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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105566
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】発酵プロセス
(51)【国際特許分類】
   C12P 1/00 20060101AFI20240730BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 1/13 20060101ALI20240730BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240730BHJP
【FI】
C12P1/00 Z
C12N1/15 ZNA
C12N1/19
C12N1/21
C12N15/63 Z
C12N15/31
C12N1/13
C12N15/113 Z
C12N1/15
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079625
(22)【出願日】2024-05-15
(62)【分割の表示】P 2020535048の分割
【原出願日】2018-12-19
(31)【優先権主張番号】17208600.1
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520216781
【氏名又は名称】シンギュロン・ソシエテ・アノニム
(71)【出願人】
【識別番号】514084347
【氏名又は名称】ユニベルシテ リブレ デ ブリュッセル
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ガバン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】エル・バクリ,ムハンマド
(72)【発明者】
【氏名】ファン・メルデレン,ローレンス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】その遺伝的活性が宿主に利点を付与する第一の核酸配列を含む自己複製性染色体外核酸分子を用いた微生物宿主を使用して目的産物を生産するための方法の提供。
【解決手段】本発明は、a)第一の核酸配列を含む自己複製性染色体外核酸分子を含む微生物宿主を提供するステップ;b)前記自己複製性染色体外核酸分子が前記目的産物の生産に関与する第二の核酸配列を含んでもよいステップ;c)前記微生物宿主が自己複製性染色体外分子を維持するための所与のレベルまで第一の核酸配列を発現することを可能にする条件下で前記微生物宿主を培養することで増殖中の微生物集団とし、同時に前記目的産物をコードする第二の配列を遺伝的に制御するステップを含む、微生物宿主を使用して目的産物を生産するための方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)その遺伝的活性が宿主に利点を付与する第一の核酸配列を含む自己複製性染色体外核
酸分子を含む微生物宿主を提供するステップであって、前記第一の核酸配列の遺伝的活性
が制御される、前記ステップ;
b)前記自己複製性染色体外核酸分子は前記目的産物の生産に関与する第二の核酸配列を
含んでいてもよく、ここで、前記第二の核酸配列の遺伝的活性は第一の配列のものから独
立して制御される;
c)前記形質転換微生物宿主が自己複製性染色体外分子を維持するための所与のレベルま
で第一の核酸配列を発現することを可能にする条件下で前記形質転換微生物宿主を培養す
ることで増殖中の微生物集団とし、同時に前記目的産物をコードする第二の配列を遺伝的
に制御するステップ
を含む、微生物宿主を使用して目的産物を生産するための方法。
【請求項2】
ステップa)の前またはステップa)中に、ステップb)の第二の核酸配列を含んでも
よい前記自己複製性染色体外核酸分子で微生物宿主を形質転換すること、それによって自
己複製性染色体外核酸分子を含む微生物宿主を提供することをさらに含む、請求項1に記
載の方法。
【請求項3】
ステップc)の少なくとも一部において、条件が、第一の核酸配列が前記遺伝的活性を
呈さないようなものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
目的産物が、培養ステップc)の終了時に精製される、請求項1から3のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項5】
目的産物が、微生物バイオマス、自己複製性染色体外核酸分子、前記第二の核酸配列の
転写産物、前記第二の配列によりコードされるポリペプチド、または前記ポリペプチドに
より直接的もしくは間接的に生産される代謝物である、請求項1から4のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項6】
微生物宿主が、細菌、酵母、糸状真菌または藻類である、請求項1から5のいずれか一
項に記載の方法。
【請求項7】
第一の核酸配列が、誘導性プロモーターに作動可能に連結される、請求項1から6のい
ずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第一の核酸配列が、その発現がその宿主に培地中の特定のバクテリオシンの存在に対す
る抵抗性を付与する免疫遺伝子をコードする配列を含む、請求項1から7のいずれか一項
に記載の方法。
【請求項9】
第一の核酸配列によりコードされる配列が、その宿主に培地中の少なくとも2つの別個
のバクテリオシンの存在に対する抵抗性を付与する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
バクテリオシンがB17、C7またはColVであって、B17に対する抵抗性を付与
する免疫性がMcbGであり、C7に対する抵抗性を付与する免疫性がMccEまたはC
末端MccEのいずれかであり、およびColVに対する抵抗性を付与する免疫性がCv
iである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
自己複製性染色体外核酸分子がプラスミドである、請求項1から10のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項12】
その遺伝的活性が微生物宿主に利点を付与する第一の核酸配列を含み、ここで前記第一
の核酸配列の遺伝的活性は制御され、および目的産物の生産に直接的または間接的に関与
する第二の核酸配列を含んでもよい、自己複製性染色体外核酸分子。
【請求項13】
第一の核酸配列が、誘導性プロモーターに作動可能に連結される、請求項12に記載の
自己複製性染色体外核酸分子。
【請求項14】
プラスミドである、請求項12または13に記載の自己複製性染色体外核酸分子。
【請求項15】
第一の核酸配列が、その発現がその宿主に培地中の特定のバクテリオシンの存在に対す
る抵抗性を付与する免疫遺伝子をコードする配列を含む、請求項12から14のいずれか
一項に記載の自己複製性染色体外核酸分子。
【請求項16】
第一の核酸配列によりコードされる配列が、その宿主に培地中の少なくとも2つの別個
のバクテリオシンの存在に対する抵抗性を付与する、請求項15のいずれか一項に記載の
自己複製性染色体外核酸分子。
【請求項17】
バクテリオシンがB17、C7またはColVであって、B17に対する抵抗性を付与
する免疫調節因子がMcbGであり、C7に対する抵抗性を付与する免疫調節因子がMc
cEまたはC末端MccEのいずれかであり、およびColVに対する抵抗性を付与する
免疫調節因子がCviである、請求項16に記載の自己複製性染色体外核酸分子。
【請求項18】
微生物宿主が、細菌、酵母、糸状真菌または藻類であってもよい、請求項11から16
のいずれか一項に記載の自己複製性染色体外核酸分子を含む微生物宿主。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中の実施形態は、その遺伝的活性が宿主に利点を付与する第一の核酸配列を含
む自己複製性染色体外核酸分子を用いた微生物宿主を使用して目的産物を生産するための
方法であって、前記第一の核酸分子の遺伝的活性が制御されてもよい、前記方法に関する
【背景技術】
【0002】
抗生物質は、微生物細胞中での目的産物の生産のための選択剤として広く用いられてい
る。しかしながら、抗生物質の使用に関連して、例えば環境中での抗生物質の大規模な拡
散などのいくつかの欠点がある。加えて、DNAコンストラクト中の抗生物質抵抗性をコ
ードする配列は、細胞にとってエネルギー的な負担となり、したがって産物の収量に悪影
響を及ぼす。このエネルギー的な負担は、抵抗性付与遺伝子が大きい遺伝子である場合、
高レベルで発現している場合および/または構成的に発現している場合にとりわけ関連が
ある。
【0003】
したがって、既存の方法の全ての欠点を持たない、代替的でさらに改良された方法への
ニーズが依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第一の態様において、
a)第一の核酸配列を含む自己複製性染色体外核酸分子を含む微生物宿主を提供するステ
ップであって、前記第一の核酸配列の遺伝的活性が制御されてもよい、前記ステップ;
b)前記自己複製性染色体外核酸分子が前記目的産物の生産に関与する第二の核酸配列を
含んでもよいステップであって、前記第二の核酸配列の遺伝的活性が第一の配列から独立
して制御される、前記ステップ;
c)前記微生物宿主が自己複製性染色体外分子を維持するための所与のレベルまで第一の
核酸配列を発現することを可能にする条件下で前記微生物宿主を培養することで増殖中の
微生物集団とし、同時に前記目的産物をコードする第二の配列を遺伝的に制御するステッ

を含む、微生物宿主を使用して目的産物を生産するための方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1はpSyn2-McbE/Fの構成を示す。
図2図2はpSyn2-McbGの構成を示す。
図3図3はpMcbG 1.1の構成を示す。
図4図4はpMcbG 1.0の構成を示す。
図5図5はpBACT5.0ベクターを示す。
図6図6はpBACT2.0ベクターを示す。
図7図7はpBACT5.0-mcherryベクターを示す。
図8図8はプロモーターの調整を示す。
図9図9はKanR(pKan-pLac)を有し、ミクロシンC7およびColV(pBACT6.0-pLac)に対する2つの免疫性を有するE.コリにおけるタンパク質Xの過剰発現の比較を示す。
図10図10はKanR(pKan-T7prom)を有し、ミクロシンC7およびColV(pBACT5.0-T7prom)に対する2つの免疫性を有するE.コリにおけるイオタ-カラギナーゼタンパク質の過剰発現の比較を示す。
図11図11はKanR(pKan-T7prom)を有し、ミクロシンC7およびColV(pBACT5.0-T7prom)に対する2つの免疫性を有するE.コリにおけるラムダ-カラギナーゼタンパク質の過剰発現の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ステップa)
ステップa)は、その遺伝的活性が宿主に利点を付与する第一の核酸配列を含む自己複
製性染色体外核酸分子を含む微生物宿主を提供することを含み、ここで前記第一の核酸配
列の遺伝的活性が制御されてもよい。自己複製性染色体外核酸分子は、微生物宿主(例と
して、本明細書中に記載される微生物細胞)中に提供されることができる。例えば、宿主
または宿主の前身は、予め自己複製性染色体外核酸分子で形質転換されたものであり得る
。かくして、いくつかの実施形態において、ステップa)は、その遺伝的活性が宿主に利
点を付与する第一の核酸配列を含む自己複製性染色体外核酸分子を含む微生物細胞宿主を
提供することを含み、ここで前記第一の核酸配列の遺伝的活性が制御されてもよい。
【0007】
任意選択の形質転換ステップ
いくつかの実施形態において、微生物宿主は、前記自己複製性染色体外核酸分子を受け
取った宿主のみが生存することを可能にする条件下で、自己複製性染色体外核酸分子で形
質転換され、このようにして自己複製性染色体外核酸分子を含む微生物宿主が提供される
。かくして、いくつかの実施形態において、この方法は、前記自己複製性染色体外核酸分
子を受け取った宿主のみが生存することを可能にする条件下、ステップa)の前またはス
テップa)中に微生物宿主を前記自己複製性染色体外核酸分子で形質転換すること、この
ようにして自己複製性染色体外核酸分子を含む微生物宿主を提供することをさらに含む。
【0008】
微生物宿主中に形質転換される自己複製性染色体外核酸分子は、ステップb)の第二の
核酸配列を含んでもよい。自己複製性染色体外核酸分子を含む微生物宿主は、続いてステ
ップc)に従って培養することができる。
【0009】
本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸の関連の中で、第一の核
酸配列を含む自己複製性染色体外核酸分子が提供される。自己複製性染色体外核酸分子は
、ゲノムを含まずに存在することができ、プラスミドまたはエピソーム、ミニ染色体また
は同様のものに由来し得て、またはこれらを含み得て、これらから本質的になり得て、ま
たはこれらからなり得る。この態様は、高コピー数(用いられるプラスミドに応じて1か
ら数百コピーまたは10から50コピー)のかかる核酸分子を微生物細胞宿主中に導入し
て維持することができることから、魅力的である。加えて、任意の宿主を、本明細書中の
実施形態の方法において用いることができる。いくつかの実施形態において、宿主のゲノ
ムを改変する必要はない。本明細書中の実施形態の方法を実施するために必要な遺伝的エ
レメントは、自己複製性染色体外核酸分子中に存在する。かかる自己複製性染色体外核酸
分子は、通常、複製起点、目的である第一の核酸配列および調節領域を含む。いくつかの
実施形態において、理論により限定されるものではないが、免疫調節因子をコードする第
一の核酸配列は、宿主細胞中で自己複製性染色体外核酸の存在および機能を維持するため
の選択可能マーカーとして働く。いくつかの実施形態において、免疫調節因子をコードす
る第一の核酸配列は、産物を生産することができるように自己複製性染色体外核酸の存在
を維持する。産物は、例えば環境中で物質を発酵させて1または複数の新たな物質を生産
することにより、宿主が存在する環境を変えることができる。いくつかの実施形態におい
て、変異を獲得した自己複製性染色体外核酸に対する選択圧を与えることにより遺伝的浮
動が最小化され、機能的な免疫調節因子を産生せず、機能が低減された免疫調節因子を産
生し、および/または変異(複数可)を獲得していない自己複製性染色体外核酸よりも低
レベルの免疫調節因子を産生した。
【0010】
本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸の関連の中で、第一の核
酸配列により表される第一の核酸分子は、遺伝的活性を呈することが可能であり、前記遺
伝的活性は、それが存在してこの遺伝的活性が発現した微生物宿主細胞に選択的な利点を
付与する。この遺伝的活性は、第一の核酸分子によりコードされる産物により提供される
。そのうえ、この遺伝的活性は、制御することができ、または低いレベルで構成的に発現
し、または調整可能であり、または弱い構成的プロモーターの制御下にある。前記活性の
制御は、宿主にとってのエネルギー的な負担を制限する利点を提供するものと考えられる
。同様に、宿主のエネルギー的な負担を制限する利点は、遺伝的活性が低いレベルで構成
的に発現し、または調整可能であり、または弱い構成的プロモーターの制御下にあるとき
に得られ得る。出願文の全体を通じて、「利点を付与すること」という概念は、「バクテ
リオシンに対する免疫性を付与すること」または「バクテリオシンに対する抵抗性を付与
すること」により置き換えられ得る。いくつかの実施形態において、第一の核酸配列は、
本明細書中に記載される免疫調節因子をコードし、それによって宿主に利点を付与する。
【0011】
第二の核酸配列は、直接的または間接的に目的産物をコードする。同じ記述が、本明細
書中に記載される第二の核酸分子の遺伝的活性についても成立する。いくつかの実施形態
において、目的産物は、工業プロセス、例えば発酵プロセスにおいて有用な酵素を含む。
発酵プロセスは、培養培地中で少なくとも1つの化合物を発酵させることができる。いく
つかの実施形態において、目的産物は、産業上有用な分子、例えば炭水化物、脂質、有機
分子、栄養素、肥料、バイオ燃料、化粧品(またはその前駆体)、医薬もしくは生物製剤
(またはその前駆体)、または列挙された項目のいずれか2つ以上を含む。
【0012】
本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸の関連の中で、遺伝的活
性は、微生物宿主中の第一の核酸分子の存在により引き起こされるまたはこれと連鎖する
任意の活性を意味し得る。前記活性の利点は、所与の条件(pH、温度、所与の分子、例
えば本明細書中に記載されるバクテリオシンまたは2つ以上のバクテリオシンの組み合わ
せなどの存在...)下で生存するまたは生存して増殖する能力であり得る。したがって
、前記活性の利点は、自己複製性染色体外核酸分子を含む微生物細胞/宿主の数を決定す
ることにより評価され得る。評価は、任意選択の形質転換ステップの終了時および/もし
くはこのステップの間に(しかし培養ステップc)の前、またはステップa)および培養
ステップc)の前に)、ならびに/または培養ステップc)の前に実施され得る。ある実
施形態において、存在する自己複製性染色体外核酸分子を含む微生物宿主細胞の数は、前
記自己複製性染色体外核酸分子を受け取った微生物宿主が生存することを可能にする条件
下で培養されている場合、(例として、本明細書中に記載され、かつ所与の条件中に存在
する1または複数のバクテリオシンに対する免疫性を保有することにより)最初の微生物
細胞/宿主の数と比較して減少しておらず、少なくとも5%、少なくとも10%、少なく
とも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35
%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少な
くとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも8
0%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれより多く増加
し得る。この評価ステップの持続時間は、少なくとも6時間、12時間、24時間、36
時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間、108時間、120時間ま
たはそれより長いものであり得て、この持続時間には、列挙された値のいずれか2つの間
の範囲が包含される。
【0013】
本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸の関連の中で、遺伝的活
性の制御は、核酸分子(すなわち第一および/または第二の核酸分子)の活性の増加また
は減少のいずれかを意味し得る。したがって、遺伝的活性の制御は、制御することができ
、または低いレベルで構成的に発現し、または調整可能であり、または弱い構成的プロモ
ーターの制御下にある。いくつかの実施形態において、遺伝的活性が調節/制御されるコ
ーディング産物は、免疫調節因子を含む、これらから本質的になる、もしくはこれらから
なるか、または目的産物の生産に関与する。いくつかの実施形態において、遺伝的活性は
、遺伝子発現レベルで調節/制御される。いくつかの実施形態において、遺伝的活性は、
転写レベルで、例えばプロモーターを活性化または抑制することにより調節される。いく
つかの実施形態において、この関連でのプロモーターは、誘導性プロモーターである。い
くつかの実施形態において、この関連でのプロモーターは、弱プロモーターである。理論
により限定されるものではないが、いくつかの実施形態の弱プロモーターは、宿主に付与
される利点(例として免疫調節因子活性)がプロモーターの制御下にある遺伝子産物(複
数可)のレベルおよび/または活性の変化に感受性であるように、転写レベルをアップレ
キュレートまたはダウンレギュレートするよう修正可能であることができる。いくつかの
実施形態において、プロモーターは、配列番号707により表されるP24プロモーター
および/または配列番号708により表されるProCプロモーターおよび/またはP2
4 LacOハイブリッドプロモーターを含む、これらから本質的になる、またはこれら
からなる。P24LacOハイブリッドプロモーターは、調整可能な/制御されたプロモ
ーターである。いくつかの実施形態において、遺伝子活性は、転写後レベルで、例えばR
NA安定性の調節を通じて調節/制御される。いくつかの実施形態において、遺伝的活性
は、翻訳レベルで、例えば翻訳開始の調節を通じて調節/制御される。いくつかの実施形
態において、遺伝的活性は、翻訳後レベルで、例えばポリペプチド安定性の調節、ポリペ
プチドの翻訳後修飾またはポリペプチドへの阻害剤の結合を通じて調節/制御される。
【0014】
いくつかの実施形態において、遺伝的活性は増加する。いくつかの実施形態において、
免疫調節因子および/または目的産物の生産に関与する第二の核酸分子のコーディング産
物のうちの少なくとも1つの活性が増加する。概念的には、遺伝的活性は、遺伝的活性を
直接的に活性化することにより、または遺伝子活性の阻害物質の活性を減少させることに
より、増加させることができる。いくつかの実施形態において、遺伝的活性は、プロモー
ター活性を誘導すること、転写リプレッサーを阻害すること、RNAの安定性を増加させ
ること、転写後阻害物質を阻害すること(例えば、リボザイムまたはアンチセンスオリゴ
ヌクレオチドを阻害すること)、翻訳を誘導すること(例えば、調節可能なtRNAを介
して)、所望の翻訳後修飾を生成させること、または翻訳後阻害物質を阻害すること(例
えば遺伝子によりコードされるポリペプチドを対象とするプロテアーゼ)のうちの少なく
とも1つにより活性化される。いくつかの実施形態において、所望の環境中に存在する化
合物は、プロモーターを誘導する。例えば、培養培地中の鉄の存在は、本明細書中に記載
される鉄感受性プロモーターによる転写を誘導することができる。いくつかの実施形態に
おいて、所望の培養培地中に存在する化合物は、転写リプレッサーを阻害する。例えば、
環境中のテトラサイクリンの存在は、tetリプレッサーを阻害することができ、それゆ
えにtetOプロモーターからの活性を可能にする。いくつかの実施形態において、所望
の培養培地外でのみ見出される化合物は、転写を誘導する。
【0015】
いくつかの実施形態において、遺伝的活性は減少する。概念的には、遺伝的活性は、遺
伝的活性を直接的に阻害することにより、または遺伝的活性の活性化物質の活性を減少さ
せることにより、減少させることができる。いくつかの実施形態において、遺伝的活性は
低減されるが、いくらかのレベルの活性は残る。いくつかの実施形態において、遺伝的活
性は完全に阻害される。いくつかの実施形態において、遺伝的活性は、プロモーター活性
を阻害すること、転写リプレッサーを活性化すること、RNAの安定性を減少させること
、転写後阻害物質を活性化すること(例えば、リボザイムまたはアンチセンスオリゴヌク
レオチドを発現させること)、翻訳を阻害すること(例えば、調節可能なtRNAを介し
て)、必要とされる翻訳後修飾を生成させないこと、ポリペプチドを不活性化すること(
例えば阻害物質と結合させることにより、またはポリペプチドに特異的なプロテアーゼを
介して)、またはポリペプチドを適当に局在させないことのうちの少なくとも1つにより
減少する。いくつかの実施形態において、遺伝的活性は、遺伝子を所望の位置から取り除
くことによって、例えばFLP-FRTもしくはcre-loxカセット、相同組換えも
しくはCRIPR-CAS9活性を用いて、またはプラスミドの欠損もしくは分解を通じ
て遺伝子を切除することによって減少する。いくつかの実施形態において、遺伝子産物(
例としてポリペプチド)または遺伝子産物により生産される産物(例として酵素反応生成
物)は、遺伝子活性をさらに阻害する(例としてネガティブフィードバックループ)。
【0016】
いくつかの実施形態において、第一の核酸分子の遺伝的活性により微生物宿主に付与さ
れる利点は、バクテリオシン(またはバクテリオシンの混合物)を含む培地中で生存する
または生存して増殖する能力である。本明細書中で用いられるとき、「バクテリオシン」
は、かかるポリペプチドの細胞を含まないまたは化学合成のバージョンを包含する。「バ
クテリオシン」およびこの語根のバリエーションは、宿主細胞により分泌されたポリペプ
チドをも指し得る。したがって、バクテリオシンは、同類または近縁の細菌株(複数可)
の増殖を阻害するために細菌により生産されるタンパク質性毒素を包含する。これらは酵
母およびゾウリムシの殺傷因子と類似しており、構造的、機能的および生態学的に多様で
ある。バクテリオシンはまた、宿主細胞により分泌されるバクテリオシンの合成バリアン
トも包含する。バクテリオシンの合成バリアントは、合成バリアントが宿主細胞により分
泌される対応するバクテリオシンの活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、
50%、60%、70%、80%、90%をなお呈するかぎり、何らかの方法で宿主細胞
により分泌されるバクテリオシンに由来し得る。
【0017】
抗生物質の詳細な記述は、本明細書の最後にある一般的記述に特化した部分の中で提供
される。
【0018】
「バクテリオシン」は、ポリペプチドが生成された個々の宿主細胞以外の、宿主細胞と
クローン的に関係している細胞および他の微生物細胞を包含する少なくとも1つの細胞を
無力化することができる。
【0019】
特定の「免疫調節因子」(本明細書中でより詳細に論じられる)を発現する細胞は、特
定のバクテリオシンまたはバクテリオシングループの無力化効果に対する免疫性がある。
かくして、バクテリオシンは、バクテリオシンを産生する細胞および/または他の微生物
細胞を、これらの細胞が適切な免疫調節因子を産生しないかぎり、無力化することができ
る。かくして、バクテリオシンは、複数の他の微生物(microbial organ
ism)に対する細胞傷害効果または増殖阻害効果を発揮することができる。ある実施形
態において、バクテリオシンは、微生物細胞の翻訳機構(例としてリボソームなど)によ
り産生される。別の実施形態において、バクテリオシンは、化学合成される。いくつかの
バクテリオシンは、ポリペプチド前駆体に由来することができる。ポリペプチド前駆体は
、切断(例えばプロテアーゼによるプロセシング)を受けることでバクテリオシンポリペ
プチド自体をもたらすことができる。かくして、いくつかの実施形態において、バクテリ
オシンは、前駆体ポリペプチドから生産される。いくつかの実施形態において、バクテリ
オシンは、翻訳後修飾、例えば切断を受けたまたは1つもしくは複数の官能基の付加を受
けたポリペプチドを含む、これらから本質的になる、またはこれらからなる。
【0020】
バクテリオシンの無力化活性としては、微生物複製の停止または細胞傷害を挙げること
ができる。いくつかのバクテリオシンは、細胞傷害活性(例として「殺菌」効果)を持ち
、それゆえに微生物(microbial organism)、例えば細菌、酵母、藻
類、合成微生物(micoorganism)などを殺傷することができる。いくつかの
バクテリオシンは、例えば細胞周期を停止させることにより、微生物(microbia
l organism)、例えば細菌、酵母、藻類、合成微生物(micoorgani
sm)などの複製を阻害することができる(例として「静菌」効果)。
【0021】
いくつものバクテリオシンが同定されて性質決定されている(表1.1および1.2を
参照されたい)。何らかの特定の理論により限定されるものではないが、例示的なバクテ
リオシンは、典型的に翻訳後修飾を受ける「クラスI」バクテリオシン、および典型的に
非修飾である「クラスII」バクテリオシンに分類することができる。加えて、各クラス
中の例示的なバクテリオシンは、表1.1中にまとめられるように様々なサブグループに
カテゴリー分けすることができ、この出典であるCotter,P.D. et al.
“Bacteriocins- a viable alternative to a
ntibiotics” Nature Reviews Microbiology
1 1:95-105は、その全体が参照により本明細書中に組み込まれる。
【0022】
何らかの特定の理論により限定されるものではないが、バクテリオシンは、様々な方法
で標的微生物細胞の無力化をもたらすことができる。例えば、バクテリオシンは細胞壁を
透過することができ、それゆえに細胞壁を脱分極させて呼吸を妨げることができる。表1
.1:例示的なバクテリオシンの分類。
【0023】
表1.1:例示的なバクテリオシンの分類
【表1】
【0024】
いくつものバクテリオシンが、本明細書中の実施形態に従って用いることができる。例
示的なバクテリオシンは、表1.2中に示される。いくつかの実施形態において、表1.
2のポリペプチド配列を含む、これらから本質的になる、またはこれらからなる、少なく
とも1つのバクテリオシンが提供される。表1.2中に示されるように、いくつかのバク
テリオシンは、分子対として機能する。かくして、特に明示的に述べられないかぎり、機
能的な「バクテリオシン」または「バクテリオシンを提供すること」などが本明細書中で
論じられる場合、個々で機能するバクテリオシンと一緒に機能的なバクテリオシン対が包
含されることが理解される。表1.2に関して、括弧内に収載された「起源生物」は、指
示されたバクテリオシンを産生することが知られている生物の別の名称および/または株
の情報を指し示す。
【0025】
本明細書中の実施形態はまた、表1.2中に記載されるバクテリオシンとの同一性を有
するペプチドおよびタンパク質を包含する。用語「同一性」は、核酸またはタンパク質の
配列相同性または3次元的相同性を包含するような意味を持つ。ポリペプチドに対する核
酸またはタンパク質の配列相同性および/または3次元的相同性を決定するためのいくつ
かの技術が存在する。これらの方法は、1つの配列、ドメインまたはモデルが持つ、標的
の配列、ドメインまたはモデルとの同一性の程度を見出すためにルーチン的に使用される
。非常に広い範囲の機能的バクテリオシンが本明細書中に開示されるバクテリオシンの特
徴を取り込むことができ、それゆえに表1.2中のバクテリオシンとの非常に広い程度の
同一性を提供することができる。いくつかの実施形態において、バクテリオシンは、表1
.2のポリペプチドのいずれか1つと少なくとも50%の同一性を、例えば、少なくとも
50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、
60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、
70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、
80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、
90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%ま
たは100%の同一性を持つ。パーセント同一性は、BLASTソフトウェア(Alts
chul,S.F.,et al. (1990) “Basic local ali
gnment search tool.” J.Mol.Biol. 215:403
-410、ワールドワイドウェブ上、blast.ncbi.nlm.nih.govに
おいてアクセス可能)をデフォルトのパラメーターで用いることにより決定され得る。
【0026】
表1.2中のバクテリオシンは天然起源のものであるが、当業者は、表1.2のバクテ
リオシンのバリアント、表1.2のバクテリオシンもしくはそのバリアント以外の天然起
源のバクテリオシン、または合成のバクテリオシンを、本明細書中のいくつかの実施形態
に従って用いることができることを理解する。いくつかの実施形態において、かかるバリ
アントは、野生型タンパク質と比べて、同じまたは異なる微生物(microorgan
ism)または微生物(microorganism)の種に対する細胞傷害性または増
殖阻害活性のレベルが高められているか、または減少している。いくつかのモチーフは、
バクテリオシンの特質として認識されている。例えば、モチーフYGXGV(配列番号2
)(ここでXは任意のアミノ酸残基である)は、クラスIlaバクテリオシンのN末端コ
ンセンサス配列の特質である。したがって、いくつかの実施形態において、合成のバクテ
リオシンは、配列番号2と少なくとも50%の同一性を有する、例えば配列番号2と少な
くとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、5
9%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、6
9%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、7
9%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、8
9%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、9
9%または100%の同一性を有するN末端配列を含む。いくつかの実施形態において、
合成のバクテリオシンは、配列番号2を含むN末端配列を含む。加えて、いくつかのクラ
スlibバクテリオシンは、GxxxGモチーフ(xは任意のアミノ酸を意味する)を含
む。何らかの特定の理論により限定されるものではないが、GxxxGモチーフは、細胞
膜の中でヘリックスタンパク質間の会合を媒介することで、例えば、細胞膜相互作用を通
じたバクテリオシン媒介性の無力化を促すことができると考えられる。かくして、いくつ
かの実施形態において、バクテリオシンは、細胞膜との相互作用を促すモチーフを含む。
いくつかの実施形態において、バクテリオシンは、GxxxGモチーフを含む。任意選択
で、GxxxGモチーフを含むバクテリオシンは、ヘリックス構造を含むことができる。
本明細書中に記載される構造に加えて、本明細書中で用いられる「バクテリオシン」は、
微生物細胞に対して、本明細書中に明示的に提供されるバクテリオシンのうちのいずれか
と実質的に同じ効果を持つ構造も包含する。
【0027】
2つ以上のバクテリオシンまたはその部分を含む、これらから本質的になる、またはこ
れらからなる融合ポリペプチドは、いずれか個々のバクテリオシンよりも幅広い範囲の微
生物(microbial organism)に対する無力化活性を持つことができる
ことが示されている。例えば、ハイブリッドバクテリオシンであるEnt35-MccV
(GKYYGNGVSCNKKGCSVDWGRAIGIIGNNSAANLATGGA
AGWKSGGGASGRDIAMAIGTLSGQFVAGGIGAAAGGVAGG
AIYDYASTHKPNPAMSPSGLGGTIKQKPEGIPSE AWNYA
AGRLCNWSPNNLSDVCL、配列番号3)は、病原性のグラム陽性細菌および
グラム陰性細菌に対して抗微生物活性を呈示することが示されている(Acuna et
al. (2012),FEBS Open Bio,2:12-19)。なお、En
t35-MccV融合バクテリオシンは、N末端からC末端までに、N末端のグリシン、
エンテロシンCRL35、3つのグリシンを含むリンカー、およびC末端のミクロシンV
を含む。本明細書において、バクテリオシンは、バクテリオシン活性を持つ2つ以上のポ
リペプチドの融合体を含むことができると考えられる。いくつかの実施形態において、2
つ以上のバクテリオシンの融合ポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態において
、2つ以上のバクテリオシンは、表1.2からのポリペプチドまたはその改変体を含む、
これらから本質的になる、またはこれらからなる。いくつかの実施形態において、2つ以
上のバクテリオシンを含む融合ポリペプチドは、いずれか個々のバクテリオシンよりも幅
広い活性スペクトルを、例えば、より多くの微生物(microbial organi
sm)に対する無力化活性、より幅広い範囲の環境条件下での無力化活性、および/また
はより高効率の無力化活性を持つ。いくつかの実施形態において、2つ以上のバクテリオ
シン、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10個のバクテリオシンの融合体が
提供される。いくつかの実施形態において、2つ以上のバクテリオシンポリペプチドは、
共有結合、例えばペプチド結合を介して互いに融合される。いくつかの実施形態において
、リンカーは、2つのバクテリオシンポリペプチドの間に位置する。いくつかの実施形態
において、リンカーは、1または複数のグリシン、例えば約1、2、3、4、5、6、7
、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個
のグリシンを含む、これらから本質的になる、またはこれらからなる。いくつかの実施形
態において、リンカーは、細胞内で切断されて、融合タンパク質中に包含される個々のバ
クテリオシンを産生する。いくつかの実施形態において、本明細書中に提供されるバクテ
リオシンは、改変されていないバクテリオシンと比べて所望の活性スペクトルを提供する
ように改変される。例えば、改変バクテリオシンは、改変されていないバクテリオシンと
同じ生物に対して、高められたまたは減少した活性を持ち得る。あるいは、改変バクテリ
オシンは、改変されていないバクテリオシンが弱い活性しか持たないまたは全く活性を持
たない生物に対して、高められた活性を持ち得る。
【0028】
表1.2:例示的なバクテリオシン
【表2】
【0029】
例えば、いくつかの実施形態において、抗真菌活性(例えば抗酵母活性など)が望まれ
る。抗真菌活性を有するいくつものバクテリオシンが同定されている。例えば、バチルス
からのバクテリオシンは、酵母株に対して無力化活性を持つことが示されており{Ade
tunji and Olaoye (2013) Malaysian Journa
l of Microbiology 9:130-13を参照されたい。この文献はそ
の全体が参照により本明細書中に組み込まれる)、エンテロコッカス・フェカリスのペプ
チド(WLPPAGLLGRCGRWFRPWLLWLQ SGAQY KWLGNLF
GLGPK、配列番号1)は、カンジダ属種(Candida species)に対し
て無力化活性を持つことが示されており{Shekh and Roy (2012)
BMC Microbiology 12:132を参照されたい。この文献はその全体
が参照により本明細書中に組み込まれる)、シュードモナスからのバクテリオシンは、真
菌、例えばカーブラリア・ルナータ(Curvularia lunata)、フザリウ
ム属種(Fusarium species)、ヘルミントスポリウム属種(Helmi
nthosporium species)およびビオポラリス属種(Biopolar
is species)などに対して無力化活性を持つことが示されている(Shala
ni and Srivastava (2008) The Internet Jo
urnal of Microbiology. Volume 5 Number 2
. DOI:10.5580/27dd - ワールドワイドウェブ上、アーカイブis
pub.com/journal/the-internet-journal-of-
micro bio logy/volume-5-number-2/screeni
ng- for-antifungal-activity-of-pseudomon
as-fluorescens-against-phytopathogenic-
fungi.html#sthash.d0Ys03UO.lDKuTlUS.dpuf
においてアクセス可能。この文献はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
例として、5.サチリス(5.subtilis)からのボトリシジン(botryci
din)AJ1316{Zuber,P et al. (1993) Peptide
Antibiotics. In Bacillus subtilis and O
ther Gram-Positive Bacteria:Biochemistry
,Physiology, and Molecular Genetics ed S
onenshein et al.,pp.897-916,American Soc
iety for Microbiologyを参照されたい。この文献はその全体が参
照により本明細書中に組み込まれる)およびアリリンBl{Shenin et al.
(1995) Antibiot Khimioter 50:3-7を参照されたい
。この文献はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)は、抗真菌活性を持つこ
とが示されている。かくして、いくつかの実施形態において、例えば真菌微生物(mic
robial organism)の無力化が望まれる実施形態において、バクテリオシ
ンは、ボトリシジンAJ1316またはアリリンB1のうちの少なくとも1つを含む。
【0030】
例えば、いくつかの実施形態において、ラン藻の培養におけるバクテリオシンの活性が
望ましい。いくつかの実施形態において、バクテリオシンは、ラン藻を無力化するために
提供される。いくつかの実施形態において、バクテリオシンは、ラン藻の培養環境中に典
型的に見出される侵入性の微生物(microbial organism)を無力化す
るために提供される。保存されたバクテリオシンポリペプチドのクラスターが、多種多様
なラン藻の種において同定されている。例えば、Wang et al.(2011),
Genome Mining Demonstrates the Widesprea
d Occurrence of Gene Clusters Encoding B
acteriocins in Cyanobacteria. PLoS ONE 6
(7):e22384(この文献はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)中
に報告されるように、少なくとも145個の推定バクテリオシン遺伝子クラスターが、少
なくとも43種のラン藻において同定されている。例示的なラン藻のバクテリオシンは、
表1.2中に配列番号420、422、424、426、428、30、432、434
、436、438、440、442、444、446、448および450として示され
る。
【0031】
本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸の関連の中で、バクテリ
オシンが微生物細胞に対して本明細書中で説明されるものと異なるメカニズムを介して作
用し得るとしても、微生物宿主がバクテリオシンを含む培地で培養されているとき、最初
の微生物宿主数と比較して、微生物宿主の数が少なくとも5%、少なくとも10%、少な
くとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも3
5%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少
なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも
80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれより多く減
少した場合、バクテリオシンは活性があると言われ得る。この培養ステップの持続時間は
、存在する微生物宿主の数をカウントすることによりバクテリオシンの活性を評価する前
の、少なくとも12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間またはそ
れより長いものであり得る。活性は、顕微鏡下で細胞をカウントすることにより、または
任意の公知の微生物技術により評価され得る。いくつかの実施形態において、微生物宿主
がバクテリオシンを含む培地で培養されているとき、最初の微生物宿主集団と比較して、
少なくとも指定された数またはパーセンテージ(paercentage)の微生物宿主
において増殖が停止した場合、例えば少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも1
5%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少
なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも
60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、
少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の微生物宿主が停止した場
合、バクテリオシンは活性がある。
【0032】
本明細書中のいくつかの実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸の関連の中で
、バクテリオシンは、それぞれ配列番号198または200を含むまたはこれらからなる
アミノ酸配列により表されるB17またはC7である。B17およびC7は、本明細書中
のいくつかの実施形態に従って、簡単に生産でき、使い易く、培養培地中で安定な選択剤
であることが実験的に確認されている(実施例1を参照されたい)。本明細書中の実施形
態の方法、使用、組成物、宿主および核酸のうちのいくつかはまた、配列番号198また
は200と少なくとも50%の同一性を持つ、例えば配列番号198または200と少な
くとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、5
9%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、6
9%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、7
9%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、8
9%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、9
9%または100%の同一性を持つバクテリオシンの使用を包含する。B17またはC7
のかかるバリアントは、それらが少なくとも実質的なB17またはC7の活性を呈するか
ぎり、本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸において用いられ得
る。この関連において、「実質的な」とは、例えば、配列番号198または200を持つ
B17またはC7の活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも705、少
なくとも80%、少なくとも90%もしくは少なくとも100%またはそれより大きいこ
とを意味する。バクテリオシンの活性は、本明細書中で先に記載されている。
【0033】
本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸の関連の中で、ならびに
標的の微生物宿主および用いられるバクテリオシンに応じて、当業者は、培地中または寒
天ペトリプレート中で用いられることになるバクテリオシンの濃度がわかる。バクテリオ
シンB17またはC7を用いて、発明者らは、本明細書中の実施形態の方法および使用を
実施することを可能にする、すなわち前記遺伝的活性の発現の利点を観察または可視化す
ることを可能にする濃度で前記バクテリオシンを含む培養培地を調製することができた。
前記活性の利点が自己複製性染色体外核酸分子を含む宿主の増殖を可能にすることである
ならば、前記培地または寒天プレート中のバクテリオシンの量は、前記自己複製性染色体
外核酸分子を受け取った微生物宿主が生存し増殖することを可能にする条件下で培養され
ている場合、最初の微生物細胞/宿主の数と比較して、前記自己複製性染色体外を含まな
い宿主の数が少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%
、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なく
とも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65
%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少な
くとも90%、少なくとも95%またはそれより多く減少しているような量である。この
評価ステップの持続時間は、少なくとも6時間、12時間、24時間、36時間、48時
間、60時間、72時間、84時間、96時間、108時間、120時間またはそれより
長いものであり得る。前記培養培地は、実質的なバクテリオシン活性を失うことなく滅菌
され得る。この関連において、「実質的な」とは、例えば、滅菌前の培養培地中に存在す
るバクテリオシン活性の50%超、60%超、70%超、80%超、90%超を意味する
【0034】
本明細書中のいくつかの実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸に適した第一
の核酸配列、およびバクテリオシンに免疫性を提供するその産物が表2中に示される。
【0035】
表2:バクテリオシンに対する免疫性を提供する例示的な核酸配列
【表3】
【0036】
表2のバクテリオシンに対する免疫性を提供する配列は天然起源であるが、当業者は、
かかる分子のバリアント、表2のもの以外の天然起源の分子、または合成のものを、本明
細書中のいくつかの実施形態に従って用いることができることを理解する。いくつかの実
施形態において、特定のバクテリオシン、バクテリオシンの特定のクラスもしくはカテゴ
リーまたはバクテリオシンの特定の組み合わせに対する免疫性を付与する特定の分子また
は免疫性を付与する分子の特定の組み合わせ。分子が免疫性を付与することができる例示
的なバクテリオシンは、表2中に同定される。表2は免疫性を付与する分子についての「
起源生物」を同定しているが、免疫性を付与するこれらの分子は、本明細書中のいくつか
の実施形態に従って、所望のバクテリオシン免疫活性を提供するために、他の天然起源の
、遺伝子改変の、または合成の微生物(microorganism)中で容易に発現さ
せることができる。かくして、本明細書中で用いられるとき、「免疫調節因子」または「
バクテリオシンに対する免疫性を付与または提供する分子」は、本明細書中に明確に提供
される構造だけでなく、完全合成の免疫調節因子および本明細書中に開示されるバクテリ
オシンと機能的に等価であるバクテリオシンに対する免疫性を提供する免疫調節因子とい
った本明細書中に記載される「免疫調節因子」構造と実質的に同じ効果を持つ構造も包含
する。
【0037】
表2のポリペプチドをコードする例示的なポリヌクレオチド配列は、表2中に指し示さ
れる。当業者は、遺伝暗号は縮重され、そのうえ、コドン使用頻度は遺伝子産物が発現し
ている特定の生物に基づいて変わり得て、かくして、特定のポリペプチドが1つ以上のポ
リヌクレオチドによりコードされることができることを容易に理解する。いくつかの実施
形態において、バクテリオシン免疫調節因子をコードするポリヌクレオチドは、バクテリ
オシン免疫調節因子を発現する生物のコドン使用頻度に基づいて選択される。いくつかの
実施形態において、バクテリオシン免疫調節因子をコードするポリヌクレオチドは、バク
テリオシン免疫調節因子を発現する特定の生物に基づいてコドン最適化される。非常に広
い範囲の機能的免疫調節因子が本明細書中に開示される免疫調節因子の特徴を取り込むこ
とができ、それゆえに表2中の免疫調節因子との非常に広い程度の同一性を提供すること
ができる。いくつかの実施形態において、免疫調節因子は、表2のポリペプチドのいずれ
か1つと少なくとも約50%の同一性を、例えば、少なくとも50%、51%、52%、
53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、
63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、
73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、
83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、
93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を持
つ。
【0038】
本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸の関連の中で、バクテリ
オシンに対する抵抗性または免疫性は、細胞がバクテリオシンを含む培地で培養されてい
るとき、バクテリオシンを使用した培養ステップ終了時の微生物細胞の数が最初の微生物
細胞の数と比較して減少しておらず、いくつかの実施形態において少なくとも5%、少な
くとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも3
0%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少
なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも
75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%ま
たはそれより多く増加したことを意味し得る。この培養ステップの持続時間は、存在する
微生物細胞の数をカウントすることによりバクテリオシンの活性を評価する前の、少なく
とも12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時
間、108時間、120時間またはそれより長いものであり得る。
【0039】
本明細書中のいくつかの実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸に適しており
、そのコーディング産物が免疫性を付与する核酸分子は、McbG(バクテリオシンB1
7に対する免疫性)であり、これは配列番号699により表される。McbGは、本明細
書中のいくつかの実施形態に従って、構成的または誘導的に選択可能マーカーとして有用
であることが実験的に確認されている(実施例3を参照されたい)。別の好適な核酸は、
配列番号700により表されるMccE(バクテリオシンC7に対する免疫性)、または
配列番号701により表されるそのc末端部分である。MccEは、ミクロシン/バクテ
リオシンに対して感受性である株におけるベクター選択マーカーとして用いられている(
実施例2を参照されたい)。いくつかの実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸
はまた、そのコーディング産物がバクテリオシンB17および/またはC7に対する免疫
性を付与し、かつ配列番号699、700または701と少なくとも50%の同一性を、
例えば配列番号699、700または701と少なくとも50%、51%、52%、53
%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63
%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73
%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83
%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93
%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を持つ核
酸分子の使用を包含する。かかるMcbGおよび/またはMccEバリアントは、それら
が少なくとも実質的なMcbG(それぞれMccE)の活性を呈するかぎり、本明細書中
の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸において用いられ得る。この関連にお
いて、「実質的な」とは、例えば、配列番号699、700または701を持つMcbG
(それぞれMccE)の活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%
、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%またはそれより大きい
ことを意味する。McbG(それぞれMccE)のコーディング産物により付与される免
疫性は、本明細書中で先に記載されている。
【0040】
驚くべきことに、配列番号701により表されるMccEのC末端部分は、バクテリオ
シンC7に対する抵抗性を付与するために十分であることが見出された。この関連におい
て、部分は、例えば元の核酸分子の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも7
0%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれより大きいものであることを意味
する。これは、かかる短い核酸分子がバクテリオシンに対する抵抗性を付与することがで
きる点で相当に魅力的であり、驚くべきことである。かかる短い核酸分子を含む自己複製
性染色体外核酸分子は、微生物細胞に何らの負担を生じさせないものと予想される。
【0041】
本明細書中のいくつかの実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸にさらに適し
ており、その産物がバクテリオシンに対する免疫性を提供する核酸分子は、その単一の産
物が少なくとも2つの別個のバクテリオシンに対して免疫性を提供する単一の核酸分子で
ある。いくつかの実施形態において、かかる核酸分子のかかる産物は、B17およびC7
に対する、またはColVおよびC7に対する、またはColVおよびB17に対する、
またはB17、C7およびColVに対する免疫性を提供する。ColVをコードする核
酸は、配列番号65として同定され、対応するコーディングアミノ酸配列は、配列番号6
4として同定される。
【0042】
いくつかの実施形態において、その産物がB17およびC7に対する免疫性を提供する
核酸分子は、配列番号715または716と少なくとも50%の同一性を持つ、例えば配
列番号715または716と少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55
%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65
%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75
%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85
%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を持つ配列により表される
。配列番号715は、MccEと融合したMcbGの核酸分子である。配列番号716は
、本明細書中で先に記載される、MccEのC末端部分と融合したMcbGの核酸分子で
ある。
【0043】
いくつかの実施形態において、その産物がColVおよびC7に対する免疫性を提供す
る核酸分子は、配列番号717または718と少なくとも50%の同一性を持つ、例えば
配列番号717または718と少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、5
5%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、6
5%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、7
5%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、8
5%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、9
5%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を持つ配列により表され
る。配列番号717は、MccEと融合したCviの核酸分子である。配列番号718は
、本明細書中で先に記載される、MccEのC末端部分と融合したCviの核酸分子であ
る。
【0044】
コア配列のかかる同一性バリアントは、本明細書中で先に記載される、それらが由来す
る分子の少なくとも実質的な活性を呈するかぎり、本明細書中の実施形態の方法、使用、
組成物、宿主および核酸において用いられ得る。
【0045】
本明細書中のいくつかの実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸において、本
明細書中に記載される、その産物が単一の、または1つ以上の、または少なくとも2つの
バクテリオシンに対して免疫性を付与するこれらの核酸分子の各々は、本明細書中に記載
されるプロモーターに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、プロモー
ターは、弱プロモーターである。いくつかの実施形態において、弱プロモーターは、配列
番号708により表されるproCプロモーター、または配列番号707により表される
P24プロモーターであり、これは、実験的に確認されている(例として実施例3を参照
されたい)。
【0046】
本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸において有用である好適
なコンストラクトは、その産物がバクテリオシンに対する免疫性を付与する第一の核酸分
子を含むことができ、これらのコンストラクトは、配列番号702、703、710、7
11、704、705、712、713または714を含み得る、これらから本質的にな
り得る、またはこれらからなり得る。これらのコンストラクトの各々は、本出願の実験部
の中に広範に記載されており、この実験部は、本明細書中のいくつかの実施形態に従って
、これらのコンストラクトの各々が実際に構築されて好適であることが確認されたことを
記している(例として、実施例1および2および3を参照されたい)。
【0047】
いくつかの実施形態の方法において、培養培地に加えられるバクテリオシンは、本明細
書中で同定されるB17および/またはC7および/またはColVである。
【0048】
この方法は、任意の目的産物の生産を可能にし得る。いくつかの実施形態の方法におい
て、目的産物は、微生物バイオマス、自己複製性染色体外核酸分子、前記第二の核配列(
nucleic sequence)の転写産物、前記第二の配列によりコードされるポ
リペプチド、または前記ポリペプチドにより直接的もしくは間接的に生産される代謝物で
ある。
【0049】
いくつかの実施形態の方法において、目的産物は、培養ステップc)の終了時に精製さ
れる。これは、当業者に公知の技術を用いて実施され得る。
【0050】
自己複製性染色体外核酸分子の存在に関連したエネルギー的な負担が最小化されている
ため、目的産物の収量は最適になると予想される。
【0051】
この方法は、任意の好適な微生物細胞を、例えば宿主として用い得る。好適な微生物細
胞は、一般的記述というタイトルの明細書の部分の中に収載される。それ自体が適した、
および本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物および宿主における使用に適した微生
物細胞としては、限定されるものではないが、細菌(例えば、グラム陰性細菌、例えばE
.コリ種)、酵母、糸状真菌または藻類が挙げられる。いくつかの実施形態において、微
生物細胞は、合成の微生物細胞である。
【0052】
ある方法において、自己複製性染色体外核酸分子上に存在する第一の核酸配列は、プロ
モーターに作動可能に連結され得る。いくつかの実施形態において、前記プロモーターは
、弱プロモーターである。いくつかの実施形態において、前記プロモーターは、構成的プ
ロモーターである。いくつかの実施形態において、前記プロモーターは、誘導性である。
いくつかの実施形態において、前記プロモーターは、弱い構成的プロモーターである。い
くつかの実施形態において、前記プロモーターは、弱い誘導性プロモーターである。前記
プロモーターの誘導能は、第一の核酸配列の遺伝的活性の存在を制御する手段である。プ
ロモーターは、当該技術分野で周知である。詳細な記述は、本明細書の一般的記述に特化
した部分の中で提供される。プロモーターは、1または複数のコーディング配列の転写を
駆動するために用いることができる。前記自己複製性染色体外核酸分子は、目的産物の生
産に関与する第二の核酸配列を含んでもよく、ここで前記第二の核酸配列の遺伝的活性は
、第一の配列のものから独立して制御される。
【0053】
ある実施形態において、前記第二の核酸配列の遺伝的活性の制御は、第一の配列の遺伝
的活性の制御から独立していない。
【0054】
いくつかの実施形態において、第二のプロモーターは、本明細書中に記載される目的産
物の生産に関与している前記第二の核酸配列の発現を駆動する。ある実施形態において、
第一のプロモーターは、本明細書中に記載される免疫調節因子ポリヌクレオチドの発現を
駆動する。
【0055】
本明細書中で用いることができるプロモーターは、それが作動可能に連結される核酸分
子にとってネイティブでないものであり得て、すなわち、それが作動可能に連結される核
酸分子(コーディング配列)にとって異種であるプロモーターであり得る。いくつかの実
施形態のプロモーターは、それが作動可能に連結されるコーディング配列にとって異種で
あるが、いくつかの実施形態において、プロモーターは、同種、例として、微生物細胞に
とって内因性である。いくつかの実施形態において、(ヌクレオチド配列にとって)異種
のプロモーターは、コーディング配列にとってネイティブであるプロモーターよりも、コ
ーディング配列を含む転写産物を高い定常状態レベルで生産する能力がある(または単位
時間あたりより多くの転写産物分子、すなわちmRNA分子を生産する能力がある)。い
くつかのプロモーターは、いつでも変わらず転写を駆動することができる(「構成的プロ
モーター」)。いくつかのプロモーターは、例えば環境条件、化合物、遺伝子産物、細胞
周期ステージなどの存在または不存在に応じて、選択環境下でのみ転写を駆動することが
できる(「コンディショナルプロモーター」または「誘導性プロモーター」)。
【0056】
当業者は、所望の発現活性に応じて、適切なプロモーターを選択し、発現させる配列と
シスに置くことができる(すなわち、つまりこれと作動可能に連結される)ことを理解す
る。例示的な活性を有する例示的なプロモーターは、本明細書中の表3.1~3.11中
に提供される。当業者は、いくつかのプロモーターには特定の転写機構(例としてRNA
ポリメラーゼ、基本転写因子など)との適合性があることを理解する。かくして、本明細
書中に記載されるいくつかのプロモーターについて適合性のある「種」が同定されるが、
本明細書中のいくつかの実施形態によると、これらのプロモーターは同定された種以外の
微生物(microorganism)において、例えば適合性のある内因性の転写機構
を有する種、適合性のある転写機構を含む遺伝子改変種、または適合性のある転写機構を
含む完全合成の微生物(microbial organism)において容易に機能す
ることができると考えられる。
【0057】
本明細書中の表3.1~3.11のプロモーターは、Biobricks財団から公的
に入手可能である。なお、Biobricks財団は、これらのプロモーターをBioB
rick(商標) Public Agreement(BPA)に従って使用すること
を奨励している。
【0058】
本明細書中に記載される「コーディング」ポリヌクレオチド(例えば第一の核酸配列お
よび/または目的産物(product of itnerest)の生産に関与する第
二の核酸配列)のいずれも、一般に、所望のプロモーターの制御下で発現させることを受
け入れられることが理解されるものである。ある実施形態において、第一の核酸配列は、
第一のプロモーターの制御下にある。ある実施形態において、目的産物の生産に関与する
第二の核酸配列は、第二のプロモーターの制御下にある。
【0059】
一般に、特定の転写産物についての翻訳開始は、転写産物のコーディング配列の5‘末
端における特定の配列により調節される。例えば、コーディング配列は、イニシエーター
tRNAと対になるように構成された開始コドンから始まることができる。天然起源の翻
訳系は典型的にMet(AUG)を開始コドンとして用いるが、イニシエーターtRNA
は任意の所望のトリプレット(複数可)に結合するように設計することができ、したがっ
て、ある種の実施形態において、AUG以外のトリプレットも開始コドンとして機能する
ことができることが容易に理解される。加えて、開始コドン付近の配列、例えば典型的な
真核生物の翻訳系におけるコザック配列((gcc)gccNccAUGG、配列番号5
42、ここでNは「A」または「G」を表す)もしくは配列内リボソーム進入部位(In
ternal Ribosome Entry Site、IRES)、または典型的な
原核生物の翻訳系におけるシャイン・ダルガーノ配列(GGAGGU、配列番号543)
は、リボソームのアセンブリを促すことができる。かくして、いくつかの実施形態におい
て、「コーディング」ポリヌクレオチド配列、例えば第一の核酸配列、または発酵産物の
生産に関与する第二の核酸配列を含む転写産物は、適切な開始コドンおよび翻訳開始配列
を含む。いくつかの実施形態において、例えば、2つ以上の「コーディング」ポリヌクレ
オチド配列が転写産物上でシスに置かれたら、各ポリヌクレオチド配列は、適切な開始コ
ドンおよび翻訳開始配列(複数可)を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、例えば、2つ以上の「コーディング」ポリヌクレオチド
配列が転写産物上でシスに置かれたら、この2つの配列は単一の翻訳開始配列の制御下に
あり、シスにコードされるポリペプチドの両方を伴って機能することができる単一のポリ
ペプチドを提供するか、またはシスにコードされる2つのポリペプチドを分離するための
手段、例えば2A配列などを提供する。いくつかの実施形態において、免疫調節因子また
は産業上有用な分子の翻訳開始を調節するために、翻訳イニシエーター(intiato
r)tRNAは調節可能である。
【0061】
表3.1:例示的な金属感受性プロモーター
【表4】
【0062】
表3.2:例示的な細胞シグナル伝達応答性プロモーター
【表5】
【0063】
表3.3:例示的な構成的E.コリσ 70 プロモーター
【表6】
【0064】
表3.4:例示的な構成的E.コリσ プロモーター
【表7】
【0065】
表3.5:例示的な構成的E.コリσ 32 プロモーター
【表8】
【0066】
表3.6:例示的な構成的B.サチリスσ プロモーター
【表9】
【0067】
表3.7:例示的な構成的B.サチリスσ プロモーター
【表10】
【0068】
表3.8:種々の原核生物からの例示的な構成的プロモーター
【表11】
【0069】
表3.9:バクテリオファージT7からの例示的な構成的プロモーター
【表12】
【0070】
表3.10:酵母からの例示的な構成的プロモーター
【表13】
【0071】
表3.11:種々の真核生物からの例示的な構成的プロモーター
【表14】
【0072】
上で参照されるプロモーターは、限定されない例としてのみ、提供される。プロモータ
ーは、合成のプロモーターであり得る。本明細書中のいくつかの実施形態の方法、使用、
組成物、宿主および核酸に適したプロモーターは、本明細書中で先に記載されており、例
として、本明細書中のいくつかの実施形態に従って実験的に確認されている配列番号70
8により表されるproC(実施例2を参照されたい)、および本明細書中のいくつかの
実施形態に従って実験的に確認されている配列番号707により表されるP24(実施例
3を参照されたい)である。いくつかの実施形態において、好適な誘導性プロモーターは
、P24 LacOハイブリッドプロモーターであり、これは、LacIの存在下で抑制
され、IPTGの存在下で活性がある。このプロモーターは、本明細書中のいくつかの実
施形態に従って実験的に確認されている(実施例3を参照されたい)。
【0073】
当業者は、上で参照されるプロモーターの多くのバリアントおよび多くの他のプロモー
ター(天然に存在する生物から単離されたプロモーター、そのバリエーション、および完
全合成のまたは操作されたプロモーターを包含する)を、本明細書中のいくつかの実施形
態に従って容易に用いることができることを容易に認識する。バリアント、完全合成また
は合成のプロモーター、またはエンジニアプロモーター(engineer promo
ter)は、転写産物をコードする核酸分子と作動可能に連結されている対照または参照
プラスミド中で試験したとき、前記プラスミドが細胞中に存在すると検出可能な量の前記
転写産物分子が存在する場合に活性があるまたは機能すると言われ、したがって、本明細
書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸において用いることができる。バ
リアント、完全合成または合成のプロモーター、またはエンジニアプロモーターは、それ
が由来するプロモーターの活性の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70
%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%を持ち得る。
【0074】
この方法は、前記自己複製性染色体外核酸分子を受け取った宿主が生存することを可能
にする条件下で、前記微生物宿主を前記自己複製性染色体外核酸分子で形質転換すること
を含んでもよい。なお、いくつかの実施形態において、自己複製性染色体外核酸分子は微
生物細胞中に提供され得て(例として、微生物細胞またはその前身が自己複製性染色体外
核酸分子で形質転換された場合)、かくして、いくつかの実施形態において、形質転換ス
テップはこの方法において必要ではない。形質転換ステップは、ステップc)の培養の前
に実施することができる。いくつかの実施形態において、形質転換ステップは、自己複製
性染色体外核酸分子を含む宿主細胞を提供するためにステップa)の前に提供される。い
くつかの実施形態において、形質転換ステップにおいて用いられる自己複製性染色体外核
酸分子は、任意選択ステップb)の第二の核酸をさらに含む。
【0075】
微生物(microbial organism)を遺伝子改変する技術は、当該技術
分野で周知である(例えばM.R.GreenおよびJ SambrookによるMol
ecular Cloning Fourth edition,2012 Cold
Spring Harbor Laboratory Press,A laborat
ory manualを参照されたい、この文献はその全体が参照により本明細書中に組
み込まれる)。いくつかの実施形態において、微生物(microorganism)は
、前記第一の核酸配列を含む自己複製性染色体外核酸分子を、および任意選択で目的産物
の生産に関与する分子を含むように遺伝子改変される。ポリヌクレオチドまたは核酸分子
は、微生物(microorganism)に送達され得る。
【0076】
ある実施形態において、微生物細胞は、前記自己複製性染色体外核酸分子を受け取った
細胞が生存することを可能にする少なくとも1つの所与の条件に対応する第一の核酸配列
の遺伝的活性によりポジティブに選択され、前記条件は環境条件であることができる。環
境条件は、培養培地であり得る。
【0077】
微生物細胞を柔軟に遺伝子改変すること、例えば、遺伝的活性の所望のタイプおよび/
またはスペクトルを持つように微生物細胞を設計または再設計することは、有用であり得
る。いくつかの実施形態において、1または複数の所望の別個の第一の核酸配列を挿入す
るためのカセットが提供される。例示的なカセットとしては、限定されるものではないが
、Cre/loxカセットまたはFLP/FRTカセットが挙げられる。
【0078】
ある実施形態において、微生物細胞は、本明細書中に記載される第一の核酸配列を含む
異なる自己複製性染色体外核酸分子を1つより多く(2つより多く、3つより多く、・・
・)含み、このことは、前記細胞が1つより多く(2つより多く、3つより多く、・・・
)の遺伝的活性を呈することができ、各遺伝的活性は細胞に利点を付与することを意味す
る。第一のプロモーターが各々の異なる自己複製性染色体外核酸分子の中に存在するなら
ば、各々の前記第一のプロモーターは、異なるものであっても同一のものであってもよい
。したがって、目的産物を生産するための方法であって、微生物宿主が1つ、2つ、3つ
、4つまたはそれより多くの別個の染色体外核酸分子を含み、各々が前記微生物宿主に対
して別個の遺伝的活性を付与する前記方法において、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれ
より多くの別個のバクテリオシンを用いることは、本明細書中の実施形態の方法、使用、
組成物、宿主および核酸の範囲内である。あるいは、その産物が少なくとも別個のバクテ
リオシンに対する免疫性を提供する単一の核酸分子が用いられることは、本明細書中の実
施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸の範囲内である。かかる核酸分子は、本明
細書中に記載されている。
【0079】
いくつかの実施形態において、所望のプラスミドを「ドナー」微生物細胞からレシピエ
ント微生物細胞に導入するため、プラスミド接合を用いることができる。Goni-Mo
reno,et al. (2013) Multicellular Computi
ng Using Conjugation for Wiring. PLoS ON
E 8(6):e65986、この文献はその全体が参照により本明細書中に組み込まれ
る。いくつかの実施形態において、プラスミド接合は、接合プラスミドをドナー微生物細
胞からレシピエント微生物細胞に導入することにより、レシピエント微生物細胞を遺伝子
改変することができる。何らかの特定の理論により限定されるものではないが、同じまた
は機能的に同じ複製遺伝子セットを含む接合プラスミドは、典型的には、同じ微生物細胞
の中で共存することができない。かくして、いくつかの実施形態において、プラスミド接
合は、レシピエント細胞中に存在していた別の接合プラスミドにとって代えるために新た
な接合プラスミドを導入することにより、レシピエント微生物細胞を「リプログラム」す
る。いくつかの実施形態において、プラスミド接合は、第一の核酸分子(いくつかの実施
形態において免疫調節因子をコードすることができる)の特定の組み合わせを使用して微
生物細胞を設計する(または再設計する)ために用いられる。いくつかの実施形態による
と、第一の酸配列(acid sequence)(いくつかの実施形態において免疫調
節因子をコードすることができる)の異なる組み合わせを含む様々な接合プラスミドが提
供される。プラスミドは、本明細書中に記載される付加的な遺伝的エレメント、例えばプ
ロモーター、翻訳開始部位などを含むことができる。いくつかの実施形態において、所望
のプラスミドを含むドナー細胞をプラスミド接合のために選択することができるように、
様々な接合プラスミドがドナー細胞のコレクション中に提供される。いくつかの実施形態
において、免疫調節因子の特定の組み合わせが選択され、組み合わせを含む接合プラスミ
ドをレシピエント細胞に導入するため、適切なドナー細胞が目的の微生物細胞と接合され
る。いくつかの実施形態において、レシピエント細胞は、例えば、培養の中に導入するた
めの、または培養を始めるために導入するための、「新たに設計された」細胞である。
【0080】
ステップb)
ステップa)に加えて、いくつかの実施形態において、この方法は、前記自己複製性染
色体外核酸分子が前記目的産物の生産に関与する第二の核酸配列を含む任意選択のステッ
プb)であって、前記第二の核酸配列の遺伝的活性が第一の配列のものから独立して制御
される、前記ステップをさらに含む。
【0081】
本明細書中の実施形態の方法、使用、組成物、宿主および核酸との関連で、表現「独立
して制御される」は、本開示を考慮して当業者により理解されるような慣例的かつ普通の
意味を持ち、第一および第二の核酸配列の遺伝的活性を制御するために別個の方法が用い
られることを意味することを包含する。核酸配列の遺伝的活性を制御する方法は、既に本
明細書中に詳細に記載されている。
【0082】
ステップc)
いくつかの実施形態において、ステップa)(本明細書中に記載される形質転換を包含
してもよい)および任意選択のステップb)の後にステップc)が続き、これは、前記形
質転換微生物宿主が自己複製性染色体外分子を維持するための所与のレベルまで第一の核
酸配列を発現することを可能にする条件下で前記形質転換微生物宿主を培養することで増
殖中の微生物集団とすることを含む。いくつかの実施形態において、任意選択で前記目的
産物をコードする第二の配列を制御すること。
【0083】
いくつかの実施形態の方法において、ステップc)の少なくとも一部の条件は、第一の
核酸配列が前記遺伝的活性を呈さないようなものである。「ステップc)の一部」は、例
えば、ステップc)の持続時間のうちの少なくとも20%、30%、40%、50%、6
0%、70%、80%もしくは90%または100%までを意味する。方法のこの実施形
態は、第一の核酸配列の遺伝的活性の存在なくしてステップc)の一部が実施されること
から、相当に魅力的である。前記遺伝的活性の存在は、微生物宿主細胞にとってエネルギ
ー的な負担となり、目的産物の好適な産生レベルを保つために必ずしも必要ではない。い
くつかの実施形態において、第一の核酸配列の遺伝的活性を伴わないステップc)の部分
があり、その後に前記活性を伴う部分があることが想定される。これらの2つの部分は、
ステップc)の間に1または複数回、繰り返され得る。
【0084】
微生物細胞は、任意の好適な微生物培養環境中で培養され得る。微生物培養環境は、多
種多様な培養培地、例えば原料を含むことができる。具体的な培養培地の選択は、所望の
用途に依存し得る。培養培地の条件としては、化学的組成だけでなく、温度、光量、pH
、COレベルなども挙げられる。培養培地は、バクテリオシンを含むことができる。あ
る実施形態において、バクテリオシンの活性を誘導する化合物は、原料の中ではなく原料
の外部に存在する。
【0085】
ある実施形態において、本明細書中に記載される遺伝子改変または形質転換微生物(m
icroorganism)は、少なくとも1つの原料を含む培養培地に添加される。あ
る実施形態において、培養培地は、免疫調節因子の活性または発現を誘導する化合物を含
む。
【0086】
用語「原料」は、本開示を考慮して当業者により理解されるような慣例的かつ普通の意
味を持ち、例えば工業プロセスとの関連で、微生物(microbial organi
sm)により消費され、発酵され、精製され、改変され、あるいは処理され得る材料を包
含する。かくして、「原料」は食品または食品製品に限定されない。本明細書中で用いら
れるとき、「原料」は、培養培地のカテゴリーである。したがって、本明細書中で用いら
れるとき、「培養培地」は、限定されるものではないが原料を包含する。かくして、本明
細書中で「培養培地」に言及されるとき、常に原料もまた明確に考えられる。
【0087】
形質転換微生物細胞を培養する前に、効果を決定すること、またはもしあるならば、前
記自己複製性染色体外核酸分子を受け取った宿主が生存することおよび任意選択で増殖す
ることを可能にする条件を最適化することが有用であり得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、その遺伝的活性が微生物宿主に利点を付与する第一の核
酸配列を含み、ここで前記第一の核酸配列の遺伝的活性は制御され、および目的産物の生
産に直接的または間接的に関与する第二の核酸配列を含んでもよい、自己複製性染色体外
核酸分子を含む微生物細胞または微生物宿主または微生物宿主細胞または合成の微生物宿
主細胞が提供される。
【0089】
いくつかの実施形態において、その遺伝的活性が微生物宿主に利点を付与する第一の核
酸配列を含み、ここで前記第一の核酸配列の遺伝的活性は制御され、および目的産物の生
産に直接的または間接的に関与する第二の核酸配列を含んでもよい、自己複製性染色体外
核酸分子が提供される。
【0090】
この微生物宿主およびこの自己複製性染色体外核酸分子の各特徴は、本明細書中に既に
記載されている。
【0091】
一般的記述
本明細書中で用いられる用語は、本開示を考慮して読んだときに当業者により理解され
る慣例的かつ普通の意味を持ち、次の一般的記述を包含することができる。
【0092】
微生物(microorganism)
本明細書中で用いられるとき、「微生物(microbial organism)」
、「微生物(microorganism)」、「微生物細胞」または「微生物宿主」お
よびこれらの語根のバリエーション(例えば複数化など)は、本開示を考慮して当業者に
より理解されるような慣例的かつ普通の意味を持ち、任意の天然起源の種または合成もし
くは完全合成の原核生物もしくは真核生物の単細胞生物、同様に古代種(Archae
species)を包含する。それゆえに、この表現は、細菌種、真菌種および藻類の細
胞を指すことができる。本明細書中の実施形態に従って用いることができる例示的な微生
物(microorganism)としては、限定されるものではないが、細菌、酵母、
糸状菌および藻類、例えば光合成性微細藻類が挙げられる。さらには、完全合成の微生物
(microorganism)ゲノムを合成して単一の微生物細胞内に移植することで
、連続的な自己複製能力がある合成の微生物(microorganism)を生産する
ことができる(Gibson et al.(2010),“Creation of
a Bacterial Cell Controlled by a Chemica
lly Synthesized Genome,” Science 329:52-
56を参照されたい、この文献はその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。か
くして、いくつかの実施形態において、微生物(microorganism)は完全合
成である。遺伝子発現を調節するエレメントおよび遺伝子産物をコードするエレメント(
例えば免疫調節因子、毒素、解毒物質および産業上有用な分子であり、目的産物とも呼ば
れる)といった遺伝的エレメントの所望の組み合わせは、所望のシャシーに載せて、部分
的または完全合成の微生物(microorganism)内にアセンブルすることがで
きる。産業用途のための遺伝子改変された微生物(microbial organis
m)の記述は、Wright,et al.(2013) “Building-in
biosafety for synthetic biology” Microbi
ology 159:1221-1235中にも見出すことができる。遺伝的エレメント
の好適な実施形態は、本明細書中で後に記載される。
【0093】
様々な細菌の種および株を本明細書中の実施形態に従って用いることができ、遺伝子改
変バリアントまたは公知の種の「シャシー」をベースとした合成細菌を提供することがで
きる。本明細書中の実施形態に従って用いることができる、産業上利用可能な特質を有す
る例示的な細菌としては、限定されるものではないが、バチルス属種(例えばバチルス・
コアグランス、バチルス・サチリスおよびバチルス・リケニホルミス)、パエニバチルス
属種、ストレプトマイセス属種、ミクロコッカス属種、コリネバクテリウム属種(Cor
ynebacterium species)、アセトバクター属種(Acetobac
ter species)、ラン藻の種、サルモネラ属種、ロドコッカス属種(Rhod
ococcus species)、シュードモナス属種、ラクトバチルス属種、エンテ
ロコッカス属種、アルカリゲネス属種(Alcaligenes species)、ク
レブシエラ属種、パエニバチルス属種、アルスロバクター属種(Arthrobacte
r species)、コリネバクテリウム属種、ブレビバクテリウム属種、サーマス・
アクアティカス(Thermus aquaticus)、シュードモナス・スタッツェ
リ(Pseudomonas stutzeri)、クロストリジウム・サーモセルス(
Clostridium thermocellus)およびエシェリキア・コリが挙げ
られる。
【0094】
様々な酵母の種および株を本明細書中の実施形態に従って用いることができ、遺伝子改
変バリアントまたは公知の種の「シャシー」をベースとした合成酵母を提供することがで
きる。本明細書中の実施形態に従って用いることができる、産業上利用可能な特質を有す
る例示的な酵母としては、限定されるものではないが、サッカロマイセス属種(Sacc
haromyces species)(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Sa
ccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・バヤヌス(Sa
ccharomyces bayanus)、サッカロマイセス・ブラウディ(Sacc
haromyces boulardii)、カンジダ属種(Candida spec
ies)(例えば、カンジダ・ウティリス(Candida utilis)、カンジダ
・クルセイ(Candida krusei))、シゾサッカロマイセス属種(Schi
zosaccharomyces species)(例えばシゾサッカロマイセス・ポ
ンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シゾサッカロマイセス
・ジャポニカス(Schizosaccharomyces japonicas))、
ピキア属種(Pichia species)またはハンゼヌラ属種(Hansenul
a species)(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris
)またはハンゼヌラ・ポリモルフド(Hansenula polymorphd))、
およびブレタノマイセス属種(Brettanomyces species)(例えば
、ブレタノマイセス・クラウセニイ(Brettanomyces clausseni
i))が挙げられる。
【0095】
様々な藻類の種および株を本明細書中の実施形態に従って用いることができ、遺伝子改
変バリアントまたは公知の種の「シャシー」をベースとした合成藻類を提供することがで
きる。いくつかの実施形態において、藻類は、光合成微細藻類を含む、これらから本質的
になる、またはこれらからなる。バイオ燃料のために有用であることができて、本明細書
中の実施形態に従って用いることができる例示的な藻類としては、ボトリオコッカス・ブ
ラウニー(Botryococcus braunii)、クロレラ属種(Chlore
lla species)、ドナリエラ・テルチオレクタ(Dunaliella te
rtiolecta)、グラシラリア属種(Gracilaria species)、
プレウロクリシス・カルテラエ(Pleurochrysis carterae)、お
よびサルガッサム属種(Sargassum species)が挙げられる。加えて、
多くの藻類が、食品製品、肥料製品、廃棄物の中和、環境浄化、および炭水化物の製造(
例えば、バイオ燃料)のために有用であることができる。
【0096】
様々な糸状菌の種および株を本明細書中の実施形態に従って用いることができ、遺伝子
改変バリアントまたは公知の種の「シャシー」をベースとした合成糸状菌を提供すること
ができる。本明細書中の実施形態に従って用いることができる、産業上利用可能な特質を
有する例示的な糸状菌としては、限定されるものではないが、アクレモニウム(Acre
monium)、アガリクス(Agaricus)、アルテルナリア(Alternar
ia)、アスペルギルス(Aspergillus)、アウレオバシジウム(Aureo
basidium)、ボトリオスパエリア(Botryospaeria)、セリポリオ
プシス(Ceriporiopsis)、ケトミジウム(Chaetomidium)、
クリソスポリウム(Chrysosporium)、クラビセプス(Claviceps
)、コクリオボルス(Cochliobolus)、コプリノプシス(Coprinop
sis)、コプトテルメス(Coptotermes)、コリナスカス(Corynas
cus)、クリフォネクトリア(Cryphonectria)、クリプトコックス(C
ryptococcus)、ジプロディア(Diplodia)、エクシジア(Exid
ia)、フィリバシジウム(Filibasidium)、フザリウム(Fusariu
m)、ジベレラ(Gibberella)、ホロマスチゴトイデス(Holomasti
gotoides)、フミコラ(Humicola)、イルペクス(Irpex)、レン
チヌラ(Lentinula)、レプトスパエリア(Leptospaeria)、マグ
ナポルテ(Magnaporthe)、メラノカルプス(Melanocarpus)、
メリピルス(メリピルス)、ムコール(Mucor)、ミセリオフトラ(Mycelio
phthora)、ネオカフィマスティクス(Neocaffimastix)、ニュー
ロスポラ(Neurospora)、ペキロマイセス(Paecilomyces)、ペ
ニシフィウム(Peniciffium)、ファネロカエテ(Phanerochaet
e)、ピロミセス(Piromyces)、ポイトラシア(Poitrasia)、シュ
ードプレクタニア(Pseudoplectania)、シュードトリコニンファ(Ps
eudotrichonympha)、リゾムコール(Rhizomucor)、シゾフ
ィラム(Schizophyllum)、スキタリジウム(Scytalidium)、
タラロマイセス(Talaromyces)、サーモアスカス(Thermoascus
)、チエラビア(Thielavia)、トリポクラジウム(Tolypocladiu
m)、トリコデルマ(Trichoderma)、トリコファエア(Trichopha
ea)、ベルチシリウム(Verticillium)、ボルバリエラ(Volvari
ella)またはキシラリア(Xylaria)が挙げられる。
【0097】
種としては、アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium cellu
lolyticus)、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus ac
uleatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamor
i)、アスペルギルス・フォエチダス(Aspergillus foetidus)、
アスペルギルス・フミガタス(Aspergillus fumigatus)、アスペ
ルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギ
ルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・
ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼ(Asper
gillus oryzae)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysospori
um inops)、クリソスポリウム・ケラチノフィラム(Chrysosporiu
m keratinophilum)、クリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrys
osporium lucknowense)、クリソスポリウム・メルダリウム(Ch
rysosporium merdarium)、クリソスポリウム・パニコラ(Chr
ysosporium pannicola)、クリソスポリウム・クイーンズランディ
カム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウ
ム・トロピカム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム
・ゾナ・ターン(Chrysosporium zona turn)、フザリウム・バ
クトリジオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セ
レアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルークウェレンス(
Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモラム(Fusa
rium culmorum)、フザリウム・グラミネアルム(Fusarium gr
aminearum)、フザリウム・グラミヌム(Fusarium graminum
)、フザリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フ
ザリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポル
ム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レチクラタム(Fusar
ium reticulatum)、フザリウム・ロセウム(Fusarium ros
eum)、フザリウム・サムブシナム(Fusarium sambucinum)、フ
ザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム
・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フ
ザリウム・サルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・ト
ルロサム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコテシオイデス
(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・ベネナトルン
(Fusarium venenaturn)、フミコラ・グリセア(Humicola
grisea)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、
フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、イルペクス・ラク
テウス(Irpex lacteus)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehe
i)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermop
hila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニ
シリウム・フニクロスム(Penicillium funiculosum)、ペニシ
リウム・プロプロゲナム(Penicillium purpurogenum)、ファ
ネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysospori
um)、チエラビア・アクロマチカ(Thielavia achromatica)、
チエラビア・アルボミセス(Thielavia albomyces)、チエラビア・
アルボピロサ(Thielavia albopilosa)、チエラビア・オウストラ
レインシス(Thielavia australeinsis)、チエラビア・フィメ
チ(Thielavia fimeti)、チエラビア・ミクロスポラ(Thielav
ia microspora)、チエラビア・オビスポラ(Thielavia ovi
spora)、チエラビア・ペルビアナ(Thielavia peruviana)、
チエラビア・セトサ(Thielavia setosa)、チエラビア・スペデドニウ
ム(Thielavia spededonium)、チエラビア・サブサーモフィラ(
Thielavia subthermophila)、チエラビア・テレストリス(T
hielavia terrestris)、トリコデルマ・ハルジアヌム(Trich
oderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderm
a koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma
longibrachiatum)、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderm
a reesei)またはトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma virid
e)が挙げられる。
【0098】
抗生物質
「抗生物質」およびこの語根のバリエーションは、本開示を考慮して当業者により理解
されるような慣例的かつ普通の意味を持ち、少なくとも1つの微生物細胞を殺傷するまた
は増殖を停止させることができる代謝物または代謝経路の中間体を包含する。いくつかの
抗生物質は、微生物細胞、例えば細菌に生産させることができる。いくつかの抗生物質は
、化学的に合成することができる。少なくとも、バクテリオシンは遺伝子産物(いくつか
の実施形態においては、付加的な翻訳後プロセシングを受けたもの)またはその合成アナ
ログを指し、抗生物質は代謝経路の中間体もしくは産物またはそれらの合成アナログを指
す点で、バクテリオシンは抗生物質と別個のものと理解される。
【0099】
配列同一性および類似性
配列同一性は、本開示を考慮して当業者により理解されるような慣例的かつ普通の意味
を持ち、配列を比較することにより決定される、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチドまた
はタンパク質)配列または2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関係を包含する
。通常、配列同一性または類似性は、比較される配列の全長にわたって比較される。当該
技術分野において、「同一性」も、場合によってはかかる配列のストランド間のマッチに
より決定される、アミノ酸または核酸配列間の配列の関連性の程度に言及することができ
る。2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列およびそ
の保存的アミノ酸置換を第二のポリペプチドの配列と比較することにより決定することが
できる。「同一性」および「類似性」は、当業者に公知の様々な方法により容易に計算す
ることができる。いくつかの実施形態において、配列同一性は、本明細書中で同定される
配列の全長を比較することにより決定される。
【0100】
同一性を決定するためのいくつかの方法は、試験される配列間の最大マッチを与えるよ
うに設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公的に入手可能なコンピ
ュータープログラム中に成文化される。2つの配列間の同一性および類似性を決定するた
めのコンピュータープログラム方法としては、例として、NCBIおよび他の供給源から
公的に入手可能なBestFit、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Al
tschul,S.F. et al.,J.Mol.Biol. 215:403-4
10(1990)が挙げられる(BLAST Manual,Altschul,S.,
et al.,NCBI NLM NIH Bethesda,MD 20894)。用
いられるアルゴリズムは、EMBOSS(ワールドワイドウェブ上、www.ebi.a
c.uk/emboss/alignにおいてアクセス可能)であることができる。EM
BOSSを用いたアミノ酸配列比較のためのパラメーターとしては、ギャップ開始10.
0、ギャップ伸長0.5、Blosum 62行列を挙げることができる。EMBOSS
を用いた核酸配列比較のためのパラメーターとしては、ギャップ開始10.0、ギャップ
伸長0.5、DNA完全行列(DNA同一性行列)を挙げることができる。
【0101】
任意選択で、アミノ酸類似性の程度の決定において、当業者は、いわゆる「保存的」ア
ミノ酸置換を考慮に入れることもあり得て、これは当業者に明らかである。保存的アミノ
酸置換とは、類似の側鎖を持つ残基の交換可能性を指す。例えば、脂肪族側鎖を持つアミ
ノ酸のグループはグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂
肪族ヒドロキシル側鎖を持つアミノ酸のグループはセリンおよびスレオニンであり;アミ
ド含有側鎖を持つアミノ酸のグループはアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側
鎖を持つアミノ酸のグループはフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり
;塩基性側鎖を持つアミノ酸のグループはリジン、アルギニンおよびヒスチジンであり;
硫黄含有側鎖を持つアミノ酸のグループはシステインおよびメチオニンである。好適な保
存的アミノ酸置換グループとしては、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニ
ン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミ
ンが挙げられる。本明細書中に開示されるアミノ酸配列の置換的バリアントは、開示され
る配列中の少なくとも1つの残基が取り除かれ、異なる残基がその場所に挿入されている
ものである。いくつかの実施形態において、アミノ酸の変化は保存的である。天然起源ア
ミノ酸の各々に適した保存的置換としては、Alaからser;Argからlys;As
nからglnまたはhis;Aspからglu;Cysからserまたはala;Gln
からasn;Gluからasp; Glyからpro;Hisからasnまたはgln;
Ileからleuまたはval;Leuからileまたはval;Lysからarg;g
lnまたはglu;Metからleuまたはile;Pheからmet、leuまたはt
yr;Serからthr;Thrからser;Trpからtyr;Tyrからtrpまた
はphe;およびValからileまたはleuが挙げられる。
【0102】
同種(homologous)または相同(homologous)
用語「同種(homologous)」は、本開示を考慮して当業者により理解される
ような慣例的かつ普通の意味を持ち、所与の(組換え)核酸またはポリペプチド分子およ
び所与の宿主生物または宿主細胞間の関係を指し示すために用いられる場合を包含して、
天然において核酸またはポリペプチド分子が同じ種の、任意選択で同じ品種または株であ
る宿主細胞または生物により産生されることを意味するものと理解することができる。宿
主細胞と同種であるならば、ポリペプチドをコードする核酸配列は、典型的には、その天
然の環境中よりも別のプロモーター配列に作動可能に連結される。2つの核酸配列の関連
性を指し示すために用いられる場合、用語「相同(homologous)」は、本開示
を考慮して当業者により理解されるような慣例的かつ普通の意味を持ち、相補的な一本鎖
核酸配列にハイブリダイズし得る1つの一本鎖核酸配列を指すことができる。ハイブリダ
イゼーションの程度は、先に提示したように、配列間の同一性の量ならびにハイブリダイ
ゼーション条件、例えば温度および塩濃度などといったいくつもの要因に依存し得る。同
一性の領域は約5bpより大きいものであることができ、同一性の領域は10bpより大
きいものであることができる。いくつかの実施形態において、2つの核酸またはポリペプ
チド配列は、80%超の同一性を持つ場合に相同であると言われる。
【0103】
異種
用語「異種」は、本開示を考慮して当業者により理解されるような慣例的かつ普通の意
味を持ち、核酸(DNAまたはRNA)またはタンパク質に関して用いられた場合を包含
して、それが存在する生物、細胞、ゲノムもしくはDNAもしくはRNA配列の一部とし
て天然にはない、または天然においてそれが見出されるものとは異なる細胞もしくはゲノ
ムもしくはDNAもしくはRNA配列中の位置(複数可)において見出される核酸または
タンパク質(ポリペプチドまたは酵素とも称される)を指すことができる。異種の核酸ま
たはタンパク質は、それが導入される細胞にとって内因性ではないが、別の細胞から得ら
れており、または合成的もしくは組換え的に生産されている。一般に、必然的ではないが
、かかる核酸は、DNAが転写または発現した細胞により普通は生産されないタンパク質
をコードする。同様に、外因性RNAは、外因性RNAが存在する細胞において普通は発
現しないタンパク質をコードする。異種の核酸およびタンパク質はまた、外来核酸または
タンパク質とも呼ばれ得る。それが発現する細胞にとって異種または外来であると当業者
が認識する任意の核酸またはタンパク質は、異種の核酸またはタンパク質という用語によ
り本明細書中に包含される。異種という用語はまた、核酸またはアミノ酸配列の非天然の
組み合わせ、すなわち組み合わせ配列の少なくとも2つが互いにとって外来である組み合
わせにも当てはまる。
【0104】
作動可能に連結される
本明細書中で用いられるとき、用語「作動可能に連結される」は、本開示を考慮して当
業者により理解されるような慣例的かつ普通の意味を持ち、機能的関係にあるポリヌクレ
オチドエレメント(またはコーディング配列または核酸配列または核酸分子)の連結を指
すことができる。核酸配列は、別の核酸配列と機能的関係になるように置かれたとき、「
作動可能に連結される」。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、コーディング配
列の転写に影響を与えるならば、コーディング配列に作動可能に連結される。作動可能に
連結されるとは、連結される核酸配列が典型的には近接することを意味し、2つのタンパ
ク質のコーディング領域をつなぐことが必要な場合は、近接してリーディングフレームに
入ることを意味する。
【0105】
プロモーター
本明細書中で用いられるとき、用語「プロモーター」は、本開示を考慮して当業者によ
り理解されるような慣例的かつ普通の意味を持ち、1または複数の核酸分子の転写を制御
するように機能する、核酸分子の転写開始部位の転写方向に関して上流に位置する核酸断
片を指すことができ、DNA依存的RNAポリメラーゼの結合部位、転写開始部位、なら
びに限定されるものではないが転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクティベーター
タンパク質結合部位といった任意の他のDNA配列、並びにプロモーターからの転写の量
を調節/制御するように直接的または間接的に作用することが当業者に公知である任意の
他のヌクレオチド配列の存在により構造的に同定される。「構成的」プロモーターは、大
半の環境および発生条件下で活性があるプロモーターである。「誘導性」プロモーターは
、環境および発生的な調節の下で活性があるプロモーターである。
【0106】
本書類およびその特許請求の範囲において、動詞「含むこと」およびその活用形は、限
定されない意味で、その言葉に続く項目が包含されるが、具体的に言及されない項目が除
外されないことを意味するように用いられる。加えて、動詞「なること」は、「から本質
的になること」により置き換えられ得て、本明細書中で定義される自己複製性染色体外核
酸分子、微生物宿主(または方法)が具体的に同定されたものよりも付加的な構成成分(
複数可)(または付加的なステップ)を含み得て、前記付加的な構成成分(複数可)(ま
たは付加的なステップ)は本発明の固有の性質を変えないことを意味する。加えて、不定
冠詞「a」または「an」によるエレメントへの言及は、エレメントがただ1つであるこ
とを文脈が明確に必要としないかぎり、エレメントが1つより多く存在する可能性を除外
しない。それゆえに、不定冠詞「a」または「an」は、通常「少なくとも1つ」を意味
する。
【0107】
本明細書中で引用される全ての特許および参考文献は、その全体が参照により本明細書
中に組み込まれる。次の例は、説明の目的のみのために提示され、本発明の範囲を限定す
ることを全く意図しない。
【0108】
配列表(特に指示がない限りDNA)
配列番号1 エンテロコッカス・フェカリス ペプチド
配列番号2 バクテリオシンのモチーフ特質
配列番号3 ハイブリッドバクテリオシン、Ent35-MccV
配列番号4~698、720~759:表1~3中の配列(表中に指し示されるように、
半分はDNA/半分はタンパク質)
配列番号699 McbG
配列番号700 MccE
配列番号701 MccEのC末端部分
配列番号702 pSyn2-McbG
配列番号703 pSyn2-McbE/F
配列番号704 pMcbG1.0
配列番号705 pMcbG.1.1.
配列番号706 MccEのC末端部分(アミノ酸)
配列番号707 P24プロモーター
配列番号708 proCプロモーター
配列番号709 Cvi
配列番号710 proC-McbG-CterMccE(proc)(CterはC末
端により置き換えることができる)
配列番号711 proC-Cvi-Cter-MccE(proc)(CterはC末
端により置き換えることができる)
配列番号712 pBACT5.0
配列番号713 pBACT2.0
配列番号714 pBACT5.0-mcherry
配列番号715 McbG-MccE
配列番号716 McbG-Cter部分MccE(CterはC末端により置き換える
ことができる)
配列番号717 Cvi-MccE
配列番号718 Cvi-Cter部分MccE(CterはC末端により置き換えるこ
とができる)
配列番号719:ベクターpUC-ColV
図の説明
図1:構成:pSyn2-McbE/F:Ptacの下に遺伝子McbEおよびFを含有
する。
【0109】
図2:構成:pSyn2-McbG:Ptacの下に遺伝子McbGを含有する。
【0110】
図3:構成:pMcbG 1.1:P24の下に遺伝子McbGを含有する。
【0111】
図4:構成:pMcbG 1.0:P24 LacOの下に遺伝子McbGを含有する。
【0112】
図5:pBACT5.0ベクター
図6:pBACT2.0ベクター
図7:pBACT5.0-mcherryベクター
図8:プロモーターの調整。インダクターの非存在下では(上部)、リプレッサーはオペ
レーターと結合して選択遺伝子の発現を妨げることができる。インダクターの存在下では
(下部)、リプレッサーはオペレーターと結合することができず、選択遺伝子の発現が可
能になる。
【0113】
図9:KanR(pKan-pLac)を有し、ミクロシンC7およびColV(pBA
CT6.0-pLac)に対する2つの免疫性を有するE.コリにおけるタンパク質Xの
過剰発現の比較。5mgの総抽出物をSDS-PAGE中で分析した。
【0114】
図10:KanR(pKan-T7prom)を有し、ミクロシンC7およびColV(
pBACT5.0-T7prom)に対する2つの免疫性を有するE.コリにおけるイオ
タ-カラギナーゼタンパク質の過剰発現の比較。5mgの総抽出物をSDS-PAGE中
で分析した。
【0115】
図11:KanR(pKan-T7prom)を有し、ミクロシンC7およびColV(
pBACT5.0-T7prom)に対する2つの免疫性を有するE.コリにおけるラム
ダ-カラギナーゼタンパク質の過剰発現の比較。5mgの総抽出物をSDS-PAGE中
で分析した。
【実施例0116】
実施例1:選択剤としてのバクテリオシンB17およびC7の使用剤
1.バクテリオシンB17、C7およびColVの生産
使用した株:C600:F tonA21 thi-1 thr-1 leuB6 l
acY1 glnV44 rfbC1 fhuA1 λ
Appleyard Genetics 39(1954),440-452中に記載さ
れている。
【0117】
Mic B17の生産のために使用したベクターは下の表中に記載される。
【0118】
表X:Mic B17の生産のために使用したベクター
使用したコンストラクト pCID909
mccB17産生遺伝子(mcbABCDEFG)を含有するpACYC184、クロラ
ムフェニコール抵抗性
これらのコンストラクトは、Rodriguez-Sainz,M.C.,C.et
al.1990.Mol.Microbiol.4:1921-1932中に詳細に記載
されたものである。
【0119】
Mic C7を生産するために使用したベクターは、Pp70である。このベクターは
pBR322ベースであり、mcc遺伝子クラスターを有する約6000bpのDNA断
片を保有する(Zukher I et al,Nucleic Acids Rese
arch,2014,Vol.42,No.19 11891-11902中に記載され
る)。
【0120】
ColVを生産するために使用したベクターは、pUC-ColV(配列番号719)
である。このベクターはpUC57ベースであり、ColV遺伝子クラスターを有する約
5000bpのDNA断片を保有する。
【0121】
これらの組換えベクターを宿した株を、LB培地中、37℃で増殖させた。一晩培養後
、発酵培地を遠心分離し、上清を0.2ミクロンのフィルターでろ過した(flit r
ed)。
【0122】
上清中に存在するバクテリオシン活性を、感受性株を含有するプレート上の拡散阻害増
殖(diffusion inhibition growth)のサイズにより推定し
た。
【0123】
2.結果
本発明者らは、B17、C7またはColV活性を呈する上清を、培養培地中に加えら
れる古典的抗生物質、例えばAmp、KanまたはChloなどとして用いることができ
ることを実証した。かかるバクテリオシン活性を提示する上清を数ヶ月間(少なくとも1
2ヶ月間)-20℃で保存したが、活性の著しい減少は認められなかった。かかるバクテ
リオシン活性を有する培地を含有するペトリプレートを+4℃で数週間(少なくとも4週
間)保存した。本発明者らは、活性の減少を認めなかった。したがって、本発明者らは、
培養培地中に存在するかかるB17、C7またはColV活性は安定であることを実証し
た。
【0124】
3.結論
実験室中での発酵により産生されるバクテリオシンB17、C7およびColVは、簡
単に生産でき、使い易く、培養培地中で安定な選択剤である。これらの性質は、古典的な
選択剤として用いられる抗生物質のものと同様である。
【0125】
実施例2:C7およびB17に対する抵抗性の付与に必要とされる最小の遺伝的エレメン
トの同定
1.必要なベクターの構築
文献は、B17バクテリオシン:B17のための配列番号699により表されるMcb
Gおよびポンプ(B17のためのMcbEおよびMcbF、配列番号703により表され
る)の場合にも、それ自身のバクテリオシンの生産に対する宿主の生産のために必要なエ
レメントを決定することを可能にした。これらの遺伝子は、必要である(またはより正確
には、バクテリオシンB17の作用に対する保護に関与する)ことが知られている。B1
7遺伝子座についての文献は、それがどれであるか、または抵抗性を与えるために十分な
エレメントはどれであるかを同定していない。
【0126】
本発明者らは、B17免疫性構造から遺伝子を分離し、これらをベクター中で、誘導性
プロモーター(Ptac)の後ろにそれらをクローニングした。
【0127】
構築物:pSyn2-McbG(図2、配列番号702):Ptacの下に遺伝子Mcb
Gを含有する
構築物:pSyn2-McbE/F(図1、配列番号703):Ptacの下に遺伝子M
cbEおよびFを含有する
本発明者らは、B17免疫性構造から遺伝子を分離し、それらをベクター中で、誘導性
プロモーター(Ptac)の後ろにクローニングした。
【0128】
本発明者らは、McbGの低発現(Ptacは誘導されない)は株に対する抵抗性の表
現型を与えるために十分であること、他方、McbE/Fの存在は毒性であり、B17の
存在に関係して提供される保護についての応答を与えさせなかったことを示した。
【0129】
2.結果
驚くべきことに、配列番号701により表されるMccEのC末端部分は、バクテリオ
シンC7に対する抵抗性を付与するために十分であることが見出された。
【0130】
本発明者らは、それぞれB17およびC7に対する抵抗性を与えるためにベクター中に
クローニングした場合にMcbGおよびMccE遺伝子(または配列番号701により表
されるトランケートのMccE)のプラスミドからの発現が可能であること、ならびに、
これらのタンパク質をこれらのミクロシン/バクテリオシンに感受性である株においてベ
クター選択マーカーとして用いることができることを実証した。使用したベクターは、p
BACT2.0(図6、配列番号713)である。
【0131】
配列番号710は、コンストラクトproC-McbG-CterMccEを表す。
【0132】
本発明者らは、それぞれColVおよびC7に対する抵抗性を与えるためにベクター中
にクローニングした場合にCviおよびMccE遺伝子のC末端部分のプラスミドからの
発現が可能であること、ならびに、これらのタンパク質をこれらのミクロシン/バクテリ
オシンに感受性である株においてベクター選択マーカーとして用いることができることを
実証した。使用したベクターは、pBACT5.0(図5、配列番号712)である。
【0133】
配列番号711は、コンストラクトproC-Cvi-CterMccEを表す。
【0134】
3.結論
したがって、配列番号701により表される小さいサイズの単一セグメントをC7に対
する選択マーカーとして用いることが可能である。
【0135】
実施例3:細菌からのエネルギーをほとんどまたは全く用いない選択可能マーカーをMc
bGから作成することができるか?
1.構築したベクター
この疑問に答えるため、McbG遺伝子を弱プロモーターP24(配列番号707)の
下にクローニングした。P24プロモーターは、Braatsch S et al,B
iotechniques. 2008 Sep;45(3):335-7中に記載され
たものである。
【0136】
本発明者らは、B17 McbG免疫性構造遺伝子を挿入し、後者をベクター中で弱い
構成的プロモーター(P24)の後ろにクローニングした。LacIの存在下で抑制され
、IPTGの存在下で活性がある誘導性プロモーターであるP24 LacOハイブリッ
ドプロモーターを使用して、第二のコンストラクトを作成した。
【0137】
構築物:P24 LacOの下に遺伝子McbGを含有するpMcbG 1.0(図4
配列番号704)
構築物:P24の下に遺伝子McbGを含有するpMcbG 1.1(図3、配列番号7
05)
使用した株は以下のものである:
BL21(DE3):fhuA2[lon] ompT gal(λ DE3)[dcm
]ΔhsdS
λ DE3=λ sBamHIo ΔEcoRI-B int::(lacI::Pla
cUV5::T7遺伝子1)i21 Δnin5
BL21(DE3)株をベクターpMcbG1.0またはpMcbG1.1(図3また
は4を参照されたい)で形質転換した。形質転換後、形質転換体を、B17を含有するプ
レート上で選択した。単離コロニーを再度増殖させ、それらが含有したプラスミドを、適
切な制限酵素での処理の後にゲル電気泳動により分析した。
【0138】
2.結果
本発明者らは、McbGの弱い転写はB17に対する抵抗性を与えるために十分である
ことを示した。加えて、本発明者らは、この選択マーカーはP24 LacOプロモータ
ーを介して誘導可能であること、およびこの遺伝子を含有するベクターはIPTGの存在
下でのみ抵抗性の表現型を与えることを示している。
【0139】
3.結論
McbG遺伝子は、構成的または誘導的に選択可能なマーカーとして用いることが可能
である。それゆえに、プロセス中の必要に応じた低レベルでの構成的発現および誘導性発
現は、産生細胞からプラスミドを喪失することなく、産生細胞にとってのエネルギー的な
負担を低減することを可能にすることが示される。
【0140】
実施例4:m-cherryタンパク質の生産
配列番号714は、m-cherryタンパク質を生産するために用いられるコンスト
ラクトを表す。このコンストラクトは図7中に表現される。
【0141】
m-cherryタンパク質は産生され、IPTGの存在下、ペトリ皿上で赤色になる
細菌コロニーとして可視化された。
【0142】
実施例5:プロモーターの調整
本発明者らは、調整可能な免疫性選択を有するベクターを調製した(図8を参照された
い)。プロモーターの調整は、選択を「オン」または「オフ」に切り替えることを可能に
する。これは、初めて、例えば宿主による組換えプラスミドの喪失に応じて、選択圧を発
酵プロセス中の必要性に適応させることを可能にする。これは、宿主にとってのエネルギ
ーの負担を制限することにより利点を提供する。それゆえに、かかるベクターは工業的結
果物(組換え産物)を改良する。そのうえ、これらはどのような株においても使い易く(
宿主ゲノム中の特別な特徴は必要とされない)、抗生物質を必要としない。
【0143】
実施例6:抗生物質(カナマイシン)選択と免疫性選択との比較
本発明者らは、異なる組換えタンパク質に対して免疫性選択を適用した。
【0144】
図9は、KanR(pKan-pLac)を有し、ミクロシンC7およびColV(p
BACT6.0-pLac)に対する2つの免疫性を有するE.コリにおけるタンパク質
Xの過剰発現の比較を示す。5mgの総抽出物をSDS-PAGE中で分析した。
【0145】
図10は、KanR(pKan-T7prom)を有し、ミクロシンC7およびCol
V(pBACT5.0-T7prom)に対する2つの免疫性を有するE.コリにおける
イオタ-カラギナーゼタンパク質の過剰発現の比較を示す。5mgの総抽出物をSDS-
PAGE中で分析した。使用したベクターは、pBACT5.0ベクター(配列番号71
2)をベースとする。
【0146】
図11は、KanR(pKan-T7prom)を有し、ミクロシンC7およびCol
V(pBACT5.0-T7prom)に対する2つの免疫性を有するE.コリにおける
ラムダ-カラギナーゼタンパク質の過剰発現の比較を示す。5mgの総抽出物をSDS-
PAGE中で分析した。使用したベクターは、pBACT5.0ベクター(配列番号71
2)をベースとする。
【0147】
この例において用いられる弱い構成的proCプロモーターは、宿主にとってのエネル
ギー的負担を低減することを可能にする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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