(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105237
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】治療用タンパク質の標的細胞に特異的な産生のための、および、標的細胞に関連する疾患、疾病、または障害の処置のための、融合性脂質ナノ粒子、および、融合性脂質ナノ粒子の製造方法と使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20240730BHJP
A61K 38/48 20060101ALI20240730BHJP
A61P 39/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240730BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/88 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P43/00 121
A61K45/06 ZNA
A61K38/48
A61P39/00
A61P35/00
A61P31/04
A61P31/00
A61P43/00 105
C12N15/11 Z
C12N15/57
C12N15/88 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024060375
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2020558508の分割
【原出願日】2019-04-18
(31)【優先権主張番号】62/659,676
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/821,084
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520402535
【氏名又は名称】オイシン バイオテクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ,マシュー,レイン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】老化、疾患、または他の状態に関連する標的細胞、とりわけ、老化細胞または癌細胞である標的細胞を含む、標的細胞内の、アポトーシス促進性タンパク質などの治療用タンパク質の標的細胞に特異的な産生のための核酸ベースの発現構築物を提供する。
【解決手段】被験体を処置する方法に使用するための組み合わせ薬剤であって、当該組み合わせ薬剤は、(a)第1の治療用タンパク質をコードする第1のポリヌクレオチドに動作可能に連結されたp16転写プロモーターを含む第1の核酸配列と、(b)第2の治療用タンパク質をコードする第2のポリヌクレオチドに動作可能に連結されたp53転写プロモーターを含む第2の核酸配列と、を含む、組み合わせ薬剤が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞内の治療用タンパク質の標的化産生のための脂質ナノ粒子(LNP)製剤であって、
LNP製剤は:
a.両方の標的細胞または非標的細胞を含む哺乳動物細胞への核酸の非特異的な送達のための脂質ナノ粒子ベクターであって、前記脂質ナノ粒子が1つ以上の脂質と1つ以上の融合性タンパク質を含む、脂質ナノ粒子ベクターと、
b.標的細胞内での治療用タンパク質の優先的な産生のための発現構築物を含み、
前記発現構築物は:
i.前記非標的細胞と比較して、前記標的細胞内で優先的に産生される1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターと、
ii.前記転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ、前記転写プロモーターの調節制御下にある核酸であって、前記核酸は、標的細胞と非標的細胞の両方を含む、哺乳動物細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または排除することができる治療用タンパク質をコードし、ならびに、前記治療用タンパク質は前記標的細胞内で産生されるが、前記非標的細胞内では産生されない、核酸とを含む、
LNP製剤。
【請求項2】
前記1つ以上の脂質は、1mMから100mMの範囲の濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項1に記載のLNP製剤。
【請求項3】
前記1つ以上の脂質は、5mMから50mMの範囲の濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項2に記載のLNP製剤。
【請求項4】
前記1つ以上の脂質は、10mMから30mMの範囲の濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項3に記載のLNP製剤。
【請求項5】
前記1つ以上の脂質は、15mMから25mMの範囲の濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項4に記載のLNP製剤。
【請求項6】
前記1つ以上の脂質は、約20mMの濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項5に記載のLNP製剤。
【請求項7】
前記1つ以上の脂質は、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール、および1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG)からなる群から選択される、請求項1に記載のLNP製剤。
【請求項8】
前記脂質は、DODAP、DOTAP、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEGからなる群から選択される2以上の脂質を含む、請求項7に記載のLNP製剤。
【請求項9】
前記脂質は、DODAP、DOTAP、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEGを含む、請求項8に記載のLNP製剤。
【請求項10】
前記DODAP、DOTAP、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEGは、35-55モル%のDODAP:10-20モル%のDOTAP:22.5-37.5モル%のDOPE:4-8モル%のコレステロール:3-5モル%のDMG-PEGのモル比で前記LNP製剤中に存在する、請求項9に記載のLNP製剤。
【請求項11】
前記DODAP、DOTAP、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEGは、約45モル%のDODAP:約15モル%のDOTAP:約30モル%のDOPE:約6モル%のコレステロール:および、約4モル%のDMG-PEGのモル比で前記LNP製剤中に存在する、請求項10に記載のLNP製剤。
【請求項12】
前記DODAP、DOTAP、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEGは、45モル%のDODAP:15モル%のDOTAP:30モル%のDOPE:6モル%のコレステロール:4モル%のDMG-PEGのモル比で前記LNP製剤中に存在する、請求項11に記載のLNP製剤。
【請求項13】
前記1つ以上の融合性タンパク質は、0.5μMから20μMの範囲の濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項1に記載のLNP製剤。
【請求項14】
前記1つ以上の融合性タンパク質は、1μMから10μMの範囲の濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項13に記載のLNP製剤。
【請求項15】
前記1つ以上の融合性タンパク質は、3μMから4μMの範囲の濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項14に記載のLNP製剤。
【請求項16】
前記1つ以上の融合性タンパク質は、3.5μMの濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項15に記載のLNP製剤。
【請求項17】
前記融合性タンパク質の1つ以上は、p14融合性タンパク質(SEQ ID NO:16)とp14e15融合性タンパク質(SEQ ID NO:17)からなる群から選択される、請求項1に記載のLNP製剤。
【請求項18】
前記融合性タンパク質は、p14融合性タンパク質(SEQ ID NO:16)である、請求項1に記載のLNP製剤。
【請求項19】
前記融合性タンパク質は、p14e15融合性タンパク質(SEQ ID NO:17)である、請求項1に記載のLNP製剤。
【請求項20】
前記発現構築物は、20μg/mLから1.5mg/mLの範囲の濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項1に記載のLNP製剤。
【請求項21】
前記発現構築物は、100μg/mLから500μg/mLの範囲の濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項20に記載のLNP製剤。
【請求項22】
前記発現構築物は、250μg/mLの濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項21に記載のLNP製剤。
【請求項23】
前記発現構築物は、250μg/mLの濃度で前記LNP製剤中に存在する、請求項21に記載のLNP製剤。
【請求項24】
前記転写プロモーターは、p16転写プロモーター、p21転写プロモーター、およびp53転写プロモーターからなる群から選択される、請求項1に記載のLNP製剤。
【請求項25】
前記転写プロモーターは、SP1、ETS1、ETS2、およびp53/TP53からなる群から選択された因子に応答する、請求項24に記載のLNP製剤。
【請求項26】
前記転写プロモーターは、p16INK4a/CDKN2A転写プロモーターとp21/CDKN1A転写プロモーターから選択される、請求項24に記載のLNP製剤。
【請求項27】
前記転写プロモーターは、EBF3、O/E-1、Pax-5、E2A、p53、VP16、MLL、HSF1、NF-IL6、NFAT1、AP-1、AP-2、HOX、E2F3、および/またはNF-κBの転写因子からなる群から選択された因子に応答する、請求項24に記載のLNP製剤。
【請求項28】
前記転写プロモーターは、p21cip1/waf1プロモーター、p27kip1プロモーター、p57kip2プロモーター、TdTプロモーター、Rag-1プロモーター、B29プロモーター、Blkプロモーター、CD19プロモーター、BLNKプロモーター、および出るPλ5プロモーターからなる群から選択される、請求項27に記載のLNP製剤。
【請求項29】
前記核酸は、カスパーゼ(Casp)、誘導性カスパーゼ(iCasp)、自己活性化カスパーゼ(saCasp)、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼからなる群から選択された治療用タンパク質をコードする、請求項1に記載のLNP製剤。
【請求項30】
前記核酸は、Casp3、Casp8、およびCasp9からなる群から選択されたカスパーゼをコードする、請求項29に記載のLNP製剤。
【請求項31】
前記核酸はCasp9をコードする、請求項30に記載のLNP製剤。
【請求項32】
前記核酸は誘導性Casp9(iCasp9)をコードする、請求項31に記載のLNP製剤。
【請求項33】
前記核酸は自己活性化Casp9(saCasp9)をコードする、請求項31に記載のLNP製剤。
【請求項34】
標的細胞の成長を減少させ、予防し、および/または排除するための方法であって、
前記方法は、標的細胞をLNP製剤に接触させる工程を含み、
前記LNP製剤は:
a.両方の標的細胞または非標的細胞を含む哺乳動物細胞への核酸の非特異的な送達のための脂質ナノ粒子ベクターであって、前記脂質ナノ粒子が1つ以上の脂質と1つ以上の融合性タンパク質を含む、脂質ナノ粒子ベクターと、
b.標的細胞内での治療用タンパク質の優先的な産生のための発現構築物を含み、
前記発現構築物は:
i.前記非標的細胞と比較して、前記標的細胞内で優先的に産生される1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターと、
ii.前記転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ、前記転写プロモーターの調節制御下にある核酸であって、前記核酸は、標的細胞と非標的細胞の両方を含む、哺乳動物細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または排除することができる治療用タンパク質をコードし、ならびに、前記治療用タンパク質は前記標的細胞内で産生されるが、前記非標的細胞内では産生されない、核酸とを含む、
方法。
【請求項35】
標的細胞を有する患者の疾患または疾病の処置のための方法であって、
前記方法は:
LNP製剤を前記患者に投与する工程を含み、
前記LNP製剤は:
a.両方の標的細胞または非標的細胞を含む哺乳動物細胞への核酸の非特異的な送達のための脂質ナノ粒子ベクターであって、前記脂質ナノ粒子が1つ以上の脂質と1つ以上の融合性タンパク質を含む、脂質ナノ粒子ベクターと、
b.標的細胞内での治療用タンパク質の優先的な産生のための発現構築物を含み、
前記発現構築物は:
i.前記非標的細胞と比較して、前記標的細胞内で優先的に産生される1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターと、
ii.前記転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ、前記転写プロモーターの調節制御下にある核酸であって、前記核酸は、標的細胞と非標的細胞の両方を含む哺乳動物細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または排除することができる治療用タンパク質をコードし、および、前記治療用タンパク質は前記標的細胞内で産生されるが、前記非標的細胞内では産生されない、核酸とを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
このPCT特許出願は2019年4月18日に出願され、2018年4月18日に出願された米国仮特許出願62/659,676号と2019年3月20日に出願された米国仮特許出願62/821,084号の利点を主張する。第62/659,676号と第62/821,084号の仮特許出願の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、2019年4月18日に作成され、68,831バイトのサイズを有する、「OSIN-01-0304WO01_2019-04-18_SEQLIST_ST25」という表題のtxtファイルとしての電子フォーマットの配列表を含む。本出願はさらに、2019年4月18日に作成された「OSIN-01-0304WO01_2019-04-18_SEQLIST_ST25」という表題のPDFファイルとしての配列表を含む。「OSIN-01-0304WO01_2019-04-18_SEQLIST_ST25」という表題のtxtとPDFのファイルの内容は同一であり、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本開示は一般に、疾患の処置、長寿の促進、老化防止、および健康増進を含む医学の分野に関する。具体的には、本開示は、老化、病気、および他の疾病に関連する細胞の成長および/または生存を抑制するための組成物および方法と関係する。治療用タンパク質の標的細胞に特異的な発現のための発現構築物が提供され、上記発現構築物は、標的細胞内には存在するが、正常な非標的細胞には存在しないか、大幅に減少している、転写調節機能を含む固有の細胞内の機能を利用する。そのような発現構築物は、標的細胞への核酸の送達のためのベクターを含む系で使用され、ベクターは、必ずしも必要とするわけではないが、融合性脂質ナノ粒子、および、随意に、標的細胞への発現構築物の送達を増強するための標的化部分を含み得る。
【0004】
関連技術の詳細
癌細胞、老化細胞、および望ましくない表現型を有する他の細胞は、人の一生の間に蓄積され得、適切な治療がなければ、こうした細胞は、人の罹患率と、最終的には死亡率に寄与するか、あるいはその原因となり得る。
【0005】
疾患における老化細胞の役割と老化細胞を除去することの潜在的な利益は、Baker et al.Nature 479:232-6(2011)などの科学出版物で議論されてきた。老化細胞の蓄積の問題に対処することを目的とする系と方法が記載されてきた。例えば、GrigggのPCT特許公開第WO1992/009298号は、カルノシンに類似する化学化合物を用いて細胞の老化を防止または逆転させるための系について記載しており、Gruberの米国特許出願公開第2012/0183534号は、放射線、超音波、毒素、抗体、および抗体-毒素複合体を用いて老化細胞を殺すための系について記載しており、これらの系は、治療分子の標的化に使用するための老化細胞表面タンパク質を含んでいる。
【0006】
老化細胞の選択的死滅は、遺伝子組み換え実験動物以外の哺乳動物では非現実的であることが証明されている。現在利用可能な系および方法は、かなりの全身毒性を呈しており、目的とする細胞の標的化が不十分であり、十分な安全性に欠けている。このような技術的な欠点が、特定の癌の治療や老化の影響を遅らせるための安全で効果的な治療法の開発を妨げている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、老化、疾患、および/または別の疾病に関連する細胞などの細胞(まとめて「標的細胞」)が、標的細胞への治療剤の標的送達を必要とすることなく、標的細胞に特異的な方法で選択的に死滅され得るという発見に基づくものである。本明細書に記載される発現構築物、系、および方法は、患者に対して限定的な治療上の利点を与えるものであった、治療剤の標的送達を採用する既存技術に関連する安全性および有効性の懸念を克服するものである。
【0008】
本明細書に記載されているように、本開示は、細胞内で産生されると、老化、疾患、および/または他の状態に関連する細胞などの細胞の成長および/または生存を抑制または排除するタンパク質をコードする核酸の発現を、標的細胞に特異的な方法で誘導するための発現カセット、系、および方法を提供する。
【0009】
本明細書に記載される発現カセット、系、および方法は、老化(老化細胞など)、疾患(癌、感染症、細菌性疾患など)、および/または他の疾病に関連する特定の細胞に内在する固有の転写調節機構を利用し、転写調節機構は、老化、疾患、または他の状態に関連しない正常な細胞(すなわち、「非標的細胞」)においては、作動しないか、または著しく減少した活性を呈する。
【0010】
本開示の発現カセット、系、および方法は、標的細胞によって提供され、かつ標的細胞に固有の細胞内機能性の結果として、標的細胞特異性の高いレベルを達成し、細胞内機能性は正常な非標的細胞では提供されないか、または著しく減少している。したがって、本開示の系および方法は、核酸が送達される細胞型に関して非特異的である核酸送達ベクターを採用し、実際に、本明細書に記載されたベクターは、標的細胞特異性、およびその結果として、標的細胞の成長および/または生存の治療上効果的な減少、予防、および/または排除を達成するために、核酸(例えば、発現カセット)の標的細胞に特異的送達のために構成される必要はない。
【0011】
特定の実施形態内では、本開示は、老化、疾患、および/または別の状態に関連する細胞などの標的細胞内での治療用タンパク質の標的化生成のための発現構築物を提供する。本明細書で開示される発現構築物は:(1)それぞれ標的細胞内で産生される1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーター、および(2)転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ転写プロモーターの調節制御下にある核酸を含み、ここで、核酸は、標的細胞を含む細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または除去することができる治療用タンパク質をコードする。
【0012】
これらの実施形態の特定の態様内では、転写プロモーターは、疾患、状態、または老化に関連する標的細胞において活性化されるが、疾患、状態、または老化に関連しない正常な哺乳動物細胞においては活性化されない。標的細胞に特異的な転写活性化は、標的細胞では産生されるが、正常な哺乳動物細胞、例えば、正常な骨格筋芽細胞、正常な脂肪細胞、正常な目の細胞、正常な脳細胞、正常な肝臓細胞、正常な結腸細胞、正常な肺細胞、正常な膵臓細胞、および/または正常な心臓細胞などの正常なヒト細胞であって、これらの正常な細胞が疾患、状態、または老化に関連していない細胞では産生されない1つ以上の因子の作用によって達成される。
【0013】
これらの実施形態の他の態様内では、標的細胞は、哺乳動物細胞または細菌細胞であり得る。標的哺乳動物細胞は、老化細胞、癌細胞、前癌細胞、異形成細胞、および感染因子に感染している細胞などのヒト細胞を含むことができる。
【0014】
ヒト標的細胞が老化細胞であるこれらの実施形態の特定の態様において、転写プロモーターは、SP1、ETS1、および/またはETS2などの転写因子による活性化に応答するp16INK4a/CDKN2A転写プロモーターなどの転写プロモーターを含み得る。ヒト標的細胞が老化細胞であるこれらの実施形態の他の態様において、転写プロモーターは、p53/TP53に応答する、p21/CDKN1A転写プロモーターなどの転写プロモーターを含み得る。
【0015】
老化細胞などの標的細胞において、転写プロモーターは、例えば、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼなどの治療用タンパク質をコードする核酸、ならびにCasp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼの誘導可能および自己活性化変異体の発現を誘導し、治療用タンパク質は、例えば、アポトーシスを含む細胞プロセスを介して老化細胞における細胞死を誘導することなどによって老化細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または排除する。壊死/ネクロプトーシス、オートファジー細胞死、小胞体ストレスに関連する細胞毒性、小胞体ストレスに関連する細胞毒性、有糸分裂カタストロフィー、パラプトーシス、ピロネクローシス、ピロネクローシス、およびエントシフを含む細胞プロセスを介して細胞死を誘導することにより、例えば、有糸分裂細胞の増殖および/または生存を減少させ、防止し、および/または排除する他の治療用タンパク質が採用され得る。
【0016】
ヒト標的細胞が脳癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、大腸癌細胞、乳癌細胞、肝臓癌細胞、血液癌細胞、および骨癌細胞などの癌細胞であるこれらの実施形態の他の態様では、転写プロモーターは、p21cip1/waf1プロモーター、p27kip1プロモーター、p57kip2プロモーター、TdTプロモーター、Rag-1プロモーター、B29プロモーター、Blkプロモーター、CD19プロモーター、BLNKプロモーター、および/または、λ5プロモーターを含み得、転写プロモーターは、EBF3、O/E-1、Pax-5、E2A、p53、VP16、MLL、HSF1、NF-IL6、NFAT1、AP-1、AP-2、HOX、E2F3、および/またはNF-κB転写因子などの1つ以上の転写因子による活性化に応答し、転写活性化は、例えば、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼなどの治療用タンパク質をコードする核酸、ならびにCasp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼの誘導可能なおよび自己活性化変異体の発現を誘導し、治療用タンパク質は、例えば、アポトーシスを含む細胞プロセスを介して老化細胞における細胞死を誘導することによって、老化細胞の増殖および/または生存を減少させ、防止し、および/または排除する。壊死/ネクロプトーシス、オートファジー細胞死、小胞体ストレスに関連する細胞毒性、小胞体ストレスに関連する細胞毒性、有糸分裂カタストロフィー、パラプトーシス、ピロネクローシス、ピロネクローシス、およびエントシフを含む細胞プロセスを介して細胞死を誘導することにより、例えば、有糸分裂細胞の増殖および/または生存を減少させ、防止し、および/または排除する他の治療用タンパク質が採用され得る。
【0017】
標的細胞が、例えば、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、肝炎ウイルス、レトロウイルスウイルス、インフルエンザウイルス、およびサイノウイルスを含むウイルスなどの感染因子に感染しているヒト細胞であるか、または標的細胞が細菌細胞であるこれらの実施形態のさらなる態様において、転写プロモーターは、感染因子または細菌細胞によって発現される因子によって活性化され得、転写活性化は、例えば、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼなどの治療用タンパク質をコードする核酸、ならびにCasp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼの誘導可能なおよび自己活性化変異体の発現を誘導し、治療用タンパク質は、例えば、アポトーシスを含む細胞プロセスを介して老化細胞における細胞死を誘導することによって、老化細胞の増殖および/または生存を減少させ、防止し、および/または排除する。壊死/ネクロプトーシス、オートファジー細胞死、小胞体ストレスに関連する細胞毒性、小胞体ストレスに関連する細胞毒性、有糸分裂カタストロフィー、パラプトーシス、ピロネクローシス、ピロネクローシス、およびエントシフを含む細胞プロセスを介して細胞死を誘導することにより、例えば、有糸分裂細胞の増殖および/または生存を減少させ、防止し、および/または排除する他の治療用タンパク質が採用され得る。
【0018】
他の実施形態において、本開示は、標的細胞内での治療用タンパク質の標的産生のための系を提供する。これらの系は、標的細胞および非標的細胞を含む細胞に核酸を送達することができるベクターであって、ベクターが、非標的細胞内ではなく、標的細胞(例えば、老化、疾患、または他の状態に関連する細胞)内での治療用タンパク質の標的産生のための発現構築物を含み、発現構築物が、前記標的細胞内でそれぞれ産生される1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターを含む、ベクターと;転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ、転写プロモーターの調節制御下にある核酸であって、核酸が、標的細胞を含む、産生される細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または排除することができる治療用タンパク質をコードする、核酸とを含む。
【0019】
これらの実施形態の特定の態様内では、製剤および系は、脂質ナノ粒子(LNP)製剤および系を含み、LPNは、カスパーゼタンパク質などのアポトーシス促進性タンパク質のためのコード領域を含むポリヌクレオチド構築物(例えば、プラスミドDNA)をカプセル化し、コード領域は、例えば、老化細胞に特異的な転写プロモーターまたは癌細胞に特異的な転写プロモーターなどの標的細胞に特異的な転写プロモーターの調節制御下にある。例示的な細胞に特異的な転写プロモーターは、p16、p22、p53を含む。アポトーシス促進性のタンパク質用の例示的なコード領域は、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼタンパク質のためのコード領域を含む。アポトーシス促進性のタンパク質は、誘導可能なCasp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼタンパク質、ならびに、自己活性化Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼタンパク質を含み、これらは誘導性カスパーゼ9(iCasp9)あるいは自己活性化カスパーゼ9(saCasp9)によって本明細書で例証される。
【0020】
iCasp9タンパク質を含む誘導可能なアポトーシス促進性のタンパク質は、AP1903またはAP20187などの化学的二量体化誘導剤(CID)に結合する、FKBPまたはFK506結合タンパク質ドメインなどの二量体化ドメインを含み得る。Clackson,Proc Natl Acad Sci U S A.95:10437-10442(1998).誘導性カスパーゼ9(iCasp9;Ariad,Erie,PA)は、AP1903の存在下で活性化され得る。米国特許第5,869,337号およびStraathof,Blood 105:4247-4254(2005)。FKBPドメインをコードする例示的なヒト遺伝子としては、AIP、AIPL1、FKBP1A、FKBP1B、FKBP2、FKBP3、FHBP5、FKBP6、FKBP7、FKBP8、FKBP8、FKBP9L、FKBP10、FKBP11、FKBP14、FKBP15、FKBP52、およびLOC541473が挙げられる。
【0021】
これらの実施形態の他の態様内では、脂質ナノ粒子(LNP)は、LNPと標的細胞原形質膜との間の脂質混合を触媒するために、例えば、爬虫類レウイルス由来の融合性p14 FAST融合タンパク質などの融合性タンパク質を含む融合性脂質ナノ粒子である。適切な融合性タンパク質は、PCT特許公開第WO2012/040825A1およびWO2002/044206A2、Lau,Biophys.J.86:272(2004),Nesbitt,Master of Science Thesis(2012),Zijlstra,AACR(2017),Mrlouah,PAACRAM 77(13Suppl):Abst 5143(2017),Krabbe,Cancers 10:216(2018),Sanchez-Garcia,ChemComm 53:4565(2017),Clancy,J Virology 83(7):2941(2009),Sudo,J Control Release 255:1(2017),Wong,Cancer Gene Therapy 23:355(2016),および、Corcoran,JBC 281(42):31778(2006)に記載され、表1で提示されるアミノ酸配列を有するP14とP14e15タンパク質によって例証される。
【0022】
【0023】
iCasp9タンパク質を発現する細胞を、CIDに接触させると、iCasp9タンパク質の二量体化が促進され、これが標的細胞のアポトーシスを誘発する。AP1903はヒトで複数回使用されたことがあり、静脈内での安全性が確認され、薬物動態が決定されている。Iuliucci,J Clin Pharmacol 41(8):870-9(2001)およびDi Stasi,N Engl J Med 365:1673-83(2011).iCasp9 + AP1903は、同種T細胞移植後のGvHDを処置するためにヒトでの使用に成功した。Di Stasi,N Engl J Med 365:1673-83(2011).
【0024】
特定の実施形態内では、自己活性化カスパーゼ9(saCasp9)などの自己活性化カスパーゼをコードするポリヌクレオチドが採用されても得、ここで、カスパーゼポリヌクレオチドの発現は、老化細胞集団または癌細胞集団などの標的細胞集団において活性である因子の調節制御下にある。自己活性化カスパーゼは、化学的二量体化誘導剤(CID)の不在下で活性化する。saCasp9などの自己活性化カスパーゼを発現する細胞は、ほぼ即座にアポトーシス(apoptose)する。こうした自己活性化カスパーゼは、誘導性カスパーゼタンパク質がCIDの投与前に希釈されることになる、急速に分裂する腫瘍細胞などの急速に分裂する細胞においてアポトーシスの誘導に有利に採用され得ることは、当業者であれば理解されるであろう。さらに、自己活性化カスパーゼによる細胞死は、誘導性カスパーゼと比較してより長い期間にわたって起こるため、腫瘍溶解症候群のリスクは自己活性化カスパーゼにより低減する。
【0025】
LNP製剤でカプセル化されたプラスミドDNAを含む製剤は、15 mg/kgを超える用量で動物には無毒で免疫原性がなく、中性脂質製剤で達成可能な効率の80倍以上、および、カチオン性脂質製剤で達成可能な効率の2~5倍以上の効率を示す。LNPカーゴは細胞質に直接沈着し、それによって内細胞経路を迂回する。
【0026】
これらの実施形態のさらなる態様内では、上記系は、例えば、細胞内因子に加えて、発現構築物内のプロモーターの転写活性化を促進するか、または、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼの誘導性変異体の二量体化も促進することなどにより治療用タンパク質の機能性を促進する化学的または生物学的化合物に、標的細胞を接触させることを要求することなどによって、発現構築物内での核酸の発現、または核酸によってコードされる治療用タンパク質の機能性に対する追加的な制御を可能にする1つ以上の安全性の特徴をさらに含む。
【0027】
本開示の発現構築物および系で採用され得るさらなる安全性の要素は、哺乳動物発現のためにpDEST26プラスミドを採用するLife Technologies Gateway Cloning Vector Systemを使用するタモキシフェン誘導性Cre構築物を含む。例えば、Creとエストロゲン受容体との融合タンパク質を構成的に発現させ、タモキシフェンの添加に応じて誘導させることができ、これにより、活性化されたCreが転写プロモーターを再配向させ、それにより治療用タンパク質を発現させることができる。
【0028】
これらの実施形態のさらに他の態様では、上記系は、検出可能なマーカー、例えば、生物発光マーカーをコードする核酸をさらに含み、それにより、治療用タンパク質を発現する細胞や、および、誘導性のCasp3、Casp8、Casp9などの誘導性の治療用タンパク質の場合には、誘導性のCasp3、Casp8、Casp9の二量体化を誘導することなどによって治療用タンパク質の活性を促進する化合物の投与によって死滅する細胞の同定を可能にする。
【0029】
さらなる実施形態内では、本開示は、標的細胞の成長を減少させ、予防し、および/または排除するための方法を提供し、上記方法は、標的細胞を、標的細胞内での治療用タンパク質の標的化産生のための系に接触させる工程を含み、ここで、上記系は、核酸を細胞に送達することができるベクターを含み、ベクターは、非標的細胞内ではなく、標的細胞(例えば、老化、疾患、または他の状態に関連する細胞)内での治療用タンパク質の標的産生のための発現構築物を含み、ここで、発現構築物は、(a)それぞれ標的細胞内で産生される1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーター、および(b)転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ転写プロモーターの調節制御下にある核酸を含み、ここで、核酸は核酸の発現時に産生される治療用タンパク質をコードし、および、標的細胞(つまり、老化、疾患、または他の状態に関連する細胞)の治療用タンパク質の産生は、標的細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または排除する。
【0030】
さらなる実施形態内では、本開示は、年老いたヒト、または疾患あるいは別の状態に悩まされているヒトを処置するための方法を提供し、ここで、老化、疾患、または他の状態は、ヒト内の標的細胞に関連しており、上記方法は、標的細胞内での治療用タンパク質の標的産生のための系をヒトに施す工程を含み、ここで、上記系は、核酸を細胞に送達することができるベクターを含み、ベクターは、非標的細胞内ではなく、標的細胞(例えば、老化、疾患、または他の状態に関連する細胞)内での治療用タンパク質の標的産生のための発現構築物を含み、ここで、発現構築物は、(a)それぞれ標的細胞内で産生される1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーター、および(b)転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ転写プロモーターの調節制御下にある核酸を含み、ここで、核酸は核酸の発現時に産生される治療用タンパク質をコードし、および、標的細胞(つまり、老化、疾患、または他の状態に関連する細胞)の治療用タンパク質の産生は、標的細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または排除し、それによって、ヒトの老化を遅らせ、および/または、ヒトの疾患または状態を無効にし、および/または除去する。
【0031】
さらなる実施形態内では、本開示は、標的細胞内での治療用タンパク質の標的産生のための脂質ナノ粒子(LNP)製剤を提供し、LNP製剤は:(a)標的細胞または非標的細胞の両方を含む哺乳動物細胞への核酸の非特異的な送達のための脂質ナノ粒子ベクターであって、前記脂質ナノ粒子が1つ以上の脂質と1つ以上の融合性タンパク質を含む、脂質ナノ粒子ベクターと、(b)標的細胞内での治療用タンパク質の優先的な産生のための発現構築物とを含む。
【0032】
これらの実施形態の特定の態様に従ったLNP製剤は、1mMから100mM、または5mMから50mM、または10mMから30mM、または15mMから25mMの範囲の濃度の1つ以上の脂質を含む。本明細書で例示されるLNP製剤は、約20mMの濃度の1つまたは複数の脂質を含む。
【0033】
本明細書で例示される特定のLNP製剤内では、1つ以上の脂質は、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DODAP)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール、および1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG)から選択される。LNP製剤は、DODAP、DOTAP、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEGからなる群から選択される2以上の脂質を含んでもよい。
【0034】
35-55モル%のDODAP:10-20モル%のDOTAP:22.5-37.5モル%のDOPE:4-8モル%のコレステロール:3-5モル%のDMG-PEGのモル比で;または、約45モル%のDODAP:約15モル%のDOTAP:約30モル%のDOPE:約6モル%のコレステロール:約4モル%のDMG-PEGのモル比で、DODAP、DOTAP、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEGを含むLNP製剤が本明細書で例示される。特定の態様内では、LNP製剤は、45モル%のDODAP:15モル%のDOTAP:30モル%のDOPE:6モル%のコレステロール:4モル%のDMG-PEGのモル比で、DODAP、DOTAP、DOPE、コレステロール、およびDMG-PEGを含む。
【0035】
これらの実施形態の他の態様に係るLNP製剤は、0.5μMから20μM、または1μMから10μM、または3μMから4μMの濃度範囲の1つ以上の融合性タンパク質を含む。融合性タンパク質が3.5μMの濃度で存在するLNP製剤が本明細書で例証される。例示的で適切な融合性タンパク質は、p14融合性タンパク質(SEQ ID NO:16)とp14e15融合性タンパク質(SEQ ID NO:17)を含む。
【0036】
これらの実施形態のさらなる態様内では、LNP製剤は、(i)前記非標的細胞と比較して、前記標的細胞内で優先的に産生される1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターと、(ii)前記転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ前記転写プロモーターの調節制御下にある核酸を含み、ここで、前記核酸は、標的細胞と非標的細胞の両方を含む、哺乳動物細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または排除することができる治療用タンパク質をコードし、および、前記治療用タンパク質は前記標的細胞内で産生されるが、前記非標的細胞内では産生されない。
【0037】
20μg/mLから1.5mg/mL、または100μg/mLから500μg/mL範囲の濃度で、または250μg/mLの濃度の発現構築物を含むLNP製剤が本明細書に例証される。
【0038】
適切な例示的なLNP製剤は以下を含む:各1mLのLNPについては、脂質濃度は20mMであり、DNA含量は250μgであり、および融合性タンパク質(例えば、p14またはp14e15)は3.5μMであり、ここで、脂質製剤は、それぞれ45:15:30:6:4のモル%比率でDODAP:DOTAP:DOPE:コレステロール:DMG-PEGを含む。
【0039】
これらの実施形態のさらなる態様内では、LNP製剤は、p16転写プロモーター、p21転写プロモーター、およびp53転写プロモーターから選択される転写プロモーターを有する発現構築物を含み、ならびに、SP1、ETS1、ETS2、およびp53/TP53から選択される因子に応答する転写プロモーターを含む。前記転写プロモーターがp16INK4a/CDKN2A転写プロモーターまたはp21/CDKN1A転写プロモーターであるLNP製剤が本明細書で例示される。
【0040】
これらの実施形態の関連する態様内では、LNP製剤は、EBF3、O/E-1、Pax-5、E2A、p53、VP16、MLL、HSF1、NF-IL6、NFAT1、AP-1、AP-2、HOX、E2F3、および/またはNF-κBから選択される因子に応答する転写プロモーターを有する発現構築物を含む。前記転写プロモーターがp21cip1/waf1プロモーター、p27kip1プロモーター、p57kip2プロモーター、TdTプロモーター、Rag-1プロモーター、B29プロモーター、Blkプロモーター、CD19プロモーター、BLNKプロモーター、およびλ5プロモーターであるLNP製剤が、本明細書で例示される。
【0041】
これらの実施形態の他の関連する態様内では、LNP製剤は、例えば、カスパーゼ(Casp)、誘導性カスパーゼ(iCasp)、自己活性化カスパーゼ(saCasp)、BAX、DFF40、HSV-TK、およびシトシンデアミナーゼから選択される治療用タンパク質などの治療用タンパク質をコードする核酸を有する発現構築物を含む。例えば、誘導性Casp9(iCasp9)または自己活性化Casp9(saCasp9)を含む、Casp9をコードする核酸を有する発現構築物を含むLNP製剤が本明細書で例示される。
【0042】
本開示の他の実施形態は、標的細胞の成長を減少させ、予防し、および/または排除するための方法を提供し、上記方法は、(a)標的細胞または非標的細胞の両方を含む哺乳動物細胞への核酸の非特異的な送達のための脂質ナノ粒子ベクターであって、前記脂質ナノ粒子が1つ以上の脂質と1つ以上の融合性タンパク質を含む、脂質ナノ粒子ベクターと、(b)標的細胞内での治療用タンパク質の優先的な産生のための発現構築物とを含むLNP製剤に、標的細胞を接触させる工程を含む。
【0043】
これらの実施形態の特定の態様内では、上記方法は、(i)前記非標的細胞と比較して、標的細胞内で優先的に産生される1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターと、(ii)転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ前記転写プロモーターの調節制御下にある核酸を含むLNP製剤を利用し、ここで、核酸は、標的細胞と非標的細胞の両方を含む、哺乳動物細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または排除することができる治療用タンパク質をコードし、および、前記治療用タンパク質は標的細胞内では産生されるが、非標的細胞内では産生されない。
【0044】
本開示の他の実施形態は、標的細胞を有するヒト患者を含む患者における疾患または状態の処置のための方法を提供し、ここで、上記方法は、(a)標的細胞または非標的細胞の両方を含む哺乳動物細胞への核酸の非特異的な送達のための脂質ナノ粒子ベクターであって、脂質ナノ粒子が、1つ以上の脂質および1つ以上の融合性タンパク質を含む、脂質ナノ粒子ベクターと、(b)標的細胞内での治療用タンパク質を優先的に産生するための発現構築物とを含む、脂質ナノ粒子を有するLNP製剤を患者に投与する工程を含む。
【0045】
これらの実施形態の特定の態様内では、上記方法は、(i)非標的細胞と比較して、標的細胞内で優先的に産生される1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターと、(ii)転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ転写プロモーターの調節制御下にある核酸とを含むLNP製剤を利用し、核酸は、標的細胞と非標的細胞の両方を含む、哺乳動物細胞の成長および/または生存を減少させ、予防し、および/または排除することができる治療用タンパク質をコードし、および、前記治療用タンパク質は標的細胞内では産生されるが、非標的細胞内では産生されない。
【0046】
本開示のこれらおよび他の関連する態様は、様々な実施形態の特定の態様を例示する、以下の図面と詳細な記載を考慮してさらに良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本開示の特定の態様に従って、InnovascreenのFusogenix(商標)プラットフォームを採用する脂質ナノ粒子を含む、ステルス融合性リポソームを含む融合性リポソームと従来のリポソームの概略図である。爬虫類レオウイルス由来のp14 FAST融合タンパク質を利用し、かつ、老化細胞集団または癌標的細胞集団などの標的細胞集団において活性なプロモーター下で誘導性カスパーゼ9(iCasp9)をコードするプラスミドベクターを含む、Fusogenix(商標)脂質ナノ粒子が示されている。この概略図では、に例示されている、AP1903などの小分子二量体化剤(dimerizer)を介して活性化されるCasp9融合ペプチドである。
【
図2】本開示の特定の態様に係る標的細胞の細胞質へのリポソーム送達の概略図である。p16をコードする標的老化細胞またはp53をコードする標的癌細胞などの標的細胞に特異的な転写プロモーターの調節制御下において、カスパーゼ9などのアポトーシス促進性タンパク質をコードする核酸などの核酸の送達のために構成されたFusogenix(商標)脂質ナノ粒子(LNP)が示されている。脂質ナノ粒子(LNP)と標的細胞原形質膜との間の迅速な脂質混合を触媒するためのp14 FASTタンパク質を含むFusogenix(商標)脂質ナノ粒子が例示されている。このようなFusogenix(商標)脂質ナノ粒子は、(i) 細胞質にカーゴ核酸を直接送達し、それによって、内分泌経路を迂回し、(ii)15mg/kg以上の用量で動物に無毒(非免疫原性)であり、(iii)中性脂質製剤よりも80倍以上効率的であり、(iv)カチオン性脂質製剤よりも2~5倍効率的であり、および、(iv)大規模に製造可能である。
【
図3】臨床段階の脂質ベースのインビボの送達技術について報告された最大許容用量(MTD)を比較する表である。本開示の融合性脂質ナノ粒子について>15mg/kgのMTDが、ラット毒性データから推定された。
【
図4A】誘導性カスパーゼ9ホモ二量体(iCasp9)の誘導の概略図であり、iCasp9は、化学的二量体化誘導剤(CID)に結合するための薬剤結合ドメインとカスパーゼ9の活性部分とを含む融合タンパク質である。AP1903やAP20187と指定されるCIDによって例示されるように、CIDは、iCasp9融合タンパク質の薬剤結合ドメインに結合して二量体化し、それによってiCasp9を活性化し、これが、アポトーシス促進性分子の細胞内活性化と標的細胞内でのアポトーシスの誘導を引き起こす。
【
図4B】本開示の特定の態様に係る例示的なアポトソームの概略図である。
【
図5】例示的な化学的二量体化誘導剤(CID)の化学構造を示しており、これは、本明細書においてAP1903(APExBIO、ヒューストン、テキサス州)として指定されるホモ二量体化剤であり、誘導性カスパーゼタンパク質(例えば、iCasp9)などの誘導性アポトーシス促進性タンパク質の活性を誘導するために、本開示の様々な実施形態において採用され得る。
【
図6】例示的な化学的二量体化誘導剤(CID)の化学構造を示しており、これは、本明細書においてAP20187(APExBIO、ヒューストン、テキサス州)として指定されるホモ二量体化剤であり、誘導性カスパーゼタンパク質(例えば、iCasp9)などの誘導性アポトーシス促進性タンパク質の活性を誘導するために、本開示の様々な実施形態において採用され得る。
【
図7】
64Cu-NOTA[1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸]で標識したFusogenix脂質ナノ粒子を静脈内投与したマウスで得られたデータを示す。
図7は、静脈内に投与されたマウスを得られたデータを提示する、
64Cu-NOTA[1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸を用いる標識されたFusogenix脂質ナノ粒子]。Fournier,EJNMMI Research 2:8(2012)を参照。
64Cuは陽電子放射断層撮影法(PET)で検出された。Aは、タンパク質を含まない
64Cu-NOTAリポソームを投与されたマウスから得られたPETデータを示す。Bは、
64Cu-NOTA-リポソーム-p14を投与されたマウスから得られたPETデータを示す。
【
図8】タンパク質を含まない
64Cu-NOTA-リポソームと
64Cu-NOTA-リポソーム-p14について24時間、SUV
meanを比較してFusogenix脂質ナノ粒子で得られたデータの棒グラフである。
図7と
図8に示されたデータは、競合する製剤と比較して、前立腺腫瘍への遺伝子/siRNA送達における50%の増加を示している。
【
図9】実施例1で議論されるように、24時間後に発現されたヌードマウス中の標識されたペグ化リポソームの生物分散の棒グラフである。
【
図10】濃度(μg/ml;
図10)および抗p14と抗LNPの抗体応答(
図11)に応じた405nmでの光学濃度のグラフであり、爬虫類のレオウイルスp14 FAST融合タンパク質(Fusogenix(商標))を利用して、例示的な融合性脂質ナノ粒子の安全性と耐容性を実証する。示されるように、(アジュバントを用いた、および用いない)免疫適格マウスでは、事実上いかなる抗体応答も観察されなかった。
【
図11】濃度(μg/ml;
図10)および抗p14と抗LNPの抗体応答(
図11)に応じた405nmでの光学濃度のグラフであり、爬虫類のレオウイルスp14 FAST融合タンパク質(Fusogenix(商標))を利用して、例示的な融合性脂質ナノ粒子の安全性と耐容性を実証する。示されるように、(アジュバントを用いた、および用いない)免疫適格マウスでは、事実上いかなる抗体応答も観察されなかった。
【
図12】Szebeni,Mol Immunol 61(2):163-73 (2014)に記載されるようなC4dおよびiC3b補体ELISAアッセイを使用して補体活性化関連偽アレルギー(psuedoallergy)(CARPA)について試験した10個のヒトサンプルのうち8個のヒトサンプルにおいて、Doxilと比較して、本開示に係る脂質ナノ粒子製剤がC4dには反応せず(
図12)、iC3bとの反応性が低い(
図13)ことを示している。
【
図13】Szebeni, Mol Immunol 61(2):163-73(2014)に記載されるようなC4dおよびiC3b補体ELISAアッセイを使用して補体活性化関連偽アレルギー(psuedoallergy)(CARPA)について試験した10個のヒトサンプルのうち8個のヒトサンプルにおいて、Doxilと比較して、本開示に係る脂質ナノ粒子製剤がC4dには反応せず(
図12)、iC3bとの反応性が低い(
図13)ことを示している。
【
図14】カスパーゼ9などのカスパーゼタンパク質を含むアポトーシス促進性タンパク質などや、誘導性カスパーゼ9(iCasp9)および自己活性化カスパーゼ9(saCasp9)などのカスパーゼタンパク質の誘導性および自己活性化変異体を含む、アポトーシス促進性タンパク質の誘導性および自己活性化変異体などの、治療用タンパク質の標的細胞に特異的な産生のための本開示の発現構築物、系、製剤、および方法の特定の態様で採用されるプラスミドベクターpVAX1(商標)の制限地図である。特定の実施形態では、発現構築物および製剤は、さらに、タモキシフェン誘導性のCre構築物(例えば、Life Technologies Gateway Cloning Vector System)などの安全要素を含み得る。Creとエストロゲン受容体の融合タンパク質は構成的に発現され、タモキシフェンの添加時に誘導され、これにより、活性化したCreがp16-プロモーターを再配向することを可能にし、それによってカスパーゼ9またはその誘導性の/自己活性化変異体を発現させる。pVAX1はThermoFisher Scientific(Waltham,MA)から市販されている。
【
図15】老齢化および/または老化に関連する標的細胞など、p16を発現する標的細胞における誘導性カスパーゼ9(iCasp9)または自己活性化カスパーゼ9(saCasp9)タンパク質の標的細胞に特異的な発現のための例示的なp16標的化構築物の概略図であり、このp16標的化構築物は、iCasp9またはsaCasp9に動作可能に接続されたp16s転写プロモーターを含む。例示的なp16転写プロモーターはBaker et al.,Nature 479(7372):232-67(2011)に記載されている。
【
図16】老齢化および/または老化に関連する標的細胞などのp16を発現する標的細胞における誘導性カスパーゼ9(iCasp9)タンパク質の標的細胞に特異的な発現のための例示的なp16標的化構築物を含む、プラスミドベクターpVAX1-16s-iCasp9-MX(SEQ ID NO:6)の制限地図であり、これは、p16標的化構築物は、iCasp9に動作可能に接続されたp16s転写プロモーターを含む。
【
図17】老齢化および/または老化に関連する標的細胞などのp16を発現する標的細胞における誘導性カスパーゼ9(iCasp9)タンパク質の標的細胞に特異的な発現のための例示的なp16標的化構築物を含む、ベクターp10-p16-s-iCasp9(SEQ ID NO:12)のプラスミドマップであり、p16標的化構築物は、iCasp9に動作可能に接続されたp16e転写プロモーターを含む。
【
図18】老齢化および/または老化に関連する標的細胞などのp16を発現する標的細胞における自己活性化カスパーゼ9(saCasp9)タンパク質の標的細胞に特異的な発現のための例示的なp16標的化構築物を含む、ベクターp10-p16-saCasp9(SEQ ID NO:13)のプラスミドマップであり、p16標的化構築物は、saCasp9に動作可能に接続されたp16e転写プロモーターを含む。
【
図19】老化用のマウスモデル系における例示的なp16標的化構築物のインビボの投与の概略図であり、ここで、老化マウスモデルは、(p16+細胞の存在によって定義されるような)老化細胞負荷、および老衰に関連する分泌表現型(SASP;van Deursen、Nature 509(7501):439-446(2014))に関連する因子の分泌を示す。脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、p16-Casp9発現構築物、例えば、pVAX1-16s-iCasp9、p10-p16e-iCasp9、p10-p16e-saCasp9、またはその変異体を包含する、p14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどのベクターおよび発現構築物を含む製剤は、尾静脈への注入を介して老化マウスにインビボで投与され、LNP+発現構築物は、特異性なく標的細胞と非標的細胞をトランスフェクトする。AP20187などの化学的二量体化誘導剤(CID)のその後のインビボ投与時に、iCasp9タンパク質を発現するp16+標的細胞(例えば、老化細胞)は、アポトーシスを経験し、SASPレベルが低下するが、p16-細胞は生存可能なままである。
【
図20A】脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、p16-Casp9発現構築物、例えば、pVAX1-16s-iCasp9、p10-p16e-iCasp9、p10-p16e-saCasp9、またはその変異体を包含する、p14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどのベクターおよび発現構築物を含む、β-galについて染色された老化マウスと腎臓細胞にインビボで投与される製剤のインビボ投与(80週齢の16匹)後の、未処理(上のパネル)または処理済(低用量-中央のパネルおよび高用量-下のパネル)のインビボ老化マウスモデルからの腎臓細胞における老化関連β-galの組織学的染色のフォトマイクログラフである。これらのデータは、p16+老化腎臓細胞の用量依存的な減少を実証した。
【
図20B】脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、p16-Casp9発現構築物、例えば、pVAX1-16s-iCasp9、p10-p16e-iCasp9、p10-p16e-saCasp9、またはその変異体を包含する、p14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどのベクターおよび発現構築物を含む、β-galについて染色された老化マウスと腎臓細胞にインビボで投与される製剤のインビボ投与(80週齢の16匹)後の、未処理(上のパネル)または処理済(低用量-中央のパネルおよび高用量-下のパネル)のインビボ老化マウスモデルからの腎臓細胞における老化関連β-galの組織学的染色のフォトマイクログラフである。これらのデータは、p16+老化腎臓細胞の用量依存的な減少を実証した。
【
図20C】脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、p16-Casp9発現構築物、例えば、pVAX1-16s-iCasp9、p10-p16e-iCasp9、p10-p16e-saCasp9、またはその変異体を包含する、p14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどのベクターおよび発現構築物を含む、β-galについて染色された老化マウスと腎臓細胞にインビボで投与される製剤のインビボ投与(80週齢の16匹)後の、未処理(上のパネル)または処理済(低用量-中央のパネルおよび高用量-下のパネル)のインビボ老化マウスモデルからの腎臓細胞における老化関連β-galの組織学的染色のフォトマイクログラフである。これらのデータは、p16+老化腎臓細胞の用量依存的な減少を実証した。
【
図20D】脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、p16-Casp9発現構築物、例えば、pVAX1-16s-iCasp9、p10-p16e-iCasp9、p10-p16e-saCasp9、またはその変異体を包含する、p14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどのベクターおよび発現構築物を含む、β-galについて染色された老化マウスと腎臓細胞にインビボで投与される製剤のインビボ投与(80週齢の16匹)後の、未処理(上のパネル)または処理済(低用量-中央のパネルおよび高用量-下のパネル)のインビボ老化マウスモデルからの腎臓細胞における老化関連β-galの組織学的染色のフォトマイクログラフである。これらのデータは、p16+老化腎臓細胞の用量依存的な減少を実証した。
【
図20E】脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、p16-iCasp9発現構築物、例えば、pVAX1-16s-iCasp9、p10-p16e-iCasp9、p10-p16e-saCasp9、またはその変異体を包含する、p14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどのベクターおよび発現構築物を含む、β-galについて染色された老化マウスと精嚢細胞にインビボで投与される製剤のインビボ投与(80週齢の16匹)後の、未処理(上のパネル)または処理済(低用量-中央のパネルおよび高用量-下のパネル)のインビボ老化マウスモデルからの精嚢細胞における老化関連β-galの組織学的染色のフォトマイクログラフである。これらのデータは、p16+老化精嚢細胞の用量依存的な減少を実証した。
【
図20F】脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、p16-iCasp9発現構築物、例えば、pVAX1-16s-iCasp9、p10-p16e-iCasp9、p10-p16e-saCasp9、またはその変異体を包含する、p14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどのベクターおよび発現構築物を含む、β-galについて染色された老化マウスと精嚢細胞にインビボで投与される製剤のインビボ投与(80週齢の16匹)後の、未処理(上のパネル)または処理済(低用量-中央のパネルおよび高用量-下のパネル)のインビボ老化マウスモデルからの精嚢細胞における老化関連β-galの組織学的染色のフォトマイクログラフである。これらのデータは、p16+老化精嚢細胞の用量依存的な減少を実証した。
【
図20G】脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、p16-iCasp9発現構築物、例えば、pVAX1-16s-iCasp9、p10-p16e-iCasp9、p10-p16e-saCasp9、またはその変異体を包含する、p14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどのベクターおよび発現構築物を含む、β-galについて染色された老化マウスと精嚢細胞にインビボで投与される製剤のインビボ投与(80週齢の16匹)後の、未処理(上のパネル)または処理済(低用量-中央のパネルおよび高用量-下のパネル)のインビボ老化マウスモデルからの精嚢細胞における老化関連β-galの組織学的染色のフォトマイクログラフである。これらのデータは、p16+老化精嚢細胞の用量依存的な減少を実証した。
【
図20H】脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、p16-iCasp9発現構築物、例えば、pVAX1-16s-iCasp9、p10-p16e-iCasp9、p10-p16e-saCasp9、またはその変異体を包含する、p14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどのベクターおよび発現構築物を含む、β-galについて染色された老化マウスと精嚢細胞にインビボで投与される製剤のインビボ投与(80週齢の16匹)後の、未処理(上のパネル)または処理済(低用量-中央のパネルおよび高用量-下のパネル)のインビボ老化マウスモデルからの精嚢細胞における老化関連β-galの組織学的染色のフォトマイクログラフである。これらのデータは、p16+老化精嚢細胞の用量依存的な減少を実証した。
【
図21】pVAX1-p16発現構築物を含む融合性脂質ナノ粒子(LNP)製剤のインビボ投与後の自然に老化したマウス中のp16+腎臓細胞の用量依存的な標的化を実証する棒グラフである。腎臓細胞はp16
lnk4a転写産物を検出するためにqRT-PCR反応にさらされた。相対的な発現は2ΔΔCtを使用して計算された(Livak,Methods 25:402-408(2001))。
【
図22】pVAX1-p16発現構築物を含む融合性脂質ナノ粒子(LNP)製剤のインビボ投与後の自然老化マウスにおけるp16+脾臓細胞の用量依存性標的化を実証する棒グラフである。脾臓細胞はp16
lnk4a転写産物を検出するためにqRT-PCR反応にさらされた。相対的な発現は2ΔΔCtを使用して計算された(Livak,Methods 25:402-408(2001))。
【
図23】pVAX1-p16発現構築物を含む融合性脂質ナノ粒子(LNP)製剤のインビボ投与後の自然老化マウスにおけるp16+精嚢細胞の用量依存性標的化を実証する棒グラフである。精嚢細胞はp16
lnk4a転写産物を検出するためにqRT-PCR反応にさらされた。相対的な発現は2ΔΔCtを使用して計算された(Livak,Methods 25:402-408(2001))。
【
図24】pVAX1-p16発現構築物を含む融合性脂質ナノ粒子(LNP)製剤のインビボ投与後の自然老化マウスにおけるp16+鼠径部の脂肪細胞の用量依存性標的化を実証する棒グラフである。鼠径部の脂肪細胞は、p16
lnk4a転写産物を検出するためにqRT-PCR反応にさらされた。相対的な発現は2ΔΔCtを使用して計算された(Livak,Methods 25:402-408(2001))。
【
図25】pVAX1-p16発現構築物を含む融合性脂質ナノ粒子(LNP)製剤のインビボ投与後の自然老化マウスにおけるp16+肺細胞の用量依存性標的化を実証する棒グラフである。肺細胞はp16
lnk4a転写産物を検出するためにqRT-PCR反応にさらされた。相対的な発現は2ΔΔCtを使用して計算された(Livak,Methods 25:402-408(2001))。
【
図26】化学療法で誘導された損傷(ドキソルビシンを用いる処置後に損傷を受けた細胞(つまり、老化細胞)の排除によって決定されるような)の改善を実証するデータの棒グラフである。老衰はドキソルビシンを用いてB6マウスで引き起こされた。動物は、マウスのp53-iCasp9、および、二量体化剤または対照(二量体化剤のみおよびLNPのみ)を用いる処置され、屠殺された。組織を室温-PCRによってp53発現についてアッセイした。
【
図27】本開示の特定の実施形態に従って腫瘍細胞の選択的な死滅による癌(腫瘍内科学)の処置で使用される例示的なp53標的化カセットの概略図である。p53標的化カセットはp53転写プロモーターを含み、これは誘導性カスパーゼ9タンパク質(iCasp9)または自己活性化カスパーゼ9タンパク質(saCasp9)の発現を駆り立てる。
【
図28】
図27に描かれるようなp53標的化カセットを含むプラスミド(pVAX1-p53-iCasp9-MX;SEQ ID NO:7)の制限地図である。誘導性Casp9タンパク質をコードするiCasp9核酸の発現は、p53転写プロモーターによって調節される。
【
図29】p53標的化カセットを含むプラスミド(pVAX1-p53-saCasp9;SEQ ID NO:8)の制限地図である。自己活性化カスパーゼ9(saCasp9)タンパク質をコードする核酸の発現は、p53転写プロモーターによって調節される。
【
図30】
図27に描かれるようなp53標的化カセットを含むプラスミド(pVAX1-p53-iCasp9-OVA;SEQ ID NO:11)の制限地図である。誘導性Casp9タンパク質をコードする核酸の発現は、p53転写プロモーターによって調節される。
【
図31】
図27に描かれるようなp53標的化カセットを含むプラスミド(pVAX1-p53-iCasp9-G-O;SEQ ID NO:9)の制限地図である。誘導性Casp9タンパク質をコードするiCasp9核酸の発現は、p53転写プロモーターによって調節される。
【
図32】
図27に描かれるようなp53標的化カセットを含むプラスミド(pVAX1-p53-iCasp9-huCD40L;SEQ ID NO:10)の制限地図である。誘導性Casp9タンパク質をコードするiCasp9核酸の発現は、p53転写プロモーターによって調節される。本明細書に開示されているように、追加の標的化カセットおよびプラスミド構築物が、高度な腫瘍学的応用のために開発されており、これらの構築物は、例えば、1つ以上の免疫刺激性サイトカイン(例えば、
図32に示されているようなhuCD40L、ならびにGMCSFおよびIL12)、および/または1つ以上の抗原(例えば、
図30に示されているようなトリ卵白アルブミン(OVA)、ならびにNt1、破傷風抗原、およびインフルエンザ抗原)をコードする核酸を採用している。
【
図33】
図27に描かれるようなp53標的化カセットを含むプラスミド(p10-p53e-iCasp9;SEQ ID NO:14)の地図である。誘導性Casp9タンパク質をコードするiCasp9核酸の発現は、p53転写プロモーターによって調節される。本明細書に開示されているように、追加の標的化カセットおよびプラスミド構築物が、高度な腫瘍学的応用のために開発されており、これらの構築物は、例えば、1つ以上の免疫刺激性サイトカイン(例えば、
図32に示されているようなhuCD40L、ならびにGMCSFおよびIL12)、および/または1つ以上の抗原(例えば、
図30に示されているようなトリ卵白アルブミン(OVA)、ならびにNt1、破傷風抗原、およびインフルエンザ抗原)をコードする核酸を採用している。
【
図34】
図27に描かれるようなp53標的化カセットを含むプラスミド(p10-p53e-saCasp9;SEQ ID NO:15)の地図である。自己活性化Casp9タンパク質をコードするsaCasp9核酸の発現は、p53転写プロモーターによって調節される。本明細書に開示されているように、追加の標的化カセットおよびプラスミド構築物が、高度な腫瘍学的応用のために開発されており、これらの構築物は、例えば、1つ以上の免疫刺激性サイトカイン(例えば、
図32に示されているようなhuCD40L、ならびにGMCSFおよびIL12)、および/または1つ以上の抗原(例えば、
図30に示されているようなトリ卵白アルブミン(OVA)、ならびにNt1、破傷風抗原、およびインフルエンザ抗原)をコードする核酸を採用している。
【
図35】カスパーゼタンパク質、例えば、カスパーゼ9タンパク質などのアポトーシス促進性タンパク質と組み合わせて動作可能なp53プロモーターを含む発現構築物を用いてp53+腫瘍を標的とするための論理的根拠を示す図である。癌細胞はしばしばそれを変異させるか欠失させるため、癌細胞は制御不能に増大することがある。しかしながら、p53遺伝子が変異するときでさえ、それに結合する転写因子はほとんど常に活性のままである。
【
図36】p53発現細胞(pVax-p53)と対照細胞(pcDNA3-GFP)を用いて得られたiCasp9とCasp9タンパク質レベルのウェスタンブロットである。ヒト前立腺癌PC-3細胞は、(ホモ二量体化剤AP201870の存在下と不在下において)pVax-p53-iCasp9-luc(ルシフェリン)プラスミドを保有するFusogenix脂質ナノ粒子で処理され、iCasp9発現について評価された。これらのデータは、化学的二量体化誘導剤(CID;例えば、AP20187とAP1903)の添加が、iCasp9またはルシフェラーゼを発現するために操作されたp53発現細胞中のiCasp9およびルシフェラーゼの発現を消失させることを実証する。
【
図37A】pVax-p53-iCasp9-lucプラスミドを保有するFusogenix脂質ナノ粒子を用いて処置され、ウェスタンブロットと発光のアッセイによってiCasp9発現について評価された、ヒト前立腺癌(LNCaP、DU145、PC-3)または正常上皮(RWPE)細胞の微視的な画像である。
【
図37B】pVax-p53-iCasp9-lucプラスミドを保有するFusogenix脂質ナノ粒子を用いて処置され、ウェスタンブロットと発光のアッセイによってiCasp9発現について評価された、ヒト前立腺癌(LNCaP、DU145、PC-3)または正常上皮(RWPE)細胞の微視的な画像である。
【
図37C】pVax-p53-iCasp9-lucプラスミドを保有するFusogenix脂質ナノ粒子を用いて処置され、ウェスタンブロットと発光のアッセイによってiCasp9発現について評価された、ヒト前立腺癌(LNCaP、DU145、PC-3)または正常上皮(RWPE)細胞の微視的な画像である。
【
図37D】pVax-p53-iCasp9-lucプラスミドを保有するFusogenix脂質ナノ粒子を用いて処置され、ウェスタンブロットと発光のアッセイによってiCasp9発現について評価された、ヒト前立腺癌(LNCaP、DU145、PC-3)または正常上皮(RWPE)細胞の微視的な画像である。
【
図38】
図37A-
図37Dに提示されたp53発現細胞を用いて得られたデータの棒グラフである。ヒト前立腺癌(LNCaP(
図38)、DU145(
図39)、PC-3(
図40)、または正常上皮(RWPE(
図41))の細胞は、pVax-p53-iCasp9-lucプラスミドを保有するFusogenix脂質ナノ粒子を用いて処置され、ウェスタンブロットと発光のアッセイによってiCasp9発現について評価された。これらのデータは、化学的二量体化誘導剤(CID;例えば、AP20187とAP1903)の添加が、iCasp9またはルシフェラーゼを発現するために操作されたp53発現細胞中のiCasp9およびルシフェラーゼの発現を消失させることを実証する。
【
図39】
図37A-
図37Dに提示されたp53発現細胞を用いて得られたデータの棒グラフである。ヒト前立腺癌(LNCaP(
図38)、DU145(
図39)、PC-3(
図40)、または正常上皮(RWPE(
図41))の細胞は、pVax-p53-iCasp9-lucプラスミドを保有するFusogenix脂質ナノ粒子を用いて処置され、ウェスタンブロットと発光のアッセイによってiCasp9発現について評価された。これらのデータは、化学的二量体化誘導剤(CID;例えば、AP20187とAP1903)の添加が、iCasp9またはルシフェラーゼを発現するために操作されたp53発現細胞中のiCasp9およびルシフェラーゼの発現を消失させることを実証する。
【
図40】
図37A-
図37Dに提示されたp53発現細胞を用いて得られたデータの棒グラフである。ヒト前立腺癌(LNCaP(
図38)、DU145(
図39)、PC-3(
図40)、または正常上皮(RWPE(
図41))の細胞は、pVax-p53-iCasp9-lucプラスミドを保有するFusogenix脂質ナノ粒子を用いて処置され、ウェスタンブロットと発光のアッセイによってiCasp9発現について評価された。これらのデータは、化学的二量体化誘導剤(CID;例えば、AP20187とAP1903)の添加が、iCasp9またはルシフェラーゼを発現するために操作されたp53発現細胞中のiCasp9およびルシフェラーゼの発現を消失させることを実証する。
【
図41】
図37A-
図37Dに提示されたp53発現細胞を用いて得られたデータの棒グラフである。ヒト前立腺癌(LNCaP(
図38)、DU145(
図39)、PC-3(
図40)、または正常上皮(RWPE(
図41))の細胞は、pVax-p53-iCasp9-lucプラスミドを保有するFusogenix脂質ナノ粒子を用いて処置され、ウェスタンブロットと発光のアッセイによってiCasp9発現について評価された。これらのデータは、化学的二量体化誘導剤(CID;例えば、AP20187とAP1903)の添加が、iCasp9またはルシフェラーゼを発現するために操作されたp53発現細胞中のiCasp9およびルシフェラーゼの発現を消失させることを実証する。
【
図42】
図36で提示されたp53発現細胞(pVax-p53)と対照細胞(pcDNA3-GFP)で得られたCasp9とiCasp9タンパク質レベルの発光アッセイからのデータの棒グラフである。ヒト前立腺癌PC-3細胞は、(ホモ二量体化剤AP20187の存在下と不在下において)pVax-p53-iCasp9-luc(ルシフェリン)プラスミドを保有するFusogenix脂質ナノ粒子で処理され、iCasp9発現について評価された。これらのデータは、化学的二量体化誘導剤(CID;例えば、AP20187とAP1903)の添加が、iCasp9またはルシフェラーゼを発現するために操作されたp53発現細胞中のiCasp9およびルシフェラーゼの発現を消失させることを実証する。
【
図43】(AP20187、
図43のAとB、および、
図44のAとBそれぞれの存在下と不在下において)pVax-p53 Fusogenix脂質ナノ粒子を用いて処置されたヒト前立腺癌PC-3細胞のフローサイトメトリーアポトーシスデータ(アネキシンV)である。
【
図44】(AP20187、
図43のAとB、および、
図44のAとBそれぞれの存在下と不在下において)pVax-p53 Fusogenix脂質ナノ粒子を用いて処置されたヒト前立腺癌PC-3細胞のフローサイトメトリーアポトーシスデータ(アネキシンV)である。これらの図で提示されたデータは、自殺遺伝子治療が、アポトーシス(ルシフェラーゼ-アネキシンVフローサイトメトリー)を誘導することによって、培養物中でp53発現ヒト前立腺癌細胞を選択的に死滅させることを実証する。
【
図45】ヒト前立腺腫瘍細胞が移植された30x NSGマウスを用いる、本開示の前臨床腫瘍内科学試験を描くフロー図である。
【
図46】
図33で描かれた前臨床腫瘍内科学試験からの腫瘍体積(mm3)のグラフであり、皮下ヒト前立腺PC-3腫瘍を有するNSGマウスに、100μgのFusogenix pVax-p53製剤を腫瘍内(IT)に注入し、96時間後に2mg/kgのホモ二量体化剤AP20187を静脈内(IV)投与した。
【
図47】A-Cは、
図46のIT注射腫瘍内科学試験からの腫瘍の写真であり、皮下ヒト前立腺PC-3腫瘍を有するNSGマウスに、100μgのFusogenix pVax-p53製剤を腫瘍内に注入し、96時間後に2mg/kgのAP20187 IV投与した。
【
図48】皮下ヒト前立腺癌PC-3腫瘍を有する4匹のNSGマウスの第1のNSGマウスのグラフであり、それらのマウスに4x100μg投与量のFusogenix pVax-p53製剤を静脈内(IV)に注入し、24時間後に2mg/kgのAP20187をIV投与した。
【
図49】皮下ヒト前立腺癌PC-3腫瘍を有する4匹のNSGマウスの第2のNSGマウスのグラフであり、それらのマウスに4x100μg投与量のFusogenix pVax-p53製剤を静脈内(IV)に注入し、24時間後に2mg/kgのAP20187をIV投与した。
【
図50】皮下ヒト前立腺癌PC-3腫瘍を有する4匹のNSGマウスの第3のNSGマウスのグラフであり、それらのマウスに4x100μg投与量のFusogenix pVax-p53製剤を静脈内(IV)に注入し、24時間後に2mg/kgのAP20187をIV投与した。
【
図51】皮下ヒト前立腺癌PC-3腫瘍を有する4匹のNSGマウスの第4のNSGマウスのグラフであり、それらのマウスに、4x100μgの投与量のFusogenix pVax-p53製剤を静脈内(IV)に注射し、24時間後に2mg/kgのAP20187をIV注射した。
【
図52】静脈内p14 LNP pVAXで処置された前立腺腫瘍を有するNSGマウス(すべての群でN=6)における、二量体形成(CID)の化学的誘導物質のインビボでの投与後の時間に応じて、腫瘍体積中の変化率を示すグラフである。
【
図53】静脈内p14 LNP pVAXで処置された前立腺腫瘍を有するNSGマウス(すべての群でN=6)における、二量体形成(CID)の化学的誘導物質のインビボでの投与後の時間に応じて、生存率を示す生存曲線である。
【
図54】100μg、400μg、および1000μgの静脈内p14 LNP pVAXで処置された前立腺腫瘍を有するNODスキッドマウス(すべての群でN=6)における、二量体形成(CID)の化学的誘導物質のインビボでの投与後の時間に応じた腫瘍体積の変化率を示す、用量漸増データのグラフである。500,000のPC-3細胞をNOD-SCIDマウスの皮下に移植し、それらの腫瘍が200mm
3(すべての群でN=2)に達すると、処置群へと無作為化した。動物に、割り当てられた投与量のp53-iCasp9 LNPを2回静脈内注射し、その後、2mg/kgの二量体化剤を注射した。腫瘍は24時間ごとに直接測定された。
【
図55】二量体形成(CID)の化学的誘導物質を含む、あるいはその誘導物質を含まないp53-iCasp9 LNPでの処置を繰り返すことにより、転移性腫瘍増殖を抑制することを示すグラフである。0日目に、NOD-SCID マウスに500,000のPC-3Mルシフェラーゼ細胞が注射され、22日目に、LNP投与が150μgのp53-iCasp9 LNPを用いて開始された。二量体化剤の投与が2mg/kgで24日目に開始された。全体の動物発光を検知するために、マウスを24-48時間ごとに画像化した。
【
図56】同質遺伝子C57B6マウスにおける二量体形成(CID)の化学的誘導物質のインビボでの投与後の時間に応じて、腫瘍体積の変化率(
図56)と生存率(
図57)を示すグラフであり、その同質遺伝子C57B6マウスは、マウスp53プロモーターの制御下でiCasp9およびマウスCD40Lをコードする構築物を含有するLNPで処置されたB16マウスメラノーマ細胞が移植されている。B16細胞の急速な(10時間)倍加時間により、それらの大部分がiCasp9誘導アポトーシスに対して抵抗性になったが、腫瘍の成長を効果的に停止させるのに十分なCD40Lを依然として分泌した。GMCSF+OVA抗原をコードする構築物も試験され、iCasp9単独と比べてより効果的であると決定されたが、CD40Lバージョンほど効果的ではなかった。両方の群でN=3。
【
図57】同質遺伝子C57B6マウスにおける二量体形成(CID)の化学的誘導物質のインビボでの投与後の時間に応じて、腫瘍体積の変化率(
図56)と生存率(
図57)を示すグラフであり、その同質遺伝子C57B6マウスは、マウスp53プロモーターの制御下でiCasp9およびマウスCD40Lをコードする構築物を含有するLNPで処置されたB16マウスメラノーマ細胞が移植されている。B16細胞の急速な(10時間)倍加時間により、それらの大部分がiCasp9誘導アポトーシスに対して抵抗性になったが、腫瘍の成長を効果的に停止させるのに十分なCD40Lを依然として分泌した。GMCSF+OVA抗原をコードする構築物も試験され、iCasp9単独と比べてより効果的であると決定されたが、CD40Lバージョンほど効果的ではなかった。両方の群でN=3。
【
図58A】75,000のB16F10細胞の静脈内注射の3、6、9、および12日後に、100μgの対照LNPあるいはp53-iCasp9 LNPが静脈内に投与された、B15F10肺転移モデルデータのそれぞれ写真と棒グラフである。5、8、11、および13日に、二量体形成(CID)の化学的誘導物質が腹腔内に投与された。動物は14日目に屠殺され、肺転移が定量化された。
【
図58B】75,000のB16F10細胞の静脈内注射の3、6、9、および12日後に、100μgの対照LNPあるいはp53-iCasp9 LNPが静脈内に投与された、B15F10肺転移モデルデータのそれぞれ写真と棒グラフである。5、8、11、および13日に、二量体形成(CID)の化学的誘導物質が腹腔内に投与された。動物は14日目に屠殺され、肺転移が定量化された。
【
図58C】75,000のB16F10細胞の静脈内注射の3、6、9、および12日後に、100μgの対照LNPあるいはp53-iCasp9 LNPが静脈内に投与された、B15F10肺転移モデルデータのそれぞれ写真と棒グラフである。5、8、11、および13日に、二量体形成(CID)の化学的誘導物質が腹腔内に投与された。動物は14日目に屠殺され、肺転移が定量化された。
【
図58D】75,000のB16F10細胞の静脈内注射の3、6、9、および12日後に、100μgの対照LNPあるいはp53-iCasp9 LNPが静脈内に投与された、B15F10肺転移モデルデータのそれぞれ写真と棒グラフである。5、8、11、および13日に、二量体形成(CID)の化学的誘導物質が腹腔内に投与された。動物は14日目に屠殺され、肺転移が定量化された。
【
図59】75,000のB16F10細胞の静脈内注射の3、6、9、および12日後に、100μgの対照LNPあるいはp53-iCasp9 LNPが静脈内に投与された、B15F10肺転移モデルデータのそれぞれ写真と棒グラフである。5、8、11、および13日に、二量体形成(CID)の化学的誘導物質が腹腔内に投与された。動物は14日目に屠殺され、肺転移が定量化された。
【
図60】p16、p53、あるいはそれらの組み合わせ(p16+p53)(すべての群でN=10)を標的とするLNP製剤のインビボでの投与後に、毎月実施されたDEXAスキャンである。マウスは、728日(104週)の年齢から毎月処置された。
【
図61】p16、p53、あるいはそれらの組み合わせ(p16+p53)(すべての群でN=10)を標的とするLNP製剤のインビボでの投与後に、毎月実施されたDEXAスキャンである。マウスは、728日(104週)の年齢から毎月処置された。
【
図62】p16、p53あるいはそれらの組み合わせ(p16+p53)(すべての群でN=10)を標的とするLNP製剤のインビボでの投与後の、自然に老化したマウスのオス(
図62)とメス(
図63)の骨密度の変化を示すグラフである。マウスは、728日(104週)の年齢から毎月処置された(矢印)。896日(128週)目に、処置されたマウスの骨密度利点の増大が、オスのマウスにおいて明らかである。
【
図63】p16、p53あるいはそれらの組み合わせ(p16+p53)(すべての群でN=10)を標的とするLNP製剤のインビボでの投与後の、自然に老化したマウスのオス(
図62)とメス(
図63)の骨密度の変化を示すグラフである。マウスは、728日(104週)の年齢から毎月処置された(矢印)。896日(128週)目に、処置されたマウスの骨密度利点の増大が、オスのマウスにおいて明らかである。
【
図64】p16、p53あるいはそれらの組み合わせ(p16+p53)(すべての群でN=10)を標的とするLNP製剤のインビボでの投与後の時間に応じて、生存率を示す生存曲線である。マウスは、728日(104週)の年齢から毎月処置された(矢印)。931日(133週)目で、処置されたマウスの延命効果が明らかである(併用療法と対照の間の>50%の生存差)。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本開示は、老化、疾患、あるいは他の状態に関連する細胞(総称して「標的細胞」)の成長および/または生存を選択的に減少し、防ぎ、および/または排除するための発現カセット、系、および方法を提供する。その発現カセット、系、および方法は、治療用化合物の標的化された送達に依存し、ならびに、例えば、非効率的な標的細胞の送達および/またはオフターゲット効果の結果として、治療効果を制限している既存の技術に関連する安全性と有効性の問題を克服している。
【0049】
より具体的には、本明細書に開示される発現カセット、系、および方法は、標的細胞に備わっている細胞特異的な転写制御機構を利用し、それにより、治療用化合物の標的化-送達を必要とせずに、標的細胞に特異的な治療効果を達成する。これらの発現カセット、系、および方法は、治療用タンパク質をコードする核酸の発現の標的細胞に特異的な誘導を可能にし、そのタンパク質は、産生される細胞の成長および/または生存を減少させ、防ぎ、および/または、排除することができる。
【0050】
したがって、本開示によって提供される様々な実施形態は以下のものを含む:
1.老化、疾患、および/または他の状態に関連する細胞などの、標的細胞内の治療用タンパク質の標的化された産生のための発現構築物であって、上記発現構築物は:
a.1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターであって、その各々が標的細胞内で生産される転写プロモーターと、
b.転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ転写プロモーターの調節制御下にある核酸であって、ここで、上記核酸は、標的細胞を含む細胞の成長および/または生存を減少させ、防ぎ、および/または排除することができる治療用タンパク質をコードする、核酸と、を含む発現構築物。
2.標的細胞内の治療用タンパク質の標的化された産生のための系であって、上記系は、標的細胞ならびに非標的細胞を含む細胞に核酸を送達するためのベクターを含み、
ここで、上記ベクターは、非標的細胞内ではなく、標的細胞(例えば、老化、癌、および/または、他の疾患および/または疾病に関連する細胞)内での治療用タンパク質の標的化された産生のための発現構築物を含み、
ここで、発現構築物は、(i)1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターであって、その各々は標的細胞内で産生される、転写プロモーターと、(ii)転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ転写プロモーター調節制御下にある核酸であって、
ここで、核酸は、標的細胞を含む産生される細胞の成長および/または生存を減少させ、防ぎ、および/または排除する治療用タンパク質をコードする、核酸とを含む、系。
3.標的細胞の増殖を減少させ、防ぎ、および/または排除するための方法であって、ここで、上記方法は、標的細胞内の治療用タンパク質の標的化された産生のための系を、標的細胞と接触させる工程を含み、
ここで、上記系は、細胞への核酸の送達のためのベクターを含み、
ここで、上記ベクターは、非標的細胞内ではなく、標的細胞(例えば、老化、疾患、あるいは他の状態に関連する細胞)内の治療用タンパク質の標的化された産生のための発現構築物を含み、
ここで、上記発現構築物は、(i)1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターであって、その因子の各々は標的細胞内で産生される、転写プロモーターと、(ii)上記転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ転写プロモーター調節制御下にある核酸であって、
ここで、上記核酸は、核酸の発現時に産生される治療用タンパク質をコードし、および
ここで、標的細胞(例えば、老化、疾患、あるいは他の状態に関連する細胞)中の治療用タンパク質の産生は、標的細胞の成長および/または生存を、減少し、防ぎ、および/または排除する核酸と、を含む方法。
4.ヒトの老化、疾患、あるいは他の状態の処置のための方法であって、ここで、老化、疾患、あるいは他の状態は標的細胞と関連し、上記方法は、標的細胞内の治療用タンパク質の標的化された産生のための系をヒトに投与する工程を含み、
ここで、上記系は、細胞に核酸を送達することができるベクターを含み、
ここで、上記ベクターは、非標的細胞内ではなく、標的細胞(例えば、老化、疾患、あるいは他の状態に関連する細胞)内の治療用タンパク質の標的化された産生のための発現構築物を含み、
ここで、上記発現構築物は、(i)1つ以上の因子に応答して活性化される転写プロモーターであって、その因子の各々は標的細胞内で産生される、転写プロモーターと、(ii)転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ転写プロモーターの調節制御下にある核酸であって、
ここで、上記核酸は、核酸の発現時に治療用タンパク質をコードする、核酸と、および
ここで、標的細胞(例えば、老化、疾患、あるいは他の状態に関連する細胞)中の治療用タンパク質の産生は、標的細胞の成長および/または生存を減少させ、防ぎ、および/または排除し、それにより、ヒトの老化を遅らせ、および/または、ヒトの疾患あるいは疾病を遅らせ、回復させ、および/または排除する、方法。
【0051】
定義
本開示のこれらの態様および他の態様は、以下の非制限的な定義を参照することにより、より良く理解することができる。
【0052】
本明細書で使用されるように、「転写プロモーター」という用語は、特定の遺伝子の転写を開始するDNAの部位を指す。プロモーターは、遺伝子の転写開始部位の近く、同じ鎖上、あるいはDNAの上流(鋳型鎖および非コード鎖とも呼ばれるアンチセンス鎖の3’領域に向かって)にある。プロモーターは、約100-1000の塩基対の長さであり得る。転写が起こるためには、RNAポリメラーゼとしても知られているRNAを合成する酵素は、遺伝子の近くのDNAに結合しなければならない。プロモーターは、RNAポリメラーゼのための、およびRNAポリメラーゼを動員する転写因子と呼ばれるタンパク質のための安全な初期結合部位をもたらす、特異的DNA配列および応答エレメントを含有している。これらの転写因子には、特定のプロモーターに結合し、遺伝子発現を調節する、対応するヌクレオチドの特定のアクチベーターまたはリプレッサー配列がある。そのプロセスはより複雑であり、RNAポリメラーゼIIをプロモーターに結合するのに、少なくとも7つの様々な因子が必要である。プロモーターは、他の制御領域(エンハンサー、サイレンサー、境界領域/インスレーター)と連携して働いて、所与の遺伝子の転写のレベルを指図することができる重要な要素を表す。
【0053】
真核転写プロモーターは多くの必須エレメントを含み、その必須エレメントは、コアプロモーター(つまり、転写を開始するのに必要なプロモーターの最小部分)を集合的に構成する。それらのエレメントは、(1)転写開始部位(TSS)、(2)RNAポリメラーゼ結合部位(特に、メッセンジャーRNAをコードする遺伝子のプロモーターにおけるRNAポリメラーゼII結合部位)、(3)基本転写因子結合部位(例えば、コンセンサス配列TATAAAを有するTATAボックスであり、これはTATA結合タンパク質(TBP)の結合部位である)、(4)B認識エレメント(BRE)、(5)調節エレメントを含有するおよそ250bpの近位プロモーター、(6)転写因子結合部位(例えば、配列CACGTFを有するEボックスであり、これは、BMAL11-Clock nad cMycを含む塩基性ヘリックスループヘリックス(bHLH)転写因子の結合部位である)、および(7)さらなる調節エレメントを含有する遠位プロモーターを含む。本明細書で使用されるように、用語「転写プロモーター」は、転写開始部位から遠く離れている調節エレメントを指す用語である「エンハンサー」とは異なる。
【0054】
真核プロモーターはしばしば、以下のクラスに従って分類される:(1)ATベースのクラス、(2)CGベースのクラス、(3)ATCGコンパクトクラス、(4)ATCGのバランスのとれたクラス、(5)ATCGミドルクラス、(6)ATCGが少ないクラス、(7)ATが少ないクラス、(8)CGスパイククラス、(9)CGが少ないクラス、および(10)ATスパイククラス。Gagniuc and Ionescu-Tirgoviste, BMC Genomics 13:512(2012)を参照。真核プロモーターは「一方向性」または「双方向性」である。一方向性プロモーターは、単一の遺伝子の転写を調節し、TATAボックスの存在によって特徴付けられる。双方向性プロモーターは、双方向性遺伝子対(つまり、互いの方を向いた5’末端を有する対向し合う鎖上でコードされた、2つの隣接遺伝子)中の遺伝子の5’末端間のDNAの短い(<1kbp)遺伝子間領域である。双方向性遺伝子はしばしば機能的に関連付けられ、および、それらが単一のプロモーターを共有するので、同時制御され、同時発現され得る。一方向性プロモーターとは異なり、双方向性プロモーターはTATAボックスを含有していないが、GpCアイランドを含有しており、かつ、一方の側の優勢なCとAおよび他方側のGとTの中点周りの対称性を示す。CCAATボックスは双方向性プロモーターにおいて共通であり、NRF-1、GABPA、YY1、およびACTACAnnTCCCモチーフも同様である。
【0055】
転写プロモーターは、しばしば2つ以上の転写因子結合部位を含有している。したがって、複数の転写因子結合部位を有するプロモーターの下流にある核酸の効率的な発現は、典型的に、複数の転写因子の協調作用を必要とする。それゆえ、転写制御の特異性、したがって関連する核酸の発現は、2つ以上の転写因子結合部位を有する転写プロモーターの利用により、増大させることができる。
【0056】
本明細書で使用されるように、用語「転写因子」は、転写プロモーター内の特異的配列に結合し、それによって、プロモーターの操作可能な近接(operable proximity)およびプロモーターの下流にある核酸の転写を制御する配列特異的DNA結合因子を指す。転写因子はアクチベーター(転写を促進する)および抑制因子(補充を防ぐまたはRNAポリメラーゼの動員または結合を防ぐことにより転写を阻止する)を含む。転写因子は、典型的には、(1)転写プロモーター内に同族の転写因子結合部位(応答エレメントとしても知られる)への配列特異的結合を促進する、1つ以上のDNA結合ドメイン(DBD)と;(2)外部シグナルに対して反応性のリガンド結合ドメインを含む、1つ以上のシグナル検知ドメイン(SSD)と;(3)転写共調節因子(transcription coregulators)を含む他のタンパク質の結合部位を含有している、1つ以上のトランス活性化ドメイン(TAD)とを含む。
【0057】
本明細書で使用されるように、用語「転写因子」は、もっぱら1つ以上のDBDを有する因子を指し、DBDを含有していない他の制御タンパク質、例えば、コアクチベーター、クロマチンリモデラー(chromatin remodelers)、ヒストンアセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、およびメチラーゼを含むようには意図されない。
【0058】
DNA結合ドメインを含有しているおよそ2,600のヒトタンパク質のうち、その大多数は転写因子であると考えられる。転写因子は、DNA結合ドメインの構造的特徴に従って分類され、その構造的特徴には、塩基性ヘリックスループヘリックスドメイン、塩基性ロイシンジッパー転写因子(bZIPドメイン)、二分応答制御因子(bipartite response regulators)の末端エフェクタードメイン、GCCボックスドメイン、ヘリックスターンヘリックスドメイン、ホメオドメイン、ラムダリプレッサー様ドメイン、 血清応答因子様(srf-様)ドメイン、ペアードボックスドメイン、ウィングドヘリックスドメイン、ジンクフィンガードメイン、マルチCys2His2ジンクフィンガードメイン、Zn2Cys6ドメイン、およびZn2Cys8の核内受容体ジンクフィンガードメインが含まれる。
【0059】
多くの転写因子は腫瘍抑制因子または癌遺伝子のいずれかであり、したがって、そのような転写因子内の突然変異およびそのような転写因子の異常な発現は、いくつかの癌および他の疾患ならびに疾病に関連する。例えば、(1)NF-κBファミリー、(2)AP-1ファミリー、(3)STATファミリー、および(4)ステロイド受容体ファミリー内の転写因子は、神経発達障害レット症候群(MECP2転写因子)、糖尿病(肝細胞核因子(HNF)およびインスリンプロモーター因子-1(IPF1/Pdx1))、発達性言語協調障害(FOXP2転写因子)、自己免疫疾患(FOXP3転写因子)、リー・フラウメニ症候群(p53腫瘍抑制因子)、および多発癌(転写因子のSTATとHOXのファミリー)に関連付けられる。Clevenger, Am. J. Pathol. 165(5):1449-60(2004);Carrithers et al., Am J Pathol 166(1):185-196(2005);Herreros-Villanueve et al., World J Gastroenterology 20(9):2247-2254(2014);およびCampbell et al., Am J Pathol 158(1):25-32(2001)。Olsson et al., Oncogene 26(7):1028-37(2007)には、ヒトの膀胱癌および前立腺癌における細胞周期の主要制御因子である、転写因子E2F3のアップレギュレーションが記載されている。Cantile et al., Curr Med Chem 18(32):4872-84(2011)には、泌尿生殖器癌におけるHOX遺伝子のアップレギュレーションが記載されており;Cillo et al., Int J. Cancer 129(11):2577-87(2011)には、肝細胞癌におけるHOX遺伝子のアップレギュレーションが記載されており;Cantile et al., Int J. Cancer 125(7):1532-41(2009) には、79の腫瘍組織タイプにわたるHOX D13発現が記載されており;Cantile et al., J Cell Physiol 205(2):202-10(2005)には、前立腺癌におけるHOX D発現のアップレギュレーションが記載されており;Cantile et al., Oncogene 22(41):6462-8(2003)には、ヒト膀胱移行細胞癌のHOXネットワークにおける遺伝子座C遺伝子の過剰発現が記載されており;Morgan et al., BioMed Central 14:15(2014)には、前立腺癌の標的としてのHOX転写因子が記載されており;および、Alharbi et al., Leukemia 27(5):1000-8(2013)には、造血と急性白血病におけるHOXC遺伝子の役割が記載されている。
【0060】
AP-2ファミリーは、抑制因子とアクチベーターの両方として機能することができる、5つの転写因子を含む。AP-2γは、p21CIP遺伝子のp53活性化を阻止することにより癌細胞生存を制御する。高レベルのAP-2γは、乳癌中の予後不良と関連している。Gee et al., J Pathol 217(1):32-41(2009)およびWilliams et al., EMBO J 28(22):3591-601(2009)。細胞生存を促進するさらなる転写因子は、フォークヘッド転写因子(FOX)であり、これは、薬剤耐性に関与するタンパク質の発現を促進し、およびプログラム細胞死を阻止することができ、したがって、化学療法剤から癌細胞を保護することができる。Gomes et al., Chin J. Cancer 32(7):365-70(2013)には、発癌と薬物耐性におけるFOXO3aおよびFOXM1の役割が記載されている。
【0061】
転写因子は、プロモーターおよびエンハンサーに結合することができる。本開示で使用されるように、転写因子という用語は、プロモーター内の転写因子結合部位に結合する転写因子の部分集合を指し、エンハンサー配列に結合するこれらの因子を除外する。転写因子は、関連する核酸の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートすることもできる。本開示は、発現を阻害するのではなく促進し、したがって、関連する核酸の発現におけるアップレギュレーションを引き起こす、転写因子の転写因子結合部位を有する転写プロモーターを利用する。核酸発現をアップレギュレートする上記転写因子としては、例えば、限定されないが、(1)同族の結合部位に結合するRNAポリメラーゼを安定化させ、(2)転写因子DNA複合体にコアクチベーターあるいはコリプレッサーのタンパク質を動員し、および/または(3)ヒストンタンパク質のアセチル化を触媒する(あるいは、ヒストンタンパク質のアセチル化を触媒する1つ以上の他のタンパク質を動員する)、転写因子が挙げられる。そのようなヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性により、DNAに結合するヒストンの親和性が低下し、それにより、DNAを転写に利用しやすくなる。
【0062】
本明細書で使用されるように、用語「ネクローシス」は、毒物、肉体的損傷、感染、または失血などの外力によって、細胞が損傷を受けた際に生じる細胞死へとつながるプロセスを指す。ネクローシスの細胞死は炎症を引き起こし、身体内の一層の苦痛または損傷を結果としてもたらす。本明細書で使用されるように、用語「アポトーシス」は、事象のプログラムされた配列が有害物質を放出することなく細胞の排除を引き起こす、細胞死につながるプロセスを指す。アポトーシスは、古い細胞、不必要な細胞、および不健康な細胞の除去により、身体の健康を発達させ、維持する際に重要な役割を果たす。アポトーシスは、カスパーゼタンパク質を含む、自殺遺伝子によって産生されたタンパク質によって媒介され、それは、生存に必要な細胞の成分を分解し、DNAsesの産生を誘導することで、核DNAを破壊する。
【0063】
本明細書で使用されるように、用語「自殺遺伝子」は、p53媒介アポトーシスの細胞の死滅を引き起こすタンパク質を産生する遺伝子のクラスを指す。本開示の発現構築物および系で利用することができる自殺遺伝子は、カスパーゼ、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(HSV-TK)、ならびにシトシンデアミナーゼ、および、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、ヘルペスHSV-TK、ならびにシトシンデアミナーゼの誘導性変異体を含む。
【0064】
ここに開示されている発現構築物および系は、老化、癌感染症、細菌感染、および/または他の疾病の処置のための方法と、老化、癌、感染症、細菌感染、および/または他の疾病に関連する細胞の死滅のための方法で使用され、かつ、標的細胞の成長および/または増殖を減少させる治療用タンパク質を使用する。ある実施形態では、治療用タンパク質は自殺遺伝子によって発現することができ、その自殺遺伝子は、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、あるいはシトシンデアミナーゼ、および、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、あるいはシトシンデアミナーゼの誘導性変異体をコードする。発現カセットおよび系は、従来の化学療法と共に使用して、老化、癌、感染症、細菌感染、および他の疾患ならびに疾病の処置のための治療レジメンの有効性を高めることができる。
【0065】
本開示のある態様内では、発現構築物は、標的細胞に特異的プロモーター、例えば、老化細胞に特異的なプロモーターあるいは癌細胞に特異的なプロモーターの調節制御下でアポトーシス促進タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、pVAX1(
図14)プラスミド発現構築物である。
【0066】
例示的なpVAX1(商標)プラスミド発現構築物は、p16sプロモーターの調節制御下での誘導性カスパーゼ9タンパク質(iCasp9)の標的細胞に特異的な発現のための、pVAX-16s-iCasp9-MX(
図16;SEQ ID NO:6)、p53プロモーターの調節制御下での誘導性カスパーゼ9タンパク質(iCasp9)の標的細胞に特異的な発現のための、pVAX1-53-iCasp9-MX(
図26;SEQ ID NO:7)、p53プロモーターの調節制御下での自己活性化カスパーゼ9タンパク質(saCASP9)の標的細胞に特異的な発現のための、pVax1-p53-saCasp9-5(
図27;SEQ ID NO:8)、p53プロモーターの調節制御下での誘導性カスパーゼ9タンパク質(iCasp9)およびオボアルブミンタンパク質の標的細胞に特異的な発現のための、pVax1-p53-iCasp9-OVA(
図28;SEQ ID NO:11)、p53プロモーターの調節制御下での誘導性カスパーゼ9タンパク質(iCasp9)およびオボアルブミンタンパク質の標的細胞に特異的な発現のための、pVax1-p53-iCasp9-G-O(
図29;SEQ ID NO:9)、p53プロモーターの調節制御下での誘導性カスパーゼ9タンパク質(iCasp9)およびCD40リガンドタンパク質(CD40L)の標的細胞に特異的な発現のための、pVax1-p53-iCasp9-huCD40L(
図30;SEQ ID NO:10)を含む。
【0067】
例示的なp10プラスミド発現構築物は、p16eプロモーターの調節制御下の誘導性カスパーゼ9タンパク質(iCasp9)の標的細胞に特異的な発現のための、p10-p16e-iCasp9(
図17;SEQ ID NO:12)、p16eプロモーターの調節制御下の自己活性化カスパーゼ9タンパク質(saCasp9)の標的細胞に特異的な発現のための、p10-p16e-saCasp9(
図18;SEQ ID NO:13)、p53プロモーターの調節制御下の誘導性カスパーゼ9タンパク質(iCasp9)の標的細胞に特異的な発現のための、p10-p53-iCasp9(
図33;SEQ ID NO:14)、および、p53プロモーターの調節制御下の自己活性化カスパーゼ9タンパク質(saCasp9)の標的細胞に特異的な発現のための、p10-p53-saCasp9(
図34;SEQ ID NO:15)を含む。
【0068】
本開示の他の態様内では、発現構築物は、NTC8385、NTC8685、およびNTC9385プラスミド発現構築物を含む、NTCベースのプラスミド発現構築物であり、これは、標的細胞に特異的なプロモーター、例えば、老化細胞に特異的なプロモーターあるいは癌細胞特異的なプロモーターの調節制御下で、アポトーシス促進タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0069】
本開示のさらなる態様内では、発現構築物は、gWizベースのプラスミド発現構築物であり、これは、標的細胞に特異的なプロモーター、例えば、老化細胞に特異的なプロモーターあるいは癌細胞に特異的なプロモーターの調節制御下で、アポトーシス促進タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0070】
本開示の実施は、特に反対のことが示されていない限り、ウイルス学、腫瘍学、免疫学、微生物学、分子生物学、および組換えDNAの分野で一般的に使用される従来の方法および技術を使用し、その方法論および技術は、当業者に周知であり、容易に利用可能である。そのような方法論および技術は、試験所マニュアル、ならびに科学文献および特許文献中で十分に説明される。例えば、Sambrook, et al., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”(2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989);Maniatis et al., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual”(1982);“DNA Cloning: A Practical Approach, vol. I & II”(Glover, ed.);“Oligonucleotide Synthesis”(Gait, ed., 1984);Ausubel et al.(eds.), “Current Protocols in Molecular Biology”(John Wiley & Sons, 1994);“Nucleic Acid Hybridization”(Hames & Higgins, eds., 1985);“Transcription and Translation”(Hames & Higgins, eds., 1984);“Animal Cell Culture”(Freshney, ed., 1986);およびPerbal, “A Practical Guide to Molecular Cloning”(1984)を参照。上記または下記に関わらず本明細書で引用される、全ての出版物、特許および特許出願は、参照によって全体として本明細書に組み入れられる。
【0071】
標的細胞の成長および/または生存を減少させ、防ぎ、および/または排除するための系および発現構築物
ある実施形態内では、本開示は、発現構築物と、標的細胞の成長および/または生存を標的細胞に特異的に減少させ、防ぎ、および/または排除することを達成するための1つの送達ベクターおよび1つの発現構築物を含む系を提供する。
【0072】
系
本開示の系は、(1)細胞が標的細胞あるいは非標的細胞であるかに関わらず、その細胞への核酸の非特異的な送達が可能なベクター、および(b)標的細胞に特異的な転写プロモーターと、治療用タンパク質をコードする核酸とを含む発現構築物を含み、この発現構築物は、治療用タンパク質の標的細胞に特異的な産生を達成する。本明細書に開示される系は、老化、疾患、あるいは別の状態に関連する細胞などの標的細胞の成長または生存の特性をもたらすが、同時に、正常な、老化、疾患、あるいは別の状態に関連しない非標的細胞の成長または生存の特性をもたらさないことが望ましい広範囲の治療適用に有用である。
【0073】
本開示は、老化、疾患、あるいは他の状態に関連する細胞の広範囲の成長および/または生存をもたらすための系を提供し、その系は、同様に、(1)非特異的核酸送達ベクター、および(2)(a)標的細胞に特異的な転写プロモーターと(b)治療用タンパク質をコードする核酸とを含む発現構築物を含む。ここに開示される系のこれらの態様の各々は、本明細書においてより詳細に記載されている。
【0074】
ある実施形態内では、標的細胞の成長および/または生存をもたらすための系が本明細書に提供され、その系は:(1)非特異的核酸送達ベクターおよび(2)発現構築物を含み、上記発現構築物は:(a)標的細胞において活性化されるが、正常な非標的細胞では活性化されない転写プロモーター、および(b)転写プロモーターの制御下である核酸であって、例えば、産生される細胞におけるプログラム細胞死の機構を誘導することによって、標的細胞の成長および/または生存を減少させ、防ぎ、および/または排除することができる治療用タンパク質をコードする、核酸を含む。したがって、これらの系は、毒素を使用することなく、および発現構築物の標的細胞に特異的な送達がない状況で、標的細胞内で生成される、かつ標的細胞に備わっている転写機構を利用することより、標的細胞の選択的な死滅を達成する。
【0075】
ヒト標的細胞が老化細胞であるこれらの実施形態のある態様では、転写プロモーターは、少なくとも、Wang et al., J. Biol. Chem. 276(52):48655-61(2001)に記載されるp16INK4a/CDKN2Aの転写因子結合部位(つまり、応答エレメント)を有することができ、この転写プロモーターは、SP1、ETS1、およびETS2などの因子による活性化に反応性である。転写プロモーターは、少なくともp21/CDKN1Aの転写因子結合部位(つまり、応答エレメント)も含むことができ、この転写プロモーターは、p53/TP53などの因子による活性化に反応性である。転写活性化は、治療用タンパク質、例えば、Casp3、Casp8、Casp9、DFF40、BAX、HSV-TK、あるいは炭酸脱水酵素、または、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、あるいはシトシンデアミナーゼの誘導性変異体をコードする核酸の発現を誘導する。
【0076】
ヒト標的細胞が癌細胞、例えば、脳癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、大腸癌細胞、乳癌細胞、肝臓癌細胞、血液癌細胞、および骨癌細胞であるこれらの実施形態の他の態様では 転写プロモーターは、少なくともp21cip1/waf1プロモーター、p27kip1プロモーター、p57kip2プロモーター、TdTプロモーター、Rag-1プロモーター、B29プロモーター、Blkプロモーター、CD19プロモーター、BLNKプロモーター、および/または、λ5プロモーターの転写因子結合部位(つまり、応答エレメント)を含むことができ、この転写プロモーターは、1つ以上の転写因子、例えば、EBF3、O/E-1、Pax-5、E2A、p53、VP16、MLL、HSF1、NF-IL6、NFAT1、AP-1、AP-2、HOX、E2F3、および/またはNF-κB転写因子による活性化に反応性であり、および、その転写活性化は、治療用タンパク質、例えば、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、あるいはシトシンデアミナーゼ、または、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、あるいはシトシンデアミナーゼの誘導性変異体をコードする核酸の発現を誘導し、その治療用タンパク質は、例えば、アポトーシスを含む細胞プロセスを介して老化細胞の細胞死を誘導することによって、癌細胞の成長および/または生存を減少させ、防ぎ、および/または排除する。例えば、ネクローシス/ネクロトーシス、オートファジー細胞死、小胞体ストレス関連細胞毒性、分裂死、パラトーシス(paraptosis)、パイロトーシス(pyroptosis)、ピロネクローシス(pyronecrosis)、およびentosifsを含む、細胞プロセスによって細胞死を誘導することによって、癌細胞の成長および/または生存を減少させ、防ぎ、および/または排除する他の治療用タンパク質が利用されてもよい。標的細胞が、例えば、ヘルペスウイルス、ポリオウイルス、肝炎ウイルス、レトロウイルス、インフルエンザウイルス、およびライノウイルスを含むウイルスなどの感染因子に感染しているヒト細胞であるか、または標的細胞が細菌細胞である、これらの実施形態のさらなる態様では、転写プロモーターは、感染因子または細菌細胞によって発現される因子によって活性化することができ、その転写活性化は、治療用タンパク質、例えば、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、あるいはシトシンデアミナーゼ、または、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、HSV-TK、あるいはシトシンデアミナーゼの誘導性変異体をコードする核酸の発現を誘導し、その治療用タンパク質は、例えば、アポトーシスを含む細胞プロセスによる老化細胞の細胞死を誘導することによって、老化細胞の成長および/または生存を減少させ、防ぎ、および/または排除する。例えば、ネクローシス/ネクロトーシス、オートファジー細胞死、小胞体ストレス関連細胞毒性、分裂死、パラトーシス(paraptosis)、パイロトーシス(pyroptosis)、ピロネクローシス(pyronecrosis)、およびentosifsを含む、細胞プロセスによって細胞死を誘導することによって、老化細胞の成長および/または生存を減少させ、防ぎ、および/または排除する他の治療用タンパク質が使用されてもよい。
【0077】
ここに開示される系のこれらの態様の各々は、本明細書において、より詳細に記載されている。
【0078】
1.非特異的核酸送達ベクター
本開示の系は、標的細胞に固有の転写機構を利用することにより、標的細胞特異性を達成する。したがって、本明細書に記載される系は、標的細胞を含むが、これに限定されない細胞への発現構築物の非特異的送達に容易に適合し得る核酸送達ベクターを利用する。
【0079】
種々様々な非ウイルスとウイルスの両方の核酸送達ベクターは、当技術分野において周知であり、かつ容易に利用可能であり、および、本明細書に開示される発現構築物の非特異的細胞送達ための使用に適合し得る。例えば、ウイルスの核酸送達方法論の概要については、Elsabahy et al., Current Drug Delivery 8(3):235-244(2011)を参照。哺乳動物細胞への核酸の成功した送達は、効率的な送達ベクターの使用に依存する。ウイルスベクターは、望ましいレベルの送達効率を示すが、しばしば、好ましくない免疫原性、炎症反応、およびスケールアップに関連する問題も示し、これらのすべては臨床使用を制限する可能性がある。核酸の送達のための理想的なベクターは、安全であるが、核酸安定性および適切な細胞内コンパートメントへの核酸の効率的な移動を確実にする。
【0080】
非ウイルスとウイルスの核酸送達ベクターの非限定的な例は、本明細書に記載され、かつ科学文献および特許文献において開示される。より具体的には、ここに開示される系は、1つ以上のリポソームベクター、ウイルスベクター、ナノ粒子、ポリプレックス(polyplexesm)デンドリマーを使用してもよく、それらの各々は、核酸の非特異的送達のために開発されており、本明細書に記載される発現構築物の非特異的送達に適合することができ、および、上記系は、対象の標的細胞への系の標的化された送達を促進するための1つ以上の薬剤を取り込むように修飾されることで、ここに開示される系の標的細胞特異性を増強することができる。
【0081】
2.リポソームベクターおよびナノ粒子
発現カセットは、例えば、リポソーム、小胞、ミセルおよび/または、マイクロスフェアなどの、脂質膜、脂質二重層、および/または脂質複合体内に取り込まれる、および/または、脂質膜、脂質二重層、および/または脂質複合体に関連し得る。本開示の発現構築物とともに利用され得る脂質ベース送達系を調製するための適切な方法は、Metselaar et al., Mini Rev. Med. Chem. 2(4):319-29(2002);O’Hagen et al., Expert Rev. Vaccines 2(2):269-83(2003);O’Hagan, Curr. Durg Targets Infect. Disord. 1(3):273-86(2001);Zho et al., Biosci Rep. 22(2):355-69(2002);Chikh et al., Biosci Rep. 22(2):339-53(2002);Bungener et al., Biosci. Rep. 22(2):323-38(2002);Park, Biosci Rep. 22(2):267-81(2002);Ulrich, Biosci. Rep. 22(2):129-50;Lofthouse, Adv. Drug Deliv. Rev. 54(6):863-70(2002);Zhou et al., J. Immunother. 25(4):289-303(2002);Singh et al., Pharm Res. 19(6):715-28(2002);Wong et al., Curr. Med. Chem. 8(9):1123-36(2001);および、Zhou et al., Immunomethods 4(3):229-35(1994)に記載されている。Midoux et al., British J. Pharmacol 157:166-178(2009)には、ポリマー、ペプチド、および脂質を含む核酸の送達のための化学的ベクターが記載されている。Sioud and Sorensen, Biochem Biophys Res Commun 312(4):1220-5(2003)には、核酸の送達のためのカチオン性リポソームが記載されている。
【0082】
それらの電荷が正であるので、負に帯電したDNA分子を濃縮するために、および、リポソーム中へのDNAの封入を容易にするために、カチオン性脂質が使用されている。カチオン性脂質はさらに、リポソームに高度な安定性を提供する。カチオン性リポソームは、細胞膜と相互作用し、エンドサイトーシスのプロセスを介して細胞によって取り入れられる。エンドサイトーシスの結果として形成されたエンドソームは、細胞質中で分解され、それにより、カーゴ核酸を放出する。しかしながら、カチオン性リポソームの固有の安定性ゆえに、トランスフェクション効率は、カーゴ核酸のリソソーム分解の結果として低くなり得る。
【0083】
ヘルパー脂質(電気的中性脂質(electroneutral lipid)DOPEおよびL-a-ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)など)は、カチオン性脂質と組み合わせて使用すると、安定性が低下したリポソームを形成し、したがって、トランスフェクション効率の向上を示す。これらの電気的中性脂質は融合性脂質(Fusogenix lipids)と呼ばれる。Gruner et al., Biochemistry 27(8):2853-66(1988)およびFarhood et al., Biochim Biophys Acta 1235(2):289-95(1995)を参照。DOPEはHII相構造を形成し、5°C~10°Cより高い温度で、脂質二重層の融合につながる超分子の構成を引き起こす。リポソーム中へのDOPEの取り込みはさらに、エンドソーム膜を不安定にするHII相の形成を支援する。
【0084】
コレステロールは、リポソームベクターが静脈内に投与される用途のために、DOPEリポソームと組み合わせて使用することができる。Sakurai et al., Eur J Pharm Biopharm 52(2):165-72(2001)。DOPEのアシル鎖中の1つの不飽和の存在は、膜融合活性の決定因子である。Talbot et al., Biochemistry 36(19):5827-36(1997)。
【0085】
飽和鎖を有するフッ素化ヘルパー脂質、例えば、DF4C11PE(rac-2,3-ジ[11-(F-ブチル)ウンデカノイル)グリセロ-1-ホスホエタノールアミンは、リポポリアミン(lipopolyamine)リポソームのトランスフェクション効率も高める。Boussif et al., J Gene Med 3(2):109-14(2001);Gaucheron et al., Bioconj Chem 12(6):949-63(2001);および、Gaucheron et al., J Gene Med 3(4):338-44(2001)。
【0086】
ヘルパー脂質1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)は、DOPE リポプレックス(lipoplexes)と比べて、インビトロの細胞トランスフェクションの効率を高める。Prata et al., Chem Commun 13:1566-8(2008)。DOPEのオレイン酸鎖の二重結合を、Distear-4-イノイルL-a-ホスファチジルエタノールアミン[DS(9-イン)PE]などの三重結合と交換することにより、安定したリポプレックスを産生すると示されている。Fletcher et al., Org Biomol Chem 4(2):196-9(2006)。
【0087】
インフルエンザウイルスの血球凝集素のHA-2サブユニットのN末端セグメントに由来する両親媒性のアニオン性ペプチド、例えば、IFN7(GLFEAIEGFIE NGWEGMIDGW YG)とE5CA(GLFEAIAEFI EGGWEGLIEG CA)のペプチドを使用して、リポソームのトランスフェクション効率を桁違いに高めることができる。Wagner et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A. 89(17):7934-8(1992);Midoux et al., Nucl Acids Res. 21(4):871-8(1993);Kichler et al., Bioconjug Chem 8(2):213-21(1997);Wagner, Adv Drug Deliv Rev 38(3):279-289(1999);Zhang et al., J Gene Med 3(6):560-8(2001)。GALAなどのいくつかの人工ペプチドも、融合ペプチドとして使用された。例えば、Li et al., Adv Drug Deliv Rev 56(7):967-85(2004)およびSasaki et al., Anal Bioanal Chem 391(8):2717-27(2008)を参照。単純ヘルペスウイルスの糖タンパク質Hからの融合ペプチドは、ヒト細胞におけるDNA/リポフェクタミンリポプレックスおよび導入遺伝子発現のエンドソーム放出(endosomal release)を改善する(Tu and Kim, J Gene Med 10(6):646-54(2008)。
【0088】
PCT特許公報WO1999024582A1号およびWO2002/044206号には、膜融合を促進するレオウイルス科に由来するタンパク質のクラスが記載されている。これらのタンパク質は、爬虫類レオウイルスのp14タンパク質およびアクアレオウイルスのp16タンパク質によって例証される。PCT特許公報WO2012/040825には、膜融合を促進するための組み換えポリペプチドが記載されており、そのポリペプチドは、p14融合関連小さな膜貫通(fusion-associated small transmembrane)(FAST)タンパク質の外部ドメインとの少なくとも80%の配列同一性を有し、また機能性のリストイル化モチーフ、FASTタンパク質からの膜貫通ドメインおよびp15 FASTタンパク質の外部ドメインとの少なくとも80%の配列同一性を有する配列を有する。’825のPCTには、選択的融合のための組み換えポリペプチドへの標的化リガンドの添加がさらに記載されている。’825のPCTで提示された組み換えポリペプチドは、核酸の送達を促進するリポソームの膜内に取り込まれ得る。核酸を含む治療用化合物を哺乳動物細胞の細胞質に送達するためのFusogenixリポソームは、リポソームの破壊ならびにその結果として生じるカーゴ核酸の全身性の分散、および/または、エンドソームを取り込みならびにその結果として生じる核酸破壊を減少させるものであり、Innovascreen Inc.(Halifax, Nova Scotia, CA)から商業上入手可能である。
【0089】
金、シリカ、酸化鉄、チタン、ヒドロゲル、およびリン酸カルシウムを含む種々様々な無機ナノ粒子は、核酸の送達について記載されているが、本明細書に記載される発現構築物の送達に適合し得る。例えば、Wagner and Bhaduri, Tissue Engineering 18(1):1-14(2012)(核酸配列の送達のための無機ナノ粒子の説明);Ding et al., Mol Ther e-pub(2014)(核酸送達のための金ナノ粒子の説明);Zhang et al., Langmuir 30(3):839-45(2014)(DNAオリゴヌクレオチドの送達のための二酸化チタンナノ粒子の説明);Xie et al., Curr Pharm Biotechnol 14(10):918-25(2014)(遺伝子送達のための生物分解性のリン酸カルシウムナノ粒子の説明);Sizovs et al., J Am Chem Soc 136(1):234-40(2014)(サブ-30単分散のオリゴヌクレオチドナノ粒子の説明)を参照。
【0090】
無機ベクターの利点は、貯蔵安定性、低い免疫原性、および微生物抵抗性である。100nm未満のナノ粒子は、核酸を効率的に捕捉し、分解せずにエンドソームからの逃避を可能にする。無機ナノ粒子は、培養皿の底部上の高密度および優先的位置により、付着細胞株の改善されたインビトロのトランスフェクションを示す。核酸送達と安定した蛍光マーカーの結合を可能にする量子ドットが記載されている。
【0091】
定義された次元のヒドロゲルナノ粒子および組成物は、PRINT(Particle Replication in Non-wetting Templates)と呼ばれる粒子形成プロセスによって調製することができ、送達ベクターとして本明細書に開示される発現構築物に使用することができる。核酸は、静電会合(electrostatic association)および物理的捕捉によって粒子に封入され得る。全身投与した後にナノ粒子からカーゴ核酸が分離するのを防ぐために、分解可能なジスフィルド結合を有する重合可能な結合(polymerizable conjugate)を利用することができる。
【0092】
PRINT技術は、標的細胞に対する発現カセットの標的化を強化するためのサイズ、形、係数、化学組成物、および表面機能性を含む、正確に制御された特性を有する設計されたナノ粒子の生成を可能にする。例えば、Wang et al., J Am Chem Soc 132:11306-11313(2010);Enlow et al., Nano Lett 11:808-813(2011);Gratton et al., Proc Natl Acad Sci USA 105:11613-11618(2008);Kelly, J Am Chem Soc 130:5438-5439(2008);Merkel et al. Proc Natl Acad Sci USA 108:586-591(2011)を参照。さらに、PRINTは、優良医薬品製造基準(GMP)条件下での粒子製造のスケールアップを可能にする、連続的なロールツーロール製造技術に適している。
【0093】
ナノ粒子は、経口バイオアベイラビリティを改善し、酵素学的分解を最小限に抑えて、血液脳関門を通過するために、脂質コーティング用いてカプセル化することができる。ナノ粒子の表面は、水溶性、インビボでの循環、およびステルス特性を改善するためにペグ化されてもよい。
【0094】
3.ウイルスベクター
例えば、単純ヘルペスウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスを含む、種々様々のウイルスベクターは、当業者に周知で、かつ容易に利用可能であり、上記ウイルスベクターは、核酸(特に、治療用タンパク質の標的細胞に特異的な発現のための発現カセットを含む核酸)の送達のために本明細書に開示される系での使用に適合し得る。
【0095】
特定の受容体への天然のウイルスあるいは操作されたウイルスの指向性は、核酸の送達のためのウイルスベクターを構築するための基礎である。標的細胞へのこれらのベクターの結合は、ウイルスベクター上のリガンドによる細胞表面上の特定の受容体の認識に左右される。表面上に非常に特異的なリガンドを提示するウイルスは、細胞上の特定の受容体上に固定される。ウイルスは、対象の標的細胞の表面上で提示された受容体のためのリガンドを表示するために操作され得る。細胞受容体とウイルスリガンドとの相互作用は、Toll様受容体によりインビボで調節される。
【0096】
細胞へのウイルスベクターの侵入には、受容体依存性エンドサイトーシスであるか膜融合であるかに関わらず、エンドソームおよび/またはリソソームの経路からのウイルスベクターの逃避を可能にする、特定のセットのドメインが必要である。他のドメインは、視交叉上核への侵入を促進する。複製、組立、潜伏は、ベクターと細胞の相互作用の動力学を決定し、ウイルスベクターの選択の際に、ならびに、治療用のカーゴ保有細胞(therapeutic cargo carrying cells)を操作する際に、癌自殺遺伝子治療を設計する際に重要な考慮事項となる。
【0097】
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、ヘルペスウイルス科のファミリーに属し、エンベロープDNAウイルスである。HSVは、3つの主要なリガンド糖タンパク質(gB、gH、ならびにgL)のオーソログを介して細胞受容体に結合し、時に、アクセサリータンパク質を使用する。これらのリガンドは、病気の経口、眼、および生殖器の形態にウイルスが侵入する主要経路において決定的役割を果たす。HSVは、神経系の細胞受容体への高い指向性を保有し、および、老化細胞、癌細胞、ならびに感染因子に感染した細胞を含む標的細胞に発現カセットを送達するために、組み換えウイルスを操作するのに利用され得る。治療用の傍観者効果は、構築物中にコネキシンをコードする配列を含めることによって増強される。標的細胞への核酸の送達のための単純ヘルペスウイルスベクターは、Anesti and Coffin, Expert Opin Biol Ther 10(1):89-103(2010);Marconi et al., Adv Exp Med Biol 655:118-44(2009);および、Kasai and Saeki, Curr Gene Ther 6(3):303-14(2006)で説明されている。
【0098】
レンチウイルスは、レトロウイルス科のファミリーに属し、エンベロープ一本鎖RNAレトロウイルスであり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含む。HIVエンベロープタンパク質はCD4に結合し、CD4+T細胞、マクロファージ、および樹状細胞などのヒト免疫系の細胞上に存在する。細胞への侵入時に、ウイルスRNAゲノムは二本鎖DNAに逆転写され、それは、細胞核内へと移入され、細胞DNAに統合される。HIVベクターは、治療用遺伝子を白血病細胞に送達するために使用された。組み換えレンチウイルスは、正常細胞への実質的な非特異的送達なしに、膵癌細胞内への、卵巣上皮癌への、および神経膠腫細胞への核酸のムチン媒介送達について記載されている。標的細胞への核酸の送達のためのレンチウイルスベクターは、Primo et al., Exp Dermatol 21(3):162-70(2012);Staunstrup and Mikkelsen, Curr Gene Ther 11(5):350-62(2011);および、Dreyer, Mol Biotechnol 47(2):169-87(2011)に説明されている。
【0099】
アデノウイルスは、二本鎖の直鎖DNAゲノムおよびカプシドからなる、非エンベロープウイルスである。当然、アデノウイルスはアデノイド中に存在し、上気道感染症の原因となる可能性がある。アデノウイルスは、細胞の鼻、気管、および肺の上皮への侵入のために、アデノウイルスの繊維タンパク質のコクサッキーウィルスとアデノウイルス受容体(CAR)を利用する。CARは、老化細胞および癌細胞上に低レベルで発現される。核酸を標的細胞に送達することができる組み換えアデノウイルスが生成され得る。複製可能なアデノウイルス媒介自殺遺伝子治療(ReCAP)は、新しく診断された前立腺癌のために臨床試験中である。標的細胞への核酸の送達のためのアデノウイルスのベクターは、Huang and Kamihira, Biotechnol Adv. 31(2):208-23(2013);Alemany, Adv Cancer Res 115:93-114(2012);Kaufmann and Nettelbeck, Trends Mol Med 18(7):365-76(2012);および、Mowa et al., Expert Opin Drug Deliv 7(12):1373-85(2010)に説明されている。
【0100】
アデノ随伴ウィルス(AAV)は、ヒトおよび他の一部の霊長類種に感染する、小さなウイルスである。AAVは、疾患を引き起こすことが現在知られておらず、結果的に、ウイルスは非常に軽度の免疫応答を引き起こす。AAVを使用するベクターは、分裂細胞および静止細胞の両方に感染し、宿主細胞のゲノム中統合することなく、染色体外の状態を存続することができる。これらの特徴により、AAVは、本開示の系で使用されるウイルスベクターを作製するための非常に魅力的な候補になる。標的細胞への核酸の送達のためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、Li et al., J.Control Release 172(2):589-600(2013);Hajitou, Adv Genet 69:65-82(2010);McCarty, Mol Ther 16(10):1648-56(2008);および、Grimm et al., Methods Enzymol 392:381-405(2005)に説明されている。
【0101】
4.ポリプレックス
ポリプレックスはDNAとポリマーの複合体である。ポリプレックスは、カチオンポリマーからなり、それらの製作はイオン相互作用による自己組織化に基づく。ポリプレックスと、リポソームおよびリポプレックスの作用方法の間の1つの重要な違いは、ポリプレックスが、核酸カーゴを標的細胞の細胞質に直接放出することができないということである。その結果、不活性化アデノウイルスなどのエンドソーム溶解剤との同時トランスフェクションは、粒子取り込み中に作られた細胞内小胞からの逃避を容易にするために必要となる。DNAがエンドリソソームの経路(つまり、プロトンスポンジ効果)から逃れることができる機構のより良い理解は、ポリマー骨格におけるプロトン化可能な残基の取り込みなどの新規ポリマー合成方策のきっかけとなり、またポリカチオンベースの系についての研究を活性化している。例えば、Parhamifar et al., Methods e-pub (2014);Rychgak and Kilbanov, Adv Drug Deliv Rev e-pub (2014);Jafari et al.,Curr Med Chem 19(2):197-208(2012)を参照。
【0102】
ポリカチオンのナノキャリアは、その低毒性、高い付加能力、および製作の容易さにより、ウイルスベクターに対する実質的な利点を示し、高い免疫原性、および潜在的発癌性、および用量依存的な毒性を引き起こす脂質ベースのベクターを示す。ポリエチレンイミン、キトサン、ポリ(β-アミノエステル)、およびホスホロアミド酸が核酸の送達について記載されている。例えば、Buschmann et al., Adv Drug Deliv Rev 65(9):1234-70 (2013)を参照。これらのポリマーナノキャリアのサイズ、形、および界面化学は、容易に操作することができる。
【0103】
5.デンドリマー
デンドリマーは、球形の高度に分岐したポリマーである。デンドリマー粒子の表面は、例えば、正の表面電荷(カチオン性デンドリマー)などを用いて、機能化される場合があり、それは、核酸の送達に使用され得る。デンドリマー-核酸の複合体は、エンドサイトーシスによって細胞中に取り込まれる。デンドリマーは、堅牢な共有結合構造および分子の構造およびサイズに対する極端な制御を提供する。デンドリマーは、動力学的駆動化学(kinetically driven chemistry)を使用して、デンドリマーを産生するDendritic Nanotechnologies Inc.から商業上利用可能であり、そのデンドリマーは、核酸の送達に適合することができ、低毒性、高効率で細胞をトランスフェクトすることができる。
【0104】
発現構築物の標的化された送達は本開示の系によって必要とされない一方、標的細胞の成長および/または生存の標的化された減少、防止、および/または排除は、標的細胞に固有の標的細胞の細胞内転写機構を利用することによって達成することができるということが理解され、企図された正確な適用に応じて、細胞のサブセットへの標的化された送達を容易にする1つ以上の成分を、他の非特異的送達ベクターに組み込むことが望ましい場合があり、その細胞の少なくとも一部は、本開示の発現構築物による成長および/または生存阻害に影響されやすい標的細胞を含む。
【0105】
リポソーム、ナノ粒子、ウイルス、および本明細書に記載される他のベクターによる核酸の標的化された送達は、科学的文献および特許文献に記載されており、当業者に周知で、かつ容易に利用可能である。したがって、そのような標的化された送達技術は、標的細胞内で達成される成長および/または生存の減少、防止、および/または排除の特異性を高めるために、本開示の発現構築物の伝達を標的化するために適切に適合され得る。標的化された送達技術の以下の例は、限定するためではなく、本開示の系を達成するのに適合され得る標的化された送達ベクターを例証するために、本明細書で提供される。
【0106】
発現構築物
本開示の発現構築物は、(a)標的細胞に産生される因子に反応する転写プロモーターであって、そのうち1つ以上が産生されず、実質的に低レベルで産生され、不活性であり、および/または非標的細胞中で実質的に低活性を示す、転写プロモーターと、(b)前記転写プロモーターに動作可能に連結され、かつ前記転写プロモーターの調節制御下にある核酸であって、該核酸が、標的細胞を含む細胞の成長および/または生存を減らし、妨げ、および/または排除することが可能なタンパク質をコードし、前記細胞中で前記タンパク質が産生される、核酸とを含む。
【0107】
1. 標的細胞の特異的な転写プロモーター
本開示は、核酸を細胞に送達するためのベクターを含む系を提供し、該核酸はプロモーターの転写制御下にあり、該プロモーターは、標的細胞中で活発化または活性化されるが、正常細胞、すなわち非標的細胞中では不活発化(reprepressed)または不活性化される。
【0108】
それゆえ、前記細胞が標的細胞であるかどうかに関係なく、細胞の成長および/または生存を低下し、妨げ、および/または排除するタンパク質をコードする核酸の標的細胞に特異的な転写活性化を介して、標的細胞を対象とする本開示の系の特異性が達成されることが理解される。ゆえに、本開示の系の標的細胞特異性は、標的細胞により提供されかつそれに固有の転写調節機構と協働して、発現カセット内で核酸の発現を調節する転写プロモーターに由来する。
【0109】
ゆえに、本開示の発現構築物、系、および方法に適宜利用可能な転写プロモーターは、標的細胞(すなわち、老齢化、疾患、または他の疾病に関連する細胞)中の核酸の発現の促進することはできるが、非標的細胞中の核酸の発現を促進することはできず、またはその能力が実質的に低下している、転写プロモーターを含む。
【0110】
本明細書には、発現構築物、および発現構築物を含む系が例証され、その中で転写プロモーターは、老齢化、疾患、または別の疾病に関係する標的細胞中で活性化される。
【0111】
いくつかの実施形態では、本開示は、老齢化に関連する老化細胞などの細胞の成長および/または生存を低下し、妨げ、および/または排除する、老齢化を処置する方法に利用可能な発現構築物、ならびに系を提供する。それら実施形態のある態様では、発現構築物は、老化細胞などの標的細胞内で産生されるが非標的細胞内では産生されない1つ以上の因子に反応する転写プロモーターを利用するものであり、それら1つ以上の因子は、前記転写プロモーターを活発化および/または活性化させ、その結果として、老化細胞を含む、老齢化に関連する細胞の成長および/または生存を低下し、妨げ、および/または排除する治療タンパク質をコードする核酸の発現を促進する。
【0112】
前記転写プロモーター自体は主要な機構であり、これによって老化細胞は本開示に記載される系により優先的に標的とされる。本開示中の系と共に使用するための標的特異的転写プロモーターの原型例は、老化細胞中で唯一活性な、または大半が活性なプロモーターである。老化細胞中で活性であると当業者に知られる多くのプロモーターが、この系と共に使用されてもよい。
【0113】
ヒト標的細胞が老化細胞であるこれら実施形態のある態様では、前記転写プロモーターは、Wang et al.,J.Biol Chem.276(52):48655-61(2001)に記載されるようなp16INK4a/CDKN2Aのプロモーター領域を含む場合があり、その中で転写プロモーターは、SP1、ETS1、およびETS2などの因子による活性化に反応する。前記転写プロモーターはp21/CDKN1Aのプロモーター領域も含む場合があり、その中で転写プロモーターはp53/TP53などの因子による活性化に反応する。
【0114】
前記ヒト標的細胞が、脳癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、大腸癌細胞、乳癌細胞、肝臓癌細胞、血液癌細胞、および骨癌細胞などの癌細胞である、これら実施形態の他の態様では、前記転写プロモーターは、p21cip1/waf1プロモーター、p27kip1プロモーター、p57kip2プロモーター、TdTプロモーター、Rag-1プロモーター、B29プロモーター、Blkプロモーター、CD19プロモーター、BLNKプロモーター、および/またはλ5プロモーターを含む場合があり、その中で転写プロモーターは、EBF3、O/E-1、Pax-5、E2A、p53、VP16、MLL、HSF1、NF-IL6、NFAT1、AP-1、AP-2、HOX、E2F3、および/またはNF-κB転写因子などの1つ以上の転写因子による活性化に反応し、転写活性化は治療タンパク質をコードする核酸の発現を誘導する。
【0115】
標的細胞が、例えばヘルペスウイルス、ポリオウイルス、肝炎ウイルス、レトロウイルス、インフルエンザウイルス、およびライノウイルスを含むウイルスなどの感染因子に感染し、または、標的細胞が細菌細胞である、これら実施形態のまたさらなる態様では、転写プロモーターは、感染因子または細菌細胞により発現される因子により活性化される場合があり、転写活性化は治療タンパク質をコードする核酸の発現を誘導する。
【0116】
2. p16転写プロモーター
一実施形態では、自殺遺伝子は、p16Ink4a遺伝子プロモーターなどのp16プロモーターの制御下に置くことができる。p16プロモーターは、非老化細胞ではなく老化細胞中で転写的に活性である。
【0117】
ヒトでは、p16はCDKN2A遺伝子によりコードされる。この遺伝子は、広範な腫瘍中で突然変異するか、または欠失することが多い。p16はCDK4およびCDK6などのサイクリン依存性キナーゼの阻害剤であり、該阻害剤は、網膜芽細胞腫タンパク質(pRB)をリン酸化することで、G1相からS相へと進行させる。p16は、細胞がG1相からS相に進行する速度を遅くすることにより細胞周期調節に重要な役割を果たすものであり、これにより、例えば黒色腫、中咽頭扁平細胞腫、および食道癌を含む癌の予防に関与する腫瘍抑制因子として作用する。p16Ink4Aの指定は、CDKN2A遺伝子のスプライス変異体のうち1つによりコードされたタンパク質の分子量(15,845)、およびCDK4の阻害におけるその役割を指す。
【0118】
ヒトでは、p16は染色体9(9p21.3)に位置するCDKN2A遺伝子によりコードされる。この遺伝子は、それらの第1のエクソン中で異なる様々な転写変異体を生成する。別個のタンパク質をコードする少なくとも3つの代替的にスプライシングされた変異体が報告されており、そのうち2つは、CDK4の阻害剤として機能と知られる構造上関連するアイソフォームをコードする。残る転写産物は、遺伝子の残部の20kb上流に位置する代替的なエクソン1を含む。この転写産物は、他の変異体の生成物とは構造上無関係のタンパク質を特定する代替的なオープンリーディングフレーム(ARF)を含んでいる。ARF生成物は、MDM2、すなわちp53の分解の原因であるタンパク質と相互に作用し、かつそれを捕捉できることから、腫瘍抑制因子タンパク質p53の安定化剤として機能する。構造上と機能上の差異にもかかわらず、この遺伝子によりコードされるCDK阻害剤アイソフォームとARF生成物は、細胞周期G1進行におけるCDK4とp53の調節上の役割を介して、細胞周期のG1相の制御下で共通の機能を共有する。この遺伝子は、広範な腫瘍中で変異または欠失されることが多く、重要な腫瘍抑制遺伝子であると知られている。
【0119】
p16INK4aの濃縮により組織年齢が劇的に増大する。Liu et al.,Aging Cell 8(4):439-48(2009) and Krishnamurthy et al.,Nature 443(7110):453-7(2006)。老齢化を伴うp16遺伝子の発現増加により幹細胞の増殖が減少し、これによりヒトの細胞老化関連の健康リスクが増大してしまう。
【0120】
p16は、G1相からS相への進行を妨げることにより細胞周期を遅くするサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤である。通常、CDK4/6はサイクリンDに結合して、網膜芽細胞腫タンパク質(pRB)をリン酸化する活性タンパク質複合体を形成する。一旦リン酸化されると、pRBは転写因子E2F1から切り離されて、E2F1をその細胞質結合状態から解放し、E2F1が核に進入するのを可能にする。一旦核に存在すると、E2F1は、G1相からS相への遷移に必須の標的遺伝子の転写を促進する。
【0121】
p16は、CDK4/6に結合し、かつサイクリンDとの相互作用を妨げることにより腫瘍抑制因子として作用する。この相互作用は最終的に、E2F1などの転写因子の下流活性を阻害して、細胞増殖を阻止する。この経路は腫瘍の形成と老化のプロセスに関連し、これらプロセスをスペクトルの両端に固定する。
【0122】
一端では、p16の過剰メチル化、突然変異、または欠失が遺伝子のダウンレギュレーションを引き起こし、かつ細胞周期進行の調節異常を介して癌を引き起こす場合がある。反対に、ROS経路、DNA損傷、または老化によるp16の活性化は、組織にp16を構築し、細胞の老化に関与する。
【0123】
p16の調節は複雑であり、様々な転写因子の相互作用ほか、プロモーター領域のメチル化および抑圧を介した後成的修飾に関与する様々なタンパク質の相互作用にも関与している。PRC1とPRC2は、p16の転写を抑制可能なメチル化パターンを実行する様々な転写因子の相互作用によりp16の発現を修飾する、2つのタンパク質複合体である。これら経路は、老化を減少するために細胞応答において活性化される。
【0124】
3. p21転写プロモーター
治療タンパク質をコードする核酸は、老化細胞、および癌細胞または前癌細胞中で転写的に活性なことが多いp21/CDKN1A転写プロモーターの制御下に置くことができる。p53/TP53は、損傷を受けたときにp21の調節、およびこれにより細胞の成長停止において中心的な役割を果たす。p21タンパク質は、細胞周期を駆動し、かつそれらのキナーゼ活性を阻害することで細胞周期阻止を修復させる、サイクリンCDK複合体に直接結合する。p21はまた、分化に関連する成長停止、および細胞老化に関連する恒久的な成長阻止を媒介する。p21遺伝子は、p53タンパク質の直接結合を媒介する様々なp53反応要素を含んでおり、その結果、p21タンパク質をコードする遺伝子の転写活性化が生じる。細胞老化におけるp53遺伝子調節の役割は、Kelley et al.,Cancer Research 70(9):3566-75.(2010)に記載されている。
【0125】
核酸、およびそれによりコードされる治療タンパク質
本開示の発現構築物、系、および方法に適宜利用可能な核酸は、標的細胞を含む細胞の成長および/または生存を低下し、妨げ、および/または排除することが可能なタンパク質をコードするものであり、前記細胞内ではタンパク質が産生される。ゆえに、本開示の発現構築物および系の標的細胞特異性は、治療タンパク質をコードする核酸の、非標的細胞ではなく標的細胞内での発現により達成される。
【0126】
本開示の発現構築物および系に利用可能な治療タンパク質をコードする核酸として、タンパク質が産生される細胞中でアポトーシスを誘発する1つ以上のタンパク質をコードする核酸が挙げられる。本明細書には、単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(HSV-TK)、シトシンデアミナーゼ、Casp3、Casp8、Casp9、BAX、DFF40、またはシトシンデアミナーゼをコードする核酸、または、細胞のアポトーシスを誘発可能なタンパク質をコードする核酸などの、1つ以上の「自殺遺伝子」を含む発現構築物および系が例証される。
【0127】
アポトーシス、すなわちプログラム細胞死(PCD)は、後生動物すべてに共通する進化的に保存された特性である。多くの生物プロセスでは、アポトーシスには、過剰または危険な細胞(前癌細胞など)を排除し、かつ正常な進行を促進することが必要となる。それゆえ、アポトーシスの調節異常は、癌、自己免疫障害、および神経変性障害を含む多くの主要な疾患の進行の一因となる場合がある。大半の場合、カスパーゼファミリーのタンパク質は細胞死を引き起こす遺伝学的プログラムを実行する。
【0128】
アポトーシスは、カスパーゼタンパク質、特にカスパーゼタンパク質CASP3、CASP8、およびCASP9の活性化を介して、哺乳動物細胞、特にヒト細胞中で引き起こされる。例えば、Xie et al.,Cancer Res 61(18):186-91(2001)、Carlotti et al.,Cancer Gene Ther 12(7):627-39(2005)、Lowe et al.,Gene Ther 8(18):1363-71(2001)、およびShariat et al.,Cancer Res 61(6):2562-71(2001)を参照。
【0129】
DNA断片形成因子(DFF)は、DNase DFF40(CAD)とそのシャペロン/阻害剤DFF45(ICAD-L)との複合体である。その不活性形態では、DFFは、45kDaシャペロン阻害剤サブユニット(DFF45またはICAD)、および40kDa潜在性エンドヌクレアーゼサブユニット(DFF40またはCAD)で構成されたヘテロ二量体である。DFF45のカスパーゼ-3開裂に際して、DFF40は活性エンドヌクレアーゼホモオリゴマーを形成する。これはアポトーシス中に活性化されることでDNA断片形成を誘導する。DFFによるDNA結合はヌクレアーゼサブユニットにより媒介される。このサブユニットはDFFからの放出後に安定したDNA複合体も形成することができる。ヌクレアーゼサブユニットは、DNA結合ではなくDNA開裂において阻害される。DFF45も、カスパーゼ-6およびカスパーゼ-8ではなくカスパーゼ-7により切断かつ不活性化される場合がある。切断DFF45フラグメントはDFF40から切り離されることで、DFF40をオリゴマー形成し(oligomerise)、二本鎖破壊の導入によりDNAを切断する大きな複合体を形成することができる。ヒストンH1はDFFにDNA結合能力を与えて、DFF40のヌクレアーゼ活性を刺激する。アポトーシスエンドヌクレアーゼDFF-40の活性化は、Liu et al.,J Biol Chem 274(20):13836-40(1999)に記載される。
【0130】
チミジンキナーゼ(TK)は、生細胞のほか、単純疱疹ウイルス(HSV)、帯状疱疹ウイルス(VZV)、およびエプスタイン-バーウイルス(EBV)を含むある種のウイルスにも存在する、ATP-チミジン5’-ホスホトランスフェラーゼである。チミジンキナーゼはデオキシチミジンをデオキシチミジン5’-モノホスフェート(TMP)に変換する。デオキシチミジン5’-モノホスフェート(TMP)は、チミジル酸キナーゼおよびヌクレオシド2リン酸キナーゼによりそれぞれデオキシチミジン二リン酸およびデオキシチミジン三リン酸にリン酸化される。デオキシチミジントリホスファーゼ(Deoxythymidine triphosphase)は、DNAポリメラーゼおよびウイルス逆転写酵素により細胞内DNAに組み込まれる。
【0131】
DNAに組み込まれると、2’-デオキシ-グアノシンの合成アナログ(例えばガンシクロビル)などのあるdNTPアナログはDNA合成の早期終止を引き起こし、これにより細胞のアポトーシスが誘発される。
【0132】
ある実施形態では、本開示の発現カセットおよび系は、HSV-TKをコードする核酸を利用する。HSV-TKをコードする核酸を利用する系をヒトに適用した後、2’-デオキシ-グアノシンなどの2’-デオキシ-ヌクレオチドのアナログがヒトに投与される。HSV-TKは2’-デオキシヌクレオチドアナログをdNTPアナログへと効率的に変換する。dNTPアナログはDNAに組み込まれると標的細胞にアポトーシスを誘発する。
【0133】
シトシンデアミナーゼ(CD)は、シトシンのDNA中でウラシルおよびアンモニアへの加水分解変換を触媒する。CD修飾部位がエンドヌクレアーゼにより認識される場合、リン酸ジエステル結合は切断され、正常細胞中で新たなシトシンを組み込むことにより修復される。5-フルオロサイトシン(5-FC)の存在下では、シトシンデアミナーゼは5-FCを5-フルオロウラシル(5-FU)に変換する。5-FUは標的細胞成長を阻害することができる。それゆえ標的細胞中のCDのトランスジェニック発現は標的細胞の成長および/または生存を低下させる。
【0134】
本開示は、治療タンパク質をコードする核酸の発現が所望の期間にわたり、および/または特定のレベルにアップレギュレートされるのを確かなものにする1つ以上の安全機能をさらに含む、発現構築物および系を提供する。
【0135】
1つのそのような実施形態では、本開示の発現構築物および系は、例えばCasp3、Casp8、Casp9の誘導性変異体を含む、治療タンパク質の誘導性変異体をコードする核酸を利用する。この誘導性変異体には、治療タンパク質を活性化する化学化合物または生物化合物を細胞とさらに接触させること、またはそれらをヒトに投与することが必要になる。
【0136】
誘導性自殺遺伝子系は周知のものであり、当該技術分野で容易に利用可能であり、例えばMiller et al.のPCT特許出願公開WO2008/154644、およびBrennerの米国特許出願公報2011/0286980に記載されている。加えて、Shah et al.,Genesis 45(4):104-199(2007)には、RU486および化学的二量体化誘導剤(CID)を利用するカスパーゼ3と9に対する二重の誘導性系が記載されている。Straathof et al.,Blood 105(11):4247-4254(2005)には誘致可能カスパーゼ9系が記載されており、その中ではカスパーゼ9はヒトFK506結合タンパク質(FKBP)に縮合されることで、FK506の非毒性合成アナログである小分子AP20187(ARIAD Pharmaceuticals,Cambridge,MA)を使用した条件的な二量体化を可能にする。Carlotti et al.,Cancer Gene Ther 12(7):627-39(2005)には、ARIAD(商標)ホモ二量体化系(FKC8;ARIAD Pharmaceuticals)の利用により誘導性カスパーゼ8系が記載されている。
【0137】
完全長の誘導性カスパーゼ9(F’F-C-Casp9.I.GFP)は、2つの12kDaヒトFK506結合タンパク質(FKBP12;GenBank AH002 818)に連結されたそのカスパーゼ動員ドメイン(CARD; GenBank NM001 229)を含む完全長のカスパーゼ9を含んでいる。2つの12kDaヒトFK506結合タンパク質は、Clackson et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:10437-10442(1998)に記載されるようなF36V突然変異を含んでおり、かつ、FKBPおよびカスパーゼ9に接続することで柔軟性を向上させるSer-Gly-Gly-Gly-Serリンカーにより接続される。
【0138】
さらなる実施形態では、誘導性自殺遺伝子は、ルシフェラーゼまたは緑色蛍光タンパク質などの検出可能なバイオマーカーに対して核酸配列に連結することで、化合物を投与して誘導性治療タンパク質を活性化する前に標的細胞の検出を可能にすることができる。
【0139】
ベクターおよび発現カセットを含む系の組成と製剤
本開示は、ベクターと発現カセットとを含む系を提供し、前記発現カセットは、標的細胞中および治療タンパク質をコードする核酸中で発現される1つ以上の転写因子に反応する転写プロモーターを含む。系は、それ自体で、または、本明細書に記載されるような疾患または疾病を処置あるいは改善する投与量の適切な担体あるいは賦形剤と共に混合された医薬組成物の中で、ヒト患者に投与することができる。これら系の混合物も、単一の混合物として、または医薬組成物の中で患者に投与することができる。
【0140】
本開示の範囲内の組成物は、治療薬が、老化細胞、癌細胞、感染因子に感染した細胞、細菌細胞、または別の疾患あるいは疾病に関連する細胞の成長および/または生存を低下または排除するのに有効な量のベクターと発現カセットとを含む系である組成物を含む。各成分の有効量の最適範囲の決定は、当業者の技術範囲内で行われる。有効投与量は、特定の系、組成物内に存在するか前記系と同時に提供される1つ以上の他の治療薬の存在、処置の頻度、患者の臨床状態、年齢、健康、および体重を含む多くの要素に左右される。
【0141】
系を含む組成物は非経口投与されてもよい。本明細書では、用語「非経口投与」は、通常は注入による、腸内投与と局所投与以外の投与形態を指すものであり、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、および胸骨下の注射と注入が挙げられるが、これらに限定されない。代替的に、または同時に、投与は経口で行われてもよい。
【0142】
系を含む組成物は、例えば静注または静脈内ボーラスにより静脈投与されてもよい。代替的に、系を含む組成物は静脈注射により投与されてもよい。
【0143】
組成物は、治療上有効な量の系と、薬学的に許容可能な担体とを含む。本明細書では、用語「薬学的に許容可能な」とは、連邦またはた州政府の規制当局の承認を受けたもの、または、米国薬局方もしくは哺乳動物、より具体的にはヒトへの使用に一般に認められている他の薬局方に列記されているものを意味する。用語「担体」は、治療薬が共に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような医薬品担体は、水、ならびに動物、植物、および合成由来のものを含む油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などといった滅菌液体でもよい。医薬組成物が静脈内投与されると、水が好ましい担体である。生理食塩水、デキストロース水溶液、およびグリセリン水溶液も、特に注射液用の液体担体として利用できる。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。前記組成物は、望まれる場合、少量の湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤も含むことができる。
【0144】
これら組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、徐放製剤などの形態を呈することができる。前記組成物は、従来の結合剤、およびトリグリセリドなどの担体を含む坐薬として製剤することができる。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準の担体を含むことができる。このような組成物は、患者への適切な投与のための形態を提供するように適量の担体と共に、好ましくは精製形態で治療上有効な量の阻害剤を含有する。この製剤は投与の様式に合わせたものでなければならない。
【0145】
医薬組成物がヒトへの静脈内投与に適しているため、組成物は慣例手順に従って製剤することができる。通常、静脈内投与用組成物は滅菌等張水性バッファーの溶液である。必要に応じて、前記組成物はさらに、可溶化剤、注入部位の疼痛を緩和するためにリグノカインなどの局所麻酔薬を含んでもよい。一般に、この成分は別々に供給されるか、または、単位剤形、例えば活性薬剤の量を示すアンプルあるいは小袋などの密封容器中の凍結乾燥粉末、あるいは水を含まない濃縮物として一体的に混合される。前記組成物が注入により投与される場合、組成物は医薬品等級の滅菌水または滅菌生理食塩水を含む注入瓶により分注可能である。前記組成物が注入により投与される場合、成分が投与前に混合されてもよいように、注射用滅菌水または生理食塩水のアンプルを提供することができる。
【0146】
本明細書に開示される系は、中性または塩形態として製剤することができる。薬学的に許容可能な塩は、塩化水素酸、リン酸、酢酸、蓚酸、酒石酸などに由来する陰イオンで形成される塩、および、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来する陽イオンで形成される塩を含む。
【0147】
老齢化、癌、感染症、細菌感染症、および/または他の疾患あるいは疾病に関連する細胞に関連する疾患または疾病を処置する方法、ならびに、前記細胞の成長および/または生存を低下し、阻害し、および/または妨げるための方法
本開示は、老齢化、癌、感染症、細菌感染症、および/または他の疾患あるいは疾病に関連する細胞の成長および/または生存を低下し、阻害し、および/または妨げるための方法を提供する。該方法は、本明細書に記載されるような系に標的細胞または標的細胞を含む細胞の集団を接触させる工程を含み、前記系はベクターと発現構築物とを含み、該発現構築物は転写プロモーターと核酸とを含む。
【0148】
本開示はまた、患者の老齢化、癌、感染症、細菌感染症、および/または他の疾患あるいは疾病を措置する方法を提供する。該方法は本明細書に記載されるような系の投与を含み、前記系はベクターと発現構築物とを含み、該発現構築物は転写プロモーターと核酸とを含む。
【0149】
本件治療方法は、老化、癌、感染症、細菌感染症、または別の疾患あるいは疾病に関連する細胞の成長および/または生存を低下および/または排除するために、ベクターと発現カセットとを含む1つ以上の系を含む組成物に標的細胞を接触させる工程、または、前記組成物をヒト患者に投与する工程を含む。
【0150】
1つ以上の転写因子の発現上昇に関連する老齢化、癌、感染症、細菌感染症、または他の疾患あるいは疾病の処置、阻害、および/または予防に有効な系の量は、通常の臨床技術により決定することができる。インビボアッセイは、最適な投与量範囲の特定を補助するために随意に使用されてもよい。製剤に利用される正確な投与量も、投与経路、および疾患または障害の重症度に左右される。有効な投与量は、インビトロまたは動物モデルの試験系に由来する用量反応曲線から推定されてもよい。
【0151】
本開示の系または医薬組成物は、ヒトに使用する前に所望の治療活性または予防活性を調べるためにインビトロで検査し、次いでインビボで検査することができる。例えば、化合物または医薬組成物の治療有効性か予防有用性を実証するインビトロアッセイは、細胞株または患者組織サンプルに対する系の効果を含む。細胞株および/もしくは組織サンプルに対する系またはその医薬組成物の効果は、増殖およびアポトーシスのアッセイを含むがこれらに限定されない、当業者に既知の技術を利用して決定することができる。本開示に従い、特定化合物の投与が示されるかどうかを定めるために使用可能なインビトロアッセイはインビトロ細胞培養アッセイを含み、該アッセイにおいて患者組織サンプルは、培養され、化合物にさらされ、またはその他の方法により前記化合物を投与され、組織サンプルに対する前記化合物の効果が観察される。
【0152】
本開示は、本明細書に記載されるような有効な量の系またはその医薬組成物を被験体に投与することによる処置、ならびに成長および/または生存阻害の方法を提供する。一態様では、前記系は、その効果を制限するか、または望ましくない副作用を生み出す物質を実質的に含まないように、実質的に精製される。
【0153】
投与の方法として、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路、および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。前記系またはその組成物は、都合の良い任意の経路、例えば注入もしくはボーラス注入、上皮もしくは粘膜皮膚の内膜(例えば口腔粘膜、直腸、腸管粘膜など)を介した吸収により投与されてもよく、かつ他の生理的に活性な物質と共に投与されてもよい。投与は全身投与でも局所投与でもよい。加えて、脳室内注射および髄腔内注射を含む任意の適切な経路により、阻害剤または組成物を中枢神経系に導入することが望ましい場合もある。脳室内注射は、例えばOmmayaリザーバーなどのリザーバーに取り付けられる脳室内カテーテルにより容易にされてもよい。例えば吸入器またはネブライザーの使用、およびエアロゾル化薬剤を含む製剤により、経肺投与も利用することができる。
【0154】
処置を必要とする領域に系またはその組成物を局所投与することが望ましい場合もある。この投与は、例えば手術中の局所注入、局所適用、注射、カテーテル、坐薬、またはインプラントにより達成されてもよく、前記インプラントは、シラスティック膜または繊維などの多孔性、非多孔性、またはゼラチン状の材料で構成されている。
【0155】
前記系は、治療標的に近づいて配される制御放出系なかで送達することができ、したがって全身投与の分画しか必要としない(例えば、Goodson,in Medical Applications of Controlled Release 2:115-138(1984)を参照)。
【0156】
系を含む組成物の静脈注射は、少なくとも約1日、少なくとも約3日、少なくとも約7日、少なくとも約14日、少なくとも約21日、少なくとも約28日、少なくとも約42日、少なくとも約56日、少なくとも約84日、または少なくとも約112日の期間にわたり連続して行われてもよい。
【0157】
系を含む組成物の連続点滴静注は、特定の期間、その後に残りを別の期間にわたって行われてもよい。例えば、連続注入の期間は、約1日~約7日、約14日、約21日、約28日、約42日、約56日、約84日、または約112日にであってもよい。その後連続注入は、残りを約1日~約2日、約3日、約7日に、約14日、または約28日間にわたり行われてもよい。その後連続注入は、上述のように、かつ残りを別の期間にわたり繰り返してもよい。
【0158】
適合された正確な注入プロトコルにかかわらず、系を含む組成物の連続注入は、所望の効果が達成されるか、または承諾しがたいレベルの毒性が明白となるまで連続して行われることを理解されたい。
【0159】
特にそれとは反対の指示がない限り、用語は、「オープン」ターム(“open”terms)として意図されることを理解されたい(例えば、用語「含むこと(including)」は「~を含むがこれらに限定されない」として解釈され、「有すること(having)」は「少なくとも~を有する」と解釈され、用語「含む(include)」は「~などを含むがこれらに限定されないとして解釈されねばならない)。「少なくとも1つ」および「1つ以上」といった句、ならびに「a」または「an」などの用語は、単数形と複数形の両方を含む。
【0160】
本開示の特徴と態様がマーカッシュ群の観点から記載されている場合、本開示は、マーカッシュ群の個々の員または員のサブグループの観点からも記載されることを意図していることを、さらに理解されたい。同様に、本明細書に開示される範囲はすべて、可能なサブ範囲すべて、およびサブ範囲の組み合わせを包含しており、「間」、「最大」、「少なくとも」、「より多く」、「未満」などの語句は、範囲内に列挙された数を含み、かつ個々の員それぞれを含む。
【0161】
上記のものまたは下記のものに関わらず、米国、PCT、またはその他外国の特許、特許出願、および特許公報、ならびに技術公報および/または科学公報のすべてを含むがこれらに限定されない、本明細書で引用される引用文献はすべて、その全体を参照することで本明細書に引用される。
【実施例0162】
様々な実施形態が本明細書に開示されているが、他の実施形態も当業者に明白であろう。本明細書に開示される様々な実施形態は例示を目的とするものであり、特許請求の範囲に示されている真の範囲と趣旨に制限されるようには意図されていない。本開示は以下の実施例を参照してさらに記述される。これら実施例はある実施形態を例示するために提供されるものであり、本開示の範囲、または請求される発明特定事項を制限するようには意図されていない。
【0163】
実施例1:p14 FAST融合性脂質ナノ粒子(LNP)による腫瘍への遺伝子送達の向上
この実施例で実証されるのは、爬虫類レオウイルスのp14 FAST融合を利用するFusogenix(商標)(Innovascreen,Halifax,Nova Scotia,Canada)脂質ナノ粒子が標的腫瘍へのプラスミドDNA構築物の送達に有効であることである。
【0164】
p14 FAST融合タンパク質(PCT特許出願公報WO2002044206A2およびWO2012040825A1に記載)の有無にかかわらず、
64Cu(
64Cu NOTAリポソーム)で標識された融合性脂質ナノ粒子をM16マウスモデル系に静脈内投与し、前立腺癌(PC3細胞)を調べた。Seo,Bioconjug Chem 19(12):2577-2585(2009)およびReeves,Cancer Therapy 136(7):1731-1740(2014)を参照。免疫化を行い24時間後、陽電子射出断層撮影法(PET)を使用してPC3腫瘍を可視化した。
図7のAとBを参照。
【0165】
図8に示すデータから実証されるのは、p14 FAST融合タンパク質を含む
64Cu NOTAリポソームのPC3前立腺腫瘍の取り込みが、p14 FAST融合タンパク質を含まない
64Cu NOTAリポソームに比べて50%増加したことである。24時間後に発現されたヌードマウスの標識化したペグ化リポソームの生物分布を
図9に示す。
【0166】
実施例2:インビボで投与されたp14 FAST融合性脂質ナノ粒子は非毒性であり、耐用性が優れている
この実施例から実証されるのは、爬虫類レオウイルスのp14 FAST融合を利用するFusogenix(商標)(Innovascreen,Halifax,Nova Scotia,Canada)脂質ナノ粒子が、スプラーグドーリーラットにインビボ投与されたときに調べられる主要な哺乳動物器官系のいずれにも有害な副作用を示さないことである。このナノ粒子は標的腫瘍へのプラスミドDNA構築物の送達で有効である。
【0167】
本明細書には、(i)LNP(PBS)なし、(ii)p14を含まないLNP、または(iii)p14含有融合性脂質ナノ粒子(LNP)のいずれかで処置したN=20のオスのラットに対して行われた比較試験を示す。各動物の尾部に、4日間にわたり15mg/kgを計3回注射した。p14含有LNPで動物を処置した結果、動物行動に任意の急激な変化が生じ、動物成長は、p14含有LNPでの処置による影響を受けなかった。p14含有LNPで処置した動物の器官重量は、研究した他の動物群すべてと同様であった。
【0168】
p14含有LNPでの処置は、主要な器官系の組織の微視的外観に影響を及ぼさなかった。肺、脳、心臓、腎臓、肝臓、生殖器、腸、内分泌系、リンパ節、脾臓、膵臓、膀胱、および尾部の組織をすべて独立して検査し、p14は視認可能な毒性徴候を引き起こさなかった。重要なのは、肝臓の外観がp14への曝露による影響を受けなかったことである。さらに、p14で処置した動物組織と対照群組織との間に差異は特定されなかった。
【0169】
多くの血液化学値を測定して、生理機能および炎症に対するp14の影響を求めた。急性肝機能を意味するALTおよびASTなどのパラメータはすべて正常範囲内であった。p14を含有するFusogenix LNPは、検査される主要な哺乳動物器官系のいずれにも何の有害な副作用も示さない。組織の組織学的外観も正常であった。
【0170】
フロインドアジュバントと混合した精製を10日間隔で3回、マウスに注射した。第1の投与量にはCFA(完全フロインドアジュバント)、第2と第3の投与量にはIFA(不完全フロインドアジュバント)が含まれていた。各注射でp14を50μg注射した。30日後にマウスを屠殺し、血清を分析して抗p14抗体を調べた。p14脂質ナノ粒子も、p14を240μg含むp53-iCasp9 Fusogenix脂質ナノ粒子400μgを静脈内注射することで2匹のマウスにて試験した。注射の30日後にマウスを屠殺し、血清を分析して抗p14抗体を調べた。陽性対照は、250ng/mlの高用量および50ng/mlの低用量で血清においてスパイクされた(spiked)精製抗体を含んでいた。
図10と11に示すデータから実証されるのは、爬虫類レオウイルスp14 FAST融合タンパク質を利用するFusogenix(商標)脂質ナノ粒子の安全性と耐容性である。抗p14抗体と抗LNP抗体のアッセイから実証されるのは、免疫適格マウス(アジュバントの有無にかかわらず)には抗体反応が実質的に観察されないことである。
【0171】
Szebeni,Mol Immunol 61(2):163-73(2014)に記載されるようにC4dおよびiC3b補足ELISAアッセイを使用して、10個のヒト血清サンプルを活性化関連仮性アレルギー(CARPA)について検査した。
図12と13に示すデータから実証されるのは、本開示に係るLNP製剤が、10個のヒトサンプルのうち8個のサンプル中のDoxilと比較して、C4dには反応せず(
図12)、iC3bにはあまり反応しなかった(
図13)ことである(ヒトの約5~10%はDoxilなどのナノ医療に対するCARPA反応を示す)。
【0172】
インビトロの抗p14抗体および抗LNP抗体の中和アッセイにより、ベクター中和には非常に高い抗体濃度が必要であることが明らかとなった。さらに、p14-LNPのワクチン接種または前処置の結果、治療効果の低下はなく、インビボ投薬の繰り返しは有効であり、十分に耐容性があった。対照のペグ化リポソームドキソルビシン(Doxil)と比較して、Fusogenix(商標)p14 FAST脂質ナノ粒子でのCARPAアッセイは補体活性をあまり引き起こさない。
【0173】
実施例3:老齢化したマウスのp16-陽性老化細胞負荷のインビボ抑制
この実施例で実証されるのは、老齢化に対してマウスモデル系の例示的なp16標的化構築物のインビボ投与後のp16-陽性老化細胞負荷における標的細胞に特異的な抑制である。
【0174】
老齢化マウスモデルは、老化細胞負荷(p16+細胞の存在により規定されるような)、および老化関連分泌表現型(SASP; van Deursen,Nature 509(7501):439-446(2014))に関連する因子の分泌を示す。
【0175】
脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、老齢化および/または老化に関連する標的細胞などのp16を発現する標的細胞中の誘導性カスパーゼ9(iCasp9)タンパク質の標的細胞に特異的な発現のための典型的なp16標的化構築物を含むp16-iCasp9発現構築物(pVAX1-16s-iCasp9;SEQ ID NO:06;
図16)を含むp14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどの、ベクターと発現構築物とを含む製剤(p16標的化構築物は、(視覚化のために)ルシフェラーゼを発現するiCasp9またはその変異体へ動作可能に接続したp16s転写プロモーターを含む)を、注射により老齢化マウスの尾静脈にインビボ投与すると、LNP+発現構築物は特異性のない標的細胞および非特異性細胞をトランスフェクトした。
図19を参照。二量化の化学誘導物質(CID)のインビボ投与後、AP20187、p16+標的細胞(例えば老化細胞)はアポトーシスを受け、その結果、SASPレベルは低下したが、p16-細胞は依然として生存可能であった。
【0176】
脂質ナノ粒子(LNP)ベクター、例えば、p16-Casp9発現構築物、例えば、pVAX1-16s-iCasp9、またはその変異体を包含する、p14 FASTなどの融合性タンパク質を含む融合性LNPなどのベクターおよび発現構築物を含む、β-galについて染色された老齢化マウスと腎臓細胞にインビボで投与される製剤のインビボ投与(80週齢の16匹)後の、未処理(左上のパネル)または処理済(右上のパネル)のインビボ老齢化マウスモデルからの腎臓細胞における老化関連β-galの組織学的染色である。
図20A~Dを参照。下方のパネルは、正常なマウスの4か月齢の腎臓細胞における老化関連β-galの組織学的(histiological)染色の顕微鏡写真である。これらデータから、p16+老化腎臓細胞の用量依存性減少が実証された。
【0177】
p16+腎臓細胞(
図21)、脾臓細胞(
図22)、精嚢細胞(
図23)、鼠蹊部脂肪細胞(
図24)、および肺細胞(
図25)の用量依存性標的化は、pVAX1-p16発現構築物を含む融合性脂質ナノ粒子(LNP)製剤のインビボ投与後に自然に老齢化したマウスにおいて実証された。腎臓細胞をqRT-PCR反応にさらして、p16
lnk4a転写産物を検出した。2ΔΔCt(Livak,Methods 25:402-408(2001)を使用して相対発現を算出した。
【0178】
実施例4:ヒト前立腺腫瘍を移植したNSGマウスでのインビボ腫瘍内科学試験
この実施例で実証されるのは、ヒト前立腺腫瘍(すなわちPC-3異種移植片)を移植したNSGマウスのp53発現前立腺癌細胞の標的細胞に特異的な抑制である。
【0179】
ヒト前立腺癌PC-3細胞を、pVax-p53-iCasp9-luc(ルシフェリン)プラスミド(ホモ二量体化剤AP201870の存在下および不在下)を保有するFusogenix脂質ナノ粒子で処置して、iCasp9発現を評価し、p53発現細胞(pVax-p53)および対照細胞(pcDNA3-GFP)で得られたiCasp9とCasp9タンパク質のレベルのウェスタンブロット解析にかけた。
図36を参照。これらデータから実証されるのは、化学的二量体化誘導剤(CID;例えばAP20187およびAP1903)の添加により、iCasp9またはルシフェラーゼを発現するように操作されたp53発現細胞中のiCasp9およびルシフェラーゼの発現が消失したことである。
【0180】
ヒト前立腺癌細胞(LNCaP(
図38)、DU145(
図39)、およびPC-3(
図40))ならびに正常上皮細胞(RWPE(
図41))を、pVax-p53-iCasp9-lucプラスミドを運ぶFusogenix脂質ナノ粒子で処置して、ウェスタンブロットおよび発光アッセイによりiCasp9発現を評価した。これらデータから実証されるのは、化学的二量体化誘導剤(CID;例えばAP20187およびAP1903)の添加により、iCasp9またはルシフェラーゼを発現するように操作されたp53発現細胞中のiCasp9およびルシフェラーゼの発現が消失したことである。
【0181】
ヒト前立腺癌PC-3細胞を、pVax-p53-iCasp9-luc(ルシフェリン)プラスミド(ホモ二量体化剤AP20187の存在下および不在下)を運ぶFusogenix脂質ナノ粒子で処置して、iCasp9発現を評価した。
図42に示すデータから実証されるのは、化学的二量体化誘導剤(CID;例えばAP20187およびAP1903)の添加により、iCasp9またはルシフェラーゼを発現するように操作されたp53発現細胞中のiCasp9およびルシフェラーゼの発現が消失したことである。
【0182】
pVax-p53 Fusogenix脂質ナノ粒子(AP20187の存在下および不在下、それぞれ
図43のA、44のA、43のB、44のB)で処置したヒト前立腺癌PC-3細胞からのフローサイトメトリーのアポトーシスデータ(アネキシンV)から実証されるのは、自殺遺伝子治療では、アポトーシス(ルシフェラーゼ-アネキシンVのフローサイトメトリー)の誘導により培養物中でp53発現ヒト前立腺癌細胞が選択的に死滅したことである。
【0183】
本開示に係る前臨床的腫瘍内科学試験を、ヒト前立腺腫瘍細胞を移植した30xNSGマウスで行った。
図45を参照。皮下ヒト前立腺PC-3腫瘍を持つNSGマウスに、100μgのFusogenix pVax-p53製剤を腫瘍内(IT)注入し、96時間後に2mg/kgのホモ二量体化剤AP20187を静脈内(IV)投与で注入した。
図46を参照。100μgのFusogenix pVax-p53製剤を腫瘍内注入し、その96時間後に2mg/kgのAP20187をIV注入した皮下ヒト前立腺PC-3腫瘍を持つNSGマウスの腫瘍を撮影した(
図47のA~C)。
【0184】
皮下ヒト前立腺癌PC-3腫瘍を持つ4匹のNSGマウスに、100μg投与量のFusogenix pVax-p53製剤の静脈内(IV)注入、その24時間後に2mg/kgのAP20187のIV注入を4回行った。腫瘍体積を測定し、IV注射後の時間関数としてプロットした。
図48~51を参照。
【0185】
腫瘍体積の変化率を求めて、p14 LNP pVAXの静脈内投与で処置した前立腺腫瘍を持つNSGマウス(全群に対しN=6)に対して化学的二量体化誘導剤(CID)のインビボ投与を行った後の時間の関数としてプロットした。
図52を参照。生存率を求めて、p14 LNP pVAXの静脈内投与で処置した前立腺腫瘍を持つNSGマウス(全群に対しN=6)に対して化学的二量体化誘導剤(CID)のインビボ投与を行った後の時間の関数としてプロットした。
図53を参照。
【0186】
用量漸増設計を実行した。そこでは腫瘍体積の変化率を、100μg、400μg、および1000μgのp14 LNP pVAXの静脈内投与で処置した前立腺腫瘍を持つNOD-SCIDマウス(全群に対しN=6)に対して化学的二量体化誘導剤(CID)のインビボ投与を行った後の時間の関数としてプロットした。NOD-SCIDマウスに500,000のPC-3細胞を皮下移植し、腫瘍が200mm
3に達したときに処置群へと無作為化した(全群に対しN=2)。動物にp53-iCasp9 LNPの割当投与量を2回IV注入し、その後に二量体化剤2mg/kgを注入した。腫瘍を24時間ごとに直接測定した。
図54を参照。
【0187】
総体的に、本明細書に示すデータから実証されるのは、p53-iCasp9発現構築物を含む融合性脂質ナノ粒子製剤の静脈内投与によりp53+前立腺癌細胞に特異的な様式で、アポトーシスを確実に誘導することができることである。
【0188】
実施例5:転移性腫瘍を移植したNOD-SCIDマウスにおける転移のインビボ抑制
化学的二量体化誘導剤(CID)を用いる、または用いないp53-iCasp9 LNPの反復処置による転移性腫瘍増殖の抑制を、NOD-SCIDマウスモデル系で実証した。
【0189】
0日目にNOD-SCIDマウスに500,000のPC-3Mルシフェラーゼ細胞を注入し、LNP投与を22日目に150μgのp53-iCasp9 LNPで開始した。二量体化剤の投与を24日目に2mg/kgで開始した。マウスを24~48時間ごとに撮像して、動物発光全体を検出した。
図55を参照。
【0190】
実施例6:B16マウス黒色腫細胞を移植した同質遺伝子型C57B6マウスの黒色腫のインビボ抑制
B16マウス黒色腫細胞を移植した同質遺伝子型C57B6マウスを、マウスp53プロモーターの制御下でiCasp9およびマウスCD40Lをコードする構築物を含有するLNP、その後にAP20187二量体化剤で処置した。
【0191】
マウスp53プロモーターの制御下でiCasp9およびマウスCD40Lをコードする構築物を含むLNPで処置した250,000のB16マウス黒色腫細胞(400mm
3に成長)を皮下注射により移植した同質遺伝子型C57B6マウスの化学的二量体化誘導剤(CID)をインビボで投与した後の時間の関数として、腫瘍体積の変化率(
図56)と生存率(
図57)を測定した。
【0192】
これらデータから実証されるのは、B16細胞の倍の速さ(10時間)により細胞の大部分がiCasp9誘導アポトーシスに耐性を持つものの、それらは依然として腫瘍成長を効率的に止めるのに十分なCD40Lを分泌したことである。GMCSF+OVA抗原をコードする構築物も検査すると、iCasp9単独よりも有効であったが、CD40L版ほど有効ではなかったことを突き止めた。両群に対してN=3。
【0193】
実施例7:B16F10マウス黒色腫細胞を移植したマウスの肺癌転移のインビボ抑制
この実施例で実証されるのは、肺転移マウスモデル系に移植したマウスp53+B16F10黒色腫標的細胞のインビボでのp53+標的細胞抑制である。
【0194】
B16F10肺転移モデル系を利用した。そこでは、75,000のB16F10細胞の静脈内注射後3、6、9、および12日目に対照LNPまたはp53-iCasp9 LNP100μgが静脈内投与されている。5、8、11、および13日目に、二量体化の科学誘導物質(CID)を腹腔内投与した。14日目に動物を屠殺し、肺転移を定量した。
図58A~58D、および
図59を参照。