(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105523
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】単離腎細胞を含有するオルガノイド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240730BHJP
A61K 35/22 20150101ALI20240730BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240730BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240730BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240730BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240730BHJP
A61K 35/51 20150101ALI20240730BHJP
A61K 38/22 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K35/22
A61P13/12
A61P7/06
A61P29/00
A61K9/10
A61K35/51
A61K38/22
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024078330
(22)【出願日】2024-05-14
(62)【分割の表示】P 2022030862の分割
【原出願日】2014-05-08
(31)【優先権主張番号】61/855,146
(32)【優先日】2013-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/855,152
(32)【優先日】2013-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516108269
【氏名又は名称】プロキドニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バス, ジョイディープ
(72)【発明者】
【氏名】ブルース, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ケリー, ラスティ
(72)【発明者】
【氏名】ガスリー, ケリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】選択された生物活性のある初代腎細胞及び、生物活性のある細胞群の混合物、ならびにその必要のある対象を治療する方法を提供する。
【解決手段】選択された生物活性のある初代腎細胞及び生物活性のある細胞群(たとえば、HUVEC細胞等の内皮細胞群)の混合物を含有するオルガノイドが開示され、及び、当該オルガノイドを用いて、その必要のある対象を治療する方法が開示される。さらに、当該単離腎細胞(尿細管及びエリスロポエチン(EPO)産生腎細胞群を含有しても良い)、及び/または、当該内皮細胞群は、自己、同種、同系、もしくは異種を起源とする、またはそれらの組み合わせのものであっても良い。さらに、当該オルガノイドを用いて、必要のある対象を治療する方法が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種腎細胞群及び生物活性のある細胞群を含有するオルガノイドの形成方法であって、前記異種腎細胞群及び生物活性のある細胞群を、i)2D培養;ii)3D培養:COL(I)ゲル;iii)3D培養:マトリゲル;iv)3D培養:スピナー、次いで、COL(I)/マトリゲル;及び、v)3D培養:COL(IV)ゲル、からなる群から選択される培養システム中で培養すること、を含む前記方法。
【請求項2】
前記異種腎細胞群が、生物活性のある腎細胞群を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異種腎細胞群が、尿細管細胞の富化群を含有するB2細胞群を含有し、及び、ここで、前記異種腎細胞群が、B1細胞群を枯渇している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記異種腎細胞群はさらに、B5細胞群を枯渇している、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記異種腎細胞群が、B2、B2/B3、B2/B4、及び、B2/B3/B4から選択される細胞群を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記異種腎細胞群は、エリスロポエチン(EPO)産生細胞を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生物活性のある細胞群は、内皮細胞群である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記内皮細胞群は、細胞株である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記内皮細胞群は、HUVEC細胞を含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞群は、異種、同系、同種、自己、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記異種腎細胞群及び前記生物活性のある細胞群は、第一の期間の間は別々に培養され、第二の期間の間に、混合され、及び培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第二の期間は、少なくとも24時間である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第二の期間は、24時間~72時間である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記腎細胞群及び生物活性のある細胞群は、1:1の比率である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記腎細胞群及び生物活性のある細胞群は、増殖培地中に懸濁される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法に従い作製されたオルガノイド。
【請求項17】
異種腎細胞群及び生物活性のある細胞群を含有するオルガノイド。
【請求項18】
前記生物活性のある細胞群は、内皮細胞群である、請求項17に記載のオルガノイド。
【請求項19】
前記異種腎細胞群は、尿細管細胞の富化群を含有するB2細胞群を含有し、ここで、前
記異種腎細胞群は、B1細胞群を枯渇している、請求項18に記載のオルガノイド。
【請求項20】
前記異種腎細胞群はさらに、B5細胞群を枯渇している、請求項19に記載のオルガノイド。
【請求項21】
前記異種腎細胞群は、B2/B3、B2/B4、及び、B2/B3/B4から選択される細胞群を含有する、請求項17に記載のオルガノイド。
【請求項22】
前記異種腎細胞群は、エリスロポエチン(EPO)産生細胞を含有する、請求項17に記載のオルガノイド。
【請求項23】
前記内皮細胞群は、細胞株である、請求項18に記載のオルガノイド。
【請求項24】
前記内皮細胞群は、HUVEC細胞を含有する、請求項18に記載のオルガノイド。
【請求項25】
少なくとも1つのオルガノイド、及び、液体培地を含有する注射可能な製剤。
【請求項26】
前記液体培地が、細胞増殖培地、DPBS、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
前記液体培地が、DPBSである、請求項26に記載の製剤。
【請求項28】
前記オルガノイドが、前記液体培地中に懸濁されている、請求項25に記載の製剤。
【請求項29】
オルガノイド、及び、
(i)約8℃以下で実質的に固形状態、及び、
(ii)およそ気温以上で実質的に液体状態、
を維持する温度感受性細胞安定化バイオマテリアルを含有する注射可能な製剤。
【請求項30】
前記オルガノイドは、生物活性のある腎細胞を含有する、請求項29に記載の製剤。
【請求項31】
前記オルガノイドはさらにHUVECを含有する、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
前記生物活性のある細胞は、実質的に、細胞安定化バイオマテリアルの体積全体に均一に分散されている、請求項29に記載の製剤。
【請求項33】
前記バイオマテリアルは、約8℃~約気温以上では、固形-液体の遷移状態を有する、請求項29に記載の製剤。
【請求項34】
前記実質的に固形状態とは、ゲル状態である、請求項29に記載の製剤。
【請求項35】
前記細胞安定化バイオマテリアルは、ハイドロゲルを含有する、請求項29に記載の製剤。
【請求項36】
前記ハイドロゲルは、ゼラチンを含有する、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
前記ゼラチンは、約0.5%~約1%(w/v)で、製剤中に存在する、請求項36に記載の製剤。
【請求項38】
前記ゼラチンは、約0.75%(w/v)で、製剤中に存在する、請求項36に記載の
製剤。
【請求項39】
異種腎細胞群及び生物活性のある細胞群を含有するオルガノイドを少なくとも1つ投与することを含む、必要のある対象における腎疾患の治療方法。
【請求項40】
前記生物活性のある細胞群は、内皮細胞群である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記異種腎細胞群は、尿細管細胞の富化群を含有するB2細胞群を含有し、ここで、前記異種腎細胞群は、B1細胞群を枯渇している、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記異種腎細胞群はさらにB5細胞群を枯渇している、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記異種腎細胞群は、B2、B2/B3、B2/B4、及び、B2/B3/B4から選択される細胞群を含有する、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記異種腎細胞群は、エリスロポエチン(EPO)産生細胞を含有する、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記内皮細胞群は、細胞株である、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記内皮細胞群は、HUVEC細胞を含有する、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
請求項25~38のいずれか1項に記載の注射可能な製剤を投与することを含む、必要のある対象における腎疾患の治療方法。
【請求項48】
前記対象は、哺乳類である、請求項39~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記哺乳類は、ヒトである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記対象は、腎疾患を有している、請求項39~46のいずれか1項に記載の方法
【請求項51】
以下の基準のうちのいずれか1つにおける改善が認められる、請求項39~46のいずれか1項に記載の方法:
貧血(Hct、Hgb、RBC)、炎症(WBC)、尿濃縮(spGrav)及び高窒素血症(BUN)。
【請求項52】
腎疾患の前記治療のための医薬の製造における、オルガノイドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択された生物活性のある初代腎細胞及び、さらに生物活性のある細胞群の混合物、ならびに、その必要のある対象を治療する方法を目的とするものである。本発明はさらに、尿細管細胞及びエリスロポエチン(EPO)産生腎細胞群を含有する単離腎細胞を含有するオルガノイド、必要のある対象に当該オルガノイドを用いて治療を行う方法を目的とする。
【背景技術】
【0002】
米国において、1900万人を超える人々が慢性腎疾患(CKD)に罹患しており、それらは多くの場合、肥満、糖尿病及び高血圧を含む代謝性疾患の結果である。データを検証したところ、比率の増加は、高血圧及び非インスリン依存性糖尿病(NIDDM)に続発する腎不全の発症によるものであることが明らかとなり(United States
Renal Data System: Costs of CKD and ESRD.ed.Bethesda,MD,National Institutes of Health,National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases,2007 pp 223-238)、そしてこの2つの疾患はまた、世界中で上昇傾向にある。肥満、高血圧、及び不十分な血糖コントロールは全て、腎損傷の独立したリスク因子であり、糸球体病変及び尿細管病変を発生させ、蛋白尿、及び、他の検出可能な腎濾過機能の全身的な変化を生じさせることが示されている(Aboushwareb,et al.,World J Urol,26:295-300,2008;Amann,K.et al.,Nephrol Dial Transplant,13:1958-66,1998)。進行ステージ1~3のCKD患者は、根本的な疾患状態(複数含む)をコントロールすることを目的に、ライフスタイルを変化させ、薬理学的介入を行うことにより管理される一方で、ステージ4~5の患者は、透析及び薬物レジメン(通常、抗高血圧剤、赤血球生成刺激剤(ESA)、鉄及びビタミンDの補給を含む)により管理される。United
States Renal Data Service (USRDS)によると、平均的な末期腎不全(ESRD)患者は、注射用赤血球生成刺激剤(ESA)、ビタミンDサプリメント、及び鉄サプリメントのために、ひと月で600$超を費やしている(United States Renal Data System:Costs of CKD and ESRD.ed.Bethesda,MD,National Institutes of Health,National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases,2007 pp 223-238)。透析の年平均コスト(65,405$)と併せると、1人の患者の維持にかかるヘルスケアコストは、72,000$/年超となり(United States Renal Data System:Costs of CKD and ESRD.ed.Bethesda,MD,National Institutes of Health,National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases,2007 pp 223-238)、さらにこの数字は標準的な手段のコストのみを反映したものであり、他の合併症、緊急時の処置、または、たとえば、透析アクセスのための代用血管の設置等の補助的な処置は含まれていない。2005年におけるCDK及びESRDに対する複合的な医療コストは、トータルで620億ドルにもなり、その年にかかった全ての医療コストの19%を占める(United States Renal
Data System:Costs of CKD and ESRD.ed.Bethesda,MD,National Institutes of Health,National Institute of Diabetes and Diges
tive and Kidney Diseases,2007 pp 223-238)。腎臓移植は、透析を回避するための先制手段として、または、透析ではもう十分に疾患状態を管理できない場合のステージ4~5の患者に対する有効な選択肢ではあるが、全腎臓移植が有効な米国におけるステージ5のCKDの患者数(>400,000)は、常に、利用可能な適切なドナー腎臓の数(約16,000)を遥かに超えている(Powe,NR et al.,Am J Kidney Dis,53:S37-45,2009)。ゆえに、透析への依存を遅延させ、または依存度を低下させ、ドナー腎臓の不足による穴を埋めるための新たな治療パラダイムが必要とされている。
【0003】
進行性の腎疾患は、最初の病害(たとえば、高血圧)があり、次いで、その障害に対し十分に腎臓が応答できないことの組み合わせにより生じる。そのような応答としては、炎症促進性及び線維化促進性のサイトカイン及び成長因子の産生が挙げられる。それゆえ、CKDの進行を遅らせるための1つの戦略は、炎症及び線維化反応を改善すること、ならびに、腎組織の修復、及び/または、再生を介して腎臓の変性を軽減もしくは元に戻すことである。
【0004】
慢性腎不全は、ヒトならびに一部の家畜動物において広く存在している。腎不全の患者は、腎機能の喪失(尿毒症)だけではなく、骨髄が赤血球造成を介した十分な数の赤血球(RBC)を産生できなくなることによる、貧血も発症する。赤血球のホメオスタシスは、腎臓に存在する特殊化した間質性線維芽細胞によるエリスロポエチン(EPO)の産生と、標的とされた骨髄の赤芽球前駆細胞が、EPOに反応して多くのRBCを産生する能力の両方に依存している。腎不全による貧血は、腎臓におけるEPO産生の減少と、骨髄のEPOの作用に対する尿毒性因子の負の作用の両方によるものである。
【0005】
これまでの慢性腎不全の治療に対する臨床研究としては、透析、腎濾過及び尿素産生の回復のための腎移植、ならびに、赤血球集団を回復させるためのEPOアナログまたは組換えEPOの全身性送達が挙げられる。透析により、中~後期ステージの腎不全患者に対して生存利益がもたらされたが、生活の質に関する著しい課題も生じている。腎移植は、腎不全の後期ステージの患者に対する、非常に望ましい(そして、多くの場合は唯一の)選択肢であるが、高品質のドナー腎臓の供給は、腎不全の患者に必要とされる数にまったく追いついていない。貧血を治療するための組換えEPOを用いたボーラス投与は、現在、重篤な下流健康リスクと関連付けられており、FDAから当該薬剤に対し枠組み付き(ブラックボックス)の警告が出されており、この患者群に対して、赤血球ホメオスタシスを回復させるための別の治療法を調査する必要性が生じている。前臨床研究により、遺伝子治療法を用いて作製されたEPO産生細胞のin vivo有効性及び安全性が検証されている。これら研究により、EPO産生細胞をin vivo送達することにより、赤血球生成を一過性に刺激し、RBC数を増加させることが可能であることが示されている。しかしながら、現在のところ、これら方法のいずれも、赤血球ホメオスタシスの制御、または長期間のin vivo機能性をもたらすには至っていない。結果として、HCT及びRBCの数がしばしば正常値を超えて増加し、それにより、真性赤血球増加症及び他の合併症が生じている。治療関連性があり、組換えEPOの送達を超えるような利益をもたらすEPO産生細胞の送達によって、HCTのみを増加させ、そして赤血球のホメオスタシスもまた回復させなければならない。しかしそれらは本来、正と負の両方の制御メカニズムである。EPO欠損性貧血は腎不全患者に普遍的ではあるが、他の疾患状態(心不全、多臓器不全、及び他の慢性疾患を含む)の結果として発症する可能性もあることに注意しなくてはならない。
【0006】
再生医療技術により、慢性腎疾患(CKD)に対する次世代の治療選択が提示されることとなった。PresnellらのWO/2010/056328及びIlaganらのPCT/US2011/036347において、尿細管及びエリスロポエチン(EPO)
産生腎細胞群を含有する生物活性のある単離腎細胞が開示され、及び、同細胞を単離し、培養する方法、ならびに、必要のある対象を、当該細胞群を用いて治療する方法が開示されている。
【0007】
必要のある対象に対する、改善され、より標的化された再生医療治療選択が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本明細書において、オルガノイド、その製造方法、及び使用方法が開示される。
【0009】
本明細書に開示されるオルガノイドにより、スキャホールドを用いることなく、必要のある対象に対して治療利益がもたらされる。
【0010】
1つの態様において、異種腎細胞群及び生物活性のある細胞群を含有するオルガノイドを形成する方法が開示される。1つの実施形態において、当該方法は、異種腎細胞群及び生物活性のある細胞群を、i)2D培養;ii)3D培養:COL(I)ゲル;iii)3D培養:マトリゲル;iv)3D培養:スピナー(spinners)、次いで、COL(I)/マトリゲル;及び、v)3D培養:COL(IV)ゲル、からなる群から選択される培養システム中で培養することを含有する。一部の実施形態において、異種腎細胞群は、生物活性のある腎細胞群を含有する。ある実施形態において、異種腎細胞群は、富化尿細管細胞群を含有するB2細胞群を含有し、ここで、当該異種腎細胞群は、B1細胞群及び/またはB5細胞群またはその組み合わせを枯渇している。一部の実施形態において、異種腎細胞群は、B2、B2/B3、B2/B4、及び、B2/B3/B4から選択される細胞群を含有する。複数の実施形態において、異種腎細胞群は、エリスロポエチン(EPO)産生細胞を含有する。
【0011】
他の実施形態において、生物活性のある細胞群は、内皮細胞群である。ある実施形態において、内皮細胞群は、細部株である。一部の実施形態において、内皮細胞群は、ヒト臍帯由来である。一部の実施形態において、生物活性のある細胞群は、内皮前駆細胞を含有する。一部の実施形態において、生物活性のある細胞群は、間葉系幹細胞を含有する。一部の実施形態において、内皮細胞群は、成人を源とするものである。一部の実施形態において、細胞群は、異種、同系、同種、自己、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0012】
他の実施形態において、異種腎細胞群及び生物活性のある細胞群は、第一の期間の間は別々に培養され、第二の期間の間に、混合され、及び培養される。ある実施形態において、腎細胞群及び生物活性のある細胞群は、1:1の比率で混合される。最も多い実施形態において、腎細胞群及び生物活性のある細胞群は、増殖培地中で混合される、たとえば、懸濁される。一部の実施形態において、第二の期間は、24~72時間、好ましくは、24時間である。
【0013】
他の態様において、オルガノイドが開示される。一部の実施形態において、オルガノイドは、本明細書に開示される方法に従い作製される。全ての実施形態において、オルガノイドは、異種腎細胞群及び生物活性のある細胞群を含有する。一部の実施形態において、生物活性のある細胞群は、内皮細胞群である。一部の実施形態において、内皮細胞群は、細胞株である。ある実施形態において、内皮細胞群は、HUVEC細胞を含有する。
【0014】
一部の実施形態において、異種腎細胞群は、尿細管細胞富化群を含有するB2細胞群を含有し、ここで、当該異種腎細胞群は、B1細胞群を枯渇している。ある実施形態において、異種腎細胞群はさらに、B5細胞群を枯渇している。選択された実施形態において、異種腎細胞群は、B2、B2/B3、B2/B4、及び、B2/B3/B4から選択され
る細胞群を含有する。一部の実施形態において、異種腎細胞群は、エリスロポエチン(EPO)産生細胞を含有する。
【0015】
さらなる態様において、オルガノイドを少なくとも1つ、及び液体培地を含有する注射可能な製剤が開示される。1つの実施形態において、液体培地は、細胞増殖培地、DPBS及びそれらの組み合わせから選択される。他の実施形態において、オルガノイドは、液体培地中に懸濁される。
【0016】
第二の実施形態において、当該注射可能な製剤には、オルガノイド、ならびに、(i)約8℃以下で実質的に固形状態、及び、(ii)およそ気温以上で実質的に液体状態、を維持する温度感受性細胞安定化バイオマテリアルが含有される。他の1つの実施形態において、生物活性のある細胞は、本明細書に開示される腎細胞を含有する。他の実施形態において、生物活性のある細胞は、実質的に、細胞安定化バイオマテリアルの体積全体に均一に分散されている。他の実施形態において、バイオマテリアルは、約8℃~気温以上では、固形-液体の遷移状態を有する。1つの実施形態において、実質的に固形状態とは、ゲル状態である。他の実施形態において、細胞安定化バイオマテリアルは、ハイドロゲルを含有する。他の1つの実施形態において、ハイドロゲルは、ゼラチンを含有する。他の実施形態において、ゼラチンは、約0.5%~約1%(w/v)で、製剤中に存在する。1つの実施形態において、ゼラチンは、約0.75%(w/v)で、製剤中に存在する。
【0017】
ある態様において、異種腎細胞群及び生物活性のある細胞群を含有するオルガノイドを少なくとも1つ投与することを含む、必要のある対象において腎疾患を治療する方法が開示される。一部の実施形態において、生物活性のある細胞群は、内皮細胞群である。ある実施形態において、内皮細胞群は、細胞株である。1つの実施形態において、内皮細胞群は、HUVEC細胞を含有する。
【0018】
多くの実施形態において、異種腎細胞群は、富化尿細管群を含有するB2細胞群を含有し、ここで、当該異種腎細胞群は、B1細胞群を枯渇している。選択された実施形態において、異種腎細胞群はさらに、B5細胞群を枯渇している。一部の実施形態において、異種腎細胞群は、B2、B2/B3、B2/B4、及び、B2/B3/B4から選択される細胞群を含有する。最も多い実施形態において、異種腎細胞群は、エリスロポエチン(EPO)産生細胞を含有する。
【0019】
ある実施形態においては、本明細書に開示される注射可能な製剤を投与することを含む、必要のある対象において腎疾患を治療する方法。全ての実施形態において、対象は、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、及び霊長類から選択される哺乳類である。特定の実施形態において、哺乳類はヒトである。全ての実施形態において、対象は、腎疾患を有している。複数の実施形態において、以下の測定基準のうちのいずれか1つにおける改善が認められる:貧血(Hct、Hgb、RBC)、炎症(WBC)、尿濃縮(spGrav)及び高窒素血症(BUN)。
【0020】
他の態様においては、腎疾患の前記治療のための医薬の製造における、オルガノイドの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】フィブロネクチンでコートされたプレート上における、初代ZSF1細胞の細胞培養形態を示す。A.5xの拡大率で観察された、未分画のソート前p0;B.5xの拡大率で観察されたp1 CD31
+;C.KGM中、フィブロネクチン処置されたフラスコ上で、21%O
2で増殖した、0継代の最後での初代培養未分画腎細胞;D.Miltenyiマイクロビーズ選択由来の陰性フロースルー(CD31
-);及び、E.EGM2が十分に補充された培地中で、フィブロネクチンでコートされたフラスコ上で増殖した1回目の継代の最後で選択された90%CD31
+細胞。
【
図2】5xで観察された、ヒト細胞培養の形態を示す。A.KGM中、TC処置されたフラスコ上、21%O
2で増殖した、p0の最後での未分画腎細胞;B.KGM中、TC処置されたフラスコ上、2%O
2O/Nに曝されながら増殖した、0継代の最後での未分画腎細胞;C.EGM2が十分に補充された培地中で、フィブロネクチンでコートされたフラスコ上、0継代の最後での未分画腎細胞;D.十分に補充されたEGM2培地中で、フィブロネクチンでコートされたフラスコ上で増殖した1継代の最後でのCD31
+陽性選択細胞。
【
図3】培養期間の間、選択された試料における陽性CD31内皮細胞のパーセンテージを示すFACS分析を示す。未分画(UNFX)内皮の組成は、p0で<3%であり、フィブロネクチン上に置かれ、EGM2培地中で培養されたp1で、約15倍に富化された。
【
図3-1】系統追跡実験のためのBigeneic Cre/loxPレポーターを示す。A.Six2-Cre x R26td Tomato Redは、上皮細胞(壁細胞、近位尿細管細胞、及び遠位尿細管細胞)、とクロストレースするが、間質または集合尿細管とはしない。B.非標識対照。C.p1培養からのSix-2陽性(3日間、酸素正常培養を行い、次いで、1日低酸素培養を行った)。
【
図4】SRCオルガノイド形成に用いられたスピナーフラスコ(A)及び、回転器上の低結合プレート(B)を示す。
【
図5】サイズの均一性を示す、A.ラット、及びB.ヒトSRCの位相差イメージング(10x)を示す。C.汎カドヘリン表現型(緑)、核(青)を発現しているオルガノイド(20x)。
【
図6】3DコラーゲンI/IVゲル内で培養されたヒトオルガノイドを示す。A.オルガノイド管形成を示す低拡大の位相差イメージング(白で囲まれた部分)。B.残余オルガノイドと共に、高拡大での位相差イメージング(白で囲まれた部分)。C.GGT-1表現型発現(緑)、核(青)。D.20x拡大での、CK18発現(緑)、核(青)。
【
図7】膜色素標識オルガノイドを示す。A.100x拡大での、DiL(赤)で標識されたSRCのみ。B.オルガノイドと、DiL(赤)で標識されたSRC、DiO(緑)で標識されたHuVEC(x100拡大)。
【
図8】自己形成オルガノイドのColI/IVゲルにおける、3D尿細管形成アッセイを示す。パネルA、B及びCにおいて、SRC群(赤)及び内皮細胞(緑)の両方の存在を示す。重ね合わせると、群は黄色に見える。核染色(青)、(20x拡大)。
【
図9】注入前の、SPIOローダミン標識オルガノイド(赤)を示す。
【
図10】移植後のオルガノイド保持の磁気共鳴イメージング(MRI)を示す。緑は細胞。注入後、A.24時間、B.48時間。
【
図11】細胞保持及び生体内分布を示す、移植オルガノイドのプルシアンブルー染色を示す(低拡大と高拡大)。A.移植24時間後の移植左腎。B.移植48時間後の移植左腎。
【
図12】本明細書に開示されるオルガノイドを投与されたラット腎臓における、ヒト細胞のHLA1染色を示す写真のパネルである。A.正常なヒト腎臓;B.ラットの腎臓におけるヒト腎細胞。C.未処置の腎摘出されたラットの腎臓。D.NKO処置(低倍率顕微鏡)。E.NKO処置(高倍率顕微鏡)。F.第二のNKO処置動物。パネルAとBは、正常なヒト腎組織の染色(茶色)ならびに、げっ歯類の腎臓へ急速に送達されたヒト腎細胞の染色(緑の矢印)を示す。おそらくタンパク質性円柱の「粘性」の性質により、バックグラウンド染色は、未処置疾患ラット腎臓実験の終了時に損傷尿細管を示した(パネルC及びFにおいて、黄色い矢印により示される)。この染色は通常、明るい色であるが、時折、暗い色となり、細胞よりも小さいサイズになる。パネルD、E及びFは、暗染色細胞特定のためのスクリーニングに用いられた低拡大図、及び、HLA1染色細胞(緑の矢印)の確認のための高拡大図を示す。
【0022】
特許または特許出願は、カラーの図を少なくとも1つ含有している。カラー図面(複数含む)を伴う本特許または本特許公開のコピーは、要求し、必要な料金を支払うことで、当局から提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
多くの細胞型によって、腎実質内の機能単位であるネフロンを作り上げる。正常及び罹患した動物とヒトから、治療的に生物活性のある腎細胞を単離する技術は近年になり確立された1~3。これら実験で用いられた方法は、浮遊密度勾配遠心を用いた、罹患した組織生検内にある腎細胞の混合物の単離によったものである。
【0024】
本発明の1つの態様は、様々なネフロン単位またはニッチの、選択された個々の細胞群の単離、同定及び増殖に関するものであり、それにより、新規で複合的な富化細胞型を、選択混合物として組み合わせることが可能となる。本発明の新規選択混合物により、腎疾患の臨床的及び病態生理学的原則に関連した特定の構造的及び機能的欠損の標的化の改善がもたらされる。ネフロンを作り上げる複合的な個々の細胞型の単離及び富化、ならびに選択混合物として組み合わせることにより、特定の腎疾患コホートの標的化治療の改善が可能となる。
【0025】
たとえば、血管内皮、尿細管及び集合尿細管の上皮、間質細胞、糸球体細胞、間葉系幹細胞等の細胞型を、単離、同定し、ex-vivoで増殖させることができる。各細胞型には、サブ培養のための固有の方法及び培地処方が必要とされる一方で、それらを選択された組み合わせまたは混合物にオルガノイドクラスターとして戻し、特定の急性及び/または慢性腎疾患患者症候群/コホート8と関連した、根本的な腎組織/細胞の欠陥に対するデリバリーの強化、及び治療の改善が可能である。
【0026】
本発明から、腎尿細管上皮と内皮細胞の規定の比率を用いた、血管系疾患(たとえば、高血圧、微小血管症性貧血等)と関連した腎機能障害の治療法が予期される。選択された培養システム及び磁気ソーティングを用いた、内在腎内皮細胞の単離、特徴解析及び増殖を行うことにより、前もって特徴解析された、特定の割合の精製腎内皮細胞(SRC+)を有する選択再生腎上皮細胞(SRC)群2,4の富化が可能となる。本発明のSRC+細胞群は、前述の、及び本明細書に開示される、選択腎細胞(SRCまたはBRC)、及び、さらに生物活性のある細胞群(限定されないが、内皮細胞、内皮前駆細胞、間葉系幹細胞及び/または脂肪由来前駆細胞を含む)を含む。1つの実施形態において、さらに生物活性のある細胞群は、腎臓起源である。他の実施形態において、さらに生物活性のある細胞群は、腎臓起源ではない。
【0027】
本発明の1つの態様は、選択された、もしくは生物活性のある腎細胞(SRCまたはBRC)またはSRC+細胞群の異種混合物または分画を含有する、及び/または、から形成されるオルガノイド、それらを単離及び培養する方法、ならびに、本明細書に開示されるオルガノイドを用いた治療方法を目的とする。SRCまたはSRC+群をオルガノイドとして、腎臓へと方向性を持って送達することにより、細胞保持が改善され、それにより、全体的な治療転帰の改善がもたらされることが予期される。本発明はまた、SRC+細胞群を用いた治療方法を目的とする。
【0028】
定義
他で定義されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者により普遍的に理解されているものと同じ意味を有する。Principles of Tissue Engineering,3rd Ed.(Edi
ted by R Lanza,R Langer,& J Vacanti),2007において、本明細書に用いられている用語のうちの多くに関する全体的なガイドラインが当業者に開示されている。当業者であれば、本明細書に開示されているものと類似した、または均等な多くの方法及び物質を認識し、及び、本発明の実施に用いることができることを認識するであろう。本発明は、決して開示される方法及び物質を限定しない。
【0029】
本明細書において、「細胞群」という用語は、適切な組織源(通常は、哺乳類)から直接的に単離することにより得た多くの細胞を指す。単離細胞群は、引き続き、in vitroで培養されても良い。当業者であれば、本発明で用いるための細胞群を単離及び培養するための様々な方法を認識し、及び、本発明における使用に適した細胞群の様々な細胞数を認識するであろう。細胞群は、腎臓由来の未分画な異種細胞群であっても良い。たとえば、異種細胞群は、腎生検から単離されたものでも、または全腎組織から単離されたものでも良い。あるいは、異種細胞群は、腎生検または全腎組織から確立された、哺乳類細胞のin vitro培養由来であっても良い。未分画の異種細胞群はまた、非富化細胞群とも呼称されても良い。
【0030】
「自然の腎臓」という用語とは、生きた対象の腎臓を意味する。対象は、健康でも不健康でも良い。不健康な対象は、腎疾患を有していても良い。
【0031】
「再生効果」という用語は、自然の腎臓に利益をもたらす効果を意味する。当該効果としては、限定されないが、損傷の程度を自然の腎臓にまで減少させること、または、自然の腎臓の機能の改善、回復、または安定化が挙げられる。腎損傷は、線維化、炎症、糸球体肥大等の形態であっても良く、及び、対象の腎疾患に関するものであっても良い。
【0032】
本明細書において、「再生能」または「再生活性の潜在性」という用語は、生物活性のある細胞群及び/または本明細書に開示される混合物を含有するオルガノイドの、再生効果をもたらす潜在性を指す。
【0033】
本明細書において、「混合物」という用語は、未分画の異種細胞群から誘導された単離された富化細胞群の2以上の組み合わせを指す。ある実施態様においては、本発明の細胞群は、腎細胞群である。
【0034】
「富化された」細胞群または調製物とは、開始腎細胞群(たとえば、未分画の異種細胞群)から誘導された細胞群を指し、当該開始細胞群におけるその細胞型の割合よりも大きい割合の特定の細胞型を含有している。たとえば、開始腎細胞群は、対象の第一、第二、第三、第四、第五等の細胞群が富化されていても良い。本明細書において、「細胞群」、「細胞調製物」、及び「細胞プロトタイプ」という用語は、相互交換可能に用いられる。
【0035】
1つの態様において、本明細書における「富化された」細胞群という用語は、開始腎細胞群(たとえば、腎生検または培養哺乳類腎細胞由来の細胞懸濁液)由来の細胞群を指し、当該開始群におけるEPOを産生することができる細胞の割合よりも高い割合のEPO産生可能細胞を含有している。たとえば、「B4」という用語は、開始群と比較して高い割合のEPO産生細胞、糸球体細胞、及び血管細胞を含有している開始腎細胞群由来の細胞群である。本発明の細胞群は、1以上の細胞型に対して付加されていても良く、及び、1以上の他の細胞型を枯渇していても良い。たとえば、富化EPO産生細胞群は、非富化細胞群(すなわち、当該富化細胞群が誘導された開始細胞群)における間質線維芽細胞及び尿細管細胞と比較して、間質線維芽細胞を富化され、尿細管細胞及び集合尿細管上皮細胞を枯渇していても良い。EPO富化、または「B4」群を引用している全ての実施態様において、当該富化細胞群は、酸素制御された様式においてEPOを産生することができる細胞(内因性天然型EPO遺伝子からの、酸素調整可能なEPO発現により示される)
を含有する異種細胞群である。
【0036】
他の態様において、特定の細胞型(たとえば、血管細胞、糸球体細胞または内分泌細胞)を、開始群における当該細胞型の割合よりも高い割合で含有する富化細胞群は、健康な個体または対象から誘導された開始腎細胞群と比較して、1以上の特定の細胞型(たとえば、血管細胞、糸球体細胞、または内分泌細胞)を枯渇、または不足していても良い。たとえば、1つの態様における「B4´」または「B4プライム」という用語は、健常な個体と比較して、開始検体の疾患状態に依存して、1以上の細胞型(たとえば、血管、糸球体または内分泌)を枯渇、または不足している開始腎細胞群由来の細胞群である。1つの実施形態において、「B4´」細胞群は、慢性腎疾患を有する対象に由来する。1つの実施形態において、B4´細胞群は、巣状分節上糸球体硬化症(FSGS)を有する対象由来である。他の実施形態において、B4´細胞群は、自己免疫性糸球体腎炎を有する対象由来である。他の態様において、B4´は、全ての細胞型(たとえば、血管細胞、糸球体細胞、または内分泌細胞)を含有する開始細胞群から誘導された細胞群であり、後に、1以上の細胞型(たとえば、血管細胞、糸球体細胞または内分泌細胞)を枯渇する、または不足する。さらに他の態様において、B4´は、全ての細胞型(たとえば、血管細胞、糸球体細胞、または内分泌細胞)を含有する開始細胞群由来の細胞群であり、後に、1以上の特定の細胞型(たとえば、血管細胞、糸球体細胞、または内分泌細胞)が富化される。たとえば、1つの実施形態において、B4´細胞群は、血管細胞が富化されているが、糸球体細胞及び/または内分泌細胞が枯渇されていても良い。他の実施形態において、B4´細胞群は、糸球体細胞が富化されているが、血管細胞及び/または内分泌細胞が枯渇されていても良い。他の実施形態において、B4´細胞群は、内分泌細胞が富化されているが、血管細胞/糸球体細胞が枯渇されていても良い。他の実施形態において、B4´細胞群は、血管細胞と内分泌細胞が富化されているが、糸球体細胞が枯渇されていても良い。好ましい実施形態において、単独、または他の富化細胞群(たとえば、B2及び/またはB3)と混合されたB4´細胞群は、治療特性を保持している。たとえば、B4´細胞群は、本明細書において、実施例(たとえば、実施例7~9)に開示されている。
【0037】
他の態様において、富化細胞群とはまた、開始群における、何らかのEPO産生細胞を伴う、血管マーカー、糸球体マーカー及び近位尿細管マーカーの1つ以上を発現している細胞の割合よりも高い、何らかのEPO産生細胞を伴う、血管マーカー、糸球体マーカー、近位尿細管マーカーを1つ以上発現している細胞を一定の割合で含有している、上述の開始腎細胞群由来の細胞群を指しても良い。たとえば、「B3」という用語は、開始群と比較して、高い割合の近位尿細管細胞ならびに血管細胞及び糸球体細胞を含有する開始腎細胞群由来の細胞群を指す。1つの実施形態において、B3細胞群は、開始群と比較して高い割合の近位尿細管細胞を含有するが、B2細胞群と比較して近位尿細管細胞の割合は低い。他の実施形態において、B3細胞群は、開始群と比較して、大きな割合の、何らかのEPO産生細胞を伴う血管マーカー及び糸球体細胞マーカーを含有するが、B4細胞群と比較して、何らかのEPO産生細胞を伴う血管細胞マーカー及び糸球体細胞マーカーの割合は低い。
【0038】
他の態様において、富化細胞群はまた、開始群において尿細管細胞マーカーを1つ以上発現している細胞の割合よりも高く、尿細管細胞マーカーを1つ以上発現している一定割合の細胞を含有する、上述の開始腎細胞群由来の細胞群を指しても良い。たとえば、「B2」という用語は、開始群と比較して、高い割合の尿細管細胞を含有する開始腎細胞群由来の細胞群を指す。さらに、尿細管細胞マーカーを1つ以上発現している細胞を富化した細胞群(またはB2)は、集合尿細管システム由来のいくらかの上皮細胞を含有しても良い。尿細管細胞マーカーを1つ以上発現している細胞に対する細胞群(またはB2)は比較的EPO産生細胞、糸球体細胞及び血管細胞を枯渇しているが、当該富化群は、開始群と比較し、低い割合のこれら細胞(EPO産生細胞、糸球体細胞及び血管細胞)を含有し
ても良い。概して、枯渇前の異種細胞群に含有されていた細胞型(複数含む)の比率と比較して、枯渇異種細胞群は少ない比率の細胞型(複数含む)を含有するように、当該異種細胞群は、1つ以上の細胞型を枯渇される。枯渇されうる細胞型は、任意の腎細胞型である。たとえば、ある実施形態において、枯渇されうる細胞型としては、<約1.045g/mlの密度を有する集合尿細管及び尿細管システムの大きな粒度の細胞(B1と呼称される)が挙げられる。他のある実施形態においては、枯渇されうる細胞型としては、>約1.095g/mlの密度を有する、低い粒度と活性の細胞残渣及び小細胞(B5と呼称される)が挙げられる。一部の実施形態において、尿細管細胞を富化した細胞群は、比較的、以下の全てを枯渇している:「B1」、「B5」、酸素調整可能なEPO発現細胞、糸球体細胞、及び血管細胞。
【0039】
本明細書において用いられる「低酸素」培養条件という用語は、大気酸素レベル(約21%)で細胞が培養される標準的な培養条件と比較して、培養システム中の利用可能な酸素レベルが減少している状態に細胞が供される培養条件を指す。非低酸素条件は、本明細書において、通常、または、正常酸素培養条件と呼称される。
【0040】
本明細書において、「酸素調整可能な」という用語は、細胞が利用可能な酸素の量に基づいて、遺伝子発現を(上または下に)調節する細胞の能力を指す。「低酸素誘導性」とは、(誘導前の酸素圧、または開始酸素圧にかかわらず)酸素圧の減少に反応して遺伝子発現を上方制御することを指す。
【0041】
「スフェロイド」という用語は、単層としての増殖とは対照的に、3D増殖を可能とするよう培養された細胞の凝集体またはアセンブリを指す。「スフェロイド」という用語は、当該凝集体が幾何学的な球状であることを意味しないことに注意されたい。凝集体は、きちんと確立された形態を有するよう高度に組織化されても良く、または、組織化されていない塊であっても良い;単一の細胞型を含有しても良く、または2以上の細胞型を含有しても良い。細胞は、主に分離下部であっても良く、または永久細胞株であっても良く、または当該2つの組み合わせであっても良い。本定義には、オルガノイド及び器官型培養物が含まれる。
【0042】
本明細書において、「オルガノイド」という用語は、自然状態の器官に存在している細胞の自己組織化、構造、及びシグナル伝達相互作用の態様が再現されている細胞の異種3D凝集を指す。「オルガノイド」という用語には、スフェロイドまたは細胞培養懸濁液から形成された細胞塊が含まれる。
【0043】
本明細書において「バイオマテリアル」という用語は、生きた組織への導入に適した天然または合成の生体適合性のある物質を指す。天然型バイオマテリアルは、生きているシステムにより作製された物質である。合成バイオマテリアルは、生きているシステムにより作製されていない物質である。本明細書に開示されるバイオマテリアルは、天然型または合成の生体適合性物質の組み合わせであっても良い。本明細書において、バイオマテリアルとしては、限定されないが、たとえば、ポリマーマトリクス及びスキャホールドが挙げられる。当分野の当業者であれば、バイオマテリアル(複数含む)は、たとえば、液体ハイドロゲル懸濁液、多孔質発泡体等の様々な形態で構成されても良く、及び、天然または合成生体適合性物質を1つ以上含有しても良い。
【0044】
「構築物」という用語は、1つ以上の合成または天然生体適合性物質から構成されているスキャホールドまたはマトリクス内、または表面上に置かれた1つ以上の細胞群を指す。当該1つ以上の細胞群は、1つ以上の合成または天然生体適合性ポリマー、タンパク質、またはペプチドから構成されているバイオマテリアルでコートされ、上に置かれ、組み込まれ、付着され、播種され、または封入されても良い。当該1つ以上の細胞群は、in
vitroまたはin vivoでバイオマテリアルまたはスキャホールドまたはマトリクスと組み合わされても良い。概して、スキャホールド/バイオマテリアルを形成するために用いられる1以上の生体適合性物質は、その上に置かれる細胞群のうちの少なくとも1つの、多細胞性の3次元組織化の形成を指示し、促進し、または可能とするよう選択される。当該構築物を作製するために用いられる1以上のバイオマテリアルはまた、内因性宿主組織を有する構築物または構築物の細胞成分の分散及び/または組込みを指示、促進または可能とするよう選択されても良く、または、構築物または構築物の細胞成分の生存、生着、寛容または機能的遂行を指示、促進または可能とするよう選択されても良い。
【0045】
「マーカー」または「バイオマーカー」という用語は通常、DNA、RNA,タンパク質、炭水化物または糖脂質をベースとした分子マーカーを指し、培養細胞群において、それらの発現または存在は、標準的な方法(または本明細書に開示される方法)により検出されることができ、当該培養細胞群における1以上の細胞が、特定の細胞型であることと一致している。マーカーは、細胞により発現されるポリペプチドであっても良く、または、たとえば遺伝子、制限酵素認識部位等の染色体上の識別可能な物理的位置であっても良く、または、天然細胞により発現されるポリペプチドをコードする核酸(たとえば、mRNA)であっても良い。マーカーは、「遺伝子発現マーカー」と呼称される遺伝子の発現領域であっても良く、または、コードしている機能が不明なDNAの何らかのセグメントであっても良い。バイオマーカーは、細胞誘導性(たとえば、分泌された)産物であっても良い。
【0046】
「特異的に発現された遺伝子」、「特異的遺伝子発現」という用語、及びそれらの類義語は、相互交換可能に用いられ、それら発現は、第二の細胞または細胞群におけるその発現と比較して、第一の細胞または細胞群において高いレベル、または低いレベルにまで活性化される遺伝子を指す。当該用語にはまた、その発現が、第一または第二の培養中の細胞の継代の間に、経時的に異なるステージで、高いレベルまたは低いレベルまで活性化される遺伝子が含まれる。また、特異的に発現される遺伝子は、核酸レベルまたはタンパク質レベルで活性化または阻害されても良く、または、別のスプライシングが行われ、異なるポリペプチド産物が生じても良い。その差は、たとえばmRNAレベルにおける変化、表面発現における変化、ポリペプチド分泌の変化またはポリペプチド分配の変化により明らかとなっても良い。特異的遺伝子発現としては、2以上の遺伝子またはその遺伝子産物間の発現比較、または、2以上の遺伝子またはその遺伝子産物管の発現比率の比較、または、同じ遺伝子の2つの異なるプロセッシング産物の比較が挙げられても良く、それらは第一の細胞と第二の細胞の間で異なっている。特異的発現は、遺伝子またはその発現産物の、たとえば第一の細胞と第二の細胞の間の一時的発現または細胞発現のパターンにおける、定量的ならびに定性的な差の両方が含まれる。本発明の目的に関しては、「特異的遺伝子発現」は、第一の細胞と第二の細胞における所与の遺伝子の発現の間に差がある場合に存在するとみなされる。マーカーの特異的発現は、投与(第二の細胞)を受けた後の患者由来の細胞における発現と比較して、細胞群、混合物または構築物(第一の細胞)の投与を受ける前の患者由来の細胞においてであっても良い。
【0047】
「阻害する」、「下方制御する」、「低発現させる」、及び「減少させる」という用語は相互交換可能に用いられ、1以上のタンパク質またはタンパク質サブユニットをコードする遺伝子の発現、または、RNA分子もしくは同等のRNA分子のレベル、または、1以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性が、1以上の対象(たとえば、1以上の陽性対照及び/または陰性対照)と比較して減少していることを意味する。低発現は、投与後の患者由来の細胞と比較して、細胞群、混合物または構築物の投与を受ける前の患者由来の細胞におけるものであっても良い。
【0048】
「上方制御」、または「過剰発現」という用語は、1以上のタンパク質またはタンパク
質サブユニットをコードする遺伝子の発現、またはRNA分子もしくは同等のRNA分子のレベル、または1以上のタンパク質もしくはタンパク質サブユニットの活性が、1以上の対象(たとえば、1以上の陽性対照及び/または陰性対照)と比較して上昇していることを意味する。過剰発現は、投与前の患者由来の細胞と比較して、細胞群、混合物または構築物の投与を受けた後の患者由来の細胞におけるものであっても良い。
【0049】
本明細書において、「貧血」という用語は、対象のEPO産生細胞による機能的なEPOタンパク質の産生が不適切であることによる、ならびに/または、全身循環へのEPOタンパク質放出が不適切であることによる、ならびに/または、EPOタンパク質に応答する骨髄における赤芽球の不能による、赤血球数及び/またはヘモグロビンレベルの不足を指す。貧血を有する対象は、赤血球のホメオスタシスを維持することができない。概して、貧血は、腎機能の減少または喪失(たとえば、慢性腎不全)で発生し、相対EPO欠乏と関連した貧血、うっ血性心不全と関連した貧血、たとえば化学療法または抗ウイルス治療(たとえば、AZT)等の骨髄抑制性治療に関連した貧血、非骨髄癌と関連した貧血、ウイルス(たとえばHIV)感染と関連した貧血、ならびに、自己免疫性疾患(たとえば、リュウマチ性関節炎)、肝疾患及び多臓器不全等の慢性疾患の貧血がある。
【0050】
「EPO欠乏」という用語は、エリスロポエチン受容体アゴニスト(たとえば、組換えEPOまたはEPOアナログ)を用いて治療することができる任意の状態または疾患を指し、貧血が含まれる。
【0051】
本明細書において、「臓器関連疾患」という用語は、臓器がその機能を発揮する能力を失う急性または慢性の臓器不全の任意のステージまたは程度と関連した疾患を指す。
【0052】
本明細書において、「腎疾患」という用語は、血液を濾過し、血液から過剰な液体、電解質及び老廃物を排出する機能を行う腎臓の能力が失われた急性または慢性の腎不全の任意のステージまたは程度に関連した疾患を指す。また、腎疾患としては、たとえば貧血(エリスロポエチン欠乏)及びミネラルの不均衡(ビタミンD欠乏)等の内分泌機能障害が挙げられる。腎疾患は、腎臓に起源があっても良く、または、様々な状態(限定されないが、心不全、高血圧、糖尿病、自己免疫性疾患または肝疾患が挙げられる)に続発するものであっても良い。腎疾患は、腎臓の急性損傷後に発症した慢性腎不全の状態であっても良い。たとえば、虚血及び/または毒物に曝されたことにより腎臓に障害が発生し、それによって急性腎損傷となり;急性腎損傷の後の回復が不完全であるために慢性腎不全を発症することもある。
【0053】
「処置」という用語は、腎疾患、貧血、EPO欠乏、尿細管輸送の欠如、または糸球体濾過の欠如に対する治療的処置及び予防または防止的手段の両方を指し、その目的は、標的とした疾患の回復、防止または減速(減少)ことである。治療を必要とする対象としては、既に腎疾患、貧血、EPO欠乏、尿細管輸送の欠如、または糸球体濾過の欠如を有するもの、ならびに、腎疾患、貧血、EPO欠乏、尿細管輸送の欠落、もしくは糸球体濾過の欠如を有する傾向があるもの、または、腎疾患、貧血、EPO欠乏、尿細管輸送の欠落、もしくは糸球体濾過の欠如が予防されるもの、が挙げられる。本明細書において、「処置」という用語は、腎機能の安定化及び/または改善が含まれる。
【0054】
「対象」という用語は、任意の1人のヒト対象(腎疾患、貧血またはEPO欠如の兆候、症状または他の指標を1つ以上経験している、または経験していた処置の適格者、患者)を意味する。そのような対象としては、限定されないが、腎疾患、貧血、またはEPO欠如(原因は問わない)と新たに診断された、もしくは既に診断されていた者、及び、再発、ぶり返しを新たに経験している者、または、そのリスクがある者が挙げられる。対象は、腎疾患、貧血、EPO欠如に対して既に処置を受けていても良く、または受けていな
くても良い。
【0055】
「患者」という用語は、処置が望まれる任意の1つの動物、より好ましくは哺乳類(たとえば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、及び非ヒト霊長類等の非ヒト動物を含む)を指す。最も好ましくは、本明細書において、患者はヒトである。
【0056】
「試料(サンプル)」または「患者試料(サンプル)」または「生物学的試料(サンプル)」という用語は、通常、対象もしくは患者、体液、体組織、細胞株、組織培養物、または他の源から得られた任意の生物学的試料を意味する。当該用語は、たとえば腎生検等の組織生検を含む。当該用語は、たとえば培養哺乳類腎細胞等の培養細胞を含む。組織生検及び培養細胞を哺乳類から得るための方法は当分野に公知である。もし「試料」という用語が単独で用いられた場合、それは、「試料」が「生物学的試料」または「患者試料」(すなわち、当該用語は相互交換可能に用いられる)であることを意味している。
【0057】
「検証試料」という用語は、本発明の方法により処置された対象由来の試料を指す。検証試料は、限定されないが、血液、精液、血清、尿、骨髄、粘膜、組織等の、哺乳類対象の様々な源由来のものであっても良い。
【0058】
「対照」または「対照試料」という用語は、陰性結果または陽性結果が予期され、検証試料における結果との相互関係の証明を補助する陽性対照または陰性対照を指す。本発明に適した対照としては、限定されないが、正常な赤血球ホメオスタシスに特徴的な指標を示すことが知られている試料、貧血に特徴的な指標を示すことが知られている試料、貧血ではないことが分かっている対象から得た試料、及び、貧血であることが判明している対象から得た試料が挙げられる。本発明方法における使用に適したさらなる対照としては、限定されないが、赤血球産生を調節することが知られている薬剤(たとえば、組換えEPOまたはEPOアナログ)で処置された対象から得た試料が挙げられる。さらに、対照は、本発明方法により処置される前の対象から得た試料であっても良い。適切な対照としてはさらに、任意の型またはステージの腎疾患を有していることが判明している対象から得た検証試料、任意の型またはステージの腎疾患を有していないことが判明している対象由来の試料であっても良い。対照は、正常で健康な、対応対照であっても良い。当業者であれば、本発明における使用に適した他の対照を認識しうるであろう。
【0059】
「再生の予後診断」、「再生予後診断」、または「再生に関する予後診断」は通常、本明細書に開示される細胞群、混合物もしくは構築物の投与または移植により推定される再生経過または転帰に関する予測または予想を指す。再生予後診断に関しては、予測または予想は、以下のうちの1つ以上により情報が与えられるものであっても良い:移植または投与後の機能性器官(たとえば腎臓)の改善、移植または投与後の機能性腎臓の発生、移植または投与後の腎臓機能または能力の改善の発現、及び、移植または投与後の自然状態の腎臓による、あるマーカーの発現。
【0060】
「再生された器官」とは、本明細書に開示される細胞群、混合物もしくは構築物の移植または投与後の、自然状態にある器官を指す。再生された器官は、様々な指標(限定されないが、自然器官の機能または能力の発現、自然器官の機能または能力の改善、及び、自然器官のあるマーカーの発現が挙げられる)により特徴付けられる。当業者であれば、再生器官の特徴付けに適しうる他の指標を認識するであろう。
【0061】
「再生された腎臓」とは、本明細書に開示される細胞群、混合物もしくは構築物の移植または投与後の、自然状態にある腎臓を指す。再生された腎臓は、様々な指標(限定されないが、自然腎臓の機能または能力の発現、自然腎臓の機能または能力の改善、及び、自
然腎臓のあるマーカーの発現が挙げられる)により特徴付けられる。当業者であれば、再生腎臓の特徴付けに適しうる他の指標を認識するであろう。
【0062】
SRC+細胞群
本発明により、急性または慢性の腎疾患の処置における使用のための、特定の生物活性のある成分または細胞型が富化され、ならびに/または、不活性もしくは望ましくない成分または細胞型及びさらには生物活性のある細胞群(限定されないが、内皮細胞、内皮前駆細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来前駆細胞が挙げられる)が枯渇した、単離異種腎細胞群を含有する細胞群が開示される。特定の生物活性のある成分または細胞型が富化され、及び/または、特定の不活性もしくは望ましくない成分または細胞型が枯渇された単離異種腎細胞群は、本明細書に開示される任意の細胞群を含有しても良い。1つの実施形態において、当該さらなる生物活性のある成分(たとえば、内皮細胞、内皮前駆細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来前駆細胞)は、特定の生物活性のある成分もしくは細胞型が富化され、及び/または、特定の不活性もしくは望ましくない成分または細胞型が枯渇した単離異種腎細胞群と混合される。本発明の他の態様において、本明細書に開示されるSRC+細胞群の製造方法が開示される。当該細胞群を含有する当該さらなる生物活性のある成分(たとえば、内皮細胞、内皮前駆細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来前駆細胞)は、細胞または組織の欠如を改善するために十分な任意の割合で存在しても良い。
【0063】
本発明の細胞群は、1以上のさらなる生物活性のある成分(限定されないが、たとえば、当該細胞群を含有する、内皮細胞、内皮前駆細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来前駆細胞)を含有しても良い。ある実施形態において、当該細胞群は、2つのさらなる生物活性のある成分を含有する。ある実施形態において、当該細胞群は、3つのさらなる生物活性のある成分を含有する。ある実施形態において、当該細胞群は、4つのさらなる生物活性のある成分を含有する。ある実施形態において、当該細胞群は、5つのさらなる生物活性のある成分を含有する。ある実施形態において、当該細胞群は、6つのさらなる生物活性のある成分を含有する。ある実施形態において、当該細胞群は、7つのさらなる生物活性のある成分を含有する。ある実施形態において、当該細胞群は、8つのさらなる生物活性のある成分を含有する。ある実施形態において、当該細胞群は、9つのさらなる生物活性のある成分を含有する。ある実施形態において、当該細胞群は、10つのさらなる生物活性のある成分を含有する。
【0064】
1つの実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、上皮細胞である。1つの実施形態において、上皮細胞は、近位尿細管上皮細胞である。他の実施形態において、上皮細胞は、遠位尿細管上皮細胞である。他の実施形態において、上皮細胞は、壁上皮細胞である。
【0065】
他の実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、上皮細胞である。1つの実施形態において、上皮細胞は、静脈内皮細胞である。1つの実施形態において、上皮細胞は、動脈内皮細胞である。1つの実施形態において、上皮細胞は、毛細管内皮細胞である。1つの実施形態において、上皮細胞は、リンパ内皮細胞である。
【0066】
他の実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、集合尿細管細胞である。さらに他の実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、平滑筋細胞である。他の実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、間葉系幹細胞である。他の実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、内皮細胞系列、間葉系細胞系列、上皮細胞系列、または造血細胞系列の前駆細胞である。他の実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、内胚葉系、外胚葉系、または間葉系起源の前駆細胞である。ある実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、任意の起源または由来の幹細胞(限定されないが、胚性(ES)幹細胞及び人工多能性(iPS)幹細胞が挙げられる)である。一部の実施
形態において、さらなる生物活性のある成分は、任意の起源または由来の幹細胞(限定されないが、胚性(ES)幹細胞及び人工多能性(iPS)幹細胞が挙げられる)の派生物であり、ここで、当該派生物は、小分子及び/もしくはタンパク質及び/もしくは核酸分子の規定の組み合わせまたはカクテルにより幹細胞から分化指示されることにより作製されても良い。1つの実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、内皮系、間葉系、上皮系または造血系の系列の前駆細胞の派生物であり、ここで、当該派生物は、小分子及び/もしくはタンパク質及び/もしくは核酸分子の規定の組み合わせまたはカクテルにより幹細胞から分化指示されることにより作製されても良い。1つの実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、内胚葉系、外胚葉系、間葉系起源の前駆細胞の派生物であり、ここで、当該派生物は、小分子及び/もしくはタンパク質及び/もしくは核酸分子の規定の組み合わせまたはカクテルにより幹細胞から分化指示されることにより作製されても良い。1つの実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、任意の系列または派生物が遺伝子操作された細胞である。
【0067】
さらに他の実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、間質細胞である。1つの実施形態において、間質細胞は、支持線維芽細胞である。他の実施形態において、間質細胞は、分化した皮質エリスロポエチン産生線維芽細胞である。
【0068】
1つの実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、対象に対して自己である源由来である。他の1つの実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、対象に対して同種である源由来である。ある実施形態において、さらなる生物活性のある成分は、対象に対して自己である源由来であり、そのさらなる生物活性のある成分は、対象に対して同種である源由来である、さらなる生物活性のある成分との混合物である。
【0069】
本発明のある態様において、本明細書に開示される細胞群及び/またはオルガノイド及び/またはバイオマテリアルの指示送達により腎臓の大部分及び腎臓の機能性の標的化再生のための方法が開示される。本発明の他の態様においてさらに、本明細書に開示される細胞群及び/またはオルガノイド及び/またはバイオマテリアルの投与により急性または慢性の腎疾患を有する患者における、腎機能の防御及び/または回復のための方法が開示される。
【0070】
治療用オルガノイド
本発明によりさらに、本明細書に開示される生物活性のある成分(たとえば、B2、B4及びB3であり、不活性または望ましくない成分(たとえば、B1及びB5)を枯渇しており、急性及び/または慢性腎疾患の処置における使用のために、単独、または混合される)を含有する、及び/または、から形成されるオルガノイドが開示される。1つの態様において、本発明により、1以上の細胞型(たとえば、血管、内分泌または内皮)が枯渇または欠如している、特定の亜分画(B4)(すなわち、B4´であり、単独で、または他の生物活性のある亜分画(たとえば、B2及び/またはB3)と混合された際に、治療特性(たとえば腎機能の安定化及び/または改善及び/または再生)を保持している)を含有する、及び/または、から形成されるオルガノイドが開示される。好ましい実施形態において、生物活性のある細胞群は、B2である。ある実施形態において、B2細胞群は、B4またはB4´と混合される。他の実施形態において、B2細胞群は、B3と混合される。他の実施形態において、B2細胞群は、B3及びB4の両方、または、B3及び/またはB4の特定の細胞性成分と混合される。全ての実施形態において、本発明のオルガノイドは、ex vivoで形成及び培養される。全ての実施形態において、オルガノイドはさらに、さらなる生物活性のある細胞群(限定されないが、内皮細胞、内皮前駆細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来前駆細胞が挙げられる)を含有し、及び/または、から形成されても良い。1つの実施形態において、さらなる生物活性のある細胞群(限定されないが、内皮細胞、内皮前駆細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来前駆細胞が挙げられる)は、特定
の生物活性成分または細胞型が富化された、及び/または、不活性もしくは望ましくない成分または細胞型が枯渇した、単離異種腎細胞群と混合される。
【0071】
1つの実施形態において、本発明のオルガノイドは、B2細胞群を含有し、または、から形成され、ここで、当該B2細胞群は、尿細管細胞の富化群を含有する。他の実施形態において、当該異種腎細胞群はさらに、B4細胞群を含有する。さらに他の実施形態において、当該異種腎細胞群はさらに、B3群を含有する。さらに他の実施形態において、当該異種腎細胞群はさらに、B5群を含有する。
【0072】
ある実施形態において、細胞群は、B2細胞群を含有し、ここで、当該B2細胞群は、尿細管細胞の富化群を含有し、及び、B1細胞群、及び/または、B5細胞群を枯渇している。
【0073】
他の態様において、本発明により、単独または混合されて、不活性または望ましくない成分(たとえば、B1及びB5)を枯渇している、本発明の生物活性のある成分(たとえば、B2、B4及びB3)を含有する、及び/または、から形成されるオルガノイドを形成する方法が開示される。1つの態様において、本発明により、1以上の細胞型(たとえば、血管、内分泌または内皮)が枯渇または不足している、特定の亜分画(B4)(すなわち、B4´であり、単独で、または他の生物活性のある亜分画(たとえば、B2及び/またはB3)と混合された際に、治療特性(たとえば腎機能の安定化及び/または改善及び/または再生)を保持している)を含有する、及び/または、から形成されるオルガノイドが開示される。好ましい実施形態において、生物活性のある細胞群は、B2である。ある実施形態において、B2細胞群は、B4またはB4´と混合される。他の実施形態において、B2細胞群は、B3と混合される。他の実施形態において、B2細胞群は、B3及びB4の両方、または、B3及び/またはB4の特定の細胞性成分と混合される。
【0074】
1つの実施形態において、本発明のオルガノイドは、B2細胞群を含有し、または、から形成され、ここで、当該B2細胞群は、尿細管細胞の富化群を含有する。他の実施形態において、当該異種腎細胞群はさらに、B4細胞群を含有する。さらに他の実施形態において、当該異種腎細胞群はさらに、B3群を含有する。さらに他の実施形態において、当該異種腎細胞群はさらに、B5群を含有する。
【0075】
ある実施形態において、細胞群は、B2細胞群を含有し、ここで、当該B2細胞群は、尿細管細胞の富化群を含有し、及び、B1細胞群、及び/または、B5細胞群を枯渇している。
【0076】
他の態様において、本発明により、本明細書に開示される生物活性のある細胞群及び/または混合物を用いた、オルガノイドを形成する方法が開示される。3D COL(I)ゲルを用いた、初代腎細胞群から管を作製する一般的な方法は当分野に公知であり、たとえば、Joraku et al.,Methods.2009 Feb;47(2):129-33に記載されている。全ての実施形態において、本発明のオルガノイドは、ex vivoで形成及び培養される。
【0077】
一部の実施形態において、本明細書に開示される生物活性のある細胞群及び/または混合物からのオルガノイド及び管の形成は、たとえば、限定されないが、以下の培養方法またはシステムを用いて誘導されても良い:i)2D培養;ii)3D培養:COL(I)ゲル;iii)3D培養:マトリゲル;iv)3D培養:スピナー、次いで、COL(I)/マトリゲル;及び、v)3D培養:COL(IV)ゲル。NKAからオルガノイド及び管を形成する具体的な例は、以下の実施例2及び4に開示される。
【0078】
1つの実施形態において、本明細書に開示される生物活性のある細胞調製物及び/または混合物から形成されるオルガノイドは、2D培養で誘導されても良い。1つの実施形態において、本明細書に開示される生物活性のある細胞調製物及び/または混合物は、標準的な2Dプラスチック製品上に播種される。1つの実施形態において、細胞は、約5000細胞/cm2の密度で播種される。細胞は、適切な培地(たとえば、腎細胞完全増殖培地)(RCGM)に播種されても良い。概して、細胞群は、約3~4日毎に定期的に培地を交換しながら、約7、8、9、10、11、12、13、14、15日以上の間、コンフルエンスを過ぎて増殖されても良い。1つの実施形態において、細胞は、スフェロイド構造(すなわち、オルガノイド)及び管へと、約7~約15日の間に、自発的な自己組織化を示す。
【0079】
他の実施形態において、本明細書に開示される生物活性のある細胞調製物及び/または混合物から形成されたオルガノイドは、3D培養で誘導されても良い。1つの実施形態において、オルガノイドは、天然または合成起源のバイオマテリアルスキャホールドと共に本発明の細胞群を用いて作製される。1つの実施形態において、本明細書に開示される製剤化された生物活性のある細胞調製物及び/または混合物は、コラーゲン(I)ゲル、コラーゲン(IV)ゲル、マトリゲル、または前述のこれらの任意の混合物(Guimaraes-Souza et al.,2012.In vitro reconstitution of human kidney structures for renal cell therapy.Nephrol Dial Transplant 0:1-9を参照のこと)へ組み込まれても良い。液体ゲルは、中性pHとされても良く、本明細書に開示される生物活性のある細胞調製物及び/または混合物は、約500~2500細胞/ulで混合されても良い。1つの実施形態においては、約1000細胞/ulが混合される。細胞/ゲル混合物は、たとえば、約200~約400ul/ウェルの24ウェルプレートのウェルへと分注され、数時間、37℃で凝固されても良い。次いで、細胞培養培地を添加し、培地を定期的に交換しながら、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10日間、成熟するまで培養させても良い。1つの実施形態において、菅構造のネットワークは、本明細書に開示される生物活性のある細胞調製物及び/または混合物により、ゲルマトリクス全体に格子構造及び環状形態として組織化される。
【0080】
他の実施形態において、オルガノイドは、スピナーフラスコまたは低結合プラスチック製品中で、本明細書に開示される生物活性のある細胞調製物及び/または混合物の懸濁培養液により、形成されても良い。1つの実施形態において、約80rpm、最大で4日間、スピナーフラスコの培地中で細胞が培養されても良い。次いで、スフェロイドがさらに約7、約8、約9、または約10日間、たとえばマトリゲルコートプレート上で培養されても良い。1つの実施形態において、本明細書に開示される生物活性のある細胞調製物及び/または混合物から形成されたスフェロイドは、培養スフェロイドから新たに伸びた環状構造により示されるように、管形成の潜在力を示す。
【0081】
細胞群
本発明のSRC+細胞群及び/またはオルガノイドは、腎疾患の処置における使用のため(すなわち、腎機能の安定化及び/または改善及び/または再生をもたらすために)に、特定の生物活性のある成分または細胞型を富化した、及び/または、特定の不活性な、もしくは望ましくない成分または細胞型を枯渇させた、単離異種腎細胞群、及びその混合物を含有し、及び/または、から形成されても良い(PresnellらのUS2011-0117162及びIlaganらのPCT/US2011/036347に既に開示されている。参照により、その全内容が本明細書に援用される)。オルガノイドは、健常な個人と比較して細胞成分を欠いているが、治療特性を保持している(すなわち、腎機能の安定化及び/または改善及び/または再生をもたらす)単離腎細胞分画を含有しても良い。本明細書に開示される細胞群、細胞分画及び/または混合物は、健常な個人、腎疾患
を有する個人、または、本明細書に開示される対象から誘導されても良い。
【0082】
生物活性のある細胞群
本発明から、必要のある対象の標的器官または組織へと投与される、生物活性のある細胞群を含有する、治療用オルガノイド及びSRC+細胞群が予期される。通常、生物活性のある細胞群は、対象への投与に対する治療特性を潜在的に有する細胞群を指す。たとえば、必要のある対象への投与で、生物活性のある腎細胞群を含有するオルガノイドは、対象の腎機能の安定化及び/または改善及び/または再生をもたらすことができる。治療特性に、再生効果が含まれても良い。
【0083】
生物活性のある細胞群としては、限定されないが、たとえば胚性幹細胞、羊膜幹細胞、成体幹細胞(たとえば、造血幹細胞、乳腺幹細胞、腸管幹細胞、間葉系幹細胞、胎盤幹細胞、肺幹細胞、骨髄幹細胞、血液幹細胞、臍帯幹細胞、内皮幹細胞、歯髄幹細胞、脂肪幹細胞、神経幹細胞、嗅神経幹細胞、神経堤幹細胞、精巣幹細胞等)等の幹細胞(たとえば多能性、多分化能、2以上の分化能、または単分化能等)、人工多能性幹細胞;遺伝子操作された細胞;ならびに、任意の身体の源から誘導された細胞群または組織片が挙げられる。生物活性のある細胞群は、単離、富化、精製、同種または異種の性質であっても良い。当業者であれば、本発明のオルガノイドの作製における使用に適した他の生物活性のある細胞群を認識するであろう。
【0084】
1つの実施形態において、細胞の源は、意図される標的器官または組織と同じである。たとえば、腎細胞は、当該腎臓へ投与されるオルガノイドを作製するために、当該腎臓から調達されても良い。他の実施形態において、細胞の源は、意図される標的器官または組織と同じではない。たとえば、エリスロポエチン発現細胞は、当該腎臓へ投与されるオルガノイドを作製するために、腎脂肪から調達されても良い。
【0085】
1つの態様において、本発明により、生物活性のある成分を富化され、不活性な、または望ましくない成分を枯渇された、異種腎細胞群のある亜分画を含有するオルガノイドが開示され、それにより、開始群よりも優れた治療転帰及び再生結果がもたらされる。たとえば、本明細書に開示される生物活性のある腎細胞(たとえば、B2、B4及びB3)は、不活性な、または望ましくない成分(たとえば、B1及びB5)が枯渇され、単独または混合されており、腎機能を安定化及び/または改善及び/または再生させるために用いられるオルガノイドを作製するために用いることができる。
【0086】
他の態様において、オルガノイドは、特定の亜分画、B4(1以上の細胞型(たとえば、血管、内分泌または内皮)を枯渇または欠如している、すなわちB4´であり、単独で、または他の生物活性のある亜分画(たとえば、B2及び/またはB3)と混合された際に、治療特性(たとえば、腎機能の安定化及び/または改善及び/または再生)を保持している)を含有する。好ましい実施形態において、生物活性のある細胞群は、B2である。ある実施形態において、B2細胞群は、B4またはB4´と混合される。他の実施形態において、B2細胞群は、B3と混合される。他の実施形態において、B2細胞群は、B3及びB4の両方、または、B3及び/またはB4の特定の細胞性成分と混合される。
【0087】
B2細胞群は、以下の1つ以上からなる群から選択される尿細管細胞マーカーの発現により特徴付けられる:メガリン、キュビリン、ヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)、ビタミンD3 25-ヒドロキシラーゼ(CYP2D25)、N-カドヘリン(Ncad)、E-カドヘリン(Ecad)、アクアポリン-1(Aqp1)、アクアポリン-2(Aqp2)、RAB17、メンバーRAS癌遺伝子ファミリー(Rab17)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、FXYDドメイン含有イオン輸送レギュレーター4(Fxyd4)、溶質担体ファミリー9(ナトリウム/水素交換)、メンバー4(Slc9a
4)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリー、メンバーB1(Aldh3b1)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリー、メンバーA3(Aldh1a3)、及び、カルパイン-8(Capn8)、及び集合尿細管マーカーアクアポリン-4(Aqp4)。B2は、B3及び/またはB4よりも大きく、粒状であり、それゆえに、約1.045g/ml~約1.063g/ml(げっ歯類)、約1.045g/ml~1.052g/ml(ヒト)、及び約1.045g/ml~約1.058g/ml(イヌ科)の浮遊密度を有している。
【0088】
B3細胞群は、何らかのEPO産生細胞を伴う、血管、糸球体及び近位尿細管マーカーの発現により特徴付けられ、B2及びB4と比較して、中間のサイズと粒度であり、ゆえに、約1.063g/ml~約1.073g/ml(げっ歯類)、約1.052g/ml~約1.063g/ml(ヒト)、及び約1.058g/ml~約1.063g/ml(イヌ科)の浮遊密度を有している。B3は、以下の1つ以上からなる群から選択されるマーカーの発現により特徴付けられる:アクアポリン7(Aqp7)、FXYDドメイン含有イオン輸送レギュレーター2(Fxyd2)、溶質担体ファミリー17(リン酸ナトリウム)、メンバー3(Slc17a3)、溶質担体ファミリー3、メンバー1(Slc3a1)、クラウジン2(Cldn2)、ナプシンAアスパラギン酸ペプチダーゼ(Napsa)、溶質担体ファミリー2(グルコース促進トランスポーター)、メンバー2(Slc2a2)、アラニル(膜)アミノペプチダーゼ(Anpep)、膜貫通タンパク質27(Tmem27)、アシル-CoA合成酵素中鎖ファミリーメンバー2(Acsm2)、グルタチオンペルオキシダーゼ3(Gpx3)、フルクトース-1,6-バイホスファターゼ1(Fbp1)、及び、アラニン-グリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ2(Agxt2)。B3はまた、血管発現マーカーである、血小板内皮細胞付着分子(Pecam)及び、糸球体発現マーカーであるポドシン(Podn)により特徴付けられる。
【0089】
B4細胞群は、以下の1つ以上を含有する血管マーカーセットの発現により特徴付けられる:PECAM、VEGF、KDR、HIF1a、CD31、CD146;以下の1つ以上を含有する糸球体マーカーセット:ポドシン(Podn)、及びネフリン(Neph);及び、未分画(UNFX)と比較して、酸素調整可能なEPO富化群、B2及びB3。B4はまた、以下のマーカーの1つ以上の発現により特徴付けられる:ケモカイン(C-X-Cモチーフ)受容体4(Cxcr4)、エンドセリン受容体B型(Ednrb)、コラーゲン、V型、α2(Col5a2)、カドヘリン5(Cdh5)、プラスミノーゲン活性化因子、組織(Plat)、アンギオポエチン2(Angpt2)、キナーゼ挿入ドメインタンパク質受容体(Kdr)、分泌型タンパク質、酸性、システインリッチ(オステオネクチン)(Sparc)、セルグリシン(Srgn)、TIMPメタロペプチダーゼインヒビター3(Timp3)、Wilms腫瘍1(Wt1)、ウィングレス型MMTV結合部位ファミリー、メンバー4(Wnt4)、Gタンパク質シグナル伝達4のレギュレーター(Rgs4)、血小板内皮細胞付着分子(Pecam)、及び、エリスロポエチン(Epo)。B4はまた、B2またはB3のいずれかと比較して、小さく、粒度が低いことにより特徴付けられ、浮遊密度は、約1.073g/ml~約1.091g/ml(げっ歯類)、約1.063g/ml~約1.091g/mL(ヒト及びイヌ科)である。
【0090】
B4´細胞群は、約1.063g/ml~約1.091g/mLの浮遊密度を有し、以下のマーカーの1つ以上を発現していると定義される:PECAM、vEGF、KDR、HIF1a、ポドシン、ネフリン、EPO、CK7、CK8/18/19。1つの実施形態において、B4´細胞群は、以下の1つ以上を含有する血管マーカーセットの発現により特徴付けられる:PECAM、vEGF、KDR、HIF1a、CD31、CD146。他の実施形態において、B4´細胞群は、内分泌マーカーEPOの発現により特徴付けられる。1つの実施形態において、B4´細胞群は、以下の1つ以上を含有する糸球体マ
ーカーの発現により特徴付けられる:ポドシン(Podn)、及びネフリン(Neph)。ある実施形態において、B4´細胞群は、以下の1つ以上を含有する血管マーカーセットの発現により特徴付けられ:PECAM、vEGF、KDR、HIF1a、及び、内分泌マーカーEPOの発現により特徴付けられる。他の実施形態において、B4´細胞群はまた、B2またはB3のいずれかと比較して、小さく、粒度が低いことにより特徴付けられ、浮遊密度は、約1.073g/ml~約1.091g/ml(げっ歯類)、約1.063g/ml~約1.091g/mL(ヒト及びイヌ科)である。
【0091】
1つの態様において、本発明により、1.063g/mL~1.091g/mLの密度を有する、エリスロポエチン(EPO)産生細胞、血管細胞、及び糸球体細胞のうち少なくとも1つを含有する、単離されたヒト腎細胞の富化B4´群を含有するオルガノイドが開示される。1つの実施形態において、B4´細胞群は、血管マーカーの発現により特徴付けられる。ある実施形態において、B4´細胞群は、糸球体マーカーの発現により特徴付けられない。一部の実施形態において、B4´細胞群は、酸素調整可能なエリスロポエチン(EPO)発現を行うことができる。
【0092】
1つの実施形態において、本発明のオルガノイドは、B4´細胞群を含有するが、1.045g/mL~1.052g/mLの密度を有する尿細管細胞を含有するB2細胞群を含有しない。他の実施形態において、B4´細胞群含有オルガノイドは、<1.045g/mlの密度を有する集合尿細管及び尿細管システムの大きな粒度の細胞を含有するB1細胞群を含有しない。さらに他の実施形態において、B4´細胞群オルガノイドは、細胞残渣及び、>1.091g/mlの密度を伴う低粒度及び低活性の小細胞を含有するB5細胞群を含有しない。
【0093】
1つの実施形態において、B4´細胞群含有オルガノイドは、1.045g/mL~1.052g/mLの密度を有する尿細管細胞を含有するB2細胞群;<1.045g/mlの密度を有する集合尿細管及び尿細管システムの大きな粒度の細胞を含有するB1細胞群;ならびに、細胞残渣及び、>1.091g/mlの密度を有する低粒度及び低活性の小細胞を含有するB5細胞群、を含有しない。一部の実施形態において、B4´細胞群は、腎疾患を有する対象由来であっても良い。
【0094】
1つの態様において、本発明により、第一の細胞群であるB2(1.045g/mL~1.052g/mLの密度を有する、単離された、富化尿細管細胞群を含有する)、及び、第二の細胞群であるB4´(約1.063g/ml~1.091g/mLの密度を有する、エリスロポエチン(EPO)産生細胞及び血管細胞を含有するが、糸球体細胞を枯渇している)を含有するヒト腎細胞の混合物を含有するオルガノイドが開示され、ここで、当該混合物は、<1.045g/mlの密度を有する集合尿細管及び尿細管システムの大きな粒度の細胞を含有するB1細胞群を含有せず、または、細胞残渣及び、>1.091g/mlの密度を有する低粒度及び低活性の小細胞を含有するB5細胞群を含有しない。ある実施形態において、B4´細胞群は、血管マーカーの発現により特徴付けられる。1つの実施形態において、B4´細胞群は、糸球体マーカーの発現により特徴付けられない。ある実施形態において、B2はさらに、集合尿細管上皮細胞を含有する。1つの実施形態において、オルガノイドは、受容体介在性アルブミン取り込みを行うことができる、細胞の混合物を含有、または、から形成されている。他の実施形態において、当該細胞の混合物は、酸素調整可能なエリスロポエチン(EPO)発現を行うことができる。1つの実施形態において、当該混合物は、in vitro及びin vivoの両方で、高分子量種のヒアルロン酸(HA)を産生することができる、及び/または、産生を刺激することができる、HAS-2発現細胞を含有する。全ての実施形態において、第一の細胞群及び第二の細胞群は、腎組織または培養腎細胞由来であっても良い(Basu et al.Lipids in Health and Disease,2011,10:17
1)。
【0095】
1つの実施形態において、オルガノイドは、in vivo送達を行うことで、再生刺激をもたらすことができる混合物を含有する。他の実施形態において、混合物は、in vivo送達を行うことで、糸球体濾過、尿細管再吸収、尿産生及び/または内分泌機能の衰退を減少させることができ、安定化させることができ、または改善することができる。1つの実施形態において、B4´細胞群は、腎疾患を有する対象由来である。
【0096】
1つの態様において、本発明により、1.063g/mL~1.091g/mLの密度を有する、エリスロポエチン(EPO)産生細胞、血管細胞及び糸球体細胞のうち少なくとも1つを含有する、単離されたヒト腎細胞富化B4´群を含有するオルガノイドが開示される。1つの実施形態において、B4´細胞群は、血管マーカーの発現により特徴付けられる。ある実施形態において、B4´細胞群は、糸球体マーカーの発現により特徴付けられない。発現されない糸球体マーカーは、ポドシンであっても良い(実施例10を参照のこと)。一部の実施形態において、B4´細胞群は、酸素調整可能なエリスロポエチン(EPO)の発現を行うことができる。
【0097】
1つの実施形態において、B4´細胞群含有オルガノイドは、1.045g/mL~1.052g/mLの密度を有する、尿細管細胞を含有するB2細胞群を含有しない。他の実施形態において、B4´細胞群オルガノイドは、<1.045g/mlの密度を有する集合尿細管及び尿細管システムの大きな粒度の細胞を含有するB1細胞群を含有しない。さらに他の実施形態において、B4´細胞群オルガノイドは、細胞残渣及び、>1.091g/mlの密度を有する低粒度及び低活性の小細胞を含有するB5細胞群を含有しない。
【0098】
1つの実施形態において、B4´細胞群含有オルガノイドは、1.045g/mL~1.052g/mLの密度を有する、尿細管細胞を含有するB2細胞群;<1.045g/mlの密度を有する集合尿細管及び尿細管システムの大きな粒度の細胞を含有するB1細胞群;ならびに、細胞残渣及び、>1.091g/mlの密度を有する低粒度及び低活性の小細胞を含有するB5細胞群、を含有しない。一部の実施形態において、B4´細胞群は、腎疾患を有する対象由来であっても良い。
【0099】
1つの態様において、本発明により、第一の細胞群であるB2(1.045g/mL~1.052g/mLの密度を有する、単離された、富化尿細管細胞群を含有する)、及び、第二の細胞群であるB4´(約1.063g/mL~1.091g/mLの密度を有する、エリスロポエチン(EPO)産生細胞及び血管細胞を含有するが、糸球体細胞を枯渇している)を含有するヒト腎細胞の混合物を含有するオルガノイドが開示され、ここで、当該混合物は、<1.045g/mlの密度を有する集合尿細管及び尿細管システムの大きな粒度の細胞を含有するB1細胞群を含有せず、または、細胞残渣及び、>1.091g/mlの密度を有する低粒度及び低活性の小細胞を含有するB5細胞群を含有しない。ある実施形態において、B4´細胞群は、血管マーカーの発現により特徴付けられる。1つの実施形態において、B4´細胞群は、糸球体マーカーの発現により特徴付けられない。ある実施形態において、B2はさらに、集合尿細管上皮細胞を含有する。1つの実施形態において、当該細胞の混合物は、受容体介在性アルブミン取り込みを行うことができる。他の実施形態において、当該細胞の混合物は、酸素調整可能なエリスロポエチン(EPO)発現を行うことができる。1つの実施形態において、当該混合物は、in vitro及びin vivoの両方で、高分子量種のヒアルロン酸(HA)を産生することができる、及び/または、産生を刺激することができる、HAS-2発現細胞を含有する。全ての実施形態において、第一の細胞群及び第二の細胞群は、腎組織または培養腎細胞由来であっても良い。
【0100】
他の態様において、本発明により、細胞分画または富化細胞群の組み合わせ(たとえば、B1、B2、B3、B4(またはB4´)、及びB5)を含有する異種腎細胞群を含有するオルガノイドが開示される。1つの実施形態において、当該組み合わせは、約1.045g/ml~約1.091g/mlの浮遊密度を有する。他の1つの実施形態において、当該組み合わせは、約1.045g/ml未満~約1.099g/mlまたは約1.100g/mlの浮遊密度を有する。他の実施形態において、当該組み合わせは、たとえば、遠心による密度勾配での分離により測定される浮遊密度を有している。さらに他の実施形態において、細胞分画の組み合わせは、B2、B3及びB4(またはB4´)を含有し、B1及び/またはB5を枯渇する。一部の実施形態において、細胞分画の組み合わせは、B2、B3、B4(またはB4´)及びB5を含有するが、B1を枯渇する。B2、B3及びB4(またはB4´)細胞分画の組み合わせを含有するオルガノイドの製造を行う前に、B1及び/またはB5を枯渇した時点で、当該組み合わせを引き続きin vitroで培養しても良い。
【0101】
本発明の発明者らは、驚くことに、B1が枯渇したB2、B3、B4及びB5の組み合わせをin vitroで培養することにより、B5が枯渇することを見出した。1つの実施形態において、B5は、少なくとも1、2、3、4または5回の継代の後で枯渇する。他の1つの実施形態において、B2、B3、B4及びB5の細胞分画の組み合わせを本明細書に開示される条件下で継代することにより、当該継代細胞群の約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、または約0.5%未満の割合でB5を有する継代細胞群がもたらされる。
【0102】
他の実施形態において、B4´は、細胞分画の組み合わせの一部である。他の1つの実施形態において、B5を欠落させるin vitro培養は、低酸素条件下である。
【0103】
1つの実施形態において、オルガノイドは、in vivo送達で再生刺激を与えることができる混合物を含有する。他の実施形態において、当該混合物は、in vivo送達を行うことで、糸球体濾過、尿細管再吸収、尿産生及び/または内分泌機能の衰退を減少させることができ、安定化させることができ、または改善することができる。1つの実施形態において、B4´細胞群は、腎疾患を有する対象由来である。
【0104】
好ましい実施形態において、オルガノイドは、B3及び/またはB4と組み合わせてB2を含有する混合物を含有、及び/または、から形成される。他の好ましい実施形態において、当該混合物は、B3及び/またはB4´と組み合わせてB2を含有する。他の好ましい実施形態において、当該混合物は、(i)B3及び/またはB4と組み合わせたB2;または、(ii)B3及び/またはB4´と組み合わせたB2、からなる、または、から本質的になる。
【0105】
B4´細胞群を含有する混合物は、健康ではない対象から得たB2及び/またはB3細胞群を含有しても良い。当該健康ではない対象は、B4´分画を得た対象と同じ対象であっても良い。B4´細胞群とは対照的に、健康ではない対象から得たB2及びB3細胞群は、健康な個体から得た開始腎細胞群と比較して、通常、1つ以上の特定の細胞型を欠如していない。
【0106】
PresnellらのWO/2010/056328に記述されるように、B2及びB4細胞群は、in vitro及びin vivoの両方で、B2細胞群においてより特異的に富化されたマーカーであるヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)の作用により、高分子量種のヒアルロン酸(HA)を産生することができることが判明している。5/6NxモデルにおけるB2を用いた処置により、線維症が減少することと同時に、in vi
voでHAS2が強発現することが示されており、当該処置組織内において高分子量HAが産生されていることが予測されている。特に、未処置の5/6Nxモデルは、わずかなHAS-2しか検出されず、高分子量HAの産生もほとんどなく、線維症を発症した。学説に拘束されることは望まないが、主にB2(及び、ある程度はB4)により産生されるこの抗炎症性高分子量種HAが、細胞調製物と相乗的に腎線維症の減少に作用し、腎臓再生の補助となったと仮定されている。従って、本発明には、ヒアルロン酸を含有するバイオマテリアルと併せて本明細書に開示される生物活性のある腎細胞を含有するオルガノイドが含まれる。また、本発明により、移植細胞による直接的な産生または産生刺激を介した、再生刺激性のバイオマテリアル成分の提供が予期される。
【0107】
1つの態様において、本発明により、必要のある対象の腎疾患、貧血、及び/または、EPO欠乏症の処置における使用のための、単離された、異種EPO産生腎細胞群を含有する、及び/または、から作製されるオルガノイドが開示される。1つの実施形態において、当該細胞群は、腎生検由来である。他の実施形態において、当該細胞群は、全腎組織由来である。他の1つの実施形態において、当該細胞群は、腎生検または全腎組織から確立された哺乳類腎細胞のin vitro培養物由来である。全ての実施形態において、これら群は、未分画の細胞群(本明細書において、非富化細胞群とも呼称される)である。
【0108】
他の態様において、本発明により、開始細胞群または最初の細胞群におけるEPO産生細胞の比率と比較して、富化亜群におけるEPO産生細胞の比率が高くなるよう、さらに富化されたエリスロポエチン(EPO)産生腎細胞の単離群を含有するオルガノイド、及び/または、から作製されたオルガノイドが開示される。1つの実施形態において、富化EPO産生細胞分画は、富化されていない最初の群に含有されていた間質線維芽細胞及び尿細管細胞と比較して、高い割合の間質線維芽細胞と低い割合の尿細管細胞を含有している。ある実施形態において、富化EPO産生細胞分画は、付加されていない最初の群に含有されていた糸球体細胞、血管細胞、及び集合尿細管細胞と比較して、高い割合の糸球体細胞及び血管細胞、ならびに、低い割合の集合尿細管細胞を含有している。当該実施形態において、これらの群は、本明細書において、「B4」細胞群と呼称される。
【0109】
他の態様において、本発明により、1以上の追加の腎細胞群と混合されたEPO産生腎細胞群を含有するオルガノイド、及び/または、から作製されるオルガノイドが開示される。1つの実施形態において、EPO産生細胞群は、EPO産生細胞が富化された第一の細胞群(たとえば、B4)である。他の実施形態において、当該EPO産生細胞群は、EPO産生細胞が富化されていない第一の細胞群(たとえば、B2)である。他の実施形態において、第一の細胞群は、第二の腎細胞群と混合される。一部の実施形態において、第二の細胞群は尿細管細胞が富化され、それらは、尿細管細胞の表現型の存在により示されうる。他の実施形態において、尿細管細胞の表現型は、1つの尿細管細胞マーカーの存在により示されても良い。他の実施形態において、尿細管細胞の表現型は、1以上の尿細管細胞マーカーの存在により示されても良い。尿細管細胞のマーカーとしては、限定されないが、メガリン、キュビリン、ヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)、ビタミンD3 25-ヒドロキシラーゼ(CYP2D25)、N-カドヘリン(Ncad)、E-カドヘリン(Ecad)、アクアポリン-1(Aqp1)、アクアポリン-2(Aqp2)、RAB17、メンバーRAS癌遺伝子ファミリー(Rab17)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、FXYDドメイン含有イオン輸送レギュレーター4(Fxyd4)、溶質担体ファミリー9(ナトリウム/水素交換)、メンバー4(Slc9a4)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリー、メンバーB1(Aldh3b1)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリー、メンバーA3(Aldh1a3)、及び、カルパイン-8(Capn8)が挙げられる。他の実施形態において、第一の細胞群は、限定されないが、間質由来細胞、尿細管細胞、集合尿細管由来細胞、糸球体由来細胞、及び/または、血液も
しくは血管系に由来する細胞、を含む、数種の腎細胞型のうち少なくとも1つと混合される。
【0110】
本発明のオルガノイドは、B2及び/またはB3との混合の形態で、または、富化細胞群の形態(たとえば、B2+B3+B4/B4´)で、B4またはB4´を含有するEPO産生腎細胞群を含有、または、から形成されても良い。
【0111】
1つの態様において、オルガノイドは、培養システムの酸素圧の減少によってEPOの発現が誘導されるよう、EPO発現及び酸素に対する生体反応性により特徴付けられるEPO産生腎細胞群を含有する、及び/または、から作製される。1つの実施形態においてEPO産生細胞群は、EPO産生細胞を富化されている。1つの実施形態において、培養システム中の細胞が利用可能な酸素のレベルが低下した状態に細胞が供される条件下で細胞群が培養された際に、通常の大気の利用可能酸素レベル(約21%)で培養された細胞群と比較して、EPO発現が誘導される。1つの実施形態において、低酸素条件下で培養されたEPO産生細胞は、通常の酸素条件で培養されたEPO産生細胞と比較して、高いレベルのEPOを発現する。通常、利用可能な酸素レベルが低い状態で細胞を培養すること(低酸素培養条件とも呼称される)は、通常の大気の利用可能な酸素レベル(正常または通常酸素培養条件とも呼称される)で細胞を培養することと比較して、酸素レベルが低下していることを意味する。1つの実施形態において、低酸素細胞培養条件は、約1%未満の酸素、約2%未満の酸素、約3%未満の酸素、約4%未満の酸素、または約5%未満の酸素で細胞を培養することを含む。他の実施形態において、正常または通常酸素培養条件は、約10%酸素、約12%酸素、約13%酸素、約14%酸素、約15%酸素、約16%酸素、約17%酸素、約18%酸素、約19%酸素、約20%酸素、または約21%酸素で細胞を培養することを含む。
【0112】
他の1つの実施形態において、EPOの誘導またはEPO発現の増加が行われ、及び、それらは利用可能な酸素が約5%未満の状態で細胞を培養し、大気(約21%)酸素で培養された細胞のEPO発現レベルと比較することにより観察することができる。他の実施形態において、細胞培養が大気酸素状態(約21%)で何らかの期間、行われる第一の培養フェーズと、利用可能な酸素レベルを低下させ、利用可能な酸素が約5%未満の状態で同細胞を培養する第二の培養フェーズを含む方法によってEPOを発現することができる細胞の培養において、EPOの誘導が得られる。他の実施形態において、低酸素状態に反応性のEPO発現は、HIF1αにより制御される。当業者であれば、当分野に公知の他の酸素操作培養条件が、本明細書に開示される細胞に対して行われうることを認識するであろう。
【0113】
1つの態様において、オルガノイドは、かん流条件に対して生体反応性(たとえば、EPO発現)であることにより特徴付けられるEPO産生哺乳類細胞の富化群を含有、及び/または、から形成される。1つの実施形態において、かん流条件には、一過性、断続的、または継続的な液体の流れ(かん流)が含まれる。1つの実施形態において、EPO発現は、細胞が培養されている培地を、当該流れを介して細胞に動力が伝わるような様式で、断続的もしくは継続的に循環または攪拌させた場合に、機械的に誘導される。1つの実施形態において、3次元構造が形成されるようなフレームワーク及び/または空間をもたらす物質中、または物質上で、一過性、断続的または継続的な液流に供された細胞を、3次元構造として当該細胞が存在するような様式で、培養する。1つの実施形態において、当該細胞を、多孔性ビーズ上で培養し、振動プラットホーム、軌道プラットホーム、またはスピナーフラスコを用いて、断続的または継続的な液流に供する。他の実施形態においては、当該細胞は3次元スキャホールド上で培養され、ならびに、当該スキャホールドが固定され、及び、液流が直接当該スキャホールドを通る、または横切るデバイスへと、置かれる。当業者であれば、当分野に公知の他のかん流培養条件を、本明細書に開示される
細胞に対して用いうることを認識するであろう。
【0114】
不活性細胞群
本明細書において、本発明は、生物活性のある成分を富化し、不活性な、または望ましくない成分を枯渇させた異種腎細胞群のある亜分画を含有するオルガノイド、及び/または、から形成されたオルガノイドによって、開始群よりも優れた治療転帰及び再生結果がもたらされるという驚きの発見に部分的に基づいている。好ましい実施形態において、本発明に開示されるオルガノイドは、B1及び/またはB5細胞群を枯渇された細胞群を含有している。たとえば、以下はB1及び/またはB5を枯渇しても良い:B2、B3及びB4(またはB4´)のうち2以上の混合物;B2、B3及びB4(またはB4´)を富化した細胞群。
【0115】
B1細胞群は、集合尿細管及び尿細管システムの大きな顆粒細胞を含有しており、当該群の当該細胞は、約1.045g/m未満の浮遊密度を有している。B5細胞群は、細胞残渣ならびに、約1.091g/ml超の浮遊密度を有する、低粒度及び低活性の小細胞から構成されている。
【0116】
細胞群の単離及び培養方法
1つの態様において、本発明のSRC+細胞群及び/またはオルガノイドは、腎組織から単離、及び/または、培養された細胞群を含有、及び/または、から形成される。本明細書において、腎疾患、貧血、EPO欠乏症、尿細管輸送障害、及び糸球体濾過障害の処置を含む、治療用途のためのオルガノイド中に含有される富化細胞群等の腎細胞成分を分離及び単離する方法が開示される。1つの実施形態において、細胞群は、消化されたばかりの、すなわち、機械的または酵素的に消化されたばかりの腎組織から単離され、または、哺乳類腎細胞のin vitro異種培養物から単離される。本発明のSRC+細胞群を含有する、さらなる生物活性のある細胞群を単離する方法を、実施例に詳述する。
【0117】
オルガノイドは、B4(B4´を含む)ならびに、B2及び/またはB3分画の両方中の分配及び組成を富化させるための密度勾配分離を行う前に、低酸素条件下で培養された腎細胞の異種混合物を含有、及び/または、から形成されても良い。罹患した腎臓及び罹患していない腎臓の両方から単離された腎細胞において、B2からB4の、酸素依存性細胞の富化が認められる。学説に拘束されることは望まないが、これは、以下の現象の1つ以上によるものである可能性がある:1)低酸素培養期間中の、特定の細胞成分の選択的生存、死亡、または増殖;2)低酸素培養に反応して細胞の粒度及び/またはサイズが変化し、それにより、浮遊密度の変化と、それに続く、密度勾配分離中の位置の変化が生じる;及び、3)低酸素培養期間に反応して細胞遺伝子/タンパク質発現が変化し、それにより、所与の勾配分画内の細胞の異なる特性がもたらされた。ゆえに、1つの実施形態において、オルガノイドは、低酸素抵抗性である、尿細管細胞が富化された細胞群(たとえば、B2)を含有、及び/または、から形成される。
【0118】
本発明の細胞群を分離及び単離するための技術例としては、対象群に含有されている異なる細胞型の異なる比重に基づいた密度勾配での分離が挙げられる。所与の細胞型の比重は、細胞内の粒度の程度、細胞内の水の量、及び他の因子により影響を受けることがある。1つの態様において、本発明により、複数の種(限定されないが、ヒト、イヌ科、及びげっ歯類を含む)にわたる、本発明の細胞調製物(たとえば、B2及びB4(B4´を含む))の単離のための最適な勾配条件が開示される。好ましい実施形態において、密度勾配を用いて、異種腎細胞群由来の尿細管細胞分画(すなわち、B2細胞群)の新規富化群を得る。1つの実施形態において、密度勾配を用いて、異種腎細胞群由来のEPO産生細胞分画(すなわち、B4細胞群)の新規富化群を得る。他の実施形態において、密度勾配を用いて、腎臓の尿細管細胞、糸球体細胞、及び内皮細胞の富化亜群を得る。1つの実施
形態において、EPO産生細胞及び尿細管細胞の両方が、赤血球及び細胞残渣から分離される。1つの実施形態において、EPO産生細胞、糸球体細胞、及び血管細胞は、他の細胞型から分離され、ならびに、赤血球細胞及び細胞残渣から分離され、一方で、尿細管細胞及び集合尿細管細胞の亜群も併せて、他の細胞型ならびに赤血球及び細胞残渣から分離される。他の1つの実施形態において、内分泌細胞、糸球体細胞、及び/または、血管細胞は、他の細胞型ならびに赤血球及び細胞残渣から分離され、一方で、尿細管細胞及び集合尿細管細胞の亜群も併せて、他の細胞型ならびに赤血球及び細胞残渣から分離される。
【0119】
1つの態様において、本発明のオルガノイドは、以下に記述されるある重要な特性に基づき、OPTIPREP(登録商標)(Axis-Shield)密度勾配培地(水に溶解させた60%非イオン性ヨウ化化合物イオジキサノールを含有)を部分的に用いて作製された細胞群を含有、及び/または、から形成される。しかしながら、当業者であれば、本発明の細胞群の単離のために必要な特性を有する任意の密度勾配または他の手段(たとえば、当分野に公知の細胞表面マーカーを用いた免疫学的分離等)を本発明に従い用いても良いことを認識するであろう。また、当業者であれば、密度勾配(サイズ及び粒度)を介した細胞亜群分離に寄与する同じ細胞特性を活用して、フローサイトメトリーを介した細胞亜群への分離が可能であることを認識するであろう(フォワードスキャッター=フローサイトメトリーを介したサイズの反映、及び、サイドスキャッター=粒度の反映)。重要なことは、密度勾配培地は、対象の特定の細胞に対し、毒性を低くすることである。密度勾配培地は対象の特定の細胞に対し毒性を低くしなければならないため、本発明からは、勾配培地の使用が、対象細胞の選択プロセスにおいて重要な役割を果たすことが予期される。学説に拘束されることは望まないが、イオジキサノールを含有する勾配から回収された本発明の細胞群は、イオジキサノール抵抗性であり、ローディング工程と回収工程の間で細胞の喪失が相当量あることから、勾配条件下でイオジキサノールに曝すことにより、ある細胞が排除されていることが示唆される。イオジキサノール勾配後に特定のバンドに現れる細胞は、イオジキサノール及び/または密度勾配の露出の何らかの有害作用に対し、抵抗性である。従って、本明細書に開示されるオルガノイドのための細胞群の単離及び/または選択において、軽度から中程度の腎毒性である追加の造影剤を用いることがまた予期される。さらに、密度勾配培地はまた、ヒト血漿中のタンパク質に結合してはならず、または、対象細胞の重要な機能に悪影響を与えてはならない。
【0120】
他の態様において、本発明により、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いて腎細胞型を富化及び/または枯渇させた細胞群を含有するオルガノイド、及び/または、から形成されたオルガノイドが開示される。1つの実施形態において、腎細胞型は、BD
FACSAria(商標)またはその均等物を用いて富化及び/または枯渇されても良い。
【0121】
他の態様において、オルガノイドは、磁性細胞ソーティングを用いて腎細胞型を富化及び/または枯渇させた細胞群を含有、及び/または、から形成される。1つの実施形態において、腎細胞型は、Miltenyi autoMACS(登録商標)またはその均等物を用いて富化、及び/または、枯渇されていても良い。
【0122】
他の態様において、オルガノイドは、3次元培養に供された腎細胞群を含有、及び/または、から形成されても良い。1つの態様において、細胞群を培養する方法は、継続的なかん流を介するものである。1つの実施形態において、3次元培養及び継続的なかん流を介して培養された細胞群は、静的培養された細胞群と比較し、高い細胞充実度及び相互接続性を示す。他の実施形態において、3次元培養及び継続的なかん流を介して培養された細胞群は、当該細胞群を静的に培養した場合と比較し、高いEPOの発現、ならびに、たとえばe-カドヘリン等の腎尿細管関連遺伝子の高い発現を示す。さらに他の実施形態において、継続的なかん流を介して培養された細胞群は、静的に培養された細胞群と比較し
て、高いレベルのグルコース消費及びグルタミン消費を示す。
【0123】
本明細書に開示されるように、本発明のオルガノイドのための細胞群を製造する方法において、低酸素条件を用いても良い。しかし、細胞群の製造方法は、低酸素条件の工程無しで用いられても良い。1つの実施形態においては、正常酸素条件を用いても良い。
【0124】
当業者であれば、当分野に公知の他の単離及び培養方法を、本明細書に開示される細胞に用いても良いことを認識するであろう。
【0125】
バイオマテリアル
Bertramらの米国特許公開20070276507に開示されるように、ポリマーマトリクスまたはスキャホールドを、任意の数の全体的なシステム制限、形状制限、または空間的制限を満たすために所望される任意の数の構造へと成形しても良い。1つの実施形態において、本発明のマトリクスまたはスキャホールドは、3次元構造であってもよく、及び、器官構造または組織構造の大きさ及び形状に合わせるために成形されても良い。たとえば、腎疾患、貧血、EPO欠乏、尿細管輸送障害、または糸球体濾過障害の処置に対するポリマースキャホールドの使用において、3次元(3-D)マトリクスを用いても良い。様々な異なる形状の3-Dスキャホールドを用いても良い。当然ながら、ポリマーマトリクスは、異なるサイズの患者に合わせるために、異なるサイズ及び形状に成形されても良い。また、ポリマーマトリクスは、患者の特別のニーズに対応するために他の方法で成形されても良い。他の実施形態において、ポリマーマトリクスまたはスキャホールドは、生体適合性の多孔性ポリマースキャホールドであっても良い。当該スキャホールドは、様々な合成物質または天然物質(限定されないが、オープンセルポリ乳酸(OPLA(登録商標))、セルロースエーテル、セルロース、セルロースエステル、フッ素化ポリエチレン、フェノール、ポリ-4-メチルペンテン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリベンゾキサゾール、ポリカルボネート、ポリシアノアリールエーテル、ポリエステル、ポリエステルカルボネート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリフルオロオレフィン、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリオキサジアゾール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリチオエーテル、ポリトリアゾール、ポリウレタン、ポリビニル、ポリビニリデンフッ化物、再生セルロース、シリコーン、尿素-ホルムアルデヒド、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、グリコサミノグリカン、絹、エラスチン、アルギン酸、ヒアルロン酸、アガロース、またはそれらのコポリマーもしくは物理的混合物が挙げられる)から形成されても良い。スキャホールドの構造は、液体ハイドロゲル懸濁液から、柔らかい多孔性スキャホールド、硬い形状維持多孔性スキャホールドに及んでも良い。
【0126】
スキャホールドは、任意のバイオマテリアルの形状(限定されないが、希釈剤、細胞担体、マイクロビーズ、マテリアル断片、合成物(限定されないが、PGA、PLGA、PLLA、OPLA、エレクトロスパンナノファイバーが挙げられる)のスキャホールド、及び合成物(限定されないが、PGA、PLGA、PLLA、OPLA、エレクトロスパンナノファイバーが挙げられる)の発泡体、が挙げられる)から構成されていても良い。
【0127】
ハイドロゲルは、様々なポリマー物質から形成されても良く、及び、様々なバイオメディカル応用において有用である。ハイドロゲルは、親水性ポリマーの3次元ネットワークとして物理的に特徴付けられることができる。ハイドロゲルのタイプに応じて、それらは、各割合の水を含有するが、水に完全には溶解しない。高含水量にもかかわらず、ハイドロゲルは、その親水性残基の存在により、かなりの量の液体にさらに結合することができる。ハイドロゲルはそのゲル状構造を変えることなく、かなり膨らむことができる。ハイ
ドロゲルの基本的な物理的特性は、用いられたポリマーの特性及び製品の特殊な追加備品に応じて、具体的に改変することができる。
【0128】
好ましくは、ハイドロゲルは、生物学的に不活性であり、哺乳類組織との生理学的な適合性を有する、生物由来の原料、合成物質由来の原料、または、それらの組み合わせであるポリマーから作製される。ハイドロゲルの原料は、好ましくは、炎症反応を誘導しないものである。ハイドロゲル形成に用いることができる他の原料の例としては、(a)改変アルギン酸塩、(b)一価カチオンに曝すことによりゲル化する多糖(たとえば、ジェランガム及びカラギーナン)、(c)非常に粘性のある液体または揺変性であり、構造のゆっくりとした変化により経時的にゲルを形成する多糖(たとえば、ヒアルロン酸)、及び、(d)ポリマーハイドロゲル前駆物質(たとえば、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレングリコールブロックコポリマー及びタンパク質)、が挙げられる。米国特許第6,224,893 B1号において、様々なポリマーに関する細かな説明、及び本発明によるハイドロゲルの作製に適したポリマーの化学的特性が記載されている。
【0129】
スキャホールドの特性またはバイオマテリアルの特性により、細胞が付着することができ、及び、スキャホールドマテリアルまたはバイオマテリアルと相互作用することができ、ならびに/または、細胞がトラップされることができる多孔性の空間がもたらされうる。1つの実施形態において、本発明の多孔性スキャホールドまたはバイオマテリアルにより、細胞の1以上の群または混合物が、多孔性スキャホールドとして構成されたバイオマテリアル上に(細胞の付着により)、及び/またはスキャホールドの孔内に(たとえば、細胞がトラップされることにより)付加または沈着することが可能となる。他の実施形態において、スキャホールドまたはバイオマテリアルにより、当該スキャホールド内の細胞:細胞、及び/または、細胞:バイオマテリアルの相互作用が可能となり、または促進され、本明細書に開示される構築物が形成される。
【0130】
1つの実施形態において、本発明に従い用いられるバイオマテリアルは、ハイドロゲルの形態のヒアルロン酸(HA)から構成され、5.1kDAから>2x106kDaのサイズ範囲のHA分子を含有する。他の実施形態において、本発明に従い用いられるバイオマテリアルは、多孔性発泡体の形態のヒアルロン酸から構成され、5.1kDAから>2x106kDaのサイズ範囲のHA分子を含有する。さらに他の実施形態において、本発明に従い用いられるバイオマテリアルは、ポリ乳酸(PLA)ベースの発泡体から構成され、オープンセルの構造を有し、約50ミクロン~約300ミクロンの多孔サイズを有している。さらに他の実施形態において、特定の細胞群、好ましくは、B2のみならずB4により、特に腎内移植の後に、ヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)を介した高分子量ヒアルロン酸の合成が直接もたらされる、及び/または、合成が刺激される。
【0131】
本明細書に開示されるバイオマテリアルはまた、ある外部条件(たとえば、in vitroまたはin vivo)に反応するよう設計または適合されても良い。1つの実施形態において、バイオマテリアルは、温度感受性である(たとえば、in vitroまたはin vivoのいずれか)。他の実施形態において、バイオマテリアルは、酵素分解への露出に応答するよう適合されている(たとえば、in vitroまたはin vivoのいずれか)。外部条件に対するバイオマテリアルの反応は、本明細書に開示されるように微調整することができる。開示されるオルガノイドの温度感受性は、当該オルガノイド中のバイオマテリアルの割合を調節することにより変えることができる。あるいは、バイオマテリアルを化学的に架橋し、酵素分解に対しより抵抗性であるようにしても良い。たとえば、カルボジイミド架橋物質を用いて、ゼラチンビーズを化学的に架橋し、それによって、内因性酵素に対する感受性を低下させても良い。
【0132】
1つの態様において、バイオマテリアルによる外部条件に対する反応は、バイオマテリ
アルの構造完全性の喪失に関与する。酵素分解に対する温度感受性及び抵抗性は上記に提示されているが、異なるバイオマテリアルにおいて、マテリアルの完全性を喪失させる他のメカニズムも存在する。これらメカニズムとしては、限定されないが、熱力学的(たとえば、融解、拡散(たとえば、バイオマテリアルから周辺組織へのイオン性架橋物質の拡散等)等の相転移)、化学的、酵素的、pH(たとえば、pH感受性リポソーム)、超音波、及び光解離性(光浸透性)のものが挙げられる。バイオマテリアルがその構造完全性を失う正確なメカニズムは変化するが、通常、当該メカニズムは、移植の時点で、または移植の後に発生する。
【0133】
当業者であれば、当分野に公知の、他のタイプの合成マテリアルまたは天然マテリアルを用いて、本明細書に開示されるスキャホールドを形成しうることを認識するであろう。
【0134】
1つの態様において、本発明により、上述のスキャホールドまたはバイオマテリアルから作製される本明細書に開示される構築物が開示される。
【0135】
構築物
1つの態様において、本発明により、必要のある対象における腎疾患、貧血またはEPO欠乏症を処置するための、本明細書に開示される細胞群の1つ以上を有する移植可能な構築物を含有するオルガノイドが開示される。1つの実施形態において、当該構築物は、生体適合性のある物質またはバイオマテリアルである、1以上の合成生体適合性物質または天然生体適合性物質及び、本明細書に開示される1以上の細胞群または細胞の混合物(付着及び/またはトラップされることにより、当該スキャホールドの表面に置かれ、または、埋め込まれている)から構成されるスキャホールドまたはマトリクスから作製される。ある実施形態において、当該構築物は、バイオマテリアル及び、当該バイオマテリアルの構成要素(複数含む)を用いてコートされ、上に置かれ、中に置かれ、付着され、中にトラップされ、中に埋め込まれ、播種され、または組み合わされた、本明細書に開示される1以上の細胞群または細胞の混合物から作製される。本明細書に開示される任意の細胞群(富化細胞群またはその混合物を含む)は、構築物を形成するためのマトリクスと組み合わせて用いられても良い。
【0136】
他の実施形態において、当該構築物の配置された細胞群または細胞成分は、酸素調整可能なEPO産生細胞が富化された第一の腎細胞群である。他の実施形態において、第一の腎細胞群は、酸素調整可能なEPO産生細胞に加えて、糸球体細胞及び血管細胞を含有している。1つの実施形態において、第一の腎細胞群は、B4´細胞群である。他の1つの実施形態において、当該構築物の配置された細胞群または細胞成分(複数含む)は、第一の富化腎細胞群及び第二の腎細胞群の両方を含有する。一部の実施形態において、第二の細胞群は、酸素調整可能なEPO産生細胞を富化されていない。他の実施形態において、第二の細胞群は、腎尿細管細胞を富化されている。他の実施形態において、第二の細胞群は、腎尿細管細胞を富化され、及び、集合尿細管上皮細胞を含有している。他の実施形態において、腎尿細管細胞は、1以上の尿細管細胞マーカー(限定されないが、メガリン、キュビリン、ヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)、ビタミンD3 25-ヒドロキシラーゼ(CYP2D25)、N-カドヘリン(Ncad)、E-カドヘリン(Ecad)、アクアポリン-1(Aqp1)、アクアポリン-2(Aqp2)、RAB17、メンバーRAS癌遺伝子ファミリー(Rab17)、GATA結合タンパク質3(Gata3)、FXYDドメイン含有イオン輸送レギュレーター4(Fxyd4)、溶質担体ファミリー9(ナトリウム/水素交換)、メンバー4(Slc9a4)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ3ファミリー、メンバーB1(Aldh3b1)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリー、メンバーA3(Aldh1a3)、及び、カルパイン-8(Capn8)が挙げられうる)の発現により特徴付けられる。
【0137】
1つの実施形態において、本発明の構築物を形成するために、バイオマテリアルまたはスキャホールド上に配置された細胞群、または、バイオマテリアルまたはスキャホールドと組み合わされた細胞群は、たとえば自己の源等の様々な源由来である。非自己源(限定されないが、同種または同系(自家または同系)の源が挙げられる)もまた使用に適している。
【0138】
当業者であれば、構築物を形成するためにバイオマテリアルに配置するための適切な方法、またはバイオマテリアルと細胞群を組み合わせるための適切な方法が数種あることを認識するであろう。
【0139】
1つの態様において、本発明の構築物は、本明細書に開示される使用方法における使用に適している。1つの実施形態において、構築物は、任意の病因の腎疾患、貧血、または任意の病因のEPO欠乏症の治療を必要とする対象への投与に適している。他の実施形態において、構築物は、赤血球系ホメオスタシスの改善または回復の必要がある対象への投与に適している。他の実施形態において、構築物は、腎機能改善の必要がある対象への投与に適している。
【0140】
さらに他の態様において、本発明により、以下を含有する、腎機能改善の必要がある対象への移植のための構築物が開示される:a)生体適合性のある合成ポリマーまたは天然タンパク質もしくはペプチドを1つ以上含有するバイオマテリアル;及び、b)第一の細胞群であるB2(単離された尿細管細胞富化群を含有し、1.045g/mL~1.052g/mLの密度を有する)及び第二の細胞群であるB4´(エリスロポエチン(EPO)産生細胞及び血管細胞を含有するが、糸球体細胞を枯渇し、1.063g/mL~1.091g/mLの密度を有する)を含有し、当該バイオマテリアルでコートされ、当該バイオマテリアル上に配置され、当該バイオマテリアル中に配置され、当該バイオマテリアル中にトラップされ、当該バイオマテリアル中に懸濁され、当該バイオマテリアル中に埋め込まれ、及び/または、当該バイオマテリアルと混合される、腎疾患を有する対象由来の哺乳類腎細胞の混合物。ある実施形態において、当該混合物は、<1.045g/mlの密度を有する集合尿細管及び尿細管システムの大きな顆粒細胞を含有するB1細胞群、または、細胞残渣ならびに、>1.091g/mlの密度を有する低粒度及び低活性の小細胞を含有するB5細胞群を含有しない。
【0141】
1つの実施形態において、構築物は、血管マーカーの発現により特徴付けられるB4´細胞群を含有する。一部の実施形態において、B4´細胞群は、糸球体マーカーの発現により特徴付けられない。ある実施形態において、当該混合物は、酸素調整可能なエリスロポエチン(EPO)発現を行うことができない。全ての実施形態において、当該混合物は、哺乳類腎組織または培養腎細胞由来であっても良い。
【0142】
1つの実施形態において、構築物は、当該混合物のトラップ及び/または付着に適した3次元(3-D)多孔性バイオマテリアルとして構成されたバイオマテリアルを含有する。他の実施形態において、構築物は、哺乳類細胞の埋め込み、付着、懸濁またはコーティングに適した液体、または反液体ゲルとして構成されたバイオマテリアルを含有する。さらに他の実施形態において、構築物は、主にハイドロゲルの形態の高分子量種のヒアルロン酸(HA)から構成されるバイオマテリアルを含有する。他の実施形態において、構築物は、主に多孔性発泡体の形態の高分子量種のヒアルロン酸から構成されるバイオマテリアルを含有する。さらに他の実施形態において、構築物は、約50ミクロン~約300ミクロンの孔を有するポリ乳酸ベースの発泡体から構成されるバイオマテリアルを含有する。さらに他の実施形態において、構築物は、腎機能を改善する必要がある対象に対して自己である、腎試料由来でありうる1以上の細胞群を含有する。ある実施形態において、試料は、腎生検である。一部の実施形態において、対象は、腎疾患を有している。さらに他
の実施形態において、細胞群は、非自己の腎試料由来である。1つの実施形態において、構築物により、赤血球系のホメオスタシスがもたらされる。
【0143】
使用方法
1つの態様において、本発明により、本明細書に開示される腎細胞群及び腎細胞の混合物を含有する、及び/もしくは、から形成される、SRC+細胞群ならびに/またはオルガノイドを用いた、必要のある対象における腎疾患、貧血、またはEPO欠乏症の処置のための方法が開示される。1つの実施形態において、当該方法には、EPO産生細胞が富化された第一の腎細胞群を含有する、及び/または、から形成されたオルガノイド(複数含む)を対象に投与することを含む。他の実施形態において、第一の細胞群は、EPO産生細胞、糸球体細胞及び血管細胞が富化されている。他の実施形態において、オルガノイド(複数含む)はさらに、1以上の追加の腎細胞群を含有しても良く、及び/または、から形成されても良い。1つの実施形態において、追加の細胞群は、EPO産生細胞が富化されていない第二の細胞群である。他の実施形態において、追加の細胞群は、EPO産生細胞、糸球体細胞、または血管細胞が富化されていない第二の細胞群である。他の実施形態において、オルガノイド(複数含む)はまた、本明細書に開示される疾患または障害の処置のための、本明細書に開示される移植可能な構築物を形成するためのバイオマテリアル中に配置され、バイオマテリアル上に配置され、バイオマテリアル中に埋め込まれ、バイオマテリアルでコートされ、またはバイオマテリアル中にトラップされる腎細胞群または腎細胞混合物を含有する、及び/または、から形成される。1つの実施形態において、オルガノイドは、単独で、または、他の細胞もしくはバイオマテリアル(たとえば、ハイドロゲル、多孔性スキャホールド、または天然ペプチドもしくはタンパク質、または合成ペプチドもしくはタンパク質)と組み合わせて用いられ、急性疾患状態または慢性疾患状態の再生を刺激する。
【0144】
他の態様において、本発明の方法により、対象における腎疾患、貧血またはEPO欠乏症の効果的な治療が、赤血球生成及び/または腎機能の様々な指標を通して認められうる。1つの実施形態において、赤血球系ホメオスタシスの指標として、限定されないが、ヘマトクリット(HCT)、ヘモグロビン(HB)、平均赤血球ヘモグロビン量(MCH)、赤血球数(RBC)、網状赤血球数、網状赤血球%、平均赤血球容積(MCV)、及び赤血球分布幅(RDW)が挙げられる。他の1つの実施形態において、腎機能の指標としては、限定されないが、血清アルブミン、アルブミンとグロブリンの比率(A/G比)、血清リン、血清ナトリウム、腎臓のサイズ(超音波で測定可能)、血清カルシウム、リン:カルシウムの比、血清カリウム、蛋白尿、尿クレアチニン、血清クレアチニン、血液窒素尿素(BUN)、コレステロールレベル、トリグリセリドレベル及び糸球体濾過率(GFR)が挙げられる。さらに、一般的な良好健康状態のいくつかの指標として、限定されないが、体重の増減、生存率、血圧(平均全身血圧、拡張期血圧、または収縮期血圧)、及び身体持久力能が挙げられる。
【0145】
他の実施形態において、SRC+細胞群または生物活性のある腎細胞オルガノイドを用いた有効的な治療は、腎機能の1つ以上の指標の安定化により証明される。腎機能の安定化は、本発明方法により処置されていない対象における同じ指標と比較して、本発明方法により処置された対象における指標の変化を観察することにより示される。あるいは、腎機能の安定化は、処置前の同じ対象における同じ指標と比較し、本発明方法により処置された対象における指標の変化の観察を行うことにより示されても良い。第一の指標における変化は、値の増加または減少であっても良い。1つの実施形態において、本発明により開示される処置は、対象における血液尿素窒素(BUN)レベルの安定化が含まれても良く、本発明方法による処置を受けていない、同じ疾患状態を有する対象と比較して、対象に認められるBUNレベルは、低い。他の1つの実施形態において、処置には、対象における血清クレアチニンレベルの安定化が含まれても良く、本発明方法による処置を受けて
いない、同じ疾患状態を有する対象と比較して、対象に認められる血清クレアチニンレベルは低い。他の実施形態において、処置には、対象におけるヘマトクリット(HCT)レベルの安定化が含まれても良く、本発明方法による処置を受けていない、同じ疾患状態を有する対象と比較して、対象に認められるHCTレベルは高い。他の実施形態において、処置には、対象における赤血球(RBC)レベルの安定化が含まれても良く、本発明方法による処置を受けていない、同じ疾患状態を有する対象と比較して、対象に認められるRBCレベルは高い。当業者であれば、本明細書に開示される、または当分野に公知の、1つ以上の追加の指標を測定し、対象における腎疾患の効果的処置を決定しても良いことを認識するであろう。
【0146】
投与方法及び投与経路
本発明のSRC+細胞群及び/または生物活性のある細胞オルガノイドは、単独で、または他の生物活性のある成分と組み合わせて投与されても良い。SRC+細胞群及び/またはオルガノイドは、組織を再生するための、固形器官内部への組込み型再生医療用成分の注入または移植に適している。
【0147】
1つの態様において、本発明により、必要のある対象に本明細書に開示される生物活性のある細胞オルガノイド(複数含む)を送達する方法が開示される。1つの実施形態において、生物活性のある細胞の源は、自己または同種、同系(自家または同系)、及びそれらの任意の組み合わせであっても良い。源が自己ではない場合、当該方法は、免疫抑制剤の投与を含んでも良い。適切な免疫抑制剤としては、限定されないが、アザチオプリン、シクロホスファミド、ミゾリビン、シクロスポリン、タクロリムス水和物、クロラムブシル、ロベンザリット二ナトリウム、オーラノフィン、アルプロスタジル、グスペリムス塩酸塩、バイオシンソルブ、ムロモナブ(muromonab)、アレファセプト、ペントスタチン、ダクリズマブ、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、レフロノミド、バシリキシマブ、ドルナーゼα、ビンダリド(bindarid)、クラドリビン(cladribine)、ピメクロリムス(pimecrolimus)、イロデカキン(ilodecakin)、セデリズマブ、エファリズマブ、エベロリムス、アニスペリムス(anisperimus)、ガビリモマブ(gavilimomab)、ファラリモマブ(faralimomab)、クロファラビン(clofarabine)、ラパマイシン、シプリズマブ(siplizumab)、柴苓湯(saireito)、LDP-03、CD4、SR-43551、SK&F-106615、IDEC-114、IDEC-131、FTY-720、TSK-204、LF-080299、A-86281、A-802715、GVH-313、HMR-1279、ZD-7349、IPL-423323、CBP-1011、MT-1345、CNI-1493、CBP-2011、J-695、LJP-920、L-732531、ABX-RB2、AP-1903、IDPS、BMS-205820、BMS-224818、CTLA4-1g、ER-49890、ER-38925、ISAtx-247、RDP-58、PNU-156804、LJP-1082、TMC-95A、TV-4710、PTR-262-MG、及びAGI-1096が挙げられる(米国特許第7,563,822号を参照のこと)。当業者であれば、他の適切な免疫抑制剤を認識するであろう。
【0148】
本発明の治療方法には、本明細書に開示されるSRC+細胞群及び/またはオルガノイドの送達が含まれる。1つの実施形態において、目的とする利益を受ける部位へと細胞を直接投与することが望ましい。
【0149】
本明細書を考慮し、対象にオルガノイドを投与する様々な手段が当業者には明らかであろう。そのような方法としては、限定されないが、実質内注射、被膜下設置、経尿道カテーテル法、及び腎動脈内カテーテル法が挙げられる。
【0150】
細胞を、対象への注射または移植による導入を容易にする送達用デバイスまたはビヒクル中に挿入しても良い。ある実施形態において、送達用ビヒクルは天然材料を含有しても良い。ある他の実施形態において、送達用ビヒクルは、合成原料を含有しても良い。1つの実施形態において、送達用ビヒクルにより、器官構造を模倣する構造、または器官構造に適切にフィットする構造がもたらされる。他の実施形態において、送達用ビヒクルは、液体様の性質である。そのような送達用ビヒクルとしては、細胞及び液体をレシピエント対象の身体に注入するためのチューブ(たとえば、カテーテル)が挙げられる。好ましい実施形態において、当該チューブはさらに、本発明の細胞が所望される位置で対象へと導入されるための針(たとえば、シリンジ)を有している。一部の実施形態において、哺乳類の腎臓由来の細胞群は、カテーテルを介した血管投与用に処方される(「カテーテル」という用語には、血管への物質送達のための任意の様々なチューブ様のシステムが含まれる)。あるいは、当該細胞は、バイオマテリアルまたはスキャホールド内、または、バイオマテリアルまたはスキャホールド(限定されないが、繊維製品(たとえば、織物、ニット、紐、メッシュ、及び非織物)、有孔フィルム、スポンジ及び発泡体、ならびにビーズ(たとえば固形ビーズまたは多孔ビーズ)、マイクロ粒子、ナノ粒子等(たとえば、Cultispher-Sゼラチンビーズ、Sigma))上に挿入されても良い。細胞は、様々な異なる形態で送達用に調製されても良い。たとえば、細胞は、溶液またはゲル中に懸濁されても良い。細胞を、薬学的に受容可能な担体または希釈剤(本発明の細胞はその中で活性を維持している)と混合しても良い。薬学的に受容可能な担体及び希釈剤としては、生理食塩水、水性緩衝溶液、溶媒及び/または分散媒が挙げられる。そのような担体及び希釈剤の使用は、当分野に公知である。溶液は、好ましくは滅菌及び液状であり、及び、多くの場合等張である。好ましくは、溶液は、製造及び保存の条件下で安定であり、及び、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等の使用を介して、細菌及び真菌等の微生物の汚染から保護されている。当業者であれば、本発明の細胞群及びその混合物の送達に用いられる送達用ビヒクルは、上述の特性の組み合わせを含有しても良いことを認識するであろう。
【0151】
たとえば、単独、またはB4´及び/またはB3と混合されたB2細胞群等の単離腎細胞群(複数含む)を含有するオルガノイド、及び/または、から形成されるオルガノイドの投与様式としては、限定されないが、実質内注射、被膜下設置、または腎動脈が挙げられる。本発明に従い用いられる、さらなる投与様式としては、直接開腹を介した、直接腹腔鏡を介した、経腹壁の、または経皮の単回注射または頻回注射が挙げられる。本発明に従い用いられる、さらに他の追加の投与様式としては、たとえば、逆行注入及び尿管腎盂注入が挙げられる。投与の外科的手段としては、たとえば、限定されないが、部分腎摘出と構築物移植、部分腎摘出、部分腎盂摘出、網±腹膜を用いた血管新生、多焦点生検注射、円錐またはピラミッド状~円柱状、及び腎極様置換等の一工程法、ならびに、たとえば、置換用のオルガノイド内部バイオリアクター等を含む二工程法が挙げられる。1つの実施形態において、細胞混合物を含有するオルガノイド及び/または細胞混合物から形成されるオルガノイドは、同時に同経路から送達される。他の実施形態において、各オルガノイドは、本明細書に開示される方法の1以上により、同時に、または時間制御された様式のいずれかで、特定の位置へ、または特定の技法を用いて別々に送達される。
【0152】
ヒトにおける適切な細胞またはオルガノイドの移植量は、たとえばEPO産生等のオルガノイドの活性、または、臨床実験で行われた用量実験からの外挿のいずれかに関連した既存情報から決定されても良い。in vitro培養及びin vivo動物実験から、オルガノイドの量が数値化され、移植物質の適切な投与量を算出する際に用いることができる。さらに、状況に応じて追加の移植を行うか、または、移植物質を減少させるかを決定するために、患者をモニターしても良い。
【0153】
本発明の細胞群及びその混合物を含有するオルガノイド、及び/または、から形成され
るオルガノイドに、1以上の他の成分(選択細胞外マトリクス成分(たとえば、当分野公知の1以上の型のコラーゲンまたはヒアルロン酸)、増殖因子、及び/または、サイトカイン(限定されないが、VEGF、PDGF、TGFβ、FGF、IGFが挙げられる)、血小板富化血漿、及び薬物が挙げられる)を追加しても良い。
【0154】
当業者であれば、本明細書に開示されるオルガノイドに適した様々な投与方法を認識するであろう。
【0155】
製品及びキット
本発明にはさらに、本発明のポリマーマトリクス及びスキャホールドを含有するキット、及び関連物質、ならびに/または、培養培地及び使用説明書を含有するキットが含まれる。使用説明書には、たとえば、本発明のSRC+細胞群またはオルガノイドの形成における細胞培養、及び/または、SRC+細胞群またはオルガノイドの投与に関する説明が含まれても良い。1つの実施形態において、本発明により、本明細書に開示されるスキャホールド及び説明書を含有するキットが開示される。さらに他の実施形態において、当該キットは、マーカー発現の検出のための剤、当該剤の使用のための試薬、及び使用説明書を含有する。このキットは、本明細書に開示されるオルガノイド(複数含む)の移植または投与後の、対象における自然腎の再生予後決定の目的のために使用されても良い。当該キットはまた、本明細書に開示されるオルガノイド(複数含む)の生体治療有効性の測定のために用いられても良い。
【0156】
本発明の他の実施形態は、必要のある対象の治療に有用な生物活性のある細胞を含有するオルガノイド、及び/または、から形成されるオルガノイドを含有する製品である。当該製品は、容器と、当該容器上に、もしくは当該容器に添付されたラベルまたは添付文書を含有する。適切な容器としては、たとえば、瓶、バイアル、シリンジ等が挙げられる。容器は、様々な物質(たとえば、ガラスまたはプラスチック)から形成されても良い。容器は、疾患の治療に有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポート(たとえば、当該容器は、注射針で穴を開けることが可能なストッパーを有するバイアルまたは溶液バッグであっても良い)を有していても良い。ラベルまたは添付文書は、オルガノイドが、特定の疾患の治療に用いられることを示している。ラベルまたは添付文書はさらに、患者へのオルガノイドの投与に関する説明書を含有しうる。本明細書に開示される併用療法を含む製品及びキットもまた予期される。添付文書は、適応症、用法、用量、投与法、禁忌、及び/または、当該治療用製品の使用に関する警告に関する情報を含む、治療用製品の市販品に習慣的に含有される説明に言及している。1つの実施形態において、添付文書は、オルガノイド(複数含む)が、たとえば腎疾患または腎障害等の疾患または障害の治療に用いられることを示している。さらに、市場及びユーザー視点から望ましい他の物質(他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針及びシリンジを含む)を含んでも良い。また、様々な目的(たとえば、再生転帰の分析等)に有用なキットが提示される。本明細書に開示される、尿由来の小胞及び/またはその内容物(たとえば、核酸(たとえば、miRNA)、小胞、エキソソーム等)に対する検出剤を含有するキットも開示されうる。検出剤としては、限定されないが、所望される標的のin vitro検出のための核酸プライマー及びプローブ、ならびに、抗体が挙げられる。製品と同様に、キットは、容器及び、当該容器上に、もしくは当該容器に添付されたラベルまたは添付文書を含有する。容器は、少なくとも1つの検出剤を含有する組成物を保持する。たとえば、希釈剤及び緩衝剤または対照検出剤等を含有する追加の容器が含まれても良い。ラベルまたは添付文書は、当該組成物に関する説明ならびに、意図されるin vitro、予測、または診断用途に対する説明を提示する。
【0157】
以下の実施例は、解説の目的のためにのみ提示するものであり、決して本発明範囲を限定するものではない。
【実施例0158】
実施例1 選択腎細胞+(SRC+)細胞群の単離:腎生検からの内皮細胞の単離
以下の方法において、従前に適合されたコラゲナーゼ/ディスパーゼ消化プロトコール2、3、5を用いた、酵素消化後の内皮細胞の単離例を提示する。この方法を、罹患ZSF1ラット腎臓及び、透析を受けている高血圧症のヒトESRD患者から得た腎生検に適用する。
【0159】
内皮細胞(EC)、脈管系、及びリンパ系の由来
下記に開示されるように、腎細胞単離のための標準的な操作手順を用いて消化された腎臓(複数含む)を、100μmのSteriflipフィルター(Millipore)を通して濾過する。残った細胞懸濁液を、5%FBSを含有するDMEMを用いて中性化し、次いで、5分間、300xgで遠心することにより洗浄する。100μmフィルターを通して回収された細胞ペレットを、十分に補充されたEMG-2増殖培地(Lonza)中に再懸濁し、25K/cm2の細胞密度で、フィブロネクチンをコートしたディッシュ上に播種する。培養を3日毎に行う。EC培養が80~90%コンフルエントに達したとき、トリプシン処理を行い、計数する。トリプシン処理された細胞を、CD31(PECAM)一次抗体を用いて標識し、Miltenyi抗CD31マイクロビーズを用いて陽性選択を行った。CD31+ソートされた細胞を洗浄、計数し、十分に補充されたEGM-2培地中に10K/cm2の密度で播種する。内皮細胞の形態は、24時間後に明白となり、これら細胞は、複数回の継代を介して増殖させることができる。脈管系及び/またはリンパ系の組成を、系統特異的抗体(たとえば、VEGF-3は毛細血管;LYVE1はリンパ系)を用いて分析しても良く;Miltenyiマイクロビーズ選択法を用いた、同じ細胞表面表現型マーカーにより、特定の内皮細胞亜群をさらに選択/ソートすることもできる。
【0160】
増殖及び精製後、NKA SRCの内皮細胞成分を、通常(<2%)よりも大きな割合(>30%)へと富化することができる(浮遊密度分画化を通して観察される)。1つの実施形態において、活性のあるNKAの生物成分または組成を制御するために、精製ECを、移植の前に、選択頻度(たとえば、60%B2-B4+40%EC)で、浮遊密度勾配分画由来の上述のB2及び/またはB2-B3-B4分画と混合させても良い。
【0161】
磁性マイクロビーズを用いた内皮細胞ソーティング
EGM2培地中、フィブロネクチンコートされたフラスコから回収された細胞を、EMG2培地w/oサプリメント中、0.4μg/100万個の細胞/100μlの濃度で、マウス抗ヒトCD31の一次抗体を用いて、4℃で20分間、染色する。20分後、細胞を洗浄し、12mlのEGM2培地w/oサプリメントと200μlのヤギ抗マウスIgG1中に再懸濁する。Miltenyiマイクロビーズを添加し、さらに20分間、4℃で遮光しながらインキュベートする。20分後、細胞を、遠心(5分、300xg)を介して2回洗浄し、12ml(1000万個の細胞/ml)中に再懸濁し、Miltenyi自動MACS機器(センシティブモードプログラムで、二重陽性選択)を用いて精製する。
【0162】
図1に開示される例において、内皮細胞は、初代ZSF1細胞から選択された(CD31+選択)。このプロセスから回収された360万個の細胞を計数し、2つのT175フィブロネクチンコートフラスコ上に、10K/cm2の濃度でサブ培養を行った。細胞を、21%O2で4日間培養し、85%コンフルエントで回収した。この選択と培養期間の後、細胞を計数し、950万個の細胞を回収した。FACSによる表現型分析のために回収されたサンプルは、CD31に対して約90%陽性であった(
図1E、右のFACSパネル)。
【0163】
ヒトCKD内皮細胞の単離、特徴解析及び増殖
ヒト腎細胞の培養:
ヒト腎細胞(ドナーに関する情報は、表1の下を参照)は、下記に開示されるように、ヒト腎初代細胞の酵素的単離及び培養に関する標準的な操作手順を用いて単離した。簡潔に述べると、細胞を単離し、標準的なKGMのT/C処置フラスコ、または、EGM2を十分に補充した培地のフィブロネクチンコートフラスコのいずれかで、25K/cm
2で培養した。細胞を、21%酸素環境下で3日間増殖させ、次いで、培地を交換し、O/N曝露のために培養物を2%酸素環境下へと移した。4日後、細胞を画像撮影し、培養形態を分析した(
図2A)。次いで、それらを回収し、標準的な方法を用いて計数した(HK027バッチレコードを参照)。サンプルを採取し、染色して、CD31
+内皮細胞の割合を測定した(
図2)。内皮細胞を、マウス抗ヒトCD31の一次抗体(BD bioscience)と磁性マイクロビーズ(Miltenyi)を用いてソートした。次いで、CD31
+細胞を10K/cm
2の密度で再度フィブロネクチンコートフラスコ上に播種し、さらに4日間培養した(
図2、細胞培養形態)。次いで、細胞を計数し、サンプルを採取して、マウス抗ヒトCD31 一次抗体とFACS分析を用いて陽性内皮細胞の割合を測定した(
図3)。
【0164】
結論として、フィブロネクチン上での罹患ZSF1細胞の最初の培養により、9%のCD31+培養物が得られた(TC処置からは<2%)。p1では、フィブロネクチン上でサブ培養された9%CD31+分画から、約90%のCD31+細胞が得られ、p0からp1にかけて、ほぼ3倍に増殖した。T/C処置またはフィブロネクチンコートフラスコのいずれか上で最初に培養されたヒトCKD細胞からは、おおよそ同じ割合のCD31陽性細胞(2.7%に対し、2.1%)が得られた。示されるように、陽性選択されたCD31陽性細胞を、十分に補充されたEGM2培地中、フィブロネクチンコートフラスコ上でサブ培養し、CD31陽性細胞の割合を1回の継代後に13倍にまで増加させる(2.7%から35.5%)ことは可能である。
【0165】
SRC+細胞群の単離:さらに生物活性のある細胞型単離の例:
A.腎上皮:
浮遊密度勾配を介して単離された分画における様々な上皮細胞コンパートメント(壁細胞、近位尿細管細胞、ヘンレ係蹄細胞、遠位尿細管細胞)の発現評価が進行中である。より具体的には、系統追跡実験により、Six2+上皮細胞単離の直接及び選択的な立証がなされ;ネフロン上皮コンパートメントに特異的なマーカーでSix2を共標識すること(表2~3を参照)により、細胞特異的な検出が確認される(表4を参照)。表4において、p0 ZSF1培養(混合分画B2-B3-B4)を近位、遠位、及び集合尿細管の細胞型の混合物として特徴解析する上皮マーカーの限定パネルを提示する。表2~4に列記されるものと同じ細胞表面検出抗体を用いた、上述の培養選択(磁性ソーティングと併せた培養条件)を介したこれら特異的上皮細胞コンパートメントの富化が予期される。
【0166】
【0167】
二次抗体は、Alexa 647分子プローブヤギ抗マウスIgG、ヤギ抗ウサギIgG、及びロバ抗ヤギIgG、ストレプトアビジンA647。1ug/ml/1x10
6細胞を用いて、SOPに従い染色。
【0168】
【0169】
B.糸球体由来細胞(壁上皮及び有足細胞):
骨盤の解剖学的除外により、糸球体分画の単離が改善される。下記に記述される、腎消化のための標準的な操作手順を用いて、細胞を単離し、100μmのSteri-flipフィルター(Millopore)を介して濾過し、100μmを超える大きさの細胞粒子/塊(糸球体分画を含有する)を、さらに20分間、再消化する。消化された分画を、10%FBSを含有するDMEM培地で中和し、遠心により洗浄する(300xg、5分)。再懸濁された細胞ペレットを、VRADD培地6(DMEM/F12、1uM All Trans Retinoic Acid(Genzyme、Cambridge、MA)、0.1umのデキサメタゾン(Sigma-Aldrich)、10~100nMのビタミンD(有足細胞培養を促進するための1,25(OH)2D3)、または、たとえば、(50:50 DMEM/KSFM)等のFBS無しで十分に補充された、壁上皮細胞に適した血清フリー培地中で、1型コラーゲンでコートされたT/Cプレート上で培養する。細胞を、25K/cm2の密度で播種し、細胞増殖が現れるまでサブ培養する。増殖細胞を、増殖させ、及び、1継代目で、Miltenyiマイクロビーズに結合した一次抗体(PEC特異的マーカー(たとえば、限定されないが、Claudin-1)または前駆体特異的マーカー(たとえば、CD146、CD117、SOX2、Oct
4A、CD24、CD133)、またはメサンギウム特異的マーカー(たとえば、限定されないが、平滑筋アクチン、ビメンチン、ミオカルジン、カルビンジン)または糸球体毛細管内皮細胞(たとえば、VEFG3またはCD31またはLIVE1)のいずれかを用いる)を用いてソートする。最適な細胞産生量で採取し、及び、通常の頻度よりも高い割合でB2成分と混合すると、高割合の糸球体由来細胞を、糸球体疾患に罹患している患者に適用することができる。
【0170】
C.集合尿細管上皮:
腎臓の皮質領域と髄質領域を解剖学的に切除することにより、骨盤内、または骨盤近くに位置する細胞の単離が改善される。下記に記述されるように、げっ歯類、イヌ科、及びヒトの初代腎細胞を単離、増殖及び採取するための標準的な操作手順は、集合尿細管上皮細胞の単離及び増殖に従うものである。初代培養腎細胞の亜群を分画化するための標準的な操作手順は、細胞分画B1の集合尿細管の細胞を富化するものであり、以下に記述される。これら細胞は、最も高い割合で集合尿細管上皮細胞を含有している(たとえば、アクアポリン2及びDolichos Biflorus Agglutinin(DBA)等のマーカーに基づく)。あるいは、Dr.Ben Humphreysから得た乳頭/髄質間集合尿細管(IMCD)培養プロトコールを適用した(EGFを補充したREGM培地;未公開データ)。これら方法のいずれにおいても、集合尿細管上皮を富化された細胞分画を、通常よりも高い頻度でB2成分と組み合わせて用いることができ、または、標準的なKGMまたは均等物を用いて増殖させ、尿濃縮と関連した疾患原因を標的とするために用いることができ、及び、腎盂の異常、及び/または、腎盂の疾患(たとえば、水腎症、血管-尿管閉塞)に適用しうる活性のある生物成分をより良く具体化しうる。
【0171】
実施例2 SRC及びSRC+群由来のオルガノイドの生成及び特徴解析
自己形成オルガノイド/スフェロイド形成
オルガノイドは、初代腎培養、増殖、及びSRCを単離するための浮遊密度勾配遠心の後に生成された(以下に記述される、NKA生成のための標準的な操作手順)。簡潔に述べると、SRCを、100mlの腎細胞増殖培地に、[1x10
6細胞/ml]の濃度で、スピナーフラスコ(Corning)中、磁気攪拌機(80rpmに設定)上で24~48時間、再懸濁した(
図4)。細胞オルガノイド/スフェロイドは、50~125μMのサイズ範囲の細胞塊からなる。オルガノイド当たりの細胞数は、細胞型、及びスピナーフラスコ培養前のサイズによって変化しうる。オルガノイド/スフェロイドは、ラット及びヒトSRCの両方から生成され、尿細管上皮の表現型を表した(
図5)。
【0172】
オルガノイドの機能及び管形成
管を形成するSRCの能力を適用して、NKAの潜在能力を評価しても良い。このアッセイを、3Dの1型コラーゲン/4型コラーゲンゼラチンの50:50混合物中で培養したSRCオルガノイドに行った。培養オルガノイドに免疫蛍光染色を行うと、得られた管は、上皮表現型を発現し続ける(
図6)。
【0173】
オルガノイドに加える
他の細胞型の組み合わせを適用する際の自己形成スフェロイドを形成するSRC活性の優位性が明らかとなる。管形成は、血管成分または幹細胞成分を添加することで増強されうる。オルガノイド形成期間中に、SRC群を有する培養液中に選択細胞群を添加することにより、再生転帰の間に活性化される重要な細胞シグナル伝達経路を繰り返しながら、機能性ユニットが形成されうる。そのような細胞-細胞相互作用としては、限定されないが、器官形成中に軸となることが知られている、上皮-間葉系シグナル伝達事象が挙げられる(Basu & Ludlow 2012,Developmental engineering the kidney-leveraging morphogenic principles for renal regeneration.Birth Defects Research Part C 96:30-38を参照のこと)。標準的な手順を用いてSRCが生成される一方で、内皮細胞株(HuVEC)は、オルガノイド(+)の組み合わせの例として用いられた。8000万個のSRCを、膜色素(Invitrogen、DiL赤色標識)を用いて標識し、そして、100mlのRCGM培地中、125mlのスピナーフラスコ中の、異なる膜色素(Invitrogen
DiO緑色標識)で標識された2000万個のHuVECに、48時間、80rpmにて、添加した(
図7)。SRCオルガノイド群単独もまた、対照として開始させた。オルガノイドが形成された時点で、管形成アッセイを、in vitro、ColI/IV 3Dゲル内で設定し、潜在的な同時血管新生を伴う、または伴わない管形成活性を確認した(
図8)。
【0174】
実施例3 腎疾患のげっ歯類モデルにおける、SRCオルガノイドの特徴解析/生体分布
48時間にわたる、SPIO標識オルガノイドの細胞保持及び生体分布を評価するZSF1急性実験。6匹の40+週齢のZSF1ラットに、2.5x10
6 SPIOローダミン標識細胞(およそ25000の自己形成オルガノイド(PBSに溶解)を表す)を、50x10
6/mlの濃度で、左尾極において、実質へと注射した(
図9)。3匹の動物を、移植後、24~48時間の間隔で回収した。腎臓を、細胞保持及び生体分布に関して、MRIにより評価し、プルシアンブルー染色及びH&E染色法を用いて組織学的に評価した(
図10と11)。
【0175】
結果
オルガノイドは、容易に標識及び標的化送達を追跡することができた。尿細管または糸
球体コンパートメントにおいて、形態学的変化は観察されず、オルガノイド処置は耐容性良好であった。上皮細胞(プルシアンブルーにより陽性染色)の多焦点塊が、注入後24時間で、左腎の腎皮質(尿細管内/尿細管間)にしばしば観察され、48時間後には少なくなった。
【0176】
実施例4 オルガノイド由来のSRC+及びSRC/SRC+の治療有効性を示すためのin vivo実験:CKD(5/6腎摘出術)免疫不全げっ歯類実験
ヒト由来SRC+SRC/SRC+オルガノイドを、免疫不全げっ歯類(NIHRNU(ヌード)ラット;無胸腺ラット)の、5/6腎摘出の慢性腎疾患モデルを用いて治療有効性に関して評価した。疾患状態の確率、治療介入モダリティ、及び治療応答の臨床評価は、従前に開示されている(Genheimer et al.,2012.Molecular characterization of the regenerative response induced by intrarenal transplantation of selected renal cells in rodent model of chronic kidney disease.Cells
Tissues Organs 196:374-84)。
【0177】
細胞単離及び選択:
ヒト腎細胞を単離し、Presnell(2011)に開示されるように生検から増殖させた。細胞をサブ培養し、2回継代した後、凍結保存緩衝液(80%HTS/10%DMSO/10%FBS)において、20x106細胞/ml/バイアルの濃度で、-1℃/分の凍結速度で-80℃まで温度を下げて凍結保存し、次いで、長期保管のための液体窒素フリーザーに移した。凍結保存の後、細胞を急速に37℃まで溶解させ、回復と活性について、標準的なトリパンブルー排除法を用いて評価した。次いで、細胞を3000細胞/cm2で組織培養管に播種し、酸素正常状態(21%O2/5%CO2/37℃)で4日間、腎細胞増殖培地中で培養した。4日後、培養培地を交換し、培養物を、低酸素環境下(2%O2/5%CO2/37℃)で一晩インキュベートし、次いで、細胞を回収して、密度勾配分離によりSRCを選別した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)培養物(Lonza 2389、CAT# CC2517)を、凍結保存後の早期継代から、EGM2が十分に補充された培地で3回継代するまで増殖させた。細胞を回収し、活性を、標準的なトリパンブルー排除法を用いて評価した。
【0178】
オルガノイド形成:
オルガノイド培養は、1)ヒトSRC及びHUVECを、それぞれの培地中に2x106細胞/mlの濃度で再懸濁し、2)各細胞調製物25ml(50x106細胞/ml)の等量を125mlのスピナーフラスコ(Corning)へと混合させることにより確立させた。混合培養に対し、各培地25mlをフラスコに添加し、100ml中、最終細胞濃度は1x106細胞/mlとした。フラスコをインキュベーター内の磁気攪拌機に置き、80RPMの早さ、24時間培養した。
【0179】
試験物質:
オルガノイドの投与量は、ラット腎臓当たり、およそ(2~5x106細胞/50μl)が投与されるように調整された。オルガノイドの数は、輸送の間に生じる損失のために、より多い量のDPBS 0.5ml中で、上述の濃度に調整された。余剰管を補充分として送付した。FEDEXを介し、4~8℃でCREDO cube shipperを用いて、2本の0.5mlマイクロ遠心管中で、投与物を移植施設へと送付した。
【0180】
試験物品の送付:
残った左腎は、左わき腹の切開により得た。送付する前に、穏やかに管底をタッピングまたはフリッキングすることによりオルガノイドを再懸濁した(ボルテックスは行わない
)。オルガノイドを、18Gの丸い先端の針を用いてシリンジ内に吸引した。次いで、送付のために針を23Gの切断針に変えた。標的化送達は、50μLを腎臓の皮髄境界領域に注入することにより行われた。未処置対照動物には処置せず、何も手順を行わなかった。
【0181】
RKMモデルの手順:
オスのNIHRNUラット(8~12週齢、体重は平均でおよそ200g)に、以下のように2工程の腎摘出術を行った。各個々の動物に対し、右腎を摘出し、重量を計測し、1週間回復させた後、左腎の頭頂及び尾極から組織を切除し、重量を計測した。実験を開始する前に、2~3週間の回復と馴化を行った。馴化期間の後、血液と尿を連続して2週間、採取し、分析した。次のサンプリングは、その後の2週間毎に行われた。全てのラットに、市販の餌を与え、水は不断で与えた。
【0182】
動物は腎摘出術後モニターされ、尿タンパク質/尿タンパク質クレアチニン(UPC)の増加が認められ、腎摘出12週後にヒトオルガノイドで処置された。以下の表5に本実験の概要を示す。
測定項目:体重(g)は、隔週ベースで記録された。血清生化学的評価、血液学的評価は、隔週ベースで、実験期間の間行われた。尿検査は隔週で行われた。予定通りの剖検の場合には、実験動物に対し肉眼的病理所見を作成し、残った腎臓を切除及び固定し、残りの動物身体をホルマリン固定した。全ての動物及び組織を必要に応じて採取し、重さを計測し、測定し、組織学的処理のために調製した。腎臓の組織学的評価に用いられる方法を行った。KMRは、腎質量の減少である。
【0183】
結果:
ヒトNKOの有効性が、無胸腺ラットの腎不全モデルで示された。
【0184】
RKMモデルの概要
無胸腺KMRモデルでの疾患進行は、従前に報告されている腎摘出モデルと一致しており、CKD関連後遺症(腎タンパク質処置、高窒素血症、高コレステロール血症、貧血及び尿毒症の発現を含む)があった。得られた疾患状態に関するNIHRNU腎摘出モデル
の転帰は、質量減少の間は、摘出された腎組織の量に影響を受けており、本明細書において使用された動物は、臨床病理モニタリングと末端組織学的評価に基づき、ゆっくりとした早期ステージの疾患状態の進行を示した。
【0185】
生存中の臨床病理所見に対する、NKOプロタイプの効果
腎機能に関連した臨床病理学的測定結果を処置前に検証し、対の形式として、実験終了前に記録された測定結果と比較した。以下の表に要約されるように、この比較から、未処置の対照動物において、4か月にわたる実験中に、疾患が進行するにつれ変化が認められた。有意の差は、BUN、Hct、Hgb、RBC、WBC、sChol、sProt、sAlb、uPro、UPC、及びspGravの対比較で記録された。これらマーカーにおける変化は、早期ステージのCKDの典型であり、急性高窒素血症、終末期の尿細管濾過/濃縮の消失及びリン酸塩血症にはまだ至っていない腎機能低下の指標である。NKOで処置された動物においては、未処置対照動物の転帰を基に予測されるように、BUN、Hct、Hgb、RBC、WBC、及びspGravの変化は有意ではなかった(以下の表6を参照)。
【0186】
モデル由来の腎臓の組織学的概要
組織学的検査により、対照動物は、中程度にまで進行し、最終的に殺処分されるまでに、腎症を発症したことが示された。
【0187】
通常、中程度の重篤度である、萎縮、拡張、及びタンパク質性の円柱を伴う損傷関連の所見は主に尿細管で発見された。尿細管の好塩基化及び線維化はしばしば最小であり、間質性の炎症は通常、最小か存在しない。糸球体の変化は、最小の重篤度であった。
【0188】
皮膜の線維化/炎症は通常、最小の重篤度のみであり、ほとんど炎症性細胞の浸潤がなかった;無胸腺ヌードラットにおいては不完全な免疫システムであることから、反応が消失した可能性がある。バッチ1の動物においては、石化とリンパ球浸潤の発生率と重篤度は低かった。まれに限局性の石化が観察された(実験用ラットには通常である)。
【0189】
未処置群とNKO処置群の間に有意差は記録されなかった。
【0190】
生存率に対するNKOの効果
全ての動物(59%KMR)が、実験終了時(Tx後119日、及び腎摘出後204日)まで生存したため、NKO処置による明らかな生存率に関する利益は検出されなかった。
【0191】
EOSで染色法を用いて検出されたヒトNKOの生着
このモデルにはヒト産物の異種移植が可能であるため、ヒト細胞を識別する抗体の使用を介した、ラット腎臓内でのヒト細胞の追跡が可能であった。RKMラット腎臓のバックグラウンド内のヒトHLA1染色により、処置の4か月後に細胞を識別した(
図12参照)。ヒト細胞の生着と一致しているとみなされた染色の同定は、二人の独立した検閲者によって確認された。各動物に対して染色された4つの切片のうちの1つにおいて、通常1または2の細胞が識別され、尿細管へと組み込まれていたが、1つの塊は間質内にあると識別された。
【0192】
結論:
オルガノイド(NKO)送達により緩和された重要な変化は、対照動物において腎疾患の進行に関連したものであり、及び、疾患モデルへの同系/自己NKA送達により影響を受けた測定項目を含有していた。
影響を受けた測定項目は、疾患モデルへの同系/自己NKA送達で観察されたもの(貧血(Hct、Hgb、RBC)、炎症(WBC)、尿濃縮(spGrav)及び、場合によって、高窒素血症(BUN)の測定項目)と一致していた。
非常に小数のヒト細胞が、NKOプロタイプで処置を行ったおよそ4か月後に検出された。
ヌードラットの腎摘出(平均で59%KMR)により、早期ステージ及び慢性進行状態の腎不全の状態がもたらされた(貧血、蛋白尿、脂質異常症、及び場合によって早期ステージの高窒素血症の指標により特徴付けられる)。
全ての動物が、実験終了まで生存した。
ヒトオルガノイドをRKMモデルへと送達させるために用いられた手順は、耐容性良好であった。
【0193】
実施例5 生体反応性腎細胞の単離及び特徴解析
成獣のオスブタ(Sus scrofa)における、貧血を伴う特発性進行性慢性腎疾患(CKD)の症例により、年齢を適合させた正常ブタ腎組織との直接比較を用いた細胞組成の評価及び特徴解析のための、新鮮な罹患腎組織がもたらされた。採取時点での腎組織の組織学的評価により、重篤なびまん性慢性間質性線維化及び多発性線維化を伴う半月体形成性糸球体腎炎により特徴付けられる腎疾患が確認された。臨床化学的検査により、高窒素血症(血中尿素窒素及び血清クレアチニンの上昇)及び、中程度の貧血(ヘマトクリットの中程度の低下及びヘモグロビンレベルの低下)が確認された。細胞を罹患腎組織及び正常腎組織の両方から単離、増殖及び特徴解析を行った。PresnellらのWO/2010/056328の
図1に示されるように、Gomori's Trichro
me染色により、正常腎組織と比較し、罹患腎組織において線維化が顕著に認められる(
矢印により示されている青色染色)。キュビリン(cubulin):メガリン(megalin)を発現し、受容体介在性アルブミン移送を行うことができる機能性尿細管細胞は、正常及び罹患腎組織の両方から増殖していた。エリスロポエチン(EPO)発現細胞もまた、培養中に存在しており、複数回の継代及び凍結/融解サイクルを通して維持された。さらに、分子学的分析により、正常及び罹患組織由来のEPO発現細胞が、EPO及び他の低酸素制御遺伝子標的(vEGFを含む)のHIF1α駆動性の誘導を伴うin vitro低酸素状態に反応したことが確認された。コラゲナーゼ+ディスパーゼを用いた酵素消化を介して、細胞をブタ腎組織から単離し、及び、1回の機械的消化及び移植片培養を行うことにより、別の実験においてもまた単離した。2回継代した時点で、移植片由来細胞培養(epo発現細胞を含有)を、大気状態(21%)及び変動低酸素状態(<5%)培養条件の両方に供し、低酸素状態に曝すことで、EPO遺伝子発現がアップレギュレートされるかどうかを測定した。げっ歯類培養で示したように(実施例3を参照)、正常なブタは、EPO遺伝子の酸素依存性の発現及び制御を呈した。驚いたことに、CKDブタは尿毒症状態/貧血状態であるにもかかわらず(ヘマトクリット<34、クレアチニン>9.0)、EPO発現細胞は、組織から容易に単離及び増殖し、EPO遺伝子の発現は低酸素制御された状態を維持していた(PresnellらのWO/2010/056328の
図2に示される。その全体で参照により本明細書に援用される)。PresnellらのWO/2010/056328(その全体で参照により本明細書に援用される)の
図3に示されるように、増殖培養中の細胞は、尿細管様構造への自己組織化能力を示した。PresnellらのWO/2010/056328(その全体で参照により本明細書に援用される)の
図4に示されるように、培養中の機能性尿細管細胞の存在(3継代目)は、培養細胞による、受容体介在性のFITC結合アルブミンの取り込みが観察されたことにより確認された。緑色のドット(薄白の矢印により示されている)は、尿細管細胞特異的受容体(メガリン及びキュビリン)により介在される、フルオレセイン結合アルブミンのエンドサイトーシスを表し、このことから、機能性尿細管細胞によるタンパク質の再吸収が示唆される。青色染色(薄白矢印により示される)は、Hoescht染色された核である。まとめると、これらのデータから、ブタの腎組織(たとえCKDに罹患し重度に弱っている腎組織であっても)から機能性尿細管及び内分泌細胞を単離、増殖させることができることが示される。さらに、これらの結果から、自己細胞をベースとした、CKD治療のための治療用製品の利点が支持される。
【0194】
さらに、正常な成人ヒト腎組織からEPO産生細胞が酵素的に単離された(実施例1に上述)。PresnellらのWO/2010/056328(その全体で参照により本明細書に援用される)の
図5に示されるように、単離を行うことによって、当初組織においてよりも、単離した後に、相対的により多くのEPOの発現がもたらされた。PresnellらのWO/2010/056328(その全体で参照により本明細書に援用される)の
図6に示されるように、EPO遺伝子の発現を維持させたまま、ヒトEPO産生細胞を培養中に維持することが可能である。平らな組織培養処置プラスチック上または、何らかの細胞外マトリクス(たとえば、フィブロネクチンまたはコラーゲン)でコートされたプラスチック上で、ヒト細胞を培養/増殖させ、及び、それら全てで、経時的にEPO発現を支持することが判明した。
【0195】
実施例6 特定の生物活性のある腎細胞の単離と富化
腎細胞単離:簡潔に述べると、10のバッチ、2週齢のオスのLewisラットの腎臓を、供給業者(Hilltop Lab Animals Inc.)から購入し、Viaspan保存培地中、約4℃で一晩輸送した。本明細書に開示される全ての工程は、滅菌性を保つために生物学的安全キャビネット(BSC)中にて行われた。腎臓をHank'
s平衡塩溶液(HBSS)中で3回洗浄し、Viaspan保存培地を洗い流した。3回の洗浄の後、残った腎臓被膜を、残りの間質組織と共に除去した。大腎杯もまた、マイクロ切開技術を用いて除去した。次いで、滅菌外科用メスを用いて腎臓を細かくスラリーへ
と分割した。次いで、スラリーを50mlのコニカル遠心管へと移し、重量を計測した。少しのサンプルをRNAのために採取し、RNAseフリーの滅菌1.5mlマイクロ遠心管へと入れ、液体窒素中で急速冷凍した。凍結した時点で、分析を行うまで-80℃の冷凍庫へと移した。10の幼齢動物の腎臓の組織重量はおよそ1gであった。バッチ重量に基づき、消化培地を調整し、組織1g当たり、20mlの消化培地とした。この手順のための消化緩衝液は、HBSSに溶解した4ユニットのディスパーゼ1(Stem Cell Tech)、300ユニット/mlのIV型コラゲナーゼ(Worthington)と5mMのCaCl2(Sigma)を含有した。
【0196】
前もって温めておいた消化緩衝液の適量をチューブに加え、次いで、封をし、37℃のインキュベーター中の振とう器に、20分間置いた。この最初の消化工程により、多くの赤血球細胞が取り除かれ、残った組織の消化が促進される。20分後、チューブを取り出して、BSC中に置いた。組織をチューブの底に沈ませ、次いで、上清を除去した。次いで、残った組織に、開始量と同じ量の新鮮な消化緩衝液を加えた。再度、チューブを、37℃のインキュベーター中の振とう器上に、さらに30分間置いた。
【0197】
30分後、消化混合物を、70μmのセルストレイナー(BD Falcon)を通して等量の中和緩衝液(DMEM w/10%FBS)へとピペッティングし、消化反応を止めた。次いで、細胞懸濁液を300xg、5分間遠心することにより洗浄した。遠心後、次いで、ペレットを20mlのKSFM培地に再懸濁し、細胞計数及びトリパンブルー排除を用いた活性評価のためのサンプルを得た。細胞数を算出し、100万個の細胞RNAのために採取し、PBSで洗浄し、液体窒素中で急速冷凍した。残った細胞懸濁液をKSFM培地で50mlとし、再度、300xg、5分間遠心することにより洗浄した。洗浄後、細胞ペレットを、1500万個の細胞/KSFM 1mlの濃度で再懸濁した。
【0198】
腎細胞懸濁液5mlを、次いで、15mlのコニカル遠心管(BD Falcon)に入れた5mlの30%(w/v)Optiprep(登録商標)へと加え、6回転倒混和することにより混合した。これにより、15%(w/v)のOptiprep(登録商標)の最終混合物が形成された。転倒混和後、チューブに注意深く1mLのPBSを重ねた。チューブを800xgで15分間、ブレーキをかけずに遠心した。遠心後、チューブを取り出し、細胞バンドが、混合物勾配の一番上に形成された。また、赤血球、死細胞、及び、いくらかの小さい少量の顆粒細胞、いくらかのepo産生細胞、いくらかの尿細管細胞、及びいくらかの内皮細胞を含有するペレットも形成された。バンドを、ピペットを用いて注意深く取り除き、もう1つの15mlコニカル管へと移した。勾配培地を吸引により取り除き、ペレットを1mlのKSFMに再懸濁することにより回収した。次いでバンド細胞及びペレット細胞を再度混合し、KSFMを用いて採取バンド量の少なくとも3希釈に再懸濁し、300xgで5分間遠心することにより洗浄した。洗浄後、細胞を20mlのKSFMに再懸濁し、細胞計数のためのサンプルを採取した。トリパンブルー排除を用いて細胞数を算出した後、100万個の細胞をRNAサンプルのために採取し、PBSで洗浄し、液体窒素中で急速冷凍した。
【0199】
密度勾配分離を用いて、特定の生物活性のある腎細胞の活性及び培養パフォーマンスを増強させるためのプレ培養「クリーンアップ」
培養のための清浄で、増殖可能な細胞群を得るために、細胞懸濁液を「腎細胞単離」で上述されたように作製した。任意選択の工程として、及び、最初の調製物を清浄化する手段として、滅菌東宝緩衝液中で懸濁された、最大で100万個のトータル細胞を、60%(w/v)イオジキサノールのストックから室温で調製した等量の30%Optiprep(登録商標)と1:1で完全に混合し(最終的に15%w/v Optiprep溶液となる)、6回転倒混和することにより完全に混合させた。混合した後、1mlのPBS緩衝液を混合細胞懸濁液の上に注意深く重ねた。次いで、勾配チューブを注意深く遠心管
に入れ、適切なバランスを取った。勾配チューブを、800xgで、15分間、25℃にてブレーキをかけずに遠心した。清浄化された細胞群(増殖能があり、機能性の集合尿細管細胞、尿細管細胞、内分泌細胞、糸球体細胞及び血管細胞を含有する)を、6%~8%(w/v)のOptiprep(登録商標)(1.025~1.045g/mLの密度に相当)で分割させた。他の細胞及び残渣は、チューブの底に沈殿した。
【0200】
腎細胞培養:
混合細胞バンド及びペレットを、次いで、組織培養処置三重フラスコ(NuncT500)またはその均等物に、抗生物質/抗真菌物質を有する、DMEM(高グルコース)/KSFM(5%(v/v)FBS、2.5μg EGF、25mg BPE、1X ITS(インスリン/トランスフェリン/セレナイトナトリウム培地補充物))の50:50の混合物150ml中、30,000細胞/cm2の細胞濃度で播種した。細胞を、加湿した5%CO2インキュベーター(細胞に21%の大気酸素レベルを供給する)で2~3日間培養した。2日後、培地を交換し、培養物を、CO2/窒素ガスのマルチガス加湿インキュベーター(Sanyo)により供給される2%酸素レベル環境下に、24時間置いた。24時間のインキュベート後、細胞を60mlの1xPBSで洗浄し、次いで、40mlの0.25%(w/v)トリプシン/EDTA(Gibco)を用いて回収した。回収した時点で、細胞懸濁液を、等量のKSFM(10%FBS含有)を用いて中和した。次いで、細胞を300xgで10分間遠心することにより洗浄した。洗浄後、細胞を20mlのKSFMに再懸濁し、50mlのコニカルチューブに移し、細胞計数のためのサンプルを採取した。トリパンブルー排除法を用いて活性のある細胞を計数した時点で、100万個の細胞を、RNAサンプルのために採取し、PBSで洗浄し、液体窒素中で急速冷凍した。細胞を再度PBSで洗浄し、300xg、5分間遠心することにより回収した。洗浄した細胞ペレットを、3750万個の細胞/mlの濃度でKSFMに再懸濁した。
【0201】
密度段階勾配分離を用いた、特定の生物活性のある腎細胞の富化:
培養した腎細胞(主に腎尿細管細胞から構成されるが、他の細胞群(集合尿細管、糸球体、血管及び内分泌系)も小数含有する)を、イオジキサノール(Optiprep)の複数の濃度w/vから作製された密度段階勾配を用いて、その構成要素亜群に分離した。培養物を、採取と勾配への適用の前に低酸素環境下に24時間置いた。段階づけられた勾配は、15mlの滅菌コニカルチューブ中に、互いに上に4つの異なる密度の培地を重ねることにより作製された(最も高い密度を有する溶液を底に置き、最も低い密度の溶液を一番上に重ねる)。細胞を段階勾配の一番上に置き、遠心することにより、サイズと粒度に基づき、複数のバンドへと群が分割される。
【0202】
簡潔に述べると、7、11、13及び16%のOptiprep(登録商標)(60%w/vイオジキサノール)の密度を、KFSM培地を希釈物質として用いて作製した。たとえば、50mlの7%(w/v)Optiprep(登録商標)に対しては、5.83mlの60%(w/v)イオジキサノールのストックを、44.17mlのKSFM培地に添加し、転倒混和により良く混合した。滅菌キャピラリーチューブに連結された滅菌L/S16Tygon管を有するぜん動ポンプ(Master Flex L/S)を、2ml/分の流速に設定し、4つの溶液各々を2mL、15mLの滅菌コニカルチューブへロードした(16%溶液から開始し、13%溶液、11%溶液、7%溶液と続く)。最終的に、7500万個の培養ラット腎細胞を含有する細胞懸濁液2mL(「腎細胞培養」に上述されるように作製された懸濁液)が、段階勾配の上にロードされた。重要なことは、ポンプが勾配溶液をチューブへと運び始めるとともに、勾配の各層の間に適切なインターフェースが形成されるよう、液体がチューブの側面に45°の角度でゆっくりと流れ落ちるように注意することである。細胞と共にロードされた段階勾配を、次いで、800xgで20分間、ブレーキをかけずに遠心した。遠心後、各インターフェースを乱さないようにチューブを注意深く取り出した。5つの異なる細胞分画(4つのバンドと1つのペレッ
ト)(B1~B4、+ペレット)(
図26、左のコニカルチューブを参照)を得た。各分画を、滅菌ディスポーザブル球ピペットまたは5mlのピペットのいずれかを用いて集め、表現型及び機能性を特徴解析した(PresnellらのWO/2010/056328、実施例10を参照のこと)。単離後すぐにラット腎細胞懸濁液を段階勾配分画に供した場合、尿細管細胞が富化された分画(及び、集合尿細管由来の細胞をいくらか含有する)は、1.062~1.088g/mLの間の密度に分離する。対照的に、密度勾配分離が、ex vivo培養の後に行われた場合、尿細管細胞が富化された分画(及び、集合尿細管由来の細胞をいくらか含有する)は、1.051~1.062g/mLの間の密度に分離する。同様に、単離後すぐにラット腎臓細胞懸濁液が段階勾配分画に供された場合、epo産生細胞、糸球体有足細胞、及び血管細胞(「B4」)が富化された分画は、1.025~1.035g/mLの間の密度に分離する。対照的に、密度勾配分離がex vivo培養の後に行われた場合、epo産生細胞、糸球体有足細胞、及び血管細胞(「B4」)が富化された分画は、1.073~1.091g/mLの間の密度に分離した。重要なことは、「B2」及び「B4」分画の両方への細胞の培養後分配は、回収及び段階勾配手順の前に、低酸素培養環境(低酸素とは、<21%(大気)酸素レベルとして定義される)へ培養物を、(約1時間~約24時間)露出することにより増強される(バンド分配に対する低酸素効果に関するさらなる詳細は、実施例7に示す)。
【0203】
各バンドを、3x量のKSFMで希釈し、良く混合し、300xgで5分間、遠心することにより洗浄した。ペレットを、2mlのKSFMに再懸濁し、活性のある細胞をトリパンブルー排除法及びヘマサイトメーターを用いて計数した。100万個の細胞をRNAサンプルのために集め、PBS中で洗浄し、液体窒素中で急速凍結した。B2及びB4由来の細胞は、尿毒症及び貧血のメスラット(Charles River Laboratoriesで、2工程の5/6腎摘出術により作製)への移植実験のために用いた。B4の特性は、定量リアルタイムPCRにより確認した(エリスロポエチン及びvEGFの酸素制御発現、糸球体マーカー(ネフリン、ポドシン)の発現、ならびに血管マーカー(PECAM)の発現を含む)。「B2」分画の表現型は、Eカドヘリン、Nカドヘリン及びアクアポリン2の発現を介して確認した。PresnellらのWO/2010/056328、
図49a及び49bを参照のこと。
【0204】
ゆえに、段階勾配法を用いることにより、小数のepo産生細胞群(B4)の富化が可能になるのみならず、機能性尿細管細胞(B2)の相対的富化分画を作製する手段ともなる(PresnellらのWO/2010/056328、
図50と51を参照のこと)。また、段階勾配戦略により、EPO産生細胞及び尿細管細胞を、赤血球、細胞残渣、及び他の望ましくない影響を有する可能性がある細胞型(たとえば、大きな細胞塊、及びあるタイプの免疫細胞)から分離することが可能となる。
【0205】
段階勾配法には、細胞成分を良く分離するために、用いられる特定の密度に調製する必要が生じうる。勾配を調製するための好ましい方法には、1)連続的な密度勾配(勾配の底辺で高い密度(たとえば、16~21%Optiprep)であり、勾配の一番上で比較的低い密度(たとえば、5~10%)である)を流すこと、を含む。連続勾配は、標準的な方法(Axis Shield)に従い、任意の標準的な密度勾配溶液(フィコール、パーコール、スクロース、イオジキサノール)を用いて調製することができる。対象の細胞を、連続勾配上にロードし、ブレーキをかけずに800xgで20分間、遠心する。サイズと粒度が似た細胞は、勾配中に一緒に分離される傾向があり、勾配中の相対位置を計測することができ、その位置での溶液の比重もまた計測される。ゆえに、その後、特定の細胞群を、特定の条件下で密度勾配を横断するそれら能力に基づいて単離することに焦点を置いた既定の段階勾配を作製することができる。不健康な組織と健康な組織で細胞を単離する場合、または、異なる種類の細胞から特定の細胞を単離する場合には、そのような最適化が必要となりうる。たとえば、ラットで同定された特定のB2及びB4の亜群を
他種細胞から単離できるようにするために、イヌ科及びヒトの腎細胞培養の両方で最適化を行った。げっ歯類B2とB4亜群の単離に最適な勾配は、7%、11%、13%及び16%Optiprep(w/v)からなる。イヌ科B2とB4亜群の単離に最適な勾配は、7%、10%、11%及び16%Optiprep(w/v)からなる。ヒトB2とB4亜群の単離に最適な勾配は、7%、9%、11%及び16%Optiprep(w/v)からなる。培養されたげっ歯類腎細胞、イヌ科腎細胞、及びヒト腎細胞からのB2及びB4の局在化のための密度範囲を、表8に提示する。
【0206】
実施例7 勾配前の低酸素培養は、バンド分布、組成、及び遺伝子発現に影響を与える。
プロトタイプB2及びB4の分布及び組成に対する酸素条件の影響を測定するために、異なる種由来の新しい腎細胞調製物を、勾配工程の前に、異なる酸素条件に曝した。げっ歯類の新しい腎増殖(NKA)細胞調製物(RK069)は、上述の標準的なラット細胞単離及び培養開始のための手順を用いて確立された。全てのフラスコは、21%(大気)酸素条件下で、2~3日間培養された。培地を交換し、次いで、フラスコの半分を、酸素制御されたインキュベーター(2%酸素に設定)へと移し、残ったフラスコは21%酸素条件にさらに24時間維持された。次いで、上述の標準的な酵素による回収手順を用いて、各設定条件から細胞を回収した。段階勾配は、標準的な手順に従い調製され、「正常酸素」(21%酸素)及び「低酸素」(2%酸素)培養は別々に回収され、同じ段階勾配に一緒に適用した(
図27)。4つのバンドとペレットが両方の条件下において生成されたが、勾配全体の細胞分布は21%と2%の酸素培養バッチで異なっていた(表3)。具体的には、B2の収量は低酸素条件で増加し、B3で減少した。さらに、B4特異的遺伝子(たとえば、エリスロポエチン)の発現は、低酸素培養細胞から作製された勾配で増強されていた(PresnellらのWO/2010/056328、
図73)。
【0207】
イヌ科のNKA細胞調製物(DK008)は、上述のイヌ細胞の単離と培養の標準的な手順を用いて確立された(げっ歯類の単離及び培養手順と類似である)。全てのフラスコは、4日間、21%(大気)酸素条件下で培養され、次いで、フラスコのサブセットが低酸素(2%)に24時間移された一方で、もう一方のフラスコサブセットは21%に維持された。続いて、フラスコの各セットを回収し、同じ段階勾配に供した(
図28)。ラットの結果(実施例6)と同じように、低酸素培養されたイヌの細胞は勾配全体に分配されており、大気酸素条件下で培養されたイヌの細胞とは異なっていた(表9)。B2の収量も、勾配前に低酸素に曝されると増加し、同時に、B3への分布は減少した。
【0208】
上述のデータから、勾配前に低酸素に曝すことで、B2の組成、ならびに、特定の特異
化細胞(エリスロポエチン産生細胞、血管細胞、及び糸球体細胞)のB4への分配が増強されることが示された。ゆえに、低酸素培養の後に上述の密度勾配分離を行うことは、種を越えて、「B2」及び「B4」細胞群を生成するのに有効な方法である。
【0209】
実施例8 ヒトの腎臓からの尿細管/糸球体細胞の単離
本明細書に開示される酵素単離方法により、正常なヒト腎組織から尿細管及び糸球体細胞を単離し、増殖させた。上述の勾配法により、尿細管細胞分画をex vivo及び培養後に富化した。PresnellらのWO/2010/056328、
図68(その全体で参照により本明細書に援用される)に示されるように、表現型の特性は、単離中及び増殖中に維持されていた。尿細管細胞の機能(標識アルブミンの取り込みにより評価された)もまた、繰り返しの継代と凍結保存の後に維持されていた。PresnellらのWO/2010/056328、
図69(その全体で参照により本明細書に援用される)において、尿細管富化群及び尿細管欠落群が3D動的培養で培養された場合、尿細管マーカー(カドヘリン)発現の著しい増加が、尿細管富化群で現れた。このことにより、細胞が3D動的環境下で培養された際に最初の富化を超えて尿細管細胞の富化が、維持され得たことが確認される。実施例7に上述される、同じ腎細胞培養群を、フローサイトメトリー分析に供し、フォワードスキャッターとサイドスキャッターを検証した。この小さく、粒度の小さいEPO産生細胞群は識別可能であり(8.15%)、フローサイトメーターのソーティング能力を用いて、当該小さく、粒度の小さい群の陽性選択を介して、分離された(PresnellらのWO/2010/056328、
図70(その全体で参照により本明細書に援用される))。
【0210】
実施例9 自己免疫性糸球体腎炎患者試料から単離された腎細胞の未分画混合物の特徴解析
自己免疫性糸球体腎炎患者の試料から、腎細胞の未分画混合物を上述のように単離した。腎組織から単離及び増殖された腎細胞の特定の亜群の、偏りのない遺伝子型組成を測定するために、定量的リアルタイムPCR(qRTPCR)分析(Brunskillら、上記、2008)を行って、細胞亜分画の間で、異なる細胞型に特異的な、及び、経路特異的な遺伝子発現パターンを特定した。IlaganらのPCT/US2011/036347の表6.1に示されるように、HK20は、自己免疫性糸球体腎炎患者の試料である。IlaganらのPCT/US2011/036347の表6.2に示されるように、HK20から生成された細胞は、糸球体細胞を欠いている(qRTPCRにより測定)。
【0211】
実施例11 蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いた、活性のある腎細胞型の富化/枯渇
蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用いて、単離初代腎組織から、1以上の単離腎細胞を富化させても良く、及び/または、1以上の特定の腎細胞型を、枯渇させても良い。
【0212】
試薬:
70%エタノール;洗浄緩衝液(PBS);50:50腎細胞培地(50%DMEM高グルコース):50%角化細胞-SFM;トリパンブルー0.4%;標的腎細胞群に対する一次抗体(たとえば、腎内皮細胞に対するCD31、及び、腎糸球体細胞に対するネフリン)。対応するアイソタイプ特異的蛍光二次抗体;染色緩衝液(PBSに溶解した0.05%BSA)
【0213】
手順:
生物学的安全キャビネット(BSC)を清浄化するための標準的な手順を行った後、初代単離物、または培養細胞のいずれか由来の腎細胞の単一細胞懸濁液を、T500T/C
処置フラスコから得て、腎細胞培地に再懸濁し、氷上に置いても良い。次いで、細胞数と活性を、トリパンブルー排除法を用いて測定する。たとえば、異種群由来の糸球体細胞または内皮細胞等の腎細胞富化/枯渇に関しては、少なくとも70%の活性を有する10~50x106生細胞が得られる。次いで、異種腎細胞群を、標的細胞型に特異的な一次抗体で染色する(開始濃度は1μg/0.1ml(染色緩衝液)/1x106細胞(もし必要であれば力価))。標的抗体は、結合されていても(たとえばCD31 PE(腎内皮細胞に特異的))、または、結合されていなくても良い(たとえばネフリン(腎糸球体細胞に特異的))。
【0214】
次いで、細胞を、遮光しながら4℃、氷上にて30分間染色する。インキュベーション30分後、細胞を300xgで5分間遠心することにより洗浄する。次いで、ペレットを、PBSまたは染色緩衝液のいずれか(結合アイソタイプ特異的二次抗体が必要かどうかに依存する)にて再懸濁する。もし細胞を、蛍光色素結合一次抗体を用いて標識する場合、細胞を、10x107細胞当たり2mlのPBSに再懸濁し、FACS ariaまたは均等のセルソーターへと進める。もし細胞が蛍光色素結合抗体で標識されない場合は、細胞を、アイソタイプ特異的蛍光色素結合二次抗体を用いて標識する(開始濃度は、1ug/0.1ml/1x106細胞)。
【0215】
次いで、細胞を30分間、氷上4℃で、遮光しながら染色する。30分間のインキュベーションの後、細胞を300xgで5分間遠心することにより洗浄する。遠心後、ペレットを、5x106/ml(PBS)の濃度でPBS中に再懸濁し、次いで、4ml/12x75mmを、滅菌チューブに移す。
【0216】
FACs Ariaは、メーカーの説明書(BD FACs Ariaユーザーマニュアル)に従い、生細胞滅菌ソーティング用に調整される。サンプルチューブをFACs Ariaへロードし、取得(acquisition)が開始された後で、PMT電圧を調製する。ゲートを引き、特定の波長による蛍光強度を用いて、腎臓の特定の細胞型を選択する。他のゲートは、陰性群を選択するために引く。所望されるゲートを引き、陽性標的群と陰性群を囲った時点で、細胞を、メーカーの説明書を用いてソートする。
【0217】
陽性標的群は、1つの15mlコニカルチューブに集め、陰性群は、他の15mlコニカルチューブに集める(チューブは腎細胞培地1mlで満たされている)。集めた後、各チューブのサンプルを、フローサイトメトリーにより分析し、純度を測定する。
【0218】
集められた細胞を、300xgで5分間、遠心により洗浄し、ペレットを、さらなる分析と実験のために、腎細胞培地中に再懸濁する。
【0219】
実施例12 磁気細胞ソーティングを用いた腎細胞型の富化/枯渇
1以上の単離腎細胞を富化しても良く、及び/または、1以上の特定の腎細胞型を、単離初代腎組織から枯渇させても良い。
【0220】
試薬:
70%エタノール、洗浄緩衝液(PBS)、50:50腎細胞培地(50%DMEM高グルコース):50%角化細胞-SFM、トリパンブルー0.4%、泳動緩衝液(PBS、2mM EDTA、0.5% BSA)、リンス緩衝液(PBS、2mM EDTA)、クリーニング溶液(70%v/vエタノール)、Miltenyi FCRブロッキング試薬、Miltenyiマイクロビーズ(IgGアイソタイプ、標的抗体(たとえばCD31(PECAM)またはネフリン)または二次抗体のいずれかに特異的)。
【0221】
手順:
生物学的安全キャビネット(BSC)を清浄化するための標準的な手順を行った後、初代単離物、または培養物のいずれか由来の腎細胞の単一細胞懸濁液を得て、腎細胞培地に再懸濁する。細胞数と活性を、トリパンブルー排除法を用いて測定する。たとえば、異種群由来の糸球体細胞または内皮細胞等の腎細胞富化/枯渇に関しては、少なくとも70%の活性を有する少なくとも10x106~4x109生細胞が得られる。
【0222】
最も良い富化/枯渇法のための分離法は、対象の標的細胞に基づいて決定される。10%未満の標的頻度の富化に対しては(たとえば、ネフリン抗体を用いた糸球体細胞)、Miltenyi autoMACS、またはその均等物、機器プログラムのPOSSELDS(センシティブモードの二重陽性選択)が用いられる。10%を超える標的頻度の枯渇に対しては、Miltenyi autoMACS、またはその均等物、機器プログラムのDEPLETES(センシティブモードの枯渇)が用いられる。
【0223】
生細胞は、たとえば糸球体細胞に対するネフリンrbポリクローナル抗体等の標的特異的一次抗体を用いて、15mlのコニカル遠心管中、1μg/10x106細胞/0.1mlPBS(0.05%BSAを含有)を添加し、次いで、4℃で15分間インキュベーションを行うことにより標識される。
【0224】
標識した後、10x107細胞当たり1~2mlの緩衝液を加え、次いで、300xgで5分間、遠心を行うことにより細胞を洗浄し、結合していない一次抗体を除去する。洗浄後、アイソタイプ特異的二次抗体(たとえば、ニワトリ抗ウサギPE(1ug/10x106/0.1ml PBS(0.05%BSA含有)))を加え、次いで、4℃で15分間、インキュベーションを行う。
【0225】
インキュベーションの後、10x107細胞当たり1~2mlの緩衝液を加え、次いで、300xgで5分間、遠心を行うことにより細胞を洗浄し、結合していない二次抗体を除去する。上清を除去し、細胞ペレットを、10x107総細胞当たり60μlの緩衝液中に再懸濁し、次いで、10x107総細胞当たり20μlのFCRブロッキング試薬を加え、それを良く混合する。
【0226】
20μlの直接MACSマイクロビーズ(たとえば、抗PEマイクロビーズ)を加え、混合し、次いで、4℃で15分間インキュベートする。
【0227】
インキュベーションの後、細胞を10~20x量の標識緩衝液を加え、300xgで5分間、細胞懸濁液を遠心することにより洗浄し、500μl~2ml緩衝液/10x108細胞で細胞ペレットを再懸濁する。
【0228】
メーカーの説明書に従い、autoMACSシステムを清浄化し、autoMACSを用いた磁気細胞分離に備えて準備する。新たな滅菌採取チューブを出口ポート(outlet ports)の下に置く。autoMACS細胞分離プログラムを選択する。選択に関しては、POSSELDSプログラムを選択する。枯渇に関しては、DEPLETESプログラムを選択する。
【0229】
標識細胞を取り込みポート(uptake ports)に挿入し、プログラムをスタートさせる。
【0230】
細胞選択または枯渇の後、試料を集め、使用するまで氷上に置く。枯渇資料または選択試料の純度は、フローサイトメトリーにより確認する。
【0231】
実施例13 治療可能性のある細胞を正常組織及び慢性腎疾患組織から単離し、増殖させ
ることが可能である。
本実験の目的は、高含量分析(HCA)を介してヒトNKA細胞の機能的特徴を測定することである。高含量イメージング(HCI)により、多数の試料の、複数の細胞内事象の2以上の蛍光プローブを用いた(マルチプレックス)同時イメージングがもたらされる。高含量分析(HCA)により、高含量イメージングで捕捉された複数の細胞パラメーターの同時定量的測定がもたらされる。簡潔に述べると、未分画(UNFX)培養を生成し(Aboushwarebら、上記、2008)、標準的な生検法を用いて進行した慢性腎疾患(CKD)を有する5人のヒト腎臓、及び非CKDの3人のヒト腎臓から採取されたコア生検から、独立して維持される。ex vivoでUNFXを2回継代した後、細胞を回収し、密度勾配法(実施例2に記述)に供し、亜分画(B2、B3及び/またはB4亜分画を含有)を生成する。
【0232】
ヒト腎組織は、非CKDヒトドナー及びCKDヒトドナーから得られた(IlaganらのPCT/US2011/036347の表10.1に要約)。IlaganらのPCT/US2011/036347の
図4に、HK17及びHK19サンプルの組織病理学的特徴が示されている。全ての非CKD(3/3)及びCKD(5/5)腎臓からex vivo培養が確立された。対象領域(ROI)を規定するヒトNKA細胞におけるアルブミン輸送の高含量分析(HCA)は、IlaganらのPCT/US2011/036347の
図5に示す(ヒトNKA細胞におけるアルブミン輸送のHCA)。非CKD及びCKDの腎臓から誘導されたNKA細胞におけるアルブミン輸送の定量比較は、IlaganらのPCT/US2011/036347の
図6に示されている。
【0233】
IlaganらのPCT/US2011/036347の
図6に示されているように、CKD由来NKA培養においてアルブミン輸送は損なわれていない。尿細管細胞富化B2亜分画と尿細管細胞枯渇B4亜分画とのマーカー発現の比較分析は、IlaganらのPCT/US2011/036347の
図7(CK8/18/19)に示されている。
【0234】
尿細管細胞富化B2亜分画と尿細管細胞枯渇B4亜分画とのアルブミン輸送の機能性比較分析は、IlaganらのPCT/US2011/036347の
図8に示されている。B2亜分画は、近位尿細管細胞が富化されているために、アルブミン輸送機能の増加を示す。
【0235】
アルブミン取り込み:
24ウェルのIV型コラーゲンプレート(BD Biocoat(商標))でコンフルエントまで増殖した細胞の培養培地を、1x抗真菌物質/抗生物質と2mMグルタミンを含有する、フェノールレッドフリー、血清フリー、低グルコースDMEM(pr-/s-/Ig DMEM)と18~24時間置き換えた。分析を行う直前に、細胞を洗浄し、pr-/s-/lg DMEM+10mM HEPES、2mMグルタミン、1.8mM CaCl2、及び1mM MgCl2と30分間インキュベートした。細胞を、25μg/mLローダミン結合ウシアルブミン(Invitrogen)に30分間曝し、氷冷PBSを用いて洗浄し、エンドサイトーシスを停止させ、ただちに2%パラホルムアルデヒド(25μg/mLのヘキスト核色素を含有)を用いて固定した。阻害実験に対しては、1μMの受容体関連タンパク質(RAP)(Ray Biotech,Inc.,Norcross GA)をアルブミン添加の10分前に添加した。顕微鏡イメージングと分析を、BD Pathway(商標)855 High-Content BioImager(Becton Dickinson)を用いて行った(Kelley et al.Am J Physiol Renal Physiol.2010 Nov;299(5):F1026-39.Epub Sep 8,2010を参照のこと)。
【0236】
結論として、HCAによって細胞レベルのデータが得られ、他のアッセイ(すなわち、
遺伝子発現またはタンパク質発現)では検出できない群動態を明らかとすることができる。アルブミン輸送機能を測定するための定量可能なex vivo HCAアッセイ(HCA-AT)を用いて、ヒトNKAプロトタイプの成分としてのヒト腎尿細管細胞を特徴解析することができる。HCAにより行うことが可能な細胞機能の比較評価によって、ヒトCKD腎から誘導されたNKA培養物中に、アルブミン輸送を行う細胞が保持されていたことが明らかとなった。また、NKA培養物中の特定の亜分画(B2及びB4)が、表現型及び機能においてはっきりと区別可能であり、B2は、アルブミン輸送活性が増強した尿細管細胞富化分画を表していた。ヒトCKD由来のB2細胞亜群は、in vivoで有効性を示されたげっ歯類B2細胞(上述)と表現型的に、及び機能的に類似している。
【0237】
参照文献
1. Kelley,R.et al.Intra-renal Transplantation of Bioactive Renal Cells Preserves
Renal Functions and Extends Survival in
the ZSFI model of Progressive Diabetic Nephropathy.2011 American Diabetes Association(ADA)Conference.(2011)
2. Kelley,R.et al.Tubular cell-enriched subpopulation of primary renal cells improves survival and augments kidney function in rodent model of chronic kidney disease.Am J Physiol Renal Physiol 299,F1026-1039.
3. Presnell,S.C.et al.(2011)Isolation,Characterization,and Expansion Methods for
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8. Basu,J.et al.Organ specific regenerative markers in peri-organ adipose:kidney.Lipids Health Dis 10,171.
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10. Buzhor et al.Kidney Spheroids Recapitulate Tubular Organoids Leading to Enhanced Tubulogenic Potency of Human Kideny-Derived Cells Tissue Engineering Part A,(2011).
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13. Urie,B.K.et al.,Evaluation of clinical status,renal function,and hematopoietic variables after unilateral nephrectomy in canine kidney donors.J Am Vet Med Assoc.230:1653-6(2007).