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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010518
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/06 20060101AFI20240117BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240117BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240117BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K9/06
A61P17/00
A61P37/08
A61K45/00
A61K47/18
A61K31/192
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111898
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤川 遥加
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD02F
4C076DD16F
4C076DD51
4C076DD63F
4C076FF35
4C076FF43
4C076FF68
4C084AA17
4C084MA27
4C084MA63
4C084NA03
4C084NA15
4C084NA20
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB131
4C084ZB132
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA48
4C206MA83
4C206NA03
4C206NA20
4C206ZA89
4C206ZB13
(57)【要約】
【課題】有効成分を含有する塗膜のαゲル構造を長時間維持して、アレルゲン、菌等の刺激性物質の皮膚への透過を長時間抑制することができる皮膚外用剤組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)~(D)を含有し、成分(A)に対する成分(C)の質量比(C)/(A)が0.4以上40以下である、αゲル皮膚外用剤組成物。
(A) アミノ酸又はその塩
(B) 非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤、殺菌剤、抗菌又は抗真菌剤、抗ウイルス剤、免疫抑制剤、局所麻酔剤及び鎮痒剤から選ばれる薬効成分
(C) イオン性界面活性剤(アミノ酸を対イオンとするものを除く)
(D) 水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、成分(A)に対する成分(C)の質量比(C)/(A)が0.4以上40以下である、αゲル皮膚外用剤組成物。
(A) アミノ酸又はその塩
(B) 非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤、殺菌剤、抗菌又は抗真菌剤、抗ウイルス剤、免疫抑制剤、局所麻酔剤及び鎮痒剤から選ばれる薬効成分
(C) イオン性界面活性剤(アミノ酸を対イオンとするものを除く)
(D) 水
【請求項2】
成分(B)がステロイド系抗炎症剤以外の薬効成分であって、成分(B)に対する成分(A)と成分(C)の合計の質量比[(A)+(C)]/(B)が0.05以上3.0以下である、請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項3】
成分(B)がステロイド系抗炎症剤であって、成分(B)に対する成分(A)と成分(C)の合計の質量比[(A)+(C)]/(B)が0.8以上20以下である、請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項4】
成分(C)がカチオン性界面活性剤である請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項5】
成分(A)の含有量が0.01質量%以上1.2質量%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項6】
次の成分(B)、(C-a)及び(D)を含有する、αゲル皮膚外用剤組成物。
(B) 非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤、殺菌剤、抗菌又は抗真菌剤、抗ウイルス剤、免疫抑制剤、局所麻酔剤及び鎮痒剤から選ばれる薬効成分
(C-a) アミノ酸を対イオンとするイオン性界面活性剤
(D) 水
【請求項7】
成分(B)が、油溶性薬効成分である、請求項1~6のいずれか1項に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項8】
更に成分(E)として、高級アルコールを含有する請求項1~7のいずれか1項に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項9】
更に成分(F)として、非イオン性界面活性剤を含有する請求項1~8のいずれか1項に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項10】
更に成分(G)として、セラミド類を含有する請求項1~9のいずれか1項に記載の皮膚外用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性の皮膚疾患、特にアトピー性皮膚炎の要因として、抗原(アレルゲン)に対する生体の過剰反応、すなわち免疫学的な異常と皮膚のバリア機能の異常が知られている。正常な皮膚では角層において、皮脂、アミノ酸、尿素などの天然保湿因子、セラミド、脂肪酸などの角質細胞間脂質が皮膚の水分量を一定に保っているのに対し、アトピー性皮膚炎では、角層におけるこれらの因子が減少し、角層が構造異常を起こし、皮膚のバリア機能が低下あるいは破壊されることが知られている。そのため皮膚内部からの水分蒸散が亢進し、角層の水分量も低下するとともに、皮膚外部からのアレルゲンが侵入しやすくなっている。
【0003】
アトピー性皮膚炎のほか、化膿性疾患など、環境アレルゲン、細菌等に影響を受けやすい皮膚症状の改善のためには、有効成分を含有するαゲル製剤を皮膚上で長時間構造安定化させ、アレルゲン、菌等の皮膚に対する刺激性物質の皮膚への接触・透過を低減させることが求められる。
【0004】
特許文献1には、高級アルコール、特定の2種以上の非イオン界面活性剤、リン脂質又は特定のアニオン界面活性剤、特定の薬効成分及び水を含有する皮膚外用剤が、皮膚上で均一なラメラ構造を有する乾燥被膜を形成して前記薬効成分を安定に保持すると共に、アレルゲンの透過を抑制できることが開示されている。その他、特許文献2には、ヘパリン類似物質とともに特定のアミノ酸成分を含有する外用組成物が記載されており、特許文献3には、セラミドとアミノ酸を一定量比で配合した皮膚外用組成物が記載されており、特許文献4には、ピロリドンカルボン酸とウフェナマートを含有する乳化組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-6521号公報
【特許文献2】特開2021-59524号公報
【特許文献3】特開2008-308462号公報
【特許文献4】特開2021-91609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、αゲル構造の乾燥被膜によってアレルゲン、菌等の刺激物質の皮膚への透過を抑制することはできるが、皮膚上でαゲル構造を長時間安定化させ、刺激物質透過抑制効果を長時間維持することについては改良の余地があることが分かった。また、特許文献2~4にも、αゲル構造の塗膜を経時的に安定化することについては記載がない。
【0007】
したがって本発明は、有効成分を含有する塗膜のαゲル構造を長時間維持して、アレルゲン、菌等の皮膚に対する刺激性物質の透過を長時間抑制することができるαゲル皮膚外用剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、イオン性界面活性剤とともにアミノ酸を用いることによって、又はアミノ酸を対イオンとするイオン性界面活性剤を用いることによって、皮膚上に塗布後の乾燥被膜において、有効成分を含有するαゲルの構造を長時間維持することができること、更にこれにより、疾患皮膚の痒みレベルを素早く下げ、経皮水分蒸散量(TEWL)、セラミド量を健常レベルに改善させると共に、皮膚の色素沈着も改善させることができることを見出した。
【0009】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、成分(A)に対する成分(C)の質量比(C)/(A)が0.4以上40以下である、αゲル皮膚外用剤組成物を提供するものである。
(A) アミノ酸又はその塩
(B) 非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤、殺菌剤、抗菌又は抗真菌剤、抗ウイルス剤、免疫抑制剤、局所麻酔剤及び鎮痒剤から選ばれる薬効成分
(C) イオン性界面活性剤(アミノ酸を対イオンとするものを除く)
(D) 水
【0010】
更に本発明は、次の成分(B)、(C-a)及び(D)を含有する、αゲル皮膚外用剤組成物を提供するものである。
(B) 非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤、殺菌剤、抗菌又は抗真菌剤、抗ウイルス剤、免疫抑制剤、局所麻酔剤及び鎮痒剤から選ばれる薬効成分
(C-a) アミノ酸を対イオンとするイオン性界面活性剤
(D) 水
【発明の効果】
【0011】
本発明の皮膚外用剤組成物は、有効成分を含有する塗膜のαゲル構造を長時間維持して、アレルゲン、菌等の刺激性物質の皮膚への透過を長時間抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔成分(A):アミノ酸又はその塩〕
アミノ酸としては、酸性アミノ酸、中性アミノ酸、塩基性アミノ酸のいずれもよい。また、D体、L体あるいはD体とL体の混合物のいずれであってもよく、L体であるのが好ましい。酸性アミノ酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、ピロリドンカルボン酸が挙げられる。中性アミノ酸としては、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、システイン、メチオニン、チロシン、バリン、トレオニン、セリン、プロリン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン等が挙げられる。塩基性アミノ酸としては、リシン、アルギニン、ヒスチジン等が挙げられる。これらのアミノ酸のなかでも、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点からアミノ酸の側鎖が嵩高いものの方が効果が高く、具体的には、アルギニン、リシン、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸、アラニン、グリシンが好ましく、アルギニン、リシン、グルタミン酸、ピロリドンカルボン酸がより好ましい。また、これらの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、塩酸塩、リン酸塩等が挙げられる。成分(A)は、いずれかを単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0013】
本発明の皮膚外用剤組成物中における成分(A)の含有量は、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.015質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上であり、また、良好な乳化状態を形成する観点から、好ましくは1.2質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
【0014】
〔成分(B):非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド系抗炎症剤、殺菌剤、抗菌又は抗真菌剤、抗ウイルス剤、免疫抑制剤、局所麻酔剤及び鎮痒剤から選ばれる薬効成分〕
非ステロイド系抗炎症剤としては、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、サリチル酸グリコール、アクタリット、アダパレン、アセメタシン、アンピロキシカム、アンフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、エトドラク、ケトプロフェン、ザルトプロフェン、ジクロフェナク、スリンダク、セレコキシブ、チアプロフェン酸、テノキシカム、デルゴシチニブ、ナプロキセン、ピロキシカム、フェルビナク、プラノプロフェン、フルルビプロフェン、メフェナム酸、メディコキシブ、メロキシカム、モフェゾラク、レフェコキシブ、ロキソプロフェン、ロベンザリット、ロルノキシカム、及びこれらの塩が挙げられる。
【0015】
ステロイド系抗炎症剤としては、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン酢酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル、フルオシノニド、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフルプレドナート、アムシノニド、ジフルコルトロン吉草酸エステル、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、デプロドンプロピオン酸エステル、デキサメタゾンプロピオン酸エステル、デキサメタゾン吉草酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル、フルオシノロンアセトニド、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、アルクロメタゾンプロピオン酸エステル、クロベタゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、プレドニゾロン、デキサメタゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン酢酸エステル、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステルナトリウム、プレドニゾロン吉草酸エステル、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾンが挙げられる。
【0016】
殺菌剤としては、グルコン酸クロルヘキシジン、銅クロロフィリンナトリウム、イソプロピルメチルフェノール、セチルピリジニウム塩化物水和物、ベンゼトニウム塩化物、塩化ベンザルコニウム、レゾルシン、酸化亜鉛、イオウ、サリチル酸、アクリノール水和物、クロルヘキシジングルコン酸塩、ホモスルファミン、ホモスルファミン塩酸塩、ポピドンヨード、ヨウ素・ヨウ化カリウム、マーキュロクロム、オキシドール、クレゾール、ヨードホルム、チモール、クロルヘキシジン塩酸塩、トリクロロカルバニリド等が挙げられる。
【0017】
抗菌又は抗真菌剤としては、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛、フェニル-11-ヨード-10-ウンデシノエート、エキサラミド、クロトリマゾール、硝酸エコナゾール、チオコナゾール、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、シクロピロクスオラミン、シッカニン、トリコマイシン、ピロールニトリン、チアントール、2,4,6-トリブロムフェニルカプロン酸エステル、トリメチルセチルアンモニウムペンタクロロフェネート、トルシクラート、トルナフタート、ハロプロジン、木槿皮、安息香酸ベルベリン、塩化デカリニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン液、酢酸デカリニウム、ヒノキチオール、レブルシン、過酸化ベンゾイル、ナジフロキサン、レボフロキサン、クリンダマイシンリン酸エステル、安息香酸、クロロブタノール、酢酸、フェノール、ヨードチンキ、塩酸ジフェニルピラリン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルイミダゾール、マレイン酸クロルフェニラミン、クロラムフェニコール、オキシテトラサイクリン塩酸塩、塩酸ジブカイン、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン、アルジオキサ、フタル酸ジエチル、クロルヒドロキシアルミニウム、サルファ剤、ポリミキシンB硫酸塩、コリスチン硫酸塩、バシトラシン、フラジオマイシン硫酸塩、ミコナゾール硝酸塩、ゲンタマイシン硫酸塩、ペンタミジンイセチオン酸塩、スルファジアジン銀、オキシコナゾール硝酸塩、スルコナゾール硝酸塩、ビホナゾール 、ネチコナゾール塩酸塩、ラノコナゾール、テナフィン塩酸塩、アモロルフィン塩酸塩、テルビナフィン塩酸塩、ブテナフィン塩酸塩等が挙げられる。
【0018】
抗ウイルス剤としては、アシクロビル、アデニンアラビノシド、ペンシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、ファムシクロビル、バラシクロビル、アメナメビル及びそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0019】
免疫抑制剤としては、シクロスポリン、タクロリムス、パクリタキセルが挙げられる。
【0020】
局所麻酔剤としては、リドカイン、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、レボプピバカイン、ジブカイン、ジブカイン塩酸塩、アミノ安息香酸エチル等が挙げられる。
【0021】
鎮痒剤としてはジフェンヒドラミン及び/又はその塩、クロルフェニラミン及び/又はその塩等の抗ヒスタミン剤が挙げられ、その他クロタミトンも挙げられる。
【0022】
なお、一般に、薬効成分が油溶性であると、皮膚に塗布後、経時でこの油溶性薬効成分に処方中の固体脂が溶け込むことで乳化構造が崩壊し、αゲル構造を長時間維持することが更に困難となり、刺激物質透過抑制効果を長時間維持できなくなるという問題がある。しかし、本発明によれば油溶性薬効成分を用いた場合でもαゲル構造を長時間維持することができ、刺激物質透過抑制効果も長時間維持することが可能となることから、本発明は成分(B)の薬効成分が油溶性である場合に特に有用である。
【0023】
これらの薬効成分は、いずれかを単独で、又は2種以上を組合せて使用することができる。本発明の皮膚外用剤組成物中における成分(B)の好ましい含有量は、成分(B)がステロイド系抗炎症剤以外の薬効成分である場合と、ステロイド系抗炎症剤である場合とで異なる。
【0024】
成分(B)がステロイド系抗炎症剤以外の薬効成分である場合、本発明の皮膚外用剤組成物中におけるステロイド系抗炎症剤の含有量は、薬剤の効果の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
【0025】
成分(B)がステロイド系抗炎症剤である場合、本発明の皮膚外用剤組成物中におけるステロイド系抗炎症剤の含有量は、薬剤の効果の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.025質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点及びαゲル中の薬剤凝集抑制の観点から、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。
【0026】
〔成分(C):イオン性界面活性剤(アミノ酸を対イオンとするものを除く)〕
成分(C)のイオン性界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを用いることもできる。中でも皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性が好ましく、カチオン性界面活性がより好ましい。
【0027】
アニオン性界面活性剤としては、N-アシルアミノ酸、脂肪酸、アルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、アシル乳酸、N-アシルメチルアラニン、N-アシルサルコシン、ジアシルアミノ酸及びそれらの塩等のカルボン酸塩型;アルカンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、α-スルホ脂肪酸メチルエステル、アシルイセチオン酸、アルキルスルホコハク酸、N-アシルメチルタウリン及びそれらの塩等のスルホン酸塩型;アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル及びそれらの塩等の硫酸塩型;アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びそれらの塩等のリン酸塩型が挙げられる。
【0028】
アニオン性界面活性剤としては、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、N-アシルアミノ酸、アルキルエーテルカルボン酸、ジアシルグルタミン酸リシン、アルキルスルホコハク酸、N-アシルメチルタウリン、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、N-アシルアミノ酸、アルキルエーテルカルボン酸、ジアシルグルタミン酸リシン、アルキルスルホコハク酸、N-アシルメチルタウリン、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含むことがより好ましく、N-アシルアミノ酸、アルキルエーテルカルボン酸、ジアシルグルタミン酸リシン、アルキルスルホコハク酸、N-アシルメチルタウリン、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含むことが更に好ましく、N-アシルアミノ酸、ジアシルグルタミン酸リシン、N-アシルメチルタウリン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含むことが更に好ましく、N-アシルアミノ酸、N-アシルメチルタウリン及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含むことが更に好ましい。
【0029】
N-アシルメチルタウリン及びその塩としては、N-ミリストイル-N-メチルタウリン、N-ラウロイル-N-メチルタウリン、N-ステアロイル-N-メチルタウリン及びそれらの塩等が挙げられる。N-アシルアミノ酸及びその塩としては、N-ラウロイル-L-グルタミン酸、N-ステアロイル-L-グルタミン酸、N-ミリストイル-L-グルタミン酸、N-パーム脂肪酸グルタミン酸等のN-アシルグルタミン酸及びその塩等が挙げられる。脂肪酸及びその塩としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の炭素数12~24の脂肪酸及びその塩が挙げられる。アルキルエーテルカルボン酸及びその塩としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及びその塩等が挙げられる。ジアシルグルタミン酸リシン及びその塩としては、ジラウロイルグルタミン酸リシン及びその塩等が挙げられる。アルキルスルホコハク酸及びその塩としては、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸及びその塩等が挙げられる。アルキル硫酸エステル及びその塩としては、ラウリル硫酸及びそれらの塩等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル及びその塩としては、ポリオキシエチレンラウリル硫酸及びその塩等が挙げられる。アルキルリン酸及びその塩としては、モノミリスチルリン酸、モノステアリルリン酸、ジ(C12-15)パレス-8-リン酸及びそれらの塩等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸及びその塩としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸及びそれらの塩等が挙げられる。
【0030】
これらのアニオン性界面活性剤の塩を構成する塩構造としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩が挙げられる。これらのアニオン性界面活性剤は単独で又は2種以上を使用することができる。
【0031】
カチオン性界面活性剤としては、スフィンゴシン塩類、脂肪族アミン塩、第4級アンモニウム塩、アシルアルギニンエステル塩、アルキルアミドアミン及びその塩、塩化ベンザルコニウム等が挙げられ、保湿効果、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、スフィンゴシン塩類、モノC12-24アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジC12-24アルキルジメチルアンモニウム塩、ジアシルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート、アシルアルギニンエステル塩、及びアルキルアミドアミン塩、及び塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ベヘナミドプロピルジメチルアミン乳酸塩、アシルアルギニンエチルエステル塩、塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
【0032】
モノC12-24アルキルトリメチルアンモニウム塩としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。ジC12-24アルキルジメチルアンモニウム塩としては、ジラウリルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。ジアシルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェートとしては、ジココイルエチルヒドロキシエチルモニウムメトサルフェート等が挙げられる。アルキルアミドアミン塩としては、N-(3-(ジメチルアミノ)プロピル)ドコサナミド(別名:ベヘナミドプロピルジメチルアミン)及びその塩等が挙げられる。これらのカチオン性界面活性剤は、1種以上を使用することができる。
【0033】
本発明で用いるカチオン性界面活性剤のうち、スフィンゴシン塩類は、スフィンゴシン類と酸性物質から構成されるものである。スフィンゴシン類としては、天然由来のスフィンゴシン類又は同構造の合成物、及びその誘導体(以下、天然型スフィンゴシンと記載する)又はスフィンゴシン構造を有する擬似型スフィンゴシン類(以下、擬似型スフィンゴシンと記載する)が好ましい。
【0034】
天然型スフィンゴシンとして、具体的には、天然のスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、及びこれらのN-アルキル体(例えばN-メチル体)等が挙げられる。これらのスフィンゴシンは、天然型(D(+)体)の光学活性体を用いても、非天然型(L(-)体)の光学活性体を用いても、更に天然型と非天然型の混合物を用いてもよい。上記化合物の相対立体配置は、天然型の立体配置のものでも、それ以外の非天然型の立体配置のものでもよく、また、これらの混合物によるものでもよい。更に、PHYTOSPHINGOSINE(INCI名;8th Edition)及び次式で表されるものが好ましい。
【0035】
【化1】
【0036】
これらは、天然からの抽出物及び合成物のいずれでもよく、市販のものを用いることができる。天然型スフィンゴシンの市販のものとしては、例えば、D-Sphingosine(4-Sphingenine)(SIGMA-ALDRICH社)、DS-phytosphingosine (DOOSAN社)、phytosphingosine(コスモファーム社)が挙げられる。
【0037】
擬似型スフィンゴシンの具体例として、次の擬似型スフィンゴシン(i)~(iv)、及び1-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-3-イソステアリルオキシ-2-プロパノールが挙げられる。
【0038】
【化2】
【0039】
スフィンゴシン類としては、天然型のスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、擬似型スフィンゴシンが好ましく、擬似型スフィンゴシンがより好ましく、擬似型スフィンゴシン(ii)、1-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-3-イソステアリルオキシ-2-プロパノールが更に好ましい。
【0040】
これらの天然型のスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、擬似型スフィンゴシンと塩を構成する酸性物質としては、リン酸、塩酸等の無機酸;酢酸等のモノカルボン酸;コハク酸等のジカルボン酸;クエン酸、乳酸、リンゴ酸等のオキシカルボン酸などが挙げられる。これらの中で、天然型のスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、又は擬似型スフィンゴシン(擬似型スフィンゴシン(ii)、1-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-3-イソステアリルオキシ-2-プロパノール)のコハク酸塩、乳酸塩が好ましい。
【0041】
これらのカチオン性界面活性剤のうち、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、塩化ベンザルコニウム、フィトスフィンゴシンが好ましい。
【0042】
両性界面活性剤としては、リン脂質類、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アミドアミノ酸塩、アルキルアミドプロピルベタインが挙げられ、なかでも皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、アルキルアミドプロピルベタイン、大豆リン脂質、水素添加大豆リン脂質が好ましく、水素添加大豆リン脂質が更に好ましい。
【0043】
本発明の皮膚外用剤組成物中における成分(C)の含有量は、乳化状態の保存安定性向上及び皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、塗布時の滑らかさ及び皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。
【0044】
成分(A)に対する成分(C)の質量比(C)/(A)は、良好な乳化状態を形成する観点から、0.4以上であって、好ましくは1.0以上、より好ましくは2.0以上、更に好ましくは5.0以上であり、また、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、40以下であって、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは17以下である。
【0045】
また、成分(B)に対する成分(A)と成分(C)の合計の質量比[(A)+(C)]/(B)は、成分(B)がステロイド系抗炎症剤以外の薬効成分である場合と、ステロイド系抗炎症剤である場合とで異なる。
成分(B)がステロイド系抗炎症剤以外の薬効成分である場合、質量比[(A)+(C)]/(B)は、良好な乳化状態を形成する観点及び皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.14以上、更に好ましくは0.3以上であり、また、薬剤の効果の観点及び塗布時の滑らかさの観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.0以下である。
成分(B)がステロイド系抗炎症剤である場合、質量比[(A)+(C)]/(B)は、αゲル中の薬剤凝集抑制の観点及び皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.4以上、更に好ましくは2.5以上であり、また、薬剤の効果の観点及び塗布時の滑らかさの観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
【0046】
〔成分(C-a):アミノ酸を対イオンとするイオン性界面活性剤〕
成分(A)と成分(C)との併用に代えて、成分(C-a)としてアミノ酸を対イオンとするイオン性界面活性剤を使用することもできる。成分(C-a)としては、前記成分(C)として挙げたイオン性界面活性剤のアミノ酸塩を使用することができ、アニオン性界面活性剤の対イオンとしては、L-アルギニン塩、L-ヒスチジン塩、L-リシン塩等の塩基性アミノ酸塩が挙げられ、カチオン性界面活性剤の対イオンとしては、グルタミン酸、アスパラギン酸、ピロリドンカルボン酸等の酸性アミノ酸が挙げられる。
【0047】
成分(C-a)の具体例としては、フィトスフィンゴシングルタミン酸塩、ココイルアルギニンエチルグルタミン酸塩、ラウロイルアルギニンイソプロピルグルタミン酸塩、ココイルアルギニンエチルピロリドンカルボン酸塩、ココイルアルギニンイソプロピルピロリドンカルボン酸塩、ココイルアルギニンイソブチルピロリドンカルボン酸塩、ラウロイルアルギニンエチルピロリドンカルボン酸塩等のフィトスフィンゴシン類、アシルアルギニンエステルの酸性アミノ酸塩が挙げられる。
【0048】
本発明の皮膚外用剤組成物が成分(C-a)を含有する場合、その含有量は、乳化状態の保存安定性向上及び皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であり、また、塗布時の滑らかさ及び皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。
【0049】
また、成分(B)に対する成分(C-a)の質量比(C-a)/(B)は、成分(B)がステロイド系抗炎症剤以外の薬効成分である場合と、ステロイド系抗炎症薬である場合とで異なる。
成分(B)がステロイド系抗炎症剤以外の薬効成分である場合、質量比(C-a)/(B)は、良好な乳化状態を形成する観点及び皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.14以上、更に好ましくは0.3以上であり、また、薬剤の効果の観点及び塗布時の滑らかさの観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.0以下である。
成分(B)がステロイド系抗炎症剤である場合、質量比(C-a)/(B)は、αゲル中の薬剤凝集抑制の観点及び皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.4以上、更に好ましくは2.5以上であり、また、薬剤の効果の観点及び塗布時の滑らかさの観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
【0050】
〔成分(D):水〕
本発明の皮膚外用剤組成物は媒体として成分(D)の水を含有する。本発明の皮膚外用剤組成物中における成分(D)の含有量は、塗布時の滑らかさの観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは87質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
【0051】
〔成分(E):高級アルコール〕
本発明の皮膚外用剤組成物は、良好なαゲル構造を形成するため、更に成分(E)として、高級アルコールを含有することができる。高級アルコールとしては、炭素数14以上20以下の脂肪族アルコールが挙げられ、なかでも直鎖脂肪族アルコールが好ましく、また、飽和脂肪族アルコールが好ましい。具体例としては、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコールが挙げられる。
【0052】
成分(E)は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、乳化状態の保存安定性の観点から、炭素数の異なる2種以上の化合物を組み合わせて使用することが好ましい。更に、同様の観点から、成分(E)のうち、(e2)長鎖(炭素数18以上20以下)の脂肪族アルコールに対する、(e1)短鎖(炭素数14以上18未満)の脂肪族アルコールの質量比(e1)/(e2)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは1.0以上であり、また、好ましくは7.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは3.0以下である。
【0053】
本発明の皮膚外用剤組成物中における成分(E)の含有量は、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上であり、また、塗布時の滑らかさの観点から、好ましくは4.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下である。
【0054】
〔成分(F):非イオン性界面活性剤〕
本発明の皮膚外用剤組成物は、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持するため、更に成分(F)として、非イオン性界面活性剤を含有することができる。非イオン性界面活性剤としては、多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤、好適には、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノ脂肪酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0055】
成分(F)は、単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができるが、2種以上を組合せて用いることが好ましい。2種以上の多価アルコール脂肪酸エステルの組合せとしては、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、(f1)HLBが3以上7以下、より好ましくは4以上6以下である多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上と、(f2)HLBが11以上16以下、より好ましくは13以上15以下である多価アルコール脂肪酸エステルの1種以上との組合せが好ましい。また、同様の観点から、これらの質量比(f1)/(f2)は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.4以上、更に好ましくは0.6以上であり、また、好ましくは4.0以下である、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.0以下である。
【0056】
本発明の皮膚外用剤組成物中における成分(F)の含有量は、乳化状態の保存安定性の観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上であり、また、塗布時の滑らかさの観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
【0057】
本発明の皮膚外用剤組成物中における成分(E)と成分(F)の質量比(E)/(F)は、皮膚上で刺激物質透過抑制効果を長時間維持する観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.4以上であり、また、塗布時の滑らかさの観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下、更に好ましくは0.8以下である。
【0058】
〔成分(G):セラミド類〕
本発明の皮膚外用剤組成物は、皮膚のバリア機能をより改善させるため、更に成分(G)として、セラミド類を含有することができる。
【0059】
セラミド類としては、天然型セラミド及び擬似型セラミドから選ばれる1種以上が挙げられる。天然型セラミドの具体例としては、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン又はスフィンガジエニンがアミド化されたセラミドType1~7が挙げられ、更にこれらのN-アルキル体(例えばN-メチル体)も含まれる。擬似型セラミドの具体例としては、(N-ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシヘキサデカナミド、(N-ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシデカナミド、N-[2-(2,3-ジヒドロキシプロピルオキシ)-3-ヘキサデシルオキシプロピル]-N-3-メトキシプロピルテトラデカンアミドが挙げられる。成分(G)は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
本発明の皮膚外用剤組成物中における成分(G)の含有量は、皮膚のバリア機能の更なる向上の観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは2.0質量%以上であり、また、塗布時の滑らかさの観点から、好ましくは6.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは4.0質量%以下である。
【0061】
〔pH〕
本発明の皮膚外用剤組成物のpHは、正常な皮膚のpH環境に整える観点、及び成分(B)の安定性向上の観点から、好ましくは7.5以下、より好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.5以下であり、また、皮膚刺激低減の観点から、好ましくは3.5以上、より好ましくは3.8以上、更に好ましくは4.0以上である。
【0062】
〔その他の成分〕
本発明の皮膚外用剤組成物は、炭化水素油、エーテル油、エステル油、シリコーン油、フッ素系油、ワックス、コレステロール類誘導体、フィトステロール類誘導体、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル類、トリグリセライド類、ラノリン、ラノステロール類誘導体、ワセリン等の高級アルコール以外の油剤、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、増粘剤、保湿剤、湿潤剤、着色剤、防腐剤、感触向上剤、粉体、香料、美白剤、制汗剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を、適宜含有することができる。
【0063】
本発明のαゲル皮膚外用剤組成物は、成分(A)~(C)、又は成分(B)及び(C-a)を水中に所定の割合で含有することにより、塗布前の組成物の状態でもαゲル構造を形成しているが、皮膚に塗布し、水分が蒸発することで、皮膚表面にαゲル構造の安定な乾燥被膜を形成することができる。なお、αゲル構造は、広角X線回折、偏光顕微鏡などによって確認することができる。
【実施例0064】
実施例1~29、比較例1~4
表1~4に示す処方で皮膚外用剤を調製し、下記方法及び基準に従って、各評価を行った。
【0065】
〔バルクでのαゲル比率評価方法〕
各外用剤について、広角X線回折により、αゲルに特徴的なBragg角=21.5°付近に現れる鋭い回折ピークの強度を測定した。実施例1において成分(B)を添加していない外用剤のピーク強度を1としたときの各外用剤のピーク強度を百分率で表した。
【0066】
〔刺激物質透過抑制の持続性評価方法〕
孔径5.0μmのメンブレンフィルターの上に各外用剤を4mg/cm2塗布し、32℃30%の条件下で乾燥させ、1時間乾燥させたメンブレンフィルターと6時間乾燥させたメンブレンフィルターを作製した。次に、その乾燥膜の上に1μLの色素水溶液(ファストグリーンFCF、1mg/mL)を滴下させた。32℃30%条件下で1時間静置後、デンシトメーターを用いて色素透過量の測定を行った。透過性は、無塗布を1としたときの色素透過量を百分率で表し、3~4回の測定値を平均した数値で示した。1時間乾燥させたメンブレンフィルターで色素透過量が少なく、かつ6時間乾燥させたメンブレンフィルターでも色素透過量が少ない外用剤を刺激物質透過抑制の持続性が高いと評価した。
【0067】
〔乳化状態の保存安定性の評価方法〕
50℃及び-5℃で1ヶ月保存後の各外用剤の状態(クリーミングか凝集のいずれか)について、目視により、下記の基準によって評価し、C以上を合格とした。
A:変化なし
B:わずかに状態が変化したが、良好な乳化状態
C:明らかに状態が変化したが、分離やゲル化は生じていない
D:一部分離あるいはゲル化
E:全体が分離あるいはゲル化
【0068】
〔皮膚への塗布性(つっぱり感)の評価方法〕
10名の専門パネラーが、各外用剤を塗布した際のつっぱり感について官能評価し、
つっぱり感なし(良い)と評価した人数を示した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【0073】
以下、本発明の皮膚外用剤の処方例を示す。
【0074】
処方例1 消炎鎮痒外用クリーム
(質量%)
プレトニゾロン 0.25
フィトスフィンゴシン 0.15
グルタミン酸 0.09
セタノール 0.9
グリセリン脂肪酸エステル 0.5
N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド
2.5
エチル[(メタクリロイルオキシ)エチル]ジメチルアンモニウムエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体/ポリエチレングリコール混合物 0.15
グリセリン 20
ジメチルポリシロキサン 2
ポリエチレングリコール 4
フェノキシエタノール 0.4
精製水 残量
【0075】
処方例2 鎮痒外用クリーム
(質量%)
ジフェンヒドラミン 1
水素添加大豆リン脂質 0.2
N-アシル-L-グルタミン酸ナトリウム 0.2
ピロリドンカルボン酸ナトリウム 0.02
ステアリルアルコール 0.9
モノステアリン酸グリセリン 0.5
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.8
モノステアリン酸ソルビタン 0.5
N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド
2.5
疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.15
グリセリン 14
ジプロピレングリコール 4
スクワラン 1
ジメチルポリシロキサン 3
コハク酸 0.02
パラオキシ安息香酸メチル 0.2
ヘパリン類似物質 0.3
精製水 残量
【0076】
処方例3 抗ウィルス外用クリーム
(質量%)
アシクロビル 5
N-ココイル-L-アルギニンエチルエステル DL-ピロリドンカルボン酸塩 0.4
グルタミン酸ナトリウム 0.02
セタノール 0.9
N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド
3
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 1
モノステアリン酸ソルビタン 0.8
ジメチルポリシロキサン 3
フェノキシエタノール 0.4
グリセリン 20
精製水 残量
【0077】
処方例4 抗真菌外用クリーム
(質量%)
ミコナゾール硝酸塩 1
N-ココイル-L-アルギニンエチルエステル DL-ピロリドンカルボン酸塩 0.2
水素添加大豆リン脂質 0.2
アルギニン 0.02
セタノール 3
N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド
2
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 1.2
モノステアリン酸ソルビタン 0.5
軽質流動パラフィン 3
パラオキシ安息香酸メチル 0.3
グリセリン 20
精製水 残量
【0078】
処方例5 抗菌外用クリーム
(質量%)
クリンダマイシンリン酸エステル 1
水素添加大豆リン脂質 0.4
グルタミン酸ナトリウム 0.025
ステアリルアルコール 0.8
N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド
3
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 1.2
モノステアリン酸ソルビタン 0.6
ジメチルポリシロキサン 3
フェノキシエタノール 0.5
グリセリン 20
精製水 残量
【0079】
処方例6 免疫抑制外用クリーム
(質量%)
タクロリムス 0.1
水素添加大豆リン脂質 1
ピロリドンカルボン酸ナトリウム 0.05
ステアリルアルコール 0.8
N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド
1.5
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 1.8
モノステアリン酸ソルビタン 1.2
軽質流動パラフィン 3
パラオキシ安息香酸メチル 0.25
グリセリン 20
精製水 残量
【0080】
処方例7 抗炎症外用クリーム
(質量%)
デルゴシチニブ 0.25
水素添加大豆リン脂質 0.5
グリシン 0.05
セチルアルコール 1
N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド
2.5
モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン 0.9
モノステアリン酸ソルビタン 0.6
スクワラン 3
フェノキシエタノール 0.45
グリセリン 10
ジプロピレングリコール 10
精製水 残量