(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105193
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】構造疲労特性の特定
(51)【国際特許分類】
G01N 3/32 20060101AFI20240730BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20240730BHJP
【FI】
G01N3/32 C
G01N3/32 J
G01N3/32 M
G01M99/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024004882
(22)【出願日】2024-01-16
(31)【優先権主張番号】18/155,448
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シェファー, ジョセフ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャスタッソン, ブライアン ピー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構造の疲労特性を特定するための方法を提供する。
【解決手段】構造を負荷フレーム内に取り付けることを含む。構造は、亀裂サイズを有する亀裂を有する。方法は、複数のサイクルにわたり調整可能な刺激を構造に繰り返し加えることを含む。調整可能な刺激は、構造に加えられる調整可能な荷重又は調整可能な変位である。該方法は、複数のサイクルの開始時に亀裂サイズを記憶すること、各サイクルにおいて調整可能な刺激を受けた構造の応答を測定すること、各サイクルにおける応答に基づいて亀裂サイズを更新すること、及び各サイクルにおいて調整可能な刺激を更新することを更に含む。更新された調整可能な刺激は、亀裂サイズに基づいて歪みエネルギー解放率を略一定に維持する。方法は、各サイクルにおける応答に基づいて構造内の亀裂伝播の成長速度を計算し、成長速度をファイル内に記憶することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造(100)の疲労特性を特定するための方法(270)であって、
前記構造(100)を負荷フレーム(142)内に取り付けること(272)であって、前記構造(100)は亀裂サイズ(104)を有する亀裂(102)を有する、前記構造(100)を負荷フレーム(142)内に取り付けること(272)、
複数のサイクル(210)にわたり調整可能な刺激(120)を前記構造(100)に繰り返し加えること(278)であって、前記調整可能な刺激(120)は、前記構造(100)に加えられる調整可能な荷重(120a)又は調整可能な変位(120b)である、複数のサイクル(210)にわたり調整可能な刺激(120)を前記構造(100)に繰り返し加えること(278)、
前記複数のサイクル(210)の開始時に前記亀裂サイズ(104)を記憶すること(276)、
前記複数のサイクル(210)の各々において前記調整可能な刺激(120)を受けた前記構造(100)の応答(112)を測定すること(280)、
前記複数のサイクル(210)の各々における前記応答(112)に基づいて前記亀裂サイズ(104)を更新すること(282)、
前記複数のサイクル(210)の各々において前記調整可能な刺激(120)を更新すること(286)であって、更新された前記調整可能な刺激(120)は、前記亀裂サイズ(104)に基づいて歪みエネルギー解放率(118)を略一定に維持する、前記複数のサイクル(210)の各々において前記調整可能な刺激(120)を更新すること(286)、
前記複数のサイクル(210)の各々における前記応答(112)に基づいて、前記構造(100)内の亀裂伝播(116)の成長速度(114)を計算すること(290)、及び
前記成長速度(114)をファイル(170)内に記憶すること(294)を含む、方法(270)。
【請求項2】
複数の異なる歪みエネルギー解放率(118)において、前記調整可能な刺激(120)を加えること(278)、前記応答(112)を測定すること(280)、前記亀裂サイズ(104)を更新すること(282)、前記調整可能な刺激(120)を更新すること(286)、及び前記成長速度(114)を計算すること(290)、を繰り返すこと(296)を更に含む、請求項1に記載の方法(270)。
【請求項3】
前記複数の異なる歪みエネルギー解放率(118)における前記成長速度(114)に基づいて、前記構造(100)内の前記亀裂(102)のパリ法挙動(182)を計算すること(300)を更に含む、請求項2に記載の方法(270)。
【請求項4】
前記負荷フレーム(142)は、モードI試験(160a)、モードII試験(160b)、又は前記モードI試験(160a)と前記モードII試験(160b)の混合(160c)を実行するように動作可能である、請求項1に記載の方法(270)。
【請求項5】
前記調整可能な刺激(120)を更新すること(286)は、
前記亀裂(102)の前記亀裂サイズ(104)が増加するにつれて前記調整可能な刺激(120)の振幅(122)を下げること(288)を含む、請求項1に記載の方法(270)。
【請求項6】
前記亀裂伝播(116)の前記成長速度(114)を計算すること(290)は、
前記複数のサイクル(210)の関数としての前記亀裂サイズ(104)の曲線(206)の傾き(208)を計算すること(298)を含む、請求項5に記載の方法(270)。
【請求項7】
前記構造(100)内の前記亀裂サイズ(104)を更新すること(282)は、
コンプライアンス計算(176)に基づいて、解析技法(174)で前記亀裂サイズ(104)の新しい値(104c)を計算すること(284)を含む、請求項1に記載の方法(270)。
【請求項8】
前記解析技法(174)は、線形弾性破壊力学の技法(184)又は非線形破壊力学の技法(186)である、請求項7に記載の方法(270)。
【請求項9】
前記複数のサイクル(210)中に特定される前記亀裂サイズ(104)は、試験オペレータ(90)による前記亀裂サイズ(104)の手作業での測定(92)を含まないことによって特徴付けられる、請求項7に記載の方法(270)。
【請求項10】
負荷フレーム(142)とコンピュータ(142)とを備える、試験システム(140)であって、
前記負荷フレーム(142)は、
複数のサイクル(210)にわたり調整可能な刺激(120)を構造(100)に繰り返し加えることであって、前記構造(100)は亀裂サイズ(104)を有する亀裂(102)を有し、前記調整可能な刺激(120)は、前記構造(100)に加えられる調整可能な荷重(120a)又は調整可能な変位(120b)である、複数のサイクル(210)にわたり調整可能な刺激(120)を構造(100)に繰り返し加えること、及び
前記複数のサイクル(210)の各々において前記調整可能な刺激(120)を受けた前記構造(100)の応答(112)を測定すること、を実行するように動作可能であり、
前記コンピュータ(142)は、前記負荷フレーム(142)に結合され、
前記複数のサイクル(210)の開始時に前記亀裂サイズ(104)を記憶すること、
前記複数のサイクル(210)の各々における前記応答(112)に基づいて前記亀裂サイズ(104)を更新すること、
前記複数のサイクル(210)の各々において前記調整可能な刺激(120)を更新することであって、更新された前記調整可能な刺激(120)は、前記亀裂サイズ(104)に基づいて歪みエネルギー解放率(118)を略一定に維持する、前記複数のサイクル(210)の各々において前記調整可能な刺激(120)を更新すること、
前記複数のサイクル(210)の各々における前記応答(112)に基づいて、前記構造(100)内の亀裂伝播(116)の成長速度(114)を計算すること、及び
前記成長速度(114)をファイル(170)内に記憶すること、を実行するように動作可能である、試験システム(140)。
【請求項11】
前記負荷フレーム(142)及び前記コンピュータ(142)は、
複数の異なる歪みエネルギー解放率(118)において、前記調整可能な刺激(120)を加えること、前記応答(112)を測定すること、前記亀裂サイズ(104)を更新すること、前記調整可能な刺激(120)を更新すること、及び前記成長速度(114)を計算すること、を繰り返すように更に動作可能である、請求項10に記載の試験システム(140)。
【請求項12】
前記コンピュータ(142)は、
前記複数の異なる歪みエネルギー解放率(118)における前記成長速度(114)に基づいて、前記構造(100)内の前記亀裂(102)のパリ法挙動(182)を計算すること、を実行するように更に動作可能である、請求項11に記載の試験システム(140)。
【請求項13】
前記負荷フレーム(142)は、モードI試験(160a)、モードII試験(160b)、又は前記モードI試験(160a)と前記モードII試験(160b)の混合(160c)を実行するように更に動作可能である、請求項10に記載の試験システム(140)。
【請求項14】
前記調整可能な刺激(120)を更新することは、
前記亀裂(102)の前記亀裂サイズ(104)が増加するにつれて前記調整可能な刺激(120)の振幅(122)を下げることを含む、請求項10に記載の試験システム(140)。
【請求項15】
前記亀裂伝播(116)の前記成長速度(114)を計算することは、
前記複数のサイクル(210)の関数としての前記亀裂サイズ(104)の曲線(206)の傾き(208)を計算することを含む、請求項14に記載の試験システム(140)。
【請求項16】
前記構造(100)内の前記亀裂サイズ(104)を更新することは、
コンプライアンス計算(176)に基づいて、解析技法(174)で前記亀裂サイズ(104)の新しい値(104c)を計算することを含む、請求項10に記載の試験システム(140)。
【請求項17】
前記解析技法(174)は、線形弾性破壊力学の技法(184)又は非線形破壊力学の技法(186)である、請求項16に記載の試験システム(140)。
【請求項18】
前記複数のサイクル(210)中に特定される前記亀裂サイズ(104)は、試験オペレータ(90)による前記亀裂サイズ(104)の手作業での測定(92)を含まないことによって特徴付けられる、請求項16に記載の試験システム(140)。
【請求項19】
前記構造(100)は、航空機(320)の一部を形成する複合材構造(100a)である、請求項10に記載の試験システム(140)。
【請求項20】
複合材構造(100a)における疲労特性を特定するための方法(270)であって、
前記複合材構造(100a)を負荷フレーム(142)内に取り付けること(272)であって、前記複合材構造(100a)は、亀裂サイズ(104)を有する亀裂(102)を有する、前記複合材構造(100a)を負荷フレーム(142)内に取り付けること(272)、
前記亀裂サイズ(104)及び歪みエネルギー解放率(118)に基づいて、前記負荷フレーム(142)によって前記複合材構造(100a)にかけられる調整可能な刺激(120)を初期化すること(274)、
複数のサイクル(210)のうちの現在のサイクル(210a)において前記調整可能な刺激(120)を前記複合材構造(100a)に加えること(278)であって、前記調整可能な刺激(120)は、前記複合材構造(100a)に加えられる調整可能な荷重(120a)又は調整可能な変位(120b)である、複数のサイクル(210)のうちの現在のサイクル(210a)において前記調整可能な刺激(120)を前記複合材構造(100a)に加えること(278)、
前記現在のサイクル(210a)において前記複合材構造(100a)の応答(112)を測定すること(280)、
前記現在のサイクル(210a)において測定された前記応答(112)と前記現在のサイクル(210a)において使用された前記調整可能な刺激(120)とに基づいて、前記複数のサイクル(210)のうちの次のサイクル(210b)において使用される前記亀裂サイズ(104)を更新すること(282)、
前記次のサイクル(210b)において使用される前記調整可能な刺激(120)を更新すること(286)であって、前記次のサイクル(210b)における前記調整可能な刺激(120)は、前記次のサイクル(210b)において使用される前記亀裂サイズ(104)に基づいて前記歪みエネルギー解放率(118)を略一定に維持する、前記次のサイクル(210b)において使用される前記調整可能な刺激(120)を更新すること(286)、
前記複数のサイクル(210)にわたり複数の異なる値の前記調整可能な刺激(120)を加えること(292)、
前記複数のサイクル(210)の各々における前記応答(112)に基づいて、前記複合材構造(100a)内の亀裂伝播(116)の成長速度(114)を計算すること(290)、及び
前記成長速度(114)をファイル(170)内に記憶すること(294)を含む、方法(270)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、広くは、構造試験に関し、特に、構造疲労特性を特定することに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 複合材構造における設計のアプローチは、概して、層間領域内の疲労損傷(すなわち、プライ、接着界面、共接合界面、共硬化界面の間の損傷、及びそれらの組み合わせ)を考慮する。航空機の疲労損傷が周期的な荷重の下で始まったり大きくなったりしないことを検証するには、長時間の試験が必要である。歴史的に、耐空性の順守と証明は、代表的な損傷による物理的な試験を通じて、損傷がスペクトル荷重下で拡大しないことを実証することで達成される。このような物理的な試験には、通常、時間と費用がかかる。その結果、設計‐試験‐証明のビルディングブロック中に潜在的な故障モードを特定することは困難である。
【0003】
[0003] したがって、当業者は、構造疲労特性試験を単純化する分野において、研究開発の努力を続けている。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 構造の疲労特性を特定するための方法が、本明細書で提供される。該方法は、構造を負荷フレーム内に取り付けることを含む。該構造は、亀裂サイズを有する亀裂を有する。該方法は、複数のサイクルにわたり調整可能な刺激を構造に繰り返し加えることを含む。調整可能な刺激は、構造に加えられる調整可能な荷重又は調整可能な変位である。該方法は、複数のサイクルの開始時に亀裂サイズを記憶すること、複数のサイクルの各々において調整可能な刺激を受けた構造の応答を測定すること、複数のサイクルの各々における応答に基づいて亀裂サイズを更新すること、及び複数のサイクルの各々において調整可能な刺激を更新することを更に含む。更新された調整可能な刺激は、亀裂サイズに基づいて歪みエネルギー解放率を略一定に維持する。該方法は、複数のサイクルの各々における応答に基づいて、構造内の亀裂伝播の成長速度を計算すること、及び成長速度をファイル内に記憶することを含む。
【0005】
[0005] 1以上の実施形態では、該方法が、複数の異なる歪みエネルギー解放率において、調整可能な刺激を加えること、応答を測定すること、亀裂サイズを更新すること、調整可能な刺激を更新すること、及び成長速度を計算すること、を繰り返すことを含む。
【0006】
[0006] 1以上の実施形態では、該方法が、複数の異なる歪みエネルギー解放率における成長速度に基づいて、構造内の亀裂のパリ法挙動(Paris Law behavior)を計算することを含む。
【0007】
[0007] 該方法の1以上の実施形態では、負荷フレームが、モードI試験、モードII試験、又はモードI試験とモードII試験の混合を実行するように動作可能である。
【0008】
[0008] 該方法の1以上の実施形態では、調整可能な刺激を更新することが、亀裂の亀裂サイズが増加するにつれて調整可能な刺激の振幅を下げることを含む。
【0009】
[0009] 該方法の1以上の実施形態では、亀裂伝播の成長速度を計算することが、複数のサイクルの関数としての亀裂サイズの曲線の傾きを計算することを含む。
【0010】
[0010] 該方法の1以上の実施形態では、構造内の亀裂サイズを更新することが、コンプライアンス計算に基づいて、解析技法で亀裂サイズの新しい値を計算することを含む。
【0011】
[0011] 該方法の1以上の実施形態では、解析技法が、線形弾性破壊力学の技法又は非線形破壊力学の技法である。
【0012】
[0012] 該方法の1以上の実施形態では、複数のサイクル中に特定される亀裂サイズが、試験オペレータによる亀裂サイズの手作業での測定を含まないことによって特徴付けられる。
【0013】
[0013] 試験システムが本明細書で提供される。試験システムは、負荷フレーム及びコンピュータを含む。負荷フレームは、複数のサイクルにわたり調整可能な刺激を構造に繰り返し加えるように動作可能である。構造は亀裂サイズを有する亀裂を有し、調整可能な刺激は、構造に加えられる調整可能な荷重又は調整可能な変位である。負荷フレームは、複数のサイクルの各々において調整可能な刺激を受けた構造の応答を測定するように更に動作可能である。コンピュータは、負荷フレームに結合され、複数のサイクルの開始時に亀裂サイズを記憶すること、複数のサイクルの各々における応答に基づいて亀裂サイズを更新すること、及び複数のサイクルの各々において調整可能な刺激を更新すること、を実行するように動作可能である。更新された調整可能な刺激は、亀裂サイズに基づいて歪みエネルギー解放率を略一定に維持する。コンピュータは、複数のサイクルの各々における応答に基づいて、構造内の亀裂伝播の成長速度を計算すること、及び成長速度をファイル内に記憶すること、を実行するように更に動作可能である。
【0014】
[0014] 試験システムの1以上の実施形態では、負荷フレーム及びコンピュータが、複数の異なる歪みエネルギー解放率において、調整可能な刺激を加えること、応答を測定すること、亀裂サイズを更新すること、調整可能な刺激を更新すること、及び成長速度を計算すること、を繰り返すように更に動作可能である。
【0015】
[0015] 試験システムの1以上の実施形態では、コンピュータが、複数の異なる歪みエネルギー解放率における成長速度に基づいて、構造内の亀裂のパリ法挙動(Paris Law behavior)を計算するように更に動作可能である。
【0016】
[0016] 試験システムの1以上の実施形態では、負荷フレームが、モードI試験、モードII試験、又はモードI試験とモードII試験の混合を実行するように動作可能である。
【0017】
[0017] 試験システムの1以上の実施形態では、調整可能な刺激を更新することが、亀裂の亀裂サイズが増加するにつれて調整可能な刺激の振幅を下げることを含む。
【0018】
[0018] 試験システムの1以上の実施形態では、亀裂伝播の成長速度を計算することが、複数のサイクルの関数としての亀裂サイズの曲線の傾きを計算することを含む。
【0019】
[0019] 試験システムの1以上の実施形態では、構造内の亀裂サイズを更新することが、コンプライアンス計算に基づいて、解析技法で亀裂サイズの新しい値を計算することを含む。
【0020】
[0020] 試験システムの1以上の実施形態では、解析技法が、線形弾性破壊力学の技法又は非線形破壊力学の技法である。
【0021】
[0021] 試験システムの1以上の実施形態では、複数のサイクル中に特定される亀裂サイズが、試験オペレータによる亀裂サイズの手作業での測定を含まないことによって特徴付けられる。
【0022】
[0022] 試験システムの1以上の実施形態では、構造が航空機の一部を形成する複合材構造である。
【0023】
[0023] 構造の疲労特性を特定するための方法が、本明細書で提供される。該方法は、複合材構造を負荷フレーム内に取り付けることを含む。複合材構造は、亀裂サイズを有する亀裂を有する。該方法は、亀裂サイズ及び歪みエネルギー解放率に基づいて、負荷フレームによって複合材構造にかけられる調整可能な刺激を初期化すること、及び複数のサイクルのうちの現在のサイクルにおいて調整可能な刺激を複合材構造に加えることを含む。調整可能な刺激は、複合材構造に加えられる調整可能な荷重又は調整可能な変位である。該方法は、現在のサイクルにおいて複合材構造の応答を測定すること、現在のサイクルにおいて測定された応答と現在のサイクルにおいて使用された調整可能な刺激とに基づいて、複数のサイクルのうちの次のサイクルにおいて使用される亀裂サイズを更新すること、及び次のサイクルにおいて使用される調整可能な刺激を更新することを更に含む。次のサイクルにおける調整可能な刺激は、次のサイクルにおいて使用される亀裂サイズに基づいて歪みエネルギー解放率を略一定に維持する。該方法は、複数のサイクルにわたり複数の異なる値の調整可能な刺激を加えること、複数のサイクルの各々における応答に基づいて、複合材構造内の亀裂伝播の成長速度を計算すること、及び成長速度をファイル内に記憶することを含む。
【0024】
[0024] 本開示の上記の特徴及び利点、ならびに他の特徴及び利点は、本開示を実行するための最良のモードの以下の詳細な説明を、添付の図面と併せて考慮したときに、容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】[0025] 1以上の例示的な実施形態による試験下の構造の概略図である。
【
図2】[0026] 1以上の例示的な実施形態による試験システムの概略図である。
【
図3】[0027] 1以上の例示的な実施形態による試験システム内のコンピュータの概略図である。
【
図4】[0028] 1以上の例示的な実施形態によるサイクルの関数としての層間剥離長さのグラフである。
【
図5】[0029] 1以上の例示的な実施形態によるパリ法挙動のグラフである。
【
図6】[0030] 1以上の例示的な実施形態による構造の疲労特性を特定するための試験方法のフロー図である。
【
図7】[0031] 1以上の例示的な実施形態による構造の疲労特性を特定するための詳細な方法のフロー図である。
【
図8】[0032] 1以上の例示的な実施形態による航空機の構成要素の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0033] 本開示の複数の実施形態は、構造(例えば、複合材構造)の疲労特性を自動的に特定するための方法及び/又は試験システムを含む。フィードバックループを使用して、一定の歪みエネルギー解放率の荷重/変位をもたらす試験下での構造内の亀裂の亀裂先端の位置を自動的に計算する。自動化された荷重/変位除去プロセスによって、亀裂が成長するにつれて一定の歪みエネルギー解放率の荷重/変位が維持される。
【0027】
[0034] 大きな構造長さスケール(構成された構造)を通じて複合材構造クーポンからの層間疲労応答をシミュレートするために、構造解析は仮想亀裂閉鎖技法(VCCT)を使用してよい。仮想亀裂閉鎖技法は、線形弾性破壊力学(LEFM)の技法の数値的な一実施態様である。線形弾性破壊力学は、低速成長数学モデルを使用してモデル化される。その場合、層間剥離/ディスボンドが、各サイクルNについて有限な距離「a」だけ成長する。その結果は、パリ法亀裂伝播として知られ、グラフでは傾きda/dNとして表される。da/dN成長を支配する方程式は、歪みエネルギー解放率Gの関数として与えられるが、所与のR比(最大印加荷重/変位と最小印加荷重/変位との間の関係)に対して固定される。同様なアプローチが、エネルギーベースの凝集法(cohesive method)に用いられる。他の種類の疲労/繰り返し荷重は、非限定的に、一定振幅、ブロック振幅、及びランダムブロック振幅(複雑でないものから複雑なものまで)を含んでよい。
【0028】
[0035] パリ法の傾きを得るには、仮想閉鎖技法解析への入力となる特性を生成するために、多数のクーポンの試験を必要とする。複合材構造では、この特性が荷重の種類に応じてモーダルベースとなる。解析には、モードI(開放モード)及び/又はモードII(滑りモード)の亀裂成長速度を利用することができる。モードIについての特性を特定するために使用される試験は、二重片持ち梁(DCB)試験である。パリ法挙動(例えば、da/dN)は、亀裂成長の開始(例えば、第1の閾値)から急速な亀裂伝播(例えば、第2の閾値)までの歪みエネルギー解放率Gの範囲にわたり特定される。
【0029】
[0036] 二重片持ち梁試験出力データ(例えば、荷重‐変位)は、線形弾性破壊力学の数学モデルによって表される。線形弾性破壊力学を通じて、実験的な応答は、力、変位、及び亀裂の位置を関連付けるために、理想化されてよい。閉じた形態の解には、多くの形態が含まれる。例示的な閉じた形態の解は、数式1によって以下のように提供される。すなわち、
【0030】
【0031】
[0038] wは試験片の幅で、EはE11弾性率で、tは試験片の厚さで、hは試験片の半分の厚さである。パラメータw、E、t、及びhは、既知の特性である。パラメータα1、α2、及びα3は、定数である。例示的なやり方では、定数が、それぞれ、3.8、3.78、及び1.0であってよい。試験されているシステムの種類に基づいて、他の複数の値が使用されてもよい。
【0032】
[0039] 静的な試験を実施することにより、定数は、材料固有の応答を記述するために適宜固定されてよい。力と変位はコンプライアンスによって関連し、コンプライアンスは亀裂長さの関数であるため、亀裂長さは、閉じた形態の解を使用して試験中の負荷フレームから特定可能である。したがって、荷重/変位は、試験を通して一定の歪みエネルギー解放率Gを維持するように亀裂が成長するよう、自動的に調整される。閉じた形態の解は、較正されると、加えられる荷重、変位、目標歪みエネルギー解放率Gの値、及び亀裂の位置の間の関係の正確な記述を提供する。
【0033】
[0040]
図1を参照すると、1以上の例示的な実施形態による試験下の例示的な構造100の概略図が示されている。様々な実施形態では、構造100(又はクーポン)が、複合材料から形成された複合材構造100aであってよい。他の複数の実施形態では、構造100が、1以上の金属から形成されてよい。構造100は、第1の端部108と第2の端部110とを有する概して棒形状を有する。亀裂102は、第1の端部108において構造100内で形成される。
【0034】
[0041] 亀裂102は、亀裂サイズ104(又は亀裂長さ)を有してよい。亀裂先端106は、構造100の第1の端部108とは反対側の亀裂102の端として規定される。試験が開始する前に、亀裂サイズ104は、初期亀裂サイズ104a(又は初期亀裂長さ)と呼ばれてよい。試験が進むにつれて、亀裂サイズ104は、亀裂長さについての新しい値104cを有する更新された亀裂サイズ104bに成長する。
【0035】
[0042] 構造100の第2の端部110が負荷フレームに固定された状態で、構造100の第1の端部108に加えられた調整可能な刺激(例えば、調整可能な荷重又は調整可能な変位)は、構造100の応答112をもたらす。応答112は、概して、構造100の曲げである(例えば、図示されているように上下に曲がる)。調整可能な刺激120は、概して、振幅122を有する。曲げは、一定の歪みエネルギー解放率118に対して、成長速度114において亀裂102の亀裂伝播116をもたらす(例えば、図示されているように右から左へ)。
【0036】
[0043]
図2を参照すると、1以上の例示的な実施形態による試験システム140の例示的な一実施態様の概略図が示されている。試験システム140は、概して、負荷フレーム142及びコンピュータ150を含む。負荷フレーム142は、カメラ144と複数の(例えば、2つの)エンドブロック146a~146bとを含む。試験システム140は、亀裂102に起因して略一定の歪みエネルギー解放率118をもたらすために、構造100を自動的に運動させるよう動作可能である。試験システム140は、試験オペレータ90であって、調整可能な刺激の手作業での調整を通じて試験を制御し、及び/又は、亀裂サイズ104の手作業での測定92を行う、試験オペレータ90の存在がない(又はそれを欠いている)ことによって特徴付けられてよい。
【0037】
[0044] コマンド信号152が、コンピュータ150によって生成され、負荷フレーム142に提示される。コマンド信号152は、負荷フレーム142が構造100に加える調整可能な刺激120を制御する。様々な実施形態では、調整可能な刺激120が、調整可能な荷重120aであってよい。他の複数の実施形態では、調整可能な刺激120が、調整可能な変位120bであってよい。コマンド信号152は、概して、調整可能な刺激120の振幅122についての情報を伝える。カメラ144が、コンピュータ150によって受け取られる測定信号154を生成する。測定信号154は、調整可能な刺激120に対する構造100の応答112を伝える。
【0038】
[0045] 負荷フレーム142は、機器を備えた可変負荷フレームを実装する。負荷フレーム142は、複数のサイクルにわたり調整可能な刺激120を構造100に繰り返し加え、各サイクルにおいて調整可能な刺激120を受けた構造100の応答112を測定するように動作可能である。調整可能な刺激120は、コマンド信号152を介してコンピュータ150によって制御される。調整可能な刺激120に対する構造100の測定された応答112は、測定信号154として負荷フレーム142からコンピュータ150に提示される。
【0039】
[0046] カメラ144は、光学カメラを実装する。カメラ144は、調整可能な刺激120に対する構造100の応答112を測定するように動作可能である。測定された応答112は、測定信号154としてコンピュータ150に送信される。
【0040】
[0047] エンドブロック146a~146bは、負荷フレーム142と構造100との間の一時的な接続を実施する。エンドブロック146a~146bは、亀裂102の両側で構造100の第1の端部108(近似的に)において構造100に固定されている。エンドブロック146a~146bは、調整可能な刺激120を負荷フレーム142から構造100に伝達して、亀裂102を拡大させる。
【0041】
[0048] コンピュータ150は、1以上のデータ処理コンピュータを実装する。コンピュータ150は、負荷フレーム142とカメラ144とに接続されている。複数のコンピュータ150を有する複数の実施形態では、個々のコンピュータ150が、データ、メモリスペース、及び処理リソースを共有するように共に結合される。コンピュータ150は、構造100を試験するために使用される構成パラメータを記憶し、負荷フレーム142を制御するために使用されるソフトウェアを実行し、カメラ144から受け取られた情報を解析するソフトウェアを実行するように動作可能であってよい。カメラ144から受け取られた測定値が、亀裂102の成長速度114を特定するために処理される。成長速度114についてのデータが、ファイル内に記憶される。成長速度114は、概して、1以上の解析技法による解析用に適している。
【0042】
[0049] 様々な実施形態では、コンピュータ150が、構造100で様々な試験のうちの1以上を実行するように、ソフトウェアによって構成されてよい。試験は、非限定的に、二重片持ち梁試験と、モードI、モードIIにおける破壊靭性試験(例えば、端部ノッチ曲げ/縁部ノッチ曲げ試験)と、混合されたモードI/モードII試験の様々な組み合わせとを含んでよい。特定の用途の設計基準を満たすために、他の複数の試験が実施されてよい。幾つかの実施形態では、コンピュータ150が、構造100の疲労特性を特定するために、測定データに対して様々な解析技法のうちの1以上を実行するよう、ソフトウェアによって構成されてよい。解析は、非限定的に、解析技法、コンプライアンス計算、仮想亀裂閉鎖技法、材料挙動解析(例えば、亀裂成長の閉じた形態の解)、パリ法挙動、線形弾性破壊力学の技法、及び非線形破壊力学の技法を含んでよい。特定の用途の設計基準を満たすために、他の解析技法が実施されてよい。
【0043】
[0050]
図3を参照すると、1以上の例示的な実施形態によるコンピュータ150の例示的な一実施態様の概略図が示されている。コンピュータ150は、1以上のプロセッサ156(1つが図示されている)及び1以上のメモリデバイス158(1つが図示されている)を含んでよい。プロセッサ156は、コマンド信号152を生成し、測定信号154を受け取ってよい。
【0044】
[0051] プロセッサ156は、コンピュータ150内に1以上のプロセッサを実装する。プロセッサ156は、コマンド及びデータを交換するために、メモリデバイス158と通信する。プロセッサ156は、コマンド信号152を介して負荷フレーム142を制御するために使用されるソフトウェアツールを実行し、測定信号154としてカメラ144から受け取られた測定されたデータを解析するように動作可能である。
【0045】
[0052] メモリデバイス158は、プロセッサ156と通信する。メモリデバイス158は、非一過性のストレージ媒体及び一過性のストレージ媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、磁気ハードドライブ、ソリッドステートドライブなど)を実装してよい。非一過性のストレージ媒体は、試験を実行し、測定されたデータを解析するために、プロセッサ156によって実行される1以上の指示命令(又はソフトウェアプログラム)を保持してよい。一過性のストレージ媒体は、亀裂102(
図1)の計算された成長速度データ114を記憶する少なくともファイル170を保持してよい。ソフトウェアプログラムは、モードI試験160a、モードII試験160b、モードI試験とモードII試験の混合160c、二重片持ち梁試験162、解析技法174、コンプライアンス計算176、仮想亀裂閉鎖技法(VCCT)178、並びに、パリ法挙動182、線形弾性破壊力学(LEFM)の技法184、及び非線形破壊力学(NLFM)の技法186などの、亀裂成長の閉じた形態の解に基づく材料挙動180を含んでよい。特定の用途の設計基準を満たすために、他のソフトウェアプログラムが実施されてよい。例えば、他のデータ解析技法は、凝集モデルなどのエネルギーに基づく技法、及び、エネルギーに基づく技法の亀裂帯/引張分離の実施態様であってよい。
【0046】
[0053] 二重片持ち梁試験は、単方向複合材のモードIの破壊靭性を測定するための試験方法である。モードIIの靭性では、同様な複合材構造が、使用され、3点曲げ構成において荷重を加えられる。
【0047】
[0054] コンプライアンスは、調整可能な刺激120が加えられたときに構造100の形状を変化させる能力を反映する。システムのコンプライアンスは、システムの圧力における単位変化に対して生じる体積の変化として規定される。言い換えると、コンプライアンスは、弾性構造が伸長する容易さのことである。特に、コンプライアンスは、構造100の弾性抵抗の測定値である。閉じた形態の解は、コンプライアンス計算に基づき、解かれている未知のパラメータは、亀裂サイズ104である。
【0048】
[0055]
図4を参照すると、1以上の例示的な実施形態によるサイクルの関数としての例示的な層間剥離長さのグラフ200が示されている。グラフ200は、X軸202とY軸204を含む。X軸202は、構造100が調整可能な刺激120を受けたサイクル210の数(N)を示している。Y軸204は、層間離長さ(a)(例えば、亀裂長さ)を示している。
【0049】
[0056] 曲線206は、一定の歪みエネルギー解放率118でのサイクル210の数の関数としての層間離長さを表している。理想的には、曲線206の傾き208が一定であり得る。傾き208は、特定の歪みエネルギー解放率118における構造100のda/dN又はパリ法挙動についての単一のポイントを規定する。複数の歪みエネルギー解放率118についての複数のda/dNのポイントは、複合材料100aの層間疲労特性を特徴付ける。自動化された測定のクリーンな性質により、da/dN挙動は、幾つかの既存の技法で使用される数百から数千のサイクルよりも少ないサイクルで特定されてよい。
【0050】
[0057]
図5を参照すると、1以上の例示的な実施形態によるパリ法挙動の例示的な一実施態様のグラフ220が示されている。グラフ220は、X軸222とY軸224を含む。X軸222は、キロジュール/メートル
2単位におけるの亀裂伝播の速度(G
max)を示している。Y軸224は、ミリメートル/サイクルの単位における構造100のda/dN挙動を示している。
【0051】
[0058] 曲線226は、複数の歪みエネルギー解放率118における構造100から測定された例示的な一組のda/dNのポイント(
図4参照)を示している。da/dN挙動は、サイクル210の数に略反比例する(例えば、da/dN~1/N)。第1の閾値228よりも下方では、亀裂102(
図1)が概して成長しない。第2の閾値230の上方では、亀裂102が指数関数的な増加速度で伝播する。第1の閾値228と第2の閾値230との間では、亀裂102が概して一定の速度で伝播する。一定の速度は、数式2によって以下のように表され得る。すなわち、
【0052】
[0059] da/dN=C(Gmax)m 数式(2)
【0053】
[0060] ここで、Cとmは、構造材料の特性である。
【0054】
[0061]
図6を参照すると、1以上の例示的な実施形態による構造の疲労特性を特定するための例示的な試験方法240のフロー図が示されている。該試験方法(又はプロセス)240は、構造100に対して試験システム140によって実行されてよい。図示されているように、試験方法240は、概して、ステップ242から256を含む。ステップのシーケンスは、代表的な一実施例として図示されている。特定の用途の基準を満たすために、他のステップ順序が実施されてよい。
【0055】
[0062]
図6及び
図1を参照すると、方法240は、目標シミュレーションを設定するために、閉じた形態の解を使用することによって開始する。ステップ242では、関心対象のサイクルについての初期時刻における歪みエネルギー解放率118の一定の値G
[t=0]と初期亀裂サイズ104a(a
[t=0])とを計算するために、シミュレーションが使用される。ステップ244では、調整可能な刺激120(P
[t=0])が、初期時刻において計算される。各サイクル210(dt)では、調整可能な刺激120(P)が、ステップ246において規定される。ステップ248では、応答112(例えば、変位D
[t])が、現在のサイクル210aにおいて負荷フレーム142から測定される。ステップ250では、閉じた形態の解を使用して、変位D
[t]及び刺激P
[t]から更新された亀裂サイズ104b(a
[t+dt])を計算する。ステップ252では、試験中に亀裂長さa
[t+dt]においてG値が一定である(例えば、G
[t+dt]=G
[t=0])であることを確実にするように、次のサイクル210bにおける更新された刺激P
[t+dt]が、閉じた形態の解について解かれる。したがって、試験は、手作業の代わりに自動化されてよい。ステップ254では、次のサイクル210bが実行されてよいかどうかを判定するための確認が行われる。より多いサイクル210が適切である場合、方法240は、別のサイクル210のためにステップ246に戻る。そうでない場合、試験はステップ256で終了する。
【0056】
[0063] 亀裂102が成長するにつれて、調整可能な刺激120は、目標歪みエネルギー解放率値Gに従って低減される(例えば、下げられる)。様々な実施形態では、その後、試験データが、サイクル応答に対する亀裂サイズ104を特定するために使用される。サイクル応答に対する亀裂サイズ104から、曲線の傾きは一定の値Gにおけるda/dNとなる。個々のデータポイントが、各目標歪みエネルギー解放率118から抽出され、プロットされて、da/dN曲線(例えば、
図5の曲線226)を形成する。曲線226の傾きは、パリ法挙動182のための入力データとして仮想亀裂閉鎖技法178に入力される特性である。コンピュータ制御は、試験オペレータ90(
図2)に代わって、亀裂サイズ104を測定する。このアプローチはまた、データポイントのばらつきを低減させ、したがって、より桁数が少ない、試験データポイント当たりの構造100を使用して、パリ法パラメータ用に改善された適合を提供する。
【0057】
[0064]
図7を参照すると、1以上の例示的な実施形態による構造の疲労特性を特定するための例示的で詳細な方法270のフロー図が示されている。方法(又はプロセス)270は、構造100に対して試験システム140によって実行されてよい。図示されているように、試験方法270は、概して、ステップ272から300を含む。ステップのシーケンスは、代表的な一実施例として図示されている。特定の用途の基準を満たすために、他のステップ順序が実施されてよい。
【0058】
[0065]
図1、
図3、及び
図7を参照すると、ステップ272では、構造100が、負荷フレーム142内に取り付けられる。ステップ274(方法240のステップ242と同じ)では、コンピュータ150が、亀裂サイズ104と歪みエネルギー解放率118とに基づいて、負荷フレーム142によって構造100にかけられる調整可能な刺激120を初期化する。ステップ276では、初期亀裂サイズ104aが、サイクル210の開始時に、メモリデバイス158内に記憶される。
【0059】
[0066] ステップ278では、調整可能な刺激120が、初期サイクル210において構造100に加えられ、複数のサイクル210にわたり繰り返し加えられる。ステップ280では、各サイクル210中、構造100の応答112が、カメラ144によって測定され、その測定データがコンピュータ150に提示される。
【0060】
[0067] ステップ282では、コンピュータ150が、現在のサイクル210aにおいて測定された応答112と現在のサイクル210aにおいて使用された調整可能な刺激120とに基づいて、次のサイクル210bにおいて使用される亀裂サイズ104bを更新する。亀裂サイズ104bを更新することは、概して、ステップ284において、コンプライアンス計算176に基づいて、解析技法174を用いて亀裂サイズ104bの新しい値104cを計算することを含む。
【0061】
[0068] ステップ286では、コンピュータ150が、次のサイクル210bにおいて使用されるべき調整可能な刺激120を更新する。更新された調整可能な刺激120は、次のサイクル210bにおいて予期される更新された亀裂サイズ104bに基づいて、歪みエネルギー解放率118を略一定に維持する。調整可能な刺激120を更新することは、ステップ288において、亀裂102の亀裂サイズ104が増加するにつれて、調整可能な刺激120の振幅122を下げることであってよい。様々な実施形態では、調整可能な刺激120が、亀裂サイズ104が増加するにつれて時々手作業で調整されてよい。コンピュータ150は、各サイクル210における応答112に基づいて、構造100内の亀裂伝播116の成長速度114を計算する。ステップ292では、調整可能な刺激120の種々の値が、後続のサイクル210において加えられて、歪みエネルギー解放率118を略一定に維持する。
【0062】
[0069] ステップ294では、コンピュータ150が、成長速度114をファイル170内に記憶する。構造100に対して調整可能な刺激120を加えること、応答112を測定すること、亀裂サイズ104bを更新すること、調整可能な刺激120を更新すること、及び成長速度114を計算することは、ステップ296において、複数の異なる歪みエネルギー解放率において繰り返される。
【0063】
[0070] パリ法解析では、ステップ298において、da/dN曲線の傾きが、サイクル210の関数として計算される。ステップ300では、構造100内の亀裂102のパリ法挙動が、様々な異なる歪みエネルギー解放率118における成長速度114に基づいて特定される。特定の用途の設計基準を満たすために、他の解析技法及び後続の挙動特定が実施されてよい。
【0064】
[0071]
図8を参照すると、1以上の例示的な実施形態による航空機320の例示的な構成要素の概略図が示されている。航空機320は、1以上の構造100及び/又は1以上の複合材構造100aを含んでよい。航空機320は、複数のシステム324を有する機体322と内装326とを含む。複数のシステム324の例は、推進システム328、電気システム330、液圧システム332、及び環境システム334のうちの1以上を含む。様々な数の他のシステムが含まれてもよい。航空宇宙産業の例を示したが、本開示の原理は、自動車産業などの他の産業に適用されてもよい。
【0065】
[0072] 試験システム140及び関連方法は、亀裂先端の位置を自動的に計算するフィードバックループを含み、一定の歪みエネルギー解放率の荷重をもたらす。この解決策は、一定のGの刺激(例えば、荷重又は変位)を提供する。
この解決策は、亀裂が進行したときに、歪みエネルギー解放率が変化しないことを確実にする。一定の歪みエネルギー解放率は、所与のアプローチにda/dNの改善された測定値をもたらす。各サイクルについて亀裂成長を測定するために、試験オペレータは必要とされない。測定値のクリーンな性質のため、da/dNを生成するための試験のサイクル数は大幅に抑えられる可能性がある。サイクルの数を減らすことで、時間と予算を節約し、解析作業のための迅速な意思決定が可能になる。単一の試験片を使用して、da/dN曲線の複数のデータポイントを生成できるので、一定なG曲線を開発するために、より少ない数の試験片が消費される。更に、この解決策は、da/dN曲線に関連するばらつきを低減させ、エンジニアは測定される特性に確信を持つことができる。この解決策は、層間試験のための他の試験方法(すなわち、モードIIの応答、及び混合されたモードI/モードIIの応答)にも適用可能であってよい。様々な実施形態では、試験システム140及び関連方法を使用して、層間(例えば、プライ)と層内(例えば、積層)の両方の定数Gの値を特定することができる(同様なアプローチを使用して)。基礎となる理論が、異なる場合について修正されるかもしれないが、破壊力学と試験アプローチとは同様であり得る。
【0066】
[0073] 本開示は、多くの異なる形態にある実施形態を受け入れる余地がある。本開示の代表的な複数の実施形態が、図面で示され、本明細書で説明される。これらの実施形態は、本開示の原理の例示として提供され、本開示の態様の範囲を限定しないことを理解されたい。その程度において、例えば、要約、背景、概要、及び詳細な説明のセクションで説明されているが、特許請求の範囲内で明示的に説明されていない実施例及び限定は、単一で又は集合的に、言外の意味で、推論によって、又はそれ以外の方法で、特許請求の範囲の中に組み込まれるべきではない。
【0067】
[0074] この詳細な説明の目的では、特に示されていない場合、単一形は複数形を含み、その逆もその通りである。「及び」と「又は」という用語は、接続的であるとともに離接的でもある。「任意の」と「全ての」という用語は、両方とも、「任意の且つ全ての」を意味し、「含む」、「包含する」、「備える」、「有する」などの用語は、各々、「非限定的に含む」ことを意味する。更に、「約」、「ほとんど」、「実質的に」、「近似的に」、及び「概して」などの、近似的な単語は、本明細書で、「において、近くで、若しくは近くにおいて」又は「その0~5%の範囲内」又は「許容可能な製造誤差の範囲内」或いは他のそれらの論理的な組み合わせの意味で使用されてよい。図面を参照すると、同様な数値が同様な構成要素を指す。
【0068】
[0075] 詳細な説明及び図面又は図は、本開示をサポートし説明するが、本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定される。本開示を実行するためのベストモード及び他の実施形態のうちの幾つかが詳細に説明されたが、添付の特許請求の範囲内で規定される本開示を実施するための様々な代替的な設計及び実施形態が存在する。更に、図面内で示された実施形態又は本説明内で述べられた様々な実施形態の特徴は、必ずしも互いに無関係な実施形態として理解される必要はない。むしろ、一実施形態の複数の実施例のうちの1つにおいて説明された各特徴は、他の実施形態からの他の所望の特徴のうちの1以上と組み合わされてよく、言葉において又は図面を参照することによって説明されていない他の実施形態をもたらすことが可能である。したがって、そのような他の実施形態が、添付の特許請求の範囲の枠組内に含まれる。
【外国語明細書】