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特開2024-105472パルス構成可能ファイバーレーザーユニット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105472
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】パルス構成可能ファイバーレーザーユニット
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/10 20060101AFI20240730BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20240730BHJP
   H01S 3/083 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01S3/10 Z
H01S3/067
H01S3/083
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024076525
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2021512499の分割
【原出願日】2019-09-05
(31)【優先権主張番号】62/727,273
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501012517
【氏名又は名称】アイピージー フォトニクス コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・ボーデンユク
(72)【発明者】
【氏名】ドミトリー・ペストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァディム・ロゾヴォイ
(72)【発明者】
【氏名】イゴール・サマルツェフ
(72)【発明者】
【氏名】アントン・リャブツェフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】信頼性の高いフェムト秒レーザーを提供する。
【解決手段】パルス構成可能レーザーユニットは、環境的に安定しており、機械的に堅牢で、メンテナンスフリーの超高速レーザー光源であり、低エネルギーの産業用、医療用、および分析用用途向けである。レーザーユニットの主な特徴は、信頼性の高い自己始動型ファイバー発振器および一体化されたプログラム可能パルス整形器である。これらのコンポーネントを組み合わせることで、レーザーの広帯域幅超短パルスの持続時間、およびスペクトル位相操作を介した任意の波形発生を最大限に活用することができる。光源は、メガワットレベルのピーク出力を有する近TL、60fs以下のパルスをふつうに送出することができる。出力パルス分散は、線上の位相歪みを事前補償し、さらには特定の用途向けにパルスプロファイルを最適化するようにチューニングすることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一な超短パルスを出力するパルス構成可能レーザーユニット(PCLU)であって、
複数の動作レジームで動作して、光路に沿ってコヒーレントな均一の増幅された巨大チャープ広帯域パルス列を出力するファイバーパルス発生器と、
各巨大チャープ広帯域パルスの線形チャープ成分を補正するように構成されている、静的コンプレッサと、前記巨大チャープ広帯域パルスの非線形チャープ成分を補正するプログラム可能な空間光変調器(SLM)を備えているパルス整形器とを備える2段コンプレッサであって、前記2段コンプレッサは、前記ファイバーパルス発生器の前記動作レジームの各々において変換限界(TL)超短コヒーレントパルス列を出力する、2段コンプレッサと、
CPUのメモリに記憶されている、位相マスクのライブラリから、所与の動作レジームに対応する位相マスクを選択的に取り出し、圧縮された前記TL超短コヒーレントパルスのチャープパルスの前記非線形チャープ成分を補償するように前記取り出されたマスクを前記パルス整形器の前記プログラム可能な空間光変調器(SLM)に適用するように前記パルス整形器を動作させるためにソフトウェアを実行する少なくとも1つまたは複数のコンピュータと、
を備えるパルス構成可能レーザーユニット(PCLU)。
【請求項2】
前記コンピュータは、前記CPUの前記メモリに記憶されている、振幅マスクのライブラリから振幅マスクを取り出し、取り出された振幅マスクを前記パルス整形器の前記プログラム可能な空間光変調器(SLM)に適用して、TLパルスのスペクトル内に存在する寄生的強度ピークを抑制するために前記ソフトウェアを実行する請求項1に記載のPCLU。
【請求項3】
前記コンピュータは、位相マスクの前記ライブラリから位相マスクを取り出し、前記取り出された位相マスクを前記パルス整形器の前記SLMに適用して、TLパルスを、前記TLパルスとは異なるが、前記ファイバーパルス発生器の前記所与の動作レジームに対して所望の形状を有するパルスに再整形するために前記ソフトウェアを実行する請求項1に記載のPCLU。
【請求項4】
前記コンピュータは、振幅マスク位相マスクのライブラリから振幅マスクを取り出し、前記取り出された振幅マスクを前記パルス整形器に適用して、前記TLパルスとは異なる前記パルスの前記所望の形状を精緻化するために前記ソフトウェアを実行する請求項3に記載のPCLU。
【請求項5】
前記パルス整形器は、液晶空間光変調器(LC SLM)、液晶位相(LCOS)、光音響変調器(AOM)、または光音響プログラム可能な分散フィルタ(AOPDF)を含む空間光変調器(SLM)とともに構成される請求項1に記載のPCLU。
【請求項6】
前記コンピュータによって実行される前記ソフトウェアは、多光子パルス内干渉位相走査法(MIIPS)アルゴリズムに従ってスペクトルパルス成分の位相を測定し、補正する請求項1に記載のPCLU。
【請求項7】
前記ファイバーパルス発生器は、リング共振器を画成する2つの同一の光学素子の群を有する自己始動型受動モードロックファイバーシードとともに構成される請求項1に記載のPCLU。
【請求項8】
各群の前記光学素子は、Yb添加能動的ファイバー、ファイバーコイル、および狭線幅の空間フィルタを備え、それぞれの群の前記空間フィルタはそれぞれのスペクトルが互いに重なるように構成され、前記光学素子は複数の受動的ファイバーによって互いに光学的に結合される請求項7に記載のPCLU。
【請求項9】
前記ファイバーパルス発生器は、ファイバーブースターをさらに備え、前記ファイバーブースターは、前記リング共振器を画成する前記素子とともに構成されるが、前記ファイバーブースターが直線的幾何学的形状を有するように互いに結合され、前記ブースターの能動的および受動的ファイバーは前記リング共振器のそれぞれの素子の実質的に均一の寸法のコアよりも大きい実質的に均一の寸法のそれぞれのコアを有する請求項8に記載のPCLU。
【請求項10】
前記パルス整形器は、一次元または二次元である請求項1に記載のPCLU。
【請求項11】
前記位相マスクおよび前記振幅マスクは、前記TLパルスに適用され、時間領域および周波数領域において規則的なおよび不規則な形状を含む前記所望の形状の前記パルスを提供する請求項4に記載のPCLU。
【請求項12】
前記自己始動型受動モードロックファイバーシードは、最大20MHzのパルス繰り返し率でコヒーレント広帯域チャープコヒーレントパルス列を出力し、各パルスは最大50nJのエネルギーおよび最大100nmの全スペクトル帯域幅を有する請求項7に記載のPCLU。
【請求項13】
前記ファイバーブースターを有する前記ファイバーパルス発生器は、最大20MHzのパルス繰り返し率でコヒーレント広帯域チャープコヒーレントパルス列を発生し、各パルスは最大100nmの全スペクトル帯域幅および最大500nJのパルスエネルギーを有する請求項9に記載のPCLU。
【請求項14】
(a)レーザー源を複数の動作レジームで動作させ、それによってパルス列を生成するステップであって、各パルスは、前記レーザー源における前記パルスの非線形発生を通して巨大チャープを獲得する、ステップと、
(b)(a)と同時に、それぞれの動作レジームに対応する光源パラメータをコンピュータメモリのライブラリ内に記憶するステップと、
(c)前記チャープパルスを、前記動作レジームの各々の中でそれぞれのTLパルスに、
前記巨大チャープの線形成分を補正することと、
前記巨大チャープの非線形成分を、前記ライブラリから前記適用された位相マスクを取り出した後に前記チャープパルスにスペクトル位相マスクを適用することによって補正することであって、それぞれの動作レジームに対応するように複数の位相マスクが生成される、補正することと、
によって圧縮するステップと、
(d)前記ライブラリから取り出されたスペクトル位相マスクまたはスペクトルフェーズドマスクおよび振幅マスクを適用することによってそれぞれの動作レジームに対応する前記TLパルスを整形し、それによって前記TLパルスとは異なる所望のパルス形状を生成するステップとを含む請求項1から13に記載のPCLUによって超高速パルスを生成する方法。
【請求項15】
前記ステップ(c)は、前記ライブラリに記憶され、それぞれの動作レジームに対応する振幅マスクを適用し、それによって、各TLパルスの強度プロファイルにおける寄生的低強度パルスを抑制するステップをさらに含む請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム可能パルス整形器(programmable pulse shaper)と一体化されたクロスフィルタモードロック(cross-filter mode lock)(CFML)機構を備える自己始動型イッテルビウム(Yb)ファイバー発振器(self-starting ytterbium (Yb) fiber oscillator)に基づく商用超短パルスファイバーレーザーユニット(commercial ultrashort pulse fiber laser unit)に関する。特に、本発明は、超短パルスファイバーレーザー光源と、能動的位相制御のために位相変調器を利用するコンパクトなスペクトル位相整形器とが一緒に集積化されているコンパクトなレーザーユニットに関し、これは、高精細パルス圧縮、ならびにパルス波形の任意の操作を可能にする。
【背景技術】
【0002】
超短パルスレーザーの応用分野は非常に広く、限定はしないが、材料の機械加工および処理、高磁場レーザー物質相互作用、超高速時間分解分光法、非線形顕微鏡法などを含む。列挙された応用例の各々は、フェムト秒(fs)~ピコ秒(ps)の時間範囲で再現性のある単一モード(SM)パルスを出力することができる頑丈でコンパクト、堅牢なパルス光源の恩恵を受ける。
【0003】
持続時間が数十フェムト秒(1fs=10-15秒)であるパルスを放射するレーザーは、環境安定性に対する要求が厳しくない研究開発を中心として使用されている。そのようなレーザーの出力パルスエネルギーは、数ナノジュール以上と非常に広い範囲にわたって変化し得る。繰り返し率も1kHzから100MHzと広く変化する。このような短いパルス持続時間であれば、高いパルスエネルギーを必要としない産業用途が多いが、生物学者、化学者、または医師のような、レーザー技術に精通していない使用者でも操作できるように取り扱いが単純で、産業環境にも耐える、信頼性の高いレーザーが求められている。3D構造化、表面エッチング、および直接ボンディングのためのバルク修正を含む、ガラスまたはサファイアのような、光学的に透明な固体材料のレーザー支援加工は、数百フェムト秒または数百フェムト秒以下のパルス持続時間と組み合わされた、200~300ナノジュール(nJ)と低いパルスエネルギーを必要とし得る。分析用途は、非破壊的相互作用を確実にするために、より短いパルス持続時間と組み合わせたより低いパルスエネルギーを必要とする。これらの用途は、短いパルス持続時間および高いビーム質だけでなく、異なる発色団の集まりが調べられるときの発色団の選択的励起のための制御可能なスペクトル位相および時間的パルスプロファイルの恩恵を受ける多光子顕微鏡法および分光法を含む。レーザー支援結晶化または核生成は、製薬産業において応用されている。リソグラフィおよび3Dプリンティングまたはマイクロ構造化のための2光子重合は、パルス持続時間が100fs未満であれば、1nJから数十nJまでのパルスエネルギーを使用する。類似のパルスパラメータは、フォトポレーションおよびトランスフェクションに使用されており、これらは今日の生細胞に対して実行される遺伝子操作手順において広く使用されているプロセスである。低エネルギーのフェムト秒パルスをうまく活用できる用途は急増している。
【0004】
前述のすべての用途に共通する特徴は、熱放散が抑制されるか、または強く緩和され、時間と量の両方で効果的に制御できる「冷たい」プロセスが必要であることである。これは、100fs未満、好ましくは50fs未満のより短いパルスを使用することによって達成され、これは、注目している領域への放射によって引き起こされる熱的影響を最小にするか、またはなくすことを確実にする。「冷たい」相互作用レジームの実現は、より長いパルスに固有の、過剰エネルギーの蓄積に関連する破壊を伴わずに、純粋に非線形のプロセスを最大化することを可能にする。
【0005】
fsパルスレーザーの開発は、レーザー利得材料であるチタン添加サファイア(Ti:サファイア)の開発と切り離せない。超高速レーザーパルスは、広いスペクトル帯域幅を必要とする。Ti:サファイアは、700nm未満から1000nm超の近赤外域(近IR)にまたがる利得帯域幅を有し、この点で優れている(the champion)。
【0006】
それにもかかわらず、近年では他の技術も進出してきている。たとえば、本出願で開示されているファイバーレーザーは、現在では、他のイッテルビウム(Yb)結晶ベースのレーザーと同様に、持続時間が100fs未満のパルスを生成している。Ti:サファイア利得媒質の代わりにファイバーレーザーを使用する理由はいくつかある。理由の1つは、低価格であること、コンパクトであること、チューニング可能であって単純であること、ならびにパルスの持続時間および信頼性を含む。
【0007】
もう一つの理由は、Ti:サファイアの広い帯域幅が、ポンプ光とレーザー光との間に大きな波長間隔、すなわち、大きな量子欠損を必要とすることである。これは著しい熱散逸も意味する。一方、Yb添加レーザー(Ybファイバーを含む)では、量子欠損は、はるかに狭い利得帯域幅で可能にされるように、数倍小さい。
【0008】
それでも、Ybファイバー利得媒質の狭い利得スペクトルは、非常に問題にもなることもある。広い利得スペクトルを有する、Ti:サファイアの利得媒質は、パルスが発振器と同じ広域利得スペクトルを有するTi:サファイア増幅器で増幅される前にTi:サファイア発振器を超えてこれらのパルスをスペクトル的に拡幅することを必要とすることなくfsパルスの発生を維持することができる。
【0009】
対照的に、Ybファイバー発振器およびYbファイバー増幅器は、実質的により狭い利得スペクトルを有する。Yb発振器は、コヒーレント広帯域パルスを出力するように構成することができる。しかし、Yb添加ファイバーは、その性質上、小さなスペクトル領域しか増幅できないので、さらなるパルス増幅は可能でない。広帯域スペクトル線の残りは影響を受けない。しかし、超高速レーザー用途の大半は、増幅された広帯域fsパルスを必要とする。
【0010】
ファイバー利得媒質において超高速パルスを発生させるいくつかの方法がよく知られている。これらの方法の1つ、受動モードロックは開示されている主題の一部である。受動モードロックの鍵は、ピーク強度の増大に対する非線形応答を有する少なくとも1つの成分が環状空洞内に存在することである。
【0011】
他のレーザーシステムとは異なり、モードロックされたfsファイバーレーザーは、任意の媒質内を伝搬するときに群速度分散(GVD)に敏感である。GVDは、分散媒質の特性であり、媒質がその媒質内を進行する光パルスの持続時間にどのような影響を及ぼすかを決定するために使用される。より具体的には、GVDは、透明媒質内の光の群速度の周波数依存性である。超短パルスの文脈において、GVDは、非線形性、たとえば、自己位相変調の影響による巨大チャープ(giant chirp)によって明らかになる。
【0012】
ここで使用される「巨大チャープ」という用語は、結果として得られる発振器出力パルスの重要特性を指す。典型的には、高エネルギー巨大チャープ出力パルスは、少なくとも数十ピコ秒以上の持続時間を有することになり、このため、外部パルス引き伸ばし回路が不要になり、したがって、モードロック発振器において増大させた電力レベルの使用が可能になる。巨大チャープパルスは、より高いパルスエネルギーを引き出すために、コンプレッサでフェムト秒まで圧縮され得るが、そのような圧縮は、すぐ下で説明されているように単純ではない。
【0013】
Ybファイバーレーザー発生パルスは、各々、90nmの全幅(FW)を有する巨大チャープを得ると仮定する。一対のグレーティングを使用することで、各パルスを、たとえば、τFWHM85fsのパルスに圧縮することが可能である。しかし、85fsの持続時間は、所与の帯域の最低限度なのか?ノーである。もちろん、理論的には、任意の完全にコヒーレントなパルスであれば、このパルスの所与の時間帯域幅積に対して可能な最低の持続時間に圧縮され得るが、これは、変換限界(TL)パルスまたはフーリエ変換(FT)パルスのいずれかと称される。たとえば、同じ90nmのチャープパルスは、約50fsの変換限界τFWHMを有する。問題は、それらの寄生35fsがどこで得られるかである。
【0014】
超短レーザーパルスの持続時間は、その帯域幅、スペクトル形状、およびすべての周波数が同相になる程度によって制限される。変換限界パルスの生成は、レーザーの内側およびレーザーの外側の位相歪みがどれだけ正確に測定され補正され得るかに依存する。TLパルスを生成するための課題はいたって単純であり、巨大チャープを補償することである。
【0015】
光ファイバーおよびファイバーコンポーネント内を伝搬するチャープは、GVDの線形成分および非線形成分を獲得し、非線形成分は、GVDの周波数依存の結果生じる三次以上の分散(TOD)に対応する。体積ブラッググレーティングおよびファイバーブラッググレーティング(それぞれ、VBG、FBG)、または表面グレーティングなどの静的コンプレッサによるチャープの線形分散成分補償は、よく知られている。しかしながら、静的コンプレッサは、非線形成分を扱うときに効果がないだけでなく、追加の著しいTODを持ち込むことも知られている。非線形成分を補正する機構は、パルス整形器と称される。
【0016】
圧縮を実現する技術も、パルスレーザー技術の当業者にはよく知られており、ほかにもあるがとりわけ、次のような状況において使用されるものを含む。
【0017】
次の方式で非線形(およびときには線形)成分の補償を補助するために使用される、多光子パルス内干渉位相走査法(MIIPS)などのアルゴリズムを備えた少数の知られているプログラム可能なパルス整形器がある。プログラム可能なパルス整形器は、レーザースペクトル全体にわたって十分にキャリブレートされた位相関数を導入することができる液晶空間光変調器(SLM)を組み込んでいる。参照位相関数は、スペクトル位相の二次導関数、fsまたはpsで測定される群分散(GD)--および高次導関数に対して局所的な補正を引き起こすものである。レーザーのスペクトルを走査するときに、第二次高調波信号の最大強度も走査し、変調器によって持ち込まれる位相シフトは第二次高調波の元のパルス最大値と同じ値であるが、符号が反対である値を有する。位相歪みがない場合、これら2つの間には直線関係があるが、位相歪みはこの関係を変化させる。トラッキングする位相偏移を通じて得られた結果は、補正関数を形成する。補正関数を二重積分した後、これらの偏移から位相歪みが得られる。位相歪みが測定された後、パルス整形器はパルス形状を補正する。
【0018】
MIIPS制御パルス整形器を動作させることが難しいのは、超短パルスレーザー技術の当業者にはよく知られている。典型的には、パルス整形器のチューニングおよび動作には、全員が博士号を持つ物理学者のチームが必要である。パルス発生器の異なる動作レジーム、すなわち、時間領域と周波数領域の両方における異なるパルス持続時間、出力パルスエネルギー、および異なるパルス形状は、異なる位相マスクまたは位相および振幅マスクを必要とする。また、同一構成のパルスレーザー発生器のうちの1つに対して適切に機能する単一の位相マスクが、同じ群の別のパルス発生器と組み合わせて適切に動作することはありそうもない。これはすべて、受け入れがたいコストと労力の非効率につながる。
【0019】
プログラム可能なパルス整形器のうちの1つは、高周波電気信号が圧電変換器を駆動して音響進行波を発生させる音響光学変調器(AOM)である。変調器の動作は、進行する音響波によって引き起こされる屈折率の変化からの光ビームの回折に基づく。回折されたビームは、電気駆動周波数に等しい量だけ周波数をシフトされ、理想的には振幅および位相はRF駆動の振幅と位相を直接反映する。液晶位相変調器(LCoS)も利用できる。代替的に、光音響プログラム可能な分散フィルタ(AOPDF)が使用され得る。AIPDFでは、音響波は光場と一緒に伝搬し、光場は場偏光を回転させ、それによって光遅延を変化させる。また、電子任意波形発生器を使用してAOMを駆動することによって、音響プロファイルが制御され、プログラム可能なパルス整形器が実現され得る。しかしながら、AOMおよびAIPDFは両方とも、レーザー光源との同期を必要とし、典型的には、所望の高パルス繰り返し率(PRR)で動作しないことがあり、その用途はいくぶん限定される。
【0020】
構成に関係なく、プログラム可能なパルス整形器は実験室で使用される複雑なツールである。典型的には、ファイバーレーザー超短パルスシステムは、異なるコンポーネント、つまり短パルスを出力するモードロック発振器、引き伸ばし回路、パルス圧縮を円滑にするプログラム可能なパルス整形器からその場で組み立てられる。組み立てられたシステムは、嵩張り、複雑なチューニングを必要とし、典型的には、高度な教育を受けた要員のチームによって行われる。
【0021】
「コールドスタート」および他の応用の要件を満たすのに適し、スペクトル位相をプログラムする機能、したがって時間的パルス形状によって増強されるfsファイバーレーザーシステムが必要とされている。
【0022】
したがって、増幅された広帯域パルスの発生を維持することができる、信頼性の高いfsファイバーレーザーシステムがさらに必要とされている。
【0023】
モードロックfsファイバーレーザーと、プログラム可能パルス整形器と、ファイバーレーザーおよびパルス整形器の動作を制御し、調整するように動作可能なコンピュータとを単一のユニットに一体化する産業用超短レーザーユニットがさらに必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国仮特許出願第62091817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
開示された産業用超短パルスファイバーレーザーシステムは、これらのニーズを満たすのに適し、スペクトル位相および/または振幅、ならびにそれにより時間パルス形状をプログラムする機能によって増強される、信頼性の高いフェムト秒レーザーを提供する。
【0026】
このレーザーは、自己始動性があり、振動および衝撃に対する回復力を有し、好ましくは高出力フェムト秒およびピコ秒レーザーシステムのシードとして動作する。有利には、レーザーシステムは、パルスエネルギーを増大させることができる追加の電力増幅モジュールを備える。レーザー出力は完全にコヒーレントであり、パルスは変換限界(TL)まで圧縮可能である。このレーザーシステムは、静的グレーティングコンプレッサとコンパクトスペクトル位相整形器を収納しているレーザーヘッドで構成される。パルス整形器は、液晶空間光変調器(SLM)または光音響変調器(AOM)を利用して能動的位相制御を行い、これは高精細パルス圧縮さらにはパルス波形の任意の操作を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本開示の一態様により、パルス構成可能(pulse configurable)コヒーレントファイバーレーザーユニットは、強くチャープされたfs-psパルスを出力するクロスフィルタモードロック(CFML)を有するYbファイバーリング共振器を備える。開示されているユニットは、チャープパルスをTLに圧縮するように動作可能なコンプレッサと、中央処理装置(CPU)とを備えるようにさらに構成される。CPUは、CFMLの任意の所与のレジームに対するTLパルスを出力するようにコンプレッサを動作させるたにMIIPSソフトウェアを実行する。CPUは、所望のパルス形状を取得するためにTLパルスに適用される所望のマスクを取り出すためにMIIPSソフトウェアを実行する。この態様のファイバーレーザーユニットの構成および機能を特徴付ける様々な特徴があり、これらの特徴は、ユニットの動作の原理を損なわない範囲で一緒に使用されるか、もしくは個別に使用されるか、または互いとの妥当な組合せで使用され得る。
【0028】
上で開示されている態様により構成されたレーザーユニットの多くの顕著な特徴の1つは、すべての構造要素がファイバーリング共振器のそれぞれの要素と同一であるが、直線的幾何学的形で配置構成されているYbファイバー増幅器またはブースターを備える追加の増幅段を設けられている。しかしながら、ブースターの能動的ファイバーおよび受動的ファイバーは、リング共振器に比べて大きいそれぞれのファイバーコア径を有する。ブースターとリング共振器との構造的な類似性により、100nmのスペクトル線に達することができる広域スペクトルの増幅が可能になる。
【0029】
好ましくは、開示されているレーザーユニットは、リング共振器とブースターとの間に中間的または予備的Yb増幅段を有する。機能的に、50nm以下の典型的なYb利得スペクトルを有する予備的Yb増幅器は、共振器生成パルスのスペクトル幅をカットする。ブースターに直接結合される共振器生成広帯域パルスは、ファイバーが破壊されるほどの高エネルギーを獲得することができるので、これはかなり有利である。しかし、プリアンプの出力において増幅されるスペクトルが比較的短くても、これらのパルスは、パルスのスペクトル(および時間的)拡幅につながる自己位相変調非線形効果を引き起こすのに十分なエネルギーを獲得する。
【0030】
上で開示されている態様のレーザーユニットの別の顕著な特徴は、CPUとの組合せでチャープパルスの圧縮をTLにもたらすプログラム可能なコンプレッサに関係する。このコンプレッサは、線形チャープ成分の大部分を補正するように動作可能な静的コンプレッサと、残留線形チャープおよび、チャープパルスの非線形成分とも称される、非線形分散を補償するプログラム可能なパルス整形器とを備える2つの段で構成されている。本発明ユニットのキャリブレーションは、非線形チャープ成分を計算することと、非線形チャープを異符号、すなわち位相および/または振幅マスクとともに適用するようにパルス整形器を制御することとを含む。しかしながら、非線形チャープは、パルス発生器52の動作レジームが出力におけるパルス繰り返し率(PRR)を含むことに依存する。後者は、共振器の利得媒質を励起するポンプ光強度の関数であって、CPUからの信号によって制御可能であり、CPUはユーザインターフェースを介してCPUに入力された外部要求に応答してこの信号を生成する。異なる動作レジームに対応するデータを収集することは、チャープパルスをそれぞれのTLに圧縮するために必要な、CPUのメモリに記憶される、マスクのライブラリを確立するのに役立つ。
【0031】
上で開示されている態様において開示されている本発明のレーザーのさらに別の特徴により、パルス整形器は、チャープパルスをそれぞれのTLに圧縮するのに役立つだけでなく、所望の形状をTLパルスに適用するようにも制御され得る。言い換えると、(必要ならば)パルスの分散が考慮され補償された後、整形器を使用してスペクトル位相および/または振幅を変更し、それによって他の光波形を生成することが容易になる。ここでもまた、これらのマスクは、CPUのメモリに記憶されるか、または訓練を受けた要員によってその場で生成され、再び記憶されるようにできる。
【0032】
上で開示されている態様のレーザーユニットのなおもさらなる特徴は、任意の所与の用途に必要なPRRまたは/およびパルス数を修正するためにパルスピッカーを利用することに関係する。パルスピッカーは、前置増幅段とブースター段との間、またはブースター段の下流に配置されてもよい。
【0033】
本開示のさらなる態様は、本発明のパルス構成可能コヒーレントファイバーレーザーユニットを動作させる方法を含む。ユニットそれ自体のように、この方法は、すべて一緒に、または互いとの任意の可能な組合せで使用され得る様々な特徴によって特徴付けられる。
【0034】
開示されているレーザーユニットの上記のおよび他の特徴は、次の図面と併せてより容易にわかるように詳しくさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】開示されているファイバーレーザーユニットの基本構成を示すブロック図である。
図2図1の基本構成の一修正形態を示すブロック図である。
図3図1の基本構成の別の修正形態を示すブロック図である。
図4】開示されているレーザーユニットのパルス発生器を示す例示的な概略図である。
図5図1から図3のパルス発生器を示す光学的概略図である。
図6】静的コンプレッサおよび折り返し4f(folded-4f)パルス整形器を含むパルス変調器の光学的概略図である。
図7】開示されているレーザーユニットを動作させる方法によって取得される上部が平坦なパルス形状を示す図である。
図8】変換限界パルスを結果としてもたらす開示されているレーザーユニットを動作させる方法を例示する図である。
図9A】変換限界パルスを結果としてもたらす開示されているレーザーユニットを動作させる方法を例示する図である。
図9B】変換限界パルスを結果としてもたらす開示されているレーザーユニットを動作させる方法を例示する図である。
図9C】変換限界パルスを結果としてもたらす開示されているレーザーユニットを動作させる方法を例示する図である。
図10A】変換限界パルスを結果としてもたらす開示されているレーザーユニットを動作させる方法を例示する図である。
図10B】変換限界パルスを結果としてもたらす開示されているレーザーユニットを動作させる方法を例示する図である。
図10C】変換限界パルスを結果としてもたらす開示されているレーザーユニットを動作させる方法を例示する図である。
図11A図4または図5のパルス発生器の出力パルスに付加される放物線位相プロファイルマスクを示す図である。
図11B図11Aの最適化されたパルスの時間領域強度プロファイルを例示する図である。
図11C図11Bの100fs、200fs、および400fsの全幅半値最大(FWHM)パルス持続時間に対する測定された実験的自己相関関数(AFC)プロファイルを例示する図である。
図12A】パルス出力に適用される正弦波位相プロファイルマスクを除く図11Aに対応する図である。
図12B】パルス出力に適用される正弦波位相プロファイルマスクを除く図11Bに対応する図である。
図12C】パルス出力に適用される正弦波位相プロファイルマスクを除く図11Cに対応する図である。
図13A図4および図5のパルス発生器の出力パルスに適用される三次位相プロファイルマスクを例示する図である。
図13B図13Aの結果として得られるパルスの計算された強度プロファイルを示す図である。
図13C図13Bのパルスを走査した三次マスクに対する実験的第二次高調波発生を例示する図である。
図14図1図3のファイバーレーザーユニットをチューニングし、動作させる本発明の方法を表す一般的な流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、市販のコヒーレントレーザーユニット50の基本構成を例示している。後者は、受動的モードロックマスターファイバー発振器10、および任意選択で、電力ファイバー増幅器62とともに構成されているレーザー光源またはファイバーパルス発生器52を備える。したがって、発振器10および増幅器62は、発振器10をシードとするMOPFAアーキテクチャを有している。自己始動型受動モードロックファイバーシードは、最大20MHzのパルス繰り返し率で単一モード(SM)広帯域コヒーレントパルス列を出力し、各パルスが最大50nJのエネルギーおよび最大100nmの全スペクトル帯域幅を有する。たとえば、各パルスは、最大100nmのFWHM、10~15psのパルス持続時間τ、100~150mWの平均電力Pav、および少なくとも1MWのパルスエネルギーEpを有することができる。出力されるpsパルスは、各々、psパルスがファイバー媒質と相互作用するときにのみ増大する巨大チャープを伴って生成される。チャープの発生は、線形成分および非線形成分が徐々に形成されることを伴う。チャープパルスをそれぞれのTLパルスに圧縮することに至る両方のチャープ成分の補償は、線形チャープの大部分を補償するように動作可能な静的コンプレッサ56およびプログラム可能なパルス整形器54の組合せによって、または、ときには、線形チャープおよび高次分散の残り部分を扱うパルス整形器54のみによって実行され得る。パルス発生器52およびパルス整形器54は両方とも、共通のまたはそれぞれの個別のコンピュータ60によって制御可能である。静的コンプレッサ56およびパルス整形器54は、好ましくは、可撓性ケーブルによってパルス発生器モジュール52に結合され得るレーザーヘッド55に装着される。代替的に、3つすべての主要なコンポーネントが同じハウジングの中に囲まれていてよい。増幅器62は、MOPFA構成におけるブースターとして当業者には知られており、パルスエネルギーを最大500nJまで増幅できる。
【0037】
図2を参照すると、静的コンプレッサ56は、整形器54の下流に位置決めされている。静的コンプレッサは線形チャープ成分を補償するが、考慮されなければならない追加の非線形性も持ち込むことを覚えておくことが重要である。図3は、コンプレッサ56がパルス発生器52と整形器54との間に配置されているレーザーユニット50の代替的構成を示している。図2と同様に、図3の整形器54は、非線形チャープと線形チャープの残りの部分とを補償する。
【0038】
図1図3に示されているユニット50の上記の構成のどれかを選択することは、パルス発生器52によって出力されるパルスのパラメータ、およびパルス整形器54の変調度に依存する。ユニット50が、約50fsから約50psの間で変化するパルス持続時間の範囲で動作することを期待することは完全に妥当である。図1図3のどれかのレーザーユニット50は、パルス発生器52からの広帯域コヒーレントpsパルスをそれぞれのほぼTLのパルスに圧縮するように動作可能である。たとえば、発生器52が波長1030nmを中心とするガウス型のFWHM90nmの広帯域1.5psパルスを出力する場合、ユニット50の出力において約51~52fsに効果的に圧縮され得る。すべての実用的な目的に関して、後者は、理論的には、90nmのパルスの最短のパルス持続時間が50fs、さらにそれ未満であるので、TLパルスと称され得る。
【0039】
図4は、参照により全体が本明細書に組み込まれている特許文献1においてさらに詳しく開示されている自己始動型の受動的にモードロックされるレーザーとして構成されているパルス発生器52の概略図を例示している。パルス発生器52は、それぞれのファイバー増幅器12および20の出力が互いにシードとなるリング共振器10とさらに称される、マスター発振器10に基づく。第1の増幅器12および第2の増幅器20の間に、ファイバー要素の2つもしくはそれ以上の同一の群または連鎖が一緒に結合され、環状空洞10を画成する。ファイバー増幅器の他に、各連鎖は、信号のそれぞれの周期的なスペクトルおよび時間的拡幅を提供するファイバーコイル16、22、ならびに広がった信号をスペクトル的にフィルタ処理するように動作可能な狭線幅フィルタ18、24を備える。これらのフィルタは、実質的に同じ帯域幅を有するが、それぞれのスペクトルが互いに重なり合うように構成され得る。代替的に、一方のフィルタは、レーザーの自己始動を確実にするスペクトルの強制的重なりを有する他方のフィルタのバンドパスよりもせいぜい5倍広いバンドパスで構成され得る。順次スペクトル拡幅およびフィルタ処理を行う自己始動型パルス発生器52の例示されている構成は、実質的に均一の持続時間、スペクトル、および振幅を有する巨大チャープパルスの生成を引き起こす。
【0040】
リング共振器10は、導波管の周りに光の一方向誘導を提供する1つまたは複数のアイソレータ28と、それぞれのファイバーコイル16、22のすぐ下流に位置決めされている1つまたは複数の出力カプラ30とをさらに備える。出力カプラは、各々、リング共振器10の外側でチャープパルスを誘導する。増幅器の利得媒質内の所望の反転分布を強めるために、すなわち、本発明のパルス発生器の動作を開始するために、1つまたは2つのCWポンプ26がそれぞれの増幅器に結合される。上で開示されているコンポーネントはすべて、単一横モード(SM)受動的ファイバーによって相互接続される。増幅器12および20は、各々、イッテルビウム(Yb)などの、適切な希土類イオンを添加されたSMまたはMMファイバーに基づくものとしてよい。すべてのファイバーは、実質的に互いに一致するモードフィールド径(MFD)を有する実質的に均一の寸法のそれぞれのコアを有している。使用時に、例示されている方式は、非飽和始動および飽和定常状態パルス生成(モードロックされた)位相によって特徴付けられる。
【0041】
図5は、より高いパルスエネルギーを提供するために望ましい追加の光ファイバー要素とともに構成されたパルス発生器52の光学的概略図を例示している。上で述べたように、リング共振器10のすべてのファイバーは、典型的には12μmを超えない均一の小コア径を有する。それぞれのファイバーのコアは、より大きなMFDを有するSM光の伝搬を支援するように増加させ得るが、はじめの図4の概略図を通して誘導されるパルスは過度に長いのでMFDの関数としてのパルスエネルギーは発生器52の開始時にひどく高くなる可能性がある。パルスは長ければ長いほどエネルギーが高くなり空洞コンポーネントの完全性を危うくする可能性がある。
【0042】
きわめて過剰に高いパルスエネルギーを回避し、それでもリング共振器10の出力で可能な最大のパルスエネルギーを得るために、開示されたパルス発生器52は、図4の環状空洞10の直線的類似物である追加の増幅カスケード62をさらに備える。増幅カスケード62は、別個のモジュールとして提供されるか、またはリング共振器と一緒に装着されてもよく、パルス発生器52と全く同じコンポーネントをも含む。したがって、リング共振器10と同様に、追加の増幅カスケード62は、重なり合うスペクトルを有するフィルタ18、24、コンポーネントを相互接続するSM受動的ファイバー、アイソレータ30、および増幅器12、20とともに構成される。増幅カスケード62の能動的ファイバーの対向端は、それぞれの入力および出力SMファイバー22に結合され、3本のファイバーすべてが一致するコア直径を有するそれぞれのコアを有する。後者は、増幅カスケード62の上流に配置されている他のすべてのファイバーの口径よりも大きい。増幅器62の添加コアファイバーは、典型的には、ただし必ずというわけではないが、非線形効果に対するより高い閾値をもたらすように、その下流端にテーパーを付けられている。
【0043】
パルス発生器52の構成にかかわらず、開示されているユニット50は、ユニット50が超高速パルス列を出力する所望のパルス数および任意選択で周波数を制御するように動作可能であるパルスピッカー76とともに構成され得る。パルスピッカー76は、追加の増幅カスケード62の上流またはその下流のいずれかに配置される。
【0044】
図6は、2つの段、つまり図1図3の静的パルスコンプレッサ56およびパルス整形器54を含むチャープ補償機構の光学的概略図を例示している。示されている概略図において、静的パルスコンプレッサ56は、2つの伝送グレーティングG1およびG2およびルーフミラーRMを備える、静的コンプレッサによって圧縮される前に、最初に誘導ミラーM2およびM1を通って伝搬する広帯域コヒーレントチャープパルスをパルス発生器52から受け取る。静的コンプレッサの動作は、広帯域コヒーレントチャープパルスの線形チャープ成分の補正をもたらす。静的コンプレッサの機構は、レーザー技術の当業者にはよく知られており、ここではチャープパルスの線形チャープ成分と称される二次分散(SOD)を少なくとも最小化するように動作する。部分的に圧縮されたパルスは、ミラーM2からM1への最初の方向とは反対の方向にさらに伝搬する。しかしながら、静的コンプレッサはチャープパルスの非線形成分には対応できない。さらに、これは三次分散(TOD)の約0.73×10fsを加える。
【0045】
圧縮適応段、つまり折り返し4fパルス整形器54は、fsパルス整形に一般的に使用され、レーザー繰り返し率に関係なくスペクトル位相を直接操作するように線形位相変調器にレーザースペクトルを分散させることによってレーザーパルスプロファイルのさらなる精緻化を可能にする。言い換えると、パルス整形器54は、非線形チャープを扱うように動作可能である。
【0046】
パルス整形器54は、互いに平行に伝搬するいくつかのカラービームレットを含む入射ビームを形成する分散型透過グレーティングG3、コリメーティングレンズまたは二重レンズLとともに構成される。示されている赤色、青色、および緑色の平行ビームレットは、ピクセル化された線形1Dまたは2D SLMに入射する。最後に、分散されたビームは入射ビームと平行に反射されるが、反射されたビームは入射ビームレットから垂直方向に間隔を空けて並び、その一方で、グレーティングG3、ミラーM3、M4を通り、コンプレッサ機構の出力の方へ導かれ、ほぼTLパルスまたは変調された位相シフトを伴うTLパルスを得る。すべてのビーム整形光学コンポーネントが垂直平面内に位置決めされているので、コンプレッサ機構のフットプリント全体は小さい。図示されているように、コンプレッサ機構は、約300×100mmと非常にコンパクトな寸法になっている。パルス整形器54は、残留スペクトル位相を測定し、TODおよびより高次の分散を補正し、コンピュータ60によって実行される、MIIPSアルゴリズムに基づくソフトウェアを実行するコンピュータ60によって制御される。
【0047】
2D LCOS SLMが使用されるときに、「回折整形」モードを利用することによってスペクトル位相と振幅の両方を整形することができる。この実装形態において、広帯域光は、LCOS SLMの1つの軸(たとえば、水平)に沿ってスペクトル分散され、集束されるが、他の直交軸(垂直)に沿っては集束されない。平面ルールド表面グレーティングのプロファイルに類似する、周期的鋸歯位相パターンが、SLMピクセルのすべての列に沿って符号化される。レーザー光は、この符号化されたパターンによって回折される。回折光に加えられる、スペクトル位相は、SLMピクセルの列毎に独立して、周期パターンを縦軸に沿ってシフトすることによって0~2πの全範囲において変化させることができる。所与のSLMピクセル列に対する周期的位相変調の深さは、対応するスペクトル成分に対する光回折効率を決定し、それによって、整形器出力におけるレーザースペクトルを決定する。
【0048】
SLMのピクセル数によっては、たとえば400~500といった大きなピクセル数を有するSLMは、線形チャープ成分と非線形チャープ成分の両方を扱うように動作可能なので、静的コンプレッサの使用は不要となり得る。LCOS SLMに基づく図示されている折り返し4fパルス整形器の代わりに、パルス整形器はAOMまたはAOPDFに基づくものとしてよい。開示されている概略図の動作は、コンプレッサ56が線形チャープ成分を扱う前に非線形チャープ成分がパルス整形器54によって補償されるときと同じである。
【0049】
図7を参照すると、パルス整形器54は、すぐ下に開示されているように、SLMに適用される位相マスクまたはプロファイルを修正することによってTLパルスを再整形する機能も提供する。したがって、パルス整形器54は、TLパルスのほぼガウス形状とは異なる任意の形状を有するパルスを必要とする多くの産業用途において動作し得る。たとえば、図7を見るとわかるように、位相マスクは上部が平坦なパルスを形成するように変調される。事実上任意のパルス形状が、パルス整形器54およびそのソフトウェア可読媒体を利用して形成され得る。
【0050】
パルス整形機構は、開ループ制御および適応制御という2つの異なるアーキテクチャによって実現され得る。開ループ構成では、ユニットの出力における所望のパルス形状は、エンドユーザによってユーザインターフェースを介して導入される。入力パルスが既知の特性を有していることを考慮すると、所望の伝達関数は知られている。パルス整形器が正確にキャリブレートされている場合、すなわち、各ピクセルに対する波長/ピクセルおよび電圧/位相の関係が決定され、コンピュータ60のメモリに記憶されている場合、所望の伝達関数を提供するようにコンピュータ60(図1)を使用してSLMをプログラムすることは、当業者にとって難しいことではない。このアプローチでは、TLパルスに加えて、三角形、長方形、放物線、または任意の他のパルス形状を含む他の異なるパルス形状が形成され、次いでコンピュータ60のライブラリに記憶され得る。
【0051】
図8図10は、圧縮された超短パルスの持続時間、形状、および/または振幅に対する顧客の要件を満たせるように開示されているレーザーユニットをチューニングする例示的な方法を示している。特に、この方法の最終的な目標は、開示されているパルス構成可能なレーザーユニット内の位相および/または振幅を制御可能に操作することによって顧客が所望の持続時間、形状、および/または振幅の超短パルスを自由に取得できるようにすることである。たとえば、TLパルスでは、すべての周波数がロックされており、正味の0のインピーダンスを有する。この場合、図8のスペクトル位相72は、実質的に水平または平坦である。一般的に、パルス整形器は、コンピュータ60のメモリにすべて記憶されている入力帯域幅、周波数分解能、最大遅延およびその他など、多数のパラメータによって定義され得る。それに加えて、波長対ピクセル、および電圧対位相の対応関係も、図1図3のコンピュータ60のメモリに記憶される。
【0052】
開示されているレーザーユニットのチューニングは、図8に示されているようなガウス形状に近い形状のパルスがリング共振器10によって出力され、分散媒質の所望の長さを有する図1図3の概略図を通してさらに誘導されるという事実に基づく。後者は、パルス発生器52および広帯域コヒーレントチャープパルスを2段コンプレッサに誘導する送達ファイバーのコンポーネントのすべてを含む。図5の概略図が使用する場合、分散媒質は、直線的に構成されている増幅カスケード62のすべてのファイバーおよびコンポーネントも含む。受動的および能動的である、すべてのファイバーは、開示されているユニットの製造業者によって使用される標準ファイバーである。
【0053】
所与のレジーム、すなわち、ポンプ出力およびフィルタ間の重なりで動作するパルス発生器52に対するチャープの決定は、出荷されるレーザーユニットをチューニングする最初のステップである。位相が各ピクセルについて決定された後、決定されたチャープを無効にする異符号を有する値は、コンピュータ60のメモリに記憶される。
【0054】
MIIPS技術では、パルス整形器54を使用して、チャープレーザーパルスに一連の参照位相パターン72を付け、次いでこれらの参照位相パターン(チャープ)からの第二次高調波生成(SHG)応答のスペクトルを監視する。これは、パルスの位相形状を波長の関数として計算し、入力ビームのチャープを相殺するために必要な位相パターンを適用して、変換限界パルスを出力するために行われる。
【0055】
このようにして、コンピュータ60のメモリに記憶され、特定のパルスパラメータに対応し、したがってパルスの分散を補償するように構成されている、複数の異なる位相マスクおよび必要ならば振幅マスク72を含むライブラリを形成することが可能である。インターフェースを使用する使用者が、新しいポンプ出力およびフィルタの重なりによって特徴付けられる新しいパルス発生器レジームを必要とする場合、コンピュータ60は、レーザーパラメータの所望の変更をもたらす制御信号を発生する。コンピュータ60のメモリは、新しい動作レジームに対応する所望のマスクを取り出し、それを、TLパルスを受け取るようにパルス発生器の出力のところでパルスに適用するように動作可能であるソフトウェアも有している。
【0056】
上で説明されている例はTLパルスに関するものであるが、パルス整形器54は、規則的な形状および不規則な形状を含む他のパルス形状を提供することができる。規則的なパルス形状は、たとえば、上部が平坦なパルス、楕円形、所定のデューティサイクルを有するパルス列などであってよい。不規則なパルス形状は、たとえば、振幅の異なるピークを有する2ピークパルスを含み得る。コンピュータのメモリに記憶されているパルス発生器の出力のところで制御されるパルスパラメータと、これもまたメモリに記憶されている対応するマスクとの間のこのような自動的対応は、実質的に動作を円滑にし、高度に専門的な操作者の必要性をなくす。開示されているパルス整形器の出力におけるパルス形状が複雑であれば、パルス発生器の出力におけるパルスに位相マスクと振幅マスクの両方を適用する必要が生じる場合がある。たとえば、本発明のユニットの出力のところで、TLパルスの代わりに所望の持続時間の単純な上部が平坦なパルスが必要である場合、ライナーチャープのみを増加させるために異なる位相マスクを適用することによって取得され得る。しかしながら、上部が平坦なパルスの前縁および後縁の一方または両方が一定の角度および曲率を有することを要求される場合に、位相マスクと振幅マスクの両方を使用することが必要になる可能性がある。
【0057】
コンピュータ60は、所望のパルスの形状のみを知っているが、周波数領域において所望の形状を有するパルスを提供するであろう具体的なマスクに関しては手がかりを有しないユーザを助ける動作が可能であるソフトウェアを有し得る。反復法を使用することで、所望のマスクが決定され、コンピュータ60のライブラリに記憶され得る。
【0058】
図8図10を再び参照すると、最初の目標は、それぞれの図4および図5のパルス発生器52の出力における広帯域パルス70をその近いTL形状に圧縮することである。インターフェースを介して異なるチャープ72を適用するだけで、操作者は、それぞれの図9Cおよび図10Cに示されているように、どのチャープが、所望の平坦なスペクトル線および最小の変調を有するパルス70を整形器54の入力において提供するかを決定することができる。マスクが決定された後、パルス70は、ほぼTLパルスに圧縮され得る。例において、図8に赤で示されている通常のチャープは、近変換限界パルスを取得するのに最適である。図9A図9Bおよび図10A図10Bに示されている測定は、図1図3のコンプレッサへの入力から上流の異なる配置で行われる。
【0059】
図4のパルス発生器52の所望の特性は、有利には、必ずというわけではないが、信頼できる自己始動を提供するために一定のままであるが、図5の構成は、明らかに、異なるポンプ出力およびフィルタの相互位置に対応する異なる動作レジームを有するように容易に変化させられ得る。それぞれのほぼTLパルスを提供する、これらの各レジームおよび対応する位相マスクの各々は、また、ライブラリに記憶され得る。ほぼTLパルス(理論的TLパルスの7%以内)がほぼ形成されたTLパルスに振幅マスクを適用することによって最小化されるか、または完全に取り除かれ得る寄生的な低強度のピークを有するときに、これは珍しいことではない。これらのマスクは、ライブラリに記憶することができる。
【0060】
典型的には、図1図3のプログラム可能なパルス整形器54を含むレーザーシステムは、それぞれのパルス発生器およびプログラム可能な整形器を制御する2つのプロセッサまたはコンピュータとともに構成される。パルス発生器52および2段パルスコンプレッサ54、56を同時に制御することができる、図1のコンピュータ60などの、フルサイズのコンピュータを追加することで、開示されているユニットをより柔軟性のあるものにし、レーザーシステムをより効率的なものにすることができる。
【0061】
典型的には、上記の例で周辺セグメントに適用される所望の位相を含むプリセットについてそうでなければ、所望の結果を得るために、ユニットの応用技術の他の専門家に加えて物理学およびコンピュータサイエンスの博士号を持つ個人を含む専門家のチームが必要になるであろう。したがって、異なる位相マスクおよび振幅マスクに対応する、記憶されているチャープのデータベースを有する開示されているユニットは、顧客が非常に多様なタスクを効率的に実行できる固有の機会を提供する。さらに、位相マスクは、製造施設で各新しいユニットをチューニングすることを必要とするデバイス固有のものであり、これは確かに顧客にとって幸運なことである。それでも、顧客が記憶されている情報の一部ではないパルス形状を必要とする場合、以下で説明されているように、位相および/または振幅を操作し、したがってパルス形状を変調することは常に可能である。
【0062】
本発明のシステムでは、開示されている整形器を使用して、受信したチャープパルスに対するスペクトルの位相を変更し、それによって、所望の光波形またはパルス形状を生成するのは容易である。最も単純な例は、図11Aに示されているように、スペクトルの赤色と青色の部分に対するパルス持続時間、またはさらには到達時間を調整するために、線形チャープを追加する(放物線スペクトル位相マスクを適用する)ことである。図11Cは、いくつかの適用されたチャープ値に対する測定された自己相関関数(ACF)プロファイルを例示しており、これは、sech2当てはめを使用してACF幅から推定された場合に100fs、200fs、および400fsのFWHMパルス持続時間をターゲットとしている。整形器に対する位相マスクを生成するのに使用される、対応するSOD値は、それぞれ、1025nmで1900fs、3700fs、および7000fsである。後者については、図11Aは、分散補償マスクに追加された、対応する放物線位相プロファイルを示している。パルスの予想される時間領域の強度プロファイルが図11Bに示されている。正または負のチャープのいずれかが適用されてよく、SODの大きさは15000fsと高くすることができることに留意されたい。
【0063】
別の例は、TLパルスをサブパルスのバーストに再整形するための正弦波位相変調の使用である。サブパルスの数およびその相対的な大きさは、位相変調振幅に強く依存する。その時間周期(間隔)は、スペクトル位相変調の「周波数」(単位はps)に等しく、これは連続的にチューニングすることができる。図12Aのパルスバーストでは、変調振幅が0.45πに設定されており、これは、類似の大きさの3つの主サブパルスを有するパルスシーケンスをもたらす。図12Aの計算された位相マスクおよび図12Bの予想される時間領域の強度プロファイルは、パルス間の0.2psの間隔について与えられる。後者は、正弦波位相マスクの変調周波数を単純に調整することによって、高い精度で連続して調整することができる。図12Cは、パルス間の0.2ps、0.4ps、および0.8psの間隔に対する実験的なACFトレースを示している。これらは、対応するパラメータ(図示せず)に対するシミュレートされたACFプロファイルと一致している。
【0064】
言い換えると、図12A図12Cは、図12Aの正弦波位相マスクを適用することによって図12AのTLパルスを図12Cのサブパルスのバーストにわける例示的な方法を示している。正弦波位相マスクのパラメータを変更することで、各々がTLパルスに閉じられるサブパルスの数、および隣接するサブパルス間の時間遅延が制御可能に変化させられ得る。
【0065】
位相整形は、非線形光学プロセスに選択性をもたらす魅力的で可逆的な方法である。これは、図13A図13Cに示されているように、第二次高調波生成(SHG)プロセス上で例示することができる。超短レーザーパルスがTLパルスに圧縮され、薄い非線形結晶に集光されたときに、ベル型のSHGスペクトルへの支配的な寄与は、レーザースペクトル帯域幅にわたる和周波発生(SFG)に由来する。Δを任意の離調として、周波数ω+Δおよびω-Δのレーザー光子が加算されて2ωのSHG光子を生成し、それらの非線形位相φ(ω+Δ)+(ω-Δ)は離調度Δに依存しないので他の寄与と建設的に干渉し、ここで、φ(ω)はレーザーパルスのスペクトル位相である。次いで、たとえばφ(ω)∝(ω-ωなどの、適切な対称性を有する位相マスクが適用された場合、SHGスペクトルにおける周波数2ωに対応する、ωについてのみ建設的な干渉が保たれる。
【0066】
後者は、三次分散(TOD)が(周波数領域で)放物線状群遅延に対応することを思い出すことによって理解できる。ωに関して対称的な周波数、すなわちω+Δおよびω-Δにおけるスペクトル帯域は等しく遅延し、したがって、SFGプロセスを通じて2ωの周波数の信号に寄与し続ける。他のSHG周波数では、ペアになったスペクトル帯域間のタイミングがドリフトし、非線形信号への寄与が抑制される。
【0067】
実験的に、三次位相が適用されるときに狭くなったSHGスパイクが観察される。他の位相歪みがない場合、SHGピークは三次位相に対する対称点を密接に辿る。つまり、図13Aのように位相マスクの中心が1025nmであれば、SHGピークは512.5nmになると予想される。三次位相マスクの中心周波数/波長を変更することによって、2光子の励起帯域を効果的にチューニングする。TODが適用されたときの2光子ピークの強さは、圧縮パルスを使用して得られるものに類似している、すなわち、整形パルスのスペクトル帯域幅全体が2ωでの2光子遷移の方へ寄与する。
【0068】
したがって、図13A図13Cは、比較的平坦な中央領域および2つの湾曲した端部領域を有する非線形位相マスクを適用することによってTLパルスを再整形する別の例を示している。結果として得られるパルスは、図13Bに示されているように、時間的に伸長され、それに加えて、パルスは、図13Bに示されているように、最も高い強度を有する先行ピークを有する一連のピークを有するように変調される。
【0069】
そのような再整形は、マーカーまたは発光団によって物質、分子などを着色するときに、化学、生物学、および医学における複数の用途で有利に使用され得る。異なるマーカーは、それぞれの異なる波長に応答して励起され得る。たとえば、病理学的構造を探索するときに、1つの色のマーカーは健常組織に付着し、異なる色のマーカーは病理学的組織に接触していることが知られている。
【0070】
開示されているユニットは、任意の組織への損傷を回避するために低エネルギーのfsパルスを生成する動作をし得る。fsパルスは、各々約200nmの幅を有するfsパルスを有する幅の広いスペクトルによって特徴付けられる。当業者に知られているように、可視領域全体は300nm以下であり、明確に見えるスペクトル領域は200nm以下である。したがって、個々のfsパルスは、それぞれの異なる組織に対応する異なる色のマーカーを励起することができ、これは、もちろん、弁別プロセスを複雑にし、診断に影響を及ぼす。
【0071】
しかしながら、開示されているレーザーユニットは、非常に狭いスペクトル領域を選択的に励起することができるようなマスクを適用することによってこの問題を解決している。図13Aのパルスに適用された位相マスクが平坦であった場合、SHGは、図13Cに点線で示されているように、500nmから約530nmの間の単一の連続スペクトル範囲を有するであろう。しかし、開示されているユニットは、位相マスクを、たとえば、平坦なものから図13Aに示されたものへと制御可能に変化させることができるので、全く同じスペクトルであれば、図13Cにおいて異なる色のそれぞれのピークによって例示されている個々の狭いSHGスペクトル領域を有することになる。したがって、スペクトル的に近いマーカーの数が非常に多いにもかかわらず、探索されるべき組織に対応するマーカーが識別されるまで個々の応答信号強度を分析しながらマーカーを次々に選択的または連続的に励起することが可能である。
【0072】
図14は、図1図3の本発明ユニット50のチューニングおよび操作の上で開示されている方法を例示している。レーザー光源52は、利得媒質に結合されるポンプ光の強度に応じて異なる動作レジームで動作する。それぞれの動作レジームのパラメータは、コンピュータ60の区切られたメモリストレージに記憶されている。
【0073】
生成されたパルスは各々、分散媒質、すなわち、レーザー光源52を構成するすべてのファイバーおよびファイバー要素を伝搬する間に、大きな群遅延分散、すなわち巨大チャープを獲得する。巨大なチャープは、レジーム特有のものである。巨大チャープは、SODに対応する線形成分と、TODまたはより高次の分散に対応する非線形成分とを含む。両方のチャープ成分は、TLパルスを形成するように補正されるべきである。能動的位相制御は、これらの成分の補正を実現する。
【0074】
位相制御を実現する2段パルスコンプレッサは、静的コンプレッサ56およびプログラム可能パルス整形器54を備え、これらはそれぞれの線形および非線形チャープ成分を補正するように動作可能である。結果として得られるパルスはほぼTLである。しかしながら、その波形は理想的なものではなく、寄生的強度ピークを示し、これはほぼTLのパルスに振幅マスクを適用することによって抑制され得、所望のTLパルスを得るのに十分であり得る。レーザー光源のそれぞれの動作レジームに対応する位相および振幅マスクは、コンピュータの区切られたメモリ内に記憶されているライブラリを形成する。
【0075】
それぞれのレジームに対する所望のTLパルスを取得した後、それらの形状は、それぞれの動作レジームに対応する他の光波形を生成するように変更できる。これは、TLパルスに位相または位相/振幅マスクを適用することによって実現される。所望の波形が形成された後、対応するマスクは、コンピュータのメモリに記憶される。
【0076】
図示され、開示されているのは、最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものあるけれども、開示された構成および方法からの逸脱は、当業者には自然とわかるものであり、付属の請求項において定義されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく使用され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0077】
10 受動的モードロックマスターファイバー発振器、リング共振器、環状空洞
12 ファイバー増幅器、第1の増幅器
16、22 ファイバーコイル
18、24 狭線幅フィルタ
20 ファイバー増幅器、第2の増幅器
26 CWポンプ
28 アイソレータ
30 出力カプラ、アイソレータ
50 コヒーレントレーザーユニット
52 ファイバーパルス発生器、自己始動型パルス発生器、レーザー光源
54 パルス整形器、折り返し4fパルス整形器、2段パルスコンプレッサ、プログラム可能パルス整形器
55 レーザーヘッド
56 静的コンプレッサ、2段パルスコンプレッサ
60 コンピュータ
62 電力ファイバー増幅器、増幅カスケード
70 広帯域パルス
72 振幅マスク、スペクトル位相、参照位相パターン
76 パルスピッカー
G1、G2 伝送グレーティング
G3 分散型透過グレーティング
L コリメーティングレンズ、二重レンズ
M1、M2 誘導ミラー
M3、M4 ミラー
RM ルーフミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図14
【外国語明細書】