(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105138
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】広告情報提供システム及び広告情報提供方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0251 20230101AFI20240730BHJP
【FI】
G06Q30/0251
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009717
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】514235307
【氏名又は名称】アニコム ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】山本 芙美子
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB08
5L049BB08
(57)【要約】
【課題】簡易な方法で、個々の愛玩動物に適した広告を提供できる広告情報提供システム及び広告情報提供方法を開示することを目的とする。
【解決手段】広告情報が記憶されているデータベースと、愛玩動物の遺伝情報に基づいて、当該愛玩動物に合わせた広告情報を選定する広告情報選定手段と、を備える広告情報提供システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広告情報が記憶されているデータベースと、
愛玩動物の遺伝情報に基づいて、当該愛玩動物に合わせた広告情報を選定する広告情報選定手段と、
を備える広告情報提供システム。
【請求項2】
前記データベースに愛玩動物の遺伝情報が記憶されているか、又は、愛玩動物の遺伝情報が記憶されているデータベースを別途備える請求項1記載の広告情報提供システム。
【請求項3】
さらに、愛玩動物の遺伝情報の受付手段を備える請求項1記載の広告情報提供システム。
【請求項4】
前記データベースに愛玩動物の基礎情報が記憶されているか、又は、愛玩動物の基礎情報が記憶されているデータベースを別途備える請求項1記載の広告情報提供システム。
【請求項5】
愛玩動物の基礎情報の変化に基づいて、広告情報を修正する修正手段をさらに備える請求項4記載の広告情報提供システム。
【請求項6】
前記遺伝情報が、性格に関連する遺伝子又は疾患罹患可能性に関連する遺伝子についての情報を含む請求項1記載の広告情報提供システム。
【請求項7】
前記愛玩動物に合わせた広告情報が、愛玩動物の遺伝情報から予測されるニーズに対応した広告情報である請求項1記載の広告情報提供システム。
【請求項8】
前記遺伝情報が、遺伝子配列、SNP又は遺伝子の発現情報を含む請求項1記載の広告情報提供システム。
【請求項9】
前記広告情報が、アプリ内で配信される広告のための情報、ウェブブラウザ上に表示される広告のための情報、或いは、SNS又はメールで配信される広告のための情報である請求項1~8のいずれか一項記載の広告情報提供システム。
【請求項10】
コンピュータを用いて、
愛玩動物の遺伝情報に基づいて、当該愛玩動物に合わせた広告情報を選定する広告情報選定ステップ、
を備える広告情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告情報提供システム及び広告情報提供方法に関し、詳しくは、動物の遺伝情報に基づいて動物に適した広告情報を提供する広告情報提供システム及び広告情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫、ウサギを始めとする愛玩動物、牛や豚を始めとする家畜は、人間にとってかけがえのない存在である。近年、人間が飼育する動物の平均寿命が大幅に伸びたり、愛玩動物が家族同様に扱われるようになったりしている。
【0003】
そのため、飼育する動物の健康やクオリティオブライフなどに関連するような商品やサービスなどに関心が高まっている。
【0004】
一方で、動物は、体質、性格、状態、飼育環境などが、個体ごとに異なっており、ある商品やサービスが、ある個体には有用であっても、別の個体には不必要なものであることが多い。
【0005】
動物の飼育者が、商品やサービス、或いは、動物病院などを選択するにあたっては、それらの広告を参考にすることがある。しかしながら、動物向けの商品やサービスの広告がやみくもに飼育者に提供されたとしても、飼育者としては、自分の飼育している動物個体に適した商品やサービスの広告であるのかが判断がつかない。また、必要としていない商品やサービスの広告が配信され続けると飼育者が、当該商品やサービスに嫌悪感を抱いてしまうこともある。
【0006】
そこで、個々の動物に対応した広告の提供が求められている。
【0007】
特許文献1には、ペットにとって適切な商品を利用者に提案する情報処理装置が開示されている。
【0008】
特許文献1に記載されている情報処理装置は、年齢、性別、体重、ボディコンディショニングスコア等のペットの属性に関する属性情報と、ペットが摂取したものに関する摂取情報とに基づいて、利用者へ商品情報を提供する。
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されている発明は、遺伝的に発現する可能性が高いものの、まだ顕在化していない性格や疾患を抱えた愛玩動物及び当該愛玩動物の飼い主に対する広告としては未だ改善の余地があるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、簡易な方法で、個々の動物に適した広告を提供できる広告情報提供システム及び広告情報提供方法を開示することを目的とする。
【0012】
本発明者は、動物の遺伝情報に基づいて広告情報を提供することで、愛玩動物及び当該愛玩動物の飼い主に対して適切な広告を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は以下の[1]から[10]である。
[1]広告情報が記憶されているデータベースと、愛玩動物の遺伝情報に基づいて、当該愛玩動物に合わせた広告情報を選定する広告情報選定手段と、を備える広告情報提供システム。
[2]前記データベースに愛玩動物の遺伝情報が記憶されているか、又は、愛玩動物の遺伝情報が記憶されているデータベースを別途備える[1]の広告情報提供システム。
[3]さらに、愛玩動物の遺伝情報の受付手段を備える[1]の広告情報提供システム。
[4]前記データベースに愛玩動物の基礎情報が記憶されているか、又は、愛玩動物の基礎情報が記憶されているデータベースを別途備える[1]の広告情報提供システム。
[5]愛玩動物の基礎情報の変化に基づいて、広告情報を修正する修正手段をさらに備える[4]の広告情報提供システム。
[6]前記遺伝情報が、性格に関連する遺伝子又は疾患罹患可能性に関連する遺伝子についての情報を含む[1]の広告情報提供システム。
[7]前記愛玩動物に合わせた広告情報が、愛玩動物の遺伝情報から予測されるニーズに対応した広告情報である[1]の広告情報提供システム。
[8]前記遺伝情報が、遺伝子配列、SNP又は遺伝子の発現情報を含む[1]の広告情報提供システム。
[9]前記広告情報が、アプリ内で配信される広告のための情報、ウェブブラウザ上に表示される広告のための情報、或いは、SNS又はメールで配信される広告のための情報である[1]~[8]のいずれかの広告情報提供システム。
[10]コンピュータを用いて、愛玩動物の遺伝情報に基づいて、当該愛玩動物に合わせた広告情報を選定する広告情報選定ステップ、を備える広告情報提供方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、愛玩動物及び当該愛玩動物の飼い主に対して適切な広告情報の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の広告情報提供システムの一実施形態を示す構成図である。
【
図2】本発明の広告情報提供システムの流れの一例を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<広告情報提供システム>
本発明の広告情報提供システムは、広告情報が記憶されているデータベースと、愛玩動物の遺伝情報に基づいて、当該愛玩動物に合わせた広告情報を選定する広告情報選定手段とを備えることを特徴とするものである。これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または記憶媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または記憶媒体の任意の組み合わせで実現されてもよい。また、本発明の広告情報提供システムは、上記構成を備えていればよく、アプリ内広告配信システム、ウェブ広告配信システム、メール送信サーバなど他の公知の広告配信システムと組み合わされたり、接続されたりすることも可能である。
【0017】
[システムの概要]
図1は、本開示の一実施形態に係る広告情報提供システムの概要を説明する図である。愛玩動物としては、犬、猫、ウサギ、鳥、爬虫類、両生類が挙げられ、犬、猫、ウサギがさらに好ましい。
図1中、端末40は、広告情報提供システムを利用して飼い主に広告を提供したい者(広告主)が利用する端末であり、端末50は、広告情報提供システムにより提供される情報を閲覧する者(飼い主)の端末である。広告主の端末40及び飼い主の端末50は、インターネット等によってサーバ10と接続されている。広告主の端末40及び飼い主の端末50は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォンやタブレット端末などが挙げられ、CPUなどの処理部、ハードディスク、ROMあるいはRAMなどの記憶部、液晶パネルなどの表示部、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力部、ネットワークアダプタなどの通信部などを含んで構成される。飼い主は端末50を介して、サーバ10(受付手段31)にアクセスし、少なくとも遺伝情報を送信する。また、必要に応じて当該動物の基礎情報(品種、年齢、性別、体格、避妊手術歴、去勢手術歴、体温、脈拍、心拍数、呼吸数、血圧、生活リズム等)を送信する。
【0018】
本実施形態において、サーバ10はコンピュータによって構成されるが、本発明にかかる機能を有する限りにおいて、どのような装置であってもよい。記憶部は、例えばROM、RAMあるいはハードディスクなどから構成される。
図1においては、記憶部に遺伝情報データベース(以下「DB」と省略することがある)11及び広告情報DB12が構築され、広告情報選定手段13の実行プログラムが記憶されている。なお、遺伝情報DB11には、遺伝情報だけでなく、基礎情報に関する情報が書き込まれていてもよい。また、遺伝情報DBを備えずに、飼い主から、随時遺伝情報を受け付ける構成であってもよく、遺伝情報DBが、サーバ10とは別のサーバ内に格納されている構成であってもよい。
【0019】
データベースは、データベースサーバの形で管理してもよく、クラウドサーバ上で管理してもよく、分散データベースとしてもよい。また、データベースに情報を書き込む方法には特に限定はなく、システム運営者がデータベースに直接情報を書き込む方法、受付手段を介して情報を書き込む方法、記憶媒体を用いてデータベースに情報を書き込む方法等を適宜選択することができる。
【0020】
広告情選定供手段13は、愛玩動物の遺伝情報に基づいて、当該愛玩動物に合わせた広告情報を選定するプログラムであり、処理演算部20(CPU)によって実行される。なお、広告情報選定手段13によって選定された広告を、広告主が取捨選択して飼い主に通知・送信する仕様としてもよいし、自動的に飼い主に通知・送信する仕様としてもよい。
【0021】
図1では、受付手段31や広告情報選定手段13がサーバ上に形成され、インターネットやLAN等のネットワークを介して広告主端末40や飼い主端末50と接続される態様を説明したが、本発明はこれに限定されない。具体的には、広告主が端末40を使用せずに、システム運営者に業務を委託する態様や、広告情報選定手段13によって選定された広告情報を電子メール等で通知するのではなく、チラシに印刷してから郵便で送達する態様などが考えられる。
【0022】
また、本実施形態において修正手段14を有していてもよい。修正手段14は、愛玩動物の基礎情報に基づいて、広告情報を修正するプログラムである。遺伝情報だけでなく、基礎情報を考慮することで、より適切な広告情報を提供することが可能になる。なお、
図1においては、基礎情報は遺伝情報DB11に遺伝情報と共に書き込まれている態様を説明しているが、別途、基礎情報DBを設けてもよい。また、基礎情報は、サーバ10とは別のサーバ内に記憶されていてもよい。
【0023】
本発明の広告情報提供システムの一実施形態に基づく情報提供のフローチャートを
図2に示す。端末を介して、飼い主又はその代理人(検査会社等)が遺伝性情報をデータベースに登録する(ステップS1)。データベースに登録されている広告情報と遺伝情報に基づいて、広告情報選定手段が適切な広告を選定する(ステップS2)。出力手段を介して、飼い主へ広告を送付する(ステップS3)。
【0024】
[広告主]
広告主は、愛玩動物に関する商品を販売する企業、ペット保険を販売する保険会社及び代理店、並びに獣医師、動物看護士等の獣医療従事者及び動物病院など、愛玩動物の飼い主に対して商品やサービスの広告情報の提供を希望する者である。例えば、動物病院は全科診療が基本であるが、専門的な技術をもった獣医師や医療器具を保有しており、当該情報を飼い主にアピールしたいという要望がある。
【0025】
図1において広告主は、端末40を通じて情報のやり取りを行う。
【0026】
[飼い主]
飼い主には、愛玩動物を所有、管理若しくは飼育する者だけでなく、愛玩動物の飼育を検討する者や、システム運営者との遣り取りについて愛玩動物の所有者等から代理を委託された者が含まれる。
【0027】
図1において飼い主は、端末50を通じて情報のやり取りを行う。
【0028】
[遺伝情報]
遺伝情報は、動物の遺伝子に関する情報である。遺伝情報としては、例えば、遺伝子配列、SNP又は遺伝子の発現情報が挙げられる。また、遺伝情報は、遺伝子から推測される形質に関する2次的な情報であってもよい。例えば、ある遺伝子を有する動物は、肥満傾向が高い、或いは、肥満傾向が低いという場合、”遺伝子情報によると肥満傾向が高い”という情報を遺伝情報として用いることもできる。この場合、本発明の広告情報提供システムが、遺伝子に関する1次情報(例えば、遺伝子配列、SNP、遺伝子の発現情報など)から、2次情報(例えば、肥満傾向が高い、攻撃性が高い、疾患の罹患傾向が高い、等)を生成する遺伝形質分類手段を備えることが好ましい。又は、遺伝形質分類手段を備えずに、予め生成された2次情報を受け付けて、遺伝情報として使用するという構成であってもよい。
遺伝情報としては、動物の性格に関連する遺伝情報、疾患罹患可能性に関連する遺伝情報が好ましい。動物の性格に関連する遺伝情報としては、例えば、動物の性格決定に影響がある遺伝子の配列、SNP、当該遺伝子の有無、当該遺伝子の発現量などが挙げられる。疾患罹患可能性に関連する遺伝情報としては、ある疾患の罹患可能性に相関のある又は原因となる遺伝子の配列、SNP、当該遺伝子の有無、当該遺伝子の発現量などが挙げられる。疾患罹患可能性に相関のある又は原因となる遺伝子としては、例えば、特定の遺伝子に変異が存在すると特定の疾患に罹患しやすくなる、あるいは、罹患しにくくなるという遺伝子、あるいは特定の配列であると特定の疾患に罹患しやすくなる、あるいは罹患しにくくなるという遺伝子が挙げられる。
愛玩動物の性格や将来罹患する可能性のある疾患に関する情報に基づいて広告情報を選定することで、行動の観察だけでは特定することのできない其々の愛玩動物に適した広告を提供できる。
【0029】
(性格)
性格とは、例えば、その動物個体の性向や、行動のしかたなどに現れる性質のことをいう。人間の場合、性格とは考え方や感受性といった内面的なものを含むが、動物の場合、内面的なものを把握することが難しいので、行動面に現れる性向や性質が好ましい。
【0030】
性格の種類としては、特に限定されない。例えば、人懐っこさ(人懐っこい/人懐っこくない)、大人しさ(大人しい/活発)、神経質さ(神経質/大らか)、社交性(社交的/内向的)、勇敢さ(臆病/勇敢)、柔軟性(頑固/柔軟)、レジリエンス(ひきずりやすい/切り替えが早い)、積極性(引っ込み事案/積極的)、依存性(甘えんぼう/独立心旺盛)、気の強さ(気が強い/気が弱い)、攻撃性(攻撃的/攻撃的ではない)、吠えやすさ(吠えやすい/吠えにくい)、我慢強さ(我慢強い/我慢できない)などが挙げられる。
【0031】
動物のうち、犬については、ペンシルバニア大学のサーペルが開発した犬の行動解析システムであるC-barq(Canine Behavioral Assessment and Research Questionnaire)に関連した13個の社会性に関する行動特性(気質)の項目が知られており、性格としてこれを用いることもできる。C-barqの行動特性は、環境省の委託を受けて日本獣医師会が実施した「平成28年度犬猫幼齢個体を親兄弟から引き離す理想的な時期に関する調査手法等検討業務」でも用いられている。13個の行動特性の項目とは、攻撃性、恐怖性、分離不安、接触過敏性、訓練生、追跡能力、興奮性、愛着行動、運動活性である。
【0032】
また本発明における性格は、上記のようなもの限らず、盲導犬に適しているかどうかというような、単に使役動物等の適合度を示すものであってもよい。
【0033】
(疾患)
遺伝子から疾患罹患可能性に関する遺伝情報を用いて広告を配信することができれば、その疾患を予防できるような広告情報を提供することができる。
【0034】
動物、例えば、犬の遺伝病(遺伝性疾患)としては、例えば、がん、進行性網膜萎縮症(PRA)、遺伝性白内障、コリー眼異常(CEA)、フォンビルブランド病(vWD)関連遺伝子、イベルメクチン感受性(MDR1遺伝子)、銅蓄積性肝障害、シスチン尿症、骨形成不全症、X染色体連鎖筋ジストロフィー、先天性筋緊張症(電位依存性塩素イオンチャネル遺伝子の変異)、ナルコレプシー(オレキシン関連遺伝子の変異)、重症複合免疫不全症、白血球粘着不全症(CLAD)、周期性好中球減少症(グレーコリー症候群)、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、ピルビン酸キナーゼ欠損症、ライソゾーム病といった疾患が知られている。
【0035】
猫の遺伝性疾患としては、例えば、骨軟骨異形成症、多発性嚢胞腎症、肥大型心筋症、グリコーゲン貯蔵病(糖原病)、ピルビン酸キナーゼ欠損症、進行性網膜萎縮症、脊髄性筋萎縮症が挙げられる。
【0036】
[基礎情報]
動物の基礎情報とは、動物の血統、生育歴、外観や身体に関する項目など、当該動物に関する基本的な情報である。例えば、品種、年齢、性別、体格、避妊手術歴、去勢手術歴、疾患に罹患した際の通院や手術歴、体温、脈拍、心拍数、呼吸数、血圧、排尿・排便回数、生活リズム等の項目が挙げられる。
【0037】
[広告情報]
広告情報とは、愛玩動物の性格又は将来罹患する可能性のある疾患に対応した商品又はサービスの広告に関する情報である。広告情報は、アプリ、ウェブブラウザ、メール、SNSといった公知のメディアにおいて所定の広告を表示するためのアルゴリズム、アプリケーション、ソフトウェア又はプログラムであってもよい。広告情報の記憶態様には特に制限はなく、データベースに、広告を配信ないし表示するためのプログラム等を格納していてもよく、広告対象となる商品・サービスの内容を保存してもよいし、商品・サービスの詳細が記載されているURLの情報を保存していてもよい。
広告情報の具体例として、例えば、ストレスを軽減させる機能のあるテアニンやGABA(γ-アミノ酪酸)を含むフード、低カロリーフード、低糖質フード、高タンパク質フードなどの機能性フードやサプリメント、特定の疾患の治療に優れた動物病院・獣医の広告や情報等が該当する。また、さらに、特定の遺伝情報をもつ愛玩動物の通院手術履歴、フード消費履歴等を広告情報としてデータベースに記憶しておき、当該遺伝情報その中から最適な広告情報を選択、提供するという構成であってもよい。
広告情報は、広告情報が、愛玩動物の遺伝情報から予測されるニーズに対応した広告情報であることが好ましい。
【0038】
[広告情報選定手段]
本発明の情報提供システムは、対象となる動物の遺伝情報が入力されると、その動物の遺伝情報に基づいて、当該動物に関連する広告情報を提案する。例えば、遺伝情報として、「ストレスによって暴れやすい」という情報が登録された場合に、ストレス軽減作用のあるテアニン・GABA配合フードが提案される。
具体的な選定のアルゴリズムとして、例えば、広告情報に予め特定の遺伝情報に対応したタグを付したうえで広告情報を記憶しておき、広告情報選定手段が、ある遺伝情報を受け取ったときに、その遺伝情報に対応したタグを有する広告情報を選定する手法が挙げられる。
例えば、低カロリーフードに関する広告情報をデータベースに記憶する場合、タグとして、「肥満」、「カロリー制限」といったタグを付しておく。そして、飼い主又は飼い主から委託を受けた遺伝子配列解析サービス業者が、本発明のシステムに、飼育している動物の遺伝情報(肥満遺伝子に関する遺伝子配列などを含む)をアップロードすると、広告情報選定手段が、当該遺伝情報に応じて、「肥満」のタグが付された広告情報をデータベースから探索、選定する。選定された広告情報が、インターネットを介して、飼い主の端末に配信され、飼い主が、本発明のシステムと連動したアプリを立ち上げた際や、プッシュ通信により、飼い主の端末に当該広告情報に基づいた広告が表示される。
【0039】
[修正手段]
本発明の広告情報提供システムは、修正手段を備えていてもよい。動物の基礎情報、特に、年齢、バイタル情報(体温、脈拍、心拍数、呼吸数、血圧等)、排尿・排便回数、生活リズムは日々変動する。そこで、基礎情報の変化に応じて、広告情報を修正する修正手段を設けることによって、其々の愛玩動物に適した広告情報を常に提供できる態様とすることが好ましい。
【0040】
また、動物の基礎情報が変更する度に、広告主に判断を求めるのは広告主の負担が大きいため、当該修正手段は、広告情報が修正されると自動的に飼い主にメール等で通知する機能を備えていてもよい。
【0041】
[受付手段]
本発明の広告情報提供システムは、受付手段を備えていてもよい。受付手段は、例えば、遺伝情報及び広告情報を受け付ける。その他にも、遺伝情報以外から得られる基礎情報(品種、年齢、性別、体格、避妊手術歴、去勢手術歴、体温、脈拍、心拍数、呼吸数、血圧、生活リズムなど)を受け付けてもよく、広告主が動物病院の場合は、カルテ情報を入力することもできる。さらに、飼い主の過去の購入履歴を受け付け、データベース等に格納することもできる。
【0042】
[出力手段]
本発明の広告情報提供システムは、出力手段を備えていてもよい。出力手段は、広告情報提供手段によって、提供された広告情報を広告主もしくは飼い主の端末に出力、送信する。本発明の広告情報提供手段による出力の形式は特に限定されず、例えば、パソコンやスマートフォンなどの端末の画面において、商品をリスト化したものを出力する方法が挙げられる。また商品を提供する企業のホームページのURLを表示してもよい。
【0043】
(広告情報提供システムの実施形態例)
(1)小売業者
広告主が、ウェブサイト等のインターネット上でペットフードを販売する小売業者である場合の本発明の広告情報提供システムの実施形態の一例を示す。
【0044】
広告主(L社)は、広告主端末を介して「ストレスを軽減して行動を落ち着かせるGABA入りペットフード(ドライ)」、「整腸作用に有効な水溶性食物繊維入りペットフード(ドライ)」、「食付きのいいジビエ(鹿)を用いたペットフード(ウェット)」についての広告を表示するためのプログラムを、それぞれ「問題行動」、「整腸」、「嗜好性」のタグを付してデータベースに登録する。同様に、M社は「ストレスを軽減し、行動を落ち着かせるテアニン入りペットフード(ドライ)」を「問題行動」のタグを付し、N社は「噛みおもちゃ」についての広告を表示するためのプログラムを「ストレス」のタグを付してデータベースに登録する。これらの情報には、原料及び栄養成分の他、給餌の対象となる愛玩動物の種や年齢、価格、郵送方法、在庫、パッケージデザイン(画像、動画)、製品コンセプト等を含む広告を表示するためのプログラムが含まれており、特にM社の「ストレスを軽減し、行動を落ち着かせるテアニン入りのペットフード(ドライ)」については、在庫が無いという情報が追加されている。
【0045】
【0046】
一方、飼い主は、飼い主端末を介して、飼っている犬Aの遺伝情報をデータベースに登録する。具体的には、遺伝子情報解析サービスを利用することによって入手した「犬Aは、5-HTR1B遺伝子の955番目の塩基が、C/CまたはT/C型であり、かつMAOB遺伝子の199番目の塩基がT/Tであるため、一般的に吠えやすい」という遺伝情報を登録する。
【0047】
【0048】
広告情報選定手段は、犬Aが吠えやすいという遺伝情報に基づいて、データベースから当該遺伝情報に対応したタグである「問題行動」、「ストレス」を探索し、「問題行動」のタグが付されたL社の「ストレスを軽減して行動を落ち着かせるGABA入りのペットフード」と「ストレス」のタグが付されたN社の「噛みおもちゃ」を選定する。M社の「ストレスを軽減し、行動を落ち着かせるテアニン入りのペットフード(ドライ)」については、在庫がないという情報が、広告情報に加えられていたため選定されない。
【0049】
出力手段は、L社の「ストレスを軽減して行動を落ち着かせるGABA入りのペットフード」とN社の「噛みおもちゃ」の記事を含む広告メールを、犬Aの飼い主に対して送付する。
【0050】
<広告情報提供方法>
本発明の広告情報提供方法は、コンピュータを用いて、愛玩動物の遺伝情報に基づいて、当該愛玩動物に合わせた広告情報を選定する広告情報選定ステップ、を備えるものである。広告情報選定ステップは、上記の広告情報選定手段に相当する手段を用いるものである。その他の構成についても、上記本発明の広告情報提供システムと同様である。
【0051】
(広告情報提供システムの別の実施形態例)
広告主が、動物病院(X病院)である場合の実施形態を示す。
【0052】
X病院は、広告主端末を介して、飼い主に対して送付するメッセージを広告情報としてデータベースに登録する。具体的には、「(3歳の犬に対して)5歳になると進行性網膜委縮症になりやすい傾向があります。定期的な健康診断をお勧めします」「(5歳の犬に対して)進行性網膜委縮症になりやすい年齢になりました。進行性網膜委縮症の診断ができるX病院で健康診断を受けることをお勧めします。」、「(進行性網膜委縮症を患っている犬に対して)」といった、疾病や年齢に応じたメッセージを登録する。
【0053】
【0054】
一方、0歳の犬B及び犬Cのそれぞれの飼い主からの依頼を受けた遺伝子検査会社Yは、自社端末を介して、犬B及び犬Cの遺伝情報を本発明の広告情報提供システムに接続されたデータベースに登録する。具体的には、「トイプードルであり、且つPRCD遺伝子の115番目の塩基がA/Aであるから、5~8歳になると進行性網膜委縮症に罹患しやすい」という遺伝情報を登録する。一方、それぞれの飼い主は、住所を登録する。住所に基づくX病院との距離は、犬Bの飼い主が3km、犬Cの飼い主が200kmである。
【0055】
広告情報選定手段は、遺伝情報と広告情報に基づいて、表4の通りメッセージを選定する。ここで、犬Cの飼い主は遠方に住んでいる(200km)ため、リスクの小さい3歳の段階ではメッセージを選定せず、リスクの大きい5歳になって初めてメッセージを選定する。そして、出力手段は、各個体が対象となる年齢に達した際に、広告情報選定手段が選定したメッセージを送付する。
【0056】