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特開2024-105542FraCアクチノポリンに基づくバイオポリマーセンシングおよび配列決定のための生物学的ナノポア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105542
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】FraCアクチノポリンに基づくバイオポリマーセンシングおよび配列決定のための生物学的ナノポア
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/435 20060101AFI20240730BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20240730BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20240730BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
G01N27/00 Z
C07K14/435
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024078970
(22)【出願日】2024-05-14
(62)【分割の表示】P 2022014867の分割
【原出願日】2017-05-24
(31)【優先権主張番号】62/360,999
(32)【優先日】2016-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】514265131
【氏名又は名称】レイクスユニフェルシテイト フローニンゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】マリア, ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】カーステン, ウォーカ
(72)【発明者】
【氏名】ムッター, ナタリー リサ
(72)【発明者】
【氏名】ソスキン, ミーシャ
(72)【発明者】
【氏名】ファン, グァン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ナノポアを通した移行の間に電気的測定を行うことによる、種々の適用、例えば、バイオポリマーおよび高分子の分析におけるその使用を提供する。
【解決手段】アクチノポリンタンパク質ファミリー由来のメンバーであるαヘリックスポア形成毒素を含む漏斗状のタンパク質性ナノポアを含むシステムであって、前記αヘリックスポア形成毒素が、フラガセアトキシンC(FraC)、変異体FraC、FraCパラログまたはFraCホモログである、システムを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチノポリンタンパク質ファミリー由来のメンバーであるαヘリックスポア形成毒素
を含む漏斗状のタンパク質性ナノポアを含むシステムであって、前記αヘリックスポア形
成毒素が、フラガセアトキシンC(FraC)、変異体FraC、FraCパラログまた
はFraCホモログである、システム。
【請求項2】
ナノポアが第1の液体媒体と第2の液体媒体との間に位置し、少なくとも一方の液体媒
体が分析物を含み、システムが分析物の特性を検出するように作動する、請求項1に記載
のシステム。
【請求項3】
分析物を、ポアを通して移行させるおよび/またはポア中にトラップするように作動す
る、請求項1または2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
分析物の特性を検出するように作動し、分析物がナノポアと相互作用するように、ナノ
ポアを電場に供することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
分析物の特性を検出するように作動し、分析物がナノポアを通して電気泳動および/ま
たは電気浸透によって移行するように、ナノポアを電場に供することを含む、請求項1か
ら4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
特性が、分析物の電気的、化学的または物理的特性である、請求項4または5に記載の
システム。
【請求項7】
ナノポアが、(平面状)脂質二重層中に含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記
載のシステム。
【請求項8】
脂質二重層が、ホスファチジルコリン(PC)、好ましくは1,2-ジフィタノイル-
sn-グリセロ-3-ホスホコリンを含むまたはそれからなる、請求項7に記載のシステ
ム。
【請求項9】
前記FraCが変異体FraCである、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステ
ム。
【請求項10】
前記変異体FraCが、ポアの狭い部分における負に荷電したアミノ酸残基から、中性
もしくは正に荷電したアミノ酸残基への少なくとも1つの置換、および/またはポアの狭
い部分における中性アミノ酸残基から、正に荷電したアミノ酸残基への少なくとも1つの
置換を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記変異体FraCが、10位における変異、好ましくは変異Asp10Argまたは
Asp10Lysを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記変異体FraCが、前記FraCの溶血活性を回復させる1つまたは複数の代償性
変異をさらに含み、好ましくは、前記代償性変異が、2位、9位、34位、52位、11
2位、150位、153位および/または159位、好ましくは159位に存在する、請
求項10から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
好ましくはそのC末端で、HisタグまたはStrepタグなどのタンパク質親和性タ
グに融合されたFraCを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のシステムを提供するための方法であって、
アクチノポリンタンパク質ファミリー由来の前記αヘリックスポア形成毒素の組換えモ
ノマーを用意する工程と、
前記モノマーをリポソームと接触させて、前記モノマーをオリゴマーへとアセンブルす
る工程と、
前記リポソームから前記オリゴマーを回収する工程と、
前記オリゴマーを、スフィンゴミエリンを含有し得る脂質二重層と接触させて、ナノポ
アの形成を可能にする工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
請求項1から13のいずれか一項に記載のシステムに電場を印加する工程を含む方法で
あって、前記αヘリックスポア形成毒素を含む漏斗状のナノポアが、第1の伝導性液体媒
体と第2の伝導性液体媒体との間に位置する、方法。
【請求項16】
前記伝導性液体媒体の少なくとも一方が分析物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記分析物が前記ナノポアと相互作用する際のイオン電流を測定して電流パターンを得
るステップを含む方法において前記分析物を検出するステップをさらに含み、前記電流パ
ターンにおける遮断の発生が、前記分析物の存在を示す、請求項15または16に記載の
方法。
【請求項18】
分析物を同定するステップをさらに含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項19】
分析物を同定するステップが、電流パターンを、同じ条件下で既知の分析物を使用して
得られた既知の電流パターンと比較することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記分析物が、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク
質、ポリマー、薬物、イオン、汚染物質、ナノスコピックな物体または生物兵器剤である
、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
分析物がポリマーである、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマーが、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、折り畳まれていないペ
プチド、折り畳まれていないオリゴペプチドおよび折り畳まれていないタンパク質からな
る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリマーが核酸である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記核酸が、ssDNA、dsDNA、RNA、またはそれらの組合せである、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記FraCナノポアが変異体FraCナノポアである、請求項15から24のいずれ
か一項に記載の方法。
【請求項26】
変異体FraCナノポアのトンネルを通るコンダクタンスが、その対応する野生型Fr
aCナノポアを通るコンダクタンスよりも高い、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ポアの狭い部分における負に荷電したアミノ酸残基から、正に荷電したアミノ酸残基へ
の少なくとも1つの置換、および/またはポアの狭い部分における中性アミノ酸残基から
、正に荷電したアミノ酸残基への少なくとも1つの置換を含む第1の変異体FraCモノ
マーを少なくとも含む、変異体フラガセアトキシンC(FraC)ナノポア。
【請求項28】
3位もしくは10位、または3位および10位の両方における置換を含む、請求項27
に記載の変異体。
【請求項29】
10位における変異、好ましくはD10Rを含む、請求項28に記載の変異体FraC
ナノポア。
【請求項30】
FraCの溶血活性を回復させる1つまたは複数の代償性変異をさらに含む変異体Fr
aCであって、好ましくは、前記代償性変異が、2位、9位、34位、52位、112位
、150位、153位、159位、および/または好ましくは159位に存在し、より好
ましくは、前記変異体FraCが、変異D10RおよびK159Eを含む、請求項27か
ら29のいずれか一項に記載の変異体。
【請求項31】
野生型FraCモノマー、第2の変異体FraCモノマー、野生型FraCパラログま
たはホモログモノマーおよび変異体FraCパラログまたはホモログモノマーからなる群
から選択される第2のモノマーを少なくともさらに含み、第2の変異体FraCモノマー
が、第1の変異体FraCモノマーと同じでも異なってもよい、請求項27から30のい
ずれか一項に記載の変異体FraCナノポア。
【請求項32】
第2のモノマーが、野生型FraCパラログまたはホモログモノマーである、請求項3
1に記載の変異体FraCナノポア。
【請求項33】
第1の変異体FraCモノマーが変異D10を含み、好ましくは、変異体が表3に示さ
れるものから選択される、請求項27から32のいずれか一項に記載の変異体FraCナ
ノポア。
【請求項34】
その対応する野生型FraCナノポアのトンネルを通るコンダクタンスよりも高い、ト
ンネルを通るコンダクタンスを有する、請求項27から33のいずれか一項に記載の変異
体FraCナノポア。
【請求項35】
分子モーターをさらに含み、分子モーターが、分子モーターの非存在下で分析物がナノ
ポア中にまたはナノポアを通して移行する平均移行速度よりも低い平均移行速度で、分析
物をナノポア中にまたはナノポアを通して移動させることが可能である、請求項27から
34のいずれか一項に記載の変異体FraCナノポア。
【請求項36】
分子モーターが酵素である、請求項35に記載の変異体FraCナノポア。
【請求項37】
酵素が、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼまたはクレノウ断片である、請求項36に
記載の変異体FraCナノポア。
【請求項38】
バイオポリマーセンシングおよび/またはバイオポリマー配列決定のための、請求項1
から13のいずれか一項に記載のシステムまたは請求項27から37のいずれか一項に記
載の変異体FraCナノポアの使用。
【請求項39】
前記バイオポリマーが、タンパク質、ペプチドまたは核酸である、請求項38に記載の
使用。
【請求項40】
前記バイオポリマーが核酸であり、好ましくは、前記核酸が、ssDNA、dsDNA
、RNA、またはそれらの組合せである、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記バイオポリマーが、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、折り畳まれてい
ないペプチド、折り畳まれていないオリゴペプチドまたは折り畳まれていないタンパク質
である、請求項39に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ナノポアの分野、および典型的にはナノポアを通した移行の間に電気
的測定を行うことによる、種々の適用、例えば、バイオポリマーおよび高分子の分析にお
けるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノポアは、例えば、ポリペプチドもしくはポリヌクレオチドの正体を決定するため、
または配列決定のためにポリマー中の個々の構成単位の正体を推定するためにバイオポリ
マーを分析する、魅力的な方法となる。これは、この方法がラベルなしであり、少数のま
たはさらには単一の分子に依存する測定を提供し、高度にスケーラブルな電気シグナルを
生成するからである。
【0003】
ナノポアを利用する測定システムでは、システムの一部の特性は、ナノポア中のヌクレ
オチドに依存し、その特性の電気的測定が行われる。例えば、測定システムは、ナノポア
を絶縁膜中に配置し、ポリヌクレオチドのヌクレオチドの存在下でナノポアを通る電圧駆
動性イオン流を測定することによって創出される。
【0004】
ナノポアは、化学反応および酵素反応の単一分子モニタリング、タンパク質の検出なら
びに核酸の配列決定のための強力なアプローチとして出現した[1]、[2]。Phi2
9[3]ならびにClyA[4]は、二本鎖DNAの移行を可能にすることが示されてい
る。最近、アエロリジンが、アデニンからなるが長さが異なるホモポリマーを識別するた
めに使用された[5]。今日まで、αHLおよびMspAのみが、核酸を識別することが
示されている。両方のナノポアは、それらの膜貫通領域中にβシートを有する。DNAが
MspAを通るとき、遮断された電流のレベルは、4つ以上のヌクレオチドによって影響
されるが[6]、αHLは、約20核酸塩基を収容するそのバレル型構造中に3つのセン
シングゾーンを有する[7]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、配列決定の精度を改善し、および/または異なるエラープロファイルを提供
する、異なる構造および認識部位を有する新規ナノポアを提供する。本明細書で、本発明
者らは、スフィンゴミエリンと複合体を形成した、アクチノポリンタンパク質ファミリー
由来のメンバーであるαヘリックスポア形成毒素フラガセアトキシン(Fragacea
toxin)C(FraC)の精製および事前オリゴマー化、ならびに1,2-ジフィタ
ノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC)から構成される平面状脂質二
重層への再構成を記載する。本発明者らは、ssDNAの捕捉および移行を可能にし、ニ
ュートラアビジン(NA)で固定化したアデニン、チミンおよびシトシンのホモポリマー
を識別するFraC変異体(例えば、ReFraC)をさらに操作した。特に、dsDN
Aは、FraCを通して、最も可能性が高いのは、ナノポアの弾性的に変形したαヘリッ
クス状のくびれを介して、移行し得る。
【0006】
注目すべきことに、FraCナノポアは、タンパク質配列決定および折り畳まれたタン
パク質の分析のための理想的な形状を有することが見出された。電気浸透流が、ナノポア
の内側へのタンパク質およびポリペプチドの進入を誘導する支配的な力であることが、本
明細書で以下に示される。ナノポアのくびれを正確に操作することまたは溶液pHを変化
させることのいずれかによってナノポアの内側表面を調整することによって、正に荷電し
たポリペプチドおよび負に荷電したポリペプチドの両方の移行を観察できた。固定された
印加電位において正の残基および負の残基の両方を輸送するのに十分に強い電気浸透流を
誘導することが可能であることが示されているので、これは注目すべきことである。異な
るサイズ、例えば、1.2~25kDaの範囲の一連の(折り畳まれていない)タンパク
質は、個々の遮断に基づいて識別できることが、注目すべきことに見出された。20アミ
ノ酸のモデルポリペプチドを使用して、単一アミノ酸残基における差異でさえもナノポア
記録によって観察できることが実証され、これは、FraCナノポアが、移行するポリペ
プチド中の特定の配列特色の同定を可能にすることを示している。
【0007】
さらに、本発明者らは、スフィンゴミエリンを含まない平面状脂質二重層中で事前オリ
ゴマー化されたFraCナノポアを再構成する方法を発明した。ReFraCナノポアは
、電気泳動によるDNA捕捉を可能にするために操作され、ssDNAホモポリマー間の
識別を示した。DNAを配列決定するために使用される他のナノポア(例えば、αHLお
よびMspA)とは対照的に、FraCは、核酸塩基識別を微調整するのに有利なαヘリ
ックスV字型の膜貫通領域を有する。これは、膜貫通αヘリックス内の異なる位置におけ
るアミノ酸置換が、くびれのサイズおよび化学組成の両方をモジュレートし得るからであ
る。
【0008】
ReFraCは、低い印加電位でDNA二重鎖のアンジッピングを誘導すること、また
は高い印加電位でそれらの移行を可能にすることもまた、本明細書で示されている。DN
Aヘアピンまたはより高次のDNA構造のアンジッピングは、αHLナノポアを使用して
調査されてきた[20]、[21]。しかし、ReFraCのシス前庭(5.5nm)は
、αHLのシス前庭(2.6nm)[13]またはMspAのシス前庭(4.8nm)[
22]よりも広く、これは、FraCが、より大きい高次のdsDNA構造、例えばG-
四重鎖、または折り畳まれたRNA構造、例えばtRNAを研究するために有利に使用さ
れ得ることを示している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、第1の態様では、本発明は、アクチノポリンタンパク質ファミリー由来の
メンバーであるαヘリックスポア形成毒素を含む漏斗状のタンパク質性ナノポアを含むシ
ステムを提供する。より具体的には、αヘリックスポア形成毒素は、フラガセアトキシン
C(FraC)、変異体FraC、FraCパラログまたはFraCホモログである。F
raCは、好ましくはそのC末端で、HisタグまたはStrepタグなどのタンパク質
親和性タグに融合され得る。
【0010】
非常に良好な結果が、変異体FraCを用いて得られ得る。例えば、変異体FraCは
、ポアの狭い部分における負に荷電したアミノ酸残基から、中性もしくは正に荷電したア
ミノ酸残基への少なくとも1つの置換、および/またはポアの狭い部分における中性アミ
ノ酸残基から、正に荷電したアミノ酸残基への少なくとも1つの置換を含む。例えば、変
異体は、膜貫通ヘリックス中に少なくとも1つの変異を含む。好ましくは、少なくとも1
つの負に荷電したアミノ酸残基が、正に荷電したアミノ酸残基に変化される。好ましい実
施形態では、変異体FraCは、10位における変異、好ましくは変異Asp10Arg
またはAsp10Lys(結晶構造PDB ID 4TSYと同様の残基番号付け)を含
む。変異体FraCは、FraCの溶血活性を回復させる1つまたは複数の代償性変異を
さらに含み得、好ましくは、前記代償性変異は、2位、9位、34位、52位、112位
、150位、153位および/もしくは159位、ならびに/または好ましくは159位
に存在する。例えば、前記代償性変異は、A2S、I9T、A34V、F52Y、W11
2L、T150I、G153D、K159E、I171Tおよびそれらの任意の組合せか
らなる群から選択される。具体的な態様では、変異体FraCは、159位における変異
、好ましくはLys159Gluを(さらに)含む。例えば、FraC二重変異体D10
R/K159Eが使用される。
【0011】
ナノポアは第1の液体媒体と第2の液体媒体との間に位置し得、少なくとも一方の液体
媒体は分析物を含み、システムは分析物の特性を検出するように作動する。
【0012】
一実施形態では、システムは、トンネルを通して分析物を移行させるように作動する。
別の実施形態では、このシステムは、分析物の特性を検出するように作動し、分析物がナ
ノポアと相互作用するように、ナノポアを電場に供することを含む。印加電位(電場を作
り出す)は、電流を有するために必要である。電流は、アウトプットシグナルである。例
えば、このシステムは、分析物の特性を検出するように作動し、分析物がナノポアを通し
て電気泳動および/もしくは電気浸透によって移行するように、ならびに/またはナノポ
ア中にトラップされるように、ナノポアを電場に供することを含む。特性は、分析物の電
気的、化学的または物理的特性であり得る。
【0013】
好ましくは、ナノポアは、(平面状)脂質二重層中に含まれる。具体的な態様では、脂
質二重層は、ホスファチジルコリン(PC)、好ましくは1,2-ジフィタノイル-sn
-グリセロ-3-ホスホコリンを含むまたはそれからなる。
【0014】
第2の態様では、本発明は、本発明に従うシステムを提供するための方法であって、
アクチノポリンタンパク質ファミリー由来の前記αヘリックスポア形成毒素の組換えモ
ノマーを用意するステップ;
前記モノマーをリポソームと接触させて、前記モノマーをオリゴマーへとアセンブルす
るステップ;
リポソームからオリゴマーを回収するステップ;および
オリゴマーを、スフィンゴミエリンを含有し得る脂質二重層と接触させて、ナノポアの
形成を可能にするステップ
を含む方法を提供する。
【0015】
第3の態様では、本発明は、本明細書に開示されるシステムに電場を印加するステップ
を含む方法であって、αヘリックスポア形成毒素を含む漏斗状のナノポアが、第1の伝導
性液体媒体と第2の伝導性液体媒体との間に位置する、方法を提供する。伝導性液体媒体
の少なくとも一方は、分析物を含み得る。この方法は、分析物がナノポアと相互作用する
際のイオン電流を測定して電流パターンを得るステップを含む方法において分析物を検出
するステップをさらに含み得、電流パターンにおける遮断の発生は、分析物の存在を示す
。この方法は、例えば、電流パターンを、同じ条件下で既知の分析物を使用して得られた
既知の電流パターンと比較することによって、分析物を同定するステップをさらに含み得
る。分析物は、ヌクレオチド、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ポリマー、薬物
、イオン、汚染物質、ナノスコピックな物体または生物兵器剤であり得る。
【0016】
一実施形態では、分析物は、ポリマー、例えば、タンパク質、ペプチドまたは核酸であ
る。好ましくは、分析物は、核酸、例えば、ssDNA、dsDNA、RNA、またはそ
れらの組合せである。別の好ましい態様では、分析物は、例えば、約1~約40kDa、
好ましくは約1~約30kDaの範囲のサイズを有する、タンパク質、ポリペプチドまた
はオリゴペプチドである。一実施形態では、分析物は、オリゴペプチド(約10以下のア
ミノ酸)、ポリペプチド(>10のアミノ酸)または折り畳まれたタンパク質(>50の
アミノ酸)である。
【0017】
本発明の方法では、FraCナノポアは、好ましくは、変異体FraCナノポアである
。変異体FraCナノポアのトンネルを通るコンダクタンスは、典型的には、その対応す
る野生型FraCナノポアを通るコンダクタンスよりも高い。
【0018】
なおさらなる態様は、ポアの狭い部分における負に荷電したアミノ酸残基から、正に荷
電したアミノ酸残基への少なくとも1つの置換、および/またはポアの狭い部分における
中性アミノ酸残基から、正に荷電したアミノ酸残基への少なくとも1つの置換を含む第1
の変異体FraCモノマーを少なくとも含む、変異体フラガセアトキシンC(FraC)
ナノポアに関する。例えば、変異体は、膜貫通ヘリックス中に少なくとも1つの変異を含
む。好ましくは、少なくとも1つの負に荷電したアミノ酸残基が、正に荷電したアミノ酸
残基に変化される。変異体は、3位もしくは10位、または3位および10位の両方にお
ける置換を含み得る。好ましい実施形態では、変異体FraCは、10位における変異、
好ましくは変異Asp10ArgまたはAsp10Lys(結晶構造PDB ID 4T
SYと同様の残基番号付け)を含む。変異体FraCは、FraCの溶血活性を回復させ
る1つまたは複数の代償性変異をさらに含み得、好ましくは、前記代償性変異は、2位、
9位、34位、52位、112位、150位、153位および/もしくは159位、なら
びに/または好ましくは159位に存在する。例えば、前記代償性変異は、A2S、I9
T、A34V、F52Y、W112L、T150I、G153D、K159E、I171
Tおよびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。具体的な態様では、変異体F
raCは、159位における変異、好ましくはLys159Gluを(さらに)含む。非
常に良好な結果が、FraC二重変異体D10R/K159Eを用いて得られ得る。具体
的に好ましい変異体には、以下の本明細書の表3のものが含まれる。
【0019】
変異体FraCナノポアは、野生型FraCモノマー、第2の変異体FraCモノマー
、野生型FraCパラログまたはホモログモノマーおよび変異体FraCパラログまたは
ホモログモノマーからなる群から選択される第2のモノマーを少なくともさらに含み得、
第2の変異体FraCモノマーは、第1の変異体FraCモノマーと同じでも異なっても
よい。例えば、第2のモノマーは、野生型FraCパラログまたはホモログモノマーであ
る。一実施形態では、変異体FraCナノポアの第1の変異体FraCモノマーは、変異
D10Rを含み、好ましくは、変異体は、表3に示されるものから選択される。
【0020】
変異体FraCナノポアは、好ましくは、その対応する野生型FraCナノポアのトン
ネルを通るコンダクタンスよりも高い、トンネルを通るコンダクタンスを有する。
【0021】
変異体FraCナノポアは、分子モーターをさらに含み得、分子モーターは、分子モー
ターの非存在下で分析物がナノポア中にまたはナノポアを通して移行する平均移行速度よ
りも低い平均移行速度で、分析物をナノポア中にまたはナノポアを通して移動させること
が可能である。
【0022】
例えば、分子モーターは、酵素、例えば、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼまたはク
レノウ断片である。
【0023】
タンパク質分析のために、荷電したくびれによって誘導される、シス区画からトランス
区画への電気浸透流(EOF)を有することが好ましい。くびれと同じ電荷のアミノ酸の
移行は、分析物溶液のpHの操作によって得られ得る。低いpH値(<約4.5)で負の
電荷を維持する1つまたは複数の非天然アミノ酸を使用することが有利であり、例えば、
硫酸(SO4 2-)またはリン酸(PO4 2-)部分は、適切なアミノ酸側鎖基である。したが
って、負の印加電位(pH4.5以下)下でシス区画からトランス区画への強い電気浸透
流を有するように操作されたナノポアもまた提供される。
【0024】
本発明は、バイオポリマーセンシングおよび/またはバイオポリマー配列決定のための
、本明細書に開示されるシステムまたは本発明に従う変異体FraCナノポアの使用もま
た提供する。例えば、前記バイオポリマーは、タンパク質、ペプチドまたは核酸である。
好ましくは、核酸、例えば、ssDNA、dsDNA、RNA、またはタンパク質もしく
はポリペプチド、あるいはそれらの組合せのセンシングおよび/あるいは配列決定のため
の、本明細書に開示されるシステムまたは本発明に従う変異体FraCナノポアの使用が
提供される。
【0025】
例えば、FraCナノポアは、タンパク質、ポリペプチドおよびオリゴペプチドバイオ
マーカーを認識するために有利に使用される。ナノポアの内側に入ると、異なるサイズの
タンパク質およびポリペプチドは、イオン電流によって識別され得る。個々のアミノ酸は
、移行の間にオンザフライで同定できなかったが、本発明者らは、トリプトファン残基1
個だけが異なる2つの小さい(折り畳まれていない)オリゴペプチドであるエンドセリン
1およびエンドセリン2(2.5kDa)が、イオン電流記録によって区別できることを
示した。したがって、ポリペプチドの移行が、例えば酵素の使用によって制御できる場合
、FraCナノポアは、移行するポリペプチド中の特定の配列特色の同定を可能にする。
【0026】
一実施形態では、(変異体)FraCナノポアは、単一分子プロテオミクス分析におい
てセンサーとして使用される。ナノポアプロテオミクスの最も単純な実行では、タンパク
質は、それらがナノポアを通して直線的に移行するとき、アミノ酸毎に認識される。生物
中のタンパク質およびオリゴペプチドの配列は、ゲノム分析から公知であるので、タンパ
ク質は、ナノポアを通過する折り畳まれていない移行の間の具体的なタンパク質遮断を、
公知のタンパク質遮断のデータベースと単純に比較することによって認識され得る。ある
いは、折り畳まれたタンパク質は、ナノポアを移行してまたは移行せずに、ナノポア前庭
の内側にそれらが留まるときに認識され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】野生型FraC(WtFraC)およびD10R-K159E FraC(ReFraC)ナノポア。(A)クーロン力表面彩色(赤=負の電荷、青=正の電荷)を示すオクタマーWtFraCの断面図。WtFraCのくびれゾーン中に位置するアスパラギン酸残基10が示される。(B)WtFraC(上)およびReFraC(下)の上面図。(C)1M NaCl、15mM Tris.HCl pH7.5中+50mVでのWtFraC(青)およびReFraC(赤)の単一チャネルコンダクタンスヒストグラム。(D)同一の取得設定(2kHzローパスBesselフィルターおよび10kHzサンプリングレート)を用いて得た、3M NaCl、15mM Tris.HCl pH7.5緩衝液中+100mVでのWtFraC(上)およびReFraC(下)の生トレース。
図2】ReFraCを用いたDNA識別。(A)ReFraCを使用する、NAと複合体を形成したホモポリマーDNA鎖の代表的遮断。模式図は、電流遮断の説明を示す。(B)ReFraCナノポアを用いてA20、C20、T20ホモポリマー鎖について得られた残留電流の代表的分布。(C)同じReFraCポアへの、ホモポリマーC20およびA20ヌクレオチドによって誘導された連続的トレースの電流遮断。示されるトレースは、100Hzカットオフを用いてデジタルでフィルタリングした。(D)C20およびA20ホモポリマー鎖の混合物によって課された残留電流の分布。(E)ホモポリマーC20およびT20ヌクレオチドの混合物を分解するための実験の連続的トレース。(F)C20およびT20ホモポリマー鎖の混合物によって課された残留電流の分布。トレースを、2kHzローパスBesselフィルターおよび10kHzサンプリングレートを使用して、3M NaCl、15mM Tris.HCl、pH7.5中で記録した。トレースCおよびEを、さらなる100Hzガウスデジタルフィルタリングに供した。
図3】ReFraCによるdsDNAのアンジッピング/移行。(A)+50mVでの、NA:A(dsDNA)C複合体を捕捉するReFraCの代表的トレース。開放ポア電流は、「1」として示され、比較のために、複合体の捕捉後が示される。2つのレベルをこのブロックにおいて観察できる:まず、ホモポリマーシトシンに対応する可能性が高い、より低いレベル(「2」)であって、これは、中間レベル(アンジッピング、角括弧)を介して、ホモポリマーアデニンに対応する可能性が最も高い、より高いレベル(「3」)へと変換する。電位の逆転の際(「4」)に、このブロックは即座に放出され、これは、二本鎖領域NA:A(dsDNA)C複合体が剥がされたことを示す。(B)+100mVでは、事例の半分よりも多くにおいて(挿入図)、単一のブロック(「2」)が、dsDNA部分が押し通された後に観察され(変形、角括弧)、-30mVの印加の際に、このブロックは、即座には放出され得ない(「3」)。より高い負の電位では、このブロックは放出され得、これは、ロタキサンが形成されたことを示している(さらなる例は図8中)。トレースを、2kHzローパスBesselフィルターおよび10kHzサンプリングレートを使用して、3M NaCl、15mM Tris.HCl、pH7.5中で記録した。
図4】WtFraCおよびReFraCナノポアについて決定した単位チャネルコンダクタンス分布および電圧電流依存性。A:平面状脂質二重層中で再構成したWtFraC(上)およびReFraC(下)の事前オリゴマー化されたポアについて測定した単位チャネルコンダクタンス分布。コンダクタンスは、-50mVの印加電位において測定した。各個々のチャネルの配向を、コンダクタンスにおける非対称に従って検証した。B:WtFraCおよびReFraCナノポアについて測定した電圧電流依存性。実験を3回反復し、エラーバーは、実験値間の標準偏差を示す。記録を、15mM Tris.HCl pH7.5および1M NaCl中で実施した。
図5】WtFraC、D10R FraCおよびReFraCの溶血活性。溶血率を、15mM Tris.HCl pH7.5 150mM NaCl中1%のウマ赤血球懸濁物において観察された濁度(650nm波長における光学密度として測定される)における50%の減少までの経過時間の逆数として計算した。タンパク質を200nM濃度で添加し、溶血率はWtFraCの百分率として示される。実験を3回反復し、エラーバーは、実験値間の標準偏差を示す。
図6】ReFraCナノポアを用いて記録したA(dsDNA)C DNA基質の移行および固定化。A(dsDNA)C基質(トレースの上に示される)を、オリゴI(5’ビオチン化AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGTGCTACGACTCT CTGTGTGCCCCCCCCCCCCCCCCCCCC)およびオリゴII(CACACAGAGAGTCGTAGCAC)のアニーリングによって作製した。A:1μMのA(dsDNA)C単独(左)および0.25μMのニュートラアビジンと複合体を形成したA(dsDNA)C(右)によってReFraCナノポア上で誘発された遮断。基質は、+50mVの印加電位下でシスに添加した。B:1μMのA(dsDNA)C単独(左)および0.25μMのニュートラアビジンと複合体を形成したA(dsDNA)C(右)によってReFraCナノポア上で誘発された遮断。基質は、+70mVでシスに添加した。遊離A(dsDNA)C遮断について検出された2つのレベルの残留電流は、薄紫の破線で示される。遮断されたポアおよび開放ポアに対応する電流レベルは、それぞれ、薄紫および灰色の破線として示される。電圧ステッピングプロトコールは、トレースの下に赤線で示される。記録を、15mM Tris.HCl pH7.5および3M NaCl中で実施し、サンプリング周波数は10kHzであり、データを、取得の際に2kHzローパスBesselフィルターによって平滑化した。
図7】ReFraCナノポア上で誘発されたA(dsDNA)C-ニュートラアビジン遮断内の残留電流の段階的増強を示す代表的トレース。1μMのA(dsDNA)Cおよび0.25μMのニュートラアビジンは、+50mVでシスに存在した。遮断内で、残留電流は、8.8±0.7%(初期レベル)から12.5±0.7%(最終レベル)へと切り替わった。電圧ステッピングプロトコールは、下に赤線で示される。記録を、15mM Tris.HCl pH7.5および3M NaCl中で実施し、サンプリング頻度は10kHzであり、データを、取得の際に2kHzローパスBesselフィルターによって平滑化した。
図8】+100mVの印加電位でReFraCナノポア中に駆動されたA(dsDNA)C-ニュートラアビジンによるロタキサン形成を示すトレースのさらなる例。1μMのA(dsDNA)Cおよび0.25μMのニュートラアビジンを、シスに添加した。電圧ステッピングプロトコールは、下に赤線で示される。ロタキサンを、印加電位を-40mVに切り替えることによって解体した。記録を、15mM Tris.HCl pH7.5および3M NaCl中で実施し、サンプリング頻度は10kHzであり、データを、取得の際に2kHzローパスBesselフィルターによって平滑化した。
図9】ReFraCナノポア内に固定化されたオリゴヌクレオチドI-ニュートラアビジンによる擬ロタキサンおよびロタキサン形成を示す代表的トレース。A:シスに存在する1μMのオリゴIおよび0.25μMのニュートラアビジンによって誘発された擬ロタキサン形成。B:1μMのオリゴヌクレオチドIIがトランスに添加された、シスに存在する1μMのオリゴヌクレオチドIおよび0.25μMのニュートラアビジンによるロタキサン形成。ロタキサンを、印加電位を-40mVに切り替えることによって解体した(トレースの上の赤い矢印は、ロタキサンの解体を示す)。dsDNAのアンジッピングを説明する一過的状態は、角括弧中に示される。電圧ステッピングプロトコールは、下に赤線で示される。記録を、15mM Tris.HCl pH7.5および3M NaCl中で実施し、サンプリング頻度は10kHzであり、データを、取得の際に2kHzローパスBesselフィルターによって平滑化した。
図10】2つの異なるpH条件で2つのFraCバリアントを用いたオリゴペプチド(エンドセリン1)およびタンパク質(キモトリプシン)の捕捉。a)野生型FraC(WtFraC、PDB:4TSY)およびD10R-K159E-FraC(ReFraC)の断面。b~c)WtFraC(左)およびReFraC(右)に対する、1μMのエンドセリン1(b)および200nMのキモトリプシン(c)によって誘導された代表的トレース。キモトリプシン(PDB:5CHA)およびヒトエンドセリン1(PDB:1EDN)は、表面提示として示される。エンドセリン1およびキモトリプシンは、負の印加電位下ではWtFraCに進入するが、正の印加電位下ではReFraCに進入する。WtFraCへのキモトリプシン遮断は、pH7.5および4.5で-50mV下でも観察されたが、十分な数の遮断を得るために、印加電位を-100mVまで増加させた。pH7.5では、正の印加バイアス下でのキモトリプシンによるReFraCへの遮断は、負の印加バイアス下でのWtFraCへの遮断よりも、高い電位を必要とした。pH7.5の緩衝液は、1M KCl、15mM Trisを含み、pH4.5の緩衝液は、1M KCl、0.1Mクエン酸、180mM Tris.塩基を含んだ。エンドセリン1およびキモトリプシンを、シス区画に添加した。全てのトレースを、50kHzサンプリングレートおよび10kHzローパスBesselフィルターを使用して記録した。彩色は、それぞれ負の電位および正の電位(範囲-4~+4kbT/ec)に対応する赤および青により、APBS(13)(1M KCl中pH7.5)によって計算された分子表面の静電電位を示す。PyMOLを使用して構造をレンダリングした。
図11】WtFraCおよびReFraCの静電分布およびイオン選択性。a)モノマー平均したシミュレートされた静電電位は、それぞれ、WtFraCおよびReFracの負に荷電したくびれおよび正に荷電したくびれを明らかにする。ReFracについて、pHを7.5から4.5に低下させることは、静電電位に対して小さい影響を有しただけであったが、WtFraCについて、くびれの中心部におけるピーク値は、約41%低下した。全てのシミュレーションは、1M KClでAPBS(13)を使用して実施し、各滴定可能な残基の部分的電荷を、PDB2PQRソフトウェアの改変バージョンを用いてそれらの平均プロトン化状態に従って調整した(14)。残基のpKa値を、PROPKAを使用して推定した(33、34)。b)逆転電位の決定は、WtFraCおよびReFraCが、それらのくびれにおける静電電位から予測されるように、それぞれカチオン選択的およびアニオン選択的であることを示している。pHを7.5から4.5に低下させることは、シミュレートされた静電電位の低減された大きさに従って、WtFraCのイオン選択性(P_(K^+)/P_([Cl]^-))を約43%低減させた。対照的に、pH4.5におけるReFraCのイオン選択性における約37%の増加は、シミュレーションによって予測されなかった。全ての逆転電位を、非対称な塩条件(トランスでは467mM KCl、シスでは1960mM KCl)下で測定し、イオン選択性を、Goldman-Hodgkin-Katz方程式を使用して決定した。詳細な実験手順は、サポート情報中で与えられる。全ての電流-電圧曲線の背後の外被は、そのそれぞれの標準偏差を示す。
図12】pH4.5でWtFraCを用いたバイオマーカーの特徴付け。a)上から下に:キモトリプシン(25kD、PDB:5CHA)の分子表面および模式図提示(Pymol)を伴った表面提示、-150mVの印加電位下で得られた代表的トレース、-150mVでのIres%に対する滞留時間分布を示すヒートプロット、Ires%の電圧依存性、滞留時間の電圧依存性、および捕捉頻度。b)、c)、d)、e)はそれぞれ、β2-ミクログロブリン(11.6kD、PDB:1LDS)、ヒトEGF(6.2kD、PDB:1JL9)、エンドセリン1(2.5kD、PDB:1EDN)およびアンジオテンシンI(1.3kD)についての同じ情報を示す。アンジオテンシンIは、Pymolを用いて引き出したランダム構造として示される。バイオマーカーの濃度は以下のとおりであった:それぞれ、キモトリプシンについて200nM、β2-ミクログロブリン(microglobin)について200nM、ヒトEGFについて2μM、エンドセリン1について1μM、アンジオテンシンIについて2μM。バイオマーカーの等電点は、文献から、またはオンライン計算ツールPepcalcを用いて得られる。エラーバーは、少なくとも3回の反復および各反復について少なくとも300の事象から得られた標準偏差を示す。データを、B-スプライン関数(Origin 8.1)を使用してフィットさせた。全ての記録を、50kHzサンプリングレートおよび10kHzローパスBesselフィルターを用いて収集した。
図13】pH4.5においてWtFraCを用いたエンドセリン1および2の識別。a)静電彩色(PyMOL)を使用したエンドセリン1およびエンドセリン2の分子表面提示。b)上:エンドセリン1および2のアミノ酸配列。青線は、各オリゴペプチド中のジスルフィド架橋を示す。下:pH4.5緩衝液(1M KCl、0.1Mクエン酸、180mM Tris.塩基)中-50mVでのエンドセリン1およびエンドセリン2遮断についてのIres%および滞留時間。c)-50mVの印加電位下での同じFraCナノポアへの代表的エンドセリン1およびエンドセリン2遮断。d)2μMのエンドセリン1によって誘発された残留電流のヒストグラム(左)、およびIres%に対する電流振幅の標準偏差を示す対応するヒートプロット(右)。e)第2の集団を明らかにする同じポアへの8μMのエンドセリン2の添加後ではあるが、(d)と同じ。グラフは、カスタムRスクリプトを用いて創出した。全ての記録を、50kHzサンプリングレートおよび10kHz Besselローパスフィルターを用いて実施した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実験セクション
セクションA
材料および方法
特記しない限り、全ての化学物質は、Sigma-Aldrichから購入した。DN
Aは、Integrated DNA Technologies(IDT)から購入し
た。酵素はFermentasから、脂質はAvanti Polar Lipidsか
ら取得した。本研究における全ての誤差は、標準偏差として与えられる。
【0029】
FraCクローニング
クローニングを可能にするために、Nco I制限部位(CCATGG)を、A.fr
agacea由来の成熟WtFraCに対応するDNA配列の開始部(5’末端)におい
て導入した。リーディングフレームを維持するために、さらに2つの塩基をNco I部
位の後ろに挿入し、開始メチオニンの後のさらなるアラニン残基を生じさせた。精製目的
のために、FraCのC末端で、His9親和性タグを、可撓性グリシン-セリン-アラ
ニンリンカーを介して結合させ、オープンリーディングフレームを、2つの連続する停止
コドンとその後のHind III制限部位(3’末端)によって終結させた。最適化さ
れたコドン組成を有する合成遺伝子(IDT)50ngが、以下のPCR反応のための鋳
型として機能した:遺伝子を、300μL体積中6μMのプライマーFrfおよびFrr
(表2)を使用して、Phire Hot Start II DNAポリメラーゼ(F
innzymes)によって増幅した。PCRプロトコールは以下のとおりであった:9
8℃で30秒間の事前インキュベーションステップの後には、30サイクルの98℃で5
秒間の変性および72℃で1分間の伸長が続いた。Hi9タグ化WtFraC遺伝子を含
む得られたPCR産物を、QIAquick PCR Purification Ki
t(Qiagen)を用いて精製し、Nco IおよびHind III(FastDi
gest、Fermentas)を用いて消化した。ゲル精製された挿入物(QIAqu
ick Gel Extraction Kit、Qiagen)を、Nco I(5’
)およびHind III(3’)部位を介した粘着末端ライゲーション(T4リガーゼ
、Fermentas)を使用してpT7-SC1発現プラスミド中にT7プロモーター
の制御下でクローニングした。ライゲーション混合物のうち0.6μLを、50μLのE
.cloni(登録商標)10G細胞(Lucigen)中に、エレクトロポレーション
によって形質転換した。形質転換された細菌を、アンピシリン(100μg/ml)LB
寒天プレート上で37℃で一晩増殖させた。クローンの正体を、配列決定によって確認し
た。
【0030】
10R FraCの構築
WtFraC遺伝子を含むpT7-SC1プラスミドのうち100ngが、PCR反応
のための鋳型として機能した:この遺伝子を、300μL体積中6μMのプライマー10
Rf(D10Rをコードする)およびT7ターミネーター(表2)を使用してPhire
Hot Start II DNAポリメラーゼ(Finnzymes)によって増幅
した。PCR反応サイクリングプロトコールは以下のとおりであった:98℃で30秒間
の事前インキュベーションステップの後には、30サイクルの98℃で5秒間の変性およ
び72℃で1分間の伸長が続いた。PCR産物をゲル精製し(QIAquick Gel
Extraction Kit、Qiagen)、MEGAWHOP手順[1]によって
pT7発現プラスミド(pT7-SC1)中にクローニングした:約500ngの精製さ
れたPCR産物を、WtFraC遺伝子を含むpT7-SC1プラスミド約300ngと
混合し、増幅を、50μLの最終体積中でPhire Hot Start II DN
Aポリメラーゼ(Finnzymes)を用いて実施した(98℃で30秒間の事前イン
キュベーション、次いで、30サイクルの98℃で5秒間の変性、72℃で1.5分間の
伸長)。環状鋳型を、Dpn I(1FDU)との37℃で2時間のインキュベーション
によって排除した。得られた混合物のうち0.6μLを、E.cloni(登録商標)1
0G細胞(Lucigen)中に、エレクトロポレーションによって形質転換した。形質
転換された細菌を、アンピシリン(100μg/ml)含有LB寒天プレート上で37℃
で一晩増殖させた。クローンの正体を、配列決定によって確認した。
【0031】
エラープローンPCRによる10R FraCライブラリーの構築
T7プロモーターおよびT7ターミネータープライマー(表2)を使用してプラスミド
DNAからD10R FraC遺伝子を増幅することによって、ライブラリーを構築した
【0032】
【表1】
表2. 本研究で使用したオリゴヌクレオチド。「5Biosg」は、C6リンカー(I
DT)を介してDNAの5’末端にコンジュゲートされたビオチン基を示す。
【0033】
第1ラウンドの変異誘発において、本発明者らは、10R FraCをコードする合成
遺伝子を含むプラスミドを、鋳型として使用した。第2の変異誘発ラウンドにおいて、本
発明者らは、第1ラウンドのスクリーニングにおいて同定された最も高い活性を有するク
ローン由来のDNAプラスミドのプールを使用した。DNA増幅を、エラープローンPC
Rによって実施した:400μLのPCRミックス(200μlのREDTaq Rea
dyMix、6μMのT7プロモーターおよびT7ターミネータープライマー、約400
ngのプラスミド鋳型)を、0~0.2mMのMnCl2を含む8つの反応体積に分割し
、27回サイクリングした(95℃で3分間の事前インキュベーション、次いでサイクリ
ング:95℃で15秒間の変性、55℃で15秒間のアニーリング、72℃で3分間の伸
長)。これらの条件は、典型的には、最終ライブラリー中に1遺伝子当たり1~4個の変
異を生じた。PCR産物を一緒にプールし、ゲル精製し(QIAquick Gel E
xtraction Kit、Qiagen)、MEGAWHOP手順によってpT7発
現プラスミド(pT7-SC1)中にクローニングした:約500ngの精製されたPC
R産物を、10R FraC遺伝子を含むpT7-SC1プラスミド約300ngと混合
し、増幅を、50μLの最終体積中でPhire Hot Start II DNAポ
リメラーゼ(Finnzymes)を用いて実施した(98℃で30秒間の事前インキュ
ベーション、その後30サイクル:98℃で5秒間の変性、72℃で1.5分間の伸長)
。環状鋳型を、Dpn I(1FDU)との37℃で2時間のインキュベーションによっ
て排除した。得られた混合物のうち0.6μLを、E.cloni(登録商標)10G細
胞(Lucigen)中に、エレクトロポレーションによって形質転換した。形質転換さ
れた細菌を、アンピシリン(100μg/ml)LB寒天プレート上で37℃で一晩増殖
させると、典型的には>105コロニーが得られ、これを、プラスミドDNAライブラリ
ー調製のために収集した。
【0034】
FraC過剰発現後の粗製溶解物における溶血活性についてのスクリーニング
600のクローン(上記を参照)由来の一晩スターター培養物を、新しい96深ウェル
プレート中で450μLの新鮮な培地中に接種し、培養物を、約0.8のOD600まで
37℃で増殖させた。次いで、IPTG(0.5mM)を添加して過剰発現を誘導し、温
度を一晩インキュベーションのために25℃に低減させた。次の日に、4℃で3000×
gで15分間の遠心分離によって細菌を収集した。上清を廃棄し、ペレットを-80℃で
2時間凍結して、細胞破壊を促進した。次いで、細胞ペレットを、0.4mLの溶解緩衝
液(15mM Tris.HCl pH7.5、1mM MgCl2、10μg/mlリ
ゾチーム、0.2単位/mL DNAse I)中で再懸濁し、37℃で1300RPM
で30分間振盪することによって溶解させた。次いで、粗製溶解物のうち0.5~5μL
を、100μLの約1%ウマ赤血球懸濁物に添加した。後者を、ウマ血液(bioMer
ieux Benelux)を4℃で6000×gで5分間遠心分離し、15mM Tr
is.HCl pH7.5、150mM NaCl中でペレットを再懸濁することによっ
て調製した。上清が赤色を呈した場合、この溶液を再度遠心分離し、ペレットを同じ緩衝
液中で再懸濁した。溶血活性を、経時的な650nmでのODにおける減少によってモニ
タリングした(Multiskan GO Microplate Spectroph
otometer、Thermo Scientific)。
【0035】
FraC中のD10Rアミノ酸置換の有害効果を代償する変異についてのスクリーニン

D10Rアミノ酸置換は、FraCの溶血活性における約5分の1の減少を生じた(図
5)。D10R FraCは、1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコ
リン(DPhPC)で作製された平面状二重層中でオリゴマー化および再構成されること
がなおも可能であったが、本発明者らは、D10R FraCの溶血活性をWtFraC
レベルに戻して回復させる代償性変異について探索した。FraCの溶血活性を維持する
ことは、2つの理由のために重要である:まず、これは、標的化された脂質二重層上でオ
リゴマーポアへとアセンブルする能力を反映し、したがって、オリゴマーナノポアのより
効率的な調製につながり得る。他方で、溶血活性は、任意のアミノ酸配列変化を有するバ
リアントの機能性をスクリーニングするための簡便な方法を提供し、したがって、Fra
Cナノポアに対する将来的な操作の試みを促進するであろう。代償性変異を同定するため
に、本発明者らは、D10R FraC遺伝子に基づいてランダム変異誘発ライブラリー
を構築し、それをBl21 DE3 E.coli中に形質転換し、参照としてWtFr
aCを使用して、過剰発現後の粗製溶解物におけるウマ赤血球に対する溶血活性について
、個々のバリアントをスクリーニングした。第1ラウンドにおいて、本発明者らは、60
0のバリアントをスクリーニングし、溶血活性スクリーニングと組み合わせた第2ラウン
ドのランダム変異誘発のための鋳型として12のクローンを選択した。次いで、最も高い
レベルの溶血活性を有する7つのクローンを、さらなる特徴付けのために選択した。対応
する遺伝子中に生じた配列変化を表3にまとめる。
【0036】
【表2】
表3.FraC中のD10R変異の有害効果を代償する配列変化
【0037】
精製されたバリアントを、スフィンゴミエリン:DPhPC(1:1)リポソームにお
いてオリゴマー化し、0.6%LDAO中に可溶化した。Ni-NTAクロマトグラフィ
ーによって界面活性剤を0.02%DDMに交換した後、オリゴマータンパク質を、DP
hPCから構成される平面状脂質二重層中でのポア形成活性について試験した。最初に、
本発明者らは、最も有望なポア形成体として、3、4およびReFraCと称するバリア
ント(表3)を同定した。しかし、バリアント3によって作製されたナノポアは不均一で
あり(50%未満がオクタマーポアを生じた)、バリアント4のポア形成活性は、4℃で
貯蔵した場合には数日内に減衰していた。オリゴマーReFraCは、4℃で貯蔵した場
合には数か月間にわたってポア形成活性を維持し、ssDNAを捕捉することができるま
まで、WtFraCとほぼ同様に均一なナノポアを形成した。したがって、本発明者らは
、本研究におけるさらなるDNA分析のためにReFraCを選んだ。さらに、本発明者
らは、ReFraC中のアスパラギン酸10をアスパラギンで置き換えてD10N K1
59Eバリアントを得たが、ssDNA進入は検出できなかった。
【0038】
WtFraC(タンパク質配列)
MASADVAGAVIDGAGLGFDVLKTVLEALGNVKRKIAVGID
NESGKTWTAMNTYFRSGTSDIVLPHKVAHGKALLYNGQKN
RGPVATGVVGVIAYSMSDGNTLAVLFSVPYDYNWYSNWWN
VRVYKGQKRADQRMYEELYYHRSPFRGDNGWHSRGLGYGL
KSRGFMNSSGHAILEIHVTKAGSAHHHHHH**
WtFraC(DNA配列)
ATGGCGAGCGCCGATGTCGCGGGTGCGGTAATCGACGGTG
CGGGTCTGGGCTTTGACGTACTGAAAACCGTGCTGGAGGC
CCTGGGCAACGTTAAACGCAAAATTGCGGTAGGGATTGAT
AACGAATCGGGCAAGACCTGGACAGCGATGAATACCTATT
TCCGTTCTGGTACGAGTGATATTGTGCTCCCACATAAGGT
GGCGCATGGTAAGGCGCTGCTGTATAACGGTCAAAAAAAT
CGCGGTCCTGTCGCGACCGGCGTAGTGGGTGTGATTGCCT
ATAGTATGTCTGATGGGAACACACTGGCGGTACTGTTCTC
CGTGCCGTACGATTATAATTGGTATAGCAATTGGTGGAAC
GTGCGTGTCTACAAAGGCCAGAAGCGTGCCGATCAGCGCA
TGTACGAGGAGCTGTACTATCATCGCTCGCCGTTTCGCGG
CGACAACGGTTGGCATTCCCGGGGCTTAGGTTATGGACTC
AAAAGTCGCGGCTTTATGAATAGTTCGGGCCACGCAATCC
TGGAGATTCACGTTACCAAAGCAGGCTCTGCGCATCATCA
CCACCATCACTGATAAGCTT
【0039】
FraCの過剰発現および精製
E.cloni(登録商標)EXPRESS BL21(DE3)細胞を、FraC遺
伝子を含むpT7-SC1プラスミドで形質転換した。形質転換体を、100mg/Lの
アンピシリンを補充したLB寒天プレート上で37℃で一晩増殖させた後に選択した。得
られたコロニーを、100mg/Lのアンピシリンを含む2×YT培地(Sigma)中
に接種した。培養物を、200rpmで振盪しながら、約0.8のOD600に達するまで
、37℃で増殖させた。次いで、FraCの発現を、0.5mM IPTGの添加によっ
て誘導し、増殖を25℃で継続した。次の日に、細菌を、6000×gで25分間の遠心
分離によって収集し、ペレットを-80℃で貯蔵した。モノマーFraCを含むペレット
(50~100mlの細菌培養物に由来する)を解凍し、40mlの15mM Tris
.HCl pH7.5、1mM MgCl2および0.05単位/mLのDNase I
(Fermentas)中で再懸濁した。次いで、細胞破壊を開始するために、細菌懸濁
物に0.2mg/mlリゾチームおよび2M尿素(デブリの形成を防止するため)を補充
し、それを、周囲温度で40分間にわたる精力的な振盪に供した。残存細菌を、プローブ
超音波処理によって破壊した。粗製溶解物を、6000×gで20分間の遠心分離によっ
て清澄化し、上清を、洗浄緩衝液(10mMイミダゾール 150mM NaCl、15
mM Tris.HCl pH7.5)で事前平衡化した200μL(ビーズ体積)のN
i-NTA樹脂(Qiagen)と混合した。周囲温度での1時間の穏やかな混合後、樹
脂をカラム(Micro Bio Spin、Bio-Rad)上にロードし、約5ml
の洗浄緩衝液で洗浄した。FraCを、300mMイミダゾールを含む洗浄緩衝液およそ
約0.5mLで溶出した。タンパク質濃度を、Bradfordアッセイによって決定し
た。FraCモノマーを、さらなる使用まで4℃で貯蔵した。
【0040】
溶血活性アッセイ
脱線維素ウマ血液(bioMerieux Benelux)を、上清が透明になるま
で150mM NaCl、15mM Tris.HCl pH7.5で洗浄した。次いで
、赤血球を、同じ緩衝液で約1%の濃度(0.6~0.8のOD 650nm)になるよ
うに再懸濁した。次いで、懸濁物を、200nMのFraCと混合した。溶血活性を、M
ultiskan(商標)GO Microplate spectrophotome
ter(Thermoscientific)を使用してOD650における減少をモニ
タリングすることによって測定した。溶血率を、濁度における50%の減少までの経過時
間にわたって一体として決定した。
【0041】
スフィンゴミエリン:DPhPCリポソームの調製
20mgのスフィンゴミエリン(脳、ブタ、Avanti Polar lipids
)およびDPhPC(1:1)混合物を、0.5%エタノール(スフィンゴミエリンの溶
解を補助するため)を補充したペンタン4ml中に溶解し、丸底フラスコ中に配置した。
溶媒を、壁上に脂質フィルムを沈着させるために、フラスコを緩徐に回転させながら蒸発
させた。脂質フィルムの沈着後に、フラスコを30分間にわたって開けたままにして、溶
媒を完全に蒸発させた。次いで、脂質フィルムを、超音波処理槽(周囲温度で5~10分
間)を使用して、150mM NaCl、15mM Tris.HCl pH7.5(総
脂質の最終濃度は10mg/ml)中に再懸濁した。得られたリポソームを-20℃で貯
蔵した。
【0042】
FraCのオリゴマー化
モノマーFraCを、150mM NaCl、15mM Tris.HCl pH7.
5緩衝液中でリポソーム(脂質/タンパク質質量比は10:1)と混合した。混合物を、
短時間超音波処理し(超音波処理槽)、37℃で30分間インキュベートした。次いで、
プロテオリポソームを0.6%LDAOで可溶化し、5分間インキュベートし、混合物を
、DDM含有洗浄緩衝液(0.02%DDM 150mM NaCl、15mM Tri
s.HCl pH7.5)で20倍希釈し、DDM含有洗浄緩衝液で事前平衡化した約1
00μl(ビーズ体積)のNi-NTAアガロース樹脂(Qiagen)と混合した。1
時間穏やかに混合した後、樹脂をカラム(Micro Bio Spin、Bio-Ra
d)上にロードし、約2mlのDDM洗浄緩衝液で洗浄した。FraCを、50μlの溶
出緩衝液(200mM EDTA、0.02%DDM、pH8-あるいは、本発明者らは
1Mイミダゾール 0.02%DDMを使用することもあり得たが、EDTAがより効率
的であることが証明された)によってカラムから溶出させた。精製されたFraCオリゴ
マーを4℃で貯蔵した。
【0043】
あるいは、FraCオリゴマーは、FraCモノマーを、スフィンゴミエリン単独によ
って形成されたリポソームと混合する(37℃で1時間、次いで、4℃で一晩)ことによ
って形成され得る。次の日に、5mM EDTAおよび1%DDM(最終)をプロテオリ
ポソームに添加し、室温で15分間インキュベートする。次いで、溶液を、5mM ED
TA、0.05%DDM 15mM Tris HCl 7.5 150mM NaCl
を含む1ml体積になるまで希釈する。次いで、溶液を、100kDaカットオフ限外濾
過デバイスを用いて約100ulまで濃縮する。
【0044】
平面状脂質二重層における電気的記録
印加電位とは、トランス電極の電位を指す。FraCナノポアを、接地電極に接続した
シス区画から、脂質二重層中に挿入した。2つの区画を、直径約100μmのオリフィス
を含む25μm厚のポリテトラフルオロエチレンフィルム(Goodfellow Ca
mbridge Limited)によって分離した。開口部を、ペンタン中10%のヘ
キサデカン約5μlで事前処理し、二重層を、両方の電気生理学チャンバーへのペンタン
中の1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC)(10
mg/mL)約10μLの添加によって形成した。典型的には、シス区画(0.5mL)
への0.01~10ngのオリゴマーFraCの添加が、単一のチャネルを得るために十
分であった。WtFraCナノポアは、負の印加電位よりも正の印加電位において、より
高い開放ポア電流を示し、ポアの配向を決定するための有用なツールを提供した。電気的
記録を、1M(FraCナノポアの初期特徴付け)および3MのNaCl(振幅を増幅す
るためのポリヌクレオチド分析のため)、15mM Tris.HCl pH7.5中で
実施した。
【0045】
データの記録および分析
平面状二重層記録からの電気的シグナルを、Axopatch 200Bパッチクラン
プ増幅器(Axon Instruments)を使用して増幅し、Digidata
1440 A/D変換器(Axon Instruments)を用いてデジタル化した
。データを、Clampex 10.4ソフトウェア(Molecular Devic
es)を使用することによって記録し、引き続く分析を、Clampfitソフトウェア
(Molecular Devices)を用いて実施した。電気的記録を、2kHzロ
ーパスBesselフィルターおよび10kHzサンプリングレートを適用することによ
って取得した。レベル0からレベル1への電流遷移を、Clampfit中の「単一チャ
ネルサーチ」機能を用いて分析した。残留電流値(Ires)を、遮断されたポア電流値(
B)および開放ポア電流値(IO)から、Ires=100*B/IOとして計算した。IB
およびIOを、事象の振幅ヒストグラムへのガウシアンフィッティングから決定した。段
階的電流増強を示す事象の場合、残留電流レベルを、ホールポイント電流ヒストグラムへ
のガウシアンフィッティングから計算した。事象寿命を決定するために、事象滞留時間(
off)を、累積分布として一緒にビニングし、単一指数関数にフィットさせた。段階的
電流増強(図3A)およびロタキサン形成性遮断を示す事象の頻度を、手動で計算した。
グラフは、Origin(OriginLab Corporation)またはCla
mpfitソフトウェア(Molecular Devices)を用いて作成した。
【0046】
FraCナノポアのグラフィック提示
分子グラフィックスを、Chimera(http://www.cgl.ucsf.
edu/chimera)を用いて実施した。
【実施例0047】
平面状脂質二重層中での野生型FraCポアの再構成
C末端でHi9タグに遺伝学的に融合させた組換え野生型FraC(WtFraC、図
1A;1B、上)タンパク質モノマーを、BL21(DE3)E.coli株において発
現させた。以前の研究は、アクチノポリンのポアアセンブリが、脂質二重層中のSMの存
在によって誘発されることを確立している[9]、[10]、[11]、[8]。一致し
て、Ni-NTAクロマトグラフィーによって精製されたWtFraCの水溶性モノマー
は、DPhPC平面状脂質二重層中ではポアを形成しなかった。したがって、本発明者ら
は、モノマーをDPhPC:SM(1:1)リポソームを用いて事前オリゴマー化した。
0.6%N,N-ジメチルドデシルアミンN-オキシド(LDAO)中でのリポソームの
可溶化後、オリゴマーの解離を防止するために[12]、LDAOを、第2ラウンドのN
i-NTAクロマトグラフィー(SI)によって0.02%β-ドデシルマルトシド(D
DM)に交換した。DPhPC平面状脂質二重層のシス側への、0.02%DDM中のオ
リゴマーWtFraCの精製されたマイクログラムに満たない量の添加は、容易にポアを
生じた。1M NaCl、15mM Tris.HCl pH7.5緩衝液におけるWt
FraCポアについての単位チャネルコンダクタンスの分布は、最近決定された結晶構造
において観察されたオクタマーにおそらくは対応する、単一のコンダクタンス型(図1C
;4A、上)を主に明らかにした[8]。他の生物学的ナノポアと同様に、WtFraC
チャネルは、ポアの配向の決定を可能にする、非対称な電流-電圧(I-V)関係(図4
B)を示した。3M NaCl、15mM Tris.HCl pH7.5緩衝液中で得
られた例示的トレースは、図1D、上に示される。
【実施例0048】
核酸分析のためのWtFraCの操作
オクタマーWtFraCの結晶構造は、このナノポアが、ssDNAの貫通を可能にす
るのに十分に大きい(くびれ直径1.2nm)ことを示唆している[8]。しかし、本発
明者らの最初の実験では、本発明者らは、ssDNA遮断を観察できず、これは、WtF
raCポアの負に荷電したくびれ領域がDNA移行を防止したことに起因する可能性が最
も高い[13]、[14]。FraCを通したssDNAの貫通を誘導するために、本発
明者らは、アスパラギン酸10をアルギニンで置換して、正に荷電したくびれを有するナ
ノポアを産生した(図1B、下)。D10R FraCは低いポア形成活性を示したので
図5)、本発明者らは、D10R FraC遺伝子の背景に対してランダム変異誘発を
実施し、得られたバリアントの溶血活性をスクリーニングした(SI)。結果として、本
発明者らは、広い前庭の外側縁に位置するリジン159からグルタミン酸への代償性変異
(K159E)を同定した(図1A)。FraCの二重変異体D10R,K159E(R
eFraC)は、WtFraCと比較して変更されたI-V関係を有するにもかかわらず
図4Bおよび図1D、下)、ほぼ野生型レベルの溶血活性を示し(図5)、均一なポア
を生じた(図1C)。1M NaCl、15mM Tris.HCl pH7.5中で±
50mVでのReFraCポアのより低いコンダクタンスは、アルギニンがアスパラギン
酸よりも嵩高い側鎖を有するので、より狭いくびれに帰せられ得る(図1B)。
【実施例0049】
ReFraCを用いたポリヌクレオチド識別
本発明者らは、DNAをニュートラアビジン(NA)で固定化するために、αHL[7
]、[15]、[16]、[17]およびMspA[14]、[18]を用いる確立され
たアプローチに従った。本発明者らは、5’末端ビオチン化A20/C20/T20 s
sDNAホモポリマーをテトラマーNAと複合体を形成して、DNA鎖を移行および識別
するReFraCの能力を評価した。本発明者らは、事前混合したDNA(1μM)およ
びNA(0.25μM)を、平面状脂質二重層設定のシス区画に添加し、3M NaCl
、15mM Tris.HCl、pH7.5緩衝液および+70mVの印加電位(トラン
ス電極を指す)においてDNA識別実験を実施した。本発明者らは、擬ロタキサンによっ
て誘発される永続的電流遮断を観察したが、このとき、ssDNAは、印加電位が逆転さ
れるまで、ポアを通して安定に貫通される(図2A図9A)。遮断されたポア電流およ
び開放ポア電流の振幅の百分率に100を乗算した残留電流Ires((IB/IO)×
100)は以下のとおりであった:NA:A20について13.1±0.4%(N=5、
n=364、ここで、Nは、独立した単一のポア実験の数であり、nは分析した遮断であ
る)、NA:C20について10.8±0.3%(N=4、n=920)、NA:T20
について14.0±0.3%(N=5、n=780)(図2B)。ポア毎の変動の影響を
排除するために、本発明者らは、ホモポリマーの混合物もまた分解した(図2C図F
。比較的低い残留電流は、貫通したssDNA周囲でのポアの緊密な閉鎖を示唆する。
【実施例0050】
ReFraCナノポアによるDNAアンジッピングおよび二本鎖DNA移行
ReFraCのくびれ(1.2nm)は、B形態の二本鎖DNA(dsDNA、約2n
m)よりも小さい。したがって、DNA分析のためのストッパーとしてのdsDNAを評
価するために、本発明者らは、2つのオリゴヌクレオチドを設計した:配列ビオチン-5
’-A20-GTGCTACGACTCTCTGTGTG-C20-3’を有する、5’
末端にビオチン基が結合したオリゴI、およびオリゴIの下線部と逆相補的な配列を有す
る短いオリゴII。アニーリングにより、A(dsDNA)C基質:A20およびC20
ssDNAセグメントが隣接するdsDNAの20塩基対長の中心セグメントが得られ
た。+50mVにおけるシス区画への1μMのA(dsDNA)Cの添加は、ReFra
Cポアへの一過的遮断を引き起こした(遮断寿命 2±5秒、Ires=10.0±0.
2%、N=3、n=290、図6A、左)。印加電位を+70mVに増加させると、遮断
寿命は2.9±0.4msまで短縮した(残留電流は以下の2つの電流レベルを示したこ
とに留意のこと:12.8±0.6%および3.5±0.5% N=3 n=2700
図6B、左)。電位による遮断寿命の減少は、ReFraCを通したA(dsDNA)C
の移行を示唆する。DNA移行を証明するために、本発明者らは、NAをシスチャンバー
に添加した。NA:A(dsDNA)C遮断は、+50mV(図6A、右)および+70
mV(図6B、右)の両方において永続的になり、したがって、これは、NAの非存在下
での一過的遮断が、シス区画へのA(dsDNA)Cの後退によって誘発できなかったこ
とを示唆している。奇妙なことに、+50mVでは、31±4%のNA:A(dsDNA
)C遮断(N=3、n=468)は、一過的レベル(図3A、状態「2」、Ires=8
.8±0.7%)から安定なレベル(図3A、状態「3」、Ires=12.5±0.7
%、N=4、n=46;さらなる例は図7中)への、残留電流の段階的増強を示した。状
態「2」の電流レベルは、NA:C20の電流レベルよりもわずかに低かった(+50m
VでIres=10.5±0.7;N=3、n=206)。状態「3」の電流レベルは、
NA:A20の電流レベルと一致した。上記電流増強についてのもっともらしい説明は、
+50mVでは、NA:A(dsDNA)CのC20セグメントがナノポアのくびれ中で
滞留しており(図3A、状態「2」)、二重鎖セグメントがさらなる移行を防止すること
である。しかし、二重鎖のアンジッピング後、A20は、ReFraCのくびれを占拠し
、NAが移行を停止させる(図3A、状態「3」)。一致して、+50mVでは、NA:
A(dsDNA)C遮断は、電位を-30mVに逆転させたときに即座に解放され、これ
は、+50mVでは、A(dsDNA)Cの移行がアンジッピングによって媒介されるこ
とを示している(図3A、角括弧)。
【0051】
対照的に、+70mVでは、かなりの割合の遮断は、-30mVでは即座には放出され
ず(図3B、挿入図)、これは、インターロックされた状態の形成を示している(図3B
、状態「2」および「3」)。さらに、これらのインターロックされた状態は、電位を増
加させることでより頻繁に生成された(例えば、+70mVにおける全ての遮断の7±4
%から、+100mVにおける54±14%まで、N=3、n=739;図3B、挿入図
)。NAと複合体を形成したオリゴI単独の遮断が、-30mVにおいて即座に解放され
たこと(図9A)を考慮して、本発明者らは、かかるインターロックされた状態がロタキ
サンに起因し、ここで、NAおよびA(dsDNA)Cの二重鎖DNAセグメントは、そ
れぞれ、シスストッパーおよびトランスストッパーとして機能すると考えた(図3B、右
)。期待されるように、かかるロタキサンは、オリゴIIをトランスに添加することによ
って、NA:オリゴIシス遮断からも形成できた(図9B)。電位を-40mVに切り替
えることで、トランスでのdsDNAストッパーのアンジッピングをおそらくは介して、
ロタキサンは迅速に解体された(図8および図9B)。シスで存在するNA:A(dsD
NA)Cからのロタキサンの形成は、A(dsDNA)C基質の二重鎖セグメントの移行
を可能にするために、ReFraCポアの変形を必要とする(図3B、角括弧)。
【0052】
この構造的可撓性は、αヘリックスポアの一般的な特色であり得る。以前に、本発明者
らは、I型ClyA-CSナノポア(くびれ直径約3.3nm)へのヒトトロンビン(直
径約4.2nm)の遮断の後に、開放ポア電流における一過的な増加が生じることを観察
した[19]。この現象は、ClyAの変形したくびれを通したタンパク質の移行として
解釈された。
【0053】
セクションAの参考文献
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【0054】
セクションB
上記本明細書のセクションAは、アクチノポリンタンパク質ファミリー由来のαヘリッ
クスポア形成毒素であるフラガセアトキシンC(FraC)が、ポリヌクレオチド分析の
ために有利に使用されることを示している。
【0055】
セクションBは、FraCナノポアが、オリゴペプチド(約10以下のアミノ酸)、ポ
リペプチド(>10のアミノ酸)および折り畳まれたタンパク質(>50のアミノ酸)の
形態の、タンパク質、例えば、バイオマーカーを認識するのにも適切であることを実証し
ている。
【0056】
材料
キモトリプシン(ウシ膵臓由来、≧85%、C4129)、β2-ミクログロブリン(
ヒト尿由来、≧98%、M4890)、エンドセリン1(≧97%、E7764)、エン
ドセリン2(≧97%、E9012)、アンジオテンシンI(≧90%、A9650)、
ペンタン(≧99%、236705)およびヘキサデカン(99%、H6703)、Tr
izma(登録商標)塩酸塩(ロット番号SLBG8541V)およびTrizma(登
録商標)塩基(ロット番号SLBK4455V)、N,N-ジメチルドデシルアミンN-
オキシド(LADO、≧99%、40234)ならびにn-ドデシルβ-D-マルトシド
(DDM、≧98%、D4641)は、Sigma-Aldrichから得た。ヒトEG
F(≧98%、CYT-217)はPROSPECから得た。1,2-ジフィタノイル-
sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC、850356P)およびスフィンゴミ
エリン(脳、ブタ、860062)は、Avanti Polar lipidsから購
入した。塩化カリウム(≧99%、ロット番号BCBL9989V)は、Flukaから
購入した。クエン酸(≧99%、ロット番号A0365028)は、ACROSから得た
。全てのポリペプチドバイオマーカーおよび化学物質を、さらなる精製なしに直接使用し
た。
【0057】
注意:以下で使用した15mM Tris、pH7.5緩衝液は、Trizma(登録
商標)プロトコールからの処方を用いて調製した:1.902gのTrizma(登録商
標)HClおよび0.354gのTrizma(登録商標)塩基を、1リットルのH2
中に溶解して、15mM Tris、pH7.5にした。
【0058】
方法
FraCモノマーの発現および精製
C末端His6タグを有するFraCをコードする遺伝子を、NcoIおよびHind
III制限消化部位を使用して、pT7-SC1発現プラスミド1中にクローニングした
。発現のために、プラスミドを、E.cloni(登録商標)EXPRESS BL21
(DE3)コンピテント細胞中に、エレクトロポレーションによって導入した。形質転換
体を、37℃での一晩インキュベーション後に100mg/lのアンピシリンを含むLB
寒天プレートから収集し、100mg/lのアンピシリンを含む200mlの新鮮な液体
2-YT培地中に接種した。細胞培養物を、200rpmで振盪しながら、0.8の60
0nmにおける光学密度になるまで、37℃で増殖させ、次いで、0.5mM IPTG
を細胞培養物に添加した。温度を25℃に低下させて、12時間にわたってFraCタン
パク質の発現を誘導した。細胞を、4℃で4,000RPMで30分間の遠心分離によっ
て回収し、細胞ペレットを-80℃で維持した。50~100mlの細胞培養物ペレット
を室温で解凍し、30mlの溶解緩衝液(15mM Tris pH7.5、1mM M
gCl2、4M尿素、0.2mg/mlリゾチームおよび0.05単位/ml DNas
e)で再懸濁し、ボルテックス(vertex)振盪機で1時間、精力的に混合した。細
胞を完全に破壊するために、懸濁物を2分間超音波処理した(デューティサイクル10%
、Branson Sonifier 450のアウトプットコントロール3)。次いで
、粗製溶解物を、4℃で6,500RPMで20分間遠心分離した。上清(FraCモノ
マーを含む)を、3mlの洗浄緩衝液(10mMイミダゾール、150mM NaCl、
15mM Tris、pH7.5)で事前洗浄した100μlのNi-NTA樹脂(Qi
agen、4℃で貯蔵、懸濁した後、100μlをピペッティングして取った)を含む5
0mlファルコンチューブに移し、穏やかに混合しながら室温で1時間インキュベートし
た。樹脂を、4℃で4,000RPMで5分間スピンダウンした。上清の大部分を廃棄し
、約5mlの緩衝液内のNi-NTA樹脂を含むペレットを、RTでMicro Bio
Spinカラム(Bio-Rad)に移した。Ni-NTAビーズを10mlの洗浄緩
衝液で洗浄し、タンパク質を、500μlの300mMイミダゾールで溶出した。タンパ
ク質濃度を、NanoDrop 2000(Thermo Scientific)を用
いて決定した。モノマーを4℃で貯蔵した。
【0059】
スフィンゴミエリン-DPhPCリポソームの調製
20mgのスフィンゴミエリン(脳、ブタ、Avanti Polar lipids
)を、20mgの1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPh
PC、Avanti Polar lipids)と混合し、0.5%v/vエタノール
を含むペンタン(Sigma)4ml中に溶解した。この脂質混合物を、丸底フラスコに
移し、ヘアドライヤーの近くで緩徐に回転させ、壁の至る所に脂質を十分に分散させて、
溶媒を蒸発させた。フラスコをもう30分間室温で開けたままにして、溶媒を完全に蒸発
させた。次いで、4mlの緩衝液(150mM NaCl、15mM Tris、pH7
.5)を、乾燥脂質に添加し、フラスコを、超音波処理槽に加えて5分間置いた。リポソ
ーム溶液を-20℃で維持した。
【0060】
FraCのオリゴマー化
凍結リポソームを、解凍後に超音波処理し、質量比1:1でモノマーFraCと混合し
た。FraCおよびリポソーム混合物を、水槽中で約30秒間超音波処理し、次いで、3
7℃で30分間維持した。プロテオリポソームを0.6%LADO(N,N-ジメチルド
デシルアミンN-オキシド、水中5%w/vのストック溶液)で可溶化し、次いで、50
mlファルコンチューブに移し、緩衝液(150mM NaCl、15mM Tris、
pH7.5、0.02%DDM)で20倍希釈した。100μlの事前洗浄したNi-N
TA樹脂(Qiagen)を、希釈されたタンパク質/リポソーム混合物に添加した。1
時間穏やかに振盪しながらのインキュベーション後、ビーズをカラム(Micro Bi
o Spin、Bio-Rad)にロードし、10mlの緩衝液(150mM NaCl
、15mM Tris、pH7.5)で洗浄した。FraCオリゴマーを、300μlの
溶出緩衝液(200mM EDTA、75mM NaCl、7.5mM Tris、pH
8、0.02%DDM)で溶出した。オリゴマーは、4℃で数週間安定であり得る。
【0061】
平面状脂質二重層における電気的記録
電気的記録を、以前に記載されたように2実施した。簡潔に述べると、2つのチャンバ
ーを、およそ100μmの直径を有する開口部を含む25μmポリテトラフルオロエチレ
ンフィルム(Goodfellow Cambridge Limited)によって分
離した。2つの銀/塩化銀電極を、0.5mlの緩衝液を満たした電気生理学チャンバー
の各区画中に浸した。接地電極をシス区画に接続し、作用電極をトランス側に接続した。
脂質二重層を形成するために、約5μlのヘキサデカン溶液(ペンタン中10%v/vの
ヘキサデカン)を、ポリテトラフルオロエチレンフィルムに添加した。約2分間後、ペン
タン中の1,2-ジフィタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPhPC)1
0mg/ml溶液10μlを、両方の区画中の緩衝液に直接添加した。次いで、脂質二重
層は、Teflonフィルム中の開口部の上および下の緩衝液を低下させることによって
、自発的に形成した。FraCオリゴマーをシス側に添加した。印加電位下では、Fra
Cのイオン電流は非対称であり、これは、脂質二重層中のFraCナノポアの配向を評価
する助けになる。FraCナノポアは、より高いコンダクタンスを負の印加電位で測定し
たときには、図10に示されるような配向を示した。次いで、分析物をシスチャンバーに
添加した。2種の緩衝溶液を、pHに依存して、本研究における電気生理学記録のために
使用した。pH7.5では、1M KClおよび15mM Trisを使用して記録を実
施した。pHを7.5から4.5に変動させた場合、使用した緩衝液は、1M KCl、
0.1Mクエン酸および180mM Tris.塩基を含んだ。FraCおよびReFr
aCオリゴマーは、pH4.5~7.5で脂質二重層中に挿入できた。
【0062】
データの記録および分析
平面状二重層記録を、パッチクランプ増幅器(Axopatch 200B、Axon
Instruments)を使用して収集し、データを、Digidata 1440
A/D変換器(Axon Instruments)を用いてデジタル化した。データ
を、Clampex 10.4ソフトウェア(Molecular Devices)を
使用することによって取得し、引き続く分析を、Clampfitソフトウェア(Mol
ecular Devices)を用いて実施した。事象持続時間(滞留時間)、2つの
事象間の時間(事象間時間)、遮断された電流レベルおよび開放ポアレベルを、「単一チ
ャネルサーチ」機能によって検出した。遮断の電流レベルをIBと呼び、開放ポア電流を
oと呼んだ。(IB/IO*100として定義されるIres%を使用して、異なるバイ
オマーカーによって引き起こされる遮断の程度を記述した。平均事象間時間を、事象間時
間をビニングし、単一指数関数フィットを累積分布に適用することによって計算した。
【0063】
イオン選択性測定
イオン透過性比(K+/Cl-)を、変数インプットとして逆転電位(Vr)を使用する
Goldman-Hodgkin-Katz方程式(本明細書以下で、方程式(1))を
使用して計算した。Vrを、以下の非対称な塩濃度条件を使用したI-V曲線からの外挿
から測定した:個々のFraCナノポアを、両方のチャンバーにおいて同じ緩衝液(対称
的条件、840mM KCl、15mM Tris、pH7.5、500μl)を使用し
て再構成して、ナノポアの配向を評価した。3.36M KCl、15mM Tris、
pH7.5を含む溶液400μlを、シスチャンバーに緩徐に添加し、KClを含まない
緩衝溶液(15mM Tris、pH7.5)400μlをトランス溶液に添加した(ト
ランス:シス、467mM KCl:1960mM KCl)。溶液を混合し、I-V曲
線を、1mVきざみで-30mVから30mVまで収集した。pH4.5における実験を
、0.1Mクエン酸緩衝溶液を使用するが同じ方法を使用して実施した。最初に、840
mM KCl、0.1Mクエン酸、180mM Tris.塩基の緩衝液500μlを両
方のチャンバー中に添加し、単一のFraCチャネルを得た。次いで、3.36M KC
l、0.1Mクエン酸、180mM Tris.塩基を含むpH4.5溶液400μlを
、シスチャンバーに緩徐に添加し、KClを含まない緩衝溶液(0.1Mクエン酸、18
0mM Tris.塩基、pH4.5)400μlをトランス溶液に添加した(こうして
、467mM KCl:1960mM KClのトランス:シス比が得られる)。溶液を
混合し、I-V曲線を、1mVきざみで-30mVから30mVまで収集した。イオン選
択性の方向性もまた、トランスチャンバー中の高いKCl濃度およびシスチャンバー中の
低いKCl濃度を使用することによって試験した。Ag/AgCl電極を、2.5M N
aClを含む2.5%アガロース架橋で囲んだ。
【実施例0064】
FraCナノポアを用いたポリペプチドおよびタンパク質の捕捉
オリゴペプチドバイオマーカーについてのセンサーとしてのFraCナノポアを評価す
るために、本発明者らは、最初に、21アミノ酸の2.5kDオリゴペプチドであるエン
ドセリン1および245アミノ酸の25kD球状タンパク質であるα-II-キモトリプ
シン(以下、キモトリプシン)を選択した(図10)。分析物を、1M KCl、15m
M Tris、pH7.5溶液を使用して野生型FraC(WtFraC)ナノポア(図
10A)のシス側に添加し、外部電位を、トランス区画中に位置する「作用」電極に印加
した。WtFraCは、約+50mVよりも上ではゲーティングを示すが、-300mV
ほどの高さの電位では安定であるので、本発明者らは、それらの限界間の電位を印加した
。シス区画への1μMのエンドセリン1の添加は、±50mV(図10B)で、および-
300mVまで、遮断を誘発しなかった。ClyAのくびれは、アスパラギン酸残基で覆
われているので(図10A)、本発明者らは、より酸性の条件におけるこれらの残基のプ
ロトン化が、WtFraCくびれを通したエンドセリン1(-2の正味の電荷を保有する
)の移行に対するエネルギー障壁を弱めるはずであると考えた。同時に、あまり負でない
エンドセリン1はまた、負の印加電位下でトランス電極に向かってより容易に移動するで
あろう。エンドセリン1遮断は、pH6.4で発生し始め、それらの捕捉頻度は、pHの
減少と共に直線的に増加した(pH6.4での0.6±0.2事象/s-1/μM-1からp
H4.4での10.8±2.3事象/s-1/μM-1まで)。pH4.5(1M KCl、
0.1Mクエン酸、180mM Tris.塩基)では、WtFraCへのエンドセリン
1遮断は、-50mVで観察されたが(Ires%:9.1±0.1%、滞留時間:5.
6±2.0ms、事象間時間:5.8±0.7ms)、+50mVでは観察されなかった
図10B)。
【0065】
酸性条件下でのより正のくびれの影響に促されて、本発明者らは次に、D10,K1
59 FraC(ReFraC)ナノポア、DNA分析の目的のために本明細書の上記
セクションAで操作した、くびれにおいてアルギニン残基を有するポアを用いたエンドセ
リン1の捕捉を調査した。WtFraCとは逆に、ReFraCは、正の印加電位下では
安定であるが、約-50mVの電位ではゲーティングを示す。したがって、本発明者らは
、-50mV~+200mVの間の電圧だけをReFraCに印加した。シス区画への1
μMエンドセリン1の添加は、+50mVではpH7.5で遮断を惹起したが(滞留時間
:3.3±2.2ms、事象間時間:1413±223ms)、-50mVでは惹起しな
かった(図10B)。pH4.5(1M KCl、0.1Mクエン酸、180mM Tr
is.塩基)への減少は、トランス電極に向かう低減された電気泳動移動度にもかかわら
ず、+50mVでの捕捉頻度における増加をもたらした(図10B、滞留時間:8.5±
1.8ms、事象間時間:402±79ms)。
【0066】
次に、タンパク質キモトリプシン(pI8.75、Sigma)を、比較的大きいタン
パク質分析物の一例として試験した。タンパク質遮断が、pH7.5緩衝液(1M KC
l、15mM Tris)中-50mVで観察されたが、本発明者らが電位を-100m
Vに増加させた場合にはこれらは均一になり(45.2±19.1事象/s-1/μM-1
滞留時間:12.0±5.7ms)、正の印加電位では捕捉は観察されなかった(図10
C)。エンドセリン1を用いて観察されたものとは対照的に、キモトリプシンの捕捉頻度
は、pH7.5と5.5との間で一定のままであり(pH7.5において45.2±19
.1事象/s-1/μM-1、pH6.4において50.5±22.6事象/s-1/μM-1
pH5.5において45.2±20.6事象/s-1/μM-1)、pHを4.4に低下させ
た場合には減少した(pH4.4において20.8±5.3事象/s-1/μM-1)。Re
FraCをpH7.5で使用して、本発明者らは、高い正の印加電位ではわずかな遮断の
みを観察したが(+200mVにおける滞留時間:0.2±0.1ms、事象間時間:1
74.3±22.9ms)、-50mVでは観察しなかった(図10C)。pHを4.5
に減少させることは、捕捉頻度における増加をもたらした(滞留時間:1.3±0.7m
s、112.5±9.5事象/s-1/μM-1図9B)。注目すべきことに、ReFra
Cは、図10C右下に示されるように、酸性条件下で負の印加電位で浅いゲーティング事
象をしばしば示した。合わせると、両方のナノポアは、分子量が10倍異なる(2.5k
D対25kDa)分析物を捕捉できる。
【実施例0067】
FraCナノポアのイオン選択性および静電電位
静電環境に対するpHの影響およびFraCナノポアの内側へのポリペプチドの進入に
対する電気浸透流の影響に関するよりよい洞察を得るために、本発明者らは、Adapt
ive Poission-Boltzmann Solver(APBS)(13)お
よびPDB2PQRソフトウェアの改変バージョン(14)を使用して、1M KCl中
pH7.5および4.5におけるWtFraCおよびReFraCの相同モデルの内側の
静電電位を推定した。シミュレーションにより、ナノポアの中心部におけるWtFraC
およびReFraCのくびれ領域が、それぞれ、高度に負の電位および正の電位を示した
ことが示された(図11A)。興味深いことに、WtFraCについて、pHを7.5か
ら4.5に低下させることは、それぞれ、くびれの中心部における-1.2~-0.7k
BT/ec(298Kで1kBT/ec=25.6mV)の還元電位を引き起こしたが、かか
る効果は、ReFraCについては観察されなかった。
【0068】
WtFraCおよびReFraCポアによる分析物の捕捉への電気浸透流の寄与を、ナ
ノポアのいずれかの側での非対称なKCl濃度(1960mMおよび467mM)を使用
して、両方のポアのイオン選択性を測定することによって推定した。次いで、逆転電位(
r)、即ち、電流がゼロである電位(図11B)を、Goldman-Hodgkin
-Katz方程式と一緒に使用して、両方のナノポアのイオン選択性(PK+/PCl-)を
計算した:
【0069】
【数1】
【0070】
式中、[ax]区画は、シス/トランス区画中のイオンXの活性であり、Rは気体定数で
あり、Tは温度であり、Fはファラデー定数である。本発明者らは、FraCナノポアの
イオン選択性が、くびれにおける電荷によって支配され、WtFracが強くカチオン選
択的であり(PK+/PCl-=3.55±0.30、pH7.5)、ReFraCがアニオ
ン選択的である(PK+/PCl-=0.57±0.04、pH7.5)ことを見出した。p
Hを4.5に低下させることは、WtFraCのカチオン選択性を減少させ(PK+/PCl
-=2.02±0.15、pH7.5)、ReFraCのアニオン選択性を増加させた(
K+/PCl-=0.36±0.08、pH4.5、図11B)。
【実施例0071】
WtFraCナノポアを用いたバイオマーカー検出
それぞれ、膵嚢胞症(15)および閉塞性細気管支炎(16)についてのタンパク質バ
イオマーカーであるキモトリプシン(25kD、245アミノ酸)およびエンドセリン1
(12.5kD、21アミノ酸)の捕捉を評価した後、WtFraCナノポアを使用して
、末梢動脈疾患についての11.6kDa(99アミノ酸)のバイオマーカーであるβ2
-ミクログロブリン(17)、慢性腎臓疾患についての6.2kDa(53アミノ酸)の
バイオマーカーであるヒトEGF(18)、および高血圧クリーゼについての1.3kD
(10アミノ酸)のバイオマーカーであるアンジオテンシンI(19)を含む、より広範
なタンパク質バイオマーカーを検出した。
【0072】
全てのバイオマーカーを、負の印加電位下で、およびキモトリプシンを除いてpH4.
5で評価した。全てのバイオマーカーの捕捉頻度は、印加電位と共に増加した。試験した
全ての他のパラメーターは、非均一な電圧依存性を示した。WtFraCの内側でのバイ
オマーカーの滞留時間は増加し(キモトリプシン)、減少し(β2-ミクログロブリンお
よびアンジオテンシン1)、または印加電位により二相性の挙動を示した(EGFおよび
エンドセリン1)。図12を参照のこと。キモトリプシンの残留電流百分率(Ires%
)の電圧依存性は、電位と共に減少し、エンドセリン1のIres%は、電位と共に増加
したが、β2-ミクログロブリン、EGFおよびアンジオテンシン1のIres%は一定
のままであった。電流遮断の複雑な電圧依存性にもかかわらず、本発明者らの結果は、W
tFraCナノポアが、それらの電流遮断単独のIres%のおかげで、異なるサイズの
オリゴペプチドおよびタンパク質バイオマーカーを識別することが可能であることを示し
た(図12)。
【実施例0073】
ほぼアイソフォームのオリゴペプチドの識別
本発明者らの実験系に挑戦するために、本発明者らは、高度に類似した分析物を同定し
ようとした。本発明者らは、21アミノ酸のうち1つだけが異なるほぼ異性体のオリゴペ
プチドであるエンドセリン1(ET-1)およびエンドセリン2(ET-2)を選択した
図13Aおよび図13B)。-50mVでは、本発明者らは、ET-1(Ires%8
.9±0.1%、滞留時間 5.6±2.0ms、N=3、n=600)およびET-2
(6.1±1.4%、滞留時間 19.0±5.3ms、N=3、n=384)について
、独自のIres%および滞留時間を有する識別可能な遮断を観察した(図12B)。こ
れは、個々の遮断レベルによるそれらの同定をすでに可能にした(図13C)。
【0074】
驚くべきことに、本発明者らが、同じポアに、最初に2μMのET-1を添加し(図1
3D)、その後8μMのET-2を連続して添加した場合(図13E)、本発明者らは、
それらの対応するIres%にわたって事象の振幅の標準偏差をプロットすることによっ
て、2つの別個の集団の両方の混合物を分離することもできた。この観察は、高度に類似
する(オリゴ)ペプチドまたは他の分析物が、FraCナノポアを用いて識別できること
を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2024105542000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチノポリンタンパク質ファミリー由来のメンバーであるαヘリックスポア形成毒素
を含む漏斗状のタンパク質性ナノポアを含むシステムであって、前記αヘリックスポア形
成毒素が、フラガセアトキシンC(FraC)、変異体FraC、FraCパラログまた
はFraCホモログである、システム。

【外国語明細書】