(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105135
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】Pt合金単結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 1/02 20060101AFI20240730BHJP
C22C 5/04 20060101ALI20240730BHJP
H01M 4/92 20060101ALI20240730BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20240730BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20240730BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20240730BHJP
C22C 1/00 20230101ALI20240730BHJP
【FI】
C22C1/02 503A
C22C5/04
H01M4/92
H01M4/90 M
H01M4/88 K
H01M4/86 M
C22C1/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009713
(22)【出願日】2023-01-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/共通課題解決型基盤技術開発/高温低加湿作動を目指した革新的低白金化技術開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】星 永宏
(72)【発明者】
【氏名】中村 将志
【テーマコード(参考)】
5H018
【Fターム(参考)】
5H018AS01
5H018BB00
5H018DD05
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE04
5H018EE10
5H018HH05
(57)【要約】
【課題】ORR活性が向上したPt合金単結晶を安定に製造する。
【解決手段】Ni、CoおよびFeから選択される遷移金属により少なくとも一部が被覆されたPt単結晶コアを準備する工程、および上記Pt単結晶コアと上記遷移金属とを溶融固化してPt合金単結晶を得る工程を含む、Pt合金単結晶の製造方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni、CoおよびFeから選択される遷移金属により少なくとも一部が被覆されたPt単結晶コアを準備する工程、および
前記Pt単結晶コアと前記遷移金属とを溶融固化してPt合金単結晶を得る工程
を含む、Pt合金単結晶の製造方法。
【請求項2】
前記遷移金属が、NiおよびCoから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遷移金属がNiである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記Pt単結晶と、前記遷移金属との物質量比(Pt/遷移金属)が、91/9~65/35である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記Pt単結晶と、前記遷移金属との物質量比(Pt/遷移金属)が3/1である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記遷移金属が線状である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記遷移金属が前記Pt単結晶コアの外周に巻き付くことにより前記Pt単結晶コアを被覆する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記Pt単結晶コアと前記遷移金属との溶融が、アルゴンおよび/またはアルゴン水素混合気体の存在下で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の方法により得られる、Pt合金単結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、Pt合金単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素と酸素を化学反応させて水を生成する際に生じるエネルギーを取り出して発電する装置である。燃料電池は、発電時に水しか排出しないため、地球温暖化対策の一環として注目されている。しかしながら、燃料電池の電極には、触媒材料として白金(Pt)等高価で資源量の乏しい材料が使用されているため、触媒使用量を低減することは燃料電池の普及に向けた課題の一つである。
【0003】
ニッケル(Ni)やコバルト(Co)と、Ptとの合金がPt単独に比べ高い耐CO被毒性と高い酸化還元反応(Oxygen Reduction Reaction;以下「ORR」とも称する)活性を有する場合があることが知られている。そこで、当該技術分野においては、より高性能な触媒を開発し、触媒の使用量の低減を図る観点から、Pt合金の表面構造およびORR活性の関係性について様々な研究が行われている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、Pt3Ni合金は、Pt3Ni線を溶融固化することにより製造されたPt3Ni単結晶の面方位とORR活性との関係について開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Electroanal.Chem.,716,58(2014)
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、非特許文献1の方法により製造されたPt合金単結晶は結晶性が悪く、ORR活性評価の結果のバラつきも多くORR活性も低いことが、本開示者らの検討により明らかとなった。
【0007】
そこで、本開示は、優れたORR活性を有するPt合金単結晶を安定に製造することを一つの目的としている。
【0008】
本発明者らは、鋭意研究した結果、Pt単結晶コアと、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)および鉄(Fe)から選択される遷移金属とを特定の手法により物理的に接触させて溶融固化すると、優れたORR活性を有するPt合金単結晶を安定に製造しうることを見出した。本開示はかかる知見に基づくものである。
【0009】
本開示の一実施態様によれば、Pt合金単結晶の製造方法であって、Ni、CoおよびFeから選択される遷移金属により少なくとも一部が被覆されたPt単結晶コアを準備する工程、および
上記Pt単結晶コアと上記遷移金属とを溶融固化してPt合金単結晶を得る工程
を含む方法が提供される。
【0010】
本開示の一実施態様によれば、上記製造方法により得られるPt合金単結晶が提供される。
【0011】
本開示によれば、ORR活性が顕著に向上したPt合金単結晶を安定に製造することができる。本開示によれば、ORR活性が顕著に向上した触媒を量産しうることから、燃料電池におけるPtの使用量を削減する上で有利に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】試験例1における参考例1-2のPt
3Ni単結晶の製造方法の模式図である。A工程はAr/H
2(95%/5%)雰囲気下でPt
3Ni線1を入れて加熱する工程であり、B工程は、Pt
3Ni線の端部が球状になるまで溶融して球状の溶融物を得る工程であり、C工程は、融線(溶融部位と非溶融部位の境界)の位置が球状の溶融物の端部付近になるまで溶融する工程であり、D工程は、球状の溶融物を固化させて、球状のPt
3Ni単結晶2を得る工程である。
【
図2】試験例1における例1のPt
3Ni単結晶の製造方法の模式図である。A’工程はAr/H
2(95%/5%)雰囲気下でPt単結晶コア3にNi線4を巻き付けて加熱する工程であり、B’工程は、Ni線4を巻き付けたPt単結晶コア3を溶融して溶融物を得る工程であり、C’工程は、融線(溶融部位と非溶融部位の境界)の位置が球状の溶融物の端部付近になるまで溶融する工程であり、D’工程は、球状の溶融物を固化させて、Pt
3Ni単結晶2を得る工程である。
【発明の具体的説明】
【0013】
本開示の一実施態様によれば、Pt合金単結晶の製造方法は、Ni、CoおよびFeから選択される遷移金属により少なくとも一部が被覆されたPt単結晶コアを準備する工程、および
上記Pt単結晶コアと前記遷移金属とを溶融固化してPt合金単結晶を得る工程
を含む。以下、本開示の方法の一実施態様を工程毎に説明する。
【0014】
<遷移金属により少なくとも一部が被覆されたPt単結晶コアを準備する工程>
本開示の一実施態様によれば、Pt単結晶コアの形状は、周囲の少なくとも一部を遷移金属により被覆できる限り特に限定されず、柱状、塊状、球状等であってよいが、好ましくは球状とされる。また、Pt単結晶コアのサイズは特に限定されないが、例えば、球状である場合、直径2.5mm~3.5mm程度としてもよい。Pt単結晶コアは、例えば、Clavilierらの方法(J. Electroanal. Chem. 107, 205-209 (1980))に従い製造することができる。
【0015】
また、本開示の一実施態様によれば、Pt単結晶コアを被覆する遷移金属は、NiおよびCoから選択され、これらは単独に使用してもよく組み合わせて使用してもよいが、好ましくは単独で用いることが好ましい。単結晶コアは、Ptを用いることがより好ましい。NiやCoを用いて上記方法により得られたPt合金単結晶において、ORR活性が顕著に向上することは意外な事実である。
【0016】
また、遷移金属の形状は、Pt単結晶コアの周囲の少なくとも一部を被覆できる限り特に限定されず、板状、帯状、線状等であってもよいが、ORR活性の向上の観点からは、線状であることが好ましい。遷移金属のサイズは特に限定されないが、例えば、線状である場合、直径0.2mm~0.5mm程度の遷移金属製のワイヤを使用してもよい。
【0017】
また、遷移金属によりPt単結晶コアを被覆する方法は、遷移金属がPt単結晶コアの周囲の少なくとも一部を被覆できる限り特に限定されないが、ORR活性の向上の観点からは、線状または帯状の遷移金属をPt単結晶コアの外周に巻き付けることにより実施することが好ましい。
【0018】
Pt単結晶と、遷移金属との物質量比(Pt/遷移金属)は、所望のPt合金の組成に応じて適宜に調整することができ、91/9~65/35とすることができるが、好ましくは3/1程度とされる。
【0019】
<Pt単結晶コアと遷移金属とを溶融固化してPt合金単結晶を得る工程>
本開示の一実施態様によれば、上記遷移金属により少なくとも一部が被覆されたPt単結晶コアを溶融固化してPt合金単結晶を得る。
【0020】
Pt単結晶コアと遷移金属とを溶融させる方法として、誘導加熱炉、バーナー炎等を用いることができるが、火炎を使用せず雰囲気制御が容易である観点から、誘導加熱炉が好ましい。上記溶融温度は、遷移金属の種類等に応じて適宜設定してよいが、Ptの融点(1769℃)および溶融に使用されるアセチレンガスの燃焼温度(3300℃)を勘案すれば、例えば、1769~3300℃、好ましくは1800~2000℃とされる。
【0021】
また、本開示の一実施態様によれば、溶融処理は、不活性ガスの存在する雰囲気下で実施することが好ましく、アルゴン(Ar)および/または水素(H2)の存在下で実施することがより好ましい。ArおよびH2の存在する雰囲気下で溶融処理を実施する場合、Ar/H2は、例えば、100容量%/0容量%~0容量%/100容量%、好ましくは95容量%/5容量%とされる。
【0022】
また、溶融処理の期間は、特に限定されないが、Pt単結晶コアと遷移金属との融線(溶融部位と非溶融部位の境界)がPt単結晶コアの端部付近の位置になるまで実施することが好ましい。かかる溶融処理の期間としては、例えば、1~60分、好ましくは10~20分、より好ましくは20分とされる。
【0023】
また、本開示の一実施態様によれば、上記溶融処理により得られたPt単結晶コアと遷移金属との溶融物の固化処理を実施する。固化処理は、例えば、大気下または不活性ガスの存在する雰囲気下で室温にて、Pt単結晶コアと遷移金属との溶融物を静置することにより実施してもよい。かかる固化処理の期間としては、例えば、1分~100分、好ましくは40~60分、より好ましくは40分とされる。
【0024】
<Pt合金単結晶>
本開示の一実施態様によれば、上記方法により得られたPt合金単結晶が提供される。本開示の一実施態様によれば、Pt合金単結晶は、Pt3NiまたはPt3Coとされる。
【0025】
Pt合金単結晶は、X-ray背面反射ラウエ法により所望の結晶面方位に合わせて調整することができる。Pt合金単結晶の面方位は、(100)、(110)、(111)等が挙げられるが、ORR活性の向上の観点からは、好ましくは(111)または(110)であり、より好ましくは(111)である。
【0026】
また、本開示の一実施態様によれば、Pt合金単結晶におけるORR活性は、面方位を調整することにより制御することができる。
【0027】
遷移金属がNiである場合、面方位(111)のPt3NiのORR活性は、例えば、30~36(mA/cm-2)とされる。また、面方位(110)のPt3NiのORR活性は、例えば、3.2~3.8(mA/cm-2)とされる。また、面方位(100)のPt3NiのORR活性は、例えば、0.9~1.1(mA/cm-2)とされる。
【0028】
遷移金属がCoである場合、面方位(111)のPt3CoのORR活性は、例えば、10.3~16.3(mA/cm-2)とされる。また、面方位(110)のPt3CoのORR活性は、例えば、11.6~12.9(mA/cm-2)とされる。また、面方位(100)のPt3CoのORR活性は、例えば、0.9~1.2(mA/cm-2)とされる。
【0029】
遷移金属がFeである場合、面方位(111)のPt3FeのORR活性は、例えば、27.4~37.2(mA/cm-2)とされる。また、面方位(110)のPt3FeのORR活性は、例えば、4.0~5.4(mA/cm-2)とされる。また、面方位(100)のPt3CoのORR活性は、例えば、0.6~1.2(mA/cm-2)とされる。
【0030】
Pt合金単結晶におけるORR活性の測定は、例えば、後述する試験例1に記載の方法に準じて実施することができる。
【0031】
また、本開示の一実施態様によれば、以下の[1]~[9]が提供される。
[1]Fe、NiおよびCoから選択される遷移金属により少なくとも一部が被覆されたPt単結晶コアを準備する工程、および
上記Pt単結晶コアと上記遷移金属とを溶融固化してPt合金単結晶を得る工程
を含んでなる、Pt合金単結晶の製造方法。
[2]上記遷移金属が、NiおよびCoから選択される、[1]に記載の方法。
[3]上記遷移金属がNiである、[1]または[2]に記載の方法。
[4]上記Pt単結晶と、上記遷移金属との物質量比(Pt/遷移金属)が、91/9~65/35である、[1]または[2]に記載の方法。
[5]上記Pt単結晶と、上記遷移金属との物質量比(Pt/遷移金属)が3/1である、[4]に記載の方法。
[6]上記遷移金属が線状である、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]上記遷移金属が上記Pt単結晶コアの外周に巻き付くことにより上記Pt単結晶コアを被覆する、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]上記Pt単結晶コアと上記遷移金属との溶融が、アルゴンおよび/または水素の存在下で実施される、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9][1]~[8]のいずれかに記載の方法により得られる、Pt合金単結晶。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定して解釈されるものではない。なお、特段の記載がない限り、本明細書における単位および測定方法はJIS(日本工業規格)に記載に従う。
【0033】
試験例1
<試験サンプルの製造>
参考例1-1:Pt単結晶
Clavilierらの方法(J. Electroanal. Chem. 107, 205-209 (1980))に従い、Pt線からPt単結晶コアを製造した。具体的には、水素/酸素炎のバーナーを用いてPt線の端部が直径3mm程度の球状部になるまで溶融した。その後、融線(溶融部位と非溶融部位の境界)の位置が球状の溶融物の端部付近になるまで5分間溶融を継続した。その後、バーナーを5分間かけてゆっくりと溶融物から離すことにより固化させ、球状のPt単結晶コア(直径約3mm)を得た。
【0034】
参考例1-2:Pt
3
Ni単結晶
非特許文献1の記載に従い、Pt
3Ni線からPt
3Ni単結晶コアを製造した。
図1は、参考例1-2のPt
3Ni単結晶の製造方法の模式図である。具体的には、
図1に示される通り、Ar/H
2(95%/5%)を流通させた管に直径1mmのPt
3Ni線1を入れて誘導加熱炉(HOTSHOT 3.5,Alonics)に設置し(A工程)、Pt
3Ni線の端部が直径3mm程度の球状になるまで溶融した(B工程)。その後、融線(溶融部位と非溶融部位の境界)の位置が球状の溶融物の端部付近になるまで20分間溶融を継続した(C工程)。その後、溶融物を40分間かけて室温まで冷却することにより固化させ(D工程)、球状のPt
3Ni単結晶2(直径約3mm)を得た。
【0035】
例1:Pt
3
Ni単結晶
参考例1の記載に従い、Pt線の端部に結合したPt単結晶コアを製造した。次に、
図2に示される通り、Pt単結晶コア3に対して物質量比1/3のNi線4を巻き付け(A工程)、Ar/H
2(95%/5%)を流通させた管に入れて誘導加熱炉(HOTSHOT 3.5,Alonics)に設置し、Pt
3Ni線の端部が直径3mm程度の球状になるまで溶融した(B工程)。その後、融線(溶融部位と非溶融部位の境界)の位置が球状の溶融物の付け根付近になるまで20分間溶融を継続した(C工程)。その後、溶融物を40分間かけて室温で静置することにより固化させ(D工程)、球状のPt
3Ni単結晶(直径約3mm)を得た。
【0036】
<機械研磨>
参考例1-1のPt単結晶、参考例1-2のPt3Ni単結晶および例1のPt3Ni単結晶について、背面反射ラウエ法(Back-reflection Laue method)を用いて結晶の面方位を(111)、(110)、(100)方向に合わせた後、ダイヤモンドスラリーを用いて鏡面になるまで機械的に研磨した。機械研磨によって生じた研磨歪を誘導加熱炉でAr/H2(95%/5%)雰囲気下1600℃のアニールにより取り除いた後、室温まで冷却した。
【0037】
<ORR活性評価>
参考例1-1のPt単結晶、参考例1-2のPt3Ni単結晶および例1のPt3Ni単結晶について電極表面を超純水で保護した後、電気化学セルに移した。次に、電気化学分析装置(ALS 701CH;BAS社製)と回転リングディスク電極装置(RRDE-3;BAS社製)を用いて、ハンギングメニスカス回転ディスク電極構成にてサイクリックボルタモグラム(CV)およびリニアスイープボルタモグラム(LSV)を測定した(0.1M HClO4中、走査速度0.01Vs-1)。LSVはO2飽和溶液中で、回転速度1600rpmで正方向に0.05V(可逆水素電極-RHE)から1.0V(RHE)まで測定した。ORR活性は,Koutecky-Levich式を用いて0.90V(RHE)での面積比活性jk(mA/cm-2)で評価した。
【0038】
結果は、表1に示される通りであった。
【0039】
【0040】
表1に示される通り、例1のPt3Ni単結晶は、参考例1-1および参考例1-2のPt単結晶より、ORR活性が向上していた。また、例1のORR活性はPt3Co(100)<Pt3Co(110)<Pt3Co(111)の順に増大した。
【0041】
特に、例1の面方位(111)において、例1のPt3Ni単結晶では、参考例1-1のPt単結晶と比較してORR活性が50倍程度向上しており、参考例1-2のPt3Ni単結晶と比較してORR活性が10倍程度向上していた。上記結果から、例1の方法によれば、参考例1-2の従来の方法よりも触媒を製造する際のPtの使用量を大幅に削減することができることが確認された。
【0042】
また、上記実験は複数回繰り返したところ、参考例1-2のPt3Ni単結晶はORR活性評価の結果は、例1の結果と比較してバラつきが多かった。例1の方法は、参考例1-2の方法と比較して安定性が高いことが確認された。
【0043】
試験例2
<試験サンプルの製造>
参考例2
Pt単結晶コアに空気中で水素/酸素炎を使ってCo線を継ぎ足し、球状のPt3Co単結晶ビーズ(直径約3mm)を得た。
【0044】
例2
Ni線に代えてCo線を用いる以外、例1と同様にして、球状のPt3Co単結晶ビーズ(直径約3mm)を得た。
【0045】
参考例2および例2を用いて試験例1と同様の実験を行った。結果は、表2に示される通りであった。
【0046】
【0047】
表2に示される通り、例2のPt3Co単結晶は、参考例2のPt3Co単結晶より、ORR活性が向上していた。また、例2のORR活性はPt3Co(100)<Pt3Co(110)<Pt3Co(111)の順に増大する一方、参考例2のORR活性はPt3Co(100)<Pt3Co(111)<Pt3Co(110)であった。
【0048】
特に、面方位(111)において、例2のPt3Co単結晶では、参考例2のPt3Co単結晶と比較してORR活性が12倍程度向上していた。また、面方位(110)において、例2のPt3Co単結晶は、参考例2のPt3Co単結晶と比較してORR活性が3.4倍程度向上していた。上記結果から、例2の方法によれば、参考例2の従来の方法よりも触媒を製造する際のPtの使用量を大幅に削減することができることが確認された。
【0049】
試験例3
<試験サンプルの製造>
参考例3
Pt単結晶コアに窒素ガスを満たしたグローブボックス中で水素/酸素炎を使ってFe線を継ぎ足し、球状のPt3Fe単結晶ビーズ(直径約3mm)を得た。
【0050】
例3
Ni線に代えてFe線を用いる以外、例1の方法と同様にして、球状のPt3Fe単結晶ビーズ(直径約3mm)を得た。結果は、表3に示される通りであった。
【0051】
【0052】
表3に示される通り、例3のPt3Fe単結晶は、参考例3のPt3Fe単結晶より、ORR活性が向上していた。また、例2のORR活性はPt3Fe(110)<Pt3Fe(111)の順に増大した。
【0053】
特に、面方位(111)および(110)において、例2のPt3Fe単結晶では、参考例2のPt3Fe単結晶と比較してORR活性が向上していた。上記結果から、例3の方法によれば、参考例3の従来の方法よりも触媒を製造する際のPtの使用量を大幅に削減することができることが確認された。