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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105092
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】電池封口体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/148 20210101AFI20240730BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240730BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240730BHJP
   H01M 50/174 20210101ALI20240730BHJP
   H01M 50/547 20210101ALI20240730BHJP
   H01M 50/552 20210101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M50/148
H01M50/193
H01M50/188
H01M50/174
H01M50/547
H01M50/552
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009651
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正憲
(72)【発明者】
【氏名】錦織 祐介
(72)【発明者】
【氏名】池田 大樹
(72)【発明者】
【氏名】森山 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】蜂巣 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】朴 東海
(72)【発明者】
【氏名】千種 達也
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 将良
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA02
5H011AA09
5H011DD02
5H011EE04
5H011HH02
5H043AA07
5H043AA19
5H043BA17
5H043CA03
5H043CA04
5H043DA05
5H043DA09
5H043DA20
5H043HA31D
5H043JA01D
5H043KA22E
5H043LA02D
(57)【要約】
【課題】製造効率を向上させるとともに、電池内部のフッ化水素の生成を抑えることができる電池封口体を提供する。
【解決手段】電池容器の開口部を封口する金属製の封口部材、金属製の端子部材、及び前記封口部材と前記端子部材との間に介装されたガスケット部材が、封止部材によって一体化された電池封口体であって、前記ガスケット部材は、フッ化水素への耐性を有する第一の熱可塑性樹脂を含み、前記封止部材は、第二の熱可塑性樹脂を含み、前記封口部材は、略平板状の本体部、及び前記本体部を厚み方向に貫通して設けられた孔部を有し、前記端子部材の外周部と、前記封口部材の前記孔部の内周部との間に、予め成形された前記ガスケット部材が挟み込まれており、前記封止部材が、前記端子部材、前記ガスケット部材、及び前記封口部材のそれぞれとの間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態で射出成形されていることを特徴とする電池封口体、及びその製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池容器の開口部を封口する金属製の封口部材、金属製の端子部材、及び前記封口部材と前記端子部材との間に介装されたガスケット部材が、封止部材によって一体化された電池封口体であって、
前記ガスケット部材は、フッ化水素への耐性を有する第一の熱可塑性樹脂を含み、
前記封止部材は、第二の熱可塑性樹脂を含み、
前記封口部材は、略平板状の本体部、及び前記本体部を厚み方向に貫通して設けられた孔部を有し、
前記端子部材の外周部と、前記封口部材の前記孔部の内周部との間に、予め成形された前記ガスケット部材が挟み込まれており、
前記封止部材が、前記端子部材、前記ガスケット部材、及び前記封口部材のそれぞれとの間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態で射出成形されていることを特徴とする電池封口体。
【請求項2】
前記端子部材は、少なくともその一部が前記封口部材の一方の主面側に露出した状態で配置されており、
前記封止部材は、前記一方の主面側において、前記端子部材の前記外周部、前記ガスケット部材、及び前記封口部材の前記内周部を覆っていることを特徴とする請求項1に記載の電池封口体。
【請求項3】
前記端子部材の前記外周部の下端面と、前記封口部材の前記孔部の内周部の上端面とが、前記ガスケット部材を挟んで対向して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池封口体。
【請求項4】
前記端子部材の前記外周部の外周端面と、前記封口部材の前記孔部の内周端面とが、前記ガスケット部材を挟んで対向して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池封口体。
【請求項5】
前記端子部材は、前記外周部において、前記封口部材と対向する側の面との反対側の面が一段下がって外周方向に突出して広がるフランジ部を有し、
前記封止部材は、前記フランジ部の前記ガスケット部材と接触している箇所を除いた、前記一方の主面側に露出している表面全体を覆って成形されることを特徴とする請求項3に記載の電池封口体。
【請求項6】
前記端子部材は、前記外周部において、前記一方の主面側の面が少なくとも一段下がって外周方向に突出して広がる1又は2以上のフランジ部を有し、
前記フランジ部のうちの少なくとも1つのフランジ部は、フランジ部の段差底面と、前記封口部材の前記孔部の内周部の下端面とが、前記ガスケット部材を挟んで対向して配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電池封口体。
【請求項7】
前記封口部材は、前記一方の主面側の前記内周部において、一段下がった段差部を有していることを特徴とする請求項2に記載の電池封口体。
【請求項8】
前記封口部材は、前記内周部の近傍に厚み方向に突き出た突起部を有し、
前記ガスケット部材は、厚み方向に凹んでなる凹部を有し、
前記封口部材の突起部と前記ガスケット部材の凹部とが密着するように嵌め合わされた状態で、前記ガスケット部材が挟み込まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池封口体。
【請求項9】
前記端子部材は、前記外周部に周方向内側に凹んでなる円周凹部を有し
前記ガスケット部材は、周方向内側に凹んでなる凹部を有し、
前記封口部材の前記内周端部と前記ガスケット部材の凹部とが、密着するように嵌め合わされるとともに、前記ガスケット部材と前記端子部材の前記凹部とが密着するように嵌め合わされた状態で、前記ガスケット部材が挟み込まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電池封口体。
【請求項10】
前記封口部材及び前記端子部材は、前記封止部材との界面に、水酸基を含有する水酸基含有皮膜が形成された接合面を各々有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電池封口体。
【請求項11】
前記水酸基含有皮膜は、開口径(D)が20μm~200μm、深さ(L)が20μm~200μm、開口径(D)と深さ(L)とのアスペクト比(L/D)が0.5~5である複数の凹凸部からなるマクロ凹凸部を表面に有するとともに、10nm~50nmの複数の開口部を有し、厚さが10nm~1000nmである微細凹凸部を前記マクロ凹凸部の表面に有し、
前記封口部材及び前記端子部材と、前記封止部材とは、前記接合面を介して、前記マクロ凹凸部及び前記微細凹凸部に前記封止部材が入り込んだ状態でそれぞれ接合されていることを特徴とする請求項10に記載の電池封口体。
【請求項12】
電池容器の開口部を封口する金属製の封口部材、金属製の端子部材、及び前記封口部材と前記端子部材との間に介装されたガスケット部材が、封止部材によって一体化された電池封口体の製造方法であって、
前記ガスケット部材は、フッ化水素への耐性を有する第一の熱可塑性樹脂を含み、
前記封止部材は、第二の熱可塑性樹脂を含み、
前記封口部材は、略平板状の本体部、前記本体部を厚み方向に貫通して設けられた孔部を有し、
前記端子部材の外周部と、前記封口部材の前記孔部の内周部との間に、予め成形された前記ガスケット部材を挟み込む部材準備工程、及び
前記封止部材を、前記端子部材、前記ガスケット部材、及び前記封口部材のそれぞれとの間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態となるように射出成形する射出成形工程を備えることを特徴とする電池封口体の製造方法。
【請求項13】
前記部材準備工程では、前記端子部材を、少なくともその一部が前記封口部材の一方の主面側に露出した状態で配置し、
前記射出成形工程では、前記封止部材が、前記一方の主面側において、前記端子部材の前記外周部、前記ガスケット部材、及び前記封口部材の前記内周部を覆うように前記射出成形を行うことを特徴とする請求項12に記載の電池封口体の製造方法。
【請求項14】
前記封口部材及び前記端子部材の表面へレーザー光を照射するレーザー処理によって、前記封口部材及び前記端子部材の表面に、水酸基を含有する水酸基含有皮膜が形成される接合面をそれぞれ形成する皮膜形成工程を備え、
前記皮膜形成工程によって得られた前記封口部材及び前記端子部材を用いて、前記部材準備工程と、前記射出成形工程とを行うことを特徴とする請求項12又は13に記載の電池封口体の製造方法。
【請求項15】
前記皮膜形成工程では、前記端子部材の前記外周部、及び前記封口部材の前記孔部の前記内周部であって、前記射出成形が行われる前記一方の主面側において、それぞれ前記接合面を形成し、
前記部材準備工程では、前記端子部材に形成された前記接合面及び前記封口部材に形成された前記接合面が、前記一方の主面側に向けて露出した状態となるよう前記端子部材及び前記封口部材を配置し、
前記射出成形工程では、前記封止部材が、前記一方の主面側において、前記端子部材及び前記封口部材の前記接合面を覆うように前記射出成形を行うことを特徴とする請求項14に記載の電池封口体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池封口体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一面に開口部を有する有底角筒状または有底円筒状の形状を有する二次電池が用いられている。二次電池のケース本体の開口部を封止するための蓋として、封口体が取り付けられている。封口体には、貫通孔が形成されるとともに、貫通孔を挿通するように配置される電極端子が設けられている。電極端子は電池内部から引き出されるリードと接続されて、電池の内部と外部とを導通させることができる。このような封口体及び電極端子は、通常、電池ケース本体の開口部に対して密閉性よく取り付けられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、蓋貫通孔を有する蓋板と電極とをホルダー樹脂によって覆った、電池ケース蓋について開示されている。この特許文献1では、従来から採用されているカシメによる結合方法を課題として、蓋板と電極にレーザー処理で微細な溝を形成してから、蓋板と電極をインサート成形機内で樹脂を射出成形することで、蓋板と電極をホルダー樹脂とともに一体成形することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、電極引出孔を有する蓋板に、シールリング(ガスケット)を介して電極端子が接続された、二次電池の上蓋組み立て体が開示されている。また、この特許文献2では、蓋板に溶接によって接続する金属ホルダーと、金属ホルダーを覆う絶縁体とからなる固定部材によって、電極端子が蓋板に接続されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-145173号公報
【特許文献2】特表2021-526707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、電極をホルダー樹脂で覆うことで、ホルダー樹脂と電池蓋との間で気密性を持たせるようにしている。しかしながら、ホルダー樹脂が電池の内部に直接露出する形になるため、ホルダー樹脂を構成する樹脂、又はホルダー樹脂に含まれるフィラーが、電池の内部で生成したフッ化水素による作用を受けて劣化することがあった。そのため、この特許文献1のような構成では、フッ化水素への耐性があるホルダー樹脂やフィラーを選定する必要が生じる。この点において、この特許文献1で例示された樹脂材料ナイロンは十分とは言えない。
【0007】
また、特許文献2では、電極端子と蓋板との間にガスケットとしてのシールリングを設けることで安全性を向上させている。ここで、特許文献2に開示される封口体では、通常、まずは金属ホルダーに対して、これを覆う絶縁体を熱可塑性樹脂からなる封止部材で射出成形して一体とした成形品である固定部材を作成している。次に、電極端子と蓋板との間にガスケット(シールリング)を挟み込んだ位置関係となるようにして、固定部材をこれらの部材の上側から覆うように蓋板に圧入して、その後に、固定部材の金属ホルダー部と蓋板とを溶接することで、封口体を製造している。このような製造方法では、前記固定部材の作成工程と、固定部材の金属ホルダー部と蓋板との溶接による溶接工程が必要となるため、工数が増加して生産効率が低下する課題がある。また、このような製造方法では、予め封止部材によって成形した成型品である固定部材を蓋板に取りつけているため、電極端子及び封止部材を含む成形品と、ガスケットとの間、また、電極端子及び封止部材を含む成形品と蓋体との間に空気層が存在することがあった。この場合、空気層に残存した空気中の水分が電池内部に侵入して電解液に混入することで、電池内部にフッ化水素が生成されるという課題があった。そのため、前記特許文献1と同様に、フッ化水素への耐性がある樹脂材料やフィラーを選定する必要も生じる。
【0008】
本発明では、製造効率を向上させるとともに、電池内部のフッ化水素の生成を抑えることができる電池封口体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)電池容器の開口部を封口する金属製の封口部材、金属製の端子部材、及び前記封口部材と前記端子部材との間に介装されたガスケット部材が、封止部材によって一体化された電池封口体であって、
前記ガスケット部材は、フッ化水素への耐性を有する第一の熱可塑性樹脂を含み、
前記封止部材は、第二の熱可塑性樹脂を含み、
前記封口部材は、略平板状の本体部、及び前記本体部を厚み方向に貫通して設けられた孔部を有し、
前記端子部材の外周部と、前記封口部材の前記孔部の内周部との間に、予め成形された前記ガスケット部材が挟み込まれており、
前記封止部材が、前記端子部材、前記ガスケット部材、及び前記封口部材のそれぞれとの間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態で射出成形されていることを特徴とする電池封口体。
(2)前記端子部材は、少なくともその一部が前記封口部材の一方の主面側に露出した状態で配置されており、
前記封止部材は、前記一方の主面側において、前記端子部材の前記外周部、前記ガスケット部材、及び前記封口部材の前記内周部を覆っていることを特徴とする(1)に記載の電池封口体。
(3)前記端子部材の前記外周部の下端面と、前記封口部材の前記孔部の内周部の上端面とが、前記ガスケット部材を挟んで対向して配置されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電池封口体。
(4)前記端子部材の前記外周部の外周端面と、前記封口部材の前記孔部の内周端面とが、前記ガスケット部材を挟んで対向して配置されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電池封口体。
(5)前記端子部材は、前記外周部において、前記封口部材と対向する側の面との反対側の面が一段下がって外周方向に突出して広がるフランジ部を有し、
前記封止部材は、前記フランジ部の前記ガスケット部材と接触している箇所を除いた、前記一方の主面側に露出している表面全体を覆って成形されることを特徴とする(3)に記載の電池封口体。
(6)前記端子部材は、前記外周部において、前記一方の主面側の面が少なくとも一段下がって外周方向に突出して広がる1又は2以上のフランジ部を有し、
前記フランジ部のうちの少なくとも1つのフランジ部は、フランジ部の段差底面と、前記封口部材の前記孔部の内周部の下端面とが、前記ガスケット部材を挟んで対向して配置されていることを特徴とする(2)に記載の電池封口体。
(7)前記封口部材は、前記一方の主面側の前記内周部において、一段下がった段差部を有していることを特徴とする(2)に記載の電池封口体。
(8)前記封口部材は、前記内周部の近傍に厚み方向に突き出た突起部を有し、
前記ガスケット部材は、厚み方向に凹んでなる凹部を有し、
前記封口部材の突起部と前記ガスケット部材の凹部とが密着するように嵌め合わされた状態で、前記ガスケット部材が挟み込まれていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電池封口体。
(9)前記端子部材は、前記外周部に周方向内側に凹んでなる円周凹部を有し
前記ガスケット部材は、周方向内側に凹んでなる凹部を有し、
前記封口部材の前記内周端部と前記ガスケット部材の凹部とが、密着するように嵌め合わされるとともに、前記ガスケット部材と前記端子部材の前記凹部とが密着するように嵌め合わされた状態で、前記ガスケット部材が挟み込まれていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電池封口体。
(10)前記封口部材及び前記端子部材は、前記封止部材との界面に、水酸基を含有する水酸基含有皮膜が形成された接合面を各々有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の電池封口体。
(11)前記水酸基含有皮膜は、開口径(D)が20μm~200μm、深さ(L)が20μm~200μm、開口径(D)と深さ(L)とのアスペクト比(L/D)が0.5~5である複数の凹凸部からなるマクロ凹凸部を表面に有するとともに、10nm~50nmの複数の開口部を有し、厚さが10nm~1000nmである微細凹凸部を前記マクロ凹凸部の表面に有し、
前記封口部材及び前記端子部材と、前記封止部材とは、前記接合面を介して、前記マクロ凹凸部及び前記微細凹凸部に前記封止部材が入り込んだ状態でそれぞれ接合されていることを特徴とする(10)に記載の電池封口体。
(12)電池容器の開口部を封口する金属製の封口部材、金属製の端子部材、及び前記封口部材と前記端子部材との間に介装されたガスケット部材が、封止部材によって一体化された電池封口体の製造方法であって、
前記ガスケット部材は、フッ化水素への耐性を有する第一の熱可塑性樹脂を含み、
前記封止部材は、第二の熱可塑性樹脂を含み、
前記封口部材は、略平板状の本体部、前記本体部を厚み方向に貫通して設けられた孔部を有し、
前記端子部材の外周部と、前記封口部材の前記孔部の内周部との間に、予め成形された前記ガスケット部材を挟み込む部材準備工程、及び
前記封止部材を、前記端子部材、前記ガスケット部材、及び前記封口部材のそれぞれとの間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態となるように射出成形する射出成形工程を備えることを特徴とする電池封口体の製造方法。
(13)前記部材準備工程では、前記端子部材を、少なくともその一部が前記封口部材の一方の主面側に露出した状態で配置し、
前記射出成形工程では、前記封止部材が、前記一方の主面側において、前記端子部材の前記外周部、前記ガスケット部材、及び前記封口部材の前記内周部を覆うように前記射出成形を行うことを特徴とする(12)に記載の電池封口体の製造方法。
(14)前記封口部材及び前記端子部材の表面へレーザー光を照射するレーザー処理によって、前記封口部材及び前記端子部材の表面に、水酸基を含有する水酸基含有皮膜が形成される接合面をそれぞれ形成する皮膜形成工程を備え、
前記皮膜形成工程によって得られた前記封口部材及び前記端子部材を用いて、前記部材準備工程と、前記射出成形工程とを行うことを特徴とする(12)又は(13)に記載の電池封口体の製造方法。
(15)前記皮膜形成工程では、前記端子部材の前記外周部、及び前記封口部材の前記孔部の前記内周部であって、前記射出成形が行われる前記一方の主面側において、それぞれ前記接合面を形成し、
前記部材準備工程では、前記端子部材に形成された前記接合面及び前記封口部材に形成された前記接合面が、前記一方の主面側に向けて露出した状態となるよう前記端子部材及び前記封口部材を配置し、
前記射出成形工程では、前記封止部材が、前記一方の主面側において、前記端子部材及び前記封口部材の前記接合面を覆うように前記射出成形を行うことを特徴とする(14)に記載の電池封口体の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造効率を向上させるとともに、電池内部のフッ化水素の生成を抑える電池封口体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の実施形態1の電池封口体の上面形状を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態1の電池封口体の下面形状を示す模式図である。
図3図3は、図1におけるA-A断面図であって、本発明の実施形態1に係る電池封口体の断面模式図である。
図4図4は、本発明の実施形態1において、ガスケット部材と封口部材とを配置する際の位置関係を示す断面模式図である。
図5図5は、マクロ凹凸部における開口径(D)と深さ(L)の求め方の一例を示す模式図である。
図6図6は、レーザー光のビーム径と照射間隔との関係を示す模式図である。
図7図7は、本発明の実施形態2に係る電池封口体の断面模式図である。
図8図8は、本発明の実施形態2において、ガスケット部材と封口部材とを配置する際の位置関係を示す断面模式図である。
図9図9は、本発明の実施形態3に係る電池封口体の断面模式図である。
図10図10は、本発明の実施形態4に係る電池封口体の断面模式図である。
図11図11は、本発明の実施形態4において、ガスケット部材と封口部材とを配置する際の位置関係を示す断面模式図である。
図12図12は、本発明の実施形態5に係る電池封口体の断面模式図である。
図13図13は、本発明の実施形態6に係る電池封口体の断面模式図である。
図14図14は、本発明の実施形態6において、端子部材とガスケット部材と封口部材とを配置する際の位置関係を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の電池封口体について、その製造方法と共に詳しく説明する。本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の変更や組み合わせが可能である。また、なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を省略する場合がある。
【0013】
本実施形態の電池封口体は、電池容器の開口部を封口する金属製の封口部材と、金属製の端子部材と、前記封口部材と前記端子部材との間に介装されたガスケット部材とが、封止部材によって一体化されている。ここで、前記ガスケット部材は、フッ化水素への耐性を有する第一の熱可塑性樹脂を含み、前記封止部材は、第二の熱可塑性樹脂を含む。前記封口部材は、略平板状の本体部、及び前記本体部を厚み方向に貫通して設けられた孔部を有する。前記端子部材の外周部と、前記封口部材の前記孔部の内周部との間には、予め成形された前記ガスケット部材が挟み込まれており、前記封止部材が、前記端子部材、前記ガスケット部材及び前記封口部材のそれぞれとの間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態で射出成形されている。
【0014】
また、本実施形態の電池封口体において、前記端子部材は、少なくともその一部が前記封口部材の一方の主面側に露出した状態で配置されており、前記封止部材は、前記一方の主面側において、前記端子部材の前記外周部、前記ガスケット部材、及び前記封口部材の前記内周部を覆っていることが好ましい。封止部材が、封口部材の一方の主面側に設けられているため、他方の面側(電位内部側)に電解液が存在する場合に、端子部材、ガスケット部材、及び封口部材によって隔てられて、封止部材が電解液に晒される可能性を避けることができる。また、封口部材の一方の主面側において、ガスケット部材を挟み込んで端子部材を配置した状態で、該一方の主面側から射出成形を行っているため、製造(組み立てと射出成形)が容易になるため好ましい。
【0015】
以下、好適な実施形態1~6に基づいて、本発明の電池封口体を具体的に説明する。
【0016】
[1.実施形態1]
[1-1.電池封口体]
図1~4には本発明の実施形態1に係る電池封口体1が示され、図1は上面図であり、図2は下面図であり、図3図1のA-A断面図である。図4は、電池封口体1の製造途中において、ガスケット部材80と封口部材20とを配置する状況の一部を示す断面図である。これらの図に示される電池封口体1は、正極又は負極のいずれかの電極で用いられるものであり、各電極における封口体の一部を示すものであり、各構成部材の大きさは、使用される電池の開口部のサイズや形状等に応じて適宜変更することができる。以降の実施形態2~6についても同様である。
【0017】
図1~4を参照すると、実施形態1に係る電池封口体1は、封口部材20と、端子部材30と、ガスケット部材80と、封止部材70とを有する。図3から把握されるとおり、ガスケット部材80は、端子部材30の外周部と、封口部材20の内周部との間に介装されている(挟み込まれている)。ここで、前記の「外周部」、「内周部」については、外周(又は内周)の端部や端部の側面に限られず、その周辺部を広く含んでもよい。すなわち、「外周部」、「内周部」は、その端部や端部の側面を含んだ広い領域であってよく、或いは、端部を含まずに外周部からいくらか内側の領域や内周部からいくらか外側の領域であってもよい。
【0018】
これらの封口部材20、端子部材30及びガスケット部材80は、封止部材70によって一体化されている。封止部材70は、端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20のそれぞれとの間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態で射出成形されている。また、封止部材70は、端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20のそれぞれと接合していることが望ましい。
【0019】
「空気層となる空間」とは、空気やそれ以外の水蒸気やガスが滞留され得る空間を指すが、本発明においてはこれが存在しないようにする。空気層に水分が存在すると、当該水分に起因して電解液中の電解質(例えば、LiPF6などのフッ素含有化合物)からフッ化水素が発生するおそれがあるため、空気層が存在しないようにすることでフッ化水素の発生を防止することができる。なお、空気層による空間が存在しないことについては、例えば、封止部材70が射出成形された該当部分の切断面をSEMなどの電子顕微鏡を使用して倍率50,000倍で観察することにより、測定視野内に空隙が無いことを確認することで判別することができる。
【0020】
封止部材70を形成する樹脂材料が射出成形の際に高温高圧を受けることで、溶融又は可塑化した樹脂材料が端子部材30、ガスケット部材80、及び封口部材20と接することになる。このとき、樹脂材料が、端子部材30、ガスケット部材80、及び封口部材20のそれぞれの表面に存在する微細な凹凸構造の内部に流入する。そして、樹脂材料が固化することによって、端子部材30、ガスケット部材80、及び封口部材220のそれぞれとアンカー効果が発揮される状態で、封止部材70が形成されることになる。また、樹脂材料が、端子部材30、ガスケット部材80、及び封口部材20のそれぞれに対して、水素結合又はファンデルワールス力等の分子間力の作用によって接合することができる程度に接近する。そして、樹脂材料が固化することによって、端子部材30、ガスケット部材80、及び封口部材220のそれぞれと分子間力が発揮される状態で、封止部材70が形成されることになる。また、射出成型の条件や、封止部材70及びガスケット部材80に用いられる材料に応じて、射出された樹脂材料と接触したガスケット部材80が溶融して、樹脂材料とガスケット部材80とが融合する。そして、樹脂材料及びガスケット部材80が固化することによって、ガスケット部材80と一体化した状態で、封止部材70が形成されることになる。
【0021】
このように、封止部材70は、端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20のそれぞれと、アンカー効果、分子間力、及び溶融に伴う融合からなる群より選ばれる少なくとも1種の作用を介して接合している。これにより、封止部材70と、端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20のそれぞれとの間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態となり、リークパスが生じることを防ぐことができる。リークパスの発生を塞ぐ観点からは、封止部材70と、端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20のそれぞれとの界面において、孔部26を通過する電池の内部と外部との間の流路を横断する形で少なくとも1箇所(1本)の連続する接合部が設けられていることが好ましく、複数箇所(複数本)の連続する接合部が設けられていることがより好ましい。
【0022】
封口部材20は、電池容器(図示外)の開口部を封口する部材であり、図1~4に示すように、略平板状であるが(これを、本体部という)、当該本体部と、この本体部を厚み方向に貫通して設けられる孔部26とを有する。孔部26は、平面視において、端子部材30の外周部と略同形状となっている。例えば、端子部材30が略円柱状であって、平面視において端子部材20の外周部が円形状である場合には、孔部26も円形状となる。孔部26の内周近傍には、封口部材20の厚み方向に突き出た突起部21を有してもよい。本実施形態では、孔部26の内周近傍には一方の主面側(電池外部側)に突き出た突起部21を有している。突起部21を有することにより、ガスケット部材80との設置及び嵌合の状態を高めることができる。
【0023】
封口部材20の形状は、電池開口部の形状に応じて適宜変更することができるが、通常、矩形又は円形状の略平板状の板材(本体部)であって、中央部分は前記の孔部26が形成されている。必要に応じて、本体部には、適宜加工や部材の追加などがなされてもよく、例えば、本体部から下方(他の主面側(電池内部側))に、電池容器に挿入される脚部が延びたような形状を有してもよい。
【0024】
封口部材20は金属製であり、金属としては、銅又は銅合金からなる銅材や、鉄又は鉄合金からなる鉄材や、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミ材等、素材は制限されるものではなく、電池の封口に要求される強度、耐食性、加工性等の種々の物性に基づいて決めることができる。通常、これらの金属材の表面には、酸化皮膜が形成されている。酸化皮膜は、大気中で自然に形成される自然酸化皮膜であってもよく、陽極酸化によって形成される陽極酸化皮膜であってもよい。また、熱間圧延によって形成される圧延酸化皮膜であってもよい。
【0025】
端子部材30は、電池内部から引き出されるリードと接続されて電池の内部と外部とを導通させるための電極端子である。端子部材30は金属製であり、前記同様の金属材が用いられる。図1~3に示されるとおり、端子部材30は、円柱状の中央部と、中央部から広がる第一フランジ部31とを有し、全体としては略円柱状の形状を有する。端子部材30は、それ以外の形状(略角柱状、略平板状など)であってもよく、第一フランジ部31などの拡張部や削り取った部分などを有してもよく、使用される電池に応じて適宜変更することができる。また、端子部材30は、封口部材20の内周近傍において一方の主面側に突き出た突起部21と平面視で重なるように設けられており、該実施形態1においては少なくとも孔部26を覆うように配置されている。
【0026】
ガスケット部材80は、予め成形されたものである。成形方法はプレス成形や射出成形などの公知の方法を用いることができる。ガスケット部材80は、封口部材20と端子部材30との間に介装されている。ガスケット部材80は、内側に空間を有する環状の形状を有する。ガスケット部材80は、環状の部分が端子部材30の外周部に対応した形状となっている。ガスケット部材80が封口部材20と端子部材30との間に介装された状態で、ガスケット部材80の環状の部分に囲まれる内側の空間部分を通じて、封口部材20の他方の主面側から端子部材30に到達できるようになっている。また、ガスケット部材80は、封口部材20の孔部26の内周部に対応した形状となっている。ガスケット部材80が封口部材20と端子部材30との間に介装された状態で、ガスケット部材80の環状の部分に囲まれる内側の空間部分が孔部26と略一致する関係になっている。例えば、端子部材30が略円柱状であって、平面視において、端子部材30の外周部が円形状であり、孔部26が円形状である場合には、ガスケット部材80も平面視で円環状となる。ガスケット部材80は、封口部材20と端子部材30との間を塞いで、気密性及び水密性を高める機能を有する。ガスケット部材80によって、電池内部の電解液から発生したフッ化水素による封止部材70や封止部材70に含まれるフィラーへの影響を抑えることができる。
【0027】
そのため、ガスケット部材80は、フッ化水素への耐性を有する熱可塑性樹脂(第一の熱可塑性樹脂)を含む。当該第一の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー(FEP)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等のフッ素樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂;ポリフェニレンサルファイド(PPS);などを挙げることができるが、これらに限定されない。第一の熱可塑性樹脂として、フッ化水素への耐性の観点から、PTFE、PFA等のフッ素樹脂が好ましい。
【0028】
ガスケット部材80は、これと接触する端子部材30及び封口部材20の部分の形状や密着の程度などに応じて、図示された形状に限られず、その形状を適宜変更することができる。
【0029】
封止部材70は、射出成形によって端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20を一方の主面側(電池外部側)から覆って封止するとともに、これらの部材を一体化する部材である。封止部材70の形状は、本発明の目的を害しない限り、一体化される他の部材の形状などに応じて適宜変更することができる。
【0030】
封止部材70は、熱可塑性樹脂(第二の熱可塑性樹脂)を含んで構成される。当該第二の熱可塑性樹脂は、第一の熱可塑性樹脂と同じでもよく異なってもよく、限定されないが、射出成形により前記の各部材との接触面に容易に入り込む樹脂であることが好ましい。第二の熱可塑性樹脂は、フッ化水素への耐性は必須ではないが、フッ化水素への耐性を有していてもよい。第二の熱可塑性樹脂としては、例えば、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF等のフッ素樹脂;PE、PP等のポリオレフィン樹脂;PPS、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等を好適に挙げることができる。射出成形時にガスケット部材80が変形しないように、第二の熱可塑性樹脂については、第一の熱可塑性樹脂の耐熱温度よりも低いものを選定することが好ましい。第二の熱可塑性樹脂として、射出成型性、及びフッ化水素への耐性の観点から、PP又はPPSが好ましく、射出成型性、フッ化水素への耐性、及び耐電圧性の観点から、PPSがより好ましい。
【0031】
本発明においては、予め成形したガスケット部材80をインサートしてから封止部材70の射出成形を行うことにより、ガスケット部材80と封止部材70との射出条件が異なっている場合であっても、両者を組み合わせて一体成形させることができる。
【0032】
また、封止部材70には、機械的強度の向上や体積変化を抑える目的等のために各種フィラーを配合することが好ましい。フィラーは公知の無機フィラーなどをいずれも用いることができるが、特に、本発明の用途として耐電圧や寸法安定性のために、フィラーとしてガラスフィラー(通常、30~70質量%程度)が配合されることが好ましい。当該ガラスフィラーが配合される場合、ガラスはフッ化水素により侵されることから、前記のとおり、電解液からフッ化水素が発生することを防止するために、空気層となる空間が存在しないように封止部材70が各部材と密着した状態で配置されることが特に重要となる。
【0033】
実施形態1の具体的な構成については、図3のとおり、封口部材20は、略平板状の本体部を貫通する、円形状の孔部26を有している。封口部材20は、孔部26の内周部の近傍に一方の主面側に突き出た突起部21を有している。また、ガスケット部材80は、平面視で円環状であって、突起部21の内周側面、端子部材30と対向する突起部21の先端面、及び突起部21の外周側面と接する内壁面を有する凹部を形成する内周部分と、当該内周部分から外周方向に広がって封口部材の平面部の一方の主面側の上面と接する外周部分と、を有する。このように、封口部材20は、内周部の近傍に厚み方向に突き出た突起部21を有し、ガスケット部材80は厚み方向に凹んでなる凹部81を有している。そして、図4に示すとおり、封口部材20の突起部21とガスケット部材80の凹部81とが密着するように嵌め合わされた状態で、ガスケット部材80が挟み込まれている。これにより、組み立てる際に封口部材20へのガスケット部材80の位置決めが容易となる。また、射出成型の際にガスケット部材80が動いてしまうことを防ぎやすくなる。
【0034】
さらに、突起部21と凹部81とが嵌め合わされたガスケット部材80の内周部分が、上下から対向する端子部材30の外周部の下面(下端面;電池内部側)と、封口部材20の孔部26の内周部の上面(上端面;電池外部側)とによって挟まれている。この実施形態1では、端子部材30は、封口部材20の孔部26には入らずに配置される。すなわち、端子部材30の外周部と、ガスケット部材80と、封口部材20の孔部26の内周部とが、この順で上(電池外部側)から積層された状態で配置されている。これらの部材がこのような積層順で配置されることにより、一方の主面側(電池外部側)において、これらの部材が封止部材70により覆われるようになっている。これにより、前記のとおり、封止部材70が、端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20によって封口部材20の他方の主面側(電池内部側)と隔てられて、封止部材70が電解液に晒される可能性を避けることができる。また、封止部材70が該一方の主面側から射出成形を行われるため、製造(組み立てと射出成形)が容易になるため好ましい。
【0035】
また、図3のとおり、端子部材30は、その外周部において、封口部材20と対向する側の面との反対側の面が一段下がって中央部から外周方向に突出して広がる第一フランジ部31を有する。言い換えれば、端子部材30には、その外周部において、一方の主面側の面が一段下がって中央部から外周方向に突出して広がる第一フランジ部31を有する。第一フランジ部31を有することにより、中央部の側面である第一段差側面33(32)と、第一フランジ部31の上面である第一段差底面34(32)とからなる第一段差部32が形成される。このような第一段差部32及び第一フランジ部31を有することにより、前記のとおり、端子部材30をガスケット部材80及び封口部材20に対して積層した状態で配置できるようになる。また、第一段差部32及び第一フランジ部31を有することにより、封止部材70は、第一段差側面33(32)、第一段差底面34(32)、第一フランジ部31の外周端面(外周側面)35、第一フランジ部31の下面、ガスケット部材80及び封口部材20の本体部と密着される。すなわち、封止部材70は、端子部材30の外周部における、ガスケット部材80と接触している箇所を除いた一方の主面側に露出している表面全体を覆って射出成形されているため、気密性及び水密性が高まると共に接着強度が高まる。第一段差部32及び第一フランジ部31における各側面及び底面(第一段差側面33(32)、第一段差底面34(32)及び第一フランジ部31の外周端面(外周側面)35)の幅(長さ)については、端子部材30の形状や封止部材70との密着(接合)の程度等を考慮して、その目的に応じて適宜変更することができる。以降の実施形態についても同様である。
【0036】
[1-2.水酸基含有皮膜]
封止部材70が密着(接合)している封口部材20及び端子部材30の各部材の界面(これらをそれぞれ接合面27、接合面36と表す)においては、水酸基を含有する水酸基含有皮膜が形成されていることが好ましい。水酸基含有皮膜は、巨視的には凹部と凸部が交互に連続して形成された「マクロ凹凸部」と、そのマクロ凹凸部の表面に形成された「微細凹凸部」とを有している。接合面27及び接合面36を有する場合、封止部材70は、封口部材20及び端子部材30の各接合面を介して、当該マクロ凹凸部及び微細凹凸部に入り込んだ状態でそれぞれ密着(接合)されるため十分な接合強度と気密性の発現が期待できる。また、接合面27及び接合面36は、図3のとおり、封口部材20及び端子部材30における射出成形が行われる一方の主面側の表面に各々形成されていることが好ましい。本実施形態では、端子部材30の第一フランジ部31の上側(第一段差底面34(32))に、接合面36が形成されている。また、封口部材20の孔部26の内周側面25付近であって、ガスケット部材80の位置よりも外周方向の部分に、接合面27が形成されている。端子部材30が一方の主面側に露出して配置されるとともに、封止部材70によって覆われる一方の主面側に水酸基含有皮膜を有する接合面27及び接合面36が形成されていることで、十分な接合強度と気密性の発現が期待できる。
【0037】
このような水酸基含有皮膜は、端子部材30又は封口部材20を構成する各金属に応じて、例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、酸化水酸化アルミニウム(AlO(OH))、水酸化銅(Cu(OH)2)、水酸化鉄(II)(Fe(OH)2)、酸化水酸化鉄(III)(FeO(OH))、等の金属基材を構成する金属の水酸化物(金属水酸化物)、または各部材を構成する金属の酸化水酸化物(金属酸化水酸化物)を含んでいる。また、水酸基含有皮膜は、各部材を構成する金属に応じて、例えば、酸化アルミニウム(Al23)、酸化銅(I)(Cu2O)、酸化銅(II)(CuO)、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(II,III)(Fe34)、酸化鉄(III)(Fe23)、等の各部材を構成する金属の酸化物(金属酸化物)を含んでいてもよい。
【0038】
水酸基含有皮膜については、例えば、グロー放電発光分析法(Glow discharge optical emission spectrometry:GD-OES)によって、端子部材30及び封口部材20の各接合面の表層付近に存在する水酸基を検出することで確認することができる。具体的には、まず、GD-OESを用いて、各接合面における厚さ方向に対して、各部材を構成する主金属および水酸基に由来する発光強度(V)を測定する。続いて、主金属に由来する発光強度の積算値(面積)から、各部材を構成する主金属の検出量を算出する。また、水酸基に由来する発光強度の積算値から、水酸基の検出量を測定する。さらに、主金属の検出量と水酸基の検出量との合計量に対する、水酸基の検出量の割合を、水酸基存在率として算出する。GD-OESによって得られる発光スペクトルのうち、281nmおよび309nmに現れるピークを、水酸基に由来するピークとする。GD-OESによる各部材の表層付近の発光強度の測定は、表面から200nmの深さまでの測定を行えばよい。具体的には、各部材を構成する主金属の元素および水酸基に由来する発光強度が検出されてから、主金属の元素に対応する200nmのスパッタリングに要する時間が経過するまでの範囲を測定する。この測定の範囲(時間)は、測定対象となる主金属元素を高純度で含む標準試料のスパッタリングレート(μm/min)を予め測定することにより把握することができる。GD-OESを利用して発光強度を測定することで、各部材の最表層に存在する成分だけではなく、封止部材70の樹脂との接合に寄与しうる、ある程度の深さまで存在する成分を検出して評価を行うことができる。
【0039】
水酸基存在率は、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上、特に好ましくは7%以上である。水酸基存在率が上記下限値以上であることにより、前記各部材の各接合面の表面付近に存在する水酸基が増加し、封止部材70の樹脂に含まれる官能基と相互作用することが期待できる。また、このとき、封止部材70の接合強度や気密性も向上する傾向にある。水酸基存在率の上限は特に限定されないが、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。水酸基存在率は、水酸基の形成方法によって変化する。例えば、前記各部材がレーザー処理を受けた場合に比して、各部材が、温水もしくは熱水による水和酸化物処理;化成処理;ジンケート処理;等の湿式処理を受けた場合の方が高くなる傾向にある。レーザー処理により水酸基含有皮膜が形成される場合には、水酸基含有率は、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。
【0040】
前記各部材の各接合面の表面には、レーザー照射に起因して形成される金属酸化物が照射部の周辺に堆積した堆積物が皮膜状に形成されている。このような堆積物からなる金属溶融層は、前記のとおりの金属酸化物として酸素を含有している。金属溶融層は、最表層に水酸基を有する水酸基含有皮膜を有している。本発明においては前記のとおり、各接合面の全面が、マクロ凹凸部及び微細凹凸を有する水酸基含有皮膜で覆われていることが好ましい。「接合面の全面」とは、必ずしも接合面27又は接合面36の各接合面の表面積の100%のみに限定されるわけでなく、未照射部によって水酸基含有皮膜に覆われていない面がごく微小のスポット的に存在している場合を排除するものではない。各接合面は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が水酸基含有皮膜に覆われていることがよい。
【0041】
<マクロ凹凸部>
マクロ凹凸部は、μmオーダーサイズの凹凸形状を有する構造体であって、水酸基含有皮膜の表面に形成されている。マクロ凹凸部は、レーザー光の照射を受けて金属基材が穿孔されることで生じる凹部と、レーザー光の照射によって生じた金属酸化物の堆積物からなる凸部とからなる構造を有している。そして、複数回のレーザー光の照射が互いに隣接して行われることで、凹部と凸部とからなる繰り返し構造を有している。マクロ凹凸部は、接合面の表面または断面を、例えば、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)を用いて観察することで確認することができる。
【0042】
マクロ凹凸部は、図5を参照して説明する手順から求められる、所定の開口径(D)と深さ(L)を有することが好ましい。マクロ凹凸部は、水酸基含有皮膜と同様に、金属水酸化物または金属酸化水酸化物を含んでいる。また、マクロ凹凸部は、水酸基含有皮膜と同様に、金属酸化物を含んでいてもよい。
【0043】
ここで、開口径(D)と深さ(L)を算出するためには、SEMを用いて端子部材30又は封口部材20の各部材か、又は各部材に封止部材70が密着(接合)した状態の接合断面の観察を行い、少なくとも12個の凹部と11個の凸部とが交互に連続して配置されている、レーザー照射で形成された複数の凹凸部を含む断面写真を撮影する。そして、この断面写真に含まれる複数の凹凸部から、開口径(D)と深さ(L)を算出することができる。
【0044】
具体的には、図5に示すように、断面写真を取得後に以下のような線を設けることにより求める。図5は、当該マクロ凹凸部の開口径(D)と深さ(L)を算出するために用いることができる断面を模式的に表した図の一例である。この図5は、マクロ凹凸部が形成された端子部材30又は封口部材20の各部材のいずれかに相当する金属製部材11に、封止部材70に相当する樹脂成形体12を接合させた場合を想定したものである。
【0045】
まず、図5において、任意に選択した連続した凹部12個について、各凹部のそれぞれの中で最も深い位置となる最底部のうちで最も深いものを最低凹部Pb1とする。最低凹部Pb1を通過するか、またはPb1よりも低い位置を通過するとともに、各凹部のそれぞれの最底部の位置からの距離の和が最も小さくなる位置を通る基準線RL1を引く。次に、上述した12個の凹部に挟まれる各凸部の中で一番高い凸部を最頂凸部Pt1とする。最頂凸部Pt1を通過するとともに、基準線RL1と平行となる基準線RL2を引く。このように、RL1及びRL2がそれぞれ最低凹部Pb1、最頂凸部Pt1を通過するように引かれることにより、深さLを算出する際に、本来の値よりも過度に大きく又は小さく計算されて、アスペクト比(L/D)が大きく又は小さく算出されてしまうことを防止することができる。続いて、最底凹部Pb1を含む連続した12個の凹部について、各凹部の最底部から、基準線RL2に対して垂直となる方向に12本の直線を引き、これらの直線をそれぞれ順にa線~l線(図5では、破線で表示)とする。
【0046】
上述したa線~l線について、互いに隣接する線の中間において平行な中線を引き、これらの中線をそれぞれ順にA~K線とする。A線~B線の間隔を、A線とB線とによって挟まれるとともに、b線が通過する凹部の開口径D1として得る。同様にして、A~K線の隣接する線どうしの間隔を、開口径D1~D10として得る。また、b線~k線それぞれにおいて、各凹部の最底部から基準線RL2までの距離を、10個の凹部の深さL1~L10として得る。開口径D1~D10、及び深さL1~L10は、a線~l線のうち、両端のa線とl線とを除いたb線~k線がそれぞれ通過する、10個の凹部の開口径D及び深さLにそれぞれ対応するものである。
【0047】
このようにして、図5に含まれるb線~k線がそれぞれ通過する10個の凹部について、深さL1~10、及び開口径D1~D10を得ることができる。さらに、深さL1~10、及び開口径D1~D10の中から、スミルノフ・グラブス検定を用いて外れ値を検出する。外れ値の検出を行うためには、まず、深さL1~L10の10個の凹部について、各深さLの値を深さL1~L10の平均値で減算した絶対偏差を算出し、算出された絶対偏差を深さL1~L10の不偏標準偏差で除算して検定統計量tを算出する。次に、検定統計量tがその値となる確率を表すp値を求める。そして、p値が5%未満となるものを外れ値として検出する。外れ値が検出された場合には、深さL1~L10の10個の凹部から外れ値が検出された凹部の深さLを除外して、残余の凹部の深さLについて再度外れ値の検出を行い、以降、外れ値が検出されなくなるまで繰り返す。同様にして、開口径D1~D10からも外れ値を検出する。さらに、図5に含まれるb線~k線がそれぞれ通過する10個の凹部について、深さLまたは開口径Dの一方または両方で外れ値が検出された凹部を除いた残余の凹部の深さLと開口径Dから、深さLの平均値と、開口径Dの平均値とを算出する。このようにして得られた深さLの平均値と、開口径Dの平均値とを、マクロ凹凸部の深さ(L)、開口径(D)とする。
【0048】
またさらに、図5に含まれるb線~k線がそれぞれ通過する10個の凹部について、深さLまたは開口径Dの一方または両方で外れ値が検出された凹部を除いた残余の凹部の深さLと開口径Dから、各凹部の深さLを各凹部の開口径Dで除算して、それぞれのアスペクト比(L/D)を算出する。そして、各凹部それぞれのアスペクト比(L/D)から、複数の凹部のアスペクト比(L/D)の平均値を算出する。このようにして得られたアスペクト比(L/D)の平均値を、マクロ凹凸部のアスペクト比(L/D)とする。
【0049】
開口径(D)は、通常20μm~200μm、好ましくは40μm~180μm、より好ましくは60μm~150μm、さらに好ましくは80μm~120μmである。当該開口径(D)が上記下限値以上となる場合、凹部が広くなることから、接合させる封止部材70の樹脂が凹部へ入り込みやすくなり、また、後述のアスペクト比を満足しやすくなる。一方で、開口径(D)が上記上限値以下となる場合、樹脂の入り込みによる嵌合効果が発揮されやすくなり、また、後述のアスペクト比を満足しやすくなる。
【0050】
深さ(L)は、通常20μm~200μm、好ましくは40μm~180μm、より好ましくは60μm~150μm、さらに好ましくは80μm~120μmである。当該深さ(L)が上記下限値以上となる場合、十分な深さを有することから樹脂の入り込みによる嵌合効果が発揮されやすくなり、また、後述のアスペクト比を満足しやすくなる。一方で、深さ(L)が上記上限値以下となる場合、深さ(L)値及び開口径(D)がともに大きくなることによる粗大な凹凸構造が形成されることを防いで、樹脂の入り込みによる嵌合効果が発揮されやすくなり、また、後述のアスペクト比を満足しやすくなる。
【0051】
また、開口径(D)と深さ(L)とのアスペクト比(L/D)は、通常0.5~5、好ましくは0.5~4、より好ましくは0.7~3、さらに好ましくは1~2である。このようなアスペクト比を満足することにより、凹部の深部まで樹脂が流入してマクロ凹凸部と樹脂との間に生じる空隙の発生を抑えて水酸基含有皮膜の表面全体を封止することができる。このように、マクロ凹凸部を介した端子部材30又は封口部材20と封止部材70の樹脂とによる嵌合が十分に発揮されるような凹部の形状となることで、これらの接合強度及び気密性を高めることができる。L/Dが上記下限値を上回ることで、凹部の開口径に対して深さが相対的に小さすぎない程度のサイズとなって、凹部が適度な深さを有する形状となり、凹部に樹脂が流入した際に各部材と樹脂との嵌合が発揮される形状となりやすくなる。また、アスペクト比が上記上限値を下回ることで、凹部の開口径に対して深さが相対的に大きすぎない程度のサイズとなって、凹部の幅が開口部から深部へ向けて次第に狭まる略三角形状の形状となり、凹部の深部まで樹脂が流入しやすくなる。
【0052】
<微細凹凸部>
微細凹凸部は、nmオーダーサイズの凹凸形状を有する構造体であって、水酸基含有皮膜の表面のマクロ凹凸部上に形成されている。微細凹凸部は、レーザー照射によって水酸基含有皮膜を有する金属溶融層が形成された際に、水酸基含有皮膜の表面に形成される。微細凹凸部は、金属部材の表面または断面を、例えば、走査電子顕微鏡を用いて観察することで確認することができる。
【0053】
微細凹凸部は、10nm~50nmのナノサイズの微細な開口部が形成されているとともに、その膜厚が10nm~1000nmの微細な構造を持つ。SEMによる観察を行った場合、微細凹凸部は、上記サイズの微細な開口部を有する海綿状の構造体として観察される。微細凹凸部は、水酸基含有皮膜と同様に、金属水酸化物または金属酸化水酸化物を含んでいる。また、微細凹凸部は、水酸基含有皮膜と同様に、金属酸化物を含んでいてもよい。
【0054】
[1-3.電池封口体の製造方法]
本発明の電池封口体1の製造方法は、端子部材30の外周部と、封口部材20の孔部26の内周部との間に、予め形成されたガスケット部材80を挟み込む部材準備工程含む。部材準備工程には、端子部材30、封口部材20及びガスケット部材80をそれぞれ準備する工程を含む。また、本発明の電池封口体1の製造方法は、部材準備工程で準備した端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20が密着した状態で、封止部材70を射出成形する射出成形工程を備えている。また、本発明の電池封口体1の製造方法は、端子部材30及び封口部材20の表面にレーザー光を照射するレーザー処理によって、当該各表面に、水酸基を含有する水酸基含有皮膜が形成される接合面をそれぞれ形成する皮膜形成工程を備えてもよく、皮膜形成工程を行った後に得られた封口部材20及び端子部材30を用いて、部材準備工程及び射出成形工程を行ってもよい。
【0055】
<部材準備工程>
部材準備工程では、先ず、封口部材20、端子部材30及びガスケット部材80を、それぞれの金属又は樹脂材料に適した成形方法及び加工方法により、予め所定の形状に成形及び加工して準備する。そして、準備された封口部材20、端子部材30及びガスケット部材80を用いて、図3に示された積層状態となるように、端子部材30の外周部と、封口部材20の孔部26の内周部との間に、ガスケット部材80を挟み込む。この際、端子部材30の少なくとも一部が封口部材20の一方の主面側に露出した状態で配置される。また、次の射出成形工程において成形される封止部材70が入り込まずに空気層となる空間が生じないように各部材を適切に配置するようにする。また、成形後の封止部材70に対して他方の主面側(電池内部)の電解液から生じるおそれがあるフッ化水素が接触しないように、封止部材70が、封口部材20と端子部材30とによって隔てられるように、これらの部材の間にガスケット部材80を適切に挟み込む。
【0056】
<射出成形工程>
射出成形工程では、先ず、部材準備工程で準備又は配置された封口部材20、端子部材30及びガスケット部材80を、射出成形用の金型内にセットする。次いで、封止部材70に使用される第二の熱可塑性樹脂や必要によりフィラーを含む樹脂材料を溶融させ射出成型用の樹脂材料を準備する。そして、前記の各部材がセットされた状態で、一方の主面側(電池外部側)から、所定の封止部材70の形状を形成するように金型のキャビティ内に前記樹脂材料を射出成形して流し込む。射出成形条件は、使用される第二の熱可塑性樹脂を含む樹脂材料に応じて、樹脂温度や金型温度などを適宜設定することができる。射出成形工程を行った後、圧力を加えながら溶融又は可塑化した樹脂材料を冷却させる冷却・固化工程を行う。その後、射出成形金型を開いて成形品である電池封口体1を取り出す取出工程を有する。
【0057】
このような射出成形工程により、図3に示されるように、当該一方の主面側において、封止部材70が、端子部材30の外周部、ガスケット部材80及び封口部材20の内周部を覆うように射出成形され、端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20が密着した状態で一体化される。また、封止部材70は、端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20のそれぞれと接合した状態で一体化されることが望ましい。すなわち、封止部材70は、端子部材30の外周部における、ガスケット部材80と接触している箇所を除いた一方の主面側に露出している表面全体を覆って射出成形されているため、気密性及び水密性が高まると共に、接着強度が高まる。また、製造(組み立てと射出成形)が容易になる。
【0058】
<皮膜形成工程>
皮膜形成工程では、部材準備工程において各部材を配置する前に、準備した封口部材20及び端子部材30における封止部材70と密着(接合)され得る箇所の表面に、レーザー光を照射する処理(以下、単に「レーザー処理」などという。)を施す。レーザー処理によって、封口部材20及び端子部材30における封止部材70との接合面27及び接合面36を形成させる。また、レーザー処理によって、水酸基含有皮膜が形成された接合面27及び接合面36が形成される。
【0059】
すなわち、封口部材20及び端子部材30の各部材の所定の箇所に接合面27及び接合面36を形成するに際しては、端子部材30の外周部の表面(例えば、第一段差底面34(32))及び封口部材20の内周部であって射出成形が行われる一方の主面側(電池外部側)において、それぞれレーザー処理を施して接合面27及び接合面36を形成する。また、部材準備工程では、端子部材30に形成された接合面36及び封口部材20に形成された接合面27が、一方の主面側に向けて露出した状態となるよう端子部材30及び封口部材20を配置する。そして、射出成形工程では、一方の主面側において、端子部材30及び封口部材20の接合面27及び接合面36を覆うように封止部材70の樹脂が射出成形されるようにすることが好ましい。このようにすることで、封止部材70によって覆われる一方の主面側に水酸基含有皮膜を有する接合面27及び接合面36が形成されていることで、十分な接合強度と気密性の発現が期待できる。また、一方の主面側のみからレーザー処理を施すことによって十分な接合強度と気密性の発現が期待できる接合面27及び接合面36を形成することができ、端子部材30及び封口部材20の封止部材70と接触する箇所の全体に対してレーザー処理を施す必要が無いため、レーザー処理に要する時間を短縮して生産効率を向上させることできる。
【0060】
レーザーとしては、公知のレーザーを使用することができるが、本発明のようにスポット的に各部材を加工することに好都合であることから、パルス発振レーザーを用いることが好ましく、例えば、YAGレーザー、YVO4レーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザーを用いることがよい。
【0061】
水酸基含有皮膜の形成原理は概ね次のとおりである。すなわち、レーザー照射によるエネルギーによって金属製の各部材が溶融・蒸発するが、蒸発によって穿孔されることでその空間が凹部の基となり、その凹部の両側(両隣)のレーザーが照射されない部分が凸部の基となる。それと同時に、溶融した金属部分は一部又は全部が酸化されて金属酸化物となり、これが凹部となる照射部の周辺に堆積することにより、凸部が形成される。金属酸化物からなる堆積物は、凹部と凸部を覆って皮膜状に形成される。このように形成された金属酸化物からなる堆積物によって、マクロ凹凸部の凹凸形状を形作る金属溶融層が形成される。さらに、金属酸化物は少なくとも多少の部分的イオン性を持っており、金属酸化物の新性表面には金属イオン(Al3+)と酸化物イオン(O2-)が存在している。静電的中和性から、空気中の水分と反応することで、金属溶融層の表面に存在する金属酸化物の水酸基化が起こり、金属溶融層の表面が水酸基で覆われることになる。このようにして、金属溶融層の最表層に、水酸基を含有する水酸基含有皮膜が形成される。
【0062】
なお、レーザー照射を受けないレーザー未照射部が存在している場合には、レーザー未照射部には金属溶融層が存在しておらず、水酸基含有皮膜も存在してない。通常、レーザー未照射部には、酸化皮膜が形成されている。レーザー未照射部は、マクロ凹凸部を有さないために、通常は平坦であることから、その部分に樹脂などを接合するとマクロ凹凸部に起因する機械的接合による接合強度の向上が期待できず、また、平坦であるために空隙も生じやすいことから気密性の向上も期待できない。したがって、接合面にレーザー未照射部が残存しており、接合面の全体に水酸基含有皮膜が形成されていない場合には、接合面27及び接合面36における気密性および接合強度が低下するおそれがある。なお、レーザー未照射部には前記した水酸基含有皮膜も存在しないことから、水酸基に起因する化学的接合による相互作用の発揮も期待できない。
【0063】
<レーザー処理条件>
上述したようなマクロ凹凸部と微細凹凸部とを有する水酸基含有皮膜とを備えるようにするためには、次のような点を考慮したレーザー処理条件に設定することが好ましい。
【0064】
レーザー処理は、単位面積当たりのレーザー光の照射エネルギー(以降、「エネルギー密度」とも称する。)の影響を受ける。エネルギー密度は、レーザー処理の対象となる対象物(ワーク)において、レーザー光が照射されるレーザー被照射部が、単位面積と単位時間当たりに受けるレーザー出力を表す。エネルギー密度(J/mm2)は、レーザー光の出力W(W)、レーザー光の走査回数N(回)、レーザー光の照射間隔C(mm)、レーザー光の走査速度V(mm/s)、レーザー被照射部におけるレーザー光の照射方向と直行する長さLength、レーザー被照射部におけるレーザー光の照射方向と平行な幅Width、から、下記式(A1)によって表される。
エネルギー密度=(((Length/C)×Width×N)/V)×W)/(Length×Width) ・・・式(A1)
式(A1)を変形すると以下の式(A2)が得られる。エネルギー密度は、式(A2)によって算出することができる。
エネルギー密度=(W×N)/(C×V) ・・・式(A2)
【0065】
エネルギー密度は、好ましくは0.5J/mm2以上である。エネルギー密度が増加すると、レーザー処理を受けた金属製の各部材の表面に、水酸基を有する微細凹凸部が形成されやすくなる。また、所定の水酸基存在率を有する水酸基含有皮膜が形成されやすくなる。さらに、エネルギー密度が増加すると、形成されるマクロ凹凸部の凹部が深く形成されて、レーザー処理後の表面粗さが大きくなる傾向にある。なお、金属製の各部材を構成する金属の融点が高く、熱拡散が大きいほど、レーザー光による作用を受けにくくなる傾向にある。上述した事情を考慮して、エネルギー密度は、レーザー処理の対象となる金属にあわせて変更することが望ましい。
【0066】
アルミニウムを主金属とする金属製の各部材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、好ましくは0.5J/mm2以上、より好ましくは1J/mm2以上、さらに好ましくは1.5J/mm2以上である。また、アルミニウムを主金属とする金属製の各部材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、好ましくは5J/mm2以下、より好ましくは4J/mm2以下、さらに好ましくは3J/mm2以下である。
【0067】
鉄を主金属とする金属製の各部材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、好ましくは1J/mm2以上、より好ましくは2J/mm2以上、さらに好ましくは3J/mm2以上である。また、鉄を主金属とする金属製の各部材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、好ましくは10J/mm2以下、より好ましくは8J/mm2以下、さらに好ましくは6J/mm2以下である。
【0068】
銅を主金属とする金属製の各部材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、好ましくは2J/mm2以上、より好ましくは4J/mm2以上、さらに好ましくは6J/mm2以上である。また、銅を主金属とする金属製の各部材に対してレーザー処理を行う場合には、エネルギー密度は、エネルギー密度は、好ましくは20J/mm2以下、より好ましくは15J/mm2以下、さらに好ましくは10J/mm2以下である。
【0069】
エネルギー密度が上記下限値以上であることにより、レーザー処理を受けた金属製の各部材の表面に、水酸基を有する微細凹凸部が形成されやすくなる。また、所定の水酸基存在率を有する水酸基含有皮膜が形成されやすくなる。したがって、水酸基を有する微細凹凸部及び水酸基含有皮膜によって、接合面27及び接合面36における気密性及び接合強度が向上しやすくなる。また、エネルギー密度が上記下限値以上であることにより、形成されるマクロ凹凸部の凹部の深さ(L)が大きくなり、アスペクト比(L/D)が大きくなる傾向にある。したがって、マクロ凹凸部に封止部材70の樹脂が入り込むことで、マクロ凹凸部と封止部材70との機械的接合(アンカー効果)が発揮されることにより、接合強度が向上しやすくなる。エネルギー密度が上記上限値以下であることにより、形成されるマクロ凹凸部の凹部深さ(L)が過度に大きくなり、アスペクト比(L/D)が過度に大きくなることを防ぎやすくなる。したがって、マクロ凹凸部の凹部の深部にまで樹脂が入り込むことができ、マクロ凹凸部の全体で金属製の各部材の水酸基と封止部材70の官能基との化学的接合が発揮されることにより、気密性が向上しやすくなる。また、マクロ凹凸部の凸部の構造が細長く尖った形状となることを防いで、凸部が折れるなどによる機械的強度の低下を抑えることができる。また、接合部分が破断する際に金属製の各部材での破壊が生じることを防ぐことができる。
【0070】
レーザー処理におけるレーザー条件(レーザー処理条件)は、上述したエネルギー密度を達成するように適宜設定すればよい。レーザー処理条件のパラメータとしては、レーザー光の出力(W)、レーザー光の周波数(kHz)、レーザー光のビーム径(μm)、レーザー光の照射間隔(μm)、レーザー光の走査速度(mm/s)、レーザー光の走査回数(回)が挙げられる。なお、走査回数とは、同一の照射軌跡に沿ってレーザー光を繰り返し照射する回数をいう。ここで、レーザー光のビーム径と照射間隔との関係について、図6を参照して説明する。レーザー光の照射間隔とは、対象物に照射される一のレーザー光の軌跡13と、当該レーザーと隣接して照射される他のレーザー光の軌跡13’との間の間隔をいう。より具体的には、レーザー光の照射間隔は、当該一のレーザー光の軌跡13における走査方向14と直行する方向のいずれか一方側の端部と、当該他のレーザー光の軌跡13’における当該一のレーザー光と同じ側の端部との間の距離をいう。パルスレーザ―を照射した場合には、レーザー光の軌跡は、個々のレーザーパルスによって形成される細孔が連続した軌跡として表される。この場合、レーザー光の照射間隔15は、連続する細孔によって形成されるレーザー光の軌跡に挟まれた領域の幅と、ビーム径16の大きさとを足し合わせた長さに相当する。
レーザー処理の対象となる金属基材の主金属がアルミニウム、鉄、銅である場合について、レーザー処理条件の例を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
[2.実施形態2]
図7は、本発明の実施形態2に係る電池封口体1の断面図を示すものである。
【0073】
図7に示されるように、実施形態2に係る電池封口体1においては、端子部材30が封口部材20の孔部26の中に挿入されている。これにより、端子部材30の外周部(第一フランジ部31)の外周端面(外周側面)35と、封口部材20の孔部26の内周端面(内周側面)25とが、ガスケット部材80を挟んで対向して配置されている。そして、このように配置されている端子部材30の外周部(第一フランジ部31)の上面(第一段差底面34(32))と、ガスケット部材80の上面と、封口部材20の平坦部の上面の一部とが、封止部材70によって、空気層となる空間を存在させずに密着して一体化されている。
なお、実施形態2において、その他の部分は実施形態1と同じであるので、同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
また、このような端子部材30、封口部材20及びガスケット部材80の配置にすることにより、これらの部材が封口部材20の本体部の平面方向に沿って並ぶように配置することができる。これにより、電池封口体の高さが比較的低くなるように形成することができ、低背化が可能となる。
【0075】
また、この平面方向に沿って並んだ端子部材30の外周部(第一段差側面33(32)、第一段差底面34(32))と、ガスケット部材80と、封口部材20におけるガスケット部材80よりも外側の平坦部分とが、封止部材70によって覆われて一体化されているため、封止部材70が、封口部材20の一方の主面側に設けられており、それにより、他方の面側(電位内部側)に電解液が存在する場合に、端子部材30、ガスケット部材80、及び封口部材20によって隔てられて、封止部材70が電解液に晒される可能性を避けることができる。
【0076】
図7図8に示されるように、実施形態2のガスケット部材80は、平面視で円環状であって、厚み方向に向けて伸びている中間部分85と、当該中間部分85から内周方向に広がって端子部材30の第一フランジ部31の上面(第一段差底面34(32))と接する内周部分と、当該中間部分85から外周方向に広がって封口部材20の内周部の突起部21を囲みながら平坦部の一方の主面側(電池外部側)と接する内壁面を有する凹部82を形成する外周部分とを有する。このように、封口部材20は、内周部の近傍に厚み方向に突き出た突起部21を有し、ガスケット部材80は厚み方向に凹んでなる凹部82を有している。そして、封口部材20の突起部21とガスケット部材80の凹部82とが密着するように嵌め合わされた状態で、ガスケット部材が挟み込まれている。これにより、組み立てる際に封口部材20へのガスケット部材80の位置決めが容易となる。また、射出成型の際にガスケット部材80が動いてしまうことを防ぎやすくなる。
【0077】
さらに、ガスケット部材80の中間部分85が、端子部材30の外周端面(外周側面)35と封口部材20の内周端面(内周側面)25とに左右から挟まれている。これにより、端子部材30とガスケット部材80と封口部材20とが平面方向で密着よく配置されるため、前記のとおり封止部材70が電解液に晒される可能性を避けることができるとともに、各部材がそれぞれ密着して状態で封止部材70を射出成形することができる。
【0078】
また、封口部材20及び端子部材30と封止部材70とが密着する界面には、実施形態1と同様に、水酸基含有皮膜、マクロ凹凸部及び微細凹凸部を有する接合面27及び接合面36が形成されることが好ましい。本実施形態では、端子部材30の第一フランジ部31の上側(第一段差底面34(32))であって、ガスケット部材80の位置よりも内周方向の部分に、接合面36が形成される。また、封口部材20の孔部26の内周端面(内周側面)25付近であって、ガスケット部材80の位置よりも外周方向の部分に接合面27が形成される。接合面27及び接合面36は、実施形態1での説明のとおり、皮膜形成工程におけるレーザー処理により形成することができる。
【0079】
実施形態2の電池封口体の製造方法は、実施形態1と同様に、封口部材20、端子部材30及びガスケット部材80を準備して所定の位置に配置する部材準備工程と、部材準備工程後には、これらの各部材のそれぞれと封止部材70との間に空気層となる空間が存在せずに密着した状態となるように封止部材70の樹脂を射出成形する射出成形工程とを含む。また、実施形態1と同様に、部材準備工程の前には、封口部材20及び端子部材30の所定の位置に接合面27及び接合面36を形成する皮膜形成工程を備えてもよい。
【0080】
[3.実施形態3]
図9は、本発明の実施形態3に係る電池封口体1の断面図を示すものである。
【0081】
実施形態3の電池封口体1は、実施形態2における端子部材30が、封口部材20の下部(本体部及び第一フランジ部31の下面全体)が孔部26を通じて、他の主面側(電池内部側)に貫通している。すなわち、実施形態3においては、端子部材30が、上部及び下部において、封口部材20の両方の主面側に突き出ている形態を有する。このような端子部材30の形状を有するため、当該端子部材30の封口部材20を貫通する部分により、電池内部の部材との導通が容易になる。図9では、封口部材20の他方の主面側に向けて、端子部材30の下部の全体が円柱状に伸びている形状で図示されているが、端子部材の下部の形状はこれに限定されない。例えば、端子部材30の下部は、板状、柱状、又は錘状の形状によって下部が伸びていていてもよく、端子部材30の下部の一部が伸びていてもよい。そして、このようにして伸びた下部に対して、電池内部の部材が接続されて、導通されるようにしてもよい。
【0082】
実施形態3において、その他の部分は実施形態2と同じであるので、同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。実施形態3における端子部材30以外の構成及び享受する作用効果は、実施形態2と同様である。
【0083】
[4.実施形態4]
図10は、本発明の実施形態4に係る電池封口体1の断面図を示すものである。
【0084】
図10に示されるように、実施形態4に係る電池封口体1においては、端子部材30が、実施形態1~3における第一フランジ部31に相当する第一フランジ部31’を有することに加えて、外周部において当該第一フランジ部31’からさらに外周方向に突出して広がる第二フランジ部41を有している。
【0085】
第一フランジ部31’を有することによって、中央部の側面である第一段差側面33’(32’)と、第一フランジ部31’の上面である第一段差底面34’(32’)とからなる第一段差部32’が形成される。また、第二フランジ部41を有することによって、第一フランジ部31’の側面である第二段差側面43(42)と、第二フランジ部41の上面である第二段差底面44(42)とからなる第二段差部42が形成されている。
【0086】
封口部材20は、平板状の平面部と、封口部材20の孔部26周辺において他方の主面側(電池内部側)に突き出た突起部21とを有する。
【0087】
ガスケット部材80は、端子部材30の第二フランジ部41による第二段差部42に配置される。すなわち、ガスケット部材80は、第二段差部42の一部又は全部を覆うように、第二段差部42における第二段差側面43(42)と第二段差底面44(42)の一部又は全部の面に沿って、密着して配置されるようにする。また、図11のとおり、ガスケット部材80には、封口部材20の突起部21の形状に合わせて、当該突起部21が嵌め込まれる凹部83を有する。
【0088】
そして、端子部材30の第二フランジ部41による第二段差部42に配置されたガスケット部材80に対して、封口部材20を配置する。図10及び11に示されるように、封口部材20は、突起部21がガスケット部材80の所定の凹部83に嵌め込まれるように配置される。この際、端子部材30の第一フランジ部31’の外周側端面である第二段差側面43(42)と、封口部材20の孔部26の内周側端面(図10では、突起部21の内周側面)とが、ガスケット80部材を挟んで左右(水平方向)で対向配置されるようにする。さらにこの際、端子部材30の第二フランジ部41の外周上端面である第二段差底面44(42)と、封口部材20の孔部26の内周部の下端面(図10では、突起部21を含む孔部26の内周部の下面)とが、ガスケット部材80を挟んで上下方向(厚み方向)で対向配置している。
【0089】
ガスケット部材80は、平面視で円環状であって、封口部材20の突起部21よりも外周よりの他方の主面側に位置する下面と接する外周部分と、当該外周部分から内周方向に向かって広がるとともに、突起部21の外周側面、突起部21の先端面、及び突起部21の内周側面と接する内壁面を有する凹部83を形成する内周部分とを有する。このように、封口部材20は、内周部の近傍に厚み方向に突き出た突起部21を有し、ガスケット部材80は厚み方向に凹んでなる凹部83を有している。そして、封口部材20の突起部21とガスケット部材80の凹部83とが密着するように嵌め合わされた状態で、ガスケット部材80が挟み込まれている。これにより、組み立てる際に封口部材20へのガスケット部材80の位置決めが容易となる。また、射出成型の際にガスケット部材80が動いてしまうことを防ぎやすくなる。
【0090】
さらに、ガスケット部材80の外周部分が、端子部材30の第二フランジ部41の第二段差底面44(42)と封口部材20の突起部21よりも外周よりの下端面とに上下から挟まれている。また、ガスケット部材80の内周部分の突起部21の先端面付近が、端子部材30の第二フランジ部41の第二段差底面44(42)と封口部材20の突起部21の先端面面とに上下から挟まれている。また、ガスケット部材80の内周部分の一部が、端子部材30の第二段差側面43(42)と封口部材20の突起部21とに左右(水平方向)から挟まれている。当該上下から挟まれている部分を有することにより、電池使用時において内圧が上昇して端子部材30が電池外側に向けて押圧された場合に、第二フランジ部41がストッパーとなることで端子部材30が電池容器から外れるのを防ぐことができる。また、当該左右(水平方向)から挟まれている部分を有することにより、同じように電池の内圧が上昇して端子部材30が電池外側に向けて押された場合に、第二フランジ部41が封口部材20との間に挟まれたガスケット部材80を押圧することで、ガスケット部材80が端子部材30及び封口部材20のそれぞれに対して密着して気密性を保つことができる。
【0091】
なお、端子部材30の外周部において、端子部材30、封口部材20及びガスケット部材80がこのような配置となることで、端子部材30の外周部は、第一フランジ部31’が封口部材20の孔部26の内部に挿入されるように配置され、また、第一フランジ部31’よりも下がった位置にある第二フランジ部41は、電池内部側において、封口部材20の孔部26の下面側から外周方向に突出して広がるように配置される。
【0092】
封止部材70は、実施形態1~3と同様に、一方の主面側(電池外部側)から射出成形されることにより、当該主面側から端子部材30の第一段差部32’(第一段差側面33’(32’)及び第一段差底面34’(32’))と、ガスケット部材80(端子部材30と封口部材20とから水平(左右)方向から挟まれた部分の上面)と、封口部材20の孔部26の内周部(図10では、突起部21の内周部)の上面とを覆うように配される。封止部材70は、これらの各部材の間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態で射出成形されている。
【0093】
また、封口部材20及び端子部材30と封止部材70とが密着する界面には、実施形態1~3と同様に、水酸基含有皮膜、マクロ凹凸部及び微細凹凸部を有する接合面27及び接合面36が形成されることが好ましい。すなわち、図10に示されるように、接合面36は、端子部材30の第一フランジ部31’の第一段差底面34’(32’)に形成される。また、接合面27は、封口部材20の孔部26の内周部の上面に形成される。前記同様に、接合面27及び接合面36は、皮膜形成工程におけるレーザー処理により形成することができる。
【0094】
実施形態4の電池封口体の製造方法は、実施形態1~3と同様に行われる。
【0095】
[5.実施形態5]
図12は、本発明の実施形態5に係る電池封口体1の断面図を示すものである。
【0096】
図12に示されるように、実施形態5に係る電池封口体1においては、端子部材30が、実施形態1~4の第一フランジ部31又は31’に相当する第一フランジ部31”を有する。また、外周部において当該第一フランジ部31”からさらに外周方向に突出して広がる第二フランジ部41’を有している。
【0097】
また、実施形態4と同様に、この第一フランジ部31”を有することによって、中央部の側面である第一段差側面33”(32”)と、第一フランジ部31”の上面である第一段差底面34”(32”)とからなる第一段差部32”が形成される。また、第二フランジ部41’を有することによって、第一フランジ部31”の側面である第二段差側面43’(42’)と、第二フランジ部41’の上面である第二段差底面44’(42’)とからなる第二段差部42’が形成され、外周部には第二フランジ部側面45が形成される。
【0098】
実施形態5における第一フランジ部31”は、その第二段差側面43’(42’)の高さを低くすることが好ましい。また、第一段差側面33”(32”)の高さを低くすることが好ましい。これらの高さを低くすることで、後述する封口部材20の配置と相まって、電池封口体1の低背化を可能とする。第二段差側面43’(42’)の高さは、制限されるものではないが、当該低背化のためには、第一段差底面34”(32”)の高さが、封口部材20の一方の主面側(電池外部側)の後述する第三段差部22を除いた上面と同程度の高さになるようにすることが好ましい。また、第一段差側面33”(32”)の高さは、制限されるものではないが、当該低背化のためには、端子部材30の上面の高さが、封口部材20の一方の主面側の後述する第三段差部22を除いた上面よりもやや高い程度になるようにすることが好ましい。
【0099】
実施形態5において、封口部材20は、図12に示されるように、外周部側における平板状の平面部と、封口部材20の孔部26周辺(内周部側)において、平面部の一方の主面側(電池外部側)の上面が凹んでなる第三段差部22とを有する。当該第三段差部22は、第三段差側面23(22)と第三段差底面24(22)とから形成される。
【0100】
ガスケット部材80は、平面視で円環状であって、封口部材20の下面(図12では、第三段差部22の下面)と接する内周部分と、当該内周部分から端子部材30の第二フランジ部側面45に沿って厚み方向に向かって立ち下がる外周部分と、を有する。そして、ガスケット部材80は、端子部材30の第二フランジ部41’による第二段差部42’に配置される。ガスケット部材80の内周部分と外周部分とによって形成される内隅に、端子部材30の第二フランジ部41’の第二段差底面44’(42’)と第二フランジ部側面45によって形成されるコーナー部分が突き当てられて、ガスケット部材80の内周部分の下面が端子部材30の第二段差底面44’(42’)と当接し、ガスケット部材80の外周部分の内側面が端子部材30の第二フランジ部側面45と当接する。すなわち、ガスケット部材80は、第二段差部42’の一部又は全部を覆うと共に、第二フランジ部41’の外周部である第二フランジ部側面45の一部又は全部を覆うように、第二段差側面43’(42’)と第二段差底面44’(42’)と第二フランジ部側面45との一部又は全部の面に沿って、密着して配置されるようにする。ガスケット部材80の内周部分と外周部分とによって形成される内隅に、端子部材30の第二フランジ部41’の第二段差底面44’(42’)と第二フランジ部側面45によって形成されるコーナー部分が突き当てられることで、組み立てる際に端子部材30へのガスケット部材80の位置決めが容易となる。また、射出成型の際にガスケット部材80が動いてしまうことを防ぎやすくなる。
【0101】
端子部材30の第二フランジ部41’による第二段差部42’と第二フランジ部側面45とに配置されたガスケット部材80に対して、封口部材20を配置する。封口部材20は、前記配置されたガスケット部材80の上面と、この封口部材20の第三段差部22が形成された周辺部の下面とを接するように配置される。その際、これらの部材が接する面が密着して配置されるようにする。また、図12に示されるように、封口部材20は、封口部材20の孔部26の内周部と、端子部材30の第二段差側面43’(42’)との間に、後述の封止部材70が入り込む部分(隙間)を有するように配置される。すなわち、封口部材20と端子部材30との間の隙間に封止部材70が入り込んで、当該隙間に露出したガスケット部材80の上面と密着する部分を生じるようにする。
【0102】
これにより、端子部材30の第二フランジ部41’の外周上端面である第二段差底面44’(42’)と、封口部材20の孔部26の内周部の下端面(図12では、第三段差部22を含む部分の下面)とが、ガスケット部材80を挟んで上下方向(厚み方向)で対向配置している。
【0103】
つまり、ガスケット部材80の内周部分が、端子部材30の第二フランジ部41’の第二段差底面44’(42’)と封口部材20における第三段差部22を含む孔部26の内周部の下端面とに上下から挟まれている。当該上下から挟まれている部分を有することにより、電池使用時において内圧が上昇して端子部材30が電池外側に向けて押圧された場合に、第二フランジ部41’がストッパーとなることで端子部材30が電池容器から外れるのを防ぐことができる。また、同じように電池の内圧が上昇して端子部材30が電池外側に向けて押された場合に、第二フランジ部41’が封口部材20との間に挟まれたガスケット部材80を押圧することで、ガスケット部材80が端子部材30及び封口部材20のそれぞれに対して密着して気密性を保つことができる。
【0104】
なお、端子部材30の外周部において、端子部材30、封口部材20及びガスケット部材80がこのような配置となることで、端子部材30の外周部は、第一フランジ部31”が封口部材20の孔部26の内部に挿入されるように配置され、また、第一フランジ部31”よりも下がった位置にある第二フランジ部41’は、電池内部側において、封口部材20の孔部26の下面側から外周方向に突出して広がるように配置される。
【0105】
封止部材70は、実施形態1~4と同様に、一方の主面側(電池外部側)から射出成形されることにより、当該主面側から端子部材30の第一段差部32”(第一段差側面33”(32”)及び第一段差底面34”(32”))と、第一フランジ部31”の側面である第二段差側面43’(42’)と、ガスケット部材80の上面(端子部材30と封口部材20との間に生じる隙間に露出する面)と、封口部材20の孔部26の内周部(図12では、第三段差部22と第三段差部22から続く平面部を含む部分)の上面とを覆うように配される。封止部材70は、これらの各部材の間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態で射出成形されている。
【0106】
また、封口部材20及び端子部材30と封止部材70とが密着する界面には、実施形態1~4と同様に、水酸基含有皮膜、マクロ凹凸部及び微細凹凸部を有する接合面27及び接合面36が形成されることが好ましい。すなわち、当該実施形態5においては、図12に示されるように、接合面36は、端子部材30の第一フランジ部31”の第一段差底面34”(32”)に形成される。また、接合面27は、封口部材20の孔部26の内周部であって第三段差部22の第三段差底面24(22)に形成される。前記同様に、接合面27及び接合面36は、皮膜形成工程におけるレーザー処理により形成することができる。
【0107】
実施形態5においては、第一段差部32”の第一段差側面33”(32”)の高さを比較的低くすることで低背化が可能となる。この際、前記のとおり、封口部材20に第三段差部22を設けることで、第三段差部22によって封口部材20の内周部周辺の厚みが薄くなった分の容積に対応して、封口部材20、端子部材30及びガスケット部材80を封止するために第二段差部42’及び第三段差部22に充填される封止部材70の樹脂の量を増やすことができる。これにより、第一段差側面33”(32”)の高さが低くて第一段差部32”に射出成形される封止部材70の樹脂の量が少なくなっても、第三段差部22と第二段差部42’との間に射出成形される封止部材70の樹脂の量を十分なものとすることができる。また、それにより、母材破壊強度を高めて、特に封止部材70と端子部材30及び封口部材20との間の接合強度を高めることができる。
【0108】
実施形態5の電池封口体1の製造方法は、実施形態1~4と同様に行われる。
【0109】
[6.実施形態6]
図13は、本発明の実施形態6に係る電池封口体1の断面図を示すものである。
【0110】
図13、14に示されるように、実施形態6に係る電池封口体1においては、端子部材30は、略円柱状の中央部と、中央部の外周部において一段下がって中央部から外周方向に突出して広がる円周凸部51と、当該円周凸部51から下がって円周凸部51よりも内周方向内側に凹んでなる円周凹部55とを有し、また、当該円周凹部55から外周方向に突出して広がる第5フランジ部61とを有している。
【0111】
実施形態6においては、円周凸部51を有することによって、中央部の側面である第四段差側面53(52)と、円周凸部51の上面である第四段差底面54(52)とからなる第四段差部52が形成される。また、円周凹部から第5フランジ部61を有することによって、円周凹部55の側面である第五段差側面63(62)と、第5フランジ部61の上面である第五段差底面64(62)とからなる第五段差部62が形成される。
【0112】
実施形態6において、封口部材20は、図13、14に示されるように、外周部側における平板状の平面部と、封口部材20の孔部26周辺(内周部側)において、平面部の一方の主面側(電池外部側)の上面が凹んでなる第三段差部22とを有する。当該第三段差部22には、第三段差側面23(22)と第三段差底面24(22)とが形成される。なお、実施形態6において当該第三段差部22は必須では無く、封口部材20の全体が平板状で形成されていてもよい。封口部材20に第三段差部22が設けられている場合には、封口部材20の内周側端部の厚さを薄くすることができる。これに伴い、第三段差部22によって封口部材20の内周部周辺の厚みが薄くなった分の容積に対応して、封口部材20、端子部材30及びガスケット部材80を封止するために第四段差部52及び第三段差部22に充填される封止部材70の樹脂の量を増やすことができる。これにより、母材破壊強度を高めて、特に封止部材70と端子部材30及び封口部材20との間の接合強度を高めることができる。また、封口部材20の内周側端部がガスケット部材80を介して嵌め込まれる円周凹部55の高さ方向の長さを短くすることができるため、電池封口体1の低背化が可能となる。
【0113】
実施形態6において、ガスケット部材80は、端子部材30の円周凹部55に嵌め込まれるように配置されている。すなわち、図14に示されるように、ガスケット部材80は、少なくとも、円周凸部51の下面と、第五段差側面63と、第五段差底面64とに沿って、密着して配置されるようにする。
【0114】
そして、前記配置されたガスケット部材80に対して、封口部材20を配置する。封口部材20は、その孔部26の内周端部が前記配置されたガスケット部材80の外周側から周方向内側に嵌め込まれるように配置される。図13、14に示されるように、第三段差部22の内周端部が、ガスケット部材80の外周側から、ガスケット部材80の凹部84に覆われるように嵌め込まれて配置される。この際も、封口部材20とガスケット部材80とは、密着して配置されるようにする。
【0115】
ガスケット部材80は、平面視で円環状であって、封口部材20の下面(図13では、第三段差部22の下面)と接する外周部分と、当該外周部分から内周方向に向かって広がるとともに、端子部材30の円周凹部の第五段差側面63に沿って厚み方向に立ち上がって、封口部材20の内周端部の下面(図13では、第三段差底面24(22)の内周端部の下面)、内周側端面、及び一方の主面側(電池外部側)の上面と接する内壁面を有する凹部84を形成する内周部分と、を有する。そして、ガスケット部材80の外周部分が、端子部材30における第五段差底面64(62)と封口部材20の下面とに上下から挟まれている。また、封口部材20の内周端部と凹部84とが嵌め合わされたガスケット部材80の内周部分が、端子部材30の第五段差側面63(62)と封口部材20の孔部26の内周側端面とに左右から挟まれるともに、第五段差底面64(62)、第五段差側面63(62)、及び円周凸部51の下端面によって囲まれて、円周凹部55に沿って嵌め込まれている。
【0116】
言い換えると、端子部材30の円周凹部55における第五段差側面63(62)と、封口部材20の孔部26の内周側端面とが、ガスケット部材80を挟んで対向配置している。また、端子部材30の端子部材30の第五段差底面64(62)と、封口部材20の孔部26周辺の下端面とが、ガスケット部材80を挟んで対向配置している。端子部材30の外周部、封口部材20の内周部及びガスケット部材80がこのような配置となっていることにより、電池使用時において内圧が上昇して端子部材30が電池外側に向けて押圧された場合に、第五フランジ部61がストッパーとなることで端子部材30が電池容器から外れるのを防ぐことができる。また、第五フランジ部61が封口部材20との間に挟まれたガスケット部材80を押圧することで、ガスケット部材80が端子部材30及び封口部材20のそれぞれに対して密着して気密性を保つことができる。
【0117】
前記のとおり、端子部材30は、外周部に周方向内側に凹んでなる円周凹部55を有している。また、ガスケット部材80は、周方向内側に凹んでなる凹部84を有している。そして、ガスケット部材80が封口部材20の孔部26の内周端部の周囲を覆うとともに、ガスケット部材80が円周凸部51及び円周凹部55に嵌め込まれている。すなわち、封口部材20の内周端部とガスケット部材80の凹部84とが密着するように嵌め合わされるとともに、ガスケット部材80と端子部材の円周凹部55とが密着するように嵌め合わされた状態で、ガスケット部材80が挟み込まれている。これにより、封止部材70の射出成型時又は電池の内圧が上昇した際に、端子部材30又はガスケット部材80が押された場合であっても、ガスケット部材80の変形が当該円周凸部51によって抑えられるため、ガスケット部材80と、端子部材30及び封口部材20とのそれぞれの間に空間が生じることを防ぐことができる。
【0118】
なお、端子部材30の外周部において、端子部材30、封口部材20及びガスケット部材80がこのような配置となることで、端子部材30の外周部は、円周凹部55(第五段差側面63(62))の一部が封口部材20の孔部26の内部に挿入されるように配置され、また、円周凹部55よりも下がった位置にある第五フランジ部61は、電池内部側において、封口部材20の孔部26の下面側から外周方向に突出して広がるように配置される。
【0119】
封止部材70は、実施形態1~5と同様に、一方の主面側(電池外部側)から射出成形されることにより、図13に示されるように、当該主面側から端子部材30の第四段差側面53(52)と、第四段差底面54(52)と、円周凸部51の外周側面と、ガスケット部材80の上端面の外周部(円周凹部55から外周側に露出した面)と、封口部材20の孔部26の内周部の上面(図13では、第三段差底面24(22))であってガスケット部材80と接する面から外周側に露出した面の一部とを覆うように配される。封止部材70は、これらの各部材の間に、空気層となる空間が存在せずに密着した状態で射出成形されている。
【0120】
また、封口部材20及び端子部材30と封止部材70とが密着する界面には、実施形態1~5と同様に、水酸基含有皮膜、マクロ凹凸部及び微細凹凸部を有する接合面27及び接合面36が形成されることが好ましい。すなわち、当該実施形態6においては、図13に示されるように、接合面36は、端子部材30の円周凸部51における第四段差底面54(52)に形成される。また、接合面27は、封口部材20の孔部26の内周部の上面(図13では、第三段差底面24(22))であってガスケット部材80と接する面から外周側に露出した面の一部に形成される。前記同様に、接合面27及び接合面36は、皮膜形成工程におけるレーザー処理により形成することができる。
【0121】
実施形態6の電池封口体1の製造方法は、実施形態1~5と同様に行われる。
【0122】
[7.作用効果]
電池の製造工程(組み立て)において、予め成形した樹脂製の封止部材70を用いて電極端子(端子部材30)と蓋板(封口部材20)とを封止する場合には、部品の精度や組み立て精度によって、封止部材70と、電極端子及び蓋板との間に空気を含む空気層が生じる場合がある。製造環境での空気雰囲気中に水分が含まれている場合には、空気雰囲気中に含まれていた水分が封口体の空気層の内部に封止されることがある。この場合、空気層中の水分が電池内部の電解液に到達することで、電解液に由来するフッ化水素が発生して、電池の性能が低下することがある。また、封止部材70及び封止部材70に含まれるフィラーが、発生したフッ化水素によって劣化を受けることがある。
【0123】
本発明によれば、封止部材70が、端子部材30、ガスケット部材80、及び封口部材20との間に空気層となる空間が存在せずに密着した状態で射出成形されていることで、空気層に含まれる水分に起因する電解液からのフッ化水素の発生を防ぐことができる。
【0124】
また、本発明によれば、封止部材70が、端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20のそれぞれと接合していることで、封止部材70と、端子部材30、ガスケット部材80及び封口部材20のそれぞれとの間にリークパスが生じることを防ぐことができる。これにより、電池の外部と内部とのリークパスを通じた気体や液体の流入又は流出を防いで、気密性及び水密性を高めることができる。
【0125】
また、電池の製造工程において電解液に水分が混入しており、電解液からフッ化水素が発生した場合であっても、封口部材20と端子部材30との間にガスケット部材80が介装されていることで、電解液から発生したフッ化水素による封止部材70及び封止部材70に含まれるフィラーへの影響を抑えることができる。
【0126】
また、本発明によれば、特許文献2のような金属ホルダーが不要となり、部品点数を削減することができる。また、本発明によれば、特許文献2のような予め金属ホルダーと封止部材とを成形した後に、成型品の圧入と溶接が不要となるため、組み立て工数を削減して製造効率を向上させることができる。
【0127】
また、本発明では、予め成形したガスケット部材80を端子部材30と封口部材20とに介装させて挟み込んだ状態でインサートしてから封止部材70の射出成形を行う。これにより、ガスケット部材80(例えば、PFAなど)と封止部材70(例えば、PPSなど)の射出条件は異なっておりそれぞれの樹脂の好適な射出条件を同時に満たせない場合であっても(樹脂溶融温度は、PFAが400℃以上、PPSが320℃以上)、両者を組み合わせて一体成形させることができる。
【0128】
さらに、本発明では、封止部材70が密着(接合)している封口部材20及び端子部材30の各部材の界面において、水酸基含有皮膜、マクロ凹凸部及び微細凹凸部が形成されている接合面27及び接合面36を設けることが好適である。それにより、封止部材70は、封口部材20及び端子部材30の各接合面を介して、当該マクロ凹凸部及び微細凹凸部に入り込んだ状態でそれぞれ密着(接合)されるため十分な接合強度と気密性及び水密性の発現が期待できる。
【0129】
また、本発明では、このような作用効果に加えて、実施形態1~6で示したとおりの各優位な作用効果を有する。
【符号の説明】
【0130】
1…電池封口体
11…金属製部材
12…樹脂成形体
13,13’…レーザー光の軌跡
14…走査方向
15…レーザー光の照射間隔
16…ビーム径
20…封口部材
21…突起部
22…第三段差部
23…第三段差側面
24…第三段差底面
25…内周端面(内周側面)
26…孔部
27…接合面
30…端子部材
31,31’,31”…第一フランジ部
32,32’,32”…第一段差部
33,33’,33”…第一段差側面
34,34’,34”…第一段差底面
35…外周端面(外周側面)
36…接合面
41,41’…第二フランジ部
42,42’…第二段差部
43,43’…第二段差側面
44,44’…第二段差底面
45…第二フランジ部側面
51…円周凸部
52…第四段差部
53…第四段差側面
54…第四段差底面
55…円周凹部
61…第五フランジ部
62…第五段差部
63…第五段差側面
64…第五段差底面
70…封止部材
80…ガスケット部材
81,82,83,84…ガスケット部材の凹部
85…ガスケット部材の中間部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14