(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105133
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】函体の据付方法
(51)【国際特許分類】
E02D 23/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
E02D23/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009711
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219406
【氏名又は名称】東亜建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】倉原 義之介
(72)【発明者】
【氏名】武田 将英
(72)【発明者】
【氏名】原 知聡
(72)【発明者】
【氏名】アイン ナターシャ バルキス ビンティ モハマド スフィアン
(57)【要約】
【課題】簡易な方法でありながら函体の据付作業時に函体が波浪によって過大に動揺するリスクを効果的に低減できる函体の据付方法を提供する。
【解決手段】施工対象海域の有義波周期に対して長周期側に所定時間ずらした目標周期を設定する。施工対象海域に浮かせた函体10の上に重量増加装置1を設置して、函体10の重心位置Gよりも函体10および重量増加装置1の一体物20の合成重心位置Qを高くする。この際、函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量を、一体物20の動揺の固有周期が設定した目標周期以上の長さになり、かつ、一体物20の合成重心位置QからメタセンターMまでの距離である一体物20のメタセンター高さが、函体10を水底Bに据付けるまでの函体10の喫水の5%以上となる条件にする。そして、重量増加装置1を設置した函体10を下方移動させて水底Bに据付ける。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工対象海域に浮かせた状態の函体の中空部に水を注入することにより、前記函体を下方移動させて水底に据付ける函体の据付方法において、
前記施工対象海域の有義波周期に対して長周期側に所定時間ずらした目標周期を設定し、
前記施工対象海域に浮かせた状態の前記函体の上に重量増加装置を設置した状態にして、前記函体の重心位置よりも前記函体および前記重量増加装置の一体物の合成重心位置を高くするに際して、
前記函体に対する前記重量増加装置の配置と前記重量増加装置の重量を、前記一体物の動揺の固有周期が前記目標周期以上の長さになり、かつ、前記一体物の合成重心位置からメタセンターまでの距離である前記一体物のメタセンター高さが前記函体を水底に据付けるまでの前記函体の喫水の5%以上となる条件にすることを特徴とする函体の据付方法。
【請求項2】
前記施工対象海域の有義波周期に対して長周期側に4秒以上ずらした前記目標周期を設定する請求項1に記載の函体の据付方法。
【請求項3】
前記重量増加装置として箱体を設置して、前記箱体に複数の重量調整材を収容した状態にする請求項1または2に記載の函体の据付方法。
【請求項4】
前記重量増加装置としてタンクを設置して、前記タンクに水を収容した状態にする請求項1または2に記載の函体の据付方法。
【請求項5】
前記函体を下方移動させるにつれて、注入ホースにより前記タンクに水を注入して貯水量を増加させる請求項4に記載の函体の据付方法。
【請求項6】
前記函体の上に昇降機を設置し、前記昇降機の上に前記重量増加装置を設置する請求項1または2に記載の函体の据付方法。
【請求項7】
前記函体を下方移動させるにつれて、前記函体に対して前記重量増加装置を前記昇降機によって上昇させる請求項6に記載の函体の据付方法。
【請求項8】
前記函体の位置合わせに使用するワイヤロープが挿通可能な構造の支持台を、前記函体の上に設置し、前記支持台の上に前記重量増加装置を設置する請求項1または2に記載の函体の据付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、函体の据付方法に関し、さらに詳しくは、簡易な方法でありながら函体の据付作業時に函体が波浪によって過大に動揺するリスクを効果的に低減できる函体の据付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
護岸や防波堤の構築に使用されるケーソン等の函体の据付作業では、施工対象海域に浮かせた状態の函体を水中に沈み込ませる過程で、施工対象海域の波浪の影響により函体が動揺する。函体の動揺の固有周期が施工対象海域の有義波周期に近いと函体の動揺は比較的大きくなり、函体の動揺の固有周期と施工対象海域の有義波周期とが一致すると函体が共振して過大に動揺するおそれがある。函体が大きく動揺する状況では、安全性の観点から据付作業を中断する必要があり、工期の遅れにつながる。
【0003】
従来技術として、流体が非充満状態で収容された大きなタンクを函体の上に設置して、函体が動揺して傾斜した際には、タンクの中で流体を函体の傾斜方向下側に向かって流動させることによって、函体の動揺を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、函体の上に函体の上面部と同程度の大きなタンクを設置する必要があるため、タンクの製造や函体に対するタンクの設置作業に比較的手間がかかるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡易な方法でありながら函体の据付作業時に函体が波浪によって過大に動揺するリスクを効果的に低減できる函体の据付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の函体の据付方法は、施工対象海域に浮かせた状態の函体の中空部に水を注入することにより、前記函体を下方移動させて水底に据付ける函体の据付方法において、前記施工対象海域の有義波周期に対して長周期側に所定時間ずらした目標周期を設定し、前記施工対象海域に浮かせた状態の前記函体の上に重量増加装置を設置した状態にして、前記函体の重心位置よりも前記函体および前記重量増加装置の一体物の合成重心位置を高くするに際して、前記函体に対する前記重量増加装置の配置と前記重量増加装置の重量を、前記一体物の動揺の固有周期が前記目標周期以上の長さになり、かつ、前記一体物の合成重心位置からメタセンターまでの距離である前記一体物のメタセンター高さが前記函体を水底に据付けるまでの前記函体の喫水の5%以上となる条件にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施工対象海域の有義波周期に対して長周期側に所定時間ずらした目標周期を設定する。そして、施工対象海域に浮かせた状態の函体の上に重量増加装置を設置した状態にして、函体の重心位置よりも函体および重量増加装置の一体物の合成重心位置を高くした状態にする。この際、函体に対する重量増加装置の配置と重量増加装置の重量を、函体および重量増加装置の一体物の動揺の固有周期が目標周期以上の長さになる条件にすることで、施工対象海域において函体および重量増加装置の一体物が共振して過大に動揺するリスクを効果的に低減できる。さらに、一体物の合成重心位置の高さを過度に高くすると一体物の安定性は低くなるが、函体に対する重量増加装置の配置と重量増加装置の重量を、一体物のメタセンター高さが、函体を水底に据付けるまでの函体の喫水の5%以上になる条件にすることで、据付作業時の一体物の安定性を確保できる。それ故、簡易な方法でありながら、函体の据付作業時に函体が過大に動揺するリスクを効果的に低減でき、函体の据付作業をより安全に行うには有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の函体の据付方法において、函体の上に重量増加装置として重錘が設置されている状況を平面視で例示する説明図である。
【
図2】本発明の函体の据付方法において、函体の上に重量増加装置として重錘が設置されていて、函体を水底に向かって下方移動させる以前の状況を縦断面視で例示する説明図である。
【
図3】
図2の状況から函体の中空部に水を注入して、函体を水底付近まで下方移動させた状況を縦断面視で例示する説明図である。
【
図4】重量増加装置を設置した函体と重量増加装置を設置していない函体のそれぞれの有義波周期と函体の有義振幅との関係を例示するグラフ図である。
【
図5】本発明の函体の据付方法において、函体の上に重量増加装置として箱体が設置されている状況を縦断面視で例示する説明図である。
【
図6】本発明の函体の据付方法において、函体の上に重量増加装置としてタンクが設置されている状況を縦断面視で例示する説明図である。
【
図7】本発明の函体の据付方法において、重量増加装置として函体の上に設置された昇降機の上に重錘が設置されている状況を縦断面視で例示する説明図である。
【
図8】本発明の函体の据付方法において、重量増加装置として函体の上に設置された支持台の上に重錘が設置されている状況を縦断面視で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の函体の据付方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0010】
図1~
図3に例示するように、本発明の函体10の据付方法は、施工対象海域に浮かせた状態の函体10の中空部11に水Wを注入することにより、函体10を下方移動させて水底Bに据付ける施工に採用できる。
図1に例示するように、この実施形態では、既設の構造体50の側方に函体10を据付ける場合を例示している。図面では、函体10の長さ方向(長手方向)をX方向、函体10の幅方向をY方向、上下方向をZ方向として示している。
【0011】
函体10としては、ケーソンや埋設函などが例示できる。この実施形態では函体10がケーソンの場合を例示している。函体(ケーソン)10は、コンクリート製または鋼製の構造物で、外壁12および隔壁13によって仕切られた複数の中空部11を有している。函体10を水底Bに向けて沈める際には、それぞれの中空部11に設けられたホース40によって、それぞれの中空部11に水Wが注入され、函体10を水底Bに着床させた後にはそれぞれの中空部11に砕石等の中詰材が投入される。この実施形態では、函体10の上面を覆う上蓋15が設けられている。上蓋15には、それぞれの中空部11に水Wを注入するホース40が挿入可能な貫通孔が設けられている。
【0012】
函体10の据付作業では、函体10の動揺の固有周期が施工対象海域の有義波周期に近いと函体10の動揺は比較的大きくなり、函体10の動揺の固有周期と施工対象海域の有義波周期とが一致すると函体10が共振して過大に動揺するおそれがある。そこで、本発明では、施工対象海域で函体10の据付作業を行う以前の事前準備工程で、施工対象海域において函体10が大きく動揺するリスクが低くなる固有周期として、施工対象海域の有義波周期に対して長周期側に所定時間ずらした目標周期を設定する。施工対象海域の有義波周期は、据付作業の施工前に予め把握することが可能である。前述した所定時間は、施工対象海域の天候などに応じて適宜決定できるが、具体的には例えば4秒、より好ましくは5秒、さらに好ましくは6秒とするとよい。
【0013】
函体10の据付作業が行われる施工対象海域の有義波周期は、3秒~10秒程度である。より詳しくは、内海の施工対象海域の有義波周期は3秒~4秒程度であり、外海の施工対象海域の有義波周期は6秒~10秒程度である。悪天候などの影響で施工対象海域の有義波周期が10秒より長い場合には、波が比較的大きく海が荒れた状況であるため、通常は安全性の観点から函体10の据付作業は実施しない。そのため、本発明では、例えば、前述した所定時間を4秒とし、施工対象海域の有義波周期が10秒の場合には、その有義波周期の10秒よりも長周期側に4秒ずらした14秒を目標周期として設定する。
【0014】
函体10の重量や寸法、重心位置Gなどによって函体10の動揺の固有周期は決まるが、函体10の上に重量増加装置1を設置して、函体10および重量増加装置1の一体物20の合成重心位置Qを函体10の重心位置Gよりも高くすることで、函体10の動揺の固有周期よりも一体物20の動揺の固有周期を長周期側にシフトさせることが可能である。
【0015】
そこで、本発明では、函体10の据付作業時には、施工対象海域に浮かせた状態の函体10の上に重量増加装置1を設置した状態にして、函体10の重心位置Gよりも函体10および重量増加装置1の一体物20の合成重心位置Qを高くする。その際に、函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量を、一体物20の動揺の固有周期が予め設定した目標周期以上の長さになり、かつ、一体物20の合成重心位置QからメタセンターMまでの距離である一体物20のメタセンター高さが函体10を水底Bに据付けるまでの函体10の喫水の5%以上となる条件(以下、条件Aという)にする。
【0016】
この実施形態では、函体10(上蓋15)の上に重量増加装置1として重錘2を設置する場合を例示する。この実施形態では、函体10の上に複数の重量増加装置1(重錘2)を設置している。それぞれの重錘2にはクレーンの吊りワイヤを連結可能な吊金具が設けられている。重錘2としては、例えば、金属製のブロックやコンクリート製のブロックなどを用いることができる。重量増加装置1は、函体10の上に設置することで函体10および重量増加装置1の一体物の合成重心位置Qを高くできるものであれば重錘2に限定されず、他にも様々な重量物を用いることができる。重量増加装置1の具体的な別例は、後に別の実施形態で例示する。
【0017】
図2は、施工対象海域に浮かせた状態の函体10を水底Bに向かって下方移動させる以前の状況を例示している。
図3は、函体10の中空部11に水Wを注入して、函体10を水底B付近まで下方移動させた状況を例示している。
図2および
図3にはそれぞれの状況での、中空部11に貯留される水Wを含む函体10の重心位置G、函体10の中空部11に貯留される水Wを含む一体物20の合成重心位置Q、一体物20が直立した状態(中立状態)での一体物20の浮心C、一体物20がわずかに傾いた状態での一体物20の浮心C´、一体物20のメタセンターMをそれぞれ図示している。一体物20のメタセンターMは、施工対象海域に浮いた状態の一体物20の傾きの中心であり、より詳しくは、一体物20が直立した状態での浮力の作用線と、一体物20がわずかに傾斜した状態での浮力の作用線との交点である。
【0018】
函体10の下方移動を開始してから函体10の底面14を水底Bに接地させるまでの過程では、函体10の中空部11に水Wを注入することで、中空部11に貯留される水Wが徐々に増加する。そのため、函体10の下方移動を開始してから函体10を水底Bに接地させるまでに、中空部11に貯留される水Wを含む函体10の重心位置Gは変化し、それに伴い中空部11に貯留される水Wを含む一体物20の合成重心位置Qも変化する。また、函体10の下方移動を開始してから函体10を水底Bに据付けるまでに、函体10の喫水も変化する。
【0019】
本発明では、函体10の据付作業を行う以前に、函体10の据付作業を再現したコンピュータ上のシミュレーション或いは水理模型実験などを行って、函体10の下方移動を開始してから函体10を水底Bに据付けるまでの過程で、常に前述した条件Aを満たす、函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量のレイアウト(配設条件)を予め決定しておく。
【0020】
函体10の据付作業を行う施工対象海域の有義波周期は、函体10の据付作業を行う施工前に予め把握することが可能である。据付対象の函体10の寸法と重量も施工前に予め把握することができる。函体10を水底Bに据付けるまでの函体10の喫水の推移も施工前に予め把握することができる。それ故、函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量の条件を変更しながらコンピュータ上のシミュレーション或いは水理模型実験を繰り返し行うことで、一体物20の動揺の固有周期が設定した目標周期以上の長さになり、かつ、一体物20のメタセンター高さが函体10を水底Bに据付けるまでの函体10の喫水の5%以上となる条件Aを満たす、函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量のレイアウトを予め決定することが可能である。
【0021】
函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量のレイアウトを決定する際には、
図1に例示するように、平面視での函体10の重心位置Gを中心として点対象に重量増加装置1を配置することが好ましい。この実施形態では、平面視で函体10の四方にそれぞれ同形状で同重量の重量増加装置1(重錘2)を設置する構成にしている。函体10に対する重量増加装置1の設置数や配置はこの実施形態に限定されず、函体10の寸法や重量などに応じて適宜決定できる。例えば、平面視での函体10の重心位置Gに1つの重量増加装置1を設置する構成にすることもできるし、函体10の4ヶ所以上に重量増加装置1を設置する構成にすることもできる。それぞれの重量増加装置1の設置位置は、ホース40や函体10の水平方向の位置合わせに使用するワイヤロープ30を張設する位置を避けた位置に設定するとよい。
【0022】
それぞれの重量増加装置1の寸法と重量は、函体10の寸法や重量などに応じて適宜決定できるが、それぞれの重量増加装置1のX方向の長さ寸法は、例えば、函体10のX方向の寸法の5%以上20%以下、それぞれの重量増加装置1のY方向の幅寸法は、例えば、函体10のY方向の寸法の例えば、5%以上20%以下に設定するとよい。より具体的には、それぞれの重量増加装置1のX方向の長さ寸法は、例えば、1m以上7m以下、それぞれの重量増加装置1のY方向の幅寸法は、例えば、1m以上7m以下に設定するとよい。それぞれの重量増加装置1の高さは例えば、1m以上3m以下に設定するとよい。それぞれの重量増加装置1の重量は、例えば、1t以上50t以下に設定するとよい。それぞれの重量増加装置1のサイズや重量を前述した数値範囲にすると、重量増加装置1の製造や搬送、設置作業などを比較的簡易に行いやすくなる。
【0023】
函体10に設置する重量増加装置1の平面視における合計面積は、函体10の上面の面積の例えば5%以上40%以下、より好ましくは5%以上30%以下、さらに好ましくは5%以上25%以下に設定するとよい。前述した数値範囲にすると、函体10の上面で重量増加装置1が占める面積が比較的小さいので、函体10の水平方向の位置合わせに使用するワイヤロープ30を張設する作業がより行いやすくなり、函体10の上で作業する作業者の移動経路も確保しやすくなる。
【0024】
函体10の上に設置する重量増加装置1の合計重量は、函体10の寸法や重量、予め設定した目標周期などに応じて適宜決定されるが、重量増加装置1の合計重量は、中空部11に水Wを収容していない状態の空の函体10の重量の例えば、0.5%以上10%以下、より好ましくは0.5%以上5%以下、さらに好ましくは0.5%以上3%以下にするとよい。
【0025】
施工対象海域での函体10の据付作業時には、施工対象海域に浮かせた状態の函体10の水底Bへの下方移動を開始する以前に、事前準備工程で予め決定した函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量のレイアウトで、函体10の上に重量増加装置1を設置する。函体10の上に重量増加装置1を設置する作業は、函体10を引船などによって施工対象海域に移送する以前に行ってもよいし、函体10を施工対象海域に移送した後に行ってもよい。
【0026】
函体10の上に重量増加装置1を設置し終えた状態では、函体10の重心位置Gよりも一体物20の合成重心位置Qが高くなる。そして、一体物20の動揺の固有周期は予め設定した目標周期以上の長さになり、かつ、一体物20の合成重心位置QからメタセンターMまでの距離である一体物20のメタセンター高さが、函体10を水底Bに据付けるまでの函体10の喫水の5%以上となる。
【0027】
図1に例示するように、既設の構造体50の側方に函体10を据付ける場合には、既設の構造体50に設置されたウインチに巻き付けられたワイヤロープ30を、既設の構造体50に設置された滑車32に掛け回した状態で、函体10に設置されている連結部31に接続する。この実施形態では、函体10の複数箇所に連結部31を固設している。この実施形態では、4本のワイヤロープ30を用いて牽引する場合を例示しているが、牽引に使用するワイヤロープ30の本数や連結部31の数や配置はこの実施形態に限定されず、他にも様々な構成にすることができる。
【0028】
そして、既設の構造体50に設置された図示しないウインチによりそれぞれのワイヤロープ30の繰り出しおよび巻取りを行うことにより、函体10のXY方向での位置決めをする。また、作業者は上蓋15の上などで必要な作業を行う。なお、この函体10の位置決め工程ではウインチ、ワイヤロープ30および滑車32の他にも様々な器具が使用されるが、ここでは図示および説明を省略する。
【0029】
ウインチは、既設の構造体50に限らず、例えば、他の海上構造物や岸などに設置することもできる。また、例えば、函体10をクレーン等で吊り下げてXY方向での位置決めをすることもできる。据付現場に最初に据付ける函体10の場合は、例えば起重機船などの基準になるものに沿わせてXY方向での位置決めをする。
【0030】
そして、函体10のXY方向の位置決めを行った後に、函体10のそれぞれの中空部11に設けたホース40により、それぞれの中空部11に水Wを注入することで、函体10を水底Bに向かって下方移動させる。
【0031】
函体10を水底Bまで沈める過程では、函体10が施工対象海域の波の影響を受けることで、函体10がX方向やY方向に動揺する。函体10が傾斜すると、函体10の傾斜によって移動した浮心C´に作用する浮力によって一体物20の合成重心Q周りにモーメントが発生する。このモーメントは一体物20を傾斜前の位置に戻そうとする復元モーメントである。この復元モーメントにより一体物20はX方向の動揺を繰り返すが、本発明では、函体10に重量増加装置1を設置して、函体10の重心位置Gよりも一体物20の合成重心位置Qを高くしていることで、函体10の重心位置Gと函体10の浮心C´との水平距離よりも、一体物20の合成重心位置Qと一体物20(函体10)の浮心C´との水平距離が小さくなり、重量増加装置1を設置していない状態の函体10の動揺の固有周期よりも一体物20が動揺する固有周期が長くなる。
【0032】
その結果として、一体物20の動揺の固有周期と施工対象海域の有義波周期との差が長くなり、一体物20が大きく動揺するリスクが低くなる。また、函体10の据付作業時に一体物20が施工対象海域の有義波周期に共振するリスクも低くなる。函体10のY方向の動揺においても同様である。尚、函体10がZ方向に動揺(上下変動)することもあるが、函体10の据付作業は波が荒れていない状況で行うので、函体10のZ方向の動揺は比較的小さく問題にはならない。
【0033】
そして、函体10を水底Bまで沈めて函体10を水底Bに接地させる。接地させた函体10の位置が据付目標位置からずれている場合には、ホース40によりそれぞれの中空部11に貯水されている水Wの一部を排出し、函体10を水底Bから数センチ程度浮かせた状態にする。そして、ウインチやワイヤロープなどを使用して函体のXY方向の最終的な位置合わせを行い、その後、ホース40によりそれぞれの中空部11に水Wを注入して函体10を再度水底Bに接地させる。
【0034】
函体10を水底Bに接地させた後には、中空部11に砕石等の中詰材を投入する。以上の作業により、水底Bに函体10が据付けられた状態になる。函体10を水底Bに据付けた後には、それぞれの重量増加装置1を、クレーンなどを使用して函体10から撤去する。撤去した重量増加装置1は別の施工で再度使用することができる。
【0035】
図4は、重量増加装置1を設置していない函体10と、本発明の前述した条件Aで重量増加装置1を設置した函体10(一体物20)の、それぞれの有義波周期と函体10の動揺の大きさを示す指標である函体10の有義振幅との関係を示すグラフ図である。
図4のグラフの横軸は施工対象海域の有義波周期を示し、縦軸は函体10の有義振幅を示している。
図4のグラフでは、重量増加装置1を設置していない函体10のデータを細い実線で示し、重量増加装置1を設置した函体10のデータを太い一点鎖線で示している。重量増加装置1を設置していない函体10の固有周期は12秒である。重量増加装置1を設置した函体10は、重量増加装置1を設置することで一体物20の固有周期を16秒にシフトさせている。
【0036】
図4のグラフのように、重量増加装置1を設置していない函体10が最も大きく揺れる有義波周期は、函体10の固有周期と一致して函体10が共振した状態になる12秒であり、有義波周期と函体10の固有周期との時間差が短いほど函体10の有義振幅は比較的大きくなり、有義波周期と函体10の固有周期との時間差が長いほど函体10の有義振幅は比較的小さくなる。重量増加装置1を設置した函体10(一体物20)が最も大きく揺れる有義波周期は、一体物20の固有周期と一致して一体物20が共振した状態になる16秒であり、有義波周期と一体物20の固有周期との時間差が短いほど一体物20の有義振幅は比較的大きくなり、有義波周期と一体物20の固有周期との時間差が長いほど一体物20の有義振幅は比較的小さくなる。
【0037】
函体10の据付作業が行われる施工対象海域の有義波周期は3秒~10秒程度であるが、重量増加装置1を設置していない函体10に対して、重量増加装置1を設置した函体10は固有周期を長周期側に4秒ずらしていることで、有義波周期が10秒以下の条件では、それぞれの有義波周期での一体物20の有義振幅が5割程度低減している。このように、函体10に重量増加装置1を設置して、函体10の据付作業を行う施工対象海域の有義波周期と函体10の固有周期との時間差よりも、施工対象海域の有義波周期と函体10に重量増加装置1を設置した一体物20の固有周期との時間差を長くすることで、施工対象海域において函体10が大きく動揺するリスクを低減できることが分かる。
【0038】
また、悪天候などの影響で施工対象海域の有義波周期が10秒より長い場合には、一般的に安全性の観点から施工は実施しないため、函体10に重量増加装置1を設置した一体物20の固有周期を14秒以上にすることで、施工対象海域で一体物20が共振することをより確実に回避できることが分かる。
【0039】
このように、本発明によれば、施工対象海域の有義波周期に対して長周期側に所定時間ずらした目標周期を設定する。そして、施工対象海域に浮かせた状態の函体10の上に重量増加装置1を設置した状態にして、函体10の重心位置Gよりも函体10および重量増加装置1の一体物20の合成重心位置Qを高くした状態にする。この際、函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量を、一体物20の動揺の固有周期が目標周期以上の長さになる条件にすることで、施工対象海域において一体物20が共振して過大に動揺するリスクを効果的に低減できる。
【0040】
さらに、一体物20の合成重心位置Qの高さを過度に高くすると一体物20の安定性は低くなるが、函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量を、一体物20のメタセンター高さが、函体10を水底Bに据付けるまでの函体10の喫水の5%以上になる条件にすることで、据付作業時の一体物20の安定性を確保できる。それ故、簡易な方法でありながら、函体10の据付作業時に函体10が過大に動揺するリスクを効果的に低減でき、函体10の据付作業をより安全に行うには有利になる。
【0041】
従来技術の函体10の上に大きなタンクを設置する方法では、函体10が傾いた際のタンク内の水の移動によって、函体10の復元モーメントとは逆方向のモーメント(減衰モーメント)を生じさせることで、函体10の動揺を抑制するという技術的思想である。それに対して、本発明は従来技術とは着眼点が大きく異なり、函体10の上に重量増加装置1を設置することで函体10および重量増加装置1の一体物20の動揺の固有周期を長周期側にずらし、施工対象海域の有義波周期と一体物20の固有周期との時間差を長くすることで、函体10が大きく動揺するリスクを低減している。この本発明の技術的思想は、従来では想起されてこなかったものである。
【0042】
この実施形態のように、函体10の上に複数の重量増加装置1を設置する構成にすると、それぞれの重量増加装置1の重量やサイズを比較的小さくできる。特に、この実施形態のように、平面視で函体10の重心位置Gを囲むように複数の重量増加装置1を四方にバランスよく配置すると、函体10の傾いた方向に極端に偏心し難くなり、函体10が大きく動揺するリスクを低減するには有利になる。
【0043】
函体10の上に重量増加装置1を設置する作業は、函体10を施工対象海域に移送した後に行うこともできるが、函体10を施工対象海域に移送する以前に函体10に重量増加装置1を設置しておくと、函体10を施工対象海域まで移送する過程で函体10が大きく動揺するリスクも低減することができる。
【0044】
この実施形態のように、重量増加装置1として重錘2を使用すると、重量増加装置1を非常に簡素に構成できる。傾斜した場合にも重心位置が変化しない重錘2を用いると、一体物20が傾斜した場合にも一体物20の合成重心位置Qが中空部11に貯水された水Wの影響以外ではほとんど変化しないため、一体物20の安定性を高めるには有利になる。
【0045】
施工対象海域の有義波周期に対して長周期側に4秒、より好ましくは5秒、さらに好ましくは6秒ずらした目標周期を設定すると、施工対象海域の有義波周期に一体物20の固有周期が一致して一体物20が共振するリスクが非常に低くなる。さらに、施工対象海域の有義波周期と一体物20の固有周期との時間差を長くすることで、一体物20が大きく動揺するリスクを低減するには有利になる。より具体的には、函体10の据付作業が行われる施工対象海域の有義波周期は3秒~10秒程度であるため、目標周期を14秒、より好ましくは15秒、さらに好ましくは16秒に設定すると一体物20が大きく動揺するリスクを低減するには有利になる。
【0046】
図5に例示するように、本発明では、函体10の上に重量増加装置1として箱体3を設置し、その箱体3に複数の重量調整材Sを収容した状態にすることもできる。
【0047】
箱体3は、鋼製または樹脂製の中空の構造物であり、重量調整材Sを収容する収容部3aを有している。この実施形態では、外形が直方体形状で縦長の箱体3を例示しているが、箱体3の形状は直方体形状に限定されず、他にも例えば、外形が円柱形状や多角形状の箱体3を用いることもできる。重量調整材Sには例えば、函体10の中空部11に投入する砕石などの中詰材を用いるとよい。
【0048】
箱体3の上部には上下に貫通する投入部3bが設けられていて、重量調整材Sを投入部3bから収容部3aに投入できる構成になっている。投入部3bには開閉蓋が設けられている。投入部3bに設けられた開閉蓋を閉じた状態にすると収容部3aは密閉された状態になる。
【0049】
函体10の上に箱体3を設置する作業や、箱体3に重量調整材Sを投入する作業は、函体10を施工対象海域に移送する以前に行ってもよいし、函体10を施工対象海域に移送した後に行ってもよい。
【0050】
この実施形態のように、函体10の上に重量増加装置1として箱体3を設置して箱体3の収容部3aに複数の重量調整材Sを収容する場合にも、
図1~
図4に例示した実施形態と同様に、目標周期を設定して条件Aを満たす函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量のレイアウトで、函体10に重量増加装置1を設置することで、
図1~
図4に例示した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0051】
この実施形態のように、重量増加装置1として箱体3と複数の重量調整材Sを用いると、箱体3に収容する重量調整材Sの量を変更することで、重量増加装置1の重量を容易に変えられるので、施工現場に応じて、重量増加装置1を適切な重量に簡易に調整できる。
【0052】
この実施形態では、箱体3の下部に上下に貫通する排出部3cが設けられていて、排出部3cには開閉蓋が設けられている。また、上蓋15の箱体3の排出部3cに対応する位置に開閉部15aが設けられている。函体10を水底Bに接地させた後に、上蓋15の開閉部15aと排出部3cの開閉蓋を開いた状態にすると、箱体3に収容されていた重量調整材Sが函体10の中空部11に落下する構成になっている。このような構成にすると、箱体3に収容していた重量調整材Sを中詰材として中空部11に落下させることで、箱体3から重量調整材Sを少ない作業工数で容易に排出できる。それ故、箱体3の撤去作業に要する手間や時間を低減するには有利になる。
【0053】
図6に例示するように、本発明では、函体10の上に重量増加装置1としてタンク4を設置して、タンク4に水Wを収容した状態にすることもできる。
【0054】
タンク4は、鋼製または樹脂製の中空の構造物であり、水Wを貯水する貯水部4aを有している。この実施形態では、外形が直方体形状で縦長のタンク4を例示しているが、タンク4の形状は直方体形状に限定されず、他にも例えば、外形が円柱形状や多角形状のタンク4を用いることもできる。
【0055】
タンク4の上面部には上下に貫通する注水口4bが設けられていて、注水口4bに注入ホース5が挿設されている。注入ホース5は施工対象海域の水W(海水)をタンク4の貯水部4aに注入する構成になっている。注水口4bに注入ホース5を挿し込んだ状態で貯水部4aから外部に水Wが漏れない構造になっている。
【0056】
函体10の上にタンク4を設置する作業や、タンク4に水Wを注入する作業は、函体10を施工対象海域に移送する以前に行ってもよいし、函体10を施工対象海域に移送した後に行ってもよい。
【0057】
この実施形態のように、函体10の上に重量増加装置1としてタンク4を設置してタンク4の貯水部4aに水Wを収容した状態にする場合にも、
図1~
図4に例示した実施形態と同様に、目標周期を設定して条件Aを満たす函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量のレイアウトで、函体10に重量増加装置1を設置することで、
図1~
図4に例示した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0058】
この実施形態のように、重量増加装置1としてタンク4を用いると、タンク4の貯水量を変更することで、重量増加装置1の重量を容易に変えられるので、施工現場に応じて、重量増加装置1を適切な重量に簡易に調整できる。
【0059】
この実施形態のように重量増加装置1としてタンク4を設置する場合には、例えば、函体10を水底Bに向かって沈める過程で、函体10を下方移動させるにつれて、注入ホース5によりそれぞれのタンク4に水Wを注入してそれぞれのタンク4の貯水量を増加させることもできる。函体10を下方移動させるにつれて、函体10の中空部11の下部に貯留される水量が増加するため、中空部11に貯留された水Wを含む函体10の重心位置Gは徐々に低くなるが、函体10を下方移動させるにつれて、それぞれのタンク4の貯水量を増加させて重量増加装置1の重量を増加させることで、函体10の中空部11に貯留された水Wを含む一体物20の合成重心位置Qが低くなることを抑えることができる。それ故、函体10の据付作業時に函体10が過大に動揺するリスクを低減するにはより有利になる。
【0060】
この実施形態では、タンク4の下部に上下に貫通する排水部4cが設けられていて、排水部4cには開閉蓋が設けられている。上蓋15のタンク4の排水部4cに対応する位置には開閉部15aが設けられている。函体10を水底Bに接地させた後に、上蓋15の開閉部15aと排水部4cの開閉蓋を開いた状態にすると、タンク4に収容されていた水Wが函体10の中空部11に落下する構成になっている。このような構成にすると、タンク4に収容していた水Wを中空部11に落下させることで、タック4から水Wを短時間で容易に排出できる。それ故、タンク4の撤去作業に要する手間や時間を低減するには有利になる。
【0061】
図7に例示するように、本発明では、函体10の上に昇降機6を設置して、その昇降機6の上に重量増加装置1を設置することもできる。
【0062】
この実施形態では、昇降機6の上に重量増加装置1として重錘2を設置している。昇降機6の天板には、昇降機6の天板に対して重量増加装置1を固定する固定部6aが設けられている。昇降機6は、函体10に対して重量増加装置1を昇降移動させる機器であり、公知の種々の昇降機(リフト)を採用できる。昇降機6の上に重量増加装置1として例えば、箱体3やタンク4を設置する構成にすることもできる。
【0063】
函体10の上に昇降機6および重量増加装置1を設置する作業は、函体10を施工対象海域に移送する以前に行ってもよいし、函体10を施工対象海域に移送した後に行ってもよい。
【0064】
この実施形態のように、函体10の上に昇降機6を設置して、その昇降機6の上に重量増加装置1を設置する場合にも、
図1~
図4に例示した実施形態と同様に、目標周期を設定して条件Aを満たす函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量のレイアウトで、函体10に重量増加装置1を設置することで、
図1~
図4に例示した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0065】
この実施形態のように、昇降機6の上に重量増加装置1を設置する構成にすると、昇降機6によって重量増加装置1を函体10の上面よりも高い位置に配置することが可能になるので、一体物20の合成重心位置Qを効率的に高くできる。また、昇降機6によって函体10に対する重量増加装置1の高さを変更することで、一体物20の合成重心位置Qを容易に調整することが可能になる。それ故、汎用性が非常に高くなる。
【0066】
この実施形態のように昇降機6の上に重量増加装置1を設置する場合には、例えば、函体10を水底Bに向かって沈める過程で、函体10を下方移動させるにつれて、函体10に対して重量増加装置1を昇降機6によって上昇させることもできる。函体10を下方移動させるにつれて、函体10の中空部11の下部に貯留される水量が増加するため、中空部11に貯留された水Wを含む函体10の重心位置Gは徐々に低くなるが、函体10を下方移動させるにつれて、昇降機6によって重量増加装置1を上昇させることで、函体10の中空部11に貯留される水Wを含む一体物20の合成重心位置Qが低くなることを抑えることができる。それ故、函体10の据付作業時に函体10が過大に動揺するリスクを低減するにはより有利になる。
【0067】
図8に例示するように、本発明では、函体10の上に函体10の位置合わせに使用するワイヤロープ30が挿通可能な構造の支持台7を設置して、その支持台7の上に重量増加装置1を設置することもできる。
【0068】
この実施形態では、支持台7の上に重量増加装置1として重錘2を設置している。支持台7の天板には、支持台7の天板に対して重量増加装置1を固定する固定部7aが設けられている。この実施形態の支持台7は、フレーム部材と天板を組み合わせて形成されている。支持台7の構造はワイヤロープ30が挿通可能な構造であれば他にも様々な構成にすることができる。支持台7の上に重量増加装置1として例えば、箱体3やタンク4を設置する構成にすることもできる。
【0069】
函体10の上に支持台7および重量増加装置1を設置する作業は、函体10を施工対象海域に移送する以前に行ってもよいし、函体10を施工対象海域に移送した後に行ってもよい。
【0070】
この実施形態のように、函体10の上に支持台7を設置して、その支持台7の上に重量増加装置1を設置する構成にした場合にも、
図1~
図4に例示した実施形態と同様に、目標周期を設定して条件Aを満たす函体10に対する重量増加装置1の配置と重量増加装置1の重量のレイアウトで、函体10に重量増加装置1を設置することで、
図1~
図4に例示した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0071】
この実施形態のように、支持台7の上に重量増加装置1を設置する構成にすると、支持台7によって重量増加装置1を函体10の上面よりも高い位置に配置することが可能になるので、一体物20の合成重心位置Qを効率的に高くできる。また、支持台7を設けると、函体10の位置合わせに用いるワイヤロープ30を張設する位置の上方にも、重量増加装置1を配置することが可能になるので、重量増加装置1のレイアウトの自由度がより高くなる。
【0072】
なお、函体10の上に設置する重量増加装置1のサイズや設置数、配置などは、上記で例示した実施形態に限定されず、函体10の重量や形状、サイズなどに応じて、他にも様々な構成にすることができる。上記で様々な重量増加装置1を例示したが、上記で例示した重量増加装置1は適宜組み合わせて併用することもできる。例えば、函体10の上に重量増加装置1として、重錘2とタンク4をそれぞれ設置することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1 重量増加装置
2 重錘
3 箱体
3a 収容部
3b 投入部
3c 排出部
4 タンク
4a 貯水部
4b 注水口
4c 排水部
5 注入ホース
6 昇降機
6a 固定部
7 支持台
7a 固定部
10 函体
11 中空部
12 外壁
13 隔壁
14 底面
15 上蓋
15a 開閉部
20 (函体および重量増加装置の)一体物
30 ワイヤロープ
31 連結部
32 滑車
40 ホース
50 既設の構造体
W 水
S 重量調整材
B 水底
G 函体の重心位置
Q 一体物の合成重心位置
C 一体物が直立した状態での浮心
C´ 一体物が傾斜した状態での浮心
M 一体物のメタセンター