(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105158
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】紫外線増幅装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009751
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH05
4C180HH17
4C180HH19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な構造によって、短時間で毒性対象を確実に分解又は不活化及び/又は死滅させて減消させ、且つ長期間継続して毒性対象を減消させていく手段を提供する。
【解決手段】内部に流体を通過させる流路を有する基体4と、上記流路内に配した紫外線放出源2と、上記基体における上記流路及び上記紫外線放出源を囲繞する内周面に配した反射層6と、を有し、上記内周面により画定される空間内で、上記反射層6によって紫外線を高次に反射させ、密度を高度化させた紫外線の領域を作出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体を通過させる流路を有する基体と、
上記流路内に配した紫外線放出源と、
上記基体における上記流路及び上記紫外線放出源を囲繞する内周面に配した反射層と、を有し、
上記内周面により画定される空間内で、上記反射層によって紫外線を高次に反射させ、密度を高度化させた紫外線の領域を作出することを特徴とする紫外線増幅装置。
【請求項2】
前記反射層は、前記紫外線に対して高屈折率の材料を一種又は複数組み合わせて成ることを特徴とする請求項1記載の紫外線増幅装置。
【請求項3】
前記反射層は、前記紫外線に対して高屈折率の材料を多層化させて構成されることを特徴とする請求項1記載の紫外線増幅装置。
【請求項4】
前記高屈折率の材料は、ジルコニア、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、五酸化ニオブ、酸化クロム、酸化アルミニウムの何れか一種以上であることを特徴とする請求項2又は3記載の紫外線増幅装置。
【請求項5】
前記紫外線放出源は、深紫外線を放出することを特徴とする請求項1記載の紫外線増幅装置。
【請求項6】
前記反射層は、層厚が1μm以上であることを特徴とする請求項1記載の紫外線増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線増幅装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を利用した殺菌やウイルスの不活化等の処理が行われている。例えば、医療器具を収納するケース内に紫外線ランプを配した携帯用の紫外線殺菌装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような紫外線殺菌装置は、ケース内面が紫外線を反射させるように金属製(ステンレス板、表面をクロームメッキした鉄板や銅板等)となっている。
また、特許文献2には、筐体内部に空気を取り込み、除菌された空気を排出する除菌装置が開示され、筐体の内部空間において紫外線ランプと、紫外線ランプを取り囲むように筒状に形成した反射部とを配し、紫外線ランプから照射される紫外線を反射させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-225012号公報
【特許文献2】特許第6915921号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1、2に記載された装置は、紫外線を反射させることで、紫外線ランプを囲繞している空間内の紫外線を増幅させているが、反射面自体の反射率が低いことから高度な紫外線量を得ることは不可能である。そのため確実に殺菌やウイルスの不活化を行うためには、十数秒~数十秒の間、紫外線を照射し続けることが必要であって非常に時間が掛かるという問題があり、筐体内部に空気を取り込む場合等において現実的な空気量を実時間で殺菌・不活化処理することは不可能であるという問題がある。
また、紫外線ランプを点灯させ続けていると装置内部の温度が上昇して紫外線ランプの不点灯や照射している紫外線量の低下等の不具合が生じ易くなるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、簡易な構造によって、短時間で毒性対象を確実に分解又は不活化及び/又は死滅させて減消させ、且つ長期間継続して毒性対象を減消させていくための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の紫外線増幅装置は、内部に流体を通過させる流路を有する基体と、上記流路内に配した紫外線放出源と、上記基体における上記流路及び上記紫外線放出源を囲繞する内周面に配した反射層と、を有し、上記内周面により画定される空間内で、上記反射層によって紫外線を高次に反射させ、密度を高度化させた紫外線の領域を作出することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記反射層が、前記紫外線に対して高屈折率の材料を一種又は複数組み合わせて成ることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記反射層が、前記紫外線に対して高屈折率の材料を多層化させて構成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記高屈折率の材料が、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、五酸化ニオブ、酸化クロム、酸化アルミニウムの何れか一種以上であることを特徴とする請求項2又は3記載の紫外線増幅装置。
【0010】
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記紫外線放出源が、深紫外線を放出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記反射層の層厚が1μm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構造によって、短時間で毒性対象を確実に分解又は不活化及び/又は死滅させて減消させ、且つ長期間継続して毒性対象を減消させ続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の紫外線増幅装置を示す斜視図である。
【
図3】紫外線増幅装置を搭載している毒性対象減消装置の断面図である。
【
図4】毒性対象減消装置内を通過する空気の流動方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の紫外線増幅装置について説明する。紫外線増幅装置は、特定の波長の紫外線を放出する紫外線放出源、該特定の波長の紫外線を反射させる反射層を有する基体等を有し、基体の内周面によって画定される内部空間内で紫外線を増幅する装置である。
【0015】
紫外線増幅装置1について
図1を参照して説明する。
図1は本実施形態の紫外線増幅装置1を示す斜視図である。紫外線増幅装置1は、長尺状で且つ放射状に紫外線を放出する紫外線放出部2、筒状基体4(基体)等を有する。また紫外線増幅装置1は、不図示の制御部、操作部、電源部等を具えており、操作部によって検出した入力操作等に従って紫外線照射等を行う。
【0016】
紫外線放出部2は、紫外線によってターゲットである毒性対象の分解、不活化、消毒、除菌、殺菌、滅菌等の減消を行う。紫外線放出部2は、殺菌灯、紫外線ランプ、紫外線LED等の紫外線光源を有するものであり、長尺状の直管形状を成し、軸方向視で略放射状に紫外線を放出する構成を設けることが好ましい。なお、紫外線放出部2の形状は、直管形状に限定するものではなく、例えば、電球形状、環形状、曲線形状等に設定し得る。
【0017】
紫外線放出部2によって照射される紫外線は、波長が100~400nm程度であることが好ましく、特に250~270nmの範囲近傍に主たる出力を有する設定とすることがより望ましい。勿論、紫外線は、少なくとも毒性対象を減消させ得るものであれば波長が270nm未満の深紫外線(UV-C)、遠紫外線(波長10~200nm)、極端紫外線(波長10~121nm)等であってもよい。また、波長が300nmを超える近紫外線(UV-A、UV-B)領域の波長を含むものであってもよい。
【0018】
筒状基体4は、横断面形状が環状で軸心が紫外線放出部2の長手方向と平行の略筒形状であって、両端部が通気性を有し、且つ内周面によって紫外線放出部2を囲繞する形状を有する。即ち、筒状基体4は、内周面によって囲繞される内側空間を形成し、該内側空間に紫外線放出部2が配される。内側空間における紫外線放出部2の位置は適宜設定し得るが、ここでは内側空間の中央部、即ち横断面形状の軸心に一致するように配するものとする。
【0019】
筒状基体4は、内周面に紫外線を高度な反射率、好ましくは95%以上の反射率、より好ましくは97%以上の反射率を以て反射させる反射層6を有する。反射層6は、高屈折率の材料、例えば、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハフニウム(ハフニア)、酸化イットリウム、酸化亜鉛、五酸化ニオブ、酸化クロム、酸化アルミニウム等から選択される一種又は複数組み合わせて成る。
【0020】
反射層6は、適宜の方法によって形成でき、例えば、真空蒸着やイオンプレーティングやスパッタリング等の物理的気相成長法(PVD法)、熱CVDやプラズマCVD等の化学的気相成長法(CVD法)、粉体塗装、溶剤塗装、印刷法、電気メッキ、無電解メッキ、電着塗装、水性塗装等が有り得る。塗装においては、紫外線反射性の塗料(例えば、粒子状のシリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)等を含んだ塗料)を使用し得る。
【0021】
また、反射層6は、高屈折率材料を多層化させて構成することが出来る。この場合に各層が同一材料によって成るものであってもよく、異なる材料によって成るものであってもよく、交互に相異なる材料を積層して構成してもよい。
【0022】
また筒状基体4の母材は、反射層6を設けることができる材料であれば、特に限定するものではない。例えば、アクリル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の樹脂材料やガラス系材料等の透明性の材料から選択される一種以上によって形成することができるが好ましくは、平滑度の高い表面を有するものを選定する。
透明性の材料によって筒状基体4を形成する場合は、可視光や赤外線に対する透過性を有する材料を選択することが望ましい。なお、透明性を有する材料に、非透明性の金属材料、セラミック等の窯業系材料、セメント等の水硬性材料、炭素材料及び/又は樹脂材料等を加えて筒状基体4の母材を構成してもよい。勿論、筒状基体4の母材を非透明性の材料(金属材料、窯業系材料、水硬性材料、炭素材料及び/又は樹脂材料等)の内、紫外線反射性の高い材料によって構成してもよい。
【0023】
筒状基体4と反射層6の形成方法は適宜設定し得る。例えば、予め筒形状に成形した筒状基体の内周面に反射層6を設けてもよく、板状の基体表面に反射層6を設けてから該基体を筒状となるように曲げて筒状基体4を成形してもよい。なお、筒状基体4の母材が紫外線透過性を有する材料とした場合は、筒状基体4の外側表面に反射層6を設けてもよい。これにより、筒状基体4の内側から透過してくる紫外線が外側表面に設けた反射層6によって内部に向け反射され、筒状基体4の内周面によって画定される内側空間の紫外線密度を上昇させることができる。
【0024】
反射層6は、誘電体多層膜で構成し、可視光及び赤外線に対して透過性を有し、紫外線に対して反射性を有するコールドミラー状の構成としてもよい。このような反射層6は、例えば誘電体を多層にわたって蒸着させた誘電体多層膜によって形成することができる。或いはコールドミラーを蒸着させた薄板を筒状基体4に貼り付けたり、筒状基体4の内側に配置したりして反射層6を設けてもよい。この場合の薄板は、可視光及び赤外線に対する透過性を有する材料から構成される。
【0025】
誘電体多層膜は、高屈折率材料の誘電体薄膜と、低屈折率材料の誘電体薄膜とを交互に積層することによって構成することもできる。高屈折率材料としては、上記高屈折率の材料を用いることができ、低屈折率材料としては、例えば、二酸化ケイ素、過酸化亜鉛、フッ化マグネシウム等が有り得る。
【0026】
反射層6は、紫外線放出部2から照射された略全ての紫外線を反射し得るように、筒状基体4の内周面における紫外線放出部2に対向する箇所全域に配される。勿論、反射層6の配設箇所は適宜設定し得、例えば筒状基体4の内周面において軸方向及び/又は周方向に沿って断続的に設けることもできる。
【0027】
反射層6の厚みは、適宜設定し得るが、例えば反射させる紫外線の波長の1/4の整数倍(紫外線の波長の1/4の奇数倍又は偶数倍)に設定することが出来る。具体的には反射させる対象となる紫外線の波長を253.7(nm)と設定した場合、厚みは63.4(nm)(即ち、波長の1/4の1倍)、126.8(nm)(即ち、波長の1/4の2倍)、190.3(nm)(波長の1/4の3倍)等に設定する。勿論、反射層6の膜厚は、数10μm程度の所謂厚膜であってもよく、数μm程度の所謂薄膜であってもよく、数nm以下の所謂超薄膜であってもよい。
【0028】
筒状基体4は、横断面を略無端形状とすることで紫外線放出部2を囲繞するように形成され、紫外線を内側に高次に、即ち多数回繰り返し反射させるように、反射層6を内周面(内側表面)に配設する(
図2(a)参照)。勿論、
図2(b)に示すように反射層6を筒状基体4の外周面(外側表面)に配設して筒状基体4を透過した紫外線を内側に反射させるようにしてもよい。
【0029】
反射層6によって紫外線を反射させたときの累積紫外線照射エネルギについて、反射層6をジルコニアで且つ層の厚みを1μm以上に設定した場合を例に説明する。ここでジルコニアによって構成した反射層6による波長253.7nmの紫外線の反射率は97強%である。これは紫外線が反射層6で反射したとき、その光子量が反射前から3%弱減少することに相当するものである。従って、光子の残量率(反射回数が0回のとき、100%である。)は、紫外線が反射層6での反射回数が1回のときに約97%となり、反射回数が2回のときに約94.01%、反射回数が3回のときに約91.27%のように、累積的に減少する。
【0030】
以下の式では紫外線の反射率を仮に97%(反射時の光子の減少率を3%)とし、∞回まで紫外線を反射させたときの累積紫外線照射エネルギとして計算するものである。
【数1】
又は、
【数2】
これにより、紫外線反射が∞回までの累積紫外線エネルギとして33.33...という値が得られる。これは紫外線を一回照射したときの紫外線照射エネルギを1とした場合に、累積紫外線照射エネルギが概ね33倍に増幅されていることに相当するものであることを示す。
【0031】
従って、筒状基体4の内部空間には、単に紫外線放出部2から放出された紫外線エネルギ量の約33倍を超える高線量であって、空間内の紫外線の密度が高度化された紫外線領域が作出されるので、筒状基体4の内周面と紫外線放出部2との間の空隙に存する毒性対象に対し、紫外線を無反射で照射している場合よりも、遥かに高い放射量の紫外線を照射することができる。そのため、毒性対象を非常に僅かな時間(例えば、0.05秒)で99.9997%(検出限界)以上のウイルス不活化率を以って確実に減消させることが出来る。
【0032】
なお、一般的に使用され得る紫外線反射性を有する材料には、アルミニウムやステンレス等の金属材料が用いられており、波長域が250~270nmの紫外線に対する反射率は、アルミニウムで約46%、ステンレスで約26%である。従って、アルミニウムを用いた反射層によって得られる累積紫外線エネルギは、約1.85倍となる。またステンレスを用いた反射層によって得られる累積紫外線エネルギは、約1.35倍となる。
従って、一般的に利用されるアルミニウムやステンレス等の紫外線反射性を有する材料を用いても、高線量の紫外線領域を作出することは非常に困難であるのに対し、本実施形態の紫外線増幅装置1によれば、遥かに高い倍率の累積紫外線エネルギを得ることが出来、極めて低い消費電力でありながら、高度な高密度・高線量の紫外線空間を作出することが可能となる。
【0033】
また、筒状基体4は、少なくとも紫外線放出部2を囲繞する形状を有するものであればよく、横断面形状を円形、楕円形、長円形、矩形、多角形、星形、ルーローの多角形、一部に放物線を含む形状等が有り得る。
また、筒状基体4は、必ずしも筒形状に限定するものではなく、蓋等によって内部を密閉可能な箱形状等であってもよい。箱形状とすることによって内部に収納されるものに付着している毒性対象の滅菌や不活化等の減消を行うことができる。
【0034】
また、反射層6による反射率を97%としたが、勿論反射率はこれに限定するものではなく、反射層6を構成する材料や、反射層6表面の平滑度等に依存する。そのため反射層6は、紫外線反射性の高い材料を選択することが好ましい。具体的には、反射率が下がることで累積紫外線エネルギの倍率が著しく低下してしまうことから、好ましくは、反射率を80%以上で累積紫外線エネルギの増幅率を5倍以上とし、より好ましくは、反射率を90%以上で増幅率を10倍以上とし、望ましくは反射率を97%以上で増幅率を約33.333倍以上とするような材料等を選択する。
【0035】
また、反射層6を形成する領域は、少なくとも紫外線を高次に繰り返し反射させる位置に反射層6を設けていればよく、例えば、紫外線放出部から放出された紫外線を反射させた反射層の紫外線の反射方向に対向する箇所に反射層が位置するように、筒状基体4の内周面及び/又は外側表面に反射層を点在させてもよい。
【0036】
次に本発明の紫外線増幅装置を搭載した毒性対象減消装置について説明する。
図3は紫外線増幅装置1を搭載している毒性対象減消装置10の断面図であり、毒性対象減消装置10は、略筒型の筐体12内に本発明の紫外線増幅装置1、送風機14等を配し、筐体12に形成されている吸込口から外気を導入し、紫外線増幅装置1を通過させて排出口から排出することで、空気に含まれる毒性対象を減消させ、毒性対象が減消した空気を外部に排出するものである。
【0037】
筐体12は、紫外線増幅装置1を囲繞しており、筒が延びる方向に沿って吸込口16及び排出口18の離間させた位置に配設する。例えば、吸込口16は筐体12の頂部、排出口18は筐体12の中間部或いは底部近傍等に配する。また、筐体12内において、空気の流動方向に沿って上流側に紫外線増幅装置1、下流側に送風機14を配するものとする。勿論、紫外線増幅装置1と送風機14の配置は、これに限定されるものではなく、上流側に送風機14、下流側に紫外線増幅装置1を配してもよい。
また、吸込口16は、筐体12の上端部で、排出口18から離間した位置に存していれば、筐体12の頂面及び/又は外周面に設けるようにしてもよい。
【0038】
また、筐体12には、紫外線放出部2の点灯を視認可能な視認部を筐体12全体又は一部に形成してもよい。即ち、筐体12には、紫外線放出部2から放出され筒状基体4を透過した電磁波(即ち、可視光及び赤外線)が透過し得る透明部材の視認部を形成することが出来る。このとき筒状基体4を可視光囲繞の波長の電磁波に対して透明性を有する材料によって成形し、且つ筐体12全体を透明部材にすれば、筐体12全体が可視光や赤外線等の電磁波を透過させ得る視認部として機能する。また筐体12の一部を窓状に開口させ、該開口に透明部材の視認部を設け、視認部を介して透過する可視光によって、紫外線放出部2の点灯を視認し得る。
【0039】
送風機14としては、軸流ファン(プロペラファン)、斜流ファン、遠心ファン(多翼ファン、シロッコファン、ラジアルファン、プレートファン、ターボファン、リミットロードファン、エアフォイルファン等)、遠心軸流ファン、渦流ファン、横断流ファン(クロスフローファン等)等を適用することができる。
【0040】
また、筐体12内には、紫外線の毒性対象減消装置10外への漏出を防止する漏出防止部20等が配設される。漏出防止部20は、空気を流動させる空隙を確保しつつ紫外線を遮るような形状を有していれば適宜形状を設定し得る。例えば、ハニカム構造や軸方向に対して傾斜させたスラットを複数平行に並べた構造等を用いることもできる。また、漏出防止部20は、筒状基体4と吸込口14との間に配することが出来る。ここでハニカム構造を成す漏出防止部20としては、その表面に紫外線反射率が極めて低い性質を有する層、例えば深紫外線に対する反射率が2.7%以下に設定されるものを設けることで、ハニカム構造に対する入射エネルギを10万分の2以下に抑えることが出来るように構成し得る。
【0041】
このような毒性対象減消装置10によれば、紫外線増幅装置1を搭載することにより外部の空気を取り込みながら、空気中の毒性対象等に高線量の紫外線を放射して毒性対象等を減消させることができる。即ち、
図4に示すように送風機14の駆動により、吸込口16を介して吸い込んだ空気を筒状基体4の内周面によって囲繞される空間を通過させて排出部18を通して外部に排出する。ここで筒状基体4の内周面によって囲繞される空間は、紫外線増幅装置1によって作出された高密度の紫外線領域である。従って、当該空間を通過した空気中の毒性対象に高線量の紫外線を照射し、結果毒性対象を減消させることができる。しかも上述したように、高密度の紫外線領域の線量は、紫外線放出部2から照射される紫外線の約33.333倍以上に増幅される為、紫外線増幅装置1内を一度通過させた菌やウイルス等の毒性対象を確実に分解又は不活化及び/又は死滅して減消させることができる。
【0042】
また、開口端からの内部への物体の侵入や覗き込み防止時の安全性を確保する手段として、人検知センサや物体感知センサ或いは開放感知センサ等を設けて人や物体の検知時に紫外線発光体を消灯させたり、ファン(流動発生部30)の動作を停止させたりするようにしてもよい。
【0043】
また、紫外線増幅装置1は、紫外線放出部2及び反射層6の表面を保護し、塵、埃等の異物や汚れが付着するのを防止するための防汚部材を具えてもよい。防汚部材は、紫外線透過材料で形成された略筒形状とし、反射層6の内周面に沿って周回状に設けてもよく、紫外線放出部2の外周面に沿って周回状に設けてもよい。防汚部材を形成する紫外線透過性材料としては、ガラス、石英、サファイア、PTFE等の非晶質のフッ素系樹脂、アクリル樹脂等があり得る。
【0044】
また、筒状基体4内に配設される紫外線放出部2は、一個体に限定されるものではなく、複数本配してもよく、個体数を増やすほど累積紫外線エネルギが増幅され、より毒性対象を減消させるのに要する時間が短縮されるので、毒性対象減消装置10の送風機14による空気の流入量を増加させることができる。よって毒性対象減消装置10周りの所定範囲内における毒性対象の減消効率を向上させることができる。
【0045】
また、本発明の紫外線増幅装置1によれば、1μm以上の膜厚の反射層6により深紫外線に対する高度な反射率の反射層6を得ることが出来る。即ち、従来の深紫外線等の特定の電磁波を反射させる反射層は、狙った反射性能を得るため厳密な膜厚のコントロールを要するため、高コスト化や量産性の低下の原因となっていた。そこで本発明の紫外線増幅装置1の反射層6のように、高屈折率の材料を含んだものであれば、厳密な膜厚のコントロールを要することなく、必要十分且つ高度な反射率を有するものを形成でき、反射層の低コスト化や量産性の向上を図ることができる。
【0046】
なお、本発明の紫外線増幅装置は、空気中の毒性対象を減消させるものに限定して使用されるものではなく、流体中の毒性対象に対して使用することができる。ここで流体とは、気体、液体、粉体を含む概念であり、毒性対象とは、菌やウイルス等の病原微生物の他、VOCや花粉などのアレルギー原因物質等の有害分子を含んだホルムアルデヒドや亜硫酸ガス、亜硝酸ガス、臭気成分等を含むものであって少なくとも人体に対して毒性を有し、流体と共に移動する対象物である。
【0047】
また、本発明の紫外線増幅装置は、種々の装置や器具に搭載したり、埋め込んだり、組み込んだり、組み合わせたりして使用することが出来る。そのような装置や器具としては、例えば、エアコン、扇風機、サーキュレータ、空気清浄機、加湿器、除湿器、換気扇、掃除機、循環ポンプ、ミストシャワー(散布機)、排気装置、プラント、浄化槽、配管、配管同士を連結する連結部材等、内部で流体が流動し得るもの全般が挙げられる。勿論、上記装置や器具以外の装置や器具に使用してもよいことは言うまでもない。また、紫外線増幅装置の配設数や配設位置等は適宜設定し得る。例えば、流体の流路途中に複数の紫外線増幅装置を配してもよい。
【0048】
また、紫外線増幅装置を搭載する器具は、流体を流動させる為の機構を有するものに限定するものではなく、少なくとも流体を通過させるように、吸込部及び排出部が外部と連通するように構成された器具を対象としてもよい。そのような器具としては、例えば、乗り物のルーフや、シートの背もたれ、シートヘッドレスト、コンパネ、テーブル、デスク、椅子、壁、天井、エレベータ等が有り得る。特に、紫外線発光体を用いて毒性対象等を減消する場合、上記の人の集まる空間或いは人が密集し易い空間に設置されている器具や、当該空間を画定する部材等に埋設することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…紫外線増幅装置、2…紫外線発光体、4…筒状基体、6…反射層、10…毒性対象減消装置、12…筐体、14…送風部、16…吸込口、18…排出部、20…漏出防止部。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線放出源と、
所定の空間を画定し得る内周面を有する基体と、
上記基体の内周面に配した反射層と、を有し、
上記反射層は、上記紫外線に対して高屈折率の材料を一種又は複数組み合わせて成り、上記紫外線に対して93%以上の反射率を有し、
上記紫外線放出源からの紫外線を上記空間内で上記反射層によって高次に反射させ、密度を高度化させた紫外線の領域を作出することを特徴とする紫外線増幅装置。
【請求項2】
前記反射層は、前記紫外線に対して高屈折率の材料を多層化させて構成されることを特徴とする請求項1記載の紫外線増幅装置。
【請求項3】
前記高屈折率の材料は、ジルコニア、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、五酸化ニオブ、酸化クロム、酸化アルミニウムの何れか一種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の紫外線増幅装置。
【請求項4】
前記反射層は、前記紫外線に対して高屈折率の材料と低屈折率の材料とを交互に積層させて構成されることを特徴とする請求項1記載の紫外線増幅装置。
【請求項5】
前記高屈折率の材料は、ジルコニア、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、五酸化ニオブ、酸化クロム、酸化アルミニウムの何れか一種以上であり、
前記低屈折率の材料は、二酸化ケイ素、過酸化亜鉛、フッ化マグネシウムの何れか一種以上であることを特徴とする請求項4記載の紫外線増幅装置。
【請求項6】
前記高屈折率及び前記低屈折率の各材料の厚みが、紫外線の波長の1/4の整数倍であることを特徴とする請求項4又は5記載の紫外線増幅装置。
【請求項7】
前記紫外線放出源は、深紫外線を放出することを特徴とする請求項1記載の紫外線増幅装置。
【請求項8】
前記反射層は、層厚が1μm以上であることを特徴とする請求項1記載の紫外線増幅装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の紫外線増幅装置は、紫外線放出源と、所定の空間を画定し得る内周面を有する基体と、上記基体の内周面に配した反射層と、を有し、上記反射層は、上記紫外線に対して高屈折率の材料を一種又は複数組み合わせて成り、上記紫外線に対して93%以上の反射率を有し、上記紫外線放出源からの紫外線を上記空間内で上記反射層によって高次に反射させ、密度を高度化させた紫外線の領域を作出することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記反射層が、前記紫外線に対して高屈折率の材料を多層化させて構成されることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記高屈折率の材料が、ジルコニア、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、五酸化ニオブ、酸化クロム、酸化アルミニウムの何れか一種以上であることを特徴とする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記反射層が、前記紫外線に対して高屈折率の材料と低屈折率の材料とを交互に積層させて構成されることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記高屈折率の材料が、ジルコニア、五酸化タンタル、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、五酸化ニオブ、酸化クロム、酸化アルミニウムの何れか一種以上であり、前記低屈折率の材料が、二酸化ケイ素、過酸化亜鉛、フッ化マグネシウムの何れか一種以上であることを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記高屈折率及び前記低屈折率の各材料の厚みが、紫外線の波長の1/4の整数倍であることを特徴とする。
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記紫外線放出源が、深紫外線を放出することを特徴とする。
また、本発明の紫外線増幅装置は、前記反射層が、層厚が1μm以上であることを特徴とする。