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特開2024-105116ダイナミックブレーキトルク切り替え回路、ダイナミックブレーキトルク切り替え方法、モータ、およびサーボシステム
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  • 特開-ダイナミックブレーキトルク切り替え回路、ダイナミックブレーキトルク切り替え方法、モータ、およびサーボシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105116
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ダイナミックブレーキトルク切り替え回路、ダイナミックブレーキトルク切り替え方法、モータ、およびサーボシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/22 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H02P3/22 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009685
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一也
【テーマコード(参考)】
5H530
【Fターム(参考)】
5H530AA05
5H530CC08
5H530CE15
5H530CF02
5H530DD14
5H530DD15
5H530EE01
5H530EE07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】モータ回転数が少なくなっても十分なブレーキトルクを得ることのできる、ダイナミックブレーキ回路を提供すること。
【解決手段】ダイナミックブレーキトルク切り替え回路10は、抵抗を介してモータの三相間を短絡することによりモータ軸にブレーキを掛けるダイナミックブレーキにおけるブレーキトルク切り替え用の回路であって、ダイナミックブレーキ電流を制限するための複数の抵抗からなる抵抗部2と、抵抗部2における総抵抗値の切り替えに用いるためのトーテムポール出力を有するトランジスタ部5とからなる構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗を介してモータの三相間を短絡することによりモータ軸にブレーキを掛けるダイナミックブレーキにおける、ブレーキトルクを切り替えるための回路であって、
ダイナミックブレーキ電流を制限するための複数の抵抗からなる抵抗部と、
該抵抗部における総抵抗値の切り替えに用いるためのトーテムポール出力を有するトランジスタ部とからなることを特徴とする、ダイナミックブレーキトルク切り替え回路。
【請求項2】
前記抵抗部は二個の抵抗すなわち第一抵抗および第二抵抗からなることを特徴とする、請求項1に記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路。
【請求項3】
前記トランジスタ部は前記第一抵抗の後流側に設けられ、前記第二抵抗は該トランジスタ部の一部を迂回して設けられていることを特徴とする、請求項2に記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路。
【請求項4】
前記総抵抗値の切り替えによって、前記抵抗部を構成する全ての抵抗にダイナミックブレーキ電流が流される高速回転対応パターンと、一部の抵抗にのみダイナミックブレーキ電流が流される低速回転対応パターンが切り替えられることを特徴とする、請求項1、2、3のいずれかに記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路。
【請求項5】
前記トランジスタ部はエミッタ接地型であることを特徴とする、請求項4に記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路。
【請求項6】
請求項4に記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路におけるダイナミックブレーキトルク切り替え方法であって、前記切り替えが、モータの回転速度が高い段階では前記高速回転対応パターンに、その後の回転速度が低くなっている段階では前記低速回転対応パターンになされることを特徴とする、ダイナミックブレーキトルク切り替え方法。
【請求項7】
請求項1、2、3、5のいずれかに記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路を備えていることを特徴とする、モータ。
【請求項8】
サーボモータであるところの請求項7に記載のモータと、これを駆動するサーボドライバとからなることを特徴とする、サーボシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイナミックブレーキトルク切り替え回路、ダイナミックブレーキトルク切り替え方法、モータ、およびサーボシステムに係り、特に、適切なブレーキトルクを得るためのダイナミックブレーキ回路等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイナミックブレーキは、モータのU、V、W間を、抵抗を介して短絡することによって、モータ軸にブレーキを掛ける技術である。モータ軸が回転しているとモータ側で電圧が発生する(逆起電圧)。電圧が発生しているU、V、Wの各相間を抵抗で短絡することにより、オームの法則により各相間に電流が流れる。電流はトルクとなり、このトルクがモータ軸の回転を低くする力すなわちブレーキとなる。これがダイナミックブレーキの原理である。流れる電流が大きいほどトルクも大きくなり、ブレーキの力も大きくなる。
【0003】
図6は、従来のブレーキトルク発生回路の構成例を示す回路図である。図示するように従来のブレーキトルク発生回路610は、1素子のトランジスタ65と、ダイナミックブレーキ電流を制限するための1個の抵抗器62を用いて構成される。モータ630からの各相をダイオード61で束ね、GNDとの間にトランジスタ65と抵抗器62を設ける。トランジスタ65をONすることにより、抵抗器62の抵抗値とモータ620の回転速度に応じたブレーキトルクを発生させることができる。なお、モータ630側で発生する電圧はモータ軸の回転数に依存し、回転数が多いと発生する電圧が大きく、回転数が少ないと発生する電圧も小さくなる。
【0004】
ダイナミックブレーキ回路については従来、技術的な提案も多くなされている。たとえば後掲特許文献1には、小型化容易で、電源OFF時でもモータにブレーキを掛けることができるダイナミックブレーキ回路具備モータ駆動回路として、複数のトランジスタとこれらにそれぞれ接続されたダイオードとからなるインバータ回路により、直流電源から駆動ラインを介してモータを駆動し、電源OFF時にはダイナミックブレーキ回路によりモータにブレーキを掛ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-178567号公報「ダイナミックブレーキ回路を具備するモータ駆動回路」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、ダイナミックブレーキのブレーキトルクは、モータの回転速度に比例する関係性を持つ。つまり、回転数が多いと発生する電圧が大きく、回転数が少ないと発生する電圧は小さくなる。ブレーキ開始直後はブレーキがかかり始めのため、回転速度が高く、十分なブレーキトルクを得られる。しかし、ブレーキの時間経過により回転速度が低くなっていくと、得られるブレーキトルクが小さくなってしまい、減速には長い時間を要することになる。
【0007】
図6に示した従来技術では抵抗値が一定である。かかる構成では、ブレーキ開始時やその直後は発生する電圧が大きいため、流れる電流も大きくブレーキの力も大きく得られるが、その後、ブレーキを掛け続けると当然回転数が少なくなるため、小さいブレーキの力しか得ることができない。モータ回転数が少なくなっても十分なブレーキトルクを得ることのできる技術が求められる。
【0008】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、モータ回転数が少なくなっても十分なブレーキトルクを得ることのできる、ダイナミックブレーキ回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は上記課題について検討した結果、従来のダイナミックブレーキ回路においては一定であった抵抗値を、モータ回転数が少なくなった場合、つまり低速回転となった場合にはより小さくすることのできるような回路構成とすればよいことに想到した。すなわち、抵抗値を切り替えることによって、回転数が少ない状態でも十分なブレーキの力を得るという方式であり、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0010】
〔1〕 抵抗を介してモータの三相間を短絡することによりモータ軸にブレーキを掛けるダイナミックブレーキにおける、ブレーキトルクを切り替えるための回路であって、ダイナミックブレーキ電流を制限するための複数の抵抗からなる抵抗部と、該抵抗部における総抵抗値の切り替えに用いるためのトーテムポール出力を有するトランジスタ部とからなることを特徴とする、ダイナミックブレーキトルク切り替え回路。
〔2〕 前記抵抗部は二個の抵抗すなわち第一抵抗および第二抵抗からなることを特徴とする、〔1〕に記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路。
〔3〕 前記トランジスタ部は前記第一抵抗の後流側に設けられ、前記第二抵抗は該トランジスタ部の一部を迂回して設けられていることを特徴とする、〔2〕に記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路。
〔4〕 前記総抵抗値の切り替えによって、前記抵抗部を構成する全ての抵抗にダイナミックブレーキ電流が流される高速回転対応パターンと、一部の抵抗にのみダイナミックブレーキ電流が流される低速回転対応パターンが切り替えられることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路。
【0011】
〔5〕 前記トランジスタ部はエミッタ接地型であることを特徴とする、〔4〕に記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路。
〔6〕 〔4〕に記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路におけるダイナミックブレーキトルク切り替え方法であって、前記切り替えが、モータの回転速度が高い段階では前記高速回転対応パターンに、その後の回転速度が低くなっている段階では前記低速回転対応パターンになされることを特徴とする、ダイナミックブレーキトルク切り替え方法。
〔7〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔5〕のいずれかに記載のダイナミックブレーキトルク切り替え回路を備えていることを特徴とする、モータ。
〔8〕 サーボモータであるところの〔7〕に記載のモータと、これを駆動するサーボドライバとからなることを特徴とする、サーボシステム。
【発明の効果】
【0012】
本発明のダイナミックブレーキトルク切り替え回路、ダイナミックブレーキトルク切り替え方法、モータ、およびサーボシステムは上述のように構成されるため、これらによれば、モータ回転数が少なくなっても(低速回転となっても)十分なブレーキトルクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のダイナミックブレーキトルク切り替え回路、モータおよびサーボシステムの基本構成を示すブロック図である。
図2】本発明のダイナミックブレーキトルク切り替え回路実施例を示す回路図である。
図3図2に示す実施例における作用を示す回路図である(高速回転対応パターン)。
図4図2に示す実施例における作用を示す回路図である(低速回転対応パターン)。
図5図2に示す実施例によるブレーキ性能を従来技術と比較してグラフ様に示した説明図である。
図6】従来のブレーキトルク発生回路の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明のダイナミックブレーキトルク切り替え回路、モータおよびサーボシステムの基本構成を示すブロック図である。図示するように本ダイナミックブレーキトルク切り替え回路10は、抵抗を介してモータの三相間を短絡することによりモータ軸にブレーキを掛けるダイナミックブレーキにおける、ブレーキトルクを切り替えるための回路であって、ダイナミックブレーキ電流を制限するための複数の抵抗からなる抵抗部2と、抵抗部2における総抵抗値の切り替えに用いるためのトーテムポール出力を有するトランジスタ部5とからなることを、主たる構成とする。
【0015】
かかる構成の本ダイナミックブレーキトルク切り替え回路10においては、複数の抵抗からなる抵抗部2によってモータ30からのダイナミックブレーキ電流が制限され、一方、トランジスタ部5のON/OFFが切り替えられることによって抵抗部2における総抵抗値の切り替えがなされる。これにより、モータ軸にブレーキを掛けるダイナミックブレーキにおいて、ブレーキトルクが切り替えられる。なお、トランジスタ部5のON/OFFの切り替えは、サーボドライバ40から送信される、トランジスタ部5のゲートへの電圧印加有無(ON/OFF)司令によるものとすることができる。
【0016】
なお、本発明ダイナミックブレーキトルク切り替え回路10を備えているモータ30も、本発明の範囲内である。また、サーボモータであるところのモータ30と、それが備えたダイナミックブレーキトルク切り替え回路10と、モータ30を駆動するサーボドライバ40とからなるサーボシステム50もまた、本発明の範囲内である。
【0017】
すなわち、本発明モータ30は上述構成のダイナミックブレーキトルク切り替え回路10を備えているため、抵抗を介してU、V、W間を短絡することによりモータ軸にブレーキを掛けるダイナミックブレーキにおいて、モータ回転数が少なくなった場合であっても(低速回転となった場合であっても)十分なブレーキトルクを得ることができる。また本発明サーボシステム50によれば、サーボドライバ40からの、トランジスタ部5のゲートへの電圧印加有無(ON/OFF)司令送信によって、トランジスタ部5のON/OFFの切り替えを行うことができる。
【0018】
図2は、本発明のダイナミックブレーキトルク切り替え回路実施例を示す回路図である。図示するように本ダイナミックブレーキトルク切り替え回路210は、モータ230の各相をダイオード21で束ね、GNDとの間にトランジスタ部25と抵抗部22を設けた構成であるが、その抵抗部22を、二個の抵抗すなわち第一抵抗23および第二抵抗24からなる構成とする。つまり、ダイナミックブレーキ電流を制限する抵抗部22を2個の抵抗23、24で構成することにより、モータ30のダイナミックブレーキにおけるブレーキトルクを2段階に切り替えることができる。
【0019】
また、図示するように本ダイナミックブレーキトルク切り替え回路210は、2素子からなるトーテムポール出力のトランジスタ部25が第一抵抗23の後流側に設けられ、かつ、第二抵抗24はトランジスタ部25の一部を迂回して設けられている構成である。トランジスタ部25のうち、第二抵抗24により迂回されるトランジスタを後段トランジスタ27(HI側トランジスタ)、後段トランジスタ27の後流側に配置されるトランジスタを前段トランジスタ26(LOW側トランジスタ)とする。なお、トーテムポール出力にはエミッタ接地型とエミッタフォロワ型があるが、本発明ダイナミックブレーキトルク切り替え回路210では前者を好適に用いることができる。
【0020】
抵抗部22の抵抗値と、トランジスタ部25における整流作用と、かかる整流作用によって決められる抵抗部22の抵抗値とによって、モータ230の回転速度に応じたブレーキトルクを発生させることができるが、その具体例について説明する。
【0021】
図3、4は、図2に示す実施例における作用を示す回路図であり、前者は高速回転対応パターン、後者は低速回転対応パターンを示す。各図中の直線矢印は、ダイナミックブレーキ電流の流れを示す。ダイナミックブレーキトルク切り替え回路210では、抵抗部22における総抵抗値の切り替えによって、抵抗部22を構成する全ての抵抗すなわち第一抵抗23ならびに第二抵抗24の双方にダイナミックブレーキ電流が流される高速回転対応パターン(図3)と、一部の抵抗すなわち第一抵抗23にのみダイナミックブレーキ電流が流される低速回転対応パターン(図4)とが切り替えられる。これらの切り替えをなすためのトランジスタ部25の作用について説明する。
【0022】
図3に示す高速回転対応パターンは、ブレーキ開始時およびその直後の、モータ230の回転数が多い段階、つまり前段におけるブレーキトルク発生パターンである。すなわち、前段トランジスタ26(LOW側トランジスタ)をONに、後段トランジスタ27(HI側トランジスタ)OFFとすることによって、モータ230からのブレーキ電流は、第一抵抗23に流れた後、後段トランジスタ27を迂回して第二抵抗24へと流れる。抵抗部22を形成する両方の抵抗にブレーキ電流が流されるため、両方の抵抗値の合算が総抵抗値となってダイナミックブレーキが掛けられる。このようにして、前段の回転速度が高い状態では、2個の抵抗へ電流を流して必要なブレーキトルクを得るのである。
【0023】
一方、図4に示す低速回転対応パターンは、モータ230の回転数が多い段階(前段)を過ぎた段階、つまり後段におけるブレーキトルク発生パターンである。すなわち、後段トランジスタ27および前段トランジスタ26、いずれをもONとすることによって、モータ230からのブレーキ電流は、第一抵抗23に流れた後、後段トランジスタ27へと流れ、第二抵抗24へは流れない。すなわち第一抵抗23のみにブレーキ電流が流されるため、これが総抵抗値となってダイナミックブレーキが掛けられる。このように、後段の回転速度が低い状態では、第一抵抗24という1個の抵抗のみに電流を流すことで、回転速度の低さに関わらず必要なブレーキトルクを得ることができる。
【0024】
前段:高速回転対応パターンから、後段:低速回転対応パターンへと切り替えるタイミングは、任意に設定可能である。すなわち、前段のパターンによって十分なブレーキトルクを得られる回転速度でモータ230が回転している限りは、前段のパターンで対応し、十分なブレーキトルクを得られなくなる回転速度となる時点で後段のパターンに切り替える設定とすればよい。本ダイナミックブレーキトルク切り替え回路210によれば、このように2段階のブレーキトルク発生によって、低速回転になった場合にも十分なブレーキトルクを得ることができる。
【0025】
図5は、実施例によるブレーキ性能を従来技術と比較してグラフ様に示した説明図である。前出図6を用いて示したように従来技術では、総抵抗値の切り替え方式はなく、1個の抵抗によってダイナミックブレーキを発生させる。ダイナミックブレーキ直後はモータ回転速度が速い状態のため、電流値は高いが、時間の経過に従い、ダイナミックブレーキによってモータ回転速度が低下していくため、電流も小さくなっていく。ブレーキトルク発生は1段のみであるため、ピークは1個のみである。
【0026】
一方、本発明では、切り替え方式により2個の抵抗でダイナミックブレーキを発生させる。ダイナミックブレーキ直後の電流値が高いことについては従来技術と同様であるが、その後に、もう一つ大きな電流のピークがある点で異なる。この2個目のピークのタイミングで総抵抗値の切り替えが行われ、総抵抗値が小さくなっているため、モータ回転速度が低下している状態であっても、十分に大きな電流を流すことができている。すなわち、十分な電流の大きさによって十分なブレーキングトルクを得るために、総抵抗値を小さくする構成としたものである。
【0027】
ブレーキ力は電流が大きいほど強い。本発明では前段の1個目のピークに続いて後段の2個目のピークでも大きなブレーキ力を得ることができ、かかる2段構成によって、望ましいブレーキ力のレベルを、より長く保持する。総抵抗値の大小の観点では、高速回転中である2段構成の前段においては電圧の高さを考慮して総抵抗値をより大きくすることとし、一方、低速回転となっている後段においては電圧の低下を考慮して総抵抗値をより小さくすることとする。
【0028】
前出図2等において、たとえば抵抗部22を構成するために用意する第一抵抗23、第二抵抗24、これら2つの抵抗値がいずれも1Ωであった場合、前段では両抵抗23、24が直列となって総抵抗値は2Ωとなり、ここにモータ230からのダイナミックブレーキ電流が流れる。一方、後段では、ダイナミックブレーキ電流が流れるのは第一抵抗23の1個のみとなり、総抵抗値は1Ωとなり、ここにダイナミックブレーキ電流が流れる。このように、前段と後段での総抵抗値の変更により、ブレーキ電流(トルク)を変える。
【0029】
なお、以上説明したダイナミックブレーキトルク切り替え回路におけるダイナミックブレーキトルク切り替え方法、すなわち、切り替えが、モータの回転速度が高い段階では前記高速回転対応パターンに、その後の回転速度が低くなっている段階では前記低速回転対応パターンになされるダイナミックブレーキトルク切り替え方法もまた、本発明の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のダイナミックブレーキトルク切り替え回路、ダイナミックブレーキトルク切り替え方法、モータ、およびサーボシステムによれば、モータ回転数が少なくなっても(低速回転となっても)十分なブレーキトルクを得ることができる、したがって、サーボドライバ、サーボシステムの製造・使用当該分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0031】
2、22…抵抗部
23…第一抵抗
24…第二抵抗
5、25…トランジスタ部
26…前段トランジスタ
27…後段トランジスタ
10、210…ダイナミックブレーキトルク切り替え回路
21…ダイオード
30、230…モータ
40、240…サーボドライバ
50、250…サーボシステム
61…ダイオード
62…抵抗器
65…トランジスタ
610…ブレーキトルク発生回路
630…モータ
640…サーボドライバ
650…サーボシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6