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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105541
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】歯飛び防止装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/18 20060101AFI20240730BHJP
   F16H 7/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
F16H7/18 B
F16H7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024078951
(22)【出願日】2024-05-14
(62)【分割の表示】P 2022008345の分割
【原出願日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】63/140,448
(32)【優先日】2021-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/218,129
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】クランプ・マシュー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ルーン・クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】シモンズ・ショーン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト・ティモシー ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】グッドセル・ジョセフ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】アダムス・ブラッドリー エフ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯飛び防止装置を使用して、チェーンの弛みを制御し、チェーン歯飛びが発生するトルクを遅延させ、それにより、歯飛びトルク性能を向上させる。
【解決手段】チェーン8は、駆動スプロケットを被駆動スプロケットに連結する。駆動スプロケットと被駆動スプロケット8の間で、チェーンは弛みストランドと張りストランドを有している。歯飛び防止装置は、トランスファケース内に取り付けられ、かつチェーン8と被駆動スプロケットに隣接し、被駆動スプロケットとチェーン8の弛みストランドとの最初の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケットに対して接線となる位置に取り付けられている。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスファケース内のチェーンドライブシステムであって、駆動スプロケットと、被駆動スプロケットと、前記駆動スプロケットを前記被駆動スプロケットに接続するチェーンであって、前記被駆動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間に弛みストランド、および前記被駆動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間に張りストランドを有するチェーンと、前記チェーンの前記弛みストランドが被駆動スプロケットに引き込まれる前記被駆動スプロケットの第1の係合部において前記チェーンが前記被駆動スプロケットに対して接線となる位置に取り付けられ、これにより前記チェーンの弛みが前記駆動スプロケット隣接して生じ、前記チェーンドライブシステムの歯飛びトルクを増加させる、第1の歯飛び防止装置と、を備えるチェーンドライブシステム。
【請求項2】
前記第1の歯飛び防止装置が、前記トランスファケースに固定され、かつ前記チェーンから距離を置いて位置決めされた緩衝体であって、前記チェーンの前記被駆動スプロケットとの係合状態を維持して前記被駆動スプロケットでのチェーン弛みの蓄積を防ぐために前記チェーンと係合するように適合された表面を備えた本体を有する緩衝体を備える、請求項1に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項3】
前記第1の歯飛び防止装置は、前記トランスファケースに固定された取り付けブラケットと、該取り付けブラケットに接続されたランプとを備え、前記取り付けブラケットは、少なくとも1つのランプ、第1の平坦な面および第2の平坦な面を含み、該第2の平坦な面は、前記チェーンの前記被駆動スプロケットとの係合状態を維持させ、かつチェーンの弛みが前記被駆動スプロケットに蓄積するのを防止するために前記チェーンと係合するように適合された面を有し、かつ前記第1の平坦な面が前記取り付けブラケットに垂直である、請求項1に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項4】
前記第1の歯飛び防止装置は、前記トランスファケースに固定された取り付けブラケットと、前記取り付けブラケットに接続され、少なくとも第1の平坦な表面、角度付きランプ、およびコンプライアント・ローラーホルダーを備えたランプと、前記チェーンの前記被駆動スプロケットとの係合状態を維持し、かつ前記被駆動スプロケット上にチェーンの弛みが蓄積するのを防ぐために前記チェーンと係合するように適合された前記コンプライアント・ローラーホルダーに装着された少なくとも1つのローラーとを備え、前記第1の平坦な表面は、前記取り付けブラケットに垂直である、請求項1に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項5】
前記第1の歯飛び防止装置は、前記ドライブトレイン・トランスファケースに固定された取り付けブラケットであって、そこから垂直に延びるピボットピンを有する取り付けブラケットと、第1の端部、第2の端部、該第2の端部におけるローラーホルダー、および前記第1の端部において前記ピボットピンを受け入れるための穴を有する本体を備えるアームと、前記チェーンの前記被駆動スプロケットとの係合状態を維持し、かつ前記被駆動スプロケット上にチェーンの弛みが蓄積するのを防ぐために前記チェーンと係合するように適合された前記コンプライアント・ローラーホルダーに装着された少なくとも1つのローラーと、前記取り付けブラケットと前記アームの間に装着され、前記ピボットアクスル上の前記アームの前記第1の端部を前記チェーンに向かって付勢するトーションスプリングと、を2備える、請求項1に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項6】
前記第1の歯飛び防止装置は、前記トランスファケースに固定された取り付けブラケットと、前記取り付けブラケットに接続され、第2の本体部分の角度付きランプに接続された第1の本体部分の第1の平坦な表面と、第1のトランジションランプを介して第2の平坦な表面に接続された前記第2の本体部分の前記角度付きランプと、前記チェーンを前記被駆動スプロケットと係合した状態に維持し、かつ前記被駆動スプロケット上にチェーンの弛みが蓄積するのを防ぐために前記チェーンと係合するように適合された面を有する前記第1および第2の平坦な表面とを備えるランプと、前記取り付けブラケットに固定され、かつ前記ランプの前記第1の本体部分の前記第1の平坦な表面に平行である緩衝体であって、前記被駆動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間の前記チェーンと係合するように適合された面を有する緩衝体とを備え、前記第1の平坦な表面は、前記取り付けブラケットに垂直である、請求項1に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項7】
前記歯飛び防止装置が、前記トランスファケースに固定されたボルトと、該ボルトの周りで回転可能な転がり要素とを備える、請求項1に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項8】
前記チェーンの前記張りストランドが前記被駆動スプロケットから送り出さる前記被駆動スプロケットの第2の係合部において取り付けられた第2の歯飛び防止装置であって、前記トランスファケースに固定され、かつ前記チェーンから距離を置いて位置決めされた緩衝体であって、前記チェーンを前記被駆動スプロケットと係合した状態に維持し、かつ前記被駆動スプロケット上にチェーンの弛みが蓄積するのを防ぐために前記チェーンと係合するように適合された表面を有する本体を備えた緩衝体を備える第2の歯飛び防止装置をさらに備える、請求項1~7のいずれかの一項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項9】
前記チェーンの前記張りストランドが前記被駆動スプロケットから送り出される前記被駆動スプロケットの第2の係合部に取り付けられた第2の歯飛び防止装置であって、前記トランスファケースに固定された取り付けブラケットと、該取り付けブラケットに接続されたランプとを備え、該ランプが、少なくとも1つのランプと、第1の平坦な表面および第2の平坦な表面とを含み、該第2の平坦な表面が、前記チェーンを前記被駆動スプロケットと係合した状態に維持し、かつ前記被駆動スプロケット上にチェーンの弛みが蓄積するのを防ぐために前記チェーンと係合するように適合された面を有し、かつ前記第1の平坦な表面が前記取り付けブラケットに垂直である、第2の歯飛び防止装置をさらに備える、請求項1~7のいずれかの一項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項10】
前記チェーンの前記張りストランドが前記被駆動スプロケットから送り出される前記被駆動スプロケットの第2の係合部に取り付けられた第2の歯飛び防止装置であって、前記トランスファケースに固定された取り付けブラケットと、前記取り付けブラケットに接続され、少なくとも第1の平坦な表面、角度付きランプ、およびコンプライアント・ローラーホルダーを備えたランプと、前記チェーンの前記被駆動スプロケットとの係合状態を維持し、かつ前記被駆動スプロケット上にチェーンの弛みが蓄積するのを防ぐために前記チェーンと係合するように適合された前記コンプライアント・ローラーホルダーに装着された少なくとも1つのローラーとを備え、前記第1の平坦な表面は、前記取り付けブラケットに垂直である、請求項1~7のいずれかの一項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項11】
前記チェーンの前記張りストランドが前記被駆動スプロケットから送り出される前記被駆動スプロケットの第2の係合部に取り付けられた第2の歯飛び防止装置であって、前記ドライブトレイン・トランスファケースに固定された取り付けブラケットであって、そこから垂直に延びるピボットピンを有する取り付けブラケットと、第1の端部、第2の端部、該第2の端部におけるローラーホルダー、および前記第1の端部において前記ピボットピンを受け入れるための穴を有する本体を備えるアームと、前記チェーンの前記被駆動スプロケットとの係合状態を維持し、かつ前記被駆動スプロケット上にチェーンの弛みが蓄積するのを防ぐために前記チェーンと係合するように適合された前記コンプライアント・ローラーホルダーに装着された少なくとも1つのローラーと、前記取り付けブラケットと前記アームの間に装着され、前記ピボットアクスル上の前記アームの前記第1の端部を前記チェーンに向かって付勢するトーションスプリングと、を備える第2の歯飛び防止装置をさらに備える、請求項1~7のいずれかの一項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項12】
前記チェーンの前記張りストランドが被駆動スプロケットから送り出される前記被駆動スプロケットの第2の係合部に取り付けられた第2の歯飛び防止装置であって、前記トランスファケースに固定された取り付けブラケットと、前記取り付けブラケットに接続され、第2の本体部分の角度付きランプに接続された第1の本体部分の第1の平坦な表面と、第1のトランジションランプを介して第2の平坦な表面に接続された前記第2の本体部分の前記角度付きランプと、前記チェーンを前記被駆動スプロケットと係合した状態に維持し、かつ前記被駆動スプロケット上にチェーンの弛みが蓄積するのを防ぐために前記チェーンと係合するように適合された面を有する前記第1および第2の平坦な表面とを備えるランプと、前記取り付けブラケットに固定され、かつ前記ランプの前記第1の本体部分の前記第1の平坦な表面に平行である緩衝体であって、前記被駆動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間の前記チェーンと係合するように適合された面を有する緩衝体とを備え、前記第1の平坦な表面は、前記取り付けブラケットに垂直である、請求項1~7のいずれかの一項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項13】
前記チェーンの前記張りストランドが前記被駆動スプロケットから送り出される前記被駆動スプロケットの第2の係合部に取り付けられた第2の歯飛び防止装置であって、前記トランスファケースに固定されたボルトおよび該ボルトの周りで回転可能な転がり要素を備える第2の歯飛び防止装置をさらに備える、請求項1~7のいずれかの一項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項14】
前記取り付けブラケットから軸方向に延び、かつ前記ランプと位置合わせされた停止部をさらに備える、請求項3、4、6、9、10、および12のいずれか一項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項15】
前記チェーンと係合するために前記緩衝体の前記面に取り付けられた第1のパッドと、前記ランプの前記第2の平坦な表面に取り付けられた第2のパッドとをさらに備える、請求項6および12のいずれかに記載のチェーンドライブシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照 本出願は、2021年1月22日に出願された「TOOTH JUMP PROTECTION DEVICE」と題された仮出願番号63/140,448および2021年7月2日に出願されたTOOTH JUMP PROTECTION DEVICEと題された仮出願番号63/218,129に開示された1つ以上の発明を主張する。米国仮特許出願の35USC§119(e)による利益を主張し、上記出願は、本明細書に参考に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、チェーンの弛みの蓄積、より具体的には、チェーンの弛みの蓄積の箇所を制御する装置に関する。
【0003】
図1aおよび図1bは、それぞれ、従来のチェーンシステム1の被駆動スプロケット6および駆動スプロケット2を基準にした弛み蓄積の概略箇所を示している。駆動スプロケット2は、歯付きチェーン8を介して被駆動スプロケット6に接続されている。チェーン8は、スプロケット2、6と噛み合い、スプロケット2、6の間で回転運動を伝達する。チェーン8は、チェーンシステム1の被駆動スプロケット6または駆動スプロケット2のいずれかで歯飛びする可能性がある。被駆動スプロケット6の近傍でチェーン8が歯飛びすると、その結果チェーン8の歯飛びトルクが低くなり、駆動スプロケット2の近傍でチェーン8が歯飛びすると、その結果チェーン8の歯飛びトルクが高くなる。したがって、駆動スプロケット2でのみ歯飛びを強制的に発生させると、チェーンの歯飛びトルク性能を高めることが可能になる。被駆動スプロケットまたは駆動スプロケット6、2を基準にしてチェーンの弛みが集まる特定の箇所が存在し、チェーン8が歯飛びする可能性が最も高いのはどちらのスプロケットかを決定する。図1aは、被駆動スプロケット6で発生する弛みの蓄積(参照番号30で表示)を示し、図1bは、駆動スプロケット2で発生する弛みの蓄積(参照番号32で表示)を示す。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一実施形態によれば、歯飛び防止装置を使用して、チェーンの弛みを制御し、チェーン歯飛びが発生するトルクを遅延させ、それにより、歯飛びトルク性能を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1a】従来のチェーンシステムの被駆動スプロケットを基準にした弛みの蓄積の概略箇所の概略図を示している。
図1b】従来のチェーンシステムの駆動スプロケットを基準にした弛みの蓄積の概略箇所の概略図を示している。
図2】垂直に取り付けられたドライブシステムの概路図である。
図3】歯飛び防止装置(TJPD)の一実施形態の概略図を示している。
図4】TJPDの別の実施形態の概略図を示している。
図5図4のTJPDの詳細図を示している。
図6】トランスファケース内の固定位置コンプライアント・ローラーとしてのTJPDの断面図を示している。
図7】コンプライアント・ローラーを備えたTJPDの詳細図を示している。
図8a】トランスファケース内のチェーンと噛み合った傾斜のついた緩衝体のTJPDの概略図を示している。
図8b】反対側のチェーンストランドに張力が加えられたときの傾斜のついた緩衝体のTJPDの概略図を示している。
図9】チェーンと係合した従来技術の緩衝体を示している。
図10】TJPDの別の実施形態を示している。
図11a】被駆動スプロケットを基準にして特定の距離を置いて配置された緩衝体、およびチェーンを基準にした特定のギャップの概略図を示している。
図11b図11aの緩衝体を基準にした弛みの蓄積を示している。
図12】トランスファケース内に緩衝体が装着されたTJPDの図を示している。
図13】チェーンとの係合に向けてスプリング被付勢コンプライアント・ローラーのTJPDの概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の一実施形態では、歯飛び防止装置(TJPD)を使用して、トランスファケース内のチェーンの弛みを制御することができ、これによりチェーンの弛みは、駆動スプロケット上にのみ発生し、その結果より高い歯飛びトルクをもたらす。より高い歯飛びトルク能力は、チェーン幅の低減を許容する。
【0007】
図2のシステムレイアウトでは、駆動および被駆動軸2、6にそれぞれ関連付けられた駆動および被駆動スプロケット103、104は、縦向きに示され、トランスファケース107内に被駆動スプロケット6が下側にあり、駆動スプロケット2が上側にある。チェーン8は、駆動スプロケット2を被駆動スプロケット6に連結する。駆動スプロケット2と被駆動スプロケット8の間で、チェーンは弛みストランド8bと張りストランド8aを有する。トランスファケースが縦向きに近づくにつれて、重力によりトランスファケース107内で被駆動スプロケット6とチェーン8の間の境界面に弛みの発生が助長される。このシステムレイアウトにおける歯飛びとチェーンの弛みの研究は、さまざまな半径方向のオフセットにおいて被駆動スプロケット6と噛み合う弛みストランド8bの入口(引き込み側)に装着された剛性ガイドすなわち歯飛び防止装置(TJPD)120を使用して実施された。実施された研究を通じて、TJPD装置120は、チェーンのスプロケットとの自然な係合との干渉を回避するために、スプロケットの中心から半径方向に離れた距離に好ましくは位置決めされる必要があると判断された。この位置決めは、チェーンが摩耗するにつれて増加する。この距離は、システムレイアウト、チェーンデザイン、およびチェーンの寿命の時点によって異なる。
【0008】
TJPD120は、好ましくは、剛性要件に基づいて十分な荷重で、チェーン8を被駆動スプロケット6に係合させ続けるのに十分な荷重を提供する。TJPD120の剛性要件は、印加ピークトルク、TJPD120の半径方向のオフセット、およびチェーンのタイプとデザインに依存する。印加されるトルクが増加すると、適切な係合を維持するためにTJPD120からの所要負荷も増加する。チェーン8が半径方向外側に移動し、TJPD120を偏向させると、被駆動スプロケットの係合を維持するためにTJPD120からの所要力が増加する。チェーンのタイプとデザインの観点から、フランク側圧力角がより急なチェーンのリンクほど、TJPD120からの力はより小さくて済む。チェーン8が被駆動スプロケット6とTJPD120との間にくさびのように無理に割り込んだ場合、TJPD120は、破局的な被駆動スプロケットの飛びに耐えるのに十分な柔軟性がなければならないことに留意されたい。
【0009】
図2は、垂直位置でのトランスファケースを示しているが、システムは適用の範囲内で任意の角度に向けることができる。TJPD120は、被駆動スプロケット6の入口に位置している。より具体的には、TJPD120は、被駆動スプロケット6とチェーン8の弛みストランド8bとの最初の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6へのチェーン8の入口)に位置付けされる。
【0010】
一実施形態では、一体型固定位置TJPD130a、130bは、被駆動スプロケット6に設置される。TJPD130a、130bは、トランスファケースの向きの角度に関係なく、被駆動スプロケット6の入口および/または出口(繰り出し側)にある。より具体的には、TJPD130aは、被駆動スプロケット6とチェーン8の弛みストランド8bとの最初に係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例、チェーン8の被駆動スプロケット6への入口)に位置づけされる。TJPD130bは、被駆動スプロケット6とチェーンの張りストランド8aとの最後の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例、チェーン8の被駆動スプロケット6から出口)に位置づけされる。
【0011】
一体型固定位置TJPD130a、130bは、プラスチック、鋼、またはアルミニウムから製造された本体131を有し、かつエラストマーコーティングを含むことができるチェーン8と相互に作用する平坦なチェーン面132を有する。一体型固定位置TJPD130a、130bは、チェーン8および被駆動スプロケット6を基準にしてトランスファケース107にボルトで固定される緩衝体(snubber)にすることができる。エラストマーコーティングの厚さは、チェーンとデザインレイアウトによって異なる。さらに、被駆動スプロケット6の両側にあるTJPD130a、130bの本体131および/またはエラストマーコーティングの厚さは、同じであっても異なっていてもよい。
【0012】
図4図5は、トランスファケース107に取り付けられ、かつチェーン8および被駆動スプロケット6に隣接するTJPD175の別の実施形態を示している。この実施形態では、TJPD175は、取り付けブラケット141を備えた「L字型」一体型多面ランプ140である。取り付けブラケット141は、多面ランプ140と一体的に形成され得る。一実施形態では、取り付けブラケット141および一体型多面ランプ140は、単一の鋼板から形成される。取り付けブラケット141は、多面ランプ140の第1の平坦な面142を基準にして約90度の角度にある。言い換えれば、取り付けブラケットは「L」の垂直部分であり、多面ランプ140は「L」の水平部分である。多面ランプ140は、好ましくは柔軟性があり、かつ滑らかな輪郭を有する。
【0013】
多面ランプ140は、取り付けブラケット141に対して約90度の第1の平坦な表面142、第1のトランジションランプ143、角度の付いたランプ144、第2のトランジションランプ145、および第2の平坦な表面146からなる。第2の平坦な表面146は、取り付けられるときにチェーン8から小さなギャップ147によってオフセットされる面146aを有する。チェーン8が摩耗または延伸するにつれて、ギャップ147は減少し、かつチェーン8の通常の動作中にチェーン8と面146aとの間の接触が可能になる。チェーン8が回転し、歯飛びが発生すると、TJPD175の第2の平坦な表面146の面146aは、チェーン8を被駆動スプロケット6と係合した状態を維持させ、かつ被駆動スプロケット6上にチェーンの弛みが蓄積するのを防止するためにチェーン8に反作用力を与える。
【0014】
代替的に、多面ランプ140は、オフセットされた(ずれた)平面の間にカンチレバーを備えたオフセットされた平坦な平面を含むことができる。より具体的には、多面ランプ140は、トランジションランプ143、145無しで、第1の平坦面142、第2の平坦面146、および角度の付いたランプ144を含むことができる。角度の付いたランプ144は、好ましくは可撓性であり、かつ滑らかな輪郭を有する。
【0015】
面146aは、騒音、振動、およびハーシュネス(NVH)の懸念を最小限に抑え、TJPD140の耐摩耗性を改善するために、プラスチックまたはエラストマー面を含むことができる。TJPD140は、好ましくは、第2の平坦な表面146の面146aが、直径に沿って被駆動スプロケット6および/または駆動スプロケット2に設置され、かつトランスファケースの向きの角度に関係なく被駆動スプロケット6または駆動スプロケット2の入口および/または出口に位置づけされるように取り付けられる。より具体的には、少なくとも第1のTJPD140は、被駆動スプロケット6とチェーン8の弛みストランド8bとの最初に係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6へのチェーン8の入口)に位置づけされる。第2のTJPD140は、被駆動スプロケット6とチェーンの張りストランド8aとの最後の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6からチェーン8の出口)に位置づけすることができる。
【0016】
代替的に、TJPD140は、図10に示すようにストップ180を含めることができる。この実施形態では、ストップ180が取り付けブラケット141に装着されている。ストップ180は、好ましくは、多面ランプ140の第1のトランジションランプ143に隣接して設置される。ストップ180は、タブまたは他のこのような突起であってよい。ストップ180は、取り付けブラケット141と一体的に形成され得る。
【0017】
ストップ180の追設は、多面ランプ140とブラケット141との間の連結191箇所での多面ランプ140全体の曲がりを低減する。追加的に、ストップ180を追設すると、第1のトランジションランプ143での曲げを低減し、その結果、多面ランプ140にかかる応力がより均等に分散される。
【0018】
図6は、TJPD190a、190bが固定位置ローラーである一実施形態を示している。各TJPD190a、190bは、トランスファケース107に固定的に装着されたボルト195を含む。ボルト195を取り囲み、自由に回転するのは、転がり要素196である。転がり要素196は、好ましくはエラストマーコーティングを有する。
【0019】
TJPD190a、190bは被駆動スプロケット6に設置される。TJPD190a、190bは、トランスファケースの向きの角度に関係なく、被駆動スプロケットの入口および/または出口にある。より具体的には、TJPD190aは、被駆動スプロケット6とチェーン8の弛みストランド8bとの最初の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6へのチェーン8の入口)に位置づけされる。TJPD190bは、被駆動スプロケット6とチェーンの張りストランド8aとの最後の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6からチェーン8の出口)に配置位置づけされている。
【0020】
図7は、TJPD180がランプ付きローラーTJPDである一実施形態を示している。TJPD180は、トランスファケース107内に取り付けられ、かつチェーン8と被駆動スプロケット6に隣接している。
【0021】
取り付けブラケット151は、第1のトランジションランプ153、角度の付いたランプ154、およびコンプライアント・ローラー156を受け入れるコンプライアント・ローラーホルダー155に移行する第1の平坦面152を基準にして約90度の角度にある。換言すれば、取り付けブラケットは「L」の垂直部分であり、第1のトランジションランプ153は「L」の水平部分である。コンプライアント・ローラー156に対するブラケット151の取り付け角度は、TJPD150a、150bの両方をトランスファケース107に取り付け、コンプライアント・ローラー156がチェーン8と係合することを可能にする任意の角度であり得る。
【0022】
TJPD180は、好ましくは、フェース・コンプライアント・ローラー156が、直径に沿って被駆動スプロケット6および/または駆動スプロケット2に設置され、かつトランスファケースの向き角度に関係なく被駆動スプロケット6または駆動スプロケット2の入口および/または出口に位置づけされるように取り付けられる。より具体的には、少なくとも第1のTJPD180は、被駆動スプロケット6がチェーン8の弛みストランド8bと最初に係合部においてに、チェーン8が被駆動スプロケット6に接する位置(例えば、被駆動スプロケット6へのチェーン8の入口)に位置づけされる。第2のTJPD180は、被駆動スプロケット6とチェーンの張りストランド8aとの最後の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6からのチェーン8の出口)に位置づけすることができる。
【0023】
フェース・コンプライアント・ローラー156は、プラスチックで作製され得る。代替的に、フェース・コンプライアント・ローラー156は、プラスチックまたは他の材料で作製され得、かつ摩耗を減らすためにエラストマーでコーティングされ得る。フェース・コンプライアント・ローラー156は、図7および13に示されるように、コンプライアント・ローラーホルダー155に装着された単一のローラー、またはコンプライアント・ローラーホルダー155のいずれもの側に装着された複数の異なるローラーであり得る。
【0024】
図13に示される代替の実施形態では、フェース・コンプライアント・ローラー156を備えたTJPD170は、チェーン8との係合に向けてスプリング157で付勢されており、接触力を低下させるためにシステム弛みの蓄積を駆動または被駆動スプロケット2、6の特定の箇所にさらに結集させる。フェース・コンプライアント・ローラー156は、アーム159と一体であるコンプライアント・ローラーホルダー155上に受け入れられる。フェース・コンプライアント・ローラー156は、従来のテンショナアームを横切って摺動するチェーンと比較して、チェーン8に対する摩擦量が低減されている。
【0025】
アーム159は、第1の端部159aにおけるコンプライアント・ローラーホルダー155の反対側のアーム159の第2の端部159bにあるアーム159のピボット穴168内に受け入れられたピボットピン158を介して取り付けブラケット151に枢動可能に取り付けられる。ピボットピン158は、90度の角度で取り付けブラケットに装着されている。アーム159は、好ましくは剛性である。
【0026】
スプリング157は、アーム159の第1の端部159aとブラケット151との間に存在して、アーム159、したがってフェース・コンプライアント・ローラー156を付勢する。各スプロケット2、6、または被駆動スプロケット6または駆動スプロケット2のいずれかからのチェーン8の入口および出口に対するばね力は、異なっていても同じであってもよい。スプリング157は、トーションスプリング、ブレードスプリング、または他のタイプのスプリングであり得る。スプリング157の使用は、コンプライアンスを増加させ、接触力を低減することを可能にする。さらに、使用されるスプリング157は、制限されたストローク範囲を有することができ、これにより第1の位置において、スプリング157は、フェース・コンプライアント・ローラー156がチェーン8と係合せず、かつフェース・コンプライアント・ローラー156とチェーン8との間にクリアランスが存在するように、フェース・コンプライアント・ローラー156を付勢する。チェーン8がスプリングの予荷重に打ち勝つのに十分な力でフェース・コンプライアント・ローラー156に接触すると、フェース・コンプライアント・ローラー156は、コンプライアント・ローラーホルダー155に連結されたアーム159を回転させることによって第2の位置に移動し、これによりアーム159は取り付けブロケット151を基準にしてピボットピン158を介して枢動する。スプリング予荷重は、チェーンの歯飛びを防ぐために利用される。スプリング荷重は、歯飛びを防ぐために、したがって、被駆動スプロケット6においてチェーンの弛みが生じるのを低減または防止するために、必要な力に調整されることが好ましい。
【0027】
TJPD170は、好ましくは、フェース・コンプライアント・ローラー156が直径に沿って被駆動スプロケット6および/または駆動スプロケット2に設置され、かつトランスファケースの向きの角度に関係なく、被駆動スプロケット6または駆動スプロケット2の入口および/または出口に位置づけられるように取り付けられる。より具体的には、少なくとも第1のTJPD170は、被駆動スプロケット6とチェーン8の弛みストランド8bとの最初の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6へのチェーン8の入口)に位置付けられる。第2のTJPD170は、被駆動スプロケット6とチェーンの張りストランド8aとの最後の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6からのチェーン8の出口)に位置付けすることができる。
【0028】
図8a~図8bは、TJPDの別の実施形態を示している。この実施形態では、TJPDは被付勢緩衝体(biased snubber)160である。被付勢緩衝体160は、ドライブトレイン・トランスファケース107に取り付けられている。被付勢緩衝体160は、第1の端部162、第1の端部162の反対側の第2の端部163を備え、第1の端部162と第2の端部163との間に長さLを有する本体161、緩衝体面164、および緩衝体面164の反対側の第2の面165を有する。緩衝体面164に沿って、第1の端部162から第2の端部163まで延在し、かつ緩衝体面164に平行な直線193を基準にして、第1の端部162と第2の端部163との間に意図する角度α(アルファ)が存在する。意図する角度αは、0~5度の間であり、より好ましくは、0度より大きい。
【0029】
被付勢緩衝体160は、チェーン8の経路と緩衝体面164との間に意図する角度αを作り、その結果、意図する角度αがチェーン経路と緩衝体面164との間に存在する。緩衝体面164は、緩衝体面164が、駆動スプロケット2と比較して、被駆動スプロケット6近傍のチェーン8により類似するように形作られている。意図するα角度は、参照番号32によって表示されるように、チェーンの弛みを駆動スプロケット2のチェーン出口の近傍に蓄積するように強制する。図8aに示すように、張力が隣接チェーンストランドに加えられるとき、被付勢緩衝体160は、チェーン経路の完全に外側にある。
【0030】
反対側のチェーンストランドに張力が加えられると、被付勢緩衝体160に隣接するチェーンストランドに弛みが蓄積し、被付勢緩衝体160の意図する角度α(アルファ)により、超過チェーンが図8bに示すように歯飛びが改善される既知の箇所に集まるように強制する。したがって、弛みの蓄積は駆動スプロケット2の近傍にのみ存在し、トランスファケース内のチェーンの弛みを制御するために利用でき、これにより、チェーンの弛みは駆動スプロケット2にのみ発生し、その結果歯飛びトルクが高くなる。より高い歯飛びトルク能力は、チェーン幅の低減を許容する。
【0031】
被付勢緩衝体160はまた、図11a~図11bに関連して以下に説明するように被駆動スプロケット6に対する弛みの蓄積を防ぎ、かつ駆動スプロケット2近傍に弛みの蓄積を強制するために、被駆動スプロケットを基準にして目標距離を置いて、かつ目標または特定のチェーンと緩衝体のギャップ内に取り付けることができることに留意されたい。
【0032】
図11a~図11bは、被駆動スプロケット6を基準にした弛みの蓄積を防ぎかつ駆動スプロケット2近傍に弛みの蓄積を強制するために被駆動スプロケット6を基準にして特定または目標距離においてかつ目標または特定のチェーン・緩衝体間ギャップ内に設置される緩衝体200のTJPDの一実施形態を示す。緩衝体200は、第1の端部202および第2の端部203、ならびに第1の面205および第2の面204を有する本体20 P.71を有する。第2の面204は、チェーン8に隣接している。任意選択で、第2の面204は、騒音、振動、およびハーシュネス(NVH)の懸念を低減するために、パッドまたはエラストマー表面を含むことができる。緩衝体の箇所は、チェーンからギャップ距離g1離れて位置決めされ、被駆動スプロケット6から距離d1離れて偏倚される。これらの距離g1、d1は、トランスファケース107を基準にしたチェーン8およびスプロケット2、6の取り付け箇所によって決定される。
【0033】
緩衝体200は、被駆動スプロケット6と駆動スプロケット2との間で、被駆動スプロケット6の中心線C1から特定の距離d1に、また第2の面204とチェーン8との間の特定のギャップ距離g1に設置される。一例では、チェーン8と緩衝体200との間のギャップ距離g1は、0~7mmの範囲にある。別の実施形態では、この範囲は0~1mmであり得る。別の実施形態では、この範囲は0~2mmであり得る。さらに別の例では、ギャップ距離g1は0.5mm以下である。チェーン8と緩衝体200との間のギャップ距離を設定することにより、緩衝体200の接触力および摩耗が減少する。チェーンピッチの長さを使用すれば、距離d1は約2つのチェーンピッチの長さになるであろう。例えば、9.525mmのピッチチェーンであれば、d1は約19mmになるであろう。11.039mmのピッチチェーンの場合、距離d1は約22mmになるであろう。
【0034】
緩衝体200が隣接しているチェーンストランドとは反対側のチェーンストランドに張力が加えられる際に、ギャップ距離g1および距離d1のために緩衝体200に隣接するチェーンストランドに弛みが蓄積し、超過チェーンを駆動スプロケット2近傍の既知の箇所に蓄積することを強制し、その結果歯飛びトルクが高くなる。より高い歯飛びトルク能力により、使用するチェーン幅を減らすことが可能になる。
【0035】
図9は、従来型すなわち伝統的な緩衝体を示している。従来の緩衝体50は角度を持たず、代わりに、長さ全体にわたって第1の端部51と第2の端部52との間で真っ直ぐまたは約180度であり、その結果、緩衝体面53全体がチェーンストランド8と相互に作用し、かつ従来の緩衝体50とチェーンの間に約0.1mmの微小なギャップが存在する。弛みは、参照番号32で表示される位置における駆動スプロケット2の近傍、および参照番号30で表示される被駆動スプロケット6の近傍に蓄積する。したがって、駆動スプロケット2と被駆動スプロケット6の両方の近傍に弛みが蓄積することが許容され、どちらのスプロケットでも歯飛びが発生する可能性がある。
【0036】
図12は、トランスファケース107に取り付けられ、かつチェーン8と被駆動スプロケット6に隣接して配置されたTJPD300を示している。この実施形態では、TJPD300は、取り付けブラケット301および緩衝体302を備えた一体型多面ランプ310である。
【0037】
取り付けブラケット301は、多面ランプ310と一体的に形成され得る。追加的に、取り付けブラケット301は、緩衝体302と一体的に形成され得る。
【0038】
緩衝体302は、第1の平坦面302aと、チェーン8に隣接する第2の反対側の平坦面302bとを有する。第2の平坦面302bに取り付けられているのは、パッドまたはエラストマーパッド303である。パッド303はチェーン8に接触する。
【0039】
また、取り付けブラケット301には、多面ランプ310が取り付けられている。多面ランプ310は、取り付けブラケット301に連結された平坦な面を備えた第1の本体部分304と、傾斜した第2の本体部分305とを有する。傾斜した第2の本体部分305は、第1の平坦な表面307に連結されている第1のトランジションランプ306に連結されている。第2の平坦な表面307の面307aに取り付けられているのは、パッドまたはエラストマー面309である。
【0040】
パッド309は、取り付けられたときにチェーン8から小さなギャップによってオフセットされる。例えば、パッド309とチェーン8との間のギャップは、0.5~1.5mmの間である。チェーン8が摩耗または延伸すると、ギャップが減少し、チェーン8の通常の動作中にチェーン8とパッド309との間の接触が可能になる。チェーン8が回転し、歯飛びが発生すると、TJPD300のパッド309は、チェーン8に反作用力を加えて、チェーン8を被駆動スプロケット6と係合させ続け、被駆動スプロケット6にチェーン弛みが蓄積するのを防ぐ。パッド303は、チェーンの通常の動作中にチェーン8との接触を維持する。パッド303は、緩衝体のように機能してチェーンの共振を減衰させ、チェーンが共振状態に入るとチェーンに接触する。
【0041】
TJPD300は、多面ランプ310のパッド309が、被駆動スプロケット6または駆動スプロケット2の直径に沿って被駆動スプロケット6または駆動スプロケット2に配置され、トランスファケースの向きの角度に関係なく被駆動スプロケットの入口および/または出口に位置付けられるように取り付けられることが好ましい。
【0042】
より具体的には、少なくとも第1のTJPD300は、被駆動スプロケット6とチェーン8の弛みストランド8bとの最初の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6へのチェーン8の入口)に位置付けされる。第2のTJPD300は、被駆動スプロケット6とチェーンの張りストランド8aとの最後の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6からのチェーン8の出口)に位置付けされることができる。
【0043】
一実施形態では、取り付けブラケット301および緩衝体302は、単一の鋼板から形成される。取り付けブラケット301は、緩衝体302の第1の平坦面302aを基準にして約90度の角度にある。
【0044】
TJPD300の緩衝体302は、チェーンシステムに伴うストランド共振を制御することにより、騒音、振動、およびハーシュネス(NVH)をさらに低減する一方、TJPD300の多面ランプ310は、被駆動スプロケット6の弛みの蓄積を制限する。
【0045】
2つのTJPD130、140、150、160、170、180、190、200、300が被駆動スプロケット6の両側に示されている。が、1つのTJPDは、被駆動スプロケット6を基準にして特定の距離または目標距離に配置できる。
【0046】
別の実施形態では、単一のTJPDまたは2つのTJPDのいずれかを駆動スプロケット2の両側に示して、被駆動スプロケット6に弛みの蓄積が発生するように強制することができる。
【0047】
図示されていないが、代替の実施形態では、被駆動スプロケットおよび/または駆動スプロケットの直径に沿って取り付けられた2つのTJPDデバイスは、異なるデバイスにすることができる。適用の範囲内に開示されたTJPDの任意の組み合わせは、被駆動スプロケット6からのチェーンの入口および出口に存在することができる。したがって、被駆動スプロケット6とチェーン8の弛みストランド8bとの最初の係合部における(例えば、被駆動スプロケット6へのチェーン8の入口)第1のTJPDは、被駆動スプロケット6とチェーンの張りストランド8aとの最後の係合部においてチェーン8が被駆動スプロケット6に対して接線となる位置(例えば、被駆動スプロケット6からのチェーン8の出口)に位置付けられる第2のTJPDと同じかまたは異なることができる。
【0048】
例えば、一体型固定位置TJPD130は、被駆動スプロケット6のチェーン8の弛みストランド8bとの最初の係合部(例えば、被駆動スプロケット6へのチェーン8の入口)においてに取り付けられ得、第2のTJPDは、被駆動スプロケット6のチェーンの張りストランド8aとの最後の係合部において取り付けられたL字型の一体型多面ランプTJPD140であり得る。別の例では、固定位置コンプライアント・ローラーTJPD150は、被駆動スプロケット6のチェーン8の弛みストランド8bとの最初の係合部において(例えば、被駆動スプロケット6へのチェーン8の入口)取り付けることができ、第2のTJPDは、被駆動スプロケット6のチェーンの張りストランド8aとの最後の係合部において取り付けられた緩衝体TJPD300であり得る。上記の例は限定的なものではなく、他の組み合わせも可能である。
【0049】
さらに、被駆動スプロケットと駆動スプロケットの間のチェーンスパンに沿って、反対側のチェーンストランドに取り付けられているTJPDも異なる場合がある。例えば、1つのTJPDは被付勢緩衝体TJPD160とすることができ、反対側のチェーンストランドを基準して取り付けられる反対側のTJPDは緩衝体TJPD200である。上記の例は限定的なものではなく、他の組み合わせも可能である。
【0050】
さらに別の実施形態では、単一のTJPD130、140、150、160、170、180、190、300を、被駆動スプロケット6と噛み合っている弛みストランド8bの入口に配置することができる。
【0051】
さらに別の実施形態では、単一のTJPD160、200は、チェーン8のストランド8a、8bのうちの1つを基準にして配置される。
【0052】
別の実施形態では、トランスファケースが水平位置に設置される場合、反対側の中間点は、被駆動スプロケット6および/または駆動スプロケット2の中心直径に沿った時計の12時および6時の位置に対応する。上記の実施形態のTJPDは、被駆動スプロケット6および/または駆動スプロケット2の反対の中間点に設置される。
【0053】
別の実施形態では、トランスファケースが垂直位置に取り付けられている場合、反対側の中間点は、被駆動スプロケット6および/または駆動スプロケット2の時計の3時および9時に対応する。上記の実施形態のTJPDは、被駆動スプロケット6および/または駆動スプロケット2の反対の中間点に設置される。
【0054】
したがって、本明細書に記載された本発明の実施形態は、本発明の原理の適用を単に例示するものであることを理解されたい。例示された実施形態の詳細を本明細書で言及することは、特許請求の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明に必須であるとみなされる特徴をそれら自体列挙するものである。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2024-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスファケース内のチェーンドライブシステムであって、
駆動スプロケットと、
被駆動スプロケットと、
前記駆動スプロケットを前記被駆動スプロケットに接続するチェーンであって、前記被駆動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間に弛みストランド、および前記被駆動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間に張りストランドを有するチェーンと、
前記チェーンの前記弛みストランド上にて前記駆動スプロケットと前記被駆動スプロケットとの間に取り付けられた第1の歯飛び防止装置であって、該第1の歯飛び防止装置は、第1の面および第2の面を備えた本体を有する緩衝体を備え、前記緩衝体が前記トランスファケースに固定されることにより、前記第2の面が前記チェーンからギャップ距離をおいて位置づけられ、かつ前記第2の面が、前記チェーンとの係合のために前記被駆動スプロケットから距離をおいて付勢されて、前記チェーンが前記被駆動スプロケットと係合した状態を維持し、かつ前記被駆動スプロケット上にチェーンの弛みが蓄積するのを防ぐ、第1の歯飛び防止装置と、
を備えるチェーンドライブシステム。
【請求項2】
前記ギャップ距離が0~7mmの範囲内である、請求項1に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項3】
前記ギャップ距離が0~2mmの範囲内である、請求項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項4】
前記ギャップ距離が0~1mmの範囲内である、請求項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項5】
前記ギャップ距離が0.5mm以下の範囲内である、請求項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項6】
前記緩衝体が前記被駆動スプロケットから離れるように付勢される前記ギャップ距離は、約2つのチェーンピッチ長である、請求項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項7】
前記チェーンの前記張りストランドが前記被駆動スプロケットから出る前記被駆動スプロケットの第2の係合部に取り付けられた第2の歯飛び防止装置であって、
前記トランスファケースに固定された第2の歯飛び防止装置の取り付けブラケットと、
第2の歯飛び防止装置の第2の本体部分の第2の歯飛び防止装置の角度付き部分に接続された第2の歯飛び防止装置の第1の本体部分の第2の歯飛び防止装置の第1の平坦な表面を含む、前記第2の歯飛び防止装置の取り付けブラケットに接続された第2の歯飛び防止装置のランプであって、前記第2の歯飛び防止装置の第2の本体部分の前記第2の歯飛び防止装置の角度付き部分は、第2の歯飛び防止装置の第1の移行部分を通して第2の歯飛び防止装置の第2の平坦な表面に接続され、前記第2の歯飛び防止装置の第2の平坦な表面は、前記チェーンを前記被駆動スプロケットと係合した状態に維持し、かつ前記被駆動スプロケット上にチェーンの弛みが蓄積するのを防ぐために、前記チェーンと係合するための第2の歯飛び防止装置の面を有する、第2の歯飛び防止装置のランプと、
前記第2の歯飛び防止装置の取り付けブラケットに固定され、かつ前記第2の歯飛び防止装置のランプの前記第2の歯飛び防止装置の第1の本体部分の前記第2の歯飛び防止装置の第1の平坦な表面に平行である第2の歯飛び防止装置の緩衝体であって、前記被駆動スプロケットと前記駆動スプロケットとの間の前記チェーンとの係合のための緩衝体の面を有する、第2の歯飛び防止装置の緩衝体と
を含む第2の歯飛び防止装置をさらに備えるチェーンドライブシステムであり、
前記第2の歯飛び防止装置のランプの前記第2の歯飛び防止装置の第1の本体部分の前記第2の歯飛び防止装置の第1の平坦な表面は、前記第2の歯飛び防止装置の取り付けブラケットに垂直であり、かつ前記第2の歯飛び防止装置のランプはコンプライアントである、請求項1に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項8】
前記チェーンと係合するために前記第1の歯飛び防止装置の緩衝体の前記第1の歯飛び防止装置の面に取り付けられた第1のパッドと、前記第2の歯飛び防止装置のランプの前記第2の歯飛び防止装置の第2の平坦な表面に取り付けられた第2のパッドとをさらに備える、請求項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項9】
前記チェーンの前記張りストランドが前記被駆動スプロケットから出る前記被駆動スプロケットの第2の係合部に取り付けられた第2の歯飛び防止装置であって、前記トランスファケースに固定されたボルトと、該ボルトの周りで回転可能な転がり要素とを備える、第2の歯飛び防止装置をさらに備える、請求項に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項10】
前記緩衝体の面の第1の端部から第2の端部へと延び、かつ前記第2の面および前記チェーンに平行である直線に対して、前記緩衝体の面の前記第1の端部と前記第2の端部との間で画成される意図された角度をさらに備える、請求項1に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項11】
前記意図された角度が0度~5度の間である、請求項10に記載のチェーンドライブシステム。
【請求項12】
前記意図された角度が、前記第1の歯飛び防止装置の前記第2の面と、前記被駆動スプロケットに最も近い前記チェーンとの間において、前記第1の歯飛び防止装置の前記第2の面と前記駆動スプロケットとの間の前記意図された角度よりも小さいため,からの前記チェーンの出口近くで弛みが蓄積する、請求項10に記載のチェーンドライブシステム。