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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010556
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】油性固形状クレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20240117BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240117BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20240117BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/39
A61K8/19
A61Q1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111953
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(72)【発明者】
【氏名】森川 愛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 学
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB131
4C083AB132
4C083AC012
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC422
4C083BB04
4C083BB12
4C083BB13
4C083CC22
4C083DD21
4C083DD22
4C083DD41
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】炭粉末を含有するにも関わらず、炭粉末が凝集及び沈降することなく、炭粉末の分散性に優れた油性固形状クレンジング化粧料を提供する。
【解決手段】
下記成分Aを4.0~20質量%、下記成分Bを50~90質量%、下記成分Cを0.01~5.0質量%、下記成分Dを8~22質量%、下記成分Eを0.01~5.0質量%、下記成分Fを0.5~6.0質量%含有する油性固形状クレンジング化粧料。
成分A:融点が50~120℃である固形油
成分B:液状油
成分C:HLB値が2~6のノニオン性界面活性剤
成分D:HLB値が8~15のノニオン性界面活性剤
成分E:体積基準のメジアン径が1~35μmの炭粉末
成分F:水
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分Aを4.0~20質量%、下記成分Bを50~90質量%、下記成分Cを0.01~5.0質量%、下記成分Dを8~22質量%、下記成分Eを0.01~5.0質量%、下記成分Fを0.5~6.0質量%含有する油性固形状クレンジング化粧料。
成分A:融点が50~120℃である固形油
成分B:液状油
成分C:HLB値が2~6のノニオン性界面活性剤
成分D:HLB値が8~15のノニオン性界面活性剤
成分E:体積基準のメジアン径が1~35μmの炭粉末
成分F:水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性固形状クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メイクアップ化粧料の除去を目的とした油性固形状クレンジング化粧料が提案されている。油性固形状クレンジング化粧料は、常温で固形状であることから、使用時の垂れ落ちがなく、固形油と液状油とノニオン性界面活性剤とを主成分とする油性クレンジング化粧料であることから、メイクアップ化粧料の除去性能に優れるという特徴を有する。
【0003】
特許文献1には、融点が60~120℃の炭化水素油、エステル油、所定のノニオン性界面活性剤を所定量含有することで、メイクアップ化粧料とのなじみ性が良く、汚れ落ちに優れ、かつ洗浄後のさっぱり感に優れる固形状油性クレンジング化粧料が得られることが開示されている。しかしながら、炭粉末などの粉体成分を配合することについては開示されていない。
【0004】
また、特許文献2には、固形油分、液状油、特定のHLB値を有するノニオン性界面活性剤と共に、粉体及び煙霧状シリカを特定比率で含有することで、たれ落ちがなく、クレンジング力及びマッサージ効果が高く、洗い流しやすさと洗い流し後のさっぱり感に優れ、且つ、品質の安定性に優れる油性固形クレンジング化粧料が得られることが開示されている。しかしながら、炭粉末を均一に配合する技術については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-206974号公報
【特許文献2】特開2020-26420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
油性固形状クレンジング化粧料は、前記の主成分とその他の成分とを溶融させ、固化させることで調製される。よって、炭粉末などの凝集及び沈降する性質を有する成分を配合する場合、固化するまでに凝集や沈降が発生してしまい、不均一な組成になりやすいという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、炭粉末を含有するにも関わらず、炭粉末が凝集及び沈降することなく、炭粉末の分散性に優れた油性固形状クレンジング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、固形油、液状油、HLB値が2~6のノニオン性界面活性剤、HLB値が8~15のノニオン性界面活性剤、所定の炭粉末及び水を含有する油性固形状クレンジング化粧料とすることで、炭粉末が凝集及び沈降することなく、均一性に優れた油性固形状クレンジング化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、下記成分Aを4.0~20質量%、下記成分Bを50~90質量%、下記成分Cを0.01~5.0質量%、下記成分Dを8~22質量%、下記成分Eを0.01~5.0質量%、下記成分Fを0.5~6.0質量%含有する油性固形状クレンジング化粧料に関する。
成分A:融点が50~120℃である固形油
成分B:液状油
成分C:HLB値が2~6のノニオン性界面活性剤
成分D:HLB値が8~15のノニオン性界面活性剤
成分E:体積基準のメジアン径が1~35μmの炭粉末
成分F:水
【発明の効果】
【0010】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料は、炭粉末を含有するにも関わらず、炭粉末が凝集及び沈降することなく、炭粉末の分散性に優れた油性固形状クレンジング化粧料である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料は、融点が50~120℃である固形油(成分A)、液状油(成分B)、HLB値が2以上6未満のノニオン性界面活性剤(成分C)、HLB値が8~15のノニオン性界面活性剤(成分D)、体積基準のメジアン径が1~35μmの炭粉末(成分E)、及び水(成分F)を所定量含有することを特徴とする。
【0012】
すなわち、本発明の油性固形状クレンジング化粧料は、成分A、成分B、成分C、成分D、成分E、及び成分Fを少なくとも含有する。本発明の油性固形状クレンジング化粧料は、求める使用感などに応じて、さらに、必須成分である成分A~F以外の成分を含んでいてもよい。本発明の油性固形状クレンジング化粧料に含まれる上記成分A~F及び他の成分などの各成分は、それぞれ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0013】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料は、常温で固形状であることから、使用時の垂れ落ちがなく、固形油と液状油とノニオン性界面活性剤とを主成分とする油性クレンジング化粧料であることから、メイクアップ化粧料の除去性能に優れるという特徴を有する。さらに、本発明の油性固形状クレンジング化粧料は、所定の炭粉末を配合し、成分A及び成分Bの配合量を所定の範囲とし、所定量の成分C及び成分Fとを配合することから、炭粉末を含有するにも関わらず、炭粉末が凝集及び沈降することなく、炭粉末の分散性優れるという特徴を有する。
【0014】
以下に、本発明の油性固形状クレンジング化粧料の必須成分である成分A~Fについて説明する。
【0015】
[成分A]
成分Aは25℃で固形であり、融点が50~120℃である固形油である。なお、本明細書において、「25℃で固形」とは、25℃で流動性がない性状を意味する。また、成分Aの融点は、医薬部外品原料規格の一般試験法である融点測定法第2法によって測定することができる。
【0016】
成分Aの融点は、調製時に均一な固形状に成型できる(成型性)という観点、及び経時安定性の観点から50℃以上であり、55℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい、また、成分Aの融点は、使用時の指取れ及び塗布時の感触(使用感)の観点から120℃以下であり、115℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。
【0017】
成分Aとしては、動植物ワックス等のワックスエステル、鉱物ワックス、炭化水素ワックス等が挙げられる。
【0018】
上記動植物ワックスとしては、カルナウバワックス、ヒマワリ種子ワックス、キャンデリラワックス、モクロウ、ミツロウ、ライスワックス、コメヌカワックス、セラックロウ及び鯨ロウなどが挙げられる。
【0019】
上記鉱物ワックスとしては、モンタンワックス等が挙げられる。
【0020】
上記炭化水素ワックスは、石油由来のワックスであってもよく、合成ワックスであってもよい。上記炭化水素ワックスとしては、例えば、セレシン、オゾケライト、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、エチレン-プロピレンコポリマー及びフィッシャー・トロプシュワックス(合成ワックス)等が挙げられる。
【0021】
成分Aとしては、加熱時に酸化が起こりにくく均一な油性固形状クレンジング化粧料が得られるという観点から、炭化水素ワックスが好ましく、マイクロクリスタリンワックス、及びフィッシャー・トロプシュワックス(合成ワックス)がより好ましい。
【0022】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の成分Aの含有量は、4.0~20質量%であり、好ましくは4.2~18質量%であり、より好ましくは4.4~16質量%である。上記含有量が4.0質量%以上であると、成型性に優れ、炭粉末の凝集及び沈降抑制効果に優れる。また、上記含有量が20質量%以下であると、使用感に優れ、硬化し過ぎて起こる輸送時などの崩壊を抑制できる。上記成分Aの含有量は、本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の全ての成分Aの含有量の合計である。
【0023】
[成分B]
成分Bは、液状油であり、25℃で流動性がある性状を有する油分、融点が50℃未満である半固形油分、沸点が260℃未満の揮発性油分が含まれる。成分Bを用いることで、使用時に指取れし易くなり、また、塗布時における伸び及びメイクなじみに優れた油性固形状クレンジング化粧料とすることができる。
【0024】
成分Bとしては、エステル油、動植物油、炭化水素油、シリコーン油、高級脂肪酸、高級アルコールなどが挙げられる。
【0025】
上記エステル油としては、イソステアリン酸イソセチル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリトリット、オクタン酸セチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリル、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸2-ヘキシルデシル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、リンゴ酸ジイソステアリル、イソプロピルミリステート、2-オクチルドデシルオレエート、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、2-エチルヘキシルパルミテート、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸デシル、ドデシルオレエート、オレイン酸オレイル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、コハク酸2-エチルヘキシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、セバチン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリグリセリン、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸へキシル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、コハク酸ジオクチル、フッ素変性エステル油、トリオクタノイン、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0026】
上記動植物油としては、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボガド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、ヒマワリ油、アルモンド油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油、卵黄油、牛脚脂、肝油等が挙げられる。
【0027】
上記炭化水素油としては、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、ポリブテン、水添ポリイソブテン、ワセリン等が挙げられる。
【0028】
上記シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン、アミノ変性シリコーン油、ポリエーテル変性シリコーン油、カルボキシ変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油、アンモニウム塩変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油等が挙げられる。
【0029】
上記高級脂肪酸としては、オレイン酸、トール油脂肪酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
【0030】
上記高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ホホバアルコール等が挙げられる。
【0031】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の成分Bの含有量は、50~90質量%であり、好ましくは60~88質量%であり、より好ましくは70~86質量%である。上記含有量が50質量%以上であると、使用時の指取れや塗布時の伸びなじみに優れる。また、上記含有量が90質量%以下であると、成型性に優れる。上記成分Bの含有量は、本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の全ての成分Bの含有量の合計である。
【0032】
[成分C]
成分Cは、HLB値が2~6のノニオン性界面活性剤である。HLB値が6以下のノニオン性界面活性剤は、親水性が低く、親油性が高いノニオン性界面活性剤である。このようなノニオン性界面活性剤を、油性固形状クレンジング化粧料に配合した場合、クレンジング後に水またはぬるま湯で洗い落そうとしても、水との親和性が低いために洗い流すことが困難であり、クレンジング化粧料のぬるぬる感が感じられなくなるまでに時間を要するという問題がある。このため、油性固形状クレンジング化粧料にHLB値が低いノニオン性界面活性剤の配合は一般的に忌避される。しかしながら、特定量の成分C及び水を、炭粉末と組み合わせて用いることで、上記の問題を発生させずに、かつ炭粉末の凝集及び沈降を抑制できる。
【0033】
成分CのHLB値は、2~6であり、好ましくは2~5、より好ましくは2~4である。上記HLB値が上記範囲内であることにより、炭粉末の凝集及び沈降を効果的に抑制できる。
【0034】
成分Cとしては、HLB値が2~6のノニオン性界面活性剤であれば特に限定されないが、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸PEG-20水添ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-5グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、ペンタステアリン酸デカグリセリル、セスキステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。なかでも、洗い流し時の残り感などの使用感を損なうことなく、炭粉末の凝集及び沈降を抑制できることから、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2が好ましい。
【0035】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の成分Cの含有量は、0.01~5.0質量%であり、好ましくは0.01~4.0質量%である。上記含有量が0.01質量%以上であると、炭粉末の凝集及び沈降を抑制できる。また、上記含有量が5.0質量%以下であると、洗い流し時の残り感を損なうことなく、炭粉末の凝集及び沈降を抑制できる。上記成分Cの含有量は、本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の全ての成分Cの含有量の合計である。
【0036】
[成分D]
成分Dは、HLB値が8~15のノニオン性界面活性剤である。成分Dを用いることにより、使用時のメイクなじみに優れ、洗い流し時の残り感が低い油性固形状クレンジング化粧料とすることができる。なお、本明細書におけるHLB値は、グリフィン(Griffin)法により算出することができる。
【0037】
成分DのHLB値は、8~15であり、好ましくは8~14、より好ましくは8~13である。上記HLB値が上記範囲内であることにより、使用時のメイクなじみ、及び洗い流し性に優れる。
【0038】
成分Dとしては、HLB値が8~15のノニオン性界面活性剤であれば特に限定されないが、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、及びこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロール及びその誘導体、ポリオキシエチレンラノリン及びその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油等が挙げられる。
【0039】
成分Dは、使用時のメイクなじみに優れ、洗い流し後の肌にもっちりとした後肌感が得られるという観点から、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含むことが好ましい。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジカプリン酸ポリグリセリル-6、ジオレイン酸ポリグリセリル-10、カプリル酸ポリグリセリル-6、カプリン酸ポリグリセリル-2等が挙げられる。
【0040】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の成分Dの含有量は、8~22質量%であり、好ましくは9~21質量%であり、より好ましくは10~20質量%である。上記含有量が8質量%以上であると、使用時のメイクなじみに優れる。また、上記含有量が22質量%以下であると、洗い流し性に優れる。
【0041】
また、成分Dとしてポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する場合、本発明の油性固形状クレンジング化粧料中のポリグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、0.1~6.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~4.0質量%である。上記含有量が0.1質量%以上であると、洗い流し後の肌にもっちりとした後肌感が得られる。また、上記含有量が6.0質量%以下であると、洗い流し性により優れる。
【0042】
[成分E]
成分Eは、所定の体積基準のメジアン径(以下、単にメジアン径とも記載する)を有する炭粉末である。成分Eを用いることにより、メイク汚れや皮脂汚れを炭粉末が吸着し、クレンジング力により優れる油性固形状クレンジング化粧料となる。油性固形状クレンジング化粧料の調製工程において炭粉末が凝集して沈降し、組成が不均一になるという問題があるが、所定量の成分C及び水と併用することで凝集及び沈降を抑制し、炭粉末の分散性に優れた油性固形状クレンジング化粧料とすることができる。
【0043】
成分Eは、特に限定されないが、多孔質の炭素物質であり、炭素以外にも、水素、酸素、無機成分等を含んでいてもよい。また、炭素物質を原料として高温でガスや薬品と反応させて作られる微細孔を持つ活性炭であることが好ましい。
【0044】
成分Eの原料としては、特に限定されず、炭粉末の原料として一般的に用いられるものを用いることができる。具体的には、例えば、ヤシ殻、竹、木材、おが屑、石炭、フェノール樹脂、レーヨン、アクリロニトリル、石炭ピッチ、石油ピッチ等が挙げられる。中でも、ヤシ殻、竹、及び木材が好ましい。
【0045】
成分Eのメジアン径は、クレンジング力の観点から1μm以上であり、好ましくは3μm以上である。また、成分Eのメジアン径は、凝集及び沈降の抑制という観点及び洗い流し後の残り感の観点から35μm以下であり、好ましくは32μm以下である。
【0046】
本明細書において、炭粉末の体積基準のメジアン径は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定法により測定することができ、例えば、「粒度分布計LA-950V2」(堀場製作所社製)により測定した値とすることができる。
【0047】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の成分Eの含有量は、0.01~5.0質量%であり、好ましくは0.02~4.0質量%であり、より好ましくは0.03~3.5質量%である。上記含有量が0.01質量%以上であると、炭粉末を配合することによる効果が得られる。また、上記含有量が5.0質量%以下であると、洗い流し性に優れ、成分Eの凝集及び沈降を抑制することができる。上記成分Eの含有量は、本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の全ての成分Eの含有量の合計である。
【0048】
[成分F]
成分Fは水であり、特に限定されないが、精製水が好ましい。油性固形状クレンジング化粧料は、固形油分、液状油、及びノニオン性界面活性剤を主成分とし、分離や析出の恐れがあることから水を含有しないことが一般的であるといえる。しかしながら、所定量の成分C及び成分Eと併用することで、成分Eの凝集及び沈降を抑制し、炭粉末の分散性に優れた油性固形状クレンジング化粧料とすることができる。
【0049】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の成分Fの含有量は、0.5~6.0質量%であり、好ましくは0.6~5.5質量%であり、より好ましくは0.8~4.0質量%である。上記含有量が0.5質量%以上であると、成分Eの凝集及び沈降を抑制することができる。また、上記含有量が6.0質量%以下であると、使用時のメイクなじみに優れる。上記成分Fの含有量は、本発明の油性固形状クレンジング化粧料中の全ての成分Fの含有量の合計である。
【0050】
[その他の成分]
本発明の油性固形状クレンジング化粧料は、成分A~F以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を任意成分として含有してもよい。
【0051】
その他の成分としては、成分C及び成分D以外の界面活性剤、成分E以外の粉体、染料、油性ゲル化剤、油溶性樹脂、多価アルコール類、低級アルコール、美白剤、賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、抗炎症剤、清涼剤(別名;冷感剤)、殺菌成分、制汗成分、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、各種エキス等の添加剤などが挙げられる。
【0052】
[油性固形状クレンジング化粧料]
本発明の油性固形状クレンジング化粧料は、25℃で固形状である。上記固形状とは、流動性を有さないことを意味し、ペースト状やジェル状も含まれる。また、本発明の油性固形状クレンジング化粧料の形状は特に限定されず、スティック状、棒状、板状、ジャーなどの容器へ流し込み成形されたものなどが挙げられる。
【0053】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料の製造方法は、特に限定されず、公知の油性固形状クレンジング化粧料の製造方法を採用することができる。本発明の油性固形状クレンジング化粧料の製造方法としては、例えば、加熱しながら各成分を混合して混合液を得た後、得られた混合液を冷却固化する方法等が挙げられる。各成分を混合する方法としては、ディスパーミキサー及びパドルミキサー等の撹拌装置を用いる方法等が挙げられる。但し、本発明は上述した製造方法にのみ限定されない。また、本発明の油性固形状クレンジング化粧料は、広口ジャー容器、チューブ容器などの容易に取り出すことが可能な容器に充填されることが好ましい。
【0054】
本発明の油性固形状クレンジング化粧料を適用する部位としては、特に限定されず、例えば、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、身体(腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中など)などが挙げられる。中でも、特に好ましくは顔である。
【実施例0055】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量)であり、特記しない限り「質量%」で表す。また、表中の配合量における「-」は、その成分を配合していないことを示す。
【0056】
実施例及び比較例
[各試料の調製]
表1及び表2に記した組成に従い、実施例及び比較例の油性固形状クレンジング化粧料を常法により調製し、下記評価試験に供した。評価結果は、表1及び2に併記する。
【0057】
表に記載の主な成分の詳細は次のとおりである。
<成分A>
合成ワックス:商品名「CireWax 80」、Cirebelle Fine Chemicals社製、融点:61~67℃
マイクロクリスタリンワックス:商品名「MULTIWAX W-835」、Sonneborn Inc社製、融点:73.9~79.4℃
<成分B>
エチルヘキサン酸セチル:商品名「NIKKOL-CIO」、日光ケミカルズ株式会社製
パルミチン酸エチルヘキシル:商品名「NIKKOL TGI-20」、日光ケミカルズ株式会社製
<成分C>
トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2:商品名「コスモール 43V」、日清オイリオグループ株式会社製、HLB:2.5
<成分D>
トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル:商品名「NIKKOL TGI-20」、日光ケミカルズ株式会社製、HLB:8
イソステアリン酸PEG-8グリセリル:商品名「ブラウノン RGL-8MISE」、青木油脂工業株式会社製、HLB:11.5
ジカプリン酸ポリグリセリル-6:商品名「サンソフトQ-102H-C」、太陽化学株式会社製、HLB:10.2
<成分E>
炭粉末1:商品名「薬用炭」、堀江生薬株式会社製、メジアン径:31.1μm
炭粉末2:商品名「微粉 備長炭末」、キリヤ化学株式会社製、メジアン径:1.2μm
炭粉末3:商品名「備長炭末」、キリヤ化学株式会社製、メジアン径:5.7μm
炭粉末4:商品名「竹炭パウダーMM」、株式会社ラテスト製、メジアン径:11.4μm
<その他成分>
炭粉末5:商品名「クラレコール PGW-20MD」、クラレケミカル株式会社製、メジアン径:36.9μm
【0058】
[製剤評価]
調製後の実施例及び比較例の各油性固形状クレンジング化粧料の外観を目視にて観察し、下記評価基準にしたがい評価した。
【0059】
<均一性>
A(優良):粉体が均一に分散しており沈降及び色味のグラデーションが確認できない。
B(良好):粉体が化粧量全体に分散しているが、Aと比較すると若干のグラデーションが確認できる。
C(実用可):粉体が化粧量全体に分散しているが、グラデーションが確認できる。実用上の問題はない。
D(不良):下端から1/3以上の層に粉体の沈降が確認できる。
【0060】
[使用感評価]
前腕内側部に市販のリキッドファンデーション約0.05gを塗布後、半径約2cmの円となるように均一に延び広げた。次いで、実施例及び比較例で得られた各油性固形状クレンジング化粧料約0.5gを塗布部のメイク汚れに塗布し、十分馴染ませた後、指先で小さな円を描くように30秒間クレンジングを行い、その後温水でメイク汚れを洗い流した。メイクなじみ、洗い流し性、及び後肌感を、下記評価基準にしたがい評価した。なお、評価は専門評価員3名の合議体の協議の結果で決定した。
【0061】
<メイクなじみ>
A(優良):メイク馴染みが良く、メイク汚れがしっかりと落ちていた。
B(良好):メイク馴染みにおいてAよりは劣るが、メイク汚れがしっかりと落ちていた。
C(実用可):メイク馴染みにおいてBよりは劣るが、メイク汚れがしっかりと落ちていた。
D(不良):メイク馴染みに劣り、メイク汚れが完全に落ちていない。
【0062】
<洗い流し性>
A(優良):クレンジング化粧料のぬるぬる感がなくなるまでの時間が充分に短く、実用上良好な洗い流し性である。
流し性である。
B(良好):クレンジング化粧料のぬるぬる感がなくなるまで時間がA超C未満であり、実用上良好な洗い流し性。
C(実用可):クレンジング化粧料のぬるぬる感がなくなるまで少し時間がかかるが、実用可能な洗い流し性である。
D(不良):クレンジング化粧料のぬるぬる感がなくなるまで1分以上の時間がかかり、実用に適さない洗い流し性である。
【0063】
<後肌感>
A(優良):使用後の肌に心地よいもっちり感を感じる。
B(良好):使用後の肌に、A未満C超のもっちり感を感じる。
C(実用可):使用後の肌に少しもっちり感を感じる。
D(不良):使用後の肌にもっちり感を感じない。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
さらに、以下に、本発明に用いることができる油性固形状クレンジング化粧料の処方例を示す。
【0067】
【表3】