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特開2024-105631流体を処理するための電磁アセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105631
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】流体を処理するための電磁アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/34 20060101AFI20240730BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240730BHJP
   B01F 33/451 20220101ALI20240730BHJP
   C07K 1/14 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01N1/34
G01N1/28 J
B01F33/451
C07K1/14
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080861
(22)【出願日】2024-05-17
(62)【分割の表示】P 2022091468の分割
【原出願日】2016-11-29
(31)【優先権主張番号】62/261,065
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/286,196
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/426,706
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ドン ダブリュー. アーノルド
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エル. キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス アール. コービー
(72)【発明者】
【氏名】イブ ルブラン
(72)【発明者】
【氏名】チャン リュウ
(57)【要約】
【課題】流体を処理する方法および装置を提供すること
【解決手段】種々の側面では、流体処理システムは、流体コンテナ内に磁場勾配を生成するように構成されている複数の磁気構造を含む磁気アセンブリを含み得る。磁気構造は、コントローラによって個々に作動させられるように構成されている複数の電磁石として形成され得る。電磁石の各々は、流体コンテナ内に磁場を生成し得る。電磁石は、流体コンテナ内に磁場勾配を作成し、流体コンテナ内に配置された磁性粒子を攪拌、混合、または別様に影響を及ぼすように差動的に作動させられ得る。電磁構造の電磁石のアクティブ化は、x-y方向に磁性粒子に影響を及ぼす磁場勾配を生成し得る。加えて、複数の電磁構造の電磁石のアクティブ化は、磁性粒子にx-y方向およびz方向に影響を及ぼす磁場勾配を生成し得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置、システム、方法等。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、米国仮特許出願第62/261,065号(2015年11月30日出願)、米国仮特許出願第62/286,196号(2016年1月22日出願)、および米国仮特許出願第62/426,706号(2016年11月28日出願)からの優先権の利益を主張し、上記出願の全ての内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(分野)
本教示は、概して、流体を処理することに関し、より具体的には、流体内に配置された磁性粒子を操作するように構成される電磁構造を使用して、流体を処理する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
サンプルの調製は、化学および生物学的分析研究の重要な段階である。精密かつ信頼できる分析を達成するために、標的化合物が、複雑な未加工サンプルから処理され、分析機器に送達されなければならない。例えば、プロテオミクス研究は、概して、単一のタンパク質またはタンパク質群に焦点を合わせる。故に、生物学的サンプルが、サンプル中の他の細胞物質から標的タンパク質を分離するために処理される。タンパク質分離(例えば、免疫沈降)、マトリクス浄化、消化、脱塩等の追加の処理が、多くの場合、要求される。塩、緩衝剤、洗剤、タンパク質、酵素、および他の化合物等の非標的物質が、典型的には、化学ならびに生物学的サンプル中で見出される。これらの非標的物質は、例えば、分析機器によって検出される標的信号の量の低減を引き起こすことによって、分析に干渉し得る。したがって、複雑な未加工サンプルは、典型的には、非標的物質から着目化合物を分離するための1つ以上の分離および/または抽出技法を受ける。
【0004】
液体クロマトグラフィ(LC)は、異なる物質の複雑な混合物中に存在する着目被分析物の分離のための典型的な溶液ベースの技法である。LCは、概して、固体不溶性マトリクスを覆って液体サンプルを流すことを伴う。液体サンプルは、ある条件、例えば、pH、塩濃度、または溶媒組成条件下で、マトリクスに対する親和性を有する着目被分析物を含み得る。LC中、混合物中の化学成分は、液体移動相の流動によって固定相を通して搬送され得る。液体クロマトグラフィにおける分離は、移動および固定相の両方との被分析物の相互作用の差異に起因して起こる。高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)は、被分析物が高い圧力で液体移動相において固定相を通して押し進められる、LCの一形態である。高い圧力を使用して被分析物を押し進めることは、分離された成分が固定相上に留まる時間、したがって、成分が列内で拡散する必要がある時間を短縮する。HPLCは、典型的には、従来のLC技法と比較して、より良好な分解能および感度を達成するために分析機器によって使用され得る処理されたサンプルをもたらす。しかしながら、LCは、サンプルを処理するために使用することが高価である複雑な技法であり、複数の平行列が複数のサンプルを同時に処理するために要求されるような連続プロセスである。加えて、LCは、ある潜在的標的材料を不可逆的に吸着および/または共溶出し得る。HPLCは、LC(典型的には、サンプルを処理するために約10~30分を要求する)よりも速いが、HPLCの複雑性および費用は、例えば、プロセスを実施するために要求されるポンプおよび他の特殊機器に起因して、従来のLCをはるかに上回る。
【0005】
磁性粒子またはビーズは、化学および生物学的検定ならびに診断のためのサンプル調製に採用され得る別の技術である。例証的磁性粒子が、米国特許第4,582,622号(特許文献1)および米国特許第4,628,037号に説明されている。サンプル分離および抽出に磁性粒子を採用するデバイスならびに方法の例が、米国特許第4,554,088号(特許文献2)および米国特許第8,361,316号に説明されている。そのような磁性粒子はまた、Martin A.M.Gijsによる著作であり、Microfluid Nanofluid(2004;I:22-40)で公開された、「Magnetic bead handling on-chip:new opportunities for analytical applications」と題された論文に開示されるようなマイクロ流体システムでも使用されている。
【0006】
磁性粒子技術は、高い性能(例えば、デバイス感度および正確度)を提供し、検定プロトコルの容易な自動化も提供する力強い技術である。いくつかの用途では、磁性粒子の表面は、他の物質との混合物中の標的物質または被分析物群を選択的に結合することができるC18、抗体、レクチン、オリゴヌクレオチド、もしくは親和性基等の好適なリガンドまたは受容体でコーティングされる。いくつかの用途では、1つの基質から別の基質への成分の質量移動が、別の考慮事項である。磁性粒子分離および取り扱い技術における1つの主要な要素は、標的物質と粒子表面との間の反応速度、1つの基質から別の基質への質量移動、または1つの媒体から別の媒体への被分析物の移動を増進するための効率的な混合である。懸濁磁性粒子が、磁力によって作動させられ得、混合プロセスを増進または生成するようにサンプル溶液の攪拌をもたらす。磁性粒子混合システムの例は、Suzuki、他による著作であり、Journal of Microelectromechanical Systems(2004;I:13:779-790)で公開された「A
chaotic mixer for magnetic bead-based micro cell sorter」と題された論文、およびWang、他による著作であり、Microfluid Nanofluid(2008;I:4:375-389)で公開された「A rapid magnetic particle driven
micromixer」と題された論文に開示されている。
【0007】
米国特許第6,231,760号(特許文献3)、米国特許第6,884,357号、および米国特許第8,361,316号に開示されるような磁性粒子を使用して流体を混合するための以前の技法は、コンテナ内の磁場勾配の相対変位を誘発するために、静止コンテナに対して磁石を移動させること、または機械的手段を使用して静止磁石に対してコンテナを移動させることを伴っている。そのような方法を使用する磁場勾配の変位は、磁石位置の変化とともに連続的に移動するように磁性粒子を誘導することによって、コンテナ内である程度の混合を引き起こし得る。しかしながら、コンテナ内の磁場勾配の形成は、粒子を引き付け、コンテナの壁に近い領域の中に閉じ込め得、混合効率および有効性を低減させる。国際特許出願公開第WO1991/09308号(特許文献4)に説明される別の技法は、その中に配置された磁性粒子を有するチャンバの周囲で互いに対面する2つの電磁石の使用を伴う。十分な周波数で2つの電磁石を連続的に通電および非通電させること(すなわち、バイナリオン/オフ制御)は、チャンバの中に配置された流体内で磁性粒子を懸濁させるように動作する。方法に従って2つの電磁石を作動させることによる粒子の移動は、チャンバ内の小さいエリアに限定され、比較的弱い混合力を生成する。加えて、磁性粒子の一部は、磁場によって影響されないこともある。影響を受けていない粒子は、チャンバ表面の近傍で凝集し、混合または親和性結合に寄与しない。
【0008】
米国特許第8,585,279号(特許文献5)は、封入サンプルコンテナ内で磁性粒子を作動させるために、統合ポンプおよび流体チャネルと組み合わせて高周波(RF)駆動電磁石を採用するマイクロ流体チップデバイス(Spinomix SAの「MagPhase」デバイス)を開示する。電磁石は、サンプルコンテナ内の磁場勾配を変動させ、サンプル流体内の磁性粒子の移動を達成するように構成される順序で、作動させられる。しかしながら、MagPhaseデバイスを使用するサンプルの混合は、マイクロ流体デバイスの構成が同時に限定数のサンプルの処理のみを可能にするので、本質的に性質が連続的である。加えて、他の従来の技法と同様に、MagPhaseデバイスは、一次元で、すなわち、x-y平面内で、サンプル混合を提供するのみである。特定の構成に起因して、MagPhaseデバイスは、比較的大きいサンプル体積損失および磁性粒子損失を受ける。さらに、MagPhaseマイクロ流体デバイスの封入チャネルおよびサンプルコンテナは、デバイスからのサンプル体積の装填および収集の自動化に障害を導入し、処理されることが可能なサンプル体積を限定する。MagPhaseデバイスを使用して処理されるサンプルは、デバイスの種々のチャネルおよび流体経路を通って進行するように要求されるので、広い接触表面積に必然的にさらされる。故に、MagPhaseデバイスを介して処理されるサンプルは、例えば、非特異的結合に起因して、高いキャリーオーバーおよび低い回収の影響を受けやすい。
【0009】
磁性粒子は、Anderson、他による著作であり、Journal of Proteome Research(2004;I:3:235-244)で公開された「Mass spectrometric quantitation of peptides and proteins using Stable Isotope Standards and Capture by Anti-Peptide Antibodies(SISCAPA)」と題された論文に説明されるSISCAPA技法等のサンプルプレート用途でも使用されている。例示的磁気サンプルプレートシステムは、Beckman Coulter,Inc.(Brea,California,United States)によって提供されるAgencourt SPRIPlate 96R-Ring Super Magnet Plate、およびAlpaqua(登録商標)(Beverly,Massachusetts,United States)によって提供されるMagnum FLXを含む。これらの用途では、サンプルプレートは、磁石がサンプルウェルの間に突出するか、またはサンプルウェルが輪状磁石内に位置付けられることを可能にするかのいずれかであるように配置される複数の固定磁場磁石を含む。サンプルウェル内の磁性粒子は、混合を促進するように攪拌され得、磁性粒子は、次いで、永久磁石の影響を通して捕らえられることができる。他のタイプの自動混合デバイスは、概して、機械的攪拌によって(すなわち、サンプルプレートを振動させることによって)混合を達成しようとする。サンプルを処理した後、磁石は、ビーズをサンプルウェルの側面に閉じ込め、サンプル流体の除去を可能にするために使用され得る。しかしながら、従来の磁気サンプルプレート用途で使用される固定磁場磁石は、力強い混合を達成することが可能ではない。例えば、磁性粒子は、概して、サンプルウェルの個別のエリアにおいて凝集してクラスタ化する傾向がある。加えて、プレート自体は、分析のステップの合間に移動させられなければならず、有意な自動化を要求する。
【0010】
故に、サンプル流体の超高速均質混合および多数のサンプル流体のアクセス可能な並行処理を含む、磁性粒子を使用するサンプル混合ならびに分離の全体的速度および効率を改良する必要性が存在する。
【0011】
例えば、より大きい体積のサンプルを含む、広い体積範囲の磁性粒子を使用するサンプル混合および分離の全体的速度ならびに効率を改良する必要性も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4,582,622号(明細書)
【特許文献2】米国特許第4,554,088号(明細書)
【特許文献3】米国特許第6,231,760号(明細書)
【特許文献4】国際公開第1991/09308号
【特許文献5】米国特許第8,585,279号(明細書)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
出願人の本教示の種々の側面による、装置、システム、および方法は、既知のシステムで経験されるサンプル体積への制限、サンプル損失、ならびに磁性粒子損失を伴わずに、電磁アセンブリを使用するサンプリングデバイスおよび流体の処理を可能にする。種々の側面では、1つの媒体から別の媒体(例えば、固体または液体)への物質の増大する質量移動も、増進されることができる。一例として、流体は、流体内に配置される磁性粒子を使用して、開放流体コンテナ(例えば、上部カバーを伴わずに周囲大気に開放している)等の流体コンテナ内で処理されることができる。別の例として、流体コンテナは、連続流体流を有するチャンバを備え得る。磁性粒子は、流体コンテナに隣接して配置される磁気構造、例えば、流体コンテナの周辺の周囲に配置されている磁気構造および/またはアセンブリによって生成される磁場によって攪拌されるように構成されることができる。磁気構造は、流体コンテナの周辺の周囲に2次元アレイで配置されることができる。磁気アセンブリは、水平または実質的に水平な層の中に配置される複数の垂直に間隔を置かれた磁気構造を含むこともできる。いくつかの実施形態では、磁気構造のうちの1つ以上のものの垂直位置は、例えば、異なるサンプル体積を処理するように、調節可能であり得る。磁気構造の各々は、流体コンテナの周囲で水平面内に配置される電磁石等の1つ以上の磁石によって形成されることができる。電磁アセンブリの1つ以上の垂直位置における1つ以上の磁気構造の種々の電磁石への信号の選択的印加に基づいて、磁性粒子は、非限定的例として、急速かつ効率的に流体を混合するように、および/または流体内の標的被分析物を捕捉するように、流体内で種々の電磁石によって生成される磁場勾配の複合効果によって、水平に(側方に)左右に、ならびに/もしくは垂直に上下に、回転、スピン、移動するように影響を受けることができる。上記のように、磁気構造は、各電磁石が、その中に配置された磁性粒子に影響を及ぼすために有効な所望の磁場を流体コンテナ内で生成するように個々に制御される、流体コンテナの周囲に配置される複数の電磁石から形成されることができる。一例として、(例えば、単一の水平層内の)各磁気構造の電磁石に印加される信号が、実質的にx-y平面内で磁場勾配を生成することができる一方で、異なる磁気構造の電磁石(例えば、異なる水平層内の電磁石)に印加される信号は、z方向または垂直成分を示す磁場勾配をもたらすことができる。
【0014】
本教示の種々の側面によると、システムは、最大10mLのそれらを含む、大きい体積を含む、広範囲の体積サンプル調製を達成するように動作し得る。これは、ある実施形態では、垂直混合技法を含むことができる。本教示の種々の側面によると、システムは、本明細書に開示される方法およびシステムが、その内側の種々の異なる体積のサンプルの処理を可能にすることができるように、コンテナ内の混合チャンバへのサンプルの統合マイクロ流体送達を伴わずに動作し得る。マイクロ流体ベースのシステムが、概して、完全に充填されたマイクロ流体ネットワークを通して固定量の液体を輸送するように、拡散、毛管力、またはマイクロ流体ポンプに依拠する閉鎖系である一方で、本教示の種々の側面によるシステムおよび方法は、種々の体積の流体サンプルで充填または部分的に充填され得るコンテナを利用することができ、それによって、例えば、サンプルの利用可能性もしくは経費および/または特定の検定の要件に応じて、処理されるサンプル体積の低減もしくは拡張を可能にする。いくつかの側面では、処理されるサンプル(および同サンプルを処理するために利用される試薬)は、(例えば、コンテナの開放端を通して挿入されるオートサンプラまたはピペットを介して)開放流体コンテナに直接添加されることができ、同様に、例えば、処理に続いて、(例えば、捕捉デバイスを介して)そこから直接除去されることができる。出願人の教示の種々の側面によると、本明細書に開示される方法およびシステムは、種々の異なる体積のサンプルを処理することができる。
【0015】
出願人の教示の種々の側面によると、流体および複数の磁性粒子を含むための流体チャンバをその中に画定する少なくとも1つの流体コンテナと、1つまたは複数の垂直位置において少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置される(例えば、水平層の中に配置される)1つ以上の磁気構造を備えている少なくとも1つの磁気アセンブリであって、1つまたは複数の磁気構造の各々は、少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように構成されている複数の電磁石を備えている、少なくとも1つの磁気アセンブリと、1つまたは複数の磁気構造に結合され、複数の電磁石の各々によって生成される磁場を制御することにより、流体内の複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために十分な複数の磁場勾配を少なくとも1つの流体コンテナ内で生成するように構成されている制御構成要素とを含むことができる流体処理システムが提供される。
【0016】
いくつかの側面では、流体チャンバは、下部閉鎖端から、大気に開放し、それを通して処理される流体を受け取るように構成される上部開放端まで延びている。
【0017】
いくつかの側面では、磁気アセンブリは、水平x-y方向および/または垂直z方向に複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすように構成される。1つ以上の種々の垂直位置において流体コンテナを包囲する複数の電磁石への電気信号の選択的印加に基づいて、磁性粒子は、種々の電磁石によって生成される磁場勾配の複合効果によって、流体サンプル内で水平に左右に、および/または垂直に上下に、回転、スピン、移動するように影響を受けることができる。例えば、各磁気構造の電磁石に印加される信号は、実質的にx-y平面内で磁場勾配を生成するように構成されることができる一方で、存在する場合、異なる磁気構造の電磁石(例えば、異なる水平層内の電磁石)に印加される信号は、z方向または垂直成分を示す磁場勾配をもたらすことができる。非限定的例として、2つ以上の磁気構造が存在するとき、複数の磁気構造が、複数の垂直位置に対応する水平層の中に実質的に配置されることができ、各磁気構造は、該複数の磁気構造のうちの他のものから独立している制御構成要素によってアクティブにされると、実質的にその対応する水平層内でx-y方向に複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすように構成されることができる。いくつかの側面では、流体処理システムは、流体コンテナに対して複数の電磁石のうちの少なくとも1つの垂直位置を調節するように構成される位置付け要素をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、位置付け要素は、流体チャンバ内の少なくとも1つの流体の体積に基づいて、位置を調節するように構成される。加えて、または代替として、いくつかの側面では、磁気アセンブリは、流体チャンバ内の流体の体積のうちの少なくとも1つに基づいて選択的にアクティブにされるように、かつ体積内の所望の流体レベルで磁性粒子を維持するように構成されている少なくとも3つの磁気構造を備えていることができる。
【0018】
いくつかの側面では、システムは、少なくとも1つの流体を混合することによって、それを処理するように構成される。いくつかの側面では、システムは、少なくとも1つの流体内の少なくとも1つの標的被分析物を捕捉するように流体分離を行うことによって、少なくとも1つの流体を処理するように構成される。磁気構造の各々の中の複数の電磁石は、数が変動し得るが、いくつかの側面では、磁気構造は、各水平層内の流体チャンバの周辺を包囲する4つの電磁石を備えていることができる。
【0019】
流体コンテナは、種々の構成を有することができる。例えば、いくつかの側面では、流体チャンバは、下部閉鎖端から、大気に開放し、それを通して処理される流体を受け取るように構成される上部開放端まで延びているように構成されることができる。いくつかの側面では、少なくとも1つの流体コンテナは、部分的に充填されたときに動作するように構成されるマクロスケール流体コンテナとして構成されることができる。流体チャンバは、非限定的例として、約1mL~約10mLの範囲等の種々の最大容積を示すことができる。加えて、または代替として、種々の側面では、少なくとも1つの流体コンテナは、複数の流体的に分離された流体コンテナを備えていることができ、複数の電磁石のうちの少なくとも一部は、複数の流体コンテナのうちの2つ以上のもの内に磁場を生成するように構成される。例えば、少なくとも1つの流体コンテナは、サンプルプレート内に配置されている複数のサンプルウェルを備えていることができ、少なくとも1つの磁気アセンブリの電磁石は、複数のサンプルウェル内に配置されている磁性粒子に同時に影響を及ぼすように構成されることができる。
【0020】
加えて、または代替として、いくつかの側面では、流体処理システムは、単一のバイアルもしくは1つ以上のバイアルの中に含まれた流体を同時に処理し得る独立型混合デバイスとして構成されることができる。種々の側面では、流体処理システムは、複数のサンプルウェルの各々内に配置される磁性粒子に同時に影響を及ぼすように、磁気アセンブリと統合され得るか、または磁気アセンブリと除去可能に関連付けられ得るサンプルプレート内に配置されている複数のサンプルウェルを含むことができる。いくつかの実施形態では、サンプルプレートは、1つ以上の流体的に分離されたサンプルチャンバを有する開放ウェルサンプルプレートとして形成される。例えば、いくつかの実施形態では、開放ウェルサンプルプレートは、本教示に従って修正される96ウェルサンプルプレートを備えている。いくつかの実施形態では、開放ウェルサンプルプレートは、96個を上回るサンプルウェルを含み得る。いくつかの実施形態では、開放ウェルサンプルプレートは、1、4、8、12、32、および64個のサンプルウェル等の96個未満のサンプルウェルを含み得る。いくつかの実施形態では、開放ウェルサンプルプレートは、単一のバイアルを備え得る。いくつかの側面では、サンプルプレートは、電磁構造の少なくとも一部に除去可能に係合するように構成されている底面を備えている(例えば、サンプルプレートは、電磁アセンブリから除去されることができる)。
【0021】
出願人の本教示の種々の側面によると、制御構成要素は、少なくとも1つの高周波数(RF)波形を電磁アセンブリの中の複数の電磁石の各々に印加することによって、複数の電磁石の各々によって生成される磁場を制御するように構成されることができる。いくつかの側面では、複数の電磁石の各々に印加される少なくとも1つのRF波形は、他の複数の電磁石の信号に対して位相遅延を示すことができる。例えば、位相遅延は、30°位相遅延、60°位相遅延、90°位相遅延、120°位相遅延、150°位相遅延、180°位相遅延、210°位相遅延、240°位相遅延、270°位相遅延、300°位相遅延、330°位相遅延、360°位相遅延、およびこれらの値のうちのいずれか2つの間の任意の値または範囲(端点を含む)であることができる。一側面では、例えば、(例えば、各水平層内の)各磁気構造の中の4つの電磁石に印加される制御信号は、その層内の隣接電磁石に対して±90°シフトを示すRF波形を備えていることができる、および/または磁気構造の中の4つの電磁石に印加される制御信号は、(例えば、異なる水平層の)別の磁気構造の中のその垂直に隣接する電磁石に対して±90°シフトを示すRF波形を備えていることができる。種々の関連側面では、流体処理システムは、例えば、コントローラによる実行のための少なくとも1つのサンプル処理プロトコルを記憶するように構成される、コントローラに動作可能に結合される少なくとも1つのメモリを含むことができる。
【0022】
出願人の本教示の種々の側面によると、流体処理システムは、流体処理システムから流体を受け取るように構成され得る、全ての非限定的例として、液体クロマトグラフィ(LC)列、化学電気泳動(CE)システム、微分移動度分光計(DMS)、もしくは質量分析計(MS)システム(例えば、質量分析計のイオン源)を含む、任意の数の下流分析器具のためにサンプルを調製するように、またはそれらとインターフェースをとるように利用されることができる。さらに、種々の側面では、流体が、質量分析計(MS)を使用して分析され得る。出願人の本教示の種々の側面によると、流体処理システムによって処理される流体は、限定ではないが、オートサンプラ、音響液滴ディスペンサ等を含む、種々の流体取り扱い技法を介して、MS、DMS-MS、LC-MS、LC-DMS-MSに移送されることができる。
【0023】
出願人の本教示の種々の側面によると、流体チャンバの周辺の周囲に配置される電磁アセンブリを有する少なくとも1つの流体コンテナの流体チャンバに流体サンプルおよび複数の磁性粒子を送達することであって、電磁アセンブリは、1つまたは複数の垂直位置において少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置される(例えば、水平層の中に配置される)1つまたは複数の磁気構造を備え、1つまたは複数の磁気構造の各々は、複数の電磁石を備えている、ことと、少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように、電気信号を複数の電磁石の各々に提供することであって、磁場は、複数の磁性粒子に影響を及ぼすように構成されている、ことと、電気信号を調節することにより、流体サンプル内の磁場を修正することと、その後、流体コンテナからサンプル流体を引き出すこととを含む、流体を処理する方法が提供される。
【0024】
いくつかの側面では、流体チャンバは、垂直軸に沿って下部閉鎖端から上部開放端まで延びていることができ、上部開放端は、大気に開放し、処理されるべき流体をそれを通して受け取るように構成され、1つ以上の複数の磁気構造は、1つもしくは複数の垂直位置に対応する1つ以上の水平層の中に配置され、各磁気構造は、電気信号が、存在する場合、該複数の磁気構造のうちの他のものから独立している各磁気構造の電磁石に提供されると、その対応する水平層内でx-y方向に複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすように構成される。例えば、各磁気構造の電磁石に印加される信号が、実質的にx-y平面内で磁場勾配を生成することができる一方で、存在する場合、異なる磁気構造の電磁石(例えば、異なる水平層内の電磁石)に印加される信号は、z方向または垂直成分を示す磁場勾配をもたらすことができる。したがって、いくつかの側面では、種々の垂直位置において流体コンテナを包囲する複数の電磁石への電気信号の選択的印加は、種々の電磁石によって生成される磁場勾配の複合効果によって、流体サンプル内で水平に左右に、および/または垂直に上下に、回転、スピン、移動するように、磁性粒子に影響を受けさせることができる。種々の側面では、電気信号を調節することにより、流体サンプル内の磁場を修正することは、マルチステップサンプル処理プロトコルを行うことを含むことができる。一例として、1つ以上の試薬は、サンプル処理プロトコルの第1のステップ後に、少なくとも1つのサンプルコンテナに添加されることができる。種々の側面では、流体サンプルを少なくとも1つの流体コンテナの流体チャンバに送達することは、オートサンプラおよびピペットのうちのいずれかを使用して、それに直接、流体サンプルを送達することを含む。
【0025】
いくつかの側面では、方法は、流体チャンバ内の流体の体積に基づいて、または体積内の所望の流体レベルで磁性粒子を維持するように、流体コンテナに対する複数の電磁石のうちの少なくとも1つの垂直位置を調節することを含むことができる。加えて、または代替として、いくつかの側面では、磁気アセンブリは、少なくとも3つの磁気構造を備えていることができ、方法は、流体チャンバ内の流体の体積のうちの1つに基づいて、または体積内の所望の流体レベルで磁性粒子を維持するように、少なくとも3つの磁気構造を選択的にアクティブ化することをさらに含む。例えば、いくつかの側面では、電気信号を調節することにより流体サンプル内の磁場を修正することは、電磁石のうちのいくつかの垂直位置を調節すること、および/または、種々の磁気構造の電極を選択的にアクティブ化することも含み得るマルチステップサンプル処理プロトコルを行うことを含むことができる。
【0026】
種々の例示的側面では、複数の磁気構造のうちの1つは、4つの電磁石を備えていることができ、少なくとも1つの高周波数波形は、
【0027】
【数1】
【0028】
に従って、複数の電磁石の各々に印加され、
Iは、電流であり、fは、周波数であり、tは、時間である。
【0029】
いくつかの側面では、流体処理システムは、流体および複数の磁性粒子を含むための流体チャンバをその中に画定する少なくとも1つの流体コンテナと、複数の垂直位置において少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置されている複数の磁気構造を備えている少なくとも1つの磁気アセンブリであって、複数の磁気構造の各々は、少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように構成されている複数の電磁石を備えている、磁気アセンブリと、複数の磁気構造に結合されている制御構成要素とを備え、制御構成要素は、複数の電磁石の各々によって生成される磁場を制御することにより、流体内の複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために十分な複数の磁場勾配を少なくとも1つの流体コンテナ内で生成するように構成され、流体コンテナは、開放ポートプローブを備え、開放ポートプローブは、管状部材と、溶媒の流入用の入口および溶媒の流出用の出口と、大気に開放している先端部とを備え、溶媒の流入および流出が先端部に差し向けられ、溶媒の定常状態レベルを維持するように構成されている。
【0030】
いくつかの側面では、埋め込まれた被分析物を含む基板表面は、基板表面から溶媒への被分析物の堆積を引き起こすように、開放ポートプローブの先端において溶媒と接触させられる。種々の側面では、基板表面は、固相微量抽出ファイバであり得る。
【0031】
いくつかの側面では、流体処理システムは、流体および複数の磁性粒子を含むための流体チャンバをその中に画定する少なくとも1つの流体コンテナと、複数の垂直位置において少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置されている複数の磁気構造を備えている少なくとも1つの磁気アセンブリであって、複数の磁気構造の各々は、少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように構成されている複数の電磁石を備えている、磁気アセンブリと、複数の磁気構造に結合されている制御構成要素とを備え、制御構成要素は、複数の電磁石の各々によって生成される磁場を制御することにより、流体内の複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために十分な複数の磁場勾配を少なくとも1つの流体コンテナ内で生成するように構成され、流体コンテナは、開放ポートプローブを備え、開放ポートプローブは、管状部材と、溶媒のための入口および出口と、大気に開放している先端部とを備え、溶媒の定常状態レベルが維持されるように構成されている。
【0032】
いくつかの側面では、埋め込めまれた被分析物を有する基板表面を処理する方法は、流体コンテナの周辺の周囲に配置されている電磁アセンブリを有する少なくとも1つの流体コンテナの流体チャンバに流体サンプルおよび複数の磁性粒子を送達することであって、電磁アセンブリは、1つまたは複数の垂直位置において少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置されている1つまたは複数の磁気構造を備え、1つまたは複数の磁気構造の各々は、複数の電磁石を備えている、ことと、少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように、電気信号を複数の電磁石の各々に提供することであって、磁場は、複数の磁性粒子に影響を及ぼすように構成されている、ことと、電気信号を調節することにより、流体サンプル内の磁場を修正することと、埋め込まれた被分析物を有する基板表面を流体サンプルに接触させ、基板表面から流体サンプルまでの被分析物の少なくとも一部の移送を引き起こすことと、その後、流体コンテナからサンプル流体を引き出すこととを含む。
【0033】
いくつかの側面では、流体サンプルを処理する方法は、流体コンテナの周辺の周囲に配置されている電磁アセンブリを有する少なくとも1つの流体コンテナの流体チャンバに被分析物および複数の磁性粒子を含む流体サンプルを送達することであって、電磁アセンブリは、1つまたは複数の垂直位置において少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置されている1つまたは複数の磁気構造を備え、1つまたは複数の磁気構造の各々は、複数の電磁石を備えている、ことと、少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように、電気信号を複数の電磁石の各々に提供することであって、磁場は、複数の磁性粒子に影響を及ぼすように構成されている、ことと、電気信号を調節することにより、流体サンプル内の磁場を修正することと、被分析物に対する親和性を有する基板表面を流体サンプルに接触させ、流体サンプルから基板表面への被分析物の少なくとも一部の移送を引き起こすこととを含む。
【0034】
出願人の教示のこれらおよび他の特徴が、本明細書に記載される。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
流体処理システムであって、前記システムは、
少なくとも1つの流体コンテナであって、前記少なくとも1つの流体コンテナは、流体および複数の磁性粒子を含むための流体チャンバをその中に画定し、前記流体チャンバは、下部閉鎖端から上部開放端まで延びており、前記上部開放端は、処理されるべき前記流体をそれを通して受け取るために大気に開放しているように構成されている、少なくとも1つの流体コンテナと、
少なくとも1つの磁気構造を備えている磁気アセンブリであって、各磁気構造は、複数の電磁石を備え、前記複数の電磁石の各々は、前記少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように構成されている、磁気アセンブリと、
前記少なくとも1つの磁気構造に結合されている制御構成要素と
を備え、
前記制御構成要素は、前記複数の電磁石の各々によって生成される前記磁場を制御することにより、前記流体内の前記複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために十分な磁場勾配を前記少なくとも1つの流体コンテナ内に生成するように構成されている、システム。
(項目2)
前記複数の電磁石は、4つの電磁石を備えている、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記少なくとも1つの流体コンテナは、複数の流体的に分離された流体コンテナを備え、前記複数の電磁石のうちの少なくとも一部は、前記複数の流体コンテナのうちの2つ以上のもの内に前記磁場を生成するように構成されている、項目1に記載のシステム。
(項目4)
前記少なくとも1つの流体コンテナは、サンプルプレート内に配置されている複数のサンプルウェルを備えている、項目1に記載のシステム。
(項目5)
前記少なくとも1つの磁気構造は、複数のサンプルウェル内に配置されている前記磁性粒子に同時に影響を及ぼすように構成されている、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記サンプルプレートは、前記電磁構造の少なくとも一部に除去可能に係合するように構成されている底面を備えている、項目4に記載のシステム。
(項目7)
前記制御構成要素は、少なくとも1つの高周波数波形を前記複数の電磁石の各々に印加することによって、前記複数の電磁石の各々によって生成される前記磁場を制御するように構成されている、項目1に記載のシステム。
(項目8)
前記複数の電磁石の各々に印加される少なくとも1つの高周波数波形は、位相遅延を有する、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記位相遅延は、90°位相遅延である、項目8に記載のシステム。
(項目10)
前記位相遅延は、180°位相遅延である、項目8に記載のシステム。
(項目11)
前記複数の電磁石は、第1の電磁石と、第2の電磁石と、第3の電磁石と、第4の電磁石とを備え、
前記少なくとも1つの高周波数波形は、
(数5)

に従って、前記複数の電磁石の各々に印加され、
Iは、電流であり、fは、周波数であり、tは、時間である、項目8に記載のシステム。
(項目12)
前記流体チャンバは、約1mL~約10mLの範囲の最大体積を保持するように構成されている、項目1に記載のシステム。
(項目13)
前記複数の電磁石は、複数の垂直位置において前記少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置されている、項目1に記載のシステム。
(項目14)
流体を処理する方法であって、前記流体を処理する方法は、
大気に開放している流体チャンバの上端を通して、流体サンプルを少なくとも1つの流体コンテナの前記流体チャンバに送達することであって、複数の電磁石が、前記流体コンテナの周辺の周囲に配置されている、ことと、
前記少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように、電気信号を前記複数の電磁石の各々に提供することであって、前記磁場は、前記流体コンテナの中の前記流体サンプル内に配置されている複数の磁性粒子に影響を及ぼすように構成されている、ことと、
前記電気信号を調節することにより、前記流体サンプル内の前記磁場を修正することと、
その後、前記流体チャンバの前記上端を介して、前記流体コンテナから前記サンプル流体を引き出すことと
を含む、流体を処理する方法。
(項目15)
流体処理システムであって、前記システムは、
少なくとも1つの流体コンテナであって、前記少なくとも1つの流体コンテナは、流体および複数の磁性粒子を含むための流体チャンバをその中に画定する、少なくとも1つの流体コンテナと、
複数の垂直位置において前記少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置されている複数の磁気構造を備えている少なくとも1つの磁気アセンブリであって、前記複数の磁気構造の各々は、前記少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように構成されている複数の電磁石を備えている、磁気アセンブリと、
前記複数の磁気構造に結合されている制御構成要素と
を備え、
前記制御構成要素は、前記複数の電磁石の各々によって生成される前記磁場を制御することにより、前記流体内の前記複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために十分な複数の磁場勾配を前記少なくとも1つの流体コンテナ内に生成するように構成されている、
システム。
(項目16)
前記流体チャンバは、下部閉鎖端から上部開放端まで延びているように構成され、前記上部開放端は、処理されるべき前記流体をそれを通して受け取るために大気に開放しているように構成されている、項目15に記載のシステム。
(項目17)
前記制御構成要素は、少なくとも1つの高周波数波形を前記複数の電磁石の各々に印加することによって、前記複数の電磁石の各々によって生成される前記磁場を制御するように構成されている、項目15に記載のシステム。
(項目18)
磁気構造における前記複数の電磁石の各々に印加される前記少なくとも1つの高周波数波形は、前記複数の電磁石のうちの他のものに印加される前記高周波数波形に対して位相遅延を示す、項目17に記載のシステム。
(項目19)
前記複数の磁気構造のうちの少なくとも1つの前記複数の電磁石は、第1の電磁石と、第2の電磁石と、第3の電磁石と、第4の電磁石とを備え、
前記少なくとも1つの高周波数波形は、
(数6)

に従って、前記複数の電磁石の各々に印加され、
Iは、電流であり、fは、周波数であり、tは、時間である、項目18に記載のシステム。
(項目20)
流体を処理する方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの流体コンテナの流体チャンバに流体サンプルおよび複数の磁性粒子を送達することであって、前記少なくとも1つの流体コンテナは、前記流体コンテナの周辺の周囲に配置されている電磁アセンブリを有し、前記電磁アセンブリは、複数の垂直位置において前記少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置されている複数の磁気構造を備え、前記複数の磁気構造の各々は、複数の電磁石を備えている、ことと、
前記少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように、電気信号を前記複数の電磁石の各々に提供することであって、前記磁場は、前記複数の磁性粒子に影響を及ぼすように構成されている、ことと、
前記電気信号を調節することにより、前記流体サンプル内の前記磁場を修正することと、
その後、前記流体コンテナから前記サンプル流体を引き出すことと
を含む、方法。
(項目21)
前記流体チャンバは、垂直軸に沿って下部閉鎖端から上部開放端まで延びており、前記上部開放端は、処理されるべき前記流体をそれを通して受け取るために大気に開放しているように構成され、前記複数の磁気構造は、前記複数の垂直位置に対応する水平層の中に配置され、各磁気構造は、電気信号が前記複数の磁気構造のうちの他のものから独立している各磁気構造の前記電磁石に提供されると、その対応する水平層内でx-y方向に前記複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすように構成されている、項目20に記載の方法。(項目22)
前記磁気アセンブリは、z方向に、および/または、x-y方向に前記複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすように構成されている、項目15に記載のシステム。
(項目23)
流体処理システムであって、前記流体処理システムは、
少なくとも1つの流体コンテナであって、前記少なくとも1つの流体コンテナは、流体および複数の磁性粒子を含むための流体チャンバをその中に画定する、少なくとも1つの流体コンテナと、
複数の垂直位置において前記少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置されている複数の磁気構造を備えている少なくとも1つの磁気アセンブリであって、前記複数の磁気構造の各々は、前記少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように構成されている複数の電磁石を備えている、磁気アセンブリと、
前記複数の磁気構造に結合されている制御構成要素と
を備え、
前記制御構成要素は、前記複数の電磁石の各々によって生成される前記磁場を制御することにより、前記流体内の前記複数の磁性粒子に磁気的に影響を及ぼすために十分な複数の磁場勾配を前記少なくとも1つの流体コンテナ内に生成するように構成され、前記流体コンテナは、開放ポートプローブを備え、前記開放ポートプローブは、管状部材と、溶媒のための入口および出口と、大気に開放している先端部とを備え、溶媒が先端部に差し向けられ、溶媒の定常状態レベルを維持するように構成されている、
流体処理システム。
(項目24)
埋め込まれた被分析物を含む基板表面が、前記開放ポートプローブの前記先端において前記溶媒と接触させられる、項目23に記載の流体処理システムの使用。
(項目25)
前記基板表面は、固相微量抽出ファイバを備えている、項目24に記載の使用。
(項目25)
埋め込めまれた被分析物を有する基板表面を処理する方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの流体コンテナの流体チャンバに流体サンプルおよび複数の磁性粒子を送達することであって、前記少なくとも1つの流体コンテナは、前記流体コンテナの周辺の周囲に配置されている電磁アセンブリを有し、前記電磁アセンブリは、1つまたは複数の垂直位置において前記少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置されている1つまたは複数の磁気構造を備え、前記1つまたは複数の磁気構造の各々は、複数の電磁石を備えている、ことと、
前記少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように、電気信号を前記複数の電磁石の各々に提供することであって、前記磁場は、前記複数の磁性粒子に影響を及ぼすように構成されている、ことと、
前記電気信号を調節することにより、前記流体サンプル内の前記磁場を修正することと、
埋め込まれた被分析物を有する前記基板表面を前記流体サンプルに接触させることにより、前記基板表面から前記流体サンプルへの前記被分析物の少なくとも一部の移送を引き起こすことと、
その後、前記流体コンテナから前記サンプル流体を引き出すことと
を含む、方法。
(項目26)
流体サンプルを処理する方法であって、前記方法は、
少なくとも1つの流体コンテナの流体チャンバに被分析物および複数の磁性粒子を含む流体サンプルを送達することであって、前記少なくとも1つの流体コンテナは、前記流体コンテナの周辺の周囲に配置されている電磁アセンブリを有し、前記電磁アセンブリは、1つまたは複数の垂直位置において前記少なくとも1つの流体コンテナの周囲に配置されている1つまたは複数の磁気構造を備え、前記1つまたは複数の磁気構造の各々は、複数の電磁石を備えている、ことと、
前記少なくとも1つの流体コンテナ内に磁場を生成するように、電気信号を前記複数の電磁石の各々に提供することであって、前記磁場は、前記複数の磁性粒子に影響を及ぼすように構成されている、ことと、
前記電気信号を調節することにより、前記流体サンプル内の前記磁場を修正することと、
前記被分析物に対する親和性を有する基板表面を前記流体サンプルに接触させることにより、前記流体サンプルから前記基板表面への前記被分析物の少なくとも一部の移送を引き起こすことと
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0035】
種々の実施形態の詳細な説明が、一例として、以下の図面を参照して、以下で本明細書に提供される。図面は、例示的にすぎず、図面の全ての参照は、例証の目的のためのみに行われ、いかようにも以下で本明細書に説明される実施形態の範囲を限定することを意図していないことが理解されるであろう。便宜上、参照番号はまた、類似構成要素または特徴を示すように、図の全体を通して(オフセットを伴って、または伴わずに)繰り返され得る。
図1図1A-1Dは、出願人の教示の種々の側面による、例証的流体処理システムを描写する。
図2図2Aおよび2Bは、出願人の教示の種々の側面による、例証的開放ウェル磁気サンプルプレートを描写する。
図3図3は、出願人の教示の種々の側面による、例証的流体処理システムを描写する。
図4図4は、出願人の教示の種々の側面による、例証的流体処理構造およびその混合パターンを描写する。
図5図5は、出願人の教示の種々の側面による、例証的流体処理構造およびその混合パターンを描写する。
図6図6は、出願人の教示の種々の側面による、例証的流体処理および分析システムを描写する。
図7図7A-Bは、出願人の教示の種々の側面による、別の例示的流体処理システムを描写する。
図8図8A-8Dは、出願人の教示の種々の側面による、別の例証的流体処理システムを描写する。
図9図9Aおよび9Bは、出願人の教示の種々の側面による、別の例証的流体処理システムを描写する。
図10図10は、出願人の教示の種々の側面による、別の例証的流体処理システムを描写する。
図11A図11Aは、出願人の教示の種々の側面による、例証的開放ウェル磁気サンプルプレートおよび流体処理システムを描写する。
図11B図11Bは、出願人の教示の種々の側面による、別の例証的開放ウェル磁気サンプルプレートおよび流体処理システムを描写する。
図12図12は、出願人の教示の種々の側面による、例示的流体処理システムの単一の磁気構造または層の中の流体の混合を概略的に描写する。
図13A図13Aおよび13Bは、出願人の教示の種々の側面による、図12の流体処理システムの例示的混合パターンを描写する。
図13B図13Aおよび13Bは、出願人の教示の種々の側面による、図12の流体処理システムの例示的混合パターンを描写する。
図14図14A-14Bは、出願人の教示の種々の側面による、図12の流体処理システムの追加の例示的側面を描写する。
図15図15A-15Dは、図12の流体処理システムを使用する例示的処理プロトコルを描写する。
図16図16A-16Cは、出願人の教示の種々の側面による、別の例示的流体処理システムおよび例示的処理プロトコルを描写する。
図17図17A-17Cは、出願人の教示の種々の側面による、図16A-16Cの流体処理システムのための別の例示的処理プロトコルを描写する。
図18図18は、開放ポートプローブの別の例示的実施形態を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
当業者は、本明細書に説明される方法、システム、および装置が、非限定的な例示的実施形態であり、出願人の開示の範囲は、請求項のみによって定義されることを理解するであろう。出願人の教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、出願人の教示がそのような実施形態に限定されることは意図されない。対照的に、出願人の教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替物、修正、および均等物を包含する。一例示的実施形態に関連して図示または説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせられ得る。そのような修正および変形例は、出願人の開示の範囲内に含まれることを意図している。
【0037】
本教示は、概して、流体サンプルの中に分散された磁性粒子を利用することによって、流体サンプルを混合、分離、濾過、または別様に処理するための流体処理方法およびシステムに関する。本教示の種々の側面によると、流体サンプルは、サンプルまたは流体コンテナ内に配置され得る。いくつかの実施形態では、流体コンテナは、開放流体コンテナ(例えば、大気に開放している)であり得、サンプルおよび/または試薬は、開放流体コンテナに直接添加されることができ(例えば、コンテナの開放端を通して挿入されるオートサンプラもしくはピペットを介して)、例えば、処理に続いて、そこから同様に直接除去されることができる(例えば、捕捉デバイスを介して)。流体内に配置される磁性粒子は、流体内の磁性粒子の移動を促進するように流体コンテナに隣接して配置される(例えば、流体コンテナの周辺の周囲に配置される)磁気アセンブリによって生成される磁場(または勾配)の影響下で攪拌されるように構成されることができる。磁気アセンブリは、水平または実質的に水平な層の中に配置される1つもしくは複数の磁気構造を含み得る。磁気構造の各々は、電磁石等の1つ以上の磁石によって形成され得る。いくつかの実施形態では、磁気構造のうちの1つ以上のものの垂直位置は、例えば、異なるサンプル体積を処理するように、および/または磁気アセンブリによって生成される磁場の特徴に影響を及ぼすように、調節可能であり得る。加えて、または代替として、いくつかの実施形態では、(例えば、異なる垂直に間隔を置かれた層の)種々の磁気構造の電極は、異なるサンプル体積を処理するように、および/または磁気アセンブリによって生成される磁場の特徴に影響を及ぼすように、選択的に通電されることができる。
【0038】
磁気アセンブリ構造は、1つ以上の異なる垂直高さで流体コンテナの周囲に配置される複数の電磁石から形成されることができ、各電磁石は、その中に配置された磁性粒子に影響を及ぼすために有効な所望の磁場を流体コンテナ内で生成するように個々に制御される。流体コンテナを包囲する複数の電磁石への電気信号の選択的印加に基づいて、磁性粒子は、種々の電磁石によって生成される磁場勾配の複合効果によって、流体サンプル内で水平に左右に、および/または垂直に上下に、回転、スピン、移動するように影響を受けることができる。一例として、(例えば、単一の水平層内の)各磁気構造の電磁石に印加される信号は、実質的にx-y平面内で磁場勾配を生成するように構成されることができる一方で、存在する場合、異なる磁気構造の電磁石(例えば、異なる水平層内の電磁石)に印加される信号は、z方向または垂直成分を示す磁場勾配をもたらすことができる。このようにして、複数の電磁石の複合効果は、非限定的例として、急速かつ効率的に流体を混合する、および/または流体内の標的被分析物を捕捉するように、異なる強度および/または方向性等の異なる特性を伴う磁場をサンプルコンテナ内で生じることができる。
【0039】
種々の側面では、コントローラは、1つ以上の高周波(RF)信号、直流(DC)信号、交流(AC)信号等の印加を介して、電磁石を差動的に作動させるように構成され得る。種々の側面では、複数の電磁石に印加されるRF信号は、サンプル流体内で電磁石の所望の移動をもたらすように、互いに対して異なる位相遅延を示すことができる。いくつかの側面では、DC信号は、非限定的例として、磁性粒子の吸引を伴わずに、流体がコンテナから引き出されることができるように、電磁石を分離する(例えば、磁性粒子を流体コンテナの一側面および/または垂直レベルに引き寄せる)ために効果的であり得る。
【0040】
種々の側面に従って説明される流体処理システムは、マイクロスケールまたはマクロスケール(大容量形式を含む)で流体を処理するように構成され得る。一般に、マクロスケールが、ミリリットル範囲の流体体積を伴う一方で、マイクロスケール流体処理は、マイクロリットル、ピコリットル、またはナノリットル等のミリリットル範囲を下回る流体体積を伴う。大容量形式は、1mLを上回る流体体積の処理を伴うことができる。例えば、本教示の種々の側面による流体処理システムは、例えば、約1.5mL、約2mL、約5mL、約10mL、またはそれを上回るものを含む、約50μL~約1mLおよびそれをさらに上回る流体体積を処理することが可能であり得る。しかしながら、本教示に照らして、流体処理システムは、本明細書に説明されるように動作することが可能な任意の流体体積を処理し得ることが理解されるであろう。
【0041】
例えば、従来の磁性粒子処理システムと比較した場合、本教示の種々の側面による磁性粒子に影響を及ぼすための磁気アセンブリの使用は、複数の技術的利点を提供することができる。そのような利点の1つの非限定的例は、種々の体積のサンプル流体における増加したサンプル接触率のための有意に向上した拡散率を含み、それは、例えば、磁気免疫学的検定の被分析物捕捉効率を向上させる。技術的利点の別の非限定的例は、増加したサンプル混合効率を含む。なぜなら、磁気アセンブリの磁気構造が、例えば、より力強い磁性粒子移動および複数の次元内の移動により、より高速でより効果的なサンプル混合を提供するように磁性粒子に影響を及ぼすことができるからである。これは、例えば、成分間の増大した質量移動につながり得る。
【0042】
出願人の教示に従って構成される流体処理構造を使用してサンプルを処理することは、速い反応速度を生成する。例えば、タンパク質処理(免疫学的親和性プルダウン、洗浄、溶出/変性、還元、アルキル化、および消化ステップを含む)は、手動の管内処理のための1日または2日の処理時間と比較して、約10~12分で完了されることができる。増加した処理速度は、例えば、流体処理の律速ステップ(例えば、LCの律速ステップ)としての拡散、および既知のマイクロ流体プラットフォームにおける小さい固定された体積を利用する必要性の克服により、達成され得る。加えて、そのような高速の効率的なサンプル処理は、同時に、サンプル反応コンテナの大型アレイにわたり達成され得る。なぜなら、出願人の教示に従って構成される流体処理構造が、サンプル反応ウェルの大型アレイの中へ統合され、それによって、サンプル処理を増加させ、例えば、オートサンプラを介した自動化を可能にし得るからである。本教示に照らして、本明細書に説明される流体処理システムは、前述の非限定的例に加えて、複数の他の技術的利点を提供することが理解されるであろう。
【0043】
本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法は、多くの異なる流体処理システムと併せて使用されることができるが、例示的流体処理システム100が、図1Aで概略的に図示されている。流体処理システム100は、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法の実施形態に従って使用するための1つの可能な流体処理システムを表すに過ぎず、他の構成ならびに動作特性を有する流体処理システムおよび/またはその構成要素も全て、本明細書に説明されるシステム、デバイス、および方法に従って使用され得ることを理解されたい。
【0044】
図1Aは、本教示のいくつかの実施形態の種々の側面による流体処理システム100を概略的に描写する。図1Aに示されるように、例示的流体処理システム100は、流体コンテナ115と、以下で詳細に議論されるように、流体コンテナ内に磁場勾配または磁力を生成するように構成される磁気構造105とを有する流体処理構造130を含む。流体コンテナ115は、概して、その中に流体保持チャンバを画定するサンプルウェル、バイアル、流体リザーバ等、サンプル流体を保持するように構成される任意のタイプのコンテナを備えていることができる。図1Bに最も良く示されるように、例示的流体コンテナ115は、開放上端115a(周囲大気に開放している)から下部閉鎖端115bまで延びており、それによって、流体コンテナ115内の流体は、開放上端115aの中に挿入可能な1つ以上の液体装填/収集デバイス135によって装填されること、および/またはそこから除去されることができる。コンテナ115が、例えば、混合中の流体の逃散、汚染、および/または蒸発を防止するために、種々の処理ステップ中に開放上端115a(例えば、エッペンドルフ管)に結合されることができる除去可能なキャップを含み得ることが、当業者によって理解されるであろう。例証的液体装填/収集デバイス135は、限定ではないが、全て非限定的例として、手動サンプル装填デバイス(例えば、ピペット)、マルチチャネルピペットデバイス、音響液体取り扱いデバイス、および/またはオートサンプラを含み得る。
【0045】
図1Aを再び参照すると、サンプル流体は、その中に配置されている複数の磁性粒子120を有することができ、磁性粒子120は、サンプル流体を流体コンテナ115に移送することに先立ってサンプル流体に添加されることができるか、またはサンプル流体がそこに移送される前もしくは後に流体コンテナ115に添加されることができる。磁性粒子120またはその一部は、限定ではないが、種々の酸化鉄材料(例えば、Fe、SiOをコーティングされたFe、Fe等)等の強磁性材料を含む種々の磁気的に影響を受けやすい材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、磁性粒子120は、非磁性コーティングでコーティングされた磁性「コア」を含み得、それは、例えば、流体と反応しないように、および/または着目材料(例えば、生体材料)を選択的に結合するように構成される。いくつかの実施形態では、磁性粒子120の少なくとも一部は、常磁性ビーズを含み得る。常磁性ビーズを使用する実施形態では、磁性粒子120の少なくとも一部は、流体中の磁性粒子の全てを攪拌するために、および/またはシステム内の磁性粒子の移動を促進するために、強磁性の磁性粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、磁性粒子は、C18アルキル基等の種々のアルキル基で修飾されるビーズ(「C18ビーズ」)を含み得る。非限定的例として、そのようなC18ビーズは、ペプチドおよびタンパク質消化物の精製、脱塩、ならびに濃縮に使用され、それらは、LCの主要な機能である。本教示に照らして、いくつかの実施形態では、磁性粒子は、例えば、サンプル内の特定の被分析物の選択的結合を提供するために、抗体でコーティングされることによって官能化されているビーズ(「親和性ビーズ」)を備え得ることも、当業者によって理解されるであろう。磁性粒子120は、国際特許出願公開第WO2015/128725号に説明されるように、球形および/またはロッド形状(すなわち、磁気攪拌子)等の種々の形状を有し得る。
【0046】
磁気構造105は、複数の電磁石110a-dを含み得る。4つの電磁石110a-dが図1Aで描写されているが、出願人の教示の種々の側面に従って動作することが可能な任意の数の電磁石が使用され得るので、実施形態は、そのように限定されない。いくつかの実施形態では、4つの電磁石110a-dは、四重極磁石構造と同様に、または実質的に同様に動作し得る。例えば、磁気構造105は、2個の電磁石、3個の電磁石、4個の電磁石110a-d、5個の電磁石、6個の電磁石、7個の電磁石、8個の電磁石、9個の電磁石、10個の電磁石、またはそれを上回るものを含み得る。電磁石110a-dは、例えば、強磁性コア電磁石を含む当業者に公知の任意の電磁石を含み得る。電磁石110a-dは、正方形、長方形、円形、楕円形、または出願人の教示の種々の側面に従って動作することが可能な任意の他の形状を含む種々の形状を有し得る。
【0047】
図1Aに示されるように、例示的流体処理システム100は、加えて、磁気構造105に動作可能に結合され、電磁石110a-dによって生成される磁場を制御するように構成されるコントローラ125を含む。種々の側面では、コントローラ125は、電気信号を複数の電磁石110a-dに供給するように構成される1つ以上の電源(図示せず)を制御するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、電気信号は、高周波数(RF)波形、DC電流、AC電流等の形態であることができる。RF波形が、概して、流体サンプルの混合を促進するために電磁石110a-dに印加されることができる波形の例として本明細書で使用されるが、出願人の教示の種々の側面に従って動作することが可能な任意のタイプの電流が本明細書で考慮されるので、実施形態は、そのように限定されない。一例として、DC信号が、加えて、または代替として、非限定的例として、混合ステップ後のコンテナからの流体移送を補助するために、および/または磁性粒子の吸引を防止するために、磁性粒子を流体コンテナの片側に(およびバルク流体から外に)引き寄せるために1つ以上の電磁石に印加されることができる。種々の側面では、コントローラ125は、電磁石を作動させることが可能な任意のタイプのデバイスおよび/または電気構成要素であることができる。いくつかの実施形態では、コントローラ125は、電磁石の各々のソレノイドを通過する電流を制御することによって、電磁石110a-dの各々によって生成される磁場を調整するように動作することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ125は、電磁石110a-dを制御するための命令を提供するように構成されるアプリケーションを実行するように構成されるコンピューティングデバイス等の論理デバイス(図示せず)および/またはメモリを含むか、もしくはそれに結合されることができる。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、オペレータ入力および/または流体処理システム100からのフィードバックに基づいて命令を提供することができる。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、メモリを含むことができ、および/または、メモリは、コントローラ125による実行のための1つ以上のサンプル処理プロトコルを記憶するように構成され得る。
【0048】
種々の側面では、各電磁石110a-dは、個々にアドレスされ、コントローラ125によって作動させられることができる。例えば、コントローラ125は、電磁石のうちの1つ以上のものが異なる磁場を生成するように、異なる位相のRF電気信号を電磁石110a-dのうちの1つ以上のものの各々に供給することができる。このようにして、流体コンテナ115内で磁気構造105によって生成される磁場勾配は、急速かつ効果的に制御され、サンプル流体内の磁性粒子120の移動を操作することができる。いくつかの実施形態では、RF波形およびその特性(例えば、位相シフト)が、サンプル処理プロトコルに従って電磁石110a-dに印加され得る。本教示に照らして、磁気構造105は、限定ではないが、タンパク質検定、サンプル誘導体化(例えば、ステロイド誘導体化、ガスクロマトグラフィのためのサンプル誘導体化等)、および/またはサンプル精製ならびに脱塩を含む、種々のプロセスでサンプル流体内の磁性粒子120を操作するために利用され得ることが理解されるであろう。この処理に続いて、処理された流体は、分析のために質量分析計(MS)等の種々の分析機器140に送達され得る。いくつかの実施形態では、電磁石110a-d(例えば、流体コンテナの周辺の周囲に流体チャンバの底部115bより上の高さで配置される)の単一の層は、流体コンテナ内の特定の平面内で磁性粒子120を捕捉する、および/または懸濁させる磁場を流体コンテナ115内で生成するために作動させられることができる。例えば、磁性粒子120は、流体収集プロセス中、および/または、流体チャンバの下面上の材料との接触が回避されるべき物質(例えば、流体チャンバの下面に付着する細胞)より上の平面内で流体(例えば、試薬)を処理するために、流体コンテナの底部から離して磁性粒子を移動させるように特定の平面内で懸濁されることができる。
【0049】
本教示の種々の側面によると、磁気構造105は、種々の流体処理システムおよび流体取り扱いデバイスに組み込まれ得る。ここで図1Bを参照すると、出願人の教示の種々の側面による例示的磁気構造105は、独立型混合デバイスとして描写されている。例えば、磁気構造105は、磁気ミキサの混合要素として、または渦型ミキサの混合要素として(すなわち、モータ駆動混合要素に取って代わって)、使用され得る。いくつかの実施形態では、流体コンテナ115(例えば、単一のバイアルおよび/またはサンプルプレートのサンプルウェル)は、アクチュエータ150に押し付けられ、コントローラ125を起動し、出願人の教示に従って電磁石110a-dを作動させるることができる。種々の側面では、磁気構造105は、従来の4、8、12、または96ウェルサンプルプレート等のサンプルプレートのサンプルウェル内で磁性粒子120を混合するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、磁気構造105は、開放ウェルサンプルプレート(すなわち、大気に開放している、除去可能カバーもしくはキャップで密閉される、および/または部分的に封入される)のサンプルウェル内で磁性粒子120を混合するように構成され得る。図1Cに示されるように、サンプルプレート160の流体コンテナ115(すなわち、サンプルウェル)は、電磁石110a-dの間に形成される空洞内に収まり得る。種々の側面では、図1Dに示されるように、サンプルプレート160は、サンプルウェル115が電磁石110a-dに隣接して配置され得るように、流体処理システム100の平面170上等、流体処理システム100の一部の上に設置され得る。
【0050】
図2Aは、出願人の教示の種々の側面による、例示的開放ウェル磁気サンプルプレートを描写する。図2Aに示されるように、96ウェルサンプルプレート205は、複数のサンプルウェル215を含み得る。菱形のサンプルウェル215が図2Aで描写されているが、本教示による流体コンテナは、そのように限定されないことが理解されるであろう。例えば、サンプルウェル215は、正方形、長方形、円形、楕円形、または出願人の教示の種々の側面に従って動作することが可能な任意の他の形状を含む種々の形状を有することができる。各サンプルウェル215は、複数の電磁石220a-dを含む磁気構造210によって、その周辺の周囲で包囲され得る。磁気構造210および出願人の教示の種々の側面に従ってRF駆動発振磁場を使用して磁性粒子を混合する方法は、サンプルウェル215の大型開放アレイとして構成されるサンプルプレートデバイスを含む、既存のサンプルプレートデバイスに組み込まれ得る。例えば、磁気構造210は、業界標準96サンプルウェルアレイ205等の標準サンプルプレートデバイスを受け取るように構成されることができる。これは、例えば、標準サンプルウェルプレートと対応する幾何学形状を有する電磁石220a-dおよび磁気構造210の形成を使用することによって、達成され得る。このようにして、流体チャネルおよびポンプは、要求されず、限定ではないが、非特異的結合およびキャリーオーバー(すなわち、使い捨てサンプルプレートの使用)を含むこれらの要素に関連する流体処理問題を低減させ、さらに排除する。加えて、開放ウェルサンプルシステムの使用は、オートサンプラおよび他の自動流体取り扱いシステムとの統合等のサンプル装填ならびに収集のためのより効率的な方法を提供する。このようにして、出願人の教示の種々の側面による流体処理システムは、流体操作および機械的複雑性の観点から単純かつ効率的であるサンプルの大型のアレイの同時処理を可能にし得る。
【0051】
タンパク質処理検定を伴う例では、プルダウンビーズが、サンプルウェル215の第1の最左列250a内に配置されることができ、イオン交換ビーズが、サンプルウェル215の第2の列250b内に配置されることができ、トリプシンをコーティングされたビーズが、サンプルウェル215の第3の列250c内に配置されることができる。このようにして、サンプルの処理は、その中で行われる処理ステップを促進するために、各ウェルを包囲する電磁石構造210を適切に作動させながら、タンパク質処理検定を行うために1つの列から別の列にサンプルを移送することのみを要求し得る。
【0052】
図2Bは、複数のサンプルウェル215a-dの間での電磁石220a-fの共有を実証する、複数のサンプルウェル215a-dおよび電磁石220a-fを備えている関連付けられる磁気構造のレイアウトを描写する。この例では、サンプルウェル215dは、電磁石220a、220b、220c、および220dを備えている磁気構造によって包囲される。電磁石220aおよび220cは、サンプルウェル215cも包囲し、サンプルウェル215c自体は、電磁石220eおよび220fによっても包囲される。電磁石220aおよび220cは、サンプルウェル215cおよび215dに浸透する磁場を生成することができる。同様に、サンプルウェル215bおよび215dは、電磁石220aおよび220bを共有し、サンプルウェル215aおよび215cは、電磁石220aおよび220eを共有する。電磁石220aは、サンプルウェル215a-dによって共有され、4つ全てのサンプルウェルの中に磁場を生成することができる。理解されるはずであるように、この構造は、全てのサンプルウェルまでサンプルウェルプレート205の全体を通して同様に繰り返す。
【0053】
図3は、出願人の教示の種々の側面による、例証的流体処理システムを概略的に描写する。図3に示されるように、流体処理システム300は、関連付けられる流体コンテナ315a-f内で磁場勾配を生成するように構成される複数の磁気構造305a-fを含む。各磁気構造305a-fは、電磁石310a-lのうちの一定のものが磁気構造305a-fの間で共有される複数の電磁石310a-lを含むことができる。電磁石310a-lは、以下の例示的位相遅延方程式320等の異なる位相遅延を有するRF信号のそれへの印加を介して、制御されることができる。
【0054】
【数2】
【0055】
式中、I=電流、f=周波数、および、t=時間である。
【0056】
図3に示されるように、電磁石310a-lは、電磁石に対応する位相遅延方程式320に従って、A-Dと標識される。磁気構造305a-fの電磁石310a-lの位相遅延は、隣接電磁石に対して90°位相シフトを生じる。しかしながら、180°位相遅延、270°位相遅延等の他の位相シフト値が、出願人の教示の種々の側面に従って使用され得るので、実施形態は、そのように限定されない。種々の側面では、位相遅延方程式320による電磁石310a-lの作動は、サンプルウェル315a、315e、および315cの中の磁性粒子(図示せず)を時計回り運動で混合させ、サンプルウェル315b、315d、および315fの中の磁性粒子を反時計回り運動で混合させる。出願人の教示の種々の側面に従って攪拌される磁性粒子を使用して流体を混合することは、磁性粒子が各流体コンテナ内で均一に分散させられ、最適な暴露および流体との増進した混合を提供する。
【0057】
図4は、出願人の教示の種々の側面による、例証的流体処理構造およびその混合パターンを描写する。グラフ405は、出願人の教示の種々の側面による、期間T1-T5における流体処理構造400の電磁石420a-dへの電流の印加に起因する、磁場410a、410bを描写する。種々の側面では、磁場410a、410bの波形は、コンテナ内で磁性粒子の例示的概略移動425を生成し、連続した磁性粒子混合および向上した混合効率を促進する正弦波を表す。磁場410a、410bは、互いに対して90°位相シフトを有し、磁場410aが電磁石420aおよび420dに対応し、磁場410bが電磁石420bおよび420cに対応する。図4の例証的描写において、電磁石420a-dが、同じ電気信号がそれに印加されると、各電磁石によって生成される磁場の向きが概して異なるように、流体サンプルに対して異なる場所に配置されていることが理解されるであろう。同様に、電磁対(すなわち、420aおよび420d、420bおよび420c)が流体サンプルの反対側に配置されているので、各対における電極によって生成される磁場は、同じ規模および逆位相の電気信号が各対における電極に印加されるときに同じ方向430にある。したがって、方程式(1)-(4)の例示的正弦波電気信号が、それぞれ、電磁石420a-dに印加されると、サンプル流体中の結果として生じる磁場は、図4で概略的に描写されるように経時的に変動し、一対の電磁石420aおよび420dが、一緒に磁場410aを生成し、一対の電磁石420bおよび420cが、一緒に磁場410bを生成し(磁場410bが磁場410aに対して90°遅延される)、それによって、概略的に描写されるような、種々の時点における粒子の略反時計回り移動425および整列435に起因して、流体に混合を受けさせる。
【0058】
したがって、本教示に照らして、異なる混合パターンが、磁気構造の電磁石に印加されるRF波形を制御することによって達成可能であることが理解されるであろう。例えば、図5を参照すると、図4の流体処理構造のための別の例証的混合パターンが、出願人の教示の種々の側面に従って描写されている。示されるように、流体混合パターンは、コントローラが、異なる位相遅延の以下の例示的RF信号を、それぞれ、電磁石420a-dに印加するように構成されるという点で、図4に示されるものと異なる。
【0059】
【数3】
【0060】
式中、I=電流、f=周波数、および、t=時間である。
【0061】
図5に示されるように、方程式(5)-(8)の例示的正弦波電気信号が、それぞれ、電磁石420a-dに印加されると、サンプル流体中の結果として生じる磁場は、概略的に描写されるように経時的に変動し、一対の電磁石420aおよび420dが、一緒に磁場410aを生成し、一対の電磁石420bおよび420cが、一緒に磁場410bを生成する。この場合、磁場410aは、代わりに、磁場410bに対して90°遅延され、それによって、概略的に描写されるような種々の時点における粒子の移動425に起因して、略時計回りの様式で流体が混合されるようにする。
【0062】
図3-5のコンテナを包囲する4つの電磁石の各々に印加される正弦波RF波形は、隣接電磁石に対して±90°シフトを示すが、本教示は、そのように限定されない。実際に、任意のタイプの波形が、出願人の教示に従って動作することが可能な電磁石に供給され得ることが理解されるであろう。非限定的例として、各流体コンテナを包囲する電磁石の数、隣接電磁石間の位相シフト(例えば、30°、60°、90°、120°、150°、180°、210°、240°、270°、300°、および330°位相シフト)、および波形の形状は、本教示の種々の側面に従って変動させられることができる。電流波形の非限定的例は、正方形、長方形、三角形、非対称、鋸歯、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、電磁石に供給される電流のタイプは、いくつかの実施形態に従って構成される流体処理システムの動作中に修正され得る。例えば、電磁石の少なくとも一部が、90°位相シフトを伴うRF波形を受信し得る一方で、別の部分は、180°位相シフトを伴うRF波形を受信し得る。そのような実施形態では、各部分の位相シフトは、流体処理システムの動作中に修正され得る(例えば、位相シフトは、切り替えられる、同期させられる等)。いくつかの実施形態では、電磁石の少なくとも一部は、並行して、順に、パルスで等で動作させられ得る。種々の側面では、電磁石に供給される電流は、処理プロトコルに従って制御され得る。いくつかの実施形態では、処理プロトコルは、フィードバック、オペレータ入力、混合効率の検出、分析結果等の種々の要因に基づいて、流体処理システムの動作中に動的に改変され得る。
【0063】
加えて、上記のように、電磁石420a-dは、代替として、非限定的例として、混合ステップ後にコンテナからの流体移送を補助するために、および/または磁性粒子の吸引を防止するために、磁性粒子を流体コンテナの片側に(およびバルク流体の外に)引き寄せるように、静的磁場を生成するように印加されるDC信号を有することができる。
【0064】
ここで図7A-Bを参照すると、本教示の種々の側面による、例示的流体処理システム700が描写されている。最初に図7Aを参照すると、分解図で描写される流体処理システム700は、ベースプレート710と、PCB基板720と、複数の電磁構造730と、その実質的に平面的な上面740aから延びている複数のサンプルウェル740を画定する上部プレート740とを備えている。上部プレート740は、サンプルウェルが実質的に円形の断面形状を有する、96ウェル形式として図7Aで描写されているが、上部プレート740は、上で議論されるような種々の断面形状および最大容積を示す任意の数のサンプルウェル742を含み得ることが当業者によって理解されるであろう。例えば、本教示によると、開放サンプルウェル742の各々は、種々の体積の流体サンプルで充填もしく部分的に充填されることができ、それによって、例えば、サンプルの利用可能性もしくは経費および/または特定の検定の要件に応じて、処理されるサンプル体積の低減もしくは拡張を可能にする。さらに、上部プレート740は、全て非限定的例として、ポリマー材料(例えば、ポリスチレンまたはポリプロピレン)等の当技術分野で公知であるか、または本教示に従って以降で開発される任意の材料で製造され得ることが理解されるであろう。加えて、当技術分野で公知であるように、表面は、親水性の増加、疎水性、不動態化、または細胞もしくは他の被分析物への結合の増加を提供するように、種々の表面コーティングでコーティングされることができる。いくつかの側面では、上部プレート740の底面740bは、以下で議論されるように、流体処理システムの下部分と(恒久的または除去可能に)係合するように構成されることができる。例えば、いくつかの側面では、底面740bは、電磁構造730の上端730aに係合するためのその中に形成されたくぼみ、またはそれを通して電磁構造の一部がサンプルウェル742の各々の周囲に配置されるように延び得る穴を含むことができる。
【0065】
ここで流体処理システム700の下部分を参照すると、図7Aは、PCB基板720、ベースプレート710、および複数の電磁構造730を描写する。示されるように、PCB基板720は、電気信号が電源(図示せず)によって印加されることができ、電磁構造730が電気的に結合されることができる複数の電気接点722を備えている。別様に本明細書で議論されるように、PCB基板720は、各電磁構造が個々にアドレスされ、それへの電気信号の選択的印加を通してコントローラによって作動させられ得るように、配線されることができる。加えて、PCB基板720は、それを通して電磁構造の一部が延びてベースプレート710と電気的に接触することができる複数の孔724を含む。例えば、図7Aに示されるように、電磁構造730は、搭載支柱732を含むことができ、搭載支柱732は、電磁構造730が電気接点722上に据え付けられると、孔724を通って延び、搭載支柱732に関連付けられる伝導リード線が、ベースプレート710に電気的に結合され得る。示されるように、ベースプレート710は、搭載支柱732がそれとしっかり係合していることを確実にするように、搭載支柱732に対応する穴を含むことができる。ベースプレート710は、本教示に従って、電流が電磁構造730を通って流動することを可能にするために、1つ以上の電気信号がPCB基板720の複数の電気接点722に印加され得るように、回路を完成させるように電力供給部に結合される(もしくは接地される)ことができる。図7Aに示されるように、電磁構造730は、上部支柱を含むことができ、その周囲に、導線734がらせん状に巻かれ、導線734は、接点722に電気的に結合され、上端730aで終端する。したがって、電流が電気接点722、ワイヤコイル734、上端730a、および金属ベースプレート710の間で流動すると(電流方向は、PCB基板720の特定の接点722に印加される信号の電圧に依存する)、ワイヤコイル734は、ソレノイドとしての役割を果たし、それによって、ワイヤコイル734を通して、かつその周囲で磁場を生成し、その方向性は電流の方向に依存することが理解されるであろう。電磁構造730の上端730aは、種々の形状(例えば、その周囲でワイヤがらせん状に巻かれる支柱と実質的に同一の断面形状)を有することができるが、上端730aは、優先的に伝導性材料から形成され、サンプルウェル内で磁場を集中させる、および/またはその一様性を増加させるレンズとして作用するように、サンプルウェルの周辺表面に対応するように成形され得ることが見出されている。
【0066】
理解されるはずであるように、図1-5および7によって具現化される例は、磁気構造が単一の水平層のみにおいて流体コンテナの周囲に配置される装置および方法を対象とする。この構成では、磁場の生成は、実質的にx-y平面内の粒子の混合を引き起こし、それは、本教示の一側面のみを説明する。さらなる実施形態で詳述されるであろうように、そのようなシステムおよび方法は、追加の磁場がz方向にも粒子の混合を引き起こすように生成される様式で修正されることができる。
【0067】
図8Aは、本教示のいくつかの実施形態の種々の側面による、例示的流体処理システム800を概略的に描写する。図8Aに示されるように、例示的流体処理システム800は、流体コンテナ115と、以下で詳細に議論されるように、流体コンテナ115内に1つ以上の磁場勾配もしくは磁力を生成するように構成される磁気アセンブリ805とを含む。流体コンテナ115は、概して、その中に流体保持チャンバを画定するサンプルウェル、バイアル、流体リザーバ等、サンプル流体を保持するように構成される任意のタイプのコンテナを備えていることができる。いくつかの実施形態では、例示的流体コンテナ115は、流体コンテナ115内の流体が、開放上端115aの中に挿入され得る1つ以上の液体装填/収集デバイス135によって、装填され、および/またはそこから除去されることができるように、開放上端115a(周囲大気に開放している)から下部閉鎖端115bまで延び得る。コンテナ115は、例えば、混合中の流体の逃散、汚染、および/または蒸発を防止するように、種々の処理ステップ中に開放上端115a(例えば、エッペンドルフ管)に結合され得る除去可能なキャップを含み得ることが当業者によって理解されるであろう。例証的液体装填/収集デバイス135は、限定ではないが、全て非限定的例として、手動サンプル装填デバイス(例えば、ピペット)、マルチチャネルピペットデバイス、音響液体取り扱いデバイス、および/またはオートサンプラを含み得る。コンテナ115は、複数の磁性粒子120を含む。
【0068】
図8Bに示されるように、磁気アセンブリ805は、複数の電磁石構造845a-nを含み得、それらの各々は、流体コンテナ115の垂直軸に対して直角または実質的に直角である平面内に配置される電磁石810の水平または実質的に水平な層を備えている。磁気構造845a-nの数によって示されるように、例示的磁気アセンブリ805は、2個の電磁石構造、3個の電磁石構造、4個の電磁石構造、5個の電磁石構造、10個の電磁石構造、20個の電磁石構造、またはそれを上回るものを含む複数の垂直に間隔を置かれた層を備えていることができる。加えて、4つの電磁石810が、図8Bで各電磁石構造845に関連付けられるものとして描写されているが(例えば、磁気構造845aの中の電磁石810a-dおよび磁気構造845nの中の電磁石810e-h)、出願人の教示の種々の側面に従って動作することが可能な任意の数の電磁石810が本明細書にさらに説明されるように使用され得るので、本教示は、そのように限定されないことが理解されるであろう。
【0069】
いくつかの実施形態では、流体コンテナ115を包囲する磁気アセンブリ805の各層における4つの電磁石810(例えば、層845a内の電磁石810a-d)は、図1-5で以前に説明されたように、四重極磁石構造と同様に、または実質的に同様に動作し得る。電磁石810a-hは、例えば、強磁性コア電磁石を含む当業者に公知である任意の電磁石を含み得ることが理解されるであろう。電磁石810a-hは、正方形、長方形、円形、楕円形、または出願人の教示の種々の側面に従って動作することが可能な任意の他の形状を含む、種々の形状を有することができる。
【0070】
図8Aおよび8Bで概略的に描写されるように、例示的流体処理システム800は、加えて、磁気アセンブリ805に動作可能に結合され、電磁石810a-hによって生成される磁場を制御するように構成されるコントローラ825を含む。種々の側面では、コントローラ825は、電気信号を複数の電磁石810a-hに供給するように構成される1つ以上の電源(図示せず)を制御するように構成されることができる。いくつかの実施形態では、電気信号は、高周波数(RF)波形、DC電流、AC電流等の形態であることができる。RF波形が、概して、流体サンプルの混合を促進するように電磁石810a-hに印加されることができる波形の例として本明細書で使用されるが、出願人の教示の種々の側面に従って動作することが可能な任意のタイプの電流が本明細書で考慮されるので、本実施形態は、そのように限定されない。一例として、DC信号は、加えて、または代替として、非限定的例として、混合ステップ後にコンテナからの流体移送を補助するために、および/または磁性粒子の吸引を防止するために、磁性粒子を流体コンテナの周辺もしくは片側および/または垂直レベルに(およびバルク流体の外へ)引き寄せるように電磁石のうちの1つ以上のものに印加されることができる。種々の側面では、コントローラ825は、電磁石を作動させることが可能な任意のタイプのデバイスおよび/または電気構成要素であることができる。いくつかの実施形態では、コントローラ825は、電磁石の各々のソレノイドを通過する電流を制御することによって、電磁石810a-hの各々によって生成される磁場を調整するように動作することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ825は、電磁石810a-hを制御するための命令を提供するように構成されるアプリケーションを実行するように構成されるコンピューティングデバイス等の論理デバイス(図示せず)、プロセッサ、および/またはメモリを含むか、もしくはそれに結合されることができる。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、オペレータ入力および/または流体処理システム800からのフィードバックに基づいて命令を提供することができる。いくつかの実施形態では、アプリケーションは、メモリを含むことができ、および/またはメモリは、コントローラ825による実行のための1つ以上のサンプル処理プロトコルを記憶するように構成され得る。
【0071】
種々の側面では、各電磁石810a-hは、個々にアドレスされ、コントローラ825によって作動させられることができる。例えば、コントローラ825は、電磁石のうちの1つ以上のものが異なる磁場を生成するように、異なる位相のRF電気信号を電磁石810a-hのうちの1つ以上のものの各々に供給することができる。このようにして、流体コンテナ115内で各磁気構造845a-nによって生成される磁場勾配は、サンプル流体内の磁性粒子120の移動を操作するように、急速かつ効果的に制御されることができる。いくつかの実施形態では、RF波形およびその特性(例えば、位相シフト)が、サンプル処理プロトコルに従って電磁石810a-hに印加され得る。本教示に照らして、磁気アセンブリ805は、限定ではないが、タンパク質検定、サンプル誘導体化(例えば、ステロイド誘導体化、ガスクロマトグラフィのためのサンプル誘導体化等)、および/またはサンプル精製ならびに脱塩を含む種々のプロセスでサンプル流体内の磁性粒子120を操作するために利用され得ることが理解されるであろう。この処理に続いて、処理された流体は、分析のために質量分析計(MS)等の種々の分析機器140に送達され得る。いくつかの実施形態では、電磁石810e-hの単一の層のみ(すなわち、例えば、流体コンテナの周辺の周囲に流体チャンバの底部115bより上の高さで配置される磁気構造845n)が、流体コンテナ内の特定の平面内で磁性粒子120を捕捉する、および/または懸濁させる磁場を流体コンテナ115内で生成するように作動させられることができる。例えば、磁性粒子120は、流体収集プロセス中、および/または流体チャンバの下面上の材料との接触が回避されるべき物質(例えば、流体チャンバの下面に付着する細胞)より上の平面内で流体(例えば、試薬)を処理するために、流体コンテナの底部から離して磁性粒子を移動させるように特定の平面内で(例えば、磁気構造845nの高さで)懸濁されることができる。
【0072】
本教示の種々の側面によると、磁気アセンブリ805は、種々の流体処理システムおよび流体取り扱いデバイスに組み込まれ得る。ここで図8Cを参照すると、出願人の教示の種々の側面による例示的磁気アセンブリ805は、サンプルプレートシステム等のサンプルトレイ850に組み込まれているもの、またはそれと組み合わせて動作するものとして描写されている。種々の側面では、磁気アセンブリ805は、従来の4、8、12、または96ウェルサンプルプレート等のサンプルプレートのサンプルウェル内で磁性粒子120を混合するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、磁気アセンブリ805は、開放ウェルサンプルプレート(すなわち、大気に開放している、除去可能カバーもしくはキャップで密閉される、および/または部分的に封入される)のサンプルウェル内で磁性粒子120を混合するように構成され得る。図8Cに示されるように、サンプルプレート850の流体コンテナ115(すなわち、サンプルウェル)は、磁気アセンブリ805の電磁石810a-hに隣接するエリア内に収まり得る。種々の側面では、サンプルプレート850は、サンプルウェル115が磁気構造845a-nの電磁石810a-hに隣接して配置され得るように、その平面上等、磁気アセンブリ805の一部の上に設置され得る。
【0073】
ここで図8Dを参照すると、出願人の教示の種々の側面による例示的磁気アセンブリ805は、独立型混合デバイス860として描写されている。例えば、磁気アセンブリ805は、磁気ミキサの混合要素として、または渦型ミキサの混合要素として(すなわち、モータ駆動混合要素に取って代わって)、使用され得る。いくつかの実施形態では、流体コンテナ115(例えば、単一のバイアルおよび/またはサンプルプレートのサンプルウェル)は、コントローラ825を起動し、出願人の教示に従って電磁石810a-hを作動させるように、アクチュエータ865に押し付けられることができる。
【0074】
図9Aおよび9Bは、電磁アセンブリ905の磁気構造のうちの少なくとも1つ(すなわち、電極910の層945n)が、出願人の教示の種々の側面に従って垂直に調節可能である、別の例示的な例証的流体処理システム900を描写する。流体コンテナ915は、下部磁気構造945a(電磁石910a-dを備え、そのうちの2つのみが示されている)と、上部磁気構造945n(電磁石910e-hを備え、そのうちの2つのみが示されている)とを有する、磁気アセンブリ905内に配置されることができる。図9Aおよび9Bに示されるように、流体コンテナ915は、流体チャンバ内で種々の高さ940a(図9Aに示されるような)および940b(図9Bに示されるような)まで延びている(その中に配置された磁性粒子920を有する)異なる体積の流体を含むように構成される。図9Aに具体的に示されるように、第1の構成では、磁気構造945nは、例えば、磁気アセンブリ905によって流体コンテナ915内で生成される磁力をもたらすために、および/または、流体コンテナ内で高さ940aを有する流体の混合を最適化するために第1の高さ960aに位置することができる。例えば、磁性粒子920および/または他の磁気構造(すなわち、磁気構造945a)に対する磁気構造945nの位置は、流体コンテナ915内で電磁アセンブリ905によって生成される磁場勾配の場所、強さ、強度、方向、または他の特性に影響を及ぼし得ることが理解されるであろう。図9Bに示されるように、流体の体積が第2の高さ940bを有するとき、上部磁気構造945nは、磁気構造が高さ960aを上回る高さ960bを有するように、上向きの方向に移動または作動させられることができる。このようにして、磁気構造945nは、異なる体積の流体を最適に処理するため、および/または流体コンテナ915の中で生成される磁場勾配の特性を改変するために、種々の高さまで移動させられることができる。
【0075】
一例として、図10は、磁気アセンブリ1005の磁気構造1045a-cのうちの少なくとも1つが、流体チャンバ内の異なる体積のサンプル流体の混合に適応するように、磁気構造の垂直分離を調節するために作動させられる(例えば、移動させられる)ことができる、出願人の教示の種々の側面による別の例証的流体処理システム1000を描写する。図10に示されるように、流体処理システム1000は、磁気アセンブリ1005の複数の電磁石1010によって包囲されるサンプルウェル1015を有する、サンプルトレイ1050を含む。例えば、磁気アセンブリ1005は、それらの各々が複数の電磁石1010(図を簡略化するためにそのうちの1つのみが標識されている)から形成される水平磁気構造1045a-cの3つの層を含む。加えて、磁気アセンブリ1005および/または個々の磁気構造1045a-cは、互いに対する1つ以上の電磁石1010もしくは磁気構造1045a-cの位置を調節するように、ならびに/もしくはサンプルウェル1015に対する磁気アセンブリ1005全体の位置を調節するように構成される位置付け要素1025を含む。位置付け要素1025の非限定的例は、回転アクチュエータ、線形アクチュエータ、サーボモータ、電子モータ等を含み得る。いくつかの実施形態では、サンプルウェル1015の中の流体の体積は、位置付け要素1025が、サンプルウェル1015の中の流体の測定された体積および/または流体処理プロトコルの要件に基づいて、1つ以上の電磁石1010、磁気構造1045a-c、ならびに/もしくは磁気アセンブリ1005全体の位置を自動的に調節できるように、測定デバイス1060によって測定されることができる。いくつかの実施形態では、位置付け要素1025は、ユーザ入力、手動入力、サンプル処理プロトコル、および/または事前設定された体積に基づいて、1つ以上の電磁石1010、磁気構造1045a-c、ならびに/もしくは磁気アセンブリ1005全体の位置を自動的に調節するように構成されることができる。
【0076】
ここで図11Aを参照すると、出願人の教示の種々の側面による、開放ウェル磁気サンプルプレート形式を有する別の例示的流体処理システム1100が描写されている。図11Aに示されるように、96ウェルサンプルプレート1150は、複数のサンプルウェル1115を含むことができる。菱形のサンプルウェル1115が描写されているが、本教示による流体コンテナは、そのように限定されないことを理解されたい。例えば、サンプルウェル1115は、正方形、長方形、円形、楕円形、または出願人の教示の種々の側面に従って動作することが可能な任意の他の形状を含む種々の形状を有することができる。さらに、流体コンテナは、静止流体のみを含む必要はない。例えば、流体コンテナは、コンテナの中への液体の流入および流出を可能にする入力ライン、出力ラインを備え得る。
【0077】
各サンプルウェル1115は、磁気アセンブリ1105によって、その周辺の周囲で包囲され、磁気アセンブリ1105は、複数の垂直に分離した磁気構造を含み、磁気構造の各々は、サンプルウェル1115の周辺の周囲に配置される複数の電磁石1110を備えている。サンプルプレート1150の上から見た図として、図11Aは、磁気アセンブリ1105の最上磁気構造1145nのみを描写する。しかしながら、磁気アセンブリは、別様に本明細書で議論されるような複数の磁気構造を含む。
【0078】
本教示によると、磁気アセンブリ1105およびRF駆動発振磁場を使用して磁性粒子を混合する方法は、サンプルウェル1115の大型開放アレイとして構成されるサンプルプレートデバイスを含む既存のサンプルプレートデバイスに組み込まれることができる。例えば、磁気アセンブリ1105は、業界標準96サンプルウェルアレイ等の標準サンプルプレートデバイスに結合する(例えば、解放可能に係合する)ように構成されることができる。これは、例えば、標準サンプルウェルプレートと対応する幾何学形状を有する電磁アセンブリ1105(およびそれらの磁気構造1145a-nならびに電磁石1110)を使用することによって、達成され得る。加えて、開放ウェルサンプルシステムの使用は、オートサンプラおよび他の自動流体取り扱いシステムとの統合等のサンプル装填ならびに収集のためのより効率的な方法を提供する。このようにして、出願人の教示の種々の側面による流体処理システムは、流体操作および機械的複雑性の観点から単純かつ効率的である、サンプルの大型のアレイの同時処理を可能にし得る。さらに、流体チャネルおよびポンプが要求されないので、限定ではないが、非特異的結合およびキャリーオーバーを含むこれらの要素に関連する流体処理問題は、磁気アセンブリに結合され得る使い捨てサンプルプレートの使用を通して低減され、さらに排除されることができる。
【0079】
種々の側面では、種々の試薬、磁性粒子、および/または他のプロセス要素は、低減したサンプル操作を用いて全検定を行うために、サンプルプレート1150のサンプルウェル1115に組み込まれ得る。例えば、サンプルプレートの各行または列の中のサンプルウェル1115は、要求された使用順に特定の検定のために要求されるプロセス要素を含むことができる。タンパク質処理検定を伴う例では、プルダウンビーズが、サンプルウェル1115の第1の最左列A内に配置されることができ、イオン交換ビーズが、サンプルウェル1115の第2の列B内に配置されることができ、トリプシンをコーティングされたビーズが、サンプルウェル1115の第3の列C内に配置されることができる。このようにして、サンプルの処理は、その中で行われる処理ステップを促進するために、各ウェルを包囲する電磁石1110を適切に作動させながら、タンパク質処理検定を行うために1つの列(例えば、列A)から別の列(例えば、列B)にサンプルを移送することのみを要求し得る。
【0080】
図11Aのサンプルウェル1115の流体チャンバは、流体的に分離されるものとして描写されているが、サンプルプレート1150は、加えて、種々のサンプルウェル1115間の流体移動を促進するために、流体チャネル、弁、ポンプ等を含む種々の液体取り扱い要素を含み得ることも理解されるであろう。別の例では、1つ以上の空気圧制御型圧力マニホールドが、可動部品を要求することなく、サンプルウェル1115間、試薬充填ポートと試薬リザーバとの間、および/または試薬リザーバとサンプルウェルとの間で流体を自動的に移送するために、サンプルプレート1150上に統合されることができる。
【0081】
種々の側面では、磁気アセンブリ1105の各電磁石1110は、2つ以上のサンプルウェル内で磁場を生成するように、2つ以上のサンプルウェル1115に関連付けられることができる。例えば、図11Bで描写されるように、電磁石1110aは、サンプルウェル1115a-dの各々内で磁場を生成することができる。故に、電磁石1110b-dと併せて、電磁石1110aは、サンプルウェル1115dに対して電磁アセンブリ1105の一部を形成することができる。同様に、電磁石1110aは、電磁石1110c、1110e、および1110fとともにサンプルウェル1115cに対して電磁アセンブリ1105の一部を形成することができる。このようにして、各電磁石1110は、複数のサンプルウェル1115a-d内に配置される磁性粒子に影響を及ぼすように構成されることができる。故に、より少ない電磁石1110が、サンプルウェル1115のトレイ内で磁性粒子を作動させるために使用され得る。例えば、図11Aに示されるような各サンプルウェル1115のために4つの電磁石を使用する96ウェルサンプルトレイ用の384個の電磁石(96×4)と比較して、117個の電磁石1110のみが、図11Bによる96ウェルサンプルプレートのために要求され得る。サンプルプレート全体の抽出は、サンプルプレート全体のための抽出プロセスを完了するための約数秒の処理時間で、各磁気アセンブリ1105の磁気構造の層内の電磁石1110の交互列を順に作動させることによって、達成され得る。
【0082】
ここで図12および13A-Bを参照すると、例示的磁気アセンブリの単一の磁気構造または層における流体の混合の例示的側面が、最初に説明されるであろう。図12は、本教示の種々の側面による、例示的流体処理システム1200の一部を概略的に描写する。図12で描写される例示的流体処理システム1200は、システム1200が、複数の磁気アセンブリを含み、それらの各々が、図12で部分的に描写され、上部磁気構造(図示せず)と、4つの電磁石1210a-dおよび複数のサンプルウェル1215a-fを備えている、垂直に間隔を置かれた下部磁気構造1245aとを備えているという点で、図11Bで描写されるものに類似する。サンプルウェル1215aに焦点を合わせると、4つの電磁石1210a-dは、サンプルウェル1215aの週辺を包囲し、サンプルウェル内の磁場の生成を介して、x-y平面(すなわち、下部磁気構造1245aの平面)内で混合を引き起こすために効果的であり得る。電磁石1210a-dは、以前に説明された例示的位相遅延方程式(1)、(2)、(3)、および(4)による、異なる位相遅延を有するRF信号のそこへの印加を介して、制御されることができる。
【0083】
図12に示されるように、種々の電磁石1210は、特定の電磁石に印加される信号に対応する位相遅延方程式に従って、A-Dと標識される。磁気構造1245aの隣接電磁石1210a-d間の位相遅延は、磁気構造1245a内のその隣接電磁石に対して±90°位相シフトを示すことが観察されるであろう。それでもなお、30°位相遅延、60°位相遅延、90°位相遅延、120°位相遅延、150°位相遅延、180°位相遅延、210°位相遅延、240°位相遅延、270°位相遅延、300°位相遅延、330°位相遅延等の他の位相シフト値が、出願人の教示の種々の側面に従って使用され得るので、本教示は、そのように限定されないことが理解されるであろう。種々の側面では、これらの例示的位相遅延方程式による電磁石1210a-dの作動は、サンプルウェル1215aの中の磁性粒子(図示せず)をx-y平面内で反時計回り運動で混合させる。列1-4の中の電極に印加されるRF信号の特定のパターンが、各サンプルウェルがx-y平面内でそれに隣接するサンプルウェルと反対方向(反時計回りまたは時計回り)のものであることを同様にもたらすことも観察されるであろう。出願人の教示の種々の側面に従って攪拌される磁性粒子を使用して流体を混合することは、磁性粒子が各流体コンテナ内で均一に水平に分散させられるようにする。
【0084】
図13Aは、出願人の教示の種々の側面による、(磁気構造1245aおよび1245b等を備えている)磁気アセンブリ1205のサンプルウェル1215aを参照して上で説明された下層(すなわち、磁気構造1245a)の電極1210a-dと、その例示的混合パターンとを描写する。グラフ1301は、出願人の教示の種々の側面による、期間T1-T5における磁気アセンブリ1205aの電磁石1210a-dへの電流の印加に起因する磁場1302a、1302bを描写する。種々の側面では、磁場1302a、1302bの波形は、連続した磁性粒子混合および向上した混合効率を促進するためのコンテナ内の磁性粒子の例示的概略移動を生成する正弦波を表す。磁場1302a、1302bは、互いに対して90°位相シフトを有し、磁場1302aが電磁石1210aおよび1210cに対応し、磁場1302bが電磁石1210bおよび1210dに対応する。図13Aの例証的描写では、電磁石1210a-dは、同じ電気信号がそれに印加されると、各電磁石によって生成される磁場の向きが概して異なるように、流体サンプルに対して異なる場所に配置されることが理解されるであろう。同様に、電磁対(すなわち、1210aおよび1210c、1210bおよび1210d)が、流体サンプルの反対側に配置されているので、各対における電極によって生成される磁場は、同じ規模および逆位相の電気信号が各対における電極に印加されるときに同じ方向におけるものである。したがって、方程式(1)-(4)の例示的正弦波電気信号が、それぞれ、電磁石1210a-dに印加されると、サンプル流体中の結果として生じる磁場は、図13Aで概略的に描写されるように経時的に変動し、一対の電磁石1210aおよび1210cが、一緒に磁場1302aを生成し、一対の電磁石1210bおよび1210dが、一緒に1302bを生成し(磁場1302bが磁場1302aに対して90°遅延される)、それによって、概略的に描写されるような種々の時点における粒子の移動1303に起因して、略反時計回りの様式で流体に混合を受けさせる。
【0085】
したがって、本教示に照らして、異なる混合パターンが、磁気構造の電磁石に印加されるRF波形を制御することによって達成され得ることが理解されるであろう。例えば、図13Bを参照すると、図13Aの流体処理構造のための別の例証的混合パターンが、出願人の教示の種々の側面に従って描写されている。示されるように、流体混合パターンは、コントローラが、異なる位相遅延の以下の例示的RF信号を、それぞれ、電磁石1210a-dに印加するように構成されるという点で、図13Aに示されるものと異なる。
【0086】
【数4】
【0087】
式中、I=電流、f=周波数、およびt=時間である。
【0088】
図13Bに示されるように、方程式(5)-(8)の例示的正弦波電気信号が、それぞれ、電磁石1210a-dに印加されるとき、サンプル流体中の結果として生じる磁場は、概略的に描写されるように経時的に変動し、一対の電磁石1210aおよび1210cが、一緒に磁場1302aを生成し、一対の電磁石1210bおよび1210cが、一緒に磁場1302bを生成する。この場合、磁場1302aは、代わりに、磁場1302bに対して90°遅延され、それによって、概略的に描写されるような種々の時点における粒子の移動1303に起因して、略時計回りの様式で流体を混合させる。
【0089】
図12A-13Bのサンプルウェル1215aを包囲する4つの電磁石の各々に印加される正弦波RF波形は、隣接電磁石に対して±90°シフトを示すが、本教示は、そのように限定されない。実際に、任意のタイプの波形が、出願人の教示に従って動作することが可能な電磁石に供給され得ることが理解されるであろう。非限定的例として、各流体コンテナを包囲する電磁石の数、隣接電磁石の間の位相シフト(例えば、30°、60°、90°、120°、150°、180°、210°、240°、270°、300°、および330°位相シフト)、および波形の形状は、本教示の種々の側面に従って変動させられることができる。電流波形の非限定的例は、正方形、長方形、三角形、非対称、鋸歯、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、電磁石に供給される電流のタイプは、いくつかの実施形態に従って構成される流体処理システムの動作中に修正され得る。例えば、電磁石の少なくとも一部が、90°位相シフトを伴うRF波形を受信し得る一方で、別の部分は、180°位相シフトを伴うRF波形を受信し得る。そのような実施形態では、各部分の位相シフトは、流体処理システムの動作中に修正され得る(例えば、位相シフトは、切り替えられる、同期させられる等であり得る)。いくつかの実施形態では、電磁石の少なくとも一部は、並行して、順に、パルスで等で動作させられ得る。種々の側面では、電磁石に供給される電流は、処理プロトコルに従って制御され得る。いくつかの実施形態では、処理プロトコルは、フィードバック、オペレータ入力、混合効率の検出、分析結果等の種々の要因に基づいて、流体処理システムの動作中に動的に改変され得る。
【0090】
加えて、上記のように、電磁石1210a-dは、加えて、または代替として、非限定的例として、磁性粒子を流体コンテナの一側面に引き寄せる(およびバルク流体から引き出す)ように、ならびに混合ステップ後にコンテナからの流体移送を補助する、および/または磁性粒子の吸引を防止するように、静的磁場を生成するように印加されるDC信号を有することができる。
【0091】
図14Aおよび14Bは、図12および13A-Bを参照して上で部分的に示される例証的大容量流体処理システム1200の追加の例示的側面を描写する。磁気アセンブリ1205の電極1210の単一の層のための例示的RF信号および混合パターンが、図12および13を参照して上記で議論される一方で、図14Aおよび14Bは、本教示の種々の側面による、磁気アセンブリ1205に対する、例示的RF信号と、サンプルウェルのうちの1つ(すなわち、サンプルウェル1215a)における結果として生じる混合パターンとを概略的に描写し、磁気アセンブリ1205は、2つの垂直に間隔を置かれた水平磁気構造1245a、b等を有する。図14Aおよび14Bに示されるように、流体コンテナ1215aは、磁気アセンブリ1205内に配置され、磁気アセンブリ1205は、コンテナ1215の下部分の周囲に配置される下部磁気構造1245a(電極1210a-dを備えている)と、そこから垂直に分離され、コンテナ1215の上部分の周囲に配置される上部磁気構造1245b(電極1210e-hを備えている)とを有する。示されるように、各電磁石1210a-hは、それ自身の構造または層1245aもしくは1245b内の2つの電磁石に隣接し、他の層内の1つの電磁石に垂直に隣接する。一例として、電磁石1210aは、下部磁気構造1245a内の電磁石1210bおよび1210dに隣接し、磁気構造1245b内の電磁石1210eに垂直に隣接する。図12および13を参照して上で議論されるように、下部磁気構造1245a内の電磁石1210a-dは、図14Aの流体体積1275の下部分で概略的に描写されるx-y平面内で例示的な反時計回りの混合をもたらすように、各電磁石1210a-dに印加される(位相遅延方程式による)例示的信号に従って、A-Dと標識される。同様に、上部磁気構造1245a内の電磁石1210e-hも、(A-Dと標識されるような位相遅延方程式による)例示的信号をそれに印加されることができ、各電磁石1210e-hに印加される信号は、図14Aの流体体積1275の上部分で概略的に描写されるx-y平面内で例示的な時計回りの混合をもたらすように、上部磁気構造1245b内のその隣接電磁石に対して±90°位相シフトを示す。しかしながら、図14Bで概略的に示されるように、磁気アセンブリ1205の電磁石1210e-hに印加されるRF信号のパターンは、z方向に磁場勾配を生成し、それによって、加えて、図14Bで概略的に描写されるような磁性粒子の垂直混合をもたらすためにも効果的であり得る。具体的には、図14Aおよび14Bの例示的描写において、一方の層の各電磁石1210a-dが、他方の層(すなわち、磁気構造1245bまたは1245a)からの1つの電磁石1210e-hに垂直に隣接し、各々に印加される信号は、その垂直に隣接する電磁石に対して±90°位相シフトを示す。図12-14で描写される例示的磁気アセンブリ1205では、例えば、列2によって示されるような下部磁気構造1245aの電極に印加される信号は、上部磁気構造1245bに対して左に1列シフトされることができ(列3も同様に左に1列シフトされることができる)、それによって、図14Aおよび14Bで描写される上部磁気構造の電磁石に印加される信号のパターンと、概略混合パターンとをもたらす。すなわち、単一の層内(例えば、下部磁気構造1245a内)の他の電磁石に対する電磁石1210(例えば、電磁石1210a-d)に印加される異なる信号が、主にx-y平面内で磁場勾配を生成することができる一方で、(例えば、下部磁気構造1245aと上部磁気構造1245bとの間の)異なる磁気構造の垂直に隣接する電磁1210(例えば、電磁石1210aおよび1210e)に印加される異なる信号は、z方向または垂直成分を示す磁場勾配をもたらすことができる。このようにして、磁性粒子は、種々の電磁石1210a-hによって生成される磁場勾配の複合効果によって、流体サンプル内で水平に左右に、および/または垂直に上下に、回転、スピン、移動するように影響を受けることができる。出願人の教示の種々の側面に従って攪拌される磁性粒子を使用して流体を混合することは、磁性粒子を各流体コンテナ内で均一に垂直かつ水平に分散させ、最適な暴露および流体との増進した混合を提供する。任意の数の混合パターンが、本教示に従って電磁石1210a-hの各々に印加されるRF信号の位相および/または振幅を改変することによって、提供されることができるが、種々の流体列内の(例えば、図14Bに示されるようなz方向への)異なる層における逆混合方向(例えば、図14Aに示されるようなx-y平面内で、下層では反時計回りおよび上層では時計回り)は、特に、コンテナ1215a内に含まれる流体の混合を増進し得ることも認識されるであろう。
【0092】
ここで図15A-15Dを参照すると、図12-14で描写される流体処理システム1200を使用する別の例示的処理プロトコルが、出願人の教示の種々の側面に従って描写されている。具体的には、図15Aは、図14Aおよび14Bを具体的に参照して上記で説明されるように、サンプルウェル1215a内に含まれるサンプル流体体積1240a中の磁性粒子の水平および垂直混合のための構成を描写する。しかしながら、図15Bでは、電磁石に印加される信号は、異なる磁気構造1245の垂直に隣接する電磁石1210(例えば、下部磁気構造1245aの電極1210aおよび上部磁気構造1245bの電極1210e)が同一であるように改変され、それによって、例えば、下部および上部磁気構造1245a、bの間の垂直分離に対応する流体レベルにおいて、流体コンテナ1215の側面上で磁性粒子を懸濁させる。例えば、図15Bで描写されるような磁性粒子の分離は、液体抽出プロセスを促進し得る。サンプルウェル1215aからの流体の抽出に続いて、追加の流体(例えば、異なるサンプルおよび/または追加の試薬)が、次いで、追加されることができる。代替として、または加えて、図15Cで描写されるように、上部磁気構造1245bは、次いで、捕捉された磁性粒子1220が、図15Dに示されるような低減した体積1240b内で再懸濁されて混合され得るように、図15Aおよび15Bのその位置に対して降下されることができる。
【0093】
図16A-16Cは、出願人の教示の種々の側面による、別の例示的流体処理システム1600の側面図を描写する。図16Aに示されるように、流体の体積1640aを含む流体コンテナ1615は、例示的磁気アセンブリ1605内に配置され得る。磁気アセンブリ1605は、図12で描写されるものに類似するが、電磁石1610a-d(そのうちの1610aおよび1610bが可視である)と、1610e-h(そのうちの1610eおよび1610fが示されている)と、1610i-l(そのうちの1610iおよび1610jが可視である)とを有する垂直に間隔を置かれた磁気構造1645a-cの3つの層を含むという点で異なる。1つの混合構成では、例えば、可視的な電磁石1610a、1610b、1610e、1610f、1610i、および1610jの各々が、(図16A-16CでAまたはBと標識される)上で議論される例示的位相遅延方程式(1)および(2)に対応する信号を有するであろう一方で、電磁石1610c、1610d、1610g、1610h、1610k、および1610l(図示せず)は、所与の水平構造1645a-c内の各電極がそれに対して±90°位相シフトを有する電磁石に隣接するように、それに印加された、位相遅延方程式(3)および(4)に対応する信号を有するであろう。
【0094】
一般に、図16A-16Cは、流体体積内の種々のレベルにおいてx-y平面内で混合するための、流体コンテナ1615の中の流体1635の体積1640a-cに基づく、異なる磁気構造1645a-cの作動を描写する。加えて、図16A-16Cは、x-y方向およびz方向を含む複数の方向における混合を達成する2つ以上の電磁構造1645a-cの同時アクティブ化を描写する。図16Aでは、例えば、流体体積1640aが比較的低いので、最下磁気構造1645aのみがアクティブにされ、垂直混合は要求されない。磁気構造1645aのみのアクティブ化は、x-y方向に流体中の磁性粒子の混合を引き起こす磁場を生じ得る。しかしながら、図16Bでは、体積1640bが、増加しており、電磁構造1645bの電磁石1610e-hが、加えて、アクティブにされている。故に、(例えば、同一の磁気構造1645b内の電磁石1610e-hによって生成される磁場に起因して)x-y方向に、かつ(例えば、異なる磁気構造1645a、b内の電磁石1610aおよび1610eによって生成される磁場に起因して)z方向に流体中の磁性粒子の混合を引き起こす磁場勾配が生成され得る。図16Cでは、体積1640cが、さらに増加され、磁気構造1645cが、加えて、アクティブにされている。故に、流体体積1640c全体を通して水平および垂直方向に磁性粒子の混合を引き起こす磁場勾配が生成され得る。いくつかの側面では、構造1645a-cのうちの1つ以上のものに印加される信号は、磁性粒子が体積内の所与の流体レベルで優先的に維持されるように、選択的に非アクティブにされることができる。一例として、流体体積の最上層は、サンプルウェル1615の底面上で培養されている細胞を妨害しないように、底部磁気構造1645aに信号を提供しない一方で、図16Cで描写される信号を最上および中間磁気構造1645b、cに印加することのみによって、下層への妨害を制限しながら、優先的に混合されることができる。
【0095】
ここで図17A-17Cを参照すると、図16で描写される流体処理システム1600を使用する別の例示的処理プロトコルが、出願人の教示の種々の側面に従って描写されている。図17Aは、例えば、所与の水平構造1645a-c内の各電極が、それに対して±90°位相シフトを有し、それに対して±90°位相シフトを示す異なる水平構造1645a-c内の電磁石に垂直に隣接する、隣接電磁石であるように、1)電磁石1610a、1610f、および1610iの各々が、(図17AのAによって示される)それに印加された例示的位相遅延方程式(1)に対応する信号を有し、2)電磁石1610b、1610e、および1610jの各々が、(図17AのBによって示される)それに印加された例示的位相遅延方程式(2)に対応する信号を有し、3)電磁石1610c、1610h、および1610k(図示せず)の各々が、それに印加された位相遅延方程式(3)に対応する信号を有し、4)電磁石1610d、1610g、および1610l(図示せず)の各々が、それに印加された位相遅延方程式(4)に対応する信号を有するであろう、上記で図16Cを参照して説明されるような、本教示の種々の例示的側面による、流体体積1640cの混合を描写する。別様に本明細書で議論されるように、図17Aで描写されるような構成は、流体体積1640c全体を通して水平および垂直方向に磁性粒子の混合を引き起こす磁場勾配をもたらすであろう。混合の完了および/または所望の反応に応じて、下部および上部磁気構造1645a、cに印加される信号が、非アクティブにされることができる一方で、中間磁気構造1645bの電磁石1610e-hに印加される信号は、液体抽出プロセスを促進するように、(例えば、電磁石1610e-hの各々へのDC電圧または同一位相の信号の印加を通して)中間磁気構造のレベルでサンプルウェル1615の壁に対して磁性粒子1620を捕捉するように改変されることができる。サンプルウェル1615からの流体の抽出に続いて、流体1640bのより少ない体積が、サンプルウェル1615に追加されることができ、捕捉された磁性粒子は、次いで、図17Cに示されるように、低減した体積1640b内で再懸濁され、混合されることができる。
【0096】
別の例では、本明細書に説明される流体処理システムは、液体の静的量を含まない流体コンテナで利用されることができる。ここで図18を参照すると、本明細書に説明される流体処理システムは、参照することによって本明細書に組み込まれる2016年4月29日に出願された米国仮出願第62/329,870号で説明され、要約書および/またはポスター”Coupling Solid-Phase Micro-Extraction (SPME) to Mass Spectrometry via an Open-Port Probe (OPP) Sampling Interface”,Chang、他(21st International Mass Spectrometry Conference,Toronto)でも説明されるもの等の開放ポートプローブデバイスの中で磁性粒子の混合を実装するために利用されることができる。
【0097】
開放ポートプローブ1800は、開放端付き先端1875を有する管1870を備え、それは、連続ベースで溶媒1885の導入および抽出の両方を行い、先端部1875において溶媒の定常状態レベル1880を提供するように構成される。この特定の例では、開放ポートプローブ1800は、第1の円筒部材を備え、第1の円筒部材は、同軸配置に配置される第2の円筒部材内に配置される。溶媒1885は、2つの円筒部材の間の環状空間1890を通って、先端部1875に向かって進行し、次いで、流体経路を画定する矢印として図で描写されるように内側円筒を通って先端部1875から離れて進行する。理解されるはずであるように、流体の流入または流出が存在しない場合、溶媒1885レベルは、定常のままであり、多くの側面では、開放ポートプローブ1800は、バイアル等の以前に説明された他の流体コンテナに同様に動作するであろう。開放ポートプローブ1800は、先端1875において溶媒1885と接触する基板表面から被分析物を抽出するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、小さい磁性粒子1895が、開放ポートプローブ1880の先端1875において溶媒の中に導入されることができ、流体処理システム、ならびに本明細書に説明される電磁石1882を備えている磁気アセンブリおよび/または構造1881と組み合わせて、磁性粒子は、先端部1875からの溶媒1885の流出に抵抗し、磁場の存在により先端部の近傍に留まるように影響を受けることができる。加えて、磁気アセンブリおよび/または構造は、磁場の存在によって限定されるようなx、yおよびz方向に、磁性粒子にスピンさせ、もしくは前後に進行させる。電磁石は、典型的には、先端表面からの磁性粒子のいかなる逃散も防止するために十分に強力であるように選定されることができるが、下流永久磁石(図示せず)も、磁性粒子を捕捉し、それによって、いかなる下流分析も汚染から防ぐために使用されることができる。開放ポートプローブ先端1875における磁性粒子1895の存在は、基板表面から溶媒の中への被分析物(またはその一部)の質量移動を支援することができる。実施形態では、溶媒と接触する基板表面は、固相微量抽出(SPME)ファイバ1896を備え得る。SPMEファイバ1896は、接触時に溶媒1885の中へ抽出(または吸収)される埋め込まれた被分析物を含むことができる。基板表面は、被分析物サンプルを保持するように構成される任意の材料であり得、メッシュ材料またはブレード様表面等の種々の例を含むことができる。
【0098】
円筒部材が、管を説明する際に上記で説明されているが、三角形、正方形、長方形、または任意の他の多辺形状を含む、変動する断面形状を伴う他の形状も利用され得ることを理解されたい。
【0099】
磁性粒子1895の存在および混合は、開放ポートプローブ先端1875において発生し得る気泡の妨害を支援し得る。気泡は、例えば、開放ポートプローブの中へ溶媒を送達するために利用される圧縮ガス駆動ポンプの使用によって引き起こされ得る。分析されるべき被分析物を含む溶媒の流出は、次いで、1つ以上の好適な分析器具(例えば、質量分析計、検出器等)を使用して、下流で処理されることができる。
【0100】
電磁石を備えている磁気アセンブリおよび/または磁気構造は、金属管の外側に設置され得るか、または、それは、それ自体が金属管の一部であり得、先端またはその近傍で金属と直接一体的であり得る。
【0101】
この特定の実施形態は、基板表面から溶媒までの被分析物の質量移動を説明するが、教示内で、それは、流体サンプルから被分析物に対する親和性を有する基板表面への被分析物(またはその一部)の移動である逆方向への質量移動を支援するために使用され得ることも理解されたい。例えば、生物学的流体サンプルが、さらに処理される、または直接分析される、固体基板表面に移送される着目被分析物を含み得る場合等。生物学的流体サンプルは、血液、唾液、尿、汗、血漿等であり得る。
【0102】
本明細書に説明される教示は、当業者によって判定され得るような規定された必要性を満たすように修正および適合され得ることを理解されたい。
【0103】
出願人の本教示に従って説明される磁気構造および流体処理システムは、LC、CE、またはMSデバイス等の当技術分野で公知であるか、または本教示に従って以降で開発および修正される種々の分析機器と組み合わせて使用されることができる。ここで図6を参照すると、出願人の教示の種々の側面による、1つの例証的流体処理および分析システムが、概略的に描写されている。図6に示されるように、流体処理システム610は、いくつかの実施形態による、磁気構造および開放ウェルサンプルプレートを使用して流体サンプルを処理するように構成されることができる。処理された流体は、全て非限定的例として、手動サンプル装填デバイス(例えば、ピペット、マルチチャネルピペット)、または液体取り扱いロボット、オートサンプラ、もしくは音響液体取り扱いデバイス(例えば、LabCyte,Inc.(Sunnyvale,California)によって製造されるEcho(登録商標)525液体ハンドラ)等の種々の自動システムのうちのいずれかを使用して、流体処理システム610から処理されることができる。処理された流体は、渦駆動サンプル移送デバイス等の種々の流体移送デバイスを使用して、移送され得る。上記のように、1つのサンプルウェルから除去されるサンプルは、さらなる処理ステップのためにプレート上の異なるサンプルウェルに添加されることができるか、または下流分析器に送達されることができる。例えば、いくつかの側面では、処理されるサンプルは、インラインLC分離のためにLC列615に送達されることができ、溶出液は、処理された被分析物のイオン化のためにイオン源620に送達され、続いて、キャリアガスを通したそれらの移動度に基づいてイオンを分析するDMS625、および/またはそれらのm/z比に基づいてイオンを分析する質量分析計630によって分析されることができる。いくつかの側面では、処理されたサンプルは、イオン源615に直接移送され、分離は、例えば、米国特許第8,217,344号に説明されるようなMSと一致した微分移動度分光計(DMS)アセンブリによって提供される。化学分離のためのDMSアセンブリと組み合わせて出願人の本教示に従って説明される流体処理システムは、MS分析のためにサンプルを処理するためのLC(またはHPLC)列の必要性を排除し得る。種々の側面では、処理されたサンプルは、表面音響波噴霧(SAWN)装置、エレクトロスプレーイオン化(ESI)デバイス、およびマトリクス支援導入イオン化(MAII)源を使用して、MS等の分析機器の中に導入され得る。
【0104】
種々の上記で開示されるおよび他の特徴ならびに機能、またはそれらの代替物は、望ましくは、多くの他の異なるシステムもしくは用途に組み入れられ得ることが理解されるであろう。種々の現在では予定外または予想外の代替物、修正、変形例、もしくはそれらの改良が、続いて、当業者によって行われ得、その代替物、変形例、および改良も、以下の請求項によって包含されることを意図していることも理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18