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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105095
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009660
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】野中 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】徳永 行洋
(72)【発明者】
【氏名】壽 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森上 敬之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB14
2C056EB30
2C056EB38
2C056EB45
2C056EB46
2C056EC14
2C056EC29
2C056FA10
2C056HA47
(57)【要約】
【課題】印刷時の熱風の温度のばらつきを抑制する。
【解決手段】インクジェットプリンタは、記録媒体を支持する支持台16と、インクヘッド35と、インクに熱風を吹きつけて乾燥させる乾燥装置50と、制御装置と、を備える。制御装置は、暖機運転時の熱風の温度である暖機温度が設定された暖機温度設定部と、印刷時の熱風の温度であって暖機温度よりも高い印刷時温度が設定される印刷時温度設定部と、温度制御部と、熱風の温度を暖機温度に維持する維持時間が設定された維持時間設定部と、印刷指令を受け付ける受信部と、を備える。温度制御部は、暖機温度まで熱風の温度を上昇させた後、維持時間が経過するまでは熱風の温度を暖機温度に維持し、維持時間が経過し、かつ、受信部が印刷指令を受け付けると熱風の温度を印刷時温度まで上昇させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記記録媒体に熱硬化性のインクを吐出するインクヘッドと、
前記記録媒体に吐出された前記インクに熱風を吹きつけて乾燥させる乾燥装置と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
暖機運転時の熱風の温度である暖機温度が設定された暖機温度設定部と、
印刷時の熱風の温度であって前記暖機温度よりも高い印刷時温度が設定される印刷時温度設定部と、
前記乾燥装置を制御して、熱風の温度を制御する温度制御部と、
熱風の温度を前記暖機温度に維持する維持時間が設定された維持時間設定部と、
印刷指令を受け付ける受信部と、を備え、
前記温度制御部は、前記暖機温度まで熱風の温度を上昇させた後、前記維持時間が経過するまでは熱風の温度を前記暖機温度に維持し、前記維持時間が経過し、かつ、前記受信部が印刷指令を受け付けると熱風の温度を前記印刷時温度まで上昇させる、
インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記乾燥装置は、
ヒーターと、
前記ヒーターによって加熱された空気を送り、熱風を発生させる送風機と、を備え、
前記制御装置は、前記送風機を制御する送風制御部を備え、
前記送風制御部は、熱風の温度が前記印刷時温度となるまでは、熱風の温度が前記印刷時温度となった後の出力よりも小さい出力で前記送風機を駆動させる、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記暖機温度よりも高い閾値温度が設定された閾値温度設定部と、
前記送風機の第1出力と、前記第1出力よりも大きい前記送風機の第2出力と、前記第2出力よりもさらに大きい前記送風機の第3出力と、が設定された出力設定部と、を備え、
前記送風制御部は、前記印刷時温度が前記閾値温度よりも高い温度に設定された場合、熱風の温度が前記閾値温度となるまでは前記第1出力で前記送風機を駆動し、熱風の温度が前記印刷時温度となるまでは前記第2出力で前記送風機を駆動し、熱風の温度が前記印刷時温度となった後は前記第3出力で前記送風機を駆動する、
請求項2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記印刷時温度は、前記記録媒体の種類に応じて設定されている、
請求項3に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記温度制御部は、前記受信部が受けた印刷指令に係る印刷ジョブが終了すると、熱風の温度を前記暖機温度まで下げた後、前記暖機温度に維持する、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェット方式により記録媒体に印刷を行うインクジェットプリンタが知られている。この種のインクジェットプリンタは、例えば、記録媒体が載置されるプラテンと、プラテンに載置された記録媒体にインクを吐出するインクヘッドとを備えている。また、使用するインクの種類によっては、記録媒体に吐出されたインクを乾燥させる乾燥装置を備えたインクジェットプリンタも存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラテンよりも下流に設けられた記録媒体のガイド部材に向けて熱風を送る乾燥装置を備えたインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1に記載の乾燥装置は、吸引口と排気口とを備えたケース部材と、ケース部材に収容されたファンおよびヒーターと、を備えている。ケース部材はガイド部材に対向するように設けられており、排気口はガイド部材の方に向けられている。乾燥装置は、ファンを駆動して吸引口から外気を吸引し、ヒーターで加熱した空気を排気口からガイド部材上の記録媒体に送るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-119541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、印刷時の熱風の温度よりも低い温度の熱風を吹き出す暖機運転をインクジェットプリンタに行わせることを考えた。しかし、印刷指令を受け、暖機温度からすぐに印刷時の温度に熱風の温度を上げると、乾燥装置内の温度が低い部分によって熱風の温度が低下するため、熱風の温度が場所によってばらつきやすいことに本願発明者は気が付いた。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、乾燥装置に暖機運転を行わせるインクジェットプリンタであって、印刷時の熱風の温度のばらつきを抑制できるインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するインクジェットプリンタは、記録媒体を支持する支持台と、前記支持台に支持された前記記録媒体に熱硬化性のインクを吐出するインクヘッドと、前記記録媒体に吐出された前記インクに熱風を吹きつけて乾燥させる乾燥装置と、制御装置と、を備える。前記制御装置は、暖機運転時の熱風の温度である暖機温度が設定された暖機温度設定部と、印刷時の熱風の温度であって前記暖機温度よりも高い印刷時温度が設定される印刷時温度設定部と、前記乾燥装置を制御して熱風の温度を制御する温度制御部と、熱風の温度を前記暖機温度に維持する維持時間が設定された維持時間設定部と、印刷指令を受け付ける受信部と、を備えている。前記温度制御部は、前記暖機温度まで熱風の温度を上昇させた後、前記維持時間が経過するまでは熱風の温度を前記暖機温度に維持し、前記維持時間が経過し、かつ、前記受信部が印刷指令を受け付けると熱風の温度を前記印刷時温度まで上昇させる。
【0008】
上記インクジェットプリンタによれば、少なくとも維持時間は熱風の温度が暖機温度に維持される。これにより、乾燥装置を暖め、印刷時温度に到達した熱風の温度が場所によってばらつくことを抑制することができる。維持時間を取らず、乾燥装置を暖めないと、乾燥装置に温度の低い場所が生まれ、温度の低い場所によって熱風の温度が低下するため、熱風の温度が場所によってばらつきやすい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】一実施形態に係るプリンタの正面図である。
図3図1のB-B線に沿う断面図である。
図4】乾燥装置の平面図である。
図5】乾燥装置の正面図である。
図6A】乾燥装置の背面図である。
図6B図6Aの部分拡大図である。
図7A】後壁を外した状態の乾燥装置の背面図である。
図7B図7Aの部分拡大図である。
図8】取付板の正面図である。
図9】スペーサの斜視図である。
図10】スペーサが挟まれた状態の第2送風室ノズルを示す斜視図である。
図11A】加熱室と第2送風室ノズルとの境界付近の断面図である。
図11B】スポンジが挟まれる前における加熱室と第2送風室ノズルとの境界付近の断面図である。
図11C】後壁が熱により変形した状態における加熱室と第2送風室ノズルとの境界付近の断面図である。
図12】下流側ガイド部材の一部を消去して示す斜視図である。
図13】プリンタの制御ブロック図である。
図14】乾燥装置の空気の流れを示す図である。
図15A】プリンタの動作を示すフローチャートの前半である。
図15B】プリンタの動作を示すフローチャートの後半である。
図16】風量制御の詳細を示すフローチャートである。
図17】記録媒体をカットした後のプリンタの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下単に「プリンタ」と称する)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
[プリンタの構成]
図1は、一実施形態に係るプリンタ10の斜視図である。図2はプリンタ10の正面図である。図3は、図1のB-B線に沿う断面図である。なお、図2では、後述する非加熱室吸気口103aおよび非加熱室排気口103bの図示は省略している。プリンタ10は記録媒体5に印刷を行う。以下では、プリンタ10の正面側を前方と呼び、背面側を後方と呼ぶ。左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0012】
記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は記録紙に限定されない。記録媒体5には、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエステル等の樹脂材料から形成されたものや、アルミや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板および段ボール等から形成されたものが含まれる。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、本体部10aと、脚11と、操作パネル12と、フロントカバー13と、を備えている。本体部10aは、左右方向に延びたケーシングを有する。脚11は、本体部10aを支持するものであり、本体部10aの下面に設けられている。操作パネル12は、例えば本体部10aの右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル12の位置は特に限定されない。操作パネル12は、ユーザが印刷に関する操作を行うものである。フロントカバー13は、本体部10aに回動可能に設けられている。フロントカバー13は、例えば、透明なアクリル樹脂で形成されている。なお、図2では、フロントカバー13の図示を省略している。
【0014】
図3に示すように、プリンタ10は、記録媒体5を支持するプラテン16と、プラテン16に支持された記録媒体5にインクを吐出するインクヘッド35と、プラテン16に支持された記録媒体5を所定の搬送方向Xに搬送する搬送装置32と、プラテン16よりも前方に配置され、記録媒体5の移動をガイドする下流側ガイド部材14と、印刷終了後の記録媒体5を切り離すシートカット装置40と、制御装置200(図13参照)と、を備えている。搬送方向Xの下流X1は、プラテン16から下流側ガイド部材14に向かう方向であり、上流X2はその逆方向である。図3に示すように、下流側ガイド部材14は、前方に向かって下降傾斜している。そのため、本実施形態では、搬送方向Xの下流X1は、下流側ガイド部材14上では下斜め前方である。搬送方向Xの下流X1は、プラテン16上では前方である。搬送方向Xの上流X2は、プラテン16上では後方であり、下流側ガイド部材14上では上斜め後方である。本実施形態では、搬送装置32による記録媒体5の搬送方向Xは、プラテン16の下流において上下方向に曲がっている。
【0015】
図3に示すように、プリンタ10は、下流側ガイド部材14の他に、プラテン16よりも搬送方向Xの上流X2に配置された上流側ガイド部材17を備えている。上流側ガイド部材17は、ここでは、プラテン16の後方に配置されている。上流側ガイド部材17は、プラテン16への記録媒体5の移動をガイドする。
【0016】
図3に示すように、プラテン16には、記録媒体5が載置される。記録媒体5への印刷は、プラテン16上で行われる。プラテン16は左右方向に延びている。プラテン16の上面16Aは平坦状に形成されている。
【0017】
図2に示すように、搬送装置32は、グリットローラ25と、ピンチローラ26と、グリットローラ25を駆動する第2駆動モータ27(図13参照)とを有している。グリットローラ25は、プラテン16に設けられている。ここでは、グリットローラ25の少なくとも一部はプラテン16に埋設されている。ピンチローラ26は、記録媒体5を上から押さえつけるものである。ピンチローラ26は、グリットローラ25の上方に配置されている。ピンチローラ26は、グリットローラ25と対向する位置に設けられている。ピンチローラ26は、上下方向に移動可能に構成されている。グリットローラ25とピンチローラ26との間に記録媒体5が挟まれた状態で、第2駆動モータ27が駆動してグリットローラ25が回転すると、記録媒体5は搬送方向Xに搬送される。なお、グリットローラ25およびピンチローラ26のそれぞれの設置位置および数は特に限定されない。また、搬送装置32の構成も、グリットローラ25およびピンチローラ26を備えたものには限定されない。
【0018】
インクヘッド35は、記録媒体5に熱硬化性のインクを吐出する。本実施形態では、インクヘッド35は、記録媒体5に水性インクを吐出する。ただし、熱硬化性のインクは、水性インクには限定されず、例えば、溶剤インク等であってもよい。図3に示すように、インクヘッド35は、プラテン16よりも上方に配置されている。インクヘッド35は、左右方向に移動可能に設けられている。本実施形態では、インクヘッド35は、図示しないインク供給路によって、インクカートリッジ37と接続されている。
【0019】
水性インクとして、例えば、ラテックスインクを好ましく用いることができる。ラテックスインクは、溶媒、色材およびバインダ樹脂を含む。ラテックスインクにおいて、バインダ樹脂は、溶媒に分散または乳濁している。溶媒としては、例えば、水や水と均一に混合し得る水溶性有機溶剤(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。ラテックスインクは、ラテックスインクの全質量に対して50質量%以上90質量%以下の溶媒を含む。色材としては、ラテックスインク中に含まれる従来の色材を適宜選択することができる。色材としては、例えば、水溶性染料等の染料や顔料等が挙げられる。バインダ樹脂としては、ラテックスインク中に含まれる従来のバインダ樹脂を適宜選択することができる。
【0020】
図2に示すように、プリンタ10は、インクヘッド35を左右方向に移動させるヘッド移動装置31を備えている。インクヘッド35は、キャリッジ30に搭載され、キャリッジ30とともに左右方向に移動する。以下では、キャリッジ30の移動方向を走査方向Yともいう。走査方向Yは、搬送方向Xに直交する直交方向の1つである。ただし、走査方向Yおよび搬送方向Xはそれぞれ左右方向および前後方向(斜め前後方向も含む)に限定されるわけではなく、プリンタ10の形態等に応じて適宜に設定可能である。
【0021】
ヘッド移動装置31は、ガイドレール20と、第1プーリ21と、第2プーリ22と、無端状のベルト23と、第1駆動モータ24と、キャリッジ30と、を有している。ガイドレール20は、キャリッジ30の走査方向Yへの移動をガイドするものである。図3に示すように、ガイドレール20は、プラテン16の上方に配置されている。図2に示すように、ガイドレール20は、走査方向Yに延びている。第1プーリ21は、ガイドレール20の左端部分に設けられている。第2プーリ22は、ガイドレール20の右端部分に設けられている。ベルト23は、第1プーリ21と第2プーリ22とに巻き掛けられている。本実施形態では、第2プーリ22には、第1駆動モータ24が接続されている。ただし、第1駆動モータ24は、第1プーリ21に接続されていてもよい。第1駆動モータ24が駆動して、第2プーリ22が回転することで、第1プーリ21と第2プーリ22との間においてベルト23が走行する。
【0022】
図2に示すように、キャリッジ30はベルト23に取り付けられている。キャリッジ30は、プラテン16より上方に配置されている。図3に示すように、キャリッジ30は、ガイドレール20に係合しており、ガイドレール20に摺動自在に設けられている。本実施形態では、ヘッド移動装置31は、第1駆動モータ24を駆動させて、ベルト23を走行させる。キャリッジ30が走査方向Yに移動することに伴い、キャリッジ30に搭載されたインクヘッド35が走査方向Yに移動する。
【0023】
シートカット装置40は、走査方向Yに横断するように記録媒体5を切断し、記録媒体5を搬送方向Xの下流側部分と上流側部分とに切り離す。図2に示すように、シートカット装置40は、キャリッジ30によって支持され、キャリッジ30とともに走査方向Yに移動する。シートカット装置40は、記録媒体5を切断可能なカッター41と、カッター41を上下方向に移動させるカッター駆動部42(図13参照)と、を備えている。カッター41は、記録媒体5への画像印刷時のような不使用時には、プラテン16よりも上方に位置している。記録媒体5を切断する際には、カッター駆動部42は、カッター41をプラテン16上の記録媒体5よりも下方まで移動させる。カッター41が下がった状態でキャリッジ30を走査方向Yに移動させることにより、記録媒体5が切断される。
【0024】
[乾燥装置の構成]
図1に示すように、プリンタ10は、乾燥装置50を備えている。乾燥装置50は、記録媒体5に吐出されたインクに風を吹きつけることにより、インクを乾燥させる装置である。詳しくは、乾燥装置50は、下流側ガイド部材14に熱風を吹きつけることによって、下流側ガイド部材14上を移動している記録媒体5上のインクを乾燥させる。乾燥装置50は、熱風により、下流側ガイド部材14も加熱する。また、乾燥装置50は、プラテン16に支持された記録媒体5に対しては、常温程度の風(以下、単に常温の風と呼ぶ)を吹きつける。以下では、プラテン16に載置された記録媒体5に常温の風を送ることを初期送風と称する。下流側ガイド部材14にガイドされる記録媒体5に熱風を送ることを完全乾燥と称する。
【0025】
図3に示すように、乾燥装置50は、プラテン16より前方に配置されている。乾燥装置50は、下流側ガイド部材14に対向するように配置されている。乾燥装置50の少なくとも一部は、平面視で下流側ガイド部材14と重なる。図2に示すように、乾燥装置50の少なくとも一部は、正面視で下流側ガイド部材14と重なる。乾燥装置50は、本体部10aに着脱可能に設けられている。
【0026】
図3に示すように、乾燥装置50は、箱状の本体ケース51を備えている。図4は乾燥装置50の平面図である。図5は乾燥装置50の正面図である。図3図5に示すように、本体ケース51は、上方に延びる前壁51Fと、前壁51Fの上端51Ftから後方に延びる上壁51Uと、前壁51Fの下端51Fdから後方に延びる下壁51Dとを有している。下壁51Dの後端51Dbには、上方に延びる後壁51Bが接続されている。後壁51Bは、本体ケース51の背面を塞ぐパネルである。下壁51Dは上壁51Uよりも下方に配置され、後壁51Bは前壁51Fよりも後方に配置されている。また、本体ケース51は、前壁51F、上壁51U、下壁51D、および後壁51Bの左方、右方にそれぞれ配置された左壁51L、右壁51Rを有している。なお、前壁51F、上壁51U、下壁51D、後壁51B、左壁51L、および右壁51Rは、平板状であってもよく、湾曲していてもよく、屈曲していてもよい。前壁51F、上壁51U、下壁51D、後壁51B、左壁51L、および右壁51Rは、単一の部材により形成されていてもよく、複数の部材が組み合わされることによって形成されていてもよい。前壁51F、上壁51U、下壁51D、後壁51B、左壁51L、および右壁51Rの少なくとも一つの一部または全部は、他の少なくとも一つの一部または全部と一体化されていてもよい。
【0027】
図3に示すように、乾燥装置50は、下壁51Dまたは後壁51Bから下方に延びる延長壁119を有している。ここでは、延長壁119は下壁51Dに取り付けられている。延長壁119は、下壁51Dの下端から前方かつ下方に延びている。ただし、延長壁119の取付位置は特に限定されない。延長壁119は後壁51Bに取り付けられていてもよい。延長壁119は後壁51Bの下端から前方かつ下方に延びていてもよい。また、延長壁119はなくてもよい。
【0028】
図3に示すように、本体ケース51の内部には、送風室101と加熱室102と非加熱室103とが設けられている。乾燥装置50は、本体ケース51の内部を送風室101と加熱室102とに仕切る仕切り壁111と、本体ケース51の内部を送風室101と非加熱室103とに仕切る仕切り壁112と、本体ケース51の内部を加熱室102と非加熱室103とに仕切る仕切り壁113と、を有している。
【0029】
[加熱室の構成]
加熱室102は、複数のヒーター135と、各ヒーター135に対応する複数の加熱室ファン132とを収容している。加熱室ファン132は、ヒーター135によって加熱された空気を送り、熱風を発生させる装置である。加熱室102は、仕切り壁111、仕切り壁113、後壁51B、左壁51L、および右壁51Rにより形成されている。仕切り壁111および仕切り壁113は屈曲板状に形成されている。以下では適宜、加熱室102を構成する壁部のことを加熱室壁102Wとも称する。ただし、加熱室壁102Wは、上記した壁部に限定されるわけではない。加熱室壁102Wは、ヒーター135および加熱室ファン132を囲うように配置されている。ただし、加熱室ファン132は、加熱室102に風を吹きこむことが可能に配置されていればよく、必ずしも加熱室102の内部に配置されていなくてもよい。加熱室壁102Wは、ここでは、例えば鉄よりも熱伝導率が低く、放熱しにくいステンレスによって形成されている。乾燥装置50は、さらに、加熱室102内を上流室102Uと下流室102Dとに仕切る仕切り壁116と、加熱室102内で下流室102Dおよび上流室102Uから出口室102Eを区画する仕切り壁117および整流板127と、を有している。
【0030】
上流室102Uは、仕切り壁111、仕切り壁116、仕切り壁117、左壁51L、および右壁51Rにより形成されている。下流室102Dは、仕切り壁111、仕切り壁113、仕切り壁116、整流板127、後壁51B、左壁51L、および右壁51Rにより形成されている。出口室102Eは、仕切り壁117、整流板127、後壁51B、左壁51L、および右壁51Rにより形成されている。下流室102Dの容積は上流室102Uの容積よりも大きく、上流室102Uの容積は出口室102Eの容積よりも大きい。
【0031】
加熱室102の後壁51Bには、加熱室吸気口102aと加熱室排気口102bとが形成されている。加熱室吸気口102aおよび加熱室排気口102bは、下流側ガイド部材14に向かって開口している。加熱室吸気口102aは、本体ケース51の外部と加熱室102の上流室102Uとを連通している。加熱室排気口102bは、加熱室102の出口室102Eと本体ケース51の外部とを連通している。
【0032】
複数の加熱室ファン132は、加熱室吸気口102aから吸い込まれ、ヒーター135を経由して、加熱室排気口102bから排出されるように空気を送る。詳しくは、加熱室102を流れる空気は、加熱室吸気口102aから上流室102Uに流入し、仕切り壁116に取り付けられた加熱室ファン132によって上流室102Uから下流室102Dに送られ、整流板127の貫通孔127hを通って下流室102Dから出口室102Eに流入し、加熱室排気口102bを通って出口室102Eから加熱室102の外部に排出される。加熱室ファン132の駆動によって発生した熱風は、加熱室排気口102bから排出される。ここでは図3に示すように、加熱室吸気口102aおよび加熱室排気口102bは、下流側ガイド部材14に向けて後方かつ下方に開口している。上流室102Uの圧力は負圧に設定され、下流室102Dの圧力は正圧に設定され、出口室102Eの圧力は下流室102Dの圧力よりも低い正圧に設定される。図3に示すように、整流板127は加熱室ファン132よりも後方に配置されており、整流板127の貫通孔127hは、複数の加熱室ファン132の出口と対向する位置を避けて配置されている。整流板127には、下流室102Dを流れる空気を加熱室排気口102bへ向かわせる案内板117Aが設けられている。ここでは、案内板117Aは、仕切り壁117の一部により形成されている。すなわち、仕切り壁117の一部が案内板117Aを兼用している。ただし、案内板117Aの構成は何ら限定されず、案内板117Aは仕切り壁117と別体であってもよい。
【0033】
図6Aは乾燥装置50の背面図である。図6Bは、図6Aの部分拡大図である。図7Aは、後壁51Bを外した状態の乾燥装置50の背面図である。図7Bは、図7Aの部分拡大図である。図7Aに示すように、本実施形態では、加熱室102は、左側加熱室102Lと、右側加熱室102Rとに仕切られている。加熱室102には、前後方向および上下方向に延び、加熱室102内部を左側加熱室102Lと右側加熱室102Rとに仕切る仕切り壁118が設けられている。左側加熱室102Lは加熱室102のうち仕切り壁118よりも左側に形成され、右側加熱室102Rは加熱室102のうち仕切り壁118よりも右側に形成されている。左側加熱室102Lと右側加熱室102Rとは、走査方向Yに並んでいる。仕切り壁118は、ここでは、加熱室102を走査方向Yに2等分している。ただし、左側加熱室102Lと右側加熱室102Rとは、異なる大きさに形成されていてもよい。
【0034】
図6Aに示すように、加熱室吸気口102aは、走査方向Yに延びている。加熱室吸気口102aは、左側加熱室102Lに設けられた左側吸気口102aLと、右側加熱室102Rに設けられた右側吸気口102aRと、を含んでいる。加熱室排気口102bもまた、走査方向Yに延びている。加熱室排気口102bは、左側加熱室102Lに設けられた左側排気口102bLと、右側加熱室102Rに設けられた右側排気口102bRと、を含んでいる。
【0035】
走査方向Yに関して、左側吸気口102aLおよび右側吸気口102aRは、それぞれ、本体ケース51の左側半分および右側半分のほぼ全域にわたって形成されている。図6Bに示すように、本実施形態では、左側吸気口102aLおよび右側吸気口102aRは、それぞれ、左右方向に並んで配置された複数のスリット102a1から構成されている。加熱室吸気口102aの各スリット102a1の形状は特に限定されないが、ここでは、図6Bに示すように、加熱室吸気口102aの各スリット102a1は、縦長の長孔状に形成されている。
【0036】
走査方向Yに関して、加熱室排気口102bは、加熱室吸気口102aより下方に配置されている。左側排気口102bLおよび右側排気口102bRは、それぞれ、本体ケース51の左側半分および右側半分のほぼ全域にわたって形成されている。図6Bに示すように、左側排気口102bLおよび右側排気口102bRも、それぞれ、複数のスリット102b1から構成されている。加熱室排気口102bの各スリット102b1の形状は特に限定されないが、ここでは、図6Bに示すように、加熱室排気口102bの各スリット102b1は、横長の長孔状に形成されている。
【0037】
図7Aに示すように、右側加熱室102Rには、複数のヒーター135と、複数の加熱室ファン132とが設けられている。図7Aおよび図7Bに示すように、右側加熱室102Rには、右側加熱室102Rの熱風の温度を測定する右側サーミスタS1Rが設けられている。左側加熱室102Lは、ここでは、右側加熱室102Rと同じ構成を有し、右側加熱室102Rと左右対称に構成されている。以下、左右を区別する場合には、左側加熱室102Lのヒーター135を左側ヒーター135Lと、左側の加熱室ファン132を左側ファン132Lとも呼ぶ。右側加熱室102Rのヒーター135を右側ヒーター135Rと、右側の加熱室ファン132を右側ファン132Rとも呼ぶ。左側加熱室102Lに設けられたサーミスタのことは、左側サーミスタS1Lとも呼ぶ。以下では、右側加熱室102Rの構成について説明し、左側加熱室102Lの構成の詳細説明は、右側加熱室102Rと同様であるため省略する。ただし、左側加熱室102Lの構成は、右側加熱室102Rと同様でなくてもよい。
【0038】
右側ファン132Rは、右側加熱室102Rの右側吸気口102aRから外部の空気を取り入れ、右側排気口102bRから排出する。図7Aに示すように、複数の右側ファン132Rおよび右側ヒーター135Rは、走査方向Yに並んで配置されている。ただし、右側ファン132Rおよび右側ヒーター135Rの数は、1つであってもよい。
【0039】
右側ヒーター135Rは、右側ファン132Rによって送風される空気を加熱する。右側ヒーター135Rの構成は何ら限定されない。図3に示すように、ここでは、右側ヒーター135Rは、筒135Aと、筒135Aの内部に配置された図示しない電熱線とを有している。空気は、筒135Aの内部を通過するときに上記電熱線によって加熱される。
【0040】
図3に示すように、右側ファン132Rは仕切り壁116に取り付けられている。仕切り壁116には、左右方向に並んだ複数の開口116aが形成されている(図3では、1つの開口116aのみ図示)。開口116aは、加熱室102の上流室102Uと下流室102Dとを連通している。右側ファン132Rは、仕切り壁116の開口116aに取り付けられている。右側ファン132Rは、右側吸気口102aRから右側加熱室102Rに空気を取り入れ、開口116aを通じて上流室102Uの空気を下流室102Dに送り、下流室102Dの空気を右側排気口102bRから排出させる。右側ファン132Rは、右側加熱室102Rの空気を送風するように構成されている。本実施形態では、右側ファン132Rは軸流ファンにより構成されている。なお、右側ファン132Rの下流側が加圧空間となるよう、右側排気口102bRの総開口面積は、右側ファン132Rの流路断面積よりも小さくてもよい。
【0041】
右側サーミスタS1Rは、右側加熱室102Rで発生させた熱風の温度を測定する温度測定装置の一例である。温度測定装置は、サーミスタには限定されず、例えば、熱電対であってもよい。また、温度測定装置は、右側加熱室102Rに一部または全部が収容されていなくてもよく、右側加熱室102Rから離れて熱風の温度を測定可能であれば(例えば、右側排気口102bRのすぐ外側で熱風の温度を測定するような場合)、右側加熱室102Rの内部に収容されていなくてもよい。
【0042】
図3に示すように、右側サーミスタS1Rは、右側加熱室102Rの出口室102Eに設けられている。さらに詳しくは、右側サーミスタS1Rは、出口室102Eを区画する仕切り壁117のうち前壁を構成する部分に固定されている。
【0043】
詳しくは制御装置200の説明において説明するが、本実施形態では、右側加熱室102Rの熱風の温度は、右側サーミスタS1Rの測定に基づき、左側加熱室102Lとは独立に制御されている。なお、右側加熱室102Rの熱風の温度制御と左側加熱室102Lの熱風の温度制御とを特に区別しない場合には、右側サーミスタS1Rと左側サーミスタS1Lとを総称してサーミスタS1と呼ぶことがあり、「サーミスタS1により加熱室102の熱風の温度を測定する」等ともいう。
【0044】
右側加熱室102Rの熱風の温度と左側加熱室102Lの熱風の温度とを独立に制御することにより、場所による熱風の熱量の差を抑制することができる。加熱室ファン132が発生させる風の風量は、出口の一方側と他方側とで差を有している。そのため、1つの加熱室102に複数のファンを配置すると、風量の強い側ではヒーター135によって加熱された空気が加熱室ファン132により冷やされる一方、風量の弱い側ではヒーター135によって加熱された空気が加熱室ファン132によりあまり冷やされることがない。そのため、熱量の差が積算され、加熱室102の場所による熱量差が大きくなる。その結果、熱量差によって、加熱室排気口102bから吹き出される乾燥風の温度が不均一となる。
【0045】
本実施形態では、加熱室102は2つの加熱室102L、102Rに分割されているが、3つ以上に分割されていてもよい。本体ケース51の内部は、複数の加熱室102を含む複数のエリアに分割されていてもよい。ただし、加熱室102は、複数の加熱室に分割されず、1つであってもよい。
【0046】
後壁51Bは、図7Aに示す複数のブラケット52に固定されている。ブラケット52は、後壁51Bを支持する支持部の一例である。ここでは、各ブラケット52は、平板状に形成され、図7Bに示すように、搬送方向Xおよび走査方向Yに(下流側ガイド部材14と略平行に)延びている。複数のブラケット52は、走査方向Yに並んで配置されている。図6Aおよび図6Bに示すように、本体ケース51は、後壁51Bを複数のブラケット52に固定する複数のネジ53を備えている。
【0047】
図6Bに示すように、後壁51Bは、ネジ53が装着されるネジ装着部51B1を有している。ネジ装着部51B1は、加熱室吸気口102aを左右方向に分断するように配置されている。ネジ装着部51B1には、ネジ53を挿通可能な孔が形成されている。ネジ装着部51B1は、加熱室吸気口102aの切れ目となっている。ここでは、ネジ装着部51B1は、複数設けられている。ただし、ネジ装着部51B1の数は、1つであってもよい。後壁51Bをネジ53でブラケット52に固定することにより、後壁51Bが吸気によって振動することが抑制される。一方で、ネジ装着部51B1により加熱室102内への吸気が妨げられ、ネジ装着部51B1の付近では吸気量が減少する。
【0048】
図6に示すように、本実施形態では、ネジ装着部51B1の一部は、加熱室ファン132と走査方向Yの位置が揃っている。上記した一部のネジ装着部51B1は、走査方向Yに関して、各加熱室ファン132の正面に位置している。ネジ装着部51B1が加熱室ファン132の正面に位置することにより、加熱室ファン132が吸い込む空気の流れが妨げられ、加熱室ファン132に吸い込まれる空気の量が減少する。これにより、本来であれば他の箇所よりも吸気量の多い加熱室ファン132の正面における吸気量が抑制されている。その結果、複数の加熱室ファン132の正面と他の部分との間で発生する吸気量のアンバランスが抑制され、加熱室吸気口102aの左右方向の位置による吸気量の差が少なくなっている。本実施形態では、左端および右端の加熱室ファン132の正面にはネジ装着部51B1が設けられていないが、全ての加熱室ファン132の正面にネジ装着部51B1が設けられていてもよい。
【0049】
なお、本体ケース51の後壁51Bは、加熱室吸気口102aが形成された開放部と加熱室吸気口102aが形成されない閉塞部とを有し、かつ、記録媒体5に対向していればよく、閉塞部は、加熱室ファン132と走査方向Yの位置が揃っていればよい。本実施形態では、閉塞部はネジ装着部51B1であるが、ネジ装着部51B1でなくてもよい。閉塞部は、例えば、単に加熱室吸気口102aが形成されていない部分であってもよい。
【0050】
加熱室102は左右方向に延び、加熱室排気口102bは左右方向の全域にわたって配置されているが、加熱室ファン132は左右方向に分散して配置されている。そこで、加熱室排気口102bから排出される空気の速度分布を均一化させる整流部材を設けてもよい。ここでは、加熱室102の下流室102Dに、整流板127が配置されている。整流板127として、例えばパンチングメタルを好適に用いることができる。整流板127は、左右方向に延びており、本体ケース51の左右方向の全域にわたって延びている。整流効果を高めるために、整流板127は加熱室排気口102bに近い位置に配置することが好ましい。ただし、整流板127の位置は特に限定される訳ではない。また、特に限定されるわけではないが、ここでは整流板127の貫通孔127hの総開口面積は、加熱室排気口102bの総開口面積よりも大きい。
【0051】
[送風室の構成]
送風室101、および、送風室101内に収容された第1送風ファン131Aは、初期送風のための風を発生させる。送風室101、および、送風室101内に収容された第2送風ファン131Bは、ヒーター135および加熱室ファン132が発生させた熱風がプラテン16に移動することを遮る風(エアカーテンとも呼ぶ)を発生させる。以下では、初期送風のための風を発生させる構成(送風室101および第1送風ファン131A)を初期送風装置101Pとも呼ぶ。また、エアカーテンを発生させ、加熱室ファン132が発生させた熱風がプラテン16に流れ込むことを遮る構成(送風室101および第2送風ファン131B)のことをエアカーテン装置101Cとも呼ぶ。
【0052】
図3に示すように、乾燥装置50は、送風室101の内部を第1送風室121と第2送風室122とに仕切る仕切り壁114を有している。また、乾燥装置50は、第1送風室121および第2送風室122から吸気室123を仕切る取付板115を有している。図4に示すように、本体ケース51の上壁51Uには、送風室吸気口101aが形成されている。送風室吸気口101aは、本体ケース51の外部と吸気室123とを連通している。送風室吸気口101aは複数形成され、左右方向に並んでいる。
【0053】
図8は、取付板115の正面図である。図8に示すように、取付板115は左右方向および上下方向に延びる平板状に形成されている。取付板115には、それぞれ左右に並んだ複数の第1開口115a、複数の第2開口115b、および複数の第3開口115cが形成されている。第1開口115a、第2開口115b、および第3開口115cは、上下に並んでいる。ここでは、第2開口115bは第1開口115aの真下に配置されている。第3開口115cは第2開口115bの真下に配置されている。第1開口115a、第2開口115b、および第3開口115cは、前後に開口している。
【0054】
図3に示すように、乾燥装置50は、送風室101に設けられた複数の第1送風ファン131Aおよび複数の第2送風ファン131Bと、非加熱室103に設けられた複数の非加熱室ファン133とを有している。第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bは、送風室101のうちの吸気室123に配置されている。
【0055】
図8に示すように、第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、および非加熱室ファン133は、取付板115に取り付けられている。複数の第1送風ファン131A、複数の第2送風ファン131B、および複数の非加熱室ファン133は、それぞれ左右に並んでいる。第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、および非加熱室ファン133は、上下に一直線上に並んでいる。第2送風ファン131Bは第1送風ファン131Aの真下に配置され、非加熱室ファン133は第2送風ファン131Bの真下に配置されている。第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、および非加熱室ファン133は、それぞれ水平方向後向きに送風するように、互いに平行に配置されている。本実施形態では、第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、および非加熱室ファン133は、軸流ファンにより構成されている。
【0056】
取付板115の第1開口115aは、吸気室123と第1送風室121とを連通している。第1送風ファン131Aは、取付板115の第1開口115aに取り付けられている。第1送風ファン131Aは、送風室吸気口101aから吸気室123に空気を取り入れ、第1開口115aを通じて吸気室123の空気を第1送風室121に送る。第1送風ファン131Aは、空気を水平方向後向きに送風するように配置されている。
【0057】
取付板115の第2開口115bは、吸気室123と第2送風室122とを連通している。第2送風ファン131Bは、取付板115の第2開口115bに取り付けられている。第2送風ファン131Bは、送風室吸気口101aから吸気室123に空気を取り入れ、第2開口115bを通じて吸気室123の空気を第2送風室122に送る。第2送風ファン131Bは、空気を水平方向後向きに送風するように配置されている。
【0058】
本実施形態では、第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bは、送風室吸気口101aの真下からずれた位置に配置されている。第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bは、送風室吸気口101aよりも左方または右方に配置されている(図4参照)。これにより、送風室吸気口101aから異物が吸い込まれた場合であっても、第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bから左右方向にずれた位置に異物が落下する可能性が高いので、その異物が第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bに巻き込まれることを防止することができる。第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bの異物の巻き込みによる故障を防止することができる。
【0059】
図3に示すように、後壁51Bの上方には、第1送風室ノズル121bおよび第2送風室ノズル122Nが形成されている。第1送風室ノズル121bおよび第2送風室ノズル122Nは、それぞれ、第1送風室121および第2送風室122の排気口である。第1送風室ノズル121bは、第1送風室121と本体ケース51の外部とを連通している。第2送風室ノズル122Nは、第2送風室122と本体ケース51の外部とを連通している。第2送風室ノズル122Nは、第1送風室ノズル121bよりも下方に配置されている。また、第2送風室ノズル122Nは、加熱室吸気口102aよりも上方に配置されている。第1送風室ノズル121bおよび第2送風室ノズル122Nは、加熱室排気口102bよりも後方に配置されている。
【0060】
図6Aに示すように、第1送風室ノズル121bおよび第2送風室ノズル122Nは、本体ケース51の左右方向の全域にわたって形成されている。図3に示すように、第1送風室121には、後方に行くほど上下幅が小さくなる排出流路121Aが形成されている。第1送風室ノズル121bは、排出流路121Aに繋がっている。第1送風室ノズル121bは、プラテン16に向けて開口している。ここでは、第1送風室ノズル121bは、水平方向に沿って後方に開口している。第1送風ファン131Aは、第1送風室121の空気を第1送風室ノズル121bから排出させる。第1送風ファン131Aは、第1送風室121の空気を送風するように構成されている。排出流路121Aと第1送風ファン131Aとの間には整流板125が設けられている。第1送風室121および複数の第1送風ファン131Aは、初期送風装置101Pを構成している。
【0061】
第2送風室122は、内部を風が流れる送風通路122Aを備えている。第2送風室ノズル122Nは、送風通路122Aの風の出口である。第2送風室ノズル122Nは、第2送風ファン131Bが発生させた風が噴射されるノズルである。第2送風室ノズル122Nから噴射される風は、熱風がプラテン16に移動することを遮るエアカーテンとなる。図6に示すように、第2送風室ノズル122Nは、左右方向に延びている。第2送風室ノズル122Nは、本体ケース51の左右方向の全域にわたって形成されている。第2送風室ノズル122Nは、下流側ガイド部材14の上壁14Uに向けて後方かつ下方に開口している。図3に示すように、第2送風室ノズル122Nは、加熱室吸気口102aよりも搬送方向Xの上流X2に設けられている。
【0062】
第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bは、互いに同一仕様のファンであってもよく、異なる仕様のファンであってもよい。第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bの風量は、互いに等しくてもよく、異なっていてもよい。ここでは、第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bは、第2送風室ノズル122Nの空気の吹き出し速度が第1送風室ノズル121bの空気の吹き出し速度よりも大きくなるように設定されている。第2送風室ノズル122Nと第2送風ファン131Bとの間には整流板126が設けられている。
【0063】
図3に示すように、第2送風室ノズル122Nは、それぞれ走査方向Y(図6参照)に延びるとともに搬送方向Xに並んだ下ノズル板122N1と上ノズル板122N2とを備えている。下ノズル板122N1と上ノズル板122N2とは、ここでは略平行に設けられ、下流側ガイド部材14に略直交するように、後方かつ下方に延びている。第2送風ファン131Bは、第2送風室122の空気を第2送風室ノズル122Nから排出させる。第2送風ファン131Bが発生させた風は、下ノズル板122N1と上ノズル板122N2との間から噴射される。
【0064】
図3に示すように、下ノズル板122N1と上ノズル板122N2との間には、複数のスペーサ128が挟まれている(図6Aおよび図6Bも参照)。スペーサ128は、下ノズル板122N1と上ノズル板122N2とに挟持されている。スペーサ128は、下ノズル板122N1と上ノズル板122N2との間に挟まれることにより、下ノズル板122N1と上ノズル板122N2との間の間隔を確保するものである。図6に示すように、複数のスペーサ128は、走査方向Yに並んで配置されている。ただし、スペーサ128の数は1つであってもよい。
【0065】
図9は、スペーサ128の斜視図である。図10は、スペーサ128が挟まれた状態の第2送風室ノズル122Nを示す斜視図である。図11Aは、加熱室102と第2送風室ノズル122Nとの境界付近の断面図である。図9および図10に示すように、スペーサ128は、下ノズル板122N1に固定された接続部128aと、接続部128aから上ノズル板122N2の側(ここでは搬送方向Xに)に延びる板状の支持部128bと、支持部128bに接続され、上ノズル板122N2よりも先まで延在する延設部128cと、支持部128bと延設部128cとの境界に形成され、スペーサ128の板厚方向(ここでは走査方向Y)に貫通した切込み部128dと、を備えている。接続部128aは、下ノズル板122N1と平行に延びる板状に構成され、下ノズル板122N1に面接触している。接続部128aは、ここでは、下ノズル板122N1に溶接されている。ただし、接続部128aと下ノズル板122N1との固定方法は特に限定されない。
【0066】
支持部128bは、下ノズル板122N1と上ノズル板122N2との間に配置されており、上ノズル板122N2を支持する。図10に示すように、支持部128bは、主面128b1と主面128b1よりも幅狭の幅狭面128b2とを有する扁平な板状に構成されている。幅狭面128b2は、記録媒体5の搬送経路(ここでは、下流側ガイド部材14)に対向している。支持部128bは、板厚方向(幅狭面128b2の幅方向)が搬送方向Xに直交するように設けられている。本実施形態では、主面128b1は、搬送方向Xと、搬送方向Xおよび走査方向Yに直交する第3の方向(以下、Z方向とも呼ぶ、図3および図11Aも参照)とに延びている。幅狭面128b2は、搬送方向Xと走査方向Yとに延びている。
【0067】
支持部128bをZ方向に延びるとともに走査方向Yに薄い板状に構成することにより、走査方向Yに幅を有するように構成する場合と比べて、スペーサ128による空気の流れの阻害を少なくすることができる。ただし、支持部128bは、主面128b1がZ方向に対してやや傾くように配置されていてもよく、主面128b1が搬送方向Xに対してやや傾くように配置されていてもよい。支持部128bの走査方向Yの厚さ(幅狭面128b2の幅)D2は、好ましくは、3.2mm以下である。支持部128bの厚さD2は、さらに好ましくは、1mm以下である。支持部128bの厚さD2は、例えば、0.8mmである。
【0068】
支持部128bは、接続部128aからの搬送方向Xの距離が所定の距離D1であって、上ノズル板122N2が載置される載置部128b3を備えている。載置部128b3は、支持部128bの上縁である。所定の距離D1は、下ノズル板122N1と上ノズル板122N2との間の間隔と同じに設定されている。上ノズル板122N2は、載置部128b3に載置されることにより、下ノズル板122N1と距離D1だけ離れて保持される(図11Aも参照)。ここでは、支持部128bと上ノズル板122N2とは、溶接によって固定されている。ただし、支持部128bと上ノズル板122N2との固定方法は特に限定されない。
【0069】
切込み部128dは、支持部128bと延設部128cとの境界に形成され、スペーサ128の板厚方向に貫通している。切込み部128dは、接続部128aの上面から搬送方向Xに、載置部128b3と同じ距離D1だけ離れて形成されている。切込み部128dは、支持部128bを走査方向Yに貫通し、載置部128b3と略平行に延びている。上ノズル板122N2は、切込み部128dに差し込まれている。
【0070】
図10に示すように、下ノズル板122N1には、支持部128bを挿通可能な第1貫通孔122aが形成されている。支持部128bは、第1貫通孔122aに挿通されている。第1貫通孔122aは、支持部128bの走査方向Yの厚さD2およびZ方向の長さに対応した形状に形成されている。第1貫通孔122aは、Z方向に延びている。支持部128bは、第2送風室ノズル122Nを製造する際、下方から第1貫通孔122aに差し込まれた後、下ノズル板122N1に溶接される。溶接時、接続部128aは、下ノズル板122N1の下面に当て付けられる。これにより、載置部128b3および切込み部128dの下ノズル板122N1からの距離が距離D1に決まるとともに、載置部128b3および切込み部128dの延設方向がZ方向に決まる。また、載置部128b3および切込み部128dのZ方向の位置が決まる。
【0071】
上ノズル板122N2には、スペーサ128の延設部128cを挿通可能な第2貫通孔122bが形成されている。延設部128cは、第2貫通孔122bに挿通されている。第2貫通孔122bは、支持部128bの厚さD2に対応した幅と、延設部128cのZ方向の長さよりも長いZ方向の長さとを有している。第2貫通孔122bは、Z方向に延びている。上ノズル板122N2は、第2貫通孔122bのZ方向の一方側の縁部(ここでは、下縁)122b1と切込み部128dのZ方向の他方側の縁部(ここでは、上縁)128d1とを当接させるように、切込み部128dに差し込まれている。これにより、上ノズル板122N2のZ方向の位置が決まっている。
【0072】
上ノズル板122N2は、延設部128cが第2貫通孔122bに挿通された状態から、第2貫通孔122bの後方側の縁部122b1が切込み部128dの伸長方向奥側の縁(ここでは、前方側の縁部128d1)に突き当たるようにスライドされることにより切込み部128dに差し込まれる。スライド方向(Z方向)の支持部128bの長さは、第2貫通孔122bのスライド方向(Z方向)の長さよりも長く構成されている。上ノズル板122N2をスライドさせた後の第2貫通孔122bの一部は、図10に示すように、延設部128cが挿通されることにより塞がれている。第2貫通孔122bの残りの部分は、支持部128bにより塞がれている。
【0073】
なお、かかるスペーサ128の構成は、他のノズル、例えば、第1送風室ノズル121bに適用することもできる。また、例えば、加熱室排気口102bをノズル形態に構成した場合には、かかるスペーサ128の構成は加熱室排気口102bに適用されてもよい。
【0074】
図6Bに示すように、本実施形態では、複数のスペーサ128は、複数の加熱室ファン132と左右方向の位置がずれるように配置されている。従って、複数のスペーサ128は、複数のネジ装着部51B1とも左右方向の位置がずれている。左右方向に関し、ネジ装着部51B1が存在する位置では、加熱室ファン132に吸い込まれる空気の量が減少するため、高温の空気が滞留する。加熱室吸気口102aのうちネジ装着部51B1によって分断された部分は、加熱室ファン132の正面であり、本来吸気量が多いため、ネジ装着部51B1が存在しても熱の滞留は少ない。しかし、スペーサ128の左右方向の位置がネジ装着部51B1と揃うと、スペーサ128によって第2送風室ノズル122Nからの風が遮られることと、ネジ装着部51B1によって吸気が遮られることとが重なり、スペーサ128の正面で熱が滞留しやすくなる。乾燥装置50と下流側ガイド部材14上の記録媒体5との間に過度の熱が滞留すると、記録媒体5の皺のような問題が発生しやすくなる。そのため、本実施形態では、複数のスペーサ128と複数の加熱室ファン132とは、走査方向Yの位置がずれるように配置されている。
【0075】
図11Aに示すように、本実施形態では、下ノズル板122N1を構成する壁部材は、第2送風室ノズル122Nの根元において下方に曲げられており、この曲げられた部分は、加熱室102の後壁51Bの上部と重ねられている。下ノズル板122N1は、第2送風室122の送風通路122Aを構成する壁部の1つであり、後壁51Bの一部と向かい合っている。第2送風室122の送風通路122Aは、後壁51Bと隣接して配置されている。図11Aに示すように、後壁51B(加熱室壁102W)と下ノズル板122N1との重なり部分には、板状のスポンジ129が挟まれている。図11Bは、スポンジ129が後壁51Bと下ノズル板122N1とによって挟まれる前における加熱室102と第2送風室ノズル122Nとの境界付近の断面図である。図11Aおよび図11Bに示すように、スポンジ129は、後壁51Bと下ノズル板122N1とによって圧縮されている。スポンジ129は、後壁51Bと下ノズル板122N1とによって圧縮状態で挟持され、後壁51Bと下ノズル板122N1との間の隙間に応じて復元する変形部材の一例である。変形部材は、スポンジ状の発泡体には限定されず、例えば、板状のゴム等であってもよい。
【0076】
加熱室壁102Wは、ヒーター135によって加熱される。そのため、加熱室壁102W(ここでは、後壁51B)は、熱により膨張して反る。図11Cは、後壁51Bが熱により変形した状態における加熱室102と第2送風室ノズル122Nとの境界付近の断面図である。図11Bに示すように、後壁51Bの変形により、後壁51Bと下ノズル板122N1との間の間隔が拡大する。圧縮された板状のスポンジ129は、この間隔が拡大してもそれに追従して復元する。スポンジ129は、これにより、後壁51Bと下ノズル板122N1との間に隙間ができることを防止している。その結果、加熱室102および第2送風室122の送風通路122Aが密閉され、送風通路122Aと加熱室102とが仕切られる。送風通路122Aと加熱室102とが分断されることにより、送風通路122Aの内部を流れる比較的温度の低い風が加熱室吸気口102aに吸い込まれることが抑制される。これにより、加熱室排気口102bから排出される熱風の温度を確保できる。
【0077】
本実施形態では、加熱室吸気口102aは、加熱室排気口102bよりも下ノズル板122N1の近くに配置されている。乾燥装置50の熱風の温度は、加熱室排気口102bから排出された温度の高い空気が加熱室吸気口102aから吸い込まれることにより維持されている。本実施形態では、加熱室吸気口102aが下ノズル板122N1の近くに配置されているため、後壁51Bと下ノズル板122N1との間に隙間ができると、第2送風室122の送風通路122Aを流れる比較的温度の低い空気が加熱室吸気口102aに吸い込まれ、熱風の温度が低下しやすい。スポンジ129は、かかる乾燥装置50の熱風の温度低下を抑制している。
【0078】
また、第2送風室122の送風通路122Aの気密性が高くなることにより、第2送風室ノズル122Nから噴射させるエアカーテンの風速が確保される。本実施形態では、加熱室壁102Wの一部である後壁51Bとスポンジ129を介して重ねられているのは、第2送風室ノズル122Nを構成する下ノズル板122N1である。そのため、後壁51Bと下ノズル板122N1との間に隙間ができると、第2送風室ノズル122Nから噴射させるエアカーテンの風速が低下しやすい。スポンジ129は、かかるエアカーテンの風速低下を抑制している。
【0079】
変形部材の材料としては、例えば、EPDMの発泡体などが好適に利用可能である。変形部材は、好適には、独立気泡構造の発泡体であるとよい。独立気泡構造の発泡体は、連続気泡構造の発泡体と比べて、元の形状に戻りやすく、反発力があるため、送風通路122Aおよび加熱室102の気密性を確保する変形部材の材料として適している。また、独立気泡構造の発泡体は、気泡が繋がっていないため、連続気泡構造の発泡体と比べて、空気が漏れにくく気密性を確保できる。変形部材の材料は、耐熱性が高く(例えば、通常使用温度が100度以上)、適度な硬さであると好ましい。
【0080】
本実施形態では、後壁51Bと下ノズル板122N1とは固定されておらず、後壁51Bの弾性力により、スポンジ129を介して、後壁51Bが下ノズル板122N1に押し当っている。ただし、後壁51Bと下ノズル板122N1とは、例えばネジ等によって固定されていてもよい。後壁51Bと下ノズル板122N1とがネジ等で固定されている部分があっても、両者の間にできる隙間にスポンジ129を挟むことにより隙間を埋めることは、加熱室102および送風通路122Aを密閉する点で有効である。また、後壁51Bと下ノズル板122N1とが固定されている場合であっても、両者の間の隙間は熱により若干拡大するおそれがある。よって、スポンジ129を両者の間に挟むことは有効である。また、後壁51Bと下ノズル板122N1とを固定すると、熱膨張により、後壁51Bおよび下ノズル板122N1が互いに力を掛け合い、両者に負荷が掛かる。後壁51Bと下ノズル板122N1とを非固定することによりこれを抑制でき、かつ、スポンジ129により、加熱室102および送風通路122Aを密閉することができる。
【0081】
[非加熱室の構成]
図5に示すように、本体ケース51の前壁51Fには、非加熱室吸気口103aが形成されている。図3に示すように、前壁51Fは、垂直壁51FAと、垂直壁51FAの下端から後方かつ下方に延びる傾斜壁51FBとを有している。本実施形態では、非加熱室吸気口103aは傾斜壁51FBに形成されている。本体ケース51の下壁51Dには、非加熱室排気口103bが形成されている。本実施形態では、下壁51Dは後方かつ下方に延びている。非加熱室吸気口103aおよび非加熱室排気口103bの各々は、本体ケース51の外部と非加熱室103とを連通している。非加熱室吸気口103aは、非加熱室排気口103bよりも前方に形成されている。非加熱室排気口103bは、後方かつ下方に延びる傾斜壁51FBに貫通形成されているので、前方かつ下方に向けて開口している。
【0082】
非加熱室ファン133は、取付板115の第3開口115cに取り付けられている。非加熱室ファン133は、非加熱室吸気口103aから非加熱室103に空気を取り入れ、第3開口115cを通じて非加熱室103の空気を取付板115の前方から後方に送り、その空気を非加熱室排気口103bから排出させる。非加熱室ファン133は、非加熱室103の空気を送風するように構成されている。非加熱室ファン133は、前方から見て非加熱室吸気口103aと重なる位置に配置されていてもよいが、本実施形態では、非加熱室吸気口103aからずれた位置に配置されている。非加熱室ファン133は、非加熱室吸気口103aよりも左方または右方に配置されている。これにより、非加熱室吸気口103aから異物が吸い込まれた場合に、非加熱室ファン133に異物が巻き込まれることを防止することができ、非加熱室ファン133の故障を防止することができる。
【0083】
[乾燥装置の他の構成]
図8に示すように、乾燥装置50は、第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、および非加熱室ファン133に電線151を介して接続されたプリント基板150を有している。プリント基板150は、第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、および非加熱室ファン133に電気を供給する。プリント基板150の個数は1つでも構わないが、本実施形態では乾燥装置50は、左右に並ぶ複数のプリント基板150を有している。プリント基板150は、取付板115に取り付けられている。すなわち、プリント基板150、第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、および非加熱室ファン133は、共通の取付板115に取り付けられている。第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、および非加熱室ファン133の近くにプリント基板150を配置することとすれば、第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、および非加熱室ファン133をプリント基板150につなぐ電線151の長さを短くすることができ、好ましい。プリント基板150は、送風室101の吸気室123に配置されている。吸気室123には、第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bにより、気流が発生している。プリント基板150は、上記気流により冷却される。ただし、プリント基板150の配置は特に限定されない。プリント基板150は非加熱室103に配置されていてもよい。この場合、プリント基板150は、非加熱室ファン133によって形成される気流により冷却される。
【0084】
本実施形態では、仕切り壁112および仕切り壁114は鉄により形成されている。加熱室102を仕切る仕切り壁111および仕切り壁113は、ステンレスにより形成されている。仕切り壁111および仕切り壁113の熱伝導率は、仕切り壁112および仕切り壁114の熱伝導率よりも低い。加えて、加熱室102の熱が送風室101および非加熱室103に伝わることを更に抑制するために、仕切り壁111の送風室101側および仕切り壁113の非加熱室103側には、断熱材155が設けられている。本実施形態では、断熱材155は可撓性を有しており、変形容易である。
【0085】
取付板115は、前方から断熱材155に押し当てられている。取付板115は、断熱材155を介して仕切り壁111および仕切り壁113に押し当てられている。取付板115は、仕切り壁111および仕切り壁113に押し当てられることにより、所定の位置に位置決めされている。取付板115と仕切り壁111および仕切り壁113との間に断熱材155が介在しているので、取付板115に取り付けられたプリント基板150、第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、および非加熱室ファン133が加熱室102の熱によって加熱されることを抑制することができる。
【0086】
ただし、仕切り壁111および仕切り壁113の材料は特に限定されない。断熱材155は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である。
【0087】
[下流側ガイド部材の構成]
次に、下流側ガイド部材14について説明する。本実施形態では、下流側ガイド部材14は、上部部材18および下部部材15によって構成されている。ここでは、下流側ガイド部材14は、プラテン16に対して搬送方向Xの下流に隣接している。図3に示すように、下流側ガイド部材14のケース14Xは、前方かつ下方に延びる上壁14Uを有している。下流側ガイド部材14のケース14Xは左右方向に延設されている。図12は、上壁14Uおよび下部部材15を消去した下流側ガイド部材14の斜視図である。下流側ガイド部材14は、後壁14Bと、上壁14Uから後方に延びる下壁14Dと、上壁14U、後壁14Bおよび下壁14Dの左方に配置された左壁14Lと、上壁14U、後壁14Bおよび下壁14Dの右方に配置された右壁14Rとを有している。
【0088】
下壁14Dには、流入口14aおよび流出口14bが形成されている。上壁14U、後壁14B、下壁14D、左壁14L、および右壁14Rにより、流入口14aから流出口14bに向かう空気流路14Eが形成されている。流入口14aは、下流側ガイド部材14を左右方向に三等分したときの中央部分14CAに形成されている。流入口14aの数は1つであってもよく、複数であってもよい。ここでは、流入口14aは2つ形成されている。流入口14aは、左流入口14aLと、左流入口14aLの右方に形成された右流入口14aRとを含んでいる。流出口14bの数は1つであってもよく、複数であってもよい。ここでは、流出口14bは2つ形成されている。流出口14bは、左流出口14bLおよび右流出口14bRを含んでいる。左流出口14bL、右流出口14bRは、それぞれ下流側ガイド部材14を左右方向に三等分したときの左側部分14LA、右側部分14RAに形成されている。左流入口14aLと右流入口14aRとの中心間の距離14LRは、左流入口14aLと左流出口14bLとの中心間の距離14LLよりも短く、右流入口14aRと右流出口14bRとの中心間の距離14RRよりも短い。
【0089】
下流側ガイド部材14には、流入口14aから吸い込まれた空気が空気流路14Eを流れて流出口14bから流出するように、空気流路14Eに空気を流す冷却ファン140が設けられている。冷却ファン140は、上壁14Uにより区画された空気流路14Eに空気を流すことにより、上壁14Uを冷却する役割を果たす。ここでは、冷却ファン140は、下流側ガイド部材14の内部かつ流入口14aに接続された吸気ファン140Aと、下流側ガイド部材14の内部かつ流出口14bに接続された排気ファン140Bとを含んでいる。吸気ファン140Aは、下流側ガイド部材14の外部の空気を下方から空気流路14Eに吸い込む。排気ファン140Bは、空気流路14Eの空気を下方に向けて下流側ガイド部材14の外部に吐き出す。本実施形態では、吸気ファン140Aおよび排気ファン140Bは、軸流ファンにより構成されている。
【0090】
下流側ガイド部材14の材料は熱伝導率が低い材料であることが好ましいが、熱伝導率の高い材料を用いつつ断熱材を付加してもよい。上壁14U、後壁14B、下壁14D、左壁14L、および右壁14Rは、例えば、ステンレスにより形成されていてもよく、断熱材が貼られた鉄製の板であってもよい。
【0091】
図3に示すように、プリンタ10は、乾燥装置50よりも搬送方向Xの上流X2の所定位置に記録媒体5が達すると、記録媒体5を検知する媒体センサS2を備えている。上記所定位置は、ここでは、下流側ガイド部材14の最上流部に設定されている。ただし、媒体センサS2が記録媒体5の到達を検出する位置は、下流側ガイド部材14の最上流部には限定されない。媒体センサS2が記録媒体5の到達を検出する位置は、プラテン16上または下流側ガイド部材14上であって、乾燥装置50よりも搬送方向Xの上流X2であればよい。例えば、媒体センサS2が記録媒体5の到達を検出する位置は、プラテン16の最下流部であってもよい。媒体センサS2の種類は限定されないが、ここでは、光学式のセンサである。媒体センサS2は、さらに、所定地点における下流側ガイド部材14またはプラテン16からの記録媒体5の浮きを検知するように構成されていてもよい。記録媒体5の浮きを検知する方法としては、公知の種々の方法を特に限定なく用いることができる。
【0092】
[制御装置の構成]
図13は、プリンタ10の制御ブロック図である。図13に示すように、制御装置200は、操作パネル12と、ヘッド移動装置31の第1駆動モータ24と、搬送装置32の第2駆動モータ27と、インクヘッド35と、シートカット装置のカッター駆動部42と、乾燥装置50の第1送風ファン131A、第2送風ファン131B、加熱室ファン132(左側ファン132L、右側ファン132R)、非加熱室ファン133、ヒーター135(左側ヒーター135L、右側ヒーター135R)とに接続され、それらの動作を制御している。また、制御装置200は、乾燥装置50のサーミスタS1(左側サーミスタS1L、右側サーミスタS1R)と、媒体センサS2とに接続され、それらからの信号を受信している。
【0093】
制御装置200の構成は特に限定されない。制御装置200は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。なお、制御装置200は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0094】
図13に示すように、制御装置200は、熱風制御部210と、第1送風制御部220と、第2送風制御部230と、第3送風制御部240と、搬送制御部250と、切断制御部260と、データ受信部270と、設定登録部280と、を備えている。制御装置200は、印刷動作を制御する制御部等、他の制御部を備えていてもよいが、ここでは、図示および説明を省略する。
【0095】
熱風制御部210は、サーミスタS1により測定される温度が所定温度となるように乾燥装置50を制御する。ここでは、熱風制御部210は、左側サーミスタS1Lにより測定される温度および右側サーミスタS1Rにより測定される温度がそれぞれ所定温度となるように乾燥装置50を制御する。詳しくは、図13に示すように、熱風制御部210は、左側熱風制御部211と、右側熱風制御部212とを備えている。左側熱風制御部211は、左側ファン132Lを駆動させるとともに、左側サーミスタS1Lによって測定された温度に基づいて左側ヒーター135Lを制御し、左側排気口102bLから排出される熱風の温度を制御する。右側熱風制御部212は、右側ファン132Rを駆動させるとともに、右側サーミスタS1Rによって測定された温度に基づいて右側ヒーター135Rを制御し、右側排気口102bRから排出される熱風の温度を制御する。
【0096】
本実施形態では、左側熱風制御部211および右側熱風制御部212は、それぞれ、サーミスタS1L、S1Rによって測定される温度が同じ温度となるように、左側ヒーター135Lおよび右側ヒーター135Rを制御する。本実施形態では、左側加熱室102Lにおける熱風の設定温度と、右側加熱室102Rにおける熱風の設定温度とは同じである。前述したように、左側加熱室102Lの熱風の温度と右側加熱室102Rの熱風の温度とは、左右方向に関する熱風の熱量のばらつきを抑制するために独立に制御される。左右方向の熱量のばらつきを抑制するために、本実施形態では、左側加熱室102Lにおける熱風の設定温度と右側加熱室102Rにおける熱風の設定温度とは同じに設定されている。ただし、左側加熱室102Lの設定温度と右側加熱室102Rの設定温度とを異ならせる方が左右方向の熱量のばらつきを抑制できるような場合には、両者は異なる温度に設定されてもよい。
【0097】
左側熱風制御部211は、左側ヒーター制御部211Aと、左側送風制御部211Bとを備えている。左側ヒーター制御部211Aは、左側サーミスタS1Lによって測定される温度が所定の温度となるように左側ヒーター135Lを制御する。熱風の温度制御は、基本的にヒーター135を制御することによって行われ、加熱室ファン132の出力は所定の場合にだけ切り替えられる。本実施形態では、熱風の温度として、暖機運転時の温度である暖機温度T1と、印刷時の温度であって暖機温度T1よりも高い印刷時温度T2が設定されている。暖機温度T1は、本実施形態では、予め定められている。印刷時温度T2は、本実施形態では、記録媒体5の種類に応じてユーザが設定する。適切な熱風の温度は、記録媒体5の種類によって異なる場合がある。記録媒体5の種類に応じて印刷時温度T2を設定することにより、より高品質な印刷を行うことができる。なお、本実施形態では、暖機温度T1よりも高い閾値温度T3も設定されている。印刷時温度T2が閾値温度T3以下に設定された場合と、閾値温度T3よりも高く設定された場合とで、左側ヒーター135Lおよび左側ファン132Lの制御が異なる。この詳細については後述する。
【0098】
左側送風制御部211Bは、左側ファン132Lを制御する。左側送風制御部211Bは、熱風の温度が印刷時温度T2となるまでは、熱風の温度が印刷時温度T2となった後の出力よりも小さい出力で左側ファン132Lを駆動させる。より詳しくは、左側送風制御部211Bは、印刷時温度T2が閾値温度T3よりも高い温度に設定された場合、熱風の温度が閾値温度T3となるまでは所定の第1加熱時出力で左側ファン132Lを駆動し、熱風の温度が印刷時温度T2となるまでは所定の第2加熱時出力で左側ファン132Lを駆動し、熱風の温度が印刷時温度T2となった後は通常出力で左側ファン132Lを駆動する。また、左側送風制御部211Bは、印刷時温度T2が閾値温度T3以下の温度に設定された場合、熱風の温度が印刷時温度T2となるまでは第1加熱時出力で左側ファン132Lを駆動し、熱風の温度が印刷時温度T2となった後は通常出力で左側ファン132Lを駆動する。第2加熱時出力は第1加熱時出力よりも大きく設定され、通常出力は第2加熱時出力よりもさらに大きく設定されている。左側送風制御部211Bは、熱風の温度が印刷時温度T2に達するまでは左側ファン132Lの出力を抑え、熱風の温度が印刷時温度T2に達すると左側ファン132Lの出力を上げるように構成されている。左側送風制御部211Bは、印刷時温度T2が高い温度に設定されている場合には、さらに、段階的に左側ファン132Lの出力を上げながら(ここでは、加熱途中で第1加熱時出力から第2加熱時出力に出力を切り替えて)、熱風の温度を印刷時温度T2まで上昇させる。
【0099】
右側熱風制御部212は、右側ヒーター制御部212Aと、右側送風制御部212Bとを備えている。右側ヒーター制御部212Aおよび右側送風制御部212Bの機能は、それぞれ、左側ヒーター制御部211Aおよび左側送風制御部211Bと同じである。以下、左側ヒーター制御部211Aと右側ヒーター制御部212Aとを総称してヒーター制御部210Aと、左側送風制御部211Bと右側送風制御部212Bとを総称して送風制御部210Bと呼ぶことがある。
【0100】
第2送風制御部230は、第2送風ファン131Bを制御して、エアカーテンを形成する風を発生させる。本実施形態では、第2送風ファン131Bの出力も、熱風の温度に応じて切り替えられる。これは、加熱室吸気口102aに吸い込まれる空気がエアカーテンの空気を含むことによる。第2送風ファン131Bの出力は、ここでは、送風制御部210Bの出力切り替えに同期して切り替えられる。すなわち、第2送風ファン131Bの出力は、加熱室ファン132の出力が第1加熱時出力のときには第1の出力に制御され、加熱室ファン132の出力が第2加熱時出力のときには第2の出力に制御され、加熱室ファン132の出力が通常出力のときには第3の出力に制御される。第2の出力は第1の出力よりも大きく設定され、第3の出力は第2の出力よりもさらに大きく設定されている。ただし、第2送風ファン131Bの出力は、送風制御部210Bの出力切り替えに完全に同期して切り替えられなくてもよい。例えば、第2送風ファン131Bの出力は、送風制御部210Bの出力に関わらず一定であってはいけないわけではない。
【0101】
第1送風制御部220は、第1送風ファン131Aを制御して、初期送風のための風を発生させる。第3送風制御部240は、非加熱室ファン133を制御して、非加熱室排気口103bから空気を噴射させる。
【0102】
搬送制御部250は、搬送装置32を制御し、記録媒体5を搬送する。搬送制御部250は、ここでは、乾燥装置50の状態に応じた態様で記録媒体5を搬送するように構成されている。
【0103】
搬送制御部250は、搬送装置32を制御して記録媒体5を搬送方向Xに搬送する。搬送制御部250は、乾燥装置50の駆動よりも前に搬送装置32を制御して記録媒体5を搬送させる事前搬送制御部251と、印刷開始前に記録媒体5を搬送させる印刷前搬送制御部252と、印刷時の記録媒体5の搬送を行う印刷時搬送部253と、シートカット装置40によって記録媒体5が切断された後に記録媒体5を搬送させるカット後搬送制御部254と、を備えている。以下、事前搬送制御部251の制御による記録媒体5の搬送を事前搬送と、印刷前搬送制御部252の制御による記録媒体5の搬送を印刷前搬送と、カット後搬送制御部254による記録媒体5の搬送をカット後搬送とも呼ぶ。
【0104】
事前搬送制御部251は、媒体センサS2が記録媒体5を検知している場合には、印刷開始よりも前に、記録媒体5を所定の事前搬送距離だけ搬送する。また、事前搬送制御部251は、媒体センサS2が記録媒体5を検知してない場合には、印刷開始よりも前に、媒体センサS2に検知されるまで記録媒体5を搬送した後、さらに記録媒体5を上記事前搬送距離だけ搬送するように構成されている。事前搬送距離は、記録媒体5が少なくとも乾燥装置50に到達する距離に設定されている。この場合、事前搬送距離は、少なくとも、下流側ガイド部材14の乾燥装置50と対向する部分のうち最上流部分と媒体センサS2との間の搬送方向Xに沿った距離よりも長く設定される。これにより、事前搬送された記録媒体5は、下流側ガイド部材14と乾燥装置50との隙間に挿入される。乾燥装置50が駆動された後では、下流側ガイド部材14と乾燥装置50との隙間では空気が流れており、記録媒体5を隙間に挿入しにくい。そのため、搬送制御部250は、乾燥装置50の駆動前に記録媒体5が下流側ガイド部材14と乾燥装置50との隙間に到達するように、記録媒体5を事前搬送する。
【0105】
より好ましくは、事前搬送距離は、下流側ガイド部材14上の乾燥装置50との間隔が最も狭い部分(図3に符号14Nで表す)に記録媒体5が到達する距離に設定されているとよい。この場合、事前搬送距離は、下流側ガイド部材14上の乾燥装置50との間隔が最も狭い部分14Nと媒体センサS2との間の搬送方向Xに沿った距離よりも長く設定される。事前搬送距離がこのように設定されることにより、事前搬送された記録媒体5は、下流側ガイド部材14上の乾燥装置50との間隔が最も狭い部分14Nを通過することができる。本実施形態では、事前搬送制御部251は、下流側ガイド部材14上の乾燥装置50との間隔が最も狭い部分14Nを記録媒体5の下流側端部が通り過ぎるように記録媒体5を搬送する。
【0106】
また、事前搬送距離は、下流側ガイド部材14上の加熱室吸気口102aと対向する位置に記録媒体5が到達する距離に設定されていることが好ましい。この場合、事前搬送距離は、下流側ガイド部材14上の加熱室吸気口102aと対向する位置と媒体センサS2との間の搬送方向Xに沿った距離よりも長く設定される。事前搬送距離がこのように設定されることにより、事前搬送された記録媒体5は、加熱室吸気口102aと対向する位置を通過することができる。下流側ガイド部材14上の加熱室吸気口102aと対向する位置に記録媒体5が到達しないような距離に事前搬送距離が設定されていると、乾燥装置50を駆動したときに、記録媒体5の下流側端部が加熱室吸気口102aに向かって巻き上げられ、加熱室吸気口102aに貼り付くおそれがある。事前搬送距離を上記のように設定することにより、記録媒体5が加熱室吸気口102aに貼り付くことを抑制できる。
【0107】
さらに、事前搬送距離は、下流側ガイド部材14上の加熱室排気口102bと対向する位置に記録媒体5が到達する距離に設定されていることが好ましい。この場合、事前搬送距離は、下流側ガイド部材14上の加熱室排気口102bと対向する位置と媒体センサS2との間の搬送方向Xに沿った距離よりも長く設定される。事前搬送距離がこのように設定されることにより、事前搬送された記録媒体5は、加熱室排気口102bと対向する位置を通過することができる。本実施形態では、事前搬送制御部251は、加熱室排気口102bと対向する位置を記録媒体5の下流側端部が通り過ぎるように記録媒体5を搬送する。下流側ガイド部材14上の加熱室排気口102bと対向する部分に記録媒体5が到達しないような距離に事前搬送距離が設定されていると、乾燥装置50を駆動したときに、記録媒体5の下流側端部が加熱室排気口102bから排出された熱風によって巻き上げられ、バタつきが発生する。事前搬送距離を上記のように設定することにより、記録媒体5の下流側端部のバタつきを抑制し、記録媒体5の搬送を円滑に行うことができる。なお、事前搬送距離だけ記録媒体5を搬送すると、記録媒体5の下流側端部は、下流側ガイド部材14上の加熱室吸気口102aと対向する位置も通り過ぎる。
【0108】
印刷前搬送制御部252は、サーミスタS1によって測定された温度が印刷時温度T2に達した後であって印刷開始前に、搬送装置32を制御して記録媒体5を所定距離だけ搬送させる(印刷前搬送)。以下、上記所定距離を印刷前搬送距離とも呼ぶ。下流側ガイド部材14に熱風を吹きつけると、下流側ガイド部材14上の記録媒体5が熱風による温度変化により伸縮する。プラテン16上の記録媒体5は搬送方向Xの上流X2側をピンチローラ26とグリットローラ25とで挟持されているため、下流側ガイド部材14上で発生する記録媒体5の伸縮を記録媒体5の上流側の移動により吸収できない。そのため、下流側ガイド部材14上で記録媒体5の伸縮が発生するとプラテン16上で記録媒体5が浮いてしまうおそれがある。印刷前搬送は、下流側ガイド部材14上での記録媒体5の温度上昇に起因するプラテン16上での記録媒体5の浮きを解消するためのものである。
【0109】
印刷前搬送距離は、搬送方向Xに関してインクヘッド35が延在する範囲よりも長く設定されている。記録媒体5の浮きが発生した場合であっても、インクヘッド35の延在範囲の長さだけ記録媒体5を搬送方向Xの下流X1に搬送すれば、インクヘッド35に対向する部分には熱の影響を受けない記録媒体5が確実に搬送される。印刷前搬送距離は、ここでは、事前搬送制御部251による記録媒体5の事前搬送距離よりも短く設定されている。印刷前搬送距離がそれほど長くなくてもプラテン16上での記録媒体5の浮きは解消できるため、生産性や記録媒体5の消費量を鑑み、印刷前搬送距離は、事前搬送距離よりも短く設定されている。
【0110】
カット後搬送制御部254は、切断制御部260の制御によりシートカット装置40が記録媒体5を切断した後、媒体センサS2に検知されるまで記録媒体5を搬送し、さらに記録媒体5を事前搬送距離だけ搬送するように構成されている。カット後搬送により、記録媒体5は、印刷前に事前搬送された後と同じ状態となる。カット後搬送された記録媒体5は、加熱室吸気口102aと対向する位置および加熱室排気口102bと対向する位置を通過する。
【0111】
熱風制御部210は、少なくとも記録媒体5のカット後搬送が開始されてから終了するまでは、記録媒体5の下流側端部が加熱室吸気口102aに向かって巻き上げられないような出力で加熱室ファン132を駆動する。以下、この記録媒体5の下流側端部が巻き上げられないような加熱室ファン132出力をカット後出力とも呼ぶ。カット後出力は、記録媒体5の下流側端部が加熱室排気口102bから排気される熱風によって下流側ガイド部材14から浮かないような出力にも設定されている。このとき、ヒーター135は駆動されていてもよい。なお、カット後出力は、出力ゼロであってもよい。すなわち、カット後搬送中、加熱室ファン132は停止されてもよい。加熱室ファン132を停止させる場合には、ヒーター135を停止させてもよい。
【0112】
データ受信部270は、印刷指令を受け付ける。データ受信部270が印刷指令を受け付けることにより、プリンタ10は印刷準備を開始する。印刷準備には、熱風の温度を暖機温度T1から印刷時温度T2まで上昇させることと、印刷前搬送とが含まれる。熱風制御部210は、サーミスタS1により測定される温度を暖機温度T1まで上昇させ、暖機温度T1に維持した後に印刷時温度T2まで上昇させるように構成されており、印刷時温度T2までの温度上昇は、印刷指令の受信がトリガーとなって開始される。熱風制御部210は、サーミスタS1により測定される温度を暖機温度T1に維持している状態でデータ受信部270が印刷指令を受け付けると、サーミスタS1によって測定される温度を印刷時温度T2まで上昇させる。
【0113】
ただし、本実施形態に係るプリンタ10は、電源投入後最初の昇温時に限り、印刷指令の有無にかかわらず、熱風温度を所定時間、暖機温度T1に維持するように構成されている。以下、この熱風の温度を暖機温度T1に維持する時間を維持時間とも呼ぶ。熱風制御部210は、暖機温度T1まで熱風の温度を上昇させた後、維持時間が経過するまでは熱風の温度を暖機温度T1に維持する。これにより、少なくとも維持時間は熱風の温度が暖機温度T1に維持される。乾燥装置50を維持時間以上暖めることにより、印刷時温度T2に到達した熱風の温度が場所によってばらつくことを抑制することができる。維持時間を取らず、乾燥装置50を暖めないと、乾燥装置50に温度の低い場所が生まれ、温度の低い場所によって熱風の温度が低下するため、熱風の温度が場所によってばらつく。熱風制御部210は、維持時間が経過し、かつ、データ受信部270が印刷指令を受け付けると熱風の温度を印刷時温度T2まで上昇させる。すなわち、熱風制御部210は、維持時間が経過したときにデータ受信部270が印刷指令を受け付けていなければ熱風の温度を暖機温度T1に維持し、データ受信部270が印刷指令を受けると直ちに熱風の温度を印刷時温度T2に向けて上昇させる。熱風制御部210は、維持時間が経過したときにデータ受信部270が既に印刷指令を受け付けている場合には、維持時間経過後直ちに熱風の温度を印刷時温度T2に向けて上昇させる。
【0114】
なお、本実施形態では、熱風制御部210は、暖機運転時には、熱風の温度が暖機温度T1に達したかどうかを、左側サーミスタS1Lによって測定された温度と右側サーミスタS1Rによって測定された温度とのうちの高い方の温度に基づいて判定するように構成されている。かかる判定により、暖機運転の維持時間が経過するまでの所要時間を短縮することができる。ただし、熱風温度が暖機温度T1に到達したかどうかは、左右のサーミスタS1LおよびS1Rの測定温度のうち低い方の温度に基づいて判定されてもよく、両者の測定温度に基づいて(例えば、両者の平均値に基づいて)判定されてもよい。他の温度への到達についても同様であり、基準となるサーミスタは限定されない。
【0115】
本実施形態では、熱風制御部210は、熱風の温度が印刷時温度T2に達したかどうかを、左側サーミスタS1Lによって測定された温度と右側サーミスタS1Rによって測定された温度との平均値に基づいて判定する。これにより、必要な熱風の温度を担保しつつ、熱風の温度が印刷時温度T2に到達するまでの時間を短縮できる。また、熱風制御部210は、熱風の温度が閾値温度T3に達したかどうかを、左側サーミスタS1Lによって測定された温度と右側サーミスタS1Rによって測定された温度とのうちの高い方の温度に基づいて判定する。これにより、左側ヒーター135Lおよび右側ヒーター135Rの温度の上がり過ぎを確実に防止することができる。
【0116】
本実施形態では、熱風制御部210は、データ受信部270が受けた印刷指令に係る印刷ジョブが終了すると、サーミスタS1によって測定される温度を暖機温度T1まで下げた後、暖機温度T1に維持し、データ受信部270が新たな印刷指令を受け付けると、サーミスタS1によって測定される温度を暖機温度T1から印刷時温度T2まで上昇させる。印刷前搬送制御部252は、サーミスタS1により測定された温度が印刷時温度T2に達した後であって新たな印刷指令に係る印刷の開始前に、搬送装置32を制御して、記録媒体5を搬送方向Xの下流X1に印刷前搬送距離だけ搬送させる。印刷前搬送は、ここでは、1つの印刷ジョブを開始する前に必ず行われる。
【0117】
設定登録部280は、暖機温度設定部281と、印刷時温度設定部282と、閾値温度設定部283と、維持時間設定部284と、加熱室ファン出力設定部285と、第2送風ファン出力設定部286と、事前搬送距離登録部287と、印刷前搬送距離登録部288と、を備えている。暖機温度設定部281には、暖機温度T1が設定されている。暖機温度T1は、例えば60度である。印刷時温度設定部282では、印刷時温度T2が設定される。閾値温度設定部283には、閾値温度T3が設定されている。閾値温度T3は、例えば、100度である。維持時間設定部284には、維持時間が設定されている。維持時間は、例えば、3分である。
【0118】
加熱室ファン出力設定部285には、加熱室ファン132の第1加熱時出力、第2加熱時出力、および通常出力が設定されている。例えば、第1加熱時出力はフル出力の80%、第2加熱時出力は90%、通常出力は100%である。第2送風ファン出力設定部286には、第2送風ファン131Bの第1の出力、第2の出力、および第3出力が設定されている。例えば、第1の出力はフル出力の40%、第2の出力は60%、第3の出力は70%である。また、加熱室ファン出力設定部285には、カット後出力が登録されている。カット後出力は、好適には、例えば、フル出力の30%以下(通常出力の0%以上30%以下)に設定される。出力0%の場合とは、加熱室ファン132を停止させる場合である。カット後出力は、例えば、通常出力の20%に設定されている。
【0119】
事前搬送距離登録部287には、事前搬送距離が登録されている。事前搬送距離は、例えば、200mmである。印刷前搬送距離登録部288には、印刷前搬送距離が登録されている。印刷前搬送距離は、例えば、50mmである。ただし、上記した温度、時間、出力、距離は例示に過ぎず、設定登録部280に設定、登録された温度、時間、出力、距離は特に限定されない。
【0120】
[乾燥装置の動作]
次に、乾燥装置50の動作について説明する。乾燥装置50は、記録媒体5に空気を吹き付けることにより、記録媒体5のインクの乾燥を促進するものである。詳しくは、乾燥装置50は、プラテン16上の記録媒体5に常温の空気を吹き付ける初期送風を行う。加えて、乾燥装置50は、下流側ガイド部材14上の記録媒体5に高温の空気を吹き付けることにより、インクの完全乾燥を促進する。図14は、乾燥装置50における空気の流れを示す図である。
【0121】
図14に示すように、本体ケース51の外部の空気は、第1送風ファン131Aおよび第2送風ファン131Bにより、送風室吸気口101aから吸気室123に吸い込まれる(矢印A123参照)。矢印A121に示すように、第1送風ファン131Aは、吸気室123から第1送風室121に空気を送り、第1送風室ノズル121bからプラテン16に向けて空気を排出する。第1送風室ノズル121bから排出された常温の空気A121bは、プラテン16上の記録媒体5に吹き付けられ、記録媒体5のインクの乾燥を促進する。
【0122】
加熱室ファン132は、矢印A102aに示すように、加熱室吸気口102aから本体ケース51の外部の空気を吸い込み、上流室102Uから下流室102Dに送る。下流室102Dの空気はヒーター135によって加熱される。加熱後の空気の温度は特に限定されないが、例えば50℃~110℃とすることができる。加熱されて高温となった空気は、矢印A102bに示すように、加熱室排気口102bから排出される。加熱室排気口102bから排出された高温の空気は、下流側ガイド部材14上の記録媒体5に吹き付けられ、記録媒体5のインクの乾燥を促進する。
【0123】
ところで、加熱室102の空気は高温となるため、加熱室102と送風室101とを仕切る仕切り壁111は、加熱室102の空気によって暖められる。乾燥装置50の運転時間の経過とともに、仕切り壁111の温度は上昇する。そのため、送風室101の空気のうち、仕切り壁111と接触する空気は加熱されて温度が上昇する。このため、第2送風室122が設けられていない場合には、第1送風室121を流れる空気A121が、仕切り壁111により温められて、外気より高温となってしまう。この高温となった空気がプラテン16上に流出すると、画質形成の為の前処理剤が乾きすぎてしまい、インクとの反応を阻害してしまう場合がある。また、プラテン16上に流れ込んだ温風がインクシステム(キャップやワイパー等)側にも到達した場合は、インクシステムに付着したインクが乾燥しやすくなり、ノズルつまりの原因となる場合がある。しかし、本実施形態によれば、第1送風室121と加熱室102との間に第2送風室122が設けられている。第1送風室121の空気A121は、仕切り壁111と接触しない。そのため、第1送風室121の空気A121の温度上昇は抑制される。第2送風室122を流れる空気A122は、第1送風室121の空気A121の温度上昇を抑制する断熱機能を果たす。従って、プラテン16上の記録媒体5に比較的高温の空気が吹き付けられることを防止することができる。なお、第2送風室122を流れる空気A122の温度は、第1送風室121を流れる空気A121の温度よりも高くなる。第2送風室ノズル122Nから排出される空気の温度は、例えば、第1送風室ノズル121bから排出される空気の温度よりも10℃~20℃程度高くなる。
【0124】
第2送風室ノズル122Nは、第1送風室ノズル121bの下方かつ加熱室吸気口102aの上方に配置されている。第2送風室ノズル122Nは、第1送風室ノズル121bと加熱室吸気口102aとの間に配置されている。第2送風室ノズル122Nから噴射される空気(エアカーテン)により、本体ケース51の後壁51Bと下流側ガイド部材14との間において、高温の空気が第1送風室ノズル121bまで上昇することが抑制される。また、第2送風室ノズル122Nは、後方かつ下方に開口している。第2送風室ノズル122Nから排出された空気は、後壁51Bおよび下流側ガイド部材14に沿って下方に流れる(矢印AH参照)。そのため、第1送風室ノズル121bから排出される常温の空気に高温の空気が混じってしまうことが抑制される。プラテン16上の記録媒体5に吹き付けられる空気の温度が上昇してしまうことを抑制することができる。
【0125】
本実施形態によれば、乾燥装置50は、下壁51Dまたは後壁51Bから前方かつ下方に延びる延長壁119を有している。そのため、高温の空気AHが後壁51Bから下壁51Dに回り込むことが抑制される。また、非加熱室ファン133は、非加熱室吸気口103aから非加熱室103に常温の空気を取り入れ、常温の空気を非加熱室排気口103bから吹き出す。仮に、高温の空気Ahが下壁51Dに回り込んだとしても、非加熱室排気口103bから吹き出された常温の空気A103により、高温の空気Ahが下壁51Dから前壁51Fに回り込むことは抑制される。すなわち、非加熱室排気口103bから吹き出された常温の空気A103は、高温の空気Ahの上昇を遮断する役割を果たす。従って、本実施形態によれば、高温の空気Ahが前壁51Fに沿って上昇することが抑制される。前壁51Fの温度が高くなることは抑制される。なお、非加熱室排気口103bは、前方かつ下方に向けて開口している。本実施形態では、非加熱室排気口103bの向きと後壁51Bの向きとは平行である。これにより、後壁51Bに沿って下方に流れる高温の空気AHを、そのまま下方に向けてより遠くに拡散させることができる。
【0126】
なお、第2送風室ノズル122Nから噴射されるエアカーテンの空気の一部は、加熱室吸気口102aから加熱室102に取り込まれる。そのため、セットアップ時に加熱室ファン132の出力を抑えているときには、第2送風ファン131Bの出力も、同調して抑えることが好ましい。セットアップ時のプリンタ10の動作については後述する。
【0127】
本実施形態では、高温の空気Ahが前壁51Fに沿って上昇することが抑制されるので、送風室吸気口101aから高温の空気Ahが取り入れられることが抑制される。このことによっても、第1送風室ノズル121bおよび第2送風室ノズル122Nから排出される空気の温度上昇を抑えることができ、プラテン16上の記録媒体5に吹き付けられる空気の温度が上昇してしまうことをさらに効果的に抑制することができる。
【0128】
前述したように、加熱室排気口102bから排出された高温の空気A102bは、下流側ガイド部材14の上壁14U上の記録媒体5に吹き付けられる。ここで、記録媒体5は前斜め下方に移動するので、記録媒体5の同一部分が長時間にわたって加熱され続けることはない。一方、下流側ガイド部材14の上壁14Uは、記録媒体5を介して、高温の空気A102bに長時間にわたって加熱され続ける。そのため、下流側ガイド部材14の上壁14Uの温度が高くなってしまうおそれがある。しかし、本実施形態によれば、図12に示すように、下流側ガイド部材14の内部に、空気が流れる空気流路14Eが形成されている。空気は流入口14aから空気流路14Eに吸い込まれ、空気流路14Eを流れた後、流出口14bから吐き出される。この空気は、空気流路14Eを流れるときに、上壁14Uを冷却する。そのため、上壁14Uの温度が高くなってしまうことが抑制される。
【0129】
[プリンタの動作]
以下では、セットアップ開始から印刷終了までのプリンタ10の動作について説明する。図15Aおよび図15Bは、プリンタ10の動作を示すフローチャートである。図15Aに示すように、ステップS01においてセットアップを開始すると、ステップS02において媒体センサS2により記録媒体5が検知される。ステップS02において、媒体センサS2により記録媒体5が検知された場合(ステップS02の結果がYESの場合)、ステップS03において記録媒体5が事前搬送距離(例えば、200mm)だけ搬送方向Xの下流X1に搬送される。これにより、記録媒体5の下流側端部が、下流側ガイド部材14上の乾燥装置50との間隔が最も狭い部分14N(図3参照)を通過する。また、記録媒体5の下流側端部が、加熱室吸気口102aおよび加熱室排気口102bの後方を通過する。
【0130】
ステップS02において、媒体センサS2により記録媒体5が検知されなかった場合(ステップS02の結果がNOの場合)、ステップS02Aにおいて、媒体センサS2に検知されるまで記録媒体5が搬送される。ステップS02Aの次には、ステップS03が行われる。ステップS04では、図示および説明を省略した読取装置によって、記録媒体5の走査方向Yの幅が読み取られる。これにより、セットアップが終了する。
【0131】
ステップS05では、暖機運転が開始される。暖機運転では、まず、暖機温度T1(例えば60度)まで熱風の温度を上昇させる。ステップS05では、加熱室ファン132の出力を第1加熱時出力(例えば、80%)として熱風を発生させる。また、ステップS05では、第2送風ファン131Bの出力を第1の出力(例えば、40%)とする。
【0132】
なお、本実施形態では、熱風の温度は、左側加熱室102Lと右側加熱室102Rとで別々に制御される。ただし、左側加熱室102Lにおける温度および風量制御と右側加熱室102Rにおける温度および風量制御とは同様であり、暖機温度T1も共通である。印刷時温度T2および閾値温度T3も、左側加熱室102Lと右側加熱室102Rとで共通である。そのため、プリンタ10の動作の説明では、特に断らない限り、熱風の温度および風量の制御は、基本的にヒーター135および加熱室ファン132の制御として説明する。
【0133】
ステップS06では、熱風温度が暖機温度T1となってから所定の維持時間が経過したかどうかが判定される。熱風温度が暖機温度T1に到達したかどうかは、左右のサーミスタS1LおよびS1Rの測定温度うち、早く暖機温度T1に到達した方を基準に判定される。維持時間が経過していないとき(ステップS06の結果がNOのとき)、維持時間が経過するまで、暖機温度T1が維持される。維持時間が経過すると(ステップS06の結果がYESとなると)、ステップS07において、印刷指示を受信しているかどうかが確認される。印刷指示を受信していない場合(ステップS07の結果がNOのとき)、印刷指示を受け付けるまで、暖機温度T1が維持される。印刷指示を既に受けているか、または、維持時間の経過後に印刷指示を受けると(ステップS07の結果がYESの場合)、ステップS08において、設定された印刷時温度T2が閾値温度T3以下かどうかが確認される。印刷時温度T2が閾値温度T3以下の場合(ステップS08の結果がYESの場合)、ステップS09Aにおいて第1の風量制御が行われながら、印刷時温度T2まで熱風の温度が上昇される。印刷時温度T2が閾値温度T3よりも高い場合(ステップS08の結果がNOの場合)、ステップS09Bにおいて第2の風量制御が行われながら、印刷時温度T2まで熱風の温度が上昇される。
【0134】
図16は、風量制御の詳細を示すフローチャートである。図16に示すように、ステップS09Aの第1の風量制御では、加熱室ファン132の出力が第1加熱時出力に維持され、第2送風ファン131Bの出力も第1の出力に維持される。ステップS09Aの第1の風量制御では、加熱室ファン132および第2送風ファン131Bの制御は、暖機運転時と同じである。
【0135】
ステップS09Bの第2の風量制御でも、当初は、ステップS09B-1において、加熱室ファン132の出力が第1加熱時出力に維持され、第2送風ファン131Bの出力も第1の出力に維持される。続くステップS09B-2では、熱風温度が閾値温度T3に到達したかどうかが確認される。熱風温度が閾値温度T3に到達していないとき(ステップS09B-2の結果がNOのとき)には、ステップS09B-1が継続される。熱風温度が閾値温度T3に到達すると(ステップS09B-2の結果がYESとなると)、ステップS09B-3において、加熱室ファン132の出力が第2加熱時出力(例えば、90%)、第2送風ファン131Bの出力が第2の出力(例えば、60%)に上げられる。熱風温度が閾値温度T3に到達したかどうかは、温度の上がり過ぎを防ぐため、左右のサーミスタS1LおよびS1Rの測定温度のうち、早く閾値温度T3に到達した方を基準に判定される。
【0136】
図15Bに示すように、ステップS09AまたはS09Bに続くステップS10では、熱風温度が印刷時温度T2に到達したかどうかが判定される。熱風温度が印刷時温度T2に到達したかどうかは、左右のサーミスタS1LおよびS1Rの測定温度の平均を基準に判定される。熱風温度が印刷時温度T2に到達していない場合(ステップS10の結果がNOのとき)には、ステップS09AまたはS09Bが継続される。熱風温度が印刷時温度T2に到達すると(ステップS10の結果がYESとなると)、ステップS11において第3の風量制御が行われながら、熱風温度が印刷時温度T2に維持される。
【0137】
図16に示すように、ステップS11の第3の風量制御では、加熱室ファン132の出力が通常出力(例えば、100%)、第2送風ファン131Bの出力が第3の出力(例えば、70%)に上げられる。熱風の加熱時には、加熱室ファン132の出力を大きくすると、温度上昇に長い時間を要する。そのため、本実施形態では、熱風の温度を早く上昇させるため、温度上昇の途中では印刷時温度T2に熱風温度を維持するときよりも加熱室ファン132の出力を抑え、風量を少なくしている。これにより、熱風の温度が早く上昇する。しかし、印刷時温度T2の設定が閾値温度T3よりも高い場合には、局所的に温度が高過ぎる場所が生まれ、乾燥装置50の機器(特に加熱室ファン132)が故障するおそれが高くなる。また、加熱室ファン132の出力を抑えた状態で熱風の温度が高温の印刷時温度T2に達した後、加熱室ファン132の出力を急に大きくすると、熱風の温度が低下し、完全乾燥を行うための熱風温度が得られなくなる。
【0138】
そのため、本実施形態では、印刷時温度T2の設定が閾値温度T3よりも高い場合には、閾値温度T3に熱風温度が到達すると、加熱室ファン132の出力を、第1加熱時出力から、第1加熱時出力よりも大きく通常出力よりも小さい第2加熱時出力に切り替える。これにより、機器の故障のおそれが高まる閾値温度T3よりも高温領域では、加熱室ファン132の出力を上げて機器の故障のおそれを低減できる。また、熱風の温度が印刷時温度T2に達した後に低下することも防止できる。
【0139】
本実施形態では、第2送風室ノズル122Nから噴射されるエアカーテンの空気の一部は、加熱室吸気口102aから加熱室102に取り込まれる。セットアップ時に加熱室ファン132の出力を抑えているときには、第2送風ファン131Bの出力も抑えることが好ましい。そのため、本実施形態では、第2送風ファン131Bの出力は、加熱室ファン132の出力の切り替えと同期して切り替えられている。
【0140】
図15Bに示すように、ステップS12では、記録媒体5が予め定められた印刷前搬送距離(例えば、50mm)だけ搬送方向Xの下流X1に搬送される。これにより、印刷の準備が完了する。
【0141】
印刷の準備が完了すると、ステップS13において印刷が行われる。ステップS14で印刷が終了すると、ステップS15において乾燥装置50が冷却される。ステップS16では、乾燥装置50が暖機温度T1まで冷却されたかどうかが確認される。乾燥装置50が暖機温度T1まで冷却されていない場合(ステップS16の結果がNOの場合)、冷却が継続される。乾燥装置50が暖機温度T1まで冷却されると(ステップS16の結果がYESとなると)、ステップS17において熱風温度が暖機温度T1に維持される。
【0142】
ステップS18では、新たな印刷指令を受信しているかどうかが確認される。新たな印刷指令を受信している場合(ステップS18の結果がYESの場合)、ステップS08に戻って、熱風温度が印刷時温度T2まで上げられる。新たな印刷指令を受信していない場合(ステップS18の結果がNOの場合)、ステップS19において所定の時間が経過すると、乾燥装置50が停止される。所定の時間が経過する前に新たな印刷指令を受信すると、ステップS08に戻って、熱風温度が印刷時温度T2まで上昇される。
【0143】
[記録媒体がカットされた場合]
図15Aおよび図15Bでは、記録媒体5がシートカット装置40によってカットされない場合を例示したが、印刷後などに記録媒体5がシートカット装置40によってカットされる場合もあり得る。図17は、記録媒体5をカットした後のプリンタ10の動作を示すフローチャートである。図17に示すように、印刷終了(ステップS14)後のステップS20において記録媒体5がシートカット装置40により切断されると(ステップS20の結果がYESの場合)、加熱室ファン132の出力がカット後出力に下げられる。これにより、後のステップS23で記録媒体5を搬送しても、記録媒体5が加熱室吸気口102aに巻き上げられることが抑制される。記録媒体5が加熱室吸気口102aに貼り付くと、加熱室102への吸気が妨げられる。加熱室102への吸気が滞ると、熱風の温度制御が困難になったり、乾燥装置50の機器が故障したりするおそれがある。
【0144】
また、加熱室ファン132の出力がカット後出力に下げられることより、ステップS23で記録媒体5を搬送しても、記録媒体5の下流側端部が加熱室排気口102bからの熱風に吹き上げられて暴れることが抑制される。これにより、記録媒体5が乾燥装置50と下流側ガイド部材14との間の隙間に引っ掛かり、記録媒体5の搬送が滞るおそれが低減される。
【0145】
ステップS21に続くステップS22では、媒体センサS2に検知されるまで、記録媒体5が搬送方向Xの下流X1に搬送される。続くS23では、記録媒体5を事前搬送距離だけ搬送方向Xの下流X1に搬送する。カット後搬送は、基本的に事前搬送と同じプロセスである。ステップS23では、加熱室ファン132の出力が抑えられているため、加熱室吸気口102aへの記録媒体5の吸着および加熱室排気口102bからの風による記録媒体5の吹き上げが抑制されている。
【0146】
[実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態に係るプリンタ10が奏することのできる作用効果について説明する。
【0147】
本実施形態に係るプリンタ10は、記録媒体5に吐出されたインクに熱風を吹きつけて乾燥させる乾燥装置50と、制御装置200と、を備えている。制御装置200は、暖機運転時の熱風の温度である暖機温度T1が設定された暖機温度設定部281と、印刷時の熱風の温度であって暖機温度T1よりも高い印刷時温度T2が設定される印刷時温度設定部282と、乾燥装置50を制御して熱風の温度を制御する熱風制御部210と、熱風の温度を暖機温度T1に維持する維持時間が設定された維持時間設定部284と、印刷指令を受け付けるデータ受信部270と、を備えている。熱風制御部210は、暖機温度T1まで熱風の温度を上昇させた後、維持時間が経過するまでは熱風の温度を暖機温度T1に維持し、維持時間が経過し、かつ、データ受信部270が印刷指令を受け付けると熱風の温度を印刷時温度T2まで上昇させる。
【0148】
かかるプリンタ10によれば、少なくとも維持時間は熱風の温度が暖機温度T1に維持される。これにより、乾燥装置50を暖め、印刷時温度T2に到達した熱風の温度が場所によってばらつくことを抑制することができる。維持時間を取らず、乾燥装置50を暖めないと、乾燥装置50に温度の低い場所が生まれ、温度の低い場所によって熱風の温度が低下するため、熱風の温度が場所によってばらつく。
【0149】
本実施形態では、乾燥装置50は、ヒーター135と、ヒーター135によって加熱された空気を送り、熱風を発生させる加熱室ファン132と、を備えている。制御装置200は、加熱室ファン132を制御する送風制御部210Bを備えている。送風制御部210Bは、熱風の温度が印刷時温度T2となるまでは、熱風の温度が印刷時温度T2となった後の出力よりも小さい出力で加熱室ファン132を駆動させる。
【0150】
かかる構成によれば、熱風の温度が印刷時温度T2に達するまでは加熱室ファン132の出力を抑えて温度上昇に要する時間を短縮するとともに、熱風の温度が印刷時温度T2に到達した後は、加熱室ファン132の出力を上げて機器の故障のおそれを低減することができる。熱風の温度が高いときに加熱室ファン132の出力が小さいと、局所的に温度が高過ぎる場所が生まれ、乾燥装置50の機器(特に加熱室ファン132)が故障するおそれが高くなるが、熱風の温度が低いときには、このようなおそれは少ない。
【0151】
本実施形態では、制御装置200は、暖機温度T1よりも高い閾値温度T3が設定された閾値温度設定部283と、加熱室ファン出力設定部285と、を備えている。加熱室ファン出力設定部285には、加熱室ファン132の第1加熱時出力と、第1加熱時出力よりも大きい加熱室ファン132の第2加熱時出力と、第2加熱時出力よりもさらに大きい加熱室ファン132の通常出力と、が設定されている。送風制御部210Bは、印刷時温度T2が閾値温度T3よりも高い温度に設定された場合、熱風の温度が閾値温度T3となるまでは第1加熱時出力で加熱室ファン132を駆動し、熱風の温度が印刷時温度T2となるまでは第2加熱時出力で加熱室ファン132を駆動し、熱風の温度が印刷時温度T2となった後は通常出力で加熱室ファン132を駆動する。
【0152】
印刷時温度T2の設定が閾値温度T3よりも高い場合には、加熱室ファン132の出力を抑えると、乾燥装置50の機器の故障のおそれが高くなる。また、加熱室ファン132の出力を抑えた状態で熱風の温度が高温の印刷時温度T2に達した後、加熱室ファン132の出力を急に大きくすると、熱風の温度が低下し、完全乾燥を行うための熱風温度が得られなくなる。そのため、本実施形態では、印刷時温度T2の設定が閾値温度T3よりも高い場合には、閾値温度T3に熱風温度が到達すると、加熱室ファン132の出力を、第1加熱時出力から、第1加熱時出力よりも大きく通常出力よりも小さい第2加熱時出力に切り替える。これにより、熱風の温度が印刷時温度T2に達した後に低下することを防止できる。また、機器の故障のおそれがさらに高まる閾値温度T3よりも高温領域では、加熱室ファン132の出力を上げて機器の故障のおそれを低減できる。
【0153】
本実施形態では、印刷時温度T2は、記録媒体5の種類に応じて設定される。適切な熱風の温度は、記録媒体5の種類によって異なる場合がある。かかるプリンタ10によれば、記録媒体5の種類に応じて印刷時温度T2を設定することにより、より高品質な印刷を行うことができる。
【0154】
本実施形態では、熱風制御部210は、データ受信部270が受けた印刷指令に係る印刷ジョブが終了すると、熱風の温度を暖機温度T1まで下げた後、暖機温度T1に維持する。かかる制御によれば、、印刷ジョブの終了後には熱風の温度を暖機温度T1に下げるため、プリンタ10の消費エネルギーを削減できる。
【0155】
[他の実施形態]
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、本発明は他にも種々の形態で実施することができる。
【0156】
例えば、上記した実施形態では、熱風の温度が印刷時温度T2となるまでは、熱風の温度が印刷時温度T2となった後の出力よりも小さい出力で加熱室ファン132を駆動させた。しかし、加熱室ファン132は、ずっと同じ出力で駆動されてもよい。
【0157】
その他、特に言及されない限り、実施形態は本発明を限定しない。例えば、インクジェットプリンタの構成は、上記した実施形態には限定されない。
【符号の説明】
【0158】
5 記録媒体
10 インクジェットプリンタ
16 プラテン(支持台)
35 インクヘッド
50 乾燥装置
132 加熱室ファン(送風機)
135 ヒーター
200 制御装置
210 熱風制御部(温度制御部)
210B 送風制御部
270 データ受信部(受信部)
281 暖機温度設定部
282 印刷時温度設定部
283 閾値温度設定部
284 維持時間設定部
285 加熱室ファン出力設定部(出力設定部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17