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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105243
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】正極片、電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20240730BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240730BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240730BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240730BHJP
   H01G 11/40 20130101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/13
H01G11/40
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024061468
(22)【出願日】2024-04-05
(31)【優先権主張番号】202310361920.5
(32)【優先日】2023-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林小萍
(57)【要約】      (修正有)
【課題】界面インピーダンスを低減する正極片を提供する。
【解決手段】本発明の正極片は、正極集電体と、前記正極集電体における少なくとも一方の表面に設けられる正極材料層を含み、正極材料層は、一次元イオン伝導性繊維と、正極活物質とを含み、一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~10μmであり、アスペクト比が1.5であり、または1.5超であり、正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比は0.01:1~0.2:1である。一次元イオン伝導性繊維の直径、およびアスペクト比、ならびに正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維に対する質量の比を上記範囲内に調整することによって、正極片と固体電解質との間の界面インピーダンス及び正極片の内部インピーダンスを低減し、さらに、電気化学装置の電気化学的特性を改良し、例えば、サイクル特性の向上、インピーダンスの低減ができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極片であって、
正極集電体と、前記正極集電体における少なくとも一方の表面に設けられる正極材料層を含み、
前記正極材料層は一次元イオン伝導性繊維と、正極活物質とを含み、
前記一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~10μmであり、アスペクト比が1.5であり、または1.5超であり、
前記正極活物質の質量に対する前記一次元イオン伝導性繊維の質量の比は0.01:1~0.2:1であることを特徴とする、正極片。
【請求項2】
前記一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~2μmであり、アスペクト比が1.5~20000であることを特徴とする、請求項1に記載の正極片。
【請求項3】
前記正極活物質の質量に対する前記一次元イオン伝導性繊維の質量の比は0.01:1~0.05:1であることを特徴とする、請求項1に記載の正極片。
【請求項4】
前記一次元イオン伝導性繊維の長さは、1μmであり、または1μm超であることを特徴とする、請求項1に記載の正極片。
【請求項5】
前記正極材料層の質量に対して、前記一次元イオン伝導性繊維の質量含有率は1%~15%であることを特徴とする、請求項1に記載の正極片。
【請求項6】
前記一次元イオン伝導性繊維のイオン伝導度は1×10-6S/cmであり、または1×10-6S/cm超であることを特徴とする、請求項1に記載の正極片。
【請求項7】
前記正極片は、以下の(1)および(2)のうちの少なくとも一つを満たす正極片であって、
(1)前記一次元イオン伝導性繊維は、銅イオンによって変性されたセルロースを含み、
(2)前記一次元イオン伝導性繊維は、イオン伝導性物質と重合体とを含有する重合体繊維を含み、
前記イオン伝導性物質は、LATP、LLZO、LLTO、LLZTO、LAGPおよびこれらの化合物のドープ化合物のうちの少なくとも1種を含み、
前記ドープ化合物のドープ元素は、Al、Ge、およびSiのうちの少なくとも1種を含み、
前記重合体は、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、及びポリアクリル酸のうちの少なくとも1種を含み、
前記重合体の質量に対する前記イオン伝導性物質の質量の比は1:2~1:1である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の正極片。
【請求項8】
前記正極活物質は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、およびリチウムリッチマンガン材料のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の正極片。
【請求項9】
前記正極材料層の厚さは、3μm~195μmであり、前記正極片の厚さは15μm~200μmであることを特徴とする、請求項1に記載の正極片。
【請求項10】
前記正極片は、以下の(1)~(3)のうちの少なくとも一つを満たす正極片であって、
(1)前記一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~2μmであり、アスペクト比が5~200であり、
(2)前記一次元イオン伝導性繊維の長さは1μm~1000μmであり、
(3)前記一次元イオン伝導性繊維の長さは1μm~100μmである、
ことを特徴とする、請求項1に記載の正極片。
【請求項11】
固体電解質と、請求項1から10のいずれか一項に記載の正極片を含む、電気化学装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学技術分野に関し、特に正極片、電気化学装置及び電子装置に関す。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池はエネルギー密度が高く、動作電圧が高く、自己放電率が低く、体積が小さく、軽量であるなどの利点があり、コンシューマー電子分野で広く応用されている。現在、電気自動車とモバイル電子機器の高速発展に伴い、リチウムイオン電池のエネルギー密度、安全特性などに対する要求はますます高まっている。
【0003】
リチウムイオン電池のエネルギー密度の増加に伴い、リチウムイオン電池の安全は早急に解決すべき問題となっている。従来の電解液は一般的にリチウム塩と有機溶媒を含む溶液であり、電気化学的ウィンドウが狭く、適用温度範囲が狭く、固体電解質界面膜(SEI膜)の形成により大量の不可逆容量を発生し、かつ有機溶媒は沸点が低く、漏れやすいなどの特徴があり、包装袋または封止材料を腐食させ、潜在的な危険性を生じる可能性もある。リチウムイオン電池における一部の液体電解液を固体電解質に置き換えることは電解液による潜在的な危険性を効果的に改善することができ、固体電解質は液状電解液自体と比べて、電気化学的ウィンドウが広く、適用温度が広く、燃えにくいなどの特徴を持ち、安全性の面で液体電解液の欠陥を補うことができ、しかし、固体電解質自体に流動性がなく、正極片と固体電解質との間の界面での接触性が悪く、リチウムイオンの輸送が阻害されるため、固体電解質を含むリチウムイオン電池、すなわち固体リチウムイオン電池は、安全問題を解決しているが、界面インピーダンスが大きく、リチウムイオン電池の電気化学的特性に影響を及ぼす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施例の目的は、界面インピーダンスを低減し、さらに、電気化学装置の電気化学的特性を改良する正極片、電気化学装置及び電子装置を提供することである。
【0005】
なお、本発明の発明内容では、リチウムイオン電池を電気化学装置の例として本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限定されるものではない。具体的な技術案は以下の通りである。
【0006】
本発明の第1の態様において、正極片を提供し、正極集電体と、前記正極集電体における少なくとも一方の表面に設けられる正極材料層を含み、前記正極材料層は、一次元イオン伝導性繊維と、正極活物質とを含み、前記一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~10μmであり、アスペクト比が1.5であり、または1.5超であり、好ましくは、前記一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~2μmであり、アスペクト比が1.5~20000であり、さらに好ましくは、前記一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~2μmであり、アスペクト比が5~200であり、前記正極活物質の質量に対する前記一次元イオン伝導性繊維の質量の比は0.01:1~0.2:1であり、好ましくは、前記正極活物質の質量に対する前記一次元イオン伝導性繊維の質量の比は0.01:1~0.05:1である。一次元イオン伝導性繊維の直径およびアスペクト比、ならびに正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比を上記範囲内に調整することによって、正極片と固体電解質との間の界面インピーダンス及び正極片の内部インピーダンスを低減することができる。よって、電気化学装置の電気化学的特性が改善され、かつ電気化学装置のエネルギー密度にはほとんど影響しない。
【0007】
本発明のいくつかの実施案では、前記一次元イオン伝導性繊維の長さは1μmであり、または1μm超であり、好ましくは、前記一次元イオン伝導性繊維の長さは1μm~1000μmであり、さらに好ましくは、前記一次元イオン伝導性繊維の長さは1μm~100μmである。一次元イオン伝導性繊維の長さを上記範囲内にすることによって、正極片と固体電解質との間に比較的に多くの接触点を有し、正極片と固体電解質との間の界面での接触性を向上させ、さらに、電気化学装置の充放電中におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の界面インピーダンスを低減し、正極片の内部に連続的なリチウムイオン輸送通路を形成し、リチウムイオンを順調に輸送させ、正極片内部におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の内部インピーダンスを低減することにも有利である。よって、電気化学装置の電気化学的特性が改良される。
【0008】
本発明のいくつかの実施案では、前記正極材料層の質量に対して、前記一次元イオン伝導性繊維の質量含有率は1%~15%である。一次元イオン伝導性繊維の質量含有率を上記範囲内に制御することによって、正極片と固体電解質との間の界面での接触性を向上させ、さらに、電気化学装置の充放電中におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の界面インピーダンスを低減し、正極片の内部に連続的なリチウムイオン輸送通路を形成し、正極片内部におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の内部インピーダンスを低減することにも有利である。よって、電気化学装置の電気化学的特性が改良される。
【0009】
本発明のいくつかの実施案では、前記一次元イオン伝導性繊維のイオン伝導度は1×10-6S/cmであり、または1×10-6S/cm超である。一次元イオン伝導性繊維のイオン伝導度が上記範囲内であることは、一次元イオン伝導性繊維が良好なイオン伝導特性を有することを示し、よって、正極片と固体電解質との界面でのリチウムイオンを順調に輸送することができ、正極片の界面インピーダンスを低減し、正極片の内部のリチウムイオンに輸送の連続性を持たせ、正極片の内部インピーダンスを低減することもできる。よって、電気化学装置の電気化学的特性が改良される。
【0010】
本発明のいくつかの実施案では、前記正極片は、以下の(1)および(2)のうちの少なくとも一つを満たす。(1)前記一次元イオン伝導性繊維は、銅イオンによって変性されたセルロースを含む。(2)前記一次元イオン伝導性繊維は、イオン伝導性物質と重合体とを含む重合体繊維を含み、前記イオン伝導性物質は、LATP、LLZO、LLTO、LLZTO、LAGPおよびこれらの化合物のドープ化合物のうちの少なくとも1種を含み、前記ドープ化合物のドープ元素は、Al、Ge、およびSiのうちの少なくとも1種を含み、前記重合体は、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、及びポリアクリル酸のうちの少なくとも1種を含み、前記重合体の質量に対する前記イオン伝導性物質の質量の比は1:2~1:1である。上記種類の一次元イオン伝導性繊維を選択することによって、正極片と固体電解質との間の界面での接触性を向上させることができ、さらに、電気化学装置の充放電中におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の界面インピーダンスを低減し、正極片の内部に連続的なリチウムイオン輸送通路を形成し、正極片内部におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の内部インピーダンスを低減することにも有利である。
【0011】
本発明のいくつかの実施案では、前記正極活物質は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、およびリチウムリッチマンガン材料のうちの少なくとも1種を含む。上記種類の正極活物質を選択することによって、良好なサイクル特性を有する電気化学装置が得られることに有利である。
【0012】
本発明のいくつかの実施案では、前記正極材料層の厚さは3μm~195μmであり、前記正極片の厚さは15μm~200μmである。正極材料層及び正極片の厚さを上記範囲内に制御することによって、良好なサイクル特性を有する電気化学装置が得られることに有利である。
【0013】
本発明の第2の態様において、固体電解質と、前記のいずれかの実施案に記載の正極片を含む電気化学装置が提供される。それによって、本発明が提供する電気化学装置は良好な電気化学的特性を有する。
【0014】
本発明の第3の態様において、前記のいずれかの実施案に記載の電気化学装置を含む電子装置が提供される。それによって、本発明が提供する電子装置は良好な使用特性を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は正極片、電気化学装置及び電子装置を提供し、正極片は、正極集電体と、前記正極集電体における少なくとも一方の表面に設けられる正極材料層を含み、正極材料層は、一次元イオン伝導性繊維と、正極活物質とを含み、一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~10μmであり、アスペクト比が1.5以上であり、正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比は0.01:1~0.2:1である。一次元イオン伝導性繊維の直径およびアスペクト比、ならびに正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比を上記範囲内に調整することによって、正極片と固体電解質との間の界面インピーダンス及び正極片の内部インピーダンスを低減し、さらに、電気化学装置の電気化学的特性を改良し、例えば、サイクル特性の向上、インピーダンスの低減ができる。
【0016】
もちろん、本発明のいずれかの製品または方法を実施するには、必ずしも上記のすべての利点を同時に達成する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の実施例又は先行技術の技術案をより明確に説明するために、以下では実施例又は先行技術に使用される図面について簡単に説明するが、以下で説明される図面が、単に本発明に係るいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとってこれらの図面に基づいて他の実施例が得られることは、明らかである。
図1図1は相関技術の正極片の概略構成図である。
図2図2図1における正極片の充放電中における内部構造の変化の概略構成図である。
図3図3は実施例16及び比較例3のサイクル特性測定図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明実施例における図面を参照し、本発明にかかる実施例の技術方案について、明確かつ完全に説明するが、説明する実施例は本発明の一部の実施例にすぎず、全部の実施例ではないことは明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が本発明に基づいて得られる他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。
【0019】
なお、本発明の発明を実施するための形態の部分では、電気化学装置の例としてリチウムイオン電池を用いて本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限定されるものではない。具体的な技術案は以下の通りである。
【0020】
固体リチウムイオン電池において、例えば固体電解質などのイオン伝導性物質を正極片に導入することにより、正極片における正極活物質自体のイオン輸送性が悪いことによる、界面インピーダンスが大きく、内部インピーダンスが大きいという問題を改善することができる。現在、固体電解質は粒子状であるものが多く、図1に示すように、正極片10は、正極集電体11と、正極集電体11の表面に設けられる正極材料層12を含み、正極材料層12は固体電解質121、正極活物質122、及びバインダー123を含み、固体電解質121及び正極活物質122はいずれも粒子状であるため、両者の間の接触点が少ない。それによって、固体電解質121を導入しても、正極片10の表面及び内部に連続的なリチウムイオン通路を形成することが困難であり、リチウムイオンインピーダンスは依然として大きく、よって、界面インピーダンス及び正極片の内部インピーダンスは依然として大きい。リチウムイオンの輸送性を向上させるために固体電解質121の含有量を増加すると、固体リチウムイオン電池のエネルギー密度に影響を及ぼす。また、固体リチウムイオン電池の充放電中において、正極活物質の粒子体積の増加によって、リチウムイオンの輸送通路が部分的に遮断され(図2に示すように)、それによって、界面インピーダンス及び正極片の内部インピーダンスをさらに増加し、固体リチウムイオン電池の電気化学的特性に影響を及ぼす。上記問題に鑑み、本発明は界面インピーダンス及び正極片の内部インピーダンスを低減し、電気化学装置の電気化学的特性を改善するために、正極片、電気化学装置及び電子装置を提供する。本発明において、固体リチウムイオン電池とは、全固体リチウムイオン電池、半固体リチウムイオン、または準固体リチウムイオン電池であり、そのうち、全固体リチウムイオン電池とは電解液を含まないリチウムイオン電池であり、半固体リチウムイオン電池とは電解液の質量とリチウムイオン電池の質量との比が0.05~0.1であるリチウムイオン電池であり、準固体リチウムイオン電池とは、電解液の質量とリチウムイオン電池の質量との比が0超0.05未満であるリチウムイオン電池である。
【0021】
本発明の第1の態様において、正極片を提供し、正極片は、正極集電体と、正極集電体における少なくとも一方の表面に設けられる正極材料層を含み、正極材料層は、一次元イオン伝導性繊維と、正極活物質とを含み、一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~10μmであり、アスペクト比が1.5であり、または1.5超である。好ましくは、一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~2μmであり、アスペクト比が1.5~20000である。さらに好ましくは、一次元イオン伝導性繊維は、直径が0.1μm~2μmであり、アスペクト比が5~200である。正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比は0.01:1~0.2:1であり、好ましくは、0.01:1~0.05:1である。例えば、一次元イオン伝導性繊維の直径Dは、0.1μm、0.3μm、0.5μm、0.7μm、1μm、2μm、5μm、7μm、もしくは10μmであり、またはそれらの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよく、例えば、一次元イオン伝導性繊維のアスペクト比Xは、1.5、5、10、50、100、150、200、500、1000、2000、3000、5000、10000、15000、もしくは20000であり、またはそれらの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよく、例えば、正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比Yは0.01:1、0.02:1、0.05:1、0.08:1、0.1:1、0.12:1、0.15:1、0.18:1、もしくは0.2:1であり、またはそれらの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。上記「正極集電体における少なくとも一方の表面に設けられる正極材料層」の意味は、正極材料層が正極集電体のその厚さ方向に沿って一方の表面に設けられてもよく、正極集電体のその厚さ方向に沿って二つの表面に設置されてもよい。なお、ここでの「表面」は正極集電体の表面の全部領域であってもよく、正極集電体表面の一部の領域であってもよく、本発明には特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよい。
【0022】
正極片は正極集電体と、正極集電体の表面に設けられる正極材料層を含み、正極材料層は一次元イオン伝導性繊維と、正極活物質とを含む。一方では、線状構造の一次元イオン伝導性繊維によって正極片と固体電解質との間に良好な界面接触を有し、電気化学装置の充放電中におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の界面インピーダンスを低減することができる。他方では、一次元イオン伝導性繊維を添加することによって、正極片における正極活物質粒子と良好な界面接触が形成され、リチウムイオンを順調に輸送することができる。また一方、一次元イオン伝導性繊維は線状構造であり、正極活物質の体積変化による影響が小さく、電気化学装置の充放電中で一次元イオン伝導性繊維と正極活物質との間に依然として良好な界面接触を維持することができ、依然としてリチウムイオンを順調に輸送し、正極片内部におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の内部インピーダンスを低減する。それによって、本発明が提供する正極片は固体電解質を含む電気化学装置に使用されることができ、正極片と固体電解質との間の界面インピーダンス、及び正極片内部インピーダンスを低減することができ、さらに、電気化学装置の電気化学的特性を改良し、例えば、サイクル特性の向上、インピーダンスの低減ができる。
【0023】
具体的には、一次元イオン伝導性繊維の直径が小さすぎると、例えば、0.1μm未満であると、一次元イオン伝導性繊維の製造難度の増加によってコストが上がり、かつ一次元イオン伝導性繊維が切れやすく、正極片におけるリチウムイオン輸送の連続性に影響を及ぼし、一次元イオン伝導性繊維の直径が大きすぎると、例えば10μm超であると、正極片と固体電解質との間の界面接触が悪く、界面インピーダンスが増加する。一次元イオン伝導性繊維のアスペクト比が小さすぎると、例えば、1.5未満であると、その線状構造の特徴は明らかではなく、リチウムイオン輸送の連続性を向上させることは困難である。正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比が小さすぎると、例えば、0.01:1未満であると、一次元イオン伝導性繊維の含有量が低く、連続的なリチウムイオン輸送通路を形成することができず、リチウムイオン輸送の連続性を向上させることができず、正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比が大きすぎると、例えば、0.2:1超であると、正極活物質の含有量が低下し、よって、電気化学装置のエネルギー密度に影響を及ぼす。一次元イオン伝導性繊維の直径およびアスペクト比、ならびに正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比を上記範囲内に調整することによって、正極片と固体電解質との間の界面インピーダンス及び正極片の内部インピーダンスを低減することができる。よって、電気化学装置の電気化学的特性が改善され、かつ電気化学装置のエネルギー密度にはほとんど影響しない。
【0024】
本発明のいくつかの実施案では、一次元イオン伝導性繊維の長さLは1μmであり、または1μm超であり、好ましくは、1μm~1000μmであり、さらに好ましくは、1μm~100μmである。例えば、一次元イオン伝導性繊維の長さは1μm、5μm、10μm、50μm、100μm、300μm、500μm、800μm、もしくは1000μmであり、またはそれらの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。一次元イオン伝導性繊維の長さを上記範囲内にすることによって、正極片と固体電解質との間に比較的に多くの接触点を有し、正極片と固体電解質との間の界面での接触性を向上させ、さらに、電気化学装置の充放電中におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の界面インピーダンスを低減し、正極片の内部に連続的なリチウムイオン輸送通路を形成し、リチウムイオンを順調に輸送させ、正極片内部におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の内部インピーダンスを低減することにも有利である。よって、電気化学装置の電気化学的特性が改良される。
【0025】
本発明のいくつかの実施案では、正極材料層の質量に対して、一次元イオン伝導性繊維の質量含有率Wは1%~15%である。例えば、一次元イオン伝導性繊維の質量含有率は1%、3%、5%、7%、9%、10%、12%、もしくは15%であり、またはそれらの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。一次元イオン伝導性繊維の質量含有率を上記範囲内に制御することによって、正極片と固体電解質との間の界面での接触性を向上させ、さらに、電気化学装置の充放電中におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の界面インピーダンスを低減し、正極片の内部に連続的なリチウムイオン輸送通路を形成し、正極片内部におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の内部インピーダンスを低減することにも有利である。よって、電気化学装置の電気化学的特性が改良される。
【0026】
本発明において、正極活物質の正極材料層における含有量は上記の正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比Y、及び一次元イオン伝導性繊維の質量含有率Wから算出することができ、状況に応じて選択することができる。例示的には、正極材料層の質量に対して、正極活物質の質量含有率は60%~99%であってもよく、好ましくは80%~99%である。
【0027】
本発明のいくつかの実施案では、一次元イオン伝導性繊維のイオン伝導度が1×10-6S/cmであり、または1×10-6S/cm超であり、好ましくは1×10-6S/cm~1×10S/cmである。例えば、一次元イオン伝導性繊維のイオン伝導度は、1×10-6S/cm、1×10-5S/cm、1×10-4S/cm、1×10-3S/cm、1×10-2S/cm、1×10S/cm、もしくは1×10S/cmであり、またはそれらの任意の2つの数値からなる範囲にあってもよい。一次元イオン伝導性繊維のイオン伝導度が上記範囲内であることは、一次元イオン伝導性繊維が良好なイオン伝導性を有することを示し、よって、正極片と固体電解質との界面でリチウムイオンを順調に輸送し、正極片の界面インピーダンスを低減することができ、正極片の内部のリチウムイオンに輸送の連続性を持たせ、正極片の内部インピーダンスを低減することもできる。よって、電気化学装置の電気化学的特性が改良される。
【0028】
本発明のいくつかの実施案では、一次元イオン伝導性繊維は導電性一次元イオン伝導性繊維であってもよく、非導電性一次元イオン伝導性繊維であってもよい。一次元イオン伝導性繊維が導電性一次元イオン伝導性繊維である場合、一次元イオン伝導性繊維の電子伝導率は10-8S/cm~10S/cmであってもよい。それによって、正極片と固体電解質との間の界面での接触性の向上、正極片の界面インピーダンスの低減、正極片内部におけるリチウムイオン輸送の連続性の向上、及び正極片の内部インピーダンスの低減に加えて、正極片の電子伝導性を向上させ、さらに電気化学装置の電気化学的特性を改良することもできる。
【0029】
本発明のいくつかの実施案では、一次元イオン伝導性繊維は、銅イオンによって変性されたセルロースを含む。本発明のいくつかの実施案では、一次元イオン伝導性繊維は、イオン伝導性物質と重合体とを含む重合体繊維を含み、イオン伝導性物質は、LATP、LLZO、LLTO、LLZTO、LAGPおよびこれらの化合物のドープ化合物のうちの少なくとも1種を含み、ドープ化合物のドープ元素は、Al、Ge、およびSiのうちの少なくとも1種を含み、重合体は、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、及びポリアクリル酸のうちの少なくとも1種を含み、重合体の質量に対するイオン伝導性物質の質量の比は1:2~1:1である。本発明のいくつかの実施案では、一次元イオン伝導性繊維は、銅イオンによって変性されたセルロースおよび上記の重合体繊維を含む。上記種類の一次元イオン伝導性繊維を選択することによって、正極片と固体電解質との間の界面での接触性を向上させ、さらに、電気化学装置の充放電中におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の界面インピーダンスを低減することができ、正極片の内部に連続的なリチウムイオン輸送通路を形成し、正極片内部におけるリチウムイオン輸送の連続性を向上させ、正極片の内部インピーダンスを低減することにも有利である。よって、電気化学装置の電気化学的特性が改良される。上記銅イオンによって変性されたセルロースは、セルロースを、銅イオンを含む塩溶液に浸漬して得られるものであり、銅イオンによって変性されたセルロースにおける銅イオンの質量含有率は0.1%~10%であってもよい。そのうち、銅イオンを含む塩溶液は、硝酸銅および硫酸銅のうちの少なくとも1種の銅塩を含む溶液を含んでもよいが、これらに限定するものではなく、上記の銅イオンを含む塩溶液は銅塩の水溶液またはエタノール溶液であってもよく、本発明は上記浸漬の時間と温度に特に制限がなく、本発明の目的が達成できればよい。本発明はドープ化合物におけるドープ元素の質量含有率に特に制限がなく、本発明の目的が達成できればよく、例示的には、ドープ化合物に対して、ドープ元素の質量含有率は0.01%%~3%である。本発明において、LATPはリチウムアルミニウムリン酸チタンであり、その一般式はLi1+uAlTi2-u(PO)、0<u≦0.5であり、具体的には、Li1.3l0.3Ti1.7(PO)、Li1.5Al0.5Ti1.5(PO)等であってもよく、LLZOはLiLaZr12であり、LLTOはチタン酸ランタンリチウムであり、その一般式はLi3vLa2/3-vTiO、0<v≦0.2であり、具体的には、Li0.34La0.55TiO、Li0.5La0.5TiO、Li0.33La0.56TiO、Li0.35La0.55TiO等であってもよく、LLZTOはLi6.4LaZr1.4Ta0.612であり、LAGPはLi1.5l0.5Ge1.512である。
【0030】
本発明のいくつかの実施案では、正極活物質は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、およびリチウムリッチマンガン材料のうちの少なくとも1種を含む。そのうち、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムは、LiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2(NCM622)、LiNi0.5Co0.3Mn0.2(NCM532)等のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定するものではなく、リチウムリッチマンガン材料は、LiMnO、LiCoO、LiMnO、LiNiCoO、xLiMnO・(1-x)LiNiMnOおよびxLiMnO・(1-x)LiNiCoMnOのうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定するものではなく、xおよびxは、0≦x≦1、0≦x≦1である。上記種類の正極活物質を選択することによって、良好なサイクル特性を有する電気化学装置が得られることに有利である。
【0031】
本発明のいくつかの実施案では、正極材料層の厚さHは3μm~195μmであり、正極片の厚さHは15μm~200μmであり、好ましくは、正極材料層の厚さは30μm~80μmであり、正極片の厚さは35μm~200μmである。例えば、正極材料層の厚さは3μm、5μm、10μm、20μm、30μm、50μm、80μm、100μm、130μm、150μm、180μm、または195μmであり、例えば、正極片の厚さは15μm、20μm、30μm、35μm、50μm、80μm、100μm、130μm、150μm、180μm、または200μmであってもよい。正極材料層及び正極片の厚さを上記範囲内に制御することによって、良好なサイクル特性を有する電気化学装置が得られることに有利である。
【0032】
本発明は一次元イオン伝導性繊維の製造方法に対して特に制限がなく、本発明の目的が達成できればよく、例えば、一次元イオン伝導性繊維の製造方法は、質量がmであるイオン伝導性物質と、質量がmである重合体を体積がVである有機溶媒に溶解し、均一になるまで攪拌し、紡糸溶液が得られ、その後、紡糸溶液に対して電界紡糸方式で繊維を得て、乾燥して待機させ、そして、空気炉で予備酸化した後、窒素ガスまたは空気雰囲気で熱処理を行い、一次元イオン伝導性繊維が得られる製造ステップを含んでもよいが、これらに限定するものではない。そのうち、イオン伝導性物質はLATP、LLZO、LLTO、LLZTO、LAGPおよびこれらの化合物のドープ化合物のうちの少なくとも1種を含み、ドープ化合物のドープ元素は、Al、Ge、およびSiのうちの少なくとも1種を含み、重合体は、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、及びポリアクリル酸のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定するものではなく、有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトン、およびエタノール等のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定するものではなく、m及びmの単位はgであり、Vの単位はmLであり、mとmとの比は、1:2~1:1であり、本発明は紡糸溶液の質量濃度に対して特に制限がなく、本発明の目的が達成できればよく、例えば、紡糸溶液の質量濃度は6%~20%であってもよく、好ましくは8%~19%である。本発明は上記イオン伝導性物質の粒径に対して、特に制限がなく、通常、イオン伝導性物質の粒径が繊維の直径より小さくて、例示的には、イオン伝導性物質の体積平均粒径は100nm~1000nmである。理解すべきことは、イオン伝導性物質の体積平均粒径が一次元イオン伝導性繊維の直径より小さいと、イオン伝導性物質が繊維に被覆され、もちろん、一部のイオン伝導性物質が部分的に繊維に埋め込まれ、部分的に繊維に埋め込まれていないことがあってもよく、イオン伝導性物質の体積平均粒径が一次元イオン伝導性繊維の直径より大きいと、イオン伝導性物質が部分的に繊維に埋め込まれ、部分的に繊維に埋め込まれておらず、通常、イオン伝導性物質の体積平均粒径が一次元イオン伝導性繊維の直径より大きい場合、イオン伝導性物質の体積平均粒径は一次元イオン伝導性繊維の直径の2倍に等しくまたはそれより小さい必要がある。本発明は、上記の予備酸化及び熱処理の温度及び時間に対して特に制限がなく、本発明の目的が達成できればよく、例示的には、予備酸化の温度Tは180℃~250℃であり、時間tは0.5h~3hであり、昇温速度Sは0.5℃/min~3℃/minであり、熱処理の温度Tは500℃~1200℃であり、時間tは0.5h~8hであり、昇温速度Sは0.5℃/min~6℃/minである。
【0033】
通常、電界紡糸における紡糸電圧及び紡糸溶液の質量濃度を調整することによって、一次元イオン伝導性繊維の直径を調整することができる。例えば、紡糸電圧を増加すると、一次元イオン伝導性繊維の直径が低減し、紡糸電圧を低減すると、一次元イオン伝導性繊維の直径が増加する。さらに、例えば、紡糸溶液の質量濃度を増加すると、一次元イオン伝導性繊維の直径が増加し、紡糸溶液の質量濃度を低減すると、一次元イオン伝導性繊維の直径が低減する。一次元イオン伝導性繊維のアスペクト比は、一次元イオン伝導性繊維を粉砕することによってアスペクト比が異なる一次元イオン伝導性繊維が得られ、通常、粉砕時間を延長すると、一次元イオン伝導性繊維のアスペクト比が低減し、粉砕時間を短縮すると、一次元イオン伝導性繊維のアスペクト比が増加する。本発明は上記の粉砕の方式及び時間に対して制限がなく、状況に応じて選択することができ、所望のアスペクト比の一次元イオン伝導性繊維が得られればよい。
【0034】
本発明は正極集電体に対して特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよく、例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、および複合集電体(例えば、アルミニウム炭素複合集電体)等を含んでもよい。本発明は正極集電体の厚さに対して特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよい。例えば、正極集電体の厚さは5μm~15μmである。
【0035】
本発明において、正極材料層は導電剤及びバインダーをさらに含んでもよく、本発明は導電剤及びバインダーの種類に対して特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよい。例えば、導電剤は導電性カーボンブラック(Super P)、カーボンナノチューブ(CNTs)、炭素繊維、鱗片状黒鉛、ケッチェンブラック、グラフェン、金属材料、および導電性重合体のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定するものではない。上記カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブ及び/又は多層カーボンナノチューブを含んでもよいが、これらに限定するものではない。上記炭素繊維は気相成長炭素繊維(VGCF)及び/又はナノ炭素繊維を含んでもよいが、これらに限定するものではない。上記の金属材料は、金属粉及び/又は金属繊維を含んでもよいが、これらに限定するものではなく、具体的には、金属は銅、ニッケル、アルミニウム、および銀のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定するものではない。上記導電性重合体は、ポリフェニレン誘導体、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、およびポリピロールのうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定するものではない。例えば、バインダーはポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸リチウム、ポリイミド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースリチウム、ポリイミド、ポリアミドイミド、スチレンブタジエンゴム、およびポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定するものではない。
【0036】
任意的に、正極片は導電層を含んでもよく、導電層が正極集電体と正極材料層との間に位置する。導電層の組成に対して特に制限がなく、当分野でよく使われる導電層であってもよい。導電層は導電剤及びバインダーを含む。本発明は導電層における導電剤及びバインダーに対して特に制限がなく、例えば、上記導電剤及び上記バインダーのうちの少なくとも1種であってもよい。
【0037】
本発明の第2の態様において、固体電解質と、前記のいずれかの実施案に記載の正極片を含む電気化学装置を提供する。それによって、本発明が提供する電気化学装置は良好な電気化学的特性を有する。本発明において、電気化学装置はさらに、負極片及びセパレータを含み、正極片、セパレータ、負極片が順に積層され設けられ、電極アセンブリが得られる。セパレータは正極片と負極片とを分離して、電気化学装置の内部短絡を防止し、電気化学的充放電プロセスの進行に影響を与えることなく、電解質イオンを自由に通過させるためのものである。
【0038】
本発明において、固体電解質はLi2+xAl2+xSi1-x、LiYCl、LiYBr、LiOCl、LiPON、Li0.5La0.5TiO、Li1+xAlTi2-x(PO)、LiLaZr12、Li10GeP12(LGPS)、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、Li3.25Ge0.250.75、Li11AlP12、およびLi11のうちの少なくとも1種を含む。そのうち、0≦x<1である。
【0039】
本発明において、負極片は負極集電体だけを含み、あるいは、負極片は負極集電体と、負極集電体における少なくとも一方の表面に設けられる負極材料層とを含む。上記「負極集電体における少なくとも一方の表面に設けられる」の意味は、負極材料層が負極集電体のその厚さ方向に沿って一方の表面に設けられてもよく、負極集電体のその厚さ方向に沿って二つの表面に設けられてもよい。なお、ここでの「表面」は負極集電体の表面の全部領域であってもよく、負極集電体表面の一部の領域であってもよく、本発明には特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよい。
【0040】
本発明は、負極集電体に対して特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよく、例えば、銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ステンレス箔、チタン箔、ニッケル発泡体、銅発泡体、または複合集電体(例えばリチウム銅複合集電体、炭素銅複合集電体、ニッケル銅複合集電体、チタン銅複合集電体等)等を含んでもよい。
【0041】
負極材料層は負極活物質を含み、本発明は負極活物質に対して特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよく、例えば、負極活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン、ケイ素、ケイ素-炭素複合体、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO、スピネル構造のリチウム化TiO-LiTi12またはLi-Al合金のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定するものではない。
【0042】
負極材料層は導電剤及びバインダーをさらに含み、本発明は導電剤及びバインダーの種類に対して特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよく、例えば、上記導電剤及び上記バインダーのうちの少なくとも1種であってもよい。本発明は負極材料層における負極活物質、導電剤、バインダーの質量比に対して特に制限がなく、当業者は、実際の必要に応じて選択することができ、本発明の目的を達成することができればよい。
【0043】
本発明は負極材料層の厚さに対して特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよく、例えば、負極材料層の厚さは30μm~120μmである。本発明は負極集電体の厚さに対して特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよく、例えば、負極集電体の厚さは5μm~35μmである。本発明は負極片の厚さに対して特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよく、例えば、負極片の厚さは50μm~250μmである。
【0044】
任意に、負極片は導電層を含んでもよく、導電層が負極集電体と負極材料層との間に位置する。本発明は導電層の組成に対して特に制限がなく、当分野でよく使われる導電層であってもよい。例えば、導電層は導電剤及びバインダーを含む。本発明は導電層における導電剤及びバインダーに対して特に制限がなく、例えば、上記導電剤及び上記バインダーのうちの少なくとも1種であってもよい。
【0045】
本発明の電気化学装置には特に制限はなく、電気化学反応を起こす任意の装置を含んでもよい。本発明のいくつかの実施案では、電気化学装置は、リチウムイオン二次電池(リチウムイオン電池)またはリチウムイオンポリマー二次電池等を含んでもよいが、これらに限定するものではない。本発明は、電気化学装置の形状に対して特に制限がなく、本発明の目的を達成することができればよい。例えば、円筒形電池、角形電池、特殊な形状の電池、またはボタン電池等を含んでもよいが、これらに限定するものではない。
【0046】
本発明にかかる電気化学装置の製造過程が当業者にとってよく知られるものであり、本発明には特に制限がなく、例えば、以下のようなステップを含んでもよいが、これらに限定するものではない。正極片、セパレータ及び負極片を順番に積層し、固体電解質を添加し、必要に応じてこれを巻回、折り畳むなどの操作によって巻回構造の電極アセンブリを得て、電極アセンブリを包装袋に入れて封口し、電気化学装置を得る。又は、正極片、セパレータ及び負極片を順番に積層し、固体電解質を添加し、そして、積層構造全体の四隅をテープで固定し、積層構造の電極アセンブリを得て、電極アセンブリを包装袋に入れて封口し、電気化学装置を得る。また、必要に応じて、過電流防止素子、リード板等を包装袋に置くことによって、電気化学装置内部の圧力上昇、過充放電を防止してもよい。そのうち、包装袋は当分野で既知の包装袋であり、本発明はこれに対して限定がない。
【0047】
本発明の第3の態様において、前記のいずれかの実施案に記載の電気化学装置を含む電子装置が提供される。それによって、本発明が提供する電子装置は良好な使用性能を有する。
【0048】
本発明は電子装置の種類に対して特に限定がなく、先行技術に使用されるあらゆる電子機器であってもよい。いくつかの実施例では、電子装置はノートパソコン、ペン入力型パソコン、モバイルパソコン、電子書籍プレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー機、携帯プリンター、ステレオヘッドホン、ビデオレコーダー、液晶テレビ、携帯クリーナー、携帯CDプレーヤー、ミニディスク、送受信機、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯レコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、アシスト自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、フラッシュライト、カメラ、家庭用大型蓄電池、およびリチウムイオンキャパシタ等を含んでもよいが、これらに限定するものではない。
【0049】
実施例
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態をより具体的に説明する。各種の試験及び評価は下記の方法に従って行う。
【0050】
試験方法と設備
一次元イオン伝導性繊維の直径D、長さL及びアスペクト比Xの測定
製造された一次元イオン伝導性繊維材料を無水エタノールを用いてシリコンウエハに分散させ、走査型電子顕微鏡(SEM(ZEISS))を利用して電子顕微鏡写真を撮り、電子顕微鏡写真における一次元イオン伝導性繊維の直径D及び長さLを測定し、20本の繊維を測定し、その平均値を最終結果とした。一次元イオン伝導性繊維のアスペクト比はX=L/Dである。
【0051】
イオン伝導度の測定
一次元イオン伝導性繊維を打錠機によって10Mpaの圧力で直径14mmの大きさの円盤に圧縮し、鋼片-円盤-鋼片で、一対の電池を組み立て、交流インピーダンス計で交流インピーダンスを測定した。一次元イオン伝導性繊維のイオン伝導度=円盤の厚さ/(交流インピーダンス×測定面積)、各実施例に3回の試験を行い、その平均値を最終結果とした。そのうち、測定面積は円形であり、円形の直径は5mmであり、鋼片は316ステンレス鋼である。
【0052】
正極材料層及び正極片の厚さの測定
各実施例および比較例における正極片及び正極集電体の厚さを精度0.0001mmのマイクロメータで測定した。正極材料層の厚さ=正極片の厚さ-正極集電体の厚さ。
【0053】
サイクル特性の測定 25℃の条件で、リチウムイオン電池を3.7Vまで0.5Cの定電流で充電し、そして3.7Vの定電圧で電流が0.025C未満になるまで充電し、5min静置し、2.8Vまで0.5Cの定電流で放電した。以上の操作を一回の充放電サイクルとし、各サイクルの放電容量を記録した。上記の条件でリチウムイオン電池を複数回サイクルさせ、各サイクルにおけるリチウムイオン電池の放電容量を測定した。50回目、100回目、150回目、200回目、250回目のサイクルで、リチウムイオン電池を3.7Vまで0.05Cの定電流で充電した後、3.7Vで電流が0.025C未満になるまで定電圧で充電し、5min静置し、2.8Vまで0.05Cの定電流で放電を行うステップで充放電を行った。初回放電の容量を100%として、放電容量維持率が初回放電容量の80%に減衰するまで充放電サイクルを繰り返し、その時に、測定を停止し、サイクル回数を記録し、リチウムイオン電池のサイクル特性を評価する指標とした。容量維持率=(各サイクルの放電終了後の容量/初回放電容量)×100%。
【0054】
インピーダンスの測定
25±2℃で、リチウムイオン電池を0.1Cの電流で電圧が4.4Vになるまで定電流で充電し、さらに電流が0.05Cになるまで4.45Vの定電圧で充電し、10分間静置する。0.1Cの電流で電圧が3.4Vになるまで放電し、5分間静置する。さらに0.1Cの電流で電圧が4.4Vになるまで定電流で充電し、さらに4.45Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し、10分間静置する。0.1Cの定電流で7秒間放電し、電圧値をUとして記録し、さらに1Cの電流で1秒間放電し、電圧値をUとして記録した。
【0055】
リチウムイオン電池のインピーダンス=(U-U)/(1C-0.1C)の式でリチウムイオン電池のインピーダンスを算出し、そのうち、「1C」とはリチウムイオン電池の容量を1時間以内に完全に放電する電流値である。
【0056】
実施例1
<一次元イオン伝導性繊維の製造>
(1)質量がm1=2.2gであるイオン伝導性物質LATP及び質量がm=2.2gである重合体ポリアクリロニトリル(PAN)を体積がV=25mLである有機溶媒としてのN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、40℃で均一になるまで撹拌し、紡糸溶液を得、紡糸溶液の質量濃度は17.8%であった。紡糸溶液を電界紡糸の方式で繊維を得た後、80℃で12時間乾燥させて待機させた。そのうち、イオン伝導性物質の体積平均粒径は300nmであり、電界紡糸過程におけるパラメータについて、負電圧は-4kVであり、正電圧は18kVであり、送液速度は0.3mL/hであり、収集プレートと紡糸針との距離は20cmであり、収集ドラムの回転数は2000rpmであった。
【0057】
(2)繊維を空気炉に入れて予備酸化し、そして、窒素ガスの雰囲気で熱処理を行い、一次元イオン伝導性繊維が得られた。そのうち、予備酸化の温度はT=230℃であり、時間はt=1hであり、昇温速度はS=1℃/minであり、熱処理の温度はT=800℃であり、時間はt=4hであり、昇温速度はS=2℃/minであった。
【0058】
<正極片の製造>
正極活物質であるリン酸鉄リチウム(LFP)、導電剤であるSuper P、バインダーであるポリフッ化ビニリデン(PVDF)、および上記で製造された一次元イオン伝導性繊維を質量比A=96.5:1.0:1.5:1.0で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)を溶媒として添加し、固形分75wt%のスラリーを調製し、真空で均一に攪拌した後、正極スラリーが得られた。正極スラリーを厚さ12μmの正極集電体アルミニウム箔の一方の表面に均一に塗布し、90℃で乾燥させ、負荷容量3mAh/cmの片面で正極材料層が塗布された正極片が得られ、片面で塗布された正極材料層の厚さHは48μmであり、正極片の厚さHは60μmであった。90℃の条件で乾燥させた後、冷間プレスし、直径14mmの円形の正極片に切断して待機させた。
【0059】
<負極片>
厚さが50μmであるリチウム銅複合箔(メーカー:天津中能▲里▼▲業▼有限公司(China Energy Lithium Co., Ltd))を負極片として使用し、直径18mmの円形負極片に切断して待機させた。
【0060】
<セパレータ>
厚さ15μmの多孔質ポリエチレンフィルム(セルガード社提供)を使用した。
【0061】
<電解液の製造>
乾燥アルゴンガス雰囲気で、まず、ジオキソラン(DOL)、ジメチルエーテル(DME)を体積比1:1で混合して有機溶媒を得た後、有機溶媒にリチウム塩であるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiTFSI)を加えて溶解して均一に混合し、リチウム塩の濃度が1mol/Lである電解液を得た。
【0062】
<リチウムイオン電池の製造>
乾燥アルゴンガス雰囲気のグローブボックスに、負極ケース、負極片、セパレータ、正極片、正極ケースの順に下から上に並べ、電解液を入れ、包装機で包装し、ボタン電池であるリチウムイオン電池を得た。そのうち、負極ケース及び正極ケースは鋼製の円形キャビティであった。そのうち、リチウムイオン電池の質量に対して、電解液の加入量は10%であった。
【0063】
実施例2~実施例23
関連製造パラメータを表1に従って調整し、それ以外は、実施例1と同様であった。実施例21において、製造された一次元イオン伝導性繊維を粉砕機(メーカー:合肥科晶材料技術有限公司、モデル番号:MSK-SFM-15)で1h粉砕した後、<正極片の製造>に使用した。
【0064】
比較例1
<正極片の製造>の過程中に一次元イオン伝導性繊維を添加せず、かつA=97.5:1.0:1.5にし、それ以外は、実施例1と同様であった。
【0065】
比較例2
<正極片の製造>の過程中に一次元イオン伝導性繊維を添加せず、かつLFP、導電剤、バインダーの質量比をA=97.5:1.0:1.5にし、それ以外は、実施例5と同様であった。
【0066】
比較例3
<正極片の製造>の過程中に一次元イオン伝導性繊維を添加せず、且つLFP、導電剤、バインダーの質量比をA=97.5:1.0:1.5にし、それ以外は、実施例7と同様であった。
【0067】
比較例4~比較例6
<正極片の製造>の過程に、一次元イオン伝導性繊維の代わり、順にLATP、LLTO、LLZTOを使用し、それ以外は、実施例1と同様であった。
【0068】
比較例7~比較例9
関連製造パラメータを表1に従って調整し、それ以外は、実施例1と同様である。
【0069】
各実施例及び比較例の関連製造パラメータ及び特性テストの結果は表1に示す。
【0070】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0071】
実施例1~実施例23、比較例1~比較例6から分かるように、正極片に一次元イオン伝導性繊維を添加することによって、リチウムイオン電池のサイクル回数が増加し、インピーダンスが低下する。それで示すように、本発明で提供した正極片を採用することによって、リチウムイオン電池のサイクル特性を向上させ、インピーダンスを低減する。これにより、界面インピーダンスを低減し、リチウムイオン電池の電気化学的特性を向上させることが示される。
【0072】
実施例1~実施例4、比較例7から分かるように、正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比Yをさらに増加させて、リチウムイオン電池のサイクル回数がさらに増加し、インピーダンスがさらに低減することが可能であるが、理解できるように、正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比Yを増加させると、正極活物質の含有量が低減し、リチウムイオン電池のエネルギー密度を低減させる。それで示すように、正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比Yを本発明範囲内に制御することによって、リチウムイオン電池のサイクル特性を向上させ、そのインピーダンスを低減させ、かつエネルギー密度に対する影響が大きくない。実施例1、実施例18~実施例20、比較例8から分かるように、比較例8における一次元イオン伝導性繊維の直径Dは本発明の範囲内ではなく、リチウムイオン電池のサイクル回数が少なく、インピーダンスが大きく、それで示すように、一次元イオン伝導性繊維の直径Dを本発明範囲内に制御することによって、リチウムイオン電池のサイクル特性を向上させ、そのインピーダンスを低減することができる。実施例1~実施例4、実施例18~実施例20、比較例9から分かるように、比較例9における正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比Y及び一次元イオン伝導性繊維の直径Dはいずれも本発明範囲内ではなく、正極活物質の含有量の低さにより、リチウムイオン電池のエネルギー密度を低減させ、かつリチウムイオン電池のサイクル回数が少なく、インピーダンスが大きく、それは、リチウムイオン電池のサイクル特性、インピーダンス及びエネルギー密度を両立できないことを示している。それで示すように、正極片に一次元イオン伝導性繊維を添加し、かつ一次元イオン伝導性繊維の直径D、アスペクト比X及び正極活物質の質量に対する一次元イオン伝導性繊維の質量の比Yを本発明の範囲内にすることによって、リチウムイオン電池のサイクル回数を増加させ、インピーダンスを低減し、さらにそのエネルギー密度も両立できる。それで示すように、本発明が提供する正極片を使用することによって、リチウムイオン電池のサイクル特性を向上させ、そのインピーダンスを低減し、そしてリチウムイオン電池のエネルギー密度も両立でき、即ち、リチウムイオン電池の電気化学的特性を向上させることができる。
【0073】
具体的には、図3に示すように、実施例16におけるリチウムイオン電池に対して401回のサイクルを行った後に、その容量維持率が80%未満であるが、比較例3におけるリチウムイオン電池に対して141回のサイクルを行った後に、その容量維持率はすでに80%未満になった。それで示すように、本発明にかかる実施例におけるリチウムイオン電池がより優れたサイクル特性を有する。
【0074】
一次元イオン伝導性繊維の長さLは、通常、リチウムイオン電池の電気化学的特性に影響を及ぼし、実施例1~実施例23から分かるように、一次元イオン伝導性繊維の長さLが本発明の範囲内にあると、得られたリチウムイオン電池はサイクル回数が多く、インピーダンスが低い。それで示すように、本発明が提供する正極片を採用して得られたリチウムイオン電池は良好なサイクル特性及び低いインピーダンスを有し、即ち、良好な電気化学的特性を有する。
【0075】
一次元イオン伝導性繊維の質量含有率Wは通常リチウムイオン電池の電気化学的特性に影響を及ぼし、実施例1~実施例4から分かるように、一次元イオン伝導性繊維の質量含有率Wを本発明の範囲内にすると、得られるリチウムイオン電池はサイクル回数が多く、インピーダンスが低い。それで示すように、本発明が提供する正極片を採用して得られたリチウムイオン電池は良好なサイクル特性及び低いインピーダンスを有し、即ち良好な電気化学的特性を有する。
【0076】
一次元イオン伝導性繊維に含まれる物質は、通常、リチウムイオン電池の電気化学的特性に影響を及ぼし、実施例1、実施例10~実施例11から分かるように、一次元イオン伝導性繊維に含まれる物質が本発明の範囲内にあると、一次元イオン伝導性繊維が高いイオン伝導度を有し、得られるリチウムイオン電池はサイクル回数が多く、インピーダンスが低い。それで示すように、本発明が提供する正極片を採用して得られたリチウムイオン電池は良好なサイクル特性及び低いインピーダンスを有し、即ち、良好な電気化学的特性を有する。
【0077】
正極材料層の厚さH及び正極片の厚さHは、通常、リチウムイオン電池の電気化学的特性に影響を及ぼし、実施例1、実施例15~実施例17、実施例22及び実施例23から分かるように、正極材料層の厚さH及び正極片の厚さHが本発明の範囲内にあると、一次元イオン伝導性繊維が高いイオン伝導度を有し、得られたリチウムイオン電池はサイクル回数が多く、インピーダンスが低い。それで示すように、本発明が提供する正極片を採用して得られたリチウムイオン電池は、良好なサイクル特性及び低いインピーダンスを有し、即ち、良好な電気化学的特性を有する。
【0078】
なお、本明細書において、「含む」、「包含」またはその他のいかなる変形も、排他的ではない包含を意味し、したがって、一連の要素を含むプロセス、方法、物品または設備には、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含まれるか、またはそのようなプロセス、方法、物品または設備に固有の要素も含まれる。
【0079】
本明細書における各実施例は、それぞれ関連した方法で記述されており、各実施例の間で同様または類似の部分を互いに参照すればよく、各実施例は他の実施例との相違点を中心に説明されている。
【0080】
以上の記載は本発明の好ましい実施例であり、本発明の保護範囲を限定するためのものではない。本発明の精神と原則の範囲内で行われたいかなる修正、同等の置換、改善なども、本発明の保護範囲に含まれる。
図1
図2
図3
【外国語明細書】