(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105251
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と金属端子用接着性フィルムを備えるキット、並びに、蓄電デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/198 20210101AFI20240730BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20240730BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240730BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20240730BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20240730BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M50/198
H01M50/178
H01M50/184 C
H01M50/193
H01M50/186
H01G11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024062567
(22)【出願日】2024-04-09
(62)【分割の表示】P 2023575656の分割
【原出願日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2022074305
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴大
(72)【発明者】
【氏名】溝尻 誠
(57)【要約】 (修正有)
【課題】金属端子に対する密着性に優れた金属端子用接着性フィルムを提供する。
【解決手段】蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子2と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材3との間に介在される、金属端子用接着性フィルム1であって、前記金属端子用接着性フィルムは、少なくとも一方側の表面を形成する樹脂層Aが、酸変性ポリオレフィンを含み、前記樹脂層Aの前記表面について、X線回折装置を用いて下記の条件で測定される結晶化度が、3以上18以下である、金属端子用接着性フィルム。
(測定条件)・X線照射の角度は、前記樹脂層Aの前記表面(0°)に対して0.09°とする。
・測定範囲は、前記樹脂層Aの前記表面から深さ5μmまでの範囲とする。
・X線検出器のカメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、
前記金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面を形成する樹脂層Aが、酸変性ポリオレフィンを含み、
前記樹脂層Aについて、X線回折装置を用いて下記の条件で測定される結晶化度が、3以上18以下である、金属端子用接着性フィルム。
(測定条件)
・X線照射の角度は、前記樹脂層Aの前記表面(0°)に対して0.09°とする。
・測定範囲は、前記樹脂層Aの前記表面から深さ5μmまでの範囲とする。
・X線検出器のカメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と金属端子用接着性フィルムを備えるキット、並びに、蓄電デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの蓄電デバイスが開発されているが、あらゆる蓄電デバイスにおいて電極や電解質等の蓄電デバイス素子を封止するために蓄電デバイス用外装材が不可欠な部材になっている。従来、蓄電デバイス用外装材として金属製の蓄電デバイス用外装材が多用されていたが、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、蓄電デバイスには、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の蓄電デバイス用外装材では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0003】
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る蓄電デバイス用外装材として、基材層/接着層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層された積層シートが提案されている。このような積層フィルム状の蓄電デバイス用外装材を用いる場合、蓄電デバイス用外装材の最内層に位置する熱融着性樹脂層同士を対向させた状態で、蓄電デバイス用外装材の周縁部をヒートシールにて熱融着させることにより、蓄電デバイス用外装材によって蓄電デバイス素子が封止される。
【0004】
蓄電デバイス用外装材のヒートシール部分からは、金属端子が突出しており、蓄電デバイス用外装材によって封止された蓄電デバイス素子は、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子によって外部と電気的に接続される。すなわち、蓄電デバイス用外装材がヒートシールされた部分のうち、金属端子が存在する部分は、金属端子が熱融着性樹脂層に挟持された状態でヒートシールされている。金属端子と熱融着性樹脂層とは、互いに異種材料により構成されているため、金属端子と熱融着性樹脂層との界面において、密着性が低下しやすい。
【0005】
このため、金属端子と熱融着性樹脂層との間には、これらの密着性を高めることなどを目的として、接着性フィルムが配されることがある。このような接着性フィルムとしては、例えば特許文献1に記載されたものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、金属端子に対する密着性に優れた、金属端子用接着性フィルムを提供することを主な目的とする。さらに、本開示は、当該金属端子用接着性フィルムの製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と当該金属端子用接着性フィルムを備えるキット、蓄電デバイス及び当該蓄電デバイスの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムにおいて、少なくとも一方側の表面を形成する樹脂層Aが、酸変性ポリオレフィンを含み、かつ、当該樹脂層Aの前記表面について、X線回折装置を用いて所定条件で測定される結晶化度が、3以上18以下である金属端子用接着性フィルムは、樹脂層A側の表面の金属端子に対する密着性に優れることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、
前記金属端子用接着性フィルムは、少なくとも一方側の表面を形成する樹脂層Aが、酸変性ポリオレフィンを含み、
前記樹脂層Aの前記表面について、X線回折装置を用いて下記の条件で測定される結晶化度が、3以上18以下である、金属端子用接着性フィルム。
(測定条件)
・X線照射の角度は、前記樹脂層Aの前記表面(0°)に対して0.09°とする。
・測定範囲は、前記樹脂層Aの前記表面から深さ5μmまでの範囲とする。
・X線検出器のカメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、金属端子に対する密着性に優れた、金属端子用接着性フィルムを提供することができる。さらに、本開示は、当該金属端子用接着性フィルムの製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、蓄電デバイス用外装材、蓄電デバイス用外装材と金属端子用接着性フィルムを備えるキット、並びに、蓄電デバイス及びその製造方法を提供することも目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の蓄電デバイスの略図的平面図である。
【
図2】
図1の線A-A'における略図的断面図である。
【
図3】
図1の線B-B'における略図的断面図である。
【
図4】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
【
図5】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
【
図6】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
【
図7】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
【
図8】本開示の蓄電デバイス用外装材の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の金属端子用接着性フィルムは、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面を形成する樹脂層Aが、酸変性ポリオレフィンを含み、さらに、樹脂層Aについて、X線回折装置を用いて下記の条件で測定される結晶化度が、3以上18以下であることを特徴とする。
【0013】
(測定条件)
・X線照射の角度は、前記樹脂層Aの前記表面(0°)に対して0.09°とする。
・測定範囲は、前記樹脂層Aの前記表面から深さ5μmまでの範囲とする。
・X線検出器のカメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
【0014】
本開示の金属端子用接着性フィルムは、このような特徴を備えていることから、金属端子に対する密着性に優れている。
【0015】
また、本開示の蓄電デバイスは、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、蓄電デバイス用外装材の外側に突出した金属端子とを備える蓄電デバイスであって、金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に、本開示の金属端子用接着性フィルムが介在されてなることを特徴とする。
【0016】
以下、本開示の金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、蓄電デバイス及びその製造方法について詳述する。
【0017】
なお、本明細書において、数値範囲については、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、別個に記載された、上限値と上限値、上限値と下限値、又は下限値と下限値を組み合わせて、それぞれ、数値範囲としてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
1.金属端子用接着性フィルム
本開示の金属端子用接着性フィルムは、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在されるものである。具体的には、例えば
図1から
図3に示されるように、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、蓄電デバイス素子4の電極に電気的に接続されている金属端子2と、蓄電デバイス素子4を封止する蓄電デバイス用外装材3との間に介在されている。また、金属端子2は、蓄電デバイス用外装材3の外側に突出しており、ヒートシールされた蓄電デバイス用外装材3の周縁部3aにおいて、金属端子用接着性フィルム1を介して、蓄電デバイス用外装材3に挟持されている。
【0019】
なお、本開示において、金属端子用接着性フィルムの金属端子への仮接着工程は、例えば、温度140~160℃程度、圧力0.01~1.0MPa程度、時間3~15秒間程度、回数3~6回程度の条件で行われ、本接着工程は、例えば、温度160~240℃程度、圧力0.01~1.0MPa程度、時間3~15秒間程度、回数1~3回程度の条件で行われる。また、蓄電デバイス用外装材に金属端子用接着性フィルム付き金属端子を介在させてヒートシールする際の加熱温度としては、通常180~210℃程度の範囲、圧力としては、通常1.0~5.0MPa程度、時間1~5秒間程度、回数1回程度の条件で行われる。
【0020】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との密着性を高めるために設けられている。金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との密着性が高められることにより、蓄電デバイス素子4の密封性が向上する。上述のとおり、蓄電デバイス素子4をヒートシールする際には、蓄電デバイス素子4の電極に電気的に接続された金属端子2が蓄電デバイス用外装材3の外側に突出するようにして、蓄電デバイス素子が封止される。このとき、金属により形成された金属端子2と、蓄電デバイス用外装材3の最内層に位置する熱融着性樹脂層35(ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂により形成された層)とは異種材料により形成されているため、このような接着性フィルムを用いない場合には、金属端子2と熱融着性樹脂層35との界面において、蓄電デバイス素子の密封性が低くなりやすい。
【0021】
[樹脂層A]
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、少なくとも樹脂層Aを備える。樹脂層Aは、金属端子用接着性フィルム1の少なくとも一方の表面を形成しており、最外層である。すなわち、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、少なくとも1層の樹脂層Aを含み、かつ、金属端子用接着性フィルム1の表面のうち、少なくとも一方側の表面は、樹脂層Aにより形成されている。本開示の効果を奏することを限度として、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、
図4に示すように単層であってもよいし、
図5~7に示すように複層であってよい。
【0022】
本開示の金属端子用接着性フィルム1が単層である場合、金属端子用接着性フィルム1は、樹脂層Aにより構成されており、金属端子側の表面と蓄電デバイス用外装材の表面は、当該樹脂層Aによって形成されている。この場合、金属端子用接着性フィルム1の蓄電デバイス用外装材側の表面を形成する樹脂と、金属端子側の表面を形成する樹脂とが、共通する樹脂(すなわち、樹脂層Aを構成する樹脂)である。なお、金属端子用接着性フィルム1の蓄電デバイス用外装材側の表面を形成する樹脂と、金属端子側の表面を形成する樹脂とが、共通するとは、これらの樹脂中の成分のうち、例えば、80質量%以上が同一であること、90質量%以上が同一であること、95質量%以上が同一であること、100質量%が同一であることなどを意味している。
【0023】
本開示の金属端子用接着性フィルム1が複層である場合、少なくとも1層が、樹脂層Aにより構成されていればよい。例えば
図5に示すように、本開示の金属端子用接着性フィルム1が2層構造である場合、金属端子用接着性フィルム1は、第1樹脂層12aと第2樹脂層12bの積層体である。後述の通り、本開示においては、これらの層のうち、第1樹脂層12aが、樹脂層Aにより構成されているとする。本開示の金属端子用接着性フィルム1が複層である場合にも、蓄電デバイス用外装材側の表面を形成する樹脂と、金属端子側の表面を形成する樹脂とが、共通する樹脂であってもよい。
【0024】
例えば
図6に示すように、本開示の金属端子用接着性フィルム1が3層構造である場合、金属端子用接着性フィルム1は、第1樹脂層12aと中間層11と第2樹脂層12bとがこの順に積層された積層体である。本開示においては、第1樹脂層12aが金属端子側の表面を構成し、第2樹脂層12bが蓄電デバイス用外装材側の表面を構成する。
【0025】
本開示の金属端子用接着性フィルム1の金属端子側の表面を構成する樹脂層Aは、金属(金属端子を構成する金属)に対する熱融着性を備えている。したがって、本開示の金属端子用接着性フィルム1を使用する際には、樹脂層Aを金属端子側に配置して使用することが好ましい。このため、本開示においては、第1樹脂層12aと第2樹脂層12bのうち、少なくとも第1樹脂層12aは樹脂層Aによって形成される。
【0026】
本開示の金属端子用接着性フィルム1の蓄電デバイス用外装材側の表面(例えば第2樹脂層12b)は、後述する熱融着性樹脂層に対する熱融着性を備えている。樹脂層Aは、後述する熱融着性樹脂層に対する熱融着性も備えている。
【0027】
樹脂層Aは、酸変性ポリオレフィンを含む層である。本開示の効果をより好適に発揮する観点から、樹脂層Aは、酸変性ポリオレフィンにより形成されていることが好ましい。すなわち、樹脂層Aは、酸変性ポリオレフィンフィルムにより好適に構成することができる。
【0028】
酸変性ポリオレフィンとしては、酸変性されたポリオレフィンであれば特に制限されないが、好ましくは不飽和カルボン酸またはその無水物でグラフト変性されたポリオレフィンが挙げられる。
【0029】
酸変性されるポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、特に好ましくはポリプロピレンである。
【0030】
また、酸変性されるポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。例えば、カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β-不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。
【0031】
酸変性される環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。構成モノマーとしては、スチレンも挙げられる。
【0032】
酸変性に使用されるカルボン酸またはその無水物としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。樹脂層Aは、赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。樹脂層Aが無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0033】
樹脂層Aは、X線回折装置を用いて下記の条件で測定される結晶化度が、3以上18以下である。本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、当該結晶化度は、好ましくは約4以上、より好ましくは約5以上6であり、また、好ましくは約15以下、より好ましくは約10以下であり、好ましい範囲としては、3~15程度、3~10程度、4~18程度、4~15程度、4~10程度、5~18程度、5~15程度、5~10程度、6~18程度、6~15程度、6~10程度が挙げられる。
【0034】
<樹脂層Aの結晶化度の測定>
X線回折装置(例えばあいちシンクロトロン光センターの商品名BL8S3ビームライン)を用い、下記の条件で結晶化度を測定する。
(測定条件)
・X線照射の角度は、樹脂層Aの前記表面(0°)に対して0.09°とする。
・測定範囲は、樹脂層Aの表面から深さ5μmまでの範囲とする。
・X線検出器としては、例えばR-AXISを用い、カメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
【0035】
(樹脂層Aの解析)
X線散乱データ解析用ソフトウェアFI2Dを用いて2次元検出器のスペクトルデータから方位角80degから100degのデータを切り出して方位角方向に積算し、回折角2θに対する強度値を示す1次元スペクトルを取得する。さらに1次元スペクトル上において2θ=4.0degと2θ=16.0degとなる二点間を通る直線をバックグラウンドとして差し引く。その後、アモルファス成分のスペクトル強度値AをA:2θ=8.8deg~9.8degの領域における強度値の最小値として規定し、4つの結晶面の結晶ピーク強度値P1、P2、P3、P4を以下の通り規定する。
P1:2θ=7.0deg~9.2degの領域にあるピークのピークトップの強度値
P2:2θ=9.2deg~10.6degにあるピークのピークトップの強度値
P3:2θ=10.6deg~12.0degにあるピークのピークトップの強度値
P4:2θ=12.0deg~14.0degにあるピークのピークトップの強度値
結晶化度CはC=(P1+P2+P3+P4)/A
配向度DはD=P2/P4で規定する。
【0036】
酸変性ポリオレフィンを含む樹脂層Aの結晶化度を調整する方法としては、例えば、樹脂層Aを形成する際の成形法(例えば押し出し法、インフレーション法などの成形法の種類や、冷却温度、冷却時間、ライン速度、クリアランス)や、樹脂の配合、樹脂種の選定などが挙げられる。例えば徐冷や高密度の樹脂を選定すると結晶化度は高くなる傾向にあり、また、急冷や低密度の樹脂を選定すると結晶化度は低くなる傾向にあることから、樹脂層Aの結晶化度が前記の範囲となるように調整する。
【0037】
本開示の金属端子用接着性フィルム1においては、金属端子用接着性フィルム1の少なくとも一方側の表面を構成する、酸変性ポリオレフィンを含む樹脂層Aの前記結晶化度が3~18という特定範囲に設定されていることにより、金属端子に対する優れた密着性を発揮できる。この理由については、次のように考えることができる。すなわち、樹脂層Aの結晶化度が前記特定範囲に設定されていることにより、樹脂層Aの金属端子に密着する表面部分の結晶性が適切であり、金属端子の形状に対する追従が適切(言い換えると、硬すぎず、柔らかすぎない)であり、結果として、金属端子に対する優れた密着性が発揮されていると考えることができる。さらに、樹脂層Aの結晶化度が前記特定範囲に設定されていることにより、電解液に浸漬された場合のシール強度(後述する「金属端子に対するシール強度(電解液浸漬後)」)を好適に高めることもできる。この理由については、次のように考えることができる。すなわち、樹脂層Aの結晶化度が前記特定範囲に設定されていることにより、樹脂層Aの金属端子に密着する表面部分の結晶性が適切であることから、金属端子の形状に対する追従が適切(言い換えると、硬すぎず、柔らかすぎない)であり、樹脂層Aと金属端子との間に隙間が生じ難く、樹脂層Aと金属端子との界面に電解液が浸入し難い。結果として、電解液に浸漬された場合のシール強度が好適に高められると考えることができる。
【0038】
また、本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、樹脂層Aにおいて、海島構造の島部比率の偏在度は、好ましくは約1.00以下、より好ましくは約0.80以下、さらに好ましくは約0.50以下、さらに好ましくは約0.35以下であり、最も好ましい下限は0であり、好ましい範囲としては、0~1.00程度、0~0.80程度、0~0.50程度、0~0.35程度が挙げられる。また、樹脂層Aの島部比率の偏在度が約0.35以下であることにより、本開示の金属端子用接着性フィルム1が金属端子にシールされた後、電解液に浸漬された場合のシール強度(後述する「金属端子に対するシール強度(電解液浸漬後)」)を好適に高めることができる。当該島部比率の偏在度は、以下の測定方法によって測定される値である。偏在度が小さいことは、すなわち、樹脂層Aの面内の海島のばらつきが小さい(面内に島部が均等に配置されている)ことを意味する。一般的には、島部に電解液が浸透しやすいため、その島部が均等に配置されていることで、電解液の浸透が抑制されると考えることができる。例えば、偏在度が大きいと、島部が局所的に密集し、電解液が密集した島部から浸透しやすいといえる。
【0039】
<樹脂層Aの島部比率の偏在度の測定>
[前処理条件]
・試料を短冊状に切断し熱硬化性樹脂を用いて包埋(50℃、24hr)
・トリミング後Ru染色
・ウルトラミクロトームを用いて断面作製(ダイヤモンドナイフ使用:仕上げ厚さ80nm)
・Osコート(1~3nm)
【0040】
[SEM観察条件]
・測定装置:市販のSEM(例えば日立ハイテクノロジーズ社製 S-4800 TYPE II)
・加速電圧:5.0kV
・エミッション電流:20μA
・W.D:5mm
・検出器:Upper+H.A
・測定倍率:10k倍
・解像度:256dpi
【0041】
[画像処理条件]
電子顕微鏡画像に下記の画像処理を施し、二値化画像を得る。
画像処理にはPythonの画像処理ライブラリであるOpenCVを用いることができる。画像処理条件を以下に列記する。
1.ガウスフィルタ(カーネルサイズ5px×5px)
2.測定画像を縦横8倍に拡大する(補完手法=CUBIC)
3.fastNlMeansDenoising関数を用いてノイズを除去する(背景色=黒色、fastNlMeansDenoising関数のパラメーターはh=10、hForColorComponents=10、templateWindowSize=7、searchWindowSize=21とする)
4.明部が白色、暗部が黒色となるよう二値化(閾値=Otsuの閾値)
5.モルフォロジー変換-Open処理(カーネルサイズ=45px×15px)
6.ノイズ除去(面積625px^2以下の黒色部除去)
7.ノイズ除去(面積75px^2以下の白色部除去)
8.ノイズ除去(面積10000px^2以下の黒色部除去)
9.モルフォロジー変換-Open処理(カーネルサイズ=65px×25px)
10.モルフォロジー変換-CLOSE処理(カーネルサイズ=25px×1px)
得られた二値化画像から504px×504px(1μm×1μm画角相当)を切り出し、その領域における白色部の比率をW(%)とする。
上記白色部の比率Wを任意の40か所を切り出して計算し、
40か所におけるWの標準偏差をWの40か所におけるWの平均値で除した値を海島構造の偏在度Lと規定する。
【0042】
酸変性ポリオレフィンを含む樹脂層Aの島部比率の偏在度を調整する方法としては、例えば、樹脂層Aを形成する際の成形法(例えば押し出し法、インフレーション法などの成形法の種類や、冷却温度、冷却時間、ライン速度)、樹脂配合の調整などが挙げられる。例えば急冷、ライン速度を速く、樹脂の島部を形成する成分を多くすると島部比率が偏在しやすくなり、また、徐冷、ライン速度を遅く、樹脂の島部を形成する成分を少なくすると島部比率が偏在しにくくなる傾向にあることから、樹脂層Aの島部比率の偏在度が小さくなるように調整する。
【0043】
本開示の金属端子用接着性フィルム1においては、樹脂層Aの前記結晶化度が3以上18以下の範囲内であって、かつ、金属端子用接着性フィルム1の少なくとも一方側の表面を構成する、酸変性ポリオレフィンを含む樹脂層Aの海島構造の島部比率の偏在度が約0.35以下であることにより、電解液に浸漬された場合のシール強度(後述する「金属端子に対するシール強度(電解液浸漬後)」)をより一層好適に高めることもできる。この理由については、次のように考えることができる。すなわち、樹脂層Aの島部は、海部と島部とは、一般に、異なる樹脂により形成されており、例えば樹脂層Aが酸変性ポリプロピレン(断面が樹脂の海島構造を有するもの)により形成されている場合、一般に、海部が酸変性ポリプロピレン成分により形成され、島部がポリエチレン成分により形成される。島部のポリエチレン部分は、海部の酸変性ポリプロピレン部分よりも密度が小さく、体積膨張率、粘性、電解液の膨潤性などが、海部とは異なっている。したがって、樹脂層Aの断面における島部の偏在が大きいと、樹脂層Aに電解液が浸透した場合の特性も偏在することになり、樹脂層Aの機械的強度が低下しやすくなる。本開示においては、樹脂層Aの海島構造の島部比率の偏在度を約0.35以下に設定することにより、樹脂層Aの断面における島部の偏在が小さく、電解液に浸漬された場合のシール強度が高められると考えられる。
【0044】
また、本開示の効果をより一層好適に発揮する観点から、樹脂層Aにおいて、配向度は、好ましくは約0.5以上、より好ましくは約0.7以上、さらに好ましくは約1.0以上であり、好ましい上限は5.5以下であり、好ましい範囲としては、0.5~5.5程度、0.7~5.5程度、1.0~5.5が挙げられる。また、樹脂層Aの配向度が約0.7以上であることにより、本開示の金属端子用接着性フィルム1が金属端子にシールされた後、電解液に浸漬された場合のシール強度(後述する「金属端子に対するシール強度(電解液浸漬後)」)を好適に高めることができる。当該配向度は、以下の測定方法によって測定される値である。
【0045】
<樹脂層Aの配向度の測定>
X線回折装置(例えばあいちシンクロトロン光センターの商品名BL8S3ビームライン)を用い、下記の条件で結晶化度を測定する。
(測定条件)
・X線照射の角度は、樹脂層Aの前記表面(0°)に対して0.09°とする。
・測定範囲は、樹脂層Aの前記表面から深さ5μmまでの範囲とする。
・X線検出器としては、例えばR-AXISを用い、カメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
【0046】
(樹脂層Aの解析)
X線散乱データ解析用ソフトウェアFI2Dを用いて2次元検出器のスペクトルデータから方位角80degから100degのデータを切り出して方位角方向に積算し、回折角2θに対する強度値を示す1次元スペクトルを取得する。さらに1次元スペクトル上において2θ=4.0degと2θ=16.0degとなる二点間を通る直線をバックグラウンドとして差し引く。その後、アモルファス成分のスペクトル強度値AをA:2θ=8.8deg~9.8degの領域における強度値の最小値として規定し、4つの結晶面の結晶ピーク強度値P1、P2、P3、P4を以下の通り規定する。
P1:2θ=7.0deg~9.2degの領域にあるピークのピークトップの強度値
P2:2θ=9.2deg~10.6degにあるピークのピークトップの強度値
P3:2θ=10.6deg~12.0degにあるピークのピークトップの強度値
P4:2θ=12.0deg~14.0degにあるピークのピークトップの強度値
結晶化度CはC=(P1+P2+P3+P4)/A
配向度DはD=P2/P4で規定する。
【0047】
樹脂層Aは、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。製膜性の観点からは、樹脂層Aは、2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成することが好ましい。ブレンドポリマーとする場合、樹脂層Aは、酸変性ポリプロピレンを主成分(50質量%以上の成分)とし、50質量%以下を他の樹脂(柔軟性を向上させる観点からは、好ましくはポリエチレン)とすることが好ましい。一方、樹脂層Aの耐電解液性の観点からは、樹脂層Aは、樹脂として酸変性ポリプロピレンを単独で含むことが好ましい。
【0048】
樹脂層Aには、必要に応じて、公知の添加剤が含まれていてもよい。
【0049】
例えば、樹脂層Aは、必要に応じて充填剤を含んでいてもよい。樹脂層Aが充填剤を含むことにより、充填剤がスペーサー(Spacer)として機能するために、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3のバリア層33との間の短絡を効果的に抑制することが可能となる。充填剤の粒径としては、0.1~35μm程度、好ましくは5.0~30μm程度、さらに好ましくは10~25μm程度の範囲が挙げられる。また、充填剤の含有量としては、樹脂層Aを形成する樹脂成分100質量部に対して、それぞれ、5~30質量部程度、より好ましくは10~20質量部程度が挙げられる。
【0050】
充填剤としては、無機系、有機系のいずれも用いることができる。無機系充填剤としては、例えば、炭素(カーボン、グラファイト)、シリカ、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、シリコンカーバイド、酸化ジルコニウム、珪酸ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、有機系充填剤としては、例えば、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル架橋物、ポリエチレン架橋物等が挙げられる。形状の安定性、剛性、内容物耐性の点から、酸化アルミニウム、シリカ、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物が好ましく、特にこの中でも球状の酸化アルミニウム、シリカがより好ましい。樹脂層Aを形成する樹脂成分への充填剤の混合方法としては、予めバンバリーミキサー等で両者をメルトブレンドし、マスターバッチ化したものを所定の混合比にする方法、樹脂成分との直接混合方法などを採用することができる。
【0051】
また、樹脂層Aは、必要に応じて顔料を含んでいてもよい。顔料としては、無機系の各種顔料を用いることができる。顔料の具体例としては、上記充填剤で例示した炭素(カーボン、グラファイト)が好ましく例示できる。炭素(カーボン、グラファイト)は、一般に蓄電デバイスの内部に使用されている材料であり、電解液に対する溶出の虞がない。また、着色効果が大きく接着性を阻害しない程度の添加量で充分な着色効果を得られると共に、熱で溶融することがなく、添加した樹脂の見かけの溶融粘度を高くすることができる。さらに、熱接着時(ヒートシール時)に加圧部が薄肉となることを防止して、蓄電デバイス用外装材と金属端子の間における優れた密封性を付与できる。
【0052】
樹脂層Aに顔料を添加する場合、その添加量としては、たとえば、粒径が約0.03μmのカーボンブラックを使用した場合、樹脂層Aを形成する樹脂成分100質量部に対して、それぞれ、0.05~0.3質量部程度、好ましくは0.1~0.2質量部程度が挙げられる。樹脂層Aに顔料を添加することにより、金属端子用接着性フィルム1の有無をセンサーで検知可能なもの、または目視で検査可能なものとすることができる。なお、樹脂層Aに充填剤と顔料とを添加する場合、同一の樹脂層Aに充填剤と顔料を添加してもよいが、金属端子用接着性フィルム1の熱融着性を阻害しない観点からは、充填剤及び顔料は、異なる層(例えば後述の第1樹脂層12a、第2樹脂層12b、中間層11など)に分けて添加することが好ましい。
【0053】
本開示の効果をより好適に奏する観点から、樹脂層Aの融解ピーク温度は、好ましくは125℃以上、より好ましくは約130℃以上、さらに好ましくは約135℃以上である。同様の観点から、当該融解ピーク温度は、例えば180℃以下、好ましくは175℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは約165℃以下、さらに好ましくは約160℃以下である。当該融解ピーク温度の好ましい範囲としては、125~180℃程度、125~175℃程度、125~170℃程度、125~165℃程度、125~160℃程度、130~180℃程度、130~175℃程度、130~170℃程度、130~165℃程度、130~160℃程度、135~180℃程度、135~175℃程度、135~170℃程度、135~165℃程度、135~160℃程度が挙げられる。本開示において、融解ピーク温度の測定方法は、以下の通りである。
【0054】
<融解ピーク温度の測定>
各測定サンプルについて、JIS K7121:2012(プラスチックの転移温度測定方法(JIS K7121:1987の追補1))の規定に準拠して融解ピーク温度を測定する。測定は、示差走査熱量計(DSC、例えばティー・エイ・インスツルメント製の示差走査熱量計Q200)を用いて行う。測定サンプルを、-50℃で15分間保持した後、10℃/分の昇温速度で-50℃から210℃まで昇温させて、1回目の融解ピーク温度P(℃)を測定した後、210℃にて10分間保持する。次に、10℃/分の降温速度で210℃から-50℃まで降温させて15分間保持する。さらに、10℃/分の昇温速度で-50℃から210℃まで昇温させて2回目の融解ピーク温度Q(℃)を測定する。なお、窒素ガスの流量は50ml/分とする。以上の手順によって、1回目に測定される融解ピーク温度P(℃)と、2回目に測定される融解ピーク温度Q(℃)を求める。以上の手順によって、1回目に測定される融解ピーク温度P(℃)の値を採用する。
【0055】
本開示の金属端子用接着性フィルム1が樹脂層Aの単層により構成されている場合、後述する金属端子用接着性フィルム1の総厚みが、樹脂層Aの厚みに対応する。
【0056】
また、本開示の金属端子用接着性フィルム1が複層により構成されている場合、本開示の効果をより好適に奏する観点から、樹脂層Aの厚さは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上であり、また、好ましくは約120μm以下、より好ましくは約100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。樹脂層Aの厚さの好ましい範囲としては、10~120μm程度、10~100μm程度、10~80μm程度、15~120μm程度、15~100μm程度、15~80μm程度、20~120μm程度、20~100μm程度、20~80μm程度が挙げられる。金属端子用接着性フィルムの絶縁性を高める観点からは、樹脂層Aの厚さは、好ましくは約55μm以上、より好ましくは約60μm以上であり、また、好ましくは約100μm以下、より好ましくは約90μm以下であり、好ましい範囲としては、55~100μm程度、55~90μm程度、60~100μm程度、60~90μm程度が挙げられる。なお、本開示の金属端子用接着性フィルム1に樹脂層Aが複数含まれている場合、各樹脂層Aの厚みが、それぞれ、前記の厚みであることが好ましい。
【0057】
前記の通り、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、例えば
図6に示すように、少なくとも、第1樹脂層12aと、中間層11と、第2樹脂層12bとがこの順に積層された構成とすることができる。当該構成において、第1樹脂層12aが金属端子2側に配置されることから、少なくとも第1樹脂層12aを樹脂層Aとする。また、第2樹脂層12bが、蓄電デバイス用外装材3側に配置される。当該構成において、両面側の表面に、それぞれ第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bが位置している。
【0058】
第2樹脂層12bは、樹脂により構成された層である。第2樹脂層12bは、樹脂層Aによって形成されていてもよいし、樹脂層Aとは異なる樹脂層B(すなわち、樹脂層Bは、酸変性ポリオレフィンを含まない樹脂層であるか、酸変性ポリオレフィンを含むが、X線回折装置を用いて前記の条件で測定される結晶化度が、3以上18以下の範囲外の樹脂層である)によって形成されていてもよい。
【0059】
また、中間層11についても、樹脂層Aより形成されていてもよいし、樹脂層Aとは異なる樹脂層Bにより形成されていてもよい。
【0060】
[樹脂層B]
樹脂層Bを構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリカーボネート及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられ、これらの中でも、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0061】
後述の通り、第2樹脂層12bは、ポリオレフィン系樹脂を含む(すなわち、ポリオレフィン骨格を有する)ことが好ましく、ポリオレフィンを含むことが好ましく、ポリオレフィンにより形成された層であることがさらに好ましい。第2樹脂層12bは、ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリオレフィンまたは酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましく、ポリオレフィンを含むことがより好ましく、ポリオレフィンにより形成された層であることがさらに好ましい。
【0062】
また、中間層11は、ポリオレフィン系樹脂を含む(すなわち、ポリオレフィン骨格を有する)ことが好ましく、ポリオレフィンを含むことが好ましく、ポリオレフィンにより形成された層であることがさらに好ましい。
【0063】
第2樹脂層12b及び中間層11に用いられる樹脂層Bおいて、それぞれ、ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ポリオレフィンは、ポリプロピレンであることが好ましく、酸変性ポリオレフィンは、酸変性ポリプロピレンであることが好ましい。
【0064】
樹脂層Bは、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。製膜性の観点からは、樹脂層Bは、2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成することが好ましい。ブレンドポリマーとする場合、酸変性ポリプロピレンを含む樹脂層Bは、酸変性ポリプロピレンを主成分(50質量%以上の成分)とし、50質量%以下を他の樹脂(柔軟性を向上させる観点からは、好ましくはポリエチレン)とすることが好ましい。また、ポリプロピレンを含む樹脂層Bは、ポリプロピレンを主成分(50質量%以上の成分)とし、50質量%以下を他の樹脂(柔軟性を向上させる観点からは、好ましくはポリエチレン)とすることが好ましい。一方、樹脂層Bの耐電解液性の観点からは、酸変性ポリプロピレンを含む樹脂層Bは、樹脂として酸変性ポリプロピレンを単独で含むことが好ましく、ポリプロピレンを含む樹脂層Bは、樹脂として酸変性ポリプロピレン又はポリプロピレンを単独で含むことが好ましい。
【0065】
樹脂層Bを構成する樹脂として、ポリエステル系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル構造を含むものである。また、ポリエチレンテレフタレート構造又はポリブチレンテレフタレート構造に加えて、さらに、ポリエーテル構造を含み、当該ポリエーテル構造が、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びネオペンチルグリコールの少なくとも一方とポリブチレンテレフタレート構造のテレフタル酸との重縮合構造を備えていてもよい。また、ポリエチレンテレフタレート構造又はポリブチレンテレフタレート構造に加えて、さらに、別のポリエステル構造を含み、当該ポリエステル構造が、イソフタル酸、ドデカンジオン酸、及びセバシン酸からなる群より選択される少なくとも1種と、ポリブチレンテレフタレート構造の1,4-ブタンジオールとの重縮合構造を備えていてもよい。
【0066】
樹脂層Bの融解ピーク温度は、好ましくは125℃以上、より好ましくは約130℃以上、さらに好ましくは約135℃以上である。当該融解ピーク温度は、例えば180℃以下、好ましくは175℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは約165℃以下、さらに好ましくは約160℃以下である。当該融解ピーク温度の好ましい範囲としては、125~180℃程度、125~175℃程度、125~170℃程度、125~165℃程度、125~160℃程度、130~180℃程度、130~175℃程度、130~170℃程度、130~165℃程度、130~160℃程度、135~180℃程度、135~175℃程度、135~170℃程度、135~165℃程度、135~160℃程度が挙げられる。
【0067】
また、本開示の金属端子用接着性フィルム1が、第2樹脂層12bとして樹脂層Bを有する場合、本開示の効果をより好適に奏する観点から、樹脂層Bの厚さは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上であり、また、好ましくは約120μm以下、より好ましくは約100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。当該樹脂層Bの厚さの好ましい範囲としては、10~120μm程度、10~100μm程度、10~80μm程度、15~120μm程度、15~100μm程度、15~80μm程度、20~120μm程度、20~100μm程度、20~80μm程度が挙げられる。
【0068】
また、本開示の金属端子用接着性フィルム1が、中間層11として樹脂層Bを有する場合、本開示の効果をより好適に奏する観点から、樹脂層Bの厚さは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約20μm以上、さらに好ましくは約30μm以上であり、また、好ましくは約120μm以下、より好ましくは約110μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。当該樹脂層Bの厚さの好ましい範囲としては、10~120μm程度、10~110μm程度、10~100μm程度、20~120μm程度、20~110μm程度、20~100μm程度、30~120μm程度、30~110μm程度、30~100μm程度が挙げられる。
【0069】
なお、樹脂層Bには、樹脂層Aと同様、公知の添加剤(前述の充填剤、顔料など)が含まれていてもよい。充填剤、顔料の種類や添加量については、樹脂層Aと同様である。
【0070】
本開示の効果をより好適に奏する観点から、金属端子用接着性フィルム1の総厚みとしては、例えば約50μm以上、好ましくは約80μm以上、より好ましくは約90μm以上、さらに好ましくは約100μm以上、さらに好ましくは約180μm以上である。また、本開示の金属端子用接着性フィルム1の総厚みは、約500μm以下、好ましくは約300μm以下、より好ましくは約250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。本開示の金属端子用接着性フィルム1の総厚みの好ましい範囲としては、50~500μm程度、50~300μm程度、50~250μm程度、50~200μm程度、80~500μm程度、80~300μm程度、80~250μm程度、80~200μm程度、90~500μm程度、90~300μm程度、90~250μm程度、90~200μm程度、100~500μm程度、100~300μm程度、100~250μm程度、100~200μm程度、180~500μm程度、180~300μm程度、180~250μm程度、180~200μm程度が挙げられる。より具体的な例としては、例えば、本開示の金属端子用接着性フィルム1を携帯電話、スマートフォン、タブレット用の比較的小型の蓄電デバイスに使用する場合には、総厚みは60~100μm程度とすることが好ましく、電力貯蔵システム、車載用の比較的大型の蓄電デバイスに使用する場合には、総厚みは100~200μm程度とすることが好ましい。
【0071】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、以下の方法によって測定される金属端子に対するシール強度(初期)は、好ましくは約20N/15mm以上、より好ましくは約25N/15mm以上、さらに好ましくは約30N/15mm以上であり、当該シール強度(初期)の上限は、通常、約80N/15mm以下であり、好ましい範囲としては、20~80N/15mm程度、25~80N/15mm程度、30~80N/15mm程度が挙げられる。
【0072】
<金属端子に対するシール強度(初期)の測定>
金属端子として、縦50mm、横22.5mm、厚み0.4mmのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8079H-O)を用意する。また、金属端子用接着性フィルムを長さ45mm、幅10mmに裁断する。次に、金属端子用接着性フィルムを金属端子の上に置き、金属端子/接着性フィルムの積層体を得る。このとき、金属端子の縦方向及び横方向が、それぞれ、金属端子用接着性フィルムの長さ方向及び幅方向と一致し、かつ、金属端子と金属端子用接着性フィルムの中心が一致するように積層する。また、金属端子用接着性フィルムの樹脂層Aが金属端子側に配置されている。次に、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム、厚さ100μm)を、当該積層体の金属端子用接着性フィルムの上に置いた(PTFEフィルムで金属端子用接着性フィルムの表面を覆った)状態で、200℃に加熱されたプレス機上に載置する(金属端子がホットプレート側)と共に、シリコーンスポンジシートを載せて、圧力0.25MPa、16秒間静置して、接着性フィルムを金属端子に熱融着させる。熱融着後の積層体を25℃まで自然冷却する。次に、25℃の環境において、テンシロン万能材料試験機(例えばエー・アンド・デイ社製のRTG-1210)で金属端子用接着性フィルムを金属端子から剥離させる。剥離時の最大強度を金属端子に対する密着強度(N/15mm)とする。剥離速度は50mm/分、剥離角度は180°、チャック間距離は30mmとし、3回測定した平均値とする。なお、温度200℃及び面圧0.25MPaの加熱加圧環境で16秒間静置する処理は、前記の仮接着工程及び本接着工程で加わる熱と圧力を想定した処理である。
【0073】
また、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、以下の方法によって測定される金属端子に対するシール強度(電解液浸漬後)は、好ましくは約15N/15mm以上、より好ましくは約20N/15mm以上、さらに好ましくは約25N/15mm以上であり、当該シール強度(電解液浸漬後)の上限は、通常、約50N/15mm以下であり、好ましい範囲としては、15~50N/15mm程度、20~50N/15mm程度、25~50N/15mm程度が挙げられる。
【0074】
<金属端子に対するシール強度(電解液浸漬後)の測定>
金属端子として、縦50mm、横22.5mm、厚み0.4mmのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8079H-O)を用意する。また、金属端子用接着性フィルムを長さ45mm、幅10mmに裁断する。次に、金属端子用接着性フィルムを金属端子の上に置き、金属端子/接着性フィルムの積層体を得る。このとき、金属端子の縦方向及び横方向が、それぞれ、金属端子用接着性フィルムの長さ方向及び幅方向と一致し、かつ、金属端子と金属端子用接着性フィルムの中心が一致するように積層する。また、金属端子用接着性フィルムの樹脂層Aが金属端子側に配置されている。次に、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム、厚さ100μm)を、当該積層体の金属端子用接着性フィルムの上に置いた(PTFEフィルムで金属端子用接着性フィルムの表面を覆った)状態で、200℃に加熱されたプレス機上に載置する(金属端子がホットプレート側)と共に、シリコーンスポンジシートを載せて、圧力0.25MPa、16秒間静置して、接着性フィルムを金属端子に熱融着さる。熱融着後の積層体を25℃まで自然冷却させる。次に得た積層体をポリ瓶100mLにいれ、中に電解液(EC(ethylene carbonate)/DMC(dimethyl carbonate)/DEC(diethyl carbonate)=1:1:1)100g+純水1000ppmを混合し、しっかりと密封する。密封した容器を85℃のオーブンにいれて、24時間経過後取り出し、水で電解液を洗い流して、得られた積層体を自然乾燥のため30分静置する。次に、25℃の環境において、テンシロン万能材料試験機(例えばエー・アンド・デイ社製のRTG-1210)で金属端子用接着性フィルムを金属端子から剥離させる。剥離時の最大強度を金属端子に対する密着強度(N/15mm)とする。剥離速度は50mm/分、剥離角度は180°、チャック間距離は30mmとし、3回測定した平均値とする。なお、温度200℃及び面圧0.25MPaの加熱加圧環境で16秒間静置する処理は、前記の仮接着工程及び本接着工程で加わる熱と圧力を想定した処理である。
【0075】
本開示の金属端子用接着性フィルムは、最外層の少なくとも一方の表面に微細な凹凸を備えていることが好ましい。これにより、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層35または金属端子との密着性をより一層向上させることができる。なお、金属端子用接着性フィルムの最外層の表面に微細な凹凸を形成する方法としては、微粒子などの添加剤を最外層に添加する方法、表面に凹凸を有する冷却ロールを当接させ賦型する方法などが挙げられる。微細な凹凸としては、好ましくは、最外層の表面の十点平均粗さが、好ましくは約0.1μm以上、より好ましくは約0.2μm以上であり、また、好ましくは約35μm以下、より好ましくは約10μm以下であり、好ましい範囲としては、0.1~35μm程度、0.1~10μm程度、0.2~35μm程度、0.2~10μm程度が挙げられる。なお、十点平均粗さは、JIS B0601:1994の規定に準拠した方法において、ミツトヨ製小型表面粗さ測定機 SURFTEST SJ-210を用いて測定した値である。
【0076】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、ポリオレフィン系樹脂により形成されていることが好ましい。例えば、本開示の金属端子用接着性フィルム1に含まれる樹脂成分は、酸変性ポリオレフィンのみであるか、酸変性ポリオレフィンとポリオレフィンのみであることが好ましい。好ましい酸変性ポリオレフィンとポリオレフィンについては、樹脂層A及び樹脂層Bで説明した通りである。
【0077】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、第1樹脂層12a、中間層11、及び第2樹脂層12bをこの順に備える積層体から構成されていることが好ましい。以下、本開示の金属端子用接着性フィルム1が、少なくとも、第1樹脂層12a、中間層11、及び第2樹脂層12bをこの順に備える積層体から構成され、第1樹脂層12aが樹脂層Aである場合を例にして、本開示の金属端子用接着性フィルム1の好ましい態様について、詳述する。
【0078】
蓄電デバイス10の金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に、本開示の金属端子用接着性フィルム1が配置されると、金属により構成された金属端子2の表面と、蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35(ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂により形成された層)とが、金属端子用接着性フィルム1を介して接着される。金属端子用接着性フィルム1の第1樹脂層12aが金属端子2側に配置され、第2樹脂層12bが蓄電デバイス用外装材3側に配置され、第1樹脂層12aが金属端子2と密着し、第2樹脂層12bが蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35と密着する。第1樹脂層12aは単層であっても複層であってよい。また、第2樹脂層12bは単層であってもよいし複層であってもよい。
【0079】
[第1樹脂層12a及び第2樹脂層12b]
本開示の好ましい態様に係る金属端子用接着性フィルム1は、
図6に示すように、中間層11の一方面側に第1樹脂層12aを備え、他方面側に第2樹脂層12bを備えている。第1樹脂層12aが金属端子2側に配置される。また、第2樹脂層12bが蓄電デバイス用外装材3側に配置される。本開示の金属端子用接着性フィルム1においては、両面側の表面に、それぞれ第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bが位置している。
【0080】
本開示において、第1樹脂層12aが前述の樹脂層Aにより形成されている。第2樹脂層12bは、前述の樹脂層Aより形成されていてもよいし、前述の樹脂層Bにより形成されていてもよい。
【0081】
第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bは、それぞれ、例えば、樹脂フィルムにより形成することができる。第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bをそれぞれ樹脂フィルムにより形成する場合、第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bを中間層11などと積層して本開示の金属端子用接着性フィルム1を製造する際に、予め形成された樹脂フィルムを、それぞれ、第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bとして用いてもよい。また、第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bを形成する樹脂を、それぞれ、押出成形や塗布などによって中間層11などの表面上でフィルム化して、樹脂フィルムにより形成された第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bとしてもよい。
【0082】
金属端子2側に配置される第1樹脂層12a(樹脂層A)は、酸変性ポリオレフィンを主成分として含んでいることがより好ましく、酸変性ポリプロピレンを主成分として含んでいることがさらに好ましい。ここで、主成分とは、第1樹脂層12aに含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、第1樹脂層12aが酸変性ポリプロピレンを主成分として含むとは、第1樹脂層12aに含まれる樹脂成分のうち、酸変性ポリプロピレンの含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0083】
前記の通り、第2樹脂層12bは、ポリオレフィン系樹脂を含む(すなわち、ポリオレフィン骨格を有する)ことが好ましく、ポリオレフィンを含むことが好ましく、ポリオレフィンにより形成された層であることがさらに好ましい。第2樹脂層12bは、ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリオレフィンまたは酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましく、ポリオレフィンを含むことがより好ましく、ポリオレフィンにより形成された層であることがさらに好ましい。ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ポリオレフィンは、ポリプロピレンであることが好ましく、酸変性ポリオレフィンは、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0084】
蓄電デバイス用外装材3側に配置される第2樹脂層12bは、ポリオレフィンを主成分として含んでいることがより好ましく、ポリプロピレンを主成分として含んでいることがさらに好ましい。ここで、主成分とは、第2樹脂層12bに含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、第2樹脂層12bがポリプロピレンを主成分として含むとは、第2樹脂層12bに含まれる樹脂成分のうち、ポリプロピレンの含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0085】
第2樹脂層12bの融解ピーク温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは約120℃以上、さらに好ましくは約130℃以上である。同様の観点から、当該融解ピーク温度は、例えば200℃以下、好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下、さらに好ましくは約170℃以下、さらに好ましくは約160℃以下である。当該融解ピーク温度の好ましい範囲としては、110~200℃程度、110~190℃程度、110~180℃程度、110~170℃程度、110~160℃程度、120~200℃程度、120~190℃程度、120~180℃程度、120~170℃程度、120~160℃程度、130~200℃程度、130~190℃程度、130~180℃程度、130~170℃程度、130~160℃程度が挙げられる。
【0086】
本開示の効果をより好適に奏する観点から、第1樹脂層12aの厚さは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上であり、また、好ましくは約120μm以下、より好ましくは約100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。第1樹脂層12aの厚さの好ましい範囲としては、10~120μm程度、10~100μm程度、10~80μm程度、15~120μm程度、15~100μm程度、15~80μm程度、20~120μm程度、20~100μm程度、20~80μm程度が挙げられる。
【0087】
また、本開示の効果をより好適に奏する観点から、第2樹脂層12bの厚さは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上、さらに好ましくは約20μm以上であり、また、好ましくは約120μm以下、より好ましくは約100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。第2樹脂層12bの厚さの好ましい範囲としては、10~120μm程度、10~100μm程度、10~80μm程度、15~120μm程度、15~100μm程度、15~80μm程度、20~120μm程度、20~100μm程度、20~80μm程度が挙げられる。
【0088】
[中間層11]
金属端子用接着性フィルム1において、中間層11は、金属端子用接着性フィルム1の支持体として機能する層である。
【0089】
中間層11は、前述の樹脂層Aより形成されていてもよいし、前述の樹脂層Bにより形成されていてもよい。
【0090】
中間層11は、例えば、樹脂フィルムにより形成することができる。中間層11を樹脂フィルムにより形成する場合、中間層11を第1樹脂層12aなどと積層して本開示の金属端子用接着性フィルム1を製造する際に、予め形成された樹脂フィルムを中間層11として用いてもよい。また、中間層11を形成する樹脂を、押出成形や塗布などによって第1樹脂層12aなどの表面上でフィルム化して、樹脂フィルムにより形成された中間層11としてもよい。
【0091】
中間層11を形成する素材については、特に制限されるものではない。中間層11を形成する素材としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリカーボネート及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられ、これらの中でも、特にポリオレフィン系樹脂が好ましい。すなわち、中間層11を形成する素材は、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン骨格を含む樹脂が好ましい。中間層11を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能である。
【0092】
前記の通り、中間層11は、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィンを含むことが好ましく、ポリオレフィンにより形成された層であることがさらに好ましい。ポリオレフィンにより形成された層は、延伸ポリオレフィンフィルムであってもよいし、未延伸ポリオレフィンフィルムであってもよいが、未延伸ポリオレフィンフィルムであることが好ましい。ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられ、より好ましくはポリプロピレンが挙げられる。また、耐電解液性に優れることから、中間層11は、ホモポリプロピレンを含むことが好ましく、ホモポリプロピレンにより形成されていることがより好ましく、未延伸ホモポリプロピレンフィルムであることがさらに好ましい。
【0093】
ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸-テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4'-ジフェニルメタン-ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0094】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0095】
また、中間層11は、上記の樹脂で形成された不織布により形成されていてもよい。中間層11が不織布である場合、中間層11は、前述のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂等で構成されていることが好ましい。
【0096】
中間層11の融解ピーク温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは約130℃以上、さらに好ましくは約140℃以上である。同様の観点から、当該融解ピーク温度は、例えば210℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましく190℃以下、さらに好ましくは約180℃以下、さらに好ましくは約170℃以下である。当該融解ピーク温度の好ましい範囲としては、120~210℃程度、120~200℃程度、120~190℃程度、120~180℃程度、120~170℃程度、130~210℃程度、130~200℃程度、130~190℃程度、130~180℃程度、130~170℃程度、140~210℃程度、140~200℃程度、140~190℃程度、140~180℃程度、140~170℃程度が挙げられる。
【0097】
中間層11について、X線回折装置を用いて下記の条件で測定される結晶化度は、好ましくは約3.0以上、より好ましくは約3.5以上、さらに好ましくは約4.0以上であり、また、好ましくは約10.0以下、より好ましくは約9.0以下、さらに好ましくは約8.0以下であり、好ましい範囲としては、3.0~10.0程度、3.0~9.0程度、3.0~8.0程度、3.5~10.0程度、3.5~9.0程度、3.5~8.0程度、4.0~10.0程度、4.0~9.0程度、4.0~8.0程度が挙げられる。下記測定条件以外の条件(装置、解析等)は、樹脂層Aについての上記結晶化度の測定と同様にして行う。
(測定条件:中間層)
・X線照射の角度は、中間層の表面(0°)に対して0.19°と0.22°とする。
・X線検出器としては、R-AXISを用い、カメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
【0098】
中間層11は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0099】
また、中間層11に着色剤を配合することにより、中間層11を、着色剤を含む層とすることもできる。また、透明度の低い樹脂を選択して、光透過度を調整することもできる。中間層11がフィルムの場合は、着色フィルムを用いることや、透明度の低いフィルムを用いることもできる。また、中間層11が不織布の場合は、着色剤を含む繊維やバインダーを用いた不織布や、透明度の低い不織布を用いることができる。
【0100】
中間層11が樹脂フィルムにより構成されている場合、中間層11の表面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等の公知の易接着手段が施されていてもよい。
【0101】
また、本開示の効果をより好適に奏する観点から、中間層11の厚さは、好ましくは約20μm以上、より好ましくは約30μm以上、さらに好ましくは約40μm以上であり、また、好ましくは約120μm以下、より好ましくは約110μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。中間層11の厚さの好ましい範囲としては、20~120μm程度、20~110μm程度、20~100μm程度、30~120μm程度、30~110μm程度、30~100μm程度、40~120μm程度、40~110μm程度、40~100μm程度が挙げられる。
【0102】
同様の観点から、第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bの合計厚みに対する、中間層11の厚みの比としては、好ましくは約0.3以上、より好ましくは約0.4以上であり、また、好ましくは約1.0以下、より好ましくは約0.8以下であり、好ましい範囲としては、0.3~1.0程度、0.3~0.8程度、0.4~1.0程度、0.4~0.8程度が挙げられる。また、金属端子用接着性フィルム1の絶縁性を高める観点からは、当該比としては、好ましくは約0.55以上、より好ましくは約0.60以上であり、また、好ましくは約1.0以下、より好ましくは約0.9以下であり、好ましい範囲としては、0.55~1.0程度、0.55~0.9程度、0.60~1.0程度、0.60~0.9程度が挙げられる。
【0103】
また、金属端子用接着性フィルム1の総厚みを100%とした場合、第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bの合計厚みの割合としては、好ましくは30~80%程度、より好ましくは50~70%程度である。
【0104】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、例えば、中間層11の両表面上に、それぞれ、第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bを積層することにより製造することができる。中間層11と第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bとの積層は、押出ラミネート法、Tダイ法、インフレーション法、サーマルラミネート法などの公知の方法により積層することができる。
【0105】
金属端子用接着性フィルム1を金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に介在させる方法としては、特に制限されず、例えば、
図1~3に示すように、金属端子2が蓄電デバイス用外装材3によって挟持される部分において、金属端子2に金属端子用接着性フィルム1を巻き付けてもよい。また、図示を省略するが、金属端子2が蓄電デバイス用外装材3によって挟持される部分において、金属端子用接着性フィルム1が2つの金属端子2を横断するようにして、金属端子2の両面側に配置されてもよい。
【0106】
接着促進剤層13は、中間層11と第1樹脂層12a、及び中間層11と第2樹脂層12bとを強固に接着することを目的として、必要に応じて設けられる層である(
図7を参照)。接着促進剤層13は、中間層11と第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bとの間の一方側のみに設けられていてもよいし、両側に設けられていてもよい。
【0107】
接着促進剤層13は、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリブタジエン系等の公知の接着促進剤を用いて形成することができる。強固な密着強度を得る観点からは、これらの中でも、イソシアネート系の接着促進剤により形成されていることが好ましい。イソシアネート系の接着促進剤としては、トリイソシアネートモノマー、ポリメリックMDIから選ばれたイソシアネート成分からなるものが、ラミネート強度に優れ、かつ、高温下でのラミネート強度の低下が少ない。特に、トリイソシアネートモノマーであるトリフェニルメタン-4,4',4"-トリイソシアネートやポリメリックMDIであるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(NCO含有率が約30%、粘度が200~700mPa・s)からなる接着促進剤によって形成することが特に好ましい。また、トリイソシアネートモノマーであるトリス(p-イソシアネートフェニル)チオホスフェートや、ポリエチレンイミン系を主剤とし、ポリカルボジイミドを架橋剤とした2液硬化型の接着促進剤により形成することも好ましい。
【0108】
接着促進剤層13は、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法等の公知の塗布法で塗布・乾燥することにより形成することができる。接着促進剤の塗布量としては、トリイソシアネートからなる接着促進剤の場合は、20~100mg/m2程度、好ましくは40~60mg/m2程度であり、ポリメリックMDIからなる接着促進剤の場合は、40~150mg/m2程度、好ましくは60~100mg/m2程度であり、ポリエチレンイミン系を主剤とし、ポリカルボジイミドを架橋剤とした2液硬化型の接着促進剤の場合は、5~50mg/m2程度、好ましくは10~30mg/m2程度である。なお、トリイソシアネートモノマーは、1分子中にイソシアネート基を3個持つモノマーであり、ポリメリックMDIは、MDIおよびMDIが重合したMDIオリゴマーの混合物であり、下記式で示されるものである。
【0109】
【0110】
本発明の効果をより好適に奏する観点から、第1樹脂層12aと中間層11とが接面しており、かつ、第2樹脂層12bと中間層11とが接面していることが好ましい。
【0111】
本開示の金属端子用接着性フィルム1の好ましい積層構成の具体例としては、酸変性ポリプロピレンにより形成された第1樹脂層/ポリプロピレンにより形成された基材/酸変性ポリプロピレンにより形成された第2樹脂層がこの順に積層された3層構成;酸変性ポリプロピレンにより形成された第1樹脂層/ポリプロピレンにより形成された基材/ポリプロピレンにより形成された第2樹脂層がこの順に積層された3層構成などが挙げられ、これらの中でも、蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35と第2樹脂層12bとの接着性の観点で後者の3層構成が特に好ましい。
【0112】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、下記の条件で測定される熱収縮率が、好ましくは60%以下、より好ましくは38%以下、さらに好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下であり、好ましい範囲としては、0~60%程度、0~38%程度、0~30%程度、0~20%程度である。
【0113】
(熱収縮率(%)の測定方法)
金属端子用接着性フィルムを長さ110mm(MD)×幅10mm(TD)のサイズに切り出して試験片とする。次に、金尺にて試験片の長さM(mm)を計測する。次に、試験片の長さ方向の端部(約10mm)を金網にテープで固定し、試験片を金網から吊るした状態にする。この状態で、190℃に加熱されたオーブン内に120秒置いた後、試験片を金網ごと取出して、室温(25℃)環境で自然冷却する。次に、室温まで自然冷却した試験片の長さN(mm)を金尺にて測定する。下の式により、金属端子用接着性フィルムの熱収縮率を算出する。
熱収縮率(%)=(1-(長さN/長さM))×100
【0114】
[金属端子2]
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に介在させて使用される。金属端子2(タブ)は、蓄電デバイス素子4の電極(正極または負極)に電気的に接続される導電部材であり、金属材料により構成されている。金属端子2を構成する金属材料としては、特に制限されず、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅などが挙げられる。例えば、リチウムイオン蓄電デバイスの正極に接続される金属端子2は、通常、アルミニウムなどにより構成されている。また、リチウムイオン蓄電デバイスの負極に接続される金属端子2は、通常、銅、ニッケルなどにより構成されている。
【0115】
金属端子2の表面は、耐電解液性を高める観点から、化成処理が施されていることが好ましい。例えば、金属端子2がアルミニウムにより形成されている場合、化成処理の具体例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物などの耐食性皮膜を形成する公知の方法が挙げられる。耐食性皮膜を形成する方法の中でも、フェノール樹脂、フッ化クロム(III)化合物、リン酸の3成分から構成されたものを用いるリン酸クロメート処理が好適である。
【0116】
金属端子2の大きさは、使用される蓄電デバイスの大きさなどに応じて適宜設定すればよい。金属端子2の厚さとしては、好ましくは50~1000μm程度、より好ましくは70~800μm程度が挙げられる。また、金属端子2の長さとしては、好ましくは1~200mm程度、より好ましくは3~150mm程度が挙げられる。また、金属端子2の幅としては、好ましくは1~200mm程度、より好ましくは3~150mm程度が挙げられる。
【0117】
[蓄電デバイス用外装材3]
蓄電デバイス用外装材3としては、少なくとも、基材層31、バリア層33、及び熱融着性樹脂層35をこの順に有する積層体からなる積層構造を有するものが挙げられる。
図8に、蓄電デバイス用外装材3の断面構造の一例として、基材層31、必要に応じて設けられる接着剤層32、バリア層33、必要に応じて設けられる接着層34、及び熱融着性樹脂層35がこの順に積層されている態様について示す。蓄電デバイス用外装材3においては、基材層31が外層側になり、熱融着性樹脂層35が最内層になる。蓄電デバイスの組み立て時に、蓄電デバイス素子4の周縁に位置する熱融着性樹脂層35同士を接面させて熱融着することにより蓄電デバイス素子4が密封され、蓄電デバイス素子4が封止される。なお、
図1から
図3には、エンボス成形などによって成形されたエンボスタイプの蓄電デバイス用外装材3を用いた場合の蓄電デバイス10を図示しているが、蓄電デバイス用外装材3は成形されていないパウチタイプであってもよい。なお、パウチタイプには、三方シール、四方シール、ピロータイプなどが存在するが、何れのタイプであってもよい。
【0118】
蓄電デバイス用外装材3を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、上限については、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、例えば約190μm以下、好ましくは約180μm以下、約160μm以下、約155μm以下、約140μm以下、約130μm以下、約120μm以下が挙げられ、下限については、蓄電デバイス素子4を保護するという蓄電デバイス用外装材3の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上、約80μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、35~190μm程度、35~180μm程度、35~160μm程度、35~155μm程度、35~140μm程度、35~130μm程度、35~120μm程度、45~190μm程度、45~180μm程度、45~160μm程度、45~155μm程度、45~140μm程度、45~130μm程度、45~120μm程度、60~190μm程度、60~180μm程度、60~160μm程度、60~155μm程度、60~140μm程度、60~130μm程度、60~120μm程度、80~190μm程度、80~180μm程度、80~160μm程度、80~155μm程度、80~140μm程度、80~130μm程度、80~120μm程度が挙げられる。
【0119】
(基材層31)
蓄電デバイス用外装材3において、基材層31は、蓄電デバイス用外装材の基材として機能する層であり、最外層側を形成する層である。
【0120】
基材層31を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層31を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層31の形成素材として好適に使用される。また、ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層31の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層31の形成素材として好適に使用される。
【0121】
基材層31は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層31として好適に使用される。
【0122】
これらの中でも、基材層31を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステルが挙げられる。
【0123】
基材層31は、耐ピンホール性及び蓄電デバイスの包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルムを積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層31を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミネート法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。
【0124】
また、基材層31は、成形性を向上させるために低摩擦化させておいてもよい。基材層31を低摩擦化させる場合、その表面の摩擦係数については特に制限されないが、例えば1.0以下が挙げられる。基材層31を低摩擦化するには、例えば、マット処理、スリップ剤の薄膜層の形成、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0125】
基材層31の厚さについては、例えば、10~50μm程度、好ましくは15~30μm程度が挙げられる。
【0126】
(接着剤層32)
蓄電デバイス用外装材3において、接着剤層32は、基材層31に密着性を付与させるために、必要に応じて、基材層31上に配置される層である。即ち、接着剤層32は、基材層31とバリア層33の間に設けられる。
【0127】
接着剤層32は、基材層31とバリア層33とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層32の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。また、接着剤層32の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
【0128】
接着剤層32の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、展延性、高湿度条件下における耐久性や黄変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層31とバリア層33との間のラミネート強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
【0129】
また、接着剤層32は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着剤層32を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層31とバリア層33とのラミネート強度を向上させるという観点から、基材層31側に配される接着剤成分として基材層31との接着性に優れる樹脂を選択し、バリア層33側に配される接着剤成分としてバリア層33との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着剤層32は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、バリア層33側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
【0130】
接着剤層32の厚さについては、例えば、2~50μm程度、好ましくは3~25μm程度が挙げられる。
【0131】
(バリア層33)
蓄電デバイス用外装材3において、バリア層33は、蓄電デバイス用外装材の強度向上の他、蓄電デバイス内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止する機能を有する層である。バリア層33は、金属層、すなわち、金属で形成されている層であることが好ましい。バリア層33を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層33は、例えば、金属箔や金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。蓄電デバイス用外装材の製造時に、バリア層33にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、JIS H4000:2014 A8079P-O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
【0132】
バリア層33の厚さについては、蓄電デバイス用外装材を薄型化しつつ、成形によってもピンホールの発生し難いものとする観点から、好ましくは10~200μm程度、より好ましくは20~100μm程度、20~45μm程度、45~65μm程度、65~85μm程度が挙げられる。
【0133】
また、バリア層33は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐食性皮膜を形成する処理をいう。
【0134】
(接着層34)
蓄電デバイス用外装材3において、接着層34は、熱融着性樹脂層35を強固に接着させるために、バリア層33と熱融着性樹脂層35の間に、必要に応じて設けられる層である。
【0135】
接着層34は、バリア層33と熱融着性樹脂層35を接着可能である接着剤によって形成される。接着層の形成に使用される接着剤の組成については、特に制限されないが、例えば、酸変性ポリオレフィンを含む樹脂組成物が挙げられる。酸変性ポリオレフィンとしては、第1樹脂層12a及び第2樹脂層12bで例示したものと同じものが例示できる。
【0136】
接着層34の厚さについては、例えば、1~40μm程度、好ましくは2~30μm程度が挙げられる。
【0137】
(熱融着性樹脂層35)
蓄電デバイス用外装材3において、熱融着性樹脂層35は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する層である。
【0138】
熱融着性樹脂層35に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0139】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0140】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。構成モノマーとしては、スチレンも挙げられる。
【0141】
これらの樹脂成分の中でも、好ましくは結晶性又は非晶性のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、及びこれらのブレンドポリマー;さらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとノルボルネンの共重合体、及びこれらの中の2種以上のブレンドポリマーが挙げられる。
【0142】
熱融着性樹脂層35は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層35は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上形成されていてもよい。第2樹脂層12bと熱融着性樹脂層35の樹脂が共通していると、これらの層間の密着性が向上することから、特に好ましい。
【0143】
また、熱融着性樹脂層35の厚さとしては、特に制限されないが、2~2000μm程度、好ましくは5~1000μm程度、さらに好ましくは10~500μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層35の厚さとしては、例えば約100μm以下、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~85μm程度が挙げられる。なお、例えば、後述の接着層5の厚みが10μm以上である場合には、熱融着性樹脂層35の厚みとしては、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~45μm程度が挙げられ、例えば後述の接着層5の厚みが10μm未満である場合や接着層5が設けられていない場合には、熱融着性樹脂層35の厚みとしては、好ましくは約20μm以上、より好ましくは35~85μm程度が挙げられる。
【0144】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、蓄電デバイスに用いるための蓄電デバイス用外装材と、本開示の金属端子用接着性フィルムとを含む、キットの形態とすることもできる。この場合にも、適用対象となる蓄電デバイスは、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、蓄電デバイス用外装材の外側に突出した金属端子とを備えている。本開示のキットは、用時に、金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に、本開示の金属端子用接着性フィルムを介在させるように用いられる。
【0145】
2.蓄電デバイス
本開示の蓄電デバイス10は、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子4と、当該蓄電デバイス素子4を封止する蓄電デバイス用外装材3と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、蓄電デバイス用外装材3の外側に突出した金属端子2とを備えている。本開示の蓄電デバイス10においては、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に、本開示の金属端子用接着性フィルム1が介在されてなることを特徴とする。すなわち、本開示の蓄電デバイス10は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に、本開示の金属端子用接着性フィルム1が介在する工程を備える方法により製造することができる。
【0146】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子4を、蓄電デバイス用外装材3で、正極及び負極の各々に接続された金属端子2を外側に突出させた状態で、本開示の金属端子用接着性フィルム1を金属端子2と熱融着性樹脂層35との間に介在させ、蓄電デバイス素子4の周縁に蓄電デバイス用外装材3のフランジ部(熱融着性樹脂層35同士が接触する領域であり、蓄電デバイス用外装材3の周縁部3a)が形成できるようにして被覆し、フランジ部の熱融着性樹脂層35同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材3を使用した蓄電デバイス10が提供される。なお、蓄電デバイス用外装材3を用いて蓄電デバイス素子4を収容する場合、蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35が内側(蓄電デバイス素子4と接する面)になるようにして用いられる。
【0147】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、半固体電池、擬固体電池、ポリマー電池、全樹脂電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【実施例0148】
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し、本開示は実施例に限定されるものではない。
【0149】
<金属端子用接着性フィルムの製造>
実施例1
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、中間層としてのポリプロピレン(PP層、ホモポリプロピレン、融解ピーク温度163℃、厚み50μm)の一方面に、外装材側の第2樹脂層としてポリプロピレン(PP層、融解ピーク温度140℃)、他方面に、金属端子側の第1樹脂層(樹脂層A)としてカーボンブラック含有無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa層、融解ピーク温度140℃)を、それぞれ厚み50μmで押出し、第1樹脂層(樹脂層A、PPa層、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)/基材(PP層、融解ピーク温度163℃、厚み50μm)/第2樹脂層(PP層、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み150μm)を得た。樹脂層Aとした第1樹脂層は、成膜温度基準条件、成膜速度基準条件、冷却基準条件で製造することで、結晶化度を調整した。
【0150】
実施例2
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、中間層としてのポリプロピレン(PP層、ランダムポリプロピレン、融解ピーク温度143℃、厚み100μm)の一方面に、外装材側の第2樹脂層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa層、融解ピーク温度140℃)、他方面に、金属端子側の第1樹脂層(樹脂層A)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa層、融解ピーク温度140℃)を、それぞれ厚み25μmで押出し、第1樹脂層(樹脂層A、PPa層、融解ピーク温度140℃、厚み25μm)/基材(PP層、融解ピーク温度143℃、厚み100μm)/第2樹脂層(PPa層、融解ピーク温度140℃、厚み25μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み150μm)を得た。樹脂層Aとした第1樹脂層は、成膜温度基準よりかなり低い、成膜速度基準よりかなり遅い、冷却基準より急冷条件で製造することで、結晶化度を調整した。
【0151】
実施例3
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、中間層としてのカーボンブラック含有ポリプロピレン(PP層、ホモポリプロピレン、融解ピーク温度160℃、厚み60μm)の一方面に、外装材側の第2樹脂層としてポリプロピレン(PP層、融解ピーク温度140℃)を厚み40μmで押出、他方面に、金属端子側の第1樹脂層(樹脂層A)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa層、融解ピーク温度140℃)を厚み50μmで押出し、第1樹脂層(樹脂層A、PPa層、融解ピーク温度140℃、厚み50μm)/基材(PP層、融解ピーク温度160℃、厚み60μm)/第2樹脂層(PP層、融解ピーク温度140℃、厚み40μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み150μm)を得た。樹脂層Aとした第1樹脂層は、成膜温度基準より低い、成膜速度基準より速い、冷却基準より徐冷条件で製造することで、結晶化度を調整した。
【0152】
実施例4
インフレーション押出装置を用いて、中間層としてのポリプロピレン(PP層、ホモポリプロピレン、融解ピーク温度160℃、厚み80μm)の一方面に、外装材側の第2樹脂層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa層、融解ピーク温度140℃)、他方面に、金属端子側の第1樹脂層(樹脂層A)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa層、融解ピーク温度140℃)を、それぞれ厚み35μmで押出し、第1樹脂層(樹脂層A、PPa層、融解ピーク温度140℃、厚み35μm)/基材(PP層、融解ピーク温度160℃、厚み80μm)/第2樹脂層(PPa層、融解ピーク温度140℃、厚み35μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み150μm)を得た。樹脂層Aとした第1樹脂層は、成膜温度基準より低い、成膜速度基準よりかなり遅い、冷却基準よりかなり徐冷の条件で製造することで、結晶化度を調整した。
【0153】
実施例5
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、中間層としてのポリプロピレン(PP層、ホモポリプロピレン、融解ピーク温度163℃、厚み80μm)の一方面に、外装材側の第2樹脂層としてポリプロピレン(PP層、融解ピーク温度140℃)、他方面に、金属端子側の第1樹脂層(樹脂層A)としてカーボンブラック含有無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa層、融解ピーク温度140℃)を、それぞれ厚み60μmで押出し、第1樹脂層(樹脂層A、PPa層、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)/基材(PP層、融解ピーク温度163℃、厚み80μm)/第2樹脂層(PP層、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。樹脂層Aとした第1樹脂層は、成膜温度基準条件、成膜速度基準条件、冷却基準条件で製造することで、結晶化度を調整した。
【0154】
実施例6
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、中間層としてのポリプロピレン(PP層、ホモポリプロピレン、融解ピーク温度163℃、厚み80μm)の一方面に、外装材側の第2樹脂層としてポリプロピレン(PP層、融解ピーク温度140℃)、他方面に、金属端子側の第1樹脂層(樹脂層A)としてカーボンブラック含有無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa層、融解ピーク温度140℃)を、それぞれ厚み60μmで押出し、第1樹脂層(樹脂層A、PPa層、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)/基材(PP層、融解ピーク温度163℃、厚み80μm)/第2樹脂層(PP層、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。樹脂層Aとした第1樹脂層は、成膜温度基準条件、成膜速度基準条件、冷却基準条件で製造することで、結晶化度を調整した。
【0155】
実施例7
押出機及びTダイキャスティング装置を用いて、中間層としてのポリプロピレン(PP層、ホモポリプロピレン、融解ピーク温度163℃、厚み80μm)の一方面に、外装材側の第2樹脂層としてポリプロピレン(PP層、融解ピーク温度140℃)を厚み60μmで押出し、他方面に、カーボンブラック含有無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa層、融解ピーク温度140℃)を厚み20μmで押出し、さらに同方面に金属端子側の第1樹脂層(樹脂層A)として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa層、融解ピーク温度140℃)を厚み40μmで押出し、第1樹脂層(樹脂層A、PPa層、融解ピーク温度140℃、厚み40μm)/第3樹脂層(PPa層、融解ピーク温度140℃、厚み20μm)/基材(PP層、融解ピーク温度163℃、厚み80μm)/第2樹脂層(PP層、融解ピーク温度140℃、厚み60μm)が順に積層された接着性フィルム(総厚み200μm)を得た。樹脂層Aとした第1樹脂層は、成膜温度基準条件、成膜速度基準条件、冷却基準条件で製造することで、結晶化度を調整した。
【0156】
比較例1
押出機およびTダイキャスティングをもちいて、酸変性ポリプロピレンフィルム(融解ピーク温度140℃、厚み100μm)を単独で金属端子用接着性フィルムとした。
【0157】
<樹脂層A及び中間層の結晶化度の測定>
実施例1-7の接着性フィルムの第1樹脂層(樹脂層A)及び中間層について、それぞれ、X線回折装置(あいちシンクロトロン光センターの商品名BL8S3ビームライン)を用い、下記の条件で結晶化度を測定した。また、比較例1の接着性フィルムについては、酸変性ポリプロピレンフィルムの結晶化度を、実施例1-7と同様に測定した。結果を表1に示す。
(測定条件:樹脂層A)
・X線照射の角度は、樹脂層Aの表面(0°)に対して0.09°とする。
・測定範囲は、樹脂層Aの表面から深さ5μmまでの範囲とする。
・X線検出器のカメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
(測定条件:中間層)
・X線照射の角度は、中間層の表面(0°)に対して0.19°と0.22°とする。
・X線検出器としては、R-AXISを用い、カメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
【0158】
(中間層の解析)
X線散乱データ解析用ソフトウェアFI2Dを用いて2次元検出器のスペクトルデータから方位角80degから100degのデータを切り出して方位角方向に積算し、回折角2θに対する強度値を示す1次元スペクトルを取得する。さらに1次元スペクトル上において2θ=4.0degと2θ=16.0degとなる二点間を通る直線をバックグラウンドとして差し引く。その後、アモルファス成分のスペクトル強度値AをA:2θ=8.8deg~9.8degの領域における強度値の最小値として規定し、4つの結晶面の結晶ピーク強度値P1、P2、P3、P4を以下の通り規定する。
P1:2θ=7.0deg~9.2degの領域にあるピークのピークトップの強度値
P2:2θ=9.2deg~10.6degにあるピークのピークトップの強度値
P3:2θ=10.6deg~12.0degにあるピークのピークトップの強度値
P4:2θ=12.0deg~14.0degにあるピークのピークトップの強度値
X線照射の角度を0.22°として測定した際のP1+P2+P3+P4の値からX線照射の角度を0.19°として測定した際のP1+P2+P3+P4の値を引いた値を、X線照射の角度を0.22°として測定した際のAの値からX線照射の角度を0.19°として測定した際のAの値を引いた値で除して得られる値を中間層の結晶化度Ciとする。
【0159】
<樹脂層Aの島部比率の偏在度の測定>
実施例1-7の接着性フィルムの第1樹脂層(樹脂層A)について、それぞれ下記の条件で島部比率の偏在度を測定した。また、比較例1の接着性フィルムについては、酸変性ポリプロピレンフィルムの島部比率の偏在度を、実施例1-7と同様に測定した。結果を表1に示す。
[前処理条件]
・試料を短冊状に切断し熱硬化性樹脂を用いて包埋(50℃、24hr)
・トリミング後Ru染色
・ウルトラミクロトームを用いて断面作製(ダイヤモンドナイフ使用:仕上げ厚さ80nm)
・Osコート(1~3nm)
【0160】
[SEM観察条件]
・測定装置:市販のSEM(例えば日立ハイテクノロジーズ社製 S-4800 TYPE II)
・加速電圧:5.0kV
・エミッション電流:20μA
・W.D:5mm
・検出器:Upper+H.A
・測定倍率:10k倍
・解像度:256dpi
【0161】
[画像処理条件]
電子顕微鏡画像に下記の画像処理を施し、二値化画像を得る。
画像処理にはPythonの画像処理ライブラリであるOpenCVを用いることができる。画像処理条件を以下に列記する。
1.ガウスフィルタ(カーネルサイズ5px×5px)
2.測定画像を縦横8倍に拡大する(補完手法=CUBIC)
3.fastNlMeansDenoising関数を用いてノイズを除去する(背景色=黒色、fastNlMeansDenoising関数のパラメーターはh=10、hForColorComponents=10、templateWindowSize=7、searchWindowSize=21とする)
4.明部が白色、暗部が黒色となるよう二値化(閾値=Otsuの閾値)
5.モルフォロジー変換-Open処理(カーネルサイズ=45px×15px)
6.ノイズ除去(面積625px^2以下の黒色部除去)
7.ノイズ除去(面積75px^2以下の白色部除去)
8.ノイズ除去(面積10000px^2以下の黒色部除去)
9.モルフォロジー変換-Open処理(カーネルサイズ=65px×25px)
10.モルフォロジー変換-CLOSE処理(カーネルサイズ=25px×1px)
得られた二値化画像から504px×504px(1μm×1μm画角相当)を切り出し、その領域における白色部の比率をW(%)とする。
上記白色部の比率Wを任意の40か所を切り出して計算し、
40か所におけるWの標準偏差をWの40か所におけるWの平均値で除した値を海島構造の偏在度Lと規定する。
【0162】
<樹脂層Aの配向度の測定>
実施例1-7の接着性フィルムの第1樹脂層(樹脂層A)について、それぞれ下記の条件で配向度を測定した。また、比較例1の接着性フィルムについては、酸変性ポリプロピレンフィルムの配向度を、実施例1-7と同様に測定した。結果を表1に示す。
(測定条件)
X線回折装置(あいちシンクロトロン光センターの商品名BL8S3ビームライン)を用い、下記の条件で結晶化度を測定する。
・X線照射の角度は、樹脂層Aの前記表面(0°)に対して0.09°とする。
・測定範囲は、樹脂層Aの表面から深さ5μmまでの範囲とする。
・X線検出器としては、例えばR-AXISを用い、カメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
【0163】
(樹脂層Aの解析)
X線散乱データ解析用ソフトウェアFI2Dを用いて2次元検出器のスペクトルデータから方位角80degから100degのデータを切り出して方位角方向に積算し、回折角2θに対する強度値を示す1次元スペクトルを取得する。さらに1次元スペクトル上において2θ=4.0degと2θ=16.0degとなる二点間を通る直線をバックグラウンドとして差し引く。その後、アモルファス成分のスペクトル強度値AをA:2θ=8.8deg~9.8degの領域における強度値の最小値として規定し、4つの結晶面の結晶ピーク強度値P1、P2、P3、P4を以下の通り規定する。
P1:2θ=7.0deg~9.2degの領域にあるピークのピークトップの強度値
P2:2θ=9.2deg~10.6degにあるピークのピークトップの強度値
P3:2θ=10.6deg~12.0degにあるピークのピークトップの強度値
P4:2θ=12.0deg~14.0degにあるピークのピークトップの強度値
結晶化度CはC=(P1+P2+P3+P4)/A
配向度DはD=P2/P4で規定する。
【0164】
<金属端子に対するシール強度(初期)の測定>
実施例1-7及び比較例1の接着性フィルムの金属端子に対するシール強度(初期)を、以下の方法で測定した。結果を表1に示す。金属端子として、縦50mm、横22.5mm、厚み0.4mmのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8079H-O)を用意した。また、実施例及び比較例で得られた各金属端子用接着性フィルムを長さ45mm、幅10mmに裁断した。次に、金属端子用接着性フィルムを金属端子の上に置き、金属端子/接着性フィルムの積層体を得た。このとき、金属端子の縦方向及び横方向が、それぞれ、金属端子用接着性フィルムの長さ方向及び幅方向と一致し、かつ、金属端子と金属端子用接着性フィルムの中心が一致するように積層した。また、金属端子用接着性フィルムの樹脂層Aが金属端子側に配置されている。次に、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム、厚さ100μm)を、当該積層体の金属端子用接着性フィルムの上に置いた(PTFEフィルムで金属端子用接着性フィルムの表面を覆った)状態で、200℃に加熱されたプレス機上に載置する(金属端子がホットプレート側)と共に、シリコーンスポンジシートを載せて、圧力0.25MPa、16秒間静置して、接着性フィルムを金属端子に熱融着させた。熱融着後の積層体を25℃まで自然冷却した。次に、25℃の環境において、テンシロン万能材料試験機(エー・アンド・デイ社製のRTG-1210)で金属端子用接着性フィルムを金属端子から剥離させた。剥離時の最大強度を金属端子に対する密着強度(N/15mm)とした。なお、密着強度(N/15mm)は、幅10mmの金属端子用接着性フィルムについて測定した密着強度(N/15mm)からの換算値である。剥離速度は50mm/分、剥離角度は180°、チャック間距離は30mmとし、3回測定した平均値とした。結果を表1に示す。なお、温度200℃及び面圧0.25MPaの加熱加圧環境で16秒間静置する処理は、前記の仮接着工程及び本接着工程で加わる熱と圧力を想定した処理である。
【0165】
<金属端子に対するシール強度(電解液浸漬後)の測定>
実施例1-7及び比較例1の接着性フィルムの金属端子に対するシール強度(電解液浸漬後)を、以下の方法で測定した。結果を表1に示す。金属端子として、縦50mm、横22.5mm、厚み0.4mmのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8079H-O)を用意した。また、実施例及び比較例で得られた各金属端子用接着性フィルムを長さ45mm、幅10mmに裁断した。次に、金属端子用接着性フィルムを金属端子の上に置き、金属端子/接着性フィルムの積層体を得た。このとき、金属端子の縦方向及び横方向が、それぞれ、金属端子用接着性フィルムの長さ方向及び幅方向と一致し、かつ、金属端子と金属端子用接着性フィルムの中心が一致するように積層した。また、金属端子用接着性フィルムの樹脂層Aが金属端子側に配置されている。次に、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム、厚さ100μm)を、当該積層体の金属端子用接着性フィルムの上に置いた(PTFEフィルムで金属端子用接着性フィルムの表面を覆った)状態で、200℃に加熱されたプレス機上に載置する(金属端子がホットプレート側)と共に、シリコーンスポンジシートを載せて、圧力0.25MPa、16秒間静置して、接着性フィルムを金属端子に熱融着させた。熱融着後の積層体を25℃まで自然冷却した。次に得た積層体をポリ瓶100mLにいれ、中に電解液(EC(ethylene carbonate)/DMC(dimethyl carbonate)/DEC(diethyl carbonate)=1:1:1)100g+純水1000ppmを混合し、しっかりと密封した。密封した容器を85℃のオーブンにいれて、24時間経過後取り出し、水で電解液を洗い流して、得られた積層体を自然乾燥のため30分静置した。次に、25℃の環境において、テンシロン万能材料試験機(エー・アンド・デイ社製のRTG-1210)で金属端子用接着性フィルムを金属端子から剥離させた。剥離時の最大強度を金属端子に対する密着強度(N/15mm)とした。剥離速度は50mm/分、剥離角度は180°、チャック間距離は30mmとし、3回測定した平均値とした。結果を表1に示す。なお、温度200℃及び面圧0.25MPaの加熱加圧環境で16秒間静置する処理は、前記の仮接着工程及び本接着工程で加わる熱と圧力を想定した処理である。
【0166】
<接着性フィルムの最外層表面の十点平均粗さ>
実施例1-7、比較例1で得られた各金属端子用接着性フィルムの樹脂層Aの表面について、JIS B0601:1994の規定に準拠した方法によって、十点平均粗さを測定した。測定にはミツトヨ製小型表面粗さ測定機 SURFTEST SJ-210を用い、測定速度0.5mm、レンジAUTOの測定条件で測定した。その結果、十点平均粗さは、実施例1では0.34μm、実施例2では0.90μm、実施例3では0.26μm、実施例4では0.24μm、実施例5では0.35μm、実施例6では0.35μm、実施例7では0.35μm、比較例1では0.40μmであった。
【0167】
<熱収縮率(%)の測定>
金属端子用接着性フィルムを長さ110mm(MD)×幅10mm(TD)のサイズに切り出して試験片とした。次に、金尺にて試験片の長さM(mm)を計測した。次に、試験片の長さ方向の端部(約10mm)を金網にテープで固定し、試験片を金網から吊るした状態にした。この状態で、190℃に加熱されたオーブン内に120秒置いた後、試験片を金網ごと取出して、室温(25℃)環境で自然冷却した。次に、室温まで自然冷却した試験片の長さN(mm)を金尺にて測定した。下の式により、金属端子用接着性フィルムの熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)=(1-(長さN/長さM))×100
【0168】
【0169】
以上のとおり、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、
前記金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面を形成する樹脂層Aが、酸変性ポリオレフィンを含み、
前記樹脂層Aについて、X線回折装置を用いて下記の条件で測定される結晶化度が、3以上18以下である、金属端子用接着性フィルム。
(測定条件)
・X線照射の角度は、前記樹脂層Aの前記表面(0°)に対して0.09°とする。
・測定範囲は、前記樹脂層Aの前記表面から深さ5μmまでの範囲とする。
・X線検出器のカメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
項2. 前記樹脂層Aは、赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出される、項1に記載の金属端子用接着性フィルム。
項3. 前記樹脂層Aは、海島構造の島部比率の偏在度が1.00以下である、項1または2に記載の金属端子用接着性フィルム。
項4. 前記樹脂層Aは、配向度が0.5以上である、項1または2に記載の金属端子用接着性フィルム。
項5. 前記金属端子用接着性フィルムは、ポリオレフィン系樹脂により形成されている、項1または2に記載の金属端子用接着性フィルム。
項6. 前記金属端子用接着性フィルムは、前記金属端子側に配される第1樹脂層と、中間層と、前記蓄電デバイス用外装材側に配される第2樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記第1樹脂層が、前記樹脂層Aである、項1または2に記載の金属端子用接着性フィルム。
項7. 前記中間層について、X線回折装置を用いて下記の条件で測定される結晶化度が、が3.0以上である、項6に記載の金属端子用接着性フィルム。
・X線照射の角度は、中間層の表面(0°)に対して0.19°と0.22°とする。
・X線検出器のカメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
項8. 蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムの製造方法であって、
前記金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面を形成する樹脂層Aが、酸変性ポリオレフィンを含み、
前記樹脂層Aについて、X線回折装置を用いて下記の条件で測定される結晶化度が、3以上18以下である、金属端子用接着性フィルムの製造方法。
(測定条件)
・X線照射の角度は、前記樹脂層Aの前記表面(0°)に対して0.09°とする。
・測定範囲は、前記樹脂層Aの前記表面から深さ5μmまでの範囲とする。
・X線検出器のカメラ長は500mm、X線波長は0.92Å、露光時間は30秒とする。
項9. 金属端子に、項1~7のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムが取り付けられてなる、金属端子用接着性フィルム付き金属端子。
項10. 少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した前記金属端子とを備える蓄電デバイスであって、
前記金属端子と前記蓄電デバイス用外装材との間に、項1~7のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムが介在されてなる、蓄電デバイス。
項11. 少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する前記蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した前記金属端子とを備える蓄電デバイスの製造方法であって、
前記金属端子と前記蓄電デバイス用外装材との間に、項1~7のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムを介在させて、前記蓄電デバイス素子を前記蓄電デバイス用外装材で封止する工程を備える、蓄電デバイスの製造方法。
項12. 蓄電デバイスに用いるための蓄電デバイス用外装材であって、
前記蓄電デバイスは、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する前記蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した前記金属端子とを備え、前記金属端子と前記蓄電デバイス用外装材との間に、金属端子用接着性フィルムが介在されてなり、
前記金属端子用接着性フィルムは、項1~7のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムであり、
前記蓄電デバイス用外装材は、少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層を備える積層体から構成されている、蓄電デバイス用外装材。
項13. 蓄電デバイスに用いるための蓄電デバイス用外装材と、項1~7のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムとを含む、キットであって、
前記蓄電デバイスは、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する前記蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した前記金属端子とを備え、
用時に、前記金属端子と前記蓄電デバイス用外装材との間に、前記金属端子用接着性フィルムを介在させるように用いられる、キット。