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特開2024-105345緊急通話中における健康情報へのアクセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105345
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】緊急通話中における健康情報へのアクセス
(51)【国際特許分類】
   H04W 64/00 20090101AFI20240730BHJP
   H04W 4/90 20180101ALI20240730BHJP
   H04W 76/50 20180101ALI20240730BHJP
   H04W 8/20 20090101ALI20240730BHJP
   G01S 5/14 20060101ALI20240730BHJP
   G01S 5/12 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H04W64/00 130
H04W4/90
H04W76/50
H04W8/20
G01S5/14
G01S5/12
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024071033
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2021564445の分割
【原出願日】2020-04-20
(31)【優先権主張番号】19171734.7
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VERILOG
2.JAVA
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ディーズ ウォルター
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラン ビグネシュ ラジャ カルピア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】緊急事態の被害者のモバイル装置以外の第1無線装置により緊急電話が掛けられた場合、その位置を推定するシステムを提供する。
【解決手段】通信システム100において、モバイルネットワーク130内のモバイル装置110及び緊急エンティティ120は、緊急通話に対応し、該ネットワークを、各個人に関する電子健康記録EHRを有する医療データベース140に結合する。モバイル装置は、装置のユーザの暗号化された医療識別子を取得すると共に、ユーザが緊急事態の被害者である可能性があると確認した場合、緊急通話の間において緊急メッセージに、該暗号化された医療識別子を含める。緊急エンティティは、緊急メッセージから暗号化された医療識別子を取得すると共に、医療データベースにアクセスして、少なくとも1つの電子健康記録を当該暗号化された医療識別子に基づいて検索し、該電子健康記録から緊急対応者への情報の転送を可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルネットワーク内で無線通信を行うモバイル装置であって、前記モバイルネットワークは少なくとも或る地域にわたりネットワーク通信プロトコルに従ってモバイル装置のための無線通信を提供し、
前記ネットワーク通信プロトコルは前記モバイルネットワークの加入者の間の通話を可能にし、
前記通話は前記モバイル装置と緊急エンティティとの間の緊急通話を含み、前記モバイル装置が緊急動作を実行すると緊急通話設定が開始され、
前記モバイルネットワークは各個人に関する電子健康記録(EHR)を含む医療データベースに結合され、各個人は該個人を対応する電子健康記録にリンクする医療識別子を持ち、
前記緊急エンティティは、
緊急メッセージから暗号化された前記医療識別子を取り出し、及び
前記医療データベースにアクセスして、前記暗号化された医療識別子に基づき少なくとも1つの電子健康記録(EHR)を検索すると共に、該電子健康記録(EHR)から緊急事態の対応者への情報の転送を可能にし、
当該モバイル装置は、
前記モバイルネットワークを介した通話を可能にするためのネットワーク通信ユニットと、
安全プロセッサと、
を有し、前記安全プロセッサが、
前記モバイル装置のユーザの前記暗号化された医療識別子を取得し、及び
前記ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確定したら、緊急通話中に前記緊急メッセージに前記暗号化された医療識別子を含める、
モバイル装置。
【請求項2】
前記安全プロセッサは、前記ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確定するために、
前記緊急通話が前記ネットワーク通信ユニットを介して行われていることを決定する動作、
所定の限界を超える減速の加速度を検出する動作、
前記ユーザのバイタルサインのセンサの異常を検出する動作、
当該モバイル装置内の他のプロセッサ又は外部ソースにより生成されたアラーム状態を検出する動作、
緊急事態に関するユーザ入力を受信する動作、
前記緊急メッセージに前記暗号化された医療識別子を含めることに関するユーザ入力を受信する動作、
前記緊急エンティティからメッセージを受信する動作、及び
- 他のモバイル電話機が見物人範囲内にないというメッセージを前記モバイルネットワークから受信する動作、
のうちの少なくとも1つを行う、請求項1に記載のモバイル装置。
【請求項3】
前記モバイルネットワークは前記地域内の各モバイル装置の各位置を決定するための位置特定サービスを提供すると共に各モバイル装置への要求メッセージの転送を可能にし、前記要求メッセージは各モバイル装置のユーザの暗号化された医療識別子を緊急メッセージに含めることを要求し、
前記緊急エンティティは、緊急通話が緊急事態の被害者であり得るユーザのモバイル装置以外の第2のモバイル装置によりなされる場合に、
前記位置特定サービスを介して、前記第2のモバイル装置の近傍の少なくとも1つのモバイル装置を位置特定し、及び
前記位置特定されたモバイル装置に対して前記要求メッセージを生成し、
前記安全プロセッサが、前記ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確定するために、前記要求メッセージを受信する、
請求項1に記載のモバイル装置。
【請求項4】
前記モバイル装置は該モバイル装置と他のモバイル装置との間の距離測定を実行し、
前記安全プロセッサが、緊急事態の場合に、距離測定を可能にすると共に測定された距離を前記モバイルネットワークに転送して、前記モバイル装置の改善された位置データを決定する、
請求項1、2又は3に記載のモバイル装置。
【請求項5】
前記安全プロセッサが、前記暗号化された医療識別子を取得するために、
前記緊急通話の間に医療識別子データをキーデータに基づいて暗号化する動作、
信頼できる当事者が前記暗号化された識別子の送信を要求していることを検証するための認証データを受信する動作、
前記ネットワーク通信ユニットを介して前記安全プロセッサにアクセス可能なリモートサーバから医療識別子データ又は前記暗号化された医療識別子を取り出す動作、
の少なくとも1つを行う、
請求項1から4の何れか一項に記載のモバイル装置。
【請求項6】
前記安全プロセッサが、前記暗号化された医療識別子を得るために、該暗号化された医療識別子が緊急電話の一部として使用された後又は所定の期間後に該暗号化された医療識別子を再暗号化する、請求項1から5の何れか一項に記載のモバイル装置。
【請求項7】
モバイルネットワーク内に配置される緊急エンティティであって、該モバイルネットワークは少なくとも或る地域にわたりネットワーク通信プロトコルに従ってモバイル装置のための無線通信を提供し、
前記ネットワーク通信プロトコルは前記モバイルネットワークの加入者の間の通話を可能にし、
前記通話は前記モバイル装置と当該緊急エンティティとの間の緊急通話を含み、前記モバイル装置が緊急動作を実行すると緊急通話設定が開始され、
- 前記モバイルネットワークは各個人に関する電子健康記録(EHR)を含む医療データベースに結合され、各個人は該個人を対応する電子健康記録にリンクする医療識別子を持ち、
前記モバイル装置は、
前記モバイル装置のユーザの暗号化された医療識別子を取得し、及び
前記ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確定したら、緊急通話の間に前記暗号化された医療識別子を緊急メッセージに含め、
当該緊急エンティティは、
前記ネットワークを介して通信するためのネットワーク通信ユニットと、
安全プロセッサと、
を有し、該安全プロセッサが、
前記緊急メッセージから前記暗号化された医療識別子を取り出し、及び
前記医療データベースにアクセスして、前記暗号化された医療識別子に基づいて少なくとも1つの電子健康記録(EHR)を検索し、該電子健康記録(EHR)から緊急事態の対応者への情報の転送を可能にする、
緊急エンティティ。
【請求項8】
前記モバイルネットワークは前記地域内の各モバイル装置の位置を決定するための位置特定サービスを提供すると共に各モバイル装置への要求メッセージの転送を可能にし、該要求メッセージは緊急メッセージに各モバイル装置のユーザの暗号化された医療識別子を含めるように要求し、
当該緊急エンティティ内の前記安全プロセッサは、緊急通話が緊急事態の被害者であり得るユーザのモバイル装置以外の第2のモバイル装置によりなされた場合に、
前記位置特定サービスを介して前記第2のモバイル装置に近い少なくとも1つのモバイル装置を位置特定し、
緊急事態の被害者であり得るユーザの選択されたモバイル装置となるように、前記少なくとも1つの位置特定されたモバイル装置のうちの1つのモバイル装置を選択し、
前記選択されたモバイル装置に対して前記要求メッセージを生成する、
請求項7に記載の緊急エンティティ。
【請求項9】
前記緊急エンティティ内の前記安全プロセッサが前記少なくとも1つの位置特定されたモバイル装置のうちの前記1つのモバイル装置を、
前記選択されたモバイル装置の位置が前記第2のモバイル装置に最も近いこと、
複数の位置特定されたモバイル装置の位置が前記選択されたモバイル装置の周りで見物人パターンを構成していること、
のうちの少なくとも1つに基づいて選択する、請求項8に記載の緊急エンティティ。
【請求項10】
前記緊急エンティティ内の前記安全プロセッサが前記少なくとも1つの位置特定されたモバイル装置のうちの前記1つのモバイル装置を、
前記第2のモバイル装置の操作者に、他のモバイル装置が遠くにある間に、該第2のモバイル装置を前記被害者のモバイル装置の近くに移動させるように要求すること、
前記選択されたモバイル装置に通話設定要求を送信して、該選択されたモバイル装置から発せられる呼出信号を発生させ、前記第2のモバイル装置の操作者が前記選択されたモバイル装置が被害者にあることを確認できるようにすること、
のうちの少なくとも1つに基づいて選択する、請求項8又は請求項9に記載の緊急エンティティ。
【請求項11】
前記緊急エンティティ内の前記安全プロセッサが前記少なくとも1つの位置特定されたモバイル装置のうちの前記1つのモバイル装置を、
生物測定特徴データを前記第2のモバイル装置に送信して、該第2のモバイル装置の操作者が、前記生物測定特徴データが前記選択されたモバイル装置を持つ被害者に対応していることを確認できるようにすること、
前記第2のモバイル装置の操作者に、前記被害者の生物測定特徴データを取得して該取得された特徴データを前記緊急エンティティに伝送するように要求すること、
のうちの少なくとも1つに基づいて選択する、請求項8から10の何れか一項に記載の緊急エンティティ。
【請求項12】
モバイルネットワーク内に配置されるネットワークエンティティであって、前記モバイルネットワークは少なくとも或る地域にわたりネットワーク通信プロトコルに従ってモバイル装置のための無線通信を提供し、
前記ネットワーク通信プロトコルは前記モバイルネットワークの加入者の間で通話を可能にし、
前記通話はモバイル装置と緊急エンティティとの間の緊急通話を含み、モバイル装置が緊急動作を実行すると緊急通話設定が開始され、
前記モバイルネットワークは各個人に関する電子健康記録(EHR)を含む医療データベースに結合され、各個人は該個人を対応する電子健康記録にリンクする医療識別子を持ち、
前記緊急エンティティは、
緊急メッセージから暗号化された医療識別子を取り出し、
前記医療データベースにアクセスして、少なくとも1つの電子健康記録(EHR)を前記暗号化された医療識別子に基づいて検索し、該電子健康記録(EHR)から緊急事態の対応者への情報の転送を可能にし、
当該ネットワークエンティティが、
緊急通話設定に関わるモバイル装置から識別情報データを受信し、
該識別情報データに対応する暗号化された医療識別子を取得し、
緊急通話の間に前記暗号化された医療識別子を前記緊急メッセージに含める、
ネットワークエンティティ。
【請求項13】
モバイルネットワーク内で無線通信を行うモバイル装置で使用するための方法であって、前記モバイルネットワークは少なくとも或る地域にわたりネットワーク通信プロトコルに従って前記モバイル装置のための無線通信を提供し、
前記ネットワーク通信プロトコルは前記モバイルネットワークの加入者の間の通話を可能にし、
前記通話は前記モバイル装置と緊急エンティティとの間の緊急通話を含み、前記モバイル装置が緊急動作を実行すると緊急通話設定が開始され、
前記モバイルネットワークは各個人に関する電子健康記録(EHR)を含む医療データベースに結合され、各個人は該個人を対応する電子健康記録にリンクする医療識別子を持ち、
前記緊急エンティティは、
緊急メッセージから暗号化された医療識別子を取り出し、
前記医療データベースにアクセスして、少なくとも1つの電子健康記録(EHR)を前記暗号化された医療識別子に基づいて検索し、該電子健康記録(EHR)から緊急事態の対応者への情報の転送を可能にし、
当該方法が、
前記モバイル装置のユーザの前記暗号化された医療識別子を得るステップ、及び
前記ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確定したら、緊急通話の間に前記暗号化された医療識別子を前記緊急メッセージに含めるステップ、
を有する、方法。
【請求項14】
モバイルネットワーク内に配置される緊急エンティティで使用するための方法であって、前記モバイルネットワークは少なくとも或る地域にわたりネットワーク通信プロトコルに従ってモバイル装置に無線通信を提供し、
前記ネットワーク通信プロトコルは前記モバイルネットワークの加入者の間の通話を可能にし、
前記通話は前記モバイル装置と前記緊急エンティティとの間の緊急通話を含み、前記モバイル装置が緊急動作を実行すると、緊急通話設定が開始され、
前記モバイルネットワークは各個人に関する電子健康記録(EHR)を含む医療データベースに結合され、各個人は該個人を対応する電子健康記録にリンクする医療識別子を持ち、
前記モバイル装置は、
該モバイル装置のユーザの暗号化された医療識別子を取得し、
前記ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確定したら、緊急通話の間に前記暗号化された医療識別子を緊急メッセージに含め、
当該方法が、
前記緊急メッセージから前記暗号化された医療識別子を取り出すステップ、
前記医療データベースにアクセスして、少なくとも1つの電子健康記録(EHR)を前記暗号化された医療識別子に基づいて検索し、該電子健康記録(EHR)から緊急事態の対応者への情報の転送を可能にするステップ、
を有する、方法。
【請求項15】
ネットワークからダウンロード可能であり、及び/又はコンピュータ可読媒体及び/又はマイクロプロセッサ実行可能媒体に記憶されたコンピュータプログラムであって、コンピュータ装置上で実行された場合に請求項13又は請求項14に記載の方法を実施するためのプログラムコード命令を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイルネットワークにおいて無線通信を行うように構成されたモバイル装置に関するもので、該モバイルネットワークは少なくとも地域エリアにわたりネットワーク通信プロトコルに従ってモバイル装置に無線通信を提供するものである。ネットワーク通信プロトコルはネットワークの加入者の間の通話(電話)を可能にする。当該通話は、モバイル装置と緊急エンティティ(実体、団体)との間の緊急通話を含む。緊急電話の設定は、モバイル装置が緊急番号112又は911を呼び出す等の緊急動作を実行すると開始される。ネットワークは各個人に関する電子健康記録(EHR)を含む医療データベースに結合され、各個人は当該個人を対応する電子健康記録にリンクする医療識別子を持つ。本発明は、更に、緊急エンティティ及びネットワークエンティティ、並びにそのような装置及びエンティティにおいて使用するための方法にも関する。
【0002】
本発明は、コアネットワーク、例えば3G、LTE、4G又は5Gと称され得る良く知られた地域(regional area)モバイル通信システムの分野に関する。コアネットワークへのアクセスは、所謂、プロバイダ又はモバイルネットワーク管理者(MNO)により管理され、これらは加入者識別情報(ID)SIと呼ばれる一群の加入者データを使用して、加入者のモバイル装置に対しコアネットワークへのアクセスを提供する。SIは、プロバイダの各加入者について、コアネットワークにアクセスするための加入者識別データを含む。通常、スマートフォン等のモバイル装置には、コアネットワークと通信するための専用送受信器(トランシーバ)が装備されており、加入者識別情報SIを更に備えている。SIは加入者の識別情報を表すと共にコアネットワークにアクセスするために要する更なるデータを表す一方、コアネットワークの使用はプロバイダにより各加入者に対し、例えば、所謂音声及びデータのバンドルを介して費用請求される。例えば、SIは、IMSI(国際モバイル加入者識別情報)等の加入者識別コードを含み得る。このような装置には、通常、SIMと呼ばれる物理的半導体モジュールをモバイル装置に挿入することによりSIが備わっている。SIMカードは、国際モバイル加入者識別番号(IMSI)番号及びそれに関連するキー(モバイル電話装置(携帯電話及びコンピュータ等の)上で加入者を識別及び認証するために使用される)を安全に保存することを目的としてプラスチックカードに埋め込まれた集積回路である。例えば、汎用加入者識別モジュール(Universal Subscriber Identity Module)を指し、3Gコアネットワーク標準であるUMTS汎用モバイル通信システム(Universal Mobile Telecommunications System)上で動作するUSIM等の、種々のタイプのモジュール又はカードが知られている。UICC(Universal Integrated Circuit Card)等の関連する物理的カードも知られており、USIMはUICC上で動作するアプリケーションである。他のタイプのSIMは、e-SIM若しくはeSIM(埋込SIM)又は埋込汎用集積回路カード(eUICC)と呼ばれる。該カードは、回路基板に直接半田付けされた交換不能な組み込みチップである。とりあえず、コアネットワークとの無線通信用に装備され、SIMカード又はその他の方法でSIが提供される全てのタイプの装置が、本明細書においてSIM装置と呼ばれる。
【背景技術】
【0003】
GSMA、2015年2月のMichael J.Kleeman、Martin Harris及びJames Erasmusによる文献「モバイルSIMベースの医療アプリケーション」は、標準化されたSIMツールキットアプリケーションを使用して装置のSIMカードに保存された医療情報にアクセスできるようにする幾つかのメカニズムを示している。しかしながら、該文献に示されているように、限られた量の医療情報しかSIM上には記憶できない一方、アクセスの制御は複雑である。特に、プライバシーが問題となり得る。
【0004】
しかしながら、緊急時には毎秒が重要である。しばしば、患者を特定し、該患者の関連医療情報(病歴、薬の使用、患者が蘇生を希望するかどうか等)を救急隊員等の最初の対応者に提供するのには時間が掛かる。このような情報が医療データベースの何処かの個人の電子健康記録(EHR)に記憶されていることが益々一般的になっている。このような情報が、緊急事態の現場に到着する医療従事者又は医師等の緊急時対応者にとり直ぐに利用可能となれば、非常に有益であろう。
【0005】
標準化されたSIMツールキットアプリケーションを配備するための上述した文献に記載されているメカニズム及び組織的構成は非常に複雑である。電子健康記録からの情報の、警察又は救急隊員等の緊急事態の対応者への転送を可能にするために、緊急時において電子健康記録にアクセスするための一層簡単な解決策を有することが有益であろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
緊急エンティティに緊急電話が掛けられた時点と最初の応答者(対応者)が現場に到着する時点との間の時間を使用して、EHRから必要な情報を取得し、この情報を最初の対応者が事故現場に到着する前に該対応者に供給することが有益であろう。前述した文献は、緊急電話を処理するための如何なるメカニズムも記載していない。プライバシー及び機密性の理由から、このようなデータの供給が、MNOがEHRへアクセスするために使用される識別情報又は資格証明情報に関する知識を持っていること、又はMNOがEHRにアクセスできることに依存しないことも有益であろう。緊急電話は通常の通話とは異なる方法で処理され、余り安全でない可能性がある一方、ユーザの識別情報は含まれない場合がある、即ち、誰でもサブスクリプションなしで緊急番号に電話を掛けることができなければならないことに注意することが重要である。したがって、個人のEHRに関する機密情報が悪意のある人の手に渡らないようにするために、セキュリティが重要な考慮事項である。
【0007】
本発明の目的は、上記の側面を考慮しながら、緊急時にEHRに高い信頼度でアクセスするためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、添付の請求項に定義されるような装置及び方法が提供される。本発明の一態様によれば、請求項1に定義されるようなモバイル装置が提供される。本発明の他の態様によれば、請求項7に定義されるような緊急エンティティ(エンティティ)及び請求項12に定義されるようなネットワークエンティティ(エンティティ)が提供される。本発明の他の態様によれば、請求項13及び14に定義されるような方法が提供される。本発明の他の態様によれば、ネットワークからダウンロード可能であり、及び/又はコンピュータ可読媒体及び/又はマイクロプロセッサ実行可能媒体に格納されるコンピュータプログラム製品が提供され、該製品はコンピュータ上で実行された場合に上記方法を実施するためのプログラムコード命令を有する。
【0009】
当該モバイル装置は、モバイルネットワーク内で無線通信を実行するように構成される。モバイルネットワークは、少なくとも或る地域にわたりネットワーク通信プロトコルに従ってモバイル装置のために無線通信を提供する。ネットワーク通信プロトコルは、ネットワークの加入者の間の通話を可能にする。通話(電話)はモバイル装置と緊急エンティティとの間の緊急通話(緊急電話)を含み、緊急通話のセットアップ(設定)はモバイル装置が緊急動作を実行する、例えば、発呼者が112若しくは911等の地域緊急番号をダイヤルすると開始され、又は車両に埋め込まれたモバイル装置は強い減速に基づいて事故を検知した後にダイヤルすることができる。
【0010】
当該ネットワークは、各個人に関する各々の電子健康記録(EHR)を含む医療データベースに結合される。該医療データベースは、モバイルネットワーク管理者により、又はネットワークに結合されたサーバ上で提供され得るが、該医療データベースは、他のネットワーク又は装置(例えば、緊急エンティティにより運用される)を介して、例えば、専用の結合装置又はリンクを介してもアクセスできる。
【0011】
各個人は、当該個人を対応する電子健康記録にリンクする対応する医療識別子を持つ。医療識別子は加入者識別情報(SI)とは異なることに留意されたい。SIは実質的に公開されており、ネットワーク及びネットワーク管理者に既に知られているからである。SIMカード固有識別子(即ち、国際モバイル加入者識別情報(IMSI)、サブスクリプション永久識別子(SUPI)、一時モバイル加入者識別情報(TMSI)又は全世界固有一時ユーザ識別情報(GUTI))等の既知のSIデータは、そのままでは、プライバシーの側面を考慮に入れることができないため、医療データベースにアクセスするためには適していない。該SIデータは、ユーザが他のネットワーク管理者に切り替えることも非常に困難にさせる。一実施形態において、医療識別子は、ネットワーク管理者により知られていないセキュリティ資格証明情報を使用して暗号化され、緊急エンティティ、医療提供者又は最初の対応者のみが、医療識別子を復号化するためのキーマテリアルにアクセスできる。暗号化された医療識別子は、対応する個人の電子健康記録又は緊急事態に関する特定の電子健康記録にアクセスするための医療資格証明情報を含み得る。また、医療データベースへのアクセスは、加入者識別データと暗号化された医療識別子との組み合わせに基づくことができ、緊急エンティティ、ユーザ、ネットワーク管理者、医療提供者、最初の対応者又はこれらの組み合わせにより知られているセキュリティ資格証明情報(例えば、パスワード、事前共有キー、秘密キー)に基づくことができる。
【0012】
緊急エンティティは、緊急メッセージから暗号化された医療識別子を取り出すと共に、医療データベースにアクセスして、該暗号化された医療識別子に基づいて少なくとも1つの電子健康記録(EHR)を検索し、該電子医療記録(EHR)からの情報の、緊急事態の対応者への転送を可能にするように適合される。緊急エンティティは、例えば医療団体にキーマテリアルを供給することにより、上記暗号化された医療識別子を復号化するように適合され得る。医療識別子を暗号化するために公開キーを使用する一方、緊急エンティティには対応する秘密キーが供給される等の、医療識別子を暗号化するための様々なシステム自体は知られている。他の例として、キーマテリアルは利用可能であり得、制限された組の人だけがアクセスを許可されている(例えば、ユーザ名/パスワードによるログインを介して)医療データベースにおいてのみ処理され得るものとする。
【0013】
当該モバイル装置は、ネットワークを介した通話を可能にするためのネットワーク通信ユニットと、該装置のユーザの暗号化された医療識別子を取得すると共に、該ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確認したら、該暗号化された医療識別子を緊急通話中の緊急メッセージに含めるように構成された安全な(セキュアな)プロセッサと、を備える。例えば、当該モバイル装置は、該装置内のローカルな安全(セキュア)記憶部(例えば、SIM上の)にアクセスして、暗号化された医療識別子を取り出すことができる。また、該モバイル装置は、ネットワークを介して安全な記憶部、例えば当該セルラネットワーク内の他の団体に加入者の詳細を提供するデータベースを維持しているモバイル事業者の構内のホーム加入者サーバ(HSS)、にアクセスすることもできる。また、前記取得の一部として、当該モバイル装置は医療識別子を暗号化して、暗号化された医療識別子を生成することもできる(例えば、当該電話機上でアプリケーション(例えば、SIMツールキットの一部として動作する)又はNFC若しくは動的に生成されるQRコード(登録商標)の読み取り等の安全な帯域外チャンネルを介して暗号化資格証明を構成することにより)。
【0014】
上記のフィーチャは以下のような効果を有する。EHR識別データは、セルラ緊急通信セッションのセットアップ(設定)の一部として受信される。当該緊急事態の被害者のEHRには即座にアクセスで、従って、緊急メッセージの受信と、最初の対応者により使用されるべき救命につながり得る患者の健康情報の取得との間で時間が失われることはない。有利な効果は、難儀者(被害者)が緊急対応者に自身のEHR情報にアクセスさせるための、例えばEHRを記憶する、EHR情報にアクセスできる組織及び/又は人のリストに緊急エンティティ及び/又は緊急対応チーム(救急車隊員等)を追加する、緊急エンティティとセキュリティ資格証明情報を交換する、緊急通話中における緊急メッセージに暗号化された医療識別子を含めるために自身のモバイル装置に上記要素を供給する等の準備を事前に行っていることを必要とする。有利にも、このような準備を事前に行うことによりプライバシーの配慮を考慮に入れることができ、専用の暗号化された医療識別子を使用することで、起こり得る誤用を回避できる。
【0015】
当該ネットワークは、地域内の各モバイル装置の位置を決定するための位置特定サービスを提供できる。また、該ネットワークは、各モバイル装置に対して、該モバイル装置のユーザの暗号化された医療識別子を緊急メッセージに含めることを要求する要求メッセージを伝送できるように構成できる。
【0016】
一実施形態において、当該緊急エンティティは、当該緊急事態の被害者であり得るユーザのモバイル装置以外の第2のモバイル装置により緊急電話が掛けられた場合に、該第2のモバイル装置の近くの少なくとも1つのモバイル装置を、前記位置特定サービスを介して位置特定し;該位置特定されたモバイル装置に対する要求メッセージを生成するよう適合できる。かくして、該緊急エンティティは、何のモバイル装置が当該緊急事態の被害者のモバイル装置、例えば第2のモバイル装置に最も近い装置でありそうかを判断できる。第2のモバイル装置の発呼者は、何のモバイル装置が被害者に属するかを、例えば該第2のモバイル装置を被害者に向かって移動させることにより、決定することを助けることができる。該緊急エンティティは、電話を掛けた人に、被害者(又は該被害者の電話機)の極近傍に移動する又は留まるように指示できる。
【0017】
当該モバイル装置の一実施形態において、ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確定するために、前記安全プロセッサは上記要求メッセージを受信するように構成される。このようなメッセージを受信すると、該モバイル装置は、ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確定し、暗号化された医療識別子を緊急メッセージに含める。有利にも、電話を掛けた人が被害者でない場合であっても、被害者の電話機からEHR識別データを自動的に取得することができる。
【0018】
当該モバイル装置が該モバイル装置と他のモバイル装置との間の距離測定を実行するように構成される一実施形態において、前記安全プロセッサは、緊急事態の場合において、距離測定を可能にすると共に測定された距離をネットワークに伝送して当該モバイル装置の改善された位置データを決定するように構成される。例えば、位置特定サービス、緊急エンティティ及び/又は緊急電話を掛けている第2の装置は、少なくとも1つの距離測定メッセージを生成するように構成され得る。このような距離測定メッセージは、当該モバイル装置と近くに位置する少なくとも1つの他のモバイル装置との間の少なくとも1つの距離測定を実行すると共に、少なくとも1つの測定された距離を位置特定サービス及び/又は緊急エンティティに伝送して該モバイル装置の改善された位置データを決定するよう要求する。これに対し、前記安全プロセッサは、上記距離測定メッセージを受信し、前記距離測定を可能にするように構成され得る。有利なことに、被害者のモバイル装置の位置は、他の位置特定された装置までの少なくとも1つの測定された距離により、高められた精度で決定され得る。該改善された位置データは、被害者の位置特定を改善するために、前記対応者に転送され得る。
【0019】
一実施形態において、モバイルネットワーク内に配置されるべきネットワークエンティティは、緊急通話設定に関わるモバイル装置から識別情報データを受信し、該識別情報データに対応する暗号化された医療識別子を取得し、該暗号化された医療識別子を緊急通話の間において緊急メッセージに含めるよう適合される。暗号化された医療識別子を含む緊急メッセージは緊急エンティティに転送される。例えば、IMEIを、識別情報データとして使用でき、例えばユーザが自身の装置をモバイル事業者により提供される或る種の登録サービスを介して装置を登録すると共に該装置を暗号化された医療識別子にリンクさせることにより該暗号化された医療識別子にリンクさせることができる。
【0020】
本発明による方法は、コンピュータ上でコンピュータ実施方法として、専用のハードウェアで又は両方の組み合わせで実施され得る。本発明による方法の実行可能コードは、コンピュータプログラム製品に記憶できる。コンピュータプログラム製品の例には、メモリスティック等のメモリ装置、光ディスク等の光記憶装置、集積回路、サーバ、オンラインソフトウェア等が含まれる。
【0021】
非一時的形態のコンピュータプログラム製品は、該プログラム製品がコンピュータ上で実行された場合に本発明による方法を実行するためのコンピュータ可読媒体上に記憶された非一時的プログラムコード手段を含み得る。一実施形態において、コンピュータプログラムは、該コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行された場合に、本発明による方法の全てのステップ又はステージ(段階)を実行するように適合されたコンピュータプログラムコード手段を含む。好ましくは、当該コンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体上で具現化される。また、ネットワークからダウンロード可能な、及び/又は揮発性のコンピュータ可読メモリ及び/又はマイクロプロセッサ実行可能媒体に記憶される一時的な形態のコンピュータプログラム製品も提供され、該製品は、コンピュータ上で実行された場合に上述した方法を実施するためのプログラムコード命令を含む。
【0022】
本発明の他の態様は、一時的形態のコンピュータプログラムをダウンロードのために利用可能にする方法を提供する。この態様は、当該コンピュータプログラムがAppleのApp Store、GoogleのPlay Store又はMicrosoftのWindows Store等にアップロードされている場合、及び該コンピュータプログラムがそのようなストアからダウンロードのために利用可能である場合に使用される。
【0023】
本発明による装置及び方法の他の好ましい実施形態は添付請求項に示され、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
本発明の上記及び他の態様は、以下の説明において添付図面を参照して例示として説明される実施形態から明らかとなり、該実施形態を参照して更に解明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、モバイル装置、緊急エンティティ及び無線通信のためのネットワークを示している。
図2図2は、モバイル装置、ネットワークエンティティ、緊急エンティティ及び無線通信のためのネットワークを備えたシステムの一例を示す。
図3図3は、モバイルネットワーク内に無線通信のために配置されたモバイル装置で使用するための方法を示している。
図4図4は、モバイルネットワーク内に配置されるべき緊急エンティティで使用するための方法を示している。
図5a図5aは、コンピュータ可読媒体を示している。
図5b図5bは、プロセッサシステムの概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面の各図は純粋に図式的であり、縮尺通りには描かれていない。各図において、既に説明した要素に対応する要素は、同じ参照番号を有し得る。
【0027】
図1は、モバイル装置、緊急エンティティ及び無線通信のためのネットワークを示している。通信システム100において、モバイル装置(MOB-DEV)110は、モバイルネットワーク130においてネットワーク通信プロトコルに従い無線通信を行うように構成される。該モバイル装置は、例えば、携帯電話、ウェアラブル医療装置又は自動車に埋め込まれたデータ通信ユニットであり得る。当該通信システムにおいて、加入者識別情報、SIは、コアネットワークにアクセスするための加入者の加入者識別データを含み、モバイルネットワークは、少なくとも或る地域にわたってモバイル装置のための無線通信を提供する。導入部で説明したように、該モバイルネットワークは3G、LTE、4G又は5Gセルラコアネットワークであり得る。図1は、緊急エンティティEM-ENT120とモバイル装置MOB-DEV110との間に通信チャネルを提供するためのネットワーク130を概略的に示している。当該コアネットワークは、少なくとも1つの通信プロバイダにより、例えば加入者データベースを管理し及び請求を行うように管理されている。当該ネットワークは、例えばインターネット上の別のサーバ上に設けられ、又は医療機関又は緊急エンティティにより提供されると共に、該ネットワークに無線及び/又は有線で又は専用リンクを介して結合された医療データベース(EHR)140にも結合される。
【0028】
モバイル装置110は、ネットワークと無線通信するように構成され、無線通信用に構成されたトランシーバ111及び通信を制御すると共にユーザに対するインターフェースを提供するように構成されたプロセッサ112を有する。該モバイル装置は、加入者識別モジュール、SIMを備えることができると共に、例えばディスプレイ及び1以上のユーザ入力エレメント115を含むユーザインターフェース113も備えることができる。例えば、該ユーザ入力エレメントは、タッチスクリーン、種々のボタン、マウス又はタッチパッド等の1以上を有し得る。ボタンは、従来の物理的ボタン、タッチセンサ、又は例えばタッチスクリーン上の若しくはマウスを介してアクティブ化されるアイコン等の仮想ボタンであり得る。上記ユーザインターフェースは、リモートユーザインターフェースであってもよい。
【0029】
緊急エンティティ(EM-ENT)120は、以下に説明するように緊急処理を実行するように構成された安全なプロセッサ122、及び無線で若しくは有線リンクを介してのいずれかで前記ネットワークと通信するように構成されたネットワーク通信ユニット121を有する。
【0030】
医療データベース140は、各個人に関する電子健康記録(EHR)を含み、各個人は該個人を対応する電子健康記録にリンクさせる医療識別子を持つ。前記ネットワークは該医療データベースに結合される。
【0031】
前記ネットワーク通信プロトコルは、当該ネットワークの加入者の間の通話を可能にし、これら通話はモバイル装置と緊急エンティティ120との間の緊急通話を含む。緊急通話設定(セットアップ)は、モバイル装置が緊急動作を実行すると開始される。
【0032】
当該緊急エンティティ内の安全(セキュア)プロセッサ122は、緊急メッセージから暗号化された医療識別子を取り出すように構成される。暗号化された医療識別子を取り出したら、該安全プロセッサは、前記医療データベースにアクセスして、上記暗号化された医療識別子に基づいて少なくとも1つの電子健康記録(EHR)を検索し、該電子健康記録(EHR)からの情報を当該緊急事態の対応者に転送できるようにする。当該緊急対応のための対応者の選択は、該対応者の状況、例えば該対応者のモバイル装置から取り込まれた対応する情報から導出される位置、専門知識、準備度、好み等に基づいて自動的に行われ得る。EHRデータの転送は、救急車等の当該緊急事態への対応者のモバイル装置に自動的に経路決めされ得る。また、対応者の選択及びEHR情報の転送は、緊急エンティティに居る操作者により、例えば救急車の医療スタッフに電話を掛けることにより実行され得る。
【0033】
前記モバイル装置内の安全プロセッサ116は、該装置のユーザの暗号化された医療識別子を取得すると共に、該ユーザが緊急事態の被害者であり得ると確定すると、緊急通話の間において緊急メッセージに該暗号化された医療識別子を含めるように構成される。種々の実際的な実施形態を以下に説明する。
【0034】
当該システムの実際的な実施形態において、モバイル装置である装置Aは、SIMカード自体の固有識別子(すなわち、国際モバイル加入者識別情報(IMSI)、加入永久識別子(SUPI)、一時的モバイル加入者識別情報(TMSI)又は全世界固有一時ユーザ識別情報(GUTI))とは異なる暗号化された識別子Xを、緊急エンティティを構成する宛先装置Bとのセルラ緊急通信セッションセットアップの一部として送信する。装置Bは、患者健康記録のデータベースと直接的に又は装置Cを介して通信可能に結合されている。装置B又は装置Cの何れかは、受信された暗号化された識別子Xを復号化(解読)して、復号化された識別子Yを生じる。該復号化された識別子Yは、該識別子Yに関連付けられた患者の健康記録を取り出すために使用される。
【0035】
他の実際的な実施形態において、第2のモバイル装置Dは、被害者のモバイル装置ではないが緊急電話を掛ける。このような状況において、装置A、B及びCを伴うシステムは上記と同じである。したがって、第2のモバイル装置Dは、宛先装置B(緊急エンティティ)とのセルラ緊急通信セッションをセットアップする。装置Bは、モバイル管理者のコアネットワークで動作する位置特定サービスSと通信可能に結合されている。位置特定サービスSは、何のモバイル装置が電話を掛けている装置に最も近いかを決定することができる。装置Bは、サービスSに、電話を掛けている装置に最も近いモバイル装置Aを決定するように要求し、モバイル装置Aの決定時に、続いて、装置Aに対し暗号化された識別子Xを装置Bにセルラ緊急通信セッションセットアップの一部として送信するための要求を発行する。代わりに又は加えて、サービスT又は装置Dとの他の通信セッションを使用して、暗号化識別子Xを装置Bに転送することができる。装置Bは、暗号化された識別子Xを上述したように受信し、処理する。
【0036】
一実施形態において、前記安全プロセッサは、ユーザが緊急事態の被害者である可能性があることを確定するために、以下のオプションのうちの1以上を実行するように構成される。オプションとして、該安全プロセッサは、当該緊急電話が前記ネットワーク通信ユニットを介して行われていることを、例えば地域の緊急電話番号が掛けられたことを検出するか、又は緊急通話が設定されているモバイル装置のプロセッサ112からデータを受信することにより決定できる。
【0037】
オプションとして、該安全プロセッサは、ユーザが緊急事態の被害者である可能性があることを確定するために、以下に説明するような状況の1つを検出でき、もし自動的に検出できない場合は、当該緊急エンティティにより追加のチェック又は手順が必要になり得、これらは、緊急電話が掛けられた装置が医療識別子を含める機能をサポートしているか否かにより異なり得る(例えば、異なる質問をする、又はユーザに当該装置上で特定の操作を実行するように求める)。この目的のために、メッセージ又はメッセージの一部としての属性/フラグを、緊急通信を介して緊急エンティティに送信でき、該メッセージ又は属性/フラグは、当該装置が医療識別子及び恐らくはセンサ情報又何の状況を該装置が検出できなかったかについての他の情報を含める機能をサポートすることを示す。
【0038】
オプションとして、被害者の電話機は、以下の状況のいずれかを検出した後、該電話機が被害者の電話機であるという何らかのメッセージを(例えば、Wi-Fi(登録商標)経由で)ブロードキャストできる。他の装置が緊急電話番号に電話を掛けた場合、該他の装置は、近くの他の電話からの、これらメッセージを聴取し始めることができ(例えば、Wi-Fi(登録商標)経由で)、これを使用して、該他の装置のユーザが緊急事態の被害者であるか又は近くの誰かであるかを決定できる。
【0039】
オプションとして、前記安全プロセッサは、所定の限界を超える減速の加速度を検出でき、例えば、車の事故又はユーザの転倒若しくは打撃を検知する。また、緊急番号に電話を掛ける直前に当該モバイル装置により転倒が検出された場合、該モバイル装置のユーザが被害者である可能性が高く、従って該モバイル装置は暗号化された医療識別子を自動的に含めることができる。また、事故に巻き込まれたばかりの車両から自動緊急電話(eCall)が発信された場合、該車両内のモバイルユニットは運転者の暗号化された医療識別子を自動的に含めることができる。また、車両制御システムを、誰が運転者及び恐らくは他の同乗者であるかを決定し、1以上の暗号化された医療識別子を含めるように構成できる。
【0040】
オプションとして、前記安全プロセッサは、ユーザのバイタルサインのセンサの異常を検出することができる。モバイル装置上のバイタルサインセンサは、主要な健康問題(心臓発作等)を検出できる。通常、これにより警報又は警告状態が生成され得る。したがって、このようなことが緊急電話を掛ける前に生じた場合、モバイル装置には暗号化された医療識別子を自動的に含めることができる。したがって、オプションとして、前記安全プロセッサは、モバイル装置内の他のプロセッサ又は外部ソースにより発生された警告状態を検出できる。該外部ソースは車両であり得る。
【0041】
オプションとして、前記安全プロセッサは緊急事態に関するユーザ入力を受けることができる。例えば、モバイル装置のUIは、ユーザが緊急事態の被害者であるか、又は緊急事態の性質に関する質問を示すことができる。例えば、質問は発呼者又は居合わせ人が被害者であるか否かであり得る。また、モバイル装置は、例えば、発呼者が「私は事故を起こした」又は「私は事故を見た」と言うのを区別する音声認識を有し得る。その結果に基づいて、前記安全プロセッサは自動的に暗号化された識別子を含めるか又は含めない。また、モバイル装置は、何らかの事前に構成された一連の規則(例えば、ユーザにより設定された)を有し得る。或る規則は、例えば、緊急電話番号に電話を掛ける場合において、ユーザが通話を開始してから10秒以内に[識別子を含めない]というボタンを押さなかった場合にのみ暗号化された識別子を含めるというものであり得る。
【0042】
オプションとして、前記安全プロセッサは、暗号化された医療識別子を緊急メッセージに含めることに関するユーザ入力を受信できる。例えば、ユーザは、そのように指示するか、又は医療データを緊急エンティティに転送することを確認でき、例えば、当該装置は発呼者が暗号化された医療識別子を含めることを欲するか否かの質問を示すことができる。また、モバイル装置は、音声通信を介して、暗号化された医療識別子を含めるためにキーを押す(例えば、「1」を押す)ようユーザに話すことができる。オプションとして、ユーザは包括的な「ユーザ同意」を与えることができる。即ち、ユーザは、緊急事態の被害者である場合だけでなく、常に暗号化された医療識別子を含めることに同意できる。
【0043】
オプションとして、前記安全プロセッサは、緊急エンティティからメッセージを受信するように構成できる。このようなメッセージは、緊急事態又は被害者に関する追加データを入力するよう要求できる。オプションとして、緊急エンティティは、例えば20秒以内に、暗号化された医療識別子を含めるか含めないかの特別なメッセージを送信できる。モバイル装置は、暗号化された医療識別子を送信する前に、このメッセージを受信するまで待機するように構成できる。この目的のために、緊急手配者は、発呼者及び被害者に関する状況を評価する際に、スクリーン上の他のボタンを押すことができ、その後、対応する特別なメッセージが送信される。該特別なメッセージは、発呼者が被害者であるか否かに基づく異なる認証資格証明を含み得、これは、暗号化された医療識別子を送信すべきか否かの手掛かりとして使用できる。
【0044】
オプションとして、前記安全プロセッサは、他のモバイル電話機が見物人範囲内には存在しないというメッセージをネットワークから受信できる。例えば、ネットワークは発呼者以外の誰も100メートル以内に居ないことを検出できる。もしそうなら、発呼者は被害者である可能性が高いため、識別子が含められることを要し、このことがモバイル装置に通知され得る。モバイル装置のユーザが被害者であることを確定したら、当該モバイル装置は、該モバイル装置上の正確な位置特定サービス(例えば、GPS)又は当該ユーザの近くにある他のモバイル装置上の位置特定サービス(例えば、ユーザの車両内のモバイル装置のGPS)を自動的にオンして、該ユーザの正確な位置を特定すると共に該ユーザの位置情報を緊急通話に自動的に含めることができる。オプションとして、ユーザを正確に位置特定するのに役立ち得る当該モバイル装置上の他の位置特定サービス、例えばWi-Fi(登録商標)支援GPSを、オンにしてユーザの正確な位置(例えば、10メートル未満)を特定するために自動的に使用できる。
【0045】
当該ネットワークは、地域内の各モバイル装置の位置を決定するための位置特定サービスを提供できる。また、該ネットワークは、各モバイル装置に対する要求メッセージの伝送を可能にするように構成でき、該要求メッセージは各モバイル装置のユーザの暗号化された医療識別子を緊急メッセージに含めるよう要求する。
【0046】
一実施形態において、モバイル装置110は該モバイル装置と他のモバイル装置との間の距離測定を実行するように構成され、安全プロセッサ116は、緊急状態の場合に、距離測定を可能にすると共に測定された距離をネットワークに転送して、該モバイル装置の改善された位置データを決定するように構成される。当該モバイル装置と他の位置特定された装置との間の1以上の距離測定値を受信することにより、位置特定サービス及び/又は緊急エンティティは、当該モバイル装置の位置データの精度を高めることが可能になる。実際に、モバイル装置からの送信を受信することに基づく位置データは、余り正確ではなく、例えば100mの許容誤差を有する。対照的に、ローカルな距離測定ははるかに正確であり、例えば1mの許容誤差を有する。複数のモバイル装置の複数の位置を、このような位置特定された装置間の距離と組み合わせることは、位置データの精度を向上させ得る。
【0047】
当該システムの実際的実施形態において、装置Aは、緊急エンティティBとの緊急通話をセットアップする。装置Bは、モバイル管理者のコアネットワークで動作するサービス又は機能Tに通信可能に結合される。サービスTは、装置Aの近くに位置すると共に、無線距離測定及び/又は角度推定を実行できる一群のモバイル装置{D0、…、Dn}を決定できる。サービスTは、該一群のモバイル装置{D0、…、Dn}のうちのモバイル装置Dx(0≦x≦n)の各々にメッセージMxを送信し、ここで、メッセージMxはモバイル装置Aとの距離測定の実行に参加するための命令及びオプションとして認証資格証明情報を含み、更にモバイル装置AにメッセージNを送信し、該メッセージNはモバイル装置{D0、…、Dn}との距離測定に参加するための命令及びオプションとして認証資格証明情報を含む。モバイル装置A及びモバイル装置{D0、…、Dn}は、次いで、距離測定及び/又は角度推定を実行し、該距離測定及び/又は角度測定の結果をサービスTに送信する。サービスT(又はTが通信的に結合されているコアネットワーク又は装置Aにおける何らかの他の機能)は、受信された距離及び/又は角度の測定値を使用して装置Aの位置推定を改善し、該改善された位置推定を緊急エンティティとのセルラ緊急通信セッション設定の一部として挿入することができる。
【0048】
一実施形態において、当該モバイル装置内の前記安全プロセッサ116は、暗号化された医療識別子を取得して、以下のオプションのうちの1以上を実行するように構成される。
【0049】
オプションとして、該安全プロセッサは、緊急電話中にキーデータに基づいて医療識別子データを暗号化するように構成される。該キーデータは、当該装置内の安全な記憶メモリに、例えばSIMに記憶できる。
【0050】
プションとして、前記安全プロセッサは、信頼できる当事者が暗号化された識別子を送信することを要求していることを検証するための認証データを受信するように構成される。例えば、緊急エンティティは、最初に自身の認証データをモバイル装置に送信できる。
【0051】
オプションとして、前記安全プロセッサは、該安全プロセッサに前記ネットワーク通信ユニットを介してアクセス可能なリモートサーバから医療識別子データ又は暗号化された医療識別子を取り込むように構成される。例えば、加入者は、緊急時に備えて、医療識別子データ又は暗号化された医療識別子を事前にHSSに保存しておける。
【0052】
一実施形態において、当該モバイル装置内の前記安全プロセッサは、暗号化された医療識別子が緊急通話の一部として使用された後又は所定の期間後に医療識別子データを再暗号化するために、暗号化された医療識別子を取得するように構成される。このような再暗号化は、悪意のある第三者が最初の暗号化された医療識別子を再使用することを防止する。
【0053】
一実施形態において、当該緊急エンティティは、緊急電話が緊急事態の被害者であり得るユーザのモバイル装置以外の第2のモバイル装置により掛けられた場合に、前記位置特定サービスを介して該第2のモバイル装置の近傍の少なくとも1つのモバイル装置を位置特定すると共に、該位置特定されたモバイル装置に対する要求メッセージを生成するように構成され得る。かくして、該緊急エンティティは、どのモバイル装置が緊急事態の被害者のモバイル装置、例えば第2のモバイル装置に最も近い装置でありそうかを決定できる。第2のモバイル装置の発呼者は、どのモバイル装置が被害者に属するかを決定するのを、該第2のモバイル装置を被害者に向かって移動させることにより支援できる。緊急エンティティは、電話をかけた人に、被害者(又は該被害者の電話機)の極近傍に移動するか又は極近傍に留まるように指示できる。オプションとして、緊急エンティティ内の安全プロセッサは、前記少なくとも1つの位置特定されたモバイル装置のうちの1つを、選択されたモバイル装置の位置が第2のモバイル装置に最も近いことに基づいて選択するように構成できる。また、緊急エンティティ内の該安全プロセッサは、前記少なくとも1つの位置特定されたモバイル装置のうちの前記1つを、複数の位置特定されたモバイル装置の位置が選択されたモバイル装置の周りに見物人パターンを構成することに基づいて、選択するように構成され得る。
【0054】
一実施形態において、緊急エンティティ内の安全プロセッサ122は、前記少なくとも1つの位置特定されたモバイル装置の前記1つを、第2のモバイル装置の操作者に該第2のモバイル装置を他のモバイル装置が遠く離れているままで被害者のモバイル装置の近くに移動するように要求することに基づいて選択するように構成できる。また、緊急エンティティ内の安全プロセッサ122は、上記選択されたモバイル装置に通話設定要求を送信して、該選択されたモバイル装置から発する呼出信号を生じさせ、第2のモバイル電話機の操作者が該選択されたモバイルが被害者にあることを確認できるようにするよう構成され得る。
【0055】
一実施形態において、緊急エンティティ内の安全プロセッサ122は、前記少なくとも1つの位置特定されたモバイル装置の前記1つを、生物測定特徴データを第2のモバイル電話機に送信して、該第2のモバイル電話機の操作者が該選択されたモバイル電話機を持っている被害者に該生物測定データが対応していることを確認できるようにすることに基づいて選択するよう構成される。また、緊急エンティティ内の安全プロセッサ122は、第2のモバイル電話機の操作者に、被害者の生物測定特徴データを取得して該取得された特徴データを緊急エンティティに転送するように要求するよう構成できる。
【0056】
例えば、第2のモバイル装置を介して電話を掛けている人が被害者でない場合、被害者であるべき範囲内の最も近い装置を決定するために1以上の測位メカニズムを使用しても、正しい人のEHR情報が扱われているかを決定するために追加のチェックが必要とされ得る。勿論、その人に意識がある場合、該人の名前を当該患者のEHR情報の一部としての該人の名前とチェックすることで十分であろう。当該人が意識を失っている場合、上記追加のチェックは、性別、年齢、髪の色、目の色、背格好、体重及び、恐らくは、患者のEHRの一部として保存された写真等の当該患者のEHR情報に基づく身体的特徴に関する情報を第2のモバイル装置に送信することを含み得る。かくして、発呼者又は現場に到着した第1対応者は、受信された上記情報/写真を使用して、被害者が確かに上記情報/写真に対応する人物であるか否かを決定できる。代わりに、電話をかけた人は、被害者及び/又は居合わせ人の写真を緊急エンティティに送信して、EHRにおける写真が被害者に対応しているかをチェックすることもできる。したがって、写真が緊急エンティティの手配者に送信され、該手配者が識別を行う。他の例として、当該人が意識を失っている場合、発呼者又は現場に到着した最初の対応者は、被害者の指紋を該被害者の指を指紋スキャナー(例えば、該最初の対応者の電話機のアプリを使用する)上に置くことにより検証するように求められ、その後、該指紋はEHRの一部として保存されている指紋と照合されて、該指紋が確かに被害者に対応するかをチェックする。更に他の代替例として、発呼者又は最初の対応者は、被害者を特定し、その名前がEHR情報内の患者の名前と一致するかを確認するために、現場における他の情報を見つける(例えば、被害者の財布をチェックすることにより)よう指示され得る。更に他の例として、近傍の最も近い装置は、該装置が、対応するEHR情報にアクセスするための暗号化された識別子Xを含めて、緊急エンティティに電話を掛けようとしているという警報を発する(例えば、特定のノイズを出し始め、又はメッセージを表示する)。
【0057】
図2は、モバイル装置、ネットワークエンティティ、緊急エンティティ及び無線通信用のネットワークを備えたシステムの一例を示している。通信システム200において、モバイル装置(MOB-DEV)110、モバイルネットワーク130及び緊急エンティティ(EM-ENT)120は、図1を参照して上述した通りである。医療データベース(EHR)240は、図1における医療データベース140と同様であるが、ここでは当該緊急エンティティに直接結合されている。他の例として、該医療データベースは、他のネットワークを介して、例えば、当該緊急エンティティに結合されたローカルネットワークを介して、又は該緊急エンティティに結合された他の装置を介してアクセスできる。
【0058】
図2は、当該ネットワークに結合されたネットワークエンティティ(NE)210も示している。該ネットワークエンティティは、緊急通話のセットアップに関わるモバイル装置から識別情報データを受信するように構成される。更に、該ネットワークエンティティは、上記識別情報データに対応する暗号化された医療識別子を取得し、緊急通話の間において緊急メッセージに該暗号化された医療識別子を含めるように構成される。例えば、該ネットワークエンティティは、以下で更に説明されるように、HSS(ホーム加入者サーバ;それ自体は示されていない)から暗号化された医療識別子を取り込むことができる。加入者は、緊急時に備えて、医療識別子データ又は暗号化された医療識別子を事前にHSSに保存しておくことができる。
【0059】
以下の節においては、電子健康記録(EHR)から緊急事態の対応者に情報を提供するための、以下の装置からなるシステムが説明される。
・ 装置Aは、被害者により操作されるモバイル装置である。この装置は、携帯電話機である可能性が高いが、バイタルサイン監視装置、テレメトリ/ECG監視装置、スマートウォッチ、転倒検出器又は他のタイプの携帯型装置でもあり得る。他の例として、装置Aは、車が事故に巻き込まれた後に緊急電話(eCall)を発信できる車内のセルラネットワークユニットであり得る。
・ 装置Bは、装置Aからの特定の緊急電話を受信して処理するために、緊急医療手配者により操作される緊急エンティティ内の電話、ラップトップ又はサーバ装置である。
・ 装置Cは、装置Bが接続され、関連する患者の健康データを有するデータベースへのアクセスを提供する、オプションとしての他の装置(例えば、救急医療手配者により使用されるコンピュータ又はゲートウェイ若しくはサーバ装置)である。
【0060】
一実施形態において、装置Aは、一般的アプリケーションプロセッサによる一般的アクセスから安全で保護された何らかのローカルな不揮発性記憶部、例えば、スマートマイクロSD記憶部、又は当該モバイル装置のSIM若しくはeSIM(各々、UICC及びeUICCとしても知られている)の内部の安全な記憶部(セキュアストレージ)又は該装置の安全なエレメントの一部を有する。通常、これらのタイプの安全な記憶解決手段は、1以上のセキュリティドメイン(例えば、GlobalPlatformカード仕様v2.2で指定されている)において一連のアプリケーション及びサービスをホストできる。モバイル装置の場合、セルラネットワークにアクセスできるように(e)SIMを装備することは非常に一般的である。ETSI TS102.221及び3GPP TS 31.101において指定されているように、(e)SIMの安全記憶部は、特定のファイル構造に従って構造化されており、標準化された一群のインターフェースコマンドのセットを使用してアクセスできる。(e)SIMには、通常、暗号化/復号化及び他のタイプのセキュリティ機能を実行可能な自身のセキュリティプロセッサも装備されている。
【0061】
装置B又は装置Cは、電子健康記録を含むデータベースに関連付けられる。このようなデータベースが典型的に多数の異なる人に関する健康記録を含んでいるとすると、特定の個人の記録にアクセスするには、個人固有の識別子が必要である。セキュリティ上の目的から、これらの記録は1以上のパスワード又はセキュリティ資格証明で保護されている。一実施形態において、該データベースに関連付けられたアプリケーション(例えば、ウェブサイト)は、緊急時に個人の電子健康記録へのアクセスを可能にするために識別子Y及び対応するセキュリティ資格証明Sを生成する。一実施形態において、識別子Y及びセキュリティ資格証明Sを、EHRの一部として格納された全ての情報にアクセスするために使用できる。他の実施形態において、該識別子及び対応する資格証明は、EHR内の全てのデータへの完全なアクセスを得るためにではなく、緊急アクセスのためにEHR情報の部分組のみにアクセスするために使用できる。
【0062】
他の実施形態において、識別子Y及び資格証明Sは、暗号化キーTで暗号化され、これにより、暗号化された識別子X及び暗号化された資格証明S’を生成する。一実施形態においては、US8627103に記載されているようなメカニズムが暗号化及び復号化に使用され、これにより、医療提供者は、緊急エージェントによりデータ復号化キー(例えば、上記の資格証明S)が提供された後にのみ、該データ復号化キーにアクセスする。結果としての暗号化された識別子X及び暗号化された資格証明S’は、装置B若しくはCに記憶され、又は装置B若しくはCによりアクセスできる安全なデータベースに記憶される。装置B又はCは、暗号化キーTに関連付けられた復号化キーにもアクセスできる。
【0063】
一実施形態において、暗号化された識別子X及び、オプションとして、暗号化された資格情報S’は、EHRデータが属する人が加入しているモバイルネットワーク管理者(MNO)に供給され、次いでMNOにより、当該個人に送られるか、又は該個人のモバイル装置AのeSIMにダウンロードされ、若しくはMNOにより独自のインターフェースを使用して無線で安全に送信される該MNOのeUICCプロファイルの一部としてMNOにより遠隔的に事前設定されるSIM上に記憶される。暗号化された識別子Xは、3GPP TS 31.102で指定されているように、(e)SIM上で実行されるUSIMアプリケーションにより読み取ることができる基本ファイルとして保存されることが好ましい。暗号化された資格証明S’の場合も同様である。代替的実施形態において、暗号化された識別子X及び、オプションとしての、暗号化された資格証明S’は、例えば3GPP TS 31.111で指定されているように、(e)SIM上で実行される他のアプリケーションによりUSIMアプリケーションと同じセキュリティドメイン内のSIMツールキットの一部として記憶される。例えば、該他のアプリケーションは暗号化された識別子Xを含むダイナミックQRコード(登録商標)を読み取ることができるアプリケーションであり得、該QRコード(登録商標)はEHRデータベースに対するWebインターフェースにより生成される。このことは、暗号化された資格証明S’に対しても同様の方法で実行できる。
【0064】
他の実施形態において、暗号化された識別子Xは、モバイルネットワークに接続するために使用されるMNOのセキュリティドメインではなく非ネットワークセキュリティドメイン(例えば、ECASD)の下の(e)UICCに基本ファイルとして記憶される。該(e)UICC上のインターフェースアプリケーションは、一連のアクセス規則(例えば、Globalplatform Card Specifications v2.3.1で指定されている)を使用してセキュリティドメイン間で確立された安全なチャネルを介して該暗号化された識別子Xにアクセスし、ネットワーク関連情報(例えば、IMSI、PLMN)がセキュリティドメイン間でアクセス可能(ネットワークアクセス)でないことを保証する(例えば、Java Card 2.2xランタイム環境におけるアプレット分離及びオブジェクト共有に指定されているように)。このことは、暗号化された資格証明S’に対しても同様の方法で実行できる。
【0065】
他の実施形態において、暗号化された識別子Xは、モバイルネットワークに接続するために使用されるMNO.Yのセキュリティドメインではなく、MNO.Xのセキュリティドメインにおいて基本ファイルとして記憶される(例えば、SIMカードの一方は暗号化された識別子Xを有し、他のカードは有さないデュアルSIM装置)。(e)UICC上のインターフェースアプリケーションは、異なるセキュリティドメイン間で一連のアクセス規則を使用して確立された安全なチャネルを介して暗号化された識別子Xにアクセスし(ネットワークアクセス)、ネットワーク関連情報(例えば、IMSI、PLMN)はセキュリティドメイン間ではアクセス(ネットワークアクセス)できないことを保証する。このことは、暗号化された資格証明S’に対しても同様の方法で実行できる。
【0066】
代替実施形態において、暗号化された識別子Xは、(e)UICCのものとは異なる信頼の基点(root of trust)の下で安全なエレメント内に基本ファイルとして記憶される。緊急電話を開始すると、(e)UICC上のインターフェースアプリケーションは、該(e)UICCのものとは異なる信頼の基点の下で安全なエレメントに記憶されたセキュリティドメイン(ネットワークアクセスなし)の安全パラメータ(例えば、PINコード)を使用して(例えば、初期設定時に装置Aの所有者により提供された安全エレメントのPINコード)、暗号化された識別子Xにアクセスする。このことは、暗号化された資格証明S’に対しても同様の方法で実行できる。
【0067】
他の実施形態において、暗号化された識別子Xは、モバイルネットワークに接続するためにMNOプロファイルでまだ事前設定されていない(e)UICC自体(例えば、空白の(e)UICC)のセキュリティドメインに基本ファイルとして記憶される。該(e)UICC上のインターフェースアプリケーションは、該(e)UICCのセキュリティドメインの下で記憶された暗号化された識別子Xにアクセスし、ネットワークを介して該識別子を送信する(例えば、モバイル加入なしで行われる緊急電話のものと同等)。このことは、暗号化された資格証明S’に対しても同様の方法で実行できる。
【0068】
他の実施形態において、装置AはNFCインターフェースを有し、暗号化された識別子X及びオプションとしての暗号化された資格証明S’は、NFC通信チャネルを使用して装置Wから装置Aに転送され、これにより、(e)UICCのNFC機能を使用して(例えば、RSPアーキテクチャV2.2で指定されているように)、暗号化された識別子X及びオプションとしての暗号化された資格証明S’をMNOセキュリティドメインの下で又は許可された管理特権を持つセキュリティドメイン階層に記憶する。(e)UICC上のインターフェースアプリケーションが、暗号化された識別子X及びオプションとしての暗号化された資格証明S’を特定のセキュリティドメインの下で記憶するNFCアプリケーションが信頼され、(e)UICC上の固有のセキュリティドメインの下で(例えば、該セキュリティドメインの認証権限に基づいて)コンテンツを変更することを許可されることを保証することが必要とされるべきである。
【0069】
一実施形態において、車両内のセルラネットワークユニットは、当該車両が事故に巻き込まれた場合にeCallを行うことができる。セルラネットワークユニットは、例えば当該車両を利用する家族全員の、複数の識別子を備え得る。車両のセルラユニットが緊急エンティティにeCallを発信すると、複数の暗号化された識別子が緊急エンティティに対しeCallの一部として同時に送信され得る。複数の家族が当該自動車事故に巻き込まれる可能性があるためである。他の例として、eCallが緊急エンティティにより受信されると、当該eCallを発信している車両の位置が、該車両の最も近くにある1以上のモバイル装置(例えば、該車両内の1以上の人により携帯されているモバイル電話機)の位置と照合される。該位置が小さな誤差範囲(例えば2メートル)内で合致する場合、該位置が当該車両の位置と合致するモバイル装置(又は複数のモバイル装置)は、被害者により所有されていると見なされる。他の例として、緊急センターは、MNOにより提供されるサービスを介して、極近傍のモバイル装置の電話番号を見付けて、何が起きたか、及び何人の被害者がいるのかを確認するために電話を掛けることができる。
【0070】
他の実施形態において、装置Aは、GSM/CSMA/HSDP/LTE/5G NRを使用して緊急エンティティに緊急電話を掛け、該電話は緊急エンティティ内で装置Bに経路決め/転送される。緊急電話は、典型的に、ヨーロッパにおいては112及び米国においては911等の国内緊急電話番号に対してなされる緊急電話である。基本的に、国内緊急電話番号はモバイル装置により記憶及び認識され、該電話番号に対し、モバイル装置及びネットワークは緊急電話に関連する特別なプロトコル動作を開始できる。MNOは、例えば4Gに関しては3GPPTS 23.401セクション4.3.12で指定され、5Gに関しては3GPP TS 23.501セクション5.16.4で指定され、3GPP TS22.101セクションで全般的に指定されているように、緊急時に通話を処理するための特定のメカニズムを備えている。本明細書において、緊急電話は国内緊急電話番号への電話のみに限定されるものではなく、重要な患者の健康情報への迅速なアクセスが重要であり、そのように識別され得る、例えば病院等への他のタイプの電話でもあり得る。このことは、例えば、これらの電話番号の1つに電話が掛けられた場合に暗号化された識別子Xが送信されるべき特定の組の電話番号をMNOに提供することにより、電話を掛ける一部として追加の認証/承認ステップ(例えば、受信側がMNO又は送信元装置に対して自身を承認できる場合、又は送信元装置が、例えば病院により運営されている特定の(私的)ネットワークスライスにアクセスするための資格証明情報を提供する場合にのみ、暗号化された識別子Xを送信する)を有することにより、又は、例えば安全なAPIを介してネットワーク公開機能及び/又はポリシー制御機能(即ち、3GPP TS 23.501で指定されているNEF及びPCF)に接続されたアプリケーション(即ち、3GPP TS 23.501におけるアプリケーション機能(AF))を介して、若しくは合法的な傍受(interception)フレームワーク(例えば、3GPP TS 33.106で指定されているような)を介して必要な資格証明情報を提供することにより、達成できる。
【0071】
他の実施形態において、暗号化された識別子Xは、緊急通信セッション設定の一部として、別個のメッセージ又は既存のメッセージ内の属性若しくは情報要素/サブフィールドとして送信される。該識別子は、USIMアプリケーションにおける通話セットアップ手順の一部として挿入できる。通話セットアップのためにセッション開始プロトコル(SIP)が使用される場合、このことは、例えば、緊急サービスに対するSIP Invite(招待)又はSIP登録メッセージ内のフィールドを使用して実行できる(3GPP TS 23.167で指定されているように)。該識別子は、SIP Invite/Register(登録)メッセージの宛先として使用される緊急SIPアドレスに追加のURIパラメーターとして追加することもできる。他の例として、該識別子を、追加のメッセージとして、又はeCall MSDメッセージにおける追加のデータフィールドの一部として追加することもできる(3GPP TS 26.267で指定されているように)。通話設定のためにPLMN回線交換ネットワークが使用される場合、これは、例えば3GPP TS22.003セクションA.1.2で指定されているように緊急通話に含まれる属性内のフィールドに追加できる。
【0072】
他の実施形態において、資格証明S又は暗号化された資格証明S’も、装置Aの安全な記憶部に格納され、緊急通信セッションの一部として暗号化された識別子Xと共に送信される。
【0073】
代替実施形態において、暗号化された識別子Xはモビリティ管理団体(MME)、アクセスモビリティ機能(AMF)又はパケットデータネットワークPDNゲートウェイに、例えばNASアタッチ要求若しくはNASアタッチアクセプトメッセージ及び/又は緊急ベアラ(emergency bearer)に対するPDN接続要求のフィールド/属性の一部として送信される。対応するMME/AMF、PDNゲートウェイは識別子Xを緊急エンティティに転送する(例えば、IMS接続設定のSIPメッセージ又は回線交換ネットワーク接続設定の一部としてのメッセージの一部として)。
【0074】
他の代替の実施形態において、暗号化された識別子Xは、装置A自体には格納されず、コアネットワーク内に、例えば、ホーム加入者サーバ(HSS、TS 23.002で指定される)又はネットワーク管理者により提供される汎用5GユーザIDサービスの一部として記憶される。装置Aが自身をネットワークに登録すると、MMEはHSSから情報を取り込み、緊急エンティティとの接続セットアップ中に該情報を渡す(例えば、IMS接続セットアップのSIPメッセージ又は回線交換ネットワーク接続のセットアップの一部としてのメッセージの一部として)。これは、勿論、SIMがコアネットワークに適切に登録されている(即ち、3GPP TS 23.401セクション4.3.12に従って有効なUEである)場合にのみ使用できる。また、緊急時に当該装置がネットワークに完全に登録されていない場合でも、該ネットワークは、ユーザがEHRデータにアクセスするために以前に自身の装置のIMEI又は他のIDを暗号化された識別子にリンクさせていた場合、サービスを提供できる。
【0075】
他の代替実施形態において、暗号化されていない識別子Yは装置Aの安全記憶部に格納される。識別子Yは、装置Aの(e)SIM内のセキュリティプロセッサを使用して、該モバイル電話機自体に安全に保存されている資格証明(例えば、MNOのセキュリティドメインの一部である資格証明又は別のセキュリティドメインの資格証明部分)を使用して暗号化される。これは、勿論、SIMがコアネットワークに適切に登録されており、NAS及びASセキュリティ状態にある(即ち、3GPP TS 23.401セクション4.3.12に従って有効なUEである)場合にのみ使用されるべきである。代わりに、別個のIPSec又はHTTPS通信チャネルを設定することもできる(例えば、事前共有キーを使用いて、又は緊急エンティティから受信されると共に信頼できる認証局により署名されたX.509証明書からの公開キーを使用して)。それ以外の場合、暗号化は行われず、識別子Yが平文で送信され、このことは、セキュリティハッキングに対して該識別子を脆弱にさせ得る。
【0076】
ユーザは、全ての緊急通話に暗号化された識別子Xを含める許可を与えることができ、及び/又は、例えば当該モバイル装置上のアプリケーション(例えば、SIMツールキット環境の一部として実行される)を介して若しくはMNOのWebサイトを介して、何の状況及び/又は何の電話番号に関して当該暗号化された識別子Xが緊急電話の一部として送信されることが許可されるかについての何らかのポリシー情報(例えば、PCFに保存される)を供給できる。暗号化された識別子Xを何時含めるべきかのロジックも、USIMアプリケーションの一部としてプログラムできる。
【0077】
セキュリティを強化するために、装置A(又はMME等のコアネットワーク機能)に特別な資格証明情報(例えば、装置Bにより装置Aに、特定の認証局により署名されたX.509証明書の一部として送信される緊急資格証明情報)が供給される場合にのみ、装置Aは暗号化された識別子Xを装置Bに送信でき、上記特別な資格証明情報に関して、その信頼性は暗号化された識別子Xを送信する前に装置A(又はMME等のコアネットワーク機能)により検証できる。このことは、当該モバイル装置が暗号化された医療識別子を送信する前に特別なメッセージ(このような緊急資格証明を含み得る)を待つように構成されている場合、前述した手順の一部であり得る。更に、セキュリティを強化するために、暗号化された識別子Xは、緊急電話の一部として使用された後(又は特定の予め決められた時間の後)新しいハッシュ又は資格証明情報で再暗号化されるべきである。オプションとして、セキュリティを強化するために、暗号化された識別子Xは、装置Aと装置Bとの間で別個のIPSec又はHTTPSで保護された通信チャネルを介して送信できる。
【0078】
他の実施形態において、当該システムは以下の装置からなる。装置A、B及びCは上記と同様である一方、装置Dは緊急電話を掛けるために使用されるモバイル装置であるが、被害者自身ではなく、居合わせた人又は該被害者の家族により操作される。これは、現場に到着したばかりの最初の対応者でもあり得る。これは、通常、モバイル電話機である。
【0079】
一実施形態において、電話を掛ける人又は最初の対応者は、被害者のモバイル電話機を持って緊急電話を掛けるように求められ、その結果、暗号化された識別子XがEHR情報にアクセスするために緊急エンティティに送られる。このシナリオは、上記で更にカバーされる。
【0080】
他の実施形態において、緊急エンティティ(例えば、装置B)は、緊急電話中に一般的に提供されるように(例えば、TS 23.167セクション7.6で指定されるように)、緊急電話を掛けている装置Dの位置を受信する。これは、FCCのE911指令(https://www.fcc.gov/general/9-1-1-and-e9-1-1-servicesを参照)のように、多くの国において必須の法的要件であるからである。装置Dの位置を受信した後、装置BはサービスSに、緊急電話を掛けている装置Dの近傍における最も近いモバイル装置に関する情報を提供するように要求できる。この目的のために、装置Bは受信した位置情報をサービスSに送信することができ、又はサービスSが、この情報をコアネットワークにおける位置特定サービス/団体(例えば、GMLC又はE-SMLC、例えばhttps://www.cisco.com/c/en/us/td/docs/wireless/asr_5000/20/MME/b_20_MME_Admin/b_20_MME_Admin_chapter_011110.pdfを参照)から要求する。この目的のために、サービスSは、装置Dが接続されているeNBに、eNBに接続されている全てのモバイル装置の位置を測定する(例えば、LTE測位プロトコル(LPP)、モバイル位置特定プロトコル(MLP)及び/又はセキュアユーザプレーン位置特定(SUPL)を介して)要求を発することができ、その後、当該モバイル装置と装置Dの位置との間の距離が推定され、最も近い推定距離を有する装置が選択される。例えば、被害者の周りに形成されている例えば円の形状のグループを検出することにより、追加の前後関係情報を使用できる。被害者の電話機は、該円の中心に位置しそうである。
【0081】
当該システムの一実施形態において、対処時間を更に短縮するために、緊急エンティティは発送する前に最も近い第1対応者を選択できる。ここで、第1対応者という用語は、緊急事態において応急処置を行う医療専門家の意味で使用される。このような専門家は、通常、緊急エンティティによりEHRデータが発送される専門家である。しかしながら、この明細書において言及される「対応者(応答者)」という文言は、既に事故現場にいる人、例えば被害者ではないが、応急処置を提供できる発呼者も指し得る。
【0082】
装置Aのユーザが被害者であることを確定し、該被害者の医療情報及び位置情報を導出したら、装置Bは、被害者の近くの対応者を第1応答者のモバイル装置から得られた情報に基づいて捜すことができる。この実施形態において、応答者のモバイル装置は、緊急エンティティの装置Bと位置情報を共有しなければならない。更に、第1対応者は、所与の時間に、例えば緊急事態に携わっているか又は緊急エンティティの装置Bに対し新しい要求を行えるか等の準備性に関する追加情報を提供しなければならない。また、特定の医学的状態を処理する際の該第1対応者の専門知識のレベルも定期的に更新でき、緊急エンティティの装置Bに提供されなければならない。この実施形態において、緊急エンティティの装置Bは、適切な第1対応者を該第1対応から得られる情報に基づいてリアルタイムで自動的に選択することができなければならない。第1対応者を選択したら、緊急エンティティの装置Bは、該第1対応者と緊急要請の受諾を確認しなければならない。緊急要請を受諾したら、装置Bは該第1対応者に対して被害者の位置及び医療情報を共有しなければならない。
【0083】
当該システムの一実施形態において、装置Dと装置Aとの間の距離を一層良好に検出するために、例えばIEEE 802.11-2016で指定されているWi-Fi(登録商標)ファイン時間測定を使用することにより、又はMNOが装置A及びDの両方でLTE ProSe機能(3GPP TS23.303及びTS24.334において指定されているような)を許可し、これらがLTEサイドリンクD2D通信チャネルを使用して互いを発見できると共に、例えばPC5又はWi-Fi(登録商標)アウェア測距を介して距離測定又は近接検出を実行できるようにすることによりAとDとの間の距離を測定するために、装置A又はDに対して特別なモードが要求され得る。他の例として、例えば911/112緊急エンティティの緊急医療手配者に、電話をかけた人又は最初の応答者に被害者の電話機を取り出して該電話機を自分の電話機の極近くに保持して、最も近くにある装置が確かにアドレスされるようにするよう指示させることにより、NFC又はQiを使用することもできる。NFC又はQi通信チャネルは、装置Aにメッセージを送信して、該装置に暗号化された識別子Xの送信を開始させるために使用できる。このようなメッセージは、暗号化された識別子Xを送信する前に装置Aにより信頼性を検証できる特別な資格証明情報(例えば、信頼できる証明機関により署名されたX.509証明の一部としての緊急資格証明情報)を含み得る。より具体的には、装置Aの(e)UICCのNFC機能(例えば、RSPアーキテクチャV2.2で指定されている)を、暗号化された識別子Xを最初の応答者の装置QのNFC対応(e)UICCに送信(例えば、PUSH)するために使用できる。装置Aの(e)UICC上のインターフェースアプリケーションは、ネットワーク関連情報(IMSI、PLMN等)が装置QのNFC対応(e)UICCのアプリケーションにNFCチャネルを介してアクセス可能とならないことを保証するであろう。装置Q、装置B又は装置Cは、識別子Xを復号化して復号化された識別子Yを生成し、次いで、該復号化された識別子Yを使用して、識別子Yに関連付けられた一連の患者の健康記録を取得する。
【0084】
他の実施形態において、前記距離情報及び/又は何の装置が装置Dに最も近いかについての情報は、サービスS又は装置Dを介して装置Bに伝達される。この情報を受信し、装置Aが装置Dに最も近い装置であると決定すると、装置Bは、暗号化された識別子Xを装置Bに送信するように装置Aに示す要求を発することができる(例えば、サービスS又は他のコアネットワークサービスを介して)。この目的のために、サービスSは、装置Aに、この特別な要求を伴うページングメッセージを送信することができる(これは、特別な緊急資格証明情報で暗号化でき、宛先IPアドレス又は呼び出し先情報を含む)。上記特別な要求を受信すると、装置Aは、暗号化された識別子Xを装置Bへの緊急電話の一部として送信できる。他の例として、装置Aは暗号化された識別子XをサービスS又は他のコアネットワークサービスに(例えば、RRCメッセージ若しくは(緊急)電話設定メッセージの一部として、又は特定の宛先IPアドレスへのユーザ平文メッセージとして)送信でき、サービスS又は他のコアネットワークサービスは該暗号化された識別子Xを装置Bに転送する。
【0085】
代替実施形態において、装置Bは装置Dを介して装置Aに特別な要求を発し、そうすると、装置DはLTEサイドリンクD2D通信チャネル又はNFC/Qi通信チャネルを介して該要求を装置Aに転送し、該装置Aは暗号化された識別子Xを装置Dに送信し、該装置Dは該暗号化された識別子Xを装置Bに転送する。
【0086】
第3の実施形態において、当該システムは以下の装置からなる。装置A及びBは上記と同じ役割を有するが、暗号化された資格証明を緊急通報の一部として含んでいても含んでいなくても良い。更なるモバイル装置{D0、…、Dn}は、ProSeサイドリンクチャネルを介した到着時間差(例えば、Wi-Fi(登録商標)アウェアのPC5)を使用して、Wi-Fi(登録商標)ファインタイム測定(例えば、Wi-Fi(登録商標)アウェア測距の一部として)を使用して、ブルートゥース(登録商標)の到着角度検出を使用して、及び/又は無線信号強度測定を使用した距離測定(例えば、PC5、Wi-Fi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)を使用する)を使用して、無線距離測定及び/又は角度検出を実行できる。
【0087】
一実施形態において、装置Bは、モバイル管理者のコアネットワークで動作するサービスTに通信可能に結合される。サービスTは、装置Aの位置を決定し及び/又は例えばコアネットワーク内の位置特定サービス/団体(例えば、GMLC又はE-SMLC、例えばhttps://www.cisco.com/c/en/us/td/docs/wireless/asr_5000/20/MME/b_20_MME_Admin/b_20_MME_Admin_chapter_011110.pdf参照)から位置情報を要求することができる。サービスTは、更に、例えば装置Aと同じeNBに接続されている装置のリストを要求する(例えば、eNB自体、MME、GMLC若しくはE-SMLC又は他のコアネットワークサービスから)ことにより、装置Aの近くにある一群のモバイル装置{K0、…、Km}を決定できる。サービスTは、更に、装置{K0、…、Km}の能力を決定でき(例えば、eNB、MME若しくは他のコアネットワークサービスから、又はUECapabilityEnquiryRRCメッセージを介して装置{K0、…、Km}から能力を要求することにより)、装置{K0、…、Km}のうちの無線距離測定及び/又は角度推定を実行できる装置の部分群{D0、…、Dn}を選択する。
【0088】
サービスTは、上記群のモバイル装置{D0、…、Dn}の各モバイル装置DxにメッセージMx(0≦x≦n)を送信し、ここで、メッセージMxはモバイル装置Aとの距離測定及び/又は角度推定の実行に参加するための命令及びオプションとしての認証資格証明情報を含み、該サービスTは更にメッセージNをモバイル装置Aに送信し、このメッセージはモバイル装置{D0、…、Dn}との距離測定及び/又は角度推定に参加するための命令及びオプションとしての認証資格証明情報を含む。オプションとして、ポップアップが表示され、当該装置のユーザに一層正確な距離測定への参加を承認するように求める。代わりに、ユーザに求められない場合、それらの距離データは匿名化される。モバイル装置A及びモバイル装置{D0、…、Dn}は、その後、距離測定及び/又は角度推定を実行し、該距離及び/又は角度測定の結果をサービスTに送信する。サービスT(又はTが通信的に結合されているコアネットワーク又は装置Aの他のサービス)は装置Aの位置推定を改善するために受信された距離(及び場合により角度)測定値を使用し、該改善された位置推定を宛先装置Bとのセルラ緊急通信セッションセットアップの一部として挿入する(例えば、MME、GMLC、E-SMLC又は他のコアネットワークサービス/機能により)。
【0089】
他の実施形態において、サービスTは、装置Aが接続されているeNB及び全ての近隣のeNBにも、距離測定/角度検出に参加するようにとの要求を送出し、好ましくは、装置Aによるだけでなく、装置{D0、…、Dn}によっても距離測定/角度検出を実行する。
【0090】
代替実施形態において、緊急エンティティ(すなわち、装置B)は、緊急通話中に一般的に供給されるように(例えば、TS 23.167セクション7.6で指定されるように)、緊急通話を行う装置Aの位置を受信する。このことは、FCCのE911指令(https://www.fcc.gov/general/9-1-1-and-e9-1-1-servicesを参照)のように、多くの国において必須の法的要件であるからである。装置Aの位置を受信した後、装置Bは、緊急電話を掛けている装置Aの一層正確な位置推定を提供するようにサービスTに要求できる。この目的のために、装置Bは受信した位置情報をサービスTに送信でき、又はサービスTがコアネットワーク内の位置特定サービス/団体(例えばGMLC又はE-SMLC、例えばhttps://www.cisco.com/c/en/us/td/docs/wireless/asr_5000/20/MME/b_20_MME_Admin/b_20_MME_Admin_chapter_011110.pdfを参照)から斯かる情報を要求し、その後、サービスTは上記の手順を実行し、装置Aの近くの前記一群の装置{D0、…、Dn}を使用して距離測定及び/又は角度推定を実行する。
【0091】
他の代替例において、当該緊急通話は、1以上のリレー装置(例えば、ProSe UE-UEリレー、UE-ネットワークリレー又はマルチホップリレーUE)を使用した間接ネットワーク接続を介して行われ得、これによれば、緊急通話を行うモバイル装置は、リモートUE(3GPP TS 23.303で指定されている)として動作する。全てのリレー装置がeNodeB基地局の直接有効領域/通信範囲内にあるとは限らないが、それらのデータが当該ネットワークに到達できるリレー装置(所謂、UE-Networkリレー)に到達するまで該データを互いにリレーすることにより該ネットワークに付属される。しかしながら、全てのリレー装置及び緊急電話を掛けるリモート装置は、位置推定及び相互の間の距離測定に参加できるものであり得る。一実施形態において、上記装置(及び、場合によっては、各リレー装置の1つ又は複数を経る間接接続を介して到達できる全ての他の装置)は、上述しメカニズムを使用して距離測定に参加するように当該ネットワークにより指示される。他の実施形態において、当該緊急通話がeノードBに到達する前に通過する全ての装置は、それらの距離測定機能を自動的にオンして、前記リモートUEと当該リレー装置との間の、及び場合によっては当該リレー装置と間接通信経路における全ての前のリレー装置との間の距離測定を実行し、その後、この情報は収集されて、例えば緊急通信と一緒に当該コアネットワークにおける位置特定サービスに送信される。
【0092】
図3は、モバイルネットワークにおいて無線通信を行うように構成されたモバイル装置で使用するための方法を示している。該モバイルネットワーク、医療データベース、暗号化された医療識別子、緊急エンティティ及びモバイル装置自体は、図1を参照して上述されている。
【0093】
該方法においては、緊急処理が実行され、ノード(START)501で開始する。第1段階(OBT)502において、該処理は当該装置のユーザの暗号化された医療識別子を取得する。例えば、該医療識別子は、当該モバイル装置の安全プロセッサ、例えばe)SIM内で医療識別子を暗号化することにより準備できる。該暗号化された医療識別子は、上記安全プロセッサ、例えば(e)SIMから取り出すことができる。次いで、段階(VIC?)503において、該処理は、例えば緊急電話番号への発呼がなされたことを検出することにより、ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確定する。そうでない場合、当該処理は、上向き矢印で示されているように緊急指示情報を監視することにより続行する。そうであると確定された場合、当該方法は、緊急通話中の緊急メッセージに上記暗号化された医療識別子を含めることにより、段階(INC)504に進む。更に、位置情報、及び他の医療情報、例えば被害者のモバイル装置から得られた心拍数等の他のデータを含めることができる。次いで、当該処理はノード(END)505で終了する。
【0094】
図4は、モバイルネットワークに配置されるべき緊急エンティティで使用するための方法を示す。該モバイルネットワーク、医療データベース、暗号化された医療識別子、モバイル装置及び緊急エンティティ自体は、図1を参照して前述されている。
【0095】
該方法においては、緊急処理が実行され、ノード(START)601で開始する。第1段階(EMC)602において、緊急電話設定(セットアップ)が検出される。該方法は、被害者のモバイル電話機を判定するための段階(DMV)603で継続する。被害者のモバイル電話機が当該緊急電話を掛けている場合、該モバイル電話機は前述したように緊急メッセージを送信する。したがって、緊急通話中に、段階(RCV)604において、上記緊急メッセージがモバイル装置から自動的に受信され、このことは、ユーザが緊急事態の被害者であり得ることを確定する。
【0096】
他の例として、緊急通話が緊急エンティティに、他のモバイル装置から、例えば居合わせ人、見物人又は緊急事態の対応者から着信している場合もあり得る。この場合、段階(DMV)603は、何のモバイル装置が被害者のモバイル装置であるかを判定することにより進行する。緊急電話を掛けているモバイル装置に最も近いモバイル装置を見付けるために位置特定サービスを使用する等の、被害者のモバイル装置を発見する種々の方法は前述した。被害者のモバイル装置を決定すると、要求メッセージがネットワークを介して被害者のモバイル装置に伝送される。該要求メッセージは、対応するモバイル装置のユーザの暗号化された医療識別子を、緊急メッセージに含めることを要求する。この場合、段階(RCV)604において、該緊急メッセージは上記要求メッセージを受信したモバイル装置から受信される。
【0097】
段階(REMI)605において、当該方法は上記緊急メッセージから暗号化された医療識別子を取り出すことにより進行する。次いで、段階(AMD)606において、前記医療データベースにアクセスして、上記暗号化された医療識別子に基づいて少なくとも1つの電子健康記録(EHR)を検索する。次いで、当該方法は、第1対応者をリアルタイム情報、例えば、第1対応者の位置、準備度、専門知識等に基づいて自動的に選択し、段階(FWD-MI)607において電子健康記録からの情報を緊急事態の対応者に自動的に転送する。また、被害者のモバイル装置の位置情報も転送できる。代わりに、該転送は、矢印610により概略的に示されるように、緊急エンティティにおける操作者により実行されてもよい。当該方法は、ノード(END)608で終了する。
【0098】
当業者には明らかであるように、当該方法を実施する多くの異なる方法が可能である。例えば、前記段階又はステップの順序は変更でき、幾つかの段階は並行して実行できる。更に、ステップの間には他の方法ステップを挿入できる。該挿入されたステップは、本明細書に記載されているような当該方法の改良を表し得るか、又は当該方法とは無関係であり得る。
【0099】
コンピュータ装置上で実行された場合に上記の方法、接続シーケンス、セキュリティ処理及び他の処理を実施するためのプログラムコード命令を有し、ネットワークからダウンロード可能であり、及び/又はコンピュータ可読媒体及び/又はマイクロプロセッサ実行可能媒体に記憶されたコンピュータプログラム製品が提供される。したがって、本発明による方法は、プロセッサシステムに各方法を実行させるための命令を有するソフトウェアを使用して実行できる。
【0100】
典型的に、緊急電話を実行するために作用し合うモバイル装置及び緊急エンティティ装置は、各々、装置に格納された適切なソフトウェアコードを含むメモリに結合されたプロセッサを備え、例えば、該ソフトウェアはダウンロードされ、及び/又は対応するメモリ、例えば、RAM等の揮発性メモリ又はフラッシュ等の不揮発性メモリ(図示せず)に格納されている。当該装置は、例えば、マイクロプロセッサ及びメモリ(図示せず)を備え得る。他の例として、当該装置は、全体として又は部分的にプログラマブルロジックで、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として実施化され得る。当該装置及びサーバは、全体として又は部分的に、所謂特定用途向け集積回路(ASIC)、すなわち、それらの特定の用途のためにカスタマイズされた集積回路(IC)として実施化され得る。例えば、前記回路は、例えば、Verilog、VHDL等のハードウェア記述言語を使用して、CMOSで実施化され得る。
【0101】
ソフトウェアは、当該システムの特定のサブ主体により実行されるステップのみを含み得る。該ソフトウェアは、ハードディスク、フロッピー、メモリ等の適切な記憶媒体に格納できる。該ソフトウェアは、配線に沿う信号として、無線で、又はデータネットワーク、例えばインターネットを使用して送信できる。該ソフトウェアは、ダウンロードのため及び/又はサーバ上でのリモート使用のために利用可能にできる。本発明による方法は、該方法を実行するために、プログラマブルロジック、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を構成するように配されたビットストリームを使用して実行できる。当該ソフトウェアは、ソースコード、オブジェクトコード、部分的にコンパイルされた形式のようなソース及びオブジェクトコードの中間のコード、又は本発明による方法の実施に使用するのに適した何らかの他の形式であり得ることが理解されよう。コンピュータプログラム製品に関する一実施形態は、記載された方法のうちの少なくとも1つの処理ステップの各々に対応するコンピュータ実行可能命令を含む。これらの命令は、サブルーチンに細分でき、及び/又は静的若しくは動的にリンクされ得る1以上のファイルに記憶できる。コンピュータプログラム製品に関する他の実施形態は、記載されたシステム及び/又は製品の少なくとも1つの手段の各々に対応するコンピュータ実行可能命令を含む。
【0102】
図5aは、コンピュータプログラム1020を含む書き込み可能部分1010を有するコンピュータ可読媒体1000を示し、該コンピュータプログラム1020はプロセッサシステムに図1図4を参照して説明したように当該システムにおいて前記方法及処理の1以上を実行させるための命令を含む。コンピュータプログラム1020は、コンピュータ可読媒体1000上で物理的マークとして又は該コンピュータ可読媒体1000の磁化により具現化できる。しかしながら、如何なる他の実施形態も同様に考えられる。更に、コンピュータ可読媒体1000は、ここでは光ディスクとして示されているが、該コンピュータ可読媒体1000は、ハードディスク、ソリッドステートメモリ、フラッシュメモリ等の任意の適切なコンピュータ可読媒体とすることができ、記録不可能又は記録可能とすることもできると理解されよう。コンピュータプログラム1020は、プロセッサシステムに前記方法を実行させるための命令を含む。
【0103】
図5bは、図1図4を参照して説明された装置又は方法の実施形態によるプロセッサシステム1100の概略図を示している。該プロセッサシステムは、回路1110、例えば1以上の集積回路を備えることができる。回路1110のアーキテクチャが、図に概略的に示されている。回路1110は、一実施形態による方法を実行するための及び/又はそのモジュール若しくはユニットを実施化するためのコンピュータプログラム要素を実行するための処理ユニット1120、例えば、CPUを備える。回路1110は、プログラミングコード、データ等を格納するためのメモリ1122を備える。メモリ1122の一部は、読み取り専用であり得る。回路1110は、通信要素1126、例えば、アンテナ、トランシーバ、コネクタ、又はその両方を含み得る。回路1110は、当該方法で定義された処理の一部又は全部を実行するための専用の集積回路1124を含み得る。プロセッサ1120、メモリ1122、専用IC1124及び通信要素1126は、相互接続部1130、例えばバスを介して互いに接続され得る。該プロセッサシステム1110は、各々コネクタ及び/又はアンテナを使用して、有線及び/又は無線通信を行うように構成され得る。
【0104】
明瞭化のために、上記の記載は本発明の実施形態を異なる機能ユニット及びプロセッサを参照して説明していることが理解されよう。しかしながら、本発明から逸脱することなく、異なる機能ユニット又はプロセッサ間での機能の任意の適切な分配を使用できることは明らかであろう。例えば、別々のユニット、プロセッサ又はコントローラにより実行されるべきと示されている機能は、同じプロセッサ又はコントローラにより実行され得る。したがって、特定の機能ユニットへの言及は、厳密な論理的又は物理的な構成又は組織を示すといより、説明された機能を提供するための適切な手段への言及としてのみ見なされるべきである。本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又はこれらの任意の組み合わせを含む任意の適切な形態で実施することができる。
【0105】
この明細書において、動詞「有する又は含む」は、掲載されているもの以外の要素又はステップの存在を除外せず、単数形表現の要素は、複数の斯様な要素の存在を除外しないことに注意されたい。要素のリストに先行する場合の「少なくとも1つ」等の表現は、該リストからの要素の全て又は任意の部分組の選択を表す。例えば、「A、B及びCの少なくとも1つ」という表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AとBの両方、AとCの両方、BとCの両方、又はA、B及びCの全てを含むと理解されるべきである。如何なる参照記号も、請求項の範囲を制限するものではない。本発明は、ハードウェア及びソフトウェアの両方により実施することができる。幾つかの「手段」又は「ユニット」は、ハードウェア又はソフトウェアの同じアイテムにより表され得、プロセッサは、恐らくはハードウェア要素との協動で、1以上のユニットの機能を果たすことができる。更に、本発明は実施形態に限定されず、本発明は上記に記載された又は相互に異なる従属請求項に記載された、各及び全ての新規な特徴又は特徴の組み合わせにある。
【0106】
要約すると、モバイルネットワーク内のモバイル装置及び緊急エンティティは、緊急電話に対応する。該ネットワークは、各個人に関する電子健康記録を含む医療データベースに結合される。当該モバイル装置は、該装置のユーザの暗号化された医療識別子を取得すると共に、ユーザが緊急事態の被害者であり得ると確定したら、緊急電話中の緊急メッセージに該暗号化された医療識別子を含めるように構成される。緊急エンティティは、上記緊急メッセージから暗号化された医療識別子を取り出すと共に、医療データベースにアクセスして、該暗号化された医療識別子に基づいて少なくとも1つの電子健康記録を取得し、該電子健康記録から緊急事態の対応者への情報の転送を可能にするように構成される。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-05-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリア内で第1無線装置の位置を特定する方法であって、
コアネットワーク内で動作するサービスに結合されている緊急エンティティにおいて呼び出しを受信することと、
前記第1無線装置の位置推定の実行を要求することと、
前記第1無線装置の近くで無線距離測定及び/又は角度推定を実行できるモバイル装置のセットを決定することと、
前記第1無線装置との間の距離測定の実行を命令するメッセージを前記決定されたセットの各モバイル装置へ送信することと、
前記測定の結果を受信することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1無線装置は、前記決定されたモバイル装置のセットに含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1無線装置の位置推定の決定のために前記受信した距離及び/又は角度測定を用いることをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1無線装置の近くで前記モバイル装置のセットを決定するステップは、前記第1無線装置と同じ親局に接続されているデバイスのリストを参照することによる、請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1無線装置の近くで前記モバイル装置のセットを決定するステップは、UECapabilityEnquiryRRCメッセージを介してモバイル装置の能力を要求することによってモバイル装置の能力を決定し、前記無線距離測定及び/又は角度推定を実行できるモバイル装置を選択することを含む、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
コアネットワーク内で動作するサービスに接続される緊急エンティティであって、
コアネットワーク内で動作するサービスに接続される緊急エンティティにおいて第1無線装置から呼び出しを受信する受信器と、
前記第1無線装置の近くで無線距離測定及び/又は角度推定を実行できるモバイル装置のセットを決定するコントローラと、
前記第1無線装置との間の距離測定の実行を命令するメッセージを前記決定されたセットの各モバイル装置へ送信する送信機と、を備え、
前記測定の結果を受信する、緊急エンティティ。
【請求項7】
モバイル装置であって、
コアネットワーク内で動作するサービスに接続される緊急エンティティへの呼び出しを確立する送信器と、
前記モバイル装置の近くの無線装置のセットとの間の距離測定の実行を命令するメッセージを受信する受信器と、
前記測定の結果を送信する送信器と、を備えるモバイル装置。
【請求項8】
モバイルネットワーク内で無線通信を行う位置特定サービスエンティティであって、
前記モバイルネットワークは、少なくとも或る地域にわたりネットワーク通信プロトコルに従ってモバイル装置のための無線通信を提供し、
前記ネットワーク通信プロトコルは、第1モバイル装置が緊急動作を実行すると緊急通話が開始されることを可能にし、
前記位置特定サービスエンティティは、前記或る地域内でモバイル装置の位置を特定するように構成され、
前記第1モバイル装置から緊急通話を受けると、
前記第1モバイル装置の近くで無線距離測定及び/又は角度推定を実行できる第2モバイル装置のセットを決定し、
前記第1モバイル装置との間の無線距離測定及び/又は角度推定の実行に参加するように命令するメッセージを前記第2モバイル装置のセットの各モバイル装置へ送信する、位置特定サービスエンティティ。
【請求項9】
前記距離及び/又は角度推定の結果を受信し、前記結果を用いて前記第1モバイル装置の改良された位置推定を取得し、
前記第1モバイル装置の前記位置推定を緊急エンティティへ提供する、請求項8に記載の位置特定サービスエンティティ。
【請求項10】
モバイルネットワーク内で無線通信を行う位置特定サービスエンティティであって、
前記モバイルネットワークは、少なくとも或る地域にわたりネットワーク通信プロトコルに従ってモバイル装置のための無線通信を提供し、
前記ネットワーク通信プロトコルは、第1モバイル装置が緊急動作を実行すると緊急通話が開始されることを可能にし、
前記位置特定サービスエンティティは、前記或る地域内でモバイル装置の位置を特定するように構成され、
前記モバイルネットワークで緊急通話を設定中の前記第1モバイル装置を一又は二以上のリレー装置を介して検出すると、
前記第1モバイル装置の近くで無線距離測定及び/又は角度推定を実行できるリレー装置のセットを決定し、
前記第1モバイル装置との間の無線距離測定及び/又は角度推定の実行を命令するメッセージを前記リレー装置のセットの各リレー装置へ送信し、
前記距離及び/又は角度推定の結果を受信し、
前記第1モバイル装置の位置推定を取得するために前記結果を使用する、位置特定サービスエンティティ。
【請求項11】
エリア内で第1無線装置の位置を特定する方法であって、
コアネットワーク内で動作する位置特定サービスに結合されている緊急エンティティが、
前記第1無線装置から呼び出しを受信し、
前記第1無線装置の位置推定の実行の要求を前記位置特定サービスへ送信することと、
前記緊急エンティティ又は前記位置特定サービスが、
前記第1無線装置の近くで無線距離測定及び/又は角度推定を実行できるモバイル装置のセットを決定し、
前記第1無線装置との間の無線距離測定及び/又は角度推定の実行を命令するメッセージを前記モバイル装置のセットの各モバイル装置へ送信することと、
前記位置特定サービスが、
前記モバイル装置のセットの各モバイル装置から前記無線距離測定及び/又は角度推定の結果を受信し、
前記無線距離測定及び/又は角度推定の結果を用いて前記第1無線装置の位置推定を実行し、
前記第1無線装置の位置推定の結果を前記緊急エンティティへ送信することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記第1無線装置は、前記決定されたモバイル装置のセットに含まれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1無線装置の近くで前記モバイル装置のセットを決定することは、前記第1無線装置と同じ親局に接続されているデバイスのリストを参照することを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1無線装置の近くで前記モバイル装置のセットを決定することは、UECapabilityEnquiryRRCメッセージを介してモバイル装置の能力を要求することによってモバイル装置の能力を決定し、前記無線距離測定及び/又は角度推定を実行できるモバイル装置を選択することを含む、請求項11から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
コアネットワーク内で動作する位置特定サービスに接続される緊急エンティティであって、
第1無線装置から呼び出しを受信する受信器と、
前記第1無線装置の近くで無線距離測定及び/又は角度推定を実行できるモバイル装置のセットを決定するコントローラと、
前記第1無線装置の位置推定の実行の要求を前記位置特定サービスへ送信し、前記第1無線装置との間の無線距離測定及び/又は角度推定の実行を命令するメッセージを前記モバイル装置のセットの各モバイル装置へ送信する送信機と、を備え、
前記受信器は、前記第1無線装置の位置推定の結果を前記位置特定サービスから受信する、緊急エンティティ。
【請求項16】
モバイル装置であって、
コアネットワーク内で動作する位置特定サービスに接続される緊急エンティティへ呼び出しを送信する送信器と、
前記モバイル装置の近くの無線装置のセットとの間の無線距離測定及び/又は角度推定の実行を命令するメッセージを前記緊急エンティティ又は前記位置特定サービスから受信する受信器と、
前記無線距離測定及び/又は角度推定を実行するコントローラと、を備え、
前記送信器は、前記無線距離測定及び/又は角度推定の結果を前記位置特定サービスへ送信する、モバイル装置。
【請求項17】
モバイルネットワーク内で無線通信を行う位置特定サービスエンティティであって、
前記モバイルネットワークは、少なくとも或る地域にわたりネットワーク通信プロトコルに従ってモバイル装置のための無線通信を提供し、
前記ネットワーク通信プロトコルは、第1モバイル装置が緊急動作を実行すると緊急通話が開始されることを可能にし、
前記位置特定サービスエンティティは、前記或る地域内でモバイル装置の位置を特定するように構成され、
前記第1モバイル装置から緊急通話を受けると、
前記第1モバイル装置の近くで無線距離測定及び/又は角度推定を実行できる第2モバイル装置のセットを決定し、
前記第1モバイル装置との間の無線距離測定及び/又は角度推定の実行を命令するメッセージを前記第2モバイル装置のセットの各モバイル装置へ送信する、位置特定サービスエンティティ。
【請求項18】
前記第2モバイル装置のセットの各モバイル装置から前記無線距離測定及び/又は角度推定の結果を受信し、
前記無線距離測定及び/又は角度推定の結果を用いて前記第1モバイル装置の位置推定を実行し、
前記第1モバイル装置の位置推定の結果を緊急エンティティへ送信する、請求項17に記載の位置特定サービスエンティティ。
【請求項19】
モバイルネットワーク内で無線通信を行う位置特定サービスエンティティであって、
前記モバイルネットワークは、少なくとも或る地域にわたりネットワーク通信プロトコルに従ってモバイル装置のための無線通信を提供し、
前記ネットワーク通信プロトコルは、第1モバイル装置が緊急動作を実行すると緊急通話が開始されることを可能にし、
前記位置特定サービスエンティティは、前記或る地域内でモバイル装置の位置を特定するように構成され、
前記モバイルネットワークで緊急通話を設定中の前記第1モバイル装置を一又は二以上のリレー装置を介して検出すると、
前記第1モバイル装置の近くで無線距離測定及び/又は角度推定を実行できるリレー装置のセットを決定し、
前記第1モバイル装置との間の無線距離測定及び/又は角度推定の実行を命令するメッセージを前記リレー装置のセットの各リレー装置へ送信する、位置特定サービスエンティティ。
【請求項20】
前記リレー装置のセットの各リレー装置から前記無線距離測定及び/又は角度推定の結果を受信し、
前記無線距離測定及び/又は角度推定の結果を用いて前記第1モバイル装置の位置推定を実行し、
前記第1モバイル装置の位置推定の結果を緊急エンティティへ送信する、請求項19に記載の位置特定サービスエンティティ。
【請求項21】
ネットワークからダウンロード可能であり、及び/又はコンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータプログラムであって、コンピュータ装置上で実行された場合に請求項1から5及び11から14の何れか一項に記載の方法を実施するためのプログラムコード命令を有する、コンピュータプログラム。
【外国語明細書】