(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105420
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】免疫性血小板減少症を治療する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240730BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61K39/395 Y ZNA
A61K45/00
A61P7/04
A61P43/00 121
A61K39/395 Y
C07K16/00
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075140
(22)【出願日】2024-05-07
(62)【分割の表示】P 2020568226の分割
【原出願日】2019-06-07
(31)【優先権主張番号】62/682,805
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/731,947
(32)【優先日】2018-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/732,414
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517303085
【氏名又は名称】アルジェニクス ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ハンス デ ハード
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ウルリチトス
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー クーザン
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス レウピン
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ドレイエル
(72)【発明者】
【氏名】トンケ ヴァン ブラグト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象の治療方法を提供する。
【解決手段】方法は、ヒト新生児型Fc受容体(hFcRn)のアンタゴニストを、任意にITP標準治療処置と組合せて、ヒト対象へ投与することを含む。特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストは、エフガルチギモド(ARGX-113)である。ITP標準治療処置は、コルチコステロイド、免疫抑制薬、及び/又はトロンボポエチン受容体(TPO-R)アゴニストを投与することを含み得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続性又は慢性免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象を治療する方法に使用
するための、ヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニストを含む、医薬組成物であって、
該方法が、該hFcRnアンタゴニストを該対象に約10mg/kgの投与量で静脈内に投与するこ
とを含み、該hFcRnアンタゴニストが、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバ
リアントFc領域からなり、各Fcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1又は配列番号:2
に記載のアミノ酸配列からなる、前記医薬組成物。
【請求項2】
前記hFcRnアンタゴニストが、週1回又は2週間に1回投与される、請求項1記載の医薬組
成物。
【請求項3】
前記hFcRnアンタゴニストの1以上の投与量が、3週間にわたる該hFcRnアンタゴニストの
4回投与を含む最初の治療期間の完了後、2週間に1回投与される、請求項1又は2記載の医
薬組成物。
【請求項4】
各Fcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1
~3のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項5】
各Fcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1
~3のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記hFcRnアンタゴニストが、エフガルチギモドである、請求項1~3のいずれか一項記
載の医薬組成物。
【請求項7】
前記方法が、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の1以上の
投与量を、前記対象に投与することを更に含む、請求項1~6のいずれか一項記載の医薬組
成物。
【請求項8】
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、コルチコステロ
イド、リツキシマブ、アレムツズマブ、フォスタマチニブ、シクロスポリン、ダプソン、
ダナゾール、静脈内免疫グロビン(IVIg)、Rho(D)免疫グロブリン(抗-D)、アザチオプリン
、トロンボポエチン受容体アゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項7
記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記コルチコステロイドが、経口プレドニソン、静脈内プレドニソン、デキサメタゾン
、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、エルトロンボパグ、アバトロンボパグ、ロ
ミプロスチム、ロミプロスチムの非-Fc部分、及びそれらの任意の組み合わせからなる群
から選択される、請求項8記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記ヒト対象が、前記hFcRnアンタゴニストの投与前に<30×109/Lの血小板数を有する
、請求項1~10のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記ヒト対象が、前記hFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治療処置につい
て承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、<100×109/L、≦50×109
/L、≦30×109/L、≦20×109/L、又は≦10×109/Lの血小板数を有する、請求項1~10のい
ずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ヒト対象が、持続性ITPを有する、請求項1~12のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記ヒト対象が、慢性ITPを有する、請求項1~12のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記治療が、血小板数の≧50×109/Lへの増加を生じ、任意に、該血小板数の≧50×109
/Lへの増加が:
(i)少なくとも4週間;
(ii)少なくとも2ヶ月;又は
(iii)少なくとも3ヶ月
の間維持される、請求項1~14のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記治療が、血小板数の≧100×109/Lへの増加を生じ、任意に、該血小板数の≧100×1
09/Lへの増加が:
(i)少なくとも4週間;
(ii)少なくとも2ヶ月;又は
(iii)少なくとも3ヶ月
の間維持される、請求項1~15のいずれか一項記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2018年6月8日に出願された米国特許出願第62/682,805号、2018年9月16日に
出願された米国特許出願第62/731,947号、及び2018年9月17日に出願された米国特許出願
第62/732,414号の優先権の恩恵を主張するものであり、これら各出願の全体の内容は、引
用により本明細書中に組み込まれている。
【0002】
(配列表)
本出願は、ASCIIフォーマットにおいて電子的に提出され、且つその全体が引用により
本明細書中に組み込まれている、配列表を含む。該ASCIIコピーは、2019年6月6日に作成
され、ファイル名は613052_AGX5-045PC_ST25.txtであり、且つサイズは8,254バイトであ
る。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、概して免疫性血小板減少症(ITP)の治療に関し、より特定すると、任意にITP
に関する標準治療処置と組合せた、FcRnアンタゴニストの投与を含む、治療方法に関する
。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
免疫性血小板減少症は、時には免疫性血小板減少性紫斑病又は特発性血小板減少症、よ
り一般にはITPと称されるが、これは健常個体の150×109~450×109/Lと比べ、100×109
/L未満までの末梢血の血小板数の減少により特徴付けられる。ITPは、糖タンパク質に対
する自己抗体が形成される自己免疫疾患である。これらの自己抗体は、血小板生成の妨害
及び血小板破壊の促進の両方を成すと考えられている。個体における抑制された血小板数
は、一過性又は持続性であり得、且つ様々な原因に由来し得る。
【0005】
関連のある原因又は障害が確定されないITPは、原発性ITPと称されるのに対し、他の自
己免疫障害又は医学的障害に結びつけられたITPは、続発性ITPと称される。成人における
ITPは、典型的には先行するウイルス性疾患又は他の疾患を伴わずに潜伏性に発症し、且
つ通常慢性的経過を辿るのに対し、小児のITPは、通常長続きせず、少なくとも2/3は、6
ヶ月以内に自然に回復する。
【0006】
ITPは、血小板型出血(例えば、点状出血;紫斑;結膜性出血又は他の型の皮膚の出血)
により、それ自身顕在化し得る。ITPは、頭蓋内出血などの、致命的合併症と関連し得る
。重篤な結果が存在しないとしても、ITP患者は、糖尿病及び関節リウマチなどの他の慢
性疾患同様、低下した生活の質に悩まされる。
【0007】
2011年に、米国血液学会(ASH)は、ITPの治療指針を出した。Neunert Cらの文献、Blood
、117: 4190-4207 (2011)。全体として、5種の異なるアプローチが、治療担当医には利用
可能である。概して治療は、持続的に血小板数30×109/L以下を有する患者に必要である
と考えられる。
【0008】
一つの治療アプローチは、コルチコステロイドなどの免疫抑制薬の使用である。最も一
般的に使用されるのは、プレドニソン(経口又はIV)、メチルプレドニソン(メチルプレド
ニゾロンとしても公知)、及びデキサメタゾンである。
【0009】
第二のアプローチは、静脈内免疫グロブリン(IVIg)又は抗-RhD免疫グロブリンの投与で
あり、後者は、Rho(D)免疫グロブリン(抗-D)としても知られている。米国血液学会は、血
小板数の迅速な増加が必要とされる場合には、コルチコステロイドとIVIgの組合せを推奨
している。IVIg又は抗-Dは、コルチコステロイドが禁忌である場合に推奨される。
【0010】
コルチコステロイド、IVIg、及び抗-Dが、治療の第一選択肢と考えられる。治療の第一
選択肢が失敗した場合、脾臓摘出が考慮されることが多く、その理由は脾臓が、血小板破
壊において主要な役割を果たしているからである。治療の第二の選択肢の別の例は、トロ
ンボポエチン受容体(TPO-R)アゴニストの投与である。トロンボポエチン(TPO)は、肝臓に
より生成される内因性サイトカインである。これは、巨核球の成長及び循環への血小板の
輸送において主要な役割を果たす。巨核球及び血小板は、TPO受容体を提示している。TPO
-Rアゴニストは、血小板の生成及びそれらの循環への放出を促進すると考えられる。
【0011】
現時点では、以下の3種のTPO-Rアゴニストが、ITPの治療における使用について承認さ
れている:ロミプロスチム、エルトロンボパグ、及びアバトロンボパグ。ロミプロスチム
は、TPO-R結合ドメインとヒトFcドメインを含む融合分子である。Fcドメインの目的は、
その薬物の半減期を増大することである。エルトロンボパグは、低分子TPO-Rアゴニスト
である。アバトロンボパグは、別の低分子TPO-Rアゴニストである。TPO-Rアゴニストの限
界は、それらの長期反応率が低い(40~50%)ことである。
【0012】
更に別のITP治療の第二の選択肢は、脾臓チロシンキナーゼ(Syk)の低分子インヒビター
である、フォスタマチニブである。
【0013】
リツキシマブ(抗-CD20 mAb)及びアレムツズマブ(抗-CD52 mAb)は、第三の選択肢の治療
レジメンにおいて使用される。
【0014】
新生児型Fc受容体(FcRn)は、母体のIgGに関する新生児の輸送受容体として当初特徴付
けられた。これはまた、成人において、IgGを分解から保護するように機能する。FcRnは
、ピノサイトーシスを受けたIgGに結合し、且つ細胞外コンパートメントへそれを戻すリ
サイクルにより、分解性リソソームへの輸送からIgGを保護する。
【0015】
ヒト化された高親和性の抗-ヒトFcRnモノクローナル抗体であるロザノリキシズマブな
どの、FcRnアンタゴニストは、ITP治療レジメンにおける使用が示唆されている。FcRn受
容体への結合により、これらの分子は、FcRn抗体サルベージ機構をブロックし、その結果
病原性IgG抗体を含むIgG抗体を、循環からクリアランスする。ITPに関与した自己抗体がI
gGクラスである場合、FcRnアンタゴニストは、有益な作用を有し得る。
【0016】
脾臓摘出は別にして、現在利用可能である多くの治療の選択肢は、一般にITP患者の血
小板数において短期間及び軽度の改善のみを生じる。従って、今日利用可能なものよりも
、より強固な血小板数の改善をもたらす治療レジメンの必要性が存在する。標準的治療を
受けている患者を含むITP患者において、長期の血小板反応を改善する治療レジメンが、
特に必要である。
【発明の概要】
【0017】
(発明の概要)
本発明は、1以上の投与量のFcRnアンタゴニストを、対象へ投与することを含む、免疫
性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象を治療する方法を提供することにより、これ
らの問題点に対処している。特定の実施態様において、本方法は、ITPのための標準治療(
SoC)処置と組合せて、1以上の投与量のFcRnアンタゴニストを、対象へ投与することを含
む。特定の実施態様において、本方法は、ITPのためのSoC処置に関して承認された少なく
とも1種の化合物の1以上の投与量を、対象へ投与することを更に含む。
【0018】
好ましくは、標準治療処置に関して承認された化合物は、FcRnアンタゴニストの作用機
序とは異なる機序により、作用する。例えば、免疫系を弱めることにより作用するコルチ
コステロイドは、FcRnアンタゴニストと組合せて使用することができる。別の例として、
血小板の生成を刺激することにより作用するTPO-Rアゴニストは、FcRnアンタゴニストと
組合せて使用することができる。
【0019】
本発明の態様は、1以上の投与量のヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニストを、対象へ投与する
ことを含む、免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象を治療する方法である。1以
上の投与量のhFcRnアンタゴニストを対象へ投与することを含む、対象における免疫性血
小板減少症(ITP)を治療する方法において使用するためのヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニスト
も、提供される。特定の実施態様において、本方法は、ITPの標準治療処置について承認
された少なくとも1種の化合物の1以上の投与量を、対象へ投与することを更に含む。
【0020】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストは、hFcRnへ特異的に結合する抗体又は
抗体断片である。特定の実施態様において、この抗体又は抗体断片は、hFcRnに特異的に
結合する1以上のCDRを含む。特定の実施態様において、この抗体又は抗体断片は、ヒトFc
ドメインを含む。特定の実施態様において、このヒトFcドメインは、hFcRnへのその結合
を修飾する1つ以上の変異を含む。特定の実施態様において、この1つ以上の変異は、M252
Y、S254T、T256E、H433K、及びN434F(EU番号付け)の1つ以上を含む。特定の実施態様にお
いて、この1つ以上の変異は、M252Y、S254T、T256E、H433K、及びN434F(EU番号付け)の各
々を含む。特定の実施態様において、ヒトFcドメインは、変異M252Y、S254T、T256E、H43
3K、及びN434F(EU番号付け)を含む。
【0021】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストは、単離されたFcRnアンタゴニストで
あり、ここでFcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバ
リアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1からなる
。
【0022】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストは、単離されたFcRnアンタゴニストで
あり、ここでFcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバ
リアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:2からなる
。
【0023】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストは、単離されたFcRnアンタゴニストで
あり、ここでFcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバ
リアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:3からなる
。
【0024】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストは、エフガルチギモド(ARGX-113)であ
る。
【0025】
本発明の態様は、1以上の投与量のヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニストを、対象へ投与する
ことを含む、免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、
ここでhFcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバリアン
トFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1からなる。また
、対象の免疫性血小板減少症(ITP)を治療する方法において使用するためのヒトFcRn(hFcR
n)アンタゴニストも提供され、この方法は、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを対象
へ投与することを含み、ここでこれはホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバ
リアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1からなる
。
【0026】
本発明の態様は、1以上の投与量のヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニストを、対象へ投与する
ことを含む、免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、
ここでhFcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバリアン
トFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:2からなる。また
、対象の免疫性血小板減少症(ITP)を治療する方法において使用するためのヒトFcRn(hFcR
n)アンタゴニストも提供され、この方法は、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを対象
へ投与することを含み、ここでこれはホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバ
リアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:2からなる
。
【0027】
本発明の態様は、1以上の投与量のヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニストを、対象へ投与する
ことを含む、免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、
ここでhFcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバリアン
トFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:3からなる。また
、対象の免疫性血小板減少症(ITP)を治療する方法において使用するためのヒトFcRn(hFcR
n)アンタゴニストも提供され、この方法は、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを対象
へ投与することを含み、ここでこれはホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバ
リアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:3からなる
。
【0028】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストは、エフガルチギモド(ARGX-113)であ
る。
【0029】
特定の実施態様において、本方法は、ITPの標準治療処置について承認された少なくと
も1種の化合物の1以上の投与量を、対象へ投与することを含む投与することを更に含む。
従ってある態様において、本発明は、ヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニストの1以上の投与量及
びITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の1以上の投与量を、対
象へ投与することを含む、免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象を治療する方
法である。
【0030】
以下を、前記態様及び実施態様の各々に適用する。
【0031】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストは、約10nmol/kg~約1000nmol/kgの1以
上の投与量で投与される。
【0032】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、約50nmol/kg~約3
00nmol/kgの範囲である。
【0033】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、約90nmol/kg~約2
00nmol/kgの範囲である。
【0034】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合
物は、コルチコステロイドを含む。特定の実施態様において、コルチコステロイドは、経
口プレドニソン、静脈内プレドニソン、デキサメタゾン、及びそれらの任意の組合せから
なる群から選択される。
【0035】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合
物は、リツキシマブを含む。
【0036】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合
物は、アレムツズマブを含む。
【0037】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合
物は、フォスタマチニブを含む。
【0038】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合
物は、シクロスポリン、ダプソン、及びアザチオプリンからなる群から選択される。
【0039】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合
物は、トロンボポエチン受容体アゴニストを含む。特定の実施態様において、トロンボポ
エチン受容体アゴニストは、エルトロンボパグである。特定の実施態様において、トロン
ボポエチン受容体アゴニストは、アバトロンボパグである。特定の実施態様において、ト
ロンボポエチン受容体アゴニストは、ロミプロスチムである。特定の実施態様において、
トロンボポエチン受容体アゴニストは、ロミプロスチムの非-Fc部分である。
【0040】
特定の実施態様において、ヒト対象は、治療前に30×109/L未満の血小板数を有する。
【0041】
特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に従う治療の前の、ITPの標準治療処
置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、<100×109/Lの
血小板数を有する。特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に従う治療の前の、
ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、
≦50×109/Lの血小板数を有する。特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に従
う治療の前の、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準
治療処置時に、≦30×109/Lの血小板数を有する。特定の実施態様において、対象は、本
発明の方法に従う治療の前の、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化
合物による標準治療処置時に、≦20×109/Lの血小板数を有する。特定の実施態様におい
て、対象は、本発明の方法に従う治療の前の、ITPの標準治療処置について承認された少
なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、≦10×109/Lの血小板数を有する。
【0042】
特定の実施態様において、本治療は、50×109/Lを上回る血小板数の増加を生じる。特
定の実施態様において、50×109/Lを上回る血小板数の増加は、少なくとも4週間維持され
る。
【0043】
特定の実施態様において、本治療は、100×109/Lを上回る血小板数の増加を生じる。特
定の実施態様において、100×109/Lを上回る血小板数の増加は、少なくとも4週間維持さ
れる。
【0044】
本発明の態様としては、免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象を治療する方
法であって、1以上の投与量のヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニストを対象へ投与することを含
み、ここでhFcRnアンタゴニストは、ヒトFcRnに特異的なアフィボディを含む。特定の実
施態様において、hFcRnアンタゴニストは、ヒトFcRnに特異的なアフィボディからなる。
特定の実施態様において、ヒトFcRnに特異的なアフィボディは、配列番号:4として示し
たアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストは、ヒトアルブ
ミンに特異的なアルブミン結合ドメインに連結されたヒトFcRnに特異的なアフィボディを
含む融合タンパク質である。特定の実施態様において、ヒトFcRnに特異的なアフィボディ
は、配列番号:4として示したアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、本方法は
、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の1以上の投与量を、対
象へ投与することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0045】
(図面の簡単な説明)
【
図1】
図1は、実施例5に説明された第II相臨床試験のデザインを描いている。
【
図2】
図2は、実施例6に説明された臨床試験のオープンラベル継続部分のデザインを描いている。
【
図3】
図3は、実施例5に説明された主要試験時に評価された総IgGの減少率を描くグラフである。
【
図4】
図4A-4Dは、実施例5に説明された主要試験時に評価された各IgG亜型の減少率を描くグラフである。
図4A、IgG1;
図4B、IgG2;
図4C、IgG3;及び、
図4D、IgG4。
【
図5】
図5は、実施例5に説明された主要試験時の1患者群当たりの平均血小板数及び平均の標準誤差を描くグラフである。矢印は、エフガルチギモド投与のタイミングを指摘している。
【
図6】
図6は、実施例5に説明された主要試験において評価された血小板数増加の増加閾値を達成している患者の割合を描いている。
【
図7】
図7は、実施例5に説明されたように5mg/kgエフガルチギモドが処置された慢性ITP患者における血小板数の反応を描いている。示された血小板数は、×10
9/Lを単位として表される。
【
図8】
図8は、実施例5に説明されたように10mg/kgエフガルチギモドが処置された慢性ITP患者における血小板数の反応を描いている。示された血小板数は、×10
9/Lを単位として表される。
【
図9】
図9は、実施例5に説明されたように5mg/kgエフガルチギモドが処置された新規診断ITP患者における血小板数の反応を描いている。示された血小板数は、×10
9/Lを単位として表される。
【
図10】
図10は、実施例5に説明されたように5mg/kgエフガルチギモドが処置された新規診断ITP患者における血小板数の反応を描いている。示された血小板数は、×10
9/Lを単位として表される。
【
図11】
図11は、第II相試験への登録前に治療を受け取らず(すなわち、ITPの治療に関して承認された少なくとも1種の化合物による治療に関して承認された待機的(wait-and-see)アプローチ中にあった)、且つ実施例5に説明されたように10mg/kgエフガルチギモドで治療された、持続性ITP患者における血小板数の反応を描いている。示された血小板数は、×10
9/Lを単位として表される。
【
図12】
図12は、世界保健機関(WHO)スケールを用い評価した出血事象を伴う患者の割合を描くグラフである。
【
図13】
図13は、ITP-特異的出血評価ツール(ITP-BAT)スケールを用いて評価した出血事象を伴う患者の割合を描く、一連の3種のグラフである。左側から右側へ:皮膚スコア>0、臓器スコア>0、及び粘膜スコア>0。
【
図14】
図14は、実施例7に説明された第III相臨床試験のデザインを描いている。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(発明の詳細な説明)
以下は、発明の詳細な説明である。
【0047】
(定義)
本明細書において使用される用語「ITP」は、免疫性血小板減少症を指す。ITPは、病原
性IgGが血小板-産生細胞(巨核球)及び循環血血小板(血小板)を破壊する、自己免疫性の疾
患又は障害である。病原性IgGは、多面的アプローチで、疾患の進行を駆動し:これらは
、血小板クリアランスを促進し、血小板産生を阻害し、血小板死滅を直接誘導し、且つ血
小板の凝固機能を発揮する血小板の能力を妨害する。ITPの診断は一般に、血小板減少症
に関連し得る他の原因又は障害の非存在下での、血小板減少症(循環血小板数<100×109/
L)の存在を必要とする、除外診断である。罹患した患者は一般に、血小板数<30×109/L
で自然出血のリスクがあり、これは血小板数<10×109/Lでの致命的出血を含む。ITPは、
急性又は慢性であることができる。特定の個々の実施態様において、ITPは、新規診断ITP
、持続性ITP、又は慢性ITPとして分類されることができる。新規診断ITPとは、最初の診
断の3ヶ月以内のITPである。持続性ITPは、診断から3~12ヶ月間続くITPである。慢性ITP
は、診断から12ヶ月を上回って続くITPである。Rodeghiero Fらの文献、Blood、113(11):
2386-2393 (2009)。
【0048】
本明細書においてITPと結びつけて使用される語句「標準治療処置(standard-of-care t
reatment)」とは、ITPの治療において有効であると一般に認められる任意の治療方法を指
す。特定の実施態様において、そのような標準治療処置は、米国血液学会などの国家的又
は国際的機関により公表された指針に従う。特定の実施態様において、「標準治療処置」
は、待機的アプローチを行うこと、すなわち対象が血小板数>30×109/Lを有し及び/又
は出血の証拠を有さない一方で、治療的介入を伴わずに、臨床パラメータ及び臨床検査パ
ラメータをモニタリングすることを、必然的に伴う。特定の実施態様において、「標準治
療処置」は、本明細書において考察した1種以上の化合物及び/又は脾臓摘出による治療
的介入を必然的に伴う。1種以上の化合物による介入に関与する標準治療処置に関して、
この1種以上の化合物は、1つ以上の機会(occasion)において投与され、並びに複数の機会
の場合、各化合物は、独立してスケジュールを基に又は必要に応じて投与されることがで
きる。
【0049】
本明細書において使用される語句「標準治療処置に関して承認された化合物」は、一般
にITPの治療において有効であるとして認められた任意の化合物を意味する。2011年に、
米国血液学会は、ITP治療に関する指針を出した。Neunert Cらの文献、Blood、117: 4190
-4207 (2011)。これらの指針において言及された任意の化合物又は化合物クラスは、「標
準治療処置に関して承認された化合物」の定義内である。これらは、コルチコステロイド
、IVIg、抗-D、リツキシマブ、及びTPO-Rアゴニストを含むが、これらに限定されるもの
ではない。同様に、2010年の原発性免疫性血小板減少症の研究及び管理における国際コン
センサスレポート(Provan Dらの文献、Blood、115: 168-186 (2010))は、この定義内であ
るとみなされる化合物の例を提供している。前記に従い、標準治療処置に関して承認され
た化合物はまた、TPO-Rアゴニスト(例えば、ロミプロスチム、エルトロンボパグ、及びア
バトロンボパグ)、シクロスポリン、アザチオプリン、フォスタマチニブ、リツキシマブ
、及びアレムツズマブのいずれか1つ以上を含むことができる。新規化合物が、科学の進
歩につれ、この定義に加えられることは、理解されるであろう。
【0050】
特定の実施態様において、本明細書において使用される「標準治療処置に関して承認さ
れた化合物」は、例えば、コルチコステロイド、IVIg、抗-D、TPO-Rアゴニスト(例えば、
ロミプロスチム、エルトロンボパグ、及びアバトロンボパグ)、シクロスポリン、アザチ
オプリン、フォスタマチニブ、リツキシマブ、及び/又はアレムツズマブのいずれか1つ
以上を含む、一般にITPの治療に有効であると認められる前述の化合物のいずれか1つを
除外する。
【0051】
特定の実施態様において、標準治療処置に関して承認された化合物は、IVIgを除外する
。特定の実施態様において、標準治療処置に関して承認された化合物は、抗-Dを除外する
。特定の実施態様において、標準治療処置に関して承認された化合物は、IVIg及び抗-Dの
両方を除外する。
【0052】
本明細書において使用される用語「治療する」、「治療している」及び「治療」は、本
明細書記載の治療的又は予防的方策を指す。「治療」の方法は、予防、治癒、遅延、重症
度の軽減、又は疾患もしくは障害の1以上の症状を又は対象における疾患もしくは障害の
再発を改善するため、あるいはそのような治療が存在しない場合に予想されるものを超え
て対象の生存を延長するため、有効量の物質の対象への投与を用いる。
【0053】
本明細書において使用される用語「対象」とは、哺乳動物を指す。特定の実施態様にお
いて、対象は、ヒトである。特定の実施態様において、ヒト対象は、少なくとも18歳の成
人である。特定の実施態様において、ヒト対象は、少なくとも12歳であるが18歳未満であ
る。特定の実施態様において、ヒト対象は、12歳未満である。特定の実施態様において、
対象は、非-ヒト霊長類である。
【0054】
本明細書において使用される用語「FcRn」は、新生児型Fc受容体を指す。特定の実施態
様において、FcRnは、ヒトFcRn(hFcRn)である。ヒトFcRnは周知であり、これは、そのア
ミノ酸配列、例えばGenBank寄託番号NM-004017で示されたようなFCGRT遺伝子によりコー
ドされた、GenBank寄託番号NP_004098を含む。
【0055】
本明細書において使用される用語「FcRnアンタゴニスト」は、FcRnへ特異的に結合し、
且つFcRnへの免疫グロブリンの結合を阻害する、任意の物質を指す。特定の実施態様にお
いて、FcRnアンタゴニストは、完全長IgG抗体(例えば、ロザノリキシズマブ)である。特
定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、IgG抗体の断片である。特定の実施態様
において、FcRnアンタゴニストは、IgG抗体のFc断片である。特定の実施態様において、F
cRnアンタゴニストは、エフガルチギモド(ARGX-113)である。本明細書において使用され
る、ARGX-113としても公知であるエフガルチギモドは、単離されたFcRnアンタゴニストで
あり、ここでこのFcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからな
るバリアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1から
なる。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFc
ドメインからなるバリアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配
列番号:2からなる。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形
成する2つのFcドメインからなるバリアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミ
ノ酸配列は、配列番号:3からなる。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、
ヒトFcRnに特異的なアフィボディ、又はこのアフィボディとアルブミン結合ドメイン(ABD
)を含む融合タンパク質である。特定の実施態様において、ヒトFcRnに特異的なアフィボ
ディは、配列番号:4として示したアミノ酸配列を有する。
【0056】
本明細書において使用される用語「抗体」は、ジスルフィド結合により相互結合された
2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖の4本のポリペプチド鎖を含む免疫グロブリン分子、並び
にそれらの多量体(例えば、IgM)を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(VHと略)及び重鎖定常
領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメインであるCH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は
、軽鎖可変領域(VLと略)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL)
を含む。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域に
より散在される、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域へ更に再分割され得る。
【0057】
本明細書において使用される用語「Fc領域」は、その2本の重鎖のFcドメインにより形
成される、未変性の免疫グロブリン、例えばIgGの部分を指す。未変性のFc領域は、ホモ
二量体である。
【0058】
本明細書において使用される用語「Fcドメイン」は、一般に、パパイン切断部位のすぐ
上流のヒンジ領域で始まり、且つ抗体のC-末端で終わる、単独の免疫グロブリン重鎖の部
分を指す。エフガルチギモド(ARGX-113)の文脈において、Fcドメインは、配列番号:1と
して示したアミノ酸配列を有する。
【0059】
本明細書において使用される用語「EU位置」は、Edelman, G.M.らの文献、Proc. Natl.
Acad. Sci USA, 63: 78-85 (1969)及びKabatらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク
質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、U.S. Dept. Health a
nd Human Services、第5版、1991年において説明されたFc領域についてのEU番号付け慣習
におけるアミノ酸の位置を指す。
【0060】
(発明の方法)
本発明の最も広範な態様において、本発明は、免疫性血小板減少症(ITP)と診断された
ヒト対象を治療する方法であって、1以上の投与量のFcRnアンタゴニストを、対象へ投与
することを含む方法に関する。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、エフガ
ルチギモド(ARGX-113)である。本発明はまた、1以上の投与量のFcRnアンタゴニストを対
象へ投与することを含む、対象における免疫性血小板減少症(ITP)を治療する方法におい
て使用するためのFcRnアンタゴニストを提供する。特定の実施態様において、FcRnアンタ
ゴニストは、ヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニストである。
【0061】
従って特定の実施態様において、本発明は、免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒ
ト対象を治療する方法であって、1以上の投与量のFcRnアンタゴニストを対象へ投与する
ことを含む方法に関し、ここでFcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcド
メインからなるバリアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列
番号:1からなる。
【0062】
特定の実施態様において、本発明は、免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象
を治療する方法であって、1以上の投与量のFcRnアンタゴニストを対象へ投与することを
含む方法に関し、ここでFcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメイン
からなるバリアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:
2からなる。
【0063】
特定の実施態様において、本発明は、免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象
を治療する方法であって、1以上の投与量のFcRnアンタゴニストを対象へ投与することを
含む方法に関し、ここでFcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメイン
からなるバリアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:
3からなる。
【0064】
特定の実施態様において、本方法は、1以上の投与量のFcRnアンタゴニストを、ITPに関
する標準治療処置と結びつけて、対象へ投与することを含む。この状況において、特定の
実施態様において、ITPに関する標準治療処置は、具体的には、ITPの治療のための待機的
アプローチをとり、すなわちITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合
物の1以上の投与量を対象へ投与することなく、患者をモニタリングすることができる。
特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、エフガルチギモド(ARGX-113)である。
【0065】
特定の実施態様において、本発明は、免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象
を治療する方法であって、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量及び標準治療処置に関し
て承認された少なくとも1種の化合物の1以上の投与量を対象へ投与することを含む方法に
関する。特定の実施態様において、本発明は、対象において免疫性血小板減少症(ITP)を
治療する方法において使用するためのFcRnアンタゴニストに関し、ここでこの方法は、IT
Pの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物と組合せて、FcRnアンタゴニ
ストの1以上の投与量を対象へ投与することを含む。特定の実施態様において、FcRnアン
タゴニストは、エフガルチギモド(ARGX-113)である。
【0066】
一部の実施態様において、本発明の方法は、ITPの標準治療処置について承認された少
なくとも1種の化合物の1以上の投与量の共投与を伴うことなく、FcRnアンタゴニストを投
与することを含む。
【0067】
一部の実施態様において、本発明の方法は、FcRnアンタゴニストを投与すること、及び
ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の1以上の投与量の安定し
た投薬レジメンを同時に投与することを含む。
【0068】
一部の実施態様において、本発明の方法は、FcRnアンタゴニストを投与すること、及び
ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の1以上の投与量の漸減投
薬レジメンを同時に投与することを含む。一部の実施態様において、本発明の方法は、Fc
Rnアンタゴニストを投与すること、及びITPの標準治療処置について承認された少なくと
も1種の化合物の漸減投薬レジメンを同時に投与することを含む。
【0069】
一部の実施態様において、本発明の方法は、FcRnアンタゴニストを投与すること、及び
ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の1以上の投与量の投薬レ
ジメンを同時に中断することを含む。一部の実施態様において、本発明の方法は、FcRnア
ンタゴニストを投与すること、及びITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種
の化合物の投薬レジメンを同時に中断することを含む。
【0070】
特定の実施態様において、対象は、慢性ITPに罹患している。他の実施態様において、
対象は、持続性ITPに罹患している。更に別の実施態様においては、対象は、ITPと新たに
診断されている。FcRnアンタゴニストは、ヒトFcRn(hFcRn)へ特異的に結合する、低分子
、抗体、抗体断片、アフィボディ、又はナノボディであってよい。特定の実施態様におい
て、FcRnアンタゴニストは、hFcRnへ特異的に結合する1以上のCDRを含む、抗体又は抗体
断片である。例としては、完全長モノクローナル抗体、例えばロザノリキシズマブ(UCB-7
665;UCB社)、DX-2504(Dyax/Shire社)、DX-2507(Dyax/Shire社)、HL161(HanAll Biopharm
a社)、M281(Momenta Pharmaceuticals社)、及びSYNT001(Syntimmune社)など;並びに、Fn
Ab-8(Shanghai Jiao University)を含む、モノクローナル抗体の断片が挙げられる。例え
ば、WO 2009/131702;WO 2014/019727;WO 2014/204280;WO 2016/123521;WO 2016/1833
52;及び、WO 2017/121330を参照されたい。アフィボディに関しては、例えばSeijsing J
らの文献、Sci Rep 8: 5141 (2018)を参照されたい。ナノボディに関しては、例えば、An
dersen JTらの文献、Sci Rep 3: 1118 (2013)を参照されたい。
【0071】
好ましい実施態様において、FcRnアンタゴニストは、hFcRnに対するその親和性を変更
するように操作されているヒトFc領域である。例としては、エフガルチギモド(ARGX-113)
が挙げられ、これは以下の変異によりhFcRn親和性が増強されるよう操作された、ヒトIgG
1抗体の単離されたFc領域である:M252Y、S254T、T256E、H433K、及びN434F(EU番号付け)
。まとめると、これらの変異は、pH6.0(酸性化されたエンドソームのpH)及びpH7.4(細胞
外pH)の両方で増強されたFc-FcRn結合を生じる、いわゆる「Abdeg」変異である。Abdeg変
異は、循環IgGのFcRnへの結合をブロックし、且つリソソーム分解を通じたIgGのクリアラ
ンスを促進する。例えば、WO 2006/130834及びWO 2015/100289を参照されたい。
【0072】
特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメ
インからなるバリアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番
号:1からなる。
【0073】
特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメ
インからなるバリアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番
号:2からなる。
【0074】
特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメ
インからなるバリアントFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番
号:3からなる。
【0075】
IgGホメオスタシスにおけるFcRn受容体の役割は必須であるので、エフガルチギモドに
より達成されるように、このFcRn機能を阻害することは、IgG-駆動した自己免疫疾患にお
ける自己抗体を含むと予想される、内在性IgGの迅速な分解につながる。この概念は、カ
ニクイザルにおける薬物動態/薬力学(PK/PD)試験と一緒に、様々なマウス疾患モデルに
おいてバリデートされている。Challa DKらの文献、MAbs. 5(5): 655-9 (2013)。同じくU
S 2015/0218239も参照されたい。
【0076】
マウスの関節リウマチ及び多発性硬化症のインビボ疾患モデルにおいて、疾患スコアの
明らかな改善が、Abdeg-備えた分子による治療後に認められた。この改善は、自己抗体レ
ベルの全身性の低下により達成された。Patel DAらの文献、J Immunol. 187: 1015-22 (2
011)。
【0077】
カニクイザルにおける薬物動態及び薬力学(PD)試験は、関連のある動物モデルにおける
エフガルチギモドの抗体-クリアリング特性を確認した。エフガルチギモドの単回注入は
、血清アルブミン濃度、並びにIgM又はIgAのレベルを変更することなく、内在性IgGの最
大55%の減少を生じた。このPD効果は、PD効果の深度及び(as)開始の迅速さの両方におい
て、ITPにおけるSoC療法と考えられるIVIgよりもより強力であることが証明された。反復
投薬は、PD効果を、最大IgG低下75%まで、改善することができる。
【0078】
前述のように、エフガルチギモドは、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなる
バリアントFc領域であり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1として示
した。
【0079】
【0080】
特定の実施態様において、エフガルチギモドのバリアントFc領域のFcドメインは、Fcド
メインのEU位置297に分岐しているGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)を有する、N-連結し
たグリカンを含む。
【0081】
密接に関連したバリアントFc領域は、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなり
、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:2として示した。
【0082】
【0083】
別の密接に関連したバリアントFc領域は、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインから
なり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:3として示した。
【0084】
【0085】
医薬活性化合物の投薬を、ヒト対象の体重1kg当たりに投与される化合物の重量に換算
して、例えばmgで報告することは、慣習である。利用可能なhFcRnアンタゴニストは、広
範な分子量に及ぶ。例えば、ロザノリキシズマブの分子量は約150kDaであり;エフガルチ
ギモドのそれは約54kDaである。作用機序は、分子レベルであり、体重1kg当たりのナノモ
ル数(nmol/kg)として投薬を表現することを、より意味があるものとしている。任意の事
象において、当業者は、望ましいならば、本明細書において使用されるnmol/kgを、mg/kg
へ容易に変換することができる。
【0086】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニストは、約10nmol/kg~約1000nmol/kgの1以
上の投与量で投与される。概して、臨床医は、対象を副作用へ過度に曝露しない可能性が
最も高い投与量を選択することを目ざす。ロザノリキシズマブは、約20nmol/kg~約50nmo
l/kg(すなわち、約3mg/kg~約7.5mg/kg)の範囲の投与量で投与されることが好ましいこと
はわかっている。エフガルチギモドは、良好な安全性プロファイルを有することはわかっ
ており、且つ約50nmol/kg~約300nmol/kg(すなわち、約2.7mg/kg~約16.2mg/kg)、好まし
くは約90nmol/kg~約200nmol/kg(すなわち、約4.9mg/kg~約10.8mg/kg)の範囲の投与量で
、ヒト対象へ投与されてよい。
【0087】
特定の実施態様において、対象は、新規診断ITPを有する。特定の実施態様において、
対象は、持続性ITPを有する。特定の実施態様において、対象は、慢性ITPを有する。
【0088】
特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に従う治療前に、血小板数<100×109
/Lを有する。特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に従う治療前に、血小板数
≦50×109/Lを有する。特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に従う治療前に
、血小板数≦30×109/Lを有する。特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に従
う治療前に、血小板数≦20×109/Lを有する。特定の実施態様において、対象は、本発明
の方法に従う治療前に、血小板数≦10×109/Lを有する。
【0089】
特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に従う治療前の、ITPの標準治療処置
について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、血小板数<100×10
9/Lを有する。特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に従う治療前の、ITPの標
準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、血小板
数≦50×109/Lを有する。特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に従う治療前
の、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時
に、血小板数≦30×109/Lを有する。特定の実施態様において、対象は、本発明の方法に
従う治療前の、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準
治療処置時に、血小板数≦20×109/Lを有する。特定の実施態様において、対象は、本発
明の方法に従う治療前の、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物
による標準治療処置時に、血小板数≦10×109/Lを有する。
【0090】
一部の実施態様において、本発明の方法に従い治療されるべき対象は、出血の臨床的証
拠を伴わないITPを有する。一部の実施態様において、本発明の方法に従い治療されるべ
き対象は、出血の臨床的証拠を伴わないITPを有する。
【0091】
本発明の特定の実施態様に従い、ヒト対象には、hFcRnアンタゴニスト単独の有効量が
投与され、すなわち、ITPの標準治療処置について承認された任意の1又は複数の化合物の
投与と結びつけられない。例えば、血小板数>30×109/Lを有し、及び/又は出血の証拠
を伴わないITPを有する対象は、ITPを治療するために、有効量のhFcRnアンタゴニストが
投与され得る。そのような実施態様に従い、本方法は、ITPの待機的な承認された標準治
療処置時に、ヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニストの1以上の投与量を、対象へ投与することを
含む。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、エフガルチギモド(ARGX-113)で
ある。
【0092】
本発明の特定の他の実施態様に従い、ヒト対象には、hFcRnアンタゴニストに加え、ITP
の標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が投与される。hFcRnアンタゴ
ニスト及び標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物は、まとめて又は個
別に投与されてよい。これらは、時間的に近く一緒に投与されるか、又はそれらの投与は
ずらして配置されてよい。これらが個別に投与される場合、特定の実施態様において、hF
cRnアンタゴニストは、ITPの標準治療処置について承認された1又は複数の化合物の前に
投与される。これらが個別に投与される場合、特定の実施態様において、ITPの標準治療
処置について承認された1又は複数の化合物は、hFcRnアンタゴニストの前に投与される。
hFcRnアンタゴニスト及び標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物は、同
じ又は異なる投与経路により投与されてよい。
【0093】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、コルチコ
ステロイド、例えば経口もしくは静脈内プレドニソン、メチルプレドニソン、デキサメタ
ゾンなど、及びそれらの組合せを含む。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置に
ついて承認された化合物は、コルチコステロイド、例えば経口又は静脈内プレドニソン、
メチルプレドニソン、デキサメタゾンなど、及びそれらの組合せからなることができる。
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、コルチコス
テロイド、例えば経口又は静脈内プレドニソン、メチルプレドニソン、デキサメタゾンな
ど、及びそれらの組合せを除外することができる。
【0094】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、IVIg又は
抗-Dを含むことができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認さ
れた化合物は、IVIgからなることができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処
置について承認された化合物は、抗-Dからなることができる。特定の実施態様において、
ITPの標準治療処置について承認された化合物は、IVIgを除外することができる。特定の
実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、抗-Dを除外するこ
とができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は
、IVIg及び抗-Dの両方を除外することができる。
【0095】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、シクロス
ポリンを含むことができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認
された化合物は、シクロスポリンからなることができる。特定の実施態様において、ITP
の標準治療処置について承認された化合物は、シクロスポリンを除外することができる。
【0096】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、ダプソン
を含むことができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された
化合物は、ダプソンからなることができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処
置について承認された化合物は、ダプソンを除外することができる。
【0097】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、アザチオ
プリンを含むことができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認
された化合物は、アザチオプリンからなることができる。特定の実施態様において、ITP
の標準治療処置について承認された化合物は、アザチオプリンを除外することができる。
【0098】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、リツキシ
マブを含むことができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認さ
れた化合物は、リツキシマブからなることができる。特定の実施態様において、ITPの標
準治療処置について承認された化合物は、リツキシマブを除外することができる。
【0099】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、アレムツ
ズマブを含むことができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認
された化合物は、アレムツズマブからなることができる。特定の実施態様において、ITP
の標準治療処置について承認された化合物は、アレムツズマブを除外することができる。
【0100】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、フォスタ
マチニブを含むことができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承
認された化合物は、フォスタマチニブからなることができる。特定の実施態様において、
ITPの標準治療処置について承認された化合物は、フォスタマチニブを除外することがで
きる。
【0101】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化合物は、1種以上の
TPO-Rアゴニスト、例えばロミプロスチム、エルトロンボパグ、及びアバトロンボパグを
含むことができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された化
合物は、1種以上のTPO-Rアゴニスト、例えばロミプロスチム、エルトロンボパグ、及びア
バトロンボパグからなることができる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置に
ついて承認された化合物は、1種以上のTPO-Rアゴニスト、例えばロミプロスチム、エルト
ロンボパグ、及びアバトロンボパグを除外することができる。
【0102】
特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合
物は、単独の化合物からなる。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承
認された少なくとも1種の化合物は、同じ又は異なるクラスからの、2種の化合物からなる
。特定の実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合
物は、1、2又は3つのクラスからの、3種の化合物からなる。特定の実施態様において、IT
Pの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物は、1、2、3、もしくは4又は
それよりも多いクラスからの、4種以上の化合物からなる。
【0103】
ITPの標準治療処置について承認された化合物の例証的クラスは:(i)広範な免疫抑制薬
、例えばコルチコステロイド、シクロスポリン、及びアザチオプリンなど;(ii)天然の免
疫グロブリンの調製品、例えばIVIg及び抗-Dなど;(iii)抗原-特異性モノクローナル抗体
、例えばリツキシマブ及びアレムツズマブなど;(iv)TPO-Rアゴニスト、例えばエルトロ
ンボパグ、ロミプロスチム、及びアバトロンボパグなど;並びに、(v)脾臓チロシンキナ
ーゼ(Syk)の低分子インヒビター、例えばフォスタマチニブ(Tavalisse)などを含む。ロザ
ノリキシズマブは、現在、成人におけるITPについて臨床試験中である。
【0104】
例えば特定の実施態様において、本方法は、hFcRnアンタゴニストの1以上の投与量、及
びコルチコステロイドの1以上の投与量を、対象へ投与することを含む。
【0105】
別の例として、特定の実施態様において、本方法は、hFcRnアンタゴニストの1以上の投
与量、コルチコステロイドの1以上の投与量、及びTPO-Rアゴニストの1以上の投与量を、
対象へ投与することを含む。
【0106】
ITPの標準治療処置について承認された単独よりも多い化合物を求める実施態様におい
て、ITPの標準治療処置について承認された2種以上の化合物は、同じ又は異なるスケジュ
ールで投与されることができる。更に、ITPの標準治療処置について承認された単独より
も多い化合物を求める実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された2種以上
の化合物は、FcRnアンタゴニストのスケジュールと同じ又は異なるスケジュールで独立し
て投与されることができる。また更に、ITPの標準治療処置について承認された単独より
も多い化合物を求める実施態様において、ITPの標準治療処置について承認された2種以上
の化合物は、それらの当初の量又は異なる量(例えば減少された量)で、並びにFcRnアンタ
ゴニストのスケジュールと同じ又は異なるスケジュールで、独立して投与されることがで
きる。
【0107】
これらの組合せの一部は、他のものよりもより効果的であると予想することができるこ
とは理解されるであろう。例えばコルチコステロイドは、患者の身体から自己抗体をクリ
アリングするhFcRnアンタゴニストの作用を補完し、自己抗体の生成を減少すると考えら
れる。本発明に従い、コルチコステロイドとhFcRnアンタゴニストの組合せは、実際に有
益であることがわかっている。
【0108】
他方で、IVIg及びhFcRnアンタゴニストの機序は、それらが両方共FcRnに結合し、且つF
cRn-媒介されたIgGリサイクルの競合的インヒビターとして作用する限りにおいて、類似
していると考えられる。IVIgの効果は、hFcRnアンタゴニストのそれにより損なわれるこ
とがあり、後者はより効率的である。
【0109】
本発明の方法に従う組合せ投与は、様々な形態のいずれかを採用することができる。あ
る実施態様において、ITPと診断されたヒト対象は、ITPの標準治療処置について承認され
た少なくとも1種の化合物の投与を含む標準治療処置を最初に受け取る。この治療が、患
者の血小板数を上昇しないか、又は十分に上昇しない場合、hFcRnアンタゴニストの投与
が開始される。この時点で、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合
物の投与は、中断され得る。あるいは、この時点で、ITPの標準治療処置について承認さ
れた少なくとも1種の化合物の投与は継続されるが、減少された投与速度で(すなわち、減
少された量及び/又は頻度で)継続され得る。また別の実施態様において、この時点で、I
TPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の投与は、変化なく継続さ
れ得るが、他方でこの患者は、hFcRnアンタゴニストを受け取る。
【0110】
特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、現在進行中の様式で定期的に投与さ
れ、例えば1以上の投与量は、2、3、4、5、6、7、もしくは8週間毎又はそれ以上で投与さ
れ得る。そのような反復投与の間の時間は、スケジュールによるか、あるいは出血の存在
もしくは非存在並びに/又は特定の閾値レベル、例えば10×109/L、15×109/L、20×109/
L、25×109/L、又は30×109/Lであるか又はこれを下回るような血小板数の下落など、臨
床及び/もしくは臨床検査のパラメータをモニタリングすることにより、設定することが
できる。
【0111】
特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、2週間毎に投与され
る。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、3週間毎に投与さ
れる。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、4週間毎に投与
される。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、5週間毎に投
与される。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、6週間毎に
投与される。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、7週間毎
に投与される。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、8週間
毎又はそれ以上で投与される。
【0112】
特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、3週間にわたるFcRn
アンタゴニストの4回投与を含む最初の治療期間の完了後、2週間毎に投与される。特定の
実施態様において、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、3週間にわたるFcRnアンタゴ
ニストの4回投与を含む最初の治療期間の完了後、3週間毎に投与される。特定の実施態様
において、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、3週間にわたるFcRnアンタゴニストの
4回投与を含む最初の治療期間の完了後、4週間毎に投与される。特定の実施態様において
、FcRnアンタゴニストの1以上の投与量は、3週間にわたるFcRnアンタゴニストの4回投与
を含む最初の治療期間の完了後、5週間毎に投与される。特定の実施態様において、FcRn
アンタゴニストの1以上の投与量は、3週間にわたるFcRnアンタゴニストの4回投与を含む
最初の治療期間の完了後、6週間毎に投与される。特定の実施態様において、FcRnアンタ
ゴニストの1以上の投与量は、3週間にわたるFcRnアンタゴニストの4回投与を含む最初の
治療期間の完了後、7週間毎に投与される。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニス
トの1以上の投与量は、3週間にわたるFcRnアンタゴニストの4回投与を含む最初の治療期
間の完了後、8週間毎又はそれ以上で投与される。
【0113】
特定の実施態様において、hFcRnアンタゴニスト及びITPの標準治療処置について承認さ
れた少なくとも1種の化合物の投与は、同時に起こるか又はずらして配置され得る。ある
いは、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の投与は、hFcRnア
ンタゴニストの投与が開始された後、漸減され得る。他の順列は、当業者には明らかであ
ろう。概して、患者の血小板数は、モニタリングされ、治療レジメンを個人に合わせるこ
とができる。
【0114】
hFcRnアンタゴニスト及びTPO-Rアゴニストの組合せ投与は、本発明に従い、ITPと診断
されたヒト対象において血小板数を増加することに有効であることが認められた。理論に
結びつけられる事を欲するものではないが、本発明者らは、これはこれらの物質の作用様
式は完全に異なるという事実の結果であると考える。
【0115】
FcRnアンタゴニストは、任意の好適な1又は複数の投与経路により投与されることがで
きる。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、静脈内に投与される。特定の実
施態様において、FcRnアンタゴニストは、腹腔内に投与される。特定の実施態様において
、FcRnアンタゴニストは、皮下に投与される。
【0116】
例えばエフガルチギモド(ARGX-113)は、任意の好適な1又は複数の投与経路により投与
されることができる。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、静脈内に投与さ
れる。特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、腹腔内に投与される。特定の実
施態様において、FcRnアンタゴニストは、皮下に投与される。
【0117】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mM NaCl、及び0.02%~0.04%(w/v)ポリソルベート20
又はポリソルベート80、pH6.0中に、約100~200mg/mLのエフガルチギモド(ARGX-113)を含
有する水性製剤であり、ここでARGX-113は、バリアントFc領域からなる単離されたFcRnア
ンタゴニストであり、ここで該バリアントFc領域は、ホモ二量体を形成する2つのFcドメ
インからなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1からなる。
【0118】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mM NaCl、及び0.04%(w/v)ポリソルベート20、pH6.0
中に、150mg/mLエフガルチギモド(ARGX-113)を含有する水性製剤である。
【0119】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mM NaCl、及び0.04%(w/v)ポリソルベート20、pH6.0
中に、175mg/mLエフガルチギモド(ARGX-113)を含有する水性製剤である。
【0120】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mM NaCl、及び0.04%(w/v)ポリソルベート20、pH6.0
中に、水、200mg/mLエフガルチギモド(ARGX-113)を含有する水性製剤である。
【0121】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mM NaCl、10mM L-メチオニン、及び0.02%~0.04%(w
/v)ポリソルベート20又はポリソルベート80、pH6.0中に、約100~200mg/mLエフガルチギ
モド(ARGX-113)を含有する水性製剤である。
【0122】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mM NaCl、10mM L-メチオニン、及び0.04%(w/v)ポリ
ソルベート20、pH6.0中に、165mg/mLエフガルチギモド(ARGX-113)を含有する水性製剤で
ある。
【0123】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mM NaCl、10mM L-メチオニン、及び0.03%(w/v)ポリ
ソルベート20、pH6.0中に、175mg/mLエフガルチギモド(ARGX-113)を含有する水性製剤で
ある。
【0124】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mM NaCl、10mM L-メチオニン、及び0.03%(w/v)ポリ
ソルベート20、pH6.0中に、200mg/mLエフガルチギモド(ARGX-113)を含有する水性製剤で
ある。
【0125】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、50mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mMアルギニンHCl、及び0.02%~0.04%(w/v)ポリソル
ベート20又はポリソルベート80、pH6.0中に、約100~200mg/mLエフガルチギモド(ARGX-11
3)を含有する水性製剤である。
【0126】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mMアルギニンHCl、10mM L-メチオニン、及び0.02%~
0.04%(w/v)ポリソルベート20又はポリソルベート80、pH6.0中に、約100~200mg/mLエフ
ガルチギモド(ARGX-113)を含有する水性製剤である。
【0127】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mMアルギニンHCl、10mM L-メチオニン、及び0.03%(w
/v)ポリソルベート20、pH6.0中に、175mg/mLエフガルチギモド(ARGX-113)を含有する水性
製剤である。
【0128】
皮下投与に関して、特定の実施態様において、FcRnアンタゴニストは、20mMヒスチジン
/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mMアルギニンHCl、10mM L-メチオニン、及び0.03%(w
/v)ポリソルベート20、pH6.0中に、200mg/mLエフガルチギモド(ARGX-113)を含有する水性
製剤である。
【0129】
抗血小板性自己抗体は、少なくとも2つの様式で、血小板数へ負の影響を及ぼすと考え
られる。Houwerzijl EJの文献、Blood, 103: 500-506 (2004);Kuter DJらの文献、Hemat
ol Oncol Clin North Am 23: 1193-1211 (2009)。そのような抗体は、巨核球へ結合し、
このことはそれらのアポトーシスへ繋がると考えられる。結果として、血小板を生成する
ことが可能な巨核球はより少なく存在する。第二の作用様式において、そのような自己抗
体は、新たに形成された血小板に結合する。自己抗体により印を付けられたこれらの血小
板は、脾臓により除去される。TPOの血漿レベルは、TPOの循環血小板への結合により制御
され、このことは循環からのその除去及びそれに続く分解を生じる。Stasi Rらの文献、B
lood Rev 24(4-5): 179-90 (2010)。結果として、この自己抗体は、TPO欠損症を生じる。
【0130】
循環から自己抗体を除去することにより、hFcRnアンタゴニストは、利用可能なTPOを増
加する。このTPO-Rアゴニストは、利用可能なTPOをより効果的にする。従ってhFcRnアン
タゴニストの投与は、TPO-Rアゴニストの作用を補強又は増幅し、その逆も当てはまる。
【0131】
従って特定の実施態様において、この治療方法は、TPO-Rアゴニスト及びhFcRnアンタゴ
ニストを投与することを含む。この時点で、好ましいTPO-Rアゴニストは、エルトロンボ
パグ、ロミプロスチム、及びアバトロンボパグである。
【0132】
エルトロンボパグ(例えば、PROMACTA(登録商標)、Novartis社)は、低分子(MW約442Da)
であり、その薬物動態は、hFcRnアンタゴニストの共投与により影響を受けないと考えら
れる。
【0133】
エルトロンボパグ同様、アバトロンボパグ(例えば、DOPTELET(登録商標)、Dova Pharma
ceuticals社)は、低分子(MW約650Da)であり、且つその薬物動態は、hFcRnアンタゴニスト
の共投与により影響を受けないと考えられる。
【0134】
ロミプロスチム(例えば、NPLATE(登録商標)、Amgen社)は、半減期の改善のためにFcド
メインを含む融合分子である。このFcドメインの効果は、hFcRnアンタゴニストにより反
対に作用される。hFcRnアンタゴニストとの共投与に関して、ロミプロスチム分子は、例
えば、Fcドメイン部分を含まず、且つTPO-R結合部分を保持することにより、修飾され得
る。このことは、製造及び投与がより容易である、より低分子量の分子を生じる。
【実施例0135】
(実施例)
(実施例1:カニクイザルにおけるARGX-113の単回投与量毒性試験)
ARGX-113は、4種の投与量レベル(10、30、50、及び100mg/kg体重[b.w.])及び対照の、
カニクイザルへの2時間のIV注入により投与した。局所的な不耐性のARGX-113に関連した
徴候は、いずれの試験した投与量レベルでも、認められなかった。ARGX-113に関連した作
用は、任意の投与量レベルで、任意の動物の行動、体重、食物消費、心電図パラメータ、
循環機能、血液学的パラメータ、リンパ球タイピング、尿パラメータ、眼科的及び聴覚の
機能、並びに臓器重量に関しては認められなかった。加えて、巨視的又は微視的な全身の
臓器の変化も、試験した任意の動物において認められず、特に組織病理学的変化は、任意
の試験した投与量レベルでサルの肝臓において認められなかった。
【0136】
ARGX-113の投与は、生化学的パラメータの有意な変化を生じ、これは事実上有害ではな
いと考えられた。γ-グロブリンの血清濃度の減少は、全てのARGX-113-処置群において認
められた。ARGX-113は、FcRn-受容体への結合により、抗体クリアランスを増強するので
、全般的免疫グロブリン(γ-グロブリン画分)の減少は、有害作用であるとは考えられず
、且つARGX-113の作用機序に関連していると考えられるべきである。従ってγ-グロブリ
ンの減少は、IgGアイソタイプの全般的グロブリンの減少、及びアルブミン/グロブリン
比の増加を生じた。しかし、そのような減少は、対照群と比較して、IgM、IgA、又はアル
ブミンレベルについては認められなかった。
【0137】
これらの知見を基に、ARGX-113の無有害作用量(NOAEL)は、100mg/kg b.w.であった。
【0138】
(実施例2:カニクイザルにおけるARGX-113の反復投与量毒性試験)
カニクイザルでの反復投与量の1ヶ月間の毒性試験において、ARGX-113を、3つの投与量
レベル(3、30、及び100mg/kg)で投与した。5匹の雄及び5匹の雌のカニクイザルの10匹の
動物は、各投与量レベルで処置され、且つ合計15回注入に関して48時間毎にARGX-113のIV
注入を受け取った。ARGX-113は、臨床徴候、体重、巨視的試験、組織病理学、食物消費、
並びに血液学的及び血清生化学パラメータにより決定された際に、全ての動物により、全
ての投与量で忍容性が良好であった。ARGX-113-関連した巨視的変化は観察されなかった
。組織病理学的試験は、ARGX-113の投与量100mg/kgでの肝臓の変化を明らかにした。肝臓
の変化は、細胞質の変化及び変性、並びにびまん性混合型の炎症細胞の浸潤を含んだ。10
0mg/kg投与量群の動物において、無治療回復相の最終時点で、肝臓病理は存在しなかった
。3mg/kg又は30mg/kgの投与量群について、明白なARGX-113-関連した変化は、認められな
かった。
【0139】
従ってこの試験におけるNOAELは、30mg/kgであると考えられた。
【0140】
カニクイザルにおける26週間の慢性毒性試験において、ARGX-113は、24匹の雄及び24匹
の雌のカニクイザルへ、30分間I.V.の反復注入により投与された。少なくとも8週間の回
復期間後の、何らかの作用の可逆性を評価した。ARGX-113又はビヒクルは、0(ビヒクル)
、10、30、及び100mg/kgの投与量で、26週間にわたり毎週1回投与した。
【0141】
任意の試験投与量レベルで、臨床徴候、体重、食物消費、ECG、循環機能、凝固、尿状
態、眼科的及び聴覚機能、相対及び絶対臓器重量、並びに骨髄の赤血球に対する比に対す
る、ARGX-113の作用は存在しなかった。本試験期間中、時期尚早に死亡した動物はなかっ
た。
【0142】
局所的な不耐性のARGX-113に関連した徴候は、処置した動物のいずれについても報告さ
れなかった。
【0143】
ARGX-113の投与は、生化学パラメータの有意な変化を生じ、これは、先の毒性試験につ
いて説明されたものと同様の理論的根拠に従う場合、事実上有害ではないと考えられた。
【0144】
リンパ球タイピングは、調べた細胞サブセット(NK細胞、ヘルパーT細胞、活性化したヘ
ルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、活性化した細胞傷害性T細胞、未熟T細胞、及びB細胞)の
組成又は活性化の等級におけるARGX-113に関連した変化を明らかにしなかった。血液学的
パラメータにおけるARGX-113に関連した変化は、認められなかった。
【0145】
巨視的又は微視的有害性の試験項目に関連した変化は、試験したいずれの動物について
も報告されなかった。
【0146】
これらの知見から、ARGX-113のNOAELは、30分間のIV注入により週1回投与された100mg/
kgであった。
【0147】
(実施例3:ラットにおけるARGX-113の反復投与量毒性試験)
ラットにおける反復投与量の1ヶ月間の毒性試験において、ARGX-113は、3種の投与量レ
ベル(10、30、及び100mg/kg)で投与された。10匹の雄及び10匹の雌動物の20匹の動物を、
各投与量レベルで処置し、合計15回の注入についてARGX-113の48時間毎のIV注射を受け取
った。ARGX-113は、臨床徴候、体重、巨視的試験、組織病理、食物消費、並びに血液学及
び血清生化学パラメータにより決定した際に、全ての動物により、全ての投与量で良く忍
容された。巨視的ARGX-113に関連した変化は、認められなかった。組織病理学的試験は、
ARGX-113の投与量100mg/kgで、一部の動物において、肝臓における試験項目に関連した組
織病理学的病巣を明らかにした。この病巣は、クッパー細胞肥大/過形成からなり、これ
は、ARGX-113の100mg/kgで処置した群の両性において認められた。投与量100mg/kg群の動
物においては、無治療回復相の最後に、肝臓病理は存在しなかった。明白なARGX-113-関
連変化は、10mg/kg又は30mg/kgの投与量群について認められなかった。
【0148】
従ってこの試験においてNOAELは、30mg/kgであると考えられる。
【0149】
(実施例4:健常ヒトにおけるエフガルチギモドの第I相投与量漸増臨床試験)
健常ヒトにおける第I相投与量漸増試験において、エフガルチギモド(ARGX-113)の投与
量0.2、2.0、10、25及び50mg/kgの単回IV投与後、エフガルチギモドのCmaxは、0.2~10mg
/kgの間で、投与量に対する比例を上回って増加し(投与量の50倍の増加について、115倍
増加する)、且つその後10~50mg/kgにわたっては全般的に投与量に比例し増加した(投与
量の5倍の増加について、5.6倍増加する)。エフガルチギモドのAUC0-96hは、0.2~2.0mg/
kgの間で、投与量に対する比例を上回って増加した(投与量の10倍の増加について、16.6
倍増加する)。AUC0-96h及びAUC0-∞の両方は、2.0~50mg/kgにわたっては全般的に投与量
に比例し増加した(投与量の25倍の増加について、各々、23.5倍及び25.1倍増加する)。
【0150】
全てのコホートにおいて、Cmaxに達する中央値時間は、2.0時間であった(すなわち、注
入の終了時)。エフガルチギモドの半減期は、2.0~50mg/kg投与量群にわたり約85.1時間
~104時間であり、0.2mg/kg投与量群においては、約140時間であった(しかし、おそらく
終末相には依然到達していないであろう)。
【0151】
エフガルチギモドは、エフガルチギモド投与量0.2及び2.0mg/kgでの単回IV投与後、0~
72時間の期間にわたり、尿中で定量不可能であった。より高い試験した投与量レベルで、
尿中のエフガルチギモドの排泄は、非常に低く(<0.1%)、且つ迅速であった(最初の12時
間以内で55~100%)。
【0152】
本試験の複数回の漸増投与量相において、全ての処置群における初回投与後のエフガル
チギモドの薬物動態(PK)は、本試験の単回漸増投与量相において認められたものと一致し
た。
【0153】
全体として、エフガルチギモドの蓄積は、21日間のq4d投薬後及び22日間のq7d投薬後に
は認められず、蓄積比(Rac)の幾何平均値は、0.814から1.26の範囲であった。最終投薬日
後(すなわち、複数回の投与後)のPKプロファイルは、初回投与量後よりも類似していた。
【0154】
エフガルチギモドの単回投与後、血清中の総IgGレベルの減少が、プラセボを受け取っ
た対象と比べ、最低投与量(0.2mg/kg)以外の全ての投与量群において認められた。平均最
大減少(Emax)は、エフガルチギモドが10~50mg/kgにわたる投与量で投与される場合に、
最高(53.1~62.8%)であった。投与量/反応作用は、認められた減少のレベルでのみでは
なく、2.0mg/kgの投与量について投薬後96時間から336時間を、並びに10~50mg/kgにわた
る投与量について48時間から最終試料収集時点まで(すなわち投薬後672時間)を対象とす
る、減少効果の期間でも生じた。従ってより高い投与量は、血清中の総IgGのより持続さ
れた減少を生じた。
【0155】
一般的様式において、異なるIgG亜型(1、2、3、及び4)は、同様の程度減少されたそれ
らの血清レベルを有したが、亜型4についてはやや少ない程度であった。
【0156】
総IgGレベルの減少は、プラセボと比べ、エフガルチギモドの単回投与後に認められた
。両方の投与量レベル(10及び25mg/kg)において、この阻害は、エフガルチギモドの複数
回の投与後に増強された。
【0157】
エフガルチギモドの10mg/kgのq4d、10mg/kgのq7d、又は25mg/kgのq7dの複数回の投与後
、それぞれのEmaxの平均は、69.4~77.5%の範囲であった。一般的様式において、異なる
IgG亜型(1、2、3、及び4)は、同様の程度減少されたそれらの血清レベルを有したが、亜
型4についてはやや少ない程度であった。
【0158】
血清中の総IgGレベル減少の程度は、試験した投与量又はレジメンの間では、有意に異
ならず、このことはエフガルチギモドによる総IgGレベルの最大減少は、10mg/kg投与量の
q7dにより既に達成されていることを示唆している。これはまた、IgG亜型2以外の、IgG亜
型レベルにおいて反映された。
【0159】
全体として、全身曝露されたエフガルチギモドと、総IgG血清レベルの減少に関する薬
力学(PD)作用(作用曲線下面積(AUEC))の間に、相関関係が認められた。同様の結果が、Ig
G亜型(1、2、3及び4)について認められた。
【0160】
エフガルチギモドの投与は、IgA、IgD、IgE、及びIgMの血清レベルにおいて関連する減
少を誘導しなかった。
【0161】
エフガルチギモドの投与量0.2、2.0、10、25、及び50mg/kg又はプラセボの単回投与後
最も頻繁に報告された治験薬投与下の有害事象(TEAE)は、異常な白血球(WBC)数差、増加
したC-反応性タンパク(CRP)、頭痛、眩暈、及び悪寒であった。
【0162】
CRP増加の事象は、25mg/kgエフガルチギモド投与量群において重症度が中等度であり、
且つ50mg/kgエフガルチギモド投与量群において重症度は軽度であると考えられた。TEAE
悪寒は、1名の対象(50mg/kgエフガルチギモド)において中等度として報告された。他の報
告されたTEAEは全て、重症度は軽度であると考えられた。
【0163】
異常なWBC数差、増加したCRP、頭痛、眩暈、及び悪寒の全ての事象は、治験責任医師に
より、最高投与量群(すなわち、25及び50mg/kg)においてのみ、被験薬に関連していると
考えられた。報告された異常なWBC数差の事象は、減少されたCD8、CD3、CD56、CD4及びCD
19リンパ球レベルの免疫学的臨床検査値の異常に関連していた。
【0164】
10mg/kgのq4dの複数回の投薬後、最も頻繁に報告されたTEAEは、下痢及び鼻咽頭炎であ
った。エフガルチギモドの10又は25mg/kgのq7dのいずれかを受け取った対象について最も
頻繁に報告されたTEAEは、頭痛、寒気、悪寒、疲労、眠気、鼻咽頭炎、腰痛及びカテーテ
ル部位の疼痛を含んだ。TEAEの寒気、腰痛、悪寒、疲労及び眠気は、最高投与量(25mg/kg
のq7d)でのみ報告された、頭痛は、治験責任医師により、3名の対象(全員25mg/kgのq7d)
において被験薬に関連していると考えられ、且つこれらの対象の1名について、頭痛は、
中等度の重症度であった。寒気、悪寒及び疲労の全ての事象は、軽度であり、且つ治験責
任医師により被験薬に関連していると考えられた。複数回の投与量群において、リンパ球
サブセットの注目すべき変化は、報告されなかった。過呼吸の1件の重篤有害事象(SAE)が
、25mg/kgのq7d群において認められ、これは治験薬物療法におそらく関連していないと考
えられたが、この第I相試験におけるTEAEはいずれも、治験責任医師により被験薬に確か
に関連していないと考えられたことは注目されるべきである。
【0165】
一過性の、TEAEとして報告されたCRP及び一部のリンパ球サブセットの範囲外の値を除
いて、臨床検査結果は、臨床的に関連のある変化を示さなかった。臨床的に関連のある変
化は、心電図(ECG)においては認められなかった。
【0166】
(実施例5:原発性ITPのヒトにおけるエフガルチギモドの第II相臨床試験)
この実施例は、原発性免疫性血小板減少症の患者において、エフガルチギモドの安全性
、有効性、薬物動態、及び薬力学を評価する、完全無作為化二重盲検プラセボ-対照比較
第II相試験(主要試験)、それに続く任意のオープンラベル継続治療期間(実施例6に説明)
を説明している。
図1は、本試験の全般的デザインを示す。
図2は、オープンラベル試験の
デザインを示す。
【0167】
(試験デザイン)
簡単に述べると、この主要試験は、2週間のスクリーニング期間、3週間の治療期間及び
8週間の経過観察(FU)期間を含む、無作為化二重盲検プラセボ対照比較第II相試験に関与
していた。このプロトコールの修正後、血小板数≧30×109/Lで最初の8週間FU期間を完了
し、且つベースライン血小板数の少なくとも2倍を有する患者は、最大13週間の継続FUに
登録し、並びに再発した患者(血小板数が30×109/L未満と規定)は、1年間のオープンラベ
ル継続(OLE)期間において再治療することができる。
【0168】
本試験は、年齢18~85歳の、原発性ITPと確定され、スクリーニング時に平均血小板数
<30×109/L(2回のカウントの平均、一度も測定値は>35×109/Lではない)を伴う患者を
含んだ。経口コルチコステロイド、経口免疫抑制薬、及び/又はTPO-RAは、本試験期間中
は許可され、且つスクリーニング前少なくとも4週間及び本試験期間中について、投与量
及び頻度は安定していなければならなかった。加えて、スクリーニング時に総IgGレベル
<6g/Lの患者は、除外した。患者は、新規診断(診断の3ヶ月以内)、持続性(診断から3~1
2ヶ月)、及び慢性(12ヶ月を上回り継続)として説明した。
【0169】
(治療介入)
患者は、プラセボ又はエフガルチギモドの投与量5mg/kgもしくは10mg/kg体重のいずれ
かを、4週間の週1回静脈内注入(1、8、15、及び22日目)を受け取るよう、1:1:1で無作為
化した。OLE期間に登録した患者は、エフガルチギモド10mg/kgの4週間の週1回の注入のサ
イクル(複数可)を受け取った。救済療法(新たなITP療法の開始又は併用ITP療法の投与量
もしくは投薬頻度の増加と規定)は、医学的に必要性があるとみなされた場合、治験責任
医師の裁量で、本試験期間中に許可された。救済療法を受け取る患者は、本治験薬(inves
tigational medicinal product)を中断し、安全性試験の終了時まで経過観察した。
【0170】
(患者の素質、人口統計学的特徴、及びベースライン特徴)
62名の患者をスクリーニングし、その中の38名の患者を、プラセボ(N=12)又はエフガル
チギモドの投与量5mg/kg(N=13)もしくは10mg/kg体重(N=13)のいずれかを、4週間の週1回
の静脈内注入の合計を受け取るよう、1:1:1で無作為化した。全体として、35名(92.1%)
の患者が、この治療期間を完了し、且つ32名(84.2%)が、8週間のFUを完了した。14名(36
.8%)の患者が、継続FUに登録した(6名の患者はエフガルチギモド5mg/kg群、6名はエフガ
ルチギモド10mg/kg群、及び2名はプラセボ群)。最後に、12名(31.6%)の患者が、OLE期間
に登録し、エフガルチギモド10mg/kgの4週間の週1回の注入の1又は複数回のサイクルを受
け取った。これら12名の患者の中で、2名(15.4%)の患者は、無作為化期間にエフガルチ
ギモド5mg/kgを受け取り、6名(46.2%)は、エフガルチギモド10mg/kgを、及び4名(33.3%
)は、プラセボを受け取っていた。
【0171】
試験の人口統計学的特徴及びベースライン特徴は、一般に、これらの試験群にわたり同
等であった(表1)。28名(73.7%)の患者は、慢性ITPと分類され、且つ2名(5.3%)の患者は
、新規診断ITPとされた(≦3ヶ月期間)。ITP持続期間の中央値は、4.8年であった(0.1~47
.8の範囲)。20名(52.6%)の患者は、ベースライン血小板数<15×109/Lを有し、ITP治療
前の中央値は、2.0であった(1~10)。9名の患者(23.7%)は、先にリツキシマブを受け取
り、14名(36.8%)は、TPO-RAを受け取り、その中の10名(26.3%)は、ベースライン時にTP
O-RA治療を受け取り、並びに6名(15.8%)は、過去に脾臓摘出していた。27名(71.1%)の
患者は、ベースライン時に少なくとも1種の併用ITP療法を受け取っていた。
【0172】
表1:人口統計学的特徴及びベースライン特徴の要約(フルアナリシスセット)
【表1】
【0173】
Ig:免疫グロブリン、ITP:原発性免疫性血小板減少症、IV:静脈内、N:アナリシスセ
ット内の患者数、n:各治療群内の観察された患者数、TPO-RA:トロンボポエチン受容体
アゴニスト。注記:百分率は、Nを基にしている。
【0174】
主要エンドポイントは、生命徴候、心電図パラメータ、及び臨床検査評価における変化
、並びに治験薬投与下の有害事象(TEAE)の出現率及び重症度であった。副次的エンドポイ
ントは、薬力学(PD)マーカー(総IgG、亜型IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)及び薬物動態(PK
)、並びに抗-薬物抗体(ADA)の存在の評価を含んだ。血小板に結合したIgGの抗-血小板活
性の測定は、Sanquin Diagnostic Laboratoryにおいて、商業的に入手可能な固相ELISA(P
akAuto(登録商標)アッセイ、Immucor GTI Diagnostic社、米国)を使用して、製造業者の
指示に従い行った。
【0175】
有効性評価もまた、副次的エンドポイントとして評価し、且つ任意の時点での血小板数
が≧50×109/L及び≧100×109/Lに増加した患者の頻度及び割合、平均血小板数変化、並
びに国際作業グループ(International Working Group)の定義「反応」(≧7日間離れた少
なくとも2回の個別の連続する機会において確認された、血小板数≧30及び<100×109/L
、並びにベースラインからの2倍を超える増加、並びに出血の非存在)、及び「完全反応」
(≧7日間離れた少なくとも2回の個別の連続する機会において確認された、血小板数≧100
×109/L、並びに出血の非存在)、並びに国際保健機関(WHO)の出血スケール及びITP-特異
的出血評価ツール(ITP-BAT)を使用する出血の評価を含んだ。事後解析は、少なくとも2回
の機会において血小板数≧50×109/Lを伴う患者の割合、及びこの閾値を達成した患者に
おける血小板数≧50×109/Lの期間を含んだ。加えて、少なくとも10累積日(cumulative d
ays)についての血小板数≧50×109/Lを伴う患者の割合を、計算した。評価のスケジュー
ルは、表2に示している。
【0176】
表2:評価スケジュール:継続経過観察期間を含む主要試験
【表2】
【0177】
略語:AE=有害事象;DNA=デオキシリボ核酸;ECG=心電図;ED=早期離脱;EoFU=経
過観察の終了;EoS=試験の終了;EoT=治療の終了;FACT-Th6=癌治療の機能評価の質問
票-Th6;HBcAb=B型肝炎コア抗体;HBsAg=B型肝炎表面抗原;HIV=ヒト免疫不全ウイル
ス;ICF=インフォームドコンセントフォーム;IgG=免疫グロブリンG;IMP=治験薬(IMP
);SMOG/ITP-BAT=免疫性血小板減少症-出血評価ツール;SAE=重篤有害事象;SF-36=シ
ョートフォーム-36;TB=結核;US=予定外来院;WHO=世界保健機関。
・治療期間及び経過観察期間における来院日間の可能なウインドウ期間は、2回の連続す
る来院日が、最低3日間離れていることを条件として、±1日である。ウインドウを伴わな
い先の「評価スケジュール」において説明されたように、各来院日を正確な日付(ベース
ライン来院又は[1日目来院]に対して)にスケジュールするために、あらゆる努力がなされ
るべきである。
a 1日目来院の初回IMP投与前、1~14日間に行われる。
b 試験に関連した評価は、インフォームドコンセントフォームに署名する前には、実行
されなかった。適格性の更なる確認のための組入れ及び除外基準の評価は、他の試験の具
体的手順/無作為化の開始前に、1日目来院時に行った。
c 身長は、スクリーニング時に測定した(及びそれに従いボディマスインデックスを計算
した)。体重は、スクリーニング時に及びIMPの各投与前に記録した(IMPは患者の体重に応
じて決めるので)。
d 転帰評価を報告する患者は、来院時のいずれか他の評価前に行うことを求められた。
e 血液学及び血液化学は、臨床化学(ナトリウム、カリウム、塩化物、ブドウ糖、炭酸水
素塩、クレアチニン、血中尿素窒素、アラニントランスアミナーゼ、AST、総ビリルビン
、γ-GT、CRP、AP、乳酸デヒドロゲナーゼ、尿酸、総タンパク質、及びアルブミン)、血
液学(ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン量、平
均赤血球ヘモグロビン濃度、赤血球数、血小板数、白血球分画)、並びに尿検査(試験紙上
の異常な血液)の全てを含んだ。患者は、スクリーニング時の血中ブドウ糖評価前少なく
とも8時間は絶食した。全ての他の来院時(1日目来院の投薬前試料採取を含む)には、血中
ブドウ糖試験はHbA1cの測定により行ったので、患者は、絶食を必要としなかった。
f 評価は、全ての被験薬注入日に投薬前に完了した。
g 患者の適格性を決定するために、血小板数は、2回の別の来院時に、スクリーニング期
間中、少なくとも1日間をあけて行った。最初のカウントは、スクリーニング時に採取し
た試料を基に、中央臨床検査室により行った。2回目のカウントは、地域の臨床検査室の
結果を基にし、且つ試験治療開始前3日以内であった。中央臨床検査室のための試料は、
この来院時に収集した。
h 抗核抗体、プロトロンビン時間、国際標準比、活性化部分トロンボプラスチン時間、
サイログロブリン、甲状腺刺激ホルモン。
i 12ヶ月以上無月経である女性及びホルモン補充療法を受けていない女性における閉経
後の状態を確認するために評価した。
j 総IgG、IgG亜型(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4)、抗血小板抗体。薬力学の試料は、全
ての投薬日に投薬前に収集した。加えて、IgA、IgD、IgE、及びIgMを評価した。抗血小板
抗体は、2種の異なるアッセイ(PakAutoアッセイ(1日目来院投薬前、8日目来院[又は9日目
来院]及び16日目来院)、及びバリデートされていないアッセイ[1日目来院から16日目来院
])により測定した。
k 血清妊娠検査は、スクリーニング時に行い、且つ尿妊娠検査は無作為化時及び他の関
連来院の全てで行った。
l HBsAg、HBcAb、抗-HBs及び抗-HCV、HIV-1及び2抗体並びにTB血清診断(QuantiFERON(登
録商標)-TB Gold)を含んだ。
m 無作為化は、IMPの投与前に完了した。
n 血液試料(得られたPK及び安全性特徴による、FcRn遺伝子型の今後の関連試験のため)
は、個別の薬理遺伝学ICFに署名した後、初回投薬(1日目来院)前のいずれかの時点で収集
した。ベースライン時の血液採取に失敗した場合には、試料を、本試験時の次の来院時の
投薬前に採取した。
o 治験薬又はプラセボは、1、3、5、及び7日目来院時に、2時間かけたIV注入として投与
した。患者は、注入後少なくとも2時間、施設内でモニタリングした。
p 有害事象、併用薬(複数可)の服用及び新規手順は、ICFに署名してから、最後の試験に
関連する活動まで継続してモニタリングした。早期離脱の場合は、「早期離脱」来院後30
日間にわたり、又は満足できる解消もしくは安定化まで、あらゆるAE/SAEを評価した。
q PK評価は、全てのIMP注入日の投薬前及び投薬後(投薬前試料については注入開始の30
分以内、及び投薬後試料については注入の終了後30分以内)の両方で行った。
r これらの来院時に、血小板数は、血液学試験の一部として得た。中央及び地域の臨床
検査室からの値は、全てのその後の血小板数測定のための「ベースライン」として採用し
た。
s 7日目来院に、ECGを、注入後に得た。
t スクリーニング時:スクリーニング時の総免疫グロブリンG(IgG)レベルは、地域の臨
床検査室により決定した(excl. crit. 10.g.)。
u スクリーニング時:治験責任医師が、スクリーニング臨床検査室での異常を決定した
場合は、この結果は、地域の臨床検査室により確認された。
v TSH又はサイログロブリンのいずれかは、「スクリーニング」時に測定した。選択した
試験からのこれらの結果が無作為化時に入手できない場合は、代替試験(TSH又はサイログ
ロブリン)を測定した。
w 継続FU期間:地域の臨床検査室からの血小板数及び救済薬物療法は、患者の医療ファ
イルから後ろ向き/前向きに収集される。
x 患者の医療ファイルにおいて入手可能な場合、WHO出血スケールのみ報告される。
y 主要試験の修正されたICFは、全ての患者により署名されなければならない。
z 継続FU期間のための経過観察来院の終了は、再発が認められた来院及び救済治療が行
われる来院、あるいは再発が起こらない場合、13週間の継続FU期間の終了前に最も近い来
院と考えられた。
【0178】
(臨床薬理学)
エフガルチギモドの5及び10mg/kgは、総IgGの急激な減少を誘導し(
図3)、プラセボ群の
ベースラインからの識別不可能な変化と比べ、25日目には、最大平均変化がエフガルチギ
モド5mg/kgで60.4%(ベースライン時の9.9g/L[SD=3.2]から4.0g/L[SD=0.8]まで)、及び10
mg/kgで63.7%(ベースライン時の10.6g/L[SD=5.1]から4.1g/L[SD=2.0]まで)に達した。Ig
G減少は、全てのIgG亜型において認められた(
図4)。
【0179】
IgA、IgD、IgE、IgMにおけるベースラインからの平均変化率(%)は、プラセボ群とエフ
ガルチギモド治療群の間で類似しており、ほとんどの場合ベースラインの±10~15%内で
あり(データは示さず)、且つ変化は、臨床的に関連があるとは考えられなかった。陽性の
投薬前ADAは、エフガルチギモド5mg/kgで治療した1名(7.7%)の患者、エフガルチギモド1
0mg/kgの3名(23.1%)、及びプラセボの2名(16.7%)において検出可能であった。陽性の投
薬後ADA力価は、エフガルチギモド5mg/kgで治療した5名(38.5%)の患者、エフガルチギモ
ド10mg/kgで治療した4名(30.8%)、及びプラセボで処置した2名(16.7%)において検出さ
れた。ADA力価は、典型的には低く、PK/PDに対する明白な作用は有さなかった。抗血小
板抗体溶出液の分析は、全ての無作為化された患者において、血小板に関連した自己抗体
(GPIIb/IIIa、GPIb/IX、GPIa/IIa)の存在を明らかにした。5mg/kgエフガルチギモドで治
療した8/12名(66.7%)の患者及び10mg/kg群の7/10名(70.0%)の患者において、自己抗体
の少なくとも1つの型に関する血小板に関連した自己抗体シグナルの40%より大きい減少
が、25/29日目及び/又は78日目の治療時に認められた。5mg/kg群の1名の患者(7.7%)及
び10mg/kg群の3名(23.1%)の患者は、ベースライン試料の喪失又は全ての投薬後試料を救
済療法後に入手したかのいずれかのために、評価できなかった。血清中の自己抗体の存在
は、余り蔓延していなかった。
【0180】
(有効性)
両方のエフガルチギモド治療群は、プラセボ群と比べ、ベースラインからのより高い最
大平均血小板数変化を達成した(5mg/kg群における11日目の77.2×10
9/L、10mg/kg群にお
ける78日目の71.5×10
9/L、及びプラセボにおける18日目の31.1×10
9/L)(
図5)。任意の時
点での血小板数≧50×10
9/Lは、両方のエフガルチギモド治療群における7名(53.8%)の患
者、及びプラセボ群における6名(50.0%)により達成された(
図6)。任意の時点での血小板
数≧100×10
9/Lは、エフガルチギモド5mg/kg群の6名(46.2%)の患者、エフガルチギモド1
0mg/kg治療群の5名(38.5%)、及びプラセボ群の1名(8.3%)において達成された。「反応
」又は「完全反応」の国際作業グループ定義は、エフガルチギモド5mg/kg群の5名(38.5%
)の患者、エフガルチギモド10mg/kg治療群の4名(30.8%)、及びプラセボ群の2名(16.7%)
において達成された。他方で、2名の新規診断ITP患者及び1名の慢性ITP患者は、継続FU期
間を通じて(最大162日目まで)増加した血小板数を維持した。
【0181】
事後解析を行った(
図6)。少なくとも2つの機会での血小板数≧50×10
9/Lは、両方のエ
フガルチギモド治療群における6名(46.2%)の患者、及びプラセボ群における3名(25.0%)
により達成された。これらの患者について、血小板数≧50×10
9/Lの平均累積期間は、エ
フガルチギモド治療した患者について3日と73日の間の範囲で、24.5日間(SD=20.70)、及
びプラセボ治療した患者について4日と9日の範囲で、7.3日間(SD=2.89)であった。加えて
、10名(38.5%)のエフガルチギモド治療した患者及び0名(0.0%)のプラセボ治療した患者
は、10日間を上回る累積期間にわたり、血小板数≧50×10
9/Lを達成した。血小板数≧50
×10
9/Lを達成する最初の時点(少なくとも2機会で血小板数≧50×10
9/Lを達成する患者に
ついて)は、エフガルチギモド治療した患者について8~43日間の範囲であった。
【0182】
エフガルチギモド5mg/kg治療群における4名(30.8%)の患者は、無作為化期間中に救済
治療を受け取り、3名は、血小板数≧50×109/Lを達成しなかった。エフガルチギモド10mg
/kg治療群において、3名(23.1%)の患者は、無作為化期間中に救済療法を受け取り、その
中の2名(15.4%)は、3回投与量のみを受け取った。これらの患者は、血小板数≧50×109/
Lを達成しなかった。1名のプラセボ患者は、53日目に救済療法を受け取った。
【0183】
OLE期間に登録し且つ10mg/kgの4週間の週1回の注入を受け取った12名の患者のうち、3
名(25.0%)の患者は、無作為化期間中の少なくとも2つの機会において、血小板数≧50×1
09/Lを達成し、全員エフガルチギモド10mg/kgで治療された(表3)。12名のうちの8名(66.7
%)の患者は、OLE期間の最初のサイクルの少なくとも2つの機会において、血小板数≧50
×109/Lを達成した。これらの8名の患者のうち、エフガルチギモド5mg/kgからの2名及び
プラセボからの3名は、無作為化期間においてこの閾値を達成せず、且つ無作為化期間に
この閾値に達した3名の患者は、エフガルチギモド10mg/kgにより再治療され、無作為化期
間及びOLE期間の両方においてこれを達成した。
【0184】
表3:オープンラベル継続期間の第一サイクルにおいて異なる血小板閾値を達成する患者(
N=12)
【表3】
N:アナリシスセット中の患者の数、n:各治療群内の観察された患者数。注記:百分率
は、Nを基にしている。
【0185】
図7及び
図8は、各々、5mg/kg又は10mg/kgエフガルチギモドで治療した慢性ITPの患者2
名の結果を示している。患者400-004(
図7)は、1984年にITPと最初に診断された、41歳女
性であり、2014年からエルトロンボパグ75mgの1日1回のp.o.からなるSoC処置が続けられ
ている。
図7に示したように、彼女は、ベースライン血小板数<10×10
9/Lを有し、且つ彼
女は、4回目のエフガルチギモド投与量5mg/kgを受け取った時点までに、血小板数~200×
10
9/Lを達成していた。患者365-002(
図8)は、2005年にITPと最初に診断された、57歳男性
であり、彼は、2017年からメチルプレドニゾロン100mgのp.o.の1日1回からなるSoC処置が
続けられている。
図8に示したように、彼は、ベースライン血小板数約10×10
9/Lを有し、
且つ彼は、自身のエフガルチギモドの初回投与量10mg/kgを受け取った後、約60日後に始
まった>100×10
9/Lの持続反応を達成していた。
【0186】
図9及び
図10は、エフガルチギモド5mg/kgで治療された新規診断ITP患者2名の結果を示
している。患者363-007(
図9)は、本試験のスクリーニングの約1ヶ月前にITPと診断された
、32歳女性であり、彼女の診断後短期間ソルメロドール12mgのp.o.の1日1回からなるSoC
処置が続けられている。
図9に示したように、彼女は、ベースライン血小板数~20×10
9/L
を有し、且つ彼女は、エフガルチギモド投与量5mg/kgの4回目の投与量を受け取った時点
の付近で始まる持続して増加する血小板数~200×10
9/Lを達成していた。患者383-001(図
10)は、本試験のスクリーニングの約2.5ヶ月前にITPと診断された、50歳女性であり、彼
女の診断の約2ヶ月後からプレドニソン10mgのp.o.の1日1回からなるSoC処置が続けられて
いる。
図10に示したように、彼女は、ベースライン血小板数約15×10
9/Lを有し、且つ彼
女は、エフガルチギモド投与量5mg/kgの4回目の投与量を受け取った後約3週間で始まった
持続した血小板数>50×10
9/Lを達成していた。
【0187】
図11は、10mg/kgエフガルチギモドで治療された持続性ITPの患者の結果を示している。
この患者(331-003)は、本試験への登録前には、「待機的」治療(積極介入を伴わない観察
)を受けていた。
図9に示したように、この患者は、ベースライン血小板数<10×10
9/Lを
有し、且つエフガルチギモド10mg/kgの4回目の投与量を受け取った後およそ1週間で始ま
った、約6週間にわたる増加した血小板数>約100×10
9/Lを達成していた。
【0188】
(出血-関連事象)
少なくとも1回の出血TEAEが、各治療群の5名(38.5%)の患者において、及びプラセボ群
の3名(25.0%)において報告された。出血TEAEは、被験薬に関連しているとは考えられず
、重症の出血事象は報告されなかった。あらゆる出血症状の発生率、部位及び重症度もま
た、WHO及びITP-BATスケールを用いて報告した(各々、
図12及び
図13)。出血(合計WHO>0)
を伴う患者の割合は、エフガルチギモド5及び10mg/kg群の両方において、各々、46.2%か
ら64日目の7.7%へ、及び38.5%から29日目の7.7%へ減少した。
【0189】
(考察)
この無作為化二重盲検プラセボ-対照比較第II相試験は、先行するITP療法に対する反応
が不充分である、主に長期にわたりITPを伴う患者(疾患期間の中央値4.82[0.1~47.8]年)
において、エフガルチギモドの安全性及び有効性を評価した。患者集団の半分より多く(2
0名[52.6%])が、ベースライン血小板数<15×109/Lを有した。
【0190】
エフガルチギモドは、忍容性が良く、投与量に関連した安全性の知見はなかった。安全
性プロファイルは、健常志願者及び重症筋無力症患者における先の知見と一致した。感染
症の増加した割合は、これらのエフガルチギモド治療群において認められなかった。1例
の肺炎症例が、OLE期間に報告され、これはエフガルチギモドの最終投与量の8週間後に起
こり、この時総IgGレベルは、ベースラインに近づき、脾臓摘出歴のある患者においてで
あった。
【0191】
エフガルチギモドによるFcRnの標的化は、IgG減少について選択的であり、且つ他の免
疫グロブリンアイソタイプのレベルには影響を及ぼさなかった。加えて、総IgG減少は、
非常に低いレベルに到達せず、低ガンマグロブリン血症を引き起こす疾患における感染症
リスクの増加に関連していることが認められた。とりわけ、エフガルチギモド投与は、一
部の抗-FcRnモノクローナル抗体により認められる、アルブミンレベルの減少を生じず、
このことは、これら2種のFcRnアンタゴニストの間の機序が異なることを示唆している。
【0192】
エフガルチギモドの短期サイクルによる治療は、治療した患者全員における総IgG及び
全てのIgG亜型の迅速且つ顕著な減少を生じ、並びにエフガルチギモド10mg/kg群において
より大きい数値の減少が認められた。ITPの患者の60%~70%と多くで、一般に最も豊富
には血小板表面GP、GPIIb/IIIa、GPIb/IX、GPIa/IIaに向けられた、検出可能な血小板に
関連した自己抗体を有するが、これらは、本試験における患者全員において同定され、且
つエフガルチギモド治療後に減少した。
【0193】
平均血小板数は、両方のエフガルチギモド治療群で増加した。エフガルチギモド5mg/kg
群における早期且つ実質的増加は、1名の患者により説明することができる。この患者は
、併用ITP療法としてエルトロンボパグを受け取っており、且つその血小板数は、8日目か
ら15日目までに500×109/Lを上回って増加した。エフガルチギモドによるIgG-枯渇と、TP
O-RAなどの異なる作用機序による他のITP治療の間に相乗作用が存在するかどうかの更な
る試験は、興味深いであろう。
【0194】
プラセボを受け取る患者の驚くほど高い数が、本試験期間中に単回の血小板数≧50×10
9/Lを達成した(例えば、2つの24-週間フォスタマチニブ第III相試験にわたる14%と比べ6
名[50%])。しかし、血小板数≧50×109/Lのより大きい頻度又は期間、あるいは増加した
血小板数≧100×109/Lを必要とする事後解析は、エフガルチギモドの有効性を明らかにし
た。両方のエフガルチギモド群で治療した6名の患者(46%)は、少なくとも2機会において
、増加した血小板数>50×109/Lを示した。加えて、統計学的に有意なより積極的な治療
をした患者は、プラセボ群と比べ、10日を上回る累積日について血小板数≧50×109/Lを
達成した(各々、10名[38%]、対、0名[0%])。
【0195】
ITPにおける自己抗体は、血小板をオプソニン化し、脾臓のマクロファージによるクリ
アランスを生じることができ、これは巨核球の増殖及び分化を阻害し、弱められた血小板
生成を生じることができ、並びに血小板アポトーシス又は補体依存性溶解を誘導すること
ができる。最近、一部の抗-GP抗体は、血小板凝集及び血栓形成を阻害するか、又は血小
板の脱シアル化及びFc-依存性肝臓クリアランスを誘導するかのいずれかで、血小板の機
能を妨害することができることが報告された。より正確には、3名の異なる患者プロファ
イルが、本試験において認められた。より正確には、エフガルチギモドの短期曝露後に、
反応の開始及び持続期間において高い変動性が、認められた。
図7に示されたように、血
小板数の急激な増加が、エフガルチギモド治療した患者の一部において認められ(エフガ
ルチギモド5mg/kg群の3名及び10mg/kgの2名)、これは抗-CD16抗体、IVIg及び脾臓摘出に
ついて報告された反応する時間に類似している。このことは、前述の治療/手順は、この
発病の機序を妨害すると考えられるので、一部の患者における、自己抗体レベルの限定さ
れた減少は、抗体に被覆された血小板のFcγ受容体-媒介型ファゴサイトーシスを阻害す
るのに十分であり得ることを示唆している。別の患者においては、反応する時間は、
図11
に例示されたように遅延された。これらの患者に関して、血小板の上昇は、4回目の注入(
22日目)後に認められ、これは、より顕著な自己抗体の減少が必要とされること、及び/
又は自己抗体は、骨髄での巨核球による血小板生成に主に影響を及ぼし、それらの除去は
、全身の血小板数へより長期に影響を及ぼすことを指摘することができる。加えて、エフ
ガルチギモド治療後に2倍の血小板ピークを明らかにした患者はほとんどなく(
図11に図示
したように)、このことは、異なる速度論を持つ2種の個別の病原性自己抗体機序を示唆し
ている。興味深いことに、この現象はまた、プラズマフェレーシスにより治療された急性
ITP患者においても説明される。エフガルチギモドに反応した患者の大多数は、血小板数
の一過性の増加を有し、その数は、無治療FU期間においてベースラインレベルへ戻った。
2名の新規診断ITP患者及び1名の慢性ITP患者は、継続FU期間を通じて(最大162日目)増加
した血小板数を維持した。同様の知見が、プラズマフェレーシス後のITPの「急性」患者
について得られたが、慢性患者に関する反応は、単に一過性であると報告された。
【0196】
ITP分類(新規診断、持続性又は慢性ITP)、併用ITP治療又はTPO-RAの使用を基にした亜
群解析において期待されるように(encouragingly)、血小板数の増加を基に明白な有効性
を伴うエフガルチギモド-治療した患者の例が存在した。それにもかかわらず、限定され
た数の患者による本試験において予想されるように、これらの小分類の各々において明白
な差異は存在しなかった。
【0197】
OLE期間において、12名の患者は、エフガルチギモド10mg/kgを受け取り、これは無作為
化試験のプラセボ群からの4名の患者を含んだ。得られたこれらの結果は、無作為化期間
中の少なくとも2機会において血小板数≧50×109/Lを達成し、OLE期間において再度この
閾値を達成した、エフガルチギモド10mg/kg群の3名の患者のように、エフガルチギモド-
誘導した血小板の再現性は、増加したことを明らかにした。興味深いことに、これらの2
名の患者は、最初にエフガルチギモド5mg/kgで治療され、血小板数の増加を示さず、OLE
期間中にエフガルチギモド10mg/kgで治療された場合に増加を示し、これはエフガルチギ
モドのより高い投与量又はより長い曝露が必要であることを示唆している(表3)。
【0198】
エフガルチギモドは、一連の先行するITP療法に対し主に難治性であるITP患者において
増加した血小板数を誘導するという知見は、先行するITP療法の使用(例えば、ステロイド
、リツキシマブ、TPO-RA、脾臓摘出)に関わらず、ITPにおける病原性IgGの中心的役割及
びIgG枯渇の可能性のある有用性を裏付けている。患者は、試験した両方の投与量で恩恵
を受け、IgG減少の仮説を更に裏付けている。10mg/kg投与量は優れていることのいくつか
のシグナルが存在し、これは、この群には新たに診断された患者は存在せず、主要試験の
2名の患者は、4回の10mg/kg投与量全ては受け取らず、且つ主要試験でエフガルチギモド5
mg/kgにより血小板数が増加しなかった2名の患者は、OLE期間中のエフガルチギモド10mg/
kgによる治療時に増加した(表3)という事実を含む。加えて、両方のエフガルチギモド-治
療群において、出血スケールを用いて測定した(WHO及びITP-BATスコアの合計>0)出血の
発生率の減少が存在し、エフガルチギモド10mg/kg群において数値的により大きく減少し
た。
【0199】
(実施例6:オープンラベル継続期間)
実施例5に説明した主要試験に参加している間に自身の進行中のSoCにおいて再発した任
意の評価可能な患者には、エフガルチギモドの安全性及び忍容性、有効性、並びにPK/PD
を更に調べるための、本試験のオープンラベル継続期間に登録する選択肢が与えられた。
本主要試験の経過観察期間中に(すなわち、8週間の経過観察期間に加え13週間の継続経過
観察期間)、再発は、出血の存在しない30×10
9/L以下に減少した患者の血小板数、又は出
血の存在しない決して30×10
9/Lに到達しない患者血小板数として特徴付けられた。
図2は
、オープンラベル継続試験のデザインを示している。エンドポイント評価は、表4及び表5
に詳述したように、「評価スケジュール」に従い行った。
【0200】
表4:評価スケジュール:オープンラベル治療期間-第一の治療サイクル
【表4】
【0201】
略語:AE=有害事象;ED=早期離脱;EoC=サイクルの終了;EoS=試験の終了;EoT=
治療の終了;FACT-Th6=癌治療の機能評価の質問票-Th6;ICF=インフォームドコンセン
トフォーム;IgG=免疫グロブリンG;IMP=治験薬;SMOG/ITP-BAT=免疫性血小板減少症-
出血評価ツール;SAE=重篤有害事象;SF-36=ショートフォーム-36;US=予定外来院;W
HO=世界保健機関。
* 治療期間及び経過観察期間における来院日間の可能なウインドウ期間は、2回の連続す
る来院が、最低3日間離れていることを条件として、±1日である。ウインドウを伴わない
先の「評価スケジュール」において説明されたように、各来院日を正確な日付(17日目来
院に対して)にスケジュールするために、あらゆる努力がなされるべきである。
a 表2のEoS来院(16日目来院)について列挙された手順が、オープンラベル治療相におけ
るARGX-113の10mg/kgの初回投与前1週間以内に行われる場合、それらの手順は、「治療評
価来院」においては繰り返さなかった。ARGX-113は、患者が本試験のオープンラベル治療
期間に参加することに同意し、且つICFに署名した場合にのみ投与することができる。
b オープンラベル治療期間への患者の適格性を確認するための組入れ及び除外基準を評
価する前に、オープンラベル治療期間に関する特定のICFに署名されなければならない。
c 身長は、「治療評価来院」時に測定した(及びそれに従いボディマスインデックスを計
算した)。体重は、「治療評価来院」時に及びIMPの各投与前に記録した(IMPは患者の体重
に応じて決めるので)。
d 転帰評価を報告する患者は、来院時のいずれか他の評価前に行うことを求められた。
e 評価は、全ての被験薬注入日に投薬前に完了した。
f 患者の適格性を決定するために、血小板数は、「治療評価来院」中に行うか、又はEoS
(16日目来院)中に行った。
g 血液学及び血液化学は、臨床化学(ナトリウム、カリウム、塩化物、ブドウ糖、炭酸水
素塩、クレアチニン、血中尿素窒素、アラニントランスアミナーゼ、AST、総ビリルビン
、γ-GT、CRP、AP、乳酸デヒドロゲナーゼ、尿酸、総タンパク質、及びアルブミン)、血
液学(ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン量、平
均赤血球ヘモグロビン濃度、赤血球数、血小板数、白血球分画)、並びに尿検査(試験紙上
の異常な血液)の全てを含んだ。
h 総IgG、抗血小板抗体。薬力学の試料は、全ての投薬日に投薬前に収集した。抗血小板
抗体は、バリデートされたアッセイにより測定した(17、25及び28日目来院)。
i 治験薬は、17、19、21、及び23日目来院時に、2時間かけたIV注入として投与した。患
者は、注入後少なくとも2時間、施設内でモニタリングした。
j 有害事象、併用薬(複数可)の服用及び新規手順は、ICFに署名してから、最後の試験に
関連する活動まで継続してモニタリングした。早期離脱の場合は、「早期離脱」来院後30
日間にわたり、又は満足できる解消もしくは安定化まで、あらゆるAE/SAEを評価した。
k PK評価は、全てのIMP注入日の投薬前及び投薬後(投薬前試料については注入開始の30
分以内、及び投薬後試料については注入の終了後30分以内)の両方で行った。
l これらの来院時に、血小板数は、血液学試験の一部として得た。
m 患者が26日目来院と28日目来院の間で再発した場合、これらの来院は、EoC来院及び/
又は次のサイクルの治療評価来院と考えられた。
n 継続FU期間:地域の臨床検査室からの血小板数、WHO出血スケール及び救済薬物療法は
、患者の医療ファイルから後ろ向き/前向きに収集される。
o 患者の医療ファイルにおいて入手可能な場合、WHO出血スケールのみが報告される。
p 23日目来院時に、ECGを、注入後に得た。
q 最初のオープンラベル治療サイクルのためのサイクル来院の終了は、再発が観察され
た来院及び救済治療が行われる来院と考えられた。
r 患者が26日目来院と28日目来院の間で再発した場合、これらの来院は、EoC来院及び/
又は次のサイクルの治療評価来院と考えられた。
【0202】
表5:評価スケジュール:オープンラベル治療期間-後続治療サイクル(複数)
【表5】
【0203】
略語:AE=有害事象;ED=早期離脱;EoC=サイクルの終了;EoS=試験の終了;EoT=
治療の終了;FACT-Th6=癌治療の機能評価の質問票-Th6;IMP=治験薬;SMOG/ITP-BAT=
免疫性血小板減少症-出血評価ツール;SAE=重篤有害事象;SF-36=ショートフォーム-36
;US=予定外来院;WHO=世界保健機関。
* 2つの連続する(再)治療サイクル間の時間ウインドウは、少なくとも4週間のFUであっ
た。患者がV34とV36の間で再発した場合、これらの来院は、EoC来院及び/又は次のサイ
クルの治療評価来院と考えられた。再治療の場合、サイクルからの継続経過観察期間中の
EoC来院は、後続サイクルの治療評価来院と一緒にすることができる。
** 最後の再治療サイクルは、オープンラベル治療期間の10ヶ月目の最初の半分を期限と
して開始された。オープンラベル治療期間の持続期間は、オープンラベル治療期間につい
てICFに署名した時から最大12ヶ月までとされた。
*** 治療期間及び経過観察期間における来院間の可能なウインドウ期間は、±1日である
。ウインドウを伴わない先の「評価スケジュール」において説明されたように、各来院日
を正確な日付(29日目来院に対して)にスケジュールするために、あらゆる努力がなされる
べきである。
a 身長は、「再治療評価来院」時に測定した(及びそれに従いボディマスインデックスを
計算した)。体重は、IMPの各投与前に記録した(IMPは患者の体重に応じて決めるので)。
b 29日目来院時に、ECGを、注入前に得た。32日目来院時に、ECGを、注入後に得た。
c 転帰評価を報告する患者は、来院時のいずれか他の評価前に行うことを求められた。
d 評価は、全ての被験薬注入日に投薬前に完了した。
e 血液学及び血液化学は、臨床化学(ナトリウム、カリウム、塩化物、ブドウ糖、炭酸水
素塩、クレアチニン、血中尿素窒素、アラニントランスアミナーゼ、AST、総ビリルビン
、γ-GT、CRP、AP、乳酸デヒドロゲナーゼ、尿酸、総タンパク質、及びアルブミン)、血
液学(ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン量、平
均赤血球ヘモグロビン濃度、赤血球数、血小板数、白血球分画)、並びに尿検査(試験紙上
の異常な血液)の全てを含んだ。
f 総IgG、抗血小板抗体。薬力学の試料は、投薬日に投薬前に収集した。抗血小板抗体は
、バリデートされたアッセイにより測定した(29及び36日目来院)。
g これらの来院時に、血小板数は、血液学試験の一部として得た。
h 治験薬は、29、30、31、及び32日目来院時に、2時間かけたIV注入として投与した。患
者は、注入後少なくとも2時間、施設内でモニタリングした。
i 有害事象、併用薬(複数可)の服用及び新規手順は、ICFに署名してから、最後の試験に
関連する活動まで継続してモニタリングした。早期離脱の場合は、「早期離脱」来院後30
日間にわたり、又は満足できる解消もしくは安定化まで、あらゆるAE/SAEを評価した。
j 継続FU期間:地域の臨床検査室からの血小板数及び救済薬物療法は、患者の医療ファ
イルから後ろ向き/前向きに収集される。
k 患者の医療ファイルにおいて入手可能な場合、WHO出血スケールのみが報告される。
l オープンラベル治療期間のためのサイクル来院の終了は、再発が観察された来院及び
救済治療が行われた来院と考えられた。再発がこの治療期間後4週間以内に生じた場合、
患者は、次の治療サイクルについては考えることができなかった。再発が生じない場合、
12ヶ月オープンラベル治療期間の終了前最も最後の来院は、「最終試験」来院と考えられ
た。
【0204】
図2に示したように、第II相試験のオープンラベル継続期間は、最大1年間継続された。
各患者は、個々の治療サイクルを最低4週間隔てた、4週間の週1回のIV注入のサイクル(す
なわち、SoCに加え3週間にわたる4投与量)において投与量10mg/kgのb.w.でエフガルチギ
モドを受け取った。オープンラベル治療中に、エフガルチギモド又はSoCの投与量の投与
及び頻度の変更は許可されなかった。しかし、経過観察期間中は、医学的に必要であると
考えられ且つ完全反応を達成した患者においてのみ、治験責任医師の裁量で、25%のレベ
ルだけSoCの減量が許可された。
【0205】
最初のオープンラベル継続サイクルは、1週目治療評価来院、3週目オープンラベル治療
期間(17日目来院から23日目来院まで)、及び4週目最小経過観察期間(24日目来院から28日
目来院まで)を含んだ。短期安全性評価来院は、2回の治療来院の間にスケジュールした。
最初のオープンラベル治療期間及び経過観察期間における来院間の可能なウインドウ期間
は、これら2回の連続する来院が、最低3日間離れていることを条件として、±1日であっ
た。表4に説明したように、各来院を同じ日(17日目来院に対して)にスケジュールするた
めに、あらゆる努力がなされるべきである。
【0206】
各後続再治療サイクルは、1週目再治療評価来院、3週目オープンラベル治療期間(例え
ば、29日目来院から32日目来院まで)、及び4週目最小経過観察期間(例えば、33日目来院
から36日目来院まで)を含んだ。各オープンラベル治療期間及び経過観察期間における来
院間の可能なウインドウ期間は、±1日であった。表5に説明したように、各来院を同じ日
(例えば、29日目来院に対して)にスケジュールするために、あらゆる努力がなされるべき
である。
【0207】
連続する(再)治療サイクル間の時間ウインドウは、最低4週間であった。各(再)治療サ
イクルに関して、4週目の経過観察期間は、自在な経過観察期間により継続することがで
きる。毎日の実践から収集した情報は、再発及び/又はITPの次治療の投与までの、例え
ば、血小板数、救済治療、出血事象、及び任意の重篤有害事象を含んだ。
【0208】
(結果)
主要試験の3つの治療アームからの合計12名の患者を、オープンラベル期間中に治療し
た。低い血小板数(例えば、15×109/L未満)を持つ数名の患者は、オープンラベル継続中
の治療に反応して、50×109/L又は100×109/Lを超える血小板数を達成した。注目すべき
ことに、5mg/kgエフガルチギモド治療アームからの1名の患者は、主要試験の期間全体を
通じて決して30×109/Lを超える血小板数を達成することはなかったが、このオープンラ
ベル継続中に血小板数およそ80×109/Lを達成した。
【0209】
(実施例7:原発性ITPのヒトにおけるエフガルチギモドの第III相臨床試験)
この実施例は、原発性免疫性血小板減少症(ITP)の成人患者におけるエフガルチギモド(
ARGX-113)10mg/kg静脈内の有効性及び安全性を評価するための、第III相多施設共同無作
為化二重盲検プラセボ対照比較の最大30週治験を説明している。本治験の主要目的は、本
治験の19回目来院と24回目来院の間の6回の来院中の少なくとも4回について少なくとも50
×109/Lの血小板数として定義される持続性血小板数反応である、慢性原発性ITPの患者に
おける持続した血小板数反応を達成することにおける、エフガルチギモドの有効性をプラ
セボと比べて評価することである。副次的目的は、全般的血小板数反応における、プラセ
ボと比較したエフガルチギモドの有効性の評価;静脈内(IV)に毎週又は隔週1回投与され
たエフガルチギモドの安全性及び忍容性の評価;プラセボと比較したエフガルチギモドに
よる治療を受けている間の出血事象の発生率及び重症度の評価;プラセボと比較したエフ
ガルチギモドによる治療を受けている間の、救済治療の使用及び併用ITP療法における変
化の評価;プラセボと比較した生活の質(QoL)の測定及び患者が報告した転帰(PRO)に対す
るエフガルチギモド治療の作用の評価;エフガルチギモドの免疫原性の評価;エフガルチ
ギモドの薬物動態(PK)の評価;並びに、エフガルチギモドの薬力学(PD)作用の評価を含む
。
【0210】
標的集団は、平均血小板数<30×109/Lを有し、且つ少なくとも1回のITP療法を過去に
受け取っている持続性又は慢性の原発性ITPの成人患者である。患者がベースライン時に
併用ITP療法を受け取っている場合、これらの療法は、無作為化前の4週間にわたり、安定
した投与量及び投薬頻度で維持される。12週目を基点として、投与量の増加及び/又は許
可された併用ITP療法のスケジュールは、「不充分な」反応(すなわち、最後の4週間中の
任意の来院時に血小板数≧30×109/Lではない)を有する患者について可能とされる。これ
らの患者は、主要エンドポイント解析について「不応例」と考えられる。
【0211】
適格性の確認後、患者は、24週間の治療期間に登録し、エフガルチギモド10mg/kgのIV
又はプラセボを、1回目から4回目の来院まで毎週1回、その後5回目から16回目の来院まで
それらの血小板数に従い調節された毎週もしくは隔週1回のいずれかで、受け取るように
無作為化される。17回目から24回目の来院までは、患者は、16回目来院時に受け取る投薬
スケジュール(すなわち、毎週又は隔週1回)に固定される。
【0212】
24週間の無作為化治験期間を完了する患者は、主要治験を終える時点で自身が受け取っ
ていた頻度(すなわち、毎週又は隔週1回)に従い、エフガルチギモド10mg/kgのIVを受け取
る、オープンラベル継続治験に登録するのに適格である。
【0213】
およそ117名の慢性ITP患者及び最大39名の持続性ITP患者を、各々、エフガルチギモド
又はプラセボを受け取るよう2:1比で無作為化される。全ての適格な患者は、本治験を通
じて、エフガルチギモド10mg/kg体重のIV注入又はマッチするプラセボを受け取るように
無作為化される。全ての患者は、最初に、1~4回目来院時に、毎週1回のIV注入を受け取
る。2回目来院時の血小板数を基に、投薬頻度を、以下の規則に従い、5回目から16回目来
院まで変更することができる(投薬頻度の変化は、最新の来院時に行われるであろう):(i
)4回の連続来院中3回について血小板数≧100×109/Lを達成する患者(4回目来院は、最新
の来院である)、及びこれらの4回の来院の最後、又は3連続来院に血小板数≧100×109/L
を有する患者において、毎週1回から隔週1回への減少;あるいは、(ii)血小板数が2連続
来院について100×109/L以下に下落、もしくは1回目来院時に<30×109/Lの患者において
、又は救済療法を受け取っている患者においては、隔週1回から毎週1回への増加。
【0214】
投与量及びスケジュールが無作為化(すなわち、1回目来院)前の最後の4週間に変更され
ないならば、許可された併用ITP療法を受け取っている患者は、本治験に適格である。許
可された併用ITP薬物療法は、経口コルチコステロイド、経口免疫抑制薬、ダプソン/ダナ
ゾール、及び/又はエルトロンボパグを含む。許可された併用ITP療法の投与量及び頻度
は、本治験中は変更されないままである。唯一の例外は、トロンボポエチン受容体アゴニ
スト(TPO-RA)エルトロンボパグによる併用治療を受けている患者であり、この患者におけ
るエルトロンボパグの投与量減少は、ラベルに規定された血小板閾値で可能である。
【0215】
併用ITP療法を受け取っていない患者も、本治験に適格である。
【0216】
エフガルチギモドを受け取るよう無作為化された患者は、10mgエフガルチギモド/kg体
重を、IV注入として、注入来院時に1時間かけて投与される。1回の注入当たりの最大総投
与量は、注入来院時に測定した体重≧120kgの患者について1,200mgである。プラセボを受
け取るように無作為化された患者は、エフガルチギモドと同じ賦形剤を含むがエフガルチ
ギモドは含まないマッチするプラセボが、注入来院時に1時間かけてIV注入として投与さ
れる。
【0217】
【0218】
本試験の結果は、10mg/kg体重で投薬されたエフガルチギモドは、慢性の原発性ITPを伴
う患者において持続された血小板数反応を達成することにおいて、プラセボと比べ有効で
あることを確認し、この持続された血小板数の反応は、本治験の19回目と24回目の来院の
間の6回の来院中少なくとも4回について少なくとも50×109/Lの血小板数と規定されてい
る。
【0219】
(実施例8:ロザノリキシズマブとの比較)
抗-FcRnモノクローナル抗体ロザノリキシズマブ(UCB7665)の第II相試験の結果が、最近
報告された。Robak Tらの文献、Blood 130: 15 (2017)。その試験においては、30名の慢
性又は持続性ITPの成人患者が、皮下投与(s.c.)される4mg/kgの毎週1回の投与量を5回、
又は7mg/kgのs.c.毎週1回の投与量を3回のいずれかの、ロザノリキシズマブの複数の投与
量により治療された。本明細書記載のエフガルチギモド(ARGX-113)の第II相試験とは異な
り、このロザノリキシズマブ試験においては、総IgGの平均減少により測定されるような
、薬力学作用の高い変動性が、認められた。例えば、4及び7mg/kgロザノリキシズマブに
よる最大IgG減少の範囲は、各々、29.9~65%及び29.5~65.5%であり、5及び10mg/kgエ
フガルチギモドによる最大IgG減少の範囲は、各々、48~81%及び46~72%であった。両
方の試験において、多くの患者における反応は、最終投薬の1ヶ月以内に失われた。しか
し、ロザノリキシズマブ試験とは異なり、本明細書記載のエフガルチギモド第II相試験の
患者は、30日間よりも長く反応が続く患者を含み、その一部は長期反応を有した。比較的
短い治療期間及びロザノリキシズマブ試験において報告された結果を考慮すると、エフガ
ルチギモドにより認められたこの延長された反応は、驚くべきことであった。
【0220】
(実施例9:アフィボディ又はアフィボディ誘導体を使用するITPの治療)
ヒトFcRnに特異的なアフィボディは、単独で(MW約6.5kDa)、あるいはアルブミン結合ド
メイン(ABD;融合タンパク質MW約19kDa、Seijsingらの文献、(2014) Proc Natl Acad Sci
USA 111(48): 17110-17115;Seijsingらの文献、(2018) Sci Rep. 8(1):5141;WO 2014/
140366)、又はヒトアルブミン(融合タンパク質MW約73kDa)のいずれかとの融合タンパク質
として発現される。実施態様において、アフィボディ(及びいずれかの融合タンパク質)は
、pH6.0でのFcRnへの高い親和性、及びpH7.4でFcRnへの低い親和性を有する。別の実施態
様において、アフィボディ(及びいずれかの融合タンパク質)は、pH6.0及びpH7.4の両方で
FcRnへの高い親和性を有する。ABDは、血液中の血清アルブミンと高い親和性で相互作用
することができる、操作された独立してフォールディングするドメインである。ABDは、F
cRn上のその結合部位との血清アルブミンの相互作用に影響を及ぼさず、このことは次にI
gGの結合部位及びFcRnとのアフィボディ相互作用とは異なる。
【0221】
アフィボディ、アフィボディ融合タンパク質(複数可)、又は無関係の対照が、マウスへ
、1日目に始めて、7~14日間、1日1回静脈内投与した。血清総IgGを、初回投与量前、及
びその後4日目から始まる1日おきに(例えば、4、6、8、10、12、14、16、18、及び20日目
に)投薬後に測定した。MWが異なることを考えると、アフィボディ単独の各投与量は、ア
フィボディ-ABD融合タンパク質の投与量よりも、およそ3倍大きい(質量/kg体重)。ある
いは又は加えて、アフィボディ-ABD融合タンパク質の各投与量は、アフィボディ-アル
ブミン融合タンパク質の投与量よりも、およそ4倍おおきく(質量/kg体重)、アルブミンの
投与量よりも少なくともおよそ3.5倍大きく、又はFc断片バリアント、例えばエフガルチ
ギモドの投与量よりも少なくともおよそ2.5倍大きい。
【0222】
実施態様において、アフィボディ-ABD融合タンパク質は、配列番号:4として示したア
ミノ酸配列を含み:
【0223】
【0224】
ここで、C-末端の58個のアミノ酸は、アフィボディに相当し、且つABD及びアフィボデ
ィは、5個のアミノ酸のGly-Serリンカーにより連結されている。
【0225】
アフィボディ単独、アフィボディ-ABD融合タンパク質、又はアフィボディ-アルブミ
ン融合タンパク質による治療は、血清総IgGを効果的に減少し、このことは、これらの物
質は、ヒトにおいてITPを治療するために使用することができることを示唆している。
【0226】
(参考文献の組み込み)
本明細書に引用された全ての特許文献及び非特許文献は、それらの全体が引用により本
明細書中に組み込まれている。
【0227】
(等価物)
本発明の精神及び範囲を逸脱しない限りは、先に説明されたものに加え多くの修飾が、
本明細書記載の構造及び技術に行われ得る。従って、特定の実施態様が説明されているが
、これらは単なる例証であり、本発明の範囲を限定するものではない。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象を治療する方法であって、ヒトFcRn(hF
cRn)アンタゴニストの1以上の投与量及びITPの標準治療処置について承認された少なくと
も1種の化合物の1以上の投与量を、対象へ投与することを含む、前記方法。
(態様2)
前記hFcRnアンタゴニストが、約10nmol/kg~約1000nmol/kgの1以上の投与量で投与され
る、態様1記載の方法。
(態様3)
前記hFcRnアンタゴニストの1以上の投与量が、約50nmol/kg~約300nmol/kgの範囲であ
る、態様2記載の方法。
(態様4)
前記hFcRnアンタゴニストの1以上の投与量が、約90nmol/kg~約200nmol/kgの範囲であ
る、態様2記載の方法。
(態様5)
前記hFcRnアンタゴニストが、hFcRnへ特異的に結合する抗体又は抗体断片である、態様
1~4のいずれか一項記載の方法。
(態様6)
前記抗体又は抗体断片が、hFcRnに特異的に結合する1以上のCDRを含む、態様5記載の方
法。
(態様7)
前記抗体又は抗体断片が、ヒトFcドメインを含むか又はこれからなる、態様5又は6記載
の方法。
(態様8)
前記ヒトFcドメインが、hFcRnへのその結合を変更する1以上の変異を含む、態様7記載
の方法。
(態様9)
前記1以上の変異が、M252Y、S254T、T256E、H433K、及びN434F(EU番号付け)の1以上を
含む、態様8記載の方法。
(態様10)
前記hFcRnアンタゴニストが、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバリアン
トFc領域からなり、ここで各Fcドメインのアミノ酸配列が、配列番号:1からなる、態様5
記載の方法。
(態様11)
前記hFcRnアンタゴニストが、エフガルチギモド(ARGX-113)である、態様5記載の方法。
(態様12)
前記エフガルチギモド(ARGX-113)が、約5mg/kgの用量で投与される、態様11記載の方法
。
(態様13)
前記エフガルチギモド(ARGX-113)が、約10mg/kgの用量で投与される、態様11記載の方
法。
(態様14)
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、コルチコステロ
イドを含む、態様1~13のいずれか一項記載の方法。
(態様15)
前記コルチコステロイドが、経口プレドニソン、静脈内プレドニソン、デキサメタゾン
、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、態様14記載の方法。
(態様16)
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、リツキシマブ又
はアレムツズマブを含む、態様1~15のいずれか一項記載の方法。
(態様17)
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、フォスタマチニ
ブを含む、態様1~16のいずれか一項記載の方法。
(態様18)
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、シクロスポリン
、ダプソン、又はアザチオプリンを含む、態様1~17のいずれか一項記載の方法。
(態様19)
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、トロンボポエチ
ン受容体アゴニストを含む、態様1~18のいずれか一項記載の方法。
(態様20)
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、エルトロンボパグである、態様19記載の方
法。
(態様21)
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、アバトロンボパグである、態様19記載の方
法。
(態様22)
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、ロミプロスチムである、態様19記載の方法
。
(態様23)
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、ロミプロスチムの非-Fc部分である、態様1
9記載の方法。
(態様24)
前記ヒト対象が、治療前に30×109/L未満の血小板数を有する、態様1~23のいずれか一
項記載の方法。
(態様25)
前記ヒト対象が、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治
療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、<100×109/
Lの血小板数を有する、態様1~24のいずれか一項記載の方法。
(態様26)
前記ヒト対象が、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治
療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、≦50×109/L
の血小板数を有する、態様1~25のいずれか一項記載の方法。
(態様27)
前記ヒト対象が、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治
療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、≦30×109/L
の血小板数を有する、態様1~26のいずれか一項記載の方法。
(態様28)
前記ヒト対象が、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治
療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、≦20×109/L
の血小板数を有する、態様1~27のいずれか一項記載の方法。
(態様29)
前記ヒト対象が、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治
療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、≦10×109/L
の血小板数を有する、態様1~28のいずれか一項記載の方法。
(態様30)
前記ヒト対象が、新規診断ITPを有する、態様1~29のいずれか一項記載の方法。
(態様31)
前記ヒト対象が、持続性ITPを有する、態様1~30のいずれか一項記載の方法。
(態様32)
前記ヒト対象が、慢性ITPを有する、態様1~31のいずれか一項記載の方法。
(態様33)
前記治療が、50×109/Lを上回る血小板数の増加を生じる、態様1~32のいずれか一項
記載の方法。
(態様34)
前記治療が、100×109/Lを上回る血小板数の増加を生じる、態様33記載の方法。
(態様35)
前記血小板数の増加が、少なくとも1ヶ月間持続する、態様33記載の方法。
(態様36)
前記血小板数の増加が、少なくとも2ヶ月間持続する、態様33記載の方法。
(態様37)
前記血小板数の増加が、少なくとも3ヶ月間持続する、態様33記載の方法。
(態様38)
免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象の治療方法であって、ヒトFcRn(hFcRn)
アンタゴニストの1以上の投与量を対象へ投与することを含み、ここでhFcRnアンタゴニス
トが、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバリアントFc領域からなり、ここ
で各Fcドメインのアミノ酸配列は、配列番号:1からなる、前記方法。
(態様39)
前記hFcRnアンタゴニストが、エフガルチギモド(ARGX-113)である、態様38記載の方法
。
(態様40)
前記hFcRnアンタゴニストが、約10nmol/kg~約1000nmol/kgの1以上の投与量で投与され
る、態様39記載の方法。
(態様41)
前記hFcRnアンタゴニストの1以上の投与量が、約50nmol/kg~約300nmol/kgの範囲であ
る、態様39記載の方法。
(態様42)
前記hFcRnアンタゴニストの1以上の投与量が、約90nmol/kg~約200nmol/kgの範囲であ
る、態様39記載の方法。
(態様43)
前記hFcRnアンタゴニストが、5mg/kgの用量で投与される、態様39記載の方法。
(態様44)
前記hFcRnアンタゴニストが、10mg/kgの用量で投与される、態様39記載の方法。
(態様45)
ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の1以上の投与量を対象
へ投与することを更に含む、態様39~44のいずれか一項記載の方法。
(態様46)
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、コルチコステロ
イドを含む、態様45記載の方法。
(態様47)
前記コルチコステロイドが、経口プレドニソン、静脈内プレドニソン、デキサメタゾン
、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、態様46記載の方法。
(態様48)
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、リツキシマブ又
はアレムツズマブを含む、態様45記載の方法。
(態様49)
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、フォスタマチニ
ブを含む、態様45記載の方法。
(態様50)
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、シクロスポリン
、ダプソン、及びアザチオプリンからなる群から選択される、態様45記載の方法。
(態様51)
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、トロンボポエチ
ン受容体アゴニストを含む、態様45記載の方法。
(態様52)
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、エルトロンボパグである、態様51記載の方
法。
(態様53)
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、アバトロンボパグである、態様51記載の方
法。
(態様54)
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、ロミプロスチムである、態様51記載の方法
。
(態様55)
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、ロミプロスチムの非-Fc部分である、態様5
1記載の方法。
(態様56)
前記ヒト対象が、治療前に30×109/L未満の血小板数を有する、態様39~55のいずれか
一項記載の方法。
(態様57)
前記ヒト対象が、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治
療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、<100×109/
Lの血小板数を有する、態様39~56のいずれか一項記載の方法。
(態様58)
前記ヒト対象が、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治
療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、≦50×109/L
の血小板数を有する、態様39~56のいずれか一項記載の方法。
(態様59)
前記ヒト対象が、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治
療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、≦30×109/L
の血小板数を有する、態様39~56のいずれか一項記載の方法。
(態様60)
前記ヒト対象が、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治
療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、≦20×109/L
の血小板数を有する、態様39~56のいずれか一項記載の方法。
(態様61)
前記ヒト対象が、1以上の投与量のhFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治
療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、≦10×109/L
の血小板数を有する、態様39~56のいずれか一項記載の方法。
(態様62)
前記ヒト対象が、新規診断ITPを有する、態様39~61のいずれか一項記載の方法。
(態様63)
前記ヒト対象が、持続性ITPを有する、態様39~61のいずれか一項記載の方法。
(態様64)
前記ヒト対象が、慢性ITPを有する、態様39~61のいずれか一項記載の方法。
(態様65)
前記治療が、50×109/Lを上回る血小板数の増加を生じる、態様39~61のいずれか一項
記載の方法。
(態様66)
前記血小板数の50×109/Lを上回る増加が、少なくとも4週間維持される、態様65記載
の方法。
(態様67)
前記血小板数の50×109/Lを上回る増加が、少なくとも2ヶ月間維持される、態様65記
載の方法。
(態様68)
前記血小板数の50×109/Lを上回る増加が、少なくとも3ヶ月間維持される、態様65記
載の方法。
(態様69)
前記治療が、100×109/Lを上回る血小板数の増加を生じる、態様39~64のいずれか一
項記載の方法。
(態様70)
前記血小板数の100×109/Lを上回る増加が、少なくとも4週間維持される、態様69記載
の方法。
(態様71)
前記血小板数の50×109/Lを上回る増加が、少なくとも2ヶ月間維持される、態様69記
載の方法。
(態様72)
前記血小板数の50×109/Lを上回る増加が、少なくとも3ヶ月間維持される、態様69記
載の方法。
(態様73)
免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象の治療方法であって、ヒトFcRn(hFcRn)
アンタゴニストの1以上の投与量を対象へ投与することを含み、ここでhFcRnアンタゴニス
トが、ヒトFcRnに特異的なアフィボディを含む、前記方法。
(態様74)
前記ヒトFcRnに特異的なアフィボディが、配列番号:4に示したアミノ酸配列を含む、
態様73記載の方法。
(態様75)
前記hFcRnアンタゴニストが、ヒトアルブミンに特異的なアルブミン結合ドメインに連
結されたヒトFcRnに特異的なアフィボディを含む融合タンパク質である、態様73記載の方
法。
(態様76)
前記ヒトFcRnに特異的なアフィボディが、配列番号:4に示したアミノ酸配列を含む、
態様75記載の方法。
(態様77)
ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の1以上の投与量を対象
へ投与することを更に含む、態様73~76のいずれか一項記載の方法。
新規診断、持続性、又は慢性免疫性血小板減少症(ITP)と診断されたヒト対象を治療する方法に使用するための、ヒトFcRn(hFcRn)アンタゴニストを含む、医薬組成物であって、
該方法が、該hFcRnアンタゴニストを該対象に投与することを含み、該hFcRnアンタゴニストが、hFcRnに対するその親和性を変更するように操作されているヒトFc領域を含み、該ヒトFc領域が、2つのFcドメインを含み、又はそれらからなり、該Fcドメインの少なくとも1つが変異M252Y、S254T、T256E、H433K、及びN434F(EU番号付け)を含む、前記医薬組成物。
前記hFcRnアンタゴニストが、2つのFcドメインを含む、又はそれらからなるヒトFc領域からなり、該Fcドメインの少なくとも1つが変異M252Y、S254T、T256E、H433K、及びN434F(EU番号付け)を含む、請求項1記載の医薬組成物。
前記hFcRnアンタゴニストが、2つのFcドメインを含む、又はそれらからなるヒトFc領域からなり、該Fcドメインの各々が、変異M252Y、S254T、T256E、H433K、及びN434F(EU番号付け)を含む、請求項1又は2記載の医薬組成物。
前記hFcRnアンタゴニストの1以上の投与量が、3週間にわたる該hFcRnアンタゴニストの4回投与を含む最初の治療期間の完了後、2週間に1回投与される、請求項1~9のいずれか一項記載の医薬組成物。
前記hFcRnアンタゴニストが、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバリアントFc領域からなり、該Fcドメインの各々のアミノ酸配列が、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか一項記載の医薬組成物。
前記hFcRnアンタゴニストが、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバリアントFc領域からなり、該Fcドメインの各々のアミノ酸配列が、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1~10のいずれか一項記載の医薬組成物。
前記hFcRnアンタゴニストが、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバリアントFc領域からなり、該Fcドメインの各々のアミノ酸配列が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか1項記載の医薬組成物。
前記hFcRnアンタゴニストが、ホモ二量体を形成する2つのFcドメインからなるバリアントFc領域からなり、該Fcドメインの各々のアミノ酸配列が、配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる、請求項1~10のいずれか一項記載の医薬組成物。
前記方法が、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物の1以上の投与量を、前記対象に投与することを更に含む、請求項1~16のいずれか一項記載の医薬組成物。
前記ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物が、コルチコステロイド、リツキシマブ、アレムツズマブ、フォスタマチニブ、シクロスポリン、ダプソン、ダナゾール、静脈内免疫グロビン(IVIg)、Rho(D)免疫グロブリン(抗-D)、アザチオプリン、トロンボポエチン受容体アゴニスト、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項17記載の医薬組成物。
前記コルチコステロイドが、経口プレドニソン、静脈内プレドニソン、デキサメタゾン、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項18記載の医薬組成物。
前記トロンボポエチン受容体アゴニストが、エルトロンボパグ、アバトロンボパグ、ロミプロスチム、ロミプロスチムの非-Fc部分、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項18記載の医薬組成物。
前記ヒト対象が、前記hFcRnアンタゴニストを投与する前の、ITPの標準治療処置について承認された少なくとも1種の化合物による標準治療処置時に、<100×109/L、≦50×109/L、≦30×109/L、≦20×109/L、又は≦10×109/Lの血小板数を有する、請求項1~20のいずれか一項記載の医薬組成物。
前記hFcRnアンタゴニストが、エフガルチギモドであり、エフガルチギモドが、20mMヒスチジン/ヒスチジンHCl、60mMショ糖、100mM NaCl、及び0.02%~0.04%(w/v)ポリソルベート20又はポリソルベート80、pH6.0中に、約100~200mg/mLのエフガルチギモドを含有する水性製剤中で皮下投与される、請求項1~27のいずれか一項記載の医薬組成物。