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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010560
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】塗液及び塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240117BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240117BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240117BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20240117BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/02
C09D7/61
C09D129/04
C09D133/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111959
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】津田 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】西尾 健
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CE021
4J038CF021
4J038CG031
4J038DG181
4J038HA446
4J038HA506
4J038JA41
4J038NA13
4J038NA26
4J038PB05
4J038PB07
4J038PB09
(57)【要約】
【課題】25℃で1週間静置後及び40℃で2週間静置後の液安定性に優れ、膜割れが生じない断熱性に優れた塗膜が得られる塗液及び塗膜の提供。
【解決手段】エアロゲル、水溶性ポリマー、鉱物、水性エマルジョン、及び液状媒体を含有する塗液である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゲル、鉱物、水溶性ポリマー、水性エマルジョン、及び液状媒体を含有することを特徴とする塗液。
【請求項2】
前記鉱物が層状粘土鉱物である、請求項1に記載の塗液。
【請求項3】
前記鉱物がベントナイトである、請求項1から2のいずれかに記載の塗液。
【請求項4】
前記鉱物の含有量が塗液中の固形分の全質量基準で6質量%以上30質量%以下である、請求項1から2のいずれかに記載の塗液。
【請求項5】
前記エアロゲルがシリカエアロゲルである、請求項1から2のいずれかに記載の塗液。
【請求項6】
前記エアロゲルの含有量が塗液中の固形分の全質量基準で40質量%以上である、請求項1から2のいずれかに記載の塗液。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、キトサン、及びアルギン酸から選択される少なくとも1種を含む、請求項1から2のいずれかに記載の塗液。
【請求項8】
前記水性エマルジョンが、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、シリコーン-アクリル共重合樹脂エマルジョン、シリコーン-ウレタン共重合樹脂エマルジョン、及びシリコーン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンから選択される少なくとも1種である、請求項1から2のいずれかに記載の塗液。
【請求項9】
エアロゲル、鉱物、水溶性ポリマー、及び水性エマルジョンの固形分を含有することを特徴とする塗膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗液及び塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱性に優れる材料としてシリカエアロゲルが知られている。しかし、シリカエアロゲルを水溶性バインダーに分散させると、比重の差から液相分離が発生して、膜強度の低下又は膜割れが生じてしまうという問題がある。
そこで、例えば、シリカエアロゲルと、水性エマルジョン系バインダーと、多糖類とを含有する断熱材用塗料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、例えば、シリカエアロゲル粒子と、セルロースナノファイバーと、非イオン界面活性剤と、水溶性樹脂と、水とを含有する水分散物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-29528号公報
【特許文献2】特開2018-43927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の多糖類は数十万以上の高分子であるため、多糖類の添加量によっては塗液の粘度が高くなってしまい使用用途が限定され、塗膜の膜割れが生じてしまうという問題がある。
また、上記特許文献2に記載のセルロースナノファイバーは化学処理による製造方法でありコストがかかるため、価格が高くなってしまい、40℃で2週間静置後の液安定性が低下してしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、従来にける前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、25℃で1週間静置後及び40℃で2週間静置後の液安定性に優れ、膜割れが生じない断熱性に優れた塗膜が得られる塗液及び塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> エアロゲル、鉱物、水溶性ポリマー、水性エマルジョン、及び液状媒体を含有することを特徴とする塗液である。
<2> 前記鉱物が層状粘土鉱物である、前記<1>に記載の塗液である。
<3> 前記鉱物がベントナイトである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の塗液である。
<4> 前記鉱物の含有量が塗液中の固形分の全質量基準で6質量%以上30質量%以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の塗液である。
<5> 前記エアロゲルがシリカエアロゲルである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の塗液である。
<6> 前記エアロゲルの含有量が塗液中の固形分の全質量基準で40質量%以上である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の塗液である。
<7> 前記水溶性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、キトサン、及びアルギン酸から選択される少なくとも1種を含む、前記<1>から<2>のいずれかに記載の塗液である。
<8> 前記水性エマルジョンが、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、シリコーン-アクリル共重合樹脂エマルジョン、シリコーン-ウレタン共重合樹脂エマルジョン、及びシリコーン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンから選択される少なくとも1種である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の塗液である。
<9> エアロゲル、鉱物、水溶性ポリマー、及び水性エマルジョンの固形分を含有することを特徴とする塗膜である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、25℃で1週間静置後及び40℃で2週間静置後の液安定性に優れ、膜割れが生じない断熱性に優れた塗膜が得られる塗液及び塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(塗液)
本発明の塗液は、エアロゲル、鉱物、水溶性ポリマー、水性エマルジョン、及び液状媒体を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0009】
本発明においては、エアロゲル、水溶性ポリマー、水性エマルジョン、及び液状媒体を含有する塗液に、保水性及び増粘機能を有する鉱物を添加することによって、比重が異なる液状媒体とエアロゲルとを長期間に亘って均一に分散でき、25℃で1週間静置後及び40℃で2週間静置後の液安定性に優れた塗液が得られる。また、前記鉱物はその鱗片状結晶の層間に水や物質が入り込むことにより保水機能が発現し得、膜割れが生じない断熱性に優れた塗膜を形成できる。
【0010】
<水溶性ポリマー>
水溶性ポリマーにおける水溶性とは、25℃の水1Lにポリマーが100g以上溶解することを意味する。ポリマーが溶解したか否かは、水が透明か否かで判断でき、目視により確認することができる。
前記水溶性ポリマーとしては、水酸基を有し水溶性を有するポリマーであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、合成物、動植物、魚介類、海藻、樹液、微生物産出物などから得られるものを用いることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、キトサン、アルギン酸が好ましく、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0011】
前記ポリビニルアルコールは、ポリマーの構造中にアルコール性ヒドロキシ基を含有する樹脂である。ポリビニルアルコールは、通常、ビニルエステル系重合体をケン化することにより得られる。
前記ポリビニルアルコールは、ビニルアルコール単位の一部が、アセタール化、エーテル化、アセトアセチル化、又はカチオン化等の反応によって、変性されたものであってもよい。
前記ポリビニルアルコールとしては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、商品名:クラレポバール5-88(株式会社クラレ製)などが挙げられる。
【0012】
前記水溶性ポリマーの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塗液中の固形分の全質量基準で、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上8質量%以下がより好ましい。
【0013】
<エアロゲル>
狭義には、湿潤ゲルに対して超臨界乾燥法を用いて得られた乾燥ゲルをエアロゲル、大気圧下での乾燥により得られた乾燥ゲルをキセロゲル、凍結乾燥により得られた乾燥ゲルをクライオゲルと称するが、本発明においては、湿潤ゲルのこれらの乾燥手法によらず、得られた低密度の乾燥ゲルを「エアロゲル」と称する。即ち、本発明においては、「エアロゲル」とは、広義のエアロゲルである「Gel comprised of a microporous solid in which the dispersed phase is a gas(分散相が気体である微多孔性固体から構成されるゲル)」を意味する。
前記エアロゲルの内部は、一般的に網目状の微細構造を有しており、2nm~20nm程度の粒子状のエアロゲル成分が結合したクラスター構造を有している。前記クラスター構造により形成される骨格間には、100nmに満たない細孔を有する。これにより、エアロゲルは、三次元的に微細な多孔性の構造が形成されている。
【0014】
前記エアロゲルとしては、例えば、シリカを主成分とするシリカエアロゲルであることが好ましい。吸湿によるエアロゲルの性能低下を抑制するため、表面に疎水性基を有する疎水性シリカエアロゲルがより好ましい。具体的には、シリカエアロゲルは表面に、下記一般式(1)で表される3置換シリル基が結合することにより疎水性となっている。
【0015】
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R、R、及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、炭素数1~18のアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基であり、例えば、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などが挙げられる。
【0016】
前記エアロゲルは、気孔率の増加に伴って、平均自由行程を阻害する数10nmの空気孔が多くなるので、熱伝導率が小さくなる。エアロゲル表面に疎水性基を有することから、水性媒体中に分散しても、細孔内への水の染み込みや侵入が防止される。このことは、塗液の状態、更には塗布後の塗膜の状態においても、エアロゲル本来の高い気孔率を保持できること、ひいては優れた断熱性を発揮できることを意味する。
【0017】
前記シリカエアロゲルは、粒子状であり、平均粒子径は1μm以上50μm以下が好ましく、1μm以上25μm以下がより好ましく、1μm以上10μm以下が更に好ましい。
平均粒子径が小さすぎると粒子間隙総合比が増え、シリカエアロゲルのナノサイズ細孔の比率が少なくなるため好ましくない。一方、平均粒子径が大きすぎると、粒子間隙のサイズが大きくなり大きい空隙の間に空気が対流し断熱性が低下する恐れがあるため好ましくない。
【0018】
前記シリカエアロゲルは、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、商品名MT-1100(キャボット社製)などが挙げられる。
【0019】
前記エアロゲルの含有量は、塗液中の固形分の全質量基準で、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。前記エアロゲルの含有量の上限値は、70質量%以下であることが好ましい。
エアロゲルの含有量が40質量%以上であると、断熱性に優れた塗膜を形成できる。
【0020】
<液状媒体>
前記液状媒体としては、水を含む水系溶媒が好ましい。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
前記水系溶媒には、水以外に有機溶媒が含まれていてもよい。
前記有機溶媒としては、水との相溶性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸;アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等の窒素含有化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記液状媒体の含有量は、特に限定されず、所望の塗液の粘度等に応じて適宜設定することができる。
【0021】
<鉱物>
前記鉱物としては、増粘機能を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、層状粘土鉱物が好ましく、水膨潤性層状粘土鉱物がより好ましく、ベントナイトが特に好ましい。
前記ベントナイトは、スメクタイトグループのモンモリロナイトを主成分とし、サポナイト、ヘクトライトなどを含む鉱物の総称であり、例えば、自動車用の鋳物、化粧品など様々な用途に使用されている。また、ベントナイトは、金属イオンが含まれるカードハウス構造であり、内部に水分子を取り込んで膨潤することから、増粘性及び粘結性を有している。更に、ベントナイトは無機鉱物であるために難燃性及び耐熱性を有し、ガスバリア性も発現させることも可能である。
前記鉱物としては、適宜合成した合成品であってもよいし、自然鉱物精製品であってもよい。
【0022】
前記自然鉱物精製品としては、例えば、ポーラゲル(主成分モンモリロナイト)(商品名:ポーラゲルNF、ボルクレイ・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
前記合成品としては、例えば、スメヌクトン(主成分サポナイト)(商品名:スメヌクトン-SA、クニミネ工業株式会社製)などが挙げられる。
【0023】
前記鉱物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塗液中の固形分の全質量基準で、6質量%以上30質量%以下が好ましく、7質量%以上25質量%以下がより好ましい。
前記鉱物の含有量が6質量%以上30質量%以下であると、膜割れが生じなく、25℃で1週間静置後及び40℃で2週間静置後の液安定性に優れた塗液が得られる。
【0024】
<水性エマルジョン>
前記水性エマルジョンとしては、特に制限はなく、pH、イオン性等の添加する他の成分との相性又は目的とする商品の特性に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、シリコーン-アクリル共重合樹脂エマルジョン、シリコーン-ウレタン共重合樹脂エマルジョン、シリコーン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水性エマルジョンとしては、適宜合成したものであってもよいし、市販品であってもよい。前記市販品としては、例えば、商品名スミカフレックスS-400HQ(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、住化ケムテックス株式会社製)などが挙げられる。
前記水性エマルジョンの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塗液中の固形分の全質量基準で、5質量%以上45質量%以下が好ましく、15質量%以上40質量%以下がより好ましい。
前記水性エマルジョンの含有量が、5質量%以上45質量%以下であると、膜割れの生じない塗膜が得られる。
【0025】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、着色剤、レベリング剤、防腐剤、防黴剤、保存剤、安定化剤などが挙げられる。
【0026】
本発明の塗液は、エアロゲル、鉱物、水溶性ポリマー、水性エマルジョン、及び更に必要に応じてその他の成分を液状媒体中で混合することにより製造される。混合方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シェーキング、磁性スターラー撹拌、機械撹拌、振動撹拌、超音波撹拌などが挙げられる。
【0027】
(塗膜)
本発明の塗膜は、エアロゲル、鉱物、水溶性ポリマー、及び水性エマルジョンの固形分を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記塗膜は、本発明の塗液から、液状媒体及び水性エマルジョンの水を除去したものであってよい。即ち、塗膜における各成分としては、上述の塗液における各成分と同じものが例示でき、塗膜における各成分の含有量は、上述の塗液における各成分の固形分含有量と同じであってよい。
【0028】
前記塗液を対象物に塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法などが挙げられる。
【0029】
塗液を塗布する対象物の材質、形態などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。対象物の材質としては、例えば、金属、セラミックス、ガラス、樹脂、又はこれらの複合材料などが挙げられる。対象物の形態としては、使用目的、材質等に応じて適宜選択することができ、例えば、ブロック状、シート状、パウダー状、繊維状などが挙げられる。
【0030】
前記塗膜の平均厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01mm以上30mm以下が好ましく、0.1mm以上20mm以下がより好ましい。
【0031】
本発明の塗膜は、膜割れが発生せず、エアロゲルに由来する優れた断熱性を有するので、例えば、携帯情報端末、車載バッテリー、車載内装品、極低温容器、宇宙分野、建築分野、自動車分野、家電分野、半導体分野、産業用設備等における断熱材としての用途などに幅広く適用できる。また、前記塗膜は、断熱材としての用途の他に、撥水材、吸音材、静振材、触媒担持材等としても利用することができる。
【実施例0032】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
シリカエアロゲル(商品名:MT-1100、キャボット社製)2g、水性エマルジョン(商品名:スミカフレックスS-400HQ、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン、住化ケムテックス株式会社製、不揮発分55質量%)1g(固形分)、水溶性ポリマー(商品名:クラレポバール5-88、株式会社クラレ製)0.2g(固形分)、鉱物(商品名:ポーラゲルNF、自然鉱物精製品、ボルクレイ・ジャパン株式会社製)0.5g、及び蒸留水7gを加え、あわとり練太郎(AR-100、株式会社シンキー製)にて2,000rpmで10分間撹拌し、実施例1の塗液を得た。
【0034】
(実施例2)
実施例1において、鉱物(商品名:ポーラゲルNF、自然鉱物精製品、ボルクレイ・ジャパン株式会社製)を、鉱物(商品名:スメヌクトン-SA、合成鉱物、主成分:サポナイト、クニミネ工業株式会社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の塗液を得た。
【0035】
(実施例3)
実施例1において、鉱物(商品名:ポーラゲルNF、自然鉱物精製品、ボルクレイ・ジャパン株式会社製)0.5gを1gに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の塗液を得た。
【0036】
(実施例4)
実施例1において、シリカエアロゲル(商品名:MT-1100、キャボット社製)2gを1gに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の塗液を得た。
【0037】
(実施例5)
実施例1において、シリカエアロゲル(商品名:MT-1100、キャボット社製)2gを3gに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の塗液を得た。
【0038】
(実施例6)
実施例1において、鉱物(商品名:ポーラゲルNF、自然鉱物精製品、ボルクレイ・ジャパン株式会社製)0.5gを0.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の塗液を得た。
【0039】
(比較例1)
実施例1において、鉱物(商品名:ポーラゲルNF、自然鉱物精製品、ボルクレイ・ジャパン株式会社製)を添加しない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の塗液を得た。
【0040】
(比較例2)
実施例1において、鉱物(商品名:ポーラゲルNF、自然鉱物精製品、ボルクレイ・ジャパン株式会社製)0.5gを、増粘剤(商品名:アデカノールUH-420、特殊非イオン高分子界面活性剤、株式会社ADEKA製、有効成分30%)0.1gに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の塗液を得た。
【0041】
(比較例3)
実施例1において、鉱物(商品名:ポーラゲルNF、自然鉱物精製品、ボルクレイ・ジャパン株式会社製)0.5gを、多糖類(商品名:メトローズ60SH-10000、信越化学工業株式会社製)0.2gに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の塗液を得た。
【0042】
(比較例4)
実施例1において、鉱物(商品名:ポーラゲルNF、自然鉱物精製品、ボルクレイ・ジャパン株式会社製)0.5g(固形分)を、セルロースナノファイバー(商品名:レオクリスタ1-2SX、第一工業製薬株式会社製)0.06g(固形分)に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の塗液を得た。
【0043】
次に、得られた各塗液について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1及び表2に示した。なお、表1及び表2中の各成分の含有量は固形分の質量基準である。
【0044】
<25℃で1週間静置後の液安定性>
作製直後の各塗液を密栓付きのガラス瓶(容量50mL)に30mL入れて、密栓をし、25℃で1週間静置し、各塗液の液安定性(分離の有無)を、以下の基準に基づき、評価した。
[評価基準]
〇:分離がない
×:分離がある
【0045】
<40℃で2週間静置後の液安定性>
作製直後の各塗液を密栓付きのガラス瓶(容量50mL)に30mL入れて、密栓をし、40℃で2週間静置し、各塗液の液安定性(分離の有無)を、以下の基準に基づき、評価した。
[評価基準]
〇:分離がない
×:分離がある
【0046】
<膜割れ>
得られた各塗液を100℃で3時間の条件で乾燥させて、200μmの厚みとなるようにシート化を行った。得られた各シートの膜割れの有無について、以下の基準に基づき評価した。前記膜割れとは、膜の表裏を貫通してしまっている状態であり、適切な熱伝導率を測定できない状態であることを意味する。
[評価基準]
〇:膜割れの発生がない
△:一部に膜割れの発生がある
×:膜割れの発生がある
【0047】
<断熱性>
得られた各塗液を用いて200mm×200mm×0.3mmのサイズの各塗膜を作製した。熱伝導率測定装置(HFM-446、NETZSCH社製)を用い、2枚の板(加熱板と冷却板)との間に各塗膜を挟んで、加熱板を60℃で加熱時の熱伝導率(mW/m・K)を測定し、下記の基準に基づき断熱性を評価した。
[評価基準]
〇:熱伝導率が30mW/m・K未満
△:熱伝導率が30mW/m・K以上35mW/m・K以下
×:熱伝導率が35mW/m・Kを超える
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0050】
25℃で1週間静置後及び40℃で2週間静置後の液安定性に優れている本発明の塗液で作製した本発明の塗膜は、膜割れが生じず、優れた断熱性を有しているので、例えば、携帯情報端末、車載バッテリー、車載内装品、極低温容器、宇宙分野、建築分野、自動車分野、家電分野、半導体分野、産業用設備等における断熱材としての用途などに幅広く適用できる。