(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105465
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】メトトレキセート誘導免疫寛容性のバイオマーカー
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240730BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240730BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20240730BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240730BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240730BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20240730BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240730BHJP
C12N 9/26 20060101ALI20240730BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/56 20060101ALI20240730BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240730BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240730BHJP
G01N 33/72 20060101ALI20240730BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/519
A61P3/00
A61K38/47
A61K39/395 U
A61K39/395 Y
A61P21/00
C12Q1/686 Z
C12Q1/6813 Z
C12N15/12
C12N9/26
C07K16/00
C12N15/13
C12N15/56
C12Q1/6869 Z
G01N33/53 M
G01N33/72 A
G01N33/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024076397
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2020534559の分割
【原出願日】2018-12-21
(31)【優先権主張番号】62/609,986
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン・トラン
(72)【発明者】
【氏名】スーザン・エム・リチャーズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象の疾患、例えばポンペ病を処置する方法を提供する。
【解決手段】対象へのメトトレキセートおよび治療剤の投与の後に対象の試料の中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること、ならびに赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を同時に投与して、または投与しないで、さらなる処置を投与することを含む方法を提供する。対象へのメトトレキセートおよび治療剤の投与の後の赤血球形成バイオマーカーの検出に基づいて、対象における治療剤への免疫寛容性のレベルを調査するための方法およびキットが、本出願によりさらに提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤による処置を必要とする対象を処置する方法であって、
(a)該対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程と;
(b)該対象に該治療剤の有効量を投与する工程と;
(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後の間に該対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程と;
(d)対照のそれと比較した該赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、該治療剤によるさらなる処置を継続する工程と
を含む前記方法。
【請求項2】
赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は赤血球形成の誘導と関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
赤血球形成バイオマーカーはヘマトクリットまたは血液ヘモグロビン含有量である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することであり、ここで、赤血球形成に関連する該遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連する遺伝子である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体、トランスフェリン、Ly76(Ter-119のための抗原)、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
トランスフェリン受容体はトランスフェリン受容体1(CD71)である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
赤血球形成に関連する遺伝子を検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子のRNA転写物を検出すること、または赤血球形成に関連する遺伝子のタンパク質生成物を検出することを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
タンパク質生成物はヘモグロビンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
赤血球形成バイオマーカーは赤血球形成に関連する補因子である、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
赤血球形成に関連する補因子は、ポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラ
ピロールである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
試料は血液試料である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
血液試料は、末梢血単核細胞(PBMC)を含む血液画分である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
血液試料は血清試料または血漿試料であり、バイオマーカーを検出することは赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
対照は既存対照またはプラセボ対照である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
対象はヒトである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
メトトレキセートは、単一サイクルで投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
メトトレキセートのサイクルは、1日のメトトレキセート投与または2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11日連続のメトトレキセート投与からなる、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
メトトレキセートは、治療剤の投与の前、間および後の1つまたはそれ以上から選択される時間に対象に投与される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
メトトレキセートは、治療剤の投与の48時間前から48時間後の間に投与される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
メトトレキセートは治療剤の投与と同時に、ならびに治療剤の投与の約24時間後および約48時間後に投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
メトトレキセートは約0.1mg/kg~約5mg/kgで投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
試料は、メトトレキセートの最終投与の少なくとも約1日後から約30日後に対象から得られる、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
試料は、メトトレキセートの最終投与の約7日後から約14日後に対象から得られる、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
試料は、メトトレキセートの最終投与後の複数の日に得られる、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
試料は、メトトレキセートの最終投与から1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、14日目、21日目または28日目のうちの1日またはそれ以上の日に得られる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
工程(d)は、T細胞、B細胞または形質細胞を枯渇させる薬剤を投与することを含む
、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
工程(d)は:
(a)リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレートおよびコルチコステロイドの1つまたはそれ以上の有効量を投与すること;および
(b)抗原特異的寛容性戦略を投与すること
の1つまたはそれ以上を含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
抗原特異的寛容性戦略は、治療剤のより高頻度の投薬または治療剤のより高い用量を投与することまたはその両方を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
治療剤のより高い用量は、IVIGと同時投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
治療剤は、ポリペプチド、核酸、ウイルス、遺伝子療法、脂質、リポソームまたは炭水化物である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
治療剤は治療ポリペプチドである、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
治療ポリペプチドは抗体またはその抗原結合性断片である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
抗体はモノクローナル抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
抗体はリンパ球枯渇剤である、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
抗体はアレムツズマブである、請求項35または36に記載の方法。
【請求項39】
治療ポリペプチドは酵素である、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
酵素はヒトアルファガラクトシダーゼAである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
酵素はヒト酸性α-グルコシダーゼである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
対象はリソソーム蓄積症を有する、請求項1~34および39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
対象はポンペ病を有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ポンペ病は小児発症ポンペ病である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ポンペ病は古典的な小児発症ポンペ病である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
対象は交差反応性免疫物質(CRIM)陰性である、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
最初の免疫寛容性誘導療法を治療剤の投与と同時に投与することをさらに含み、ここで、治療剤はヒト酸性α-グルコシダーゼである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
最初の免疫寛容性誘導療法はリツキシマブおよびIVIGの1つまたはそれ以上を投与することを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
それを必要とする対象においてポンペ病を処置する方法であって、
(a)該対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程と;
(b)該対象にヒト酸性α-グルコシダーゼの有効量を投与する工程と;
(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後に該対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程と;
(d)対照のそれと比較した該赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、該ヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続する工程と
を含む前記方法。
【請求項50】
赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は赤血球形成の誘導と関連する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、ヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずにヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続することを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
赤血球形成バイオマーカーはヘマトクリットである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することであり、ここで、赤血球形成に関連する該遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連する遺伝子である、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体、トランスフェリン、Ly76(Ter-119のための抗原)、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
トランスフェリン受容体はトランスフェリン受容体1(CD71)である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
赤血球形成に関連する遺伝子を検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子のRNA転写物を検出すること、または赤血球形成に関連する遺伝子のタンパク質生成物を検出することを含む、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
タンパク質生成物はヘモグロビンである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
赤血球形成バイオマーカーは赤血球形成に関連する補因子である、請求項51に記載の方法。
【請求項60】
赤血球形成に関連する補因子は、ポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
試料は血液試料である、請求項49~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
血液試料は、末梢血単核細胞(PBMC)を含む血液画分である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
対象はヒトである、請求項49~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
ポンペ病は小児発症ポンペ病である、請求項49~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
ポンペ病は古典的な小児発症ポンペ病である、請求項49~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
対象はCRIM陰性である、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
対照は既存対照またはプラセボ対照である、請求項49~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される、請求項49~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
メトトレキセートの有効量は、単一サイクルで投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
メトトレキセートのサイクルは、1日のメトトレキセート投与または2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11日連続のメトトレキセート投与からなる、請求項68または69に記載の方法。
【請求項71】
メトトレキセートの有効量は、治療剤の投与の前、間および後の1つまたはそれ以上から選択される時間に対象に投与される、請求項49~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
メトトレキセートの有効量は、治療剤療法の投与の48時間前から48時間後の間に投与される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
メトトレキセートは治療剤の投与と同時に、ならびに治療剤の投与の約24時間後および約48時間後に投与される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
メトトレキセートの有効量は約0.1mg/kg~約5mg/kgである、請求項49~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出することは、メトトレキセートの最終投与の少なくとも約1日後から約30日後である、請求項49~74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出することは、メトトレキセートの最終投与の約7日後から約14日後である、請求項49~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
試料は、メトトレキセートの最終投与後の複数の日に得られる、請求項49~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
試料は、メトトレキセートの最終投与から1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、14日目、21日目または28日目のうちの1日またはそれ以上の日に
得られる、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
工程(d)は、T細胞、B細胞または形質細胞を枯渇させる薬剤を投与することをさらに含む、請求項49~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
形質細胞を枯渇させる薬剤はボルテゾミブである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
工程(d)は、
(a)リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレートおよびコルチコステロイドの1つまたはそれ以上の有効量を投与すること;ならびに
(b)抗原特異的寛容性戦略を投与すること
の1つまたはそれ以上を含む、請求項49~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
抗原特異的寛容性戦略は、治療剤のより高頻度の投薬または治療剤のより高い用量を投与することまたはその両方を含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
治療剤のより高い用量は、IVIGと同時投与される、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
抗ヒト酸性α-グルコシダーゼ抗体、CD19レベルまたは疾患進行の1つまたはそれ以上をモニタリングすることをさらに含む、請求項49~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
ポンペ病を有する対象における免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、
(a)少なくとも1サイクルのメトトレキセート処置および治療剤の少なくとも1用量を以前に投与されている該対象から試料を得る工程と;
(b)該試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程であって、対照のレベルに対する該試料中の該赤血球形成バイオマーカーのレベルは免疫寛容性の誘導を示す、工程と
を含む前記方法。
【請求項86】
工程(b)は試料を赤血球形成バイオマーカーに結合する薬剤と接触させることを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
治療剤を必要とする対象における該治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、
(a)該対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程と;
(b)該対象に該治療剤の有効量を投与する工程と;
(c)該対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程であって、対照のレベルに対する該試料中の該赤血球形成バイオマーカーのレベルは該対象における該治療剤への免疫寛容性の誘導を示す、工程と
を含む前記方法。
【請求項88】
治療剤を必要とする対象における該治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、
(a)該対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程と;
(b)該対象に該治療剤の有効量を投与する工程と;
(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後に該対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程と;
(d)工程(c)において検出されるバイオマーカーのレベルに基づいて該対象におけ
る該治療剤への免疫寛容性のレベルを同定する工程と
を含む前記方法。
【請求項89】
赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は赤血球形成の誘導と関連する、請求項85~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない、請求項89に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により完全に本明細書で組み入れられる、2017年12月22日に出願の米国特許仮出願第62/609,986号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般的に免疫学に、より具体的には治療剤によって対象を処置する方法、および赤血球形成バイオマーカーの検出に基づいてメトトレキセートによって誘導される治療剤への免疫寛容性を調査する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
メトトレキセートは、悪性の自己免疫性疾患の処置において確立された歴史を有する(例えば、非特許文献1を参照)。それは1940年代にがんの処置のために最初に記載され、メトトレキセートの高用量クールはいくつかの新生物状態を処置するために使用し続けられている。自己免疫では、とりわけ、慢性関節リウマチおよび乾癬などの疾患を処置するために、連続的週単位の低用量メトトレキセートが使用される(非特許文献2;非特許文献3、にレビューされる)。しかし、より近年の研究は、免疫寛容性の誘導におけるメトトレキセートの代替使用を発見した。一時的な低用量メトトレキセート免疫寛容誘導(ITI)レジメンは、組換えヒト酸性-α-グルコシダーゼ(rhGAA、アルグルコシダーゼアルファ)などの酵素補充療法(ERT)への免疫寛容性を誘導することが示された(非特許文献4;非特許文献5)。同種心臓移植における移植体拒絶反応を処置するために使用されたマウスの抗胸腺細胞グロブリンで実証されたように、一時的な低用量メトトレキセート処置および治療用バイオ医薬品の同時投与は、バイオ医薬品への長期免疫寛容性を誘導することも示された(非特許文献6)。高リスクの古典的な小児発症ポンペ患者における臨床観察では、一時的な低用量メトトレキセートがリツキシマブ(B細胞を枯渇させるモノクローナル抗体)および、場合により、静脈内免疫グロブリン(IVIG)と一緒に同時投与された免疫寛容性プロトコールは、rhGAAに対する抗薬物抗体(ADA)の長期低減の実現に成功した(非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。リツキシマブだけで長期免疫寛容性を再現的に誘導することが一般的にできなかったので、メトトレキセートが臨床レジメンにおいて良好な免疫寛容性に寄与すると考えられる(非特許文献10、非特許文献11)。
【0004】
ポンペ病は、リソソーム酸α-グルコシダーゼ(GAA)遺伝子の欠損によって引き起こされる。高リスクの古典的な小児発症ポンペ患者は、リソソーム内のグリコーゲンを分解する酵素である内在性GAAを欠いている。機能的GAAの欠如は、筋肉組織におけるグリコーゲンの過剰蓄積から生じる神経筋病状をもたらす。処置無しでは、これらの患者における疾患進行は急速であり、一般的に生後1年以内に、侵襲性の換気を究極的に必要とする呼吸衰弱、心不全および死につながる筋肉劣化(ミオパシー)を伴う。rhGAAによる酵素補充療法は、ポンペ病の処置において有効だった(非特許文献12)。しかし、高リスクの古典的な小児発症ポンペ患者におけるrhGAA単独療法は、処置に干渉して効能を低減する、rhGAAに対するADAの高力価に一般的につながる。今日まで、一時的な低用量メトトレキセートとリツキシマブおよびIVIGの同時投与によって、少数の古典的小児発症ポンペ患者における臨床試験で、rhGAAへの長期免疫寛容性が首尾よく誘導されている。これらの研究では、患者は継続した処置によって35カ月を超える年齢までADA無しの状態である(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。しかし、ADA応答を軽減するために必要とされる免疫モジュレーションの程度は、前の酵素補充療法の程度によって患者の間で異なった:免疫寛容性処置の前にERTを事前投与された患者は、さらなる免疫モジュレーションを必要とした(非特許文献8)。臨床観察
は数が限定されたままであるが、rhGAAへのADA免疫応答の発達および潜在的確立を制限するために、高リスクの小児発症ポンペ患者における良好なERTは、ERTにおいて免疫寛容性が達成されるのがより早いほど良好である可能性がより高いことが明らかである(非特許文献9)。しかし、免疫調節療法を誘導するために免疫寛容性をモニタリングするために利用可能なツールは、これらの患者では有用性が限定される可能性がある:抗薬物抗体は寛容性の程度(または欠如)の一次マーカーであるが、そのような抗体は治療用バイオ医薬品による処置の開始後数週から数カ月の間一般的に出現しない。この点で、免疫寛容性を効果的に誘導して維持するための重要な時間が、既に失われていることがある。治療の早期に生じる免疫寛容性のマーカーの不在は、有効な療法の不在下で急速に悪化する、高リスクの小児発症ポンペ患者などの患者のために特に懸念される。
【0005】
したがって、ポンペ病のためのrhGAAなどの治療用バイオ医薬品を含む、免疫応答の誘発が可能な治療薬を受ける患者において望ましくない免疫応答を低減するための戦略を誘導するために、免疫寛容性(免疫寛容性の早期の誘導など)を調査する改善された方法の必要性がある。
【0006】
本明細書で参照される全ての刊行物、特許、特許出願および公開特許出願の開示は、ここに参照により本明細書に完全に組み入れられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Kremer 2004
【非特許文献2】Cronstein 2005
【非特許文献3】Taylorら 2008
【非特許文献4】Garman、Munroeら 2004
【非特許文献5】Joseph、Munroeら 2008
【非特許文献6】Joseph、Neffら 2012
【非特許文献7】Mendelsohn、Messingerら 2009
【非特許文献8】Messinger、Mendelsohnら 2012
【非特許文献9】Banugaria、Praterら 2013
【非特許文献10】Franchini、Mengoliら 2008
【非特許文献11】Collins、Mathiasら 2009
【非特許文献12】Kishnani、Corzoら 2007
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、処置の方法および赤血球形成バイオマーカーの検出に基づいて治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法を提供する。
【0009】
したがって、本出願の一態様は、治療剤による処置を必要とする対象を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療剤の有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後の間に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;および(d)対照のそれと比較した赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、治療剤によるさらなる処置を継続することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか、または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対し
て上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか、または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。
【0010】
一部の実施形態では、治療剤による処置を必要とする対象を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療剤の有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後の間に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;(d)赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与すること;または(e)赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数(innnature reliculocyte fraction)または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、未熟な有核赤血球のレベルが未熟な有核赤血球のレベルが上昇する前に最初に低下する場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置が継続される。一部の実施形態では、メトトレキセートが単一サイクルで投与される場合、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1、約2、約3、約4、約5、約6または約7日前までに低下する。一部の実施形態では、メトトレキセートが2サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される場合、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1日から約14日前までに低下する。一部の実施形態では、メトトレキセートが2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される場合、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1日から約14日前までに低下する。
【0011】
一部の実施形態では、治療剤による処置を必要とする対象を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療剤の有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後の間に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;(d)赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与すること;または(e)赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。
【0012】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することであり、ここで、赤血球形成に関連する遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上である。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体、トランスフェリン、Ly76(Ter-119のための抗原)、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、トランスフェリン受容体は、トランスフェリン受容体1(CD71)である。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子を検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子のRNA転写物を検出すること、または赤血球形成に関連する
遺伝子のタンパク質生成物を検出することを含む。一部の実施形態では、タンパク質生成物は、ヘモグロビンである。
【0013】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子である。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する補因子は、ポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。
【0014】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、治療剤は、ポリペプチド、核酸、ウイルス、遺伝子療法、脂質、リポソームまたは炭水化物である。一部の実施形態では、治療剤は、治療ポリペプチドである。一部の実施形態では、治療ポリペプチドは、抗体またはその抗原結合性断片である。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体は、リンパ球枯渇剤である。一部の実施形態では、抗体は、アレムツズマブである。一部の実施形態では、治療ポリペプチドは、酵素である。一部の実施形態では、酵素は、ヒトアルファガラクトシダーゼAである。一部の実施形態では、酵素は、ヒト酸性α-グルコシダーゼである。
【0015】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、対象は、リソソーム蓄積症を有する。一部の実施形態では、対象は、ポンペ病を有する。一部の実施形態では、対象は、古典的な小児発症ポンペ病などの小児発症ポンペ病を有する。一部の実施形態では、ポンペ病は、交差反応免疫物質(CRIM)陰性である。一部の実施形態では、本方法は、最初の免疫寛容性誘導療法を治療剤の投与と同時に投与することをさらに含み、ここで、治療剤はヒト酸性α-グルコシダーゼである。一部の実施形態では、最初の免疫寛容性誘導療法は、リツキシマブおよびIVIGの1つまたはそれ以上を投与することを含む。
【0016】
一部の実施形態では、それを必要とする対象(例えば、ヒト)においてポンペ病を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象にヒト酸性α-グルコシダーゼの有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;(d)赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、ヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置と同時に投与すること;または(e)赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずにヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、未熟な有核赤血球のレベルが未熟な有核赤血球のレベルが上昇する前に最初に低下する場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置が継続される。一部の実施形態では、メトトレキセートが単一サイクルで投与される場合、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1、約2、約3、約4、約5、約6または約7日前までに低下する。一部の実施形態では、メトトレキセートが2サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される場合、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1日から約14日前までに低下する。一部の実施形態では、メトトレキセートが2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される場合、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1日から約14日前までに低下する。
【0017】
一部の実施形態では、それを必要とする対象(例えば、ヒト)においてポンペ病を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象にヒト酸性α-グルコシダーゼの有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを
検出すること;(d)赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法をヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置と同時に投与すること;または(e)赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずにヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することであり、ここで、赤血球形成に関連する遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連する遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子を検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子のRNA転写物を検出すること、または赤血球形成に関連する遺伝子のタンパク質生成物を検出することを含む。一部の実施形態では、タンパク質生成物は、ヘモグロビンである。
【0018】
一部の実施形態では、それを必要とする対象(例えば、ヒト)においてポンペ病を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象にヒト酸性α-グルコシダーゼの有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;(d)赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、ヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置と同時に投与すること;または(e)赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずにヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することであり、ここで、赤血球形成に関連する遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連する遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体、トランスフェリン、Ly76(Ter-119のための抗原)、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、トランスフェリン受容体は、トランスフェリン受容体1(CD71)である。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子を検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子のRNA転写物を検出すること、または赤血球形成に関連する遺伝子のタンパク質生成物を検出することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子である。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する補因子は、ポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。
【0019】
上記のポンペ病を処置する方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、ポンペ病は、小児発症ポンペ病である。一部の実施形態では、ポンペ病は、古典的な小児発症ポンペ病である。一部の実施形態では、対象は、CRIM陰性である。
【0020】
ポンペ病を処置する方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、方法は抗ヒト酸性α-グルコシダーゼ抗体、CD19レベルまたは疾患進行の1つまたはそれ以上をモニタリングすることをさらに含む。
【0021】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、試料は、血液試料である。一部の実施形態では、血液試料は、末梢血単核細胞(PBMC)を含む血液画分である。一部の実施形態では、血液試料は、血清試料または血漿試料であり、バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することである。
【0022】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、対照は既存対照またはプラセボ対照である。
【0023】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0024】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、単一サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートのサイクルは、1日のメトトレキセート投与または2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11日連続のメトトレキセート投与からなる。
【0025】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療剤の投与の前、間および後の1つまたはそれ以上から選択される時間に対象に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療剤療法の投与の48時間前から48時間後の間に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは治療剤の投与と同時に、ならびに治療剤の投与の約24時間後および約48時間後に投与される。
【0026】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、メトトレキセートは、約0.1mg/kg~約5mg/kgで投与される。
【0027】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、試料は、メトトレキセートの最終投与の少なくとも約1日後から約30日後に対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、メトトレキセートの最終投与の約7日後から約14日後に対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、メトトレキセートの最終投与後の複数の日に得られる。一部の実施形態では、試料は、メトトレキセートの最終投与から1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、14日目、21日目または28日目のうちの1日またはそれ以上の日に得られる。
【0028】
上記の方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、工程(d)は、T細胞、B細胞または形質細胞を枯渇させる薬剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、形質細胞を枯渇させる薬剤は、ボルテゾミブである。一部の実施形態では、工程(d)は、(a)リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレートおよびコルチコステロイドの1つまたはそれ以上の有効量を投与すること;ならびに(b)抗原特異的寛容性戦略を投与することの1つまたはそれ以上を含む。一部の実施形態では、抗原特異的寛容性戦略は、治療剤のより高頻度の投薬または治療剤のより高い用量を投与することまたはその両方を含む。一部の実施形態では、治療剤のより高い用量は、IVIGと同時投与される。
【0029】
本出願の一態様は、ポンペ病を有する対象における免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、(a)対象から試料を得る工程であって、対象は、少なくとも1サイクルのメトトレキセート処置および治療剤の少なくとも1用量を以前に投与されている、工程;ならびに(b)試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程であって、対照のレベルに対する試料中の赤血球形成バイオマーカーのレベルは免疫寛容性の誘導を示す、工程を含む方法を提供する。一部の実施形態では、工程(b)は、赤血球形成バイオマーカーに結合する薬剤と試料を接触させることを含む。
【0030】
本出願の一態様は、治療剤を必要とする対象における治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程;(b)対象に治療剤の有効量を投与する工程;および(c)対象から得た試料中の赤血球形成バ
イオマーカーを検出する工程であって、対照のレベルに対する試料中の赤血球形成バイオマーカーのレベルは、対象における治療剤への免疫寛容性の誘導を示す、工程を含む方法を提供する。
【0031】
本出願の一態様は、治療剤を必要とする対象における治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療剤の有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;および(d)工程(c)において検出されるバイオマーカーのレベルに基づいて対象における治療剤への免疫寛容性のレベルを同定することを含む方法を提供する。
【0032】
上記の調査方法のいずれか1つによる一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;またはここで赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたは低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない。
【0033】
本明細書に記載される方法のいずれか1つで使用するための、組成物、キットおよび製造品がさらに提供される。
【0034】
本発明のこれらおよび他の態様と利点は、以降の詳細な記載および添付の特許請求の範囲から明らかになる。本明細書に記載される様々な実施形態の性質の1つ、いくつかまたは全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成することができることを理解すべきである。
【0035】
特許または出願ファイルは、色刷りの少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を有するこの特許または特許出願公報のコピーは、請求および必要な手数料の支払いによって特許庁から提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】様々な実験群の中のマウスの脾臓試料における、赤血球形成に関連する遺伝子発現レベルのサブセットのヒートマップを示す図。
【
図1B】様々な実験群の中のマウスの血液試料における、赤血球形成に関連する遺伝子発現レベルのサブセットのヒートマップを示す図。1群につき4~9匹のC57BL/6マウスを、実施例1に記載の通りに、低用量メトトレキセートの有る無しでrhGAAで処置した。メトトレキセートの有る無しでFB(製剤緩衝液)で処置したマウスの実験対照群が含まれた。rhGAA開始から7日目に、脾臓(A)および血液(B)試料を、RNA増幅の後にIllumina HISEQ2000(登録商標)でRNAシークエンシングによって調べた。示した遺伝子は、赤血球形成に関連する全遺伝子のサブセットである。RNAシークエンシングデータセットは、変化倍率(FC)≧2およびp値≦0.05によって差別的発現についてスクリーニングした。赤色は高度に上方制御された遺伝子を意味し、青色は下方制御された遺伝子を示す。結果は、例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンは、脾臓および血液における赤血球形成の転写サインを上方制御することを実証する。
【
図1C】実施例1~4に記載される試験計画の概略図を示す図。
【
図2】例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンに応答した、脾臓におけるトランスフェリンおよびトランスフェリン受容体1の上方制御を示す図。1群につき8匹のC57BL/6マウスを、実施例1に記載の通りに、例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンの不在下または存在下で、rhGAAで処置した。rhGAA開始から7日目に、脾臓および血液試料を、LC/MSタンパク質質量分析によって調べた。差別的に発現された遺伝子を、FC≧2およびp値≦0.05でスクリーニングした。
【
図3-1】
図3Aは、rhGAA+MTX群における有意に富化したB10調節B細胞を示す。
図3Bは、rhGAA+MTX群における有意に富化した活性化濾胞性(FO)B細胞を示す。
図3Cは、rhGAA+MTX群における有意に富化した全活性化B細胞を示す。
図3Dは、生きているCD19
+事象について選択するためのフローサイトメトリーにおけるゲーティング戦略を示す。以降のゲーティングは、B10調節B細胞(上:CD19
+、CD1d
high CD5
+)、活性化濾胞性B細胞(2列目:CD19
+、IgM
low/high CD23
+、CD86
+)、および全活性化B細胞(下:CD19
+ CD86
+)について選択した。1群につき4~10匹のC57BL/6またはC57BL/6NTacマウスを、実施例1に記載の通りに、rhGAA単独でまたは単一サイクルの低用量メトトレキセートと一緒に処置した。実施例2に記載の通りに、rhGAA開始の7日後に、脾臓を死後抽出し、単一細胞懸濁液にホモジナイズし、RBC溶解に付し、フローサイトメトリーによって調べた。これらのデータは、3つまたはそれ以上の別個の実験からのものである。スチューデントt検定を実行し、有意性は
*≦0.05で表す。富化したB細胞サブセットは、一時的な低用量メトトレキセート処置の後の免疫寛容性のパターンを実証した。
【
図4-1】
図4Aは、異なる実験群のマウスからの脾臓の代表的な像(黒色バー=1cm)を示す。
図4Bは、rhGAA開始の7日後のマウスの脾臓重量のグラフ表示を示す。
図4Cは、5、6、7および8日目にフローサイトメトリーによって測定した脾臓試料中の細胞総数を示す。1群につき4~6匹のC57BL/6NTacマウスを、20mg/kg i.v.のrhGAA単独でまたは単一サイクルの低用量メトトレキセートと組み合わせて処置した(rhGAA処置の15分以内の5mg/kgの3回の連続した毎日のi.p.処置)。実施例2に記載の通りに、脾臓を単一細胞懸濁液にホモジナイズし、フローサイトメトリーによって調べた。
図4Dは、マウスの脾臓試料のフローサイトメトリーにおけるゲーティング戦略を示す。生きている全RBC(Ter-119
+)および未熟な有核RBCサブセット(Ter-119
+ CD71
+)を選択した。
図4Eは、rhGAA開始から2、6、7および9日目のマウスの脾臓における全RBCの数を示す。
図4Fは、rhGAA開始から2、6、7および9日目のマウスの脾臓における未熟な有核RBCの数を示す。マウスに、rhGAAだけ(rhGAA)または単一サイクルの低用量メトトレキセートと組み合わせたrhGAA(rhGAA+1サイクルのMTX)を投与した。
図4Gは、rhGAA開始から2、7および9日目のマウスの脾臓における全RBCの数を示す。
図4Hは、rhGAA開始から2、7および9日目のマウスの脾臓における未熟な有核RBCの数を示す。メトトレキセートの有る無しでビヒクル対照FB(製剤緩衝液)で処置したマウスの実験対照群が含まれた。これらのデータは、3つまたはそれ以上の別個の実験からのものである。スチューデントt検定を実行し、有意性は
*≦0.05で表す。縦のバーは、標準偏差を表す。結果は、例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンが、全体のおよび未熟な有核RBCの早期の短期低減および続く富化、ならびに脾臓の拡張を引き起こしたことを実証する。
【
図5-1】
図5Aは、フローサイトメトリーで判定した、rhGAA開始から2、4、7、9、14および28日目のマウスの血液における全RBCの数を示す。
図5Bは、rhGAA開始から2、4、7、9、14および28日目のマウスの血液における未熟な有核RBCの数を示す。1群につき5~10匹のC57BL/6NTacマウスを、単一サイクルの低用量メトトレキセートの有る無しでrhGAAで処置した。実施例2に記載の通りに、収集された血液の25μLアリコートから赤血球系細胞の総数を導き、フローサイトメトリーによって調べた。マウスに、rhGAAだけ(rhGAA)または単一サイクルの低用量メトトレキセートと同時のrhGAA(rhGAA+1サイクルのMTX)を投与した。
図5Cは、2日目のマウスの血液における全RBCの数を示す。
図5Dは、7日目のマウスの血液における全RBCの数を示す。
図5Eは、9日目のマウスの血液における全RBCの数を示す。
図5Fは、2日目のマウスの血液における未熟な有核RBCの数を示す。
図5Gは、7日目のマウスの血液における未熟な有核RBCの数を示す。
図5Hは、9日目のマウスの血液における未熟な有核RBCの数を示す。例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンの有る無しでFBで処置したマウスの実験対照群が含まれた。これらのデータは、3つまたはそれ以上の別個の実験からのものである。スチューデントt検定を実行し、有意性は
*≦0.05で表す。縦のバーは、標準偏差を表す。結果は、例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンが、脾臓におけるそれと比較して全身血液コンパートメントにおいて類似しているが遅延したRBC応答を生じさせることを実証した。
【
図6-1】
図6Aは、rhGAA開始から7日目のマウスの全身血液コンパートメントにおける全RBC数を示す。
図6Bは、rhGAA開始から7日目のマウスの全身血液コンパートメントにおけるヘモグロビンレベルを示す。
図6Cは、rhGAA開始から7日目のマウスの全身血液コンパートメントにおけるヘマトクリットの百分率を示す。
図6Dは、rhGAA開始から7日目のマウスの全身血液コンパートメントにおける成熟網赤血球の数を示す。
図6Eは、rhGAA開始から7日目のマウスの全身血液コンパートメントにおける成熟網赤血球の頻度を示す。
図6Fは、rhGAA開始から7日目のマウスの全身血液コンパートメントにおける網赤血球成熟指数を示す。1群につき6匹のC57BL/6NTacマウスを、単一サイクルの低用量メトトレキセートの有る無しでrhGAAで処置した。例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンの有る無しでFBで処置したマウスの実験対照群が含まれた。眼窩後ブリードによって試料をEDTA抗凝固収集チューブに収集し、72時間以内、2~8℃で保存した。CBC、WBC画分分析および網赤血球算定を、Sysmex XT2000iVで実行した。スチューデントt検定を実行し、有意性は
*≦0.05で表す。縦のバーは、標準偏差を表す。結果は、例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンが、全身血液コンパートメントにおいて7日目に再生性の赤血球応答を生じさせることを実証する。
【
図7】
図7Aは、フローサイトメトリーで判定した、rhGAA開始後のマウスの骨髄試料における4、5、7および9日目の全RBCの数を示す。
図7Bは、フローサイトメトリーで判定した、rhGAA開始後のマウスの骨髄試料における4、5、7および9日目の未熟な有核RBCサブセットの数を示す。1群につき6匹のC57BL/6NTacマウスを、単一サイクルの低用量メトトレキセートの不在下または存在下で、rhGAAで処置した。実施例2に記載の通りに、単一の大腿骨から赤血球系細胞の総数を導き、フローサイトメトリーによって調べた。マウスに、rhGAAだけ(rhGAA)または単一サイクルの低用量メトトレキセートと同時のrhGAA(rhGAA+1サイクルのMTX)を投与した。これらのデータは、2つの別個の実験からのものである。スチューデントt検定を実行し、有意性は
*≦0.05で表す。縦のバーは、標準偏差を表す。結果は、例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンが、全体のおよび未熟な有核RBCの早期の一時的な枯渇につながるが、RBCは骨髄において恒常レベルにすぐに戻ることを実証した。
【
図8-1】
図8Aは、発達の異なる段階における赤血球系細胞について選択するためのフローサイトメトリーにおけるゲーティング戦略を示す。同定された生きているTer-119
+の生きている事象からのCD44およびFSC(前方散乱)の差別的発現および:(I)前赤芽球(Ter-119
intermediate、CD44
high)、(II)塩基親和性赤芽球(Ter-119
+、CD44
high FSC
high)、(III)多染性赤芽球(Ter-119
+、CD44
intermediate FSC
intermediate)、(IV)正染性赤芽球および網赤血球(Ter-119
+、CD44
intermediate FSC
low)、および(V)成熟した赤血球(Ter-119
+、CD44
low FSC
low)。
図8Bは、rhGAA開始から2日目のマウスの脾臓試料における赤血球系細胞の数を示す。
図8Cは、rhGAA開始から7日目のマウスの脾臓試料における赤血球系細胞の数を示す。各脾臓試料は、単一の均質化脾臓に由来した。
図8Dは、rhGAA開始から2日目のマウスの血液試料における赤血球系細胞の数を示す。
図8Eは、rhGAA開始から7日目のマウスの血液試料における赤血球系細胞の数を示す。各血液試料は、全身血液コンパートメントからの25μL収集物に由来した。
図8Fは、rhGAA開始から4日目のマウスの骨髄試料における赤血球系細胞の数を示す。
図8Gは、rhGAA開始から5日目のマウスの骨髄試料における赤血球系細胞の数を示す。
図8Hは、rhGAA開始から7日目のマウスの骨髄試料における赤血球系細胞の数を示す。
図8Iは、rhGAA開始から9日目のマウスの骨髄試料における赤血球系細胞の数を示す。各骨髄試料は、単一の大腿骨に由来した。1群につき5~10匹のC57BL/6NTacマウスに、単一サイクルの低用量メトトレキセートから15分以内にrhGAAで処置した。マウスは、rhGAAだけ(rhGAA)または単一サイクルの低用量メトトレキセートと一緒にrhGAA(rhGAA+1サイクルのMTX)を投与した。これらのデータは、2つまたはそれ以上の別個の実験からのものである。スチューデントt検定を実行し、有意性は
*≦0.05で表す。縦のバーは、標準偏差を表す。結果は、例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンによって誘発される赤血球形成は、マウスの脾臓で主に起こることを実証した。
【
図9A】
図9Aは、例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンが、脾臓の赤色髄における有核細胞(造血前駆体を含む)の出現を増加させることを示す。1群につき4~6匹のC57BL/6NTacマウスを、単一サイクルの低用量メトトレキセートの有る無しでrhGAAで処置した。例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンの有る無しでFBで処置したマウスの実験対照群が含まれた。脾臓試料はrhGAA開始の7日後に収集し、免疫蛍光法のために処理した。脾臓試料はrhGAA開始の7日後に収集し、OCT培地での低温切片作製、CD71およびTer-119のための免疫蛍光染色、ならびに、マルチチャネル蛍光画像化のために構成され、PlanApo20x、0.8NA対物レンズを備えているAxioScanスライドスキャナ(Carl Zeiss;Peabody、MA)での分析に付した。(A)CD71免疫蛍光染色が赤色(PE)およびTER119が緑色(FITC)で示される代表的な全スライドスキャンを示した。試料は、核を可視化するために、DAPI(青色)でも染色した。CD71またはTer-119染色を欠いた領域は、白色髄を表す。CD71および/またはTer-119染色を有する領域は、赤色髄を表す。スケールバーは、500μmを表す。
【
図9B】
図9Bは、赤色髄対白色髄の面積比(上)および全組織面積(下)の形態測定定量化の結果のグラフ表示を示す。縦のバーは、
*≦0.05のボンフェローニ調整p値による平均の標準誤差(SEM)を表す。
【
図10】
図10は、タンパク質赤血球アンキリンおよびグリコホリンCが、例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンで処置したマウスの脾臓において減少することを示す。1群につき4~6匹のC57BL/6NTacマウスを、単一サイクルの低用量メトトレキセートの有る無しでrhGAAで処置した。例示的な一時的な低用量メトトレキセートレジメンの有る無しでFBで処置したマウスの実験対照群が含まれた。脾臓試料はrhGAA開始の7日後に収集し、組織質量分析画像化のために処理した。赤血球アンキリンおよびグリコホリンCのためのシグナルを示す、10μM脾臓切片を示す。空間分解能は、30μMである。
【
図11-1】
図11A~11Cは、ドナーマウスの血液からの200,000,000個の全赤血球を受けたマウスにおける、血清抗rhGAA抗体価を示す。rhGAA開始の7日後に一時的な低用量メトトレキセートITIレジメンで処置したマウスから単離した脾臓の未熟な有核RBCは、ナイーブマウスにおいて免疫寛容性誘導の傾向を提示するようである。一時的な低用量メトトレキセートITIレジメン有りのrhGAA(免疫寛容マウス)および一時的な低用量メトトレキセートITIレジメン無しのrhGAA(非免疫寛容マウス)で処置したマウスから全赤血球系細胞を単離し、ナイーブなレシピエントマウスに導入した。輸血後およびその後毎週、レシピエントマウスにi.v. rhGAAを投与した。rhGAAの以降の投与には、ジフェンヒドラミンの予防的投与が付随した。ELISAによる抗rhGAA IgG抗体価の評価のために、血清を収集した。(
図11A)rhGAA開始の9日後、ドナーマウスの血液からの200,000,000個の全赤血球を、白血球除去によって精製した。血液から精製したドナー赤血球は、≧99.9%純粋だった。(
図11B)rhGAA開始の7日後、ドナーマウスの脾臓からの75,000,000個の全赤血球を、Ter-119ミクロビーズによる正の選択によって精製した。脾臓から精製したドナー赤血球は、≧93.3%純粋だった。(
図11C)一時的な低用量メトトレキセートITIレジメンの存在下および不在下のrhGAAによる投与された対照マウス。最も高い力価は除去した。このデータは、単一の実験からのものである。スチューデントt検定を実行し、有意性は
*≦0.05で表す。縦のバーは、平均値の標準誤差を表す。AUC:曲線下面積。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本出願は、治療剤によって対象の疾患(ポンペ病など)を処置する方法、ならびにメトトレキセートおよび治療剤の投与の後に対象において赤血球形成バイオマーカーの検出を含む治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法を提供する。
【0038】
抗薬物抗体(ADA)免疫応答は、薬物効能を低減すること、および患者の安全性にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。ADAの蓄積を軽減するために、治療用バイオ医薬品による処置と一緒の、およびその後の第1週内の投与のために、一時的な低用量メトトレキセート処置を含む免疫寛容性誘導(「ITI」)レジメンが開発された(Garman、Munroeら 2004;Joseph、Munroeら 2008)。酵素補充療法(アルグルコシダーゼアルファなど)および抗体療法(抗胸腺細胞グロブリンなど)への長期の免疫寛容性が、一時的な低用量メトトレキセートレジメンで実証された(同書;Joseph、Neffら 2012)。
【0039】
本発明の態様は、一時的な低用量メトトレキセート投与によって誘発される赤血球形成が、免疫寛容性の誘導と関連することの発見に関する。本明細書に記載される方法およびキットは、抗薬物抗体(ADA)を生成する酵素補充療法などの治療薬を受ける患者における、望ましくない免疫応答の低減のために有益である。
【0040】
本開示は、治療用バイオ医薬品、すなわち、ポンペ病を処置するために使用される酵素補充療法である組換えヒト酸性α-グルコシダーゼ(rhGAA、アルグルコシダーゼアルファ)処置による処置との関連で、一時的な低用量メトトレキセート(例示的なITIレジメン)に対する、脾臓、血液および骨髄における分子的および細胞性の応答を記載す
る。本明細書に記載される転写およびプロテオーム分析は、一時的な低用量メトトレキセート(例示的なITIレジメン)による処置の後の赤血球形成を示す、血液および脾臓における転写およびタンパク質サインの上方制御を明らかにした。細胞研究は、一時的な低用量メトトレキセート処置の後の脾臓および血液におけるTer-119+CD71+の未熟な有核赤血球(RBC)のかなりの増大を確認した。さらに、免疫蛍光分析は、脾臓の赤色髄における造血前駆体を含む有核細胞の割合の増加を示唆した。反対に、組織質量分析画像化(tMSI)は、脾臓における成熟RBCに関連するタンパク質の検出の低減を示した。注目すべきことに、これらのRBCの増大のタイミングは、処置ナイーブ動物において免疫寛容性を付与する能力を有することが以前に実証された調節B細胞のかなりの富化と一致した。本明細書に記載されるさらなる分析は、一時的な低用量メトトレキセートで処置した動物に由来する赤血球系細胞の輸血が、ナイーブレシピエントに免疫寛容性を付与したことを示す。したがって、本明細書に記載される赤血球形成バイオマーカーは、治療剤への免疫寛容性を調査するために、および/またはメトトレキセートおよび治療剤を受けた患者において治療剤のさらなる投与と共に追加の免疫寛容性誘導または免疫抑制療法の投与を誘導するために使用することができる。
【0041】
したがって、本出願の一態様は、治療剤による処置を必要とする対象(例えば、ヒト酸性α-グルコシダーゼによる処置を必要とするポンペ病を有する対象)を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療剤の有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後の間に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;および(d)対照のそれと比較した赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、治療剤によるさらなる処置を継続することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法をまたは投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。
【0042】
本出願の別の態様では、治療剤を必要とする対象(例えば、ヒト酸性α-グルコシダーゼによる処置を必要とするポンペ病を有する対象)における治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程;(b)治療剤の治療有効量を対象に投与する工程;および(c)対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程であって、対照のレベルに対する試料中の赤血球形成バイオマーカーのレベルは、対象における治療剤への免疫寛容性の誘導を示す、工程を含む方法が提供される。
【0043】
本明細書に記載される方法のために有益である、キットおよび製造品も提供される。
【0044】
I.定義
用語「検出する」は、標的分子の定性的および定量的な測定を含むように最も広い意味で本明細書において使用される。検出することは、試料中の標的分子の単なる存在を同定することだけでなく、標的分子が検出可能なレベルで試料中に存在するかどうかについて
判定することを含む。
【0045】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は本明細書で互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸の重合体を指す。重合体は線状または分枝状であってもよく、それは改変アミノ酸を含むことができ、非アミノ酸が割り込んでもよい。本用語は、天然にまたは介入;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、リピド化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変、例えば標識構成成分とのコンジュゲーションによって改変されているアミノ酸重合体も包含する。例えば、アミノ酸の1つまたはそれ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸等を含む)ならびに当技術分野で公知の他の改変を含有するポリペプチドも、この定義の中に含まれる。本明細書で使用される用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、抗体を具体的に包含する。一部の例では、タンパク質は、複数のポリペプチドまたは重合鎖を含む。
【0046】
本明細書で使用される用語「バイオマーカー」は、試料中で検出することができる指標、例えば、予測的、診断的および/または予後診断的指標を指す。バイオマーカーは、ある特定の分子的、病理的、組織学的および/または臨床的特性によって特徴付けられる、特定のサブタイプの疾患、状態または生物学的応答(例えば、治療剤への望ましくない免疫応答)の指標の役割をすることができる。一部の実施形態では、バイオマーカーは、遺伝子である。一部の実施形態では、バイオマーカーは、細胞の集団またはサブセットである。バイオマーカーには、限定されずに、ポリヌクレオチド(例えば、DNAおよび/またはRNA)、ポリヌクレオチドコピー数の変化(例えば、DNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭水化物、糖脂質をベースとした分子マーカー、細胞および/または細胞の集団が含まれる。
【0047】
個体への臨床有益性の増加に関連するバイオマーカーの「量」または「レベル」は、生体試料中で検出可能なレベルである。これらは、当業技術者に公知であり、本明細書に開示されてもいる方法によって測定することができる。調査されるバイオマーカーの発現レベルまたは量は、処置への応答を判定するために使用することができる。
【0048】
用語「ハウスキーピングバイオマーカー」は、全ての細胞型に一般に同じように存在するバイオマーカー(例えば、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)またはバイオマーカー群を指す。一部の実施形態では、ハウスキーピングバイオマーカーは、「ハウスキーピング遺伝子」である。本明細書において、「ハウスキーピング遺伝子」は、その活性が細胞機能の維持のために必須であり、全ての細胞型に一般に同じように存在するタンパク質をコードする遺伝子または遺伝子群を指す。
【0049】
本明細書で互換的に使用されるように、「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドの重合体を指し、DNAおよびRNAが含まれる。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾されたヌクレオチドまたは塩基、および/またはそれらの類似体、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによって、または合成反応によって重合体に組み込むことができる任意の基質であってもよい。ポリヌクレオチドは、修飾されたヌクレオチド、例えばメチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体を含むことができる。存在する場合、ヌクレオチド構造の修飾は重合体のアセンブリーの前後に付与することができる。ヌクレオチドの配列には、非ヌクレオチド構成成分が割り込むことができる。ポリヌクレオチドは、合成の後に、例えば標識とのコンジュゲーションによってさらに修飾されてもよい。他のタイプの修飾には、例えば、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドの1つまたはそれ以上の類似体による置換、ヌクレオチド間修飾、例えば非荷電結合によるもの(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメート等)、および荷電結合によるもの(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)、ペンダント部分、例えば、タンパク質(例
えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply-L-リシン等)を含有するもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレン等)を有するもの、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化性金属等)を含有するもの、アルキル剤を含有するもの、改変された結合を有するもの(例えば、アルファアノマー核酸等)、ならびにポリヌクレオチドの未改変形態が含まれる。さらに、糖に通常存在するヒドロキシル基のいずれも、例えばホスホネート基、リン酸基と置き換えるか、標準の保護基によって保護するか、もしくは追加のヌクレオチドへの追加の結合を用意するために活性化することができるか、または固体もしくは半固体の支持体にコンジュゲートすることができる。5’および3’末端のOHは、リン酸化するか、または炭素原子数1から20のアミンもしくは有機キャップ形成基部分で置換することができる。他のヒドロキシルを、標準の保護基に誘導体化することもできる。ポリヌクレオチドは、当技術分野で一般に公知であるリボースまたはデオキシリボース糖の類似形、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-または2’-アジド-リボース、炭素環式糖類似体、α-アノマー糖、エピマー糖、例えばアラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、非環式類似体および無塩基ヌクレオシド類似体、例えばメチルリボシドを含有することもできる。1つまたはそれ以上のホスホジエステル結合を、代替の連結基と置き換えてもよい。これらの代替の連結基には、限定されずに、リン酸がP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、COまたはCH2(「ホルムアセタール」)で置き換えられる実施形態が含まれ、ここで、各RまたはR’は独立してHであるか、またはエーテル(-O-)結合、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルもしくはアラルジルを場合により含有する置換型もしくは非置換型のアルキル(1~20C)である。ポリヌクレオチドの中の全ての結合が同一である必要があるとは限らない。上の記載は、本明細書において言及される、RNAおよびDNAを含む全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0050】
本明細書で使用されるように、「オリゴヌクレオチド」は、そうとは限らないが長さが約250ヌクレオチド未満である、短い一本鎖ポリヌクレオチドを一般に指す。オリゴヌクレオチドは合成物であってもよい。用語「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」は、互いに排他的でない。ポリヌクレオチドの上の記載は、オリゴヌクレオチドに等しくおよび完全に適用できる。
【0051】
用語「プライマー」は、核酸とハイブリダイズすることができ、その後、一般に遊離の3’-OH基を提供することによって相補核酸の重合を促進する、一本鎖ポリヌクレオチドを指す。
【0052】
用語「小分子」は、約2000ダルトンまたはそれ未満、好ましくは約500ダルトンまたはそれ未満の分子量の任意の分子を指す。
【0053】
本明細書で使用される用語「試料」は、例えば物理的、生化学的、化学的および/または生理的特徴に基づいて特徴付けるおよび/または同定する細胞性および/または他の分子実体を含有する、目的の対象および/または個体から得られるかそれに由来する組成物を指す。試料には、限定されずに、一次もしくは培養された細胞または細胞系、細胞上清、細胞溶解物、血小板、血清、血漿、硝子体液、リンパ液、滑液、小胞液、精液、羊水、乳汁、全血、血液由来細胞、尿、脳脊髄液、唾液、痰、涙、汗、粘液、腫瘍溶解物および組織培地、組織抽出物、例えばホモジナイズされた組織、腫瘍組織、細胞抽出物、およびその組合せが含まれる。
【0054】
「組織試料」または「細胞試料」は、対象または個体の組織またはコンパートメントから得られた類似の細胞の集合を意味する。組織または細胞試料の供与源は、新鮮な凍結さ
れたおよび/もしくは保存された臓器、組織の試料、生検および/または吸引物などからの固体組織;血液または血漿などの任意の血液成分;体液、例えば脳脊髄液、羊水、腹水または間質液;対象の妊娠または発達の任意の時間からの細胞であってよい。組織試料は、一次または培養された細胞もしくは細胞系であってもよい。場合により、組織または細胞試料は、疾患組織/臓器から得られる。組織試料は、保存剤、抗凝固薬、緩衝液、固定剤、栄養素、抗生物質などの天然において組織と本来混合していない化合物を含有することができる。
【0055】
本明細書で使用されるように、「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」または「対照組織」は、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準またはレベルを指す。
【0056】
本明細書の目的のために、組織試料の「切片」は、組織試料の単一の部分または断片、例えば組織試料から切り取られた組織または細胞の薄切片を意味する。組織試料の同じ切片を形態学的および分子的レベルで分析することができるか、またはポリペプチドおよびポリヌクレオチドの両方に関して分析することができるものと理解される場合には、組織試料の複数の切片をとり、分析にかけることができるものと理解される。
【0057】
「相関する」または「相関している」は、どんな形であれ、第1の分析またはプロトコールの成績および/または結果を、第2の分析またはプロトコールの成績および/または結果と比較することを意味する。例えば、第1の分析もしくはプロトコールの結果を第2のプロトコールの実行で使用することができ、および/または第2の分析もしくはプロトコールを実行するべきであるかどうか判定するために第1の分析もしくはプロトコールの結果を使用することができる。ポリペプチドの分析またはプロトコールの実施形態に関して、特定の治療レジメンを実行するべきであるかどうか判定するために、ポリペプチド発現の分析またはプロトコールの結果を使用することができる。ポリヌクレオチドの分析またはプロトコールの実施形態に関して、特定の治療レジメンを実行するべきであるかどうか判定するために、ポリヌクレオチド発現の分析またはプロトコールの結果を使用することができる。
【0058】
本明細書で使用される用語「実質的に同じ」は、2つの値の間の差が、前記値(例えば、Kd値または発現)で測定される生物学的特性の面で生物学的および/または統計的にほとんどまたはまったく有意でないと当業者がみなすような、2つの数値の間の十分に高い程度の類似性を表す。前記2つの値の間の差は、例えば、参照/コンパレーター値に対して、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満および/または約10%未満である。
【0059】
本明細書で使用される語句「実質的に異なる」は、2つの値の間の差が前記値(例えば、Kd値)で測定される生物学的特性の面で統計的に有意であると当業者がみなすような、2つの数値の間の十分に高い程度の差を表す。前記2つの値の間の差は、例えば、参照/コンパレーター分子の値に対して、約10%を超え、約20%を超え、約30%を超え、約40%を超え、および/または約50%を超える。
【0060】
薬剤の「有効量」は、必要な投薬量および期間で、所望の生理学的結果を達成するのに有効な量を指す。
【0061】
「治療的有効量」は、対象で疾患または状態を処置または予防するための治療剤の量を指す。一部の実施形態では、治療剤の治療的有効量は、生存期間(全生存期間および無進行生存を含む)を延長すること;客観的な応答(完全寛解または部分寛解を含む)をもたらすこと;疾患または状態の1つまたはそれ以上の徴候または症状を少なくとも一部緩和
すること;および/または対象の生活の質を向上させることができる。
【0062】
用語「医薬組成物」は、そこに含まれる有効成分の生物活性を有効にさせるような形態であり、製剤が投与される対象に許容されないほど毒性である追加の構成成分を含有しない調製物を指す。
【0063】
「薬学的に許容される担体」は、医薬製剤中の、有効成分以外の対象に無毒である成分を指す。薬学的に許容される担体には、限定されずに、緩衝液、賦形剤、安定剤または保存剤が含まれる。
【0064】
本明細書で使用されるように、「処置」(および「処置する」または「処置すること」などの文法上のその変形)は、処置する個体の自然経過を変化させる企てにおける臨床介入を指し、臨床病理の過程で実行することができる。処置の望ましい効果には、限定されずに、疾患の再発を予防すること、症候の緩和、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的帰結の減少、疾患進行の速度を低下させること、病態の改善または緩和、および寛解または予後の向上が含まれる。
【0065】
本明細書で使用されるように、用語「予防的処置」は、個体が障害を有するかそれを有する危険があることが知られているか疑われているが、障害の症状も最小限の症状も示していない場合の処置を指す。予防的処置を受ける個体は、症状の発症の前に処置することができる。
【0066】
「個体」または「対象」は、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されずに、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌおよびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギおよびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれる。ある特定の実施形態では、個体または対象は、ヒトである。
【0067】
本明細書において用語「同時に」は、2つまたはそれ以上の治療剤の投与を指すために使用され、ここで、投与の少なくとも一部は時間的に重複するか、または投与は厳密には時間的に重複しないが、少なくとも第2の薬剤が投与される間、1つの薬剤が生理作用を発揮し続けるのに十分な全身レベルで残存する。したがって、同時投与は、1つまたはそれ以上の薬剤の投与が1つまたはそれ以上の他の薬剤の投与を中止した後にも継続する投与レジメン、または1つまたはそれ以上の薬剤が、1つまたはそれ以上の他の薬剤が投与された後であるが生理作用を発揮し続けるのに十分な全身レベルで残存している間に投与される投与レジメンを含む。
【0068】
「低減または阻害する」は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上のいずれかの全体の減少を引き起こす能力を意味する。
【0069】
「増加または上昇する」は、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上のいずれかの全体の増加を引き起こす能力を意味する。
【0070】
用語「添付文書」は、適応症、使用法、投薬量、投与、併用療法、禁忌症および/またはそのような治療製品の使用に関する警告に関する情報を含む、治療製品の市販パッケージに慣習的に含まれる説明書を指すために使用される。
【0071】
「製造品」は、少なくとも1つの試薬、例えば、疾患もしくは状態(例えば、がん)の処置のための医薬、または本明細書に記載されるバイオマーカーを特異的に検出するため
のプローブを含む任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)またはキットである。ある特定の実施形態では、製品またはキットは、本明細書に記載される方法を実行するためのユニットとして促進されるか、配給されるか、販売される。
【0072】
本明細書で使用される場合、語句「基づく」は、1つまたはそれ以上のバイオマーカーに関する情報は、処置決定、添付文書で提供される情報またはマーケッティング/プロモーションの指針等を知らせるために使用されることを意味する。
【0073】
目的の抗原、例えば宿主細胞タンパク質に「結合する」抗体は、抗体が検定用試薬として、例えば、捕捉抗体または検出抗体として有益であるように十分な親和性で抗原に結合するものである。一般的に、そのような抗体は、他のポリペプチド(例えば、他の抗原)と有意に交差反応しない。
【0074】
標的分子へのポリペプチドの結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的の上のエピトープへの「特異的結合」またはそれに「特異的に結合する」または「特異的である」という用語は、非特異的相互作用と測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般的に結合活性を有しない類似の構造的エレメントで構成される分子である対照分子(例えば、標的タンパク質と同一でない対照タンパク質)の結合と比較した、標的分子の結合を判定することによって測定することができる。
【0075】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)の間の非共有相互作用の合計の強度を指す。特に明記しない限り、本明細書で使用されるように、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)の間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。そのパートナーYへの分子Xの親和性は、解離定数(Kd)によって一般的に表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む当技術分野で公知の一般方法によって測定することができる。
【0076】
本明細書の用語「抗体」は最も広い意味で使用され、具体的にはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、半抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、および、それらが所望の生物活性を示す限り、抗体断片を包含する。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書で抗体と互換的に使用される。
【0077】
本明細書に記載される発明の実施形態は、実施形態「からなる」および/または「から事実上なる」ことを含むと理解される。
【0078】
本明細書で「約」のついた値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする変形体を含む(および記載する)。例えば、「約X」に言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0079】
本明細書で使用されるように、値またはパラメータ「ではない」への言及は、一般的に値またはパラメータ「以外」を意味し、記載する。例えば、その方法はタイプXのがんを処置するために使用されないとは、その方法がX以外のタイプのがんを処置するために使用されることを意味する。
【0080】
本明細書で使用される用語「約X~Y」は、「約Xから約Y」と同じ意味を有する。
【0081】
本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「または」および「the」には、文脈が明らかに別に指示しない限り、複数形が含まれる。
【0082】
II.処置および調査の方法
治療剤による処置を必要とする対象を処置する方法であって、治療剤およびメトトレキセートの投与の後の対象からの試料中の赤血球形成バイオマーカーの検出に基づく方法が本明細書で提供される。
【0083】
一部の実施形態では、治療剤による処置を必要とする対象(例えばヒト対象)を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療剤の有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後(例えば約7日後から約14日後)の間に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;および(d)対照のそれと比較した赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、治療剤によるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。一部の実施形態では、前記の赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することを含み、ここで、遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子、例えばポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療剤療法の投与の48時間前から48時間後の間(例えば約24時間から約48時間後の間)に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、0.1mg/kg~5mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与することは、リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレート、コルチコステロイドの1つまたはそれ以上を投与すること;および、抗原特異的寛容性戦略(例えば、場合により同時のIVIGと一緒のより頻繁なおよび/またはより高い用量の治療薬)を投与することを含む。
【0084】
一部の実施形態では、治療ポリペプチド(例えば、モノクローナル抗体または酵素)による処置を必要とする対象を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療ポリペプチドの有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後(例えば約7日後から約14日後)の間に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;および(d
)対照のそれと比較した赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、治療ポリペプチドによるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療ポリペプチドによるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療ポリペプチドによるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療ポリペプチドによるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療ポリペプチドによるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。一部の実施形態では、前記の赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することを含み、ここで、遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子、例えばポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療ポリペプチド療法の投与の48時間前から48時間後の間(例えば約24時間から約48時間後の間)に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、0.1mg/kg~5mg/kgで投与される。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与することは、リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレート、コルチコステロイドの1つまたはそれ以上を投与すること;および、抗原特異的寛容性戦略(例えば、場合により同時のIVIGと一緒のより頻繁なおよび/またはより高い用量の治療薬)を投与することを含む。一部の実施形態では、治療ポリペプチドは、リンパ球を枯渇させる薬剤、例えばアレムツズマブである。一部の実施形態では、治療ポリペプチドは、酵素、例えばヒトアルファガラクトシダーゼAまたはヒト酸性α-グルコシダーゼである。
【0085】
一部の実施形態では、治療ポリペプチド(例えば、モノクローナル抗体または酵素)による処置を必要とする対象(例えば、ヒト対象)を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療ポリペプチドの有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後の間に対象から得た試料中の未熟な有核赤血球を検出すること;および(d)未熟な有核赤血球のレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療ポリペプチドによるさらなる処置と同時に投与すること;または未熟な有核赤血球のレベルが対照のそれに対して上昇している場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療ポリペプチドによるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、試料は、血液試料、または末梢血単核細胞を含む血液画分の試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である
。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療ポリペプチド療法の投与の48時間前から48時間後の間(例えば約24時間から約48時間後の間)に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、0.1mg/kg~5mg/kgで投与される。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与することは、リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレート、コルチコステロイドの1つまたはそれ以上を投与すること;および、抗原特異的寛容性戦略(例えば、場合により同時のIVIGと一緒のより頻繁なおよび/またはより高い用量の治療薬)を投与することを含む。
【0086】
一部の実施形態では、治療ポリペプチド(例えば、モノクローナル抗体または酵素)による処置を必要とする対象(例えば、ヒト対象)を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療ポリペプチドの有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後の間に対象から得た試料中の赤血球形成に関連する遺伝子(例えば、RNA転写物またはタンパク質)を検出すること;および(d)赤血球形成に関連する遺伝子のレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療ポリペプチドによるさらなる処置と同時に投与すること;または赤血球形成に関連する遺伝子のレベルが対照のそれに対して上昇している場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療ポリペプチドによるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、試料は、血液試料、または末梢血単核細胞を含む血液画分の試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療ポリペプチド療法の投与の48時間前から48時間後の間(例えば約24時間から約48時間後の間)に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、0.1mg/kg~5mg/kgで投与される。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与することは、リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレート、コルチコステロイドの1つまたはそれ以上を投与すること;および、抗原特異的寛容性戦略(例えば、場合により同時のIVIGと一緒のより頻繁なおよび/またはより高い用量の治療薬)を投与することを含む。
【0087】
一部の実施形態では、治療ポリペプチド(例えば、モノクローナル抗体または酵素)による処置を必要とする対象(例えば、ヒト対象)を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療ポリペプチドの有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後の間に対象から得た試料中の赤血球形成に関連する補因子を検出すること;および(d)赤血球形成に関連する補因子のレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療ポリペプチドによるさらなる処置と同時に投与すること;または赤血球形成に関連する補因子のレベルが対照のそれに対して上
昇している場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療ポリペプチドによるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する補因子は、ポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。一部の実施形態では、試料は、血液試料、または末梢血単核細胞を含む血液画分の試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療ポリペプチド療法の投与の48時間前から48時間後の間(例えば約24時間から約48時間後の間)に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、0.1mg/kg~5mg/kgで投与される。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与することは、リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレート、コルチコステロイドの1つまたはそれ以上を投与すること;および、抗原特異的寛容性戦略(例えば、場合により同時のIVIGと一緒のより頻繁なおよび/またはより高い用量の治療薬)を投与することを含む。
【0088】
一部の実施形態では、治療剤(例えば、酵素)による処置を必要とするリソソーム蓄積症を有する対象を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療剤の有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後(例えば約7日後から約14日後)の間に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;および(d)対照のそれと比較した赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、治療剤によるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。一部の実施形態では、前記の赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することを含み、ここで、遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子、例えばポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。一部の実施形態では、試料は、血液試料、または末梢血単核細胞を含む血液画分の試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メ
トトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療剤療法の投与の48時間前から48時間後の間(例えば約24時間から約48時間後の間)に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、0.1mg/kg~5mg/kgで投与される。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与することは、リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレート、コルチコステロイドの1つまたはそれ以上を投与すること;および、抗原特異的寛容性戦略(例えば、場合により同時のIVIGと一緒のより頻繁なおよび/またはより高い用量の治療薬)を投与することを含む。一部の実施形態では、治療ポリペプチドは、ヒトアルファガラクトシダーゼAまたはヒト酸性α-グルコシダーゼである。一部の実施形態では、対象は、ゴーシェ病を有し、ヒトアルファガラクトシダーゼAを必要とする。
【0089】
一部の実施形態では、対象(例えば、ヒト対象)においてポンペ病(例えば、小児発症および/またはCRIM陰性のポンペ病)を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象に治療剤(例えば、ヒト酸性α-グルコシダーゼ)の有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後(例えば約7日後から約14日後)に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;および(d)対照のそれと比較した赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、治療剤によるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。一部の実施形態では、前記の赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することを含み、ここで、遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子、例えばポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。一部の実施形態では、試料は、血液試料、または末梢血単核細胞を含む血液画分の試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療剤療法の投与の48時間前から48時間後の間(例えば約24時間から約48時間後の間)に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、0.1mg/kg~5mg/kgで投与される。一部の実施形態では、追加
の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与することは、リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレート、コルチコステロイドの1つまたはそれ以上を投与すること;および、抗原特異的寛容性戦略(例えば、場合により同時のIVIGと一緒のより頻繁なおよび/またはより高い用量の治療薬)を投与することを含む。一部の実施形態では、工程(d)は、T細胞、B細胞または形質細胞を枯渇させる薬剤、例えばボルテゾミブを投与することをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、治療剤に対する抗体のレベル、CD19のレベルおよび疾患進行の1つまたはそれ以上をモニタリングすることをさらに含む。
【0090】
一部の実施形態では、対象(例えば、ヒト対象)において小児発症ポンペ病(例えば、古典的小児発症ポンぺ病)を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象にヒト酸性α-グルコシダーゼの有効量を最初の免疫寛容性誘導療法(例えば、リツキシマブおよび/またはIVIG)と同時に投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後(例えば約7日後から約14日後)に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;および(d)対照のそれと比較した赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、ヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法をヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずにヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法をヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずにヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。一部の実施形態では、前記の赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することを含み、ここで、遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子、例えばポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。一部の実施形態では、試料は、血液試料、または末梢血単核細胞を含む血液画分の試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、ヒト酸性α-グルコシダーゼ療法の投与の48時間前から48時間後の間(例えば約24時間から約48時間後の間)に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、0.1mg/kg~5mg/kgで投与される。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与することは、リツキシマブ、静脈内免
疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレート、コルチコステロイドの1つまたはそれ以上を投与すること;および、抗原特異的寛容性戦略(例えば、場合により同時のIVIGと一緒のより頻繁なおよび/またはより高い用量の治療薬)を投与することを含む。一部の実施形態では、工程(d)は、T細胞、B細胞または形質細胞を枯渇させる薬剤、例えばボルテゾミブを投与することをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、抗ヒト酸性α-グルコシダーゼ抗体(例えば、抗rhGAA IgG抗体)およびCD19レベル、および疾患進行の1つまたはそれ以上をモニタリングすることをさらに含む。一部の実施形態では、小児発症ポンペ病は、CRIM陰性のポンペ病である。
【0091】
一部の実施形態では、ポンペ病(例えば、小児発症および/またはCRIM陰性のポンペ病)を有する対象を処置する方法であって、(a)少なくとも1サイクルのメトトレキセート処置および治療剤(例えば、ヒト酸性α-グルコシダーゼ)の少なくとも1用量を以前に投与されている対象から試料を得ること;(b)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後(例えば約7日後から約14日後)に試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;および(c)対照のそれと比較した赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、治療剤によるさらなる処置を継続することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(c)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(c)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、工程(c)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。一部の実施形態では、前記の赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することを含み、ここで、遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子、例えばポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。一部の実施形態では、試料は、血液試料、または末梢血単核細胞を含む血液画分の試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療剤療法の投与の48時間前から48時間後の間(例えば約24時間から約48時間後の間)に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、0.1mg/kg~5mg/kgで投与される。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与することは、リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレート、コルチコステロイドの1つまたはそれ以上を投与すること;および、抗原特
異的寛容性戦略(例えば、場合により同時のIVIGと一緒のより頻繁なおよび/またはより高い用量の治療薬)を投与することを含む。一部の実施形態では、工程(d)は、T細胞、B細胞または形質細胞を枯渇させる薬剤、例えばボルテゾミブを投与することをさらに含む。一部の実施形態では、本方法は、治療剤に対する抗体のレベル、CD19のレベルおよび疾患進行の1つまたはそれ以上をモニタリングすることをさらに含む。
【0092】
本出願の一態様は、治療剤を必要とする対象における治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程;(b)治療剤の治療有効量を対象に投与する工程;および(c)対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程であって、対照のレベルに対する試料中の赤血球形成バイオマーカーのレベルは、対象における治療剤への免疫寛容性の誘導を示す、工程を含む方法を提供する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する遺伝子であり、ここで、遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子、例えばポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたは低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。一部の実施形態では、試料は、血液試料、または末梢血単核細胞を含む血液画分の試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。
【0093】
一部の実施形態では、治療剤を必要とする対象における治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程;(b)治療剤の治療有効量を対象に投与する工程;および(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後(例えば約7日後から約14日後)に赤血球形成バイオマーカーを検出する工程であって、赤血球形成バイオマーカーの上昇したレベルの検出は、対象における治療剤への免疫寛容性の誘導を表す、工程を含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する遺伝子であり、ここで、遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランス
フェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子、例えばポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたは低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。一部の実施形態では、試料は、血液試料、または末梢血単核細胞を含む血液画分の試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。
【0094】
一部の実施形態では、ポンペ病を有する対象における免疫寛容性を調査する方法であって、(a)少なくとも1サイクルのメトトレキセート処置および治療剤の少なくとも1用量を以前に投与されている対象から試料を得る工程;および(b)試料を赤血球形成バイオマーカーに結合する薬剤と接触させる工程であって、対照に対して赤血球形成バイオマーカーの上昇したレベルの検出は、免疫寛容性の誘導を示す、工程を含む方法が提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する遺伝子であり、ここで、遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子、例えばポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたは低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。一部の実施形態では、試料は、血液試料、または末梢血単核細胞を含む血液画分の試料である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料である。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。
【0095】
A.赤血球形成バイオマーカー
本出願は、試料中の1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーを検出する方法を提供する。本明細書に記載される赤血球形成バイオマーカーは、免疫寛容性誘導をモニタリングするために、処置の任意の好適な時間に単独でまたは組み合わせで使用することができる。一部の実施形態では、対照のそれより高いレベルの赤血球形成バイオマーカーの検出は、対象においてメトトレキセート投与によって誘導される治療薬への免疫寛容性を示す。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーが上昇レベルで検出される場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法が同時に投与されない治療剤によるさらなる処置に対象が応答する可能性がより高い。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーが対照のレベルまたはそれ以下で検出される場合、追加の免疫寛容性誘導療法または
免疫抑制療法の治療剤によるさらなる処置との同時投与から対象が利益を受ける可能性がある。
【0096】
一部の実施形態では、対照における赤血球形成バイオマーカーのレベルは、前もって決められる。一部の実施形態では、対照における赤血球形成バイオマーカーのレベルは、メトトレキセートおよび/または治療剤を受ける前の個体における赤血球形成バイオマーカーの平均または中間レベルに基づく。一部の実施形態では、対照における赤血球形成バイオマーカーのレベルは、一人またはそれ以上の健康な個体における赤血球形成バイオマーカーの平均または中間レベルに基づく。一部の実施形態では、対照における赤血球形成バイオマーカーのレベルは、治療剤を受ける個体と同じ疾患または状態(例えばポンペ病)を有する一人またはそれ以上の個体における赤血球形成バイオマーカーの平均または中間レベルに基づく。一部の実施形態では、対照における赤血球形成バイオマーカーのレベルは、メトトレキセートおよび/または治療剤を受ける前に、またはそれ無しに治療剤を必要とする、一人またはそれ以上の個体における赤血球形成バイオマーカーの平均または中間レベルに基づく。一部の実施形態では、対照における赤血球形成バイオマーカーのレベルは、メトトレキセート処置によって治療剤への免疫寛容性が誘導された、一人またはそれ以上の個体における赤血球形成バイオマーカーの平均または中間レベルに基づく。一部の実施形態では、対照における赤血球形成バイオマーカーのレベルは、治療剤による処置を受けたが、その治療剤に対する免疫応答(ADAなど)を有していない一人またはそれ以上の個体における赤血球形成バイオマーカーの平均または中間レベルに基づく。一部の実施形態では、対照における赤血球形成バイオマーカーのレベルは、対照試料に基づいて決められる。
【0097】
本出願は、免疫寛容性を養子的に導入することができる7日時点で単離される試料の転写、プロテオームおよび細胞分析による、メトトレキセート誘導免疫寛容性の機構のさらなる評価を一部開示する。この評価は、免疫寛容性の誘導のためのバイオマーカーとして、赤血球形成に関連する様々な遺伝子を同定した。本開示は、脾臓の赤色髄における未熟な有核RBCのより高い頻度および出現によって実証される通り、メトトレキセートが赤血球(RBC)を一時的に枯渇させ、それによって赤血球形成を誘導することの発見にも関する。
【0098】
一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後の間に検出される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、メトトレキセートの投与の後に複数回検出される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、メトトレキセートの投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30日後のうちの1日またはそれより多い日に検出される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、サイクルで投与される。例えば、メトトレキセートの単一サイクルは、メトトレキセートの単回投与、またはメトトレキセートの約2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11日のうちのいずれか1つの連続投与からなることができる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、サイクルの最後のメトトレキセート投与の1日後から約30日後の間に検出される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、サイクルの最初のメトトレキセート投与の1日後から約30日後の間に検出される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、単一サイクル、2サイクルまたは3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、単一サイクルまたは複数のサイクルの最初のサイクルの最後のメトトレキセート投与の1日後から約30日後の間に検出される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、単一サイクルまたは複数のサイクルの最初のサイクルの最初のメトトレキセート投与の1日後から
約30日後の間に検出される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、第3サイクルの最後のメトトレキセート投与の1日後から約30日後の間に検出される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、単一または第3のサイクルの最初のメトトレキセート投与の1日後から約30日後の間に検出される。
【0099】
一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベルである。一部の実施形態では、未熟な有核赤血球のレベルはメトトレキセート投与の後に低下するが、その後経時的に上昇し、そのため、未熟な有核赤血球のレベルは参照試料と比較して上昇する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6もしくは7日後のいずれかまたは約1日後から7日後の間の任意の時期に低下する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与のサイクルの中の最後のメトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6もしくは7日後のいずれかまたは約1日後から7日後の間の任意の時期に低下する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与のサイクルの中の最初のメトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6もしくは7日後のいずれかまたは約1日後から7日後の間の任意の時期に低下する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6、7、14、21、28もしくは30のいずれかを超える日数の後、または約1日後から30日後の間の任意の時期に上昇する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与のサイクルの中の最後のメトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6、7、14、21、28もしくは30のいずれかを超える日数の後、または約1日後から30日後の間の任意の時期に上昇する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与のサイクルの中の最初のメトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6、7、14、21、28もしくは30のいずれかを超える日数の後、または約1日後から30日後の間の任意の時期に上昇する。
【0100】
赤血球形成は、さもなければ赤血球前駆体として知られる未熟な有核RBCが、無核の円板状の成熟した赤血球に発達する過程である(Nandakumarら、2016)。未熟な有核RBCは、細胞表面トランスフェリン受容体CD71によって同定することができる(PanおよびJohnstone 1983)。造血組織における最も初期の未熟な有核RBCまたは赤芽球は、前赤芽球である。有糸分裂の連続した段階を通して、最終的に有糸分裂の複数の段階を通して形態学的に異なったものに分化する前赤芽球は、連続して好塩基、多染性に、次に正染性赤芽球になり、次に網赤血球(核が放出された)になり、最後に成熟した赤血球になる(Nandakumarら、2016)。赤血球特異的モノクローナル抗体Ter-119は、有核前赤芽球から核摘出成熟赤血球までの様々な分化段階を通して赤血球系細胞と反応する(Kinaら、2000)。初期の有核赤芽球および網赤血球はトランスフェリン受容体CD71を発現するが、成熟赤血球または赤血球は発現しない(PanおよびJohnstone 1983)。前赤芽球および赤血球形成発達の異なった連続的段階は、CD71の発現を通して明白に、または接着分子CD44の差別的発現を通して同様に同定することができる(Chenら、2009、Koulnisら、2011)。マウスでは、成熟した赤血球は体内を最高40日間循環することができ、その後、それらは加齢および自然劣化により老化を経る(Van Putten 1958)。加齢RBCはエリプトーシスと呼ばれる特殊形態のアポトーシスを経、循環から取り除かれる(Daugasら、2001、Testa 2004)。重要なことに、成熟したRBCおよび未熟な有核RBCは、独立した機構を通して免疫調節能力を有すると示唆されている(Schakelら、2006;Cremelら、2013;Gettsら、2013;Cremelら、2015;Grimmら、2015;Lorentzら、2015;Yiら、2015)。
【0101】
成熟したRBCの除去は、自己抗原への持続的な継続した免疫寛容性を提供すると考え
られている(Cremelら、2013;Gettsら、2013)。理論的には、エリプトーシスを経る加齢RBCは免疫寛容原性的に取り除かれ、それによってRBCおよびその抗原ペイロード全体への寛容性を誘導する。この天然の現象を利用することによって、いくつかのグループは、成熟した赤血球を封入するかまたは標的タンパク質配列に結合させることによって、マウスにおいて生物学的療法への免疫寛容性を達成した(Kontosら、2013;Cremelら、2015;Grimmら、2015;Lorentzら、2015)。あるいは、CD71を発現する未熟な有核RBCは、新生児における固有の免疫抑制を直接的に媒介することが示唆されている(Elahiら、2013)。さらに、新興の文献は、RBCの上のCD47の樹状細胞の上のシグナル調節タンパク質α(SIRPα)との相互作用を通してT細胞活性化および抗体応答を促進する樹状細胞の能力を、RBCが阻害することができることを示している(Schakelら、2006;Yiら、2015)。
【0102】
上記のおよび/または他の機構を通して、理論によって束縛されること無しに、本明細書に記載されるメトトレキセートによって誘導される赤血球形成は、生物学的療法への免疫寛容性誘導をさらに促進することができる。したがって、本明細書に記載される赤血球形成バイオマーカーは、一時的な低用量メトトレキセート処置によって誘導される免疫寛容性のレベルの正確で便利な早期の評価を提供することができ、これは、治療剤による処置のさらなるサイクルを追加するために免疫寛容性誘導および/または免疫抑制療法の選択を導くために使用することができる。
【0103】
一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、全体の赤血球系細胞集団または赤血球系細胞のサブセットである。当業者が理解するように、所与の赤血球系細胞集団のレベルは、いくつかの方法で表すことができる。例えば、集団のレベルは、比較百分率、割合もしくは頻度(例えば、全体の血液細胞または全体の末梢血単核細胞の)、絶対数または濃度(例えば、細胞数/ml)で表すことができる。赤血球系細胞は全血または細胞性血液画分から一般的に得られるが、赤血球系細胞は脾臓、骨髄または他の組織から得ることもできる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。本明細書で使用されるように、「ヘマトクリット」は、赤血球の体積の血液の全体積に対する比を指す。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球系細胞のサブセットのレベルである。本明細書で言及されるように、「赤血球系細胞」および「赤血球」(すなわち「RBC」)は、赤血球系統における全ての細胞型を指すために互換的に使用され、それらは、マウスRBCの細胞表面のLy76(すなわち、抗体Ter-119の抗原)またはヒトPBMCの細胞表面のCD235aの発現によって特徴付けられる。赤血球系細胞には、前赤芽球、塩基親和性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球、未熟網赤血球を含む網赤血球、および赤血球(すなわち、成熟した赤血球)が含まれる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球系前駆体細胞のレベルである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球(RBC)のレベルである。「未熟な有核赤血球」は、細胞表面のLy76(Ter-119の抗原)およびトランスフェリン受容体CD71の発現によって特徴付けられる、核を有する赤血球前駆体である。未熟な有核RBCには、前赤芽球から未熟網赤血球までの核を含むRBC前駆体が含まれる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、網赤血球成熟指数(別名、「IRF」)である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、成熟赤血球のレベルである。成熟網赤血球は、核を放出した網赤血球であり、成熟赤血球に形質転換する。
【0104】
一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、細胞性核酸の含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、血液試料中の全血液細胞のRNA含有量などの細胞性RNA含有量である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、血液試料中の全血液細胞のDNA含有量などの細胞性DNA含有量である。血液試料中の
網赤血球レベルは、血液試料中の血液細胞のRNAおよび/またはDNA含有量と相関する。
【0105】
赤血球系細胞亜集団の様々なレベルおよび全血液細胞の核酸含有量は、当技術分野で公知の方法を使用して測定することができる。SYSMEX(登録商標)Hematology Analyzersなどの市販の自動細胞計数システムは、未熟な有核RBCレベル、網赤血球成熟指数、ヘマトクリットおよび全血液細胞のRNA/DNA含有量を含む血液パラメータを判定するために利用可能である。
【0106】
本明細書で同定される赤血球形成バイオマーカーには、赤血球形成に関連する遺伝子および/または赤血球系細胞の1つまたはそれ以上のサブセットが含まれ、これらは、「赤血球形成バイオマーカー遺伝子」と本明細書において呼ばれる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、例えば造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝を含む、赤血球形成における1つまたはそれ以上の生化学経路に関連する遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、
図1Aおよび1Bに示すrhGAA+MTX群の上方制御された遺伝子の群から選択される遺伝子である。例示的な遺伝子には、限定されずに、トランスフェリン受容体、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2およびGATA-1が含まれる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球系細胞または赤血球系細胞のサブセットによって発現される細胞表面マーカーをコードする遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、Ly76(Ter-119のための抗原)またはCD235aである。CD235aは、グリコホリンA、GYPA、MN、MNS、GPSAT、PAS-2、GPErik、HgpMiv、HgpMiXIまたはHgpSta(C)としても知られる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、トランスフェリン受容体である。一部の実施形態では、赤血球形成は、トランスフェリン受容体1である。トランスフェリン受容体1は、TfR1、分化抗原群71、CD71、T9、TR、TFR、p90、TRFRまたはIMD46としても知られる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、トランスフェリンである。トランスフェリンは、TF、TFQTL1、PRO1557、PRO2086またはHEL-S-71pとしても知られる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、CD44である。CD44は、IN、LHR、MC56、MDU2、MDU3、MIC4、Pgp1、CDW44、CSPG8、HCELL、HUTCH-1またはECMR-IIIとしても知られる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球系細胞または赤血球系細胞のサブセットによって発現される遺伝子である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘモグロビンである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、成熟した赤血球によって発現される遺伝子、例えば赤血球アンキリンまたはグリコホリンCである。
【0107】
赤血球形成に関連しているかまたは赤血球系細胞の細胞表面マーカーをコードする1つまたはそれ以上の遺伝子の発現レベルは、DNA、mRNA、cDNA、タンパク質、タンパク質断片および/または遺伝子コピー数を限定されずに含む、当技術分野で公知の任意の好適な基準に基づいて定性的および/または定量的に判定することができる。バイオマーカー遺伝子の「発現レベル」および「量」は、本明細書において互換的に使用される。一部の実施形態では、第1の試料中のバイオマーカー遺伝子の発現レベルは、第2の試料中の発現レベルと比較して増加または上昇する。一部の実施形態では、第1の試料中のバイオマーカー遺伝子の発現レベルは、第2の試料中の発現レベルと比較して低下または低減する。ある特定の実施形態では、第2の試料は、参照(例えば、参照試料、参照細胞または参照組織)または対照(例えば、対照試料、対照細胞または対照組織)である。一部の実施形態では、対照は、既存対照またはプラセボ対照である。「既存対照」は、1つまたはそれ以上の以前の実験で得た対照を指す。一部の実施形態では、既存対照は、1つまたはそれ以上の治験に基づく対照である。プラセボ対照は、メトトレキセート処置もし
くは治療剤療法を受けないか、またはメトトレキセート処置無しで治療剤療法を受ける対象から得られる対照を指す。対照試料における発現レベルと比較した第1の試料におけるバイオマーカー遺伝子の「上昇した」または「増加した」発現レベルの検出は、第1の試料におけるバイオマーカー遺伝子の「存在」を示すことができる。対照試料における発現レベルと比較した第1の試料におけるバイオマーカー遺伝子の「低減した」または「低下した」発現レベルの検出は、第1の試料におけるバイオマーカー遺伝子の「不在」を示すことができる。バイオマーカー遺伝子の発現レベルを判定するための追加の開示が、本明細書に記載される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2および/またはGATA-1である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘモグロビン、赤血球アンキリンおよび/またはグリコホリンCである。
【0108】
一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する補因子である。赤血球形成に関連する例示的な補因子には、ポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールが限定されずに含まれる。補因子のレベルは、例えば、質量分析およびHPLCを含む、当技術分野で公知の任意の方法を使用して測定することができる。
【0109】
一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球の存在である。一部の実施形態では、未熟な有核赤血球のレベルはメトトレキセート投与の後に低下するが、その後経時的に上昇し、そのため、未熟な有核赤血球のレベルは参照試料と比較して上昇する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6もしくは7日後のいずれかまたは約1日後から7日後の間の任意の時期に低下する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与のサイクルの中の最後のメトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6もしくは7日後のいずれかまたは約1日後から7日後の間の任意の時期に低下する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与のサイクルの中の最初のメトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6もしくは7日後のいずれかまたは約1日後から7日後の間の任意の時期に低下する。一部の実施形態では、メトトレキセートが単一サイクルで投与される場合、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1、約2、約3、約4、約5、約6または約7日前までに低下する。一部の実施形態では、メトトレキセートが2サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される場合、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1日から約14日前までに低下する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6、7、14、21、28もしくは30のいずれかを超える日数の後、または約1日後から30日後の間の任意の時期に上昇する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与のサイクルの中の最後のメトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6、7、14、21、28もしくは30のいずれかを超える日数の後、または約1日後から30日後の間の任意の時期に上昇する。一部の実施形態では、未熟な赤血球のレベルは、メトトレキセート投与のサイクルの中の最初のメトトレキセート投与の約1、2、3、4、5、6、7、14、21、28もしくは30のいずれかを超える日数の後、または約1日後から30日後の間の任意の時期に上昇する。
【0110】
赤血球系細胞の1つまたはそれ以上のサブセットのレベルは、例えば、好適な細胞表面マーカー、組織像マーカーの発現、および形態(例えば、細胞体積および核の有無)を含む、当技術分野で公知の任意の好適な基準に基づいて定性的および/または定量的に判定することができる。本明細書で使用されるように、赤血球系細胞のサブセットの「レベル」は、細胞の数、全ての赤血球系細胞の中の赤血球系細胞のサブセットの割合、または全血液細胞もしくはPBMCにおける赤血球系細胞の頻度を指す。一部の実施形態では、第1の試料中の赤血球系細胞のサブセットのレベルは、第2の試料中のレベルと比較して増加または上昇する。一部の実施形態では、第1の試料中の赤血球系細胞のサブセットのレ
ベルは、第2の試料中のレベルと比較して低下または低減する。ある特定の実施形態では、第2の試料は、参照(例えば、参照試料または参照組織)または対照(例えば、対照試料または対照組織)である。一部の実施形態では、対照試料/組織は、既存対照またはプラセボ対照である。対照試料のレベルと比較した第1の試料における赤血球系細胞のサブセットの「上昇した」または「増加した」レベルの検出は、第1の試料における赤血球系細胞のサブセットの「存在」を示すことができる。対照試料のレベルと比較した第1の試料における赤血球系細胞のサブセットの「低減した」または「低下した」レベルの検出は、第1の試料における赤血球系細胞のサブセットの「不在」を示すことができる。赤血球系細胞のサブセットのレベルを判定するための追加の開示が、本明細書に記載される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核RBCのレベル(例えば、数、割合または頻度)である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、網赤血球成熟指数である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。
【0111】
方法のいずれか1つの一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーの上昇したレベルは、参照または対照と比較したときの、本明細書に記載されるものなどの当技術分野で公知の標準方法によって検出される、赤血球形成バイオマーカーのレベル、例えば赤血球形成に関連する遺伝子もしくは赤血球系細胞の細胞表面マーカーをコードする遺伝子の発現レベル(例えば、タンパク質またはmRNA)、または赤血球系細胞のサブセットのレベル(例えば、数、割合または頻度)における、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上のいずれかの全体的増加を指す。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーの上昇したレベルは、試料中の赤血球形成バイオマーカーのレベルの増加を指し、ここで、増加は、参照または対照におけるそれぞれの赤血球形成バイオマーカーのレベルの少なくとも約1.5×、1.75×、2×、3×、4×、5×、6×、7×、8×、9×、10×、25×、50×、75×または100×のいずれかである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーの上昇したレベルは、参照または対照と比較して、約1.5倍、約1.75倍、約2倍、約2.25倍、約2.5倍、約2.75倍、約3.0倍または約3.25倍を超える全体的増加を指す。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルは、特定の試料または試料群におけるバイオマーカーのレベルの中間値である対照に対するものである。例えば、一部の実施形態では、対照は、治療剤への免疫寛容性がメトトレキセート処置によって、例えば一時的な低用量メトトレキセートITIレジメンによって誘導されている対象の試料からの赤血球形成バイオマーカーの中間レベルである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーの中間レベルは、治療剤への免疫寛容性がメトトレキセート処置によって誘導された特定の疾患を有する患者のデータベースから導かれる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーの中間レベルは、治療剤への免疫寛容性がメトトレキセートによって誘導された特定の治療剤による処置を必要とする患者のデータベースから導かれる。例えば、rhGAA処置を必要とするポンペ病患者に関する赤血球形成バイオマーカー遺伝子の発現レベルは、メトトレキセート処置のためにrhGAAへの免疫寛容性を獲得したかまたはrhGAAへの免疫応答を起こさないポンペ病患者のデータベース中のデータに基づく赤血球形成バイオマーカー遺伝子の中間発現レベルと比較することができる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、トランスフェリン受容体(例えば、CD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核RBCのレベル(例えば、数、割合または頻度)である。
【0112】
方法のいずれかの一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーの低減したレベルは、参照または対照と比較した、本明細書に記載されるものなど標準の当技術分野で公知の方法によって検出される赤血球形成バイオマーカーのレベル、例えば赤血球形成に関連す
る遺伝子もしくは赤血球系細胞の細胞表面マーカーをコードする遺伝子の発現レベル(例えば、タンパク質またはmRNA)、または赤血球系細胞のサブセットのレベル(例えば、数、割合または頻度)における、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上のいずれかの全体的低減を指す。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーの低減したレベルは、試料中の赤血球形成バイオマーカーのレベルの低下を指し、ここで、低下は、参照または対照におけるそれぞれの赤血球形成バイオマーカーのレベルの少なくとも約0.9×、0.8×、0.7×、0.6×、0.5×、0.4×、0.3×、0.2×、0.1×、0.05×または0.01×のいずれかである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘモグロビン、赤血球アンキリンまたはグリコホリンCである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、全体の赤血球系細胞または成熟RBCのレベルである。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、網赤血球成熟指数である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘマトクリットである。
【0113】
一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、メトトレキセートおよび/または治療剤の最初の投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、24または28日後のいずれかの日に、上昇したレベルを有する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、メトトレキセートおよび/または治療剤の最初の投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、24または28日後のいずれかの日に、低減したレベルを有する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、メトトレキセートの最後の投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、24または28日後のいずれかの日に、上昇したレベルを有する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、メトトレキセートの最後の投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、24または28日後のいずれかの日に、低減したレベルを有する。一部の実施形態では、メトトレキセートは、単一サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、最初のサイクルまたは第3のサイクルの中のメトトレキセートの最後の投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、24または28日後のいずれかの日に、上昇したレベルを有する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、第1、第2、第3、第4または第5のサイクルの中のメトトレキセートの最後の投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、24または28日後のいずれかの日に、上昇したレベルを有する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、最初のサイクルまたは第3のサイクルの中のメトトレキセートの最後の投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、24または28日後のいずれかの日に、低減したレベルを有する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、第1、第2、第3、第4または第5のサイクルの中のメトトレキセートの最後の投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、24または28日後のいずれかの日に、低減したレベルを有する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルは先ず低下し、その後、メトトレキセートおよび/または治療剤の最初の投与の後に増加する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカー、例えば、未熟な有核RBC、網赤血球成熟指数、細胞性核酸の含有量、トランスフェリン受容体、トランスフェリン、Ly76(Ter-119のための抗原)、CD44、CD235a、ALAS2およびGATA-1から選択される遺伝子、または赤血球形成に関連する補因子は、治療剤による処置の開始の6日目から16日目の間(例えば、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目および14日目のいずれか)に、対象の血液試料(PBMCまたは血漿試料など)において上昇したレベルを有する。
【0114】
試料中の様々な赤血球形成バイオマーカー遺伝子の発現レベルは、その多くは当技術分野で公知であり、当業者によって理解される、免疫組織化学(「IHC」)、ウエスタンブロット分析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、ELIFA、蛍光活性化細胞分取(「FACS」)、MASSARRAY(登録商標)、プロテオミクス、質量分析、組織質量分析画像化(tMSI)、定量的な血液ベースのアッセイ(例えば血清ELISA)、生化学的酵素活性アッセイ、in situハイブリダイゼーション、サザン分析、ノーザン分析、全ゲノム配列決定、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)、例えば定量的リアルタイムPCR(「qRT-PCR」)および他の増幅型検出方法、例えば分枝DNA、SISBA、TMAなど)、RNA-Seq、FISH、マイクロアレイ分析、遺伝子発現プロファイリング、ならびに/または遺伝子発現の連続分析(「SAGE」)、ならびにタンパク質、遺伝子および/もしくは組織アレイ分析によって実行することができる多種多様なアッセイのいずれか1つを限定されずに含む、いくつかの方法によって分析することができる。遺伝子および遺伝子産物の状態を評価するための一般的なプロトコールは、例えば、Ausubelら編、1995、Current Protocols
In Molecular Biology、ユニット2(ノーザンブロッティング)、4(サザンブロッティング)、15(イムノブロッティング)および18(PCR分析)に見出される。Rules Based MedicineまたはMeso Scale Discovery(「MSD」)から入手できるものなどの、多重化イムノアッセイを使用することもできる。
【0115】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカー遺伝子の発現レベルは、(a)試料(例えば、対象からのPBMCまたは血漿試料)に対して遺伝子発現プロファイリング、PCR(例えばrtPCRまたはqRT-PCR)、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MASSARRAY(登録商標)技術、またはFISHを実行すること;および(b)試料中の1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカー遺伝子の生成物の発現レベルを判定することを含む方法を使用して判定される。一部の実施態様では、マイクロアレイ方法は、上で指摘した遺伝子をコードする核酸分子にストリンジェント条件下でハイブリダイズすることができる1つまたはそれ以上の核酸分子を有するか、または上で指摘した遺伝子によってコードされるタンパク質の1つまたはそれ以上に結合することができる1つまたはそれ以上のポリペプチド(ペプチドまたは抗体など)を有するマイクロアレイチップの使用を含む。一部の実施形態では、遺伝子発現は、マイクロアレイによって測定される。一部の実施形態では、遺伝子発現は、qRT-PCRによって測定される。一部の実施形態では、遺伝子発現は、多重PCRによって測定される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、トランスフェリン受容体(例えば、CD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1である。
【0116】
細胞の中のmRNAの評価の方法は周知であり、例えば、相補的DNAプローブを使用したハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、1つまたはそれ以上の遺伝子に特異的な標識リボプローブを使用したin situハイブリダイゼーション、ノーザンブロットおよび関連した技術)、および、様々な核酸増幅アッセイ(例えば、遺伝子の1つまたはそれ以上に特異的である相補的プライマーを使用したRT-PCR、および他の増幅型の検出方法、例えば、分枝DNA、SISBA、TMAなど)が含まれる。対応する遺伝子の発現を評価するために、翻訳前の遺伝子生成物(例えば、スプライシングされたか、スプライシングされていないか、または部分的にスプライシングされたmRNA)の定量的な調査を実行することができる。そのような方法は、生物学的試料中の標的mRNAのレベルを判定することを可能にする、1つまたはそれ以上の工程を含むことができる(例えば、アクチンファミリーメンバーなどの「ハウスキーピング」遺伝子の比較用対照mRNA配列のレベルを同時に検査することによる)。場合により、増幅された標的cDNAの
配列を決定してもよい。
【0117】
任意選択の方法は、マイクロアレイ技術により組織または細胞試料中の標的mRNAなどのmRNAを検査または検出するプロトコールを含む。核酸マイクロアレイを使用して、検査および対照組織試料からの検査および対照mRNA試料を逆転写し、標識し、cDNAプローブを生成する。次に固体支持体の上に固定化された核酸のアレイに、プローブをハイブリダイズさせる。アレイは、アレイの各メンバーの配列および位置が既知であるように構成される。例えば、赤血球形成に関連する遺伝子のセレクションを固体支持体の上に配列することができる。標識プローブと特定のアレイメンバーとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来する試料がその遺伝子を発現することを示す。
【0118】
免疫凝集、免疫沈降(例えば、免疫拡散、免疫電気泳動、免疫固定)、免疫染色、および/または免疫結合検出技術(例えば、ウエスタンブロッティング、in situ免疫組織化学、in situ免疫細胞化学、免疫蛍光法、免疫アフィニティークロマトグラフィー、酵素免疫検定法を含む)などを利用することによって、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカー遺伝子の発現レベルを、タンパク質レベルで判定することもできる。混合物中の特定のポリペプチドを定量化するこれらのおよびさらなる方法は、例えば抗体の特異的結合に頼ることができ、定量的に(例えば、組織および/または細胞試料の定量的組織形態計測によって)実行することができる。精製されたポリペプチドの量は、物理的方法、例えば、測光または質量分析方法(例えば、組織質量分析画像化)によって判定することもできる。
【0119】
一部の実施形態では、試料中の赤血球形成バイオマーカータンパク質の発現レベルは、IHCおよび染色プロトコールを使用して検査される。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を判定または検出するための信頼できる方法であることが示されている。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、免疫組織化学によって検出される。一部の実施形態では、個体からの試料中の赤血球形成バイオマーカーの発現レベルの上昇は、タンパク質発現レベルの上昇であり、さらなる実施形態では、IHCを使用して判定される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーの発現レベルは、(a)試料(例えば、対象からのPBMCまたは血漿試料)のIHC分析を抗体で実行すること;および(b)試料中の赤血球形成バイオマーカー遺伝子の発現レベルを判定することを含む方法を使用して判定される。一部の実施形態では、IHC染色強度は、参照と比較して判定される。一部の実施形態では、参照は参照値(例えば、免疫療法への完全な応答体および部分的な応答体のデータベースからの)である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、トランスフェリン受容体(例えば、CD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1である。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、ヘモグロビン、赤血球アンキリンまたはグリコホリンCである。
【0120】
IHCは、形態学的染色および/または蛍光in-situハイブリダイゼーションなどの追加の技術と組み合わせて実行することができる。IHCの2つの一般的方法、直接的および間接的アッセイが利用可能である。第1のアッセイによると、標的抗原への抗体の結合は、直接的に判定される。この直接的なアッセイは、蛍光性タグまたは酵素標識一次抗体などの、さらなる抗体相互作用無しで可視化することができる標識試薬を使用する。一般的な間接アッセイでは、非コンジュゲート型一次抗体が抗原に結合し、次に標識二次抗体が一次抗体に結合する。二次抗体が酵素標識にコンジュゲートされる場合、抗原の可視化を提供するために発色性または蛍光発生基質が加えられる。いくつかの二次抗体が一次抗体の上の異なるエピトープと反応することができるので、シグナル増幅が起こる。
【0121】
本明細書に記載される検出方法で使用するために、当業者は、本発明に包含されるポリ
ペプチドまたはオリゴヌクレオチドを標識する能力を有する。当技術分野で日常的に実施されるように、mRNAレベルの検出で使用するためのハイブリダイゼーションプローブおよび/またはIHC方法で使用するための抗体もしくは抗体断片は、当技術分野で公知の標準方法により標識し、可視化することができる。一般的に使用されるシステムの非限定例には、放射性標識、酵素標識、蛍光性タグ、ビオチン-アビジン複合体、化学発光などの使用が含まれる。
【0122】
IHCのために使用される一次および/または二次抗体は、検出可能な部分で一般に標識される。多数の標識が利用可能であり、それらは以下のカテゴリーに一般に分類することができる:(a)放射性同位体、例えば35S、14C、125I、3Hおよび131I;(b)コロイド金粒子;(c)希土類キレート(ユウロピウムキレート)、TEXAS RED(登録商標)、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン、フィコシアニンまたは市販の蛍光体、例えばSPECTRUM ORANGE(商標)およびSPECTRUM GREEN(商標)ならびに/または上記のいずれか1つまたはそれ以上の誘導体を限定されずに含む蛍光標識;(d)米国特許第4,275,149号に記載される標識を限定されずに含む酵素-基質標識;ならびに(e)例えば、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;例えば、米国特許第4,737,456号を参照)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸脱水素酵素、ウレアーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカライドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼおよびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどを含む酵素標識。
【0123】
酵素-基質の組合せの例には、例えば、水素ペルオキシダーゼを基質とする西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPO);パラニトロフェニルリン酸塩を発色基質とするアルカリ性ホスファターゼ(AP);およびβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)と発色性基質(例えば、p-ニトロフェニル-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光原基質(例えば、4-メチルウンベリフェリル--D-ガラクトシダーゼ)が含まれる。これらの一般的なレビューのために、米国特許第4,275,149号および第4,318,980号を参照する。
【0124】
方法のいずれの一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカー遺伝子の発現は、赤血球形成バイオマーカー遺伝子発現生成物に対する診断用抗体(すなわち、一次抗体)を使用して免疫組織化学によって検出される。一部の実施形態では、診断用抗体はヒト赤血球形成バイオマーカー遺伝子の生成物に特異的に結合する。一部の実施形態では、診断用抗体は、非ヒト抗体である。一部の実施形態では、診断用抗体は、ラット、マウスまたはウサギの抗体である。一部の実施形態では、診断用抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、診断用抗体は、直接的に標識される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、トランスフェリン受容体(例えば、CD71)、トランスフェリン、Ly76、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1である。一部の実施形態では、診断用抗体は、Ter-119である。
【0125】
試料を上記の診断用抗体のいずれか1つと接触させることによってIHC試料を調製することができ、それは、マウントしてカバーガラスを被せることができる。次に、例えば顕微鏡を使用してスライドの評価を判定し、当技術分野で通常使用される染色強度基準を用いることができる。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーの存在は、IHCによって試料の>0%で、試料の少なくとも1%で、試料の少なくとも5%で、試料の少なくとも10%で検出される。
【0126】
代替の方法では、抗体-バイオマーカー複合体が形成するのに十分な条件の下で試料を前記バイオマーカーに特異的な抗体と接触させ、次に前記複合体を検出することができる。バイオマーカーの存在は、血漿または血清を含む各種の組織および試料を分析するためのウエスタンブロット法およびELISA法などのいくつかの方法で検出することができる。そのようなアッセイフォーマットを使用する各種のイムノアッセイ技術が利用でき、例えば米国特許第4,016,043号、第4,424,279号および4,018,653号を参照されたい。これらには、非競合型の単一部位および2部位または「サンドウィッチ」アッセイ、ならびに伝統的な競合結合アッセイが含まれる。これらのアッセイには、標的バイオマーカーへの標識抗体の直接結合も含まれる。
【0127】
組織または細胞試料中の赤血球形成バイオマーカー遺伝子の発現レベルは、機能的または活性ベースのアッセイを通して検査することもできる。例えば、バイオマーカーが酵素である場合は、組織または細胞試料中の所与の酵素活性の存在を判定または検出するために、当技術分野で公知のアッセイを実行することができる。
【0128】
一部の実施形態では、赤血球系細胞のサブセットまたは全赤血球系細胞のレベルは、フローサイトメトリー(例えば、FACS)を使用して、当技術分野で公知の方法または本明細書に記載される方法を使用して判定される。赤血球系細胞の各サブセットは、それらの特異な形態(例えば、細胞体積および形態学的複雑性)によって、ならびにCD44およびCD71などの特異的細胞表面マーカーの発現によって特徴付けられる。細胞体積は、フローサイトメトリーを使用して前方散乱光(すなわち、「FSC」)を使用して測定することができる。赤血球系細胞およびそのサブセットは、以下のゲーティング戦略を使用してフローサイトメトリーによって同定し、単離することができる:全RBC(マウスの場合Ter-119+またはヒトの場合CD235a+)、未熟な有核RBC(Ter-119+、CD71+)、成熟したRBC(Ter-119+/CD235a+、CD71-またはTer-119+/CD235a+、CD44low FSClow)、前赤芽球(Ter-119intermediate/CD235aintermediate、CD44high)、塩基親和性赤芽球(Ter-119+/CD235a+、CD44high FSChigh)、多染性赤芽球(Ter-119+/CD235a+、CD44intermediate FSCintermediate)、正染性赤芽球および網赤血球(Ter-119+/CD235a+、CD44intermediate FSClow)。Chen、Liuら 2009およびKoulnis、Popら
2011を参照する。
【0129】
ある特定の実施形態では、試料は、分析した赤血球形成バイオマーカーのレベルの差および使用した試料の品質の変動性の両方に関して、ならびにアッセイ操作の間の変動性に関して正規化される。そのような正規化は、周知のハウスキーピング遺伝子を含むある特定の正規化バイオマーカーを検出し、組み込むことによって達成することができる。あるいは、正規化は、分析した遺伝子の全てまたはその大きなサブセット(包括的正規化アプローチ)の平均または中間シグナルに基づくことができる。遺伝子ごとに、対象におけるmRNAまたはタンパク質の測定された、正規化された量は、参照セットまたは既存対照において見出される量と比較される。1対象あたりの1試験試料あたりの各mRNAまたはタンパク質の正規化された発現レベルは、参照セットまたは既存対照で測定される発現レベルの百分率として表すことができる。分析する特定の対象試料で測定されるレベルは、この範囲内の何らかのパーセンタイルにあり、それは当技術分野で周知である方法によって判定することができる。
【0130】
赤血球形成バイオマーカーのレベルは、試料の中で検出される。試料は、対象からの細胞もしくは細胞の集団、または組織もしくは体液の量を一般的に含有する。本明細書で企
図される試料には、生検および剖検試料などの組織の切片、ならびに組織学的目的のための凍結切片が含まれる。生体試料には、血液および血液画分または生成物(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球など)も含まれる。「生検」は、診断または予後診断評価のための組織試料を取り出す過程、および組織検体それ自体を指す。当技術分野で公知である任意の生検技術を、本発明の診断および予後診断方法に適用することができる。適用される生検技術は、他の因子もある中で、評価される組織タイプ(例えば、脾臓、骨髄、血液細胞等)に依存する。代表的な生検技術には、限定されずに、摘出生検、切開生検、針生検、外科的生検および骨髄生検が含まれる。生検技術は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine、Kasperら編、第16版、2005、第70章およびパートV全体で議論される。
【0131】
一部の実施形態では、試料は、臨床試料である。一部の実施形態では、試料は、対象の脾臓から得られる。一部の実施形態では、試料は、対象の骨髄から得られる。一部の実施形態では、組織試料はホルマリン固定およびパラフィン包埋され、新鮮なままでまたは冷凍されて保管される。一部の実施形態では、試料は、全血である。一部の実施形態では、試料は、末梢血単核細胞(PBMC)を含む血液画分である。一部の実施形態では、試料は、血漿試料または血清試料である。
【0132】
一部の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、検査試料を得るときと異なる1時点またはそれより多い時点で得られる、同じ対象または個体からの単一の試料または組み合わせた試料である。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、検査試料を得るときより早い時点で同じ対象または個体から得られる既存対照である。そのような参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、対象におけるバイオマーカーのベースラインレベルを提供するために対象へのメトトレキセートおよび治療剤の投与の前に参照試料が得られる場合に役立つことができる。
【0133】
ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、処置する対象でも個体でもない1人またはそれより多くの健康な個体からの組み合わせた試料である。一部の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、処置する対象でも個体でもない、疾患または状態(例えば、ポンペ病)を有する1人またはそれより多くの個体からの組み合わせた試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、処置する対象でも個体でもない1人またはそれより多くの個体からのプールされたPBMCまたは血漿試料からのプールされた試料(例えば、RNAまたはタンパク質試料)である。一部の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、処置する対象でも個体でもないが、メトトレキセート処置によって治療剤への免疫寛容性が誘導された、1人またはそれより多くの個体からの組み合わせた試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、処置する対象でも個体でもないが、メトトレキセート処置によって治療剤への免疫寛容性が誘導された(例えば、陽性対照)1人またはそれより多くの個体からのプールされた血漿またはPBMC試料からのプールされた試料(例えば、RNAまたはタンパク質試料)である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、対象でも個体でもなく、治療剤への免疫寛容性を示さない(例えば、陰性対照)、1人またはそれより多くの個体からのプールされた血漿またはPBMC試料からのプールされた試料(例えば、RNAまたはタンパク質試料)である。一部の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、治療剤療法をメトトレキセートと一緒に受けない(「プラセボ対照」)、1人またはそれより多くの個体からの組み合わせた試料である。ある特定の実施形態では、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞または対照組織は、治療剤療法
をメトトレキセートと一緒に受けない(「プラセボ対照」)、1人またはそれより多くの個体からのプールされたPBMCまたは血漿試料からのプールされた試料(例えば、RNAまたはタンパク質試料)である。一部の実施形態では、1人またはそれより多くの個体からのプラセボ対照試料は、処置する対象と同じ疾患または障害(例えば、ポンぺ病)を有する。
【0134】
一部の実施形態では、試料は、メトトレキセートの最後の投与の約1、2、4、7、9、14または28日後のいずれか1日を含む、少なくとも約1日後から約30日後に対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、メトトレキセートの最後の投与の約7日後から約14日後に対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、治療剤の最初の投与の約1、2、4、7、9、14または28日後のいずれか1日を含む、少なくとも約1日後から約30日後に対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、治療剤の開始の約7日後から約14日後に対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、メトトレキセートおよび治療剤の最初の投与の少なくとも約1日後から約30日後、例えば、約7、9および/または14日後に対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、メトトレキセートおよび治療剤の開始の約7日後から約14日後に対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、1回を超えて(例えば、約2、3、4またはそれより多くの回数のいずれか)対象から得られる。一部の実施形態では、試料は、メトトレキセート処置(例えば、メトトレキセート処置のサイクルの最後のメトトレキセート投与)から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30日目のうちの1日またはそれより多い日に得られる。一部の実施形態では、試料は、追加の免疫寛容性誘導療法および/または免疫抑制療法が対象に投与される前に対象から得られる。
【0135】
B.治療剤
本明細書に記載される方法は、対象において治療剤に対する望ましくない免疫応答をモニタリング、調査および/または制御するために有益である。多くの場合、治療剤に対する望ましくない免疫応答は、患者の転帰に様々な影響を引き起こすことができる。そのような応答は、生物学的治療薬が、例えば、ヒト患者に異物であるエピトープを構成する配列および高次構造をしばしば含有するので起こる。例えば、抗薬物抗体(ADA)は、治療的効能に干渉することおよび/または安全性リスクを増加させることがある。ADA応答は、過敏性反応、アナフィラキシー、血清病、免疫複合体病、急性腎不全を引き起こすことができる。ADAは、タンパク質療法を受ける患者において、ELISAおよび免疫組織化学を含む十分に確立された方法を使用して、臨床医がモニタリングすることができる。
【0136】
様々な治療剤が望ましくない免疫応答を誘導することが知られており、それは、抗薬物抗体(ADA)ならびに他の望ましくないT細胞および/またはB細胞媒介免疫応答を含むことができる。一部の実施形態では、治療剤は、バイオ医薬品、例えば、タンパク質、核酸、ウイルス、遺伝子療法、脂質、リポソーム、炭水化物、その代謝産物または組合せである。
【0137】
一部の実施形態では、治療剤は、タンパク質療法である。タンパク質療法は、治療剤が、ペプチドまたはタンパク質を含むタンパク性物質である療法を指す。タンパク質治療薬は、例えば、酵素、サイトカイン、増殖因子、免疫調節物質、血栓溶解剤、抗体(ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を含む)、抗体断片または改変された抗体(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、Fd、scFvおよびdAb)であってよい。
【0138】
一部の実施形態では、治療剤は、治療ポリペプチドである。一部の実施形態では、治療剤は、酵素である。例えば、ファブリー病のためのFABRAZYME(登録商標)(組
換えヒトアルファ-ガラクトシダーゼ)、ゴーシェ病のためのCEREZYME(登録商標)(イミグルセラーゼ)、ムコ多糖体症I(MPSI)のためのALDURAZYME(登録商標)(ラロニダーゼ)ならびにポンペ病のためのMYOZYME(登録商標)およびLUMIZYME(登録商標)(アルグルコシダーゼアルファ)を含めて、ある特定の遺伝病を有する患者のために多くの酵素補充療法が開発されている。一部の実施形態では、治療剤は、ヒトアルファガラクトシダーゼAである。一部の実施形態では、酵素は、ヒト酸性α-グルコシダーゼ(酸性マルターゼ、アルファ-グルコシダーゼ、アルファ-1,4-グルコシダーゼまたは酸性アルファ-1,4-グルコシダーゼと様々に呼ばれる)である。一部の実施形態では、酵素は、米国特許第7,001,994号;米国特許第7,723,296号;米国特許第7,786,277号;米国特許第8,399,657号;米国特許第8,841,427号;米国特許第9,687,531号;米国特許第8,759,501号;および米国特許第9,469,850号に記載の通りに、酸性アルファ-グルコシダーゼ-オリゴ糖コンジュゲートまたは他の酵素-オリゴ糖コンジュゲートを含む、酵素-オリゴ糖コンジュゲートである。
【0139】
一部の実施形態では、治療剤は、酵素、神経栄養因子、CNS関連の障害を有する個体で欠損しているか突然変異しているポリペプチド、抗酸化剤、抗アポトーシス因子、抗血管形成因子および抗炎症性因子、アルファ-シヌクレイン、酸性ベータ-グルコシダーゼ(GBA)、ベータ-ガラクトシダーゼ-1(GLB1)、イズロネート2-スルファターゼ(IDS)、ガラクトシルセラミダーゼ(GALC)、マンノシダーゼ、アルファ-D-マンノシダーゼ(MAN2B1)、ベータ-マンノシダーゼ(MANBA)、偽アリールスルファターゼA(ARSA)、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(GNPTAB)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)、ニーマン-ピックCタンパク質(NPC1)、酸性アルファ-1,4-グルコシダーゼ(GAA)、ヘキソサミニダーゼベータサブユニット、HEXB、N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(MPS3A)、N-アルファ-アセチルグルコサミニダーゼ(NAGLU)、ヘパリンアセチルCoA、アルファ-グルコサミニダーゼN-アセチルトランスフェラーゼ(MPS3C)、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ(GNS)、アルファ-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(NAGA)、ベータ-グルクロニダーゼ(GUSB)、ヘキソサミニダーゼアルファサブユニット(HEXA)、ハンチンチン(HTT)、リソソーマル酸リパーゼ(LIPA)、アスパルチルグルコサミニダーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼA、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼ、リソソーム膜貫通タンパク質、システイントランスポータ、酸性セラミダーゼ、酸性アルファ-L-フコシダーゼ、カテプシンA、アルファ-L-イズロニダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸塩、酸性ベータ-ガラクトシダーゼまたはアルファ-ノイラミダーゼである。一部の実施形態では、治療剤は、ニューロンアポトーシス阻害タンパク質(NAIP)、神経成長因子(NGF)、神経膠由来増殖因子(GDNF)、脳由来増殖因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、チロシン水酸化酵素(TH)、GTP-シクロヒドロラーゼ(GTPCH)、アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)、抗酸化剤、抗血管形成ポリペプチド、抗炎症性ポリペプチドおよびアスパルトアシラーゼ(ASPA)からなる群から選択されるポリペプチドである。
【0140】
一部の実施形態では、治療剤は、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、ジストロフィン、ジスフェルリンおよび嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)である。
【0141】
一部の実施形態では、治療剤は、抗体またはその抗原結合性断片である。抗体治療薬の例には、CAMPATH(登録商標)(アレムツズマブ)、THYMOGLOBULIN(登録商標)、AVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)、LUCENTIS(登録
商標)(ラニビズマブ)、REMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)、HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、TYSABRI(登録商標)(ナタリズマブ)、SIMULECT(登録商標)(バシリキシマブ)、ZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)、OKT3(登録商標)(ムロモナブ-CD3)、ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)、MYLOTARG(登録商標)(ゲムツズマブ)、HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)およびBENLYSTA(登録商標)(ベリムマブ)が含まれる。他のタンパク質治療薬の例には、ENBREL(登録商標)(エタネルセプト)および他の融合タンパク質が含まれる。
【0142】
一部の実施形態では、治療剤は、リンパ球枯渇剤である。リンパ球枯渇は、リンパ球減少をもたらす、循環リンパ球、例えば、T細胞および/またはB細胞の低減による免疫抑制のタイプである。リンパ球枯渇剤には、例えば、THYMOGLOBULIN(登録商標)、ヒト化抗CD52モノクローナル抗体CAMPATH-1H(登録商標)(アレムツズマブ)およびリツキシマブが含まれる。リンパ球枯渇は、多発性硬化症(Colesら、Ann.Neurol.46、296~304頁(1999);Colesら、2008)、慢性関節リウマチ、血管炎およびループスを含むいくつかの自己免疫性状態の処置において所望される。リンパ球枯渇療法は、二次自己免疫を引き起こすことができる。自己免疫は、それが第1の(「一次」)疾患、例えば、「一次」自己免疫性疾患の発症の後に生じる場合、本明細書において「二次自己免疫」と呼ばれる。二次自己免疫は、例えば、リンパ球枯渇療法の後にリンパ球減少を有するかまたは有したMS患者において時々生じる。一部の個体では、二次自己免疫は、リンパ球枯渇療法(例えば、アレムツズマブによる処置)の直後に生じる。他の個体では、二次自己免疫は、リンパ球枯渇療法から数カ月または数年後まで起こることができない;それらの個体の一部では、彼らが二次免疫を起こすまでに実質的なリンパ球回復(全リンパ球数)が起こっている可能性があり、そのため彼らはもはやリンパ球減少性でない可能性がある。リンパ球枯渇は、抗体治療薬または小分子治療薬による処置との関連で起こることがある。
【0143】
一部の場合には、治療剤は、核酸治療薬を送達するためにウイルスベクターが使用されるウイルス療法である。そのような療法で使用される例示的なウイルスには、限定されずに、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスおよびレトロウイルスが含まれる。ウイルスのカプシドタンパク質に対して抗体が発達して、効能を低減し、そのような療法の安全性リスクを増加させることがある。本出願の方法は、ウイルス療法において望ましくない免疫学的応答(例えば、ADA応答ならびに他の望ましくないT細胞および/またはB細胞媒介免疫応答)を制御するためにも有益である。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、本明細書に記載される治療剤のいずれかをコードする。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、酵素、神経栄養因子、CNS関連の障害を有する個体で欠損または突然変異しているポリペプチド、抗酸化剤、抗アポトーシス因子、抗血管形成因子、抗炎症性因子、アルファ-シヌクレイン、酸性ベータ-グルコシダーゼ(GBA)、ベータ-ガラクトシダーゼ-1(GLB1)、イズロネート2-スルファターゼ(IDS)、ガラクトシルセラミダーゼ(GALC)、マンノシダーゼ、アルファ-D-マンノシダーゼ(MAN2B1)、ベータ-マンノシダーゼ(MANBA)、偽アリールスルファターゼA(ARSA)、N-アセチルグルコサミン-1-ホスホトランスフェラーゼ(GNPTAB)、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)、ニーマン-ピックCタンパク質(NPC1)、酸性アルファ-1,4-グルコシダーゼ(GAA、例えばアルグルコシダーゼアルファ)、ヘキソサミニダーゼベータサブユニット、HEXB、N-スルホグルコサミンスルホヒドロラーゼ(MPS3A)、N-アルファ-アセチルグルコサミニダーゼ(NAGLU)、ヘパリンアセチルCoA、アルファ-グルコサミニダーゼN-アセチルトランスフェラーゼ(MPS3C)、N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ(GNS)、アルファ-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(NAGA)、ベータ-グルクロニダーゼ(GU
SB)、ヘキソサミニダーゼアルファサブユニット(HEXA)、ハンチンチン(HTT)、リソソーマル酸リパーゼ(LIPA)、アスパルチルグルコサミニダーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼA、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼ、リソソーム膜貫通タンパク質、システイントランスポータ、酸性セラミダーゼ、酸性アルファ-L-フコシダーゼ、カテプシンA、アルファ-L-イズロニダーゼ、アリールスルファターゼB、アリールスルファターゼA、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸塩、酸性ベータ-ガラクトシダーゼまたはアルファ-ノイラミダーゼをコードする。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、ニューロンアポトーシス阻害タンパク質(NAIP)、神経成長因子(NGF)、神経膠由来増殖因子(GDNF)、脳由来増殖因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、チロシン水酸化酵素(TH)、GTP-シクロヒドロラーゼ(GTPCH)、アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)、抗酸化剤、抗血管形成ポリペプチド、抗炎症性ポリペプチドおよびアスパルトアシラーゼ(ASPA)からなる群から選択されるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、ジストロフィン、ジスフェルリンまたは嚢胞性線維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)をコードする。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、抗体またはその抗原結合性断片をコードする。抗体治療薬の例には、CAMPATH(登録商標)(アレムツズマブ)、THYMOGLOBULIN(登録商標)、AVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)、LUCENTIS(登録商標)(ラニビズマブ)、REMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)、HUMIRA(登録商標)(アダリムマブ)、RITUXAN(登録商標)(リツキシマブ)、TYSABRI(登録商標)(ナタリズマブ)、SIMULECT(登録商標)(バシリキシマブ)、ZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)、OKT3(登録商標)(ムロモナブ-CD3)、ERBITUX(登録商標)(セツキシマブ)、MYLOTARG(登録商標)(ゲムツズマブ)、HERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)およびBENLYSTA(登録商標)(ベリムマブ)が含まれる。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、融合タンパク質、例えば、ENBREL(登録商標)(エタネルセプト)をコードする。
【0144】
本出願の方法は、非タンパク生物学的療法における望ましくない免疫学的応答を制御するために使用することもできる。例示的な非タンパク生物療法には、限定されずに、核酸療法(例えば、アンチセンス療法、siRNA療法およびmiRNA療法)が含まれる。
【0145】
C.メトトレキセート、他の免疫寛容性誘導療法および免疫抑制療法
本明細書に記載される方法は、対象にメトトレキセートの有効量を投与することを含む。一部の実施形態では、メトトレキセートは、対象において治療剤への免疫寛容性を誘導するために使用される。免疫寛容性を誘導するために、連続的な週単位の反復投与レジメン(Garmanら Clin Exp Immunol、137(3):496~502頁(2004);Josephら、Clin Exp Immunol、152(1):138~46頁(2008);Mendelsohnら、N Engl J Med、360(2):194~5頁(2009))、および一時的な低用量レジメン(米国特許出願公開第20140135337号を参照する)を含む、利用可能な投与レジメンのいずれも使用することができる。一部の実施形態では、メトトレキセートの有効量は、3サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、単一サイクルで投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、1、2、3、4、5サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与される。
【0146】
免疫寛容性の誘導のための一時的な低用量メトトレキセートの使用は、リウマチ病における化学療法剤として、または連続的免疫抑制剤としてのその十分に認知された役割から特異である(Kremer 2004)。メトトレキセートは1940年代にがんの処置のために最初に記載され、メトトレキセートの高用量クールはいくつかのがんおよび新生
物を処置するために処方され続けられている。自己免疫障害では、とりわけ、慢性関節リウマチおよび乾癬を処置するために、連続的な週単位の低用量メトトレキセートが使用される(Cronstein 2005;Taylorら、2008)。一時的な低用量メトトレキセートレジメンでは、単一サイクルまたは3サイクルの低用量メトトレキセートが、バイオ医薬品療法の開始と同時に投与される。一部の実施形態では、1サイクルは、0、24および48時間時に投与される低用量メトトレキセートの3日連続の日用量と同等である。本来3サイクルレジメンとして設計されているが、単一サイクルの低用量メトトレキセートは、永続的免疫寛容性を提供することにおいて全く同様に有効であることがマウスにおいて実証されている(Joseph、Neffら 2012、Joly、Martinら 2014)。
【0147】
メトトレキセートは、ヌクレオシドチミジンの新規の合成ならびにプリンおよびピリミジンの生合成のために必須であるジヒドロ葉酸レダクターゼを競合的に阻害する葉酸アンタゴニストとして機能する。DNA合成は細胞周期にとって決定的に重要であるので、高用量メトトレキセートは高度に増殖する細胞を死滅させることによってがんを処置すると考えられる。対照的に、連続的な週単位の低用量メトトレキセートが自己免疫性障害を制御すると考えられる機構は、T細胞の枯渇または抗原依存性T細胞増殖の阻害につながるプリン代謝への影響によると考えられている(Cronstein 2005)。さらに、メトトレキセートは、炎症性障害においてT調節細胞を媒介することができる抗炎症性媒介物アデノシンの蓄積を誘導することが示されている(Cronstein 2005、Ernst、Garrisonら 2010、Han、Thomasら 2013)。
【0148】
マウスにおいて免疫寛容性が一時的な低用量メトトレキセート処置によって達成される機構は、メトトレキセートの連続的な週単位の反復投与を通した免疫抑制のそれと異なるように見える。一時的な投与レジメンと比較したとき、メトトレキセートの週単位の反復投与は異なる免疫学的帰結を有する可能性がある。
【0149】
本明細書で使用されるように、単一サイクルは、連続的または非連続的日々の処置レジメンまたは処置単位を指し、治療剤の投与の好ましくは5日後以内(例えば、3日後以内)に開始される。メトトレキセートの単一サイクルは、メトトレキセートの単回投与、またはメトトレキセートの約2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11日のうちのいずれか1つの連続投与からなることができる。治療剤が複数の期間に投与される場合、メトトレキセートによる処置の単一サイクルは、好ましくは治療剤投与の第1の期間を越えて延長しない。例として、週単位、月単位または年単位の治療剤では、メトトレキセートの単一サイクルは、治療剤が初めて患者に与えられる日である0日目から開始して、3日連続のメトトレキセート摂取(例えば、経口的)からなる。その後、患者は1日目(約24時間後)および2日目(約48時間後)にメトトレキセートの単回投与を受ける。一部の実施形態では、メトトレキセートの単一サイクルは、約8日より長く持続しない。
【0150】
メトトレキセートおよび治療剤は、適当と考えられる任意の順序で投与することができる。例えば、メトトレキセートは治療剤の投与の前、その間および/または後に対象に投与することができる。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療剤療法の投与の約48時間前から約48時間後の間に投与される。例えば、メトトレキセートは、治療剤療法の投与の約48時間前、36時間前、24時間前、12時間前、同時、12時間後、24時間後、36時間後または48時間後のいずれかに投与することができる。一部の実施形態では、メトトレキセートは、治療剤と同時に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは治療剤の投与と同時に、ならびに治療剤の投与の約24時間後および約48時間後に投与される。一部の実施形態では、治療剤はアルグルコシダーゼアルファであり、メトトレキセートは治療剤の投与と同時に、ならびに治療剤の投与の約24時間後および約48時間後に投与される。
【0151】
メトトレキセートは、望ましくない免疫学的応答、例えば抗体または細胞性応答の低減において有効である任意の用量で投与することができる。ヒト患者におけるメトトレキセートの有効量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲内、例えば、約0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、2.5mg/kg、3mg/kg、3.5mg/kg、4mg/kg、4.5mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7.5mg/kgまたは10mg/kgのいずれか1つ以下であってよい。一部の実施形態では、有効量は、約0.1mg/kg~約1.5mg/kg、約0.12mg/kg~約1.28mg/kg、約1mg/kg~約2.5mg/kg、または約2.5mg/kg~約5mg/kg、または約0.1mg/kg~約5mg/kgのいずれか1つである。一部の実施形態では、メトトレキセートの投薬量は最小限の安全性リスクしかもたらさないことができるが、その理由は、投与レジメンが、低い新生物用量よりも慢性関節リウマチの用量と類似している用量レベルのメトトレキセートの短時間クールだけを含むからである。慢性関節リウマチ患者は、有意な毒性を被ること無しに、1週につき最高25mgのメトトレキセートを受けることができる。メトトレキセートの低い新生物用量は、30mg/m2であると考えられる。
【0152】
一部の実施形態では、メトトレキセートは、低い全投薬量であるが複数のサイクルで投与される。例えば、メトトレキセートは、2サイクルまたはそれ以上(例えば、3、4、5、6等)のサイクルで、しかし患者における全合計投薬量が5mg/kg以下で投与することができる。
【0153】
メトトレキセートの低用量レジメンは、成人で十分寛容されるであろう。メトトレキセートの正確な投薬量およびレジメンは、患者の身体的状態、年齢、体重、性、服用中の他の医薬品およびそれらの公知の副作用、ならびに任意の他の関連する因子を考慮することによって、臨床医によって確立されるべきである。
【0154】
一部の実施形態では、メトトレキセートに加えて、対象は最初の免疫寛容性誘導療法を治療剤の投与と同時に投与される。本明細書で言及されるように、「最初の免疫寛容性誘導療法」は、治療剤による処置のさらなるサイクルにおいて投与される免疫寛容性誘導療法に対して、治療剤の開始後に対象に投与される免疫寛容性誘導レジメンを指す。一部の実施形態では、最初の免疫寛容性誘導療法は、メトトレキセートと同時に投与される。一部の実施形態では、最初の免疫寛容性誘導療法は、メトトレキセートの投与の後に、例えばメトトレキセートの投与の1、2、3、4、5、6、7日またはそれ以上後のいずれか1日に投与される。一部の実施形態では、最初の免疫寛容性誘導療法は、メトトレキセートの投与の前に、例えばメトトレキセートの投与の1、2、3、4、5、6、7日またはそれ以上前のいずれか1日に投与される。一部の実施形態では、対象は、ポンペ病、例えばCRIM陰性のポンペ病および/または小児発症ポンペ病(例えば、古典的小児発症ポンペ病)を有する。一部の実施形態では、メトトレキセートは、経腸的に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、約0.5mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、週単位で投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、皮下に投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、約0.4mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、メトトレキセートは、3週の間に1週につき3用量で投与される。
【0155】
一部の実施形態では、最初の免疫寛容性誘導療法は、リツキシマブ、IVIGまたはその組合せを含む。一部の実施形態では、最初の免疫寛容性誘導療法は、リツキシマブの投与を含む。一部の実施形態では、リツキシマブは、約375mg/m2の用量で投与される。一部の実施形態では、例えば対象の体表面積(BSA)が0.5m2未満である場合
、リツキシマブは約12.5mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、リツキシマブは、静脈内投与される。一部の実施形態では、リツキシマブは、週単位で投与される。一部の実施形態では、最初の免疫寛容性誘導療法は、IVIGの投与を含む。一部の実施形態では、IVIGは、約0.5g/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、IVIGは、約400~500mg/kgの用量で投与される。一部の実施形態では、IVIGは、約4週ごとに投与される。一部の実施形態では、IVIGは、月単位で投与される。一部の実施形態では、最初の免疫寛容性誘導療法は、リツキシマブとIVIGの両方の投与を含む。
【0156】
一部の実施形態では、対象は、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて治療剤によるさらなる処置を投与される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を投与される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して低減している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法および/または免疫抑制療法の投与と同時に治療剤によるさらなる処置を投与される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球を含む。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーは、赤血球形成に関連する遺伝子を含み、ここで、遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連している。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーは、トランスフェリン受容体(例えばCD71)、トランスフェリン、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子を含む。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーは、メトトレキセートの最終投与の約7日後から約14日後に対象から得られる試料で検出される。一部の実施形態では、試料は、血液試料、PBMC試料または血漿試料である。
【0157】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しい(例えば、少なくとも約90%、95%、98%、99%またはそれ以上のいずれか1つ)か、またはそれ未満である(すなわち、それに対して低減している)場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を投与される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法および/または免疫抑制療法の投与と同時に治療剤によるさらなる処置を投与される。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーは、成熟赤血球を含む。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーは、全赤血球系細胞を含む。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーは、ヘモグロビン、赤血球アンキリンまたはグリコホリンCを含む。一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーは、メトトレキセートの最終投与の約1日後から約30日後(例えば、約7日後から約14日後)に対象から得られる試料で検出される。一部の実施形態では、試料は、血液試料、PBMC試料または血漿試料である。
【0158】
当技術分野で公知の免疫寛容性誘導療法および/または免疫抑制療法のいずれも、治療剤によるさらなる処置と併用して対象に投与することができる。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法は、小分子治療剤、タンパク質治療剤またはその組合せを含む。例示的な免疫抑制剤には、限定されずに、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、抗BAFF抗体(例えば、ベリムマブ)、抗CD3抗体(例えば、ムロモナブまたはオテリキシズマブ)、抗CD19抗体、抗CD22抗体、抗IgE抗体(例えば、オマリズマブ)、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン)、ラパマイシン
、メトトレキセート、WIG、シクロホスファミド、シクロスポリンA、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルおよびプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ)が含まれる。これらの追加の免疫調節剤またはそれらの誘導体には、抗原提示および/または体液性もしくは細胞媒介免疫応答を標的にする/変更する薬剤が含まれる。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法は、静脈内ガンマグロブリン(IVIG)の投与を含む。一部の実施形態では、免疫抑制療法は、T細胞、B細胞および/または形質細胞を枯渇させるリンパ球枯渇剤を含む。一部の実施形態では、形質細胞を枯渇させる薬剤は、ボルテゾミブである。
【0159】
一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法は、抗原特異的寛容性戦略を含む。例えば、抗原ペプチド、抗原またはペプチドに結合した細胞、変更ペプチドリガンド(APL)およびその誘導体を使用して、様々な抗原特異的寛容性療法が開発されている。抗原特異的寛容性療法は、例えば、Millerら Nature Reviews Immunology 7.9(2007):665~677頁に記載されている。一部の実施形態では、抗原特異的寛容性療法は、治療剤のより高頻度の投与または治療剤のより高い用量を投与することまたはその両方を含む。例えば、治療剤は、最初の用量の少なくとも約1.5×、2×、3×、5×、10×またはそれ以上のいずれか1つの用量で投与することができる。一部の実施形態では、治療剤は、最初の頻度の少なくとも約1.5×、2×、3×、5×またはそれ以上高い頻度のいずれか1つの頻度で投与される。一部の実施形態では、治療剤のより高い用量は、IVIGと同時投与される。
【0160】
一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法は、メトトレキセートの投与を含む。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法は、メトトレキセートの投与を含まない。一部の実施形態では、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法は、以下の1つまたはそれ以上を含む:リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレートおよびコルチコステロイドの1つまたはそれ以上の有効量を投与すること;ならびに、抗原特異的寛容性戦略の投与。
【0161】
追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法は、治療剤のさらなる投与の前に、または治療剤のさらなる投与と同時に対象に投与することができる。一部の実施形態では、治療剤によるさらなる処置は、少なくとも約1カ月、2カ月、3カ月、6カ月、1年、2年、3年またはそれ以上のいずれかの期間持続する。追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法は、治療剤のさらなる処置の全期間で、またはさらなる処置の一部で(例えば、最初だけ)投与することができる。治療剤による処置の各サイクルのために、異なるタイプおよび/またはレジメンの追加の免疫寛容性誘導療法および/または免疫抑制療法を投与することができる。追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法の処置の投与レジメンおよび期間は、疾患進行、抗薬物抗体のレベルおよび/または1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、医師が選択することができる。
【0162】
患者における望ましくない抗体応答の管理に及ぼすメトトレキセートならびに場合により他の免疫寛容性誘導療法および免疫抑制療法の効果は、患者の臨床検査、症状、抗薬物抗体価を検査する血液検査および免疫組織化学的アッセイ(例えば、C4沈着アッセイおよび他の固相抗体検出方法、例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)およびビーズベースの蛍光定量アッセイ)を含む、周知の方法によってモニタリングすることができる。効果は、そのレベルはメトトレキセート処置によって低減されることが示されている、MCP-1、IL-13、IL-6およびIL-12などのバイオマーカーのレベル、ならびに、その数はメトトレキセート処置によって増加することが示されている、移行性2B細胞、移行性3B細胞、濾胞性B細胞、周辺帯B細胞、B10 B細胞およびB1 B細胞を測定することによってモニタリングすることもできる。さらに、TGF-ベータ
、FoxP3、IL-5、IL-10、IL-15およびGM-CSFは、必要に応じて望ましくない免疫応答に及ぼすメトトレキセートの効果をモニタリングするためのバイオマーカーとして使用することができる。バイオマーカーのレベルは、治療剤(例えば、治療ポリペプチド)へのT細胞応答に及ぼすメトトレキセートの効果をモニタリングするために使用することもできる。T細胞応答に及ぼすメトトレキセートの効果のための読み出しとして、IL-2、インターフェロン-γおよびTNF-αなどのT細胞活性化のためのバイオマーカーをモニタリングすることもできる。一部の実施形態では、望ましくない免疫応答をモニタリングするために、CD19のレベルがさらに検出される。一部の実施形態では、対象は、抗薬物抗体レベル(例えば、抗rhGAA IgG抗体レベル)、CD19レベルおよび疾患進行の1つまたはそれ以上について、処置の全体を通じてモニタリングされる。
【0163】
D.疾患および状態
本明細書に記載される方法は、タンパク質治療剤などの治療剤によって処置することができる疾患または状態を有する対象を処置するために有益である。例えば、多くの疾患および状態を処置するために酵素補充療法が開発されたが、酵素補充療法を受ける対象において抗薬物抗体などの望ましくない免疫応答が発達することがある。
【0164】
一部の実施形態では、対象は、リソソーム蓄積症を有する。リソソーム蓄積症は、通常遺伝子突然変異の結果として特定のリソソーム酵素の欠損から各々もたらされる、40を超える遺伝子障害のクラスを記載する(例えば、Holton、J.B.、THE INHERITED METABOLIC DISEASES 205~242頁(第2版、1994);Scriverら、2 THE METABOLIC BASIS OF INHERITED DISEASE(第7版、1995)を参照)。リソソーム酵素は、細胞のリソソームの中でタンパク質、糖脂質および炭水化物代謝産物を分解するために必要である。これらの酵素の1つまたはそれ以上が遺伝性の突然変異のために罹患者において欠損している場合、罹患者の細胞の中のリソソームは、ほとんどリポサッカライドおよび炭水化物である未消化基質のサブセットを、欠損した酵素が消化することができない貯蔵物質として蓄積する。例えば、ゴーシェ病では、ベータ-グルコセレブロシダーゼの欠損がグルコシルセラミドの蓄積を引き起こし、ファブリー病では、欠損したアルファ-ガラクトシダーゼAがグロボトリアオシルセレミドの蓄積をもたらし、ポンペ病では、酸性アルファ-グルコシダーゼの欠如は、グリコーゲンアルファ-1-4結合オリゴ糖の蓄積を引き起こし、テイ-サックス病では、ベータ-N-アセチルヘキソサミニダーゼの欠損が、GM2ガングリオシドの蓄積につながる。臨床的には、これらの症候群の患者は、リソソームにおけるこれらの貯蔵物質の蓄積に関連する様々な症状を示し、それらは、ヒト体内の臓器の機能不全をもたらす、細胞または組織の正常な機能に最終的に影響を及ぼす。疾患の重症度は、残存する酵素活性によって異なる。酵素活性がほとんどまたはまったくない重度の症例では、生涯の早期に死に至ることがある。
【0165】
一部の実施形態では、対象はゴーシェ病を有し、ベータ-グルコセレブロシダーゼによる処置を必要とする。一部の実施形態では、対象はファブリー病を有し、アルファ-ガラクトシダーゼAによる処置を必要とする。一部の実施形態では、対象はテイ-サックス病を有し、ベータ-N-アセチルヘキソサミニダーゼを必要とする。一部の実施形態では、対象はポンペ病を有し、酸性α-グルコシダーゼを必要とする。
【0166】
一部の実施形態では、対象はポンペ病(酸性マルターゼ欠損症およびグリコーゲン蓄積症II型と様々に知られる)を有する。本明細書に記載される方法は、早発性(小児)および遅発性(若年および成人)ポンペ病の両方を有する対象のために有効である。一部の実施形態では、対象は、遺伝的継承ポンペ病を有する。一部の実施形態では、対象は、小児発症ポンペ病を有する。一部の実施形態では、対象は、非古典的小児発症ポンペ病を有
する。一部の実施形態では、対象は、遅発性ポンペ病、例えば児童発症、若年発症または成人発症ポンペ病を有する。一部の実施形態では、対象は、成人発症型のポンペ病を有する。
【0167】
古典的小児発症ポンペ病は、生後数カ月以内に始まる。この障害を有する小児は、全ての臓器におけるグリコーゲン蓄積に付随して、筋力低下(ミオパシー)、劣った筋緊張(緊張低下)、拡大した肝臓(肝腫大)および心臓肥大を含む心臓欠損を一般的に経験する。罹患小児は、体重増加および予想される速度での成長も不良であり(生育不全)、呼吸系の問題を有することもある。臨床検査では、筋肉消耗を伴う全身性緊張低下、胸骨の退縮による呼吸数の増加、肝臓の中等度の拡大および舌の突出がある。心臓の超音波検査は、最終的に不十分な心拍出量につながる、進行性の肥大型心筋症を示す。ECGは、著しい左側の軸偏位、短いPR間隔、大きなQRS群、反転したT波およびST下降によって特徴付けられる。この疾患は、生後1年以内に心呼吸系不全につながる急進行性の経過を示す。剖検時の組織学的検査では、リソソームグリコーゲン蓄積が様々な組織で観察され、心臓および骨格筋で最も顕著である。未処置の場合、この形態のポンペ病は、生後1年以内に心不全から死に一般的につながる。
【0168】
非古典的な小児発症ポンペ病は、通常1歳までに出現する。それは、遅延された運動技能(例えば、転がることおよび座ること)および進行性の筋力低下によって特徴付けられる。心臓は異常に大きくなることがある(心臓肥大症)が、罹患者は通常心不全を経験しない。この障害における筋力低下は、重大な呼吸系の問題につながり、未処置の場合、非古典的小児発症ポンペ病のほとんどの児童は、初期児童期までにしか生きない。
【0169】
遅発性ポンペ病は、児童後期、青年期または成人期まで明らかにならない可能性がある。遅発性ポンペ病は、通常この障害の小児発症型より軽度であり、心臓を巻き込む可能性は低い。遅発性ポンペ病のほとんどの個体は、特に呼吸を制御する筋肉を含む脚および胴体における、進行性の筋力低下を経験する。障害の進行にしたがい、呼吸系の問題は呼吸不全につながることがある。
【0170】
ヒト酸性アルファグルコシダーゼによる処置は、そのような患者の寿命を長くすることができる(例えば、1年、2年または5年を超えて正常な寿命まで)。処置は、上記のような、ポンペ病の臨床および生化学的特徴を消去または低減することもできる。処置は出産直後に、または彼らの子孫を危険にさらす変異したアルファグルコシダーゼ対立遺伝子を親が有することが知られている場合は、出産前に投与される。
【0171】
遅発性成人型ポンペ病を有する患者は、生涯の最初の20年以内に症状を経験しないかもしれない。この臨床サブタイプでは、特に肢帯、胴体および横隔膜の筋肉における、骨格筋に対する効果が卓越している。階段を登ることにおける困難が、しばしば最初の愁訴である。呼吸障害は、かなり変動する。それは臨床像を支配することもあるか、または患者は生涯の後期までそれを経験しないかもしれない。ほとんどの遅発性患者は、最終的に呼吸機能不全のために死ぬ。若年性サブタイプの患者では、症状は、通常生涯の最初の10年に明らかになる。成人ポンペ病におけるように、骨格の筋力低下が主要な問題であり、心臓肥大症、肝腫大および大舌症が見られることがあるが、稀である。多くの場合、夜間の換気サポートが最終的に必要である。肺感染症は、呼吸筋の消耗と一緒に生命を脅かし、一般的に生涯の第3の10年間の前に致命的になる。本方法による処置は、若年または成人の遅発性ポンペ病患者の生命を正常な寿命まで長くする。処置は、疾患の臨床および生化学的症状をさらに消去または有意に低減させる。
【0172】
一部の実施形態では、ポンペ病を有する対象は、CRIM陰性である。ポンペ病との関連で本明細書において使用されるように、「CRIM」は患者の内在性GAAタンパク質
の免疫反応性を指す。例えば、野生型ヒトGAAタンパク質に対する抗体を使用してウエスタンブロットによって判断されるように、GAAの2つの有害突然変異を有する患者およびGAAが完全にない患者は、交差反応性免疫物質(CRIM)陰性として分類される。ウエスタンブロットによって検出可能なGAAタンパク質を有する患者は、CRIM陽性として分類される。大半のCRIM陽性患者はERTに対して持続的治療応答を有するが、CRIM陰性患者はrhGAAに対する持続的な高力価抗体の発達のためにほとんど一様に劣り、急速な臨床上の衰退を経験する。Kishnani PSら Mol Genet Metab.2010;99:26~33頁を参照。このADAは、一部のCRIM陽性患者でも観察されている(Banugariaら 2011)。一部の実施形態では、CRIM状態は、皮膚線維芽細胞のウエスタンブロット分析による確認の有無にかかわらず、GAA突然変異分析を通して同定される。
【0173】
一部の実施形態では、対象は、多発性硬化症(MS)などの自己免疫性疾患を有する。一部の実施形態では、対象は、抗CD52抗体による処置を必要とする。一部の実施形態では、この抗体は、アレムツズマブである。
【0174】
一部の実施形態では、対象は遺伝病を有する。一部の実施形態では、対象は、バイオ医薬品(例えば、ポリペプチド、核酸等)の投与により処置される疾患または障害を有する。一部の場合には、対象は、抗薬物抗体(ADA)応答または免疫応答を誘導することができる化合物(例えば、バイオ医薬品)で処置される疾患または障害を有する。一部の実施形態では、対象は、血友病A、血友病B、筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、ハンチントン病、パーキンソン病またはアルツハイマー病を有する。一部の実施形態では、対象は、核酸を送達するためにウイルスベクターが使用される、ウイルス療法により処置される疾患または障害を有する。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペス、ワクシニアまたはアデノ随伴ウイルスに由来する。
【0175】
III.キット、アッセイおよび製造品
さらに、メトトレキセートおよび治療剤の投与の後に対象から得られる試料の中の赤血球形成バイオマーカーを検出するための、1つまたはそれ以上の試薬を含むキットが本明細書で提供される。一部の実施形態では、キットは、治療剤および/またはメトトレキセートをさらに含む。一部の実施形態では、キットは、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、個体が赤血球形成バイオマーカーの低減したレベルを有する場合、疾患または障害を処置するための医薬(例えば、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法)を選択するためにキットを使用するための説明書をさらに含む。一部の実施形態では、キットは、2つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーを検出するための試薬を含む。
【0176】
一部の実施形態では、ポンペ病の対象において治療剤(例えば、ヒト酸性α-グルコシダーゼ)への免疫寛容性のレベルを調査するためのアッセイであって、少なくとも1サイクルのメトトレキセート処置および治療薬の少なくとも1用量を以前に投与されている対象から試料を得る工程;および試料を赤血球形成バイオマーカーに結合する薬剤と接触させる工程であって、対照のレベルに対する赤血球形成バイオマーカーの上昇したレベルの検出は免疫寛容性の誘導を示す、工程を含む方法が提供される。
【0177】
一部の実施形態では、治療薬を必要とする対象において治療剤への免疫寛容性のレベルを調査するアッセイであって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程;(b)治療剤の治療有効量を対象に投与する工程;および(c)対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程であって、対照のレベルに対する試料中の赤血球形成バイオマーカーのレベルは、対象における治療剤への免疫寛容性の誘導を示す、工程
を含むアッセイが提供される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーは、メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後に対象から得られる試料中で検出される。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は、赤血球形成の誘導と関連する。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない。一部の実施形態では、赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたは低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない。
【0178】
本明細書において、一緒に包装されている、治療剤(例えば、ヒト酸性α-グルコシダーゼ)を含む医薬組成物、メトトレキセート、および、治療剤が、治療剤およびメトトレキセートの投与の後の赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて疾患または状態を有する患者を処置するためのものであることを示す添付文書を含む医薬組成物を含む製造品も提供される。一部の実施形態では、製造品は、追加の免疫寛容性誘導療法および/または免疫抑制療法をさらに含む。処置方法には、本明細書に開示される処置方法のいずれも含まれる。
【0179】
製造品は、容器、および容器の上にまたはそれに付随して、ラベルまたは添付文書を含む。適する容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ等が含まれる。容器はガラスまたはプラスチックなどの様々な材料で作ることができる。容器は、治療剤を有効成分として含む組成物を保持または含有し、無菌アクセスポートを有することができる(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針で穿刺可能なストッパを有するバイアルであってもよい)。
【0180】
製造品は、薬学的に許容される希釈緩衝液、例えば静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー液およびデキストロース溶液を含む第2の容器をさらに含むことができる。製造品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針およびシリンジを含む、商業的およびユーザーの見地から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
【0181】
本発明の製造品は、組成物が、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて疾患または状態を処置するために使用されることを示す、例えば添付文書の形の情報も含む。挿入文書またはラベルは、紙、またはフラッシュメモリ(例えば、USBフラッシュドライブなど)、磁気記録媒体(例えば、フロッピーディスク)またはCD-ROMを含むデータ記憶装置などの電子媒体などの、任意の形態をとることができる。ラベルまたは挿入文書は、医薬組成物および剤形に関する他の情報をキットまたは製造品に含むこともできる。
【0182】
本発明は、製造品を製造する方法であって、パッケージの中で、治療剤(例えば、ヒト酸性α-グルコシダーゼ)を含む医薬組成物、メトトレキセートを含む医薬組成物、および、治療剤が、治療剤およびメトトレキセートの投与の後の赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて疾患または状態(例えば、ポンペ病)を有する患者を処置するためのものであることを示す添付文書を組み合わせることを含む方法にも関する。一部の実施形態では、製造品は、追加の免疫寛容性誘導療法および/または免疫抑制療法をさらに含む。
【0183】
IV.例示的な実施形態
本発明は、以下の実施形態を提供する:
実施形態1。治療剤による処置を必要とする対象を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程;(b)対象に治療剤の有効量を投与する工程;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後の間に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程;および(d)対照のそれと比較した赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、治療剤によるさらなる処置を継続する工程を含む方法。
【0184】
実施形態2。赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は赤血球形成の誘導と関連する、実施形態1の方法。
【0185】
実施形態3。赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む、実施形態2の方法。
【0186】
実施形態4。赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置を継続することを含む、実施形態2の方法。
【0187】
実施形態5。赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である、実施形態3の方法。
【0188】
実施形態6。赤血球形成バイオマーカーはヘマトクリットである、実施形態4の方法。
【0189】
実施形態7。未熟な有核赤血球のレベルが未熟な有核赤血球のレベルが上昇する前に最初に低下する場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置が継続される、実施形態5の方法。
【0190】
実施形態8。メトトレキセートは、単一サイクルで投与され、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1、約2、約3、約4、約5、約6または約7日前までに低下する、実施形態7の方法。
【0191】
実施形態9。メトトレキセートは2サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与され、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1日から約14日前までに低下する、実施形態7の方法。
【0192】
実施形態10。赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することであり、ここで、赤血球形成に関連する遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連する遺伝子である、実施形態3または4の方法。
【0193】
実施形態11。赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体、トランスフェリン、Ly76(Ter-119のための抗原)、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である、実施形態10の方法。
【0194】
実施形態12。トランスフェリン受容体はトランスフェリン受容体1(CD71)である、実施形態11の方法。
【0195】
実施形態13。赤血球形成に関連する遺伝子を検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子のRNA転写物を検出すること、または赤血球形成に関連する遺伝子のタンパク質生成物を検出することを含む、実施形態10~12のいずれか1つの方法。
【0196】
実施形態14。タンパク質生成物はヘモグロビンである、実施形態13の方法。
【0197】
実施形態15。赤血球形成バイオマーカーは赤血球形成に関連する補因子である、実施形態3の方法。
【0198】
実施形態16。赤血球形成に関連する補因子は、ポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである、実施形態15の方法。
【0199】
実施形態17。試料は血液試料である、実施形態1~16のいずれか1つの方法。
【0200】
実施形態18。血液試料は、末梢血単核細胞(PBMC)を含む血液画分である、実施形態17の方法。
【0201】
実施形態19。血液試料は血清試料または血漿試料であり、バイオマーカーを検出することは赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することである、実施形態18の方法。
【0202】
実施形態20。対照は既存対照またはプラセボ対照である、実施形態1~19のいずれか1つの方法。
【0203】
実施形態21。対象はヒトである、実施形態1~20のいずれか1つの方法。
【0204】
実施形態22。メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される、実施形態1~21のいずれか1つの方法。
【0205】
実施形態23。メトトレキセートは、単一サイクルで投与される、実施形態22の方法。
【0206】
実施形態24。メトトレキセートのサイクルは、1日のメトトレキセート投与または2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11日連続のメトトレキセート投与からなる、実施形態22または実施形態23の方法。
【0207】
実施形態25。メトトレキセートは、治療剤の投与の前、間および後の1つまたはそれ以上から選択される時間に対象に投与される、実施形態1~24のいずれか1つの方法。
【0208】
実施形態26。メトトレキセートは、治療剤の投与の48時間前から48時間後の間に投与される、実施形態25の方法。
【0209】
実施形態27。メトトレキセートは治療剤の投与と同時に、ならびに治療剤の投与の約24時間後および約48時間後に投与される、実施形態26の方法。
【0210】
実施形態28。メトトレキセートは約0.1mg/kg~約5mg/kgで投与される、実施形態1~27のいずれか1つの方法。
【0211】
実施形態29。試料は、メトトレキセートの最終投与の少なくとも約1日後から約30日後に対象から得られる、実施形態1~28のいずれか1つの方法。
【0212】
実施形態30。試料は、メトトレキセートの最終投与の約7日後から約14日後に対象から得られる、実施形態1~29のいずれか1つの方法。
【0213】
実施形態31。試料は、メトトレキセートの最終投与後の複数の日に得られる、実施形態1~30のいずれか1つの方法。
【0214】
実施形態32。試料は、メトトレキセートの最終投与から1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、14日目、21日目または28日目のうちの1日またはそれ以上の日に得られる、実施形態30の方法。
【0215】
実施形態33。工程(d)は、T細胞、B細胞または形質細胞を枯渇させる薬剤を投与することを含む、実施形態1~32のいずれか1つの方法。
【0216】
実施形態34。工程(d)は、実施形態1~33のいずれか1つの方法:(a)リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレートおよびコルチコステロイドの1つまたはそれ以上の有効量を投与すること;ならびに(b)抗原特異的寛容性戦略を投与することの1つまたはそれ以上を含む。
【0217】
実施形態35。抗原特異的寛容性戦略は、治療剤のより高頻度の投薬または治療剤のより高い用量を投与することまたはその両方を含む、実施形態34の方法。
【0218】
実施形態36。治療剤のより高い用量は、IVIGと同時投与される、実施形態35の方法。
【0219】
実施形態37。治療剤は、ポリペプチド、核酸、ウイルス、遺伝子療法、脂質、リポソームまたは炭水化物である、実施形態1~36のいずれか1つの方法。
【0220】
実施形態38。治療剤は治療ポリペプチドである、実施形態1~37のいずれか1つの方法。
【0221】
実施形態39。治療ポリペプチドは抗体またはその抗原結合性断片である、実施形態38の方法。
【0222】
実施形態40。抗体はモノクローナル抗体である、実施形態39の方法。
【0223】
実施形態41。抗体はリンパ球枯渇剤である、実施形態39また40の方法。
【0224】
実施形態42。抗体はアレムツズマブである、実施形態40または実施形態41の方法。
【0225】
実施形態43。治療ポリペプチドは酵素である、実施形態38の方法。
【0226】
実施形態44。酵素はヒトアルファガラクトシダーゼAである、実施形態42の方法。
【0227】
実施形態45。酵素はヒト酸性α-グルコシダーゼである、実施形態42の方法。
【0228】
実施形態46。対象はリソソーム蓄積症を有する、実施形態1~38および43~45のいずれか1つの方法。
【0229】
実施形態47。対象はポンペ病を有する、実施形態46の方法。
【0230】
実施形態48。ポンペ病は小児発症ポンペ病である、実施形態47の方法。
【0231】
実施形態49。ポンペ病は古典的な小児発症ポンペ病である、実施形態46の方法。
【0232】
実施形態50。対象は交差反応性免疫物質(CRIM)陰性である、実施形態46~49のいずれか1つの方法。
【0233】
実施形態51。最初の免疫寛容性誘導療法を治療剤の投与と同時に投与することをさらに含み、ここで、治療剤はヒト酸性α-グルコシダーゼである、実施形態50の方法。
【0234】
実施形態52。最初の免疫寛容性誘導療法はリツキシマブおよびIVIGの1つまたはそれ以上を投与することを含む、実施形態51の方法。
【0235】
実施形態53。それを必要とする対象においてポンペ病を処置する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与すること;(b)対象にヒト酸性α-グルコシダーゼの有効量を投与すること;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出すること;および(d)対照のそれと比較した赤血球形成バイオマーカーのレベルに基づいて、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与して、または投与しないで、ヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続することを含む方法。
【0236】
実施形態54。赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は赤血球形成の誘導と関連する、実施形態53の方法。
【0237】
実施形態55。赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法をヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずにヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続することを含む、実施形態54の方法。
【0238】
実施形態56。赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法をヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置と同時に投与することを含むか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたはそれより低い場合、工程(d)は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずにヒト酸性α-グルコシダーゼによるさらなる処置を継続することを含む、実施形態54の方法。
【0239】
実施形態57。赤血球形成バイオマーカーは、未熟な有核赤血球のレベル、網赤血球成熟指数または細胞性核酸の含有量である、実施形態55の方法。
【0240】
実施形態58。赤血球形成バイオマーカーはヘマトクリットである、実施形態56の方法。
【0241】
実施形態59。未熟な有核赤血球のレベルが未熟な有核赤血球のレベルが上昇する前に最初に低下する場合、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を投与せずに治療剤によるさらなる処置が継続される、実施形態57の方法。
【0242】
実施形態60。メトトレキセートは、単一サイクルで投与され、未熟な有核赤血球のレベルが、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1、約2、約3、約4、約5、約6または約7日前までに低下する、実施形態59の方法。
【0243】
実施形態61。メトトレキセートは2サイクルまたはそれより多くのサイクルで投与され、未熟な有核赤血球のレベルは、未熟な有核赤血球のレベルが上昇する約1日から約14日前までに低下する、実施形態59の方法。
【0244】
実施形態62。赤血球形成バイオマーカーを検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子の発現を検出することであり、ここで、赤血球形成に関連する遺伝子は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝の1つまたはそれ以上に関連する遺伝子である、実施形態55または56の方法。
【0245】
実施形態63。赤血球形成に関連する遺伝子は、トランスフェリン受容体、トランスフェリン、Ly76(Ter-119のための抗原)、CD44、CD235a、ALAS2またはGATA-1をコードする遺伝子である、実施形態62の方法。
【0246】
実施形態64。トランスフェリン受容体はトランスフェリン受容体1(CD71)である、実施形態63の方法。
【0247】
実施形態65。赤血球形成に関連する遺伝子を検出することは、赤血球形成に関連する遺伝子のRNA転写物を検出すること、または赤血球形成に関連する遺伝子のタンパク質生成物を検出することを含む、実施形態62~64のいずれか1つの方法。
【0248】
実施形態66。タンパク質生成物はヘモグロビンである、実施形態65の方法。
【0249】
実施形態67。赤血球形成バイオマーカーは赤血球形成に関連する補因子である、実施形態55の方法。
【0250】
実施形態68。赤血球形成に関連する補因子は、ポルフィリン、ポルフィリン含有化合物またはテトラピロールである、実施形態67の方法。
【0251】
実施形態69。試料は血液試料である、実施形態53~68のいずれか1つの方法。
【0252】
実施形態70。血液試料は、末梢血単核細胞(PBMC)を含む血液画分である、実施形態69の方法。
【0253】
実施形態71。対象はヒトである、実施形態53~70のいずれか1つの方法。
【0254】
実施形態72。ポンペ病は小児発症ポンペ病である、実施形態53~71のいずれか1つの方法。
【0255】
実施形態73。ポンペ病は古典的な小児発症ポンペ病である、実施形態72の方法。
【0256】
実施形態74。対象はCRIM陰性である、実施形態72または73の方法。
【0257】
実施形態75。対照は既存対照またはプラセボ対照である、実施形態53~74のいずれか1つの方法。
【0258】
実施形態76。メトトレキセートの有効量は、単一サイクルまたは3サイクルで投与される、実施形態53~75のいずれか1つの方法。
【0259】
実施形態77。メトトレキセートの有効量は、単一サイクルで投与される、実施形態76の方法。
【0260】
実施形態78。メトトレキセートのサイクルは、1日のメトトレキセート投与または2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくは11日連続のメトトレキセート投与からなる、実施形態76または77の方法。
【0261】
実施形態79。メトトレキセートの有効量は、治療剤の投与の前、間および後の1つまたはそれ以上から選択される時間に対象に投与される、実施形態53~78のいずれか1つの方法。
【0262】
実施形態80。メトトレキセートの有効量は、治療剤療法の投与の48時間前から48時間後の間に投与される、実施形態79の方法。
【0263】
実施形態81。メトトレキセートは治療剤の投与と同時に、ならびに治療剤の投与の約24時間後および約48時間後に投与される、実施形態80の方法。
【0264】
実施形態82。メトトレキセートの有効量は約0.1mg/kg~約5mg/kgである、実施形態53~81のいずれか1つの方法。
【0265】
実施形態83。試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出することは、メトトレキセートの最終投与の少なくとも約1日後から約30日後である、実施形態53~82のいずれか1つの方法。
【0266】
実施形態84。試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出することは、メトトレキセートの最終投与の約7日後から約14日後である、実施形態53~83のいずれか1つの方法。
【0267】
実施形態85。試料はメトトレキセートの最終投与後の複数の日に得られる、実施形態53~84のいずれか1つの方法。
【0268】
実施形態86。試料は、メトトレキセートの最終投与から1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、14日目、21日目または28日目のうちの1日またはそれ以上の日に得られる、実施形態85の方法。
【0269】
実施形態87。工程(d)は、T細胞、B細胞または形質細胞を枯渇させる薬剤を投与することをさらに含む、実施形態53~86のいずれか1つの方法。
【0270】
実施形態88。形質細胞を枯渇させる薬剤はボルテゾミブである、実施形態87の方法。
【0271】
実施形態89。工程(d)は、(a)リツキシマブ、静脈内免疫グロブリン(IVIG)、シクロホスファミド、ボルテゾミブ、アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノレートおよびコルチコステロイドの1つまたはそれ以上の有効量を投与すること;ならび
に(b)抗原特異的寛容性戦略を投与することの1つまたはそれ以上を含む、実施形態53~88のいずれか1つの方法。
【0272】
実施形態90。抗原特異的寛容性戦略は、治療剤のより高頻度の投薬または治療剤のより高い用量を投与することまたはその両方を含む、実施形態89の方法。
【0273】
実施形態91。治療剤のより高い用量は、IVIGと同時投与される、実施形態90の方法。
【0274】
実施形態92。抗ヒト酸性α-グルコシダーゼ抗体、CD19レベルまたは疾患進行の1つまたはそれ以上をモニタリングすることをさらに含む、実施形態53~91のいずれか1つの方法。
【0275】
実施形態93。ポンペ病を有する対象における免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、(a)少なくとも1サイクルのメトトレキセート処置および治療剤の少なくとも1用量を以前に投与されている対象から試料を得る工程;および(b)試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程であって、対照のレベルに対する試料中の赤血球形成バイオマーカーのレベルは、免疫寛容性の誘導を示す、工程を含む方法。
【0276】
実施形態94。工程(b)は試料を赤血球形成バイオマーカーに結合する薬剤と接触させることを含む、実施形態93の方法。
【0277】
実施形態95。治療剤を必要とする対象における治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程;(b)対象に治療剤の有効量を投与する工程;および(c)対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程であって、対照のレベルに対する試料中の赤血球形成バイオマーカーのレベルは、対象における治療剤への免疫寛容性の誘導を示す、工程を含む方法。
【0278】
実施形態96。治療剤を必要とする対象における治療剤への免疫寛容性のレベルを調査する方法であって、(a)対象にメトトレキセートの有効量を投与する工程;(b)対象に治療剤の有効量を投与する工程;(c)メトトレキセートの投与の少なくとも1日後から約30日後に対象から得た試料中の赤血球形成バイオマーカーを検出する工程;および(d)工程(c)において検出されるバイオマーカーのレベルに基づいて対象における治療剤への免疫寛容性のレベルを同定する工程を含む方法。
【0279】
実施形態97。赤血球形成バイオマーカーのレベルの変化は赤血球形成の誘導と関連する、実施形態93~96のいずれか1つの方法。
【0280】
実施形態98。赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに概ね等しいかまたはそれより低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない、実施形態97の方法。
【0281】
実施形態99。赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに対して概ね上昇している場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法または免疫抑制療法を、治療剤によるさらなる処置と同時に必要とするか;または赤血球形成バイオマーカーのレベルが対照のそれに等しいかまたは低い場合、対象は、追加の免疫寛容性誘導療法も免疫抑制療法も必要としない、実施形態97の方法。
【0282】
この明細書で開示される機能の全ては、任意の組合せで組み合わせることができる。この明細書で開示される各機能は、同じか、同等であるかまたは類似の目的の役目をする代替の機能と置き換えることができる。したがって、明示的に特記されない限り、開示される各機能は、一般的な一連の同等または類似の機能の例にすぎない。
【0283】
本発明のさらなる詳細は、以下の非限定的実施例で例示される。明細書中の全ての参考文献の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例0284】
下の実施例は本発明の単なる例示が目的であり、したがって、本発明を限定するものと決して考えるべきでない。以下の実施例および詳細な記載は、例示として提供され、限定するものではない。
転写モジュール分析は、rhGAA単独で処置したマウスと比較したときの、rhGAAおよび低用量メトトレキセートで処置したマウスの脾臓における、影響を受けた細胞周期経路を示した。細胞周期の変化の他に、転写モジュール分析は、造血、鉄イオンホメオスタシス、赤血球分化の調節およびヘム代謝を含む赤血球増殖関連経路における富化を示した(下の表1)。対照的に、血液試料は細胞性ストレス応答の徴候(データは示さず)を示したが、ヘム代謝における富化も示した(表1)。全体として、脾臓および血液の転写分析は、rhGAA開始の7日後にrhGAAおよびメトトレキセートで処置した群における、赤血球形成関連経路における上方制御を示した。