IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クラレノリタケデンタル株式会社の特許一覧

特開2024-105624歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置
<>
  • 特開-歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置 図1
  • 特開-歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置 図2
  • 特開-歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置 図3
  • 特開-歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置 図4A
  • 特開-歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置 図4B
  • 特開-歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置 図5
  • 特開-歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置 図5A
  • 特開-歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置 図5B
  • 特開-歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置 図6
  • 特開-歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105624
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/00 20180101AFI20240730BHJP
   G16H 30/00 20180101ALI20240730BHJP
   G16H 20/00 20180101ALI20240730BHJP
【FI】
G16H50/00
G16H30/00
G16H20/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080727
(22)【出願日】2024-05-17
(62)【分割の表示】P 2020551218の分割
【原出願日】2019-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2018192868
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 直文
(72)【発明者】
【氏名】山口 里志
(57)【要約】
【課題】人間の記憶等に頼らせることなく、治療ステップに対応する処理手順を的確にガイドすることができ、歯科治療をより適切に支援することを可能とする。
【解決手段】治療対象を含む被治療者の口腔内を撮影する撮像部(1)、使用用途及び使用製品に関する入力情報が入力される入力部(3)、撮影画像が表示される表示部(4)、複数の製品情報及び各製品の用途毎の処理手順情報が記憶される記憶部(17)、使用用途及び使用製品に対応する製品情報及び処理手順情報を記憶部(17)から取得する製品情報取得部(24)、撮影画像中の治療対象を検出し、治療ステップを特定する撮影画像解析部(22)、治療ステップに対応する処理手順を選定する処理手順制御部(25)及び処理手順及び撮影画像を並べて表示部(4)に表示する表示画像制御部(26)を備えた歯科治療支援装置(10)である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
治療対象を含む被治療者の口腔内を撮影する撮像部と、
歯科材料製品の使用用途及び使用する歯科材料製品の少なくとも一方に関する入力情報が入力される入力部と、
複数の歯科材料製品情報及び各歯科材料製品の用途毎の処理手順情報が記憶される記憶部と、
前記撮像部が撮影した撮影画像を解析し、解析結果及び前記入力情報に基づいて前記治療対象に対する治療ステップを特定するとともに、前記撮影画像を解析して処理手順の所定の工程の開始と終了を検知する撮影画像解析部と、
前記入力部から入力される前記入力情報及び前記治療ステップに対応する前記歯科材料製品情報及び前記処理手順情報を前記記憶部から取得する製品情報取得部と、
前記処理手順の所定の工程の開始が検出されたときに、処理時間をカウントし、前記処理時間が所定時間に達したときに、アラームを通知する処理手順制御部と、
前記治療ステップごとに、前記処理手順情報から選択された所定の処理手順を前記撮影画像と並べて前記表示部に表示するとともに、前記処理手順の所定の工程の開始が検出されたときにカウントされる前記処理時間に対応するカウンタ画像を前記表示部に表示し、前記処理手順の所定の工程の終了が検知されると、次の処理手順を前記表示部に表示する表示画像制御部と、
を備えた
ことを特徴とする歯科治療支援装置。
【請求項2】
前記表示部が、ヘッドマウントディスプレイに設けられ、前記表示部は、前記処理手順を表示しつつ治療対象を視認可能に透過性を有していることを特徴とする請求項1に記載の歯科治療支援装置。
【請求項3】
前記処理手順の所定の工程が、乾燥工程及び光照射工程の何れかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科治療支援装置。
【請求項4】
前記処理手順制御部は、前記処理手順を音声で通知することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科治療支援装置。
【請求項5】
前記処理手順制御部は、前記撮影画像と、前記入力情報、前記歯科材料製品情報、前記処理手順及び前記処理手順の実行結果を含む支援結果とを対応付けて前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科治療支援装置。
【請求項6】
前記処理手順制御部は、前記支援結果に基づいて、使用した製品の紹介情報又は前記処理手順に対応する製品の紹介情報を、前記表示部に表示することを特徴とする請求項5に記載の歯科治療支援装置。
【請求項7】
人工知能機能を有する学習部を備えていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科治療支援装置。
【請求項8】
歯科治療支援装置と、前記歯科治療支援装置と通信ネットワークを介して接続されるサーバと、を備え、
前記歯科治療支援装置は、
表示部と、
治療対象を含む被治療者の口腔内を撮影する撮像部と、
歯科材料製品の使用用途及び使用する歯科材料製品の少なくとも一方に関する入力情報が入力される入力部と、
前記撮像部で撮影された撮影画像及び前記入力部から入力される前記入力情報を前記サーバに送信する情報処理部と、を備え、
前記サーバは、人工知能機能を有する学習部と、
複数の歯科材料製品情報及び各歯科材料製品の用途毎の処理手順情報が記憶されるデータベースと、を備え、
前記学習部は、前記歯科治療支援装置から前記通信ネットワークを介して前記撮影画像及び前記入力情報を取得し、前記撮影画像を解析し、解析結果及び前記入力情報に基づいて前記治療対象に対する治療ステップを特定し、特定した前記治療ステップ及び前記入力情報に基づいて、前記データベースから当該治療ステップに対応する前記歯科材料製品情報及び前記処理手順情報を取得して前記歯科治療支援装置へ送信するように構成され、
前記歯科治療支援装置の前記情報処理部は、前記撮影画像を解析し、解析結果及び前記入力情報に基づいて前記治療対象に対する治療ステップを特定するとともに、前記撮影画像を解析して処理手順の所定の工程の開始と終了を検知し、前記治療ステップごとに、前記撮影画像と、前記学習部から取得した前記歯科材料製品情報及び前記処理手順情報とを前記表示部に並べて表示するとともに、前記処理手順の所定の工程の開始が検出されたときに、処理時間をカウントし、前記処理時間に対応するカウンタ画像を前記表示部に表示し、前記処理時間が所定時間に達したときに、アラームを通知し、前記処理手順の所定の工程の終了が検知されると、次の処理手順を前記表示部に表示することを特徴とする歯科治療支援システム。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科治療支援装置が備える情報処理部で実行される、歯科治療支援装置の作動方法であって、
治療対象を含む被治療者の口腔内を撮影する撮像工程と、
前記撮像部が撮影した撮影画像を解析し、解析結果及び前記入力情報に基づいて前記治療対象に対する治療ステップを特定するとともに、前記撮影画像を解析して処理工程の開始と終了を検知する撮影画像解析工程と、
前記入力部から入力される前記入力情報及び前記治療ステップに対応する前記歯科材料製品情報及び前記処理手順情報を前記記憶部から取得する製品情報取得工程と、
前記処理手順の所定の工程の開始が検出されたときに、処理時間をカウントし、前記処理時間が所定時間に達したときに、アラームを通知する処理手順制御部と、
前記治療ステップごとに、前記処理手順情報から選択された所定の処理手順を前記撮影画像と並べて前記表示部に表示するとともに、前記処理手順の所定の工程の開始が検出されたときにカウントされる前記処理時間に対応するカウンタ画像を前記表示部に表示し、前記処理手順の所定の工程の終了が検知されると、次の処理手順を前記表示部に表示する表示画像制御工程と、を有することを特徴とする歯科治療支援装置の作動方法。
【請求項10】
コンピュータを、
歯科材料製品情報及び処理手順情報が記憶される記憶手段、
治療対象を含む被治療者の口腔内が撮影された撮影画像を取得する撮影画像取得手段、
歯科材料製品の使用用途及び使用する歯科材料製品の少なくとも一方に関する入力情報を取得する入力情報取得手段、
前記撮影画像を解析し、解析結果及び前記入力情報に基づいて前記治療対象に対する治療ステップを特定するとともに、前記撮影画像を解析して処理工程の開始と終了を検知する撮影画像解析手段、
前記入力情報及び前記治療ステップに対応する前記歯科材料製品情報及び前記処理手順情報を前記記憶手段から取得する製品情報取得手段、
処理手順の所定の工程の開始が検出されたときに、処理時間をカウントし、前記処理時間が所定時間に達したときに、アラームを通知する処理手順制御手段、
前記治療ステップごとに、前記処理手順情報から選択された所定の処理手順を前記撮影画像と並べて表示部に表示するとともに、前記処理手順の所定の工程の開始が検出されたときにカウントされる前記処理時間に対応するカウンタ画像を前記表示部に表示し、前記処理手順の所定の工程の終了が検知されると、次の処理手順を前記表示部に表示する表示画像制御手段として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科治療支援装置と、
前記歯科治療支援装置での支援結果に基づいて、使用した歯科材料製品の購入サイトの情報又は使用した歯科材料製品と用途が同じ別の歯科材料製品の購入サイトの情報を、前記表示部に表示する販売促進部と、
を備えたことを特徴とする歯科製品販売促進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯科治療支援装置、歯科治療支援システム、歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム及び歯科製品販売促進装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科臨床において、齲蝕や破折等により損傷した歯質の修復には、通常、充填用コンポジットレジン、支台築造用コンポジットレジン等の充填修復材料や金属合金、セラミックス、レジン材料等の歯冠修復材料が用いられる。加えて、充填修復材料や歯冠修復材料を歯質と接着させるためにボンドやセメント等の接着材料が一般的に併用される。一般的な治療手順の例として、損傷した歯質にボンドを塗布し、エアーブローにより所定時間乾燥後に光照射器を用いて所定時間の光照射によって重合・硬化させ、次いで充填用コンポジットレジンを充填し、光照射器を用いて所定時間の光照射によって重合・硬化させる。このような歯科医師による歯科治療の際には歯科衛生士が立ち合い、使用する歯科材料を手渡したり、薬剤を混合したりして歯科医師をサポートする。しかし、使用方法は、製品毎に異なることから、歯科医師等が予め記憶しておく必要がある。記憶しきれない場合は、説明書やインターネット、アプリ等で手順を確認することもできるが、治療の度に確認するのは煩わしく、円滑な治療やサポートが困難となる場合がある。また、新しい製品を導入すると新たな使用方法に変わってしまい、記憶し直す必要がある。そのため、新しい製品を導入することに積極的でない歯科医師も少なくない。
【0003】
また、治療対象の口腔内を歯科医師とともに歯科衛生士が直接観察することが難しく、治療行為においてどのステップに至ったか確認しにくいため、サポート作業に影響することがある。
【0004】
一方、カメラで口腔内を撮影した画像を用いた歯科診療の支援システムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の治療支援システムは、カメラで撮影した口腔内の実画像に、被治療者のCT画像等に基づいて取得した神経、血管、インプラント等の画像を重畳して歯科医師が装着するヘッドマウントディスプレイに表示することで、歯科医師の治療を支援する。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の従来技術では、歯科医師等に、治療ステップに必要な製品の使用手順をガイドするものではなく、使用手順は、依然として歯科医師等の記憶に頼らざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-200537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、人間の記憶等に頼らせることなく、治療ステップに対応する処理手順を的確にガイドすることができ、歯科治療をより適切に支援することを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本願に係る歯科治療支援装置は、表示部と、治療対象を含む被治療者の口腔内を撮影する撮像部と、使用用途及び使用する歯科材料製品の少なくとも一方に関する入力情報が入力される入力部と、複数の歯科材料製品情報及び各歯科材料製品の用途毎の処理手順情報が記憶される記憶部と、前記撮像部が撮影した撮影画像を解析し、解析結果及び前記入力情報に基づいて前記治療対象に対する治療ステップを特定するとともに、前記撮影画像を解析して処理手順の所定の工程の開始と終了を検知する撮影画像解析部と、前記入力部から入力される前記入力情報及び前記治療ステップに対応する前記歯科材料製品情報及び前記処理手順情報を前記記憶部から取得する製品情報取得部と、前記処理手順の所定の工程の開始が検出されたときに、処理時間をカウントし、前記処理時間が所定時間に達したときに、アラームを通知する処理手順制御部と、前記治療ステップごとに、前記処理手順情報から選択された所定の処理手順を前記撮影画像と並べて前記表示部に表示するとともに、前記処理手順の所定の工程の開始が検出されたときにカウントされる前記処理時間に対応するカウンタ画像を前記表示部に表示し、前記処理手順の所定の工程の終了が検知されると、次の処理手順を前記表示部に表示する表示画像制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、製品の処理手順が表示部に表示される。そのため、製品の処理手順を確認することができる。したがって、人間の記憶等に頼らせることなく、治療ステップに対応する処理手順を的確にガイドすることができ、歯科治療をより適切に支援することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係る歯科治療支援装置のハードウェア構成例を示す概略図である。
図2図1に示す歯科治療支援装置の機能ブロック図である。
図3図1に示す歯科治療支援装置の表示部への表示画像の流れの一例を説明するための説明図である。
図4A図1に示す歯科治療支援装置の表示部への表示画像の流れの一例を説明するための説明図である。
図4B図1に示す歯科治療支援装置の表示部への表示画像の流れの一例を説明するための説明図である。
図5】第1実施形態に係る歯科治療支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5A】第2実施形態に係る歯科治療支援装置の構成を示す模式図である。
図5B】第3実施形態に係る歯科治療支援装置の構成を示す模式図である。
図6】第4実施形態に係る歯科治療支援システムの機能ブロック図である。
図7】第4実施形態に係る歯科治療支援システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
以下、本開示の第1の実施形態に係る歯科治療支援システムについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る歯科治療支援装置10のハードウェア構成を示す概略図である。この図1に示すように、歯科治療支援装置10は、撮像部1と、情報処理部(制御装置)2と、入力部3と、表示部4と、音出力部5と、を主に備えて構成されている。歯科治療支援装置10は、この他にも、撮像部1で撮影された撮影画像や、歯科治療支援結果を印刷する出力先としてのプリンタ、外部と通信する通信機器などを備えていてもよい。
【0012】
撮像部1は、被治療者の歯等の治療対象を含む口腔内の画像を撮影する機器である。撮像部1としては、特に限定されるものではなく、例えば、マイクロスコープ、ウェアラブルカメラ、CCDカメラ、診察台等に固定されたデジタルビデオカメラ等が好適に用いられる。撮像部1は、少なくとも1台あればよいが、同じものが複数台あってもよいし、種類の異なるものが組み合わされて複数台あってもよい。複数台用いる場合は、治療対象を様々な角度や撮影条件で撮影することで、治療対象や治療ステップを、より詳細に検出することや、治療対象を3D表示すること等が可能である。
【0013】
撮像部1と情報処理部2とは、接続ケーブル等によって有線で接続されているか又はWi-Fi(登録商標)等の無線LANにより接続されている。撮像部1で撮影された治療対象の画像信号は、リアルタイムで情報処理部2へと出力される。なお、撮影画像は、静止画像であってもよいし、動画像であってもよい。本実施形態では動画像が撮影されて、リアルタイムで情報処理部2へと出力されるものとする。
【0014】
情報処理部2のハードウェア構成としては、図1に示すように、CPU11、ROM12、RAM13、入力I/F(インタフェース)14、出力I/F15、外部機器I/F16、記憶部17等から構成されるが、この構成に限定されない。
【0015】
CPU11は中央演算処理装置であり、歯科治療支援装置10全体の動作を制御する。ROM12は、読出専用メモリであり、CPU11が実行する制御プログラムや歯科治療支援プログラム等が記憶されている。RAM13は随時書込読出メモリであり、CPU11のワークエリアとして使用される。すなわち、CPU11は、RAM13をワークエリアとして、ROM12に記憶された歯科治療支援プログラムを実行して、歯科治療支援装置10を動作させる。
【0016】
記憶部17は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記録媒体から構成される。入力I/F14は、入力部3とCPU11とを接続するためのインタフェースである。出力I/F15は、表示部4及び音出力部5とCPU11とを接続するためのインタフェースである。外部機器I/F16は、外部機器とCPU11とを接続するためのインタフェースであり、本実施形態では、撮像部1とCPU11とが接続されている。
【0017】
記憶部17には、歯科治療支援処理に必要な各種情報として、各種製品の製品情報、製品の用途毎の処理手順(使用手順)情報等が予め記憶される。さらに、記憶部17には、撮像部1で治療の様子を撮影した撮影画像と支援結果等が関連付けられて記憶される。また、各部での演算結果等が一時的に記憶されることもある。
【0018】
製品情報としては、例えば、製品名、製品に含まれる歯科材料名、各歯科材料の成分、使用可能な用途、各用途で使用される器具や機器の情報等が挙げられる。これらは、製品別に分類されて記憶部17に記憶されている。また、記憶部17には、製品情報として、用途毎に使用できる製品を対応付けた一覧表や、製品の紹介文書、製品関連サイトのURL等からなる製品の紹介情報等も記憶されている。
【0019】
製品としては、一つの歯科材料からなる製品であってもよいし、複数の歯科材料等からなるキット製品であってもよい。歯科材料としては、例えば、ボンド、セメント、充填用コンポジットレジン、支台築造用コンポジットレジン、金属合金、セラミックス、レジン硬化物、石こう材、埋没剤、研削及び研磨剤等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
ここで、一つの歯科材料でも、様々な用途があり、例えば、クラレノリタケデンタル株式会社製の「クリアフィル(登録商標)ユニバーサルボンド」は、歯科充填用コンポジットレジン(以下、「CR」という。)による窩洞の充填修復、窩洞シーリング、露出根面等の処置、CRによる歯冠修復物の補修、ポストの植立、その他様々な治療や処置に用いることができる。また、用途に応じて、使用する器具や機器、別途用いる歯科材料(CR等)も異なる場合がある。そのため、歯科治療支援には、このような用途及び各用途で使用する器具等に関する情報も必要である。よって、処理手順情報として、各製品の用途毎の処理工程、各処理工程で使用する器具や機器、各処理工程での処理時間等が記憶部17に記憶されている。
【0021】
支援結果とは、歯科治療支援装置10を用いた実際の治療過程及び治療結果のことをいう。支援結果として、例えば、使用した製品、その用途に関する情報、治療ステップでの実際の治療過程及び処理工程の実行結果に関する情報(例えば、乾燥5秒のところ、実際は10秒の乾燥時間を要した場合、その実時間等)が記憶部17に記憶される。
【0022】
本実施形態では、このような情報処理部2を、デスクトップ型のパーソナルコンピュータ(PC)から構成している。なお、情報処理部2がデスクトップ型のPCに限定されるものではなく、表示部4が一体に設けられたノート型PCで構成してもよい。また、PC等に限定されることもなく、表示部4が一体に設けられたスマートフォン、携帯電話、タブレット端末の携帯情報機器から構成することもできる。
【0023】
入力部3は、文字、数字、各種指示等を入力するための機器であり、歯科医師、歯科衛生士等によって操作される。入力部3としては、例えば、キーボード、マウス、テンキー等が挙げられる。また、表示部4がタッチパネルディスプレイの場合には、タッチパネル画面も入力部3として機能する。入力部3では、歯科医師や歯科衛生士等による使用用途(治療ステップの内容)、使用製品(歯科材料)等の入力情報の入力等を受け付ける。入力情報の信号は、情報処理部2へと出力される。
【0024】
表示部4は、使用用途及び使用製品の入力画面、撮像部1で撮影された撮影画像及び歯科材料の処理手順が表示される機器である。表示部4としては、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等が好適に挙げられる。また、情報処理部2として携帯情報機器を用いる場合は、表示部4はタッチパネルディスプレイとするが、PCを用いる場合も、タッチパネルディスプレイとしてもよい。
【0025】
表示部4は、少なくとも1つ設ければよいが、複数設けてもよい。例えば、歯科医師用と歯科衛生士用の表示部4を設ければ、歯科医師と歯科衛生士とがそれぞれの作業位置で、見易い位置に配置した表示部4を視認しながら、治療やサポートを行うことができる。さらに複数の表示部4を設けたり、大型のモニタを用いたりすることで、歯科医師や歯科衛生士以外の者も、使用手順に従った治療の様子を視認することができ、例えば、授業や公開治療、製品紹介のデモンストレーション等の際に好適に用いることができる。
【0026】
また、ヘッドマウントディスプレイの表示部(ディスプレイ)を本実施形態の表示部4としてもよい。このようなヘッドマウントディスプレイを歯科医師が装着すれば、歯科医師はヘッドマウントディスプレイを通して口腔内を観察しつつ、表示部4に表示された処理手順を確認しながら治療することも可能となる。また、ヘッドマウントディスプレイに撮像部1としてウェアラブルカメラを取り付けることで、歯科医師等の視線に対応した撮影画像を取得することができる。
【0027】
音出力部5は、歯科医師や歯科衛生士等に所定の通知をするための通知音を出力する機器であり、例えば、スピーカ、ブザー等が挙げられる。音出力部5から出力される通知音は、特に限定されるものではなく、歯科材料の乾燥時間、光照射時間の開始や終了を通知するブザー音やアラーム音等であってもよい。また、時間をカウントする音や音声を発したり、時間の経過を音や音声で通知したりしてもよい。また、「ボンドを塗布して下さい」、「光を照射して下さい」等、処理工程の内容を音声で通知してもよい。
【0028】
次に、図2の機能ブロック図を用いて、歯科治療支援装置10の動作全体を制御する情報処理部2の機能について説明する。この図2に示すように、情報処理部2は、撮影画像取得部21、撮影画像解析部22、入力情報取得部23、製品情報取得部24、処理手順制御部25及び表示画像制御部26として機能する。
【0029】
撮影画像取得部21は、撮像部1からリアルタイムで入力される画像信号をデジタル信号に変換し、適宜の画像処理を施した撮影画像を、撮影画像解析部22及び表示画像制御部26へ渡す。
【0030】
また、撮影画像取得部21は、検出した治療対象近傍を拡大して撮影するように撮像部1を制御してもよいし、物体追跡技術を利用して、撮像部1を制御し、検出した治療対象を追跡して撮影させるようにしてもよい。または、撮像部1が有するオートフォーカス機能や物体認識機能等を利用して、撮像部1が自動で治療対象を検出して、治療対象のフォーカスや拡大撮影、追跡撮影する構成としてもよい。
【0031】
撮影画像解析部22は、撮影画像取得部21から受け取った撮影画像を解析して、例えば、齲歯、窩洞、根管等の治療対象を検出する。例えば、特徴量の抽出やパターンマッチング等の物体認識処理を実行して、齲歯、窩洞等を検出し、これを治療対象とする。このとき、入力部3で入力された用途に応じて治療対象を検出してもよい。例えば、用途が窩洞の充填修復やシーリングであれば、撮影画像から窩洞を検出して治療対象とする。より簡易には、表示部4に表示された撮影画像上での歯科医師等によるマウスクリックやタッチパネルのタッチ操作等によって指定された歯等を治療対象として検出してもよい。
【0032】
また、撮影画像解析部22は、撮影画像を解析し、解析結果と入力情報に基づいて歯科医師が治療対象に対して行う(行おうとしている)治療ステップを特定する。検出した治療対象の情報と認識した治療ステップの情報は、処理手順制御部25へと渡される。また、人工知能(AI;Artificial Intelligence)を有する学習部を備え、学習部により撮影画像解析部22で解析した情報及び予め記憶した教師データに基づいて、より詳細で高度な治療支援を行ってもよい。例えば、撮影画像解析部22が画像解析によって治療対象を特定し、当該治療対象の特徴量及び入力情報を学習部に入力する。学習部は、治療を必要とする様々な状態の齲歯、窩洞、根管等を表す特徴量と、これら様々な状態の齲歯、窩洞、根管等に対する実際の治療ステップ、処理工程、使用する製品情報等が対応付けられたデータを教師データとして用い、入力された治療対象の特徴量及び入力情報に基づいてニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを利用して、当該治療対象の窩洞の形態等を判断して治療ステップを特定し、対応する処理手順及び使用材料等を出力する。撮影画像解析部22はこの学習部からの出力に基づいて、治療ステップに応じた、より適切な使用材料を歯科医師等に提示してもよい。また、治療ステップと、器具(ブラシ、インスツルメント等)及び材料(性状、色等)とを対応付けたデータを教師データとして用い、撮影画像の解析結果に基づいて、歯科医師が使用している器具(ブラシ、インスツルメント等)、使用する材料(性状、色等)を学習部が判別し、治療ステップのいずれの処理工程が実行されているか判断してもよい。
【0033】
入力情報取得部23は、入力部3から入力された使用用途、使用製品等に関する入力情報を取得する。製品情報取得部24は、入力情報取得部23で取得した使用用途、使用製品の情報に基づいて、記憶部17から該当する製品情報と、使用用途に対応する処理手順情報を取得する。取得された製品情報及び処理手順情報は、処理手順制御部25へと渡される。
【0034】
処理手順制御部25は、製品情報取得部24で取得した処理手順情報から、入力情報に対応する任意の処理手順を選択する。第1実施形態では、処理手順制御部25は入力情報に加え、撮影画像解析部22で解析された治療ステップに対応する処理手順を選択している。また、処理手順制御部25は、選択した処理手順情報を表示部4に表示するように、表示画像制御部26を制御する。また、処理手順制御部25は、処理時間の計測が必要な処理工程(例えば、乾燥工程や、光照射工程)の場合は、処理が開始されたら、処理時間を計測し、所定の処理時間に到達したときに、音出力部5にアラーム音等を出力させる。
【0035】
また、処理手順制御部25は、治療が終了すると、撮影画像と支援結果とを関連付けて記憶部17に記憶する。支援結果とは、例えば、使用した製品の名称等の製品情報、使用用途、処理手順の実際の処理実行結果(例えば、実際の乾燥時間や光照射時間、予め決められた処理とは別の処理を行った場合はその処理等)等が挙げられる。
【0036】
また、処理手順制御部25は、必要に応じて、表示画像制御部26を制御して、製品の紹介情報の画面を表示部4に表示させる。紹介情報の画面としては、例えば、使用製品の詳細な使用説明等が記載された画面であってもよいし、使用製品と用途が同じ別の製品の使用説明等が記載された画面であってもよい。これらの画面を視認することで、歯科医師や歯科衛生士が、製品の使用手順を改めて認識したり、製品の他の用途等を知ることができたり、使用用途に対して、より適した製品の情報を知ることができたりする。
【0037】
また、紹介情報の画面として、これらの製品の情報が公開されているサイト、製品の使用例の動画が公開されているサイトのURLを含む画面を表示してもよい。このようなURLをクリックすることで、当該サイトへ導かれ、歯科医師等は、製品のより詳細な情報や使用例を知ることができたり、製品の購入を検討したりすることができる。
【0038】
表示画像制御部26は、表示部4の表示面4a(図3等参照)へ表示する画像、例えば、図3に示す使用用途選択画面41、使用製品選択画面42、図4A図4Bに示す支援画面43等を生成して表示する。支援画面43は、撮像部1で撮影されるリアルタイムの撮影画像を表示する撮影画像表示領域43aと、使用する歯科材料や器具の画像を表示する材料等表示領域43bと、治療ステップに応じた処理手順の各工程を表示する処理手順表示領域43cと、等を有している。また、処理時間の計測中は、処理手順表示領域43cにカウンタ画像43d(図4A参照)を表示してもよい。
【0039】
上述のような構成の歯科治療支援装置10で実行される歯科治療支援処理(歯科治療支援方法、歯科治療支援プログラム)の一例を、図3図4A図4Bの表示画像の流れの説明図、図5のフローチャートを参照しながら説明する。ここでは、表示部4の表示面4aに表示された画像を視認しながら、歯科衛生士が歯科医師の治療のサポートを行う場面を想定して説明する。
【0040】
まず、情報処理部2としてのPCにおいて、歯科治療支援プログラムを立ち上げることで、歯科治療支援装置10を起動させ、撮像部1での被治療者の口腔内の撮影を開始する。
【0041】
すると、表示画像制御部26が表示部4の表示面4aに、図3の上図に示すように、使用用途の一覧が表示された使用用途選択画面41を表示する(ステップS1)。歯科衛生士等は、使用用途選択画面41の所定の用途上で、マウスのクリックやタッチパネルのタッチ操作を行うことで、使用用途を選択することができる。選択された使用用途の情報を、入力情報取得部23が取得する(ステップS2)。ここでは、「充填修復」が選択されたものとする。
【0042】
入力情報取得部23で取得した使用用途に応じて、製品情報取得部24は記憶部17から、使用用途に対応する製品情報(ここでは、名称の一覧等)を取得する(ステップS3)。そして、表示画像制御部26は、図3の中央の図に示すように、使用製品の一覧が表示された使用製品選択画面42を表示する(ステップS4)。この使用製品選択画面42から歯科衛生士等によって選択された使用製品の情報を、入力情報取得部23が取得する(ステップS5)。ここでは、製品Aが選択されたとする。
【0043】
なお、本実施形態では、使用用途を先に選択し、次いで製品を選択するように構成されているが、この構成に限定されるものではなく、まず製品を選択し、この製品に応じて表示された用途の中から、使用用途を選択する構成としてもよい。または、使用用途のみを入力して、使用用途に応じた製品を自動で選択する構成としてもよいし、使用製品のみを選択する構成とし、撮影画像の解析によって特定した治療ステップに基づいて、当該使用製品の用途を特定してもよい。
【0044】
使用用途が選択されると、次に、製品情報取得部24は取得した使用製品に対応する製品情報を記憶部17から取得する。より具体的には、製品情報取得部24は、使用用途に応じた当該製品の処理手順、必要な歯科材料、器具等の情報を含む処理手順情報を記憶部17から取得する(以上、ステップS6)。
【0045】
以上により、使用用途及び製品に応じた治療支援処理が開始される。撮像部1で撮影された撮影画像(動画像)は、撮影画像取得部21によって取得され、撮影画像解析部22によって解析されて治療対象が検出される。撮影画像解析部22は、治療対象を拡大して撮影したり、治療対象を追跡して撮影したりするように、撮像部1を制御する(以上、ステップS7)。
【0046】
撮像部1で撮影した撮影画像は、表示画像制御部26によって表示部4へリアルタイムに表示される。より具体的には、表示画像制御部26は、図3の下図に示すように、取得された撮影画像を撮影画像表示領域43aに表示し、使用する歯科材料や器具の画像を材料等表示領域43bに表示し、処理手順の画像を処理手順表示領域43cに表示した支援画面43を、表示部4の表示面4aに表示する(以上、ステップS8)。撮影画像表示領域43aには、治療対象の近傍の画像を表示してもよいし、さらに治療対象の拡大画像等を表示してもよい。また、複数台の撮像部1で撮影している場合は、必要に応じてこれらでの撮影画像の1つ又は複数を適宜選択して表示してもよい。
【0047】
この支援画面43の撮影画像表示領域43aに表示される撮影画像を視認することで、歯科衛生士は、歯科医師が行っている治療ステップを確認することができる。材料等表示領域43bを視認することで、必要な歯科材料や器具を確認することができる。また、処理手順表示領域43cを視認することで、処理手順の具体的な工程を確認することができる。そのため、歯科衛生士は、器具の準備、歯科材料の準備や調合など、治療のアシストをより的確かつ円滑に行うことができる。
【0048】
次いで、撮影画像解析部22は、撮影画像を解析して、歯科医師による治療ステップの具体的な処理工程を検出し、処理手順制御部25が、検出した治療ステップに応じた歯科材料と器具及び処理を選定する。表示画像制御部26が、選定された歯科材料と器具を材料等表示領域43bに表示し、処理手順の詳細を処理手順表示領域43cに表示する(以上、ステップS9)。このとき、音出力部5により、処理手順の工程の内容、例えば、「ボンドを窩洞に塗布して下さい」等のメッセージを音声によって出力してもよい。
【0049】
そして、撮影画像解析部22が撮影画像を解析して当該処理が開始されたか否かを判定する(ステップS10)。処理が開始されない間は(ステップS10の判定がNO)、開始されるまでプログラムは待機し、処理が開始されたと判定したときは(ステップS10の判定がYES)、プログラムはステップS11へと進む。次のステップS11では、処理手順制御部25は、処理時間の計測の必要があれば処理時間をカウントする。このとき、表示画像制御部26は、処理手順表示領域43cに、カウンタ画像43dを表示する。処理時間に達したら、処理手順制御部25は、音出力部5を制御してアラーム音やアラームメッセージ等を出力させ、アラームを通知する(ステップS12)。このアラームの通知によって、歯科衛生士は勿論、歯科医師も、乾燥時間等に達したことを、より明確に知ることができる。
【0050】
なお、製品の販売元が予め設定した処理時間とは異なる時間で歯科医師が処理を行ったときは、処理手順制御部25は、その実際の処理時間を記憶しておいてもよい。例えば、規定の処理時間では、乾燥や硬化が十分でなく、歯科医師の判断で規定よりも処理時間を長くした場合などが考えられる。この場合、実際の処理時間のデータを収集して検討することで、処理手順をより好適なものに変更するための参考とすることができる。
【0051】
次に、ステップS13では、次の処理工程があるか否かを判定し、処理工程がある場合(ステップS13の判定がYES)、ステップS9に戻って当該ステップS9~S12の工程を繰り返す。
【0052】
一方、処理工程がすべて完了した場合(ステップS13の判定がNO)、ステップS14へと進み、治療終了か否かを判定する。例えば、歯科衛生士等によって、入力部3から終了の指示が入力されたときに治療終了と判定し(ステップS14の判定がYES)、ステップS15へと進む。
【0053】
これに対して、入力部3から続行の指示や、使用用途選択画面41への戻り指示等があった場合は、治療続行と判定し(ステップS14の判定がNO)、ステップS1に戻って当該ステップS1~S13の処理を繰り返す。
【0054】
ステップS15では、治療終了を受けて、処理手順制御部25が、撮像部1で撮影した撮影画像と、使用製品、使用用途及び実際の処理工程等の支援結果とを対応付けて記憶部17へ記憶する。
【0055】
また、必要に応じて、ステップS16へと進み、表示画像制御部26が製品の紹介情報を表示部4に表示させる。前述したように、製品の紹介又は購入サイトに導く情報を表示してもよいし、今回使用した製品の別の用途を紹介する情報を表示してもよい。また、記憶部17に蓄積された支援結果に基づいて、当該歯科医師が、ある用途に、ある製品のみを使用している場合は、同じ用途に用いられる別の製品の紹介画面を表示してもよい。また、いわゆるリスティング広告のように、表示面4aの所定の領域に製品の広告情報が表示されるようにしてもよい。
【0056】
図4A図4Bを参照して、表示部4に表示される支援画面43の流れの具体例を説明する。図4Aの上図では、治療ステップの具体的な処理工程としてボンド塗布工程が特定されたため、材料等表示領域43bにボンド材料と塗布具の画像が表示され、処理手順表示領域43cに処理工程として「ボンド塗布」が表示された状態を示す。
【0057】
撮影画像中から塗布具を検出したり、ボンドの液面を検出したりすることで、撮影画像解析部22がボンドの塗布を検出する。この検出に応じて、次の乾燥工程のため、図4Aの中央の図に示すように、表示画像制御部26が支援画面43に、エアーノズルと処理工程(エアーブロー)と処理時間(5秒以上)を表示する。撮影画像解析部22が撮影画像からエアーノズルによるエアーの噴射等を検出すると、処理手順制御部25による処理時間のカウントが始まり、図4Aの中央図に示すように、表示画像制御部26がカウンタ画像43dを表示する。処理時間に達すると、処理手順制御部25が音出力部5からアラーム音を出力する。
【0058】
撮影画像解析部22が乾燥工程の終了を検知すると、光照射工程の支援へ進む。表示画像制御部26により、図4Aの下図に示すように、支援画面43に光照射器と処理工程(光照射工程)と処理時間(10秒)が表示される。撮影画像解析部22が光照射を検知すると、処理手順制御部25により処理時間のカウントとカウンタ画像43dの表示が開始される。処理時間に達すると、処理手順制御部25により音出力部5からアラーム音が出力される。
【0059】
また、図4Bの上図は、ボンドの塗布に続いて行われる光重合型の歯科充填用コンポジットレジンの充填工程の際の支援画面43である。この支援画面43には、使用するコンポジットレジン材料の画像と、処理工程(光重合コンポジットレジン充填)が表示されている。撮影画像解析部22が充填の終了を検知すると、図4Bの下図に示すように、表示画像制御部26により支援画面43に光照射器と処理工程(光照射工程)と処理時間(Y秒)が表示される。この場合も、処理手順制御部25による処理時間のカウント等とアラーム音の出力が行われる。引き続いて、研磨工程等の支援画面43を表示してもよい。
【0060】
なお、上記では、歯科衛生士のアシストのために本実施形態の歯科治療支援装置10を用いているが、このような使用に限定されるものではない。例えば、歯科医師自身が使用してもよく、歯科衛生士が不在の場合などは、歯科医師が自身で処理工程や処理時間を確認しながら、治療を行うことができる。
【0061】
(変形例)
第1実施形態の変形例として、より簡易な実施形態を説明する。上記第1実施形態では、撮影画像解析部22が画像解析によって検出した治療ステップに基づいて、自動で治療ステップの各処理工程に対応する支援画面43の表示、処理時間のカウント等を行っているが、これに限定されるものではない。例えば、図3の下図の支援画面43を表示面4aに表示するだけでも、使用する歯科材料、器具、処理手順を、一目で把握することができる。そして、撮影画像表示領域43aに表示されるリアルタイムの撮影画像によって治療ステップを確認しながら、処理手順表示領域43cに表示された処理工程に従って、器具の受け渡し、薬剤の混合、処理時間のカウント等のアシスト作業を行うことができる。又は、歯科医師等が、表示面4aを確認しながら治療等の処置を行うことができる。この実施形態の場合、撮影画像解析部22を設けなくてもよく、より簡易な構成で、より高速な歯科治療支援装置10とすることができる。
【0062】
また、他の異なる実施形態(変形例)として、入力部3から入力された使用用途、使用製品等に関する入力情報に基づいて、製品情報取得部24が記憶部17から当該入力情報に対応する処理手順情報を取得し、リアルタイムの撮影画像と取得した処理工程とを並べて表示部4に表示するものであってもよい。これにより、歯科医師等は、その処理工程を確認しながら、治療や治療アシストを行うことができる。また、処理手順情報のうちの最初の処理工程を、撮影画像と並べて表示部4に表示してもよく(例えば、図4Aの上図等)、歯科医師等は、撮影画像と処理工程を確認しながら治療や治療アシストを行うことができる。そして、当該処理工程が終わったら、例えば、「次へ」のボタンをクリックすること等により、次の処理工程が撮影画像と並んで表示された画面に遷移する構成とすることで、歯科治療の支援をより適切に行うことができる。この場合も撮影画像解析部22を必ずしも設けなくてもよい。
【0063】
さらに異なる実施形態(変形例)として、例えば、歯科衛生士が、歯科医師によるボンド塗布を表示部4の撮影画像で確認して、図3の下図の支援画面43の処理手順表示領域43c上で「ボンド塗布」をクリックやタッチ操作で選択する。この選択操作によって、乾燥時間がカウントされ、アラーム音が通知される構成としてもよい。または、治療ステップの各工程に応じて、歯科衛生士等が処理手順表示領域43cの各処理工程を順次クリック等で選択することで、図4A図4Bのいずれか支援画面43が表示されるように構成してもよい。
【0064】
以上、第1実施形態及び変形例によれば、使用用途又は使用製品の入力情報を入力することで、入力情報に対応する好適な処理手順(使用手順)が選択され、表示部4に表示される。これにより、歯科医師、歯科衛生士等が、製品の処理手順を確認することができる。また、第1実施形態及び変形例では、治療対象を含む被治療者の口腔内を撮影する撮像部1を備え、表示画像制御部26は、処理手順情報から選択された所定の処理手順及び撮像部1で撮影される撮影画像を並べて表示部4に表示する構成である。よって、この表示部4に表示された撮影画像を視認することで、歯科衛生士等が、治療対象や歯科医師による治療ステップの進行状態を明確に確認することができる。また、撮影画像を視認しつつ、表示部4に表示された処理手順に従って、歯科材料や器具の準備、受け渡し等のアシスト作業を、より的確かつより円滑に行うことができる。又は、歯科医師等が表示部4の撮影画像と処理手順を視認しつつ、治療等を行うこともできる。したがって、人間の記憶等に頼らせることなく、使用用途、使用製品、又は治療ステップに対応する処理手順を的確にガイドすることができる。この結果、歯科治療をより適切に支援することを可能とする歯科治療支援装置10、歯科治療支援方法及び歯科治療支援プログラムを提供することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、撮影画像中の治療対象を検出し、当該治療対象に対して行う治療ステップを特定する撮影画像解析部22と、治療ステップに対応する処理手順を、処理手順情報から選定する処理手順制御部25とをさらに備えている。この構成とすれば、治療ステップの進行状態に対応した処理手順(使用手順)を、撮影画像とともに表示部4に表示することができる。そのため、歯科医師等が治療ステップを確認する必要がなく、実際の治療ステップの進行状態に対応した、より適切な処理手順を表示して、歯科治療をより適切に支援することが可能となる。
【0066】
また、第1実施形態において、処理手順制御部25は、処理手順の所定の工程が実行されたときに、処理時間をカウントし、処理時間に達したときに、アラームの通知を行うように構成することができる。この構成とすれば、歯科衛生士は勿論、歯科医師等も、処理時間が経過したことを、より明確に知ることができ、支援効果をより向上させることができる。
【0067】
また、第1実施形態において、処理手順制御部25は、処理手順を音声で通知するように構成することができる。この構成とすれば、歯科衛生士は勿論、歯科医師等も、音声で処理手順を知ることができ、支援効果をより向上させることができる。
【0068】
また、第1実施形態において、処理手順制御部25は、入力情報、製品情報、処理手順及び処理手順の実行結果を含む支援結果を記憶部17に記憶するように構成することができる。この構成とすれば、歯科医師等が、治療終了後に支援結果を確認することで、治療状態を確認したり、今後の治療に役立てたりすることができる。
【0069】
また、第1実施形態において、処理手順制御部25は、支援結果に基づいて、使用した製品の紹介情報又は処理手順に対応する製品の紹介情報を、表示部4に表示するように構成することができる。この構成とすれば、歯科医師等が、製品の用途等をより詳細に知ることができる。さらに、用途により好適な他の製品の情報を知ることができ、新しい製品に対する抵抗感がなくなり、積極的に新しい製品を導入するようになり得る。また、製品の販売業者側にとっても、自社製品の販売促進につながる。よって、製品の積極的な導入や販売促進に貢献し得る歯科治療支援装置10を提供することができる。
【0070】
また、歯科治療支援装置10に、人工知能(AI;Artificial Intelligence)機能を有する学習部を備えた構成としてもよい。このような学習部を備えることで、撮影画像の解析、治療対象や治療ステップの特定、好適な治療工程の選択等を、より高精度に行うことができる。また、学習結果を蓄積し、これを利用することで、ユーザの要求に適応した高度な歯科治療支援が可能となる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る歯科治療支援装置10Aを、図5Aを参照しながら説明する。図5Aに示すように、第2実施形態に係る歯科治療支援装置10Aは、ヘッドマウントディスプレイ6と、PCからなる情報処理部(制御装置)2と、を主に備えて構成される。情報処理部2は、入力部3及び表示部4等を備えている。情報処理部2の構成等は、第1実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0072】
ヘッドマウントディスプレイ6は、制御部6a、表示部4A等を備えている。制御部6aは、CPU、ROM、RAM、記憶部等を備え、ヘッドマウントディスプレイ6全体の動作を制御する。制御部6aは、情報処理部2と有線又は無線により通信し、情報処理部2からの制御信号に基づいて、表示部4Aに歯科治療支援のための情報を表示する。
【0073】
表示部4Aは、歯科治療支援のための情報としての処理手順を表示しつつ治療対象を視認可能に透過性を有している。表示部4Aとして、例えば、有機EL等が好適に用いられる。表示部4Aは、全面に情報を表示可能であるが、本実施形態では、治療対象の視認を妨げないように、表示部4Aの表示面4aの右上に、処理手順を表示する処理手順表示領域43cが設けられている。この処理手順表示領域43cの位置が表示部4Aの右上に限定されるものではなく、処理手順や治療目的等に応じて、適宜の位置に設けることができる。
【0074】
ヘッドマウントディスプレイ6は、特に限定されることはなく、歯科治療支援の情報が表示できる表示部4Aを備え、表示部4Aを通して治療対象が視認できればよい。形態も特に限定されることはなく、例えば、ゴーグル型、ヘルメット型、眼鏡型等、適宜のものを使用することができる。また、ヘッドマウントディスプレイが第2実施形態及び後述の第3実施形態のように、処理手順を表示しつつ治療対象を視認可能に透過性を有する表示部4A,4Bを備えたものに限定されることもない。他の異なる実施形態として、例えば、頭部等への固定具、または頭部等へ固定された情報処理部から延びるアームの先端に、液晶ディスプレイ等の小型の表示部(モニタ)を取り付け、この表示部を装着者の視野内に配置する構成でもよい。これにより、装着者は、表示部に表示された処理手順等を視認することができ、さらに視点を変えることで、治療対象を視認することができる。
【0075】
上述のような構成の第2実施形態の歯科治療支援装置10Aでは、例えば、歯科医師等(被装着者)がヘッドマウントディスプレイ6を頭部に装着し、透過性を有する表示部4Aを通して治療対象の歯等を視認する。次いで、歯科医師又は歯科衛生士等が入力部3から使用用途、使用製品等を入力すると、これらの入力に基づいて、情報処理部2が記憶部17から製品情報や処理手順を取得し、ヘッドマウントディスプレイ6の制御部6aに処理手順の表示の制御信号を送信する。制御部6aは、この制御信号に基づいて、処理手順を表示部4Aに表示する。処理手順は、情報処理部2から送信されるものであってもよいし、ヘッドマウントディスプレイ6の記憶部に画像等を予め記憶しておき、情報処理部2からの制御信号に基づいて、制御部6aが対応する画像等を表示部4Aに表示してもよい。
【0076】
以上により、歯科医師は、表示部4Aの処理手順等を視認及び治療対象を視認しつつ、かつ表示部4Aに表示された処理手順を確認にしつつ、治療等を行うことができる。このとき、情報処理部2の表示部4にも処理手順等を表示することで、歯科衛生士等も処理手順を確認することができる。また、ヘッドマウントディスプレイ6を歯科衛生士等が装着してもよく、治療対象を視認しつつ、かつ処理手順を確認しながら歯科医師のアシストを行うことができる。
【0077】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る歯科治療支援装置10Bを、図5Bを参照しながら説明する。第3実施形態に係る歯科治療支援装置10Bは、ヘッドマウントディスプレイ6Bが、制御部6aに代えて情報処理部2Bを備え、さらに撮像部1Bを備えていること以外は、図5Aに示す第2実施形態に係る歯科治療支援装置10Aと同様の基本構成を備えている。このため、第2実施形態と同様の構成については第2実施形態と同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、PCからなる情報処理部2と区別するため、ヘッドマウントディスプレイ6Bに備えられる情報処理部2Bを、以下では「モバイル情報処理部2B」という。
【0078】
図5Bに示すように、第3実施形態に係る歯科治療支援装置10Bは、ヘッドマウントディスプレイ6Bを主に備えて構成される。ヘッドマウントディスプレイ6Bは、撮像部1Bと、モバイル情報処理部2Bと、入力部3Bと、表示部4Bと、音出力部5Bと、を主に備えて構成される。
【0079】
撮像部1Bは、表示部4Bの側部や上部に、被装着者の目線で口腔内の撮影等が可能な位置に設置されている。撮像部1Bは、ウェアラブルカメラ等、第1実施形態と同様のものが好適に用いられる。この撮像部1Bによって、歯科医師等の視線に対応した撮影画像を取得することができる。撮影した撮影画像は、例えば、後述の情報処理部2’に送信され、情報処理部2’の表示部4’や、歯科衛生士等が装着するヘッドマウントディスプレイ6Bの表示部4Bに表示される。これにより、歯科衛生士等が、歯科医師が行っている治療ステップを、歯科医師の目線で確認することができる。
【0080】
モバイル情報処理部2Bは、ヘッドマウントディスプレイ6の本体部(本実施形態では、眼鏡型のヘッドマウントディスプレイ6Bのテンプル部分)に固定されている。または、被装着者のポケット等に収納可能な、分離型のモバイル情報処理部2Bとし、本体部と有線又は無線により接続されるものであってもよい。
【0081】
モバイル情報処理部2Bは、小型の情報処理装置であって、マイクロプロセッサ等のCPUと、RAM、ROM、記憶媒体等の記憶部17Bを備えて構成される。また、モバイル情報処理部2Bは、第1実施形態の情報処理部2と同様に、撮影画像取得部21、撮影画像解析部22、入力情報取得部23、製品情報取得部24、処理手順制御部25及び表示画像制御部26として機能する(図2参照)。
【0082】
ヘッドマウントディスプレイ6Bは、キーボード、マウス、テンキー等の入力部3’及び表示部4’等を備えたPCからなる情報処理部2’、及び/又は操作者の手や足で操作可能なマウス等からなる入力部3’’と、有線又は無線によって接続されている。この情報処理部2’の入力部3’、マウス等からなる入力部3’’が、本実施形態の入力部3Bとして機能する。よって、被装着者等が、表示部4Bに表示された各種選択画面において、入力部3Bをクリック操作等することによって、使用用途等を選択することができる。この選択操作による入力信号が情報処理部2Bへと出力される。
【0083】
記憶部17Bには、各種製品の製品情報、製品の用途毎の処理手順(使用手順)情報等の治療支援に必要な情報が予め記憶されている。これらの情報は、入力部3Bの操作(コピー、アップロード操作等)により、情報処理部2’から記憶部17Bに転送することができる。さらに、記憶部17Bには、撮像部1Bで治療の様子を撮影した撮影画像と支援結果等が関連付けられて記憶されてもよい。この情報は、入力部3Bの操作(コピー、ダウンロード操作等)により、記憶部17Bから情報処理部2’に転送することができる。
【0084】
表示部4Bは、処理手順を表示しつつ治療対象を視認可能に透過性を有し、第2実施形態の表示部4Aと同様に、有機EL等が好適に用いられる。表示部4Bの表示面4aには、処理手順表示領域43cが設けられている。音出力部5Bは、被装着者に所定の通知をするためのものである。本実施形態では、被装着者の耳に簡単に装着できるイヤホン型の音出力部5Bを用いているが、これに限定されることはなく、スピーカ等、適宜のものを用いることができる。
【0085】
上記構成の第3実施形態に係る歯科治療支援装置10Bにおいても、第1、第2実施形態と同様の作用効果が得られる。すなわち、ヘッドマウントディスプレイ6Bを装着した歯科医師は、表示面4aを介して治療対象を視認しつつ、かつ表示部4Aに表示された処理手順を確認にしつつ、治療等を行うことができる。また、ヘッドマウントディスプレイ6Bを歯科衛生士等が装着してもよく、治療対象を視認しつつ、かつ処理手順を確認しながら歯科医師のアシストを行うことができる。また、撮像部1で撮影した撮影画像と処理手順等を、情報処理部2’の表示部4’や、歯科衛生士等が装着したヘッドマウントディスプレイ6Bの表示部4Bにも表示することで、歯科衛生士等が、治療対象、治療ステップ、及び処理手順を、歯科医師と同じ目線で確認しながらのアシストが可能となる。
【0086】
さらに、第3実施形態では、小型のモバイル情報処理部2Bを、ヘッドマウントディスプレイ6Bに取り付けるか、又はポケット等に収納可能としたため、小型で軽量、かつ携帯性に優れる歯科治療支援装置10Bを提供できる。また、歯科医師等の頭部に装着できるヘッドマウントディスプレイ6Bと、さらに足で操作可能な入力部3’とを備えることで、歯科医師等が操作等に手を用いる必要がなく、両手を使って自由に治療やアシストを行うことができる。
【0087】
また、第3実施形態に係る歯科治療支援装置10Bでは、さらに入力部として、図5Bに破線で示すようにマイク等の音入力部3B’を備え、情報処理部2Bに音声解析ソフトウェア(音声解析部)等をインストールした構成としてもよい。この構成により、歯科医師等が、音入力部から口頭(音声)で使用用途の選択を指示することで、音声解析ソフトウェアが音声を解析し、解析結果に応じて、情報処理部2Bが各処理を実行する。したがって、操作に手足を用いる必要がなく、歯科医師等は、より自由かつ手軽に治療やアシストを行うことができる。
【0088】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る歯科治療支援システム100を、図6のブロック構成図、図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0089】
図6に示すように、第4実施形態に係る歯科治療支援システム100は、歯科医院等のクライアント側に設置される歯科治療支援装置10と、歯科治療支援サービスを提供する業者等が管理するサーバ30と、を備えて構成される。歯科治療支援装置10とサーバ30とは、インターネット等の通信ネットワークNを介して接続されている。
【0090】
歯科治療支援装置10は少なくとも1台備えられていればよく、複数台備えられていることがより望ましく、様々な症例のより多くの支援結果を収集できる。複数台の場合は、各歯科治療支援装置10が、複数の歯科医院等にそれぞれ1台又は複数台ずつ設置されている。また、歯科治療支援装置10とともに、又はこれに代えて、第2、第3実施形態のような歯科治療支援装置10A,10Bを何れかの歯科医院等に備えていてもよい。
【0091】
第4実施形態の歯科治療支援装置10は、各部の機能と記憶部17に記憶される情報とが一部異なること以外は、第1実施形態の歯科治療支援装置10と同様の基本構成を備えている。そのため、第1実施形態の歯科治療支援装置10と同様の構成部品には、第1実施形態と同様の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0092】
第4実施形態では、撮影画像の解析による治療ステップの特定、表示する処理手順、製品情報の選定等は、サーバ30で行っている。第4実施形態の歯科治療支援装置10は、撮影画像及び入力情報を、通信ネットワークNを介してサーバ30に送信し、サーバ30から治療ステップ、処理手順、製品情報等を受信し、これらに基づいて歯科治療支援を行う。各部の機能の詳細は、後述する図7のフローチャートを用いた動作の説明のときに併せて説明する。
【0093】
サーバ30は、CPU、RAM、ROM、記憶媒体等を備えるサーバ用PCから構成されるが、汎用大型コンピュータ(メインフレーム)等を用いることもできる。サーバ用PCは、クラウドコンピューティングサービスを利用したものであってもよいし、データセンタや業者の自社のサーバ用PCであってもよい。
【0094】
サーバ30は、学習部31と、データベース32と、を主に備えているが、これ以外にも、通信部や画像表示部等、サーバ30としての一般的な構成や機能を備えている。
【0095】
データベース32には、製品情報、処理手順情報等が記憶され、さらに、物体認識等に用いる各種情報が記憶されている。また、データベース32には、各歯科治療支援装置10から受信した撮影画像、支援結果等が記憶される。また、データベース32に記憶される製品情報や処理手順は、学習部31による書き換え、又は製品販売業者からの新情報の提供によって逐次更新(バージョンアップ)される。更新された情報は、所定のタイミングで各歯科治療支援装置10へ送信されて記憶部17に反映されるものとしてもよい。
【0096】
学習部31は、人工知能機能を有している。例えば、治療を必要とする様々な状態の齲歯、窩洞、根管等を表す特徴量と、これら様々な状態の齲歯、窩洞、根管等に対する実際の治療ステップ、さらには処理工程及び使用材料とが対応付けられたデータを教師データとして用い、入力された撮影画像の特徴量に基づいて、機械学習アルゴリズムを利用して治療ステップを出力し、さらには好適な処理工程や使用材料を出力する。そのため、より高度な解析や判断が可能となる。学習部31は、各歯科治療支援装置10から受信した入力情報に基づいて、データベース32から製品情報、処理手順情報を取得し、歯科治療支援装置10へ送信する。学習部31は、各歯科治療支援装置10から送信される撮影画像を、物体認識技術を用いて解析し、治療ステップを特定して歯科治療支援装置10へ送信する。さらには、歯科ステップの各処理工程の実行状況(例えば、歯科材料が塗布された、エアーが噴射された、光照射がされた、等)を判別して、実行状況に対応する表示情報や音声情報等を確定し、歯科治療支援装置10へ送信する機能を備えていてもよい。
【0097】
また、学習部31は、使用製品の製品情報、処理手順情報、支援結果等をデータベース32に記憶する。また、学習部31は、支援結果に基づいて、データベース32から製品紹介情報を取得し、歯科治療支援装置10へ送信する。また、学習部31は、蓄積される試験結果を分析して、より好適な用途や処理手順を導き出し、データベース32の処理手順等に反映する構成とすることもできる。
【0098】
上述のような構成の歯科治療支援システム100で実行される歯科治療支援処理の一例を、第1実施形態の各部との違いを明確にしつつ、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0099】
歯科治療支援装置10で、歯科治療支援プログラムが起動されると、サーバ30との通信が開始され、データベース32の製品情報や処理手順情報に更新があったときは、更新された情報をサーバ30から受信し、記憶部17を更新する(ステップS20)。
【0100】
次に、ステップS21では、表示画像制御部26が使用用途選択画面41(図3参照)を表示部4に表示する。ステップS22で、入力情報取得部23が、選択された使用用途の情報を取得する。ステップS23で、使用用途に応じて、製品情報取得部24が記憶部17から製品名の一覧を取得し、ステップS24で、表示画像制御部26が使用製品選択画面42を表示部4に表示する(図3参照)。ステップS25で、入力情報取得部23が使用製品の情報を取得する。
【0101】
ステップS26では、情報処理部2は、撮影画像取得部21が取得した撮影画像と、取得した使用用途の情報及び使用製品からなる入力情報を、サーバ30へ送信する。ステップS27では、サーバ30の学習部31が、使用用途の情報、使用製品に関する入力情報を参照しつつ、受信した撮影画像を解析して治療ステップを特定する。学習部31が人工知能機能を備えているので、より高精度な解析が可能である。ステップS28では、学習部31が、治療ステップ及び入力情報に基づいて、データベース32から、当該治療ステップに対応する処理手順、この処理手順の各工程で使用する歯科材料や器具等の情報を含む処理手順情報を取得する。
【0102】
次いで、ステップS29では、サーバ30が歯科治療支援装置10へ取得した処理手順情報を送信する。これを受信した歯科治療支援装置10では、ステップS30で、表示画像制御部26が、リアルタイムの撮影画像を撮影画像表示領域43aに、治療ステップに応じた歯科材料及び器具の画像を材料等表示領域43bに、治療ステップに応じた処理手順や個々の処理工程を処理手順表示領域43cに表示した支援画面43を生成して表示部4の表示面4aへ表示する。この支援画面43を視認することで、歯科衛生士等は治療ステップ、必要な歯科材料、器具、処理手順を確認することができる。
【0103】
次いで、ステップS31で、撮影画像解析部22が撮影画像を解析して当該処理が開始されたか否かを判定する。この判定は、サーバ30の学習部31で行ってもよく、より高精度な判定が可能となる。処理が開始されない間は(ステップS31の判定がNO)、開始されるまでプログラムは待機し、処理が開始されたと判定したときは(ステップS31の判定がYES)、処理手順制御部25は、処理時間の計測の必要があれば、ステップS32に進んで処理時間のカウントやカウンタ画像43dの表示を行い、時間になったらステップS33でアラームを通知する。
【0104】
第4実施形態でも、予め設定した処理時間とは異なる時間や手順で歯科医師が処理を行ったときは、処理手順制御部25は、実際の処理時間や手順を記憶しておくことで、後にサーバ30の学習部31が支援結果を分析するのに有用な情報とすることができる。
【0105】
次に、ステップS34では、処理手順制御部25が次の処理工程があるか否かを判定し、処理工程がある場合(YES)、ステップS26に戻り、撮影画像のサーバ30への送信、ステップS27の撮影画像の解析、ステップS28の処理手順情報の取得、ステップS29の歯科治療支援装置10への処理手順情報等の送信、ステップS30の表示部4への支援画面43の表示、ステップS31の処理の実行の判定、必要に応じたステップS32の処理時間のカウント等及びステップS33のアラームの通知を順次実行する。これらのステップS26~S33の処理を、すべての処理工程が終わるまで(ステップS34の判定がNOとなるまで)繰り返す。
【0106】
その後、ステップS35に進んで、治療終了か否かを判定し、終了していない場合は(NO)、ステップS21に戻って、次の治療ステップに関して、当該ステップS21~S34の処理を繰り返す。
【0107】
情報処理部2は、ステップS35で治療が終了したと判定した場合(YES)、ステップS36で、処理手順制御部25が、撮影画像と、使用製品、使用用途及び実際の処理手順等の支援結果とを対応付けて記憶部17へ記憶するとともにサーバ30へ送信する。サーバ30では、ステップS37で、受信したこれらの情報を、歯科治療支援装置10の識別番号等と対応付けてデータベース32に記憶するとともに、必要に応じてこれらの情報を解析する。この解析に基づいて、乾燥や光照射のより適切な処理時間を設定する等、処理手順の内容を、より好適なものに変更し、データベース32の処理手順情報を更新してもよい。
【0108】
また、必要に応じて、ステップS38へと進み、データベース32から製品の紹介情報(第1実施形態の紹介情報参照)を抽出し、歯科治療支援装置10へ送信する。歯科治療支援装置10では、ステップS39で、表示画像制御部26が、受信した紹介情報を表示部4に表示する。
【0109】
また、サーバ30では、複数の歯科治療支援装置10の支援結果を収集してデータベース32へ蓄積し、蓄積した支援結果を、学習部31に分析、学習させるようにしてもよい。これにより、歯科医師等が好んで使用する製品やその用途の傾向等を知ることができ、営業戦略、製品の改良及び新製品開発に有効に活用することができる。
【0110】
以上、第4実施形態の歯科治療支援システム100では、歯科治療支援装置10を備えていることで、歯科医師や歯科衛生士等が視認する表示部4に、撮像部1で撮影される治療対象のリアルタイムの撮影画像と、使用製品や使用用途に対応した処理手順とが表示される。また、人工知能機能を有する学習部31を備えることで、治療ステップやその実行状態を、より詳細かつ高精度に特定することができる。そのため、人間の記憶等に頼らせることなく、治療ステップに対応する処理手順を的確にガイドすることができ、歯科治療をより適切に支援することが可能な歯科治療支援システム100を提供することができる。
【0111】
また、サーバ30と複数の歯科治療支援装置10とを接続することで、様々な症例の支援結果をサーバ30側で収集することができる。収集した支援結果を分析することで、製品の使用状況や歯科医師等の好む製品等の把握や、治療ステップに対するより好適な製品や使用手順の検討ができ、製品の改良や新製品の開発につなげることも可能となる。
【0112】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態として、歯科製品販売促進装置及びこの歯科製品販売促進装置を用いた歯科製品販売促進方法について説明する。第5実施形態の歯科製品販売促進装置は、図1等に示す第1実施形態の歯科治療支援装置10と、販売促進部と、を備えて構成される。本実施形態では、処理手順制御部25を販売促進部として機能させている。
【0113】
販売促進部(処理手順制御部25)は、歯科治療支援装置10での支援結果に基づいて、使用した製品の購入サイトの情報又は使用した製品と用途が同じ別の製品の購入サイトの情報を、表示部4に表示する機能を有する。本実施形態では、歯科治療支援装置10の処理手順制御部25が、販売促進部として機能するが、この構成に限定されるものではない。変形例として、処理手順制御部25とは別個に販売促進部を設けてもよいし、通信ネットワークを介して接続されたサーバ等に、販売促進部を設けてもよい。
【0114】
このような構成の歯科製品販売促進装置で実行される歯科材料販売促進方法は、第1実施形態の歯科治療支援装置10で実行される歯科診療支援方法と同様の方法で得られた支援結果に基づいて、使用製品の購入サイトの情報又は使用用途が同じ別の製品の購入サイトの情報を、表示部4に表示する。このような購入サイトの情報として、例えば、購入サイトのURLを表示する。このURLをクリックすることで、購入サイトへと導くことができ、歯科医師等が必要とする製品の販売促進を、より効果的に行うことができる。
【0115】
以上、本開示の実施形態を図面により詳述してきたが、上記各実施形態は本開示の例示にしか過ぎないものであり、本開示は上記各実施形態の構成にのみ限定されるものではない。本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本開示に含まれることは勿論である。
[関連出願への相互参照]
【0116】
本出願は、2018年10月11日に日本国特許庁に出願された特願2018-192868に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図5A
図5B
図6
図7