(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105346
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】T細胞、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240730BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240730BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240730BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240730BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240730BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240730BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240730BHJP
【FI】
A61K35/17
C12N5/0783 ZNA
C12N5/10
A61P29/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P31/10
A61P31/12
A61P31/04
A61P35/02
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024071037
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2022570128の分割
【原出願日】2020-05-15
(71)【出願人】
【識別番号】522446661
【氏名又は名称】博迪賀康(北京)生物技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石彦
(72)【発明者】
【氏名】蒙俊辰
(72)【発明者】
【氏名】王暁博
(72)【発明者】
【氏名】耿爽
(57)【要約】 (修正有)
【課題】感染性疾患、炎症又は腫瘍を治療する医薬品の調製におけるT細胞の有用な使用を提供する。
【解決手段】Ryr2発現を調整する試薬、Ca
2+基礎振動を調整する試薬、m-カルパイン活性を調整する試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を調整する試薬又はRyr2が過剰発現されているT細胞の、感染性疾患、炎症又は腫瘍を治療する医薬品の調製における使用であって、好ましくは、前記Ryr2が過剰発現されているT細胞は、Treg細胞である、使用が提供される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ryr2遺伝子が欠損されていることを特徴とするT細胞。
【請求項2】
Ryr2遺伝子の7番エクソンが欠損されていることを特徴とする請求項1に記載のT細胞。
【請求項3】
少なくともRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列が欠損されており、好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、Ryr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにあることを特徴とする請求項1に記載のT細胞。
【請求項4】
前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、GCAGGGGを含むことを特徴とする請求項3に記載のT細胞。
【請求項5】
前記T細胞は、Tconv細胞であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のT細胞。
【請求項6】
前記調製方法は、shRNA、siRNA、CRISPR/Cas9、ジンクフィンガーヌクレアーゼ技術、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ技術又はホーミングエンドヌクレアーゼから選ばれることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のT細胞の調製方法。
【請求項7】
前記shRNAは、SEQ ID NO:5、6に示されることを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
T細胞のRyr2遺伝子をノックダウンすることにより、T細胞Ca2+基礎振動を低下させ、m-カルパイン活性を低下させ、DC細胞との結合強度を向上させ、免疫抑制細胞の機能を有する、又は感染性疾患、炎症若しくは腫瘍を治療する機能を有することを特徴とするshRNA。
【請求項9】
前記shRNAは、SEQ ID NO:5、6であることを特徴とする請求項8に記載のshRNA。
【請求項10】
Ryr2が過剰発現されていることを特徴とするT細胞。
【請求項11】
前記T細胞は、Treg細胞であることを特徴とする請求項10に記載のT細胞。
【請求項12】
Ryr2発現を調整する試薬、Ca2+基礎振動を調整する試薬、m-カルパイン活性を調整する試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を調整する試薬又は請求項1~5及び10~11のいずれか1項に記載のT細胞の、感染性疾患、炎症又は腫瘍を治療する医薬品の調製における使用。
【請求項13】
Ryr2発現を調整する試薬、Ca2+基礎振動を調整する試薬、m-カルパイン活性を調整する試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を調整する試薬又は請求項1~5及び10~11のいずれか1項に記載のT細胞の、感染性疾患、炎症又は腫瘍の治療における使用。
【請求項14】
Ryr2発現を低下させる試薬、Ca2+基礎振動を低下させる試薬、m-カルパイン活性を低下させる試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を向上させる試薬又は請求項1~5のいずれか1項に記載のT細胞の、感染性疾患又は炎症を治療する医薬品の調製における使用。
【請求項15】
Ryr2発現を低下させる試薬、Ca2+基礎振動を低下させる試薬、m-カルパイン活性を低下させる試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を向上させる試薬又は請求項1~5のいずれか1項に記載のT細胞の、感染性疾患又は炎症の治療における使用。
【請求項16】
Ryr2発現を向上させる試薬、Ca2+基礎振動を向上させる試薬、m-カルパイン活性を向上させる試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を低下させる試薬又は請求項10~11のいずれか1項に記載のT細胞の、腫瘍治療薬の調製における使用。
【請求項17】
Ryr2発現を向上させる試薬、Ca2+基礎振動を向上させる試薬、m-カルパイン活性を向上させる試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を低下させる試薬又は請求項10~11のいずれか1項に記載のT細胞の、腫瘍の治療における使用。
【請求項18】
前記感染性疾患は、細菌感染、ウイルス感染又は真菌感染から選ばれ、さらに好ましくはウイルス感染、感染性ショックを伴う肺炎、腹膜炎、菌血症、膿敗血症又は敗血症であり、前記ウイルス感染は、急性ウイルス感染又は慢性ウイルス感染から選ばれ、好ましくはインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、水疱口炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス又はヒトパピローマウイルスであることを特徴とする請求項12~15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
前記炎症は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強皮症、喘息、アトピー性皮膚炎、臓器特異的炎症性疾患、アレルギー、毛包炎、扁桃炎、肺炎、肝炎、腎炎、ざ瘡、自己免疫疾患、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、結腸炎、炎症性腸疾患、骨盤炎、再灌流損傷、移植拒絶反応、血管炎又は間質性膀胱炎から選ばれることを特徴とする請求項12~15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
前記腫瘍は、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、グリオーマ、腸癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、皮膚癌、横紋筋癌、舌扁平上皮癌、鼻咽頭頭癌、卵巣癌、胎盤絨毛癌、リンパ腫、白血病、直腸腺癌、髄芽腫、髄膜腫、神経線維腫、上衣腫、神経鞘腫、星細胞腫、黒色腫、中皮腫、骨髄腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病、表皮癌、結腸癌、胸腺癌、血液癌、頭頸部癌又は中咽頭癌から選ばれることを特徴とする請求項12~13及び16~17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
Ryr2発現調整の、Ca2+基礎振動調整、m-カルパイン活性調整又はT細胞とDC細胞との結合強度向上における使用。
【請求項22】
Ca2+基礎振動調整の、m-カルパイン活性調整又はT細胞とDC細胞との結合強度調整における使用。
【請求項23】
m-カルパイン活性調整の、T細胞とDC細胞との結合強度調整における使用。
【請求項24】
前記調整は低下又は向上であることを特徴とする請求項21~23のいずれか1項に記載の使用。
【請求項25】
Ryr2拮抗剤であって、前記拮抗剤は、Ryr2遺伝子の7番エクソン又はRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列を標的とし、好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、Ryr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにあり、さらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、GCAGGGGを含むことを特徴とするRyr2拮抗剤。
【請求項26】
Ryr2発現を調整することを含むことを特徴とする、T細胞とDC細胞との結合強度を調整する方法。
【請求項27】
前記調整は、低下又は向上であり、好ましくは、前記T細胞とDC細胞との結合強度を低下させる方法は、Ryr2発現を向上させることを含み、T細胞とDC細胞との結合強度を向上させる方法は、Ryr2発現を低下させることを含むことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
Ryr2発現を低下させることは、T細胞中のFoxP3を過剰発現させるか、又はRyr2阻害剤を添加することを含み、Ryr2発現を向上させることは、T細胞中のFoxP3の発現を低下させるか、又はRyr2駆動剤を添加することを含み、前記Ryr2阻害剤は、請求項25に記載のRyr2拮抗剤、リアノジン、ダントロレン又はJTV519から選ばれ、前記Ryr2駆動剤は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、カフェイン、4-クロロ-m-クレゾール、リアノジン、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、B型アドレナリン、4-クロロ-3-メチルフェノール、シアントラニリプロール、シクラニリプロール、環状アデノシン二リン酸リボース、スラミンナトリウム、テトラニリプロール又はトリフルオペラジンから選ばれることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
Ryr2発現を低下させることは、T細胞中のRyr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトすることを含み、好ましくは、T細胞中のRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列をノックダウン又はノックアウトし、さらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、Ryr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにあり、最も好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、GCAGGGGを含むことを特徴とする請求項26又は27に記載の方法。
【請求項30】
前記Ryr2発現を低下させることは、T細胞中のRyr2遺伝子の7番エクソンを欠損させることを含むことを特徴とする請求項26又は27に記載の方法。
【請求項31】
T細胞中のRyr2発現を低下させる、Ca2+基礎振動を低下させる、m-カルパイン活性を低下させる方法であって、前記方法は、
T細胞中のFoxP3を過剰発現させる、T細胞中のRyr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトするか、又はRyr2阻害剤を添加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
T細胞中のRyr2発現を向上させる、Ca2+基礎振動を向上させる、m-カルパイン活性を向上させる方法であって、前記方法は、
T細胞中のFoxP3の発現を低下させるか、又はRyr2駆動剤を添加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
Tconv細胞をTreg細胞と類似した機能を有するものに転化する方法であって、前記方法は、
Tconv細胞のFoxP3を過剰発現させるか、又はTconv細胞のRyr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項34】
Tconv細胞中のRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列をノックダウン又はノックアウトすることを含み、好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、Ryr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにあり、さらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、GCAGGGGを含むことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記方法は、Ryr2遺伝子の7番エクソンをノックアウトすることを含むことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項36】
請求項1~5のいずれか1項に記載のT細胞の有効量を対象に投与することを含むことを特徴とする感染性疾患又は炎症の治療方法。
【請求項37】
対象のT細胞中のFoxP3を過剰発現させること、T細胞中のRyr2発現を低下させること、Ca2+基礎振動を低下させること、m-カルパイン活性を低下させること、T細胞とDC細胞との結合強度を向上させること、又はRyr2阻害剤を添加することから選ばれることを特徴とする感染性疾患又は炎症の治療方法。
【請求項38】
前記感染性疾患は、細菌感染、ウイルス感染又は真菌感染から選ばれ、さらに好ましくはウイルス感染、感染性ショックを伴う肺炎、腹膜炎、菌血症、膿敗血症又は敗血症であり、前記ウイルス感染は、急性ウイルス感染又は慢性ウイルス感染から選ばれ、好ましくはインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、水疱口炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス又はヒトパピローマウイルスであり、前記炎症は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強皮症、喘息、アトピー性皮膚炎、臓器特異的炎症性疾患、アレルギー、毛包炎、扁桃炎、肺炎、肝炎、腎炎、ざ瘡、自己免疫疾患、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、結腸炎、炎症性腸疾患、骨盤炎、再灌流損傷、移植拒絶反応、血管炎又は間質性膀胱炎から選ばれることを特徴とする請求項35又は36に記載の方法。
【請求項39】
請求項10~11のいずれか1項に記載のT細胞の有効量を対象に投与することを含むことを特徴とする腫瘍治療方法。
【請求項40】
対象T細胞中のFoxP3の発現を低下させること、T細胞中のRyr2発現を向上させること、Ca2+基礎振動を向上させること、m-カルパイン活性を向上させること、T細胞とDC細胞との結合強度を低下させること、又はRyr2駆動剤を添加することから選ばれることを特徴とする腫瘍治療方法。
【請求項41】
前記腫瘍は、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、グリオーマ、腸癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、皮膚癌、横紋筋癌、舌扁平上皮癌、鼻咽頭頭癌、卵巣癌、胎盤絨毛癌、リンパ腫、白血病、直腸腺癌、髄芽腫、髄膜腫、神経線維腫、上衣腫、神経鞘腫、星細胞腫、黒色腫、中皮腫、骨髄腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病、表皮癌、結腸癌、胸腺癌、血液癌、頭頸部癌又は中咽頭癌から選ばれることを特徴とする請求項38又は39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物の技術分野に関し、具体的には、T細胞、その調製方法及び使用、並びにRyr2発現を調整する試薬、調整Ca2+基礎振動を調整する試薬、m-カルパイン活性を調整する試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を調整する試薬の、感染性疾患、炎症又は腫瘍を治療する医薬品の調製における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
制御性T細胞(Treg)は抑制性T細胞の機能亜群であり、天然のTreg細胞は1995年にSakaguchiらによって初めて報告され、それらは末梢血CD4+T細胞数の約5%~10%を占め、FoxP3は天然のTregの標識である。制御性T細胞は、天然Treg(n Treg)と獲得Treg(a Treg)の2種類に分類される。
【0003】
Treg細胞の抑制機序は研究の焦点である。参照文献:Past, Present, and Future of Regulatory T Cell Therapy in Transplantation and Autoimmunity(Romano et al.,Frontiers in Immunology,2019)で開示されている機序には、T細胞の溶解、表面タンパク質の抽出、アデノシンの局所生成などが含まれるが、これらのいずれにもTreg結合が必要である。近年、一連の研究報告は樹状細胞の直接抑制に研究の重点を移している。主な理由は以下の通りである。まず、CD4+T細胞の数ではTreg細胞が樹状細胞をはるかに上回っているが、Treg細胞は樹状細胞に比べて数的に優位であり、体内での割合は約2:1であり、抑制能のより合理的で公正な使用の可能性が推察される。次に、DC/Tregの直接結合は体内と体外でよく見られる。このような制約はDCを抑圧するものと考えられるが、適切な運用方法についてはまだ意見が一致していない。参照文献:Trans-endocytosis of CD80 and CD86: a molecular basis for the cell-extrinsic function of CTLA-4(Qureshi et al.,Science 332,2011)においてSakaguchiのチームは、これは主にCTLA-4がTreg上で発現するサイトーシス作用によって実現されることを提案した。Shevachは最近の論文で、MHC クラスII抽出が抗原提示におけるDCの抑制に重要な役割を果たすことを提案している。
【0004】
しかし、本願の発明者らは、TregとDCとの結合はLFA-1とICAM-1を介して媒介されており、結合自体が非常に強く、DC細胞の骨格が大きく歪んでしまい、他のT細胞への抗原提示をサポートできないと考えている(参照文献:Strong adhesion by regulatory T cells induces dendritic cell cytoskeletal polarization and contact-dependent lethargy(Chen et al.,The Journal of experimental medicine,2017))。時間の経過とともに、これらの違いが解消され、Tregが接触によってDCをどのように抑制するかについて、より正確で包括的な画像が得られるかもしれない。しかし、議論を続けるためには、なぜTregがDCをこれほど強力な力で結びつけているのか、その過剰な力がDCにどのように影響を与えているのか、という基本的な問いに答えなければならない。
【0005】
Ryr2は小胞体/筋小胞体(ER/SR)のカルシウム放出チャネルであり、以下の従来技術では、Ryr2遺伝子が心原性突然死、不整脈、冠状動脈性硬化症に関連することが開示されている。例えば、
非特許文献:Ryr2遺伝子の新たな突然変異による心原性突然死の家族研究(申童ら、中国医学と西洋医学を統合した心血管病雑誌、2019.02)は、Ryr2遺伝子上のミスセンス突然変異c.G4107Cを有すれば、労作性呼吸困難、胸痛などの症状が存在し、すなわち、Ryr2遺伝子上のミスセンス突然変異が心原性突然死と関連する可能性があることを開示した。
【0006】
非特許文献:CASQ2とRyr2のジアモルフィンによる心筋細胞リズム異常における作用(胡夏韻ら、新疆医科大学学報、2019.03)は、Ryr2とカルシウムチャンネルの関係を開示し、Ryr2が心筋細胞カルシウムチャンネル異常と不整脈に関与する過程を明らかにした。
【0007】
非特許文献:Ryr2遺伝子発現と冠状動脈性硬化症の心気虚証の発病との関連性に関する理論的検討(馬月香ら、中医薬情報、2012)は、Ryr2機能失調が心機能低下を招くことがあり、心が主に血脈に作用し、心気が血液運行を推進する基本動力であり、心気虚損が心機能低下を招くという中医学に合致することを開示し、Ryr2遺伝子の発現から心気虚証の証候の実質をさらに明らかにすることができる。
【0008】
非特許文献:カルベジロールのRyr2媒介自発性カルシウム振動に対する抑制作用(肖建民ら、中国病理生理雑誌、2013)は、カルベジロールがRyr2媒介自発性カルシウム振動を抑制できることを開示し、そして、カルベジロールが心不全死亡率を下げる面で他のβ受容体ブロッカーより優れていることを明らかにした。
【0009】
しかし、上記従来技術では、Ryr2とT細胞及び感染性疾患、炎症や腫瘍との関連性は開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術の空白を埋めるために、Treg細胞機能の調整スイッチであるRyr2を発見し、FoxP3過剰発現によりRyr2の発現を低下させる技術を取得し、しかも、標的位置を特定する。また、T細胞中のRyr2をノックダウン又はノックアウトすることによりCD4+T細胞プールが免疫抑制細胞になり、得られたT細胞はTreg細胞と類似した機能を持つことは多くの試験を通じて確認される。さらに、Ryr2の調整は、ウイルス感染、喘息、アレルギー、結腸炎や腫瘍のいずれの治療においても優れた効果が得られ、皮癬罹患マウスの関連する系の自己免疫を回復する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
具体的には、本発明の第1態様は、Ryr2遺伝子が欠損されているか、又はFoxP3が過剰発現されたT細胞を提供する。
【0012】
好ましくは、前記T細胞において、少なくともRyr2遺伝子の7番エクソンが欠損されている。
【0013】
好ましくは、前記T細胞において、少なくともRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列が欠損されている。
【0014】
好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、Ryr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにある。
【0015】
好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、少なくとも4つのグアニン(G)を含むヌクレオチド配列である。さらに好ましくは、少なくとも4~20個のグアニン(G)を含むヌクレオチドである。
【0016】
本発明の1つの特定実施形態では、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個などを含む。
【0017】
好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、GCAGGGGを含む。
【0018】
好ましくは、前記T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、制御/抑制性T細胞(Treg)又はメモリーT細胞から選ばれる。
【0019】
本発明の1つの特定実施形態では、前記T細胞はTconv細胞である。
【0020】
本発明の第2態様は、shRNA、siRNA、CRISPR/Cas9、ジンクフィンガーヌクレアーゼ技術、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ技術又はホーミングエンドヌクレアーゼを用いる本発明の前記T細胞の調製方法を提供する。
【0021】
好ましくは、前記shRNAはSEQ ID NO:5、6である。
【0022】
本発明の第3態様は、細胞のRyr2遺伝子をノックダウンすることにより、T細胞Ca2+基礎振動を低下させ、m-カルパイン(m-カルパイン)活性を低下させ、DC細胞との結合強度を向上させ、免疫抑制細胞の機能又は感染性疾患、炎症又は腫瘍を治療する機能を有するshRNAを提供する。
【0023】
好ましくは、前記shRNAは、SEQ ID NO:5、6である。
【0024】
本発明の第4態様は、Ryr2が過剰発現されているT細胞を提供する。
【0025】
好ましくは、前記T細胞は、細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、制御/抑制性T細胞(Treg)又はメモリーT細胞から選ばれる。
【0026】
本発明の1つの特定実施形態では、前記T細胞はTreg細胞である。
【0027】
本発明の第5態様は、FoxP3発現を調整する試薬、Ryr2発現を調整する試薬、Ca2+基礎振動を調整する試薬、m-カルパイン活性を調整する試薬又はT細胞とDC細胞との結合強度を調整する試薬の、感染性疾患、炎症又は腫瘍を治療する医薬品の調製における使用を提供する。
【0028】
好ましくは、前記感染性疾患は、細菌感染、ウイルス感染又は真菌感染から選ばれ、さらに好ましくはウイルス感染、感染性ショックを伴う肺炎、腹膜炎、菌血症、膿敗血症又は敗血症であり、前記ウイルス感染は、急性ウイルス感染又は慢性ウイルス感染から選ばれ、好ましくはインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス(例えばHSV-1、EBV)、麻疹ウイルス、水疱口炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス又はヒトパピローマウイルスである。
【0029】
好ましくは、前記炎症は任意の組織に現れる炎症であってもよく、前記組織は、副腎、副腎髓質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳腺、盲腸、中枢神経系(脳を含むか、又は除く)、小脳、子宮頸部、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎上皮細胞)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝、肺、リンパ、リンパ節、リンパ母細胞、上顎骨、縦隔、腸間膜、子宮筋層、鼻咽頭、網膜、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、軟組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃体、気管、子宮、外陰、白血球を含むが、これらに限定されるものではない。さらに好ましくは、前記炎症は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強皮症、喘息、アトピー性皮膚炎、臓器特異的炎症性疾患、アレルギー(例えばアレルギー鼻炎)、毛包炎、扁桃炎、肺炎、肝炎、腎炎、ざ瘡、自己免疫疾患、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、結腸炎、炎症性腸疾患、骨盤炎、再灌流損傷、移植拒絶反応、血管炎又は間質性膀胱炎から選ばれる。
【0030】
好ましくは、前記腫瘍は、任意の望ましくない細胞増殖(又は自体が望ましくない細胞増殖を示す任意の疾患)、新生物、又は望ましくない細胞増殖、新生物や腫瘍の傾向もしくはリスク増加であってもよい。良性又は悪性のものであってもよいし、原発性又は続発性(転移性)のものであってもよい。新生物は細胞の任意の異常な成長又は増殖であってもよく、また、任意の組織にあってもよい。組織の例は、副腎、副腎髓質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳腺、盲腸、中枢神経系(脳を含むか、又は除く)、小脳、子宮頸部、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎上皮細胞)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝、肺、リンパ、リンパ節、リンパ母細胞、上顎骨、縦隔、腸間膜、子宮筋層、鼻咽頭、網膜、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、軟組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃体、気管、子宮、外陰、白血球を含む。さらに好ましくは、前記腫瘍は、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、グリオーマ(例えば神経膠腫)、腸癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、皮膚癌、横紋筋癌、舌扁平上皮癌、鼻咽頭頭癌、卵巣癌、胎盤絨毛癌、リンパ腫(例えば非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫)、白血病、直腸腺癌、髄芽腫、髄膜腫、神経線維腫(例えば神経線維肉腫)、上衣腫、神経鞘腫、星細胞腫、黒色腫、中皮腫、骨髄腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病、表皮癌、結腸癌、胸腺癌、血液癌、頭頸部癌又は中咽頭癌から選ばれる。
【0031】
本発明の第6態様は、FoxP3発現を調整する試薬、Ryr2発現を調整する試薬、Ca2+基礎振動を調整する試薬、m-カルパイン活性を調整する試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を調整する試薬又は本発明の前記T細胞の、感染性疾患、炎症又は腫瘍の治療における使用を提供する。
【0032】
本発明の第7態様は、FoxP3発現を調整する試薬、Ryr2発現を調整する試薬、Ca2+基礎振動を調整する試薬、m-カルパイン活性を調整する試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を調整する試薬又は本発明の前記T細胞の、感染性疾患、炎症又は腫瘍を治療する医薬品の調製における使用を提供する。
【0033】
本発明の第8態様は、FoxP3発現調整、Ryr2発現調整、Ca2+基礎振動調整、m-カルパイン活性調整、T細胞とDC細胞との結合強度調整又は本発明に記載のT細胞の、感染性疾患、炎症又は腫瘍の治療又は感染性疾患、炎症又は腫瘍を治療する医薬品の調製における使用を提供する。
【0034】
好ましくは、前記感染性疾患は細菌感染、ウイルス感染又は真菌感染から選ばれ、さらに好ましくはウイルス感染、感染性ショックを伴う肺炎、腹膜炎、菌血症、膿敗血症又は敗血症であり、前記ウイルス感染は急性ウイルス感染又は慢性ウイルス感染から選ばれ、好ましくはインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス(例えばHSV-1、EBV)、麻疹ウイルス、水疱口炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス又はヒトパピローマウイルスである。
【0035】
好ましくは、前記炎症は任意の組織に現れる炎症であってもよく、前記組織は、副腎、副腎髓質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳腺、盲腸、中枢神経系(脳を含むか、又は除く)、小脳、子宮頸部、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎上皮細胞)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝、肺、リンパ、リンパ節、リンパ母細胞、上顎骨、縦隔、腸間膜、子宮筋層、鼻咽頭、網膜、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、軟組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃体、気管、子宮、外陰、白血球を含むが、これらに限定されるものではない。さらに好ましくは、前記炎症は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強皮症、喘息、アトピー性皮膚炎、臓器特異的炎症性疾患、アレルギー(例えばアレルギー鼻炎)、毛包炎、扁桃炎、肺炎、肝炎、腎炎、ざ瘡、自己免疫疾患、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、結腸炎、炎症性腸疾患、骨盤炎、再灌流損傷、移植拒絶反応、血管炎又は間質性膀胱炎から選ばれる。
【0036】
好ましくは、前記腫瘍は任意の望ましくない細胞増殖(又は自体が望ましくない細胞増殖を示す任意の疾患)、新生物、又は望ましくない細胞増殖、新生物や腫瘍の傾向もしくはリスク増加であってもよい。良性又は悪性のものであってもよいし、原発性又は続発性(転移性)のものであってもよい。新生物は細胞の任意の異常な成長又は増殖であってもよく、また任意の組織にあってもよい。組織の例は副腎、副腎髓質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳腺、盲腸、中枢神経系(脳を含むか、又は除く)、小脳、子宮頸部、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎上皮細胞)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝、肺、リンパ、リンパ節、リンパ母細胞、上顎骨、縦隔、腸間膜、子宮筋層、鼻咽頭、網膜、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、軟組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃体、気管、子宮、外陰、白血球を含む。さらに好ましくは、前記腫瘍は、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、グリオーマ(例えば神経膠腫)、腸癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、皮膚癌、横紋筋癌、舌扁平上皮癌、鼻咽頭頭癌、卵巣癌、胎盤絨毛癌、リンパ腫(例えば非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫)、白血病、直腸腺癌、髄芽腫、髄膜腫、神経線維腫(例えば神経線維肉腫)、上衣腫、神経鞘腫、星細胞腫、黒色腫、中皮腫、骨髄腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病、表皮癌、結腸癌、胸腺癌、血液癌、頭頸部癌又は中咽頭癌から選ばれる。
【0037】
本発明の第9態様は、FoxP3発現を向上させる試薬、Ryr2発現を低下させる試薬、Ca2+基礎振動を低下させる試薬、m-カルパイン活性を低下させる試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を向上させる試薬又は上記Ryr2遺伝子欠損T細胞の、感染性疾患又は炎症を治療する医薬品の調製における使用を提供する。
【0038】
本発明の第10態様は、FoxP3発現を向上させる試薬、Ryr2発現を低下させる試薬、Ca2+基礎振動を低下させる試薬、m-カルパイン活性を低下させる試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を向上させる試薬又は上記Ryr2遺伝子欠損T細胞の、感染性疾患又は炎症の治療における使用を提供する。
【0039】
本発明の第11態様は、FoxP3発現向上、Ryr2発現低下、Ca2+基礎振動低下、m-カルパイン活性低下又はT細胞とDC細胞との結合強度向上の、感染性疾患、炎症治療又は感染性疾患、炎症を治療する医薬品の調製における使用を提供する。
【0040】
好ましくは、前記感染性疾患は、細菌感染、ウイルス感染又は真菌感染から選ばれ、さらに好ましくはウイルス感染、感染性ショックを伴う肺炎、腹膜炎、菌血症、膿敗血症又は敗血症であり、前記ウイルス感染は、急性ウイルス感染又は慢性ウイルス感染から選ばれ、好ましくはインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス(例えばHSV-1、EBV)、麻疹ウイルス、水疱口炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス又はヒトパピローマウイルスである。
【0041】
好ましくは、前記炎症は任意の組織に現れる炎症であってもよく、前記組織は、副腎、副腎髓質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳腺、盲腸、中枢神経系(脳を含むか、又は除く)、小脳、子宮頸部、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎上皮細胞)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝、肺、リンパ、リンパ節、リンパ母細胞、上顎骨、縦隔、腸間膜、子宮筋層、鼻咽頭、網膜、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、軟組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃体、気管、子宮、外陰、白血球を含むが、これらに限定されるものではない。さらに好ましくは、前記炎症は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強皮症、喘息、アトピー性皮膚炎、臓器特異的炎症性疾患、アレルギー(例えばアレルギー鼻炎)、毛包炎、扁桃炎、肺炎、肝炎、腎炎、ざ瘡、自己免疫疾患、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、結腸炎、炎症性腸疾患、骨盤炎、再灌流損傷、移植拒絶反応、血管炎又は間質性膀胱炎から選ばれる。
【0042】
本発明の第12態様は、FoxP3発現を低下させる試薬、Ryr2発現を向上させる試薬、Ca2+基礎振動を向上させる試薬、m-カルパイン活性を向上させる試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を低下させる試薬又は上記Ryr2を過剰発現させたT細胞の、腫瘍治療薬の調製における使用を提供する。
【0043】
本発明の第13態様は、FoxP3発現を低下させる試薬、Ryr2発現を向上させる試薬、Ca2+基礎振動を向上させる試薬、m-カルパイン活性を向上させる試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を低下させる試薬又は上記Ryr2を過剰発現させたT細胞の、腫瘍の治療における使用を提供する。
【0044】
本発明の第14態様は、FoxP3発現低下、Ryr2発現向上、Ca2+基礎振動向上、m-カルパイン活性向上、T細胞とDC細胞との結合強度低下の、腫瘍治療又は腫瘍治療薬の調製における使用を提供する。
【0045】
好ましくは、前記腫瘍は任意の望ましくない細胞増殖(又はそれ自体が望ましくない細胞増殖を示す任意の疾患)、新生物、又は望ましくない細胞増殖、新生物や腫瘍の傾向もしくはリスク増加であってもよい。それは良性又は悪性のものであってもよいし、原発性又は続発性(転移性)のものであってもよい。新生物は細胞の任意の異常な成長又は増殖であってもよく、また任意の組織にあってもよい。組織の例は、副腎、副腎髓質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳腺、盲腸、中枢神経系(脳を含むか、又は除く)、小脳、子宮頸部、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎上皮細胞)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝、肺、リンパ、リンパ節、リンパ母細胞、上顎骨、縦隔、腸間膜、子宮筋層、鼻咽頭、網膜、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、軟組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃体、気管、子宮、外陰、白血球を含む。さらに好ましくは、前記腫瘍は、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、グリオーマ(例えば神経膠腫)、腸癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、皮膚癌、横紋筋癌、舌扁平上皮癌、鼻咽頭頭癌、卵巣癌、胎盤絨毛癌、リンパ腫(例えば非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫)、白血病、直腸腺癌、髄芽腫、髄膜腫、神経線維腫(例えば神経線維肉腫)、上衣腫、神経鞘腫、星細胞腫、黒色腫、中皮腫、骨髄腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病、表皮癌、結腸癌、胸腺癌、血液癌、頭頸部癌又は中咽頭癌から選ばれる。
【0046】
本発明の第15態様は、FoxP3発現向上の、Ryr2発現低下、Ca2+基礎振動低下、m-カルパイン活性低下又はT細胞とDC細胞との結合強度向上における使用を提供する。
【0047】
本発明の第16態様は、Ryr2発現調整の、Ca2+基礎振動調整、m-カルパイン活性調整又はT細胞とDC細胞との結合強度向上における使用を提供する。好ましくは、前記調整は低下又は向上である。
【0048】
本発明の第17態様は、Ca2+基礎振動調整の、m-カルパイン活性調整又はT細胞とDC細胞との結合強度調整における使用を提供する。好ましくは、前記調整は低下又は向上である。
【0049】
本発明の第18態様は、m-カルパイン活性調整の、T細胞とDC細胞との結合強度調整における使用を提供する。好ましくは、前記調整は低下又は向上である。
【0050】
本発明の第19態様は、Ryr2遺伝子の7番エクソン又はRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列を標的とするRyr2拮抗剤を提供する。好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列はRyr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにある。さらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列はGCAGGGGを含む。
【0051】
本発明の第20態様は、Ryr2発現を調整することを含むT細胞とDC細胞との結合強度を調整する方法を提供する。
【0052】
好ましくは、前記調整は低下又は向上である。前記T細胞とDC細胞との結合強度を低下させる方法は、Ryr2発現を向上させることを含み、T細胞とDC細胞との結合強度を向上させる方法は、Ryr2発現を低下させることを含む。
【0053】
好ましくは、前記Ryr2発現を低下させることは、T細胞中のFoxP3を過剰発現させるか、又はRyr2阻害剤を添加することを含む。さらに好ましくは、前記Ryr2阻害剤は、本発明の前記拮抗剤、リアノジン、ダントロレン又はJTV519から選ばれる。
【0054】
好ましくは、前記Ryr2発現を向上させることは、T細胞中のFoxP3の発現を低下させるか、又はRyr2駆動剤を添加することを含む。さらに好ましくは、前記Ryr2駆動剤は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、カフェイン、4-クロロ-m-クレゾール、リアノジン、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、B型アドレナリン、4-クロロ-3-メチルフェノール、シアントラニリプロール、シクラニリプロール、環状アデノシン二リン酸リボース、スラミンナトリウム、テトラニリプロール又はトリフルオペラジンから選ばれる。
【0055】
好ましくは、前記Ryr2発現を低下させることは、前記T細胞中Ryr2遺伝子の7番エクソンを欠損させることを含む。
【0056】
本発明の1つの特定実施形態では、shRNAを採用してSEQ ID NO:5、6のためにRyr2遺伝子の7番エクソンをノックアウトする。
【0057】
好ましくは、Ryr2発現を低下させることは、T細胞中のRyr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトすることを含む。さらに好ましくは、T細胞中のRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列をノックダウン又はノックアウトする。よりさらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列はRyr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにある。最も好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列はGCAGGGGを含む。
【0058】
好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は少なくとも4つのグアニン(G)を含むヌクレオチド配列である。さらに好ましくは、少なくとも4~10個のグアニン(G)を含むヌクレオチド配列である。
【0059】
本発明の1つの特定実施形態では、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個などを含む。
【0060】
本発明の第21態様は、T細胞中のRyr2発現を低下させる、Ca2+基礎振動を低下させる、m-カルパイン活性を低下させる方法であって、T細胞中のFoxP3を過剰発現させる、T細胞中のRyr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトするか、又はRyr2阻害剤を添加することを含む方法を提供する。
【0061】
好ましくは、少なくともRyr2遺伝子の7番エクソンをノックアウトする。
【0062】
本発明の1つの特定実施形態では、shRNAを採用してSEQ ID NO:5、6のためにRyr2遺伝子の7番エクソンをノックアウトする。
【0063】
好ましくは、前記方法は、T細胞中のRyr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトすることを含む。さらに好ましくは、T細胞中のRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列をノックダウン又はノックアウトする。よりさらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列はRyr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにある。最も好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列はGCAGGGGを含む。
【0064】
好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は少なくとも4つのグアニン(G)を含むヌクレオチド配列である。さらに好ましくは、少なくとも4~10個のグアニン(G)を含むヌクレオチド配列である。
【0065】
本発明の1つの特定実施形態では、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個などを含む。
【0066】
好ましくは、前記Ryr2阻害剤は、本発明の前記拮抗剤、リアノジン、ダントロレン又はJTV519から選ばれる。
【0067】
本発明の第22態様は、T細胞中のRyr2発現を向上させる、Ca2+基礎振動を向上させる、m-カルパイン活性を向上させる方法であって、T細胞中のFoxP3の発現を低下させるか、又はRyr2駆動剤を添加することを含む方法を提供する。
【0068】
好ましくは、前記Ryr2駆動剤は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、カフェイン、4-クロロ-m-クレゾール、リアノジン、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、B型アドレナリン、4-クロロ-3-メチルフェノール、シアントラニリプロール、シクラニリプロール、環状アデノシン二リン酸リボース、スラミンナトリウム、テトラニリプロール又はトリフルオペラジンから選ばれる。
【0069】
本発明の第23態様は、Tconv細胞をTreg細胞と類似した機能を有するものに転化する方法であって、Tconv細胞のFoxP3を過剰発現させるか、又はTconv細胞のRyr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトすることを含む方法を提供する。
【0070】
好ましくは、前記方法は、少なくともRyr2遺伝子の7番エクソンをノックダウン又はノックアウトすることを含む。
【0071】
本発明の1つの特定実施形態では、shRNAを採用してSEQ ID NO:5、6のためにRyr2遺伝子の7番エクソンをノックアウトする。
【0072】
好ましくは、前記方法は、Tconv細胞中のRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列をノックダウン又はノックアウトすることを含む。さらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列はRyr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにある。よりさらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列はGCAGGGGを含む。
【0073】
本発明の1つの特定実施形態では、Ryr2遺伝子のプロモータ領域の1.5kb又は40kb長さのヌクレオチド配列をノックダウン又はノックアウトする。
【0074】
好ましくは、前記Treg細胞と類似した機能は、DC細胞との結合強度、関連する表面マーカー(例えばCD25、GITR、CTLA-4、CD39、PD-1、LAG-3、TIM-3)の発現量、Ca2+レベルが低いこと、Ca2+基礎振動が低いこと、CMAC消化が低いこと、talin消化が低下したこと、及び免疫過多が低減したことを含むが、これらに限定されるものではない。
【0075】
本発明の第24態様は、本発明の前記Ryr2遺伝子欠損T細胞の有効量を対象に投与することを含む、感染性疾患又は炎症の治療方法を提供する。
【0076】
本発明の第25態様は、対象のT細胞中のFoxP3を過剰発現させること、T細胞中のRyr2発現を低下させること、Ca2+基礎振動を低下させること、m-カルパイン活性を低下させること、T細胞とDC細胞との結合強度を向上させること、又はRyr2阻害剤を添加することから選ばれる、感染性疾患又は炎症の治療方法を提供する。
【0077】
好ましくは、前記Ryr2阻害剤は本発明の前記拮抗剤、リアノジン、ダントロレン又はJTV519から選ばれる。
【0078】
好ましくは、前記感染性疾患は、細菌感染、ウイルス感染又は真菌感染から選ばれ、さらに好ましくはウイルス感染、感染性ショックを伴う肺炎、腹膜炎、菌血症、膿敗血症又は敗血症であり、前記ウイルス感染は、急性ウイルス感染又は慢性ウイルス感染から選ばれ、好ましくはインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス(例えばHSV-1、EBV)、麻疹ウイルス、水疱口炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス又はヒトパピローマウイルスである。
【0079】
好ましくは、前記炎症は任意の組織に現れる炎症であってもよく、前記組織は、副腎、副腎髓質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳腺、盲腸、中枢神経系(脳を含むか、又は除く)、小脳、子宮頸部、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎上皮細胞)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝、肺、リンパ、リンパ節、リンパ母細胞、上顎骨、縦隔、腸間膜、子宮筋層、鼻咽頭、網膜、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、軟組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃体、気管、子宮、外陰、白血球を含むが、これらに限定されるものではない。さらに好ましくは、前記炎症は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強皮症、喘息、アトピー性皮膚炎、臓器特異的炎症性疾患、アレルギー(例えばアレルギー鼻炎)、毛包炎、扁桃炎、肺炎、肝炎、腎炎、ざ瘡、自己免疫疾患、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、結腸炎、炎症性腸疾患、骨盤炎、再灌流損傷、移植拒絶反応、血管炎又は間質性膀胱炎から選ばれる。
【0080】
本発明の第26態様は、本発明の前記Ryr2を過剰発現させたT細胞の有効量を対象に投与することを含む、腫瘍治療方法を提供する。
【0081】
本発明の第27態様は、対象のT細胞中のFoxP3の発現を低下させること、T細胞中のRyr2発現を向上させること、Ca2+基礎振動を向上させること、m-カルパイン活性を向上させること、T細胞とDC細胞との結合強度を低下させること、又はRyr2駆動剤を添加することから選ばれる腫瘍治療方法を提供する。
【0082】
好ましくは、前記Ryr2駆動剤は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、カフェイン、4-クロロ-m-クレゾール、リアノジン、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、B型アドレナリン、4-クロロ-3-メチルフェノール、シアントラニリプロール、シクラニリプロール、環状アデノシン二リン酸リボース、スラミンナトリウム、テトラニリプロール又はトリフルオペラジンから選ばれる。
【0083】
好ましくは、前記腫瘍は、任意の望ましくない細胞増殖(又は自体が望ましくない細胞増殖を示す任意の疾患)、新生物、又は望ましくない細胞増殖、新生物や腫瘍の傾向もしくはリスク増加であってもよい。良性又は悪性のものであってもよいし、原発性又は続発性(転移性)のものであってもよい。新生物は細胞の任意の異常な成長又は増殖であってもよく、また任意の組織にあってもよい。組織の例は、副腎、副腎髓質、肛門、虫垂、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳腺、盲腸、中枢神経系(脳を含むか、又は除く)、小脳、子宮頸部、結腸、十二指腸、子宮内膜、上皮細胞(例えば腎上皮細胞)、胆嚢、食道、グリア細胞、心臓、回腸、空腸、腎臓、涙腺、喉頭、肝、肺、リンパ、リンパ節、リンパ母細胞、上顎骨、縦隔、腸間膜、子宮筋層、鼻咽頭、網膜、口腔、卵巣、膵臓、耳下腺、末梢神経系、腹膜、胸膜、前立腺、唾液腺、S状結腸、皮膚、小腸、軟組織、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、舌、扁桃体、気管、子宮、外陰、白血球を含む。さらに好ましくは、前記腫瘍は、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、グリオーマ(例えば神経膠腫)、腸癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、皮膚癌、横紋筋癌、舌扁平上皮癌、鼻咽頭頭癌、卵巣癌、胎盤絨毛癌、リンパ腫(例えば非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫)、白血病、直腸腺癌、髄芽腫、髄膜腫、神経線維腫(例えば神経線維肉腫)、上衣腫、神経鞘腫、星細胞腫、黒色腫、中皮腫、骨髄腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病、表皮癌、結腸癌、胸腺癌、血液癌、頭頸部癌又は中咽頭癌から選ばれる。
【0084】
本発明の前記「調整」とは、アップレギュレーション(向上)又はダウンレギュレーション(低下)を含む。例えば、前記「FoxP3発現を調整する試薬」は、FoxP3発現を向上させる試薬又はFoxP3発現を低下させる試薬を含み、前記「Ryr2発現を調整する試薬」は、Ryr2発現を向上させる試薬又はRyr2発現を低下させる試薬を含む。
【0085】
本発明の前記「治療」は、1つの徴候、症状、障害、病症又は疾患の進行又は重篤度の遅延、中断、阻止、制御、停止、軽減、又は逆転を含むが、これらに限定されるものではなく、疾患に関連する全ての徴候、症状、病症、又は障害を完全に解消するわけではない。
【0086】
本発明の前記「試薬」は、対応する機能を発生させたり特定の目的を達成させたりするために使用される汎用試薬、高純度試薬、解析用試薬、器具解析用試薬、臨床診断試薬、生物化学的試薬、無機イオン発色剤試薬又は装置やデバイスを表し得る。例えば、前記「FoxP3発現を向上させる試薬」は、T細胞中のFoxP3発現を向上させ得る任意の試薬、例えばT細胞にFoxP3遺伝子を導入する試薬、T細胞中のFoxP3遺伝子の転写又は発現を向上させる試薬などを含む。前記「FoxP3発現を低下させる試薬」は、T細胞中のFoxP3発現を低下させ得る任意の試薬、例えばT細胞中のFoxP3遺伝子をノックアウト又はノックダウンする試薬、FoxP3遺伝子の転写又は発現を抑制する試薬などを含む。前記「Ryr2発現を低下させる試薬」は、Ryr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトするのに必要な試薬、FoxP3発現を向上させる試薬、又はRyr2転写又は発現を低下させる試薬;例えば本発明の前記拮抗剤、リアノジン、ダントロレン又はJTV519などを含むが、これらに限定されるものではない。前記「Ryr2発現を向上させる試薬」は、T細胞にRyr2遺伝子を導入する試薬、T細胞中のRyr2遺伝子の転写又は発現を向上させる試薬又はT細胞中のFoxP3発現を低下させる試薬などを含むが、これらに限定されるものではない。前記「Ca2+基礎振動を低下させる試薬」は、Ryr2発現を低下させる試薬を含むが、これらに限定されるものではない。前記「Ca2+基礎振動を向上させる試薬」は、Ryr2発現を向上させる試薬を含むが、これらに限定されるものではない。前記「m-カルパイン活性を低下させる試薬」は、Ryr2発現を低下させる試薬を含むが、これらに限定されるものではない。前記「m-カルパイン活性を向上させる試薬」は、Ryr2発現を向上させる試薬を含むが、これらに限定されるものではない。前記「T細胞とDC細胞との結合強度を向上させる試薬」は、Ryr2発現を低下させる試薬を含むが、これらに限定されるものではない。前記「T細胞とDC細胞との結合強度を低下させる試薬」は、Ryr2発現を向上させる試薬を含むが、これらに限定されるものではない。
【0087】
本発明の前記「対象」は、非ヒト哺乳類又はヒトを含むが、これらに限定されるものではない。好ましくは、前記非ヒト哺乳類は、サル、イヌ、マウスやラットなどを含むが、これらに限定されるものではない。
【0088】
本発明の前記「有効量」とは、単一又は複数の用量で対象又は器官に投与した後に期待される治療を提供する本発明の前記試薬又は医薬品の量又は用量である。
【0089】
本発明の前記「CMAC」は青色蛍光染料であり、化学名が7-アミノ-4-クロロメチルクマリンである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。
【
図1】野生型マウスから単離されたTconv及びTreg細胞中のm-カルパインのタンパク質発現の解析であり、このうち、
図A、
図Cはm-カルパインのmRNAレベルであり、
図1Bはm-カルパインのタンパク質レベルであり、全ての値は平均値+SEMである。
【
図2】休止状態でのCa
2+の単一Tconv及びTreg細胞における基礎振動であり、検出系は、2mM Ca
2+のHBSSにCa
2+プローブFluo 4-AMを加えたものであり、ここで、各ラインは1つの細胞を表し、nは1群のデータ点における生物学的繰り返し回数であり、n=20である。
【
図3】休止状態でのTconv及びTregにおけるCa
2+振動の平均蛍光強度(MFI)である。Tconv及びTreg細胞についてFluo 4-AMにより染色してMFIを解析する。
【
図4】
図2に示されるCa
2+振動強度の標準偏差(SD)である。
【
図5】GEOデータベースによりTreg及びTconvのカルシウムイオン調節関連タンパク質のレベルを解析し、違いによって並べ替えられる。
【
図6】精製されたTconv及びTregにおけるRyr2 mRNA発現のqPCR解析である。
【
図7】カルパイン基質CMACで消化し、Ryr活性化(4-CMC処理)後のTconv(左)及びTreg(右)細胞のカルパイン活性を測定する。
【
図8】5mM JTV519阻害剤を用いてRyr2を抑制したTconv細胞(中央の図)、野生型Tconv細胞(左の図)及びTreg細胞(右の図)のカルシウムイオン基礎振動である。
【
図9】5mM JTV519阻害剤を用いてRyr2を抑制したTconv細胞、野生型Tconv細胞及びTreg細胞中のカルシウムイオン基礎振動の標準偏差である。
【
図10】WTマウスから単離されたTconv細胞及びshRNAからRyr2遺伝子をノックダウンしたTconv細胞のmRNA転写レベルをqPCRにより解析する。
【
図11】shRNAを採用してRyr2遺伝子をノックダウンしたTconv細胞と野生型Tconv細胞とのCa
2+基礎振動の比較である。
【
図12】shRNAを採用してRyr2遺伝子をノックダウンしたTconv細胞と野生型Tconv細胞とのCa
2+基礎振動の標準偏差である。
【
図13】JTV519処理Tconv(左)、JTV519処理Treg(中)及びRyr2ノックダウンTconv(右)におけるカルパイン活性である。
【
図14】T細胞のDC2.4への接着の接着力を検出する。左図は未処理Treg、Tconv及びJTV519処理Tconvの平均接着力であり、右図は空白干渉対照(shCtrl)とRyr2ノックダウンTconvの平均接着力である。
【
図15】OT-II T細胞とOVAを提示したDC2.4細胞との間の接着力の測定であり、
図Aは3つの細胞のAFM解析の模式図を示し、
図BはW/O細胞(無細胞群)、空白干渉対照(shCtrl)、Ryr2ノックダウンTconv、Tregの抑制細胞としての平均接着力を示す。
【
図16】抑制OT-II T細胞の分裂のテスト結果であり、
図Aは無Treg、Treg、空白干渉対照(shCtrl)又はRyr2ノックダウンTconv細胞の抑制OT-II T細胞の分裂のFACS図であり、
図BはTreg(100%抑制として定義)及び無Treg(0%抑制として定義)で標準化された空白干渉対照(shCtrl)又はRyr2ノックダウンTconv細胞の抑制効率であり、ここで、*、P <0.05、**、P <0.01、***、P <0.001、****、P <0.0001である。
【
図17】WTマウスから単離されたTconv細胞中のItpr1、Cacnb1、Trpm1、Trpm4、Trpv2、Orai1及びOrai3遺伝子のshRNAノックダウン効率をqPCRにより解析する。
【
図18】未処理Treg細胞、空白干渉対照Tconv(shCtrl)、Ryr2ノックダウンTconv、Itpr1ノックダウンTconv、Cacnb1ノックダウンTconv、Trpm1ノックダウンTconv、Trpm4ノックダウンTconv、Trpv2ノックダウンTconv、Orai1ノックダウンTconv、及びOrai3ノックダウンTconvの平均接着力である。
【
図19】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。具体的には、FoxP3過剰発現Tconv、A20、3T3及びRenca細胞中のRyr2 mRNAレベルである。
【
図20】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。Foxp3 ChIP-seq、トランスフェクションFoxp3(上)又はFoxp3(下)未トランスフェクションTconvである。矢印はRyr2遺伝子のTSS部位を示す。三角はChIP-seqにより認識された有意差がある結合ピークであり、この位置は主にこの遺伝子のプロモータ領域(ブロック)と重なる。
【
図21】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。上図はRyr2プロモータ-ルシフェラーゼレポータベクターの構築の概略図、TSS、転写開始部位である。下図はFoxP3過剰発現3T3又はRenca細胞においてRyr2プロモータにより駆動される転写レベルである。
【
図22】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。
図Aは配列において配列セグメントを削除した結果、即ち、Ryr2プロモータ-ルシフェラーゼレポータベクターの切断ベクターの概略図であり、
図BはFoxP3過剰発現3T3においてRyr2プロモータにより駆動される転写レベルである。
【
図23】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。
図AはRyr2プロモータ-ルシフェラーゼレポータベクターの2つの切断ベクター及びノックアウト戦略の概略図であり、
図BはFoxP3過剰発現3T3細胞における異なる切断ベクター又はFoxP3結合配列を発現させたRyr2プロモータにより駆動される転写レベルであり、N.S.は、統計学的有意差無しである。
【
図24】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。カルシウムイオンを含まないHBSSにおいて、4-CmCはFoxP3過剰発現A20又は3T3細胞を刺激し、カルシウムイオンが経時的に変化する平均軌跡(N=3)であり、独立の実験ごとに、1回の測定は少なくとも30個の細胞を解析用に集める。
【
図25】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス皮癬(Scurfy)モデルの免疫抑制を誘導し、Scurfyマウスの免疫恒常性を回復し、
図AはWT及びPBS注射後のマウスの生存率であり、
図Bは、Treg、Ryr2+/+(Foxp3-)Tconv及びRyr2-/-Tconvを注射したマウスのそれぞれの生存率である。
【
図26】Ryr2遺伝子においてCreは第7番エクソンをノックダウンする条件に依存してマウスをノックダウンして構築される。
【
図27】Ryr2+/+(Ryr2未ノックアウト野生型)マウス、CD4-Cre/Ryr2fl/+マウス、及びCD4-Cre/Ryr2-/-マウスの脾臓及び胸腺におけるCD4+及びCD8+T細胞の分布のフローサイトメトリー検出である。
【
図28】マウスのFoxP3+/CD4+脾臓細胞の割合である。
【
図29】WTTconv(Ryr2+/+)、Ryr2-/-Tconv中のTreg機能関連表面マーカー(CD25、GITR、CTLA-4、CD39、PD-1、LAG-3、TIM-3を含む)のフローサイトメトリー分析、及び24h抗CD3/抗CD28刺激後、上清中のIL-10及びTGF-βレベルのELISA検出である。
【
図30】Ryr2ノックダウンT細胞がインビトロで細胞接触による抑制機能を有する。WT(
図A)又はCD4-Cre、Ryr2fl/fl(Ryr2-/-)(
図B)マウスから単離されたTconv及びTregを比較し(
図C)、2mM Ca
2+のHBSSにおいてカルシウムイオンの振動レベル及びその標準偏差を検出する(
図D)。
【
図31】CMAC基質分解によりTreg、Ryr2+/+及びRyr2-/-Tconv細胞中のカルパイン活性を検出する。
【
図32】Treg、Ryr2+/+及びRyr2-/-Tconvの3種類の細胞におけるインビボ基質Talinの分解結果をウェスタンブロットによって示す。
【
図33】Ryr2ノックダウンTconvがインビトロで細胞接触による抑制機能を有する。4つの個別のDC-T細胞対由来の全てのデータ点(
図A、
図Bにおける点)を各条件で同じ日に収集し、
図Cの棒グラフの生成に用いられ、T-DC対ごとに、少なくとも15個の接着力の読み取り値が収集され、具体的には、WT Tconv(
図A)及びRyr2-/-Tconv細胞(
図B)対DC2.4の接着力、及び平均接着力(
図C)である。
【
図34】OT-II T細胞とOVAを提示したDC2.4細胞との間の接着の実験であり、DC上の抑制細胞はTreg、WT Tconv又はRyr2-/-Tconv細胞であり、
図Aは3つの細胞のAFM測定装置を示し、
図BはTreg、WT Tconv又はRyr2-/-Tconvの抑制細胞としての平均OT-II-DC接着力である。
【
図35】無Treg、Treg、Ryr+/+及びRyr2-/-Tconvの相対抑制効率であり、このうち、無Tregは0%、Tregは100%とする。
【
図36】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でヘルペス感染マウスモデルの免疫抑制を誘導し、図は細胞養子移入後の足底組織におけるHSV-1力価の解析であり、HSV-1、Treg、Ryr2-/-Tconv又はRyr2+/+Tconvは、それぞれPBS、Treg又はRyr2-/-Tconv、Ryr2+/+Tconvを養子移入したものである。
【
図37】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でヘルペス感染マウスモデルの免疫抑制を誘導し、図は細胞養子移入と紫外線不活化によるHSV-1抗原再攻撃後の遅発型過敏症(DTH)であり、抗原再攻撃を行わなかった足底の厚さは100%とした。
【
図38】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でヘルペス感染マウスモデルの免疫抑制を誘導し、上図はDTH解析における試験案であり、下図は代表的な足底腫脹である。
【
図39】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス喘息モデルの免疫抑制を誘導し、
図AはBALFの総浸潤であり、
図Bはリンパ細胞浸潤であり、
図Cは好酸球浸潤である。測定結果としての数値は全て3回の試験の平均値であり、空白は空白対照群を表し、PBS、Treg、Ryr2-/-Tconv及びRyr2+/+Tconv群は、それぞれ、喘息モデルにPBS、Treg、Ryr2-/-Tconv及びRyr2+/+Tconvを等量で注射したものである。
【
図40】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス喘息モデルの免疫抑制を誘導し、
図Aは喘息モデルの感受性手段であり、
図Bは代表的な肺H&E組織切片であり、縮尺は200μmを表し、PBS、Treg、Ryr2-/-Tconv及びRyr2+/+Tconv群は、それぞれ、喘息モデルにPBS、Treg、Ryr2-/-Tconv及びRyr2+/+Tconvを等量で注射したものである。
【
図41】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス結腸炎(IBD)モデルの免疫抑制を誘導し、空白は空白対照群、DSSは水処理を表す。
【
図42】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス結腸炎(IBD)モデルの免疫抑制を誘導し、
図AはDSS誘導結腸炎モデルの誘導方法であり、
図Bは代表的な結腸画像であり、
図Cは結腸切片の顕微鏡写真であり、縮尺は200μmを表す。
【
図43】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス結腸癌モデルの免疫抑制を誘導し、各群のマウスの腫瘍体積成長曲線をそれぞれ測定する。第1群:MC38+PBS、第2群:MC38+Ryr2+/+Tconv、第3群:MC38+Treg、第4群:MC38+Ryr2-/-Tconvである。
【
図44】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス皮癬(Scurfy)モデルの免疫抑制を誘導し、Scurfyマウスの免疫恒常性を回復し、図はマウスのKaplan-Meier生存曲線であり、
図AはWT及びPBS注射後のマウスの生存率であり、
図Bは、Treg、Ryr2+/+(Foxp3-)Tconv及びRyr2-/-Tconvをそれぞれ注射したマウスの生存率である。
【
図45】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス皮癬(Scurfy)モデルの免疫抑制を誘導し、Scurfyマウスの免疫恒常性を回復し、
図AはScurfyマウスの身体症状及び治療であり、
図Bは各器官(胸腺、脾臓、肺、耳、肝、膵臓、小腸、結腸)の代表的なH&E染色であり、PBS注射モデルマウス、WTマウスは、3週目にサンプルを採取し、Treg細胞、Foxp3-(Ryr2+/+) Tconv及びRyr2-/-Tconvを養子移入したマウスは8~12週目に採取する。
【
図46】Foxp3を過剰発現させRyr2を抑制することはT細胞の免疫抑制作用の重要な効果機序であり、左図はFoxp3を過剰発現させRyr2を抑制したT細胞の作用機序であり、右図は野生型T細胞の作用機序である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下、本発明の実施例の図面を参照して、本発明の実施例の技術的解決手段を明確かつ完全に説明するが、説明する実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、全部の実施例ではないことは明らかである。当業者が本発明の実施例に基づいて創造的な努力を必要とせずに得る他の全ての実施例は本発明の特許範囲に属する。
【0092】
実施例に使用される試験動物、試薬及び装置の由来
マウス
マウスは全てC57BL/6背景である。Ryr2fl/flマウス及びCAG-LSL-Ryr2-flagトランスジェニックマウスはGemPharmatech Co.,Ltdによって生産されたものであり、遺伝子型同定された。OT-IIトランスジェニックマウスはJackson実験室から購入する。野生型、Foxp3-IRES-GFP、Ryr2fl/fl、Ryr2トランスジェニック、OT-IIトランスジェニック、CD4-Cre及びFoxp3-Cre-YFP、雌Foxp3 +/-マウスは清華大学動物センタで飼育される。マウスは全て特定病原体フリー(SPF)の条件下で飼育する。全ての動物実験は動物福祉ガイドラインに合致し、清華大学動物実験倫理委員会IACUCにより承認された。
【0093】
細胞株及び初代細胞の培養
DC2.4細胞はKen Rock UMass医学院から贈られた。Vero細胞は清華大学薬学院の譚旭博士より提供された。Renca細胞は北京朝陽病院の安広宇医師より提供された。HEK293FT細胞は清華大学医学院の郭偉博士から贈られた。MC38細胞は米国典型培養物保蔵センタ(ATCC)から購入した。MC38、Renca、NIH-3T3細胞及びVero細胞は10%FBS、100U/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシンを含有するDMEMにて培養される。他の細胞は全て、50μMβ-メルカプトエタノールを含む同量のRPMI-1640にて成長する。PCR解析により全ての細胞株に対してマイコプラズマ汚染がテストされる。マウスCD4+CD25+Treg及びCD4+CD25-Tconvは、マウスCD4+T細胞単離キット(StemCell、19852)及びマウスCD25 Treg細胞陽性選択キット(Stem cell、18782)を用いて脾臓から単離される。Treg及びTconv細胞は、場合によっては、FACSによってFoxp3-IERS-GFPマウスCD4+脾臓細胞から選別される。マウスDCはマウスCD11c選択キットII(Stem cell、28007)を用いて脾臓から単離される。OT-II T細胞は、マウスCD4+T細胞単離キット(Stem cell、19852)を用いてOT-II脾臓細胞から単離され、場合によっては、FACSによりTCRVα2抗体を用いて選別される。
【0094】
抗体及び試薬
全ての初代細胞単離キットはStemCellからのものである。組換えヒトIL-2はR&D systemsからのものである。抗マウスCD3eモノクローナル抗体、抗マウスCD28及び抗マウスTCRVα2-PE抗体はeBioscienceからのものである。フローサイトメトリー抗体はeBioscienceからのものであり、抗CD4、抗CD8、抗GITR、抗CD25、抗PD-1、抗CTLA-4、抗Tim-3及び抗LAG3抗体を含む。抗FoxP3抗体はInvitrogenからのものである。抗マウスCD4、抗マウスCD8、抗マウスGITR、抗マウスCD25、抗マウスPD-1、抗マウス/ラットCTLA-4、抗マウス/ラットFoxP3(FJK-16s)、抗マウス/ヒトTim-3、抗マウスLAG3、抗マウスPD-1(J43.1)、抗マウスCTLA4(UC10-4B9)、抗マウスGITR(DTA-1)のクローンが使用される。ウェスタンブロット解析に用いられる抗体はm-カルパイン大サブユニット(M型)抗体と抗マウスIgG-HRPを連結した抗体はCSTからのものである。抗talin抗体(8D4)はSigma-Aldrichより購入された。
【0095】
清華大学生物医学解析センタのshRNAライブラリプラットフォームから購入されたpLKO.1ベクターは全ての遺伝子ノックダウン実験に用いられる。予め設計された全てのshRNA配列はRuiboxingke Biotechにより合成される。
【0096】
pLVX-IRES-mcherryベクターは清華大学医学院の沈暁華博士から贈られた。
【0097】
実施例1:Ryr2遺伝子ノックダウン又はFoxP3過剰発現T細胞の調製
1、Ryr2遺伝子ノックダウン試験のステップ
レンチウイルスによるshRNAをRyr2遺伝子ノックダウンに用い、具体的には、予め合成されたshRNA配列をpLKO.1ベクターに挿入した。EndoFreeプラスミドMidiキット(CWBIO、CW2105S)を用いて、形質転換大腸菌からshRNAを含むプラスミド及びパッケージング構築体(pMD2.G及びpsPAX2)を精製した。製造元による取扱書に従ってレンチウイルスパッケージングを行った。簡単に言えば、皿の60~80%が覆われるまで、293FT細胞を10cm皿で培養した。DNAトランスフェクション2時間前に培地を交換した。Neofect(Neofect)を用いて、パッケージングベクターpMD2.G 2.5μgとpsPAX2 2.5μg、pLKO.1ベクター5μg(挿入されたshRNA付き)を293FT細胞にトランスフェクションした。72時間後、レンチウイルスを得て、Polybrene(終濃度8μg/mL)でT細胞を感染した。ウイルス感染48時間後、Ariaフローサイトメータ(BD Biosciences)により細胞を選別した。リアルタイム定量PCRによりノックダウン効率を検証した。shRNA配列は以下に示される。
【0098】
対照-shRNA:5'-CCGGcaacaagatgaagagcaccaaCTCGAGttggtgctcttcatcttgttgTTTTTG-3'(SEQ ID NO:3)と5’-AATTCAAAAAcaacaagatgaagagcaccaaCTCGAGttggtgctcttcatcttgttgg-3’(SEQ ID NO:4);Ryr2-shRNA:5'-CCGGccgctaatgaagccatataaaCTCGAGTTTATATGGCTTCATTAGCGGTTTTTG-3'(SEQ ID NO:5)と5’-AATTCAAAAAccgctaatgaagccatataaaCTCGAGTTTATATGGCTTCATTAGCGG-3’(SEQ ID NO:6);Itpr1-shRNA:5'-CCGGgcagtaggtaagaagttattaCTCGAGtaataacttcttacctactgcTTTTTG-3'(SEQ ID NO:7)と5'-AATTCAAAAAgcagtaggtaagaagttattaCTCGAGtaataacttcttacctactgc-3'(SEQ ID NO:8);
Orai1-shRNA:5'-CCGGcacaaccaccaactcggtcaaaCTCGAGtttgaccgagttgaggttgtgTTTTTG-3'(SEQ ID NO:9)と'-AATTCAAAAAcacaacctcaactcggtcaaaCTCGAGtttgaccgagttgaggttgtg-3'(SEQ ID NO:10);Orai3-shRNA:5'-CCGGgcccttgcttatctgtataatCTCGAGattatacagataagcaagggcTTTTTTGG-3'(SEQ ID NO:11)と5'-AATTCAAAAAAgcccttgcttatctgtataatCTCGAGattatacagataagcaagggc-3'(SEQ ID NO:12); Trpm1-shRNA:5'-CCGGcggagtgaacatgcagcatttCTCGAGaaatgctgcatgttcactccgTTTTTG-3'(SEQ ID NO:13)と5'-AATTCAAAAAcggagtgaacatgcagcatttCTCGAGaaatgctgcatgttcactccg-3'(SEQ ID NO:14);Trpm4-shRNA:5'-CCGGgcacatcttcacggtgaacaaCTCGAGttgttcaccgtgaagatgtggttTTTG-3'(SEQ ID NO:15)と5'-AATTCAAAAAgcacatcttcacggtgaacaaCTCGAGttgttcaccgtgaagatgtgc-3'(SEQ ID NO:16);Trpv2-shRNA:5'-CCGGccaaggaacttgtttctatttCTCGAGaaatagaaacaagttccttggTTTTTG-3'(SEQ ID NO:17)と5'-AATTCAAAAAccaaggaacttgtttctatttCTCGAGaaatagaaacaaagagctccttgg-3'(SEQ ID NO:18);Cacnb1-shRNA:5'-CCGGtaggaacgcaatggatattaaCTCGAGttaatatccattgcgttcctaTTTTTG-3'(SEQ ID NO:19)と5'-AATTCAAAAAtaggaacgcaatggatattaaCTCGAGttaatattccattgcgttccta-3'(SEQ ID NO:20)。
【0099】
2、ノックダウン効率はリアルタイム定量PCRにより検証された。具体的なステップは以下に示される。
【0100】
TRIzol試薬(Invitrogen)を用いて、係る細胞から全RNAを抽出し、逆転写酵素M-MLV(TaKaRa)を用いて第1鎖cDNAを合成した。SYBR Green Master Mix(No Rox)(Yeasen)を用いてリアルタイム定量PCRを行った。GAPDH又は18S RNAを標準化対照に用いた。プライマー配列は以下に示される。
【0101】
マウスGAPDH、5'-CATCACTGCCACCCAGAAGACTG-3'(SEQ ID NO:21)と5'-ATGCCAGTGAGCTTCCCGTTCAG-3’(SEQ ID NO:22);マウス18S RNA、5'-CGGACAGGATTGACAGATTG-3'(SEQ ID NO:23)と5’-CGGACAGGATTGACAGATTG-3’(SEQ ID NO:24);マウスRyr2、5’-ATGGCTTTAAGGCACAGCG-3’(SEQ ID NO:25)と5’-CAGAGCCCGAATCATCCAGC-3’(SEQ ID NO:26);マウスFoxP3、5’-CCCATCCCCAGGAGTCTTG-3'(SEQ ID NO:27)と5'-ACCATGACTAGGGGCACTGTA-3'(SEQ ID NO:28);マウスm-カルハイン、5'-3'と5'-3';マウスItpr1、5'-CGTTTTGAGTTTGAAGGCGTTT-3'(SEQ ID NO:29)と5'-CATCTTGCGCCAATTCCCG-3'(SEQ ID NO:30);マウスOrai1、5'-GATCGGCCAGAGTTACTCCG-3'(SEQ ID NO:31)と5'-TGGGTAGTCATGGTCTGTGTC-3'(SEQ ID NO:32);マウスOrai3、5’-GGCTACCTGGACCTTATGGG-3'(SEQ ID NO:33)と5'-GCAGGCACTAAATGTGACC-3'(SEQ ID NO:34);マウスTrpm1、5'-ATCCGAGTCTCCTACGACACC-3'(SEQ ID NO:35)と5'-CAGTTTGGACTGCATCTCGAA-3’(SEQ ID NO:36);マウスTrpm4、5'-GGACTGCACACAGGCATTG-3'(SEQ ID NO:37)と5'-GTACCTTGCGGGGAATGAGC-3’(SEQ ID NO:38);マウスTrpv2、5'-TGCTGAGGTGAACAAAGGAAAG-3'(SEQ ID NO:39)と5'-TCAAACCGATTTGGGTCCTGT-3'(SEQ ID NO:40);マウスCacnb1、5′-GGCAGCAAGTTATCTCCCAG-3'(SEQ ID NO:41)と5'-CCACAGGATGATTGGCGTCTT-3'(SEQ ID NO:42); HSV-1 gB、5’-AACGCGACGCACATCAAG-3'(SEQ ID NO:43)と5'-CTGGTACGCGATCAGAAAGC-3'(SEQ ID NO:44); HSV-1 LAT、5'-GGGTGGGCTCGTGTTACAG-3'(SEQ ID NO:45)と5'-GGACGGGTAAGTAACAGAGTCTCTA-3’(SEQ ID NO:46)。
【0102】
3、FoxP3過剰発現試験のステップ
ベクターを構築し、Tregの全RNAのcDNAをテンプレートとして、順方向プライマー5’-ATCGCTCGAGATGTGCACACCTAGGCCA-3’(SEQ ID NO:47)と逆方向プライマー5’-ATCGGAATTCTCAAGGGCAGGGATTGGA-3’(SEQ ID NO:48)のプライマーを用いて、FoxP3をPCR増幅した。増幅した断片をゲルで精製し、消化(XhoIとEcoRI)し、pLVX-IRES-mcherryプラスミドにクローニングし、pLVX-FoxP3-IRES-mcherry構築体を得た。上記ノックダウン方法に従って、pLVX-FoxP3-IRES-mcherryを持つ細胞株とFoxP3-過剰発現細胞株で生成されるレンチウイルスを産生した。RT-PCRによりFoxP3発現を検証した。
【0103】
4、フローサイトメトリー法検出のステップ
細胞とFcブロッカー(CD16/32抗体;2.4G2)を5分間インキュベートした後、表面抗体(CD4、CD8、GITR、CD25、PD-1、CTLA-4、TIM-3、LAG3)とともに室温で遮光下15分間放置した。FoxP3細胞を染色し、表面が染色された細胞をFoxP3/転写因子固定/透過緩衝液(Thermo Fisher)とともに30分間インキュベートし、次に、抗体とともに2時間インキュベートした。染色した細胞を直接解析するか、又はたまにFACS Divaソフトウェアを用いて、Fortessaフローサイトメータ(BD Biosciences)により1%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定化してから解析した。Flowjoソフトウェアによってデータを解析した。
【0104】
5、ELISA検出ステップ
IL-10及びTGF-βを検出するために、抗CD3/抗CD28抗体で106個の精製Treg、Ryr2+/+及びRyr2-/-Tconvを刺激した。72時間後、上清を収集した。結合力の高い96ウェルELISAプレート(Nunc)を4℃で一晩放置し、抗マウスIL-10及び抗マウスTGF-β捕捉抗体を塗布した。乾燥後、プレートをPBS中の2%BSAにより室温で1時間ブロックした。洗浄後、3部分に分けられるウェルに希釈細胞上清を100μL加え、その後、室温で1時間インキュベートした。その後、プレートをPBST(0.05%Tween20、Sigma-Aldrich、PBS中)で洗浄し、HRP標識ヤギ抗マウスIL-10及びTGF-β検出抗体とともに室温で0.5時間インキュベートした。TMB(100mL/ウェル)を加えて、プレートを暗所で10分間室温でインキュベートし、その後、ウェルあたりH2SO4(50μL、1M)を加えて反応を停止した。停止直後、ELISAマイクロプレートリーダ(Bio-Rad)を用いて、450nmで光学濃度(OD)を読み取った。
【0105】
6、カルシウムイメージング
非接着細胞について、Treg、TconvとA20細胞をHBSS-HEPS(10 mM)緩衝液中の2mM fluo-4 AM(Thermo Fisher)により37℃で1時間染色した。洗浄後、室温でサンドイッチのような自作室に取り付けられたポリ-L-リジンコーティング(0.1mg/mL;Sigma-Aldrich)付き円形ガラス板に細胞を接着させた。15分間後、緩衝液で余分な非接着細胞を流し落とした。接着細胞について、ガラス板に接着したNIH-3T3及びRenca細胞をHBSS-HEPS(10mM)緩衝液中の2mM fluo-4 AM(Thermo Fisher)により37℃で1時間染色した。その後、20倍(開口数:0.8)又は40倍(開口数:1.2)Olympus対物レンズを備えたOlympus IX-73顕微鏡に測定室を載せた。特に断らない限り、6sの間隔でCa2+振動を20分間記録した。抑制実験においては、Fluo-4標識細胞を暗所でJTV519(Sigma)により30分間室温処理し、その後、画像を取得した。刺激性実験では、1sの間隔でCa2+振動を5分間記録した。画像を取得し始め、50~80s後、4-CmC(Sigma)緩衝液を加えて細胞内カルシウムの放出を誘導した。Ca2+含有又は不含のフェノールレッドフリーHBSS培地で実験を行った。電荷結合素子カメラ(ORCA-AG、浜松社製)を用いて488nmレーザにより励起された468~550nmの放射シグナルを記録した。データ収集はNIS-Elements 3.0ソフトウェア(Nikon)により制御された。ImageJを用いて単一細胞の平均蛍光強度の経時的変化を記録し、1フレーム目の蛍光強度に従って標準化した(Fluo-4 F / F0)。単一細胞のCa2+振動ピーク値を表示し、Ca2+振動強度の標準偏差をMean±SDとして算出した。
【0106】
7、ウェスタンブロット(western blot)測定ステップ
細胞を収集し、RIPA緩衝液(Beyotime,P0013B)で溶解した。細胞溶解液を遠心分離し、上清を収集した。BCAタンパク質測定キット(Beyotime,P0012)を用いて総タンパク質を定量した。3XSDS注入緩衝液と混合して5分間沸騰した後、7.5%PAGEゲル(EpiZyme,PG111)にタンパク質を注入した。次に、タンパク質をNC膜に転写し、示した1次抗体と2次抗体を用いてイムノブロットを行った。最後に、Super ECL検出試薬(Yeasen,36208ES76)を用いて免疫染色のバンドを検出した。
【0107】
8、試験結果
CD4-creのTconvでは、Ryr2をノックダウンすることができる(
図26)。また、Ryr2ノックダウンTconv細胞は、マウスの体重や発育速度を含め、その基礎機能が影響を受けなかった。さらに、胸腺細胞と末梢血のCD4+、CD8+マーカーの分布はWTマウスとほぼ同じであった(フローサイトメトリー検出結果は
図27参照)。FoxP3+CD4+T細胞の割合も一定に維持された(
図28)。Treg機能に関連する可能性のある表面マーカーも、WT Tconvと比較して変化しなかった(フローサイトメトリー検出及びELISA検出の結果は
図29を参照)。Ryr2ノックダウンTconvは基礎Ca
2+レベルが低下し、振動強度が低下している(カルシウムイメージング結果は
図30を参照)。Ryr2-/-TconvにおけるCMAC消化は、未処理Tconvと比較して、Tregと同様のレベルまで低減されている(
図31)。Tregと同様に、Ryr2-/-Tconvでは、talin消化が大量に欠損している(western blot検出結果は
図32を参照)。
【0108】
実施例2:FoxP3発現によるRyr2遺伝子への影響の検証及び標的位置の決定
本実施例では、Ryr2遺伝子調節の特異性を決定するために、Ryr2遺伝子調節をFoxP3発現と関連させ、標的位置を決定した。
【0109】
まず、T細胞、B細胞(A20)、3T3及びRenca腫瘍系のいずれにもFoxP3が過剰発現された(実施例1の方法を採用)。これら4つのケースでは、FoxP3の過剰発現がRyr2遺伝子の転写を有意にブロックしており、FoxP3が自発的にRyr2を標的としていることが示唆された(
図19)。
【0110】
次に、遺伝子発現分析用の全ゲノムChip-seqデータセットを作成し、ChIP-seqデータはGEOデータセットからダウンロードし、GEO IDはTconv GSM989036中のFoxp3であり、Tconv細胞中のFoxP3は発現マーカー-Foxp3 GSM989034として形質導入された。IGV(v2.4.14)はマウス参照ゲノムmm8を用いてChIP-seqデータの可視化を促進した。特定の遺伝子座でのスクリーンショットに示す通りである。IGVプログラムを使用してこのデータセットをRyr2遺伝子の周囲の40kb領域に集中させると、トランスフェクションされていない対照群で1.5kbプロモータ領域の強いシグナルが検出された(
図20)。
【0111】
さらに、FoxP3過剰発現群とFoxP3未過剰発現群を含め、上記領域をクローニングし、このプロモータの制御下で、3T3及びRenca細胞を発現するためのルシフェラーゼレポータ遺伝子の発現ベクターを構築した。
図21より、FoxP3の過剰発現がルシフェラーゼ活性を低下させていることが分かった。その後、配列において配列セグメントを削除した(
図22A参照)。一連の実験では、Ryr2開始コドン(
図22B)より前の200bpになるように、TSS部位の後~300bp~500bpの所定領域まで抑制活性を段階的に縮小した。
【0112】
最後に、FoxP3結合部位を2回繰り返し出現したGCAGGGG配列に決定した。これら2つの部位に突然変異が生じた場合、FoxP3の過剰発現はルシフェラーゼを抑制する能力を失い、これら2つの部位がプロモータのFoxP3の結合部位であることが示された(
図23)。また、ルシフェラーゼ活性抑制がRyr2活性と関連していることをさらに確認するために、本実施例では、FoxP3過剰発現群とFoxP3未過剰発現群を含め、Ryr2媒介3T3及びA20細胞のCa
2+流束がトリガーされた。
図24は、FoxP3トランスフェクション細胞においてFoxP3の作用により4-CmCが駆動するCa
2+シグナルははるかに小さいことを示している。Ryr2は確かにFoxP3の直接制御を受け、T細胞の活性を抑制する重要なチャネルであることを示した。
【0113】
ここでは、本実施例に係るデュアルルシフェラーゼレポータアッセイのステップは文献Identification and characterization of MAVS, a mitochondrial antiviral signaling protein that activates NF-kappaB and IRF 3(Sethら,Cell 122,669-682,2005)とLFA-1-mediated adhesion is regulated by cytoskeletal restraint and by a Ca2+-dependent protease, calpain(Stewartら,J Cell Biol 140,699-707,1998)を参照する。Ryr2プロモータ1500bpをルシフェラーゼ発現pGL3ベクターにサブクローニングすることにより、マウスRyr2レポータプラスミドを構築した。完全なプロモータ配列と切断されたプロモータを合成し、配列決定によりプラスミドが正しいことを確認した。Neofect(KS2000)を用いて、1.25×105 FoxP3過剰発現-3T3、FoxP3過剰発現Renca又はFoxP3過剰発現A20細胞を300ng Ryr2レポータ遺伝子及び海腎ルシフェラーゼレポータ遺伝子プラスミドと共トランスフェクションした。トランスフェクション36時間後、細胞溶解物を調製し、デュアルルシフェラーゼレポータアッセイシステム(Promega)を用いて解析した。
【0114】
実施例3:T細胞におけるCa2+レベルに対するRyr2抑制の影響
1、Tconv及びTregにおけるm-カルパインの違い、及びDC結合能力
Tregにおけるm-カルパイン活性は低いので、本実施例では、その発現レベルが低いか否かを事前に判定した。また、m-カルパインは細胞内のCa2+の可用性により調整されるので、休止状態でのTconv及びTregのC2+シグナルを検出した。
【0115】
その結果、
図1A、B、Cに示すように、Tconv及びTregにおけるm-カルパインはタンパク質又はmRNAレベルのいずれにも違いがなかった。そして、基礎Ca
2+振動はTconvを含む多くの免疫細胞に共通の特徴であるが、この活性はTregにはほとんど存在しない。すなわち、個々のTregはCa
2+振動のピーク値を示さない(
図2及び
図3)。Ca
2+振動強度の標準偏差は、Tregでは、Tconvよりも有意に小さくなった(
図4)。すなわち、m-カルパイン活性はTregでブロックされ、これにより、TregはLFA-1/icam-1に基づく非常に強いDC結合能力を有する。
【0116】
2、Ca
2+レベルに影響する要素の決定
T細胞が活性化すると、Ca
2+シグナルはIP3Rチャネルに由来するが、これは免疫チロシンによるシグナルがカスケードして二次性Ca
2+増幅イベントに拡大した結果であり、この活性化誘導シグナルは休止細胞には存在しない。本実施例では、データベースGEO DataSets(参照文献:A mechanism for expansion of regulatory T-cell repertoire and its role in self-tolerance(Feng et al.,Nature,2015))に含まれるいくつかのCa
2+シグナル調節に影響する要素のデータ(具体的には
図5に示される)を使用して、Tregにおける基礎Ca
2+レベルが低い理由を検証し、TregとTconvの発現の違いの度合いによってランク付けした。その結果、
図5に示すように、Ryr2の違いが最も大きく、Tconvの発現レベルはTregより5倍log2以上高く(32倍線形)、p値は2.57×10
-14であった。qPCRを用いてさらに解析し、この結論を確認した(
図6参照)。
【0117】
ここで、GEOデータベース解析は以下の通りである。NCBI GEOデータベース(GSE71162)に発表されている3つのRNA-Seq研究に基づき、タンパク質を発現レベルによって分類した。カルシウム関連タンパク質をGO解析によりランク付けした。これらのタンパク質の機能はUniProt(http://www.uniprot.org/)に基づいて注釈されている。タンパク質をTregとTconvの発現の違いの度合いによってランク付けした。
【0118】
Ryr受容体はer膜(Ryr1、2及び3)上に位置し、ヒトPBMCにおいて、Ryr1はCD19+集団で、Ryr2はCD3+部分で発現する。TregにおけるRyr2の発現量が低いことを確認するために、刺激因子4-CMCを用いてCMAC(カルパイン基質)の消化率を観察した。その結果、
図7に示すように、4-CMCはカルパイン活性を完全に誘導することができる一方、Tregはこの処理に敏感ではなく、TregではRyr2の発現が低下していることが確認された。
【0119】
3、Tconv細胞のRyr2抑制によるCa
2+レベル及び基礎振動の低下
本実施例では、Ryr2抑制後のCa
2+シグナルの変化をさらに検証し、その結果、
図8、
図9に示すように、ピーク値もCa
2+シグナルの標準偏差も、Ryr2抑制Tconv細胞では、Tregの効果に近く、Ryr2を抑制していないTconv細胞と比較して、カルシウムイオンレベルは有意に低下した。
【0120】
以上より、T細胞亜群のCa2+レベル低下は、基本的にRyr2の転写抑制により制御される。
【0121】
実施例4:Ryr2ブロックによるT細胞とDCとの結合増強
1、Ryr2をノックダウンしたTconvによって、Ca2+レベルを低下させることができる。
【0122】
Ryr2抑制がTconvにおけるCa
2+レベル低下の原因であることを遺伝学的に確認するために、本実施例では、shRNA干渉によるRyr2ノックダウンを行った。Ryr2特異的shRNAノックダウンRyr2の転写mRNAレベルとノックダウンされていないRyr2の転写mRNAレベルとを比較した(
図10)。Ryr2ノックダウンTconvでは、対照群に比べ、細胞基礎Ca
2+レベルは著しく低下している(
図11及び
図12)。ノックダウン後、Ca
2+ピーク値が低下し、Ca
2+変化の標準偏差も低くなった。低m-カルパイン基質消化処理の結果、例えばJTV519処理によるRyr2抑制と一致した(
図13)。
【0123】
ここで、カルパイン活性を測定した。カルパイン活性を測定するために、20μMカルパイン基質CMAC(t-BOC-Leu-Met,Thermo Fisher)を含む200μLの培地で、105個のT細胞を暗所で室温インキュベートした。5分間のインキュベーション後、1%PFA(Biosharp)で反応を停止し、細胞を直ちに氷上に置いた。FortechフローサイトメータによりHoechstブルーチャネルを介して消化した基質から発せられる蛍光シグナルをカルパイン活性とした。いずれの実験においても、阻害剤JTV519を実験30分前に添加し、同時に活性化剤4-CmCとCMACを添加した。
【0124】
2、Tconv細胞中のRyr2の欠損によるT細胞とDCとの結合への影響
Ryr2の減少とm-カルパイン活性の喪失がT細胞とDCとの結合に及ぼす影響を検証するために、本実施例では、shRNA及びJTV519を用いて、TconvにおいてRyr2をブロックした。その結果、2種の処理のいずれもTregよりも高い強度で樹状細胞との強い接触を誘導することが示された(
図14)。
【0125】
さらに、処理TconvとDCの結合向上により抗原特異的Tconvが同じDCと安定的に結合することを確認するために、三重細胞結合力解析を行った(参照文献:Strong adhesion by regulatory T cells induces dendritic cell cytoskeletal polarization and contact-dependent lethargy(Chen et al.,The Journal of experimental medicine,2017))。その結果、Treg媒介ブロックにより、Ryr2が低下したTconvは、OTIIとOVAを担持したDCとの結合強度を有意に抑制することが示された(
図15)。したがって、単細胞レベルでは、Ryr2活性が低下したTconvは、TconvとDCとの相互作用を阻止する能力がTreg機能と同等であることが確認された。次に、典型的なDC媒介抗原提示試験において、shRNA処理TconvのOTII活性化抑制能力をテストした。その結果、
図16に示すように、これらの細胞はOTIIの分裂減少においてはTregのような方式を示した。Ryr2と同様に作用する可能性のある他の潜在的なCa
2+チャネル活動の調査では、CD4 Tconv細胞でのこれらの活性を低下させるshRNAが産生され、SCFSにより、これらのshRNAとDCとの結合がテストされた。その結果、
図17、
図18に示すように、Ryr2以外のノックダウンは処理T細胞とDCとの結合を向上させず、Ryr2の特別な関与が確認された。
【0126】
ここで、インビトロ抑制機能がある。精製OTII T細胞をCellTrace CFSE(Thermo Fisher Scientifc)で染色した。脾臓細胞に由来する104個の精製DC、2×104個のOTII T細胞、2×10-Treg又はRyr2-/-Tconv又はRyr2ノックダウンTconv、及び2μM OVA323-339ペプチドを混合して、96ウェルU底プレートの各ウェルで培養し、Fortessaフローサイトメータを用いてCFSE希釈によりOTII T細胞の増殖を評価した。(1-増殖%)から抑制パーセンテージを計算し、無Treg群を0%抑制、Treg群を100%抑制とすることでデータの正規化を行った。
【0127】
3、フォーススペクトルによるRyr2欠損時のDCとの結合状況の確認
同様に、Ryr2が欠損するとDCとの結合が増加することが、フォーススペクトルからも示された(
図33)。また、3細胞力解析では、DCとT細胞との接触を干渉する能力も増強された(
図34)。さらに重要なこととして、Ryr2-/-Tconvは、抗原陽性樹状細胞刺激によるOTII増幅を抑制する能力がTregと類似している(
図35)。したがって、Tconv細胞中のRyr2を制限するだけで、インビトロでDC媒介性T細胞の活性化を抑制する能力を得ることができる。
図46はRyr2を抑制したT細胞の免疫抑制作用を示している。
【0128】
ここで、原子間力顕微鏡による単細胞フォーススペクトルのステップは前述した通りであり、JPK CellHesion装置を用いて実験した(参照文献:Alum interaction with dendritic cell membrane lipids is essential for its adjuvanticity(Flachら,Nat Med 17,479-487,2011)と文献:Strong adhesion by regulatory T cells induces dendritic cell cytoskeletal polarization and contact-dependent lethargy(Chenら,The Journal of experimental medicine,2017))。簡単に言えば、2細胞系におけるT-DC接着力を測定するために、DC2.4細胞を未処理ガラスディスクで培養した。T細胞を200U/mLのヒトIL-2で一晩処理した。ディスクをAFMと互換性があるチャンバに移し、マシンテーブルに取り付けた。クリーンなカンチレバーをCellTak(BD)でコーティングし、ディスク上の個々のT細胞に貼り付けた。単一のT細胞を担持したAFMカンチレバーを降下させ、単一のDCと接触させ、15s相互作用させた後、2つの細胞が完全に分離するまで上に移動させた。これにより、力曲線を取得した。その後、このプロセスを繰り返した。3細胞系では、実験前に、ガラスディスク上で培養したDC2.4細胞を100μg/mLの可溶性OVAタンパク質で4h処理した。IL-2処理Treg/Tconv細胞を10μM CFSEで染色し、DC2.4細胞をこれらの蛍光標識Treg又はTconv細胞と約20分間インキュベートした後、標識していないOT-II T細胞を加えた。次に、OT-II T細胞を有するカンチレバー先端を、紫外線フラッシュランプで認識したTreg/Tconv細胞-DC対にアプローチした。Treg/T形質転換媒介OT-II-DC接着抑制を解析した。各サイクルで、単一のT細胞を担持したAFMカンチレバーは、最初の力曲線が生成されるまで0.5~2μm分降下した。その後、カンチレバー上のT細胞をDCと15s相互作用させ、2つの細胞が完全に分離するまでカンチレバーを上に移動させた。機械を入れたインキュベータを37℃、5%CO2の条件に置いた。全ての実験で、少なくとも14個の力曲線がさらなる解析のために収集された。JPK画像処理ソフトウェアを使用して力曲線を処理した。円形で頑丈な細胞のみを選択してAFM接合を行った。各SCFS実験では、1つのT-DC対を使用して、数分以内に上下サイクルごとの力の読み取り値を生成した。各条件には、少なくとも3対のデータが使用された。
【0129】
実施例5:HSV-1感染におけるRyr2-/-T細胞の作用
1、ヘルペス感染モデルの作製及び試験ステップ
106 pfu HSV-1(F株)を用いてPBS 20μL中の後足底で引き起こした。3dpiでは、細胞を2×105個の細胞/20μL PBS、Treg又はRyr2-/-Tconv、Ryr2+/+Tconvを足底に養子移入した。7dpiでは、ホモジネートした足底組織を用いてウイルス力価をテストした。1群あたり4~6匹のマウスとし、試験を3回繰り返した。
【0130】
DTHに対しては、6dpiでは、紫外線不活化HSV-1(106 pfu/20μL PBS)で右足底を再活性化した後、7dpiでは、左足底を対照として足底腫脹を測定した。1群あたり16~21匹のマウスとした。
【0131】
2、試験結果
ヘルペス感染モデルでは、Treg又はRyr2-/-Tconv 1 logを注射すると、HSV-1 pfuカウントが増加し始めた。Ryr2+/+Tconvの輸注は、ウイルス(PBS)単独接種と比較して増加しなかった(
図36参照)。次に、同じモデルをDTH応答の検出に使用した。HSV-1を2回接種した後、感作させた足底は腫脹したが、TregとRyr2-/-Tconvを注射した足底の厚さの増加はいずれも減少したが、対照群では、Ryr2+/+Tconvとウイルス単独接種(PBS)はいずれも厚さを減少しなかった(
図37、
図38)。
【0132】
実施例6:マウス喘息モデルにおけるRyr2-/-T細胞の作用
1、喘息モデルの作製及び試験ステップ
オボアルブミン(OVA)で気道炎症を誘発した。0日目と14日目に、OVAとミョウバンのアジュバント(100μg+4mg)を2回i.p注射し、マウスを感作させた。21、23、及び25日目に、舌後部に気管内OVAショックを繰り返した。106個のTreg、Ryr2-/-Tconv、Ryr2+/+Tconv、又はPBSをi.v養子移入した。32日目に、BALF浸潤と組織学を解析した。
【0133】
2、H&E組織学的ステップ
皮膚、耳、肝臓やその他の組織を全て4℃で4%の神経緩衝性ホルマリン中に固定化した。その後、パラフィンにサンプルを包埋した。厚さ5~6μmのスライドガラスに切った。全てのガラスはヘマトキシリンとエオシンで染色した。
【0134】
3、試験結果
図40Aの感作スケジュールに従って作製したOVA感作喘息モデルでは、TregとRyr2-/-Tconvの輸注はBALF細胞数の制限に同等の効果を示し、リンパ球と好酸球の減少度も同様であった(
図39)。組織学的検査を
図40Bに示す。
【0135】
実施例7:マウス結腸炎モデルにおけるRyr2-/-T細胞の作用
1、DSS誘導結腸炎(IBD)モデルの作製及び試験ステップ
DSS誘導マウス実験性結腸炎モデルは、文献Inhibition of Dectin-1 Signaling Ameliorates Colitis by Inducing Lactobacillus-Mediated Regulatory T Cell Expansion in the Intestine(Tangら,Cell Host Microbe 18,183-197,2015)とMyeloid-Derived Suppressor Cells Are Controlled by Regulatory T Cells via TGF-beta during Murine Colitis(Leeら,Cell Rep 17,3219-3232,2016)を参照することができる。簡単に言えば、6週齢の雄C57BL/6マウスに、3×106個のRyr2-/-Tconv、野生型Tconv又はTregをi.v養子移入した。翌日、4%DSS(w/v)を7日間経口投与して結腸炎(Yeason,MW=36,000~50,000 Da)を誘導した後、通常の飲み水を与えた。正常対照マウスにPBSを投与し、通常の飲料水を与えた。10日目にマウスを殺し、結腸を解剖して結腸の長さを測定した。その後、結腸を4%PFAにて4℃で48時間固定化し、その後のH&E染色に用いた。3DHISTECH Pannoramic SCAN(3DHISTECH)にて結腸切片を観察した。1群あたり11~18匹のマウスとした。
【0136】
2、H&E組織学的ステップ
皮膚、耳、肝臓やその他の組織を全て4℃で4%の神経緩衝性ホルマリン中に固定化した。その後、パラフィンにサンプルを包埋した。厚さ5~6μmのスライドガラスに切った。全てのガラスはヘマトキシリンとエオシンで染色した。
【0137】
3、試験結果
図42Aの誘導スケジュールに従って作製した結腸炎モデルでは、TregとRyr2-/-Tconvを注射した群では、結腸の長さが短縮した。Treg群とRyr2+/+Tconv群は、いずれもRyr2-/-Tconv群と比較して結腸損傷を軽減することができた(
図41、
図42)。
【0138】
実施例8:マウス結腸癌モデルにおけるRyr2-/-T細胞の作用
1、結腸癌腫瘍モデルの作製及び試験ステップ
文献Oxidative stress controls regulatory T cell apoptosis and suppressor activity and PD-L1-blockade resistance in tumor(Majら,Nat Immunol 18,1332-1341,2017))を参照して移植した腫瘍マウスモデルを作製した。簡単に言えば、MC38結腸癌細胞をPBSで2回洗浄した後、200μLのPBSで5×105個のMC38細胞と106個のT細胞を6週齢の雄C57BL/6マウスの腹部皮下に皮下注射した。腫瘍注射後7日目から4~5日毎にノギスを用いて腫瘍の成長をモニタリングした。体積は(長さ×幅×幅)/2として計算される。第1群:MC38+PBS、第2群:MC38+Ryr2+/+Tconv、第3群:MC38+Treg、第4群:MC38+Ryr2-/-Tconv。1群あたり10匹のマウスとした。
【0139】
2、試験結果
MC38腫瘍モデルでは、Treg及びRyr2-/-Tconvの注入は腫瘍の成長を促進したが、PBS及びRyr2+/+Tconv群には有意な効果は認められなかった(
図43)。
【0140】
実施例9:マウス皮癬モデルにおけるRyr2-/-T細胞の免疫恒常性回復作用
本実施例では、多臓器自己免疫による一般的な炎症におけるRyr2-/-Tconv細胞の作用が最も有意であることから、Foxp3欠損マウスモデルを構築し、Ryr2-/-Tconv細胞の調節下におけるFoxp3欠損の免疫欠損マウスの免疫恒常性回復を検証した。
【0141】
1、皮癬罹患マウス(Scurfy)モデル
文献A requisite role for induced regulatory T cells in tolerance based on expanding antigen receptor diversity(Haribhaiら,Immunity 35,109-122,2011)とTGF-beta-induced Foxp3+ regulatory T cells rescue scurfy mice(Huter等,Eur J Immunol 38,1814-1821,2008)を参照して、Foxp3欠損マウスの皮癬モデルを作製した。5×106個の精製T細胞をPBSで2回洗浄し、50μLのPBSに重懸濁させ、腹膜内注射した。新生相同皮癬罹患マウスの生後2日目又は3日目に注射した。最初の2週間は、3~4日ごとにT細胞養子移入を行い、その後、2週間ごとに1回行った。養子移入時、皮癬モデルと雄WT同窩仔の体重を記録し、生存率をモニタリングした。全てのマウスを出産当日にサンプリングし、PCRによりsf変異遺伝子についてジェノタイピングを行い、配列決定により遺伝子型を検証した。FoxP3 PCRのプライマーは5’-CATCCCACTGTGACGAGATG-3’(SEQ ID NO:1)と5’-ACTTGGAGCACAGGGGTCT-3’(SEQ ID NO:2)である。組織学的には、PBSを注入したマウスを3週目に、TregとRyr2-/-Tconvを養子移入したマウスを8~12週目に解析した。
【0142】
2、H&E組織学的ステップ
皮膚、耳、肝臓やその他の組織を全て4℃で4%の神経緩衝性ホルマリン中に固定化した。その後、パラフィンにサンプルを包埋した。厚さ5~6μmのスライドガラスに切った。全てのガラスはヘマトキシリンとエオシンで染色した。
【0143】
3、試験結果
皮癬罹患マウス(FoxP3-/-、C57BL/6)に、PBS、Treg、Ryr2+/+Tconv、又はRyr2-/-Tconvを生後2~3日に注射した。予想された通り、PBS又はRyr2+/+Tconvを注射したマウスは、生後2~4週間で全て死亡した。一方、Treg又はRyr2-/-Tconvを注射した全てのマウスは少なくとも20週間生存した(
図44、
図25)。また、6カ月経過観察後も、Ryr2-/-Tconvを注射した皮癬罹患マウスの死亡や明らかな異常は認められなかった。
【0144】
組織学的結果を
図45に示す。予想された通り、PBS又はRyr2+/+Tconvを注射したマウスは、重症の甲状腺炎、脾臓炎、肺炎、皮膚炎、肝炎、膵炎、胃炎や結腸炎を示した。一方、Treg又はRyr2-/-Tconvを注射したマウスは全てこれらの疾患を完治し、すなわちFoxP3欠損マウスの総合効果機能欠損は回復され、Ryr2がT細胞の免疫機能を調節することを示唆した。
【0145】
以上より、Ryr2-/-T及びTreg細胞は、マウスヘルペス感染モデル、喘息モデル、結腸炎モデル及び結腸癌モデルでは、機能的に同じ効果を示し、しかも、免疫不全マウスでも免疫機能を回復させることができた。つまり、Tregが免疫調節作用を有することが知られているいくつかの疾患では、Ryr2-/-Tは同等の作用を果たすことが示されている。
【0146】
以上は本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明は上記実施形態の詳細に限定されるものではなく、本発明の技術的構想を逸脱することなく、本発明の技術的解決手段について様々な変形を行うことができ、これらの簡単な変形は全て本発明の特許範囲に属する。
【0147】
なお、上記の具体的な実施形態に記載の各特定技術的特徴は、矛盾しない限り、任意の適切な方式で組み合わせられてもよく、不要な重複を回避するように、本発明は各種の可能な組み合わせの形態については、再度説明しない。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ryr2発現を調整する試薬、Ca2+基礎振動を調整する試薬、m-カルパイン活性を調整する試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を調整する試薬又はRyr2が過剰発現されているT細胞の、感染性疾患、炎症又は腫瘍を治療する医薬品の調製における使用であって、
好ましくは、前記Ryr2が過剰発現されているT細胞は、Treg細胞である、使用。
【請求項2】
Ryr2発現を低下させる試薬、Ca2+基礎振動を低下させる試薬、m-カルパイン活性を低下させる試薬、又はT細胞とDC細胞との結合強度を向上させる試薬の、感染性疾患又は炎症を治療する医薬品の調製における使用。
【請求項3】
Ryr2発現を向上させる試薬、Ca2+基礎振動を向上させる試薬、m-カルパイン活性を向上させる試薬、T細胞とDC細胞との結合強度を低下させる試薬又はRyr2が過剰発現されているT細胞の、腫瘍治療薬の調製における使用であって、
好ましくは、前記Ryr2が過剰発現されているT細胞は、Treg細胞である、使用。
【請求項4】
前記感染性疾患は、細菌感染、ウイルス感染又は真菌感染から選ばれ、さらに好ましくはウイルス感染、感染性ショックを伴う肺炎、腹膜炎、菌血症、膿敗血症又は敗血症であり、前記ウイルス感染は、急性ウイルス感染又は慢性ウイルス感染から選ばれ、好ましくはインフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、水疱口炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス又はヒトパピローマウイルスであることを特徴とする請求項1~2のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記炎症は、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強皮症、喘息、アトピー性皮膚炎、臓器特異的炎症性疾患、アレルギー、毛包炎、扁桃炎、肺炎、肝炎、腎炎、ざ瘡、自己免疫疾患、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、結腸炎、炎症性腸疾患、骨盤炎、再灌流損傷、移植拒絶反応、血管炎又は間質性膀胱炎から選ばれることを特徴とする請求項1~2のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記腫瘍は、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、グリオーマ、腸癌、子宮頸癌、非小細胞肺癌、肺癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌、皮膚癌、横紋筋癌、舌扁平上皮癌、鼻咽頭頭癌、卵巣癌、胎盤絨毛癌、リンパ腫、白血病、直腸腺癌、髄芽腫、髄膜腫、神経線維腫、上衣腫、神経鞘腫、星細胞腫、黒色腫、中皮腫、骨髄腫、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病、表皮癌、結腸癌、胸腺癌、血液癌、頭頸部癌又は中咽頭癌から選ばれることを特徴とする請求項1又は3に記載の使用。
【請求項7】
T細胞中Ryr2発現調整の、Ca2+基礎振動調整、m-カルパイン活性調整又はT細胞とDC細胞との結合強度向上における使用。
【請求項8】
Ca2+基礎振動調整の、m-カルパイン活性調整又はT細胞とDC細胞との結合強度調整における使用。
【請求項9】
m-カルパイン活性調整の、T細胞とDC細胞との結合強度調整における使用。
【請求項10】
調整は低下又は向上であることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
Ryr2発現を調整することを含むことを特徴とする、T細胞とDC細胞との結合強度を調整する方法。
【請求項12】
調整は、低下又は向上であり、好ましくは、T細胞とDC細胞との結合強度を低下させる方法は、Ryr2発現を向上させることを含み、T細胞とDC細胞との結合強度を向上させる方法は、Ryr2発現を低下させることを含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Ryr2発現を低下させることは、T細胞中のFoxP3を過剰発現させるか、又はRyr2阻害剤を添加することを含み、Ryr2発現を向上させることは、T細胞中のFoxP3の発現を低下させるか、又はRyr2駆動剤を添加することを含み、
前記Ryr2阻害剤は、Ryr2拮抗剤、リアノジン、ダントロレン又はJTV519から選ばれ、前記Ryr2拮抗剤は、Ryr2遺伝子の7番エクソン又はRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列を標的とし、好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、Ryr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにあり、さらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、GCAGGGGを含み、好ましくは、前記Ryr2阻害剤は、shRNAを含み、前記shRNAは、SEQ ID NO:5、6に示され、
前記Ryr2駆動剤は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、カフェイン、4-クロロ-m-クレゾール、リアノジン、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロール、B型アドレナリン、4-クロロ-3-メチルフェノール、シアントラニリプロール、シクラニリプロール、環状アデノシン二リン酸リボース、スラミンナトリウム、テトラニリプロール又はトリフルオペラジンから選ばれることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Ryr2発現を低下させることは、T細胞中のRyr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトすることを含み、好ましくは、前記Ryr2発現を低下させることは、T細胞中のRyr2遺伝子の7番エクソンをノックダウン又はノックアウトすることを含み、好ましくは、SEQ ID NO:5、6であるshRNAを用いてRyr2遺伝子の7番エクソンをノックアウトすることを特徴とする請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記Ryr2発現を低下させることは、T細胞中のRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列を欠損させることを含み、さらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、Ryr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにあり、最も好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、GCAGGGGを含むことを特徴とする請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
Ca2+基礎振動を低下させる、m-カルパイン活性を低下させる方法であって、前記方法は、
T細胞中のFoxP3を過剰発現させる、T細胞中のRyr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトするか、又はRyr2阻害剤を添加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
T細胞中のRyr2発現を向上させる、Ca2+基礎振動を向上させる、m-カルパイン活性を向上させる方法であって、前記方法は、
T細胞中のFoxP3の発現を低下させるか、又はRyr2駆動剤を添加することを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
Tconv細胞をTreg細胞と類似した機能を有するものに転化する方法であって、前記方法は、
Tconv細胞のRyr2遺伝子をノックダウン又はノックアウトすることを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
Tconv細胞中のRyr2遺伝子の1セグメントのグアニンリッチ配列をノックダウン又はノックアウトすることを含み、好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、Ryr2遺伝子の開始コドンの最初の200bpにあり、さらに好ましくは、前記1セグメントのグアニンリッチ配列は、GCAGGGGを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、Ryr2遺伝子の7番エクソンをノックアウトすることを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
Ryr2が過剰発現されていることを特徴とするT細胞。
【請求項22】
前記T細胞は、Treg細胞であることを特徴とする請求項21に記載のT細胞。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
Ryr2は小胞体/筋小胞体(ER/SR)のカルシウム放出チャネルであり、以下の従来技術では、Ryr2遺伝子が心原性突然死、不整脈、冠状動脈性硬化症に関連することが開示されている。例えば、
非特許文献:Ryr2遺伝子の新たな突然変異による心原性突然死の家族研究(申童ら、中国医学と西洋医学を統合した心血管病雑誌、2019.02)は、Ryr2遺伝子ミスセンス突然変異c.G4107Cを有する者には、労作性呼吸困難、胸痛などの症状が存在し、すなわち、Ryr2遺伝子上のミスセンス突然変異が心原性突然死と関連する可能性があることを開示した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、従来技術の空白を埋めるために、Treg細胞機能の調整スイッチであるRyr2を発見し、FoxP3過剰発現によりRyr2の発現を低下させる技術を取得し、しかも、標的位置を特定する。また、T細胞中のRyr2をノックダウン又はノックアウトすることによりCD4+T細胞プールが免疫抑制細胞になり、得られたT細胞はTreg細胞と類似した機能を持つことは多くの実験を通じて確認される。さらに、Ryr2の調整は、ウイルス感染、喘息、アレルギー、結腸炎や腫瘍のいずれの治療においても優れた効果が得られ、皮癬罹患マウスの関連する系の自己免疫を回復する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
本発明の1つの特定実施形態では、shRNAを採用してSEQ ID NO:5、6のためにRyr2遺伝子の7番エクソンをノックダウンする。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
好ましくは、少なくともRyr2遺伝子の7番エクソンをノックダウンする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
好ましくは、前記方法は、少なくともRyr2遺伝子の7番エクソンをノックダウン又はノックダウンすることを含む。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0090
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0090】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。
【
図1】野生型マウスから単離されたTconv及びTreg細胞中のm-カルパインのタンパク質発現の解析であり、このうち、
図A、図
Bはm-カルパインの
タンパク質レベルであり、図
Cはm-カルパインの
mRNAレベルであり、全ての値は平均値+SEMである。
【
図2】休止状態でのCa
2+の単一Tconv及びTreg細胞における基礎振動であり、検出系は、2mM Ca
2+のHBSSにCa
2+プローブFluo 4-AMを加えたものであり、ここで、各ラインは1つの細胞を表し、nは1群のデータ点における生物学的繰り返し回数であり、n=20である。
【
図3】休止状態でのTconv及びTregにおけるCa
2+
シグナルの平均蛍光強度(MFI)である。Tconv及びTreg細胞についてFluo 4-AMにより染色してMFIを解析する。
【
図4】
図2に示されるCa
2+振動強度の標準偏差(SD)である。
【
図5】GEOデータベースによりTreg及びTconvのカルシウムイオン調節関連タンパク質のレベルを解析し、違いによって並べ替えられる。
【
図6】精製されたTconv及びTregにおけるRyr2 mRNA発現のqPCR解析である。
【
図7】カルパイン基質CMACで消化し、Ryr活性化(4-CMC処理)後のTconv(左)及びTreg(右)細胞のカルパイン活性を測定する。
【
図8】5mM JTV519阻害剤を用いてRyr2を抑制したTconv細胞(中央の図)、野生型Tconv細胞(左の図)及びTreg細胞(右の図)のカルシウムイオン基礎振動である。
【
図9】5mM JTV519阻害剤を用いてRyr2を抑制したTconv細胞、野生型Tconv細胞及びTreg細胞中のカルシウムイオン基礎振動の標準偏差である。
【
図10】WTマウスから単離されたTconv細胞及びshRNAからRyr2遺伝子をノックダウンしたTconv細胞の
Ryr2mRNA転写レベルをqPCRにより解析する。
【
図11】shRNAを採用してRyr2遺伝子をノックダウンしたTconv細胞と野生型Tconv細胞とのCa
2+基礎振動の比較である。
【
図12】shRNAを採用してRyr2遺伝子をノックダウンしたTconv細胞と野生型Tconv細胞とのCa
2+基礎振動の標準偏差である。
【
図13】JTV519処理Tconv(左)、JTV519処理Treg(中)及びRyr2ノックダウンTconv(右)におけるカルパイン活性である。
【
図14】T細胞のDC2.4への接着の接着力を検出する。左図は未処理Treg、Tconv及びJTV519処理Tconvの平均接着力であり、右図は空白干渉対照(shCtrl)とRyr2ノックダウンTconvの平均接着力である。
【
図15】OT-II T細胞とOVAを提示したDC2.4細胞との間の接着力の測定であり、
図Aは3つの細胞のAFM解析の模式図を示し、
図BはW/O細胞(無細胞群)、空白干渉対照(shCtrl)、Ryr2ノックダウンTconv、Tregの抑制細胞としての平均接着力を示す。
【
図16】抑制OT-II T細胞の分裂のテスト結果であり、
図Aは無Treg、Treg、空白干渉対照(shCtrl)又はRyr2ノックダウンTconv細胞の抑制OT-II T細胞の分裂のFACS図であり、
図BはTreg(100%抑制として定義)及び無Treg(0%抑制として定義)で標準化された空白干渉対照(shCtrl)又はRyr2ノックダウンTconv細胞の抑制効率であり、ここで、*、P <0.05、**、P <0.01、***、P <0.001、****、P <0.0001である。
【
図17】WTマウスから単離されたTconv細胞中のItpr1、Cacnb1、Trpm1、Trpm4、Trpv2、Orai1及びOrai3遺伝子のshRNAノックダウン効率をqPCRにより解析する。
【
図18】未処理Treg細胞、空白干渉対照Tconv(shCtrl)、Ryr2ノックダウンTconv、Itpr1ノックダウンTconv、Cacnb1ノックダウンTconv、Trpm1ノックダウンTconv、Trpm4ノックダウンTconv、Trpv2ノックダウンTconv、Orai1ノックダウンTconv、及びOrai3ノックダウンTconvの平均接着力である。
【
図19】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。具体的には、FoxP3過剰発現Tconv、A20、3T3及びRenca細胞中のRyr2 mRNAレベルである。
【
図20】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。Foxp3 ChIP-seq、トランスフェクションFoxp3(上)又はFoxp3(下)未トランスフェクションTconvである。矢印はRyr2遺伝子のTSS部位を示す。三角はChIP-seqにより認識された有意差がある結合ピークであり、この位置は主にこの遺伝子のプロモータ領域(ブロック)と重なる。
【
図21】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。上図はRyr2プロモータ-ルシフェラーゼレポータベクターの構築の概略図、TSS、転写開始部位である。下図はFoxP3過剰発現3T3又はRenca細胞においてRyr2プロモータにより駆動される
デュアルルシフェラーゼの発現レベルである。
【
図22】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。
図Aは配列において配列セグメントを削除した結果、即ち、Ryr2プロモータ-ルシフェラーゼレポータベクターの切断ベクターの概略図であり、
図Bは
図AにおいてそれぞれがFoxP3過剰発現3T3においてRyr2プロモータにより駆動される
デュアルルシフェラーゼの発現レベルである。
【
図23】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。
図AはRyr2プロモータ-ルシフェラーゼレポータベクターの2つの切断ベクター及びノックアウト戦略の概略図であり、
図BはFoxP3過剰発現3T3細胞における異なる切断ベクター又はFoxP3結合配列を発現させたRyr2プロモータにより駆動される
デュアルルシフェラーゼの発現レベルであり、N.S.は、統計学的有意差無しである。
【
図24】FoxP3を過剰発現させ、Ryr2遺伝子転写をサイレンシングする。カルシウムイオンを含まないHBSSにおいて、4-CmCはFoxP3過剰発現A20又は3T3細胞を刺激し、カルシウムイオンが経時的に変化する平均軌跡(N=3)であり、独立の実験ごとに、1回の測定は少なくとも30個の細胞を解析用に集める。
【
図25】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス皮癬(Scurfy)モデルの免疫抑制を誘導し、Scurfyマウスの免疫恒常性を回復し、
図AはWT及びPBS注射後のマウスの
体重変化であり、
図Bは、Treg、Ryr2+/+(Foxp3-)Tconv及びRyr2-/-Tconvを注射したマウスのそれぞれの
体重変化である。
【
図26】Ryr2遺伝子においてCreは第7番エクソンをノックダウンする条件に依存してマウスをノックダウンして構築される。
【
図27】Ryr2+/+(Ryr2未ノックアウト野生型)マウス、CD4-Cre/Ryr2fl/+マウス、及びCD4-Cre/Ryr2
fl-/
fl-マウスの脾臓及び胸腺におけるCD4+及びCD8+T細胞の分布のフローサイトメトリー検出である。
【
図28】マウスのFoxP3+/CD4+脾臓細胞の割合である。
【
図29】WTTconv(Ryr2+/+)、Ryr2-/-Tconv中のTreg機能関連表面マーカー(CD25、GITR、CTLA-4、CD39、PD-1、LAG-3、TIM-3を含む)のフローサイトメトリー分析、及び24h抗CD3/抗CD28刺激後、上清中のIL-10及びTGF-βレベルのELISA検出である。
【
図30】
インビトロでRyr2ノックダウンT細胞
の基礎振動を検出した図である。WT(
図A)又はCD4-Cre、Ryr2fl/fl(Ryr2-/-)(
図B)マウスから単離されたTconv及びTregを比較し(
図C)、2mM Ca
2+のHBSSにおいてカルシウムイオンの振動レベル及びその標準偏差を検出する(
図D)。
【
図31】CMAC基質分解によりTreg、Ryr2+/+及びRyr2-/-Tconv細胞中のカルパイン活性を検出する。
【
図32】Treg、Ryr2+/+及びRyr2-/-Tconvの3種類の細胞におけるインビボ基質Talinの分解結果をウェスタンブロットによって示す。
【
図33】Ryr2ノックダウンTconvがインビトロで
より強い接着能力を有する。4つの個別のDC-T細胞対由来の全てのデータ点(
図A、
図Bにおける点)を各条件で同じ日に収集し、
図Cの棒グラフの生成に用いられ、T-DC対ごとに、少なくとも15個の接着力の読み取り値が収集され、具体的には、WT Tconv(
図A)及びRyr2-/-Tconv細胞(
図B)対DC2.4の接着力、及び平均接着力(
図C)である。
【
図34】OT-II T細胞とOVAを提示したDC2.4細胞との間の接着の実験であり、DC上の抑制細胞はTreg、WT Tconv又はRyr2-/-Tconv細胞であり、
図Aは3つの細胞のAFM測定装置を示し、
図BはTreg、WT Tconv又はRyr2-/-Tconvの抑制細胞としての平均OT-II-DC接着力である。
【
図35】無Treg、Treg、Ryr
2+/+及びRyr2-/-Tconvの相対抑制効率であり、このうち、無Tregは0%、Tregは100%とする。
【
図36】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でヘルペス感染マウスモデルの免疫抑制を誘導し、図は細胞養子移入後の足底組織におけるHSV-1力価の解析であり、HSV-1、Treg、Ryr2-/-Tconv又はRyr2+/+Tconvは、それぞれPBS、Treg又はRyr2-/-Tconv、Ryr2+/+Tconvを養子移入したものである。
【
図37】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でヘルペス感染マウスモデルの免疫抑制を誘導し、図は細胞養子移入と紫外線不活化によるHSV-1抗原再攻撃後の遅発型過敏症(DTH)であり、抗原再攻撃を行わなかった足底の厚さは100%とした。
【
図38】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でヘルペス感染マウスモデルの免疫抑制を誘導し、上図はDTH解析における試験案であり、下図は代表的な足底腫脹である。
【
図39】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス喘息モデルの免疫抑制を誘導し、
図AはBALFの総浸潤であり、
図Bはリンパ細胞浸潤であり、
図Cは好酸球浸潤である。測定結果としての数値は全て3回の
実験の平均値であり、空白は空白対照群を表し、PBS、Treg、Ryr2-/-Tconv及びRyr2+/+Tconv群は、それぞれ、喘息モデルにPBS、Treg、Ryr2-/-Tconv及びRyr2+/+Tconvを等量で注射したものである。
【
図40】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス喘息モデルの免疫抑制を誘導し、
図Aは喘息モデルの感受性手段であり、
図Bは代表的な肺H&E組織切片であり、縮尺は200μmを表し、PBS、Treg、Ryr2-/-Tconv及びRyr2+/+Tconv群は、それぞれ、喘息モデルにPBS、Treg、Ryr2-/-Tconv及びRyr2+/+Tconvを等量で注射したものである。
【
図41】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス結腸炎(IBD)モデルの免疫抑制を誘導し、空白は空白対照群、DSSは
DSS水処理
群を表す。
【
図42】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス結腸炎(IBD)モデルの免疫抑制を誘導し、
図AはDSS誘導結腸炎モデルの誘導方法であり、
図Bは代表的な結腸画像であり、
図Cは結腸切片の顕微鏡写真であり、縮尺は200μmを表す。
【
図43】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス結腸癌モデルの免疫抑制を誘導し、各群のマウスの腫瘍体積成長曲線をそれぞれ測定する。第1群:MC38+PBS、第2群:MC38+Ryr2+/+Tconv、第3群:MC38+Treg、第4群:MC38+Ryr2-/-Tconvである。
【
図44】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス皮癬(Scurfy)モデルの免疫抑制を誘導し、Scurfyマウスの免疫恒常性を回復し、図はマウスのKaplan-Meier生存曲線であり、
図AはWT及びPBS注射後のマウスの生存率であり、
図Bは、Treg、Ryr2+/+(Foxp3-)Tconv及びRyr2-/-Tconvをそれぞれ注射したマウスの生存率である。
【
図45】Ryr2遺伝子ノックダウンT細胞(Ryr2-/-Tconv)でマウス皮癬(Scurfy)モデルの免疫抑制を誘導し、Scurfyマウスの免疫恒常性を回復し、
図AはScurfyマウスの身体症状及び治療であり、
図Bは各器官(胸腺、脾臓、肺、耳、肝、膵臓、小腸、結腸)の代表的なH&E染色であり、PBS注射モデルマウス、WTマウスは、3週目にサンプルを採取し、Treg細胞、Foxp3-(Ryr2+/+) Tconv及びRyr2-/-Tconvを養子移入したマウスは8~12週目に採取する。
【
図46】Foxp3を過剰発現させRyr2を抑制することはT細胞の免疫抑制作用の重要な効果機序であり、左図はFoxp3を過剰発現させRyr2を抑制したT細胞の作用機序であり、右図は野生型T細胞の作用機序である。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0092
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0092】
実施例に使用される実験動物、試薬及び装置の由来
マウス
マウスは全てC57BL/6背景である。Ryr2fl/flマウスはGemPharmatech Co.,Ltdによって生産されたものであり、PCRにより、遺伝子型が同定された。OT-IIトランスジェニックマウスはJackson実験室から購入する。野生型、Foxp3-IRES-GFP、Ryr2fl/fl、Ryr2トランスジェニック、OT-IIトランスジェニック、CD4-Cre及びFoxp3-Cre-YFP、雌Foxp3 +/-マウスは清華大学動物センタで飼育される。マウスは全て特定病原体フリー(SPF)の条件下で飼育する。全ての動物実験は動物福祉ガイドラインに合致し、清華大学動物実験倫理委員会IACUCにより承認された。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
細胞株及び初代細胞の培養
DC2.4細胞はUMass医学院のKen Rock教授から贈られた。Vero細胞は清華大学薬学院の譚旭博士より提供された。Renca細胞は北京朝陽病院の安広宇医師より提供された。HEK293FT細胞は清華大学医学院の郭偉博士から贈られた。MC38細胞は米国典型培養物保蔵センタ(ATCC)から購入した。MC38、Renca、NIH-3T3細胞及びVero細胞は10%FBS、100U/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシンを含有するDMEMにて培養される。他の細胞は全て、50μMβ-メルカプトエタノールを含む同量のRPMI-1640にて成長する。PCR解析により全ての細胞株に対してマイコプラズマ汚染がテストされる。マウスCD4+CD25+Treg及びCD4+CD25-Tconvは、マウスCD4+T細胞単離キット(StemCell、19852)及びマウスCD25 Treg細胞陽性選択キット(Stem cell、18782)を用いて脾臓から単離される。Treg及びTconv細胞は、場合によっては、FACSによってFoxp3-IERS-GFPマウスCD4+脾臓細胞から選別される。マウスDCはマウスCD11c選択キットII(Stem cell、28007)を用いて脾臓から単離される。OT-II T細胞は、マウスCD4+T細胞単離キット(Stem cell、19852)を用いてOT-II脾臓細胞から単離され、場合によっては、FACSによりTCRVα2抗体を用いて選別される。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
抗体及び試薬
全ての初代細胞単離キットはStemCellからのものである。組換えヒトIL-2はR&D systemsからのものである。抗マウスCD3eモノクローナル抗体、抗マウスCD28及び抗マウスTCRVα2-PE抗体はeBioscienceからのものである。フローサイトメトリー抗体はeBioscienceからのものであり、さらに抗CD4、抗CD8、抗GITR、抗CD25、抗PD-1、抗CTLA-4、抗Tim-3及び抗LAG3抗体を含む。抗FoxP3抗体はInvitrogenからのものである。抗マウスCD4、抗マウスCD8、抗マウスGITR、抗マウスCD25、抗マウスPD-1、抗マウス/ラットCTLA-4、抗マウス/ラットFoxP3(FJK-16s)、抗マウス/ヒトTim-3、抗マウスLAG3、抗マウスPD-1(J43.1)、抗マウスCTLA4(UC10-4B9)、抗マウスGITR(DTA-1)のクローンが使用される。ウェスタンブロット解析に用いられる抗体はm-カルパイン大サブユニット(M型)抗体と抗マウスIgG-HRPを連結した抗体はCSTからのものである。抗talin抗体(8D4)はSigma-Aldrichより購入された。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
実施例1:Ryr2遺伝子ノックダウン又はFoxP3過剰発現型の調製及び実験検証
1、Ryr2遺伝子ノックダウン実験のステップ
レンチウイルスによるshRNAをRyr2遺伝子ノックダウンに用い、具体的には、予め合成されたshRNA配列をpLKO.1ベクターに挿入した。EndoFreeプラスミドMidiキット(CWBIO、CW2105S)を用いて、形質転換大腸菌からshRNAを含むプラスミド及びパッケージングプラスミド(pMD2.G及びpsPAX2)を精製した。試薬取扱書に従ってレンチウイルスパッケージングを行った。簡単に言えば、皿の60~80%のカバー度まで、293FT細胞を10cm皿で培養した。DNAトランスフェクション2時間前に培地を交換した。Neofect(Neofect)を用いて、パッケージングベクターpMD2.G 2.5μgとpsPAX2 2.5μg、pLKO.1ベクター5μg(挿入されたshRNA付き)を293FT細胞にトランスフェクションした。72時間後、レンチウイルスを得て、Polybrene(終濃度8μg/mL)でT細胞を感染した。ウイルス感染48時間後、Ariaフローサイトメータ(BD Biosciences)により細胞を選別した。リアルタイム定量PCRによりノックダウン効率を検証した。shRNA配列は以下に示される。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0098】
対照-shRNA:5'-CCGGcaacaagatgaagagcaccaaCTCGAGttggtgctcttcatcttgttgTTTTTG-3'(SEQ ID NO:3)と5’-AATTCAAAAAcaacaagatgaagagcaccaaCTCGAGttggtgctcttcatcttgttgg-3’(SEQ ID NO:4);Ryr2-shRNA:5'-CCGGccgctaatgaagccatataaaCTCGAGTTTATATGGCTTCATTAGCGGTTTTTG-3'(SEQ ID NO:5)と5’-AATTCAAAAAccgctaatgaagccatataaaCTCGAGTTTATATGGCTTCATTAGCGG-3’(SEQ ID NO:6);Itpr1-shRNA:5'-CCGGgcagtaggtaagaagttattaCTCGAGtaataacttcttacctactgcTTTTTG-3'(SEQ ID NO:7)と5'-AATTCAAAAAgcagtaggtaagaagttattaCTCGAGtaataacttcttacctactgc-3'(SEQ ID NO:8);
Orai1-shRNA:5'-CCGGcacaaccaccaactcggtcaaaCTCGAGtttgaccgagttgaggttgtgTTTTTG-3'(SEQ ID NO:9)と'-AATTCAAAAAcacaacctcaactcggtcaaaCTCGAGtttgaccgagttgaggttgtg-3'(SEQ ID NO:10);Orai3-shRNA:5'-CCGGgcccttgcttatctgtataatCTCGAGattatacagataagcaagggcTTTTTTGG-3'(SEQ ID NO:11)と5'-AATTCAAAAAAgcccttgcttatctgtataatCTCGAGattatacagataagcaagggc-3'(SEQ ID NO:12); Trpm1-shRNA:5'-CCGGcggagtgaacatgcagcatttCTCGAGaaatgctgcatgttcactccgTTTTTG-3'(SEQ ID NO:13)と5'-AATTCAAAAAcggagtgaacatgcagcatttCTCGAGaaatgctgcatgttcactccg-3'(SEQ ID NO:14);Trpm4-shRNA:5'-CCGGgcacatcttcacggtgaacaaCTCGAGttgttcaccgtgaagatgtggTTTTTG-3'(SEQ ID NO:15)と5'-AATTCAAAAAgcacatcttcacggtgaacaaCTCGAGttgttcaccgtgaagatgtgc-3'(SEQ ID NO:16);Trpv2-shRNA:5'-CCGGccaaggaacttgtttctatttCTCGAGaaatagaaacaagttccttggTTTTTG-3'(SEQ ID NO:17)と5'-AATTCAAAAAccaaggaacttgtttctatttCTCGAGaaatagaaacaaagagctccttgg-3'(SEQ ID NO:18);Cacnb1-shRNA:5'-CCGGtaggaacgcaatggatattaaCTCGAGttaatatccattgcgttcctaTTTTTG-3'(SEQ ID NO:19)と5'-AATTCAAAAAtaggaacgcaatggatattaaCTCGAGttaatattccattgcgttccta-3'(SEQ ID NO:20)。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
TRIzol試薬(Invitrogen)を用いて、指定の細胞から全RNAを抽出し、逆転写酵素M-MLV(TaKaRa)を用いて第1鎖cDNAを合成した。SYBR Green Master Mix(No Rox)(Yeasen)を用いてリアルタイム定量PCRを行った。GAPDH又は18S RNAを標準化対照に用いた。プライマー配列は以下に示される。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0101
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0101】
マウスGAPDH、5'-CATCACTGCCACCCAGAAGACTG-3'(SEQ ID NO:21)と5'-ATGCCAGTGAGCTTCCCGTTCAG-3’(SEQ ID NO:22);マウス18S RNA、5'-CGGACAGGATTGACAGATTG-3'(SEQ ID NO:23)と5’-CAAATCGCTCCACCAACTAA-3’(SEQ ID NO:24);マウスRyr2、5’-ATGGCTTTAAGGCACAGCG-3’(SEQ ID NO:25)と5’-CAGAGCCCGAATCATCCAGC-3’(SEQ ID NO:26);マウスFoxP3、5’-CCCATCCCCAGGAGTCTTG-3'(SEQ ID NO:27)と5'-ACCATGACTAGGGGCACTGTA-3'(SEQ ID NO:28);マウスm-カルハイン、5'-GGTCGCATGAGAGAGCCATC-3'(SEQ ID NO:49)と5'-CCCCGAGTTTTGCTGGAGTA -3'(SEQ ID NO:50);マウスItpr1、5'-CGTTTTGAGTTTGAAGGCGTTT-3'(SEQ ID NO:29)と5'-CATCTTGCGCCAATTCCCG-3'(SEQ ID NO:30);マウスOrai1、5'-GATCGGCCAGAGTTACTCCG-3'(SEQ ID NO:31)と5'-TGGGTAGTCATGGTCTGTGTC-3'(SEQ ID NO:32);マウスOrai3、5’-GGCTACCTGGACCTTATGGG-3'(SEQ ID NO:33)と5'-GCAGGCACTAAATGTGACC-3'(SEQ ID NO:34);マウスTrpm15'-ATCCGAGTCTCCTACGACACC-3'(SEQ ID NO:35)と5'-CAGTTTGGACTGCATCTCGAA-3’(SEQ ID NO:36);マウスTrpm4、5'-GGACTGCACACAGGCATTG-3'(SEQ ID NO:37)と5'-GTACCTTGCGGGGAATGAGC-3’(SEQ ID NO:38);マウスTrpv2、5'-TGCTGAGGTGAACAAAGGAAAG-3'(SEQ ID NO:39)と5'-TCAAACCGATTTGGGTCCTGT-3'(SEQ ID NO:40);マウスCacnb1、5′-GGCAGCAAGTTATCTCCCAG-3'(SEQ ID NO:41)と5'-CCACAGGATGATTGGCGTCTT-3'(SEQ ID NO:42); HSV-1 gB、5’-AACGCGACGCACATCAAG-3'(SEQ ID NO:43)と5'-CTGGTACGCGATCAGAAAGC-3'(SEQ ID NO:44); HSV-1 LAT、5'-GGGTGGGCTCGTGTTACAG-3'(SEQ ID NO:45)と5'-GGACGGGTAAGTAACAGAGTCTCTA-3’(SEQ ID NO:46)。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0102】
3、FoxP3過剰発現実験のステップ
ベクターを構築し、Tregの全RNAのcDNAをテンプレートとして、順方向プライマー5’-ATCGCTCGAGATGTGCACACCTAGGCCA-3’(SEQ ID NO:47)と逆方向プライマー5’-ATCGGAATTCTCAAGGGCAGGGATTGGA-3’(SEQ ID NO:48)のプライマーを用いて、FoxP3をPCR増幅した。増幅した断片をゲルで精製し、消化(XhoIとEcoRI)し、pLVX-IRES-mcherryプラスミドにクローニングし、pLVX-FoxP3-IRES-mcherry構築体を得た。上記ノックダウン方法に従って、pLVX-FoxP3-IRES-mcherryレンチウイルスの生産とFoxP3過剰発現細胞株の精製を行った。RT-PCRによりFoxP3発現を検証した。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0103
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0103】
4、フローサイトメトリー法検出のステップ
細胞とFcブロッカー(CD16/32抗体;2.4G2)を5分間インキュベートした後、表面抗体(CD4、CD8、GITR、CD25、PD-1、CTLA-4、TIM-3、LAG3)とともに室温で遮光下15分間放置した。FoxP3細胞を染色し、表面が染色された細胞をFoxP3/転写因子固定/透過緩衝液(Thermo Fisher)とともに30分間インキュベートし、次に、抗体とともに2時間インキュベートした。FACS Divaソフトウェアで制御されたFortessaフローサイトメータ(BD Biosciences)によりサンプルを解析した。Flowjoソフトウェアによってデータを解析した。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
5、ELISA検出ステップ
IL-10及びTGF-βを検出するために、抗CD3/抗CD28抗体で106個の精製Treg、Ryr2+/+及びRyr2-/-Tconvを刺激した。72時間後、上清を収集した。結合力の高い96ウェルELISAプレート(Nunc)を4℃で一晩インキュベートした。乾燥後、2%BSAにより室温で1時間ブロックした。洗浄後、ウェル毎に希釈細胞上清を100μL加え、室温で1時間インキュベートした。再度PBST(0.05%Tween20、Sigma-Aldrich、PBS中)で洗浄し、その後、HRP標識ヤギ抗マウスIL-10及びTGF-β検出抗体により室温で0.5時間インキュベートした。TMB(100mL/ウェル)を加えて、10分間室温で、暗所でインキュベートし、その後、ウェルあたりH2SO4(50μL、1M)を加えて反応を停止した。停止直後、ELISAマイクロプレートリーダ(Bio-Rad)を用いて、450nmで光学濃度(OD)を読み取った。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
6、カルシウムイメージング
非接着細胞について、Treg、TconvとA20細胞を2mM fluo-4 AM(Thermo Fisher)により37℃で1時間染色した。洗浄後、室温でサンドイッチのような自作室に取り付けられたポリ-L-リジンコーティング(0.1mg/mL;Sigma-Aldrich)で処理された円形ガラス板に細胞を接着させた。15分間後、緩衝液で余分な非接着細胞を流し落とした。接着細胞について、ガラス板に成長したNIH-3T3及びRenca細胞を2mM fluo-4 AM(Thermo Fisher)により37℃で1時間染色した。その後、20倍(開口数:0.8)又は40倍(開口数:1.2)Olympus対物レンズを備えたOlympus IX-73顕微鏡に測定室を載せた。特に断らない限り、6sの間隔でCa2+振動を20分間記録した。抑制実験においては、Fluo-4標識細胞を暗所でJTV519(Sigma)により30分間室温処理し、その後、画像を取得した。刺激性実験では、1sの間隔でCa2+振動を5分間記録した。画像を取得し始め、50~80s後、4-CmC(Sigma)緩衝液を加えて細胞内カルシウムの放出を誘導した。Ca2+含有又は不含のフェノールレッドフリーHBSS培地で実験を行った。電荷結合素子カメラ(ORCA-AG、浜松社製)を用いて488nmレーザにより励起された468~550nmの放射シグナルを記録した。データ収集はNIS-Elements 3.0ソフトウェア(Nikon)により制御された。ImageJを用いて単一細胞の平均蛍光強度の経時的変化を記録し、1フレーム目の蛍光強度に従って標準化した(Fluo-4 F / F0)。単一細胞のCa2+振動ピーク値を表示し、Ca2+振動強度の標準偏差をMean±SEMとして算出した。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0106
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0106】
7、ウェスタンブロット(western blot)ステップ
細胞を収集し、RIPA緩衝液(Beyotime,P0013B)で溶解した。細胞溶解液を遠心分離し、上清を収集した。BCAタンパク質測定キット(Beyotime,P0012)を用いて総タンパク質を定量した。3XSDS注入緩衝液と混合して5分間沸騰した後、7.5%PAGEゲル(EpiZyme,PG111)にタンパク質を注入して分離した。次に、タンパク質をNC膜に転写し、示した1次抗体と2次抗体を用いてイムノブロットを行った。最後に、Super ECL検出試薬(Yeasen,36208ES76)を用いて免疫染色のバンドを検出した。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0107
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0107】
8、
実験結果
CD4-creのTconvでは、Ryr2をノックダウンすることができる(
図26)。また、
Tconv細胞Ryr2ノックダウンTconv細胞は、マウスの体重や発育速度を含め、その基礎機能が影響を受けなかった。さらに、胸腺細胞と末梢血のCD4+、CD8+マーカー
細胞の分布はWTマウスとほぼ同じであった(フローサイトメトリー検出結果は
図27参照)。
脾臓においてFoxP3+CD4+T細胞の割合も一定に維持された(
図28)。Treg機能に関連する可能性のある表面マーカーも、WT Tconvと比較して変化しなかった(フローサイトメトリー検出及びELISA検出の結果は
図29を参照)。Ryr2ノックダウンTconvは基礎Ca
2+レベルが低下し、振動強度が低下している(カルシウムイメージング結果は図
11及び図30を参照)。Ryr2-/-TconvにおけるCMAC消化は、未処理Tconvと比較して、Tregと同様のレベルまで低減されている(
図31)。Tregと同様に、Ryr2-/-Tconvでは、talin消化が大量に欠損している(western blot検出結果は
図32を参照)。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0111
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0111】
さらに、FoxP3過剰発現群とFoxP3未過剰発現群を含め、上記領域をクローニングし、このプロモータの制御下で、3T3及びRenca細胞
に発現す
るルシフェラーゼレポータ遺伝子の発現ベクターを構築した。
図21より、FoxP3の過剰発現がルシフェラーゼ活性を低下させていることが分かった
。一連の
切断実験では、Ryr2
プロモーターのTSS部位の後~300bp~500bpの所定領域まで
Foxp3抑制活性を段階的に縮小した。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0112
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0112】
最後に、FoxP3結合部位を2回繰り返し出現したGCAGGGG配列に決定した。これら2つの部位に突然変異が生じた場合、FoxP3の過剰発現はルシフェラーゼを抑制する能力を失い、これら2つの部位がプロモータのFoxP3の結合部位であることが示された(
図23)。また、ルシフェラーゼ活性抑制がRyr2
が媒介するCa
2+
活性と関連していることをさらに確認するために、本実施例では、
4-CmC誘導FoxP3過剰発現群とFoxP3未過剰発現群
における3T3及びA20細胞の
カルシウムシグナルを検出した。
図24は、FoxP3トランスフェクション細胞においてFoxP3の作用により4-CmCが駆動するCa
2+シグナルははるかに小さいことを示している。Ryr2は確かにFoxP3の直接制御を受け、T細胞の活性を抑制する重要なチャネルであることを示した。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
ここでは、本実施例に係るデュアルルシフェラーゼレポータアッセイのステップは文献Identification and characterization of MAVS, a mitochondrial antiviral signaling protein that activates NF-kappaB and IRF 3(Sethら,Cell 122,669-682,2005)とLFA-1-mediated adhesion is regulated by cytoskeletal restraint and by a Ca2+-dependent protease, calpain(Stewartら,J Cell Biol 140,699-707,1998)を参照する。簡便に、合成された1500bpの完全なプロモーター配列と切断された各プロモーター配列をそれぞれルシフェラーゼ発現ベクターpGL3にサブクローニングして、各マウスRyr2レポータプラスミドを構築した。配列決定によりプラスミドが正しいことを確認した。Neofect(KS2000)を用いて、300ng Ryr2レポータ遺伝子及び海腎ルシフェラーゼレポータ遺伝子プラスミドを1.25×105 FoxP3過剰発現3T3、FoxP3過剰発現Renca又はFoxP3過剰発現A20細胞に共トランスフェクションした。トランスフェクション36時間後、細胞溶解物を調製し、デュアルルシフェラーゼレポータアッセイシステム(Promega)を用いて解析した。
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0114
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0114】
実施例3:T細胞におけるCa2+レベルに対するRyr2抑制の影響
1、Tconv及びTregにおけるm-カルパインの違い及びDC結合能力
Tregにおけるm-カルパイン活性は低いので、本実施例では、その発現レベルが低いか否かを判定しようとした。また、m-カルパインは細胞内のCa2+の可用性により調整されるので、休止状態でのTconv及びTregのC2+シグナルを検出した。
【手続補正25】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
その結果、
図1A、B、Cに示すように、Tconv及びTregにおけるm-カルパインはタンパク質又はmRNAレベルのいずれにも違いがなかった
。基礎Ca
2+振動はTconvを含む多くの免疫細胞に共通の特徴であるが、この活性はTregにはほとんど存在しない。すなわち、個々のTregはCa
2+振動のピーク値を示さない(
図2及び
図3)。Ca
2+振動強度の標準偏差は、Tregでは、Tconvよりも有意に小さくなった(
図4)。すなわち、m-カルパイン活性はTregでブロックされ、これにより、TregはLFA-1/icam-1に基づく非常に強いDC結合能力を有する。
【手続補正26】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0117
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0117】
ここで、GEOデータベース解析ステップは以下の通りである。NCBI GEOデータベース(GSE71162)に発表されている3つのRNA-Seq研究に基づき、タンパク質を発現レベルによって分類した。カルシウム関連タンパク質をGO解析によりランク付けした。これらのタンパク質の機能はUniProt(http://www.uniprot.org/)に基づいて注釈されている。タンパク質をTregとTconvの発現の違いの度合いによってランク付けした。
【手続補正27】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0118
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0118】
Ryr受容体は
ER膜(Ryr1、2及び3)上に位置し、ヒトPBMCにおいて、Ryr1はCD19+集団で、Ryr2はCD3+部分で発現する。TregにおけるRyr2の発現量が低いことを確認するために、刺激因子4-CMCを用いてCMAC(カルパイン基質)の消化率を観察した。その結果、
図7に示すように、4-CMCはカルパイン活性を完全に誘導することができる一方、Tregはこの処理に敏感ではなく、TregではRyr2の発現が低下していることが確認された。
【手続補正28】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0122
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0122】
Ryr2抑制がTconvにおけるCa
2+レベル低下の原因であることを遺伝学的に確認するために、本実施例では、shRNA干渉によるRyr2ノックダウンを行った。Ryr2特異的shRNAノックダウンRyr2の転写mRNAレベルとノックダウンされていないRyr2の転写mRNAレベルとを比較した(
図10)
ところ、Ryr2ノックダウンTconvでは、対照群に比べ、細胞基礎Ca
2+レベルは著しく低下
し、Ca
2+ピーク値が低下し、Ca
2+変化の標準偏差も低くなった
(図11及び図12)。
JTV519処理されたRyr2抑制による低m-カルパイン基質消化処理の結
果と一致した(
図13)。
【手続補正29】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0123
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0123】
ここで、カルパイン活性の測定ステップ。カルパイン活性を測定するために、20μMカルパイン基質CMAC(t-BOC-Leu-Met,Thermo Fisher)を含む200μLの培地で、105個のT細胞を暗所で室温インキュベートした。5分間のインキュベーション後、1%PFA(Biosharp)で反応を停止し、細胞を直ちに氷上に置いた。FortessaフローサイトメータによりHoechstブルーチャネルを介して消化した基質から発せられる蛍光シグナルをカルパイン活性とした。いずれの実験においても、阻害剤JTV519を実験30分前に添加し、活性化剤4-CmCはCMACと同時に添加した。
【手続補正30】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0125
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0125】
さらに、処理TconvとDCの結合向上により抗原特異的Tconvが同じDCと安定的に結合
できないことを確認するために、
3細胞結合力解析を行った(参照文献:Strong adhesion by regulatory T cells induces dendritic cell cytoskeletal polarization and contact-dependent lethargy(Chen et al.,The Journal of experimental medicine,2017))。その結果、Treg
及びRyr2が
ノックダウンしたTconvは、OTIIとOVAを担持したDCとの結合強度を有意に抑制することが示された(
図15)。したがって、単細胞レベルでは、Ryr2活性が低下したTconvは、TconvとDCとの相互作用を阻止する能力がTreg機能と同等であることが確認された。次に、典型的なDC媒介抗原提示
実験において、shRNA処理TconvのOTII
分裂抑制能力をテストした。その結果、
図16に示すように、これらの細胞はOTIIの分裂減少においてはTregのような
能力を示した。Ryr2と同様に作用する可能性のある他の潜在的なCa
2+チャネル活動の調査では、CD4 Tconv細胞でのこれらの活性を低下させるshRNAが産生され、SCFSにより、これらのshRNAとDCとの結合がテストされた。その結果、
図17、
図18に示すように、Ryr2以外のノックダウンは処理T細胞とDCとの結合を向上させず、Ryr2の特別な関与が確認された。
【手続補正31】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0126
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0126】
ここで、インビトロ抑制実験ステップ:精製OTII T細胞をCellTrace CFSE(Thermo Fisher Scientifc)で染色した。104個の脾臓細胞に由来する精製DC、2×104個のOTII T細胞、2×10Treg又はRyr2-/-Tconv又はRyr2ノックダウンTconv、及び2μM OVA323-339ペプチドを混合して、96ウェルU底プレートで培養し、Fortessaフローサイトメータを用いてCFSEの希釈を検出してOTII T細胞の増殖を評価した。(1-増殖%)から抑制パーセンテージを計算し、無Treg群を0%抑制、Treg群を100%抑制とすることでデータの正規化を行った。
【手続補正32】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0127
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0127】
3、フォーススペクトルによるRyr2欠損時のDCとの結合状況の確認
同様に、Ryr2が欠損するとDCとの結合が増加することが、フォーススペクトルからも示された(
図33)。また、3細胞力
学解析では、DCとT細胞との接触を干渉する能力も増強された(
図34)。さらに重要なこととして、Ryr2-/-Tconvは、抗原陽性樹状細胞刺激によるOTII増幅を抑制する能力がTregと類似している(
図35)。したがって、Tconv細胞中のRyr2を制限するだけで、インビトロでDC媒介性T細胞の活性化を抑制する能力を得ることができる。
図46はRyr2を抑制したT細胞の免疫抑制作用を示している。
【手続補正33】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0128
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0128】
ここで、原子間力顕微鏡による単細胞フォーススペクトルの検出ステップは前述した通りである。JPK CellHesion装置を用いて実験した(参照文献:Alum interaction with dendritic cell membrane lipids is essential for its adjuvanticity(Flachら,Nat Med 17,479-487,2011)と文献:Strong adhesion by regulatory T cells induces dendritic cell cytoskeletal polarization and contact-dependent lethargy(Chenら,The Journal of experimental medicine,2017))。簡単に言えば、2細胞系におけるT-DC接着力を測定するために、DC2.4細胞を未処理ガラスシートで培養した。T細胞を200U/mLのヒトIL-2で一晩処理した。ガラスシートをAFMと互換性があるチャンバに移し、マシンテーブルに取り付けた。クリーンなカンチレバーをCellTak(BD)でコーティングし、単一のT細胞をカンチレバー先端に貼り付けた。単一のT細胞を担持したAFMカンチレバーを降下させ、単一のDCと接触させ、15s相互作用させた後、2つの細胞が完全に分離するまで上に移動させた。これにより、フォーススペクトル曲線を取得した。その後、このプロセスを繰り返した。3細胞系では、実験前に、ガラスシート上で培養したDC2.4細胞を100μg/mLの可溶性OVAタンパク質で4h処理した。IL-2処理Treg/Tconv細胞を10μM CFSEで染色し、DC2.4細胞をこれらの蛍光標識Treg又はTconv細胞と約20分間インキュベートした後、標識していないOT-II T細胞を加えた。次に、OT-II T細胞を有するカンチレバー先端を、紫外フラッシュランプで認識したTreg/Tconv細胞-DC対にアプローチした。Treg/TTconv接触媒介OT-II-DC接着抑制を解析した。各サイクルで、単一のT細胞を担持したAFMカンチレバーは、最初の力曲線が生成されるまで0.5~2μm分降下した。その後、カンチレバー上のT細胞をDCと15s相互作用させ、2つの細胞が完全に分離するまでカンチレバーを上に移動させた。機械を入れたインキュベータを37℃、5%CO2の条件に置いた。全ての実験で、少なくとも14個の力曲線がさらなる解析のために収集された。JPK画像処理ソフトウェアを使用して力曲線を処理した。円形で飽満な細胞のみを選択してAFM検出を行った。各SCFS実験では、1つのT-DC対を使用して、数分以内に上下サイクルごとの力の読み取り値を生成した。各条件には、少なくとも3対のデータが使用された。
【手続補正34】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0131
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0131】
2
、結果
ヘルペス感染モデルでは、Treg又はRyr2-/-Tcon
vを注射すると、HSV-1
の増幅を促進し、Ryr2+/+Tconvの輸注は、ウイルス(PBS)単独接種と比較して
HSV-1のpfuが増加しなかった(
図36参照)。次に、同じモデルをDTH応答の検出に使用した。HSV-1を
第2回接種した後、感作させた足底は腫脹したが、TregとRyr2-/-Tconvを注射した足底の厚さの増加はいずれも減少したが、対照群では、Ryr2+/+Tconvとウイルス単独接種(PBS)はいずれも厚さを減少しなかった(
図37、
図38)。
【手続補正35】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0132
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0132】
実施例6:マウス喘息モデルにおけるRyr2-/-T細胞の作用
1、喘息モデルの作製及び実験ステップ
オボアルブミン(OVA)で気道炎症を誘発した。0日目と14日目に、OVAとミョウバンのアジュバント(100μg+4mg)を2回i.p注射し、マウスを感作させた。21、23、及び25日目に、舌後部に気管内OVAショックを繰り返した。106個のTreg、Ryr2-/-Tconv、Ryr2+/+Tconv、又はPBSをi.v養子移入した。32日目に、安楽死マウスの気管支肺胞洗液における免疫細胞浸潤の分析と肺組織の病理解析を行った。
【手続補正36】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0133
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0133】
2、H&E染色ステップ
肺組織を全て4℃で4%のホルマリン中に固定化した。その後、パラフィンにサンプルを包埋した。厚さ5~6μmの薄片に切った。ヘマトキシリンとエオシンで染色した。
【手続補正37】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0134
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0134】
3、
実験結果
図40Aの感作スケジュールに従って作製したOVA感作喘息モデルでは、TregとRyr2-/-Tconvの輸注はBALF細胞数の制限に同等の効果を示し、リンパ球と好酸球の減少度も同様であった(
図39)。組織学的検査を
図40Bに示す。
【手続補正38】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
実施例7:マウス結腸炎モデルにおけるRyr2-/-T細胞の作用
1、DSS誘導結腸炎(IBD)モデルの作製及び実験ステップ
DSS誘導マウス実験性結腸炎モデルは、文献Inhibition of Dectin-1 Signaling Ameliorates Colitis by Inducing Lactobacillus-Mediated Regulatory T Cell Expansion in the Intestine(Tangら,Cell Host Microbe 18,183-197,2015)とMyeloid-Derived Suppressor Cells Are Controlled by Regulatory T Cells via TGF-beta during Murine Colitis(Leeら,Cell Rep 17,3219-3232,2016)を参照することができる。簡単に言えば、6週齢の雄C57BL/6マウスに、3×106個のRyr2-/-Tconv、野生型Tconv又はTregをi.v養子移入した。翌日、4%DSS(w/v)水を7日間投与して結腸炎(Yeason,MW=36,000~50,000 Da)を誘導した後、通常の飲み水に変えて飼育を続けた。正常対照マウスにPBSを投与し、通常の飲料水を与えた。10日目にマウスを殺し、結腸を解剖して結腸の長さを測定した。その後、結腸を4%PFAにて4℃で48時間固定化し、その後のH&E染色に用いた。3DHISTECH Pannoramic SCAN(3DHISTECH)にて結腸切片を観察した。1群あたり11~18匹のマウスとした。
【手続補正39】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0136
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0136】
2、H&E組織学的ステップ
結腸組織を4℃で4%のホルマリン中に固定化した。その後、パラフィンにサンプルを包埋した。厚さ5~6μmの薄片に切った。ヘマトキシリンとエオシンで染色した。
【手続補正40】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0137
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0137】
3、
実験結果
図42Aの誘導スケジュールに従って作製した結腸炎モデルでは、TregとRyr2-/-Tconvを注射した群では、結腸の長さが短縮した。Treg群とRyr2+/+Tcon
vは、いずれもRyr2-/-Tcon
vと比較して結腸損傷を軽減することができた(
図41、
図42)。
【手続補正41】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0138
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0138】
実施例8:マウス結腸癌モデルにおけるRyr2-/-T細胞の作用
1、結腸癌腫瘍モデルの作製及び実験ステップ
文献Oxidative stress controls regulatory T cell apoptosis and suppressor activity and PD-L1-blockade resistance in tumor(Majら,Nat Immunol 18,1332-1341,2017))を参照して移植した腫瘍マウスモデルを作製した。簡単に言えば、MC38結腸癌細胞をPBSで2回洗浄した後、5×105個のMC38細胞と106個のT細胞を混合した後、6週齢の雄C57BL/6マウスの腹部皮下に注射した。腫瘍接種後7日目から4~5日毎にノギスを用いて腫瘍の大きさを計量した。体積は(長さ×幅×幅)/2として計算される。第1群:MC38+PBS、第2群:MC38+Ryr2+/+Tconv、第3群:MC38+Treg、第4群:MC38+Ryr2-/-Tconv。1群あたり10匹のマウスとした。
【手続補正42】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0139
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0139】
2、
実験結果
MC38腫瘍モデルでは、Treg及びRyr2-/-Tconvの注入は腫瘍の成長を促進したが、PBS及びRyr2+/+Tconv群には有意な効果は認められなかった(
図43)。
【手続補正43】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0142
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0142】
2、H&E組織学的ステップ
皮膚、耳、肝臓やその他の組織を全て4℃で4%のホルマリン中に固定化した。その後、パラフィンにサンプルを包埋した。厚さ5~6μmの薄片に切った。ヘマトキシリンとエオシンで染色した。
【手続補正44】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0143
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0143】
3、
実験結果
皮癬罹患マウス(FoxP3-/-、C57BL/6)に、PBS、Treg、Ryr2+/+Tconv、又はRyr2-/-Tconvを生後2~3日に注射した。予想された通り、PBS又はRyr2+/+Tconvを注射したマウスは、生後2~4週間で全て死亡した。一方、Treg又はRyr2-/-Tconvを注射した全てのマウスは少なくとも20週間生存した(
図44、
図25)。また、6カ月経過観察後も、Ryr2-/-Tconvを注射した皮癬罹患マウスの死亡や明らかな異常は認められなかった。
【手続補正45】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0145
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0145】
以上より、Ryr2-/-T及びTreg細胞は、マウスヘルペス感染モデル、喘息モデル、結腸炎モデル及び結腸癌モデルでは、機能的に同じ効果を示し、しかも、皮癬マウスでも免疫機能を回復させることができた。つまり、Tregが免疫調節作用を有することが知られているいくつかの疾患では、Ryr2-/-Tは同等の作用を果たすことが示されている。
【手続補正46】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
【手続補正47】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正48】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【外国語明細書】