(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105200
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】時計ムーブメントのひげぜんまい
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20240730BHJP
G04B 18/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G04B17/06 Z
G04B18/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024007424
(22)【出願日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】23153324.1
(32)【優先日】2023-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィラレー, ピエール
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ぜんまいブレードと、フレームへひげぜんまいを締結する接続部材を含む、ひげぜんまいを提供する。
【解決手段】ぜんまいブレード11;11’と、フレーム5、6、8へひげぜんまい1;1’を締結する接続部材12;12’を含む、ひげぜんまいであって、接続部材は、第一締結要素13a;13a’と、第二締結要素13b;13b’と、第一締結要素を第二締結要素へ接続する、第一アーム121;121’と、第一アームをぜんまいブレードへ接続する第二アーム122;122’であって、第一接合区域122a;122a’においてぜんまいブレードに接続される、第二アームと、を含み、ひげぜんまいは、第二締結要素に対する第一締結要素の第一振幅での第一変位が、第二アームの、特に第一接合区域のあらゆる変位を生じないよう構成されまたは配置され、第二振幅は、第一振幅の0.15倍または0.1倍または0.05倍より小さい、ひげぜんまい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ぜんまいブレード(11;11’)と、フレーム(5、6、8)へひげぜんまい(1;1’)を締結する接続部材(12;12’)を含む、ひげぜんまい(1;1’)であって、前記接続部材は、
第一締結要素(13a;13a’)と、
第二締結要素(13b;13b’)と、
前記第一締結要素(13a;13a’)を前記第二締結要素(13b;13b’)へ接続する、第一アーム(121;121’)と、
前記第一アーム(121;121’)を前記ぜんまいブレード(11;11’)へ接続する第二アーム(122;122’)であって、第一接合区域(122a;122a’)において前記ぜんまいブレード(11;11’)に接続される、前記第二アーム(122;122’)と、を含み、
前記ひげぜんまい(1;1’)は、前記第二締結要素(13b;13b’)に対する前記第一締結要素(13a;13a’)の第一振幅での第一変位が、前記第二アーム(122;122’)の、特に前記第一接合区域(122a;122a’)のあらゆる変位を生じないよう、または前記第二締結要素(13b;13b’)に対する前記第二アーム(122;122’)の、特に前記第一接合区域(122a;122a’)の第二振幅での第二変位を生じさせるよう構成されまたは配置され、前記第二振幅は、前記第一振幅の0.15倍または0.1倍または0.05倍より小さい、
ひげぜんまい(1;1’)。
【請求項2】
前記第一振幅と前記第二振幅は、
前記ぜんまいブレード(11;11’)がその中で延長する、第一平面(P1)、及びまたは
前記接続部材(12;12’)がその中で延長する、第二平面(P2)、
に垂直に測定される、
請求項1に記載のひげぜんまい(1;1’)。
【請求項3】
前記第一アームの長さの、前記第二アームの長さに対する前記比率は、2と10の間、または3と10の間である、
請求項1または2に記載のひげぜんまい(1;1’)。
【請求項4】
前記第一アーム(121;121’)を前記第二アーム(122;122’)へ接合する第二接合区域(123;123’)は、
前記第一締結要素(13a;13a’)から点または境界を隔てる前記距離の、
前記第二締結要素(13b;13b’)から点または境界を隔てる前記距離に対する前記比率が、4より大きいまたは8より大きくなるような、前記点または境界に配置される、
請求項1から3のいずれか一項に記載のひげぜんまい(1;1’)。
【請求項5】
前記ひげぜんまいは、一体である、または一体に形成される、
請求項1から4のいずれか一項に記載のひげぜんまい(1;1’)。
【請求項6】
前記ひげぜんまいは、部分的または全体的に、
その方位に関わらず、単結晶シリコン、または、
多結晶シリコン、または、
非晶質シリコン、または、
非晶質二酸化ケイ素、または、
ドープのタイプやレベルに関わらず、ドープシリコン、または
多孔質シリコン、または、
炭化ケイ素、または、
ガラス、または、
セラミック、または
クオーツ、または、
金属、または、
合金、特にNb-Z4合金、
製である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のひげぜんまい(1;1’)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のひげぜんまい(1;1’)、特に真(10)に搭載されたてん輪(9)と請求項1から6のいずれか一項に記載のひげぜんまい(1;1’)、と、組立体装置(200;200’)とを含む、発振器(100;100’)を含む、組立体(300;300’)、特に時計ムーブメント(300;300’)であって、前記組立体装置(200;200’)は、
前記発振器(100;100’)を旋回させる、第一ブランク(5)と、
前記発振器(100;100’)を旋回させる、第二ブランク(6)と、
を含む、
組立体(300;300’)。
【請求項8】
前記組立体装置(200;200’)は、前記第二ブランク(6)に対して前記第一ブランク(5)を位置決めする第一要素(7a、7b)、特にねじ足(7a、7b)を含み、前記第一位置決め要素(7a、7b)は、前記組立体(300;300’)の平面(P)内で、前記第一ブランク(5)に対して、及びまたは前記第二ブランク(6)に対して、前記ひげぜんまい(1;1’)を位置決めするよう配置される及びまたは構成される、
請求項7に記載の組立体(300;300’)。
【請求項9】
前記組立体装置(200;200’)は、第一軸方向遊び調節要素(92)と第二軸方向遊び調節要素(7a)とを含み、前記第一軸方向遊び調節要素(92)は、前記発振器(100;100’)を旋回させる前記第一ブランク(5)に対して、及びまたは前記発振器(100;100’)を旋回させる第二ブランク(6)に対して、前記第一締結要素(13a;13a’)を移動させることで、前記発振器(100;100’)の前記軸方向遊びを調節するため、前記第二軸方向遊び調節要素(7a)と相互作用する、
請求項7または8に記載の組立体(300;300’)。
【請求項10】
前記第一軸方向遊び調節要素(92)は、ナット(92)を含み、前記第二軸方向調節要素(7a)は、前記第二ブランク(6)に対して前記第一ブランク(5)を位置決めする第一要素(7a,7b)上に製造された、特にねじ足(7a、7b)上に製造された、ねじ山(76a)を含む、
請求項9に記載の組立体(300;300’)。
【請求項11】
前記第一ブランク(5)及び前記第二ブランク(6)は、前記ひげぜんまい(1;1’)を両者間に保持するよう、特に前記ひげぜんまい(1;1’)と第三ブランク(8)を両者間に保持するよう、配置される及びまたは構成される、
請求項7から10のいずれか一項に記載の組立体(300;300’)。
【請求項12】
前記第二アーム(122;122’)は、
前記第一ブランク(5)と、
前記第二ブランク(6)または保持要素(99’)と、
の間で、または
前記第二ブランク(6)と、
保持要素(99’)と、
の間で、保持される、特に介在して保持されるまたはクランプされる、
請求項7から11のいずれか一項に記載の組立体(300;300’)。
【請求項13】
前記第一アーム(121;121’)を前記第二アーム(122;122’)へ接合する前記第二接合区域(123;123’)は、前記第一ブランク(5)と前記第二ブランク(6)との間で保持される、特に介在して保持されるまたはクランプされる、
請求項7から12のいずれか一項に記載の組立体(300;300’)。
【請求項14】
前記第一ブランク(5)は、てんぷ受(5)である、及びまたは
前記第二ブランク(6)は、板(6)である、
請求項7から13のいずれか一項に記載の組立体(300;300’)。
【請求項15】
請求項1から6のいずれか一項に記載のひげぜんまい(1;1’)、及びまたは請求項7から14のいずれか一項に記載の組立体(300;300’)を含む、時計(400;400’)、特に腕時計(400;400’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計ムーブメントのひげぜんまいに関する。本発明はまた、当該ひげぜんまいを含む、組立体、特に時計ムーブメントに関する。最後に、本発明は、当該ひげぜんまいまたは当該組立体を含む、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、それぞれ接続部材が設けられた、様々なひげぜんまいを開示する。検討する変形例に応じて、接続部材は、円の部分の、または円の形状、または直線状形状を有することができる。当該接続部材は、単一要素の形状を取り、遊び調節要素により作用されることは意図されない。
【0003】
特許文献2は、コイルを衝撃から保護することが意図される減衰装置としての役割を更に果たす、ひげぜんまいを取り付ける装置に関する。このため、ひげぜんまいは、異なる弾力を有する2つの部分からなる接続部材を含み、ひげぜんまいのコイルの外端の位置決めにより、これら部分を区切ることを可能にする。当該接続部材は、単一要素の形状を取り、遊び調節要素により作用されることは意図されない。
【0004】
特許文献3は、締結支持部に対してひげぜんまいを回転させる装置に関し、時計の拍を刻ませる操作は、締結支持部を回転させることではなく、ひげぜんまいを回転させることで直接実施されるよう構成される。ひげぜんまいは、接続部材を含む。てんぷ受を板ねじへねじ止めすることは、特に接続部材が板とてんぷ受との間でクランプされることから、ひげぜんまいの外端の、ムーブメントのフレームへの固着をもたらす。しかしながら、当該接続部材は、遊び調節要素により作用されることは意図されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2437126号明細書
【特許文献2】特開2016-173241号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第3032354号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来技術から既知のひげぜんまいを改善することを可能にする、ひげぜんまいを提供することである。本発明は特に、遊び調節要素により作用されるよう特に構成された、ひげぜんまいを提案する。当該ひげぜんまい構成は、特に、軸方向遊び調節要素の取り扱い中に、ばねのブレードのあらゆる変形のリスクを回避するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるひげぜんまいは、請求項1で定義される。
【0008】
本発明にかかるひげぜんまいの実施形態は、従属請求項2から6で定義される。
【0009】
本発明にかかる組立体は、請求項7で定義される。
【0010】
本発明にかかる組立体の実施形態は、従属請求項8から14で定義される。
【0011】
本発明にかかる時計は、請求項15で定義される。
【0012】
添付の図面は、本発明にかかる時計の2つの実施形態を、例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明にかかる時計の第一実施形態の模式図である。
【
図2】
図2は、てんぷ受が除去された、
図1と同様の図である。
【
図3】
図3は、
図1のIV-IV平面に沿った、第一実施形態の部分的断面図である。
【
図4】
図4は、ブランクの相対的位置決め用要素と一致した、
図1のIV-IV平面に沿った、第一実施形態の部分的詳細断面図である。
【
図5】
図5は、ブランクの相対的位置決め用要素と一致した、第一実施形態の部分図である。
【
図6】
図6は、本発明にかかる時計の第二実施形態の、部分的詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
時計400の第一実施形態を、
図1から5を参照して以下に詳細に説明する。
【0015】
時計400は、例えば小型時計、特に腕時計である。時計400は、自身を外部環境から保護するために時計ケース内に搭載されることに適した、組立体または時計ムーブメント300を含む。
【0016】
時計ムーブメント300は機械式ムーブメント、具体的には自動式ムーブメントであってもよく、ハイブリッドムーブメントであってもよい。
【0017】
時計ムーブメント300または組立体300は、
- ひげぜんまい1を含む、発振器100、具体的には、真10上に搭載されたてん輪9とひげぜんまい1を含む、発振器100と、
- 発振器100を旋回させる、第一ブランク5と
- 発振器100を旋回させる、第二ブランク6と
- を含む、組立体装置200と、
を含む。
【0018】
第一ブランク5と第二ブランク6は、組立体またはムーブメントのフレームの一部を形成する。フレームは、更に、てん輪9を保護する受8を含んでもよい。
【0019】
ひげぜんまい1は、
- ぜんまいブレード11と、
- ひげぜんまい1をフレームのブランク5、6、8へ締結する接続部材12と、
を含む。
【0020】
接続部材12は、
- 第一締結要素13aと、
- 第二締結要素13bと、
- 第一締結要素13aを第二締結要素13bへ接続する、第一アーム121と、
- 第一アーム121をぜんまいブレード11へ接続する、第二アーム122であって、第一接合区域122aにおいてぜんまいブレード11へ接続される、第二アーム122と、
を含む。
【0021】
ひげぜんまい1は、第二締結要素13bに対する第一締結要素13aの第一振幅での(軸A1に平行な軸方向、または平面P1または平面P2に垂直方向の)第一変位が、第二アームの、特に第一接合区域122aのあらゆる変位を生じさせない、または第二締結要素13bに対する第二アーム122の、特に第一接合区域122aの、第二振幅での第二変位を生じさせるように構成及びまたは配置され、第二振幅は、第一振幅の0.15倍または0.1倍または0.05倍より小さい。
【0022】
上述のように、ひげぜんまい1は、接続部材12が2つの別個のアーム121、122を有する点で優れている。第一及び第二アームのそれぞれは、ひげぜんまいのブレード11の剛性よりも実質的に大きい剛性を有する。第一アーム121の第一部分121aは、垂直または実質的に垂直方向に、即ち、
- ぜんまいブレード11がその中で延長する、第一平面P1、及びまたは
- 接続部材12がその中で延長する、第二平面P2、及びまたは
- 時計ムーブメント300がその中で延長する、第三平面P、
に垂直または実質的な垂直方向に、移動されることが可能である。
この結果、上述の第一振幅及び第二振幅は、
- ぜんまいブレード11がその中で延長する、第一平面P1、及びまたは
- 接続部材12がその中で延長する、第二平面P2、及びまたは
- 時計ムーブメント300がその中で延長する、第三平面P、
に垂直に測定される。
当該変位は、軸方向遊び調節要素により生じさせることができる。
【0023】
第二アーム122は、非可動である、または非常に少なく移動され、ひげぜんまいのブレード11の外端を、第一アーム121の第二部分121bへ接続する。
【0024】
ひげぜんまい1は、組立体装置200内へ組み込まれることが意図される。当該組立体装置は、少なくとも第二アーム122を、特に第二アーム122を第一アーム121の第二部分121bへ接合する接合区域123の下流で、拘束することが意図される。上述の、第一アーム121の第一部分121aへ作用可能な、軸方向遊び調節要素は、組立体装置200の一部を形成する。
【0025】
ひげぜんまい1の要素11と121、122は、それぞれ、好ましくはムーブメント300がその中で延長する平面Pに平行または実質的に並行な、平面P1及びP2内で延長する。第一方向はz1で、(第一方向に反対の)第二方向はz2で示される、垂直方向は、平面P、P1、及びP2に垂直である。
【0026】
このような組立体装置200は、第二アーム122の、そして即ちブレード11の、変位及びまたは変形を発生させることなく、第一アーム121の第一部分121aの、垂直または実質的に垂直方向への変位を許可するという利点を有する。このため、計時的性能は、発振器の遊び調節とは独立する。
【0027】
有利には、組立体装置200において、接続部材12は、第一ブランク5に、例えばてんぷ受5に対して、また第二ブランク6に、例えばムーブメント300の板6に対して、平面P内に位置決めされ固定される。接続部材12は、特に、第一及び第二ブランク5、6の間で、平面P内に位置決めされ固定される。
【0028】
てん輪-ひげぜんまい組立体100、特にてん輪-ひげぜんまい100の真10は、てんぷ受5と板6のそれぞれの軸受50と60により、旋回される。軸方向遊び調節要素は、第二ブランク6に対する第一ブランク5の変位を介して、特に板6に対して固定されたてんぷ受の第二部分5bに対する、てんぷ受の第一部分5aの垂直方向または当該方向へ実質的に並行な方向への変位を介して、軸受50を軸受60に対して垂直方向に移動させることが意図される。第一及び第二部分5a、5bは、例えば、
図1に示すように、てんぷ受5の長手方向端部5a、5bを形成してもよい。てんぷ受5は、
図1に示すように、直通部品である、即ちてん輪9の両側で第二ブランク6へ締結される。好ましくは、てんぷ受5の締結の軸は、てん輪-ひげぜんまい組立体100の、特に真10の軸A1に対して、約180°の角度に位置する。当該角度は、例えば、130°と180°の間であってもよい。
図1において、当該角度は約165°である。
【0029】
図1から5に示すひげぜんまい1の接続部材12の第一アーム121は、
- 角度範囲が、てん輪-ひげぜんまい組立体100の、特に真10の軸A1に対して100°程度である、リングの一部の形状の中央部分121cと、
- ここでは屈曲され、中央部分121cの両側に位置決めされる、部分121aと121bと、
が設けられる。
【0030】
部分121aと121bのそれぞれは、それぞれの端部の一方に、以下で詳細に説明する、第一ブランク5と第二ブランク6に対してひげぜんまいを締結し位置決めする、要素13a、13bを含む。
【0031】
第二アーム122は、軸A1に対して半径方向または実質的に半径方向に向けられた、直線状または実質的に直線状形状を有する。アーム122の第一端部122aは、ひげぜんまいのブレード11に隣接し、接続部材12をブレード11へ接合する接合区域122aを形成し、アーム122の第二端部122bは、第一アーム121の第二部分121bに隣接し、第二アーム122を第一アーム121へ接合する接合区域123を形成する。当該第一実施形態において、第二アーム122を第一アーム121へ接合する接合区域123は、締結及び位置決め要素13bと一致して配置される。その結果、軸A1に対して半径方向または実質的に半径方向に向けられたスロット124は、アーム121と122とを、特に第二部分121bと第二アーム122とを、分離可能である。
【0032】
締結及び位置決め要素13a、13bは、ここでは、平面P内で第二ブランク6に対して第一ブランク5を位置決め(及び締結)することを可能にすることも意図される、それぞれ位置決め要素7a、8bと相互作用することが意図される、開口の、特に貫通開口の形状を取る。
【0033】
ここでは、各位置決め要素7a、7bは、それぞれ第二ブランク6の開口61a、61b内に、特に各位置決め要素7a、7bの打ち込み部分74a、74bにおいて、打ち込まれる、ねじ足の形状を取る。
【0034】
てん輪-ひげぜんまい組立体100がムーブメント300に搭載されると、ねじ足7a、8bは、それぞれの開口13a、13b内に収容されることが意図される。このため、各ねじ足7a、7bは、より具体的には、ひげぜんまい1の外端を、特に接続部材12を、てんぷ受5及び板6に対して正確に位置決めすることが意図される、案内部分71a、71bを含む。
【0035】
有利には、案内部分71a、71bの形状は、組立間隙を除き、開口13a、13bの形状に対応する。好ましくは、案内部分71a、71bは、円筒状または少なくとも部分的に円筒状である。好ましくは、てん輪-ひげぜんまい組立体100の組立中の過剰固定性のあらゆるリスクを克服するため、及びまたはねじ足7aに対して実質的に垂直方向の開口13aの変位を可能にするため、開口13bは円形であり、開口13aは、特に開口13bの中心に向かう方向に、長円である。
【0036】
第一ブランク5はまた、第一ブランク5の部分5a、5bにそれぞれ配置された、ねじ足7a、7bを受けることが意図される、貫通開口51a、51を含む。各ねじ足7a、7bは、より具体的には、それぞれの開口51a、51bを用いて、第一ブランク5を平面Pに正確に位置決めすることが意図される、案内部分72a、72bを含む。てん輪-ひげぜんまい組立体100の組立中の過剰固定性のあらゆるリスクを克服するため、またはねじ足7aに対して実質的に垂直方向の部分5aの変位を可能にするため、開口51aもまた、特に開口51bの中心に向かう方向に、長円であってもよい。
【0037】
組立体装置200は、任意で、てん輪9を保護する受8を含んでもよい。この受は、板6上に(少なくとも部分的に)配置される。有利には、受は、ねじ足7a、7bを用いて、板6に対して平面P内に位置決めされる。このため、受8は、てん輪保護受8の案内部分73a、73bに、ねじ足7a、7bを受けることが意図される、貫通開口81a、81bを含む。てん輪-ひげぜんまい組立体100の組立中の過剰固定性のあらゆるリスクを克服するため、またはねじ足7aに対して実質的に垂直方向の開口81aの変位を可能にするため、開口81aもまた、特に開口81bの中心に向かう方向に、長円であってもよい。このように、組立体は第三ブランク8を含み、第三ブランクは、例えば、てん輪保護受8である、及びまたは第三ブランクは、例えば、第一及び第二ブランク5、6の間に介在されるまたは配置される。
【0038】
装置200が組み立てられると、ひげぜんまいの接続部材12は、第一ブランク5、典型的にはてんぷ受5と、第二ブランク6、典型的には板6との間に配置される。例えば、より具体的には、ひげぜんまいの接続部材12は、てんぷ受5とてん輪保護受8との間に配置されてもよい。特に、ひげぜんまい1の、より具体的には接続部材12の、上面112は、てんぷ受5の下部支持表面52に対して接触し、ひげぜんまい1の、より具体的には接続部材12の、下面111は、てん輪保護受8の上部支持表面82に対して重みをかける。ひげぜんまい1は、特に接続部材12は、このように、第一ブランク5と第二ブランク6の間にクランプ(固定)される。特に、第一アーム121を第二アーム122へ接合する第二接合区域123は、第一ブランク5と第二ブランク6の間に保持される、特に介在して保持されるまたはクランプされる。
【0039】
てん輪-ひげぜんまい組立体100は、特にひげぜんまい1は、ねじ足7a、7bのそれぞれのねじ穴75a、75bへねじ込まれることが意図される、ねじ91a、91bを用いて、てんぷ受5が板6へ締結されると、ムーブメント300に締結される。ひげぜんまい1は、特に接続部材12は、このように第一ブランク5と第二ブランク6の間で、位置決めされクランプされる。
【0040】
このため、各ねじ足7a、7bは、様々な機能を組み合わせるもので、
- ひげぜんまい1を案内する、第一部分71a、71bと、
- てんぷ受5を案内する、第二部分72a、72bと、
- てん輪保護受8を案内する、第三部分73a、73bと、
- 板6へ打ち込まれる、部分74a,74bと、
- ねじ91a、91bを受けることが意図される、ねじ穴75a、75bと、
を含む。
【0041】
これら案内部分は、好ましくは、円筒状または少なくとも部分的に円筒状である。有利には、第二案内部分72a、72bの直径は、第一案内部分71a、71bの直径より小さい。有利には、第一案内部分71a、71bの直径は、第三案内部分73a、73bの直径より小さい。
【0042】
当該組立体装置200の実施形態において、軸方向遊び調節要素は、てんぷ受5の第一部分5aに配置される。軸方向遊び調節要素は、
- ねじ穴部分921を有するナット92を含む、第一調節要素92と、
- ねじ足7aのねじ山部分76aを含む、第二調節要素76aと、
を含み、第一及び第二要素は、ねじ込みにより、互いに相互作用する。
【0043】
接続部材12のアーム121の部分121aが、てん輪保護受8とナット92を用いて、てんぷ受5と板6の間で平面P内にまたは実質的に平面P内に位置決めされ固定されるよう、ナット92の上面は、てん輪保護受8の下面83と接触する。この場合、アーム121の部分121aは、てんぷ受5とてん輪保護受8との間でクランプされ、てん輪保護受8は、ナット92上に直接配置される。
【0044】
ナット92は、好ましくは、調節ナット93の歯付部分932と噛み合いにより相互作用することが意図される、歯付部分922を含む。当該ナットは、スクリュードライバといった時計製造工具により回転されることが可能な、構造931を、特にねじ頭931を含む。ねじ91aが除去されると、ナット93の回転は、ナット92のねじ足7a周りの回転と、当該ナット92の垂直方向への並進とを生じさせ、これはてん輪保護受8と接続部材12のアーム121の部分121aを用いて、より具体的には第一締結要素13aを用いて、てんぷ受5の第一部分5aの垂直または実質的に垂直変位を発生させることを可能にする。好ましくは、締結要素13aは、位置決め要素7aと相互作用する、及びまたはナット92上に載置される。
【0045】
加えて、接続部材12の第二アーム122は、第一ブランク5と、具体的にはてんぷ受5と、第二ブランク6と、具体的には板6との間でクランプされる。より具体的には、接続部材12の第二アーム122は、てんぷ受5の第二部分5bとてん輪保護受8との間でクランプされる。しかしながら、ねじ足7bは、軸方向遊び調節要素を形成しない。このため、てんぷ受5、アーム122、それにてん輪保護受8は、特に垂直方向に、板6に対して固定される。このように、ブランク5、6、及び8は、ムーブメント300のフレームに対して固定された第二アーム122の固定接続を定義する。当該固定接続は、より具体的には、
図5の一点鎖線曲線Eにより模式的に区切られた支持区域を定義する。
【0046】
組立体装置200の当該実施形態において、アーム121の第二部分121bはまた、第一ブランク5と、具体的にはてんぷ受5と、第二ブランク6と、具体的には板6との間でクランプされる。より具体的には、アーム121の第二部分121bは、てんぷ受5と、特に第二部分5bと、てん輪保護受8との間でクランプされる。このように、ブランク5、6、及び8もまた、ムーブメント300のフレームに対して固定された、アーム121の第二部分121bの固定接続を定義する。当該固定接続は、より具体的には、
図5の一点鎖線曲線Eにより模式的に区切られた支持区域において定義される。
【0047】
このように、アーム122と、アーム121の第二部分121bは、ムーブメントのフレームに対して固定される。両者は、曲線Eにより模式的に区切られる支持区域において、ブランク5、6、及び8により拘束される。具体的には、アーム122と、アーム121の第二部分121bとは、アーム122をアーム121の第二部分121bへ接続する、接合区域123の上流で、拘束される。このように、アーム122は、アーム121の、特にアーム121の第二部分121bのあらゆる変位及びまたは変形により影響されない。
【0048】
本明細書の文脈において、「上流」及び「下流」の概念は、ねじ足7a、7bのそれぞれの中心を、即ち開口13a、13bの中心を通過し、ねじ足7aからねじ足7bに向かう、即ち開口13aから開口13bに向かう、ベクトルV(
図1、5)に関して決定される。ベクトルVは、具体的には軸A1からねじ足7bまたは開口13bに向かい離れる。ベクトルVは、下流を指す。
【0049】
組立体装置200の当該特定の実施形態において、接合区域123は、アーム121の第二部分121bの一端と、第二アーム122の一端122bを形成する、接続部材12の締結要素13bと一致して配置される。当該接合区域123は、スロット124の長手方向端部124aと隣接する素材を、少なくとも部分的に含む。アーム122とアーム121の第二部分121bとは、このように、スロット124の長手方向端部124aの上流で拘束される(
図5)。
【0050】
このため、第一アーム121の第一部分121aの垂直方向への変位は、第二アーム122に、即ちひげぜんまいのブレード11になんら影響を及ぼさない。ブレード11は、第二アーム122を用いて、ひげぜんまい1の残部に接続される。このため、このような設計は、発振器100の軸方向遊びを調整する際に、ひげぜんまい1のブレード11の形状完全性を保護することを可能にする。
【0051】
本明細書中、接続部材12の剛性は、特にアーム121と122の剛性は、ひげぜんまいのブレード11の剛性よりも実質的に大きい。特に、
- 平面P1内に位置し、ベクトルVに垂直な軸周りの屈曲での、接続部材12の、特にアーム121と122の、全体剛性は、典型的には、ブレード11の全体剛性(軸方向遊び調節要素に作用することにより実施される遊び調節中の曲げ応力)より少なくとも10倍大きい、及びまたは
- 平面Pに垂直な軸周りの屈曲での、接続部材12の、特にアーム121と122の、全体剛性は、典型的には、ブレード11の全体剛性より1000倍大きい。
【0052】
時計400’の第二実施形態を、
図6を参照して以下に詳細に説明する。
【0053】
時計400’は、例えば小型時計、特に腕時計である。時計400’は、自身を外部環境から保護するために時計ケース内に搭載されることに適した、組立体または時計ムーブメント300’を含む。
【0054】
時計ムーブメント300’は機械式ムーブメント、具体的には自動式ムーブメントであってもよく、ハイブリッドムーブメントであってもよい。
【0055】
第二実施形態において、要素の符号は、同一または類似機能を実施する第一実施形態の要素の符号に基づくもので、「’」が付記される。
【0056】
好ましくは、第二実施形態は、接続部材12’の第一アーム121’と第二アーム122’の配置及びまたは構成のみにおいて、第一実施形態から異なる。
【0057】
当該第二実施形態において、第二アーム122’を第一アーム121’へ接合する接合区域123’は、アーム121’の第二部分121b’の端部と、第二アーム122’の端部と、異なる位置に配置される。
【0058】
例として、
図6は、締結要素13b’と、接続部材12’をブレード11’へ接合する接合122a’との間の実質的に半分の距離に配置される、第二アーム122’と第一アーム121’の間の接合区域123’を含む、ひげぜんまい1’を実施する、代替的組立体装置200’を模式的に図示する。加えて、好ましくは、時計のフレームに固定された硬質保持板99’は、例えば曲線E’で区切られた軸受区域において、第二アーム122’に重みをかけてもよい。当該板は、第二アーム122’を、より一般的には接続部材12’を、フレームに対して固定することに寄与可能である。
【0059】
接合区域123’は、例えば、保持板99’と、他の締結要素を含む第一アーム121’の他端と反対の、第一アーム121’の一端121b’を形成する、ひげぜんまい1’の締結要素13b’との間に介在されてもよい。
【0060】
実施形態または変形例に関わらず、組立体装置200;200’は、てんぷ受5の第二部分5bに、発振器の軸方向遊びを調節する追加要素を含むことができる。例えば、こうした追加要素は、
- ナット92に類似の、ナットと、
- ねじ足7bと、
を含んでもよい。
具体的には、この場合、ブランク5、6、及び8は、部分5bにおいてムーブメント300;300’のフレームに対して、垂直方向に可動な、第二アーム122;122’の固定接続を定義する。
【0061】
実施形態または変形例に関わらず、解決策の単純化されたバージョンにおいて、てん輪保護受8を除去することも可能である。この場合、接続部材12の表面111は、ナット92を直接押圧する。
【0062】
実施形態または変形例に関わらず、ねじ足7a、7bを、ピンと交換することも可能であり、この場合てんぷ受及び存在する場合にはてん輪保護受は、それらを通過し、板に直接ねじ込まれる、ねじにより締結されてもよい。
【0063】
実施形態または変形例に関わらず、第一アームの長さの第二アームの長さに対する比率は、有利には2から10の間、または3から8の間である。
【0064】
実施形態または変形例に関わらず、第一アーム121;121’を第二アーム122;122’に接合する接合区域123;123’は、有利には、
- 第一締結要素13a;13a’から点または境界を隔てる距離の、
- 第二締結要素13b’;13b’から点または境界を隔てる距離に対する比率が、4より大きい、または8より大きくなる、
点または境界に配置される。
【0065】
図1から6に示す実施形態において、ひげぜんまいは、一体である。換言すれば、ブレード11、接続部材12、およびひげ玉14は、一体に形成される。しかしながら、代替として、実施形態または変形例に関わらず、ひげぜんまいは、組立の結果であってもよく、例えば接続部材12がブレード11に取り付けられてもよい。
【0066】
図示する実施形態において、ひげぜんまいは、
- その方位に関わらず、単結晶シリコン、
- 多結晶シリコン、
- 非晶質シリコン、
- 非晶質二酸化ケイ素、
- ドープのタイプやレベルに関わらず、ドープシリコン、または多孔質シリコン、
- 炭化ケイ素、
- ガラス、
- 工業用セラミック、または
- クオーツ、
を全体にまたは部分的に含んでもよい。
代替として、ひげぜんまいは、金属または金属合金、特にNb-Zr合金製であってもよい。
【0067】
本明細書中、「アーム」は、長さ、幅、及び厚さを有する形状を意味するために与えられ、長さは他の寸法(幅と厚さ)の最大の寸法よりも少なくとも2倍大きい。長さは、形状が非直線カーブに沿って延長する場合、適応可能な場合、当該非直線カーブに沿って測定される。
【0068】
上述の解決策は、発振器の軸方向遊びを調節する際にひげぜんまいのブレードの形状完全性を保護することを可能にする、特定のひげぜんまい構成を有する。当該構成は、ひげぜんまいの外端が、特にひげぜんまいのブレードに固着された接続部材が、軸方向遊び調節要素により作用可能な組立体装置を用いて、発振器が組み立てられた場合に、特に適している。
【0069】
上述の解決策は、軸方向遊び調節要素が設けられた組立体装置の最適な実施を可能にする、ひげぜんまい構成を有する。
【0070】
換言すれば、上述の解決策は、それぞれがひげぜんまいのブレードの剛性よりも実質的に高い剛性を有する2つの別個のアームを含むという特定の特徴を有する接続部材が設けられたひげぜんまいに基づくもので、第一アームの第一部分は、垂直または実質的に垂直方向に移動可能であり、非可動第二アームは、ひげぜんまいのブレードの外端を第一アームの第二部分へ接続する。このようなひげぜんまいは、有利には、少なくとも第二アームを、特に第二アームを第一アームの第二部分へ接合する接合区域の上流で、拘束することが意図され、第一アームの第一部分に作用することができる軸方向遊び調節要素を含む、発振器の組立体装置に組み込まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 ひげぜんまい
5 第一ブランク
6 第二ブランク
7a 位置決め要素
7b 位置決め要素
8 第三ブランク
9 てん輪
10 真
11 ブレード
12 接続部材
13a 第一締結要素
13b 第二締結要素
100 発振器
121 第一アーム
122 第二アーム
122a 第一接合区域
123 第二接合区域
200 組立体装置
300 組立体
400 時計
【外国語明細書】