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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105500
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/26 20060101AFI20240730BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20240730BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20240730BHJP
   F28F 21/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F28F9/26
F28F9/02 Z
F28D7/16
F28F21/06
【審査請求】有
【請求項の数】35
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077316
(22)【出願日】2024-05-10
(62)【分割の表示】P 2020571586の分割
【原出願日】2019-06-11
(31)【優先権主張番号】62/688,645
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18183578.6
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ピー・クロイツ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エル・グライデン
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・エム・フィエロ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】管側流れの猛烈な沸騰を生じさせず、管側流れの均一な分配を生じさせる熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器(100)は、シェル(101)と、シェル(101)に設けられた管側入口(106)および出口(107)と、シェル(101)に設けられたシェル側入口(105)および出口(104)と、シェル(101)内に配置された複数の管(102)と、シェル(101)内に配置された分配組立体(108)と、シェル(101)内に配置された入口管板(114)および出口管板(112)と、断熱管板(103)とを備え、断熱管板(103)は分配組立体(108)とシェル側出口(104)との間に配置されて両者の間に断熱空間(109)を作り出し、断熱空間(109)は管側入口(106)および分配組立体(108)をシェル(101)から断熱している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(100)であって、
シェル(101)と、
いずれも前記シェル(101)に設けられた管側入口(106)および管側出口(107)と、
いずれも前記シェル(101)に設けられたシェル側入口(105)およびシェル側出口(104)と、
前記シェル(101)内に配置された複数の管(102)と、
前記シェル(101)内に配置された分配組立体(108)と、
いずれも前記シェル(101)内に配置された入口管板(114)および出口管板(112)と、
断熱管板(103)と、
を備え、
前記断熱管板(103)は、前記分配組立体(108)と前記シェル側出口(104)との間に配置されて、前記分配組立体(108)と前記シェル側出口(104)との間に断熱空間(109)を作り出し、
前記断熱空間(109)は、前記管側入口(106)および前記分配組立体(108)を前記シェル(101)から断熱し、
前記管(102)は、前記分配組立体(108)と前記出口管板(112)との間で前記シェル(101)の内側に取り付けられ、前記分配組立体(108)を通して前記管側入口(106)と連通し、かつ、前記管側出口(107)と連通している、熱交換器(100)。
【請求項2】
前記断熱空間(109)が、前記管側入口(106)および前記分配組立体(108)を前記シェル(101)から断熱する、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記シェル側入口(105)が、前記シェル(101)を通過するシェル側流れの進入を可能にし、前記シェル側出口(104)が前記シェル側流れの退出を可能にし、前記管側入口(106)が、前記管(102)を通過する管側流れの進入を可能にし、前記管側出口(107)が、前記管側流れの退出を可能にする、請求項1または2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記分配組立体(108)に対する前記断熱管板(103)の位置が、ほぼ管側流れの沸点である、前記管側流れの少なくとも1つの成分の温度および沸点、ならびに前記シェル側流れの温度に基づいて決定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記管側流れが、前記管側入口(106)において液体流れである、請求項4に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記複数の管(102)が、前記シェル(101)の内側に互いに平行に配置される、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
ベントノズル(110)が前記断熱空間(109)から延在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記断熱空間(109)には、空気が充填される、請求項1から7のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記シェルの前記管側入口(106)には、1つまたは複数の流動支援入口(111)が取り付けられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記熱交換器が、一段式熱交換器、または熱交換器の各段が直列に連結された多段式熱交換器である、請求項1から9のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記熱交換器が、多段式熱交換器であり、前記断熱管板(103)が、熱交換器ごとに、前記分配組立体(108)と前記シェル側出口(104)との間に配置される、請求項10に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記断熱管板(103)が、熱抵抗材料で作製される、請求項1から11のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項13】
前記熱抵抗材料が、テフロン(登録商標)である、請求項12に記載の熱交換器。
【請求項14】
前記熱交換器が、前記シェル側内に入口管板(114)を備える、請求項1から13のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項15】
前記熱交換器が、前記シェル側内に1つまたは複数のバッフル(113)を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項16】
前記分配組立体(108)が、複数の孔(1081)付きの分配プレートである、請求項1から15のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項17】
前記分配プレート上の前記複数の孔が、1mmから100mmの範囲の直径を有する、請求項16に記載の熱交換器。
【請求項18】
前記複数の管(102)が、正方形ピッチで並べられる、請求項1から17のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項19】
前記複数の管(102)が、三角形ピッチで並べられる、請求項1から18のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項20】
前記複数の管(102)が、六角形ピッチで並べられる、請求項1から19のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項21】
熱交換器が、前記シェルの前記管側出口(107)において断熱空間を含まない、請求項1から20のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項22】
前記熱交換器が、蒸発器である、請求項1から21のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項23】
前記蒸発器が、流下膜式蒸発器である、請求項22に記載の熱交換器。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の熱交換器を用いて熱を交換する方法であって、
i.前記管側入口(106)を通して管側流れを前記分配組立体(108)に送るステップと、
ii.前記管側流れを前記複数の管(102)に通すステップと、
iii.前記シェル側入口(105)を通してシェル側流れを送るステップと、
iv.前記複数の管(102)内の前記管側流れと前記シェル側流れとの間で前記熱を交換するステップと、
を含み、
前記管側入口(106)を通って入り前記分配組立体(108)に至る前記管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、ほぼ前記液体成分の前記少なくとも1つの沸点であり、
前記シェル側入口(105)を通って入る前記シェル側流れの温度は、分配組立体(108)での前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つよりも高い、方法。
【請求項25】
前記シェル側流れが、空気、ガス、液体、またはその組合せから選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記管側流れが、1つまたは複数の液体成分を含み、前記管側入口(106)を通って入り前記分配組立体(108)に至る前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つの温度は、T-15℃未満であり、ここでTは、ほぼ前記管側流れの沸点である、前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つの沸点である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記管側流れが、1つまたは複数の液体成分を含み、前記管側入口(106)を通って入り前記分配組立体(108)に至る前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つの温度は、T-10℃未満であり、ここでTは、ほぼ前記管側流れの沸点である、前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つの沸点である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記シェル側流れの温度が、T+5℃を上回り、ここでTは、ほぼ前記管側流れの沸点である、前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つの沸点である、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
v.流動支援入口(111)を通してガスを送り、前記ガスを前記管側流れと同じ方向に流すステップを含み、前記管側流れの速度は、前記流動支援ガスによって、前記複数の管(102)の内壁に沿って加速される、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
請求項1から23のいずれか一項に記載の流下膜式熱交換器を用いて液体を濃縮する方法であって、
i.前記管側入口(106)を通して管側流れを前記分配組立体(108)に送るステップと、
ii.内壁を有する前記複数の管(102)に前記管側流れを通し、前記内壁に沿って前記管側流れの膜を形成するステップと、
iii.前記シェル側入口(105)を通してシェル側流れを送るステップと、
iv.前記複数の管(102)内の前記管側流れと前記シェル側流れとの間で前記熱を交換するステップと、
v.前記シェルの前記管側出口(107)を通して、濃縮された流れを得るステップと、
を含み、
前記管側入口(106)を通って入り前記分配組立体(108)に至る前記管側流れの温度は、ほぼ前記管側流れの沸点であり、
前記シェル側入口(105)を通って入る前記シェル側流れの温度は、前記分配組立体(108)での前記管側流れよりも高い、方法。
【請求項31】
vi.流動支援入口(111)を通してガスを送り、前記ガスを前記液体と同じ方向に流すステップをさらに含み、前記液体の速度は、前記流動支援ガスによって、前記複数の管(102)の前記内壁に沿って加速される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記シェル側流れが、空気、ガス、蒸気、水、油、または前段の熱交換器からの二次蒸気である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記管側流れが、1つまたは複数の液体成分を含み、前記管側入口(106)を通って入り前記分配組立体(108)に至る前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つの温度は、T-15℃未満であり、ここでTは、ほぼ前記管側流れの沸点である、前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つの沸点である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記管側流れが、1つまたは複数の液体成分を含み、前記管側入口(106)を通って入り前記分配組立体(108)に至る前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つの温度は、T-5℃未満であり、ここでTは、ほぼ前記管側流れの沸点である、前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つの沸点である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記シェル側流れの温度が、T+5℃を上回り、ここでTは、ほぼ前記管側流れの沸点である、前記管側流れの前記液体成分の少なくとも1つの沸点である、請求項30から34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで請求項に係る発明は、熱交換デバイスおよび熱を交換する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝達は、さまざまな工業において多くのプロセスの重要な部分である。一般に、熱伝達は、高温である少なくとも1つの流れおよび低温である少なくとも1つの他の流れを伴い、これらの流れを直接的にまたは間接的に互いに接触させて熱伝達によって加熱または冷却する。
【0003】
熱交換器は、少なくとも2つの流れ間の間接的熱交換に通常使用される機器である。熱交換器の具体的なタイプの選択は、2つの流れ間の温度差、流れの化学的性質、および利用可能な設置スペースに左右される。そうではあるが、最も広く使用されている熱交換器は、一般に、2重管式熱交換器、多管円筒式熱交換器、および/またはプレート式熱交換器として説明される。これらのうち、多管円筒式熱交換器は、ほとんどすべての工業において広く適用されている。多管円筒式熱交換器は、主に、配設された複数の管をその内部に含むシェルを備え、流れの少なくとも1つがその管の周りを流れ、一方で複数の管は、管束の形態になるように一緒に束ねられ、他の流れの少なくとも1つがこの管を流れ抜ける。シェル側および管側の流れは、互いに平行、向流、または直交流の方向に流れることができる。
【0004】
特許文献1は、エンジンの冷却剤を使用して排ガスを冷却するためのEGR(排ガス再循環)冷却器を開示している。図10は、EGR冷却器を開示している。EGR冷却器内のチャンバ21は、吸い込み流体の沸騰を抑制するために冷却剤を連続して流すための入口25および出口26を有している。したがって、連続熱交換プロセスは、チャンバ21内の冷却剤の連続流と吸い込み流体との間で関与する。特許文献1は、さらに、冷却の効率を向上させるために、チャンバ21を使用して、より高い沸点を有する潤滑油または軽油などのより高沸点の液体を導入できることを開示している。
【0005】
特許文献2は、複数の管を備える熱交換デバイスを説明しており、これらの管は互いに平行に配置されて、円筒状シェル内に軸方向に挿入される1つまたは複数の管束を形成する。円筒状シェルの第1の端部にありかつ軸方向に向けられた1つまたは複数の第1の入口孔を通して供給された第1の流体は、管の内部を流れ、第2の入口孔を通して供給された第2の流体は、円筒状シェルの内側を流れて、管壁を介して第1の流体との熱伝達をもたらす。
【0006】
管の一方の端部は、第1の入口孔において管プレートに連結され、管プレートは、第2の流体を第1の流体から分離する。複数の貫通孔がそれぞれ設けられた少なくとも2つの衝突プレートが、それぞれの第1の入口孔と管プレートとの間に連続的に置かれる。衝突プレートは、第1の流体を管の内側に分配するために、互いに平行であり、円筒状シェルの中心軸と直交している。
【0007】
特許文献3は、複数の鉛直伝熱管と、管の下側端部を囲む液体入口プレナムと、入口プレナム内に位置し、多数のオリフィスが貫通する分配プレートと、を含む蒸発器を開示しており、前記分配プレートは、管の入口端部から離間されて置かれてマニフォールドを画定し、マニフォールドは、前記入口を相互連結して直交流を可能にする。
【0008】
特許文献4は、接触気相反応を実施するための反応器構成を説明しており、この構成は、ジャケット管反応器(2)と、管束と、側部出口に直接的に連結された別個の後段冷却器(3)と、を備え、後段冷却器内の横断面積は、ジャケット内の横断面積と本質的に一致しており、両方の横断面積は、互いに向かい合って多数の対にされる。
【0009】
温度にかかわらずほぼ全ての種類の流れを、多管円筒式熱交換器内で冷却または加熱することができるが、これらの熱交換器が流れ間に効率的な熱交換をもたらさない状態がいくつかある。1つのそのような状態は、熱交換器の一方の側、たとえば管側の流れがほぼその沸点である場合に生じる。そのような状態では、熱交換器の他方の側の流れ、ここではシェル側流れは、管側流れをその沸点まで過剰に加熱することがあり、それによって管側流れの猛烈な破壊的沸騰を引き起こす。これにより、管の内側での管側流れの不均一な分配が生じ、したがってその結果、シェル側流れと管側流れとの間の熱交換が非効率となる。追加的に、これはまた、蒸発気の形成による管側流れの損失を生じさせ、それによって交換器の動作コストを増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-013551号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/112381号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第2126116号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1586370号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、ここで請求項に係る発明の目的は、管側流れの猛烈な破壊的沸騰を生じさせず、その結果、損失を最小限にしてまたは無くして管側流れの均一な分配を生じさせる、熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、上記で定義した目的は、分配組立体と熱交換器のシェル側出口との間に断熱管板を挿入することによって達成されることが見出された。断熱管板の挿入により、分配組立体と断熱管板との間に、入口断熱空間が作り出される。入口断熱空間を作り出すことにより、分配組立体での管側流れの過熱に関連する問題が解決されるだけでなく、管側流れとシェル側流れとの間の熱交換に必要とされるシェル側流れの量も低減され、その結果、さらにコストが削減され、熱交換プロセスを経済的なものにする。
【0013】
したがって、1つの態様では、ここで請求項に係る発明は、熱交換器(100)であって、
シェル(101)と、
管側入口(106)および管側出口(107)と、
シェル側入口(105)およびシェル側出口(104)と、
複数の管(102)と、
分配組立体(108)と、
入口管板(114)および出口管板(112)と、
断熱管板(103)と、
を備え、
断熱管板(103)は、分配組立体(108)とシェル側出口(104)との間に配置されて分配組立体(108)とシェル側出口(104)との間に断熱空間(109)を作り出し、
管(102)は、分配組立体(108)と出口管板(112)との間でシェル(101)の内側に取り付けられ、分配組立体(108)を通して管側入口(106)と連通し、および管側出口(107)と連通している、熱交換器を対象とする。
【0014】
別の態様では、ここで請求項に係る発明は、上記の熱交換器を用いて熱を交換する方法であって、
i.前記管側入口(106)を通して管側流れを前記分配組立体(108)に送るステップと、
ii.管側流れを前記複数の管(102)に通すステップと、
iii.前記シェル側入口(105)を通してシェル側流れを送るステップと、
iv.複数の管(102)内の管側流れとシェル側流れとの間で熱を交換するステップと、
を含み、
管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、ほぼ液体成分の少なくとも1つの沸点であり、
シェル側入口(105)を通って入るシェル側流れの温度は、分配組立体(108)での管側流れの液体成分の少なくとも1つよりも高い、方法を対象とする。
【0015】
別の態様では、ここで請求項に係る発明は、本明細書に説明するような流下膜式熱交換器を用いて液体を濃縮する方法であって、
i.前記管側入口(106)を通して管側流れを前記分配組立体(108)に送るステップと、
ii.内壁を有する前記複数の管(102)に管側流れを通し、内壁に沿って管側流れの膜を形成するステップと、
iii.前記シェル側入口(105)を通してシェル側流れを送るステップと、
iv.複数の管(102)内の管側流れとシェル側流れとの間で熱を交換するステップと、
v.シェルの前記管側出口(107)を通して、濃縮された流れを得るステップと、
を含み、
管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの温度は、ほぼ管側流れの沸点であり、
シェル側入口(105)を通って入るシェル側流れの温度は、分配組立体(108)での管側流れよりも高い、方法を対象とする。
【0016】
ここで請求項に係る発明を添付の図を併用して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ここで請求項に係る発明による熱交換器を示す概略図である。
図2】複数の管開口部を示す、分配プレートの拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
後述の説明は、例示的な実施形態のみを提供し、本開示の範囲、適用性、または構成を限定することを意図しない。それよりも、例示的な実施形態の後述の説明は、1つまたは複数の例示的な実施形態を実施することを可能にする説明を当業者に提供する。添付の特許請求の範囲に記載するような本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、要素の機能および配置においてさまざまな変更を加えてもよいことが理解される。また、ここで請求項に係る発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書において使用する用語および本明細書において説明する図は、限定的であることを意図しないことを理解されたい。
【0019】
これ以後、少なくともある特定の数の実施形態を含むようにグループが定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみで構成するグループを包含することも意味する。さらに、本説明および特許請求の範囲における用語「第1」、「第2」、「第3」または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」などは、類似の要素間を区別するために使用され、必ずしも順序または時系列を説明するためではない。そのように使用される用語は、適切な状況下において相互に交換可能であり、本明細書において説明する、ここで請求項に係る発明の実施形態は、本明細書において説明するかまたは例示する以外の他の順序で動作できることを理解されたい。用語「第1」、「第2」、「第3」または「(A)」、「(B)」、および「(C)」もしくは「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「i」、「ii」などが、方法、使用または分析のステップに関連する場合、ステップ間には時間または時間間隔の一貫したつながりは無く、すなわち、本明細書の上記または下記で記載する適用において別途示されない限り、ステップを同時に実施してよく、またはそのようなステップ間に数秒、数分、数時間、数日、数週間、数ヶ月、またはさらには数年の時間間隔があってもよい。
【0020】
さらに、本明細書を通じて規定される範囲は、最終値も含み、すなわち1から10の範囲は、1および10の両方が範囲内に含まれることを暗に意味する。混乱を避けるために、本出願人は、適用可能な法律に従った同等の権利を有するものとする。
【0021】
本明細書を通じて「1つの実施形態」または「一実施形態」への言及は、その実施形態に関連して説明する特定の特徴、構造、または特性が、ここで請求項に係る発明の少なくとも1つの実施形態内に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じてさまざまな場所に出現する「1つの実施形態では」または「一実施形態では」という語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照するものではないが、そうであってもよい。さらに、特定の特徴、構造、または特性を、1つまたは複数の実施形態において、本開示から当業者に明らかになるように、任意の適切な形で組み合わせることもできる。さらに、本明細書に説明するいくつかの実施形態は、いくつかの特徴を含み、他の実施形態内に含まれる他の特徴を含まないが、当業者によって理解されるように、異なる実施形態の特徴の組合せは、ここで請求項に係る発明の範囲内に入り、異なる実施形態を形成することを意味する。たとえば、添付の特許請求の範囲では、請求項に係る実施形態のいずれも任意の組合せで使用することができる。
【0022】
実施形態の完璧な理解を提供するために、特有の詳細が以下の説明において与えられる。しかし、これらの特有の詳細無しで実施形態を実践してもよいことを当業者は理解するであろう。たとえば、本発明におけるシステム、プロセス、および他の実施形態は、不必要な詳細で実施形態を曖昧にしないために、ブロック図の形態で構成要素として示され得る。他の場合では、よく知られているプロセス、構造、および技術は、実施形態を曖昧にすることを回避するために不必要な詳細無しに示され得る。
【0023】
また、個々の実施形態が、フローチャート、フロー図、データフロー図、構造図、またはブロック図として示すプロセスとして説明され得ることが留意される。フローチャートは順次プロセスとして動作を説明し得るが、動作の多くは並行してまたは同時に実行することができる。加えて、動作の順番は、再構成され得る。プロセスは、その動作が完了したときに終了することができるが、図に論じないかまたは含まない追加のステップを有することもできる。さらに、任意の具体的に説明するプロセスにおけるすべての動作がすべての実施形態において行われなくてもよい。プロセスは、方法、機能、手順などに対応することができる。
【0024】
さらに、本発明の実施形態を、少なくとも部分的に手動でまたは自動で実施することができる。手動または自動による実施は、機械、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、または任意のその組合せを使用することによって実行されるか、または少なくとも支援され得る。
【0025】
【表1】
【0026】
ここで請求項に係る発明の一態様は、図1に示すような熱交換器を提供する。熱交換器(100)は、
シェル(101)と、
管側入口(106)および管側出口(107)と、
シェル側入口(105)およびシェル側出口(104)と、
複数の管(102)と、
分配組立体(108)と、
入口管板(114)および出口管板(112)と、
断熱管板(103)と、
を備え、
断熱管板(103)は、分配組立体(108)とシェル側出口(104)との間に配置されて分配組立体(108)とシェル側出口(104)との間に断熱空間(109)を作り出し、
管(102)は、分配組立体(108)と出口管板(112)との間でシェル(101)の内側に取り付けられ、分配組立体(108)を通して管側入口(106)と連通し、および管側出口(107)と連通している。
【0027】
1つの実施形態では、ここで請求項に係る発明の熱交換器は、蒸発器であり、さらに別の実施形態では、流下膜式蒸発器である。
【0028】
シェル(101)は、本明細書の上記で説明したように、熱交換器内のシェル側流れのためのコンテナまたは容器であり、任意の所定の形状およびサイズを有する。シェル(101)は、水平または鉛直に向けることができ、当業者によく知られている構造の材料を有する。たとえば、シェルは、板金から作製することができる。本発明は、シェル(101)の形状、サイズ、向き、および構造の材料によって限定されない。しかし、一実施形態では、熱交換器は、鉛直に配設される。
【0029】
シェル(101)は、高真空から(10MPaを上回る)超高圧まで、かつ極低温から高温(1100℃)まで、かつシェル側流れと管側流れとの間の任意の温度差および圧力差などの任意の能力および条件で動作するようにカスタム設計することができる。たとえば、約1.3MPaの圧力および約260℃、約0.4MPaの圧力および約150℃、および約0.6MPaの圧力および約35℃の蒸気をすべてシェル側流れとして使用することができる。
【0030】
一実施形態では、シェル(101)の形状は、円筒形または矩形であり、別の実施形態では、シェル(101)の形状は、円筒形である。シェル(101)は、それだけに限定されないが、(TEMAとも称される)管式熱変換器製造業者協会(Tubular Exchanger Manufacturers Association)によって定められた、指定された表記E、F、G、H、J、K、Xそれぞれを有する、一パス型シェル、長手方向バッフルを備えた二パス型シェル、分流型、2重分流型、分割流型、ケトルタイプ、直交流型などであり得る。
【0031】
TEMAによって定められるように、熱交換器は、前部ヘッドと後部ヘッドとを有する。前部ヘッドのタイプは、チャネルおよび取り外し可能なカバー(A)、ボンネット(B)、管板および取り外し可能なカバーと一体化したチャネル(CおよびN)、ならびに特殊高圧筐体(D)から選択される。後部ヘッドは、「A」固定ヘッドのような固定された管板(L)、「B」固定ヘッドのような固定された管板(M)、「C」固定ヘッドのような固定された管板(N)、外側でパックされた遊動ヘッド(P)、バッキングデバイス付き遊動ヘッド(S)、および引き出し遊動ヘッド(T)、U字管束(U)、ならびにランタンリング付きのパックされた遊動管板(W)から選択される。
【0032】
管側入口(106)は、管側流れの進入を可能にし、管側出口(107)は管側流れの退出を可能にする。管側入口(106)および管側出口(107)は、使用されている熱交換器のタイプに応じて、反対側または同じ側にあることができる。たとえば、簡単な多管円筒式交換器が使用される場合、管側入口(106)はシェルの一方側にあり、管側出口(107)は反対側にある。熱交換器が一シェルパスおよび二管パスを有する多管円筒式交換器の場合、管側入口(106)および管側出口(107)は、同じ側にある。一実施形態では、管側入口(106)は、シェル(101)の一方の側にあり、管側出口(107)は、その反対側にある。
【0033】
別の実施形態では、複数の管(102)を管板または管プレート上に嵌合して管束を得る。管束は、シェル(101)内に収容され、シェルの内壁と、管束の管の外側と、の間に空間を確立し、この空間では、シェル側流れが循環する。図1では1つの管だけが示されているが、実際には熱交換器は、複数のそのような管を有することができることを理解されたい。管はすべて、互いに平行に配置され、両端は開いている。管の内壁は、薄膜の形態の管側流れの内壁に沿った流動が妨げられず、減速せず、または抵抗を受けないように平滑なものである。本発明は、管の選択、管の構造材料、管の数および管束自体によって限定されない。これらは、当業者によく知られており、それだけに限定されないが、管側およびシェル側の流れならびにこれら2つの流れ間の温度差などに応じて変わり得る。
【0034】
本明細書の上記で説明した熱交換器の管(102)の外壁は、平滑であるか、またはフィン付きであり、いくつかの実施形態では、管の壁はフィン付きである。ここで請求項に係る発明の管は、それだけに限定されないが、炭素鋼、銅、アドミラルティー(admiralty)、黄銅、銅ニッケル、ステンレス鋼、マンツメタル、アルミニウム、アルミニウム青銅、ハステロイ、インコネルおよびチタンなどで作製される。管束は、それだけに限定されないが、まっすぐまたはU字形状などの任意の形状のものであり、いくつかの実施形態では、まっすぐである。複数の管を管板上に嵌合させて管束を得る。管板は、管束を支持するためにシェル(101)のいずれかの側に嵌合され得る。管板は、管束の端部において内側空間を効果的に閉じる。シェル(101)の内側の管の数は、数十~数百から1000を超える範囲であり得る。材料および装置の所望の能力、条件、および他のパラメータに応じて、管の数および寸法を決定することは、当業者にとって通例である。
【0035】
別の実施形態では、シェル側入口(105)は、シェル側流れの進入を可能にし、シェル側出口(104)はシェル側流れの退出を可能にする。
【0036】
別の実施形態では、管側流れは、ほぼ沸点の温度を有する液体である。管側流れは、成分の少なくとも1つがほぼ沸点である液体成分の混合物であることができる。さらに、液体成分の混合物は、共沸混合物を形成することができ、そのような場合、管側流れの温度は、共沸混合物のほぼ沸点であり、その一方でシェル側流れは、それだけに限定されないが、蒸気、温水、油および空気などの単一の流体または流体の混合物であることができる。
【0037】
別の実施形態では、ここで請求項に係る発明の熱交換器は、図2に示すように管側入口の下方に分配組立体(108)を含み、分配組立体は、複数の管(102)に入る前の管側流れの分配を助け、管(102)の内壁に沿った薄膜の形成を容易にする。分配組立体では、1つまたは複数の分配トレイが使用され得る。分配トレイは、任意の形状のものであることができるが、いくつかの実施形態では、分配トレイは、丸いディスクを含む。分配組立体(108)の分配トレイは、複数の孔(1081)を有し、これらの孔を通して、管側流れが流れ、分配される。分配トレイ上の孔(1081)の直径は、約1mmから100mmの範囲であり、いくつかの実施形態では、5mmから50mm、さらに他の実施形態では8mmから25mmの範囲である。管束内の各々すべての管の直径は、同じであっても、異なっていてもよい。分配組立体(108)上の複数の孔(1081)は、正方形ピッチ、三角形ピッチ、および六角形ピッチで並べられる。
【0038】
別の実施形態では、本明細書の上記で説明したような熱交換器は、断熱管板(103)を備え、断熱管板は、分配組立体(108)とシェル側出口(104)との間に配置されて、分配組立体(108)と断熱管板(103)との間に断熱空間(109)を作り出す。分配組立体(108)と断熱管板(103)との間に作り出された断熱空間(109)は、分配組立体にある管側流れをシェル側流れと接触させないように保護する。断熱空間が作り出され、それによって管側流れを、分配組立体において猛烈に破壊的に沸騰しないように保護し、管の内壁に沿った管側流れの均一な分配、およびシェル側流れと管側流れとの間の効率的な熱交換をもたらす。追加的に、断熱空間はまた、管側流れを、蒸発気形成によって損失しないように保護する。
【0039】
分配組立体(108)に対する断熱管板(103)の位置は、管側流れの温度および沸点ならびにシェル側流れの温度に基づく。たとえば、断熱管板(103)は、管側流れの沸点と温度との差が15℃未満または10℃未満の場合、シェル側出口の近くに置かれる。この温度差がこれ以上大きいとき、断熱管板(103)は、シェル側出口から遠くに置かれ得る。
【0040】
別の実施形態では、断熱空間(109)には、この空間内に液体が存在しないことを確実にするためにベントノズル(110)が取り付けられる。入口断熱管板の厚さは、5mmから100mmの範囲、いくつかの実施形態では10mmから50mmの範囲である。断熱管板(103)の形状は、シェルの形状に左右されるが、いくつかの実施形態では、これは円形ディスクの形状である。
【0041】
別の実施形態では、断熱空間(109)には、空気が充填される。
【0042】
別の実施形態では、断熱管板(103)は、熱抵抗材料または金属で作製される。いくつかの実施形態では、熱抵抗材料は、テフロン(登録商標)である。通常の熱交換器では、入口管板(114)は、管側流れおよびシェル側流れの両方と接触するが、請求項に係る本熱交換器では、断熱管板(103)が入口管板(114)をシェル側流れと接触しないように保護するため、入口管板(114)は、管側流れのみと接触する。
【0043】
1つの実施形態では、本明細書の上記で説明したような熱交換器は、管側出口において第2の断熱空間を含む。しかし、別の実施形態では、本明細書の上記で説明した熱交換器は、管側出口に断熱空間を含まず、管側入口だけに断熱空間を含む。
【0044】
別の実施形態では、熱交換器は、一段式熱交換器、または熱交換器の各段が直列に連結された多段式熱交換器である。熱交換器が多段式熱交換器である場合、断熱管板(103)は、熱交換器ごとに、分配組立体(108)とシェル側出口(104)との間に配置される。
【0045】
別の実施形態では、熱交換器は、少なくとも1つのバッフル(113)を備える。バッフルは、2つの重要な機能を果たす。第1に、これらバッフルは、組み立ておよび動作中、管(102)を支持し、流動によって誘発された渦からの振動を防止するのに役立つ。第2に、これらバッフルは、シェル側流れを管束を横切って前後に向けて、効果的な速度および熱伝達率をもたらす。請求項に係る本装置内のバッフルは、シェル側流体をシェルを横切って前後に向けるために長手方向バッフルまたは横断方向バッフルであり得る。バッフルは、単一セグメント、2重セグメント、オリフィス、ディスク、およびドーナツタイプなどのものであり得る。本発明は、そのようなバッフルの選択によって限定されない。
【0046】
任意選択により、1つまたは複数の流動支援入口(111)、たとえば蒸気入口が、熱交換器内に設置される。いくつかの実施形態では、蒸気入口となり得る4つから6つの流動支援入口(111)が、設置される。熱交換器では、流動支援物、たとえば蒸気は、流動支援入口(111)を通って管(102)に入り、一方で熱交換される管側流れは、入口(106)から管(102)に入る。移動している流動支援物は、管側流れと同時に移動し、それによって管側流れが加速された速度で管の内壁に沿って流れることを支援する。
【0047】
別の態様では、ここで請求項に係る発明は、本明細書の上記で説明したような熱交換器を用いて熱を交換する方法であって、
i.前記管側入口(106)を通して管側流れを前記分配組立体(108)に送るステップと、
ii.管側流れを前記複数の管(102)に通すステップと、
iii.前記シェル側入口(105)を通してシェル側流れを送るステップと、
iv.複数の管(102)内の管側流れとシェル側流れとの間で熱を交換するステップと、
を含み、
v.管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、ほぼ液体成分の少なくとも1つの沸点であり、
vi.シェル側入口(105)を通って入るシェル側流れの温度は、分配組立体(108)での管側流れの液体成分の少なくとも1つよりも高い、方法を対象とする。
【0048】
管側流れは、分配組立体(108)内への管側入口(106)を介して熱交換器に導入される。管側流れは、各管内で等量で分配され、それによって向流を形成し、この向流は、管自体の表面を介してシェル側流れと熱を交換する。したがって、シェル側流れは、管の出口において集まる。管側出口(107)は、熱交換された管側流れを集め、シェル側出口(104)は、シェル側流れが熱交換器から出ることを可能にする。
【0049】
別の実施形態では、管側流れは、1つまたは複数の液体成分を含み、管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、T-15℃未満であり、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または前記共沸混合物の沸点である。いくつかの実施形態では、管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、T-10℃未満であり、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または前記共沸混合物の沸点である。他の実施形態では、管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、T-5℃未満であり、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または前記共沸混合物の沸点である。
【0050】
たとえば、管側流れは、2つまたはそれ以上の液体の混合物であり、各成分は、独立的に沸騰し、このとき、Tは、最初に沸騰する成分の沸点である。別の場合は、管側流れが共沸混合物を形成する2つまたはそれ以上の混合物である場合であり、このときTは、共沸混合物の沸点である。
【0051】
別の実施形態では、シェル側流れの温度は、T+5℃を上回り、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または管側流れ内の成分の混合物によって形成された前記共沸混合物の沸点である。いくつかの実施形態では、シェル側流れの温度は、T+10℃を上回り、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または管側流れ内の成分の混合物によって形成された前記共沸混合物の沸点である。さらに他の実施形態では、シェル側流れの温度は、T+15℃を上回り、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または管側流れ内の成分の混合物によって形成された前記共沸混合物の沸点である。
【0052】
別の実施形態では、熱を交換する方法は、流動支援入口(111)を通してガスを送るステップと、ガスを管側流れと同じ方向に流すステップと、を含み、管側流れの速度は、流動支援ガスによって、複数の管(102)の内壁に沿って加速される。
【0053】
別の態様では、本発明は、上記で説明するような流下膜式熱交換器を用いて液体を濃縮する方法であって、
i.前記管側入口(106)を通して管側流れを前記分配組立体(108)に送るステップと、
ii.前記複数の管の内壁に沿って管側流れの膜を形成することによって、管側流れを前記複数の管(102)に通すステップと、
iii.前記シェル側入口(105)を通してシェル側流れを送るステップと、
iv.複数の管(102)内の管側流れとシェル側流れとの間で熱を交換するステップと、
v.シェルの前記管側出口(107)を通して、濃縮された流れを得るステップと、
を含み、
管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの温度は、ほぼ管側流れの沸点であり、
シェル側入口(105)を通って入るシェル側流れの温度は、分配組立体(108)での管側流れよりも高い、方法を対象とする。
【0054】
別の実施形態では、シェル側流れは、蒸気、水、油、空気、前段の熱交換器からの二次蒸気、またはその組合せから選択される。
【0055】
別の実施形態では、管側流れは、1つまたは複数の液体成分を含み、管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、T-15℃未満であり、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または管側流れ内の成分の混合物によって形成された共沸混合物の沸点である。いくつかの実施形態では、管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、T-10℃未満であり、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または管側流れ内の成分の混合物によって形成された共沸混合物の沸点である。さらに他の実施形態では、管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、T-5℃未満であり、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または管側流れ内の成分の混合物によって形成された共沸混合物の沸点である。
【0056】
別の実施形態では、シェル側流れの温度は、T+5℃を上回り、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または管側流れ内の成分の混合物によって形成された共沸混合物の沸点である。いくつかの実施形態では、シェル側流れの温度は、T+10℃を上回り、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または管側流れ内の成分の混合物によって形成された共沸混合物の沸点である。他の実施形態では、シェル側流れの温度は、T+15℃を上回り、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点であるか、または管側流れ内の成分の混合物によって形成された共沸混合物の沸点である。
【0057】
ここで請求項に係る発明は、次の利点および改良点の少なくとも1つを示す。
【0058】
分配組立体(108)と断熱管板(103)との間に作り出される断熱空間(109)は、分配組立体での管側流れを、管側流れが分配組立体を通過して管に入る前にシェル側流れのより高温である温度と接触しないように保護する。断熱空間が作り出され、それによって管側流れを分配組立体において猛烈に破壊的に沸騰しないように保護する。このような沸騰により、管の内壁に沿った管側流れの分配は均一性に欠け、そのためシェル側流れと管側流れとの間の熱交換は効率的でなくなり得る。追加的に、断熱空間はまた、管側流れを蒸発気形成によって損失しないように保護する。シェル側流れの要件が、入口断熱プレートの導入によって大幅に低減され、それによってさらなるコストおよびエネルギーの削減をもたらすことも、例から明らかである。
【0059】
本発明は、以下の実施形態および対応する従属式の参照およびリンクの結果生じる実施形態の組合せによってより詳細に例示される、
1.熱交換器(100)であって、
シェル(101)と、
管側入口(106)および管側出口(107)と、
シェル側入口(105)およびシェル側出口(104)と、
複数の管(102)と、
分配組立体(108)と、
入口管板(114)および出口管板(112)と、
断熱管板(103)と、
を備え、
断熱管板(103)は、分配組立体(108)とシェル側出口(104)との間に配置されて分配組立体(108)とシェル側出口(104)との間に断熱空間(109)を作り出し、
管(102)は、分配組立体(108)と出口管板(112)との間でシェル(101)の内側に取り付けられ、分配組立体(108)を通して管側入口(106)と連通し、および管側出口(107)と連通している、熱交換器。
2.断熱空間(109)が、前記管側入口(106)および前記分配組立体(108)を前記シェル(101)から断熱する、実施形態1に記載の熱交換器。
3.シェル側入口(105)が、シェル側流れの進入を可能にし、シェル側出口(104)がシェル側流れの退出を可能にし、管側入口(106)が、管側流れの進入を可能にし、管側出口(107)が管側流れの退出を可能にする、実施形態1または2に記載の熱交換器。
4.分配組立体(108)に対する断熱管板(103)の位置が、ほぼ管側流れの沸点である管側流れの少なくとも1つの成分の温度および沸点、ならびに前記シェル側流れの温度に基づく、実施形態1から3のいずれか1つに記載の熱交換器。
5.管側流れが、管側入口(106)において液体流れである、実施形態4に記載の熱交換器。
6.管(102)が、熱交換器の内側に平行に配置される、実施形態1から5のいずれか1つに記載の熱交換器。
7.断熱空間(109)には、ベントノズル(110)が取り付けられる、実施形態1から6のいずれか1つに記載の熱交換器。
8.断熱空間(109)には、空気が充填される、実施形態1から7のいずれか1つに記載の熱交換器。
9.シェルの管側入口(106)には、1つまたは複数の流動支援入口(111)が取り付けられる、実施形態1から8のいずれか1つに記載の熱交換器。
10.熱交換器が、一段式熱交換器、または熱交換器の各段が直列に連結された多段式熱交換器である、実施形態1から9のいずれか1つに記載の熱交換器。
11.熱交換器が、多段式熱交換器であり、断熱管板(103)が、熱交換器ごとに、分配組立体(108)とシェル側出口(104)との間に配置される、実施形態10に記載の熱交換器。
12.断熱管板(103)が、熱抵抗材料で作製される、実施形態1から11のいずれか1つに記載の熱交換器。
13.熱抵抗材料が、テフロン(登録商標)である、実施形態12に記載の熱交換器。
14.熱交換器が、シェル側内に入口管板(114)を備える、実施形態1から13のいずれか1つに記載の熱交換器。
15.熱交換器が、シェル側内に1つまたは複数のバッフル(113)を備える、実施形態1から14のいずれか1つに記載の熱交換器。
16.分配組立体(108)が、複数の孔(1081)付きの分配プレートである、実施形態1から15のいずれか1つに記載の熱交換器。
17.分配プレート上の複数の孔が、1mmから100mmの範囲の直径を有する、実施形態16に記載の熱交換器。
18.複数の管(102)が、正方形ピッチで並べられる、実施形態1から17のいずれか1つに記載の熱交換器。
19.複数の管(102)が、三角形ピッチで並べられる、実施形態1から18のいずれか1つに記載の熱交換器。
20.複数の管(102)が、六角形ピッチで並べられる、実施形態1から19のいずれか1つに記載の熱交換器。
21.熱交換器が、シェルの管側出口(107)において断熱空間を含まない、実施形態1から20のいずれか1つに記載の熱交換器。
22.熱交換器が、蒸発器である、実施形態1から21のいずれか1つに記載の熱交換器。
23.蒸発器が、流下膜式蒸発器である、実施形態1から22のいずれか1つに記載の熱交換器。
24.実施形態1から23のいずれか1つに記載の熱交換器を用いて熱を交換する方法であって、
i.前記管側入口(106)を通して管側流れを前記分配組立体(108)に送るステップと、
ii.管側流れを前記複数の管(102)に通すステップと、
iii.前記シェル側入口(105)を通してシェル側流れを送るステップと、
iv.複数の管(102)内の管側流れとシェル側流れとの間で熱を交換するステップと、
を含み、
管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、ほぼ液体成分の少なくとも1つの沸点であり、
シェル側入口(105)を通って入るシェル側流れの温度は、分配組立体(108)での管側流れの液体成分の少なくとも1つよりも高い、方法。
25.シェル側流れが、空気、ガス、液体、またはその組合せから選択される、実施形態24に記載の方法。
26.管側流れが、1つまたは複数の液体成分を含み、管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、T-15℃未満であり、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点である、実施形態24に記載の方法。
27.管側流れが、1つまたは複数の液体成分を含み、管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、T-10℃未満であり、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点である、実施形態26に記載の方法。
28.シェル側流れの温度が、T+5℃を上回り、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点である、実施形態24から26のいずれか1つに記載の熱を交換する方法。
29.v.流動支援入口(111)を通してガスを送り、ガスを管側流れと同じ方向に流すステップを含み、管側流れの速度は、流動支援ガスによって、複数の管(102)の内壁に沿って加速される、実施形態24に記載の方法。
30.実施形態1から23のいずれか1つに記載の流下膜式熱交換器を用いて液体を濃縮する方法であって、
i.前記管側入口(106)を通して管側流れを前記分配組立体(108)に送るステップと、
ii.内壁を有する前記複数の管(102)に管側流れを通し、内壁に沿って管側流れの膜を形成するステップと、
iii.前記シェル側入口(105)を通してシェル側流れを送るステップと、
iv.複数の管(102)内の管側流れとシェル側流れとの間で熱を交換するステップと、
v.シェルの前記管側出口(107)を通して、濃縮された流れを得るステップと、
を含み、
管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの温度は、ほぼ管側流れの沸点であり、
シェル側入口(105)を通って入るシェル側流れの温度は、分配組立体(108)での管側流れよりも高い、方法。
31.vi.流動支援入口(111)を通してガスを送り、ガスを液体と同じ方向に流すステップをさらに含み、液体の速度は、流動支援ガスによって、複数の管(102)の内壁に沿って加速される、実施形態30に記載の方法。
32.シェル側流れが、空気、ガス、蒸気、水、油、または前段の熱交換器からの二次蒸気である、実施形態30に記載の方法。
33.管側流れが、1つまたは複数の液体成分を含み、管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、T-15℃未満であり、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点である、実施形態30に記載の方法。
34.管側流れが、1つまたは複数の液体成分を含み、管側入口(106)を通って入り分配組立体(108)に至る管側流れの液体成分の少なくとも1つの温度は、T-5℃未満であり、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点である、実施形態33に記載の方法。
35.シェル側流れの温度は、T+5℃を上回り、ここでTは、ほぼ管側流れの沸点である、管側流れの液体成分の少なくとも1つの沸点である、実施形態30から34のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
ここで請求項に係る発明は、実施例によって説明される。しかし、ここで請求項に係る発明の主題は、与えられた実施例には限定されない。
【0061】

Table 1およびTable 2は、断熱プレートが設置された場合と設置されない場合の、大規模熱交換器を動作させる2つのセットの比較例および本発明の例を示す。表から明らかになるのは、断熱管板の組み込みにより、管側流れとシェル側流れとの間の熱交換が改良されるという利益がもたらされたことである。断熱管板は、管側流体が、泡を形成することなく、また均一な流動を壊すことなく、複数の管を通って自由に流れることを確実にした。
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【符号の説明】
【0064】
100 熱交換器
101 シェル
102 複数の管
103 断熱管板
104 シェル側出口
105 シェル側入口
106 管側入口
107 管側出口
108 分配組立体
109 入口断熱空間
110 ノズル
111 流動支援入口
112 出口管板
113 バッフル
114 入口管板
1081 複数の孔
図1
図2
【外国語明細書】