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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010548
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】フッ素樹脂断熱製品
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/04 20060101AFI20240117BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240117BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
F16L59/04
B32B27/30 D
B32B1/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111941
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000211156
【氏名又は名称】中興化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】菅澤 淳
【テーマコード(参考)】
3H036
4F100
【Fターム(参考)】
3H036AA01
3H036AB18
3H036AC01
3H036AD05
4F100AK17A
4F100AK17B
4F100AK18A
4F100AK19B
4F100BA02
4F100DA02
4F100DA11
4F100DC13
4F100DJ00A
4F100DJ00B
4F100JJ02
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】設置が容易なフッ素樹脂断熱製品を提供すること。
【解決手段】多孔質構造を含む第1フッ素樹脂製の第1層と、第1層と同軸上に設けられた第2フッ素樹脂製の第2層とを具備するフッ素樹脂断熱製品が提供される。第2層は、20%以下の気孔率と0.8mm以上の厚さを有する。フッ素樹脂断熱製品は、第1層と第2層とを含んだ多層管形状を含む。フッ素樹脂断熱製品は、管軸方向に沿った背割り部を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造を含む第1フッ素樹脂製の第1層と、
前記第1層と同軸上に設けられ20%以下の気孔率と0.8mm以上の厚さを有する第2フッ素樹脂製の第2層と
を具備し、
前記第1層と前記第2層と含んだ多層管形状を含み、管軸方向に沿った背割り部を有する、フッ素樹脂断熱製品。
【請求項2】
前記第1層は5%以上の気孔率を有する、請求項1に記載のフッ素樹脂断熱製品。
【請求項3】
前記第1層は100μmを上回る厚さを有する、請求項1又は2に記載のフッ素樹脂断熱製品。
【請求項4】
前記背割り部は爪形状部を含む、請求項1又は2に記載のフッ素樹脂断熱製品。
【請求項5】
前記背割り部にて前記多層管形状の側面に対する貫通口を含む、請求項1又は2に記載のフッ素樹脂断熱製品。
【請求項6】
前記多層管形状を複数含み、複数の前記多層管形状はその管軸方向が交差する配置で接合されている、請求項1又は2に記載のフッ素樹脂断熱製品。
【請求項7】
前記第1フッ素樹脂はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む、請求項1又は2に記載のフッ素樹脂断熱製品。
【請求項8】
前記第2フッ素樹脂はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマ(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項7に記載のフッ素樹脂断熱製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂断熱製品に関する。
【背景技術】
【0002】
四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン;PTFE)等のフッ素樹脂からなる多孔質材料は、耐薬品性および耐熱性を有することから、断熱材として利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平5-154928号公報)には、延伸により形成された空隙を有する多孔質四フッ化エチレン樹脂シートを、断熱対象物を覆う立体形状に形成した断熱カバーが開示されている。特許文献1では、半導体等の製造装置の薬液ラインにおいてシリコンウェハーのエッチング用の薬液として使用される濃硫酸や濃硝酸等に対する耐食性に優れている四フッ化エチレン樹脂を用いることで、半導体製造現場に適用可能な断熱材を提供している。
【0004】
特許文献2(特表2020-515685号公報)には、ポリマーマトリックス、エアロゲル粒子および膨張微小球を含む断熱材料が開示されている。ポリマーマトリックスの例としては、フルオロポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、及びポリウレタン等が挙げられている。エアロゲル粒子は対流及び伝導熱伝達を有意に低減する断熱材であるので含まれており、膨張微小球はポリマーマトリックスを膨張させることで発泡断熱材を得ることを可能にするので含まれている。つまり特許文献2の断熱材料は、断熱性を向上させるための添加剤としてエアロゲル粒子および膨張微小球を含んでいる。
【0005】
特許文献3(特開2019-189816号公報)には、フッ素樹脂を含有する多孔体、特にPTFEを主成分として含有する多孔体が開示されている。特許文献3によれば、PTFE多孔体は、耐熱性、耐薬品性に優れ、比誘電率等の電気的特性にも優れるため、断熱材、吸音材、シール材、フィルタなどの分離膜、医療用途など幅広い用途に用いられている。特許文献3では、フッ素樹脂粉末の分散液を発泡させることによって、特定の方向に配向していない独立した円形又は楕円形の形状の気孔を有し、熱収縮が小さく、気孔率が高く、柔軟性および復元性に優れるフッ素樹脂多孔体を得ている。フッ素樹脂粉末の分散液は、フッ素樹脂粉末を水/水溶性のアルコールの混合溶媒に分散させることで調製されている。
【0006】
なお、PTFE等のフッ素樹脂が有する耐薬品性および耐熱性は、断熱材以外の用途でも利用されている。具体的な形態の例として、それぞれフッ素樹脂からなる多孔質層と充実層とを重ねた多層チューブを挙げることができる。
【0007】
例えば、特許文献4(特開平7-1630号公報)には、充実構造のPTFEからなる第1層と、その外周面に積層された多孔質構造のPTFEからなる第2層とからなり、該第1層と第2層とは熱融着により一体化されている可撓性多層チューブが開示されている。当該多層チューブは、優れた耐薬品性および耐熱性に加え、優れた気密性、並びに優れた屈曲性および内部表面の耐汚染性を有する可撓性チューブを提供するものである。大まかには、充実構造の第1層による気密性と多孔質構造の第2層による屈曲性とを併せ持った可撓性多層チューブが記載されている。チューブの屈曲性の観点から第1層を形成する充実構造フィルムをできるだけ薄くすることが望ましいところ、該フィルムを実質上完全気密構造に形成することで、薄膜であっても優れた気密性を付与できる。可撓性多層チューブの用途の例として、電子内視鏡装置における吸引チューブや管路形成用チューブ等の医療用チューブが記載されている。
【0008】
また、特許文献5(特開平10-337405号公報)には、多孔質構造層と、非多孔質構造層とが厚み方向に一体化され、厚み方向の中心から外表面側と内表面側とで異なった非対称の構造を有し、液体浸透性がなく且つ気体透過性を有するフッ素樹脂チューブが開示されている。当該チューブを薬液中の溶存ガスを除去するための真空脱気装置における膜材として使用することで、処理液のチューブ透過を防止しつつも効率よく脱気処理を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5-154928号公報
【特許文献2】特表2020-515685号公報
【特許文献3】特開2019-189816号公報
【特許文献4】特開平7-1630号公報
【特許文献5】特開平10-337405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
断熱対象物への断熱材の取付けを容易に行う手段として、例えば、背割り加工を施したチューブ形状の断熱材を用いる方法が知られている。しかし、一般的には背割りチューブを被せた後にバンド等を使用してチューブを固定するため、断熱材の取付けに手間を要する。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、設置が容易なフッ素樹脂断熱製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
多孔質構造を含む第1フッ素樹脂製の第1層と、第1層と同軸上に設けられた第2フッ素樹脂製の第2層とを具備するフッ素樹脂断熱製品が提供される。第2層は、20%以下の気孔率と0.8mm以上の厚さを有する。フッ素樹脂断熱製品は、第1層と第2層とを含んだ多層管形状を含む。フッ素樹脂断熱製品は、管軸方向に沿った背割り部を有する。
【発明の効果】
【0013】
上記構成のフッ素樹脂断熱製品は、断熱対象物に被せるだけで設置が可能であるため、容易に取付け可能な断熱材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フッ素樹脂断熱製品の一例を概略的に示す斜視図。
図2図1のII-II’面に沿った概略断面図。
図3】フッ素樹脂断熱製品の他の例を概略的に示す斜視図。
図4図3のIV-IV’面に沿った概略断面図。
図5】一例のフッ素樹脂断熱製品の取付けの概要を表す概略図。
図6】フッ素樹脂断熱製品の変形例を概略的に示す断面図。
図7】フッ素樹脂断熱製品の他の変形例を概略的に示す断面図。
図8】フッ素樹脂断熱製品のさらに他の変形例を概略的に示す平面図。
図9】フッ素樹脂断熱製品のまたさらに他の変形例を概略的に示す斜視図。
図10図9に示す例のフッ素樹脂断熱製品の取付けの概要を表す概略図。
図11】フッ素樹脂断熱製品のことさら他の変形例を概略的に示す斜視図。
図12図11に示す例のフッ素樹脂断熱製品の取付けの概要を表す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0016】
<フッ素樹脂断熱製品>
発明の実施形態に係るフッ素樹脂断熱製品は、第1フッ素樹脂製の第1層と、第1層と同軸上に設けられた第2フッ素樹脂製の第2層とを具備する。第1層は、多孔質構造を含む。第2層は、20%以下の気孔率と0.8mm以上の厚さを有する。フッ素樹脂断熱製品は多層管形状を含んでおり、この多層管形状は第1層と第2層とを含む。そしてフッ素樹脂断熱製品は、管軸方向に沿って背割り部を有する。
【0017】
係るフッ素樹脂断熱製品は、例えば、配管(配管材料)上に設けるフッ素樹脂製の断熱製品であり得る。
【0018】
以下、実施形態に係るフッ素樹脂断熱製品を、“断熱製品”と省略して表記する。
【0019】
第1層は多孔質構造を含み、断熱性能を示す。第2層は上述の気孔率と厚さを有しているため、管形状を保つ応力を発揮する。例えば、断熱製品を背割り部にて押し開いても、第2層の応力によって元の形状に戻ろうとする。そのため、断熱製品を断熱材として断熱対象物に設置する際に、背割り部を開いて断熱対象物に被せた時に第2層の応力により背割り部が閉じるので、ワンタッチで断熱製品を取り付けることができる。また、第2層の応力により、断熱対象物への設置時に断熱製品の抱き着き力が生まれる。そのため、結束バンド等の拘束部材を別途使用しなくても、断熱対象物上に断熱製品を保持することができる。
【0020】
加えて、第1層と接合または接着されている第2層が十分な硬さを有しているため、加熱や高温環境に起因する収縮が生じにくい。収縮およびそれによる第1層の気孔率の低下が抑えられているため、設置個所への取付け後の断熱製品の断熱効果の低下が改善されている。
【0021】
断熱製品が含む多層管形状は、管形状の第1層と管形状の第2層とが積層されて成るものであり得る。ここでいう管形状とは、例えば、円筒形等のチューブ又はパイプに背割りを施したものである。または、フッ素樹脂のシートを曲げるなどして管形状とすることもできる。第1層と第2層とは、例えば、熱融着により接合された状態に在り得る。また、多層管形状において、第1層と第2層との間に、例えば、接着層が介在し得る。
【0022】
多層管形状における第1層および第2層の配置としては、第1層が第2層より内側に位置してもよく、第1層が第2層より外側に位置してもよい。多層管形状の内側および外側の何れの位置においても第1層は断熱性能を発揮することができる。多層管形状の内側および外側の何れの位置においても第2層は、応力による多層管形状への復元力および断熱対象物への抱き着き力を発揮することができる。
【0023】
断熱性を高める観点からは、第2層が外側に設けられる配置が望ましい。第1層と比較して気孔率が低い第2層により第1層の外周を覆うことにより、第1層における空気の対流を少なくできる。第1層における空気の対流を防止できるため、気密性を示す充実構造の第2層を第1層の外周に設けることが、断熱性の観点からさらに好ましい。
【0024】
また、第2層を充実層とすることで、例えば、断熱対象物の配管材料から薬液が漏れた場合に外部に流出することを防止できる。一方で第2層は、多層管形状への復元力が得られる応力を示すことができれば、充実層に限られず、例えば、上述した上限値以下の気孔率(第2気孔率)の第2多孔質構造を含み得る。
【0025】
断熱製品の一例を、図1及び図2に示す。
【0026】
図1は断熱製品の一例を概略的に示す斜視図であり、図2図1のII-II’面に沿った概略断面図である。ここで図示する例の断熱製品では、多層管形状の内側に多孔質構造の第1層が位置し、外側に第2層が位置する。
【0027】
図1及び図2に示す例の断熱製品10は、多孔質構造を含んだフッ素樹脂製の第1層1と、第1層1の外周に設けられたフッ素樹脂製の第2層2とから成る多層管形状を有する。図示する例では第1層1及び第2層2は何れも円形断面を有しているが、各層の断面形状は円形に限られない。
【0028】
断熱製品10の多層管形状の管軸方向に沿って、背割り部3が設けられている。背割り部3は、例えば、断熱製品10の外表面から内表面まで第1層1及び第2層2の両方を貫く切れ目であり得る。背割り部3は、図2に示すように断熱製品10の外表面と内表面とを直線で結ぶ分け目であってもよいが、背割り部3の形態は図示する例に限られない。また、背割り部3は、図1に示すように断熱製品10の多層管形状の長手方向に直線的に沿う分け目であってもよいが、背割り部3の形態は図示する例に限られない。後述する変形例にて、背割り部3の他の形態の例を一部示す。
【0029】
断熱製品10の多層管形状の内径Dは、断熱対象物の寸法に応じて適宜設定できる。従って、内径Dは特に制限されないが、例えば、10mm以上50mm以下の範囲内にある。なお、内径Dは、例えば、1/1000mmの精度を有するピンゲージ又はノギスを用いて測定することができる。
【0030】
第1層1の壁面の厚さTは、100μmを上回ることが好ましい。壁面の厚さが過剰に小さいと、断熱製品10として優れた断熱性を示すのが困難となる。第1層1の厚さTは、一例によると0.5mm以上3.0mm以下の範囲内にある。厚さTは、図示するとおり第1層1の内周面から、最も近い外周面までの径方向の距離で規定される。第1層1の壁面の厚さTは、例えば、断熱製品10の多層管形状の全長に亘って均一又は略均一であり得る。第2層2の壁面は、0.8mm以上の厚さTを有する。作業性およびコストパフォーマンスの観点から、第2層2の壁面の厚さTは、好ましくは5mm以下である。
【0031】
各層の壁面厚さは、デジタルマイクロスコープ等の光学顕微鏡で観察することにより測定可能である。具体的には、測定対象の多層管の断面を少なくとも5つ用意し、各断面における測定値の単純平均を算出することで決定する。断熱製品10全体の多層管形状の厚さのみならず、他の構成要素(例えば第1層1)の壁面の厚さを測定する場合にも同様に測定することができる。
【0032】
断熱製品の他の例を、図3及び図4に示す。
【0033】
図3は断熱製品の他の例を概略的に示す斜視図であり、図4図3のIV-IV’面に沿った概略断面図である。ここで図示する例の断熱製品では、多層管形状の外側に多孔質構造の第1層が位置し、内側に第2層が位置する。
【0034】
図3及び図4に示す例の断熱製品10は、多孔質構造を含んだフッ素樹脂製の第1層1と、第1層1の内周に設けられたフッ素樹脂製の第2層2とから成る多層管形状を有する。図示する例では第1層1及び第2層2は何れも円形断面を有しているが、各層の断面形状は円形に限られない。
【0035】
図1及び図2に示した例の断熱製品10では背割りを施した断熱性多孔質チューブから成る第1層1の外径側に第2層2が設けられているところ、図3及び図4に示した例の断熱製品10では第1層1の内径側に第2層2が設けられている。図3及び図4の例には、第1層1と第2層2との配置関係を除き図1及び図2の例との相違点が無いため、重複する説明を省略する。
【0036】
また、例を図示しないが、第1層と第2層との間には、プライマー(接着性樹脂)などからなる接着層が存在していてもよい。第1層と第2層とは、接着層を介して接着され得る。接着層は、例えば、第1層と第2層との対向部分に設けられる。接着層は、多層管形状の全長に亘って形成されていてもよい。
【0037】
図5に一例の断熱製品の取付けの概要を表す。具体的には、図1及び図2に示した例と同様の構造の断熱製品を直管形状の断熱対象物へ取り付ける様子を示す。
【0038】
断熱製品10を背割り部3にてC字型に開き、断熱対象物の管90の側面に断熱製品10の内表面が接するよう管90に断熱製品10を被せる。第2層2の応力により図1に示したような筒形状への断熱製品10の復元力が働き、上下に開いた背割り部3の背割り面同士が接するように閉じて断熱製品10が元の形状に戻る。このように背割りした多層管の形状を有する断熱製品10を管90に被せるだけで管90の外周面に断熱製品10が抱き着き、結束バンドで拘束したり背割り面同士を接着剤で貼り合わせたりせずとも断熱製品10を設置することが可能である。多孔質の第1層1単体では、背割り部3を開いた後に閉じて筒形状へ戻る復元力が得られない。断熱製品10では、硬めの第2フッ素樹脂製の第2層2が第1層1の外径側または内径側に設けられていることで、第2層の応力を利用して断熱材設置の施工性が向上している。
【0039】
断熱対象物への断熱製品の密着力の向上や脱落防止を目的として、背割り部に爪形状部を含ませてもよい。例えば、返しのある爪形状が背割り部に形成されている断熱製品の設置時に背割り部を閉じた際に爪形状が返しの部分で引っかかり、背割り部が閉じた状態でより強固に固定される。そうすることで、断熱対象物への断熱製品の保持力を高めることができる。爪形状部の例の一部を、後述する変形例にて示す。
【0040】
係る断熱製品は、例えば、曲げ加工や切削加工等により被覆対象物に対応する形状に加工されたものであってもよい。例えば、配管に断熱製品を取り付ける場合、図1から図4に示した様な円筒形状に背割り加工を施しただけの形態では、直管部には比較的容易に取り付け可能だが、継手部(エルボ部、ティー部(チーズ部)等)への取り付けは難しい。曲げ加工や切削加工を施した断熱製品を準備することで、配管の継手部等の非直管部へも断熱材設置を簡便に行うことができる。一例を、後述する変形例にて示す。
【0041】
(第1層)
第1層は、第1フッ素樹脂を含む。第1フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。第1層は、PTFEから成っていてもよい。第1層は、多孔質構造を有する管形状部材であり得る。
【0042】
第1層が含む多孔質構造は、例えば、熱流動性を示さないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の性質に起因する構造であり得る。即ち、多孔質構造は一例では、PTFEで構成されるノード及びフィブリルからなる微細構造又は網目構造である。多孔質構造は、例えば、PTFEを含む充実構造の成形品に対し一軸延伸による多孔質化を行うことで得ることができる。充実構造のPTFE成形品を一軸延伸すると、おおよそ延伸方向に沿ってノードからフィブリルが引き出される。ノードとは、高分子繊維が引き延ばされずにPTFE材料が凝集している領域を指す。フィブリルは、ノード間に存在し、延伸方向に沿って配向している高分子繊維を指す。ノード間、フィブリル間、並びにノード及びフィブリルの間には、多数の貫通孔が形成されている。これら貫通孔は、連通孔及び/又は独立孔を含む。第1層が高い断熱性を達成するためには、これら貫通孔は独立孔を多く含むことが好ましい。
【0043】
第1層が有する多孔質構造(第1多孔質構造)の気孔率(第1気孔率)は、例えば、5%以上であり得る。第1層における第1多孔質構造の第1気孔率は、5%以上95%以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは75%以上90%以下の範囲内にある。多孔質構造の気孔率がこの範囲内にあると、断熱製品は優れた断熱性を備えることができる。多孔質構造は、第1層の全体に存在することが好ましいが、第1層の少なくとも一部に存在していればよい。
【0044】
(第2層)
第2層は、第2フッ素樹脂を含む。第2層は、第2フッ素樹脂から成っていてもよい。第2フッ素樹脂は、フッ素樹脂であればその種類は特に制限されない。第2フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマ(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
【0045】
第2層は、例えば、熱融着により第1層と接合され得る。熱処理によって第1層と第2層とを融着させて接合する場合は、第2フッ素樹脂は溶融流動性フッ素樹脂であることが好ましい。第2層が溶融流動性フッ素樹脂を含む場合、上記熱処理によって第2層を第1層の外周面に存在し得る多孔質構造に融着しやすい効果がある。つまり、熱処理によって溶融した溶融流動性フッ素樹脂が多孔質構造に入り込むため、アンカー効果が生じて第2層が剥離し難くなる。第2層の内周面は第1層の外周面に融着され得る。又は、第2層の外周面が第1層の内周面に融着され得る。
【0046】
また、第2フッ素樹脂として、第1フッ素樹脂より融点が低い材料を用いることが好ましい。
【0047】
断熱製品を設置する断熱対象物は、例えば、エルボ型配管継手の様に直管ではない形状を有し得る。断熱対象物に応じて断熱製品に対する曲げ加工を行う場合がある。第1層と第2層との間では、比較的気孔率の低い第2層の方が硬く、その応力により断熱製品全体の復元力が発揮されることから、曲げ加工の際の加熱温度は第2層の曲げ加工が可能になる温度以上であれば十分である。そのため第1フッ素樹脂より融点が低い第2フッ素樹脂を用いることで、第1フッ素樹脂の融点未満の加熱温度で曲げ加工を実施することができる。それにより、高温環境下での使用時の第1層の収縮につながる応力の発生や第1層の多孔質構造における気孔の潰れを回避できることから、第1層の気孔率の低下を抑えられる。第1フッ素樹脂よりも低い融点を有する第2フッ素樹脂を使用した組合せの例として、第1フッ素樹脂としてPTFEを用いるとともに第2フッ素樹脂とて溶融流動性フッ素樹脂を用いることができる。
【0048】
第2層の気孔率(第2気孔率)は20%以下であり、第2層は、充実構造を有するか、充実構造でなくとも第2フッ素樹脂が含むノードとフィブリルが大きく離れていない第2多孔質構造を有する。そしてこのように低気孔率の第2層が0.8mm以上の厚さを有することで、断熱製品は管形状への復元力を示すことができる。
【0049】
(接着層)
接着層は、例えば、シアノアクリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びビニル系樹脂などの接着性樹脂で構成され得る。
【0050】
第2層を構成する第2フッ素樹脂がPTFE又は変性PTFEを含む場合、第1層と第2層との間に接着層を介在させることが好ましい。なぜなら、PTFE及び変性PTFEの融点は非常に高い上、これらフッ素樹脂は溶融流動性を示さないか又は殆ど示さないためである。第1層がPTFEの融点付近まで加熱されると、第1層の第1多孔質構造が変形して気孔が潰れ易い。それ故、第1層に、第2フッ素樹脂としてPTFE又は変性PTFEからなる第2層を積層させて高温の熱処理に供すると、仮に、第1層と第2層との積層構造が得られたとしても、第1層に含まれる第1多孔質構造が潰れてしまう傾向がある。この場合、優れた断熱性を達成することが困難である。
【0051】
従って、第2フッ素樹脂がPTFE又は変性PTFEを含む場合には、断熱製品は多層管形状にて接着層を備えることが好ましい。但し、断熱製品は、第2フッ素樹脂の種類によらず、接着層を備えることができる。
【0052】
(変形例)
図6に、断熱製品の変形例を概略的に示す。図7に、断熱製品の他の変形例を示す。図6及び図7にそれぞれ例示する断熱製品10は、径断面に爪形状部4を有する変形例である。背割り部3のうち第2層2に位置する部分が爪形状部4に形成されている。図6及び図7の変形例では、何れも図1及び図2に示した例の断熱製品10と同様に外層側に第2層2が位置しているが、図3及び図4に示した例と同様に内層側に第2層2が位置する変形例も可能である。そのような場合、内層側の第2層2にて爪形状部4が形成される。
【0053】
図8に、断熱製品のさらに他の変形例を概略的に示す。図8に例示する断熱製品10は、その長さ方向に沿って背割り部3に爪形状部5を含む。背割り部3は断熱製品10の長さ方向に亘って直線的に設けられているのではなく、その一部が突起形状の爪形状部5に形成されている。このような背割り部3が長さ方向にて変形して形成されてなる爪形状部5については、第1層および第2層の双方を重ねた断熱製品10の肉厚全体に亘って設けられている。
【0054】
背割り部に含む爪形状部の形態は、図示した例に限られない。
【0055】
図9に、断熱製品の変形例として、ティー型の配管用継手部(チーズ部)へ取り付けるための加工が施された断熱製品を概略的に示す。また図10に、図9に示す変形例の断熱製品の継手部への取付けの概要を概略的に表す。図9及び図10に例示する断熱製品10は、背割り部3にて多層筒形状の側面に対する貫通口6を有する変形例である。貫通口6は、断熱製品10をティー型の継手91の本管92に被せた際に枝管93を通す取り出し口となる。図9の変形例では図1及び図2に示した例の断熱製品10と同様に外層側に第2層2が位置しているが、図3及び図4に示した例と同様に内層側に第2層2が位置する変形例も可能である。
【0056】
詳細には図示しないが、図5に示した直管部への取付けと同様に断熱製品10を背割り部3にてC字型に開き、本管92の側面に断熱製品10の内表面が接し、且つ、枝管93の位置が断熱製品10の貫通口6と重なるよう継手91に断熱製品10を被せる。第2層2の応力により図9に示した筒形状への断熱製品10の復元力が働き、貫通口6の両隣にて上下に開いた背割り部3の背割り面同士が接するように閉じて断熱製品10が元の形状に戻る。
【0057】
図11に、断熱製品の変形例として、エルボ型の配管用継手部(エルボ部)へ取り付けるための加工が施された断熱製品を概略的に示す。また図12に、図11に示す変形例の断熱製品の継手部への取付けの概要を概略的に表す。図11及び図12に例示する断熱製品10は、多層管形状を複数含み、複数のそれら多層管形状はその管軸方向が交差する配置で接合されている変形例である。具体的には、図示する断熱製品10は、第1多層管形状11と第2多層管形状12とを含んでいる。第1多層管形状11の中心軸Cが沿う方向と第2多層管形状12の中心軸C’が沿う方向とが交差するように、第1多層管形状11と第2多層管形状12とが端部の断面にて溶着されて、全体としてL字型に折れ曲がった管の形状の断熱製品を構成している。第1多層管形状11と第2多層管形状12との接合面に対し各々の管軸方向は直交してなく、各々の接合断面は、例えば、楕円形であり得る。
【0058】
図示する例では第1多層管形状11と第2多層管形状12とが、それらの管軸方向が直角に交差するように、つまり第1多層管形状11の中心軸Cと第2多層管形状12の中心軸C’との交差角θが90°になる角度で配置されているが、断熱製品10の折り曲げ角度は直角に限られず、断熱対象物としてのエルボ部の曲がり具合に応じて様々な角度に変更することができる。例えば、交差角θは、0°より大きく180°未満であり得る。また、図示する例の断熱製品10は2つの多層管形状を含んでいるが、例えば、継手94の曲率に応じて適切な形状をとるべく多層管形状の数は3以上であってもよい。
【0059】
加えて、図示する例では、断熱製品10が有する曲げ形状の内側の側面に背割り部3が設けられているが、背割り部3の位置は図示する位置に限られない。また、図11の変形例では図1及び図2に示した例の断熱製品10と同様に外層側に第2層2が位置しているが、図3及び図4に示した例と同様に内層側に第2層2が位置する変形例も可能である。
【0060】
詳細には図示しないが、エルボ部への取付けについても、断熱製品10を背割り部3にて開き、複数の管90とそれらをつなぐ継手94とを含む配管に、断熱製品10が含む複数の多層管形状の管軸方向を各管90の管軸方向とが揃うように断熱製品10を被せる。第2層2の応力により図11に示した形状への断熱製品10の復元力が働き、背割り部3の背割り面同士が接するように閉じて断熱製品10が元の形状に戻る。
【0061】
上記では、配管の直管部およびティー部やエルボ部等の継手部への断熱材設置の施工例を示したが、断熱製品の形態は加工の有無を問わず上記例に限られないし、断熱対象物は配管の直管部およびティー部やエルボ部に限られない。例えば、上述した例以外の他の配管上の継手部を断熱対象物とし、その形状に応じて加工された形態の断熱製品を挙げることができる。また、断熱対象物は、配管材料に限られない。
【0062】
<気孔率の測定方法>
第1層の気孔率(第1気孔率)及び第2層の気孔率(第2気孔率)は、水中置換法による比重測定により測定する。具体的には先ず、多層管形状における各層から一定の寸法の試験片を切り出す。切り出した試験片について水中置換法による比重測定を実施し、測定された比重に基づいて気孔率を求める。
【0063】
<製造方法>
係る断熱製品は、次のように製造することができる。断熱製品の製造方法は、例えば、第1フッ素樹脂製の多孔質チューブを成形して第1成形品を得ることと、第2フッ素樹脂製の第2成形品を得ることと、第1成形品の外径側または内径側に第2成形品を接合または接着して多層管形状を得ることと、管軸方向に沿って背割りすることとを含む。
【0064】
第1成形品としての第1フッ素樹脂製の多孔質チューブは、例えば、第1フッ素樹脂を用いて押出成形法により第1押出しチューブを得て、得られた第1押出チューブに対し延伸による多孔質化処理を施すことにより得ることができる。第1押出チューブは、例えば、充実構造のフッ素樹脂チューブであり得る。多孔質化処理には、例えば、長手方向に沿った一軸延伸を行うことができる。延伸倍率を高くした方が気孔率が増加し、断熱効果が向上する。
【0065】
造孔剤や充填剤を用いて多孔質化した場合はそれらの残留や脱落などと言った懸念があるところ、延伸により多孔質化することで、そのような問題を回避できる。延伸により得られた多孔質チューブ自体は加熱されると長さ方向に収縮しようとするが、第1層として第2層と接合または接着されるため、断熱製品においては第1層の熱収縮が抑えられる。このため、多孔質構造内に存在する網目構造(連通気孔)が潰れにくい。その結果、優れた断熱性を長期間に亘って維持できる。
【0066】
第2フッ素樹脂製の第2成形品は、例えば、第2フッ素樹脂を用いて押出成形法により得ることができる。第2成形品は、例えば、第2フッ素樹脂製のシート、チューブ、又は背割りチューブであり得る。背割りチューブは、第2フッ素樹脂製のチューブに背割り加工を施すことで得ることができる。背割り加工を実施する際、背割り部に爪形状部を設けてもよい。
【0067】
多層管形状は、例えば、第1成形品としての多孔質チューブの外周面に第2フッ素樹脂製のシート又は背割りチューブを熱溶融により圧着することで得られる。又は、多孔質チューブを第2フッ素樹脂製チューブ内に挿入し、重ねたこれらチューブに熱処理を実施することで、多層管形状が得られる。若しくは、接着性樹脂を用いて多孔質チューブの外周面に第2フッ素樹脂製のシート又は背割りチューブを接着することで多層管形状が得られる。或いは、多孔質チューブの中空部に第2フッ素樹脂製のチューブを挿入し、ブロー成型法に準じた方法で挿入したチューブを多孔質チューブの内周面に圧着することで多層管形状が得られる。
【0068】
多層管形状は、例えば、第1フッ素樹脂製の多孔質チューブに背割り加工を施してから、得られる多孔質背割りチューブの外周面または内周面に第2フッ素樹脂製のシート又は背割りチューブを熱溶融により圧着したり接着したりして得ることもできる。この際、第2層となる第2フッ素樹脂製シートの合わせ目または背割りチューブの背割り部分の位置を、第1層となる多孔質背割りチューブの背割り部分の位置に合わせる。第1成形品に予め背割りを施すと背割り部分で多孔質チューブを開くことができるため、内周面への第2成形品の圧着や接着が容易になる。又は、多孔質背割りチューブの内周面に第2フッ素樹脂製のチューブを圧着または接着することで多層管形状を得てもよい。
【0069】
以上のように第1成形品の外径側または内径側に第2成形品を設けることで、第1層とその同軸上に設けられた第2層とを含む多層管形状が得られる。
【0070】
熱融着やブロー成型により第2成形品を圧着したり重ねたチューブに熱処理を実施する場合は、第2フッ素樹脂の融点以上となる温度まで加熱する。こうすると、第2フッ素樹脂を含む第2成形品の一部が溶融して、第1成形品の多孔質構造に入り込む。従って、加熱を伴う接合を行う場合は、第2フッ素樹脂として溶融流動性フッ素樹脂を用いることが望ましい。
【0071】
管軸方向に沿った背割り加工は、任意の段階で行うことができる。例えば、第1層と第2層とを含む多層管に対し管軸方向に沿って背割り加工を施すことで、第1層と第2層とを含んだ多層管形状を含み背割り部を有する断熱製品が得られる。第2成形品としてフッ素樹脂製シート又は背割りチューブを多孔質チューブ(第1成形品)の外径側に設けた場合は、シートの合わせ目または背割りチューブの背割り部分の位置に合わせて多層管の背割りを実施することが望ましい。若しくは上述したとおり、第1成形品に予め背割り加工を施してから第2成形品を圧着または接着する多層化を行っても良い。背割りした第1成形品の内周面に第2フッ素樹脂製のチューブを設けた場合は、第1成形品の背割り部分に合わせて第2成形品チューブの背割りを行える。
【0072】
また、例えば、曲げ加工や切削加工等、断熱対象物に対応する形状への加工を行ってもよい。このような加工は、第1層と第2層との接合または接着による多層化よりも後の任意の段階で行うことができる。例えば、多層管に背割り加工を実施する前に断熱対象物に合わせる加工を行ってもよいし、多層管に背割り加工を実施した後に断熱対象物に合わせる加工を行ってもよい。又は、多孔質背割りチューブに第2成形品を設けて多層管形状を得た後に、断熱対象物に合わせる加工を行ってもよい。
【0073】
上記製造方法により、多孔質構造を含むフッ素樹脂製の第1層とその同軸上に設けられたフッ素樹脂製の第2層とを含む多層管形状を含み、管軸方向に沿った背割り部を有する断熱製品が得られる。
【実施例0074】
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例)
以下に説明する手順で、第1層の前駆体とする多孔質チューブを製造し、その外周面上に充実構造の第2層の前駆体を積層させた後、背割り加工を施した。
【0076】
先ず、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ファインパウダーとして、PTFE成形品の押出成形に汎用されている材料を準備した。ファインパウダーとは、乳化重合で得られた水性分散液を凝析・乾燥して得られるものであり得る。ファインパウダーは、例えば、重合により生成した1次粒子が凝集して粒径400μmから500μm程度の2次粒子となったものを主体とし得る。
【0077】
ファインパウダー100質量部に対して、石油系助剤22質量部を添加して均一に混合し、24℃の温度で48時間に亘り熟成させて混和物を得た。この混和物を圧縮して円筒状の予備成形品を作製した。
【0078】
予備成形品をペースト押出機に投入し、押出しを行って未焼成チューブを得た。押し出された未焼成チューブを乾燥炉に搬送して、130℃~190℃の温度環境下にて乾燥させて助剤を揮発させた。乾燥後の未焼成チューブを焼成炉に搬送して、380℃~450℃の温度環境下で120秒に亘り焼成を行った。未焼成チューブを得るための押出しから、乾燥及び焼成までの一連の流れの中でチューブを4.0倍に延伸して、第1層としての多孔質チューブを製造した。得られた多孔質チューブは、内径26.4mm及び外径33.7mmの寸法を有していた。
【0079】
別途、第2層の前駆体としての充実構造のペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)製チューブを準備した。準備したPFAチューブの肉厚は、1.5mmだった。
【0080】
その後、先に作製した多孔質チューブをPFAチューブ内に挿入し、これらチューブを、PFAの融点以上且つPTFEの融点未満の温度で焼成した。ここで、内径保持のため、多孔質チューブの内径側に芯材(マンドレル)を入れ加熱した。こうして、多孔質層と、多孔質層の外周面上に設けられた充実層とを備える多層チューブを作製した。次いで、多層チューブの周方向における1箇所にて、多孔質層と充実層の両方を含んだ多層チューブ全体の厚みに亘る切込を管軸方向(チューブ長手方向)に沿って加えた。このように多層チューブに背割り加工を施すことで、フッ素樹脂断熱製品を得た。
【0081】
(比較例)
第2層の前駆体としての充実構造PFAチューブを、肉厚が0.6mmのものに変更したことを除き、上記実施例と同様の方法でフッ素樹脂断熱製品を作製した。
【0082】
<評価>
上記実施例および比較例にて作製した各々のフッ素樹脂断熱製品の、多層管形状への復元力を次のとおり評価した。
【0083】
各フッ素樹脂断熱製品の背割り部を多層管形状の内径幅まで開いた後、背割り部を放した。実施例で作製したフッ素樹脂断熱製品は、背割り部を放した後に元の多層管形状へ戻ることが確認された。対して、比較例で作製したフッ素樹脂断熱製品は、背割り部を放しても元の形状へ戻らなかった。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0085】
1…第1層、2…第2層、3…背割り部、4…爪形状部、5…爪形状部、6…貫通口、10…断熱製品、11…第1多層管形状、12…第2多層管形状、90…管、91…継手、92…本管、93…枝管、94…継手。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12