(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105461
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20240730BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240730BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240730BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240730BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20240730BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240730BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240730BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/60
A61K8/04
A61Q1/00
A61Q5/00
A61K8/46
A61K8/39
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024076313
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2021552616の分割
【原出願日】2020-03-09
(31)【優先権主張番号】62/815,314
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511299355
【氏名又は名称】イノレックス インベストメント コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルゴ ロッコ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】チェン メイ
(72)【発明者】
【氏名】フェボラ マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】モッサー ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ピーズ ブリタニー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アミノ酸ベースのカチオン性エステルと、非イオン性両親媒性物質と、無水緩衝剤とを含む自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物を提供する。
【解決手段】一実施形態において、組成物は、水性溶媒中に分散又は溶解されると、約4を超えるpHを有する溶液/分散液を結果としてもたらす。アミノ酸ベースのカチオン性エステルは、(i)非極性側鎖、及び酸で中和されたアミン基を有するアミノ酸と、(ii)長鎖脂肪アルコールとの反応生成物であり得る。また、自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物を作製する方法であって、アミノ酸ベースのカチオン性エステルと、非イオン性両親媒性物質と、無水緩衝剤とを混ぜ合わせることを含む、方法も本発明の範囲内に含まれる。得られる組成物は無水固体形態で存在する。アミノ酸ベースのカチオン性エステルを含有する処方物及び/又はそれを含む組成物も提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AABCと、非イオン性両親媒性物質と、無水緩衝剤とを含む自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物。
【請求項2】
前記組成物が水性溶媒中に分散又は溶解されると、得られた溶液/分散液は、約4を超えるpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記AABCは、非極性側鎖を有し、アミン基が酸で中和されているアミノ酸と、(ii)長鎖脂肪アルコールとの反応生成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
中和する酸は、エタンスルホン酸である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記アミノ酸は、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、及び/又はそれらの混合物から選択され、かつ前記脂肪アルコールは、ヤシ油、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ブラシシルアルコール、及びそれらの混合物から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記AABCは、ブラシシルバリンエシレート、セチルバリンエシレート、セテアリルバリンエシレート、ステアリルバリンエシレート、イソステアリルバリンエシレート、ベヘニルバリンエシレート、オクチルドデシルバリンエシレート、デシルテトラデシルバリンエシレート、ブラシシルイソロイシンエシレート、セチルイソロイシンエシレート、セテアリルイソロイシンエシレート、ステアリルイソロイシンエシレート、イソステアリルイソロイシンエシレート、ベヘニルイソロイシンエシレート、オクチルドデシルイソロイシンエシレート、デシルテトラデシルイソロイシンエシレート、ブラシシルバリンエシレート、ブラシシルイソロイシンエシレート、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記非イオン性両親媒性物質は、脂肪アルコール、脂肪グリセリルエステル、脂肪グリコールエステル、ポリグリセロールの脂肪エステル、メチルグルコースの脂肪エステル、ソルビタンの脂肪エステル、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記非イオン性両親媒性物質は、約10個~約35個の炭素原子を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記非イオン性両親媒性物質は、ブラシカアルコールであり、かつ前記AABCは、ブラシシルバリンエシレート及びブラシシルイソロイシンエシレートから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記無水緩衝剤は、グルコン酸のアルカリ金属塩、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、無水固体形態で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物を作製する方法であって、AABCと、非イオン性両親媒性物質と、無水緩衝剤とを混ぜ合わせることを含み、ここで、得られる組成物が無水固体形態で存在する、方法。
【請求項13】
前記AABCは、非極性側鎖を有し、アミン基が酸で中和されているアミノ酸と、(i
i)長鎖脂肪アルコールとの反応生成物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アミノ酸は、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、及び/又はそれらの混合物から選択され、かつ前記脂肪アルコールは、ヤシ油、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ブラシシルアルコール、及びそれらの混合物から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記AABCは、ブラシシルバリンエシレート、セチルバリンエシレート、セテアリルバリンエシレート、ステアリルバリンエシレート、イソステアリルバリンエシレート、ベヘニルバリンエシレート、オクチルドデシルバリンエシレート、デシルテトラデシルバリンエシレート、ブラシシルイソロイシンエシレート、セチルイソロイシンエシレート、セテアリルイソロイシンエシレート、ステアリルイソロイシンエシレート、イソステアリルイソロイシンエシレート、ベヘニルイソロイシンエシレート、オクチルドデシルイソロイシンエシレート、デシルテトラデシルイソロイシンエシレート、及びそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記AABCは、ブラシシルバリンエシレート、ブラシシルイソロイシンエシレート、及びそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記非イオン性両親媒性物質は、脂肪アルコール、脂肪グリセリルエステル、脂肪グリコールエステル、ポリグリセロールの脂肪エステル、メチルグルコースの脂肪エステル、ソルビタンの脂肪エステル、及びそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記非イオン性両親媒性物質は、ブラシカアルコールであり、かつ前記AABCは、ブラシシルバリンエシレート及びブラシシルイソロイシンエシレートから選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記無水緩衝剤は、グルコン酸のアルカリ金属塩、グルコン酸のアルカリ土類金属塩、及びそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の自己中和型のAABC組成物と、少なくとも1種の添加剤とを含む処方物。
【請求項21】
前記添加剤は、水、エモリエント、保湿剤、コンディショニング剤、キレート化剤、pH調整剤、芳香剤、着色剤、角質除去剤、酸化防止剤、シリカ、植物抽出物、界面活性剤、及びそれらの混合物から選択される、請求項20に記載の処方物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、「Self-Neutralizing Amino-Acid Based Cationic Compositions」という名称の2019年3月7日に出願された米国仮特許出願第62/815,314号に対する、米国特許法第119条(e)項に基づく優先権を主張するものであり、その開示全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
中和アミノ酸エステルである非石油化学由来のカチオン性乳化剤は、Burgoの特許文献
1及びその関連出願に記載され、特許の保護が請求されている。Burgoのこれらのアミノ
酸ベースのカチオン性エステル(以下、「AABC」)は、無水形態として、すなわち、それほど多量の水を含まない、例えば、水が約5重量%未満である形態として供給され得る。
【0003】
BurgoのAABC組成物は、アミノ酸エステルをカチオンに荷電した化学種にする強有
機酸、例えばエタンスルホン酸(ESA)によってアミノ基が中和されているアミノ酸エステルから主に構成されている。AABC組成物はまた、少量、例えば2重量%未満の未反応アミノ酸、例えばイソロイシン又はバリンを含み得て、これらはまた強有機酸によって中和され、強酸性塩、例えばイソロイシンエシレート又はバリンエシレートを生ずる。
【0004】
BurgoのAABC組成物は、水性媒体中に溶解又は分散されると、かなり低いpH値、
例えばpH<3.0を有する水性組成物を生ずる傾向にある。理論に縛られることを望むものではないが、これらの低いpH値は、AABCが強酸及び弱塩基の塩であるという事実に起因すると考えられている。アニオン、すなわち強酸の共役塩基は傍観イオンとなり、プロトンを引き付けることができないのに対して、弱塩基からのカチオンはプロトンを水に供与してヒドロニウムイオン(H3O+)を形成するため、溶液のpH値を下げる。さらに、AABC組成物中に未反応の副生成物として存在する強酸性アミノ酸塩、例えばイソロイシンエシレート又はバリンエシレートもまた、溶液のpHを下げることに寄与することとなる。
【0005】
このような低いpH値は、多くの用途、特にほとんどの製品がpH≧4.0で処方されるパーソナルケア及び化粧品においては望ましくない。こうして以前は、AABCを用いて作製された処方物には、適切な塩基を使用して慎重で時間のかかるpH調整を行い、所望の範囲内の安定したpH値を達成することが必要とされていた。例えば、文献で報告される皮膚pHの典型的な値はpH4.5~pH5.0の範囲であり、これが、典型的には、皮膚で局所使用されるパーソナルケア製品に関連する望ましいpH値である。例えば、非特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J. W. Weichers, Formulating at pH 4-5: How Lower pH Benefits the Skin and Formulations, Cosmetics & Toiletries, 2008, 123(12), 61-70
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
処方物に含まれる場合にパーソナルケア製品及び化粧製品に適したpHを有する溶液/分散液を結果としてもたらすアミノ酸ベースのカチオン性エステルが、依然として当該技術分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載される発明は、アミノ酸ベースのカチオン性エステルと、非イオン性両親媒性物質と、無水緩衝剤とを含む自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物を含む。一実施の形態において、該組成物は、水性溶媒中に分散又は溶解されると、約4を超えるpHを有する溶液/分散液を結果としてもたらす。
【0010】
アミノ酸ベースのカチオン性エステルは、(i)非極性側鎖、及び酸で中和されたアミン基を有するアミノ酸と、(ii)長鎖脂肪アルコールとの反応生成物であり得る。
【0011】
また、自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物を作製する方法であって、アミノ酸ベースのカチオン性エステルと、非イオン性両親媒性物質と、無水緩衝剤とを混ぜ合わせることを含む、方法も本発明の範囲内に含まれる。得られる組成物は無水固体形態で存在する。
【0012】
アミノ酸ベースのカチオン性エステルを含有する処方物及び/又はそれを含む組成物も開示されている。
【0013】
上記の概要及び以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付の図面と一緒に読むことでより良く理解され得る。
【0014】
本発明は、示された設備及び機器そのものに制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例4~実施例6及び比較例4~比較例6の組成物におけるAABCブレンドの重量%に対する水性組成物のpHを示す図である。
【
図2】本発明に従って作製された自己中和型のAABC組成物を15%含む本発明の例示的な処方物の偏光顕微鏡写真(400倍の倍率)である。
【
図3】ブラシシルバリンエシレートを含むラメラLC系についてのSAXSデータを示す図である。
【
図4】ブラシシルイソロイシンエシレートを含むラメラLC系についてのSAXSデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、水中に溶解又は分散させることで、塩基の添加によるpH調整の必要性を排除して所望のpH値(約3.5~約7)を有する水性組成物を得ることができる自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物を提供する。本発明はまた、自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物を作製する方法、及び自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物を含む組成物を作製する方法を提供する。
【0017】
本明細書に記載される自己中和型のアミノ酸ベースのカチオン性組成物は、アミノ酸ベースのカチオン性エステル、すなわち、中和アミノ酸エステルと、非イオン性両親媒性物質と、無水緩衝剤(以下、「ABA」)とを含む。各成分は、独立して、単一の形態(例えば、1種類のアミノ酸ベースのカチオン性エステル)で、又は混合物(例えば、2種以上のアミノ酸ベースのカチオン性エステルの混合物)として組成物中に存在し得る。組成物の個々の成分の詳細を以下に示す。水等の水性溶媒中に分散又は溶解させると、得られ
る溶液/分散液は、約3.5を超える、約3.5~約7、約4~約6.5、約4~約5.5、又は約4~約5のpHを有する。
【0018】
本明細書に記載される自己中和型のAABC組成物での使用のために、Burgoに記載さ
れる中和アミノ酸エステル(すなわち、アミノ酸ベースのカチオン性エステル)(以下、「AABC」)が使用され得る。Burgoの内容は、引用することにより本明細書に取り入
れられ、これは参考までに付録Aで提供されている。概して、このようなAABCは、(i)非極性側鎖を有し、アミン基が酸で中和されているアミノ酸を、(ii)長鎖脂肪アルコールによりエステル化することで作製され得る。AABCは、式(I):
【化1】
の構造によって表され得る。
【0019】
(I)において、R1は、分岐状又は直鎖状であり得るアルキル基を表す。そのアルキル基は、1個~10個の炭素原子、又は2個~6個の炭素原子を有し得る。R2は、直鎖状又は分岐状であり得る炭素鎖を表す。その炭素鎖は、10個~50個の炭素原子、又は24個~32個の炭素原子を含み得る。R2の鎖は、少なくとも1個の不飽和炭素原子を含み得る。一実施形態において、R2は、8個~24個の炭素原子を有するアルキル基である。X-は、アミノ酸エステルを中和するのに使用される酸の共役塩基を表す。
【0020】
AABCを形成するアミノ酸としては、あらゆる中性のアミノ酸が挙げられる。一実施形態において、該アミノ酸には、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン及びL-イソロイシンを選択することができる。本発明の幾つかの実施形態において、該アミノ酸は、L-イソロイシン及びL-バリンであることが特に好ましい。他の選択肢としては、任意のα,ω-アミノアルキルカルボン酸、例えば、11-アミノウンデカン酸又は12-アミノドデカン酸が挙げられ得る。
【0021】
本発明のエステルを得るには、アミノ酸のアミン基を酸で中和し、長鎖脂肪アルコールと反応させる。適切な脂肪アルコールは、直鎖状及び/又は分岐状であり得て、さらに飽和及び/又は不飽和であり得る。脂肪アルコールは、約10個~約50個、又は約24個~約32個の炭素原子を含むことが好ましい場合がある。一実施形態において、約12個~約22個の炭素原子を含む直鎖状及び/又は分岐状の脂肪アルコールが好ましい場合がある。別の実施形態において、約16個~約24個の炭素原子を含む直鎖状の脂肪アルコールが好ましい。
【0022】
好適な脂肪アルコールの例としては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、及びそれらの混合物又は組合せが挙げられる。脂肪アルコールは、非石油化学起源から誘導されることが望ましい。一実施形態において、AABCは、アミノ酸と脂肪アルコールとの反応生成物であり、ここで、アミノ酸は、L-アラニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、及び/又はそれらの混合物であり、脂肪酸は、ヤシ油(様々な長鎖脂肪酸の混合物を含む)、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、及び/又はブラシシルアルコール(任意に水素化されている)である。本明細書で使用されるブラシカアルコールは、C18脂肪アルコール、C20脂肪アルコール、及びC22脂肪アルコールを含む又はこれらを主に含
むアブラナ科の植物に由来する種子油から生成される脂肪アルコールとして定義される。
【0023】
幾つかの実施形態において、AABCは、好ましくは25℃で固体である、エタンスルホン酸で中和されたL-バリン又はL-イソロイシンであるアミノ酸との脂肪アルコールエステルであることが好ましい場合がある。このようなAABCは、例えば、ブラシシルバリンエシレート、セチルバリンエシレート、セテアリルバリンエシレート、ステアリルバリンエシレート、イソステアリルバリンエシレート、ベヘニルバリンエシレート、オクチルドデシルバリンエシレート、デシルテトラデシルバリンエシレート、ブラシシルイソロイシンエシレート、セチルイソロイシンエシレート、セテアリルイソロイシンエシレート、ステアリルイソロイシンエシレート、イソステアリルイソロイシンエシレート、ベヘニルイソロイシンエシレート、オクチルドデシルイソロイシンエシレート、デシルテトラデシルイソロイシンエシレート、最も好ましくは、ブラシシルバリンエシレート、及び/又はブラシシルイソロイシンエシレートを含むことができる。
【0024】
AABCは、当該技術分野で知られる又は開発されたあらゆる方法によって合成され得る。しかしながら、合成の実例はBurgoに示されており、これは引用することにより本明
細書の一部をなす。
【0025】
上記組成物はまた、少なくとも1種の非イオン性両親媒性物質を含み、選択された非イオン性両親媒性物質は、25℃で固体のものであることが好ましい場合がある。幾つかの実施形態において、非イオン性両親媒性物質は、約10個~約35個の炭素原子、約15個~約30個の炭素原子、及び約16個~約24個の炭素原子を含み得る。例示的な非イオン性両親媒性物質としては、以下のものが挙げられ得る:
【0026】
脂肪アルコール、例えば12個以上の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の脂肪アルコール等(例としては、ラウリル、ミリスチル、セチル、セテアリル、ステアリル、イソステアリル、オレイル、アラキジル、ベヘニル、オクチルドデシル、デシルテトラデシル、ヤシアルコール、パームアルコール、パーム核アルコール、ブラシカアルコール、水添ナタネアルコールが挙げられる);好ましくは16個以上の炭素原子を有する直鎖脂肪アルコール;最も好ましくはブラシカ、セチル、セテアリル、ステアリル又はベヘニルアルコール;
【0027】
脂肪グリセリルエステル、例えばグリセロールと、12個以上の炭素原子を有する1つ以上の脂肪酸とのエステルを含むグリセロールのモノエステル、ジエステル若しくはトリエステル、又はそれらの混合物等、例えば、ラウリン酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、パーム脂肪酸グリセリル、セスキステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリルse、ベヘン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ブラシカグリセリド、水添ナタネグリセリド、水添ココ-グリセリド、水添C12~18グリセリド、水添パームグリセリド、水添ダイズグリセリド等;好ましくはブラシカグリセリド;
【0028】
脂肪グリコールエステル、例えばエチレングリコールのモノエステル若しくはジエステル、又はそれらの混合物等;エチレングリコールと、12個以上の炭素原子を有する1つ以上の脂肪酸とのエステル、例えばステアリン酸グリコール、ジステアリン酸グリコール、ベヘン酸グリコール、ジベヘン酸グリコール;
【0029】
ポリグリセロールの脂肪エステル、例えば、ポリグリセリルエステル等は、2個~10個のグリセリル反復単位の平均重合度を有し、約12個~約24個の炭素原子のアシル基(ここで、アシル基としては、ラウロイル、ココイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、アラキドノイル、ベヘノイル、及びブラシコイル(brassicoyl)が挙げられ
得る)を有するポリグリセロールのモノアシル又はポリアシルエステル(例えば、ポリグリセリル鎖1本当たり平均1.5個~10個のエステル基を有する)等、例えば、ステアリン酸ポリグリセリル-3、ステアリン酸ポリグリセリル-3SE、ステアリン酸ポリグリセリル-4、ステアリン酸ポリグリセリル-10、セスキステアリン酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-4、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ベヘン酸ポリグリセリル-3、トリベヘン酸ポリグリセリル-5、テトラベヘン酸ポリグリセリル-6、ジステアリン酸ポリグリセリル-2、ジステアリン酸ポリグリセリル-3、ジステアリン酸ポリグリセリル-6、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、パルミチン酸ポリグリセリル-2、パルミチン酸ポリグリセリル-3、パルミチン酸ポリグリセリル-4、パルミチン酸ポリグリセリル-6、ジパルミチン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-5、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-7、ラウリン酸ポリグリセリル-8、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-2、ミリスチン酸ポリグリセリル-3、ミリスチン酸ポリグリセリル-4、ミリスチン酸ポリグリセリル-5、ミリスチン酸ポリグリセリル-6、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、及びペンタミリスチン酸ポリグリセリル-5等である;
【0030】
メチルグルコースグルコースの脂肪エステル、例えば、約12個~約24個の炭素原子のアシル基(ここで、アシル基としては、ラウロイル、ココイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、アラキドノイル、ベヘノイル、及びブラシコイルが挙げられ得る)の場合、メチルグルコースのモノアシル又はポリアシルエステル(例えば、メチルグルコース単位1つ当たり平均1.5個~3個のエステル基を有する)のようなメチルグルコースエステル等、例えば、メチルグルコースジオレエート、メチルグルコースイソステアレート、メチルグルコースラウレート、メチルグルコースセスキカプリレート/セスキカプレート、メチルグルコースセスキココエート、メチルグルコースセスキイソステアレート、メチルグルコースセスキラウレート、メチルグルコースセスキオレエート、及びメチルグルコースセスキステアレート等;
【0031】
ソルビタンの脂肪エステル、例えば約12個~約24個の炭素原子のアシル基(例としては、ラウロイル、ココイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、アラキドノイル、ベヘノイル、及びブラシコイルが挙げられる)を有するソルビタンのモノアシル又はポリアシルエステル(例えば、メチルグルコース単位1つ当たり平均1.5個~4個のエステル基を有する)等。例としては、ソルビタンココエート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンラウレート、ソルビタンオレエート、ソルビタンオリベート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンパルメート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタンステアレート、ソルビタントリオレート、及びソルビタントリステアレートが挙げられる。
【0032】
上記組成物は、無水緩衝剤(「ABA」)を更に含む。緩衝剤等の本明細書の材料を「無水」と記載することにより、該材料は、加水を実質的に含まない、好ましくは約5%未満の水、より好ましくは約4%未満の水、更により好ましく約2%未満の水、最も好ましくは約1.5%未満の水を含むと解釈される。無水の材料は、例えば、周囲湿分の吸収、又は加工条件、例えば洗浄に続く不完全な乾燥からの少量の偶発的な水を含み得る。幾つかの実施形態において、ABAは、粒状形態又は粉末形態で存在することが好ましく、例えば、ABAは、小さい粒子サイズ、好ましくは約100μm未満の粒子サイズを有する微細化された固体である。
【0033】
本発明の組成物で使用するのに適したABAとしては、当該技術分野で既知の若しくは開発されたあらゆるもの、又はそれらの組合せが挙げられる。様々な実施形態において、ABAは、AABC組成物が水中に溶解されるときに水溶液のpHを維持することができ
る材料である。
【0034】
粉末形態において、ABAが、約100μm未満、好ましくは約75μm未満、より好ましくは約50μm未満、更により好ましくは約25μm未満の平均粒子サイズを有する易流動性の固体であり得る場合に、或る特定の実施形態においては、平均粒子サイズは約20μm未満である。多くの実施形態において、小さな粒子サイズの粉末形態を使用して、溶融状態での加工の間に、かつ冷却して固化させる過程の間に、組成物全体にわたるABAの均一な分散の維持を容易にすることで、緩衝剤が全体にわたって均質に分散された固体形態を得ることができる。
【0035】
様々な実施形態において、選択されるABAは、強塩基及び弱有機酸の塩であり得て、例えば、ここで、強塩基は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等であり、かつ弱酸はグルコン酸、クエン酸、乳酸等である。
【0036】
本発明の組成物に使用される例示的なABAとしては、例えば、グルコン酸のアルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩、例えばグルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウムが挙げられる。
【0037】
作製されると、本発明の組成物は、任意の相対量で上記の2種/3種の成分のいずれかを含み得て、そのような相対量は、当該技術分野で理解されるように、例えば、製造パラメーター、組成物の企図される最終用途等を含む幾つかの要因に応じて変動し得る。このように、相対量の変動は、当業者による日常的な事項である。
【0038】
しかしながら、本発明の説明のために、AABCが、それぞれ組成物全体の重量に対して、約10重量%~約70重量%、約12重量%~約60重量%、約15重量%~約55重量%、又は約20重量%~約50重量%の量で組成物中に存在することが示唆される。
【0039】
幾つかの実施形態において、ABAは、それぞれ組成物全体の重量に対して、約2重量%~約25重量%、約4重量%~約20重量%、約6重量%~約15重量%、又は約8重量%~約12重量%の量で組成物中に含まれ得る。
【0040】
多くの実施形態において、組成物の残部は、選択された非イオン性両親媒性物質(複数の場合もある)から構成され得る。本発明の組成物に他の成分が含まれる場合に、選択された非イオン性両親媒性物質(複数の場合もある)は、それぞれ組成物全体に対して、少なくとも約10重量%、約15重量%~約70重量%、幾つかの実施形態において、好ましくは約20重量%~約40重量%の量で存在し得る。
【0041】
様々な実施形態において、存在する非イオン性両親媒性物質の量にかかわらず、組成物中のAABC対ABAの比は、(i)重量基準(重量%:重量%)で、約1:2~約1:8、約1:2~約1:6、約1:2~約1:4、若しくは約1:2~1:3、又は(ii)モル基準で、約1:1~約1:5、約1:1~約1:4、約1:1~約1:3、若しくは約1:1~約1:2であり得る。幾つかの実施形態において、AABC対無水緩衝剤のモル比は、1:1又は1:2であり得る。
【0042】
上記組成物は、多くの実施形態において、無水形態、好ましくは無水固体形態で存在する。
【0043】
自己中和型のAABC組成物は、他の成分を含み得る。そのような成分は、好ましくは粉末形態で存在する、及び/又は無水でもある。例としては、水溶性ポリマー又はガム、例えばグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーガム
、ポリクアテルニウム-10、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、グアーガム、カシアガム等;キレート化剤、例えばEDTA四ナトリウム、EDTA二ナトリウム、グルタミン酸二酢酸四ナトリウム等;及び双性イオン界面活性剤、例えばコカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ラウラミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0044】
自己中和型のAABC組成物はまた、例えば、植物由来のトリグリセリド、すなわち、油及びバター、並びに好ましくは非石油化学由来のワックス及びワックスエステル等の、溶融相で組成物中に組み込むことができる他の固体成分又は半固体成分を含み得る。酢酸トコフェロール又はパルミチン酸アスコルビル等の酸化防止剤を含む他の治療用又は化粧用の有益な作用物質を、自己中和型のAABC組成物に添加することもできる。
【0045】
本発明の自己中和型のAABC組成物は、当該技術分野で既知の又は開発されたあらゆる方法によって作製され得る。しかしながら、例示を目的として、一般的な製造方法は、以下の通りである:AABC及び非イオン性両親媒性物質を、完全に溶融されるまで加熱し混合して、均質な溶融混合物を形成する。好ましくは剪断下で、無水緩衝剤を溶融混合物中に分散させて、溶融混合物中に粉末の均一な分散をもたらす。この分散は、溶融状態にありながら均質に保たれることが保証されるように、加工の間に加熱下及び剪断下で維持される。
【0046】
一実施形態において、加工の間に、ABAが、例えば沈降により沈殿しないことが保証されるように注意を払うべきである。均質な混合物は、例えば機械式混合機で一定の剪断を加えることによって維持され得る。より大きな容器においては、ポンピング及びインライン剪断混合による内容物の再循環に機械式混合を組み合わせることで、溶融混合物中のABAの均質な分散を維持することができる。
【0047】
次に、溶融混合物を冷却する。所望であれば、後続の製造後の取り扱い及び加工の利便性を高めることが望まれるのであれば、そのために固体に至らしめることができる。幾つかの実施形態において、上記組成物は、例えば、フレーク化、錠剤化(pastillation)、噴射造粒、ビーズ化(beading)、押出、及びペレット化等のような様々な製造後プロセ
スに供され得る。例えば、混合物を、冷却された表面上に薄い層で展延し、冷却及び固化させ、得られた固体シートを小さな破片(フレーク)に砕き、その後の処方物への配合のために貯蔵することができる。冷却及び固化の過程は、例えばフレークごとに又は錠剤(pastille)ごとに、かつ大規模な連続運転装置で行われる場合には運転の開始から運転の終わりまで、固体形態において均一で均質な緩衝剤の分布が存在することが保証されるように優先的に構成される。したがって、冷却及び固化は、溶融混合物におけるABA粒状物の沈殿速度(つまり、沈降速度)よりもはるかに速い時間尺度で行われなければならない。
【0048】
本発明の組成物を、多くの消費者用及び工業用の最終処方物、例えば、パーソナルケア、在宅ケア及び施設ケア、医薬品、獣医医療、口腔ケア、テキスタイルケア、金属加工、食品加工、並びに工業用途のための処方物へと組み込むことができる。
【0049】
本発明の一実施形態において、上記組成物を少なくとも1種の他の成分とともに組み込むことで、パーソナルケア処方物等の処方物が形成される。適切な添加成分としては、ヒト用処方物での使用に許容可能な、水、界面活性剤、エモリエント、保湿剤、毛髪、皮膚又は爪用のコンディショニング剤、キレート化剤、活性剤、漂白剤若しくはホワイトニング剤、追加のpH調整剤、芳香剤、着色剤、角質除去剤、酸化防止剤、植物成分、例えば植物抽出物、マイカ、スメクタイト、増粘剤、医薬品、カンナビノイド、油、染料、ワックス、アミノ酸、核酸、ビタミン、加水分解タンパク質及びその誘導体、グリセリン及び
その誘導体、酵素、抗炎症薬及び他の医薬、殺生物剤、抗真菌剤、消毒薬、酸化防止剤、UV吸収剤、染料及び顔料、防腐剤、日焼け止め活性剤、発汗抑制剤、酸化剤、pH平衡剤、グリセリルモノエステル、モイスチャライザー、ペプチド及びその誘導体、アンチエイジング活性剤、育毛促進剤、抗セルライト活性剤等が挙げられる。
【0050】
そのような処方物は、例えば、限定されるものではないが、毛髪、爪、皮膚又はテキスタイルのコンディショナー、シャンプー、ヘアスプレー、口髭/顎髭用の油又はワックス、ヘアスタイリング調剤、パーマ液、染髪剤、グレーズ、スキンローション、フェイス&ボディウォッシュ、メイク落とし、クレンジングローション、エモリエントローション/クリーム、バーソープ、シェービングクリーム、日焼け止め、日焼けトリートメント、デオドラント、モイスチャージェル、モイスチャーエッセンス、UV曝露防止エッセンス、シェービングフォーム、フェイスパウダー、ファンデーション、リップスティック、チーク、アイライナー、リンクルクリーム及びアンチエイジングクリーム、アイシャドウ、アイブロウペンシル、マスカラ、マウスウォッシュ、歯磨き粉、オーラルケア組成物、スキンクレンジング組成物、テキスタイルクレンジング組成物、食器洗い組成物、ヘアクレンジング組成物又はファークレンジング組成物、デオドラント又は制汗剤、化粧品、ヘアスタイリング組成物、スキンモイスチャライザー、スキンコンディショナー、ヘアコンディショナー、及びネイルコンディショナーとしての最終用途を有し得る。
【0051】
本発明の自己中和型のAABC組成物を含むこれらの処方物は、当該技術分野で既知の又は開発されたあらゆる方法によって作製され得る。しかしながら、例示を目的として、一般的な方法は、以下の通りである:水相を、自己中和型のAABC組成物の溶融温度を上回る温度に加熱し、剪断(混合)下で維持する。混合しながら、固体の自己中和型のAABC組成物をゆっくりと添加し、分散させて、水相中に溶かし入れる。AABCの緩衝剤が溶解し、得られた組成物全体にわたって安定で均一なpH値が得られるまで、処方物を混合する。自己中和型のAABC組成物の添加前又は添加後のいずれかで、適宜、他の成分を添加することができる。
【0052】
代替的な方法は、以下の通りである:自己中和型のAABC組成物を加熱して液体を形成し、この液体を、緩衝剤の均質な分布が保証されるように剪断(混合)下で維持する。水相を、溶融された自己中和型のAABC組成物とほぼ同じ温度に加熱する。溶融された自己中和型のAABC組成物を、加熱及び混合しながら、加熱された水相と混ぜ合わせ、2つの相の均一な混合を保証するのに適切な撹拌を使用する。AABCの緩衝剤が溶解し、得られた組成物全体にわたって安定で均一なpH値が得られるまで、処方物を混合する。この方法において、他の成分は、適宜、2つの相を混ぜ合わせる前に水相若しくは溶融された自己中和型のAABC相のいずれかに添加され得るか、又は2つの相を混ぜ合わせた後に得られた組成物に添加され得る。
【0053】
例えば、脂肪アルコール、脂肪酸、トリグリセリド、ワックス、化粧用油等は、水相と混ぜ合わせる前に溶融物と混合され得る。代替的には、保湿剤、キレート化剤、増粘剤、例えば水溶性ポリマー等のような水溶性成分は、溶融された自己中和型のAABC相と混ぜ合わせる前に水相に添加され得る。
【0054】
多くの実施形態において、本発明の自己中和型のAABC組成物を使用して作製された水性処方物は、ラメラ液晶(LC)相挙動を示すこととなる。このようなLC相挙動は、偏光顕微鏡法、小角X線散乱(SAXS)、及びクライオ凍結割断走査型電子顕微鏡法(cryo freeze-fracture scanning electron microscopy)(クライオSEM)等の当業者
によく知られる技術を使用して容易に特徴付けられる。ラメラLC系は、D間隔として知られるラメラ二重層膜の間隔によって特徴付けられ得る。本発明の組成物によって形成されるラメラLC相は、SAXSによって測定される、約1nm~約100nmのD間隔を
有し得て、或る特定の実施形態においては、約2nm~約25nmのD間隔を有し、好ましい実施形態においては、約3nm~約15nmのD間隔を有する。
【0055】
当業者は、AABCの炭素鎖長及び/又は自己中和型のAABC組成物中の非イオン性両親媒性物質、処方物中のAABC及び非イオン性両親媒性物質のレベル、又は自己中和型のAABC組成物若しくは処方物自体のいずれかにおけるAABC対非イオン性両親媒性物質(複数の場合もある)の比を含む1つ以上の変項を変えることによって、ラメラLC相のD間隔を調節することができること、例えば、追加のAABC又は非イオン性両親媒性物質を自己中和型のAABC組成物を含む処方物に添加することで、ラメラLC相のD間隔に影響を与えることができることを認識するであろう。処方物におけるpH、イオン強度、又は分散された油相のレベルを変動させることで、ラメラD間隔に影響を与えることもできる。本発明のラメラLC相は、好ましくは、20℃~60℃の温度範囲にわたって一定に保たれるD間隔を有する。
【0056】
本発明の自己中和型の組成物を含有する固体形式の処方物を作製する方法の別の例示的な実施形態において、自己中和型のAABCを溶融状態に加熱して、適切に掻き混ぜつつ混合することで、混合物中での緩衝剤の均一な分布が維持される。追加の成分は、溶融された混合物へと添加及び混合される。この混合物を冷却して、最終消費者が使用する際に事前に選択されたpH値を示す固体処方物を得る。
【0057】
例えば、固体処方物の10%溶液は、好ましくは約3.5~約6.5、より好ましくは約3.7~約6.0、更により好ましくは約3.8~約5.5、最も好ましくは約3.8~約5.0のpH値を有することとなる。固体処方物を更に粉砕、押出、又は他のプロセスを介して加工して、界面活性剤、コンディショニング剤、芳香剤、着色剤、角質除去剤、又は他の化粧用若しくは治療用の有益な作用物質等の追加の成分を組み込むことができる。固体処方物は、溶融し、型に流し込み、固化させることによって、又は押出及びプレスでの型押しにより成形形状にすることによって、バー、ボール、スティック等の様々な形態へと二次加工され得る。
【実施例0058】
実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3:実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3で使用される各成分の相対量を以下の表1に示す:
【0059】
【0060】
実施例1-ブラシシルバリンエシレートを使用した自己中和型のAABC組成物を調製する手順
ブラシシルバリンエシレート(BVE)及びブラシカアルコール(BA)を、オーバーヘッド型機械式撹拌機と、プロペラブレードと、加熱用ホットプレートとを備えた適切なサイズのビーカーに入れた。スパチュラを用いて手動で撹拌しながら混合物を穏やかに加熱して固体成分を溶融させ、液化したら、中速ないし高速での混合を開始し、温度を75℃~80℃にした。11μmのD50平均粒子サイズを有する無水グルコン酸カルシウム(CaG)粉末をゆっくりとふるいにかけて、溶融されたBVE/BAブレンドに入れて、均一に分散するまで混合した。撹拌を止めたら直ちに、混合物をステンレス鋼トレイへと注ぎ入れ、均一な薄層に展延させ、周囲温度まで冷まして固化させた。
【0061】
固化した層をトレイから掻き取って、自己中和型のAABC組成物のフレークを得た。
【0062】
比較例1
表1中の量及び実施例1の手順を使用して、比較AABC組成物を調製した。しかしながら、この例では、グルコン酸カルシウムを組成から省いた。ABAをAABCの組成から省く場合に、この例では、追加の非イオン性両親媒性物質が100重量%に達するよう適量で添加されることに留意する。
【0063】
実施例2-ブラシシルイソロイシンエシレートを使用した自己中和型のAABC組成物を調製する手順
表1中の量及び実施例1の手順を使用して、AABC組成物を調製した。しかしながら、実施例2では、ABCは、ブラシシルイソロイシンエシレートであった。
【0064】
比較例2
表1中の量及び実施例1の手順を使用して、比較AABC組成物を調製した。しかしながら、この例では、グルコン酸カルシウムを組成から省いた。
【0065】
実施例3-第2の非イオン性両親媒性物質を用いた自己中和型のAABC組成物を調製す
る手順
表1中の量及び実施例1の手順を使用して、自己中和型のAABC組成物を調製した。しかしながら、実施例3では、AABCはブラシシルバリンエシレートであり、第2の非イオン性両親媒性物質であるブラシカグリセリドを組成物に添加した。
【0066】
比較例3
表1中の量及び実施例1の手順を使用して、比較AABC組成物を調製した。しかしながら、この例では、グルコン酸カルシウムを組成から省いた。
【0067】
実施例4~実施例6及び比較例4~比較例6:実施例4~実施例6及び比較例4~比較例6で使用される各成分の相対量は、実施例1~実施例3及び比較例1~比較例3で使用された相対量(表1を参照)と同じである。それぞれについて収集されたpHデータを以下の表2に示す。
【0068】
【0069】
実施例4-自己中和型のAABC組成物を含む処方物の調製
処方物を以下のように調製した:オーバーヘッド型機械式撹拌機と、プロペラブレードと、加熱用ホットプレートとを備えたビーカーに、脱イオン水(100重量%までの適量)を入れ、これを75℃~80℃に加熱した。指定された量(表2に示される)の実施例1の自己中和型のABC組成物を、中速で混合しながら高温の水相にゆっくりと添加し、完全かつ均一に分散するまで混合した。混合物を低速ないし中速で混合しながら周囲温度まで冷ました後に、貯蔵用容器に排出した。処方物を一晩平衡化させた後に、pH計を使用してpHを測定した。自己中和型のAABC組成物を含む実施例4~実施例6の組成物を、偏光顕微鏡法を使用して特性決定したところ、特徴的なマルタ十字模様によって裏付けられるように、ラメラLC相挙動を示すことが観察された。
【0070】
図2は、実施例1の自己中和型のAABC組成物を15%含む実施例4の処方物の偏光顕微鏡写真(400倍の倍率)である。
【0071】
自己中和型のAABC組成物を15%含む実施例4及び実施例5の組成物をSAXSにより分析して、20℃~70℃の温度範囲にわたって得られるラメラLC系のD間隔を特徴付けた。
図3及び
図4は、それぞれブラシシルバリンエシレート及びブラシシルイソロイシンエシレートを含むラメラLC系についてのSAXSデータを示す。観察されたピークは、それぞれの処方物についての75Å(7.5nm)及び77Å(7.7nm)のD間隔を示している。60℃を超える温度でのピークの消失は、非ラメラ系への相変化を示している。
【0072】
比較例4
比較例1で調製された材料を表2に指定された量で使用して、実施例3の方法を繰り返した。
【0073】
実施例5-自己中和型のAABC組成物を含む処方物の調製
実施例2で調製された自己中和型のAABC組成物を表2に指定された量で使用して、実施例4の方法を繰り返した。
【0074】
比較例5
比較例2で調製された材料を表2に指定された量で使用して、実施例4の方法を繰り返した。
【0075】
実施例6-自己中和型のAABC組成物を含む処方物の調製
実施例3で調製された自己中和型のAABC組成物を表2に指定された量で使用して、実施例4の方法を繰り返した。
【0076】
比較例6
比較例3で調製された材料を表2に指定された量で使用して、実施例4の方法を繰り返した。
【0077】
これらの例から収集されたpHデータは
図1に示されている。表2及び
図1のデータは、水中に分散させた場合の自己中和型のAABC組成物(実施例1~実施例3)のpH緩衝効果を示している。
【0078】
明らかなように、実施例1、実施例2、及び/又は実施例3を含む水性組成物は、5重量%~20重量%の範囲のAABCブレンドの濃度で4.3~4.5のほぼ一定のpH値を示すのに対して、緩衝剤を含まない比較例(比較例1、比較例2、及び比較例3)は、より低いpH値を示し、これはAABCブレンドの濃度の増加に応じて減少する。
【0079】
したがって、実施例1、実施例2、及び実施例3の自己中和型のAABC組成物は、使用レベルに依存せず、かつ水性媒体中での配合に際して更なる調整を必要とせずにヘアケア及びスキンケア用の組成物の処方物にpH値が適切であるという利点をもたらす。
【0080】
実施例7-ナチュラルなリンスオフ型ヘアコンディショナー
表3は、ヘアコンディショナーの以下の例示的な処方物で使用される成分の相対量を示している。
【0081】
【0082】
オーバーヘッド型機械式撹拌機と、プロペラブレードと、加熱用ホットプレートとを備えた適切なサイズのビーカーに、水及びカプリルヒドロキサム酸(及び)プロパンジオールを入れ、これを低速ないし中速で混合しながら75℃~80℃に加熱した。70℃~75℃で、実施例1の自己中和型のAABCブレンド、ブラシカアルコール、トリヘプタノイン、コハク酸ジヘプチル(及び)カプリロイルグリセリンセバシン酸コポリマー、及びアルガニア・スピノサ(アルガン)核油をビーカーに入れた。
【0083】
温度を80℃~85℃にし、混合物を中速ないし高速で10分間~15分間撹拌した。加熱を停止し、中速ないし高速で撹拌しながら混合物を70℃に冷ました。70℃で、混合物を高速で3分間均質化した後に、アンカー型ブレードを用いて低速で撹拌しながら45℃~50℃まで冷ました。50℃で、混合物を貯蔵用の適切な容器に排出した。得られた処方物のpHは4.20であり、ブルックフィールド粘度(RVT(D)、helipathスピンドルT-C、10rpm)は室温(約21℃)で53500cPであった。
【0084】
実施例8-ナチュラルなリーブイン型枝毛コート剤
表4は、毛髪枝毛コート剤の以下の例示的な処方物で使用される成分の相対量を示している。
【0085】
【0086】
オーバーヘッド型機械式撹拌機と、プロペラブレードと、加熱用ホットプレートとを備えた適切なサイズのビーカーに、水、カプリルヒドロキサム酸(及び)ベンジルアルコール(及び)グリセリン、及びグリセリンを入れた。混合を低速ないし中速で開始し、混合物を80℃に加熱した。別個のビーカーにおいて、セチルアルコール、コハク酸ジヘプチル(及び)カプリロイルグリセリンセバシン酸コポリマー、実施例1の自己中和型のAABC組成物、及びココス・ヌシフェラ(ヤシ)油を混ぜ合わせ、混合しながら80℃に加熱し、均一になるまで混合した。
【0087】
中速ないし高速で混合しながら、80℃で油相混合物を水相混合物に添加した。混合物を70℃に冷ました後に、高速で3分間均質化した。均質化の後に、アンカー型ブレードを用いて低速で撹拌しながら混合物を45℃~50℃まで冷ました。45℃~50℃で、混合物を貯蔵用の適切な容器に排出した。
【0088】
得られた処方物のpHは4.27であり、ブルックフィールド粘度(RVT(D)、helipathスピンドルT-C、10rpm)は室温(約21℃)で69600cPであった。
【0089】
実施例9及び実施例10:ナチュラルなヘアコンディショナーバー
表5は、ヘアコンディショナーバーの以下の例示的な処方物で使用される成分の相対量を示している。
【0090】
【0091】
実施例9及び実施例10を、当業者に既知の「溶融及び注入」法によって調製した。成分を適切なサイズのビーカーに入れ、中速で混合して混合物中の緩衝剤の均一な分散を維持しながら80℃~85℃に加熱した。芳香剤は、混合の最後の1分~2分まで混合物に加えずにおいた。芳香剤の添加後に、混合物を直ちに冷却されたバー成形型に排出し、急速に冷却することで、均一で均質な固体形態を維持した。バー型組成物の10%水溶液のpH値は、実施例9及び実施例10について、それぞれ4.09及び5.39であった。
【0092】
実施例11及び比較例11-治療用ローション処方
表6は、実施例11及び比較例11の治療用ローション処方の処方物で使用される成分の相対量を示している。各処方物の明らかにされた粘度及びpHも表6に示されている。
【0093】
【0094】
実施例11
オーバーヘッド型機械式撹拌機と、プロペラブレードと、加熱用ホットプレートとを備えた適切なサイズのビーカーに、水、塩化ナトリウム、及びグリセリンを入れた。混合を中速で開始し、加熱を開始して、バッチ温度を80℃~85℃にした。コロイダルオートミールをゆっくりとふるいにかけてバッチに入れ、均一に分散して塊が見られなくなるまで混合した。
【0095】
温度が60℃~65℃に達したら、実施例3の自己中和型のAABCをパルミチン酸イソプロピル、ワセリン、及びジメチコンとともに添加した。80℃~85℃に達したら、全ての成分が溶融して均一に分散することが保証されるように、バッチを中速ないし高速で10分間~15分間混合した。加熱を停止し、混合を続けながらバッチを約70℃まで冷ました。70℃で、バッチを3000rpmで3分間均質化した後に、冷ましながら低速ないし中速で混合を再開した。バッチ温度が55℃まで冷めたら、カプリルヒドロキサム酸(及び)ベンジルアルコール(及び)グリセリンを添加した。アンカー型ブレードを用いて低速で撹拌しながら混合物を40℃~45℃まで冷ました。
【0096】
約40℃で、混合物を貯蔵用の適切な容器に排出した。得られた処方物のpHは4.19であり、ブルックフィールド粘度(RVT(D)、helipathスピンドルT-C、10rpm)は室温(約21℃)で12400cPであった。
【0097】
比較例11
実施例11と同じ方法に従って、非自己中和型のAABC組成物である比較例3を使用して、比較例11を調製した。得られたローションは、実施例11と比較して、不所望に低いpH値(2.73)及び不所望に低い粘度(5400cP)を示した。
【0098】
実施例12及び比較例12-高エモリエントスキンクリーム
表7は、実施例12及び比較例12の処方物で使用される成分の相対量を示している。各処方物の明らかにされた粘度及びpHも表7に示されている。
【0099】
【0100】
実施例12
オーバーヘッド型機械式撹拌機と、プロペラブレードと、加熱用ホットプレートとを備えた適切なサイズのビーカーにおいて、ヘリアンサス・アンヌス(ヒマワリ)種子油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、及びパルミチン酸イソプロピルを混ぜ合わせることによって、油相を調製した。低速ないし中速で混合しながら、混合物を75℃~80℃に加熱した。加熱しながら、実施例3の自己中和型のAABC組成物を添加し、油相を均一になるまで混合した。
【0101】
沈降することなく均一な分散が維持されるように、油相を混合しながら75℃~80℃で保持した。オーバーヘッド型機械式撹拌機と、プロペラブレードと、加熱用ホットプレ
ートとを備えた別個のビーカーにおいて、水及びカプリルヒドロキサム酸(及び)カプリル酸グリセリル(及び)グリセリンを混ぜ合わせ、これを低速ないし中速で混合しながら75℃~80℃に加熱した。75℃~80℃で、混合速度を中速ないし高速に高め、高温の油相を主要バッチに添加し、均一になるまで75℃~80℃で混合させた。
【0102】
加熱を停止し、バッチを約70℃に冷ました後に、3000rpmで3分間均質化した。冷ましながら、アンカー型ブレードを用いて低速ないし中速で混合を再開した。バッチ温度が約45℃~50℃に冷えたら、混合物を貯蔵用の適切な容器に排出した。得られた処方物のpHは4.16であり、ブルックフィールド粘度(RVT(D)、heilapathスピンドルT-C、10rpm)は室温(約21℃)で69400cPであった。
【0103】
比較例12
実施例12と同じ方法に従って、非自己中和型のAABC組成物である比較例3を使用して、比較例12を調製した。得られたクリームは、実施例12と比較して、不所望に低いpH値(2.55)及び不所望に低い粘度(21800cP)を示した。
【0104】
実施例13-ナチュラルなシェーブローション
実施例12に記載されたのと同じ一般的手順に従って、実施例13を調製した。冷却期間の間に温度が55℃未満に冷えたら、シトラス・オーランティアム・ダルシス(Citrus
Aurantium Dulcis)(オレンジ)果皮油及び芳香剤をバッチに後から添加した。得られ
た処方物のpHは4.03であり、ブルックフィールド粘度(RVT(D)、helipathスピンドルT-C、10rpm)は室温(約21℃)で50400cPであった。
【0105】
表8は、実施例13に使用された成分及びそれらの相対量を示している。
【0106】
【0107】
該当する場合に、化学物質は、化粧品成分の国際命名法のガイドラインに従って、それらのINCI名によって指定される。供給業者及び商品名を含む追加情報は、米国パーソナルケア製品評議会(ワシントンDC)によって発行された国際化粧品成分辞書・ハンドブック第16版における適切なINCIモノグラフで、又は米国パーソナルケア製品評議会のOn-Line INFOBASE(http://online.personalcarecouncil.org)に
オンラインで見出すことができる。
【0108】
当業者は、広範な本発明の概念を逸脱しなければ、上記の実施形態を変更することができることが認められる。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨及び範囲内の変更形態を含むように意図されることが理解される。