(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105569
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】容器、収容物入り容器、収容物入り容器の製造方法、解凍方法および細胞製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240730BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C12M1/00 Z
B65D25/20 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024079696
(22)【出願日】2024-05-15
(62)【分割の表示】P 2020058646の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 良至
(72)【発明者】
【氏名】原田 怜
(72)【発明者】
【氏名】籠田 将慶
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容器内の収容物を解凍するとき等に、液体が容器の開口部に付着することを効果的に抑制する容器を提供する。
【解決手段】容器10は、生体物質を収容する容器であって、第1端部23と第2端部24とを有し、少なくとも第1端部が閉鎖されている筒状の容器本体20と、容器本体の接続部に接続した広がり部40と、を備え、容器本体は、容器本体の延びる方向において、接続部よりも第1端部側に位置し、内部に収容物を収容する、収容部21を有し、容器の、接続部を通り且つ容器本体の延びる方向に垂直な断面において、容器の輪郭に接する容器第1接線と、容器の輪郭に接し且つ容器第1接線に平行な容器第2接線と、の距離がとり得る最小値は、容器本体の輪郭に接する容器本体第1接線と、容器本体の輪郭に接し且つ容器本体第1接線に平行な容器本体第2接線と、の距離がとり得る最小値よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体物質を収容する容器であって、
第1端部と第2端部とを有し、少なくとも前記第1端部が閉鎖されている筒状の容器本体と、
前記容器本体の接続部に接続した広がり部と、を備え、
前記容器本体は、前記容器本体の延びる方向において、前記接続部よりも前記第1端部側に位置し、内部に収容物を収容する、収容部を有し、
前記容器の、前記接続部を通り且つ前記容器本体の延びる方向に垂直な断面において、前記容器の輪郭に接する容器第1接線と、前記容器の輪郭に接し且つ前記容器第1接線に平行な容器第2接線と、の距離がとり得る最小値は、前記容器本体の輪郭に接する容器本体第1接線と、前記容器本体の輪郭に接し且つ前記容器本体第1接線に平行な容器本体第2接線と、の距離がとり得る最小値よりも大きく、
前記容器本体の延びる方向において、前記接続部よりも前記第2端部側に位置する、目印部をさらに備える、容器。
【請求項2】
生体物質を収容する容器であって、
第1端部と第2端部とを有し、少なくとも前記第1端部が閉鎖されている筒状の容器本体と、
前記容器本体の接続部に接続した広がり部と、を備え、
前記容器本体は、前記容器本体の延びる方向において、前記接続部よりも前記第1端部側に位置し、内部に収容物を収容する、収容部を有し、
前記容器の、前記接続部を通り且つ前記容器本体の延びる方向に垂直な断面において、前記容器本体の輪郭に接する容器本体第1接線と、前記容器本体の輪郭に接し且つ前記容器本体第1接線に平行な容器本体第2接線とを引くと、前記容器本体第1接線及び前記容器本体第2接線が前記広がり部を横切り、
前記容器本体の延びる方向において、前記接続部よりも前記第2端部側に位置する、目印部をさらに備える、容器。
【請求項3】
前記目印部は、容器本体の外周に設けられた溝状の部分である、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記容器本体の延びる方向において、前記接続部よりも前記第2端部側で前記容器本体に接続するとともに、前記容器本体から離間するように突出している、つかみ部をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
前記つかみ部は、前記容器本体の延びる方向において、前記目印部よりも前記第2端部側に位置する、請求項4に記載の容器。
【請求項6】
前記容器本体の内面に接続するとともに、前記容器本体の延びる方向において前記第2端部側に突出した、環状の泡入れ部をさらに備え、
前記目印部は、前記容器本体の延びる方向において、前記泡入れ部と重なる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
前記広がり部は、前記容器本体の延びる方向に交差する方向に広がる広がり本体部と、前記広がり本体部の前記容器本体から離間する側の端部に接続した広がり補助部と、を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
前記広がり部の体積をV
1、前記容器本体のうち、内部を含めた前記接続部の体積と、内部を含めた前記収容部の体積との合計の体積をV
2、前記広がり補助部の体積をV
3とする場合に、以下の式(3)で表される割合Y(%)が1%以上である、請求項7に記載の容器。
【数1】
【請求項9】
前記広がり部は、温められることによって膨張する内容物を収容した袋状部を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の容器。
【請求項10】
前記袋状部は、前記内容物が温められて膨張することによって、前記容器本体から離間する側に向かって起立した状態となる、請求項9に記載の容器。
【請求項11】
前記容器本体は、前記接続部よりも前記第2端部側に、前記収容部を外部に通じさせる開口部を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、容器、収容物入り容器、収容物入り容器の製造方法、解凍方法および細胞製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、凍結された状態の収容物を保管するための容器が知られている。容器は、例えば細胞や細胞からの分泌物質等の生体物質を凍結された状態で保管する生体物質用容器として用いられる。生体物質用容器は、特に、細胞用容器として、培養された細胞を、使用されるまで凍結された状態で保管する用途で用いられる。容器内の収容物は、使用される直前に、容器とともに適度に加熱された液体との熱交換で解凍される。例えば、容器に細胞や分泌物質等の生体物質を含んだ収容物が収容されている場合には、30℃~40℃に維持された水等の液体中に容器を浸すことで、収容物が解凍される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-110539号公報
【特許文献2】特開2001-70402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば容器内の収容物を解凍するとき等に、容器の一部を液体に浸すことが求められる場合がある。この場合に、容器に収容物を収容するための開口部、又は容器から収容物を取り出すための開口部に付着した液体によって、収容物が汚染されてしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、このような点を考慮してなされたものであって、液体が容器の開口部に付着することを効果的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示による容器は、
生体物質を収容する容器であって、
第1端部と第2端部とを有し、少なくとも前記第1端部が閉鎖されている筒状の容器本体と、
前記容器本体の接続部に接続した広がり部と、を備え、
前記容器本体は、前記容器本体の延びる方向において、前記接続部よりも前記第1端部側に位置し、内部に収容物を収容する、収容部を有し、
前記容器の、前記接続部を通り且つ前記容器本体の延びる方向に垂直な断面において、前記容器の輪郭に接する容器第1接線と、前記容器の輪郭に接し且つ前記容器第1接線に平行な容器第2接線と、の距離がとり得る最小値は、前記容器本体の輪郭に接する容器本体第1接線と、前記容器本体の輪郭に接し且つ前記容器本体第1接線に平行な容器本体第2接線と、の距離がとり得る最小値よりも大きい。
【0007】
本開示による容器は、
生体物質を収容する容器であって、
第1端部と第2端部とを有し、少なくとも前記第1端部が閉鎖されている筒状の容器本体と、
前記容器本体の接続部に接続した広がり部と、を備え、
前記容器本体は、前記容器本体の延びる方向において、前記接続部よりも前記第1端部側に位置し、内部に収容物を収容する、収容部を有し、
前記容器の、前記接続部を通り且つ前記容器本体の延びる方向に垂直な断面において、前記容器本体の輪郭に接する容器本体第1接線と、前記容器本体の輪郭に接し且つ前記容器本体第1接線に平行な容器本体第2接線とを引くと、前記容器本体第1接線及び前記容器本体第2接線が前記広がり部を横切る。
【0008】
本開示による容器において、前記収容部は、前記容器本体のうち前記接続部より前記第2端部側の部分よりも、前記容器本体の延びる方向に垂直な方向において小さな寸法を有する、収容部細部を有してもよい。
【0009】
本開示による容器において、前記容器本体の延びる方向における前記収容部の寸法は、前記容器本体の延びる方向に垂直な方向における前記収容部の寸法よりも大きくてもよい。
【0010】
本開示による容器において、前記収容部は、前記容器本体の延びる方向に垂直な断面において、複数の凹部を有する形状を有してもよい。
【0011】
本開示による容器において、前記収容部は、前記容器本体の延びる方向に垂直な断面において、回転対称性を有してもよい。
【0012】
本開示による容器において、前記容器本体のうち、前記収容部における壁面の厚みは、3mm以下であってもよい。
【0013】
本開示による容器において、前記容器本体のうち、前記収容部における壁面の熱伝導率は、0.1W/m・K以上であってもよい。
【0014】
本開示による容器において、前記広がり部は、前記容器本体の前記接続部以外の部分から離間するように、突出していてもよい。
【0015】
本開示による容器において、前記広がり部の体積をV
1、前記容器本体のうち、内部を含めた前記接続部の体積と、内部を含めた前記収容部の体積との合計の体積をV
2、前記容器の質量をW
1、水の密度をρ
Wとする場合に、以下の式(1)が成立してもよい。
【数1】
【0016】
本開示による容器において、以下の式(2)で表される割合X(%)が5%以上であってもよい。
【数2】
【0017】
本開示による容器において、前記広がり部の体積を、前記広がり部と前記接続部との境界を構成する接続面の面積で割った値が、5(mm3/mm2)以上であってもよい。
【0018】
本開示による容器において、前記広がり部は、前記容器本体の延びる方向に交差する方向に広がる広がり本体部と、前記広がり本体部の前記容器本体から離間する側の端部に接続した広がり補助部と、を有してもよい。
【0019】
本開示による容器において、前記広がり部の体積をV
1、前記容器本体のうち、内部を含めた前記接続部の体積と、内部を含めた前記収容部の体積との合計の体積をV
2、前記広がり補助部の体積をV
3とする場合に、以下の式(3)で表される割合Y(%)が1%以上であってもよい。
【数3】
【0020】
本開示による容器において、前記広がり部は、前記容器本体の延びる方向からの観察において対称性を有してもよい。
【0021】
本開示による容器において、前記広がり部は、前記容器本体の延びる方向からの観察において回転対称性を有してもよい。
【0022】
本開示による容器において、前記広がり部は、円環状の形状を有してもよい。
【0023】
本開示による容器において、前記容器本体と前記広がり部とは、一体的に成形されていてもよい。
【0024】
本開示による容器において、前記広がり部は、温められることによって膨張する内容物を収容した袋状部を有してもよい。
【0025】
本開示による容器において、前記袋状部は、前記内容物が温められて膨張することによって、前記容器本体から離間する側に向かって起立した状態となってもよい。
【0026】
本開示による容器は、前記容器本体の延びる方向において、前記接続部よりも前記第2端部側に位置する、目印部をさらに備えてもよい。
【0027】
本開示による容器は、前記容器本体の内面に接続するとともに、前記容器本体の延びる方向において前記第2端部側に突出した、環状の泡入れ部をさらに備え、
前記目印部は、前記容器本体の延びる方向において、前記泡入れ部と重なってもよい。
【0028】
本開示による容器において、前記容器本体の前記第2端部は閉鎖されていてもよい。
【0029】
本開示による容器は、前記容器本体の前記第2端部を着脱可能に閉鎖する蓋材をさらに備えてもよい。
【0030】
本開示による容器において、前記容器本体の前記第2端部をなす面が、薄肉部を有してもよい。
【0031】
本開示による容器において、前記容器本体の前記第2端部は、筒状の前記容器本体の対向する側面を接合してなるシール部によって閉鎖されていてもよい。
【0032】
本開示による容器において、前記容器本体のうち、前記シール部よりも前記第1端部側において前記シール部の近傍に位置する部分における壁面の厚みは、前記収容部における壁面の厚みよりも、小さくてもよい。
【0033】
本開示による容器において、前記容器本体は、前記接続部よりも前記第2端部側に、前記収容部を外部に通じさせる開口部を有してもよい。
【0034】
本開示による収容物入り容器は、上記記載の容器と、前記容器の内部に位置する凍結収容物と、を備える収容物入り容器であって、
前記容器の内部に位置する前記凍結収容物のうち、50質量%以上が、前記収容部に収容されている。
【0035】
本開示による収容物入り容器の製造方法は、上記記載の容器の前記開口部を介して、前記収容部に収容物を供給する供給工程と、
前記開口部を封止する封止工程と、を備える。
【0036】
本開示による解凍方法は、上記記載の容器の前記収容部に収容された凍結収容物を液体との熱交換により解凍する、解凍方法であって、
前記容器を、前記容器本体の前記第1端部側から、前記液体に浸ける、解凍工程を備える。
【0037】
本開示による解凍方法において、前記広がり部の体積をV
1、前記容器本体のうち、内部を含めた前記接続部の体積と、内部を含めた前記収容部の体積との合計の体積をV
2、前記容器の質量をW
1、前記液体の密度をρとする場合に、以下の式(1)が成立してもよい。
【数4】
【0038】
本開示の細胞製剤の製造方法は、上記記載の容器の前記収容部に収容された凍結細胞を液体との熱交換により解凍することによって、細胞製剤を製造する、細胞製剤の製造方法であって、
前記容器を、前記容器本体の前記第1端部側から、前記液体に浸ける、解凍工程を備える。
【発明の効果】
【0039】
本開示によれば、液体が容器の開口部に付着することを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本開示の一実施の形態を説明するための図であって、容器の一具体例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、内部に収容物が収容される前の容器を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1の容器の作用を説明するための図であって、容器を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図1の容器の作用を説明するための図であって、容器を示す断面図である。
【
図10】
図10は、円筒状の形状を有する一般的な容器を液体上に浮かべた様子を示す図である。
【
図11】
図11は、円筒状の形状を有する一般的な容器を液体上に浮かべた様子を示す図である。
【
図12】
図12は、
図1の容器の作用を説明するための図であって、容器を示す断面図である。
【
図24】
図24は、
図21の容器の作用を説明するための図であって、容器を示す断面図である。
【
図28】
図28は、容器の他の変形例を示すための図であって、容器を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0042】
図1~
図12は、本開示の一実施の形態を説明するための図であって、容器の一具体例を示している。
【0043】
収容物入り容器5は、容器10と容器10に収容された収容物Cとを有している。容器10は、収容物Cを収容する。本実施の形態においては、一例として、後述する液体51との熱交換により凍結された収容物Cを解凍する際に使用される容器10について説明する。収容物Cは、例えば生体物質である。生体物質は、生物の体内に存在し得る物質であり、例えば細胞や細胞から分泌される分泌物質等を例示することができる。容器10に収容される収容物Cには、一具体例として、人体等の組織や細胞シート等の培養済みの細胞や、培養前の細胞を含んだ細胞懸濁液が含まれる。一般に、細胞等の生体物質を含んだ収容物Cは、凍結された状態で使用まで保管される。容器10内の収容物Cは、使用される直前に、容器10とともに適度に加熱された液体51に浸される。液体51との熱交換で解凍された収容物Cは、後述する取出開口部を介して容器10の収容部から取り出される。とりわけ本実施の形態による容器10は、液体51を用いた収容物Cの解凍中に、液体51が取出開口部に付着することを効果的に抑制するための工夫が施されている。取出開口部への液体51の付着が抑制されることで、取出開口部を介して取り出される収容物Cの汚染を効果的に抑制することができる。
【0044】
まず、
図1~
図5に示された一具体例を参照しながら一実施の形態を説明する。
図1は、容器10を示す斜視図である。
図2は、容器10を示す正面図である。
図1及び
図2に示す容器10の内部には、収容物Cが収容されている。
【0045】
図1及び
図2に示すように、容器10は、筒状の容器本体20と、容器本体20に接続した広がり部40と、を備える。以下、容器本体20のうち、広がり部40に接続された部分のことを、接続部22とも称する。
【0046】
容器本体20は、第1端部23と第2端部24とを有しており、少なくとも第1端部23は閉鎖されている。
図1及び
図2に示す例において、容器本体20は、円筒状の形状を有し、容器本体20の第1端部23は、曲面によって形成され、とりわけ半球状に形成されている。また、
図1及び
図2に示す例において、容器本体20の第2端部24は閉鎖されている。
図1及び
図2に示す例において、容器本体20の第2端部24は、筒状の容器本体20の対向する側面を接合してなるシール部25によって閉鎖されている。この場合、容器本体20のうち、シール部25よりも第1端部23側においてシール部25の近傍に位置する部分を切断することによって、第2端部24側に、収容物Cを取り出す取出開口部を形成することができる。
図2に示す符号26の付された破線は、容器本体20を切断して取出開口部を形成することが予定される部分の位置の一例を示している。以下、取出開口部の形成が予定される部分を、取出開口予定部26とも称する。
図2に示す容器本体20の切断には、例えばはさみを用いることができる。図示はしないが、容器本体のうち、シール部25よりも第1端部23側においてシール部25の近傍に位置する部分における壁面27の厚みは、収容部21における壁面27の厚みよりも、小さくてもよい。この場合、容器本体20のうち、シール部25よりも第1端部23側においてシール部25の近傍に位置する部分の切断を、より容易にすることができる。なお、容器本体20のうちシール部25よりも第1端部23側においてシール部25の近傍に位置する部分を、折って切ることによって、第2端部24側に取出開口部を形成してもよい。
【0047】
図示はしないが、容器本体20は、壁面27の厚みが部分的に薄くなっている薄壁部、又は壁面27の外側の面の一部が内側に向けて凹んでいる凹み部を有していてもよい。この場合に、接続部22と、薄壁部又は凹み部とは、容器本体20の延びる方向d1において離れていてもよい。
【0048】
容器本体20は、後述する収容物Cの解凍工程における液体51との接触に対する耐性を有していることが好ましい。より具体的には、容器本体20は、少なくとも30℃以上の環境下で、典型的には37℃の環境下で物理的に耐え得る物性を有していることが好ましい。容器本体20は、好ましくは60℃以上、特に好ましくは典型的な液体51としての水の沸点である100℃以上の環境下で物理的に耐え得る物性を有していることが好ましい。また、容器本体20は、後述する収容物Cを凍結させる処理にも用いられることが好ましい。すなわち、容器本体20は、解凍中における高温および凍結中における低温のいずれにも耐性を有していることが好ましい。より具体的には、容器本体20は、少なくとも0℃以下、好ましくは-80℃以下、さらに好ましくは液体窒素気相下の-150℃以下、特に好ましくは窒素を液体に維持できる-196℃以下の環境下で物理的に耐え得る物性を有していることが好ましい。
【0049】
ここで物理的に耐え得るとは、例えば容器本体20の壁面27を構成する材料が破損することが無いことを意味する。また、物理的に耐え得るとは、容器本体20が破損して容器10の密閉性が損なわれ、容器10の内部の無菌状態が維持できなくなることが無いことを意味してもよい。
【0050】
容器本体20に用いられる材料として、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、ポリイミド並びにエチレン-酢酸ビニル共重合体、フッ素系樹脂、塩化ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアセタール、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタラートなどを用いることができる。
【0051】
図3は、
図2の容器10を線III-IIIに沿って切断した場合を示す断面図である。容器本体20は、容器本体20の延びる方向d1において、接続部22よりも第1端部23側に位置し、内部に収容物Cを収容する、収容部21を有する。
【0052】
図4は、
図2の容器10を線IV-IVに沿って切断した場合を示す断面図である。換言すれば、
図2の容器10を、容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において切断した場合を示す断面図である。
図4に示す例において、収容部21は、容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において、回転対称性を有する。収容部21が容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において回転対称性を有する場合、回転対称性とは、例えば、2回対称であっても、3回対称であっても、4回対称であっても、6回対称であってもよい。
図4に示す例において、収容部21は、容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において円形の形状を有する。
【0053】
図3に示す例において、容器本体20の接続部22は、収容部21と、容器10の内部から収容物Cを取り出す部分である取出開口予定部26との間に位置している。
【0054】
次に、広がり部40について説明する。
図3に示す例において、広がり部40は、容器本体20の接続部22に接続するとともに、容器本体20の接続部22以外の部分から離間するように突出している。また、広がり部40は、容器本体20を周状に取り囲んでいる。また、広がり部40は、容器本体20の延びる方向d1に交差する方向に広がる、広がり本体部41を有している。
図3に示す例において、広がり本体部41は、容器本体20の延びる方向d1に直交する方向に広がっている。
図3に示す例において、容器本体20と広がり部40とは、一体的に成形されている。図示はしないが、広がり部40は、容器本体20とは別部材として作製されて、容器本体20に取り付けられていてもよい。広がり部40の材料は、特に限定されないが、例えば、収容物Cの解凍に用いられる液体51よりも小さな比重を有した材料、典型的には水よりも軽い1未満の比重を有した材料である。広がり部40は、容器本体20と同様に、解凍中における高温および凍結中における低温のいずれにも耐性を有していることが好ましい。
【0055】
図3に示す例において、広がり部40は、容器本体20の延びる方向d1からの観察において対称性、特に回転対称性を有する。広がり部40が容器本体20の延びる方向d1からの観察において回転対称性を有する場合、広がり部40は、例えば、2回対称であっても、3回対称であっても、4回対称であってもよい。
図3に示す例において、広がり部40は、円環状の形状を有する。
【0056】
図5は、
図2の容器10を線V-Vに沿って切断した場合を示す断面図である。言い換えれば、容器10の、接続部22を通り且つ容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面における断面図である。広がり部40を備える容器10は、以下の条件を満たすような形状を有する。まず、容器10の、接続部22を通り且つ容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において、容器10の輪郭101に接する容器第1接線73を引く。また、容器10の輪郭101に接し且つ容器第1接線に平行な容器第2接線74を引く。このように、任意の容器第1接線73及び容器第1接線73に平行な容器第2接線74を引いた場合において、容器第1接線73と容器第2接線74との距離がとり得る最小値を、値s1とする。また、容器10の、接続部22を通り且つ容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において、容器本体20の輪郭201に接する容器本体第1接線71を引く。ここで、容器本体20の輪郭201は、広がり部40と接続部22とが接続している部分においては、広がり部40と接続部22との境界を構成する接続面22aの位置に定められる。接続面22aは、一例として、広がり部40よりも第2端部24側に位置する壁面27の外側の面を方向d1に延長した、仮想の面である。また、容器本体20の輪郭201に接し且つ容器本体第1接線71に平行な容器本体第2接線72を引く。このように、任意の容器本体第1接線71及び容器本体第1接線71に平行な容器本体第2接線72を引いた場合において、容器本体第1接線71と容器本体第2接線72との距離がとり得る最小値を、値s2とする。この場合に、値s1は、値s2よりも大きい。
【0057】
また、本実施の形態に係る広がり部40を備える容器10は、以下の条件を満たすような形状を有する。上述の通り、任意の容器本体第1接線71及び容器本体第1接線71に平行な容器本体第2接線72を引いた場合に、容器本体第1接線71及び容器本体第2接線72が、広がり部40を横切る。
【0058】
図3に示す例においては、容器10のうち、第1端部23及び第2端部24が閉鎖された容器本体20の内部に収容物Cが収容され、収容物入り容器5が形成されている。容器10の内部に収容されている収容物Cは、例えば生体物質、具体的には、無菌状態で培養された細胞や培養前の細胞を含んだ細胞懸濁液である。
【0059】
次に、容器10の内部に収容物Cを収容して、収容物入り容器5を製造する方法について説明する。一例として、収容物Cが細胞懸濁液である場合について説明する。
図6は、内部に収容物Cが収容される前の容器10を示す斜視図である。
図6に示す容器10の容器本体20は、接続部22よりも第2端部24側に、収容部21を外部に通じさせる開口部28を有する。この場合、
図6に示す容器10の開口部28を介して収容部21に収容物Cを供給する供給工程と、開口部28を封止する封止工程とによって、収容物入り容器を製造することができる。
【0060】
収容物Cが細胞懸濁液である場合、供給工程において、収容物Cは、アイソレータや細胞培養プロセッシングセンタ等を利用して、細胞を害する菌等が排除された無菌医薬品製造区域でグレードAに分類される環境下において収容部21に供給される。容器本体20の内部に収容される収容物Cの質量について説明する。
図7は、容器10の
図3に示す断面の輪郭を示すとともに、広がり部40等の範囲をハッチングによって示す図である。
図7に示すように、広がり部40の体積(ドットのハッチングが付された部分の体積)をV
1、容器本体20のうち、内部を含めた接続部22の体積と、内部を含めた収容部21の体積との合計の体積(斜線のハッチングが付された部分の体積)をV
2、容器10の質量をW
1とし、後述する液体51の密度をρとする。この場合に、収容物Cの質量は、ρ(V
1+V
2)―W
1の値以下である。なお、内部を含めた接続部22の体積とは、例えば容器本体20のうち、容器本体20の延びる方向d1において接続部22が位置する部分の、内部を含めた体積である。
【0061】
次に、封止工程において、閉鎖環境下で、容器本体20の開口部28が封止される。一例として、開口部28は、容器本体20の開口部28の対向する側面をヒートシールにて接合し、
図1に示すように開口部28を閉鎖するシール部25を形成することによって、封止される。このようにして、収容部21が無菌の閉鎖された状態に維持され、且つ、細胞を含んだ収容物Cが収容部21内に保持される。
【0062】
収容物入り容器の製造方法は、さらに、収容物Cを収容した容器10を、液体窒素等の冷媒に浸漬したり、液体窒素気相下に静置したりする工程を備えてもよい。これにより、容器10内の収容物Cを、凍結された状態で、使用されるまで保管することができる。以下において、凍結された状態の収容物Cを、凍結収容物とも称する。
【0063】
上記の方法によって製造される、容器10と、容器10の内部に位置する凍結収容物と、を備える収容物入り容器5においては、容器10の内部に位置する凍結収容物のうち、50質量%以上が、収容部21に収容されていることが好ましい。容器10の内部に位置する凍結収容物のうち、収容部21に収容されている凍結収容物の割合は、70質量%以上であることが、より好ましく、90質量%以上であることが、さらに好ましい。凍結収容物は、容器10を液体51上に浮かべた際に、液体51と接触する収容部21の内部に位置するほうが、容器10の内部のうち収容部21以外の部分に位置するよりも、液体51との熱交換によって、より速く解凍される。このため、上記の通りに、収容部21に収容されている凍結収容物の割合が一定以上大きければ、凍結収容物を、特に速く解凍することができる。
【0064】
容器10に収容された凍結収容物は、使用する前に解凍される。容器10の収容部21に収容された凍結収容物を解凍する解凍方法について説明する。容器10に収容される凍結収容物としては、例えば凍結細胞、生理食塩水等の電解質輸液、ブドウ糖等の糖質注射液、血液製剤、抗生物質、抗体等の蛋白質性医薬品、低分子蛋白質、ホルモン等のペプチド性医薬品、核酸医薬品、細胞医薬品、各種感染症を予防するワクチン、ステロイド剤、インスリン、抗がん剤、蛋白質分解酵素阻害剤、鎮痛剤、解熱鎮痛消炎剤、麻酔剤、脂肪乳剤、血圧降下剤、血管拡張剤、ヘパリン塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、造影剤等の液体や微粒子を含む懸濁液が挙げられる。
【0065】
一例として、凍結収容物が凍結細胞である場合について説明する。なお、凍結細胞とは、例えば細胞懸濁液を凍結させたものである。細胞懸濁液とは、例えば細胞凍結保存液に細胞を懸濁した液である。凍結収容物が凍結細胞である場合、凍結収容物を解凍する解凍方法は、凍結細胞を解凍することによって細胞製剤を製造する、細胞製剤の製造方法であるともいえる。この場合、細胞製剤として、例えばヘパトーマ細胞、肝臓の実質細胞である肝細胞、クッパー細胞、血管内皮細胞や角膜内皮細胞などの内皮細胞、繊維芽細胞、骨芽細胞、砕骨細胞、歯根膜由来細胞、表皮角化細胞などの表皮細胞、気管上皮細胞、消化管上皮細胞、子宮頸部上皮細胞、角膜上皮細胞などの上皮細胞、乳腺細胞、ペリサイト、平滑筋細胞や心筋細胞などの筋細胞、腎細胞、膵ランゲルハンス島細胞、末梢神経細胞や視神経細胞などの神経細胞、軟骨細胞、骨細胞、又は幹細胞、ES細胞(胚性幹細胞)及びiPS細胞(人工多能性幹細胞)等が製造される。幹細胞としては、例えば骨髄未分化間葉幹細胞、造血幹細胞、血管幹細胞、神経幹細胞、小腸幹細胞、脂肪幹細胞、皮膚幹細胞、歯周組織幹細胞、毛様体幹細胞、角膜輪部幹細胞、内臓幹細胞等が挙げられる。収容部21に収容された凍結収容物は、液体51との熱交換によって、解凍される。
【0066】
凍結収容物の解凍方法は、容器10を、容器本体20の第1端部23側から液体51に浸ける、解凍工程を備える。このとき、容器10は、容器本体20の一部、及び広がり部40の少なくとも一部が液体51の界面51aよりも下に沈むことによって浮力を得て、容器本体20の第2端部24を上に向けた状態で液体51上に浮かぶ。ここで、容器10は、
図8に示すように、容器本体20の第1端部23側から、液体保持容器50に保持された液体51に浸けた場合に、容器本体20の収容部21が液体51に浸かり、かつ、容器本体20の取出開口予定部26が液体51に浸かっていない状態で、液体51上に浮かぶ。このため、収容部21に収容された凍結収容物を液体51との熱交換によって解凍しつつ、取出開口予定部26への液体51の付着を抑制することができる。これによって、取出開口予定部26において取出開口部を形成し、取出開口部を介して収容物Cを取り出す際に、収容物Cが液体51によって汚染されることを抑制することができる。
【0067】
液体51は、凍結収容物を解凍できるものであれば特に限られないが、例えば水である。液体51の温度は、凍結収容物を解凍できるものであれば特に限られない。一例として、凍結収容物が凍結細胞であり、凍結細胞を解凍することによって細胞製剤を製造する場合には、液体51の温度は、例えば30℃以上40℃以下であり、典型的には37℃である。
【0068】
図7に示すように、広がり部40の体積をV
1、容器本体20のうち、内部を含めた接続部22の体積と、内部を含めた収容部21の体積との合計の体積をV
2、容器10の質量をW
1とする。また、液体51の密度をρとする。この場合に、以下の式(4)が成立することが好ましい。
【数5】
【0069】
なお、液体51を水とする場合には、水の密度をρ
Wとして、以下の式(1)が成立することが好ましい。なお、水の密度ρ
Wとは、例えば37℃における水の密度であり、例えば1g/cm
3である。
【数6】
【0070】
式(4)が成立することの作用効果について説明する。仮に、
図9に示すように、容器10が、広がり部40の、容器本体20の延びる方向d1における第2端部24側の端面まで、液体51に浸かっている場合について考える。この場合、V
1+V
2の値は、内部を含めた容器10の体積のうち、液体51の界面51aより下に位置する部分の体積に相当する。
図9に示す状態の容器10にはたらく浮力は、重力加速度をgとすると、ρ(V
1+V
2)gで表される。仮に容器10が内部に収容物Cを収容していないものとすると、容器10にはたらく重力は、W
1gで表される。ここで、式(4)が成立する場合、
図9の状態での浮力ρ(V
1+V
2)gが、重力W
1gよりも大きくなる。このため、容器10は、内部に収容物Cを収容していない場合に、広がり部40よりも第2端部24側の部分が液体51に浸からない状態で浮かぶ。
【0071】
さらに、容器10が内部に収容物Cを収容し、収容物入り容器5を形成している場合について考える。この場合、容器10の内部に収容する収容物Cの質量がρ(V
1+V
2)―W
1の値以下ならば、
図9の状態の収容物入り容器5にはたらく浮力が、収容物入り容器5にはたらく重力以上となる。このため、収容物入り容器5は、広がり部40よりも第2端部24側の部分が液体51に浸からない状態で浮かぶ。以上より、式(4)が成立することによって、容器10の内部に収容する収容物Cの質量をρ(V
1+V
2)―W
1の値以下とする場合に、取出開口予定部26への液体51の付着を、より効果的に抑制することができる。
【0072】
図8に示すように容器10を液体51上に浮かべる場合における、広がり部40の作用効果について説明する。まず、仮に、
図10に示すように、円筒状の形状を有する一般的な容器10´を液体51上に浮かべた場合において、容器10´が傾いた場合について考える。
図10に示す例においては、容器10´の浮心Bが、容器10´の重心Gよりも、容器10´が傾いた側(
図10における右側)に位置している。この場合、容器10´には、重心Gと浮心Bとの位置関係によって、容器10´の傾きを解消しようとする力、すなわち復原力がはたらく。
【0073】
以下、容器10´の対称軸、特に円筒状の形状を有する容器10´の回転対称軸であるL1と、容器10´に作用する浮力P2の作用線L3との交点Mを、メタセンタMとも称する。容器10´に復原力がはたらくか否かは、重心GとメタセンタMとの位置関係によって決まると言い換えることもできる。
図10に示す例においては、浮心Bが重心Gよりも容器10´が傾いた側に位置しているために、浮心Bを通る浮力Pの作用線L3と対称軸L1との交点であるメタセンタMは、重心Gよりも上方に位置している。
図10の例のようにメタセンタMが重心Gよりも上方にあれば、容器10´の傾きを解消させるような力のモーメントが生じる。
【0074】
復原力は、容器10´に、下向きの重力P1と、上向きの浮力P2とが作用することによって、容器10´を回転させるようにはたらく。復原力の大きさPは、
図10に示す重力の作用線L2と浮力の作用線L3との距離をw2とし、容器10´の質量をmとして、以下の式(5)によって表すことができる。
【数7】
【0075】
また、仮に、
図11に示すように、液体51上に浮かんでいる容器10´が傾いた場合において、重心Gが、浮心Bよりも、容器10´が傾いた側(
図11における右側)に移動してしまった場合についても考える。この場合、
図11に示すように、浮心Bを通る浮力Pの作用線L3と対称軸L1との交点であるメタセンタMは、重心Gよりも下方に位置するようになる。
図11の例のようにメタセンタMが重心Gよりも下方にある場合には、容器10´を更に傾斜させるような力のモーメントが生じ、容器10´に復原力をはたらかせることはできなくなる。
【0076】
図10、
図11及び式(5)から、容器に、十分な大きさの復原力を安定的にはたらかせるためには、容器の形状が、容器が傾いたときに、浮心Bのほうが、重心Gよりも、より容器が傾いた側に移動しやすい形状であることが好ましいことが理解できる。また、容器の形状を、重心Gが移動しにくい形状とするためには、容器における重心Gの位置が低いほうが好ましい。
【0077】
次に、仮に、本実施の形態に係る容器10が、
図8に示すように液体51上に浮かんでいる状態から、
図12に示すように一方に傾いた場合について考える。
図12において、容器10は、図の左側に傾いている。この場合、容器10が傾いた側においては、広がり部40のうち、
図8において液体51の界面51aより上に位置していた部分が、界面51aより下に沈む。また、容器10が傾いた側とは反対側においては、広がり部40のうち、
図8において液体51の界面51aより下に位置していた部分が、界面51aより上に上昇する。これによって、内部を含めた容器10の体積のうち、液体51の界面51aより下に位置する部分の体積が、容器10が傾いた側において大きく増加し、容器10が傾いた側とは反対側において大きく減少する。
図12に示す例においては、液体51の界面51aより下に位置する部分の体積が、容器10が傾いた左側において大きく増加し、容器10が傾いた側とは反対側である右側において大きく減少している。このため、容器10の浮心は、容器10が傾く前と比較して、容器10が傾いた側に大きく移動する。これによって、容器10が一方に傾いた場合に、浮心を傾いた側に大きく移動させ、容器10に、安定的に復原力をはたらかせることができる。これによって、容器10が、容器本体20の取出開口予定部26が液体51に浸からないように液体51上に浮かんでいる状態を、より安定させることができる。
【0078】
また、上述した一具体例において、容器10は、広がり部40を備えることによって、
図5に示す値s1が値s2よりも大きくなるような形状を有する。これによって、容器10が広がり部40を有しない場合と比べて、容器10を液体51上に浮かべた際、容器10に復原力をはたらかせやすくすることができる。
【0079】
また、上述した一具体例において、広がり部40は、容器10の、接続部22を通り且つ容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において、上述の容器本体第1接線71及び容器本体第2接線72を引いた場合に、容器本体第1接線71及び容器本体第2接線72が広がり部40を横切るような形状を有する。これによって、容器10を液体51上に浮かべた際、容器10が様々な向きに傾いたとしても、広がり部40の作用によって、容器10に復原力をはたらかせることができる。
【0080】
また、広がり部40は、容器本体20の延びる方向d1からの観察において対称性、特に回転対称性を有する。特に、広がり部40は、円環状の形状を有する。広がり部40が上記の形状を有することによって、
図8に示すように容器10が液体51上に浮かんでいる場合に、容器10が容器本体20の第2端部24を上に向けている状態を、より安定させることができる。また、
図8に示すように容器10が液体51上に浮かんでいる場合において、容器10が、異なる複数の向きに傾いたときであっても、広がり部40の作用によって、容器10に復原力がはたらきやすくなる。
【0081】
また、上述した一具体例において、以下の式(2)で表される割合X(%)は、5%以上であることが好ましい。割合X(%)が上記の範囲であることによって、広がり部40の体積V
1と、容器本体20のうち、内部を含めた接続部22の体積と、内部を含めた収容部21の体積との合計の体積V
2との和に対する、広がり部40の体積V
1の割合を十分に大きくすることができる。このため、液体51上に浮かんでいる容器10が傾いた場合に、容器10の浮心を大きく移動させ、容器10に安定的に復原力をはたらかせる、という広がり部40の作用を、より生じやくすることができる。
【数8】
【0082】
なお、広がり部40が円環状の形状を有する場合、広がり部40の体積V
1の大きさを確保する観点からは、
図3に示す広がり部40の幅t1は、4mm以上であることが好ましい。
【0083】
また、上述した一具体例において、広がり部40の体積V
1を、広がり部40と接続部22との境界を構成する、
図3に示す接続面22aの面積で割った値が、5(mm
3/mm
2)以上であってもよい。これによって、広がり部40の体積V
1を、接続面22aの面積との比率において、十分に大きくすることができる。このため、液体51上に浮かんでいる容器10が傾いた場合に、容器10の浮心を大きく移動させ、容器10に安定的に復原力をはたらかせる、という広がり部40の作用を、より生じやくすることができる。
【0084】
また、上述した一具体例において、広がり部40は、容器本体20の接続部22以外の部分から離間するように突出している。これによって、広がり部40と容器本体20の収容部21とが離間するため、
図8に示すように収容部21と液体51とを接触させて、収容部21に収容された収容物Cと液体51との熱交換を、効率よく生じさせることができる。
【0085】
また、上述した一具体例において、収容部21は、収容部21に収容された収容物Cと液体51との熱交換の効率が高くなるように構成されていることが好ましい。例えば、
図3に示す、収容部21における壁面27の厚みt2は、3mm以下であることが好ましい。厚みt2は、2mm以下がさらに好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1mm以下がより一層好ましい。また、収容部21における壁面27の熱伝導率は、0.1W/m・K以上であることが好ましい。これによって、凍結収容物を、液体51との熱交換によって、より速く解凍することができる。
【0086】
また、上述した一具体例において、収容部21の表面積が大きいことが好ましい。収容部21の表面積が大きいことによって、収容部21と液体51とが接触する面積を大きくして、収容物Cと液体51との熱交換の効率を高くことができる。これによって、凍結収容物を、より速く解凍することができる。一例として、
図3に示す容器本体20の延びる方向d1における収容部21の寸法t3は、容器本体20の延びる方向に垂直な方向における収容部の寸法t4よりも大きい。寸法t3は、寸法t4の1.02倍以上であることがさらに好ましく、2倍以上であることがより好ましい。寸法t3と寸法t4との関係を上記のように定めることによって、側面における収容部21の表面積を増加させて、収容部21の表面積を十分に大きくすることができる。
【0087】
収容物Cと液体51との熱交換の効率を高くすることができる収容部21を有する容器10によれば、例えば、凍結された状態の100ml以下の収容物Cを、25分以内に解凍し得る。また、20ml以下の収容物Cを、15分以内に解凍し得る。また、2ml以上6ml以下の収容物Cを、6分以上10分以下の時間内に解凍し得る。また、0.5ml以上1.5ml以下の収容物Cを、3分以内に解凍し得る。
【0088】
収容部21は、
図4に示すように、容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において、回転対称性を有することが好ましい。
図4に示す例において、収容部21は、容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において、円形の形状を有する。収容部21が上記の形状を有することによって、
図8に示すように容器10が液体51上に浮かんでいる場合に、容器10が容器本体20の第2端部24を上に向けている状態を、より安定させることができる。また、収容部21の内部に、液体51からの距離が特に離れている部分が生じることを抑制して、収容物Cに、より均等に液体51からの熱を伝えることができる。
【0089】
また、接続部22は、方向d1において、容器本体20の重心と取出開口予定部26との間に位置していることが好ましい。これによって、容器10の重心の位置を、十分に低い位置(十分に第1端部23側の位置)とすることができる。このため、液体51上に浮かんでいる容器10が傾いた場合に、より容器10の重心が移動しにくくなり、取出開口予定部26が液体51に浸かっていない状態で、特に安定的に、液体51上に浮かべることができる。
【0090】
凍結収容物の解凍が終了した後、容器10の内部の収容物Cは、以下のようにして使用に供される。まず、容器10を液体51から引き上げる。その後、取出開口予定部26において、収容物Cを取り出す取出開口部を形成する。次に、容器10内の解凍された収容物Cを取出開口部から取り出す。そして、取り出された収容物Cが使用に供される。
【0091】
なお、従来技術として紹介した特開2018-110539号公報や特開2001-70402号公報では、容器の取出開口予定部への液体の付着を抑制するため、収容物の解凍に先立ち、容器を外装袋に収納している。外装袋を液体中に浸漬することで収容物を解凍した後、容器を外装袋から取り出している。このような従来技術と比較して、本実施の形態によれば、凍結収容物を収容した容器10を解凍作業前に外装袋内に収容する作業、および、解凍された収容物Cを容器10の取出開口部から取り出す作業前に外装袋から容器10を取り出す作業を省くことが可能となる。これにより、凍結させた収容物Cを使用するまでの準備時間を大幅に短縮し且つ準備作業を軽減することができる。このような作用効果は、解凍した生体物質、例えば細胞懸濁液や細胞シート等の細胞を人体に対して適用する際に、とりわけ好適と言える。
【0092】
一実施の形態を具体例により説明してきたが、この具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行うことができる。
【0093】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0094】
上述した一具体例において、広がり部40は、円環状の形状を有していた。しかしながら、広がり部40の形状は、これに限られない。
図13は、一変形例における容器10を示す断面図である。
図13に示す例において、広がり部40は、部分的に、容器本体20の延びる方向d1において、接続部22よりも第1端部23側に位置している。図示はしないが、本変形例の広がり部40は、容器本体20の延びる方向d1からの観察において回転対称性を有する。広がり部40が、部分的に接続部22よりも第1端部23側に位置していることによって、容器10に、より安定的に復原力をはたらかせることができる。
【0095】
また、
図14に示すように、容器10の、接続部22を通り且つ容器本体20の延びる方向に垂直な断面において、広がり部40が、異なる3方向に延びる部分を有していてもよい。また、
図15及び
図16に示すように、広がり部40は、一部が欠けた楕円形の形状を有していてもよい。また、広がり部40は、
図17に示す形状を有していてもよい。
図17に示す例では、容器10の、接続部22を通り且つ容器本体20の延びる方向に垂直な断面において、広がり部40は、容器本体20の接続部22に接続するとともに一方向に延びる第1部分45を有する。また、広がり部40は、第1部分45に接続するとともに第1部分45が延びる方向と交差する方向に延びる第2部分46を有する。
図14~
図17に示す例においても、上述の値s1は値s2よりも大きくなる。また、
図14~
図17に示す例においても、容器本体20の輪郭201に接する任意の容器本体第1接線71と、容器本体20の輪郭201に接し且つ容器本体第1接線71に平行な容器本体第2接線72を引くと、容器本体第1接線71及び容器本体第2接線72は、広がり部40を横切る。
【0096】
また、
図18に示すように、容器10の、接続部22を通り且つ容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において、広がり部40は、一方向に延びていてもよい。
図18に示す例において、容器本体20は、楕円形の形状を有している。そして、広がり部40は、楕円形の容器本体20の長軸が延びる方向と交差する方向に延びている。
図18に示す例においても、上述の値s1は値s2よりも大きくなる。
【0097】
また、広がり部40は、容器本体20の延びる方向d1からの観察において、容器本体20側に向かって窪んだ窪み部43を有していてもよい。
図19は、広がり部40が窪み部43を有する一変形例における容器10を示す斜視図である。
図20は、
図19の容器を、容器本体20の延びる方向d1において、第1端部23側から観察した様子を示す図である。広がり部40が窪み部43を有することによって、容器10の使用者は、窪み部43に指をあてることで、容易に容器10を持つことができる。窪み部43の大きさは、例えば人の指が部分的に入る大きさである。窪み部43の数は、特に限られない。
図19及び
図20に示す例において、広がり部40は、4つの窪み部43を有する。
【0098】
また、広がり部40は、容器本体20の延びる方向d1に交差する方向に広がる広がり本体部41を有するとともに、広がり本体部41の容器本体20から離間する側の端部に接続した広がり補助部42を有してもよい。
図21は、広がり部40が広がり補助部42を有する一変形例における容器10を示す斜視図である。
図22は、
図21の容器10を線XXII-XXIIに沿って切断した場合を示す断面図である。
図21及び
図22に示す例において、広がり補助部42は、広がり本体部41の、容器本体20の延びる方向d1における第1端部23側に位置し、容器本体20の延びる方向d1に広がっている。
【0099】
図21及び
図22に示す容器10の作用効果について説明するため、
図24に示すように、液体51上に浮かんでいる容器10が一方に傾いた場合について考える。この場合、
図21及び
図22に示す、広がり補助部42を有する容器10においては、
図1~
図4に示す容器10と比較して、容器10が傾いた側に、より大きく浮心が移動しやすい。このため、液体51上に浮かんでいる容器10が傾いた場合に、容器10の浮心を大きく移動させ、容器10に安定的に復原力をはたらかせる、という広がり部40の作用を、より生じやくすることができる。復原力によって、液体51に波が生じたこと等に起因して容器10が傾いた場合に、容器10の傾きが解消される。また、容器10は、復原力によって傾きが解消されるには至らない場合であっても、一定の傾きを維持した状態で、取出開口予定部26が液体51に浸からないように液体51上に浮かび続けることがある。この場合にも、取出開口予定部26への液体51の付着を抑制することができる。
【0100】
図23は、容器10の
図22に示す断面の輪郭を示すとともに、広がり部40等の範囲をハッチングによって示す図である。
図23に示すように、広がり部40の体積(ドットのハッチングが付された部分と横線のハッチングが付された部分との合計の体積)をV
1、容器本体20のうち、内部を含めた接続部22の体積と、内部を含めた収容部21の体積との合計の体積(斜線のハッチングが付された部分の体積)をV
2、広がり補助部42の体積(横線のハッチングが付された部分の体積)をV
3とする。この場合に、以下の式(3)で表される割合Y(%)が1%以上であることが好ましい。割合Y(%)が上記の範囲であることによって、広がり部40の体積V
1と、容器本体20のうち、内部を含めた接続部22の体積と、内部を含めた収容部21の体積との合計の体積V
2との和に対する、広がり補助部42の体積V
3の割合を十分に大きくすることができる。このため、液体51上に浮かんでいる容器10が傾いた場合に、容器10の浮心を大きく移動させ、容器10に安定的に復原力をはたらかせる、という広がり部40の作用を、より生じやくすることができる。
【数9】
【0101】
また、広がり部40は、温められることによって膨張する内容物Bを収容した袋状部44を有してもよい。
図25は、広がり部40が袋状部44を有する一変形例における容器10を示す側面図である。
図26は、
図25の容器10を
図25とは異なる方向から示す側面図である。なお、
図25及び
図26は、同一の容器10を、容器本体20の延びる方向d1に延びる軸線を中心として略90°回転して示している。
図27は、容器10を液体51上に浮かべ、
図25の容器10の袋状部44が温められた状態を示す側面図である。
図25~
図27に示す例において、広がり部40は、袋内部44aに内容物Bを収容する、2つの袋状部44を有する。袋状部44に収容される内容物Bは、例えば空気である。
【0102】
広がり部40が内容物Bを収容した袋状部44を有することによって、広がり部40の体積V
1は、温められることによって増加し、冷やされることによって減少する。これによって、凍結された状態の収容物Cを収容した収容物入り容器5を保存する際には、
図25及び
図26に示すように、広がり部40の体積V
1が小さい状態で、収容物入り容器5を保存することができる。このため、収容物入り容器5の保存に要するスペースを小さくすることができる。また、収容物入り容器5を液体51上に浮かべて収容物Cを解凍する際には、内容物Bが液体51との熱交換によって温められ、
図27に示すように、広がり部40の体積V
1が増加する。このため、収容物Cを解凍する際には、広がり部40の体積V
1を十分に大きくして、容器10が、容器本体20の取出開口予定部26を液体51に浸けないように液体51上に浮かんでいる状態を、より安定させる、という広がり部40の作用を、より向上することができる。
【0103】
袋状部44は、容器10を液体51上に浮かべた際に、内容物Bが温められて膨張することによって、
図27に示すように、容器本体20から離間する側に向かって起立した状態となってもよい。これによって、収容物入り容器5を液体51上に浮かべて収容物Cを解凍する際に、広がり部40と容器本体20の収容部21とが離間する。このため、収容部21と液体51とを接触させて、収容部21に収容された収容物Cと液体51との熱交換を、効率よく生じさせることができる。
【0104】
一例として、袋状部44に収容された内容物Bは、内容物Bの温度が第1温度より高い第2温度であるときに、上述の値s1が値s2よりも大きくなるように、膨張する。また、袋状部44に収容された内容物Bは、内容物Bの温度が第1温度より高い第2温度であるときに、容器本体20の輪郭201に接する任意の容器本体第1接線71と、容器本体20の輪郭201に接し且つ容器本体第1接線71に平行な容器本体第2接線72を引くと、容器本体第1接線71及び容器本体第2接線72が広がり部40を横切るように、膨張する。
【0105】
袋状部44に収容された内容物Bは、広がり部の体積V
1が、内容物Bの温度が第1温度であるときには以下の式(1)が成立しないが、内容物Bの温度が第1温度より高い第2温度であるときには式(1)が成立するように、膨張してもよい。また、広がり部40の体積V
1が、内容物Bの温度が第1温度であるときには以下の式(2)のX(%)が5%未満となるが、内容物Bの温度が第2温度であるときには式(2)のX(%)が5%以上となるように、膨張してもよい。また、内容物Bの温度が第1温度であるときには、広がり部40の体積V
1を接続面22aの面積で割った値が、5(mm
3/mm
2)以上とならないが、内容物Bの温度が第2温度であるときには、広がり部40の体積V
1を接続面22aの面積で割った値が、5(mm
3/mm
2)以上となるように、膨張してもよい。第1温度は、例えば凍結された状態の収容物Cを収容した収容物入り容器5を保存する際の内容物Bの温度であり、例えば-196℃以上-20℃以下である。第2温度は、例えば収容物入り容器5を液体51上に浮かべて収容物Cを解凍する際の内容物Bの温度である。例えば、凍結された状態の収容物Cが凍結細胞である場合には、第2温度は、細胞の培養に適した温度であり、例えば20℃以上40℃以下、好ましくは37℃である。
【数10】
【0106】
また、容器10の広がり部40が袋状部44を有する場合、容器10は、一端が袋状部44の一部に接続され、他端が容器本体20の一部に接続された紐部60を、さらに備えてもよい。
図28は、紐部60を備える一変形例における容器10を液体51上に浮かべた状態を示す側面図である。
図28に示す例において、紐部60の一端は、袋状部44の、接続部22に接続している側とは反対側の端部44bに接続されている。また、
図28に示す例において、紐部60の他端は、容器本体20のうち、容器本体20の延びる方向d1において接続部22よりも第1端部23側の側面に接続されている。図示はしないが、紐部60の他端は、容器本体20の底部に接続されていてもよい。紐部60は、容器10を液体51上に浮かべた場合に、袋状部44の端部44bが、容器本体20の延びる方向d1において第2端部24側に一定以上移動しないように、袋状部44の移動を制限する。この場合、容器10を液体51上に浮かべた場合に、
図28に示すように、袋状部44の端部44bが、液体51から遠ざかるように移動することを抑制することができる。このため、袋状部44のうち、界面51aよりも下に沈む部分の体積を、より大きくすることができる。これによって、相対的に、容器本体20のうち、界面51aよりも下に沈む部分の体積を小さく抑え、取出開口予定部26への液体51の付着を抑制することができる。
【0107】
また、上述した一具体例において、容器本体20の第2端部24は、シール部25によって閉鎖されていた。しかしながら、閉鎖されている第2端部24の形態は、容器本体20の第2端部24側から収容物Cを取り出すことが可能であれば、特に限られない。
図29に示す一変形例においては、第2端部24は面24aによって閉鎖されており、面24aが第2端部24をなしている。そして、第2端部24をなす面24aが、薄肉部24bを有している。薄肉部24bは、シリンジによる穿刺、またはシリンジ針による穿刺が容易となるように構成されている。薄肉部24bの厚みは、1mm以下が好ましく、0.5mm以下がさらに好ましく、0.3mm以下がより好ましい。なお、図示はしないが、第2端部24を閉鎖する面24aは、容器本体20の側面の厚みと同程度の厚みを有していてもよい。また、図示はしないが、第2端部24が面24aによって閉鎖されている場合には、容器10が、面24aに取り付けられたプルタブをさらに備え、面24aが、プルタブが引き上げられることによって切断されて、面24aに取出開口部を形成する、易切断線を有してもよい。
【0108】
また、
図30に示す一変形例のように、容器10は、容器本体20の第2端部24を閉鎖する蓋材11をさらに備えてもよい。
図30に示す例において、蓋材11は、容器本体20の第2端部24から着脱可能な部材であり、キャップ形状を有している。図示はしないが、蓋材11は、第2端部24から引き剥がすことができるように、第2端部24に接着された部材であってもよい。また、図示はしないが、蓋材11は、ガラス管等の穿刺が容易な材料、例えばゴムによって構成されている部材であってもよい。
【0109】
また、図示はしないが、上述した一具体例のように容器本体20の第2端部24がシール部25によって閉鎖されている場合には、容器本体20の内部のうち、第2端部24側の一部に、シール部25によって画定され、容器10から収容物Cを取り出す際に収容物Cが通る、注出流路が形成されていてもよい。また、シール部25には、切込みや切欠き等の開封開始手段が形成されていてもよい。より具体的には、容器本体20の内部にシール部25によって画定された注出流路が形成されており、かつ、シール部25に、注出流路を横断するように容器本体20の壁面27を破断させることができる開封開始手段が形成されていてもよい。
【0110】
閉鎖されている第2端部24の形態が上記のいずれの場合であっても、容器本体20の第2端部24側から収容物Cを取り出すことによって、収容物Cが液体51によって汚染されることを抑制することができる。
【0111】
また、上述した一具体例において、容器本体20の第1端部23は、半球状の面によって閉鎖されていた。しかしながら、第1端部23は、
図31及び
図32に示す一変形例のように、シール部29によって閉鎖されていてもよい。なお、
図31及び
図32は、同一の容器10を、容器本体20の延びる方向d1に延びる軸線を中心として略90°回転して示している。
図31及び
図32に示す例において、第2端部24は、薄肉部24bを有する面24aによって閉鎖されている。
【0112】
図31及び
図32に示す容器10には、以下の方法によって、収容物Cを収容してもよい。まず、シール部29を形成する前の、開口している第1端部23から、容器10の内部に収容物Cを供給する。次に、開口している第1端部23の対向する側面をヒートシールにて接合し、
図31及び
図32に示すようにシール部29を形成する。
【0113】
また、上述した一具体例において、収容部21は、容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において円形の形状を有した。しかしながら、収容部21は、
図33に示すように、容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において、複数の凹部21aを有する形状を有してもよい。凹部21aとは、容器本体20の収容部21における壁面27が、収容部21の内部に向けて凹んでいる部分である。
図33に示す例において、収容部21は、容器本体20の延びる方向d1に垂直な断面において、6つの凹部21aを有し、かつ、6回対称な形状を有する。収容部21が上記の形状を有することによって、収容部21の表面積を十分に大きくすることができる。これによって、収容物Cと液体51との熱交換の効率を高くことができる。また、収容部21の内部に、液体51からの距離が特に離れている部分が生じることを抑制して、収容物Cに、より均等に液体51からの熱を伝えることができる。
【0114】
また、容器10は、容器本体20の延びる方向d1において、接続部22よりも第2端部24側に位置する、目印部12をさらに備えてもよい。
図34は、目印部12を備える一変形例における容器10について、第2端部24側の開口部28を封止する前の状態を示す斜視図である。
図35は、
図34の容器10を、容器本体20の延びる方向d1において、第2端部24側から観察した様子を示す図である。
図36は、
図35の容器10を線XXXVI-XXXVIに沿って切断した場合を示す断面図である。
図34及び
図36に示す例において、目印部12は、容器本体20の外周に設けられた突起状の部分である。図示はしないが、目印部12は、容器本体20の外周に設けられた溝状の部分であってもよい。目印部12は、例えば、容器本体20の延びる方向d1において、目印部12よりも第2端部24側に、収容物Cを取り出すための取出開口部を形成すべきことを表示する。
【0115】
また、容器10は、
図35及び
図36に示すように、容器本体20の内面に接続するとともに、容器本体20の延びる方向d1において第2端部24側に突出した、環状の泡入れ部13をさらに備えてもよい。
【0116】
泡入れ部13の作用効果について説明する。容器10の内部に収容された収容物Cを解凍する際に、収容物Cの表面に気泡が生じる場合がある。この場合において、第2端部24側に取出開口部を形成し、シリンジ又はピペット等を用いて容器10の内部の収容物Cを吸うことによって収容物Cを取り出すとき、シリンジ又はピペット等の先端に気泡が付着する可能性がある。この場合に、容器10の使用者は、付着した気泡を泡入れ部13に引っ掛けることによって、シリンジ又はピペット等の先端から気泡を除くことができる。このため、シリンジ又はピペット等が先端に付着した気泡を吸ってしまうことで収容物Cを吸う操作が阻害されてしまうことを抑制しつつ、容器10の内部から収容物Cを取り出すことができる。
【0117】
図36に示す、容器本体20の壁面27と泡入れ部13とがなす角度θ1は、例えば50°以下である。これによって、容器10の内部に位置する液体が、容器本体20の壁面27と泡入れ部13との間に溜まることを抑制することができる。
【0118】
容器10が目印部12と泡入れ部13とを備える場合、
図36に示すように、目印部12は、容器本体20の延びる方向d1において、泡入れ部13と重なってもよい。この場合、容器10の使用者は、容器本体20の内側を覗き込まなくとも、目印部12によって、泡入れ部13の位置を把握することができる。なお、
図34及び
図36に示す例において、第1端部23は平坦面となっている。このため、容器10は、第1端部23を下側に向けた状態で水平な面上に載置することが可能となっている。
【0119】
また、容器10は、
図34~
図36に示すように、容器本体20の延びる方向d1において接続部22よりも第2端部24側で、容器本体20に接続するとともに、容器本体20から離間するように突出している、つかみ部14をさらに備えてもよい。
図34~
図36に示す例において、容器10は、容器本体20から離間する方向に延びる略直方体の形状を有する、2つのつかみ部14を備えている。また、つかみ部14は、容器本体20の延びる方向d1において目印部12よりも第2端部24側に位置している。つかみ部14によって、容器10の使用者は、収容物Cを解凍する際に、接続部22よりも第2端部24側に位置するつかみ部14を持って、容器10を液体51に浸けることができる。このため、容器10を液体51に浸ける際に、使用者の手が液体51に触れるのを抑制することができる。
【0120】
また、収容部21は、容器本体20のうち接続部22より第2端部24側の部分よりも、容器本体20の延びる方向d1に垂直な方向において小さな寸法を有する、収容部細部21bを有してもよい。
図37は、収容部21が収容部細部21bを有する一変形例における容器10について、第2端部24側の開口部28を封止する前の状態を示す斜視図である。
図38は、
図37の容器10を示す側面図である。
図38に示すように、容器本体20の延びる方向d1に垂直な方向における収容部細部21bの寸法t5は、容器本体20のうち接続部22より第2端部24側の部分の寸法t6よりも小さい。なお、寸法t6が一定でない場合には、寸法t5は、寸法t6の最大値よりも小さい。収容部細部21bの体積は、収容部21の全体の体積の70%以上であることが好ましい。
【0121】
収容部細部21bの寸法t5が寸法t6よりも小さいことによって、容器10を液体51上に浮かべた場合に、収容部細部21bの内部のうち、容器本体20の延びる方向d1に垂直な方向における中央に位置する収容物Cと、液体51との距離を小さく抑えることができる。これによって、収容部細部21bに収容された収容物Cと液体51との熱交換を、効率よく生じさせることができる。また、容器本体20のうち接続部22より第2端部24側の部分の寸法t6が寸法t5よりも大きいことによって、容器本体20のうち接続部22より第2端部24側の部分に取出開口部を形成する際に、より大きな取出開口部を形成することができる。これによって、取出開口部を介して容器10の内部から収容物Cを取り出すことを、より容易にすることができる。特に、取出開口部を介して容器10の内部にピペット等の先端を挿入し、ピペット等を用いて収容物Cを分注する操作を、より容易にすることができる。
【0122】
さらに別の変形例として、上述した容器10では、容器本体20の収容部21が無菌状態に維持され、収容物Cが容器本体20の収容部に直接収容される例を示したが、この例に限られない。収容物Cが容器10とは別個の内袋に収容され、この内袋内で収容物Cが凍結保管され、収容物Cを含んだ内袋が上述した容器10に収容されて液体51を用いた解凍作業が行われるようにしてもよい。この例において、容器10は、解凍作業時だけに用いられるようにしてもよい。このような使用例においても、容器10の取出開口部への液体51の付着が効果的に抑制されるので、容器10から内袋を取り出す際に内袋に液体51が付着することを効果的に回避することができる。
【0123】
さらに、上述した例において、収容物Cが生体物質を含んでいる例を示したが、この例に限られない。生体物質を含まない種々の収容物Cについても、熱交換に用いられる液体の混入、液体の付着、液体との接触等の回避が要望されることもある。一例として、食品を加熱された水や冷却された水と熱交換させる場合、食品への水の付着を抑制することが要望されることがある。そして、上述してきた一実施の形態による容器10は、生体物質を含んだ収容物Cに限られること無く種々の収容物Cに対して適用することができ、液体51の熱交換時に液体51が収容物Cに接触、付着、混入することを効果的に回避することができる。
【0124】
また、上述した一具体例においては、容器10を、凍結された収容物Cの、液体51との熱交換による解凍に使用する方法について説明した。しかしながら、容器10の使用方法は、これに限られない。一例として、収容物Cを液体51との熱交換によって凍結させることができる。凍結させる収容物Cとしては、生体物質、特に無菌状態で培養された細胞や培養前の細胞を含んだ細胞懸濁液が挙げられる。
【0125】
一例として、容器10を使用して細胞懸濁液を凍結させる方法について説明する。まず、
図34~
図36に示すような、開口部28を有する容器10を、第2端部24を上に向けた状態で液体51上に浮かべる。この場合、液体51は、細胞懸濁液を凍結できるものであれば特に限られないが、例えば液体窒素である。
【0126】
容器10は、収容物Cを凍結させる液体51上に浮かべる際にも、第2端部24を上に向けた状態で浮かぶ。このため、容器10の使用によって、開口部28への液体51の付着を抑制し、収容物Cが液体51によって汚染されることを抑制できる。液体51を液体窒素とする場合には、液体窒素の密度をρ
Nとして、以下の式(6)が成立することが好ましい。上述の式(4)又は式(6)が成立することによって、容器10を、より安定的に液体51上に浮かべて、開口部28への液体51の付着を抑制することができる。なお、液体窒素の密度ρ
Nとは、例えば三重点における液体窒素の密度であり、例えば0.807g/cm
3である。
【数11】
【0127】
次に、インクジェットヘッド又はスプレー等を用いて、細胞懸濁液の液滴を、開口部28を介して容器10の内部に滴下する。これによって、細胞懸濁液は、容器10に触れること等によって冷却され、凍結される。この場合、細胞懸濁液は、液滴の形状を保ったまま凍結されてもよい。以上によって、容器10の内部に細胞懸濁液を供給しつつ、細胞懸濁液を凍結させることができる。
【0128】
細胞懸濁液を凍結させた後に開口部28を封止することによって、細胞懸濁液を、凍結された状態で容器10に収容することができる。この場合、凍結された細胞懸濁液を収容した容器10は、例えば-196°以上-150℃以下の低温環境にて保存することができる。
【0129】
上述の細胞懸濁液を凍結させる方法によれば、インクジェットヘッド等によって細胞懸濁液の液滴を作成し、液滴毎に冷却するため、短時間で細胞懸濁液を凍結させることができる。また、細胞懸濁液の凍結と、容器10の封止と、凍結された細胞懸濁液の低温環境での保存とを、一つの容器10を用いて行うことができるため、細胞懸濁液を凍結して保存するまでに要する時間を短くすることができる。以上より、細胞懸濁液を凍結して保存するまでに、外部の温度によって細胞がダメージを受けることを、抑制することができる。これによって、従来細胞懸濁液を凍結させる際の細胞へのダメージを低減するために細胞懸濁液に添加されていたジメチルスルホキシド(DMSO)又はグリセロール等の添加率を小さくすることができる。又は、ジメチルスルホキシド又はグリセロール等の添加が不要となる。このため、細胞懸濁液にジメチルスルホキシド又はグリセロールを多く添加することに起因する細胞毒性や細胞の未分化状態への影響を、抑制することができる。
【0130】
容器10を上述の細胞懸濁液を凍結させる方法に使用する場合に、容器10の第1端部23は、例えば
図34~
図36に示すように、平坦面となっていてもよい。また、第1端部23側における容器10の内側の面(
図36に示す符号27aを付した面)は、図示はしないが、容器10の外側に向かって窪む複数の窪みを有していてもよい。一例として、窪みは、容器10の第2端部24側からの観察において、円形の形状を有する。この場合、容器10の第2端部24側からの観察における窪みの直径は、1mm以下が好ましく、0,5mm以下がより好ましく、0.2mm以下が更に好ましい。第1端部23側における容器10の内側の面27aが上述の窪みを有する場合、細胞懸濁液が液滴の形状を保ったまま凍結された場合に、凍結された液滴が窪みにはまり、液滴の動きが抑制される。このため、容器10の輸送の際等に、凍結された液滴同士が衝突して細胞懸濁液が損傷することを、抑制することができる。
【実施例0131】
次に、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0132】
(実施例1)
実施例1として、
図1~
図4に示す形態の容器10と、容器10の内部に収容された凍結状態の収容物Cとを備える、収容物入り容器5を、
図8に示すように液体51上に浮かべた。そして、収容物入り容器5を、容器本体20の第2端部24が液体51に浸かっていない状態で液体51上に浮かべ、収容物入り容器5が安定的に浮かぶかを評価した。
【0133】
容器10の材料はポリエチレン製であった。また、広がり部40の体積V1を接続面22aの面積で割った値は、5.44(mm3/mm2)であった。また、上記の式(2)で表される割合X(%)は、9%であった。
【0134】
容器10を浮かべた液体51は、37℃の水であった。液体51の密度ρを1g/cm3とした場合、上記の式(4)の左辺であるρ(V1+V2)―W1の値は、1.05(g)となった。
【0135】
収容物Cは、細胞懸濁液を凍結させた凍結細胞であった。容器10の内部に収容された収容物Cの質量は、1.00(g)であった。
【0136】
(実施例2)
実施例2として、以下に記載する点以外は、実施例1の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例1と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例2において、体積V1を接続面22aの面積で割った値は、1.09(mm3/mm2)であった。また、上記の式(2)で表される割合X(%)は、2%であった。また、上記の式(4)の左辺であるρ(V1+V2)―W1の値は、1.00(g)であった。
【0137】
(実施例3)
実施例3として、以下に記載する点以外は、実施例1の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例1と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例3においては、
図19及び
図20に示す形態の容器10を用いた。また、体積V
1を接続面22aの面積で割った値は、12.94(mm
3/mm
2)であった。また、上記の式(2)で表される割合X(%)は、39%であった。また、上記の式(4)の左辺であるρ(V
1+V
2)―W
1の値は、9.75(g)であった。
【0138】
(実施例4)
実施例4として、以下に記載する点以外は、実施例3の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例3と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例4において、上記の式(4)の左辺であるρ(V1+V2)―W1の値は、9.59(g)であった。また、容器10の内部に収容された収容物Cの質量は、2.00(g)であった。
【0139】
(実施例5)
実施例5として、以下に記載する点以外は、実施例3の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例3と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例5において、上記の式(4)の左辺であるρ(V1+V2)―W1の値は、9.70(g)であった。また、容器10の内部に収容された収容物Cの質量は、5.00(g)であった。
【0140】
(実施例6)
実施例6として、以下に記載する点以外は、実施例3の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例3と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例6において、上記の式(2)で表される割合X(%)は、11%であった。また、上記の式(4)の左辺であるρ(V1+V2)―W1の値は、5.12(g)であった。
【0141】
(実施例7)
実施例7として、以下に記載する点以外は、実施例6の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例6と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例7において、上記の式(4)の左辺であるρ(V1+V2)―W1の値は、4.96(g)であった。また、容器10の内部に収容された収容物Cの質量は、2.00(g)であった。
【0142】
(実施例8)
実施例8として、以下に記載する点以外は、実施例6の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例6と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例8において、上記の式(4)の左辺であるρ(V1+V2)―W1の値は、5.07(g)であった。また、容器10の内部に収容された収容物Cの質量は、5.00(g)であった。
【0143】
(実施例1~8の評価結果)
実施例1~8のいずれにおいても、収容物入り容器5が、容器本体20の第2端部24が液体51に浸かっていない状態で液体51上に浮かぶことが確認された。このため、本開示の容器10によれば、容器本体20の第2端部24側に位置する取出開口予定部26への、液体51の付着が抑制されることがわかった。
【0144】
実施例1~8の収容物入り容器5を、特に波立っている液体51上に浮べた際の安定性を評価するために、さらに以下の評価を行った。まず、液体51として水が入れられた水槽と、噴流ポンプ(吐出量:10L/min)と、を有するウォーターバス(アズワン株式会社製、商品名「サーマルロボ TR-2AR」)を用意した。次に、噴流ポンプを作動させて、水槽内の水を波立たせた。次に、収容物入り容器5を、第2端部24が水に浸からないように、噴流ポンプから25cm程度離れた水面上に浮かべ、収容物入り容器5が安定的に浮かぶかを評価した。水の温度は、37℃とした。
【0145】
波立つ液体51上での評価の結果、体積V1を接続面22aの面積で割った値が5(mm3/mm2)未満であり、割合X(%)が5%未満である実施例2の収容物入り容器5は安定的に浮かばず、第2端部24が水に触れてしまった。その一方で、体積V1を接続面22aの面積で割った値が5(mm3/mm2)以上であり、割合X(%)が5%以上である実施例1及び3~8の収容物入り容器5は、安定的に浮かんだ。このため、本開示の容器10によれば、体積V1を接続面22aの面積で割った値を5(mm3/mm2)とするか、または割合X(%)を5%以上とすることによって、収容物入り容器5を、特に安定的に、容器本体20の第2端部24が液体51に浸かっていない状態で、液体51上に浮かべることができることがわかった。
【0146】
(実施例9)
実施例9として、以下に記載する点以外は、実施例1の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例1と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例9において、体積V1を接続面22aの面積で割った値は、9.45(mm3/mm2)であった。また、上記の式(2)で表される割合X(%)は、7%であった。また、上記の式(4)の左辺であるρ(V1+V2)―W1の値は、6.67(g)であった。また、容器10の内部に収容された収容物Cの質量は、5.00(g)であった。なお、実施例9の容器10は、広がり補助部42を有しないため、上記の式(3)で表される割合Y(%)は、0%であった。
【0147】
収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかの評価においては、特に、液体51上に浮かんでいる収容物入り容器5が傾いた場合に、収容物入り容器5が、容器本体20の第2端部24が液体51に浸かっていない状態を維持できるかを評価するために、以下の評価方法を行った。容器本体20の延びる方向d1と液体51の界面51aに垂直な直線とが一定の角度をなすように収容物入り容器5を液体51に浸け、収容物入り容器5を液体51上に浮かべた。そして、収容物入り容器5が、10分以上、容器本体20の第2端部24が液体51に浸かっていない状態を維持しつつ、液体51上に浮かぶことができるか否かを判定した。この操作を、収容物入り容器5を液体51に浸けるときに、容器本体20の延びる方向d1と液体51の界面51aに垂直な直線とがなす角度を変更しつつ、複数回行った。以下、収容物入り容器5を液体51に浸けるときに、容器本体20の延びる方向d1と液体51の界面51aに垂直な直線とがなす角度を、角度θ2とも称する。
【0148】
(実施例10)
実施例10として、以下に記載する点以外は、実施例9の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例9と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例10においては、
図21及び
図22に示す形態の、広がり補助部42を有する容器10を用いた。また、体積V
1を接続面22aの面積で割った値は、11.10(mm
3/mm
2)であった。また、上記の式(2)で表される割合X(%)は、8%であった。また、上記の式(4)の左辺であるρ(V
1+V
2)―W
1の値は、6.69(g)であった。また、上記の式(3)で表される割合Y(%)は、1%であった。
【0149】
(実施例11)
実施例11として、以下に記載する点以外は、実施例10の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例10と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例11において、体積V1を接続面22aの面積で割った値は、12.75(mm3/mm2)であった。また、上記の式(2)で表される割合X(%)は、9%であった。また、上記の式(4)の左辺であるρ(V1+V2)―W1の値は、6.72(g)であった。また、上記の式(3)で表される割合Y(%)は、2%であった。
【0150】
(実施例12)
実施例12として、以下に記載する点以外は、実施例10の収容物入り容器5と同様の収容物入り容器5について、実施例10と同様の方法によって、収容物入り容器5が液体51上に安定的に浮かぶかを評価した。実施例12において、体積V1を接続面22aの面積で割った値は、17.70(mm3/mm2)であった。また、上記の式(2)で表される割合X(%)は、12%であった。また、上記の式(4)の左辺であるρ(V1+V2)―W1の値は、6.76(g)であった。また、上記の式(3)で表される割合Y(%)は、6%であった。
【0151】
(実施例9~12の評価結果)
実施例9においては、収容物入り容器5は、角度θ2が0°の場合には、容器本体20の第2端部24が液体51に浸かっていない状態を維持しつつ、液体51上に浮かんだが、角度θ2が3°の場合には、上記の状態を維持できなかった。実施例10においては、収容物入り容器5は、角度θ2が3°の場合には、上記の状態を維持しつつ、液体51上に浮かんだが、角度θ2が5°の場合には、上記の状態を維持できなかった。実施例11においては、収容物入り容器5は、角度θ2が5°の場合には、上記の状態を維持しつつ、液体51上に浮かんだが、角度θ2が8°の場合には、上記の状態を維持できなかった。実施例12においては、収容物入り容器5は、角度θ2が8°の場合においても、上記の状態を維持することができた。
【0152】
上記の評価結果から、広がり補助部42を有する収容物入り容器5のほうが、広がり補助部42を有しない収容物入り容器5よりも、より大きく傾いた場合であっても、容器本体20の第2端部24が液体51に浸かっていない状態を維持できることが確認された。また、割合Y(%)がより大きい容器10を備える収容物入り容器5のほうが、より大きく傾いた場合であっても、容器本体20の第2端部24が液体51に浸かっていない状態を維持できることが確認された。このため、本開示の容器10によれば、割合Y(%)を、より大きくすることによって、収容物入り容器5を、特に安定的に、容器本体20の第2端部24が液体51に浸かっていない状態で、液体51上に浮かべることができることがわかった。
【0153】
実施例9~12の収容物入り容器5を、特に波立っている液体51上に浮べた際の安定性を評価するために、さらに以下の評価を行った。まず、液体51として水が入れられた水槽と、噴流ポンプ(吐出量:10L/min)と、を有するウォーターバス(アズワン株式会社製、商品名「サーマルロボ TR-2AR」)を用意した。次に、噴流ポンプを作動させて、水槽内の水を波立たせた。次に、収容物入り容器5を、第2端部24が水に浸からないように、噴流ポンプ周辺に浮かべ、収容物入り容器5が安定的に浮かぶかを評価した。水の温度は、37℃とした。
【0154】
波立つ液体51上での評価の結果、広がり補助部42を有しない実施例9の収容物入り容器5は安定的に浮かばず、第2端部24が水に触れてしまった。その一方で、広がり補助部42を有する実施例10~12の収容物入り容器5は、安定的に浮かんだ。このため、広がり補助部42によって、収容物入り容器5を、特に安定的に、容器本体20の第2端部24が液体51に浸かっていない状態で、液体51上に浮かべることができることがわかった。