(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010562
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】捺染用インクセット及び捺染物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/54 20140101AFI20240117BHJP
C09D 11/40 20140101ALI20240117BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20240117BHJP
D06P 1/44 20060101ALI20240117BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240117BHJP
【FI】
C09D11/54
C09D11/40
D06P5/30
D06P1/44 F
B41M5/00 114
B41M5/00 120
B41M5/00 132
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111961
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】林 暁子
(72)【発明者】
【氏名】白石 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴久
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 涼
(72)【発明者】
【氏名】松田 拓海
(72)【発明者】
【氏名】甲 こころ
【テーマコード(参考)】
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2H186AB03
2H186AB12
2H186AB27
2H186AB54
2H186AB57
2H186BA08
2H186DA17
2H186FA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB56
2H186FB58
4H157AA01
4H157BA15
4H157CA19
4H157CA29
4H157CB08
4H157CB13
4H157CB25
4H157DA01
4H157GA06
4J039BD02
4J039BE01
4J039CA06
4J039EA18
4J039EA19
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】発色性に優れた非白色画像を形成することが可能な捺染用インクセットを提供する。
【解決手段】多価金属塩、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含む前処理液と、白色顔料、樹脂粒子、および水溶性有機溶剤を含む白色インクジェットインクと、非白色顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含む非白色インクジェットインクと、を含み、前記前処理液の表面張力をX、前記白色インクジェットインクの表面張力をY、前記非白色インクジェットインクの表面張力をZ1、及び、前記非白色インクジェットインクから前記界面活性剤を除いた組成を有する液体の表面張力をZ2とするとき、下記式1、式2、および式3を満たす、捺染用インクセット。
(式1)33mN/m≦X≦50mN/m
(式2)-5mN/m≦Y-Z1≦10mN/m
(式3)0mN/m≦Z2-Z1≦10mN/m
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価金属塩、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含む前処理液と、
白色顔料、樹脂粒子、および水溶性有機溶剤を含む白色インクジェットインクと、
非白色顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含む非白色インクジェットインクと、を含み、
前記前処理液の表面張力をX、前記白色インクジェットインクの表面張力をY、前記非白色インクジェットインクの表面張力をZ1、及び、前記非白色インクジェットインクから前記界面活性剤を除いた組成を有する液体の表面張力をZ2とするとき、下記式1、式2、および式3を満たす、捺染用インクセット。
(式1)33mN/m≦X≦50mN/m
(式2)-5mN/m≦Y-Z1≦10mN/m
(式3)0mN/m≦Z2-Z1≦10mN/m
【請求項2】
さらに式4を満たす、請求項1に記載の捺染用インクセット。
(式4)0mN/m≦Z2-Z1≦6.5mN/m
【請求項3】
前記非白色インクジェットインクは、強制乳化型樹脂粒子を、前記非白色インクジェットインク全量に対して5質量%以上含む、請求項1または2に記載の捺染用インクセット。
【請求項4】
前処理液を布に付与することと、
前記前処理液が付与された前記布に、白色インクジェットインクをインクジェット法で付与することと、
前記白色インクジェットインクが付与された前記布に、非白色インクジェットインクをインクジェット法で付与することとを含み、
前記前処理液は、多価金属塩、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含み、
前記白色インクジェットインクは、白色顔料、樹脂粒子、および水溶性有機溶剤を含み、
前記非白色インクジェットインクは、非白色顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含み、
前記前処理液の表面張力をX、前記白色インクジェットインクの表面張力をY、前記非白色インクジェットインクの表面張力をZ1、及び、前記非白色インクジェットインクから前記界面活性剤を除いた組成を有する液体の表面張力をZ2とするとき、下記式1、式2、および式3を満たす、捺染物の製造方法。
(式1)33mN/m≦X≦50mN/m
(式2)-5mN/m≦Y-Z1≦10mN/m
(式3)0mN/m≦Z2-Z1≦10mN/m
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、捺染用インクセット及び捺染物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
織物、編み物、不織布等の布等に、文字、絵、図柄等の画像を捺染する方法として、スクリーン捺染法やローラー捺染法の他に、インクジェット捺染方法が注目されている。
【0003】
白色等の淡色の布と比較し、黒色等の濃色の布に形成した画像は視認しにくい傾向がある。特許文献1には、黒等の濃色の布に、多価金属塩を含有する前処理剤を塗布したのち、白色顔料を含むインクを印刷して白色画像を形成し、その上に所望の画像を形成する方法が記載されている。また、特許文献1には、前処理剤を塗布した後、熱処理を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
濃色の布に凝集剤を含む前処理液を付着させた後、乾燥工程を設けずに、いわゆるウェットオンウェット方式で基材に白色インクを付与して白色画像を形成し、さらに非白色インクを付与して非白色画像を形成する場合、非白色画像において十分な発色を得られない場合がある。
本発明の実施形態は、発色性に優れた非白色画像を有する捺染物を製造することが可能な捺染用インクセット、及び、捺染物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、多価金属塩、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含む前処理液と、白色顔料、樹脂粒子、および水溶性有機溶剤を含む白色インクジェットインクと、非白色顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含む非白色インクジェットインクと、を含み、前記前処理液の表面張力をX、前記白色インクジェットインクの表面張力をY、前記非白色インクジェットインクの表面張力をZ1、及び、前記非白色インクジェットインクから前記界面活性剤を除いた組成を有する液体の表面張力をZ2とするとき、下記式1、式2、および式3を満たす、捺染用インクセットに関する。
(式1)33mN/m≦X≦50mN/m
(式2)-5mN/m≦Y-Z1≦10mN/m
(式3)0mN/m≦Z2-Z1≦10mN/m
本発明の他の実施形態は、前処理液を布に付与することと、前記前処理液が付与された前記布に、白色インクジェットインクをインクジェット法で付与することと、前記白色インクジェットインクが付与された前記布に、非白色インクジェットインクをインクジェット法で付与することとを含み、前記前処理液は、多価金属塩、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含み、前記白色インクジェットインクは、白色顔料、樹脂粒子、および水溶性有機溶剤を含み、前記非白色インクジェットインクは、非白色顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含み、前記前処理液の表面張力をX、前記白色インクジェットインクの表面張力をY、前記非白色インクジェットインクの表面張力をZ1、及び、前記非白色インクジェットインクから前記界面活性剤を除いた組成を有する液体の表面張力をZ2とするとき、下記式1、式2、および式3を満たす、捺染物の製造方法に関する。
(式1)33mN/m≦X≦50mN/m
(式2)-5mN/m≦Y-Z1≦10mN/m
(式3)0mN/m≦Z2-Z1≦10mN/m
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、発色性に優れた非白色画像を有する捺染物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を詳しく説明するが、本発明がこれらの実施形態に限定されることはなく、様々な修正や変更を加えてもよいことはいうまでもない。
【0009】
<捺染用インクセット>
一実施形態の捺染用インクセットは、多価金属塩、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含む前処理液と、白色顔料、樹脂粒子、および水溶性有機溶剤を含む白色インクジェットインクと、非白色顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含む非白色インクジェットインクと、を含み、前処理液の表面張力をX、白色インクジェットインクの表面張力をY、非白色インクジェットインクの表面張力をZ1、及び、非白色インクジェットインクから界面活性剤を除いた組成を有する液体の表面張力をZ2とするとき、下記式1、式2、および式3を満たす、捺染用インクセットである。
(式1)33mN/m≦X≦50mN/m
(式2)-5mN/m≦Y-Z1≦10mN/m
(式3)0mN/m≦Z2-Z1≦10mN/m
この捺染用インクセットを用いる場合、発色性に優れた非白色画像を形成することができる。特に、濃色の布にウェットオンウェット方式で印刷を行った場合にも、発色性に優れた非白色画像を形成することができる。
【0010】
以下の説明において、捺染用インクセットを単にインクセットと称することがある。また、白色インクジェットインクを単に白色インクと称することがある。また、非白色インクジェットインクを単に非白色インクと称することがある。
【0011】
特定の理論に拘束されるものではないが、一実施形態のインクセットは、以下のように作用しうると考えられる。
【0012】
発色に優れた白色画像を形成することができると、その上に形成する非白色画像の発色も良好なものとすることができる傾向がある。
前処理液が布内部に浸透すると、布表面の凝集剤量は少なくなるが、前処理液の表面張力(X)が33mN/m以上の場合、前処理液が布の内部に浸透しにくく、布表面の凝集剤量の低下、及びそれによる白色インクと凝集剤との反応性の低下が抑制され、白色画像の発色を良好にすることができる。
前処理液の表面張力(X)が50mN/m以下の場合、前処理液は、布に着弾した後に布表面でレベリングしやすい。このため、白色画像の均一性を向上させ、それにより、白色画像の発色を向上させることができる。
【0013】
白色インクの表面張力(Y)と非白色インクの表面張力(Z1)が、Y-Z1≦10mN/mを満たす場合、非白色インクの白色画像上での濡れ広がりが抑制されやすく、ヒートプレスのような加圧式の加熱乾燥を行う場合でも、非白色インクと白色インクとが混ざりにくく、非白色インクの発色を良好なものとすることができる。
【0014】
非白色インクのドットが小さくなると、下地の白色画像の露出により非白色インクの画像の発色が低下する傾向がある。-5mN/m≦Y-Z1を満たす場合、非白色インクのドットが小さくなりにくく、非白色インクの画像の発色を向上させることができる。
【0015】
ウェットオンウェット方式で、前処理液および白色インクが乾燥しきっていない状態で非白色インクを付与すると、残留液体が多く流動性のある塗膜の上に非白色インクのドットが重なる状態となる。この状態で、ヒートプレス等により加熱乾燥を行うと、乾燥後の非白色画像の発色が低下する場合がある。これは、非白色インク中の界面活性剤の界面活性能力が熱により低下して、非白色インクのドットが収縮し、下地の白色画像が露出するためと考えられる。このような界面活性剤の界面活性能力の低下は、非イオン性界面活性剤でとくに起こりやすい傾向がある。非白色インクの表面張力(Z1)、及び、非白色インクから界面活性剤を除いた組成を有する液体の表面張力(Z2)が、Z2-Z1≦10mN/mを満たす場合、つまり、界面活性剤の有無による表面張力の差が10mN/m以下の場合、界面活性剤の界面活性能力の低下による表面張力への影響が小さく、ウェットオンウェット方式の場合に、ヒートプレス等で加熱乾燥した後の非白色画像の発色も良好なものとすることができる。
【0016】
一実施形態の捺染用インクセットは、多価金属塩、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含む前処理液と、白色顔料、樹脂粒子、および水溶性有機溶剤を含む白色インクジェットインクと、非白色顔料、樹脂粒子、水溶性有機溶剤、および界面活性剤を含む非白色インクジェットインクと、を含む。捺染用インクセットは、例えば、非白色インクジェットインクを2種以上含んでよい。捺染用インクセットは、後処理液等をさらに含んでよい。
【0017】
以下、前処理液、白色インクジェットインク、及び、非白色インクジェットインクについて説明する。
【0018】
<前処理液>
前処理液は、凝集剤として多価金属塩を含むことができる。
【0019】
多価金属塩は、一般に反応性が高い傾向にあり、比較的少量で、基材上で白色インクの色材を良好に凝集させることができる。このため、多価金属塩を用いた場合、前処理液付与量を少なくすることができる。前処理液付与量が多いと、白色インク、非白色インクの浸透乾燥を妨げる傾向があり、印刷物表面の液体量が多くなり、インク層の流動性が維持されやすくなる。このため、これらのインクのドットサイズや形状の乱れが起きやすくなり、発色の低下が生じやすい。
【0020】
多価金属塩は、2価以上の多価金属イオンとアニオンから構成される。2価以上の多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Mg2+、Cu2+、Ni2+、Zn2+、Ba2+等が挙げられる。アニオンとしては、例えば、Cl-、NO3
-、CH3COO-、I-、Br-、SO4
2-、ClO3
-等が挙げられる。多価金属塩として具体的には、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸銅、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。多価金属塩は、水和物であってもよく、無水和物であってもよい。
【0021】
これらの多価金属塩は、1種のみ、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多価金属塩の含有量は、有効成分量で、前処理液全量に対し、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、多価金属塩の含有量は、有効成分量で、前処理液全量に対し、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。多価金属塩の含有量は、有効成分量で、例えば、前処理液全量に対し、10~50質量%が好ましく、15~45質量%がより好ましく、20~40質量%がさらに好ましい。
なお、多価金属塩として金属塩水和物を用いる場合は、多価金属塩の有効成分量は、無水和物に換算した量である。
【0022】
前処理液には、水溶性有機溶剤を配合することが好ましい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0023】
水溶性有機溶剤は、一種単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。水溶性有機溶剤の含有量は、前処理液全量に対し、1~50質量%であることが好ましく、5~40質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
前処理液は、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤またはこれらの組合せを好ましく用いることができ、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、低分子系界面活性剤、高分子系界面活性剤のいずれを用いてもよい。
【0025】
界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましい。
【0026】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型界面活性剤;アセチレン系界面活性剤;シリコーン系界面活性剤;フッ素系界面活性剤等が挙げられる。なかでも、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0027】
アセチレン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレン基を有する界面活性剤等を挙げることができる。
【0028】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、アセチレン基を有するグリコールであって、好ましくはアセチレン基が中央に位置して左右対称の構造を備えるグリコールであり、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造を備えてもよい。
アセチレン系界面活性剤の市販品としては、例えば、エボニックインダストリーズ社製サーフィノールシリーズ「サーフィノール104E」、「サーフィノール104H」、「サーフィノール420」、「サーフィノール440」、「サーフィノール465」、「サーフィノール485」等、日信化学工業株式会社製オルフィンシリーズ「オルフィンE1004」、「オルフィンE1010」、「オルフィンE1020」等を挙げることができる(いずれも商品名)。
【0029】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、例えば、日信化学工業株式会社製の「シルフェイスSAG002」、「シルフェイス503A」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0030】
また、その他の非イオン性界面活性剤として、例えば、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲン102KG」、「エマルゲン103」、「エマルゲン104P」、「エマルゲン105」、「エマルゲン106」、「エマルゲン108」、「エマルゲン120」、「エマルゲン147」、「エマルゲン150」、「エマルゲン220」、「エマルゲン350」、「エマルゲン404」、「エマルゲン420」、「エマルゲン705」、「エマルゲン707」、「エマルゲン709」、「エマルゲン1108」、「エマルゲン4085」、「エマルゲン2025G」等のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0031】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製エマールシリーズ「エマール0」、「エマール10」、「エマール2F」、「エマール40」、「エマール20C」等、ネオペレックスシリーズ「ネオペレックスGS」、「ネオペレックスG-15」、「ネオペレックスG-25」、「ネオペレックスG-65」等、ペレックスシリーズ「ペレックスOT-P」、「ペレックスTR」、「ペレックスCS」、「ペレックスTA」、「ペレックスSS-L」、「ペレックスSS-H」等、デモールシリーズ「デモールN、デモールNL」、「デモールRN」、「デモールMS」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0032】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アセタミンシリーズ「アセタミン24」、「アセタミン86」等、コータミンシリーズ「コータミン24P」、コータミン86P」、「コータミン60W」、「コータミン86W」等、サニゾールシリーズ「サニゾールC」、「サニゾールB-50」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0033】
両性界面活性剤としては、例えば、花王株式会社製アンヒトールシリーズ「アンヒトール20BS」、「アンヒトール24B」、「アンヒトール86B」、「アンヒトール20YB」、「アンヒトール20N」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0034】
界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
界面活性剤の含有量は、前処理液全量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.2~3質量%がさらに好ましい。
【0036】
前処理液は、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、水、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。
【0037】
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等が挙げられる。
【0038】
水は前処理液全量に対して、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがさらに好ましい。
【0039】
前処理液の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の攪拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことにより得ることができる。
【0040】
前処理液のpHは、3~9が好ましく、4~8がより好ましい。
前処理液の粘度は、23℃における粘度が1~30mPa・sであることが好ましい。
【0041】
白色画像の良好な発色及びそれによる非白色画像の良好な発色の観点から、前処理液の表面張力をXとするとき、下記式1を満たすことが好ましい。
(式1)33mN/m≦X≦50mN/m
【0042】
白色画像の良好な発色及びそれによる非白色画像の良好な発色の観点から、Xは、33mN/m以上が好ましく、34mN/m以上がより好ましく、35mN/m以上がさらに好ましくい。白色画像の良好な発色及びそれによる非白色画像の良好な発色の観点から、Xは、50mN/m以下が好ましく、45mN/m以下がより好ましく、40mN/m以下がさらに好ましい。Xは、33mN/m~50mN/mが好ましく、34mN/m~45mN/mがより好ましく、35mN/m~40mN/mがさらに好ましい。
【0043】
前処理液の表面張力は、例えば、界面活性剤、水溶性有機溶剤等の種類や量等によってコントロールすることができる。
【0044】
本明細書において、表面張力は、周波数0.05Hzにおける動的表面張力であって、23℃における値であり、バブルプレッシャー法(最大泡圧法)に従って、23℃、0.05Hzの測定条件で求めることができる。測定には、例えば、SITA Process Solutions社製「SITA Messtechnik GmbH science line t60」を用いることができる。
【0045】
前処理液は、捺染用として好ましく用いることができる。前処理液の付与方法はとくに限定されないが、インクジェット法で付与されることが好ましい。
【0046】
<白色インクジェットインク>
白色インクジェットインクは、色材として、白色顔料を含む。
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム等の無機顔料などを挙げることができる。中空樹脂微粒子、高分子微粒子等の白色顔料を用いることもできる。なかでも、隠蔽性の観点から、酸化チタンを用いることが好ましい。酸化チタンの平均粒子径は、隠蔽性の観点から100nm以上であることが好ましく、吐出安定性の観点から600nm以下であることが好ましい。酸化チタンを使用する場合は、光触媒作用を抑制するために、アルミナやシリカで表面処理されたものを用いることが好ましい。表面処理量は、顔料中に5~20質量%であることが好ましい。
【0047】
白色顔料として、自己分散性顔料を用いてもよい。自己分散性顔料は、化学的処理又は物理的処理により顔料の表面に親水性官能基が導入された顔料である。自己分散性顔料に導入させる親水性官能基については、後述する。
白色顔料として、顔料分散剤で顔料があらかじめ分散された顔料分散体を使用してもよい。後述する顔料分散剤で分散された顔料分散体を使用してもよい。
【0048】
白色顔料は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
白色顔料の含有量は、隠蔽性等の観点から、白色インクジェットインク全量に対して1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、5~15質量%がさらに好ましい。
【0050】
白色インクジェットインク中に白色顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤、界面活性剤型分散剤等に代表される顔料分散剤を用いることができる。
高分子分散剤としては、例えば、市販品として、EVONIK社製のTEGOディスパースシリーズ「TEGOディスパース740W」、「TEGOディスパース750W」、「TEGOディスパース755W」、「TEGOディスパース757W」、「TEGOディスパース760W」等、日本ルーブリゾール株式会社製のソルスパースシリーズ「ソルスパース20000」、「ソルスパース27000」、「ソルスパース41000」、「ソルスパース41090」、「ソルスパース43000」、「ソルスパース44000」、「ソルスパース46000」等、BASFジャパン株式会社製のジョンクリルシリーズ「ジョンクリル57」、「ジョンクリル60」、「ジョンクリル62」、「ジョンクリル63」、「ジョンクリル71」、「ジョンクリル501」等、ビックケミージャパン株式会社製の「DISPERBYK-102」、「DISPERBYK-185」、「DISPERBYK-190」、「DISPERBYK-193」、「DISPERBYK-199」等、第一工業製薬株式会社製の「ポリビニルピロリドンK-30」、「ポリビニルピロリドンK-90」等が挙げられる(いずれも商品名)。
界面活性剤型分散剤としては、例えば、花王株式会社製デモールシリーズ「デモールP」、「デモールEP」、「デモールN」、「デモールRN」、「デモールNL」、「デモールRNL」、「デモールT-45」等のアニオン性界面活性剤、花王株式会社製エマルゲンシリーズ「エマルゲンA-60」、「エマルゲンA-90」、「エマルゲンA-500」、「エマルゲンB-40」、「エマルゲンL-40」、「エマルゲン420」等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0051】
顔料分散剤は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料分散剤を使用する場合の白色インクジェットインク中の量は、その種類によって異なり特に限定はされないが、一般に、有効成分の質量比で顔料1に対し、0.005~0.5が好ましい。
【0052】
白色インクジェットインクは、樹脂粒子を含むことができる。
【0053】
樹脂粒子は、水性溶媒中で分散可能な樹脂粒子であることが好ましい。樹脂粒子は、水中で水に溶解することなく分散して水中油(O/W)型エマルションを形成できるものであることが好ましい。
樹脂粒子は、白色インクジェットインクの製造に際し、水中油型樹脂エマルションとして配合することができる。
【0054】
樹脂粒子は、水に安定に分散させるために親水性基及び/又は親水性セグメントを樹脂に導入した自己乳化型の樹脂粒子でもよいし、分散剤を用いて樹脂を強制的に分散させた強制乳化型樹脂粒子でもよい。
樹脂粒子は、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性のいずれであってもよいが、アニオン性、または非イオン性が好ましい。
【0055】
アニオン性樹脂粒子は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するアニオン性官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にアニオン性分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。アニオン性の官能基としては、代表的にはカルボキシ基、スルホ基、スルフィノ基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、亜リン酸基、亜リン酸エステル基等が挙げられる。アニオン性の分散剤としては、陰イオン界面活性剤等が挙げられる。
非イオン性樹脂粒子は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有する非イオン性官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面に非イオン性分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。非イオン性の官能基としては、代表的にはポリオキシアルキレングリコール基、ヒドロキシル基等が挙げられる。非イオン性の分散剤としては、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0056】
樹脂粒子の平均粒子径は、インクジェット吐出性の観点から、600nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下がより好ましい。例えば、樹脂粒子の平均粒子径は、10nm~600nmの範囲であってよく、50nm~300nmの範囲であってよく、50nm~200nmの範囲であってよい。
本明細書において、樹脂粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による体積基準の平均粒子径である。
【0057】
樹脂粒子の種類としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。
【0058】
樹脂粒子の種類としては、例えば、
スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の共役ジエン系樹脂;
アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体、またはこれらとスチレン等との共重合体等のアクリル系樹脂;
エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、
あるいはこれらの各種樹脂のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂;
メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂(「ウレタン樹脂」と記載する場合もある。)、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂粒子が挙げられる。これらの単独樹脂の樹脂粒子を用いてもよく、ハイブリッド型の樹脂粒子でもよい。
【0059】
樹脂粒子は、アクリル系樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、またはこれらの組合せを含むことが好ましい。
ポリウレタン樹脂としては、脂肪族ポリウレタン及び芳香族ポリウレタンのいずれであってもよい。また、ポリウレタン樹脂の例としては、例えば、エーテル系ポリウレタン樹脂、エステル系ポリウレタン樹脂、エステル・エーテル系ポリウレタン樹脂、カーボネート系ポリウレタン等が挙げられる。
【0060】
樹脂粒子のエマルションの市販品としては、第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックス460」、「スーパーフレックス470」、「スーパーフレックス740」、「スーパーフレックス150」、ジャパンコーティングレジン株式会社製「モビニール6763」、「モビニール6718」等が挙げられる(いずれも商品名)。
【0061】
樹脂粒子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
樹脂粒子は、白色インクジェットインク全量に対し、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましく、12質量%以上がさらに好ましい。樹脂粒子Aは、白色インクジェットインク全量に対し、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。樹脂粒子は、白色インクジェットインク全量に対しは、例えば、5~30質量%が好ましく、8~25質量%がより好ましく、10~20質量%がさらに好ましく、12~20質量%がさらに好ましい。
【0062】
白色インクジェットインクには、水溶性有機溶剤を配合することが好ましい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、上記した前処理液で説明したものから選択して用いることができる。
【0063】
水溶性有機溶剤は、1種を単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。水溶性有機溶剤は、白色インクジェットインク全量に対し、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
【0064】
白色インクジェットインクは、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、水、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤等が挙げられる。
【0065】
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。
特に、インクの貯蔵安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、インク粘度の調整の観点から、白色インクジェットインク全量に対して、30~70質量%で含まれることが好ましく、35~65質量%で含まれることがより好ましく、40~60質量%で含まれることがさらに好ましい。
【0066】
界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤又はこれらの組合せを好ましく用いることができ、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、低分子系界面活性剤、高分子系界面活性剤のいずれを用いてもよい。
【0067】
界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましい。
【0068】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、上記した前処理液で説明したものから選択して用いることができる。なかでも、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0069】
界面活性剤の含有量は、白色インクジェットインク全量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.2~3質量%がさらに好ましい。
【0070】
白色インクジェットインクの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の攪拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことによりインクを得ることができる。
【0071】
白色インクジェットインクのpHは、インクの貯蔵安定性の観点から、7.0~10.0が好ましく、7.5~9.0がより好ましい。
白色インクジェットインクの粘度は、例えばインクジェット吐出性の観点から、23℃における粘度が1~30mPa・sであることが好ましい。
【0072】
白色インクジェットインクの表面張力をYとするとき、Yは、28mN/m以上であることが好ましく、30mN/m以上であることがより好ましく、32mN/m以上であることがさらに好ましい。一方、Yは、50mN/m以下であることが好ましく、45mN/m以下であることがより好ましく、42mN/m以下であることがさらに好ましい。Yは、例えば、28mN/m~50mN/mであることが好ましく、30mN/m~45mN/mであることがより好ましく、32mN/m~42mN/mであることがさらに好ましい。
【0073】
白色インクジェットインクの表面張力は、例えば、水溶性有機溶剤等の種類や量等によってコントロールすることができる。
【0074】
非白色インクジェットインクの表面張力をZ1とするとき、非白色画像の発色の向上の観点から、Y及びZ1は、下記式2を満たすことが好ましい。
(式2)-5mN/m≦Y-Z1≦10mN/m
【0075】
非白色画像の発色の向上の観点から、Y-Z1は、-5mN/m以上であることが好ましく、-3mN/m以上であることがより好ましく、-2mN/m以上であることがさらに好ましい。一方、非白色画像の発色の向上の観点から、Y-Z1は、10mN/m以下であることが好ましく、8mN/m以下であることがより好ましく、6mN/m以下であることがさらに好ましい。Y-Z1は、-5mN/m~10mN/mであることが好ましく、-3mN/m~8mN/mであることがより好ましく、-2mN/m~6mN/mであることがさらに好ましい。
【0076】
白色インクジェットインクは、捺染用として好ましく用いることができる。
白色インクジェットインクは、インクジェット法によって基材に付与して白色の画像を形成することができる。白色インクジェットインクが付与された基材に、非白色インクジェットインク付与して、非白色画像を形成することができる。白色インクジェットインクは、前処理液が付与された基材に付与することが好ましい。
【0077】
<非白色インクジェットインク>
非白色インクジェットインクとしては、マゼンタインク、シアンインク、イエローインク、ブラックインク等の白色インク以外のインクが挙げられる。
【0078】
非白色インクジェットインクは、色材として、非白色の顔料を含むことができる。
【0079】
非白色の顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料、及び、カーボンブラック、金属酸化物等の無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスカーボンブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0080】
非白色インク中における非白色顔料粒子の平均粒子径は、吐出安定性と保存安定性の観点から、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の平均値として、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさらに好ましい。
【0081】
非白色顔料として自己分散性顔料を配合してもよい。自己分散性顔料は、化学的処理又は物理的処理により顔料の表面に親水性官能基が導入された顔料である。自己分散性顔料に導入させる親水性官能基としては、イオン性を有するものが好ましく、顔料表面をアニオン性又はカチオン性に帯電させることにより、静電反発力によって顔料粒子を水中に安定に分散させることができる。アニオン性官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、スルフィノ基、硫酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、亜リン酸基、亜リン酸エステル基等が好ましい。カチオン性官能基としては、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基等が好ましい。
【0082】
これらの親水性官能基は、顔料表面に直接結合させてもよいし、他の原子団を介して結合させてもよい。他の原子団としては、アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられるが、これらに限定されることはない。顔料表面の処理方法としては、ジアゾ化処理、スルホン化処理、次亜塩素酸処理、フミン酸処理、真空プラズマ処理等が挙げられる。
【0083】
自己分散性顔料としては、例えば、キャボット社製CAB-O-JETシリーズ「CAB-O-JET200」、「CAB-O-JET300」、「CAB-O-JET250C」、「CAB-O-JET260M」、「CAB-O-JET270」、「CAB-O-JET450C」等、オリヱント化学工業株式会社製「BONJET BLACK CW-1」、「BONJET BLACK CW-2」、「BONJET BLACK CW-3」、「BONJET BLACK CW-4」等を好ましく使用することができる(いずれも商品名)。
非白色顔料として、非白色顔料を樹脂で被覆したマイクロカプセル化顔料を用いてもよい。
【0084】
顔料分散剤で非白色顔料があらかじめ分散された顔料分散体を使用してもよい。顔料分散剤で分散された顔料分散体の市販品としては、例えば、クラリアント社製HOSTAJETシリーズ、冨士色素株式会社製FUJI SPシリーズ、大日精化工業株式会社製「AC-AK1」(商品名)等が挙げられる。後述する顔料分散剤で分散された顔料分散体を使用してもよい。
【0085】
非白色画像の発色のさらなる向上の観点から、非白色顔料の電荷密度は、200μeq/g以下であることが好ましく、150μeq/g以下であることがより好ましく、120μeq/g以下であることがさらに好ましい。非白色顔料の電荷密度が200μeq/g以下であると、非白色画像の発色をより向上させやすい。このメカニズムは定かではないが、次のように推測される。基材として用いる布の種類によって、布表面に残る凝集剤量は異なり、たとえば吸水性の低い布では、凝集剤が布表面に残りやすく、白色画像にも混在しやすい。非白色顔料と白色画像に混在する凝集剤とが反応して非白色顔料粒子の凝集が進むと、顔料粒子が大きくなり、粒子数が減少して、非白色顔料の粒子の分布が不均一となり、発色が低下する傾向がある。非白色顔料の電荷密度が200μeq/g以下であると、非白色顔料と白色画像に混在する凝集剤との反応性が低くなり、非白色顔料粒子が均一に分布しやすくなり、発色をさらに向上させやすいと推測される。
【0086】
撥水加工を施したTシャツなどの撥水性の高い布での滲みの抑制とシャープな画像の形成の観点から、非白色顔料の電荷密度は30μeq/g以上であることが好ましく、50μeq/g以上であることがより好ましい。
非白色顔料の電荷密度は、例えば、30~200μeq/gが好ましく、30~150μeq/gがより好ましく、50~120μeq/gがさらに好ましい。
【0087】
本明細書において、顔料の電荷密度は、流動電位法で測定される電荷密度である。顔料の電荷密度は、顔料分散体の顔料の固形分量当たりの電荷量である(単位:μeq/g)。
具体的には、測定する顔料分散体を水で100倍に希釈した希釈液を試料として用い、0.0025Nポリ塩化ジアリルジメチル-アンモニウム溶液にて滴定を行い、試料の流動電位が0Vになる反応終点を測定し、反応終点までに使用した0.0025Nポリ塩化ジアリルジメチル-アンモニウム溶液量から、試料(希釈した顔料分散体)の総電荷量を求めることができる。試料(希釈した顔料分散体)の総電荷量を、試料に含まれる顔料の固形分量で割った値が、顔料の電荷密度(μeq/g)である。
電荷密度の測定装置には、例えば、コロイド粒子電荷量計(AFG ANALYTIC GmbH製「Model CAS」)を用いることができる。
【0088】
非白色顔料は、1種で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
非白色顔料の含有量は、印刷濃度とインク粘度の観点から、非白色インクジェットインク全量に対して1~10質量%であることが好ましく、2~8質量%であることがより好ましく、2~6質量%であることがさらに好ましい。
【0090】
非白色インクジェットインク中に非白色顔料を安定に分散させるために、高分子分散剤、界面活性剤型分散剤等に代表される顔料分散剤を用いることができる。
【0091】
顔料分散剤としては、例えば、上記した白色インクジェットインクで説明したものから選択して用いることができる。
顔料分散剤を使用する場合の非白色インクジェットインク中の配合量は、その種類によって異なり特に限定はされないが、一般に、有効成分の質量比で顔料1に対し、0.005~0.5が好ましい。
【0092】
非白色インクジェットインクは、樹脂粒子を含むことができる。
樹脂粒子は、水性溶媒中で分散可能な樹脂粒子であることが好ましい。樹脂粒子は、水中で水に溶解することなく分散して水中油(O/W)型エマルション形成できるものであることが好ましい。
樹脂粒子は、非白色インクジェットインクの製造に際し、水中油型樹脂エマルションとして配合することができる。
【0093】
樹脂粒子は、水に安定に分散させるために親水性基及び/又は親水性セグメントを樹脂に導入した自己乳化型の樹脂粒子でもよいし、分散剤を用いて樹脂を強制的に分散させた強制乳化型樹脂粒子でもよい。
非白色画像の発色のさらなる向上の観点から、非白色インクジェットインク中の樹脂粒子は、強制乳化型樹脂粒子を含むことが好ましい。強制乳化型樹脂粒子は、樹脂が親水性官能基を有していないことが好ましい。
【0094】
樹脂粒子は、例えば、アニオン性樹脂粒子、カチオン性樹脂粒子、非イオン性樹脂粒子、または両性樹脂粒子のいずれであってもよいが、アニオン性樹脂粒子、非イオン性樹脂粒子又はこれらの組合せが好ましい。
【0095】
アニオン性樹脂粒子は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するアニオン性官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にアニオン性分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。
非イオン性樹脂粒子は、自己乳化型樹脂のように、樹脂が有する非イオン性官能基が樹脂粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面に非イオン性分散剤を付着させる等の表面処理がされたものでもよい。アニオン性の官能基、アニオン性の分散剤、非イオン性の官能基、非イオン性の分散剤の例としては、上述の白色インクの樹脂粒子において説明したもの等が挙げられる。
【0096】
樹脂粒子の平均粒子径は、インクジェット吐出性の観点から、600nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましく、200nm以下がより好ましい。例えば、樹脂粒子の平均粒子径は、10nm~600nmの範囲であってよく、50nm~300nmの範囲であってよく、50nm~200nmの範囲であってよい。
【0097】
樹脂粒子の種類としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。
【0098】
樹脂粒子の種類としては、例えば、
スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の共役ジエン系樹脂;
アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体、またはこれらとスチレン等との共重合体等のアクリル系樹脂;
エチレン-酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、
あるいはこれらの各種樹脂のカルボキシ基等の官能基含有単量体による官能基変性樹脂;
メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキッド樹脂等、の樹脂粒子が挙げられる。これらの単独樹脂の樹脂粒子を用いてもよく、ハイブリッド型の樹脂粒子でもよい。
【0099】
樹脂粒子はアクリル系樹脂粒子、ウレタン樹脂粒子、またはこれらの組合せを含むことが好ましい。
樹脂粒子のエマルションの市販品としては、例えば、上記した白色インクで例示したものが挙げられる。
【0100】
樹脂粒子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
非白色画像の発色の観点から、樹脂粒子は、非白色インクジェットインク全量に対し、10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましく、14質量%以上がさらに好ましい。樹脂粒子が、非白色インクジェットインク全量に対し、10質量%以上であると、ヒートプレス等の加圧式の加熱装置を使用して加熱乾燥を行う場合でも、ドットの流動性が抑制されて、非白色インクと白色インクとの混合が抑制されやすく、非白色インクの発色をより良好なものとしやすい。
樹脂粒子は、非白色インクジェットインク全量に対し、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。樹脂粒子は、例えば、非白色インクジェットインク全量に対し、10~30質量%がこのましく、12~25質量%がより好ましく、14~20質量%がさらに好ましい。
【0101】
非白色インクジェットインクは、強制乳化型樹脂粒子を含むことが好ましい。非白色画像の発色のさらなる向上の観点から、強制乳化型樹脂粒子は、非白色インクジェットインク全量に対し、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。強制乳化型樹脂粒子の配合量が多いほど、後述するZ2-Z1が大きくなることを抑制できる傾向がある。このメカニズムは定かではないが、強制乳化型樹脂粒子の場合、樹脂粒子を分散させるために使用されている分散剤が溶媒の表面張力を下げ得ること、及び、強制乳化型樹脂粒子は分散剤で分散しているため、自己乳化型樹脂粒子に比べ、立体障害や分子間力が分散安定化に寄与する割合が大きく、白色インクの層に混在する多価金属塩と接触した場合でも凝集しにくいこと、などにより、ドットの収縮が抑制されやすいためであると推測される。
【0102】
強制乳化型樹脂粒子は、非白色インクジェットインク全量に対し、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。強制乳化型樹脂粒子は、例えば、非白色インクジェットインク全量に対し、3~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましく、10~20質量%以上がさらに好ましい。
強制乳化型樹脂粒子は、非白色インクジェットインク中の樹脂粒子の10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。
【0103】
非白色インクジェットインクは、水溶性有機溶剤を含むことができる。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、上記した前処理液で説明したものから選択して用いることができる。
これらの水溶性有機溶剤は、1種を単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。
水溶性有機溶剤の非白色インクジェットインク中の含有量は、非白色インクジェットインク全量に対して10~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。
【0104】
非白色インクジェットインクは、界面活性剤を含むことが好ましい。
【0105】
界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはこれらの組み合わせも好ましく用いることができるが、安定性の観点から、非イオン性界面活性剤がより好ましい。また、低分子系界面活性剤、高分子系界面活性剤のいずれを用いてもよい。
【0106】
界面活性剤のHLB値は、5~20であることが好ましく、10~18であることがより好ましい。
界面活性剤としては、例えば、上記した白色インクジェットインクで説明したものから選択して用いることができる。なかでも、アセチレングリコール系界面活性剤等のアセチレン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0107】
界面活性剤は、1種で、または2種以上を組み合わせて用いてよい。
界面活性剤の含有量は、非白色インクジェットインク全量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましく、0.2~3質量%がさらに好ましい。
【0108】
非白色インクジェットインクは、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、水、pH調整剤、防腐剤等が挙げられる。
【0109】
水としては、特に制限されないが、イオン成分をできる限り含まないものが好ましい。特に、インクの貯蔵安定性の観点から、カルシウム等の多価金属イオンの含有量が少ないことが好ましい。水としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水等を用いるとよい。
水は、インク粘度の調整の観点から、非白色インクジェットインク全量に対して30~70質量%で含まれることが好ましく、35~65質量%で含まれることがより好ましい。
【0110】
非白色インクジェットインクの製造方法は、特に限定されず、公知の方法により適宜製造することができる。例えば、スリーワンモーター等の攪拌機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等のろ過機を通すことによりインクを得ることができる。
【0111】
非白色インクジェットインクのpHは、インクの貯蔵安定性の観点から、7.0~10.0が好ましく、7.5~9.0がより好ましい。
非白色インクジェットインクの粘度は、例えばインクジェット吐出性の観点から、23℃における粘度が1~30mPa・sであることが好ましい。
【0112】
非白色インクジェットインクの表面張力をZ1とするとき、Z1は、28mN/m以上であることが好ましく、30mN/m以上であることがより好ましく、32mN/m以上であることがさらに好ましい。一方、Z1は、50mN/m以下であることが好ましく、45mN/m以下であることがより好ましく、42mN/m以下であることがさらに好ましい。Z1は、例えば、28mN/m~50mN/mであることが好ましく、30mN/m~45mN/mであることがより好ましく、32mN/m~42mN/mであることがさらに好ましい。
【0113】
非白色インクジェットインクの表面張力は、例えば、界面活性剤、水溶性有機溶剤等の種類や量等によってコントロールすることができる。
【0114】
非白色インクジェットインクから界面活性剤を除いた組成を有する液体の表面張力をZ2とするとき、非白色画像の発色の向上の観点から、Z2-Z1は、10mN/m以下が好ましく、8mN/m以下であることがより好ましく、6.5mN/m以下であることがさらに好ましい。
【0115】
Z2-Z1は、0mN/m以上であることが好ましい。Z2-Z1は、例えば、0mN/mより高くてもよい。
【0116】
非白色画像の発色の向上の観点から、Z2-Z1は、0mN/m~10mN/m、すなわち、下記式3を満たすことが好ましい。
(式3)0mN/m≦Z2-Z1≦10mN/m
【0117】
Z2-Z1は、0mN/m~6.5mN/m、すなわち、下記式4を満たすことがより好ましい。
(式4)0mN/m≦Z2-Z1≦6.5mN/m
【0118】
Z2-Z1は、例えば、樹脂粒子、顔料粒子、水溶性溶剤の選定によりコントロールすることができる。また、非白色インクの樹脂粒子が、強制乳化型樹脂粒子を含む場合、Z2―Z1を低減させやすい。
【0119】
非白色インクジェットインクは、捺染用として好ましく用いることができる。
【0120】
非白色インクジェットインクは、インクジェット法によって基材に付与して非白色の画像を形成することができる。白色インクジェットインクが付与された基材に非白色インクジェットインクを付与して、非白色画像を形成することが好ましい。
【0121】
一実施形態の捺染用インクセットは、布への印刷に好ましく用いることができる。
布に含まれる繊維としては、例えば、綿、絹、羊毛、麻等の天然繊維;ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ナイロン、レーヨン、キュプラ、アセテート等の化学繊維等を挙げることができる。布は、1種または2種以上の繊維を含んでよい。また、布は、織物、編物、又は不織布等であってよい。
【0122】
<捺染物の製造方法>
一実施形態の捺染物の製造方法は、前処理液を布に付与すること(以下、「前処理液付与工程」とも称する。)と、前記前処理液が付与された布に、白色インクジェットインクをインクジェット法で付与すること(以下、「白色インク付与工程」とも称する。)と、白色インクジェットインクが付与された布に、非白色インクジェットインクをインクジェット法で付与すること(以下、「非白色インク付与工程」とも称する。)とを含むことができる。前処理液として、上述の一実施形態のインクセットに含まれる前処理液として説明した前処理液を用いることができる。また、白色インクジェットインクとして、上述の一実施形態のインクセットに含まれる白色インクジェットインクとして説明したインクを用いることができる。また、非白色インクジェットインクとして、上述の一実施形態のインクセットに含まれる非白色インクジェットインクとして説明したインクを用いることができる。布としては、上述の一実施形態のインクセットを用いることができる布として説明した布を用いることができる。
【0123】
前処理液付与工程について説明する。
前処理液を布に付与する方法は特に限定されず、例えば、エアブラシ等を用いるスプレー法、浸漬法、パッド法、コーティング法等の任意の方法を用いることができ、さらにインクジェット印刷(インクジェット法)、スクリーン印刷等の各種印刷方法を用いてもよい。
インクジェット法は特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから前処理液又はインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を布に付着させるようにすることが好ましい。
【0124】
前処理液を付与する領域は、白色インクジェットインクによる画像と同一の形状の領域であってもよいし、白色インクジェットインクによる画像の形状を含む広めの領域であってもよいし、布の全面であってもよい。
前処理液の付与領域、白色インクジェットインクの付与領域および非白色インクジェットインクの付与領域は、少なくとも部分的に重なることが好ましい。
【0125】
布への前処理液の付与量は、10~100g/m2が好ましく、20~75g/m2がより好ましく、30~50g/m2がさらに好ましい。
【0126】
白色インク付与工程について説明する。
白色インクジェットインクは、インクジェット法で布に付与することが好ましい。インクジェット法は、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから前処理液又はインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を布に付着させるようにすることが好ましい。
白色インクジェットインクは、前処理液の付与領域と、付与領域が少なくても部分的に重なるように付与することが好ましい。前処理液の付与領域と白色インクジェットインクの付与領域は、少なくとも部分的に重なることが好ましい。
【0127】
白色インクジェットインクは、前処理液が付与された布に、ウェットオンウェット方式で付与されることが好ましい。白色インクジェットインクは、前処理液が付与された布から水分を完全に除去しない状態で付与されることが好ましい。好ましくは、白色インクジェットインクは、前処理液が付与された布が湿潤状態を保つ状態で付与され得る。例えば、前処理液を布に付与した後、加熱乾燥などの乾燥工程を行わずに白色インクジェットインクを布に付与することが好ましい。前処理液付与後、白色インクジェットインク付与までの布表面の温度は、40℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましい。前処理液付与後、布上の前処理液の揮発分の残存量が90質量%以上の状態で、白色インクジェットインクが付与されることが好ましい。布に前処理液を付与してから白色インクジェットインクを付与するまでの時間は、0.1~200秒であることが好ましい。
【0128】
布への白色インクジェットインクの付与量は特に限定されないが、例えば、50~400g/m2が好ましく、100~200g/m2がより好ましい。
【0129】
非白色インク付与工程について説明する。
非白色インクジェットインクは、インクジェット法で布に付与することが好ましい。インクジェット法は、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式などのいずれの方式であってもよい。インクジェット印刷装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから前処理液又はインクの液滴を吐出させ、吐出された液滴を布に付着させるようにすることが好ましい。
非白色インクジェットインクは、白色インクジェットインクの付与領域と、付与領域が少なくとも部分的に重なるように付与することが好ましい。前処理液の付与領域、白色インクジェットインクの付与領域および非白色インクジェットインクの付与領域は、少なくとも部分的に重なることが好ましい。
【0130】
非白色インクジェットインクは、白色インクジェットインクが付与された布に、ウェットオンウェット方式で付与されることが好ましい。非白色インクジェットインクは、白色インクジェットインクが付与された布から水分を完全に除去しない状態で付与されることが好ましい。好ましくは、非白色インクジェットインクは、白色インクジェットインクが付与された布が湿潤状態を保つ状態で付与され得る。例えば、白色インクジェットインクを布に付与した後、加熱乾燥などの乾燥工程を行わずに非白色インクジェットインクを布に付与することが好ましい。白色インクジェットインク付与後、非白色インクジェットインク付与までの布表面の温度は、40℃以下であることが好ましく、35℃以下であることがより好ましい。白色インクジェットインク付与後、布上の白色インクジェットインクの揮発分の残存量が90質量%以上の状態で、非白色インクジェットインクが付与されることが好ましい。布に白色インクジェットインクを付与してから非白色インクジェットインクを付与するまでの時間は、0.1~200秒であることが好ましい。
【0131】
布への非白色インクジェットインクの付与量は特に限定されないが、例えば、5~60g/m2が好ましく、10~30g/m2がより好ましい。
【0132】
1種類の非白色インクジェットインクを付与してもよく、2種類以上の非白色インクジェットインクを付与してもよい。
【0133】
前処理液をインクジェット法で付与する場合、前処理液の付与と、白色インクジェットインクの付与は、別々の印刷装置で行ってもよく、1つの印刷装置を用いて行ってもよい。
例えば、白色インクジェットインクの付与と非白色インクジェットインクの付与を、1台の印刷装置を用いて行ってもよいし、別々の印刷装置を用いて付与してもよい。例えば、前処理液の付与、白色インクジェットインクの付与、及び非白色インクジェットインクの付与を、1台の印刷装置を用いて行ってもよい。また、例えば2台の印刷装置を用い、そのうちの1台の印刷装置を用いて前処理液の付与を行い、他の1台を用いて、白色インクジェットインクの付与及び非白色インクジェットインクの付与を行ってもよい。
【0134】
非白色インクジェットインク付与工程の後に、布を熱処理する工程を設けることが好ましい。
熱処理温度は、布の材料等によって適宜選択することができる。熱処理温度は、例えば、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。熱処理温度は、布へのダメージを低減する観点から、200℃以下が好ましい。
加熱装置は、特に制限されないが、例えば、ヒートプレス、ロールヒータ、温風装置、赤外線ランプヒーター等を用いることができる。
加熱処理時間は、加熱方法等に応じて適宜設定すればよく、例えば、1秒~10分が好ましく、5秒~5分であってよい。
【0135】
非白色インク付与工程の後に、後処理液を付与する工程を設けてもよい。例えば、非白色インク付与工程の後に、布を熱処理する工程を設け、その後に後処理液を付与してもよい。例えば、非白色インク付与工程の後にウェットオンウェット方式で後処理液を付与してもよい。さらに、後処理液を付与したのちに、布を熱処理する工程を設けてもよい。
【実施例0136】
以下、本発明の実施形態を実施例により詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の説明において、特に説明のない箇所では、「%」は「質量%」を示す。
【0137】
1.前処理液の作製
表1に前処理液の処方を示す。表1に記載の配合比で原材料を混合し、孔径3μmのセルロースアセテートメンブレンフィルターでろ過し、前処理液PT1~PT5を得た。
【0138】
表1に記載の原材料の詳細は以下の通りである。表1に記載の硝酸マグネシウム六水和物の量は、六水和物としての量である。
(多価金属塩)
硝酸マグネシウム六水和物:富士フイルム和光純薬株式会社製、有効成分(無水和物としての量)57.8質量%
(界面活性剤)
オルフィンE1020:アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製、有効成分100質量%
オルフィンE1010:アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製、有効成分100質量%
(水溶性有機溶剤)
ジエチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
トリエチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
グリセリン:富士フイルム和光純薬株式会社製
【0139】
【0140】
2.白色インクの作製
(1)白色顔料分散体の作製
白色顔料として酸化チタン「R62N」(堺化学工業株式会社製)250g、顔料分散剤として「デモールEP」(花王株式会社製)10g(有効成分で2.5g)を用い、イオン交換水740gと混合し、ビーズミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製、DYNO-MILL KDL A型)を用いて、0.5mmΦのジルコニアビーズを充填率80%、滞留時間2分で分散し、白色顔料分散体(顔料分25質量%)を得た。
【0141】
(2)白色インクの作製
表2に白色インクW1~W5の処方を示す。表に記載の配合比で原材料を混合し、孔径3μmのセルロースアセテートメンブレンフィルターでろ過し、白色インクW1~W5を得た。
【0142】
表2に記載の白色インクW1~W5の原材料の詳細は以下の通りである。表2において、樹脂エマルション及び顔料分散体の量は、それぞれ、水性媒体等を含む全体量で示す。
【0143】
(顔料分散体)
白色顔料分散体:上記の方法で得られたもの、顔料分25質量%
【0144】
(樹脂エマルション)
スーパーフレックス740:ポリウレタン樹脂エマルション、第一工業製薬株式会社製、樹脂分40.0質量%
スーパーフレックス150:ポリウレタン樹脂エマルション、第一工業製薬株式会社製、樹脂分30.0質量%
【0145】
(界面活性剤)
オルフィンE1020:アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製、有効成分100質量%
オルフィンE1010:アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製、有効成分100質量%
【0146】
(水溶性有機溶剤)
グリセリン:富士フイルム和光純薬株式会社製
ジエチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
【0147】
【0148】
3.非白色インクの作製
表3~6に非白色インクC1~C11、及び、非白色インクC1X~C11Xの処方を示す。非白色インクC1X~C11Xはそれぞれ、非白色インクC1~C11から界面活性剤を除いた組成を有する。
表に記載の配合比で原材料を混合し、孔径3μmのセルロースアセテートメンブレンフィルターでろ過し、非白色インクC1~C11及び非白色インクC1X~C11Xを得た。
【0149】
表3~6に記載の非白色インクC1~C11及び非白色インクC1X~C11Xの原材料の詳細は以下の通りである。表3~6おいて樹脂エマルション及び顔料分散体の量は、それぞれ、水性媒体等を含む全体量で示す。
【0150】
(顔料分散体)
AC-AK1:分散剤分散顔料分散体、大日精化工業株式会社製、顔料分14.0質量%
BONJET BLACK CW-1:自己分散性顔料分散体、オリヱント化学工業株式会社製、顔料分20.0質量%
FUJI SP Black 8140:自己分散性顔料分散体、冨士色素株式会社製、顔料分15.0質量%
BONJET BLACK CW-2:自己分散性顔料分散体、オリヱント化学工業株式会社製、顔料分15.0質量%
【0151】
(樹脂エマルション)
モビニール6763:アクリル系樹脂エマルション(強制乳化型)、ジャパンコーティングレジン株式会社製、樹脂分45.0質量%
モビニール6718:アクリル系樹脂エマルション(強制乳化型)、ジャパンコーティングレジン株式会社製、樹脂分45.0質量%)
スーパーフレックス470:ポリウレタン樹脂エマルション(自己乳化型)、第一工業製薬株式会社製、樹脂分38.0質量%
スーパーフレックス740:ポリウレタン樹脂エマルション(自己乳化型)、第一工業製薬株式会社製、樹脂分40.0質量%
スーパーフレックス460:ポリウレタン樹脂エマルション(自己乳化型)、第一工業製薬株式会社製、樹脂分38.0質量%
【0152】
(界面活性剤)
オルフィンE1010:アセチレングリコール系界面活性剤、日信化学工業株式会社製、有効成分量100質量%
サーフィノール465:アセチレングリコール系界面活性剤、エボニックインダストリーズ社製、有効成分量100質量%
【0153】
(水溶性有機溶剤)
グリセリン:富士フイルム和光純薬株式会社製
ジエチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
エチレングリコール:富士フイルム和光純薬株式会社製
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:富士フイルム和光純薬株式会社製
【0154】
4.顔料の電荷密度の測定
表3~6に、非白色インクC1~C11に用いられた顔料分散体の電荷密度を示す。表中に記載の各顔料分散体の電荷密度は、流動電位法により、以下の手順で得られた値である。電荷密度の測定には、コロイド粒子電荷量計(AFG ANALYTIC GmbH製、Model CAS)を使用した。測定する顔料分散体をイオン交換水で100倍に希釈して試料として用い、0.0025Nポリ塩化ジアリルジメチル-アンモニウム溶液(富士フイルム和光純薬株式会社製)にて滴定を行い、試料の流動電位が0Vになる反応終点を測定し、反応終点までに使用した0.0025Nポリ塩化ジアリルジメチル-アンモニウム溶液量から、試料(希釈した顔料粒子の水分散体)の総電荷量を求めた。試料の総電荷量を、試料に含まれる顔料の固形分量で割った値が、顔料の電荷密度(μeq/g)である。
【0155】
5.表面張力の測定
表1~6に前処理液PT1~PT5、白色インクW1~W5、非白色インクC1~C11及びC1X~C11Xの表面張力を示す。表1~6に記載の表面張力は、SITA Process Solutions社製の「SITA Messtechnik GmbH science line t60」を用いて、23℃、0.05Hzの測定条件で求めた。
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
6.捺染物の作製
上記で作製した前処理液PT1~PT5、白色インクW1~W5、及び非白色インクC1~C11を用いて、以下の手順で実施例1~14及び比較例1~6の捺染物を作製した。
表7~9に実施例1~14及び比較例1~6の捺染物の作製に用いた前処理液、白色インク及び非白色インクを示す。
基材として、トムス株式会社製黒綿Tシャツ(製品名Printstar)を用い、この黒綿Tシャツの表面の10cm×20cmの部分に、前処理液をインクジェット法で付与した。画像はベタ画像とし、前処理液の付与量は約50g/m2とした。前処理液付与後、乾燥工程を設けずに、前処理液を付与した部分に白色インクをインクジェット法で付与した。画像はベタ画像とし、白色インクの付与量は約180g/m2とした。白色インク付与後、乾燥工程を設けずに、白色インクを付与した部分に非白色インクをインクジェット法で付与した。画像はベタ画像とし、非白色インクの付与量は約20g/m2とした。前処理液の付与、白色インクの付与及び非白色インクの付与には、いずれも、印刷装置として、マスターマインド社製「MMP-8130」(商品名)を使用した。非白色インク付与後、FUSION社製ヒートプレス機を用いて160℃で2分間加熱乾燥し、10cm×20cmのベタ画像を有する捺染物を得た。
【0161】
7.捺染物の評価
捺染物の非白色の画像を目視で評価し、非白色画像の発色を以下の基準で判定した。評価結果を表に示す。
A:非白色画像の発色が非常に優れる
B:非白色画像の発色が優れる
C:非白色画像の発色が不十分である
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
実施例1~14の捺染物は、非白色画像の発色が優れていた。
これに対して、式3を満たさない比較例1、2及び6、式2を満たさない比較例3、式1を満たさない比較例4及び5は、いずれも非白色画像の発色が十分ではなかった。