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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105242
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ホットメルト接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/00 20060101AFI20240730BHJP
   C09J 11/00 20060101ALI20240730BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20240730BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C09J123/00
C09J11/00
C08L23/02
C08L91/06
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061206
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2021512211の分割
【原出願日】2019-09-03
(31)【優先権主張番号】2018/05888
(32)【優先日】2018-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(71)【出願人】
【識別番号】518462558
【氏名又は名称】サソル サウス アフリカ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン ゲリト ヤン デ ヨンゲ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ リチャーズ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ペトラス バーミューレン
(57)【要約】
【課題】ホットメルト接着剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つのポリオレフィンポリマー、少なくとも1つの炭化水素ワックス、および任意選択的に抗酸化剤を含み、炭化水素ワックスが、75~110℃の範囲に凝固点を有し、200~235℃J/gの示差走査熱量測定で測定された溶融熱を有し、合成フィッシャートロプシュワックスである、不織布製品用のポリオレフィンベースのホットメルト接着剤組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンベースのホットメルト接着剤組成物であって、
-少なくとも1つのポリオレフィンポリマー20~80wt%、
-少なくとも1つの炭化水素ワックス2~20wt%、および
-任意選択的に抗酸化剤、
を含み、炭化水素ワックスが、
-凝固点を75~110℃の範囲に有し、
-示差走査熱量測定で特定される200~235J/gの融解熱を有し;そして
-合成フィッシャー-トロプシュワックスである、
ホットメルト接着剤組成物。
【請求項2】
動的機械的分析におけるtan delta(G”/G’)が、60℃~100℃、好ましくは65℃~85℃の範囲において1に等しい、請求項1に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項3】
炭化水素ワックスが500~1200g・mol-1、好ましくは600~1000g・mol-1の分子量(数平均)を有する、請求項1~2のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項4】
炭化水素ワックスが10~25wt%の分岐炭化水素の含有量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項5】
炭化水素ワックスが、以下の特徴のうちの1つまたは複数によってさらに特徴付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物:
-ブルックフィールド粘度が135℃で20mPa・s未満;
-針入度が25℃で10 1/10mm未満;
-炭化水素ワックスが水素処理されている;そして
-オイル含有量が1wt%未満である。
【請求項6】
炭化水素ワックスを2~18wt%、好ましくは2~15wt%、より好ましくは5~10wt%の量で含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項7】
接着剤組成物が、以下の特性のうちの1つまたは複数によってさらに特徴付けられる、請求項1~6のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物:
-炭化水素ワックスを含まない、および/または本発明に従わない炭化水素ワックスを含む、同じホットメルト接着剤組成物と比較して、少なくとも10%、好ましくは20%高いT-剥離強度;
-周波数10Hz、冷却速度2℃/分での動的機械的分析における貯蔵弾性率(G')の増加が、60℃を超える10℃以内の点、好ましくは70~60℃で10MPa超、好ましくは50MPa超;
-周波数10Hz、冷却速度2℃/分での動的機械的分析における貯蔵弾性率(G’)の増加が、40~100℃で500MPa超;そして
-ブルックフィールド粘度が160℃において5000mPa・s未満。
【請求項8】
接着剤組成物が、
-好ましくは10~60wt%、好ましくは10~50wt%の量の粘着付与剤、および/または、
-好ましくは5~15wt%の量の、加工油を
さらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項9】
0.1~2wt%の量で抗酸化剤が存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項10】
接着剤組成物中のポリオレフィンポリマーが、アモルファスポリ-アルファ-オレフィンコポリマー(APAO)、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリブテンホモポリマーから、好ましくはエチレン-プロピレンコポリマーまたはエチレン-ブテンコポリマーの群から選択され、より好ましくは0~50wt%、好ましくは5~37.5wt%、より好ましくは7~35wt%、そして最も好ましくは10~25wt%のエチレン含有量を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項11】
前記ポリマーが、2つのポリマーの混合物または1つのポリマーのみであり、および/または35~60wt%の量で存在する、請求項10に記載のホットメルト接着剤組成物。
【請求項12】
ポリマーが、以下の特徴のうちの1つまたは複数によってさらに特徴付けられる、請求項10または11に記載のホットメルト接着剤組成物:
-ブルックフィールド粘度が190℃で1000~50000mPa・s、好ましくは1500~20000mPa・s;
-環球軟化点が90~130℃;
-示差走査熱量測定で特定される融解熱が30J/g未満;および
-密度が0.8~0.9g・cm-3
【請求項13】
溶融状態で、少なくとも1つのポリオレフィンポリマー、少なくとも1つの炭化水素ワックス、および任意選択で、粘着付与剤、加工油、および/または抗酸化剤のいずれか1つまたは複数を、加熱混合器内でそれらが均一になるまで互いに混合することを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤を製造する方法であって、炭化水素ワックスが、
-凝固点を75~110℃の範囲に有し、
-示差走査熱量測定で特定される200~235J/gの融解熱を有し;そして
-合成フィッシャー-トロプシュワックスであり;そして
組成物が
-少なくとも1つのポリオレフィンポリマー20~80wt%、
-少なくとも1つの炭化水素ワックス2~20wt%
を含む、ホットメルト接着剤を製造する方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤を使用して製造され、したがってそれを含む、不織布ラミネート。
【請求項15】
ラミネートが、少なくとも1つの不織布層、または少なくとも1つの不織布層と1つの、好ましくはポリエチレンから作製される、ポリマー層とを含む、請求項14に記載の不織布ラミネート。
【請求項16】
少なくとも以下のステップを含む、請求項14または15に記載の不織布ラミネートを製造する方法:
-不織布層またはポリマー層を、請求項1~12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物でスプレーコーティングすること;そして
-コーティングされた層が上に配置された、少なくとも1つの不織布またはポリマーの層を提供し、層を一緒にプレスすること。
【請求項17】
スプレーコーティングが、120~160℃の温度で、1~4g/mのコーティング重量で、0.005~0.05MPaのノズル空気圧、および1~4m/分または4-600m/分の機械速度で実行されて、コーティングされた層を得る、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
層を一緒にプレスすることが、互いの層が重なり合うように配置して2つのローラー、好ましくは空気圧ローラーの間に供給し、層を一緒にプレスすることを含む、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
不織布ラミネートを接着するための、請求項1~12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物の使用。
【請求項20】
炭化水素ワックスを含まない、および/または本発明に従わない炭化水素ワックスを含む、同じホットメルト接着剤組成物の使用と比較して、不織布ラミネートが、少なくとも10%、好ましくは20%高いT-剥離強度を有する、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤組成物に関する。本発明は、特に不織布ラミネートなどの不織布製品を製造するための、ポリオレフィンベースのホットメルト接着剤組成物を提供する。本発明は、また、組成物を使用して製造された不織布ラミネート、組成物および不織布ラミネートを製造する方法、ならびに不織布ラミネートを製造する際の組成物の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
接着剤は、一般的に言えば、2つの別々のアイテム(「被着体」)の片面または両面に塗布される物質であり、それらを互いに結び付け、アイテム間に接着剤接合を形成することによってそれらの分離に抵抗する。特定の接着剤の物理的または化学的形態、接合される材料のタイプ、または接着剤が塗布される条件に基づく特性を説明するために、「接着剤」という語と組み合わせて形容詞が使用されることがある。
【0003】
たとえば感圧接着剤(PSA)は、接着剤を被着体と接合させるために軽い圧力を適用して接合を形成する。それらは、流れと流れに対する抵抗との間のバランスをとるように設計されている。接着剤が被着体に流れる(すなわち「濡れる」)のに十分柔らかいため、接合が形成される。接着剤は、接着剤に応力が加えられたときに流れに抵抗するのに十分な硬さがあるため、接着剤には強度がある。接着剤と被着体が近接すると、ファンデルワールス力などの分子相互作用が接合に関与し、その極限強度に大きく貢献する。PSAは、永久的または除去可能な適用のために設計されている。永久的な適用の例は、電力設備の安全ラベル、暖房、換気、空調ダクト作業用のホイルテープ、自動車の内部トリムアセンブリ、音響/振動減衰フィルムを含む。
【0004】
一部の高性能永久的PSAは、高い接着値を示し、高温でも接触面積1平方センチメートル当たりキログラムの重量を支える。永久的PSAは、(たとえば、誤ってラベル付けされた商品を回収するために)最初は除去可能であり、数時間または数日後に永久的な接合への接着を構築する。
【0005】
ホットメルト接着剤(HMA)は別のタイプの接着剤であり、100%非揮発性の固体熱可塑性プラスチックである。適用中、ホットメルト接着剤が、溶融状態にある高温で、好ましくは65~180℃の範囲で、接合される基材の少なくとも1つに塗布され、他の基材と接触させられ、その後、冷却固化される。その後、これらの基材間に強い接合を形成する。このほとんど即時の接合により、ホットメルト接着剤は、自動化された作業用の優れた候補になる。これらの中で、ホットメルト接着剤の最も一般的な用途には、不織布ラミネートなどの不織布構造の接合が含まれる。典型的なホットメルト接着剤は、ベースポリマー、希釈ワックスまたはオイル、粘着付与剤、安定剤、および任意選択的なフィラーで構成されている。エチレン酢酸ビニルポリマーベースのホットメルト接着剤は、その使いやすさと接合できる一般的な材料の範囲が広いため、工芸品に特に人気がある。スチレンブロックコポリマー体は、その二重の特性、すなわち別の相のゴム状挙動に関連するスチレン相の結合のために、ホットメルト接着剤において一般的に使用されている。それらは、また、不織布材料における滲み(bleed-through)に対して非常に耐性がある。
【0006】
ここ数年、従来のスチレンブロックコポリマーに取って代わり始めている新しいタイプのポリオレフィンポリマーが、接着剤用に、特に不織布用途において開発された。ホットメルト接着剤の配合には、多くの異なるオレフィンポリマーが使用されてきた。最初の1つは、さまざまな粘着付与剤、可塑剤、ワックス、およびフィラーと組み合わせて、さまざまなエンドユースの用途(たとえば、Eastman Chemical Company(Kingsport,Tennessee)のEastoflex製品の範囲)用のホットメルト接着剤を製造できるアモルファスポリプロピレン(APP)であった。その後、オリジナルのAPPポリマーよりもはるかに改善された特性を持つオレフィンポリマーが利用可能になった。これらは、アモルファスポリアルファオレフィン(APAO)と呼ばれる。これらは、たとえばおむつの製造(不織布とポリエチレンの接合)に非常に適しているが、弾性アタッチメントの用途に必要なレベルの高温クリープ耐性がなく、従来のホットメルト塗布装置を使用してうまくスプレーすることができない。
【0007】
APAOは、プロピレン、エチレン、ブテンなどのさまざまなモノマー、またはC10までの高級オレフィンと、チーグラーナッタ触媒またはメタロセン触媒による重合を使用して製造することができる。それらは、広い分子量分布を有するランダムポリマーであり、30J/g未満の融解熱によって表される非常に低い結晶化度を持っている。
【0008】
残念ながら、C4-C10アルファオレフィンは非常に高価である可能性があり、重合プロセス中に限られた反応性を示す可能性もある。そのため、半結晶性(30~80J/gの熱融解)で、コポリマーの硬度と接合強度を経時的に高める結晶性ポリプロピレンを含むプロピレン-エチレンコポリマーが開発された。しかし、エチレン含有量が高すぎることで軟化点が高くなるか、接着特性が低下するため、それらの用途は制限される。
【0009】
ホットメルト接着剤の高い融点または軟化点は、接合される基材が非常に薄く、高温に敏感であるため、不織布業界では望ましくない。さらに、上記のオレフィンポリマーは、噴霧可能性、性能、および温度適用ウィンドウの点で、不織布HMA用のスチレンブロックコポリマーの特性に匹敵できていない。
【0010】
したがって、より最近では、より正確に調整された特性を備えたポリオレフィンが開発された。このような特性の例には、結晶化度をさらに低下させ、低密度ポリマーを提供するための、より狭い分子量分布または1-ブテンまたは1-オクテンなどの高レベルのコモノマーが含まれる。一方では、これは、チェーンシャトル重合によって製造されたハード(結晶性、低コモノマー含有量)およびソフト(アモルファス、高コモノマー含有量)セグメントを含むオレフィンブロックコポリマー(OBC)で得ることができ(例えば、Dow Chemical Company(Midland,Michigan)のInfuse製品の範囲)、同様の密度の典型的なメタロセンランダムポリマーと比較して、ポリマーにはるかに優れた高温耐性と弾性を与える。あるいは、一方で、結晶性ではなくなり、特定の触媒を使用して製造されたアモルファスポリプロピレンホモポリマー(例えば、出光興産株式会社(東京、日本)のL-Modu製品の範囲)は、ポリマーの立体規則性を制御し、優れた噴霧可能性と接合強度を示す。
【0011】
一部のOBCは低い(30J/g未満)融解熱を有するが、ポリマー構造が完全に異なり(すなわち、ブロック対ランダム)、結晶領域を持つように特別に製造されているため、アモルファスのポリアルファオレフィンとは見なされない。
【0012】
ポリプロピレンホモポリマーは、通常アイソタクチックであり、高結晶性で剛性のある構造であるか、またはアタクチックを形成し、結果的にアモルファスの外観になる。典型的な触媒では、半結晶性のランダム様の構造が生成されるが、上述の新しい触媒系では、混合立体化学、低結晶性、柔らかく弾性のある特性を持つポリプロピレンホモポリマーが得られる。
【0013】
適切な市販のプロピレンポリマーは、例えば、VISTAMAXX 8880プロピレン-エチレンコポリマー、VISTAMAXX 8780プロピレン-エチレンコポリマー、およびVISTAMAXX 8380プロピレン-エチレンコポリマーを含む、ExxonMobil Chemical Company(Houstone,Tex.)の取引上の名称のVISTAMAXXシリーズ、例えば、LICOCENE PP 1502 TP、PP 1602 TP、およびPP 2602 TPプロピレン-エチレンコポリマーを含む、Clariant Int.Ltd(Muttenz Switzerland)の取引上の名称のLICOCENEシリーズ、AERAFIN17およびAERAFIN180プロピレン-エチレンコポリマーを含む、Eastman Chemical Company(kingsport,Tenn.)の取引上の名称のAERAFINシリーズ、L-MODU S-400ポリプロピレンホモポリマーを含む、出光興産株式会社(日本)の取引上の名称のL-MODUシリーズ、および、KOATTRO PB M 1500M ポリブテン-1-エチレンコポリマーを含む、LyondellBasellの取引上の名称のKOATTROシリーズ、を含む様々な取引上の名称の下で入手可能である。
【0014】
上記のポリマータイプの異なるものをホットメルト接着剤において組み合わせることも知られている。それらの低い結晶化度のために、そのような接着剤は、一般に、ホットメルト配合物で一般的に使用される可塑剤および粘着付与剤との良好な適合性および長期の熱エイジング性能を示す。しかし、それらはまた、適用後の特性の発達が遅い傾向があり、迅速な接合を必要とする建設用途には不適切になる、長い開放時間につながる。不織布などの多孔質基材を使用してラミネート構造を生成する場合、硬化時間が遅いと、接着剤が過剰に浸透し、ブロッキング、機器の汚れ、さらには最終製品の機械的性能の低下につながる可能性がある。また、長期的なパフォーマンスが低く、体温での流れに対する抵抗が少ないことがある。経時的に、それらは接着剤から移動して分離する傾向があり、接着剤の強度と外観にさらに影響を及ぼす。
【0015】
高い結晶化度を有するポリマーブレンドは、低い適合性を示し、より低い粘着性を有する傾向がある。これらの問題を克服するために、アモルファスポリマーと結晶性ポリマーまたは半結晶性ブロックコポリマーの組み合わせが使用されてきたが、今なおはるかに短い硬化時間を示す可能性がある。次に、ワックスなどの結晶化度のより高い材料がしばしば使用されるが、重大な制限もあり、他の接着剤成分との適合性が低い傾向があり、物理的特性の低下と長期安定性の問題につながり、ホットメルトの濡れ(ウェットアウト)と接着を低減するだけでなく、不織布などの弾性構造に採用されるホットメルト接着剤に必要な伸びなどの機械的特性を損なう可能性がある。
【0016】
不織布は、本発明の目的のこの用語の意味を絶対に限定するものではないが、一般的に言えば、織りや編み物を除いて、繊維やフィラメントを絡ませることにより、化学的、機械的、または熱的に一緒に接合された、任意の性質または起源の、長繊維、連続フィラメントまたはチョップドヤーンのシートまたはウェブ構造から作られた材料に含まれる。不織布はまた、多くの異なる方法、例えば、エアレイド、ウェットレイド、スパンボンドまたはメルトブローによって形成することができる。繊維は、特定の方向に向けられるように梳くことができる(例えば、櫛を通り抜ける)。ウェブは、例えば、水流交絡、化学的接合、ニードルパンチまたは熱的接合を含む任意の方法で一つに接合することができる。湿式粉砕で得られるフェルトは不織布ではない。ウェットレイドウェブは、長さ対直径の比が300以上の人工繊維またはその他の非植物由来の繊維を最低50%含む場合、または、長さと直径の比が600以上で、最大見掛け密度は0.40g/cmの人工繊維を最低30%含む場合は不織布である。複合構造は、上記の定義に係る不織布の質量が少なくとも50%で構成されている場合、または不織布コンポーネントが一般的な役割を果たす場合、不織布と考えられる。不織布は、1つまたは複数のポリマー(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリプロピレンおよびポリエチレン、1つまたは複数の天然繊維(例えば、レーヨンセルロース、綿セルロース、麻およびビスコース)またはそれらの組み合わせ。)から作られた繊維を含むことができる。不織布材料は自己弾性であり得る。これは、不織布に弾性繊維を組み込むことによって、または、弾性を改善するために吸収された弾性材料を組み込むことによって達成される。本発明の組成物を含む、ここに記載されるホットメルト接着剤は、複合材料の弾性性能を増強するために弾性不織布と組み合わせて使用することができる。代替的に基板の1つは不織布であり得、他はポリマーフィルムであり得る。任意のポリマーフィルムを使用できる。
【0017】
ポリマーフィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレンコポリマー、およびPETからなる群から選択することができる。
【0018】
ホットメルト接着剤の典型的な塗布温度は150~200℃であり、上記の不織布フィルムは熱感受性であるため、基材と接着剤塗布ノズルとの直接接触は避ける必要がある。したがって、このような場合、接着剤は、しばしば圧縮空気の助けを借りて離れた場所から基材にスプレーコーティングすることによって塗布される。
【0019】
不織布の加工品においては、ホットメルト接着剤が不織布材料をポリマーフィルムおよび弾性コンポーネントと接合させる。ホットメルト接着剤を使用して不織布材料と弾性コンポーネントをストランド、フィルム、またはその他の連続的または離散的な形態で接合させるラミネート構造は、おむつ、女性用衛生用品、成人用失禁装置、アンダーパッド、ベッドパッド、工業用パッドなどの使い捨ての吸収性製品のような衛生製品において特に有用である。
【0020】
接合とは、液体ベースの接着剤を不織布ウェブに塗布することを主に指す。バインダーとして通常使用される材料の3つのグループは、アクリレートポリマーとコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、および酢酸ビニルエチレンコポリマーである。水ベースのバインダーシステムが最も広く使用されているが、粉末接着剤、泡、場合によっては有機溶剤溶液も見られる。
【0021】
バインダーを適用する方法はたくさんある。含浸、コーティング、スプレーによって均一に塗布することも、プリントボンディングにおけるように断続的に塗布することもできる。プリントボンディングは、特定のパターンが必要な場合や、機能上の理由から繊維の大部分にバインダーを含まないようにする必要がある場合に使用される。
【0022】
おむつなどの不織布にホットメルト接着剤を塗布する場合、例えば、おむつの弾性ストランドなどの接着剤接合に力が作用しても、物品を一つに保持するように接着剤はすぐに強度を構築しなければならない。接着剤は、弾性ストランドの収縮力に耐えることができなければならない。接着剤が不織布に滲まない(bleed-throughブリードスルーしない)ことも重要である。
【0023】
さもないと、接着剤がおむつラインのローラーまたは圧縮セクションに付着する可能性がある。適用を容易にするための接着剤の比較的低い粘度、適用直後に基材を一つに保持するための内部強度の迅速な発達、およびブリードスルーに対する耐性の間のバランスを達成する必要がある。
【0024】
ラミネートまたはラミネート構造は、多層の熱可塑性ポリマーフィルムであり、同じまたは異なるポリマー材料の少なくとも2つの層をプレスまたは溶融することによって製造される。この明細書において、ラミネート構造は、本発明の接着剤組成物などの接着剤によって少なくとも1つの他の層が接合された少なくとも1つの不織布の層を特に含み、少なくとも1つの他の層は、不織布、ポリマー材料、またはそれらの組み合わせを含む。
【0025】
粘着付与剤の適切なクラスは、芳香族、脂肪族および脂環式炭化水素樹脂、芳香族および脂肪族混合修飾炭化水素樹脂、芳香族修飾脂肪族炭化水素樹脂、およびそれらの水素化バージョン;テルペン、修飾テルペンおよびそれらの水素化バージョン; 天然ロジン、修飾ロジン、ロジンエステル、およびそれらの水素化バージョン;低分子量ポリ乳酸; およびそれらの組み合わせを含む。
【0026】
有用な粘着付与剤は、例えば、ExxonMobil Chemical Company(ヒューストン、テキサス)からの、例えば、ESCOREZ 1310LC、ESCOREZ 5400、ESCOREZ 5637、ESCOREZ 5415;ESCOREZ 5600、ESCOREZ 5615を含む、ESCOREZシリーズの取引上の名称を含む、様々な取引上の名称の下で商業的に入手可能である。また、ESCOREZ 5690、Eastman Chemical Company(キングスポート、テネシー)からの、例えば、EASTOTAC H100R、EASTOTAC H100L、及びEASTOTAC H130Wを含む、EASTOTACシリーズの取引上の名称、Cray Valley HSC(エクストン、ペンシルバニア)からの、例えば、WINGTACK 86、WINGTACK EXTRA、及びWINGTACK 95などを含む、WINGTACKシリーズの取引上の名称、Eastman Chemical Company(キングスポート、テネシー)からの、例えば、PICCOTAC 8095及び1115を含む、PICCOTACシリーズの取引上の名称、Arkawa Europe Gmbh(ドイツ)からの、例えば、ARKON P-125を含む、ARKONシリーズの取引上の名称、Eastman Chemical Companyからの、例えば、REGALITE R1125及びREGALREZ1126を含む、REGALITE及びREGALREZシリーズの取引上の名称、及び、Resinall Corp(セバーン、ノースカロライナ)からの、RESINALL 1030を含む、RESINALLシリーズの取引上の名称もある。
【0027】
ホットメルト接着剤は、加工油などの可塑剤をさらに含むことができる。加工油には、例えば、鉱油、ナフテン油、パラフィン油、芳香油、ヒマシ油、菜種油、トリグリセリド油、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。当業者が認識するように、加工油はまた、接着剤に一般的に使用されるエキステンダー油を含み得る。接着剤がテープまたはラベルを製造するための感圧接着剤として、または不織布を接着するための接着剤として使用されるならば、接着剤における油の使用は望ましいかもしれない。ある実施形態において、接着剤はいかなる加工油をも含まなくてよい。
【0028】
さらなる添加剤、例えば、抗酸化剤、安定剤、可塑剤、接着促進剤、紫外線安定剤、レオロジー調整剤、腐食防止剤、着色剤(顔料や染料など)、難燃剤、核剤、またはカーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛またはそれらの組合せなどの充填剤を存在させてもよい。
【0029】
有用な抗酸化剤は、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3,(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、例えば、トリス-(p-ノニルフェニル)-ホスファイト(TNPP)及びビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)4,4’-ジフェニレン-ジホスホナイト、ジ-ステアリル-3,3’-チオジプロピオネート(DST-DP)、およびそれらの組み合わせを含む亜リン酸塩を含む。有用な抗酸化剤は、例えば、IRGANOX 1010、IRGANOX 565、及びIRGANOX 1076阻害フェノール系抗酸化剤、及びIRGAFOS 168亜リン酸塩抗酸化剤を含み、IRGANOXシリーズの取引上の名称を含むさまざまな取引上の名称の下で商業的に入手可能であり、これらの全てはBASFコーポレーション(フローハムパーク、ニュージャージー)から入手可能であり、また、エチル 702 4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)もあり、これはアルベマールコーポレーション(バトンルージュ、ルイジアナ)から入手可能である。
【0030】
ワックスは、ホットメルト接着剤において、核剤、希釈剤、または粘度低下剤として使用できる。
【0031】
核剤として、ワックスは、HMA(ホットメルト接着剤)においてポリマー材料の破断点伸びを改善する。希釈剤として、ワックスは、接着剤配合物の濡れを促進し(溶融)粘度を低下させ、コストを減らし、接着剤の塗布速度を制御することができる。柔軟性の改善と粘度低下による濡れ性の改善の観点から、ワックスの含有量が決定的である。
【0032】
ワックスは、一般に化学組成として定義され、40℃超の液滴融点を有し、わずかな圧力で研磨可能で、練り込み可能または脆くなりにくく、20℃で透明から不透明になり、40℃超で分解することなく溶融し、通常50~90℃で溶け、200℃までの例外的なケースでは、ペーストまたはゲルを形成し、熱と電気の伝導性が低い。
【0033】
ワックスは、例えば、その由来などの、さまざまな基準に従って分類することができる。ここで、ワックスは、2つの主要なグループ:天然ワックスと合成ワックスに分けることができる。天然ワックスは、化石ワックス(例:石油ワックス)と非化石ワックス(例:動物および植物ワックス)にさらに分けることができる。石油ワックスは、マクロクリスタリンワックス(パラフィンワックス)とマイクロクリスタリンワックス(マイクロワックス)に分けられる。合成ワックスは、部分合成ワックス(例:アミドワックス)と完全合成ワックス(例:ポリオレフィン-およびフィッシャー-トロプシュワックス)に分けることができる。
【0034】
パラフィンワックスは石油源に由来する。それらは透明で無臭であり、食品との接触のために精製することができる。それらは、ある範囲の(主に)n-アルカンとiso-アルカン、およびいくつかのシクロアルカンを含む。生または粗パラフィンワックス(スラックワックス)は、さらに精製すると除去される短鎖アルカン(「オイル」)を多数有する。パラフィンワックスのさまざまな分布と品質を得ることができる。精製は、脱油、蒸留、水素化を含んでもよい。
【0035】
合成ガス(CO及びH)のアルカンへの触媒フィッシャー-トロプシュ合成に由来する合成フィッシャー-トロプシュワックスまたは炭化水素は、主にn-アルカン、少数の分岐アルカンを含み、基本的にシクロアルカンまたは例えば硫黄や窒素のような不純物を含まない。その見返りに、オレフィンおよび酸素化物(すなわち、アルコール、エステル、ケトンおよび/またはアルデヒドなどの酸化炭化水素)の数は、石油ベースのワックスとは異なり、より多くなる可能性がある。
【0036】
フィッシャー-トロプシュワックスは、一般に、低融点(凝固点20~45℃)、中融点(凝固点45℃~70℃)、高融点(凝固点70~105℃)に分類できる。
【0037】
合成ワックスのもう1つの供給源は、オレフィン系モノマーのオリゴマー化/重合、場合によってはそれに続く水素化から得られる製品である。
【0038】
炭化水素ワックスは、主に炭化水素を含む上記の定義によるワックスである。炭化水素は、炭素原子と水素原子だけで構成される分子である。特に明記しない限り、n-またはlinearは直鎖および脂肪族を指し、i-、iso-またはbranchedは分岐および脂肪族を表わす。
【0039】
US20080081868は、プロピレンに由来する単位の少なくとも80wt%および少なくとも1つのC6~C10のα-オレフィンに由来する単位の1~20wt%を含むコポリマーを含む接着剤を開示し、ここで、接着剤は、80%の上記アモルファスまたは半結晶性ポリマーと、20%の少なくとも1つのワックスと官能化ポリオレフィン、例えば、凝固点が80~85℃のフィッシャー-トロプシュワックス(SasolからのC80)など)やマレイン酸無水物変性ポリプロピレンを含み得る。これらの接着剤は、改善された硬化時間、粘度、剥離強度、および-18℃での優れた低温接着性能と高い靭性を含む接着特性を示す。
【0040】
US8431642は、少なくとも50mol%のポリプロピレンと少なくとも1つのワックスを含むポリオレフィンを用いる包装用途向けのHMAを開示しており、分子量が3000以上の直鎖ポリエチレンワックスを含んでいる。凝固点が80℃のフィッシャー-トロプシュワックス(Sasolwax C80)が追加の添加剤として言及されているが、開示されるポリエチレンワックスよりも硬化時間が悪いため、この文書ではクレームされたポリマー組成物においての使用を避けている。
【0041】
US20150225622は、軟化点が90~115℃の範囲のポリプロピレン-エチレンコポリマーと、任意選択で、ホットメルトを包装用途向けに使用するときのフィッシャー-トロプシュワックス(例:SasolのH1)などのワックスを用いる接着剤を開示する。
【0042】
US9334431は、10~70wt%のポリプロピレンホモポリマー、10~60wt%第1の粘着付与剤、および0~65wt%の第2の粘着付与剤、5~50wt%の可塑剤、0.1~5wt%の安定剤または抗酸化剤、および1~40wt%の溶融エンタルピーが30J/gより大きいワックスを含む多孔質基材において使用するホットメルト接着剤を開示する。言及されているワックスは、66℃の軟化点および187J/gの溶融エンタルピーを有するものなどのパラフィンワックスである。このような低弾性のポリプロピレンホモポリマーのみを含むホットメルト接着剤は、硬化時間が非常に遅く、滲む(bleed through)傾向が高い。ワックスは硬化速度を増して、それ自体の再結晶化によって滲み(bleed-through)を防ぐ、または、ポリマーを核生成させより速く結晶化させることができる。また、基材に付着するのを防ぐために表面に被覆することもできる。
【0043】
WO2016153663は、特定のポリプロピレン-ポリエチレンコポリマー、ポリプロピレン-アルファ-オレフィンコポリマーまたはポリプロピレン、粘着付与剤、および任意選択でワックスまたは可塑剤を用いるホットメルト接着剤を開示する。コポリマーは、90℃未満の融点を有する。
【0044】
US20160130480では、少なくとも50wt%のポリプロピレンと少なくとも15wt%の、フィッシャー-トロプシュワックスを含む2つの未修飾ワックスの組み合わせとを含む、少なくとも40wt%の未修飾の半結晶性プロピレンポリマーを含むホットメルト接着剤組成物が開示されている。
【0045】
US20180002578は、プロピレンポリマーとエチレン-アルファ-オレフィンコポリマーのポリマー混合物を少なくとも35wt%、融点が80℃より高く融解熱が少なくとも200J/gのワックス成分を18~37wt%含むホットメルト接着剤組成物を開示している。
【0046】
ポリオレフィンベースのポリマーを含む不織布用接着剤においては、硬度と軟化点の間の理想的なバランスを見つけて、特性が改善された接着剤を製造する必要がある。さらに、コストの削減や製品性能の向上、例えば、低温での有用性、塗布速度の向上、塗布温度の低下、コーティング重量の低下、タックの増加などに関してHMAを改善するための絶え間ない努力がある。
【0047】
したがって、不織布用のポリオレフィンベースのホットメルト接着剤の配合に対するニーズがあり、迅速な硬化時間、機械的特性の良好なバランス、優れた長期エイジング性能を示す配合であって、接着剤のエイジング、臭い、色、ブロッキングまたはスプレーパターンに悪影響を及ぼさず、優れた低温噴霧可能性、高い剥離強度、および不織布における滲み(bleed-through)がない配合が求められる。
【0048】
ホットメルト接着剤を塗布した不織布品を、ヨウ素結晶の存在下で密閉チャンバーに24時間入れてヨウ素で染色することにより、噴霧可能性とスプレーパターンを観察することができる。不織布品は、色と接着剤が塗布された領域を変化させ、そのパターンが見えるようになる。
【0049】
剥離強度は、ASTM D 1876に準拠した300mm/分のT剥離試験を用いて、接着された不織布ラミネート物品で特定することができる。
【0050】
接着剤配合物の臭気は、1グラムの接着剤サンプルを40℃で24時間容器に入れ、容器を開けたときに異なる個々の被験者に独立して臭いをかがせることによってテストすることができる。
【0051】
エイジングは、接着剤の少量サンプルをオーブン内で170℃の大気雰囲気で72時間加熱すること、および色を視覚的に確認することによって、特定することができる。この処理中にサンプルの色が変化しなかった場合、耐エージ性は良好である。ブロッキングは、各ラミネートの3つの100×100mmサンプルを、オーブン内でガラスプレート間において相互に重ねて50℃、1kgの圧力で、24時間積み重ねることによって測定することができる。仮に、ブロッキングが生じなければ、この処理の後に3つのサンプルは、ガラスプレートの間から容易に別々に取り外すことができる。
【0052】
ホットメルト接着剤の特性を評価するためのもう1つの適切なテストは、動的機械的分析(略称DMA、動的機械的分光法としても知られている)である。これは、材料、特にポリマーの粘弾性挙動を研究および特性評価するために用いられる手法である。正弦波応力が適用され、材料のひずみが測定され、貯蔵弾性率を特定することができる。サンプルの温度または応力の頻度はしばしば変化し、貯蔵弾性率の変化につながる;このアプローチは、材料のガラス転移温度を探すため、および他の分子運動に対応する転移を特定するために使用できる。
【0053】
純粋に弾性な材料においては、応力とひずみが同位相で発生するため、一方の応答が他方の応答と同時に発生する。純粋に粘性の材料においては、応力とひずみの間に位相差があり、ひずみは応力より90度(π/2ラジアン)の位相差で遅れる。粘弾性材料は、純粋な粘性材料と純粋な弾性材料の間のどこかの挙動を示し、ひずみにおいていくらかの位相遅れを示す。
【0054】
粘弾性材料の応力とひずみは、次の式を用いて表される。
Strain:ε=εsin(ωt)
Stress:σ=σsin(ωt+δ)
ここで、
ω=2πf ここで、fはひずみ振動の周波数で、tは時間、δは応力とひずみとの間の位相遅れである。
【0055】
粘弾性材料における貯蔵弾性率と損失弾性率は、弾性部分を表す貯蔵エネルギーと、粘性部分を表す熱として放散されるエネルギーを測定する。引張貯蔵および損失弾性率は次のように定義される。
Storage:E’=(σ/ε)cosδ
Loss:E”=(σ/ε)sinδ
【0056】
同様に、剪断貯蔵弾性率及び剪断損失弾性率G’及びG”が定義される。G’は、変形から回復したり、エネルギーを保持したりするための材料の安定性を反映するため、材料の剛性/弾性を示す。G”は、エネルギーを消散させる材料の能力を反映する。
【0057】
粘弾性材料における損失弾性率と貯蔵弾性率の比率は、材料における減衰の尺度を提供するtanδ(tan delta)として定義される。tan deltaは、ベクトル空間において、貯蔵弾性率と損失弾性率との間の位相角の接線として視覚化することもできる。
Tensile:tanδ=E”/E’
Shear:tanδ=G”/G’
【0058】
たとえば、tan deltaが1より大きい材料は、tan deltaが1より小さい材料よりも減衰を示す、すなわち、材料は弾性よりも粘性である。tan deltaが1より大きい材料がより減衰を示す理由は、材料の損失弾性率が貯蔵弾性率よりも大きいためであり、これは複合弾性率のエネルギー消散粘性成分が材料挙動を支配することを意味する。tan deltaが1に等しいクロスオーバーポイントは、材料が流れ始める温度、または結晶化/ゲル化が起こり始める温度を示す。このクロスオーバーポイントにおける温度は、材料の低温噴霧可能性の適切な指標にもなる。
【発明の概要】
【0059】
本発明の一態様によれば、上記の要件は、驚くべきことに、ポリオレフィンベースのホットメルト接着剤組成物であって、
-少なくとも1つのポリオレフィンポリマー20~80wt%、
-少なくとも1つの炭化水素ワックス2~20wt%、および
-任意選択的に抗酸化剤、
を含み、炭化水素ワックスが、
-75~110℃の範囲に凝固点を有し;
-示差走査熱量測定で特定される200~235J/gの融解熱を有し;
-合成フィッシャー-トロプシュワックスである、
ホットメルト接着剤組成物で達成することができる。
【0060】
組成物は、特に、不織布構造物、例えば、不織布ラミネートの製造における使用のための組成物であり得る。
【0061】
接着剤組成物は、通常、動的機械的分析において、60℃から100℃、好ましくは65℃から85℃の範囲で1に等しい剪断tan delta(G”/G’)を有する。
【0062】
したがって、ホットメルト接着剤組成物は、好ましくは、160℃以下、より好ましくは130℃~160℃、最も好ましくは135℃~145℃の範囲の温度で噴霧可能である。
【0063】
炭化水素ワックスおよびポリマーの本発明の選択は、不織布構造物の製造における使用のための優れたホットメルト接着剤を提供し、優れた低温噴霧可能性および高い剥離強度を有し、ホットメルト接着剤組成物の使用に必要なコーティング重量を低減し得る。
【0064】
合成フィッシャー-トロプシュワックスは、フィッシャー-トロプシュ合成によって得られ、本発明に従って、合成ガス(COおよびH)からアルカンへのコバルト-または鉄-触媒のフィッシャー-トロプシュ合成に由来する炭化水素として定義されることが好ましい。この合成の粗生成物は、蒸留によって液体画分と異なる固体画分に分離される。炭化水素は、主に、n-アルカン、少数の分岐アルカンを含み、基本的にシクロアルカンや、例えば硫黄または窒素のような不純物は含まれない。
【0065】
フィッシャー-トロプシュワックスは、メチレン単位からなり、炭素鎖長分布が、一実施形態によれば、関連する特定の炭素原子鎖長に対する分子の数を均等に増加および減少させることによって特徴付けられる。これは、ワックスのガスクロマトグラフィー-分析に見ることができる。
【0066】
フィッシャー-トロプシュワックスは、好ましくは、10~25wt%の分岐炭化水素の含有量を有する。フィッシャー-トロプシュワックスの分岐分子は、より好ましくは10wt%を超え、最も好ましくは25wt%を超えるメチル分岐を有する分子を含む。さらに、フィッシャー-トロプシュワックスの分岐分子は、好ましくは、四級炭素原子を含まない。これは、ワックスのNMR測定に見ることができる。
【0067】
本発明の好ましい実施形態において、炭化水素ワックスは、500~1200g/モルの分子量(数平均)を有し、より好ましくは、600~1000g/モルである。
【0068】
好ましい実施形態において、炭化水素ワックスは、互いに独立の以下の特性の1つまたは複数をさらに有する:
-135℃におけるブルックフィールド粘度が20mPa・s未満;
-25℃における針入度が10 1/10mm未満;
-炭化水素ワックスは水素化処理されている;そして
-オイル含有量が1wt%未満。
【0069】
この理論に拘束されることなく、これらの範囲において、炭化水素ワックスは、本発明に従う不織布用の最適に機能するポリオレフィン-ベースのホットメルト接着剤を提供すると考えられる。
【0070】
本発明の好ましい実施形態において、ホットメルト接着剤組成物は、2~18wt%、より好ましくは2~15wt%、最も好ましくは5~10wt%の炭化水素ワックスを含む。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、接着剤組成物は、互いに独立した以下の特性の1つまたは複数を有する:
-炭化水素ワックスを含まない、および/または本発明に従うものではない炭化水素ワックスを含む、同じホットメルト接着剤組成物と比較して、少なくとも10%、好ましくは20%高いT-剥離強度;
-周波数10Hz、冷却速度2℃/分での動的機械的分析における貯蔵弾性率(G')の増加が、60℃を超える10℃以内の点、好ましくは70~60℃で10MPa超、好ましくは50MPa超;
-周波数10Hz、冷却速度2℃/分での動的機械的分析における貯蔵弾性率(G’)の増加が、40~100℃で500MPa超;そして
-ブルックフィールド粘度が160℃において5000mPa・s未満。
【0072】
さらに、組成物は、好ましくは10~60wt%、より好ましくは10~50wt%の量の粘着付与剤、および/または、好ましくは5~20wt%、より好ましくは5~15wt%の量の加工油を含み得る。
【0073】
粘着付与剤は、芳香族、脂肪族および脂環式炭化水素樹脂、混合芳香族および脂肪族修飾炭化水素樹脂、芳香族修飾脂肪族炭化水素樹脂、およびそれらの水素化バージョン;テルペン、修飾テルペンおよびそれらの水素化バージョン;天然ロジン、修飾ロジン、ロジンエステル、およびそれらの水素化バージョン;低分子量ポリ乳酸;およびそれらの組み合わせ、から選択することができる。
【0074】
加工油は、例えば、鉱油、ナフテン油、パラフィン油、芳香油、ヒマシ油、菜種油、トリグリセリド油、またはそれらの組み合わせから選択することができる。当業者が理解するように、加工油は、また、接着剤に一般的に使用される軟質油を含み得る。
【0075】
任意選択的に、抗酸化剤が存在し得る。通常、0.1~2wt%の量で存在し得る。
【0076】
接着剤組成物におけるポリオレフィンポリマーは、アモルファスポリアルファオレフィンコポリマー(APAO)、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリブテンホモポリマーから、好ましくはエチレン-プロピレンコポリマーまたはエチレン-ブテンコポリマーの群から、より好ましくは、0~50wt%、好ましくは5~37.5wt%、そして最も好ましくは10~25wt%のエチレン含有量で、選択され得る。
【0077】
好ましくは、これらのポリマーのうちの2つの混合物またはこれらのポリマーのうちの1つのみが接着剤組成物に使用され、および/または35~60wt%のポリマーの量である。
【0078】
本発明の好ましい実施形態において、ポリオレフィンポリマーは、互いに独立した以下の特性のうちの1つまたは複数を有する:
-190℃におけるブルックフィールド粘度が1000~50000mPa・s、好ましくは1500~20000mPa・s;
-環球軟化点が90~130℃;
-示差走査熱量測定による融解熱が30J/g未満;そして
-密度が0.8~0.9g・cm-3
【0079】
本発明のさらなる態様において、本発明に従うホットメルト接着剤組成物を製造する方法であって、少なくとも1つのポリオレフィンポリマー、少なくとも1つの炭化水素ワックス、および、任意選択的に、1つ以上の粘着付与剤、加工油、および/または抗酸化剤を、溶融状態で、それらが均質になるまで加熱ミキサー内で互いに混合することを含む方法が提供される。
【0080】
均質な混合物は、ホットメルト接着剤組成物を提供し得る。
【0081】
この方法は、成分として、少なくとも1つのポリオレフィンポリマー、少なくとも1つの炭化水素ワックス、および任意選択的に粘着付与剤、加工油および/または抗酸化剤を提供することを含み得る。
【0082】
少なくとも1つのポリオレフィンポリマー、少なくとも1つの炭化水素ワックス、粘着付与剤、加工油および/または抗酸化剤、ならびにそれらの相対的な比率は、前述のとおりであり得る。
【0083】
この方法は、容器内のホットメルト接着剤組成物を、冷却および固化するために移すことをさらに含み得る。
【0084】
本発明は、さらなる態様において、本発明のホットメルト接着剤組成物を、使用して製造される、ゆえに含む、不織布ラミネートを提供する。
【0085】
ラミネートは、少なくとも1つの不織布層、または少なくとも1つの不織布層と1つのポリマー層であって、好ましくはポリエチレンから作られる層を含み得る。
【0086】
本発明は、また、そのさらなる態様において、少なくとも以下のステップを含む不織布ラミネートを製造する方法を提供する:
-少なくとも1つの不織布層を本発明に従うホットメルト接着剤組成物でスプレー-コーティングすること;そして
-コートされた層の上に配置される、少なくとも第2の不織布またはポリエチレン層を提供し、層を一緒にプレスすること。
【0087】
層を一緒にプレスすると、不織布ラミネートが製造され得る。
【0088】
スプレー-コーティングは、120~160℃の温度で、好ましくはスパイラルパターンで、コーティング重量が1~4g/m、好ましくは2g/mで、ノズル空気圧が0.005~0.05MPaで、そして、機械速度が1~4m/minまたは4~600m/minで実施することができる。
【0089】
この方法は、コンベヤーベルト上に少なくとも1つの不織布層を提供することを含み得る。
【0090】
層を一緒にプレスすることは、2つのローラー、好ましくは空気圧ローラーの間に第1および第2の層を供給して、層を一緒にプレスすることを含み得る。
【0091】
この方法は、また、冷却および貯蔵の役割で、不織布ラミネートを巻き取ることが含まれ得る。
【0092】
不織布ラミネートは、1つ以上の不織布層または少なくとも1つの不織布層と少なくとも1つのポリマー層であって、より好ましくはポリエチレンから作られるものを好ましくは含む。
【0093】
スプレー-コーティングは、好ましくは130℃~160℃、より好ましくは135℃~145℃の温度において実施することができる。
【0094】
本発明は、また、そのさらなる態様において、不織布ラミネートを接着するための本発明に従うホットメルト接着剤組成物の使用を含む。
【0095】
不織布ラミネートは、炭化水素ワックスを含まない、および/または本発明に従うものではない炭化水素ワックスを使用する、同じホットメルト接着剤組成物の使用と比較して、少なくとも10%、好ましくは20%高いT-剥離強度を有し得る。
【0096】
本明細書に記載のすべての凝固点は、ASTM D 938に従って測定されており、ポリマーのすべての環球軟化点は、ASTM E 28に従って測定されている。
【0097】
140℃および160℃でのホットメルト接着剤配合物のための、および135℃での炭化水素ワックスのための、190℃でのポリマーのブルックフィールド粘度は、スピンドル27を備えたASTM D3236に従って測定されている。15mPa・sをはるかに下回る値の炭化水素ワックスの粘度は、ASTM D445に従って測定されている。
【0098】
25℃での針入度は、ASTM D 1321に従って測定され、ポリマーの浸透はASTM D5またはASTM D2240(デュロメーター硬度)に従って、ポリマーのガラス転移点(Tg)はASTM D3418に従って、炭化水素ワックスのオイル含有量はASTM D721に従って測定されている。
【0099】
炭化水素ワックスのイソアルカン含有量およびモル質量(数平均)は、欧州ワックス連盟のEWFメソッド001/03に従ったガスクロマトグラフィーによって特定された。
【0100】
示差走査熱量測定で測定された融解熱は、ASTM E793に従って測定された。
【0101】
T-剥離強度は、ASTM D 1876に基づいて測定されている。
【実施例0102】
種々のポリマー(表1を参照)および炭化水素ワックス(表2を参照)を使用して、溶融混合により様々なホットメルト接着剤組成物(以下、「配合物」と呼ぶことがある)を調製した(表3,4,5および6を参照)。
【0103】
最初のステップにおいて、ポリマーと抗酸化剤を110~120℃に加熱したシグマミキサーにロードし、ポリマーが完全に溶融して抗酸化剤がポリマーに均一に混合されるまで、15Hzで30~40分間混合した。
【0104】
第2のステップにおいて、樹脂、ワックス、および任意選択的に油を、120~130℃でミキサーに連続して加え、それらが均質になるまで(約15分)混合した。第3のステップにおいて、混合物を真空および120~130℃の温度で40~60分間脱気した。
【0105】
最後のステップにおいて、混合物を容器に移し、冷却し、固化させた。
【0106】
以下の表で、使用された製品は次のとおりである。
- 米国テネシー州キングスポートのEastman製AerafinTM180
- 米国テネシー州キングスポートのEastman製AerafinTM17
- 米国テネシー州キングスポートのEastman製RegaliteTMR1090
- 米国テキサス州ヒューストンのLyndonellBasell製KoattroTMPBM 1500M
- 米国テキサス州アーヴィングのExxonMobil製VistamaxxTM8780
- 米国テキサス州アーヴィングのExxonMobil製VistamaxxTM8380
- ドイツ、ハンブルクのSasol、Wax製SASOLWAXTM6705
- ドイツ、ハンブルクのSasol、Wax製SASOLWAXTM6805
- 南アフリカ、ハウテン州サントンのSasol製SERATIONTM1830
- 南アフリカ、ハウテン州サントンのSasol製SERATIONTM1820
- 南アフリカ、ハウテン州サントンのSasol製SERATIONTM1810
- スウェーデン、ストックホルムのNynas製NyflexTM222B
- スウェーデン、ストックホルムのNynas製NyflexTM3100
- 米国のTrecora Chemical、Pasadena、TX 77507製CWP 400
【0107】
表3、4、5および6で特定された組成物は、修飾「comp」によって確認される比較組成物である組成物1、4、8、9および16を除いて、すべて発明である。より具体的には、組成物1、4、9および16は、パラフィンワックスを含むホットメルト接着剤組成物であり、組成物8は、ポリエチレンワックスを含むものであり、すべて本発明に従うものではない。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
ホットメルト接着剤には、臭気、エイジング、溶融粘度、動的機械的分析を含む、種々のテストが適用されている(すべての表7を参照)。
【0115】
接着剤配合物の臭気は、それらの1グラムを40℃で24時間容器に封入することによって試験され、5人の女性被験者に互いに独立に匂いについての意見が求められた。すべての配合物の匂いは許容できることがわかった。エイジングは、配合物の少量のサンプルを大気中170℃のオーブンで72時間加熱し、次に色を視覚的に確認することによって評価した。すべての本発明の配合物は、この処理後に色の変化を示さなかった。
【0116】
接着剤配合物の140℃および160℃での粘度は、ASTM D 3236に従ってThermosellシステムと♯27スピンドル(表7)を備えたブルックフィールドDV-II+ Pro Extra 粘度計で特定し、一般的なSBS-接着剤配合物(Comp.1)と比較した。
【0117】
最後に、直径25mmの平行板測定システムを備えたAnton Paar MCR502 レオメーターを使用する平行板レオロジー測定を適用して配合物の動的機械的分析を実施した。配合物1から3に対しては、CTD 450温度制御ユニットを使用し、配合物は、0.1%の振幅ひずみおよび10Hzの周波数、2℃/分の冷却速度で170~60℃で実行された。配合物4~22およびComp.1には、H-PTD200フードおよびP-PTD200下部プレートを使用し、配合物は、0.015%の振幅ひずみおよび10Hzの周波数、2℃/分の冷却速度で170~-30℃で実行された。これらのデータから、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、およびtan delta(G”/G’)が計算される(表7を参照)。より具体的には、実験から得られた冷却曲線のデータから、貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、およびtan delta(G”/G’)が計算される。冷却曲線が生成され、Rheomanagerツールと、Temperature ramp:Crystallisation and melting of Polymerと呼ばれる提供されているソフトウェアの方法を使用して、Anton PaarレオメーターのRheoplusソフトウェアによって、弾性率とtan deltaは計算される。
【0118】
【表7】
【0119】
本発明の配合物は、160℃で5000mPa・s未満のブルックフィールド粘度を有する。これは、低温での優れた噴霧可能性と相関し、特に不織布への塗布に求められる。
【0120】
良好な低温噴霧可能性は、また、ホットメルト接着剤組成物の動的機械的分析におけるtan delta値(G”/G’)が60℃~100℃の範囲で1に等しい温度と相関する。
【0121】
別の態様では、本発明の配合物は、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、およびワックスを含まないスチレンブロックコポリマーベース接着剤配合物を含む配合物と比較して、動的機械的分析において貯蔵弾性率(G’)のはるかに急勾配な増加を示す(貯蔵弾性率が10℃以内で10MPaを超える、または40~100℃で500MPaを超える)。これにより、接着剤が塗布された基材間の接合が迅速かつ強力に形成される。
【0122】
基材上のホットメルト接着剤組成物によって形成されたこの接合を試験するために、接着剤配合物をサミットスパイラルスプレー塗布法において使用して、不織布材料のラミネートを調製した。基材として、溶融ブローされたポリプロピレン不織布が使用された。配合物1~3および16~18について、ラミネートは、不織布/不織布および不織布/ポリエチレン構造で作られ、130℃~150℃の範囲の異なるスプレー温度で、2g/mのコーティング重量、0.02MPaのノズル空気圧、および、40m/分および45m/分のマシン速度で準備された。T-剥離強度は、ラミネートの製造直後に、ASTM D 1876に基づいて、ZwickiLine引張試験機を使用して特定された。25×150mmのラミネートのサンプルを、20.3℃および湿度52.3%で300mm/分の速度で引き離し、力を測定した。値は、本発明に従わない、パラフィンワックス(1,4,9および16)、ポリエチレンワックス(配合物8)を含むホットメルト接着剤組成物、またはワックスを含まないスチレンブロックコポリマーベース接着剤で製造されたラミネートと比較され、表8および9にリスト化されている。
【0123】
【表8】
【0124】
【表9】
【0125】
剥離強度の結果から、本発明の接着剤配合物は、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、またはワックスを含まないスチレンブロックコポリマーベースの接着剤で接着されたラミネートよりも強い結合を示すことが分かる。
【0126】
本発明の配合物で製造されたラミネートのいずれも、ブリードスルーまたは接着剤のブロッキングによる色の変化を示さなかった。ブロッキングは、各ラミネートの3つの100×100mmサンプルを、50℃のオーブンでガラスプレートの間に1kgの圧力で24時間積み重ねることによって測定した。本発明の配合物の場合、3つのラミネートサンプルは、この処理後、ガラス板の間から容易にそして別々に取り除くことができた。
【0127】
スプレーパターンは、ヨウ素結晶の存在下で24時間密閉チャンバー内でラミネートサンプルを染色することによってチェックされた。すべてのサンプルは、規則的なスパイラルスプレーパターンを示した。
【0128】
全体として、本発明のホットメルト接着剤組成物は、低温での良好な噴霧可能性および高いT-剥離強度を示し、これにより、不織布ラミネートにおける適用に非常に適し、コーティング重量、したがってホットメルト接着剤の量を減らすことができる。さらに、臭いや色ずれは生じない。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0128
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0128】
全体として、本発明のホットメルト接着剤組成物は、低温での良好な噴霧可能性および高いT-剥離強度を示し、これにより、不織布ラミネートにおける適用に非常に適し、コーティング重量、したがってホットメルト接着剤の量を減らすことができる。さらに、臭いや色ずれは生じない。
本発明の実施形態としては、以下の実施形態を挙げることができる。
(付記1)
ポリオレフィンベースのホットメルト接着剤組成物であって、
-少なくとも1つのポリオレフィンポリマー20~80wt%、
-少なくとも1つの炭化水素ワックス2~20wt%、および
-任意選択的に抗酸化剤、
を含み、炭化水素ワックスが、
-凝固点を75~110℃の範囲に有し、
-示差走査熱量測定で特定される200~235J/gの融解熱を有し;そして
-合成フィッシャー-トロプシュワックスである、
ホットメルト接着剤組成物。
(付記2)
動的機械的分析におけるtan delta(G”/G’)が、60℃~100℃、好ましくは65℃~85℃の範囲において1に等しい、付記1に記載のホットメルト接着剤組成物。
(付記3)
炭化水素ワックスが500~1200g・mol -1 、好ましくは600~1000g・mol -1 の分子量(数平均)を有する、付記1~2のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
(付記4)
炭化水素ワックスが10~25wt%の分岐炭化水素の含有量を有する、付記1~3のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
(付記5)
炭化水素ワックスが、以下の特徴のうちの1つまたは複数によってさらに特徴付けられる、付記1~4のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物:
-ブルックフィールド粘度が135℃で20mPa・s未満;
-浸透が25℃で10 1/10mm未満;
-炭化水素ワックスが水素処理されている;そして
-オイル含有量が1wt%未満である。
(付記6)
炭化水素ワックスを2~18wt%、好ましくは2~15wt%、より好ましくは5~10wt%の量で含む、付記1~5のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
(付記7)
接着剤組成物が、以下の特性のうちの1つまたは複数によってさらに特徴付けられる、付記1~6のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物:
-炭化水素ワックスを含まない、および/または本発明に従わない炭化水素ワックスを含む、同じホットメルト接着剤組成物と比較して、少なくとも10%、好ましくは20%高いT-剥離強度;
-周波数10Hz、冷却速度2℃/分での動的機械的分析における貯蔵弾性率(G')の増加が、60℃を超える10℃以内の点、好ましくは70~60℃で10MPa超、好ましくは50MPa超;
-周波数10Hz、冷却速度2℃/分での動的機械的分析における貯蔵弾性率(G’)の増加が、40~100℃で500MPa超;そして
-ブルックフィールド粘度が160℃において5000mPa・s未満。
(付記8)
接着剤組成物が、
-好ましくは10~60wt%、好ましくは10~50wt%の量の粘着付与剤、および/または、
-好ましくは5~15wt%の量の、加工油を
さらに含む、付記1~7のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
(付記9)
0.1~2wt%の量で抗酸化剤が存在する、付記1~8のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
(付記10)
接着剤組成物中のポリオレフィンポリマーが、アモルファスポリ-アルファ-オレフィンコポリマー(APAO)、ポリプロピレンホモポリマーまたはポリブテンホモポリマーから、好ましくはエチレン-プロピレンコポリマーまたはエチレン-ブテンコポリマーの群から選択され、より好ましくは0~50wt%、好ましくは5~37.5wt%、より好ましくは7~35wt%、そして最も好ましくは10~25wt%のエチレン含有量を有する、付記1~9のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物。
(付記11)
前記ポリマーが、2つのポリマーの混合物または1つのポリマーのみであり、および/または35~60wt%の量で存在する、付記10に記載のホットメルト接着剤組成物。
(付記12)
ポリマーが、以下の特徴のうちの1つまたは複数によってさらに特徴付けられる、付記10または11に記載のホットメルト接着剤組成物:
-ブルックフィールド粘度が190℃で1000~50000mPa・s、好ましくは1500~20000mPa・s;
-リングアンドボール軟化点が90~130℃;
-示差走査熱量測定で特定される融解熱が30J/g未満;および
-密度が0.8~0.9g・cm -3
(付記13)
溶融状態で、少なくとも1つのポリオレフィンポリマー、少なくとも1つの炭化水素ワックス、および任意選択で、粘着付与剤、加工油、および/または抗酸化剤のいずれか1つまたは複数を、加熱混合器内でそれらが均一になるまで互いに混合することを含む、付記1から12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤を製造する方法であって、炭化水素ワックスが、
-凝固点を75~110℃の範囲に有し、
-示差走査熱量測定で特定される200~235J/gの融解熱を有し;そして
-合成フィッシャー-トロプシュワックスであり;そして
組成物が
-少なくとも1つのポリオレフィンポリマー20~80wt%、
-少なくとも1つの炭化水素ワックス2~20wt%
を含む、ホットメルト接着剤を製造する方法。
(付記14)
付記1~12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤を使用して製造され、したがってそれを含む、不織布ラミネート。
(付記15)
ラミネートが、少なくとも1つの不織布層、または少なくとも1つの不織布層と1つの、好ましくはポリエチレンから作製される、ポリマー層とを含む、付記14に記載の不織布ラミネート。
(付記16)
少なくとも以下のステップを含む、付記14または15に記載の不織布ラミネートを製造する方法:
-不織布層またはポリマー層を、付記1~12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物でスプレーコーティングすること;そして
-コーティングされた層が上に配置された、少なくとも1つの不織布またはポリマーの層を提供し、層を一緒にプレスすること。
(付記17)
スプレーコーティングが、120~160℃の温度で、1~4g/m のコーティング重量で、0.005~0.05MPaのノズル空気圧、および1~4m/分または4-600m/分の機械速度で実行されて、コーティングされた層を得る、付記16に記載の方法。
(付記18)
層を一緒にプレスすることが、互いの層が重なり合うように配置して2つのローラー、好ましくは空気圧ローラーの間に供給し、層を一緒にプレスすることを含む、付記16または付記17に記載の方法。
(付記19)
不織布ラミネートを接着するための、付記1~12のいずれか一項に記載のホットメルト接着剤組成物の使用。
(付記20)
炭化水素ワックスを含まない、および/または本発明に従わない炭化水素ワックスを含む、同じホットメルト接着剤組成物の使用と比較して、不織布ラミネートが、少なくとも10%、好ましくは20%高いT-剥離強度を有する、付記19に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンベースのホットメルト接着剤組成物であって、
-少なくとも1つのポリオレフィンポリマー20~80wt%、
-少なくとも1つの炭化水素ワックス2~20wt%、および
-任意選択的に抗酸化剤、
を含み、炭化水素ワックスが、
-凝固点を75~110℃の範囲に有し、
-示差走査熱量測定で特定される200~235J/gの融解熱を有し;そして
-合成フィッシャー-トロプシュワックスである、
ホットメルト接着剤組成物。
【外国語明細書】