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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105205
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】インク組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/08 20060101AFI20240730BHJP
   C09D 11/104 20140101ALI20240730BHJP
   C09D 11/106 20140101ALI20240730BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20240730BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20240730BHJP
【FI】
C09D11/08
C09D11/104
C09D11/106
C09D11/037
C09D11/102
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008161
(22)【出願日】2024-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2023009346
(32)【優先日】2023-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】田中 友揮
(72)【発明者】
【氏名】黒田 雄介
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AD10
4J039AE06
4J039AE11
4J039BA06
4J039BA39
4J039BC07
4J039BC10
4J039BC11
4J039BC13
4J039BC14
4J039BC15
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039CA02
4J039EA33
4J039EA36
4J039FA01
4J039FA02
4J039FA04
4J039FA05
4J039GA03
4J039GA09
4J039GA10
4J039GA11
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】天然由来のバインダーを用いても金属光沢に優れたインク組成物を提供する。
【解決手段】銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)と、セルロース系樹脂を含む樹脂成分(B)とを含み、かつポリビニルアセタール系樹脂を実質的に含まないインク組成物を調製する。前記セルロース系樹脂は、セルロースエステル、セルロースエーテルおよびセルロースエーテルエステルからなる群より選択された少なくとも1種であってもよい。前記樹脂成分(B)は、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種の第2樹脂をさらに含んでいてもよい。前記樹脂成分(B)の割合は、前記複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して5~50質量部であってもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)と、セルロース系樹脂を含む樹脂成分(B)とを含み、かつポリビニルアセタール系樹脂を実質的に含まないインク組成物。
【請求項2】
前記セルロース系樹脂が、セルロースエステル、セルロースエーテルおよびセルロースエーテルエステルからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1記載のインク組成物。
【請求項3】
前記樹脂成分(B)が第2樹脂をさらに含み、かつ前記第2樹脂が、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種である請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分(B)の割合が、前記複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して5~50質量部である請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項5】
表面調整剤(C)をさらに含む請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項6】
前記表面調整剤(C)の割合が、前記複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して0.1~30質量部である請求項5記載のインク組成物。
【請求項7】
溶剤(D)をさらに含み、かつ前記溶剤(D)が、アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびジアルキレングリコールモノアルキルエーテルからなる群より選択された少なくとも1種を含む請求項1または2記載のインク組成物。
【請求項8】
請求項1または2記載のインク組成物を基材の上に塗布する塗布工程と、前記インク組成物で形成された塗膜を乾燥させて金属光沢膜を得る乾燥工程とを含む金属光沢膜の製造方法。
【請求項9】
銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)と、セルロース系樹脂を含む樹脂成分(B)とを含む金属光沢膜。
【請求項10】
被加飾体である基材と、この基材の上に積層された請求項9記載の金属光沢膜とを含む装飾体。
【請求項11】
被加飾体である基材の上に、請求項9記載の金属光沢膜を積層し、前記基材を装飾する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の被加飾体をメタリック加飾するために有用なインク組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
メタリック加飾は、例えば、自動車の内装・外装部品、エンブレム、電子機器、化粧品の容器、ゴルフクラブのシャフトなどの幅広い分野で必要とされており、高級感を得るために、金属に匹敵する程の高度な金属光沢が求められている。特に、銀は光の反射率が高いことから美しい金属光沢(メタリック性、光輝性、鏡面性)を有し、高度な意匠性に好適な金属として期待されている。
【0003】
被加飾体に金属光沢を付与するための手法としては、箔押し、蒸着、銀鏡反応を利用した銀鏡メッキ、クロムメッキのほか、光輝顔料としてアルミニウム顔料を用いたインクや、金属ナノ粒子を含むインクによる印刷や塗布によって、基材に金属光沢層を形成する方法が挙げられる。
【0004】
箔押し、蒸着、銀鏡メッキ、クロムメッキは、金属に近い金属光沢を付与することができるが、製造工程が複雑であることや、専用の設備が必要であることから製造コストの面で不利な方法である。また、銀鏡メッキは、メッキ特有の白化、クラック、発色のムラの発生や、メッキを施す部分以外の部分がメッキされてしまうことによる不良率も高い。さらに、クロムメッキは環境に対する負荷が大きい。これらの手法に対して、インクを用いた印刷や塗布などの方法は、製造コストが安価で、適用できる基材も幅広く選択できる。
【0005】
インクの中でも、アルミニウム顔料(光輝顔料)を用いたインクよりも、金属ナノ粒子を含むインクによる金属光沢層の方が、金属光沢に優れている。
【0006】
特開2022-8103号公報(特許文献1)には、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子、非シリコーン系樹脂、シリコーン系樹脂(C)および溶剤(D)を含むインク組成物が開示されている。
【0007】
特開2022-142769号公報(特許文献2)には、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子、ポリビニルアセタール系樹脂を含む樹脂成分および溶剤を含むインク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-8103号公報
【特許文献2】特開2022-142769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1および2に開示されている金属ナノ粒子を用いたインクでは、シリコーン樹脂やポリビニルアセタール系樹脂を必須のバインダーとして使用しているが、地球環境に対する配慮がされていない。近年、地球環境問題が逼迫しており、地球環境を壊さずに経済を持続可能な形で発展させるために、世界的に共通な開発目標として、SDGs(Sustainable Development Goals)が広く認知されており、容易に取得できる天然資
源由来の材料の使用が望まれている。
【0010】
一方、金属ナノ粒子を含むインクに共通する課題として、バインダーなどの樹脂量を多くすると金属光沢(銀光沢)が得られなくなるため、高い金属光沢を得るためには樹脂量を極力少なくする必要があった。樹脂量を少なくすると、基材との密着性、耐擦過性が低下するため、上塗り層、下塗り層との併用が必要であった。すなわち、金属光沢性と密着性とはトレードオフの関係にあるため、簡便な方法で両特性を両立させるのは困難であった。そのため、天然資源という制約の下で、バインダーを含むインクを設計するのは極めて困難であった。
【0011】
従って、本発明の目的は、天然由来のバインダーを用いても銀光沢などの金属光沢に優れたインク組成物およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、ポリビニルアセタール系樹脂を用いることなく、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子と、セルロース系樹脂とを組み合わせることにより、銀光沢などの金属光沢を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の態様[1]としてのインク組成物は、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)と、セルロース系樹脂を含む樹脂成分(B)とを含み、かつポリビニルアセタール系樹脂を実質的に含まない。
【0014】
本発明の態様[2]は、前記態様[1]において、前記セルロース系樹脂が、セルロースエステル、セルロースエーテルおよびセルロースエーテルエステルからなる群より選択された少なくとも1種である態様である。
【0015】
本発明の態様[3]は、前記態様[1]または[2]において、前記樹脂成分(B)が第2樹脂をさらに含み、かつ前記第2樹脂が、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン系樹脂からなる群より選択された少なくとも1種である態様である。
【0016】
本発明の態様[4]は、前記態様[1]~[3]のいずれかの態様において、前記樹脂成分(B)の割合が、前記複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して5~50質量部である態様である。
【0017】
本発明の態様[5]は、前記態様[1]~[4]のいずれかの態様において、表面調整剤(C)をさらに含む態様である。
【0018】
本発明の態様[6]は、前記態様[5]において、前記表面調整剤(C)の割合が、前記複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して0.1~30質量部である態様である。
【0019】
本発明の態様[7]は、前記態様[1]~[6]のいずれかの態様において、溶剤(D)をさらに含み、かつ前記溶剤(D)が、アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびジアルキレングリコールモノアルキルエーテルからなる群より選択された少なくとも1種を含む態様である。
【0020】
本発明には、態様[8]として、前記態様[1]~[7]のいずれかの態様のインク組成物を基材の上に塗布する塗布工程と、前記インク組成物で形成された塗膜を乾燥させて金属光沢膜を得る乾燥工程とを含む金属光沢膜の製造方法も含まれる。
【0021】
本発明には、態様[9]として、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)と、セルロース系樹脂を含む樹脂成分(B)とを含む金属光沢膜も含まれる。
【0022】
本発明には、態様[10]として、被加飾体である基材と、この基材の上に積層された前記態様[9]の金属光沢膜とを含む装飾体(メタリック加飾体またはメタリック調成形体)も含まれる。
【0023】
本発明には、態様[11]として、被加飾体である基材の上に、前記態様[9]の金属光沢膜を積層し、前記基材を装飾(またはメタリック加飾)する方法も含まれる。
【0024】
本願において、用語「インク」は「インキ」と同義に用いるとともに、「インク組成物」は「塗布または塗工組成物」と同義で用いる。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、ポリビニルアセタール系樹脂を用いることなく、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子と、セルロース系樹脂とが組み合わされているため、金属光沢(特に、銀光沢)を向上できる。さらに、銀を含む金属を偏在させることにより、金属光沢を維持しつつ、樹脂成分を増量できるため、金属光沢と密着性および耐擦過性とを両立できる。詳しくは、被加飾体に対して、上塗り層や下塗り層などを形成することなく、高い密着性で金属光沢膜を形成できるため、簡便な方法で密着性を向上でき、耐擦過性も向上できる。さらに、膜表面に銀を含むナノ粒子で密な層を形成できるため、光の遮蔽性(非透過性)も大きく、金属光沢(鏡面)を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、実施例2で得られた銀光沢膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。
図2図2は、比較例2で得られた銀光沢膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[インク組成物]
本発明のインク(またはインキ)組成物(またはコーティング組成物)において、樹脂成分として、セルロース系樹脂を含むことにより、高度な金属光沢、特に、銀光沢(鏡面)が発現するメカニズムは、以下のように推定できる。
【0028】
まず、樹脂成分がセルロース系樹脂を単独で含む場合は、セルロース系樹脂の分子構造が影響していると推定できる。すなわち、セルロース系樹脂は分子鎖に疎水基(アシル基、アルコキシ基など)と親水基(水酸基)とを有する。樹脂成分がセルロース系樹脂のみの場合、複合体ナノ粒子が疎水基または親水基のどちらかに偏在することで、セルロース系樹脂の分子鎖上で、相対的に複合体ナノ粒子を多く含む部分と、少ない部分とが生じる。すなわち、セルロース系樹脂の分子鎖上で、複合体ナノ粒子が密な相と疎な相との相分離構造に類似した構造が生じている。その結果、相対的に複合体ナノ粒子を多く含む相(遮蔽性の高い相)が光を遮蔽する(透過させない)役割を果たし、高度な金属光沢が発現していると推定できる。
【0029】
一方、樹脂成分が、第1樹脂としてのセルロース系樹脂と第2樹脂とを含む場合は、樹脂同士の相分離構造が影響していると推定できる。すなわち、セルロース系樹脂と、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ樹脂などの第2樹脂とを組み合わせた場合は、第1樹脂と第2樹脂とが相分離し、複合体ナノ粒子はそのいずれかの相に偏在する。セルロース系樹脂単独での分子鎖上での相分離に比べて、2種類の樹脂による相分離では、相対的に複合体ナノ粒子を多く含む相のサイズが大きくなる。そのため、セルロース系樹脂を単独で使用した場合に比べて、銀を含む金属に対する樹脂量を増加しても光の遮蔽効果(非透過性)が得られ、高度な金属光沢が得られる。そのため、第1樹脂と第2樹脂とを組み合わせる場合は、樹脂量を多く配合でき、密着性、耐擦過性をより向上できる。
【0030】
(A)複合体ナノ粒子
本発明のインク組成物(メタリックインク組成物)は、銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)を含む。
【0031】
前記複合体ナノ粒子(A)において、銀を含む金属(銀含有金属)と保護コロイドとの複合形態は、特に限定されず、銀含有金属ナノ粒子の表面に付着または配位した複合体であってもよく、銀含有金属ナノ粒子の表面を被覆した複合体であってもよい。銀含有金属ナノ粒子は、保護コロイド(または分散剤)に対する配位性が高いため、保護コロイドが銀含有金属ナノ粒子の表面に配位することにより、銀含有金属ナノ粒子を被覆した複合体であってもよい。銀含有金属ナノ粒子は、保護コロイドで複合化されていると、銀含有金属ナノ粒子の分散安定性を向上できるとともに、樹脂成分との親和性を調整し易くなり、相分離構造を形成できる。
【0032】
(銀含有金属ナノ粒子)
銀含有金属ナノ粒子はナノメーターサイズである。銀含有金属ナノ粒子の数平均粒径(数平均一次粒径)は、例えば1~100nm(例えば2~80nm)、好ましくは3~70nm(例えば4~50nm)、さらに好ましくは5~40nm(特に10~30nm)である。
【0033】
銀含有金属ナノ粒子は、前記平均粒径を有するとともに、200nm以下の範囲で広い粒度分布を示すが、200nmを超える粗大粒子を殆ど含んでいなくてもよい。そのため、前記銀含有金属ナノ粒子の最大一次粒径は、例えば、200nm以下、好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
【0034】
銀含有金属ナノ粒子において、一次粒子径が100nm以上の粒子の割合は、質量基準で、例えば10質量%以下(例えば0~8質量%)、好ましくは5質量%以下(例えば0.01~3質量%)、さらに好ましくは1質量%以下(例えば0.02~0.5質量%)である。
【0035】
なお、本願において、銀含有金属ナノ粒子の粒径および粒度分布は、透過型電子顕微鏡を用いて測定でき、平均粒径は、任意の10個の平均値として示す。
【0036】
(銀を含む金属)
銀を含む金属(銀含有金属)は、銀単体であってもよく、銀と他の金属との合金であってもよい。他の金属としては、銀と合金化できれば特に限定されないが、例えば、Cr、Mo、W、Ni、Pd、Pt、Cu、Au、Zn、In、Sn、Pbなどが挙げられる。これら他の金属は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これら他の金属のうち、Cuが好ましい。
【0037】
銀含有金属のうち、銀の割合は、銀含有金属中50質量%以上であってもよく、例えば90質量%以上、好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、より好ましくは99質量%以上であり、最も好ましくは100質量%(銀単体)である。銀の割合が低すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0038】
銀含有金属が銀と他の金属(特に銅)との組み合わせである場合、他の金属の割合は、銀100質量部に対して、例えば0.01~10質量部、好ましくは0.03~5質量部、さらに好ましくは0.05~3質量部である。
【0039】
(保護コロイド)
保護コロイドは、分散剤であってもよく、非揮発性分散剤である場合が多い。特に、保護コロイドは、カルボキシル基またはその誘導体基を有する高分子分散剤を含むのが好ましい。なお、本願において、カルボキシル基には、酸無水物基の形態であるカルボキシル基も含まれる。
【0040】
前記高分子分散剤(または高分子型分散剤)は、少なくともカルボキシル基を有し、銀含有金属ナノ粒子を分散可能であればよく、両親媒性の高分子分散剤(またはオリゴマー型分散剤)であってもよい。
【0041】
前記高分子分散剤としては、通常、塗料、インキ分野などで着色剤の分散に用いられている高分子分散剤が例示できる。代表的な高分子分散剤(両親媒性の高分子分散剤)としては、親水性モノマーで形成された親水性ユニット(または親水性ブロック)を含む水溶性または水分散性樹脂が含まれる。
【0042】
前記親水性モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有単量体((メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などの不飽和多価カルボン酸またはその酸無水物など)、スルホ基を有する単量体(スチレンスルホン酸など)、ヒドロキシル基含有単量体(2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルフェノールなど)などの付加重合性モノマー;エチレンオキシドなどの縮合重合性モノマーなどが例示できる。前記縮合重合性モノマーは、ヒドロキシル基などの活性水素(例えば、前記ヒドロキシル基)との反応により、親水性ユニット(またはブロック)を形成していてもよい。親水性モノマーは、単独でまたは2種以上組み合わせて親水性ユニット(またはブロック)を形成していてもよい。好ましい親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、エチレンオキシドである。
【0043】
なお、前記高分子分散剤は、少なくともカルボキシル基を有していればよく、前記親水性モノマーの官能基、例えば、酸基(スルホ基)、ヒドロキシル基を有していてもよい。これらの官能基は、単独でまたは2種以上組み合わせて高分子分散剤に導入してもよい。
【0044】
高分子分散剤は、少なくとも親水性ユニット(または親水性ブロック)を含んでいてもよく、親水性モノマーの単独または共重合体(例えば、ポリアクリル酸またはその塩など)であってもよく、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマーであってもよい。疎水性モノマー(非イオン性モノマー)としては、(メタ)アクリル酸エステル[(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-フェニルエチルなどの(メタ)アクリル酸アラルキルなど]などの(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系モノマー;α-C2-20オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセンなど)などのオレフィン系モノマー;酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル系モノマーなどの付加重合性モノマー;プロピレンオキシドなどのC3-6アルキレンオキシドなどの縮合重合性モノマーが挙げられる。疎水性モノマーは、単独でまたは2種以上組み合わせて疎水性ユニットを構成していてもよい。
【0045】
コポリマー(例えば、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー)の高分子分散剤は、ランダムコポリマー、交互共重合体、ブロックコポリマー(例えば、親水性モノマーで構成された親水性ブロックと、疎水性モノマーで構成された疎水性ブロックとで構成されたコポリマー)、櫛型コポリマー(または櫛型グラフトコポリマー)などであってもよい。前記ブロックコポリマーの構造は、特に限定されず、ジブロック構造、トリブロック構造(ABA型、BAB型)などであってもよい。また、前記櫛型コポリマーにおいて、主鎖は、前記親水性ブロックまたは前記疎水性ブロックで形成してもよく、親水性ブロックおよび疎水性ブロックで形成してもよい。親水性ブロックおよび疎水性ブロックのブロック共重合体は、金属光沢性も向上できる。
【0046】
なお、前記のように、親水性ユニットは、親水性ブロック(ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシドなど)で形成することもできる。親水性ブロック(ポリアルキレンオキシドなど)と疎水性ブロック(ポリオレフィンブロックなど)とは、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合などの連結基を介して結合していてもよい。これらの結合は、例えば、疎水性ブロック(ポリオレフィンなど)を変性剤[不飽和カルボン酸またはその無水物((無水)マレイン酸など)、ラクタムまたはアミノカルボン酸、ヒドロキシルアミン、ジアミンなど]で変性した後、親水性ブロックを導入することにより形成してもよい。また、ヒドロキシル基やカルボキシル基などの親水性基を有するモノマー(前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど)から得られるポリマーと、前記縮合系の親水性モノマー(エチレンオキシドなど)とを反応(または結合)させることにより、櫛型コポリマー(主鎖が疎水性ブロックで構成された櫛型コポリマー)を形成してもよい。
【0047】
さらに、共重合成分として、親水性の非イオン性モノマーを使用することにより、親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。このような成分としては、2-(2-メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート(例えば、数平均分子量200~1,000)などのエチレンオキシユニットを有するモノマーまたはオリゴマーなどを例示できる。また、親水性基(カルボキシル基など)を変性(例えば、エステル化)することにより親水性と疎水性とのバランスを調整してもよい。
【0048】
カルボキシル基を有する高分子分散剤において、カルボキシル基は塩や酸無水物基であってもよく、例えば、少なくとも一部のカルボキシル基は、塩(アミンとの塩、金属塩など)を形成していてもよいが、カルボキシル基などの酸基が塩を形成していない高分子分散剤[すなわち、遊離のカルボキシル基を有する高分子分散剤]を好適に使用できる。
【0049】
カルボキシル基を有する高分子分散剤の酸価は、例えば1mgKOH/g以上(例えば2~100mgKOH/g)、好ましくは3mgKOH/g以上(例えば4~90mgKOH/g)、さらに好ましくは5mgKOH/g以上(例えば6~80mgKOH/g)、より好ましくは7mgKOH/g以上(例えば8~50mgKOH/g)であってもよく、通常3~30mgKOH/g(特に5~20mgKOH/g)である。なお、このような高分子分散剤において、アミン価は0(またはほぼ0)であってもよい。
【0050】
なお、前記高分子分散剤において、官能基の位置は、特に限定されず、主鎖であってもよく、側鎖であってもよく、主鎖および側鎖に位置していてもよい。このような官能基は、例えば、親水性モノマーまたは親水性ユニット由来の官能基(例えば、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、エチレンオキサイドなどの共重合により導入された官能基)であってもよい。
【0051】
カルボキシル基を有する高分子分散剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0052】
なお、高分子分散剤として、特開2004-207558号公報などに記載の高分子分散剤(高分子量顔料分散剤)を使用してもよい。また、高分子分散剤は、合成してもよく、市販品を用いてもよい。以下に、市販の高分子分散剤(または少なくとも両親媒性の分散剤で構成された分散剤)を具体的に例示すると、ソルスパース13240、ソルスパース13940、ソルスパース32550、ソルスパース31845、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース41090などのソルスパースシリーズ[アビシア(株)製];DISPERBYK-160、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-166、DISPERBYK-170、DISPERBYK-180、DISPERBYK-182、DISPERBYK-184、DISPERBYK-190、DISPERBYK-191、DISPERBYK-192、DISPERBYK-193、DISPERBYK-194、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2015、DISPERBYK-2050などのディスパービックシリーズ[ビックケミー・ジャパン(株)製];EFKA-46、EFKA-47、EFKA-48、EFKA-49、EFKA-1501、EFKA-1502、EFKA-4540、EFKA-4550、ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453[EFKAケミカル(株)製];アジスパーPB711、アジスパーPAl11、アジスパーPB811、アジスパーPB821、アジスパーPW911などのアジスパーシリーズ[味の素(株)製];フローレンDOPA-158、フローレンDOPA-22、フローレンDOPA-17、フローレンTG-700、フローレンTG-720W、フローレン-730W、フローレン-740W、フローレン-745Wなどのフローレンシリーズ[共栄社化学(株)製];ジョンクリル678、ジョンクリル679、ジョンクリル62などのジョンクリルシリーズ[ジョンソンポリマー(株)製]などが挙げられる。代表的な高分子分散剤には、DISPERBYK-190、DISPERBYK-194、DISPERBYK-2015などが挙げられる。
【0053】
前記高分子分散剤の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定したとき、ポリスチレン換算で、例えば1,500~100,000、好ましくは2,000~80,000(例えば2,000~60,000)、さらに好ましくは3,000~50,000(例えば5,000~30,000)、より好ましくは7,000~20,000である。
【0054】
カルボキシル基を有する高分子分散剤は、ヒドロキシル基を有さない高分子分散剤であってもよい。
【0055】
保護コロイドの割合は、銀含有金属100質量部に対して、例えば0.1~100質量部(特に1~50質量部)である。カルボキシル基を有する高分子分散剤の割合は、銀含有金属100質量部に対して、例えば0.1~60質量部(例えば1~50質量部)程度の範囲から選択でき、通常2~40質量部(例えば2.5~30質量部)、さらに好ましくは3~25質量部(特に5~20質量部)である。
【0056】
なお、本願において、複合体ナノ粒子(A)中の保護コロイドの割合は、慣用の方法、例えば、熱分析(例えば、熱重量/示差熱同時分析など)により、測定することができる。
【0057】
保護コロイドは、必要であれば、他の分散剤を含んでいてもよく、他の分散剤は、無機化合物であってもよいが、通常、有機化合物である。他の分散剤としては、例えば、アルカノール類(ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オクタデカノールなどのC6-20アルカンモノオール)、アルデヒド類(カプリルアルデヒド、ラウリルアルデヒド、パルミトアルデヒドなどのC6-20脂肪族アルデヒド)、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、高級脂肪酸またはその塩、スルホン酸類(アルカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸など)が挙げられる。これらの他の分散剤は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。
【0058】
他の分散剤の割合は、前記高分子分散剤100質量部に対して、例えば0.1~100質量部、好ましくは0.5~50質量部、さらに好ましくは1~30質量部である。
【0059】
前記複合体ナノ粒子の製造方法は、特に限定されず、慣用の方法、例えば、銀含有金属が銀単体である場合、銀ナノ粒子に対応する銀化合物を、保護コロイドおよび還元剤の存在下、溶媒中で還元することにより調製できる。具体的な製造方法としては、例えば、特開2010-80442号公報や特開2010-229544号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0060】
(B)樹脂成分
本発明のインク組成物は、第1樹脂としてのセルロース系樹脂を含む樹脂成分(B)を含む。樹脂成分(B)は、第1樹脂(B1)のみを含んでいてもよく、第1樹脂(B1)および第2樹脂(B2)を含んでいてもよい。
【0061】
(B1)第1樹脂
第1樹脂(B1)であるセルロース系樹脂は、特に限定されないが、セルロースを修飾または変性して得られるセルロース誘導体であってもよい。
【0062】
セルロース誘導体としては、例えば、セルロースエステル、セルロースエーテル、セルロースエーテルエステルなどが挙げられる。セルロースエステルとしては、例えば、ニトロセルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロースなどのセルロース無機酸エステル;セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどのセルロース有機酸エステルなどが挙げられる。セルロースエーテルとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、エチルプロピルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロースなどのセルロースアルキルエーテル;カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロースなどが挙げられる。セルロースエーテルエステルとしては、例えば、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースプロピオネート、カルボキシメチルセルロースブチレートなどのセルロースエーテルエステルなどが挙げられる。
【0063】
これらのセルロース誘導体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、セルロース有機酸エステル、セルロースアルキルエーテルが好ましい。
【0064】
セルロース有機酸エステルとしては、セルロースアシレートが好ましく、セルロースC2-6アシレート(例えばC3-4アシレート)がさらに好ましく、セルロースアセテートC3-6アシレート(例えばC4-6アシレート)がより好ましく、セルロースC4-5アシレート(特にセルロースアセテートブチレート)が最も好ましい。セルロース有機酸エステルは、セルロースと、有機酸および/または酸無水物との反応によって製造してもよく、特に、セルロースを有機酸および/または酸無水物でトリエステル化した後に加水分解して製造してもよい。
【0065】
セルロースアシレートのエステル置換度は、例えば30~70質量%、好ましくは35~65質量%、さらに好ましくは40~60質量%、より好ましくは45~55質量%である。
【0066】
セルロースアセテートC3-6アシレート(特に、セルロースアセテートC3-4アシレート)のアセチル置換度は、例えば0.5~30質量%、好ましくは0.8~20質量%、さらに好ましくは1~10質量%である。
【0067】
セルロースアセテートC3-6アシレート(特に、セルロースアセテートC3-4アシレート)のC3-6アシル置換度(特に、C3-4アシル置換度)は、例えば15~60質量%、好ましくは30~55質量%、さらに好ましくは40~50質量%である。
【0068】
なお、本願において、セルロースアシレートのエステル置換度は、セルロースアシレート中のアシル基の質量割合を意味し、慣用の方法、例えば、滴定法、ガスクロマトグラフィー分析、IR元素分析、NMR法などを用いて測定でき、特に、ガスクロマトグラフィー分析で測定してもよい。
【0069】
セルロースアセテートC3-6アシレート(特に、セルロースアセテートC3-4アシレート)の水酸基含量は、例えば0.1~30質量%、好ましくは1~20質量%であり、金属光沢性を向上できる点から、さらに好ましくは2~10質量%、より好ましくは3~8質量%、最も好ましくは4~6質量%である。
【0070】
なお、本願において、セルロースアシレートの水酸基含量は、慣用の方法、例えば、滴定法、ガスクロマトグラフィー分析、IR元素分析、NMR法などを用いて測定でき、特に、ガスクロマトグラフィー分析で測定してもよい。
【0071】
セルロースアシレートの数平均分子量は、例えば1,000~300,000、好ましくは5,000~100,000、さらに好ましくは8,000~50,000、より好ましくは10,000~30,000、最も好ましくは15,000~25,000である。分子量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0072】
なお、本願において、セルロースアシレートの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0073】
セルロースアシレートのガラス転移温度は80~180℃程度の範囲から選択でき、例えば90~170℃、好ましくは100~160℃、さらに好ましくは120~150℃、より好ましくは125~145℃、最も好ましくは130~140℃である。ガラス転移温度が低すぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0074】
なお、本願において、セルロースアシレートのガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定できる。
【0075】
セルロースアルキルエーテルとしては、セルロースC1-6アルキルエーテルが好ましく、セルロースC1-4アルキルエーテルがさらに好ましく、セルロースC2-3アルキルエーテルがより好ましい。セルロースアルキルエーテルは、セルロースをアルカリセルロース化して得られたアルカリセルロースと、アルキルクロライドとの反応によって製造してもよい。
【0076】
セルロースアルキルエーテルのエーテル置換度は、例えば30~70質量%、好ましくは40~60質量%、さらに好ましくは45~55質量%、より好ましくは48~50質量%である。
【0077】
なお、本願において、セルロースアルキルエーテルのエーテル置換度は、慣用の方法、例えば、滴定法、ガスクロマトグラフィー分析、IR元素分析、NMR法などを用いて測定でき、特に、ガスクロマトグラフィー分析で測定してもよい。
【0078】
セルロースアルキルエーテルの数平均分子量は、例えば1,000~300,000、好ましくは10,000~200,000、さらに好ましくは30,000~100,000、より好ましくは50,000~70,000、最も好ましくは60,000~65,000である。分子量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0079】
なお、本願において、セルロースアルキルエーテルの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0080】
セルロースアルキルエーテルのガラス転移温度は、例えば80~180℃、好ましくは100~150℃、さらに好ましくは110~140℃、より好ましくは120~140℃、最も好ましくは125~135℃である。ガラス転移温度が低すぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0081】
なお、本願において、セルロースアルキルエーテルのガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定できる。
【0082】
これらのうち、金属光沢性を向上できる点から、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースエーテルが好ましい。さらに、第2樹脂との組み合わせにより、金属光沢性を向上できる点から、セルロースアセテートC4-6アシレート、セルロースエーテルが好ましく、セルロースアセテートC4-5アシレート、セルロースアルキルエーテルが特に好ましく、セルロースアセテートブチレートが最も好ましい。
【0083】
(B2)第2樹脂
第2樹脂(B2)は、第1樹脂と相分離可能な樹脂であれば、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂(a)、(メタ)アクリル系樹脂(b)、エポキシ樹脂(c)、シリコーン系樹脂(d)などが挙げられる。
【0084】
(a)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂(a)は、単量体としてポリカルボン酸とポリオールとを脱水縮合してエステル結合を形成させることによって合成される重合体である。本発明におけるポリエステル系樹脂(またはポリエステル樹脂)としては、特に限定されないが、ポリエステルポリオール樹脂(a1)、アルキド樹脂(a2)などが挙げられる。
【0085】
(a1)ポリエステルポリオール樹脂
ポリエステルポリオール樹脂(またはポリエステルポリオール類)(a1)は、分子鎖中にエステル結合を有するポリマーであり、1分子中に2個以上の水酸基を有する。
【0086】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)は、例えば、低分子量ポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオール;環状エステル化合物(ラクトン)を開環重合反応して得られるポリエステルポリオール;ポリオール(例えば、低分子量ポリオール、アルキレンオキシド、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上など)を開始剤として、環状エステル化合物を反応(付加)させて得られるポリエステルポリオール;これらの共重合ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0087】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としての低分子量ポリオールとしては、分子量が50~300程度のポリオールを用いることができ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオールなどの脂肪族ジオール(炭素数2~10の脂肪族ジオール);グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの脂肪族トリオール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールなどの四官能以上のポリオール;1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなどの脂環式構造含有ポリオール;ビスフェノールAやビスフェノールFなどのビスフェノール化合物およびそれらのアルキレンオキシド付加物、p-ヒドロキシフェネチルアルコールなどの芳香族ポリオールなどが挙げられる。
【0088】
これらの低分子量ポリオールは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0089】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としてのポリカルボン酸としては、特に限定されず、例えば、コハク酸、無水コハク酸、アルケニルコハク酸、アルケニル無水コハク酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ハイミック酸、無水ハイミック酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸;テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ジフェン酸などの芳香族ジカルボン酸;4,4-ビス(p-ヒドロキシフェニル)バレリック酸、5-ヒドロキシイソフタル酸などのオキシポリカルボン酸;スルホテレフタル酸、5-スルホイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、4-スルホフタル酸、4-スルホナフタレン-2,7-ジカルボン酸、5-(4-スルホフェノキシ)イソフタル酸などのスルホン酸基またはスルホン酸塩基(金属塩、アンモニウム塩など)を有する芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水メチルシクロヘキセントリカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの3官能以上のポリカルボン酸などが挙げられる。
【0090】
これらのポリカルボン酸は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0091】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としての環状エステル化合物としては、例えば、β-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどのC4-8ラクトンなどが挙げられる。これらの環状エステル化合物は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ε-カプロラクトンが汎用される。
【0092】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としてのポリエステルポリオール(環状エステル化合物を付加させる原料)としては、例えば、低分子量ポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0093】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としてのポリエーテルポリオールとしては、例えば、アルキレンオキシドの単独又は共重合体[ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリ(C2-4アルキレングリコール)]、ビスフェノールAまたは水添ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加体などが挙げられる。
【0094】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としてのポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記低分子量ジオールと、ジアルキルカーボネート(ジメチルカーボネートなどのジC1-4アルキルカーボネートなど)やジアリールカーボネート(ジフェニルカーボネートなどのジC6-12アリールカーボネートなど)との反応生成物などが挙げられる。
【0095】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料としてのポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0096】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)は、必要に応じて、共重合成分として、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸などのオキシカルボン酸をさらに含んでいてもよい。
【0097】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)には、必要に応じて、共重合成分として、分岐骨格を導入する目的で、ポリカルボン酸成分および/またはポリオール成分に3官能以上の成分を含んでいてもよい。
【0098】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の水酸基価は、例えば5~500mgKOH/g、好ましくは10~300mgKOH/g、さらに好ましくは20~200mgKOH/g、より好ましくは30~150mgKOH/g、最も好ましくは50~100mgKOH/gである。水酸基価が小さすぎると、銀光沢性および銀光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、銀光沢性が低下する虞がある。
【0099】
なお、本願において、ポリエステルポリオール樹脂(a1)の水酸基価は、JIS K 1557-1に準拠して測定できる。
【0100】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)にカルボキシル基を導入していてもよい。ポリエステルポリオール樹脂(a1)の酸価は0.1~10mgKOH/gが好ましく、0.2~5mgKOH/g(例えば0.3~1mgKOH/g)がより好ましい。
【0101】
なお、本願において、ポリエステルポリオール樹脂(a1)の酸価は、水酸化カリウム法に従って滴定することにより算出できる。
【0102】
カルボキシル基を導入する方法としては、重合後に酸付加によってカルボン酸をポリエステルポリオールに導入する方法が挙げられる。酸付加にモノカルボン酸、ジカルボン酸、3官能以上のポリカルボン酸化合物を用いると、エステル交換により分子量の低下が起こる可能性があるため、カルボン酸無水物基を少なくとも一個有する化合物を用いることが好ましい。カルボン酸無水物としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、オルソフタル酸、2,5-ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸(PMDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’-(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、2,2’-ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)などが挙げられる。
【0103】
ポリエステルポリオール樹脂(a1)の重量平均分子量は、例えば600~20,000、好ましく1,000~10,000、さらに好ましくは1,300~5,000、より好ましくは1,500~3,000である。分子量が小さすぎると、銀光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0104】
なお、本願において、ポリエステルポリオール樹脂(a1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0105】
(a2)アルキド樹脂
アルキド樹脂(a2)は、塗料分野などで利用される慣用のアルキド樹脂であり、例えば、短油アルキド樹脂、長油アルキド樹脂、変性アルキド樹脂、イソシアネート硬化型アルキド樹脂、エポキシエステル樹脂(エポキシ変性アルキド樹脂)、アルキドポリオール、オイルフリーアルキド樹脂などであってもよい。
【0106】
具体的なアルキド樹脂(a2)は、例えば、JIS K 5500「塗料用語」に定義されている合成樹脂、すなわち、ポリカルボン酸(多塩基酸)と、ポリオール(多価アルコール)と、必要により油成分との重縮合によって得られる合成樹脂であってもよい。
【0107】
ポリカルボン酸としては、例えば、ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料として例示されたポリカルボン酸などが挙げられる。前記ポリカルボン酸は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。前記ポリカルボン酸のうち、イソフタル酸やテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが汎用される。
【0108】
油成分(油脂成分)には、脂肪油(油脂)および/または脂肪酸が含まれる。
【0109】
脂肪油としては、例えば、綿実油、亜麻仁油、桐油、ひまし油、脱水ひまし油、サフラワー油(紅花油)、大豆油、米油、トウモロコシ油、ゴマ油、向日葵油、米糖油、アサミ油、菜種油、落花生油、やし油、パーム油、カポック油、扁桃油、オリーブ油、トール油、えの油などの植物油;牛脂、豚脂、羊脂、山羊脂、馬脂、鶏脂、七面鳥脂などの動物油;ニシン油、カレイ油、タラ油、シタビラメ油、ハリバ油、コイ油、マス油、ナマズ油などの魚油;これらの水添油などが挙げられる。これらの油脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0110】
脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などの直鎖または分岐鎖飽和C8-24脂肪酸;ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、ガトレン酸、アラキドン酸、エルカ酸などの直鎖または分岐鎖不飽和C8-24脂肪酸などが挙げられる。これらの脂肪酸は、ヒドロキシル基などの置換基を有していてもよい。ヒドロキシル基を有する脂肪酸としては、例えば、ひまし油の主成分であるリシノレイン酸、サビニン酸、ジオキシステアリン酸などが挙げられる。脂肪酸は、前記脂肪油からケン化などにより得られる脂肪酸であってもよく、例えば、脱水ひまし油から得られるハイジエン脂肪酸や、亜麻仁油、桐油、脱水ひまし油、大豆油、サフラワー油などから得られる脂肪酸(例えば、亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、大豆油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸など)などであってもよい。これらの脂肪酸は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0111】
これらの油成分のうち、亜麻仁油、桐油、脱水ひまし油、大豆油、サフラワー油などの植物油;これらの植物油由来の脂肪酸;ステアリン酸などの飽和C10-22脂肪酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、エレオステアリン酸またはリシノール酸などの不飽和C10-22脂肪酸が好ましい。
【0112】
ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール樹脂(a1)の原料として例示された低分子量ポリオールに加えて、従来からアルキド樹脂に使用されてきた多価アルコールを挙げることができる。これらのポリオールは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの脂肪族ポリオールなどが汎用される。
【0113】
アルキド樹脂(a2)は、ポリカルボン酸およびポリオールに加えて、安息香酸、p-t-ブチル安息香酸、アビエチン酸、水素添加アビエチン酸などの一塩基酸をさらに含んでいてもよい。
【0114】
アルキド樹脂(a2)の水酸基価は、例えば5~500mgKOH/g、好ましくは10~300mgKOH/g、さらに好ましくは20~200mgKOH/g、より好ましくは50~150mgKOH/gである。水酸基価が小さすぎると、金属光沢性および金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0115】
なお、本願において、アルキド樹脂(a2)の水酸基価は、ISO 4629(2)に準拠して測定できる。
【0116】
アルキド樹脂(a2)の酸価は、例えば0.5~30mgKOH/g、好ましくは1~20mgKOH/g、さらに好ましくは2~15mgKOH/g、より好ましくは3~8mgKOH/gである。酸価が小さすぎると、金属光沢性が低下する虞があり、逆に高すぎると、金属光沢性および金属光沢膜の機械的特性が低下する虞がある。
【0117】
なお、本願において、アルキド樹脂(a2)の酸価は、JIS K 5601-1-2に準拠して測定できる。
【0118】
アルキド樹脂(a2)の重量平均分子量は、例えば500~30,000、好ましくは1,000~20,000、さらに好ましくは2,000~10,000である。分子量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0119】
なお、本願において、アルキド樹脂(a2)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0120】
(b)(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂(b)は、特に限定されないが、例えば(メタ)アクリル系単量体の単独または共重合体、(メタ)アクリルポリオール、変性(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。
【0121】
(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキル;(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキル;(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリール;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-フェニルエチルなどの(メタ)アクリル酸アラルキル;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC1-4アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル系単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸C1-4アルキル;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2-3アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0122】
(メタ)アクリル系樹脂(b)は、これらの単量体の単独重合体であってもよいが、共重合体が好ましい。共重合体としては、2種以上の前記(メタ)アクリル系単量体の共重合体であってもよく、前記(メタ)アクリル系単量体と共重合性単量体との共重合体であってもよい。共重合性単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン系単量体;α-C2-20オレフィン(エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ドデセンなど)などのオレフィン系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル系単量体などの付加重合性単量体などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、スチレンなどのスチレン系単量体が好ましい。
【0123】
(メタ)アクリル系樹脂(b)が(メタ)アクリル系単量体とスチレン系単量体との共重合体(特に、メタクリル系単量体とスチレン系単量体との共重合体)である場合、(メタ)アクリル系単量体とスチレン系単量体とのモル比は、前者/後者=95/5~5/95、好ましくは90/10~10/90、さらに好ましくは80/20~20/80、より好ましくは70/30~30/70である。
【0124】
(メタ)アクリルポリオールとしては、分子内に2以上の水酸基を有する(メタ)アクリル系ポリマーであれば、特に制限されず、例えば、前記(メタ)アクリル系樹脂の単量体としてヒドロキシC2-3アルキル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。
【0125】
変性(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレートなどのポリエステル変性(メタ)アクリル系樹脂、ウレタン(メタ)アクリレートなどのポリウレタン変性(メタ)アクリル系樹脂、エポキシ(メタ)アクリレートなどのエポキシ変性(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン(メタ)アクリレートなどのシリコーン変性(メタ)アクリル系樹脂などが挙げられる。これらの変性(メタ)アクリル系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0126】
これらの(メタ)アクリル系樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、銀含有金属ナノ粒子(特に、複合体ナノ粒子(A))に対する親和性が高く、かつ用途に応じて硬化剤によって硬化し易い点から、水酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂[特に、イソシアネート硬化型(メタ)アクリル系樹脂などの複数の水酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂]が好ましく、水酸基およびスチレン単位を有する(メタ)アクリル系樹脂(例えば、メチル(メタ)アクリレート-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート-スチレン共重合体など)が特に好ましい。なお、水酸基の位置は、特に限定されず、主鎖であってもよく、側鎖であってもよく、主鎖および側鎖に位置していてもよい。
【0127】
(メタ)アクリル系樹脂(b)の酸価は、例えば1mgKOH/g以上(例えば1~200mgKOH/g)、好ましくは2mgKOH/g以上(例えば2~100mgKOH/g)、さらに好ましくは3mgKOH/g以上(例えば3~50mgKOH/g)、より好ましくは5mgKOH/g以上(例えば5~10mgKOH/g)である。酸価が小さすぎると、金属光沢性および金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0128】
なお、本願において、(メタ)アクリル系樹脂(b)の酸価は、慣用の方法、例えば、中和滴定法で測定できる。
【0129】
(メタ)アクリル系樹脂(b)の重量平均分子量は、例えば1,000~300,000、好ましくは5,000~200,000、さらに好ましくは10,000~100,000、より好ましくは20,000~80,000、最も好ましくは30,000~50,000である。分子量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0130】
なお、本願において、(メタ)アクリル系樹脂(b)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0131】
(メタ)アクリル系樹脂(b)のガラス転移温度は、例えば0~120℃、好ましくは20~100℃、より好ましくは30~80℃、最も好ましくは40~60℃である。ガラス転移温度が低すぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、金属光沢性や製膜性が低下する虞がある。
【0132】
なお、本願において、(メタ)アクリル系樹脂(b)のガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定できる。
【0133】
(メタ)アクリル系樹脂(b)は、カルボキシル基またはその塩を有さない(メタ)アクリル系樹脂であってもよい。
【0134】
(c)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂(c)は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であってもよい。エポキシ樹脂(c)には、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂などが含まれる。これらのうち、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が汎用される。
【0135】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、アルコールエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0136】
これらのエポキシ樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0137】
エポキシ樹脂(c)のエポキシ当量は、例えば100~5,000g/eq、好ましくは300~3,000g/eq、さらに好ましくは500~1,500g/eq、より好ましくは700~1,000g/eqである。エポキシ樹脂のエポキシ当量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0138】
なお、本願において、エポキシ当量とは、「1当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂の質量」と定義され、JIS K 7236に準拠して測定できる。
【0139】
エポキシ樹脂(c)の数平均分子量は、例えば5,000~100,000、好ましくは7,000~70,000、さらに好ましくは10,000~40,000、より好ましくは12,000~20,000である。分子量が小さすぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0140】
なお、本願において、エポキシ樹脂の数平均分子量は、JIS K 0124-2011に記載の方法に準拠して測定でき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。
【0141】
エポキシ樹脂(c)の軟化点は、JIS K 7234に準拠した方法で測定された軟化点が30~150℃、好ましくは50~130℃、さらに好ましくは70~120℃、より好ましくは90~100℃である。軟化点が低すぎると、金属光沢膜の機械的特性が低下する虞があり、逆に高すぎると、製膜性が低下する虞がある。
【0142】
なお、本願において、エポキシ樹脂(c)の軟化点は、JIS K 7234の環球法に基づいて、規定の環に試料を充填し、水浴またはグリセリン浴中で水平に支え、試料の中央に規定の球を置いて浴温を毎分5℃の速さで上昇させ、球を包み込んだ試料が環台の底板に接触した時に読み取った温度である。
【0143】
(d)シリコーン系樹脂
シリコーン系樹脂(d)は、特に制限されず、シリコーン系レジンであってもよく、シリコーン系オリゴマーであってもよい。これらのうち、密着性および耐擦過性を向上できる点から、シリコーン系レジンが好ましい。
【0144】
シリコーン系レジンは、ポリオルガノシロキサン骨格を有する熱可塑性樹脂、硬化性樹脂(未架橋樹脂)または硬化樹脂(架橋樹脂)であればよい。ポリオルガノシロキサン骨格は、Si-O結合(シロキサン結合)を有する直鎖状、分岐鎖状または網目状の化合物であって、式:R SiO(4-a)/2(式中、Rは置換基を示し、係数aは0~3の数である)で表される単位で構成されている。シリコーン系レジンとしては、前記式で表される各単位である単官能性のM単位(一般的にR SiO1/2で表される単位)、二官能性のD単位(一般的にR SiO2/2で表される単位)、三官能性のT単位(一般的にRSiO3/2で表される単位)、四官能性のQ単位(一般的にSiO4/2で表される単位)のうち、通常、T単位を主単位として含むポリオルガノシロキサンが使用される。
【0145】
前記式において、置換基Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのC1-10アルキル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン化C1-10アルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基などのC2-10アルケニル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基などのC6-20アリール基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3-10シクロアルキル基、ベンジル基、フェネチル基などのC6-12アリール-C1-4アルキル基などが挙げられる。これらの置換基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0146】
これらのうち、Rとしては、メチル基、プロピル基などのC1-4アルキル基、フェニル基、ナフチル基などのC6-10アリール基が好ましく、C1-3アルキル基、C6-8アリール基がさらに好ましく、メチル基、フェニル基が最も好ましい。さらに、Rとしては、単独で使用するよりも、(メタ)アクリル系樹脂との相溶性を向上できる点から、二種以上組み合わせて使用する方が好ましく、C1-4アルキル基とC6-10アリール基がさらに好ましく、C1-3アルキル基とC6-8アリール基との組み合わせがより好ましく、メチル基とフェニル基との組み合わせが最も好ましい。
【0147】
1-4アルキル基とC6-10アリール基とを組み合わせる場合、両者のモル比は、C1-4アルキル基/C6-10アリール基=30/1~1/30程度の範囲から選択でき、例えば20/1~1/10、好ましくは10/1~1/5、さらに好ましくは8/1~1/1、より好ましくは5/1~1.5/1、最も好ましくは3/1~2/1である。
【0148】
シリコーン系レジンは、ストレートシリコーン系レジン(未変性シリコーン系レジン)であってもよく、変性シリコーン系レジンであってもよい。変性シリコーン系レジンとしては、例えば、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの他の樹脂で変性されたシリコーン系レジンなどが挙げられる。
【0149】
具体的に好ましいシリコーン系レジンとしては、置換基Rがメチル基などのC1-4アルキル基であるC1-4アルキル系シリコーンレジン(例えば、メチル系シリコーンレジンなどのC1-3アルキル系シリコーンレジンなど)、置換基Rがフェニル基などのC6-10アリール基であるC6-10アリール系シリコーンレジン(例えば、フェニル系シリコーンレジンなどのC6-8アリール系シリコーンレジン)、置換基RがC1-4アルキル基とC6-10アリール基との組み合わせであるC1-4アルキルC6-10アリール系シリコーンレジン(例えば、メチルフェニル系シリコーンレジン、プロピルフェニル系シリコーンレジンなどのC1-3アルキルC6-8アリール系シリコーンレジンなど)などが挙げられる。これらのシリコーン系レジンは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。密着性および耐擦過性を向上できる点から、C1-4アルキルC6-10アリール系シリコーンレジンなどのアルキルアリール系シリコーンレジンが好ましく、メチルフェニル系シリコーンレジンなどのC1-2アルキルC6-8アリール系シリコーレジンが特に好ましい。
【0150】
(第2樹脂の特性および割合)
これら第2の樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これら第2樹脂のうち、金属光沢性に優れる点から、アルキド樹脂、(メタ)アクリル系樹脂(b)、エポキシ樹脂(c)およびシリコーン系樹脂(d)からなる群より選択された少なくとも1種が好ましく、エポキシ樹脂(c)および/またはシリコーン系樹脂(d)が特に好ましい。
【0151】
特に、第1樹脂(セルロース系樹脂)がセルロースアセテートプロピオネートである場合、金属光沢性を向上できる点から、第2樹脂はエポキシ樹脂(c)、シリコーン系樹脂(d)が好ましく、シリコーン系樹脂(d)が特に好ましい。
【0152】
また、第1樹脂(セルロース系樹脂)がセルロースアセテートC4-6アシレート(特にセルロースアセテートブチレート)ある場合、金属光沢性を向上できる点から、第2樹脂はエポキシ樹脂(c)が好ましい。
【0153】
さらに、第1樹脂(セルロース系樹脂)がセルロースエーテル(特に、セルロースC2-3アルキルエーテルである場合、金属光沢性を向上できる点から、第2樹脂はエポキシ樹脂(c)、シリコーン系樹脂(d)が好ましく、エポキシ樹脂(c)が特に好ましい。
【0154】
第1樹脂(セルロース系樹脂)と第2樹脂との質量比は、前者/後者=100/0~5/95(特に99/1~5/95)程度の範囲から選択でき、例えば95/5~5/95(例えば90/10~10/90)、好ましくは80/20~20/80、さらに好ましくは70/30~30/70、より好ましくは60/40~40/60である。第2樹脂の割合が多すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。金属光沢性が重要な用途では、第1樹脂/第2樹脂=100/0~30/70、好ましくは98/2~35/65、さらに好ましくは95/5~40/60、より好ましくは93/7~45/55、最も好ましくは92/8~50/50であってもよい。
【0155】
(樹脂成分(B)の割合および特性)
樹脂成分(B)の割合は、複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して3~150質量部程度の範囲から選択でき、例えば5~120質量部、好ましくは7~100質量部、さらに好ましくは8~60質量部、より好ましくは10~50質量部、最も好ましくは20~40質量部である。特に、金属光沢性と密着性および耐擦過性とのバランスに優れる点から、樹脂成分(B)の割合は、複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して3~60質量部程度の範囲から選択でき、例えば5~50質量部、好ましくは6~40質量部、さらに好ましくは7~35質量部、より好ましくは8~25質量部、最も好ましくは9~15質量部であってもよい。樹脂成分(B)の割合が少なすぎると、密着性および耐擦過性が低下する虞があり、多すぎると、金属光沢性が低下する虞がある。
【0156】
本発明のインク組成物は、樹脂成分(B)としてポリビニルアセタール系樹脂(特に、ポリビニルブチラール系樹脂)を実質的に含まないが、ポリビニルアセタール系樹脂を含まないのが特に好ましい。
【0157】
(C)表面調整剤
本発明のインク組成物は、表面調整剤(C)を含んでいてもよい。表面調整剤(C)は、表面張力低下能を有していればよく、慣用の表面調整剤を利用できる。慣用の表面調整剤としては、例えば、(メタ)アクリル系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤などが挙げられる。これらの表面調整剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、金属光沢性を効果的に向上できる点から、(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)およびシリコーン系表面調整剤(C2)からなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。
【0158】
(C1)(メタ)アクリル系表面調整剤
(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)は、(メタ)アクリル系骨格を有する表面調整剤であればよい。(メタ)アクリル系骨格としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体の単独重合体または共重合体などが挙げられる。(メタ)アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。
【0159】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシテトラメチレングリコール(メタ)アクリレートなどの(ポリ)オキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート(ポリエーテル(メタ)アクリレート);ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテルエステル(メタ)アクリレート;シリコーン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルなどの(メタ)アクリル酸アルキル、ポリエーテル(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0160】
(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)は、(メタ)アクリル系単量体の単独重合体または共重合体の主鎖に、ポリエーテルマクロマーおよび/またはシリコーンマクロマーが導入された表面調整剤、特に、前記主鎖にポリエーテルマクロマーおよび/またはシリコーンマクロマーがグラフト重合した表面調整剤であってもよい。
【0161】
これらの(メタ)アクリル系表面調整剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)としては、(メタ)アクリル酸C1-10アルキルなどの(メタ)アクリル酸アルキルと、(ポリ)オキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートとの共重合体などが挙げられる。
【0162】
(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)としては、市販の(メタ)アクリル系表面調整剤を利用できる。市販の(メタ)アクリル系表面調整剤としては、ビックケミー・ジャパン(株)製BYKシリーズの表面調整剤(「BYK-350」、「BYK-354」、「BYK-355」、「BYK-356」、「BYK-358N」、「BYK-361N」、「BYK-381」、「BYK-392」、「BYK-394」、「BYK-3440」、「BYK-3441」など)などが挙げられる。
【0163】
(C2)シリコーン系表面調整剤
シリコーン系表面調整剤(C2)は、ポリオルガノシロキサン骨格を有する表面調整剤であればよい。ポリオルガノシロキサン骨格としては、単官能性のM単位(一般的にR SiO1/2で表される単位)、二官能性のD単位(一般的にR SiO2/2で表される単位)、三官能性のT単位(一般的にRSiO3/2で表される単位)、四官能性のQ単位(一般的にSiO4/2で表される単位)で形成されたポリオルガノシロキサンであればよいが、通常、D単位で形成されたポリオルガノシロキサンが使用される。
【0164】
ポリオルガノシロキサンの前記式において、置換基Rとしては、炭化水素基の中から選択できるが、通常、メチル基、エチル基、プロピル基などのC1-4アルキル基;フェニル基、ナフチル基などのアリール基が使用され、メチル基、フェニル基(特にメチル基)が好ましい。シロキサン単位の繰り返し数(重合度)は、例えば2~3000、好ましくは3~2000、さらに好ましくは5~1000である。
【0165】
ポリオルガノシロキサン骨格は、ポリオルガノシロキサン骨格(ポリジメチルシロキサンなど)の主鎖または側鎖に変性基を導入した変性ポリオルガノシロキサン(変性シリコーン)であってもよい。変性基としては、例えば、ポリエーテル基、ポリエステル基、ラジカル重合性基、アラルキル基などが挙げられる。
【0166】
ポリエーテル基としては、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン基などのポリオキシC2-4アルキレン基などが挙げられる。ポリエーテル基において、オキシアルキレン基の繰り返し数(付加モル数)は、例えば2~1000、好ましくは3~100、さらに好ましくは5~50である。これらのうち、ポリオキシエチレンやポリオキシプロピレンなどのポリオキシC2-3アルキレン基(特にポリオキシエチレン基)が好ましい。
【0167】
ポリエステル基としては、例えば、ジカルボン酸(テレフタル酸などの芳香族カルボン酸やアジピン酸などの脂肪族カルボン酸など)とジオール(エチレングリコールなどの脂肪族ジオールなど)との反応により形成されるポリエステル基、環状エステル(例えば、カプロラクトンなどのラクトン類)の開環重合により形成されるポリエステル基などが挙げられる。
【0168】
ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基などが挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリロイルオキシ基が汎用される。
【0169】
アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などのC7-18アラルキル基などが挙げられる。
【0170】
これらの変性基は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの変性基のうち、ポリエーテル基、ポリエステル基、アラルキル基が好ましく、ポリエステル基が特に好ましい。
【0171】
シリコーン系表面調整剤(C2)は、密着性および耐擦過性を向上できる点から、水酸基を有していてもよい。水酸基は、ポリオルガノシロキサン骨格が有していてもよく、ポリオルガノシロキサン骨格が変性されている場合は、ポリオルガノシロキサン骨格が有していてもよく、ポリエーテル基、ポリエステル基、(メタ)アクリロイル基などの変性基が有していてもよい。
【0172】
これらのシリコーン系表面調整剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましいシリコーン系表面調整剤(C2)としては、ポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤、水酸基を有するポリエーテル変性シリコーン系表面調整剤、ポリエステル変性シリコーン系表面調整剤、水酸基を有するポリエステル変性シリコーン系表面調整剤、アラルキル変性シリコーン系表面調整剤であり、特に好ましいシリコーン系表面調整剤(C2)は、水酸基を有するポリエステル変性シリコーン系表面調整剤である。
【0173】
シリコーン系表面調整剤(C2)としては、市販のシリコーン系表面調整剤を利用できる。市販のシリコーン系表面調整剤としては、ビックケミー・ジャパン(株)製BYKシリーズの表面調整剤(「BYK-300」、「BYK-306」、「BYK-310」、「BYK-322」、「BYK-323」、「BYK-333」、「BYK-370」、「BYK-375」、「BYK-SILCLEAN3700」、「BYK-SILCLEAN3720」など)などが挙げられる。
【0174】
(表面調整剤(C)の好適な態様および割合)
表面調整剤(C)としては、第1樹脂がセルロース系樹脂である場合、金属光沢性を高度に向上できる点から、シリコーン系表面調整剤(C2)が好ましく、第2の樹脂を用いる場合、金属光沢性を向上し易い点から、(メタ)アクリル系表面調整剤(C1)が好ましい。
【0175】
これらの表面調整剤(C)の割合は、複合体ナノ粒子(A)の銀を含む金属100質量部に対して、例えば0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部、さらに好ましくは1~15質量部、より好ましくは2~10質量部、最も好ましくは3~7質量部である。表面調整剤(C)の割合が少なすぎると、金属光沢性が低下する虞があり、多すぎると、金属光沢性、密着性および耐擦過性が低下する虞がある。
【0176】
(D)溶剤
本発明のインク組成物は、前記複合体ナノ粒子(A)および樹脂成分(B)に加えて、溶剤(D)をさらに含んでいてもよい。樹脂成分(B)に対して溶剤(D)を配合することにより、製膜性も向上でき、樹脂成分(B)が第2樹脂を含む場合には、スピノーダル分解による相分離も促進できる。
【0177】
溶剤(D)は、極性有機溶媒を含むのが好ましい。極性有機溶媒としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのC1-4アルカノールなど)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのアルカントリオール、ペンタエリスリトールなどのアルカンテトラオールなど)、アミド類(ホルムアミド、アセトアミドなどのアシルアミド類、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミドなどのモノ又はジC1-4アシルアミド類など)、ピロリドン類(2-ピロリドン、3-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-3-ピロリドンなど)、ケトン類(アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン、イソホロンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、有機カルボン酸類(酢酸など)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミルなどの酢酸エステルなど)、アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールなどのC2-6アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルなど)、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトールなどのジC2-6アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1-4アルキルセロソルブアセテート類)、カルビトールアセテート類(メチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテートなどのC1-4アルキルカルビトールアセテートなど)、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらの極性有機溶媒は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0178】
極性有機溶媒の割合は、溶剤中50質量%以上であってもよく、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0179】
溶剤(D)は、極性溶媒に加えて、無極性溶媒をさらに含んでいてもよい。無極性溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、テトラリンなどの脂環族炭化水素などが挙げられる。無極性有機溶媒の割合は、極性有機溶媒100質量部に対して50質量部以下(例えば0.1~50質量部程度)であってもよく、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0180】
これらの溶剤のうち、アルコール類、エステル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびジアルキレングリコールモノアルキルエーテルから選択される1種以上を含むのが好ましく、エステル類、アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびジアルキレングリコールモノアルキルエーテルから選択される1種以上を含むのがさらに好ましく、アルキレングリコールモノアルキルエーテルおよびジアルキレングリコールモノアルキルエーテルから選択される1種以上を含むのがより好ましい。なかでも、C2-6アルキレングリコールモノC1-6アルキルエーテルおよびジC2-6アルキレングリコールモノC1-6アルキルエーテルから選択される1種以上がさらに好ましく、C2-5アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルおよびジC2-5アルキレングリコールモノC1-4アルキルエーテルから選択される1種以上が最も好ましい。ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルは、原料としての銀コロイド粒子を分散させるための分散媒由来の極性溶媒であってもよい。
【0181】
溶剤(D)の割合は、前記複合体ナノ粒子(A)の銀含有金属100質量部に対して、例えば50~1,000質量部、好ましくは100~500質量部、さらに好ましくは200~450質量部、より好ましくは250~400質量部、最も好ましくは300~350質量部である。溶剤の割合が少なすぎると、製膜性が低下する虞があり、逆に多すぎると、生産性や製膜性が低下する虞がある。
【0182】
(E)硬化剤
本発明のインク組成物は、前記複合体ナノ粒子(A)および樹脂成分(B)に加えて、硬化剤(E)をさらに含んでいてもよい。硬化剤(E)としては、慣用の硬化剤、例えば、イソシアネート系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤などが挙げられる。これらのうち、イソシアネート系硬化剤が好ましく、ポリイソシアネートが特に好ましい。ポリイソシアネートなどのイソシアネート系硬化剤は、第1樹脂および第2樹脂が官能基(特に、水酸基)を有する場合に特に有効である。
【0183】
ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート[プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などのジイソシアネート;1,6,11-ウンデカントリイソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネートなどのトリまたはポリイソシアネート]、脂環族ポリイソシアネート[シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタンなどのジイソシアネート;ビシクロヘプタントリイソシアネートなどのトリまたはポリイソシアネートなど]、芳香族ポリイソシアネート[フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ビス(イソシアナトフェニル)メタン(MDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,3-ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなどのジイソシアネート;トリ又はポリイソシアネート]などが挙げられる。
【0184】
ポリイソシアネートは、多量体(二量体や三量体、四量体など)、アダクト体、変性体(ビウレット変性体、アロハネート変性体、ウレア変性体など)などの誘導体や、複数のイソシアネート基を有するウレタンオリゴマーなどであってもよい。ポリイソシアネートの変性体または誘導体としては、例えば、ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートなど)と多価アルコール(トリメチロールプロパンやペンタエリスリトールなど)とのアダクト体、前記ポリイソシアネートのビウレット体、前記ポリイソシアネート(例えば、脂肪族ポリイソシアネート)の多量体(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体などのイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートなど)などが例示できる。
【0185】
これらのポリイソシアネートは単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのポリイソシアネートのうち、脂肪族ポリイソシアネートまたはその誘導体(例えば、HDIまたはその三量体など)、芳香族ポリイソシアネート(TDI、MDIなど)などが汎用される。
【0186】
硬化剤(E)の割合は、樹脂成分(B)100質量部に対して、例えば10~200質量部、好ましくは20~150質量部、さらに好ましくは25~100質量部である。
【0187】
(F)他の金属ナノ粒子
本発明のインク組成物は、前記複合体ナノ粒子(A)および樹脂成分(B)に加えて、他の金属ナノ粒子(F)をさらに含んでいてもよい。他の金属ナノ粒子(F)としては、例えば、周期表第8族金属(鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金など)、周期表第1B族金属(銅、金など)、周期表第3B族金属(アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)および周期表第4B族金属(ゲルマニウム、スズ、鉛など)などであってもよい。なお、金属(金属原子)は、保護コロイドに対する配位性の高い金属、例えば、周期表第8族金属、周期表第1B族金属などである場合が多い。他の金属ナノ粒子(F)の割合は、前記複合体ナノ粒子(A)の銀含有金属100質量部に対して100質量部以下であり、好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0188】
(G)他の成分
本発明のインク組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分(G)として、慣用の添加剤、例えば、可塑剤(または造膜助剤)、光沢付与剤、金属腐食防止剤(防錆剤)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤など)、界面活性剤(アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、特に、アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤)、分散安定化剤、増粘剤または粘度調整剤、保湿剤、チクソトロピー性賦与剤、レベリング剤、浸透剤、消泡剤、pH調整剤、キレート剤、着色剤(染顔料など)、色相改良剤、染料定着剤、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、酸素吸収剤などをさらに含んでいてもよい。なお、界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤、ポリシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などであってもよい。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。他の成分(G)の割合は、前記複合体ナノ粒子(A)の銀含有金属100質量部に対して50質量部以下であり、好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
【0189】
[インク組成物の調製方法]
本発明のインク組成物は、前記複合体ナノ粒子(A)、樹脂成分(B)および表面調整剤(C)を慣用の方法で混合することにより調製できる。混合方法としては、慣用の攪拌装置を利用でき、例えば、攪拌脱泡装置を利用してもよい。インク組成物が溶剤(D)を含む場合、前記複合体ナノ粒子(A)は、溶剤(D)としてのジアルキレングリコールモノアルキルエーテルに分散させた分散液の形態で、樹脂成分(B)および溶剤(D)としてのアルキレングリコールモノアルキルエーテルと混合してもよい。
【0190】
[金属光沢膜の製造方法]
金属光沢膜は、被加飾体(基材)の上に前記インク組成物を塗布して塗膜を形成する塗布工程、塗膜を乾燥させて金属光沢膜を得る乾燥工程を経て得られる。
【0191】
塗布工程において、基材の種類は、特に制限はなく、用途に応じて樹脂基材(フィルム等)、金属基材、ガラス基材、セラミックス基材、紙などを利用できる。
【0192】
塗布方法としては、特に制限されず、慣用のコーティング方法、例えば、フローコーティング法、ディスペンサーコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、キャスト法、バーコーティング法、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディッピング法、スリット法、フォトリソグラフィ法、インクジェット法、オフセット印刷法などを利用できる。
【0193】
塗膜の平均厚み(乾燥厚み)は、例えば0.05~100μm、好ましくは0.1~30μm、さらに好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~5μmである。
【0194】
なお、本発明では、下塗り層、上塗り層を形成することなく、金属光沢性と密着性および耐擦過性とを両立できるが、用途に応じて、下塗り層および/または上塗り層を併用してもよい。
【0195】
乾燥工程では、塗膜を乾燥させることにより、金属光沢膜を形成する。塗膜の乾燥方法としては、加熱して乾燥する方法が好ましく、相分離構造を形成し易い点から、予備加熱処理と本加熱処理とを組み合わせた二段階で加熱処理して乾燥する方法が好ましい。
【0196】
予備加熱処理において、予備加熱温度は、例えば40~80℃、好ましくは45~70℃、さらに好ましくは45~60℃、より好ましくは45~55℃である。予備加熱時間は、例えば1~100分、好ましくは3~60分、さらに好ましくは5~30分である。
【0197】
本加熱処理において、本加熱温度は、例えば60~150℃、好ましくは65~120℃、さらに好ましくは70~90℃、より好ましくは75~85℃である。本加熱時間は、例えば30~240分、好ましくは80~180分、さらに好ましくは100~150分である。
【0198】
樹脂成分(B)が第2樹脂を含む場合、乾燥工程において、スピノーダル分解による相分離を形成して金属光沢膜を形成してもよい。第2樹脂を含む場合は、塗膜を乾燥させることにより、溶剤の揮発に伴って、スピノーダル分解によって、銀含有金属を多量に含む相と、銀含有金属を少量含む相とに相分離させることができる。
【0199】
[金属光沢膜の構造]
前記方法で得られた金属光沢膜は、基材(被加飾体)の上に形成されており、前記基材の上に積層され、かつ銀を含む金属と保護コロイドとの複合体ナノ粒子(A)と、セルロース系樹脂を含む樹脂成分(B)とを含む。金属光沢膜の平均厚みは、例えば0.05~100μm、好ましくは0.1~30μm、さらに好ましくは0.3~10μm、より好ましくは0.5~5μm、最も好ましくは1~3μmである。
【0200】
特に、基材の上に形成され、かつ第2樹脂を含む金属光沢膜は、基材の上に、界面層、中間層、表面層が順次積層された構造を有していてもよい。
【0201】
前記界面層は、前記複合体ナノ粒子で形成されており、前記複合体ナノ粒子が基材との界面において配列または配向することにより、銀を含む金属が密な薄膜(銀含有金属薄膜)を形成している。基材との界面において、このような界面層が形成されることにより、透明基材などにおいては裏面からの金属光沢性を向上できる。
【0202】
界面層の平均厚みは、例えば5~300nm、好ましくは10~200nm、さらに好ましくは10~100nm、より好ましくは20~40nmである。
【0203】
なお、本願において、界面層の平均厚みは、銀光沢膜断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定できる。
【0204】
前記中間層は、前記複合体ナノ粒子および第1樹脂を含む第1相と、前記複合体ナノ粒子および第2樹脂を含み、銀含有金属の含有割合が異なる第2相として相分離した相分離構造を有している。銀含有金属の濃度が異なる相分離構造を有することにより、樹脂成分の割合を高めても、金属光沢性を向上でき、金属光沢性と密着性および耐擦過性とを両立できる。
【0205】
第1相と第2相との比率(断面における面積比率)は、第1相/第2相=90/10~10/90、好ましくは70/30~30/70、さらに好ましくは60/40~40/60、より好ましくは55/45~45/55である。
【0206】
なお、本願において、前記比率は、銀光沢膜断面の透過型電子顕微鏡(TEM)像に基づいて測定できる。
【0207】
前記相分離構造は、海島構造であってもよく、共連続構造であってもよい。これらのうち、海島構造が好ましい。中間層が海島構造である場合、海部を構成する連続相(マトリックス相)は、第1相であってもよく、第2相であってもよい。
【0208】
海島構造において、分散相の平均径は、例えば10~3,000nm、好ましくは100~1,000nm、さらに好ましくは150~500nm、より好ましくは200~300nmである。
【0209】
分散相の平均ピッチ(隣接する分散相の中心間の距離の平均値)は、例えば10~2,000nm、好ましくは100~1,000nm、さらに好ましくは200~700nm、より好ましくは300~500nmである。
【0210】
金属光沢膜断面の観察方法としては、特に限定されず、通常の構造解析に用いられる手法を用いることができる。観察方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)等による形態・構造観察;蛍光X線やエネルギー分散型X線分光法(EDX)、波長分散型X線分光法(WDX)、電子エネルギー損失分光法(Electron Energy-Loss Spectroscopy(EELS))等による構成元素の解析を行うことができる。これらのうち、特に微細構造まで観察できる点から、透過型電子顕微鏡(TEM)観察が好ましい。観察に供する試料は、観察や分析に適するように、適宜加工して用いることができ、例えば、ミクロトーム等を用いて薄片試料を作製してもよい。
【0211】
そのため、本願において、金属光沢膜断面における島構造の構造、サイズおよび分布状態は、銀光沢膜断面のTEM像に基づいて、観察および測定でき、サイズについては、任意の10カ所の平均値である。さらに、TEM像では、銀含有金属ナノ粒子は、濃色であるため、容易に確認でき、中間層においては、銀含有金属ナノ粒子の凝集部を分散相とする。
【0212】
中間層の平均厚みは、例えば0.01~100μm、好ましくは0.05~30μm、さらに好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.2~1μmである。
【0213】
中間層の平均厚みは、表面層の平均厚みに対して2倍以上であってもよく、例えば2~1,000倍、好ましくは3~100倍、さらに好ましくは3.5~50倍、より好ましくは4~10倍である。
【0214】
なお、本願において、中間層の平均厚みは、金属光沢膜断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定でき、任意の3カ所の平均値である。
【0215】
表面層は、前記複合体ナノ粒子で形成されており、前記複合体ナノ粒子が金属光沢膜の表面部において配列または配向することにより、銀含有金属が密な薄膜(金属薄膜)を形成している。本発明では、金属光沢膜の表面において、このような表面層が形成されることにより、金属光沢性を向上できる。
【0216】
表面層の平均厚みは、例えば3~300nm、好ましくは5~200nm、さらに好ましくは10~150nm、より好ましくは30~100nmである。
【0217】
なお、本願において、表面層の平均厚みは、銀光沢膜断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することにより測定でき、詳細には、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【実施例0218】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。以下の例において、インク組成物の調製方法および評価試験の測定方法を以下に示す。
【0219】
[使用した材料]
(第1樹脂)
セルロースエステルA:巴工業(株)販売のセルロースアセテートブチレート「CAB-553-0.4」、アセチル基2質量%、ブチリル基46質量%、水酸基4.8質量%、ASTM D1343に準拠した落球速度0.30秒、ガラス転移温度136℃、数平均分子量20,000
セルロースエステルB:巴工業(株)販売のセルロースアセテートプロピオネート「CAP-482-20」、アセチル基2.5質量%、プロピオニル基46質量%、水酸基1.8質量%、ASTM D1343に準拠した落球速度20.0秒、ガラス転移温度147℃、数平均分子量75,000
セルロースエーテル:日新化成(株)販売のエチルセルロース「STD-100」)、エトキシ基含有量48.0~49.5質量%、水分2.0質量%以下、塩化物0.15質量%以下、粘度90.0~110.0mPa・s(5質量%溶液、25℃、トルエン/エタノール=80/20(質量比))、ガラス転移温度129~133℃、数平均分子量63,420
【0220】
(第2樹脂)
アクリル系樹脂A:三菱ケミカル(株)製「ダイヤナールBR-116」、酸価7.8mgKOH/g、ガラス転移温度48℃
アクリル系樹脂B:DIC(株)製「WXU-880」、イソシアネート硬化型アクリル樹脂、不揮発分50%、水酸基価10mgKOH/g、ガラス転移温度90℃
シリコーン系樹脂:信越化学工業(株)製「KR-255」、メチルフェニル系シリコーンレジン、不揮発分50%
エポキシ樹脂:三菱ケミカル(株)製「jER1055」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量850、軟化点93℃、数平均分子量1600
アルキド樹脂:DIC(株)製「D-128-65BA」、イソシアネート硬化型アルキド樹脂、不揮発分65%、水酸基価90mgKOH/g、酸価5.0mgKOH/g
【0221】
(表面調整剤)
表面調整剤A:ビックケミー・ジャパン(株)製表面調整剤「BYK-3440」、アクリルコポリマー(主成分)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(主溶剤)、不揮発分10%
表面調整剤B:ビックケミー・ジャパン(株)製表面調整剤「BYK-370」、水酸基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン溶液(主成分)、キシレン(主溶剤)、不揮発分25%
【0222】
(溶剤)
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール:(株)クラレ製「ソルフィット」、沸点174℃
【0223】
(高分子分散剤)
カルボキシル基を有する高分子分散剤A:ビックケミー社製「DISPERBYK-190」、カルボキシル基を有する高分子量ブロック共重合物の溶液、溶媒:水、不揮発成分40%、酸価10mgKOH/g、アミン価0
カルボキシル基を有する高分子分散剤B:ビックケミー社製「DISPERBYK-2015」、カルボキシル基を有するアクリルコポリマーの溶液、溶媒:水、不揮発成分40%、酸価10mgKOH/g、アミン価0
【0224】
[光沢度]
実施例および比較例のインク組成物で形成した銀光沢膜について、紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」)、積分球ISR-3100を用い、380~780nmの波長域における反射光の強度から光沢度(L値)を算出し、以下の基準に従って評価した。標準試料には、光沢度が100.0のアルミ蒸着ミラー((株)島津製作所製「品番:202-35988」)を使用した。
【0225】
a判定:光沢度が65以上(合格)
b判定:光沢度が60以上65未満(合格)
c判定:光沢度が50以上60未満(合格)
d判定:光沢度が50未満(不合格)
【0226】
[光非透過性]
紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」)、積分球ISR-3100を用い、380~780nmの波長域の可視光透過率を測定した。ブランク測定(大気)の積分値に対する透過率の積分値を、380~780nmの波長域における透過率を積分して求め、以下の基準に従い評価した。ブランク測定に対する透過率の積分値は、小さい方が膜の透過性が低く、優れている。
【0227】
a判定:透過率の積分値が1.0%以下(合格)
b判定:透過率の積分値が5.0%以下(合格)
c判定:透過率の積分値が5.0%より大きい(不合格)
【0228】
[密着性]
硬化膜に対し、セロテープ(登録商標)を貼り、勢いよく剥離し、以下の基準で評価した。
【0229】
a判定:膜に剥離がない(合格)
b判定:膜の表面部にわずかな剥離があるが、基板は見えない程度(合格)
c判定:膜に剥離がある(不合格)
【0230】
[耐擦過性]
硬化膜に対し、摩擦摩耗試験機を用い、乾いた木綿で、荷重500gおよび10往復する摩擦試験を行った。摩擦試験後の硬化膜の20°光沢度を測定し、摩擦試験前後での光沢度の低下率を求め、以下の基準に従い耐擦過性を評価した。
【0231】
a判定:光沢度の低下率が20%未満(合格)
b判定:光沢度の低下率が20%以上50%未満(合格)
c判定:光沢度の低下率が50%以上(不合格)
【0232】
[総合判定]
光沢度、光非透過性、密着性、耐擦過性の結果から、優劣判定を行い、ランクA、B、Cを合格とした。
【0233】
ランクA:光沢度、光非透過性、密着性および耐擦過性が全てa判定の場合
ランクB:光沢度がa判定で、かつそれ以外の評価項目にc判定はないが、1つb判定があった場合、または光沢度がb判定で、かつそれ以外の評価項目が合格(a判定もしくはb判定)の場合
ランクC:光沢度がa判定で、かつそれ以外の評価項目にc判定はないが、2つ以上b判定があった場合、または光沢度がc判定で、かつそれ以外の評価項目が合格(a判定もしくはb判定)の場合
ランクD:光沢度がd判定、またはそれ以外の評価項目にc判定がある場合
【0234】
[膜の断面観察]
得られた銀光沢膜から試料を切り出し、汎用の包埋樹脂であるエポキシ樹脂で試料を包埋し、ミクロトームにて切削断面を露出させてSEM観察を行った。さらに、微細な構造観察を行うため、ミクロトームにて切削断面を露出した後、100nm以下程度の厚みで超薄切片を作製し、TEM観察を行なって、以下の方法により、分散相のサイズ(平均径および平均ピッチ)を測定した。
【0235】
(表面層および界面層の平均厚み)
表面付近、界面付近のTEM拡大像において、銀ナノ粒子が配列している層の厚みを測定した。任意の3カ所について測定した層の厚みの平均値を平均厚みとした。
【0236】
(分散相の平均径)
銀ナノ粒子が凝集している分散相(島)について長径と短径を測定し、その平均値を分散相(島)の径とした。そして、任意の10個の分散相(島)について算出した径の平均値を分散相の平均径とした。
【0237】
(分散相の平均ピッチ)
分散相の長径と短径との交点を分散相の中心とし、隣接する分散相の中心間の距離を測定した。任意の10カ所について測定した中心間の距離の平均値を、分散相の平均ピッチとした。
【0238】
実施例1~11および比較例1~3
(複合体ナノ粒子分散液Aの調製方法)
硝酸銀66.8g、カルボキシル基を有する高分子分散剤A 7.2gを、イオン交換水100gに投入し、激しく攪拌し、懸濁液を得た。この懸濁液に対して、ジメチルアミノエタノール(和光純薬工業(株)製)100gを水温が50℃を超えないように徐々に加えた後、水温50℃のウォーターバス中で4時間加熱攪拌し、複合体ナノ粒子分散液を得た。
【0239】
得られた複合体ナノ粒子分散液に過剰量のメタノールを入れて攪拌し、その後、遠心分離により複合体ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。再度、メタノールを加えて攪拌し、その後、遠心分離により複合体ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。得られた沈殿を含んだメタノール液にジエチレングリコールモノブチルエーテルを加え、エバポレータで混入したメタノールを除去することで銀含有量が分散液中70質量%の複合体ナノ粒子分散液Aを得た。この分散液について、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製)で、複合体ナノ粒子を構成する銀ナノ粒子の粒径を確認したところ、一次粒子の個数平均粒子径は約20nmであった。
【0240】
(複合体ナノ粒子分散液Bの調製方法)
カルボキシル基を有する高分子分散剤Aの代わりにカルボキシル基を有する高分子分散剤Bを用いたこと以外は、複合体ナノ粒子分散液Aと同様に複合体ナノ粒子分散液Bを調製した。得られた複合体ナノ粒子分散液Bについて、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製)で銀ナノ粒子の粒径を確認したところ、一次粒子の個数平均粒子径は約30nmであった。
【0241】
(複合体ナノ粒子分散液Cの調製方法)
硝酸銀65.58g、カルボキシル基を有する高分子分散剤A 7.2gを、イオン交換水100gに投入し、激しく攪拌し、懸濁液Aを得た。
【0242】
硝酸銅(II)3水和物1.40g、1mol/Lの硝酸水溶液2.93gを採り、50℃の湯浴中で攪拌し、硝酸銅(II)3水和物を溶解し、水溶液Bを得た。
【0243】
前記懸濁液Aと前記水溶液Bとを攪拌しながら混合し、カルボキシル基を有する高分子分散剤A、硝酸銀、硝酸銅の混合液を得た。
【0244】
この混合液に対して、ジメチルアミノエタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)100gを水温が50℃を超えないように徐々に加えた後、水温50℃のウォーターバス中で4時間加熱攪拌した。
【0245】
得られた複合体ナノ粒子含有分散体に過剰量のメタノールを入れて攪拌し、その後、遠心分離により銀/銅合金ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。再度、メタノールを加えて攪拌し、その後、遠心分離により複合体ナノ粒子を沈降させ、上澄み液を除去した。得られた沈殿を含んだメタノール液にジエチレングリコールモノブチルエーテルを加え、エバポレータで混入したメタノールを除去することで、銀100質量部に対する銅の割合が1質量部であり、銀/銅合金含有量が70質量%の複合体ナノ粒子分散液Cを得た。この分散液について、透過型電子顕微鏡(日本電子(株)製)で銀/銅合金ナノ粒子の粒径を確認したところ、一次粒子の個数平均粒子径は約20nmであった。
【0246】
(メタリックインク組成物の調製方法)
表1~5に示す割合で、得られた複合体ナノ粒子分散液、樹脂成分、表面調整剤および溶剤を、攪拌脱泡装置(クラボウ(株)製「マゼルスター」)を用いて攪拌混合し、メタリックインク組成物を調製した。なお、表1~5の樹脂および表面調整剤の量は、固形分換算の含有量である。メタリックインク組成物をガラス基材(基板)に20μmの厚みにアプリケーターで塗布した。その後、50℃のホットプレートで10分間加熱後、80℃のホットプレートで120分間加熱した。得られた金属光沢膜の厚み(前記塗膜の乾燥厚み)は約2μmであった。
【0247】
得られた金属光沢膜の評価結果を表1~5に示す。
【0248】
【表1】
【0249】
【表2】
【0250】
【表3】
【0251】
【表4】
【0252】
【表5】
【0253】
樹脂成分の種類および量の検証結果を表1に示した。
【0254】
[実施例2、4~5、比較例1~5]
実施例2、4~5、比較例1~5は、樹脂成分として1種類のみを用い、添加量6.0質量%(銀に対する樹脂量を30%)として、樹脂の種類の違いを比較した検証である。
【0255】
樹脂成分にアクリル系樹脂Aを用いた比較例1は、光非透過性は合格であったものの、光沢度が45.0(d判定)で、総合判定はランクDとなった。樹脂成分にアクリル系樹脂Bを用いた比較例2、シリコーン系樹脂を用いた比較例3、エポキシ樹脂を用いた比較例4、アルキド樹脂を用いた比較例5では、いずれも光沢度は合格水準(c判定)であったものの、光非透過性が不合格(c判定)のため、総合判定はランクDとなった。
【0256】
一方、樹脂成分にセルロース系樹脂(セルロースエステルA)を用いた実施例2は、光沢度は61.4(b判定)で、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクBとなった。同じく、セルロース系樹脂(セルロースエーテル)を用いた実施例5は、光沢度は61.3(b判定)で、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクBとなった。セルロース系樹脂(セルロースエステルB)を用いた実施例4は、光沢度は56.1(c判定)で、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクCとなった。樹脂成分としてセルロース系樹脂を用いることで、光沢度、光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。
【0257】
実施例2で得られた金属光沢膜の断面写真を図1に示す。なお、図1では、TEM像の下側が基材との界面層側であり、上側が表面層側である。光沢度が高い実施例2の銀光沢膜では、膜内部(中間層)では、銀ナノ粒子が凝集した領域(分散相)と、銀ナノ粒子の凝集が少ない領域(連続相)とに相分離していた。すなわち、銀ナノ粒子は分散相に偏在した構造を有していた。さらに、表面および基材との界面では、銀ナノ粒子が整列して薄肉の連続層(薄肉層)を形成していた。
【0258】
実施例2における表面層および界面層の平均厚みを測定したところ、表面層の平均厚みは29nm、界面層の平均厚みは28nmであった。また、分散相(銀ナノ粒子が凝集した領域)の平均径および平均ピッチを測定したところ、平均径は115nmであり、平均ピッチは149nmであった。
【0259】
比較例2で得られた金属光沢膜の断面写真を図2に示す。なお、図2でも、TEM像の下側が基材との界面層側であり、上側が表面層側である。光沢度の低い銀光沢膜では、膜全体において、銀ナノ粒子が均一に分散していた。
【0260】
[実施例1、3]
実施例1、3は、銀ナノ粒子(銀)に対する樹脂量が30%である実施例2の組成をベースに、樹脂量を変量した例である。銀に対する樹脂量を10%とした実施例1では、光沢度が77.2(a判定)に上昇し、ランクAとなった。銀に対する樹脂量を50%とした実施例3では、光沢度が51.3(c判定)で、ランクCとなった。
【0261】
なお、樹脂成分を全く含まない比較例6では、光沢度、光非透過性は合格水準であったものの、密着性、耐擦過性が不合格であった(ランクD)。
【0262】
樹脂成分として、セルロース系樹脂と第2樹脂とを組み合わせた場合の検証結果を表2に示した。
【0263】
[実施例6~10]
実施例6~10は、樹脂成分にセルロース系樹脂(セルロースエステルA)のみを用いた実施例2に対して、樹脂成分の総添加量を6.0質量%(銀に対する樹脂量を30%)としたまま、第2樹脂を組み合わせた組成の例である。第2樹脂として、実施例6ではアクリル系樹脂A、実施例7ではアクリル樹脂B、実施例8ではシリコーン系樹脂、実施例9ではエポキシ樹脂、実施例10ではアルキド樹脂を用いた。
【0264】
実施例6は光沢度が62.9(b判定)で、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクBとなった。実施例7は光沢度が60.6(b判定)で、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクBとなった。実施例8は光沢度が63.3(b判定)で光非透過性も合格で、ランクBとなった。実施例9は光沢度が65.1(a判定)で、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクAとなった。実施例10は光沢度が53.3(c判定)で、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクCとなった。セルロースエステルAを第2樹脂と組み合わせて用いても光沢度、光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。
【0265】
[実施例11~13]
実施例11~13は、樹脂成分にセルロース系樹脂(セルロースエステルB)のみを用いた実施例4に対して、樹脂成分の総添加量を6.0質量%(銀に対する樹脂量を30%)としたまま、第2樹脂を組み合わせた組成の例である。第2樹脂として、実施例11ではアクリル系樹脂A、実施例12ではシリコーン系樹脂、実施例13ではエポキシ樹脂を用いた。
【0266】
実施例11は光沢度が50.5(c判定)でそれ以外の評価項目はa判定であり、ランクCとなった。実施例12は光沢度が77.7(a判定)でそれ以外の評価項目もa判定であり、ランクAとなった。実施例13は光沢度が58.9(c判定)でそれ以外の評価項目はa判定であり、ランクCとなった。セルロースエステルBを第2樹脂と組み合わせて用いても、光沢度、光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。
【0267】
[実施例14~16]
実施例14~16は、樹脂成分にセルロース系樹脂(セルロースエーテル)のみを用いた実施例5に対して、樹脂成分の総添加量を6.0質量%(銀に対する樹脂量を30%)としたまま、第2樹脂を組み合わせた組成の例である。第2樹脂として、実施例14ではアクリル系樹脂A、実施例15ではシリコーン系樹脂、実施例16ではエポキシ樹脂を用いた。
【0268】
実施例14は光沢度が63.6(b判定)で、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクBとなった。実施例15は光沢度が69.2(a判定)で、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクAとなった。実施例16は光沢度が70.3(a判定)で、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクAとなった。セルロースエステルと同様に、セルロースエーテルを第2樹脂と組み合わせて用いても光沢度、光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属銀光沢膜が得られた。
【0269】
複合体ナノ粒子の保護コロイドを変更した場合、複合体ナノ粒子として銀/銅合金を含む複合体ナノ粒子を用いた場合、および表面調整剤の有無の検証結果を表3に示した。
【0270】
[実施例17~20]
実施例17~18は、樹脂成分にセルロース系樹脂(セルロースエステルA)のみを用いた実施例2をベースに、複合体ナノ粒子の種類を変更した例である。複合体ナノ粒子としては、実施例17では、複合体ナノ粒子分散液Aと保護コロイドの異なる複合体ナノ粒子分散液Bを用い、実施例18では、銀/銅合金を含む複合体ナノ粒子分散液Cを用いた。実施例19~20では、樹脂成分にセルロース系樹脂(セルロースエステルA)と第2樹脂(アクリル系樹脂A)とを、セルロース系樹脂:第2樹脂=50:50で使用した実施例6をベースに、複合体ナノ粒子の種類を変更した例である。複合体ナノ粒子としては、実施例19では、複合体粒子分散液Aと保護コロイドの異なる複合体ナノ粒子分散液Bを用い、実施例20では、銀/銅合金を含む複合体ナノ粒子分散液Cを用いた。
【0271】
実施例17は光沢度が60.1(b判定)でそれ以外の評価項目はa判定であり、ランクBとなった。実施例18は光沢度が57.2(c判定)でそれ以外の評価項目はa判定であり、ランクCとなった。実施例19は光沢度が57.3(c判定)でそれ以外の評価項目はa判定であり、ランクCとなった。実施例20は光沢度が58.3(c判定)でそれ以外の評価項目はa判定であり、ランクCとなった。複合体ナノ粒子の保護コロイドを変更した場合、および複合体ナノ粒子として銀/銅合金を含む複合体ナノ粒子Cを用いた場合でも、光沢度、光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。
【0272】
[実施例21~24]
実施例21~22は、実施例2の組成に対して、表面調整剤を添加した例である。実施例23~24は、実施例6の組成に対して、表面調整剤を添加した例である。表面調整剤として、実施例21、23では表面調整剤A(アクリル系表面調整剤)、実施例22、24では表面調整剤B(シリコーン系表面調整剤)を用いた。実施例21は、光沢度が65.3(a判定)でそれ以外の評価項目もa判定であり、ランクAとなった。実施例22は、光沢度が74.0(a判定)でそれ以外の評価項目もa判定であり、ランクAとなった。実施例23は、光沢度が60.4(b判定)でそれ以外の評価項目はa判定であり、ランクBとなった。実施例24は、光沢度が52.7(c判定)でそれ以外の評価項目はa判定であり、ランクCとなった。表面調整剤の添加をした場合でも、光沢度、光非透過性、密着性および耐擦過性に優れた金属光沢膜が得られた。
【0273】
樹脂成分としてセルロースエステルAとアクリル樹脂Aとを用い、その質量比率を等量とした実施例6に対して、銀ナノ粒子に対する樹脂量を変量した検証結果を表4に示した。
【0274】
[実施例25~27]
いずれの実施例も合格水準(ランクA~C)であったが、銀ナノ粒子に対する樹脂量が多くなるにつれて、光沢度が低下する傾向が見られる反面、密着性、耐擦過性は向上する傾向が見られた。銀ナノ粒子に対する樹脂量が30質量%である実施例6と比較して、10質量%である実施例26では光沢度が75.5(a判定)と上昇して、それ以外の評価項目もa判定であり、ランクAとなったのに対して、5質量%である実施例25では光沢度が77.1(a判定)とさらに上昇したが、密着性および耐擦過性が低下したため(b判定)、ランクCとなった。一方、銀ナノ粒子に対する樹脂量が50質量%である実施例27では、光沢度が50.3(c判定)と低下したものの、それ以外の評価項目はa判定であり、ランクCとなった。
【0275】
樹脂成分としてセルロースエステル樹脂Aのみを用いた実施例2に対して、銀ナノ粒子に対する樹脂量を等量(30質量%)にしたまま、セルロースエステル樹脂Aと第2樹脂(アクリル系樹脂A)との質量比率を変量した場合の検証結果を表5に示した。
【0276】
[実施例28~29]
アクリル樹脂Aを用いない実施例2(セルロースエステルA:アクリル系樹脂A=100:0)、第2樹脂を少量含む実施例28(セルロースエステル樹脂A:アクリル系樹脂A=90:10)、両者を等量とした実施例6(セルロースエステル樹脂A:アクリル系樹脂A=50:50)では、光沢度がb判定であったものの、第2樹脂の比率を高めた実施例29(セルロースエステル樹脂A:アクリル系樹脂A=10:90)では、光沢度が50.1(c判定)と低下し、ランクCとなった。セルロースエステルAを用いずアクリル系樹脂Aのみとした、前述の比較例1(セルロースエステルA:アクリル系樹脂A=0:100)では光沢度が不合格(d判定)となったため、総合判定はランクDとなった。
【産業上の利用可能性】
【0277】
本発明のインク組成物は、各種の被加飾体(成形体)の装飾性を向上させるために利用でき、例えば、自動車の内装や外装部品、エンブレム、携帯電話、ノートパソコン、ゴルフクラブのシャフト、軟包装や化粧品の容器などの加飾、塗装用途、インクジェット印刷方式でのインキ用途などに利用できる。
図1
図2