(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105519
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】がんの予後及び治療におけるAPOE遺伝子型決定
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240730BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/195 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240730BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240730BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20240730BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20240730BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240730BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240730BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240730BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALI20240730BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240730BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240730BHJP
C12Q 1/6886 20180101ALI20240730BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20240730BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240730BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240730BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K45/00 ZNA
A61P35/00
A61K31/195
A61P35/02
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/00 101
A61K31/337
A61K33/243
A61K31/282
A61K39/395 N
A61K51/04 320
A61K31/519
C12Q1/6827 Z
C12N15/11 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6886 Z
C12Q1/6837 Z
C12M1/00 A
C12N15/09 200
C12Q1/6851 Z
A61K45/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024078254
(22)【出願日】2024-05-13
(62)【分割の表示】P 2021549974の分割
【原出願日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】62/811,575
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】592054292
【氏名又は名称】ザ ロックフェラー ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】タバズィ,ソハイル,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】オステンドーフ,ベンジャミン,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】タバズィ,マソウド
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザルベス,フォスター
(57)【要約】 (修正有)
【課題】補助療法、腫瘍監視、及び疾患進行の可能性に関する医学的及び臨床的決定を下すのに有用である、がん治療及びがんの予後のための方法及び試薬を提供する。
【解決手段】19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象の、がんを治療する方法であって、有効量のLXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象の、がんを治療する方法であって、有効量のLXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
治療を必要とする対象のがんを治療する方法であって、
(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定された対象を提供すること;並びに、
(b)有効量のLXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与すること、
を含む方法。
【請求項3】
対象のがんを治療する方法であって、
(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定され、かつ、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在に基づいて、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を用いる治療から利益を得る可能性が高いと特定される対象を提供すること;並びに、
(b)有効量の前記LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を前記特定された対象に投与すること、
を含む方法。
【請求項4】
対象のがんを治療するための方法であって、
(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;
(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;
(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること;並びに、
(d)有効量の前記LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を前記特定された対象に投与すること、
を含み、それにより前記がんを治療する方法。
【請求項5】
LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する方法であって、
(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;
(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;並びに、
(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs42935
8の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること、
を含み、それにより、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する方法。
【請求項6】
前記LXRβアゴニストが、2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象の、がんを治療する方法であって、有効量のPD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項8】
治療を必要とする対象のがんを治療する方法であって、
(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定された対象を提供すること;並びに、
(b)有効量のPD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩を前記対象に投与すること、
を含む方法。
【請求項9】
対象のがんを治療する方法であって、
(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定され、かつ、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在に基づいて、PD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定された対象を提供すること;並びに、
(b)有効量のPD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤を前記特定された対象に投与すること、
を含む方法。
【請求項10】
対象のがんを治療するための方法であって、
(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;
(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;
(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、PD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること;並びに、
(d)有効量のPD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩を、前記特定された対象に投与すること、
を含み、それにより前記がんを治療する方法。
【請求項11】
PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤による治療から利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する方法であって、
(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;
(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;並びに、
(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、PD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること、
を含み、それによりPD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はその薬学的に許容される塩による治療の利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する方法。
【請求項12】
前記対象が、以前にCTLA-4阻害剤又はその薬学的に許容される塩を投与されている、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって決定される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在が前記対象のAPOE3タンパク質又はAPOE4タンパク質の発現レベルによって決定される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記がんが、乳癌、結腸癌、腎細胞癌、肺癌、肝細胞癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、食道癌、前立腺癌、肉腫、膀胱癌、頭頸部癌、神経膠芽細胞腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、白血病、又は黒色腫である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記がんが黒色腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記がんが転移性である、及び/又は局所的に進行している、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記がんが切除不能である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記有効量が、前記がんの転移性コロニー形成を抑制するのに有効な量を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記がんが白金含有化学療法、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、血管新生阻害剤、キナーゼ阻害剤、及び/又はアルキル化剤に耐性がある、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記がんが、白金含有化学療法、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、血管新生阻害剤、キナーゼ阻害剤、及び/又はアルキル化剤による治療中又は治療後に進行した、請求項
1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記がんが、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、血管新生阻害剤、キナーゼ阻害剤、及び/又はアルキル化剤に耐性があると決定されている、又は予測されている、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、前記対象に追加の抗がん療法を施すことをさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記追加の抗がん療法が、外科手術、放射線療法、化学療法、及び/又は免疫療法を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記追加の抗がん療法が化学療法及び/又は免疫療法を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記化学療法が、ドセタキセル、カルボプラチン若しくはシスプラチン、ペメトレキセド、及び/又はペムブロリズマブを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、有効量の葉酸、ビタミンB12、コルチコステロイド、スタチン、制吐剤、止瀉剤、食欲刺激剤、一般刺激剤、ビスホスホネート、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト、成長因子、及び/又はLHRHアゴニストを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、ApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、ApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子を有する、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記対象が、ApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε4対立遺伝子、rs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子及びε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε2対立遺伝子及びε4対立遺伝子を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が、ApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε4対立遺伝子を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有する対象のがんを治療する方法であって、前記対象に積極的治療を施すことを含む方法。
【請求項33】
治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法であって、
(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有すると特定された対象を提供すること;及び、
(b)前記対象に積極的治療を施すこと、
を含む方法。
【請求項34】
対象のがんを治療する方法であって、
(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有すると特定され、かつ、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在に基づいて積極的治療から利益を得る可能性が高いと特定された対象を提供すること;及び、
(b)特定された対象に積極的治療を施すこと、
を含む方法。
【請求項35】
対象のがんを治療するための方法であって、
(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;
(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在を検出すること;
(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有する対象を、積極的治療から利益を得る可能性が高いと特定すること;及び、
(d)前記特定された対象に積極的治療を施すこと、
を含み、それにより前記がんを治療する方法。
【請求項36】
積極的治療から利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する方法であって、(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;
(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在を検出すること;及び、
(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有する対象を、積極的治療から利益を得る可能性が高いと特定すること、
を含み、それにより積極的治療の利益を受ける可能性のある、がんを有する個体を特定する方法。
【請求項37】
19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在がPCRによって決定される、請求項32~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在が、前記対象におけるAPOE2タンパク質の発現レベルによって決定される、請求項32~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が、19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε2対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε2対立遺伝子及びε3対立遺伝子を有する、請求項32~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記がんが、乳癌、結腸癌、腎細胞癌、肺癌、肝細胞癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、食道癌、前立腺癌、肉腫、膀胱癌、頭頸部癌、神経膠芽細胞腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、白血病、又は黒色腫である、請求項32~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記がんが黒色腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記がんが転移性である、及び/又は局所的に進行している、請求項32~41のいず
れか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記がんが切除不能である、請求項32~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記積極的治療が、2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩の投与、及び同時の有効量の免疫療法を含む、請求項32~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記積極的治療が、前記対象に対して手術を行うことをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩が、手術前に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩が、手術後に投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記免疫療法が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はCTLA-4阻害剤である、請求項44~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
APOE2、APOE3、及びAPOE4からなる群から選択される第2の核酸配列に相補的な第1の核酸配列を有するプローブを含むキットであって、前記プローブが、厳しい条件下で2番目の核酸配列にハイブリダイズするキット。
【請求項50】
前記キットが、それぞれAPOE2、APOE3、及びAPOE4に相補的である配列を有する標識プローブを含む、請求項49に記載のキット。
【請求項51】
前記第2の核酸が、配列番号1~3からなる群から選択される配列を含む、請求項49に記載のキット。
【請求項52】
ゲノム領域に隣接する配列に特異的に結合して、前記ゲノム領域を含むAPOE2、APOE3、及びAPOE4のうちの少なくとも1つのPCR増幅をさせるように構成されたプライマーの対をさらに含む、請求項49~51のいずれか1項に記載のキット。
【請求項53】
前記プライマーの対が、配列番号4~16からなる群から選択される配列を有するプライマーを含む、請求項52に記載のキット。
【請求項54】
前記プローブが検出ラベルと連結している、請求項49~53のいずれか1項に記載のキット。
【請求項55】
前記検出ラベルが、フルオロフォア、色素、放射性標識、酵素、及びビオチンからなる群から選択される、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記第1の核酸配列が15~200塩基長である、請求項49~55のいずれか1項に記載のキット。
【請求項57】
複数の固有の位置を有する支持体を含むアレイであって、実質的に少なくとも、APO
E2、APOE3、及びAPOE4からなる群から選択される核酸配列に相補的な配列を有する核酸、からなるアレイ。
【請求項58】
前記核酸配列が、配列番号1~3からなる群から選択される、請求項57に記載のアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月28日に出願された米国仮出願第62/811,575号の優先権を主張する。本出願の内容は、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府支援の研究に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所によって授与された5R01CA184804の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有している。
【0003】
技術分野
本発明は、通常、がんの予後及び治療のための方法及び試薬、より具体的には、APOE遺伝子型決定(GENOTYPING、ジェノタイピングとも言う)に基づくがんの予後及び治療のための方法及び試薬に関する。
【背景技術】
【0004】
背景技術
がんは依然として米国の主要な死因の1つである。臨床的には、外科手術、放射線療法、化学療法薬療法など、広域で様々な医学的アプローチが現在、ヒトのがんの治療に使用されている。しかしながら、そのようなアプローチは、転移及び腫瘍再発の可能性を正確に予測することが根本的に不可能であること、又はこれらの否定的な結果の発生を最小限に抑えるための最も効果的な治療計画によって制限され続けていることが認識されている。
【0005】
予後、浸潤性又は転移性の広がりの可能性を予測し得るすべてのタイプのがんのマーカーの発見及び臨床的検証は、今日の腫瘍学が直面している主要な課題の1つである。例えば、乳癌において、年間約186,000件の症例の70%がリンパ節陰性として存在するが;しかしながら、これらの症例の30%は、局所療法(乳房切除術又は「乳腺腫瘤摘出術」)後に再発する(Boringら, Clin. J. Cancer 42: 19-38 (1992))。これらの患者のための適切な治療法を決定するために、疾患再発のリスクが重大な治療毒性のリスクを超える患者を最もよく特定する方法は、依然として不明である(Osbourne, J. Clin. Oncol. 10: 679-682 (1992))。
【0006】
したがって、補助療法、腫瘍監視、及び疾患進行の可能性を決定するために、がん治療及びがんの予後のための方法及び試薬を開発することが、依然として強く求められている。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
本開示は、いくつかの態様で上記の必要性に対処する。一態様では、本開示は、19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象のがんを治療する方法を提供する。前記方法は、有効量のLXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む。
【0008】
他の態様では、本開示は、対象のがんを治療する方法を提供する。前記方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多
型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定された対象を提供すること;並びに、(b)有効量のLXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与すること、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定され、かつ、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在に基づいて、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を用いる治療から利益を得る可能性が高いと特定される対象を提供すること;並びに、(b)有効量の前記LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を前記特定された対象に投与すること、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記方法は、(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること;並びに、(d)有効量の前記LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を前記特定された対象に投与すること、を含み、これにより前記がんを治療する。
【0011】
他の態様では、本開示はまた、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性があるがんを有する個体を特定する方法を提供する。前記方法は、(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;並びに、(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること、
を含み、それにより、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記LXRβアゴニストは、構造:
【0013】
【0014】
を有する2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩であり得る。
【0015】
他の態様では、本開示はさらに、19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象の、がんを治療する方法を提供する。前記方法は、有効量のPD-1阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS 936559、及びアテゾリズマブ)若しくはPD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ及びデュルバルマブ)、又はそれらの薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む。
【0016】
他の態様では、本開示は、治療を必要とする対象のがんを治療する方法を提供する。前記方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定された対象を提供すること;並びに、(b)有効量のPD-1阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS 936559、及びアテゾリズマブ)若しくはPD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ及びデュルバルマブ)、又はそれらの薬学的に許容される塩を前記対象に投与すること、を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定され、かつ、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在に基づいて、PD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定された対象を提供すること;並びに、(b)有効量のPD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤を前記特定された対象に投与すること、を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記方法は、(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、PD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること;並びに、(d)有効量のPD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩を、前記特定された対象に投与すること、を含み、それにより前記がんを治療する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示は、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤による治療から利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する方法を提供する。前記方法は、(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;並びに、(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs42935
8の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、PD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること、を含み、それによりPD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はその薬学的に許容される塩による治療の利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記対象は、以前にCTLA-4阻害剤又はその薬学的に許容される塩を投与されている。
【0021】
いくつかの実施形態では、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって決定される。
【0022】
いくつかの実施形態では、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在は、前記対象のAPOE3タンパク質又はAPOE4タンパク質の発現レベルによって決定される。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記がんは、乳癌、結腸癌、腎細胞癌、肺癌、肝細胞癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、食道癌、前立腺癌、肉腫、膀胱癌、頭頸部癌、神経膠芽細胞腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、白血病、又は黒色腫である。いくつかの実施形態では、前記がんは、黒色腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌である。いくつかの実施形態では、前記がんは、転移性である、及び/又は局所的に進行している。いくつかの実施形態では、前記がんは切除不能である。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記有効量は、前記がんの転移性コロニー形成(例えば、肝臓及び/又は脳への転移性コロニー形成)を抑制するのに有効な量を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記がんは、白金含有化学療法、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、有糸分裂阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、血管新生阻害剤、キナーゼ阻害剤、及び/又はアルキル化剤に耐性がある。いくつかの実施形態では、前記がんは、白金含有化学療法、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、血管新生阻害剤、キナーゼ阻害剤、及び/又はアルキル化剤による治療中又は治療後に進行した。いくつかの実施形態では、前記がんは、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、血管新生阻害剤、キナーゼ阻害剤、及び/又はアルキル化剤に耐性があると決定されている、又は予測されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記方法は前記対象に追加の抗がん療法を施すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記追加の抗がん療法は、外科手術、放射線療法、化学療法、及び/又は免疫療法を含む。いくつかの実施形態では、前記追加の抗がん療法は化学療法及び/又は免疫療法を含む。いくつかの実施形態では、前記化学療法は、ドセタキセル、カルボプラチン若しくはシスプラチン、ペメトレキセド、及び/又はペムブロリズマブを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記方法は、有効量の葉酸、ビタミンB12、コルチコステロイド、スタチン、制吐剤、止瀉剤、食欲刺激剤、一般刺激剤、ビスホスホネート、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト、成長因子、及び/又はLHRHアゴニストを前記対象に投与することをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記対象は、ApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、前記対象は、ApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、前記対象は、ApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε4対立遺伝子、rs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子及びε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε2対立遺伝子及びε4対立遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、前記対象は、ApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε4対立遺伝子を有する。
【0029】
さらに他の態様では、本開示はさらに、19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有する対象のがんを治療する方法を提供する。前記方法は、前記対象に積極的治療を施すことを含む。
【0030】
他の態様では、本開示は治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法を提供する。前記方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有すると特定された対象を提供すること;及び、(b)前記対象に積極的治療を施すこと、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有すると特定され、かつ、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在に基づいて積極的治療から利益を得る可能性が高いと特定された対象を提供すること;及び、(b)特定された対象に積極的治療を施すこと、を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記方法は、(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在を検出すること;(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有する対象を、積極的治療から利益を得る可能性が高いと特定すること;及び、(d)前記特定された対象に積極的治療を施すこと、を含み、それにより前記がんを治療する。
【0033】
他の態様では、本開示は積極的治療から利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する方法を提供する。前記方法は、(a)前記対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)前記サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在を検出すること;及び、(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有する対象を、積極的治療から利益を得る可能性が高いと特定すること、を含み、それにより積極的治療の利益を受ける可能性のある、がんを有する個体を特定する。
【0034】
いくつかの実施形態では、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在は、PCRによって決定される。いくつかの実施形態では、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在が、前記対象におけるAPOE2タンパク質の発現レベルによって決定される。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記対象は、19番染色体上のApoE遺伝子において、r
s7412及びrs429358の多型からのε2対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε2対立遺伝子及びε3対立遺伝子を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記積極的治療は、2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩の投与、及び同時の有効量の免疫療法を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記積極的治療は、前記対象に対して手術を行うことをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩は、手術前に投与される。いくつかの実施形態では、前記2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩は、手術後に投与される。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記免疫療法は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はCTLA-4阻害剤である。
【0039】
他の態様では、本開示はさらに、APOE2、APOE3、及びAPOE4からなる群から選択される第2の核酸配列に相補的な第1の核酸配列を有するプローブを含むキットを提供し、前記プローブは、厳しい条件下で2番目の核酸配列にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、前記第1の核酸配列が15~200塩基長である。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記キットは、それぞれAPOE2、APOE3、及びAPOE4に相補的である配列を有する標識プローブを含む。いくつかの実施形態では、前記第2の核酸は、配列番号1~3からなる群から選択される配列を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記キットは、ゲノム領域に隣接する配列に特異的に結合して、前記ゲノム領域を含むAPOE2、APOE3、及びAPOE4のうちの少なくとも1つのPCR増幅をさせるように構成されたプライマーの対をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記プライマーの対は、配列番号4~16からなる群から選択される配列を有するプライマーを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記プローブは検出ラベルと連結している。いくつかの実施形態では、前記検出ラベルは、フルオロフォア、色素、放射性標識、酵素、及びビオチンからなる群から選択される。
【0043】
さらに他の実施形態では、本開示はまた、複数の固有の位置を有する支持体を含むアレイを提供し、前記アレイは、実質的に少なくとも、APOE2、APOE3、及びAPOE4からなる群から選択される核酸配列に相補的な配列を有する核酸からなる。いくつかの実施形態では、前記核酸配列は、配列番号1~3からなる群から選択される。
【0044】
前述の概要は、開示のすべての態様を定義することを意図するものではなく、追加の側面は、以下の詳細な説明などの他のセクションで説明されている。本文書全体が、統一された開示として関連することを意図しており、特徴の組み合わせがこの文書の同じ文、段落、又はセクションに一緒に見出されない場合でも、本明細書に記載の特徴の全ての組み合わせが企図されることを理解されたい。本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本開示の思想及び範囲内の様々な変更及び修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、詳細な説明及び特定の例は、本
開示の特定の実施形態を示しているが、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図面の簡単な説明
【
図1-1】
図1a、
図1b、
図1c、
図1d、
図1e、及び
図1fは、アポリポプロテインE(APOE)生殖細胞変異体がヒト黒色腫の生存を予測するために使用されたことを示す一連の図である。
図1aは、3つの一般的なAPOE変異体、APOE2、APOE3、及びAPOE4を定義する2つのアミノ酸を示している。ヒトAPOE3の構造表現(PDB ID:2L7B;Chenら, PNAS, 2011)。112位及び158位におけるシステイン又はアルギニンの存在により、対立遺伝子APOE2(E2と略記)、APOE3(E2と略記)、及びAPOE4(E2と略記)が区別される。
図1bは、TCGA-SKCMコホートの黒色腫患者の転帰に対するAPOE遺伝子型の影響を分析するための計算パイプラインを示している。
図1cは、コミュニティ研究におけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)及びTCGA-SKCMコホートにおけるE2キャリア及びE4キャリアの割合を示している。示されているように、非E2/E4キャリアは、健康な集団に対してTCGA-SKCMコホートにおいてやや過剰出現していた(P=0.0017、χ
2検定)。
図1dは、黒色腫患者のAPOEキャリアの状態の予測生存率を示している。APOEキャリアの状態によって層別化されたTCGA-SKCMコホートの生存(P=0.014、傾向のログランク検定)。
図1eは、APOE変異体が黒色腫の生存に遺伝子投与効果を及ぼすことを示している。バイアレルAPOE遺伝子型によって層別化されたTCGA-SKCMコホートの生存率(P=0.016、傾向のログランク検定)。
図1fは、APOEキャリアの状態が進行性限局性疾患の患者の生存と関連していたことを示している。APOEキャリアの状態によって層別化されたTCGA-SKCMコホートにおけるステージII-III患者の生存率(P=0.0025、傾向のログランク検定)。かっこ内の数字はサンプルサイズを表す。
【
図1-2】
図1a、
図1b、
図1c、
図1d、
図1e、及び
図1fは、アポリポプロテインE(APOE)生殖細胞変異体がヒト黒色腫の生存を予測するために使用されたことを示す一連の図である。
図1aは、3つの一般的なAPOE変異体、APOE2、APOE3、及びAPOE4を定義する2つのアミノ酸を示している。ヒトAPOE3の構造表現(PDB ID:2L7B;Chenら, PNAS, 2011)。112位及び158位におけるシステイン又はアルギニンの存在により、対立遺伝子APOE2(E2と略記)、APOE3(E2と略記)、及びAPOE4(E2と略記)が区別される。
図1bは、TCGA-SKCMコホートの黒色腫患者の転帰に対するAPOE遺伝子型の影響を分析するための計算パイプラインを示している。
図1cは、コミュニティ研究におけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)及びTCGA-SKCMコホートにおけるE2キャリア及びE4キャリアの割合を示している。示されているように、非E2/E4キャリアは、健康な集団に対してTCGA-SKCMコホートにおいてやや過剰出現していた(P=0.0017、χ
2検定)。
図1dは、黒色腫患者のAPOEキャリアの状態の予測生存率を示している。APOEキャリアの状態によって層別化されたTCGA-SKCMコホートの生存(P=0.014、傾向のログランク検定)。
図1eは、APOE変異体が黒色腫の生存に遺伝子投与効果を及ぼすことを示している。バイアレルAPOE遺伝子型によって層別化されたTCGA-SKCMコホートの生存率(P=0.016、傾向のログランク検定)。
図1fは、APOEキャリアの状態が進行性限局性疾患の患者の生存と関連していたことを示している。APOEキャリアの状態によって層別化されたTCGA-SKCMコホートにおけるステージII-III患者の生存率(P=0.0025、傾向のログランク検定)。かっこ内の数字はサンプルサイズを表す。
【
図1-3】
図1a、
図1b、
図1c、
図1d、
図1e、及び
図1fは、アポリポプロテインE(APOE)生殖細胞変異体がヒト黒色腫の生存を予測するために使用されたことを示す一連の図である。
図1aは、3つの一般的なAPOE変異体、APOE2、APOE3、及びAPOE4を定義する2つのアミノ酸を示している。ヒトAPOE3の構造表現(PDB ID:2L7B;Chenら, PNAS, 2011)。112位及び158位におけるシステイン又はアルギニンの存在により、対立遺伝子APOE2(E2と略記)、APOE3(E2と略記)、及びAPOE4(E2と略記)が区別される。
図1bは、TCGA-SKCMコホートの黒色腫患者の転帰に対するAPOE遺伝子型の影響を分析するための計算パイプラインを示している。
図1cは、コミュニティ研究におけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)及びTCGA-SKCMコホートにおけるE2キャリア及びE4キャリアの割合を示している。示されているように、非E2/E4キャリアは、健康な集団に対してTCGA-SKCMコホートにおいてやや過剰出現していた(P=0.0017、χ
2検定)。
図1dは、黒色腫患者のAPOEキャリアの状態の予測生存率を示している。APOEキャリアの状態によって層別化されたTCGA-SKCMコホートの生存(P=0.014、傾向のログランク検定)。
図1eは、APOE変異体が黒色腫の生存に遺伝子投与効果を及ぼすことを示している。バイアレルAPOE遺伝子型によって層別化されたTCGA-SKCMコホートの生存率(P=0.016、傾向のログランク検定)。
図1fは、APOEキャリアの状態が進行性限局性疾患の患者の生存と関連していたことを示している。APOEキャリアの状態によって層別化されたTCGA-SKCMコホートにおけるステージII-III患者の生存率(P=0.0025、傾向のログランク検定)。かっこ内の数字はサンプルサイズを表す。
【
図1-4】
図1a、
図1b、
図1c、
図1d、
図1e、及び
図1fは、アポリポプロテインE(APOE)生殖細胞変異体がヒト黒色腫の生存を予測するために使用されたことを示す一連の図である。
図1aは、3つの一般的なAPOE変異体、APOE2、APOE3、及びAPOE4を定義する2つのアミノ酸を示している。ヒトAPOE3の構造表現(PDB ID:2L7B;Chenら, PNAS, 2011)。112位及び158位におけるシステイン又はアルギニンの存在により、対立遺伝子APOE2(E2と略記)、APOE3(E2と略記)、及びAPOE4(E2と略記)が区別される。
図1bは、TCGA-SKCMコホートの黒色腫患者の転帰に対するAPOE遺伝子型の影響を分析するための計算パイプラインを示している。
図1cは、コミュニティ研究におけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)及びTCGA-SKCMコホートにおけるE2キャリア及びE4キャリアの割合を示している。示されているように、非E2/E4キャリアは、健康な集団に対してTCGA-SKCMコホートにおいてやや過剰出現していた(P=0.0017、χ
2検定)。
図1dは、黒色腫患者のAPOEキャリアの状態の予測生存率を示している。APOEキャリアの状態によって層別化されたTCGA-SKCMコホートの生存(P=0.014、傾向のログランク検定)。
図1eは、APOE変異体が黒色腫の生存に遺伝子投与効果を及ぼすことを示している。バイアレルAPOE遺伝子型によって層別化されたTCGA-SKCMコホートの生存率(P=0.016、傾向のログランク検定)。
図1fは、APOEキャリアの状態が進行性限局性疾患の患者の生存と関連していたことを示している。APOEキャリアの状態によって層別化されたTCGA-SKCMコホートにおけるステージII-III患者の生存率(P=0.0025、傾向のログランク検定)。かっこ内の数字はサンプルサイズを表す。
【
図2-1】
図2a、
図2b、
図2c、及び
図2dは、ヒトAPOE変異体がマウス黒色腫モデルの腫瘍進行を決定することを示す一連の図である。
図2aは、ヒトAPOE変異体が移植可能なBraf変異YUMM1.7マウス黒色腫モデルの進行を調節することを示している。ヒトAPOEを標的とした置換マウスに注入された100,000個のYUMM1.7細胞の腫瘍体積(グループあたりn=9~11、*p<0.05、**p<0.01、片側t検定;2つの独立した実験を表すデータ)。代表的な腫瘍は26日目に対応する(スケールバー、5mm)。
図2bは、遺伝的に誘発されたマウス黒色腫の進行に対するヒトAPOE対立遺伝子の影響を評価するための実験的アプローチの概略図を示している。ヒトAPOE3及びAPOE4ノックインマウスを、タモキシフェンによって誘発されたメラノサイト特異的なCreの発現時において、遺伝的に駆動される黒色腫を発症するTyr::CreER;Braf
V600E/+;Pten
lox/loxマウスと交配させた。
図2cは、APOE4/E4マウスが、遺伝的に誘発された黒色腫モデルにおいて、APOE3/E3マウスと比較して腫瘍量の減少を示すことを示している。黒色腫誘発後35日目の
図2cに記載されているマウスの背部皮膚領域のパーセンテージとして測定された黒色腫負荷(p=0.01、片側マンホイットニー検定)。代表的なスキンの画像を右に示す。*p<0.05。箱ひげ図は中央値、第1四分位数、第3四分位数を示し、ひげは最小値と最大値を表す。全てのデータポイントは、1つのマウスに対応する各円で表示される。括弧内の数字はサンプルサイズを示している。
図2dは、間質APOE遺伝子型が静脈内注射された100,000個のB16F10-TR-shApoE細胞の転移進行をもまた調節することを示している(グループあたりn=10、片側マンホイットニー検定;2つの独立した実験の代表)。
【
図2-2】
図2a、
図2b、
図2c、及び
図2dは、ヒトAPOE変異体がマウス黒色腫モデルの腫瘍進行を決定することを示す一連の図である。
図2aは、ヒトAPOE変異体が移植可能なBraf変異YUMM1.7マウス黒色腫モデルの進行を調節することを示している。ヒトAPOEを標的とした置換マウスに注入された100,000個のYUMM1.7細胞の腫瘍体積(グループあたりn=9~11、*p<0.05、**p<0.01、片側t検定;2つの独立した実験を表すデータ)。代表的な腫瘍は26日目に対応する(スケールバー、5mm)。
図2bは、遺伝的に誘発されたマウス黒色腫の進行に対するヒトAPOE対立遺伝子の影響を評価するための実験的アプローチの概略図を示している。ヒトAPOE3及びAPOE4ノックインマウスを、タモキシフェンによって誘発されたメラノサイト特異的なCreの発現時において、遺伝的に駆動される黒色腫を発症するTyr::CreER;Braf
V600E/+;Pten
lox/loxマウスと交配させた。
図2cは、APOE4/E4マウスが、遺伝的に誘発された黒色腫モデルにおいて、APOE3/E3マウスと比較して腫瘍量の減少を示すことを示している。黒色腫誘発後35日目の
図2cに記載されているマウスの背部皮膚領域のパーセンテージとして測定された黒色腫負荷(p=0.01、片側マンホイットニー検定)。代表的なスキンの画像を右に示す。*p<0.05。箱ひげ図は中央値、第1四分位数、第3四分位数を示し、ひげは最小値と最大値を表す。全てのデータポイントは、1つのマウスに対応する各円で表示される。括弧内の数字はサンプルサイズを示している。
図2dは、間質APOE遺伝子型が静脈内注射された100,000個のB16F10-TR-shApoE細胞の転移進行をもまた調節することを示している(グループあたりn=10、片側マンホイットニー検定;2つの独立した実験の代表)。
【
図3-1】
図3a、
図3b、
図3c、
図3d、
図3e、
図3f、
図3g、及び
図3hは、TCGA-SKCMコホートのバイアレルAPOE分布及び臨床的特徴を示す一連の図である。
図3aは、性別の比率がAPOEキャリアグループ間で有意差がなかったことを示している(P=0.717、χ
2検定)。
図3bは、診断時の年齢がAPOEキャリアグループ間で有意差がなかったことを示している(P=0.999、ANOVA)。
図3cは、診断時の腫瘍の病期がAPOEキャリアグループ間で有意差がなかったことを示している(P=0.1703、χ
2検定)。
図3dは、診断時の黒色腫クラークレベルがAPOEキャリアグループ間で有意差がなかったことを示している(P=0.6579、χ
2検定)。
図3eは、診断時にブレスロー深度がAPOEキャリアグループ間で有意差がなかったことを示している(P=0.2814、クラスカル・ウォリス順位和検定)。
図3fは、TCGA-SKCMコホートの分子サブタイプ全体でのAPOEキャリア状態の割合を示している。示されているように、APOEキャリアの状態は腫瘍変異サブタイプと有意に関連していなかった(P=0.8703、χ
2検定)。
図3gは、TCGA-SKCMコホートの転写クラスター全体でのAPOEキャリア状態の割合を示している。示されているように、APOEキャリアの状態はトランスクリプトミクスクラスターと有意には関連していなかった(P=0.1176、χ
2検定)。
図3hは、コミュニティのアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)及びTCGA-SKCMコホートにおけるAPOE遺伝子型の割合を示している。示されているように、バイアレルAPOE遺伝子型の分布は、TCGA-SKCMコホートと健康な集団でやや偏っていた(P=0.0056、χ
2検定)。
【
図3-2】
図3a、
図3b、
図3c、
図3d、
図3e、
図3f、
図3g、及び
図3hは、TCGA-SKCMコホートのバイアレルAPOE分布及び臨床的特徴を示す一連の図である。
図3aは、性別の比率がAPOEキャリアグループ間で有意差がなかったことを示している(P=0.717、χ
2検定)。
図3bは、診断時の年齢がAPOEキャリアグループ間で有意差がなかったことを示している(P=0.999、ANOVA)。
図3cは、診断時の腫瘍の病期がAPOEキャリアグループ間で有意差がなかったことを示している(P=0.1703、χ
2検定)。
図3dは、診断時の黒色腫クラークレベルがAPOEキャリアグループ間で有意差がなかったことを示している(P=0.6579、χ
2検定)。
図3eは、診断時にブレスロー深度がAPOEキャリアグループ間で有意差がなかったことを示している(P=0.2814、クラスカル・ウォリス順位和検定)。
図3fは、TCGA-SKCMコホートの分子サブタイプ全体でのAPOEキャリア状態の割合を示している。示されているように、APOEキャリアの状態は腫瘍変異サブタイプと有意に関連していなかった(P=0.8703、χ
2検定)。
図3gは、TCGA-SKCMコホートの転写クラスター全体でのAPOEキャリア状態の割合を示している。示されているように、APOEキャリアの状態はトランスクリプトミクスクラスターと有意には関連していなかった(P=0.1176、χ
2検定)。
図3hは、コミュニティのアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)及びTCGA-SKCMコホートにおけるAPOE遺伝子型の割合を示している。示されているように、バイアレルAPOE遺伝子型の分布は、TCGA-SKCMコホートと健康な集団でやや偏っていた(P=0.0056、χ
2検定)。
【
図4-1】
図4a、
図4b、
図4c、
図4d、
図4e、及び
図4fは、APOE遺伝子型が免疫療法レジメン下で黒色腫の進行を調節することを示す一連の図である。
図4aは腫瘍の成長を示し、
図4bはYUMMER1.7腫瘍を注射し、抗PD1抗体で治療したヒトAPOEノックインマウスの生存を示している(グループあたりn=26;P=0.022、両側ログランク検定;2つの独立した実験からプールされたデータ;CR=完全寛解)。
図4c及び4dは、Rohら及びRiazらによる、抗CTLA4治療に失敗した後の抗PD1免疫療法で治療された黒色腫患者の生存を示している。
図4dは、APOEキャリアステータス(ログランク検定によるp値)によって層別化された研究を示している。
図4eは、ヒトAPOEノックインマウスにおけるYUMM1.7腫瘍の増殖に対するLXRアゴニスト治療の効果を示している(グループあたりn=10;両側t検定;2つの独立した実験の代表)。
図4fは、
図4eからの注射後29日目の個々の腫瘍体積を示している。
【
図4-2】
図4a、
図4b、
図4c、
図4d、
図4e、及び
図4fは、APOE遺伝子型が免疫療法レジメン下で黒色腫の進行を調節することを示す一連の図である。
図4aは腫瘍の成長を示し、
図4bはYUMMER1.7腫瘍を注射し、抗PD1抗体で治療したヒトAPOEノックインマウスの生存を示している(グループあたりn=26;P=0.022、両側ログランク検定;2つの独立した実験からプールされたデータ;CR=完全寛解)。
図4c及び4dは、Rohら及びRiazらによる、抗CTLA4治療に失敗した後の抗PD1免疫療法で治療された黒色腫患者の生存を示している。
図4dは、APOEキャリアステータス(ログランク検定によるp値)によって層別化された研究を示している。
図4eは、ヒトAPOEノックインマウスにおけるYUMM1.7腫瘍の増殖に対するLXRアゴニスト治療の効果を示している(グループあたりn=10;両側t検定;2つの独立した実験の代表)。
図4fは、
図4eからの注射後29日目の個々の腫瘍体積を示している。
【
図4-3】
図4a、
図4b、
図4c、
図4d、
図4e、及び
図4fは、APOE遺伝子型が免疫療法レジメン下で黒色腫の進行を調節することを示す一連の図である。
図4aは腫瘍の成長を示し、
図4bはYUMMER1.7腫瘍を注射し、抗PD1抗体で治療したヒトAPOEノックインマウスの生存を示している(グループあたりn=26;P=0.022、両側ログランク検定;2つの独立した実験からプールされたデータ;CR=完全寛解)。
図4c及び4dは、Rohら及びRiazらによる、抗CTLA4治療に失敗した後の抗PD1免疫療法で治療された黒色腫患者の生存を示している。
図4dは、APOEキャリアステータス(ログランク検定によるp値)によって層別化された研究を示している。
図4eは、ヒトAPOEノックインマウスにおけるYUMM1.7腫瘍の増殖に対するLXRアゴニスト治療の効果を示している(グループあたりn=10;両側t検定;2つの独立した実験の代表)。
図4fは、
図4eからの注射後29日目の個々の腫瘍体積を示している。
【
図5】
図5a及び
図5bは、APOE遺伝子型が甲状腺癌及び乳癌の生存を調節することを示す一連の図である。APOEキャリア状態(ログランク検定)によって層別化されたTCGAコホートからのステージII/III甲状腺癌(
図5a)及び乳癌(
図5b)のがん患者の生存。
【
図6】
図6a、
図6b、及び
図6cは、APOE遺伝子型が乳癌の生存に及ぼす影響が腫瘍の白血球の浸潤に依存することを示す一連の図である。
図6aは、APOE遺伝子型によって層別化されたTCGAコホートにおける乳癌患者の生存率を示している。
図6a、
図6b、及び
図6cは、RNA-seqデコンボリューションによって評価されるように、高い白血球浸潤(
図6b)対低い白血球浸潤(
図6c)によって層別化された(
図6a)からの乳癌患者の生存を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
ヒトのがんの最も困難な特徴の1つは診断後のその予測不可能な経過である。本開示は、部分的に、ヒト黒色腫において、白人の約39%に存在するAPOEの一般的な遺伝的生殖細胞系列多型ががんの進行及び生存転帰を予測するという予期せぬ発見に基づいて、がんの予後のための方法及び試薬を提供する。Cancer Genome Atlas(TCGA)の分析により、APOE2変異体のキャリアは、より一般的なAPOE3変異体を保有するキャリアと比較して黒色腫の生存転帰が悪化していることが明らかとなった。対照的に、APOE4変異体のキャリアは、APOE3ホモ接合体と比較して黒色腫の生存率の改善を示した。黒色腫の転帰に対するこれらの対立遺伝子の影響は用量依存的であり、APOE2ホモ接合体が最短の生存を示し、APOE4ホモ接合体が最長の生存を示した。腫瘍は、APOE3ノックインマウスよりもヒトAPOE2でより効率的に増殖し、APOE4マウスでは最も効率が低く、APOE変異体が黒色腫の進行を因果的に調節することを示唆している。従って、APOE4及びAPOE2生殖細胞変異体は、黒色腫の進行の可能性をそれぞれ減少及び増加させ、アルツハイマー病においてそれらのリスク修正の役割は逆転している。調査結果は、生殖細胞系列の遺伝子構成が将来の悪性腫瘍の軌跡に影響を与え得るという考えと一致している。
【0047】
分泌された糖タンパク質アポリポプロテインE(APOE)は、がん細胞の自律的及び非自律的メカニズムを通じて黒色腫の進行及び転移を抑制することが以前に発見された。ヒトにおいて、APOE2、APOE3、及びAPOE4と呼ばれる3つの一般的なAPOE変異体があり、112位及び158位の2つのアミノ酸のみが異なる(
図1a)(Chen, J.ら, PNAS108, 14813-14818 (2011))。これらの変異体は、アルツハイマー病及び心血管疾患のリスクの主要な遺伝的修飾因子であるが(Strittmatter, W. J.ら, PNAS90, 1977-1981 (1993); Corder, E. H.ら, NatGenet7, 180-184 (1994); Mahley, R. W., J Mol Med(Bed) 94, 739-746 (2016))、がんの転帰との潜在的な関連性はこれまでのところ決定的ではない。
【0048】
黒色腫の進行におけるAPOEの役割を支持する以前の証拠を考慮すると、生殖細胞系APOE変異体の状態と黒色腫患者の臨床転帰との関連は、TCGA-SKCM研究の4
70人の参加者の正常組織全エクソームシーケンスデータからAPOE遺伝子型を決定することによって調査された(
図1b)(Network, T. C. G. A. (2015), Cell, 161(7), 1681-1696)。同様の年齢及び民族構成を有するコントロールと比較して、最も一般的なAPOE3変異体(すなわち、非E2/E4キャリア)のホモ接合体は、TCGA-SKCMコホートでやや過剰出現しており、APOE2及びAPOE4のキャリア状態の両方が、黒色腫発生率の増加の素因がないことを示している(
図1c)。しかしながら、驚くべきことに、APOEキャリアの状態は生存と有意に関連していた。E2キャリア、E3;E3ホモ接合体、及びE4キャリアの生存期間の中央値は、それぞれ3.9年、5.5年、及び10.1年である(
図1d)。診断時のAPOEキャリアグループ間で、性別、年齢、腫瘍の病期、黒色腫クラークレベル、ブレスロー深度、突然変異又は転写サブタイプなどの潜在的な交絡特性に有意差はなかった(
図3a~g)。注目すべきことに、バイアレルAPOE遺伝子型によって患者を層別化すると、生存率に対する遺伝子投与の影響が明らかとなった(E2;E2、E2;E3、E3;E3、E3;E4、及びE4;E4、それぞれにおいて、生存期間中央値は3.6、3.9、5.8、9.4年であり、生存期間中央値には達していなかった。)(
図1f及び
図3h)。進行した局所疾患の患者は転移進行のリスクが高いため、全身療法を慎重に検討する必要がある。そのような治療法は死亡率及び罹患率のリスクを伴うため、進行のリスクが最も高い人に投与されるのが理想的である。従って、TCGA-SKCMコホートにおいて、APOE遺伝子型と生存率との関連が黒色腫期の患者で維持されているかどうかをさらに評価した。実際、APOE遺伝子型はこのサブグループ間で患者の生存を層別化し、APOE遺伝子型がこれらの患者を層別化するリスクに使用され得ることを示唆している(
図1e)。従って、APOE遺伝子型は、遺伝子投与量に依存して黒色腫の生存と有意に関連していた。
【0049】
APOE遺伝子型が黒色腫の転帰の変化と単に相関しているか、又は因果関係があるかどうかを評価するために、内因性マウスAPOE遺伝子座が3つのヒトAPOE変異体の1つに置き換えられたマウスを利用した。Braf変異型YUMM1.7黒色腫モデルを使用して、E3;E3マウスと比較してE4;E4で有意に遅い腫瘍進行、及びE2;E2マウスで速い腫瘍進行を観察し、黒色腫進行に因果的に影響を与えるAPOE遺伝子型と一致した(
図2a)。白人の合計対立遺伝子頻度は91.6%であり、APOE3及びAPOE4が最も一般的な対立遺伝子である(Farrer, L. A.ら, JAMA278, 1349-1356 (1997))。それらの豊富さを考慮して、腫瘍コンパートメントもまた対応する変異体を発現する、遺伝的に引き起こされる黒色腫モデルに対するこれらのAPOE遺伝子型の影響を評価した。この目的のために、APOE3及びAPOE4マウスをTyr:CreER;Braf
V600E/+;Pten
lox/loxマウスを交配したところ、黒色腫形成は、メラノサイトにおけるタモキシフェン誘発性及びCre媒介性のPtenの切除によって開始され得る(
図2b)。移植可能な黒色腫モデルの結果と一致して、E3;E3マウスと比較して黒色腫腫瘍量の減少を示すE4;E4遺伝子型を有するマウスが観察された(
図2c)。さらに、非常に積極的なB16F10-TR-shApoEモデル(内因性マウスApoEが枯渇)を使用して、転移の進行に対するAPOE遺伝子型の影響を評価した。転移性負荷は、APOE3及びAPOE4マウスよりもAPOE2マウスにおいて有意に速く進行することが見出された(
図2d)。従って、ヒトAPOE対立遺伝子は、上記の臨床的関連データと一致する同系マウス黒色腫モデルの進行を因果的に支配する。
【0050】
本明細書に記載の結果は、生殖細胞系列に存在する遺伝的変異が、一般的なヒトのがんの進行を予測し、影響を与え得ることを明らかにしている。特に、転移性黒色腫の表現型の多面発現抑制因子であるAPOEの一般的な変異体は、腫瘍の進行に対して異なる効果を示す。従って、本開示は、APOE遺伝子型の存在に基づいてがんを治療するための方法を提供する。さらに、本開示は、ネオアジュバント及びアジュバント療法、腫瘍監視、
並びに腫瘍進行に偶然に関連するAPOE遺伝子型の存在に基づく疾患進行の可能性について医学的及び臨床的決定を下すための方法を提供する。
【0051】
I.癌を治療する方法及び癌の予後の方法
a.がんを治療する方法
本開示は、いくつかの態様で上記の必要性に対処する。一態様では、本開示は、19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象のがんを治療する方法を提供する。方法は、有効量の抗がん剤若しくは抗腫瘍剤、又はそれらの薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、抗がん剤又は抗腫瘍剤は、LXRβアゴニストである。
【0052】
APOEは、ApoE-ε2、ApoE-ε3、及びApoE-ε4として知られる、2つの一塩基多型(SNP)、rs429358及びrs7412によって定義されるように、3つの主要な対立遺伝子/アイソフォームを有する多型である。これらの遺伝子によって生成されるタンパク質は、ApoE2、ApoE3、及びApoE4と呼ばれる。いくつかの実施形態では、APOE2は、Cys112及びCys158残基を含み得て、APOE3は、Cys112及びArg158残基を含み得て、かつAPOE4は、Arg112及びArg158残基を含み得る。
【0053】
これらの対立遺伝子型は、112位及び158位の1つ又は2つのアミノ酸だけが互いに異なり得るが、これらの違いはAPOEの構造及び機能を変化させる。ヒトAPOE2、APOE3、及びAPOE4のヌクレオチド配列を表1に示す。いくつかの実施形態では、特定のAPOE遺伝子型としては、配列番号1~3の配列を有するAPOE遺伝子が挙げられ得る。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
多くの実施形態では、「対象」及び「患者」という用語は、対象が何らかの形態の治療を受けているか又は現在受けているかに関係なく、交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、「対象」及び「複数の対象」という用語は、哺乳動物(例えば、牛、豚、ラクダ、ラマ、馬、山羊、ウサギ、羊、ハムスター、モルモット、猫、犬、ラット、及びマウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザルなどのサル)、チンパンジーなど)並びに人間)を含むがこれらに限定されない、いずれかの脊椎動物を指し得る。対象は人間又は非人間である可能性があります。この文脈において、「正常な」、「対照」、又は「参照」の対象、患者、又は集団は、それぞれ、検出可能な疾患又は障害を示さないものである。いくつかの実施形態では、「正常な」、「対照」、又は「参照」対象は、APOE3遺伝子型を有する。
【0058】
より例示的な態様では、哺乳類はヒトである。本明細書で使用される場合、「それを必要とする対象」又は「それを必要とする患者」という表現は、がん又は腫瘍の1つ又は複数の症状又は徴候を示す、及び/又は固形腫瘍を含む腫瘍又はがんと診断され、その治療が必要な、ヒト又は非ヒト哺乳動物を意味する。当該表現は、原発性、確立性、又は再発性の腫瘍病変を有する対象を含む。特定の実施形態では、表現は、固形腫瘍の治療を受けている及び/又は治療を必要とするヒト対象を含む。当該表現は、原発性又は転移性腫瘍(進行性悪性腫瘍)のある対象をも含む。特定の実施形態では、当該表現は、以前の治療(例えば、手術、又はカルボプラチン若しくはドセタキセルなどの抗がん剤による治療)に対して耐性若しくは不応性であるか、又は不十分に制御される固形腫瘍を有する患者を含む。特定の実施形態では、当該表現は、以前の治療の1つ以上のラインで治療された(例えば、外科的に除去された)が、その後再発した腫瘍病変を有する患者を含む。いくつかの実施形態では、当該表現は、治癒的手術若しくは治癒的放射線の候補ではない、又は例えば毒性副作用のために従来の抗がん療法が推奨されない腫瘍若しくはがんを有する対
象を含む。他の実施形態では、当該表現は、外科的除去が計画されている腫瘍病変を有する対象を含む。他の実施形態では、当該表現は、手術後の再発の既往歴のために再発のリスクが高い対象を含む。
【0059】
本発明を説明するために使用される場合、「がん」、「腫瘍」、及び「悪性腫瘍」は全て、組織又は器官の過形成に同等に関連している。組織がリンパ系又は免疫系の一部である場合、悪性細胞としては循環細胞の非固形腫瘍が挙げられ得る。他の組織又は臓器の悪性腫瘍は固形腫瘍を生成し得る。本発明の方法は、リンパ細胞、循環免疫細胞、及び固形腫瘍の治療に使用され得る。
【0060】
治療され得るがんとしては、血管新生されていない、又は実質的に血管新生されていない腫瘍、及び血管新生された腫瘍が挙げられる。がんは、非固形腫瘍(例えば、白血病及びリンパ腫などの血液腫瘍)を含み得るか、又は固形腫瘍を含み得る。本発明の組成物で治療されるがんのタイプとしては、癌腫、芽細胞腫及び肉腫、並びに特定の白血病又は悪性リンパ性腫瘍、良性及び悪性の腫瘍並びに悪性腫瘍、例えば、肉腫、癌腫、及び黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。成人の腫瘍/がん及び小児の腫瘍/がんもまた挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態では、がんは、乳癌、結腸癌、腎細胞癌、肺癌、肝細胞癌、胃癌、卵巣癌、膵臓癌、食道癌、前立腺癌、肉腫、膀胱癌、頭頸部癌、神経膠芽細胞腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、白血病、又は黒色腫である。いくつかの実施形態では、癌は黒色腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌である。いくつかの実施形態では、がんは転移性及び/又は局所進行性である。いくつかの実施形態では、がんは切除不能である。
【0062】
本明細書で使用される場合、「治療している」、「治療する」などの用語は、対象の、少なくとも1つの症状又は徴候の重症度を緩和又は軽減すること、一時的又は永続的に症状の原因を排除すること、腫瘍の成長を遅延又は阻害すること、腫瘍細胞の負荷又は腫瘍の負担を減少させること、腫瘍の退縮を促進すること、腫瘍の縮小、壊死及び/又は消失を引き起こすこと、腫瘍再発を防止すること、転移を予防又は阻害すること、転移性腫瘍増殖を阻害すること、手術の必要性を排除すること、及び/又は生存期間を延長することを指す。
【0063】
「薬剤」という用語は、本明細書では、化合物、化合物の混合物、生体高分子(核酸、抗体、タンパク質又はその一部、例えばペプチドなど)、又は細菌、植物、真菌、若しくは動物(特に哺乳類)の細胞若しくは組織などの生物学的材料から生成した抽出物を示すために使用される。そのような剤の活性は、対象において局所的又は全身的に作用する生物学的、生理学的、又は薬理学的に活性な物質(又は複数の物質)である「治療剤」としてそれを適切し得る。
【0064】
「治療剤」、「治療可能剤」、又は「医療剤」という用語は互換的に使用され、対象への投与に何らかの有益な効果を与える分子又は化合物を指す。有益な効果としては、診断決定の有効化;病気、症状、障害、又は病的状態の改善;病気、症状、障害、又は状態の発症を軽減又は予防こと;及び一般的に病気、症状、障害又は病的状態を打ち消すこと、が挙げられる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、組成物の生物学的活性又は特性を無効にせず、比較的無毒である、支持体又は希釈剤などの材料を指し、すなわち、材料は、望ましくない生物学的効果を引き起こしたり、それが含まれている組成物の成分のいずれかと有害な方法で相互作用したりすることなく、個体に投与され得る。
【0066】
「薬学的に許容される支持体」という用語は、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される材料、組成物、液体若しくは固体の充填剤などの支持体、希釈剤、賦形剤、溶媒、又は目的の機能を実行し得るように、本発明の化合物を対象内若しくは対象に、運搬若しくは輸送することに関与する封入材料を含む。典型的には、そのような化合物は、ある器官又は体の一部から他の器官又は体の一部に運搬又は輸送される。各塩又は支持体は、製剤の他の成分と適合性があるという意味で「許容可能」でなければならず、対象に有害であってはならない。薬学的に許容される支持体として役立ち得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖;コーンスターチ及びジャガイモ澱粉などの澱粉; セルロース、並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;希釈剤;造粒剤;潤滑剤;バインダー;崩壊剤;湿潤剤;乳化剤;着色剤;離型剤;コーティング剤;甘味料;香料;香料;防腐剤;抗酸化剤;可塑剤;ゲル化剤;増粘剤;硬化剤;設定剤;懸濁剤;界面活性剤;保湿剤;キャリア;スタビライザー;並びに製剤に使用される他の非毒性適合性物質、又はそれらのいずれかの組み合わせ、が挙げられる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される支持体」としては、ありとあらゆるコーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、並びに吸収遅延剤、並びに本発明の1つ又は複数の構成要素の活性と適合性があり、対象に生理学的に許容されるものなどもまた挙げられる。補足的な活性化合物もまた、組成物に組み込まれ得る。
【0067】
「有効量」、「有効用量」、又は「有効投与量」という用語は、望ましい効果を達成する、又は少なくとも部分的に達成するのに十分な量として定義される。薬物又は治療剤の「治療有効量」又は「治療有効投与量」は、単独で、又は他の治療薬と組み合わせて使用した場合に、疾患症状の重症度の低下、病気の無症状期間の頻度及び期間の増加、又は病気の苦痛による障害若しくは障害の予防、によって証明される疾患の退行を促進するいずれかの量の薬物である。薬物/剤の「予防的に有効な量」又は「予防的に有効な投与量」は、疾患を発症するリスク又は疾患の再発を患うリスクのある対象に、単独で又は他の治療薬と組み合わせて投与された場合に、疾患の発症又は再発を阻害する薬物の量である。疾患の退行を促進する、又は疾患の発症又は再発を阻害する治療剤又は予防剤の能力は、臨床試験中のヒトの対象、ヒトでの有効性を予測する動物モデルシステム、又はインビトロアッセイで薬剤の活性をアッセイすることなど、当業者に知られている様々な方法を使用して評価され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、有効量は、がんの転移性コロニー形成を抑制するのに有効な量を含む。
【0069】
他の態様では、本開示は、対象のがんを治療する方法を提供する。方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定された対象を提供すること;並びに、(b)有効量の抗がん剤若しくは抗腫瘍剤(例えば、LXRβアゴニスト)又はその薬学的に許容される塩を対象に投与すること、を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、
又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定され、かつ、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在に基づいて、抗がん剤若しくは抗腫瘍剤(例えば、LXRβアゴニスト)又はその薬学的に許容される塩を用いる治療から利益を得る可能性が高いと特定される対象を提供すること;並びに、(b)有効量の抗がん剤若しくは抗腫瘍剤(例えば、LXRβアゴニスト)又はその薬学的に許容される塩を、特定された対象に投与すること、を含む。
【0071】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定され、かつ、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在に基づいて、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を用いる治療から利益を得る可能性が高いと特定される対象を提供すること;並びに、(b)有効量のLXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を、特定された対象に投与すること、を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、抗がん剤若しくは抗腫瘍剤(例えば、LXRβアゴニスト)又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること;並びに、(d)有効量の抗がん剤若しくは抗腫瘍剤(例えば、LXRβアゴニスト)又はその薬学的に許容される塩を特定された対象に投与すること、を含み、これによりがんを治療する。
【0073】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること;並びに、(d)有効量のLXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を特定された対象に投与すること、を含み、これによりがんを治療する。
【0074】
「サンプル」、「試験サンプル」、及び「患者サンプル」は、本明細書では互換的に使用され得る。サンプルは、血清、尿、血漿、羊水、脳脊髄液、細胞(例えば、抗体産生細胞)又は組織のサンプルであり得る。そのようなサンプルは、本明細書で説明するように、又は当技術分野で知られているように、患者から得られたものとして直接使用され得て、又は濾過、蒸留、抽出、濃縮、遠心分離、干渉成分の不活性化、試薬の添加などによって前処理されて、何らかの方法でサンプルの特性を変更し得る。本明細書で使用される「サンプル」及び「生物学的サンプル」という用語は、通常、抗体などの目的の分析物を含むかどうか試験されている及び/又は含まれている疑いのある生物学的材料を指す。サンプルは、対象からのいずれかの組織サンプルであり得る。サンプルは、対象からのタンパク質を含み得る。
【0075】
サンプルを得るために、いずれかの細胞型、組織、又は体液を利用し得る。そのような細胞型、組織、及び体液としては、生検及び剖検サンプルなどの組織の切片、組織学的目的で採取された凍結切片、血液(全血など)、血漿、血清、痰、便、涙、粘液、唾液、髪、皮膚、赤血球、血小板、間質液、眼球レンズ液、脳脊髄液、汗、鼻液、滑液、おりもの、羊水、精液などが挙げられ得る。細胞の種類及び組織としては、リンパ液、腹水、婦人科液、尿、腹水、脳脊髄液、膣洗浄によって収集された液体、又は膣洗浄によって収集された液体もまた挙げられ得る。組織又は細胞型は、動物から細胞のサンプルを除去することによって提供され得るが、以前に単離された細胞を使用することによっても達成され得る(例えば、他の人によって、他の時に、及び/又は他の目的のために)。治療歴又は転帰歴を有するものなどのアーカイブ組織をも使用され得る。タンパク質の精製は必要ない場合がある。
【0076】
尿、血液、血清、血漿、及び他の体液を収集、取り扱い、並びに処理するための当技術分野で周知の方法を、本開示の実施において、例えば、本明細書で提供される抗体が免疫診断試薬として、及び/又はイムノアッセイキットで使用される場合、使用し得る。試験サンプルは、抗体、抗原、ハプテン、ホルモン、薬物、酵素、受容体、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドなどの目的の分析物に加えて、さらなる部分を含み得る。例えば、サンプルは、対象から得られた全血サンプルであり得る。試験サンプル、特に全血は、本明細書に記載されるように、例えば前処理試薬で、イムノアッセイの前に処理されることが必要又は望ましい場合がある。前処理が不要な場合でも、単に便宜上、前処理を行ってもよい(例えば、商用プラットフォームのレジメンの一部として)。サンプルは、対象から得られたものとして直接使用されるか、又は前処理後にサンプルの特性を変更するために使用され得る。前処理としては、抽出、濃縮、干渉成分の不活性化、及び/又は試薬の添加が挙げられ得る。
【0077】
「増加した」、「増加」又は「増強」又は「活性化」という用語はすべて、本明細書では、一般に、静的に有意な量の増加を意味するために使用され;疑いを避けるために、「増加した」、「増加」、「強化」、又は「活性化」という用語は、参照レベルと比較して少なくとも10%の増加、例えば、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%、若しくは100%までの増加、又は、参照レベルと比較して10~100%の増加、又は少なくとも約2倍、若しくは少なくとも約3倍、若しくは少なくとも約4倍、若しくは少なくとも約5倍、若しくは少なくとも約10倍の増加、又は参照レベルと比較して2倍~10倍以上の増加、を意味する。
【0078】
他の態様では、本開示はまた、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性があるがんを有する個体を特定する方法を提供する。方法は、(a)対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;並びに、(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること、を含み、それにより、LXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する。
【0079】
いくつかの実施形態では、LXRβアゴニストは、2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩であり得る。いくつかの実施形態において、LXRβアゴニストは、以下により表される構造を有する。
【0080】
【0081】
他の態様では、本開示はさらに、19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象の、がんを治療する方法を提供する。方法は、有効量のPD-1阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS 936559、及びアテゾリズマブ)若しくはPD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ及びデュルバルマブ)、又はそれらの薬学的に許容される塩を対象に投与することを含む。
【0082】
他の態様では、治療を必要とする対象のがんを治療する方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定された対象を提供すること;並びに、(b)有効量のPD-1阻害剤(例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、BMS 936559、及びアテゾリズマブ)若しくはPD-L1阻害剤(例えば、アテゾリズマブ及びデュルバルマブ)、又はそれらの薬学的に許容される塩を対象に投与すること、を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有すると特定され、かつ、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在に基づいて、PD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定された対象を提供すること;並びに、(b)有効量のPD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤を特定された対象に投与すること、を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、PD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること;並びに、(d)有効量のPD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩を、特定された対象に投与すること、を含み、
それによりがんを治療する。
【0085】
いくつかの実施形態では、本開示は、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤による治療から利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する方法を提供する。方法は、(a)対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在を検出すること;並びに、(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象を、PD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの薬学的に許容される塩による治療から利益を得る可能性が高いと特定すること、を含み、それによりPD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はその薬学的に許容される塩による治療の利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する。
【0086】
いくつかの実施形態では、対象は、以前にCTLA-4阻害剤又はその薬学的に許容される塩を投与されている。
【0087】
いくつかの実施形態では、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって決定される。
【0088】
いくつかの実施形態では、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子の存在は、対象のAPOE3タンパク質又はAPOE4タンパク質の発現レベルによって決定される。
【0089】
APOEタンパク質のレベルは、タンパク質レベル又はmRNAレベルを決定又は推定することによって測定され得る。タンパク質レベル又はmRNAレベルを決定又は推定するための方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、APOEタンパク質のタンパク質レベル(例えば、タンパク質発現レベル)は、SDS-PAGE、ウエスタンブロット、又はイムノアッセイ(例えば、イムノブロッティングアッセイ、免疫沈降アッセイ)によって決定され得る。mRNAレベルは、RT-PCRによって決定され得る。
【0090】
APOEタンパク質のレベルの測定は、タンパク質自体をアッセイすることによって(ウエスタンブロッティング、ELISA、RIA、及び当業者に知られている他の技術によって)、これらのタンパク質をコードするmRNAをアッセイすることによって(定量的PCR、ノーザンブロッティング、RNAseプロテクションアッセイ、RNAドットブロッティング、及び当業者に知られている他の技術など)、又はAPOEタンパク質の遺伝子の調節要素の活性をアッセイすることによって、実行され得る。例えば、調節エレメントの活性は、プロモーター、エンハンサー、及び/又はレポーター(ルシフェラーゼ、ベータガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、又は簡単にアッセイできる他の報告遺伝子など)をコードするcDNAに結合したイントロンエレメントからのDNAセグメントからなるレポーター構築物によって評価され得る。これらのレポーター構築物は、安定的又は一時的に細胞にトランスフェクトし得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、がんは、白金含有化学療法、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、代謝拮抗剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、血管新生阻害剤、キナーゼ阻害剤、及び/又はアルキル化剤に対して耐性があるか、又は以前の
治療に応答しなかった。いくつかの実施形態では、がんは、白金含有化学療法、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、血管新生阻害剤、キナーゼ阻害剤、及び/又はアルキル化剤による治療中又は治療後に進行した。いくつかの実施形態では、がんは、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、代謝拮抗剤、血管新生阻害剤、キナーゼ阻害剤、及び/又はアルキル化剤に耐性があると決定されている、又は予測されている。
【0092】
いくつかの実施形態では、方法は対象に追加の抗がん療法を施すことをさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の抗がん療法は、外科手術、放射線療法、化学療法、及び/又は免疫療法を含む。いくつかの実施形態では、追加の抗がん療法が化学療法及び/又は免疫療法を含む。いくつかの実施形態では、化学療法は、ドセタキセル、カルボプラチン若しくはシスプラチン、ペメトレキセド、及び/又はペムブロリズマブを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、方法は、有効量の葉酸、ビタミンB12、コルチコステロイド、スタチン、制吐剤、止瀉剤、食欲刺激剤、一般刺激剤、ビスホスホネート、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト、成長因子、及び/又はLHRHアゴニストを対象に投与することをさらに含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、対象は、ApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε4対立遺伝子、rs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子及びε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε2対立遺伝子及びε4対立遺伝子を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε4対立遺伝子を有する。
【0095】
さらに他の態様では、本開示はさらに、19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有する対象のがんを治療する方法を提供する。方法は、対象に積極的治療を施すことを含む。
【0096】
他の態様では、本開示は治療を必要とする対象におけるがんを治療する方法を提供する。方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有すると特定された対象を提供すること;及び、(b)対象に積極的治療を施すこと、を含む。
【0097】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有すると特定され、かつ、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在に基づいて積極的治療から利益を得る可能性が高いと特定された対象を提供すること;及び、(b)特定された対象に積極的治療を施すこと、を含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在を検出すること;(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有する対象を、積極的治療から利益を得る可能性が高いと特定すること;及び、(d)特定された対象に積極的治療を施すこと、を含み、それによりがんを治療する。
【0099】
他の態様では、本開示は積極的治療から利益を得る可能性のある、がんを有する個体を特定する方法を提供する。方法は、(a)対象から核酸を含むサンプルを入手すること;(b)サンプルでジェノタイピングアッセイを実行し、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在を検出すること;及び、(c)19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子を有する対象を、積極的治療から利益を得る可能性が高いと特定すること、を含み、それにより積極的治療の利益を受ける可能性のある、がんを有する個体を特定する。
【0100】
いくつかの実施形態では、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって決定される。いくつかの実施形態では、19番染色体上のApoE遺伝子における、rs7412又はrs429358の多型からの少なくとも1つのε2対立遺伝子の存在が、対象におけるAPOE2タンパク質の発現レベルによって決定される。
【0101】
いくつかの実施形態では、対象は、19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412及びrs429358の多型からのε2対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε2対立遺伝子及びε3対立遺伝子を有する。
【0102】
いくつかの実施形態では、積極的治療は、2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩の投与、及び同時の有効量の免疫療法を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、積極的治療は、対象に対して手術を行うことをさらに含む。いくつかの実施形態では、2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩は、手術前に投与される。いくつかの実施形態では、2-[3-[(3R)-3-[[2-クロロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル-(2,2-ジフェニルエチル)アミノ]ブトキシ]フェニル]酢酸又はその薬学的に許容される塩は、手術後に投与される。
【0104】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、又はCTLA-4阻害剤である。
【0105】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、第2の治療薬の前、後、又は同時に対象に投与され得る。抗がん剤若しくは抗腫瘍剤(例えば、LXRβアゴニスト、PD-1阻害剤、又はPD-L1阻害剤)、又はそれらの医薬組成物は、単回投与として投与され得るか、又は、より一般的には複数回投与され得る。単回投与の間隔は、例えば、毎週、毎月、3か月ごと、又は毎年であり得る。患者への抗がん剤又は抗腫瘍剤(例えば、LXRβアゴニスト、PD-1阻害剤、又はPD-L1阻害剤)の血中レベルを測定することによって示される通りに、間隔も不規則であり得る。
【0106】
抗がん剤若しくは抗腫瘍剤(例えば、LXRβアゴニスト、PD-1阻害剤、又はPD-L1阻害剤)、又はそれらの医薬組成物は、当技術分野で知られている様々な方法のうちの1つ又は複数を使用して、1つ又は複数の投与経路を介して投与され得る。当業者によって理解されるように、投与の経路及び/又はモードは、望ましい結果に応じて変化し得る。例えば、抗がん剤又は抗腫瘍剤の投与経路としては、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔
内、皮下、脊髄、又は他の非経口投与経路、例えば注射又は注入による投与経路が挙げられる。本明細書で使用される「非経口投与」という句は、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、通常は注射によるものであり、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び注入が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、抗がん剤又は抗腫瘍剤は、例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下又は局所に、局所、表皮又は粘膜の投与経路などの非経口経路を介して投与され得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、抗がん剤若しくは抗剤、又はそれらの医薬組成物は、腫瘍内、静脈内、皮下、骨内、経口、経皮、徐放性、徐放性、坐剤として、又は舌下に投与され得る。
【0108】
投与計画は、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単一のボーラスを投与し得て、いくつかの分割された用量を経時的に投与し得て、又は治療状況の緊急性によって示される通りに、用量を比例して減少又は増加させ得る。投与の容易さ及び投薬量の均一性のために、投薬単位形態で非経口組成物を処方することは特に有利である。本明細書で使用される投薬単位形態は、治療される対象の単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し;各ユニットは、必要な医薬支持体に関連して望ましい治療効果を生み出すように計算された所定量の有効成分を含む。本発明の投薬単位形態の仕様は、(a)活性化合物の独特の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、並びに、(b)個人の感受性の治療のための、そのような有効成分を配合する技術に固有の制限、によって決定され、それに直接依存する。
【0109】
抗がん剤又は抗腫瘍剤の投与の場合、投与量は、宿主体重の約0.0001~100mg/kg、より通常は0.01~5mg/kgの範囲である。例示的な治療レジームは、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、月に1回、3ヶ月に1回、又は3~6ヶ月に1回の投与を伴う。
【0110】
あるいは、抗がん剤又は抗腫瘍剤を徐放性製剤として投与し得て、その場合、より少ない頻度の投与が必要とされる。投与量及び頻度は、患者の抗がん剤又は抗腫瘍剤の半減期によって異なる。投与量及び投与頻度は、治療が予防的であるか治療的であるかによって異なり得る。予防的用途では、比較的低用量が長期間にわたって比較的まれな間隔で投与される。一部の患者は、一生治療を受け続ける。治療用途では、疾患の進行が軽減又は終了するまで、好ましくは患者が病気の症状の部分的又は完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が必要になり得る。その後、患者は予防レジームを投与され得る。
【0111】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に毒性を与えることなく、特定の患者、組成物、及び投与様式に対して望ましい治療反応を達成するのに有効な量の有効成分を得るように変更され得る。選択される投薬量レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用されている特定の有効成分の排泄率、治療期間、他の薬物、使用される特定の組成物、年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態、及び治療される患者の以前の病歴、並びに医学技術でよく知られている同様の要因と組み合わせて使用される化合物及び/又は材料、などの様々な薬物動態学的要因に依存し得る。
【0112】
いくつかの実施形態では、抗がん剤若しくは抗腫瘍剤(例えば、LXRβアゴニスト、PD-1阻害剤、又はPD-L1阻害剤)、又はそれらの医薬組成物は、併用療法、すなわち、追加の治療薬で投与され得る。例えば、併用療法としては、上記の化学療法剤及び免疫療法剤などの他の抗がん剤又は抗腫瘍剤などの少なくとも1つの追加の治療薬と組み合わせた、LXRβアゴニスト、PD-1阻害剤、又はPD-L1阻害剤が挙げられ得る
。
【0113】
「化学療法剤」は、がんの治療に有用な化合物である。化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXANTM)などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボクオン、メチュレドーパ、及びウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスファオラミド及びトリメチルオロメラミンなどのエチレンイミン及びメチルアメラミン;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンなど);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成類似体など);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIなど);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコディクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロスレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、例えば、Agnew Chem. Intl. Ed. Engl. 33: 183-186 (1994)を参照のこと;ダイネミシンAを含むダイネミシン;エスペラミシン;ネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンなど)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類縁物質;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FUなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストトラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎;フロリン酸などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミド配糖体;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;メイタンシン及びアンサミトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、及びアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストルマイヤーズスク
イブオンコロジー、ニュージャージー州プリンストン)及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローヌプーランローラー、アントニー、フランス);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が挙げられる。この定義には、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、4(5)-イミダゾールを阻害するアロマターゼ、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(ファレストン)などの抗エストロゲン;フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド、ゴセレリンなどの抗アンドロゲン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体などの腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれる。
【0114】
「免疫療法剤」は、がんの治療に有用な生物学的薬剤である。免疫療法剤の例としては、アテゾリズマブ、アベルマブ、ブリナツモマブ、ダラツムマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、エロツズマブ、ラヘルパレプベック、イピリムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オファツムマブ、ペムブロリズマブ、及びタリモジェンが挙げられる。
【0115】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫チェックポイント阻害剤又はLXRアゴニスト(例えば、RGX-104)を投与されている。免疫チェックポイント阻害剤の例には、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、キラー免疫グロブリン受容体(KIR)、LAG3、B7-H3、B7-H4、TIM3、A2aR、CD40L、CD27、OX40、4-IBB、TCR、BTLA、ICOS、CD28、CD80、CD86、ICOS-L、B7-H4、HVEM、4-1BBL、OX40L、CD70、CD40、又はGALSを標的とする抗体が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体である。
【0116】
本明細書で使用される場合、「同時投与」又は「同時投与された」という用語は、対象への少なくとも2つの薬剤又は療法の投与を指す。いくつかの実施形態では、2つ以上の薬剤/治療の同時投与は同時に行われる。他の実施形態では、第1の薬剤/治療は、第2の薬剤/治療の前に投与される。当業者は、使用される様々な剤/治療法の処方及び/又は投与経路が異なり得ることを理解している。
【0117】
b.がんの予後の方法
この開示はまた、がんを有するか又はがんを有するリスクがある対象の予後を評価するための方法を提供する。方法は、(i)対象からサンプルを入手すること;(ii)サンプル中の特定のAPOE遺伝子型の存在を決定すること;及び、(iii)APOE2、APOE3、又はAPOE4遺伝子型などの特定のAPOE遺伝子型の存在に基づいて対象の予後結果を決定すること、を含む。いくつかの実施形態では、方法はさらに、特定のAPOE遺伝子型の存在に基づいて、がんを治療するための薬物を対象に投与して、決定された予後結果よりも良好な予後結果を達成することを含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、サンプルは、腫瘍組織又は血液サンプルなどの、対象からの細胞、組織、又は体液のサンプルを含み得る。サンプル中の特定のAPOE遺伝子型の存在は、PCRによって決定され得る。PCRプライマーは、ゲノムDNAの特定のフラグメントの増幅をもたらすゲノムの既知の配列に基づいて選択されることが好ましい。当技術分野でよく知られているコンピュータプログラムは、オリゴバージョン5.0(Nat
ional Biosciences)など、必要な特異性及び最適な増幅特性を備えたプライマーの設計に有用である。いくつかの実施形態では、PCRプライマーは、配列番号4~16の配列を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、特定のAPOE遺伝子型の存在を決定することには、サンプル中の特定のAPOE変異タンパク質の存在を決定することが含まれる。サンプル中の特定のAPOE変異体タンパク質の存在の決定は、特定のAPOE変異体タンパク質に特異的に結合する抗体又はそのフラグメントを使用して実施され得る。そのようなAPOE変異体タンパク質特異的抗体としては、APOE2特異的抗体:クローンF48.1(Research Diagnostics、ニュージャージー州、米国)、APOE4特異的抗体:クローン4E4(Novus Biologicals、カタログ番号NBP1-49529)、が挙げられ得るが、これらに限定されない。抗体又はそのフラグメントを使用して特定のAPOE変異タンパク質の存在を決定するために、電気化学発光アッセイ、強化化学発光アッセイ、酵素免疫測定法(ELISA)、共免疫沈降(co-IP)などの、様々なアッセイを使用され得る。
【0120】
腫瘍組織サンプル又は末梢血サンプルなどの生物学的サンプルにおけるAPOE多型のジェノタイピングは、回復又はその欠如の早期の兆候を提供し得る。例えば、APOE2遺伝子型の存在は、対象の予後不良を示し、一方、APOE4遺伝子型の存在は、対象の予後が良好であることを示している。疾患経過の予後としては、転移、再発、及び再発のリスクが挙げられる。良好な予後は、予後不良の対象と比較して生存率が長いことを示す。
【0121】
本明細書に記載の予後方法は、制御されていない自律的な細胞増殖を特徴とする状態の進行及び管理を特定し、予後に有用な情報を提供する。例えば、情報は、臨床医が化学療法又は他の治療レジメンを設計して、人間などの苦しんでいる対象の身体からそのような状態を根絶することをより具体的に支援する。例えば、方法を使用して、対象が、制御されていない自律的な細胞増殖に関連する障害を治療するための剤(例えば、アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣物、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、又は他の薬物候補)とともに投与されるのに適しているかどうかを決定し得る。
【0122】
本明細書で使用される「予後」という用語は、臨床状態又は疾患の予想される経過及び結果の予測を指す。予後は通常、疾患の好ましい又は好ましくない経過又は結果を示す疾患の要因又は症状を評価することによって実施される。本明細書で使用される「予後の評価」又は「予後の決定」という句は、当業者が患者の状態の経過又は結果を予測し得るプロセスを指す。「予後」という用語は、状態の経過又は結果を100%の精度で予測する能力を指すのではなく、当業者は、「予後」という用語が、特定の経過又は結果が生じる可能性の増加、つまり、特定の状態を示していない個人と比較した場合、特定の状態を示している患者で経過又は結果が発生する可能性が高くなること、を指すことを理解するであろう。
【0123】
本明細書で使用される「良好な予後」、「好ましい予後」、及び「良性の予後」、又は「不良な予後」、「好ましくない予後」、及び「不良性の予後」という用語は、状態又は疾患の予想される経過及び/又は予想される結果を予測するための相対的な用語である。良好、好ましい、又は良性の予後は、不良、好ましくない、又は不良性の予後よりも、状態のより良い結果を予測する。一般的な意味で、「良好な予後」、「好ましい予後」、及び「良性の予後」は、特定の状態に関連する可能性のある他の多くの可能な予後よりも比較的良好な結果であり、一方、「不良な予後」、「好ましくない予後」、及び「不良性の予後」は、特定の状態に関連し得る他の多くの可能な予後よりも比較的悪い結果を予測する。良好な、好ましい又は良性の予後の典型的な例としては、平均よりも良好な治癒率、
転移のより低い傾向、予想よりも長い平均余命、良性プロセスとがん性プロセスとの分化などが挙げられる。例えば、良性の予後とは、患者が治療後に特定のがんが治癒する確率が50%であるのに対し、同じがんの平均的な患者が治癒する確率は25%のみである場合である。いくつかの実施形態では、APOE4キャリアの「良好な予後」、「好ましい予後」、及び「良性の予後」は、APOE3キャリアの予後結果(「中立」APOE遺伝子型と見なされる)に関連している。同様に、APOE2キャリアの「不良な予後」、「好ましくない予後」、及び「不良性の予後」は、APOE3キャリアの予後結果に関連している。
【0124】
本明細書に記載の予後方法は、対象が治療、例えば、手術又は治療薬(アゴニスト、アンタゴニスト、ペプチド模倣薬、タンパク質、ペプチド、核酸、小分子、又は他の薬物など)の投与、に適しているか、又は治療を必要としているかどうかを決定するために使用され得る。例えば、そのような方法は、対象に抗体を投与し得るか、又は他の療法(例えば、切断などの手術)を施し得るかどうかを決定するために使用され得る。従って、本明細書に記載の特定の方法は、対象が不良な予後を受けた場合に、対象を(例えば、1つ又は複数の医薬組成物で一定期間又は外科手術によって)治療することをさらに含んでもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、予後分析を受ける対象は、がんを有するか、又はがんを有するリスクがある。がんは、口腔癌、中咽頭癌、鼻咽頭癌、呼吸器癌、泌尿生殖器癌、胃腸癌、中枢又は末梢神経系組織癌、内分泌又は神経内分泌癌又は造血癌、神経膠腫、肉腫、癌腫、リンパ腫、黒色腫、線維腫、髄膜腫、脳腫瘍、中咽頭癌、鼻咽頭癌、腎癌、胆道癌、フェオクロモサイトーマ、膵島細胞癌、リ・フラウメニ腫瘍、甲状腺癌、副甲状腺癌、下垂体癌、副腎腫瘍、骨形成性肉腫腫瘍、多発性神経内分泌I型及びII型腫瘍、乳癌、肺癌、頭頸部癌、前立腺癌、食道癌、気管癌、肝癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、精巣癌、結腸癌、直腸癌、皮膚癌のいずれかである。
【0126】
II.がんの予後のためのキット及びアレイ
本開示はまた、上記の方法を具体化するキット及びアレイを提供する。そのようなキットは、容易に入手可能な材料及び試薬から調製され得て、様々な実施形態で提供され得る。
【0127】
いくつかの実施形態では、キットは、APOE2、APOE3、又はAPOE4の核酸配列に相補的な核酸配列を有するプローブを含む。そのようなプローブは、厳しい条件下でAPOE2、APOE3、又はAPOE4の核酸配列にハイブリダイズし得る。いくつかの実施形態では、キットは、それぞれAPOE2、APOE3、及びAPOE4に相補的な配列を有する標識プローブを含む。いくつかの実施形態では、APOE2、APOE3、及びAPOE4の核酸配列は、それぞれ配列番号1~3の配列を含む。いくつかの実施形態では、プローブの核酸配列の長さは15~200塩基である。いくつかの実施形態では、プローブは検出ラベルに連結されている。検出標識は、フルオロフォア、色素、放射性標識、酵素、ビオチン、若しくは抗体(又はそれらのフラグメント)であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、キットは、ゲノム領域に隣接する配列に特異的に結合して、ゲノム領域を含むAPOE2、APOE3、及びAPOE4の少なくとも1つのPCR増幅をさせるように構成されたプライマーをも含む。いくつかの実施形態では、プライマーは、配列番号4~16の配列を有し得る。
【0129】
キットは、キャリブレータ又はコントロール、例えば、精製された、及び凍結乾燥されていてもよい、抗原、抗体、又はそれらの組み合わせを含み得る。キットは、アッセイを実施するための少なくとも1つの容器(例えば、チューブ、マイクロタイタープレート又
はストリップであり、これらは、適切な抗原又は抗体で既にコーティングされ得る)、及び/又はアッセイバッファーやウォッシュバッファーなどの緩衝液、濃縮溶液、検出可能な標識の基質溶液(例えば、酵素標識)、又は停止溶液のいずれかとして提供され得るうちの一つを含み得る。好ましくは、キットは、アッセイを実施するために必要なすべての成分、すなわち、試薬、標準、緩衝液、希釈剤などを含む。抗体、キャリブレータ、及び/又はコントロールは、別々の容器で提供するか、適切なアッセイ形式、例えばマイクロタイタープレートに事前に分注され得る。
【0130】
キットは、品質管理コンポーネント(例えば、感受性パネル、キャリブレータ、ポジティブコントロール)を含んでもよい。品質管理試薬の調製は当技術分野で公知であり、様々な診断製品の挿入シートに記載されている。感受性パネルメンバーは、アッセイ性能特性を確立するために使用されていてもよく、さらにキット試薬の完全性及びアッセイの標準化の有用な指標となり得る。
【0131】
キットはまた、緩衝液、塩、酵素、酵素補因子、基質、検出試薬などのような、診断アッセイを実施するため、又は品質管理評価を容易にするために必要な他の試薬を含んでいてもよい場合がある。試験サンプル(例えば、前処理試薬)の単離及び/又は処理のための緩衝液及び溶液などの他の成分もまた、キットに含まれ得る。キットは、1つ又は複数の他のコントロールを追加で含み得る。キットの1つ又は複数の構成要素を凍結乾燥し得て、その場合、キットは、凍結乾燥された構成要素の再構成に適した試薬をさらに含み得る。
【0132】
キットの様々な構成要素は、適切な容器、例えばマイクロタイタープレートで提供されていてもよい。キットは、サンプルを保持又は保存するための容器(例えば、尿サンプル用の容器又はカートリッジ)をさらに含み得る。必要に応じて、キットは、試薬又は試験サンプルの調製を容易にする反応容器、混合容器、及びその他のコンポーネントを含んでいてもよい。キットは、注射器、ピペット、鉗子、薬さじなどの、試験サンプルの採取を支援するための1つ又は複数の器具をも含み得る。
【0133】
必要に応じて、キットは、磁性粒子、ビーズ、試験管、マイクロタイタープレート、キュベット、膜、足場分子、フィルム、濾紙、水晶、ディスク、又はチップなどの固相を含み得る。キットは、抗原又は抗体であるか、又はそれに結合され得る検出可能な標識をも含み得る。検出可能な標識は、例えば、酵素、オリゴヌクレオチド、ナノ粒子化学発光団、フルオロフォア、蛍光消光剤、化学発光消光剤、又はビオチンであり得る直接標識であり得る。キットは、ラベルの検出に必要な追加の試薬を含んでいてもよい場合がある。
【0134】
いくつかの例では、キットは、本明細書に記載されているか又は当技術分野で知られている1つ又は複数の化学療法剤又は免疫療法剤などの1つ又は複数の追加の抗がん治療剤を含み得る。そのようなキットは、抗体、抗菌治療薬、及びそれらの使用方法に関する市販のパッケージ及び/又は印刷された情報を含み得る。
【0135】
キットには、使用方法の説明書が含まれ得る。キットに含まれている説明書は、梱包材に添付し得るか、又は添付文書として含め得る。説明書は通常、書かれた又は印刷された資料であるが、それらはそれに限定されない。そのような説明書を記憶し、それらをエンドユーザーに伝達し得る媒体のいずれかが、本開示によって企図される。そのような媒体としては、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD ROM)などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「説明書」という用語は、説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得る。説明書は、標的を定量化する目的で標準曲線又は参照標準を生成するための説明書をも含み得る。
【0136】
バイオチップ又はアレイもまた、本開示において提供される。バイオチップ/アレイは、本明細書に記載のプローブ又は複数のプローブが取り付けられた固体又は半固体の基板を含み得る。プローブは、厳しいハイブリダイゼーション条件下で標的配列にハイブリダイズすることができる場合がある。プローブは、基板上の空間的に定義されたアドレスに取り付けられ得る。重複するプローブ又は特定の標的配列の異なるセクションへのプローブのいずれかを用いて、標的配列ごとに複数のプローブを使用し得る。プローブは、当業者によって認められている単一の障害に関連する標的配列にハイブリダイズすることができる場合がある。プローブは、最初に合成してからバイオチップに取り付けられるか、バイオチップ上で直接合成され得る。
【0137】
他の態様では、本開示は、複数の固有の位置を有する支持体を含むアレイを提供する。アレイは、少なくとも、APOE2、APOE3、又はAPOE4の核酸配列に相補的な配列を有する核酸又はプローブを含み得る。いくつかの実施形態では、核酸配列は、配列番号1~3のうちの1つである。
【0138】
固体基板は、プローブの取り付け又は結合に適切な個別の独自の部位を含むように改変され得て、少なくとも1つの検出方法に適した材料であり得る。そのような基板の例としては、ガラス及び修飾又は官能化ガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、及びスチレンと他の材料のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロンなどを含む)、多糖類、ナイロン又はニトロセルロース、樹脂、シリコン及び修飾シリコンを含むシリカ又はシリカベースの材料、炭素、金属、無機ガラス、並びにプラスチックが挙げられる。基板は、感知し得るほど蛍光を発することなく光学的検出を可能にし得る。
【0139】
基板は平面であり得るが、他の形態の基板をも使用し得る。例えば、プローブは、サンプル量を最小化するためのフロースルーサンプル分析のために、チューブの内面に配置され得る。同様に、基板は、特定のプラスチックで作製された独立気泡発泡体を含む、可撓性発泡体などの可撓性であり得る。
【0140】
アレイ/バイオチップ及びプローブは、2つの後の連結のために化学官能基で誘導体化され得る。例えば、バイオチップは、アミノ基、カルボキシル基、オキソ基又はチオール基が挙げられるがこれらに限定されない化学官能基で誘導体化され得る。これらの官能基を使用して、プローブは、リンカーを使用して直接的又は間接的にプローブ上の官能基を用いて連結され得る。プローブは、5’末端、3’末端、又は内部ヌクレオチドのいずれかによって固体支持体に連結され得る。プローブはまた、非共有結合的に固体支持体に連結され得る。例えば、ストレプトアビジンで共有結合的にコーティングされた表面に結合して連結をもたらし得るビオチン化オリゴヌクレオチドを作製し得る。あるいは、プローブは、光重合及びフォトリソグラフィーなどの技術を使用して表面上で合成され得る。核酸を支持基板に連結するための方法の詳細な議論は、例えば、米国特許第5837832号,6087112号,5215882号,5707807号,5807522号,5958342号,5994076号,6004755号,6048695号,6060240号,6090556号,及び6040138号において見られ得る。
【0141】
III.定義
本開示による組成物及び方法の詳細な説明を理解するのを助けるために、本開示の様々な態様の明確な開示を容易にするために、いくつかの明確な定義が提供される。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0142】
本明細書で使用される「対立遺伝子」という用語は、染色体上の所与の遺伝子座を占める遺伝子の1つ又は複数の代替形態を指す。
【0143】
本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、天然(例えば、ゲノム)の、又は合成の遺伝子を指し、転写及び/又は翻訳調節配列及び/又はコード領域及び/又は非翻訳配列(例えば、イントロン、5’-非翻訳配列及び3’-非翻訳配列)を含む。遺伝子のコード領域は、アミノ酸配列又は機能的RNA(tRNA、rRNA、触媒RNA、siRNA、miRNA、又はアンチセンスRNAなど)をコードするヌクレオチド配列であり得る。遺伝子はまた、それに連結された5’-非翻訳配列又は3’-非翻訳配列を含んでいてもよいコード領域(例えば、エキソン及びmiRNA)に対応するmRNA又はcDNAであり得る。遺伝子はまた、コード領域の全部又は一部、及び/又はそれに連結された5’-非翻訳配列又は3’-非翻訳配列を含む、インビトロで生成された、増幅された核酸分子であり得る。用語は、タンパク質をコードする能力を失った、又は細胞内で発現しなくなった既知の遺伝子の機能不全の近縁種である偽遺伝子をも含む。
【0144】
本明細書で使用される「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」は、共に共有結合された少なくとも2つのヌクレオチドを指す。一本鎖の描写は、相補鎖の配列をも定義する。従って、核酸は、描写された一本鎖の相補鎖をも包含する。核酸の多くの変異体は、所与の核酸と同じ目的で使用され得る。従って、核酸は、実質的に同一の核酸及びその相補体をも包含する。一本鎖は、厳しいハイブリダイゼーション条件下で標的配列にハイブリダイズし得るプローブを提供する。従って、核酸は、厳しいハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするプローブをも包含する。
【0145】
核酸は、一本鎖若しくは二本鎖であり得るか、又は二本鎖及び一本鎖配列の両方の部分を含み得る。核酸は、ゲノムDNA及びcDNAの両方のDNA、RNA、又はハイブリッドであり得て、ここで、核酸は、デオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの組み合わせ、並びにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、及びイソグアニンなどの塩基の組み合わせを含み得る。核酸は、化学合成法又は組換え法によって入手され得る。
【0146】
「ポリペプチド」は、その従来の意味で、すなわち、アミノ酸の配列として使用される。ポリペプチドは、製品の特定の長さに限定されない。ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質は、ポリペプチドの定義に含まれ、そのような用語は、特に明記しない限り、本明細書では交換可能に使用され得る。この用語は、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、並びに天然に存在するもの及び天然に存在しないものの両方の当技術分野で知られている他の修飾をも含む。ポリペプチドは、タンパク質全体又はその部分配列であり得る。
【0147】
「プライマー」という用語は、その3’末端で相補的核酸分子にハイブリダイズし得て、核酸ポリメラーゼによって伸長し得る遊離の3’ヒドロキシ末端を提供するいずれかの核酸を指す。本明細書で使用される場合、増幅プライマーは、遺伝子の5’又は3’領域(それぞれプラス鎖及びマイナス鎖、又はその逆)にアニーリングし得て、その間に短い領域を含み得る一対の核酸分子である。適切な条件下で適切な試薬を使用すると、そのようなプライマーは、プライマーに隣接するヌクレオチド配列を有する核酸分子の増幅を可能にする。in situ法の場合、細胞又は組織サンプルを調製し、スライドガラスなどの支持体に固定化してから、RNAにハイブリダイズし得るプローブと接触させ得る。発現したRNAサンプルに対応する核酸を増幅するための代替の方法には、例えば、米国特許第7,897,750号に記載されているものが含まれる。
【0148】
本明細書で使用される「プローブ」という用語は、1つ又は複数のタイプの化学結合を
介して、通常は相補的な塩基対を介して、通常は水素結合の形成を介して、相補的配列の標的核酸に結合し得るオリゴヌクレオチドを指す。プローブは、ハイブリダイゼーション条件の厳密さに応じて、プローブ配列との完全な相補性を欠く標的配列に結合し得る。標的配列と本明細書に記載の一本鎖核酸との間のハイブリダイゼーションを妨害するいずれかの数の塩基対ミスマッチが存在し得る。しかしながら、突然変異の数が非常に多く、最も厳密でないハイブリダイゼーション条件下でもハイブリダイゼーションが起こらない場合、その配列は相補的な標的配列ではない。プローブは、一本鎖又は部分的に一本鎖及び部分的に二本鎖であり得る。プローブの鎖は、標的配列の構造、組成、及び特性によって決定される。プローブはまた、直接標識するか、又はストレプトアビジン複合体が後で結合し得るビオチンなどで間接的に標識し得る。
【0149】
本明細書で核酸を指すために使用される「相補体」又は「相補的」は、核酸分子のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体間のワトソンクリック(例えば、A-T/U及びC-G)又はフーグスティーン塩基対を意味し得る。完全な相補体又は完全に相補的は、核酸分子のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体間の100%相補的な塩基対形成を意味し得る。
【0150】
本明細書で使用される「厳しいハイブリダイゼーション条件」は、核酸の複雑な混合物などにおいて、第1の核酸配列(例えば、プローブ)が第2の核酸配列(例えば、標的)にハイブリダイズする条件を指す。厳しい条件は、配列に依存し、異なる状況下で異なり、当業者によって適切に選択され得る。厳しい条件は、定義されたイオン強度pHでの特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5~10℃低くなるように選択され得る。Tmは、標的に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度(定義されたイオン強度、pH、及び核酸濃度の下で)であり得る(標的配列が過剰に存在するため、Tmでは、プローブの50%が平衡状態で占有される)。厳しい条件は、塩濃度が約1.0Mナトリウムイオン未満である条件、例えば、pH7.0~8.3での約0.01~1.0Mナトリウムイオン濃度(又は他の塩)であり得て、温度は、短いプローブ(例えば、約10~50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃であり、長いプローブ(例えば、約50を超えるヌクレオチド)については少なくとも約60℃である。ホルムアミドなどの不安定化剤を添加することでも、厳しい条件を達成し得る。選択的又は特異的ハイブリダイゼーションの場合、陽性シグナルは、バックグラウンドハイブリダイゼーションの少なくとも2~10倍であり得る。例示的な厳しいハイブリダイゼーション条件には、以下が含まれる:42℃でインキュベートする50%ホルムアミド、5xSSC及び1%SDS、又は、0.2xSSC及び65℃において0.1%SDSでの洗浄を伴う65℃でインキュベートする5xSSC、1%SDS。しかしながら、塩濃度などの温度以外のいくつかの要因がハイブリダイゼーションの厳密さに影響を与え得て、当業者は、同様の厳密さを達成するために要因を適切に選択し得る。
【0151】
「ハイブリダイゼーション」とは、本質的に相補的なヌクレオチド配列(核酸のポリマー)のワトソン-クリック塩基対形成を意味し、二本鎖分子を形成する。
【0152】
本明細書で使用されて、核酸(例えば、プローブ)及び固体支持体に関する「連結」又は「固定化」は、プローブと固体支持体との間の結合が、結合、洗浄、分析、及び除去の条件下で安定するのに十分であることを意味し得る。結合は共有結合又は非共有結合であり得る。共有結合は、プローブと固体支持体との間に直接形成され得るか、又は架橋剤によって、又は固体支持体若しくはプローブ又は両方の分子のいずれかに特定の反応性基を含むことによって形成され得る。非共有結合は、静電相互作用、親水性相互作用、及び疎水性相互作用のうちの1つ又は複数であり得る。非共有結合としては、ストレプトアビジンなどの分子の支持体への共有結合、及びビオチン化プローブのストレプトアビジンへの非共有結合が挙げられる。固定化は、共有結合及び非共有結合の相互作用の組み合わせも
含み得る。
【0153】
「決定する」、「測定する」、「評価する」、及び「アッセイする」という用語は交換可能に使用され、定量的及び定性的測定の両方を含み、特性、特質、又は特徴が存在するかどうかを決定することを含む。評価は相対的又は絶対的であり得る。標的の「存在の評価」は、存在する標的の量の決定、及び標的の存在又は不在の決定が含む。
【0154】
「治療する」又は「治療」という用語は、障害、障害の症状、障害に続発する病状、又は障害の素因を治癒、軽減、緩和、治療、遅延、予防又は改善する目的で、障害を有するか、又は障害を発症するリスクがある対象への化合物又は剤の投与を指す。
【0155】
本明細書で使用される場合、「インビトロ」という用語は、多細胞生物内ではなく、人工環境、例えば、試験管又は反応容器、細胞培養などで発生する事象を指す。
【0156】
本明細書で使用される場合、「インビボ」という用語は、非ヒト動物などの多細胞生物内で発生する事象を指す。
【0157】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形の参照を含むことに留意されたい。
【0158】
「挙げられる」、「含む」、「含有する」、又は「有する」という用語及びそれらの変形は、特に断りのない限り、その後に記載される項目及びその同等物、並びに追加の対象を包含することを意味する。
【0159】
「一実施形態では」、「様々な実施形態では」、「いくつかの実施形態では」などの句は、繰り返し使用される。そのような句は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らないが、文脈が別の方法で指示しない限り、それらは可能である。
【0160】
「及び/又は」又は「/」という用語は、項目のいずれか1つ、項目のいずれかの組み合わせ、又はこの用語が関連するすべての項目を意味する。
【0161】
「実質的に」という言葉は、「完全に」を除外するものではない。例えば、Yから「実質的に含まれない」組成物は、Yから完全に含まれない場合がある。必要に応じて、「実質的に」という言葉は、本発明の定義から省略され得る。
【0162】
本明細書で使用される場合、「およそ」又は「約」という用語は、関心のある1つ又は複数の値に適用される場合、記載された参照値と同様の値を指す。いくつかの実施形態では、「およそ」又は「約」という用語は、特に明記しない限り、又は文脈から明らかでない限り、記載された参照値のいずれかの方向(より大きい又はより小さい)で25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5% 、4%、3%、2%、1%、又はそれより下に収まる値の範囲を指す(そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。本明細書で別段の指示がない限り、「約」という用語は、個々の成分、組成物、又は実施形態の機能に関して同等である記載された範囲に近接する値、例えば、重量パーセントを含むことを意図する。
【0163】
本明細書に開示されるように、いくつかの範囲の値が提供される。文脈が明確に別段の指示をしない限り、下限の単位の10分の1までの各介在値もまた、その範囲の上限と下限との間で具体的に開示されることが理解される。記載された値又は記載された範囲内の
介在値と、その記載された範囲内の他の記載された値又は介在する値との間の各より小さい範囲は、本発明に含まれる。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、個別に範囲に含めるか、又は除外され得て、いずれか、どちらでもない、又は両方の制限がより小さな範囲に含まれる各範囲もまた、記載された範囲で特に除外された制限を条件として、本発明に含まれる。記載された範囲が一方又は両方の制限を含む場合、それらの含まれる制限のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0164】
本明細書で使用される場合、「それぞれ」という用語は、項目の収集物に関して使用される場合、収集物内の個々の項目を識別することを意図しているが、必ずしも収集物内の全ての項目を指すわけではない。明示的な開示又は文脈が明らかにそうでないことを指示する場合、例外が発生し得る。
【0165】
本明細書で提供されるありとあらゆる例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく照らすことを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲を制限するものではない。明細書のいかなる文言も、請求されていない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0166】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、いずれかの適切な順序で実行される。提供される方法のいずれかに関して、方法の工程は、同時に又は連続して発生し得る。方法の工程が連続して発生する場合、特に明記されていない限り、工程はいずれかの順序で発生し得る。方法が工程の組み合わせを含む場合、本明細書に別段の記載がない限り、工程のありとあらゆる組み合わせ又はサブコンビネーションは、本開示の範囲内に含まれる。
【0167】
本明細書で引用される各刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、本開示と矛盾しない範囲で、その全体が参照により援用される。本明細書に開示された刊行物は、本発明の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供されている。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明のためにそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される発行日は実際の発行日と異なり得て、個別に確認することを必要とし得る。
【0168】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示のみを目的としていること、及びその観点からの様々な修正又は変更は、当業者に提案され、本出願の思想及び範囲並びに添付の特許請求の範囲に含まれるべきであることが理解される。
【0169】
IV.実施例
実施例1:TCGA-SKCMコホートにおけるヒト黒色腫の生存に対するAPOE遺伝子型の影響
Genomic Data Commons APIを使用してTCGA-SKCMプロジェクトからゲノム座標chr19:44904748-44910394(GRCh38)用にスライスされる、アラインされた全エクソームシーケンスBAMファイルをダウンロードして(Network, T. C. G. A. (2015) Cell, 161(7), 1681-1696)、黒色腫患者のAPOE遺伝子型を評価した。APOE変異体は、samtools/bcftoolsパッケージ(Li, H. (2011) Bioinformatics, 27(21), 2987-2993)を使用して検出され、事前分布としてコミュニティのアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究で決定されたchr19:44908684(rs429358)及びchr19:44908822(rs7412)の対立遺伝子頻度を提供した(Blair, C. K.ら, (2005) Neurology, 64(2), 268-276)。次に、これら2つの遺伝子座の変異検出に、RのAPOE対立遺伝子の注釈を付
けた。470人の患者が正常な組織サンプル(正常な血液、正常な固形組織、又は正常な口腔細胞)を利用可能であった。E2;E4遺伝子型を示した患者(n=5)は、遺伝子型頻度評価以外の分析から除外された。参加者が年齢及び民族性に関して同等であったことを考えると、ARIC研究で白人患者について評価されたように、正常集団におけるAPOE遺伝子型の存在量が報告されている(Blair, C. K.ら, (2005)Neurology, 64(2), 268-276)。遺伝子型分布の違いを試験するために、χ2検定が採用された。
【0170】
近年キュレートされたように、生存時間及び臨床反応を含む臨床データが使用された(Liu, J.ら, (2018) Cell, 173(2), 400-416)。Rパッケージ「TCGAbiolinks」を使用して、ブレスロー深度及びClarkレベルの臨床データを追加した(Colaprico, A.ら, (2016) Nucleic Acids Res, 44(8), e71)。APOE遺伝子型が生存に与える影響を評価するために、カプランマイヤー生存分析を実行し、「survival」及び「survminer」パッケージを使用した傾向のログランク検定で統計的有意性を試験した(Therneau, T. M. (2015). A Package for Survival Analysis in S。https://CRAN.R-project.org/package=survivalから取得);(Alboukadel, K.ら, (2018) survminer: Drawing Survival Curves using ‘ggplot2’。https://CRAN.R-project.org/package=survminerから取得)。全ての分析は、R v3.5(The R Foundation for Statistics Computing)及びRStudiov1.1.3を使用して実行された。
【0171】
実施例2:動物実験
全ての動物実験は、ロックフェラー大学の施設内動物管理使用委員会によって承認されたプロトコルに従って実施された。ヒトAPOE2(系統#1547)、APOE3(#1548)及びAPOE4(#1549)を標的とした置換(ノックイン)マウスは、TACONICBIOSCIENCESから入手された。Tyrr.CreER;BrafV600E/+;Ptenlox/loxマウス(Dankort, D.ら, Nature genetics 41, 544-552 (2009)は、ジャクソン研究所(#013590)から入手された。
【0172】
実施例3:腫瘍成長研究
同系黒色腫の増殖に対するAPOE遺伝子型の影響を評価するために、100,000個(YUMM1.7)の細胞を、7~10週齢のAPOE標的置換雄マウスの脇腹に皮下注射した。すべての注入において、細胞を、成長因子を減らしたマトリゲル(356231、CORNING)と1:1で混合し、総量100μLで注入した。腫瘍サイズについては、デジタルノギスを使用して指定された日に測定し、腫瘍体積を(小径)2×(大径)×Π/6として計算した。転移の進行を評価するために、100,000個のB16F10-TR-shApoE細胞をヒトApoEノックインマウスの尾静脈に静脈内注射し、生物発光を週に2回測定した。
【0173】
実施例4:黒色腫進行の遺伝的に開始されたモデル
ヒトAPOE標的置換(ノックイン)マウスをTyrr.CreER;BrafV600E/+;Ptenlox/loxマウスと交配させた。黒色腫を誘発するために、6~7週齢の雌マウスに1mgのタモキシフェン(T5648、Sigma-Aldrich)を3日間連続して腹腔内注射した。タモキシフェン溶液については、タモキシフェン粉末を100%エタノールに50℃で5分間溶解し、続いてピーナッツオイルで10倍に希
釈して、10mg/mLの作業溶液を生成することによって調製した。黒色腫の負荷を評価するために、耳から股関節まで伸びる背部皮膚サンプルを誘導後35日目に採取し、市販の脱毛クリーム(Nair)で脱毛し、水で洗浄し、4%PFAで固定した。次に、皮膚をスキャンし、Cellprofiler v3(McQuin, C.ら CellProfiler 3.0: Next-generation image processing for biology. PLoS Blot 16, e2005970 (2018))を使用して色素性黒色腫病変領域の割合を定量化した。
【0174】
実施例5:細胞株
マウスB16F10黒色腫細胞は、American Tissue Type Collectionから入手し、供給元の条件に従って培養した。ルシフェラーゼを発現するためにレトロウイルスコンストラクトで形質導入されたB16F10細胞(Therneau, T. M. (2015)。A Package for Survival
Analysis in S。https://CRAN.R-project.org/package=survivalから取得)及びApoeを標的とするshRNA(shRNAクローンTRCN0000011799)は以前に記載された(Pencheva, N.ら, (2014) Cell, 156(5), 986-1001)。BrafV600E/+;Pten-/-マウス;Cdkn2amouse黒色腫に由来するYUMM1.7細胞は、MarcusBosenbergによって最初に十分に提供された(Meeth, K.ら, Pigment Cell Melanoma Res 29, 590-597 (2016))。B16F10細胞は、10%FBS(F4135、SIGMA)、ペニシリン-ストレプトマイシン(15140、GIBCO)、及びアンホテリシンB(17-936E、LONZA)を添加したピルビン酸及びグルタミン(11995、GIBCO)を有するDMEM培地で培養した。YUMM1.7細胞は、10%FBS、ペニシリン-ストレプトマイシン、アンホテリシンB、及び1%非必須アミノ酸(111400、GIBCO)を添加したL-グルタミン及び15mM HEPES(11330、Gibco)を有するDMEM/F-12培地で培養された。マイコプラズマによる汚染は、標準的なプロトコルに従ったPCRテストによって除かれた(Young, L.ら, Nature Protocols 5, 929-934 (2010))。
【0175】
実施例6:マウスのジェノタイピング
Tyrr.CreER;BrafV600E/+;Pten-/-マウスのジェノタイピングは、マウス及びヒトのAPOEに対して独立した反応を伴う標準的なPCRを使用して、マウスとヒトとのAPOEを区別するために実行された(PCR産物の長さはそれぞれ200bpと約600bp)。ヒトAPOE対立遺伝子を区別するために、PCR制限断片長多型ジェノタイピング(Hixson, J. E. 及びVernier, D. T. Journal of lipid research 31, 545-548 (1990))を使用した。簡潔に説明すると、APOEの244bpフラグメントを標準PCRを使用して増幅し、Hhal(R0139S, New England Biolabs)で消化し、対立遺伝子特異的産物を15%ポリアクリルアミドゲルで分離した。以下のプライマーは、示されたPCR反応に使用された:
Tyr::CreER; BrafV600E/+; Ptenlox/loxマウス
Cre導入遺伝子フォワード:5’-GCG GTC TGG CAG TAA AAA CTA TC-3’(配列番号4)
Cre導入遺伝子リバース:5’-GTG AAA CAG CAT TGC TGT
CAC TT-3’(配列番号5)
Cre内部コントロールフォワード:5’-CAC GTG GGC TCC AGC
ATT-3’(配列番号6)
Cre内部コントロールリバース:5’-TCA CCA GTC ATT TCT
GCC TTT G-3’(配列番号7)
Brafフォワード:5’-TGA GTA TTT TTG TGG CAA CTG C-3’(配列番号8)
Brafリバース:5’-CTC TGC TGG GAA AGC GGC-3’(配列番号9)
Ptenフォワード:5’-CAA GCA CTC TGC GAA CTG AG
-3’(配列番号10)
Ptenリバース:5’-AAG TTT TTG AAG GCA AGA TGC-3’(配列番号11)
マウス対ヒトノックインAPOEマウス
共通フォワード:5-TAC CGG CTC AAC TAG GAA CCA T-3’(配列番号12)
マウスApoeリバース:5’-TTT AAT CGT CCT CCA TCC CTG C-3’(配列番号13)
ヒトAPOEリバース:5’-GTT CCA TCT CAG TCC CAG TCTC-3’(配列番号14)
ヒトAPOE対立遺伝子制限長多型
ヒトAPOEフォワード:5’-ACA GAA TTC GCC CCG GCC TGG TAC AC-3’(配列番号15)
ヒトAPOEリバース:5’-TAA GCT TGG CAC GGC TGT CCA AGG A-3’(配列番号16)
実施例7:腫瘍増殖の研究及び治療
同系黒色腫の増殖に対するAPOE遺伝子型の影響を評価するために、1×105個のYUMM1.7細胞を、6~10週齢の性別を一致させたヒトAPOE標的置換マウスの脇腹に皮下注射した。細胞は総量100μLで注入され、YUMM1.7細胞は注入前に成長因子が減少したマトリゲル(356231、Corning)と1:1で混合させた。腫瘍サイズは、デジタルノギスを使用して示された日に測定され、腫瘍体積は、(小径)2×(大径)×Π/6として計算された。YUMMER1.7細胞を使用した実験では、PBSに再懸濁した5×105個の細胞を脇腹に皮下注射した。LXRアゴニスト治療では、注射後3日目から、合成LXRアゴニストRGX-104(Rgenix(Tavazoie, M.ら, (2018) Cell, 172(4), 825-840))を628.5mg/kg固形飼料(Research Diets、およその目標用量100mg/kg体重)を添加した固形飼料をマウスに投与した。抗PD1治療では、腫瘍細胞注射後6日目及び9日目に、マウスにそれぞれ250μg及び125μgの抗PD-1抗体(BioXCell、クローンRMP1-14)を腹腔内注射した。対照マウスは同じ日にPBS注射を受けた。YUMMER1.7モデルでの生存分析では、腫瘍体積が1000mm3を超えたときにマウスを安楽死させた。腫瘍体積が16mm3(検出下限)を下回った場合、治療反応は完全(CR、完全奏功)と見なされた。
【0176】
実施例8:TCGAコホートにおけるAPOE遺伝子型の分析
Cancer Genome Atlas(TCGA)は、Genomic Data
Commons APIを使用してゲノム座標chr19:44904748-44910394(GRCh38)用にスライスされる、アラインされた全エクソームシーケンスBAMファイルをダウンロードして(Network, T. C. G. A. (2015) Cell, 161(7), 1681-1696)、がん患者のAPOE遺伝子型を評価した。APOE変異体は、samtools/bcftoolsパッケージ(Li, H. (2011) Bioinformatics, 27(21), 2987-2993)を使用して、コミュニティにおけるアテローム性動脈硬化症リスク(ARIC)研究(Blair, C. K.ら、 (2005) Neurology, 64(2), 268-276)で決定された通りに、chr19:4490868
4(rs429358)及びchr19:44908822(rs7412)の対立遺伝子頻度を提供し、事前分布として検出された。APOE2;APOE4遺伝子型を示した患者(n=5)は、遺伝子型頻度評価を除いて分析から除外された。
【0177】
最近キュレートされたように、生存時間と臨床反応を含む臨床データが使用された(Liu, J.ら, (2018) Cell, 173(2), 400-416.)。Rパッケージ「TCGAbiolinks」を使用して、ブレスロー深度及びClarkレベルの臨床データを追加した(Colaprico,A.ら、(2016)Nucleic Acids Res,44(8),e71)。APOE遺伝子型が生存に与える影響を評価するために、カプランマイヤー生存分析を実行し、「survival」及び「survminer」パッケージを使用したログランク検定で統計的有意性を評価した(Therneau, T. M. (2015) A Package for Survival Analysis in S。https://CRAN.R-project.org/package=survivalから取得);(Alboukadel, K.ら, (2018)survminer: Drawing Survival
Curves using ‘ggplot2’。https://CRAN.R-project.org/package=survminerから取得)。ハザード比については、「survival」Rパッケージを使用したCox比例ハザード回帰モデルに従って計算した(Therneau, T. M. (2015) A Package for Survival Analysis in S。https://CRAN.R-project.org/package=survivalから取得)。視覚化の目的で、生存データは12年で切り捨てられた。全ての分析は、R v3.5(The R Foundation for Statistics Computing)及びRStudiov1.1.3を使用して実行された。
【0178】
実施例9:抗PD1黒色腫研究におけるAPOE遺伝子型の分析
Rohら(Roh, W.ら, (2017) Sci Transl Med, 9(379).)、及びRiazら(Riaz, N.ら、(2017) Cell, 171(4), 934-949)のコホートの分析は、TCGA-SKCMコホートについて記載したように実行された。簡潔に言えば、正常組織の全エクソームシーケンスデータはdbGaP(BioProject ID PRJNA369259及びPRJNA359359)からダウンロードされ、APOE遺伝子型は上記のように検出された。Rohらのコホートにおいて、1人の患者の遺伝子型は決定され得なかった。Rohらのコホートでは、抗CTLA4治療及び抗PD1治療の両方を受けた患者のみが考慮された。Riazらのコホートでは、患者は以前のCTLA4治療状態によって層別化された。カプランマイヤー生存分析は、上記のように「survival」及び「survminer」パッケージを使用して実行された。
【0179】
実施例10:APOE遺伝子型は、免疫療法との関連でがんの生存を調節する
APOE遺伝子型が免疫療法の文脈で黒色腫の進行に影響を与え得るかどうかを評価するため、免疫原性YUMMER1.7黒色腫モデルの進行に対するAPOE遺伝子型の影響を分析したが、これは抗PD1チェックポイント療法の影響を受けやすい(Wang,
J.ら, (2017) Pigment Cell & Melanoma
Research, 30(4), 428-435)。APOE4マウスは、抗PD1治療時にAPOE2マウスよりも有意に長く生存し、APOE遺伝子型が免疫療法の状況においても黒色腫の転帰を調節することを示唆していた(
図4a~b)。この効果がヒトでも観察できるかどうかを評価するため、抗CTLA4チェックポイント阻害を進めた後に抗PD1チェックポイント阻害療法を受けた黒色腫患者を分析した(Roh, W.ら, (2017) Sci Transl Med, 9(379))。実際、APOE遺伝子型は、このコホートの生存率と有意に関連していた(p=0.017、ログラン
ク検定)。上記の初期段階の患者の生存に関する観察結果と一致して、APOE4及びAPOE2キャリアは、抗PD1療法でそれぞれ最長及び最短の生存を示した(
図4c)。これらの所見は、CTLA4遮断の進行時に抗PD1療法を受けている患者の独立したコホートで検証された(Riaz, N.ら,(2017) Cell, 171(4),
934-949)。Roh,W.らによって研究されたコホートと一致して、Riazらによるこの研究でAPOE4及びAPOE2キャリアもまた、それぞれ最長及び最短の生存結果を示した(
図4d)。従って、これらのコホートの両方で、APOE遺伝子型は以前の免疫療法で進行した患者の生存に関連していた。
【0180】
APOEの薬理学的活性化は、黒色腫の進行に対するAPOE変異体の異なる影響を増大させ得る。肝臓X受容体(LXR)は、APOEをなどの、コレステロール及び脂質代謝に関与する多くの遺伝子を転写的に活性化する核内ホルモン受容体である(Evans, R. M.ら, (2014) Cell, 157(1), 255-266; Hong, C.ら, (2014) Nat Rev Drug Discov, 13(6), 433-444)。LXRアゴニズムは、抗腫瘍免疫を増強することが示されており、この効果は、主にAPOEによって媒介されることが示されている(Tavazoie, M.ら, (2018) Cell, 172(4), 825-840.e18; Pencheva, N.ら,(2014) Cell, 156(5),986-1001)。実際に、LXRアゴニズムの有効性はAPOE2マウスでは完全に無効となったが、APOE4マウスは治療の強力な抗腫瘍効果の恩恵を受けて、APOE2マウスとAPOE4マウスとの間の腫瘍進行の違いを増大させた(
図4e~f)。従って、異なるAPOE遺伝子型は、LXRアゴニスト療法に対する異なる反応性を誘発し、がん治療におけるLXRアゴニズムの使用を調査する現在の臨床努力の潜在的なバイオマーカーとして役立ち得る(Tavazoie, M.ら, (2018) Cell, 172(4), 825-840)。
【0181】
実施例11:APOE遺伝子型は甲状腺癌及び乳癌の転帰を調節する
甲状腺癌及び乳癌患者の転帰に対するAPOE遺伝子型の影響を評価するために、がんゲノムアトラス(TCGA)コホートのステージII/III疾患の患者からの正常組織全エクソームシーケンスデータを分析した。両方のコホートにおいて、APOE遺伝子型は生存率と有意に関連しており(
図5a~b)、APOE2遺伝子型を保有する患者は最短の生存率を示した。
【0182】
実施例12:乳癌の生存に対するAPOE遺伝子型の影響は腫瘍免疫細胞浸潤と相互作用する
TCGA乳癌コホート全体の分析により、APOE2又はAPOE4対立遺伝子を保有する患者は、APOE3ホモ接合体よりも生存期間が短いことが明らかとなった(
図6a~c)。黒色腫のコホートと甲状腺癌のコホートとのこの違いの観点から見ると、乳癌の生存に対するAPOEの影響は、がんの転帰を決定する他の要因によって調整され得る。腫瘍免疫に対するAPOEの影響を考慮して、(腫瘍トランスクリプトーム解析(Thorsson, V.ら,(2018) Immunity, 48(4), 812-830. e14.)及びAPOE遺伝子型によって評価されるような免疫細胞浸潤の程度の相互作用を試験した。免疫浸潤はAPOE遺伝子型と相互作用し、それにより、白血球浸潤が低い患者と高い患者との両方のグループで、APOE遺伝子型と全生存との有意な関連があったが、APOE2及びAPOE4キャリアの生存は、2つのグループ間で逆転した。従って、APOE遺伝子型が乳癌の生存に及ぼす影響は、腫瘍の免疫細胞浸潤と相互作用すると結論付けられた。
【0183】
実施例13:統計分析
特に明記されていない限り、全てのデータは平均±平均の標準誤差として表され、図の
凡例に示されているように、正規分布データのt検定又は非正規分布データのマンホイットニー検定を使用してグループが比較された。有意差はp<0.05で結論付けられた。生存時間を比較するために、ログランク検定が採用された。全ての図全体を通して:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び*”*”p<0.0001。
【0184】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明及び実施例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、例示としてのみ与えられていることを理解されたい。さらに、本発明の思想及び範囲内の変更及び修正は、この詳細な説明から当業者に明らかになることが企図されている。
【0185】
実施例14
RGX-104は、単剤療法として、又はドセタキセル、ニボルマブ、又はイピリムマブのいずれかと組み合わせて、固形癌の患者に投与された。51人の患者が腫瘍反応のX線写真による評価とApoE遺伝子型との両方について評価可能であった。以下は、各遺伝子型の患者数及び治療に対する臨床反応(部分反応)の数を示す表である。
【0186】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
19番染色体上のApoE遺伝子において、rs7412若しくはrs429358の多型からの少なくとも1つのε4対立遺伝子、又はrs7412及びrs429358の多型からのε3対立遺伝子を有する対象の、がんを治療する方法であって、有効量のLXRβアゴニスト又はその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含む方法。
【外国語明細書】