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特開2024-105183組織接触検出のためのベースライン電極インピーダンスを決定する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105183
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】組織接触検出のためのベースライン電極インピーダンスを決定する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/276 20210101AFI20240730BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20240730BHJP
   A61B 5/308 20210101ALN20240730BHJP
【FI】
A61B5/276 100
A61B18/14
A61B5/308
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023214169
(22)【出願日】2023-12-19
(31)【優先権主張番号】18/096,214
(32)【優先日】2023-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511177374
【氏名又は名称】セント・ジュード・メディカル,カーディオロジー・ディヴィジョン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック ジェイ. ボス
(72)【発明者】
【氏名】ジェフェリー エー. シュヴァイツェル
(72)【発明者】
【氏名】リンダ エル. ロイツ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ベースライン値は、患者ごと、過程ごとなど、非常にばらつきがあり、その過程中に少なくとも1回は各電極について決定する必要がある。
【解決手段】組織接触検出のための医療装置に配置された複数の電極における第1の電極のベースラインインピーダンス値を決定する方法は、第1の電極への駆動信号に反応して生成される第1の電極のインピーダンス値を測定することを含む。本方法はさらに、所定の時間インターバルで測定された各インピーダンス値に基づいて、第1の電極にベースラインインピーダンス値を割り当てることと、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定することとを含む。本方法はさらに、信頼値が所定の閾値以上であるとき、第1の電極の接触状態を判定する際にベースラインインピーダンス値を利用することを含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織接触検出のための医療装置に配置された複数の電極における第1の電極についてのベースラインインピーダンス値を決定する方法であって、
前記第1の電極への駆動信号に反応して生成される前記第1の電極のインピーダンス値を測定すること、
所定の時間インターバルで測定された各インピーダンス値に基づいて、前記第1の電極にベースラインインピーダンス値を割り当てること、
前記ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定すること、および、
前記信頼値が所定の閾値以上であるとき、前記第1の電極の接触状態を決定する際に前記ベースラインインピーダンス値を利用すること、を備える方法。
【請求項2】
前記第1の電極にベースラインインピーダンス値を割り当てることは、前記所定の時間インターバルで測定された最小インピーダンス値を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最小インピーダンス値が所定のインピーダンス閾値より大きく、所定のインピーダンス限界値未満である場合、前記最小インピーダンス値が、割り当てられた前記ベースラインインピーダンス値になる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インピーダンス値は、前記複数の電極における前記第1の電極と第2の電極との間に前記駆動信号を印加した結果生じる双極電極複合インピーダンス(BECI)値である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ベースラインインピーダンス値に関連する前記信頼値を決定することは、割り当てられた前記ベースラインインピーダンス値を所定量より多く上回る測定されたインピーダンス値に基づいて前記信頼値を徐々に増加させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ベースラインインピーダンス値に関連する前記信頼値を決定することは、割り当てられた前記ベースラインインピーダンス値の所定の許容範囲内にある測定されたインピーダンス値に基づいて、前記第1の電極の前記信頼値を徐々に増加させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ベースラインインピーダンス値に関連する前記信頼値を決定することは、前記測定されたインピーダンス値が、割り当てられた前記ベースラインインピーダンス値の前記所定の許容範囲外にある場合、前記信頼値を減少させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ベースラインインピーダンス値に関連する前記信頼値を決定することは、前記複数の電極のうちの、前記第1の電極とペアになっている第2の電極について収集されたインピーダンスデータに基づいて前記信頼値を徐々に増加させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ベースラインインピーダンス値に関連する前記信頼値を決定することは、前記複数の電極における追加の電極ペアについて収集されたインピーダンスデータに基づいて、前記信頼値を徐々に増加させることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
複数の電極における第1の電極についてのベースラインインピーダンス値の信頼性を評価する方法であって、
前記複数の電極のうちの、ペアを形成する前記第1の電極と第2の電極との間に駆動信号を印加すること、
前記駆動信号に反応して生成された前記第1の電極についての双極電極複合インピーダンス(BECI)値を測定すること、
前記第1の電極についてのベースラインBECI値を決定することであって、前記ベースラインBECI値は、第1の所定の時間インターバルの間に測定された、所定の下限閾値より大きく所定の上限値未満である第1の最小BECI値である、前記決定すること、
第2の時間インターバルの間に測定されたBECI値が前記ベースラインBECI値よりも所定量だけ大きいことに基づいて、組織接触を決定すること、および、
前記ベースラインBECI値についての信頼状態を、前記第1の電極についての測定されたBECI値に少なくとも部分的に基づいて割り当てること、を備える方法。
【請求項11】
前記ベースラインBECI値についての前記信頼状態を割り当てることは、
第2の所定の時間インターバルの間に第2の最小BECI値が測定され、前記第2の最小BECI値が前記所定の下限閾値より大きく、前記所定の上限値未満であり、前記第1の最小BECI値の所定の許容範囲内にあるとき、前記信頼状態を増加させること、および、
前記第2の最小BECI値が前記第1の最小BECI値の前記所定の許容範囲外にあるとき、前記信頼状態を減少させ、新たなベースラインBECI値を設定すること、を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記信頼状態を減少させ、新たなベースラインBECI値を設定することは、新たなベースライン値として前記第2の最小BECI値を利用することを含み、
本方法は、組織接触を決定し、前記信頼状態を割り当てるステップを繰り返すことをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ベースラインBECI値についての前記信頼状態を割り当てることは、さらに、前記第2の電極について測定されたBECI値に基づく、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記ベースラインBECI値についての前記信頼状態を割り当てることは、前記第2の電極が、前記第1の電極の前記第1の最小BECI値または第2の最小BECI値の所定の許容範囲内にある最小BECI値を有するとき、前記信頼状態を増加させることを備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ベースラインBECI値についての前記信頼状態を割り当てることは、さらに、前記複数の電極における追加の電極ペアについて測定されたBECI値に基づく、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記ベースラインBECI値についての前記信頼状態を割り当てることは、前記第1の電極の前記第1の最小BECI値または第2の最小BECI値の所定の許容範囲内にある平均ベースラインBECI値を有する追加の電極ペアごとに前記信頼状態を増加させることを備える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
複数の電極を有し、患者内に挿入するように構成された医療装置と共に使用するためのシステムであって、
前記複数の電極の各電極にわたって複数の駆動信号を印加するように構成された信号発生器と、
前記駆動信号に対する前記複数の電極の応答を測定し、前記複数の電極の各電極についてのインピーダンス値を生成するように構成された測定回路と、および、
各電極のベースラインインピーダンス値を決定し、各電極の前記ベースラインインピーダンス値の信頼状態を、特定の電極について測定されたインピーダンス値に少なくとも部分的に基づいて決定するように構成された接触評価モジュールと、を備えるシステム。
【請求項18】
各電極についての前記信頼状態は、前記特定の電極について測定されたインピーダンス値と、前記複数の電極内の他の電極について測定されたインピーダンス値とに基づく、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記接触評価モジュールは、前記信頼状態が所定の閾値以上であるとき、電極の接触状態を決定するために前記電極についての前記ベースラインインピーダンス値を利用する、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
組織接触検出のための医療装置に配置された複数の電極のうち、第1の電極についてのベースラインインピーダンス値を決定する方法であって、
前記第1の電極への駆動信号に反応して生成される前記第1の電極のインピーダンス値を測定すること、
前記複数の電極のうちの他の電極の各々についてのインピーダンス値であって、前記他の電極の各々への駆動信号に反応して生成された前記インピーダンス値を測定すること、
所定の時間インターバルで測定された最小インピーダンス値に基づいて、前記第1の電極にベースラインインピーダンス値を割り当てること、
前記第1の電極について測定されたBECI値と、前記複数の電極のうちの前記他の電極の1つまたは複数について測定されたBECI値とに基づいて、前記ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定すること、および、
前記信頼値が所定の閾値以上であるとき、前記第1の電極の接触状態を決定する際に前記ベースラインインピーダンス値を利用すること、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、電極インピーダンスに基づいて組織接触を検出するカテーテルおよび方法ならびにシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは人体内の多くの手術に利用されている。これらの用途の多くでは、周囲の組織からデータを収集する場合であれ、治療を行う場合であれ、カテーテル、特にデータを収集する電極または治療を行う電極と、隣接組織との近接性を決定することが重要である。この決定を行うために、例えば心電図信号(例えば電極間で測定される電圧)および/または電極のインピーダンスのモニタリングなど、多くの方法が利用される。例えば、インピーダンスは一般に、組織との接触に反応して増加すると理解されている。しかし、体内の電極の位置(すなわち、異なる量の血流にさらされる異なる心室は、異なるインピーダンス値を示す可能性がある)や、例えば心臓の拍動の結果として周辺組織が動くことを含む、多くの他の要因もまた、インピーダンスの変動をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電極が組織と接触しているかどうかを査定するために、測定されたインピーダンスを、定義上、その電極が組織に近接していないときのインピーダンスの大きさを表すベースライン値と比較することができる。しかし、ベースライン値は、患者ごと、過程ごとなど、非常にばらつきがあり、その過程中に少なくとも1回は各電極について決定する必要がある。さらに、ある電極が組織から離れた時間を特定するのは難しい。カテーテル上の各電極の特定のベースライン値の質を評価する方法とシステムを開発することは有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様によれば、組織接触検出のための医療装置に配置された複数の電極における第1の電極についてのベースラインインピーダンス値を決定する方法は、第1の電極への駆動信号に反応して生成される第1の電極のインピーダンス値を測定することを含む。本方法はさらに、所定の時間インターバルで測定された各インピーダンス値に基づいて、第1の電極にベースラインインピーダンス値を割り当てることと、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定することとを含む。本方法はさらに、信頼値が所定の閾値以上であるとき、第1の電極の接触状態を判定する際にベースラインインピーダンス値を利用することを含む。
【0005】
別の態様によれば、複数の電極における第1の電極についてのベースラインインピーダンス値の信頼性を評価する方法は、複数の電極のうちの、ペアを形成する第1の電極と第2の電極との間に駆動信号を印加することを含む。駆動信号に反応して生成された第1の電極についての双極電極複合インピーダンス(BECI)値が測定され、第1の電極についてのベースラインBECI値が決定され、ベースラインBECI値は、第1の所定の時間インターバルの間に測定された、所定の下限閾値より大きく所定の上限値未満である第1の最小BECI値である。本方法はさらに、第2の時間インターバルの間に測定されたBECI値がベースラインBECI値よりも所定量だけ大きいことに基づいて、組織接触を決定することと、ベースラインBECI値についての信頼状態を、第1の電極についての測定されたBECI値に少なくとも部分的に基づいて割り当てること、を含む。
【0006】
組織接触検出のための医療装置に配置された複数の電極のうち、第1の電極についてのベースラインインピーダンス値を決定する方法は、第1の電極への駆動信号に反応して生成される第1の電極のインピーダンス値を測定することと、複数の電極のうちの他の電極の各々についてのインピーダンス値であって、他の電極の各々への駆動信号に反応して生成されるインピーダンス値を測定することを含む。所定の時間インターバルで測定された最小インピーダンス値に基づいて、第1の電極にベースラインインピーダンス値が割り当てられ、第1の電極について測定されたBECI値と、複数の電極のうちの他の電極の1つまたは複数について測定されたBECI値とに基づいて、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値が決定される。信頼値が所定の閾値以上であるとき、第1の電極の接触状態を決定する際にベースラインインピーダンス値が利用される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】いくつかの実施形態による、患者内へ挿入するための医療装置を含むシステムであって、医療装置の遠位端に配置される1つまたは複数の電極の接触状態を決定するために電極間のインピーダンスを利用するように構成されたシステムの模式図。
【0008】
図2】いくつかの実施形態による、心臓組織に隣接して配置された、複数のスプラインおよび各スプライン上に配置された複数の電極を有する医療装置の遠位端の模式図。
【0009】
図3】いくつかの実施形態による、複数のスプラインを有し、各スプラインはグリッド状アレイに編成された複数の電極を含む医療装置の遠位端の模式図。
【0010】
図4】いくつかの実施形態による、複数のスプラインを有し、各スプラインはバスケット状アレイに編成された複数の電極を含む医療装置の遠位端の模式図。
【0011】
図5】いくつかの実施形態による、医療装置に配置された2つの電極間のインピーダンスを測定するために利用されるコンポーネントの模式図。
【0012】
図6】いくつかの実施形態による、複数の電極における第1の電極についてのベースラインインピーダンス値を決定するために利用されるステップを示すフローチャート。
【0013】
図7】いくつかの実施形態による、第1の電極についてのベースラインインピーダンス値に関連する信頼状態を決定するための状態マシン(state machine)。
【0014】
図8】いくつかの実施形態による、例示的なインピーダンス大きさ信号と、対応するベースラインインピーダンス値および信頼状態とを示すプロット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
いくつかの実施形態によれば、特許請求される発明は、医療装置の複数の電極のうちの各電極のベースラインインピーダンス値の質を定量化することを容易にする。ベースラインインピーダンスは、電極が組織の近くにないときのインピーダンスの大きさと定義される。ベースラインインピーダンス値は、電極の組織接触状態を決定するための組織接触アルゴリズムで利用されてもよく、したがって、インピーダンスについての質が高いベースライン値は、組織接触状態を正確に決定することにとって中心的なものである。ベースラインインピーダンスが低く設定され過ぎていると、電極は組織の近接に対して感度が高くなり過ぎる可能性があり、誤接触という結果を示し得る。ベースラインインピーダンスが高く設定され過ぎていると、電極が組織としっかり接触していることすら示しにくくなる。本明細書に開示された方法では、ベースラインインピーダンスを適宜適切にリセットすることが可能となる。本方法は、具体的に組織接触の証拠を含むインターバルが含まれたベースライン測定の繰り返しを含む。
【0016】
ある電極のベースラインインピーダンス値の質を定量化することは、その電極について収集されたインピーダンスデータに基づいて、その電極の信頼状態を段階的に増加させることを含むことができる。いくつかの実施形態では、信頼状態は、医療装置における他の電極について収集されたインピーダンスデータに基づいてさらに増加される。医療装置における複数の電極は、ペアに配置することができる。各電極は、それ自身のベースラインインピーダンス値を有することができ、各ペアは、ペア内の2つの電極それぞれのベースラインインピーダンス値の平均である「ペアベースライン」(pairedBL)値を有することができる。その目的は、各電極について、ベースラインインピーダンス値として使用するための最も低い安定したインピーダンス値を得ることであり、収集されるデータが多ければ多いほど、そのベースライン値の質に対する信頼性は高まることとなる。信頼状態または信頼度は、組織接触状態を決定する際にベースラインインピーダンスを使用するかどうかを決定する際に、使用することができる。
【0017】
図1は、医療装置102およびローカルシステム103を含むシステム100の模式図である。いくつかの実施形態では、ローカルシステムは、スイッチ108と、デジタル-アナログ(D to A)変換器110と、フィルタ112と、アナログ-デジタル(A to D)変換器114と、フィルタ116と、ディスプレイ130と、電子制御ユニット(ECU)118と、を含む。電子制御ユニット118は、信号源120と、同期復調回路122と、接触評価モジュール124と、メモリ126と、プロセッサ128とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の表面パッチ電極105が患者の皮膚に接着されてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、医療装置102は、診断および/または治療用カテーテル、イントロデューサ、シース、または他の同様のタイプの装置などの細長い医療装置である。医療装置102は、遠位端104と、技術者によって操作されるハンドルを含む近位端(図示せず)と、医療装置102をローカルシステム103にインターフェース接続するためのインターフェースとを含む。遠位端104は、患者内での遠位端104の位置特定/ナビゲーション、患者内の生理学的パラメータのマッピング、および治療の提供のための様々なセンサおよび/またはコンポーネントを含んでもよい。詳細には、医療装置の遠位端104は、これらの目的の1つまたは複数に利用され得る複数の電極を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、医療装置102の遠位端104に位置する1つまたは複数の電極の接触状態は、電極で測定された1つまたは複数の電気的特性に基づいて決定される。例えば、いくつかの実施形態において、測定された電気的特性は、双極対を形成する2つの電極間で励起信号を駆動することによって生成された双極電極複合インピーダンス(BECI)である。各電極に結果として生じる電圧が、測定され、複合インピーダンス信号を導出するために利用される。いくつかの実施形態では、接触評価モジュール124は、単独で、または他の測定された電気的特性と組み合わせて、BECI測定値を利用し、各電極の接触状態を決定する。いくつかの実施形態では、「接触状態」という用語は、電極が組織と「接触している」か「接触していない」かの二値決定である。他の実施形態では、「接触状態」という用語は、「断続的に接触」のような追加の接触状態を含んでもよい。さらに他の実施形態では、「接触状態」という用語は、隣接組織に対する電極の近接性を表してもよい。
【0020】
図1に示す実施形態では、信号源120は励起信号を生成するために利用される。いくつかの実施形態では、信号源120は、各々が固有の周波数である、1つまたは複数の励起信号または駆動信号を生成する。より具体的には、信号源120は、一実施形態において、約1kHzから500kHzを超える範囲内、より典型的には約2kHzから200kHzの範囲内、さらに典型的には約10kHzから約20kHzの範囲内の固有の周波数を有する複数の励起信号または駆動信号を生成してもよい。駆動信号はそれぞれ、一実施形態において、典型的には1~200μAの範囲内、より典型的には約5μAの定電流を有してよい。信号発生器120はまた、例えば、マッピング、ナビゲーション、および/または治療提供のために利用され得る、患者の体内における電極の位置の決定に関与する信号を発生してもよい。信号源120によって生成されたデジタル信号は、D-A変換器110によってアナログ信号に変換され、フィルタ112およびスイッチ108を介して選択された双極電極に供給される。選択された双極電極間に供給されたアナログ信号に応答して、結果として生じる電圧が、スイッチ108、フィルタ116、A-D変換器114、および同期復調回路122によって電極ペアで測定される。いくつかの実施形態では、スイッチ108は、供給される励起信号または駆動信号に応答して、モニタする電極を選択する。フィルタ116およびA-D変換器114は、アナログ信号をECU118が操作可能なデジタル信号に変換する。同期復調回路122は、励起信号または駆動信号の周波数に基づいて信号を互いに分離し、電極ペアに供給される複数の励起信号または駆動信号に基づいて複数の双極電極ペアをほぼ同時に解析できるようにする。
【0021】
いくつかの実施形態では、メモリ126は、医療装置102、患者、および/または他のデータ(例えば、較正データ)のそれぞれのデータを記憶するように構成されてもよい。このようなデータは、医療処置の前に既知であってもよいし(医療装置固有のデータ、カテーテル電極の数など)、処置中に決定されて記憶されてもよい。メモリ126はまた、プロセッサ128および/または接触評価モジュール124によって実行されると、ECU118に本明細書に記載される1つまたは複数の方法、ステップ、機能、またはアルゴリズムを実行させる命令を記憶するように構成されてもよい。例えば、限定はしないが、メモリ126は、医療装置102における1つまたは複数の電極のそれぞれのインピーダンスを決定し、インピーダンスの測定値を利用して1つまたは複数の電極の接触状態を決定するためのデータおよび命令を含んでもよい。さらに、メモリ126は、ベースラインインピーダンス値の質を決定し定量化するためのデータおよび命令を含んでもよい。いくつかの実施形態では、接触評価モジュール124は、メモリ126に格納された命令を実行するプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、または他のタイプのプロセッサを利用する。ECUは、ディスプレイ130に接続されてもよく、このディスプレイ130は、感知された組織(例えば、心臓)、医療装置(図示せず)、および/または医療装置102の1つまたは複数の電極の決定された接触状態の出力を表示してもよい。
【0022】
図2は、いくつかの実施形態による、心臓組織に隣接して配置された複数のスプラインおよび各スプライン上に配置された複数の電極204a、204bを有する医療装置102の遠位端104の模式図である。図2に示す実施形態では、電極204aおよび204bは、双極電極ペアを形成する。いくつかの実施形態では、インピーダンス測定値は、電極204aおよび204bに励起信号を供給することによって生成され、その結果、破線の矢印208a、208bによって示されるように、電極204aおよび204bの間に電流が流れる。電流208a、208bの少なくとも一部が電極と組織界面において患者組織206を通過することにより、駆動信号(単数または複数)に対する電極応答の誘導性、容量性、および/または抵抗性効果に影響を及ぼす。すなわち、組織の接触は、電極204a、204bのインピーダンス測定値に影響を与える。一般に、電極204a、204bが組織206と接触していない場合、回路は患者の血液プール内に形成され、血液プール内に形成される導電経路のためにインピーダンス測定値が低下する。図2に示すように回路経路が組織206を含む場合は、血液プール内で測定した場合と比較して組織206のインピーダンスが高いことを反映して、インピーダンス測定値が増加する。インピーダンス測定値は、電極の組織接触状態を決定するために利用される。いくつかの実施形態では、接触状態は、接触しているか接触していないかの判定を含んでもよい。他の実施形態では、接触状態は、断続的に接触、または接触状態の範囲のような他の接触状態を含んでもよい。いくつかの実施形態において、測定されたインピーダンスは、双極複合インピーダンス(BECI)値である。
【0023】
他の実施形態では、医療装置102の遠位端104は、複数の異なる形状および/または設計を組み込んでもよい。図2に示す実施形態は、バスケット形状に配置された複数のスプラインを含み、各スプラインは複数の電極を含む。図4に示す実施形態も同様に、複数のスプラインを含み、各スプラインは単一の電極のみを含む。他の実施形態では、医療装置202の遠位端は、図3により詳細に示される電極のグリッド状アレイである。他の実施形態では、医療装置の遠位端は、遠位端に沿って間隔をあけて配置された複数の電極を有して湾曲しているかまたはループ状であってもよい。同様に、様々な異なるタイプ、形状、およびサイズの電極が、医療装置の遠位端で利用されてもよい。
【0024】
図3は、グリッドアレイカテーテル300の上面図である。いくつかの実施形態において、グリッドアレイカテーテル300は、シャフト302、シャフト電極304aおよび304b、近位端306、複数のスプライン308a、308b、308c、308d、遠位端310、および複数のスプライン電極312を含む。いくつかの実施形態では、双極電極複合インピーダンス測定は、隣接する電極の任意のペアの間で行われてもよい。例えば、インピーダンス測定は、シャフト電極304a、304bの間で行われてもよい。他の実施形態では、インピーダンス測定は、スプライン電極312の任意のペアの間で行われてもよい。上述のように、いくつかの実施形態では、インピーダンス測定はBECI測定である。
【0025】
図4は、バスケットカテーテル400の等角図である。いくつかの実施形態において、バスケットカテーテル400は、シャフト402、近位端404、遠位端406、および近位端404と遠位端406との間に延びる複数のスプライン410a~410fを含む。複数のスプライン410a~410fの各々は、対応する電極412a~412fを含む。いくつかの実施形態では、BECI測定は、電極412aと412bの間、または電極412cと412dの間など、隣接する電極のペアの間で行われてもよい。
【0026】
図5は、いくつかの実施形態による、電極の双極ペアを励起し、結果として生じる複合インピーダンスを測定するために利用される回路要素を示す回路図である。詳細には、回路図は、信号源120(図1に示す)、1つのペアの電極204a、204b(図2に示す)、第1および第2のオペアンプ502a、502b、およびECU118(同じく図1に示す)を含む。いくつかの実施形態において、信号源120は、第1および第2の電極204a、204bに供給される励起信号を生成する。第1のオペアンプ502aは、第1の電極204aに接続された第1の端子(例えば、正端子)と、参照電極105(例えば、表面電極)に接続された第2の端子(例えば、負端子)とを含む。オペアンプ502aの出力は、第1の電極204aと参照電極105との間の電圧の差を反映する。第2のオペアンプ502bは、第2の電極204bに接続された第1の端子(例えば、正端子)と、参照電極105(例えば、表面電極)に接続された第2の端子(例えば、負端子)とを含む。オペアンプ502bの出力は、第2の電極204bと参照電極105との間の電圧の差を反映する。第1のオペアンプ502aおよび第2のオペアンプ502bのそれぞれの出力はECU118に供給され、ECU118はそれぞれの測定値を利用して双極電極複合インピーダンス(BECI)を決定する。
【0027】
図6は、いくつかの実施形態による、複数の電極のうちの第1の電極についてのベースラインインピーダンス値およびベースラインインピーダンスに関連する信頼度を決定するために利用される方法600のステップを示すフローチャートである。いくつかの実施形態では、アルゴリズムは、複数の電極の各々に別々に適用される。しかしながら、以下により詳細に説明するように、いくつかの実施形態において、決定されたベースラインインピーダンスに関連する信頼度の決定は、部分的に、複数の電極のうち他のもののベースラインインピーダンスおよび/または決定された信頼度に基づく。複数の電極は、例えば、図2図3および図4に示すカテーテルのいずれかのようなカテーテル上に配置することができる。ステップ602では、上述のように、第1の電極に駆動信号が印加される。より具体的には、駆動信号は第1の電極と第2の電極との間に印加することができ、第1の電極および第2の電極は第1のペアを形成する。ステップ604では、駆動信号に反応して、第1の電極のインピーダンス値が時間インターバルにわたって測定される。いくつかの実施形態によれば、測定されたインピーダンスは、双極電極複合インピーダンス(BECI)である。インピーダンス測定値は、電極が血液プール内にあるときだけでなく、電極が組織と接触しているときにもインピーダンス測定値を収集するために、カテーテルが心臓室の周囲で活発に動かされながら収集することができる。
【0028】
ステップ606で、ベースラインインピーダンスが第1の電極に割り当てられる。いくつかの実施形態では、ベースラインインピーダンスは、時間インターバルにわたって検出または測定された最小インピーダンスである。いくつかの実施形態では、ベースラインインピーダンスは、単に時間インターバル内に検出された最小インピーダンスではない。例えば、いくつかの実施形態において、ベースラインインピーダンスは、時間インターバル内で測定された選択された最小インピーダンスの平均(例えば、時間インターバルから選択された10個の最低測定インピーダンスの平均)として決定される。いくつかの実施形態では、ベースラインインピーダンスは、測定されたインピーダンスのパーセンタイルに基づいて選択されてもよい(例えば、モニタされたインピーダンスの10番目パーセンタイルに位置するインピーダンスが、ベースラインインピーダンスとして選択される)。いくつかの実施形態では、ベースライン値を、たとえ初期段階であっても、最小値以外のものとして選択することにより、明らかに誤ったインピーダンス値がベースラインを表すものとして選択されるのを防ぐことができる。これには、電極が互いに接触し、ベースライン(例えば、血液プール内)値を表さない、極端に低いインピーダンス値を示す状況を含み得る。いくつかの実施形態では、平均値やパーセンタイルを利用するのではなく、検出された最小インピーダンスが、電極が組織の近く(すなわち血液プール内)になく、したがってベースライン値の良い候補であることの妥当な指針であることを保証するために、ステップ606で1つまたは複数の制約が含まれる。例えば、このような制約には、測定されたインピーダンスの範囲(すなわち、最大インピーダンス値から最小インピーダンス値を差し引いた値)が第1の所定値未満である(すなわち、ばらつきが小さい)こと、この最小値が第2の所定値より大きい(すなわち、選択されるベースライン値はこの所定値より大きくなければならない)こと、および/またはこの最小値が第3の所定値未満である(すなわち、ベースライン値は所定値より大きくなり得ない)ことが含まれ得る。いくつかの実施形態では、これらの制約は、ベースライン値が妥当であることを保証する。最小インピーダンス値が血液プールで採取される可能性が高いことを保証するために、他のパラメータまたは制約を使用できることが認識される。これらの制約が満たされている場合、測定された最小インピーダンスを第1の電極のベースラインインピーダンスとして使用することができる。これらの制約が満たされない場合は、測定された最小インピーダンスを第1の電極に割り当てることができるまで、第1の電極について追加の測定を行うことができる。
【0029】
ステップ608では、割り当てられたベースラインインピーダンスに対する信頼値を決定することができる。初期段階で、信頼値は低い(例えば状態ゼロ)。信頼値は、第1の電極のインピーダンスデータが収集されるにつれて増加していき、それは選択されたインピーダンス値が適切であることを裏付ける。いくつかの実施形態では、信頼値は、複数の電極のうちの追加の電極に関連するインピーダンスおよび信頼値にも基づく。いくつかの実施形態では、信頼値は、例えば図7に示され、以下に説明されるような状態マシンモデルに従ってインクリメントされる(場合によってはデクリメントされる)。ある状態から次の状態への遷移は、1つまたは複数の条件の満足を条件とし、各状態は定量化された信頼度を表す(すなわち、各状態は選択されたベースライン値に関連する定量化された信頼性を示す)。追加データが収集されるにつれてステップ608で信頼値が増加し得るのと同様に、信頼値はまた減少し得、方法600は、特定の条件下でベースラインインピーダンスをリセットすることを含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、信頼状態または信頼度は、ディスプレイを介して技術者に表示することができる。ディスプレイは、各電極に関連する信頼状態および/または信頼度の数値を含むことができる。数値に対して代替的に、または加えて、ディスプレイは、各電極と関連する信頼度の図的表示(例えば、決定された接触状態に関連する信頼値をユーザに迅速に示すために色分けされる)のような色分けまたは他の図的要素を使用して、医療装置における各電極について信頼度閾値が満たされているかどうかを視覚的に表すことができる。
【0031】
ステップ610で、ベースラインインピーダンス値と現在の(すなわち最新の)インピーダンス値に基づいて、第1の電極の接触状態が決定される。質の高いベースラインインピーダンスは、組織との接触状態に使用されるアルゴリズムの最適な結果のために必要である。組織接触アルゴリズムは、ベースラインインピーダンス値に対して測定されたインピーダンス値を比較する。割り当てられたベースラインインピーダンスが低すぎる場合、第1の電極は組織近接に過度に反応しやすく、アルゴリズムは組織接触の偽陽性を示す可能性がある。一方、ベースラインインピーダンスが高すぎると、組織接触の確認ができないことが起こりうる。このように、質の高いベースラインインピーダンスは、接触状態を効果的に決定するために重要である。いくつかの実施形態では、ステップ608で割り当てられた信頼値は、組織接触状態を決定できるかどうかを決定するために利用される。例えば、いくつかの実施形態では、ベースラインインピーダンスに関連する信頼値が選択された閾値以上である場合にのみ、組織接触が決定される。他の実施形態では、組織接触状態は、ステップ608で決定された信頼値に関係なく決定されるが、決定された組織接触状態に関連する信頼性の表示をユーザに提供するために、信頼値が組織接触状態とともに表示される。割り当てられたベースラインインピーダンスの信頼度が低すぎる場合、組織接触アルゴリズムにおいてベースラインインピーダンスを採用することは賢明でないかもしれない。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、方法600は、接触状態を決定するステップ610においてベースラインインピーダンス値を利用する前に、満たさなければならない信頼度閾値を設定することを含むことができる。信頼度閾値は、パーセンテージに基づくことができる。パーセンテージ値に加えて、またはそれの代替として、信頼度閾値は、状態マシン内の状態番号に対応することができる。
【0033】
図7は、いくつかの実施形態による第1の電極の信頼値を定量化するために利用される条件および基準を示す状態マシン図700である。各状態は、決定されたベースラインインピーダンス値に関連する増加する信頼(定量化された信頼)を表す。いくつかの実施形態では、選択されたベースラインインピーダンスは変化しないままであるが、選択されたベースラインインピーダンス値に関連する信頼値は、電極が状態マシンを進行するにつれて増加する(すなわち、状態704から状態706への進行は、決定されたベースラインインピーダンスに関連する信頼値の増加をもたらすこととなる)。
【0034】
状態マシン700の多くの変形例は、追加ロジックまたは代替ロジックを含め、本発明の範囲内である。以下に状態について簡単に説明し、各状態についてさらに詳細を説明する。状態マシン700は第1の電極を参照して説明されているが、状態マシンは医療装置における複数の電極のうちの各電極に使用できることが認識される。ゼロ状態702は、開始状態または「未定義」である(各電極は状態702からスタートする)。ゼロ状態702は、信頼ゼロまたは初期状態を表す。電極は、第1の条件が満たされることに反応して、ゼロ状態702から第1の状態704に進行する。例えば、一実施形態では、第1の条件は、電極が血液プールに位置していることを示す測定されたインピーダンス大きさの「低く静かな」インターバルの検出である。第1の状態704では、ベースラインインピーダンス値が選択されるが、ベースラインインピーダンスに関連する信頼値は、状態704を示す値(すなわち、比較的低い)に設定される。第1の電極は、組織接触を示す、検出された増加または十分に高いインピーダンス値に反応して、第1の状態704から第2の状態706に進行する。第1の状態704で設定されたベースラインインピーダンスと比較して、インピーダンスの増加が検出されると、ベースラインインピーダンスがベースラインまたは低インピーダンス値である可能性が高いことが確認されるため、ベースラインインピーダンス値の信頼性が高まる。第1の電極は、ベースラインインピーダンスが確認される別の低く静かなインターバルがあるとき、第2の状態706から第3の状態708に進行する。第3の状態708では、(第1の状態704で設定された)ベースラインインピーダンスの確認が、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値をさらに増加させる。
【0035】
いくつかの実施形態では、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値をさらに増加させるために、いくつかの追加状態が利用されてもよい。いくつかの実施形態では、電極は、そのペアになる電極(第2の電極)も状態708に進行することに反応して、第3の状態708から第4の状態710に進行する。すなわち、電極ペアの各電極の信頼値が閾値(例えば、第3の状態708)に達した場合、両電極に関連する信頼値は第3の状態708から第4の状態710へとさらに増加する。いくつかの実施形態では、第1の電極は2つ以上の電極とペアになっていてもよく、第1の電極に関連するベースラインインピーダンスの信頼値は、医療装置における電極の各追加ペアとの比較に基づいて(第4の状態710から第5の状態712、第6の状態714、第7の状態716へ)増加し続けてもよい。図7に示す例では、医療装置またはカテーテルには8つの電極がある。(第1の電極および第2の電極として定義される第1の組に加えて)3組の追加の電極があるので、712、714および716にはそれぞれ第5、第6および第7の状態がある。状態が高ければ高いほど、第1の電極が妥当なベースライン値を検出したことの信頼性がより高まる。いくつかの実施形態では、各状態は定量化された信頼値を提供する。例えば、8つの状態を有する実施形態では、各状態に信頼値を割り当ててもよく、ゼロ状態には「0」の値が割り当てられ、7番目の状態には「1」の値が割り当てられる。間の状態には、「0」から「1」まで直線的に増加する10進値が割り当てられるが、他の実施形態も本発明の範囲内である。
【0036】
いくつかの実施形態では、状態マシン700は、組織接触を決定するための上述の組織接触アルゴリズムとは別個にできるベースラインインピーダンスアルゴリズムの動作を定義する。いくつかの実施形態では、ベースラインインピーダンスアルゴリズムは、各電極に対して使用することができ、Wサンプル(公称0.5秒であり、そのような将来の値も公称値であり、拘束されない)長さの、その状態(定量化された信頼値に対応する)、その現在のベースライン値、「候補」ベースライン値(以下に説明する)、および、そのインピーダンス大きさの移動ウィンドウWの経過を追うことができる。移動ウィンドウWは、時間の長さと、インピーダンス大きさの所定の最小値と最大値によって定義される。インピーダンス信号が飽和しているか、さもなければ「無効」であると判断された場合のいつでも、アルゴリズムの変数はデフォルト値(ウィンドウは空、状態はゼロ、オーム値は高に設定)にリセットすることができる。
【0037】
明確にするために、第1の電極を再び使用して説明するが、各電極はゼロ状態702で始まることが認識される。いくつかの実施形態では、ベースラインインピーダンスアルゴリズムは、変動性の低い以下の条件の1つまたは複数が満たされたときに、第1の電極をゼロ状態702から第1の状態704に変化させる。ここでの条件とは、第1の電極のウィンドウWが、完全なWサンプルを有することと、その範囲(最大インピーダンス大きさからサンプルの最小インピーダンスの大きさを引いた値)が第1の所定値(公称12オーム)未満であることと、その最小値が第2の所定値(例えば40オームなどの最小オーム値)より大きく、第3の所定値(例えば86オームなどの最大オーム値)未満であることと、その最小値が現在のベースライン(現在のベースラインが存在する場合)未満であり、その状態が1以下であること、である。いくつかの実施形態では、これらの条件が満たされる場合、「血液プールが検出された」のための基準が満たされ、ウィンドウ中に収集されたインピーダンス測定値の少なくとも一部が、電極が血液プール内にある間に生成されたインピーダンス測定値に対応する(すなわち、所望のベースラインインピーダンスに対応する)ことを示す。したがって、ベースラインインピーダンス値は、収集されたインピーダンス値の1つまたは複数に基づいて設定することができ、電極は第1の状態704に変化する。いくつかの実施形態では、選択されたベースライン値は、ウィンドウの間に測定された(基準を満たす)最小インピーダンス値として選択されるが、他の実施形態では、選択されたベースライン値は、測定されたインピーダンス値から選択された平均値またはパーセンタイルを表してもよい。他の実施形態では、ゼロ状態702から第1の状態704に遷移するために、上記で利用された基準のうちの1つまたは複数を単独で、または互いに組み合わせて利用してもよい。上述したように、ゼロ状態702から第1の状態704への遷移は、ベースライン値に関連する信頼値を増加させる。
【0038】
いくつかの実施形態では、第1の状態704において、ベースラインインピーダンスアルゴリズムはウィンドウWをクリアし、インピーダンスベースラインを設定し、第1のペア(第1の電極および第2の電極)の「ペアベースライン」または「pairedBL」を設定/更新して、第1の電極の現在のベースラインと第2の電極の現在のベースラインとの平均とする。以下に詳述するように、「ペアベースライン」は、電極ペアのベースラインインピーダンスが一致する結果、より高い状態(すなわち、より大きな信頼値)に遷移するために利用される。いくつかの実施形態では、ウィンドウWはクリアされ、第1の状態704から第2の状態706に遷移するかどうかを決定するために新しいインピーダンス値が収集される。しかし、他の実施形態では、ウィンドウWは新しいインピーダンス値の収集とともに移動し続け、ウィンドウWのクリアは必要ない。
【0039】
いくつかの実施形態において、第1の電極は、第1の電極の組織接触を示す増大した大きさのインピーダンスが観察されたときに、第1の状態704から第2の状態706に遷移する。具体的には、測定されたインピーダンスが、現在のベースラインインピーダンスを第4の所定値(例えば、10オーム、または代替的に予め定義されたパーセンテージまたは係数)より多く上回る場合、アルゴリズムは、電極が組織に接触したと決定する。組織との接触を示す検出されたインピーダンス値が高ければ高いほど、第1の状態704で設定されたベースライン値が血液プール内で測定されたインピーダンス値を表すという信頼性が高まる。このようにして、第2の状態706への遷移は、第1の状態704で設定されたベースライン値に関連する信頼値を増加させる。ベースライン値自体は、第1の状態704から第2の状態706への遷移では変化せず、第1の状態704から第2の状態706への遷移に関連する信頼値だけである。
【0040】
いくつかの実施形態では、ベースラインインピーダンスアルゴリズムが現在のベースラインインピーダンスの近くにある測定インピーダンスを検出し、組織からの移動と血液プールへの戻りを確認すると、電極は第2の状態706から第3の状態708に遷移する。この確認は、第1の状態704で設定されたベースラインインピーダンス値が正確である可能性が高いことを示しており、したがってベースラインインピーダンス値の信頼性をさらに高める。いくつかの実施形態では、ウィンドウW内で検出された最小インピーダンス値が、現在のベースラインインピーダンスのいくつかの所定の係数未満である(すなわち、現在のベースライン値のいくつかの閾値以内であり、ベースラインインピーダンス値が血液プール内にあるときの電極インピーダンスの良好な推定であることを示す)ことに反応して、第1の電極は、第2の状態706から第3の状態708に遷移する。例えば、その係数は、1.0+例えば0.03のような所定のウィンドウ許容差(「WindowTolerance」)に等しくすることができる。いくつかの実施形態では、ウィンドウW内で検出された最小値がベースラインインピーダンス値を表しているかどうかを決定するために、第1の状態704で提供されたものと同様の追加の制約を課してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の追加の制約は、ウィンドウW内のインピーダンスの範囲が第1の所定値未満であることと、ウィンドウW内で検出された最小インピーダンスが第2の所定値より大きいことと、およびウィンドウW内で検出された最小インピーダンスが第3の所定値未満であること、を含む。いくつかの実施形態では、ウィンドウW内で検出された最小インピーダンス値が、現在のベースラインインピーダンスのある所定の係数未満である場合(および1つまたは複数の追加制約が満たされる場合)、電極は第4の状態710に遷移する。第1の状態704で第1の電極に設定されたベースラインインピーダンス値に関連する信頼値は増加するが、ベースラインインピーダンス値自体は変化しないままである。これらの条件が満たされた場合、現在のベースラインインピーダンスは確認され、変化しない。
【0041】
しかし、第2の状態706でウィンドウW内で検出された最小インピーダンスがベースラインインピーダンス値の近くでない場合、これは、第1の状態704で設定されたベースラインインピーダンス値が血液プール内のベースラインインピーダンスを表していない可能性があることを示す。いくつかの実施形態では、電極は、第2の状態706からゼロ状態702に戻って遷移し、これは、第1の状態704で最初に設定されたベースライン値に対する信頼性の欠如を示す。特に、第2の状態706にある間にウィンドウW内で測定された最小インピーダンス値が、現在のベースラインの所定の係数より大きい場合、および/または最小インピーダンスが現在のベースラインの所定の許容範囲外である場合、電極は第2の状態706からゼロ状態702に遷移し、ベースラインインピーダンス値を選択し、選択された値に対する信頼性を構築するためにプロセスが再び開始される。
【0042】
いくつかの実施形態では、第3の状態706が最も高い信頼状態を表してもよい。この実施形態では、第1の電極は、第1の電極から受信したインピーダンス測定値に全体的に基づいて第3の状態706に到達する。いくつかの実施形態において、追加の状態710、712、714、および/または716への進行は、1つまたは複数のペアになった電極の測定されたベースライン値に依存してもよい。いくつかの実施形態において、第1の電極は、そのペアになる電極(第2の電極)も第3の状態708(またはより高い状態)にある場合に、第4の状態710に変化する。いくつかの実施形態では、第1の電極と第2の電極が互いに十分に近いインピーダンス値を有する場合、第1の電極は第4の状態710に変化する。この場合、第2の電極も第3の状態708にあり、第1の電極が第4の状態710に変化する場合、第2の電極も第4の状態710に変化することとなる。いくつかの実施形態では、第1の電極および第2の電極が第4の状態710に遷移するとき、医療装置における他の電極の信頼状態を定量化するために使用することができる「ペアベースライン」(pairedBL)値が決定される。いくつかの実施形態では、「ペアベースライン」値は、第1の電極および第2の電極に関連するベースラインインピーダンスの平均である。他の実施形態では、「ペアベースライン」値は、第1の電極と第2の電極に関連するベースラインインピーダンスの最小値であってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1の電極の第5の状態712、第6の状態714および第7の状態716への遷移は、第1の電極および第2の電極に関連するペアになったベースライン値と他の電極ペアとの比較に基づく。第1の電極ペアのベースラインインピーダンス値の所定の許容範囲内にある「ペアBL」値を有する電極の各追加ペアについて、電極は次の状態に遷移し、それに対応して、第1の電極に関連するベースラインインピーダンスに関連する信頼値は値が増加する。8つの電極を持つ例示的なカテーテルの場合、他の3ペアの電極があるため、最大信頼状態は7であり、他の3ペアがすべて上記の基準を満たす場合、信頼状態は4から7まで増加させることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、より低いベースライン値が検出された場合、ベースラインインピーダンスをリセットすることができる。ベースラインインピーダンスをリセットするための具体的な詳細は、より低いベースライン値が検出されたときに第1の電極がどのような状態にあるかに依存する。例えば、第2の状態706に関して、第2の状態706にある間にウィンドウW内で測定された最小インピーダンス値が、現在のベースラインの所定の係数より大きい場合、および/またはその最小インピーダンスが現在のベースラインの所定の許容範囲外である場合、ベースラインインピーダンスはリセットされ得る(そして電極は第1の状態704に戻される)。同様に、いくつかの実施形態では、第1の電極が第3の状態708以上に遷移し、現在のベースラインに対してより低いベースラインが検出された場合(例えば、1.0-WindowToleranceの係数未満)、ベースラインはその新しいより低いベースラインに自動的にリセットされない。むしろ、新しい低いベースラインは、第1の電極について第2の状態706の条件に関連する条件が再び満たされ、そして、候補ベースラインを確認するために別の低い変動ウィンドウが検出されるまで、候補ベースライン(「候補BL」)として保持することができる。低変動ウィンドウまたは許容範囲は、(1.0+WindowTolerance)に候補ベースライン(「candidateBL」)を乗じた値以下である最小インピーダンスと定義される。これらの条件が満たされると、候補ベースラインが新たなベースラインインピーダンス値となる。
【0045】
状態マシン700で使用される例示的なカテーテルにおける8つの電極のうちのどの電極についても、電極が状態3にあり、そのペアになる電極(または仲間)が状態3以上にある場合、アルゴリズムはその状態を4に設定し、そのペアのpairedBLを更新する。ペアになった電極も直ちに更新することができる。次に、ベースラインインピーダンスアルゴリズムは、他の3ペアの電極のそれぞれを調べ、pairedBLがペア許容範囲(「PairedTolerance」、公称0.36)の相対係数内にある状態4の他の各ペアについて、アルゴリズムはその状態値を1ずつ増加させることができる。(いくつかの電極ペアが最大状態7にある一方で、他の電極ペアがそうでないこともあり得ることに注意)。他の電極ペアのpairedBLをモニタすることで、電極は状態5と6を経て状態7(最高品質状態)に進むことができる。
【0046】
最高品質の状態は、カテーテルにおける電極の総数に依存する。図7の状態マシン700は8つの電極を持つカテーテルに基づいている。電極が8個より多いカテーテルは最大状態が高くなり、電極が8個未満のカテーテルは最大状態が低くなることが認識される。電極のペアに依存するBECI測定などのインピーダンス測定では、状態マシンにとっての電極総数は常に偶数である。
【0047】
いくつかの実施形態では、状態マシン内の各状態は、所与の電極に対して設定されたベースラインインピーダンスに関連する信頼値を表し、0から100の範囲の信頼パーセントとして表すことができる。信頼性0パーセントは、データがまだ収集されていないため、現在のベースライン値が正しいという信頼性がない開始状態または未定義状態(状態ゼロ)を表す。対照的に、信頼性100パーセントは、ベースラインインピーダンスの値が正しいという信頼性が高い、最高品質の状態を表す。ゼロパーセントから100パーセントへの進行は、状態マシンの状態数に対応する個々のステップで行うことができる。この場合も、状態の数はカテーテルまたは医療装置の電極数に基づく。非ゼロ状態の数は3+(n/2)に等しく、nは電極数である。例と同じ8電極のカテーテルを使用すると、状態の数は3+(8/2)すなわち7に等しい。信頼状態2では、信頼度は2を7で割った値、すなわち29%に等しい。信頼状態3では、信頼度は3を7で割った値、すなわち43%に等しい。以下の表1は、パーセンテージに変換できる、対応する状態の10進値を示している。
表1は、8つの電極のカテーテルの状態マシンにおける各種状態の概要である。
【表1】
【0048】
状態マシンがどのように機能するかを説明するために、8電極カテーテルを例として使用する。状態マシンの概念は任意の偶数個の電極に適用できることが認識される。n個の電極を持つカテーテルでは、同時に実行される状態マシンがn個存在する。別の例として、6電極のカテーテルの場合、非ゼロ状態の数は3+(6/2)、すなわち合計6状態に等しい。さらに別の例では、10電極カテーテルの場合、非ゼロ状態の数は3+(10/2)、すなわち合計8状態となる。
【0049】
図8は、電極の例示的なインピーダンス大きさ信号と、上述のベースラインインピーダンスアルゴリズムによって設定されたベースラインインピーダンスを示すプロットである。図8はまた、電極の各信頼状態が達成される時間をX軸上に示している。
【0050】
図8に示すように、ベースライン値は信頼状態1に設定されている。信頼状態2では、インピーダンス大きさに顕著な増加(約10オーム)が見られる。信頼状態3では、検出された最小インピーダンスはベースラインインピーダンス値とほぼ同じであり、血液プール内での繰り返しの検出が確認される。状態4と状態5の間には、より低いベースラインが見られる。より低い最小インピーダンスが検出されたとき、信頼状態は3より大きかったので、信頼状態は、状態0および1に戻るのではなく、増加し続けることができる。しかし、新しいより低い最小インピーダンスは、組織の接触を示す別のピークが観察されるまで、すぐには受け入れられない(むしろ、アルゴリズムはそれを候補ベースラインとして指定する)。
【0051】
本発明を例示的な実施形態(単数または複数)を参照して説明してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を加えることができ、その要素に等価物を代用してもよいことは当業者には理解されるであろう。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために多くの変更を加えることができる。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に属するすべての実施形態を含むことが意図される。
【0052】
可能な実施形態の検討。
以下は、本発明の可能な実施形態の非排他的な説明である。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、組織接触検出のための医療装置に配置された複数の電極における第1の電極についてのベースラインインピーダンス値を決定する方法は、第1の電極への駆動信号に反応して生成される第1の電極のインピーダンス値を測定することと、所定の時間インターバルで測定された各インピーダンス値に基づいて、第1の電極にベースラインインピーダンス値を割り当てることを含む。本方法はさらに、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定することと、信頼値が所定の閾値以上であるとき、第1の電極の接触状態を判定する際にベースラインインピーダンス値を利用することを含んでもよい。
【0054】
前項の方法は、任意選択で、追加的および/または代替的に、以下の特徴、ステップ、構成、および/または追加成分のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0055】
例えば、第1の電極にベースラインインピーダンス値を割り当てるステップは、所定の時間インターバルで測定された最小インピーダンス値を選択することを含んでもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、最小インピーダンス値が所定のインピーダンス閾値より大きく、所定のインピーダンス限界値未満である場合、最小インピーダンス値が、割り当てられたベースラインインピーダンス値になる。
【0057】
いくつかの実施形態において、インピーダンス値は、複数の電極における第1の電極と第2の電極との間に駆動信号を印加した結果生じる双極電極複合インピーダンス(BECI)値である。
【0058】
いくつかの実施形態では、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定するステップは、割り当てられたベースラインインピーダンス値を所定量より多く上回る測定されたインピーダンス値に基づいて信頼値を徐々に増加させることを含んでもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定するステップは、割り当てられたベースラインインピーダンス値の所定の許容範囲内にある測定されたインピーダンス値に基づいて、第1の電極の信頼値を徐々に増加させることを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定するステップは、測定されたインピーダンス値が、割り当てられたベースラインインピーダンス値の所定の許容範囲外にある場合、信頼値を減少させることを含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定するステップは、複数の電極のうちの、第1の電極とペアになっている第2の電極について収集されたインピーダンスデータに基づいて信頼値を徐々に増加させることをさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定するステップは、複数の電極における追加の電極ペアについて収集されたインピーダンスデータに基づいて、信頼値を徐々に増加させることをさらに含む。
【0063】
別の態様によれば、複数の電極における第1の電極についてのベースラインインピーダンス値の信頼性を評価する方法は、複数の電極のうちの、ペアを形成する第1の電極と第2の電極との間に駆動信号を印加することと、駆動信号に反応して生成された第1の電極についての双極電極複合インピーダンス(BECI)値を測定することを含む。本方法はさらに、第1の電極についてのベースラインBECI値であって、第1の所定の時間インターバルの間に測定された、所定の下限閾値より大きく所定の上限値未満である第1の最小BECI値であるベースラインBECI値を決定することと、第2の時間インターバルの間に測定されたBECI値がベースラインBECI値よりも所定量だけ大きいことに基づいて、組織接触を決定することを含んでもよい。本方法はさらに、ベースラインBECI値についての信頼状態を、第1の電極についての測定されたBECI値に少なくとも部分的に基づいて割り当てること、を含んでもよい。
【0064】
前項の方法は、任意選択で、追加的および/または代替的に、以下の特徴、ステップ、構成、および/または追加成分のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0065】
例えば、ベースラインBECI値についての信頼状態を割り当てるステップは、第2の所定の時間インターバルの間に第2の最小BECI値が測定され、第2の最小BECI値が所定の下限閾値より大きく、所定の上限値未満であり、第1の最小BECI値の所定の許容範囲内にあるとき、信頼状態を増加させること、および第2の最小BECI値が第1の最小BECI値の所定の許容範囲外にあるとき、信頼状態を減少させ、新たなベースラインBECI値を設定すること、をさらに含んでもよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、信頼状態を減少させ、新たなベースラインBECI値を設定することは、新たなベースライン値として第2の最小BECI値を利用することを含み、本方法は、組織接触を決定し、信頼状態を割り当てるステップを繰り返すことをさらに含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、ベースラインBECI値についての信頼状態を割り当てることは、第2の電極について測定されたBECI値にさらに基づく。
【0068】
いくつかの実施形態において、ベースラインBECI値についての信頼状態を割り当てることは、第2の電極が、第1の電極の第1の最小BECI値または第2の最小BECI値の所定の許容範囲内にある最小BECI値を有するとき、信頼状態を増加させることをさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、ベースラインBECI値についての信頼状態を割り当てることは、さらに、複数の電極における追加の電極ペアについて測定されたBECI値に基づく。
【0070】
いくつかの実施形態において、ベースラインBECI値についての信頼状態を割り当てることは、第1の電極の第1の最小BECI値または第2の最小BECI値の所定の許容範囲内にある平均ベースラインBECI値を有する追加の電極ペアごとに信頼状態を増加させることをさらに含む。
【0071】
別の態様によれば、複数の電極を有し、患者内に挿入するように構成された医療装置と共に使用するためのシステムは、信号発生器と、測定回路と、接触評価モジュールを含む。いくつかの実施形態では、信号発生器は複数の電極の各電極にわたって複数の駆動信号を印加するように構成され、測定回路は、駆動信号に対する複数の電極の応答を測定し、複数の電極の各電極についてのインピーダンス値を生成するように構成されている。いくつかの実施形態では、接触評価モジュールは、各電極のベースラインインピーダンス値を決定し、各電極のベースラインインピーダンス値の信頼状態を、特定の電極について測定されたインピーダンス値に少なくとも部分的に基づいて決定するように構成されている。
【0072】
前項のシステムは、任意選択で、追加的および/または代替的に、以下の特徴、ステップ、構成、および/または追加構成要素のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0073】
例えば、各電極についての決定された信頼状態は、特定の電極について測定されたインピーダンス値と、複数の電極内の他の電極について測定されたインピーダンス値とに基づいてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、接触評価モジュールは、信頼状態が所定の閾値以上であるとき、電極の接触状態を決定するために当該電極についてのベースラインインピーダンス値を利用してもよい。
【0075】
別の態様によれば、組織接触検出のための医療装置に配置された複数の電極のうち、第1についての電極のベースラインインピーダンス値を決定する方法は、第1の電極への駆動信号に反応して生成される第1の電極のインピーダンス値を測定することと、複数の電極のうちの他の電極の各々についてのインピーダンス値であって、他の電極の各々への駆動信号に反応して生成されたインピーダンス値を測定することを含む。本方法はさらに、所定の時間インターバルで測定された最小インピーダンス値に基づいて、第1の電極にベースラインインピーダンス値を割り当てることと、第1の電極について測定されたBECI値と、複数の電極のうちの他の電極の1つまたは複数について測定されたBECI値とに基づいて、ベースラインインピーダンス値に関連する信頼値を決定することを含んでもよい。本方法はさらに、信頼値が所定の閾値以上であるとき、第1の電極の接触状態を決定する際にベースラインインピーダンス値を利用することを含んでもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】