(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105244
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ポンペ病の処置のための高濃度α-グルコシダーゼ組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/47 20060101AFI20240730BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240730BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240730BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240730BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240730BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240730BHJP
C12N 9/26 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61K38/47
A61K47/22
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/18
A61K47/40
A61P21/00
C12N9/26
C12N15/56
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061569
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2021158067の分割
【原出願日】2013-03-07
(31)【優先権主張番号】61/607,920
(32)【優先日】2012-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/750,718
(32)【優先日】2013-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.NONIDET
3.BRIJ
4.PLURONIC
5.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507170099
【氏名又は名称】アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バレンザーノ, ケニス ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】クラウリー, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カンナ, リッチ
(72)【発明者】
【氏名】フラナガン, ジョン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポンペ病処置のための新規組成物、およびそれらの組成物を対象に投与する方法を提供する。
【解決手段】高濃度の酸α-グルコシダーゼを、酸α-グルコシダーゼのための活性部位特異的シャペロンと組み合わせて含む組成物と、処置を必要とする対象におけるポンペ病の処置方法であって、それらの組成物を対象に投与する方法を含む、方法とを提供する。本願はまた、酸α-グルコシダーゼ酵素製剤のインビトロ及びインビボでの安定性を増大させる方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸α-グルコシダーゼと、1-デオキシノジリマイシン及びn-ブチルデオキシノジリマイシンからなる群から選択される活性部位特異的シャペロンとを含む組成物であって、前記酸α-グルコシダーゼが、約5mg/mLを超える量で存在する、組成物。
【請求項2】
前記酸α-グルコシダーゼ酵素が、組み換えヒト野生型酸α-グルコシダーゼである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性部位特異的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン又はその薬学的に許容され得る塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記活性部位特異的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシンの塩酸塩である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記活性部位特異的シャペロンが、n-ブチル-デオキシノジリマイシン又はその薬学的に許容され得る塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記酸α-グルコシダーゼが、約5mg/mL~約250mg/mLの量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸α-グルコシダーゼが、約25mg/mL、約80mg/mL、約115mg/mL、約160mg/mL、約200mg/mL及び約240mg/mLからなる群から選択される量で存在する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記活性部位特異的シャペロンが、約0.5mM~約20mMの量で存在する1-デオキシノジリマイシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記活性部位特異的シャペロンが、約20mg/mL~約200mg/mLの量で存在する1-デオキシノジリマイシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、対象に皮下投与するために処方されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、対象に静脈内投与するために処方されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、重炭酸緩衝液、リン酸緩衝液及びこれらの組み合わせからなる群から選択される緩衝液を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
ポリエチルグリコール400、アルギニン、グルタミン酸、プロリン、γ-シクロデキストリン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される賦形剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
対象におけるポンペ病の処置方法であって、酸α-グルコシダーゼと、1-デオキシノジリマイシン及びn-ブチルデオキシノジリマイシンからなる群から選択される活性部位特異的シャペロンとを含む組成物を前記対象に投与することを含み、前記酸α-グルコシダーゼが約5mg/mLを超える量で存在する、方法。
【請求項15】
前記活性部位特異的シャペロンが、1-デオキシノジリマイシン又はその薬学的に許容され得る塩である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記酸α-グルコシダーゼが、約5mg/mL~約250mg/mLの量で存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記活性部位特異的シャペロンが、約0.5mM~約20mMの量で存在する1-デオキシノジリマイシンである、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記活性部位特異的シャペロンが、約20mg/mL~約200mg/mLの量で存在する1-デオキシノジリマイシンである、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記活性部位特異的シャペロンが、n-ブチルデオキシノジリマイシン又はその薬学的に許容され得る塩である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が皮下投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、前記用量の前記投与から約10時間~約50時間以内に、前記対象の筋組織内で酸α-グルコシダーゼのピーク濃度をもたらすのに十分な用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、前記用量の前記投与から約24時間以内に、前記対象の筋組織内で酸α-グルコシダーゼのピーク濃度をもたらすのに十分な用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が単一用量製剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が多用量製剤である、請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、又は7日に1回投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、週に2回投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項27】
対象に皮下投与するための製剤中の酸α-グルコシダーゼの安定性を増大させる方法であって、前記酸α-グルコシダーゼを、1-デオキシノジリマイシン及びn-ブチル-デオキシノジリマイシンからなる群から選択される活性部位特異的シャペロンと組み合わせることを含み、前記酸α-グルコシダーゼが約5mg/mLを超える量で存在する、方法。
【請求項28】
前記活性部位特異的シャペロンが1-デオキシノジリマイシン又はその薬学的に許容され得る塩である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記酸α-グルコシダーゼが、約5mg/mL~約250mg/mLの量で存在する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記活性部位特異的シャペロンが、約0.5~約20mMの量で存在する1-デオキシノジリマイシンである、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記活性部位特異的シャペロンが、約20mg/mL~約200mg/mLの量で存在する1-デオキシノジリマイシンである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記活性部位特異的シャペロンが、n-ブチル-デオキシノジリマイシン又はその薬学的に許容され得る塩である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記酸α-グルコシダーゼが、前記製剤中で前記酸α-グルコシダーゼの凝集を低減するのに有効な量の前記活性部位特異的シャペロンと組み合わされる、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記酸α-グルコシダーゼが、インビトロで安定化される、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記酸α-グルコシダーゼが、インビボで安定化される、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、各々優先権が主張され、また各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2012年3月7日出願の米国仮特許出願第61/607,920号明細書、及び2013年1月9日出願の米国仮特許出願第61/750,718号明細書による利益を主張する。
【0002】
1.序文
本発明は、ポンペ病を処置し、予防し及び/又は回復させる方法に関する。本発明は、ポンペ病の処置における使用に標識され得る組成物及び薬物にも関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術
ポンペ病(酸マルターゼ欠損)は酵素酸α-グルコシダーゼ(GAA)の欠乏により生じる。GAAは、エネルギーに使用される糖の貯蔵形態であるグリコーゲンをグルコースに代謝する。グリコーゲンの蓄積は、全身に進行性の筋疾患をもたらし、これは様々な身体組織、特に心臓、骨格筋、肝臓及び神経系を冒す。国立神経疾患・脳卒中研究所(National Institute of Neurological Disorders and Stroke)によれば、ポンペ病は40,000人の出生中約1人に発生すると推定されている。
【0004】
ポンペ病の認識された3つの型-乳児、若年及び成人発症型が存在する(例えば、Hirschhorn and Reuser,In:Scriver CR,Beaudet AL,Sly W,Valle D,編集者;Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease,Vol.III,New York:McGraw-Hill;2001.p.3389-420.,2001:3389-3420参照)。乳児発症型ポンペ病は最も重篤であり、筋緊張の重篤な欠乏、脱力、拡大肝臓及び心臓、並びに心筋症を含む症状を呈する。嚥下が困難となり得、舌が突出し、拡大する場合がある。殆どの子供は、2才以前に呼吸器又は心臓合併症により死亡するが、乳児発症型患者のサブセットは、より長期間生存する(非古典型乳児患者)。若年発症型ポンペ病は、最初に、小児の早期~後期に見出され、体幹内の呼吸筋、横隔膜及び下肢の進行性脱力、並びに運動不耐性を含む。殆どの若年発症型ポンペ患者は、人生の20年又は30年を超えて生存しない。成人発症型症状は、全身性の筋力低下、並びに体幹内の呼吸筋、下肢及び横隔膜の衰弱を含む。ある成人患者は、主な症状又は運動限界を有しない。
【0005】
出生前スクリーニング中に同定されない限り、ポンペ病の診断は困難である。成人発症型ポンペの診断は、患者が経験する症状の数、重篤さ及びタイプが非常に様々であるため、更により困難であり、筋ジストロフィー等のより一般的な疾患を示唆する場合がある。診断は、α-グルコシダーゼ活性を測定し、及び/又は、生物学的サンプルからグリコーゲンの病理学的レベルを検出することにより裏付けられる。現在認可されている唯一の治療法は、組み換えα-グルコシダーゼを用いた酵素補充療法である。
【0006】
ポンペ病は、グリコーゲン病態のいくつかの症状の1つである。他には、脱分枝酵素欠損症(Cori’s-Forbes病;糖原病III型);分枝酵素欠損症(糖原病IV型;アンダーソン病);筋ホスホリラーゼ(マッカードル病、グリコーゲン貯蔵病V型);ホスホフルクトキナーゼ欠損-Mアイソフォーム(タウリ病(Tauri’s disease);糖原病VII型);ホスホリラーゼbキナーゼ欠損症(糖原病VIII型);ホスホグリセリン酸キナーゼA-アイソフォーム欠損症(糖原病IX);ホスホグリセリン酸M-ムターゼ欠損症(糖原病X型)が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
3.課題を解決するための手段
本発明は、ポンペ病(例えば、乳児発症型ポンペ病)の処置のための方法に関し、このような方法は、そのような処置を必要とする個人に、酸α-グルコシダーゼ(GAA)酵素、(例えば、組み換えヒトGAA(rhGAA))を、GAA酵素(例えば、1-デオキシノジリマイシン(DNJ、1-DNJ))のための活性部位特異的シャペロン(ASSC)と組み合わせて投与することによる。
【0008】
本発明は更に、適切な立体構造にあるGAA酵素のインビボ及びインビトロでの安定性を増大させる方法を提供する。一実施形態において、酸α-グルコシダーゼ(GAA)酵素(例えば、組み換えヒトGAA(rhGAA))とGAA酵素(例えば、1-デオキシノジリマイシン又は1-デオキシノジリマイシン-HCl)のためのASSCとの組み合わせは、そのような処置を必要とする個人に投与される。GAA酵素は、ASSCと組み合わされた際、立体構造的に安定化され、例えば熱及びpHチャレンジに耐えるのに非常に適している。
【0009】
所定の実施形態では、GAA酵素は、高濃度で、例えば濃度約5~約250mg/mLでASSCと組み合わされる。
【0010】
所定の実施形態では、GAA酵素は、高濃度で、例えば約25mg/mL、約80mg/mL、約115mg/mL、約160mg/mL、約200mg/mL及び約240mg/mLからなる群から選択される濃度でASSCと組み合わされる。
【0011】
所定の実施形態では、GAA酵素はASSCと組み合わされ、ASSCは濃度約5mg/mL~約200mg/mLで存在する。
【0012】
所定の実施形態では、GAA酵素はASSCと組み合わされ、ASSCは、約32mg/mL及び約160mg/mLからなる群から選択される濃度で存在する。
【0013】
所定の実施形態では、GAA酵素はASSCと組み合わされ、ASSCは濃度約0.5mM~約20mMで存在する。
【0014】
所定の実施形態では、GAA酵素は、共製剤として、ASSCと組み合わされる。
【0015】
所定の実施形態では、GAA酵素は、共製剤中でASSCと組み合わされ、共製剤は更に賦形剤を含む。所定の実施形態では、賦形剤は、ポリエチルグリコール(PEG)、PEG-400、アルギニン、アルギニン及びグルタミン酸、プロリン、γ-シクロデキストリン、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
所定の実施形態では、本発明の製剤は、タンパク質が高濃度であるにも係わらず、長期間に亘って物理的及び化学的安定性を維持し、また皮下投与に好適な粘度を有する。本発明の製剤は、少なくとも一部は、ASSCと組み合わせたGAA酵素が高濃度(例えば25mg/mL)で可溶性を維持し得、注射(例えば皮下投与)に好適な粘度を維持すると共に、凝集しない状態のままであるという驚くべき発見に基づいて確立されている。
【0017】
所定の実施形態では、本発明の組成物は、約5mg/mLを超えるGAA酵素を含む。
【0018】
所定の実施形態では、本発明の組成物は、約25mg/mLのGAA酵素及び約10mMのDNJを含む。
【0019】
所定の実施形態では、本発明の組成物は、約25mg/mLのGAA酵素及び約1mMのDNJを含む。
【0020】
本発明の製剤の利点は、通常、タンパク質濃度が増大すると起こるタンパク質凝集を増大させることなく、高濃度のタンパク質を提供することである。一実施形態において、本発明の製剤は、約1%未満の凝集体タンパク質を有する。
【0021】
本発明の一態様によれば、ポンペ病を有する個人の組織、例えば筋組織へのGAAの送達を向上させる方法を提供する。本方法は、GAAをASSCと組み合わせて、個人に皮下投与することを含む。いくつかの実施形態では、GAAとASSCとの組み合わせは、用量の投与から24時間以内に、対象の組織内でGAAのピーク濃度をもたらすのに十分な用量で投与される。所定の実施形態では、GAAとASSCとの組み合わせは、用量の投与から約10~約50時間、又は約45、40、35、30、25、又はそれ未満の時間以内に、対象の組織内でGAAのピーク濃度をもたらすのに十分な用量で投与される。いくつかの実施形態では、用量は、個人の肝臓内で毒性レベルのGAAをもたらさない。
【0022】
非限定的な様々な実施形態では、GAA酵素のためのASSCは、GAA酵素の可逆的かつ競合的な阻害剤を含む、GAA酵素の小分子阻害剤である。
【0023】
一実施形態において、ASSCは、式:
(式中、R
1は、H又は1~12個の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキル若しくはアミノアルキルであり、これらは任意選択で-OH、-COOH、-Cl、-F、-CF
3、-OCF
3、-O-C(=O)N-(アルキル)
2で置換され;R
2は、H又は1~9個の炭素原子を含む直鎖若しくは分岐鎖のアルキル、シクロアルキル若しくはアルコキシルアルキルである)により表され;その薬学的に許容され得る塩、エステル及びプロドラッグを含む。一実施形態において、ASSCは、上記に定義した通りであり、R
1はHである。別の実施形態では、ASSCは、上記に定義した通りであり、R
2はHである。
【0024】
非限定的な特定の一実施形態では、ASSCは以下の式:
により表される1-デオキシノジリマイシン(1-DNJ)、又は1-デオキシノジリマイシンの薬学的に許容され得る塩、エステル若しくはプロドラッグである。一実施形態において、塩は、塩酸塩(即ち、1-デオキシノジリマイシン-HCl)である。
【0025】
特定の非限定的な一実施形態において、ASSCは、以下の式:
により表されるN-ブチル-デオキシノジリマイシン(NB-DNJ;Zavesca(登録商標)、Actelion Pharmaceuticals Ltd,Switzerland)、又はNB-DNJの薬学的に許容され得る塩、エステル若しくはプロドラッグである。
【0026】
非限定的な特定の一実施形態では、ASSCは、以下の式:
により表されるC
10H
19NO
4、又はC
10H
19NO
4の薬学的に許容され得る塩、エステル若しくはプロドラッグである。一実施形態において、塩は、塩酸塩である。
【0027】
非限定的な特定の一実施形態では、ASSCは、以下の式:
により表されるC
12H
23NO
4、又はC
12H
23NO
4の薬学的に許容され得る塩、エステル若しくはプロドラッグである。一実施形態において、塩は、塩酸塩である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】熱安定性アッセイにて決定した、100μMの1-デオキシノジリマイシン塩酸塩(1-DNJ-HCl)の存在下又は不在下における、ERpH(7.4)又はリソソームpH(5.2)での組み換えヒトGAA(Myozyme(登録商標)、Genzyme Corp.)の安定性を示す。熱安定性アッセイは、タンパク質変性を誘導するのに熱を利用し、このような変性は、疎水性アミノ酸(折り畳まれたタンパク質内では曝露されていない)に結合した後、蛍光を発するSYPRO Orange染料を使用して監視される。変性により多くの熱を必要とするタンパク質構造は、定義によれば、より安定である。上記に示したように、Myozyme(登録商標)は、通常、ERpH(7.4)と比較してリソソームpH(5.2)にて遙かに、より安定である。しかしながら、pH7.4における酵素安定性は、100μMの1-デオキシノジリマイシンの添加後、Myozyme(登録商標)単独と比較して有意に増大する。
【
図2A】37℃における、血漿pH(7.4)又はリソソームpH(5.2)での組み換えヒトGAA(Myozyme(登録商標)、Genzyme Corp.)酵素活性に対する1-DNJ-HClの効果を示す。GAA活性を評価して、GAAのASSCがある時間に亘りrhGAAの活性を延長する能力を評価した。Myozyme(登録商標)(45nM)を、pH7.4又はpH5.2緩衝液中で、50μMの1-DNJを有し又は有さずに37℃で24時間に亘ってインキュベートした。サンプルを、0、3、6及び24時間にて、4-MU-α-グルコースを使用してGAA酵素活性に関してアッセイし、残留GAA活性を初期活性の%として表した。これらの結果は、1-DNJが血漿pH(7.4)にてGAA酵素活性の損失を回復することを示す。
【
図2B】
図2Aに示した、ERpH(7.4)における酵素活性の損失、特にMyozyme(登録商標)活性の損失が、タンパク質アンフォールディング及び変性と相関するか否かを決定する、並行SYPRO Orange熱安定性実験を示す。Myozyme(登録商標)(0.9μM)を、pH7.4又はpH5.2緩衝液中で、100μMの1-DNJ-HClを有し又は有さずに37℃でインキュベートし、タンパク質折り畳みを24時間に亘って毎時監視した。
図2A及び2Bは、GAA変性が酵素活性の損失と相関することを示す(2つの図にて、曲線を菱形曲線と比較されたい)。より重要なことには、これらの結果は、1-DNJが血漿pHにおいてGAA変性を防止し、酵素活性の損失を防止できることを示す。
【
図3】1-DNJ-HClの同時の経口投与を有し及び有さずに、ERTを受容したGAA KOマウスに関するGAA活性試験の結果を示す。Myozyme(登録商標)は、単独で、又は、Myozyme(登録商標)投与の30分前と、8、16及び24時間後の10、100若しくは1000mg/kgの1-DNJ-HClとの組み合わせで、用量10mg/kgで、週に1回、3週間迄、IV注入を介して投与された。これらの結果は、Myozyme(登録商標)組織取り込み(GAA活性の尺度としての)が、注射から7日後に低下したことを示す。1-DNJ-HClとMyozyme(登録商標)との共投与は、注射から7日後迄の間、Myozyme(登録商標)取り込みの用量依存的増大を促進する。1-DNJ-HClの効果は、週に1、2又は3回のMyozyme(登録商標)の注入のいずれも、注射から4及び7日後において、より明白かつ有意であった(p<0.05t検定、対Myozyme(登録商標)単独)。
【
図4】1-DNJ-HClが約1μMのIC
50によりGAAを阻害することを示す。
【
図5】タンパク質変性を誘導するのに熱を利用する熱安定性アッセイの結果を示し、このような変性は、疎水性アミノ酸(折り畳まれたタンパク質内では曝露されていない)に結合した後、蛍光を発するSYPRO Orange染料を使用して監視される。GAAの融解温度が用量依存的に増大することから明かなように、1-DNJ-HClはGAA熱安定性を増大させる。
【
図6】経口投与された3mg/kg又は30mg/kgの1-DNJ-HClを有し及び有しない、10mg/kgのrhGAA又は生理食塩水のIV投与から24時間に亘る、ラットにおけるGAA活性の結果を示す。rhGAA又は生理食塩水を、1-DNJ-HCl投与の30分後に投与した。この実施例では、1-DNJ-HClは、投与後の酵素活性の損失を抑制し、それによりrhGAAのインビボでの半減期を延長した。rhGAAのインビボでの半減期は、1.4±0.2時間(0mg/kgの1-DNJ-HCl)から2.1±0.2時間(3mg/kgの1-DNJ-HCl)及び3.0±0.4時間(30mg/kgの1-DNJ-HCl)に延長した。
【
図7】GAA KOマウスに投与した際の、ERT単独療法及びERT/ASSC併用療法(rhGAA+1-DNJ-HCl)に関する心臓及び横隔膜組織内のGAA活性を示す。心臓及び横隔膜内でのrhGAA取り込みは、1-DNJ-HClと共投与された際に増大する。
【
図8】1-DNJ-HClが血中でrhGAA酵素不活性化を防止することを示す。Myozyme(登録商標)(0.5μM)を、50μM 1-DNJ-HClの存在下又は不在下、クエン酸塩で抗凝固処理した全血中にて37℃でインキュベートした。アリコートを0、2、4、8及び24時間にて収集し、遠心分離して血漿を得た。次いで、これらの血漿サンプルを酢酸カリウム緩衝液(pH4.0)中で希釈し、4-メチルウンベリフェリル(methylumbeliferyl)-α-グルコース(4-MUG)蛍光発生基質を使用して、GAA活性に関してアッセイした。各時点における測定した個人サンプルに関するGAA活性を、0時間に対して正規化し、初期活性の%として表した。4つの独立実験からのデータを分析して平均(及び標準偏差)を得、時間に対してプロットして、この時間経過に亘る酵素活性の損失を評価した。
【
図9】低い1-DNJ-HCl濃度が、血中でrhGAA酵素不活性化を防止することを示す。Myozyme(登録商標)(0.5μM)を、様々な1-DNJ-HCl濃度(0~100μM)と共に、クエン酸塩で抗凝固剤処理した全血中にて37℃でインキュベートした。アリコートを0、3及び6時間にて収集し、遠心分離して血漿を得た。次いで、これらの血漿サンプルを酢酸カリウム緩衝液(pH4.0)中で希釈し、4-メチルウンベリフェリル(methylumbeliferyl)-α-グルコース(4-MUG)蛍光発生基質を使用して、GAA活性に関してアッセイした。各時点における測定した個人サンプルに関するGAA活性を、0時間に対して正規化し、初期活性の%として表した。残留GAA酵素活性を時間に対してプロットして、この時間経過に亘る1-DNJ-HCl濃度に関連した酵素活性の損失を評価した。
【
図11】1-DNJ-HClと共投与したMyozyme(登録商標)が、Myozyme(登録商標)単独と比較して、GAA KOマウスにおいて有意により高い組織グリコーゲン低下をもたらしたことを示す。Myozyme(登録商標)単独によるグリコーゲン低下は、未処置マウスに対して、心臓、横隔膜、ヒラメ筋及び四頭筋内で各々93±1%、41±4%、69±3%及び18±4%であった。1-DNJ-HClと共投与したMyozyme(登録商標)によるグリコーゲン低下は、各々96±0.6%、66±5%、82±3%及び23±3%であった。
【
図12】1mM DNJを25mg/mL Myozyme(登録商標)と組み合わせることにより、中性pH7.4及び37℃でMyozyme(登録商標)の凝集が低減されることを示す。凝集は、4週間のインキュベーション期間後に評価した。
【
図13】10mg/kg Myozyme(登録商標)と等価な量で共処方された30mg/kg DNJを、尾静脈注射を介して投与することにより、四頭筋内においてMyozyme(登録商標)の循環血漿半減期及び組織取り込みが増大したことを示す。
【
図14】20mg/kgのMyozyme(登録商標)と共処方されたDNJの皮下投与が、DNJを有しない20mg/kgのMyozyme(登録商標)の投与と比較して、rhGAAの循環レベルを増大させたことを示す。
【
図15】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、注射部位における皮膚内でのrhGAA活性を示す。
【
図16A】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、腹側皮膚内でのrhGAA活性を示す。
【
図16B】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から14日後の、腹側皮膚内でのグリコーゲンレベルを示す。
【
図17A】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、心臓内でのrhGAA活性を示す。
【
図17B】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から14日後の、心臓内でのグリコーゲンレベルを示す。
【
図18A】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、舌内でのrhGAA活性を示す。
【
図18B】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から14日後の、舌内でのグリコーゲンレベルを示す。
【
図19A】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、横隔膜内でのrhGAA活性を示す。
【
図19B】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から14日後の、横隔膜内でのグリコーゲンレベルを示す。
【
図20A】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、二頭筋内でのrhGAA活性を示す。
【
図20B】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から14日後の、二頭筋内でのグリコーゲンレベルを示す。
【
図21A】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、三頭筋内でのrhGAA活性を示す。
【
図21B】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から14日後の、三頭筋内でのグリコーゲンレベルを示す。
【
図22A】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、腓腹筋内でのrhGAA活性を示す。
【
図22B】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から14日後の、腓腹筋内でのグリコーゲンレベルを示す。
【
図23A】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、四頭筋内でのrhGAA活性を示す。
【
図23B】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から14日後の、四頭筋内でのグリコーゲンレベルを示す。
【
図24】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、ヒラメ筋内でのrhGAA活性を示す。
【
図25】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後の、肝臓内でのrhGAA活性を示す。
【
図26】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から3日後に試験した、様々な組織内でのrhGAA活性の比較を示す。
【
図27A】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から2時間(A)後の血漿rhGAA活性を示す。
【
図27B】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から4時間(B)後の血漿rhGAA活性を示す。
【
図28】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から2時間後の血漿rhGAA活性及び血漿GAAタンパク質レベル(ウェスタンブロットにより測定して)を示す。
【
図29】実施例13に記載した、rhGAA又はrhGAA及び1-DNJの共製剤のマウスへの最終皮下投与から4時間後の血漿rhGAA活性及び血漿GAAタンパク質レベル(ウェスタンブロットにより測定して)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
5.発明を実施するための形態
本発明は、少なくとも一部は、酸α-グルコシダーゼ(GAA)酵素(例えば、組み換えヒトGAA(rhGAA))をGAA酵素(例えば1-デオキシノジリマイシン)のためのASSCと組み合わせることにより、いずれかの処置単独と比較して、インビボでのGAA活性の驚くほどの増大がもたらされるという発見に基づいている。本発明はまた、少なくとも一部は、GAA酵素(例えばrhGAA)が-インビトロ及びインビボの両方で-GAA酵素のためのASSCの添加後、適切な立体構造を安定化させるという発見に基づいている。本発明はまた、少なくとも一部は、ASSCを高濃度のGAAと組み合わせることにより、高いGAA濃度で通常生じるGAA凝集が低減されるという発見に基づいている。
【0030】
明確さのために、また限定する目的ではなく、この詳細な記載は、以下のサブ部分に分割される。
(i)定義;
(ii)ポンペ病;
(iii)GAA及びASSCの獲得;
(iv)ERT及びASSCを用いたポンペ病の処置;
(v)医薬組成物;
(vi)インビトロでの安定性;並びに
(vii)インビボでの安定性。
【0031】
5.1 定義
本明細書で一般的に使用される用語は、本発明の状況、及び各用語が使用される特定の状況において、当技術分野にて通常の意味を有する。所定の用語は、本発明の組成物及び方法、並びにそれらの作製及び使用方法の説明において更なるガイダンスを実践者に提供するために、下記又は本明細書の他の箇所に論じられる。
【0032】
本発明によれば、「対象」又は「患者」は、ヒト又は非ヒト動物である。動物対象はヒトが好ましいが、本発明の化合物及び組成物は、例えばイヌ、ネコ、及び様々な他のペット等の飼い慣らされた種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の家畜種;例えば、野生又は動物園内の野生動物;並びにニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、鳴鳥類等の鳥類の処置のための獣医学においても用途を有する。
【0033】
用語「酵素補充療法」又は「ERT」は、非天然の、精製された酵素を、それらの酵素が欠損した個人内に導入することを指す。投与される酵素は、天然源から又は組み換え発現により得ることができる。この用語はまた、精製酵素を、別様に精製酵素の投与を必要とする又はこのような投与から利益を得る、例えばタンパク質不全症に苦しむ個人に導入することを指す。導入酵素は、インビトロで生成された、精製された組み換え酵素であってもよく、又は単離された組織若しくは流体、例えば胎盤若しくは畜乳、若しくは植物から精製された酵素であってもよい。
【0034】
用語「適切な立体構造を安定化させる」は、野生型又は突然変異体タンパク質の構造がその天然の形態又は適切な形態として維持され得るように、化合物若しくはペプチド若しくは他の分子が野生型タンパク質、又は、このような野生型タンパク質の野生型機能をインビトロ及びインビボで行うことができる突然変異体タンパク質と関連する能力を指す。この効果は、(i)タンパク質の有効期間の延長;又は(ii)タンパク質の単位/量当たりの活性の向上;又は(iii)インビボでの効力の向上のうちの1つ以上を介して実践的に現れ得る。これは、発現中、ERからの収量の増大;又は温度上昇に起因するアンフォールディングに対する耐性の増大(例えば、熱安定性アッセイにて決定して)、又はカオトロピック剤の存在を介して実験的に、及び類似した手段により観察することができる。
【0035】
本明細書で使用される用語「活性部位」は、ある特定の生物学的活性を有するタンパク質の領域を指す。例えば、活性部位は、基質又は他の結合パートナーに結合し、化学結合の形成及び切断に直接参加するアミノ酸残基に寄与する部位であってもよい。本発明における活性部位は、酵素の触媒部位、抗体の抗原結合部位、受容体のリガンド結合ドメイン、制御因子の結合ドメイン、又は分泌タンパク質の受容体結合ドメインを包含してもよい。活性部位はまた、トランス活性化、タンパク質-タンパク質相互作用、又は転写因子及び制御因子のDNA結合ドメインも包含し得る。
【0036】
本明細書で使用される用語「活性部位特異的シャペロン」は、タンパク質の活性部位と特異的に可逆的に相互作用して、安定な分子立体構造の形成を向上させる、タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物等を含む任意の分子を指す。本明細書で使用される「活性部位特異的シャペロン」は、Bip、カルネキシン若しくはカルレティキュリン等の、細胞のER内に存在する内因性の一般的シャペロン、又は、重水、DMSO若しくはTMAO等の一般的な非特異的化学シャペロンを含まない。
【0037】
本明細書で使用される用語「精製された」は、そこから材料が得られた天然材料を含む無関連材料、即ち汚染物質の存在を低減又は排除する条件下で単離されている材料を指す。例えば、精製タンパク質は、細胞内で関連している他のタンパク質又は核酸を実質的に含まないことが好ましく;精製核酸分子は、細胞内でこのような核酸分子と共に見出され得るタンパク質又は他の無関連核酸分子を実質的に含まないことが好ましい。本明細書で使用される用語「実質的に含まない」は、材料の分析試験の状況下で操作的に使用される。汚染物質を実質的に含まない精製材料は、少なくとも95%純粋;より好ましくは少なくとも97%純粋、尚より好ましくは少なくとも99%純粋であることが好ましい。純度は、クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、イムノアッセイ、組成物分析、生物学的アッセイ、及び当技術分野にて既知の他の方法により評価することができる。特定の実施形態では、精製された、は、汚染物質のレベルが、ヒト又は非ヒト動物に対する安全な投与のために、規制当局により許容可能なレベルを下回ることを意味する。
【0038】
本明細書で使用される用語「突然変異体」及び「突然変異」は、遺伝子材料、例えばDNAにおける任意の検出可能な変化、又はそのような変化の任意のプロセス、機構若しくは結果を意味する。突然変異体及び突然変異は、遺伝子の構造(例えばDNA配列)が変更された遺伝子突然変異、任意の突然変異プロセスにより生じた任意の遺伝子又はDNA、及び改変遺伝子又はDNA配列により発現される任意の発現生成物(例えばRNA、タンパク質又は酵素)を含む。
【0039】
本明細書で使用される用語「突然変異体タンパク質」は、タンパク質配列の変更をもたらす遺伝子突然変異を含む遺伝子から翻訳されたタンパク質を指す。特定の実施形態では、そのような突然変異により、タンパク質は、ER内に通常存在する条件下で、その天然の立体構造を達成することが不可能となる。この立体構造の達成の障害により、これらのタンパク質は、タンパク質輸送システムにおける通常の経路を介して細胞内の適切な位置へ輸送されるのではなく、分解されることになる。他の突然変異は、活性の低下、又はより急速な代謝回転をもたらし得る。
【0040】
本明細書で使用される用語「野生型遺伝子」は、インビボで通常の生物学的機能活性を有することが可能なタンパク質をコードする核酸配列を指す。野生型核酸配列は、生物活性に殆ど又は全く影響しないアミノ酸置換をもたらす限り、公表されている既知の配列とは異なるヌクレオチド変化を含んでもよい。用語、野生型はまた、内因性又は天然タンパク質に対して増大又は向上された活性が可能なタンパク質をコードするように操作された核酸配列も含み得る。
【0041】
本明細書で使用される用語「野生型タンパク質」は、インビボで発現又は導入された際に機能的な生物学的活性を有することが可能な、野生型遺伝子によりコードされた任意のタンパク質を指す。用語「通常の野生型活性」は、細胞内でのタンパク質の通常の生理学的機能を指す。そのような機能性は、タンパク質の機能性を確立するのに既知の、任意の手段により試験することができる。
【0042】
用語「遺伝子改変された」は、遺伝子生成物をコードするコード配列を、そのコード配列の発現を制御する制御要素と共に含む核酸の導入後、特定の遺伝子生成物を発現する細胞を指す。核酸の導入は、遺伝子ターゲティング及び相同組み換えを含む、当技術分野にて既知の任意の方法により達成することができる。本明細書で使用されるように、この用語はまた、例えば遺伝子活性化技術によって、それらの細胞により通常発現されない内因性遺伝子又は遺伝子生成物を発現又は過剰発現するように操作されている細胞を含む。
【0043】
「薬学的に許容され得る」というフレーズは、本発明の医薬組成物に関連して使用されているかいないかに係わらず、生理学的に容認でき、典型的にはヒトに投与された際に望ましくない反応を生じない分子存在物及び組成物を指す。好ましくは、本明細書で使用される用語「薬学的に許容され得る」は、動物、及びより詳細にはヒトでの使用のために、連邦若しくは州政府の規制当局により認可され、又は米国薬局方(U.S.Pharmacopeia)若しくは他の一般に認識されている薬局方にリストされていることを意味する。用語「担体」は、化合物と共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤又はビヒクルを指す。そのような医薬担体は、水及び油等の無菌液体であってもよい。水又は水溶液生理食塩水溶液、並びにデキストロース及びグリセロール水溶液は、担体、特に注射用溶液として使用するのに好ましい。好適な医薬担体は、E.W.Martin,第18版による「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0044】
用語「治療的に有効な用量」及び「有効な量」は、治療的応答をもたらすのに十分な化合物の量を指す。ASSC及びGAAが複合体として投与される実施形態では、用語「治療的に有効な用量」及び「有効な量」は、治療的応答をもたらすのに十分な複合体の量を指し得る。治療的応答は、使用者(例えば、臨床医)が、治療法に対する有効な応答と認識するであろう任意の応答であってもよい。それ故、治療的応答は、一般に、疾病又は疾患の1つ以上の症状又は徴候の回復であろう。
【0045】
精製された治療的タンパク質のインビトロでの生成、輸送又は保管中に阻害的であるASSCの濃度は、インビボでの投与後の、ASSCの希釈(及び結果としての、平衡の変化による結合のシフト)、生物学的利用能及び代謝により本発明の目的のための「有効な量」を尚構成し得ることに留意するべきである。
【0046】
用語「アルキル」は、不飽和を含まず、単一結合によって分子の残りの部分に結合している炭素及び水素原子のみからなる直鎖又は分岐鎖の炭化水素、例えばメチル、エチル、N-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)を指す。
【0047】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含み、直鎖又は分岐鎖であってもよいC2~C20脂肪族炭化水素基、例えばエテニル、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニルを指す。
【0048】
用語「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の、不飽和の非芳香族単環式-又は多環式炭化水素環系を示す。多環式シクロアルキル基の例としては、ペルヒドロナフチル、アダマンチル及びノルボルニル基の架橋環式基、又はスピロ二環式基、例えばスピロ(4,4)ノナ-2-イルが挙げられる。
【0049】
用語「アリール」は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル等の、約6~約14個の範囲内の炭素原子を有する芳香族ラジカルを指す。
【0050】
用語「複素環式」は、炭素原子と、窒素、酸素及び硫黄からなる群から選択される1~5個のヘテロ原子とからなる、安定な3~15員環ラジカルを指す。本発明の目的のために、複素環ラジカルは、単環式又は二環式の環系であってもよく、これらは縮合又は架橋環系を含んでもよく、また、複素環ラジカル内の窒素、炭素、酸素又は硫黄原子は、任意選択で様々な酸化状態に酸化されてもよい。加えて、存在する場合、窒素原子は、任意選択で第四級化されてもよく;また環ラジカルは、部分的又は完全に飽和されていてもよい(即ち、複素環式芳香族又はヘテロアリール芳香族)。
【0051】
複素環ラジカルは、安定な構造の形成をもたらすように、いずれかのへテロ原子又は炭素原子にて主構造に結合し得る。
【0052】
用語「ヘテロアリール」は、環が芳香族である複素環を指す。
【0053】
「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換シクロアルキル」、「置換アリール」及び「置換ヘテロアリール」における置換基は、同一でも又は異なっていてもよく、1つ以上は、水素、ハロゲン、アセチル、ニトロ、カルボキシル、オキソ(=O)、CF3、-OCF3、NH2、-C(=O)-アルキル2、OCH3、又は任意選択で、アルキル、アルコキシ及びアリールから選択される置換された基の群から選択される。
【0054】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素のラジカルを指す。
【0055】
5.2 ポンペ病
ポンペ病は、リソソームグリコーゲン代謝を損なう、欠損した酸αグルコシダーゼ(GAA)活性により特徴付けられる、常染色体劣性LSDである。酵素欠損は、リソソームグリコーゲン蓄積に繋がり、進行性の骨格筋脱力、心機能の低下、呼吸不全、及び/又は、疾病の後期におけるCNS障害をもたらす。GAA遺伝子における遺伝子突然変異は、酵素の発現の低下、又は、安定性及び/若しくは生物学的活性が変更された酵素の突然変異体形態の生成をもたらし、最終的に疾病に繋がる(一般に、Hirschhorn R,1995,Glycogen Storage Disease Type II:Acid α-Glucosidase(Acid Maltase)Deficiency,The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease,Scriver et al.,編,McGraw-Hill,New York,第7版,pp.2443-2464を参照されたい)。ポンペ病の認識された3つの臨床形態(乳児、若年及び成人)は、残留α-グルコシダーゼ活性のレベルと相関する(Reuser A J et al.,1995,Glycogenosis Type II(Acid Maltase Deficiency),Muscle&Nerve Supplement 3,S61-S69)。ASSC(他の箇所で「薬理学的シャペロン」とも称される)は、リソソーム貯蔵疾患(例えばポンペ病)等の遺伝子疾病の処置のための見込みのある新しい治療的アプローチとなる。
【0056】
乳児型ポンペ病(I型又はA型)は、最も一般的かつ最も重篤であり、人生の2年以内での成長の不全、全身性緊張低下、心臓肥大症及び心呼吸系不全症により特徴付けられる。若年型ポンペ病(II型又はB型)は、中間の重症度であり、心拡大を有しない筋症状の優勢により特徴付けられる。若年型ポンペの個人は、通常、呼吸不全により、20歳に達する前に死亡する。成人型ポンペ病(III型又はC型)は、多くの場合、10代、又は60代という遅くに、緩徐進行性のミオパシーとして呈される(Felice K J et al.,1995,Clinical Variability in Adult-Onset Acid Maltase Deficiency:Report of Affected Sibs and Review of the Literature,Medicine 74,131-135)。
【0057】
ポンペでは、α-グルコシダーゼがグリコシル化、リン酸化、及びタンパク質分解工程により翻訳後に広範に改変されることが示されている。最適なグリコーゲン触媒作用には、リソソーム内でのタンパク質分解によって110キロダルトン(kDa)の前駆体を76及び70kDaの成熟形態に変換することが必要である。
【0058】
本明細書で使用される用語「ポンペ病」は、全部の型のポンペ病を指す。本願に開示した製剤及び投与計画は、例えばI型、II型又はIII型ポンペ病の処置に使用することができる。
【0059】
5.3 GAA及びASSCの獲得
GAAは、GAAを内因的に発現する細胞から得ることができ、又はGAAは、本明細書に記載した組み換えヒトGAA(rhGAA)であってもよい。非限定的な一実施形態において、rhGAAは、完全長野生型GAAである。別の非限定的な実施形態では、rhGAAは、野生型GAA内に存在するアミノ酸残基のサブセットを含み、このようなサブセットは、基質結合及び/又は基質還元のための活性部位を形成する、野生型GAAのアミノ酸残基を含む。従って、本発明は、基質結合及び/又は基質還元のための野生型GAA活性部位と、野生型GAA内に存在し得る又はし得ない他のアミノ酸残基とを含む融合タンパク質であるrhGAAを想定する。
【0060】
GAAは、商業的供給源から得ることでき、又は当業者に既知の合成技術により得ることができる。野生型酵素は、組み換え細胞発現系(例えば、哺乳類細胞又は昆虫細胞-一般に、Desnick et al.に付与された米国特許第5,580,757号明細書;Selden et al.に付与された米国特許第6,395,884号明細書及び米国特許第6,458,574号明細書;Calhoun et al.に付与された米国特許第6,461,609号明細書;Miyamura et al.に付与された米国特許第6,210,666号明細書;Selden et al.に付与された米国特許第6,083,725号明細書;Rasmussen et al.に付与された米国特許第6,451,600号明細書;Rasmussen et al.に付与された米国特許第5,236,838号明細書;並びにGinns et al.に付与された米国特許第5,879,680号明細書を参照されたい)、ヒト胎盤、又は畜乳(Reuser et al.に付与された米国特許第6,188,045号明細書を参照)から精製することができる。注入後、外因性酵素は、非特異的又は受容体特異的機構を介して組織によって取り込まれると予想される。一般に、取り込み効率(ASSCを使用せずに)は高くなく、また外因性タンパク質の循環時間は短い(Ioannu et al.,Am.J.Hum.Genet.2001;68:14-25)。加えて、外因性タンパク質は不安定であり、インビトロで急速な細胞内分解に供される。
【0061】
医薬に好適なGAAを獲得する他の合成技術は、例えばLebowitz et al.に付与された米国特許第7,560,424号明細書及び米国特許第7,396,811号明細書、Lebowitz et al.に対する米国特許出願公開第2009/0203575号明細書、米国特許出願公開第2009/0029467号明細書、米国特許出願公開第2008/0299640号明細書、米国特許出願公開第2008/0241118号明細書、米国特許出願公開第2006/0121018号明細書及び米国特許出願公開第2005/0244400号明細書、米国特許第7,423,135号明細書、米国特許第6,534,300号明細書及び米国特許第6,537,785号明細書;国際公開第2005/077093号パンフレット及び米国特許出願公開第2007/0280925号明細書、並びに米国特許出願公開第2004/0029779号明細書に見出すことができる。これらの参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
一実施形態において、GAAは、ヒト酵素酸α-グルコシダーゼ(GAA)からなるアルグルコシダーゼαであり、これは、この遺伝子の観察された9つのハプロタイプの最も優勢なものによりコードされ、チャイニーズハムスター卵巣細胞株内にて組み換えDNA技術により生成される。アルグルコシダーゼαは、Myozyme(登録商標)及びLumizyme(登録商標)としてGenzyme Corporation(Cambridge,MA)から入手可能である。
【0063】
ASSCは、当業者に既知の合成技術を用いて得ることができる。例えば、本願に使用され得る、1-DNJ等のASSCは、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,274,597号明細書及び米国特許第6,583,158号明細書、並びに米国特許出願公開第2006/0264467号明細書に記載されているように調製することができる。
【0064】
本願の一実施形態において、ASSCは、α-ホモノジリマイシンであり、GAAは、hrGAA(例えばMyozyme(登録商標)又はLumizyme(登録商標))である。代替的な実施形態では、ASSCは、カスタノスペルミンであり、GAAは、hrGAA(例えばMyozyme(登録商標)又はLumizyme(登録商標))である。ASSC(例えばα-ホモノジリマイシン及びカスタノスペルミン)は、本発明に従った潜在的なASSCの供給源を提供する合成ライブラリーから得ることができる(例えばNeedels et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1993;90:10700-4;Ohlmeyer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1993;90:10922-10926;Lam et al.,PCT国際公開第92/00252号パンフレット;Kocis et al.,PCT国際公開第94/28028号パンフレット参照)。合成化合物ライブラリーは、Maybridge Chemical Co.(Trevillet,Cornwall,UK)、Comgenex(Princeton,N.J.),Brandon Associates(Merrimack,N.H.)及びMicrosource(New Milford,Conn.)から市販されている。レアケミカルライブラリーは、Aldrich(Milwaukee,Wis.)から入手可能である。代替的に、細菌、真菌、植物及び動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーは、例えばPan Laboratories(Bothell,Wash.)若しくはMyco Search(NC)から入手可能であり、又は容易に生成することができる。加えて、天然及び合成的に生成されたライブラリー及び化合物は、Res.1986;155:119-29により容易に修飾される。
【0065】
一実施形態において、本発明に有用なASSC’sは、リソソーム酵素の阻害剤であり、Asano et al.,J.Med.Chem.1994;37:3701-06;Dale et al.,Biochemistry1985;24:3530-39;Goldman et al.,J.Nat.Prod.1996;59:1137-42;Legler et al,Carbohydrate Res.1986;155:119-29に記載されているようなグルコース及びガラクトースイミノ糖誘導体を含む。それらの誘導体は、Toronto Research Chemicals,Inc.(North York,On.Canada)及びSigma等の商業的供給源から購入できるものを含む。
【0066】
5.4 ERT及びASSCを用いたポンペ病の処置
本発明によれば、GAA(例えばrhGAA)を、GAAのためのASSCと組み合わせて使用する方法が提供される。本発明の一実施形態は、GAA(例えばhrGAA ERT)及びASSCの組み合わせ療法を提供する。例えば、ASSCシャペロン1-デオキシノジリマイシン-HClは、突然変異体GAAに結合し、GAAが適切な立体構造へと安定化する能力を増大させる。
【0067】
本発明の一実施形態は、ASSC及びhrGAA酵素補充療法を用いて、IVS 1(-13T>G)スプライシング欠損を有するポンペサブセット患者を処置する方法を提供する。この共通のスプライシング突然変異を有する遅発型ポンペ患者に由来する細胞株において、1-デオキシノジリマイシン-HClは、単独で及びhrGAAとの組み合わせでGAAレベルを増大させた。
【0068】
本発明の非限定的な一実施形態では、本発明は、1-デオキシノジリマイシン-HCl、又はその薬学的に許容され得る塩を、GAAの投与前、又は投与と同時に、又は投与後に、用量約10mg/kg~1000mg/kgで対象に投与し、好ましくは経口的に投与し得る。非限定的な一実施形態では、1-デオキシノジリマイシン-HCl及び組み換えヒトGAAは、細胞酵素活性、グリコーゲン低下及びポンペ病の処置に対して驚くべき効力を示す。ラットでは、組み換えヒトGAA(rhGAA)の血漿半減期は、1-デオキシノジリマイシン-HCl(30mg/kg p.o.)がrhGAA注射の30分前の投与を含む投与計画にて投与された際、2倍に延長した。GAA KOマウスでは、rhGAAの取り込みは、1-デオキシノジリマイシン-HCl(100mg/kg p.o.)が、rhGAA注射の前の投与を含む投与計画にて投与された際、心臓及び横隔膜にておよそ2倍増大した。これらの結果は、ASSCとrhGAAとの共投与が、インビボでの酵素の曝露及び組織取り込みを、驚くべき量で増大させることを示す。
【0069】
例えば、本発明の一実施形態は、ポンペ病の処置方法を提供し、このような方法は、GAA注入前、及びGAA注入後の規則的な間隔での、約1~約5000mg/kgのASSC(例えば1-DNJ-HCl)と組み合わせた、GAA(例えばrhGAA)の週に2回、週に1回、又は2週間に1回、約10週間迄の投与を含む。例えば、ASSCは、注入の2時間以内に投与された後、注入後、24時間以内に1回、2回、3回、4回、5回又は6回、規則的な間隔で投与されてもよい。
【0070】
特定の一実施形態では、GAAはMyozyme(登録商標)であり、注入を介して週に1回投与され、ASSC(例えば1-DNJ-HCl)は、注入の30分前に10mg/kg、100mg/kg又は1000mg/kgで投与された後、各Myozyme(登録商標)注入から8、16及び24時間後に投与される。
【0071】
別の特定の実施形態では、GAAはLumizyme(登録商標)であり、注入を介して週に1回投与され、ASSC(例えば1-DNJ-HCl)は、注入の30分前に10mg/kg、100mg/kg又は1000mg/kgで投与された後、各Lumizyme(登録商標)注入から8、16及び24時間後に投与される。
【0072】
任意の特定の理論に束縛されるものではないが、酸α-グルコシダーゼ(GAA)は、リソソームグリコーゲンから末端グルコース残基を除去するように機能すると考えられる。いくつかの遺伝子突然変異は、GAA輸送及び成熟を低減する。薬理学的シャペロン1-DNJは、酵素に選択的に結合して適切な立体構造とし、このような酵素を安定化させることによりGAAレベルを増大させ、このことはリソソームへの適切なタンパク質輸送を再建する。
【0073】
代替的な実施形態では、ASSCは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/134628号パンフレットに記載されているように投与される。
【0074】
いくつかの実施形態では、投与経路は、皮下である。他の投与経路は、静脈内、動脈内、腹腔内、眼内、筋肉内、頬側、直腸内、腟内、眼窩内、脳内、皮内、頭蓋内、脊髄内、心室内、くも膜下腔内、大槽内、嚢内、肺内、鼻孔内、経粘膜、経皮、又は吸入を介して、を含む経口又は非経口であってもよい。肺内送達方法、機器及び薬物調製物は、例えば、各々参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,785,049号明細書、米国特許第5,780,019号明細書及び米国特許第5,775,320号明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、皮内送達の方法は、パッチを介したイオン泳動的送達によるものであり;そのような送達の一例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,843,015号明細書に教示されている。
【0075】
投与は、調製物のボーラスの周期的注射によるもの、又は長期間に亘る持続放出剤形として、又は、例えば、外部(例えばIVバッグ)若しくは内部(例えば、生体浸食性インプラント、バイオ人工臓器、又は移植されたGAA生成細胞の集団)であるリザーバからの静脈内若しくは腹腔内投与によるものであってもよい。例えば、各々参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,407,957号明細書及び米国特許第5,798,113号明細書を参照されたい。肺内送達方法及び機器は、例えば、各々参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,654,007号明細書、米国特許第5,780,014号明細書及び米国特許第5,814,607号明細書に記載されている。他の有用な非経口送達システムとしては、エチレン-ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入システム、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、針送達注射、無針注射、ネブライザー、エアロゾライザー(aeorosolizer)、電気穿孔法及び経皮パッチが挙げられる。無針注射器装置は、その明細書が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,879,327号明細書;米国特許第5,520,639号明細書;米国特許第5,846,233号明細書及び米国特許第5,704,911号明細書に記載されている。本明細書に記載した任意のGAA調製物を、これらの方法で投与することができる。
【0076】
製剤の送達は、数時間、1~数週間、1~数ヶ月の範囲、又は1年以上迄の所定の投与期間に亘って連続的であってもよい。所定の実施形態では、剤形は、長期間に亘るGAAの送達に適合されたものである。そのような送達装置は、GAAの数時間(例えば2時間、12時間、又は24時間~48時間以上)、~数日間(例えば2~5日間以上、約100日間以上)、~数ヶ月又は数年の投与に適合され得る。これらの実施形態のいくつかでは、装置は、約1ヶ月~約12ヶ月以上の範囲の期間の送達に適合されている。GAA送達装置は、GAAを、例えば約2時間~約72時間、約4時間~約36時間、約12時間~約24時間;約2日間~約30日間、約5日間~約20日間、約7日間~約100日間以上、約10日間~約50日間;約1週間~約4週間;約1ヶ月~約24ヶ月以上、約2ヶ月~約12ヶ月、約3ヶ月~約9ヶ月;又は、必要に応じてこれらの範囲内の増分範囲(incremental range)を含む他の時間範囲、個人に投与するように適合されているものであってもよい。
【0077】
所定の実施形態では、本発明の方法は、用量約0.1~約50mg/kgのGAAを個人に投与、例えば皮下投与することを含み、用量は、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、又は6日に1回投与される。所定の実施形態では、本願の製剤は、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、又は週に7回投与される。
【0078】
所定の実施形態では、本願の方法は、GAA及びASSCを含む共製剤を個人に投与することを含み、共製剤は、皮下投与される。所定の実施形態では、共製剤中のGAAの用量は約0.1~約5000mg/kg、又は約10~約4000mg/kg、又は約25~約3000mg/kg、又は約50~約2000mg/kg、又は約100~約1000mg/kg、又は約200~約500mg/kgである。
【0079】
所定の実施形態では、共製剤中のGAAの用量は、約0.1~約100mg/kg、又は約1~約80mg/kg、又は約5~約50mg/kg、又は約10~約40mg/kg、又は約15~約25mg/kgである。
【0080】
所定の実施形態では、共製剤中のrhGAAの用量は、約20mg/kgである。
【0081】
所定の実施形態では、共製剤中のASSCの用量は、約0.1~約5000mg/kg、又は約10~約4000mg/kg、又は約25~約3000mg/kg、又は約50~約2000mg/kg、又は約100~約1000mg/kg、又は約200~約500mg/kgである。
【0082】
所定の実施形態では、共製剤中のASSCの用量は、約0.1~約100mg/kg、又は約1~約80mg/kg、又は約5~約50mg/kg、又は約10~約40mg/kg、又は約15~約25mg/kgである。
【0083】
所定の実施形態では、共製剤中のASSCの用量は、約30mg/kgである。
【0084】
所定の実施形態では、用量は、個人の肝臓内で毒性レベルのGAAをもたらさない。いくつかの実施形態では、GAAは、用量の投与から約24時間以内に、対象の組織、例えば筋組織内でGAAのピーク濃度をもたらすのに十分な用量で投与される。所定の実施形態では、GAAは、用量の投与から約10~約50時間、又は約45、40、35、30、25、又はそれより短い時間以内に、対象の組織内でGAAのピーク濃度をもたらすのに十分な用量で投与される。いくつかの実施形態では、GAAの製剤は、単一用量製剤である。いくつかの実施形態では、GAAの製剤は、多用量製剤である。
【0085】
本発明のGAA調製物は、必要な総用量が1ミリリットル以上、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ミリリットル以上の単一皮下注射にて投与され得るように処方されてもよい。調製物は、数個の異なる注射部位にて皮下投与されるよう処方されてもよい。1又は2ミリリットルの注射容積を可能にするために、本発明のGAA調製物は、好ましい用量が1~2ミリリットルの容積で送達される濃度で処方されてもよい。GAA調製物の皮下注射は、特に自己投与を可能にすることにより患者に都合がよいという利点を有し、一方、例えば静脈内投与と比較して長い血漿半減期ももたらす。血漿半減期の延長は、より長時間に亘る有効な血漿GAAレベルの維持をもたらし、その利益は、注射されたGAAに対する臨床的に罹患した組織の曝露を増大させる結果、それらの組織内へのGAAの取り込みを増大させ得ることである。これにより、患者に対するより有益な効果及び/又は投与頻度の低減が可能となる。更に、本明細書に述べるように、再充填可能な注射ペン及び無針注射装置等の、患者の利便性のために設計された多様な装置を、本発明のGAA調製物と共に使用することができる。ASSCと共処方されたGAAは、室温で長期間安定であるため、調製物は患者の身体の傍らでカートリッジ内に保持することができ、低用量投与の反復、又は連続的な低容量投与を可能にして、酵素投与の定常状態を提供する。そのような投与は、静脈内注入中に投与される高用量の酵素補充療法(ERT)の潜在的な副作用を回避し得る。
【0086】
5.5 医薬組成物
本発明の化合物及び組成物は、薬学的に許容され得る担体又は賦形剤との混合物により医薬組成物として処方され得る。
【0087】
一実施形態において、ASSC及びGAAは、単一組成物(即ち、共製剤)に処方される。そのような組成物は保管中(即ち、インビトロで)及びインビボで対象に投与した後の両方でGAAの安定性を向上させることによって、循環半減期、組織取り込みを増大させ、GAAの治療効力の増大をもたらす。製剤は、静脈内、皮下及び腹腔内投与を含む非経口投与に好適であることが好ましいが、経口、鼻孔内、又は経皮等の他の投与経路に好適な製剤も想定される。
【0088】
本発明は、当技術分野にて承認されている製剤と比較して、改善された特性を有する液体医薬製剤(例えばGAA及びASSCを含む製剤)に関する。本発明は、ASSCをGAAと組み合わせることにより、製剤中のGAAの濃度を、ASSCが存在しない場合にGAA凝集体の形成を通常もたらす量に増大させることができるという、驚くべき発見に基づいている。高濃度のGAAにも係わらず、本発明の製剤は、例えば製造、保管及び/若しくは反復した凍結/解凍処理ステップ、又は、増大された空気-液体界面に対する長期間の曝露中、GAAの溶解度及び安定性を維持することが可能である。加えて、本発明の製剤は、高濃度のGAAを有するにも係わらず、低いレベルのタンパク質凝集(例えば約5%、4%、3%、2%未満、又は約1%未満)を維持する。本発明の製剤はまた、驚くべきことに、高濃度のGAAを有するにも係わらず、皮下注射に好適な範囲内の低粘度を維持する。
【0089】
本発明はまた、GAAをASSCと組み合わせることにより、小さい容積中でのGAAの可溶化を達成できる、非常に強力かつ濃縮されたGAA製剤を提供する。本発明の製剤は、送達装置が比較的小さく(例えば、移植可能なシステム)、比較的長い持続時間の送達が必要である場合、又は所望の治療効果を達成するためにGAAの高い有効用量が必要な場合に、特に有用である。それ故、送達装置を再充填又は代替する必要なく、長期間(例えば日間、週間、ヶ月等)に亘る一貫した量のGAAの送達が可能となり、それにより感染及び組織損傷の危険性が低減し、患者のコンプライアンスが向上し、一貫した正確な投与が達成される。
【0090】
本発明の所定の実施形態では、治療量のGAA(高い用量であっても)は、非常に小さい容積のGAAのみ(例えば、1日にマイクロリットル又はナノリットルのオーダーで)を使用することによって、対象に投与することができる。所定の身体組織、例えば皮下空間内では、小容積の送達は、局所組織によるGAAのより良好な吸収を促進し、また局所組織障害、外傷、又は浮腫を最小限にする。
【0091】
所定の実施形態では、本発明の製剤は、液体製剤が有意な乳光、凝集、又は沈殿を示さないように、高濃度のGAAを含む。
【0092】
別の実施形態では、本発明の製剤は、有意な痛み感覚(felt pain)(例えば、視覚的評価スケール(VAS)スコアにより決定して)を有しない、例えば皮下投与に好適であるように、高濃度のGAAを含む。
【0093】
所定の実施形態では、本発明の製剤は、例えば約25mg/mL、又は約50mg/mL、又は約80mg/mL、又は約100mg/mL、又は約115mg/mL、又は約150mg/mL、又は約160mg/mL又は約200mg/mL、又は約240mg/mL、又は約250mg/mLのGAA濃度を含む、高いGAA濃度を含む。例えば、下記の実施例10に記載するように、本発明の一態様では、液体医薬製剤は、約25mg/mLのヒト組み換え野生型GAA濃度を含む。本発明の製剤は、約1mg/mL~約500mg/mL、又は約5mg/mL~約500mg/mL、又は約5mg/mL~約250mg/mL、又は約10mg/mL~約200mg/mL、又は約20mg/mL~約100mg/mL、又は約1mg/mL~約60mg/mLのGAA濃度を含み得ることも想定される。上記に引用した濃度の中間の濃度及び範囲も、本発明の一部であると意図される(例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、又は200mg/mL)。
【0094】
所定の実施形態では、本発明の製剤は、5mg/mLを超える濃度でGAAを含む。
【0095】
所定の実施形態では、本発明の製剤は、製剤中でGAAの凝集を低減又は阻害するのに有効な量で、ASSCを含む。そのようなASSCの量としては、例えば約0.005mM~100mM、又は約0.05mM~約90mM、又は約0.1mM~約80mM、又は約0.5mM~約70mM、又は約1mM~約60mM、又は約2mM~約50mM、又は約3mM~約40mM、又は約4mM~約30mM、又は約5mM~約20mMが挙げられる。所定の実施形態では、ASSCは、約0.5~約20mMの濃度で、本発明の製剤中に存在する。所定の実施形態では、ASSCは、約1mMの濃度で、本発明の製剤中に存在する。所定の実施形態では、ASSCは、約10mMの濃度で、本発明の製剤中に存在する。
【0096】
所定の実施形態では、本発明の製剤は、製剤中でGAAの凝集を低減又は阻害するのに有効な量で、ASSCを含む。そのようなASSCの量としては、例えば約5~約500mg/mL、又は約10~約250mg/mL、又は約20~約200mg/mL、又は約30~約150mg/mL、又は約40~約100mg/mL、又は約50~約75mg/mLが挙げられる。所定の実施形態では、ASSCは、約5~約200mg/mLの量で存在する。
【0097】
所定の実施形態では、ASSCは、約32mg/mL又は約160mg/mLの濃度で製剤中に存在する。
【0098】
本発明の所定の実施形態では、DNJ及びGAAを含む液体製剤は、DNJを水に溶解して、濃度10mM DNJを達成することにより調製される。GAAは1.8mlの水中で再構成され、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で一晩透析されてもよい。次いで、GAAの濃度が25mg/mLとなるように、4.4マイクロリットルのDNJ(10mM)を400マイクロリットルのGAAに加えてもよい。
【0099】
別の実施形態では、GAA及びASSCは、別個の組成物に処方される。この実施形態では、シャペロン及び補充タンパク質は、同じ経路、例えば点滴静注によって投与され、又は異なる経路、例えば補充タンパク質は点滴静注、ASSCは経口投与によって投与されてもよい。
【0100】
注射用の使用に好適な医薬製剤としては、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び、無菌注射用溶液又は分散液の即時調製用の無菌粉末が挙げられる。全ての場合において、形態は無菌である必要があり、注射容易性が存在する程度に流体である必要がある。製剤は、製造及び保管の条件下で安定である必要があり、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用に対抗して保存される必要がある。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチルグリコール等)、これらの好適な混合物、及び野菜油を含む溶媒又は分散媒であってもよい。例えばレシチン等のコーティングの使用により、分散液の場合は必要な粒径を維持することにより、及び界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。微生物の活動の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、石炭酸塩、ベンジルアルコール、ソルビン酸等の様々な抗菌及び抗真菌剤によりもたらされ得る。
【0101】
多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の延長された吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に使用することによりもたらされ得る。無菌注射用溶液は、必要な量のGAA及びASSCを、適した溶媒中で、必要に応じて、上記に列挙した様々な他の成分と共に組み込んだ後、濾過又は最終滅菌することにより調製されてもよい。一般に、分散液は、基礎分散媒、及び、上記に列挙した必要な他の成分を含む無菌ビヒクル中に、様々な滅菌活性成分を組み込むことにより調製される。無菌注射用溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これは活性成分及び以前無菌濾過したその溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末を提供する。
【0102】
製剤は、一種以上の賦形剤を含み得ることが好ましい。製剤中に含まれ得る薬学的に許容され得る賦形剤は、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液(例えばリン酸一ナトリウム、リン酸水素ナトリウム及びこれらの組み合わせ等)、酢酸緩衝液、重炭酸緩衝液等の緩衝液、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質;血清アルブミン、コラーゲン及びゼラチン等のタンパク質;EDTA又はEGTA及び塩化ナトリウム等の塩;リポソーム;ポリビニルピロリドン;デキストラン、マニトール、ソルビトール及びグリセロール等の糖;プロピレングリコール及びポリエチルグリコール(例えばPEG-4000、PEG-6000);グリセロール;グリシン又は他のアミノ酸;並びに脂質である。製剤により使用される緩衝液系としては、クエン酸;酢酸;重炭酸;及びリン酸緩衝液が挙げられる。
【0103】
所定の実施形態では、本願の製剤は、ポリエチルグリコール(PEG)、PEG-400、アルギニン、アルギニン及びグルタミン酸、プロリン、γ-シクロデキストリン及びこれらの組み合わせからなる群から選択される賦形剤を更に含む。
【0104】
所定の実施形態では、緩衝液及び/又は賦形剤は、約1~約50%重量/体積(w/v)、又は約2~約40%w/v、又は約3~約30%w/v、又は約4~約20%w/v、又は約5~約10%w/vの濃度で製剤中に存在する。
【0105】
所定の実施形態では、緩衝液及び/又は賦形剤は、約1~約500mM、又は約10~約400mM、又は約20~約300mM、又は約30~約250mM、又は約40~約200mM、又は約50~約150mM、又は約60~約100mMの濃度で製剤中に存在する。
【0106】
所定の実施形態では、製剤は、約26mMの濃度で存在するリン酸緩衝液を含む。
【0107】
所定の実施形態では、製剤は、約150mMの濃度で存在するクエン酸緩衝液を含む。
【0108】
所定の実施形態では、製剤は、約5%w/vの濃度で存在するPEG-400を含む。
【0109】
所定の実施形態では、製剤は、約100mMの濃度で存在するアルギニンを含む。
【0110】
所定の実施形態では、製剤は、約50mMの濃度のアルギニンと、約50mMの濃度で存在するグルタミン酸とを含む。
【0111】
所定の実施形態では、製剤は、約250mMの濃度で存在するプロリンを含む。
【0112】
所定の実施形態では、製剤は、約10%w/vの濃度で存在するγ-シクロデキストリンを含む。
【0113】
製剤は、非イオン性洗剤も含み得る。好ましい非イオン性洗剤としては、ポリソルベート20、ポリソルベート80、Triton X-100、Triton X-114、Nonidet P-40、オクチルα-グリコシド、オクチルβ-グリコシド、Brij 35、Pluronic及びTween20が挙げられる。
【0114】
タンパク質及びシャペロン調製物の凍結乾燥のために、タンパク質濃度は、0.1~10mg/mLであってもよい。グリシン、マンニトール、アルブミン及びデキストラン等の充填剤を、凍結乾燥混合物に添加してもよい。加えて、二糖類、アミノ酸及びPEG等の可能な凍結保護物質を、凍結乾燥混合物に添加してもよい。上記にリストした任意の緩衝液、賦形剤及び洗剤を添加することができる。
【0115】
投与経路は、静脈内、皮下、動脈内、腹腔内、眼内、筋肉内、頬側、直腸内、腟内、眼窩内、脳内、皮内、頭蓋内、脊髄内、心室内、くも膜下腔内、大槽内、嚢内、肺内、鼻孔内、経粘膜、経皮、又は吸入を介して、を含む経口又は非経口であってもよい。
【0116】
上述した非経口製剤の投与は、調製物のボーラスの周期的注射であってもよく、又は、外部(例えばi.v.バッグ)若しくは内部(例えば、生体浸食性インプラント、バイオ人工臓器、又は補充タンパク質を生成する移植細胞の集団)であるリザーバからの静脈内若しくは腹腔内投与により投与されてもよい。例えば、各々参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,407,957号明細書及び米国特許第5,798,113号明細書を参照されたい。肺内送達方法及び機器は、例えば、各々参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,654,007号明細書、米国特許第5,780,014号明細書及び米国特許第5,814,607号明細書に記載されている。他の有用な非経口送達システムとしては、エチレン-ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能な注入システム、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、針送達注射、無針注射、ネブライザー、エアロゾライザー、電気穿孔法及び経皮パッチが挙げられる。無針注射器装置は、その明細書が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,879,327号明細書;米国特許第5,520,639号明細書;米国特許第5,846,233号明細書及び米国特許第5,704,911号明細書に記載されている。上述した製剤のいずれも、これらの方法で投与することができる。
【0117】
5.6 インビトロでの安定性
GAA製剤の有効期間中にこのような製剤の安定性を確実にすることは、大きな課題である。例えば、Myozyme(登録商標)及びLumizyme(登録商標)の患者説明書は、バイアルが単回使用のみのためであり、また不使用の製品は廃棄する必要があることを注意する。説明書は更に、Myozyme(登録商標)及びLumizyme(登録商標)が医療専門家により再構成され、希釈され、投与される必要があり、また投与は遅延なく行う必要があることを示す。Myozyme(登録商標)及びLumizyme(登録商標)は、2~8℃で保管する必要があり、また製品はこれらの温度で24時間までのみ安定である。
【0118】
ASSC及びGAAが同じ組成物中に存在する場合、本発明の処方された組成物は、より安定な組成物を提供する。ASSCは、投与されたタンパク質をインビボで安定化することに加えて、インビトロでGAAに可逆的に結合し、GAAの立体構造を安定化させることにより、凝集及び分解を防止し、製剤の有効期間を延長する。ASSC/補充タンパク質相互作用の分析は、例えば示差走査熱量計、又は円偏光二色性等の当技術分野にて既知の技術を用いて評価することができる。
【0119】
例えば、組成物の水性注射用製剤が、針及び注射器を使用して内容物を引き抜くのに好適な栓付きバイアル内に供給される場合、ASSCの存在は、GAAの凝集を阻害する。バイアルは、単回使用又は多回使用用のいずれであってもよい。製剤はまた、プレフィルド注射器、ペン型注射器、又は無針投与装置として供給されてもよい。別の実施形態では、製剤は、乾燥又は凍結乾燥状態にあり、これは規格の又は供給された生理学的希釈剤を用いて液体状態に再構成する必要があるであろう。この場合、ASSCの存在は、GAA再構成中及び再構成後にGAAを安定化させて、凝集を防止する。製剤が静脈内投与用の液体、例えば静脈内投与ライン又はカテーテルに接続される無菌バッグ内に存在する実施形態では、ASSCの存在は、同じ利益を付与する。
【0120】
投与される補充タンパク質を安定化させることに加えて、ASSCの存在は、GAA製剤が約7.0~7.5の中性pHで保管されることを可能にする。このことは、安定性を保つために、通常、より低いpHで保管される必要があるタンパク質に利益を付与する。例えば、GAA等のリソソーム酵素は、典型的には、低いpH(例えば5.0以下)で安定な立体構造を維持する。しかしながら、低いpHでの補充酵素の長期保管は、酵素及び/又は製剤の分解を促進し得る。
【0121】
上述したように、本発明の液体製剤は、有利な安定性及び保管特性を有する。液体製剤の安定性は保管の形態に依存せず、凍結、凍結乾燥、噴霧乾燥された製剤、又はその中に活性成分が懸濁している製剤を含むがこれらに限定されない。安定性は、選択された期間、選択された温度で測定されてもよい。本発明の一態様では、液体製剤中のタンパク質は、液体形態で少なくとも約1週間;少なくとも約2週間;少なくとも約3週間;少なくとも約1ヶ月;少なくとも約2ヶ月;少なくとも約3ヶ月;少なくとも約4ヶ月、少なくとも約5ヶ月;少なくとも約6ヶ月;少なくとも約12ヶ月;少なくとも約18ヶ月安定である。上記に引用した期間の中間の値及び範囲、例えば約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は約24ヶ月も、本発明の一部であることが意図される。加えて、上限及び/又は下限としての、上記に引用した値の任意の組み合わせを使用した値の範囲が含まれることが意図される。所定の実施形態では、製剤は、室温(約30℃)、若しくは約37℃、若しくは約40℃、若しくは約45℃で少なくとも約1ヶ月安定であり、及び/又は約2~8℃で少なくとも約1年間安定であり、又はより好ましくは約2~8℃で少なくとも約2年間安定である。更に、製剤は、このような製剤の冷凍(例えば-80℃に)及び解凍後に安定であることが好ましく、以後これを「凍結/解凍サイクル」と称する。
【0122】
液体製剤中のタンパク質の安定性(例えば、タンパク質の安定性及び/又は汚染の低減)はまた、製剤中のタンパク質のモノマー、凝集体、若しくは断片、又はこれらの組み合わせの百分率として定義されてもよい。タンパク質は、このようなタンパク質が色及び/若しくは清澄性の視認検査により、又はUV光散乱により測定して、又はサイズ排除クロマトグラフィー、非変性PAGE、若しくはサイズを決定する他の方法等により、凝集、沈殿及び/又は変性の徴候を実質的に示さない場合、製剤中で「その物理的安定性を維持する」。本発明の一態様では、安定な液体製剤は、製剤中に約10%未満、又は約5%未満、又は約1%未満のタンパク質が凝集体として存在する製剤である。
【0123】
一実施形態において、液体製剤の物理的安定性は、撹拌ストレスアッセイ、例えば24時間又は48時間の撹拌ストレスアッセイ後に製剤の濁度を測定することにより決定される。例えば、撹拌ストレスアッセイは、好適な容積の液体製剤をマグネチックスターラー、例えば(マルチポイントHP、550rpm)を有するビーカー内に配置し、アリコートを任意の好適な時間、例えばT0~T48(時間)にて除去し、所望によりアリコートに関して好適なアッセイを行うことにより、行ってもよい。同じ条件下で、撹拌を有さなかった製剤のサンプルは、対照として機能する。
【0124】
濁度測定は、Hach(Germany)製の実験室濁度測定システムを使用して行うことができ、濁度単位(nephelometric unit)(NTU)として報告される。
【0125】
組成物の安定性(例えば、タンパク質の安定性及び/又は汚染物質の低減)はまた、例えばタンパク質分解又は汚染物質の増殖若しくは存在を測定することにより測定されてもよい。タンパク質分解は、例えば逆相HPLC、非変性PAGE、イオン交換クロマトグラフィー、ペプチドマッピング、又は同様の方法により決定され得る。
【0126】
本明細書に記載した濃度での、ASSCの存在下でのGAAの安定性は、例えば所定時間におけるパーセント凝集又は分解として測定され、1つ以上の基準と比較されてもよい。例えば、好適な基準は、GAAがASSCと接触されないこと以外は試験条件と同様である組成物である。一濃度におけるGAAの安定性を比較する。好適性は、ASSCの不在下と同等の又はより高い安定性を有する、特定の濃度のGAAとASSCとの組み合わせにより示すことができる。
【0127】
5.7 インビボでの安定性
インビトロでの製剤に関して上述したように、GAAのためのASSCの存在は、外因性GAAの血漿半減期を延長することによって、有効な補充タンパク質レベルをより長期間に亘って維持し、GAAに対する臨床的に罹患した組織の曝露の増大と、ひいては組織中へのタンパク質の取り込みの増大とをもたらす利点を有する。このことは、安心感の向上、投与頻度の低下、及び/又は投与量の低減等の有益な効果を患者に与える。このことはまた、処置費用を低下させるであろう。
【0128】
ASSCはまた、野生型補充GAAを安定化させることに加えて、ポンペ病等の立体構造疾患(conformational disorder)におけるような、ER内での適切な折り畳み及び処理を阻止する突然変異の結果として欠損した内因性突然変異体GAAの発現を安定化及び向上させるであろう。
【0129】
本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態及び以下の実施例による範囲内に限定されるべきではない。実際に、本明細書に記載したものに加えて、前述の記載並びに添付の実施例及び図面から本発明の様々な修正形態が当業者に明かとなろう。それらの修正形態は、付随する特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【実施例0130】
実施例1:rhGAA及び100μM 1-DNJ-HClのインビトロでの熱安定性
100μMのASSC 1-デオキシノジリマイシン塩酸塩(1-DNJ-HCl)を有する及び有しない組み換えヒトGAA(Myozyme(登録商標)、Genzyme Corp.)の安定性を、タンパク質変性を誘導するのに熱を使用する熱安定性アッセイにより決定した。変性は、疎水性アミノ酸(折り畳まれたタンパク質内では曝露されていない)に結合した後、蛍光を発するSYPRO Orange染料を使用して監視される。
【0131】
熱安定性は、2つの製剤に関して、ERのpHと一致するpH7.4で行った。
図1に示すように、7.4pHで100μMの1-DNJ-HClを含む製剤は、7.4pHでASSCを有しない製剤と比較して、変性するのに有意により多くの熱を必要とし、従ってより安定である。
【0132】
実施例2:rhGAA及び50μM 1-DNJ-HClのGAA残留活性及び熱安定性
残留GAA活性を4つの製剤に関して決定した:
(1)pH7.4でのMyozyme(登録商標)単独;
(2)pH7.4でのMyozyme(登録商標)+50μM 1-DNJ-HCl;
(3)pH5.2でのMyozyme(登録商標)単独;
(4)pH5.2でのMyozyme(登録商標)+50μM 1-DNJ-HCl。
【0133】
初期活性(t=0)の%に基づいて、活性を24時間に亘って測定した。サンプルのGAA酵素活性を、蛍光発生基質4-MU-α-グルコースの加水分解に基づいて、0、3、6及び24時間にてアッセイした。GAA活性を、初期活性の%、即ち残留活性として表した。
【0134】
図2Aに示すように、上記の製剤(1)(ASSCなし)は、時間と共に活性を損失し、投与から24時間後、その初期活性の約20%のみを有した。対照的に、製剤(2)は、その初期活性の全部ではないが殆どを24時間に亘って維持した。ph5.2での両方の製剤(上記の製剤(3)及び(4))は、それらの初期活性の殆どを24時間に亘って維持した。
【0135】
初期酵素活性の損失が、適切な立体構造の維持の不足と相関するか否かを決定するために、SYPRO Orange熱安定性実験を実施例1に概略したように、上記のサンプルに関して行った。しかしながら、この熱安定性実験では、1-DNJ-HClの濃度は製剤(2)及び(4)中で100μMに増大された。この実験に基づいて、折り畳まれたGAAの%を概算し、
図2Bにプロットした。
図2Bの製剤(1)に関する24時間に亘る折り畳まれたGAAの量の低下は、この一般的製剤に関して
図2Aに示した活性の損失と相関する。
【0136】
実施例3:1-DNJ-HClの経口投与を有し及び有しないGAA KOマウスにおけるインビボでのMyozyme(登録商標)取り込み
5グループのGAA KOマウスに、以下の製剤の1つを投与した:
(1)未処理対照;
(2)10mg/kgのMyozyme(登録商標)IVを週に1回、3週間迄
(3)(2)と同様のMyozyme(登録商標)注入、+10mg/kgの1-DNJ-HCl;
(4)(2)と同様のMyozyme(登録商標)注入、+100mg/kgの1-DNJ-HCl;
(5)(2)と同様のMyozyme(登録商標)注入、+1000mg/kgの1-DNJ-HCl;
分析用に組織ホモジネートを生成した。酵素活性を4-MUG蛍光発生基質アッセイにより決定した。結果を
図3に示す。
【0137】
これらの結果は、Myozyme(登録商標)組織取り込み(GAA活性の尺度)が、全ブループに関して、注射から7日後に低下したことを示す。1-DNJ-HClとMyozyme(登録商標)との共投与は、注射から7日後迄の間、Myozyme(登録商標)取り込みの用量依存的増大を促進した。1-DNJ-HClの効果は、1、2又は3用量のいずれの注射後も、4及び7日目において、より明白かつ有意であった(p<0.05 t検定、対Myozyme(登録商標)単独)。
【0138】
実施例4:1-DNJ-HClの経口投与を有し及び有しないGAA KOマウスにおけるインビボでのMyozyme(登録商標)取り込み
概して実施例1に記載した熱安定性実験を、4つの組成物に関して行った:
(1)Myozyme(登録商標)のみの組成物;
(2)Myozyme(登録商標)+1μMの1-DNJ-HCl;
(3)Myozyme(登録商標)+10μMの1-DNJ-HCl;
(4)Myozyme(登録商標)+100μMの1-DNJ-HCl;
図5に示すように、GAAの融解温度が用量依存的に増大することから明かなように、DNJ-HClはGAA熱安定性を増大させる。
【0139】
実施例5:単独療法として投与された場合、又は1-DNJ-HClと組み合わされた場合の、ラットにおけるrhGAAのインビボでの半減期
4グループのラットに、以下の投与計画の1つを投与した。
(1)生理食塩水+水;
(2)10mg/kgのrhGAA+水;
(3)10mg/kgのrhGAA+3mg/kgの1DNJ-HCl;
(4)10mg/kgのrhGAA+30mg/kgの1DNJ-HCl;
rhGAA又は生理食塩水を1-DNJ-HCl投与の30分後に投与した。概して実施例3に記載したようにGAA活性を決定した。24時間に亘る結果を、
図6に示す。1-DNJ-HClは、投与後の酵素活性の損失を抑制し、それによりrhGAAのインビボでの半減期を延長した。rhGAAのインビボ半減期は、1.4±0.2時間(0mg/kgの1-DNJ-HCl)から2.1±0.2時間(3mg/kgの1-DNJ-HCl)及び3.0±0.4時間(30mg/kgの1-DNJ-HCl)に延長した。
【0140】
実施例6:GAA KOマウスにおけるGAA酵素活性
3グループのGAA KOマウスに、以下の製剤の1つを投与した:
(1)対照(処置なし);
(2)10mg/kgのrhGAA;
(3)10mg/kgのrhGAAと、rhGAA注入の30分前、及び注入後8時間毎に48時間の100mg/kgの1-DNJ-HCl。
【0141】
心臓及び横隔膜組織ホモジネートを回収し、rhGAA活性を蛍光発生基質(4-MUG)により測定した。結果を
図7に示す。
【0142】
実施例7:1-DNJ-HClはrhGAAを安定化させ、血液中での酵素不活性化を防止する
1-DNJ-HClを、全(クエン酸ナトリウム抗凝固)血中にて37℃でrhGAA(例えばMyozyme(登録商標))を安定化させるその能力に関して評価して、数時間の注入中にERTが曝露された環境を模倣した。結果は、
図8に示すように、rhGAAが、およそ40%の酵素が4時間迄に、約70%が8時間迄に、及びほぼ100%が24時間迄に不活性化されたように、これらの条件下で不安定であることを示す。(赤い菱形の線のプロット)。これらの結果は、有意な割合のrhGAA用量が、これらの注入が典型的には6時間を超え、場合によっては12時間を超えるため、不活性となる可能性があることを示唆する。更に、Myozyme(登録商標)は長い血漿半減期(3時間を超えると報告)を有するため、注入後、かなりの量の酵素が何時間も循環中に残留する高い可能性があり、このような酵素はまた不活性化を受けやすい。一方、rhGAAが同一の実験条件下で50μM 1-DNJ-HClと共にインキュベートされた際、酵素は、試験全体中ずっと完全に活性なままであった(青い正方形の線のプロット)。これらの結果は、1-DNJ-HClがrhGAAを安定化させ、全血中での酵素不活性化を防止したことを示す。重要なことには、これらのデータはまた、血液中に存在する血漿タンパク質がrhGAA酵素活性の損失を防止するのに十分ではない一方、1-DNJ-HClのような薬理学的シャペロンは、酵素不活性化を防止できることを示す。
【0143】
実施例8:1-DNJ-HClはrhGAAを安定化させ、血液中での酵素不活性化を防止する
rhGAAを全血中で様々な濃度の1-DNJ-HCl(0~100μM)を用いて測定して、rhGAA酵素不活性化を防止する1-DNJ-HClの最低限の濃度を決定した(
図9)。予想したように、高い1-DNJ-HCl濃度(50及び100μM)は、rhGAAを安定化させ、酵素不活性化を防止するのに最良であった。しかしながら、低い1-DNJ-HCl濃度(2.5μMもの低さ)も6時間の時間経過に亘って約20%の損失によりrhGAA活性を維持したことは興味深い。これらの結果は、中程度の1-DNJ-HCl濃度(例えば10~25μM)が、注入中、血液中でrhGAAを安定化させるのに十分であり得ることを示唆する。ヒト血漿PKデータに基づいて、これらの濃度は、診療所内で容易に得ることができる。
【0144】
実施例9:1-DNJ-HClと共投与したMyozyme(登録商標)は、Myozyme(登録商標)単独と比較して、GAA KOマウスにおいて有意により高い組織グリコーゲン低下をもたらした
12週齢の雄のGAA KOマウスに単一用量のMyozyme(登録商標)(40mg/kg)を、ボーラス尾静脈注射を介して8週間の間1週間置きに投与した。アナフィラキシーを防ぐために、第3及び第4のMyozyme(登録商標)注射前に、Myozyme(登録商標)注射の10分前にジフェンヒドラミン(10mg/kg腹腔内)を投与した。加えて、マウスはMyozyme(登録商標)投与の30分前に、強制経口投与(oral gavage)を介して水又は30mg/kgの1-DNJ-HClのいずれかを受容した。マウスを最終Myozyme(登録商標)投与から14日後に安楽死させた。実験計画を
図10に示す。
【0145】
次いで、心臓、横隔膜、ヒラメ筋及び四頭筋内のグリコーゲンレベルを測定した。1-DNJ-HClと共投与したMyozyme(登録商標)は、Myozyme(登録商標)単独と比較して、GAA KOマウスにおいて有意により高い組織グリコーゲン低下をもたらした(
図11)。手短には、約50mgの組織を、マイクロホモジナイザーを用いて、氷上で200μLの脱イオン水中で3~5秒間ホモジナイズすることによりホモジネートを調製した。上清を熱変性(99℃で10分間)させて、内因性アミログルコシダーゼ活性を除去した。次いで、10μLの800U/mLアミログルコシダーゼ(Sigma Aldrich,St.Louis,MO)を有し及び有さずに、36μL水を加え、50℃で1時間インキュベートすることによって、変性ライセート(4μL)を二重に分析した。100℃で10分間の不活性化によって反応を停止させた。最後に、200μLのグルコース試薬(Sigma)を加え、吸光度をSpectramax上にて340nMで読み取った。5μg/mL~400μg/mLの範囲のIII型ウサギ肝臓グリコーゲン(Sigma)の標準曲線を毎日作成して、吸光度を絶対グリコーゲン単位に変換した。同時に、Micro BCAタンパク質アッセイ(Pierce,Rockford,IL)を用いて、製造業者の指示書に従って組織ホモジネート中のタンパク質の量を決定した。各サンプルのグリコーゲン含有量をタンパク質に対して正規化し、データを最終的に、タンパク質のミリグラム当たりのグリコーゲンのミリグラム(μg/mgタンパク質)として表した。
【0146】
実施例10:DNJは、高濃度のMyozyme(登録商標)を含む組成物中で、Myozyme(登録商標)の凝集を低減する
DNJ及びGAAを含む液体製剤を、DNJを水に溶解して濃度10mM DNJを達成することにより調製した。GAAを1.8mlの水中で再構成し、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で一晩透析した。次いで、GAAの濃度が25mg/mLとなるように、4.4マイクロリットルのDNJ(10mM)を400マイクロリットルのGAAに加えた。
【0147】
25mg/mL Myozyme(登録商標)を、1mM DNJと伴に又は伴わずに、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水中でインキュベートした。37℃で4週間インキュベートした後、Myozyme(登録商標)の凝集を評価した。
図12に示すように、1mM DNJを25mg/mL Myozyme(登録商標)を組み合わせると、Myozyme(登録商標)の凝集が低下した。
【0148】
実施例11:DNJは、Myozyme(登録商標)の循環半減期及び組織取り込みを増大させる
Sprague-Dawleyラットに10mg/kg Myozyme(登録商標)、又は10mg/kg Myozyme(登録商標)と混合した30mg/kg DNJを、尾静脈を介して投与した。GAA活性を血漿及び四頭筋組織内で測定した。GAA又はDNJ及びGAA投与後の測定されたGAAから、四頭筋内のベースラインGAA活性を減算した(約16nMol/mgタンパク質/時間)。
【0149】
図13に示すように、30mg/kg DNJを10mg/kg Myozyme(登録商標)と共に尾静脈を介して投与することにより、四頭筋内においてMyozyme(登録商標)の循環血漿半減期及び組織取り込みが増大した。
【0150】
実施例12:1-DNJ存在下でのLumizyme(登録商標)の溶解度
1-DNJ及び異なる賦形剤の存在下でのLumizyme(登録商標)(アルグルコシダーゼα)の溶解度を検査した。
【0151】
方法
52.5mgタンパク質、210mgマンニトール、0.5mgポリソルベート80、9.9mg Na2HPO4x7H20、及び31.2mg NaH2PO4xH2Oを含むLumizyme(登録商標)のバイアルを、最少容積の水(1mL添加)に溶解して、1.2mLのタンパク質溶液を提供した。5個の240μLアリコート(各々、10.5mgタンパク質を含む)をAmicon Ultra 0.5mL 30kDaカットオフ遠心フィルター装置に移し、エッペンドルフ遠心管内にて14,000xgで10分間遠心分離して、約50μLの残基(retentate)を得た。
【0152】
組成物中に存在する元の賦形剤、即ちマンニトール及びポリソルベート80を新たな賦形剤と交換して、タンパク質溶解度を試験した(同一の緩衝条件を保持)。元のリン酸緩衝液を使用して、交換のための以下の賦形剤溶液を調製した:
1. PEG400(5%w/v)
2. アルギニン(100mM)
3. アルギニン(50mM)+グルタミン酸(50mM)
4. プロリン(250mM)
5. γ-シクロデキストリン(10%)
サンプル2(100mMアルギニン)を除いた全サンプルが、小分子リガンド1-デオキシノジリマイシン塩酸塩(1-DNJ-HCl、AT2220 HCl、2220 HCl)を、リガンドとタンパク質との比1:1(w/w)で含み、サンプル2はリガンドを、低いリガンドとタンパク質との比1:5(w/w)で含んでいた。
【0153】
賦形剤を交換するために、5.2mg Na2HPO4及び27.1mg NaH2PO4を10.3mL水に溶解して、およそ26mMの洗浄/賦形剤交換リン酸緩衝液を調製した。賦形剤交換用の容積8mLの緩衝液を160mg/mLの小分子リガンドで補充して(賦形剤1、3、4及び5溶液を調製し)、一方、賦形剤2(100mMアルギニン)のために2mLを32mg/mLリガンドで補充した。賦形剤の各々を2mLのこの緩衝液に、上記にリストした濃度にて溶解した。
【0154】
賦形剤溶液を別個の各フィルター装置に加えて、総容積0.5mLを達成した。各フィルター装置を卓上エッペンドルフ遠心管内にて14,000xgで15分間遠心分離して、およそ25μLを維持した。ユニットを同一の賦形剤溶液で0.5mLに再充填し、再度遠心分離した(このプロセスを2回反復した)。この手順は、マンニトール及びポリソルベート80を、上述した賦形剤で効率的に代替し、元の成分を約1:1000にて希釈した。各賦形剤に関する全濾液を収集し、フィルターを通った任意のタンパク質漏出に関して検査した。
【0155】
各遠心分離フィルター装置を清浄なチューブ内に反転し、1000xgで2分間遠心分離することにより濃縮タンパク質溶液を各フィルター装置から収集した。各サンプルの容積を決定し(66μL、標的タンパク質濃度160mg/mLに対応)、各サンプル中、可視の沈殿が観察できないことを確認した。サンプルをそれらの各々のフィルター装置に移し戻し、更に5分間遠心分離した。次いで、フィルターを清浄なチューブ内に反転することによりサンプルを収集し、1000xgで2分間遠心分離して、約37μLの残基(10.5mgタンパク質の総初期濃度に基づいて、>280mg/mLタンパク質に対応)を提供した。
【0156】
サンプルを渦撹拌し、室温で1時間インキュベートして液相及び固相を平衡化した後、14,000xgで10分間遠心分離した。再度、可視の沈殿は観察されなかった。2~3個の10μLアリコートを各サンプルの上清から取り(液相の利用可能な容積に応じて)、2ステップで1:1000に希釈した。タンパク質濃度を280nMでのUV吸光度により測定し、高い再現性を有する較正曲線に従って最大タンパク質溶解度を計算した。6.8mgのMyozyme(登録商標)(アルグルコシダーゼα)凍結乾燥粉末(1.16mgタンパク質を含む)を1.16mLの水に溶解した後、脱イオン水中で連続希釈することにより較正曲線を準備した。0.5mLアリコートを使用して、吸光度を1cm光透過石英セミマイクロキュベット(light-pass quartz semi-micro cuvette)内にて280nMで測定した。
【0157】
結果:
表1に示すように、この研究にて試験した賦形剤は、小分子リガンド、1-DNJ-HClの存在下で、タンパク質の溶解度を増大させた。観察された最大値は、アルギニン及びグルタミン酸(242mg/mL)の混合物に関してであり、最小値は、γ-シクロデキストリン(114mg/mL)に関してであった。賦形剤を添加しなかったタンパク質の溶解度は、約80mg/mLと決定された。いずれの理論にも束縛されるものではないが、溶解度の増大は、タンパク質表面の疎水性及び親水性部位とのアミノ酸賦形剤の効率的な相互作用に起因する可能性があり、このような相互作用は、タンパク質-タンパク質会合を競合的に妨害する。
【0158】
【0159】
実施例13:GAA KOマウスにおける組織取り込み及びグリコーゲン低下に対する、共処方rhGAA及び1-DNJの反復皮下投与の効果
本研究は、GAAノックアウトマウス(GAA KO)がrhGAA、又はrhGAA及び1-DNJの共製剤の反復皮下(SQ)注射に耐えるか否か、rrhGAAの反復SQ注射がGAA KOマウスにおいてrhGAAの組織取り込みを増大させ、グリコーゲンレベルを低下させるか否か、並びに、rhGAA及び1-DNJの共製剤の反復SQ注射が、rhGAA単独のSQ注射と比較して、rhGAAの組織取り込みを増大させ、グリコーゲンレベルを低下させるか否かを検査した。
【0160】
方法
本研究では、7グループの12週齢の雄のGAA KOマウスを使用した。マウスの各グループに、以下の処置の1つを投与した:
(1)生理食塩水のみ(薬物対照なし);
(2)皮下送達(SQ)したLumizyme(登録商標)単独(20mg/kg);又は
(3)共処方したLumizyme(登録商標)(20mg/kg)及び1-DNJ(30mg/kg)SQ。
【0161】
処置の各々を、それらの対応する処置グループに2週間の間投与した。処置を各週の月曜日及び木曜日に投与した。処置を受けている各マウスの肩甲骨間にSQ注射を投与した。合計4用量を各研究動物に投与した。第3及び第4の用量の前に、ジフェンヒドラミンを腹腔内(IP)投与した。
【0162】
以下のサンプリングプロトコルに従ってrhGAA及びグリコーゲンレベルを決定した。血漿薬物動態分析のために、第4の用量後に各研究動物から血液を採取した。最終SQ用量から2及び4時間後に採取した血漿サンプルに関して、GAA活性、ウェスタンブロット、及び1-DNJレベルを決定した。
【0163】
この研究の最終用量から3日後(即ち、用量4の3日後)、組織サンプルを収集してrhGAA取り込みを決定した。組織サンプルは、SQ注射部位からの、心臓、横隔膜、舌、脳、脾臓、肝臓、二頭筋、三頭筋、四頭筋、ヒラメ筋、腓腹筋、腹側皮膚及び背側皮膚を含んでいた。研究の最終用量から14日後(即ち、用量4の14日後)にも組織サンプルを収集して、グリコーゲン濃度を決定した。試験対象に投与した処置、及びサンプル収集のタイミングの概要を表2に示す。
【0164】
【0165】
結果
組織rhGAA及びグリコーゲン
図15~25は、3つの処置のうちの1つを受けていた動物から採取した組織サンプルにおける、最終処置用量から3日後のGAA活性、及び最終処置用量から14日後のグリコーゲンレベルを示す。試験した組織の殆どに関して、1-DNJとのrhGAAの共処方は、rhGAA単独の投与と比較して、試験組織内のrhGAA取り込み及び活性を有意に増大させた。加えて、rhGAA、又はrhGAA及び1-DNJの共製剤を用いた処置後、最終処置用量から3日後に、rhGAA活性は腹側皮膚内及び前肢筋内のSQ注射の部位にて高かった。rhGAA活性は、前肢を除いて、試験した全筋肉内よりも肝臓内でより高かった。
【0166】
更に、表3に記載したように、SQで投与された1-DNJ及びrhGAA(Lumizyme(登録商標))の共製剤を用いて達成されたrhGAAレベルは、静脈内で投与されたhGAA(Myozyme(登録商標))単独で達成されたレベルと比較して、同一又はより高かった(大部分の組織内で)。
【0167】
【0168】
組織サンプル中で検出されたグリコーゲンレベルに関して、グリコーゲン低下の大きさは、いくつかの組織内でrhGAA取り込みと相関した。心臓、舌及び腹側皮膚は、rhGAA+1-DNJ共製剤により、rhGAAの取り込みの改善とグリコーゲン低下の改善との間に、rhGAA単独を超える相関を示した。いずれの理論にも束縛されるものではないが、いくつかの組織ライセート中の高いrhGAA酵素活性は、組織(例えば脂肪、リンパ、血管)内に存在するが、未だ細胞及びリソソーム内に取り込まれていない酵素に由来する可能性がある。加えて、いずれの理論にも束縛されるものではないが、リソソーム酵素が役立たないが、検出可能な大量の細胞質グリコーゲンが全細胞ライセート中に存在する可能性がある。
【0169】
血漿rhGAA
共製剤で処置した動物からの血漿サンプル中に存在する1-DNJが、サンプル中のrhGAAを阻害したか否かを決定するために、血漿サンプルからのrhGAAをGAA基質と共に1時間インキュベートし、基質代謝に基づく酵素活性を決定することによってrhGAA活性を決定した。次いで、サンプルを基質と共に3時間インキュベートしてこのようなサンプルを1-DNJを酵素から解離させることによって、1-DNJにより生じた任意の酵素阻害を逆行させて再分析した。2つのアッセイ形式の結果の間に、実質的な変化は見られなかった。
【0170】
図26~28は、最終処置用量から2及び4時間後に収集したサンプル中の血漿rhGAA活性及びタンパク質濃度を示す。最終SQ処置用量から2時間後、1-DNJが共製剤中でrhGAAと共に投与された場合、rhGAAが単独で投与された場合よりも高いrhGAA活性及びタンパク質濃度を血漿中で検出することができた(即ち、各々、活性アッセイ及びウェスタンブロット)。最終SQ処置用量から4時間後、血漿rhGAAレベルは、共製剤により処置されたマウスにおいて高いままであった一方、rhGAA単独で処置されたマウスからの血漿rhGAAレベルは、2時間におけるサンプルのレベルと比較して増大した。
【0171】
本発明は、本明細書に記載した特定の実施形態により範囲を限定されるべきではない。実際に、本明細書に記載したものに加えて、前述の記載及び添付の図面から本発明の様々な修正形態が当業者に明かとなろう。それらの修正形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0172】
特許、特許出願、文献、製品の説明、GenBank受託番号、及びプロトコルが本願全体を通して引用され、これらの開示全体は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。