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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105157
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】鋼板保持装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/06 20060101AFI20240730BHJP
   B25J 15/00 20060101ALI20240730BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B66C1/06 B
B25J15/00 F
B25J15/06 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009750
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】593003949
【氏名又は名称】ウエダ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】植田 敏治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 忠男
【テーマコード(参考)】
3C707
3F004
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS21
3C707BT03
3C707CY22
3C707CY36
3C707DS03
3C707ES03
3C707ET03
3C707EU04
3C707EV07
3C707EW07
3C707FS07
3C707FU01
3C707HS13
3C707HT22
3C707NS09
3F004EA03
3F004JA05
(57)【要約】
【課題】鋼板保持装置を大型化する場合であっても、油圧シリンダーの動力を係止用アームに伝達する動力伝達部の重量の増大を抑制する。
【解決手段】鋼板保持装置10の落下防止機構16は、係止用アーム21と油圧シリンダー22と動力伝達部23とを備えている。動力伝達部23は、基端部21bを支点に係止用アーム21を回転させるための第1伝達機構31と、係止用アーム21の基端部21bを上下動させるための第2伝達機構32と、クラッチ部材25を具備する切替機構33とを有する。ピストンロッドの進出過程では、切替機構33は、クラッチ部材25が第1伝達機構31に係合する第1状態から、クラッチ部材25が第2伝達機構32に係合する第2状態に切り替わり、第1状態の期間に、第1伝達機構31の動作によって係止用アーム21が下方に回転し、第2状態の期間に、第2伝達機構32の動作によって係止用アーム21の基端部21bが持ち上げられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁力によって鋼板を吸着する吸着装置と、
前記吸着装置により吸着される鋼板を係止する落下防止機構とを備えた鋼板保持装置であって、
前記落下防止機構は、
先端部にて鋼板に係止可能で、基端部が回転自在に支持された係止用アームと、
ピストンロッドが進退する油圧シリンダーと、
前記基端部を支点に前記係止用アームを回転させるための第1伝達機構と、前記係止用アームの基端部を上下動させるための第2伝達機構と、前記第1伝達機構と前記第2伝達機構に係合するクラッチ部材を具備し、前記ピストンロッドの進退に伴ってクラッチ部材が移動して該クラッチ部材の係合先が前記第1伝達機構と前記第2伝達機構とで切り替わる切替機構とを有する動力伝達部とを備え、
前記ピストンロッドの進出過程では、前記切替機構は、前記クラッチ部材が前記第1伝達機構に係合する第1状態から、前記クラッチ部材が前記第2伝達機構に係合する第2状態に切り替わり、前記第1状態の期間に、前記クラッチ部材の移動に伴う前記第1伝達機構の動作によって、前記先端部が上方を向く状態の係止用アームが下方に回転し、前記第2状態の期間に、前記クラッチ部材の移動に伴う前記第2伝達機構の動作によって、前記係止用アームの基端部が持ち上げられる、鋼板保持装置。
【請求項2】
前記第2伝達機構は、当該鋼板保持装置の基台に固定された固定軸に一端側が回転自在に支持されて、他端側が前記係止用アームの基端部に回転自在に連結された伝達側回転体を備え、
前記切替機構は、前記ピストンロッドの進退に伴って、前記クラッチ部材が前記固定軸と同軸の回転軸を中心に回転移動するように構成され、
前記第2状態では、前記ピストンロッドの進出に伴って、前記伝達側回転体に係合する前記クラッチ部材が移動して、該移動に伴って前記伝達側回転体が回転することで、前記係止用アームの基端部が持ち上げられる、請求項1の鋼板保持装置。
【請求項3】
前記第1伝達機構は、
当該鋼板保持装置の基台に固定された固定軸に回転自在に支持された揺動ギアと、
前記揺動ギアに噛み合うピニオンを有し、且つ、前記ピニオンの回転軸を支点にして回転自在に設けられて、前記先端部が上方を向く状態の係止用アームを下側から支持するリフト用アームとを備え、
前記第1状態の期間に、前記ピストンロッドの進出に伴って、前記揺動ギアに係合する前記クラッチ部材が移動して、該移動に伴って前記揺動ギアが回転することで、前記リフト用アームと共に前記係止用アームが下方に回転する、請求項1に記載の鋼板保持装置。
【請求項4】
重機のアームが連結されるアーム連結部と、
前記吸着装置の上側に配置され、前記落下防止機構が取り付けられた基台と、
前記アーム連結部と前記基台の間に設けられ、前記アーム連結部に対し前記基台を傾動可能に連結する傾動機構とをさらに備え、
前記傾動機構は、
平面視において互いに直交する第1回転軸及び第2回転軸を有する自在継手と、
前記自在継手の連結角度の変化による傾動の際に、弾性変形により収縮する復元機構とを備えている、請求項1の鋼板保持装置。
【請求項5】
前記自在継手は、前記第1回転軸及び前記第2回転軸が一体化されたリング部材と、前記基台側に固定されて前記第1回転軸を回転自在に支持する第1軸回転支持機構と、前記アーム連結部側に固定されて前記第2回転軸を回転自在に支持する第2回転支持機構とをさらに備え
前記第1回転軸は、前記リング部材の外周面から、互いに逆方向に突出する一対の第1軸部材により構成され、
前記第2回転軸は、平面視において前記第1回転軸と直交する方向に沿って前記リング部材の外周面から互いに逆方向に突出する一対の第2軸部材により構成されている、請求項4の鋼板保持装置。
【請求項6】
前記復元機構は、前記基台側の部材と前記アーム連結部側の部材とが対面する対面空間に配置されて、該対面空間において上面視で互いに離間して配置された複数の伸縮装置を有し、前記傾動の際に前記対面空間の高さが狭まる箇所の伸縮装置が、弾性変形により収縮し、
前記伸縮装置は、
上下方向に弾性変形可能な弾性部材と、
前記アーム連結部側の部材に対し、少なくとも前記第1回転軸の軸方向と前記第2回転軸の軸方向とに揺動自在に支持された上側部材と、
上部が前記上側部材に係合して、前記上側部材と共に前記弾性部材を挟む下側部材と、
前記基台側の部材上に設けられて前記下側部材を受止め、且つ、前記第1回転軸の軸方向及び前記第2回転軸の軸方向の2方向の何れかに、前記下側部材が移動するように案内するガイド部とを備えている、請求項4の鋼板保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板などの運搬に用いられる鋼板保持装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
土木などの工事現場では、足場の保護等のために鋼板が敷設される。鋼板の敷設又は撤去の際には、重量物である鋼板の運搬が必要となる。このような場面で、ショベルなどの重機によって吊下げられた状態で使用される鋼板保持装置が用いられる。
【0003】
特許文献1には、鋼板のクランプの確実性及び容易性を高めるように構成された鋼板移送装置が記載されている。この鋼板移送装置は、先端にフック部を有した左右一対の支持アームを備えている。支持アームは、動力伝達部によって上下方向に回転するように軸支されており、回転下限位置において、フック部が鋼板を裏面側から支持する。動力伝達部は、油圧シリンダーと、油圧シリンダーの伸縮動を支持アームの回転動として伝達するリンク機構とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-69130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の鋼板保持装置では、動力伝達部を構成するリンク機構の一端部が、油圧シリンダーのピストンロッドに連結され、他端部が支持アーム(本願発明の「係止用アーム」に相当)の基端部に連結されている。そして、リンク機構は、油圧シリンダー寄りの支点で、該鋼板保持装置の基台(フレーム)に固定された固定軸に対して回転自在に支持されている。リンク機構は、支点から支持アームとの連結箇所までの距離が比較的長い。そのため、ピストンロッドを進出させる際に、支持アームの基端部の移動距離が長くなり、リンク機構による動力伝達のみで、支持アームを下方に回転させ、且つ、支持アームの基端部を持ち上げることができる。
【0006】
しかし、従来の鋼板保持装置のリンク機構は、支点から支持アームとの連結箇所までの距離を長くする必要があるために、比較的大きな部材となる。そのため、昨今において求められている鋼板保持装置の大型化に対応しようとすると、リンク機構の強度を確保するために部材の厚みが必要となり、リンク機構の重量が増大する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、鋼板保持装置を大型化する場合であっても、油圧シリンダーの動力を係止用アームに伝達する動力伝達部の重量の増大を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、磁力によって鋼板を吸着する吸着装置と、吸着装置により吸着される鋼板を係止する落下防止機構とを備えた鋼板保持装置であって、落下防止機構は、先端部にて鋼板に係止可能で、基端部が回転自在に支持された係止用アームと、ピストンロッドが進退する油圧シリンダーと、基端部を支点に係止用アームを回転させるための第1伝達機構と、係止用アームの基端部を上下動させるための第2伝達機構と、第1伝達機構と第2伝達機構に係合するクラッチ部材を具備し、ピストンロッドの進退に伴ってクラッチ部材が移動して該クラッチ部材の係合先が第1伝達機構と第2伝達機構とで切り替わる切替機構とを有する動力伝達部とを備え、ピストンロッドの進出過程では、切替機構は、クラッチ部材が第1伝達機構に係合する第1状態から、クラッチ部材が第2伝達機構に係合する第2状態に切り替わり、第1状態の期間に、クラッチ部材の移動に伴う第1伝達機構の動作によって、先端部が上方を向く状態の係止用アームが下方に回転し、第2状態の期間に、クラッチ部材の移動に伴う第2伝達機構の動作によって、係止用アームの基端部が持ち上げられる、鋼板保持装置である。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、第2伝達機構は、当該鋼板保持装置の基台に固定された固定軸に一端側が回転自在に支持されて、他端側が係止用アームの基端部に回転自在に連結された伝達側回転体を備え、切替機構は、ピストンロッドの進退に伴って、クラッチ部材が固定軸と同軸の回転軸を中心に回転移動するように構成され、第2状態では、ピストンロッドの進出に伴って、伝達側回転体に係合するクラッチ部材が移動して、該移動に伴って伝達側回転体が回転することで、係止用アームの基端部が持ち上げられる。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、第1伝達機構は、当該鋼板保持装置の基台に固定された固定軸に回転自在に支持された揺動ギアと、揺動ギアに噛み合うピニオンを有し、且つ、ピニオンの回転軸を支点にして回転自在に設けられて、先端部が上方を向く状態の係止用アームを下側から支持するリフト用アームとを備え、第1状態の期間に、ピストンロッドの進出に伴って、揺動ギアに係合するクラッチ部材が移動して、該移動に伴って揺動ギアが回転することで、リフト用アームと共に係止用アームが下方に回転する。
【0011】
第4の発明は、第1の発明において、重機のアームが連結されるアーム連結部と、吸着装置の上側に配置され、落下防止機構が取り付けられた基台と、アーム連結部と基台の間に設けられ、アーム連結部に対し基台を傾動可能に連結する傾動機構とをさらに備え、傾動機構は、平面視において互いに直交する第1回転軸及び第2回転軸を有する自在継手と、自在継手の連結角度の変化による傾動の際に、弾性変形により収縮する復元機構とを備えている。
【0012】
第5の発明は、第4の発明において、自在継手は、第1回転軸及び第2回転軸が一体化されたリング部材と、基台側に固定されて第1回転軸を回転自在に支持する第1軸回転支持機構と、アーム連結部側に固定されて第2回転軸を回転自在に支持する第2回転支持機構とをさらに備え第1回転軸は、リング部材の外周面から、互いに逆方向に突出する一対の第1軸部材により構成され、第2回転軸は、平面視において第1回転軸と直交する方向に沿ってリング部材の外周面から互いに逆方向に突出する一対の第2軸部材により構成されている。
【0013】
第6の発明は、第4の発明において、復元機構は、基台側の部材とアーム連結部側の部材とが対面する対面空間に配置されて、該対面空間において上面視で互いに離間して配置された複数の伸縮装置を有し、傾動の際に対面空間の高さが狭まる箇所の伸縮装置が、弾性変形により収縮し、伸縮装置は、上下方向に弾性変形可能な弾性部材と、アーム連結部側の部材に対し、少なくとも第1回転軸の軸方向と第2回転軸の軸方向とに揺動自在に支持された上側部材と、上部が上側部材に係合して、上側部材と共に弾性部材を挟む下側部材と、基台側の部材上に設けられて下側部材を受止め、且つ、第1回転軸の軸方向及び第2回転軸の軸方向の2方向の何れかに、下側部材が移動するように案内するガイド部とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ピストンロッドの進出過程で、切替機構が、ピストンロッドの進出に伴って移動するクラッチ部材が第1伝達機構に係合する第1状態から、クラッチ部材が第2伝達機構に係合する第2状態に切り替わる。第1状態の期間は、第1伝達機構の動作によって、先端部が上方を向く状態の係止用アームが下方に回転する。そして、第2状態の期間は、第2伝達機構の動作によって、先端部が下方を向いた状態の係止用アームの基端部が持ち上げられる。
【0015】
本発明では、ピストンロッドの進退に伴って移動するクラッチ部材の係合先として、係止用アームを回転させるための第1伝達機構と、係止用アームの基端部を上下動させるための第2伝達機構とが設けられている。すなわち、係止用アームの回転のための動力伝達と、係止用アームの基端部の上下動のための動力伝達とについて、従来は、リンク機構が両方を担っていたのに対し、本発明は、それぞれを担う2つの伝達機構が設けられ、切替機構によってクラッチ部材の係合先が切り替わるようにしている。そのため、従来のリンク機構に比べて、各伝達機構を有する動力伝達部の構成部材の小型化が可能である。従って、鋼板保持装置を大型化する場合であっても、動力伝達部の重量の増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る鋼板保持装置を斜め上方から見た斜視図である。
図2図2(a)は、実施形態に係る鋼板保持装置の正面図であり、図2(b)は、鋼板保持装置の側面図である。
図3図3(a)は、実施形態に係る鋼板保持装置の落下防止機構における一方の係合機構の上面図であり、図3(b)は、係合機構を正面から見た係合機構の拡大図である。
図4図4(a)は、実施形態に係る鋼板保持装置の係合機構の揺動ギアの正面図であり、図4(b)は、図4(a)の揺動ギアを紙面右側から見た図であり、図4(c)は、図4(a)の揺動ギアを紙面下側から見た図である。
図5図5は、実施形態に係る鋼板保持装置の落下防止機構の動作を説明するための図であり、図5(a)は、下方回転動作の開始前の状態(又は、上方回転動作の終了後の状態)を表し、図5(b)は、下方回転動作中に係止用アームが鋼板にちょうど当たった状態を表す。
図6図6は、実施形態に係る鋼板保持装置の落下防止機構の動作を説明するための図であり、図6(a)は、図5(b)で偏心していた鋼板の中心が鋼板保持装置の中心位置に略一致した状態を表し、図6(b)は、基端部が持ち上げられた係止用アームの先端部のフックが鋼板に引っ掛かった状態を表す。
図7図7は、実施形態に係る鋼板保持装置の傾動機構について、上部プレートを取り外した状態を斜め上から見た斜視図である。
図8図8は、実施形態に係る鋼板保持装置の傾動機構の伸縮装置の構造図であり、図8(a)は、伸縮装置をピンの軸方向に見た側面図であり、図8(b)は、ピンの軸方向とは直交する方向に伸縮装置を見た側面図である。
図9図9(a)は、実施形態に係る鋼板保持装置の傾動機構の側面図であり、第1回転軸を中心に傾動した様子を表し、図9(b)は、傾動機構の正面図であり、第2回転軸を中心に傾動した様子を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
[鋼板保持装置の構造について]
本実施形態は、物体を吊下げ可能な重機(ショベルなど)に吊下げられて使用される鋼板保持装置10である。鋼板保持装置10は、土木などの工事現場で、足場の保護等のための鋼板Sを敷設又は撤去する際に、鋼板Sを移送するために使用される。
【0019】
鋼板保持装置10は、図1及び図2に示すように、基台11、基台11の下側に設けられて磁力によって鋼板Sを吸着する吸着装置12、重機のアームが連結されるアーム連結部13、アーム連結部13に対し基台11を傾動可能に連結する傾動機構14、アーム連結部13に対し基台11を旋回させるための旋回機構15、及び、吸着装置12により吸着される鋼板Sの落下を防止するための落下防止機構16を備えている。なお、図2(b)では、落下防止機構16の記載を省略している。また、以下では、平面視における鋼板保持装置10の長手方向(図2(a)の左右方向)を「第1方向」と言い、第1方向に直交する短手方向(図2(b)の左右方向)を「第2方向」と言う。
【0020】
基台11は、板状の基台本体17と、基台本体17の上面から立ち上がる複数の脚部18とを備えている。基台本体17は、平面視で略長方形状に形成されている。基台11上には、下側から、傾動機構14、旋回機構15及びアーム連結部13がこの順番で載置されている。複数の脚部18の上端部には、傾動機構14の下部プレート62が固定されている。
【0021】
吸着装置12は、電磁石により構成されている。吸着装置12は、例えば重機から操作される。吸着装置12は、鋼板Sを吸着する際に電磁石による吸着力を発生させ、鋼板Sを離脱する際に吸着力の発生を停止させる。なお、吸着装置12は、鋼板S以外に板状の磁石を吸着してもよい。
【0022】
アーム連結部13は、重機のアームの先端部に設けられたリンク機構、及び、アームの先端部に設けられた油圧シリンダーが連結される部分である(図示省略)。
【0023】
傾動機構14は、下面が基台11の各脚部18に固定され、上面が旋回機構15に固定されている。傾動機構14は、第1方向及ぶ第2方向の各方向に対し、基台11を傾動可能に構成されている。傾動機構14の詳細は後述する。
【0024】
旋回機構15は、下面が傾動機構14に固定され、上面がアーム連結部13に固定されている。旋回機構15は、重機からの操作に応じて、上下に延びる回転軸を中心に、アーム連結部13に対し傾動機構14を旋回させることが可能に構成されている。
【0025】
<落下防止機構の構成>
【0026】
落下防止機構16は、基台11の第1方向(長手方向)の両側にそれぞれ設けられた一対の係合機構20を備えている。一対の係合機構20は、同一の構成であり、図2(a)に示す正面視において左右対称に設けられている。
【0027】
各係合機構20は、図3(a)及び図3(b)に示すように、先端部21aにて鋼板Sに係止可能で基端部21bが回転自在に支持された棒状の係止用アーム21と、ピストンロッド22aが進退する油圧シリンダー22と、油圧シリンダー22が発生する動力を係止用アーム21に伝達させる動力伝達部23とを備えている。各係合機構20は、係止用アーム21の先端部21aのフックが外側を向くように設けられている。油圧シリンダー22には、基台11に搭載されたオイルポンプ及びオイルタンク(図示省略)が接続されている。油圧シリンダー22は、重機によってオイルポンプが制御されることで作動油の圧力が増減してピストンロッド22aが進退する。
【0028】
動力伝達部23は、基端部21bを支点に係止用アーム21を回転させるための第1伝達機構31と、係止用アーム21の基端部21bを上下動させるための第2伝達機構32と、第1伝達機構31と第2伝達機構32に係合するクラッチ部材25を具備し、ピストンロッド22aの進退に伴ってクラッチ部材25が移動してクラッチ部材25の係合先が第1伝達機構31と第2伝達機構32とで切り替わる切替機構33とを備えている。
【0029】
第1伝達機構31は、第1固定軸26に回転自在に支持された揺動ギア41と、揺動ギア41に噛み合うピニオン42aを有するリフト用アーム42とを備えている。リフト用アーム42は、一端側のピニオン42aの回転軸(ピニオン42aを回転自在に支持する第2固定軸)27を支点に、回動自在に設けられている。リフト用アーム42の他端側には、係止用アーム21を下側から支持するための支持部42bが設けられている。支持部42bは、リフト用アーム42の他端部において第2固定軸27の軸方向(第2方向)に延びている。なお、第1固定軸26及び第2固定軸27は、基台11から立ち上がる一対の支持板28に支持されており、一対の支持板28を介して基台11に固定されている。
【0030】
また、揺動ギア41とピニオン42aのギア比(1:n)について、nは1よりも大きい値(例えばn=3)である。揺動ギア41が角度θ1だけ回転する際のピニオン42aの回転角度θ2は、角度θ1よりも大きくなる。
【0031】
揺動ギア41は、図4(a)-図4(c)に示すように、外周の一部に複数の歯部41aが形成された大径部51と、大径部51に同軸に重ねられて一体化された小径部52とを備えている。小径部52には、クラッチ部材25に係合するギア側係合部53が設けられている。ギア側係合部53は、径方向に外周から突出する部分(他の部分よりも大径の部分)により構成されている。ギア側係合部53では、突出部分における周方向の端面53aに、クラッチ部材25が当接する。なお、図4(b)及び図4(c)では、複数の歯部41の形成領域にハッチングを付している。また、小径部52の外周面には、端面53aの手前に窪みが形成されている。
【0032】
また、大径部51には、他の部分よりも大径の部分54が、カウンターウェイトとして設けられている。揺動ギア41は、外力を受けずに第1固定軸26に支持されている状態では、図4(a)に示す状態でバランスする。この状態では、揺動ギア41の下部に複数の歯部41aが位置し、ギア側係合部53の端面53aが横方向の油圧シリンダー22側に延びている。
【0033】
第2伝達機構32は、第1固定軸26に一端側が回転自在(揺動自在)に支持されて、他端側が係止用アーム21の基端部21bに回転自在に連結されたフックレバー(伝達側回転体)37を備えている。伝達側回転体37は、フック側のリンク部材を構成しており、ピン19を介して係止用アーム21の基端部21bに連結されている。伝達側回転体37は、第1固定軸26の軸方向に間隔を空けて対面する2枚の板状部材38が互いに連結されて構成されている。
【0034】
各板状部材38の一端側は、第1固定軸26を軸支する軸受け部39により構成されている。軸受け部39は、油圧シリンダー22側が円弧状に形成されている。軸受け部39には、クラッチ部材25に係合する回転体側係合部54が、図3(b)の下側部分に設けられている。回転体側係合部54は、径方向に外周から突出する部分(他の部分よりも大径の部分)により構成されている。回転体側係合部54は、突出部分における周方向の端面54aに、クラッチ部材25が当接する。
【0035】
切替機構33は、ピストンロッド22aの進退に伴って、クラッチ部材25が第1固定軸26を中心に回転移動するように構成されている。切替機構33は、クラッチ部材25に加えて、一端側がピストンロッド22aに回転自在に連結されて他端側が第1固定軸26に回転自在(揺動自在)に支持されたシリンダーレバー(切替側回転体)47を備えている。シリンダーレバー47は、シリンダー側のリンク部材を構成しており、クラッチ部材25が一体化されている。
【0036】
クラッチ部材25は、図3(a)に示すように、シリンダーレバー47において互いに平行に設けられた一対の側面47a,47bから、それぞれ第2方向に突出している。クラッチ部材25は、一方の側面47aから突出する部分25aが、ギア側係合部53及び回転体側係合部54に当接し、他方の側面47bから突出する部分25bが、回転体側係合部54に当接する。
【0037】
<落下防止機構の動作>
落下防止機構16の動作のうち、図5図6を参照して、係止用アーム21を下方に回転させる下方回転動作について説明する。なお、以下において、「時計回り」及び「半時計回り」は、図5図6での回転方向を意味する。また、図5図6では、重なる部材同士の裏側部分も実線で表している。
【0038】
ここで、下方回転動作の開始前は、図5(a)に示すように、ピストンロッド22aが最も後退した状態となり、先端部21aが上方を向く係止用アーム21が、リフト用アーム42によって下側から支持された状態となっている。また、揺動ギア41のギア側係合部53が、クラッチ部材25に当たる第1状態となっている。この状態では、係止用アーム21及びリフト用アーム42が重力によって下方に回転しようとする回転力が、リフト用アーム42のピニオン42aと揺動ギア41の歯部41aとの噛み合い部を介して、揺動ギア41に伝達されるものの、揺動ギア41のギア側係合部53を受け止めるクラッチ部材25が停止しているため、揺動ギア41は回転不能である。
【0039】
下方回転動作では、ピストンロッド22aの進出過程において、切替機構33が、クラッチ部材25が第1伝達機構31に係合する第1状態から、クラッチ部材25が第2伝達機構32に係合する第2状態に切り替わる。そして、第1状態の期間に、クラッチ部材25の移動に伴う第1伝達機構31の動作によって、係止用アーム21が下方に回転し、第2状態の期間に、クラッチ部材25の移動に伴う第2伝達機構32の動作によって、係止用アーム21の基端部21bが持ち上げられる。
【0040】
なお、第1状態の期間は、ピストンロッド22aが最も後退した状態から、ピストンロッド22aの進出途中まで続く。第2状態の期間は、ピストンロッド22aの進出途中から、ピストンロッド22aが最も進出した状態まで続く。
【0041】
具体的に、第1状態の期間は、図5(a)-図5(b)に示すように、ピストンロッド22aの進出に伴って、シリンダーレバー47が第1固定軸26を中心に時計回りに回転する。そして、シリンダーレバー47の回転に伴ってクラッチ部材25が時計回り(図5(b)の実線矢印の方向)に回転移動することで、揺動ギア41が時計回りに回転できるようになる。その結果、揺動ギア41の回転によって、リフト用アーム42が、第2固定軸27を中心に半時計回り(図5(b)の破線矢印の方向)に回転する。すなわち、リフト用アーム42が下方に回転する。これにより、係止用アーム21も下方に回転する。リフト用アーム42は、図5(b)に示すように、その回転過程で係止用アーム21から外れる。
【0042】
なお、図5(b)は、クラッチ部材25がフックレバー37の回転体側係合部54にちょうど当接した状態を表す。すなわち、図5(b)は、第2状態に切り替わるタイミングを表す。このタイミングでは、クラッチ部材25は、ギア側係合部53と回転体側係合部54とに挟まれている。また、油圧シリンダー22は、ピストンロッド22aとは反対側で回転自在に支持されており、ピストンロッド22aの進出に伴って半時計回りに回転する。
【0043】
また、下方回転動作では、一対の係合機構20において同じ動作が同じタイミングで行われ、一方の係合機構20の係止用アーム21は、図5(b)に示すように、回転途中で鋼板Sに当接する。そして、一対の係止用アーム21に挟まれた鋼板Sは、落下防止機構16の第1方向の中心位置に動かされる。この過程では、図5(c)に示すように、係止用アーム21と鋼板Sの接触箇所が、係止用アーム21の先端部21a側から基端部21b側に変化し、係止用アーム21の先端部21aのフックが、鋼板Sから下方に離れた状態となる。
【0044】
そして、第2状態の期間に、ピストンロッド22aの進出に伴って、シリンダーレバー47が第1固定軸26を中心に時計回りに回転する。そして、シリンダーレバー47の回転に伴ってクラッチ部材25が時計回りに回転移動することで、クラッチ部材25に押されてフックレバー37が時計回り(図5(c)の実線矢印の方向)に回転する。これにより。図5(d)に示すように、係止用アーム21の基端部21bが持ち上げられ、係止用アーム21の先端部21aのフックが鋼板Sに下側から引っ掛かる。
【0045】
続いて、落下防止機構16の動作のうち、係止用アーム21を上方に回転させる上方回転動作について説明する。
【0046】
ここで、上方回転動作の開始前は、図5(d)に示すように、ピストンロッド22aが最も進出した状態となっている。また、フックレバー37の回転体側係合部54が、クラッチ部材25に当たる第2状態となっている。この状態では、係止用アーム21の荷重がフックレバー37に作用し、フックレバー37が、第1固定軸26を中心に半時計回りに回転しようとするが、クラッチ部材25に当たって回転不能である。
【0047】
上方回転動作では、ピストンロッド22aの後退過程において、切替機構33が、クラッチ部材25が第2伝達機構32に係合する第2状態から、クラッチ部材25が第1伝達機構31に係合する第1状態に切り替わり、下方回転動作とは逆に、図5(d)、図5(c)、図5(b)、及び図5(a)の順番で状態が遷移する(但し、鋼板Sの状態は、逆の順番に遷移しない)。具体的に、第2状態の期間に、クラッチ部材25の移動に伴う第2伝達機構32の動作によって、係止用アーム21の基端部21bが下降する。第1状態の期間に、クラッチ部材25の移動に伴う第1伝達機構31の動作によって、係止用アーム21がリフト用アーム42に持ち上げられて上方に回転する。
【0048】
<傾動機構の構成>
傾動機構14は、図2及び図7に示すように、旋回機構15の下面に固定された上部プレート(アーム連結部側の部材)61と、間隔を隔てて上部プレート61に対面する下部プレート62(基台側の部材)と、上部プレート61と下部プレート62を連結する自在継手63と、上部プレート61と下部プレート62とが対面する対面空間68(図2(b)参照)に配置されて自在継手63の連結角度の変化による傾動の際に対面空間68の高さが狭まる箇所で、弾性変形により収縮する復元機構64とを備えている。なお、図7は、上部プレート61を取り外した状態の斜視図である。
【0049】
自在継手63は、図7に示すように、平面視において互いに直交する第1回転軸71及び第2回転軸72と、基台11側の下部プレート62に固定されて第1回転軸71を回転自在に支持する第1回転支持機構81と、アーム連結部13側の上部プレート61に固定されて第2回転軸72を回転自在に支持する第2回転支持機構82と、第1回転軸71及び第2回転軸72が一体化されたリング部材65とを備えている。第1回転軸71は第1方向に延びている。第2回転軸72は第2方向に延びている。
【0050】
リング部材65は、上部プレート61と下部プレート62の間に配置されて、軸心が上下方向に延びている。リング部材65は、上部プレート61と下部プレート62の各々とは別体の部材であり、浮いた状態で支持されている。リング部材65は、旋回機構15の回転軸と同軸に配置されている。なお、リング部材65を用いずに、第1回転軸71及び第2回転軸72が直接一体化されていてもよい。
【0051】
第1回転軸71は、リング部材65の外周面から互いに逆方向に突出する一対の第1軸部材71aにより構成されている。第2回転軸72は、平面視において第1回転軸71と直交する方向に沿って、リング部材65の外周面から互いに逆方向に突出する一対の第2軸部材72aにより構成されている。
【0052】
第1回転支持機構81は、一対の第1軸部材71aを回転自在に支持する一対の第1軸受け装置81aにより構成されている。一対の第1軸受け装置81aは、リング部材65を挟んで配置されており、ともに下部プレート62に固定されている。第2回転支持機構82は、一対の第2軸部材72aを回転自在に支持する一対の第2軸受け装置82aにより構成されている。一対の第2軸受け装置82aは、リング部材65を挟んで配置されており、ともに上部プレート61に固定されている。
【0053】
復元機構64は、図7に示すように、対面空間68において上面視で互いに離間して配置された複数の伸縮装置74を有している。複数の伸縮装置74は、上面視において下部プレート62の4隅に配置されている。
【0054】
各伸縮装置74は、図8に示すように、上下に弾性変形可能な弾性部材75と、上部プレート61に対し少なくとも第1回転軸71の軸方向(第1方向)と第2回転軸72の軸方向(第2方向)とに揺動自在に支持された筒状ケース(上側部材)76と、上部が筒状ケース76に係合して筒状ケース76と共に弾性部材75を挟む柱状部材(下側部材)77と、下部プレート62上に設けられて柱状部材77を受止め、且つ、第1回転軸71の軸方向及び第2回転軸72の軸方向の何れかの方向に柱状部材77が移動するように案内するガイド部78とを備えている。弾性部材75は、例えば複数の皿バネからなる皿バネセットである。弾性部材75は、略円筒状に形成されている。
【0055】
筒状ケース76は例えば円筒状に形成されている。筒状ケース76は、下側に開口部が形成されてその開口部から挿入された弾性部材75を収容している。筒状ケース76は、自在ベース部80を介して、上部プレート61に対し、上面視で上述の2方向を含む任意の方向に、揺動自在に支持されている。自在ベース部80は、上部プレート61に固定されたブラケット85、ブラケット85に挿通されたピン86、ピン86を回転自在に支持する一対の軸受け部88、及び、ブラケット85の内面に回転自在に取り付けられてピン86を保持する球面軸受け(球面ブッシュ)87とを備えている。
【0056】
柱状部材77は、筒状ケース76の底面との間で弾性部材75を挟み込むように筒状ケース76の開口部に挿入されている。柱状部材77は、筒状ケース76の内周面に摺動自在に嵌まり込む大径柱部77aと、大径柱部77aの上面から突出して弾性部材75の内側に挿入される小径柱部77bとが一体化されたものである。筒状ケース76内では、筒状ケース76の底面と小径柱部77bの上面との間に隙間Gが形成されている。
【0057】
ガイド部78は、ともに第1方向に延びる第1凸部91a及び第1溝部91bの組合せによる第1ガイド91と、ともに第2方向に延びる第2凸部92a及び第2溝部92bの組合せによる第1ガイド92とを備えている。
【0058】
具体的に、ガイド部78は、柱状部材77の真下において下部プレート62に固定された第1プレート96と、第1プレート96と柱状部材77との間に配置された第2プレート97とを備えている。また、第1凸部91aは、第2プレート97の下面に設けられている。第1凸部91aを受ける第1溝部91bは、第1プレート96の上面に設けられている。第2凸部92aは、柱状部材77の底面に設けられている。第2凸部92aを受ける第2溝部92bは、第2プレート97の上面に設けられている。
【0059】
また、各伸縮装置74には、対面空間68の高さが広がる場合に外れることを防止するために、抜け止め70が設けられている(図9参照)。抜け止め70は、上面視において第1溝部91bと第2溝部92bとが交わる箇所で、第1プレート96と第2プレート97を貫通しており、伸縮装置74の伸縮に応じて可動に設けられている。
【0060】
<傾動機構の動作>
傾動機構14は、鋼板Sを把持又は離脱する際に、図9(a)に示すように、第1回転軸71を中心に傾動する。図9(a)において、第2方向の右側を「前側」、左側を「後ろ側」とした場合、前側の伸縮装置74では、弾性部材75が収縮して、柱状部材77の小径柱部77bの上端面が、筒状ケース76の底面に当接する角度まで傾動可能である。後ろ側の伸縮装置74では、弾性部材75の上端が筒状ケース76の底面から離れる。傾動機構14では、収縮した弾性部材75の復元力によって、非傾動状態に戻る。
【0061】
傾動機構14は、鋼板Sを把持又は離脱する際に、図9(b)に示すように、第2回転軸72を中心に傾動する。右側の伸縮装置74では、弾性部材75が収縮して、柱状部材77の小径柱部77bの上端面が、筒状ケース76の底面に当接する角度まで傾動可能である。左側の伸縮装置74では、弾性部材75の上端が筒状ケース76の底面から離れる。傾動機構14では、収縮した弾性部材75の復元力によって、非傾動状態に戻る。
【0062】
[実施形態の効果等]
本実施形態では、ピストンロッド22aの進退に伴って移動するクラッチ部材25の係合先として、係止用アーム21を回転させるための第1伝達機構31と、係止用アーム21の基端部21bを上下動させるための第2伝達機構32とが設けられている。すなわち、係止用アーム21の回転のための動力伝達と、係止用アーム21の基端部の上下動のための動力伝達とについて、従来は、リンク機構が両方を担っていたのに対し、本実施形態は、それぞれを担う2つの伝達機構31,32が設けられ、切替機構33によってクラッチ部材25の係合先が切り替わるようにしている。そのため、従来のリンク機構に比べて、各伝達機構31,32を有する動力伝達部23の構成部材の小型化が可能である。従って、鋼板保持装置10を大型化する場合であっても、動力伝達部23の重量の増大を抑制することができる。
【0063】
本実施形態では、係止用アーム21が下方に回転する際に自重落下しないように、動力伝達部23が構成されている。ここで、特許文献1に記載のリンク機構では、係止用アーム21に相当する支持アームが、下方に回転する途中で自重落下して、鋼板に衝突してしまう。それに対し、本実施形態では、係止用アーム21が下方に回転する過程で、揺動ギア41とピニオン42aが常に噛み合い、ピストンロッド22aの進出、及び、それに伴うクラッチ部材25の移動に追従して、リフト用アーム42及び係止用アーム21が下方に回転する。そのため、係止用アーム21が鋼板Sに衝突することを防止することができる。なお、リフト用アーム42は、係止用アーム21が鋼板Sに衝突した後に係止用アーム21から離れる。
【0064】
本実施形態では、傾動機構14に自在継手63を利用することで、平面視において互いに直交する2方向の各々に対し、傾動可能となっている。ここで、特許文献1に記載の傾動機構の場合は、4つの伸縮体(バネ)のみで傾動を実現するため、伸縮体の上端部及び下端部に大きな荷重が作用する。特に下端部の球体部分の摺動は、グリース等が適切に行き渡らなければ荷重が大きいために損傷が生じる虞がある。それに対し、本実施形態では、回転軸71,72を備えた自在継手63を利用するため、回転軸71,72及びその回転支持機構81,82に大きな荷重が作用することを抑制することができる。また、上部プレート61と下部プレート62との間に自在継手63と復元機構64を集約したため、傾動機構14の軽量化を図ることができる。また、伸縮装置74の下端は、強固に拘束されていないため、伸縮装置74の下端の損傷を抑制することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、鋼板の運搬に用いられる鋼板保持装置等に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 鋼板保持装置
11 基台
12 吸着装置
13 アーム連結部
14 傾動機構
15 旋回機構
16 落下防止機構
20 係合機構
21 係止用アーム
22 油圧シリンダー
23 動力伝達部
25 クラッチ部材
26 第1固定軸
27 第2固定軸
31 第1伝達機構
32 第2伝達機構
33 切替機構
37 フックレバー
38 板状部材
41 揺動ギア
42 リフト用アーム
42a ピニオン
47 シリンダーレバー
53 ギア側係合部
54 回転体側係合部
61 上部プレート
62 下部プレート
63 自在継手
64 復元機構
65 リング部材
68 対面空間
71 第1回転軸
72 第2回転軸
74 伸縮装置
75 弾性部材
76 筒状ケース(上側部材)
77 柱状部材(下側部材)
78 ガイド部
81 第1回転支持機構
82 第2回転支持機構
91 第1ガイド部
91a 第1凸部
91b 第1溝部
92 第2ガイド部
92a 第2凸部
92b 第2溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9