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特開2024-105114透明性紙製品、冊子及び透明性紙製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105114
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】透明性紙製品、冊子及び透明性紙製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B42F 7/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B42F7/00 G
B42F7/00 E
B42F7/00 A
B42F7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009682
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】512210836
【氏名又は名称】株式会社ウイル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】北風 英雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓也
【テーマコード(参考)】
2C017
【Fターム(参考)】
2C017QA02
2C017QA03
2C017QA17
2C017QC02
2C017QH01
(57)【要約】
【課題】透明性を高めるために薄い紙を使用しても、求められる剛性や強度を充分に確保することが可能になる透明性紙製品を提供する。
【解決手段】紙の少なくとも一部に透明化剤が含浸されるとともに、中空部を挟んだ2面が形成されるクリアファイル1である。
そして、透明化剤によって透明化させる第1面部11と、第1面部に直接又は間接的に対向させる第2面部12とを備え、第2面部は積層された紙によって形成されている。
ここで、第1面部と第2面部とは折り曲げ線を挟んで連続しているとともに、第2面部は、同じ種類の紙を接着糊又は粘着糊で接合させることで形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙の少なくとも一部に透明化剤が含浸されるとともに、中空部を挟んだ少なくとも2面が形成される透明性紙製品であって、
前記透明化剤によって透明化させる第1面部と、
前記第1面部に直接又は間接的に対向させる第2面部とを備え、
前記第2面部は積層された紙によって形成されていることを特徴とする透明性紙製品。
【請求項2】
前記第1面部と前記第2面部とは折り曲げ線を挟んで連続しているとともに、
前記第2面部は、同じ種類の紙を接着糊又は粘着糊で接合させることによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の透明性紙製品。
【請求項3】
略長方形の前記第1面部と第2面部は、前記折り曲げ線に直交する1辺が直接又は間接的に接合されてクリアファイル状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の透明性紙製品。
【請求項4】
前記第1面部と前記第2面部との間に、中仕切部が介在されていることを特徴とする請求項3に記載の透明性紙製品。
【請求項5】
略長方形の前記第1面部と第2面部は、前記折り曲げ線及び2辺の接合によって3辺が塞がれた封筒状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の透明性紙製品。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の透明性紙製品が複数束ねられたことを特徴とする冊子。
【請求項7】
略長方形の紙シート材を長手方向に3つ以上に分割した領域の少なくとも一部に透明化剤を含浸させる透明化処理を行うことで透明化領域を形成する工程と、
前記透明化領域に隣接する第1貼付領域と第2貼付領域の少なくとも一方に接着糊又は粘着糊を塗布して貼り合わせる工程と、
前記透明化領域と前記第1貼付領域の境界を折り曲げて、折り曲げ線に直交する少なくとも1辺を接合する工程とを備えたことを特徴とする透明性紙製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙の少なくとも一部に透明化剤が含浸されるとともに、中空部を挟んだ2面が形成される透明性紙製品、冊子及び透明性紙製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を達成するために、プラスチックなどの化石燃料に由来する物の使用量の削減が求められる中、透明なプラスチックで構成されるクリアファイルなどを、紙製品に置き換えていこうとする動きがある。
【0003】
そして、紙に含浸させることで、紙の透明性を高めることができる透明化剤は、特許文献1に記載されているものだけでなく、特許文献2-5に開示されているように、様々な製品が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6989200号公報
【特許文献2】特許第3282019号公報
【特許文献3】特許第3676731号公報
【特許文献4】特開平6-108397号公報
【特許文献5】特許第6793485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、透明化剤の性能がどんなに優れたものであっても、塗布する紙自体の厚さが厚ければ透明度が低下することになるため、可能な限り薄い紙を使用することが求められる。しかしながら、紙が薄くなりすぎると、製品として求められる剛性や強度が確保できなくなるため、透明度を犠牲にして厚めの紙を使用しているのが現状である。
【0006】
そこで、本発明は、透明性を高めるために薄い紙を使用しても、求められる剛性や強度を充分に確保することが可能になる透明性紙製品、冊子及び透明性紙製品の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の透明性紙製品は、紙の少なくとも一部に透明化剤が含浸されるとともに、中空部を挟んだ2面が形成される透明性紙製品であって、前記透明化剤によって透明化させる第1面部と、前記第1面部に直接又は間接的に対向させる第2面部とを備え、前記第2面部は積層された紙によって形成されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記第1面部と前記第2面部とは折り曲げ線を挟んで連続しているとともに、前記第2面部は、同じ種類の紙を接着糊又は粘着糊で接合させる構成とすることができる。例えば、略長方形の前記第1面部と第2面部は、前記折り曲げ線に直交する1辺が直接又は間接的に接合されてクリアファイル状に形成されている。さらに、前記第1面部と前記第2面部との間に、中仕切部が介在されている構成とすることもできる。また、略長方形の前記第1面部と第2面部は、前記折り曲げ線及び2辺の接合によって3辺が塞がれた封筒状に形成されていてもよい。
【0009】
そして、冊子の発明は、上記いずれかの透明性紙製品が複数束ねられたことを特徴とする。
【0010】
また、透明性紙製品の製造方法の発明は、略長方形の紙シート材を長手方向に3つ以上に分割した領域の少なくとも一部に透明化剤を含浸させる透明化処理を行うことで透明化領域を形成する工程と、前記透明化領域に隣接する第1貼付領域と第2貼付領域の少なくとも一方に接着糊又は粘着糊を塗布して貼り合わせる工程と、前記透明化領域と前記第1貼付領域の境界を折り曲げて、折り曲げ線に直交する少なくとも1辺を接合する工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の透明性紙製品は、透明化剤によって透明化させる第1面部に直接又は間接的に対向させる第2面部を、積層された紙によって形成する。このため、透明性を高めるために第1面部に薄い紙を使用しても、第2面部は薄い紙を積層させることで、製品として求められる剛性や強度を充分に確保することができるようになる。
【0012】
例えば、第1面部と第2面部を同じ1枚の薄い紙で構成した場合に、第2面部では薄い紙を折り重ねて貼り合わせるなどして厚みを持たせることで、製品として必要な剛性や強度を確保することができる。
【0013】
このような透明性紙製品としては、折り曲げて重ねられた第1面部と第2面部の1辺を接合させるだけで、クリアファイルと同様の製品を紙で製作することができる。また、折り曲げて重ねられた第1面部と第2面部の2辺を接合させることで、表面に透明な領域がある封筒を、プラスチックを使用することなく製作することができる。
【0014】
さらに、複数のクリアファイル状や封筒状の透明性紙製品を束ねることで、たくさんの書類や小物を仕分けすることができる冊子を、紙だけで製作することが可能になり、化石燃料の使用量を削減することができる。
【0015】
また、透明性紙製品の製造方法の発明によれば、1枚の薄い紙シート材を折り曲げて、貼り合わせることで、効率的かつ安価に透明性の高い紙製品を製作することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態のクリアファイルを説明するための斜視図である。
図2】本実施の形態の透明性紙製品の製造方法の工程を説明するフローチャートである。
図3】透明化処理工程が施された紙シート材を示した説明図である。
図4】接着糊の塗布工程を示した説明図である。
図5】側縁などをカットする工程を示した説明図である。
図6】接合工程を示した説明図である。
図7】複数のクリアファイルを綴じた冊子を説明する斜視図である。
図8】実施例1の封筒を説明するための斜視図である。
図9】実施例2のクリアファイルを説明するための斜視図である。
図10】実施例2の紙シート材の外面側を示した説明図である。
図11】実施例2の紙シート材の内面側を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の透明性紙製品であるクリアファイル1を説明するための斜視図である。また、図2は、本実施の形態の透明性紙製品の製造方法の工程を説明するフローチャートである。
【0018】
本実施の形態のクリアファイル1は、上質紙などの紙を折り畳むなどして製作され、必要に応じて一部又は全体に印刷が施される。図1は、折り曲げ線13で折り畳まれた第1面部11と第2面部12との間に、書類などが収容できる中空部がポケット状に形成されたいわゆるクリアファイル(クリアフォルダとも言う。)を示している。
【0019】
ここで、透明化剤が含浸されることで紙が透明になる面を第1面部11とし、第1面部11とは折り曲げ線13を挟んで連続して形成されて、第1面部11に対向させる面を第2面部12とする。
【0020】
略長方形の第1面部11は、折り曲げ線13に1辺が接する略長方形に形成されており、折り曲げ線13に対向する反対側の長辺には、必要に応じて半円状や三角形状の切取部111,112が設けられる。
【0021】
一方、略長方形の第2面部12も、折り曲げ線13に1辺が接する略長方形に形成され、第1面部11とは、折り曲げ線13に直交する1辺(短辺)において接合部14で接合される。
【0022】
要するに図1に示したクリアファイル1は、切取部111,112が設けられた長辺側が中空部の開口となり、接合部14が中空部の底となり、接合部14の反対側の短辺が中空部の上方開口となる。
【0023】
第1面部11の紙を透明にする透明化剤は、樹脂組成物等どのような組成の薬剤であってもよい(特許文献1-5など参照)。例えば紙に含浸させる樹脂組成物は、粘度が低く、硬化物のガラス転移温度が高く、曲げ強さに優れたエネルギー線重合性(メタ)アクリル系モノマー又はオリゴマーなどを含有する。また、樹脂組成物は、未硬化状態(25℃)での粘度が100mPa・s以下(好ましくは40mPa・s以下)で、屈折率が水の屈折率(1.33)に比べてセルロースの屈折率(1.47)に近いことが好ましい。
【0024】
紙を透明化する工程としては、例えば上質紙などの原料紙に上述したような樹脂組成物を含浸させ、その樹脂組成物を含浸した紙にエネルギー線を照射して樹脂組成物を硬化させることで、紙を透明化させることができる。
【0025】
含浸した樹脂組成物にエネルギー線を照射する手段は、特に限定されるものではなく、例えば、紫外線ランプや紫外線レーザ照射装置などの紫外線の照射手段、又は白熱電球、蛍光灯、LED若しくは可視光レーザ照射装置などの可視光線の照射手段が使用できる。要するにエネルギー線は、特に限定されず、例えば電磁波や電子線などでよい。
【0026】
エネルギー線を照射して硬化させた樹脂組成物のガラス転移温度の下限は、50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度の下限を上述のように設定することで、クリアファイル1が使用される常温環境において、硬化物がガラス転移して柔らかくなることを防ぐことができる。
【0027】
そして、原料紙に使用される紙は、薄い方が透明度が高くなる。例えば、一般的にコピー用紙などで使用される上質紙70kg(厚さ0.098mm程度)や雑誌の表紙などに使用される上質紙90kg(厚さ0.120mm程度)に比べて、上質紙55kg(厚さ0.075mm程度)を原料紙に使用した方が、透明度を高めることができる。ここで、上質紙55kgとは、四六判(788×1091mm)の上質紙1000枚分の重さを指す。
【0028】
一方、上質紙55kgを第1面部11に使用してクリアファイル1を製作すると、第1面部11自体では自立性が低くなり、クリアファイルという製品に求められる剛性や強度が確保できなくなるため、本実施の形態のクリアファイル1では、第2面部12の構成によって補うこととする。
【0029】
すなわち第2面部12は、接着された少なくとも2層の紙によって形成される。例えば、後述するように帯状の紙を折り畳んで2層に積層させることもできるし、2枚の長方形の紙を貼り合わせて2層に積層させることもできる。
【0030】
これに対して、透明化させる第1面部11は、1層で形成される。そして、第1面部11と第2面部12とが折り畳まれた状態のクリアファイル1は、3層の紙によって構成されることになって、クリアファイルという製品に求められる剛性及び強度が確保できるようになる。
【0031】
次に、本実施の形態の透明性紙製品であるクリアファイル1の製造方法の工程について、図2に示したフローチャートと、図3図6に示した説明図とを参照しながら説明する。
【0032】
まず、本実施の形態のクリアファイル1の製造方法を実施する前には、ロール紙(上質紙55kg)から紙を引き出して、必要に応じて両面印刷機によって紙の両面に印刷を行う。すなわち、折り畳まれた状態や中空部を開いた状態などで露出する紙面において、印刷を施す必要がある範囲には、この段階で印刷をしておく。
【0033】
続いて、図3に示すように帯状の略長方形に切り出された紙シート材2に対して、ステップS1では、透明化処理を行う。ここで、薄い上質紙(例えば55kg)である紙シート材2には、長手方向に略等幅間隔で3分割した長方形領域を形成して、図3の右端から、透明化領域21、第1貼付領域22、第2貼付領域23とする。
【0034】
図3の透明化領域21と第1貼付領域22の境界は、後工程において山折りの折り曲げ線(13)となり、第1貼付領域22と第2貼付領域23の境界も、後工程において山折りの折り曲げ線(24)となる。
【0035】
そして、紙シート材2の一方の端部領域となる透明化領域21に対して、透明化処理を行う。透明化処理工程では、透明化領域21に上述したような透明化剤を含浸させ、透明化剤が含浸した透明化領域21に紫外線などのエネルギー線を照射して透明化剤を硬化させることで、紙を透明化させた透明部3が形成される。
【0036】
ここで、図3は、クリアファイル1の外面側に表れる紙シート材2の透明化領域21を示している。これに対して図4は、図3の紙シート材2を裏返した、クリアファイル1の中空部側(内面側)に表れる透明化領域21を示している。
【0037】
透明化処理が施された透明部3は、紙シート材2の表から見ても裏から見ても、ほぼ同じ状態の透明な状態になっている。例えば、書類を透明部3に重ねると、書類に記載された文字や図が透明部3に透けて見える。一方、印刷が施された箇所には透明化剤が含浸されないので、透けさせたくない範囲には、印刷やインクの塗布を行っておけばよい。
【0038】
続いてステップS2では、接着糊の塗布を行う。接着糊は、貼ったらきれいに剥がせなくなる程度に接着力が強い糊である。なお、接着糊に代えて、貼ったり剥がしたりすることを繰り返すことが可能な粘着糊を使用することもできる。
【0039】
接着糊は、糊付け機の版を使って塗布される。すなわち、図4に示した第1貼付領域22及び第2貼付領域23に対して、接着糊を塗布した接着糊面4を形成する。なお、接着糊の塗布は、第1貼付領域22又は第2貼付領域23のいずれか一方であってもよい。
【0040】
ここで、第2貼付領域23と第1貼付領域22との境界の帯状の折り曲げエリア24は、後工程でカットされる除去部となるので、接着糊は塗布されない。ステップS3は、第1貼付領域22と第2貼付領域23との貼り合わせ工程となる。すなわち、第1貼付領域22と第2貼付領域23の境界の折り曲げエリア24を、図4で見て谷折りにする。
【0041】
図5は、図4に示した状態の紙シート材2を、折り曲げエリア24で谷折りした状態を示している。すなわち、接着糊の塗布面である第1貼付領域22及び第2貼付領域23の接着糊面4は、対峙して貼り合わされる。
【0042】
ステップS4の切り込み工程においては、図5に示すように、透明化領域21の所定箇所に切り込みを入れる。切り込みは、切取部111,112の形状(半円形、三角形)に合わせたダイカットで行う。
【0043】
ステップS5の接着糊の塗布工程では、図5に示すように、透明化領域21の下縁に接着糊を塗布して接合糊面5とする。接着糊は、貼ったらきれいに剥がせなくなる程度に接着力が強い糊である。
【0044】
この透明化領域21の下縁となる1辺に形成される接合糊面5が、第2面部12との接合部14になる。すなわちステップS6では、接合糊面5を第2貼付領域23に接合させる。
【0045】
図6は、図5に示した状態の紙シート材2を、折り曲げ線13で谷折りした状態を示している。この谷折りによって、接着糊の塗布箇所である接合糊面5は、対峙する第2貼付領域23に貼り合わされることになる。要するに、透明化領域21の下縁の接合糊面5は、第2面部12側の表面に位置する第2貼付領域23の下縁に接合される。
【0046】
続いてステップS7では、余分な側縁を断裁する。すなわち、第1貼付領域22と第2貼付領域23との境界であった折り曲げエリア24を、除去部として断裁して取り除く。なお、断裁は、切り込み工程時など別のタイミングで行う場合もある。
【0047】
このようにして、図1に示すような折り曲げ線13と接合部14とによって直交する2辺が塞がれて、その他の2辺が開放されたクリアファイル1が、紙シート材2のみによって完成する。
【0048】
次に、本実施の形態の透明性紙製品、冊子及び透明性紙製品の製造方法の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態のクリアファイル1は、透明化剤によって透明化させる第1面部11に対向させる第2面部12を、積層された紙によって形成する。
【0049】
例えば、薄い紙(例えば上質紙55kg)である1枚の紙シート材2からクリアファイル1を製作する場合、第2面部12は、折り重ねた紙(第1貼付領域22及び第2貼付領域23)と接着糊とによって、上質紙110kgの厚い紙以上の剛性と強度を備えることになる。
【0050】
このため、透明化処理による透明性を高めるために第1面部11に薄い紙をそのまま使用しても、第2面部12は薄い紙が積層されていることで、クリアファイルという製品に求められる剛性や強度を充分に確保することができる。
【0051】
また、クリアファイル1は、そのままでも製品とすることができるが、図7に示すように、複数のクリアファイル1を束ねて表紙101を付けて綴じることで、たくさんの書類や小物を仕分けすることができる冊子10を、紙だけで製作することができる。この結果、プラスチックによってクリアファイルを製造する場合と比べて、化石燃料の使用量を大幅に削減することができる。
【0052】
また、上述した透明性紙製品の製造方法の発明によれば、1枚の薄い紙シート材2を折り重ねて貼り合わせることで、効率的かつ安価に透明性の高い紙製品を製作することができる。すなわち、工場においてロール紙から引き出された紙シート材2に対して、1台の糊付け機という簡単な製造ラインによって、大量にクリアファイル1を製造することが可能になる。
【実施例0053】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例1について、図8を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一符号又は同一用語を使って説明する。
【0054】
前記実施の形態では、透明性紙製品として第1面部11が透明化されたクリアファイル1について説明したが、本実施例1では、図8に示すように、透明化された第1面部11を備えた封筒1Aを透明性紙製品として説明する。
【0055】
図8に例示した封筒1Aには図示していないが、上述したクリアファイル1と同様に、第1面部11に中空部を挟んで対向する第2面部12は、複数の紙を積層して貼り合わせた構成となっている。
【0056】
また、袋状の封筒1Aにするために、蓋部16のある上辺のみが開口となって、底辺が折り曲げ線13Aによって塞がれる。また、底辺(折り曲げ線13A)が直交する2辺(長辺)は、前記実施の形態で説明した接合部14と同様に、第1面部11と第2面部12とが接着糊などで接合される接合部15A,15Bによって塞がれる。
【0057】
なお、図8には、折り曲げ線13Aが底辺になる封筒1Aについて説明したが、これに限定されるものではなく、封筒のサイズによっては、封筒の長辺側が折り曲げ線となって、それに対向する長辺と底辺(短辺)が接合部となる構成にすることもできる。
【0058】
このように構成された実施例1の封筒1Aは、製品として必要な剛性や強度が折り重ねた紙(第1貼付領域22及び第2貼付領域23)によって確保されているうえに、薄い紙を使用することによって第1面部11の透明性を高めることができる。
【0059】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例0060】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例2について、図9図11を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一符号又は同一用語を使って説明する。
【0061】
前記実施の形態では、第1面部11に第2面部12が直接的に対向するクリアファイル1について説明したが、本実施例2では、図9に示すように、第1面部11Bと第2面部12Bとの間に中仕切部18が介在されて、第1面部11Bと第2面部12Bとが間接的に対向するクリアファイル1Bについて説明する。
【0062】
図9に示したクリアファイル1Bは、折り曲げ線13Bで折り畳まれていて、第1面部11Bと中仕切部18との間及び中仕切部18と第2面部12Bとの間に、書類などがそれぞれ収容できる仕切り付きクリアファイル(クリアフォルダ)である。中仕切部18は、複数枚を設けることができ、数に応じて収容区画が増えることになる。
【0063】
透明化剤が含浸されることで紙が透明になる第1面部11Bと中仕切部18との間に挟まれた書類等は、透けてクリアファイル1Bの外側から見ることができる。また、中仕切部18にも透明化処理を施した場合は、第2面部12Bとの間に収容された書類についても、中仕切部18側から透けて見ることができる。
【0064】
略長方形の第1面部11Bと第2面部12Bとは、折り曲げ線13Bを挟んで連続して形成されていて、第1面部11Bと第2面部12Bとは、折り曲げ線13Bに直交する1辺(短辺)において接合部17で間接的に接合される。要するにクリアファイル1Bは、切取部111,112が設けられた長辺側が中空部の開口となり、接合部17が中空部の底となり、接合部17の反対側の短辺が中空部の上方開口となる。
【0065】
クリアファイル1Bの第1面部11Bは、1層の紙で形成されているので、高い透明性を確保することができる。一方、裏表紙となる第2面部12Bは、接着された2層の紙によって形成されている。そして、1層の紙で形成された中仕切部18と併せて、クリアファイル1Bは4層の紙によって構成されることになるので、クリアファイルという製品に求められる剛性及び強度を、確実に確保することができる。
【0066】
続いて、図10図11を参照しながら、実施例2のクリアファイル1Bの製造方法について説明する。クリアファイル1Bを製造する場合にも、前記実施の形態で説明した印刷工程及び透明化処理工程は、同様にして行われる。
【0067】
図10図11は、透明化処理工程を経た紙シート材2Bの外面側と内面側を示している。この紙シート材2Bは、薄い上質紙(例えば55kg)によって形成されていて、長手方向に略等幅間隔で4分割した長方形領域を備えている。図10の紙シート材2Bを外面側から見た場合は、左端から、第1貼付領域22B、透明化領域21B、第2貼付領域23B、中仕切領域25となる。図11の紙シート材2Bを内面側から見た場合は、左端から、中仕切領域25、第2貼付領域23B、透明化領域21B、第1貼付領域22Bとなる。
【0068】
紙シート材2Bの外面側の第2貼付領域23B(図10)及び紙シート材2Bの内面側の第1貼付領域22B(図11)には、接着糊が塗布されて接着糊面4が形成される。一方、紙シート材2Bの外面側の中仕切領域25の下縁(図10)並びに紙シート材2Bの内面側の中仕切領域25、第2貼付領域23B及び透明化領域21Bの下縁(図11)には、接着糊が塗布されて接合糊面5が形成される。
【0069】
紙シート材2Bは、まず図11の内面側から見て、中仕切領域25と第2貼付領域23Bとの境界の谷折り線26Bで折り曲げられ、続いて帯状の折り曲げエリア24Bが谷折りされることで、中仕切領域25の外面側の接合糊面5(図10)と透明化領域21Bの内面側の接合糊面5(図11)とが接合される。
【0070】
そして、図11の内面側から見て第1貼付領域22Bの境界となる谷折り線26Bを谷折りすることで、第2貼付領域23Bの接着糊面4(図10)と第1貼付領域22Bの接着糊面4とを貼り合わせる。なお、紙シート材2Bの内面側から見た谷折り線26Bは、紙シート材2Bの外面側から見れば山折り線26Aになる。
【0071】
このようにして、接合部17を形成するための下縁の接合糊面5の接合と、第2面部12Bを形成するための接着糊面4同士の貼り合わせを行った後に、透明化領域21Bと第2貼付領域23Bとの境界であった折り曲げエリア24Bを、除去部として断裁して取り除く。
【0072】
この断裁によって、図9に示すように、切取部111,112側の側縁が開放され、折り曲げ線13Bと接合部17とによって直交する2辺が塞がれて、中仕切部18を有するクリアファイル1Bが、紙シート材2Bのみによって完成する。
【0073】
このように構成された実施例2のクリアファイル1Bは、中仕切部18がある透明性紙製品であって、製品として必要な剛性や強度が折り重ねた紙(第1貼付領域22B及び第2貼付領域23B)によって確保されているうえに、薄い紙を使用することによって第1面部11Bも高い透明性を備えている。
【0074】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0075】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0076】
例えば、前記実施の形態及び実施例1,2では、第1面部11,11Bと第2面部12,12Bの1辺又は2辺(接合部14,15A,15B,17)を接着糊で接合させる接合手段について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、重ねた紙にエンボス加工や貫通孔を形成しながら圧接させる接合手段や両面テープによる接合手段など、様々な方法で接合させることができる。
【0077】
また、前記実施の形態及び実施例1,2では、1枚の紙シート材2,2Bを折り畳んで製造されるクリアファイル1,1B及び封筒1Aについて説明したが、これに限定されるものではなく、複数の紙シート材を重ねて貼り合わせることで第2面部やクリアファイルを製造することもできる。
【0078】
さらに、前記実施の形態では、複数のクリアファイル1を束ねた冊子10について説明したが、これに限定されるものではなく、実施例1の封筒1Aや実施例2のクリアファイル1Bを複数束ねることで冊子にすることもできる。
【符号の説明】
【0079】
1 :クリアファイル(透明性紙製品)
11 :第1面部
12 :第2面部
13 :折り曲げ線
14 :接合部
10 :冊子
1A :封筒(透明性紙製品)
15A,15B:接合部
2 :紙シート材
21 :透明化領域
22 :第1貼付領域
23 :第2貼付領域
1B :クリアファイル(透明性紙製品)
11B :第1面部
12B :第2面部
13B :折り曲げ線
17 :接合部
18 :中仕切部
2B :紙シート材
21B :透明化領域
22B :第1貼付領域
23B :第2貼付領域
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11