(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105602
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】皮膚化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20240730BHJP
A61Q 7/02 20060101ALI20240730BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61K8/49
A61Q7/02
A61Q15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2024080112
(22)【出願日】2024-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清野 勇輝
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、体毛の成長を効果的に抑制して、除毛処理回数を減少させることができる発毛抑制剤を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)マーキアインを含有する皮膚化粧料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)マーキアインを含有する皮膚化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体毛の成長を効果的に抑制することができ、体毛の除去処理回数を低減させることのできる皮膚化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、頭皮上の毛髪は豊かであることが望まれているのに対し、腕、足、腋、顔等における体毛は、美的外観上好ましくないとされる傾向が高まっている。そのため、好ましくない体毛等を除去する方法が開発され、利用されている。具体的には、シェーバー、抜毛器等を用いて体毛を毛根から抜去する方法、除毛剤(例えば、特許文献1:特開平4-173725号公報)を用いて、その化学的作用により体毛を除去する方法などが提案されている。
しかしながら、これら従来の毛髪除去方法は皮膚に対して刺激を伴うものである。また、毛の成長を止めるものではないために再び伸長した体毛の除去処理を頻繁に行わなければならず、体毛除去処理回数を減少させることができないという問題がある。
また近年、生薬抽出物(例えば、特許文献2:特開平8-81336号公報、特許文献3:特開平10-139639号公報)を用いた発毛抑制剤が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-173725号公報
【特許文献2】特開平8-81336号公報
【特許文献3】特開平10-139639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記発毛抑制剤の発毛抑制効果は未だ充分なものではなく、更に発毛抑制効果の高い発毛抑制剤の提供が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、体毛の成長を効果的に抑制して、除毛処理回数を減少させることができる発毛抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、マーキアインを含む皮膚化粧料組成物が、優れた発毛抑制効果を示すことを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち、本発明の皮膚化粧料組成物は有効成分としてマーキアインを含有することを特徴とする。また、本発明の皮膚化粧料組成物は、マーキアインを含有する組成物であり、腕、脚、腋、顔等の体毛発毛部位に適用することにより、体毛を伸びにくくすると共に、毛を細く、目立たなくするため除毛処理回数を減少させることができる組成物である。
【0006】
従って、下記発明を提供する。
[1](A)マーキアインを含有する皮膚化粧料組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の皮膚化粧料組成物は、優れた体毛の発毛抑制効果を発揮し、除毛または髭剃り関連化粧品などとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明の皮膚化粧料組成物は、マーキアインを含有することを特徴とする。
【0009】
<(A)マーキアイン>
前記(A)成分のマーキアインとしては特に制限はなく、マーキアインを含むクララ抽出物、サンズコン抽出物、キラヤ抽出物を用いることもできる。
前記マーキアインとしては、市販品を用いてもよく、適宜合成したものを用いてもよい。前記市販品としては、例えば、マーキアイン(商品名:マーキアイン セレックバイオティック株式会社)、クララ抽出物(商品名:クジン抽出液BG-J 丸善製薬株式会社)、サンズコン抽出物 商品名:ウチダサンズコンM ウチダ和漢薬株式会社)、キラヤ抽出物(商品名:キラヤ抽出液BG(丸善製薬株式会社)等が挙げられる。
【0010】
前記(A)成分の含有量は、組成物全体の0.01~1質量%が好ましく、より好ましくは0.1~0.5質量%である。0.01質量%以上であれば、体毛の伸長抑制に優れ、1質量%以下であれば、製剤の安定性に優れる。
【0011】
本発明の皮膚化粧料組成物は、特に腕、脚、腋、顔等のムダ毛の生える部位に適用される製品に好適に含有せしめることができる。本発明を適用する製品は特に限定されるものではないが、脱毛、除毛又は髭剃り関連品、又は動物の体毛の脱毛、除毛関連品とすることが好ましい。具体的には、ペースト状、クリーム状、エアゾール状等の除毛剤、ワックス状、ジェル状、シート状等の脱毛剤、除毛または脱毛の後処理に用いるローション、クリーム等の後処理料、髭剃り関連品でプレシェーブローション等の髭剃り前処理料、シェービングクリーム等の髭剃り料、アフターシェーブローション等の髭剃り後処理料などが挙げられる。
【0012】
また、女性においては腋のムダ毛処理が広く行われており、また特に夏場には制汗剤も一般的に使用されていることから、制汗剤などに本発明の発毛抑制剤を配合することによって手軽で効率的なケアをすることも可能である。具体的には、デオドラントローション、デオドラントパウダー、デオドラントスプレー、デオドラントスティック、デオドラントジェル、デオドラントクリームなどの制汗・防臭料などが挙げられる。
また、そのほかにも、洗浄剤や入浴剤などに配合して全身のムダ毛に対して簡便に効果的に作用させることもできる。
【0013】
本発明の皮膚化粧料組成物には、前記(A)成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、剤型に応じて、通常、皮膚化粧料組成物に配合されるその他の成分を添加することができる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、油脂化合物、ワックス化合物、シリコーン化合物、炭化水素油、高級脂肪酸、多価アルコール、高級アルコール、低級アルコール、界面活性剤、ポリマー、酸化防止剤、色素、乳化安定剤、調整剤、防腐剤、紫外線吸収剤、キレート剤、保湿剤、増粘剤、清涼剤、抗炎症剤、殺菌剤、アミノ酸、ビタミン類、香料、各種植物抽出エキス、pH調整剤などが挙げられる。
なお、前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、本発明の効果を妨げない範囲で目的に応じて適宜選択することができる。
また、本発明の皮膚化粧料組成物は、エアゾールの形態をとることができる。その場合には、上記成分以外にn-プロピルアルコールまたはイソプロピルアルコールなどの低級アルコール;ブタン、プロパン、イソブタン、液化石油ガス、ジメチルエーテルなどの可燃性ガス;窒素ガス、酸素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素ガスなどの圧縮ガスを含有することができる。
【0014】
―低級アルコール―
前記低級アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。
前記低級アルコールの含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、皮膚化粧料組成物全量に対して5質量%以上55質量%以下が好ましく、18質量%以上35質量%以下がより好ましい。
前記低級アルコールは、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該低級アルコールの合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。当該低級アルコールの市販品としては、例えば、商品名で、トレーサブル 95 1級(発酵エタノール)(日本アルコール産業株式会社製)などが挙げられる。
【0015】
―清涼化剤―
前記清涼化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メントールなどが挙げられる。
前記清涼化剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、皮膚化粧料組成物全量に対して0.01質量%以上1.2質量%以下が好ましい。
前記清涼化剤は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該清涼化剤の合成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。当該清涼化剤の市販品としては、例えば、商品名で、l-メントール(高砂香料工業株式会社製)などが挙げられる。
【0016】
-水-
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記水の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、皮膚化粧料組成物全量に対して55質量%以上75質量%以下が好ましく、60質量%以上70質量%以下がより好ましい。
【0017】
-防腐剤-
前記防腐剤としては、安息香酸塩、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、パラオキシ安息香酸エステル、2,4,4’-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’-トリクロロカルバニリド、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、レゾルシン、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液(商品名:ケーソンCG、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製)、サリチル酸、ペンタンジオール、フェノキシエタノール、エタノールなどが挙げられ、皮膚化粧料組成物全体に対して0.01~1.0%が好ましい。
【0018】
-酸化防止剤-
前記酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸などが挙げられ、皮膚化粧料組成物全体に対して0.001~1.0%が好ましい。
【0019】
-pH調整剤-
前記pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、クエン酸、コハク酸、トリエタノールアミン、アンモニア水、トリイソプロパノールアミン、リン酸、グリコール酸、塩酸などが挙げられる。
【0020】
-紫外線吸収剤-
前記紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート、酸化チタン、カオリン、タルクなどが挙げられ、皮膚化粧料組成物全体に対して0.01~1.0%が好ましい。
【0021】
-ビタミン類-
前記ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンK、ビタミンP、ビタミンU、カルニチン、フェルラ酸、γ-オリザノール、α-リポ酸、オロット酸及びその誘導体などが挙げられ、皮膚化粧料組成物全体に対して0.001%~1.0%が好ましい。
【0022】
-ポリマー-
前記ポリマーとしては、非水溶性ポリマー粉体と水溶性ポリマーがあげられ、前記非水溶性ポリマー粉体としては、無機粉体、粘土鉱物、ナイロン、ポリエチレンなどが挙げられ、保存安定性・使用感の観点から液体組成物全体に対して0.1%以下が好ましい。
前水溶性ポリマーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられ、皮膚化粧料組成物全体に対して0.01~1.0%が好ましい。
【0023】
-香料-
前記香料としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、特開2002-128658号公報の段落[0065]~[0071]に記載された香料組成物A~D、特開2003-73249号公報の段落[0076]~[0088]に記載の香料組成物A~E、又は特開2020-132680号公報の段落[0016]~[0023]に記載の調合香料組成物1~4などを用いることができる。
【0024】
<製造方法>
前記液組成物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、それぞれの成分を単独あるいは複数種類まとめて使用し、所定の装置を用いて常法により製造することができる。
前記皮膚化粧料組成物を調製する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、剪断力と全体混合できる複数の攪拌羽根(例えばプロペラ、タービン、ディスパー等)を備えた攪拌装置が好ましい。
【0025】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の例において「%」は、いずれも「質量%」を表し、実施例及び比較例に記載の成分量は全て純分換算である。
【0026】
(実施例1~4、比較例1)
常法に準じて表1に示した濃度に調整した。得られたサンプルについて、以下のようにして、髪の成長を促すテストステロン5αリダクターゼの阻害効果を評価した。結果を表1に示す。
<テストステロン5αリダクターゼ阻害効果>
マーキアイン、クララ抽出物、サンズコン、キラヤ抽出物、エタノールについて、以下のようにしてテストステロン5α-レダクターゼ活性阻害作用を試験した。尚、サンズコンは100gを粉砕機で破砕し、エタノール(99.5%)で抽出した。
プロプレングリコールで調製した4.2mg/mLのテストステロン(東京化成社製)20μLと、1mg/mLのNADPHを含有する5mmol/Lのトリス塩酸緩衝液(pH7.13)825μLとを混合した。さらに、試料のエタノール水溶液80μL及びS-9(ラット肝臓ホモジネート,オリエンタル酵母工業社製)75μLを加えて混合し、37℃にて60分間インキュベートした。その後、塩化メチレン1mLを加えて反応を停止させ、激しく振とうさせた。これを遠心分離し(4℃, 9100×g,10分間)、塩化メチレン層を分取して、分取した塩化メチレン層について、下記の条件にてガスクロマトグラフィー分析をし、5α-ジヒドロテストステロン(5α-DHT)及びテストステロンの濃度比を算出した。コントロールとして、試料溶液の代わりに試料溶媒を同量(80μL)使用して同様に処理し、ガスクロマトグラフィー分析をした。
(ガスクロマトグラフィー条件)
使用装置:Shimadzu GCMS-QP2020(島津製作所社製)
カラム:Inert Cap 5MA/Sil(内径:0.25mm,長さ:30m,膜厚:0.25μm,ジーエルサイエンス社製)
カラム温度:250℃
注入口温度:300℃
検出器:FID
試料注入量:1μL
スプリット比:1:2
キャリアガス:窒素ガス
キャリアガス流速:1.18mL/min
5α-レダクターゼによる変換率(テストステロン5α-レダクターゼによりテストステロンが還元されて生成した5α-DHTの濃度と、テストステロンの初期濃度との濃度比)を算出した。
変換率=A/(A+B)・・・(1)
式(1)中、Aは「5α-DHTのピーク面積」を表し、Bは「テストステロンのピーク面積」を表す。
式(1)に基づいて算出された変換率を用いて、下記式(2)に基づき、テストステロン5α-レダクターゼ活性阻害率(%)を算出した。
阻害率(%)=(1-C/D)×100・・・(2)
式(2)中、Cは「試料添加時の変換率」を表し、Dは「コントロールの変換率」を表す。
【0027】
【0028】
実施例1~4において高いテストステロン5αリダクターゼ阻害効果が確認できた。
【0029】
(実施例5~7、比較例2~4)
表2~3に示す組成からなる、実施例及び比較例の液体制汗剤組成物を常法に準じて調製した。
【0030】
次に、制汗剤組成物について、以下のようにして、抑毛効果、製剤の安定性を評価した。結果を表2~3に示す。
【0031】
<抑毛効果>
男性被験者9名の下肢部の皮膚に、洗浄後に各抑毛組成物を1日2回、2gを1ヶ月間塗布し、抑毛効果について官能評価をした。
-評価基準-
◎:非常に感じた
○:感じた
×:感じなかった
<製剤の安定性>
製剤を目視で確認し、浮遊物の有無を評価
-評価基準-
○:白い浮遊物が見えない
×:白い浮遊物が見える
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
なお、前記実施例、及び前記比較例、処方例で使用した各種成分の詳細について、下記表10に示す。
【0041】
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の皮膚化粧料組成物は、例えば、制汗剤、デオドラント剤、除毛剤、脱毛剤、髭剃り前処理料、髭剃り料、髭剃り後処理料などに好ましく使用することができ、高いテストステロン5αリダクターゼ阻害効果、抑毛効果を得る事ができる。