(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105393
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】改善されたタンパク質の回収
(51)【国際特許分類】
C07K 1/34 20060101AFI20240730BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20240730BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
C07K1/34
C07K16/24
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024074343
(22)【出願日】2024-05-01
(62)【分割の表示】P 2021507639の分割
【原出願日】2019-08-13
(31)【優先権主張番号】62/718,864
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】アブヒラム・アルンクマール
(72)【発明者】
【氏名】ヌリペン・シン
(72)【発明者】
【氏名】アメヤ・ウメシュ・ボルワンカル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を低減または防止する方法を提供する。
【解決手段】以下を含む、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を低減または防止する方法:(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通す、および(ii)回収洗浄中に緩衝液を濾過アセンブリに100リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質の希釈と比較して、標的タンパク質の希釈を低減または防止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を低減または防止する方法:(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通す、および(ii)回収洗浄中に緩衝液を濾過アセンブリに100リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質の希釈と比較して、標的タンパク質の希釈を低減または防止する。
【請求項2】
以下を含む、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の濃度を改善または増加させる方法:(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通す、および(ii)回収洗浄中に洗浄緩衝液を濾過アセンブリに100リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質濃度と比較して、標的タンパク質濃度を改善する。
【請求項3】
回収洗浄における流動のレイノルズ数(「Re」)が、2000未満、1500未満、1000未満、900未満、800未満、700未満、600未満、500未満、400未満、300未満、200未満、100未満、90未満、80未満、70未満、60未満、50未満、40未満、30未満、20未満、10未満、5未満、4未満、または3未満であり、Reが以下の式によって計算される、請求項1または2に記載の方法:Re=Dυρ/μ、ここでDは流路の直径(m)または非円筒形流路形状の場合には相当直径であり、υは平均速度(m/s)(Q/Ac)であり、ρは密度(kg/m3)であり、μは粘度(Pa・s)である。
【請求項4】
回収洗浄における流動のReが、約1~約50、約1~約45、約1~約40、約1~約35、約1~約30、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、約2~約40、約1~約10、約2~約9、約3~約8、約4~約7、約4~約6、約3~約7、約3~約6、約3~約5、約2~約8、約2~約7、約2~約6、約2~約5、約3~約10、または約4~約6である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
回収洗浄における流動のReが、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または約30である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
回収洗浄における流動のReが約3.8である、請求項3記載の方法。
【請求項7】
洗浄流速が、約5LMH~約100LMH、約10LMH~約100LMH、約10LMH~約90LMH、約10LMH~約80LMH、約10LMH~約70LMH、約10LMH~約60LMH、約10LMH~約50LMH、約10LMH~約40LMH、約10LMH~約30LMH、約30LMH~約50LMH、約20LMH~約100LMH、約20LMH~約90LMH、約20LMH~約80LMH、約20LMH~約70LMH、約20LMH~約60LMH、約20LMH~約50LMH、約20LMH~約40LMH、約30LMH~約100LMH、約30LMH~約90LMH、約30LMH~約80LMH、約30LMH~約70LMH、約30LMH~約60LMH、約30LMH~約50LMH、約30LMH~約40LMH、または約20LMH~約30LMHである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
洗浄流速が、少なくとも約10LMH、少なくとも約20LMH、少なくとも約30LMH、少なくとも約40LMH、少なくとも約50LMH、少なくとも約60LMH、少なくとも約70LMH、少なくとも約80LMH、少なくとも約90LMH、または少なくとも約100LMHである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
洗浄流速が約30LMHである、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
標的タンパク質の粘度が高い、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
標的タンパク質の粘度が、少なくとも約1センチポアズ(cP)、少なくとも約2cP、少なくとも約3cP、少なくとも約4cP、少なくとも約5cP、少なくとも約6cP、少なくとも約7cP、少なくとも約8cP、少なくとも約9cP、少なくとも約10cP、少なくとも約11cP、少なくとも約12cP、少なくとも約13cP、少なくとも約14cP、少なくとも約15cP、少なくとも約16cP、少なくとも約17cP、少なくとも約18cP、少なくとも約19cP、少なくとも約20cP、少なくとも約21cP、少なくとも約22cP、少なくとも約23cP、少なくとも約24cP、少なくとも約25cP、少なくとも約26cP、少なくとも約27cP、少なくとも約28cP、少なくとも約29cP、または少なくとも約30cPである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
標的タンパク質の粘度が、少なくとも約20センチポアズ(cP)、少なくとも約21cP、少なくとも約22cP、少なくとも約23cP、少なくとも約24cP、少なくとも約25cP、少なくとも約26cP、少なくとも約27cP、少なくとも約28cP、少なくとも約29cP、少なくとも約30cP、少なくとも約31cP、少なくとも約32cP、少なくとも約33cP、少なくとも約34cP、少なくとも約35cP、少なくとも約36cP、少なくとも約37cP、少なくとも約38cP、少なくとも約39cP、少なくとも約40cP、少なくとも約41cP、少なくとも約42cP、少なくとも約43cP、少なくとも約44cP、少なくとも約45cP、少なくとも約46cP、少なくとも約47cP、少なくとも約48cP、少なくとも約49cP、少なくとも約50cP、少なくとも約51cP、少なくとも約52cP、少なくとも約53cP、少なくとも約54cP、少なくとも約55cP、少なくとも約56cP、少なくとも約57cP、少なくとも約58cP、少なくとも約59cP、少なくとも約60cP、少なくとも約61cP、少なくとも約62cP、少なくとも約63cP、少なくとも約64cP、少なくとも約65cP、少なくとも約66cP、少なくとも約67cP、少なくとも約68cP、少なくとも約69cP、少なくとも約70cP、少なくとも約71cP、少なくとも約72cP、少なくとも約73cP、少なくとも約74cP、少なくとも約75cP、少なくとも約76cP、少なくとも約77cP、少なくとも約78cP、少なくとも約79cP、少なくとも約80cP、少なくとも約81cP、少なくとも約82cP、少なくとも約83cP、少なくとも約84cP、少なくとも約85cP、少なくとも約86cP、少なくとも約87cP、少なくとも約88cP、少なくとも約89cP、少なくとも約90cP、少なくとも約91cP、少なくとも約92cP、少なくとも約93cP、少なくとも約94cP、少なくとも約95cP、少なくとも約96cP、少なくとも約97cP、少なくとも約98cP、少なくとも約99cP、または少なくとも約100cPである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
標的タンパク質の粘度が、約2cP~約10cP、約3cP~約10cP、約1cP~約9cP、約2cP~約8cP、約2cP~約7cP、約2cP~約6cP、約3cP~約6cP、約4cP~約5cP、または約2cP~約5cPである、請求項10記載の方法。
【請求項14】
回収洗浄後の標的タンパク質の濃度が、濾過の前に少なくとも約100g/L、少なくとも約110g/L、少なくとも約120g/L、少なくとも約130g/L、少なくとも約140g/L、少なくとも約150g/L、少なくとも約160g/L、少なくとも約170g/L、少なくとも約180g/L、少なくとも約190g/L、少なくとも約200g/L、少なくとも約210g/L、少なくとも約220g/L、少なくとも約230g/L、少なくとも約240g/L、少なくとも約250g/L、少なくとも約260g/L、少なくとも約270g/L、少なくとも約280g/L、少なくとも約290g/L、または少なくとも約300g/Lである、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
回収洗浄後の標的タンパク質の濃度が、約100g/L~約300g/L、約110g/L~約250g/L、約120g/L~約240g/L、約150g/L~約250g/L、約130g/L~約260g/L、約140g/L~約260g/L、約160g/L~約220g/L、または約170g/L~約230g/Lである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
回収洗浄後の標的タンパク質の濃度が、約90g/L、約100g/L、約110g/L、約120g/L、約130g/L、約140g/L、約150g/L、約160g/L、約170g/L、約180g/L、約190g/L、約200g/L、約210g/L、約220g/L、約230g/L、約240g/L、約250g/L、約260g/L、約270g/L、約280g/L、約290g/L、または約300g/Lである、請求項14記載の方法。
【請求項17】
回収洗浄後の標的タンパク質の収量が、(i)および(ii)からなる回収洗浄プロセスの前の標的タンパク質の濃度と比較して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%である、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
回収洗浄後の標的タンパク質の収量が、300LMHの流速による回収洗浄後に得られた標的タンパク質の収量と比較して少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、または少なくとも20%増加している、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
(i)における通過が(ii)における洗浄速度よりも高いフィード流速である、請求項1~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
フィード流速が、少なくとも200LMH、少なくとも210LMH、少なくとも220LMH、少なくとも230LMH、少なくとも240LMH、少なくとも250LMH、少なくとも260LMH、少なくとも270LMH、少なくとも280LMH、少なくとも290LMH、少なくとも300LMH、少なくとも310LMH、少なくとも320LMH、少なくとも330LMH、少なくとも340LMH、少なくとも350LMH、少なくとも360LMH、少なくとも370LMH、少なくとも380LMH、少なくとも390LMH、少なくとも400LMH、少なくとも410LMH、少なくとも420LMH、少なくとも430LMH、少なくとも440LMH、少なくとも450LMH、少なくとも460LMH、少なくとも470LMH、少なくとも480LMH、少なくとも490LMH、または少なくとも500LMHである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
フィード流速が、200LMH~500LMH、200LMH~450LMH、250LMH~450LMH、450LMH、300LMH~450LMH、300LMH~400LMH、または300LMH~350LMHである、請求項19記載の方法。
【請求項22】
フィード流速が約300LMHである、請求項19記載の方法。
【請求項23】
濾過アセンブリが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、再生セルロース、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ビニル共重合体、ポリアミド(「ナイロン6」または「ナイロン66」など)ポリカーボネート、PFA、またはそれらの任意の組合せから得られる膜を含む、請求項1~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
洗浄緩衝液が有機酸および無機酸またはそれらの塩を含む、請求項1~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
有機酸または無機酸が、クエン酸塩(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、酢酸塩(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)、トリメチルアミン塩(例えば、Tris)、リン酸塩、またはヒスチジンである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
洗浄緩衝液がヒスチジンを含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
洗浄緩衝液が糖を含む、請求項1~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
糖が、スクロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクトース、グルコース、粉糖、またはプルランである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
洗浄緩衝液が20mMヒスチジンおよび250mMスクロースを含む、請求項1~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
濾過緩衝液が(i)において使用される、請求項1~29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
濾過緩衝液が洗浄緩衝液と同じである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
濾過緩衝液が洗浄緩衝液と異なっている、請求項30記載の方法。
【請求項33】
濾過緩衝液が有機酸および無機酸またはそれらの塩を含む、請求項30~32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
有機酸または無機酸が、クエン酸塩(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、酢酸塩(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)、トリメチルアミン塩(例えば、Tris)、リン酸塩、またはヒスチジンである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
濾過緩衝液が糖を含む、請求項30~34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
糖が、スクロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクトース、グルコース、粉糖、またはプルランである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
洗浄緩衝液および/または濾過緩衝液が、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、または約9.5のpHである、請求項1~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
試料が、純粋なタンパク質試料、清澄化されたバルクタンパク質試料、細胞培養物試料、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1~37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
細胞培養物試料が哺乳類細胞を含む細胞培地から得られる、請求項38記載の方法。
【請求項40】
哺乳類細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK293細胞、マウス骨髄腫(NS0)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、サル腎臓線維芽細胞(COS-7)、メイディンダービーウシ腎臓細胞(MDBK)、またはそれらの任意の組合せから選択される、請求項39記載の方法。
【請求項41】
標的タンパク質が抗体または融合タンパク質を含む、請求項1~40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
標的タンパク質が抗体を含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
抗体が、IgM、IgA、IgE、IgD、およびIgGから選択されるアイソタイプである、請求項42記載の方法。
【請求項44】
IgG抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択される、請求項43記載の方法。
【請求項45】
抗体が、抗GITR抗体、抗CXCR4抗体、抗CD73抗体、抗TIGIT抗体、抗OX40抗体、抗LAG3抗体、抗CSF1R抗体、または抗IL8抗体である、請求項42~44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
標的タンパク質が、酵素、ホルモン、サイトカイン、細胞表面受容体、プロテアーゼ、サイトカイン受容体、またはそれらの任意の組合せを含む、請求項1~41のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
標的タンパク質が融合タンパク質である、請求項41~46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
融合タンパク質が異種部分と融合している、請求項47記載の方法。
【請求項49】
異種部分が半減期延長部分である、請求項48記載の方法。
【請求項50】
半減期延長部分がFcを含む、請求項49記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2018年8月14日に出願された米国仮出願第62/718,864号の優先権の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多様な治療用タンパク質の皮下送達は、特に大量の薬物を投与することを必要とするモノクローナル抗体などの特定のタンパク質サブタイプについて急速に成長している分野である。これらの分子を適切に製剤化するためには、100g/Lを超える濃度が必要である。このような高濃度でのこれらの分子の製造、およびタンジェンシャルフロー濾過(TFF)または他の濾過法を用いた高度に濃縮された産物の大規模回収はいずれも困難であることが知られている。
【0003】
タンジェンシャルフロー濾過(TFF)は、生体分子を分離および精製する迅速で効率的な方法である。TFFは幅広い生物学の分野(免疫学、タンパク質化学、分子生物学、生化学および微生物学など)に適用され得る。TFFは10mLから数千リットルの体積の試料溶液を濃縮および脱塩するために使用され得、小さな生体分子から大きな生体分子を分画し、細胞懸濁液を収集し、発酵ブロスおよび細胞溶解物を清澄化するのに使用され得る。膜濾過は、ライフサイエンスの研究室で広く使用されている分離技術である。膜の空隙率に応じて、膜濾過は精密濾過法または限外濾過法に分類され得る。限外濾過膜は一般に0.001~0.1μmの孔径を有し、溶解した分子(タンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物および他の生体分子)の濃縮および脱塩、緩衝液の交換、および総分画に使用される。限外濾過膜は通常、孔径ではなく分子量カットオフ(MWCO)によって分類される。
【0004】
原薬段階において意図される高タンパク質濃度(>150mg/mL)での高粘度限外濾過では、標的濃度を達成するための負担が限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスにあることは周知である。製造時に直面する問題の一つは製造チューブまたは他の「ホールドアップ」領域におけるタンパク質の残留であり、これは回収容器における不十分な回収率をもたらし、従って不十分な収量をもたらす。そのため、回収洗浄を利用して残留したタンパク質を回収容器に押し出し、全収量を増加させることが通常行われる。洗浄の動作が理想的なプラグフロー条件に従う場合、洗浄中に希釈は生じず、代わりに洗浄緩衝液がタンパク質を回収容器に単純に押し出し、「ホールドアップ」領域において取って代わることになり、希釈を伴わない「ホールドアップ」領域に捕捉されたタンパク質の回収は問題にならない。しかしながら、現実の条件下では、回収洗浄緩衝液と回収容器に押し出されるタンパク質との間で希釈が生じるため、回収洗浄は産物の希釈を生じる。したがって、回収洗浄中における標的産物の希釈を低減または防止する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を低減または防止する方法に関する。本開示のある態様は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に緩衝液を濾過アセンブリに100リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質の希釈と比較して、標的タンパク質の希釈を低減または防止することに関する。別の態様において、本開示は、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の濃度を改善または増加させる方法に関する。本開示のある態様は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に洗浄緩衝液を濾過アセンブリに100リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質濃度と比較して、標的タンパク質濃度を改善することに関する。
【0006】
いくつかの実施態様において、回収洗浄における流動のレイノルズ数(「Re」)は、2000未満、1500未満、1000未満、900未満、800未満、700未満、600未満、500未満、400未満、300未満、200未満、100未満、90未満、80未満、70未満、60未満、50未満、40未満、30未満、20未満、10未満、5未満、4未満、または3未満であり、Reは以下の式によって計算される:Re=Dυρ/μ、ここでDは流路の直径(m)または非円筒形流路形状の場合には相当直径であり、υは平均速度(m/s)(Q/Ac)であり、ρは密度(kg/m3)であり、μは粘度(Pa・s)である。
【0007】
いくつかの実施態様において、回収洗浄における流動のレイノルズ数(Re)は、約1~約50、約1~約45、約1~約40、約1~約35、約1~約30、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、約2~約40、約1~約10、約2~約9、約3~約8、約4~約7、約4~約6、約3~約7、約3~約6、約3~約5、約2~約8、約2~約7、約2~約6、約2~約5、約3~約10、または約4~約6である。
【0008】
いくつかの実施態様において、回収洗浄における流動のレイノルズ数(Re)は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、または約30である。いくつかの実施態様において、回収洗浄における流動のReは約3.8である。
【0009】
いくつかの実施態様において、洗浄流速は、約5LMH~約100LMH、約10LMH~約100LMH、約10LMH~約90LMH、約10LMH~約80LMH、約10LMH~約70LMH、約10LMH~約60LMH、約10LMH~約50LMH、約10LMH~約40LMH、約10LMH~約30LMH、約30LMH~約50LMH、約20LMH~約100LMH、約20LMH~約90LMH、約20LMH~約80LMH、約20LMH~約70LMH、約20LMH~約60LMH、約20LMH~約50LMH、約20LMH~約40LMH、約30LMH~約100LMH、約30LMH~約90LMH、約30LMH~約80LMH、約30LMH~約70LMH、約30LMH~約60LMH、約30LMH~約50LMH、約30LMH~約40LMH、または約20LMH~約30LMHである。
【0010】
いくつかの実施態様において、洗浄流速は、少なくとも約10LMH、少なくとも約20LMH、少なくとも約30LMH、少なくとも約40LMH、少なくとも約50LMH、少なくとも約60LMH、少なくとも約70LMH、少なくとも約80LMH、少なくとも約90LMH、または少なくとも約100LMHである。いくつかの実施態様において、洗浄流速は約30LMHである。
【0011】
本方法は、原薬段階において意図される高タンパク質濃度(>150mg/mL)での高粘度限外濾過において特に有効であり得る。いくつかの実施態様において、標的タンパク質の粘度は、少なくとも約1センチポアズ(cP)、少なくとも約2cP、少なくとも約3cP、少なくとも約4cP、少なくとも約5cP、少なくとも約6cP、少なくとも約7cP、少なくとも約8cP、少なくとも約9cP、少なくとも約10cP、少なくとも約11cP、少なくとも約12cP、少なくとも約13cP、少なくとも約14cP、少なくとも約15cP、少なくとも約16cP、少なくとも約17cP、少なくとも約18cP、少なくとも約19cP、少なくとも約20cP、少なくとも約21cP、少なくとも約22cP、少なくとも約23cP、少なくとも約24cP、少なくとも約25cP、少なくとも約26cP、少なくとも約27cP、少なくとも約28cP、少なくとも約29cP、または少なくとも約30cPである。
【0012】
いくつかの実施態様において、標的タンパク質の粘度は高く、少なくとも約20センチポアズ(cP)、少なくとも約21cP、少なくとも約22cP、少なくとも約23cP、少なくとも約24cP、少なくとも約25cP、少なくとも約26cP、少なくとも約27cP、少なくとも約28cP、少なくとも約29cP、少なくとも約30cP、少なくとも約31cP、少なくとも約32cP、少なくとも約33cP、少なくとも約34cP、少なくとも約35cP、少なくとも約36cP、少なくとも約37cP、少なくとも約38cP、少なくとも約39cP、少なくとも約40cP、少なくとも約41cP、少なくとも約42cP、少なくとも約43cP、少なくとも約44cP、少なくとも約45cP、少なくとも約46cP、少なくとも約47cP、少なくとも約48cP、少なくとも約49cP、少なくとも約50cP、少なくとも約51cP、少なくとも約52cP、少なくとも約53cP、少なくとも約54cP、少なくとも約55cP、少なくとも約56cP、少なくとも約57cP、少なくとも約58cP、少なくとも約59cP、少なくとも約60cP、少なくとも約61cP、少なくとも約62cP、少なくとも約63cP、少なくとも約64cP、少なくとも約65cP、少なくとも約66cP、少なくとも約67cP、少なくとも約68cP、少なくとも約69cP、少なくとも約70cP、少なくとも約71cP、少なくとも約72cP、少なくとも約73cP、少なくとも約74cP、少なくとも約75cP、少なくとも約76cP、少なくとも約77cP、少なくとも約78cP、少なくとも約79cP、少なくとも約80cP、少なくとも約81cP、少なくとも約82cP、少なくとも約83cP、少なくとも約84cP、少なくとも約85cP、少なくとも約86cP、少なくとも約87cP、少なくとも約88cP、少なくとも約89cP、少なくとも約90cP、少なくとも約91cP、少なくとも約92cP、少なくとも約93cP、少なくとも約94cP、少なくとも約95cP、少なくとも約96cP、少なくとも約97cP、少なくとも約98cP、少なくとも約99cP、または少なくとも約100cPである。
【0013】
いくつかの実施態様において、標的タンパク質の粘度は、約2cP~約10cP、約3cP~約10cP、約1cP~約9cP、約2cP~約8cP、約2cP~約7cP、約2cP~約6cP、約3cP~約6cP、約4cP~約5cP、または約2cP~約5cPである。
【0014】
いくつかの実施態様において、回収洗浄後の標的タンパク質の濃度は、濾過の前に少なくとも約100g/L、少なくとも約110g/L、少なくとも約120g/L、少なくとも約130g/L、少なくとも約140g/L、少なくとも約150g/L、少なくとも約160g/L、少なくとも約170g/L、少なくとも約180g/L、少なくとも約190g/L、少なくとも約200g/L、少なくとも約210g/L、少なくとも約220g/L、少なくとも約230g/L、少なくとも約240g/L、少なくとも約250g/L、少なくとも約260g/L、少なくとも約270g/L、少なくとも約280g/L、少なくとも約290g/L、または少なくとも約300g/Lである。
【0015】
いくつかの実施態様において、回収洗浄後の標的タンパク質の濃度は、約100g/L~約300g/L、約110g/L~約250g/L、約120g/L~約240g/L、約150g/L~約250g/L、約130g/L~約260g/L、約140g/L~約260g/L、約160g/L~約220g/L、または約170g/L~約230g/Lである。
【0016】
いくつかの実施態様において、回収洗浄後の標的タンパク質の濃度は、約90g/L、約100g/L、約110g/L、約120g/L、約130g/L、約140g/L、約150g/L、約160g/L、約170g/L、約180g/L、約190g/L、約200g/L、約210g/L、約220g/L、約230g/L、約240g/L、約250g/L、約260g/L、約270g/L、約280g/L、約290g/L、または約300g/Lである。
【0017】
これにより、本方法は回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を防止または低減することによって、回収洗浄後のタンパク質収量の増加をもたらし得る。いくつかの実施態様において、回収洗浄後の標的タンパク質の収量は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に緩衝液を濾過アセンブリに100リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことからなる回収洗浄プロセスの前の標的タンパク質の濃度と比較して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%である。
【0018】
いくつかの実施態様において、回収洗浄後の標的タンパク質の収量は、300LMHの流速による回収洗浄後に得られた標的タンパク質の収量と比較して少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、または少なくとも20%増加している。いくつかの実施態様において、(i)における通過は(ii)における洗浄速度よりも高いフィード流速である。
【0019】
いくつかの実施態様において、フィード流速は、少なくとも200LMH、少なくとも210LMH、少なくとも220LMH、少なくとも230LMH、少なくとも240LMH、少なくとも250LMH、少なくとも260LMH、少なくとも270LMH、少なくとも280LMH、少なくとも290LMH、少なくとも300LMH、少なくとも310LMH、少なくとも320LMH、少なくとも330LMH、少なくとも340LMH、少なくとも350LMH、少なくとも360LMH、少なくとも370LMH、少なくとも380LMH、少なくとも390LMH、少なくとも400LMH、少なくとも410LMH、少なくとも420LMH、少なくとも430LMH、少なくとも440LMH、少なくとも450LMH、少なくとも460LMH、少なくとも470LMH、少なくとも480LMH、少なくとも490LMH、または少なくとも500LMHである。
【0020】
いくつかの実施態様において、フィード流速は、200LMH~500LMH、200LMH~450LMH、250LMH~450LMH、450LMH、300LMH~450LMH、300LMH~400LMH、または300LMH~350LMHである。いくつかの実施態様において、フィード流速は約300LMHである。
【0021】
いくつかの実施態様において、濾過アセンブリは膜を含む。いくつかの実施態様において、濾過アセンブリに有用な濾過膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、再生セルロース、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ビニル共重合体、ポリアミド(「ナイロン6」または「ナイロン66」など)ポリカーボネート、PFA、またはそれらの任意の組合せから得られる。いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液は有機酸もしくは無機酸またはそれらの塩を含む。
【0022】
いくつかの実施態様において、有機酸または無機酸は、クエン酸塩(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、酢酸塩(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)、トリメチルアミン塩(例えば、Tris)、リン酸塩、またはヒスチジンである。いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液はヒスチジンを含む。いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液は糖を含む。いくつかの実施態様において、糖は、スクロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクトース、グルコース、粉糖、またはプルランである。いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液は20mMヒスチジンおよび250mMスクロースを含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、濾過緩衝液は(i)において使用される。いくつかの実施態様において、濾過緩衝液は洗浄緩衝液と同じである。他の実施態様において、濾過緩衝液は洗浄緩衝液とは異なる。いくつかの実施態様において、濾過緩衝液は有機酸および無機酸またはそれらの塩を含む。
【0024】
いくつかの実施態様において、有機酸または無機酸は、クエン酸塩(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、酢酸塩(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)、トリメチルアミン塩(例えば、Tris)、リン酸塩、またはヒスチジンである。
【0025】
いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液は糖を含む。いくつかの実施態様において、糖は、スクロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクトース、グルコース、粉糖、またはプルランである。いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液および/または濾過緩衝液は、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、または約9.5のpHである。
【0026】
いくつかの実施態様において、試料は、純粋なタンパク質試料、清澄化されたバルクタンパク質試料、細胞培養物試料、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、細胞培養物試料は哺乳類細胞を含む細胞培地から得られる。いくつかの実施態様において、哺乳類細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK293細胞、マウス骨髄腫(NS0)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、サル腎臓線維芽細胞(COS-7)、メイディンダービーウシ腎臓細胞(MDBK)、またはそれらの任意の組合せから選択される。
【0027】
いくつかの実施態様において、標的タンパク質は抗体または融合タンパク質を含む。いくつかの実施態様において、標的タンパク質は抗体を含む。いくつかの実施態様において、抗体は、IgM、IgA、IgE、IgDおよびIgGから選択されるアイソタイプである。いくつかの実施態様において、IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から選択される。いくつかの実施態様において、抗体は、抗GITR抗体、抗CXCR4抗体、抗CD73抗体、抗TIGIT抗体、抗OX40抗体、抗LAG3抗体、抗CSF1R抗体、または抗IL8抗体である。
【0028】
いくつかの実施態様において、標的タンパク質は、酵素、ホルモン、サイトカイン、細胞表面受容体、プロテアーゼ、サイトカイン受容体、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施態様において、標的タンパク質は融合タンパク質である。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は異種部分と融合している。いくつかの実施態様において、異種部分は半減期延長部分である。いくつかの実施態様において、半減期延長部分はFcを含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、サイズ16のフィードチューブ(176cm2の膜面積)を用いたスケールダウンしたプロセスから生成されたデータを示す。回収洗浄前に標的濃度を超えるようにTFF残余分を濃縮した後、多数の異なる回収洗浄流速を試験した。
図1に見られるように、より高い回収洗浄流速は濃縮されたTFF残余分のより大きな希釈をもたらす。
【0030】
【
図2】
図2は、様々な断面積を有するチューブを用いて計算されたレイノルズ数の比較を示す。断面積は表1に示されている。
【0031】
【
図3】
図3は、様々な断面積のチューブを一定速度で移動する流体の粘度に対する計算されたレイノルズ数の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を低減または防止するための非常に効果的な手法を提供する。具体的には、本手法は、計算されたレイノルズ数(Re)が高い場合に生じる乱流の希釈効果に対抗するためにより遅い流速を使用する。いくつかの実施態様において、本方法に有用な計算されたReは2000未満である。
【0033】
実施例に示されているように、本手法は、回収洗浄流速によって生じる回収洗浄中における標的タンパク質の希釈を低減または防止するのに有効である。ある実施態様において、本開示は、30LMHの回収洗浄流速を使用することによって回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を低減または防止する方法を提供し、これにより100LMHの回収洗浄流速で得られた標的タンパク質の希釈と比較して標的タンパク質の希釈を低減または防止する。このようなシステムの使用は回収洗浄中における標的タンパク質の極少量の希釈を可能にし、回収洗浄をしないことまたはより速い回収洗浄流速による過剰な希釈により産物の収量または濃度を犠牲にすることなくより高い最終標的濃度に達することを可能にする。
【0034】
ある実施態様において、本開示は、目的のタンパク質および1以上の混入物を含む混合物から目的のタンパク質を精製する方法を提供する。可能性のある混入物には、宿主細胞タンパク質(HCP)、高分子量種(HMW)、低分子量種(LMW)またはDNAが含まれる。
【0035】
ある実施態様において、本開示は抗体を精製する方法を提供する。ある実施態様において、混合物は、回収された細胞培養液、細胞培養上清、細胞溶解物、および清澄化されたバルクに由来する。
【0036】
I.用語
本開示がより容易に理解できるように、特定の用語を最初に定義する。本願において使用される場合、本明細書で他に明示的に与えられている場合を除き、以下の各用語は以下に記載される意味を有するものとする。追加の定義が本願のあらゆる箇所に記載されている。
【0037】
本明細書における用語「および/または」は、2つの特定の特徴または成分の他方を伴う、または伴わないそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。したがって、本明細書で「Aおよび/またはB」などの語句において使用される用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの語句において使用される用語「および/または」は、以下の各態様を包含することが意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0038】
本明細書において態様が「含む」という表現を用いて記載されている場合は常に、「からなる」および/または「本質的にからなる」に関して記載される他の類似の態様も提供されていると理解される。
【0039】
特に規定されていない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が関連する分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press;およびthe Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、本開示で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供する。
【0040】
単位、接頭辞および記号は、国際単位系(SI)に準拠した形式で表記されている。数値範囲は、その範囲を規定する数値を含む。本明細書において与えられる見出しは本開示の様々な態様を限定するものではなく、本開示の様々な態様は本明細書を全体として参照することによって得られ得る。したがって、以下で定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0041】
代替物(例えば、「または」)の使用は、代替物のいずれか一方、両方またはその任意の組合せを意味するものと理解されるべきである。本明細書において、不定冠詞「a」または「an」は、記載または列挙された任意の成分の「1つ以上」を指すものと理解されるべきである。
【0042】
用語「約」または「から本質的に構成される」は、当業者によって決定される特定の値または組成の許容誤差範囲内にある値または組成を指し、これは値または組成がどのように測定または決定されるか(すなわち測定系の限界)に部分的に依存する。例えば、「約」または「から本質的に構成される」は、当分野の実施毎の1以内または1を上回る標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」または「から本質的に構成される」は最大で20%の範囲を意味し得る。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、本用語は最大で1桁または5倍の値を意味し得る。本願および特許請求の範囲において特定の値または組成が与えられている場合、特に明記しない限り、「約」または「から本質的に構成される」の意味はその特定の値または組成の許容誤差範囲内であると想定されるべきである。
【0043】
本明細書に記載されているように、任意の濃度範囲、割合の範囲、比率の範囲または整数範囲は、特に指示がない限り、記載された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合にはその小数(整数の10分の1および100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0044】
本明細書において、用語「目的のタンパク質」は、精製が望まれる混合物中に存在する任意のタンパク質(天然または組換えのいずれか)を含むように最も広い意味で使用される。そのような目的のタンパク質には、限定されないが、酵素、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、免疫グロブリン(例えば抗体)、および/または任意の融合タンパク質が含まれる。
【0045】
用語「清澄化」は、微粒子を除去するプロセスを指す。清澄化は、精製プロセス中の後続のクロマトグラフィー(例えばAEXまたはCEX)の負担を低減させ得る。いくつかの例において、清澄化は、細胞培養物からコロイド、脂質、DNA-RNA、残存細胞および他の粒子を除去する方法である。濾過も使用され得、濾過はデプスフィルターを含み得る。「清澄化されたバルク」は、清澄化のプロセスにかけられた混合物を指す。
【0046】
用語「ウイルス不活化」は、混合物から感染性ウイルス混入物を除去するプロセスを指す。現在、伝染性の病原性ウイルスを不活化する多くの異なる方法(例えば、熱不活化、溶媒/界面活性剤(S/D)による不活化、pHによる不活化、化学的不活化および/または紫外線照射による不活化を含む)が存在している。
【0047】
用語「クロマトグラフィー」は、目的のタンパク質(例えば抗体)を混合物中に存在する他の分子(例えば混入物)から分離するあらゆる種類の技術を指す。通常、目的のタンパク質は、混合物の個々の分子が移動相の影響下で固定媒体を移動する速度の差異、または結合および溶出プロセスにおける差異の結果として他の分子(例えば混入物)から分離される。用語「マトリックス」または「クロマトグラフィーマトリックス」は本明細書において互換的に使用され、分離プロセスにおいて目的のタンパク質(例えば、免疫グロブリンなどのFc領域含有タンパク質)を混合物中に存在する他の分子から分離するあらゆる種類の吸着剤、樹脂または固相を指す。限定されない例として、粒子状樹脂、モノリス樹脂または繊維状樹脂、およびカラムまたはカートリッジに入れることができる膜が含まれる。マトリックスを形成するための物質の例には、多糖類(アガロースおよびセルロースなど);および他の力学的に安定したマトリックス(シリカ(例えば調節孔ガラス)、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、ポリアクリルアミド、セラミック粒子、および上記のいずれかの誘導体など)が含まれる。本開示の方法に適した典型的なマトリックスの種類の例は、陽イオン交換樹脂、アフィニティー樹脂、陰イオン交換樹脂、または混合モード樹脂である。「リガンド」はクロマトグラフィーマトリックスに結合し、マトリックスの結合特性を決定する官能基である。「リガンド」の例には、限定されないが、イオン交換基、疎水性相互作用基、親水性相互作用基、チオフィリック相互作用基、金属親和性基、親和性基、生物親和性基、および混合モード基(上記の組合せ)が含まれる。本明細書において使用され得るいくつかの好ましいリガンドには、限定されないが、強陽イオン交換基(スルホプロピル、スルホン酸など);強陰イオン交換基(トリメチルアンモニウムクロリドなど);弱陽イオン交換基(カルボン酸など);弱陰イオン交換基(N5NジエチルアミノまたはDEAEなど);疎水性相互作用基(フェニル、ブチル、プロピル、ヘキシルなど);および親和性基(プロテインA、プロテインGおよびプロテインLなど)が含まれる。本開示がより容易に理解され得るように、特定の用語を最初に定義する。本願において使用される場合、本明細書で明示的に与えられている場合を除き、以下の各用語は以下に記載される意味を有するものとする。追加の定義が本願のあらゆる箇所に記載されている。
【0048】
用語「アフィニティークロマトグラフィー」は、目的のタンパク質(例えば、Fc領域を含む目的のタンパク質または抗体)を目的のタンパク質に特異的なリガンドに特異的に結合させるタンパク質分離技術を指す。そのようなリガンドは、一般に生体分子特異的リガンドと呼ばれる。いくつかの実施態様において、生体分子特異的リガンド(例えば、プロテインAまたはその機能的バリアント)はクロマトグラフィーマトリックス物質に共有結合しており、溶液がクロマトグラフィーマトリックスに接触している場合に溶液中の目的のタンパク質にアクセス可能である。目的のタンパク質は一般にクロマトグラフィー工程の間、生体分子特異的リガンドに対する特異的な結合親和性を保持しているが、混合物中の他の溶質および/またはタンパク質はリガンドにあまりまたは特異的に結合しない。目的のタンパク質の固定化されたリガンドへの結合は、混入したタンパク質またはタンパク質不純物がクロマトグラフィーマトリックスを通過し、目的のタンパク質が固相物質上の固定化されたリガンドに特異的に結合したままであることを可能にする。次いで、特異的に結合した目的のタンパク質は適切な条件下(例えば、低pH、高pH、高塩分、競合リガンドなど)において固定化されたリガンドから活性型で除去され、溶出緩衝液とともにクロマトグラフィーカラムを通過し、先にカラムを通過した混入したタンパク質またはタンパク質不純物を含有しない。任意の成分は、それぞれの特異的に結合するタンパク質(例えば抗体)を精製するためのリガンドとして使用され得る。しかしながら、本開示における様々な方法では、プロテインAがFc領域含有標的タンパク質のリガンドとして使用される。標的タンパク質(例えばFc領域含有タンパク質)の生体分子特異的リガンド(例えばプロテインA)からの溶出条件は、当業者によって容易に決定され得る。いくつかの実施態様において、プロテインGもしくはプロテインLまたはそれらの機能的バリアントが生体分子特異的リガンドとして使用され得る。いくつかの実施態様において、生体分子特異的リガンド(プロテインAなど)はFc領域含有タンパク質に結合し、生体分子特異的リガンド/標的タンパク質コンジュゲートを洗浄または再平衡化し、次いで少なくとも1つの塩を含む約4または4未満のpHを有する緩衝液で溶出するために5~9のpH範囲で使用される。
【0049】
本明細書において互換的に使用される用語「精製する」、「分離する」または「単離する」は、目的のタンパク質および1以上の不純物を含む組成物または試料から目的のタンパク質の純度を増加させることを指す。通常、目的のタンパク質の純度は、組成物から少なくとも1つの不純物を(完全または部分的に)除去することによって増加する。
【0050】
本明細書における用語「緩衝液」は、溶液中のその存在によってpHの単位変化を生じさせるために添加しなければならない酸またはアルカリの量を増加させる物質を指す。緩衝溶液は、酸と塩基の共役成分の作用によりpHの変化に抵抗する。生物学的試薬とともに使用される緩衝溶液は、一般に溶液のpHが生理的範囲内にあるように水素イオンの濃度を一定に維持できる。従来の緩衝液の成分には、限定されないが、有機塩、無機塩、酸および塩基が含まれる。
【0051】
本明細書におけるクロマトグラフィーに関連する用語「クロマトグラフィーカラム」または「カラム」は、多くの場合クロマトグラフィーマトリックスまたは樹脂が充填されたシリンダーまたは中空の柱の形をした容器を指す。クロマトグラフィーマトリックスまたは樹脂は、精製のために利用される物理的特性および/または化学的特性を与える物質である。
【0052】
用語「イオン交換」および「イオン交換クロマトグラフィー」は、目的のイオン化可能な溶質(例えば混合物中の目的のタンパク質)が混合物中の溶質不純物または混入物よりも帯電した化合物と非特異的に多くまたは少なく相互作用するように、目的の溶質が固相イオン交換物質に(例えば共有結合によって)結合した逆に帯電したリガンドとpHおよび伝導性の適切な条件下で相互作用するクロマトグラフィープロセスを指す。混合物中の混入した溶質はイオン交換物質のカラムから洗浄され得、または目的の溶質よりも速くまたは遅く樹脂に結合するか、または樹脂から排除される。「イオン交換クロマトグラフィー」には、具体的には陽イオン交換(CEX)、陰イオン交換(AEX)、および混合モードクロマトグラフィーが含まれる。
【0053】
本明細書における用語「混入物」は、混合物中の任意の望ましくない成分または化合物を包含するように最も広い意味で使用される。細胞培養物、細胞溶解物または清澄化されたバルク(例えば清澄化された細胞培養上清)において、混入物には、例えば細胞培地中に存在する宿主細胞核酸(例えばDNA)および宿主細胞タンパク質が含まれる。宿主細胞の混入タンパク質には、限定されないが、宿主細胞によって天然にまたは組換えで産生されたタンパク質、ならびに目的のタンパク質に関連または由来するタンパク質(例えば、タンパク質分解断片)および他のプロセスに関連する混入物が含まれる。ある実施態様において、混入物の沈殿物は遠心分離、滅菌濾過、深層濾過、およびタンジェンシャルフロー濾過などの手段を用いて細胞培養物から分離される。
【0054】
用語「レイノルズ数」(Re)は以下の式で計算される:Re=Dυρ/μ、ここでDは流路の直径(m)または非円筒形流路形状の場合には相当直径であり、υは平均速度(m/s)(Q/Ac)であり、ρは密度(kg/m3)であり、μは粘度(PA s)である。レイノルズ数は無次元単位であり、流動流体中の粘性力に対する慣性力の比率を記述する。レイノルズ数は多くの流体の流れの相関において使用され、流体の流れのレジーム(層流、移行型、および乱流)の境界を記述するために使用される。流体が平行な層で流れ、層間に乱れがない場合、層流が生じる。レイノルズ数が約2,000未満である場合、チューブ内の流れは一般に層流である。レイノルズ数が約4,000より大きい場合、流れは乱流である。2,000~4,000のレイノルズ数は、層流と乱流の間の移行領域を示す。
【0055】
用語「回収洗浄」は、既に所望の標的濃度よりも濃縮されているタンパク質試料を洗浄し、回収容器に未だ到達していない追加のタンパク質を移すタンパク質精製工程を指す。過剰濃縮工程における過剰濃縮の量は最終的な標的タンパク質濃度に到達する前に可能な希釈の量を決定するため、回収工程において使用できる洗浄量に影響を与える。多くの大規模なタンパク質精製プロセスにおいて、かなりの量のタンパク質が回収容器の外側のチューブ、管または他の「ホールドアップ」領域に保持されてい得、より多くの量のタンパク質産物を回収容器または精製されたタンパク質産物を回収するために使用される他の容器に回収するために回収洗浄が必要である。回収洗浄を行わない場合、大規模なタンパク質精製システムのチューブ、管または他の「ホールドアップ」領域に蓄積したタンパク質産物は、タンパク質回収容器または精製されたタンパク質産物を回収するために使用される他の容器に到達しなかったために失われ得、または回収されない場合がある。
【0056】
用語「洗浄緩衝液」は、タンパク質の全収量の増加もしくはタンパク質の最終標的濃度への希釈のいずれかまたはその両方のために使用される回収洗浄中に使用される溶液または混合物を指す。洗浄緩衝液はまた、タンパク質が蓄積している濾過アセンブリのチューブまたは他の領域からタンパク質を押し出すために使用される。
【0057】
用語「濾過緩衝液」は、目的のタンパク質を含むフィードを膜に通過させ、または通すために使用される濾過中に使用される溶液または混合物を指す。
【0058】
用語「濾過アセンブリ」は、タンパク質精製を行うために使用されるシステム全体を指す。濾過アセンブリの一例は、目的のタンパク質を含むフィードを濾過膜に垂直なフィード流にかけるタンジェンシャルフロー濾過(TFF)システムである。市販のTFFシステムには、AKTA(登録商標) Fluxタンジェンシャルフロー濾過システム(GE Life Sciences)が含まれる。濾過アセンブリの別の例は、目的のタンパク質を含むフィードを濾過膜に平行なフィード流にかける直接フロー濾過(DFF)システムである。
【0059】
用語「フィード流速」(LMH)または時に「クロスフロー速度」は、目的のタンパク質を含むフィードを濾過膜に垂直なフィード流にかけるタンジェンシャルフロー濾過(TFF)のタンパク質精製の工程における流速を指す。フィードのタンジェンシャルフローは、フィルターの表面上に捕捉された粒子が蓄積することで濾過を妨害するのを妨げる。限外濾過の濃縮工程において、限外濾過膜カセットへのフィード流は濃縮および緩衝液交換に必要な膜間圧(TMP)およびクロスフロー流を与える。直接フロー濾過(DFF)システムの文脈において、用語「フィード流速」は濾過膜に平行な流速を指す。
【0060】
用語「洗浄流速」(LMH)は、既に望ましい標的濃度よりも濃縮されているタンパク質試料を洗浄し、回収容器内に存在しないタンパク質を移すタンパク質精製工程において使用される流速を指す。洗浄流速は、精製プロセスの回収洗浄段階中に洗浄緩衝液がシステムを流れる速度を表す。
【0061】
用語「透析濾過」は、タンパク質、ペプチド、核酸および他の生体分子を含む溶液から塩または溶媒を除去し、置換し、またはその濃度を低下させるプロセスを指す。このプロセスは透過性膜フィルターを用いて溶液または混合物の成分を分子サイズに基づいて分離する。膜の孔より小さい分子は膜を自由に通過する。
【0062】
用語「限外濾過」は、フィルターを用いてあるサイズの粒子を別のサイズの粒子から分離するプロセスを指す。限外濾過は、タンパク質の濃縮および緩衝液交換に広く用いられる圧力駆動の膜プロセスである。限外濾過は、膜の孔より大きい種が保持され、小さい種がフィルターを通過する、サイズに基づく分離である。限外濾過は、圧力下において膜を通過する種々の成分の濾過速度の差異により行われる。
【0063】
いくつかの実施態様において、用語「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含むタンパク質を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)および重鎖定常領域(本明細書ではCHと略される)で構成される。いくつかの抗体(例えば天然に存在するIgG抗体)において、重鎖定常領域はヒンジならびにCH1、CH2およびCH3の3つのドメインで構成される。いくつかの抗体(例えば天然に存在するIgG抗体)において、各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン(本明細書ではCLと略される)で構成される。VH領域およびVL領域は、より保存されている領域(フレームワーク領域(FR)と呼ばれる)が散在している超可変性の領域(相補性決定領域(CDR)と呼ばれる)にさらに細分され得る。各VHおよびVLは3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。重鎖はC末端のリジンを有していてもよく、有していなくてもよい。用語「抗体」は、二重特異性抗体または多特異性抗体を含み得る。
【0064】
いくつかの実施態様において、本明細書における「IgG抗体」(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4抗体)は、天然に存在するIgG抗体の構造を有する(すなわち、同じサブクラスの天然に存在するIgG抗体と同じ数の重鎖および軽鎖ならびにジスルフィド結合を有する)。例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体は2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)からなり得、2つのHCおよびLCは(抗体がジスルフィド架橋を改変するように変異されていない限り)それぞれ天然に存在するIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4抗体において生じるジスルフィド架橋と同じ数および位置のジスルフィド架橋によって連結されている。
【0065】
免疫グロブリンは、一般に知られているアイソタイプ(限定されないが、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含む)のいずれかであり得る。IgGアイソタイプは特定の種においてサブクラスに分けられる:ヒトではIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4、ならびにマウスではIgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3。免疫グロブリン(例えばIgG1)はいくつかのアロタイプが存在し、これらは最大で数個のアミノ酸が互いに異なっている。例として、「抗体」には、天然に存在する抗体および天然に存在しない抗体の両方;モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体;キメラ抗体およびヒト化抗体;ヒト抗体および非ヒト抗体、ならびに全合成抗体が含まれる。
【0066】
本明細書における抗体の用語「抗体結合部分」は、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体の1以上のフラグメントを指す。抗体の抗原に結合する機能は、完全長抗体のフラグメントによって実行され得ることが示されている。抗体の用語「抗原結合部分」に包含される結合フラグメントの例には、(i)Fabフラグメント(パパイン切断からのフラグメント)またはVL、VH、LCおよびCH1ドメインからなる類似の一価フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント(ペプシン切断からのフラグメント)またはヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結されている2つのFabフラグメントを含む類似の二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)dAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546)、これはVHドメインからなる;(vi)単離された相補性決定領域(CDR);および(vii)合成リンカーによって任意で結合されてい得る2以上の単離されたCDRの組合せが含まれる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされているが、これらは合成リンカーによって組換え法を用いて連結され得、合成リンカーはこれらをVLおよびVH領域が対形成し、一価分子を形成している単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)としても知られる;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883参照)とすることを可能にする。このような単鎖抗体はまた、抗体の用語「抗原結合部分」に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは当業者に公知の従来の技術を用いて取得され、フラグメントは無傷の抗体と同一の様式で有用性についてスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術または無傷の免疫グロブリンの酵素的切断もしくは化学的切断によって作製され得る。
【0067】
「Fc領域」(フラグメント結晶化可能領域)、「Fcドメイン」または「Fc」は、免疫グロブリンと宿主組織または因子との結合(免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)上に位置するFc受容体との結合、または古典的補体系の第一の成分(C1q)との結合を含む)を媒介する抗体の重鎖のC末端領域を指す。したがって、Fc領域は、第一の定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH1またはCL)を除く抗体の定常領域を含む。抗体のアイソタイプのIgG、IgAおよびIgDにおいて、Fc領域は、抗体の2つの重鎖の第2(CH2)および第3(CH3)の定常ドメインに由来する2つの同一のタンパク質フラグメントを含む;IgMおよびIgEのFc領域は、各ポリペプチド鎖において3つの重鎖定常ドメイン(CHドメイン2~4)を含む。IgGアイソタイプは特定の種においてサブクラスに分けられる:ヒトではIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4、ならびにマウスではIgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3。IgGにおいて、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCH2およびCH3ならびにCH1ドメインとCH2ドメインの間のヒンジを含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界の定義は様々であり得るが、本明細書において定義されているように、ヒトIgG重鎖Fc領域はIgG1ではD221、IgG2ではV222、IgG3ではL221およびIgG4ではP224のアミノ酸残基から重鎖のC末端までの区間として定義され、ここでこの番号付けはKabatと同様にEUの指標に従う。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインはアミノ酸237からアミノ酸340に広がっており、CH3ドメインはFc領域におけるCH2ドメインのC末端側に位置する(すなわち、IgGのアミノ酸341からアミノ酸447または(C末端のリジン残基が存在しない場合)446または(C末端のグリシンおよびリジン残基が存在しない場合)445に広がっている)。本明細書において、Fc領域は、あらゆるアロタイプのバリアントを含む天然配列のFcまたはバリアントのFc(例えば天然に存在しないFc)であり得る。
【0068】
「Fc受容体」または「FcR」は、免疫グロブリンのFc領域と結合する受容体である。IgG抗体と結合するFcRはFcγRファミリーの受容体を含み、これらの受容体はその対立遺伝子バリアントおよび選択的スプライシング型を含む。FcγRファミリーは、3つの活性化受容体(マウスにおいて、FcγRI、FcγRIIIおよびFcγRIV;ヒトにおいて、FcγRIA、FcγRIIAおよびFcγRIIIA)および1つの阻害性受容体(FcγRIIB)からなる。ヒトFcγRの様々な性質が当分野で公知である。自然エフェクター細胞型(innate effector cell type)の大部分は1以上の活性化FcγRおよび阻害性FcγRIIBを共発現するが、ナチュラルキラー(NK)細胞は1つの活性化Fc受容体(マウスにおけるFcγRIIIおよびヒトにおけるFcγRIIIA)を選択的に発現し、マウスおよびヒトにおける阻害性FcγRIIBを発現しない。ヒトIgG1はほとんどのヒトFc受容体に結合し、結合する活性化Fc受容体の型に関してマウスIgG2aに相当すると考えられている。
【0069】
本明細書における用語「組換えヒト抗体」は、組換え手法によって調製、発現、作製または単離されたあらゆるヒト抗体((a)ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそこから調製されたハイブリドーマを遺伝子導入または染色体導入した動物(例えばマウス)から単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞(例えばトランスフェクトーマ)から単離された抗体、(c)組換えヒト抗体コンビナトリアルライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含むあらゆる他の手段によって調製、発現、作製または単離された抗体など)を含む。
【0070】
本明細書において、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子にコードされている抗体のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgE抗体)を指す。
【0071】
アミノ酸は、一般に知られている3文字の記号またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会によって推奨されている1文字の記号のいずれかによって本明細書において言及される。同様に、ヌクレオチドは一般に受け入れられている1文字のコードで言及される。
【0072】
本明細書において、用語「ポリペプチド」は、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって直線的に連結されたモノマー(アミノ酸)で構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は2以上のアミノ酸の任意の鎖を指し、特定の長さの産物を指すものではない。本明細書における用語「タンパク質」は、(いくつかの例においてアミド結合以外の結合によって結合され得る)1以上のポリペプチドで構成される分子を包含することが意図される。他方、タンパク質は単一のポリペプチド鎖であり得る。後者の例では、単一のポリペプチド鎖は、いくつかの例においてタンパク質を形成するために融合された2以上のポリペプチドサブユニットを含み得る。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」はまた、発現後修飾(限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質切断、または天然に存在しないアミノ酸による修飾を含む)の産物を指す。ポリペプチドまたはタンパク質は天然の生物学的起源に由来し得、または組換え技術によって作製され得るが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されない。ポリペプチドまたはタンパク質は、化学合成を含む任意の方法で生成され得る。
【0073】
本明細書における用語「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド」は単数の核酸および複数の核酸を包含することが意図され、単離された核酸分子またはコンストラクト(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補的DNA(cDNA)またはプラスミドDNA(pDNA))を指す。ある態様において、ポリヌクレオチドは、従来のホスホジエステル結合または従来の結合ではない結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)などにおいて見出されるアミド結合)を含む。
【0074】
用語「核酸」は、ポリヌクレオチド中に存在する任意の1以上の核酸セグメント(例えば、DNA、cDNAまたはRNAフラグメント)を指す。核酸またはポリヌクレオチドに適用される場合、用語「単離された」は天然の環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを指す(例えば、ベクターに含まれる抗原結合タンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドは、本開示の目的のために単離されているとみなされる)。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞中で維持されているか、または溶液中の他のポリヌクレオチドから(部分的または実質的に)精製されている組換えポリヌクレオチドが含まれる。単離されたRNA分子には、本開示のポリヌクレオチドのインビボまたはインビトロでのRNA転写物が含まれる。本開示における単離されたポリヌクレオチドまたは核酸はさらに、合成により作製されたそのような分子を含む。さらに、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位または転写終結シグナルなどの調節エレメントを含み得る。
【0075】
範囲:本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、割合の範囲、比率の範囲または整数範囲は、特に指示がない限り、記載された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合にはその小数(整数の10分の1および100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0076】
用語「HMW種」は、混合物中に存在する任意の1以上の不要なタンパク質を指す。高分子種には、二量体、三量体、四量体または他の多量体が含まれ得る。これらの種は産物に関連した不純物とみなされることが多く、共有結合または非共有結合のいずれかで結合してい得、例えば疎水性アミノ酸残基が極性溶媒に露出しているミスフォールドしたモノマーからなり得、凝集を生じ得る。
【0077】
用語「LMW種」は、混合物中に存在する任意の1以上の不要な種を指す。低分子量種は産物に関連した不純物とみなされることが多く、短縮された種または二量体を目的とした化合物(モノクローナル抗体など)の半分子を含み得る。
【0078】
用語「宿主細胞タンパク質」またはHCPは、意図される目的のタンパク質の産生とは無関係に宿主細胞によって生成される望ましくないタンパク質を指す。望ましくない宿主細胞タンパク質は上流の細胞培養上清に分泌され得る。望ましくない宿主細胞タンパク質はまた、細胞溶解中に放出され得る。上流の細胞培養に使用される細胞は増殖、転写およびタンパク質合成のためにタンパク質を必要とし、これらの無関係なタンパク質は最終的な製剤において望ましくない。
【0079】
本開示の様々な態様が以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記述される。
【0080】
II.回収洗浄の方法
本開示は、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を低減または防止する方法に関する。本開示のある態様は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に緩衝液を濾過アセンブリに300リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質の希釈と比較して、標的タンパク質の希釈を低減または防止することに関する。別の態様において、本開示は、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の濃度を改善または増加させる方法に関する。本開示のある態様は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に洗浄緩衝液を濾過アセンブリに300リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質濃度と比較して、標的タンパク質濃度を改善することに関する。いくつかの実施態様において、標的タンパク質の所望の濃度は、約100mg/mL、約110mg/mL、約120mg/mL、約130mg/mL、約140mg/mL、約150mg/mL、約160mg/mL、約170mg/mL、約180mg/mL、約190mg/mL、または約200mg/mLよりも高い。
【0081】
下流の製造プロセスにおいて目的のタンパク質を精製するための標準的な手法は、回収洗浄から生じる希釈に適応させるためにタンパク質溶液をわずかに高濃度に(例えば20%高く)濃縮することである。この戦略は、製剤化の前の50mg/mLという比較的低濃度でのUF/DF操作においてうまく機能する。例えば、標的タンパク質は濾過段階において55~60mg/mLに濃縮され得、製剤化の前に50mg/mLに希釈され得る。55~60mg/mLのタンパク質濃度では、いくつかのモノクローナル抗体の粘度は通常、室温において2~6cPの範囲である。
【0082】
高いタンパク質濃度の場合、終濃度および希釈は悪循環をもたらす。タンパク質濃度が高い場合、回収洗浄がタンパク質を正しい濃度に希釈し、過剰希釈を回避することを可能にするために、標的タンパク質を非常に高いレベル(すなわち、濾過後の所望の濃度よりも高いレベル)に濃縮することが望ましい。例えば、タンパク質を高い濃度(例えば150mg/mL~170mg/mL)に濃縮するにはかなりの時間がかかり得、これは膜を通過する追加の流路をもたらし、産物の質に影響を与え得る。さらに、濾過工程中/後に高濃度を達成した後においても、回収洗浄中における産物の過剰希釈の高いリスクが存在する。これは、多くの大規模なタンパク質精製プロセスでは、かなりの量のタンパク質が残余分のタンクの外側のチューブまたは管に保持され得るためである。したがって、チューブまたは管に保持されている大量のタンパク質のために、最初の回収洗浄では回収産物の全量が回収容器に蓄積されない場合がある。これは追加の回収洗浄をもたらし得、最終的な産物濃度をさらに希釈させ得る。本方法は、洗浄緩衝液の洗浄流速を遅くすることによって回収洗浄中の標的タンパク質の希釈を防止または低減させるように設計されている。したがって、本方法は、回収洗浄プロセス中における追加の回収洗浄工程をスキップまたは回避することを可能にする。
【0083】
いくつかの実施態様において、本開示は、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を低減または防止する方法に関する。本開示のある態様は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に緩衝液を濾過アセンブリに300リットル/平方メートル/時間(LMH)未満、約250LMH未満、約200LMH未満、約150LMH未満、約140LMH未満、約130LMH未満、約120LMH未満、約110LMH未満、または約100LMH未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質の希釈と比較して、標的タンパク質の希釈を低減または防止することに関する。別の態様において、本開示は、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の濃度を改善または増加させる方法に関する。本開示のある態様は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に洗浄緩衝液を濾過アセンブリに300リットル/平方メートル/時間(LMH)未満、約250LMH未満、約200LMH未満、約150LMH未満、約140LMH未満、約130LMH未満、約120LMH未満、約110LMH未満、または約100LMH未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質濃度と比較して、標的タンパク質濃度を改善することに関する。
【0084】
本方法において標的タンパク質の希釈を防止または低減させるために、濾過アセンブリにおける流れは層流である。流体が平行な層で流れ、層間に乱れがない場合、層流が生じる。レイノルズ数が約2,000未満である場合、チューブ内の流れは一般に層流である。レイノルズ数が約4,000より大きい場合、流れは乱流である。2,000~4,000のレイノルズ数は、層流と乱流の間の移行領域を示す。したがって、いくつかの実施態様において、回収洗浄における流動のレイノルズ数(「Re」)は、2000未満、1900未満、1800未満、1700未満、1600未満、1500未満、1400未満、1300未満、1200未満、1100未満、1000未満、900未満、800未満、700未満、600未満、500未満、400未満、300未満、200未満、100未満、90未満、80未満、70未満、60未満、50未満、40未満、30未満、20未満、10未満、5未満、4未満、3未満、2未満、または1未満であり、Reは以下の式によって計算される:Re=Dυρ/μ、ここでDは流路の直径(m)または非円筒形流路形状の場合には相当直径であり、υは平均速度(m/s)(Q/Ac)であり、ρは密度(kg/m3)であり、μは粘度(Pa s)である。
【0085】
いくつかの実施態様において、回収洗浄における流動のレイノルズ数(Re)は、約1~約50、約1~約45、約1~約40、約1~約35、約1~約30、約1~約25、約1~約20、約1~約15、約1~約10、約1~約5、約1~約4、約1~約3、約2~約40、約2~約9、約3~約8、約4~約7、約4~約6、約3~約7、約3~約6、約3~約5、約2~約8、約2~約7、約2~約6、約2~約5、約3~約10、約4~約6、約3~約4、または約2~約3である。
【0086】
いくつかの実施態様において、回収洗浄における流動のレイノルズ数(Re)は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29または約30である。いくつかの実施態様において、回収洗浄における流動のレイノルズ数(Re)は、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約51、約52、約53、約54、約55、約56、約57、約58、約59、または約60である。いくつかの実施態様において、回収洗浄における流動のReは約3.8である。
【0087】
ある実施態様において、本開示は、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を低減または防止する方法に関する。本開示のある態様は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に緩衝液を濾過アセンブリに約100リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質の希釈と比較して、標的タンパク質の希釈を低減または防止することに関する。別の態様において、本開示は、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の濃度を改善または増加させる方法に関する。本開示のある態様は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に洗浄緩衝液を濾過アセンブリに約100リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質濃度と比較して、標的タンパク質濃度を改善することに関する。いくつかの実施態様において、洗浄流速は、約5LMH~約100LMH、約10LMH~約100LMH、約10LMH~約90LMH、約10LMH~約80LMH、約10LMH~約70LMH、約10LMH~約60LMH、約10LMH~約50LMH、約10LMH~約40LMH、約10LMH~約30LMH、約30LMH~約50LMH、約20LMH~約100LMH、約20LMH~約90LMH、約20LMH~約80LMH、約20LMH~約70LMH、約20LMH~約60LMH、約20LMH~約50LMH、約20LMH~約40LMH、約30LMH~約100LMH、約30LMH~約90LMH、約30LMH~約80LMH、約30LMH~約70LMH、約30LMH~約60LMH、約30LMH~約50LMH、約30LMH~約40LMH、または約20LMH~約30LMHである。
【0088】
いくつかの実施態様において、洗浄流速は、少なくとも約10LMH、少なくとも約20LMH、少なくとも約30LMH、少なくとも約40LMH、少なくとも約50LMH、少なくとも約60LMH、少なくとも約70LMH、少なくとも約80LMH、少なくとも約90LMH、または少なくとも約100LMHである。いくつかの実施態様において、洗浄流速は約30LMHである。
【0089】
ある実施態様において、本開示は、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を低減または防止する方法に関する。本開示のある態様は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に緩衝液を濾過アセンブリに約30リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質の希釈と比較して、標的タンパク質の希釈を低減または防止することに関する。別の態様において、本開示は、濾過後の回収洗浄中において標的タンパク質の濃度を改善または増加させる方法に関する。本開示のある態様は、(i)濾過が行われている間、標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すこと、および(ii)回収洗浄中に洗浄緩衝液を濾過アセンブリに約30リットル/平方メートル/時間(LMH)未満の洗浄流速で通すことにより、300LMHの洗浄流速で得られた標的タンパク質濃度と比較して、標的タンパク質濃度を改善することに関する。
【0090】
いくつかの実施態様において、標的タンパク質の粘度は、少なくとも約1センチポアズ(cP)、少なくとも約2cP、少なくとも約3cP、少なくとも約4cP、少なくとも約5cP、少なくとも約6cP、少なくとも約7cP、少なくとも約8cP、少なくとも約9cP、少なくとも約10cP、少なくとも約11cP、少なくとも約12cP、少なくとも約13cP、少なくとも約14cP、少なくとも約15cP、少なくとも約16cP、少なくとも約17cP、少なくとも約18cP、少なくとも約19cP、少なくとも約20cP、少なくとも約21cP、少なくとも約22cP、少なくとも約23cP、少なくとも約24cP、少なくとも約25cP、少なくとも約26cP、少なくとも約27cP、少なくとも約28cP、少なくとも約29cP、または少なくとも約30cPである。
【0091】
いくつかの実施態様において、本開示は、高い粘度を有する標的タンパク質を濾過するのに特に有効であり得る。いくつかの実施態様において、標的タンパク質の粘度は高く、少なくとも約20センチポアズ(cP)、少なくとも約21cP、少なくとも約22cP、少なくとも約23cP、少なくとも約24cP、少なくとも約25cP、少なくとも約26cP、少なくとも約27cP、少なくとも約28cP、少なくとも約29cP、少なくとも約30cP、少なくとも約31cP、少なくとも約32cP、少なくとも約33cP、少なくとも約34cP、少なくとも約35cP、少なくとも約36cP、少なくとも約37cP、少なくとも約38cP、少なくとも約39cP、少なくとも約40cP、少なくとも約41cP、少なくとも約42cP、少なくとも約43cP、少なくとも約44cP、少なくとも約45cP、少なくとも約46cP、少なくとも約47cP、少なくとも約48cP、少なくとも約49cP、少なくとも約50cP、少なくとも約51cP、少なくとも約52cP、少なくとも約53cP、少なくとも約54cP、少なくとも約55cP、少なくとも約56cP、少なくとも約57cP、少なくとも約58cP、少なくとも約59cP、少なくとも約60cP、少なくとも約61cP、少なくとも約62cP、少なくとも約63cP、少なくとも約64cP、少なくとも約65cP、少なくとも約66cP、少なくとも約67cP、少なくとも約68cP、少なくとも約69cP、少なくとも約70cP、少なくとも約71cP、少なくとも約72cP、少なくとも約73cP、少なくとも約74cP、少なくとも約75cP、少なくとも約76cP、少なくとも約77cP、少なくとも約78cP、少なくとも約79cP、少なくとも約80cP、少なくとも約81cP、少なくとも約82cP、少なくとも約83cP、少なくとも約84cP、少なくとも約85cP、少なくとも約86cP、少なくとも約87cP、少なくとも約88cP、少なくとも約89cP、少なくとも約90cP、少なくとも約91cP、少なくとも約92cP、少なくとも約93cP、少なくとも約94cP、少なくとも約95cP、少なくとも約96cP、少なくとも約97cP、少なくとも約98cP、少なくとも約99cP、または少なくとも約100cPである。いくつかの実施態様において、標的タンパク質の粘度は、約20cP~約100cP、約20cP~約90cP、25cP~約100cP、約25cP~約90cP、約30cP~約100cP、約30cP~約90cP、約30cP~約80cP、約30cP~約70cP、約40cP~約60cPである。他の実施態様において、標的タンパク質の粘度は、約10cP、約20cP、約30cP、約40cP、約50cP、約60cP、約70cP、約80cP、約90cP、または約100cPである。
【0092】
いくつかの実施態様において、標的タンパク質の粘度は低く、約2cP~約10cP、約3cP~約10cP、約1cP~約9cP、約2cP~約8cP、約2cP~約7cP、約2cP~約6cP、約3cP~約6cP、約4cP~約5cP、または約2cP~約5cPである。
【0093】
したがって、本方法は回収洗浄中において標的タンパク質の希釈を防止または低減することによって、回収洗浄後の標的タンパク質の濃度を改善し得る。いくつかの実施態様において、回収洗浄後の標的タンパク質の濃度は、濾過の前に少なくとも約100g/L、少なくとも約110g/L、少なくとも約120g/L、少なくとも約130g/L、少なくとも約140g/L、少なくとも約150g/L、少なくとも約160g/L、少なくとも約170g/L、少なくとも約180g/L、少なくとも約190g/L、少なくとも約200g/L、少なくとも約210g/L、少なくとも約220g/L、少なくとも約230g/L、少なくとも約240g/L、少なくとも約250g/L、少なくとも約260g/L、少なくとも約270g/L、少なくとも約280g/L、少なくとも約290g/L、または少なくとも約300g/L、少なくとも約200g/L、少なくとも約210g/L、少なくとも約220g/L、少なくとも約230g/L、少なくとも約240g/L、少なくとも約250g/L、少なくとも約260g/L、少なくとも約270g/L、少なくとも約280g/L、少なくとも約290g/L、または少なくとも約300g/Lである。
【0094】
いくつかの実施態様において、回収洗浄後の標的タンパク質の濃度は、約100g/L~約300g/L、約110g/L~約250g/L、約120g/L~約240g/L、約150g/L~約250g/L、約130g/L~約260g/L、約140g/L~約260g/L、約160g/L~約220g/L、または約170g/L~約230g/Lである。
【0095】
いくつかの実施態様において、回収洗浄後の標的タンパク質の濃度は、約100g/L~約300g/L、約110g/L~約300g/L、約110g/L~約290g/L、約120g/L~約290g/L、約120g/L~約280g/L、約130g/L~約280g/L、約130g/L~約270g/L、約140g/L~約270g/L、約140g/L~約260g/L、約150g/L~約260g/L、約150g/L~約250g/L、約160g/L~約250g/L、約160g/L~約240g/L、約170g/L~約240g/L、約170g/L~約230g/L、約180g/L~約230g/L、約180g/L~約220g/L、約190g/L~約220g/L、約190g/L~約210g/L、または約200g/L~約210g/Lである。
【0096】
いくつかの実施態様において、回収洗浄後の標的タンパク質の濃度は、約90g/L、約100g/L、約110g/L、約120g/L、約130g/L、約140g/L、約150g/L、約160g/L、約170g/L、約180g/L、約190g/L、約200g/L、約210g/L、約220g/L、約230g/L、約240g/L、約250g/L、約260g/L、約270g/L、約280g/L、約290g/L、または約300g/Lである。
【0097】
いくつかの実施態様において、本方法における回収洗浄後の標的タンパク質の収量は、回収洗浄プロセスの前の標的タンパク質の濃度と比較して、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%である。
【0098】
いくつかの実施態様において、本方法における回収洗浄後の標的タンパク質の収量は、300LMHの流速による回収洗浄後に得られた標的タンパク質の収量と比較して少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%、少なくとも約21%、少なくとも約22%、少なくとも約23%、少なくとも約24%、少なくとも約25%、少なくとも約26%、少なくとも約27%、少なくとも約28%、少なくとも約29%、少なくとも約30%、少なくとも約31%、少なくとも約32%、少なくとも約33%、少なくとも約34%、少なくとも約35%、少なくとも約36%、少なくとも約37%、少なくとも約38%、少なくとも約39%、または少なくとも約40%増加している。いくつかの実施態様において、(i)における通過は(ii)における洗浄流速よりも高いフィード流速である。
【0099】
本方法において、標的タンパク質は濾過が行われている間に濾過アセンブリを通過する。本明細書において、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)工程における標的タンパク質を含むフィードの流速を、洗浄流速の対語としてフィード流速と呼ぶ。フィードのタンジェンシャルフローは、フィルターの表面上に捕捉された粒子が蓄積することで濾過を妨害するのを妨げる。限外濾過の濃縮工程において、限外濾過膜カセットへのフィード流は濃縮および緩衝液交換に必要な膜間圧(TMP)およびクロスフロー流を与える。
【0100】
本開示において、フィード流速は洗浄流速よりも高い。いくつかの実施態様において、フィード流速は、少なくとも200LMH、少なくとも210LMH、少なくとも220LMH、少なくとも230LMH、少なくとも240LMH、少なくとも250LMH、少なくとも260LMH、少なくとも270LMH、少なくとも280LMH、少なくとも290LMH、少なくとも300LMH、少なくとも310LMH、少なくとも320LMH、少なくとも330LMH、少なくとも340LMH、少なくとも350LMH、少なくとも360LMH、少なくとも370LMH、少なくとも380LMH、少なくとも390LMH、少なくとも400LMH、少なくとも410LMH、少なくとも420LMH、少なくとも430LMH、少なくとも440LMH、少なくとも450LMH、少なくとも460LMH、少なくとも470LMH、少なくとも480LMH、少なくとも490LMH、または少なくとも500LMHであり、ここで洗浄流速はフィード流速よりも低い(例えば100LMHよりも低い)。
【0101】
いくつかの実施態様において、フィード流速は、200LMH~500LMH、200LMH~450LMH、250LMH~450LMH、450LMH、300LMH~450LMH、300LMH~400LMH、または300LMH~350LMHである。いくつかの実施態様において、フィード流速は約300LMHである。
【0102】
本方法において、濾過アセンブリは目的のタンパク質の濾過を行うために使用される。濾過アセンブリは一般に、フィルターホルダー、濾過カセットおよび濾液を流すためのポートなどの要素を含む。濾過カセットは、生体分子の分離および精製に使用されるメンブレンフィルターを通常保持しているアセンブリの要素である。濾過膜は、目的の標的タンパク質を精製するために使用される。いくつかの実施態様において、濾過膜は細胞、細胞デブリまたはオルガネラおよび他の成分を保持し、タンパク質およびより小さい溶質を濾液に通すことを可能にするために使用される。いくつかの実施態様において、濾過アセンブリは膜を含む。他の実施態様において、濾過アセンブリ膜に有用な膜は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルスルホン、再生セルロース、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ビニル共重合体、ポリアミド(「ナイロン6」または「ナイロン66」など)ポリカーボネート、PFA、またはそれらの任意の組合せから得られる。
【0103】
本開示における方法は、回収容器の外側のチューブ、管または他の「ホールドアップ」領域に保持されているタンパク質を回収するために、回収洗浄中に洗浄緩衝液を使用することを含む。精製されたタンパク質のすべてが最初の精製実行中に回収容器に到達するわけではないため、回収洗浄はより多くの量のタンパク質産物を回収容器または精製されたタンパク質産物を回収するために使用される他の容器に回収するために必要である。いくつかの例において、タンパク質の高レベルな精製および濃縮は、不要なタンパク質の凝集をもたらし得る。緩衝液のpH、塩分または他の成分の改変が、精製および濃縮プロセス中のタンパク質凝集または他の望ましくない効果を妨げるために必要とされ得る。いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液は有機酸もしくは無機酸またはそれらの塩を含む。いくつかの実施態様において、有機酸または無機酸は、クエン酸塩(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、酢酸塩(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)、トリメチルアミン塩(例えば、Tris)、リン酸塩、またはヒスチジンである。いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液はヒスチジンを含む。いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液は糖を含む。いくつかの実施態様において、糖は、スクロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクトース、グルコース、粉糖、またはプルランである。いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液は20mMヒスチジンおよび250mMスクロースを含む。
【0104】
本開示の方法において、濾過緩衝液は、濾過が行われている間に標的タンパク質を含む試料を濾過アセンブリにフィード流速で通すプロセスにおいて使用される。濾過緩衝液は下流のクロマトグラフィーおよび濾過装置を保護するために重要であり、タンパク質の精製および濃縮プロセス中に使用される。濾過緩衝液は、洗浄緩衝液がタンパク質の精製および濃縮プロセスの後に行われる洗浄回収中に使用される点において洗浄緩衝液とは異なる。いくつかの実施態様において、濾過緩衝液中の成分は洗浄緩衝液中の成分と同じである。他の実施態様において、濾過緩衝液中の成分は洗浄緩衝液中の成分とは異なる。
【0105】
タンパク質の高レベルな精製および濃縮は、不要なタンパク質の凝集をもたらし得る。緩衝液のpH、塩分または他の成分の改変が、精製および濃縮プロセス中のタンパク質凝集または他の望ましくない効果を妨げるために必要とされ得る。いくつかの実施態様において、濾過緩衝液は有機酸および無機酸またはそれらの塩を含む。いくつかの実施態様において、有機酸または無機酸は、クエン酸塩(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸塩(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸塩(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸塩(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸塩(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸塩(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸塩(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、酢酸塩(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)、トリメチルアミン塩(例えば、Tris)、リン酸塩、またはヒスチジンである。
【0106】
いくつかの実施態様において、濾過緩衝液は糖を含む。いくつかの実施態様において、糖は、スクロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクトース、グルコース、粉糖、またはプルランである。いくつかの実施態様において、洗浄緩衝液および/または濾過緩衝液は、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、または約9.5のpHである。
【0107】
本発明の方法において、目的のタンパク質を含む試料を濾過アセンブリに最初に通し、次いで回収洗浄を行う。いくつかの実施態様において、試料は、濾過および回収洗浄工程の直接の上流にある従前の精製動作(ウイルス濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)、深層濾過、酸処理またはプロテインAクロマトグラフィーなど)に既にかけられていてもよい。精製および濾過される試料は、細胞培養物、細胞溶解物または清澄化されたバルク(例えば、清澄化された細胞培養上清)などの供給源に由来し得る。いくつかの実施態様において、試料は、純粋なタンパク質試料、清澄化されたバルクタンパク質試料、細胞培養物試料、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。いくつかの実施態様において、細胞培養物試料は哺乳類細胞を含む細胞培地から得られる。いくつかの実施態様において、哺乳類細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HEK293細胞、マウス骨髄腫(NS0)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、サル腎臓線維芽細胞(COS-7)、メイディンダービーウシ腎臓細胞(MDBK)、またはそれらの任意の組合せから選択される。
【0108】
本方法に有用な標的タンパク質は、天然に存在するか、または組換えにより作製される任意のタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドである。いくつかの実施態様において、標的タンパク質は高い粘度を有する。いくつかの実施態様において、標的タンパク質は高分子量(例えば100kDa~500kDa)のタンパク質である。他の実施態様において、標的タンパク質は低分子量のタンパク質である。他の実施態様において、標的タンパク質は、少なくとも約10kDa、少なくとも約20kDa、少なくとも約30kDa、少なくとも約40kDa、少なくとも約50kDa、少なくとも約60kDa、少なくとも約70kDa、少なくとも約80kDa、少なくとも約90kDa、少なくとも約100kDa、少なくとも約110kDa、少なくとも約120kDa、少なくとも約130kDa、少なくとも約140kDa、少なくとも約150kDa、少なくとも約160kDa、少なくとも約170kDa、少なくとも約180kDa、少なくとも約190kDa、または少なくとも約200kDa、および最大で400kDaまたは500kDaの分子量を有する。
【0109】
いくつかの実施態様において、標的タンパク質は抗体または融合タンパク質を含む。いくつかの実施態様において、標的タンパク質は抗体を含む。いくつかの実施態様において、抗体は、IgM、IgA、IgE、IgDおよびIgGから選択されるアイソタイプである。いくつかの実施態様において、IgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4から選択される。本方法は、抗原に特異的に結合するあらゆる抗体に適用可能であり得る。いくつかの実施態様において、抗体は、抗GITR抗体、抗CXCR4抗体、抗CD73抗体、抗TIGIT抗体、抗OX40抗体、抗LAG3抗体、抗CSF1R抗体、または抗IL8抗体である。
【0110】
いくつかの実施態様において、標的タンパク質は、酵素、ホルモン、サイトカイン、細胞表面受容体、プロテアーゼ、サイトカイン受容体、またはそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施態様において、標的タンパク質は融合タンパク質である。いくつかの実施態様において、融合タンパク質は異種部分と融合している。いくつかの実施態様において、異種部分は半減期延長部分である。いくつかの実施態様において、異種部分は、アルブミン、免疫グロブリン定常領域またはその一部、免疫グロブリン結合ポリペプチド、免疫グロブリンG(IgG)、アルブミン結合ポリペプチド(ABP)、PAS化部分、HES化部分、XTEN、PEG化部分、Fc領域、およびそれらの任意の組合せを含む。いくつかの実施態様において、半減期延長部分は非ポリペプチド部分を含む。いくつかの実施態様において、半減期延長部分はポリペプチドを含む。いくつかの実施態様において、半減期延長部分はFcを含む。ある実施態様において、本開示の融合タンパク質は免疫グロブリン定常領域またはその一部(例えばFcバリアント)にアミノ酸置換を含み、これはIg定常領域の抗原非依存性エフェクター機能(特にタンパク質の循環半減期)を変化させる。
【実施例0111】
実施例1
スケールダウンした設計の評価
潜在的な回収洗浄プロセスを評価するために,チューブサイズの変化を分析するスケールダウンしたモデルを設計した。このスケールダウンしたモデルは176cm2の膜面積を使用し、最初にサイズ16のチューブを用いて試験した。モデル化に使用した様々なチューブを表1に記載する。250g/Lの開始タンパク質濃度を使用し、様々な洗浄フィード流速を試験した。このデータを
図1に示す。より高い洗浄フィード流速はより低い最終的なタンパク質濃度をもたらすため、
図1に見られるようにより低い洗浄流速が望ましい。
表1.スケールに応じたチューブ
【表1】
【0112】
レイノルズ数に対する流速パラメータの影響を、粘度および密度を固定した混合物を用いて調べ、
図2に詳述した。混合物は17cPの粘度および1.08g/cm3の密度を有し、30リットル/M2/時間の一定流速を用いた。使用した様々なチューブの断面積の差異のために、各チューブの比流速を調整しなければならなかった。CM150システムでは0.03L/分の流速を用い、DCMでは0.04L/分の流速を用いた。
【0113】
レイノルズ数に対する粘度の影響を0.019m/sの一定流速を用いて評価した。これらのデータを
図3に要約している。より高い粘度は各種類のチューブについてより高い計算されたレイノルズ数をもたらした。
【0114】
実施例2
様々なモノクローナル抗体を用いた洗浄戦略の評価
3つのモノクローナル抗体(A、BおよびC)を設計された洗浄プロセスを用いて評価した。抗体Aの洗浄プロセスから得られたデータを表2に詳述する。これらのデータは、洗浄の流れ(LMH)、レイノルズ数(Re)、残余分の濃度、精製された原薬の濃度、収率、予想される収率、および洗浄量を含んでいる。スケールダウンした洗浄プロセスを評価した後、この手法をCM150タンジェンシャルフロー濾過(TFF)スケールでモノクローナル抗体Aについて検証した。すべての例において、流速を30リットル/M2/時間の流れに設定した。CM150システムで使用したチューブの断面積を考慮すると、これはCM150システムにおいて265のレイノルズ数に対応する。モノクローナル抗体BおよびCについて、追加のスケールダウンおよびCM150 TFFのデータを作成し、これらのデータをそれぞれ表2および表3に示した。
表2.モノクローナル抗体Aのデータ
【表2】
表3.モノクローナル抗体Bの30リットル/M2/時間の回収洗浄
【表3】
表3.モノクローナル抗体Cの30リットル/M2/時間の回収洗浄
【表4】
【0115】
概要および要約のセクションではなく、詳細な説明のセクションが特許請求の範囲を解釈するために使用されることが意図されていると理解されるべきである。概要および要約のセクションは本発明者によって想定される本発明のすべてではないが1つ以上の例示的な態様を記載し得、したがって本発明および添付の特許請求の範囲をいかなる方法によっても制限することを意図していない。
【0116】
本発明は、指定された機能の実装およびその関係を示す機能的な構成要素を用いて上述されている。説明の利便性のために、これらの機能的な構成要素の境界は本明細書において任意に規定されている。指定された機能およびその関係が適切に実施される限り、別の境界が規定され得る。
【0117】
具体的な態様についての上述の説明は本発明の一般的な性質を十分に明らかにし、他者は当分野の技能の範囲内の知識を適用することによって、過度の実験を行うことなく、本発明の一般的な概念から逸脱せずにそのような具体的な態様を容易に改変および/または様々な用途に適用できる。したがって、そのような適用および改変は、本明細書に提示された教示および指針に基づいて、開示された態様の均等物の意味および範囲内にあることが意図される。本明細書における表現または用語は説明のためのものであり、制限のためのものではないことが理解されるはずであり、本明細書の用語または表現は教示および指針を考慮して当業者によって解釈されるべきである。
【0118】
本発明の幅および範囲は上述のいかなる例示的な態様によっても制限されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびその均等物のみに従って規定されるべきである。