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特開2024-105446使用されていない接続を能動的に切断することによる多重化システムにおける信号品質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105446
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】使用されていない接続を能動的に切断することによる多重化システムにおける信号品質
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/00 20060101AFI20240730BHJP
   A61B 5/304 20210101ALI20240730BHJP
【FI】
H03K17/00 E
A61B5/304
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024075811
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2019116232の分割
【原出願日】2019-06-24
(31)【優先権主張番号】16/016,774
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(57)【要約】
【課題】電子デバイスを提供すること。
【解決手段】電子デバイスは、マルチプレクサ(MUX)、スイッチングアレイ、及び論理回路を含む。MUXは、複数の入力ポート及び出力ポートを含み、入力ポートを介して複数の入力信号を受信し、出力ポートを介して、入力信号のうちの選択された信号を出力するように構成されている。スイッチングアレイは、MUXの入力ポートに結合され、入力信号を受信し、各入力信号とそれぞれの入力ポートとの間を接続又は切断するように構成されている。論理回路は、スイッチングアレイ及びMUXに電気的に結合されており、MUXが出力している少なくとも選択された信号と接続し、少なくとも選択された信号以外の全ての入力信号を切断するようにスイッチングアレイを制御するように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の入力ポート及び出力ポートを備え、前記複数の入力ポートを介して、医療システムのカテーテルに備えられた複数のセンサから送信された複数の入力信号を受信し、前記出力ポートを介して、前記複数の入力信号のうちの選択された信号を出力するように構成されている、マルチプレクサ(MUX)と、
前記マルチプレクサの前記複数の入力ポートに結合された複数のスイッチを備え、前記複数のスイッチの各々が前記複数の入力信号の各々を受信し、前記複数のセンサから送信された前記複数の入力信号の各々と前記複数の入力ポートの各々との間を接続又は切断するように構成されている、スイッチングアレイと、
前記スイッチングアレイ及び前記マルチプレクサに電気的に結合されており、時分割多重化を使用して、逐次的な順序で、前記複数のスイッチの各々の接続および切断、及び、前記複数のスイッチの各々に対応する前記複数の入力ポートの各々と前記出力ポートとの間の接続および切断を実行し、前記複数の入力信号のうちの1つが前記マルチプレクサに送信される際には、前記複数の入力信号のうちの前記1つ以外の全ての入力信号が前記マルチプレクサに送信されないように、前記スイッチングアレイを制御する、論理回路と、
を備え、
前記スイッチングアレイは、複数の電気リード線を介して前記複数の入力信号を受信するように構成されており、
前記複数の電気リード線は、少なくとも100本の電気リード線であり、前記複数の電気リード線の各々は、少なくとも1ピコファラッドの寄生容量を有し、前記複数の電気リード線は、少なくとも100ピコファラッドの合計寄生容量を有し、
前記複数のセンサは、前記カテーテルの位置を検出する位置センサ、及び、前記カテーテルが接触する組織の電位を検出する電位センサを含み、
前記複数の入力信号は、前記位置センサにより検出された、移動している前記カテーテルの複数の位置における複数の位置信号、及び、前記電位センサにより検出された、前記組織の複数の箇所における複数の電位信号を含み、
前記複数の入力信号はアナログ信号であり、前記マルチプレクサは、前記複数の入力信号をアナログ・デジタル変換器に出力するように構成されており、前記アナログ・デジタル変換器は、前記複数の位置信号および前記複数の電位信号をデジタル変換し、
プロセッサは、前記アナログ・デジタル変換器により前記複数の位置信号がデジタル変換された複数のデジタル位置信号、及び、前記アナログ・デジタル変換器により前記複数の電位信号がデジタル変換された複数のデジタル電位信号を受信し、前記複数のデジタル位置信号の各々および前記複数のデジタル電位信号の各々を含むデータの組を構築するように構成されている、電子デバイス。
【請求項2】
前記電気リード線のそれぞれは、前記マルチプレクサに接続されたときにそれぞれの寄生容量に寄与し、前記論理回路は、前記複数の入力信号のうちの前記1つ以外の前記全ての入力信号が前記マルチプレクサに送信されないようにすることによって、前記マルチプレクサにおける総寄生容量を低減するように構成されている、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記電子デバイスは、特定用途向けIC(ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を備える、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記論理回路は、前記複数の入力信号のうちのどれを前記マルチプレクサが所与の時間に選択するかを制御するように構成されている、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項5】
(i)医療システムのカテーテルに備えられた複数のセンサから送信された複数の入力信号を受信するための複数の入力ポート及び前記複数の入力信号のうちの選択された信号を出力するための出力ポートを備えるマルチプレクサ(MUX)と、(ii)前記マルチプレクサの前記複数の入力ポートに結合された複数のスイッチを備え、前記複数のスイッチの各々が前記複数の入力信号の各々を受信し、前記複数のセンサから送信された前記複数の入力信号の各々と前記複数の入力ポートの各々との間を接続又は切断するように構成されている、スイッチングアレイと、(iii)前記スイッチングアレイ及び前記マルチプレクサに電気的に結合されている論理回路と、を備える電子デバイスにおいて、
前記論理回路が、時分割多重化を使用して、逐次的な順序で、前記複数のスイッチの各々の接続および切断、及び、前記複数のスイッチの各々に対応する前記複数の入力ポートの各々と前記出力ポートとの間の接続および切断を実行し、前記複数の入力信号のうちの1つが前記マルチプレクサに送信される際には、前記複数の入力信号のうちの前記1つ以外の全ての入力信号が前記マルチプレクサに送信されないように、前記論理回路が前記スイッチングアレイを制御することと、
前記マルチプレクサが、前記出力ポートを介して、前記複数の入力信号のうちの前記1つを出力することと、
を含み、
前記スイッチングアレイは、複数の電気リード線を介して前記複数の入力信号を受信するように構成されており、
前記複数の電気リード線は、少なくとも100本の電気リード線であり、前記複数の電気リード線の各々は、少なくとも1ピコファラッドの寄生容量を有し、前記複数の電気リード線は、少なくとも100ピコファラッドの合計寄生容量を有し、
前記複数のセンサは、前記カテーテルの位置を検出する位置センサ、及び、前記カテーテルが接触する組織の電位を検出する電位センサを含み、
前記複数の入力信号は、前記位置センサにより検出された、移動している前記カテーテルの複数の位置における複数の位置信号、及び、前記電位センサにより検出された、前記組織の複数の箇所における複数の電位信号を含み、
前記複数の入力信号はアナログ信号であり、前記マルチプレクサは、前記複数の入力信号をアナログ・デジタル変換器に出力するように構成されており、前記アナログ・デジタル変換器は、前記複数の位置信号および前記複数の電位信号をデジタル変換し、
プロセッサは、前記アナログ・デジタル変換器により前記複数の位置信号がデジタル変換された複数のデジタル位置信号、及び、前記アナログ・デジタル変換器により前記複数の電位信号がデジタル変換された複数のデジタル電位信号を受信し、前記複数のデジタル位置信号の各々および前記複数のデジタル電位信号の各々を含むデータの組を構築するように構成されている、方法。
【請求項6】
前記電気リード線のそれぞれは、前記マルチプレクサに接続されたときにそれぞれの寄生容量に寄与し、前記複数の入力信号のうちの前記1つ以外の前記全ての入力信号が前記マルチプレクサに送信されないようにすることは、前記マルチプレクサにおける総寄生容量を低減することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スイッチングアレイを制御することは、前記複数の入力信号のうちのどれを前記マルチプレクサが所与の時間に選択するかを制御することを含む、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療システム、特に、医療システムにおける信号品質を改善するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの医療システムは、複数の電気リード線を使用して多数の電気信号を感知及び経路指定する。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2003/0135127号は、モニタリングされる個人によって装着される改善されたモニタリング衣料品を用いる生理学的モニタリング装置を記載しており、この衣料品には、肺機能を反映するパラメータ、又は心臓機能を反映するパラメータをモニタリングするためのセンサが取り付けられている。モニタリング装置はまた、センサからデータを受信し、コンピュータ可読媒体にデータを記憶させるためのユニットを含む。
【0004】
米国特許出願公開第2003/0083584号は、複数のECG電極のうちの1つ以上が患者に適切に固定されていないことを表示するためのECG装置の「リードオフインジケータ」と、それによって従来の高周波駆動信号の必要性を排除され、その代わりに、ECGベクトルを画定する電極のうちの1つが適切に固定されていないように、共通モード入力ノイズを基準電極への駆動信号として用いることとを記載している。ECGシステムが右脚電極を基準として利用しないときに、損失電極の識別を可能にする信号を発生させるためのインピーダンス平衡回路が提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載の本発明の一実施形態は、マルチプレクサ(MUX)、スイッチングアレイ及び論理回路を含む電子デバイスを提供する。MUXは、複数の入力ポート及び出力ポートを含み、入力ポートを介して複数の入力信号を受信し、出力ポートを介して、入力信号のうちの選択された信号を出力するように構成されている。スイッチングアレイは、MUXの入力ポートに結合され、入力信号を受信し、各入力信号とそれぞれの入力ポートとの間を接続又は切断するように構成されている。論理回路は、スイッチングアレイ及びMUXに電気的に結合されており、MUXが出力している少なくとも選択された信号と接続し、少なくとも選択された信号以外の全ての入力信号を切断するようにスイッチングアレイを制御するように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、スイッチングアレイは、複数のそれぞれの電気リード線を介して複数の入力信号を受信するように構成されており、電気リード線の各々は、MUXに接続されたときにそれぞれの寄生容量に寄与し、論理回路は、少なくとも選択された信号以外の入力信号を切断することによって、MUXにおける総寄生容量を低減するように構成されている。他の実施形態では、電子デバイスは、特定用途向けIC(ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。更に他の実施形態では、入力信号の各々は、心電図(ECG)信号、電位図(EGM)信号、及び位置信号からなるリストから選択される信号を含む。
【0007】
一実施形態では、入力信号はアナログ信号を含み、MUXは、少なくとも選択された信号をアナログ・デジタル変換器に出力するように構成されている。別の実施形態では、論理回路は、複数の入力信号のうちのどれをMUXが所与の時間に選択するかを制御するように構成されている。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、(i)複数の入力信号を受信するための複数の入力ポート及び入力信号のうちの選択された信号を出力するための出力ポートを備えるマルチプレクサ(MUX)と、(ii)MUXの入力ポートに結合されたスイッチングアレイと、を備える電子デバイスにおいて、入力ポートのうちのそれぞれ1つ以上に少なくとも選択された信号を接続し、少なくとも選択された信号以外の全ての入力信号を切断するようにスイッチングアレイを制御すること、を含む方法が更に提供される。少なくとも選択された信号は、それぞれの入力ポートを介して受信され、選択された信号は、出力ポートを介して出力される。
【0009】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮すると、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による、患者の組織を切除するためのシステムを絵で表した概略図である。
図2】本発明の一実施形態による集積回路(IC)を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概論
以下に記載される本発明の実施形態は、例えば、アナログ・デジタル(A/D)変換器によって信号をサンプリングするために、複数の信号を多重化するための改良された技術を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、電気生理学システムなどの医療システムは、典型的には、多数(例えば、100本)の長い電気リード線にわたって多数のアナログ信号を取得し、経路指定する。いくつかの実施形態では、システムは、複数の入力ポート及び出力ポートを有するマルチプレクサ(MUX)を含む、特定用途向けIC(ASIC)などの集積回路(IC)デバイスを備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、MUXは、入力ポートを介して、電気生理学システムの様々なセンサによって取得された複数の入力信号を受信し、出力ポートを介して、入力信号うちの選択された信号を出力するように構成されている。センサは、典型的には、長い電気リード線を介してASICに結合されている。いくつかの実施形態では、MUXによって選択された信号は、サンプリングされ、A/D変換器によってデジタル信号に変換され、デジタル信号は、システムのプロセッサによって処理される。
【0014】
システムの各電気リード線は、数ピコファラッド(pF)のオーダーの寄生容量を有し得る。上述の100本のリード線は、全体的な静電容量を2桁ずつ増加させる。一部の場合には、選択された信号は、MUXの入力ポートに接続された多数のリード線によって引き起こされる大きな寄生容量によって歪んでいる。信号歪みは、典型的には、処理された信号の品質及び信頼性(QR)、並びに電気生理学システムの性能全体を低下させる。
【0015】
1つの信号のみが、任意の所与の時間にMUXによって実際に選択されることを前提として、開示された技術は、選択された信号以外の全ての入力信号を切断することによって寄生容量を低減する。
【0016】
いくつかの実施形態では、ASICは、MUXの入力ポート及び電気リード線に電気的に結合されたスイッチングアレイを備える。スイッチングアレイは、電気リード線を介して入力信号を受信し、各入力信号とそれぞれの入力ポートとの間を接続又は切断するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、ASICは、スイッチングアレイ及びMUXに電気的に結合される論理回路を更に含む。論理回路は、MUXが出力している少なくとも選択された信号を接続し、他の全ての入力信号を切断するようにスイッチングアレイを制御するように構成されている。その結果、いくつかの実施形態では、MUXによって現在選択されている信号を伝達する単一の電気リード線のみが、任意の所与の時間にMUXに接続される。この技術は、MUX入力における望ましくない寄生容量のレベルを低減し、したがって、MUX出力における選択された信号の歪みを低減する。
【0018】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、患者14の組織を切除するための多重化医療システム10の、絵で表した概略図である。図1(ならびに以下の図2)に示されるシステム10の目的は、多重化技術の実施形態を実証することである。開示される実施形態は、複数の信号が単一の出力へと多重化される任意の他のシステムに等しく適用可能である。
【0019】
いくつかの実施形態では、システム10は、以下に詳述されるように、患者14の心臓40をマッピングするための、切除の前のマッピングの構築と、構築されたマッピングを使用する、切除処置中の心臓40内の医療器具の誘導と、を支援する。
【0020】
いくつかの実施形態では、システム10は、1つ以上の切除電極、1つ以上の磁気位置センサ、及びインピーダンスセンサなどの複数のデバイス(図示せず)を含む遠位先端13を含むカテーテル12を含む。この構成では、遠位先端13を有するカテーテル12は、以下に記載されるように、較正プローブとして使用される。マッピング段階中(並びに切除処置中)、医師16は、挿入点30を介してカテーテル12を患者14の脈管系に挿入することができ、次いでカテーテル先端を患者の心臓に誘導することができる。次いで、カテーテル12は、組織を切除する前に心臓40の組織をマッピングするために使用される。
【0021】
いくつかの実施形態では、操作コンソール18は、心臓40の組織上にカテーテル12によって印加されるラジオ波(RF)切除信号を生成するように構成されたRF発生器22を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、コンソール18は、カテーテル12からの信号を受信するのに好適でありかつ本明細書に記載のシステム10の他の構成要素を制御するのに好適である、フロントエンド及びインターフェース回路を有する、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ20を含む。プロセッサ20は、システムによって使用される機能を実行するようにソフトウェアにプログラムされてもよく、プロセッサはソフトウェアのためのデータをメモリ(図示せず)に記憶する。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール18にダウンロードされてもよく、又は光学的記憶媒体、磁気的記憶媒体、若しくは電子的記憶媒体などの、非一時的有形媒体上で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ20の機能の一部又は全ては、専用の構成要素又はプログラマブルデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、システム10は、磁気位置追跡システムと、インピーダンスに基づく有効現在位置(ACL)システムと、を更に含む。これらのシステムのそれぞれは、患者14の心臓40内の切除場所にカテーテル12を誘導するために、遠位先端13の位置を追跡するために使用することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、磁気位置追跡システムは、患者14の体外の既知の位置、例えば、患者の胴体の下に配置された磁場発生器36を含む。一実施形態において、コンソール18は、本明細書に記載される技術の実行を支援する。
【0025】
いくつかの実施形態では、コンソール18は、ケーブル38を介して磁場発生器36を駆動するように構成された駆動回路21を含む。遠位先端13が医師16によって心臓40の中へ誘導されると、遠位先端13の磁気位置センサは、磁場発生器36によって生成された、感知した外部磁場に応答して位置信号を生成し、それによって、プロセッサ20が心臓40の空洞内の遠位先端13の位置を識別することを可能にする。
【0026】
磁気位置センサは、カテーテル近位端でプロセッサ20に結合されたインターフェース回路に接続されている。一実施形態において、遠位先端13の位置は、ユーザディスプレイ34に表示される心臓40の画像42上に示される。いくつかの実施形態では、画像42は、コンピュータ断層撮影(CT)システムなどの解剖学的撮像システム又は任意のその他の好適な撮像技術を用いて取得される。
【0027】
この磁場に基づく位置感知方法は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムにおいて実行されており、その詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されており、それらの開示は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
上述のように、システム10は、磁場に基づくシステムの代替的な位置追跡システムとして機能することができるACLシステムを含む。いくつかの実施形態では、ACLシステムは、例えば、患者14の皮膚に付着するパッチ29を介して患者14の身体に結合される複数の電極28を備える。図1の例では、システム10は、6つの電極を含み、これらのうち、電極28a、28b、及び28cは、患者14の前方(例えば、胸部)に結合され、電極28d、28e、及び28fは、患者14の後方(例えば、胴体)に結合される。図1に示すように、電極は、次のように、対で配置される:電極28a及び28dは、患者14の右側で互いに対向しており、電極28c及び28fは、患者14の左側で互いに対向しており、電極28b及び28eは、患者14の胸部及び胴体の上部で互いに対向している。
【0029】
別の実施形態では、システム10は、任意の好適な配置で患者の皮膚に結合された、任意の好適な数の電極を含むことができる。
【0030】
電極28は、典型的にはケーブル32を介してプロセッサ20に接続され、当該プロセッサはインピーダンスの値などの情報を電極から受信し、この情報に基づいて、以下に記載される技術を用いて心臓40内における遠位先端13の位置を推定するように構成されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、システム10は、限定するものではないが、心電図(ECG)システム(図示せず)及び/又は電圧ベースのナビゲーションシステム(図示せず)などの、任意の他の好適な感知システム及び/又はナビゲーションシステムを備えていてもよく、遠位先端13に結合されたセンサが、患者胴体に結合された外部電極間に印加される電圧勾配を測定する。
【0032】
ディスプレイ34は、典型的には、関連する情報を医師16に表示することによって切除処置の動作を容易にするように構成されている。例えば、プロセッサ20は、例えば、心臓40の画像42上にカテーテル12の遠位先端13を表すアイコンを重ね合わせることによって、画像42内に遠位先端13の場所及び向きを表示するように、前述の追跡システムの座標系と(画像42を取得した)CTステムの座標系との間に登録することができる。
【0033】
上述したように、電極28は典型的には、インピーダンスに基づく追跡技術、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,456,182号及び米国特許出願公開第2015/0141798号に記載の技術を使用して、患者14の身体内のカテーテル12を誘導するために使用される。このような技術は、遠位先端13と電極28a~28fのそれぞれとの間で測定された異なるインピーダンスに応答して遠位先端13の場所及び向きを推定することを伴う。上述したように、遠位先端13の推定場所を、ディスプレイ34上に好適なアイコンとして医師に表示することができる。この表示に基づいて、医師16は、カテーテル12の遠位先端13を心臓40内の1つ以上の所望の場所に誘導することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、典型的には、遠位先端13に既知の振幅の電気信号を印加することによって、任意の所与の時間に遠位先端13の位置及び配向が推定され、結果として得られる電圧及び/又は電流が各対の電極28で測定される。代替的な実施形態では、電気信号は電極28によって印加されてもよく、結果として得られる電気値は遠位先端13によって測定される。
【0035】
いくつかの実施形態では、これらの印加された電気信号により、それぞれがカテーテルに対して異なる位置に設置された電極28の対(例えば、電極28a及び28dの対、電極28c及び28fの対、並びに電極28b及び28eの対)は、遠位先端13と電極28の対のそれぞれとの間の異なる電気的に妨害する組織の量(したがって異なるインピーダンス度)に起因して、異なるそれぞれの電気値を呈する。
【0036】
いくつかの実施形態では、これらの測定された電気値は、ケーブル32及び図2で以下に記載する集積回路(IC)を介してプロセッサ20に送信され、このプロセッサ20は、これらの値を用いて、(その位置が分かっている)電極28に対する遠位先端13の相対的な場所及び向きを推定する。あるいは、カテーテルの遠位先端と電極との間に電圧が生成されてもよく、これらの電極を通って流れる、結果として得られた電流を測定し、遠位先端13の場所及び向きを推定するために使用してもよい。
【0037】
上述したように、医師16は、遠位先端13を誘導して心臓40内の複数の場所を調査する。いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、調査した場所のそれぞれでカテーテル12から2組の値を受信するように構成されている。第1の組は、磁気位置追跡システムからの位置座標を含み、第2の組は、ACLシステムからの1つ以上のそれぞれの電気値(例えば、電極28の各対からの電流又はインピーダンスの値)を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、プロセッサ20は、遠位先端13によって調査されたそれぞれの位置で測定された位置及び電気値をそれぞれが含むデータ点の組を構築するように構成されている。いくつかの実施形態では、電気値は、遠位先端13の位置に関連し得る。他の実施形態では、遠位先端13に結合された電極は、患者の心臓40の組織の電位(EP)マッピングに関連する信号を、調査した場所の一部又は全てで取得してもよい。
【0039】
このデータ点の組は、選択された複数の電気値をそれぞれの位置に位置づけ、本明細書では、「マッピング」と称される。一実施形態において、マッピングは完了すると、測定された電気値を心臓40における位置測定値に変換するために、遠位先端13及び/又は電極28によって取得された電気値に(例えば切除中に)適用される。いくつかの実施形態では、患者14の選択された呼吸動作(例えば、全吸気動作後、全呼気動作後、又は吸気動作と呼気動作との中間)のために、別個のマッピングが構築されてもよい。別の実施形態では、電極の各対に対して別個のマッピングが構築される。
【0040】
本開示及び請求項の文脈において、用語「位置関連信号」及び「位置信号」は、互換的に使用され、上述の位置センサによって取得された信号を指す。同様に、用語「EP関連信号」及び「EP信号」は互換的に使用され、限定するものではないが、遠位先端13及びパッチ29に結合された電圧電極、電流電極、インピーダンス、及びECG感知電極などの様々な種類の電極を使用して心臓40から取得される電位図(EGM)及びECG信号を指す。
【0041】
位置信号及びEP信号は、例えばケーブル32及びカテーテル12を介してコンソール18に経路指定されることに留意されたい。いくつかの実施形態では、ケーブル32及びカテーテル12の各々は、センサからコンソール18に信号を渡すように構成された複数の電気リード線を含む。典型的には、各電気リード線は、数ピコファラッド(pF)のオーダーの寄生容量を有する。一部の場合には、システム10などの多重化医療システムは、100本を超える電気リード線を含んでもよく、それにより、リード線の累積総静電容量がシステム性能全体を劣化させる可能性がある。例えば、寄生容量は、信号歪みを引き起こすローパスフィルタと同様の効果を有する可能性があり、それによって信号の品質及び信頼性が低下する。他の場合には、寄生容量は信号遅延を引き起こし、それによってシステム10の性能を低下させる可能性がある。
【0042】
使用されていない接続を能動的に切断することによる信号品質の改善
図2は、本発明の実施形態による、コンソール18の集積回路(IC)50の一部を概略的に図示する、ブロック図である。
【0043】
いくつかの実施形態では、IC50は、複数の入力ポート54A~54G及び出力ポート56を含むマルチプレクサ(MUX)55を含む。いくつかの実施形態では、MUX55は、入力ポート54A~54Gを介して、複数の入力信号を受信するように構成されている。MUX55は、受信した入力信号のうちの選択された信号を、出力ポート56を介して出力するように更に構成されている。
【0044】
図2の実施例では、信号は、上述の図1に記載された位置信号及びEP信号などのアナログ信号を含む。選択された信号は、出力ポート56を介してアナログ・デジタル(A/D)変換器62に出力され、これは、選択されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号をプロセッサ20に送信するように構成されている。典型的な適用例では、プロセッサは、異なる時間間隔で、異なるそれぞれのデジタル化された入力信号を受信する。例えば、論理回路は、逐次的な循環順序で入力信号を走査するように構成されてもよい。このような時分割多重化(TDM)を使用して、単一のプロセッサは、複数の異なる入力信号を処理することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、IC50は、電気線58を介して入力ポート54A~54Gにそれぞれ結合されたスイッチ66A~66Gを含むスイッチングアレイ64を含む。図2の実施例では、入力信号は、例えば、上述の図1に記載されたケーブル32及びカテーテル12の電気リード線を表すリード線52を介して受信される。各入力リード線52は、それぞれのスイッチ(例えば、スイッチ66A)及びそれぞれの入力ポート(例えば、ポート54A)に対応することに留意されたい。実際には、IC50は、100個を超えるスイッチと、典型的には同じ数の入力ポートとを含んでもよい。上述の図1に記載されたように、リード線52の総静電容量は、数百pF以上のオーダーであってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、スイッチングアレイ64は、入力信号を受信し、各入力信号をそれぞれの入力ポートに選択的に接続し、又は切断するように構成される。使用されていない入力信号を切断することにより、MUX55の入力における総静電容量は、有意に(例えば、100倍)低減する。
【0047】
いくつかの実施形態では、IC50は、スイッチングアレイ64及びMUX55へ電気線58を介して電気的に結合される論理回路60を更に含む。論理回路60は、MUX55によって現在選択されている単一の信号を接続し、他の電気リード線から受信された他の全ての入力信号を切断するようにスイッチングアレイ64を制御するように構成されている。
【0048】
代替実施形態では、論理回路60は、MUX55によって選択された信号に加えて、1つ以上の信号を接続するようにスイッチングアレイ64を制御するように構成されている。
【0049】
図2の実施例では、所与の時間期間において、論理回路60は、入力信号をMUX55のポート54Bに接続するようにスイッチ66Bを制御する。一実施形態では、MUX55は、破線70によって示されるように、この単一の入力を出力ポート56を介してA/Dデバイス62に出力する。所与の時間期間において、アレイ64の他の全てのスイッチは、それぞれの入力信号がMUXに送信されないように、MUX55の入力ポート54からリード線52を切断することに留意されたい。
【0050】
いくつかの実施形態では、論理回路60は、MUX55及びスイッチングアレイ64の両方を制御するように構成されている。これらの実施形態では、回路60は、例えば、入力ポート54Bによって受信された入力信号を選択するように、かつ、スイッチ66Bによって受信された入力信号のみを接続するようにスイッチングアレイ64を同期制御するように、MUX55を制御する。論理回路は、各入力ポート54の選択と、それぞれのスイッチ66の接続との間で同様に同期する。
【0051】
他の実施形態では、回路60は、入力ポート54Bによって受信された入力信号に加えて、1つ以上の(典型的には少数の)入力信号を接続するように、スイッチングアレイ64を制御する。例えば、MUX55が入力ポート54Bによって受信された入力信号のみを選択したとしても、回路50は、スイッチ66Bによって受信された入力信号、並びにスイッチ66Aによって受信された入力信号を接続するように、スイッチングアレイ64を制御することができる。
【0052】
代替実施形態では、論理回路60は、スイッチングアレイ64を制御するが、MUXが選択すべき信号を選択しない。このような実施形態では、論理回路60は、例えば、コントローラ(図示せず)から、入力ポート54Bを選択することを示す制御信号を受信する。これらの実施形態では、回路60は、入力をアレイ64に送信して、スイッチ66Bによって受信された入力信号のみを接続するように構成されている。制御信号と入力信号との間の同期は、回路60又はコントローラによって実行されてもよい。
【0053】
任意の所与の時間に、単一のリード線52のみとMUX55との間の電気接続を可能にすることにより、MUX55が経験する望ましくない静電容量は、数百pFからわずか数pFにまで低減される。
【0054】
いくつかの実施形態では、MUX55の入力における望ましくない静電容量のレベルの低減は、A/D変換器62に提供される出力信号の品質及び信頼性を改善し、システムの性能全体を改善する。
【0055】
図2に示されたIC50の構成は、あくまで概念を明確化する目的で選ばれた例示的な構成である。代替的な実施形態では、他の任意の好適な構成もまた用いることができる。IC50の異なる要素は、特定用途向け集積回路(ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)内など、任意の好適なハードウェアを用いて、実施することができる。いくつかの実施形態では、IC50の機能の一部又は全ては、ソフトウェアを使用して、又はハードウェア要素とソフトウェア要素との組み合わせを使用して、実施され得る。いくつかの実施形態では、IC50は、任意の好適な揮発性メモリ又は不揮発性メモリ(図示せず)、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)又はフラッシュメモリを更に含むことができる。
【0056】
本明細書に記載される実施形態は、主として心臓学システムに対処するが、本明細書に記載される方法及びシステムはまた、複数の信号が単一の出力又は少数の出力へと多重化される任意のシステムにおいてなど、他の適用例で使用することもできる。
【0057】
したがって、上に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上で具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその部分的な組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、かつ従来技術において開示されていない、それらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、任意の用語が、本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾するようにこれらの組み込まれた文献において定義されていない限り、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の必須部分とみなすものとする。
【0058】
〔実施の態様〕
(1) 複数の入力ポート及び出力ポートを備え、前記入力ポートを介して複数の入力信号を受信し、前記出力ポートを介して、前記入力信号のうちの選択された信号を出力するように構成されている、マルチプレクサ(MUX)と、
前記MUXの前記入力ポートに結合され、前記入力信号を受信し、各入力信号とそれぞれの入力ポートとの間を接続又は切断するように構成されている、スイッチングアレイと、
前記スイッチングアレイ及び前記MUXに電気的に結合されており、前記MUXが出力している少なくとも前記選択された信号を接続し、前記少なくとも選択された信号以外の全ての前記入力信号を切断するように前記スイッチングアレイを制御するように構成されている、論理回路と、
を備える、電子デバイス。
(2) 前記スイッチングアレイは、複数のそれぞれの電気リード線を介して前記複数の入力信号を受信するように構成されており、前記電気リード線のそれぞれは、前記MUXに接続されたときにそれぞれの寄生容量に寄与し、前記論理回路は、前記少なくとも選択された信号以外の前記入力信号を切断することによって、前記MUXにおける総寄生容量を低減するように構成されている、実施態様1に記載の電子デバイス。
(3) 前記電子デバイスは、特定用途向けIC(ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を備える、実施態様1に記載の電子デバイス。
(4) 前記入力信号のそれぞれは、心電図(ECG)信号、電位図(EGM)信号、及び位置信号からなるリストから選択される信号を含む、実施態様1に記載の電子デバイス。
(5) 前記入力信号はアナログ信号を含み、前記MUXは、少なくとも前記選択された信号をアナログ・デジタル変換器に出力するように構成されている、実施態様1に記載の電子デバイス。
【0059】
(6) 前記論理回路は、前記複数の入力信号のうちのどれを前記MUXが所与の時間に選択するかを制御するように構成されている、実施態様1に記載の電子デバイス。
(7) (i)複数の入力信号を受信するための複数の入力ポート及び前記入力信号のうちの選択された信号を出力するための出力ポートを備えるマルチプレクサ(MUX)と、(ii)前記MUXの前記入力ポートに結合されたスイッチングアレイと、を備える電子デバイスにおいて、
前記入力ポートのうちのそれぞれ1つ以上に少なくとも前記選択された信号を接続し、前記少なくとも選択された信号以外の全ての前記入力信号を切断するように前記スイッチングアレイを制御することと、
前記それぞれの入力ポートを介して少なくとも前記選択された信号を受信し、前記出力ポートを介して前記選択された信号を出力することと、
を含む、方法。
(8) 前記スイッチングアレイを制御することは、複数のそれぞれの電気リード線を介して前記複数の入力信号を受信することを含み、前記電気リード線のそれぞれは、前記MUXに接続されたときにそれぞれの寄生容量に寄与し、前記少なくとも選択された信号以外の全ての前記入力信号を切断することは、前記MUXにおける総寄生容量を低減することを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記入力信号のそれぞれは、心電図(ECG)信号、電位図(EGM)信号、及び位置信号からなるリストから選択される信号を含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記入力信号はアナログ信号を含み、前記選択された信号を出力することは、前記選択された信号をアナログ・デジタル変換器に出力することを含む、実施態様7に記載の方法。
【0060】
(11) 前記スイッチングアレイを制御することは、前記複数の入力信号のうちのどれを前記MUXが所与の時間に選択するかを制御することを含む、実施態様7に記載の方法。
図1
図2
【外国語明細書】