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特開2024-105177酸無水物化合物、これを利用したポリアミドイミド樹脂およびフィルム
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  • 特開-酸無水物化合物、これを利用したポリアミドイミド樹脂およびフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105177
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】酸無水物化合物、これを利用したポリアミドイミド樹脂およびフィルム
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/04 20060101AFI20240730BHJP
   C08G 73/14 20060101ALI20240730BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C07D493/04 101A
C07D493/04 CSP
C08G73/14
C08G69/26
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023195696
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2023-0009443
(32)【優先日】2023-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514260642
【氏名又は名称】コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィ
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, サンユル
(72)【発明者】
【氏名】キム, ソンジョン
【テーマコード(参考)】
4C071
4J001
4J043
【Fターム(参考)】
4C071AA01
4C071BB01
4C071CC12
4C071EE05
4C071FF17
4C071HH08
4C071HH28
4C071KK01
4C071LL03
4J001DA01
4J001DB01
4J001DC07
4J001EB55
4J001EB57
4J001EB64
4J001EC65
4J001EE47D
4J001FB03
4J001FC03
4J001GA13
4J001JA12
4J001JB01
4J001JB14
4J001JB18
4J001JB41
4J001JB42
4J001JC01
4J043PA02
4J043QB33
4J043RA05
4J043RA34
4J043SA47
4J043SA54
4J043SB01
4J043TA11
4J043TA21
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA131
4J043UA172
4J043XA13
4J043ZA12
4J043ZA35
4J043ZA51
4J043ZA52
4J043ZB50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高耐熱性の無色透明なポリイミド系フィルムを製造できるモノマーである新規構造の酸無水物化合物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】下記化学式1で示される、酸無水物化合物である。
[化学式1]

(前記化学式1中、RおよびRは、それぞれ独立して水素、(C1-C20)アルキル、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)ヘテロアリールであり、前記RおよびRの少なくとも1つは、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-20)アリールまたは(C3-C20)ヘテロアリールであり、Xは、OまたはSOである。)
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示される、酸無水物化合物。
[化学式1]
【化45】
(前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して水素、(C1-C20)アルキル、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)ヘテロアリールであり、前記RおよびRの少なくとも1つは、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-20)アリールまたは(C3-C20)ヘテロアリールであり、
は、OまたはSOである。)
【請求項2】
下記化学式2で示される、請求項1に記載の酸無水物化合物。
[化学式2]
【化46】
(前記化学式2中、
nは、1~5の整数である。)
【請求項3】
下記化学式3で示される、請求項2に記載の酸無水物化合物。
[化学式3]
【化47】
【請求項4】
下記化学式1で示される酸無水物化合物から誘導された構造単位および芳香族ジアミンから誘導された構造単位を含む、ポリアミドイミド。
[化学式1]
【化48】
(前記化学式1中、
、RおよびXは、第1項の化学式1における定義と同じである。)
【請求項5】
前記ポリアミドイミドは、下記化学式5で示される繰り返し単位を含む、請求項4に記載のポリアミドイミド。
[化学式5]
【化49】
(前記化学式5中、
およびRは、それぞれ独立して水素、(C1-C20)アルキル、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)ヘテロアリールであり、前記RおよびRのうち少なくとも1つは、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-20)アリールまたは(C3-C20)ヘテロアリールであり、
は、OまたはSOであり、
ArおよびArは、それぞれ独立して
【化50】
または
【化51】
であり、
Lは、単結合、-O-、-S-、-SO-、(C1-C7)アルキレン、(C6-C12)アリレンまたはこれらの組み合わせであることができ、前記Lのアリレンおよびアルキレンは、(C1-C7)アルキルおよびハロ(C1-C7)アルキルから選択される1つ以上でさらに置換されることができ、
11~R13はそれぞれ独立して(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシまたはハロ(C1-C7)アルキルであり、
a~cは、それぞれ独立して0~2の整数である。)
【請求項6】
下記化学式6で示される繰り返し単位を含む、請求項5に記載のポリアミドイミド。
[化学式6]
【化52】
(前記化学式6中、
ArおよびArは、それぞれ独立して
【化53】
または
【化54】
であり、
であり、
Lは、単結合、-O-、-S-または-CR1415-であり、
11~R15は、それぞれ独立して(C1-C3)アルキルまたはフルオロ(C1-C3)アルキルであり、
a~cは、それぞれ独立して0~2の整数である。
【請求項7】
前記ArおよびArは、それぞれ独立して下記構造から選択される、請求項6に記載のポリアミドイミド。
【化55】
【化56】
【請求項8】
下記化学式7または化学式8で示される繰り返し単位を含む、請求項7に記載のポリアミドイミド。
[化学式7]
【化57】
[化学式8]
【化58】
【請求項9】
前記ポリアミドイミドの数平均分子量は10、000~200、000g/molである、請求項8に記載のポリアミドイミド。
【請求項10】
下記化学式1で示される酸無水物化合物と下記化学式Aで示される芳香族ジアミンを反応させ、イミド化して下記化学式4で示されるジカルボン酸化合物を製造するステップと、
化学式4で示されるジカルボン酸化合物と下記化学式Bで示される芳香族ジアミンを反応させて、化学式5で示される繰り返し単位を含むポリアミドイミドを製造するステップと、を含む、ポリアミドイミドの製造方法。
[化学式1]
【化59】
[化学式4]
【化60】
[化学式5]
【化61】
[化学式A]
【化62】
[化学式B]
【化63】
(前記化学式1、4、5、AおよびB中、
、R、X、ArおよびArは、請求項5に記載の化学式5の定義と同じである。)
【請求項11】
請求項4~9のいずれか一項に記載のポリアミドイミドを含む、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のポリアミドイミドフィルム形成用組成物から形成された、ポリアミドイミドフィルム。
【請求項13】
前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さが1~20μmであり、ガラス転移温度(T)が400℃以上である、請求項12に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項14】
前記ポリアミドイミドフィルムは、熱変形解析法(TMA Method)により100~450℃の温度範囲で測定した熱膨張係数(CTE)が20ppm/℃以下である、請求項13に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項15】
前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1925による黄色度が4以下である、請求項14に記載のポリアミドイミドフィルム。
【請求項16】
請求項12に記載のポリアミドイミドフィルムを含む、フレキシブルディスプレイパネル。
【請求項17】
下記化学式4で表される、ジカルボン酸化合物。
[化学式4]
【化64】
(前記化学式4中、
、R、XおよびArは、請求項5に記載の化学式5の定義と同じである。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規な構造の酸無水物化合物、そこから製造されるポリアミドイミド樹脂およびポリアミドイミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ディスプレイ装置が多様な形態で発展する中で軽量化、スリム化、フレキシブル化が重要視されており、従来のガラス基板を軽くて柔軟性があり、耐薬品性などに優れたポリイミド系フィルムに置き換えようとする試みが続いている。しかし、ポリイミド系フィルムをディスプレイ装置に適用するためには、固有の黄色度特性を改善し、無色透明な光学物性を付与することが必須である。
さらに、フレキシブルデバイスは薄膜トランジスタ(Thin film transistor、TFT)や有機物蒸着などの高温工程を伴うため、高温工程でも変形が起こらず、高温工程で異種素材間の膨張と収縮の差を最小限に抑えるための優れた熱的寸法安定性が要求される。一例として、TFTに使用される無機物および金属と同様の程度である20ppm/℃以下の低い熱膨張係数、400℃以上の高いガラス転移温度などの熱的特性が要求されている。
【0003】
しかし、ポリイミド系フィルムの光学物性と耐熱性は互いにトレードオフの関係にあり、ポリイミド系フィルムに無色透明な光学物性を付与すると耐熱性が弱まり、熱膨張係数が大きくなる結果を招く。このため、高耐熱性および低熱膨張係数を持ちながら無色透明なポリイミド系フィルムを開発するための研究が続けられているが、これら全てを満足するには限界があるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2014-0085064号公報(2014.07.07.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、高耐熱性の無色透明なポリイミド系フィルムを製造できるモノマーである新規構造の酸無水物化合物およびその製造方法を提供する。
本発明の別の態様は、前記新規酸無水物化合物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミド樹脂およびポリアミドイミドフィルムを提供する。
本発明の別の態様は、前記ポリアミドイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイ素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、下記化学式1で示される酸無水物化合物を提供する。
【0007】
[化学式1]
【化1】
(前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して水素、(C1-C20)アルキル、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)ヘテロアリールであり、前記RおよびRの少なくとも1つは、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-20)アリールまたは(C3-C20)ヘテロアリールであり、
は、OまたはSOである。)
【0008】
一態様による前記酸無水物化合物は、下記化学式2で表してもよい。
【0009】
[化学式2]
【化2】
(前記化学式2中、
nは、1~5の整数である)。
【0010】
一態様による前記酸無水物化合物は、下記化学式3で表してもよい。
【0011】
[化学式3]
【化3】
【0012】
本発明の別の態様は、下記化学式1で示される酸無水物化合物から誘導された構造単位および芳香族ジアミンから誘導された構造単位を含む、ポリアミドイミドを提供する。
【0013】
[化学式1]
【化4】
(前記化学式1中、
、RおよびXは、前記の定義と同じである。)
【0014】
一態様による前記ポリアミドイミドは、下記化学式5で示される繰り返し単位を含めてもよい。
【0015】
[化学式5]
【化5】
(前記化学式5中、
およびRは、それぞれ独立して水素、(C1-C20)アルキル、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)ヘテロアリールであり、前記RおよびRのうち少なくとも1つは、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-20)アリールまたは(C3-C20)ヘテロアリールであり、
は、OまたはSOであり、
ArおよびArは、それぞれ独立して
【化6】
または
【化7】
であり、
Lは、単結合、-O-、-S-、-SO-、(C1-C7)アルキレン、(C6-C12)アリレンまたはこれらの組み合わせであってもよく、前記Lのアリレンおよびアルキレンは、(C1-C7)アルキルおよびハロ(C1-C7)アルキルから選択される1つ以上でさらに置換されてもよく、
11~R13は、それぞれ独立して(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシまたはハロ(C1-C7)アルキルであり、
a~cはそれぞれ独立して0~2の整数である)。
【0016】
一態様による前記ポリアミドイミドは、下記化学式6で示される繰り返し単位を含めてもよい。
【0017】
[化学式6]
【化8】
(前記化学式6中、
ArおよびArは、それぞれ独立して
【化9】
または
【化10】
であり、
Lは、単結合、-O-、-S-または-CR1415-であり、
11~R15は、それぞれ独立して(C1-C3)アルキルまたはフルオロ(C1-C3)アルキルであり、
a~cは、それぞれ独立して0~2の整数である)。
【0018】
前記ArおよびArは、それぞれ独立して以下の構造から選択してもよい。
【化11】
【化12】
【0019】
一態様による前記ポリアミドイミドは、下記化学式7または化学式8で示される繰り返し単位を含めてもよい。
【0020】
[化学式7]
【化13】
【0021】
[化学式8]
【化14】
【0022】
前記ポリアミドイミドの数平均分子量は10、000~200、000g/molであってもよい。
【0023】
本発明の別の態様は、下記化学式1で示される酸無水物化合物と下記化学式Aで示される芳香族ジアミンを反応させてイミド化して下記化学式4で示されるジカルボン酸化合物を製造するステップと、下記化学式4で示されるジカルボン酸化合物と下記化学式Bで示される芳香族ジアミンを反応させて下記化学式5で示される繰り返し単位を含むポリアミドイミドを製造するステップと、を含む、ポリアミドイミドの製造方法を提供する。
【0024】
[化学式1]
【化15】
【0025】
[化学式4]
【化16】
【0026】
[化学式5]
【化17】
【0027】
[化学式A]
【化18】
【0028】
[化学式B]
【化19】
(前記式1、4、5、AおよびB中、
、R、X、ArおよびArは、前記化学式5の定義と同じである)。
【0029】
本発明の別の態様は、前記ポリアミドイミドを含む、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物を提供する。
【0030】
本発明の別の態様は、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物から形成された、ポリアミドイミドフィルムを提供する。
【0031】
一態様による前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さが1~20μmであり、ガラス転移温度(T)が400℃以上であってもよい。
【0032】
一態様による前記ポリアミドイミドフィルムは、熱変形解析法(TMA Method)により100~450℃の温度範囲で測定した熱膨張係数(CTE)が20ppm/℃以下であってもよい。
【0033】
一態様による前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1925による黄色度が4以下であってもよい。
【0034】
本発明の別の態様は、前記ポリアミドイミドフィルムを含む、フレキシブルディスプレイパネルを提供する。
【0035】
本発明の別の態様は、下記化学式4で示されるジカルボン酸化合物を提供する。
【0036】
[化学式4]
【化20】
(前記化学式4中、
、R、XおよびArは、前記化学式5の定義と同じである)。
【発明の効果】
【0037】
一態様による新規な酸無水物化合物は、優れた熱的特性および光学物性を同時に有するポリアミドイミドフィルムを提供することができる。具体的には、一態様による新規な酸無水物化合物から製造されたポリアミドイミドフィルムは、無色透明であるだけでなく、400℃以上の高いガラス転移温度および20ppm/℃以下の低い熱膨張係数を持つことができる。
すなわち、一態様によるポリアミドイミドフィルムは、高温工程に伴うフレキシブルディスプレイ素子の基板材料として適用可能であると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施例1および2で製造されたポリアミドイミドフィルムの写真である。
図2】実施例1および2で製造されたポリアミドイミドフィルムの紫外線-可視光領域の透過率グラフである。
図3】実施例1および実施例2で製造されたポリアミドイミドフィルムの窒素環境(N)および空気(Air)環境での熱重量分析グラフである。
図4】実施例1および実施例2で製造されたポリアミドイミドフィルムの示差走査熱量計分析グラフである。
図5】実施例1および2で製造されたポリアミドイミドフィルムの熱機械分析グラフである。
図6】実施例1および2で製造されたポリアミドイミドフィルムの動的機械分析グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書で特に定義されていない限り、すべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書の説明に使用される用語は、特定の実施形態を効果的に説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0040】
本明細書で使用される単数形は、文脈で特別な指示がない限り、複数形も含むことを意図することができる。
【0041】
また、本明細書で使用される数値範囲は、下限値と上限値とその範囲内のすべての値、定義される範囲の形と幅から論理的に導かれる増分、二重に限定されたすべての値、および異なる形で限定された数値範囲の上限と下限のすべての可能な組み合わせを含む。本明細書で特別な定義がない限り、実験誤差または値の丸めにより発生する可能性がある数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0042】
本明細書の用語、「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」または「特徴とする」などの表現と同等の意味を持つ開放型記載であり、さらに列挙されていない要素、材料またはプロセスを排除するものではない。
【0043】
本明細書の用語、「アルキル」は、1つの水素除去によって脂肪族炭化水素から誘導された有機ラジカルであり、直鎖状または縮合形態の両方を含めてもよい。前記アルキルは、1~20個の炭素原子、具体的には1~15個の炭素原子、具体的には1~10個の炭素原子、具体的には1~7個の炭素原子、具体的には1~5個の炭素原子を有してもよい。前記アルキルとしては、一例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、エチルヘキシル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
本明細書の用語、「フルオロアルキル」は、前記アルキル中の少なくとも一つ以上の水素がフルオロ基(-F)で置換されたものを意味することができる。
【0045】
本明細書の用語、「アリール」は、一つの水素除去によって芳香族炭化水素から誘導された有機ラジカルで、各環に適切に4~7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単一または縮合環系を含み、複数のアリールが単結合で連結されている形態まで含めてもよい。一例として、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニルなどを含むが、これらに限定されない。
【0046】
本明細書の用語「ヘテロアリル」とは、ヘテロアリルから1つの水素を除去することによって誘導される2価の有機ラジカルを意味する。前記「ヘテロアリル」とは、芳香族環骨格原子としてN、O、SおよびSeから選択される少なくとも一つのヘテロ原子を含み、残りの芳香族環骨格原子が炭素であるアリール基を意味するものであり、5~6員の単環式ヘテロアリル、および1つ以上のベンゼン環と縮合した多環式ヘテロアリルであり、部分的に飽和していてもよい。また、本発明におけるヘテロアリルは、1つ以上のヘテロアリルが単結合で連結された形態も含む。具体的な例として、プリン、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、トリアジニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニルなどの単環式ヘテロアリル、ベンゾフランイル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾフランイル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、イソインドリル、インドリル、インダゾリル、キノリル、イソキノリル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、カルバゾリル、ベンゾカルバゾリル等の多環式ヘテロアリル、等を含むが、これらに限定されない。
【0047】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0048】
本発明の一態様は、高耐熱性の無色透明なポリイミド系フィルムを製造できるモノマーである新規構造の酸無水物化合物を提供する。
【0049】
具体的には、一態様による前記酸無水物化合物は、下記化学式1で表すことができる。
【0050】
[化学式1]
【化21】
(前記化学式1中、
およびRは、それぞれ独立して水素、(C1-C20)アルキル、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)ヘテロアリールであり、前記RおよびRのうち少なくとも1つは、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-20)アリールまたは(C3-C20)ヘテロアリールであり、
はOまたはSOであり。)
【0051】
一例として、前記化学式1中、RおよびRは、それぞれ独立して水素、(C1-C7)アルキル、フルオロ(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C12)ヘテロアリールであり、前記RおよびRの少なくとも1つは、フルオロ(C1-C7)アルキル、(C6-12)アリールまたは(C3-C12)ヘテロアリールであってもよい。
【0052】
一例として、前記化学式1中、前記RおよびRは、互いに同一であり、フルオロ(C1-C20)アルキルであってもよく、具体的には、パーフルオロ(C1-C20)アルキル、またはパーフルオロ(C1-C7)アルキルであってもよい。
【0053】
具体的には、一態様による前記酸無水物化合物は、下記化学式2で表すことができる。
【0054】
[化学式2]
【化22】
(前記化学式2中、
nは1~5の整数である)。
【0055】
一例として、前記化学式2において、nは1~3の整数であり、1または2であってもよい。
【0056】
より具体的には、一態様による前記酸無水物化合物は、下記化学式3で表されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
[化学式3]
【化23】
【0058】
本発明の別の態様は、下記化学式1で示される酸無水物化合物から誘導された構造単位を含むポリアミドイミドを提供する。
【0059】
[化学式1]
【化24】
(前記化学式1中、
、RおよびXの定義は前述の通りである)。
【0060】
すなわち、一態様による酸無水物化合物は、ポリアミドイミドポリマー製造用モノマーとして適用することができ、ジアミン化合物との反応でポリアミドイミドを合成することができる。
【0061】
具体的には、一態様によるポリアミドイミドは、前記化学式1で示される酸無水物化合物から誘導された構造単位および芳香族ジアミンから誘導された構造単位を互いに隣接して含めてもよく、例えば、下記化学式5で示される繰り返し単位を含めてもよい。
【0062】
[化学式5]
【化25】
(前記化学式5中、
およびRは、それぞれ独立して水素、(C1-C20)アルキル、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C3-C20)ヘテロアリールであり、前記RおよびRの少なくとも1つは、フルオロ(C1-C20)アルキル、(C6-20)アリールまたは(C3-C20)ヘテロアリールであり、
は、OまたはSOであり、
ArおよびArは、それぞれ独立して
【化26】
または
【化27】
であり、
Lは、単結合、-O-、-S-、-SO-、(C1-C7)アルキレン、(C6-C12)アリレンまたはこれらの組み合わせであってもよく、前記Lのアリレンおよびアルキレンは、(C1-C7)アルキルおよびハロ(C1-C7)アルキルから選択される1つ以上でさらに置換されてもよく、
11~R13は、それぞれ独立して(C1-C7)アルキル、(C1-C7)アルコキシまたはハロ(C1-C7)アルキルであり、
a~cは、それぞれ独立して0~2の整数である)。
【0063】
一例として、前記式5中、RおよびRは、それぞれ独立して水素、(C1-C7)アルキル、フルオロ(C1-C7)アルキル、(C6-C12)アリール、(C3-C12)ヘテロアリールであり、前記RおよびRの少なくとも1つは、フルオロ(C1-C7)アルキル、(C6-12)アリールまたは(C3-C12)ヘテロアリールであることができる。
【0064】
一例として、前記式5中、前記RおよびRは、互いに同一であり、フルオロ(C1-C20)アルキルであってもよく、具体的には、パーフルオロ(C1-C20)アルキル、またはパーフルオロ(C1-C7)アルキルであってもよい。
【0065】
具体的には、一態様による前記ポリアミドイミドは、下記化学式5-1で示される繰り返し単位を含むものであってもよい。
【0066】
[化学式5-1]
【化28】
(前記化学式5-1中、
nは、1~5の整数であり、ArおよびArは、前記化学式5の定義と同じである)。
【0067】
一例として、前記化学式5中、nは、1~3の整数であり、1または2であってもよい。
【0068】
具体的には、一態様による前記ポリアミドイミドは、下記化学式6で示される繰り返し単位を含むものであってもよい。
【0069】
[化学式6]
【化29】
(前記化学式6中、
ArおよびArは、それぞれ独立して
【化30】
または
【化31】
であり、
Lは、単結合、-O-、-S-または-CR1415-であり、
11~R15は、それぞれ独立して(C1-C3)アルキルまたはフルオロ(C1-C3)アルキルであり、
a~cはそれぞれ独立して0~2の整数である)。
【0070】
一例として、前記ArおよびArは、それぞれ独立して下記構造から選択することができる。
【化32】
【化33】
【0071】
一例として、一態様による前記ポリアミドイミドは、下記化学式7または化学式8で示される繰り返し単位を含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0072】
[化学式7]
【化34】
【0073】
[化学式8]
【化35】
【0074】
一態様による前記ポリアミドイミドの数平均質分子量は、10、000~200、000g/mol、または50、000~200、000g/mol、または80、000~200、000g/molであってもよい。
【0075】
以下、一態様による前記ポリアミドイミドの製造方法について説明するが、これに使用される有機溶媒は限定されず、反応時間と温度も本発明の核心を逸脱しない範囲内で変更可能であることはもちろんである。
【0076】
一態様による前記ポリアミドイミドは、下記化学式1で示される酸無水物化合物と下記化学式Aで示される芳香族ジアミンを反応させてイミド化して下記化学式4で示されるジカルボン酸化合物を製造するステップと、下記化学式4で示されるジカルボン酸化合物と下記化学式Bで示される芳香族ジアミンを反応させて下記化学式5で示される繰り返し単位を含むポリアミドイミドを製造するステップと、を含んで製造してもよい。
【0077】
[化学式1]
【化36】
【0078】
[化学式4]
【化37】
【0079】
[化学式5]
【化38】
【0080】
[化学式A]
【化39】
【0081】
[化学式B]
【化40】
(前記化学式1、4、5、AおよびB中、
、R、X、ArおよびArは、前記化学式5の定義と同じである)。
【0082】
特定の理論に拘束されるつもりはないが、一例として、前記化学式4で表されるジカルボン酸化合物を製造するステップと、を含まない場合、ポリアミドイミドのポリマー鎖内のモノマー配列の規則性(酸無水物化合物-Ar-酸無水物化合物-Ar)を確保することができず、今後のポリアミドイミドフィルムの熱安定性が低下し、本発明で目的とする物性を実現することが困難になる可能性がある。
【0083】
本発明の別の態様は、前記ポリアミドイミドを含む、ポリアミドイミドフィルム形成用組成物を提供する。
【0084】
具体的には、一態様に係る前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、前記ポリアミドイミドと、有機溶剤と、を含むものであってもよい。
【0085】
前記組成物に含まれる有機溶剤は、ガンマ-ブチロラクトン、1、3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトン類と、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類と、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類(セロソルブ)と、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類と、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、カルビトールなどのアルコール類と、N、N-ジメチルプロピオンアミド(DMPA)、N、N-ジエチルプロピオンアミド(DEPA)、N、N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N、N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N、N-ジエチルホルムアミド(DEF)、N-メチルピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、N、N-ジメチルメトキシアセトアミド等のアミド類と、等から選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0086】
一態様によるポリアミドイミドフィルム形成用組成物は、組成物の総重量を基準として、固形分(ポリアミドイミドポリマー)の含有量が5重量%以上、または10重量%以上であってもよく、具体的には、5重量%~50重量%、または10重量%~40重量%、または20重量%~40重量%であってもよい。
【0087】
本発明の別の態様は、前記ポリアミドイミドフィルム形成用組成物から形成された、ポリアミドイミドフィルムを提供する。
【0088】
一態様による前記ポリアミドイミドフィルムは、厚さが1~500μm、または、1~100μm、または、1~50μm、または、1~20μmであってもよい。
【0089】
また、前記ポリアミドイミドフィルムはガラス転移温度(T)が400℃以上で熱安定性が非常に優れており、熱変形解析法(TMAMethod)により100~450℃の温度範囲で測定した熱膨張係数(CTE)が20ppm/℃以下であってもよい。
【0090】
つまり、作業態様によるポリアミドイミドフィルムは、フレキシブルデバイスで要求される高温工程でも変形が起こらず、高温工程で異種材料間の膨張と収縮の差を最小限に抑えることができる。
【0091】
また、一態様による前記ポリアミドイミドフィルムは、ASTM D1925による黄色度が5以下、または4以下、または3以下であってもよい。
【0092】
すなわち、一態様によるポリアミドイミドフィルムは、無色透明でありながら高耐熱性および低熱膨張係数を持つことができ、高温ステップと、に伴うフレキシブルディスプレイ素子の基板材料として適用可能であると期待される。
【実施例0093】
以下、実施例を通じて上述した実施例をより詳細に説明する。ただし、以下の実施例は単なる説明のためのものであり、権利範囲を制限するものではない。
【0094】
[物性測定方法]
(1)水平菌分子量
ゲル透過クロマトグラフィー(GelPermeation Chromatography、GPC)を用いて測定した。カラムはPLgel MIXED-B10μm、標準試料はポリスチレン、溶媒はテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)を使用し、温度30℃、流量(flowrate)1.0mL/minの条件でサンプルを5mg/10mLの濃度に調製した後、200μLの量で供給して測定した。
(2)黄色度
ASTMD1925規格に基づき測定した。
(3)カットオフ波長(cutoff wavelength)
ASTMD1003規格に従って透過率を測定し、透過率が現れ始める波長を各フィルムの遮断波長(λ)とした。
(4)透過率
ASTMD1003規格に基づき、400nm波長に対する透過率(T400nm)と550nm波長に対する透過率(T550nm)をそれぞれ測定した。
(5)熱分解温度(Td、5%
熱重量分析(thermogravimetricanalysis、TA instruments、TGA Q50)法を利用した。測定条件は、常温から常温で800℃の温度範囲、5℃/minの昇温速度、1.5bar/分の圧力で窒素ガス注入下で測定し、5%の質量減少が発生する温度を熱分解温度(Td、5%)とした。
(6)ガラス転移温度(T
等温示差走査熱量分析(Isothermal Differential Scanning Calorimetry、TAinstruments、DSC Q20)を使用して、0℃から400℃まで10℃/minで昇温および冷却し、2回目に得られた値で測定した。
(7)熱膨張係数(CTE)
熱機械分析装置(ThermomechanicalAnalyzer、TA instruments、TMA-Q400)を用いて測定した。0.01Nの荷重で常温から450℃の温度範囲、5℃/minの昇温速度、条件で膨張率を平均して測定した。
(8)アルファトランジション温度(Tα
ASTM D4065規格に基づき、動的機械分析装置(Dynamic MechanicalAnalyzer、TA instruments、DMAQ800)で測定した。0.01Nの荷重で常温から450℃の温度範囲、5℃/minの昇温速度、1Hzの周波数、15μmのAmplitude条件でアルファトランジション温度を測定した。示差走査熱量計で450℃までガラス転移温度が観測されなかったため、ガラス転移温度と同様の温度で観測されるアルファトランジション温度を測定した。
【0095】
[製造例1]酸無水物化合物の製造
【化41】
【0096】
3つ口丸底フラスコに、4-ブロモ-1、2-ジメチルベンゼン7.88g、3-エチルフェノール4.00g、鉄(III)アセチルアセトナート(Fe(acac))1.16g、ヨウ化銅(CuI)0.62g、炭酸カリウム(KCO)9.05g、無水ジメチルホルムアミド(DMF)5mLを投入して反応溶液を調製した。前記反応溶液を135℃で12時間攪拌した後、ヘキサンで抽出し、化合物A-1を得た。
【0097】
前記化合物A-1をジクロロメタン(DCM)34mL、トリフルオロメタンスルホン酸(triflic acid)34mL混合溶媒下でヘキサフルオロアセトン三水和物26.45gと共に1つ口丸底フラスコに投入した。33時間室温で攪拌した後、反応溶液を水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液にゆっくり入れて中和した。その後、ジエチルエーテル(diethylether)で抽出して生成物を得て、前記生成物を再びジクロロメタン(DCM)49.5mL、トリフルオロメタンスルホン酸(triflic acid)98.9mL混合溶媒下で室温で20時間攪拌した後、反応溶液を同じ方法で水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液にゆっくり入れて中和した後、ヘキサンで抽出して化合物A-2を得た。
【0098】
前記化合物A-2をピリジン143.5mL、蒸留水21mL混合溶媒下で水酸化ナトリウムと過マンガン酸カリウム(KMnO)で酸化させた後、pH1の硫酸水溶液を処理し、トリカルボン酸化合物である化合物A-3を得た。前記化合物1-Cを210℃で真空昇華させて酸無水物化合物Aを得た(収率15%)。
【0099】
H-NMR(400MHz、Acetone-d)、δ(ppm):11.93(broad、COOH、1H)、8.53(s、1H)、8.17(d、J=8.6Hz、1H)、8.08(s、1H)、8.05(dd、J=8.6、1.9Hz、1H)、7.99(d、J=1.8Hz、1H)。
【0100】
<ポリアミドイミド樹脂の製造>
[実施例1]
ジカルボン酸化合物の製造
【化42】
【0101】
丸底フラスコに前記化合物A8.57g、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン3.17g、ジメチルアセトアミド50mLを入れ、室温で12時間窒素を流しながら攪拌した後、無水酢酸5.06g、DABCO5.56gを加え、さらに14時間攪拌した。反応溶液をpH1水溶液に注ぎ、沈殿物を乾燥させてジカルボン酸化合物を製造した(収率100%)。
【0102】
ポリアミドイミド樹脂の製造
【化43】
【0103】
3つ口丸底フラスコに、前記得られたジカルボン酸化合物379.52mg(0.33mmol)と2、2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)105.70mg(0.33mmol)を入れ、塩化カルシウム(CaCl)0.3g、トリフェニルホスファイト(Triphenylphosphite、TPP)1mL、ピリジン1mLおよび無水N-メチルピロリドン5mLを加えて反応溶液を調製した。フラスコに窒素注入口と排出口および機械式攪拌機を装着し、前記反応溶液を100℃で8時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を水:メタノール=1:1体積比溶液に沈殿させ、沈殿したポリマーはフィルター後、メタノールで数回洗浄した後、真空オーブンで80℃で乾燥させた。乾燥したポリマーを再びジメチルアセトアミドに溶解した後、メタノールに沈殿させ、濾過して180℃の真空オーブンで乾燥して実施例1のポリアミドイミド樹脂1を得た(収率100%)。実施例1のポリアミドイミド樹脂の数平均質分子量は94、400g/molであった。
【0104】
H-NMR(DMF-d、400MHz)、δ(ppm):11.31(s、amide、1H)、10.83(s、amide、1H)、8.81(s、2H)、8.44(s、2H)、8.33-8.21(m、4H)、8.28(s、2H)、8.18-8.16(m、6H)、8.08(d、J=7.7Hz、2H)、7.85(d、J=8.6Hz、2H)、7.47(d、J=8.9Hz、2H)。
【0105】
[実施例2]
【化44】
【0106】
前記実施例1におけるポリアミドイミド樹脂の製造ステップで、2、2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)の代わりに2、6-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジジンを使用したこと以外は同じように実施し、実施例2のポリアミドイミド樹脂を製造した(収率100%)。前記2、6-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンは大韓民国公開特許公報第10-2014-0085064号に公知された方法で製造し、得られた実施例2のポリアミドイミド樹脂の数平均質分子量は104、900g/molであった。
【0107】
H-NMR(DMF-d、400MHz)、δ(ppm):11.31(s、amide、1H)、10.83(s、amide、1H)、8.81(s、2H)、8.44(s、2H)、8.33-8.21(m、4H)、8.28(s、2H)、8.18-8.16(m、6H)、8.08(d、J=7.7Hz、2H)、7.85(d、J=8.6Hz、2H)、7.47(d、J=8.9Hz、2H)。
【0108】
<ポリアミドイミドフィルムの製造>
前記で製造した実施例1および実施例2のポリアミドイミド樹脂それぞれをN、N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)に35重量%で溶解してポリアミドイミドフィルム形成用組成物を製造した。前記組成物をガラス基板上にドロップキャスティング(dropcasting)し、30℃で12時間乾燥させた後、200℃で6時間熱処理した後、常温で冷却した。その後、ガラス基板上に形成されたフィルムを基板から分離して、厚さ約10μmのポリアミドイミドフィルムを得た。前記物性測定方法に記載された方法でポリアミドイミドフィルムの物性を測定し、その結果を下記表1に記載した。
【0109】
【表1】
【0110】
前記表1のように、一態様による新規酸二無水物化合物から製造されたポリアミドイミドフィルムは、可視光領域の波長に対する高い透過率および低い黄色度を持ち、広い波長領域の光を透過することを確認した。また、一態様によるポリアミドイミドフィルムは、窒素条件およびAir条件において、共に高い熱分解温度を持っており、環境に影響を与えることなく熱安定性に優れ、20ppm/℃以下の低い熱膨張係数を持つことが分かる。つまり、一態様によるポリアミドイミドフィルムは無色透明であるだけでなく、高温工程でも変形が起こらず、異種素材間の膨張と収縮の差を最小限に抑えることができ、フレキシブルディスプレイ素子の基板素材として有用に適用できると期待される。
【0111】
以上のように、本発明では特定の事項と限定された実施例によって説明したが、これは本発明のより全体的な理解を助けるために提供されたものであり、本発明は前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば、これらの記載から様々な修正および変形が可能である。
【0112】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定して定められるものではなく、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価な変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6