(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105312
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ナツメ属植物及びガラナの生物活性植物化学物質
(51)【国際特許分類】
A61K 31/401 20060101AFI20240730BHJP
A61K 36/725 20060101ALI20240730BHJP
A61K 36/77 20060101ALI20240730BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240730BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240730BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20240730BHJP
A61K 125/00 20060101ALN20240730BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20240730BHJP
A61K 129/00 20060101ALN20240730BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61K31/401
A61K36/725
A61K36/77
A61P3/10
A61P29/00
A61P1/02
A23L33/105
A61K125:00
A61K127:00
A61K129:00
A61K131:00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024068280
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2021531639の分割
【原出願日】2019-12-04
(31)【優先権主張番号】1819759.0
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516023630
【氏名又は名称】フィトクエスト リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PHYTOQUEST LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ,ロバート ジェイムズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】4-ヒドロキシメチルプロリンを含む組成物を製造するプロセス、医薬組成物、生薬、または栄養補助食品の品質をモニターするための方法、並びに植物の育種系統及び/または品種を選択するための方法を提供する。
【解決手段】選択された単離された4-ヒドロキシメチル-プロリン、またはその薬学的に許容される塩または誘導体を含む組成物が記載されている。また、新規の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンが、それらの調製プロセス、それらを含む組成物、ならびに医薬及び医薬品としてのそれらの使用とともに記載されている。また、前記生薬のサンプル中の1つ以上の4-ヒドロキシメチル-N-メチルプロリンの存在もしくは非存在を検出するか、またはその量を測定することによって前記生薬の品質をモニターするステップを含む、生薬を製造するためのプロセスも記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
または、それら薬学的に許容される塩または誘導体から選択される単離された4-ヒドロ
キシメチル-プロリンを含む組成物であって、Rが、任意選択で置換されるC1~6アル
キル、C1~6アルケニル、またはC1~6アルキニルを表す、前記組成物。
【請求項2】
前記4-ヒドロキシメチル-プロリンが、
【化2】
またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体から選択される、請求項1に記載の組成
物。
【請求項3】
前記単離された4-ヒドロキシメチル-プロリンが、合成であるか、または(a)ナツ
メ属の植物、及び(b)ガラナ属の植物から選択される植物供給源から精製される、請求
項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
(a)前記植物供給源が、Z. jujuba、Z. spina-christi、
Z. lotus、Z. mauritiana、及びZ. joazeiroから選択
される植物種から選択されるか、または(b)前記植物供給源が、Paullinia
cupanaの植物種から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記植物源が、果実、果実部分、果実抽出物、果汁、種子、樹皮、根、及び/または葉
を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
先行請求項のいずれか1項に記載の組成物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む医
薬組成物。
【請求項7】
(a)医薬品パック、キット、または患者パックの形式、または(b)単位剤形である
、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
治療または予防での使用のための、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
エネルギー利用疾患を治療する方法での使用のための、先行請求項のいずれか1項に記
載の組成物。
【請求項10】
前記エネルギー利用疾患が、(a)ホメオスタシスの障害;(b) 代謝性疾患;(c
)糖代謝の機能不全;(d)食欲障害;(e)インスリン抵抗性;(f)糖尿病(例えば
、1型糖尿病または2型糖尿病);(g)前糖尿病;(h)メタボリックシンドローム;
(i)肥満;(j)消耗症候群(例えば、がん関連悪液質);(k)筋障害;(l)胃腸
疾患;(m)成長遅延、;(n)高コレステロール血症;(o)アテローム性動脈硬化症
;(p)加齢性代謝機能障害;(q)高血糖;(r)耐糖能異常;(s)高インスリン血
症;(t)糖尿;(u)代謝性アシドーシス;(v)白内障;(w)糖尿病性ニューロパ
チー;(x)糖尿病性腎症;(y)糖尿病性網膜症;(z)黄斑変性症;(aa)糸球体
硬化症;(bb)糖尿病性心筋症;(cc)グルコース代謝障害;(dd)関節炎;(e
e)高血圧;(ff)高脂血症;(gg)骨粗鬆症;(hh)骨減少症;(ii)骨量減
少;(jj)脆性骨症候群;(kk)急性冠症候群;(ll)不妊症;(mm)短腸症候
群;(nn)慢性疲労;(oo)摂食障害;(pp)腸運動機能障害;(qq)糖代謝機
能障害;(rr)脂肪肝;(ss)多嚢胞性卵巣症候群;(tt)ヘモクロマトーシス;
及び(uu)黒色表皮腫から選択される、請求項8に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
炎症性障害を治療する方法での使用のための、請求項1~8のいずれか1項に記載の組
成物。
【請求項12】
前記炎症性障害が、(a)非局在化炎症性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(S
LE)、強皮症、及び過敏症);(b)慢性前立腺炎;(c)糸球体腎炎;(d)炎症性
腸疾患;(e)骨盤炎症性疾患;(f)再灌流傷害;(g)関節リウマチ;(h)移植片
拒絶;(i)血管炎;(j)喘息;(k)にきび;(l)変形性関節症;(m)口腔粘膜
、胃腸の炎症;(n)眼の炎症;(o)鼻の炎症;(p)耳の炎症;(q)ステロイド反
応性炎症性疾患;(r)皮膚の炎症性疾患(例えば、光線性角化症、尋常性ざ瘡、面皰性
にきび、酒さ性ざ瘡、及び結節性嚢胞性にきび、アレルギー性接触皮膚炎、血管浮腫、水
疱性ペミフィゴイド、皮膚薬物反応、多形紅斑、紅斑性強皮症、、光皮膚炎、乾癬性関節
炎、強皮症及び蕁麻疹、乾癬、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、強皮症、ステロイド反応性皮
膚炎症性障害、尿路性掻痒症、放射線、化学療法、及び環境刺激物への曝露に関連する皮
膚状態);(s)炎症性自己免疫疾患(例えば、アンキロス性脊椎炎、クローン病、潰瘍
性大腸炎、アルツハイマー病、多発性硬化症、運動神経疾患、パーキンソン病、慢性疲労
症候群、インスリン依存性真性糖尿病、アディソン病、グッドパスチャー症候群、IgA
腎症、間質性腎炎、シェーグレン症候群、及び自己免疫性膵炎);(t)骨関節炎;(u
)歯周病;(v)糖尿病性腎症;(w)慢性閉塞性肺疾患;(x)関節硬化症;(y)移
植片対宿主病;(z)慢性骨盤内炎症性疾患;(a’)子宮内膜症;(b’)慢性肝炎;
(c’)結核、ならびに(d’)皮膚の炎症、例えば、日光、アレルゲン、刺激物または
火傷への曝露によって引き起こされるもの、から選択される、請求項11に記載の使用の
ための組成物。
【請求項13】
前記炎症性障害が自己免疫疾患、喘息、またはアレルギーである、請求項11に記載の
使用のための組成物。
【請求項14】
前記自己免疫疾患が、グレーヴス病;関節リウマチ;橋本甲状腺炎;白斑;糖尿病(例
えば、I型尿病またはII型糖尿病);悪性貧血;多発性硬化症;糸球体腎炎;全身性エ
リテマトーデスE(SLE、ループス);シェーグレン症候群;強皮症;乾癬;強直性脊
椎炎;重症筋無力症;天疱瘡;多発性筋炎;皮膚筋炎;ブドウ膜炎;ギランバレー症候群
;クローン病;潰瘍性大腸炎及び炎症性腸疾患(IBD)から選択される、請求項13に
記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記炎症性疾患が、移植片対宿主病;サルコイドーシス;播種性血管内凝固症候群、ア
テローム性動脈硬化症、川崎病を含む血管炎症性疾患;血管炎;シェーグレン症候群;乾
癬性関節炎;腸障害性関節炎;炎症性腸疾患に関連する反応性関節炎及び関節炎から選択
される、請求項13に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記アレルギーが、アトピー性アレルギー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、
アトピー性皮膚炎、高好酸球増加症、刺激性腸症候群、アレルゲン誘発性片頭痛、細菌性
アレルギー、気管支アレルギー(喘息)、接触アレルギー(皮膚炎)、遅延性アレルギー
、花粉アレルギー(花粉症)、薬物アレルギー、刺傷アレルギー、咬傷アレルギー、胃腸
アレルギー;食物アレルギー;ならびに身体的アレルギー、例えば寒冷蕁麻疹、血管浮腫
、コリン作動性蕁麻疹及び光線過敏症から選択される、請求項13に記載の使用のための
組成物。
【請求項17】
新生物を治療する方法での使用のための、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物
。
【請求項18】
前記新生物が良性、前がん性及び悪性新生物、過形成、化生及び異形成から選択される
、請求項17に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記新生物が悪性新生物(がん)である、請求項17に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
前記悪性新生物が、(a)がん腫;(b)芽細胞腫;(c)白血病;(d)リンパ腫;
(e)骨髄腫;(f)肉腫;及び(g)混合型のがんから選択される、請求項19に記載
の使用のための組成物。
【請求項21】
前記悪性新生物が、膀胱、乳房(例えば、原発性乳房腫瘍、リンパ節転移陰性乳癌、乳
房の浸潤性腺管腺癌及び非類内膜性乳癌)、結腸(例えば、結腸腺癌及び結腸腺腫などの
結腸直腸癌)、腎臓、表皮(例えば、悪性黒色腫)、肝臓、肺(例えば、腺癌、副腎皮質
、鼻咽頭、小細胞肺癌、及び非小細胞肺癌)、食道、胆嚢、卵巣、膵臓(例えば、外分泌
膵臓癌)、胃、子宮頸部、甲状腺、前立腺、胃腸系(例、胃腸間質腫瘍)、または皮膚(
例えば、扁平上皮癌)のがん腫から選択されるがん腫である、請求項20に記載の使用の
ための組成物。
【請求項22】
前記悪性新生物がリンパ性白血病、例えば、前駆細胞白血病、成熟B細胞白血病、成熟
T細胞白血病及びNK細胞白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、ならびに骨
髄異形成症候群から選択される白血病である、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
前記悪性新生物が、(a)ホジキンリンパ腫;(b)非ホジキンリンパ腫(例えば、前
駆細胞リンパ腫、成熟B細胞リンパ腫、成熟T細胞リンパ腫及びNK細胞リンパ腫;(c
)バーキットリンパ腫、ならびに(d)リンパ網状新生物、例えばマントル細胞リンパ腫
から選択されるリンパ腫である、請求項20に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記悪性新生物が、骨肉腫;軟骨肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;中皮腫;線維肉腫;
血管肉腫または血管内皮腫;脂肪肉腫;神経膠腫;星状細胞腫;粘液肉腫及び間葉性及び
混合中胚葉性腫瘍から選択される肉腫である、請求項20に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
細菌またはウイルスの感染症を治療する方法での使用のための、請求項1~8のいずれ
か1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記方法が、インビボで共生細菌及び/または病原性細菌の増殖を阻害することを含む
、請求項25に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
前記方法が、宿主-細菌細胞相互作用を破壊すること、及び/または哺乳動物(例えば
、ヒト)宿主における細菌バイオフィルム形成を阻害もしくは排除することを含む、請求
項25に記載の使用のための組成物。
【請求項28】
前記方法が、細菌バイオフィルム(例えば、歯肉下プラークバイオフィルム及び筋膜バ
イオフィルム)の存在によって媒介または特徴づけられる疾患及び障害の治療または予防
を含む、請求項26または27に記載の使用のための組成物。
【請求項29】
歯周病、細菌性膣炎、及び/またはTannerella forsythia、Ta
nnerella denticola、Porphyromonas gingiva
lis、またはGardnerella vaginalisによる感染によって引き起
こされる疾患を治療する方法で使用するための、請求項1~8のいずれか1項に記載の組
成物。
【請求項30】
アテローム形成、例えば、アテローム性動脈硬化症を治療する方法での使用のための、
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
哺乳動物宿主における共生細菌増殖を調節する方法での使用のための、請求項1~8の
いずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記方法が、哺乳動物、例えばヒトの宿主における共生細菌の組成の調節を含む、請求
項31に記載の使用のための組成物。
【請求項33】
哺乳動物、例えばヒトの対象において血糖を制御する方法での使用のための、請求項1
~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物の有効量を対象に投与することを含む、請
求項9~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
疾患の治療のための、または請求項9~33のいずれか1項に記載の方法で使用するた
めの、医薬の製造のための、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項36】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物を含み、任意選択で化粧品、栄養補助食品
、または薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む、化粧品、栄養補助食品、生
薬、または医薬組成物。
【請求項37】
請求項1~8または36のいずれか一項に記載の組成物の、例えば皮膚への局所適用に
よる対象への投与を含む、皮膚の腫脹または紅斑を軽減するための美容的方法。
【請求項38】
前記単離された4-ヒドロキシメチル-プロリンが少なくとも、0.5%、1%w/w
、5%w/w、10%w/w、15%w/w、20%w/w、25%w/w、30%w/
w、35%w/w、40%w/w、45%w/w、50%w/w、60%w/w、70%
w/w、80%w/w、90%w/w、99%w/w(乾燥重量ベース)のレベルで組成
物中に存在する、先行請求項のいずれか1つに記載の組成物、使用のための組成物、方法
、または使用。
【請求項39】
先行請求項のいずれか1つに記載の組成物の製造のためのプロセスであって、
(a) 請求項2~5のいずれか1項に記載の植物供給源源から植物材料を提供するステ
ップと、
(b) 前記植物材料から請求項1に記載の4-ヒドロキシメチル-プロリンを抽出する
ステップと、次いで
(c) 前記抽出された4-ヒドロキシメチル-プロリンを、薬学的に許容される賦形剤
と共に製剤化して、医薬組成物を生成するステップと、
を含む、前記プロセス。
【請求項40】
医薬組成物、生薬、または栄養補助食品を製造するためのプロセスであって、前記医薬
組成物、生薬または栄養補助食品のサンプル中で、請求項1に記載の4-ヒドロキシメチ
ルプロリンの存在または不在を検出するか、またはその量を測定することによって、前記
医薬組成物、生薬、または栄養補助食品の品質をモニターするステップを含む、前記プロ
セス。
【請求項41】
医薬組成物、生薬、または栄養補助食品の品質をモニターするための方法であって、
(a) 医薬組成物、生薬、または栄養補助食品のサンプルを提供するステップと、
(b) 前記サンプル中で、請求項1に記載の4-ヒドロキシメチルプロリンの存在また
は不在を検出するか、またはその量を測定するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項42】
補充された食品または飲料を製造するためのプロセスであって、(a)先行請求項のい
ずれか1項に記載の組成物を提供するステップと、(b)前記ステップ(a)の組成物を
食品または飲料に添加して、補充された食品または飲料を製造するステップと、を含む前
記プロセス。
【請求項43】
請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の植物の育種系統及び/または品種を選
択するための方法であって、
(a) 請求項3または請求項4に記載の植物に由来する、例えば、請求項5に記載の植
物部分である、材料を提供するステップと、
(b) 前記ステップ(a)の材料中で、請求項1または請求項2に記載の4-ヒドロキ
シメチルプロリンの存在または不在を判定するステップ、及び/またはその量を測定する
ステップと、
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンを含む組成物、及びエネルギ
ー利用疾患、血糖の制御、炎症、細菌感染、皮膚障害、シアリダーゼ活性のインビボ阻害
、メタボリックシンドローム(例えば、中枢性肥満、トリグリセリドのレベルの上昇及び
糖尿病(1型糖尿病、2型糖尿病及びインスリン抵抗性を含む)に関連する任意の疾患ま
たは障害を含む)の治療を含む医学におけるそれらの使用、様々な植物源から前記組成物
を単離及び精製するためのプロセスに、ならびにそれとともに様々な製品、化合物、組成
物、医療用途及びそれに基づく方法に関する。
【0002】
本発明はまた、ナツメ属植物及びガラナの生薬、サプリメント、及び抽出物の品質をモ
ニターするための方法、ナツメ属植物及びガラナの抽出物に基づく生薬を製造するための
プロセス、ならびにそのようなプロセスによって得られるハーブ食品添加物、食品、及び
飲料に関する。
【背景技術】
【0003】
ナツメ属種
ナツメ属は、クロウメモドキ科であるRhamnaceaeのとげのある低木と小さな
木の多くの種を持つ属である。それらは世界中の熱帯及び亜熱帯地域に分布している。果
実は食用の核果、黄褐色、赤、または黒で、しばしば非常に甘くて糖分が多く、食感と風
味のデーツを彷彿とさせる。よく知られている種としては、Z. jujuba、Z.
spina-christi、Z. lotus、Z. mauritiana、及びZ
. joazeiroが挙げられる。
【0004】
Zizyphus jujubaには、中国のデーツとしても知られ、伝統的な漢方薬
で使用される果物、ナツメがある。心臓に栄養を与え、精神を落ち着かせると考えられて
おり、神経過敏、不眠症、動悸の治療に使用される。ナツメ属種の他の伝統的な用途には
、消化器疾患、肝臓病、尿路疾患、糖尿病、皮膚感染症、発熱などの病気の疾患の治療が
含まれる。それは湿疹の治療として使用される(Khiljee at al., 20
11, Journal of Pakistan Association of D
ermatologists 21, 112)。
【0005】
Zizyphus spina-christiは、砂漠地帯で育つ野生の木であり、
中東全体に豊富にある。その葉は砂漠の動物にとって豊富なタンパク質源であり、小さな
茶色の果物は地元の人々に食べられている。植物の全ての部分は、伝統的に地元の人々が
健康を維持するために使用している。抗菌性、抗真菌性、抗酸化性、及び抗炎症性が植物
に起因しており、葉の抽出物は傷及び皮膚病の治療に使用されている。乾燥した葉の注入
は、皮膚清拭剤及びヘアトリートメントとして使用される。その根皮は、疼痛の治療とし
て民間療法でも使用されている。
【0006】
この植物の化学成分に関する研究は十分に文書化されている(Abdel-Zaher
, A. et al., 2005, J. Ethnopharmacol.101
,129)。多くのペプチド及びシクロペプチドアルカロイド、フラボノイド、トリテル
ペノイドサポニン配糖体、及びベツリン酸が、属のさまざまな種でさまざまな量で同定さ
れている(Han, B., et al., 1990, Phytochemist
ry 29, 3315、Solati, J. & Soleimani, N.,
2010, Acta Diabetol., 47, 219)。
【0007】
最近、Zizyphus jujubaの水抽出物の組成、抗酸化活性、及び肝保護効
果が評価された (Liu, N. et al., 2017, RSC Adv.7
, 6511)。Z. jujuba果実のより詳細な分析は、Villanueva,
J.R.& Villanueva, L.R.によって実施された(2017, P
hytotherapy Research, 31, 347)。
【0008】
文献には、糖尿病の治療のためのZ.spina-christiの使用に関する多く
の科学的研究が含まれている(例えば、Nesseem, D., et al., 2
009, Pharmazie 64, 104)。植物の抽出物は、抗高血糖活性を持
っていると報告されている(例えば、Abdel-Zaher, A. et al.,
2005, J. Ethnopharmacol.101,129)。アロキサン糖
尿病ラットの治療に使用されるZ.spinachristi及びZ.jujubaの根
のメタノール抽出物は、高血糖、高脂質血症、及び過酸化脂質が減少した糖尿病ラットに
有益な効果があると主張された(Hussein, H., et al., 2006
, International Journal of Pharmacology
2, 563)。Husseinらは、活性が本発明の化合物の特性ではない強力な抗酸
化活性に起因すると考える。
【0009】
Tanira, M., et al., (1988, Internationa
l Journal of Pharmacology 2, 563)は、マウスでZ
. spina-christiの葉のエタノール抽出物をテストし、抗炎症作用と中程
度の解熱作用を示した。Motamedi, H. et al., (2009, A
sian Journal of Plant Sciences 8, 187)は、
新しい抗菌化合物の潜在的な供給源としてZ. spina-christiのエタノー
ル及びメタノールの葉抽出物を報告しているが、現在では、多くの植物の共通の脂肪酸(
ヘキサデカン酸)が、強力な抗菌活性を含んでいることが明らかになっている。Mota
medi et alは、4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンを潜在的な有効
成分として特定したり、果物の使用を示唆したりしていない。
【0010】
Borgi, W. et al.,(2007, Fitoterapia 78,
16)は、Z. lotusの根皮の水性及びメタノールの抽出物が、炎症過程の急性
期に有意な抗炎症効果を示したが、抗酸化効果に関連していることを報告した。「Ext
racts of Z. spina-christi for cosmetics
and psoriasisと題された米国特許第5,849,302号及びEP081
5842A2は、Z. spina-christiの葉の10%水性抽出物を使用した
葉抽出物を記載し、これはUV照射された健常ボランティアの皮膚に対して抗炎症活性を
示し、全ての対象において発赤が17.5%減少した。
【0011】
しかしながら、本明細書に記載の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリン(また
は同様の化合物)はいずれもナツメ属植物からは報告されておらず、これらの化合物は生
物活性研究のいずれにも関与することが示唆されていない。むしろ、この点への関心は、
構造的に無関係なトリテルペン、抗酸化剤、及びペプチドに集中してきていた。
【0012】
ガラナ
ナツメ属種に存在する生物活性植物化学物質として本明細書に記載の4-ヒドロキシメ
チル-N-メチル-L-プロリンは他のグループによって報告されておらず、ここでは驚
くべきことに、ガラナ、Paullinia cupana(ムクロジ科、ナツメ属とは
密接に関連していない)の果実でも発見された。
【0013】
Paullinia cupanaはアマゾン盆地に自生し、特にブラジルで一般的で
ある。ガラナはその果実からの種子で最もよく知られており、コーヒー豆とほぼ同じサイ
ズで、栄養補助食品として使用され、カフェイン含有量が高いことで最も有名である(そ
の種子にはコーヒー種子に含まれるカフェインの約2倍の濃度が含まれている:カフェイ
ンは、コーヒー種子の1%~2%と比較して、ガラナの種子には約2%~4.5%のレベ
ルで存在する-Bempong, D.K., et al., 1993, Int.
J. Pharmacog.31, 175)。
【0014】
飲料としてのガラナの使用に関する最初の報告は、1669年に、アマゾンへのイエズ
ス会の遠征中に、宣教師のJoao Felipe Bettendorfが、サテレ=
マウェ族インディアンが利尿作用と頭痛、発熱及びけいれんに対する治療効果とを有する
刺激的な飲料を消費していたことを観察したものであった。ガラナは現在、甘くしたかも
しくは炭酸化した飲料またはエネルギーショット、ハーブティーの成分、またはカプセル
に含まれているものに使用されている。ナツメ属にはカフェインが含まれていない。
【0015】
覚醒剤、強壮剤、媚薬としてのガラナの治療特性は、その固有の使用の最初の報告以来
、世界中で知られるようになった。種子は、ガラナの刺激特性に起因するカフェイン(1
,3,7-トリメチルキサンチン)の含有量のため、植物の商業的に有用な部分である(
Kofink, M., et al., 2007, European Food
Research and Technology 225, 569、Campos,
M.P.D. et al., 2011, Journal of Alterna
tive and Complementary Medicine 17, 505)
。
【0016】
向精神作用に加えて、カテキンも豊富な緑茶と同様の機能特性を持っていると思われる
ため、代謝障害へのガラナの使用が広く研究されている。研究によると、ガラナは脂質代
謝にプラスの影響を与え、基礎エネルギー及び体重減少を増加させ、肥満治療に役立ち得
ることが示されている(例えば、Opala, T., et al., 2006,
European Journal of Medical Research 11,
343)。
【0017】
しかしながら、他の研究では、ガラナを含む製剤の体重への影響は示されておらず(S
ale, C., et al., 2006, Int. J. Obes.(Lon
d.), 30, 764)、これは、(例えば、本発明者らが4-ヒドロキシメチル-
N-メチル-L-プロリンについて初めて示したように、)インビトロまたはインビボで
特定の活性を有することが示される化合物を測定する品質管理された抽出物を生成する必
要性を浮き彫りにする。
【0018】
本明細書に記載の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリン(及び同様の化合物)
はいずれもグアナ属植物からは報告されておらず、これらの化合物が生物活性植物化学物
質であるとも示唆されていない。むしろ、この点への関心は、メチルキサンチン、カテキ
ン、メチルベンゼン、環状モノテルペン、セスキテルペン、オレイン酸、パウリン酸、及
びメトキシフェニルプロペンを含む、構造的に無関係な化学物質に集中してきた(Ava
to, P., et al., 2003, Lipids 38, 773-780
)。
【0019】
ハーブ食品添加物と治療法
現在、ハーブ療法とサプリメントの使用に大きな関心が寄せられており、食品メーカー
、ヘルスケア企業、及び医療専門家から、ハーブ製品には価値があり、確立された製剤と
治療を補完できるということがますます認められてきている。現在、ハーブ食品添加物及
びサプリメントが広く使用されている。
【0020】
しかしながら、ハーブ食品添加物の品質管理は、植物材料の複雑な性質と固有の不均一
性のために困難である。ハーブ及び植物ベースの食品添加物に使用される材料は、通常、
植物全体またはその一部または抽出物である。植物材料には多くの異なる化学成分が含ま
れているため、材料は複雑な混合物である。これにより、材料の品質を標準化及び管理す
ることが非常に困難となる。さらに、多くのハーブ食品添加物は、2つ以上の植物ベース
の成分の混合物であり、したがって混合物の混合物であるため、さらなるレベルの複雑性
が導入される。さらに、使用されるレシピ及び製造方法は、しばしば均一ではなく、開示
されないままである可能性がある。これらの要因により、異なる供給源から取得され、表
面上は同一である特定の製品の2つのサンプルに、実際に同じ成分の混合物が含まれてい
ることを確認することは非常に困難である。このような材料の品質を管理するのが困難な
ものにするこの問題は、ハーブ熟練者の間でさえ、特定のハーブ抽出物の使用が制限され
ていた。
【0021】
他の問題は、ハーブ食品添加物の実践に使用される植物がしばしば地元で入手できず、
したがって、エンドユーザーから離れた供給源から入手する必要があるという事実から生
じる。しかしながら、遠隔地からのそのような植物の供給は、特に多くのそのような植物
の識別性と品質基準を含む詳細なモノグラフが存在しないため、不規則で不正確になる可
能性がある。薬用植物に見られる成分の複雑な混合物は、植物供給源、植物が育つ場所、
その近くで育っている他の植物や微生物、植物が収穫される時期、材料が保管及び処理さ
れる条件、ならびに使用される抽出手順などの多くの要因に応じて、種類と濃度が大きく
異なる。
【0022】
したがって、ハーブ製品をプロファイルし、活性に関連する可能性のある薬用植物材料
の標準仕様を確立できる高感度のプロセスが必要である。これにより、ハーブ食品添加物
の製造における品質管理が可能になり、活性であることが既知またはその可能性のある成
分を理想的に定量化できる。
【0023】
本発明者は、特定の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンの植物分布が、様々
な疾患の治療に使用されるナツメ属植物及びガラナと相関することを発見した。この発見
は商業的及び医学的に非常に重要であり、治療的に活性な4-ヒドロキシメチル-N-メ
チル-プロリンの新しいファミリーの合成及び/または単離を初めて可能にし、標準仕様
を満たす改良された生薬の製造、及びそれに基づく一連の治療的処置を可能にする。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、少なくとも部分的に、特定の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリン
の植物分布が様々な疾患の治療に使用される薬用植物と相関するという驚くべき発見に基
づいている。したがって、4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンのファミリーが
、確立された生薬の重要な生物活性成分として初めて特定された。
【0025】
したがって、本発明によれば、以下から選択される単離された4-ヒドロキシメチル-
プロリン:
【化1】
または、それらの薬学的に許容される塩または誘導体を含む組成物が提供され、ここで、
Rは、任意選択で置換されるC1~6アルキル、C1~6アルケニル、またはC1~6ア
ルキニルを表す。
【0026】
好ましい実施形態において、4-ヒドロキシメチル-プロリンは、
【化2】
またはその薬学的に許容される塩もしくは誘導体から選択される。
【0027】
本発明の他の実施形態は、本明細書に添付される特許請求の範囲に定義されている。
【0028】
本明細書に記載の特定の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンは新規である。
本発明によると、また、新規の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンそれ自体が
、それらの調製プロセス、それらを含む組成物、ならびに医薬及び医薬品としてのそれら
の使用とともに提供される。そのような本明細書に記載の4-ヒドロキシメチル-N-メ
チル-プロリンのいくつかは、知られている限り、それらは生物活性として認識されてお
らず、したがってそれ自体が医薬品として主張されていない。
【0029】
本発明のハーブ品質モニタリングの態様
本発明の別の態様によると、前記生薬のサンプル中の1つ以上の4-ヒドロキシメチル-
N-メチルプロリンの存在もしくは非存在を検出するか、またはその量を測定することに
よって前記生薬の品質をモニターするステップを含む、生薬を製造するためのプロセスが
提供される。
【0030】
別の態様では、本発明は、以下のステップを含む、生薬の品質をモニターするための方
法を提供する。(a)生薬のサンプルを提供するステップ;及び(b)前記生薬のサンプ
ル中の1つ以上の4-ヒドロキシメチル-N-メチルプロリンの存在もしくは非存在を検
出するか、またはその量を測定するステップ。
【0031】
この文脈において、品質という用語は、その意図された使用に対する生薬の全体的な適
合性を定義するために使用され、例えば、前記サンプル中の1つ以上の4-ヒドロキシメ
チル-N-メチル-プロリンの(適切な濃度での)存在または非存在を含み得、これは、
特定の供給源の使用、状態、純度、及び望ましくない補充成分及び/または汚染物質によ
る許容できるまたは許容できない程度の汚染を示す。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、以下のステップを含む、補充された食品または飲料
を製造するためのプロセスを提供する。
(a)ナツメ属種及び/またはPaullinia cupanaの植物部分を提供す
るステップ;
(b)本発明の方法によって、前記植物部分の品質をモニターするステップ;及び
(c)植物部分(またはその1つ以上の画分)を食品または飲料に添加して、前記補充
された食品または飲料を製造するステップ。
【0033】
本発明のこの態様は、任意の補充された食品または飲料の製造において幅広い有用性を
見出し、任意の食品または飲料を使用することができ、これには、冷蔵食品及び飲料、温
かい食品及び飲料、甘味食品及び飲料、炭酸飲料、アルコール飲料及び非アルコール飲料
が含まれる。
【0034】
本発明のプロセス及び方法は、好ましくは、前記生薬食品添加物のサンプル中の1つ以
上の4-ヒドロキシメチル-N-メチルプロリンの存在もしくは非存在を検出するか、ま
たはその量を測定するステップをさらに含む。
【0035】
本発明によって1つ以上の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンの存在が検出
される実施形態では、以下から選択される1つ以上の4-ヒドロキシメチル-プロリンが
、
【化3】
〔式中、Rは、任意選択で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルケニル、またはC
1-6アルキニルを表す〕、アッセイ、検出、またはモニターされるプロセスが好ましい
。
【0036】
本発明によって1つ以上の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンの存在が検出
される他の実施形態では、以下から選択される1つ以上の4-ヒドロキシメチル-プロリ
ンが、
【化4】
アッセイ、検出、またはモニターされるプロセスが好ましい。
【0037】
本発明はまた、本発明の方法及びプロセスによって得られる生薬を企図する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、ヒト血液中のLPS刺激TNF-α産生に対する化合物1(μM)の効果を示す。
【
図2】
図2は、血糖値に対するナツメ属植物の抽出物の効果を示す。
【
図3】
図3は、血糖値に対するナツメ属植物の抽出物の効果を示す。
【
図4】
図4は、血糖値に対するナツメ属植物の抽出物の効果を示す。
【
図5】
図5は、血糖値に対するナツメ属植物の抽出物の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、特許出願、及び他の参考文献は、個々の刊
行物、特許または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示され、そ
の内容が完全に列挙されているかのように、あらゆる目的のためにその全体が参照により
本明細書に組み込まれる。
【0040】
定義
本明細書で使用される場合、特に別段の指示がない限り、以下の用語は、その用語が当
技術分野で享受する可能性のあるより広い(またはより狭い)意味に加えて、以下の意味
を有することを意図する。
【0041】
文脈上別段の必要がない限り、ここでの単数形の使用は複数形を含むように読まれ、そ
の逆も同様である。実体に関連して使用される「a」または「an」という用語は、その
実体の1つ以上を指すと解釈される。そのようなとき、用語「a」(または「an」)、
「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用される。
【0042】
本明細書で使用されるとき、「含む」という用語、または「含む」または「含むこと」
などのその変形は、任意の列挙された完全体(integer)(例えば、特徴、要素、
特性、特性、方法/プロセスのステップ、または限定)あるいは完全体(例えば、特徴、
要素、特性、特性、方法/プロセスのステップ、または限定)の群の包含を示すために読
まれるべきであるが、他の任意の完全体または完全体の群を除外しない。したがって、本
明細書で使用されるとき、「含むこと」という用語は、両端を含むか、オープンエンドで
あり、追加の、列挙されていない完全体または方法/プロセスのステップを除外しない。
【0043】
「本質的に~からなること」という語句は、本明細書では、特定の完全体(複数可)ま
たはステップ、ならびに特許請求された発明の特性または機能に実質的に影響を及ぼさな
いものを必要とするために使用される。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「~からなること」という用語は、列挙された完全体(例
えば、特徴、要素、特性、特性、方法/プロセスのステップまたは限定)あるいは完全体
(例えば、特徴、要素、特性、特性、方法/プロセスのステップまたは限定)の群のみの
存在を示すために使用される。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「疾患」という用語は、生理学的機能を損ない、特定の症
状に関連する任意の異常な状態を定義するために使用される。この用語は、病因の性質(
または実際に疾患の病因的根拠が確立されているかどうか)に関係なく、生理学的機能が
損なわれている障害、病気、異常、病状、病気、状態、または症候群を包含するために広
く使用される。したがって、感染、外傷、傷害、手術、放射線焼灼、中毒、または栄養欠
乏から生じる状態が含まれる。
【0046】
本明細書で使用されるとき、「治療」または「治療すること」という用語は、疾患の症
状を治癒、改善、もしくは軽減するか、またはその原因(複数可)(例えば、病的な多彩
な状態)を除去(もしくは影響を軽減)する介入(例えば、対象への薬剤の投与)を指す
。この場合、この用語は「療法」という用語と同義で使用される。
【0047】
さらに、「治療」または「治療すること」という用語は、疾患の発症もしくは進行を予
防もしくは遅延させるか、または治療された集団内でのその発生率を低減(もしくは根絶
)する介入(例えば、対象への薬剤の投与)を指す。この場合、治療という用語は「予防
」という用語と同義で使用される。
【0048】
「対象」という用語(文脈が許す場合、「個体」、「動物」、「患者」または「哺乳動
物」を含むように読まれるべきである)は、治療が必要とされる任意の対象、特に哺乳動
物対象を定義する。哺乳動物の対象には、ヒト、飼育動物、家畜、動物園の動物、スポー
ツ動物、ペットの動物が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、対
象はヒトである。
【0049】
本明細書で使用されるとき、「エネルギー利用疾患」という用語は、異常なエネルギー
利用から生じる任意の疾患または障害を包含する。したがって、この用語は、恒常性の障
害及び疾患、代謝性疾患、糖代謝の機能不全、ならびに食欲障害を包含する。したがって
、この用語には、インスリン抵抗性、さまざまな形態の糖尿病、メタボリックシンドロー
ム、肥満、消耗症候群(例えば、がん関連悪液質)、筋障害、胃腸疾患、成長遅延、高コ
レステロール血症、アテローム性動脈硬化症、及び加齢性代謝機能障害が含まれる。この
用語にはまた、メタボリックシンドローム、肥満、及び/または糖尿病に関連する状態を
含み、例えば、高血糖、耐糖能異常、高インスリン血症、糖尿、代謝性アシドーシス、白
内障、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、糸球体硬
化症、糖尿病性心筋症、インスリン抵抗性、グルコース代謝障害、関節炎、高血圧、高脂
血症、骨粗鬆症、骨減少症、骨量減少、脆性骨症候群、急性冠症候群、不妊症、短腸症候
群、慢性疲労、摂食障害、及び腸運動機能障害が含まれる。
【0050】
「メタボリックシンドローム」という用語は、本明細書では、以下の症状の3つ以上の
存在を特徴とする状態を定義するために使用される:中心性肥満(男性の場合は101.
6センチメートル(40インチ)以上、女性の場合は88.9センチメートル(35イン
チ)以上のウエスト測定);高レベルのトリグリセリド(150mg/dL以上);低レ
ベルのHDL(男性では40mg/dL未満、女性では50mg/dL未満)、及び高血
圧(130/85mmHg以上)。
【0051】
したがって、この用語には、世界保健機関によるメタボリックシンドロームの定義に従
って定義された以下の状態が含まれる:(a)6.1mmol/Lを超える空腹時血漿グ
ルコース;(b)140/90mmHgを超える血圧;及び(c)次の1つ以上:(i)
1.7mmol/Lを超える血漿トリグリセリド;(ii)0.9及び1.0mmol/
L未満のHDL(それぞれ男性及び女性の場合);(iii)30kg/m2を超える体
格指数。
【0052】
本明細書におけるメタボリックシンドロームの治療への言及は、特に肥満(例えば、中
心性肥満)、ならびに血清トリグリセリドの上昇及び糖尿病(1型及び2糖尿病とインス
リン抵抗性を含む)を含む、メタボリックシンドロームに関連する障害のいずれかまたは
全ての治療を含むと解釈されるべきである。
【0053】
本明細書における1型または2型糖尿病の治療への言及は、1型及び2型糖尿病自体の
治療ならびに前糖尿病(初期糖尿病)及びインスリン抵抗性を含むと解釈されるべきであ
る。
【0054】
「前糖尿病」または「初期糖尿病」という用語は、糖尿病がない場合に上昇したレベル
のグルコースまたはグリコシル化ヘモグロビンが存在する状態を定義する。
【0055】
本明細書で使用されるとき、化合物または組成物の有効量は、合理的な利益/リスク比
に見合った、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なく対
象に投与できる、望ましい効果、例えば、対象の状態の永続的または一時的な改善によっ
て現れる治療または予防を提供するのに十分な量を定義する。この量は、個人の年齢及び
全身状態、投与モード、ならびに他の要因などに応じて、対象間で変動し得る。したがっ
て、正確な有効量を指定することは不可能であるが、当業者は、日常的な実験及びバック
グラウンドの一般知識を使用して、個々の場合において適切な「有効」量を決定すること
ができるであろう。この文脈での治療結果には、症状の根絶または軽減、疼痛または不快
感の軽減、生存期間の延長、可動性の改善、及び臨床的改善の他のマーカーが含まれる。
治療結果は完全な治癒である必要はない。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「医薬品キット」という用語は、任意選択で全て共通の外
側包装内に含まれる、投与手段(例えば、測定装置)及び/または送達手段(例えば、吸
入器または注射器)を伴う、1つ以上の単位用量の様々な医薬組成物を定義する。2つ以
上の化合物/薬剤の組み合わせを含む医薬品キットにおいて、個々の化合物/薬剤は、単
一または非単一の製剤であり得る。単位用量(複数可)はブリスターパックに含まれてい
てもよい。医薬品キットは、任意選択で、使用説明書をさらに含んでもよい。
【0057】
本明細書で使用されるとき、「医薬品パック」という用語は、任意選択で共通の外側包
装内に含まれる、1つ以上の単位用量の様々な医薬組成物を定義する。2つ以上の化合物
/薬剤の組み合わせを含む医薬品パックにおいて、個々の化合物/薬剤は、単一または非
単一の製剤であり得る。単位用量(複数可)はブリスターパックに含まれていてもよい。
医薬品パックは、任意選択で、使用説明書をさらに含んでもよい。
【0058】
本明細書で使用される場合、「患者パック」という用語は、治療の全過程のための医薬
組成物を含む、患者に処方されるパッケージを定義する。患者パックには通常、1つ以上
のブリスターパック(複数可)が含まれている。患者パックは、薬剤師が患者の医薬品の
供給をバルク供給から分割する従来の処方箋よりも優れており、患者は常に、通常は患者
の処方箋にはない、患者パックに含まれる添付文書にアクセスできる。添付文書を含める
ことで、医師の指示に対する患者のコンプライアンスが向上することが示されている。
【0059】
本発明の化合物に適用される薬学的に許容される誘導体という用語は、本発明の親化合
物の化学的誘導体化によって得られる(または得ることのできる)化合物を定義する。し
たがって、薬学的に許容される誘導体は、過度の毒性、刺激またはアレルギー反応なしに
(すなわち、合理的な利益/リスク比に見合った)ヒトの組織への投与または接触しての
使用に適している。好ましい誘導体は、親化合物のアルキル化、エステル化、またはアシ
ル化によって得られる(または得ることのできる)ものである。したがって、本発明の化
合物の薬学的に許容される誘導体には、N-オキシド及びそのエステルが含まれる。
【0060】
本発明の薬学的に許容される誘導体は、本明細書に記載の生物活性の一部または全てを
保持し得る。場合によっては、誘導体化によって生物活性が増加する。誘導体はプロドラ
ッグとして作用する可能性があり、本明細書に記載の生物学的活性の1つ以上は、インビ
ボ処理後にのみ生じ得る。特に好ましいプロドラッグは、1つ以上の遊離ヒドロキシルで
エステル化され、インビボでの加水分解によって活性化されるエステル誘導体である。誘
導体化はまた、化合物の他の生物活性、例えば、バイオアベイラビリティ及び/またはグ
リコシダーゼ阻害プロファイルを増強し得る。例えば、誘導体化はCNS浸透(例えば、
血液脳関門の浸透)を増加させ得る。
【0061】
薬学的に許容される塩という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応なしにヒト及
び下等動物の組織と接触して使用するのに適しており、合理的な利益/リスク比に見合っ
た遊離塩基の非毒性有機または無機の酸付加塩を定義する。適切な薬学的に許容される塩
は当該技術分野でよく知られている。例としては、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、
硫酸、及びリン酸)、有機カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳
酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコ
ルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ジヒドロキシマレイン酸、安息香酸、フ
ェニル酢酸、4-アミノ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、桂皮酸、
サリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、及びマンデル酸)なら
びに有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸)の塩が挙
げられる。
【0062】
これらの塩及び遊離塩基化合物は、水和形態または実質的に無水の形態のいずれかで存
在してもよい。本発明の化合物の全ての多形形態を含む結晶形態も企図され、一般に、化
合物の酸付加塩は、水及び様々な親水性有機溶媒に可溶であり、それらの遊離塩基形態と
比較して、より高い融点と増加した溶解度を示す。
【0063】
本明細書では、「アルキル」という用語は、直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素鎖を
定義する。「C1-C6アルキル」という用語は、1から6個の炭素原子を有する直鎖状ま
たは分岐鎖状の飽和炭化水素鎖を指す。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イ
ソプロピル、t-ブチル、n-ヘキシルが挙げられる。本発明のアルキル基は、任意選択
で、1個以上のハロゲン原子で置換することができる。
【0064】
本明細書では、「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を
含む直鎖状または分岐鎖状の炭化水素鎖を定義する。「C1-C6アルケニル」という用語
は、1から6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状の不飽和炭化水素鎖を指す。例
としては、エテニル、2-プロペニル、及び3-ヘキセニルが挙げられる。本発明のアル
ケニル基は、任意選択で、1個以上のハロゲン原子で置換することができる。
【0065】
本明細書では、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を
含む直鎖状または分岐鎖状の炭化水素鎖を定義する。「C1-C6アルキニル」という用語
は、1から6個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状の不飽和炭化水素鎖を指す。例
としては、エチニル、2-プロピニル、及び3-ヘキシニルが挙げられる。本発明のアル
キニル基は、任意選択で、1個以上のハロゲン原子で置換することができる。
【0066】
植物化学物質という用語は、高分子及び小分子を含む、植物の任意の化学成分を包含す
るために、本明細書では広い意味で使用される。重要な例としては、アルカロイド(例え
ば、イミノ糖及びイミノ糖酸、例えば、構造クラスのピロリジン、ピペリジン、ピロリジ
ジン、インドリジジン、トロパン、及びノルトロパンから選択される)、炭水化物類似体
、フェノール化合物、テルペノイド、酵素阻害剤、グリコシド、ヌクレオチド、アミノ酸
、脂質及び糖が挙げられる。
【0067】
本発明の化合物に適用されるとき単離されたという用語は、化合物が天然に存在する環
境とは異なる物理的環境に存在する(または合成化合物の場合、ある程度精製される)こ
とを示すために本明細書で使用される。例えば、単離された化合物は、それが天然に存在
する複雑な細胞環境に対して(あるいは、それが合成される際の出発生成物、中間体、緩
衝液、溶媒、反応物及び/または副生成物の一部または全てに対して)、実質的に単離(
例えば精製)され得る。したがって、単離された化合物は、本明細書に記載の植物供給源
のいずれかの濃縮画分または抽出物の形態をとることができる。
【0068】
単離された材料(例えば、合成の、天然に存在しない化合物)が精製される場合、純度
の絶対レベルは重要ではなく、当業者は、材料が置かれる用途に応じて適切なレベルの純
度を容易に決定することができる。合成材料の場合、純度レベルは85~99%w/wの
範囲であり、99%w/wを超えてもよい。しかしながら、特に材料が天然供給源から単
離されている場合は、少なくとも0.1%w/w、0.2%w/w、0.3%w/w、0
.4%w/w、0.5%w/w、0.6%w/w、0.7%w/w、0.8%w/w、0
.9%w/w、1.0%w/w、1.1%w/w、1.2%w/w、1.3%w/w、1
.4%w/w、1.5%w/w、1.6%w/w、1.7%w/w、1.8%w/w、1
.9%w/w、または2.0%w/wの純度レベルが好ましい。
【0069】
特に好ましいのは、少なくとも0.5~2.0%w/w、例えば少なくとも0.8~1
.5%w/w、例えば少なくとも約1.0%w/wの純度レベルである。必要に応じて、
イオン交換クロマトグラフィーなどの適切な濃縮技術を使用することにより、材料が天然
供給源から単離される場合、5~10%w/wのレベルを容易に得ることができる。
【0070】
状況によっては、単離された化合物は、組成物(例えば、他の多くの物質を含むより粗
であるかまたはより粗ではない抽出物)または緩衝系の一部を形成し、これは、例えば、
他の成分を含み得る。他の状況では、単離された化合物は、例えば分光光度的に、NMR
またはクロマトグラフィー(例えば、トリメチルシリル誘導体のGC-MS)によって決
定されるとき、本質的な均一性まで精製され得る。
【0071】
生薬という用語は、本明細書では、少なくとも1つの有効成分(例えば、化合物)が化
学的に合成されておらず、むしろ植物の植物化学成分である医薬組成物を定義するために
使用される。ほとんどの場合、この非合成有効成分は単離されないが(ここで定義されて
いるように)、供給源植物で関連付けられている他の植物化学物質と一緒に存在する。し
かしながら、場合によっては、植物由来の生物活性成分が濃縮画分に含まれていてもよく
、単離されていてもよい(しばしば高度な精製を含む)。しかしながら、多くの場合、生
薬は、植物のより粗であるかまたはより粗ではない抽出物、注入または画分、あるいは未
処理の植物全体(またはその一部)を含むが、そのような場合、植物(または植物の一部
)は通常少なくとも乾燥及び/または粉砕されている。生薬は、栄養補助食品、飲料の形
であるか、または生薬キットまたは生薬パックとして複数の単回投与で提供され得る。
【0072】
ハーブ食品という用語は、本明細書では、少なくとも1つの成分が化学的に合成されて
おらず、むしろ植物の植物化学成分である組成物を定義するために使用される。ほとんど
の場合、この非合成成分は精製されないが、供給源植物で関連付けられている他の植物化
学物質と一緒に存在する。しかしながら、場合によっては、植物由来の成分(複数可)が
濃縮画分に含まれているか、または(場合によっては高純度で)単離されていてもよい。
しかしながら、多くの場合、ハーブ食品添加物は、植物のより粗であるかまたはより粗で
はない抽出物、煎液または画分、あるいは未処理の植物全体(またはその一部)を含むが
、そのような場合、植物(または植物の一部)は通常少なくとも乾燥及び/または粉砕さ
れている。したがって、この用語には、食品及び飲料に使用するための添加物及び補充成
分の形態のハーブ食品が含まれる。
【0073】
生物活性成分という用語は、本明細書では、それが含まれる生薬の薬効に必要または十
分である植物化学物質を定義するために使用される。本発明の場合、生物活性成分(複数
可)は、本発明の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンのうちの1つま以上を含
む。
【0074】
栄養補助食品という用語は、本明細書では、生理学的利益を提供するか、または疾患か
ら保護する食品(またはその単離物)を定義するために使用される。本発明の好ましい栄
養補助食品は、血糖調節活性を有し、エネルギー利用疾患の治療における用途を見出す。
本発明の他の栄養補助食品は抗炎症性である。
【0075】
標準仕様という用語は、本明細書では、生薬、化粧品または栄養補助食品の許容可能な
品質と相関する特性または植物化学プロファイルを定義するために使用される。この文脈
において、品質という用語は、その意図された使用に対する製品の全体的な適合性を定義
するために使用され、適切な濃度での本発明の1つ以上の4-ヒドロキシメチル-N-メ
チル-プロリンの存在を含む。
【0076】
植物化学プロファイルという用語は、本明細書では、異なる植物化学成分に関連する一
連の特性を定義するために使用される。
【0077】
その最も広い態様において、本発明は、本発明の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-
プロリンの全ての光学異性体、ラセミ形態、及びジアステレオマーを企図する。したがっ
て、本発明の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンへの言及は、ジアステレオマ
ーの混合物として、個々のジアステレオマーとして、エナンチオマーの混合物として、な
らびに個々のエナンチオマーの形態での4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンを
包含する。
【0078】
化学合成
本明細書に記載の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンは、従来の方法によっ
て作製することができる。ヘテロ芳香族環系を作製する方法は、当技術分野でよく知られ
ている。特に、合成の方法は、Comprehensive Heterocyclic
Chemistry, Vol. 1 (Eds.: AR Katritzky,
CW Rees), Pergamon Press, Oxford, 1984、及
びComprehensive Heterocyclic Chemistry II
: A Review of the Literature 1982-1995 T
he Structure, Reactions, Synthesis, and
Uses of Heterocyclic Compounds, Alan R.
Katritzky (Editor), Charles W. Rees (Edi
tor), E.F.V. Scriven (Editor), Pergamon
Pr, June 1996に記載されている。目的の化合物の合成を支援するその他の
一般的なリソースには、March’s Advanced Organic Chem
istry: Reactions, Mechanisms, and Struct
ure, Wiley-Interscience;5th edition (Jan
uary 15, 2001)が含まれる。
【0079】
植物供給源からの抽出/そこでの検出
本明細書に記載の本発明の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンは、天然供給
源から単離することができる。
【0080】
例えば、本発明の化合物は、以下から選択される植物供給源から抽出及び/または精製
することができる:(a)ナツメ属植物;及び(b)ガラナ属植物。好ましい実施形態で
は、植物供給源は、以下から選択される植物種から選択される:Z. jujuba、Z
. spina-christi、Z. lotus、Z. mauritiana、Z
. joazeiro、及びP. cupana。
【0081】
上述の植物供給源からの植物材料は、本発明に従って使用するための4-ヒドロキシメ
チル-N-メチル-プロリンの単離及び精製のための出発物質として使用することができ
る。本発明の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンは水溶性であり、陰イオン交
換クロマトグラフィーまたは陽イオン交換クロマトグラフィーによって濃縮することがで
きる。サイズ排除法を使用して、それらを濃縮することもできる。したがって、当業者は
、標準的な技術を使用して、本発明の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンを容
易に精製及び単離できることが理解されるであろう。
【0082】
植物供給源の任意の適切な部分を使用することができ、好ましい実施形態では、供給源
は、果実、種子、及び葉から選択される植物部分を含むか、または本質的にそれらからな
ることができる。根、茎、及び樹皮などの他の部分も使用できる。
【0083】
抽出及び/または精製に適したプロセスには、以下のステップを含むプロセスが含まれ
る:
(a) 材料、例えば、以下から選択される植物部分を提供するステップ:植物供給源
からの、果実、果実部分、果実抽出物、果汁、種子、樹皮、根及び/または葉;
(b) 材料の第1のサンプルを極性溶媒で抽出して、極性抽出物と非極性残留物を生
成するステップ;
(c) ステップ(b)の極性抽出物をイオン交換クロマトグラフィーに供して、イオ
ン性化合物及び非イオン性残留物に濃縮された抽出物を生成するステップ;
(d) ステップ(c)の濃縮抽出物をクロマトグラフィーで分画して、イオン性化合
物が濃縮され、本発明の1つ以上の化合物を含む1つ以上の極性画分を生成するステップ
。
【0084】
ハーブの品質管理の態様
サンプル
本発明の方法で使用されるハーブサンプルは、乾燥植物材料またはそれが食品及び飲料
に添加される形態のハーブ食品添加物のアリコートであり得る。代替的に、サンプルは、
特性評価の前に、さまざまな方法のいずれかで前処理することができる。前処理は、物理
的または化学的な前処理、例えば、粉末化、粉砕、凍結、蒸発、濾過、プレス、噴霧乾燥
、押出し、超臨界溶媒抽出、及びチンキ製造を含み得る。
【0085】
好ましくは、食品添加物サンプルは、特性評価の前に分画される。溶媒抽出(複数可)
を含む、任意の適切な分別方法を使用することができる。好ましい実施形態では、サンプ
ルは、イオン交換クロマトグラフィーによって分画されて、極性化合物及び非極性残留物
に濃縮された抽出物を生成する。そのような実施形態では、特性評価は、好ましくは、気
液クロマトグラフィー(GC)、例えば、GC-MSを含む。GCを使用する場合、濃縮
された抽出物はクロマトグラフィーの前に誘導体化される。
【0086】
ハーブ食品添加物が植物全体(またはその一部)の形で管理または販売される場合、植
物材料は使用前に乾燥され得る。凍結乾燥、噴霧乾燥、または空気乾燥を含む、任意の便
利な形態の乾燥を使用することができる。
【0087】
4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンの検出
食品添加物サンプルの任意の適切な形態の特性評価を使用することができ、これには、
サンプル中の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンの存在もしくは非存在を検出
するか、またはその量を測定するのに十分である、機能的及び/または物理的及び/また
は化学的な特性評価が含まれるが、これらには限定されない。
【0088】
サンプルが物理的に特性評価されている場合、特性評価は次から選択できる:(a)植
物化学成分(複数可)の定量化;及び/または(b)成分の純度の測定;及び/または(
c)分子量(または複数の異なる植物化学成分を含む画分の場合はその分子量分布または
その様々な統計的関数)の決定;及び/または(d)分子式(複数可)の決定(例えば、
核磁気共鳴による);及び/または(e)スペクトル分析。
【0089】
スペクトル分析が特に好ましく、以下のスペクトルのいずれかまたは全てを生成する可
能性がある:
(a) マススペクトル(例えば、質量電荷比(m/z)値対存在量)、及び/または
(b) クロマトグラフィーデータ(スペクトル、カラム保持時間、溶出プロファイル
など)、及び/または
(c) フォトダイオードアレイ(PDA)スペクトル(例えば、UV範囲と可視範囲
の両方)、及び/または
(d) 電気化学的検出または蒸発光散乱検出、
(e) 核磁気共鳴(NMR)スペクトル(例えば、1H及び/または13C NMRを
介して得られるスペクトルデータセット)。
【0090】
本発明に従って使用される場合、スペクトル分析は、例えば、GC-MS及び/または
HPLC-PDA-MSの使用による、サンプルの分画及び/または誘導体化と組み合わ
せることができる。
【0091】
特に好ましいのは、サンプル中の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-プロリンの存在
もしくは非存在を検出するか、またはその量を測定するためのGC-MSの使用である。
【0092】
サンプルが化学的に特性評価される場合、特性評価は、植物化学成分(複数可)の化学
反応性、植物化学成分(複数可)の溶解度、植物化学成分(複数可)の安定性及び融点、
またはそれらの任意の組み合わせの測定から選択され得る。
【0093】
サンプルが機能的に特性評価される場合、特性評価は、例えばインビボまたはインビト
ロアッセイ、酵素阻害アッセイ(例えばシアリダーゼ阻害)、受容体結合アッセイ、細胞
アッセイ(例えば細胞複製、細胞病原体、細胞間相互作用、及び細胞分泌アッセイ)、免
疫アッセイ、抗菌活性(例えば、細菌及びウイルスの細胞結合及び/または複製)アッセ
イ、毒性アッセイ(例えば、LD50アッセイ)またはそれらの任意の組み合わせから選択
される生物学的アッセイを含み得る。
【0094】
溶媒抽出
本発明のプロセスで使用するのに適した極性溶媒には、有機アルコールなどの有機溶媒が
含まれるが、これらに限定されない。好ましいのは、エタノール及びメタノール、ならび
にエタノール/水またはメタノール/水の混合物である。好ましくは、極性溶媒は、51
~80%エタノール/水、31~50%エタノール/水、及び30%までのエタノール/
水から選択される。特に好ましいのは、約50%エタノール/水である極性溶媒である。
本発明のプロセスにおいて不要な成分を除去するのに使用するのに適した非極性溶媒には
、ヘキサン及びジクロロメタン(DCM)またはクロロホルムなどの有機溶媒が含まれる
が、これらに限定されない。特に好ましいのはジクロロメタンである。抽出(複数可)が
実行される条件(時間、温度、攪拌の程度など)は、経験的に容易に決定することができ
、サンプルの性質、任意の前処理の性質、及び選択した溶媒系によって変動し得る。
【0095】
クロマトグラフィー分画
クロマトグラフィー分画は気液クロマトグラフィーを含み得る。気液クロマトグラフィ
ーは、加圧された不活性ガスと、加熱されたカラム内の不活性支持体上にコーティングさ
れた非揮発性液体の薄層との間でサンプルを分配することにより、揮発性物質の複雑な混
合物をその成分に分離するプロセスである。混合物中の特定の化合物を良好に分離するた
めには、正しい特性を持つカラムを使用することが重要である。固体支持体の性質、液相
の種類と量、充填方法、全長、及びカラム温度は重要な因子である。
【0096】
当業者は、日常的な試行錯誤によって、及び一般的な一般知識を使用することによって
、とりわけ研究中の抽出物及び抽出に使用される溶媒の性質及びそれらの溶媒で予想され
る化学物質の種類を含む状況に応じて適切なカラム特性を容易に決定することができる。
特に好ましく、多くの状況で有用なのは、非極性液相でコーティングされたキャピラリー
カラム(25m×0.22mm id×0.25μm BPX5固定相、SGE Ltd
.製または同等品)である。
【0097】
多くの化合物は、極性が高く、揮発性が低く、熱的に不安定であるため、ガスクロマト
グラフへの直接注入には適していない。高度にヒドロキシル化された化合物は、分子間水
素結合のために気化するのが困難である。ただし、ヒドロキシル水素を他の化学基で置き
換えることにより、GC分析に十分に揮発性とすることができる。ヒドロキシル基を誘導
体化する2つの最も一般的な手段は、アセチル化とシリル化であり、アセチレート[CH
3CO-O-R]またはシリルエーテル、例えばトリメチルシリル(TMS)エーテル[
(CH3)3Si-O-R]が形成される。したがって、濃縮抽出物が分析スケールでクロ
マトグラフィーで分画される実施形態では、濃縮抽出物の植物化学成分は、好ましくは、
例えば、アシル化またはシリル化によって誘導体化される。特に好ましいのは、トリメチ
ルシリル(TMS)誘導体化である。
【0098】
クロマトグラフィー分画はまた、イオン交換クロマトグラフィーを含み得る。イオン交
換クロマトグラフィーは、イオン種を部分的に精製して濃縮し、汚染物質を除去する。当
業者は、日常的な試行錯誤によって、及び一般的な一般知識を使用することによって、と
りわけ、分画される量、研究中の抽出物、及び抽出に使用される溶媒の性質に応じて、適
切なカラム充填材料及び移動相(複数可)を容易に特定することができる。本発明の方法
において特に好ましいのは、遊離酸または水素(H+形態またはアンモニウム(NH4
+)
塩形態のいずれかで使用することができる強酸性陽イオン交換樹脂である。これらの形態
は、溶液から陽イオンを吸着し、同数の対イオンを溶液に放出する(使用される形態に応
じて、H+またはNH4
+イオンのいずれか)。水酸化物形態(OH-)で使用される場合
、強塩基性陰イオン交換樹脂も好ましい。
【0099】
分画の特性評価
特性評価の形式は、研究中の生薬の性質と採用されている特性評価手法によって異なる
。一般に、次のアプローチのいずれかまたは全てを使用できる:
【0100】
(a)機能的特性評価
機能的特性評価は、生物学的アッセイを含み得る。生物学的アッセイは、インビボまた
はインビトロで実施することができ、酵素阻害アッセイ(例えば、シアリダーゼ阻害)を
含み得る。他の生物学的アッセイには、受容体結合アッセイ、細胞アッセイ(細胞複製、
細胞病原体、及び細胞間相互作用、及び細胞分泌アッセイを含む)、免疫アッセイ、抗菌
活性(例えば、細菌及びウイルスの細胞結合及び/または複製)アッセイ、ならびに毒性
アッセイ(例えば、LD50アッセイ)が含まれる。
【0101】
機能的特性評価はまた、生物活性の1つ以上の指標の同定を可能にする特性評価の形態
によって間接的に実施され得る。
【0102】
(b)物理的特性評価
これは、任意の所与の画分またはプロセスの他の段階に存在する植物化学成分(複数可)
の定量化、成分の純度の測定、または複数の異なる植物化学成分を含む画分の場合はその
分子量分布またはその様々な統計的関数)の決定、分子式(複数可)の決定(例えば、核
磁気共鳴による)、及びさまざまなスペクトル分析の形をとることができる。
【0103】
特に有用なスペクトル特性評価は以下を含む:
● マススペクトル(例えば、質量電荷比(m/z)値対存在量)、及び/または
● クロマトグラフィーデータ(スペクトル、カラム保持時間、溶出プロファイルなど)
、及び/または
● フォトダイオードアレイ(PDA)スペクトル(例えば、UV範囲と可視範囲の両方
)、及び/または
● 電気化学的検出または蒸発光散乱検出、及び/または
● 核磁気共鳴(NMR)スペクトル(1H及び/または13C NMRを介して得られる
スペクトルデータセットを含む)。
【0104】
スペクトルの特性評価は、分別ステップと組み合わせることができる。例えば、GC-
MS及びHPLC-PDA-MS-ED-ELSDを使用して(本明細書で説明するよう
に)、分画を、質量スペクトル、UV-可視スペクトル、電気化学応答、または分率質量
データ及びクロマトグラフィースペクトルデータの取得と組み合わせることができる。
【0105】
上述の特性のいずれかまたは全てを使用して、任意のサンプル(またはその画分もしく
は植物化学成分)の「化学的フィンガープリント」を定義できる。
【0106】
(c)化学的特性評価
これは、とりわけ植物化学成分(複数可)の化学反応性、それらの溶解度、安定性、及び
融点の測定の形をとることができる。
【0107】
本発明の化合物の医学的使用
新生物
本発明の化合物はシアリダーゼ阻害剤であり、したがって、シアリダーゼ活性及び/また
はシアル酸によって媒介される疾患及び障害の治療または予防における用途を見出す。
【0108】
シアリダーゼは、細菌及びウイルスの感染ならびに新生物を含む、さまざまな病理学的
プロセスに関与しているため、これらの酵素は魅力的な治療標的になっている。シアリダ
ーゼNeu1及びNeu3の発現は、糖尿病で変化しているように見える(例えば、Ne
u1 activity discussed by Natori, Y., et
al, 2013, Biol.Pharm., Bull., 36, 1027)。
シアリダーゼはアテローム形成(Sukhorukov, V.N., et al.,
2017, Curr. Pharm. Des., 23, 4696)及び骨関節
炎(Katoh, S., et al., 1999, J Immunol., 1
62, 5058)にも関与すると考えられる。
【0109】
したがって、本発明の化合物は、以下により詳細に記載されるように、新生物/増殖性
障害の治療または予防における用途を見出す。
【0110】
本明細書で使用されるとき、「新生物」という用語は、腫瘍性細胞の異常な増殖を伴う
疾患を定義するために、厳密に使用される。この用語には、良性、前がん性、及び悪性の
新生物(上で定義)が含まれ、「増殖性障害」という用語と同義語として使用される。
【0111】
新生物は、正常な生理学的制御からそれらを解放する遺伝的またはエピジェネティック
な変化を獲得した(すなわち、細胞が「形質転換された」)腫瘍性細胞における不適切に
高レベルの細胞分裂及び/または低レベルのアポトーシスまたは老化から生じる。新生物
は通常、新生物として知られる以下の構造を生成する:組織の異常な塊であり、その増殖
は正常組織の増殖を上回り、調整されておらず、その増殖は、変化を引き起こした刺激の
停止後も同じように過剰に持続する。ほとんどの新生物は大きな組織塊(固形腫瘍)を形
成するが、一部の新生物はそのような個別の組織塊を形成しない。これらには、子宮頸部
上皮内腫瘍、肛門上皮内腫瘍、及び白血病が含まれる。
【0112】
新生物は良性、潜在的に悪性または悪性であり得る。良性腫瘍には、子宮筋腫及び色素
細胞性母斑(皮膚のほくろ)が含まれるが、これらは浸潤性ではなく、悪性新生物に変化
したり進行したりすることはない。潜在的に悪性の(前がん性の)新生物には、転移して
いない上皮内癌が含まれ、これは浸潤性ではないが、時を経て悪性新生物に形質転換する
。
【0113】
悪性新生物は、周囲の組織に浸潤して破壊し、転移を形成する可能性があり、最終的に
宿主を殺傷する可能性のある新生物(腫瘍)を生じさせる。「悪性新生物」及び「がん」
という用語は、本明細書では同義として使用される。
【0114】
「増殖性障害」及び「新生物」という用語は、本明細書では、インビボでの細胞の病理
学的増殖を伴う疾患のクラスを定義するために、同義として使用され得る。
【0115】
したがって、増殖性障害には、がん、がん転移、平滑筋細胞増殖、全身性硬化症、肝硬
変、成人呼吸困難症候群、特発性心筋症、紅斑性ループス、網膜症(例えば、糖尿病性網
膜症)、心臓過形成、良性前立腺肥大、卵巣嚢胞、肺線維症、子宮内膜症、線維腫症、ハ
ルマトーマ、リンパ管腫症、サルコイドーシス、及びデスモイド腫瘍が含まれる。平滑筋
細胞の増殖を伴う新生物には、血管系における細胞の過剰増殖(例えば、内膜平滑筋細胞
の過形成、再狭窄、及び血管形成術などの生物学的または機械的媒介血管損傷後の特定の
狭窄を含む血管閉塞)が含まれる。さらに、内膜平滑筋細胞過形成は、血管系以外の平滑
筋における過形成(例えば、胆管、気管支気道、及び腎間質性線維症の患者の腎臓内の閉
塞)を含み得る。非がん性増殖性疾患には、乾癬及びその様々な臨床形態、ライター症候
群、日光角化症、及び角化障害の過剰増殖性バリアント(光線性角化症、老人性角化症、
及び強皮症を含む)などの皮膚における細胞の過剰増殖も含まれる。
【0116】
「新生物」という用語はまた、本明細書では、インビボでの細胞の異常な増殖及び/ま
たは分化を伴う疾患を定義するために広義に使用され、したがって、過形成、化生、及び
異形成を包含する。
【0117】
過形成は、臓器または組織内の正常な(形質転換されていない)細胞が異常な程度まで
増殖する状態を定義する。したがって、臓器の全体的な拡大、良性腫瘍の形成をもたらす
可能性があり、または顕微鏡下でのみ見ることができる可能性がある。過形成は特定の刺
激に対する生理学的反応であり、過形成細胞は通常の調節制御メカニズムの影響を受け続
ける(細胞が正常な生理学的制御に反応しない異常な方法で増殖する腫瘍性増殖とは異な
る)。例としては、先天性副腎過形成、子宮内膜増殖症、良性前立腺肥大(前立腺肥大)
、乳房の過形成(管過形成を含む)、限局性上皮過形成(ヘック病)、脂腺過形成、肝臓
過形成などが挙げられる。
【0118】
化生は、ある成熟した分化型の細胞が別の成熟した分化型の細胞に置き換わる状態を定
義する。例としては、唾液腺管の円柱上皮細胞の扁平上皮化生(結石が存在する場合)、
膀胱の移行上皮の扁平上皮化生(同様に、結石が存在する場合、または感染に関連する場
合)、胃酸逆流症(バレット食道)の患者における食道の腺化生及び結合組織における骨
化生が挙げられる。
【0119】
異形成は、組織内の細胞の異常な成熟を特徴とする状態を定義する。これは一般に、未
成熟細胞の拡大と、それに対応する成熟細胞の数と配置の減少で構成される。例えば、子
宮頸部の上皮性異形成は、粘膜表面に限定された未成熟細胞の集団の増加を特徴とする。
骨髄異形成症候群、または造血細胞の異形成は、骨髄中の未成熟細胞の数の増加と、血液
中の成熟した機能細胞の減少を示す。他の例には、神経線維腫症が含まれる。
【0120】
過形成、化生、及び異形成は、一般に可逆的な状態であり、刺激(例えば、発作または
傷害)の結果である。対照的に、新生物は一般に不可逆的であり、細胞の形質転換に関連
している。
【0121】
本発明の化合物は、増殖性障害、良性、前がん性及び悪性新生物、過形成、化生、なら
びに異形成を含む任意の新生物の治療において一般的な用途を見出す。
【0122】
したがって、本発明は、がん、がん転移、平滑筋細胞増殖、全身性硬化症、肝硬変、成
人呼吸困難症候群、特発性心筋症、紅斑性ループス、網膜症(例えば、糖尿病性網膜症)
、心臓過形成、良性前立腺肥大、卵巣嚢胞、肺線維症、子宮内膜症、線維腫症、ハルマト
ーマ、リンパ管腫症、サルコイドーシス、及びデスモイド腫瘍を含むがこれらに限定され
ない増殖性障害の治療に用途を見出す。平滑筋細胞の増殖を伴う新生物には、血管系にお
ける細胞の過剰増殖(例えば、内膜平滑筋細胞の過形成、再狭窄、及び血管形成術などの
生物学的または機械的媒介血管損傷後の特定の狭窄を含む血管閉塞)が含まれる。さらに
、内膜平滑筋細胞過形成は、血管系以外の平滑筋における過形成(例えば、胆管、気管支
気道、及び腎間質性線維症の患者の腎臓内の閉塞)を含み得る。非がん性増殖性疾患には
、乾癬及びその様々な臨床形態、ライター症候群、日光角化症、及び角化障害の過剰増殖
性バリアント(光線性角化症、老人性角化症、及び強皮症を含む)などの皮膚における細
胞の過剰増殖も含まれる。
【0123】
特に好ましいのは、悪性新生物(がん)の治療である。本発明は、以下の主要な分類か
ら選択されたものを含む、あらゆるがんの治療における用途を見出す:(a)がん腫;(
b)芽細胞腫;(c)白血病;(d)リンパ腫;(e)骨髄腫;(f)肉腫;及び(g)
混合型のがん。
【0124】
がん腫とは、上皮由来の悪性新生物、または体の内層または外層のがんを指す。上皮組
織の悪性腫瘍であるがん腫は、全てのがん症例の80~90パーセントを占める。上皮組
織は全身に見られる。皮膚だけでなく、臓器及び胃腸管などの内部通路の覆い及び内層に
も存在する。好ましい実施形態では、本発明に従って治療されるがん腫は、以下のがん腫
から選択される:結腸;直腸;虫垂;肺;胸腺;乳房;子宮頸部;膀胱、及び目。
【0125】
本発明は、肝芽細胞腫(例えば、腎芽細胞腫、非上皮性腎腫瘍、ラブドイド腎腫瘍、腎
肉腫、及び腎臓のpPNET)、髄芽腫、膵臓芽細胞腫、肺芽細胞腫、胸膜肺芽細胞腫、
神経芽細胞腫(一般的な末梢神経細胞腫瘍、ならびに神経節神経芽細胞腫及び網膜芽細胞
腫を含む)を含む全ての芽細胞腫の治療に用途を見出す。
【0126】
本発明は、以下を含む全ての白血病、骨髄増殖性疾患、及び骨髄異形成性疾患の治療に
おける用途を見出す:リンパ性白血病(例えば、前駆細胞白血病、成熟B細胞白血病、成
熟T細胞白血病、及びNK細胞白血病);急性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性疾患;骨髄
異形成症候群、及びその他の骨髄増殖性疾患。したがって、本発明は、リンパ性白血病、
リンパ球性白血病、またはリンパ芽球性白血病(リンパ性及びリンパ球性血球系列の悪性
腫瘍)、ならびに真性多血症または赤血球血症(さまざまな血球産物、しかし、赤血球が
優勢である悪性腫瘍)を含む様々な白血病の治療に用途を見出す。
【0127】
リンパ腫は、リンパ系の腺またはリンパ節、血管、リンパ節、及び臓器(特に脾臓、扁
桃腺、胸腺)のネットワークで発生し、体液を浄化して感染と戦う白血球またはリンパ球
を生成する。しばしば「液体がん」と呼ばれる白血病とは異なり、リンパ腫は「固形がん
」である。リンパ腫は、胃、乳房、または脳などの特定の臓器にも発生する可能性がある
。これらのリンパ腫はリンパ節外リンパ腫と呼ばれる。リンパ腫は2つのカテゴリーに分
類される:ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫。ホジキンリンパ腫におけるリード
シュテルンベルク細胞の存在は、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫を診断的に区別
する。本発明は、以下を含む全てのそのようなリンパ腫及び細網内皮新生物の治療におけ
る用途を見出す:(a)ホジキンリンパ腫;(b)非ホジキンリンパ腫(例えば、前駆細
胞リンパ腫、成熟B細胞リンパ腫、成熟T細胞リンパ腫及びNK細胞リンパ腫;(c)バ
ーキットリンパ腫、ならびに(d)マントル細胞リンパ腫を含む他のリンパ網状新生物。
【0128】
したがって、本発明は、例えば、リンパ系の腺または結節(脾臓、扁桃腺、及び胸腺を
含む)の腫瘍、ならびに胃、乳房、及び脳の結節外リンパ腫を含む、広範囲のリンパ腫の
治療における用途を見出す。
【0129】
骨髄腫は骨髄の形質細胞に発生するがんである。したがって、本発明は、リンパ系の造
血器腫瘍及び血液悪性腫瘍(例えば、白血病、急性リンパ球性白血病、慢性リンパ球性白
血病、B細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫など)、T細胞リンパ腫、ホジ
キンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(ホジキンリンパ腫におけるリードシュテルンベルク
細胞の存在はホジキンリンパ腫を非ホジキンリンパ腫と区別する)、毛細胞リンパ腫及び
バーキットリンパ腫)、ならびに骨髄系の造血器腫瘍(例えば急性骨髄性白血病、慢性骨
髄性白血病、骨髄性白血病及びイマチニブ感受性及び難治性慢性骨髄性白血病、骨髄異形
成症候群、ボルテゾミブ感受性及び難治性多発性骨髄腫、骨髄増殖性疾患または前骨髄球
性白血病及び甲状腺濾胞癌)を含む造血器腫瘍及び血液悪性腫瘍の治療に用途を見出す。
【0130】
本発明は、全ての肉腫の治療における用途を見出す。肉腫とは、骨、腱、軟骨、筋肉、
及び脂肪などの支持組織や結合組織に発生するがんを指す。一般的に若年成人に発生する
最も一般的な肉腫は、しばしば疼痛を伴う骨の腫瘤として発症する。肉腫腫瘍は通常、そ
れらが増殖する組織に類似する。本発明による治療のための例示的な肉腫には、骨肉腫(
または骨原性肉腫);軟骨肉腫;平滑筋肉腫(平滑筋);横紋筋肉腫(骨格筋);中皮肉
腫または中皮腫(体腔の膜状の内層);線維肉腫(線維性組織);血管肉腫または血管内
皮腫(血管);脂肪肉腫;神経膠腫;星状細胞腫;粘液肉腫(原発性胚性結合組織)なら
びに間葉性または混合性中胚葉性腫瘍(混合性結合組織型)が含まれる。線維肉腫には、
末梢神経鞘腫瘍及び他の線維性新生物、例えば、線維芽細胞性及び筋線維芽細胞性腫瘍、
神経鞘腫瘍及び他の線維腫性新生物が含まれる。カポジ肉腫も含まれる。軟部組織肉腫、
例えば軟部組織のユーイング腫瘍及びアスキン腫瘍、軟部組織のpPNET、腎外ラブド
イド腫瘍、線維組織球性腫瘍;滑膜肉腫;軟部組織及び胞巣状軟部肉腫の骨性及び軟骨腫
性新生物も含まれる。骨肉腫(悪性骨腫瘍)には、骨の悪性線維性新生物;悪性脊索腫及
び歯原性悪性腫瘍が含まれる。神経膠腫には、乏突起膠腫、混合及び特定不能の神経膠腫
、神経上皮グリア腫瘍が含まれる。
【0131】
本発明は、例えば腺扁平上皮癌、混合性中胚葉性腫瘍、がん肉腫及び奇形腫を含む混合
型のがんの治療における用途を見出す。したがって、本発明は、星状細胞腫、神経芽細胞
腫、神経膠腫、神経鞘腫、上衣腫及び脈絡膜神経叢腫瘍(例えば、上衣腫及び脈絡膜神経
叢腫瘍);頭蓋内及び脊髄内胚腫瘍(例えば、髄芽腫、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET
)、髄上皮腫、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍及びその他の頭蓋内及び脊髄内腫瘍(例え
ば、一般に、下垂体の腺腫及びがん腫、セラー領域の腫瘍(頭蓋咽頭腫)、神経及び混合
神経グリア腫瘍、髄芽腫、及び頭蓋内及び脊髄内の新生物)を含む、様々なCNS、PN
S及びその他の頭蓋内及び脊髄内新生物の治療における用途を見出す。
【0132】
したがって、本発明は、頭蓋内及び脊髄内胚細胞腫瘍;頭蓋内及び脊髄内胚細胞腫;頭
蓋内及び脊髄内奇形腫;頭蓋内及び脊髄内胚性癌;頭蓋内及び脊髄内卵黄嚢腫瘍;頭蓋内
及び脊髄内絨毛癌、ならびに混合型の頭蓋内及び脊髄内腫瘍の治療において特定の用途を
見出す。
【0133】
本発明はまた、様々な胚細胞腫瘍、栄養膜腫瘍、及び性腺の新生物の治療における用途
を見出す。したがって、本発明は、例えば、一般に、頭蓋外及び性腺外部位の悪性胚細胞
腫、頭蓋外及び性腺外部位の悪性奇形腫、頭蓋外及び性腺外部位の胚性癌腫、頭蓋外及び
性腺外部位の卵黄嚢腫瘍;頭蓋外及び性腺外部位の絨毛癌、及び頭蓋外及び性腺外部位の
悪性混合胚細胞腫瘍を含む、悪性頭蓋外及び性腺外胚細胞腫瘍の治療における用途を見出
す。本発明はまた、例えば、悪性性腺胚芽腫、精上皮腫、悪性性腺奇形腫、性腺胚性癌、
性腺卵黄嚢腫瘍、性腺胆管細胞癌、混合形態の悪性性腺腫瘍及び悪性性腺性腺芽腫を含む
、悪性性腺生殖細胞腫瘍の治療における用途を見出す。
【0134】
感染症
本発明の化合物はシアリダーゼ阻害剤であり、したがって、シアリダーゼ活性及び/ま
たはシアル酸によって媒介される疾患及び障害の治療または予防における用途を見出す。
このような疾患及び障害には、感染症(細菌及びウイルスの感染を含む)が含まれる。
【0135】
本発明の化合物は、任意の感染体に対して抗感染性(例えば、病原阻止または病原殺滅
)活性を有し得る。したがって、本発明の化合物は、広範囲の異なる感染性因子を標的と
できる(すなわち、それに対して活性を有する)。したがって、本発明は、ウイルス、細
菌、真菌、原生動物、プリオンまたは後生動物の因子が関係している感染症を含む、あら
ゆる感染症または感染性疾患の治療または予防において幅広い用途を見出す。
【0136】
したがって、本発明は、ウイルス感染症の治療または予防;細菌感染症の治療または予
防;原虫感染症の治療または予防;真菌感染症の治療または予防;プリオン感染症の治療
または予防;及び/または後生動物(例えば、蠕虫)の感染または侵入の治療または予防
において幅広い用途を見出す。本発明の化合物はまた、慢性、休眠または潜伏性のウイル
ス、細菌、原生動物、真菌、プリオンまたは後生動物(例えば、蠕虫)の感染または侵入
の治療または予防における用途を見出すことができる。
【0137】
● ウイルスの標的には、以下のウイルス(またはウイルスクラス)が含まれるが、こ
れらに限定されない:レトロウイルス科(例えば、HIV-1を含むヒト免疫不全ウイル
ス);ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイ
ルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カリシウイルス
科(例えば、胃腸炎を引き起こす菌株);トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、
風疹ウイルス);フラビウイルス科(例えば、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウ
イルス);コロナウイルス科(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(例えば、
水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス
);パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、
はしかウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルトミクソウイルス科(例えば、インフル
エンザウイルス);ブンガウイルス科(例えば、ハンタンウイルス、ブンガウイルス、フ
レボウイルス、及びナイロウイルス);アレナウイルス科(出血熱ウイルス);レオウイ
ルス科(例えば、レオウイルス、オルビウイルス、及びロタウイルス);ビルナウイルス
科;ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(パルボウイルス);
パピローマウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科
(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)
1及び2、バリセラ帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイ
ルス;ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);
及びイリドウイルス科(例えば、アフリカ豚熱ウイルス);ならびに未分類ウイルス(例
えば、海綿状脳症の病因物質、デルタ肝炎の病原体(B型肝炎ウイルスの欠陥サテライト
であると考えられている)、HCVウイルス(非A、非B肝炎を引き起こす)、ノーウォ
ーク及び関連ウイルス、及びアストロウイルス)。この中で特に好ましいのは、HIV、
A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、狂犬病ウイルス、ポリオウイルス、インフルエンザウイ
ルス、髄膜炎ウイルス、はしかウイルス、ムンプスウイルス、風疹、百日咳、脳炎ウイル
ス、パピローマウイルス、黄熱病ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パルボウイルス、チ
クングニアウイルス、出血熱ウイルス及びヘルペスウイルス、特にバリセラ、サイトメガ
ロウイルス及びエプスタイン・バーウイルスである。
【0138】
● 細菌の標的には、グラム陰性菌とグラム陽性菌の両方が含まれるが、これらに限定
されない。本発明の化合物が標的とし得る細菌の例には、以下が含まれるが、これらに限
定されない:Helicobacter pylori、Borelia burgdo
rferi、Legionella pneumophilia、マイコバクテリウム属
種(例えば、M. tuberculosis、M. leprae、M. avium
、M. intracellulare、M. kansaii、及びM. gordo
nae)、Staphylococcus aureus、Neisseria gon
orrhoeae、Neisseria meningitidis、Listeria
monocytogenes、Streptococcus pyogenes(A群
レンサ球菌)、Streptococcus agalactiae(B群レンサ球菌)
、Streptococcus viridans、Streptococcus fa
ecalis、Streptococcus bovis、レンサ球菌属の嫌気性種、S
treptococcus pneumoniae、カンピロバクター属種、エンテロコ
ッカス属種、Haemophilus influenzae、Bacillus an
thracis、コリネバクテリウム属種(C. diphtheriaeを含む)、E
rysipelothrix rhusiopathiae、Clostridium
perfringens、Clostridium tetani、Enterobac
ter aerogenes、クレブシエラ属種(K. pneumoniaeを含む)
、Pasturella multocida、バクテロイデス属種、Fusobact
erium nucleatum、Streptobacillus monilijo
rmis、Treponema pallidium、Treponema perte
nue、レプトスピラ属種、リケッチア属種、及びアクチノミセス属種(A. isra
eliiを含む)。インビボでバイオフィルムを形成する細菌は、本発明の化合物の特定
の標的であり、これらには、Tannerella forsythia、Tanner
ella denticola、Porphyromonas gingivalis、
及びGardnerella vaginalisが含まれる。
【0139】
● 真菌の標的には、Cryptococcus neoformans、Histo
plasma capsulatum、Coccidioides immitis、B
lastomyces dermatitidis、Chlamydia tracho
matis、及びCandida albicansが含まれるが、これらには限定され
ない。
【0140】
● 原生動物の標的には、マラリア原虫属種(Plasmodium falcipa
rum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale
、及びPlasmodium vivaxを含む)、トキソプラズマ属種(T. gon
dii及びT. cruziiを含む)、リーシュマニア属種、クリプトスポリジウム属
種(C. parvumを含む)、シクロスポラ属種(C. cayetanensis
を含む)、エントアメーバ属種(E. histolyticaを含む)、ならびにジア
ルジア属種(G. lambliaを含む)が含まれるが、これらには限定されない。
【0141】
● 後生動物の標的には、蠕虫(例えば、シストソーマ属種)などの寄生虫または病原
体が含まれる。
【0142】
インビボでの細菌増殖の阻害
本発明の化合物のシアリダーゼ阻害特性はまた、インビボでの共生及び/または病原性
細菌増殖の阻害、特に哺乳動物(例えば、ヒト)宿主における細菌バイオフィルムの阻害
または排除を含む、宿主-細菌細胞相互作用の破壊における用途を見出す。
【0143】
したがって、これらの化合物は、細菌バイオフィルム(例えば、歯肉下プラークバイオ
フィルム及び筋膜バイオフィルム)の存在によって媒介または特徴づけられる疾患及び障
害の治療または予防における用途を見出す。
【0144】
このような疾患には、歯周病、細菌性膣炎、及びTannerella forsyt
hia、Tannerella denticola、Porphyromonas g
ingivalis、及びGardnerella vaginalis(後者の種は細
菌性膣炎及び早産に関連する)の感染によって引き起こされる疾患が含まれる。
【0145】
アテローム形成
本発明の化合物はシアリダーゼ阻害剤であり、シアリダーゼがこのプロセスに関与して
いるため、アテローム形成(Sukhorukov, V.N., et al., 2
017, Curr. Pharm. Des., 23, 4696)及び骨関節炎(
Katoh, S., et al., 1999, J Immunol., 162
, 5058)の治療または予防に用途を見出す。したがって、本発明の化合物は、アテ
ローム性動脈硬化症の治療及び予防における用途を見出す。
【0146】
共生細菌増殖の調節
本発明の化合物のシアリダーゼ阻害特性はまた、宿主における微生物叢(及び特に共生
細菌)の組成の調節、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)宿主における共生細菌の組成の
調節における用途を見出す。特に好ましいのは、腸内微生物叢の調節である。
【0147】
炎症
本発明の化合物は、変形性関節症におけるTNF-α誘発性炎症過程に関与すると考え
られているシアリダーゼを阻害する(Gee, K. et al., 2003, J
Biol Chem., 37275)。さらに、本発明の化合物は、TNF-α活性
を抑制または阻害することができる。このように、それらは、炎症が生理学的機能の機能
障害及び/または症状及び/または疼痛に役割を果たすあらゆる障害に用途を見出す。例
えば、本発明の化合物は、例えば、急性、慢性、局所性、または全身性の炎症を軽減また
は排除するために、抗炎症剤として使用することができる。
【0148】
炎症は、微生物、外傷、化学物質、熱、冷え、日焼け、またはその他の有害なイベント
によって組織が損傷したときに発生する。内因性の化学物質(例えば、ブラジキニン、ヒ
スタミン、及びセロトニン)は、怪我または傷害の際に放出され、そのような化学物質は
、組織のマクロファージ及び他の白血球を活性化して誘引する。この過程で、TNF-α
などの化学メディエーターが放出され、炎症を引き起こす。
【0149】
炎症性障害は、炎症が持続的または慢性的なものである。そのような状況では、長期の
炎症は組織破壊を引き起こし、影響を受けた組織及び/または臓器の広範な損傷及び最終
的な不全をもたらす。
【0150】
したがって、本発明の化合物は、非局在化炎症性障害、例えば、複数の臓器に影響を与
えるものの治療における用途を見出す。このような障害には、免疫機能障害(したがって
、自己免疫成分を有し得る)から生じる障害が含まれる。このような状態には、全身性エ
リテマトーデス(SLE)、強皮症、過敏症などが含まれる。
【0151】
本発明の化合物はまた、皮膚炎症及び慢性前立腺炎、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、骨盤
炎症性疾患、再灌流傷害、関節リウマチ、移植片拒絶、血管炎、喘息、にきび、変形性関
節症、口腔粘膜、胃腸の炎症、眼、鼻、及び耳の炎症、ならびにその他のステロイド反応
性炎症性疾患を含む限局性炎症性障害の治療における用途を見出す。
【0152】
特に、本発明の化合物は、皮膚の炎症性疾患の治療における用途を見出す。これらには
、例えば、光線性角化症、にきび(尋常性ざ瘡、面皰、酒さ性ざ瘡、及び結節性嚢胞性に
きびを含む)、アレルギー性接触皮膚炎、血管浮腫、水疱性ペミフィゴイド、皮膚薬物反
応、多形紅斑、紅斑性強皮症、光皮膚炎、乾癬性関節炎、強皮症及び蕁麻疹、乾癬、皮膚
炎(例えば、アトピー性皮膚炎)、強皮症、ステロイド反応性皮膚炎症性障害(例えば、
尿路性掻痒症)、ならびに日光、放射線、化学療法、及び環境刺激物への曝露に関連する
皮膚状態が含まれる。
【0153】
本発明の化合物はまた、炎症性自己免疫疾患の治療における用途を見出す。そのような
疾患は、特定の組織または臓器(リウマチ性関節炎及びアンキロス性脊椎炎のような筋骨
格組織など)、消化管(例えば、クローン病及び潰瘍性大腸炎のような)、CNS(例え
ば、アルツハイマー病のような、多発性硬化症、運動神経疾患、パーキンソン病、及び慢
性疲労症候群)、膵臓ベータ細胞(例えば、インスリン依存性真性糖尿病)、副腎(例え
ば、アディソン病)、腎臓(例えば、グッドパスチャー症候群、IgA腎症及び間質性腎
炎)、外分泌腺(例えば、シェーグレン症候群及び自己免疫性膵炎)ならびに皮膚(例え
ば、乾癬及びアトピー性皮膚炎)を含み得る。
【0154】
本発明に従って治療可能な他の炎症性障害には、骨関節炎、歯周病、糖尿病性腎症、慢
性閉塞性肺疾患、関節硬化症、移植片対宿主病、慢性骨盤内炎症性疾患、子宮内膜症、慢
性肝炎、及び結核などの状態が含まれる。
【0155】
エネルギー利用疾患
本発明の化合物は、血糖調節活性を有する。したがって、本発明は、様々なエネルギー
利用疾患の治療における用途を見出す。これらの疾患は、広範囲の疾患及び障害を含み、
例えば、ホメオスタシスの障害、代謝性疾患、糖代謝の機能不全、及び食欲障害を含む。
【0156】
したがって、エネルギー利用疾患の例には、インスリン抵抗性、さまざまな形態の糖尿
病(1型及び2型糖尿病を含む)、メタボリックシンドローム、肥満、消耗症候群(例え
ば、がん関連悪液質)、筋障害、胃腸疾患、成長遅延、高コレステロール血症、アテロー
ム性動脈硬化症、及び加齢性代謝機能障害が含まれる。
【0157】
エネルギー利用疾患にはまた、メタボリックシンドローム、肥満、及び/または糖尿病
に関連する状態を含み、例えば、高血糖、耐糖能異常、高インスリン血症、糖尿、代謝性
アシドーシス、白内障、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、黄斑
変性症、糸球体硬化症、糖尿病性心筋症、インスリン抵抗性、グルコース代謝障害、関節
炎、高血圧、高脂血症、骨粗鬆症、骨減少症、骨量減少、脆性骨症候群、急性冠症候群、
不妊症、短腸症候群、慢性疲労、摂食障害、及び腸運動機能障害が含まれる。
【0158】
インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、糖尿病
健常人では、血糖値は、インスリン(膵臓のβ細胞によって生成される)とグルカゴン
(膵臓のα細胞によって生成される)の2つの膵臓ホルモンによって狭い範囲内に維持さ
れている。膵臓のβ細胞は血糖値の上昇を感知し、インスリンを分泌することで応答する
。インスリンは生体の組織によるグルコースの取り込みを促進し、それによって血糖濃度
を生理学的範囲に戻す。グルカゴンは相互に作用し、主に肝臓でのグルコース産生を刺激
することにより、空腹状態の血糖値を上昇させる。
【0159】
インスリン抵抗性は、骨格筋、脂肪細胞、及び肝細胞におけるインスリンの作用の低下
を特徴とし、その結果、正常な量のインスリンは、これらの組織の細胞から正常なインス
リン応答をもたらすには不十分になる。脂肪細胞では、インスリン抵抗性により、貯蔵さ
れているトリグリセリドが加水分解され、血漿中の遊離脂肪酸が上昇する。筋肉では、イ
ンスリン抵抗性はグルコースの取り込みを減らし、肝細胞ではグルコースの貯蔵を減らす
。後者の両方の場合において、血糖濃度の上昇が生じる。
【0160】
インスリン抵抗性によるインスリンとグルコースの高い血漿レベルは、しばしばメタボ
リックシンドロームと2型糖尿病に進行する。
【0161】
メタボリックシンドロームは、心血管疾患及び糖尿病のリスクを高める異常及び障害の
集まりである。発生率は多くの先進国で非常に高い:いくつかの研究は人口の25%まで
の米国での有病率を示している。この障害は、(メタボリック)シンドロームX、インス
リン抵抗性症候群、リーベン症候群、及びCHAOSとしても知られている。メタボリッ
クシンドロームは、以下の症状の3つ以上の存在によって診断される:中心性肥満(男性
の場合は101.6センチメートル(40インチ)以上、女性の場合は88.9センチメ
ートル(35インチ)以上のウエスト測定);高レベルのトリグリセリド(150mg/
dL以上);低レベルのHDL(男性では40mg/dL未満、女性では50mg/dL
未満)、及び高血圧(130/85mmHg以上)。関連する病気と徴候は以下の通りで
ある: 脂肪肝(しばしば非アルコール性脂肪性肝疾患に進行する)、多嚢胞性卵巣症
候群、ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)及び黒色表皮腫(黒色表皮腫)。
【0162】
メタボリックシンドロームの一次治療は、ライフスタイルの変化(カロリー制限と身体
活動)である。しかしながら、薬物治療がしばしば必要である。一般に、メタボリックシ
ンドロームを構成する個々の疾患は別々に治療される(例えば、利尿薬と高血圧のための
ACE阻害薬)。コレステロール薬は、LDLコレステロールとトリグリセリドのレベル
が上昇している場合はそれらを低下させ、HDLレベルが低下している場合は上昇させる
ために使用できる。インスリン抵抗性を低下させる薬の使用(例えば、メトホルミンとチ
アゾリジンジオンは議論を引き起こしている)。有酸素運動は、症例の31%未満で治療
的であり、一般に空腹時血漿グルコースまたはインスリン抵抗性の低下を引き起こさない
。
【0163】
したがって、メタボリックシンドロームの新しい及び/または代替治療、特に肥満及び
/またはトリグリセリドレベルの上昇に対して有効な治療が必要である。
【0164】
2型糖尿病は、血糖値の持続的な上昇(高血糖)を特徴とする慢性疾患である。インス
リン抵抗性は、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌障害とともに、この疾患の特徴である
。2型糖尿病へのインスリン抵抗性の進行は、膵臓のβ細胞が正常な血糖値(正常血糖)
を維持するのに十分なインスリンを産生できなくなると、食事後の高血糖の発症によって
特徴づけられる。
【0165】
2型糖尿病の治療に現在使用されている最も重要な薬剤は、メトホルミン(Gluco
phage、Diabex、Diaformin、Fortamet、Riomet、G
lumetza、Cidophageなど)である。メトホルミンは、ビグアニドクラス
の経口抗高血糖剤である。他のビグアニドには、フェンホルミンとブホルミン(現在は廃
止)が含まれている。メトホルミンは、主にグリコーゲン貯蔵庫からの血糖の肝臓放出を
減少させることによって機能するが、グルコースの取り込みを増加させるいくらかの効果
も有する。他の広く使用されている薬剤クラスには、スルホニル尿素グループの薬剤クラ
ス(グリベンクラミド及びグリクラジドを含む)が含まれる。これらの薬は、膵臓による
グルコース刺激インスリン分泌を増加させる。新しい薬剤クラスには、細胞核内の受容体
分子のグループであるPPAR(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体)に結合するこ
とによって作用するチアゾリジンジオン(例えば、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、及
びトログリタゾン)が含まれる。他のクラスには、α-グルコシダーゼ阻害剤(アカルボ
ース)、メグリチニド(インスリン放出を刺激し、ナテグリニド、レパグリニド、及びそ
れらの類似体を含む)、ペプチド類似体(例えば、インスリン分泌促進薬として作用する
インクレチン模倣薬、グルカゴン様ペプチド類似体(例えば、エクセナチド))、ジペプ
チジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤(インクレチンレベルを増加させる(例え
ば、シタグリプチン))、ならびにアミリンアゴニスト類似体(胃内容排出を遅らせ、グ
ルカゴンを抑制する(例えばプラムリンチド))が含まれる。
【0166】
しかしながら、2型糖尿病のさまざまな形態に対する既存の治療法は、β細胞の主要な
内因性因子の機能を改善するようには見えず、既存の治療法は全て、疾患の進行を阻止で
きず、時間の経過とともに、血糖値を正常化できず、及び/またはその後の合併症を防ぐ
こともできない。既存の治療法はまた、望ましくない副作用と関連している。例えば、イ
ンスリン分泌促進薬とインスリン注射は、低血糖と体重増加を引き起こす可能性がある。
患者はまた、時間の経過とともにインスリン分泌促進薬に反応しなくなる可能性がある。
メトホルミン及びα-グルコシダーゼ阻害剤はしばしば胃腸の問題を引き起こし、PPA
Rアゴニストは体重増加及び浮腫の増加を引き起こす傾向がある。エクセナチドは、悪心
及び嘔吐を引き起こすことも報告されている。
【0167】
グリコシル化はタンパク質の特性を調節する上で重要な役割を果たし、多くの疾患に関
連している。Itoh, N. et al., 2007 (Am J Physio
l Endocrinol Metab 293: E1069-E1077)は、2型
糖尿病のヒト対象の血清N-グリカンプロファイルを報告し、二分岐するN-アセチルグ
ルコサミンとともにα1,6-フコースを有する二分岐N-グリカンの量が増加している
ことを発見した。Copeland, R.J. et al., 2008 (Am
J Physiol Endocrinol Metab 295: E17-E28)
は、糖尿病におけるO-結合型N-アセチルグルコサミンの重要性を総説し、GlcNA
c化とインスリン抵抗性の発症との間に強い正の相関があると結論付けた。O-結合型-
β-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)は、リン酸化と同様に、セリン及び
/またはトレオニンヒドロキシル基のオンとオフで循環する動的な翻訳後修飾である。O
-GlcNAcの循環は、O-GlcNAcトランスフェラーゼとO-GlcNAcアー
ゼの協調作用によって調節される。GlcNAc化は、2型糖尿病の主要な特徴である、
グルコース毒性と慢性高血糖誘発性インスリン抵抗性の病因に関与している。ヘキソサミ
ニダーゼ活性は、糖尿病患者の血清で上昇することが示されている(例えば、Agard
h, C.D. et al., 1982, Acta Med Scand.212
:39-41)。
【0168】
1型糖尿病(またはインスリン依存性糖尿病)は、膵臓のランゲルハンス島のインスリ
ン産生ベータ細胞の喪失を特徴とし、インスリンの欠乏を引き起こす。このベータ細胞喪
失の主な原因は、T細胞を介した自己免疫攻撃である。北米とヨーロッパの糖尿病症例の
10%までを占める1型糖尿病に対して講じることができる既知の予防策はない。ほとん
どの罹患した人々は、そうでなければ健康であり、発症時に健康な体重である。インスリ
ンに対する感受性と応答性は通常、特に初期段階では正常である。
【0169】
1型糖尿病の主な治療法は、初期の段階からでも、血液検査モニターを使用して血糖値
を注意深くモニターすることと組み合わせたインスリンの補充である。インスリンがない
と、ケトーシス及び糖尿病性ケトアシドーシスが発症し、昏睡または死に至る可能性があ
る。一般的な皮下注射とは別に、ポンプでインスリンを送達することも可能であり、これ
により、事前設定されたレベルで1日24時間インスリンを継続的に注入でき、食事時に
必要に応じてインスリンの用量(ボーラス)をプログラムできる。吸入型のインスリンで
あるエクスベラは、最近FDAによって承認された。
【0170】
1型糖尿病の治療は無期限に継続する必要がある。治療は通常の活動を損なうものでは
ないが、検査と薬物における十分な認識、適切なケア、及び規律を遵守する必要がある。
【0171】
したがって、新規の及び/または代替の抗糖尿病薬治療、特にβ細胞機能を回復するこ
とができる治療が必要である。特に、既存の薬物療法よりも副作用が少ない、2型糖尿病
と1型糖尿病の両方及び関連する状態を治療することができる効果的な薬物に対する、現
実的かつ実質的に満たされていない臨床的必要性が存在する。
【0172】
本発明は、あらゆるエネルギー利用疾患の治療における幅広い用途を見出す。
【0173】
したがって、本発明によって治療できる疾患は、例えば、ホメオスタシスの障害、代謝
性疾患、糖代謝の機能不全、及び食欲障害を含む。
【0174】
好ましい実施形態では、本発明は、インスリン抵抗性、さまざまな形態の糖尿病、メタ
ボリックシンドローム、肥満、消耗症候群(例えば、がん関連悪液質)、筋障害、胃腸疾
患、成長遅延、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、及び加齢性代謝機能障
害の治療における用途を見出す。
【0175】
本発明はまた、メタボリックシンドローム、肥満、及び/または糖尿病に関連する状態
、例えば、高血糖、耐糖能異常、高インスリン血症、糖尿、代謝性アシドーシス、白内障
、糖尿病性ニューロパチー、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、糸球体硬化症
、糖尿病性心筋症、インスリン抵抗性、グルコース代謝障害、関節炎、高血圧、高脂血症
、骨粗鬆症、骨減少症、骨量減少、脆性骨症候群、急性冠症候群、不妊症、短腸症候群、
慢性疲労、摂食障害、腸運動機能障害、及び糖代謝機能障害の治療に使用できる。
【0176】
本発明はまた、食欲を抑制するために使用され得る。理論に拘束されることを望まない
が、これは血糖値の維持にさえも影響を受ける可能性があり、疲労/倦怠感及び甘いもの
を食べたいという欲求を引き起こす大きな落ち込みを排除する(すなわち、「改善された
エネルギーバランス」を促進することによって)。
【0177】
特に好ましいのは、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、肥満、及び糖尿病
(特に2型糖尿病)の治療である。
【0178】
本発明は、インスリン抵抗性の治療における用途を見出す。インスリン抵抗性は、骨格
筋、脂肪細胞、及び肝細胞におけるインスリンの作用の低下を特徴とし、その結果、正常
な量のインスリンは、これらの組織の細胞から正常なインスリン応答をもたらすには不十
分になる。脂肪細胞では、インスリン抵抗性により、貯蔵されているトリグリセリドが加
水分解され、血漿中の遊離脂肪酸が上昇する。筋肉では、インスリン抵抗性はグルコース
の取り込みを減らし、肝細胞ではグルコースの貯蔵を減らす。後者の両方の場合において
、血糖濃度の上昇が生じる。インスリン抵抗性によるインスリンとグルコースの高い血漿
レベルは、しばしばメタボリックシンドロームと2型糖尿病に進行する。
【0179】
本発明は、メタボリックシンドローム(本明細書で定義される)の治療における用途を
見出す。この障害は、(メタボリック)シンドロームX、インスリン抵抗性症候群、リー
ベン症候群、及びCHAOSとしても知られている。
【0180】
本発明は、例えば、以下を含む、メタボリックシンドロームに関連する疾患の治療にお
ける用途を見出す:脂肪肝(しばしば非アルコール性脂肪性肝疾患に進行する)、多嚢胞
性卵巣症候群、ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)及び黒色表皮腫(黒色表皮腫)。
【0181】
本発明は、1型及び2型糖尿病を含む糖尿病の治療における用途を見出す。2型糖尿病
は、血糖値の持続的な上昇(高血糖)を特徴とする慢性疾患である。インスリン抵抗性は
、膵臓のβ細胞からのインスリン分泌障害とともに、この疾患の特徴である。2型糖尿病
へのインスリン抵抗性の進行は、膵臓のβ細胞が正常な血糖値(正常血糖)を維持するの
に十分なインスリンを産生できなくなると、食事後の高血糖の発症によって特徴づけられ
る。
【0182】
1型糖尿病
本発明は、1型糖尿病(またはインスリン依存性糖尿病)の治療における用途を見出す。
1型糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島のインスリン産生ベータ細胞の喪失を特徴とし、
インスリンの欠乏を引き起こす。このベータ細胞喪失の主な原因は、T細胞を介した自己
免疫攻撃である。北米とヨーロッパの糖尿病症例の10%までを占める1型糖尿病に対し
て講じることができる既知の予防策はない。ほとんどの罹患した人々は、そうでなければ
健康であり、発症時に健康な体重である。インスリンに対する感受性と応答性は通常、特
に初期段階では正常である。
【0183】
以下に説明するように、本発明の化合物は、抗糖尿病誘発性ウイルス活性を有し得る。
糖尿病誘発性ウイルスは1型糖尿病の病因因子であるため、抗糖尿病誘発性ウイルス活性
を有する化合物は、1型糖尿病の治療または予防での、あるいは以下での使用に特に好ま
しい:(a)ウイルス誘発性1型糖尿病の治療;(b)ウイルス性糖尿病発生の遅延また
は予防;(c)1型糖尿病の治療;(d)ウイルス誘発性β細胞溶解(例えば、非免疫細
胞溶解または免疫介在性細胞溶解による)の治療または予防;(e)ウイルスを介した内
因性インターフェロン産生の予防、減少または排除;(f)β細胞を標的とする自己反応
性T細胞のウイルス媒介バイスタンダー活性化の予防、減少または排除;(g)β細胞を
標的とする自己反応性T細胞のウイルス活性化及び/または拡大の予防、減少または排除
;及び/または(h)β細胞を免疫介在性細胞溶解に曝露する制御性T細胞のウイルス媒
介性喪失の予防または減少。
【0184】
そのような患者は1型糖尿病に進行するリスクが高く、上述のように糖尿病誘発性ウイ
ルスに感染している可能性があるため、そのような用途は、膵島自己抗体を有する対象の
治療において特に有用である。
【0185】
本発明はまた、ミトコンドリア病、特に前述のエネルギー利用疾患に関連する後天性ミ
トコンドリア機能障害の治療及び管理における用途を見出す。
【0186】
薬量学
本発明の化合物は、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、直腸
、膣、及び局所(頬側及び舌下を含む)投与を含む、局所または経口または非経口経路に
よって投与することができる。
【0187】
投与される量は、使用される特定の投与単位、治療期間、治療される患者の年齢及び性
別、治療される障害の性質及び程度、及び選択される特定の化合物に応じて大きく変動し
得る。
【0188】
一般に、投与される化合物の有効量は、一般に、1日あたり、約0.01mg/kg~
500mg/kgの範囲である。単位投与量は、0.05~500mgの化合物を含み得
、1日あたり1回以上服用することができる。化合物は、以下に記載されるように、経口
的、非経口的、または局所的のいずれかで従来の投与単位形態を使用して、薬学的な担体
と共に投与することができる。
【0189】
好ましい投与経路は経口投与である。一般に、適切な用量は、レシピエントの1日あた
り体重1キログラムあたり0.01~500mgの範囲、好ましくは1日あたり体重1キ
ログラムあたり0.1~50mgの範囲、最も好ましくは1日あたり体重1キログラムあ
たり1~5mgの範囲である。
【0190】
所望の用量は、好ましくは、毎日の投与のための単回用量として提供される。しかしな
がら、1日を通して適切な間隔で投与される2、3、4、5、もしくは6、またはそれ以
上のサブ用量を使用することもできる。これらのサブ用量は、例えば、単位剤形あたり0
.001~100mg、好ましくは0.01~10mg、最も好ましくは0.5~1.0
mgの活性成分を含む単位剤形で投与することができる。
【0191】
製剤
本発明に従って使用するための化合物は、任意の形態をとることができる。それは、合
成または天然供給源から(例えば、クロウメモドキ科及びムクロジ科の植物(例えば、ナ
ツメ属またはガラナ属植物、例えばZizyphus jujubaまたはPaulli
nia cupanaの種の植物))であってよい。植物供給源として特に好ましいのは
、前述の植物の果実、果実の一部、果実抽出物、及び果汁である。
【0192】
天然供給源から単離された場合、化合物は精製され得る。しかしながら、本発明の組成
物は、前述のように、生薬の形態をとることができる。そのような生薬は、好ましくは、
それらが使用前に標準仕様を満たしているかどうかを決定するために分析される。
【0193】
本発明に従って使用するための生薬は、乾燥した植物材料であり得る。代替的に生薬は
、物理的または化学的な前処理、例えば、粉末化、粉砕、凍結、蒸発、濾過、プレス、噴
霧乾燥、押出し、超臨界溶媒抽出、及びチンキ製造を含む、処理をされた植物材料であり
得る。生薬が植物全体(またはその一部)の形で管理または販売される場合、植物材料は
使用前に乾燥され得る。凍結乾燥、噴霧乾燥、または空気乾燥を含む、任意の便利な形態
の乾燥を使用することができる。
【0194】
本発明の化合物は、極性溶媒(エタノール/水混合物、例えば、50%v/v以上(例
えば、約70%v/vまで)のエタノール/水混合物)での抽出によって、タンパク質及
び多糖類などの高分子量成分から分離することができる。他の適切な技術には、さまざま
な膜技術が含まれる。これらには、精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過が含まれる。代替的に
、または付加的に、電気透析を使用して、荷電化合物を濃縮することもできる。これらの
方法は、特定のサイズ未満の分子のみが通過できるようにする、または分子の電荷に依存
して分子が膜を通過できるようにする、または通過できないようにする細孔径の膜を使用
する。陰イオン及び陽イオン交換樹脂を使用して、化合物を濃縮することもできる。
【0195】
天然供給源から単離された場合、本発明に従って使用するための化合物を精製すること
ができる。化合物が薬学的に許容される賦形剤と一緒に製剤化される実施形態では、例え
ば不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、着色剤、及び保存剤を含む
任意の適切な賦形剤を使用することができる。適切な不活性希釈剤には、炭酸ナトリウム
及び炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム及びカルシウム、ならびにラクトースが含まれ、
一方、コーンスターチ及びアルギン酸は、適切な崩壊剤である。結合剤は、デンプン及び
ゼラチンを含み得、一方、潤滑剤は、存在する場合、一般に、ステアリン酸マグネシウム
、ステアリン酸、またはタルクである。
【0196】
医薬組成物は、任意の適切な形態をとることができ、例えば、錠剤、エリキシル剤、カ
プセル、溶液、懸濁液、粉末、顆粒、及びエアロゾルを含み得る。
【0197】
医薬組成物は、部品のキットの形態をとることができ、そのキットは、使用説明書及び
/または単位剤形の複数の異なるコンポーネントと共に本発明の組成物を含み得る。
【0198】
経口使用のための錠剤は、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、
着色剤、及び保存剤などの薬学的に許容される賦形剤と混合された、本発明による使用の
ための化合物を含み得る。適切な不活性希釈剤には、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウム
、リン酸ナトリウム及びカルシウム、ならびにラクトースが含まれ、一方、コーンスター
チ及びアルギン酸は、適切な崩壊剤である。結合剤は、デンプン及びゼラチンを含み得、
一方、潤滑剤は、存在する場合、一般に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ま
たはタルクである。必要に応じて、錠剤は、胃腸管での吸収を遅らせるために、モノステ
アレートグリセリルまたはジステアレートグリセリルなどの材料でコーティングすること
ができる。経口用カプセルには、本発明で使用する化合物を固体希釈剤と混合したハード
ゼラチンカプセル、及び有効成分を水またはピーナッツ油、液体パラフィン、もしくはオ
リーブ油などの油と混合したソフトゼラチンカプセルが含まれる。
【0199】
直腸投与用の製剤は、例えばココアバターまたはサリチル酸塩を含む適切な基剤を有す
る坐剤として提供され得る。膣内投与に適した製剤は、活性成分に加えて当該技術分野に
おいて適切であることが知られているような担体を含むペッサリー、タンポン、クリーム
、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー製剤として提供されてもよい。
【0200】
筋肉内、腹腔内、皮下、及び静脈内での使用の場合、本発明の化合物は、一般に、適切
なpH及び等張性に緩衝された滅菌水溶液または懸濁液で提供される。適切な水性ビヒク
ルには、リンガー液及び等張塩化ナトリウムが含まれる。本発明による水性懸濁液は、セ
ルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、及びトラガカントガム
などの懸濁剤、ならびにレシチンなどの湿潤剤を含み得る。水性懸濁液に適した保存剤に
は、エチル及びn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートが含まれる。
【0201】
本発明の化合物はまた、リポソーム製剤として提供され得る。
【0202】
経口投与の場合、化合物または複数の化合物は、カプセル、ピル、錠剤、トローチ、ロ
ゼンジ、溶融物、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、分散液、またはエマルション(これらの溶
液、懸濁液分散液、またはエマルションは、水性または非水性であり得る)などの固体ま
たは液体製剤に製剤化することができる。固体単位剤形は、例えば、界面活性剤、潤滑剤
、及びラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、及びコーンスターチなどの不活性充
填剤を含む通常のハードシェルまたはソフトシェルゼラチンタイプであり得るカプセルで
あり得る。
【0203】
別の実施形態において、本発明の化合物は、アカシア、コーンスターチ、またはゼラチ
ンなどの結合剤、投与後の錠剤の分解及び溶解を助けることを目的とするポテトスターチ
、アルギン酸、コーンスターチ、グアーガムなどの崩壊剤、錠剤顆粒の流れを改善し、錠
剤のダイ及びパンチの表面への錠剤材料の付着を防ぐことを目的とした潤滑剤、例えばタ
ルク、ステアリン酸、またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、もし
くはステアリン酸亜鉛、錠剤の美的品質を高め、それらを患者により受け入れやすくする
ことを目的とする染料、着色剤、及び香味剤と組み合わせて、ラクトース、スクロース、
及びコーンスターチなどの従来の錠剤ベースで錠剤化される。
【0204】
経口液体剤形で使用するのに適した賦形剤には、水及びアルコール、例えばエタノール
、ベンジルアルコール、及びポリエチレンアルコールなどの希釈剤が含まれ、薬学的に許
容される界面活性剤、懸濁剤、または乳化剤の添加を伴うかまたは伴わないかのいずれか
である。
【0205】
本発明の化合物はまた、非経口的に、すなわち、皮下、静脈内、筋肉内、または腹腔内
に投与され得る。
【0206】
そのような実施形態では、化合物は、薬学的担体(滅菌液体または液体の混合物であり
得る)と共に、生理学的に許容される希釈剤中の注射可能な用量として提供される。適切
な液体には、水、生理食塩水、デキストロース水溶液及び関連する糖溶液、アルコール(
エタノール、イソプロパノール、またはヘキサデシルアルコールなど)、グリコール(プ
ロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど)、グリセロールケタール(2,
2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール)、エーテル(ポリ(エチレング
リコール)400など)、油、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはグリセリド、またはアセチ
ル化脂肪酸グリセリドが含まれ、薬学的に許容される界面活性剤(石鹸(soap)また
は洗剤(detergent)など)、懸濁剤(ペクチン、カロマー、メチルセルロース
、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロースなど)、ま
たは乳化剤及び他の薬学的アジュバントの添加を伴うかまたは伴わないかのいずれかであ
る。本発明の非経口製剤に使用できる適切な油は、石油、動物、植物、または合成由来の
もの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、
石油、及び鉱油である。適切な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸、及びイソステア
リン酸が含まれる。適切な脂肪酸エステルは、例えば、オレイン酸エチル及びミリスチン
酸イソプロピルである。
【0207】
適切な石鹸には、脂肪アルカリ金属、アンモニウム、及びトリエタノールアミン塩が含
まれ、適切な洗剤には、カチオン性洗剤、例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハラ
イド、アルキルピリジニウムハライド、及びアルキルアミンアセテート;アイオン性洗浄
剤、例えば、アルキル、アリール、及びオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン
、エーテル、及びモノグリセリド硫酸塩、ならびにスルホコハク酸塩;非イオン性洗剤、
例えば、脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、及びポリオキシエチレンポリ
プロピレンコポリマー;ならびに両性洗剤、例えば、アルキル-ベータ-アミノプロピオ
ネート、及び2-アルキルイミダゾリン第4級アンモニウム塩、ならびに混合物が含まれ
る。
【0208】
本発明の非経口組成物は、典型的には、溶液中で本発明に従って使用するための化合物
の約0.5~約25重量%を含む。保存剤及び緩衝液も使用できる。注射部位での刺激を
最小化または排除するために、そのような組成物は、約12~約17の親水性-親油性バ
ランス(HLB)を有する非イオン性界面活性剤を含み得る。そのような製剤中の界面活
性剤の量は、約5~約15重量%の範囲である。界面活性剤は、上述のHLBを有する単
一の成分であり得るか、または所望のHLBを有する2つ以上の成分の混合物であり得る
。親製剤において使用される界面活性剤の例は、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル
のクラス、例えば、ソルビタンモノオレエート、及びプロピレンオキシドとプロピレング
リコールとの縮合によって形成される疎水性塩基とのエチレンオキシドの高分子量付加物
である。
【0209】
本発明に従って使用するための化合物または複数の化合物はまた、局所的に投与され得
、そうされるとき、担体は、溶液、軟膏、またはゲルベースを適切に含み得る。基剤は、
例えば、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、みつろう、鉱油、水及びアルコ
ールなどの希釈剤、ならびに乳化剤及び安定剤のうちの1つ以上を含み得る。局所製剤は
、約0.1~約10%w/v(単位体積あたりの重量)の化合物の濃度を含み得る。
【0210】
補助的に使用される場合、本発明に従って使用するための化合物または複数の化合物は
、1つ以上の他の薬物(複数可)と共に使用するために製剤化され得る。したがって、補
助的使用は、他の薬物(複数可)と適合性がある(または相乗作用する)ように設計され
た特定の単位用量、または化合物もしくは複数の化合物が1つ以上の酵素と混合される製
剤に反映され得る。補助的使用はまた、本発明の化合物が酵素と共包装される(例えば、
一連の単位用量の一部として)本発明の医薬品キットの組成に反映され得る。補助的使用
はまた、化合物または複数の化合物及び/または酵素の共投与に関する情報及び/または
使用説明書に反映され得る。
【0211】
化粧品配合
本発明の化粧品組成物は、例えば、保湿組成物、クレンジング組成物、または皮膚に利
益を提供し得る任意の組成物から選択することができる。本発明の化粧品組成物は、例え
ば、以下に記載されるものから選択される、化粧品として許容される賦形剤または担体を
含み得る。
【0212】
一実施形態では、化粧品組成物はクレンジング組成物である。適切なクレンジング組成
物は、室温で固体または半固体である。有用なクレンジング組成物の例には、グリセリン
石鹸(soap)、合成洗剤(detergent)、及びそれらの混合物を含む脂肪酸
石鹸が含まれるが、これらに限定されない。固体クレンジング組成物は、Soap Te
chnology for the 1990’sで広く教示されており、その内容は、
参照により本明細書に組み込まれる。クレンジング組成物は流動性であることが望ましい
。
【0213】
本発明の一実施形態では、クレンジング組成物は、グリセリン石鹸を含む。本発明にお
いて有用なグリセリン石鹸の例には、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4
,405,492号、及び同第4,879,063号に開示されているものが含まれるが
、これらに限定されない。
【0214】
適切な脂肪酸石鹸の例には、約10~22の炭化水素鎖長(カルボキシル炭素を含む)
に由来する石鹸が含まれ、飽和または不飽和であり得る。石鹸は、例えば、ナトリウム塩
、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩及びそれらの混合物であ
り得る。
【0215】
適切な合成洗剤には、所望の目的のために当技術分野で知られているものが含まれる。
パーソナルクレンジングに有用な洗浄剤の例には、イセチオネート、サルコシネート、及
びグリセリルエーテルスルホネートが含まれ、これらは純粋な鎖長のバリアントまたはコ
コナッツ油などの市販の油に由来するものであってもよい。他の適切な界面活性剤には、
アニオン性アシルサルコシネート、メチルアシルタウレート、N-アシルグルタミン酸、
アルキルスルホコハク酸塩、アルキルホスフェートエステル、エトキシル化アルキルホス
フェートエステル、トリデセスサルフェート、タンパク質縮合物、エトキシル化アルキル
サルフェートとアルキルアミンオキシドの混合物、ベタイン、スルテン及びそれらの混合
物が含まれる。含まれるのは、1~12個のエトキシ基を有するアルキルエーテル硫酸塩
、特にラウリルエーテル硫酸アンモニウム及びラウリルエーテル硫酸ナトリウムである。
【0216】
化粧品組成物は、保湿組成物であってよい。
【0217】
本発明の化粧品組成物の他の任意選択の成分には、香料、フレグランス、保存剤、着色
剤、染料、固結防止剤、及びスキンケア成分及びヘアケア成分を含むがこれらに限定され
ないパーソナルケア成分が含まれるが、これらに限定されない。
【0218】
本発明において有用な適切なパーソナルケア成分の例には、安全かつ有効な量の、加湿
剤、日焼け止め活性物質、皮膚鎮静剤、抗刺激剤、抗炎症剤、皮膚軟化剤、コンディショ
ニング剤、保湿剤、脱臭剤、抗発汗剤、人工日焼け剤、抗菌剤、抗ニキビ剤、抗しわ剤、
抗皮膚萎縮剤、皮膚硬化剤、抗かゆみ剤、抗真菌剤、局所麻酔薬、肌の色調のイブニング
剤、活性天然成分、不要な髪の外観を最小限に抑えるか、再成長を遅らせるための薬剤、
肌のテクスチャー修飾剤、及び追加のクレンジング剤、が含まれるが、これらに限定され
ない。
【0219】
一実施形態では、化合物は、例えば乾燥皮膚の治療及び皮膚軟化薬の用途に使用される
ような油中水型(w/o)エマルションを使用することにより、水またはアルコール水抽
出物から使用することができる。
【0220】
皮膚軟化剤は、皮膚表面または角質層に留まり、潤滑剤として作用し、剥離を減らし、
皮膚の外観を改善するそれらの能力によって機能する。典型的な皮膚軟化剤には、脂肪エ
ステル、脂肪アルコール、鉱油、ポリエーテルシロキサンコポリマーなどが含まれる。適
切な皮膚軟化剤の例には、ポリプロピレングリコール(「PPG」)-15ステアリルエ
ーテル、PPG-10セチルエーテル、steareth-10、oleth-8、PP
G-4ラウリルエーテル、酢酸ビタミンE、PEG-7グリセリルココエート、ラノリン
、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ビタミンEアセテート
、PEG-7グリセリルココエート及びそれらの組み合わせが好ましい。
【0221】
適切な保湿剤の例には、多価アルコールが含まれる。適切な多価アルコールには、グリ
セロール(グリセリンとしても知られる)、ポリアルキレングリコール、アルキレンポリ
オール及びそれらの誘導体(プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロ
ピレングリコール、ポリエチレングリコール及びそれらの誘導体を含む)、ソルビトール
、ヒドロキシプロピルソルビトール、ヘキシレングリコール、1,3-ジブチレングリコ
ール、1,2,6-ヘキサントリオール、エトキシル化グリセリン、プロポキシル化グリ
セリン及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0222】
適切な皮膚鎮静剤には、パンテノール、ビサボロール、アラントイン、アロエ、及びそ
れらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0223】
適切なコンディショニング剤には、ジメチコンプロピルPG-ベタイン、ジメチコンコ
ポリオール、ポリクオタニウム-10、グアー、グアー誘導体、及びそれらの組み合わせ
が含まれるが、これらに限定されない。適切な抗ニキビ活性成分には、サリチル酸、硫黄
、乳酸、グリコール酸、ピルビン酸、尿素、レゾルシノール、N-アセチルシステイン、
レチノイン酸、過酸化ベンゾイル、オクトピロックス、トリクロサン、アゼライン酸、フ
ェノキシエタノール、フェノキシプロパノール、フラボノイド、それらの誘導体、及びそ
れらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。サリチル酸と過酸化ベンゾイル
が好ましい。
【実施例0224】
ここで、本発明を特定の実施例を参照して説明する。これらは単なる例示であり、説明
のみを目的とする:それらは、特許請求された独占の範囲または記載された発明に限定す
ることを意図するものでは決してない。これらの実施例は、本発明を実施するために現在
考えられている最良のモードを構成する。
【0225】
実施例1:化合物1~3の単離及び同定
3つの4-ヒドロキシメチル-N-メチル-L-プロリン化合物(1~3)は全て、Z.
jujubaの果実、ガラナの種子及びZ. spina-christiの葉で観察
され、単離され、構造が解明された。
【0226】
ガラナの種子には、主に化合物1(約0.1%w/w)が含まれ、少量の2と3が含ま
れていた。ナツメ属種は、典型的には、それぞれ化合物1と3の比率が約2:1であった
(約0.1%w/w)。化合物1と2は、Z. jujubaの果実から、3はZ. s
pina-christiから単離された。
【0227】
これらの化合物はいずれも他の供給源から単離されていない。
【0228】
ナツメ属植物の抽出物の調製
乾燥したZ. spina-christiの葉(BEZ01)のサンプル(200g
)を、4リットルの50%エタノール水溶液で一晩抽出した。濾過した抽出物を陽イオン
交換カラム(H+型のAmberlite IR120)に通し、保持された画分をアン
モニアで溶出した。次いで、これを陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(OH-型の
Amberlite CG400)にかけ、結合した画分を酢酸で溶出し、CG400ア
セテート型カラムに適用した。
【0229】
画分の分析により、化合物1(HS0810/146/36-50mg)及び3(HS
0810/146/41-44mg)の同定ができた。同じ方法を使用して、化合物1(
JH0806/42/4)及び2(LJ746/18/7)もZ.jujubaの果実か
ら単離され、1はまたガラナ(JH0420/8/20)からも単離された。
【0230】
ガラナの抽出物(Blue Sky Botanicsバッチ150701A)は、以
下に説明するGC条件下で9.9分の保持時間でトリメチルシリル誘導体(主要イオン1
94 amu)のGCMSによるカフェインと一致する主要化合物を有する点、及び新規
のN-メチル化ピペコリン酸(N-メチル-4R,5S-ジヒドロキシ-2S-ピペコリ
ン酸)(JH0806/90/5;保持時間8.4分)を有する点でナツメ属種の抽出物
とは異なった。
【0231】
抽出物と純粋な化合物のGC分析
全てのサンプルは、誘導体化の前に凍結乾燥された。トリメチルシリル(TMS)誘導
体は、ピリジン中のヘキサメチルジシラザン(HMDS)とトリメチルクロロシラン(T
MCS)の混合物(Pierce「Tri-Sil」シリル化試薬、2:1:10の比率
のHMDS:TMCS:ピリジン)を使用して調製した。サンプルを60℃で15分間加
熱した後、室温で少なくとも60分間放置した。不溶性の反応生成物を遠心分離によって
沈殿させ、上清をシリンジを使用して新しいバイアルに移した。
【0232】
分析は、高極性フューズドシリカカラム(Varian ‘Factor Four’
VF-5msカラム、25m×0.25mm i.d.、0.25mm相厚)を備えた
Perkin Elmer AutosystemXLガスクロマトグラフを使用したG
C-MSによって実施された。キャリアガス(ヘリウム)の流速は1ml/分であった。
トリメチルシリル(TMS)誘導体は、160℃で開始して5分間、その後10℃/分の
速度で300℃まで直線的に上昇させる温度プログラムを使用して分離した。温度を30
0℃でさらに10分間保持した。総分析時間は29分であった。カラム溶出液の電子衝撃
質量分析は、分析中に常に250℃で実行される四重極イオンフィルターシステムを備え
たPerkin Elmer TurboMassGold質量分析計を使用して実施さ
れた。検出器の質量範囲は100~650 amuに設定された。トランスファーライン
(GCからMS)の温度は250℃に保たれた。サンプルは、不活性化された石英ウール
が充填されたフューズドシリカナローボア注入ライナーを介して、スプリットベント(分
割比50:1)を介してカラムに注入された。注入口の温度は200℃に維持された。注
入量は1μlであった。システム制御、データ収集、及び質量スペクトル分析は、Per
kin Elmer TurboMassソフトウェア(TurboMass v. 4
.4)を使用して実行された。
【0233】
化合物1~3は、上述のように調製されたトリメチルシリル誘導体として、以下に説明
する条件下でGCMSによって異なる保持時間で特徴的な質量スペクトルを示す。
化合物1、特徴的なイオン186(100%)、260(10%)、及び288(10
%)amu(保持時間4.8分)。
化合物2、特徴的なイオン170(10%)及び186(100%)amu(保持時間
5.6分)。
化合物3、特徴的なイオン170(10%)、274(100%)、288(15%)
、及び376(10%)amu(保持時間7分)。
【0234】
構造の決定
イオン交換によって精製された化合物は、溶媒として重水を使用してBruker A
vance500MHz機器で分析された。NMRによる解明は以下のとおりである。
【0235】
化合物1の構造解明
【化5】
【表1】
1H NMR (500MHz, D
2O) δ/ppm 3.89 (1H, t, J
= 9.14 Hz, 2), 3.48-3.58 (2H, m, 5), 3.
46-3.50 (1H, m, 6), 3.29 (1H, dd, J = 12
.0, 8.8 Hz, 5), 2.87 (3H, s, 7), 2.65-2.
77 (1H, m, 4), 2.60 (1H, dt, J = 13.6, 8
.4 Hz, 3), 1.71-1.82 (1H, m, 3)
13C NMR (126MHz, D
2O) δ /ppm 173.6 (8), 7
1.2 (2), 62.8 (6), 58.2 (5), 41.4 (7), 3
8.6 (4), 32.2 (3)
【0236】
個々の炭素原子へのプロトンの付着は、ペンダント及びHMQCスペクトルから割り当
てられた。COZY相関は、2から3から4までの相関、及び4から5と6の両方への相
関を示す。δ3.89ppmでのCH(2)、δ2.87ppmでのメチル(7)、なら
びにδ3.29ppmとδ3.52ppmでのメチレン(5)の水素化学シフトは、全て
が窒素に結合し、N-メチルピロリジン環構造を形成することを示している。
【0237】
δ3.50ppmでのメチレンの水素化学シフト(6)は、メチレンがヒドロキシルに
結合し、したがって4に結合したヒドロキシルメチルを形成することを示している。2及
び3からδ173.6ppmの第4級までのHMBC相関は、酸が2に結合することを示
している。
【0238】
δ3.89ppm(2)とδ2.70ppm(4)のプロトン間のNOESY相関は、
それらが環の同じ側にあり、S,S構成になることを示している。これらの解釈に基づい
て、構造はN-メチル-4S-(ヒドロキシメチル)-2S-ピロリジンカルボン酸(化
合物1)であると仮定される。
【0239】
プロトンの化学シフトは、置換基効果の標準表から予想されるものとよく一致しており
、炭素シフトは予測値(ACD CNMR予測子)と厳密に一致している。解明された構
造はこれまで報告されていなかった。
【0240】
化合物2の構造解明
【化6】
【表2】
1H NMR (500MHz, D
2O) δ/ppm 3.39-3.53 (2H,
m, 6), 2.96-3.05 (1H, m, 2), 2.91 (1H,
d, J = 10.7 Hz, 5), 2.42-2.57 (1H, m, 5)
, 2.29-2.42 (1H, m, 4), 2.22-2.29 (1H, m
, 3), 2.22 (3H, s, 7), 1.46(1H, dt, J =
8.8, 4.7Hz, 3).
13C NMR (126MHz, D
2O) δ /ppm 173.6 (8), 6
8.6 (2), 64.5 (6), 57.8 (5), 41.4 (7), 3
8.6 (4), 33.2 (3)
【0241】
個々の炭素原子へのプロトンの付着は、ペンダント及びHMQCスペクトルから割り当
てられた。COZY相関は、2から3から4までの相関、及び4から5と6の両方への相
関を示す。δ3.01ppmでのCH(2)、δ2.22ppmでのメチル(7)、なら
びにδ2.91ppmとδ2.51ppmでのメチレン(5)の水素化学シフトは、全て
が窒素に結合し、N-メチルピロリジン環構造を形成することを示している。δ3.47
ppmでのメチレンの水素化学シフト(6)は、メチレンがヒドロキシルに結合し、した
がって4に結合したヒドロキシルメチルを形成することを示している。7から2及び5ま
でのHMBC相関により、N-メチルピロリジン環構造が確認される。2及び3からδ1
73.6ppmの第4級までのHMBC相関は、酸が2に結合することを示している。δ
3.01ppm(2)とδ2.34ppm(4)のプロトン間にNOESY相関はなく、
環の反対側にあり、S,R構成になることを示している。これらの解釈に基づいて、構造
はN-メチル-4R-(ヒドロキシメチル)-2S-ピロリジンカルボン酸(化合物2)
であると仮定される。
【0242】
プロトンの化学シフトは、置換基効果の標準表から予想されるものとよく一致しており
、炭素シフトは予測値(ACD CNMR予測子)と厳密に一致している。
【0243】
解明された構造はこれまで報告されていなかった。
【0244】
化合物3の構造解明
【化7】
【表3】
1H NMR (500MHz, D
2O) δ/ppm 4.21 (1H, dd,
J = 11.3, 7.3 Hz, 2), 3.81 (1H, d, J = 1
2.9 Hz, 5), 3.58 (2H, s, 6), 3.14 (1H, d
, J = 12.9 Hz, 5), 2.99 (3H, s, 7), 2.41
(1H, dd, J = 13.9, 7.3 Hz, 3), 2.13 (1H
, dd, J = 13.9, 11.3 Hz, 3)
13C NMR (126MHz, D
2O) δ/ppm 172.8 (8), 79
.9 (4), 70.6 (2), 64.9 (6), 63.3 (5), 43
.1(7), 39.4 (3)
【0245】
個々の炭素原子へのプロトンの付着は、ペンダント及びHMQCスペクトルから割り当
てられた。COZY相関は、2から3までの連結を示している。δ4.21ppmでのC
H(2)、δ2.99ppmでのメチル(7)、ならびにδ3.14ppmとδ3.81
ppmでのメチレン(5)の水素化学シフトは、全てが窒素に結合し、N-メチル環構造
を形成することを示している。δ2.99pm(7)のメチルから2及び5へのHMBC
相関は、この配置を確認する。δ3.58ppmの一重項は、炭素と水素の化学シフトか
らのヒドロキシメチルを意味する2つのプロトンとして統合される。これにより、HMB
Cの相関関係が3、4、及び5になる。それが一重項であるという事実は、それが第4級
、したがってに付着していることを意味する。4の炭素化学シフトは、ヒドロキシルユニ
ットが結合していることを意味する。
【0246】
これらの解釈に基づいて、構造はN-メチル-4-ヒドロキシ-4-(ヒドロキシメチ
ル)-2-ピロリジンカルボン酸であると仮定される。2と6の間にはNOESY相関が
あり、ヒドロキシメチルが環のプロトンと同じ側にあることを意味し、したがって、構造
はN-メチル-4-ヒドロキシ-4S-(ヒドロキシメチル)-2S-ピロリジンカルボ
ン酸(化合物3)であると仮定される。
【0247】
プロトンの化学シフトは、置換基効果の標準表から予想されるものとよく一致しており
、炭素シフトは予測値(ACD CNMR予測子)と厳密に一致している。解明された構
造はこれまで報告されていなかった。
【0248】
化合物1及び化合物3のプロトンスペクトルとZ. spina-christiの抽
出物のプロトンNMRスペクトル(NMRファイルK101613)との比較により、ア
ミノ酸とともに主要なN-メチルプロリン成分として2つの化合物の混合物が含まれてい
ることが確認された。
【0249】
実施例2:化合物1及び3とZ. spina-christi抽出物を使用したマウ
スにおける二糖負荷試験
導入
精製された化合物1及び3は、両方の化合物を含むZ. spina-christi
の抽出物とともに、マウスでの血糖調節活性について研究された。
【0250】
方法
この研究の動物実験プロトコルは、富山大学の動物実験委員会によって承認された(S
-2010UH-2)。一晩絶食させた後の雄のddyマウス(29~33g)を急性二
糖負荷試験に使用した。マルトース(2.5g/kg体重)またはスクロース(2.5g
/kg体重)、ならびに試験サンプルを0.9%NaCl溶液に溶解し、胃管を介してマ
ウスに投与した。対照群には生理食塩水のみを負荷した。
【0251】
グルコース測定用の血液サンプルは、二糖負荷後0、15、30、60、及び120分
で尾静脈から採取した。血糖値は、ポータブルキットのAntsence II(商標)
(Sankyo Co. Ltd. Tokyo, Japan)によって測定された。
ナツメ属植物の抽出物HS0810/142/41と精製化合物は、この方法でテストさ
れた。
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
結論
ナツメ属植物の混合物は、化合物1と同様に、マルトースによる二糖チャレンジ後の血
糖値を低下させる効果を有していた。化合物3は、30分でより速く低下するというより
複雑な効果があるように見えたが、スクロースチャレンジの早い段階で血糖値が明らかに
増加したが、2時間までに他のグループよりも高い開始点を下回り、おそらくDMDP及
び血糖値がより低い対照よりも優れた調節を示している。
【0257】
実施例3: 化合物1及び3によるグルコシダーゼ阻害の欠如
導入
グリコシダーゼアッセイは、化合物1及び3と、二糖負荷マウスの研究で使用されたナ
ツメ属植物の抽出物で実施され、グルコシダーゼ阻害が血糖への影響を説明できるかどう
かを判断した。グリコシダーゼのパネルを使用して、見つかった活性が酵素への非特異的
結合だけでなく、選択的阻害であることを確認した。
【0258】
酵素アッセイ
グリコシダーゼアッセイは、Watson et al.ら(Phytochemis
try 1997、46、255)に記載されるように、p-ニトロフェニル基質(基質
としてメチルウンベリフェリル-N-アセチルノイラミン酸を使用したシアリダーゼを除
く)を使用して実施した。アッセイはマイクロタイタープレートで実施された。酵素は、
0.1Mクエン酸/0.2Mリン酸水素二ナトリウム(マキルベン)バッファー中で酵素
に最適なpHでアッセイした。全てのアッセイは20℃で実施された。全ての酵素と基質
はSigma Aldrich Chemicals Limitedから購入した。イ
ンキュベーション混合物は、10μlの酵素溶液、10μlのイミノ糖溶液、及び酵素に
最適なpHのマキルベン緩衝液で構成された50μlの適切な5mMのp-ニトロフェニ
ル基質から構成されていた。反応の指数関数的段階の間、反応を0.4Mグリシン(pH
10.4)で停止させた。405nmで吸光度を読み取った。ブランクのアルカロイドの
代わりに水を使用した。反応は3回行った。
【0259】
酵素阻害剤溶液-化合物を1mg mL-1の濃度で蒸留水に溶解し、次いで、基質のア
ッセイ容量で1mg mL-1の希釈の後、0.14mg mL-1 の濃度でスクリーニン
グした。
【0260】
シアリダーゼアッセイでは、1mM阻害剤(または阻害剤を含まない水)と2.5nM
シアリダーゼ(T. forsythiaのNanHを含む)を、20mMリン酸ナトリ
ウム緩衝液中の0.1mMメチルウンベリフェリル-N-アセチルノイラミン酸、pH7
.2の存在下でインキュベートした。ph10.5 60mM炭酸ナトリウム緩衝液の添
加により、30秒及び60秒で反応を停止させた。蛍光発生MUの放出は、450nm、
励起350nmでの蛍光発光を測定することによって定量化された。シアリダーゼ活性の
パーセンテージは、阻害剤なしの反応のそれと比較した、30秒~60秒の間の蛍光の変
化として表された。反応は3回行った。
【0261】
結果
結果は阻害%として表される。ナツメ属植物の抽出物、またはナツメ属植物とガラナか
らの化合物1と3では、グルコシダーゼ阻害は観察されなかった。グルコシダーゼ阻害剤
DMDP及びDNJ(1-デオキシノジリマイシン)は、さまざまなグルコシダーゼの予
想される強力な阻害を示した。試験した他のグリコシダーゼのうち、単離された化合物で
見られた唯一の阻害は、化合物1による細菌T. forsythiaからのシアリダー
ゼによるものであった(化合物3及びナツメ属植物の抽出物はそのアッセイに利用できな
かった)。
【表8】
【0262】
太字の数字は、0.4mMでテストした濃度で強い阻害を示している。
【0263】
負の値は、おそらく安定化または折り畳みの改善による酵素活性の増加を示す。
【0264】
DMDPとDNJは最も一般的に存在する植物イミノ糖であり、どちらもα-グルコシ
ダーゼの強力な阻害剤である(Watson, A. A., Fleet, G. W
. J., Asano, N., Molyneux, R. J.;Nash, R
. J. Phytochemistry 2001, 56, 265-295)。D
NJ(1-デオキシノジリマイシン)は、桑から最初に単離され、中国の伝統医学で糖尿
病に使用された。
【0265】
実施例4:化合物1によるTNF-αの減少
導入
ヒトの血液中のTNF-α産生の測定は、TNF-αレベルに対して全身投与されたい
ずれかの薬剤の作用を予測する。すなわち、エクスビボまたはインビトロでの血液中の影
響はインビボでの影響を正確に模倣する。これは、倫理的懸念またはより重要な安全性の
考慮事項のいずれかのために、インビボでヒトで研究を直接実施することが困難な場合に
特に有用である。全血インキュベーションは、ヒトにおいてインビトロで炎症促進性メデ
ィエーターの刺激を実証するのに有用であることが示されている(Finch-Arie
tta, M.B.& Cochran, F.R., 1991, Agents a
nd Actions 34, 49)。このアプローチは、全身投与されたいずれかの
薬剤のバイオアベイラビリティをモニターするのにも有用である(Song, H.J.
et al., 2005, European Journal of Clini
cal Nutrition 59, 508)。
【0266】
炎症を抑制するにはいくつかのアプローチがあり、現在治療的に最も日常的に使用され
ている2つは、a)ステロイド(グルココルチンコイド類似体)とb)エタネルセプト(
可溶性TNF-α受容体融合タンパク質)及びインフリキシマブ(TNFαに対するモノ
クローナル抗体)などのTNF-αの作用を中和する薬剤である。これらのアプローチは
両方とも、炎症促進性サイトカイン、ステロイドによる産生の抑制、及びエタネルセプト
とインフリキシマブによるTNF-αの作用の防止を対象としている。これはまた、炎症
反応を抑制するためにTNF-αを標的とすることの重要性を示している(Feldma
nn, M. & Maini, R.N., 2001, Annual Revie
w of Immunology 19, 163)。同様に、糖質コルチコイド類似体
もサイトカイン及びデキサメタゾンの産生を抑制し、具体的には、ヒト単球からのLPS
刺激によるTNF-αの産生を減少させることができる (Waage, A. & B
akke, O., 1988, Immunology 63: 299)。
【0267】
この研究の目的は、ヒトの全血中のTNF-αレベルを調節する能力に関して、化合物
1の抗炎症活性を評価することであった。
【0268】
材料
血液及びバフィーコート画分は、英国グラスゴーのスコットランド国立輸血サービス(
SNBTS)から提供された。Ficoll Histopaque(1.077g/l
)、リポ多糖(Salmonella abortus equiから)はSigma-
Aldrich Co. Ltd.(UK)から購入した。PGEは、Cayman C
hemical Co.(Ann Arbor, MI)から入手した。TNFα-EL
ISAアッセイ用のヒトTNFα-抗体ペアは、Invitrogen/Life Sc
iences Europeから入手した。全ての薬物は、英国のGibco BRLか
らのRPMI1640培地に溶解した。
【0269】
方法
全血インキュベーションを用いた実験では、献血後にそれ以上の処理を行わずに血液を
使用した。血液は、スコットランド国立輸血サービスから、HIV、B型肝炎及びC型肝
炎、CMV、マラリアなどの寄生虫症(国立輸血サービスによる検査)が全て陰性である
ことを確認することで定義されているとき、健常ドナーから提供された。また、常に50
pg/ml未満であったTNF-αの基礎レベルを測定することにより、採血時に急性炎
症性疾患がないことも当研究室で確認された。
【0270】
細胞の刺激とTNF-αの測定
全血のアリコート(800μl)を、結果に示されているように、RPMI 1640
に溶解した化合物とともに適切なプレインキュベーション期間インキュベートし、その後
LPSを添加し、加湿した(100%)空気中の5%CO2の雰囲気で37℃で20時間
さらにインキュベーションを継続した。インキュベーション期間の終わりに、血漿または
培地のいずれかからなる上清を、10,000gで30秒間室温で遠心分離することによ
って収集し、TNF-αレベルをヒトTNF-αELISAシステム(BioSourc
e Europe S.A., Belgium、Invitrogenから供給)を使
用して、以前に記載されるように製造者の使用説明書に従って測定した(Brown e
t al., 2013)。
【0271】
結果及び結論
化合物1は、ヒト血液中の濃度依存的にLPS刺激TNFα-の産生を減少させる平均
値の傾向を示した。
【0272】
図1は、ヒト血液中のLPS刺激TNF-α産生に対する化合物1(μM)の効果を示
す。全血を、化合物の濃度を変化させたLPS(10μg/ml)の非存在下(白抜きの
記号)または存在下(黒丸)で24時間インキュベートした。37℃(5%CO2、10
0%湿度)でのインキュベーション後、遠心分離によって血液から血漿を収集し、血漿サ
ンプル中のTNF-αのレベルをELISAによって測定した。値はn=3の平均値±標
準偏差を表す。
【0273】
ここで使用される低μM濃度では重要ではないが、ナツメ属植物抽出物の濃度は、それ
らがどのように生成されるかによって高くなり得、これと他の4-ヒドロキシメチル-N
-メチル-L-プロリン(化合物1、2、及び3)は、植物に対して主張されている抗炎
症作用を説明するのに役立つかもしれない。
【0274】
実施例5:シアリダーゼ及び歯周病原菌の増殖に対する4-ヒドロキシメチル-N-メ
チル-L-プロリンの効果
歯周病は、世界中で推定7億人の患者がおり、英国の人口の約10~20%がり患してい
る、重大な健康上の負担である。最近の研究では、歯の喪失の原因であることに加えて、
歯周病の発生率の増加が、心血管疾患、糖尿病、及び関節リウマチなどのさまざまな重要
な全身性疾患に関連していることが示されている。年齢とともに発生率が高くなる。
【0275】
疾患の進行の一部として、歯肉縁下のプラークバイオフィルムを形成する歯周細菌の能
力と、口腔上皮細胞との相互作用を介して自然免疫を刺激する歯周細菌の能力が、病因の
鍵とみなされている。歯周病原菌Tannerella forsythia, T.
denticola、及びPorphyromonas gingivalisからの病
原体シアリダーゼがこのプロセスに関与していることが示されている。したがって、シア
リダーゼ阻害は、歯周炎の有力な候補である治療または予防を表す。関連する酵素はイン
フルエンザウイルスの主要な病原性因子として存在する(すなわち、H1N1のNは、タ
ミフルの標的であるノイラミニダーゼを表す)。
【0276】
この研究の目的は、4-ヒドロキシメチル-N-メチル-L-プロリンが歯周細菌とそ
の精製シアリダーゼのシアリダーゼ活性を阻害する能力と、化合物を含む抽出物(例えば
、ナツメ属植物の果実)の効果を調査することであった。さらに、バイオフィルム形成及
び宿主-細菌結合のインビトロモデルに関する予備研究を実施して、歯周病原体の毒性に
対する化合物及び抽出物の影響を評価した。これらは、口腔内の病原体の生存及び増殖に
とって重要であると考えられているためである。
【0277】
これらのアッセイにおける効果はまた、シアリダーゼ活性が関与している他の病状の予
防または治癒への可能性のある関連性をより一般的に有するヒトマイクロバイオームに対
する化合物及びそれらを含む抽出物の影響を示し得る。
【0278】
シアリダーゼ活性アッセイ
これらのアッセイでは、蛍光発生基質であるメチルウンベリフェリル-N-アセチルノ
イラミン酸(MUNANA)を使用した。これは、シアル酸の作用によって切断され、N
-アセチルノイラミン酸(Neu5Ac)とメチルウンベリフェロン(MU)を放出し、
後者は350nmでの励起時に450nmで最大の蛍光を示す。MUの放出は、シアリダ
ーゼ活性を定量化するために使用できる。
【0279】
全細菌または精製シアリダーゼを、化合物1(実施例3)または1%のN-メチル-プ
ロリンを含むナツメ属植物の果実の50%水性エタノール抽出物の存在下または非存在下
でMUNANAに曝露した。
【0280】
1mM阻害剤(または阻害剤を含まない水)及び2.5nMシアリダーゼ(T. fo
rsythia由来のNanHを含む)を、0.1mM MUNANA、pH 7.2、
20mMリン酸ナトリウム緩衝液の存在下でインキュベートした。ph10.5 60m
M炭酸ナトリウム緩衝液の添加により、30秒及び60秒で反応を停止させた。蛍光発生
MUの放出は、450nm、励起350nmでの蛍光発光を測定することによって定量化
された。シアリダーゼ活性のパーセンテージは、阻害剤なしの反応のそれと比較した、3
0秒~60秒の間の蛍光の変化として表された。反応は3回行った。
【0281】
さまざまな化合物と市販のシアリダーゼ(ノイラミニダーゼ)阻害剤ザナミビル(イン
フルエンザの治療薬として医薬製剤「リレンザ(商標)」で販売されている)を使用した
N1Neu阻害の初期スクリーニングを実施した。
【0282】
Neu1活性に対する化合物及び植物抽出物の初期スクリーニング
シアリダーゼアッセイを実施し、反応は、0.1mM MUNANA、pH 7.4、5
0mM Tris、5mM CaCl2、200mM NaCl、植物抽出物または対照
シアリダーゼ阻害剤ザナミビルを示された濃度で含むか、推定阻害剤を含まなかった。N
1Neuは反応中に0.025μg/mlで存在した。50μlのこれらの反応は、10
0μlの100mM炭酸ナトリウム緩衝液、pH10.5を使用して、5分及び10分で
クエンチした。10分の時点を使用してシアリダーゼ活性を評価した。示されているデー
タは、各条件が3回繰り返された1回の実験の平均を表す。クエンチされた反応に存在す
るMUは、励起340nm発光430nmでTECANM200 Infiniteマイ
クロプレートリーダーを使用して定量化され、阻害剤なしの条件に対するシアリダーゼ活
性(MU蛍光)のパーセンテージとして表された。
【0283】
宿主細胞結合
細菌は、バイオフィルムを形成し、粘膜表面に存在することに加えて、宿主細胞と結合(
付着及び浸潤)し得る。これには、抗菌療法、免疫系、またはバイオフィルムの機械的除
去に直面した場合の持続性、及び宿主細胞内の栄養素へのアクセスを含む、細菌にとって
のいくつかの利点がある。細菌と宿主細胞との結合も免疫調節に影響を及ぼす。すなわち
、細胞浸潤の増加は炎症の上方制御につながり、歯周病の一因となり得る。シアリダーゼ
(及び他の生成物)は、P. gingivalis及びT. forsythiaの宿
主細胞との結合の際に重要である。
【0284】
P. gingivalis及びT. forsythiaによる宿主細胞の付着及び
浸潤の阻害を試験するために、抗生物質保護アッセイを使用した。これらは、2セットの
宿主細胞単層を増殖することを含み、次いで、これらを1:100の宿主細胞:細菌の比
率(感染多重度)で細菌で感染させた。1.5時間のインキュベーション後、1セットを
溶解し、細菌を寒天上に播種して、生存可能な細菌の数を取得した。これは、結合した細
菌の総数をもたらす。感染した単層の第2のセットを抗生物質メトロニダゾールと1時間
インキュベートした。メトロニダゾールは、外部の(付着した)細菌を殺し、浸潤した(
内部化した)細菌のみを残す。次いで、細胞を溶解し、上述のように寒天上に播種する。
付着した(外部の)細菌を得るために結合した合計から浸潤細菌の数を差し引いた。
【0285】
バイオフィルムアッセイ
歯周病原体は(プラークの一部として)口腔内のバイオフィルムに存在し、通常の口腔
衛生法と歯周炎治療の両方がバイオフィルムを破壊することである。したがって、潜在的
な治療または予防は、歯周病原体のバイオフィルムを破壊することもできるはずであり、
これは、単一または混合種のバイオフィルムとしてインビトロでモデル化することができ
る。植物抽出物及び化合物の効果は直接抗菌性ではないかもしれないが、宿主糖タンパク
質への付着を防ぐか、または糖タンパク質からの栄養素獲得を防ぐように作用するので、
さまざまな異なるアプローチが取られた。これらは、血清(ウシ胎仔血清-FBS)でコ
ーティングされた表面で栄養豊富な培地(トリプシン大豆ブロス-TSB)中でP. g
ingivalis及びT. forsythia培養することを、ならびに炭素及び窒
素源として血清(10%v/v FBS)のみを含む栄養欠乏培地でP. gingiv
alisを培養することを含んだ。シアリダーゼ阻害剤としての明らかな活性を考慮して
、ナツメ属植物からの抽出物をバイオフィルム形成を防止するその能力について試験した
。
【0286】
バイオフィルム形成を定量化するために、高スループットで感度が低いクリスタルバイ
オレット染色と、クリスタルバイオレット染色よりも感度は高いがスループットが低い直
接細菌カウントである2つのアプローチが使用された。クリスタルバイオレット染色は、
定性的観察のためにバイオフィルムを画像化するためにも使用できる。
【0287】
P. gingivalisとT. forsythiaは、1500μg/mlのナ
ツメ属植物の抽出物の存在下または非存在下で、FBSでプレコートされたマイクロタイ
タープレートで、補充されたTSB中でそれぞれ2日間と5日間培養された。この一連の
実験では、細菌のカウントによりバイオフィルム形成の定量化が可能になり、クリスタル
バイオレット染色によりバイオフィルムの可視化が可能になった。これらの条件下では、
P. gingivalisのバイオフィルム形成は有意に阻害されなかった。T. f
orsythiaのバイオフィルム形成は、全ての条件で少なくとも2倍減少し、阻害剤
を含まない対照の2.2x107細菌/mlから1.0x107に減少した。
【0288】
バイオフィルム阻害アッセイ-リッチ培地中のP. gingivalis+F. n
ucleatum(25586)混合種バイオフィルム
血清コーティング表面上のTSBで培養されたT. forsythia及びP. gi
ngivalisに対するナツメ属植物の抽出物の効果
P. gingivalisまたはT. forsythiaを、FBS(50μlの1
00%FBSを添加し、4℃で一晩インキュベートした後、PBSで1回洗浄して未結合
の血清を除去した)でプレコートされた96ウェルポリリジンコーティング組織培養プレ
ートのウェル内の、0.1%w/v酵母エキス、5μg/mlヘミン、1μg/mlメナ
ジオン、及び50μg/mlゲンタマイシンを含むTSB中に0.05のOD600で播
種した。両方の種を37℃で、T. forsythiaについては5日間、P. gi
ngivalisについては48時間、嫌気的に培養した。上清を除去し、ウェルをPB
Sで2回洗浄した。バイオフィルムは、希釈する前に(適切な場合)、PBS中に激しく
再懸濁し、ヘルバーチャンバーと位相差顕微鏡を倍率400で使用してカウントした。
【0289】
イメージング用のウェルはクリスタルバイオレットで染色された。上清を除去し、ウェ
ルを0.1%(w/v)クリスタルバイオレットとともに室温で15分間インキュベート
した。染料を除去し、ウェルをPBSを使用して3回洗浄した。バイオフィルムは、倒立
顕微鏡とイメージングソフトウェアを使用して400倍の倍率でイメージングされた。画
像キャプチャパラメータ(光強度と露光時間)は、各画像で一定であった。示されている
データは、3回の実験の平均を表しており、各条件は実験ごとに3回繰り返された。
【0290】
バイオフィルム形成に対するナツメ属植物抽出物の異なる効果の考えられる説明は、こ
れら2つの生物の栄養要件の違いであり、T. forsythiaはP. gingi
valisよりも厳しい成長要件を有している。例えば、T. forsythiaは通
常、N-アセチルノイラミン酸(NAM)の外因性供給源を必要とするが、これはバイオ
フィルム形成中にシアル酸で置き換えることができ(この実験では、この供給源はFBS
によって提供された)、これはシアリダーゼによって破壊される可能性がある一方で、P
. gingivalisは、シアリダーゼ阻害の存在下でも、補充されたTSB培地か
ら栄養要求を得ることができる可能性がある。したがって、炭素及び窒素の供給源として
血清(FBS)のみを含む限定培地も、バイオフィルム形成に対するナツメ属植物の抽出
物の効果を評価するために利用された。
【0291】
バイオフィルム阻害アッセイ-限定培地中のP. gingivalis
T. forsythiaはP. gingivalisよりも厳しいため、限定培地を
使用して単一種のバイオフィルムとして培養する試みは失敗した。したがって、限定培地
で培養されたP. gingivalisそのものに対してナツメ属植物の抽出物をテス
トした。P. gingivalisを、FBS(50μlの100%FBSを添加し、
4℃で一晩インキュベートした後、PBSで1回洗浄して未結合の血清を除去した)でプ
レコートされた96ウェルポリリジンコーティング組織培養プレートのウェル内の、10
%v/v FBS、5μg/mlヘミン、50μg/mlゲンタマイシンをさらに補充し
た限定培地中に0.05のOD600で播種した。P. gingivalisは、37
℃で5日間嫌気的に培養された。
【0292】
上清を除去し、ウェルを0.1%(w/v)クリスタルバイオレットとともに室温で1
5分間インキュベートした。染料を除去し、ウェルを水流で洗浄した。A)クリスタルバ
イオレット染色の定量化-クリスタルバイオレットは、エタノール:アセトン(80:2
0)を使用してバイオフィルムから新しい96ウェルマイクロタイタープレートに抽出さ
れ、590nmでの吸光度を測定することによって定量化された。
【0293】
結果
示されているデータは、2回の実験の平均を表しており、各条件は実験ごとに10回繰り
返された。
【0294】
N1ノイシアリダーゼ阻害
【表9】
【表10】
N.B. 1mMの化合物1は、T. forsythiaからのNanHの50%阻害
をもたらした(実施例3)
【0295】
【表11】
【表12】
【表13】
ナツメ属植物1500μg/mlは、阻害剤なしと比較して、バイオフィルム形成の減少
を示した
【表14】
N.B. リッチ培地では、クリスタルバイオレット染色を使用したP. gingiv
alisバイオフィルムに対して明らかな効果はなかった。
【0296】
考察
化合物1(実施例3)及び1%の4-ヒドロキシメチル-N-メチル-L-プロリン1~
3を含むナツメ属植物の抽出物は、Tannerella forsythiaのシアリ
ダーゼを阻害した。ナツメ属植物の抽出物は直接抗菌効果があるようには見えなかったが
、糖含有量が高いにもかかわらず、栄養素の獲得を防止したり、血清コーティングされた
表面への付着を制限したりすることで、バイオフィルム形成を阻害し得る。TSB中での
P. gingivalisのバイオフィルム形成は、植物抽出物によって有意に阻害さ
れなかったが、限定培地(血清-FBSが唯一の炭素及び窒素の供給源である)で培養す
ると阻害された。
【0297】
これは、化合物1~3を含む抽出物が、そのシアリダーゼ及びおそらく他の酵素の阻害
を通じてP. gingivalisによる栄養素の獲得を妨げていたことを示唆してお
り、これは、P. gingivalisのタンパク質異化作用を制限する可能性がある
。これは、血清からの栄養素の獲得に特に有害であり、タンパク質供給源(大豆ミール)
がすでに酵素消化を受けているTSBからの栄養素の獲得にはそれほど有害ではない。お
そらく、限定培地は、P. gingivalisが歯肉溝滲出液(GCF、血清と組成
が類似)中の宿主糖タンパク質、及び血液及び唾液中の他の糖タンパク質の異化作用によ
って栄養素を獲得する、インビボの状況をよりよく表している。
【0298】
T. forsythiaはP. gingivalisよりも厳しいため、限定培地
を使用して単一種のバイオフィルムとして培養する試みはこれまでのところ失敗している
。しかしながら、TSBの血清コーティングされた表面にバイオフィルムを形成し得る。
この一連の実験では、ナツメ属植物の抽出物がT. forsythiaのバイオフィル
ム形成を阻害するように見えた。
【0299】
これらの発見はまた、本発明の化合物が、細菌性膣炎及び早産に関連する種であるGa
rdnerella vaginalisを含む他の細菌性シアリダーゼの阻害に基づく
様々な治療的処置における用途を見出すことができることを示す。
【0300】
実施例6:Zizyphus jujuba果実50%水性エタノール抽出物のマウス
試験
Zizyphus jujubaの果実抽出物を50%水性エタノールで調製し、乾燥
させた。抽出物のガスクロマトグラフィー-質量分析(GCMS)による分析では、単糖
糖含有量が高く(>5%)、化合物1~3が1%存在することが示された。Z. spi
na-christi抽出物の抽出に関する以前の研究は、マルトース及びスクロース負
荷試験でオスのddyマウスにおいて実施された(実施例2)。
【0301】
この研究では、オスのC57BL/6Jマウスを、グルコース、マルトース、及びスク
ロースの負荷試験に使用した。
【0302】
方法
動物実験プロトコルは、富山大学の動物実験委員会によって承認された。動物を一晩絶
食させた。グルコース(2.5g/kg体重)またはスクロース(2.5g/kg体重)
、ならびに抽出物を0.9%NaCl溶液に溶解し、胃管を介してマウスに投与した。対
照群には生理食塩水のみを負荷した。グルコース測定用の血液サンプルは、糖負荷後0、
15、30、60、及び120分で尾静脈から採取した。血糖値は、ポータブルキットの
Antsence II(商標)(Sankyo Co. Ltd. Tokyo, J
apan)によって測定された。テストは以下のとおりであった。
【0303】
● グルコース負荷試験1000mg/kg体重(
図2、表1)
● グルコース負荷試験500mg/kg体重(
図3、表2)
● スクロース負荷試験1000mg/kg体重(
図4、表3)
● マルトース負荷試験500mg/kg体重(
図5、表4)
【0304】
結果
図2は、血糖値に対するナツメ属植物の抽出物の効果を示す。ナツメ属植物の抽出物(
各1000mg/kg体重)抽出物(白丸)を含む2.5g/kg体重のグルコースを経
口負荷した後のオスC57BL/6Jマウスの血糖濃度。対照群には生理食塩水を負荷し
た(黒丸)。各値は平均±SEMを表す(n=5)。
【0305】
図3は、血糖値に対するナツメ属植物の抽出物の効果を示す。ナツメ属植物の抽出物(
各500mg/kg体重)抽出物(白丸)を含む2.5g/kg体重のグルコースを経口
負荷した後のオスC57BL/6Jマウスの血糖濃度。対照群には生理食塩水を負荷した
(黒丸)。各値は平均±SEMを表す(n=5)。
【0306】
図4は、血糖値に対するナツメ属植物の抽出物の効果を示す。ナツメ属植物の抽出物(
各1000mg/kg体重)抽出物(白丸)を含む2.5g/kg体重のスクロースを経
口負荷した後のオスC57BL/6Jマウスの血糖濃度。対照群には生理食塩水を負荷し
た(黒丸)。各値は平均±SEMを表す(n=5)。
【0307】
図5は、血糖値に対するナツメ属植物の抽出物の効果を示す。ナツメ属植物の抽出物(
各500mg/kg体重)抽出物(白丸)を含む2.5g/kg体重のマルトースを経口
負荷した後のオスC57BL/6Jマウスの血糖濃度。対照群には生理食塩水を負荷した
(黒丸)。各値は平均±SEMを表す(n=5)。
【0308】
【0309】
結論
追加の単糖を含むZizyphus jujubの果実抽出物は、グルコースとスクロ
ースの両方の負荷試験で血糖を抑制した。マルトースまたはスクロースの負荷条件への効
果は、抽出物が有意なグルコシダーゼ阻害を示さなかったことを除いて、マルターゼまた
はスクラーゼ阻害によって生じた可能性がある。グルコース負荷試験の結果は、グルコシ
ダーゼ阻害とは独立した異なるメカニズムと、おそらくインスリン放出または他のメカニ
ズムへの効果を示唆している。
【0310】
均等物
前述の説明は、本発明の現在好ましい実施形態を詳述している。これらの説明を考慮する
と、当業者には、その実際における多数の修正及び変形が生じることが予想される。これ
らの修正及び変形は、本明細書に添付された特許請求の範囲内に含まれることが意図され
ている。