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特開2024-105471天然に存在するCpGオリゴヌクレオチド組成物およびその治療的適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105471
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】天然に存在するCpGオリゴヌクレオチド組成物およびその治療的適用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20240730BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 35/747 20150101ALI20240730BHJP
   C12N 15/117 20100101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K35/74
A61P1/16
A61K31/7125
A61P43/00 121
A61P37/02
A61K35/747
C12N15/117 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024076469
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2022020362の分割
【原出願日】2013-09-23
(31)【優先権主張番号】61/704,090
(32)【優先日】2012-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515078165
【氏名又は名称】マッケーナ、エリザベス
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス・マッケーナ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】肝障害の処置のための、治療剤の対象の粘膜を通しての送達のための組成物を提供する。
【解決手段】(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩、および(b)天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を含み、前記細胞壁可溶化液および前記ODNが、免疫障害を処置するのに有効な量で存在する、組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝障害の処置のための、治療剤の対象の粘膜を通しての送達のための組成物であって、前記組成物が、
(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩、および
(b)天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)
を含み、前記細胞壁可溶化液および前記ODNが、免疫障害を処置するのに有効な量で存在する、組成物。
【請求項2】
徐放剤、促進剤、担体、またはそれらの組合せをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グラム陽性細菌が、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)(ラクトバチルス・スポロゲネス(Lactobacillus sporogenes))、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium animalis)(特に、B.アニマーリス(B. animalis)亜種アニマーリス(animalis))、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリカス(bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)亜種ラクティス(lactis)(ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis))、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、およびラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記促進剤が、アミノ酸、アミノ糖、および糖からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記グラム陽性細菌がラクトバチルス・デルブレッキイである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1つ以上の肝障害を患っている対象における肝障害の合併症の処置のための組成物であって、前記組成物が、治療的有効量の、
1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩、および
少なくとも1つのトール様受容体(TLR)9アゴニスト
を含み、前記グラム陽性細菌がラクトバチルス科の細菌から選択される、組成物。
【請求項7】
前記TLR9アゴニストがCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記CpG ODNが細菌可溶化液内に天然に存在する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記肝障害が、TLR9、ならびにTLR2、TLR4、およびTLR7のうちの1つ以上の過剰発現により特徴づけられる、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、トローチ、チューインガム、咀嚼錠、キャンディ、および溶解錠からなる群から選択される剤形である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記溶解錠が、低速溶解錠および急速溶解錠からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記粘膜が、口腔粘膜、舌下粘膜、頬側粘膜、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
化学療法剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、前記組成物が投与される対象において少なくとも1つのトール様受容体(TLR)の調節を示す、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
調節される前記TLRが、TLR2、TLR4、TLR7、およびTLR9から選ばれる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物を含む栄養補助食品。
【請求項17】
対象において腫瘍に対する免疫応答を誘導する方法であって、
腫瘍を有する対象を選択すること、ならびに
前記対象に
(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩、および
(b)天然に存在するCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)
を含む治療的有効量の組成物を投与し、それにより前記対象において前記腫瘍に対する前記免疫応答を誘導すること
を含む、方法。
【請求項18】
前記天然に存在するCpGオリゴデオキシヌクレオチドが細菌可溶化液に由来する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記CpG ODNが、C型、D型、またはK型CpG ODNからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫応答が抗体の産生を含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2012年9月21日に出願された米国仮特許出願第61/704,090号の優先権を主張し、その米国仮特許出願の内容は、全体として参照により本明細書に組み入れられている。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発に関する言明
適用なし。
【0003】
付録書類への言及
適用なし。
【発明の背景】
【0004】
発明の分野。ここで開示および教示された本発明は、一般的に、哺乳類、特にヒトにおいて障害を処置する組合せおよび方法に関する。特に、この発明は、天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドおよびグラム陽性細菌の細胞壁画分を使用する、肝障害およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)の処置のための併用治療および処置レジメンを提供する。
【0005】
関連分野の記載
哺乳類における肝障害およびいくつかの他のウイルス性障害を処置する従来の手法は、ウイルス自体を治療、例えば、ウイルス特異的化学療法剤の標的とすることである。そのような障害を処置する代替手法は、ウイルス自体を標的とする代わりに、またはそれに加えて、対象の免疫系を標的とすることである(「免疫治療」)。免疫治療の潜在的利益は、正常な健康細胞に対する有害効果を最小限にしながら、腫瘍に対する患者自身の免疫応答を増強することにより有効性の向上を実現することである。
【0006】
細菌DNAは、B細胞およびナチュラルキラー細胞を活性化する免疫刺激効果を有する[[Tokunaga, T.ら、1988. Jpn. J. Cancer Res. 79:682-686;Tokunaga, T.ら、1984, JNCI 72:955-962;Messina, J. P.ら、1991, J. Immunol. 147:1759-1764、;C. A. SteinおよびA. M. Krieg編、「Applied Oligonucleotide Technology」、1998、John Wiley and Sons, Inc., New York, N.Y.発行、pp. 431-448、でKriegが概説]。細菌DNAの免疫刺激効果は、特定の塩基構成(CpGモチーフ)の非メチル化CpGジヌクレオチドの存在の結果であり、それは、細菌DNAにおいて一般的であるが、脊椎動物DNAにおいてはメチル化され、少なく見積もられる[Kriegら、Nature, Vol. 374, pp. 546-549 (1995);Krieg、Biochim. Biophys. Acta, 93321:1-10 (1999)]。細菌DNAの免疫刺激効果は、これらのCpGモチーフを含有する合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)(以下、「CpG ODN」または「免疫刺激性ODN」と交換可能に呼ばれる)で模倣することができる。そのようなCpG ODNは、B細胞増殖、サイトカインおよび免疫グロブリン分泌、ナチュラルキラー(NK)細胞溶解活性、IFN-γ分泌、ならびに同時刺激分子を発現し、かつサイトカイン、特にTh1様T細胞応答の発生を促進することにおいて重要であるTh1様サイトカインを分泌する樹状細胞(DC)および他の抗原提示細胞の活性化を誘導する、いくつかの哺乳類生物学的機能に対して高い刺激効果を生じることが示されている。天然のホスホジエステル主鎖CpG ODNの免疫刺激効果は、CpGモチーフがメチル化され、GpCへ変わり、または別なふうに除去され、もしくは変化した場合には、その効果が劇的に低下する点において、高度にCpG特異的である[Kriegら、Nature, Vol. 374, pp. 546-549 (1995);Hartmannら、1999 Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 96, pp. 9305-9310 (1999)を参照]。
【0007】
免疫刺激効果が、プリン-プリン-CpG-ピリミジン-ピリミジン配列の構成のCpGモチーフを必要とすることは以前に考えられていた[Kriegら、Nature, Vol. 374, pp. 546-549 (1995);Pisetsky、J. Immunol., Vol. 156, pp. 421-423 (1996);Hackerら、EMBO J., Vol. 17, pp. 6230-6240 (1998);Lipfordら、Trends in Microbiol. 6:496-500(1998)]。しかしながら、マウスリンパ球が、この構成ではないホスホジエステルCpGモチーフに十分よく応答すること[Yiら、J. Immunol. Vol. 160, pp. 5898-5906(1998)]、および同じことがヒトB細胞および樹状細胞についてもいえること[Hartmannら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96, pp. 9305-10 (1999)]が現在、明らかである。
【0008】
1つのクラスのGpG ODNは、B細胞を活性化するのに強力であるが、IFN-αおよびNK細胞活性化を誘導することにおいては比較的弱く、このクラスはBクラスと名付けられている。BクラスCpGオリゴヌクレオチドは、典型的には、完全に安定化されており、ある特定の好ましい塩基構成内に非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。例えば、米国特許第6,194,388号;第6,214,806号;第6,239,116号;および第6,339,068号を参照。
【0009】
T細胞媒介性肝損傷は、肝臓疾患、例えば、自己免疫性肝炎、ウイルス性肝炎、および急性肝不全の病気の発生において鍵となる役割を果たすこともまた示されている[Becker, Y.、Virus Genes, Vol. 30 (2), pp. 251-266 (2005)]。トール様受容体(TLR)9についてのリガンドである、CpG含有オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)は、免疫学的アジュバントとして広く使用されており、いくつかのグループは、肝炎および他の疾患のマウスモデルにおいてCpG ODNのT細胞媒介性肝臓傷害への効果の研究の結果を報告している。炎症細胞の活性化が、CpG ODN前処置により減弱され得ることもまた示されている。これらの結果は、CpG ODN前処置が、肝細胞アポトーシス、リンパ球の炎症および活性化を阻害することにより肝臓傷害から保護することを示唆した[Zhang, H.ら、Int. Immunopharmacol., Vol. 10(1), pp. 79-85 (2010)]。
【0010】
CpG ODNの治療的応答を誘導するための個々の使用は、患者におけるいくつかの障害の処置においてかなり有望であるが、そのような障害をそのような免疫治療的手法で処置する新規な治療を開発する必要性が残されている。
【0011】
ここで開示および教示された本発明は、肝障害、癌、ライム病、および/またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)の処置のための治療および処置レジメン、加えて、天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドおよびグラム陽性細菌の細胞壁画分を使用するそのような処置方法のための組成物を対象とする。
【発明の概要】
【0012】
天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドおよび少なくとも1種類のグラム陽性細菌の細胞壁画分を使用する、肝障害、癌、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)障害、加えて癌障害を含む免疫疾患および障害の処置のための併用治療および処置レジメンを使用するための系に関係した、本発明の、上記の目的ならびに他の利点および特徴は、ここで、ならびに関連した付属書類および図面に示されているように、本出願に組み入れられている。
【0013】
本開示の第1の態様によれば、そのような処置を必要としている患者において1つ以上の障害を処置または防止する方法であって、(a)治療的有効量の1つ以上のグラム陽性細菌可溶化液と組み合わせて、治療的有効量の1つ以上の天然に存在するCpG OGNを患者へ、同時に、準同時的に、別々に、または逐次的に、投与することを含む治療的レジメン、および任意に、(b)維持用量のCpG OGN、グラム陽性細菌可溶化液、またはその組合せを含む維持レジメンを患者へ投与することを含む、方法が記載されている。例示的態様において、CpG ODNは、本開示のある特定の側面によればグラム陽性細菌可溶化液に由来する、天然に存在するCpG ODNである。本開示のさらなる側面において、治療的レジメンは、治療的有効量の、合成CpG ODN、または細菌可溶化液とは別の供給源由来のCpG ODNをさらに含んでもよい。
【0014】
本開示のさらなる態様によれば、そのような処置を必要としている患者において1つ以上の障害を処置または防止することに使用する組成物であって、治療的有効量の細菌細胞壁可溶化液または画分、および治療的有効量の天然に存在するCpG ODNを含む、組成物が記載されている。
【0015】
本開示のさらに別の態様において、対象における肝障害の処置のための、対象の粘膜を通しての治療剤の送達のための組成物であって、(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩;および(b)天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を含み、細胞壁可溶化液およびODNが、免疫障害を処置するのに有効な量で存在する、組成物が記載されている。この態様の側面によれば、組成物は栄養補助食品である。
【0016】
本開示のさらなる態様によれば、1つ以上の肝障害を患っている対象において肝障害の合併症の処置のための組成物であって、治療的有効量の、1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも1つのトール様受容体(TLR)9アゴニストを含み、グラム陽性細菌が、ラクトバチルス科の細菌から選択される、組成物が記載されている。この態様の側面によれば、TLR9アゴニストは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)である。さらにこの態様の側面によれば、CpG ODNは細菌可溶化液内に天然に存在している。
【0017】
本開示の別の態様において、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘導する方法であって、腫瘍を有する対象を選択すること、ならびに(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩;および(b)天然に存在するCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を含む治療的有効量の組成物を対象に投与し、それにより、対象において腫瘍に対する免疫応答を誘導することを含む、方法が記載されている。この態様の選択された側面によれば、天然に存在するCpGオリゴデオキシヌクレオチドは、細菌可溶化液に由来している。
【0018】
以下の図は、本明細書の一部を形成し、本発明のある特定の側面をさらに実証するために含まれる。本発明は、ここで提示された特定の態様の詳細な説明と組み合わせて、これらの図の1つ以上を参照することにより、より良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本開示に従って使用するのに適したCpG ODNの例示的な一般的な構造を示す。
図2図2は、様々なCpGモチーフ、ならびに自然免疫系および適応免疫系へのそれらの効果を示す。
図3図3は、選択されたTLR/NLR細胞系への本発明の組成物の例示的な刺激効果のグラフを示す;グラフにおける値は、スクリーニング1~3の平均に対応する。
図4図4は、本発明の対照および試料組成物のNF-κB対照細胞に対する刺激効果のグラフを示す;グラフにおける値は、スクリーニング1~3の平均に対応する。
図5図5は、ヒトTLR/NLRリガンドのスクリーニングの結果を示す。
図6図6は、NF-κB対照細胞のスクリーニングの結果を示す。
【0020】
ここで開示された本発明は、様々な改変および代替形態を受けやすいが、ほんの数個の特定の態様だけが、図面において例として示されており、かつ下で詳細に記載される。これらの特定の態様の図および詳細な説明は、発明概念または添付の特許請求の範囲の広さまたは範囲をいかなる方法によっても限定することを意図するものではない。むしろ、図および詳細な明細書は、発明概念を当業者に説明するために、およびそのような者が発明概念を形にし、かつ使用することを可能にするために、提供される。
【0021】
定義
以下の定義は、本発明の詳細な説明を理解することにおいて当業者を助けるために、提供される。ここで他に定義がない限り、本発明に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解されている意味をもつものとする。さらに、文脈上、他に要求がない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般的に、ここで記載された細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法ならびに技術は、当技術分野においてよく知られ、かつ一般的に使用されるものである。
【0022】
本発明の方法および技術は、一般的に、他に指定がない限り、当技術分野においてよく知られた方法に従って、かつ本明細書を通して引用され、論じられている様々な一般的な、およびより特定の参考文献に記載されているように、実施される。そのような参考文献には、例えば、Sambrook及びRussell、Molecular Cloning, A Laboratory Approach, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, NY (2002)、および、HarlowおよびLane、Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990)が挙げられ、それらは、参照によりここに組み入れられている。酵素反応および精製技術は、製造元の仕様書に従って、当技術分野において一般的に遂行されているように、またはここで記載されているように、実施される。ここで記載された分析化学、合成有機化学、ならびに医化学および薬化学に関連して使用される命名法、ならびにそれらの実験手順および技術は、当技術分野においてよく知られ、かつ一般的に使用されるものである。標準技術は、化学合成、化学分析、医薬品、製剤、および送達、ならびに患者の処置に使用される。
【0023】
ここで使用される場合、用語「CpGモチーフ」は、リン酸結合またはホスホジエステル主鎖によって連結された非メチル化シトシン-グアニンジヌクレオチド(すなわち、シトシン(C)、続いてグアニン(G))を含有するヌクレオチド配列を意味する。これらのモチーフはまた、同等に「非メチル化シトシン-ホスフェート-グアニンジヌクレオチド」とも呼ばれ、生物学的応答、例えば、免疫応答を活性化する。
【0024】
ここで使用される場合、用語「CpGオリゴデオキシヌクレオチド」(以下、「CpG ODN」と呼ばれる)は、上記のCpGモチーフの少なくとも2個を含むオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を意味する。そのようなCpG ODNは、必要に応じて、クラス-A(D型)、クラス-B(K型)、クラス-C、クラスP、またはクラスSであってもよい。
【0025】
特に、CpGオリゴヌクレオチドのいくつかの異なるクラスが最近、記載されている。1つのクラスは一方または両方の末端にポリGモチーフを含有し、A-クラスと名付けられている。1つのクラスは、B細胞を活性化するのに強力であるが、IFN-αおよびNK細胞活性化を誘導することにおいては比較的弱い;このクラスはBクラスと名付けられている。BクラスCpGオリゴヌクレオチドは、典型的には、完全に安定化されており、ある特定の好ましい塩基構成内に非メチル化CpGジヌクレオチドを含む。例えば、米国特許第6,194,388号;第6,207,646号;第6,214,806号;第6,218,371号;第6,239,116号;および第6,339,068号を参照。CpGオリゴヌクレオチドの別のクラスは、B細胞およびNK細胞を活性化し、IFN-αを誘導する;このクラスはC-クラスと名付けられている。最初に特徴づけられているように、C-クラスCpGオリゴヌクレオチドは、典型的には、完全に安定化されている;それらは、Bクラス型配列、およびGCリッチなパリンドロームまたは準パリンドロームを含む。このクラスは、国際公開第WO03/015711号に記載されている。Aクラスオリゴヌクレオチドは、非常に複雑なより高次の構造、例えば、ナノ粒子を形成することができ[Kerkmannら、J Biol. Chem. 280(9):8086-93 (2005)]、Cクラスは、分子間二重鎖またはヘアピンを形成する場合がある。最近、5’末端と3’末端の両方において、またはその近くに、二重鎖形成領域、例えば、完全な、または不完全なパリンドロームを含有して、それらにコンカテマーを形成する潜在能力を与える、CpGオリゴヌクレオチドの新しいサブクラスが記載されている;例えば、米国特許出願公開第2008/0045473A1号参照。P-クラスオリゴヌクレオチドと呼ばれるこれらのオリゴヌクレオチドは、場合によっては、C-クラスよりはるかに高いレベルのIFN-α分泌を誘導する能力を有する。P-クラスオリゴヌクレオチドは、インビトロおよび/またはインビボで、自発的にコンカテマーへ自己組織化する能力を有する。図2(Vollmer, J.ら、Advanced Drug Delivery Reviews, Vol. 61(3), pp. 195-204 (2009)から抜粋)は、様々なCpGモチーフ、ならびに自然免疫系および適応免疫系へのそれらの効果を図示している。
【0026】
句「医薬組成物」は、化合物、および生物学的活性化合物の哺乳類、例えば、ヒトへの送達のための当技術分野において一般的に許容される媒体の製剤を指す。そのような媒体には、そのための全ての薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤が挙げられる。
【0027】
ここで使用される場合、句「薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤」には、非限定的に、ヒトまたは家畜用に許容されるものとして米国食品医薬品局によって認可されている、任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、香味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒、または乳化剤が挙げられる。
【0028】
ここで使用される場合、用語「有効量」または「治療的有効量」とは、哺乳類、好ましくはヒトへ投与される場合、その化合物の非存在下で検出される応答と比較して、検出可能な治療的応答を媒介する量を意味する。治療的応答、例えば、限定されるわけではないが、全生存の増加、腫瘍成長(腫瘍サイズ停滞を含む)、腫瘍サイズ、転移の阻害および/または減少などが、例えばここで開示されているような方法を含む、有り余るほどの、技術分野で認められている方法により容易に評価することができる。
【0029】
当業者は、ここで投与されるCpG ODN、化合物、または組成物の有効量は、様々であり、いくつかの因子、例えば、処置されることになっている疾患または状態、疾患の病期、処置されることになっている哺乳類の年齢ならびに健康状態および身体的状態、疾患の重症度、投与されることになっている特定のCpG ODN化合物などに基づいて容易に決定することができることを理解する。
【0030】
動物、例えば、哺乳類、特にヒトへ投与される用量である、ここで使用される場合の用語「治療的有効量」は、標的とする疾患もしくは障害、例えば、癌を防止し、それの発症を遅らせ、それの進行の速度を遅くし、または疾患もしくは障害を処置する(例えば、状態を逆転させ、または打ち消す)のに十分であるべきである。当業者は、投薬量が、用いられる特定の組成物の強度、加えて動物の年齢、種、状態、および体重を含む様々な因子に依存することを認識しているだろう。用量のサイズはまた、投与の経路、タイミング、および頻度、加えて、特定の組成物の投与に伴って起こる可能性がある任意の有害な副作用の存在、性質、および程度、ならびに所望の生理学的効果によって決定される。
【0031】
ここで使用される場合、「生物学的活性物質」は、治療的に有用な効果を示す、天然または合成の、任意のアミノ酸、ペプチド、タンパク質、または抗体(キメラ、モノクローナル、単離された、またはヒト化抗体を含む)を指す。そのような生物学的活性物質には、組換えタンパク質、酵素、ペプトイド、またはPNA、加えて、そのような作用物質の組合せが挙げられ得る。
【0032】
句「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」は、医学的または獣医学的設定においてヒトまたは動物に投与される場合、アレルギーまたは類似した、予想外の反応を生じない組成物を指す。
【0033】
ここで使用される場合、「防止する」こととは、患者によって経験される疾患の症状の発症または進行(すなわち、腫瘍成長および/もしくは転移、または免疫細胞の数および/もしくは活性によって媒介される他の効果など)を阻害することを意味する。その用語は、疾患の症状、合併症、または生化学的徴候(例えば、前立腺癌におけるPSAレベルの上昇)の発症を阻害し、または遅らせるための、本発明のCpG ODN、化合物、または作用物質の投与を含む。
【0034】
ここで使用される場合、用語「配位子」は、中心金属原子と会合する分子群を意味する。二座の(bidentateまたはdidentate)、三座の、四座の、および多座の、という用語は、配位子の潜在的結合部位の数を示すために使用される。例えば、カルボン酸は、それが、少なくとも2つの結合部位、カルボキシル酸素およびヒドロキシル酸素を有するため、二座または他の多座配位子であり得る。同様に、アミドは、少なくとも2つの結合部位、カルボキシル酸素および窒素原子を有する。アミノ糖は、少なくとも2つの結合部位を有し得、多数のアミノ糖は、アミノ窒素、ヒドロキシル酸素、エーテル酸素、アルデヒドカルボニル、および/またはケトンカルボニルを含む複数の結合部位を有する。
【0035】
ここで使用される場合、用語「アミノ糖」は、系統的にx-デオキシ-x-単糖として知られた、アミノ基によって置きかえられた1つのアルコールヒドロキシル基を(必ずしもではないが、一般的に「2’位」に)有する単糖を指す。非限定的例として、D-グルコサミンまたは2-アミノ-2-デオキシ-D-グルコピラノースはアミノ糖である。他の実例的アミノ糖には、エリトロサミン、トレオサミン、リボサミン、アラビノサミン、キシロサミン、リキソサミン、アロサミン、アルトロサミン、グリコサミン、マンノサミン、イドサミン、ガラクトサミン、タロサミン、およびそれらの誘導体が挙げられるが、それらに限定されず、それらの全部は本開示の組成物内に使用するのに適している。アミノ糖には、アルドースとケトースの両方の糖が挙げられる。追加として、アミノ糖は、直鎖構造であり得る;しかしながら、アミノ糖のアルデヒド基またはケトン基は、異なる炭素原子上のヒドロキシル基と反応して、ヘミアセタールまたはヘミケタールを形成する場合があり、その場合、その2個の炭素原子の間に酸素架橋があり、複素環を形成する。5個の原子および6個の原子を有するアミノ糖環は、それぞれ、フラノース型およびピラノース型と呼ばれ、それらの対応する直鎖型と平衡状態で存在する。環型は、直鎖型より1個多い光学活性炭素を有し、それゆえに、α型とβ型の両方を有し、それらは平衡状態で相互転換することは、留意されるべきである。用語「アミノ糖」はまた、窒素がH以外の官能基と置換されているアミノ糖である、グリコシルアミンを意味する。グリコシルアミンの実例的な非限定的例には、N-アセチルグルコサミン(NAG)およびN-メチルグルコサミンが挙げられる。
【0036】
ここで使用される場合、用語「グリコサミノグリカン」は、アミノ糖を含有する、一群の多糖のいずれかを意味する。グリコサミノグリカンはまた、タンパク質と複合体を形成することができる。
【0037】
ここで使用される場合、用語「水和物」または「n水和物」は、ある程度の水和を有する分子実体を意味し、ただし、nは、水和の水の数を表す整数であり、例えば、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物、五水和物、六水和物、七水和物、八水和物、九水和物などである。
【0038】
本発明の組成物は、当技術分野において一般的に知られた、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、[Troy, David B.,編;Lippincott, Williams and Wilkins;第21版、(2005)]に記載されている、方法による、および賦形剤と共に、医薬品投与のために調製されてもよい。
【0039】
ここで使用される場合、「処置すること」または「処置」は、関心対象となる疾患または状態を有する哺乳類、好ましくはヒトにおける、関心対象となる疾患または状態、例えば、組織傷害の処置、加えて、疾患または障害についての予防的または抑制的措置を網羅し、それは、(i)哺乳類において、特に、そのような哺乳類が、その状態に罹りやすいが、それを有するとはまだ診断されていない場合に、疾患もしくは状態が起きるのを防止すること、(ii)疾患もしくは障害を阻害すること、すなわちそれの発生を停止させること、(iii)疾患もしくは障害を軽減すること、すなわち、疾患もしくは障害の退行を引き起こすこと、または(iv)疾患もしくは障害に起因する症状を軽減することを含む。したがって、例えば、用語「処置」は、疾患または障害の発症前、または発症後に作用物質を投与し、それにより、疾患または障害の全ての徴候を防止または除去することを含む。別の例として、疾患の臨床所見後の疾患の症状と戦うための作用物質の投与は、疾患の「処置」を構成する。さらに、発症後および臨床症状が発生した後の作用物質の投与であって、投与が疾患または障害の臨床パラメータ、例えば、組織傷害の程度または疾患の寛解に影響する、投与は、疾患の「処置」を構成する。
【0040】
句「処置を必要としている」は、疾患または障害が防止されるべきである哺乳類を含む、疾患または障害をすでに有する哺乳類、例えば、ヒトまたは動物を含む。
【0041】
ここで使用される場合、用語「疾患」、「障害」、および「状態」は交換可能に使用されてもよく、または特定の病弊もしくは状態の原因物質がわかっていない(その結果、病因学がまだ成立していない)場合があるという点において異なっていてもよく、それゆえに、それは、疾患としてまだ認識されていないが、望ましくない状態または症候群としてのみ認識されており、多かれ少なかれ特定のセットの症状が臨床医によって同定されている。
【0042】
ここで使用される場合、表現「作用物質」、「組成物」、および「アンタゴニスト」は、本開示の範囲内で交換可能に使用され、リンパ系障害を患っている対象に投与される場合、治療効果を生じる任意の分子または物質を含むことを意図される。
【0043】
ここで使用される場合、用語「医原性障害」は、いくつかの他の障害を処置することを意図された治療用化合物への曝露により誘発された障害を指す。薬物誘発性肝臓疾患または障害の例には、例えば、数例を挙げると、アミネプチン、クロメタシン、ダントロレン、ジクロフェナク、およびフェノフィブレートの投与に関連した慢性活動性肝炎;ほんの数例を挙げれば、アセプロメタジン、アジマリンおよび関連薬物、アミトリプチリン、ならびにアンピシリンの投与に関連した慢性胆汁うっ滞;またはアロプリノール、アスピリン、およびジアゼパムの投与に関連した肝肉芽腫が挙げられる。この関連において、”MacSween's Pathology of the Liver、第5版”[(Burt、PortmanおよびFerrell編)、Churchill Livingstone (2007)の14章、“Hepatic Injury Due to Drugs, Chemicals and Toxins”、Lewis, J.H.およびKleiner, D.E.著、pp. 649-759]の表14.8、14.10、および14.11を参照することができ、その開示は、参照によりここでの関係部分において組み入れられている。
【0044】
用語「水に溶けない」は、やや水に溶けにくい、わずかに水に溶ける、または極めてわずかに水に溶ける、さらには事実上もしくは全く水に溶けない化合物という用語を包含する[Remington:The Science and Practice of Pharmacy, vol. I, 194-195 (Gennaro編、1995)参照]。ここで使用される場合、化合物は、それが1部の溶質を溶解させるのに少なくとも30部の溶媒(例えば、水または生理食塩水)を必要とする場合は、本発明の目的として、水に溶けない(同文献)。本開示に従って、用語「水に溶けない」はまた、油溶性または脂溶性、さらには実質的油溶性または脂溶性を包含する。
【0045】
文脈から他に具体的に規定され、または明らかである場合を除き、本発明の「化合物」という用語は、必要に応じて、その「薬学的に許容される塩」(その表現は、場合によっては簡潔さのために削除されている)を含むものと解釈されるべきである。
【0046】
ここで使用される場合、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences [Troy、David B.編;Lippincott, Williams and Wilkins;第21版、(2005)]に記載されている、(w/v、v/vまたはw/wのような)条件なしで使用される場合の用語「%」は、液体における固体の溶液についての重量容量%(w/v)、液体における気体の溶液についての重量容量%(w/v)、液体における液体の溶液についての容積%(v/v)、および固体と半固体の混合物についての重量%(w/w)を意味する。
【0047】
ここで使用される場合、用語「患者」および「対象」は、交換可能に使用され、一般的に、哺乳類、より具体的には、ヒト、類人猿、サル、ラット、ブタ、イヌ、ウサギ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ヒツジ、およびヤギを指す。この定義に従って、本開示により記載および言及された肺表面または膜は、哺乳類、好ましくは、ヒトまたは動物試験対象のそれらを指す。
【0048】
ここで使用される場合、開示された治療用組成物に関しての「増強すること」および/または「取り除くこと」とは、言及された組成物の対象への投与が、肝炎障害の1つ以上の症状の即時および/または長期の、軽減、寛解、阻害、または緩和を対象哺乳類へもたらすことを意味する。
【0049】
本開示と共に使用される場合の用語「薬物」は、生物学的活性がある、例えば、インビボで治療的もしくは予防的効果を、またはインビトロで生物学的効果を示し、または示す能力がある、任意の化合物を意味する。
【0050】
ここで使用される場合、用語「栄養補助食品」は、全食事摂取量を増加させることにより食事を補うために人々が使用するための食事性または栄養性物質を含む天然または合成のいずれかの起源の化合物または組成物を指す。様々な態様において、栄養補助食品は、1994年の栄養補助食品健康教育法(DSHEA)または同等の法により定義されているような栄養補助食品であってもよい。DSHEAは、栄養補助食品が、食事を補うことを意図され、かつ以下の少なくとも1つを含有する製造物としてあることを要求する:ビタミン、ミネラル、ハーブもしくは他の植物(タバコを除く)、アミノ酸、全食事摂取量を増加させることにより食事を補うために人々が使用するための食事性物質、または上記のいずれかの濃縮物、代謝産物、成分、抽出物、もしくは組合せ。さらに、DSHEAは、栄養補助食品がまた、通常の食物として、または料理もしくは食事のただの要素として使用するためのものを表しているのではない、丸剤、カプセル剤、錠剤、散剤、液剤、または他の適切な経口剤形における摂取のために意図されなければならず、かつ「栄養補助食品」と名称をつけられなければならないことを要求する。
【0051】
ここで使用される場合、用語「口腔粘膜」は、歯を除く口腔の内部の全ての構造を網羅する粘膜マトリックスを指す。口腔粘膜は、一般的に、個体の皮膚の色によってピンクから茶色がかった紫まで色が異なる。口腔粘膜の構造は、口腔内のそれの位置およびそのエリアの機能によって異なる。例えば、頬を裏打ちする粘膜は、咀嚼の大きい力に耐えるようには設計されていないが、顎を覆う咀嚼粘膜は、咀嚼の力に耐えるように構造化されている。味蕾を含む特殊化した粘膜は舌を覆う。口腔粘膜組織の例には、口蓋組織、歯肉組織、頬側粘膜組織、舌組織、および口腔底組織が挙げられるが、それらに限定されない。
【0052】
ここで使用される場合、用語「制御薬物送達システム」または「DDS」は、治療剤/薬物送達の速度および期間を制御し(すなわち、持続放出投薬)、対象身体の特定のエリアを標的とし、所望の処置期間中治療レベルを維持するように設計されている製剤を指し、例えば、M. Vallet-Regi [Chem. Eur. J., Vol. 12, pp. 5934-5943 (2006)]に記載されたものがある。
【0053】
用語「生物学的利用率」は、薬物が、身体における処置部位に吸収され、または利用されるようになる速度および/または程度を指す。
【0054】
ここで使用される場合、用語「投与すること」は、本発明の組成物の、口腔の粘膜(すなわち、口腔粘膜)への投与を指す。口腔粘膜内の投与の適切な部位の例には、非限定的に、口腔底の粘膜(舌下粘膜)、頬(頬側粘膜)、歯肉(歯肉粘膜)、口蓋(口蓋粘膜)、唇の内層、およびそれらの組合せが挙げられる。好ましくは、本発明の組成物は、舌下粘膜、頬側粘膜、またはそれらの組合せへ投与される。
【0055】
ここで使用される場合、用語「機能的に等価の変種」は、最初の微生物と同じ性質および機能を本質的に有する微生物を指す。そのような変種は、任意で、例えば、UV照射、または当業者に知られた他の突然変異誘発技術、加えて、分類学的名前の変更、例えば、ビフィドバクテリウム属における変更により形成され得る。
【0056】
ここで使用される場合、句「併用治療」は、天然に存在する免疫刺激性ODN、例えば、CpG ODN、および任意で維持相を含む特定の処置レジメンの一部としての化学療法剤の、これらの治療剤の共同作用から有益な効果を与えることを意図された投与を包含する。併用の有益な効果には、治療剤の併用に起因する薬物動態学的または薬力学的共同作用が挙げられるが、それらに限定されない。組み合わせてのこれらの治療剤の投与は、規定された期間(通常、選択された併用に依存して、分、時間、日、または週)にわたって行われる。「併用治療」は、一般的に、偶然かつ任意に本発明の併用を生じる別々の単剤治療レジメンの一部としてこれらの治療剤の2種以上の投与を包含することは意図されない。
【0057】
「併用治療」は、逐次様式での、すなわち、各治療剤が異なる時点で投与される場合のこれらの治療剤の投与、加えて、実質的同時の様式でのこれらの治療剤、または治療剤の少なくとも2種の投与を包含する。実質的同時の投与は、例えば、定率の各治療剤を有する単一カプセルを、または治療剤のそれぞれについての複数個の単一カプセルで、対象に投与することにより、達成することができる。各治療剤の逐次の、または実質的同時の投与は、任意の適切な経路によってもたらすことができ、その経路には、経口経路、静脈内経路、筋肉内、皮下経路、および粘膜組織を通っての直接的吸収が挙げられるが、それらに限定されない。治療剤は、同じ経路により、または異なる経路により投与することができる。例えば、第1の治療剤(例えば、CpG ODN)は、皮下注射によって投与することができ、第2の薬剤(例えば、化学療法剤)は静脈内に投与することができる。さらに、選択された併用の第1の治療剤は、静脈内注射によって投与されてもよく、一方、併用のその他の治療剤は、経口で投与されてもよい。あるいは、例えば、両方の治療剤が、経口で投与されてもよく、または両方の治療剤が、静脈内もしくは皮下注射によって投与されてもよい。
【0058】
本明細書において、用語「逐次の」は、他に規定がない限り、定まった順番または順序により特徴づけられることを意味し、例えば、投与レジメンがCpG ODNおよび化学療法剤の投与を含む場合には、逐次投与レジメンは、化学療法剤の投与の前、同時、実質的同時、または後のCpG ODNの投与を含むことができるが、両方の薬剤は、定まった順番または順序で投与される。用語「別々の」は、他に規定がない限り、一方を他方から離すことを意味する。用語「同時に」は、他に規定がない限り、同じ時点で起こり、または行われ、すなわち、本発明の化合物が同じ時点で投与されることを意味する。用語「実質的同時に」は、化合物が、お互いに数分以内(例えば、お互いに10分以内)に投与されることを意味し、合同投与、加えて連続投与を包含することを意図されるが、投与が連続的である場合には、それは、ほんの短い期間(例えば、医者が2つの化合物を別々に投与するのにかかる時間)、時間的な隔たりがある。ここで使用される場合、並行投与および実質的同時投与は、交換可能に使用される。逐次投与は、ODNおよび化学療法剤の時間的に別々の投与を指す。
【0059】
「併用治療」はまた、他の生物学的活性成分(例えば、第2の異なる抗悪性腫瘍剤、樹状細胞ワクチン、または他の腫瘍ワクチンであるが、それらに限定されない)および非薬物治療(例えば、手術もしくは放射線処置、または両方であるが、それらに限定されない)とさらに併用した、上記のような治療剤の投与を包含することができる。併用治療はさらに、放射線処置を含み、放射線処置は、治療剤と放射線処置の併用の共同作用からの有益な効果が達成される限り、任意の適切な時点で行われてもよい。例えば、適切と思われる場合においては、放射線処置が治療剤の投与から時間的に、ことによると数日間、またはさらに数週間、かけ離れている場合でもなお有益な効果が達成される。そのような併用治療はまた、他の治療剤の1つ以上の有害な、または望ましくない副作用を軽減する可能性がある。
【0060】
ここで使用される場合、用語「アジュバント療法」は、一次処置後に施される処置を指し、それには、非限定的に、放射線照射、化学療法、ホルモン治療などが挙げられる。アジュバント療法の目標は、患者の寛解または治癒の見込みを増加させること、患者の全延命効果を増加させること、および再発のリスクを減少させるのを助けることである。したがって、本開示の天然のCpG ODNがアジュバントとして投与される場合には、それは、一次処置後に患者へ投与され、例えば、患者は、化学療法のレジメン、続いて、天然のCpG ODNのコースを施されることが理解される。この点において、CpG ODNの用量は、アジュバント療法の目標に応じて、治療用量または維持用量とみなされ得る。用語「ネオアジュバント療法」は、一次処置の前に施される処置を指し、それには、非限定的に、化学療法が挙げられる。ネオアジュバント設定において、CpG ODNの用量は治療用量である。
【0061】
用語「第一選択治療」は、状態もしくは疾患に対して施される最初の治療型、または特定の型の癌の処置のための選択された最初の治療を指す。したがって、必然的に、用語「第二選択治療」は、最初の、または第一選択の治療がうまくいかない場合に施される処置を指し、「第三選択治療」は、最初の処置と次の処置の両方がうまくいかない場合に施される処置または処置レジメンを指すことになる。
【0062】
ここで使用される場合、細胞懸濁液に関しての用語「溶解させること」は、細胞壁および/または細胞膜、細胞構成要素、細胞の少なくとも一部のオルガネラを破裂させ、その結果、その内容物の少なくとも一部、例えば、細胞の生物学的分子が放出されることを指す。本発明の方法のある特定の態様において、生物学的材料の少なくとも一部が溶解して、可溶化液を形成する。操作のいかなる特定の理論に縛られるつもりはないが、生物学的試料は、圧力、および熱もしくはキャビテーションのいずれかまたはその2つの組合せと共に適切な溶媒環境の組合せにより生じる物理化学的力により溶解する。溶解で放出される生物学的分子には、核酸、糖質、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、DNA(ssDNA、dsDNA、およびmsDNA(マルチコピー一本鎖DNA))、RNA(ssRNAを含む)、複合糖(オリゴ糖)、ペプチドグリカン、およびそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。生物学的試料は、典型的には水性であり、水性とは、それらが、それらを液体状態にさせるのに有効量の水分子を含有することを意味する。
【0063】
ここで使用される場合、用語「溶解」は、(例えば、酵素または他の適切な材料を使用する消化による)細胞膜または細胞壁の破裂、および細胞質の細胞からの放出を指す。ここで使用される場合、用語「可溶化液」は、溶解の破壊的過程によって生じる材料、具体的には、溶解した細胞片(例えば、破裂した細胞壁および/または細胞膜)およびDNAを含む液化相を指す。
【0064】
ここで使用される場合、用語「可溶化液」は、生物学的材料を溶解させることの生成物、例えば、上記で列挙されているような放出される生物学的分子を指す。たいていの可溶化液は生物学的試料液中に容易に溶けるが、ある特定の可溶化液部分、例えば、疎水性構成要素は、可溶化液の少なくとも一部が可溶化されるのを保証するために追加の工程を必要とする場合がある。可溶化液の可溶化を保証するための追加の工程の例には、適切な界面活性剤(または脱水剤)、例えば、典型的には緩衝液中に含まれるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、またはそれらの任意の組合せが挙げられる。可溶化液の可溶化はまた、激しい混合、剪断、界面活性剤中の加熱、キャビテーション、ビーズでのビーティング、煮沸、脱泡、またはそれらの組合せを使用して補助されてもよい。
【0065】
ここで使用される場合、用語「細胞」は、原核細胞、真核細胞、ファージ粒子、およびオルガネラを包含することを意図される。
【0066】
ここで使用される場合、用語「化学療法剤」は、対象において腫瘍または癌細胞の増殖を阻害する細胞傷害性化合物を意味する。化学療法剤は、状況によっては、患者において、正常(非癌性および非腫瘍性)細胞に細胞傷害性効果を生じる場合がある。
【0067】
ここで使用される場合、用語「下方制御」は、細胞が、外的な変化するもの、例えば、治療剤に応答して、細胞構成要素、例えば、RNAまたはタンパク質の量を減少させる過程を指す。
【0068】
ここで使用される場合、用語「上方制御」は、細胞が、外的な変化するもの、例えば、治療剤に応答して、細胞構成要素、例えば、RNAまたはタンパク質の量を増加させる過程を指す。
【0069】
ここで使用される場合、用語「ライム病」は、Dattwyler, R. J.およびWormser, G. ”Lyme borreliosis. ”Infectious Diseases Medicine and Surgery、S. GorbachおよびJ. Bartlett編、第3版、Saunders Pub. New York, N.Y., 2003に要約されているような特性を示し、かつ病原性ボレリア(Borrelia)によって引き起こされる疾患を指す。
【発明の詳細な説明】
【0070】
上記の図、ならびに下記の特定の構造および機能の明細書は、出願人が発明しているものの範囲、または添付の特許請求の範囲を限定するために提示されるのではない。むしろ、図および明細書は、特許権保護が求められる本発明を行い、かつ使用することを当業者に教示するために提供される。当業者は、明瞭さおよび理解のために、本発明の商業的態様の全ての特徴が記載され、または示されているとは限らないことを認識しているだろう。当業者はまた、本発明の側面を組み入れる実際の商業的態様の開発が、商業的態様についての開発者の最終目的を達成するために多数の実装時固有決定を必要とすることも認識しているだろう。そのような実装時固有決定には、特定の実装、位置によって、かつ時々、異なり得る、システム関連、ビジネス関連、政府関連、および他の制約の順守が挙げられ、おそらくそれらに限定されないだろう。開発者の努力は、絶対的な感覚で、複雑かつ時間のかかることであろうが、とはいえ、そのような努力は、この開示の恩恵を受ける当業者にとって日常的仕事であろう。ここで開示され、かつ教示された本発明は、多数かつ様々な改変および代替形態を受けやすいことは理解されなければならない。最後に、単数形の用語、例えば、限定されるわけではないが、「1つの(a)」の使用は、項目の数を限定することを意図するものではない。また、関係語の使用、例えば、限定されるわけではないが、「頂上」、「底部」、「左」、「右」、「上部の」、「下部の」、「下方へ」、「上方へ」、「側」などの使用は、明細書において、図を具体的に参照して明瞭さのために使用され、本発明の範囲または添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0071】
出願人は、1種類以上のグラム陽性細菌に由来した治療剤(例えば、グラム陽性細菌の細胞壁画分)および天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチドを使用する、肝障害、ならびにヒト免疫不全ウイルス(HIV)、癌、およびライム病を含む免疫障害の処置のための併用治療および処置レジメンを生み出している。本開示の組成物により、および関連した方法を使用して、処置され得る例示的な免疫障害には、限定されるわけではないが、慢性炎症性疾患および障害、例えば、クローン病、ライム病を含む反応性関節炎を含むTリンパ球関連障害、インスリン依存型糖尿病、多発性硬化症、橋本甲状腺炎、およびグレーブス病を含む臓器特異的自己免疫、接触性皮膚炎、乾癬、移植片拒絶、移植片対宿主病、サルコイドーシス、アトピー性状態、例えば、喘息、およびアレルギー性鼻炎、食物アレルギーを含む消化管アレルギーを含むアレルギー、好酸球増加症、結膜炎、糸球体腎炎、ある特定の病原体感受性、例えば、蠕虫(例えば、リーシュマニア症)感染、ならびにHIVを含む特定のウイルス感染、ならびに結核およびらい腫性ハンセン病を含む細菌感染が挙げられる。
【0072】
A.組成物
本開示の治療的活性のある組成物は、第1の生物学的活性物質、好ましくは、例えば、可溶化液の形をとる、1種類以上のグラム陽性細菌の1種類以上の細胞壁画分;第2の生物学的活性物質、好ましくは天然に存在するCpG ODN;任意の促進剤;および任意で、組成物が、治療を必要としている対象の粘膜壁へ吸収され、またはそれと相互作用することを可能にするための、徐放性成分を含む1種以上の他の添加剤を含む。
【0073】
本発明によれば、第1の生物学的活性治療剤は、特定の治療的適用に依存して必要とされるように、約1mg/kgから約100mg/kgまでの範囲の量での、グラム陽性細菌の1種類以上の可溶化液または細胞壁画分の混合物である。本開示によれば、グラム陽性細菌の可溶化液または細胞壁画分は、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・カテナフォルミス(Lactobacillus catenaforme)、ラクトバチルス・セロビオスス(Lactobacillus cellobiosus)、ラクトバチルス・クリスパータス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・カルバータス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリカス(bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ラクティス(lactis)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lactobacillus jensenii)、ラクトバチルス・レイクマンニイ(Lactobacillus leichmannii)、ラクトバチルス・ミヌツス(Lactobacillus minutus)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・ロゴサエ(Lactobacillus rogosae)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・スポロゲネス(Lactobacillus sporogenes)(バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)としても知られている)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermenturn)、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium animalis)(特に、B.アニマーリス(B. animalis)亜種アニマーリス(animalis))、ビフィドバクテリウム・アンギュラツム(Bifidobacterium angulatum)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・カテヌラツム(Bifidobacterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・デンティウム(Bifidobacterium dentium)、ビフィドバクテリウム・エリクソニ(Bifidobacterium eriksonii)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)(ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium animalis)亜種ラクティス(lactis))、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・プランタルム(Bifidobacterium plantarum)、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラツム(Bifidobacterium pseudo-catenulatum)、ビフィドバクテリウム・シュードロングム(Bifidobacterium pseudo-longum)、レプトコッカス・ラクティス(Leptococcus lactis)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)(ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)亜種ラクティス(lactis)とも呼ばれる)、ストレプトコッカス・ラフィノラクティス(Streptococcus raffinolactis)、アシダミノコッカス・フェルメンタンス(Acidaminococcus fermenta)、サイトファーガ・フェルメンタンス(Cytophaga fermentans)、ロドフェラックス・フェルメンタンス(Rhodoferax fermentans)、セルロモナス・フェルメンタンス(Cellulomonas fermentans)、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)、およびストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、加えて、それらの機能的に等価の変種からなる群から選択されるグラム陽性細菌の群由来であり、それらは全て、本発明を実行するのに適している。これらの周知の種の混合物は、当業者により容易に調製することができる。
【0074】
他の種、例えば、当技術分野の現状において開示された種、かつコレクション、例えば、ECACC(European Collection of Cell Cultures)、ASTM、およびDSMにおいて一般的に利用可能な種を使用することができる。
【0075】
本発明による好ましい第1の生物学的治療活性物質は、以下からなる群から選択されるグラム陽性細菌の可溶化液または細胞壁抽出物である:ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium animalis)(特に、B.アニマーリス(B. animalis)亜種アニマーリス(animalis))、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリカス(bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)(ラクトバチルス・スポロゲネス(Lactobacillus sporogenes))、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)(ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium animalis)亜種ラクティス(lactis))、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、およびラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、加えて、それらの機能的に等価の変種。これらの混合物の一部は凍結乾燥した形で市販されている。
【0076】
第2の生物学的活性治療剤は、天然に存在するCpG ODNである。天然に存在するCpG ODNは、第1の生物学的活性治療剤が得られる同じ細菌または細菌可溶化液から得られることが、必要ではないが、好ましい。CpG ODNは、任意のCpGモチーフであってもよく、そのCpGモチーフには、必要に応じて、クラス-A(D型)、クラス-B(K型)、クラス-C、クラスP、もしくはクラスS、またはそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。第2の生物学的活性治療剤は、単一のCpG ODNまたは2つ以上のCpG ODNの組合せであってもよく、その組合せには、天然に存在する、および合成のCpG ODNの組合せであって、唯一の条件が、2つ以上のCpG ODNのうちの少なくとも1つが天然に存在することである、組合せが挙げられる。本発明は、幅広い範囲の用量における、治療用量の、または治療用量と維持用量の両方のCpG ODN構成要素の投与をさらに企図する。本組成物のCpG ODN構成要素の例示的な治療および/または維持用量には、1日あたり1回から最高3回までの、約0.001mg/kgから約5.0mg/kgまで、好ましくは約0.001mg/kgから約2.5mg/kgまでの用量範囲が挙げられるが、それらに限定されない。本発明は、治療用量に加えて、維持レジメンの一部として、約0.001~約5.0mg/KgのCpG ODNの維持用量の投与を企図し、維持用量として使用されるそのようなCpG ODNが、必要に応じて、グラム陽性細菌の可溶化液内のCpG ODNと同じまたは同じではないかのいずれかである。
【0077】
本開示の治療用組成物は、生物学的膜を通しての活性物質の治療的送達を助けるための1種以上の促進剤をさらに、および任意に含んでもよい。好ましくは、本開示に従って有用な促進剤は、アミノ酸、N-アルキル化ペプチド、糖、アミノ糖、またはアミノ糖キレートである。1つ以上のアミノ糖配位子、1つ以上の飽和ヒドロキシル化カルボン酸配位子、および栄養的に許容される金属を含むアミノ糖キレートであって、1つ以上のアミノ糖配位子の少なくとも1つがグルコサミンであり、かつ金属が、マンガン、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、および亜鉛からなる群から選択され、かつ1つ以上の飽和ヒドロキシル化カルボン酸配位子がグルコン酸であり、かつグルコサミン配位子対栄養的に許容される金属の比が2:1である。
【0078】
本開示の1つの側面によれば、治療用製剤は、キチンを含む、モノマー、オリゴマー、および/またはポリマーの形をとる、N-アセチルグルコサミン(NAG;GlcNAc)、ガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、マンノサミン、N-アセチルシステイン(NAC)、およびN-アセチルマンノサミン、ならびにヒトグルコサミノグリカン、加えて、それらの誘導体からなる群から選択される1つ以上のアセチル化または脱アセチル化アミノ糖を含んでもよい。アミノ糖に関してここで使用される用語「それらの誘導体」は、滅菌中に細胞傷害性分解産物を形成する同じ、または本質的に同じ能力を有するアミノ糖の誘導体を意味する。本開示の選択されたさらなる側面によれば、促進剤は、ポリ-L-リジン、グルコサミン、ポリ-L-アルギニン、ガラクトサミン、N-アセチルマンノサミン(NAM;N-Ac-Man)、N-アセチルグルコサミン(NAG;N-Ac-Glc)、N,N'-ジアセチルグルコサミン(NAG-NAG;N,N'-ジアセチルキトビオース)、N,N',N'',N'''-テトラアセチルグルコサミン(NAG-NAG-NAG-NAG;N,N',N''N'''-テトラアセチルキトテトラオース)、およびそれらの混合物からなる群から選択されるメンバーである。
【0079】
任意に、および同様に許容されることには、促進剤は、2~12個のα-1,2および/またはα-1,6結合型糖のアシル化グリコシルオキシ糖部分、または任意にアシル化されたオリゴグリコシルオキシ糖部分であってもよく、糖が、D-マンノース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-グルコサミン、N-アセチルグルコサミン、および6-デオキシ-L-マンノースからなる群から選択され、オリゴグリコシルオキシ糖部分が同じまたは異なる糖を含んでもよい。
【0080】
本開示のさらなる側面によれば、本発明の治療用製剤は、1種以上の追加の治療剤、例えば、下記の第2の治療剤をさらに含んでもよい。組成物は通常、薬学的に許容される担体を普通には含む無菌の医薬組成物の一部として供給される。追加の治療剤を含むこの組成物は、(それを患者に投与する望ましい方法に依存して)任意の適切な形をとることができる。
【0081】
ある特定の側面において、第2の治療剤は、抗リウマチ薬、抗炎症剤、化学療法剤、放射線治療剤、免疫抑制剤、インターフェロン、インターフェロンに基づいた化学療法剤、異なる細菌壁可溶化液、または細胞傷害性薬である。
【0082】
抗リウマチ薬には、オーラノフィン、アザチオプリン、クロロキン、D-ペニシラミン、金チオリンゴ酸ナトリウム、ヒドロキシクロロキン、ミオクリシン、およびスルファサラジンメトトレキセートが挙げられるが、それらに限定されない。
【0083】
抗炎症剤には、デキサメタゾン、ペンタサ、メサラジン、アサコール、リン酸コデイン、ベノリレート、フェンブフェン、ナプロシン、ジクロフェナク、エトドラクおよびインドメタシン、アスピリンおよびイブプロフェン、加えて、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDS)が挙げられるが、それらに限定されない。
【0084】
化学療法剤には、放射性分子、細胞の生存能にとって有害である任意の作用物質を含む、細胞毒または細胞傷害性物質とも呼ばれる毒素、および化学療法化合物を含有するリポソームまたは他のベシクルが挙げられるが、それらに限定されない。適切な化学療法剤の例には、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシルダカルバジン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、アクチノマイシンD、アドリアマイシン、アルデスロイキン、アルキル化剤、アロプリノールナトリウム、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、アントラマイシン(AMC)、有糸分裂阻害剤、cis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)、シスプラチン、ジアミノジクロロ白金、アントラサイクリン、抗生物質、代謝拮抗剤、アスパラギナーゼ、BCG生菌(膀胱内)、リン酸ベタメタゾンナトリウムおよび酢酸ベタメタゾン、ビカルタミド、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、ロイコボリンカルシウム、カリケアミシン、カペシタビン、カルボプラチン、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BSNU)、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、コルチシン、結合型エストロゲン、シクロホスファミド、シクロトスファミド(Cyclothosphamide)、シタラビン、シタラビン、サイトカラシンB、シトキサン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダクチノマイシン(以前は、アクチノマイシン)、ダウノルビシンHCL、クエン酸ダウノルビシン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン(dihydroxy anthracin dione)、ドセタキセル、ドラセトロンメシル酸塩、ドキソルビシンHCL、ドロナビノール、大腸菌L-アスパラギナーゼ、エメチン、エポエチン-α、エルウィニア L-アスパラギナーゼ、エステル化エストロゲン、エストラジオール、リン酸エストラムスチンナトリウム、臭化エチジウム、エチニルエストラジオール、エチドロネート、エトポシドシトロボラム因子、リン酸エトポシド、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルコナゾール、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルタミド、フォリン酸、ゲムシタビンHCL、グルココルチコイド、酢酸ゴセレリン、グラミシジンD、グラニセトロンHCL、ヒドロキシウレア、イダルビシンHCL、イホスファミド、インターフェロンα-2b、イリノテカンHCL、レトロゾール、ロイコボリンカルシウム、酢酸ロイプロリド、レバミソールHCL、リドカイン、ロムスチン、マイタンシノイド、メクロレタミンHCL、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファランHCL、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、メチルテストステロン、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、酢酸オクトレオチド、オンダンセトロンHCL、パクリタキセル、パミドロン酸二ナトリウム、ペントスタチン、ピロカルピンHCL、プリマイシン、カルムスチンインプラントとのポリフェプロザン20(polifeprosan 20 with carmustine implant)、ポルフィマーナトリウム、プロカイン、プロカルバジンHCL、プロプラノロール、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾトシン、タモキシフェン、タキソール、テニポシド、テノポシド(tenoposide)、テストラクトン、テトラカイン、チオエパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、チオグアニン、チオテパ、トポテカンHCL、クエン酸トレミフェン、トラスツズマブ、トレチノイン、バルルビシン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、および酒石酸ビノレルビンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0085】
本開示のさらに他の側面において、第2の治療剤は、本開示のTNF-αアンタゴニストまたは抗TNF-α抗体である。そのようなTNF-αアンタゴニストの例には、可溶性TNF-α受容体;エタネルセプト(ENBREL(登録商標);Immunex)またはその断片、誘導体、または類似体;インフリキシマブ(REMICADE(登録商標);Centacor)またはその誘導体、類似体、または抗原結合断片;インターフェロン-γ活性化マクロファージによってTNF-α産生を遮断することが知られているIL-10、TNFR-IgG;マウス産物TBP-1;ワクチンCytoTAb(Protherics);アンチセンス分子104838(ISIS);ペプチドRDP-58(SangStat);サリドマイド(Celgene);CDC-801(Celgene);DPC-333(Dupont);VX-745(Vertex);AGIX-4207(AtheroGenics);ITF-2357(Italfarmaco);NPI-13021-31(Nereus);SCIO-469(Scios);TACEターゲッター(targeter)(Immunix/AHP);CLX-120500(Calyx);チアゾロピリム(Thiazolopyrim)(Dynavax);オーラノフィン(Ridaura)(SmithKline Beecham Pharmaceuticals);キナクリン(メパクリンジクロロヒドレート(mepacrine dichlorohydrate));テニダップ(Enablex);メラニン(Large Scale Biological);およびUriach社製の抗p38 MAPK剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0086】
追加として、第2の治療剤は、免疫系を刺激することを意図されている特定の乳酸菌の微粒子細胞壁断片でできていてもよい(例えば、Del-Immune V(登録商標)、Pure Research Products, LLC, Colorado, USA)。
【0087】
別の態様において、本発明の組成物は、トローチ、チューインガム、咀嚼錠、および溶解錠、例えば、低速溶解錠、急速溶解錠、または徐放性錠剤もしくは他の適切な徐放性製剤からなる群から選択される剤形をもつ。好ましくは、組成物は、トローチまたは溶解錠である。
【0088】
好ましい態様において、本開示の活性物質は、対象の口腔粘膜を通して送達され、口腔粘膜が、舌下粘膜、頬側粘膜、およびそれらの組合せからなる群から選択される。好ましくは、組成物は、舌下に投与され、その結果、活性成分が舌下粘膜を通して送達される。
【0089】
別の態様において、担体は、典型的には、固体、半固体、または液体、例えば、結合剤、ガムベース、またはそれらの組合せである。本発明の組成物に使用する適切な結合剤には、非限定的に、糖アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、およびキシリトール;糖、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、グルコース、および粉糖;他の物質、例えば、イノシトール、糖蜜、マルトデキストリン、デンプン、セルロース、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、アカシアゴム、グアーガム、トラガカントゴム、アルギネート、アイリッシュモス抽出物、パンワールゴム(panwar gum)、ガッチゴム、イサポール殻(isapol husks)の粘液、VEEGUM(登録商標)、カラマツアラボガラクタン(larch arabogalactan)、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸(例えば、カーボポール)、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、およびそれらの組合せが挙げられる。本発明の組成物に使用する適切なガムベースには、例えば、当技術分野において知られた多くの水に溶けない、および唾液に溶けないガムベース材料の中から選択される材料が挙げられる。場合によっては、ガムベースは、少なくとも1つの疎水性ポリマーおよび少なくとも1つの親水性ポリマーを含む。ガムベースについての適切な疎水性および親水性ポリマーの非限定的な例には、天然ポリマーと合成ポリマーの両方、例えば、エラストマー、ゴム、およびそれらの組合せが挙げられる。適切な天然ポリマーの例には、非限定的に、植物起源の物質、例えば、チクル、ジェルトン、ガッタパーチャ、クラウンガム、およびそれらの組合せが挙げられる。適切な合成ポリマーの例には、エラストマー、例えば、ブタジエン-スチレンコポリマー、イソブチレンとイソプレンのコポリマー(例えば、「ブチルゴム」)、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリビニルエステル(例えば、酢酸ポリビニルおよびポリ酢酸ビニルフタレート)、およびそれらの組合せが挙げられる。他の例において、ガムベースは、ブチルゴム(すなわち、イソブチレンとイソプレンのコポリマー)とポリイソブチレンと、任意で、(例えば、およそ12,000の分子量を有する)ポリ酢酸ビニルとの混合物を含む。
【0090】
さらに別の態様において、本発明の組成物は、甘味剤、香味剤、保護剤、可塑剤、ワックス、エラストマー系溶媒、フィラー材料、保存剤、またはそれらの組合せをさらに含むことができる。まださらに別の態様において、本発明の組成物は、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、懸濁化剤、着色剤、崩壊剤、またはそれらの組合せをさらに含むことができる。好ましい態様において、ここに記載された組成物における薬物の平均粒子サイズは、約75ミクロンから約100ミクロンまでの典型的な平均薬物粒子サイズと比較して、約20ミクロンである。別の好ましい態様において、ここに記載された組成物における薬物の平均粒子サイズは、担体成分(例えば、ガムベース、結合剤など)の平均粒子サイズ以下である。
【0091】
本開示の1つの側面において、治療用組成物は、任意に、処置されることになっている対象の口腔における唾液の開始時pHに関係なく、唾液のpHを、約8.0から約11までのpHへ上げるための緩衝系を含んでもよい。本発明に使用する適切な治療剤は上に記載されている。本発明の緩衝系に使用する適切な炭酸塩および重炭酸塩もまた上に記載されている。場合によっては、組成物は、非生物学的治療剤、例えば、NSAIDをさらに含む。
【0092】
適切なクエン酸塩、リン酸塩、およびホウ酸塩には、非限定的に、当技術分野において知られた、クエン酸、リン酸、またはホウ酸の任意の塩が挙げられる。例えば、いくつかの態様において、クエン酸塩は、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、およびクエン酸アンモニウムからなる群から選択される。他の態様において、リン酸塩は、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸カリウム、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、一塩基性リン酸マグネシウム、二塩基性リン酸マグネシウム、一塩基性リン酸アンモニウム、および二塩基性リン酸アンモニウムからなる群から選択される。さらに他の態様において、ホウ酸塩は、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、およびホウ酸アンモニウムからなる群から選択される。場合によっては、緩衝系は、炭酸塩、重炭酸塩、および/またはクエン酸塩を含む。ある特定の他の場合では、緩衝系は、炭酸塩、重炭酸塩、および/またはリン酸塩を含む。さらなる場合において、緩衝系は、炭酸塩、重炭酸塩、および/またはホウ酸塩を含む。
【0093】
炭酸塩、重炭酸塩、および/または金属酸化物を含む緩衝系に加えて、他の緩衝系は、本発明の組成物に使用するのに適している。例えば、代替の態様において、三成分緩衝系は、炭酸塩と、重炭酸塩と、クエン酸塩、リン酸塩、またはホウ酸塩とを含む。別の代替の態様において、緩衝系は、炭酸塩または重炭酸塩と、金属酸化物、クエン酸塩、リン酸塩、およびホウ酸塩からなる群から選択される2種以上の緩衝剤とを含む。さらに別の代替の態様において、緩衝系は、炭酸塩または重炭酸塩と、金属酸化物とを含む二成分緩衝系である。なおさらに別の代替の態様において、緩衝系は、炭酸塩または重炭酸塩と、クエン酸塩、リン酸塩、またはホウ酸塩とを含む二成分緩衝系である。さらなる代替の態様において、緩衝系は、金属酸化物と、クエン酸塩、リン酸塩、またはホウ酸塩とを含む二成分緩衝系である。なおさらに別の代替の態様において、緩衝系は、炭酸塩と重炭酸塩、好ましくは炭酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムを含む二成分緩衝系である。
【0094】
B.徐放性添加剤
本発明の治療用組成物はまた、徐放性添加剤を含んでもよい。治療用組成物における徐放性添加剤の存在は、対象の粘膜への送達後の初期の最初の1~2分間中に治療用組成物から放出される生物学的活性物質の「初期バースト」を実質的に低下させる。ここで使用される場合、用語「実質的に低下させる」は、その添加剤なしの組成物と比較して、治療用組成物から放出される生物学的活性物質の少なくとも15%の減少を意味する。好ましくは、徐放性添加剤は、ポリマー組成物から放出される生物学的活性物質の初期バーストを、徐放性添加剤を含まない治療用組成物と比較して、約15%~約70%、より好ましくは約30%~約60%、低下させる。
【0095】
本開示によれば、徐放性添加剤は、任意の適切な徐放性添加剤であり、好ましくは、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLG)部分およびポリエチレングリコール(PEG)部分を有する熱可塑性ポリマーである。好ましくは、徐放性添加剤は、約50モル%から約90モル%までのラクチドモノマーおよび約50モル%~約10モル%のグリコリドモノマーを含むPLG/PEGブロックコポリマーである。より好ましくは、PLG/PEGブロックコポリマーは、約50モル%から約75モル%までのラクチドモノマーおよび約50モル%~約25モル%のグリコリドモノマーを含む。好ましくは、PEG部分は、約1,000ダルトン~約10,000ダルトン、より好ましくは約5000ダルトンの分子量を有する。ブロックコポリマーのPEG部分は、ブロックコポリマーの総重量の約1重量%から約20重量%までの範囲である。そのパーセンテージは、調製されるブロックコポリマーの分子量、および使用されるポリエチレングリコールの分子量に依存する。したがって、5,000ダルトンの分子量を有するPEGで調製された100,000ダルトンの平均分子量をもつブロックコポリマー(I.V.およそ0.8dL/g)は、約5重量%PEGを含有する。1,000ダルトンの分子量をもつPEGが使用される場合には、ブロックコポリマーは、約1重量%のPEGを含む。
【0096】
徐放性添加剤の内部粘度(「I.V.」と略される;単位はデシリットル/グラムである)は、それの分子量の測定値である。好ましくは、本開示の組成物と共に使用するのに適した徐放性添加剤の内部粘度は、(クロロホルム中で測定された場合)約0.50dL/gから約1.0dL/gまで、より好ましくは、約0.70dL/gから約0.90dL/gまでである。
【0097】
適切なポリマー徐放性添加剤には、前に言及された属性をもつ任意のPLG/PEGブロックコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。適切なポリマー徐放性添加剤の例には、非限定的に、50/50 PLG/PEG-5000(0.81);70/30 PLG/PEG-5000(0.73);および70/30 PLG/PEG-5000(0.79)が挙げられる。
【0098】
製剤中に含まれる場合の徐放性添加剤は、粘膜への送達後から最初の2分間中に治療用組成物から放出される生物学的活性物質の初期バーストを低下させるのに有効な量で、治療用組成物中に存在してもよい。好ましくは、治療用組成物は、約1重量%~約50重量%、より好ましくは約2重量%~約20重量%の徐放性添加剤を含む。
【0099】
C.剤形
本発明の治療用組成物は、固体、半固体、凍結乾燥粉末、または液体剤形、例えば錠剤(例えば咀嚼錠、低速溶解錠、急速溶解錠)、丸剤、カプセル剤、トローチ、キャンディ、ガム、散剤、溶液剤、懸濁剤、エマルジョン、エアロゾル、または同種のものなどの形態をとっていてもよい。好ましくは、剤形は、チューインガム、急速溶解錠、キャンディ、またはトローチである。本開示のさらなる側面によれば、本組成物は、栄養補助食品、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、または他の経口送達製剤の形態である。
【0100】
対象または患者それぞれにここで説明される治療剤の吸収の速度と程度に影響を与え得る固有の要因があるが、剤形、例えばチューインガム、キャンディ、急速溶解錠、またはトローチが、従来の経口投与用剤形に勝る利益をもたらす。例えば、これらの剤形はいずれも、肝臓の初回通過代謝、胃腸管内での分解、および吸収の際の薬物の損失を回避する。結果的に、用量1回分に必要な活性治療剤の量は、例えば経口投与用丸剤または錠剤に製剤化した場合に必要な量よりも少なくなる。同様に、これらの剤形のそれぞれによれば治療剤の生物学的利用率が増加するため、治療活性が始まるまでの時間が短くなる。
【0101】
ここで使用される場合、用語「剤形」は、ヒト対象および他の哺乳類のための一体化された投薬形態として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、1種以上の適切な医薬賦形剤、例えば担体と共に所望の作用発現、忍容性、および治療効果がもたらされるように計算された予め決められた量の治療剤を含有する。このような剤形の調製方法は公知であるか、または当業者には明らかである。例えば、いくつかの態様において、本発明のチューインガム剤形は、当業界において標準的な手法に従って調製できる。他の態様において、本発明の錠剤、トローチまたはキャンディの剤形(例えばサッカー(sucker))は、例えばRemington's ”The Science and Practice of Pharmacy、第20版”[Lippincott, Williams & Wilkins (2003);および”Pharmaceutical Dosage Forms, Volume 1: Tablets,”第2版、Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y. (1989)]に記載の手法に従って調製できる。投与しようとする剤形は、いずれの場合においても、本発明の教示に従って投与される場合、処置される状態を軽減するための治療的有効量で活性治療剤の量を含有する。
【0102】
ここで使用される場合、用語「担体」は、典型的には、薬物、例えば治療剤の希釈剤または媒体として使用される不活性物質を指す。またこの用語は、組成物に粘着性を付与する典型的に不活性物質も包含する。本発明の組成物で使用するのに適切な担体としては、これらに限定されないが、固体、半固体、または液体、例えば結合剤またはガムベースが挙げられる。結合剤の非限定的な例としては、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルトデキストリン、ラクトース、デキストロース、スクロース、グルコース、イノシトール、粉糖、糖蜜、デンプン、セルロース、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、アカシアゴム、グアーガム、トラガカントゴム、アルギネート、アイリッシュモス抽出物、パンワールゴム、ガッチゴム、イサポール殻の粘液、VEEGUM(登録商標)、カラマツアラボガラクタン、ゼラチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸(例えば、カーボポール)、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、カオリン、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、およびそれらの組合せが挙げられる。これらの結合剤を、当技術分野において知られた方法で、例えば凍結乾燥[例えば”Fundamentals of Freeze-Drying” Pharm. Biotechnol., Vol. 14, pp. 281-360 (2002);”Lyophililization of Unit Dose Pharmaceutical Dosage Forms” Drug. Dev. Ind. Pharm., Vol. 29, pp. 595-602 (2003)を参照];固溶体調製;ならびに潤滑剤のダスティング(lubricant dusting)および適切な滑沢剤を用いた湿式造粒調製(例えば、上記Remington: The Science and Practice of Pharmacyを参照)で前処理して、それらの流動性および味を改善してもよい。例えばSPI Pharma Group(New Castle, Delaware)販売のMANNOGEM(登録商標)およびSORBOGEM(登録商標)は、それぞれマンニトールおよびソルビトールの凍結乾燥
した加工形態である。典型的には、製剤中に結合剤が含まれる場合、本発明の組成物は、重量で約15%から約90%まで、好ましくは約35%から約80%までの結合剤を含む。しかしながら、当業者は、結合剤をまったく用いずに本発明の組成物を作製して、例えば高度に砕けやすい剤形を生産できることを理解されよう。
【0103】
ガムベースの非限定的な例としては、当技術分野において知られた多くの水不溶性および唾液不溶性のガムベース材料から選択される材料が挙げられる。例えば、いくつかの場合、ガムベースは、少なくとも1つの疎水性ポリマーと少なくとも1つの親水性ポリマーとを含む。ガムベースのための適切な疎水性および親水性ポリマーの非限定的な例としては、天然および合成ポリマーの両方、例えばエラストマー、ゴム、およびそれらの組合せが挙げられる。適切な天然ポリマーの例としては、これらに限定されないが、植物起源の物質、例えばチクル、ジェルトン、ガッタパーチャ、クラウンガム、およびそれらの組合せが挙げられる。適切な合成ポリマーの例としては、エラストマー、例えばブタジエン-スチレンコポリマー、イソブチレンとイソプレンのコポリマー(例えば「ブチルゴム」)、ポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリビニルエステル(例えばポリ酢酸ビニルおよびポリ酢酸ビニルフタレート)、およびそれらの組合せが挙げられる。他の例において、ガムベースは、ブチルゴム(すなわちイソブチレンとイソプレンのコポリマー)、ポリイソブチレンと、任意で(例えばおよそ12,000の分子量を有する)ポリ酢酸ビニルとの混合物を含む。典型的には、ガムベースは、重量で約25%から約75%まで、好ましくは約30%から約60%までのこれらのポリマーを含む。
【0104】
本発明の組成物は、滑沢剤;湿潤剤;乳化剤;可溶化剤;懸濁化剤;保存剤、例えばヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、およびヒドロキシ安息香酸プロピル、ブチルヒドロキシトルエン、ならびにブチルヒドロキシアニソール;甘味剤;香味剤;着色剤;脂質、例えばビタミンEまたはオメガ脂肪酸;ならびに崩壊剤(すなわち溶解剤)、例えばクロスポビドン、加えてクロスカルメロースナトリウムおよび他の架橋セルロースポリマーを追加で含むことができる。
【0105】
滑沢剤を使用して、ダイおよびパンチの表面への剤形の接着を防ぎ、粒子間の摩擦を低減することができる。また滑沢剤は、ダイの空洞からの剤形の放出も容易にし、加工中の顆粒化流の速度を改善し得る。適切な滑沢剤の例としては、これらに限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シメチコン、二酸化ケイ素、タルク、硬化植物油、ポリエチレングリコール、鉱油、およびそれらの組合せが挙げられる。本発明の組成物は、重量で約0%から約10%まで、好ましくは約1%から約5%までの滑沢剤を含んでいてもよい。
【0106】
甘味剤を使用して、組成物が有する可能性があるあらゆる不快な味をマスキングすることによって組成物の嗜好性を改善できる。適切な甘味剤の例としては、これらに限定されないが、糖類の群、例えば単糖、二糖、三糖、多糖、およびオリゴ糖;糖、例えばスクロース、グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、マルトデキストリン、およびポリデキストロース;サッカリンおよびその塩、例えばナトリウム塩およびカルシウム塩;シクラミン酸およびその塩;ジペプチド甘味料;塩素化した糖誘導体、例えばスクラロースおよびジヒドロカルコン;糖アルコール、例えばソルビトール、ソルビトールシロップ、マンニトール、キシリトール、ヘキサレソルシノールなど、およびそれらの組合せから選択される化合物が挙げられる。水素化デンプンの加水分解物、ならびに3,6-ジヒドロ-6-メチル-1-1,2,3-オキサチアジン-4-オン-2,2-ジオキシドのカリウム、カルシウム、およびナトリウム塩も使用が可能である。前述のもののなかでも、ソルビトール、マンニトール、およびキシリトールが、単独または組合せのいずれかで、好ましい甘味剤である。本発明の組成物は、重量で約0%から約80%まで、好ましくは約5%から約75%まで、より好ましくは約25%から約50%までの甘味剤を含んでいてもよい。
【0107】
また香味剤を使用しても、組成物の嗜好性を改善できる。適切な香味剤の例としては、これらに限定されないが、天然および/または合成(すなわち人工)化合物、例えばペパーミント、スペアミント、ウインターグリーン、桂皮、メントール、サクランボ、イチゴ、スイカ、ブドウ、バナナ、モモ、パイナップル、アンズ、洋ナシ、ラズベリー、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、プラム、リンゴ、フルーツパンチ、パッションフルーツ、チョコレート(例えばホワイト、ミルク、ダーク)、バニラ、キャラメル、コーヒー、ヘーゼルナッツ、それらの組合せなどが挙げられる。着色剤を使用して、例えばそこに含まれる治療剤のタイプおよび投薬量を表示するために組成物を色コードで分類することができる。適切な着色剤としては、これらに限定されないが、天然および/または人工化合物、例えばFD&C着色剤、天然果汁濃縮物、色素、例えば酸化チタン、二酸化ケイ素、および酸化亜鉛、それらの組合せなどが挙げられる。本発明の組成物は、重量で約0%から約10%まで、好ましくは約0.1%から約5%まで、より好ましくは約2%ら約3%までの香味剤および/または着色剤を含んでいてもよい。
【0108】
1.チューインガム
剤形がチューインガムである場合、本発明の組成物は、グラム陽性細菌に由来した活性治療剤またはその薬学的に許容される塩、促進剤、担体、例えばガムベース、二成分または三成分の緩衝系を含み、任意に保護剤を含んでいてもよい。チューインガム組成物は、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、甘味剤、香味剤、および着色剤をさらに含んでいてもよい。典型的には、チューインガム組成物は、重量で約0.001%から約10.0%まで、より典型的には約0.01%から約5.0%まで、さらにより典型的には約0.1%から約3.0%までの活性治療剤(どのような形態が選ばれたとしても、その遊離塩基の形態として測定される)を含む。当業者は、前述のパーセンテージは、利用されたグラム陽性ベースの活性治療剤の特定の供給源、最終的な製剤で望まれる活性治療剤の量、加えて所望の活性治療剤の特定の放出速度に応じて変更されることを理解する。チューインガム組成物の任意の緩衝系は、少なくとも約8.0を超える、好ましくは少なくとも約9.5を超える、より好ましくは約9.9から約11までの範囲の最終的な唾液のpHをもたらすことができる。チューインガム組成物は、典型的には、重量で約20%から約95%までのガムベース、より典型的には約30%から約85%まで、最も典型的には約50%から約70%までのガムベースを含む。
【0109】
チューインガム組成物は、保護剤をさらに含んでいてもよい。保護剤は、治療剤の少なくとも一部を、典型的にはこれら2つの作用物質が混合されるときにコーティングする。保護剤と活性治療剤とは、重量で約0.1から約100までの比率で、好ましくは約1から約50までの比率で、より好ましくは約1から約10までの比率で混合されていてもよい。いかなる特定の理論にも縛られることはないが、治療剤がより容易にガムベースから放出できるように、保護剤は治療剤とガムベースとの間の接着を小さくする。この方式で、治療剤は、咀嚼の約5~約20分以内に、好ましくは咀嚼の約10分以内に口腔の粘膜を通して送達され得る。多種多様の保護剤を使用できる。適切な保護剤の例としては、これらに限定されないが、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、硬化ヒマシ油、I型硬化植物油、軽油、ラウリル硫酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ポロキサマー、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、カボシル(cab-o-sil)、タルク、ステアリン酸亜鉛、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0110】
ガムベースは、可塑剤、例えば柔軟剤または乳化剤を追加で含んでいてもよい。このような可塑剤は、例えばガムベースの粘度を所望の粘稠度まで下げるのに役立ち、その全体的な質感と噛み応えを改善することができる。また可塑剤は、咀嚼時に治療剤の放出を容易にすることもできる。可塑剤の非限定的な例としては、レシチン、モノおよびジグリセリド、ラノリン、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、トリ酢酸グリセロール、モノステアリン酸グリセロール、グリセリン、およびそれらの組合せが挙げられる。ガムベースは、典型的には、重量で約0%から約20%まで、より典型的には約5%から約15%までの可塑剤を含む。
【0111】
ガムベースは、ワックス、例えば蜜蝋およびミクロクリスタリンワックス、脂肪または油、例えばダイズ油および綿実油、ならびにそれらの組合せをさらに含んでいてもよい。典型的には、ガムベースは、重量で約0%から約25%までのこれらのワックスおよび油を含み、より典型的には約15%から約20%までのこれらのワックスおよび油を含む。
【0112】
加えて、ガムベースは、1種以上のエラストマー系溶媒、例えばロジンおよび樹脂をさらに含んでいてもよい。このような溶媒の非限定的な例としては、ロジンのメチル、グリセロール、およびペンタエリスリトールエステル、変性ロジン、例えば水素化、二量体化もしくは重合ロジン、またはそれらの組合せ(例えば部分的に水素化されたウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、ウッドロジンのペンタエリスリトールエステル、ウッドロジンのグリセロールエステル、部分的に二量体化されたロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、トール油ロジンのグリセロールエステル、ウッドロジンおよび部分的に水素化されたウッドロジンのグリセロールエステル、ならびにロジンの部分的に水素化されたメチルエステル、例えばα-ピネンまたはβ-ピネンのポリマー、ポリテルペンなどのテルペン樹脂、ならびにそれらの組合せ)が挙げられる。典型的には、ガムベースは、重量で約0%から約75%まで、より典型的には約10%未満のエラストマー系溶媒を含む。
【0113】
ガムベースは、最終的なチューインガム組成物の咀嚼性を増強するためにフィラー材料をさらに含んでいてもよい。最終的なチューインガム製剤の他の構成要素と実質的に反応性を有さないフィラーが好ましい。適切なフィラーの例としては、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム(すなわちタルク)、リン酸二カルシウム、金属性無機塩(例えばアルミナ、水酸化アルミニウム、およびケイ酸アルミニウム)、およびそれらの組合せが挙げられる。典型的には、ガムベースは、重量で約0%から約30%まで、より典型的には約10%から約20%までのフィラーを含む。
【0114】
当業者は、ガムベースをその個々の構成要素から調製する必要がないことを理解する。例えば所望の成分を含有するガムベースを購入してもよいし、追加の作用物質が含まれるように改変してもよい。いくつかの製造元が、説明されたチューインガム組成物との使用に適切なガムベースを生産している。このようなガムベースの例としては、これらに限定されないが、PHARMGUM(商標)M、SまたはC(SPI Pharma Group;New Castle, Del.)が挙げられる。一般的に、PHARMAGUM(商標)は、ガムベース、甘味剤、可塑剤、および糖の混合物を含む。
【0115】
場合によっては、チューインガム組成物は、治療剤のセンターフィル(centerfill)を含む。センターフィルは、治療剤の即時放出が好ましい場合に特に適切な場合がある。加えて、センターフィル中に活性治療剤を封入することにより、治療剤が有する可能性があるあらゆる望ましくない味のマスキングを促進してもよい。これらの例において、ガムベースは、センターフィルを少なくとも部分的に取り囲む。センターフィルは、少なくとも1種の治療剤を含み、液体または半流動体の材料であってもよい。センターフィル材料は、合成ポリマー、半合成ポリマー、低脂肪または無脂肪であってもよく、1種以上の甘味剤、香味剤、着色剤、および/または着香剤を含有していてもよい。好ましくは、センターフィルは、緩衝系、例えばここで説明されるように二成分または三成分の緩衝系を含む。センターフィルを有するチューインガムの調製方法は例えば米国特許第3,806,290号で説明されており、これは、関連する部分において参照により本明細書に組み入れられる。
【0116】
チューインガム組成物は、任意の所望の形状、サイズ、および質感を有していてもよい。例えば本組成物は、スティック、タブ、ガムボールなどの形状を有していてもよい。同様にチューインガムは、任意の所望の色を有していてもよい。例えばチューインガムは、赤色、青色、緑色、オレンジ色、黄色、紫色、藍色、およびそれらの混合の任意の色調を有していてもよく、そこに含まれる治療剤のタイプおよび投薬量を表示するために色コードで分類することもできる。チューインガムは、個別にラッピングしてもよいし、または当技術分野においてよく知られた方法で包装するために個々に分かれた状態で一まとめになっていてもよい。
【0117】
2.錠剤
剤形が錠剤、例えば溶解錠(すなわち崩壊性錠剤)または咀嚼錠である場合、本発明の組成物は、ここで説明されるような1種類以上のグラム陽性細菌に由来した治療剤、またはその薬学的に許容される塩、天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド、例えばCpG ODNモチーフもしくは等価体、任意の促進剤、担体、例えば結合剤、および緩衝系、例えば二成分または三成分の緩衝系などを含む。錠剤組成物は、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、甘味剤、香味剤、着色剤、および崩壊剤をさらに含んでいてもよい。典型的には、本発明の錠剤組成物は、重量で約0.001%から約10.0%まで、より典型的には約1.0%から約5.0%までの活性治療剤(どのような形態が選ばれたとしても、その遊離塩基の形態として測定される)を含む。当業者は、前述のパーセンテージは、利用される活性治療剤の特定の供給源、最終的な製剤で望まれる活性治療剤の量、加えて所望の活性治療剤の特定の放出速度に応じて変更されることを理解する。錠剤組成物の緩衝系は、少なくとも約8.0を超える、好ましくは少なくとも約9.5を超える、より好ましくは約pH9.9から約pH11までの範囲の最終的な唾液のpHをもたらす。
【0118】
ある特定の態様において、錠剤は、溶解錠、例えば咀嚼を必要とせずとも対象の唾液で溶解する低速溶解錠または急速溶解錠である。例えば対象の舌の上に置かれた溶解錠は、治療剤の口腔内送達に使用できる。あるいは、対象の舌下に置かれた溶解錠は、治療剤の舌下送達に使用できる。小さい子供や高齢の個体はある種のものを咀嚼するのが難しい場合がしばしばあることから、このタイプの剤形は小児および老齢の患者に特に望ましい場合がある。溶解錠は、典型的には投与後約1~約15分以内、好ましくは約2~約10分以内、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9、または10分以内に溶解するように製剤化される。当業者は、急速溶解錠は低速溶解錠より速く溶解し、典型的には、低速溶解錠は、対象の唾液で迅速にというよりも徐々に溶解することを理解する。好ましい態様において、低速溶解錠または急速溶解錠は、約1分より長い期間にわたり舌下粘膜を通して治療剤を送達する。
【0119】
ある特定の他の態様において、錠剤は、対象によって咀嚼される咀嚼錠であり、迅速にまたは徐々にのいずれかで溶解するように製剤化される。例えば対象の舌の上に置かれた咀嚼錠は、治療剤の口腔内送達に使用できる。咀嚼中、咀嚼錠は口内中を移動でき、時には歯肉と頬との間または舌下に留まることもある。結果として、咀嚼錠内に含有される治療剤の少なくとも一部を、舌下でも(すなわち舌下粘膜を通して)送達することもできる。典型的には、咀嚼錠は、投与後約1~約15分以内、好ましくは約2~約10分以内、1分以上、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9、または10分以内に溶解するように製剤化される。
【0120】
上記で説明したように、本発明の溶解錠および咀嚼錠は、典型的には、投与後約1~15分以内、好ましくは約1分以上で溶解するように製剤化される。しかしながら、これらの時間枠は、口腔粘膜(例えば舌下および/または頬側粘膜)への治療剤の最大曝露には適しているが、使用者の服薬順守にも適しているとは限らない(例えば使用者が嚥下しすぎるために、最大の経粘膜吸収を妨げる可能性がある)。結果として、場合によっては、患者の服薬順守と口腔粘膜への治療剤の最大曝露時間とのバランスをとることが望ましい場合がある。これは、例えば緩衝系または治療剤の単位用量あたりの濃度または量を減少させることなく錠剤のサイズを小さくすること(例えば約700~800mgから約200~300mgまでに)によって達成できる。加えて、錠剤の配合へのわずかな変化、例えばある香味剤を別のものに(例えばチョコレートをスペアミントに)置きかえること、またはある結合剤もしくは甘味剤を別のものに(例えばラクトースをマンニトールまたはソルビトールに)置きかえることを使用して唾液分泌を低下させてもよい。
【0121】
本発明の錠剤に存在する担体は、典型的には錠剤を半固体状態に維持するのに有用な結合剤であり、固体または液体であってもよく、例えば高融点の脂肪またはろう質の材料であってもよい。結合剤として適切な材料は上記で詳細に論じられており、本発明の錠剤組成物において単独で、または組み合わせて使用してもよい。加えて、結合剤、例えばマンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、およびイノシトールは、錠剤に、その口内での崩壊を許容または増強する特性を付与できる。
【0122】
錠剤組成物は、保護剤をさらに含んでいてもよい。保護剤は、治療剤の少なくとも一部を、典型的にはこれら2つの作用物質が混合されるときにコーティングする。保護剤は、治療剤と、重量で約0.1から約100までの比率で、好ましくは約1から約50までの比率で、より好ましくは約1から約10までの比率で混合されていてもよい。いかなる特定の理論に縛られることはないが、治療剤がより容易に結合剤から放出できるように、保護剤は治療剤と結合剤と間の接着を小さくする。この方式で、治療剤は、約5~約20分以内に、好ましくは約10分以内に口腔の粘膜を通して送達され得る。保護剤として適切な材料は上記で詳細に論じられており、本発明の錠剤組成物において単独で、または組み合わせて使用してもよい。
【0123】
また錠剤組成物は、1種以上のエラストマー系溶媒、例えばロジンおよび樹脂を含んでいてもよい。このような溶媒の非限定的な例は上記で詳細に論じられており、本発明の錠剤組成物において単独で、または組み合わせて使用してもよい。加えて錠剤組成物は、ワックス、例えば蜜蝋およびミクロクリスタリンワックス、脂肪または油、例えばダイズ油および綿実油、ならびにそれらの組合せをさらに含んでいてもよい。さらに錠剤組成物は、可塑剤、例えば柔軟剤または乳化剤を追加で含んでいてもよい。このような可塑剤は、例えば溶解した錠剤の唾液溶液の粘度を所望の粘稠度まで下げるのに役立ち、その全体的な質感および噛み応えを改善し、治療剤の放出を容易にするのに役立ち得る。このような可塑剤の非限定的な例は上記で詳細に論じられており、本発明の錠剤組成物において単独で、または組み合わせて使用してもよい。
【0124】
場合によっては、錠剤組成物は、治療剤のセンターフィルを含む。センターフィルは、治療剤の即時放出が好ましい場合に特に適切な場合がある。加えて、センターフィル中に活性治療剤を封入することにより、治療剤が有する可能性があるあらゆる望ましくない味のマスキングを促進してもよい。これらの例において、結合剤は、センターフィルを少なくとも部分的に取り囲む。センターフィルは、本開示に係る少なくとも1種の治療剤を含み、液体または半流動体の材料であってもよい。センターフィル材料は、低脂肪または無脂肪であってもよく、1種以上の甘味剤、香味剤、着色剤、および/または着香剤を含有していてもよい。好ましくは、センターフィルは、ここで説明されるような二成分または三成分の緩衝系を含む。
【0125】
ある特定の他の例において、本発明の錠剤組成物は、多層である。この方式で、溶解錠または咀嚼錠は、第1のグラム陽性細菌に由来した1種より多くの治療剤、例えば2種以上の活性治療剤、または1種以上の活性治療剤が、第2のグラム陽性細菌に由来した1種以上の活性治療剤と組み合わされて提供されるように設計できる。例えば二層状の錠剤の場合、第1の層は、第1のグラム陽性細菌に由来した第1の活性治療剤を含有し、第2の層は、同じまたは異なるグラム陽性細菌に由来した同じまたは異なる活性治療剤を含有する。典型的には、第1の層は錠剤の溶解または咀嚼可能な部分を含み、第2の(すなわちそれに続く)層は第1の層でコーティングされる。このタイプの製剤は、活性治療剤の即時放出、それに続く第2の治療剤の胃腸での吸収が望ましい場合に特に適切な場合がある。例えば共存症の症状を軽減するために、または錠剤の溶解または咀嚼可能な部分における活性治療剤の治療的有用性を維持するために、第2の治療剤が胃腸で吸収されることが望ましい場合がある。あるいは、第2の層は、第1の層の外側の層として存在する。第2の層は、典型的には、少なくとも1種の治療剤を含み、さらに上記で説明したような1種以上の甘味剤、香味剤、着色剤、および着香剤を含んでいてもよい。いくつかの場合、第2の層は、ここで説明されるような二成分または三成分の緩衝系などをさらに含む。
【0126】
さらに他の例において、活性治療剤の組合せは、追加の治療剤を含む場合もまたは含まない場合も、必ずしも多層錠剤の形態をとらなくてもよいが、その代わりに単一の均質な錠剤層を含む。このタイプの製剤は、少なくとも1種の治療剤が胃腸で吸収されることが望ましい場合でも使用が可能である。この場合において、2種以上の治療剤のイオン化の相対的な程度が、それらがどのように吸収されるかを決定する。例えば、イオン化されていない治療剤は口腔粘膜を介して吸収されるが、イオン化された治療剤は胃腸での吸収のために嚥下される。
【0127】
錠剤組成物は、任意の所望の形状、サイズ、および質感を有していてもよい。例えば錠剤は、スティック、タブ、ペレット、球体などの形状を有していてもよい。同様に錠剤は、任意の所望の色を有していてもよい。例えば錠剤は、赤色、青色、緑色、オレンジ色、黄色、紫色、藍色、およびそれらの混合の任意の色調を有していてもよく、そこに含まれる治療剤のタイプおよび投薬量を表示するために色コードで分類することもできる。錠剤は、個別にラッピングしてもよいし、または当技術分野においてよく知られた方法で包装するために個々に分かれた状態で一まとめになっていてもよい。
【0128】
3.トローチ
剤形がトローチまたはキャンディである場合、本発明の組成物は、グラム陽性細菌に由来した活性物質またはその薬学的に許容される塩、任意の促進剤、担体、例えば結合剤、および緩衝系、例えば二成分または三成分の緩衝系などを含む。トローチまたはキャンディ組成物は、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、甘味剤、香味剤、着色剤、および崩壊剤をさらに含んでいてもよい。トローチおよびキャンディの総括的な論考は、例えば”Pharmaceutical Dosage Forms, Volume 1: Tablets”[第2版、Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., pp 75-418 (1989)]に示されている。
【0129】
典型的には、本発明のトローチまたはキャンディ組成物は、重量で約0.001%から約10.0%まで、好ましくは約1.0%から約5.0%まで、より好ましくは約2.5%から約4.5%までの活性治療剤(どのような形態が選ばれたとしても、その遊離塩基の形態として測定される)を含む。当業者は、前述のパーセンテージは、利用される活性治療剤の特定の供給源、最終的な製剤で望まれる活性治療剤の量、加えて所望の活性治療剤の特定の放出速度に応じて変更されることを理解する。トローチまたはキャンディ組成物のための緩衝系は、含まれるかまたは必要な場合、単一化合物の緩衝系であってもよいが、典型的には、無定形酸化マグネシウムまたは同種のものを炭酸塩および/または重炭酸塩と共に含む二成分または三成分の緩衝系である。例えば例示的な三成分緩衝系は、典型的には、重量で約4.0%から約7.0%までの炭酸ナトリウム;重量で約8.0%から約12.0%までの乾燥剤でコーティングした炭酸水素ナトリウム;および重量で約20%から約30%までの無定形酸化マグネシウムを含む。緩衝系は、必要に応じて少なくとも約8.0を超える、好ましくは少なくとも約9.5を超える、より好ましくは約9.9から約11までの範囲の最終的な唾液のpHをもたらす。
【0130】
ある特定の態様において、トローチまたはキャンディは、咀嚼を必要とせずとも対象の唾液で溶解する。例えば対象の舌の上に置かれたトローチは、治療剤の口腔内送達に使用できる。あるいは、対象の舌下に置かれたトローチは、治療剤の舌下送達に使用できる。小さい子供や高齢の個体はある種のものを咀嚼するのが難しい場合がしばしばあることから、このタイプの剤形は小児および老齢の患者に特に望ましい場合がある。典型的には、トローチは、投与後約1~約15分以内、好ましくは約2~約10分以内、好ましくは約1分以上、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9、または10分以内に溶解するように製剤化される。好ましい態様において、トローチまたはキャンディは、1分より長い期間にわたり舌下粘膜を通して治療剤を送達する。
【0131】
上記で説明したように、本発明のトローチは、典型的には投与後約1~約15分以内、好ましくは約1分以上で溶解するように製剤化される。しかしながら、これらの時間枠は、口腔粘膜(例えば舌下および/または頬側粘膜)への治療剤の最大曝露には適しているが、使用者の服薬順守にも適しているとは限らない(例えば使用者が嚥下しすぎるために、最大の経粘膜吸収を妨げる可能性がある)。結果として、場合によっては、患者の服薬順守と口腔粘膜への治療剤の最大曝露時間とのバランスをとることが望ましい場合がある。これは、例えば緩衝系または治療剤の単位用量あたりの濃度または量を減少させることなくトローチのサイズを小さくすること(例えば約700~800mgから約200~300mgまでに)によって達成できる。加えて、トローチの配合へのわずかな変化、例えばある香味剤を別のものに(例えばチョコレートをスペアミントに)置きかえること、またはある結合剤もしくは甘味剤を別のものに(例えばラクトースをマンニトールまたはソルビトールに)置きかえることを使用して唾液分泌を低下させてもよい。
【0132】
本発明のトローチに存在する担体は、典型的にはトローチを半固体状態に維持するのに有用な結合剤であり、固体または液体であってもよく、例えば高融点の脂肪またはろう質の材料であってもよい。結合剤として適切な材料は上記で詳細に論じられており、本発明のトローチ組成物において単独で、または組み合わせて使用してもよい。加えて、結合剤、例えばマンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、およびイノシトールは、トローチに、その口内での崩壊を許容または増強する特性を付与できる。
【0133】
トローチ組成物は、保護剤をさらに含んでいてもよい。保護剤は、治療剤の少なくとも一部を、典型的にはこれら2つの作用物質が混合されるときにコーティングする。保護剤は、治療剤と、重量で約0.1から約100までの比率で、好ましくは約1から約50までの比率で、より好ましくは約1から約10までの比率で混合されていてもよい。いかなる特定の理論に縛られることはないが、治療剤がより容易に結合剤から放出できるように、保護剤は治療剤と結合剤と間の接着を小さくする。この方式で、治療剤は、約5~約20分以内に、好ましくは約10分以内に口腔の粘膜を通して送達され得る。保護剤として適切な材料は上記で詳細に論じられており、本発明のトローチ組成物において単独で、または組み合わせて使用してもよい。
【0134】
またトローチ組成物は、1種以上のエラストマー系溶媒、例えばロジンおよび樹脂を含んでいてもよい。このような溶媒の非限定的な例は上記で詳細に論じられており、本発明の錠剤組成物において単独で、または組み合わせて使用してもよい。加えてトローチ組成物は、ワックス、例えば蜜蝋およびミクロクリスタリンワックス、脂肪または油、例えばダイズ油および綿実油、ならびにそれらの組合せをさらに含んでいてもよい。さらにトローチ組成物は、可塑剤、例えば柔軟剤または乳化剤を追加で含んでいてもよい。このような可塑剤は、例えば溶解したトローチの唾液溶液の粘度を所望の粘稠度まで下げるのに役立ち、その全体的な質感および噛み応えを改善し、治療剤の放出を容易にするのに役立つ可能性がある。このような可塑剤の非限定的な例は上記で詳細に論じられており、本発明のトローチ組成物において単独で、または組み合わせて使用してもよい。
【0135】
場合によっては、トローチ組成物は、治療剤のセンターフィルを含む。センターフィルは、治療剤の即時放出が好ましい場合に特に適切な場合がある。加えて、センターフィル中に治療剤を封入することにより、治療剤が有する可能性があるあらゆる望ましくない味のマスキングを促進してもよい。これらの例において、結合剤は、センターフィルを少なくとも部分的に取り囲む。センターフィルは、少なくとも1種の治療剤を含み、液体または半液体材料であってもよい。センターフィル材料は、合成ポリマー、半合成ポリマー、低脂肪、または無脂肪であってもよく、1種以上の甘味剤、香味剤、着色剤、および/または着香剤を含有していてもよい。好ましくは、センターフィルは、ここで説明されるような二成分または三成分の緩衝系を含む。
【0136】
ある特定の他の例において、本発明のトローチ組成物は、多層である。この方式で、トローチは、第1のグラム陽性細菌に由来した1種より多くの治療剤、例えば2種以上の治療剤、または1種以上の治療剤が、第2のグラム陽性細菌に由来した1種以上の治療剤と組み合わされて提供されるように設計できる。例えば二層状のトローチの場合、第1の層は、ラクトバチルス(Lactobacillus)に由来した第1の治療剤を含有していてもよく、第2の層は、同じもしくは異なる治療剤、または同じもしくは第2のグラム陽性細菌に由来した治療剤、例えば天然に存在するCpG ODNもしくはそのモチーフを含有する。典型的には、第1の層はトローチの溶解性の部分を含み、第2の(すなわちそれに続く)層は第1の層でコーティングされる。このタイプの製剤は、治療剤の即時放出、それに続く第2の治療剤の胃腸での吸収が望ましい場合に特に適切な場合がある。例えば共存症の症状を軽減するために、またはトローチの溶解性の部分における一次治療剤の治療的有用性を維持するために、第2の治療剤が胃腸で吸収されることが望ましい場合がある。あるいは、第2の層は、第1の層の外側の層として存在する。第2の層は、典型的には、少なくとも1種の治療剤を含み、さらに上記で説明したような1種以上の甘味剤、香味剤、着色剤、および着香剤を含んでいてもよい。いくつかの場合、第2の層は、ここで説明されるような緩衝系をさらに含む。
【0137】
さらに他の例において、治療剤の組合せは、細菌由来ではない治療剤を含む場合もまたは含まない場合も、必ずしも多層トローチの形態をとらなくてもよいが、その代わりに単一の均質なトローチ層を含む。このタイプの製剤は、少なくとも1種の治療剤が胃腸で吸収されることが望ましい場合でも使用が可能である。この場合において、2種以上の治療剤のイオン化の相対的な程度が、それらがどのように吸収されるかを決定する。例えば、イオン化されていない治療剤は口腔粘膜を介して吸収されるが、イオン化された治療剤は胃腸での吸収のために嚥下される。
【0138】
トローチ組成物は、任意の所望の形状、サイズ、および質感を有していてもよい。例えばトローチは、スティック、タブ、ペレット、球体などの形状を有していてもよい。同様にトローチは、任意の所望の色を有していてもよい。例えばトローチは、赤色、青色、緑色、オレンジ色、黄色、紫色、藍色、およびそれらの混合の任意の色調を有していてもよく、そこに含まれる治療剤のタイプおよび投薬量を表示するために色コードで分類することもできる。トローチは、個別にラッピングしてもよいし、または当技術分野においてよく知られた方法で包装するために個々に分かれた状態で一まとめになっていてもよい。
【0139】
上記で説明した好ましい剤形に加えて、本発明の組成物はまた、ここで説明されるような治療剤を口腔粘膜を通して送達するための溶液製剤の形態をとってもよい。例えば溶液製剤は、2室型シリンジによる送達システムを使用することによって舌下投与してもよく、ここで上部室は緩衝化されていない治療剤溶液を含有し、下部室は乾燥緩衝系構成要素を含有し、不透性膜が上部室と下部室とを隔てている。シリンジを押し下げると不透性膜が破裂して、緩衝化されていない治療剤溶液が乾燥緩衝系構成要素と混合される。次いで得られた緩衝化治療剤溶液が、シリンジのチップから放出される。そのような場合、単に対象の舌下のどこかにシリンジのチップを置いてシリンジを押し下げることにより、本発明の溶液製剤を使用して、対象の舌下粘膜を通して活性治療用組成物を送達できる。
【0140】
したがって、本発明はさらに、肝疾患および/または肝障害を処置するための、対象の口腔粘膜を通して治療用組成物を送達するための組成物であって、本組成物が、(a)グラム陽性細菌の抽出物、可溶化液、またはその薬学的に許容される塩、好ましくはグラム陽性細菌のラクトバチルス種に由来した抽出物、可溶化液、またはその薬学的に許容される塩;(b)天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド;(c)任意の活性物質の促進剤を含み、任意に(d)炭酸塩および/または重炭酸塩を含む緩衝系を含んでいてもよく、ここで緩衝系は、唾液の開始時pHに関係なく唾液のpHを約9.9より大きいpHに高くする、組成物を提供する。好ましくは、本組成物は、口腔粘膜への投与の直前に調製される溶液である。ある特定の好ましい態様において、緩衝系は、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムを含み、ここで炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムとの比は、重量で約1:1から約5:1までの範囲である。他の態様において、炭酸ナトリウムは、炭酸水素ナトリウムと同等か、またはそれより多い量で使用される。より具体的には、本組成物は、15分未満(例えば約1~約15分)、好ましくは約5分~約10分の活性成分のピーク血漿濃度をもたらす組成物である。
【0141】
D.投与方法
本発明の組成物は、例えば、肝臓の疾患または障害、例えば、A型、B型、および/またはC型肝炎を含む免疫疾患または障害の処置を、そのような処置を必要としている対象において行うための、治療的適用において有用である。本発明の方法は、様々な肝障害、特に、対象の補体系における代替経路との関連リンクによって特徴づけられる肝障害の処置において有用である。したがって、本開示によれば、肝障害は、肝臓または周囲脈管構造における任意の肝臓疾患または障害である。例えば、本発明の方法および組成物は、感染、医原性障害、遺伝性障害、自己免疫障害、胆汁うっ滞性症候群、サルコイドーシス、臓器移植、肝癌などに起因するものを含む、様々な肝障害の処置において有用である。
【0142】
本開示の範囲内の疾患または障害には、表1に詳述された疾患および障害が挙げられるが、それらに限定されない。
【表1-1】
【表1-2】
【0143】
本発明の組成物で防止され、寛解し、および/または処置され得る他の障害または疾患には、対象内の癌および腫瘍が挙げられる。ここで使用される場合、用語「癌」は、分化の喪失、成長速度の増加、周囲組織の浸潤を伴う特徴的な退形成を起こしており、転移する能力がある悪性新生物を指す。例えば、甲状腺癌は、甲状腺組織中に、またはそれから生じる悪性新生物であり、乳癌は、乳房組織中に、またはそれから生じる悪性新生物(例えば、乳管癌腫)である。残存癌は、甲状腺癌を縮小させ、または根絶するために対象に施された任意の型の処置後、対象に残存する癌である。転移性癌は、転移性癌が由来する最初の(原発性の)癌の起源の部位以外の身体における1つ以上の部位における癌である。癌には、固形腫瘍が挙げられるが、それらに限定されない。
【0144】
ここで使用される場合、用語「腫瘍」は、良性または悪性であり得る、細胞の異常な成長を指す。癌は、異常な、または制御できない細胞成長によって特徴づけられる悪性腫瘍である。悪性度に関連づけられることが多い他の特徴には、転移、隣接細胞の正常機能への干渉、サイトカインまたは他の分泌性産物の異常レベルでの放出、および炎症性または免疫学的応答の抑制または悪化、周囲または遠位の組織または器官、例えば、リンパ節の浸潤などが挙げられる。「転移性疾患」は、最初の腫瘍部位を離れており、例えば、血流またはリンパ系を介して、身体の他の部分へ遊走する癌細胞を指す。
【0145】
個体における腫瘍の量は、腫瘍の数、体積、または重量として測定することができる「腫瘍量」である。転移しない腫瘍は、「良性」と呼ばれる。周囲組織に浸潤し、および/または転移することができる腫瘍は、「悪性」と呼ばれる。血液学的腫瘍の例には、急性白血病(例えば、11q23転座型急性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、および骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、および赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、および慢性リンパ球性白血病)を含む白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(低悪性度および高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、有毛細胞性白血病、および骨髄形成異常が挙げられる。
【0146】
固形腫瘍、例えば、肉腫および癌腫の例には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、および他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌腫、リンパ系腫瘍、膵臓癌、乳癌(基底乳癌腫、乳管癌腫、および小葉乳癌腫を含む)、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌腫、扁平上皮癌腫、基底細胞癌腫、腺癌、汗腺癌腫、甲状腺髄様癌腫、甲状腺乳頭癌腫、褐色細胞腫、皮脂腺癌腫、乳頭部癌腫、乳頭腺癌、髄様癌腫、気管支原性肺癌腫、腎細胞癌腫、肝細胞腫、胆管癌腫、絨毛癌、ウイルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌腫、およびCNS腫瘍(例えば、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫、および網膜芽細胞腫)が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの例において、腫瘍は、メラノーマ、肺癌、リンパ腫、乳癌、または結腸癌である。
【0147】
1つ以上の癌型または腫瘍の処置に使用される場合のここで記載された組成物は、任意で、1つ以上の他の抗癌剤または抗癌性化合物を含んでもよく、またはそれらと組み合わされてもよい。そのような抗癌剤には、以下が挙げられるが、それらに限定されない:20-エピ-1,25 ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;血管新生抑制剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背側化形態形成タンパク質-1(anti-dorsalizing morphogenetic protein-1);抗アンドロゲン、前立腺癌腫;抗エストロゲン剤;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィディコリングリシネート;アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシスレギュレーター;アプリン酸;アラ-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビセレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン(budotitane);ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリア痘IL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN700;軟骨由来阻害剤;カルゼレシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリックス;クロリン;クロロキノキサリンスルフォンアミド;シカプロスト;cis-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA-4(コンブレタスタチンA-4ジホスフェートを含む);コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クランベシジン816;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタアントラキノン;シクロプラタン(cycloplatam);シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解性因子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド(dexifosfamide);デクスラゾキサン;デキスベラパミル;ジアジクオン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール,9-;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン(diphenyl spiromustine);ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エポチロンA;エポチロンB;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン;ホルフェニメックス;フォルメスタン;フォストリエシン;フォテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゲラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;HMG CoAレダクターゼ阻害剤(例えば、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、レスコール、ルピトール、ロバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチン);ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン;イミキモド;免疫賦活剤ペプチド;インスリン様成長因子-1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール,4-;イロプラクト(iroplact);イルソグラジン;イソベンガゾール(isobengazole);イソホモハリコンドリンB(isohomohalicondrin B);イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリンNトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病抑制因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミゾール;LFA-3TIP(Biogen, Cambridge, Mass.;米国特許第6,162,432号);リアロゾール;直鎖状ポリアミン類似体;親油性二糖ペプチド;親油性白金化合物;リッソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;メイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MWF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;ミトトキシン線維芽細胞成長因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト絨毛性ゴナドトロピン;モノホスホリルリピドA+ミオバクテリウム(myobacterium)細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;multiple tumor suppressor 1に基づいた治療;マスタード型抗癌剤;ミカペルオキシドB;ミコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ(nagrestip);ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン(napavin);ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレーター;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン(nitrullyn);O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;口腔サイトカインインデューサー(oral cytokine inducer);オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ポリ硫酸ペントサンナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニル酢酸;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチン(placetin)A;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター;白金複合体;白金化合物;白金-トリアミン複合体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビスアクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;プロテインAに基づいた免疫モジュレーター;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類;タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化ヘモグロビンポリオキシエチレンコンジュゲート;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルプロテイントランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;レテリプチン脱メチル化;レニウムRe186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi1模倣体;セムスチン;老化由来阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレーター;一本鎖抗原結合性タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ボロカプテイトナトリウム;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール;ソマトメジン結合性タンパク質;ソネルミン(sonermin);スパルホシック酸(sparfosic acid);スピカマイシンD;スピロムスチン(spiromustine);スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクアラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分裂阻害剤;スチピアミド;ストロメリシン阻害剤;スルフィノシン;超活性型血管作用性腸ペプチドアンタゴニスト(superactive vasoactive intestinal peptide antagonist);スラジスタ(suradista);スラミン;スウェインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;5-フルオロウラシル(5-FU);ロイコボリン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム(tecogalan sodium);テガフール;テルルアピリリウム(tellurapyrylium);テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;トロンボポエチン模倣体;チマルファシン;チモポエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;エチルエチオプルプリンすず;チラパザミン;二塩化チタノセン;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキセート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクター系、赤血球遺伝子治療;サリドマイド;ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン(vinxaltine);ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;およびジノスタチンスチマラマー。
【0148】
本発明の組成物で処置可能であり得るさらに別の障害には、ライム病、ならびに、ネズミバベシア(Babesia microti)によって引き起こされる貧血、エーリキア症、野兎病(例えば、フランシセラ・ツラレンシス(Franciselia tularensis)によって引き起こされるもの)、およびリケッチア・リケッチイ(Rikettsia rickettsii)によって引き起こされる疾患を含む他のマダニ類感染症が挙げられる。
【0149】
本発明の関連内での特に好ましい障害は、慢性肝炎、特に、感染、特にウイルス感染に起因する肝炎である。このカテゴリー内には、ウイルス性(HBV、HDV、HCV)、自己免疫性肝炎(古典的なルポイド型および亜型)、自己免疫性重複症候群、薬物誘発性(例えば、ニトロフラントイン、αメチルドパ、イソニアジド)およびいわゆる「原因不明」肝炎を含む、慢性肝炎の確立された血清学的カテゴリーが含まれる。この点において、当業者は、”McSween’s Pathology of the Liver”、第5版(同上)における8章および9章、特に、表9.2および9.3を参照する。当業者が認識しているように、慢性肝炎の定義内に含まれないいくつかの慢性肝臓疾患は、慢性肝炎の組織学的特徴を有する場合がある(例えば、ピースミールネクローシス)。これらの障害、例えば、肝内または肝外胆管の疾患が、ここでの定義内に含まれる。いくつかのウイルスでの感染は、肝炎ウイルス、A型肝炎(HAV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、D型肝炎(HDV、デルタ因子)、E型肝炎、F型肝炎、および他のウイルス、例えば、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、パラミオウイルスなどを含む、肝臓の重篤な炎症を生じることが知られている。(A~Gと命名された)、肝炎ウイルスの少なくとも7つの型が、今まで同定されている。これらのうち、最も壊滅的なものの一つは、C型肝炎ウイルス(HCV、非A非B型とも呼ばれる)である。米国において推定390万人の人々が現在、HCVに感染しており、毎年推定8,000~10,000人の死亡が、HCV関連慢性肝臓疾患に起因している。現在の治療には、γ-インターフェロン、エンファサイズB(emphasize B)、およびリバビリンが挙げられ、それぞれは、効力が限定的であり、患者に重篤な副作用を生じる。現在の治療にはまた、移植も挙げられるが、感染した個体は、ウイルスに感染したままであるため、移植後免疫抑制された患者は、ウイルスRNAレベルの増加を示し、新しい肝臓に関して肝臓疾患を急速に進行させる場合が多い。
【0150】
慢性胆汁うっ滞性症候群は、肝機能不全、肝線維症、および肝硬変を生じる肝内胆管の進行性炎症性破壊によって特徴づけられる。この型の障害の例には、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、および成人型特発性胆管減少症が挙げられる。
【0151】
ここで開示された方法により処置可能な遺伝性障害には、遺伝子に関係した形質に関連する炎症性障害が挙げられる。例として、ウィルソン病、α1-アンチトリプシン欠損症、および遺伝性代謝障害、例えば、ガラクトース血症およびチロシン血症が挙げられるが、それらに限定されない。
【0152】
重要なことには、本発明の組成物は、唾液の開始時点のpHに関係なく、口腔粘膜を通しての本開示の活性治療剤組成物の迅速な送達を提供する。特に、口腔粘膜を通しての治療剤の送達は、肝臓の初回通過代謝、胃腸管内での分解、および吸収の際の治療剤の損失を回避する。結果として、治療剤は、伝統的な経口(例えば、錠剤)投与に関してより、実質的により短い期間で、かつ実質的により高い濃度で、体循環に達する。
【0153】
本発明の組成物は、ヒトおよび獣医学的治療学のエリアにおいて特別な有用性をもつ。一般的に、投与される投薬量は、数ピコモル~数マイクロモルの濃度の活性組成物を適切な部位へ送達するのに有効である。
【0154】
本発明の組成物の投与は、好ましくは、口腔の粘膜への認められた投与様式のいずれかによって行われ得る。口腔粘膜内の投与の適切な部位の例には、非限定的に、口腔底の粘膜(舌下粘膜)、頬(頬側粘膜)、歯肉(歯肉粘膜)、口蓋(口蓋粘膜)、唇の内層、およびそれらの組合せが挙げられる。これらの領域は、それらの解剖学的形態、薬物透過性、および薬物に対する生理的応答に関してお互いに異なる。好ましくは、本発明の組成物は、舌下粘膜、頬側粘膜、またはそれらの組合せに投与される。
【0155】
豊富な血液供給および適切な薬物透過性を有する口腔粘膜は、治療剤の全身性送達のための特に魅力的な投与経路である。さらに、口腔粘膜を通しての治療剤の送達は、肝臓の初回通過代謝を迂回し、胃腸管内での酵素的分解を回避し、かつ薬物吸収のためのより適切な酵素的細菌叢を提供する。ここで使用される場合、用語「舌下送達」は、口腔底および/または腹側舌を裏打ちする粘膜を通しての治療剤の投与を指す。ここで使用される場合、用語「頬側送達」は、頬を裏打ちする粘膜を通しての治療剤の投与を指す。
【0156】
口腔粘膜は、重層扁平上皮の最外層で構成される。この層の真下に、基底膜、すなわち、固有層、続いて、最内層としての粘膜下層がある。口腔粘膜の上皮は、それが、いくつかの分化中の中間層を通って表層へと進み、そこで細胞が上皮の表面から脱落する、有糸分裂的活性のある基底細胞層を含有する点において、身体の残りの部分に見出される重層扁平上皮と類似している。例えば、頬側粘膜の上皮は、厚さが約40~50細胞層であり、舌下上皮のそれは、若干より少ない細胞層を含有する。上皮細胞は、それらが、基底層から表層へ移動するにつれて、サイズが増加し、かつより扁平になる。
【0157】
5~6日間と見積もられる、頬側粘膜上皮についてのターンオーバー時間は、舌下粘膜上皮、加えて口腔粘膜における他の上皮についてのターンオーバー時間を代表する[Harrisら、J. Pharm. Sci, Vol. 81, pp. 1-10 (1992)]。口腔粘膜の厚さは、口腔における部位によって異なる。例えば、頬側粘膜は、厚さが約500~800μmであり、一方、硬口蓋および軟口蓋粘膜、舌下粘膜、腹側舌、ならびに歯肉粘膜は、厚さが約100~200μmである。上皮の組成もまた、口腔における部位によって異なる。例えば、メカニカルストレスを受けやすいエリアの粘膜(すなわち、歯肉および硬口蓋)は、表皮と類似して角質化される。しかしながら、軟口蓋、舌下領域、および頬側領域の粘膜は、角質化されない[Harrisら、前記]。角質化上皮は、中性脂質、例えば、セラミドおよびアシルセラミドを含有し、それらは、バリア機能を提供することと関連づけられている。結果として、これらの上皮は、相対的に水に対して不透過性である。対照的に、非角質化上皮、例えば、舌下および頬側上皮は、アシルセラミドを含有せず、ほんの少量のセラミドを有する[Wertzら、Crit. Rev. Ther. Drug Carr. Sys., Vol. 8, pp. 237-269 (1991);Squierら、J. Invest. Dermat., Vol. 96, pp. 123-126 (1991);Squierら、”Oral Mucosal Drug Delivery”、M. J. Rathbone編、Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y.、pp. 1-26 (1996)]。非角質化上皮はまた、少量の、中性であるが、極性の脂質、例えば、硫酸コレステロールおよびグルコシルセラミドを含有する。それとして、これらの上皮は、角質化上皮より、水に対してかなり透過性であることが見出されている。
【0158】
一般的に、口腔粘膜は、表皮の漏出性と腸管粘膜の漏出性の中間のやや漏出性の上皮である。例えば、頬側粘膜の透過性は、皮膚のそれより約4~4000倍大きいと推定される[Galeyら、J. Invest. Dermat., 67:713-717 (1976)]。口腔粘膜の異なる領域の透過性は、一般的に、舌下粘膜>頬側粘膜、および頬側粘膜>口蓋粘膜という順に、減少する。この透過性は、一般的に、これらの膜の相対的な厚さおよび角質化の程度に基づき、舌下粘膜が相対的に薄く、かつ角質化せず、頬側粘膜がより厚く、かつ角質化せず、口蓋粘膜は厚さが中間であるが、角質化している。
【0159】
口腔粘膜の上皮細胞は、細胞表面上のある特定の領域に付着している場合もあるし、付着していない場合もある、タンパク質および糖質の複合体を主に含む粘液によって囲まれている。粘液は、細胞間接着において役割を果たすことができ、加えて、潤滑剤として働いて、細胞がお互いに移動することを可能にし得る[Tabakら、J. Oral Pathol., 11:1-17 (1982)]。身体の他の場所で見出される重層扁平上皮において、粘液は、特定化された粘液分泌細胞、例えば、杯細胞によって合成される;しかしながら、口腔粘膜において、粘液は、大唾液腺および小唾液腺によって唾液の一部として分泌される[Tabakら、前記;Rathboneら、Adv. Drug Del. Rev., 13:1-22 (1994)]。生理的pHにおいて、粘液ネットワークは、糖質上に存在するシアル酸および硫酸残基による負電荷を運搬する。このpHにおいて、粘液は、ゼラチン層として上皮細胞表面に結合する強粘着性ゲル構造を形成することができる。いかなる特定の理論によっても縛られるつもりはないが、本発明の緩衝系は、糖質上に存在するシアル酸残基を中和し、それらを治療剤と相互作用することから防ぎ、それにより、薬物透過をさらに増強させる。
【0160】
口腔の環境の別の特徴は、唾液腺により産生される唾液の存在である。唾液は、口腔の全ての組織のための保護液である。唾液は、約1%の有機および無機材料を含む水性液体である。唾液組成の主要な決定因子は、流量であり、それは、次に因子、例えば、時刻、刺激の型、および刺激の程度に依存する。唾液pHは、典型的には、流量に依存して、約5.5から約7.0までの範囲である。例えば、高流量において、ナトリウムおよび重炭酸塩の濃度が増加し、pHの増加をもたらす。一日の唾液体積は、約0.5~約2リットルの間であるので、口腔は、本発明の口腔粘膜剤形の水和および/または溶解のための水性環境を提供する。
【0161】
舌下粘膜は、口腔の最も高い透過性領域であり、便利で、利用しやすく、かつ広く受け入れられている投与経路における薬物の迅速な吸収および高い生物学的利用率を提供する[Harrisら、前記]。適切な舌下剤形には、非限定的に、錠剤(例えば、急速溶解性、低速溶解性)、トローチ、キャンディ、および液体薬物で満たされた軟ゼラチンカプセル剤が挙げられる。そのような系は、それらが舌下粘膜を通して全身的に吸収される前に、舌下領域において非常に高い濃度を生じる。結果として、舌下粘膜は、作用の迅速な開始を起こすのに特によく適しており、舌下剤形は、より短い送達期間が要求され、および/または投薬頻度のより少ないレジメンで、薬物を送達するために使用することができる。頬側粘膜は舌下エリアよりかなり透過性が低いが、薬物の急速吸収および高い生物学的利用率を、頬側投与に関しても観察することができる。適切な頬側剤形には、非限定的に、チューインガム、錠剤(例えば、急速溶解性、低速溶解性)、トローチ、キャンディなどが挙げられる。頬側粘膜と舌下粘膜の両方は、薬物の吸収および生物学的利用率の増加をもたらすことについて、胃腸管よりはるかに優れている。
【0162】
口腔粘膜を通っての薬物の透過性を増加させるために、透過増強剤を、本発明の剤形に含むことができる。透過増強剤は、透過を増強させるために口腔粘膜の性質を変化させるタイプでも、または口腔粘膜を通っての透過を増強させるために治療剤の性質を変化させるタイプでもよい。適切な透過増強剤には、非限定的に、ポリオキシエチレン23-ラウリルエーテル、アプロチン(aprotin)、アゾン、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、シクロデキストリン、硫酸デキストラン、ラウリン酸、プロピレングリコール、リゾホスファチジルコリン、メントール、メトキシサリチレート、メチルオレエート、オレイン酸;ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン、ポリソルベート80、エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、加えて、ある特定のスルホキシドおよびグリコシド、ならびにそれらの組合せが挙げられる。
【0163】
口腔粘膜を通っての送達は、本開示によれば、好ましいが、活性治療剤を、それが治療的に作用し始めることができる粘膜壁に送達する任意の送達方法が構想されることは、留意されるべきであり、そのような代替の粘膜送達製剤には、坐剤(直腸と膣の両方)、スプレー(経口と経鼻の両方)、皮下インプラント、および製剤が患者の胃領域を通過して移動することを可能にする徐放性カプセル剤、例えば、pH徐放性カプセル剤が挙げられるが、それらに限定されない。
【0164】
理論によって限定または制限されることを望まないが、天然に存在するCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)は、結合能研究を通して示されているように、ヒト天然B細胞の抗原提示細胞機能、特に様々な肝臓ウイルス、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)エピトープについてのその機能を増強する潜在能力を有すると考えられている。これらの結果は、ワクチン設計の開発のための新しいストラテジーを示唆し、かつそれを必要としている患者のためのより毒性の低い治療レジメンを提供することができる。
【0165】
本発明の好ましい態様を実証するために以下の例が挙げられる。後に続く実施例に開示された技術が、本発明の実施において十分機能するように本発明者らによって発見された技術を代表し、したがって、それの実施のための好ましい様式を構成するとみなし得ることは当業者によって認識されているはずである。しかしながら、当業者は、本開示を鑑みれば、開示されている特定の態様において多くの変更を加えることができ、かつそれでもなお、本発明の範囲から逸脱することなく、同様の、または類似した結果が得られることは、認識しているはずである。
【0166】
[実施例]
例1:活性成分組成物調製
治療試験およびさらなる細胞系試験、例えば、スクリーニング試験および対象試験において適した、ここで記載されているような例示的な製剤を調製する。
【0167】
活性成分。活性成分は、グラム陽性細菌、例えば、上記のものである。例として、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリカス(Bulgaricus)を使用し、Kerry Ingredients & Flavours (Beloit, WI)により実行されるような、および一般的に下記のような発酵および細胞単離プロセスを利用した。
【0168】
発酵。グラム陽性細菌、ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスの細胞を、500Lの適切な培地中でおよそ120時間、発酵させた。
【0169】
細胞単離。500Lのブロスを遠心分離し、生じた細胞集団を脱イオン水で3回、洗浄した。これは、およそ60kgの湿った細胞集団を生じた。
【0170】
溶解および精製。湿った細胞集団を再構成し、pHを6.8~7.0に調整する。(ニワトリ卵白から抽出された)塩化リゾチームを添加し、500ppmの濃度の塩化リゾチームを含む溶液を作製した。スラリーを撹拌し、温度を40~50℃に24時間、維持する。溶解後、活性構成要素は液相中にあった。水溶性活性構成要素を含有するこの液体材料を、固体材料を除去する遠心分離によって回収し、その後、脱イオン水で3回、洗浄した。生じた混合物を、ペレットとして凍結させ、遠心機における残りの固体材料を廃棄した。
【0171】
製剤。凍結したペレットを凍結乾燥させて、乾性粉末を形成し、必要に応じて粉砕した。この材料を、促進剤、例えば、N-アセチル D-グルコサミンHCI(NAG)と混合して、溶解したラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリカスとNAGの混合物を形成した。任意に、必要に応じて、固形丸剤または散剤を作製するために、他の製剤賦形剤を添加した。その後、この生成物を、以下のスクリーニング試験に用いた。
【0172】
例2:TLRスクリーニング
TLR刺激を、所定のTLRまたはNLRを発現するHEK293細胞においてNF-κB活性化を評価することにより、試験した。試料の活性を、7個の異なるヒトTLR:TLR2、3、4、5、7、8、および9(Invivogen, San Diego, CA)、ならびに2つの異なるヒトNLR(NOD1およびNOD2)に関して試験した。各リガンドを、TLRまたはNLR細胞に関して、ストック溶液の1/100の最終濃度で試験し、下記のような対照リガンドと比較した。この工程を3連で実施した。
【0173】
例で使用される対照リガンド、対照細胞系、および試料産物は表2に示されている通りであった。
【表2】
【0174】
一般的手順:スクリーニングにおけるTLR刺激を、所定のTLRを発現するHEK293細胞においてNF-κB活性化を評価することにより試験する。分泌型アルカリフォスファターゼレポーターは、転写因子NF-κBにより誘導可能なプロモーターの制御下にある。スクリーニングにおけるTLR刺激を、所定のTLRまたはNLRを発現するHEK293細胞においてNF-κB活性化を評価することにより、試験した。このレポーター遺伝子は、NF-κBの活性化に基づいた、TLR/NLRを通してのシグナル伝達のモニタリングを可能にする。適切な細胞(50,000~75,000細胞/ウェル)を含有する96ウェルプレート(200μL総容積)において、20μLの試料(可溶化液産物)または陽性対照リガンドをウェルに添加した。ウェルに添加される培地は、NF-κB誘導性SEAP(分泌型アルカリフォスファターゼ)の検出のために設計される。16~20時間のインキュベーション後、650nmにおけるOD(光学密度)は、Molecular Devices Spectra Max 340PC吸光度検出器において読み取られ、記録された。
【0175】
これらの実験のスクリーニング結果は、図3においてグラフで示され、スクリーニングデータ結果表として、図5に示されている。対照細胞系比較は、図4においてグラフで示され、データとして、図6の集計表に示されている。これらの結果から見ると、試験された可溶化液試料が、1/100濃度においてヒトTLR2、4、およびNOD2を活性化していることは明らかである。
【0176】
上記の本発明の1つ以上の側面を利用する他の態様およびさらなる態様は、本出願人の発明の精神から逸脱することなく、工夫することができる。例えば、組成物は、少なくとも1つの天然に存在するCpG ODNおよび細菌可溶化液画分に加えて、1つ以上の合成CpG ODN、例えば、市販のGenasenseまたはIMOxine(登録商標)を含んでもよい。さらに、製造方法および系の組み立て、加えて、位置特定化の様々な方法および態様は、開示された方法および態様のバリエーションを生じるようにお互いに組み合わせて、含むことができる。単数の要素の考察は、複数の要素を含むことができ、逆もまた同様である。
【0177】
他に明確に限定されない限り、工程の順序は様々な順番で起こることができる。ここで記載された様々な工程は、他の工程と組み合わせ、提示された工程を差し挟み、および/または複数の工程に分けることができる。同様に、要素は、機能的に記載されており、別々の構成要素として具体化することができ、または複数の機能を有する構成要素へと組み合わせることができる。
【0178】
本発明は、好ましいものを始めとする態様に関連して記載されており、本発明のあらゆる態様が記載されているとは限らない。記載された態様への明らかな改変および変更は、当業者に利用可能である。開示された態様および開示されていない態様は、本出願人らによって思い描かれる本発明の範囲または適用性を限定または制限することを意図するものではなく、むしろ、特許法に準拠して、出願人らは、以下の特許請求の範囲の等価物の範囲または領域内に入る全てのそのような改変および改良を完全に保護することを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-05-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝障害の処置のための、治療剤の対象の粘膜を通しての送達のための組成物であって、前記組成物が、
(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩、および
(b)天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)
を含み、前記細胞壁可溶化液および前記ODNが、免疫障害を処置するのに有効な量で存在する、組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0178
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0178】
本発明は、好ましいものを始めとする態様に関連して記載されており、本発明のあらゆる態様が記載されているとは限らない。記載された態様への明らかな改変および変更は、当業者に利用可能である。開示された態様および開示されていない態様は、本出願人らによって思い描かれる本発明の範囲または適用性を限定または制限することを意図するものではなく、むしろ、特許法に準拠して、出願人らは、以下の特許請求の範囲の等価物の範囲または領域内に入る全てのそのような改変および改良を完全に保護することを意図する。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 肝障害の処置のための、治療剤の対象の粘膜を通しての送達のための組成物であって、前記組成物が、
(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩、および
(b)天然に存在する免疫刺激性オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)
を含み、前記細胞壁可溶化液および前記ODNが、免疫障害を処置するのに有効な量で存在する、組成物。
[2] 徐放剤、促進剤、担体、またはそれらの組合せをさらに含む、[1]に記載の組成物。
[3] 前記グラム陽性細菌が、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)(ラクトバチルス・スポロゲネス(Lactobacillus sporogenes))、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・アニマーリス(Bifidobacterium animalis)(特に、B.アニマーリス(B. animalis)亜種アニマーリス(animalis))、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種ブルガリカス(bulgaricus)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)亜種ラクティス(lactis)(ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis))、ストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、およびラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、[1]に記載の組成物。
[4] 前記促進剤が、アミノ酸、アミノ糖、および糖からなる群から選択される、[2]に記載の組成物。
[5] 前記グラム陽性細菌がラクトバチルス・デルブレッキイである、[1]に記載の組成物。
[6] 1つ以上の肝障害を患っている対象における肝障害の合併症の処置のための組成物であって、前記組成物が、治療的有効量の、1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩、および
少なくとも1つのトール様受容体(TLR)9アゴニストを含み、前記グラム陽性細菌がラクトバチルス科の細菌から選択される、組成物。
[7] 前記TLR9アゴニストがCpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)である、[6]に記載の組成物。
[8] 前記CpG ODNが細菌可溶化液内に天然に存在する、[7]に記載の組成物。
[9] 前記肝障害が、TLR9、ならびにTLR2、TLR4、およびTLR7のうちの1つ以上の過剰発現により特徴づけられる、[6]に記載の組成物。
[10] 前記組成物が、トローチ、チューインガム、咀嚼錠、キャンディ、および溶解錠からなる群から選択される剤形である、[1]に記載の組成物。
[11] 前記溶解錠が、低速溶解錠および急速溶解錠からなる群から選択される、[10]に記載の組成物。
[12] 前記粘膜が、口腔粘膜、舌下粘膜、頬側粘膜、およびそれらの組合せからなる群から選択される、[1]に記載の組成物。
[13] 化学療法剤をさらに含む、[1]に記載の組成物。
[14] 前記組成物が、前記組成物が投与される対象において少なくとも1つのトール様受容体(TLR)の調節を示す、[1]に記載の組成物。
[15] 調節される前記TLRが、TLR2、TLR4、TLR7、およびTLR9から選ばれる、[14]に記載の組成物。
[16] [1]に記載の組成物を含む栄養補助食品。
[17] 対象において腫瘍に対する免疫応答を誘導する方法であって、
腫瘍を有する対象を選択すること、ならびに
前記対象に
(a)1種類以上のグラム陽性細菌に由来した、もしくはそれから単離された可溶化液もしくは細胞壁抽出物、またはその薬学的に許容される塩、および
(b)天然に存在するCpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)
を含む治療的有効量の組成物を投与し、それにより前記対象において前記腫瘍に対する前記免疫応答を誘導すること
を含む、方法。
[18] 前記天然に存在するCpGオリゴデオキシヌクレオチドが細菌可溶化液に由来する、[17]に記載の方法。
[19] 前記CpG ODNが、C型、D型、またはK型CpG ODNからなる群から選択される、[17]に記載の方法。
[20] 前記免疫応答が抗体の産生を含む、[17]に記載の方法。
【外国語明細書】