(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105195
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】車両の電気駆動装置の冷却システム
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20240730BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240730BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H02K9/19
F16H57/04 G
H05K7/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024005408
(22)【出願日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】202310074734.3
(32)【優先日】2023-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522447473
【氏名又は名称】ヴァレオ、イーオートモーティブ、ジャーマニー、ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】VALEO EAUTOMOTIVE GERMANY GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】イェーチン、チン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、ワンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】スン、ヤーウェイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷却液の位置を正確かつ確実に判断して冷却液の吸引を実現し、吸気(空気を吸引すること)の可能性を低減できる冷却システムを提供する。
【解決手段】車両の電気駆動装置200の冷却システム100であって、電気駆動装置が、ハウジング210と、ハウジング内の第1の空間V1に収容されたモータ220と、ハウジング内の第2の空間V2に収容された減速機230とを備え、冷却システムが、第1の空間および第2の空間にそれぞれ接続された第1の吸引ポート310および第2の吸引ポート320を有する冷却ポンプ300であって、第1の吸引ポートまたは第2の吸引ポートから冷却液を択一的に吸引するように動作可能に構成された冷却ポンプと、冷却ポンプの出口に接続され、第1の吸引ポートまたは第2の吸引ポートから吸引された冷却液を受ける冷却器400とを備える、ことを特徴とする冷却システムに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電気駆動装置の冷却システムであって、前記電気駆動装置が、ハウジングと、前記ハウジング内の第1の空間に収容されたモータと、前記ハウジング内の第2の空間に収容された減速機とを備え、
前記冷却システムが、
前記第1の空間および前記第2の空間にそれぞれ接続された第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートを有する冷却ポンプであって、前記第1の吸引ポートまたは前記第2の吸引ポートから冷却液を択一的に吸引するように動作可能に構成された冷却ポンプと、
前記冷却ポンプの出口に接続され、前記第1の吸引ポートまたは前記第2の吸引ポートから吸引された前記冷却液を受ける冷却器と
を備える、ことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
前記第1の吸引ポートおよび前記第2の吸引ポートの一方が吸気状態にあるとき、前記冷却ポンプが、前記第1の吸引ポートおよび前記第2の吸引ポートの前記一方からの前記冷却液の吸引を、前記第1の吸引ポートおよび前記第2の吸引ポートの他方からの前記冷却液の吸引に切り替えるように動作される、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記切り替えが、前記冷却ポンプの回転方向を変更することを含む、請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じたとき、または車両状態に所定の変化が生じたときに、前記第1の吸引ポートおよび前記第2の吸引ポートの前記一方が前記吸気状態にあると判定される、請求項2に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じたとき、および車両状態に所定の変化が生じたときに、前記第1の吸引ポートおよび前記第2の吸引ポートの前記一方が前記吸気状態にあると判定される、請求項2に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記冷却ポンプの前記出力信号に前記所定の変化が生じることが、前記冷却ポンプの前記出力信号が予め設定された出力閾値よりも低いことを含む、請求項4または5に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記冷却ポンプの前記出力信号が、前記冷却ポンプの出力電流信号または出力電圧信号、および前記冷却ポンプの出力トルク信号の少なくとも1つを含む、請求項4または5に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記車両状態に前記所定の変化が生じることが、第1の方向における前記車両の加速度値が、所定の時間内に予め設定された第1の加速度閾値を超えることを含み、前記第1の方向は、前記減速機に対する前記モータの配置方向である、請求項4または5に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記車両状態に前記所定の変化が生じることが、第1の方向に沿った、前記車体構造の高低差が、予め設定された第1の高低差閾値よりも大きいことを含み、前記第1の方向は、前記減速機に対する前記モータの配置方向である、請求項4または5に記載の冷却システム。
【請求項10】
前記第1の吸引ポートおよび前記第2の吸引ポートが、第2の方向に沿って異なる位置に配置され、前記車両状態に前記所定の変化が生じることが、前記第2の方向における前記車両の加速度の値が、所定の時間内に予め設定された第2の加速度閾値を超えることを含み、前記第2の方向は、前記減速機に対する前記モータの配置方向に対して垂直である、請求項4または5に記載の冷却システム。
【請求項11】
前記第2の方向における前記車両の加速度の値が、所定の時間内に予め設定された第2の加速度閾値を超えることが、
前記第2の方向の第1の副方向における前記車両の加速度の値が、所定の時間内に対応する前記予め設定された第2の加速度閾値を超えることを含み、前記第2の方向の前記第1の副方向は、前記第2の方向における前記第1の吸引ポートから前記第2の吸引ポートへの副方向を指し;または
前記第2の方向の第2の副方向における前記車両の加速度の値が、所定の時間内に対応する前記予め設定された第2の加速度閾値を超えることを含み、前記第2の方向の前記第2の副方向は、前記第2の方向における前記第2の吸引ポートから前記第1の吸引ポートへの副方向を指す、
請求項10に記載の冷却システム。
【請求項12】
前記第1の吸引ポートおよび前記第2の吸引ポートが、第2の方向に沿って異なる位置に配置され、前記車両状態の前記所定の変化が、前記第2の方向に沿った前記車体構造の高低差が、予め設定された第2の高低差閾値よりも大きいことを含み、前記第2の方向は、前記減速機に対する前記モータの配置方向に対して垂直である、請求項4または5に記載の冷却システム。
【請求項13】
前記第2の方向に沿った前記車体構造の高低差が、予め設定された第2の高低差閾値よりも大きいことが、
前記第2の方向の第1の副方向に沿った前記車体構造の高低差が、対応する前記第2の予め設定された高低差閾値よりも大きいことを含み、前記第2の方向の前記第1の副方向は、前記第2の方向における前記第1の吸引ポートから前記第2の吸引ポートへの副方向を指し;または
前記第2の方向の第2の副方向に沿った前記車体構造の高低差が、対応する前記第2の予め設定された高低差閾値よりも大きいことを含み、前記第2の方向の前記第2の副方向は、前記第2の方向における前記第2の吸引ポートから前記第1の吸引ポートへの副方向を指す、
請求項12に記載の冷却システム。
【請求項14】
前記冷却システムが、前記第1の空間に対応する第1のフィルタと、前記第2の空間に対応する第2のフィルタとをさらに備え、
前記第1のフィルタのサイズが、前記第2のフィルタのサイズ以下である、
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項15】
前記冷却システムが、第3のフィルタをさらに備える、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項16】
請求項1~15に記載の冷却システムを備える、電気駆動装置。
【請求項17】
請求項16に記載の電気駆動装置を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気駆動装置の分野に関し、特に車両の電気駆動装置の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
民間および商業分野における電気駆動装置の広範な使用に伴い、電気駆動装置の冷却は、より厳しい要件に直面している。
【0003】
現在、車両の電気駆動装置の冷却において、例えば、モータと減速機とが共同で形成された電気駆動装置(モータおよび減速機は電気駆動装置のハウジング内に配置されている)を冷却する場合、冷却ポンプには、一般に、減速機側から冷却液を吸引し、次いで、冷却液を冷却する必要がある構成要素、例えばモータに搬送するためのただ1つの吸引ポートが設けられ、冷却液は重力の作用下で最終的に減速機に戻る。しかしながら、傾斜などで車両が傾いた場合、減速機側の吸引ポートでは冷却液を吸引することができず、同時に、モータの非駆動端(すなわち、減速機に接続されていない端部)に多量の冷却液が溜まってしまうため、冷却ポンプの吸引ポートから空気が吸引され、冷却システムに多量の空気が入り、冷却システムにおける熱交換効率が大幅に低下する。
【0004】
このため、電気駆動装置における冷却液の効果的な吸引を達成することを前提条件として、冷却液の位置を正確かつ確実に判断して冷却液の吸引を実現し、吸気(空気を吸引すること)の可能性を低減できる冷却システム、例えば低容積で製造コストの低い冷却システムおよび冷却ポンプが求められている。
【発明の概要】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明は、車両の電気駆動装置の冷却システムを提供する。本発明で提供される冷却システムを使用すると、電気駆動装置において冷却液の効果的な吸引を達成することに基づいて、冷却液の位置を正確かつ確実に判断し、冷却液の吸引を実現して、吸気(空気を吸引すること)の可能性を低減することが可能であり、冷却システムおよび冷却ポンプは、例えば、低容積で製造コストが低い。
【0006】
本発明の一態様によれば、車両の電気駆動装置の冷却システムであって、電気駆動装置が、ハウジングと、ハウジング内の第1の空間に収容されたモータと、ハウジング内の第2の空間に収容された減速機とを備え、冷却システムが、第1の空間および第2の空間にそれぞれ接続された第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートを有する冷却ポンプであって、第1の吸引ポートまたは第2の吸引ポートから冷却液を択一的に吸引するように動作可能に構成された冷却ポンプと、冷却ポンプの出口に接続され、第1の吸引ポートまたは第2の吸引ポートから吸引された冷却液を受ける冷却器とを備える、ことを特徴とする冷却システムが提案される。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの一方が吸気状態にあるとき、冷却ポンプは、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの前記一方からの冷却液吸引を、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの他方からの冷却液吸引に切り替えるように動作される。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記切り替えは、冷却ポンプの回転方向を変更することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じたとき、または車両状態に所定の変化が生じたときに、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの前記一方が吸気状態にあると判定される。
いくつかの実施形態では、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じたとき、および車両状態に所定の変化が生じたときに、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの前記一方が吸気状態にあると判定される。
【0010】
いくつかの実施形態では、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じることは、冷却ポンプの出力信号が予め設定された出力閾値よりも低いことを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、冷却ポンプの出力信号は、冷却ポンプの出力電流信号または出力電圧信号、および冷却ポンプの出力トルク信号の少なくとも1つを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、車両状態に所定の変化が生じることは、第1の方向における車両の加速度の値が、所定の時間内に予め設定された第1の加速度閾値を超えることを含み、第1の方向は、減速機に対するモータの配置方向である。
【0013】
いくつかの実施形態では、車両状態に所定の変化が生じることは、第1の方向における車両の胴体構造の高低差が、予め設定された第1の高低差閾値よりも大きいことを含み、第1の方向は、減速機に対するモータの配置方向である。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートは、第2の方向の異なる位置に配置され、車両状態に所定の変化が生じることは、第2の方向における車両の加速度の値が、所定の時限内に予め設定された第2の加速度閾値を超えることを含み、第2の方向は、減速機に対するモータの配置方向に垂直である。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2の方向における車両の加速度の値が、所定の時限内に予め設定された第2の加速度閾値を超えることは、第2の方向の第1の副方向における車両の加速度の値が、所定の時限内に対応する予め設定された第2の加速度閾値を超えることを含み、第2の方向の第1の副方向は、第2の方向内の第1の吸引ポートから第2の吸引ポートに向かう副方向であり;または、第2の方向の第2の副方向における車両の加速度の値が、所定の時限内に対応する予め設定された第2の加速度閾値を超えることを含み、第2の方向の第2の副方向は、第2の方向内の第2の吸引ポートから第1の吸引ポートに向かう副方向である。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートは、第2の方向の異なる位置に配置され、車両状態に所定の変化が生じることは、第2の方向における車両の胴体構造の高低差が、予め設定された第2の高低差閾値よりも大きいことを含み、第2の方向は、減速機に対するモータの配置方向に垂直である。
【0017】
いくつかの実施形態では、第2の方向における車両の胴体構造の高低差が、予め設定された第2の高低差閾値よりも大きいことは、車両の胴体構造が第2の方向の第1の副方向に有する高低差が、対応する第2の予め設定された高低差閾値よりも大きいことを意味し、第2の方向の第1の副方向は、第2の方向における第1の吸引ポートから第2の吸引ポートに向かう副方向であり;または、車両の胴体構造が第2の方向の第2の副方向に有する高低差が、対応する第2の予め設定された高低差閾値よりも大きいことを意味し、第2の方向の第2の副方向は、第2の方向における第2の吸引ポートから第1の吸引ポートに向かう副方向である。
【0018】
いくつかの実施形態では、冷却システムは、第1の空間に対応する第1のフィルタと、第2の空間に対応する第2のフィルタとをさらに備え、第1のフィルタのサイズは、第2のフィルタのサイズ以下である。
【0019】
いくつかの実施形態では、冷却システムは、第3のフィルタをさらに備える。
【0020】
本発明の実施形態の技術的解決策をより明確に説明するために、実施形態を説明する際に使用される図面を以下に簡単に説明する。明らかに、以下に説明する図面は、本発明のいくつかの実施形態のみを示しており、当業者は、発明の努力なしにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。以下の図面は、実際の寸法に即して精緻に描かれたものではなく、本発明の内容を示すことに主眼を置いたものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1のシナリオにおける本発明の一実施形態による電気駆動装置の冷却システム100の例示的な図を示す。
【
図2】第2のシナリオにおける本発明の一実施形態による電気駆動装置の冷却システム100の例示的な図を示す。
【
図3A】本開示の一実施形態による第1の状態の冷却ポンプの概略図を示す。
【
図3B】本開示の一実施形態による第2の状態の冷却ポンプの概略図を示す。
【
図4】第1のフィルタ510および第2のフィルタ520を示す、本開示の一実施形態による冷却システムの概略図を示す。
【
図5】第3のフィルタ530を示す、本開示の一実施形態による冷却システムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態における技術的解決策を、図面を参照して以下に明確かつ完全に説明する。明らかに、記載された実施形態は、本発明の実施形態のすべてではなく、一部にすぎない。本発明の実施形態に基づいて当業者によって発明の努力なしに得られる他のすべての実施形態も、本発明の保護の範囲内に入るものとする。
【0023】
本出願および特許請求の範囲に示されるように、文脈において特に明示的に指定されない限り、「1つの(a)」、「1つの(one)」、「1タイプの」および/または「前記」などの単語は、特に単数形を参照する代わりに、複数形も含むことができる。一般に、「備える」および「含む」という用語は、明示的に識別されたステップおよび要素を含むことを単に示すが、これらのステップおよび要素は排他的列挙を構成せず;方法または装置は、他のステップまたは要素も含むことができる。
【0024】
本出願は、本出願の実施形態によるシステム内の特定のモジュールを様々に参照するが、任意の数の異なるモジュールを使用し、ユーザ端末および/またはサーバ上で実行することができる。モジュールは純粋に例示的なものであり、システムおよび方法の異なる態様では、異なるモジュールを使用することができる。
【0025】
本出願では、本出願の一実施形態によるシステムによって実施される動作を説明するためにフローチャートが使用される。先行または後続の動作は、必ずしも正確な順序で実施されるとは限らないことを理解されたい。逆に、必要に応じて、様々なステップを逆の順序でまたは同時に実施することができる。さらに、これらのプロセスに他の動作が追加されてもよく、またはこれらのプロセスから1つまたは複数のステップが削除されてもよい。
【0026】
図1は、第1のシナリオにおける本発明の一実施形態による電気駆動装置の冷却システム100の例示的な図を示し;
図2は、第2のシナリオにおける本発明の一実施形態による電気駆動装置の冷却システム100の例示的な図を示す。
【0027】
図1および
図2を参照すると、電気駆動装置200が示されており、電気駆動装置100は、例えば、ハウジング210と、ハウジング210内の第1の空間V1に収容されたモータ220と、ハウジング210内の第2の空間V2に収容された減速機230とを備える。
【0028】
電気駆動装置は、電力によって動作するように駆動される機器であることを理解されたい。一例として、モータは、入力された電気エネルギーを回転機械エネルギーに変換することができ;減速機は、モータに機械的に結合され、モータによって生成された回転速度およびトルクを調整し、次いで、それらを車両の車輪に伝達する。モータは、例えば油冷モータ、例えば同期モータであってもよく、または非同期モータであってもよい。本開示の実施形態は、モータの特定のタイプに関して制限されず、減速機の特定のタイプに関して制限されない。
【0029】
さらに、本出願の実際の例では、減速機230は、モータ220に接続されている。減速機230は、モータ220の高速トルクおよび低速トルクを、低速トルクおよび高速トルクに変換することができる。実際の必要性に応じて、減速機230は、例えば、モータ220および差動装置に接続され、異なる速度を有する多段減速ギヤを備えることができる。これらのギヤの1つは、例えばモータ220により駆動され、減速によりトルクを増加させる。減速機230は、例えば、モータ220の駆動シャフトによって駆動されるギヤと、差動装置に接続され、より大きな直径を有する別のギヤとに接続することができる中間伝達シャフトをさらに備えることができ、その結果、減速された駆動力が、差動装置によって異なる車輪間に分配される。
【0030】
本出願に示す実際の例では、モータ220は、減速機230に対して横方向に配置され、すなわち、モータシャフトは車両のハーフシャフト(駆動シャフト)に略平行であり、モータ220は、減速機230に機械的に結合された駆動端と、減速機230から離れた非駆動端とを有する。モータおよび減速機は、別の方法で配置されてもよいことに留意されたい。
【0031】
第1の空間V1および第2の空間V2は、モータおよび減速機をそれぞれ収容するために使用される空間を区別するためのものにすぎず、その空間的形態および容積を限定するためのものではないことを理解されたい。第1の空間および第2の空間は、例えば、少なくとも部分的に互いに連通していてもよい。
【0032】
さらに
図1を参照すると、冷却システム100は、例えば、冷却ポンプ300と、冷却器400とを備える。
【0033】
冷却ポンプは、電気駆動装置の内部から冷却液を吸引するために使用されるポンプである。例えば、冷却ポンプは、第1の吸引ポート310、第2の吸引ポート320および出口330を有し、第1の吸引ポート310および第2の吸引ポート320は、第1の空間V1および第2の空間V2にそれぞれ接続されている。
【0034】
第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートは、異なる空間に接続されたポートを区別するためのものにすぎず、ポートを限定するためのものではなく;本開示の実施形態は、第1および第2の吸引ポートがハウジング上に配置される特定の位置に関して制限されず、それらの特定の形状および寸法によっても制限されないことを理解されたい。
【0035】
例えば、第1の吸引ポート310は、モータの後側の非駆動端のハウジングに配置され、第1の空間に接続されてもよく;第2の吸引ポート320は、例えば、減速機の前側のハウジング(例えば、ハウジングの底部)に配置され、第2の空間に接続されてもよい。
【0036】
冷却ポンプ300は、第1の吸引ポート310または第2の吸引ポート320から択一的に冷却液を吸引するように動作可能に構成される。
【0037】
「択一的に」という単語は、冷却ポンプが、同時に第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの一方からのみ冷却液を吸引することができ、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートから一斉に冷却液を吸引しないことを意味することを理解されたい。
【0038】
冷却ポンプが第1の吸引ポートから冷却液を吸引する第1のシナリオを
図1に実線で模式的に示し;冷却ポンプが第2の吸引ポートから冷却液を吸引する第2のシナリオを
図2に点線で模式的に示す。上述したように、冷却ポンプの実際の動作中には、冷却液は、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの一方のみから吸引することができることを理解されたい。
【0039】
例えば、冷却ポンプの回転方向を変更して、冷却ポンプが第1の吸引ポート310または第2の吸引ポート320のいずれから冷却液を吸引するかを選択してもよく、または他の方法を使用して、冷却ポンプが第1の吸引ポート310または第2の吸引ポート320のいずれから冷却液を吸引するかを制御してもよい。
【0040】
冷却器400は、冷却ポンプ300の出口330に接続され、第1の吸引ポート310または第2の吸引ポート320から吸引された冷却液を受ける。
【0041】
冷却器の目的は、冷却ポンプからの冷却液を冷却することである。本開示の実施形態は、冷却器の特定のタイプおよび組成に関して制限されない。
【0042】
冷却システムでは、冷却器での処理後に出力される必要な温度の冷却液は、例えば、実際の必要性に応じて、対応する対象の構成要素に搬送され得ることを理解されたい。例えば、冷却液は、モータおよび減速機をさらに冷却するために、電気駆動装置の第1の空間および第2の空間に一斉に搬送されてもよく、または対応する冷却を実現するために別の構成要素、例えば自動車のバッテリまたはエンジンに搬送されてもよい。本開示の実施形態は、冷却器での処理後の冷却液の下流側流路に関して制限されない。
【0043】
上記に基づいて、本出願では、冷却システムが、第1の空間および第2の空間にそれぞれ接続された第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートを有する冷却ポンプを備えるように構成され、冷却ポンプが、第1の吸引ポートまたは第2の吸引ポートから択一的に冷却液を吸引するように動作可能に構成されるという事実の結果として、モータまたは減速機に配置された冷却液を吸引する、したがって効果的な冷却液吸引を達成する実際の必要性に応じて、冷却ポンプを簡単かつ便利に制御することができる。冷却ポンプが減速機側のポートを介してのみ吸引する現在の状況と比較して、本出願では冷却ポンプが第1の吸引ポートまたは第2の吸引ポートから択一的に冷却液を吸引するように構成されるという事実は、吸気の可能性を大幅に低減し、多量の空気が冷却システムに入るのを防止し、それによって冷却システムにおける熱交換効率を効果的に高めることを可能にする。さらに、本出願では、冷却ポンプが柔軟に構成されるため、冷却ポンプは、一度に1つのポートのみで冷却液を吸引し、冷却ポンプの動作効率および使用効率を効果的に高めることを可能にし、冷却ポンプの製造容積および製造コストを低減し、したがって冷却ポンプの製造および設置を容易にすることができる。さらに、冷却器を、冷却ポンプの出口に接続し、第1の吸引ポートまたは第2の吸引ポートから吸引された冷却液を受けるようにさらに構成する結果として、冷却システムは、冷却器によって処理された冷却液を実際の必要性に応じて異なる構成要素に柔軟に分配することができ、良好な冷却効果を達成することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、第1の吸引ポート310および第2の吸引ポート320の一方が吸気状態にあるとき、冷却ポンプは、第1の吸引ポート310および第2の吸引ポート320の前記一方からの冷却液吸引を、第1の吸引ポート310および第2の吸引ポート320の他方からの冷却液吸引に切り替えるように動作される。
【0045】
本出願で言う「吸気状態」とは、前記ポートで空気が吸引される危険性が高く、吸引ポートを切り替える必要がある状態であることを理解されたい。
【0046】
例えば、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じた場合、例えば、冷却ポンプの出力電流が著しく低下した場合、これは、例えば、冷却ポンプがポートで吸気に遭遇したことを示す可能性があり、その場合、ポートは吸気状態にあると判定することができる。別の例として、電気駆動装置が自動車に設置され、左折/右折、急ブレーキ、急発進、上り坂または下り坂の走行などの状況が自動車に生じた場合、例えば、減速機に対するモータの配置方向に沿ったまたはそれに垂直な車両の加速度が所定の時限内に予め設定された加速度閾値を超える可能性があり、非常に高い加速度のためにポートで吸気が生じる危険性が高いため、この時点でポートが吸気状態にあると判定することもできる。
【0047】
本出願における吸気状態とは、例えば、単一の変数のみに基づいて判断されてもよく;代替的に、実際の必要性に応じて、複数の変数がすべて所定の変化を経験する場合にのみ、ポート状態が吸気状態にあると判定されてもよいことを理解されたい。
【0048】
例えば、第1の吸引ポート310が吸気状態にある場合、冷却ポンプは、例えば回転方向を変更して第2の吸引ポート320から冷却液を吸引するように構成されてもよい。
【0049】
上記に基づいて、本出願では、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの一方が吸気状態にあるとき、冷却ポンプは、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの前記一方からの冷却液吸引を、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの他方からの冷却液吸引に切り替えるように動作され;この構成により、冷却ポンプが冷却液を吸引するポートは、吸気状態に基づいてリアルタイムで柔軟に切り替えることができ、冷却液吸引の正確性を高め、吸気シナリオを効果的に防止し、冷却システムの熱交換効率および動作効率を高めることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、冷却ポンプが、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの前記一方からの冷却液吸引を、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの他方からの冷却液吸引に切り替えるように動作されることは、冷却ポンプの回転方向を変更することを含む。
【0051】
例えば、冷却ポンプの回転方向は、ポンプモータによって制御されてもよく;例えば、冷却ポンプが時計回りに回転するとき、冷却ポンプは、第1の吸引ポートから冷却液を吸い込み、冷却ポンプが反時計回りに回転するとき、冷却ポンプは、第2の吸引ポートから冷却液を吸引する。しかしながら、冷却ポンプの回転は上記に例示されているにすぎず、本開示の実施形態はこれに限定されないことを理解されたい。
【0052】
図3Aは、本開示の一実施形態による第1の状態の冷却ポンプの概略図を示す。
図3Bは、本開示の一実施形態による第2の状態の冷却ポンプの概略図を示す。
【0053】
図3Aおよび
図3Bに示すように、冷却ポンプは、例えばポンプ機構、ポンプモータ(ここでは図示せず)、第1の吸引ポート310、第2の吸引ポート320および出口330を有する双方向ポンプ、例えばサイクロイドポンプである。さらに、ポンプ機構は、例えば、第1の一方向弁350と、第2の一方向弁360と、三方弁370とを備える。第1の一方向弁350は、例えば、第1の吸引ポート310と連通して、第1の吸引ポート310からポンプ機構内に冷却液を導入し、第2の一方向弁360は、例えば、第2の吸引ポート320と連通して、第2の吸引ポート320からポンプ機構内に冷却液を導入する。三方弁は、例えば、対応する入力ポートからの冷却液が冷却ポンプの出口330から流出するように、第1の一方向弁350、第2の一方向弁360およびポンプ出口330と連通するように構成可能である。
【0054】
例えば、ポンプモータが冷却ポンプを時計回りに回転するように制御する場合、冷却ポンプは、例えば
図3Aの第1の状態にあり、その時点で、冷却ポンプは、第1の吸引ポート310から冷却液を吸引し、吸引された冷却液を第1の一方向弁350を介してポンプ機構内に案内し、三方弁は、冷却ポンプの時計回りの回転に起因して
図3Aに示すような第1の位置にあり;この位置では、第1の一方向弁350を介してポンプ機構内に案内される冷却液が出口330を通って流出することができるように、出口330は第2の一方向弁から隔離され、第1の一方向弁350は出口330と連通する。
【0055】
例えば、ポンプモータが冷却ポンプを反時計回りに回転するように制御する場合、冷却ポンプは、例えば
図3Bの第2の状態にあり、その時点で、冷却ポンプ300は、第2の吸引ポート320から冷却液を吸引し、吸引された冷却液を第2の一方向弁360を介してポンプ機構内に案内し、三方弁は、冷却ポンプの反時計回りの回転に起因して
図3Bに示すように第2の位置にあり;この位置では、第2の一方向弁360を介してポンプ機構内に案内される冷却液が出口330を通って流出することができるように、出口330は第1の一方向弁から隔離され、第2の一方向弁360は出口330と連通する。
【0056】
上記に基づいて、本出願では、冷却ポンプの回転方向を変更して、冷却ポンプが、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの一方からの冷却液吸引を、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの他方からの冷却液吸引に切り替え;この構成により、冷却ポンプ吸引ポートは簡単かつ便利に切り替えることができ、したがって、実際の用途において吸引ポートの一方で吸気状況が判明したときに、最大速度でポートを切り替えることが容易になり、吸引される空気の量を最小限に抑えることができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、冷却ポンプ300の出力信号に所定の変化が生じた場合、または車両状態に所定の変化が生じた場合に、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの前記一方が吸気状態にあると判定される。
【0058】
冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じることは、例えば、冷却ポンプの出力信号が所定の変化を経験することを示し、これは、冷却ポンプが吸引ポートにおいて吸気状態にあることに対応することを理解されたい。例えば、所定の変化は、冷却ポンプの出力信号が予め設定された出力閾値よりも低いことであり得る。しかしながら、本開示の実施形態は、所定の変化の特定の組成に関して制限されないことを理解されたい。
【0059】
車両状態に所定の変化が生じるとは、電気駆動装置が取り付けられた自動車が予め設定された変化を経験することを意味し、車両状態の所定の変化は、冷却ポンプの吸引ポートにおける吸気の危険性を示す、すなわち、冷却ポンプが吸引ポートにおいて吸気状態にあることを示す。
【0060】
例えば、実際の状況ならびに電気駆動装置の設置の特定の位置および方向に応じて、車両状態の所定の変化には、限定されないが、車両の水平加速度(例えば、車両が急旋回状態にある)および前後加速度(例えば、車両が上り坂走行、下り坂走行、または急停止/急発進状態にある)の所定の変化、傾きを生じさせる前後方向および左右方向における車体構造の高低差などが含まれる。
【0061】
本開示の実施形態は、車両状態の所定の変化の特定の組成および特定のタイプに関して制限されないことを理解されたい。
【0062】
上記に基づいて、本出願では、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じた場合、または車両状態に所定の変化が生じた場合に、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの前記一方が吸気状態にあると判定され;この構成により、吸気状態を判断するときに、電気駆動装置を搭載する自動車の車両状態および冷却ポンプの動作状態が冷却ポンプポートにおける吸気の判断に与える影響を総合的に考慮することができ、冷却ポンプ信号または自動車の車両状態に所定の変化が生じたときに吸気状態を高感度でリアルタイムに区別することが可能になり、吸気状態を識別する感度を高め、吸気状況を効果的に低減することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じたとき、および車両状態に所定の変化が生じたときに、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの前記一方が吸気状態にあると判定される。
【0064】
例えば、車両状態に所定の変化が生じたことを検出した際に(例えば、車両が急に左折/右折した、急ブレーキをかけた、急発進した、上り坂または下り坂の走行に際し過度の加速があったことを検出した際に)、冷却ポンプの出力信号を収集し、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じたか否かを判断することができる。代替的に、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じたとき、車両状態をさらに確認し、車両状態に所定の変化が生じたか否かを判断することができる。
【0065】
本出願の実施形態は、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が検出されること、および車両状態に所定の変化が検出されることの順序に関して制限されず;これら2つの検出動作は、順序通りに、逆の順序で、または一斉に実施されてもよいことを理解されたい。
【0066】
上記に基づいて、本出願では、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じ、かつ、車両状態に所定の変化が生じたときにのみ、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートの前記一方が吸気状態にあると判定され;この構成により、吸気状態を判断する正確性を効果的に高めることができる。具体的には、吸気状態を判断するとき、冷却ポンプの動作の予期せぬ事情によって冷却ポンプ出力信号が変動する可能性があること、および走行途中の予期せぬ事情または運転者によって車両の車両状態も誤認識される可能性があることを総合的に考慮し;この時点で、冷却ポンプの出力信号と車両状態とを組み合わせて判断を実施することによって、複数の変数に基づいて交差検証を実施することができ、吸気状態の誤った判断、冷却ポンプ出力信号または車両状態の誤りによる頻繁なまたは誤った吸引ポートの切り替えを防止し、吸気検出の信頼性および精度を高めることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じることは、冷却ポンプの出力信号が予め設定された出力閾値よりも低いことを含む。
【0068】
予め設定された出力閾値は、前もって設定された冷却ポンプの最小出力信号であり;この最小出力信号よりも小さいことは、冷却ポンプの現在の吸引ポートが吸気状態にあることを示す。本開示の実施形態は、予め設定された出力閾値の特定の値に関して制限されない。
【0069】
具体的には、冷却ポンプの出力信号は、冷却ポンプの負荷の変化に関連付けられる。一般に、冷却ポンプの出力電流、電圧、トルクなどは、例えば、冷却ポンプの負荷と正の相関があり、すなわち、冷却ポンプがより多くの冷却液を吸引するとき、冷却ポンプの出力信号はより大きくなり、冷却ポンプがより少ない冷却液を吸引するとき(この時点では、高い割合で、空気が吸引される可能性がある)、冷却ポンプの出力信号はより小さくなり;これに基づいて、冷却ポンプの出力信号が予め設定された出力閾値よりも低いことは、冷却ポンプの現在の吸引ポートが吸気状態にあることを示すことは明らかである。
【0070】
上記に基づいて、本出願では、冷却ポンプの出力信号に所定の変化が生じることは、冷却ポンプの出力信号が予め設定された出力閾値よりも低いことを含み;この構成により、冷却信号の出力信号を簡単かつ便利に区別することができ、冷却ポンプの出力信号に基づいて対応する区別を迅速かつ確実に実施することが容易になり、したがって吸気状態の信頼性を高めることができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、冷却ポンプの出力信号は、冷却ポンプの出力電流信号または出力電圧信号、および冷却ポンプの出力トルク信号の少なくとも1つを含む。
【0072】
冷却ポンプの出力電流信号または出力電圧信号は、冷却ポンプによって出力され、冷却ポンプの動作状態を示す電流信号値または電圧信号値であり、例えば、冷却ポンプの負荷と正の相関があり、それによって冷却ポンプの負荷状態を示すことができ、すなわち、冷却ポンプが現在の吸引ポートで空気を吸引しているか否かに関連付けられる。
【0073】
冷却ポンプの出力トルク信号は、冷却ポンプの動作トルクを示す信号である。冷却ポンプが一般に一定の回転速度で回転しているとき、冷却ポンプの出力トルク信号は、例えば、冷却ポンプの負荷と正の相関があり、それによって冷却ポンプの負荷状態を示すことができ、すなわち、冷却ポンプが現在の吸引ポートで空気を吸引しているか否かに関連付けられる。
【0074】
上記に基づいて、本出願では、冷却ポンプの出力信号は、冷却ポンプの出力電流信号または出力電圧信号、および冷却ポンプの出力トルク信号の少なくとも1つを含み;この構成により、現在の吸引ポートにおける冷却ポンプの吸気状態は、冷却ポンプの複数の局面にわたる複数タイプの出力信号に基づいて判断することができ、吸気状態判断の正確性および信頼性を高めるのに役立つ。
【0075】
いくつかの実施形態では、車両状態に所定の変化が生じることは、第1の方向における車両の加速度の値が、所定の時限内に予め設定された第1の加速度閾値を超えることを含み、第1の方向は、減速機に対するモータの配置方向である。
【0076】
減速機に対するモータの配置方向は、モータおよび減速機を通って延びる直線の方向であり、例えば、モータおよび減速機の中心点を結ぶ線の方向として表すことができる。例えば、電気駆動装置が車両の横方向に配置される場合、減速機に対するモータの配置方向は、例えば、横方向である。
【0077】
電気駆動装置が自動車に設置された場合、自動車自体の走行状態もまた、電気駆動装置内の冷却液の分配にかなりの影響を及ぼす。特に、車両が減速機に対するモータの配置方向に高い加速度を経験した場合、これにより、減速機の第2の空間およびモータの第1の空間への冷却液の流れが生じ、多量の冷却液が第1の空間から第2の空間に、または第2の空間から第1の空間に移動し、したがって現在の吸引ポートにおいて吸気状態を生じさせる。
【0078】
予め設定された第1の加速度閾値は、第1の方向における車両の加速度の予め設定された最大値であり;この値を超えることは、例えば、冷却ポンプが現在の吸引ポートで空気を吸引する危険性があること、すなわち、現在の吸引ポートが吸気状態にあることを示すことを理解されたい。加速度閾値は、例えば、単一の値または複数の値であってもよく;本開示の実施形態は、加速度閾値の値の特定の数に関して制限されないことを理解されたい。
【0079】
所定の時限は、予め設定された時間間隔であり;予め設定された時間間隔内に、減速機に対するモータの配置方向における車両の加速度のすべての値が、予め設定された第1の加速度閾値を超えた場合、および、その場合にのみ、現在の吸引ポートが吸気状態にあると判定されることを理解されたい。本開示の実施形態は、予め設定された時限の特定の持続時間に関して制限されないことを理解されたい。
【0080】
例えば、加速度閾値は、単一の閾値、例えばA0に設定されてもよく;次いで、減速機に対するモータの配置方向(例えば、モータから減速機への方向S1、または減速機からモータへの方向S2を含む)における車両の加速度の値がすべて、所定の時間T0内においてA0よりも大きい場合、車両が所定の変化を経験したと判断される。例えば、第1の方向における車両の加速度が1秒間に0.5gよりも連続して大きい場合(重力gによる加速度は、一般に、9.8m/s2であると解釈される)、例えば、車両が所定の変化を経験したと判断されてもよく、吸引ポートが切り替えられる。
【0081】
代替的に、加速度閾値は、複数の閾値であるように設定されてもよい。具体的には、例えば、減速機に対するモータの配置方向が横方向である場合、加速度閾値は、例えば、モータから減速機への方向S1における加速度閾値A1(
図1に示すように)と、減速機からモータへの方向S2における加速度閾値A2とを含むように設定されてもよい。この場合、車両状態に所定の変化が生じることは、例えば、より具体的に説明することができ、例えば、第2の吸引ポート320を通って冷却液が吸引されるとき(この時点で、冷却液は減速機で濃縮されている)、モータから減速機への方向S1における加速度閾値A1が、例えば、目標加速度閾値であると決定され、所定の時限内の、モータから減速機への方向S1における加速度の捕捉された値が加速度閾値A1と比較され、モータから減速機への方向S1における加速度の値が加速度閾値A1よりも大きいとき、これは、例えば、多量の冷却液がモータに移動する可能性があることを示すため、第2の吸引ポート320は、この時点で吸気状態にあると判定され、吸引ポートが切り替えられる。
【0082】
第1の吸引ポート310を通って冷却液が吸引されるとき(この時点で、冷却液はモータで濃縮されている)、減速機からモータへの方向S2における加速度閾値A2が、例えば、目標加速度閾値であると決定され、所定の時限内の、減速機からモータへの方向S2における加速度の捕捉された値が加速度閾値A2と比較され、減速機からモータへの方向S2における加速度の値が加速度閾値A2よりも大きいとき、これは、例えば、多量の冷却液が減速機に移動する可能性があることを示すため、第1の吸引ポート310は、この時点で吸気状態にあると判定され、吸引ポートが切り替えられる。
【0083】
しかしながら、上記では、加速度閾値設定の数例のみが与えられており、本開示の実施形態はこれに限定されないことを理解されたい。
【0084】
上記に基づいて、本出願では、車両状態に所定の変化が生じることは、減速機に対するモータの配置方向における車両の加速度が、所定の時限内に予め設定された第1の加速度閾値を超えることを含み;この構成により、吸気状態に対する車両状態の影響を考慮しながら、時間および加速度の因子が総合的に考慮される。第1に、これにより、車両の運動状態の変化を高感度で便利に捕捉することが可能になるため、車両が、急な左折/右折、緊急ブレーキ、緊急発進、上り坂走行または下り坂走行など、吸引ポートにおける吸気状況に影響を及ぼし得る状態にある場合、運動状態における減速機に対するモータの配置方向における加速度を迅速かつ効果的に取得することができ(この方向における加速は、実際に、冷却液の流れに最も影響を及ぼす加速方向である)、その後に吸気状態を効果的に区別するために、加速度を評価することができる。第2に、加速度が所定の時限内に予め設定された第1の加速度閾値を超える構成を用いて、判断条件に時間制限をさらに追加することにより、車両走行時の急な短時間の動作変化によって生じる車両状態の急激な変化に起因して、吸引ポートが吸気状態にあると誤って判断することを防止することもでき、したがって、吸気状態をその後に区別する正確性を高めることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、車両状態に所定の変化が生じることは、第1の方向における車両の胴体構造の高低差が、予め設定された第1の高低差閾値よりも大きいことを含み、第1の方向は、減速機に対するモータの配置方向である。
【0086】
上記のように、ここで述べた減速機に対するモータの配置方向は、モータおよび減速機を通って延びる直線の方向であり、例えば、モータおよび減速機の中心点を結ぶ線の方向として表すことができる例えば、電気駆動装置が車両の横方向に配置される場合、減速機に対するモータの配置方向は、例えば、横方向である。
【0087】
具体的には、車両運動の過程で、胴体構造の状態が変化することも、電気駆動装置内部への冷却液の流れを引き起こすことがある。特に、減速機に対するモータの配置方向において車両の胴体構造に高低差が生じるとき、その高低差により、対応する冷却液の移動が生じ、したがって現在の吸引ポートが吸気状態になるおそれがある。
【0088】
予め設定された第1の高低差閾値は、減速機に対するモータの配置方向における高低差の予め設定された最大値である。この値を超えた場合、起こり得る結果は、例えば冷却液の流れが吸気状況を引き起こすことである。本開示の実施形態は、高低差閾値の特定の値に関して制限されないことを理解されたい。
【0089】
例えば、高低差閾値は、モータの中心点が減速機の中心点よりも高い第1の高低差閾値H1と、減速機の中心点がモータの中心点よりも高い第2の高低差閾値H2とを含むように設定されてもよい。第2の吸引ポート320を通って冷却液が吸引されるとき(この時点で、冷却液は減速機で濃縮されている)、多量の冷却液がモータ後方に急激に流れることによる、第2の吸引ポート320における吸気状況を防止する必要がある。この場合、減速機の中心点がモータの中心点よりも高い第2の高低差閾値H2が、例えば、目標高低差閾値であると決定され、減速機の中心点がモータの中心点よりも高い捕捉された高低差が、第2の高低差閾値H2と比較され、減速機の中心点がモータの中心点よりも高い高低差が第2の高低差閾値H2よりも大きいとき、これは、例えば、冷却液が高い加速度でモータに移動する可能性があることを示すため、第2の吸引ポート320は、この時点で吸気状態にあると判定され、吸引ポートが切り替えられる。
【0090】
しかしながら、上記では、高低差閾値設定の一例のみが与えられており、本開示の実施形態はこれに限定されないことを理解されたい。
【0091】
上記に基づいて、本出願では、車両状態に所定の変化が生じることは、減速機に対するモータの配置方向における車両の胴体構造の高低差が、予め設定された第1の高低差閾値よりも大きいことを含み;この構成により、車両状態が吸気状態に与える影響を考慮しながら、車両自身の構造(すなわち、胴体構造)の変化が冷却液の流れに与える影響が総合的に考慮され、車両が凹凸路もしくは傾斜路にあるとき、または勾配の高い道路の上り坂もしくは下り坂を走行しているときの車体構造の変化を効果的に検出し、胴体構造の変化に基づいて現在の吸引ポートにおける冷却ポンプの吸気状態を効果的に区別することが容易になり、したがって吸気状態を区別する信頼性および精度を高める。
【0092】
いくつかの実施形態では、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートは、第2の方向の異なる位置に配置され、車両状態に所定の変化が生じることは、第2の方向における車両の加速度の値が、所定の時限内に予め設定された第2の加速度閾値を超えることを含み、第2の方向は、減速機に対するモータの配置方向に垂直である。
【0093】
減速機に対するモータの配置方向に対して垂直とは、減速機に対するモータの配置方向に対して垂直な方向を意味する。具体的には、例えば減速機に対するモータの配置方向が横方向である場合、第2の方向は、例えば横方向に垂直な長手方向を示し;これは、自動車の前進方向および後進方向を含み得る。
【0094】
第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートが第2の方向の異なる位置に配置されているとは、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートが第2の方向において同じ位置に配置されておらず、代わりに第2の方向において一方が他方の前方に配置されていることを意味することを理解されたい。
【0095】
具体的には、車両運動の過程で、第2の方向における車両の状態が変化することも、電気駆動装置内部への冷却液の流れを引き起こすことがある。例えば、
図1に示す方向N1が車両の進行方向であり、減速機に対するモータの配置方向が横方向であり、第1の吸引ポートが長手方向において第2の吸引ポートよりも前方に配置されている場合、モータの第1の空間と減速機の第2の空間とは、前方領域で互いに連通している。冷却ポンプが減速機の第2の空間に配置された第2の吸引ポートから冷却液を現在吸引している場合、第2の吸引ポートは、例えば、この時点で、減速機に対応する第2の空間の中央または後方領域に配置されている。この場合、例えば、車両が制動または減速を経験した場合、冷却液は車両の前方に向かって移動し、減速機に対応する第2の空間の前方領域に流れ、第2の空間の前方領域と連通する第1の空間に流入する。したがって、この時点では第2の吸引ポートにおいて冷却液を吸引することができず、吸気状況が生じる。代替的に、
図1に示す方向N2が車両の進行方向である場合、第1の吸引ポートは、長手方向において第2の吸引ポートの後方に配置される。モータの第1の空間と減速機の第2の空間とが例えば後方領域で互いに連通している場合、および冷却ポンプが減速機の第2の空間の中央または前方領域に配置された第2の吸引ポートから冷却液を現在吸引している場合、冷却液は、車両が急発進または急加速したときに車両の後方に向かって移動し、減速機に対応する第2の空間の後方領域に流れ、第2の空間の後方領域と連通する第1の空間に流入する。したがって、この時点で、第2の吸引ポートも、冷却液を吸引することができない状況(すなわち、吸気状況)を経験する。
【0096】
第2の加速度閾値は、第2の方向における加速度の閾値を区別するためのものにすぎず、閾値を限定するためのものではないことを理解されたい。
【0097】
予め設定された第2の加速度閾値は、第2の方向における車両の加速度の予め設定された最大値であり;この値を超えることは、例えば、冷却ポンプが現在の吸引ポートで空気を吸引する危険性があること、すなわち、現在の吸引ポートが吸気状態にあることを示すことを理解されたい。加速度閾値は、例えば、単一の値または複数の値であってもよく;本開示の実施形態は、加速度閾値の値の特定の数に関して制限されないことを理解されたい。例えば、第2の方向における車両の加速度が1秒間に0.5gよりも連続して大きい場合(重力gによる加速度は、一般に、9.8m/s2であると解釈される)、例えば、車両が所定の変化を経験したと判断されてもよく、吸引ポートが切り替えられる。
【0098】
所定の時限は、予め設定された時間間隔であり;第2の方向における車両の加速度のすべての値が、予め設定された時間間隔内に、予め設定された第2の加速度閾値を超えた場合、およびその場合にのみ、現在の吸引ポートが吸気状態にあると判定されることを理解されたい。本開示の実施形態は、予め設定された時限の特定の持続時間に関して制限されないことを理解されたい。
【0099】
上記のプロセスは、例えば、より具体的に説明され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、第2の方向における車両の加速度の値が、所定の時限内に予め設定された第2の加速度閾値を超えるとは、第2の方向の第1の副方向における車両の加速度の値が、所定の時限内に対応する予め設定された第2の加速度閾値を超えることを意味し、第2の方向の第1の副方向は、第2の方向内の第1の吸引ポートから第2の吸引ポートに向かう副方向であり;または、第2の方向の第2の副方向における車両の加速度の値が、所定の時限内に対応する予め設定された第2の加速度閾値を超えることを意味し、第2の方向の第2の副方向は、第2の方向内の第2の吸引ポートから第1の吸引ポートに向かう副方向である。
【0100】
第2の方向の第1の副方向および第2の方向の第2の副方向は、互いに反対で、同じ直線に沿って走る、第2の方向に含まれる2つの副方向である。具体的には、減速機に対するモータの配置方向は、例えば横方向であり;この場合、第2の方向は、例えば長手方向である。この場合、第2の方向の第1の副方向は、例えば、長手方向内の第1の吸引ポートから第2の吸引ポートに向かう長手方向の第1の副方向であってもよく、第2の方向の第2の副方向は、例えば、長手方向内の第2の吸引ポートから第1の吸引ポートに向かう長手方向の第2の副方向であってもよい。
【0101】
例えば、冷却ポンプが第2の吸引ポートから冷却液を現在吸引している場合、第2の方向の第1の副方向(第2の方向内の第1の吸引ポートから第2の吸引ポートに向かう副方向)における車両の加速度の値が、所定の時限内に予め設定された対応する第2の加速度閾値を超えた場合、これは、第2の吸引ポート付近の空間領域から第1の吸引ポート付近の空間領域に多量の冷却液が流れる可能性があることを示し;この場合、例えば、第2の吸引ポートが吸気状態にあることを確認し、第1の吸引ポートが冷却液を吸引するように切り替えが行われ得る構成が可能である。冷却ポンプが第1の吸引ポートから冷却液を現在吸引している場合、第2の方向の第2の副方向(第2の方向内の第2の吸引ポートから第1の吸引ポートに向かう副方向)における車両の加速度の値が、所定の時限内に予め設定された対応する第2の加速度閾値を超えた場合、これは、第1の吸引ポート付近の空間領域から第2の吸引ポート付近の空間領域に多量の冷却液が流れる可能性があることを示し;この場合、例えば、第1の吸引ポートが吸気状態にあることを確認し、第2の吸引ポートが冷却液を吸引するように切り替えが行われ得る。
【0102】
ここで、上記のプロセスを、特定の実施形態に関連してより具体的に説明する。例えば、
図1を参照すると、減速機に対するモータの配置方向は横方向であり、第1の吸引ポート310と第2の吸引ポート320とは長手方向の異なる位置に配置されている。例えば、第2の加速度閾値は、複数の閾値に設定されてもよい。具体的には、第2の加速度閾値は、例えば、方向N2(すなわち、第2の方向の第1の副方向、この場合、長手方向内の第1の吸引ポート310から第2の吸引ポート320に向かう副方向)における加速度閾値B2と、方向N1(すなわち、第2の方向の第2の副方向、この場合、長手方向内の第2の吸引ポート320から第1の吸引ポート310に向かう副方向)における加速度閾値B1とを含むように設定されてもよい。
【0103】
この場合、例えば、減速機に対するモータの配置方向は横方向であり、車両の進行方向は方向N1であり、第2の吸引ポート320は、方向N1において第1の吸引ポート310の後方に配置される。車両状態に所定の変化が生じることは、例えば、より具体的に説明することができ、例えば、減速機が配置された第2の空間の中央または後方領域から第2の吸引ポート320を介して冷却液が吸引されているとき、例えば、方向N2(すなわち、第2の方向の第1の副方向)における加速度閾値B2が目標加速度閾値として決定され、方向N2における加速度の捕捉された値が加速度閾値B2と比較され、方向N2における加速度の値がすべて、予め設定された時間内に加速度閾値B2よりも大きいとき(車両走行状況および電気駆動装置の配置に応じる、これは、例えば、車両の急な減速または制動に対応し得る)、モータの第1の空間および減速機の第2の空間が前方領域で互いに連通しているという事実に起因して、これは、多量の冷却液が、第2の空間の前方領域、および第2の空間の前方領域と連通している第1の空間に移動する可能性があることを示すため、この時点で、第2の吸引ポート320が吸気状態にあると判定され、吸引ポートが切り替えられる。
【0104】
代替的に、例えば、減速機に対するモータの配置方向は横方向であり、車両の進行方向は方向N2であり、第2の吸引ポート320は、方向N2において第1の吸引ポート310の前方に配置される。減速機が配置された第2の空間の中央または前方領域から第2の吸引ポート320を介して冷却液が現在吸引されている場合、例えば方向N2における加速度閾値B2が目標加速度閾値であると決定され、方向N2における加速度の捕捉された値が加速度閾値B2と比較され、方向N2における加速度の値がすべて、予め設定された時間内に加速度閾値B2よりも大きく(車両走行状況および電気駆動装置の配置に応じる、これは、例えば、車両の急加速、または停止状態からの急発進に対応し得る)、かつ、モータの第1の空間と減速機の第2の空間とが後方領域で互いに連通しているとき、これは、多量の冷却液が、第2の空間の後方領域、および第2の空間の後方領域と連通している第1の空間に移動する可能性があることを示すため、この時点で、第2の吸引ポート320が吸気状態にあると判定され、吸引ポートが切り替えられる。
【0105】
しかしながら、上記では、加速度閾値設定および電気駆動装置構成の数例のみが与えられており、本開示の実施形態はこれに限定されないことを理解されたい。
【0106】
上記に基づいて、本出願では、車両状態に所定の変化が生じることは、第2の方向における車両の加速度の値が、所定の時限内に予め設定された第2の加速度閾値を超えることを含み、第2の方向は、減速機に対するモータの配置方向に垂直であり;この構成により、吸気状態に対する車両状態の影響を考慮しながら、時間および加速度の因子が総合的に考慮される。第1に、これにより、車両の運動状態の変化を高感度で便利に捕捉することが可能になるため、車両が、緊急ブレーキ、緊急発進、上り坂走行または下り坂走行など、吸引ポートにおける吸気状況に影響を及ぼし得る状態にある場合、運動状態における減速機に対するモータの配置方向に垂直な加速度を迅速かつ効果的に取得することができ(この方向における加速は、多量の冷却液を第1または第2の空間内で前方または後方に移動させる可能性があり、その結果、元の吸引ポートは冷却液を吸引することができない)、その後に吸気状態を効果的に区別するために、加速度を評価することができる。第2に、加速度が所定の時限内に予め設定された第1の加速度閾値を超える構成を用いて、判断条件に時間制限をさらに追加することにより、車両走行時の急な短時間の動作変化によって生じる車両状態の急激な変化に起因して、吸引ポートが吸気状態にあると誤って判断することを防止することもでき、したがって、吸気状態をその後に区別する正確性を高めることができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートは、第2の方向の異なる位置に配置され、車両状態に所定の変化が生じることは、第2の方向における車両の胴体構造の高低差が、予め設定された第2の高低差閾値よりも大きいことを含み、第2の方向は、減速機に対するモータの配置方向に垂直である。
【0108】
上記のように、減速機に対するモータの配置方向に対して垂直とは、減速機に対するモータの配置方向に対して垂直な方向を意味する。具体的には、例えば減速機に対するモータの配置方向が横方向である場合、第2の方向は、例えば横方向に垂直な長手方向を示す。
【0109】
上記のように、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートが第2の方向の異なる位置に配置されているとは、第1の吸引ポートおよび第2の吸引ポートが第2の方向において同じ位置に配置されておらず、代わりに第2の方向において一方が他方の前方に配置されていることを意味する。
【0110】
具体的には、車両運動の過程で、胴体構造の状態が変化することも、電気駆動装置内部への冷却液の流れを引き起こすことがある。特に、減速機に対するモータの配置方向が横方向であり、冷却ポンプが減速機の第2の空間に配置された第2の吸引ポートから冷却液を現在吸入している場合、減速機に対するモータの配置方向に垂直な車体構造に高低差が生じるとき、その高低差により、対応する冷却液の移動が生じ;この時点で、冷却液は、車両の運動状態に起因して車両の前方または後方に向かって移動し、減速機に対応する第2の空間の前方領域または後方領域に流れ、第2の空間の前方領域または後方領域と連通する第1の空間に流入し、したがって、現在の第2の吸引ポートが吸気状態になるおそれがある。
【0111】
予め設定された第2の高低差閾値は、減速機に対するモータの配置方向に垂直な高低差の予め設定された最大値である。この値を超えた場合、起こり得る結果は、例えば冷却液の流れが吸気状況を引き起こすことである。本開示の実施形態は、高低差閾値の特定の値に関して制限されないことを理解されたい。
【0112】
上記のプロセスは、例えば、より具体的に説明され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、第2の方向における車両の胴体構造の高低差が、予め設定された第2の高低差閾値よりも大きいことは、車両の胴体構造が第2の方向の第1の副方向に有する高低差が、対応する第2の予め設定された高低差閾値よりも大きいことを意味し、第2の方向の第1の副方向は、第2の方向における第1の吸引ポートから第2の吸引ポートに向かう副方向であり;または、車両の胴体構造が第2の方向の第2の副方向に有する高低差が、対応する第2の予め設定された高低差閾値よりも大きいことを意味し、第2の方向の第2の副方向は、第2の方向における第2の吸引ポートから第1の吸引ポートに向かう副方向である。
【0113】
第2の方向の第1の副方向および第2の方向の第2の副方向は、互いに反対で、同じ直線に沿って走る、第2の方向に含まれる2つの副方向である。具体的には、減速機に対するモータの配置方向は、例えば横方向であり;この場合、第2の方向は、例えば長手方向である。この場合、第2の方向の第1の副方向は、例えば、長手方向内の第1の吸引ポートから第2の吸引ポートに向かう長手方向の第1の副方向であってもよく、第2の方向の第2の副方向は、例えば、長手方向内の第2の吸引ポートから第1の吸引ポートに向かう長手方向の第2の副方向であってもよい。
【0114】
ここで、上記のプロセスを、特定の実施形態に関連してより具体的に説明する。例えば、
図1を参照すると、減速機に対するモータの配置方向が横方向である場合、第2の方向が車両の長手方向であることは明らかである。車両の進行方向が方向N2であり、第2の吸引ポート320が方向N2において第1の吸引ポート310の前方に配置される場合、第2の高低差閾値は、この場合、長手方向の第1の副方向(すなわち、第2の方向の第1の副方向であり、この場合、方向N2に対応する)における電気駆動装置の後端と前端との間の高低差閾値D2と、長手方向の第2の副方向(すなわち、第2の方向の第2の副方向であり、この場合、方向N1に対応する)における電気駆動装置の後端と前端との間の高低差閾値D1とを含むように設定されてもよい。
【0115】
車両が前進方向である方向N1に走行しているとき、
図1に示すように、電気駆動装置は、例えば横方向に配置され、第2の吸引ポート320は、例えば、長手方向において第1の吸引ポート310の後方に配置される。この時点で、例えば、第2の吸引ポート320を介して、減速機の第2の空間の中央または後方領域に配置された第2の吸引ポートから冷却液が吸引され;この場合、第2の空間の前方領域および第2の空間と連通する第1の空間の前方領域に向かって多量の冷却液が急激に流れることによる、第2の吸引ポート320における吸気状況を防止する必要がある。この時点で、例えば、方向N1(すなわち、第2の方向の第2の副方向)における電気駆動装置の後端と前端との間の高低差閾値D1が、目標高低差閾値として決定され、方向N1における電気駆動装置の後端と前端との間の捕捉された高低差が、高低差閾値D1と比較され、方向N1における電気駆動装置の後端と前端との間の高低差が、高低差閾値D1よりも大きいとき(例えば、車両が下り坂を走行している)、これは、例えば、多量の冷却液が、第2の空間の後方領域から第2の空間の前方領域に、および第2の空間の前方領域と連通する第1の空間に移動する可能性があることを示すため、この時点で、第2の吸引ポート320が吸気状態にあると判定され、吸引ポートが切り替えられる。
【0116】
しかしながら、上記では、第2の高低差閾値設定の一例のみが与えられており、本開示の実施形態はこれに限定されないことを理解されたい。
【0117】
上記に基づいて、本出願では、車両状態に所定の変化が生じることは、減速機に対するモータの配置方向に垂直な車両の胴体構造の高低差が、予め設定された第2の高低差閾値よりも大きいことを含み;この構成により、車両状態が吸気状態に与える影響を考慮しながら、車両自身の構造(すなわち、胴体構造)の変化が冷却液の流れに与える影響が総合的に考慮され、車両が勾配の高い道路の上り坂または下り坂を走行しているときの車体構造の変化を効果的に検出し、胴体構造の変化に基づいて現在の吸引ポートにおける冷却ポンプの吸気状態を効果的に区別することが容易になり、したがって吸気状態を区別する信頼性および精度を高める。
【0118】
図4は、第1のフィルタ510および第2のフィルタ520を示す、本開示の一実施形態による冷却システムの概略図を示す。
【0119】
図4を参照すると、冷却システム100は、例えば、第1の空間V1に対応する第1のフィルタ510と、第2の空間V2に対応する第2のフィルタ520とをさらに備える。第1のフィルタ510のサイズは、第2のフィルタ520のサイズ以下である。
【0120】
第1のフィルタおよび第2のフィルタは両方とも、冷却液を濾過することを意図していることを理解されたい。第1のフィルタおよび第2のフィルタは、例えば、同じタイプのフィルタであってもよく、または異なるタイプのフィルタであってもよい。本開示の実施形態は、第1のフィルタおよび第2のフィルタの特定のタイプに関して制限されない。
【0121】
例えば、第1のフィルタ510および第2のフィルタ520は、電気駆動装置200のハウジング210内に一体化されるように構成される。
【0122】
冷却システムが第1の空間に対応する第1のフィルタと、第2の空間に対応する第2のフィルタとをさらに備えるように構成し、第1のフィルタのサイズが第2のフィルタのサイズ以下になるように構成した結果として、冷却液の十分かつ効果的な濾過を達成するために、冷却液を頻繁に吸引する必要がある、減速機を含む第2の空間内に、より大きな容積のフィルタが設けられ;実際の必要性に基づいて、冷却液が吸引される相対的な回数がより少ないモータには(一般に、減速機の吸引ポートで吸気が生じたときに、モータの吸引ポートを通って、モータの後側の冷却液が吸引される)、より小さいサイズの第1のフィルタが設けられる。したがって、冷却液を効果的に吸引するという前提条件の下で、製造コストの低減およびコンパクトなサイズの構造の必要性が効果的に考慮される。
【0123】
図5は、第3のフィルタ530を示す、本開示の一実施形態による冷却システムの概略図を示す。
【0124】
図5を参照すると、いくつかの実施形態では、冷却システムは、第3のフィルタ530をさらに備える。
【0125】
例えば、第3のフィルタは、冷却ポンプ300と冷却器400との間にメインフィルタとして配置され、冷却ポンプ300によって吸引された冷却液を、冷却器400に入る前にさらに濾過し、それによって冷却器に入る冷却液が純粋で不純物がないことを保証することができる。
【0126】
上記に基づいて、本出願では、冷却システムが第3のフィルタをさらに備えるように構成した結果として、第1および第2のフィルタによって第1および第2の空間からの冷却液が一次濾過された上で、冷却ポンプ内に吸引された後、冷却ポンプ出口からの冷却液は、第3のフィルタによって再び濾過され、それによって冷却器に入る冷却液の純度を効果的に高め、また、第1のフィルタおよび第2のフィルタにおける一次濾過の圧力降下が比較的低いという事実に起因してオイルポンプの効率を高めるのに役立つ。
【0127】
本出願では、本出願の実施形態を説明するために、特定の用語が使用される。例えば、「第1/第2の実施形態」、「実施形態」および/または「いくつかの実施形態」は、本出願の少なくとも1つの実施形態に関連する特徴、構造または特性を指す。したがって、本明細書の異なる場所で2回以上言及される「実施形態」、「一実施形態」または「代替実施形態」は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らないことに注意および留意されたい。さらに、本出願の1つまたは複数の実施形態における特定の特徴、構造または特性は、適切に組み合わせることができる。
【0128】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で明示的にそのように定義されていない限り、一般的な辞書で定義されているような用語は、理想化されたまたは非常に形式化された意味で解釈されるのではなく、関連技術の文脈でそれらが有するのと同じ意味を有すると解釈されるべきであることも理解されたい。
【0129】
上記は本発明の説明であり、本発明を限定するものと見なすべきではない。本発明の特定の例示的な実施形態を説明したが、当業者は、本発明の新規な教示および利点から逸脱することなく、例示的な実施形態に多くの修正を加えることができることを容易に理解するであろう。したがって、そのような修正はすべて、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれることが意図される。上記は本発明の説明であり、開示された特定の実施形態に限定されると見なされるべきではなく;さらに、開示された実施形態および他の実施形態に対して行われた修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。本発明は、特許請求の範囲およびその均等物によって定義される。
【外国語明細書】