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特開2024-105139製品検査システムおよび製品検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105139
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】製品検査システムおよび製品検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20240730BHJP
   G01N 21/85 20060101ALI20240730BHJP
   G01N 21/89 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01N21/27 Z
G01N21/85 A
G01N21/89 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009718
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】591040753
【氏名又は名称】東和薬品株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305021292
【氏名又は名称】第一実業ビスウィル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
(72)【発明者】
【氏名】藤本 政弥
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 勝也
(72)【発明者】
【氏名】佐原 純輝
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
【Fターム(参考)】
2G051AA02
2G051AB20
2G051BA06
2G051CB02
2G051CC15
2G051DA06
2G051EA14
2G051EB01
2G059AA05
2G059BB08
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH01
2G059KK01
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】分光分析を用いた製品の良否判定を、より高精度に実現できる技術を提供する。
【解決手段】製品検査システムは、搬送されている製品のスペクトルを測定するスペクトル測定部と、スペクトル測定部により測定された製品のスペクトルデータを機械学習により生成された学習済みモデルに入力することにより得られる出力に基づいて製品の良否を判定する良否判定部44と、を備える。学習済みモデルは、互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータを含む教師データを用いた機械学習により生成される。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されている製品のスペクトルを測定するスペクトル測定部と、
前記スペクトル測定部により測定された前記製品のスペクトルデータを機械学習により生成された学習済みモデルに入力することにより得られる出力に基づいて前記製品の良否を判定する良否判定部と、
を備え、
前記学習済みモデルは、互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータを含む教師データを用いた機械学習により生成される製品検査システム。
【請求項2】
前記学習済みモデルは、特定成分の含有量を出力するように構成される請求項1に記載の製品検査システム。
【請求項3】
前記互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータは、搬送方向に直交する方向における位置が互いに異なる位置で測定されたスペクトルデータを含む請求項1に記載の製品検査システム。
【請求項4】
前記互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータは、基準搬送面に対する高さが互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータを含む請求項1に記載の製品検査システム。
【請求項5】
前記互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータは、搬送方向に見て、基準搬送面に対する角度が互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータを含む請求項1に記載の製品検査システム。
【請求項6】
前記互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータは、搬送方向に直交する方向に見て、基準搬送面に対する角度が互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータを含む請求項1に記載の製品検査システム。
【請求項7】
前記互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータは、製品が非回転対称な形状である場合において、搬送面に垂直な軸周りの向きが互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータを含む請求項1に記載の製品検査システム。
【請求項8】
前記互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータは、製品が割線を有する錠剤である場合において、搬送面に垂直な方向に見て、割線の延在方向が互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータを含む請求項1に記載の製品検査システム。
【請求項9】
前記良否判定部は、さらに前記製品の外観に基づいて、前記製品の良否を判定する請求項1に記載の製品検査システム。
【請求項10】
搬送されている製品のスペクトルを測定するステップと、
測定された前記製品のスペクトルデータを機械学習により生成された学習済みモデルに入力することにより得られる出力に基づいて前記製品の良否を判定するステップと、
を備え、
前記学習済みモデルは、互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータを含む教師データを用いた機械学習により生成される製品検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品検査システムおよび製品検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、分光分析を用いた非破壊分析により製品の良否を高速に判定する技術を開示する。特許文献1によれば、移動している状態の製品のスペクトルを測定し、移動している製品の移動を止めることなくその良否を判定できるため、製品の良否判定を高スループットで実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-159971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より高い精度で製品を良否判定できるに越したことはない。本発明者達は、鋭意検討を重ね、分光分析を用いた製品の良否判定を、より高精度に実現できる技術に想到した。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、分光分析を用いた製品の良否判定を、より高精度に実現できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の製品検査システムは、搬送されている製品のスペクトルを測定するスペクトル測定部と、スペクトル測定部により測定された製品のスペクトルデータを機械学習により生成された学習済みモデルに入力することにより得られる出力に基づいて製品の良否を判定する良否判定部と、を備える。学習済みモデルは、互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータを含む教師データを用いた機械学習により生成される。
【0007】
本発明の別の態様は、製品検査方法である。この方法は、搬送されている製品のスペクトルを測定するステップと、測定された前記製品のスペクトルデータを機械学習により生成された学習済みモデルに入力することにより得られる出力に基づいて前記製品の良否を判定するステップと、を備える。学習済みモデルは、互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータを含む教師データを用いた機械学習により生成される。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分光分析を用いた製品の良否判定を、より高精度に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る製品検査システムの構成を示す図である。
図2図1の搬送機構が錠剤を搬送する様子を示す斜視図である。
図3図1の治具の使用時の様子を示す図である。
図4図1の搬送機構における錠剤の姿勢について説明する図である。
図5図1の搬送機構における錠剤の姿勢について説明する図である。
図6図1の搬送機構における錠剤の姿勢について説明する図である。
図7図1の搬送機構における錠剤の姿勢について説明する図である。
図8図1の搬送機構における錠剤の姿勢について説明する図である。
図9図1の搬送機構における錠剤の姿勢について説明する図である。
図10図1の搬送機構における錠剤の姿勢について説明する図である。
図11図1の製品検査システムの制御系を示すブロック図である。
図12】準備フェーズの動作を説明するフロー図である。
図13】検査フェーズにおける良否判定の動作を説明するフロー図である。
図14】変形例に係る製品検査システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態の製品検査システムは、分光分析により製品のスペクトルを測定し、それを学習済みモデル(検量モデル)に入力して製品の特定成分の含有量を推定し、推定した特定成分の含有量に基づいて製品の良否を判定する。「学習済みモデル」は、機械学習による学習済みのモデルであって、製品のスペクトルデータを入力すると、その製品に含まれる特定成分の含有量を推定(出力)するように学習された学習済みのモデルである。「特定成分」は、製品に含まれる特定の成分であり、特に限定されないが、製品の品質に最も影響を与える成分であってもよいし、その製品において最も含有量が多い成分であってもよい。
【0012】
製品検査システムでは、製品の良否を高速に(例えば1製品あたり10ミリ秒以下で)検査するために、搬送機構により搬送されて移動している製品に光を照射して、すなわち製品の移動を止めることなく、そのスペクトルを測定する。
【0013】
しかしながら、搬送機構に高速に製品を並べるため、その並べ方にもよるが、並べられた製品の姿勢は製品ごとで異なりうる。
【0014】
また、搬送機構は使用により経年変化する。例えば搬送機構が搬送ベルトを含む場合に搬送ベルトは使用により経年変化で伸びて撓む。したがって、時間の経過とともに搬送機構上における製品の姿勢は異なりうる。
【0015】
搬送機構上における製品の姿勢が異なれば、スペクトルを測定する測定部に対する製品の姿勢も異なるため、測定されるスペクトルに影響が生じ、学習済みモデルによる特定成分の含有量の推定精度、ひいては良否判定の精度に影響が生じる。
【0016】
そこで本実施の形態では、スペクトルを測定する際の製品の姿勢が製品ごとあるいは時間経過で異なりうることをあらかじめ考慮した学習済みモデルを生成する。これにより、より高精度に製品の特定成分の含有量を推定し、高スループット、かつ、より高精度な良否判定を実現できる。
【0017】
より詳しくは製品検査システムは、「準備フェーズ」において、特定成分の含有量が既知である製品について、意図的に種々の姿勢でスペクトルを測定し、それらを教師(学習用)データとして用いて学習済みモデルを生成する。製品検査システムは、「検査フェーズ」において、搬送機構に搬送されて移動している製品のスペクトルを移動を止めることなく測定し、それを準備フェーズにおいて生成した学習済みモデルに入力して製品の特定成分の含有量を推定し、その良否を判定する。
【0018】
以下では、製品が錠剤である場合を例示する。錠剤は、典型的には薬、特に医薬品であるが、これには限定されず、例えば、健康食品やサプリメントであってもよい。
【0019】
なお製品は、固相であって、特定成分の含有量が品質に影響を与えるものであればよく、錠剤とは別の製品であってもよい。この場合、矛盾しない限りにおいて後述の技術思想を当該他の製品に適用でき、したがって後述の説明における「錠剤」を当該他の製品に読み替えればよい。
【0020】
図1は、実施の形態に係る製品検査システム1の構成を示す図である。製品検査システム1は、スペクトル測定部10と、搬送機構12と、系外排除装置14と、治具16と、情報処理装置18と、を備える。
【0021】
スペクトル測定部10は、錠剤Tに光を照射し、その透過光のスペクトルを測定する。スペクトル測定部10は、準備フェーズにおいて、図3を参照して後述するように治具16に保持されている錠剤Tのスペクトルを測定する。この錠剤Tは、特定成分の含有量が既知の錠剤であり、サンプル錠剤Tとも呼ぶ。また、スペクトル測定部10は、検査フェーズにおいて、図1に示すように搬送機構12により次々に搬送される錠剤Tのスペクトルをその移動を止めることなく測定する。これらの錠剤Tは、特定成分の含有量が未知である検査対象の錠剤である。
【0022】
スペクトル測定部10は、照射部20と、受光部22と、を含む。照射部20は、測定光L1を錠剤に照射する。受光部22は、照射部20が錠剤Tに測定光L1を照射したときの錠剤Tからの透過光L2を受光(検出)する。
【0023】
照射部20と受光部22の一例について以下説明する。照射部20と受光部22が以下の構成に限定されないことは言うまでもない。照射部20は、広帯域のパルス光源と出射されたパルス光のパルス幅を1パルスにおける波長と経過時間との関係が1対1となるように伸長させるパルス伸長素子を備えてもよい。パルス伸長素子は、パルス光源から出射されたパルス光を波長に応じて空間的に分割するアレイ導波路回折格子と、アレイ導波路回折格子が分割する波長の数に応じた数の複数のファイバと、を備えてもよい。
【0024】
図1に戻る。測定光L1は、錠剤Tの第1面(図1の下面)に照射され、錠剤Tを透過し、その第2面(上面)から透過光(以下、物体光ともいう)L2として放射される。測定光L1のスペクトルをIL1(λ)、物体光L2の波長依存性を有する透過率X(λ)とするとき、物体光L2のスペクトルIL2(λ)は、以下の式(1)で表される。
L2(λ)=X(λ)×IL1(λ) ・・・(1)
【0025】
受光部22は、搬送機構12を挟んで照射部20と反対側に設けられており、錠剤Tの第2面から放射される拡散透過光を検出する。受光部22は、錠剤Tの拡散透過光を物体光L2として検出する光検出器を含む。受光部22は、光検出器に加えて、A/Dコンバータや集光光学系などを含みうるが、図1では省略している。光検出器は、光信号を電気信号に変換する光電変換素子であり、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、フォトトランジスタ、光電効果を利用した光電子増倍管(フォトマル)や光照射による電気抵抗変化を利用した光電導素子などが例示される。
【0026】
スペクトル測定部10は、受光部22の出力信号にもとづいて、物体光L2のスペクトルIL2(λ)を生成する。そして、測定光L1のスペクトルIL1(λ)と物体光L2のスペクトルIL2(λ)にもとづいて、以下の式(2)により錠剤Tの透過率X(λ)を計算する。
X(λ)=IL2(λ)/IL1(λ) ・・・(2)
【0027】
変形例として、スペクトル測定部10は、錠剤Tからの反射光のスペクトルを測定してもよい。この場合、受光部22は、例えば搬送機構12の搬送面12aに対して照射部20と同じ側に配置され、照射部20が錠剤Tに測定光L1を照射したときの錠剤Tからの反射光を受光すればよい。
【0028】
さらなる変形例として、スペクトル測定部10は、錠剤Tからの透過光L2および反射光の両方のスペクトルを測定してもよい。
【0029】
測定光L1は、錠剤Tの特定成分の含有量を推定できる光である。測定光L1は、特に限定されないが、例えば近赤外域の波長範囲を含む光であり、具体的には1000nm以上1300nm以下の波長範囲の光、より好ましくは1100nm以上1200nm以下の波長範囲の光である。測定光L1は、パルス光であってもよい。
【0030】
搬送機構12は、検査フェーズにおいて、錠剤Tを、錠剤Tが並べられている方向に搬送する機構である。搬送機構12は、図1では錠剤Tを左から右に搬送する。錠剤Tは、図示しない吸引機構によって吸引されて搬送面12aに吸着されてもよい。この場合、安定に搬送される。
【0031】
以下、搬送機構12が錠剤Tを搬送する方向を搬送方向xといい、搬送方向xに直交する方向を幅方向yといい、搬送方向xおよび幅方向の両方に直交する方向を高さ方向zという。
【0032】
図2は、搬送機構12が錠剤Tを搬送する様子を示す斜視図である。搬送機構12は、一実施例としては、図2に示すように一対の搬送ベルト52を含む。一対の搬送ベルト52は、幅方向yに所定の間隔を空けて配置される。一対の搬送ベルト52は、無端状のベルトであり、回転軸が幅方向yを向いた図示しない複数のローラに巻き掛けられている。錠剤Tは、一対の搬送ベルト52に跨がるようにそれらに載置される。モータなどの図示しない駆動部がローラを駆動すると、それに伴い一対の搬送ベルト52が回転し、錠剤Tが搬送される。照射部20からの測定光L1は、一対の搬送ベルト52の間を通って錠剤Tに照射される。
【0033】
図1に戻り、情報処理装置18は、製品検査システム1を統括的に制御する。情報処理装置18は、準備フェーズにおいては、詳しくは後述する教師データを用いて、錠剤Tの良否判定に使用する学習済みモデルを生成する。また、情報処理装置18は、検査フェーズにおいては、詳しくは後述するように、学習済みのモデルを用いて錠剤Tの良否を判定する。
【0034】
系外排除装置14は、検査フェーズにおいて、良否判定で不良品と判定された錠剤Tのみを系外に排除する。系外排除装置14の構成は特に限定されず、公知の、あるいは将来利用可能な技術を用いて構成されればよい。
【0035】
図3は、図1の治具16の使用時の様子を示す図である。図3は、スペクトル測定部10とその周辺を搬送方向xに見た図である。治具16は、照射部20と受光部22との間に設けられている。この例では、搬送機構12が、照射部20と受光部22との間を横切る位置から待避されている。あるいはスペクトル測定部10が、搬送機構12が照射部20と受光部22との間を横切る位置から待避されている。
【0036】
治具16は、サンプル錠剤Tを種々の姿勢に保持するために使用される。詳しくは、治具16は、図4~8で後述する、スペクトルを測定する際の錠剤Tごとの姿勢の相違を再現するために使用される。準備フェーズにおいて、治具16によりサンプル錠剤Tを所望の姿勢に保持した状態で、教師データとして用いるスペクトルをスペクトル測定部10により測定する。
【0037】
例えば治具16は、回転軸Rまわりに回転する円板16aを含む。錠剤Tを保持した円板16aを回転させることで、搬送機構12による搬送速度で搬送される状態を再現する。この状態で、円板16aに保持される錠剤Tのスペクトルであって教師データとして用いるスペクトルを、スペクトル測定部10により測定する。
【0038】
なお、準備フェーズにおけるスペクトルの測定、すなわち教師データとして用いるスペクトルの測定では、スペクトル測定部10と同様に構成されたスペクトル測定部10とは別の図示しないスペクトル測定部によってスペクトルを測定してもよい。当該別のスペクトル測定部は、その照射部と受光部との間を搬送機構12が横切らない位置に設けられればよい。
【0039】
続いて、図4~8を参照して、搬送機構12における錠剤Tごとで異なる姿勢について説明する。なお、ここでの「異なる姿勢」には、幅方向yや高さ方向zの位置が異なる場合も含まれる。また、ここでは搬送機構12が一対の搬送ベルト52を含んで構成される場合について説明する。
【0040】
図4は、搬送機構12を搬送面12aに垂直な方向に見た図である。この例では、錠剤Tの幅方向yの位置が互いに異なっている。錠剤Tの並べ方にもよるが、錠剤Tを搬送機構12に高速に(例えば1錠剤あたり10ミリ秒以下で)並べるため、幅方向の位置のずれが生じうる。
【0041】
図5(a)~(c)は、搬送機構12を幅方向yに見た図である。図5(a)~(c)では、測定光L1が錠剤Tに照射される照射位置において、所定の基準搬送面Sに対する錠剤Tの高さ方向zの位置が互いに異なっている。基準搬送面Sは、特に限定されないが例えば、搬送機構12に経年変化が生じる前の搬送面に一致する面である。図5(a)は、搬送面が基準搬送面Sに一致している。図5(b)、(c)では、例えば経年変化によって搬送ベルトが伸びて撓んだことにより、搬送面12aが基準搬送面Sよりも低くなっている。図5(a)~(c)では、照射位置における搬送面12aの高さが互いに異なっているため、基準搬送面Sに対する高さが互いに異なっている。
【0042】
図6(a)、(b)は、搬送機構12を搬送方向xに見た図である。図6(a)、(b)では、測定光L1が錠剤Tに照射される照射位置において、所定の搬送基準面Sに対する錠剤Tの角度θyであって搬送方向xに平行な軸周りの角度θyが互いに異なっている。基準搬送面Sは、特に限定されないが例えば、搬送機構12に経年変化が生じる前の搬送面に一致する面である。例えば、錠剤Tの曲面状の外表面部分が搬送面12aに接地する場合に基準搬送面Sに対する錠剤Tの角度θyが錠剤Tごとで互いに異なりうる。
【0043】
図7(a)、(b)は、搬送機構12を搬送方向xに見た図である。図7(a)、(b)では、図6(a)、(b)と同様に、照射位置において錠剤Tの角度θyが互いに異なっている。例えば、一対の搬送ベルト52の経年変化の進行度合いの差によって角度θyが異なりうる。
【0044】
図8(a)、(b)は、搬送機構12を幅方向yに見た図である。図8(a)、(b)では、測定光L1が錠剤Tに照射される照射位置において、所定の搬送基準面Sに対する錠剤Tの角度θxであって幅方向yに平行な軸周りの角度θxが互いに異なっている。基準搬送面Sは、特に限定されないが例えば、搬送機構12に経年変化が生じる前の搬送面に一致する面である。例えば、錠剤Tの曲面状の外表面部分が搬送面12aに接地する場合に基準搬送面Sに対する錠剤Tの角度θxが錠剤Tごとで互いに異なりうる。
【0045】
図9(a)、(b)は、搬送機構12を幅方向yに見た図である。図9(a)、(b)では、図8(a)、(b)と同様に、照射位置において錠剤Tの角度θxが互いに異なっている。例えば、搬送ベルト52の経年変化によって角度θxが異なりうる。
【0046】
図10は、搬送機構12を搬送面12aに垂直な方向に見た図である。図8において、錠剤Tは非回転対称な形状であり、搬送面12aに垂直な(言い換えると高さ方向zに平行な軸周り)軸周りの向きが互いに異なっている。ここでは、錠剤Tは割線Lを有し、搬送面12aに垂直な方向に見て、割線Lの延在方向が互いに異なっている。
【0047】
なお、ここでは搬送機構12が一対の搬送ベルト52を含んで構成される場合について説明したが、搬送機構12が他の構成であっても、図4~10の少なくともいずれかの姿勢の相違は生じうる。
【0048】
図11は、製品検査システム1の制御系を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0049】
情報処理装置18は、スペクトルデータ受信部40と、モデル生成部42と、良否判定部44と、モデル記憶部46と、を備える。なお、情報処理装置18の構成要素は、本実施の形態において注目する構成要素のみを示している。
【0050】
情報処理装置18を構成する物理的な装置(筐体)の数に制限はなく、情報処理装置18は単一の装置として実現されてもよいし、複数の装置の連携により実現されてもよい。例えば、情報処理装置18が第1の装置および第2装置の連携により実現され、第1の装置がスペクトルデータ受信部40、モデル生成部42およびモデル記憶部46を備え、第2の装置が良否判定部44を備えてもよい。
【0051】
モデル記憶部46は、後述するモデル生成部42により生成される学習済みモデル(検量モデル)を記憶する。
【0052】
スペクトルデータ受信部40は、事前フェーズにおいて、スペクトル測定部10により測定されたサンプル錠剤Tのスペクトルデータを受信する。なお、サンプル錠剤Tのスペクトルは上述したようにスペクトル測定部10とは別のスペクトル測定部によって測定されてもよく、この場合、スペクトルデータ受信部40は当該別のスペクトル測定部により測定されたサンプル錠剤Tのスペクトルデータを受信する。
【0053】
また、スペクトルデータ受信部40は、検査フェーズにおいて、スペクトル測定部10により順次測定される錠剤Tのスペクトルデータを受信する。
【0054】
モデル生成部42は、準備フェーズにおいて、教師データを用いた機械学習を実施することにより、錠剤Tのスペクトルデータを入力するとその錠剤Tの特定成分の含有量を出力(推定)する学習済みモデルを生成する。学習済みモデルは、公知の、あるいは将来利用可能な任意の機械学習方法を用いて構成されればよい。モデル生成部42は、生成した学習済みモデルをモデル記憶部46に記憶させる。教師データについては後述する。
【0055】
良否判定部44は、検査フェーズにおいて、モデル記憶部46に記憶される学習済みモデルを用いて、錠剤Tの良否を判定する。詳しくは良否判定部44は、スペクトルデータ受信部40が受信したスペクトルデータを学習済みモデルに入力することにより、錠剤Tの特定成分の含有量を学習済みモデルに推定(出力)させる。
【0056】
続いて良否判定部44は、学習済みモデルが推定した特定成分の含有量に基づいて錠剤Tの良否を判定する。良否判定部44は、錠剤Tに含まれるべき特定成分の含有量に対する、推定された特性成分の含有量(言わば錠剤Tに実際に含まれる特定成分の含有量)の比率(以下、規定含有率という)が所定の閾値範囲内である場合、例えば規定含有率が98%以上102%以下である場合、錠剤Tを良品と判定し、規定含有率がその閾値範囲外である場合、錠剤Tを不良品と判定する。良否判定部44は、特定成分の含有量に加え、少なくとも1つの他の要素をさらに考慮して錠剤Tの良否を判定してもよい。他の要素は、例えば、錠剤Tの外観であってもよい。この場合、良否判定部44は、規定含有率が所定の閾値範囲内であっても、錠剤Tの外観が不良であれば、錠剤Tを不良品と判定する。錠剤Tの外観が不良であるか否かは、図示しない撮影部で錠剤Tを撮影した撮影画像を画像解析して判定してもよく、例えば、錠剤Tに欠けや割れ等の変形が生じている場合に錠剤Tの外観が不良と判定してもよい。
【0057】
系外排除装置14は、排除制御部48を備える。排除制御部48は、系外排除装置14を統括的に制御する。排除制御部48は、系外排除装置14を制御し、良否判定部44により不良品と判定された錠剤Tを系外に排除する。不良品と判定された錠剤Tが自動的に排除されるため、不良品が出荷される事故を防止できる。
【0058】
続いて「教師データ」について説明する。教師データは、特定成分の含有量が既知の複数のサンプル錠剤Tについての複数のデータセットであって、それぞれが、特定成分の含有量とスペクトルデータとを含む複数のデータセットである。
【0059】
複数のサンプル錠剤Tには、様々な含有量のサンプル錠剤T、すなわち特定成分の含有量が互いに異なるサンプル錠剤Tが含まれる。好ましくは、複数のサンプル錠剤Tには、特定成分の含有量が100%のサンプル錠剤Tが含まれる。
【0060】
好ましくは、複数のサンプル錠剤Tには、錠剤Tの特定成分の想定される含有量の範囲をカバーできるサンプル錠剤Tが含まれる。すなわち、好ましくは、複数のサンプル錠剤Tには、特定成分の含有量が想定の範囲内のサンプル錠剤T、特定成分の含有量が想定の範囲内よりも低いサンプル錠剤T、特定成分の含有量が想定の範囲内よりも高いサンプル錠剤Tが含まれる。
【0061】
複数のサンプル錠剤Tに含まれる特定成分の含有量のバリエーションは、生成されるモデルの精度に影響しうる。したがって、例えば試行錯誤によって、複数のサンプル錠剤Tに含まれる特定成分の含有量のバリエーションを決定してもよい。例えば、複数のサンプル錠剤Tには、錠剤Tの特定成分の想定される含有量の範囲が90%~110%の場合、88%~112%の範囲で2%刻みの含有量のサンプル錠剤T、すなわち特定成分の含有量が88%、90%、92%、・・・、112%のサンプル錠剤Tが用意されてもよい。
【0062】
複数のデータセットには、互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータのデータセットが含まれる。互いに異なる姿勢は、図4~10で説明した、幅方向yにおける位置、高さ方向zにおける位置、所定の搬送基準面に対する錠剤Tの角度θy(すなわち搬送方向xに平行な軸周りの角度θy)、所定の搬送基準面に対する錠剤Tの角度θx(すなわち幅方向yに平行な軸周りの角度θx)、搬送面12aに垂直な軸周り(すなわち高さ方向zに平行な軸周り)の向き、の少なくとも1つが互いに異なる姿勢である。
【0063】
複数のデータセットには、各サンプル錠剤Tについて、1つの姿勢で測定した1つのデータセットのみが含まれていてもよいし、各サンプル錠剤Tについて、複数の姿勢で測定した複数のデータセットが含まれていてもよい。
【0064】
以上が製品検査システム1の基本構成である。続いてその動作を説明する。
【0065】
図12は、準備フェーズの動作を説明するフロー図である。まず、特定成分の含有量が既知である複数のサンプル錠剤Tについて、種々の姿勢でスペクトルを測定する(S10)。次に、測定したサンプル錠剤Tのスペクトルデータを含む教師データを用いて錠剤Tの良否判定に使用する学習済みモデルを生成する(S12)。
【0066】
図13は、検査フェーズにおける良否判定の動作を説明するフロー図である。図13の処理は、所定の周期(例えば10ミリ秒以下の所定の周期)で、言い換えると次々に搬送される錠剤ごとに、繰り返し実施される。まず、搬送機構12により搬送されて移動している錠剤Tのスペクトルを移動を止めることなく測定する(S20)。次に、測定されたスペクトルデータを学習済みモデルに入力することにより、錠剤Tの特定成分の含有量を推定する(S22)。次に、推定した特定成分の含有量に基づいて、錠剤Tの良否を判定する(S24)。
【0067】
本実施の形態によれば、準備フェーズにおいて、特定成分の含有量が既知である複数のサンプル錠剤Tについてのスペクトルデータであって、意図的に種々の姿勢で測定されたスペクトルデータを含む教師データを用いて学習済みモデルが作成され、検査フェーズにおいて、その学習済みモデルを用いて錠剤の特定成分の含有量が推定され、錠剤の良否が判定される。つまり、スペクトルを測定する際の錠剤Tの姿勢が錠剤Tごと、あるいは時間経過で異なりうることをあらかじめ考慮した学習済みモデルに基づいて特定成分の含有量を推定するため、より高精度に特定成分の含有量を推定でき、より高精度に錠剤Tの良否を判定できる。
【0068】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0069】
(変形例1)
実施の形態では、治具16を使用してサンプル錠剤Tを種々の姿勢に保持し、種々の姿勢におけるサンプル錠剤Tのスペクトルであって教師データとして用いるサンプル錠剤Tのスペクトルを測定する場合について説明したが、種々の姿勢におけるサンプル錠剤Tのスペクトルを測定できればよく、治具16を使用したスペクトルの測定には限定されない。
【0070】
図14は、変形例に係る製品検査システム101の構成を示す図である。以下、実施の形態との相違点を中心に説明する。
【0071】
製品検査システム101は、スペクトル測定部10と、搬送機構12と、系外排除装置14と、情報処理装置18と、姿勢検出部108と、を備える。すなわち、本変形例の製品検査システム101は、治具16を備えていない。
【0072】
本変形例の準備フェーズでは、検査フェーズと同様に、搬送機構12はサンプル錠剤Tを次々に搬送し、スペクトル測定部10は搬送機構12により次々に搬送されるサンプル錠剤Tのスペクトルをその移動を止めることなく測定する。
【0073】
姿勢検出部108は、準備フェーズにおいて、搬送機構12によって搬送されているサンプル錠剤Tの姿勢を検出する。姿勢検出部108は、図示のようにスペクトル測定部10よりも上流側においてサンプル錠剤Tの姿勢を検出してもよいし、スペクトル測定部10よりも下流側においてサンプル錠剤Tの姿勢を検出してもよいし、スペクトル測定部10によりスペクトルを測定される位置(例えば照射部20からの測定光L1がサンプル錠剤Tに照射される照射位置)においてサンプル錠剤Tの姿勢を検出してもよい。
【0074】
姿勢検出部108の構成は、特に限定されない。姿勢検出部108は、例えば、少なくとも1つのカメラを含んで構成されてもよい。この場合、姿勢検出部108は、搬送方向x、幅方向yおよび高さ方向zの3方向から錠剤Tを撮影可能であってもよい。また例えば、姿勢検出部108は、超音波センサを含んで構成されてもよい。いずれにせよ姿勢検出部108は、サンプル錠剤Tの姿勢を検出可能であればよい。
【0075】
本変形例における教師データの複数のデータセットには、上述のように搬送機構12により搬送されながら測定されたサンプル錠剤Tのスペクトルデータのデータセットが含まれる。教師データの複数のデータセットは、特に限定しないが、測定されたサンプル錠剤Tのスペクトルデータのうちからユーザよって選択されたものであってもよい。ユーザは、姿勢検出部108によるサンプル錠剤Tの姿勢の検出結果に基づいて、例えば姿勢検出部108としての少なくとも1つのカメラがサンプル錠剤Tを撮影した画像を参照して、種々の姿勢で測定されたスペクトルデータのデータセットが含まれるように、教師データの複数のデータセットを選択すればよい。例えばユーザは、幅方向yにおける位置、所定の搬送基準面に対する錠剤Tの角度θy、所定の搬送基準面に対する錠剤Tの角度θx、搬送面12aに垂直な軸周りの向き、の少なくとも1つが互いに異なる姿勢で測定されたスペクトルデータのデータセットが含まれるように教師データの複数のデータセットを選択してもよい。
【0076】
本変形例によれば、実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0077】
(変形例2)
実施の形態では、スペクトル測定部10と情報処理装置18とが通信可能に接続されている。しかしながら、スペクトル測定部10の内部に情報処理装置18を備える形態であってもよい。
【0078】
(変形例3)
実施の形態では、良否判定で用いられる学習済みモデルが、錠剤のスペクトルデータを入力すると、その錠剤の特定成分の含有量を出力(推定)するように学習される場合について説明したが、これには限定されず、学習済みモデルは、特定成分の含有量との観点における錠剤の良否を出力(推定)するように学習されてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 製品検査システム、 10 スペクトル測定部、 44 良否判定部。
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