(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105450
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】肺動脈高血圧症の治療のための医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20240730BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240730BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240730BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240730BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240730BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P9/00
A61P11/00
A61P9/12
A61K45/00
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/32
A61K47/12
A61K9/20
A61K9/48
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075949
(22)【出願日】2024-05-08
(62)【分割の表示】P 2021533836の分割
【原出願日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/086724
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/051830
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/060151
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/066494
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/067186
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】500226786
【氏名又は名称】アクテリオン ファーマシューティカルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH-4123 Allschwil,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】デーネシュ ゾンカ
(72)【発明者】
【氏名】ワシム ファレス
(72)【発明者】
【氏名】ハンス フーフカーメル
(72)【発明者】
【氏名】クーン トーフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】肺動脈高血圧症(PAH)の治療のための薬剤。
【解決手段】高用量のマシテンタン、又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物若しくはその形態的形態、又はアプロシテンタンに関する。更に、本発明は、PAHの治療及び/又は予防のための薬剤の製造のための、高用量のマシテンタン、又はアプロシテンタンの使用、並びに高用量のマシテンタン又はアプロシテンタンを含むPAHの治療及び/又は予防のための方法に関する。更に、本発明は、PAHの治療及び/又は予防のための投与レジメン、並びに1つ以上のホスホジエステラーゼ型5(PDE5)阻害剤、プロスタサイクリン類似体、プロスタサイクリン受容体アゴニスト又は可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤の組み合わせに関する。その中、PAHは、好ましくは軽度又は中程度のPAHである。更に、本発明は、高用量のマシテンタン又はアプロシテンタンを含むPAHの治療用の医薬組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてマシテンタンを含み、1日当たり60~90mgの用量で、前記マシテンタンが用いられる、ヒトにおける肺動脈高血圧症(PAH)の治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項2】
前記マシテンタンの用量が、1日当たり70~80mgである、請求項1に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項3】
前記マシテンタンの用量が、1日当たり75mgである、請求項1に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項4】
前記PAHが軽度又は中程度のPAHである、請求項1~3のいずれか一項に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項5】
前記マシテンタンの用量が、1日当たり2回30~45mgである、請求項1~4のいずれか一項に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項6】
前記マシテンタンの用量が、1日当たり2回37.5mgである、請求項1~5のいずれか一項に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項7】
有効成分としてマシテンタンを含む、ヒトにおけるPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤であって、前記薬剤における前記マシテンタンの用量が、1日当たり10mgから漸増され、続いて1日当たり25~50mgである、薬剤。
【請求項8】
前記マシテンタンの用量が、1日当たり10mgから漸増され、続いて1日当たり37.5mg、及び続いて1日当たり75mgである、請求項7に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項9】
有効成分としてマシテンタンを含む、ヒトにおけるPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤であって、前記薬剤における前記マシテンタンの用量が、1日当たり10mgから漸増され、続いて1日当たり60~90mgである、薬剤。
【請求項10】
前記マシテンタンの用量が、1日当たり10mgから漸増され、続いて1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mgである、請求項9に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項11】
前記マシテンタンの用量が、1日当たり1回10mgから15~45日間漸増され、続いて1日当たり25~50mgで15~45日間、続いて1日当たり60~90mgである、請求項7に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項12】
前記マシテンタンの用量が、1日当たり1回10mgから15~45日間漸増され、続いて1日当たり1回37.5mgで15~45日間、続いて、1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mgである、請求項11に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項13】
前記マシテンタンの用量が、1日当たり1回10mgから15~45日間漸増され、続いて、1日当たり60~90mgである、請求項9に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項14】
前記マシテンタンの用量が、1日当たり1回10mgから15~45日間漸増され、続いて、1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mgである、請求項10に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項15】
有効成分としてマシテンタンを含む、ヒトにおけるPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤であって、前記薬剤における前記マシテンタンの用量が、1日当たり25~50mgであり、患者が、ボセンタン及びアンブリセンタンから選択されるエンドセリン受容体拮抗薬で既に治療されている条件である、薬剤。
【請求項16】
前記患者が、ボセンタン及びアンブリセンタンから選択されるエンドセリン受容体拮抗薬で既に治療されている条件で、PAHの治療及び/又は予防において用いられる、請求項15に記載の薬剤。
【請求項17】
前記マシテンタンが、PDE5阻害剤及び/又はエポプロステノール、トレプロスチニル、イロプロスト、及びベラプロストから選択されるプロスタサイクリン類似体及び/又はプロスタサイクリン受容体アゴニスト及び/又は可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤と組み合わされる、請求項1~16のいずれか一項に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項18】
前記PDE5阻害剤が、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、及びウデナフィルから選択され、前記プロスタサイクリン類似体は、エポプロステノール、トレプロスチニル、イロプロスト、及びベラプロストから選択され、前記プロスタサイクリン受容体アゴニストは、セレキシパグ及びラリーヌパグから選択され、前記可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤は、リオシグアト及びビリシグアトから選択される、請求項17に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項19】
前記マシテンタンが、タダラフィル及び/又はセレキシパグ又はラリーヌパグと組み合わされる、請求項17又は18に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項20】
タダラフィルは、適用可能であれば、1日当たり20~40mgの用量を有し、セレキシパグは、適用可能であれば、1日当たり2回0.2~1.6mgの用量を有し、ラリーヌパグは、適用可能であれば、1日当たり0.05~1.45mgの用量を有する、請求項19に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項21】
前記治療及び/又は予防が、PAHの罹患率及び/又は死亡リスクの低減を意味する、請求項1~20のいずれか一項に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項22】
マシテンタンを有効成分として含み、及び少なくとも薬学的に許容される賦形剤を含むPAHの治療用及び/又は予防用の医薬組成物であって、75mgの量のマシテンタンを含有する医薬組成物。
【請求項23】
前記薬剤が、37.5mg又は75mgの量のマシテンタンを含有する医薬組成物の形態で投与される、請求項1に記載のPAHの治療用及び/又は予防用の薬剤。
【請求項24】
前記医薬組成物が、
(i)前記医薬組成物の総重量に基づいて、10~50重量%の総量であるマシテンタンと、
(ii)前記医薬組成物の総重量に基づいて、10~85重量%の総量で、微結晶セルロースを含むラクトース一水和物からなる充填剤と、
(iii)前記医薬組成物の総重量に基づいて、1~10重量%の総量であるデンプン
グリコール酸ナトリウム、又はデンプングリコール酸ナトリウムとポリビニルピロリドンとの組み合わせからなる崩壊剤と、
(iv)前記医薬組成物の総重量に基づいて0.1~1重量%の総量でポリソルベートからなる界面活性剤と、
(v)前記医薬組成物の総重量に基づいて、0.05~5重量%の総量であるステアリン酸マグネシウムからなる潤滑剤と、を含む、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
カプセル又は錠剤の形態である、請求項22又は24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記薬剤が、
(i)前記薬剤の総重量に基づいて、10~50重量%の総量であるマシテンタンと、
(ii)前記薬剤の総重量に基づいて、10~85重量%の総量で、微結晶セルロースを含むラクトース一水和物からなる充填剤と、
(iii)前記薬剤の総重量に基づいて、1~10重量%の総量であるデンプングリコール酸ナトリウム、又はデンプングリコール酸ナトリウムとポリビニルピロリドンとの組み合わせからなる崩壊剤と、
(iv)前記薬剤の総重量に基づいて0.1~1重量%の総量でポリソルベートからなる界面活性剤と、
(v)前記薬剤の総重量に基づいて、0.05~5重量%の総量であるステアリン酸マグネシウムからなる潤滑剤と、を含む、請求項23に記載の薬剤。
【請求項27】
カプセル又は錠剤の形態である、請求項23に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防に使用するための、高用量のマシテンタン(INN)、すなわち、プロピルスルファミン酸[5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル]-アミド又は製薬上許容され得る塩、溶媒和物、水和物若しくは形態学的形態に関する。更に、本発明は、PAHの治療及び/又は予防のための薬剤の製造のための高用量のマシテンタンの使用、並びに患者に高用量のマシテンタンを投与することを含むPAHの治療及び/又は予防のための方法に関する。更に、本発明は、PAHの治療及び/又は予防のための投与レジメン、並びに1つ以上のホスホジエステラーゼ型5(PDE5)阻害剤、プロスタサイクリン類似体、プロスタサイクリン受容体アゴニスト又は可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤とマシテンタンの組み合わせに関する。その中、PAHは、好ましくは軽度又は中程度のPAHである。更に、本発明は、高用量のマシテンタンを含むPAHの治療用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
突然死した患者の検視が、いずれの明らかな原因も伴わずに右心室肥大及び肺動脈硬化を明らかにしたとき、肺高血圧症(PH)が1891年に初めて報告された。肺動脈高血圧症(PAH)は、PHの亜群であり、右心室後負荷と肥大の増加の基本的な原因として肺血管抵抗(PVR)を上昇させた進行性疾患であり、これは、最終的に右心室拡張及び異常に進行し、早期死に進行する。PHは、世界保健機関(WHO)分類に従って、臨床的に5つの群に分類され:肺動脈高血圧症(PAH)(群1)、左心疾患に関連するPH(群2)、肺疾患及び/又は低酸素症によるPH(群3)、慢性血栓塞栓性PH及び他の肺動脈閉塞(群4)、並びに不明瞭及び/又は多因子機構を有するPH(群5)(Roger Hullin,Cardiovascular Medicine(2018)、21(7~8):同第195-199号、Simonneau et al.,肺高血圧症の血行力学的定義と最新の臨床分類。EUR.Respir.J.(2018),Dec 13.pii:1801913.doi:10.1183/13993003.01913-2018.[印刷に先立つ電子公開])。
【0003】
本発明は、平均肺動脈圧(PAP)>20mmHg、肺動脈楔入圧(PAWP)≦15mmHg、及び(>)3 Wood単位、あるいは>2 Wood単位以上のPVRの存在によって血行力学的に特徴付けられるPAHに焦点を当てる。
【0004】
特に、本発明は、平均肺動脈圧(PAP)≧25mmHg、肺動脈楔入圧(PAWP)≦15mmHg、及び(>)3 Wood単位、あるいは>2 Wood単位以上のPVRの存在によって血行力学的に特徴付けられるPAHに焦点を当てる。
【0005】
PAHの病態生理学は、血管収縮を媒介する分子(例えば、エンドセリン又はトロンボキサン)及び/又は血管拡張を媒介する分子(例えば、プロスタサイクリン及び一酸化窒素)の不均衡によって特徴付けられる。更に、これらの分子の細胞分裂促進作用は、肺循環における特定の病理形態変化があり、疾患進行に関与する。
【0006】
PAHの特異的治療のために承認された現在入手可能な化合物は、a)エンドセリン受容体拮抗薬、b)ホスホジエステラーゼ型5阻害剤(PDE5is)及び可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤、及びc)プロスタサイクリン経路に干渉する分子の3つの異なる群である。一般的な尺度と組み合わせたこれらの化合物による治療は、REVEALレジストリ(Benza et al.,REVEALレジストリから肺動脈高血圧症における
診断時からの長期生存の評価)に示されるように、特発性PAHの最初の診断後、1980年代の48%から過去20年間の74%に3年の生存期間が増加している。CHEST(2012)、142(2)、448-456;、及びCHEST(2012)、141(2):354-362)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、肺動脈高血圧症(PAH)のための薬剤及び/又は治療レジメンを提供することである。特に、本発明の目的は、軽度又は中程度のPAHの治療のための薬剤及び/又は治療レジメンを提供することである。本発明の更なる目的は、PAHの併用薬剤及び/又は治療を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ヒトに投与されたマシテンタンの用量の関数におけるヘモグロビン(HGB)の変化を示す用量反応曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らは、臨床的に関連するヘモグロビンの減少の恐れにもかかわらず、血圧低下及び/又は浮腫又は流体保持が増加するにもかかわらず、高用量のマシテンタンを有するPAH患者を治療することが可能であり安全かつ有効であることを認識した。特に、疾患の進行を減少させることができ、又は更には疾患の状態を改善することが可能である。
【0010】
本発明において、マシテンタンは、プロピルスルファミン酸[5-(4-ブロモ-フェニル)-6-[2-(5-ブロモ-ピリミジン-2-イルオキシ)-エトキシ]-ピリミジン-4-イル]-アミド、すなわち式(I)の化合物として定義される。
【0011】
【化1】
又は薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、又は形態学的形態が挙げられる。
【0012】
マシテンタンは、2つのエンドセリン(ET)受容体サブタイプ、ETA及びETB(Kholdani et al,肺動脈性肺高血圧症の治療のためのマシテンタン)の拮抗薬として作用するエンドセリン受容体拮抗薬(ERA)である。Vasc.Health Risk Manag.(2014),10,665-673)。ヒトにおける半減期は約16時間であり、定常状態は、第3の投与日(Bruderer et al.,ヒトにおいて、二重エンドセリン受容体拮抗薬であるマシテンタンの吸収、分布、代謝、排泄)に到達する。Xenobiotica(2012),42(9),901-910)。それは、血漿中にゆっくりと吸収される(Sidhartaら、マシテンタン:新たなエンドセリン受容体拮抗薬によるヒトへの侵入試験。Eur.J.Clin.Pharmacol.(2011),67,977-984)。第1の用量が投与された約30時間後にそのピーク血漿濃度に達する、活性代謝産物ACT-132577内に、マシテン
タン脱アルキレートが投与され、約48時間の半減期を有する。ACT-132577は、その親化合物よりも、ET受容体に対して低い親和性を有する(Iglarz et al.,経口活性組織標的二重エンドセリン受容体拮抗薬である、マシテンタンの薬理学。J.Pharmacol.Exp.Ther.(2008)327(3)、736-745)は、マシテンタンよりも高い血漿濃度を維持する。両方の化合物は、尿又は糞便を通って身体から排泄され得る。
【0013】
ラットにおけるマシテンタンの最大又はほぼ最大効果は、10mg/kgであることが報告されている。(20(「EMA Assessment Report」)でEuropean Medicines Agency,European Public Assessment Report for Opsumit,Procedure No.EMEA/H/C/002697/0000(2013))。ラットにおけるマシテンタンの最大有効用量は、30mg/kgであることも報告されている(Id.;e.g.,Iglarz et al.,全身性及び肺高血圧症の前臨床モデルにおけるマシテンタンとボセンタンの薬理活性の比較。Life Sci.(2014),118,333-339)。Kunita-Takanezawa et al.,新規の二重エンドセリン受容体拮抗薬マシテンタンは、ラットの重度の肺動脈性肺高血圧症を逆転させるも参照。J.Cardiovasc.Pharmacol.(2014)、64(5):473-480)。
【0014】
健康なヒト被験者における1mg、3mg、10mg、及び30mgの用量のマシテンタンを評価する複数の漸増用量試験において、定常状態での血漿ET-1濃度は用量依存的な増加を示し、10mg経口用量を超えて更に増加せず、この用量で遮断を示す。(40ではId)。評価者は、10mgの用量が薬理学的効果のプラトーに近いように見えたと結論付けた。(48ではId)。欧州医薬品庁及び米国食品医薬品局は、肺動脈高血圧症患者の治療のために、10mgの1日経口用量のマシテンタンが承認されている。(2でEMA、Opsumit(2019年10月29日)の製品特性の要約;1でFDA、Opsumitのための処方情報(2019年4月))。
【0015】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0016】
(a)本発明の一態様は、ヒトにおける肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、マシテンタンの用量は、1日当たり20mg超~1日当たり300mg以下、例えば、1日当たり20mg超~1日当たり250mg未満である。好ましくは、用量は25mg~200mgである。
【0017】
より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0018】
本発明では、PAHは、ヒトの肺動脈高血圧症として定義される。
【0019】
本発明は、全て安静時に測定された、平均肺動脈圧(PAP)>20mmHg、肺動脈楔入圧(PAWP)≦15mmHg、及び3 Wood単位、あるいは>2 Wood単位を超える(>)PVRの存在によって血行力学的に特徴付けられるPAHに焦点を当てる。上記の血行力学的特徴付けに加えて、PAHは、過剰な左側の心臓疾患、重篤な肺疾患、又は既知の慢性血栓塞栓疾患の不在によって臨床的に特徴付けられる。
【0020】
具体的には、本発明の焦点は、以下のように、右心臓カテーテル法によって血行力学的に特徴付けられる。
●平均肺動脈圧(mPAP)≧25mmHg
●肺閉塞楔入圧(PAWP)≦15mmHg
●3 Wood単位、あるいは>2 Wood単位を超える(>)肺血管抵抗。
【0021】
上記の血行力学的特徴付けに加えて、PAHは、過剰な左側の心臓疾患、重篤な肺疾患、又は既知の慢性血栓塞栓疾患の不在によって臨床的に特徴付けられる。
【0022】
上述のように、マシテンタンは、現在、1日1回10mgの経口投与として投与される。しかしながら、本発明では、高用量のマシテンタンを投与することにより、疾患状態を改善し、疾患の悪化の発生の防止、WHO機能クラスを改善又は安定化、長期生存の改善、及び/又は入院率を低下させることが示唆される。有利には、例えば、ボセンタンと比較して、肝臓機能に対する副作用がより少なくなり、肝毒性が全く又は有意ではない。
【0023】
更なる利点は、更に臨床的に関連するヘモグロビンの減少、血圧の更なる臨床的に関連する減少、及び/又は浮腫/流体保持の更なる臨床的に関連する増加はない。
【0024】
(b)本発明の別の態様は、PAHが軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHである、態様(a)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0025】
驚くべきことに、軽度及び中程度のPAHでは、疾患状態が改善又は安定化され得ることが見出された。具体的には、軽度及び中程度の患者において、WHO機能クラスを改善することができる。6分間歩行試験で測定される機能容量も改善され得る。
【0026】
用語「軽度PAH」は、WHO機能性クラスI及びIIとほぼ等しい。
【0027】
用語「中程度PAH」は、WHO機能クラスIIIとほぼ等しい。
【0028】
これとは対照的に、WHO機能クラスIVは、重度のPAHに等しい。
【0029】
WHO機能クラス(WHOFC)が一般的に既知であり、以下のように定義される。
WHOFC I:運動又は静止時の肺動脈高血圧症の症状なし。クラスIのままで患者が診断されることはまれである。PAHの強皮症又は家族歴を有する患者のような、PAHを発症するための高いリスク因子のためにスクリーニングされる患者がクラスIと診断されることは稀であり得る。より多くの場合、この分類は、以前はクラスII又はIIIであったがクラスIに改善された治療に対する相当な応答を示した患者を説明するために使用される。
【0030】
WHOFC II:安静時の症状がないが、例えば、階段を上る、食料品ショッピング、又はベッドメーキングなどの通常の活動を有する不快感、疲労、又は息切れ。
【0031】
WHOFC III:患者は安静時に症状を有さない場合があるが、通常の活動は、息切れ、疲労、又は失神寸前によって大幅に制限される。このクラスの患者は、家の周囲で通常の雑用をすることが困難な時間を有し、日常生活の活動を行っている間に休憩をとる必要がある。
【0032】
WHOFC IV:安静時の症状又は任意の活動に伴う重度の症状。このクラスの患者は、活動に即して又は頭を下げてかがみながら失神する場合がある。このクラスの多くの患者はまた、右心不全からの足及び足首の浮腫で過剰に過負荷されている。
【0033】
軽度PAHのより詳細な評価は、以下のように決定される。
(d軽度):以下の基準のうちの少なくとも3つを満たす:
-WHOFC I又はII、
-6分間歩行距離(6MWD)>440m、
-B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)<50ng/L又はN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)<300ng/L;又はRAP<8mmg HG、
-CI≧2.5L/分/m2又はSvO2>65%;
-(d重篤な)基準のいずれも満たさない。
【0034】
重篤なPAHのより詳細な評価は、以下のように決定される。
(d重篤):CI又はSvO2を含む以下の特徴のうちの少なくとも2つを満たす
-WHOFC IV、
-6MWD<165メートル、
-BNP>300ng/L又はNT-proBNP>1400ng/L;又は、RAP>14mmg HG
-CI<2.0L/分/m2又はSvO2<60%。
【0035】
中程度PAHのより詳細な評価は、以下のように決定される。
(d中程度)、(d軽度)基準及び(d重度の)基準の前述の評価は、患者のPAHを軽度PAHとして分類することも、患者のPAHを重篤なPAHとして分類することも可能ではない。
【0036】
好ましくは、BNPの濃度ではなくNT-proBNPの濃度が決定され、前述のより詳細な評価定義に従って、患者が軽度、中程度、又は重度のPAHを有するかどうかを決定するために使用される。
【0037】
BNPは、以下のように測定される:血漿試料を回収し、プラスチック製のEDTA管中で凍結させ(-20℃以下)、免疫化学分析アッセイ(ICMA)で分析する。このICMAアッセイの原理は、以下の通りである。
●以下の3つの作用溶液/懸濁液を用いて市販のキット(Triage(登録商標)BNP試験)を使用する。
○S1a:トリス緩衝生理食塩水溶液(150mM NaCl,50mMトリス-HCl、pH 7.6 aq.溶液)中に懸濁されたマウス全クローン抗ヒトBNP抗体でコーティングされた常磁性粒子であって、ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1% ProClin(商標)300(0.60~1.00%2-メチル-4-イソチアゾリン-3-1及び2.10-2.80% 5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-1aq.溶液)及び<0.1%アジ化ナトリウムを含む;
○S1b:トリス緩衝生理食塩水溶液(150mM NaCl,50mMトリス-HCl、pH 7.6 aq.溶液)中の精製マウス及びヤギIgG、ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1% ProClin(商標)300(0.60~1.00%2-メチル-4-イソチアゾリン-3-1及び2.10-2.80% 5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-1 aq.溶液)及び<0.1%アジ化ナトリウムを含む。
○S1c:PBS緩衝生理食塩水溶液中のマウスモノクローナル抗ヒトBNP抗体-アルカリホスファターゼウシ共役(pH 7.4;137mmol/LのNaCl,2.7mmol/LのKCl、10mmol/LのNa2HPO4及び1.8mmol/L KH2PO4)、ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1% ProClin(商標)300(0.60~1.00%2-メチル-4-イソチアゾリン-3-1及び2.10-2.80% 5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-1溶液)及び<0.1%アジ化ナトリウムを含む。
●血液試料(500μL)を患者から採取し、抗凝固剤としてK2EDTAを含有するプラスチック血液ドローチューブに入れた。血液試料は、チューブを何度も静かに反転さ
せることによって混合されるべきである。
●懸濁液S1a及び溶液S1cを反応容器に入れ、55μLの血液試料をそれに加える。
●反応容器内でのインキュベーション後、固体相に結合した材料を保持するために磁場を使用し、溶液S1bを使用して非結合材料を洗い流す。
●次いで、化学発光基質、Lumi-Phos(登録商標)530(Chemical
Abstracts Substance No.146239-76-1)を反応容器に添加し、反応により生成された光を照度計で測定する。得られた光はBNP濃度に比例するため、試料中のBNP濃度を決定することができる。
●ICMAアッセイ結果の精度を確保するために、照度計は、市販の基準溶液で定期的に較正されるべきである。
【0038】
NT-proBNPは、以下のように測定される:血清又は血漿サンプルが収集され、収集から3日以内の場合、周囲温度で輸送され、又は遠心分離後、赤いトップチューブで冷凍され、電気化学発光イムノアッセイ(ECLIA)で分析される。このECLIAアッセイの原理は以下の通りである。
●以下の3つの作用溶液/懸濁液を有する市販のキットを使用する。
○S1:保存剤を含有するストレプトアビジンコーティングされた微小粒子(0.72mg/mL)の懸濁液(6.5mL);
○S2:ビオチン化モノクローナル抗-NT-proBNP抗体(マウス)(1.1μg/mL)、リン酸緩衝液40mmol/L、pH 5.8及び防腐剤を含有する抗-NT-proBNP-Ab-ビオチンの溶液(9mL)、及び
○S3:トリス(2,2’-ビピリジル)ルテニウム(II)錯体(Ru(bpy))(1.1μg/mL)、リン酸緩衝液40mmol/L、pH 5.8、及び防腐剤で標識化されたモノクローナルNT-proBNP-特異的抗体を含有する、抗NT-プロBNNP Ab-Ru(bpy)の溶液(9mL)。
●試料(15μL)を最初に溶液S2及びS3と共にインキュベートする。ビオチン化モノクローナルNT-proBNP-特異的抗体及びルテニウム錯体で標識化されたモノクローナルNT-proBNP-特異的抗体は、サンドイッチ複合体を形成する。
●次いで、第2のインキュベーションが行われ、それにより、懸濁液S1を添加した後、ビオチンとストレプトアビジンとの相互作用を介して複合体が固相に結合する。
●反応混合物は、微小粒子が電極の表面上に磁気的に捕捉される測定セルに吸引される。次いで、未結合物質を除去する。電極への電圧の印加は、次いで、光電子増倍器によって測定される化学発光放射を誘導する。
●結果は、市販の参照溶液を使用して較正曲線に基づいて決定される。
【0039】
CIは、以下のように測定される:CIは、心臓を通る血液の流れ(リットル/分)を反映し、心臓出力(CO)と呼ばれ、患者の身体表面領域(BSA)に標準化されている。したがって、CIは、リットル/分/メートル2で表される。右心臓カテーテル法(RHC)は、PAHを診断するために使用される標準的な処置である。カテーテルが大静脈を通して挿入され、次いでカテーテルが心臓の右側に前進し、次いで肺動脈内に前進される侵襲的処置である。CIを測定するための方法は異なるが、最も一般的な方法は、フィック心指数法又は熱希釈心臓指数法である。これらは、標準化及び十分に確立された方法である。最も一般的な方法は、熱希釈法である。本発明によれば、熱希釈(TD)法は、CIを測定するために使用される特定の方法である。TDは、1組の量の流体(典型的には、室温、すなわち25℃)が右心房[肺動脈(PA)カテーテルの近位ポート内に注入される]からPA(PAカテーテルの遠位部の先端に近接する熱センサによって検出される)にどのくらい速く移動するかに基づいてCOを決定する。温度変化の曲線下面積(AUC)が生成される。これを少なくとも3回繰り返すことができ、次いで、平均値を計算するが、値はこれらの測定値を有効にするために、互いの(+/-)10-15%以内で
あるべきである。曲線はまた、誤った注入又は測定を示唆し得る曲線の急激な変化なしに流れが滑らかであることを確認するために評価されるべきである。得られた平均AUC及び患者のBSAに基づいて、以下のように定義される
BSA=√[(cmの高さ×kgの重量)/3600]
CIを計算する。
【0040】
RAPは、以下のように測定される。RAP(時折、mRAP、すなわち平均RAPと呼ばれる)もまた、CIを測定するために上で概説されるようにRHC手順中に測定される。カテーテルの先端部には、心臓の右側にその方法を形成する静脈内に挿入される圧力センサが存在する。センサは、カテーテル先端が右心房にあるときの圧力を測定し、測定された圧力は、RAPである。これは、単一の測定値である。
【0041】
SvO2は、以下のように測定される:SvO2はまた、CIを測定するために上記で概説したようにRHC手順中に測定される。カテーテル先端が中心静脈又は右心房にあるとき、血液が採取され、その血液サンプル中の酸素の「濃度」/「含有量」(血液中の酸素の分圧)は、標準的な血液ガス分析装置/センサを使用して分析され、血液試料中の酸素化の%は、SvO2である。また、単一の測定値でもある。
【0042】
より詳細な評価のために、軽度及び中程度のPAHは、早期及び長期のPAH疾患管理を評価するためのレジストリ(REVEALレジストリ)に基づくアルゴリズムに従って定義することができる。アルゴリズムは、以下の工程を含むものとして説明することができる。
(i)患者のWHOグループIサブグループの決定及び割り当て
+APAH-CTD(結合組織疾患に関連するPAH)についての+1スコア、
APAH-PoPHの+2スコア(PAHは、門脈肺高血圧症に関連する)、
FPAHの+2スコア(現在は、遺伝性PAHと呼ばれる家族性PAH);
PAHの任意の他のサブグループについての0スコア;
(ii)人口統計学及び併存の判定及び割り当て
腎不全の+1スコア、
>60歳の男性年齢の+2スコア、
他の患者に対する0スコア;
(iii)WHO機能クラスの判定及び割り当て
WHOFC Iについての-2スコア
WHOFC IIについての0スコア
WHOFG IIIについての+1のスコア
WHOFG IVについての+2スコア
(iv)重要な兆候の決定及び割り当て
SBP(収縮期全身血圧)<110mmHgの+1スコア、
HR(心拍数)>92BPM(毎分拍動)の+1スコア、
他のいずれかの症例についての0スコア;
(v)6分間歩行距離の決定及び割り当て
≧440メートルの-1スコア、
<165メートルの+1スコア、
任意の他の症例についての0スコア;
(vi)BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)の決定及び割り当て
BNP<50pg/mLの-2スコア、
BNP>180pg/mLの+1スコア、
50pg/mL~180pg/mLのBNPの0スコア;
(vii)心エコーグラムの決定及び割り当て
心膜滲出液についての+1スコア、
任意の他の症例についての0スコア;
(viii)肺機能試験及び割り当て
予測DLCO≧80%(一酸化炭素の肺の拡散容量)ついての-1スコア、
%予測DLCO≦32%の+1スコア、
32%~80%の予測DLCO%についての0スコア;
(ix)右心臓の熱化及び割り当て
RAP(平均右動脈圧)>20mmHg、1年以内の+1スコア、
PVR(肺血管抵抗)>32 Wood単位の+2スコア、
任意の他の症例についての0スコア;
(x)工程(i)~(ix)で得られたスコアを要約し、数字6を追加し;
(xi)軽度PAHは、1~7のスコアに割り当てられ、
中程度のPAHは、8又は9のスコアに割り当てられる。
【0043】
上記アルゴリズム「+」は加算を意味し、「-」が減算を意味する。
【0044】
Wood単位は、圧力の増分を使用する肺血管抵抗(PVR)を測定値するための簡略化されたシステムの尺度である。PVRの測定は、平均肺動脈圧から肺動脈楔入圧を減算しリットル/分で心拍出量で割ることによって行う。
【0045】
したがって、軽度PAHは1-7のスコアと関連付けられ、中程度のPAHは8又は9のスコアと関連付けられる。
【0046】
更なる定義については、ESC/ERS Guidelines,European Heart Journal(2016),37,67-119に明示的に指摘されている。
【0047】
PAHの遺伝的継承は、PAH患者の約6%~10%で報告されており、これらの個体の50%~90%では、BMPR2(骨形態形成タンパク質受容体タイプ-2)における突然変異が同定されている。家族性肺動脈高血圧症(FPAH)におけるBMPR2における突然変異は、遺伝的予測及び不完全な浸透性によって特徴付けられる。FPAHは、HPAH(遺伝性PAH)とも呼ばれる。表現型は、全ての世代では発現されないが、発現されると、早期の年齢で発生し、より重度かつ急速に進行性の疾患に関連する。多くの他の遺伝子突然変異は、家族性(遺伝性)PAHに関連すると同定されているが、これらはBMPR2突然変異よりもはるかに一般的ではない。(Morrell et al.,Eur.Respir.J.(2018),Dec 13.pii:1801899.doi:10.1183/13993003.01899-2018.[印刷に先立つ電子公開])。
【0048】
本発明では、APAH-CTD(PAHが結合組織疾患に関連する)は、また、結合組織疾患とも呼ばれる自己免疫疾患を有する人のPAHによって特徴付けられる。PAHに関連する最も一般的な結合組織疾患は、強皮症(全身性硬化症)、ルーパス(全身性エリテマトーデス/SLE)、混合結合組織疾患及びシェーグレン病である。
【0049】
本発明では、APAH-PoPH(門脈肺高血圧症に関連するPAH)は、門脈高血圧症に関連するPAHによって特徴付けられる。門脈高血圧症は、5mmHgを超える、門脈と肝静脈との間の圧力勾配の増加によって証明されるように、門脈内の圧力の増加として定義される(圧力勾配が≧10mmHgである場合に臨床的に有意になる)。門脈は、胃腸系から肝臓へ血液を運ぶ。これは、より多くの場合、門脈高血圧症を引き起こす進行性肝疾患の存在下で起こるが、門脈肺高血圧症は、門脈性高血圧が存在する限り、肝疾患の非存在下で起こり得る。
【0050】
門脈高血圧症に関連するPAHは、一般にPoPHと呼ばれる。この実体は、異常肺血管拡張及び低酸素血症によって特徴付けられる、肝肺症候群と混同されるべきではない。しかしながら、両方の条件の間の重複が生じ得る。用語によって示唆されるように、PoPHは、肝疾患の存在を必ずしも有さない、上記に定義された門脈高血圧症の存在に関連する。しかしながら、肝硬性肝疾患は、大部分の門脈高血圧症の原因であるため、PoPHは肝硬変患者において最も頻繁に遭遇する。
【0051】
右心臓カテーテル法(RHC)を含む完全診断ワークアップは、肺疾患、LHD又は慢性血栓塞栓疾患を含む、疾患の重症度、血行力学的側面、及びPHの他の潜在的原因を評価するために必要とされる(ESC/ERS Guidelines、European
Heart Journal(2016)、37,67~119)。
【0052】
本発明において、腎不全は、90mL/分/1.73m2未満の糸球体濾過速度(GFR)によって特徴付けられる。GFRは、患者から標準化されたクレアチニン血濃度(SCr)を入手し、以下のMDRD式を使用することによって得られる。
GFR=175×SCr-1.154×年齢-0.203×(女性の場合0.742)×(黒人の場合1.21)
【0053】
上記の式に従って得られたGFRは、1.73m2の身体表面積当たりmL/分で表される。患者の身体表面積が1.73m2と異なる場合、上のMDRD式を介してGFRについて得られた値は、それに応じて変換されるべきである。
【0054】
心膜滲出液は、心臓の周囲の流体の収集である。通常、非常に薄い、典型的には正常な眼には不可視であるべきであり、心臓と心膜との間の摩擦を防止するために潤滑剤として作用する流体の層(心臓を包囲及び保護する線維素層)が存在するべきである。高度なPH(並びに多くの他の疾患)の設定において、流体は蓄積し、心膜滲出液として定義される心臓周囲に収集を形成する。このような滲出液の存在は、進行したPH及び右心臓の機能不全/不全を意味するので、予後が乏しい傾向がある。
【0055】
DLCOは、肺機能試験によって測定される。これらの試験は、Graham et al.,2017肺における単呼吸一酸化炭素取り込みのERS/ATS標準に記載されているように実施される。Eur.Respir.J.(2017)、49,1600016.
【0056】
RHCは侵襲性であり、典型的には、中心静脈を通してカテーテルを挿入し、次いで右側の心腔を通過させて肺動脈に到達させることを伴う外来処置である。心臓出力と呼ばれる圧力及び血流を含む、この手順の間に、異なる測定が行われる。
【0057】
(c)本発明の別の態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、マシテンタンの用量は、1日当たり60~90mgである。好ましくは、用量は1日当たり65~85mgであり、より好ましくは用量は1日当たり70~80mgであり、最も好ましくは用量は1日当たり75mgである。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mgである。より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0058】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PA
Hの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0059】
(d)本発明の更なる態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、マシテンタンの用量は、1日当たり25~50mgである。好ましくは、用量は、1日当たり30~45mg、より好ましくは1日当たり35~40mg、最も好ましくは1日当たり37.5mgである。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり25~45mg、又は1日当たり25~40mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり30~50mg、又は30~40mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり36~39mgである。より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0060】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0061】
(e)本発明の更なる態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、マシテンタンの用量は、1日当たり110~200mgである。好ましくは、用量は、1日当たり125~175mg、より好ましくは1日当たり140~160mg、最も好ましくは1日当たり150mgである。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、用量はまた、1日当たり110~175mg、1日当たり110~160mg、又は1日当たり110~150mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり125~160mg又は140~175mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり145~155mgである。より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0062】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0063】
(f)本発明の更なる態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、マシテンタンの用量は、1日当たり2回60~90mgである。好ましくは、用量は、1日当たり2回65~85mg、より好ましくは1日当たり2回70~80mg、最も好ましくは1日当たり2回75mgである。上記に開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり2回60~85mg、1日当たり2回60~80mg、又は1日当たり2回60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり2回65~90mg、又は1日当たり2回65~75mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり2回72~78mgである。
【0064】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0065】
(g)本発明の更なる態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり2回25~50mg、好ましくは1日当たり2回30~45mg、より好ましくは1日当たり2回35~40mg、最も好ましくは1日当たり2回37.5mgである。上記に開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり2回25~45mg、又は1日当たり2回25~40mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり2回30~50mg、又は1日当たり2回30~40mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり2回36~39mgであ
る。
【0066】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0067】
(h)本発明の更なる態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり10mgから漸増され、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、及び任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgである。その中に「続いて、1日当たり25~50mg」とは、好ましくは、用量が1日当たり30~45mg、より好ましくは1日当たり35~40mg、最も好ましくは1日当たり37.5mgであることを意味する。開示される下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり25~45mg、又は1日当たり25~40mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり30~50mg、又は30~40mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり36~39mgである。より高い用量までのいずれかの漸増は、より高い用量が許容されない場合には、より低い用量に戻ることができることを理解されたい。
【0068】
更に、「任意に続いて、1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは、用量は、1日当たり65~85mgであり、より好ましくは用量は1日当たり70~80mgであり、最も好ましくは用量は1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mgである。より高い用量までのいずれかの漸増は、より高い用量が許容されない場合には、より低い用量に戻ることができることを理解されたい。
【0069】
より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0070】
存在する場合、PAHの治療に使用するためのマシテンタンの用量は、1日当たり10mgである。この用量を得る患者は、1日当たり37.5mgまでの即時用量漸増を受けてもよく、任意に続いて1日当たり75mgであってもよい。
【0071】
本発明の更なる態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関し、マシテンタンの用量は、1日当たり10mgから漸増され、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、任意に続いて1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mg、任意に続いて1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり150mgである。
【0072】
「任意に続いて、1日当たり110~200mg」という語句は、好ましくは、用量は、1日当たり125~175mg、より好ましくは1日当たり140~160mg、最も好ましくは1日当たり150mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、用量はまた、1日当たり110~175mg、1日当たり110~160mg、又は1日当たり110~150mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり125~160mg又は140~175mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり145~155mgである。より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0073】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PA
Hの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0074】
(i)本発明の更なる態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、マシテンタンの用量は、1日当たり10mgから漸増され、続いて1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日2回37.5mgである。
【0075】
「任意に続いて、1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは、用量は、1日当たり65~85mgであり、より好ましくは用量は1日当たり70~80mgであり、最も好ましくは用量は1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mgである。より高い用量までのいずれかの漸増は、より高い用量が許容されない場合には、より低い用量に戻ることができることを理解されたい。
【0076】
より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0077】
本発明の更なる態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり10mgから漸増され、続いて1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mg、又は1日当たり2回37.5mg、任意に続いて1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり150mgである。
【0078】
「任意に続いて、1日当たり110~200mg」という語句は、好ましくは、用量は、1日当たり125~175mg、より好ましくは1日当たり140~160mg、最も好ましくは1日当たり150mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、用量はまた、1日当たり110~175mg、1日当たり110~160mg、又は1日当たり110~150mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり125~160mg又は140~175mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり145~155mgである。より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0079】
存在する場合、PAHの治療に使用するためのマシテンタンの用量は、1日当たり10mgである。この用量を得る患者は、1日当たり75mg又は1日当たり150mgまでの即時用量漸増を受け得る。
【0080】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0081】
(j)本発明の更なる態様は、態様(h)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、マシテンタンの用量は、1日当たり1回10mgから、好ましくは15~45日間漸増され、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり1回37.5mg、好ましくは15~45日間、及び任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mgである。より高い用量までのいずれかの漸増は、より高い用量が許容されない場合には、より低い用量に戻ることができることを理解されたい。
【0082】
その中、用語「15~45日」は、好ましくは20~40日、より好ましくは21~3
5日、最も好ましくは28~30日、すなわち約1ヶ月を意味する。
【0083】
更に、「続いて、1日当たり25~50mg」という語句は、好ましくは、用量は、1日当たり30~45mg、より好ましくは1日当たり35~40mg、最も好ましくは1日当たり37.5mgであることを意味する。開示される下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり25~45mg、又は1日当たり25~40mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり30~50mg、又は30~40mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり36~39mgである。
【0084】
更に、「続いて、1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは1日当たり65~85mgであり、より好ましくは用量は1日当たり70~80mgであり、最も好ましくは用量は1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mg、又は1日当たり2回36~39mgである。
【0085】
より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0086】
本発明の更なる態様は、態様(h)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、マシテンタンの用量は、1日当たり1回10mgから、好ましくは15~45日間漸増され、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり1回37.5mg、好ましくは15~45日間、任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mg、好ましくは15~45日間、任意に続いて、1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり150mgである。
【0087】
「任意に続いて、1日当たり110~200mg」という語句は、好ましくは、用量は、1日当たり125~175mg、より好ましくは1日当たり140~160mg、最も好ましくは1日当たり150mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、用量はまた、1日当たり110~175mg、1日当たり110~160mg、又は1日当たり110~150mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり125~160mg又は140~175mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり145~155mgである。より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0088】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0089】
(k)本発明の更なる態様は、態様(i)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンであって、マシテンタンの用量は、1日当たり1回10mgから、好ましくは15~45日間漸増され、続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mgである。
【0090】
その中、用語「15~45日」は、好ましくは20~40日、より好ましくは21~35日、最も好ましくは28~30日、すなわち約1ヶ月を意味する。
【0091】
「続いて、1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは、用量は、1日当たり65~85mgであり、より好ましくは用量は1日当たり70~80mgであり、最も
好ましくは用量は1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mg、又は1日当たり2回36~39mgである。
【0092】
本発明の更なる態様は、(i)に従ったPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり1回10mgから、好ましくは15~45日間漸増され、続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mg、好ましくは15~45日間、任意に続いて、1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり150mgである。「任意に続いて、1日当たり110~200mg」という語句は、好ましくは、用量は、1日当たり125~175mg、より好ましくは1日当たり140~160mg、最も好ましくは1日当たり150mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、用量はまた、1日当たり110~175mg、1日当たり110~160mg、又は1日当たり110~150mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり125~160mg又は140~175mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり145~155mgである。
【0093】
より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0094】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0095】
(l)本発明の更なる態様は、態様(a)~(d)のいずれか1つに記載のPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、マシテンタンの用量は、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mgに漸増され、好ましくは、15~45日間漸増し、任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgであり、患者が、好ましくはボセンタン及びアンブリセンタンから選択されるエンドセリン受容体拮抗薬で既に治療されている条件である。より高い用量までのいずれかの漸増は、より高い用量が許容されない場合には、より低い用量に戻ることができることを理解されたい。
【0096】
その中、用語「15~45日」は、好ましくは20~40日、より好ましくは21~35日、最も好ましくは28~30日、すなわち約1ヶ月を意味する。
【0097】
更に、「続いて、1日当たり25~50mg」という語句は、好ましくは、用量は、1日当たり30~45mg、より好ましくは1日当たり35~40mg、最も好ましくは1日当たり37.5mgであることを意味する。開示される下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり25~45mg、又は1日当たり25~40mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり30~50mg、又は30~40mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり36~39mgである。
【0098】
更に、「続いて、1日当たり60~90mg」という語句は、好ましくは1日当たり65~85mgであり、より好ましくは用量は1日当たり70~80mgであり、最も好ましくは用量は1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。ま
た、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mg、又は1日当たり2回36~39mgである。
【0099】
任意に、マシテンタンの用量は、1日当たり110~200mgで更に上昇させることができることを理解されたい。これにより、用量は、態様(i)、(j)又は(k)のように漸増される。
【0100】
より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0101】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0102】
(m)本発明の更なる態様は、態様(a)~(c)のいずれか1つに記載のPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関し、マシテンタンの用量は、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgであり、患者が、好ましくはボセンタン及びアンブリセンタンから選択されるエンドセリン受容体拮抗薬で既に治療されている条件である。
【0103】
「1日当たり60~90mg」の語句は、好ましくは、用量は、1日当たり65~85mgであり、より好ましくは用量は1日当たり70~80mgであり、最も好ましくは用量は1日当たり75mgであることを意味する。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり72~78mg、又は1日当たり2回36~39mgである。
【0104】
任意に、マシテンタンの用量は、1日当たり110~200mgで更に上昇させることができることを理解されたい。これにより、用量は、態様(i)、(j)又は(k)のように漸増される。
【0105】
より好ましい態様によれば、これらの用量は、1日1回適用される。
【0106】
好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0107】
(n)本発明の更なる態様は、態様(a)~(m)のいずれか1つに記載のPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、ここで、マシテンタンは、PDE5阻害剤及び/又はプロスタサイクリン類似体及び/又はプロスタサイクリン受容体アゴニスト及び/又は可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤と組み合わされる。
【0108】
環状グアノシン一リン酸(cGMP)分解酵素ホスホジエステラーゼ型5の阻害は、この酵素を発現している部位におけるNO/cGMP経路を通じた血管拡張をもたらす。肺血管系は相当量のホスホジエステラーゼ型5を含有しているため、ホスホジエステラーゼ型5阻害剤(PDE5is)の潜在的臨床効果がPAHで調査されている。加えて、PDE5isは、抗増殖効果を発揮する(ESC/ERSガイドライン;European Heart Journal(2016),37,67-119)。
【0109】
プロスタサイクリンは、主に内皮細胞によって産生され、全ての血管床の強力な血管拡張を誘導する。この化合物は、血小板凝集の最も強力な内因性阻害剤であり、細胞保護活性及び抗増殖活性の両方を有するようにも見える。プロスタサイクリン代謝経路の調節不
全は、肺動脈のプロスタサイクリン合成酵素の発現及びプロスタサイクリン尿代謝産物の低減によって評価されるPAHを有する患者に示されている。PAH患者におけるプロスタサイクリンの臨床使用は、異なる薬物動態特性を有するが、質的に類似した薬物動態効果を共有する安定した類似体の合成によって拡張された(ESC/ERS Guidelines;European Heart Journal(2016),37,67-119)。
【0110】
薬物薬物相互作用は、マシテンタン及びその活性代謝産物であるACT-132577については、今まで観察されなかった。
【0111】
例えば、o.d.1日当たり10mgのマシテンタンは、1mgのロスバスタチンの薬物動態に対するいかなる影響も示さず、これはBCRP輸送体が阻害されていないことを示唆する。BCRPは、腸、肝臓癌膜、及び腎臓に位置する流出ポンプであり、肝臓及び腎臓内の細胞内薬物濃度に曝露される。
【0112】
マシテンタン及びACT-132577は、それぞれ1.1~1.2μM及び7.2~8.7μMのEC50値を有するヒトPXRを活性化した。ヒト肝細胞において、両方の化合物は、CYP3A4 mRNA及び酵素活性の濃度依存性増加を誘導した。
【0113】
1日当たり75mgのPAH患者におけるマシテンタン及びACT-132577の予測ピーク血漿濃度は、PKサブ試験に基づいて、それぞれ約5μM及び14μMであると予想され、用量の線形性を仮定する。高度なタンパク質結合を考慮すると、遊離血漿濃度は、マシテンタンとACT-132577でそれぞれ、0.02μM~0.07μMの範囲であることが予想される。これらの非結合濃度のマシテンタン及びACT-132577は、肝臓又は腎臓におけるBCRPの任意の阻害、又は肝臓内のCYP3A4酵素の誘導をもたらす可能性は低い。
【0114】
したがって、マシテンタンの用量は、態様(n)において1日当たり60~90mgであってもよい。好ましくは、用量は1日当たり65~85mgであり、より好ましくは用量は1日当たり70~80mgであり、最も好ましくは用量は1日当たり75mgである。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの用量も開示される。更なる好ましい用量範囲は、1日当たり72~78mgである。
【0115】
更に、マシテンタンの用量は、1日当たり10mgから漸増し、続いて1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、続いて1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mg、任意に続いて、1日当たり100~200mg、好ましくは1日当たり150mgであってもよい。
【0116】
好ましい態様では、これらの組み合わせは、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0117】
(o)本発明の更なる態様は、態様(n)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、PDE5阻害剤は、シルデナフィジル、タダラフィル、バルデナフィル、及びウデナフィルから選択され、プロスタサイクリン類似体は、エポプロスチノール、トレプロスチニル、イロプロスト、及びベラプロストから選択され、プロスタサイクリン受容体アゴニストは、セレキシパグ及びラリーヌパグから選択され、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤は、リオシグアト及びビリシグアトから選択される。
【0118】
ここで、マシテンタンは、態様(a)~(l)及び(n)のいずれか1つに記載の投与又は投与レジメンを有する。好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0119】
好ましい態様では、これらの組み合わせは、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0120】
(p)本発明の更なる態様は、態様(n)又は(o)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、ここで、マシテンタンは、タダラフィル及び/又はセレキシパグ又はラリーヌパグと組み合わされる。好ましくは、マシテンタンは、タダラフィル及び/又はセレキシパグと組み合わされる。
【0121】
ここで、マシテンタンは、態様(a)~(k)及び(n)のいずれか1つに記載の投与又は投与レジメンを有する。好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0122】
好ましい態様では、これらの組み合わせは、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0123】
(q)本発明の更なる態様は、態様(p)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、タダラフィルは、適用可能であれば、1日当たり20~40mg、好ましくは1日当たり40mgの用量を有し、セレキシパグは、適用可能であれば、1日当たり2回0.2~1.6mgの用量を有し、ラリーヌパグは、適用可能であれば、1日当たり0.05~1.45mgの用量を有する。
【0124】
ここで、マシテンタンは、態様(a)~(k)及び(n)のいずれか1つに記載の投与又は投与レジメンを有する。好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0125】
好ましい態様では、これらの組み合わせは、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連する。
【0126】
(r)本発明の更なる態様は、マシテンタン及び少なくとも薬学的に許容される賦形剤を含むPAHの治療に使用するための医薬組成物に関し、20mg超~1日当たり300mg以下、例えば、20mg超~250mg未満、好ましくは37.5mg、75mg又は150mg、より好ましくは37.5mg又は75mg、最も好ましくは75mgの量のマシテンタンを含有する。
【0127】
マシテンタンは、態様(a)~(e)の毎日の用量のいずれか1つによる用量を有し得ることを理解されたい。
【0128】
好ましい態様では、医薬組成物は、軽度又は中程度のPAHの治療及び/又は予防に使用するためのものである。
【0129】
(s)本発明の更なる態様は、態様(r)による医薬組成物に関し、
i)医薬組成物の総重量に基づいて、総量が10~50重量%であるマシテンタンと、
ii)医薬組成物の総重量に基づいて、10~85重量%の総量で、微結晶セルロースを含むラクトース一水和物からなる充填剤と、
iii)医薬組成物の総重量に基づいて、1~10重量%の総量で、デンプングリコ
ール酸ナトリウム、又はデンプングリコール酸ナトリウムとポリビニルピロリドンとの組み合わせからなる崩壊剤と、
iv)医薬組成物の総重量に基づいて0.1~1重量%の総量でポリソルベートからなる界面活性剤と、
v)医薬組成物の総重量に基づいて、0.05~5重量%の総量である、ステアリン酸マグネシウムからなる潤滑剤と、を含む、医薬組成物。
【0130】
(t)本発明の更なる態様は、態様(r)又は(s)に記載の医薬組成物に関し、この医薬組成物は、カプセル又は錠剤の形態(特に、75mgのマシテンタンを含有する錠剤の形態)である。
【0131】
(u)本発明の更なる態様は、態様(a)~(q)のいずれか1つに記載のPAHの治療及び/又は予防に使用するためのマシテンタンに関連し、治療及び/又は予防は、PAHの罹患率及び/又は死亡リスクの低減を意味する。すなわち、本発明のこの態様は、PAHの罹患率及び/又は死亡リスクを低減する際に使用するためのマシテンタンに関連し、ここで、マシテンタンは、態様(a)~(q)のいずれか1つによる方法で使用される。
【0132】
PAHの罹患率及び/又は死亡リスクの低減は、例えば、以下の事象(一次終点)のベースラインから第1までの時間として定義される、EOT(治療終了)後7日までの最初の臨床的悪化までの時間までに、複合罹患率/死亡リスクの低減として評価することができる。
●死(全死亡率);
●肺高血圧関連入院(PAHの悪化のために、心房痙攣術、心臓移植を伴う又は伴わない肺移植、又は非経口プロスタサイクリンの開始を含む);
●PAHの悪化により、非経口的プロスタノイド療法の開始がもたらされ、
●肺高血圧関連疾患進行は以下のように定義され、
●ベースラインにおける機能クラスII及びIII患者について(両方の基準が満たされなければならない):
●ベースラインからの6分間歩行距離(6MWD)の減少が15%超であり、互いに2週間以内に2日目に実施された2つの6MWD試験によって確認され、
●追加のPAH療法の開始、又は、WHO機能クラスの悪化、
●ベースラインにおける機能クラスIV患者について(両方の基準が満たされなければならない):
●ベースラインからの6MWDにおける15%を超える減少が、互いに2週間以内に2日目に実施された2つの6MWD試験によって確認され、
●追加のPAH療法の開始。
【0133】
あるいは、PAHの罹患率及び/又は死亡リスクの低減は、別個に評価されてもよい。
【0134】
上記評価は、例えば、以下のスケジュールによって行われてもよい。
i)1日当たり10mgのマシテンタンの用量でのランイン期間(例えば、4週間);
ii)1日当たり37.5mgのマシテンタンの用量での滴定期間(例えば、4週間);
iii)1日当たり75mgのマシテンタンの用量を有する維持期間。
【0135】
上記評価は、例えば、滴定及び維持期間において1日当たり10mgのマシテンタンの用量を受けた対照群による二重盲検試験によって行われてもよい。
【0136】
PAHの罹患率及び/又は死亡リスクを低減するために、マシテンタンの用量は、1日
当たり60~90mgであり得る。好ましくは、用量は1日当たり65~85mgであり、より好ましくは用量は1日当たり70~80mgであり、最も好ましくは用量は1日当たり75mgである。上記で開示された下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち用量はまた、1日当たり60~85mg、60~80mg、又は60~75mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり65~90mg、又は65~75mgの用量も開示される。更なる好ましい用量範囲は、1日当たり72~78mgである。
【0137】
更に、マシテンタンの用量は、1日当たり10mg、続いて1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、続いて1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mg、任意に続いて、1日当たり100~200mg、好ましくは1日当たり150mgであってもよい。
【0138】
開示された全ての態様は、態様(a)~(q)及び(u)のいずれか1つによる使用のための薬剤の製造のために、マシテンタンの形態でも開示されるものとみなされるべきであることを理解されたい。
【0139】
(a’)本発明の一態様は、ヒトにおける肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防に使用する薬剤の製造のためのマシテンタンに関連し、マシテンタンの用量は、1日当たり20mg超~1日当たり300mg以下、例えば、1日当たり20mg超~1日当たり250mg未満である。態様(a)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0140】
(b’)本発明の他の態様は、態様(a’)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防に使用するための薬剤の製造のためのマシテンタンに関連し、PAHは軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHである。態様(b)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0141】
(c’)本発明の他の態様は、態様(a’)又は(b’)に記載のPAHの治療及び/又は予防に使用する薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり65~85mg、より好ましくは1日当たり70~80mg、最も好ましくは1日当たり75mgである。態様(c)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0142】
(d’)本発明の他の態様は、態様(a’)又は(b’)によるPAHの治療及び/又は予防に使用する薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、マシテンタンの用量は、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり30~45mg、より好ましくは1日当たり35~40mg、最も好ましくは1日当たり37.5mgである。態様(d)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0143】
(e’)本発明の他の態様は、態様(a’)又は(b’)によるPAHの治療及び/又は予防に使用する薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、マシテンタンの用量は、1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり125~175mg、より好ましくは1日当たり140~160mg、最も好ましくは1日当たり150mgである。態様(e)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0144】
(f’)本発明の他の態様は、態様(a’)又は(b’)によるPAHの治療及び/又は予防に使用する薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、マシテンタンの用量は、1日当たり2回60~90mg、好ましくは1日当たり2回65~85mg、より好ましくは1日当たり2回70~80mg、最も好ましくは1日当たり2回75mgである。態様(
f)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0145】
(g’)本発明の他の態様は、態様(a’)又は(b’)によるPAHの治療及び/又は予防に使用する薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、マシテンタンの用量は、1日当たり2回25~50mg、好ましくは1日当たり2回30~45mg、より好ましくは1日当たり2回35~40mg、最も好ましくは1日当たり2回37.5mgである。態様(g)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0146】
(h’)本発明の他の態様は、態様(a’)又は(b’)によるPAHの治療及び/又は予防に使用する薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、この場合、マシテンタンの用量は、1日当たり10mgから漸増され、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、及び任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgである。態様(h)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0147】
(i’)本発明の他の態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用する薬剤の製造のためのマシテンタンに関連し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり10mgから漸増され、続いて1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日2回37.5mgである。態様(i)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0148】
(j’)本発明の他の態様は、態様(h’)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するための薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、この場合、マシテンタンの用量は、1日当たり1回10mgから、好ましくは15~45日間漸増され、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり1回37.5mg、好ましくは15~45日間、及び任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mgである。態様(j)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0149】
(k’)本発明の他の態様は、態様(i’)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するための薬剤の製造のためのマシテンタンに関連し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり1回10mgから、好ましくは15~45日間漸増され、続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mgである。態様(k)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0150】
(l’)本発明の他の態様は、態様(a’)~(d’)のいずれか1つに記載のPAHの治療及び/又は予防に使用するための薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、マシテンタンの用量は、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、好ましくは15~45日間漸増され、任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgであり、患者が、好ましくはボセンタン及びアンブリセンタンから選択されるエンドセリン受容体拮抗薬で既に治療されている条件である。態様(l)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0151】
(m’)本発明の他の態様は、態様(a’)~(c’)のいずれか1つに記載のPAHの治療及び/又は予防に使用するための薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、マシテンタンの用量は、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgである。患者が、好ましくはボセンタン及びアンブリセンタンから選択されるエンドセリン受容体拮抗薬で既に治療されている条件である。態様(m)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0152】
(n’)本発明の他の態様は、態様(a’)~(m’)のいずれか1つに記載のPAHの治療及び/又は予防に使用するための薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、ここで、マシテンタンは、PDE5阻害剤及び/又はプロスタサイクリン類似体及び/又はプロスタサイクリン受容体アゴニスト及び/又は可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤と組み合わされる。態様(n)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0153】
(o’)本発明の他の態様は、態様(n’)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するための薬剤の製造のためのマシテンタンに関連し、PDE5阻害剤は、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、及びウデナフィルから選択され、プロスタサイクリン類似体は、エポプロスチノール、トレプロスチニル、イロプロスト、及びベラプロストから選択され、プロスタサイクリン受容体アゴニストは、セレキシパグ及びラリーヌパグから選択され、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤は、リオシグアト及びビリシグアトから選択される。態様(o)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0154】
(p’)本発明の他の態様は、態様(n’)又は(o’)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するための薬剤の製造のためのマシテンタンに関連し、ここで、マシテンタンは、タダラフィル及び/又はセレキシパグ又はラリーヌパグ、好ましくはタダラフィル及び/又はセレキシパグと組み合わされる。態様(p)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0155】
(q’)本発明の他の態様は、態様(p’)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するための薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、タダラフィルは、適用可能であれば、1日当たり20~40mg、好ましくは1日当たり40mgの用量を有し、セレキシパグは、適用可能であれば、1日当たり2回0.2~1.6mgの用量を有し、ラリーヌパグは、適用可能な場合、1日当たり0.05~1.45mgの用量を有する。態様(q)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0156】
(u’)本発明の他の態様は、態様(a’)~(q’)のいずれか1つに記載のPAHの治療及び/又は予防に使用するための薬剤の製造のためのマシテンタンに関連し、治療及び/又は予防は、PAHの罹患率及び/又は死亡リスクの低減を意味する。すなわち、本発明のこの態様は、PAHの罹患率及び/又は死亡リスクを低減する薬剤の製造のためのマシテンタンに関し、マシテンタンは、態様(a’)~(q’)のいずれか1つによる方法で投与される。態様(u)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0157】
態様(a)~(q)及び(u)のコメント及び詳細はまた、態様(a’)~(q’)及び(u’)にも適用されることを理解されたい。
【0158】
更に、開示された全ての態様(a)~(q)及び(u)は、治療方法の形態でも開示されるものとみなされるべきであることを理解されたい。
【0159】
(a”)本発明の一態様は、ヒトにおける肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防の方法に関し、この方法は、1日当たり20mg超~1日当たり300mg以下、例えば、1日当たり20mg超~250mg/日未満の用量で、それを必要とする被験者にマシテンタンを投与することを含む、方法に関する。態様(a)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0160】
(b”)本発明の他の態様は、PAHが軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHである、態様(a”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関する。態様(b)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0161】
(c”)本発明の他の態様は、態様(a”)又は(b”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関し、マシテンタンの用量が、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり65~85mg、より好ましくは1日当たり70~80mg、最も好ましくは1日当たり75mgである。態様(c)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0162】
(d”)本発明の他の態様は、態様(a”)又は(b”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関し、マシテンタンの用量が、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり30~45mg、より好ましくは1日当たり35~40mg、最も好ましくは1日当たり37.5mgである、肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関する。態様(d)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0163】
(e”)本発明の他の態様は、態様(a”)又は(b”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関し、マシテンタンの用量が、1日当たり110~200mg、好ましくは1日当たり125~175mg、より好ましくは1日当たり140~160mg、最も好ましくは1日当たり150mgである、肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関する。態様(e)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0164】
(f”)本発明の他の態様は、態様(a”)又は(b”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり2回60~90mg、好ましくは1日当たり2回65~85mg、より好ましくは1日当たり2回70~80mg、最も好ましくは1日当たり2回75mgである。態様(f)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0165】
(g”)本発明の他の態様は、態様(a”)又は(b”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり2回25~50mg、好ましくは1日当たり2回30~45mg、より好ましくは1日当たり2回35~40mg、最も好ましくは1日当たり2回37.5mgである。態様(g)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0166】
(h”)本発明の他の態様は、態様(a”)又は(b”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防の方法に関し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり10mgから漸増され、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、及び任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgである。態様(h)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0167】
(i”)本発明の他の態様は、態様(a”)又は(b”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防の方法に関し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり10mgから漸増され、続いて1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日2回37.5mgである。態様(i)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0168】
(j”)本発明の他の態様は、態様(h”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防の方法に関し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり1回10mgから、好ましくは15~45日間漸増され、続いて、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり1回37.5mg、好ましくは15~45日間、及び任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mgである。態様(j)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0169】
(k”)本発明の他の態様は、態様(i”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防の方法に関し、ここで、マシテンタンの用量は、1日当たり1回10mgから、好ましくは15~45日間漸増され,続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり1回75mg、又は1日当たり2回37.5mgである。態様(k)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0170】
(l”)本発明の他の態様は、態様(a”)~(d”)のいずれか1つによる肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防の方法に関し、マシテンタンの用量は、1日当たり25~50mg、好ましくは1日当たり37.5mg、好ましくは15~45日間漸増され、任意に続いて、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgであり、患者が、好ましくはボセンタン及びアンブリセンタンから選択されるエンドセリン受容体拮抗薬で既に治療されている条件である。態様(l)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0171】
(m”)本発明の他の態様は、態様(a”)~(c”)のいずれか1つによる肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防の方法に関し、マシテンタンの用量は、1日当たり60~90mg、好ましくは1日当たり75mgである。患者が、好ましくはボセンタン及びアンブリセンタンから選択されるエンドセリン受容体拮抗薬で既に治療されている条件である。態様(m)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0172】
(n”)本発明の他の態様は、態様(a”)~(m”)のいずれか1つによる肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関し、ここで、マシテンタンは、PDE5阻害剤及び/又はプロスタサイクリン類似体及び/又はプロスタサイクリン受容体アゴニスト及び/又は可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤と組み合わされる。態様(n)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0173】
(o”)本発明の他の態様は、態様(n”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防の方法に関し、PDE5阻害剤は、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、及びウデナフィルから選択され、プロスタサイクリン類似体は、エポプロスチノール、トレプロスチニル、イロプロスト、及びベラプロストから選択され、プロスタサイクリン受容体アゴニストは、セレキシパグ及びラリーヌパグから選択され、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤は、リオシグアト及びビリシグアトから選択される。態様(o)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0174】
(p”)本発明の他の態様は、態様(n”)又は(o”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関し、ここで、マシテンタンは、タダラフィル及び/又はセレキシパグ又はラリーヌパグ、好ましくはタダラフィル及び/又はセレキシパグと組み合わされる。態様(p)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0175】
(q”)本発明の他の態様は、態様(p”)による肺動脈高血圧症(PAH)の治療及び/又は予防方法に関し、ダラフィルは、適用可能であれば、1日当たり20~40mg、好ましくは1日当たり40mgの用量を有し、セレキシパグは、適用可能であれば、1日当たり2回0.2~1.6mgの用量を有し、ラリーヌパグは、適用可能であれば、1日当たり0.05~1.45mgの用量を有する。態様(q)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0176】
(u”)本発明の他の態様は、態様(a”)~(q”)のいずれか1つによるPAHの治療及び/又は予防の方法に関し、治療及び/又は予防は、PAHの罹患率及び/又は死亡リスクの低減を意味する。すなわち、本発明のこの態様は、PAHの罹患率及び/又は死亡リスクを低減する方法に関し、この方法では、マシテンタンは、態様(a”)~(q
”)のいずれか1つによる方法で投与される。態様(u)の開示は、同様に適用されることを理解されたい。
【0177】
態様(a)~(q)のコメント及び詳細はまた、態様(a”)~(q”)及び(u”)にも適用されることを理解されたい。
【0178】
本発明の更なる態様によれば、上記の態様のそれぞれにおいて、すなわち、(a)~(t)及び(u)、(a’)~(q’)及び(u’)並びに(a”)~(q”)及び(u”)のそれぞれにおいて、マシテンタンは、その活性代謝産物に置き換えることができ、コードネームACT-132577及び国際一般名アプロシテンタンで知られている。これは、化学式を有する。
【0179】
【化2】
これにより、任意の重量のマシテンタンが、5倍重量のアプロシテンタンで置換される。
【0180】
例えば、上記の本発明の態様(c)をとると、本発明の更なる態様は、態様(a)又は(b)によるPAHの治療及び/又は予防に使用するためのアプロシテンタンに関し、マシテンタンアプロシテンタンの重量は、アプロシテンタンの5倍の重量に置き換えられ、アプロシテンタンの重量は、1日当たり300~450mgである。好ましくは、アプロシテンタンの用量は、1日当たり325~425mgであり、より好ましくは、アプロシテンタンの用量は1日当たり350~400mgであり、最も好ましくは、アプロシテンタンの用量は、1日当たり375mgである。上記で開示の下限のそれぞれは、上限のそれぞれと組み合わされてもよく、すなわち、アプロシテンタンの用量はまた、1日当たり300~425mg、300~400mg、又は300~375mgであってもよいことを理解されたい。また、1日当たり325~450mg、又は325~375mgのアプロシテンタンの用量も開示される。更に好ましい範囲は、1日当たり360~390mgのアプロシテンタンである。より好ましい態様によると、これらの用量のアプロシテンタンは、1日1回適用される。好ましい態様では、これらの用量は、軽度又は中程度のPAH、好ましくは中程度PAHの治療及び/又は予防に使用するためのアプロシテンタンに関する。
【0181】
また、本明細書では、以下の略語が使用される。
略語:
APAH-CTD 結合組織疾患に関連するPAH
APAH-PoPH 門脈肺高血圧症に関連するPAH
aq. 水溶液
BNP 脳性ナトリウム利尿ペプチド
BPM 1分当たりのBPM拍動
CI 心指数
DLCO CO(一酸化炭素)の肺の拡散容量
EDTA エチレンジアミン四酢酸
ERA エンドセリン受容体拮抗薬
ET エンドセリン
FPAH 家族性PAH
HR 心拍数
IgG 免疫グロブリンG、
K2EDTAエチレンジアミン四酢酸二カリウム塩
mPAP=平均肺動脈圧
6MWD 6分間歩行距離
NT-proBNP N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド
PAH 肺動脈高血圧症
PAOP PAWPと同義であるPAOP肺動脈閉塞圧
PAWP PAOPと同義であるPAWP肺毛細管楔入圧
PAP 肺動脈圧
PBS リン酸緩衝生理食塩水、
PD 薬力学
PDE5 環状グアノシン3’,5’-一リン酸(cGMP)ホスホジエステラーゼ型5PDE5はPDE5阻害剤である
PH 肺高血圧症
PK 薬物動態
PVR 肺血管抵抗
RRAP 右動脈圧(時にはmRAPとも呼ばれる)
RHC 右心臓カテーテル法
SBP 収縮期全身血圧
SvO2 混合静脈酸素飽和
トリス: トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;
WHO 世界保健機関
WHO FC 世界保健機関機能クラス
【0182】
実験部分
本発明を、以下の非限定的実施例によって更に説明する。
【実施例0183】
ヘモグロビン濃度の減少に対するマシテンタンの効果
健康なボランティアにおける3相I臨床研究からヘモグロビン測定値をプールした。
●研究AC-055~102:男性被験者におけるマシテンタンのPK、PD、安全性及び忍容性の調査(試験プロトコルは、健康な被験者における漸増多重投与試験における、エンドセリン受容体拮抗薬であるマシテンタンの安全性、耐容性、薬物動態。J.Clin.Pharmacol.(2013),53(11):1131-1138に記載)
●研究AC-055-116:男性の被験者におけるマシテンタンのPK、PDの調査、安全性及び忍容性(研究プロトコルは、以下の刊行物に記載されている:健康な日本人男性被験者における、新しいエンドセリン受容体拮抗薬であるマシテンタンの忍容性、安全性、薬物動態、及び薬力学。臨床薬理・治療学の臨床薬理/日本ジャーナル(2016),47,143-150)
●研究AC-055-117:男性の韓国人被験者におけるマシテンタンのPK、PD
、安全性及び忍容性の調査(研究プロトコルは、次の出版物に記載されている:Ahn et al、健康な韓国人被験者に複数回投与した後の、新しいエンドセリン受容体拮抗薬であるマシテンタンの薬物動態-薬力学的関係、Am.J.Cardiovasc.Drugs(2014)、14(5)、377-385)
【0184】
マシテンタン治療の11日目の朝、及び1日目のベースラインで測定されたヘモグロビン濃度を分析に使用した。ベースラインと比較したヘモグロビン濃度の変化は、プラセボを含む、異なる用量レベルのマシテンタンに対して退行した。
【0185】
ベースラインを有するEmax曲線を当てはめ、以下のパラメータを非線形回帰によって推定した。
●E0:マシテンタンなしのヘモグロビンの変化
●Emax:ヘモグロビンの最大変化は、理論的には、マシテンタンにより誘発され得る。
●ED50:ヘモグロビンの50%減少をもたらす用量
【0186】
以下の式を使用した。
ヘモグロビンの変化=E0+((マシテンタン用量×Emax)/(マシテンタン用量+ED50))
【0187】
【0188】
分析に基づいて、ヘモグロビン減少に対するマシテンタンの最大効果は、約1.23g/dLであり、ヘモグロビンへのマシテンタンの効果は、既に10mg用量でプラトーを減少させる(
図1を参照)。したがって、ヘモグロビンの臨床的に関連する減少は、ヒトにおける10mgの用量のマシテンタンよりも予測されない。