(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105156
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】嵌合システム、制御装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/00 20060101AFI20240730BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B25J15/00 F
B25J15/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009749
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100152054
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 孝雅
(72)【発明者】
【氏名】三浦 祐太
(72)【発明者】
【氏名】中島 和哉
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS07
3C707BS15
3C707DS01
3C707DS02
3C707ES03
3C707ES10
3C707ET08
3C707EV11
3C707FS01
3C707FT02
3C707FT10
3C707FT17
3C707FU01
3C707FU02
3C707KS34
3C707KW03
3C707KX08
3C707LU08
3C707LV10
3C707LV17
3C707MT10
3C707NS26
3C707NS28
(57)【要約】
【課題】ロボットによって蓋閉め作業を行う場合に、より簡便に、容器や蓋の膨らみを抑制する。
【解決手段】嵌合システム1は、容器の収容空間を蓋によって閉塞する多関節ロボット30と、多関節ロボット30の動作を制御する制御装置40と、を備える。制御装置40は、保持機構によって蓋を保持する保持動作と、保持している蓋を、押し込み機構によって容器の収容空間側の方向に押し込む押し込み動作と、蓋が収容空間側の方向に押し込まれている状態で、押圧機構310によって蓋の嵌合部を容器の嵌合部に対して押圧して嵌合部同士を嵌合させることで、容器の収容空間を蓋によって閉塞する閉塞動作と、を多関節ロボット30に実行させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の収容空間を蓋によって閉塞するロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた嵌合システムであって、
前記制御装置は、
保持機構によって前記蓋を保持する保持動作と、
前記保持している前記蓋を、押し込み機構によって前記容器の収容空間側の方向に押し込む押し込み動作と、
前記蓋が前記収容空間側の方向に押し込まれている状態で、押圧機構によって前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に対して押圧して嵌合部同士を嵌合させることで、前記容器の収容空間を蓋によって閉塞する閉塞動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする嵌合システム。
【請求項2】
前記押し込み動作では、前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に接触させることで、前記容器が前記蓋を支持している状態とした上で、前記蓋を前記容器の収容空間側の方向に押し込む、
ことを特徴とする請求項1に記載の嵌合システム。
【請求項3】
前記保持機構が前記押し込み動作を行うことによって、前記保持機構は、さらに前記押し込み機構としても機能する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項4】
前記押し込み動作において、前記押し込み機構は、前記蓋の中央の領域を押し込み、
前記閉塞動作において、前記押圧機構は、前記蓋の両端に設けられている嵌合部を押圧する、
ことを特徴をとする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項5】
前記押し込み動作において押し込む方向と前記閉塞動作において押圧する方向は、鉛直下方であり、
前記押し込み機構が前記蓋に接触して押し込む部分は、前記押圧機構の前記蓋に接触して押圧する部分よりも鉛直上方に位置する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項6】
前記押し込み機構は、弾性体によって支持されており、前記押し込み動作において前記押し込んだ蓋からの反力に応じて、押し込む方向において伸縮する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項7】
前記押し込み機構は、アクチュエータの駆動により前記押し込む方向における伸縮を制御可能となっており、
前記押圧機構による閉塞動作の実行中に、前記押し込み機構を前記押し込む方向に伸ばすことで、前記押し込み動作を実現する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項8】
容器の収容空間を蓋によって閉塞するロボットの動作を制御する制御装置の制御に従って、前記ロボットが行う嵌合方法であって、
保持機構によって前記蓋を保持する保持ステップと、
前記保持している前記蓋を、押し込み機構によって前記容器の収容空間側の方向に押し込む押し込みステップと、
前記蓋が前記収容空間側の方向に押し込まれている状態で、押圧機構によって前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に対して押圧して嵌合部同士を嵌合させることで、前記容器の収容空間を蓋によって閉塞する閉塞ステップと、
を含むことを特徴とする嵌合方法。
【請求項9】
容器の収容空間を蓋によって閉塞するロボットの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、
前記制御手段は、
保持機構によって前記蓋を保持する保持動作と、
前記保持している前記蓋を、押し込み機構によって前記容器の収容空間側の方向に押し込む押し込み動作と、
前記蓋が前記収容空間側の方向に押し込まれている状態で、押圧機構によって前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に対して押圧して嵌合部同士を嵌合させることで、前記容器の収容空間を蓋によって閉塞する閉塞動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする制御装置。
【請求項10】
容器の収容空間を蓋によって閉塞するロボットの動作を制御する制御機能をコンピュータに実現させるプログラムであって、
前記制御機能は、
保持機構によって前記蓋を保持する保持動作と、
前記保持している前記蓋を、押し込み機構によって前記容器の収容空間側の方向に押し込む押し込み動作と、
前記蓋が前記収容空間側の方向に押し込まれている状態で、押圧機構によって前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に対して押圧して嵌合部同士を嵌合させることで、前記容器の収容空間を蓋によって閉塞する閉塞動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合システム、嵌合方法、制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な業界において機械化が推進され、ロボットにより各種の作業が行われている。例えば、惣菜等の食品が盛り付けられた容器に対して、蓋を嵌合することで容器を閉塞するという蓋閉め作業がロボットにより行われている。
このような、蓋閉め作業を行うロボットに関する技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓋閉め作業の対象とするのが、閉塞時の密閉性が高い容器や蓋である場合、嵌合の際に容器内に空気が流入して、嵌合後に容器や蓋が膨らんだ状態となることがある。このように容器や蓋が膨らんでしまうと、嵌合が不十分となり、外部からの力が加わった場合に蓋が容易に外れてしまう。
この容器や蓋が膨らんでしまうという課題を考慮して、例えば、特許文献1に開示の技術では、独立して駆動可能な複数の押圧部材によって交互に押圧を行うことで、容器内の空気を抜きながら嵌合をして、空気の流入を抑制している。
しかしながら、このような構成とした場合、複数の押圧部材をそれぞれ独立して駆動させるために、複数の押圧用の機構が必要となる。また、これら複数の押圧機構を適切に連携させるための制御も必要となる。さらに、複数回の押圧で嵌合をすることから、一度の押圧で嵌合をする場合に比べて、蓋閉め作業に要する時間が長くなってしまう。
【0005】
これらの課題は、食品が盛り付けられた容器に蓋を閉める状況に限られるものではなく、工業分野等において、ロボットによって蓋閉めを行う様々な状況全般に共通するものである。
このように、従来の技術では、ロボットによって蓋閉め作業を行う場合に、容器や蓋の膨らみを防止することについて、未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明の課題は、ロボットによって蓋閉め作業を行う場合に、より簡便に、容器や蓋の膨らみを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る嵌合システムは、
保持機構及び押圧機構を備えたロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた嵌合システムであって、
前記制御装置は、
第1嵌合部を有する蓋を前記保持機構で保持することで、第2嵌合部を有する容器に対して、前記蓋を近接させた状態を維持する保持動作と、
前記保持動作により近接させた状態が維持されている間に、可撓性を有する前記押圧機構を、前記第1嵌合部の押圧対象部分の形状に適合した形状となるように前記可撓性を利用して変形させる変形動作と、
前記変形動作により変形した状態の前記押圧機構により、前記押圧対象部分を押圧することで、前記第1嵌合部と前記第2嵌合部とを嵌合させる嵌合動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ロボットによって蓋閉め作業を行う場合に、より簡便に、容器や蓋の膨らみを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】発明に係る嵌合システム1全体の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】制御装置40のハードウェア構成を示す模式図である。
【
図3】制御装置40の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】ハンド31の先端に装着される嵌合部材31aの構成について模式的に示す斜視図である。
【
図5】押圧機構310の構造について、より詳細に説明するための模式図である。
【
図6】第1支持部312と第2支持部313が固定された状態の押圧機構310の構造について、詳細に説明するための模式図である。
【
図7】抑制機構340の構造について、より詳細に説明するための模式図である。
【
図8】制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
【
図9】制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
【
図10】嵌合システム1による嵌合に関わる一連の動作における作用について説明するための模式図である。
【
図11】嵌合システム1による嵌合に関わる一連の動作における作用について説明するための模式図である。
【
図12】嵌合システム1が実行する蓋嵌合処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】変形例1において、制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
【
図14】変形例2において、複数の機能を、それぞれ別の機構により実現する場合の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[実施形態]
[全体構成]
図1は、本発明に係る嵌合システム1全体の構成を模式的に示す斜視図である。
本実施形態における嵌合システム1は、対象物が盛り付けられた容器に対して、蓋を嵌合する嵌合システムに本発明を適用することを想定したものである。以下の説明では、嵌合システム1が、対象物として食品が盛り付けられた容器に対して、蓋を嵌合することで、この容器の開口部を閉塞する場合を例に挙げて説明する。
【0011】
この場合、食品の種類について特に限定されず、例えば、麺類や寿司といった主食や、肉や魚料理等の主菜や、ポテトサラダ等の副菜(すなわち、惣菜)や、これらが容器内で区分された領域毎に詰め合わせられた弁当等であってもよい。また、容器及び蓋の形状についても特に限定されず、容器及び蓋を鉛直上方から平面視した場合に、四角形や六角形といった多角形の形状のものであってもよいし、多角形にさらに円弧を含んだ形状のものであってもよいし、正円や楕円といった円形の形状のものであってもよい。
すなわち、嵌合システム1は、様々な食品が盛り付けられた、様々な形状の容器及び蓋に対して、汎用的に嵌合を行うことができる。
【0012】
図1に示すように、嵌合システム1は、蓋供給部10と、容器検出センサ20と、多関節ロボット30と、制御装置40と、を備えている。また、制御装置40と、蓋供給部10、容器検出センサ20、及び多関節ロボット30とは、有線又は無線によって通信接続されており、相互に通信可能となっている。
【0013】
さらに、嵌合システム1に隣接して、食品が盛り付けられた容器を上流から下流に向かって自動的に運搬するベルトコンベア2が設置されている。このベルトコンベア2には、容器の進行方向を前方向とした場合における左右の方向に、一対の案内部材2Aが設置されている。案内部材2Aは、進行方向に向かってその左右幅が狭まっていくテーパ状の形状をしており、容器を所定の位置に案内できる構造となっている。食品が盛り付けられた容器は、案内部材2Aよりも上流においてベルトコンベア2の様々な位置(例えば、左右方向における異なる位置)にて運搬されているが、この案内部材2Aにより案内されることで、蓋を嵌合する位置である嵌合位置P1に案内される。
【0014】
なお、本実施形態において、嵌合システム1のさらなる上流にて容器に食品を盛り付ける作業は、人手によって行われてもよいし、食品盛り付け用のロボットによって行われてもよい。
【0015】
蓋供給部10は、多関節ロボット30に対して蓋を供給する位置である蓋供給位置P2に対して、蓋を供給する。蓋供給部10には、複数の種類の容器に対応した複数の種類の蓋が、それぞれ複数個収容されている。そして、蓋供給部10は、嵌合システム1が動作を開始すると、蓋供給部10に備えられた押し出し機構によって、ベルトコンベア2にて運搬中の容器に対応した形状の蓋を、1つずつ蓋供給位置P2に供給する。また、蓋供給部10は、多関節ロボット30が蓋閉めのために蓋を取得するたびに、新たに蓋を供給する。
なお、蓋が確実に蓋供給位置P2上に供給されるように、例えば、蓋供給部10の蓋の排出部分に向かって開口している、鉛直上方から平面視した場合に凹型等の形状をした部材を、蓋供給位置P2を囲うようにして設置してもよい。
【0016】
容器検出センサ20は、ベルトコンベア2にて運搬中の容器の位置を検出するセンサである。容器検出センサ20は、例えば、光学センサにより構成される。容器検出センサ20は、例えば、案内部材2Aにより案内された容器が、嵌合位置P1に運搬されたこと、あるいは、嵌合位置P1に運搬される直前であることを検出する。容器検出センサ20によって検出された容器の位置のデータは、制御装置40に出力される。
【0017】
多関節ロボット30は、例えば、水平多関節ロボットあるいは垂直多関節ロボット等によって構成され、容器に対して蓋の嵌合を実行するハンド31と、ハンド31の先端に装着されて蓋の嵌合を実行する嵌合部材31aと、可動範囲において任意の位置にハンド31を移動させるロボットアーム32と、を備えている。
また、多関節ロボット30のハンド31を保持する関節には、ハンド31が容器や蓋に接触したことを検出する手段の一例として、接触対象物からの反力(表面に接触されることで得られる力覚を含む)を計測する力センサ30Aが設置されている。力センサ30Aによって計測された反力のデータは、制御装置40に出力される。
【0018】
さらに、ハンド31を保持する関節は、ロボットアーム32に対してハンド31を捻り方向に回転させる軸を備えている。そのため、ハンド31が容器に蓋を嵌合する際に、ハンド31の向きを変化させることで、ハンド31が蓋や容器に対向する方向を調整することができる。これにより、自由度の高い動きによって、適切に嵌合を行うことができる。
【0019】
制御装置40は、PC(Personal Computer)又はプログラマブルコントローラ等の情報処理装置によって構成され、各種プログラムを実行することにより、嵌合システム1全体を制御する。例えば、制御装置40は、蓋供給部10が蓋を供給する動作や、多関節ロボット30が、蓋供給位置P2から蓋を取得し、この蓋を嵌合位置P1において容器に対して嵌合する動作等を制御する。より詳細には、例えば、制御装置40は、ロボットアーム32の駆動を制御することで、ハンド31を予め設定された所定位置に所定ルート及び所定速度で移動させる動作や、ハンド31に装着された嵌合部材31aが備える各機構の駆動を制御する動作を制御する。
【0020】
[制御装置40のハードウェア構成]
図2は、制御装置40のハードウェア構成を示す模式図である。
図2に示すように、制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)711と、ROM(Read Only Memory)712と、RAM(Random Access Memory)713と、バス714と、入力部715と、出力部716と、記憶部717と、通信部718と、ドライブ719と、を備えている。
【0021】
CPU711は、ROM712に記録されているプログラム、又は、記憶部717からRAM713にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM713には、CPU711が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0022】
CPU711、ROM712及びRAM713は、バス714を介して相互に接続されている。バス714には、入力部715、出力部716、記憶部717、通信部718及びドライブ719が接続されている。
【0023】
入力部715は、マウスやキーボード等の入力装置を備え、制御装置40に対する各種情報の入力を受け付ける。なお、入力部715としてマイクを備え、作業者の音声入力によって各種情報の入力を受け付けることとしてもよい。
出力部716は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部717は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部718は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0024】
ドライブ719には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア731が適宜装着される。ドライブ719によってリムーバブルメディア731から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部717にインストールされる。
なお、上記ハードウェア構成は、制御装置40の基本的構成であり、一部のハードウェアを備えない構成としたり、付加的なハードウェアを備えたり、ハードウェアの実装形態を変更したりすることができる。
【0025】
[機能的構成]
次に、制御装置40の機能的構成について説明する。
図3は、制御装置40の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、嵌合システム1の動作を制御するためのプログラムを実行することにより、制御装置40のCPU711においては、対象情報取得部151と、センサ情報取得部152と、蓋供給制御部153と、多関節ロボット制御部154と、記録制御部155と、が機能する。また、記憶部717には、パラメータ記憶部171と、履歴データベース(履歴DB)172と、が形成される。
【0026】
パラメータ記憶部171には、嵌合システム1が動作する際に用いられる各種パラメータが記憶されている。例えば、パラメータ記憶部171には、嵌合位置P1や蓋供給位置P2の位置、嵌合を実行する際のハンド31の移動経路、嵌合を実行する際の嵌合部材31aの駆動制御の手順といった、多関節ロボット30の動作パターンを定義するパラメータ等が記憶される。なお、嵌合システム1は、上述したように、様々な種類の容器及び蓋の嵌合に対応することが可能なので、このパラメータは様々な種類の容器及び蓋のそれぞれに対応して複数設定されていてもよい。
【0027】
履歴DB172には、嵌合システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータ、あるいは嵌合システム1で嵌合を行った際に嵌合に要した時間を示す値(例えば、複数回の嵌合に要した時間を、嵌合した回数で除算した値)等が履歴として記憶される。この場合、記録された制御に関するパラメータは、例えば、新たな動作パターンを設定する場面等において活用される。また、嵌合に要した時間を示す値は、例えば、嵌合システム1のユーザが要求するタクトタイム(TT:Takt Time)を、満たすことができるか否か等を検討する際の指標として活用される。
【0028】
対象情報取得部151は、嵌合の対象となる容器及び蓋に関する情報である対象情報を取得する。例えば、対象情報取得部151は、現在ベルトコンベア2にて運搬中の容器の種類や、これに対応する形状の蓋の種類といった情報や、あといくつ嵌合した場合に、ベルトコンベア2にて運搬される容器が異なる種類の容器変更される予定かといった情報を取得する。これらの情報は、ユーザが制御装置40の入力部715を介して入力することで、対象情報取得部151に取得される。この場合に、入力部715に代えて、例えば、多関節ロボット30の近傍にタッチパネル等の入力装置を設置し、ユーザがこの入力装置を介してこれらの情報を入力するようにしてもよい。
【0029】
センサ情報取得部152は、嵌合システム1に設置された各種センサによって検出された情報であるセンサ情報を取得する。例えば、センサ情報取得部152は、多関節ロボット30の関節に設置された力センサ30Aによって計測された反力のデータや、多関節ロボット30の近傍に設置された容器検出センサ20によって検出された容器の位置のデータを取得する。
【0030】
蓋供給制御部153は、蓋供給部10を制御し、蓋供給位置P2に蓋を供給するタイミングを制御する。例えば、蓋供給制御部153は、嵌合システム1の動作開始と共に、蓋供給部10に蓋の供給を開始させる。また、蓋供給制御部153は、多関節ロボット30が蓋閉めのために蓋を取得するたびに、蓋供給部10に新たに蓋を供給させる。この場合に、蓋供給制御部153は、対象情報取得部151が取得した対象情報に基づいて、現在ベルトコンベア2にて運搬中の容器の種類を特定し、この特定した容器に対応する形状の蓋を、蓋供給部10に供給させる。
【0031】
多関節ロボット制御部154は、多関節ロボット30の動作を制御し、嵌合システム1において定義されている動作パターンに従って、容器に対して蓋を嵌合するための一連の動作を多関節ロボット30に実行させる。例えば、多関節ロボット制御部154は、ハンド31を嵌合位置P1や蓋供給位置P2に向かって移送する動作(移送動作)、ハンド31により蓋供給位置P2から蓋を取得する動作(蓋取得動作)、ハンド31により蓋を容器の収容空間側に押し込む動作(押し込み動作)、ハンド31により嵌合位置P1にて容器に対して蓋を嵌合する動作(嵌合実行動作)、等を含む様々な動作を多関節ロボット30に実行させる。この場合に、多関節ロボット制御部154は、対象情報取得部151が取得した対象情報に基づいて、現在ベルトコンベア2にて運搬中の容器の種類を特定し、この特定した容器に対応する動作パターンを用いるようにする。
【0032】
記録制御部155は、嵌合システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータや、嵌合システム1で嵌合を行った際に嵌合に要した時間を示す値等を、履歴DB172に記憶する。これらの情報の活用方法については、履歴DB172の説明の際に上述した通りである。
【0033】
[嵌合部材31aの構成]
図4は、ハンド31の先端に装着される嵌合部材31aの構成について模式的に示す斜視図である。
図4に示すように、嵌合部材31aは、押圧機構310と、スライド機構320と、開閉機構330と、抑制機構340と、ハンド装着部350と、を備える。ここで、図示するように、押圧部311の長手方向を基準として、開閉機構330が配置されている方向を前方向と定義する。また、この前方向と逆側のスライド機構320が配置されている方向を後ろ方向と定義する。また、水平面において、この長手方向と直行する方向であって、嵌合部材31aを後方向から前方向に向かって平面視した場合の、右側の方向を右方向と定義し、左側の方向を左方向と定義する。さらに、前後方向及び左右方向のそれぞれと互いに直行する方向を鉛直方向と定義する。この場合、鉛直方向を基準として、スライド機構320や開閉機構330が配置されている側の方向が鉛直上方であって、押圧機構310や抑制機構340が配置されている側の方向が鉛直下方となる。
【0034】
押圧機構310は、左方向と右方向のそれぞれに配置されており、一対の構成となっている。この一対の押圧機構310のそれぞれは、シリコンやゴム等の可撓性のある素材により板状に構成されている押圧部311と、押圧部311を支持する第1支持部312と、同じく押圧部311を支持する第2支持部313と、を備える。
押圧機構310は、蓋を嵌合する際に押圧部311によって蓋と接触することで、蓋の当接対象部分を当接したり、蓋の押圧対象部分を押圧したりする機構として機能する。なお、押圧機構310のより詳細な構造については、
図5や
図6を参照して後述する。
【0035】
スライド機構320は、左右方向に直線の溝が設けられたレール部321と、この溝に係止するフック部322と、第2支持部313、フック部322、及びラック333のそれぞれを結合することで各機構同士を連結する連結部323と、を備える。
スライド機構320は、レール部321、フック部322及び連結部323によって一対の押圧機構310を左右方向に直動可能に支持すると共に、連結部323を介して開閉機構330から伝達される左右方向へ直動する力に応じて、一対の押圧機構310同士を左右方向に近づけたり遠ざけたりする(すなわち、開閉する)ための機構として機能する。
【0036】
開閉機構330は、鉛直方向を回転軸として回転運動をするアクチュエータ331と、アクチュエータ331の回転部分の先端に接続されたピニオンギア332と、ピニオンギア332の歯車に噛み合うように溝が設けられた一対のラック333と、を備えている。
ピニオンギア332とラック333はラック・アンド・ピニオンを形成し、アクチュエータ331の回転運動により生じた回転力を、ピニオンギア332と、一対のラック333それぞれが、左右方向に直動する力に変換する。これにより、開閉機構330は、左右方向に直動する力を、連結部323を介して一対の押圧機構310のそれぞれに伝達することで、一対の押圧機構310を駆動する機構として機能する。
【0037】
抑制機構340は、接続されている真空発生器(図示省略)を用いて、密着した対象物との間の空間を真空に近づけることで、対象物を吸着する吸着パッドである。本実施形態において、抑制機構340は、対象物として蓋に密着して吸着することで、蓋を保持する。さらに、抑制機構340は、鉛直方向に容器に蓋を嵌合する際に、蓋に密着した先端が鉛直方向に伸縮する構造を有している。そして、抑制機構340は、この伸縮する先端を用いることで、蓋の天面を容器の収容空間側に押し込む。なお、抑制機構340のより詳細な構造については、
図7を参照して後述する。
【0038】
ハンド装着部350は、上述の構成をした嵌合部材31a全体を、ハンド31の先端に装着するための部分である。ハンド装着部350には、例えば、図示を省略した複数のネジ穴が設けられ、このネジ穴にネジを螺合することで、嵌合部材31aはハンド31の先端に装着される。
【0039】
図5は、押圧機構310の構造について、より詳細に説明するための模式図である。
図5では、押圧機構310を鉛直下方から平面視した構造を示す。
【0040】
図5(a)に示すように、押圧部311は、2つの異なる形状が組み合わさった構造をしている。具体的には、
図4で定義した左右方向(
図5の紙面では上下方向)において、一対の押圧機構310の一方と他方が対向する側(すなわち、内側)は平面形状となっている。一方で、左右方向において、この内側と逆側の方向(すなわち、外側)は、鉛直方向に延在する角柱が所定間隔で離間して配置された形状となっている。なお、押圧部311が、可撓性を有する素材で構成されている点については、上述した通りである。
【0041】
図5(b)に示すように、押圧部311は、押圧部311の両端の角柱形状それぞれに対応した形状にて構成された第1支持部312に嵌め込まれる。
【0042】
図5(c)に示すように、押圧部311は、第1支持部312と挟まれるようにして、第2支持部313に支持される。そして、
図5(d)に示すように、第1支持部312と第2支持部313は、ネジにより螺合されることで固定される。
これらの、第1支持部312と、第2支持部313とは、押圧部311を適切に支持するために、押圧部311とは異なり、通常の使用では変形しないステンレス等の可撓性が極めて低い素材で構成されている。
【0043】
図6は、第1支持部312と第2支持部313が固定された状態の押圧機構310の構造について、詳細に説明するための模式図である。
【0044】
図6(a)は、押圧機構310を
図5で定義した外側から平面視した状態を示す。また、
図6(b)は、押圧機構310を
図5で定義した内側から平面視した状態を示す。前提として、同じ素材で構成されていたとしても、その構造から、押圧部311の内側の平面形状は、相対的に可撓性が高く変形しやすい。これに対して、押圧部311の外側の角柱形状は、相対的に可撓性が低く変形しにくい。
【0045】
そのため、押圧部311の底面(平面形状及び角柱形状の底面)が何らかの物体に接触して、その物体から鉛直方向の力(例えば、鉛直上方への力)が加わった場合には、角柱形状の低い可撓性が影響することで、全体として可撓性が低く変形しにくい状態となる。これに対して、押圧部311の内側の平面形状が何らかの物体に接触して、その物体から外側方向への力が加わった場合、平面形状はその高い可撓性により外側に湾曲すると共に、角柱形状はそれぞれが離間していることから互いに接触することはなく、平面形状の湾曲に対して影響を与えない。これにより、全体として可撓性が高く変形しやすい状態となる。
【0046】
図6(c)は、上述した後者の場合(押圧部311の内側の平面形状が何らかの物体に接触して、その物体から外側方向への力が加わった場合)の、押圧機構310を、鉛直上方から平面視した状態を示す。図示されるように、外側方向への力が加わったことから、第1支持部312及び第2支持部313に支持されている部分を除き、平面形状はその高い可撓性により外側に湾曲する。そして、角柱形状はこの平面形状の湾曲に対して影響を与えていないことが分かる。本実施形態では、このような、力のかかる方向によって、押圧部311の可撓性に基づく変形の仕方が異なるという特徴を利用して、適切な嵌合を実現する。
【0047】
図7は、抑制機構340の構造について、より詳細に説明するための模式図である。
図7では、抑制機構340を前方向から平面視した構造を示す。
図7(a)に示すように、抑制機構340は、筐体部341と、押し込み部342と、保持部343を備える。
【0048】
筐体部341は、押し込み部342全体を収容する円筒形の筐体であり、筐体部341の天面は嵌合部材31aの底面に固定される。また、図中では押し込み部342の構成を明確とするため、筐体部341については、その断面を示す。
押し込み部342は、筐体部341の内部で保持部343を支持する。押し込み部342は鉛直方向に伸縮する弾性体(ここでは、圧縮コイルばね)を有している。
保持部343は、蓋に密着して吸着することで、蓋を保持する真空パッドである。保持部343は、筐体部341及び押し込み部342の中心部分を鉛直方向に挿通して、真空発生器(図示省略)に接続される。
【0049】
このような構成を有する抑制機構340は、
図7(b)に示すように、蓋に接触すると、保持部343による吸着により蓋を移送可能な状態に保持する。また、
図7(c)に示すように、後述する嵌合時の動作において、保持部343の先端に蓋が密着した状態(すなわち、蓋を保持している状態)であって、且つ、蓋が容器に支持された状態(詳細は後述する。)で、嵌合部材31aが下降すると、抑制機構340は、鉛直下方に向かって押し込まれる。すると、保持部343の先端に対して、蓋からの反力が押し込む方向と逆側の方向(ここでは、鉛直上方)に与えられ、これに応じて弾性体である圧縮コイルばねが弾性変形し、押し込む方向(ここでは、鉛直方向)において縮む。
【0050】
次に、
図7(d)に示すように、嵌合部材31aがさらに下降すると、抑制機構340の押し込み部342は、さらに弾性変形し、押し込まれた蓋は、蓋自身の可撓性により変形して、押し込み方向(ここでは、鉛直下方)に押し込まれた状態となる。本実施形態では、このような、抑制機構340の先端が鉛直方向に伸縮するという特徴を利用して、蓋閉め作業において嵌合を行う場合に、より簡便に、容器や蓋の膨らみを抑制する。
この嵌合時の動作や作用ついて、以下、さらに説明をする。
【0051】
[嵌合に関する一連の動作]
図8及び
図9は、制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
【0052】
図8(a)に、容器及び蓋を鉛直上方から平面視した状態を示す。容器及び蓋の中央の盛り付け領域には、食品が盛り付けられている。また、盛り付け領域の周辺には嵌合部が設けられており、容器の嵌合部を蓋の嵌合部に対して押圧して、2つの嵌合部を嵌合することで、容器の開口部は蓋により閉塞される。なお、このような容器と蓋の嵌合については、例えば、外勘合方式、内勘合方式、内外勘合方式等の様々な嵌合方式があるが、本実施形態では、蓋の嵌合部を押圧することで嵌合を実現できるのであれば、何れの嵌合方式についても、処理の対象とすることができる。
【0053】
以下に説明する
図8(a)~
図10、並びに、後述する
図13及び14は、何れも、この
図8(a)のA-A断面図である。
まず、
図8(b)に示すように、多関節ロボット30は、ハンド31を蓋供給位置P2に移送させると、嵌合部材31aを蓋供給位置P2に供給されている蓋に接触するまで鉛直上方から下降させる。そして、多関節ロボット30は、抑制機構340により蓋を吸着することで、蓋の保持を開始する。そして、多関節ロボット30は、蓋を保持したまま、ハンド31を嵌合位置P1に移送する。
【0054】
次に、
図8(c)に示すように、多関節ロボット30は、ベルトコンベア2により嵌合位置P1まで運搬されてくる容器に対して、嵌合部材31aを鉛直上方から下降する。この場合、蓋の嵌合部の底面は、容器の嵌合部の天面に接触する。しかしながら、未だ押圧機構310による押圧は行われていないことから、嵌合部同士は嵌合していない。
これにより、蓋の両端部分にある蓋の嵌合部は、容器により鉛直下方から支持された状態となる。
【0055】
次に、
図9(d)に示すように、多関節ロボット30は、容器に対して、嵌合部材31aを鉛直上方からさらに下降する。ここで、上述したように、蓋の両端部分にある蓋の嵌合部は、容器により鉛直下方から支持されている。そのため、蓋の両端部分については、これ以上鉛直下方には移動しない。これに対して、蓋の中央の領域については、蓋の両端のように支持されてはいない。そのため、抑制機構340により蓋の中央の領域が鉛直下方に押し込まれることに伴い、蓋の中央の領域は変形して、容器の収容空間側(すなわち、食品が盛り付けられている側)の方向に押し込まれた状態となる。
【0056】
次に、
図9(e)に示すように、多関節ロボット30は、蓋を抑制機構340で保持しながら、抑制機構340による押し込みを継続して行うことで、蓋が収容空間側の方向に押し込まれている状態を維持する。そして、多関節ロボット30は、この押し込まれている状態が維持されている間に、アクチュエータ331を駆動して、一対の押圧機構310のそれぞれを容器の水平面における中央部分に近づく方向(すなわち、内側方向)に水平移動させることで、一対の押圧機構310同士を近づけて、嵌合部よりも鉛直上方の蓋の側面の部分(以下、「当接対象部分」と称する。)に対して、押圧機構310の押圧部311を当接させる。ここで、
図6を参照して上述したように、押圧部311の内側の平面形状が何らかの物体(ここでは、蓋の当接対象部分)に接触して、その物体から内側方向と反対側の外側方向への力(ここでは、蓋の当接対象部分からの反力)が加わった場合、押圧部311は平面形状の相対的に高い可撓性により外側に湾曲するという特徴がある。そのため、押圧部311は、可撓性により、蓋及び押圧部311を鉛直上方から平面視した場合に、当接対象部分の外周の形状に沿った形状に湾曲する。すなわち、本実施形態では、容器の水平面の形状(すなわち、鉛直上方から平面視した形状)そのものを利用して、この形状に沿った形状に、押圧機構310を変形させる。
これに伴い、押圧部311は、蓋の当接対象部分のさらに鉛直下方に存在する、嵌合のために押圧すべき部分(以下、「押圧対象部分」と称する。)に適合した形状に変形する。
【0057】
次に、
図9(f)に示すように、多関節ロボット30は、変形動作により変形した状態の押圧機構310の押圧部311により、蓋の嵌合部の嵌合のために押圧すべき押圧対象部分を、鉛直下方に向かって押圧する。押圧対象部分の位置は容器によって異なるが、典型的には蓋の嵌合部の鉛直上方の部分が押圧対象部分である。なお、この鉛直下方に向かって押圧とは、鉛直上方から鉛直下方への鉛直方向成分が主たる成分となる方向に向かって押圧する場合を含む。すなわち、鉛直上方から鉛直下方へ斜めに押圧するような場合も含む。
【0058】
また、通常、当接対象部分と押圧対象部分とは、鉛直上方から平面視した場合に相似した形状をしているが、その大きさが異なることから離間している。そのため、押圧対象部分を押圧するのは、当接対象部分と当接している押圧部311の平面形状ではなく、この平面形状から外側に離間している押圧部311の角柱形状である。ここで、
図6を参照して上述したように、押圧部311の角柱形状の底面が何らかの物体(ここでは、蓋の押圧対象部分)に接触して、その物体から鉛直上方への力(ここでは、蓋の押圧対象部分からの反力)が加わった場合、角柱形状の低い可撓性により変形しにくいという特徴がある。そのため、押圧部311は、変形することなく押圧を行うことができる。また、上述した当接対象部分による当接によって、角柱形状も含めて押圧部311は、押圧対象部分に適合した形状に変形している。そのため、押圧部311は、押圧対象部分全体を均等な力でまんべんなく押圧することができ、より確実に、蓋の嵌合部と容器の嵌合部という嵌合部同士を嵌合することができる。
【0059】
また、この嵌合の時点においても、抑制機構340による押し込みを継続することで、蓋が収容空間側の方向に押し込まれている状態を維持している。これにより、容器と蓋とで閉塞される空間を縮小させて、空気を抜きながら嵌合することができる。そのため、容器内へ空気の流入量が低減し、閉塞後の容器や蓋の膨らみを抑制することができる。また、膨らみを抑制することで、容器と蓋をより確実に嵌合することができる。
【0060】
そして、多関節ロボット30は、嵌合が終了すると抑制機構340による吸着を取り止め、抑制機構340による蓋の保持を終了する。これにより、嵌合システム1による嵌合時の一連の動作は終了する。なお、その後、多関節ロボット30は、嵌合後の容器を解放するために上昇するが、この上昇の際に、嵌合した蓋が再度外れないように、押圧機構310を一度左右に開いて当接対象部分への当接を取り止めてから、上昇するようにしてもよい。
【0061】
このように、嵌合システム1による嵌合に関わる一連の動作では、力のかかる方向によって、押圧部311の可撓性に基づく変形の仕方が異なるという特徴を利用して、変形時には相対的に高い可撓性で変形をさせる一方で、押圧時には相対的に低い可撓性で変形させることなく押圧をすることができる。
これにより、押圧機構310を、今回の嵌合の対象とする容器や蓋の嵌合部に適合した形状とした上で、その後、適切に押圧を行うことができる。そのため、複数の種類の蓋や容器のそれぞれに対応して嵌合を実現することが可能となる。従って、例えば、1つの製造ライン上で異なる形状の容器に対応しなければならないような状況において、蓋閉めに用いる部材を交換することなく嵌合をすることができる。
また、この変形は、押圧機構310が有する可撓性という物理的な特性を利用することで実現できる、従って、上記のような状況において、多関節ロボット30の制御方法を適宜細かく調整することなく対応することができる。
すなわち、嵌合システム1によれば、多関節ロボット30によって嵌合を行う場合に、様々な嵌合対象物に対して、より汎用的に嵌合を行うことができる。
【0062】
また、嵌合システム1による嵌合に関わる一連の動作では、抑制機構340の先端が鉛直方向に伸縮するという特徴を利用して、容器と蓋とで閉塞される空間を縮小させて、空気を抜きながら嵌合することができる。そのため、容器内へ空気の流入量が低減し、閉塞後の容器や蓋の膨らみを抑制することができる。また、膨らみを抑制することで、容器と蓋をより確実に嵌合することができる。
さらに、嵌合システム1によれば、独立して駆動可能な複数の押圧部材によって交互に押圧を行うような煩雑な処理を行う必要もない。そのため、例えば、一度の押圧で嵌合を終了でき、作業時間を短縮することができる。
すなわち、嵌合システム1によれば、多関節ロボット30によって嵌合を行う場合に、より簡便に、容器や蓋の膨らみを抑制することができる。
【0063】
加えて、嵌合システム1によれば、蓋の嵌合部を容器の嵌合部に接触させることで、容器が蓋を支持している状態とした上で、蓋を容器の収容空間側の方向に押し込む。これにより、蓋を支持するための部材として容器を利用し、この容器により支持された状態で、蓋を押し込むことができる。
また、嵌合システム1によれば、抑制機構340が、保持部343により蓋の保持を行うのみならず、押し込み部342により鉛直方向に伸縮する保持部343の先端によりさらに押し込みも行う。これにより、単一の機構により複数の機能を実現することができ、装置構成を簡略化することができる。
【0064】
さらに、嵌合システム1によれば、抑制機構340は、蓋の中央の領域を押し込む。一方で、押圧機構310は、蓋の両端に設けられている嵌合部を押圧する。これにより、容器の両端から効率よく空気を抜きながら嵌合をすることができる。
さらに、嵌合システム1によれば、蓋を押し込む方向と蓋を押圧する方向は、鉛直下方である。そして、抑制機構340が押し込みの際に蓋に接触する先端部分は、押圧機構310が蓋に接触して押圧する底面部分よりも鉛直上方に位置する。これにより、押圧時に押圧機構310に与えられる鉛直下方への力が、抑制機構340の先端部分に加わりにくくなるため、押し込み機構により蓋を押し込む力が抑制され、蓋がへこみ過ぎることを防止できる。
【0065】
さらに、嵌合システム1によれば、抑制機構340は、弾性体による支持を利用することで、押し込んだ蓋からの反力に応じて、押し込む方向において伸縮する。これにより、蓋の形状が複数種類あるような場合であっても、抑制機構340が伸縮するストロークの範囲内であれば、この形状の違いを許容して、同じ抑制機構340を異なる種類の蓋に対して汎用的に用いることができる。
【0066】
[作用]
図10及び
図11は、上述した嵌合システム1による嵌合に関わる一連の動作における作用について説明するための模式図である。
【0067】
図10(A)には、一般的な技術において、蓋の両端の嵌合部を同時に容器の嵌合部に対して嵌合させた場合の、嵌合後の蓋により閉塞された容器の状態を示す。なお、これは、あくまで本実施形態との比較のために示すものであり、本実施形態により嵌合を行った場合の状態を示すものではない。本実施形態の押し込みのような動作を行わない場合、容器内に空気が流入した状態のまま嵌合がなされるので、図示するように、内部の空気により蓋が外側に押し出され、嵌合後に容器や蓋が膨らんだ状態となる。このように容器や蓋が膨らんでしまうと、これも図示するように、容器や蓋の膨らみに伴って嵌合部も変形してしまい嵌合が不十分となり、外部からの力が加わった場合に蓋が容易に外れてしまう。
また、この課題を考慮して、例えば、特許文献1に開示の技術のように、交互に押圧を行うことで、容器内の空気を抜きながら嵌合をすると、蓋閉め作業に要する時間が長くなってしまう。
【0068】
これに対して、
図10(B)には、本実施形態において、上述したようにして嵌合させた場合の、嵌合後の蓋により閉塞された容器の状態を示す。上述したように、本実施形態では、抑制機構340により蓋の中央領域を、容器の収容空間側の方向に押し込んだ状態で嵌合を行う。これにより、容器と蓋とで閉塞される空間を縮小させて、空気を抜きながら嵌合することができる。そのため、図示するように、閉塞後の容器や蓋の膨らみを抑制することができる。また、膨らみを抑制することで、嵌合部の変形が生じることもなく、容器と蓋をより確実に嵌合することができる。さらに、蓋の両端の嵌合部を同時に容器の嵌合部に対して嵌合させるため、蓋閉め作業に要する時間を短縮することができる。
このように、一般的な技術と比較して、本実施形態が、より簡便に、容器や蓋の膨らみを抑制できることは明らかである。
【0069】
図11は、押圧機構310の押圧部311を当接対象部分に当接させた場合の、変形例を示す図である。
図11は、変形前後の押圧機構310と、容器及び蓋とを、鉛直上方から平面視した状態を示す。
図11(A)及び(B)に示すように、変形前の押圧機構310は、長手方向において、当接対象部分及び押圧対象部分以上の長さを有している。すなわち、変形前の押圧機構310は、長手方向において、相対的に長尺となっている。これにより、蓋や容器の大小を問うことなく、押圧対象部分の全体に対して、押圧することが可能となる。
【0070】
また、これも
図11(A)及び(B)に示すように、当接対象部分や押圧対象部分は、円弧形状を含む形状である。変形後の押圧機構310は、この円弧形状に沿った形状となるように、少なくとも一部を湾曲させるように変形している。これにより、例えば、食品を盛り付ける容器や蓋等でよく用いられる、円弧形状を含んだ容器や蓋に対して、適切に押圧を行うことができる。
なお、
図11(A)及び(B)では、角部分に円弧形状を含んだ四角形の容器や、全体が円弧形状で構成された正円である円形の容器を例示しているが、押圧機構310を変形させる対象はこれに限られない。例えば、角部分に円弧形状を含んでいない六角形等の多角形の容器を対象として、押圧機構310を変形させることも可能である。
【0071】
[全体動作]
次に、嵌合システム1の全体動作を説明する。
図12は、嵌合システム1が実行する蓋嵌合処理の流れを示すフローチャートである。蓋嵌合処理は、例えば、ユーザによって蓋嵌合処理を開始させる操作が行われたことを契機として開始される。
【0072】
蓋嵌合処理が開始されると、S11において、多関節ロボット制御部154は、蓋嵌合処理における一連の動作を実行するための動作用のデータ(動作パターンのデータ等)をパラメータ記憶部171から読み込むことで、容器に蓋を嵌合するための準備を行う。この際、多関節ロボット制御部154は、現在ベルトコンベア2にて運搬中の容器に対応する動作パターンを読み込む。
【0073】
ステップS12において、蓋供給制御部153は、蓋供給部10を制御し、蓋供給位置P2に、現在ベルトコンベア2にて運搬中の容器に対応する蓋を供給する。
ステップS13において、多関節ロボット制御部154は、動作パターンのデータに従って、蓋供給位置P2に、ハンド31を移送する。
【0074】
ステップS14において、多関節ロボット制御部154は、抑制機構340を制御し、蓋を吸着して保持する。
ステップS15において、多関節ロボット制御部154は、容器検出センサ20によって容器が嵌合位置P1に運搬されたこと、あるいは、嵌合位置P1に運搬される直前であることが検出されたか否かを判定する。検出された場合は、ステップS15においてYesと判定され、処理はステップS16に進む。一方で、検出されない場合は、ステップS15においてNoと判定され、ステップS15の判定を継続する。
【0075】
ステップS16において、多関節ロボット制御部154は、動作パターンのデータに従って、嵌合位置P1に、ハンド31を移送する。
ステップS17において、多関節ロボット制御部154は、抑制機構340の先端部分を利用し、容器により支持されている蓋の、中央の領域を押し込む。
ステップS18において、多関節ロボット制御部154は、嵌合部材31aを制御し、押圧機構310を当接対象部分に当接することで、押圧部311を変形させる。
【0076】
ステップS19において、多関節ロボット制御部154は、嵌合部材31aを制御し、変形した状態の押圧機構310の押圧部311により、押圧対象部分を、鉛直下方に向かって押圧する。
ステップS20において、多関節ロボット制御部154は、押圧により容器と蓋が嵌合すると、抑制機構340を制御して蓋の保持を終了させると共に、ハンド31を上昇させる。これにより容器と蓋の嵌合が実行される。
【0077】
ステップS21において、記録制御部155は、嵌合システム1が動作した際に取得される制御に関するパラメータや、嵌合システム1で嵌合を行った際に嵌合に要した時間を示す値等を、履歴DB172に記憶する。
【0078】
ステップS22において、多関節ロボット制御部154は、蓋嵌合処理を終了する条件に適合したか否かを判定する。この場合、蓋嵌合処理を終了する条件としては、予定された数の容器に蓋を嵌合したこと、あるいは、ユーザによって蓋嵌合処理を終了させる操作が行われたこと等を定義することができる。
蓋嵌合処理を終了する条件に適合していない場合は、ステップS22においてNoと判定されて、処理はステップS23に進む。一方で、蓋嵌合処理を終了する条件に適合している場合は、ステップS22においてYesと判定されて、蓋嵌合処理は終了する。
【0079】
ステップS23において、多関節ロボット制御部154は、対象情報取得部151が取得している対象情報に基づいて、嵌合をすべき容器と蓋に変更があるか否かを判定する。変更がある場合は、ステップS23においてYesと判定され、処理はステップS11に戻る。そして、多関節ロボット制御部154は、変更後の容器と蓋に対応する動作パターンを新たに読み込んだ上で、この新たに読み込んだ動作パターンに従って、ステップS12以降の処理を再度行う。一方で、変更がない場合は、ステップS23においてNoと判定され、処理はステップS12に戻る。そして、多関節ロボット制御部154は、読み込み済みの動作パターンに従って、ステップS12以降の処理を再度行う。
【0080】
以上のように、本実施形態に係る嵌合システム1によれば、多関節ロボット30によって蓋閉め作業を行う場合に、より簡便に、容器や蓋の膨らみを抑制することができる。これに加えて、本実施形態に係る嵌合システム1は、
図8~
図11を参照した説明の際に上述したような、様々な効果も奏する。
【0081】
[変形例1]
上述の実施形態では、抑制機構340の先端部分は、蓋からの反力に応じて弾性体である圧縮コイルばねが弾性変形することで、鉛直方向に伸縮していた。これに限らず、他の構成で抑制機構340の先端部分を伸縮させるようにしてもよい。例えば、抑制機構340の先端部分を、任意のタイミングで鉛直方向に伸縮できるように、抑制機構340の先端部分とこれに結合されている部分を、鉛直方向に任意に移動可能なアクチュエータを用いる構成としてもよい。
図13は、本変形例において、制御装置40の制御に基づいて、多関節ロボット30が行う嵌合に関する一連の動作の一例を示す模式図である。
【0082】
まず、
図13(a)に示すように、多関節ロボット30は、ハンド31を蓋供給位置P2に移送させると、嵌合部材31aを蓋供給位置P2に供給されている蓋に接触するまで鉛直上方から下降させる。そして、多関節ロボット30は、抑制機構340により蓋を吸着することで、蓋の保持を開始する。また、多関節ロボット30は、抑制機構340の先端部分とこれに結合されている部分を、鉛直方向に任意に移動可能なアクチュエータ(図示省略)の駆動を制御することにより、抑制機構340の先端部分を鉛直上方に移動させる。すなわち、抑制機構340を、鉛直方向において縮ませる。
【0083】
また、多関節ロボット30は、この抑制機構340に対する制御と並行して、一対の押圧機構310同士を近づけて、蓋の当接対象部分に対して、押圧機構310の押圧部311を当接させる。これに伴い、押圧部311は、蓋の当接対象部分のさらに鉛直下方に存在する、押圧対象部分に適合した形状に変形する。
そして、多関節ロボット30は、蓋の保持及びを維持したまま、ハンド31を嵌合位置P1に移送する。
【0084】
次に、
図13(b)に示すように、多関節ロボット30は、ベルトコンベア2により嵌合位置P1まで運搬されてくる容器に対して、嵌合部材31aを鉛直上方から下降する。この場合、抑制機構340及び押圧機構310の状態は、
図13(a)の状態のまま維持されている。
【0085】
次に、
図13(c)に示すように、多関節ロボット30は、押圧機構310の押圧部311により、蓋の嵌合部の嵌合のために押圧すべき押圧対象部分を、鉛直下方に向かって押圧する。また、多関節ロボット30は、この押圧によって嵌合中のタイミング(すなわち、完全に嵌合する前のタイミング)で、抑制機構340の先端部分とこれに結合されている部分を、鉛直方向に任意に移動可能なアクチュエータの駆動を制御することにより、抑制機構340の先端部分を鉛直下方に移動させる。すなわち、抑制機構340を、鉛直方向において伸ばす。
【0086】
この嵌合中のタイミングにおいて、蓋の両端の嵌合部は、鉛直下方を容器により支持されると共に、鉛直上方を押圧機構310の底面によって支持されている。そのため、上述の実施形態と同様に、抑制機構340の先端部分は、蓋の容器中央を容器の収容空間側の方向に押し込む。特に、本変形例では、上述した実施形態のように、蓋からの反力に応じて、いわば受動的に弾性体である圧縮コイルばねが弾性変形するのではなく、アクチュエータによりいわば能動的に抑制機構340を、鉛直方向において伸ばしている。そのため、抑制機構340の先端部分を、蓋の容器中央を容器の収容空間側の方向に、嵌合中という短い時間の間に、タイミングよく押し込むことができる。そして、多関節ロボット30は、このタイミングよく押し込まれた蓋に対して、押圧を継続することで、嵌合を終了する。
【0087】
本変形例によれば、上述の実施形態と同様に、容器や蓋の膨らみを抑制した上で、蓋閉め作業を終了することができる。また、本変形例によれば、押し込みと嵌合を同時並行して行うことができ、作業時間をさらに短縮することができる。
【0088】
[変形例2]
上述の実施形態では、抑制機構340が、保持部343により蓋の保持を行うのみならず、押し込み部342により鉛直方向に伸縮する保持部343の先端によりさらに押し込みも行っていた、すなわち、抑制機構340という、単一の機構により複数の機能を実現していた。これに限らず、複数の機能を、それぞれ別の機構により実現するようにしてもよい。
【0089】
図14は、本変形例において、複数の機能を、それぞれ別の機構により実現する場合の構成例を示す図である。
図14に示すように、本変形例における嵌合部材31a-1は、抑制機構340に代えて、保持機構360と、押し込み機構370と、を備える。なお、抑制機構340以外の構成要素については、上述した実施形態の嵌合部材31aと、本変形例の嵌合部材31a-1とで共通するので、図示を省略する。
【0090】
保持機構360は、抑制機構340の保持部343の機能に相当する機構であり、対象物として蓋に密着して吸着することで、蓋を保持する。また、押し込み機構370が備える筐体部371及び押し込み部372は、それぞれ抑制機構340の筐体部341及び押し込み部372と同様の構造である。ただし、押し込み機構370には、抑制機構340の保持部343に代えて棒状部373が、押し込み部372により支持されている。この棒状部373は、蓋の中央を押し込む部分として機能する。
この場合に、押し込み機構370は、蓋の中央を押し込むために、蓋の中央の領域に対応した位置に配置される。一方で、保持機構360は、この押し込み機構370と離間した位置であって、蓋を保持可能な位置(ここでは、蓋の天面の両端に対応する位置)に配置される。
【0091】
本変形例のような構成とした場合にも、上述した実施形態の抑制機構340と同様の機能を実現することができる。また、本変形例のような構成とした場合、蓋を容器において支持しなくても、保持機構360により蓋を保持しながら押し込み機構370により押し込みを行うことができる。さらに、本変形例のような構成とした場合、真空パッドのような吸着により保持をする機構のみならず、例えば、人間の手指のようなマニピュレータで容器の両端を把持して蓋閉めするような構成に対しても適用可能となり、押し込みによる膨らみの抑制を行うことができる。
【0092】
[変形例3]
上述の実施形態では、押圧部311を、平面形状と角柱形状を組み合わせた構成としていた。そして、平面形状の高い可撓性を利用して、例えば、押圧部311を、外側に湾曲するよう変形をさせていた。これに限らず、押圧部311は、適切に押圧をできる形状に構成すればよく、必ずしも変形するような形状でなくともよい。
このようにした場合であっても、少なくとも抑制機構340等を利用した押し込みを実現することは可能であるので、より簡便に、容器や蓋の膨らみを抑制することができるという効果を奏することができる。
【0093】
[変形例4]
上述の実施形態において、多関節ロボット制御部154は、例えば、力センサ30Aによって計測された容器や蓋からの反力(すなわち、容器や蓋への接触の検出結果)のデータに基づいて、蓋の押し込みを開始したり、当接対象部分への当接を開始したり、押圧対象部分への押圧を開始したり、これらを終了したりするように、多関節ロボット30を制御することができる。これに限らず、他の方法で制御をするようにしてもよい。
【0094】
例えば、容器や蓋の幅や高さが正確にデータとして把握できており、より高精度に多関節ロボット30を駆動できる場合には、この容器や蓋の幅や高さのデータのみに基づいて、多関節ロボット30を制御するようにしてもよい。あるいは、カメラの設置コスト等が問題とならない場合には、カメラ(すなわち、撮像装置)によって、嵌合位置P1の蓋や容器を撮影する。そして、この撮像装置によって撮像された画像をリアルタイムに画像解析し、その解析結果に基づいて、多関節ロボット30を制御するようにしてもよい。
なお、上述した変形例1~変形例4については、これらを適宜組み合わせて、別途の変形例とすることも可能である。
【0095】
[構成例]
以上のように、本実施形態における嵌合システム1は、容器の収容空間を蓋によって閉塞する多関節ロボット30と、多関節ロボット30の動作を制御する制御装置40と、を備える。
制御装置40は、
保持機構によって蓋を保持する保持動作と、
保持している蓋を、押し込み機構によって容器の収容空間側の方向に押し込む押し込み動作と、
蓋が収容空間側の方向に押し込まれている状態で、押圧機構310によって蓋の嵌合部を容器の嵌合部に対して押圧して嵌合部同士を嵌合させることで、容器の収容空間を蓋によって閉塞する閉塞動作と、
を多関節ロボット30に実行させる。
これにより、容器と蓋とで閉塞される空間を縮小させて、空気を抜きながら嵌合することができる。そのため、容器内へ空気の流入量が低減し、閉塞後の容器や蓋の膨らみを抑制することができる。また、膨らみを抑制することで、容器と蓋をより確実に嵌合することができる。
さらに、嵌合システム1によれば、独立して駆動可能な複数の押圧部材によって交互に押圧を行うような煩雑な処理を行う必要もない。そのため、例えば、一度の押圧で嵌合を終了でき、作業時間を短縮することができる。
すなわち、嵌合システム1によれば、多関節ロボット30によって嵌合を行う場合に、より簡便に、容器や蓋の膨らみを抑制することができる。
【0096】
押し込み動作では、蓋の嵌合部を容器の嵌合部に接触させることで、容器が蓋を支持している状態とした上で、蓋を容器の収容空間側の方向に押し込む。
これにより、蓋を支持するための部材として容器を利用し、この容器により支持された状態で、蓋を押し込むことができる。
【0097】
保持機構として機能して保持動作を行う抑制機構340がさらに押し込み動作を行うことによって、抑制機構340は、さらに押し込み機構としても機能する。
これにより、保持機構と押し込み機構を同一の機構として機能させ、装置構成を簡略化することができる。
【0098】
押し込み動作において、押し込み機構は、蓋の中央の領域を押し込む。
閉塞動作において、押圧機構310は、蓋の両端に設けられている嵌合部を押圧する。
これにより、容器の両端から効率よく空気を抜きながら嵌合をすることができる。
【0099】
押し込み動作において押し込む方向と閉塞動作において押圧する方向は、鉛直下方である。
押し込み機構が蓋に接触して押し込む部分は、押圧機構310の蓋に接触して押圧する部分よりも鉛直上方に位置する。
これにより、押圧時に押圧機構に与えられる鉛直下方への力が、押し込み機構が蓋に接触して押し込んでいる部分に加わりにくくなるため、押し込み機構により蓋を押し込む力が抑制され、蓋がへこみ過ぎることを防止できる。
【0100】
押し込み機構は、弾性体によって支持されており、押し込み動作において押し込んだ蓋からの反力に応じて、押し込む方向において伸縮する。
これにより、押し込み量に応じて押し込む方向において弾性体が伸縮して押し込むので、押圧時に押圧機構310と共に、押し込み機構が押し込み方向に押し込まれたとしても、蓋がへこみ過ぎることを防止できる。また、これにより、蓋の形状が複数種類あるような場合であっても、抑制機構340が伸縮するストロークの範囲内であれば、この形状の違いを許容して、同じ押し込み機構を異なる種類の蓋に対して汎用的に用いることができる。
【0101】
押し込み機構は、アクチュエータの駆動により押し込む方向における伸縮を制御可能となっており、
押圧機構310による閉塞動作の実行中に、押し込み機構を押し込む方向に伸ばすことで、押し込み動作を実現する。
これにより、押し込みと嵌合を同時並行して行うことができ、作業時間をさらに短縮することができる。
【0102】
なお、上述の実施形態及び変形例は、本発明の実施形態の一例であり、本発明の機能を実現する種々の実施形態が本発明の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態及び変形例において、食品が盛り付けられた容器に対して、蓋をする嵌合システムに本発明を適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、種々の対象物を嵌合するシステムに適用することができる。例えば、工業分野等において、ロボットによって嵌合を行う様々なシステムに本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態に記載された例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、
図3の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。すなわち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が嵌合システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図3の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0103】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0104】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクあるいはフラッシュメモリ等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。フラッシュメモリは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリあるいはSDカードにより構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【0105】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0106】
上記実施形態は、本発明を適用した一例を示しており、本発明の技術的範囲を限定するものではない。すなわち、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができ、上記実施形態以外の各種実施形態を取ることが可能である。本発明が取ることのできる各種実施形態及びその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
1 嵌合システム、2 ベルトコンベア、2A 案内部材、10 蓋供給部、20 容器検出センサ、30 多関節ロボット、30A 力センサ、31 ハンド、31a、31a-1 嵌合部材、32 ロボットアーム、40 制御装置、51 容器、52 蓋、151 対象情報取得部、152 センサ情報取得部、153 蓋供給制御部、154 多関節ロボット制御部、155 記録制御部、171 パラメータ記憶部、172 履歴データベース(履歴DB)、310 押圧機構、311 押圧部、312 第1支持部、313 第2支持部、320 スライド機構、321 レール部、322 フック部、323 連結部、330 開閉機構、331 アクチュエータ、332 ピニオンギア、333 ラック、340 抑制機構、341、371 筐体部、342、372 押し込み部、343 保持部、350 ハンド装着部、360 保持機構、370 押し込み機構、373 棒状部、711 CPU、712 ROM、713 RAM、714 バス、715 入力部、716 出力部、717 記憶部、718 通信部、719 ドライブ、731 リムーバブルメディア
【手続補正書】
【提出日】2023-07-18
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、嵌合システム、制御装置に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の収容空間を蓋によって閉塞するロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた嵌合システムであって、
前記制御装置は、
保持機構によって前記蓋を保持する保持動作と、
前記保持している前記蓋を、押し込み機構によって前記容器の収容空間側の方向に押し込む押し込み動作と、
前記蓋が前記収容空間側の方向に押し込まれている状態で、押圧機構によって前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に対して押圧して嵌合部同士を嵌合させることで、前記容器の収容空間を蓋によって閉塞する閉塞動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする嵌合システム。
【請求項2】
前記押し込み動作では、前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に接触させることで、前記容器が前記蓋を支持している状態とした上で、前記蓋を前記容器の収容空間側の方向に押し込む、
ことを特徴とする請求項1に記載の嵌合システム。
【請求項3】
前記保持機構が前記押し込み動作を行うことによって、前記保持機構は、さらに前記押し込み機構としても機能する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項4】
前記保持機構は、該保持機構の先端部によって前記蓋を吸着可能であると共に、
前記先端部を前記蓋に接触させた状態で吸着をすることで前記保持動作を実現し、
前記先端部を前記容器の収容空間側の方向に押し込むことで前記押し込み動作を実現する、
ことを特徴とする請求項3に記載の嵌合システム。
【請求項5】
前記押し込み動作において、前記押し込み機構は、前記蓋の中央の領域を押し込み、
前記閉塞動作において、前記押圧機構は、前記蓋の両端に設けられている嵌合部を押圧する、
ことを特徴をとする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項6】
前記押し込み動作において押し込む方向と前記閉塞動作において押圧する方向は、鉛直下方であり、
前記押し込み機構が前記蓋に接触して押し込む部分は、前記押圧機構の前記蓋に接触して押圧する部分よりも鉛直上方に位置する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項7】
前記押し込み機構は、弾性体によって支持されており、前記押し込み動作において前記押し込んだ蓋からの反力に応じて、押し込む方向において伸縮する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項8】
容器の収容空間を蓋によって閉塞するロボットの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、
前記制御手段は、
保持機構によって前記蓋を保持する保持動作と、
前記保持している前記蓋を、押し込み機構によって前記容器の収容空間側の方向に押し込む押し込み動作と、
前記蓋が前記収容空間側の方向に押し込まれている状態で、押圧機構によって前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に対して押圧して嵌合部同士を嵌合させることで、前記容器の収容空間を蓋によって閉塞する閉塞動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする制御装置。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の収容空間を蓋によって閉塞するロボットと、前記ロボットの動作を制御する制御装置と、を備えた嵌合システムであって、
前記制御装置は、
保持機構の先端部を前記蓋に接触させた状態で吸着をすることで、前記蓋を保持する保持動作と、
前記保持している前記蓋を、押し込み機構としても機能する前記保持機構の先端部を前記容器の収容空間側の方向に押し込む押し込み動作と、
前記蓋が前記収容空間側の方向に押し込まれている状態で、押圧機構によって前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に対して押圧して嵌合部同士を嵌合させることで、前記容器の収容空間を蓋によって閉塞する閉塞動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする嵌合システム。
【請求項2】
前記押し込み動作では、前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に接触させることで、前記容器が前記蓋を支持している状態とした上で、前記蓋を前記容器の収容空間側の方向に押し込む、
ことを特徴とする請求項1に記載の嵌合システム。
【請求項3】
前記押し込み動作において、前記押し込み機構としても機能する前記保持機構の先端部は、前記蓋の中央の領域を押し込み、
前記閉塞動作において、前記押圧機構は、前記蓋の両端に設けられている嵌合部を押圧する、
ことを特徴をとする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項4】
前記押し込み動作において押し込む方向と前記閉塞動作において押圧する方向は、鉛直下方であり、
前記押し込み機構としても機能する前記保持機構の先端部が前記蓋に接触して押し込む部分は、前記押圧機構の前記蓋に接触して押圧する部分よりも鉛直上方に位置する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項5】
前記押し込み機構としても機能する前記保持機構の先端部は、弾性体によって支持されており、前記押し込み動作において前記押し込んだ蓋からの反力に応じて、押し込む方向において伸縮する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の嵌合システム。
【請求項6】
容器の収容空間を蓋によって閉塞するロボットの動作を制御する制御手段を備えた制御装置であって、
前記制御手段は、
保持機構の先端部を前記蓋に接触させた状態で吸着をすることで、前記蓋を保持する保持動作と、
前記保持している前記蓋を、押し込み機構としても機能する前記保持機構の先端部を前記容器の収容空間側の方向に押し込む押し込み動作と、
前記蓋が前記収容空間側の方向に押し込まれている状態で、押圧機構によって前記蓋の嵌合部を前記容器の嵌合部に対して押圧して嵌合部同士を嵌合させることで、前記容器の収容空間を蓋によって閉塞する閉塞動作と、
を前記ロボットに実行させることを特徴とする制御装置。