(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105479
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】CD33標的剤と共に使用するためのCD33エクソン2欠損型ドナー幹細胞
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20240730BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240730BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240730BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240730BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240730BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240730BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240730BHJP
C12N 5/0789 20100101ALN20240730BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240730BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240730BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240730BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61K39/00 H ZNA
A61K39/395 N
A61K35/17
A61K35/28
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K39/00 H
C12N15/09 110
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N5/10
C12N5/0789
C12N5/0783
C07K19/00
C07K14/705
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024076658
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2020511435の分割
【原出願日】2018-08-28
(31)【優先権主張番号】62/551,075
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー,シッドハルシャ
(72)【発明者】
【氏名】アリ,アブドゥラー,マフムード
(72)【発明者】
【氏名】ボロット,フローレンス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤および前記抗原を欠損している造血細胞集団による、血液学的悪性疾患の免疫療法を提供する。
【解決手段】造血器悪性疾患を処置する方法であって、(i)CD33を標的にする薬剤の有効量であって、前述の薬剤がCD33を結合する抗原結合断片を含む、薬剤の有効量;および(ii)変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含む造血細胞集団、を投与する工程を含む、方法とする。前述の薬剤は、抗原結合断片を含むキメラ受容体を発現する免疫細胞である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書または図面に実質的に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月28日出願の米国特許仮出願第62/551,075号(その全体が本明細書中で参考として援用される)の優先権を主張する。
【0002】
配列表の参照による援用
ASCIIテキストファイル「01001_006139_WO0_ST25.txt」(ファイルサイズ73,728キロバイト)として提出された配列表は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0003】
開示の背景
数十年にわたる努力にも関わらず、抗体またはT細胞(T細胞受容体を介する)のいずれかによる抗原認識能力を基本原理とする治効ある免疫学的がん治療は、その達成が非常に困難である(Cousin-Frankel,Science(2013)342:1432)。抗体に基づいた免疫療法は、標的抗原(例えば、Her-2増幅乳癌におけるHer-2)が腫瘍細胞中で正常細胞と比較して上方制御される症例、または腫瘍細胞が抗体または抗体-毒素抱合体(例えば、CD20に対するリツキシマブ)によって認識され得る抗原を発現する症例(Baselga et al.,Annals Oncology(2001)12:S35)における癌に対して広く使用されている。抗体に基づいた免疫療法を使用した臨床試験では、限られた数のがん型で患者の生存が改善されている(通常は標準的な化学療法と併用した場合)が、これらの効果は、しばしば、重大な安全性および有効性の懸念を伴う(Cousin-Frankel Cancer,Science(2013)342:1432)。
【0004】
有効ながんT細胞治療を臨床的に達成することはさらにより困難である(Schmitt et al.,Hum.Gene Ther.(2009)20(11):1240)。有効ながんT細胞治療は、癌細胞上の抗原に指向される高親和性を有するT細胞に依存する。キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)は、高い親和性および特異性で、かつペプチドを「提示する」ためのHLA抗原などのアクセサリー認識分子を必要とすることなく細胞上の抗原を認識するために広範に使用されている。CAR T細胞のT細胞受容体は、抗原結合性の重鎖および軽鎖と「取り替えられ」、それにより、HLAアクセサリー分子を不要にする。組換えCAR T受容体がシグナル伝達ドメインに融合され、それにより標的抗原へのCAR T受容体の結合の際にT細胞が活性化する。
【0005】
CAR T細胞の臨床での使用は範囲の狭い細胞表面抗原の標的に制限されており、がん処置における改良された新規のアプローチの必要性をさらに裏付ける。
【0006】
特に、強化化学療法(現在の標準的ケア)を受けることができない高齢の患者における予後が依然として非常に不良である(生存期間の中央値がわずか5~10ヶ月間)急性骨髄球性白血病(新)(AML)(Dohner et al.,NEJM(2015)373:1136)などの疾患に対する新規のアプローチが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の概要
本開示は、造血器悪性疾患を処置する方法であって、前述の処置を必要とする被験体に以下の:(i)CD33を標的にする薬剤の有効量であって、前述の薬剤がCD33を結合する抗原結合断片を含む、薬剤の有効量;および(ii)変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含む造血細胞集団、を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0008】
本開示は、造血器悪性疾患を処置する方法であって、前述の処置を必要とする被験体に以下の:(i)CD33を標的にする薬剤の有効量であって、前述の薬剤がCD33を結合する抗原結合断片を含む、薬剤の有効量、および(ii)変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含むように遺伝子操作されている造血細胞集団、を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0009】
造血細胞は、同種または自家であり得る。
【0010】
造血細胞は造血幹細胞であり得る。造血幹細胞はCD34+/CD33-であり得る。造血幹細胞は、骨髄細胞または末梢血単核球(PBMC)に由来し得る。
【0011】
1つの実施形態では、造血細胞は、CD33遺伝子のエクソン2中に一塩基多型(SNP)rs12459419を含む。
【0012】
造血細胞は、遺伝子操作され得る。
【0013】
造血細胞は、エクソン2を欠くCD33の成熟転写物を含み得る。造血細胞は、変異型エクソン2を有するCD33の成熟転写物を含み得る。
【0014】
1つの実施形態では、造血細胞は、IgVドメインを欠損しているCD33を含む。別の実施形態では、造血細胞は、IgVドメインを欠くCD33を含む。さらに別の実施形態では、造血細胞は、変異型IgVドメインを有するCD33を含む。
【0015】
造血細胞は、CD33を標的にする薬剤によって認識されないCD33を含み得る。
【0016】
造血細胞を、CRISPR-Cas9によって操作できる。遺伝子操作された造血細胞を、CD33の成熟転写物からエクソン2が喪失されるようにCD33をコードする内因性遺伝子を編集することによって調製できる。
【0017】
1つの実施形態では、CRISPR-Cas9操作により、SRSF2に対するエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉しCD33の成熟転写物からのエクソン2の喪失をもたらす変異が作出される。
【0018】
薬剤は、抗原結合断片を含むキメラ受容体を発現する免疫細胞であり得る。免疫細胞はT細胞であり得る。
【0019】
キメラ受容体は、以下の:
(a)ヒンジドメイン、
(b)膜貫通ドメイン、
(c)少なくとも1つの共刺激ドメイン、
(d)細胞質シグナル伝達ドメイン、または
(e)これらの組み合わせ
をさらに含み得る。
【0020】
キメラ受容体は、4-1BB、CD28、およびICOSからなる群から選択される共刺激受容体に由来する、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0021】
被験体は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、および/または多発性骨髄腫を有し得る。
【0022】
被験体は、急性骨髄球性白血病(新)、慢性骨髄性白血病(新)、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病である白血病を有し得る。
【0023】
本開示は、少なくとも一部が、系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含む薬剤(例えば、CD33を標的にするキメラ受容体を発現する免疫細胞)が、系譜特異的細胞表面抗原を発現する細胞の細胞死を選択的に引き起こすのに対して、前述の抗原を欠損する細胞(例えば、遺伝子操作された造血細胞)は抗原によって引き起こされる細胞死を回避するという発見に基づく。かかる所見に基づいて、系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤(例えば、CD33を標的にするCAR-T細胞)と、系譜特異的細胞表面抗原(例えば、CD33)を欠損する造血細胞との組み合わせを含む免疫療法が造血器悪性疾患の有効な処置方法を提供すると予想されるであろう。
【0024】
一定の実施形態では、本発明は、CD33遺伝子のエクソン2中に一塩基多型(SNP)を示すドナーHSCの利用に関する。例えば、CがTに変化したSNPrs12459419(chr19:51,225,221;hg38)は、SRSF2に対するエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉し、それは、成熟転写物からのエクソン2の喪失をもたらす。エクソン2によってコードされる領域は、CD33の細胞外領域であり、この領域は、CD33を標的にするモノクローナル抗体の大部分の結合部位である。したがって、このSNP(またはCD33成熟転写物においてエクソン2を喪失させるか、欠損型エクソン2を生じる任意のSNP)を有するHSCの利用は、系譜特異的細胞表面抗原が欠損または変異された造血細胞集団を提供し、それ故に、抗原特異的処置後に正常な造血細胞を回復できる標的化方法である。
【0025】
別の実施形態では、ゲノム操作方法(ゲノム操作を含む)が、ドナー細胞がSNPrs12459419(C>T;Ala14Val)を示すかどうかと無関係に、ドナー細胞中のESE部位を破壊するために使用され、それ故に、CD33成熟転写物中のCD33エクソン2の喪失または変異を保証する。例えば、CRISPR/Cas9システム、TALEN、ZnFタンパク質、および/または修正CRISPR/Cas9塩基編集システムを使用して、ドナー細胞におけるエクソン2スプライシングを破壊することができる(例えば、ESE部位を破壊し、かつ/またはスプライスアクセプターを操作する)。ドナー細胞由来のESE部位を破壊するためのこのCRISPR/Cas9システムは、系譜特異的細胞表面抗原が欠損または変異された造血細胞集団を提供するための代替方法であり、それ故に、抗原特異的処置後に正常な造血細胞に回復できる。したがって、この実施形態は、CD33標的剤で処置された患者に対しHSCを回復する方法である。
【0026】
したがって、本開示の実施形態は、造血器悪性疾患を処置する方法であって、前述の処置を必要とする被験体に、以下の:
(i)系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤の有効量であって、前述の薬剤が、CD33である系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含む、薬剤の有効量;および
(ii)変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含む造血細胞集団
を投与する工程を含む、方法を含む。
【0027】
さらなる実施形態では、造血細胞(例えば、造血幹細胞)は、CD33遺伝子のエクソン2中に一塩基多型(SNP)rs12459419(C>T;Ala14Val)を示す。
【0028】
なおさらなる実施形態では、SNPがSRSF2に対するエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉し、それによりCD33の成熟転写物からエクソン2が喪失される。
【0029】
さらなる実施形態では、本開示は、造血器悪性疾患を処置する方法であって、前述の処置を必要とする被験体に、以下の:
(i)系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤の有効量であって、前述の薬剤が、CD33である系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含む、薬剤の有効量および
(ii)変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含むように遺伝子操作されている造血細胞集団
を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0030】
さらなる実施形態では、CD33遺伝子は、造血細胞中でCRISPR-Cas9によって操作される。
【0031】
さらなる実施形態では、遺伝子操作された造血細胞は、CD33をコードする内因性遺伝子を、CD33の発現を消失させるか、CD33の成熟転写物からエクソン2が喪失されるように編集することによって調製される。
【0032】
別の実施形態では、CRISPR-Cas9操作により、SRSF2に対するエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉しそれによりCD33の成熟転写物からエクソン2が喪失される変異が作出される。
【0033】
なおさらなる実施形態では、CRISPR-Cas9操作により、CD33を標的にする薬剤によって認識されないCD33が得られる。
【0034】
ある実施形態では、遺伝子操作された造血細胞は、CD33をコードする内因性遺伝子を、CD33の発現を消失させるか減少させるように編集することによって調製される。
【0035】
さらなる実施形態では、内因性遺伝子は、CRISPR-Cas9によって編集される。
【0036】
本開示の別の態様は、造血器悪性疾患を処置する方法であって、前述の処置を必要とする被験体に、以下の(i)系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤の有効量であって、前述の薬剤が、系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含む、薬剤の有効量;および(ii)系譜特異的細胞表面抗原を欠損している造血細胞集団、を投与する工程を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、薬剤は、系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含むキメラ受容体を発現する免疫細胞(例えば、T細胞)であり得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞、造血細胞、またはこれらの両方は、同種または自家である。いくつかの実施形態では、造血細胞は造血幹細胞(例えば、CD34+/CD33-HSC)である。いくつかの実施形態では、造血幹細胞は、骨髄細胞または末梢血単核球(PBMC)から得ることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、タイプ2系譜特異的細胞表面抗原(例えば、CD33)である系譜特異的細胞表面抗原を結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、タイプ1系譜特異的細胞表面抗原(例えば、CD19)である系譜特異的細胞表面抗原を結合する。
【0038】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体中の抗原結合断片は、ヒトCD33またはCD19などのヒトタンパク質であり得る系譜特異的細胞表面抗原を特異的に結合する単鎖抗体断片(scFv)である。いくつかの実施形態では、scFvは、ヒトCD33に結合し、かつ配列番号12中の相補性決定部(CDR)と同一のCDRを有する重鎖可変領域および配列番号13中のCDRと同一のCDRを有する軽鎖可変領域を含む。一例を挙げれば、scFvは、配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインおよび配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0039】
キメラ受容体は、(a)ヒンジドメイン、(b)膜貫通ドメイン、(c)少なくとも1つの共刺激ドメイン、(d)細胞質シグナル伝達ドメイン、または(e)これらの組み合わせをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、GITR、HVEM、またはこれらの組み合わせの共刺激受容体に由来し得る少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28のシグナル伝達ドメインおよびICOSのシグナル伝達ドメインを含むハイブリッド共刺激ドメインである。一例を挙げれば、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメインはCD28に由来し、キメラ受容体は4-1BBまたはICOS由来の第2の共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、CD3ζ由来の細胞質シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、CD8αまたはCD28α由来のヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、CD8、CD28、またはICOS由来である、膜貫通ドメインを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、N末端からC末端の方向に、(i)系譜特異的細胞表面抗原(例えば、CD33またはCD19)に結合するscFv、CD8α由来のヒンジドメイン、CD8由来の膜貫通ドメイン、4-1BB由来の共刺激ドメイン、およびCD3ζ由来の細胞質シグナル伝達ドメイン;(ii)系譜特異的細胞表面抗原(例えば、CD33またはCD19)に結合するscFv、CD8α由来のヒンジドメイン、CD28由来の膜貫通ドメイン、CD28由来の共刺激ドメイン、およびCD3ζ由来の細胞質シグナル伝達ドメイン;または(iii)系譜特異的細胞表面抗原(例えば、CD33またはCD19)に結合するscFv、CD8α由来のヒンジドメイン、CD28由来の膜貫通ドメイン、CD28由来の第1の共刺激ドメイン、4-1BB由来の第2の共刺激ドメイン、およびCD3ζ由来の細胞質シグナル伝達ドメイン、を含む。
【0042】
本明細書中に記載のいずれかの方法では、被験体は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫を有し得る。いくつかの例では、被験体は、急性骨髄球性白血病(新)、慢性骨髄性白血病(新)、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病である、白血病を有する。
【0043】
別の態様では、本開示は、本明細書中に記載の任意のキメラ受容体をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。キメラ受容体は、CD33に結合する抗原結合断片、膜貫通ドメイン、および細胞質シグナル伝達ドメイン(CD3ζ由来の細胞質シグナル伝達ドメインなど)を含み得る。抗原結合断片(例えば、scFv断片)は、配列番号12中のCDRと同一のCDRを有する重鎖可変領域および配列番号13中のCDRと同一のCDRを有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、scFvは、配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインおよび配列番号13のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインを含む。
【0044】
本開示の他の態様は、本明細書中に提供される任意の核酸を含むベクターを提供する。本明細書中に記載の核酸によってコードされるキメラ受容体およびかかるキメラ受容体を発現する免疫細胞(例えば、T細胞)も本開示の範囲内にある。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、造血器悪性疾患を有する患者から得ることができる。
【0045】
本開示は、変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含む造血細胞(例えば、HSC)を提供する。本開示は、エクソン2を欠くか、変異型エクソン2を有するCD33の成熟転写物を含む造血細胞(例えば、HSC)を提供する。造血細胞(例えば、造血幹細胞)は、少なくとも1つのrs12459419-T対立遺伝子を保有し得る。造血細胞(例えば、造血幹細胞)は、rs12459419-T対立遺伝子(例えば、rs12459419-CT)についてホモ接合性であり得るか、rs12459419-T対立遺伝子についてヘテロ接合性であり得る。造血細胞(例えば、造血幹細胞)は、CD33成熟転写物においてエクソン2の欠失または変異型エクソン2を生じる少なくとも1つの対立遺伝子を保有し得る。いくつかの実施形態では、CD33成熟転写物中のCD33のエクソン2の全体または一部は、欠失しているか、変異している。ゲノム編集または遺伝子操作(例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casシステムが含まれる)を使用して、変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含む造血細胞(例えば、HSC)を操作することができる。
【0046】
本開示は、CD33のIgVドメインを欠損している造血細胞(例えば、HSC)を提供する。造血細胞(例えば、HSC)は、IgVドメインを欠くCD33、および/または変異型IgVドメインを有するCD33を含み得る。造血細胞(例えば、HSC)は、シアル酸を結合する能力を欠くか、野生型IgVドメインを有するCD33を有する造血細胞と比較して低下されたシアル酸結合能力を有し得る。
【0047】
配列番号52~58(表5~7)から選択される1つまたは複数のガイド配列と組み合わせてCRISPR-Cas9システムを使用することによって調製される造血細胞(例えば、HSC)も本開示に含まれる。
【0048】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、造血幹細胞(例えば、CD34+/CD33-細胞)である。
【0049】
本開示の別の態様は、遺伝子操作前に造血細胞上に存在する系譜特異的細胞表面抗原(例えば、CD33、CD19)を欠損している、遺伝子操作された造血細胞(例えば、HSC)を提供する。いくつかの実施形態では、系譜特異的細胞表面抗原をコードする内因性遺伝子の全体または一部が、例えば、ゲノム編集(例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casシステムを含む)によって欠失されている。いくつかの実施形態では、系譜特異的細胞表面抗原はCD33であり、CD33の免疫グロブリン定常(IgC)ドメインの一部が欠失されている。いくつかの実施形態では、造血細胞は、造血幹細胞(例えば、CD34+/CD33-細胞)である。
【0050】
いくつかの実施形態では、造血幹細胞は、骨髄細胞または末梢血単核球(PBMC)から得ることができる。
【0051】
本明細書中に記載の系譜特異的細胞表面抗原を欠失している細胞を産生する方法も本明細書中に提供される。本方法は、細胞を準備する工程、および(i)系譜特異的細胞表面抗原(例えば、CD33、CD19)をコードするヌクレオチド配列の一部とハイブリッド形成するCRISPR-CasシステムガイドRNA(gRNA)のヌクレオチド配列を含む核酸、および(ii)Casエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはCpf1)を細胞に導入する工程を含む。CRISPR-CasシステムgRNAおよびCasヌクレアーゼのヌクレオチド配列を含む核酸は、例えば、同一の核酸上または異なる核酸上にコードされ得るか、予め形成されたリボ核タンパク質複合体として細胞に導入することができる。いくつかの実施形態では、それに対しgRNAがハイブリッド形成するヌクレオチド配列部分は、18~22ヌクレオチドからなる。いくつかの例では、gRNAは、配列番号11または28~31のヌクレオチド配列を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、細胞は、造血幹細胞(例えば、CD34+)などの造血細胞である。
【0053】
(i)系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含む系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤;および(ii)系譜特異的細胞表面抗原を欠損している造血細胞(例えば、造血幹細胞)の集団を含むキットも本開示の範囲内にある。いくつかの実施形態では、系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤は、系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含むキメラ受容体を発現する免疫細胞である。
【0054】
さらに、本開示は、造血器悪性疾患の処置で用いる系譜特異的細胞表面抗原を標的にする任意の免疫細胞および/または系譜特異的細胞表面抗原を欠損している任意の造血細胞を含む医薬組成物;ならびに造血器悪性疾患の処置で用いる医薬の製造のための免疫細胞および造血細胞の使用を提供する。
【0055】
本開示の1つまたは複数の実施形態を、以下の説明で詳述する。本開示の他の特徴または利点は、いくつかの実施形態の詳細な説明から、および添付の特許請求の範囲からも明らかであろう。
【0056】
図面の簡単な説明
包袋は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の複写物は、請求および必要な料金の支払いによって、特許庁より提供されるであろう。
【0057】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示の一定の態様をさらに実証するために含まれており、本明細書中に示した特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することにより、より深く理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1は、タイプ0、タイプ1、タイプ2、およびタイプ3の系譜特異的抗原の例示的な図を示す。
【
図2】
図2は、タイプ0系譜特異的細胞表面抗原CD307を標的にするキメラ受容体を発現する免疫細胞を示す略図である。CD307を発現する多発性骨髄腫(MM)細胞およびCD307を発現する他の細胞(形質細胞など)は、抗CD307キメラ受容体を発現する免疫細胞の標的にされる。
【
図3】
図3は、タイプ2系譜特異的細胞表面抗原CD33を標的にするキメラ受容体を発現する免疫細胞を示す略図である。CD33を発現する急性骨髄球性白血病(新)(AML)細胞。ヒト造血幹細胞(HSC)は、CD33を欠失するように遺伝子操作されており、したがって、抗CD33キメラ受容体を発現する免疫細胞によって認識されない。HSCは、骨髄性細胞を生じることができる。
【
図4】
図4は、CRISPR/Casシステムを使用するゲノム編集を示す略図である。sgRNAは、系譜特異的細胞表面抗原のエクソンの一部とハイブリッド形成し、Cas9エンドヌクレアーゼはプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列(5’-NGG-3’)の上流を切断する。配列は、上から下に、配列番号45および46に対応する。
【
図5】
図5は、CD33を破壊するためにCRISPR/Cas9システムを使用するゲノム編集ストラテジーを示す略図である。Cas9タンパク質およびCD33を標的にするガイドRNAをコードするPX458ベクターを、K-562細胞(ヒト白血病細胞株)にヌクレオフェクトした。Cas9およびガイドRNAの細胞への送達前(上のプロット)および後(下のプロット)に抗CD33抗体を使用して前述の細胞集団に対してフローサイトメトリーを行った。ゲノム編集により、遺伝子のコード領域が欠失し、細胞表面由来のCD33が有意に減少した。
【
図6】
図6は、CD45RAを破壊するためにCRISPR/Cas9システムを使用するゲノム編集ストラテジーを示す略図である。Cas9タンパク質およびCD45RAを標的にするガイドRNAをコードするPX458ベクターを、TIB-67細網肉腫マウスマクロファージ様細胞にヌクレオフェクトした。Cas9およびガイドRNAの細胞への送達前(上のプロット)および後(下のプロット)に抗CD45RAを使用して前述の細胞集団に対してフローサイトメトリーを行った。ゲノム編集により、遺伝子のコード領域が欠失し、細胞表面由来のCD45RAが有意に減少した。
【
図7A】
図7A~7Dは、CD33を標的にする抗原結合断片を含む例示的なキメラ受容体の略図を示す。
図7A:抗CD33scFv、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、共刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインを含むCD33を標的にする一般的なキメラ受容体。
【
図7B】
図7A~7Dは、CD33を標的にする抗原結合断片を含む例示的なキメラ受容体の略図を示す。
図7B:抗CD33scFv、CD8由来のヒンジドメイン、CD8由来の膜貫通ドメイン、ならびにCD28およびCD3ζ由来の細胞内ドメインを含むCD33を標的にするキメラ受容体。
【
図7C】
図7A~7Dは、CD33を標的にする抗原結合断片を含む例示的なキメラ受容体の略図を示す。
図7C:抗CD33scFv、CD8由来のヒンジドメイン、CD8由来の膜貫通ドメイン、ならびにICOS(またはCD27、4-1BB、もしくはOX-40)およびCD3ζ由来の細胞内ドメインを含むCD33を標的にするキメラ受容体。
【
図7D】
図7A~7Dは、CD33を標的にする抗原結合断片を含む例示的なキメラ受容体の略図を示す。
図7D:抗CD33scFv、CD8由来のヒンジドメイン、CD8由来の膜貫通ドメイン、ならびにOX40、CD28、およびCD3ζ由来の細胞内ドメインを含むCD33を標的にするキメラ受容体。
【
図9A】
図9A~9Bは、空のベクターまたは抗CD33キメラ受容体をコードするベクターで形質導入したK562細胞で発現された抗CD33キメラ受容体の発現を示す。
図9A:CD3ζを認識する一次抗体を使用するウェスタンブロット。表は、試験した各キメラ受容体の推定分子量を示す。
【
図9B】
図9A~9Bは、空のベクターまたは抗CD33キメラ受容体をコードするベクターで形質導入したK562細胞で発現された抗CD33キメラ受容体の発現を示す。
図9B:抗CD33キメラ受容体に対して陽性染色される細胞集団の増加を示すフローサイトメトリー分析。
【
図10A】
図10A~10Cは、抗CD33キメラ受容体がCD33に結合することを示す。
図10A:ポンソー染色したタンパク質ゲル。レーン1,3,5:CD33分子。レーン2,4,6:CD33mol+APC抱合体。
【
図10B】
図10A~10Cは、抗CD33キメラ受容体がCD33に結合することを示す。
図10B:CD3ζを認識する一次抗体を使用するウェスタンブロット。レーン1、3、および5は、CD33分子と同時インキュベートしたキメラ受容体を含み、レーン2、4、および6は、CD33-APC抱合体と同時インキュベートしたキメラ受容体を含む。
【
図10C】
図10A~10Cは、抗CD33キメラ受容体がCD33に結合することを示す。
図10C:抗CD33キメラ受容体を発現し、CD33に結合する細胞集団の増加を示すフローサイトメトリー分析。
【
図11A】
図11A~11Bは、表示のキメラ受容体を発現するNK92細胞によるK562細胞の細胞傷害性を示す。
図11A:空のHIVzsGベクターと比較したCART1およびCART2。
【
図11B】
図11A~11Bは、表示のキメラ受容体を発現するNK92細胞によるK562細胞の細胞傷害性を示す。
図11B:空のHIVzsGベクターと比較したCART3。
【
図12A】
図12A~12Bは、表示のキメラ受容体を発現するNK92細胞によるCD33を欠損しているK562細胞の細胞傷害性(y軸に細胞傷害率として示す)を示す。
図12A:CD33標的CRISPR/Cas試薬で予め処置した未選別のK562細胞集団。
【
図12B】
図12A~12Bは、表示のキメラ受容体を発現するNK92細胞によるCD33を欠損しているK562細胞の細胞傷害性(y軸に細胞傷害率として示す)を示す。
図12B:CD33を欠損しているK562細胞の単一クローン。カラムは、左から右に、空のHIVzsGベクター、CART1、CART2、およびCART3に対応している。
【
図13A】
図13A~13Bは、初代T細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
図13A:T細胞マーカーC4
+、CD8
+、または両方CD4
+CD8
+の発現に基づいた細胞選別。
【
図13B】
図13A~13Bは、初代T細胞集団のフローサイトメトリー分析を示す。
図13B:表示の初代T細胞集団におけるCD33の相対発現。
【
図14A】
図14A~14Bは、表示のキメラ受容体を発現する初代T細胞によるK562細胞の細胞傷害性を示す。
図14A:CD4
+T細胞。
【
図14B】
図14A~14Bは、表示のキメラ受容体を発現する初代T細胞によるK562細胞の細胞傷害性を示す。
図14B:CD4
+/CD8
+(CD4/8)およびCD8
+(CD8)。
【
図15】
図15は、CRISPR/Cas9システムおよび2つの異なるgRNA(Crispr3(右上のパネル)およびCrispr5(右下のパネル))を使用するK562細胞におけるCD33編集のフローサイトメトリー分析を示す。
【
図16A】
図16A~16Cは、CD33を欠損しているK562細胞が正常な細胞増殖および赤血球生成性分化(erythropoeitic differentiation)を示すことを示す。
図16A:1日目+50μMヘミンでの表示の細胞集団のフローサイトメトリー分析。
【
図16B】
図16A~16Cは、CD33を欠損しているK562細胞が正常な細胞増殖および赤血球生成性分化(erythropoeitic differentiation)を示すことを示す。
図16B:9日目の表示の細胞集団のフローサイトメトリー分析。
【
図16C】
図16A~16Cは、CD33を欠損しているK562細胞が正常な細胞増殖および赤血球生成性分化(erythropoeitic differentiation)を示すことを示す。
図16C:MTT細胞増殖アッセイ。
【
図17A】
図17A~17Cは、CRISPR/Cas9システムおよび2つの異なるgRNA(crispr3(左下のパネル)およびcrispr5(右下のパネル))を使用するヒトCD34
+細胞におけるCD33編集のフローサイトメトリー分析を示す。
図17A:CRISPR/Cas9システムを使用するヒトCD34
+細胞におけるCD33編集のフローサイトメトリー分析。
【
図17B】
図17A~17Cは、CRISPR/Cas9システムおよび2つの異なるgRNA(crispr3(左下のパネル)およびcrispr5(右下のパネル))を使用するヒトCD34
+細胞におけるCD33編集のフローサイトメトリー分析を示す。
図17B:crispr3。
【
図17C】
図17A~17Cは、CRISPR/Cas9システムおよび2つの異なるgRNA(crispr3(左下のパネル)およびcrispr5(右下のパネル))を使用するヒトCD34
+細胞におけるCD33編集のフローサイトメトリー分析を示す。
図17C:crispr5。
【
図18】
図18は、ヒトCD34
+/CD33
+細胞と比較したヒトCD34
+/CD33
-細胞のコロニー形成を示す。カラムは、左から右に、レンチウイルス感染なし、空のベクターコントロール、crispr1、crispr3、およびcrispr5に対応している。
【
図19】
図19は、CD33のエクソン2をコードする19番染色体の重要な領域、ならびにCRISPR/Cas9法のためのPAM配列を有するガイドおよびニッカーゼスキームの概要である。ガイド配列:AGAAATTTGGATCCATAGCC(配列番号59)、AAATTTCTGGCTGCAAGTGC(配列番号60)、GTGTCCCCGGGACCGATACC(配列番号61)。
【
図20】
図20は、CD33遺伝子遺伝子座のゲノム編集を用いた場合と用いない場合の仮説上のスプライシングのシナリオを示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
開示の詳細な説明
癌細胞表面上に存在する抗原を標的にするがん免疫療法は、標的抗原が被験体の発生および/または生存に必要とされるか非常に関与する正常な非癌細胞の表面上にも存在する場合に、特に困難である。これらの抗原を標的にすることは、癌細胞に加えてかかる細胞に対しても免疫療法の細胞傷害効果が及ぶので、被験体に悪影響をもたらし得る。
【0060】
本明細書中に記載の方法、核酸、および細胞は、癌細胞上だけでなく、被験体の発生および/または生存に極めて重要な細胞上にも存在する抗原(例えば、タイプ1またはタイプ2の抗原)を標的にすることを可能にする。本方法は、(1)標的系譜特異的細胞表面抗原を保有する細胞の数を、かかる抗原を標的にする薬剤を使用して減少させること;および(2)抗原を提示ししたがって薬剤の投与によって死滅し得る正常細胞(例えば、非癌細胞)を、系譜特異的細胞表面抗原を欠損している造血細胞と置換することを含む。本明細書中に記載の方法は、目的の系譜特異的細胞表面抗原を発現する標的細胞(癌細胞を含む)の監視を維持し、かつ被験体の発生および/または生存に極めて重要であり得る前述の系譜特異的抗原を発現する非癌細胞集団の監視も維持することができる。
【0061】
したがって、系譜特異的細胞表面抗原(CD33またはCD19など)を標的にする抗原結合断片を含むキメラ受容体を発現する免疫細胞と、造血器悪性疾患を処置するための系譜特異的細胞表面抗原を欠損している造血細胞(造血幹細胞(HSC)など)との同時使用を本明細書中に記載する。キメラ受容体、かかるキメラ受容体をコードする核酸、かかるキメラ受容体を含むベクター、およびかかるキメラ受容体を発現する免疫細胞(例えば、T細胞)も本明細書中に提供する。本開示はまた、系譜特異的抗原を欠損している遺伝子操作された造血細胞(本明細書中に記載の細胞など)およびかかる細胞の作製方法(例えば、ゲノム編集法)を提供する。
【0062】
定義
用語「被験体」、「個体」、および「患者」は、互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは、ヒトなどの哺乳動物を指す。哺乳動物は、ヒト霊長類、非ヒト霊長類、またはマウス、ウシ、ウマ、イヌ、もしくはネコの種を含むが、これらに限定されない。本開示の文脈では、用語「被験体」はまた、in vitroまたはex vivoで培養できるか、in vivoで操作できる組織および細胞を含む。用語「被験体」を、用語「生物」と互換的に使用できる。
【0063】
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、および「オリゴヌクレオチド」を、互換的に使用する。これらの用語は、任意の長さのデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドまたはそのアナログのヌクレオチドのいずれかの多量体形態を指す。ポリヌクレオチドの例は、遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、エクソン、イントロン、伝令RNA(mRNA)、転移RNA、リボゾームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、短いヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマーを含むが、これらに限定されない。ポリヌクレオチド内の1つまたは複数のヌクレオチドをさらに改変することができる。ヌクレオチドの配列を、非ヌクレオチド成分で分断することもできる。ポリヌクレオチドを、標識剤との抱合などによって重合後に改変することもできる。
【0064】
用語「ハイブリッド形成」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化される複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソン・クリック型塩基対合、フーグスティーン型結合により、または任意の他の配列特異的様式で生じ得る。複合体は、二重鎖を形成する2本の鎖、多重鎖を形成する3本またはそれを超える鎖、自己ハイブリッド形成する一本鎖、またはこれらの任意の組み合わせを含み得る。ハイブリッド形成反応は、PCRの開始、または酵素によるポリヌクレオチドの切断などの、より広範な過程の一工程を構成し得る。所与の配列とハイブリッド形成できる配列は、所与の配列の「相補物」と呼ばれる。
【0065】
用語「組換え発現ベクター」は、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの発現を可能にする、遺伝子改変されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの構築物を意味し、この構築物がmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む場合に、このベクターは前述の細胞内で前述のmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを発現させるのに十分な条件下でこの細胞と接触される。本開示のベクターは、全体として天然に存在しない。一部のベクターは、天然に存在し得る。本開示の天然に存在しない組換え発現ベクターは、任意のタイプのヌクレオチド(合成されたか、一部には天然供給源から得た一本鎖または二本鎖であり得るDNAおよびRNA、ならびに天然、非天然、または変化したヌクレオチドを含み得るDNAおよびRNAを含むが、これらに限定されない)を含み得る。
【0066】
本明細書中で使用される「トランスフェクション」、「形質転換」、または「形質導入」は、物理的方法または化学的方法を使用する宿主細胞への1つまたは複数の外因性ポリヌクレオチドの導入を指す。
【0067】
「抗体」、「抗体の断片」、「抗体断片」、「抗体の機能的断片」、または「抗原結合部分」は、特異的抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数の断片または一部を意味するために互換的に使用される(Holliger et al.,Nat.Biotech.(2005)23(9):1126)。本発明の抗体は、抗体および/またはその断片であり得る。抗体断片は、Fab、F(ab’)2、scFv、ジスルフィド連結Fv、Fc、またはバリアントおよび/もしくは混合物を含む。抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、または二重得意性抗体であり得る。全ての抗体アイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMを含む)が本開示に含まれる。適切なIgGサブタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。抗体の軽鎖可変領域または重鎖可変領域は、フレームワーク領域と、その間に挟み込まれた相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3つの超可変領域とからなる。本発明の抗体または抗原結合部分のCDRは、非ヒトまたはヒト供給源に由来し得る。本発明の抗体または抗原結合部分のフレームワークは、ヒト、ヒト化、非ヒトのフレームワーク(例えば、ヒトにおける抗原性を減少させるように改変されたマウスフレームワーク)、または合成フレームワーク(例えば、コンセンサス配列)であり得る。
【0068】
本発明の抗体または抗原結合部分は、約10-7M未満、約10-8M未満、約10-9M未満、約10-10M未満、約10-11M未満、または約10-12M未満の解離定数(KD)で特異的に結合することができる。本開示の抗体の親和性を、従来の技術を使用して容易に決定できる(例えば、Scatchard et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.(1949)51:660;および米国特許第5,283,173号、同第5,468,614号、または同等物を参照のこと)。
【0069】
用語「キメラ受容体」、「キメラ抗原受容体」、または「CAR」は、本明細書を通して互換的に使用され、少なくとも細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および以下に定義の刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書中で「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)を含む組換えポリペプチド構築物を指す。Lee et al.,Clin.Cancer Res.(2012)18(10):2780;Jensen et al.,Immunol Rev.(2014)257(1):127;www.cancer.gov/about-cancer/treatment/research/car-t-cells。1つの実施形態では、刺激分子は、T細胞受容体複合体に関連するζ鎖である。1つの態様では、細胞質シグナル伝達ドメインは、少なくとも1つの以下に定義の共刺激分子に由来する1つまたは複数の機能的シグナル伝達ドメインをさらに含む。共刺激分子はまた、4-1BB(すなわち、CD137)、CD27、および/もしくはD28、またはこれらの分子の断片であり得る。別の態様では、CARは、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、および刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。CARは、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに共刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。あるいは、CARは、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに1つまたは複数の共刺激分子由来の2つの機能的シグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。CARはまた、細胞外抗原認識ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに1つまたは複数の共刺激分子由来の少なくとも2つの機能的シグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質含み得る。核酸配列によってコードされるCARの抗原認識部分は、任意の系譜特異的抗原結合抗体断片を含むことができる。抗体断片は、1つまたは複数のCDR、可変領域(またはその一部)、定常領域(またはその一部)、または前述のうちのいずれかの組み合わせを含むことができる。
【0070】
用語「シグナル伝達ドメイン」は、セカンドメッセンジャーを生成するか、かかるメッセンジャーに応答することによりエフェクターとして機能することによって定義されたシグナル伝達経路を介して細胞活動を制御するように細胞内に情報を伝達することにより作用する、タンパク質の機能的部分を指す。
【0071】
用語「ζ」あるいは「ζ鎖」、「CD3-ζ」、または「TCR-ζ」を、GenBank受入番号NP_932170、NP_000725、またはXP_011508447として提供されるタンパク質;または非ヒト種(例えば、マウス、げっ歯類、サル、および類人猿など)由来の等価な残基と定義し、「ζ刺激ドメイン」あるいは「CD3-ζ刺激ドメイン」または「TCR-ζ刺激ドメイン」を、T細胞活性化に必要な最初のシグナルを機能的に伝達するのに十分なζ鎖の細胞質ドメイン由来のアミノ酸残基と定義する。
【0072】
用語「遺伝子操作された」または「遺伝子改変された」は、遺伝子操作によって(例えば、ゲノム編集によって)操作された細胞を指す。すなわち、細胞は、前述の細胞中に天然には存在しない異種配列を含む。典型的には、異種配列を、ベクター系または細胞に核酸分子を導入するための他の手段(リポソームを含む)を介して導入する。異種核酸分子を、細胞のゲノムに組み込むことができるか、例えば、プラスミドの形態で、染色体外に存在させることができる。この用語は、遺伝子操作された単離CARポリペプチドの細胞への導入の実施形態も含む。
【0073】
用語「自家の」は、同じ個体由来の任意の材料を指し、この材料は後に、同じ個体に再度導入される。
【0074】
用語「同種の」は、材料が導入される個体と同じ種の異なる動物に由来する任意の材料を指す。1つまたは複数の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合の2またはそれを超える個体を相互に同種であるという。
【0075】
用語「細胞系譜」は、共通の祖先を有し、同じタイプの同定可能な細胞から特定の同定可能な/機能性細胞へと発達する細胞を指す。本明細書中で使用される細胞系譜は、呼吸器、前立腺、膵臓、乳房、腎臓、腸、神経、骨格、血管、肝臓、造血器、筋肉、または心臓の細胞系譜を含むが、これらに限定されない。
【0076】
用語「阻害」は、系譜特異的抗原の遺伝子の発現または機能に関して使用される場合、系譜特異的抗原の遺伝子の発現レベルまたは機能の低下を指し、ここで阻害は、遺伝子の発現または機能の干渉の結果である。阻害は、完全(発現または機能が検出不可能である場合)であり得るか、部分的であり得る。部分的阻害は、ほぼ完全な阻害~ほぼ存在しない阻害の範囲であり得る。特定の標的細胞の排除により、CAR T細胞は、特定の細胞系譜の発現全体を有効に阻害できる。
【0077】
「系譜特異的抗原を欠損している」造血細胞などの細胞は、その天然に存在する対応物(例えば、同一タイプの内因性造血細胞、または系譜特異的抗原を発現しない、すなわち、FACSなどの日常的なアッセイによって検出不可能な、細胞)と比較して系譜特異的抗原の発現レベルが実質的に低下している細胞を指す。いくつかの例では、「抗原を欠損している」細胞の系譜特異的抗原の発現レベルは、天然に存在する対応物の同じの系譜特異的抗原の発現レベルの約40%未満(例えば、30%、20%、15%、10%、5%、またはそれ未満)であり得る。本明細書中で使用される場合、用語「約」は、特定の値+/-5%を指す。例えば、約40%の発現レベルは、35%~45%の間の任意の発現量を含み得る。
【0078】
系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤
本開示の態様は、例えば、標的癌細胞上の系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤を提供する。かかる薬剤は、系譜特異的細胞表面抗原を結合し標的にする抗原結合断片を含み得る。いくつかの例では、抗原結合断片は、系譜特異的抗原に特異的に結合する単鎖抗体(scFv)であり得る。
【0079】
A.系譜特異的細胞表面抗原
本明細書中で使用される場合、用語「系譜特異的細胞表面抗原」および「細胞表面系譜特異的抗原」は、互換的に使用でき、細胞表面上に十分に存在し、かつ細胞系譜(複数可)の1つまたは複数の集団に関連する任意の抗原を指す。例えば、抗原は、細胞系譜(複数可)の1つまたは複数の集団上に存在してよく、かつ他の細胞集団の細胞表面上で不在であり得る(または低レベルで存在し得る)。
【0080】
一般に、系譜特異的細胞表面抗原を、抗原および/または抗原が存在する細胞集団が宿主生物の生存および/または発生に必要であるかどうかなどのいくつかの要因に基づいて分類できる。系譜特異的抗原の例示的なタイプのまとめを、以下の表1に提供する。
図1も参照のこと。
【0081】
【0082】
表1および
図1に示すように、タイプ0系譜特異的細胞表面抗原は、組織のホメオスタシスおよび生存に必要であり、タイプ0系譜特異的細胞表面抗原を保有する細胞型も被験体の生存に必要であり得る。したがって、タイプ0系譜特異的細胞表面抗原またはタイプ0系譜特異的細胞表面抗原を保有する細胞のホメオスタシスおよび生存における重要性を考慮すると、このカテゴリーの抗原を標的にすることは、かかる抗原およびかかる抗原を保有する細胞の阻害または除去は被験体の生存に有害であり得るので、従来のCAR T細胞免疫療法を使用して困難であり得る。したがって、系譜特異的細胞表面抗原(タイプ0系譜特異的抗原など)および/またはかかる抗原を保有する細胞型は生存に必要であり得る(例えば、それらが被験体において重要な必須の機能を果たすため)ので、この系譜特異的抗原タイプはCAR T細胞ベースの免疫療法の良い標的ではないであろう。
【0083】
タイプ0抗原と対照的に、タイプ1細胞表面系譜特異的抗原およびタイプ1細胞表面系譜特異的抗原を保有する細胞は、組織のホメオスタシスまたは被験体の生存に必要とされない。タイプ1細胞表面系譜特異的抗原を標的にしても、被験体において有害な結果をもたらす可能性は低い。例えば、CD307(正常な形質細胞上および多発性骨髄腫(MM)細胞上の両方に固有に発現されるタイプ1抗原)を標的にするように操作されたCAR T細胞は、両方の細胞型を排除するであろう(
図2)(Elkins et al.,Mol Cancer Ther.10:2222(2012))。しかし、形質細胞系譜は生物の生存のために消費されるので、CD307および他のタイプ1系譜特異的抗原は、CAR T細胞ベースの免疫療法に適切な抗原である。タイプ1クラスの系譜特異的抗原は、多種多様な異なる組織(卵巣、精巣、前立腺、乳房、子宮内膜、および膵臓を含む)で発現され得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、タイプ1抗原である細胞表面系譜特異的抗原を標的にする。
【0084】
タイプ1抗原と比較して、タイプ2抗原を標的にすることは、非常に困難である。タイプ2抗原は、以下を特徴とする抗原である:(1)この抗原は、生物の生存のために重要ではない(すなわち、生存に必要とされない)、かつ(2)この抗原を保有する細胞系譜は、生物の生存に不可欠である(すなわち、特定の細胞系譜は生存に必要とされる)。例えば、CD33は、正常な骨髄性細胞および急性骨髄球性白血病(新)(AML)細胞の両方で発現されるタイプ2抗原である(Dohner et al.,NEJM 373:1136(2015))。結果として、CD33抗原を標的にするように操作されたCAR T細胞は、正常な細胞およびAML細胞の両方を死滅させることができ、このことは被験体の生存には不適合であり得る(
図3)。いくつかの実施形態では、薬剤は、タイプ2抗原である細胞表面系譜特異的抗原を標的にする。
【0085】
本開示の方法および組成物によって多種多様な抗原を標的にすることができる。これらの抗原に対するモノクローナル抗体は、市販品を購入するか、目的の抗原での動物の免疫化後の従来のモノクローナル抗体法(例えば、上記考察のKohler and Milstein,Nature(1975)256:495の標準的な体細胞ハイブリッド形成技術)を含む、標準的な技術を使用して生成できる。抗体または抗体をコードする核酸を、任意の標準的なDNAまたはタンパク質の配列決定技術を使用して配列決定できる。
【0086】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の方法および細胞を使用して標的にされる細胞表面系譜特異的抗原は、白血球または白血球の亜集団の細胞表面系譜特異的抗原である。いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原は、骨髄性細胞に関連する抗原である。いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原は、細胞膜分化抗原(CD)である。CD抗原の例は、CD1a、CD1b、CD1c、CD1d、CD1e、CD2、CD3、CD3d、CD3e、CD3g、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8a、CD8b、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDw12、CD13、CD14、CD15、CD16、CD16b、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32a、CD32b、CD32c、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD42a、CD42b、CD42c、CD42d、CD43、CD44、CD45、CD45RA、CD45RB、CD45RC、CD45RO、CD46、CD47、CD48、CD49a、CD49b、CD49c、CD49d、CD49e、CD49f、CD50、CD51、CD52、CD53、CD54、CD55、CD56、CD57、CD58、CD59、CD60a、CD61、CD62E、CD62L、CD62P、CD63、CD64a、CD65、CD65s、CD66a、CD66b、CD66c、CD66F、CD68、CD69、CD70、CD71、CD72、CD73、CD74、CD75、CD75S、CD77、CD79a、CD79b、CD80、CD81、CD82、CD83、CD84、CD85A、CD85C、CD85D、CD85E、CD85F、CD85G、CD85H、CD85I、CD85J、CD85K、CD86、CD87、CD88、CD89、CD90、CD91、CD92、CD93、CD94、CD95、CD96、CD97、CD98、CD99、CD99R、CD100、CD101、CD102、CD103、CD104、CD105、CD106、CD107a、CD107b、CD108、CD109、CD110、CD111、CD112、CD113、CD114、CD115、CD116、CD117、CD118、CD119、CD120a、CD120b、CD121a、CD121b、CD121a、CD121b、CD122、CD123、CD124、CD125、CD126、CD127、CD129、CD130、CD131、CD132、CD133、CD134、CD135、CD136、CD137、CD138、CD139、CD140a、CD140b、CD141、CD142、CD143、CD144、CDw145、CD146、CD147、CD148、CD150、CD152、CD152、CD153、CD154、CD155、CD156a、CD156b、CD156c、CD157、CD158b1、CD158b2、CD158d、CD158e1/e2、CD158f、CD158g、CD158h、CD158i、CD158j、CD158k、CD159a、CD159c、CD160、CD161、CD163、CD164、CD165、CD166、CD167a、CD168、CD169、CD170、CD171、CD172a、CD172b、CD172g、CD173、CD174、CD175、CD175s、CD176、CD177、CD178、CD179a、CD179b、CD180、CD181、CD182、CD183、CD184、CD185、CD186、CD191、CD192、CD193、CD194、CD195、CD196、CD197、CDw198、CDw199、CD200、CD201、CD202b、CD203c、CD204、CD205、CD206、CD207、CD208、CD209、CD210a、CDw210b、CD212、CD213a1、CD213a2、CD215、CD217、CD218a、CD218b、CD220、CD221、CD222、CD223、CD224、CD225、CD226、CD227、CD228、CD229、CD230、CD231、CD232、CD233、CD234、CD235a、CD235b、CD236、CD236R、CD238、CD239、CD240、CD241、CD242、CD243、CD244、CD245、CD246、CD247、CD248、CD249、CD252、CD253、CD254、CD256、CD257、CD258、CD261、CD262、CD263、CD264、CD265、CD266、CD267、CD268、CD269、CD270、CD271、CD272、CD273、CD274、CD275、CD276、CD277、CD278、CD279、CD280、CD281、CD282、CD283、CD284、CD286、CD288、CD289、CD290、CD292、CDw293、CD294、CD295、CD296、CD297、CD298、CD299、CD300a、CD300c、CD300e、CD301、CD302、CD303、CD304、CD305、306、CD307a、CD307b、CD307c、D307d、CD307e、CD309、CD312、CD314、CD315、CD316、CD317、CD318、CD319、CD320、CD321、CD322、CD324、CD325、CD326、CD327、CD328、CD329、CD331、CD332、CD333、CD334、CD335、CD336、CD337、CD338、CD339、CD340、CD344、CD349、CD350、CD351、CD352、CD353、CD354、CD355、CD357、CD358、CD359、CD360、CD361、CD362、およびCD363を含むが、これらに限定されない。www.bdbiosciences.com/documents/BD_Reagents_CDMarkerHuman_Poster.pdf.を参照のこと。
【0087】
いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原は、CD19、CD20、CD11、CD123、CD56、CD34、CD14、CD33、CD66b、CD41、CD61、CD62、CD235a、CD146、CD326、LMP2、CD22、CD52、CD10、CD3/TCR、CD79/BCR、およびCD26である。いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原は、CD33またはCD19である。
【0088】
あるいはまたはさらに、細胞表面系譜特異的抗原は、癌抗原(例えば、癌細胞上に差分的に存在する細胞表面系譜特異的抗原)であり得る。いくつかの実施形態では、癌抗原は、組織または細胞系譜に特異的な抗原である。特定の癌タイプに関連する細胞表面系譜特異的抗原の例は、CD20、CD22(非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL))、CD52(B細胞CLL)、CD33(急性骨髄性白血病(新)(AML))、CD10(gp100)(コモン(プレB)急性リンパ球性白血病および悪性黒色腫)、CD3/T細胞受容体(TCR)(T細胞リンパ腫および白血病)、CD79/B細胞受容体(BCR)(B細胞リンパ腫および白血病)、CD26(上皮およびリンパ性の悪性疾患)、ヒト白血球抗原(HLA)-DR、HLA-DP、およびHLA-DQ(リンパ性悪性疾患)、RCAS1(婦人科癌腫、胆管腺癌、および膵臓の導管腺腫)、ならびに前立腺特異的膜抗原を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞表面抗原CD33は、AML細胞に関連する。
【0089】
B.抗原結合断片
任意の抗体またはその抗原結合断片を、本明細書中に記載の系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤の構築のために使用できる。かかる抗体または抗原結合断片を、従来の方法、例えば、ハイブリドーマテクノロジーまたは組換えテクノロジーによって調製できる。
【0090】
例えば、目的の系譜特異的抗原に特異的な抗体を、従来のハイブリドーマテクノロジーによって作製できる。KLHなどの担体タンパク質にカップリングできる系譜特異的抗原を使用して、かかる複合体に結合する抗体を生成するための宿主動物を免疫化できる。宿主動物の免疫化の経路およびスケジュールは、一般に、本明細書中にさらに記載されるように、抗体の刺激および産生のための確立された従来の技術を遵守する。マウス抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体の産生のための一般的な技術は当該分野で公知であり、本明細書中に記載されている。任意の哺乳動物被験体(ヒトまたはヒト由来の抗体産生細胞を含む)を、哺乳動物(ヒトハイブリドーマ細胞株を含む)の産生のための基本としての機能を果たすように操作できることが意図される。典型的には、宿主動物に、ある量の免疫原(本明細書中に記載の免疫原を含む)を、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、足底内、および/または皮内に接種する。
【0091】
ハイブリドーマを、Kohler,B.and Milstein,C.(1975)Nature 256:495-497の一般的な体細胞ハイブリッド形成技術またはBuck,D.W.,et al.,In Vitro,18:377-381(1982)による修正された技術を使用して、リンパ球および不死化骨髄腫細胞から調製できる。利用可能な骨髄腫株(X63-Ag8.653およびSalk Institute,Cell Distribution Center,San Diego,Calif.,USA由来の骨髄腫株を含むが、これらに限定されない)を、ハイブリッド形成で使用できる。一般に、技術は、ポリエチレングリコールなどの融合物質を使用するか、当業者に周知の電気的手段による骨髄腫細胞およびリンパ球系細胞の融合を含む。融合後に、細胞を融合培地から分離し、ヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地などの選択成長培地中で成長させて、ハイブリッド形成しなかった親細胞を排除する。血清を補足するか補足しない本明細書中に記載の任意の培地を、モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマの培養のために使用できる。細胞融合技術の代替技術として、EBV不死化B細胞を使用して、本明細書中に記載のTCR様モノクローナル抗体を産生できる。ハイブリドーマを拡大およびサブクローン化し、必要に応じて、上清を、従来の免疫アッセイ手順(例えば、放射免疫アッセイ、酵素免疫アッセイ、または蛍光免疫アッセイ)によって抗免疫原活性についてアッセイする。
【0092】
抗体の供給源として使用できるハイブリドーマは、系譜特異的抗原に結合できるモノクローナル抗体を産生する親ハイブリドーマの全ての誘導体、子孫細胞を含む。かかる抗体を産生するハイブリドーマを、公知の手順を使用して、in vitroまたはin vivoで成長させることができる。モノクローナル抗体を、必要に応じて従来の免疫グロブリン精製手順(硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、透析、クロマトグラフィ、および限外濾過など)によって、培養培地または体液から単離できる。必要に応じて、望ましくない活性(ある場合)を、例えば、固相に付着させた免疫原から作製された吸着剤上に調製物を流し、免疫原から所望の抗体を溶出するか放出させることによって除去できる。二機能性剤または誘導体化剤(例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による抱合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による抱合)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、またはR1N=C=NR(式中、RおよびR1は、異なるアルキル基である))を使用する、免疫化される種において免疫原性を示すタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤)に抱合された標的抗原または標的アミノ酸配列を含む断片での宿主動物の免疫化は、抗体集団(例えば、モノクローナル抗体)を生成できる。
【0093】
必要に応じて、目的の抗体(例えば、ハイブリドーマによって産生)を配列決定でき、次いで、ポリヌクレオチド配列を、発現または増殖のためのベクター中にクローン化できる。目的の抗体をコードする配列を、宿主細胞にてベクター中で維持でき、次いで、宿主細胞を拡大し、その後の使用のために凍結できる。代替法では、遺伝子操作のためにポリヌクレオチド配列を使用して、抗体を「ヒト化」するか、親和性(親和性の成熟)または抗体の他の特徴を改善できる。例えば、抗体を臨床試験およびヒトでの処置で使用する場合、定常領域を、免疫応答を回避するためにヒト定常領域により類似するように操作できる。系譜特異的抗原に対する親和性がより高くなるように抗体配列を遺伝子操作することが望ましいかもしれない。抗体の1つまたは複数のポリヌクレオチドを変化させても前述の抗体の標的抗原に対する結合特異性を依然として維持できることが当業者に明らかであろう。
【0094】
他の実施形態では、完全ヒト抗体を、特異的ヒト免疫グロブリンタンパク質を発現するように操作された市販のマウスを使用して得ることができる。より望ましい(例えば、完全ヒト抗体)またはより頑強な免疫応答が得られるように設計されたトランスジェニック動物を、ヒト化抗体またはヒト抗体の生成のために使用することもできる。かかるテクノロジーの例は、Amgen,Inc.(Fremont,Calif.)のXenomouse(登録商標)ならびにMedarex,Inc.(Princeton,N.J.)のHuMAb-Mouse(登録商標)およびTC Mouse(商標)である。代替法において、抗体を、ファージディスプレイまたは酵母テクノロジーによって組換えて作成できる。例えば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717;5,733,743号;および同第6,265,150;ならびにWinter et al.,(1994)Annu.Rev.Immunol.12:433-455を参照のこと。あるいは、ファージディスプレイテクノロジー(McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-553)を使用して、非免疫化ドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーからヒト抗体および抗体断片をin vitroで産生できる。
【0095】
インタクトな抗体(全長抗体)の抗原結合断片を、日常的な方法によって調製できる。例えば、F(ab’)2断片を、抗体分子のペプシン消化によって産生でき、Fab断片を、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋の還元によって生成できる。
【0096】
遺伝子操作された抗体(ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、および二重特異性抗体など)を、例えば、従来の組換えテクノロジーによって産生できる。一例を挙げれば、標的抗原に特異的なモノクローナル抗体をコードするDNAを、従来の手順を使用して(例えば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブの使用により)容易に単離しおよび配列決定できる。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源としての機能を果たす。単離されると、DNAを1つまたは複数の発現ベクター中に配置でき、次いで、本来は免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞(大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞など)にトランスフェクトして、組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成する。例えば、PCT公開番号WO87/04462号を参照のこと。DNAを次いで、例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列をマウス相同配列の代わりに置き換えること(Morrison et al.,(1984)Proc.Nat.Acad.Sci.81:6851)によるか、免疫グロブリンコード配列に非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部を共有結合により連結することによって改変できる。この様式で、標的抗原への結合特異性を有する遺伝子操作された抗体(「キメラ」抗体または「ハイブリッド」抗体など)を調製できる。
【0097】
「キメラ抗体」の産生のために開発された技術は、当該分野で周知である。例えば、Morrison et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81,6851;Neuberger et al.(1984)Nature 312,604;およびTakeda et al.(1984)Nature 314:452を参照のこと。
【0098】
ヒト化抗体を構築する方法も、当該分野で周知である。例えば、Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:10029-10033(1989)を参照のこと。一例を挙げれば、親非ヒト抗体のVHおよびVLの可変領域を、当該分野で公知の方法後に三次元分子モデリング解析に供する。次に、正確なCDR構造の形成に重要であると予想されるフレームワークアミノ酸残基を、同一の分子モデリング解析を使用して同定する。並行して、親非ヒト抗体のアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を有するヒトのVH鎖およびVL鎖を、検索クエリーとして親のVH配列およびVL配列を使用して、任意の抗体遺伝子データベースから同定する。次いで、ヒトのVHおよびVLアクセプター遺伝子を選択する。
【0099】
選択されたヒトアクセプター遺伝子内のCDR領域を、親非ヒト抗体またはその機能的バリアント由来のCDR領域と置換できる。必要に応じて、CDR領域との相互作用に重要であると予想される親鎖のフレームワーク領域内の残基(上記説明を参照のこと)を使用して、ヒトアクセプター遺伝子中の対応する残基を置換できる。
【0100】
単鎖抗体を、組換えテクノロジーを用いて、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を連結することによって調製できる。好ましくは、可動性リンカーを、2つの可変領域の間に組み込む。あるいは、単鎖抗体の産生について記載の技術(米国特許第4,946,778号および同第4,704,692号)を採用してファージまたは酵母scFvライブラリーを産生でき、系譜特異的抗原に特異的なscFvクローンを、日常的な手順後にライブラリーから同定できる。陽性クローンをさらなるスクリーニングに供して、系譜特異的抗原に結合するクローンを同定できる。
【0101】
いくつかの例では、目的の系譜特異的抗原はCD33であり、抗原結合断片はCD33(例えば、ヒトCD33)を特異的に結合する。抗ヒトCD33抗体の例示的な重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列および核酸配列を、以下に提供する。アミノ酸配列中のCDR配列を、下線を引いた太字で示す。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0102】
本明細書中に記載のCD33を標的にする薬剤の構築で用いる抗CD33抗体結合断片は、配列番号12および配列番号13と同一の重鎖および/または軽鎖CDR領域を含み得る。かかる抗体は、1つまたは複数のフレームワーク領域中のアミノ酸残基変異を含み得る。いくつかの例では、抗CD33抗体断片は、配列番号12と少なくとも70%の配列同一性(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれを超える)を有する重鎖可変領域を含みおよび/または配列番号13と少なくとも70%の配列同一性(例えば、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれを超える)を有する軽鎖可変領域を含み得る。
【0103】
2つのアミノ酸配列の「同一率」を、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993にあるように修正されたKarlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを使用して決定する。かかるアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLASTタンパク質検索を、XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を使用して実行して、本開示のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得ることができる。2配列間にギャップが存在する場合、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載のギャップありBLASTを利用できる。BLASTおよびギャップありBLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用できる。
【0104】
C.キメラ受容体を発現する免疫細胞
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤は、系譜特異的抗原(例えば、CD33またはCD19)に結合できる抗原結合断片(例えば、単鎖抗体)を含むキメラ受容体を発現する免疫細胞である。キメラ受容体の抗原結合断片によってその細胞表面上に系譜特異的抗原を有する標的細胞(例えば、癌細胞)が認識されると、キメラ受容体のシグナル伝達ドメイン(複数可)(例えば、共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または細胞質シグナル伝達ドメイン)に活性化シグナルが伝達され、それはキメラ受容体を発現する免疫細胞におけるエフェクター機能を活性化できる。
【0105】
本明細書中で使用される場合、キメラ受容体は、宿主細胞表面上で発現され細胞表面系譜特異的抗原に結合する抗原結合断片を含む天然に存在しない分子を指す。一般に、キメラ受容体は、異なる分子に由来する少なくとも2つのドメインを含む。本明細書中に記載の抗原結合断片に加えて、キメラ受容体は、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、少なくとも1つの共刺激ドメイン、および細胞質シグナル伝達ドメインの1つまたは複数をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、N末端からC末端の方向に、細胞表面系譜特異的抗原、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質シグナル伝達ドメインに結合する抗原結合断片を含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、少なくとも1つの共刺激ドメインをさらに含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のキメラ受容体は、抗原結合断片と膜貫通ドメインの間に存在し得るヒンジドメインを含む。ヒンジドメインは、タンパク質の2ドメイン間に一般に見いだされ、相互に比較してタンパク質の可撓性およびドメインの一方または両方の運動性を付与し得るアミノ酸セグメントである。キメラ受容体の別のドメインと比較して抗原結合断片にかかる可撓性および運動性を付与する任意のアミノ酸配列を使用できる。
【0107】
ヒンジドメインは、約10~200アミノ酸(例えば、15~150アミノ酸、20~100アミノ酸、または30~60アミノ酸)を含み得る。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、約10、11、12、13、14,15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200アミノ酸長であり得る。
【0108】
いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、天然に存在するタンパク質のヒンジドメインである。ヒンジドメインを含むことが当該分野で公知の任意のタンパク質のヒンジドメインは、本明細書中に記載のキメラ受容体での使用に適合する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、天然に存在するタンパク質のヒンジドメインの少なくとも一部であり、キメラ受容体に可撓性を付与する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αまたはCD28αのヒンジドメインである。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、CD8αのヒンジドメインの一部であり、例えば、CD8αまたはCD28αのヒンジドメインの少なくとも15(例えば、20、25、30、35、または40)の連続するアミノ酸を含む断片である。
【0109】
抗体(IgG、IgA、IgM、IgE、またはIgD抗体など)のヒンジドメインはまた、本明細書中に記載のキメラ受容体での使用に適合する。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体の定常ドメインCH1およびCH2を連結するヒンジドメインである。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメインであり、抗体のヒンジドメインおよび抗体の1つまたは複数の定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメインおよび抗体のCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、抗体のヒンジドメインならびに抗体のCH2およびCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG、IgA、IgM、IgE、またはIgD抗体である。いくつかの実施形態では、抗体はIgG抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4抗体である。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域ならびにCH2およびCH3定常領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジ領域は、IgG1抗体のヒンジ領域およびCH3定常領域を含む。
【0110】
天然に存在しないペプチドであるヒンジドメインを含むキメラ受容体も本開示の範囲内にある。いくつかの実施形態では、Fc受容体の細胞外リガンド結合ドメインのC末端と膜貫通ドメインのN末端の間のヒンジドメインは、(GlyxSer)nリンカー(式中、xおよびnは、独立して、3と12の間の整数(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、またはそれを超える整数を含む)であり得る)などの、ペプチドリンカーである。
【0111】
本明細書中に記載のキメラ受容体のヒンジドメインで使用できるさらなるペプチドリンカーは当該分野で公知である。例えば、Wriggers et al.Current Trends in Peptide Science(2005)80(6):736-746およびPCT公開WO2012/088461号を参照のこと。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のキメラ受容体は、膜貫通ドメインを含み得る。キメラ受容体で用いる膜貫通ドメインは、当該分野で公知の任意の形態であり得る。本明細書中で使用される場合、「膜貫通ドメイン」は、細胞膜、好ましくは真核細胞膜内で熱力学的に安定な任意のタンパク質構造を指す。本明細書中で使用されるキメラ受容体での使用に適合する膜貫通ドメインを、天然に存在するタンパク質から得ることができる。あるいは、膜貫通ドメインは、合成の天然に存在しないタンパク質セグメント(例えば、細胞膜中で熱力学的に安定な疎水性タンパク質セグメント)であり得る。
【0113】
膜貫通ドメインは、膜貫通ドメイントポロジー(膜貫通ドメインの膜通過数およびタンパク質の配向を含む)に基づいて分類される。例えば、1回貫通タンパク質は細胞膜を1回通過し、複数回貫通膜タンパク質は、細胞膜を少なくとも2回(例えば、2、3、4、5、6、7、またはそれを超える回数)通過する。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、1回貫通膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、キメラ受容体のN末端が細胞の細胞外側に配向し、キメラ受容体のC末端が細胞の細胞内側に配向する1回貫通膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、1回貫通膜貫通タンパク質から得られる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはCD8αの膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、ICOSの膜貫通ドメインである。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のキメラ受容体は、1つまたは複数の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。用語「共刺激シグナル伝達ドメイン」は、本明細書中で使用される場合、エフェクター機能などの免疫応答を誘導するように細胞内のシグナル伝達を媒介するタンパク質の少なくとも一部を指す。本明細書中に記載のキメラ受容体の共刺激シグナル伝達ドメインは、シグナルを伝達し、免疫細胞(T細胞、NK細胞、マクロファージ、好中球、または好酸球など)によって媒介される応答を調整する、共刺激タンパク質由来の細胞質シグナル伝達ドメインであり得る。
【0115】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、1つを超える(少なくとも2、3、4、またはそれを超える)共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、異なる共刺激タンパク質から得られる1つを超える共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、共刺激シグナル伝達ドメインを含まない。
【0116】
一般に、多数の免疫細胞は、細胞の増殖、分化、および生存を促進し、細胞のエフェクター機能を活性化するために、抗原特異的シグナルの刺激に加えて、共刺激を必要とする。宿主細胞(例えば、免疫細胞)における共刺激シグナル伝達ドメインの活性化は、サイトカインの産生および分泌、食作用性、増殖、分化、生存、および/または細胞傷害性を増加または減少させるように細胞を誘導できる。任意の共刺激タンパク質の共刺激シグナル伝達ドメインは、本明細書中に記載のキメラ受容体での使用に適合し得る。共刺激シグナル伝達ドメインのタイプ(複数可)は、キメラ受容体を発現すると考えられる免疫細胞のタイプ(例えば、初代T細胞、T細胞株、NK細胞株)および所望の免疫エフェクター機能(例えば、細胞傷害性)などの要因に基づいて選択される。キメラ受容体で用いる共刺激シグナル伝達ドメインの例は、共刺激タンパク質(CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、Cd40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3を含むが、これらに限定されない)の細胞質シグナル伝達ドメインであり得る。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、4-1BB、CD28、またはICOSに由来する。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインはCD28に由来し、キメラ受容体は、4-1BBまたはICOS由来の第2の共刺激ドメインを含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、1つを超える共刺激ドメインまたは1つを超える共刺激ドメインの一部を含む融合ドメインである。いくつかの実施形態では、共刺激ドメインは、CD28およびICOS由来の共刺激ドメインの融合物である。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載のキメラ受容体は、細胞質シグナル伝達ドメインを含む。任意の細胞質シグナル伝達ドメインを、本明細書中に記載のキメラ受容体で使用できる。一般に、細胞質シグナル伝達ドメインは、シグナル(細胞外リガンド結合ドメインのそのリガンドとの相互作用など)を中継して、細胞のエフェクター機能(例えば、細胞傷害性)の誘導などの細胞応答を刺激する。
【0119】
当業者に明らかなように、T細胞活性化に関与する要因は、細胞質シグナル伝達ドメインの免疫受容体免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)のリン酸化である。当該分野で公知の任意のITAM含有ドメインを使用して、本明細書中に記載のキメラ受容体を構築できる。一般に、ITAMモチーフは、6~8アミノ酸で分離されたアミノ酸配列YxxL/I(式中、各xは、独立して、任意のアミノ酸である)の2つのリピートを含んでよく、保存モチーフYxxL/Ix(6-8)YxxL/Iを産生する。いくつかの実施形態では、細胞質シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来する。
【0120】
例示的なキメラ受容体を、以下の表2および表3に提供する。
【0121】
【0122】
キメラ受容体の構築のための例示的な成分の核酸配列を以下に提供する。
【化5】
【化6】
【化7】
【0123】
いくつかの実施形態では、核酸配列は、CD33に結合し、かつ配列番号12のCDRと同一のCDRを有する重鎖可変領域および配列番号13のCDRと同一のCDRを有する軽鎖可変領域を含む抗原結合断片をコードする。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、配列番号12によって提供される重鎖可変領域および配列番号13によって提供される軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、少なくとも膜貫通ドメインおよび細胞質シグナル伝達ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、ヒンジドメインおよび/または共刺激シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0124】
表3は、本明細書中に記載の例示的なキメラ受容体を提供する。例示的な構築物は、N末端からC末端に、抗原結合断片、膜貫通ドメイン、および細胞質シグナル伝達ドメインを有する。いくつかの例では、キメラ受容体は、抗原結合断片と膜貫通ドメインの間に存在するヒンジドメインをさらに含む。いくつかの例では、キメラ受容体は、膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインの間に存在し得る1つまたは複数の共刺激ドメインをさらに含む。
【0125】
【0126】
上記の表3に列挙した例示的なキメラ受容体のアミノ酸配列を、以下に提供する:
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【0127】
上記の表3に列挙した例示的なキメラ受容体の核酸配列を、以下に提供する:
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【0128】
本明細書中に記載の任意のキメラ受容体を、組換えテクノロジーなどの日常的な方法によって調製できる。本明細書中のキメラ受容体を調製する方法は、キメラ受容体の各ドメイン(抗原結合断片および、任意選択的に、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達ドメイン、および細胞質シグナル伝達ドメインを含む)を含むポリペプチドをコードする核酸の生成を含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の各成分をコードする核酸は、組換えテクノロジーを使用して相互に連結される。
【0129】
キメラ受容体の各成分の配列を、日常的なテクノロジー(例えば、当該分野で公知の種々の供給源の任意の1つ由来のPCR増幅)から得ることができる。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の1つまたは複数の成分の配列を、ヒト細胞から得る。あるいは、キメラ受容体の1つまたは複数の成分の配列を合成できる。各成分(例えば、ドメイン)の配列を、PCR増幅またはライゲーションなどの方法を使用して直接または間接的に(例えば、ペプチドリンカーをコードする核酸配列を使用して)連結して、キメラ受容体をコードする核酸配列を形成できる。あるいは、キメラ受容体をコードする核酸を合成できる。いくつかの実施形態では、核酸はDNAである。他の実施形態では、核酸はRNAである。
【0130】
各成分の配列の連結前または連結後のキメラ受容体の1つまたは複数の成分(例えば、抗原結合断片など)内の1つまたは複数の残基の変異。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の成分の1つまたは複数を、標的の成分(例えば、標的抗原の抗原結合断片)の親和性を調整(増加または減少)し、および/または成分の活性を調整するように変異させることができる。
【0131】
本明細書中に記載の任意のキメラ受容体を、従来のテクノロジーによって発現に適切な免疫細胞中に導入できる。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、初代T細胞またはT細胞株などのT細胞である。あるいは、免疫細胞は、樹立NK細胞株(例えば、NK-92細胞)などのNK細胞であり得る。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、CD8(CD8+)またはCD8およびCD4(CD8+/CD4+)を発現するT細胞である。いくつかの実施形態では、T細胞は、樹立T細胞株のT細胞(例えば、293T細胞またはJurkat細胞)である。
【0132】
初代T細胞を、末梢血単核球(PBMC)、骨髄、脾臓、リンパ節、胸腺、または腫瘍組織などの組織など、任意の供給源から得ることができる。所望の免疫細胞型を得るのに適切な供給源は、当業者に自明であろう。いくつかの実施形態では、免疫細胞集団は、患者から得た骨髄由来またはPBMC由来など、造血器悪性疾患を有するヒト患者に由来する。いくつかの実施形態では、免疫細胞集団は、健康なドナーに由来する。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、キメラ受容体を発現する免疫細胞がその後に投与される被験体から得られる。そこから細胞が得られた同じ被験体に投与される免疫細胞が自家細胞と呼ばれるのに対して、免疫細胞が投与される被験体ではない被験体から得られる免疫細胞は同種異系細胞と呼ばれる。
【0133】
所望の宿主細胞型を、刺激分子と細胞を共インキュベーションすることにより得られた細胞の集団内で拡大でき、例えば、T細胞の拡大のために抗CD3抗体および抗CD28抗体を使用できる。
【0134】
本明細書中に記載の任意のキメラ受容体構築物を発現する免疫細胞を構築するために、キメラ受容体構築物の安定発現または一過性発現のための発現ベクターを、本明細書中に記載の従来の方法を介して構築し、免疫宿主細胞に導入できる。例えば、キメラ受容体をコードする核酸を、適切な発現ベクター(適切なプロモーターに作動可能に連結されるウイルスベクターなど)中にクローン化できる。核酸およびベクターを適切な条件下で制限酵素と接触させて、相互に対合できリガーゼを用いて連結できる各分子上の相補性末端を作出できる。あるいは、合成核酸リンカーを、キメラ受容体をコードする核酸の末端にライゲートできる。合成リンカーは、ベクター中の特定の制限部位に対応する核酸配列を含み得る。発現ベクター/プラスミド/ウイルスベクターの選択は、キメラ受容体発現のための宿主細胞型に依存するであろうが、真核細胞での取り込みおよび複製に適切であるべきである。
【0135】
種々のプロモーターを、本明細書中に記載のキメラ受容体の発現のために使用でき、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)中初期プロモーター、ウイルスLTR(ラウス肉腫ウイルスLTR、HIV-LTR、HTLV-1 LTR、Maloneyマウス白血病ウイルス(MMLV)LTR、骨髄増殖性(myeoloproliferative)肉腫ウイルス(MPSV)LTR、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)LTRなど)、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、単純ヘルペスtkウイルスプロモーター、EF1-αイントロンを含むか含まない伸長因子1-α(EF1-α)プロモーターを含むが、これらに限定されない。キメラ受容体発現のためのさらなるプロモーターは、免疫細胞中で構成性に活性な任意のプロモーターを含む。あるいは、免疫細胞内での発現を調整できるような任意の制御可能なプロモーターを使用できる。
【0136】
さらに、ベクターは、例えば、以下のいくつかまたは全てを含み得る:宿主細胞中で安定なまたは一過性のトランスフェクタントを選択するためのネオマイシン遺伝子などの選択マーカー遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMVの最初期遺伝子由来のエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV40由来の転写終結およびRNAプロセシングシグナル;α-グロビンまたはβ-グロビンのような高発現遺伝子由来のmRNA安定性および翻訳効率のための5’-および3’-非翻訳領域;適切なエピソーム複製のためのSV40ポリオーマ複製起点およびColE1;内部リボソーム結合部位(IRES)、多用途多重クローニング部位;センスRNAおよびアンチセンスRNAのin vitro転写のためのT7プロモーターおよびSP6 RNAプロモーター;誘発された場合にベクターを保有する細胞を死滅させる「自殺スイッチ」または「自殺遺伝子」(例えば、HSVチミジンキナーゼ、iCasp9などの誘導性カスパーゼ)、およびキメラ受容体の発現を評価するためのレポーター遺伝子。以下のセクションVIを参照のこと。導入遺伝子を含むベクターの産生に適切なベクターおよび方法は、当該分野で周知であり、かつ利用可能である。キメラ受容体の発現のためのベクターの調製例を、例えば、米国特許出願公開第2014/0106449号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に見出すことができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体構築物または前述のキメラ受容体をコードする核酸は、DNA分子である。いくつかの実施形態では、キメラ受容体構築物または前述のキメラ受容体をコードする核酸はDNAベクターであり、免疫細胞に電気穿孔され得る(例えば、Till,et al.Blood(2012)119(17):3940-3950を参照のこと)。いくつかの実施形態では、キメラ受容体をコードする核酸はRNA分子であり、RNA分子は、免疫細胞に電気穿孔され得る。
【0138】
本明細書中に記載のキメラ受容体構築物をコードする核酸配列を含む任意のベクターも、本開示の範囲内にある。かかるベクターを、適切な方法によって宿主免疫細胞などの宿主細胞中に送達できる。免疫細胞へのベクターの送達方法は、当該分野で周知であり、DNA、RNA、もしくはトランスポゾンのエレクトロポレーション、DNA、RNA、もしくはトランスポゾンを送達させるためのトランスフェクション試薬(リポソームまたはナノ粒子など);機械的変形によるDNA、RNA、もしくはトランスポゾンもしくはタンパク質の送達(例えば、Sharei et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2013)110(6):2082-2087を参照のこと);またはウイルス形質導入を含み得る。いくつかの実施形態では、キメラ受容体の発現用ベクターは、ウイルス形質導入によって宿主細胞に送達される。例示的なウイルス送達方法は、組換えレトロウイルス(例えば、PCT公開番号WO90/07936号;WO94/03622号;WO93/25698号;WO93/25234号;WO93/11230号;WO93/10218号;WO91/02805号;米国特許第5,219,740号および同第4,777,127号;英国特許第2,200,651号;および欧州特許第0345242号を参照のこと)、アルファウイルスベースのベクター、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、PCT公開番号WO94/12649号、WO93/03769号;WO93/19191号;WO94/28938号;WO95/11984号、およびWO95/00655号を参照のこと)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、キメラ受容体発現用のベクターは、レトロウイルスである。いくつかの実施形態では、キメラ受容体発現用のベクターは、レンチウイルスである。いくつかの実施形態では、キメラ受容体発現用のベクターは、アデノ随伴ウイルスである。
【0139】
ウイルスベクターを使用してキメラ受容体をコードするベクターを宿主細胞に導入する例では、免疫細胞に感染できかつベクターを保有するウイルス粒子を、当該分野で公知の任意の方法によって産生でき、前述の方法を、例えば、PCT出願番号WO1991/002805A2号、WO1998/009271A1号、および米国特許第6,194,191号に見出すことができる。ウイルス粒子を細胞培養上清から採取し、単離および/または精製後にウイルス粒子を免疫細胞と接触させることができる。
【0140】
本明細書中に記載の任意のキメラ受容体を発現する宿主細胞の調製方法は、ex vivoで免疫細胞を活性化および/または拡大する工程を含み得る。宿主細胞の活性化は、宿主細胞がエフェクター機能(例えば、細胞傷害性)を発揮できるかもしれない活性状態に宿主細胞を刺激することを意味する。宿主細胞を活性化する方法は、キメラ受容体の発現のために使用される宿主細胞の型に依存するであろう。宿主細胞の拡大は、キメラ受容体を発現する細胞の数を増加させる任意の方法を含み、例えば、宿主細胞を増殖させるか、宿主細胞を増殖するよう刺激する。宿主細胞の拡大を刺激する方法は、キメラ受容体の発現のために使用される宿主細胞の型に依存し、この方法は当業者に明らかであろう。いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の任意のキメラ受容体を発現する宿主細胞は、被験体への投与前にex vivoで活性化および/または拡大される。
【0141】
いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原を標的にする薬剤は、抗体薬物抱合体(ADC)である。当業者に明らかなように、用語「抗体薬物抱合体」は、「免疫毒素」と互換的に使用でき、毒素または薬物の分子に抱合された抗体(またはその抗原結合断片)を含む融合分子を指す。抗体の対応する抗原への結合により、細胞表面上に抗原を提示する細胞(例えば、標的細胞)に毒素または薬物の分子が送達され、それにより、標的細胞の死滅をもたらす。
【0142】
いくつかの実施形態では、薬剤は抗体薬物抱合体である。いくつかの実施形態では、抗体薬物抱合体は、抗原結合断片および標的細胞において細胞傷害性を誘導する毒素または薬物を含む。いくつかの実施形態では、抗体薬物抱合体は、タイプ2抗原を標的にする。いくつかの実施形態では、抗体薬物抱合体は、CD33またはCD19を標的にする。
【0143】
いくつかの実施形態では、抗体薬物抱合体の抗原結合断片は、配列番号12によって提供される重鎖可変領域と同一の重鎖CDRおよび配列番号13によって提供される軽鎖可変領域と同一の軽鎖CDRを有する。いくつかの実施形態では、抗体薬物抱合体の抗原結合断片は、配列番号12によって提供される重鎖可変領域および配列番号13によって提供される同一の軽鎖可変領域を有する。
【0144】
抗体薬物抱合体での使用に適合する毒素または薬物は、当該分野で周知であり、当業者に自明であろう。例えば、Peters et al.Biosci.Rep.(2015)35(4):e00225を参照のこと。いくつかの実施形態では、抗体薬物抱合体は、抗体および薬物の分子に付着するリンカー(例えば、切断可能なリンカーなどのペプチドリンカー)をさらに含み得る。
【0145】
本明細書中に記載のADCを、本明細書中に記載の併用療法を受けている被験体に対する継続処置として使用できる。
【0146】
系譜特異的細胞表面抗原を欠損している造血細胞
本開示はまた、系譜特異的細胞表面抗原を欠損するように遺伝子改変されているHSCなどの造血細胞を提供する。いくつかの実施形態では、造血細胞は造血幹細胞である。造血幹細胞(HSC)は、骨髄系前駆細胞およびリンパ球系前駆細胞の両方を生成でき、これらの前駆細胞は、骨髄性細胞(例えば、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、樹状細胞、赤血球、血小板など)およびリンパ球系細胞(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞など)をそれぞれさらに生成できる。HSCは細胞表面マーカーCD34(例えば、CD34+)の発現(これをHSCの同定および/または単離に使用できる)およびある細胞系譜への拘束に関連する細胞表面マーカーが存在しないことを特徴とする。
【0147】
いくつかの実施形態では、HSCは、哺乳動物被験体などの被験体から得られる。いくつかの実施形態では、哺乳動物被験体は、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、マウスまたはラット)、ウシ、ブタ、ウマ、または家畜である。いくつかの実施形態では、HSCは、ヒト患者(造血器悪性疾患を有するヒト患者など)から得られる。いくつかの実施形態では、HSCは、健康なドナーから得られる。いくつかの実施形態では、HSCは、キメラ受容体を発現する免疫細胞がその後に投与される被験体から得られる。そこから細胞が得られる同じ被験体に投与されるHSCが自家細胞と呼ばれるのに対して、HSCが投与される被験体ではない被験体から得られるHSCは同種異系細胞と呼ばれる。
【0148】
HSCを、当該分野で公知の従来の手段を使用して、任意の適切な供給源から得ることができる。いくつかの実施形態では、HSCは、被験体由来の試料(骨髄試料など)または血液試料から得られる。あるいはまたはさらに、HSCを、臍帯から得ることができる。いくつかの実施形態では、HSCは、骨髄または末梢血単核球(PBMC)に由来する。一般に、骨髄細胞を、被験体の腸骨稜、大腿骨、脛骨、脊椎、肋骨、または他の骨髄腔から得ることができる。骨髄を、患者から採取し、当該分野で公知の種々の分離手順および洗浄手順によって単離できる。例示的な骨髄細胞の単離手順は、以下の工程を含む:a)骨髄試料の抽出;b)骨髄懸濁液の3つの画分への遠心分離による分離および中間画分(すなわち、バフィーコート)の収集;c)工程(b)由来のバフィーコート画分を分離液(一般に、Ficoll(商標))中で再度遠心分離し、骨髄細胞を含む中間の画分を収集すること;およびd)再輸液可能な骨髄細胞の回収のために工程(c)由来の収集した画分を洗浄すること。
【0149】
HSCは典型的には、骨髄中に存在するが、末梢血からHSCを採取するために動員剤を投与することにより循環血中に動員できる。いくつかの実施形態では、そこからHSCを得る被験体に、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などの動員剤を投与する。動員剤を用いる動員後のHSCの収集数は典型的には、動員剤を使用せずに得られる細胞数より多い。
【0150】
いくつかの実施形態では、試料を被験体から得、次いで、所望の細胞型(例えば、CD34+/CD33-細胞)を富化する。例えば、本明細書中に記載のように、PBMCおよび/またはCD34+造血細胞を血液から単離できる。細胞を、例えば、所望の細胞型の細胞表面上のエピトープに結合する抗体を用いる単離および/または活性化によって、他の細胞から単離することもできる。使用できる別の方法は、受容体連結による細胞の活性化を用いずに特定の細胞を選択的に富化させるための細胞表面マーカーに対する抗体を使用するネガティブ選択を含む。
【0151】
HSC集団を、系譜特異的細胞表面抗原が欠損するようにHSCを遺伝子操作する前または後に拡大できる。細胞を、幹細胞因子(SCF)、Flt-3リガンド(Flt3L)、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン3(IL-3)、またはインターロイキン6(IL-6)などの、1つまたは複数のサイトカインを含む拡大培地を含む条件下で培養できる。細胞を、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25日間または必要に応じた任意の範囲の日数で拡大できる。いくつかの実施形態では、HSCを、被験体から得た試料からの所望の細胞集団(例えば、CD34+/CD33-)の単離後かつ遺伝子操作前に拡大する。いくつかの実施形態では、HSCを遺伝子操作後に拡大し、それにより遺伝子改変を受けておりかつ系譜特異的細胞表面抗原を欠損している細胞を選択的に拡大する。いくつかの実施形態では、遺伝子改変後に所望の特徴(例えば、表現型または遺伝子型)を有するある細胞(「クローン」)またはいくつかの細胞を選択し、独立して拡大できる。
【0152】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、細胞表面系譜特異的抗原を欠損するように遺伝子操作される。いくつかの実施形態では、造血細胞は、薬剤によって標的にされる同一の細胞表面系譜特異的抗原を欠損するように遺伝子操作される。本明細書中で使用される場合、造血細胞は、造血細胞が、遺伝子操作された造血細胞と同型の天然に存在する造血細胞(例えば、CD34などの同一の細胞表面マーカーの存在を特徴とする)と比較して、実質的に低下された細胞表面系譜特異的抗原の発現を有する場合、細胞表面系譜特異的抗原を欠損していると見なされる。いくつかの実施形態では、造血細胞は、細胞表面系譜特異的抗原の検出可能な発現がない。細胞表面系譜特異的抗原の発現レベルを、当該分野で公知の任意の手段によって評価できる。例えば、細胞表面系譜特異的抗原の発現レベルを、抗原特異的抗体を用いて抗原を検出すること(例えば、フローサイトメトリー法、ウェスタンブロッティング)によって評価できる。
【0153】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された造血細胞上の細胞表面系譜特異的抗原の発現を、天然に存在する造血細胞上の細胞表面系譜特異的抗原の発現と比較する。いくつかの実施形態では、遺伝子操作により、天然に存在する造血細胞上の細胞表面系譜特異的抗原の発現と比較して、細胞表面系譜特異的抗原の発現レベルが、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%減少する。
【0154】
いくつかの実施形態では、造血細胞は、細胞表面系譜特異的抗原をコードする内因性遺伝子全体を欠損している。いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原をコードする内因性遺伝子全体が欠失されている。いくつかの実施形態では、造血細胞は、細胞表面系譜特異的抗原をコードする内因性遺伝子の一部を含む。いくつかの実施形態では、造血細胞は、細胞表面系譜特異的抗原の一部(例えば、短縮タンパク質)を発現する。他の実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原をコードする内因性遺伝子の一部が欠失されている。いくつかの実施形態では、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、またはそれを超える細胞表面系譜特異的抗原をコードする遺伝子が欠失されている。
【0155】
当業者が認識するように、細胞表面系譜特異的抗原をコードするヌクレオチド配列の一部または1つまたは複数の非コード配列を、造血細胞が抗原を欠損する(例えば、実質的に低下された抗原発現を有する)ように欠失させることができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原はCD33である。CD33の予測される構造は、2つの免疫グロブリンドメイン、1つのIgVドメイン、および1つのIgC2を含む。いくつかの実施形態では、CD33の免疫グロブリンCドメインの一部が欠失される。
【0157】
細胞表面系譜特異的抗原を欠損している、HSCなどの、任意の遺伝子操作された造血細胞を、日常的な方法または本明細書中に記載の方法によって調製できる。いくつかの実施形態では、ゲノム編集を使用して遺伝子操作を行う。本明細書中で使用される場合、「ゲノム編集」は、生物の、任意のタンパク質コードまたは非コードヌクレオチド配列を含むゲノムを、標的遺伝子の発現をノックアウトするように改変する方法を指す。一般に、ゲノム編集法は、例えば標的にされたヌクレオチド配列で、ゲノムの核酸を切断できるエンドヌクレアーゼの使用を含む。ゲノム中の二本鎖切断物を、変異を導入して修復でき、かつ/または外因性核酸を、標的にされた部位に挿入できる。
【0158】
ゲノム編集法は一般に、標的核酸中の二本鎖切断物の生成に関与するエンドヌクレアーゼのタイプに基づいて分類される。これらの方法は、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、およびCRISPR/Casシステムの使用を含む。
【0159】
野生型Cas酵素または変異Cas酵素を使用できる。いくつかの実施形態では、Cas9酵素をコードするヌクレオチド配列を、タンパク質活性が変化するように改変する。変異Cas酵素は、標的配列を含む標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を切断する能力を欠き得る。Cas9は、HNHエンドヌクレアーゼおよびRuvCエンドヌクレアーゼに相同な2つの独立したヌクレアーゼドメインを保有し、これらの2つのドメインのいずれかの変異により、Cas9タンパク質を、一本鎖切断物を導入するニッカーゼに変換できる(Cong,L.et al.Science 339,819-823(2013))。例えば、S.pyogenes由来のCas9のRuvCI触媒ドメイン中のアスパラギン酸-アラニン置換(D10A)は、Cas9を、両鎖を切断するヌクレアーゼからニッカーゼ(一本鎖を切断する)に変換する。Cas9をニッカーゼにする変異の他の例は、D10A、H840A、N854A、N863A、およびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、Cas9ニッカーゼを、ガイドRNA(複数可)(例えば、DNA標的のセンス鎖およびアンチセンス鎖をそれぞれ標的にする2つのガイドRNA)と組み合わせて使用できる。
【0160】
本明細書中で使用される場合、用語「塩基エディタ」は、ヌクレオチド塩基を編集するタンパク質を指す。「編集」は、一方の核酸塩基の他方の核酸塩基への変換を指す(例えば、AからGへ、AからCへ、AからTへ、CからTへ、CからGへ、CからAへ、GからAへ、GからCへ、GからTへ、TからAへ、TからCへ、TからGへ)。いくつかの実施形態では、核酸塩基エディタは、1)ヌクレオチド、ヌクレオシド、または核酸塩基を改変する酵素と、2)特定の核酸配列に結合するようにプログラミングできる核酸結合タンパク質との組み合わせを使用して、大部分の(例えば、80%超、85%超、90%超、95%超、99%超、99.9%超、または100%)核酸配列中のある核酸塩基の別の核酸塩基への変換(すなわち、移行または塩基転換)をもたらす高分子または高分子複合体である。塩基エディタは、(i)DNA結合ドメイン;および(ii)デアミナーゼドメイン、を含む融合タンパク質であり得る。1つの実施形態では、塩基エディタは、a)RNAガイド型エンドヌクレアーゼ;およびb)シチジンデアミナーゼを含む融合ポリペプチドである。例えば、Komor et al.(2016)Nature 533:420を参照のこと。
【0161】
いくつかの実施形態では、塩基エディタは、塩基エディタを標的配列に向かわせるDNA結合ドメイン(例えば、dCas9またはnCas9などのDNA結合ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、核酸塩基エディタは、DNA結合ドメイン(例えば、dCas9またはnCas9)に融合された核酸塩基改変酵素を含む。野生型Cas9ヌクレアーゼの点変異体(D10A)であるnCas9は、ニックエンドヌクレアーゼ活性を有する。「核酸塩基改変酵素」は、核酸塩基を改変し、一方の核酸塩基を他方の核酸塩基に変換できる酵素(例えば、シトシンデアミナーゼまたはアデノシンデアミナーゼなどのデアミナーゼ)である。いくつかの実施形態では、核酸塩基エディタは、核酸配列中のシトシン(C)塩基を標的にし、Cをチミン(T)塩基に変換できる。いくつかの実施形態では、CからTへの編集を、デアミナーゼ(例えば、シトシンデアミナーゼ)によって行う。他のタイプの塩基変換(例えば、アデノシン(A)からグアニン(G)へ、CからGへ)を行うことができる塩基エディタも意図される。
【0162】
いくつかの実施形態では、DNA結合タンパク質ドメインは、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)または転写アクチベーター様エフェクタードメイン(TALE)のDNA結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、DNA結合タンパク質ドメインを、ガイドヌクレオチド配列によってプログラムできる。いくつかの実施形態では、DNA結合タンパク質は、ヌクレアーゼ不活性Cas9(すなわち、dCas9)である。本明細書中で使用されるdCas9は、そのヌクレアーゼ活性が完全に不活性であるか、そのヌクレアーゼ活性が部分的に不活性であるCas9(例えば、Cas9ニッカーゼ)を含む。いくつかの実施形態では、DNA結合タンパク質は、ヌクレアーゼ不活性Cpf1である。いくつかの実施形態では、DNA結合タンパク質は、ヌクレアーゼ不活性アルゴノートである。いくつかの実施形態では、塩基エディタは、Cas9(例えば、dCas9およびnCas9)、CasX、CasY、Cpf1、C2c1、C2c2、C2c3、またはアルゴノートタンパク質を含む。例えば、塩基エディタは、シトシンデアミナーゼ-dCas9融合タンパク質、シトシンデアミナーゼ-Cas9ニッカーゼ融合タンパク質、デアミナーゼ-dCas9-UGI融合タンパク質、UGI-デアミナーゼ-dCas9融合タンパク質、UGI-デアミナーゼ-Cas9ニッカーゼ融合タンパク質、APOBEC1-dCas9-UGI融合タンパク質、APOBEC1-Cas9ニッカーゼ-UGI融合タンパク質であり得る。
【0163】
塩基エディタ(BE)システムの種々の誘導体(BE1、BE2、およびBE3など)を使用できる。1つの実施形態では、本方法はBE2を使用する。別の実施形態では、本方法はBE3を使用する。
【0164】
本開示の方法および組成物を、Cas9の一本鎖または二本鎖誘導バージョンならびに他のRNAガイド型DNAヌクレアーゼ(他の細菌Cas9様システムなど)と共に使用できることが特に意図される。本明細書中に記載の本発明の方法および組成物の配列特異的ヌクレアーゼは、操作されているか、キメラであるか、生物から単離されたヌクレアーゼであり得る。ヌクレアーゼを、DNA、mRNA、およびタンパク質の形態で細胞中に導入できる。
【0165】
標準的な手順を使用して、野生型Cas9、ニッカーゼCas9、または塩基エディタCas9を発現でき、手順は、プラスミドのトランスフェクション、レンチウイルス粒子の形質導入、またはタンパク質のヌクレオフェクションを含む。
【0166】
本開示の1つの態様では、系譜特異的抗原が改変された正常細胞を使用して、腫瘍細胞を、改変された正常細胞集団と置換する。かかる改変は、CRISPR-Cas9システムを使用した任意の系譜特異的抗原の枯渇または阻害を含み得る。ここで、前述のクラスター化された規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)-Cas9システムは、操作された天然に存在しないCRISPR-Cas9システムである(
図4)。
【0167】
CRISPR-Casシステムは、種々の生物(細菌、ヒト、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、および植物を含むが、これらに限定されない)のゲノムを編集するためにうまく利用されている。例えば、Jiang et al.,Nature Biotechnology(2013)31(3):233;Qi et al,Cell(2013)5:1173;DiCarlo et al.,Nucleic Acids Res.(2013)7:4336;Hwang et al.,Nat.Biotechnol(2013),3:227);Gratz et al.,Genetics(2013)194:1029;Cong et al.,Science(2013)6121:819;Mali et al.,Science(2013)6121:823;Cho et al.Nat.Biotechnol(2013)3:230;およびJiang et al.,Nucleic Acids Research(2013)41(20):el88を参照のこと。
【0168】
本開示は、系譜特異的抗原ポリヌクレオチド中の標的配列とハイブリッド形成するCRISPR/Cas9システムを使用する方法を提供し、ここで、前述のCRISPR/Cas9システムは、Cas9ヌクレアーゼおよび操作されたcrRNA/tracrRNA(または単鎖ガイドRNA)を含む。CRISPR/Cas9複合体は、系譜特異的抗原ポリヌクレオチドに結合し抗原ポリヌクレオチドの切断を可能にし、それによりポリヌクレオチドを改変できる。
【0169】
本開示のCRISPR/Casシステムは、細胞表面系譜特異的抗原内のコード領域もしくは非コード領域中の、遺伝子内もしくは遺伝子に隣接する(例えば、リーダー配列、トレーラー配列、またはイントロンなど)、またはコード領域の上流もしくは下流のいずれかの、非転写領域内の目的の領域に結合し、かつ/またはそれを切断できる。本開示で使用されるガイドRNA(gRNA)を、gRNAがゲノム中の予め決定した切断部位(標的部位)へのCas9-gRNA複合体の結合を指示するように設計できる。切断部位を、未知配列の領域または、SNP、ヌクレオチド挿入、ヌクレオチド欠失、再編成などを含む領域を含む断片を放出するように選択できる。
【0170】
遺伝子領域の切断は、Cas酵素による標的配列の位置での1つまたは2つの鎖の切断を含み得る。1つの実施形態では、かかる切断により、標的遺伝子の転写を減少させることができる。別の実施形態では、切断は、相同組換えによって切断された標的ポリヌクレオチドを外因性のテンプレートポリヌクレオチドを用いて修復することをさらに含んでよく、この修復は、標的ポリヌクレオチドの1つまたは複数のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換をもたらす。
【0171】
用語「gRNA」、「ガイドRNA」、および「CRISPRガイド配列」は、本明細書を通して互換的に使用でき、CRISPR/CasシステムのCasDNA結合タンパク質の特異性を決定づける配列を含む核酸を指す。gRNAは、宿主細胞のゲノム中の標的核酸配列とハイブリッド形成する(部分的にまたは完全に相補的に)。標的核酸とハイブリッド形成するgRNAまたはその一部は、15~25ヌクレオチド長、18~22ヌクレオチド長、または19~21ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態では、標的核酸とハイブリッド形成するgRNA配列は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、標的核酸とハイブリッド形成するgRNA配列は、10~30または15~25ヌクレオチド長である。
【0172】
標的核酸に結合する配列に加えて、いくつかの実施形態では、gRNAは足場配列も含む。標的核酸に相補的な配列および足場配列の両方をコードするgRNAの発現は、標的核酸への結合(ハイブリッド形成)およびエンドヌクレアーゼの標的核酸への動員の両方の二重機能を有し、それは部位特異的CRISPR活性をもたらす。いくつかの実施形態では、かかるキメラgRNAは、単鎖ガイドRNA(sgRNA)と呼ばれ得る。
【0173】
本明細書中で使用される場合、「足場配列」は、tracrRNAとも呼ばれ、相補gRNA配列に結合される(ハイブリッド形成する)標的核酸にCasエンドヌクレアーゼを動員する核酸配列を指す。少なくとも1つのステムループ構造を含みかつエンドヌクレアーゼを動員する任意の足場配列を、本明細書中に記載の遺伝因子およびベクター中で使用できる。例示的な足場配列は、当業者に自明であり、例えば、Jinek,et al.Science(2012)337(6096):816-821、Ran,et al.Nature Protocols(2013)8:2281-2308、PCT出願番号WO2014/093694号、およびPCT出願番号WO2013/176772号に見出すことができる。
【0174】
いくつかの実施形態では、gRNA配列は足場配列を含まず、足場配列は別の転写物として発現される。かかる実施形態では、gRNA配列は、足場配列の一部に相補的であり、足場配列に結合(ハイブリッド形成)してエンドヌクレアーゼを標的核酸に動員するように機能するさらなる配列をさらに含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、gRNA配列は、標的核酸と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または少なくとも100%相補的である(gRNA配列の標的ポリヌクレオチド配列との相補性の教示について参考として援用される米国特許第8,697,359号も参照のこと)。CRISPRガイド配列と標的核酸の3’末端付近の標的核酸の間のミスマッチはヌクレアーゼ切断活性を無効にし得ることが実証されている(Upadhyay,et al.Genes Genome Genetics(2013)3(12):2233-2238)。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、標的核酸の3’末端(例えば、標的核酸の3’末端の最後の5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド)と少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または少なくとも100%相補的である。
【0176】
標的核酸は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の3’側に隣接し、PAMは、エンドヌクレアーゼと相互作用でき、かつ標的核酸へのエンドヌクレアーゼ活性の標的化にさらに関与し得る。標的核酸に隣接するPAM配列は、エンドヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼが由来する供給源に依存すると一般的に考えられている。例えば、Streptococcus pyogenes由来のCas9エンドヌクレアーゼについて、PAM配列はNGGである。Staphylococcus aureus由来のCas9エンドヌクレアーゼについて、PAM配列はNNGRRTである。Neisseria meningitidis由来のCas9エンドヌクレアーゼについて、PAM配列はNNNNGATTである。Streptococcus thermophilus由来のCas9エンドヌクレアーゼについて、PAM配列はNNAGAAである。Treponema denticola由来のCas9エンドヌクレアーゼについて、PAM配列はNAAAACである。Cpf1ヌクレアーゼについて、PAM配列はTTNである。
【0177】
いくつかの実施形態では、細胞の遺伝子操作はまた、Casエンドヌクレアーゼの細胞への導入を含む。いくつかの実施形態では、CasエンドヌクレアーゼおよびgRNAをコードする核酸を、同一の核酸(例えば、1つのベクター)上で提供する。いくつかの実施形態では、CasエンドヌクレアーゼおよびgRNAをコードする核酸を、異なる核酸(例えば、異なるベクター)上で提供する。あるいはまたはさらに、Casエンドヌクレアーゼを、タンパク質の形態で細胞内に提供するか導入できる。
【0178】
いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼは、Cas9酵素またはそのバリアントである。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼは、Streptococcus pyogenes、Staphylococcus aureus、Neisseria meningitidis、Streptococcus thermophilus、またはTreponema denticolaに由来する。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を、宿主細胞中での発現のためにコドン最適化できる。いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼは、Cas9のホモログまたはオルソログである。
【0179】
いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列は、タンパク質活性を変化させるようにさらに改変される。いくつかの実施形態では、Cas9エンドヌクレアーゼは、触媒的に不活性なCas9である。例えば、dCas9は、触媒的に活性な残基の変異(D10およびH840)を含み、ヌクレアーゼ活性を持たない。あるいはまたはさらに、Cas9エンドヌクレアーゼは、別のタンパク質またはその一部に融合できる。いくつかの実施形態では、dCas9は、KRABドメインなどのリプレッサードメインに融合される。いくつかの実施形態では、かかるdCas9融合タンパク質は、多重遺伝子抑制(例えば、CRISPR干渉(CRISPRi))のために本明細書中に記載の構築物と共に使用される。いくつかの実施形態では、dCas9は、VP64またはVPRなどのアクチベータードメインに融合される。いくつかの実施形態では、かかるdCas9融合タンパク質は、遺伝子活性化(例えば、CRISPR活性化(CRISPRa))のために本明細書中に記載の構築物と共に使用される。いくつかの実施形態では、dCas9は、ヒストンデメチラーゼドメインまたはヒストンアセチルトランスフェラーゼドメインなどの後成的調整ドメインに融合される。いくつかの実施形態では、dCas9は、LSD1もしくはp300またはこれらの一部に融合される。いくつかの実施形態では、dCas9融合を、CRISPRベースの後成的調整のために使用する。いくつかの実施形態では、dCas9またはCas9は、Fok1ヌクレアーゼドメインに融合される。いくつかの実施形態では、Fok1ヌクレアーゼドメインに融合されたCas9またはdCas9を、ゲノム編集のために使用する。いくつかの実施形態では、Cas9またはdCas9は、蛍光タンパク質(例えば、GFP、RFP、mCherryなど)に融合される。いくつかの実施形態では、蛍光タンパク質に融合されたCas9/dCas9タンパク質を、ゲノム遺伝子座の標識および/もしくは可視化またはCasエンドヌクレアーゼを発現する細胞の同定のために使用する。
【0180】
あるいはまたはさらに、CasエンドヌクレアーゼはCpf1ヌクレアーゼである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、Provetella spp.またはFrancisella spp.由来のCpf1ヌクレアーゼを発現する。いくつかの実施形態では、Cpf1ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を、宿主細胞中での発現のためにコドン最適化できる。
【0181】
いくつかの実施形態では、本開示は、CRISPR/Cas9システムを使用して造血細胞における細胞表面系譜特異的抗原を阻害するための組成物および方法を提供し、ここでガイドRNA配列が細胞表面系譜特異的抗原をコードするヌクレオチド配列とハイブリッド形成する。いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原はCD33であり、gRNAは、CD33をコードするヌクレオチド配列の一部とハイブリッド形成する(
図5)。CD33を標的にするgRNAの例を表4に提供しているが、CD33とハイブリッド形成するさらなるgRNAを作出でき、それらを本明細書中に記載の方法で使用できる。
【0182】
表4は、CD33の一部とハイブリッド形成するか、ハイブリッド形成すると予想される例示的なガイドRNA配列を提供する。
【0183】
【0184】
一定の実施形態では、本発明は、CD33遺伝子のエクソン2中に一塩基多型(SNP)を示すドナーHSCの利用に関する。例えば、CがTに変化したSNPrs12459419(chr19:51,225,221;hg38)は、SRSF2のエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉し、それにより、成熟転写物からエクソン2が喪失される。エクソン2によってコードされる領域は、CD33の細胞外領域であり、この領域は、CD33を標的にするモノクローナル抗体の大部分の結合部位である。したがって、このSNP(またはCD33成熟転写物においてエクソン2を喪失させるか、欠損型エクソン2を生じる任意のSNP)を有するHSCの利用は、系譜特異的細胞表面抗原が欠損または変異された造血細胞集団を提供するための、かつそれ故に抗原特異的処置後に正常な造血細胞を回復できる標的化方法である。
【0185】
別の実施形態では、ドナー細胞がSNPrs12459419(C>T;Ala14Val)を示すかどうかと無関係にドナー細胞中のESE部位を破壊し、それ故に、CD33成熟転写物中のCD33エクソン2の喪失または変異を保証する遺伝的操作方法(ゲノム操作を含む)を使用する。例えば、CRISPR/Cas9システム、TALEN、ZnFタンパク質、および/または修正CRISPR/Cas9塩基編集システムを使用して、ドナー細胞中のエクソン2スプライシングを破壊する(例えば、ESE部位を破壊し、かつ/またはスプライスアクセプターを操作する)ことができる。ドナー細胞由来のESE部位を破壊するためのこのCRISPR/Cas9システムは、系譜特異的細胞表面抗原が欠損または変異された造血細胞集団を提供しそれ故に、抗原特異的処置後に正常な造血細胞を回復できる代替方法である。したがって、この実施形態は、CD33標的剤で処置した患者に対するHSCを回復する方法である。
【0186】
したがって、本開示の実施形態は、造血器悪性疾患を処置する方法であって、前述の処置を必要とする被験体に、以下の:
(i)系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤の有効量であって、前述の薬剤が、CD33である系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含む、薬剤の有効量;および
(ii)変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含む造血細胞集団
を投与する工程を含む、方法を含む。
【0187】
さらなる実施形態では、造血細胞(例えば、造血幹細胞)は、CD33遺伝子のエクソン2中に一塩基多型(SNP)rs12459419(C>T;Ala14Val)を示す。
【0188】
なおさらなる実施形態では、SNPがSRSF2のエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉し、それによりCD33の成熟転写物からエクソン2が喪失される。
【0189】
さらなる実施形態では、本開示は、造血器悪性疾患を処置する方法であって、前述の処置を必要とする被験体に、以下の:
(i)系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤の有効量であって、前述の薬剤が、CD33である系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含む、薬剤の有効量および
(ii)変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含むように遺伝子操作されている造血細胞集団
を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0190】
さらなる実施形態では、CD33遺伝子は、造血細胞中でCRISPR-Cas9によって操作される。
【0191】
さらなる実施形態では、遺伝子操作された造血細胞は、CD33をコードする内因性遺伝子を、CD33の発現を消失させるか、CD33の成熟転写物からエクソン2が喪失されるように編集することによって調製される。
【0192】
別の実施形態では、CRISPR-Cas9操作により、SRSF2に対するエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉しそれによりCD33の成熟転写物からエクソン2が喪失される変異が作出される。
【0193】
なおさらなる実施形態では、CRISPR-Cas9操作は、CD33を標的にする薬剤によって認識されないCD33をもたらす。
【0194】
CD33のエクソン2は、シアル酸結合を媒介する免疫グロブリン様可変ドメイン(IgV)をコードする。Malik et al.,Human Molecular Genetics,2015,Vol.24,No.12 3557-3570。
【0195】
本開示は、変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含む造血細胞(例えば、HSC)を提供する。本開示は、エクソン2を欠くか、変異型エクソン2を有するCD33の成熟転写物を含む造血細胞(例えば、HSC)を提供する。造血細胞(例えば、造血幹細胞)は、少なくとも1つのrs12459419-T対立遺伝子を保有し得る。造血細胞(例えば、造血幹細胞)は、rs12459419-T対立遺伝子(例えば、rs12459419-CT)についてホモ接合性であり得るか、rs12459419-T対立遺伝子についてヘテロ接合性であり得る。造血細胞(例えば、造血幹細胞)は、CD33成熟転写物においてエクソン2を欠失させるか変異型エクソン2を生じる少なくとも1つの対立遺伝子を保有し得る。いくつかの実施形態では、CD33成熟転写物中のCD33のエクソン2の全体または一部は、欠失されるか、変異される。ゲノム編集または遺伝子操作(例えば、亜鉛フィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写アクチベーター様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、またはCRISPR-Casシステムを含む)を使用して、変異型または欠損型のエクソン2を有するCD33の成熟転写物を含む造血細胞(例えば、HSC)を操作できる。
【0196】
本開示は、CD33のIgVドメインを欠損している造血細胞(例えば、HSC)を提供する。造血細胞(例えば、HSC)は、IgVドメインを欠くCD33、および/または変異型IgVドメインを有するCD33を含み得る。造血細胞(例えば、HSC)は、野生型IgVドメインを有するCD33を有する造血細胞と比較して、シアル酸を結合する能力を欠き得るか、シアル酸を結合する能力が低下し得る。
【0197】
配列番号52~58(表5~7)から選択される1つまたは複数のガイド配列と組み合わせてCRISPR-Cas9システムを使用することによって調製される造血細胞(例えば、HSC)も本開示に含まれる。
【0198】
表5は、CD33の一部とハイブリッド形成するか、ハイブリッド形成すると予想される例示的なガイドRNA配列を提供する。相同テンプレートの非存在下で野生型Cas9/CRISPRシステムと組み合わせて使用する場合、これらのガイドRNAは、エクソン2のスプライシング部位および/またはESE部位にインデルを作出し得る。これにより、エクソン2および/またはフレームワークが読み飛ばされるであろう。あるいは、野生型Cas9/CRISPRシステムおよび特異的部位(複数可)に変異(複数可)を有する相同テンプレートと組み合わせて使用した場合、これらのガイドRNAは、エクソン2のスプライシング部位および/またはESE部位でのヌクレオチド変化を生じることができる。
【0199】
【0200】
表6は、CD33の一部とハイブリッド形成するか、ハイブリッド形成すると予想される例示的なガイドRNA配列を提供する。相同テンプレートの非存在下でニッカーゼCas9/CRISPRシステムと組み合わせて使用される場合、これらのガイドRNAは、エクソン2のスプライシング部位および/またはESE部位にインデルを作出し得る。これにより、エクソン2の読み飛ばしおよび/またはフレームシフトが起こるであろう。あるいは、ニッカーゼCas9/CRISPRシステムおよび特異的部位(複数可)に変異(複数可)を有する相同テンプレートと組み合わせて使用される場合、これらのガイドRNAは、エクソン2のスプライシング部位および/またはESE部位でヌクレオチドを変化させることができる。
【0201】
【0202】
表7は、CD33の一部とハイブリッド形成するか、ハイブリッド形成すると予想される例示的なガイドRNA配列を提供する。塩基エディタCas9/CRISPRシステム(例えば、塩基エディタ2(BE2)Cas9)と組み合わせて使用される場合、これらのガイドRNAは、スプライスアクセプターおよびESE内の4つのGをAに変換し(逆の鎖については、CからTに変換し)、それにより、エクソン2のスプライスアクセプターおよび/またはESE部位を喪失させることができる。
【0203】
【0204】
表5~7中の配列は、Human Dec.2013(GRCh38/hg38)Assemblyに基づく。
【0205】
CD33は、シアル酸結合免疫グロブリン様レクチン(siglec)ファミリーのメンバーである。CD33関連siglecファミリー内の複数の受容体も骨髄性細胞上で発現され、重複した機能を有する(Cao and Crocker,2011,Immunology,132:18-26;Nguyen et al.,2006,Exp.Hematol.,34:728-735)。本明細書中で考察されるガイドRNA配列は、CD33偽遺伝子(SIGLEC17P、SIGLEC21P、SIGLEC22P、およびSIGLEC29Pを含むが、これらに限定されない)を標的にしてもしなくてもよい。
【0206】
いくつかの実施形態では、HSC、特に同種HSCを、移植片対宿主効果を低下させるようにさらに遺伝操作することが望ましいかもしれない。例えば、再発性AMLの標準的治療は、造血幹細胞移植(HSCT)である。しかし、HSCTの成功を制限する少なくとも1つの要因は移植片対宿主病(GVHD)であり、これは、細胞表面分子CD45の発現が関与している。例えば、Van Besie,Hematology Am.Soc.Hematol Educ Program(2013)56;Mawad Curr.Hematol.Malig.Rep.(2013)8(2):132を参照のこと。CD45RAおよびCD45ROは、CD45(赤血球を除く全ての造血細胞上で見いだされる)のイソ型である。Tリンパ球では、CD45RAはナイーブ細胞上で発現される一方で、CD45ROは記憶細胞上で発現される。CD45RAT細胞は、HSCT後のレシピエント特異的抗原に対する反応性が潜在的に高く、それにより、GVHDをもたらす。したがって、移植片拒絶またはGVHDの可能性も低下させる有効でかつ安全なAML処置が依然として必要である。CD45はタイプ1系譜抗原である。なぜならCD45保有細胞は生存に必要とされるがこの抗原はCRISPRを使用して幹細胞から欠失され得るからである。
【0207】
HSCT後のGvHDの発症に起因する合併症を考慮して、本開示はまた、CD45RAを標的にするための組成物および方法を提供する。かかる組成物および方法は、GvHDの発生および程度を予防および/または低下させる手段である。
【0208】
したがって、GVHDの場合、患者の処置は、以下の工程を含み得る:(1)T細胞の治療有効量を患者に投与する工程であって、ここでT細胞が、CD45RA系譜特異的抗原を標的にするキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含む、投与する工程;および(2)患者に造血幹細胞を注入する工程であって、ここで造血細胞は、CD45RA系譜特異的抗原の低下された発現を有する、注入する工程。
【0209】
さらに、本開示は、CD33系譜特異的抗原およびCD45RA系譜特異的抗原の両方の組み合わせた阻害のための組成物および方法を提供する。かかる処置レジメンは、以下の工程を含み得る:(1)T細胞の治療有効量を患者に投与する工程であって、ここでT細胞が、CD33系譜特異的抗原およびCD45RA系譜特異的抗原の両方を標的にするキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含む、投与する工程;および(2)自家または同種のいずれかの造血幹細胞を患者に注入または再注入する工程であって、ここで造血細胞は、CD33系譜特異的抗原およびCD45RA系譜特異的抗原の両方の低下された発現を有する、注入または再注入する工程。
【0210】
いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原CD45RAはまた、CRISPR/Cas9システムを使用して造血細胞中で欠失または阻害される。いくつかの実施形態では、gRNA配列は、CD45RAをコードするヌクレオチド配列の一部とハイブリッド形成する(
図6)。CD45RAを標的にするgRNAの例を表8に提供するが、CD45RAとハイブリッド形成するさらなるgRNAを作出でき、それらを本明細書中に記載の方法で使用できる。
【0211】
表8は、ヒトCD45のエクソン4またはエクソン5とハイブリッド形成するか、ハイブリッド形成すると予想される例示的なガイドRNA配列を提供する。
【0212】
【0213】
細胞を準備する工程および前述の細胞にゲノム編集のためのCRISPR Casシステムの成分を導入する工程を含む、細胞表面系譜特異的抗原を欠損している細胞を産生する方法も本明細書中に提供する。いくつかの実施形態では、系譜特異的細胞表面抗原をコードするヌクレオチド配列の一部とハイブリッド形成するか、ハイブリッド形成すると予想されるCRISPR-CasガイドRNA(gRNA)を含む核酸を、細胞に導入する。いくつかの実施形態では、ベクター上のgRNAを細胞に導入する。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼを細胞に導入する。いくつかの実施形態(emboidment)では、Casエンドヌクレアーゼを、Casエンドヌクレアーゼをコードする核酸として細胞に導入する。いくつかの実施形態では、同じ核酸(例えば、同じベクター)上のgRNAおよびCasエンドヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を、細胞に導入する。いくつかの実施形態では、Casエンドヌクレアーゼを、タンパク質の形態で細胞に導入する。いくつかの実施形態では、CasエンドヌクレアーゼおよびgRNAをin vitroで予め形成し、複合体として細胞に導入する。
【0214】
本開示は、さらに、CRISPR/Cas9複合体の1つまたは複数の成分をコードできる操作された天然に存在しないベクターおよびベクター系を提供し、ここで、ベクターは、(i)系譜特異的抗原配列とハイブリッド形成する(CRISPR)-CasシステムガイドRNAおよび(ii)Cas9エンドヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0215】
本開示のベクターは、哺乳動物発現ベクターを使用して、哺乳動物細胞中の1つまたは複数の配列の発現を駆動できる。哺乳動物発現ベクターの例は、pCDM8(Seed,Nature(1987)329:840)およびpMT2PC(Kaufman,et al.,EMBO J.(1987)6:187)を含む。哺乳動物細胞で使用される場合、発現ベクターの調節機能は典型的には、1つまたは複数の制御エレメントによって提供される。例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、サルウイルス40、および本明細書中に開示され、当業者に公知のウイルスに由来する。原核細胞および真核細胞の両方に適切な他の発現系については、例えば、Sambrook,ct al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL.2nd eds.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989の16章および17章を参照のこと。
【0216】
本開示のベクターは、核酸の発現を特定の細胞型で優先的に指示できる(例えば、核酸を発現するために組織特異的制御エレメントを使用する)。かかる制御エレメントは、組織特異的または細胞特異的であり得るプロモーターを含む。用語「組織特異的」は、この用語をプロモーターに適用する場合、目的のヌクレオチド配列の選択的発現を、異なる組織型における同じ目的のヌクレオチド配列の発現の相対的な不在下で特定の組織型(例えば、シード)において指示できるプロモーターを指す。用語「細胞型特異的」は、この用語をプロモーターに適用する場合、目的のヌクレオチド配列の選択的発現を、同じ組織内の異なる細胞型における同じ目的のヌクレオチド配列の発現の相対的な不在下で特定の細胞型において指示できるプロモーターを指す。用語「細胞型特異的」はまた、プロモーターに適用する場合、単一の組織内の領域中の目的のヌクレオチド配列の選択的発現を促進できるプロモーターを意味する。プロモーターの細胞型特異性を、当該分野で周知の方法(例えば、免疫組織化学染色)を使用して評価できる。
【0217】
従来のウイルスおよび非ウイルスベースの遺伝子移入法を使用して、哺乳動物細胞または標的組織中でCRISPR/Cas9をコードする核酸を導入できる。かかる方法を使用して、CRISPR-Casシステムの成分をコードする核酸を培養物中のまたは宿主生物中の細胞に投与できる。非ウイルスベクター送達系は、DNAプラスミド、RNA(例えば、本明細書中に記載のベクターの転写物)、裸の核酸、および送達ビヒクルと複合体化した核酸を含む。ウイルスベクター送達系は、細胞への送達後にエピソーム性ゲノムまたは取り込まれたゲノムのいずれかを有する、DNAウイルスおよびRNAウイルスを含む。
【0218】
遺伝子療法の手順の概説について。
ウイルスベクターを、患者に直接投与でき(in vivo)、または細胞を操作するためにin vitroまたはex vivoで使用し、改変された細胞を患者に投与できる。1つの実施形態では、本開示は、遺伝子移入のためにウイルスベースのシステム(レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルスベクターを含むが、これらに限定されない)を利用する。さらに、本開示は、レトロウイルスまたはレンチウイルスなどの、宿主ゲノム中の組み込みができるベクターを提供する。好ましくは、本開示のCRISPR-Casシステムの発現のために使用されるベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0219】
1つの実施形態では、本開示は、CRISPR-Casをコードする1つまたは複数のベクターの真核細胞への導入を提供する。細胞は、癌細胞であり得る。あるいは、細胞は、造血細胞(造血幹細胞など)である。幹細胞の例は、多能性幹細胞、多分化能性幹細胞、および単能性幹細胞を含む。多能性幹細胞の例は、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、胚性癌腫細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)を含む。好ましい実施形態では、本開示は、造血幹細胞へのCRISPR-Cas9の導入を提供する。
【0220】
本開示のベクターは、被験体の真核細胞に送達される。CRISPR/Cas9システムを介する真核細胞の改変は細胞培養中で起こり、その方法は、改変前に被験体から真核細胞を単離する工程を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、前述の真核細胞および/または前述の真核細胞に由来する細胞を被験体に戻す工程をさらに含む。
【0221】
併用療法
本明細書中に記載のように、細胞表面系譜特異的抗原に結合する抗原結合断片を含む薬剤を、細胞表面系譜特異的抗原を欠損している造血細胞と組み合わせて被験体に投与できる。本明細書中で使用される場合、「被験体」、「個体」、および「患者」は、互換的に使用され、脊椎動物、好ましくは、ヒトなどの哺乳動物を指す。哺乳動物は、ヒト霊長類、非ヒト霊長類、またはマウス、ウシ、ウマ、イヌ、もしくはネコの種を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、被験体は、造血器悪性疾患を有するヒト患者である。
【0222】
いくつかの実施形態では、薬剤および/または造血細胞を、薬学的に許容され得る担体と混合して医薬組成物を形成でき、この医薬組成物も本開示の範囲内にある。
【0223】
本明細書中に記載の方法を実施するために、有効量の細胞表面系譜特異的抗原に結合する抗原結合断片を含む薬剤の有効量および造血細胞の有効量を、処置を必要とする被験体に同時投与できる。
【0224】
本明細書中で使用される用語「有効量」は、用語「治療有効量」と互換的に使用でき、それを必要とする被験体に投与した際に所望の活性を得るのに十分な薬剤、細胞集団、または医薬組成物(例えば、薬剤および/または造血細胞を含む組成物)の量を指す。本開示の文脈内で、用語「有効量」は、本開示の方法によって処置される障害の発症を遅延させるか、進行を停止させるか、少なくとも1つの症状を軽減または緩和するのに十分な化合物、細胞集団、または医薬組成物の量を指す。有効成分の組み合わせを投与する場合、組み合わせの有効量は、各成分を個別に投与した場合に有効であった各成分の量を含んでも含まなくてもよいことに留意すべきである。
【0225】
有効量は、当業者によって認識されるように、処置される特定の容態、容態の重症度、各患者のパラメーター(年齢、健康状態、サイズ、性別、および体重を含む)、処置期間、現行治療の性質(受けている場合)、特定の投与経路、ならびに医療従事者の知識および経験の範囲内の同様の要因に応じて変動する。いくつかの実施形態では、有効量は、被験体において任意の疾患または障害を緩和するか、軽減するか、回復させるか、改善するか、症状を軽減するか、進行を遅延させる。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。いくつかの実施形態では、被験体は、造血器悪性疾患を有するヒト患者である。
【0226】
本明細書中で使用される場合、キメラ受容体を発現する造血細胞および/または免疫細胞は、被験体の自家細胞であってよく、すなわち、この細胞は処置を必要とする被験体から得られ、細胞表面系譜特異的抗原の発現またはキメラ受容体構築物の発現を欠損するように遺伝子操作され、次いで同じ被験体に投与される。被験体への自家細胞の投与により、非自家細胞の投与と比較して、宿主細胞の拒絶が軽減され得る。あるいは、宿主細胞は同種異系細胞であり、すなわち、この細胞は第1の被験体から得られ、細胞表面系譜特異的抗原の発現またはキメラ受容体構築物の発現を欠損するように遺伝子操作され、第1の被験体と異なるが同じ種である第2の被験体に投与される。例えば、同種免疫細胞は、ヒトドナーに由来し、ドナーと異なるヒトレシピエントに投与できる。
【0227】
いくつかの実施形態では、免疫細胞および/または造血細胞は同種異系細胞であり、移植片対宿主病を軽減するようにさらに遺伝子操作されている。例えば、本明細書中に記載のように、造血幹細胞を、CD45RA発現を低下させるように遺伝子操作できる(例えば、ゲノム編集を使用して)。
【0228】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載の任意のキメラ受容体を発現する免疫細胞を、標的細胞(例えば、癌細胞)の数を少なくとも20%(例えば、50%、80%、100%、1/2、1/5、1/10、1/20、1/50、1/100、またはそれ未満)低下させるのに有効な量で被験体に投与する。
【0229】
哺乳動物(例えば、ヒト)へ投与される細胞(すなわち、免疫細胞または造血細胞)の典型的な量は、例えば、100万個~1000億個の範囲であり得る;しかし、この例示的な範囲未満またはそれを超える量も本発明の範囲内にある。例えば、細胞の一日用量は、約100万個~約500億個(例えば、約500万個、約2500万個、約5億個、約10億個、約50億個、約200億個、約300億個、約400億個、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)、好ましくは、約1000万個~約1000億個(例えば、約2000万個、約3000万個、約4000万個、約6000万個、約7000万個、約8000万個、約9000万個、約100億個、約250億個、約500億個、約750億個、約900億個、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)、より好ましくは、約1億個~約500億個(例えば、約1億2000万個、約2億5000万個、約3億5000万個、約4億5000万個、約6億5000万個、約8億個、約9億個、約30億個、約300億個、約450億個、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)であり得る。
【0230】
1つの実施形態では、キメラ受容体(例えば、キメラ受容体をコードする核酸)を免疫細胞に導入し、被験体(例えば、ヒト患者)は、キメラ受容体を発現する免疫細胞の初回投与または初回用量を受ける。薬剤(例えば、キメラ受容体を発現する免疫細胞)の1回または複数回の投与を患者に、前の投与後15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2日間の間隔で与えてよい。1週間あたり1を超える用量の薬剤を被験体に投与できる(例えば、2、3、4、またはそれを超える薬剤の投与)。被験体は、1週間に1用量を超える薬剤(例えば、キメラ受容体を発現する免疫細胞)を受け、その後1週間薬剤の投与がなく、その後最後に1または複数のさらなる用量の薬剤を投与できる(例えば、1週間に1回を超えるキメラ受容体を発現する免疫細胞の投与)。キメラ受容体を発現する免疫細胞を、2、3、4、5、6、7、8週間、またはそれを超える期間にわたって、1日おきに週3回投与できる。
【0231】
本開示の文脈において本明細書中に列挙した任意の病状に関する限り、用語「処置する」および「処置」などは、かかる病状に関連する少なくとも1つの症状を軽減するか緩和し、またはかかる病状の進行を遅延させるか逆行させることを意味する。本開示の意味の範囲内で、用語「処置する」はまた、疾患を停止させ、開始(すなわち、疾患の臨床症状前の期間)を遅延させ、かつ/または疾患の発症または悪化のリスクを低下させることを示す。例えば、がんに関連して、用語「処置する」は、患者の全身腫瘍組織量の消失もしくは低下、または転移の予防、遅延、または抑制などを意味し得る。
【0232】
いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原を結合する抗原結合断片を含む薬剤および細胞表面系譜特異的抗原を欠損している造血細胞集団。したがって、かかる治療方法では、薬剤は、標的死滅のために細胞表面系譜特異的抗原を発現する標的細胞を認識する(結合する)。抗原を欠損している造血細胞は、薬剤の標的にされる細胞型を再増殖させることができる。いくつかの実施形態では、患者の処置は、以下の工程を含み得る:(1)細胞表面系譜特異的抗原を標的にする薬剤の治療有効量を患者に投与する工程および(2)自家または同種のいずれかの造血幹細胞を患者に注入または再注入する工程であって、ここで造血細胞は、系譜特異的疾患関連抗原の低下された発現を有する、注入または再注入する工程。いくつかの実施形態では、患者の処置は、以下の工程を含み得る:(1)キメラ受容体を発現する免疫細胞の治療有効量を患者に投与する工程であって、ここで免疫細胞が、細胞表面系譜特異的疾患関連抗原に結合するキメラ受容体をコードする核酸配列を含む、投与する工程;および(2)自家または同種のいずれかの造血細胞(例えば、造血幹細胞)を患者に注入または再注入する工程であって、ここで造血細胞は、系譜特異的疾患関連抗原の低下された発現を有する、注入または再注入する工程。
【0233】
細胞表面系譜特異的抗原を結合する抗原結合断片を含む薬剤および細胞表面系譜特異的抗原を欠損している造血細胞集団を使用する治療方法の有効性を、当該分野で公知の任意の方法によって評価でき、この方法は、医療専門家に明らかであろう。例えば、治療の有効性を、被験体の生存または被験体もしくは被験体の組織もしくは試料の腫瘍量によって評価できる。いくつかの実施形態では、治療の有効性は、細胞の特定の集団または系譜に属する細胞数の定量によって評価される。いくつかの実施形態では、治療の有効性は、細胞表面系譜特異的抗原を提示する細胞数の定量によって評価される。
【0234】
いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原に結合する抗原結合断片を含む薬剤および造血細胞集団を、同時投与する。
【0235】
いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原を結合する抗原結合断片を含む薬剤(例えば、本明細書中に記載のキメラ受容体を発現する免疫細胞)を、造血細胞の投与前に投与する。いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原を結合する抗原結合断片を含む薬剤(例えば、本明細書中に記載のキメラ受容体を発現する免疫細胞)を、造血細胞の投与の少なくとも約1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前、10週間前、11週間前、12週間前、3ヶ月前、4ヶ月前、5ヶ月前、6ヶ月前、またはそれ以前に投与する。
【0236】
いくつかの実施形態では、造血細胞を、細胞表面系譜特異的抗原を結合する抗原結合断片を含む薬剤(例えば、本明細書中に記載のキメラ受容体を発現する免疫細胞)の投与前に投与する。いくつかの実施形態では、造血細胞集団を、細胞表面系譜特異的抗原に結合する抗原結合断片を含む薬剤の投与の少なくとも約1日前、2日前、3日前、4日前、5日前、6日前、1週間前、2週間前、3週間前、4週間前、5週間前、6週間前、7週間前、8週間前、9週間前、10週間前、11週間前、12週間前、3ヶ月前、4ヶ月前、5ヶ月前、6ヶ月前、またはそれ以前に投与する。
【0237】
いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原を標的にする薬剤および造血細胞集団を、実質的に同時に投与する。いくつかの実施形態では、細胞表面系譜特異的抗原を標的にする薬剤を投与し、患者をある期間中に評価し、その後に造血細胞集団を投与する。いくつかの実施形態では、造血細胞集団を投与し、患者をある期間中に患者を評価し、その後に細胞表面系譜特異的抗原を標的にする薬剤を投与する。
【0238】
薬剤および/または造血細胞集団の複数の投与(例えば、用量)も本開示の範囲内にある。いくつかの実施形態では、薬剤および/または造血細胞集団を、被験体に1回投与する。いくつかの実施形態では、薬剤および/または造血細胞集団を、被験体に1回を超える回数で(例えば、少なくとも2、3、4、5回、またはそれを超える回数で)投与する。いくつかの実施形態では、薬剤および/または造血細胞集団を、被験体に、一定の間隔で(例えば、6ヶ月毎)投与する。
【0239】
いくつかの実施形態では、被験体は、造血器悪性疾患を有するヒト被験体である。本明細書中で使用される場合、造血器悪性疾患は、造血細胞(例えば、前駆細胞および幹細胞を含む血球)に関与する悪性の異常を指す。造血器悪性疾患の例は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫を含むが、これらに限定されない。白血病は、急性骨髄球性白血病(旧)、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病(旧)、急性リンパ芽球性白血病、または慢性リンパ芽球性白血病、および慢性リンパ性白血病を含む。
【0240】
いくつかの実施形態では、白血病は、急性骨髄球性白血病(旧)(AML)である。AMLは、重要な分化および成長の制御経路を破壊する極めて重要な遺伝子の変化が進行的に獲得された形質転換細胞を起源とする異種クローン性新生物疾患と特徴づけられる(Dohner et al.,NEJM,(2015)373:1136)。CD33糖タンパク質は、大部分の骨髄球性白血病細胞上でならびに正常な骨髄系前駆細胞および単球系前駆細胞上で発現し、AML治療の魅力的な標的であると見なされている(Laszlo et al.,Blood Rev.(2014)28(4):143-53)。抗CD33モノクローナル抗体ベースの治療を使用した臨床試験は、標準的な化学療法と併用した場合にAML患者の部分集合で生存の改善を示したが、これらの効果には安全性および有効性の懸念もあった。
【0241】
AML細胞を標的にすることを目的とした他の試みは、AMLにおいてCD33を選択的に標的にするキメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞の生成を含んだ。Buckley et al.,Curr.Hematol.Malig.Rep.(2):65(2015)。しかし、データは限られており、このアプローチが患者の処置においてどの程度有効であり得るのか(全ての標的にされた細胞が消失するかどうか)不確かである。さらに、骨髄細胞系譜細胞は生命に不可欠であるので、被験体から骨髄細胞系譜細胞を枯渇させると、患者の生存に悪影響を及ぼす可能性があった。本開示は、AML処置に関連するかかる問題の少なくとも一部の解決を目的としている。
【0242】
あるいはまたはさらに、本明細書中に記載の方法を使用して、非造血癌(肺癌、耳鼻咽喉癌、結腸癌、黒色腫、膵臓癌、乳がん、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、基底細胞癌、胆道癌;膀胱癌;骨の癌;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸直腸癌;結合組織癌;消化器系の癌;子宮内膜癌;食道癌;眼球の癌;頭頸部癌;胃癌;上皮内新生物;腎臓癌;喉頭癌;肝臓癌;線維腫、神経芽細胞腫;口腔癌(例えば、唇、舌、口、および咽頭);卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌;腎癌;呼吸器系の癌;肉腫;皮膚癌;胃がん;睾丸癌;甲状腺癌;子宮癌;泌尿器系の癌、ならびに他の癌腫および肉腫を含むが、これらに限定されない)を処置できる。
【0243】
癌腫は、上皮起源のがんである。本開示の方法を用いた処置を意図する癌腫は、小葉がん、小葉癌、肺胞腺癌(腺様嚢胞癌、腺筋上皮腫、篩状癌、および円柱腫とも呼ばれる)、腺様癌、腺癌、副腎皮質の癌腫、胞巣状癌、肺胞上皮癌(細気管支癌、肺胞細胞腫瘍、および肺腺腫症とも呼ばれる)、基底細胞癌、基底細胞がん(バサローマ、またはバシローマ、および毛母癌とも呼ばれる)、類基底細胞癌、基底扁平細胞癌、乳房癌腫、気管支肺胞上皮癌、細気管支癌、気管支原性癌、脳様癌、胆管細胞癌(胆管腫および肝内胆管癌とも呼ばれる)、絨毛癌、粘液癌、面皰性乳癌、子宮体部癌、篩状癌、鎧状癌、皮膚がん、円柱癌腫、円柱細胞癌、管癌、硬性癌、胎児性癌、脳様癌、上眼球癌、類上皮癌、腺上皮癌、潰瘍癌、線維癌、膠様癌、膠様癌腫、巨細胞癌、巨細胞歯肉腫、腺癌、顆粒膜細胞癌、毛母組織癌、血様癌、肝細胞癌(ヘパトーム、悪性ヘパトーム、および肝細胞がんとも呼ばれる)、ヒュルトレ細胞癌(Huirthle cell carcinoma)、硝子状癌、副腎様癌、乳児胎児性癌、上皮内癌、表皮内癌、上皮内癌、クロムペッヘル癌腫、クルチツキー細胞癌腫、レンズ状癌、レンズ状がん、脂肪腫様癌、リンパ上皮性癌、乳腺癌、髄様癌、髄様がん、黒色がん、悪性黒色腫、粘液癌、粘液分泌癌、粘液細胞癌、粘膜類表皮癌、粘液がん、粘膜癌、粘液腫様癌、鼻咽腔癌、黒色癌、燕麦細胞癌、骨化性癌、類骨癌、卵巣癌、乳頭状癌、門脈周囲癌、前浸潤癌、前立腺がん、腎臓の腎細胞癌(腎臓の腺癌および副腎様癌腫(hypemephoroid carcinoma)とも呼ばれる)、予備細胞癌、肉腫様癌、シュナイダー癌腫(scheinderian carcinoma)、スキルス癌、子宮膣部癌、印環細胞癌、単純癌、小細胞癌、バレイショ状癌、回転楕円面細胞癌腫、紡錘細胞癌、海綿様癌、扁平上皮がん、扁平上皮癌、数珠様癌、血管拡張癌、毛細血管拡性癌腫、移行上皮癌、結節がん、結節癌、疣状癌、絨毛がんを含むが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、本開示の方法を、乳房、子宮頸部、卵巣、前立腺、肺、結腸直腸、膵臓、胃、または腎臓の癌を有する被験体を処置するために使用する。
【0244】
肉腫は、骨および軟部組織中に生じる間葉新生物である。様々なタイプの肉腫が認識されており、これらは、以下を含む:脂肪肉腫(粘液様脂肪肉腫および多形性脂肪肉腫(pleiomorphic liposarcoma)を含む)、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(悪性シュワン細胞腫、神経線維肉腫、または神経原性肉腫とも呼ばれる)、ユーイング腫瘍(骨のユーイング肉腫、骨外性(すなわち、非骨)ユーイング肉腫、および原始神経外胚葉腫瘍(PNET)を含む)、滑膜肉腫、血管肉腫、血管内皮腫、リンパ管肉腫、カポジ肉腫、血管内皮腫、線維肉腫、硬性線維腫(進行性線維腫症とも呼ばれる)、隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)、悪性線維性組織球腫(MFH)、血管周囲細胞腫、悪性間葉腫、胞状軟部肉腫、類上皮肉腫、明細胞肉腫、結合組織形成性小細胞腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)(GI間質肉腫としても公知)、骨肉腫(骨原性肉腫としても公知)-骨格および骨外性、ならびに軟骨肉腫。
【0245】
いくつかの実施形態では、処置すべきがんは、難治性がんであり得る。「難治性がん」は、本明細書中で使用される場合、処方された標準的ケアに耐性を示すがんである。これらのがんは、最初は処置に応答したように見える場合があるか(その後再発する)、処置に全く応答しない場合がある。通常の標準的なケアは、癌のタイプおよび被験体における進行度に応じて変化するであろう。ケアは、化学療法、手術、放射線療法、またはこれらの組み合わせであり得る。当業者は、かかる標準的ケアを承知している。したがって、本開示にしたがって難治性がんを処置される被験体は、別の癌処置を事前に受けている可能性がある。あるいは、がんが難治性である可能性が高い場合(例えば、がん細胞の分析または被験体の病歴による)、被験体は別の処置を事前に受けていない可能性がある。難治性がんの例は、白血病、黒色腫、腎細胞癌、結腸癌、肝臓癌(肝癌)、膵臓癌、非ホジキンリンパ腫、および肺癌を含むが、これらに限定されない。
【0246】
本明細書中に記載の任意のキメラ受容体を発現する免疫細胞を、医薬組成物として薬学的に許容され得る担体または賦形剤中で投与できる。
【0247】
句「薬学的に許容され得る」は、本開示の組成物および/または細胞に関連して使用される場合、生理学的に忍容性が高く、かつ哺乳動物(例えば、ヒト)に投与した場合に有害反応を典型的には生じない、かかる組成物の分子実体および他の成分を指す。好ましくは、本明細書中で使用される場合、用語「薬学的に許容され得る」は、哺乳動物、より詳細にはヒトにおける使用について、連邦政府または州政府の規制当局によって承認されているか、米国薬局方または他の一般的に認識されている薬局方に列挙されていることを意味する。「許容され得る」は、担体が組成物の有効成分(例えば、核酸、ベクター、細胞、または治療抗体)と適合し、かつ 組成物(複数可)を投与される被験体に悪影響を及ぼさないことを意味する。本方法で使用されるべき任意の医薬組成物および/または細胞は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で薬学的に許容され得る担体、賦形剤、または安定剤を含み得る。
【0248】
薬学的に許容され得る担体(緩衝液を含む)は、当該分野で周知であり、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;抗酸化剤(アスコルビン酸およびメチオニンを含む);防腐剤;低分子量ポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);アミノ酸;疎水性ポリマー;モノサッカリド;ジサッカリド;および他の炭水化物;金属錯体;および/または非イオン性界面活性剤を含み得る。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000)Lippincott Williams and Wilkins,Ed.K.E.Hooverを参照のこと。
【0249】
治療用キット
細胞表面系譜特異的抗原を欠損している造血細胞集団と組み合わせた細胞表面系譜特異的抗原を標的にする薬剤を使用するためのキットも本開示の範囲内にある。かかるキットは、細胞表面系譜特異的抗原を結合する抗原結合断片を含む任意の薬剤(例えば、本明細書中に記載のキメラ受容体を発現する免疫細胞)および薬学的に許容され得る担体を含む第1の医薬組成物、ならびに細胞表面系譜特異的抗原を欠損している造血細胞集団(例えば、造血幹細胞)および薬学的に許容され得る担体を含む第2の医薬組成物を含む1つまたは複数の容器を含み得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書中に記載の任意の方法で用いる説明書を含み得る。同封される説明書は、被験体が意図する活性を得るための被験体への第1および第2の医薬組成物の投与の説明を含み得る。キットはさらに、被験体が処置を必要とするかどうかの同定に基づいて処置に適切な被験体を選択するための説明を含んでもよい。いくつかの実施形態では、説明書は、処置を必要とする被験体への第1および第2の医薬組成物の投与の説明を含む。
【0251】
本明細書中に記載の細胞表面系譜特異的抗原を標的にする薬剤ならびに第1および第2の医薬組成物の使用に関する説明書は一般に、意図する処置のための投薬量、投与計画、および投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、大量包装(例えば、複数回用量包装)または副次的単位用量であり得る。本開示のキット中に提供される説明書は典型的には、ラベルまたは添付文書上に印刷された説明書である。ラベルまたは添付文書は、医薬組成物が被験体の疾患または障害の処置、発症の遅延、および/または緩和のために使用されることを示す。
【0252】
本明細書中に提供されるキットは、適切な包装物に入っている。適切な包装物は、バイアル、ボトル、ジャー、および軟包装などを含むが、これらに限定されない。吸入器、経鼻投与デバイス、または注入デバイスなどの特定のデバイスと組み合わせて用いるための包装も意図される。キットは、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針で突き刺すことができる栓を有する静脈注射用溶液のバッグまたはバイアルであり得る)。容器はまた、滅菌アクセスポートを有し得る。医薬組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本明細書中に記載のキメラ受容体バリアントである。
【0253】
キットは任意選択的に、緩衝液および解釈を補助する情報などのさらなる構成要素を提供し得る。通常、キットは、容器および容器上または容器に付随したラベルまたは添付文書(複数可)を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、上記キットの内容物を含む製品を提供する。
【0254】
一般的技術
本開示の実施は、別段の指示がない限り、当該分野の技術の範囲内の分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来技術を用いるであろう。かかる技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press;Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987);Introuction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons;Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.):Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995);DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.(1985>>;Transcription and Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins,eds.(1984>>;Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986>>;Immobilized Cells and Enzymes(lRL Press,(1986>>;およびB.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984);F.M.Ausubel et al.(eds.)などの文献で十分に説明されている。
【0255】
さらに詳述することなく、当業者は、上記説明に基づいて、本開示を最大限に利用できると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示と解釈すべきであり、本開示の残りの部分をいかようにも限定するものではない。本明細書中に引用した全ての刊行物は、本明細書中で参照される目的または手段のために参考として援用される。
【0256】
実施例1:ヒト白血病細胞株におけるCD33のin vitro欠失
CRSPR-Cas9システムがin vitroでCD33を標的にする能力を試験するために、ヒト白血病細胞K-562を、Neon(商標)(Thermo Fisher Scientific)を使用して、Cas9-GFP(PX458、S.pyogenes)およびNGG PAM配列を含むガイドRNA(
図4)(ガイドRNAを、hCD33ゲノム配列を標的にするようにデザインした)で同時トランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、Cas9を発現する細胞を同定し、GFPについて選別するFACSを使用して単離した。細胞を次いで、96時間インキュベートし、フローサイトメトリーによりCD33発現について試験した(
図5)。抗CD33抗体を使用するフローサイトメトリープロットは、Cas9ベクターおよびガイドRNAの送達前(上のプロット)および後(下のプロット)のK-562細胞によるCD33発現を示す。
図5に示すように、98%の細胞がトランスフェクション後にCD33発現を欠いていた。
【0257】
この実施例は、ヒト白血病細胞におけるCRISPR-Cas9システムを使用するCD33の有効な欠失を実証する。
【0258】
実施例2:ヒト白血病細胞株におけるCD45のin vitro欠失
in vitroでCD45RAを標的にするためにCRISPR-Cas9システムを使用した。簡潔に述べれば、TIB-67細網肉腫マウスマクロファージ様細胞を、Neon(商標)試薬(Thermo Fisher Scientific)を使用して、Cas9-GFP(PX458、S.pyogenes)およびhCD45RAゲノム配列を標的にするCRISPR gRNA(「NGG」PAM配列を含む)で同時トランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、CRISPR-Cas9システムを発現する細胞を同定し、GFPについて選別するFACSを使用して単離した。細胞を次いで、96時間インキュベートし、CD45RA発現について試験した(
図6)。CD45RA抗体を使用するフローサイトメトリープロットは、Cas9ベクターおよびガイドRNAの送達前(上のプロット)および後(下のプロット)のCD45RA発現を示す。
【0259】
白血病細胞においてCD33発現がうまく低下された実施例1と同様に、この実施例における所見は、CRISPR-Cas9システムを使用するCD45RAの有効な標的化を示す。
【0260】
実施例3:急性骨髄球性白血病(新)(AML)における細胞表面系譜特異的CD33の標的化
本実施例は、AMLにおけるCD33抗原の標的化を含む。本実施例の特定の工程を、表9に概説する。
【0261】
【0262】
I.CD33標的化キメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療
A.抗CD33CAR構築物の生成
本明細書中に記載のCD33を標的にするキメラ抗原受容体は、5’から3’への順序で以下の成分からなり得る:pHIV-Zsgreenレンチウイルスバックボーン(www.addgene.org/18121/)、ペプチドシグナル、CD33scFv、ヒンジ、CD28分子の膜貫通領域、CD28の細胞内ドメイン、およびTCR-ζ分子のシグナル伝達ドメイン。
【0263】
最初に、ペプチドシグナル、抗CD33軽鎖(配列番号1)、可動性リンカー、および抗CD33重鎖(配列番号2)を、任意選択的なKozak配列を有するpHIV-ZsgreenのEcoRI部位にクローン化する。
【0264】
軽鎖-リンカー-重鎖-ヒンジ-CD28/ICOS-CD3ζの基本構造をもつ、CD33を結合する例示的なキメラ受容体の核酸配列を以下に提供する。
パート1:軽鎖-リンカー-重鎖(配列番号16):Kozak開始部位を太字で示す。ペプチドシグナルL1を斜体で示す。リンカーで分離された抗CD33の軽鎖および重鎖を太字の斜体で示す。
【化23】
パート2:ヒンジ-CD28/ICOS-CD3ζNotI制限酵素認識部位を、大文字で示す。翻訳停止部位を太字で示す。BamHI制限切断部位を、下線で示す。
【化24】
【化25】
【化26】
【0265】
次の工程では、TCR-ζのヒンジ領域、CD28ドメイン(配列番号3)、および細胞質成分を、pHIV-Zsgreen(ペプチドシグナルおよびCD33scFvを事前に含む)のNotI部位およびBamHI部位にクローン化する。あるいは、CD28ドメインを、ICOSドメイン(配列番号4)で置換できる。
【0266】
CD28ドメインおよびICOSドメインに加えて、CD28のフラグメントおよびICOS細胞内シグナル伝達ドメインを含む融合ドメインを操作し(配列番号5)、さらなるキメラ受容体の生成のために使用するであろう。かかる立体配置は、キメラ受容体が抗原結合断片、抗CD33軽鎖可変領域、リンカー、抗CD33重鎖可変領域、CD28/ICOSハイブリッド領域(CD28のTM領域を含む)、およびTCR-ζ分子のシグナル伝達ドメインを含む。
【0267】
キメラ受容体を生成するために使用できる成分の例示的なアミノ酸配列(CD28ドメイン(配列番号6)、ICOSドメイン(配列番号7)、CD28/ICOSハイブリッドドメイン(配列番号8)、およびTCR-ζなど)を本明細書中に提供する。あるいは、キメラ受容体も生成できる(セクションB)。
【0268】
B.抗CD33CAR構築物の別の生成方法
例示的なキメラ受容体の略図を、
図7のパネルA~Dに示す。キメラ受容体を、CD33抗原を認識する細胞外ヒト化scFv(細胞外CD8ヒンジ領域によって連結される)、膜貫通ドメインおよび細胞質シグナル伝達ドメイン、ならびにCD3ζ-シグナル伝達鎖を使用して生成するであろう(
図7、パネルB)。抗CD33キメラ受容体をコードするDNAを、ヒト化scFv使用して生成するであろう(Essand et al.,J Intern Med.(2013)273(2):166)。代替法は、CD28もしくはCD28/OX1またはCD28/4-1-B-Bハイブリッドの代わりにOX-1または41-BBを含むCAR T細胞を含む(
図7、パネルCおよびD)。
【0269】
抗CD33scFV配列を生成するために、上記の抗CD33抗体の可変領域の重鎖および軽鎖のコード領域(配列番号1および2)を、特異的プライマーで増幅し、細胞での発現のためのpHIV-Zsgreenベクターにクローン化するであろう。scFv(単鎖可変断片)の標的抗原への結合強度を評価するために、scFvをHek293T細胞中で発現させるであろう。この目的のために、ベクター(コード領域を含むpHIV-Zsgreen)を、大腸菌Top10F細菌に形質転換しプラスミドを調製するであろう。scFv抗体をコードする得られた発現ベクターを、Hek293T細胞へトランスフェクションによって導入するであろう。トランスフェクトされた細胞を5日間培養した後、上清を取り出し、抗体を精製するであろう。
【0270】
得られた抗体を、当該分野で公知のプロトコールによるフレームワーク置換を使用してヒト化できる。参照として、例えば、1つのかかるプロコールはBioAtla(San Diego)によって提供され、ここではテンプレート抗体に由来するフラグメントライブラリーをコードする合成CDRを、機能的に発現された抗体由来の生殖系列配列に制限されたヒトフレームワークプール由来のフラグメントをコードするヒトフレームワーク領域にライゲートする(bioatla.com/applications/express-humanization/)。
【0271】
抗原結合親和性を改善するために、親和性の成熟を行うことができる。ファージディスプレイ(Schier R.、J.Mol.Biol(1996)、263:551)などの当該分野で公知の一般的な技術を用いてこれを行うことができる。バリアントを、例えば、Biacore分析を使用してその生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングできる。改変の優れた候補と考えられる超可変領域残基を同定するために、アラニンスキャニング変異誘発を行って、抗原結合に有意に寄与する超可変領域残基を同定できる。さらに、記載のコンビナトリアルライブラリーを、抗体親和性の改善のために使用することもできる(Rajpal et al.,PNAS(2005)102(24):8466)。あるいは、BioAtlaは、抗体の迅速かつ有効な親和性の成熟のためのプラットフォームを開発しており、このプラットフォームを、抗体最適化のために利用することもできる(bioatla.com/applications/functional-maturation/)。
【0272】
(C)CAR構築物のアセンブリ
次に、抗CD33scFvを、細胞外CD8ヒンジ領域、膜貫通ドメインおよび細胞質CD28シグナル伝達ドメイン、およびCD3ζ-シグナル伝達鎖に連結するであろう。簡潔に述べれば、抗CD33scFv配列に特異的なプライマーを使用して、上記のscFvを増幅するであろう。完全なヒトCD8コード配列を保有するプラスミド(pUN1-CD8)(www.invivogen.com/puno-cd8a)を使用して、CD8ヒンジおよび膜貫通ドメイン(アミノ酸135~205)を増幅するであろう。CD3ζフラグメントを、完全なヒトCD3ζコード配列を保有するInvivogenプラスミド pORF9-hCD247a(http://www.invivogen.com/PDF/pORF9-hCD247a_10E26v06.pdf)から増幅するであろう。最後に、CD28(アミノ酸153~220、CD28のTMドメインおよびシグナル伝達ドメインに対応する)を、Trizol法によって活性化T細胞から回収したRNAを使用して生成したcDNAから増幅するであろう。抗CD33-scFv-CD8-ヒンジ+TM-CD28-CD3ζを含むフラグメントを、スプライス重複伸長(SOE)PCRを使用してアセンブリするであろう。次いで、得られたPCRフラグメントを、pELPSレンチウイルスベクターにクローン化するであろう。pELPSは、第3世代レンチウイルスベクターpRRL-SIN-CMV-eGFP-WPREの誘導体であり、それはCMVプロモーターがEF-1αプロモーターに置換され、HIVのセントラルポリプリン配列がプロモーターの5’側に挿入されている(Milone et al.,Mol Ther.(2009)(8):1453,Porter et al.,NEJM(2011)(8):725)。全構築物を、配列決定によって検証するであろう。
【0273】
あるいは、CD28ドメインの代わりにICOS、CD27、41BB、またはOX-40シグナル伝達ドメインを含むCARを生成し、T細胞に導入し、CD33陽性細胞を根絶する能力について試験するであろう(
図7、パネルC)。効力をさらに増強するために複数のシグナル伝達ドメイン(CD3z-CD28-41BBまたはCD3z-CD28-OX40など)を組み合わせた「第3世代」キメラ受容体の生成も意図する(
図7、パネルD)(Sadelain et al.,Cancer Discov.(2013)4:388)。
【0274】
(D)抗CD33CAR T細胞の調製
初代ヒトCD8+T細胞を、免疫磁気分離法(Miltenyi Biotec)によって患者の末梢血から単離するであろう。T細胞を、以前に記載のように(Levine et al.,J.Immunol.(1997)159(12):5921)、完全培地(10%熱失活FBS、100U/mLペニシリン、100μg/mL硫酸ストレプトマイシン、10mM HEPESを補足したRPMI1640)中で培養し、抗CD3および抗CD28mAbをコーティングしたビーズ(Invitrogen)で刺激するであろう。
【0275】
パッケージング細胞株を使用して、標的細胞に形質導入でき抗CD33キメラ受容体を含むウイルスベクターを生成するであろう。レンチウイルス粒子を生成するために、この実施例のセクション(1)で生成したCARを、不死化した通常の胎児腎臓293Tパッケージング細胞にトランスフェクトするであろう。細胞を、10%FBS、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを含む高グルコースDMEMを用いて培養するであろう。トランスフェクションから48~72時間後に、上清を回収し、組換えレンチウイルスを、FBSを含まないDMEM中で濃縮するであろう。次に、初代CD8+T細胞を、ポリブレンの存在下にて約5~10の感染多重度(MOI)で形質導入するであろう。ヒト組換えIL-2(R&D Systems)を、一日おきに添加するであろう(50IU/mL)。T細胞を、刺激後約14日間培養するであろう。ヒト初代T細胞の形質導入効率を、ZsGreenレポーター遺伝子の発現によって評価するであろう(Clontech、Mountain View、CA)。
【0276】
E.患者へのCAR T細胞の注入
患者への抗CD33CAR T細胞のi.v.注入前に、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、濃縮するであろう。無菌の閉鎖系を提供するHaemonetics CellSaver(Haemonetics Corporation,Braintree,MA)などのセルプロセッサーを、製剤化前の洗浄および濃縮工程で使用するであろう。抗CD33キメラ受容体を発現する終末T細胞を、ヒト血清アルブミンを補足した100mlの滅菌規定食塩液に処方するであろう。最後に、患者に、1~10×107個T細胞/kgを1~3日間にわたって注入するであろう(Maude et al.,NEJM(2014)371(16):1507)。注入される抗CD33キメラ受容体を発現するT細胞の数は、癌患者の状態、患者の年齢、以前の処置など多数の要因に依存するであろう。
【0277】
さらに、AML患者におけるCDを標的にするキメラ受容体に加えて、CD45RAを標的にするキメラ受容体を発現する免疫細胞も本明細書中で意図される。これを、以下の2つの異なるアプローチで達成できる:1)抗CD33キメラ受容体を発現する免疫細胞および抗CD47RAキメラ受容体を発現する免疫細胞を個別に生成し、両方の免疫細胞型を個別に患者に注入すること、または2)CD33およびCD45RAの両方を同時に標的にする免疫細胞を生成すること(Kakarla et al.,Cancer(2):151(2014))。
【0278】
II.CD34+CD33-細胞を使用する自家造血幹細胞移植片(HSCT)
患者からの幹細胞の単離、移植前処置移植前処置、および患者への幹細胞の注入に関するプロトコールは、患者の年齢、状態、治療歴、および処置が行われる施設に依るところが非常に大きいと理解される。したがって、下記のプロトコールは単なる例示であり、当業者によって日常的に最適化される。
【0279】
A.抗CD33CAR T細胞の養子移入後の末梢血幹細胞(PBSC)動員を使用する造血幹細胞の単離
AML患者を、10mg/kg/日の顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)のi.v.投与によって刺激するであろう。CD34+細胞のポジティブ選択を、免疫磁性ビーズおよび免疫磁性富化デバイスを使用して行うであろう。最少で2×106個CD34+細胞/kg体重が、FenwallCS3000+セルセパレーターを用いて収集されると予想される(Park et al.,Bone Marrow Transplantation(2003)32:889)。
【0280】
B.患者の移植前処置
自家末梢血幹細胞移植片(PBSCT)の移植前処置を、エトポシド(VP-16)+シクロホスファミド(CY)+全身照射(TBI)を使用して行うであろう。簡潔に述べれば、このレジメンは、単回用量としての26時間にわたる1.8g/m2のエトポシド(VP-16)のi.v.持続注入(c.i.v.)、その後の2時間にわたる3日間の60mg/kg/日i.v.でのシクロホスファミド(CY)、その後の3日間の300cGy/日の全身照射(TBI)からなるであろう。
【0281】
用量を計算するために、理想体重または実際の体重のいずれか少ない方を使用するであろう。前述のように、正確な移植前処置を決定する際には、癌患者の状態、患者の年齢、以前の処置、および手順を行われる施設のタイプなどの要因の全てが考慮されるであろう。
【0282】
C.CD33を標的にするCRISPR-Cas9システムのプラスミド構築
インサートCas9およびピューロマイシン耐性遺伝子を含むlentiCRISPR v2を、Addgene(プラスミド番号52961)から入手するであろう(Sanjana et al.,Nat Methods(2014)(8):783)。単鎖ガイドRNA(sgRNA)CD33ガイド配列をクローン化するために、lentiCRISPR v2を切断し、FastDigest BsmBIおよびFastAP(Fermentas)を用いて37℃で2時間脱リン酸化するであろう。CD33を標的にするgRNAを、crispr.mit.edu.でのオンライン最適化デザインツールを使用してデザインするであろう。あるいは、gRNAは、
図12に示す配列を有するであろう(配列番号11)。CD33gRNAオリゴヌクレオチドを、Integrated DNA Technologies(IDT)から入手し、ポリヌクレオチドキナーゼ(Fermentas)を使用して37℃で30分間リン酸化し、95℃への5分間の加熱および25℃への1.5℃/分の冷却によってアニーリングするであろう。T7リガーゼを使用して、オリゴをアニーリングし、その後にアニーリングしたオリゴをゲル精製したベクター(Qiagen)に25℃で5分間ライゲートするであろう。次いで、得られたプラスミドを、無内毒素-midi-prepキット(Qiagen)を使用して増幅できる(Sanjana et al.,Nat Methods(2014)(8):783)。
【0283】
あるいは、2つのベクター系を、以前に記載されたプロトコール(Mandal et al.,Cell Stem Cell(2014)15(5):643)で使用できる(gRNAおよびCasを個別のベクターから発現させる場合)。ここで、Mandal et al.は、非ウイルスベクターから発現されたCRISPR-Casシステムを使用して、ヒト造血幹細胞中の遺伝子の効率的な消失を達成した。
【0284】
簡潔に述べれば、C末端SV40核局在シグナルを含むヒトコドン最適化Cas9遺伝子を、2A-GFPを有するCAG発現プラスミドにクローン化するであろう。Cas9に目的のCD33配列を切断させるために、ガイドRNA(gRNA(配列番号11))を、ヒトU6ポリメラーゼIIIプロモーターを含むプラスミドから個別に発現するであろう。gRNA配列オリゴヌクレオチドを、Integrated DNA Technologies(IDT)から入手し、アニーリングし、BbsI制限部位を使用してプラスミドに導入するであろう。ヒトU6プロモーターの転写開始には「G」塩基が必要であるため、かつPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列も必要であるため、ゲノム標的はGN20GGヌクレオチド配列を含むであろう。
【0285】
患者にCD33枯渇造血幹細胞HSCを注入することに加えて、患者にその後CD45RA枯渇HSCを注入するプロトコールが開発されるであろう。あるいは、本発明者らは、CRISPR-Cas9システムを使用して、CD33遺伝子およびCD45RA遺伝子の両方を同時に減少させるためのCD34+CD33-CD45RA-細胞を生成するであろう。CD45RAおよびCD33のための例示的なガイドRNA配列を、表4~8に示す。
【0286】
D.CD34+CD33-細胞を生成するためのCD34+細胞HSCのトランスフェクション
新たに単離した末梢血由来CD34+細胞(工程4由来)を、1×106細胞/mlで、細胞培養グレードの幹細胞因子(SCF)300ng/ml、FLT3-L 300ng/ml、トロンボポエチン(TPO)100ng/ml、およびIL-3 60ng/mlの存在下で無血清CellGro SCGM培地に播種するであろう。24時間の事前刺激後に、CD34+HSCを、AmaxaヒトCD34細胞Nucleofectorキット(U-008)(#VPA-1003)を使用して、Cas9およびCD33gRNAを含むLentiCRISPRv2でトランスフェクトするであろう(Mandal et al.,Cell Stem Cell(2014)15(5):643)。トランスフェクションから24~48時間後に、CD34+CD33-細胞を1.2μg/mlピューロマイシンで選択する。ピューロマイシン選択後に、CD34+CD33-細胞を、無ピューロマイシン培地中で2日間維持するであろう。
【0287】
E.CD34+CD33-細胞の患者への再注入
ex vivoにてCRISPR-Cas9-CD33でトランスフェクトしたCD34+細胞(CD34+CD33-細胞)を、フィルターを使用しない標準的な血液投与セットを使用して、直ちにヒックマンカテーテルによって再注入する(Hacein-Bey Abina et al.JAMA(2015)313(15):1550)。
【0288】
一般に、上記概説の処置プロトコールを受けた患者を、循環芽球および血球減少の再出現についてモニタリングするであろう。さらに、特定の患者におけるAMLの発症機序に応じて、処置の成功を、有益な分子マーカーもしくは細胞遺伝学的マーカーの再出現、または有益なフローサイトメトリーパターンの試験によってモニタリングするであろう。例えば、フィラデルフィア染色体陽性AMLにおけるBCR-ABLシグナルの再出現を、BCR(22番染色体について)およびABL(9番染色体について)に対するプローブを用いる蛍光in situハイブリッド形成(FISH)を使用して検出するであろう。
【0289】
CRISPR-Cas9システムを介するCD33欠失の成功を評価するために、末梢血CD34+細胞を、タンパク質(移植後)から単離し、例えばフローサイトメトリー、ウェスタンブロッティング、または免疫組織化学を使用して、CD33発現について評価するであろう。
【0290】
本明細書中に記載のように、この実施例に記載のHSCTは、自家または同種のいずれかであり得、両方のアプローチが適切であり、本開示に記載の方法に組み込むことができる。
【0291】
III.任意選択的な工程:毒素に付着されたCD33抗体による患者の継続処置
A.CD33免疫毒素ゲムツズマブオゾガマイシン(GO)による患者の処置
患者を、2週間間隔で2回の用量における2時間の静脈内注入として、9mg/m
2の抗CD33抗体ゲムツズマブオゾガマイシン(GO)で処置するであろう(Larson et al.,Cancer(2005),104(7):1442-52)。GOは、細胞増殖抑制薬カリチアマイシンと抱合されたCD33に対するヒト化モノクローナル抗体から構成される(
図8)。
【0292】
あるいは、抗CD33抗体を、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素A(PE)、またはリシン毒素A鎖(RTA)などの異なる毒に抱合して生成できる(Wayne et al.,Blood(2014)123(16):2470)。同様に、抗CD45RA抗体を毒素に付着させ、処置レジメンに含めることができる。
【0293】
実施例4:抗CD33キメラ受容体を発現するT細胞およびNK細胞株は、CD33を発現する標的細胞の細胞死を誘導する
CD33へのキメラ受容体の結合
CD33を結合するキメラ受容体(例えば、CART1、CART2、CART3)を、従来の組換えDNAテクノロジーを使用して生成し、pHIV-Zsgreenベクター(Addgene;Cambridge、MA)に挿入した。キメラ受容体を含むベクターを使用してレンチウイルス粒子を生成し、これを使用して、異なる細胞型、例えば、T細胞株(例えば、293T細胞)およびNK細胞株(例えば、NK92細胞)に形質導入した。キメラ受容体の発現を、ウェスタンブロッティング(
図9、パネルA)およびフローサイトメトリー(
図9、パネルB)によって検出した。
【0294】
キメラ受容体を発現する細胞を、蛍光標示式細胞分取(FACS)によって選択し、そのCD33への結合能力を評価した。簡潔に述べれば、キメラ受容体を発現する293T細胞のライセートを、CD33またはCD33-アロフィコシアニン(APC)抱合体と同時インキュベートした。試料をタンパク質電気泳動に供し、ポンソータンパク質染料(
図10、パネルA)で染色するか、膜に移して抗CD3ζ一次抗体で探索した(
図10、パネルB)。両方の場合で、キメラ受容体とそれらの標的CD33の間の結合。
【0295】
キメラ受容体を発現するK562細胞も、プローブとしてCD33を使用するフローサイトメトリーによりCD33への結合について評価した(
図10、パネルC)。空のベクターコントロールを含む細胞と比較して、キメラ受容体(CART1、CART2、またはCART3)の発現およびCD33結合について陽性の細胞数が増加し、キメラ受容体がCD33に結合することが示された。
【0296】
キメラ受容体を発現する細胞によって誘導される細胞傷害性
キメラ受容体を発現するNK-92細胞を、細胞表面上にCD33を提示する標的細胞(例えば、K562は、CD33+であるヒト慢性骨髄性白血病(新)細胞株である)の細胞傷害性を誘導する能力について機能的に特徴づけた。細胞傷害性アッセイを行うために、エフェクター細胞(NK-92細胞などの免疫細胞)を、キメラ受容体をコードするレンチウイルス粒子で感染させ、拡大した。感染から7日後に、キメラ受容体を発現する細胞を、キメラ受容体コードベクターによってもコードされる蛍光マーカー(例えば、GFP+またはRed+)について選択することによるFACS分析によって選択した。キメラ受容体を発現する選択された細胞を、1週間拡大した。感染から14日後に、標的細胞(標的細胞表面系譜特異的抗原CD33を発現する細胞)のカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(carboyxfluorescein succinimidyl ester)(CFSE)での染色ならびに標的細胞およびキメラ受容体を発現する細胞の計数を含む細胞傷害性アッセイを行った。標的細胞およびキメラ受容体を発現する細胞を、異なる比で丸底96ウェルプレート中にて4.5時間同時インキュベートし、その後に7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)を添加して生育不能細胞を染色した。フローサイトメトリーを行って、生存標的細胞集団および生育不能標的細胞集団を計数した。
図11のパネルAおよびBに示すように、キメラ受容体CART1、CART2、またはCART3を発現するNK92細胞は、評価した各細胞比で相当量の標的K562細胞の細胞死を誘導した。
【0297】
K562細胞の細胞死がCD33へのキメラ受容体の特異的標的化に依存するかどうかを決定するために、K562を、CRISPR/Casシステムを使用してCD33が欠損するように遺伝子操作した。簡潔に述べれば、ヒトコドン最適化Cas9エンドヌクレアーゼおよびCD33のIgCドメインの一部を標的にするgRNAをK562細胞中で発現し、それにより、CD33欠損型K562細胞集団を得た。この細胞を拡大し、キメラ受容体を発現するNK92細胞と同時インキュベートし、細胞傷害性アッセイを上記のように行った。
図12のパネルAに示すように、プールしたCD33欠損型K562細胞は、キメラ受容体を発現するNK92細胞と同時インキュベートした場合に細胞死のわずかな減少を示した。しかし、CD33欠損型K562細胞の単一クローンを単離し、拡大し、これを使用して細胞傷害性アッセイを行った場合、細胞傷害性のより顕著な低下が観察された(
図12、パネルB)。
【0298】
初代T細胞におけるキメラ受容体の発現
初代T細胞集団を、FACSによるCD4+細胞、CD8+細胞、またはCD4+/CD8+細胞の陽性選択によってドナーから得たPMBCから単離し、それにより、高純度の集団を得た(
図13、パネルAおよびB)。各初代T細胞集団(CD4+細胞、CD8+細胞、またはCD4+/CD8+細胞)を、キメラ受容体(例えば、CART1およびCART8)を含むレンチウイルスベクターで形質導入し、それによって得られたキメラ受容体を発現する初代T細胞を使用して、上記のように細胞傷害性アッセイを行った。キメラ受容体を発現するCD4+T細胞集団のK562(1000個の標的K562細胞)との同時インキュベーションは、K562細胞の細胞傷害性を生じなかった(
図14、パネルA)。対照的に、キメラ受容体を発現するCD8+細胞またはCD4+/CD8+細胞のいずれかおよび1000個の標的K562細胞を使用する細胞傷害性アッセイでは、CD8+細胞またはCD4+/CD8+細胞は、低細胞比でK562細胞の細胞死を誘導できた(
図14、パネルB)。
【0299】
造血幹細胞の遺伝子操作
いくつかのgRNAを、CD33のIgCドメインとハイブリッド形成するようにデザインした(例えば、表4、配列番号11または28~31を参照のこと)。各gRNAを、K562細胞中でCas9エンドヌクレアーゼ(endonculease)と共に発現させた。CD33の発現を、フローサイトメトリーによって評価した(
図15)。Crispr3(配列番号28)およびCrispr5(配列番号29)について示すように、CD33を標的にするCRISPR/Casシステムを発現する細胞において、CD33を発現する対照細胞と比較して、CD33が顕著に減少した。
【0300】
CD33欠損型造血幹細胞を、種々の特徴(増殖、赤血球生成性分化(erythopoeitic differentiation)、およびコロニー形成を含む)についても評価した。簡潔に述べれば、CD33欠損型造血幹細胞および対照細胞を、ヘミンへの前述の細胞の暴露によって分化誘導し、CD71(赤血球前駆体のマーカー)を、フローサイトメトリーによって異なる時点で評価した(
図16、パネルAおよびB)。CD33欠損型造血幹細胞は赤血球生成性分化(erythopoeitic differentiation)を受け、フローサイトメトリープロフィールは、対照細胞(CD33+)に類似するようであった。細胞をMTTアッセイにも供して、CD33欠損型造血幹細胞の代謝活性を測定した。
図16のパネルCに示すように、CD33欠損型造血幹細胞は対照細胞と同程度に機能した。最後に、細胞が増殖して細胞コロニーを形成する能力を、微視的コロニー形成アッセイを使用して観察した。この場合も、CD33欠損型造血幹細胞は、対照細胞と同程度にコロニーを形成できた(
図18)。これらの結果は、CD33の一部のCRISPR/Cas欠失が細胞の増殖能力、分化能力、またはコロニー形成力に有意に影響を及ぼさないことを示す。
【0301】
実施例5
ある実施形態では、本発明は、CD33遺伝子のエクソン2中に一塩基多型を示すドナーHSCの利用に関する。ある実施形態では、SNPは:CD33遺伝子のエクソン2中の(SNP)rs12459419(C>T;Ala14Val)(
図19を参照のこと)である。このSNPは、SRSF2のエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉し、その結果、成熟転写物からエクソン2が喪失する。エクソン2によってコードされる領域は、CD33を標的にするほとんどのモノクローナル抗体の結合部位である。したがって、このSNP(またはエクソン2を喪失させる類似のSNP)と共にHSCを利用することは、系譜特異的細胞表面抗原を欠損している造血細胞集団を提供し、それ故に抗原特異的処置後に正常な造血細胞を回復できる標的化方法である。
【0302】
別の実施形態では、ドナー細胞がSNPrs12459419(C>T;Ala14Val)を示すかどうかと無関係にドナー細胞由来のESE部位を破壊し、それ故にCD33エクソン2の喪失を保証するCRISPR/Cas9システムの使用方法を提供する。したがって、この実施形態は、ドナー細胞由来のESE部位を破壊するためのCRISPR/Cas9システムの使用に関する。PAMを有するガイドおよびこの方法のための配列全体の概要を
図19に示す。ドナー細胞由来のESEを破壊するためのCRISPR/Cas9システムの利用は、系譜特異的細胞表面抗原を欠損している造血細胞集団を提供しそれ故に抗原特異的処置後に正常な造血細胞を回復できる代替法である。
【0303】
この実施形態の重要な配列の態様の概要を述べた略図を
図19に示す。
【0304】
したがって、ある態様では、ドナーHSCを、本明細書中に記載のSNPの存在についてスクリーニングでき、この場合、SNPがSRSF2のエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉し、それにより成熟転写物からエクソン2が喪失するので、さらなる遺伝子操作は必要ないであろう。この様式で、CD33標的化処置を受けた患者にHSCの回復集団を提供でき、患者らの正常なHSCが回復されるであろう。
【0305】
あるいは、かかるSNPの非存在下で、CRISPR/Cas9システムは、本明細書中に記載のドナー細胞由来のESE部位を破壊してCD33エクソン2を有効に排除し、抗原特異的処置後に正常な造血細胞を回復するためのHSCを生成するための代替法を提供する。
【0306】
したがって、本開示の1つの態様は、造血器悪性疾患を処置する方法であって、前述の処置を必要とする被験体に、以下の:
(i)系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤の有効量であって、前述の薬剤が、CD33である系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含む、薬剤の有効量;および
(ii)CD33遺伝子のエクソン2が変異しているか欠損している造血細胞集団
を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0307】
さらなる実施形態では、幹細胞は、CD33遺伝子のエクソン2中に一塩基多型(SNP)rs12459419(C>T;Ala14Val)を示す。
【0308】
なおさらなる実施形態では、SNPは、SRSF2のエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉し、それによりCD33の成熟転写物からエクソン2を喪失させる。
【0309】
さらなる実施形態では、本開示は、造血器悪性疾患を処置する方法であって、前述の処置を必要とする被験体に、以下の:
(i)系譜特異的細胞表面抗原を標的にする薬剤の有効量であって、前述の薬剤が、CD33である系譜特異的細胞表面抗原を結合する抗原結合断片を含む、薬剤の有効量および
(ii)CD33遺伝子のエクソン2が変異するか欠損するように遺伝子操作された造血細胞集団
を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0310】
さらなる実施形態では、CD33遺伝子は、造血細胞中でCRISPR-Cas9によって操作される。
【0311】
さらなる実施形態では、遺伝子操作された造血細胞は、CD33をコードする内因性遺伝子を、CD33の発現を消失させるかCD33の成熟転写物からエクソン2が喪失されるように編集することによって調製される。
【0312】
別の実施形態では、CRISPR-Cas9操作により、SRSF2のエクソン内スプライシングエンハンサー(ESE)結合部位に干渉し、それによりCD33の成熟転写物からエクソン2が喪失される変異が作出される。
【0313】
なおさらなる実施形態では、CRISPR-Cas9操作により、CD33を標的にする薬剤によって認識されないCD33が得られる。
【0314】
本明細書中で使用される場合、造血器悪性疾患は、造血細胞(例えば、前駆体および幹細胞を含む血球)が関与する悪性の異常を指す。造血器悪性疾患の例は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫を含むが、これらに限定されない。白血病は、急性骨髄球性白血病(新)(AML)、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病(新)、急性リンパ芽球性白血病または慢性リンパ芽球性白血病、および慢性リンパ性白血病を含む。
【0315】
あるいはまたはさらに、本明細書中に記載の方法を使用して、非造血癌(肺癌、耳鼻咽喉癌、結腸癌、黒色腫、膵臓癌、乳がん、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、基底細胞癌、胆道癌;膀胱癌;骨の癌;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸直腸癌;結合組織癌;消化器系の癌;子宮内膜癌;食道癌;眼球の癌;頭頸部癌;胃癌;上皮内新生物;腎臓癌;喉頭癌;肝臓癌;線維腫、神経芽細胞腫;口腔癌(例えば、唇、舌、口、および咽頭);卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌;腎癌;呼吸器系の癌;肉腫;皮膚癌;胃がん;睾丸癌;甲状腺癌;子宮癌;泌尿器系の癌、ならびに他の癌腫および肉腫を含むが、これらに限定されない)を処置できる。
【0316】
参考文献
Lamba JK1,et al.,J.Clin.Oncol.2017 Aug 10;35(23):2674-2682.doi:10.1200/JCO.2016.71.2513.Epub 2017 Jun 23. CD33 Splicing Polymorphism Determines Gemtuzumab Ozogamicin Response in De Novo Acute Myeloid Leukemia:Report From Randomized Phase III Children’s Oncology Group Trial AAML0531.
【0317】
他の実施形態
本明細書中に開示の全ての特徴を、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書中に開示の各特徴を、同一、等価、または類似の目的を果たす別の特徴に置き換えることができる。したがって、特に明記しない限り、開示の各特徴は、一般的な一連の等価または類似の特徴の一例にすぎない。
【0318】
上記の説明から、当業者は、本開示の本質的特質を容易に確認でき、その意図および範囲から逸脱することなく、種々の用途および条件に適応するように本開示の種々の変更および修正を行うことができる。したがって、他の実施形態も特許請求の範囲の範囲内にある。
【0319】
均等物
本明細書中にいくつかの本発明の実施形態を記載および例示しているが、当業者は、本明細書中に記載の機能を発揮し、そして/または結果および/または1つまたは複数の利点を得るための種々の他の手段および/または構造を容易に想定し、かかる変形および修正の各々が本明細書中に記載の本発明の実施形態の範囲内にあると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書中に記載の全てのパラメーター、寸法、材料、および構成が例示であることを意味すること、ならびに、実際のパラメーター、寸法、材料、および構成が本発明の教示が使用される特定の適用に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、日常的な実験のみを使用して、本明細書中に記載の本発明の特定の実施形態の多数の均等物を認識するか、確認できるであろう。したがって、前述の実施形態がほんの一例として示されおり、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明の実施形態を、具体的に説明および主張された方法以外の方法で実施できると理解すべきである。本開示の本発明の実施形態は、本明細書中に記載の個別の特徴、システム、製品、材料、キット、および/または方法に関する。さらに、かかる特徴、システム、製品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、2つまたはそれを超えるかかる特徴、システム、製品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせが、本開示の本発明の範囲内に含まれる。
【0320】
本明細書中で定義および使用されるすべての定義は、辞書の定義、参考として援用される文書の定義、および/または定義された用語の通常の意味を制すると理解されるべきである。
【0321】
本明細書中に開示の全ての参考文献、特許、および特許出願は、それぞれが引用される主題に関して参考として援用され、場合によっては文書全体を包含し得る。
【0322】
本明細書中および特許請求の範囲中で使用される不定冠詞「a」および「an」は、明らかに反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0323】
本明細書中および特許請求の範囲中で使用される句「および/または」は、前述の句で連結された要素の「いずれかまたは両方」(すなわち、ある場合には連言的に存在し、別の場合には離接的に存在する要素)を意味すると理解すべきである。「および/または」を用いて列挙した複数の要素は、同一の様式にある(すなわち、前述の句で連結された「1つまたは複数」の要素)と解釈されるべきである。前述の具体的に指定された要素と関連するか無関係かに関わらず、「および/または」節によって具体的に指定された要素以外の他の要素が任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」との言及は、「含む(comprising)」などの非制限用語と併せて使用される場合、1つの実施形態では、Aのみ(B以外の要素を任意選択的に含む);別の実施形態では、Bのみ(A以外の要素を任意選択的に含む);さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(他の要素を任意選択的に含む)などを指し得る。
【0324】
本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、「または」は、上記定義の「および/または」と同一の意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包含、すなわち、要素の数またはリストの少なくとも1つを含むが、2つ以上も含み、任意選択的に、列挙されていないさらなる項目も含むと解釈されるものとする。「1つのみ」もしくは「正確に1つ」、または、特許請求の範囲で使用される場合の「~からなる」などの逆を明確に示す用語のみが、複数の要素の数またはリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指すであろう。一般に、本明細書中で使用される用語「または」は、「いずれか」、「1つの」、「たった1つの」、または「正確に1つの」などの排他性を示す用語が先行する場合、代替物を排除する(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない」)ことのみを示すと解釈されるものとする。「~から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法で使用される通常の意味を持つものとする。
【0325】
本明細書中および特許請求の範囲中で使用される場合、1つまたは複数の要素のリストに関する句「少なくとも1つ」は、複数の要素のリスト中の任意の1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、複数の要素のリスト内に具体的に列挙された各要素およびあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含まず、かつ複数の要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを排除しないと理解すべきである。この定義はまた、句「少なくとも1つ」が指す要素のリストの範囲内に具体的に指定された要素以外の要素が、前述の具体的に指定された要素と関連するか無関係かに関わらず、任意選択的に存在し得ることを許容する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、等価に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または、等価に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態では、Bが存在しない(かつB以外の要素を任意選択的に含む)少なくとも1つのA(任意選択的に1超を含む);別の実施形態では、Aが存在しない(かつA以外の要素を任意選択的に含む)少なくとも1つのB(任意選択的に1超を含む);さらに別の実施形態では、少なくとも1つのA(任意選択的に1超を含む)および少なくとも1つのB(任意選択的に1超を含む)(かつ他の要素を任意選択的に含む)などを指し得る。
【0326】
逆に明確に示されない限り、1つを超える工程または行為を含む本明細書中に主張した任意の方法において、方法の工程または行為の順序は、方法の工程または行為が列挙された順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】