(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105204
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】インク組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
C09D 11/106 20140101AFI20240730BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20240730BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20240730BHJP
【FI】
C09D11/106
C09D11/00
C09D11/037
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008160
(22)【出願日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2023009345
(32)【優先日】2023-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】田中 友揮
(72)【発明者】
【氏名】黒田 雄介
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AD07
4J039AD10
4J039AE11
4J039BA06
4J039BC07
4J039BC08
4J039BC09
4J039BC10
4J039BC13
4J039BC14
4J039BC15
4J039BD02
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039BE25
4J039EA33
4J039EA36
4J039EA43
4J039FA01
4J039FA02
4J039FA04
4J039GA11
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】金属光沢性に優れたインク組成物を提供する。
【解決手段】銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)、ポリビニルアセタール系樹脂を含む樹脂成分(B)および表面調整剤(C)とを含むインク組成物を調製する。前記表面調整剤(C)が、(メタ)アクリル系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤およびフッ素系表面調整剤からなる群より選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。前記表面調整剤(C)の割合は、前記複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して0.1~30質量部であってもよい。前記ポリビニルアセタール系樹脂はポリビニルブチラール系樹脂であってもよい。前記樹脂成分(B)は、第2樹脂をさらに含んでいてもよい。前記第2樹脂は、ポリエステルポリオール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂およびセルロース系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)、ポリビニルアセタール系樹脂を含む樹脂成分(B)および表面調整剤(C)を含むインク組成物。
【請求項2】
前記表面調整剤(C)が、(メタ)アクリル系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤およびフッ素系表面調整剤からなる群より選択された少なくとも1種を含む請求項1記載のインク組成物。
【請求項3】
前記表面調整剤(C)の割合が、前記複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して0.1~30質量部である請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項4】
前記ポリビニルアセタール系樹脂がポリビニルブチラール系樹脂である請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項5】
前記樹脂成分(B)が第2樹脂をさらに含み、かつ前記第2樹脂が、ポリエステルポリオール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂およびセルロース系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種である請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項6】
前記樹脂成分(B)の割合が、前記複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して10~50質量部である請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項7】
溶剤(D)をさらに含み、かつ前記溶剤(D)が、アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびジアルキレングリコールモノアルキルエーテルからなる群より選択された少なくとも1種を含む請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項8】
請求項1または2記載のインク組成物を基材の上に塗布する塗布工程と、前記インク組成物で形成された塗膜を乾燥させて金属光沢膜を得る乾燥工程とを含む金属光沢膜の製造方法。
【請求項9】
銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)と、ポリビニルアセタール系樹脂を含む樹脂成分(B)と、表面調整剤(C)とを含む金属光沢膜。
【請求項10】
被加飾体である基材と、この基材の上に積層された請求項9記載の金属光沢膜とを含む装飾体。
【請求項11】
被加飾体である基材の上に、請求項9記載の金属光沢膜を積層し、前記基材を装飾する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の被加飾体をメタリック加飾するために有用なインク組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
メタリック加飾は、例えば、自動車の内装・外装部品、エンブレム、電子機器、化粧品の容器、ゴルフクラブのシャフトなどの幅広い分野で必要とされており、高級感を得るために、金属に匹敵する程の高度な金属光沢が求められている。特に、銀は光の反射率が高いことから美しい金属光沢(メタリック性、光輝性、鏡面性)を有し、高度な意匠性に好適な金属として期待されている。
【0003】
被加飾体に金属光沢を付与するための手法としては、箔押し、蒸着、銀鏡反応を利用した銀鏡メッキ、クロムメッキのほか、光輝顔料としてアルミニウム顔料を用いたインクや、金属ナノ粒子を含むインクによる印刷や塗布によって、基材に金属光沢層を形成する方法が挙げられる。
【0004】
箔押し、蒸着、銀鏡メッキ、クロムメッキは、金属に近い金属光沢を付与することができるが、製造工程が複雑であることや、専用の設備が必要であることから製造コストの面で不利な方法である。また、銀鏡メッキは、メッキ特有の白化、クラック、発色のムラの発生や、メッキを施す部分以外の部分がメッキされてしまうことによる不良率も高い。さらに、クロムメッキは環境に対する負荷が大きい。これらの手法に対して、インクを用いた印刷や塗布などの方法は、製造コストが安価で、適用できる基材も幅広く選択できる。
【0005】
インクの中でも、アルミニウム顔料(光輝顔料)を用いたインクよりも、金属ナノ粒子を含むインクによる金属光沢層の方が、金属光沢に優れている。
【0006】
特開2009-227736号公報(特許文献1)には、金属ナノ粒子と分散剤とで形成された金属コロイド粒子;および溶媒(B)を含み、前記分散剤がカルボキシル基を有する有機化合物および高分子分散剤を含むインクジェット印刷用インキ組成物が記載されている。この文献には、バインダー樹脂(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子など)などの添加剤を添加してもよいことも記載されている。
【0007】
特開2017-149942号公報(特許文献2)には、銀ナノ粒子と、カルボキシル基又はその塩を有する分散剤と、水性溶媒とを含み、被印刷体に印字または印刷するためのインキ組成物であって、固形分換算で、銀ナノ粒子100質量部に対して、被膜形成能を有する水溶性または水分散性高分子を1~30質量部の割合で含むインキ組成物が開示されている。
【0008】
特開2018-153965号公報(特許文献3)には、基材と、前記基材上に形成された金属光沢層とを有する画像形成物において、前記金属光沢層は、金属ナノ粒子と、前記金属ナノ粒子の表面に吸着した高分子分散剤と、バインダー樹脂と、を含み、前記高分子分散剤は、酸価が1以上80以下の化合物であり、前記バインダー樹脂は、SP値が23.0以上26.0以下の樹脂である画像形成物が開示されている。この文献には、前記バインダー樹脂、けん化度が72以上85以下のポリビニルアルコールが記載されている。
【0009】
特開2018-145319号公報(特許文献4)には、水、沸点が250℃以下の水溶性有機溶剤、光輝性顔料、及びビニルポリマーを含む第一の樹脂粒子、ならびに第二の樹脂粒子を含有するインクが開示されている。この文献には、光輝性顔料として銀コロイド粒子分散液が記載されている。
【0010】
特開2019-116522号公報(特許文献5)には、粒子径Dav90が45nm以下である銀粒子、ポリオール、シリコーン系界面活性剤、樹脂を含むインクが開示されている。この文献には、前記インクが水溶性樹脂または水分散性樹脂を含むこと、シリコーン系界面活性剤としてポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が好ましいことが記載されている。
【0011】
特開2017-2219号公報(特許文献6)には、アルコール溶媒中に高分子分散剤を溶解させるとともに、酸化銀および炭酸銀から選択される少なくとも1種の銀化合物を分散させたアルコール溶液を用い、前記アルコール溶液中に超音波を照射することにより得られた、銀ナノ粒子の分散溶液からなる銀鏡膜層形成用組成液が開示されている。
【0012】
特開2022-142769号公報(特許文献7)には、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子、ポリビニルアセタール系樹脂を含む樹脂成分および溶剤を含むインク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009-227736号公報
【特許文献2】特開2017-149942号公報
【特許文献3】特開2018-153965号公報
【特許文献4】特開2018-145319号公報
【特許文献5】特開2019-116522号公報
【特許文献6】特開2017-2219号公報
【特許文献7】特開2022-142769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1~7に開示されている金属ナノ粒子を用いたインクでは、銀光沢が十分ではなかった。さらに、前記インクでは、バインダーなどの樹脂量を多くすると金属光沢(銀光沢)が得られなくなるため、高い金属光沢を得るためには樹脂量を極力少なくする必要があった。樹脂量を少なくすると、基材との密着性、耐擦過性が低下するため、上塗り層、下塗り層との併用が必要であった。すなわち、金属光沢性と密着性とはトレードオフの関係にあるため、簡便な方法で両特性を両立させるのは困難であった。
【0015】
従って、本発明の目的は、銀光沢などの金属光沢に優れたインク組成物およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子と、ポリビニルアセタール系樹脂と、表面調整剤とを組み合わせることにより、銀光沢などの金属光沢を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明の態様[1]としてのインク組成物は、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)、ポリビニルアセタール系樹脂を含む樹脂成分(B)および表面調整剤(C)を含む。
【0018】
本発明の態様[2]は、前記態様[1]において、前記表面調整剤(C)が、(メタ)アクリル系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤およびフッ素系表面調整剤からなる群より選択された少なくとも1種を含む態様である。
【0019】
本発明の態様[3]は、前記態様[1]または[2]において、前記表面調整剤(C)の割合が、前記複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して0.1~30質量部である態様である。
【0020】
本発明の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様において、前記ポリビニルアセタール系樹脂がポリビニルブチラール系樹脂である態様である。
【0021】
本発明の態様[5]は、前記態様[1]~[4]のいずれかの態様において、前記樹脂成分(B)が第2樹脂をさらに含み、かつ前記第2樹脂が、ポリエステルポリオール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂およびセルロース系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種である態様である。
【0022】
本発明の態様[6]は、前記態様[1]~[5]のいずれかの態様において、前記樹脂成分(B)の割合が、前記複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して10~50質量部である態様である。
【0023】
本発明の態様[7]は、前記態様[1]~[6]のいずれかの態様において、溶剤(D)をさらに含み、かつ前記溶剤(D)が、アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびジアルキレングリコールモノアルキルエーテルからなる群より選択された少なくとも1種を含む態様である。
【0024】
本発明には、態様[8]として、前記態様[1]~[7]のいずれかの態様のインク組成物を基材の上に塗布する塗布工程と、前記インク組成物で形成された塗膜を乾燥させて金属光沢膜を得る乾燥工程とを含む金属光沢膜の製造方法も含まれる。
【0025】
本発明には、態様[9]として、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)と、ポリビニルアセタール系樹脂を含む樹脂成分(B)と、表面調整剤(C)とを含む金属光沢膜も含まれる。
【0026】
本発明には、態様[10]として、被加飾体である基材と、この基材の上に積層された前記態様[9]の金属光沢膜とを含む装飾体(メタリック加飾体またはメタリック調成形体)も含まれる。
【0027】
本発明には、態様[11]として、被加飾体である基材の上に、前記態様[9]の金属光沢膜を積層し、前記基材を装飾(またはメタリック加飾)する方法も含まれる。
【0028】
本願において、用語「インク」は「インキ」と同義に用いるとともに、「インク組成物」は「塗布または塗工組成物」と同義で用いる。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子、ポリビニルアセタール系樹脂および表面調整剤が組み合わされているため、金属光沢(特に、銀光沢)を向上できる。さらに、銀を含む金属を偏在させることにより、金属光沢を維持しつつ、樹脂成分を増量できるため、金属光沢と密着性および耐擦過性とを両立できる。詳しくは、被加飾体に対して、上塗り層や下塗り層などを形成することなく、高い密着性で金属光沢膜を形成できるため、簡便な方法で密着性を向上でき、耐擦過性も向上できる。さらに、膜表面に銀を含むナノ粒子で密な層を形成できるため、光の遮蔽性(非透過性)も大きく、金属光沢(鏡面)を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施例5で得られた銀光沢膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[インク組成物]
本発明のインク(またはインキ)組成物(またはコーティング組成物)において、樹脂成分として、ポリビニルアセタール系樹脂(特に、ポリビニルブチラール系樹脂)を含むことにより、高度な金属光沢、特に、銀光沢(鏡面)が発現するメカニズムは、以下のように推定できる。
【0032】
すなわち、本発明のインク組成物では、ポリビニルアセタール系樹脂の分子構造および表面調整剤の作用が影響していると推定できる。詳しくは、ポリビニルアセタール系樹脂は、分子鎖に疎水基(ブチラール基などのアセタール基、アセチル基)と親水基(水酸基)とを有するため、複合体ナノ粒子が疎水基または親水基のいずれかに偏在し易い構造を有している。さらに、このような構造を有するポリビニルアセタール樹脂に対して、表面調整剤が複合体ナノ粒子の偏在を促進することにより、ポリビニルアセタール系樹脂の分子鎖上で、相対的に複合体ナノ粒子を多く含む部分と、少ない部分とが生じる。すなわち、ポリビニルアセタール系樹脂の分子鎖上で、複合体ナノ粒子が密な相と疎な相との相分離構造に類似した構造が生じている。その結果、相対的に複合体ナノ粒子を多く含む相(遮蔽性の高い相)が光を遮蔽する(透過させない)役割を果たし、高度な金属光沢が発現していると推定できる。
【0033】
一方、樹脂成分が、第1樹脂としてのポリビニルアセタール系樹脂と第2樹脂とを含む場合は、樹脂同士の相分離構造が影響していると推定できる。すなわち、ポリビニルブチラール系樹脂などのポリビニルアセタール系樹脂と、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、セルロース系樹脂などの第2樹脂とを組み合わせた場合は、第1樹脂と第2樹脂とが相分離し、さらに表面調整剤の作用によって相分離が促進されることにより、複合体ナノ粒子はそのいずれかの相に偏在する。ポリビニルアセタール系樹脂単独での分子鎖上での相分離に比べて、2種類の樹脂による相分離では、相対的に複合体ナノ粒子を多く含む相のサイズが大きくなる。そのため、ポリビニルアセタール系樹脂を単独で使用した場合に比べて、銀を含む金属に対する樹脂量を増加しても光の遮蔽効果(非透過性)が得られ、高度な金属光沢が得られる。そのため、第1樹脂と第2樹脂とを組み合わせる場合は、樹脂量を多く配合でき、密着性、耐擦過性をより向上できる。
【0034】
これに対して、特許文献1~6などに記載の従来のインク組成物で高度な金属光沢が発現できない原因は、バインダー成分が銀粒子を偏在させる構造を有しておらず、銀粒子が均一に分布しているためであると推定できる。さらに、特許文献1~6のインク組成物では、樹脂成分の割合が少ないと(銀を含む金属に対する樹脂成分の量が約10質量%以下になると)、光沢性は高いが、密着性、耐擦過性が低くなり、上塗り層および下塗り層が必要になる場合が多かった。一方、樹脂成分の割合が多いと(銀を含む金属に対する樹脂成分の量が約10質量%以上になると)、密着性および耐擦過性は向上するが、光沢性は低下した。そのため、特許文献1~6の金属光沢性インクでは、銀を含む金属に対する樹脂量を少量に留める必要があり、銀を含む金属に対する樹脂成分の量は、多くても10質量%程度であり、シンプルな構造で密着性および耐擦過性を向上することはできなかった。一方、特許文献7のインク組成物では、バインダー成分は銀粒子を偏在させる構造を有しているものの、バインダー成分の構造や組み合わせのみでは、金属光沢を高度に発現させることはできなかった。
【0035】
(A)複合体ナノ粒子
本発明のインク組成物(メタリックインク組成物)は、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)を含む。
【0036】
前記複合体ナノ粒子(A)において、銀を含む金属(銀含有金属)と保護コロイドとの複合形態は、特に限定されず、銀含有金属ナノ粒子の表面に付着または配位した複合体であってもよく、銀含有金属ナノ粒子の表面を被覆した複合体であってもよい。銀含有金属ナノ粒子は、保護コロイド(または分散剤)に対する配位性が高いため、保護コロイドが銀含有金属ナノ粒子の表面に配位することにより、銀含有金属ナノ粒子を被覆した複合体であってもよい。銀含有金属ナノ粒子は、保護コロイドで複合化されていると、銀含有金属ナノ粒子の分散安定性を向上できるとともに、樹脂成分との親和性を調整し易くなり、相分離構造を形成できる。
【0037】
(銀含有金属ナノ粒子)
銀含有金属ナノ粒子はナノメーターサイズである。銀含有金属ナノ粒子の数平均粒径(数平均一次粒径)は、例えば1~100nm(例えば2~80nm)、好ましくは3~70nm(例えば4~50nm)、さらに好ましくは5~40nm(特に10~30nm)である。
【0038】
銀含有金属ナノ粒子は、前記平均粒径を有するとともに、200nm以下の範囲で広い粒度分布を示すが、200nmを超える粗大粒子を殆ど含んでいなくてもよい。そのため、前記銀含有金属ナノ粒子の最大一次粒径は、例えば、200nm以下、好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
【0039】
銀含有金属ナノ粒子において、一次粒子径が100nm以上の粒子の割合は、質量基準で、例えば10質量%以下(例えば0~8質量%)、好ましくは5質量%以下(例えば0.01~3質量%)、さらに好ましくは1質量%以下(例えば0.02~0.5質量%)である。
【0040】
なお、本願において、銀含有金属ナノ粒子の粒径および粒度分布は、透過型電子顕微鏡を用いて測定でき、平均粒径は、任意の10個の平均値として示す。
【0041】
(銀を含む金属)
銀を含む金属(銀含有金属)は、銀単体であってもよく、銀と他の金属との合金であってもよい。他の金属としては、銀と合金化できれば特に限定されないが、例えば、Cr、Mo、W、Ni、Pd、Pt、Cu、Au、Zn、In、Sn、Pbなどが挙げられる。これら他の金属は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これら他の金属のうち、Cuが好ましい。
【0042】
銀含有金属のうち、銀の割合は、銀含有金属中50質量%以上であってもよく、例えば90質量%以上、好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、より好ましくは99質量%以上であり、最も好ましくは100質量%(銀単体)である。銀の割合が低すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0043】
銀含有金属が銀と他の金属(特に銅)との組み合わせである場合、他の金属の割合は、銀100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、好ましくは0.03~5質量部、さらに好ましくは0.05~3質量部である。
【0044】
(保護コロイド)
保護コロイドは、分散剤であってもよく、非揮発性分散剤である場合が多い。特に、保護コロイドは、カルボキシル基またはその誘導体基を有する高分子分散剤を含むのが好ましい。なお、本願において、カルボキシル基には、酸無水物基の形態であるカルボキシル基も含まれる。
【0045】
前記高分子分散剤(または高分子型分散剤)は、少なくともカルボキシル基を有し、銀含有金属ナノ粒子を分散可能であればよく、両親媒性の高分子分散剤(またはオリゴマー型分散剤)であってもよい。
【0046】
前記高分子分散剤としては、通常、塗料、インキ分野などで着色剤の分散に用いられている高分子分散剤が例示できる。代表的な高分子分散剤(両親媒性の高分子分散剤)としては、親水性モノマーで形成された親水性ユニット(または親水性ブロック)を含む水溶性または水分散性樹脂が含まれる。
【0047】
前記親水性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有単量体((メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸またはその酸無水物など)、スルホ基を有する単量体(スチレンスルホン酸など)、ヒドロキシル基含有単量体(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルフェノールなど)などの付加重合性モノマー;エチレンオキシドなどの縮合重合性モノマーなどが例示できる。前記縮合重合性モノマーは、ヒドロキシル基などの活性水素(例えば、前記ヒドロキシル基)との反応により、親水性ユニット(またはブロック)を形成していてもよい。親水性モノマーは、単独でまたは2種以上組み合わせて親水性ユニット(またはブロック)を形成していてもよい。好ましい親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、エチレンオキシドである。
【0048】
なお、前記高分子分散剤は、少なくともカルボキシル基を有していればよく、前記親水性モノマーの官能基、例えば、酸基(スルホ基)、ヒドロキシル基を有していてもよい。これらの官能基は、単独でまたは2種以上組み合わせて高分子分散剤に導入してもよい。
【0049】
高分子分散剤は、少なくとも親水性ユニット(または親水性ブロック)を含んでいてもよく、親水性モノマーの単独または共重合体(例えば、ポリアクリル酸またはその塩など)であってもよく、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマーであってもよい。疎水性モノマー(非イオン性モノマー)としては、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-フェニルエチルなどの(メタ)アクリル酸アラルキルなど]などの(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;α-C2-20オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセンなど)などのオレフィン系モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル系モノマーなどの付加重合性モノマー;プロピレンオキシドなどのC3-6アルキレンオキシドなどの縮合重合性モノマーが挙げられる。疎水性モノマーは、単独でまたは2種以上組み合わせて疎水性ユニットを構成していてもよい。
【0050】
コポリマー(例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー)の高分子分散剤は、ランダムコポリマー、交互共重合体、ブロックコポリマー(例えば、親水性モノマーで構成された親水性ブロックと、疎水性モノマーで構成された疎水性ブロックとで構成されたコポリマー)、櫛型コポリマー(または櫛型グラフトコポリマー)などであってもよい。前記ブロックコポリマーの構造は、特に限定されず、ジブロック構造、トリブロック構造(ABA型、BAB型)などであってもよい。また、前記櫛型コポリマーにおいて、主鎖は、前記親水性ブロックまたは前記疎水性ブロックで形成してもよく、親水性ブロックおよび疎水性ブロックで形成してもよい。親水性ブロックおよび疎水性ブロックのブロック共重合体は、金属光沢性も向上できる。
【0051】
なお、前記のように、親水性ユニットは、親水性ブロック(ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシドなど)で形成することもできる。親水性ブロック(ポリアルキレンオキシドなど)と疎水性ブロック(ポリオレフィンブロックなど)とは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合などの連結基を介して結合していてもよい。これらの結合は、例えば、疎水性ブロック(ポリオレフィンなど)を変性剤[不飽和カルボン酸またはその無水物((無水)マレイン酸など)、ラクタムまたはアミノカルボン酸、ヒドロキシルアミン、ジアミンなど]で変性した後、親水性ブロックを導入することにより形成してもよい。また、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの親水性基を有するモノマー(前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど)から得られるポリマーと、前記縮合系の親水性モノマー(エチレンオキシドなど)とを反応(または結合)させることにより、櫛型コポリマー(主鎖が疎水性ブロックで構成された櫛型コポリマー)を形成してもよい。
【0052】
さらに、共重合成分として、親水性の非イオン性モノマーを使用することにより、親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。このような成分としては、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(例えば、数平均分子量200~1,000)などのエチレンオキシユニットを有するモノマーまたはオリゴマーなどを例示できる。また、親水性基(カルボキシル基など)を変性(例えば、エステル化)することにより親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。
【0053】
カルボキシル基を有する高分子分散剤において、カルボキシル基は塩や酸無水物基であってもよく、例えば、少なくとも一部のカルボキシル基は、塩(アミンとの塩、金属塩など)を形成していてもよいが、カルボキシル基などの酸基が塩を形成していない高分子分散剤[すなわち、遊離のカルボキシル基を有する高分子分散剤]を好適に使用できる。
【0054】
カルボキシル基を有する高分子分散剤の酸価は、例えば1mgKOH/g以上(例えば2~100mgKOH/g)、好ましくは3mgKOH/g以上(例えば4~90mgKOH/g)、さらに好ましくは5mgKOH/g以上(例えば6~80mgKOH/g)、より好ましくは7mgKOH/g以上(例えば8~50mgKOH/g)であってもよく、通常3~30mgKOH/g(特に5~20mgKOH/g)である。なお、このような高分子分散剤において、アミン価は0(またはほぼ0)であってもよい。
【0055】
なお、前記高分子分散剤において、官能基の位置は、特に限定されず、主鎖であってもよく、側鎖であってもよく、主鎖および側鎖に位置していてもよい。このような官能基は、例えば、親水性モノマーまたは親水性ユニット由来の官能基(例えば、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、エチレンオキサイドなどの共重合により導入された官能基)であってもよい。
【0056】
カルボキシル基を有する高分子分散剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
なお、高分子分散剤として、特開2004-207558号公報などに記載の高分子分散剤(高分子量顔料分散剤)を使用してもよい。また、高分子分散剤は、合成してもよく、市販品を用いてもよい。以下に、市販の高分子分散剤(または少なくとも両親媒性の分散剤で構成された分散剤)を具体的に例示すると、ソルスパース13240、ソルスパース13940、ソルスパース32550、ソルスパース31845、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース41090などのソルスパースシリーズ[アビシア(株)製];DISPERBYK-160、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-166、DISPERBYK-170、DISPERBYK-180、DISPERBYK-182、DISPERBYK-184、DISPERBYK-190、DISPERBYK-191、DISPERBYK-192、DISPERBYK-193、DISPERBYK-194、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2015、DISPERBYK-2050などのディスパービックシリーズ[ビックケミー・ジャパン(株)製];EFKA-46、EFKA-47、EFKA-48、EFKA-49、EFKA-1501、EFKA-1502、EFKA-4540、EFKA-4550、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453[EFKAケミカル(株)製];アジスパーPB711、アジスパーPAl11、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911などのアジスパーシリーズ[味の素(株)製];フローレンDOPA-158、フローレンDOPA-22、フローレンDOPA-17、フローレンTG-700、フローレンTG-720W、フローレン-730W、フローレン-740W、フローレン-745Wなどのフローレンシリーズ[共栄社化学(株)製];ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62などのジョンクリルシリーズ[ジョンソンポリマー(株)製]などが挙げられる。代表的な高分子分散剤には、DISPERBYK-190、DISPERBYK-194、DISPERBYK-2015などが挙げられる。
【0058】
前記高分子分散剤の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したとき、ポリスチレン換算で、例えば1,500~100,000、好ましくは2,000~80,000(例えば2,000~60,000)、さらに好ましくは3,000~50,000(例えば5,000~30,000)、より好ましくは7,000~20,000である。
【0059】
カルボキシル基を有する高分子分散剤は、ヒドロキシル基を有さない高分子分散剤であってもよい。
【0060】
保護コロイドの割合は、銀含有金属100質量部に対して、例えば0.1~100質量部(特に1~50質量部)である。カルボキシル基を有する高分子分散剤の割合は、銀含有金属100質量部に対して、例えば0.1~60質量部(例えば1~50質量部)程度の範囲から選択でき、通常2~40質量部(例えば2.5~30質量部)、さらに好ましくは3~25質量部(特に5~20質量部)である。
【0061】
なお、本願において、複合体ナノ粒子(A)中の保護コロイドの割合は、慣用の方法、例えば、熱分析(例えば、熱重量/示差熱同時分析など)により、測定することができる。
【0062】
保護コロイドは、必要であれば、他の分散剤を含んでいてもよく、他の分散剤は、無機化合物であってもよいが、通常、有機化合物である。他の分散剤としては、例えば、アルカノール類(ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノールなどのC6-20アルカンモノオール)、アルデヒド類(カプリルアルデヒド、ラウリルアルデヒド、パルミトアルデヒドなどのC6-20脂肪族アルデヒド)、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、高級脂肪酸またはその塩、スルホン酸類(アルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)が挙げられる。これらの他の分散剤は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。
【0063】
他の分散剤の割合は、前記高分子分散剤100質量部に対して、例えば0.1~100質量部、好ましくは0.5~50質量部、さらに好ましくは1~30質量部である。
【0064】
前記複合体ナノ粒子の製造方法は、特に限定されず、慣用の方法、例えば、銀含有金属が銀単体である場合、銀ナノ粒子に対応する銀化合物を、保護コロイドおよび還元剤の存在下、溶媒中で還元することにより調製できる。具体的な製造方法としては、例えば、特開2010-80442号公報や特開2010-229544号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0065】
(B)樹脂成分
本発明のインク組成物は、第1樹脂としてのポリビニルアセタール系樹脂を含む樹脂成分(B)を含む。樹脂成分(B)は、第1樹脂(B1)のみを含んでいてもよく、第1樹脂(B1)および第2樹脂(B2)を含んでいてもよい。
【0066】
(B1)第1樹脂
第1樹脂(B1)であるポリビニルアセタール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化したポリビニルアルコールと、アルデヒド(特に、n-ブチルアルデヒド)とを反応(アセタール化反応)させて得られる。アセタール化反応において、ポリビニルアルコールを完全にアセタール化(特に、ブチラール化)することはできないため、水酸基が残存し、またケン化の際にも少量のアセチル基が残存するため、ポリビニルアセタール系樹脂は、構成単位中にアセタール基、水酸基、アセチル基を有している。
【0067】
すなわち、本発明のポリビニルアセタール系樹脂は、構成単位として、下記式(1)で表されるビニルアセタール単位、下記式(2)で表されるビニルアルコール単位、下記式(3)で表されるビニルアセテート単位を含む。
【0068】
【0069】
(式中、Rは水素原子または炭化水素基である)。
【0070】
前記式(1)において、Rで表される炭化水素基には、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基が含まれる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ヘキシル基、2-エチル-ブチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、ヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基などのC6-10アリール基などが挙げられる。Rとして、これらの炭化水素基および水素原子は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0071】
これらのうち、Rとしては、水素原子またはアルキル基が好ましく、直鎖状または分岐鎖状C1-5アルキル基がさらに好ましく、直鎖状C2-4アルキル基がより好ましく、プロピル基が最も好ましい。すなわち、ポリビニルアセタール系樹脂としては、ポリビニルブチラール系樹脂(ブチラール系樹脂)が好ましい。
【0072】
ポリビニルアセタール系樹脂は、前記式(1)~(3)で表される構成単位に加えて、他の構成単位をさらに含んでいてもよい。他の構成単位としては、ラジカル重合性基を有する共重合性単量体由来の単位であればよい。
【0073】
共重合性単量体としては、例えば、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニルなどのC3-8アルカン酸-ビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテルなどのC1-6アルキル-ビニルエーテル;エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ヘキセンなどのα-C2-6オレフィン;(メタ)アクリル酸およびその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルなどの(メタ)アクリル酸C1-6アルキルエステル;(メタ)アクリルアミド;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸などの不飽和スルホン酸などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0074】
また、ポリビニルアセタール系樹脂は、慣用の方法で修飾または変性されたポリビニルアセタール系樹脂であってもよい。
【0075】
ポリビニルアセタール系樹脂中における前記式(1)で表される単位の割合(アセタール化度)は5~95モル%(例えば10~90モル%)程度であり、用途に応じて、例えば20~90モル%、好ましくは30~85モル%であってもよく、また50モル%以上(例えば50~90モル%)、好ましくは60モル%以上(例えば60~85モル%)、さらに好ましくは70モル%以上(例えば70~80モル%)である。また、アセタール化度は、例えば9~98質量%、好ましくは25~95質量%、さらに好ましくは35~90質量%であってもよく、55質量%以上(例えば55~95質量%)、好ましくは65質量%以上(例えば65~90質量%)、さらに好ましくは70質量%以上(例えば70~80質量%)である。アセタール化度が小さすぎると、金属光沢性が低下する虞があり、逆に高すぎると、ポリビニルアセタール系樹脂の調製が困難となる虞がある。
【0076】
ポリビニルアセタール系樹脂中における前記式(2)で表される単位(水酸基を有する単位)の割合は10~50モル%(例えば15~40モル%)であってもよく、好ましくは20~35モル%、さらに好ましくは23~27モル%である。また、ポリビニルアセタール系樹脂中における前記式(2)で表される単位の割合は5~40質量%(例えば12~30質量%)であってもよく、好ましくは15~25質量%、さらに好ましくは18~23質量%である。式(2)で表される単位の割合が少なすぎると、樹脂成分としてポリビニルアセタール系樹脂を単独で使用した場合、金属光沢性が低下する虞があり、逆に多すぎても同様である。
【0077】
ポリビニルアセタール系樹脂中における前記式(3)で表される単位(アセチル基を有する単位)の割合は、例えば15モル%以下、好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。また、ポリビニルアセタール系樹脂中における前記式(3)で表される単位の割合は、例えば20質量%以下、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。式(3)で表される単位の割合が多すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0078】
ポリビニルアセタール系樹脂中における前記式(1)~(3)で表される構成単位の合計割合は、例えば80モル%以上、好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であり、より好ましくは100モル%である。
【0079】
ポリビニルアセタール系樹脂中における共重合性単量体由来の割合は、例えば20モル%以下、好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。
【0080】
なお、本願において、ポリビニルアセタール系樹脂のアセタール化度および各単位の割合は、慣用の方法を用いて測定でき、例えば、滴定法、IR元素分析、NMR法などを用いて測定できる。また、ブチラール系樹脂の場合は、JIS K 6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法で測定できる。
【0081】
ポリビニルアセタール系樹脂(特に、ブチラール系樹脂)の重量平均分子量は、例えば3,000~300,000、好ましくは5,000~100,000、さらに好ましくは7,000~70,000、より好ましくは10,000~40,000、最も好ましくは12,000~20,000である。分子量が小さすぎると、金属光沢膜の金属光沢性や機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0082】
なお、本願において、ポリビニルアセタール系樹脂の重量平均分子量は、JIS K 0124-2011に記載の方法に準じ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0083】
ポリビニルアセタール系樹脂(特に、ブチラール系樹脂)のガラス転移温度は50~130℃程度の範囲から選択でき、例えば60~125℃、好ましくは70~120℃、さらに好ましくは80~115℃、より好ましくは90~115℃、最も好ましくは100~110℃である。ガラス転移温度が低すぎると、金属光沢膜の金属光沢性や機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0084】
なお、本願において、ポリビニルアセタール系樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定できる。
【0085】
ポリビニルアセタール系樹脂(特に、ブチラール系樹脂)の10質量%溶液粘度(溶媒:トルエン/エタノール(質量比)=50/50)は、温度20℃において、回転粘度型(BM型)で測定したとき、2~20,000mPa・s(特に10~10,000mPa・s)程度の範囲から選択でき、用途に応じて、例えば5~1,000mPa・s(例えば10~500mPa・s)、好ましくは20~400mPa・s(例えば25~300mPa・s)、さらに好ましくは50~250mPa・s(例えば70~200mPa・s)であってもよく、また例えば3~150mPa・s(例えば5~100mPa・s)、好ましくは10~50mPa・s(特に10~30mPa・s)である。粘度が低すぎると、金属光沢膜の金属光沢性や機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0086】
(B2)第2樹脂
第2樹脂(B2)は、第1樹脂と相分離可能な樹脂であれば、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂(a)、(メタ)アクリル系樹脂(b)、エポキシ樹脂(c)、セルロース系樹脂(d)、シリコーン系樹脂(e)などが挙げられる。
【0087】
(a)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂(a)は、単量体としてポリカルボン酸とポリオールとを脱水縮合してエステル結合を形成させることによって合成される重合体である。本発明におけるポリエステル系樹脂(またはポリエステル樹脂)としては、特に限定されないが、ポリエステルポリオール樹脂(a1)、アルキド樹脂(a2)などが挙げられる。
【0088】
(a1)ポリエステルポリオール樹脂
ポリエステルポリオール樹脂(またはポリエステルポリオール類)(a1)は、分子鎖中にエステル結合を有するポリマーであり、1分子中に2個以上の水酸基を有する。
【0089】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)は、例えば、低分子量ポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール;環状エステル化合物(ラクトン)を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;ポリオール(例えば、低分子量ポリオール、アルキレンオキシド、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上など)を開始剤として、環状エステル化合物を反応(付加)させて得られるポリエステルポリオール;これらの共重合ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0090】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としての低分子量ポリオールとしては、分子量が50~300程度のポリオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオールなどの脂肪族ジオール(炭素数2~10の脂肪族ジオール);グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの脂肪族トリオール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールなどの四官能以上のポリオール;1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環式構造含有ポリオール;ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール化合物およびそれらのアルキレンオキシド付加物、p-ヒドロキシフェネチルアルコールなどの芳香族ポリオールなどが挙げられる。
【0091】
これらの低分子量ポリオールは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0092】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としてのポリカルボン酸としては、特に限定されず、例えば、コハク酸、無水コハク酸、アルケニルコハク酸、アルケニル無水コハク酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ハイミック酸、無水ハイミック酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸などの芳香族ジカルボン酸;4,4-ビス(p-ヒドロキシフェニル)バレリック酸、5-ヒドロキシイソフタル酸などのオキシポリカルボン酸;スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、4-スルホフタル酸、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸、5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸などのスルホン酸基またはスルホン酸塩基(金属塩、アンモニウム塩など)を有する芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水メチルシクロヘキセントリカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの3官能以上のポリカルボン酸などが挙げられる。
【0093】
これらのポリカルボン酸は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0094】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としての環状エステル化合物としては、例えば、β-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどのC4-8ラクトンなどが挙げられる。これらの環状エステル化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ε-カプロラクトンが汎用される。
【0095】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としてのポリエステルポリオール(環状エステル化合物を付加させる原料)としては、例えば、低分子量ポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0096】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としてのポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンオキシドの単独又は共重合体[ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリ(C2-4アルキレングリコール)]、ビスフェノールAまたは水添ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体などが挙げられる。
【0097】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としてのポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記低分子量ジオールと、ジアルキルカーボネート(ジメチルカーボネートなどのジC1-4アルキルカーボネートなど)やジアリールカーボネート(ジフェニルカーボネートなどのジC6-12アリールカーボネートなど)との反応生成物などが挙げられる。
【0098】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としてのポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0099】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)は、必要に応じて、共重合成分として、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸などのオキシカルボン酸をさらに含んでいてもよい。
【0100】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)には、必要に応じて、共重合成分として、分岐骨格を導入する目的で、ポリカルボン酸成分および/またはポリオール成分に3官能以上の成分を含んでいてもよい。
【0101】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の水酸基価は、例えば5~500mgKOH/g、好ましくは10~300mgKOH/g、さらに好ましくは20~200mgKOH/g、より好ましくは30~150mgKOH/g、最も好ましくは50~100mgKOH/gである。水酸基価が小さすぎると、銀光沢性および銀光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、銀光沢性が低下する虞がある。
【0102】
なお、本願において、ポリエステルポリオール樹脂(a1)の水酸基価は、JIS K 1557-1に準拠して測定できる。
【0103】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)にカルボキシル基を導入していてもよい。ポリエステルポリオール樹脂(a1)の酸価は0.1~10mgKOH/gが好ましく、0.2~5mgKOH/g(例えば0.3~1mgKOH/g)がより好ましい。
【0104】
なお、本願において、ポリエステルポリオール樹脂(a1)の酸価は、水酸化カリウム法に従って滴定することにより算出できる。
【0105】
カルボキシル基を導入する方法としては、重合後に酸付加によってカルボン酸をポリエステルポリオールに導入する方法が挙げられる。酸付加にモノカルボン酸、ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸化合物を用いると、エステル交換により分子量の低下が起こる可能性があるため、カルボン酸無水物基を少なくとも一個有する化合物を用いることが好ましい。カルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、オルソフタル酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)などが挙げられる。
【0106】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の重量平均分子量は、例えば600~20,000、好ましく1,000~10,000、さらに好ましくは1,300~5,000、より好ましくは1,500~3,000である。分子量が小さすぎると、銀光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0107】
なお、本願において、ポリエステルポリオール樹脂(a1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0108】
(a2)アルキド樹脂
アルキド樹脂(a2)は、塗料分野などで利用される慣用のアルキド樹脂であり、例えば、短油アルキド樹脂、長油アルキド樹脂、変性アルキド樹脂、イソシアネート硬化型アルキド樹脂、エポキシエステル樹脂(エポキシ変性アルキド樹脂)、アルキドポリオール、オイルフリーアルキド樹脂などであってもよい。
【0109】
具体的なアルキド樹脂(a2)は、例えば、JIS K 5500「塗料用語」に定義されている合成樹脂、すなわち、ポリカルボン酸(多塩基酸)と、ポリオール(多価アルコール)と、必要により油成分との重縮合によって得られる合成樹脂であってもよい。
【0110】
ポリカルボン酸としては、例えば、ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料として例示されたポリカルボン酸などが挙げられる。前記ポリカルボン酸は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記ポリカルボン酸のうち、イソフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが汎用される。
【0111】
油成分(油脂成分)には、脂肪油(油脂)および/または脂肪酸が含まれる。
【0112】
脂肪油としては、例えば、綿実油、亜麻仁油、桐油、ひまし油、脱水ひまし油、サフラワー油(紅花油)、大豆油、米油、トウモロコシ油、ゴマ油、向日葵油、米糖油、アサミ油、菜種油、落花生油、やし油、パーム油、カポック油、扁桃油、オリーブ油、トール油、えの油などの植物油;牛脂、豚脂、羊脂、山羊脂、馬脂、鶏脂、七面鳥脂などの動物油;ニシン油、カレイ油、タラ油、シタビラメ油、ハリバ油、コイ油、マス油、ナマズ油などの魚油;これらの水添油などが挙げられる。これらの油脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0113】
脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などの直鎖または分岐鎖飽和C8-24脂肪酸;ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ガトレン酸、アラキドン酸、エルカ酸などの直鎖または分岐鎖不飽和C8-24脂肪酸などが挙げられる。これらの脂肪酸は、ヒドロキシル基などの置換基を有していてもよい。ヒドロキシル基を有する脂肪酸としては、例えば、ひまし油の主成分であるリシノレイン酸、サビニン酸、ジオキシステアリン酸などが挙げられる。脂肪酸は、前記脂肪油からケン化などにより得られる脂肪酸であってもよく、例えば、脱水ひまし油から得られるハイジエン脂肪酸や、亜麻仁油、桐油、脱水ひまし油、大豆油、サフラワー油などから得られる脂肪酸(例えば、亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、大豆油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸など)などであってもよい。これらの脂肪酸は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0114】
これらの油成分のうち、亜麻仁油、桐油、脱水ひまし油、大豆油、サフラワー油などの植物油;これらの植物油由来の脂肪酸;ステアリン酸などの飽和C10-22脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、エレオステアリン酸またはリシノール酸などの不飽和C10-22脂肪酸が好ましい。
【0115】
ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料として例示された低分子量ポリオールに加えて、従来からアルキド樹脂に使用されてきた多価アルコールを挙げることができる。これらのポリオールは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの脂肪族ポリオールなどが汎用される。
【0116】
アルキド樹脂(a2)は、ポリカルボン酸およびポリオールに加えて、安息香酸、p-t-ブチル安息香酸、アビエチン酸、水素添加アビエチン酸などの一塩基酸をさらに含んでいてもよい。
【0117】
アルキド樹脂(a2)の水酸基価は、例えば5~500mgKOH/g、好ましくは10~300mgKOH/g、さらに好ましくは20~200mgKOH/g、より好ましくは50~150mgKOH/gである。水酸基価が小さすぎると、金属光沢性および金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0118】
なお、本願において、アルキド樹脂(a2)の水酸基価は、ISO 4629(2)に準拠して測定できる。
【0119】
アルキド樹脂(a2)の酸価は、例えば0.5~30mgKOH/g、好ましくは1~20mgKOH/g、さらに好ましくは2~15mgKOH/g、より好ましくは3~8mgKOH/gである。酸価が小さすぎると、金属光沢性が低下する虞があり、逆に高すぎると、金属光沢性および金属光沢膜の機械的特性が低下する虞がある。
【0120】
なお、本願において、アルキド樹脂(a2)の酸価は、JIS K 5601-1-2に準拠して測定できる。
【0121】
アルキド樹脂(a2)の重量平均分子量は、例えば500~30,000、好ましくは1,000~20,000、さらに好ましくは2,000~10,000である。分子量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0122】
なお、本願において、アルキド樹脂(a2)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0123】
これらのポリエステル系樹脂のうち、金属光沢性に優れる点から、ポリエステルポリオール樹脂(a1)が好ましい。
【0124】
(b)(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂(b)は、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル系単量体の単独または共重合体、(メタ)アクリルポリオール、変性(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。
【0125】
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-フェニルエチルなどの(メタ)アクリル酸アラルキル;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC1-4アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル系単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸C1-4アルキル;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2-3アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0126】
(メタ)アクリル系樹脂(b)は、これらの単量体の単独重合体であってもよいが、共重合体が好ましい。共重合体としては、2種以上の前記(メタ)アクリル系単量体の共重合体であってもよく、前記(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体であってもよい。共重合性単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体;α-C2-20オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセンなど)などのオレフィン系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル系単量体などの付加重合性単量体などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、スチレンなどのスチレン系単量体が好ましい。
【0127】
(メタ)アクリル系樹脂(b)が(メタ)アクリル系単量体とスチレン系単量体との共重合体(特に、メタクリル系単量体とスチレン系単量体との共重合体)である場合、(メタ)アクリル系単量体とスチレン系単量体とのモル比は、前者/後者=95/5~5/95、好ましくは90/10~10/90、さらに好ましくは80/20~20/80、より好ましくは70/30~30/70である。
【0128】
(メタ)アクリルポリオールとしては、分子内に2以上の水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーであれば、特に制限されず、例えば、前記(メタ)アクリル系樹脂の単量体としてヒドロキシC2-3アルキル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。
【0129】
変性(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレートなどのポリエステル変性(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレートなどのポリウレタン変性(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ(メタ)アクリレートなどのエポキシ変性(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン(メタ)アクリレートなどのシリコーン変性(メタ)アクリル系樹脂などが挙げられる。これらの変性(メタ)アクリル系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0130】
これらの(メタ)アクリル系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、銀含有金属ナノ粒子(特に、複合体ナノ粒子(A))に対する親和性が高く、かつ用途に応じて硬化剤によって硬化し易い点から、水酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂[特に、イソシアネート硬化型(メタ)アクリル系樹脂などの複数の水酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂]が好ましく、水酸基およびスチレン単位を有する(メタ)アクリル系樹脂(例えば、メチル(メタ)アクリレート-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート-スチレン共重合体など)が特に好ましい。なお、水酸基の位置は、特に限定されず、主鎖であってもよく、側鎖であってもよく、主鎖および側鎖に位置していてもよい。
【0131】
(メタ)アクリル系樹脂(b)の水酸基価は、例えば1mgKOH/g以上(例えば2~400mgKOH/g)、好ましくは3mgKOH/g以上(例えば4~300mgKOH/g)、さらに好ましくは5mgKOH/g以上(例えば6~200mgKOH/g)、より好ましくは7mgKOH/g以上(例えば8~150mgKOH/g)であってもよく、通常10~150mgKOH/g(特に10~100mgKOH/g)である。水酸基価が小さすぎると、金属光沢性および金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0132】
なお、本願において、(メタ)アクリル系樹脂(b)の水酸基価は、慣用の方法、例えば、中和滴定法で測定できる。
【0133】
(メタ)アクリル系樹脂(b)の重量平均分子量は、例えば1,000~100,000、好ましくは2,000~80,000(例えば3,000~50,000)、さらに好ましくは5,000~30,000(例えば10,000~20,000)、より好ましくは12,000~16,000である。分子量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0134】
なお、本願において、(メタ)アクリル系樹脂(b)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0135】
(メタ)アクリル系樹脂(b)のガラス転移温度は、例えば0~120℃、好ましくは40~110℃、より好ましくは50~100℃、最も好ましくは55~90℃である。ガラス転移温度が低すぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0136】
なお、本願において、(メタ)アクリル系樹脂(b)のガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定できる。
【0137】
(メタ)アクリル系樹脂(b)は、カルボキシル基またはその塩を有さない(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。
【0138】
(c)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂(c)は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であってもよい。エポキシ樹脂(c)には、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂などが含まれる。これらのうち、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が汎用される。
【0139】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0140】
これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0141】
エポキシ樹脂(c)のエポキシ当量は、例えば100~5,000g/eq、好ましくは300~3,000g/eq、さらに好ましくは500~1,500g/eq、より好ましくは700~1,000g/eqである。エポキシ樹脂のエポキシ当量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0142】
なお、本願において、エポキシ当量とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K 7236に準拠して測定できる。
【0143】
エポキシ樹脂(c)の数平均分子量は、例えば5,000~100,000、好ましくは7,000~70,000、さらに好ましくは10,000~40,000、より好ましくは12,000~20,000である。分子量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0144】
なお、本願において、エポキシ樹脂の数平均分子量は、JIS K 0124-2011に記載の方法に準拠して測定でき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0145】
エポキシ樹脂(c)の軟化点は、JIS K 7234に準拠した方法で測定された軟化点が30~150℃、好ましくは50~130℃、さらに好ましくは70~120℃、より好ましくは90~100℃である。軟化点が低すぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0146】
なお、本願において、エポキシ樹脂(c)の軟化点は、JIS K 7234の環球法に基づいて、規定の環に試料を充填し、水浴またはグリセリン浴中で水平に支え、試料の中央に規定の球を置いて浴温を毎分5℃の速さで上昇させ、球を包み込んだ試料が環台の底板に接触した時に読み取った温度である。
【0147】
(d)セルロース系樹脂
セルロース系樹脂(d)は、特に限定されないが、セルロースを修飾または変性して得られるセルロース誘導体であってもよい。
【0148】
セルロース誘導体としては、例えば、セルロースエステル、セルロースエーテル、セルロースエーテルエステルなどが挙げられる。セルロースエステルとしては、例えば、ニトロセルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなどのセルロース無機酸エステル;セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロース有機酸エステルなどが挙げられる。セルロースエーテルとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、エチルプロピルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロースなどのセルロースアルキルエーテル;カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロースなどが挙げられる。セルロースエーテルエステルとしては、例えば、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースプロピオネート、カルボキシメチルセルロースブチレートなどのセルロースエーテルエステルなどが挙げられる。
【0149】
これらのセルロース誘導体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、セルロース有機酸エステルが好ましく、セルロースアシレートがさらに好ましく、セルロースC2―4アシレートがより好ましく、セルロースアセテートC3-4アシレートが最も好ましい。セルロース有機酸エステルは、セルロースと、有機酸および/または酸無水物との反応によって製造してもよく、特に、セルロースを有機酸および/または酸無水物でトリエステル化した後に加水分解して製造してもよい。
【0150】
セルロースアシレートのエステル置換度は、例えば30~70質量%、好ましくは35~65質量%、さらに好ましくは40~60質量%、より好ましくは45~55質量%である。
【0151】
セルロースアセテートC3-4アシレートのアセチル置換度は、例えば0.5~30質量%、好ましくは5~20質量%、さらに好ましくは10~15質量%である。
【0152】
セルロースアセテートC3-4アシレートのC3-4アシル置換度は、例えば15~60質量%、好ましくは30~50質量%、さらに好ましくは35~40質量%である。
【0153】
なお、本願において、セルロースアシレートのエステル置換度は、セルロースアシレート中のアシル基の質量割合を意味し、慣用の方法、例えば、滴定法、ガスクロマトグラフィー分析、IR元素分析、NMR法などを用いて測定でき、特に、ガスクロマトグラフィー分析で測定してもよい。
【0154】
セルロース系樹脂の数平均分子量は、例えば1,000~300,000、好ましくは10,000~200,000、さらに好ましくは30,000~100,000、より好ましくは50,000~90,000、最も好ましくは60,000~80,000である。分子量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性および金属光沢性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0155】
なお、本願において、セルロース系樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0156】
セルロース系樹脂(d)のガラス転移温度は、例えば80~180℃、好ましくは100~170℃、さらに好ましくは120~160℃、より好ましくは130~150℃、最も好ましくは135~145℃である。ガラス転移温度が低すぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0157】
なお、本願において、セルロース系樹脂(d)のガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定できる。
【0158】
(e)シリコーン系樹脂
シリコーン系樹脂(e)は、特に制限されず、シリコーン系レジンであってもよく、シリコーン系オリゴマーであってもよい。これらのうち、密着性および耐擦過性を向上できる点から、シリコーン系レジンが好ましい。
【0159】
シリコーン系レジンは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する熱可塑性樹脂、硬化性樹脂(未架橋樹脂)または硬化樹脂(架橋樹脂)であればよい。ポリオルガノシロキサン骨格は、Si-O結合(シロキサン結合)を有する直鎖状、分岐鎖状または網目状の化合物であって、式:R2
aSiO(4-a)/2(式中、R2は置換基を示し、係数aは0~3の数である)で表される単位で構成されている。シリコーン系レジンとしては、前記式で表される各単位である単官能性のM単位(一般的にR2
3SiO1/2で表される単位)、二官能性のD単位(一般的にR2
2SiO2/2で表される単位)、三官能性のT単位(一般的にR2SiO3/2で表される単位)、四官能性のQ単位(一般的にSiO4/2で表される単位)のうち、通常、T単位を主単位として含むポリオルガノシロキサンが使用される。
【0160】
前記式において、置換基R2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1-10アルキル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン化C1-10アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのC2-10アルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのC6-20アリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3-10シクロアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのC6-12アリール-C1-4アルキル基などが挙げられる。これらの置換基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0161】
これらのうち、R2としては、メチル基、プロピル基などのC1-4アルキル基、フェニル基、ナフチル基などのC6-10アリール基が好ましく、C1-3アルキル基、C6-8アリール基がさらに好ましく、メチル基、フェニル基が最も好ましい。さらに、R2としては、単独で使用するよりも、(メタ)アクリル系樹脂との相溶性を向上できる点から、二種以上組み合わせて使用する方が好ましく、C1-4アルキル基とC6-10アリール基がさらに好ましく、C1-3アルキル基とC6-8アリール基との組み合わせがより好ましく、メチル基とフェニル基との組み合わせが最も好ましい。
【0162】
C1-4アルキル基とC6-10アリール基とを組み合わせる場合、両者のモル比は、C1-4アルキル基/C6-10アリール基=30/1~1/30程度の範囲から選択でき、例えば20/1~1/10、好ましくは10/1~1/5、さらに好ましくは8/1~1/1、より好ましくは5/1~1.5/1、最も好ましくは3/1~2/1である。
【0163】
シリコーン系レジンは、ストレートシリコーン系レジン(未変性シリコーン系レジン)であってもよく、変性シリコーン系レジンであってもよい。変性シリコーン系レジンとしては、例えば、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの他の樹脂で変性されたシリコーン系レジンなどが挙げられる。
【0164】
具体的に好ましいシリコーン系レジンとしては、置換基R2がメチル基などのC1-4アルキル基であるC1-4アルキル系シリコーンレジン(例えば、メチル系シリコーンレジンなどのC1-3アルキル系シリコーンレジンなど)、置換基R2がフェニル基などのC6-10アリール基であるC6-10アリール系シリコーンレジン(例えば、フェニル系シリコーンレジンなどのC6-8アリール系シリコーンレジン)、置換基R2がC1-4アルキル基とC6-10アリール基との組み合わせであるC1-4アルキルC6-10アリール系シリコーンレジン(例えば、メチルフェニル系シリコーンレジン、プロピルフェニル系シリコーンレジンなどのC1-3アルキルC6-8アリール系シリコーンレジンなど)などが挙げられる。これらのシリコーン系レジンは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。密着性および耐擦過性を向上できる点から、C1-4アルキルC6-10アリール系シリコーンレジンなどのアルキルアリール系シリコーンレジンが好ましく、メチルフェニル系シリコーンレジンなどのC1-2アルキルC6-8アリール系シリコーレジンが特に好ましい。
【0165】
(第2樹脂の特性および割合)
これら第2の樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これら第2樹脂のうち、金属光沢に優れる点から、ポリエステルポリオール樹脂(a1)、(メタ)アクリル系樹脂(b)、エポキシ樹脂(c)およびセルロース系樹脂(d)からなる群より選択された少なくとも1種が好ましく、セルロース系樹脂(d)が特に好ましい。
【0166】
第1樹脂(ポリビニルアセタール系樹脂)と第2樹脂との質量比は、前者/後者=100/0~5/95(特に99/1~5/95)程度の範囲から選択でき、例えば95/5~5/95(例えば90/10~10/90)、好ましくは80/20~20/80、さらに好ましくは70/30~30/70、より好ましくは60/40~40/60である。第2樹脂の割合が多すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。また、第1樹脂の割合が多すぎても、金属光沢性が低下する虞がある。金属光沢性が重要な用途では、第1樹脂/第2樹脂=100/0~50/50、好ましくは98/2~60/40、さらに好ましくは95/5~70/30、より好ましくは93/7~80/20、最も好ましくは92/8~85/15であり、第1樹脂のみ(100/0)であってもよい。
【0167】
(樹脂成分(B)の割合)
樹脂成分(B)の割合は、複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して3~150質量部程度の範囲から選択でき、例えば5~120質量部、好ましくは7~100質量部、さらに好ましくは8~60質量部、より好ましくは10~50質量部(特に25~50質量部)、最も好ましくは20~40質量部(特に25~40質量部)である。樹脂成分(B)の割合が少なすぎると、密着性および耐擦過性が低下する虞があり、多すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0168】
(C)表面調整剤
本発明のインク組成物は、表面調整剤(C)を含む。表面調整剤(C)は、表面張力低下能を有していればよく、慣用の表面調整剤を利用できる。慣用の表面調整剤としては、例えば、(メタ)アクリル系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤などが挙げられる。これらの表面調整剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、金属光沢性を効果的に向上できる点から、(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)、シリコーン系表面調整剤(C2)およびフッ素系表面調整剤(C3)からなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。
【0169】
(C1)(メタ)アクリル系表面調整剤
(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)は、(メタ)アクリル系骨格を有する表面調整剤であればよい。(メタ)アクリル系骨格としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体の単独重合体または共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0170】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート(ポリエーテル(メタ)アクリレート);ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテルエステル(メタ)アクリレート;シリコーン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルなどの(メタ)アクリル酸アルキル、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0171】
(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)は、(メタ)アクリル系単量体の単独重合体または共重合体の主鎖に、ポリエーテルマクロマーおよび/またはシリコーンマクロマーが導入された表面調整剤、特に、前記主鎖にポリエーテルマクロマーおよび/またはシリコーンマクロマーがグラフト重合した表面調整剤であってもよい。
【0172】
これらの(メタ)アクリル系表面調整剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)としては、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルなどの(メタ)アクリル酸アルキルと、(ポリ)オキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートとの共重合体などが挙げられる。
【0173】
(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)としては、市販の(メタ)アクリル系表面調整剤を利用できる。市販の(メタ)アクリル系表面調整剤としては、ビックケミー・ジャパン(株)製BYKシリーズの表面調整剤(「BYK-350」、「BYK-354」、「BYK-355」、「BYK-356」、「BYK-358N」、「BYK-361N」、「BYK-381」、「BYK-392」、「BYK-394」、「BYK-3440」、「BYK-3441」など)などが挙げられる。
【0174】
(C2)シリコーン系表面調整剤
シリコーン系表面調整剤(C2)は、ポリオルガノシロキサン骨格を有する表面調整剤であればよい。ポリオルガノシロキサン骨格としては、単官能性のM単位(一般的にR3
3SiO1/2で表される単位)、二官能性のD単位(一般的にR3
2SiO2/2で表される単位)、三官能性のT単位(一般的にR3SiO3/2で表される単位)、四官能性のQ単位(一般的にSiO4/2で表される単位)で形成されたポリオルガノシロキサンであればよいが、通常、D単位で形成されたポリオルガノシロキサンが使用される。
【0175】
ポリオルガノシロキサンの前記式において、置換基R3としては、炭化水素基の中から選択できるが、通常、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1-4アルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基が使用され、メチル基、フェニル基(特にメチル基)が好ましい。シロキサン単位の繰り返し数(重合度)は、例えば2~3000、好ましくは3~2000、さらに好ましくは5~1000である。
【0176】
ポリオルガノシロキサン骨格は、ポリオルガノシロキサン骨格(ポリジメチルシロキサンなど)の主鎖または側鎖に変性基を導入した変性ポリオルガノシロキサン(変性シリコーン)であってもよい。変性基としては、例えば、ポリエーテル基、ポリエステル基、ラジカル重合性基、アラルキル基などが挙げられる。
【0177】
ポリエーテル基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン基などのポリオキシC2-4アルキレン基などが挙げられる。ポリエーテル基において、オキシアルキレン基の繰り返し数(付加モル数)は、例えば2~1000、好ましくは3~100、さらに好ましくは5~50である。これらのうち、ポリオキシエチレンやポリオキシプロピレンなどのポリオキシC2-3アルキレン基(特にポリオキシエチレン基)が好ましい。
【0178】
ポリエステル基としては、例えば、ジカルボン酸(テレフタル酸などの芳香族カルボン酸やアジピン酸などの脂肪族カルボン酸など)とジオール(エチレングリコールなどの脂肪族ジオールなど)との反応により形成されるポリエステル基、環状エステル(例えば、カプロラクトンなどのラクトン類)の開環重合により形成されるポリエステル基などが挙げられる。
【0179】
ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基などが挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリロイルオキシ基が汎用される。
【0180】
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC7-18アラルキル基などが挙げられる。
【0181】
これらの変性基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの変性基のうち、ポリエーテル基、ポリエステル基、アラルキル基が好ましく、ポリエステル基が特に好ましい。
【0182】
シリコーン系表面調整剤(C2)は、密着性および耐擦過性を向上できる点から、水酸基を有していてもよい。水酸基は、ポリオルガノシロキサン骨格が有していてもよく、ポリオルガノシロキサン骨格が変性されている場合は、ポリオルガノシロキサン骨格が有していてもよく、ポリエーテル基、ポリエステル基、(メタ)アクリロイル基などの変性基が有していてもよい。
【0183】
これらのシリコーン系表面調整剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましいシリコーン系表面調整剤(C2)としては、ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤、水酸基を有するポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤、ポリエステル変性シリコーン系表面調整剤、水酸基を有するポリエステル変性シリコーン系表面調整剤、アラルキル変性シリコーン系表面調整剤であり、特に好ましいシリコーン系表面調整剤(C2)は、水酸基を有するポリエステル変性シリコーン系表面調整剤である。
【0184】
シリコーン系表面調整剤(C2)としては、市販のシリコーン系表面調整剤を利用できる。市販のシリコーン系表面調整剤としては、ビックケミー・ジャパン(株)製BYKシリーズの表面調整剤(「BYK-300」、「BYK-306」、「BYK-310」、「BYK-322」、「BYK-323」、「BYK-333」、「BYK-370」、「BYK-375」、「BYK-SILCLEAN3700」、「BYK-SILCLEAN3720」など)などが挙げられる。
【0185】
(C3)フッ素系表面調整剤
フッ素系表面調整剤(C3)は、フッ素原子を有する表面調整剤であればよく、フルオロ脂肪族炭化水素骨格を有する表面調整剤が好ましい。
【0186】
フルオロ脂肪族炭化水素骨格としては、例えば、フルオロメタン、フルオロエタン、フルオロプロパン、フルオロイソプロパン、フルオロブタン、フルオロイソブタン、フルオロt-ブタン、フルオロペンタン、フルオロヘキサンなどのフルオロC1-10アルカンなどが挙げられる。これらのフルオロ脂肪族炭化水素骨格は、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていればよいが、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロ脂肪族炭化水素骨格が好ましく、パーフルオロアルカン骨格が特に好ましい。
【0187】
さらに、フルオロ脂肪族炭化水素骨格は、エーテル結合を介した繰り返し単位であるポリフルオロアルキレンエーテル骨格を形成していてもよい。繰り返し単位としてのフルオロ脂肪族炭化水素基は、フルオロメチレン、フルオロエチレン、フルオロプロピレン、フルオロイソプロピレンなどのフルオロC1-4アルキレン基からなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。これらのフルオロ脂肪族炭化水素基は、同一であってもよく、複数種の組み合わせであってもよい。フルオロアルキレンエーテル単位の繰り返し数(重合度)は、例えば2~3000、好ましくは5~1000、さらに好ましくは10~500であってもよい。
【0188】
これらのフッ素系表面調整剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましいフッ素系表面調整剤としては、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系表面調整剤が好ましく、パーフルオロアルキル基を有し、かつオリゴマー型のフッ素系表面調整剤が特に好ましい。
【0189】
フッ素系表面調整剤(C3)は、市販のフッ素系表面調整剤を利用できる。市販のフッ素系表面調整剤としては、AGCセイミケミカル(株)製サーフロンシリーズの表面調整剤(「S-242」、「S-242L」、「S-243」、「S-386」、「S-651」、「S-658」、「S-693」など)が挙げられる。
【0190】
(表面調整剤(C)の好適な態様および割合)
表面調整剤(C)としては、金属光沢性を高度に向上できる点から、(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)、シリコーン系表面調整剤(C2)が好ましく、(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)、水酸基を有するポリエステル変性シリコーン系表面調整剤がさらに好ましく、(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)が最も好ましい。
【0191】
これらの表面調整剤(C)の割合は、複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して、例えば0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部、さらに好ましくは1~15質量部、より好ましくは2~10質量部、最も好ましくは3~7質量部である。表面調整剤(C)の割合が少なすぎると、金属光沢性が低下する虞があり、多すぎると、金属光沢性、密着性および耐擦過性が低下する虞がある。
【0192】
(D)溶剤
本発明のインク組成物は、前記複合体ナノ粒子(A)、樹脂成分(B)および表面調整剤(C)に加えて、溶剤(D)をさらに含んでいてもよい。樹脂成分(B)に対して溶剤(D)を配合することにより、製膜性も向上でき、樹脂成分(B)が第2樹脂を含む場合には、スピノーダル分解による相分離も促進できる。
【0193】
溶剤(D)は、極性有機溶媒を含むのが好ましい。極性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1-4アルカノールなど)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのアルカントリオール、ペンタエリスリトールなどのアルカンテトラオールなど)、アミド類(ホルムアミド、アセトアミドなどのアシルアミド類、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのモノ又はジC1-4アシルアミド類など)、ピロリドン類(2-ピロリドン、3-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-3-ピロリドンなど)、ケトン類(アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン、イソホロンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、有機カルボン酸類(酢酸など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどの酢酸エステルなど)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどのC2-6アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルなど)、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトールなどのジC2-6アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1-4アルキルセロソルブアセテート類)、カルビトールアセテート類(メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのC1-4アルキルカルビトールアセテートなど)、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの極性有機溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0194】
極性有機溶媒の割合は、溶剤中50質量%以上であってもよく、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0195】
溶剤(D)は、極性溶媒に加えて、無極性溶媒をさらに含んでいてもよい。無極性溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、テトラリンなどの脂環族炭化水素などが挙げられる。無極性有機溶媒の割合は、極性有機溶媒100質量部に対して50質量部以下(例えば0.1~50質量部程度)であってもよく、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0196】
これらの溶剤のうち、アルコール類、エステル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびジアルキレングリコールモノアルキルエーテルから選択される1種以上を含むのが好ましく、エステル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびジアルキレングリコールモノアルキルエーテルから選択される1種以上を含むのがさらに好ましく、アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびジアルキレングリコールモノアルキルエーテルから選択される1種以上を含むのがより好ましい。なかでも、C2-6アルキレングリコールモノC1-6アルキルエーテルおよびジC2-6アルキレングリコールモノC1-6アルキルエーテルから選択される1種以上がさらに好ましく、C2-5アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルおよびジC2-5アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルから選択される1種以上が最も好ましい。ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、原料としての銀コロイド粒子を分散させるための分散媒由来の極性溶媒であってもよい。
【0197】
溶剤(D)の割合は、前記複合体ナノ粒子(A)の銀含有金属100質量部に対して、例えば50~1,000質量部、好ましくは100~500質量部、さらに好ましくは200~450質量部、より好ましくは250~400質量部、最も好ましくは300~350質量部である。溶剤の割合が少なすぎると、製膜性が低下する虞があり、逆に多すぎると、生産性や製膜性が低下する虞がある。
【0198】
(E)硬化剤
本発明のインク組成物は、前記複合体ナノ粒子(A)、樹脂成分(B)および表面調整剤(C)に加えて、硬化剤(E)をさらに含んでいてもよい。硬化剤(E)としては、慣用の硬化剤、例えば、イソシアネート系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤などが挙げられる。これらのうち、イソシアネート系硬化剤が好ましく、ポリイソシアネートが特に好ましい。ポリイソシアネートなどのイソシアネート系硬化剤は、第1樹脂および第2樹脂が官能基(特に、水酸基)を有する場合に特に有効である。
【0199】
ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート[プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などのジイソシアネート;1,6,11-ウンデカントリイソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネートなどのトリまたはポリイソシアネート]、脂環族ポリイソシアネート[シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタンなどのジイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネートなどのトリまたはポリイソシアネートなど]、芳香族ポリイソシアネート[フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ビス(イソシアナトフェニル)メタン(MDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,3-ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなどのジイソシアネート;トリ又はポリイソシアネート]などが挙げられる。
【0200】
ポリイソシアネートは、多量体(二量体や三量体、四量体など)、アダクト体、変性体(ビウレット変性体、アロハネート変性体、ウレア変性体など)などの誘導体や、複数のイソシアネート基を有するウレタンオリゴマーなどであってもよい。ポリイソシアネートの変性体または誘導体としては、例えば、ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートなど)と多価アルコール(トリメチロールプロパンやペンタエリスリトールなど)とのアダクト体、前記ポリイソシアネートのビウレット体、前記ポリイソシアネート(例えば、脂肪族ポリイソシアネート)の多量体(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体などのイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートなど)などが例示できる。
【0201】
これらのポリイソシアネートは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリイソシアネートのうち、脂肪族ポリイソシアネートまたはその誘導体(例えば、HDIまたはその三量体など)、芳香族ポリイソシアネート(TDI、MDIなど)などが汎用される。
【0202】
硬化剤(E)の割合は、樹脂成分(B)100質量部に対して、例えば10~200質量部、好ましくは20~150質量部、さらに好ましくは25~100質量部である。
【0203】
(F)他の金属ナノ粒子
本発明のインク組成物は、前記複合体ナノ粒子(A)、樹脂成分(B)および表面調整剤(C)に加えて、他の金属ナノ粒子(F)をさらに含んでいてもよい。他の金属ナノ粒子(F)としては、例えば、周期表第8族金属(鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金など)、周期表第1B族金属(銅、金など)、周期表第3B族金属(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)および周期表第4B族金属(ゲルマニウム、スズ、鉛など)などであってもよい。なお、金属(金属原子)は、保護コロイドに対する配位性の高い金属、例えば、周期表第8族金属、周期表第1B族金属などである場合が多い。他の金属ナノ粒子(F)の割合は、前記複合体ナノ粒子(A)の銀含有金属100質量部に対して100質量部以下であり、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0204】
(G)他の成分
本発明のインク組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分(G)として、慣用の添加剤、例えば、可塑剤(または造膜助剤)、光沢付与剤、金属腐食防止剤(防錆剤)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤など)、界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、特に、アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤)、分散安定化剤、増粘剤または粘度調整剤、保湿剤、チクソトロピー性賦与剤、レベリング剤、浸透剤、消泡剤、pH調整剤、キレート剤、着色剤(染顔料など)、色相改良剤、染料定着剤、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、酸素吸収剤などをさらに含んでいてもよい。なお、界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などであってもよい。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。他の成分(G)の割合は、前記複合体ナノ粒子(A)の銀含有金属100質量部に対して50質量部以下であり、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0205】
[インク組成物の調製方法]
本発明のインク組成物は、前記複合体ナノ粒子(A)、樹脂成分(B)および表面調整剤(C)を慣用の方法で混合することにより調製できる。混合方法としては、慣用の攪拌装置を利用でき、例えば、攪拌脱泡装置を利用してもよい。インク組成物が溶剤(D)を含む場合、前記複合体ナノ粒子(A)は、溶剤(D)としてのジアルキレングリコールモノアルキルエーテルに分散させた分散液の形態で、樹脂成分(B)および溶剤(D)としてのアルキレングリコールモノアルキルエーテルと混合してもよい。
【0206】
[金属光沢膜の製造方法]
金属光沢膜は、被加飾体(基材)の上に前記インク組成物を塗布して塗膜を形成する塗布工程、塗膜を乾燥させて金属光沢膜を得る乾燥工程を経て得られる。
【0207】
塗布工程において、基材の種類は、特に制限はなく、用途に応じて樹脂基材(フィルム等)、金属基材、ガラス基材、セラミックス基材、紙などを利用できる。
【0208】
塗布方法としては、特に制限されず、慣用のコーティング方法、例えば、フローコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法、フォトリソグラフィ法、インクジェット法、オフセット印刷法などを利用できる。
【0209】
塗膜の平均厚み(乾燥厚み)は、例えば0.05~100μm、好ましくは0.1~30μm、さらに好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~5μmである。
【0210】
なお、本発明では、下塗り層、上塗り層を形成することなく、金属光沢性と密着性および耐擦過性とを両立できるが、用途に応じて、下塗り層および/または上塗り層を併用してもよい。
【0211】
乾燥工程では、塗膜を乾燥させることにより、金属光沢膜を形成する。塗膜の乾燥方法としては、加熱して乾燥する方法が好ましく、相分離構造を形成し易い点から、予備加熱処理と本加熱処理とを組み合わせた二段階で加熱処理して乾燥する方法が好ましい。
【0212】
予備加熱処理において、予備加熱温度は、例えば40~80℃、好ましくは45~70℃、さらに好ましくは45~60℃、より好ましくは45~55℃である。予備加熱時間は、例えば1~100分、好ましくは3~60分、さらに好ましくは5~30分である。
【0213】
本加熱処理において、本加熱温度は、例えば60~150℃、好ましくは65~120℃、さらに好ましくは70~90℃、より好ましくは75~85℃である。本加熱時間は、例えば30~240分、好ましくは80~180分、さらに好ましくは100~150分である。
【0214】
樹脂成分(B)が第2樹脂を含む場合、乾燥工程において、スピノーダル分解による相分離を形成して金属光沢膜を形成してもよい。第2樹脂を含む場合は、塗膜を乾燥させることにより、溶剤の揮発に伴って、スピノーダル分解によって、銀含有金属を多量に含む相と、銀含有金属を少量含む相とに相分離させることができる。
【0215】
[金属光沢膜の構造]
前記方法で得られた金属光沢膜は、基材(被加飾体)の上に形成されており、前記基材の上に積層され、かつ銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)と、ポリビニルアセタール系樹脂を含む樹脂成分(B)とを含む。金属光沢膜の平均厚みは、例えば0.05~100μm、好ましくは0.1~30μm、さらに好ましくは0.3~10μm、より好ましくは0.5~5μm、最も好ましくは1~3μmである。
【0216】
特に、基材の上に形成され、かつ第2樹脂を含む金属光沢膜は、基材の上に、界面層、中間層、表面層が順次積層された構造を有していてもよい。
【0217】
前記界面層は、前記複合体ナノ粒子で形成されており、前記複合体ナノ粒子が基材との界面において配列または配向することにより、銀を含む金属が密な薄膜(銀含有金属薄膜)を形成している。基材との界面において、このような界面層が形成されることにより、透明基材などにおいては裏面からの金属光沢性を向上できる。
【0218】
界面層の平均厚みは、例えば5~300nm、好ましくは10~200nm、さらに好ましくは10~100nm、より好ましくは20~40nmである。
【0219】
なお、本願において、界面層の平均厚みは、銀光沢膜断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定できる。
【0220】
前記中間層は、前記複合体ナノ粒子および第1樹脂を含む第1相と、前記複合体ナノ粒子および第2樹脂を含み、銀含有金属の含有割合が異なる第2相として相分離した相分離構造を有している。銀含有金属の濃度が異なる相分離構造を有することにより、樹脂成分の割合を高めても、金属光沢性を向上でき、金属光沢性と密着性および耐擦過性とを両立できる。
【0221】
第1相と第2相との比率(断面における面積比率)は、第1相/第2相=90/10~10/90、好ましくは70/30~30/70、さらに好ましくは60/40~40/60、より好ましくは55/45~45/55である。
【0222】
なお、本願において、前記比率は、銀光沢膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)像に基づいて測定できる。
【0223】
前記相分離構造は、海島構造であってもよく、共連続構造であってもよい。これらのうち、海島構造が好ましい。中間層が海島構造である場合、海部を構成する連続相(マトリックス相)は、第1相であってもよく、第2相であってもよい。
【0224】
海島構造において、分散相の平均径は、例えば10~3,000nm、好ましくは100~1,000nm、さらに好ましくは150~500nm、より好ましくは200~300nmである。
【0225】
分散相の平均ピッチ(隣接する分散相の中心間の距離の平均値)は、例えば10~2,000nm、好ましくは100~1,000nm、さらに好ましくは200~700nm、より好ましくは300~500nmである。
【0226】
金属光沢膜断面の観察方法としては、特に限定されず、通常の構造解析に用いられる手法を用いることができる。観察方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)等による形態・構造観察;蛍光X線やエネルギー分散型X線分光法(EDX)、波長分散型X線分光法(WDX)、電子エネルギー損失分光法(Electron Energy-Loss Spectroscopy(EELS))等による構成元素の解析を行うことができる。これらのうち、特に微細構造まで観察できる点から、透過型電子顕微鏡(TEM)観察が好ましい。観察に供する試料は、観察や分析に適するように、適宜加工して用いることができ、例えば、ミクロトーム等を用いて薄片試料を作製してもよい。
【0227】
そのため、本願において、金属光沢膜断面における島構造の構造、サイズおよび分布状態は、銀光沢膜断面のTEM像に基づいて、観察および測定でき、サイズについては、任意の10カ所の平均値である。さらに、TEM像では、銀含有金属ナノ粒子は、濃色であるため、容易に確認でき、中間層においては、銀含有金属ナノ粒子の凝集部を分散相とする。
【0228】
中間層の平均厚みは、例えば0.01~100μm、好ましくは0.05~30μm、さらに好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.2~1μmである。
【0229】
中間層の平均厚みは、表面層の平均厚みに対して2倍以上であってもよく、例えば2~1,000倍、好ましくは3~100倍、さらに好ましくは3.5~50倍、より好ましくは4~10倍である。
【0230】
なお、本願において、中間層の平均厚みは、金属光沢膜断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定でき、任意の3カ所の平均値である。
【0231】
表面層は、前記複合体ナノ粒子で形成されており、前記複合体ナノ粒子が金属光沢膜の表面部において配列または配向することにより、銀含有金属が密な薄膜(金属薄膜)を形成している。本発明では、金属光沢膜の表面において、このような表面層が形成されることにより、金属光沢性を向上できる。
【0232】
表面層の平均厚みは、例えば3~300nm、好ましくは5~200nm、さらに好ましくは10~150nm、より好ましくは30~100nmである。
【0233】
なお、本願において、表面層の平均厚みは、銀光沢膜断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【実施例0234】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の例において、インク組成物の調製方法および評価試験の測定方法を以下に示す。
【0235】
[使用した材料]
(第1樹脂)
ポリビニルブチラール系樹脂(ブチラール系樹脂):積水化学工業(株)製「エスレックKS-10」、アセタール化度74モル%以上、アセチル基3モル%以下、水酸基25モル%、10質量%溶液粘度(温度20℃、回転粘度型(BM型)、溶媒=トルエン/エタノール=50/50(質量比))10~30mPa・s、ガラス転移温度106℃、重量平均分子量17,000
【0236】
(第2樹脂)
ポリエステルポリオール樹脂:DIC(株)製「OD-X-2420」、粘度5,600mPa・s(25℃)、平均分子量2,000、酸価0.4mgKOH/g、水酸基価56mgKOH/g
アクリル系樹脂:DIC(株)製「WXU-880」、イソシアネート硬化型アクリル樹脂、不揮発分50%、水酸基価10mgKOH/g、ガラス転移温度90℃
セルロース系樹脂A:巴工業(株)販売のセルロースアセテートブチレート「CAB-381-20」、アセチル基13.5質量%、ブチリル基37質量%、水酸基1.8質量%、ASTM D1343に準拠した落球速度20.0秒、ガラス転移温度141℃、数平均分子量70000
セルロース系樹脂B:巴工業(株)販売のセルロースアセテートブチレート「CAB-381-0.5」、アセチル基13.5質量%、ブチリル基38質量%、水酸基1.3質量%、ASTM D1343に準拠した落球速度0.5秒、ガラス転移温度130℃、数平均分子量30000
エポキシ樹脂:三菱ケミカル(株)製「jER1055」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量850、軟化点93℃、数平均分子量1600
【0237】
(表面調整剤)
表面調整剤A:ビックケミー・ジャパン(株)製表面調整剤「BYK-3440」、アクリルコポリマー(主成分)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(主溶剤)、不揮発分10%
表面調整剤B:ビックケミー・ジャパン(株)製表面調整剤「BYK-370」、水酸基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン溶液(主成分)、キシレン(主溶剤)、不揮発分25%
表面調整剤C:ビックケミー・ジャパン(株)製表面調整剤「BYK-333」、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン溶液(主成分)、不揮発分100%
表面調整剤D:AGCセイミケミカル(株)製フッ素系表面調整剤「サーフロン S-386」、パーフルオロアルキル化合物(主成分)、不揮発分100%
【0238】
(溶剤)
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール:(株)クラレ製「ソルフィット」、沸点174℃
【0239】
(高分子分散剤)
カルボキシル基を有する高分子分散剤A:ビックケミー社製「DISPERBYK-190」、カルボキシル基を有する高分子量ブロック共重合物の溶液、溶媒:水、不揮発成分40%、酸価10mgKOH/g、アミン価0
カルボキシル基を有する高分子分散剤B:ビックケミー社製「DISPERBYK-2015」、カルボキシル基を有するアクリルコポリマーの溶液、溶媒:水、不揮発成分40%、酸価10mgKOH/g、アミン価0
【0240】
[光沢度]
実施例および比較例のインク組成物で形成した銀光沢膜について、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」)、積分球ISR-3100を用い、380~780nmの波長域における反射光の強度から光沢度(L値)を算出した。標準試料には、光沢度が100.0のアルミ蒸着ミラー((株)島津製作所製「品番:202-35988」)を使用した。
【0241】
そして、表面調整剤を添加した組成については、その光沢度の数値から、表面調整剤を含まないベース組成の光沢度の数値を差し引いた値を「表面調整剤の添加による光沢度の上昇度」とした。上昇度が正の値であれば、表面調整剤によって光沢度が上昇し、ゼロまたは負の値であれば表面調整剤が光沢度の上昇に寄与しなかったことを表わす。
【0242】
さらに、各組成について、表面調整剤を含まないベース組成の光沢度の数値に対する、「表面調整剤の添加による光沢度の上昇度」の割合を、「表面調整剤の添加による光沢度の上昇率」として算出した。
【0243】
表面調整剤を含まないベース組成に対して、表面調整剤の添加によって光沢度が上昇した場合を合格として扱い、さらに表面調整剤の添加による光沢度の上昇率について、以下の基準に従い評価した。表面調整剤を添加しても光沢度が上昇しない(上記の上昇度がゼロまたは負の値である)場合は、不合格とした。
【0244】
a判定:表面調整剤の添加による光沢度の上昇率が5%以上(合格)
b判定:表面調整剤の添加による光沢度の上昇率が1%以上5%未満(合格)
c判定:表面調整剤の添加による光沢度の上昇率が0%超え1%未満(合格)
d判定:表面調整剤の添加による光沢度の上昇率が0%以下(不合格)
【0245】
[光非透過性]
紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」)、積分球ISR-3100を用い、380~780nmの波長域の可視光透過率を測定した。ブランク測定(大気)の積分値に対する透過率の積分値を、380~780nmの波長域における透過率を積分して求め、以下の基準に従い評価した。ブランク測定に対する透過率の積分値は、小さい方が膜の透過性が低く、優れている。
【0246】
a判定:透過率の積分値が1.0%以下(合格)
b判定:透過率の積分値が5.0%以下(合格)
c判定:透過率の積分値が5.0%より大きい(不合格)
【0247】
[密着性]
硬化膜に対し、セロテープ(登録商標)を貼り、勢いよく剥離し、以下の基準で評価した。
【0248】
a判定:膜に剥離がない(合格)
b判定:膜の表面部にわずかな剥離があるが、基板は見えない程度(合格)
c判定:膜に剥離がある(不合格)
【0249】
[耐擦過性]
硬化膜に対し、摩擦摩耗試験機を用い、乾いた木綿で、荷重500gおよび10往復する摩擦試験を行った。摩擦試験後の硬化膜の20°光沢度を測定し、摩擦試験前後での光沢度の低下率を求め、以下の基準に従い耐擦過性を評価した。
【0250】
a判定:光沢度の低下率が20%未満(合格)
b判定:光沢度の低下率が20%以上50%未満(合格)
c判定:光沢度の低下率が50%以上(不合格)
【0251】
[総合判定]
光沢度、光非透過性、密着性、耐擦過性の結果から、優劣判定を行い、ランクA、B、Cを合格とした。
ランクA:光沢度がa判定で、かつ光非透過性、密着性、耐擦過性が合格
ランクB:光沢度がb判定で、かつ光非透過性、密着性、耐擦過性が合格
ランクC:光沢度がc判定で、かつ光非透過性、密着性、耐擦過性が合格
ランクD:光沢度がd判定であるか、または光非透過性、密着性、耐擦過性のいずれかが不合格
【0252】
[膜の断面観察]
得られた銀光沢膜から試料を切り出し、汎用の包埋樹脂であるエポキシ樹脂で試料を包埋し、ミクロトームにて切削断面を露出させてSEM観察を行った。さらに、微細な構造観察を行うため、ミクロトームにて切削断面を露出した後、100nm以下程度の厚みで超薄切片を作製し、TEM観察を行なった。
【0253】
実施例1~20および比較例1~14
(複合体ナノ粒子分散液Aの調製方法)
硝酸銀66.8g、カルボキシル基を有する高分子分散剤A 7.2gを、イオン交換水100gに投入し、激しく攪拌し、懸濁液を得た。この懸濁液に対して、ジメチルアミノエタノール(和光純薬工業(株)製)100gを水温が50℃を超えないように徐々に加えた後、水温50℃のウォーターバス中で4時間加熱攪拌し、複合体ナノ粒子分散液を得た。
【0254】
得られた複合体ナノ粒子分散液に過剰量のメタノールを入れて攪拌し、その後、遠心分離により複合体ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。再度、メタノールを加えて攪拌し、その後、遠心分離により複合体ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。得られた沈殿を含んだメタノール液にジエチレングリコールモノブチルエーテルを加え、エバポレータで混入したメタノールを除去することで銀含有量が分散液中70質量%の複合体ナノ粒子分散液Aを得た。この分散液について、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製)で、複合体ナノ粒子を構成する銀ナノ粒子の粒径を確認したところ、一次粒子の個数平均粒子径は約20nmであった。
【0255】
(複合体ナノ粒子分散液Bの調製方法)
カルボキシル基を有する高分子分散剤Aの代わりにカルボキシル基を有する高分子分散剤Bを用いたこと以外は、複合体ナノ粒子分散液Aと同様に複合体ナノ粒子分散液Bを調製した。得られた複合体ナノ粒子分散液Bについて、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製)で銀ナノ粒子の粒径を確認したところ、一次粒子の個数平均粒子径は約30nmであった。
【0256】
(複合体ナノ粒子分散液Cの調製方法)
硝酸銀65.58g、カルボキシル基を有する高分子分散剤A 7.2gを、イオン交換水100gに投入し、激しく攪拌し、懸濁液Aを得た。
【0257】
硝酸銅(II)3水和物1.40g、1mol/Lの硝酸水溶液2.93gを採り、50℃の湯浴中で攪拌し、硝酸銅(II)3水和物を溶解し、水溶液Bを得た。
【0258】
前記懸濁液Aと前記水溶液Bとを攪拌しながら混合し、カルボキシル基を有する高分子分散剤A、硝酸銀、硝酸銅の混合液を得た。
【0259】
この混合液に対して、ジメチルアミノエタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)100gを水温が50℃を超えないように徐々に加えた後、水温50℃のウォーターバス中で4時間加熱攪拌した。
【0260】
得られた複合体ナノ粒子含有分散体に過剰量のメタノールを入れて攪拌し、その後、遠心分離により複合体ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。再度、メタノールを加えて攪拌し、その後、遠心分離により複合体ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。得られた沈殿を含んだメタノール液にジエチレングリコールモノブチルエーテルを加え、エバポレータで混入したメタノールを除去することで、銀100質量部に対する銅の割合が1質量部であり、銀/銅合金含有量が70質量%の複合体ナノ粒子分散液Cを得た。この分散液について、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製)で銀/銅合金ナノ粒子の粒径を確認したところ、一次粒子の個数平均粒子径は約20nmであった。
【0261】
(メタリックインク組成物の調製方法)
表1~4に示す割合で、得られた複合体ナノ粒子分散液、樹脂成分、表面調整剤および溶剤を、攪拌脱泡装置(クラボウ(株)製「マゼルスター」)を用いて攪拌混合し、メタリックインク組成物を調製した。なお、表1~4の樹脂および表面調整剤の量は、固形分換算の含有量である。メタリックインク組成物をガラス基材(基板)に20μmの厚みにアプリケーターで塗布した。その後、50℃のホットプレートで10分間加熱後、80℃のホットプレートで120分間加熱した。得られた金属光沢膜の厚み(前記塗膜の乾燥厚み)は約2μmであった。
【0262】
得られた金属光沢膜の評価結果を表1~4に示す。
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
樹脂成分および表面調整剤の量の検証結果を表1に示した。
【0268】
[実施例1~2、5、7、比較例1~4]
比較例1~4は、樹脂成分にブチラール系樹脂を単独で使用し、表面調整剤を含まない例である。比較例1~4は、銀ナノ粒子に対する樹脂量を10%、20%、30%、50%と変量した組成であるが、これらの組成に表面調整剤を1.0質量%(銀に対して5質量%)添加した実施例1~2、5、7では、いずれも光沢度(L値)が上昇し、かつ光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。表面調整剤の添加による光沢度の上昇率と総合判定は、実施例1では0.7%でランクC(合格)、実施例2では4.7%でランクB(合格)、実施例5では9.2%でランクA(合格)、実施例7では22.7%でランクA(合格)であった。
【0269】
[実施例3、4、6]
樹脂成分にブチラール系樹脂を単独で使用し、表面調整剤を添加した実施例の中で、最も光沢度が大きい実施例5の組成をベースに、表面調整剤の添加量の変量試験を行った。
【0270】
表面調整剤の添加量が1.0質量%(銀に対して5質量%)の実施例5の組成に対して、表面調整剤の添加量を0.1質量%(銀に対して0.5質量%)、0.2質量%(銀ナノ粒子に対して1質量%)、2.0質量%(銀に対して10質量%)に変量した実施例3、4、6では、いずれも表面調整剤を含まないベースとなる組成の比較例3に対して光沢度(L値)は上昇し、かつ光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。表面調整剤の添加による光沢度の上昇率と総合判定は、実施例3では0.8%でランクC(合格)、実施例4では2.2%でランクB(合格)、実施例6では4.8%でランクB(合格)であった。
【0271】
この変量試験では、表面調整剤の添加量が1.0質量%(銀に対して5質量%)の実施例5の光沢度が最も大きくなった。表面調整剤の添加量が多いほど光沢度が大きくなるのではなく、1.0質量%(銀に対して5質量%)付近が適量であるといえる。
【0272】
実施例5で得られた金属光沢膜の断面写真を
図1に示す。なお、
図1では、TEM像の左下側が基材との界面層側であり、右上側が表面層側である。光沢度が高い実施例5の銀光沢膜では、膜内部(中間層)では、銀ナノ粒子が凝集した領域(分散相)と、銀ナノ粒子の凝集が少ない領域(連続相)とに相分離していた。すなわち、銀ナノ粒子は分散相に偏在した構造を有していた。さらに、表面および基材との界面では、銀ナノ粒子が整列して薄肉の連続層(薄肉層)を形成していた。
【0273】
樹脂成分の種類および表面調整剤の有無の検証結果を表2に示した。
【0274】
[実施例8~12、比較例5~9]
比較例5~9は、樹脂成分としてブチラール系樹脂と第2樹脂を組み合わせた組成において、表面調整剤を含まない例である。第2樹脂としては、比較例5ではアクリル系樹脂、比較例6ではセルロース系樹脂A、比較例7ではセルロース系樹脂B、比較例8ではポリエステルポリオール樹脂、比較例9ではエポキシ樹脂を用いた。これらの組成に表面調整剤を1.0質量%(銀ナノ粒子に対して5質量%)添加した実施例8~12では、いずれも光沢度(L値)が上昇し、かつ光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。表面調整剤の添加による光沢度の上昇率と総合判定は、実施例8では7.4%でランクA(合格)、実施例9では40.3%でランクA(合格)、実施例10では39.4%でランクA(合格)、実施例11では6.4%でランクA(合格)、実施例12では32.8%でランクA(合格)であった。
【0275】
表面調整剤の種類、複合体ナノ粒子の保護コロイドを変更した場合、複合体ナノ粒子として銀/銅合金を含む複合体ナノ粒子を用いた場合、および表面調整剤の有無の検証結果を表3に示した。
【0276】
[実施例13~15]
実施例13~15は、樹脂成分にブチラール系樹脂を単独で使用し、表面調整剤を添加した実施例の中で、最も光沢度が大きい実施例5の組成をベースに、表面調整剤の種類を変えた例である。表面調整剤としては、実施例5ではアクリル系表面調整剤を用いたのに対し、実施例13ではポリエステル変性シリコーン系表面調整剤、実施例14ではポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤、実施例15ではフッ素系表面調整剤を用いた。
【0277】
実施例13~15は、実施例5と同様に、表面調整剤を含まないベースとなる組成の比較例3に対して光沢度(L値)は上昇し、かつ、光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。表面調整剤の添加による光沢度の上昇率と総合判定は、実施例13では5.0%でランクA(合格)、実施例14では2.4%でランクB(合格)、実施例15では2.7%でランクB(合格)であった。
【0278】
[実施例16~17、比較例10~11]
比較例10~11は、樹脂成分としてブチラール系樹脂を単独で使用した、比較例3の組成をベースに、複合体ナノ粒子の種類を変更した例である。複合体ナノ粒子としては、比較例10では、複合体ナノ粒子分散液Aと保護コロイドの異なる複合体ナノ粒子分散液Bを用い、比較例11では、銀/銅合金を含む複合体ナノ粒子分散液Cを用いた。これらの組成に表面調整剤を1.0質量%(銀ナノ粒子または銀/銅合金ナノ粒子に対して5質量%)添加した実施例16~17では、いずれも光沢度(L値)が上昇し、かつ、光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。表面調整剤の添加による光沢度の上昇率と総合判定は、実施例16では6.4%でランクA(合格)、実施例17では6.2%でランクA(合格)であった。
【0279】
樹脂成分として、ブチラール系樹脂と第2樹脂(アクリル樹脂)とを用いた組成において、樹脂成分の量、ブチラール系樹脂と第2樹脂(アクリル樹脂)との質量比率、および表面調整剤の有無の検証結果を表4に示した。
【0280】
[実施例18、比較例12]
比較例12は、樹脂成分にブチラール系樹脂と第2樹脂(アクリル樹脂)との質量比率を、ブチラール系樹脂:第2樹脂=50:50で使用した比較例5をベースに、銀ナノ粒子に対する樹脂量を50質量%に変量した組成であるが、これらの組成に表面調整剤Aを1.0質量%(銀に対して5質量%)添加した実施例18は、光沢度(L値)が上昇し、かつ、光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。実施例18の、表面調整剤の添加による光沢度の上昇率と総合判定は、16.7%でランクA(合格)であった。
【0281】
[実施例19~20、比較例13~14]
比較例13~14は、樹脂成分にブチラール系樹脂と第2樹脂(アクリル樹脂)とを、銀ナノ粒子に対する樹脂量を30質量%にした比較例5をベースに、ブチラール系樹脂と第2樹脂(アクリル樹脂)との質量比率をブチラール系樹脂:第2樹脂=25:75、ブチラール系樹脂:第2樹脂=75:25と変量した組成であるが、これらの組成に表面調整剤を1.0質量%(銀に対して5質量%)添加した実施例19~20は、いずれも光沢度(L値)が上昇し、かつ、光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。表面調整剤の添加による光沢度の上昇率と総合判定は、実施例19では4.6%でランクB(合格)、実施例20では4.0%でランクB(合格)であった。
本発明のインク組成物は、各種の被加飾体(成形体)の装飾性を向上させるために利用でき、例えば、自動車の内装や外装部品、エンブレム、携帯電話、ノートパソコン、ゴルフクラブのシャフト、軟包装や化粧品の容器などの加飾、塗装用途、インクジェット印刷方式でのインキ用途などに利用できる。